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1971-11-12 第67回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十一月十二日(金曜日)     午後一時十六分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 金丸  信君 理事 國場 幸昌君    理事 二階堂 進君 理事 湊  徹郎君    理事 毛利 松平君 理事 久保 三郎君    理事 細谷 治嘉君 理事 中川 嘉美君    理事 門司  亮君       天野 光晴君    池田 清志君       石井  一君    宇田 國榮君       小渕 恵三君    大石 八治君       大野  明君    大村 襄治君       加藤 陽三君    木野 晴夫君       佐藤 文生君    佐藤 守良君       正示啓次郎君    關谷 勝利君       田中伊三次君    田中 龍夫君       谷川 和穗君    藤波 孝生君      三ツ林弥太郎君    箕輪  登君       武藤 嘉文君    森  喜朗君       山下 徳夫君    豊  永光君       石川 次夫君    角屋堅次郎君       金丸 徳重君    川俣健二郎君       木島喜兵衞君    武部  文君       美濃 政市君    山口 鶴男君       伊藤惣助丸君    桑名 義治君       斎藤  実君    二見 伸明君       小平  忠君    米原  昶君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         外 務 大 臣 福田 赳夫君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣 渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 西村 直己君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務総局         管理局長    茨木  広君         総理府総務副長         官       砂田 重民君         防衛庁参事官  鶴崎  敏君         防衛庁長官官房         長       宍戸 基男君         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         防衛施設庁長官 島田  豊君         防衛施設庁総務         部長      長坂  強君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         科学技術政務次         官       粟山 ひで君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         沖繩北方対策         庁調整部長   田辺 博通君         農林政務次官  伊藤宗一郎君         労働政務次官  中山 太郎君  委員外出席者         議     員 細谷 治嘉君         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 十一月十二日  辞任         補欠選任   井上 普方君     角屋堅次郎君   石川 次夫君     金丸 徳重君 同日  辞任         補欠選任   角屋堅次郎君     井上 普方君   金丸 徳重君     石川 次夫君     ————————————— 十一月十一日  沖繩平和開発基本法案細谷治嘉君外十六名提  出、衆法第一号) 同月十日  沖繩センター建設用地に関する請願(松尾正吉  君紹介)(第一一〇九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩平和開発基本法案細谷治嘉君外十六名提  出、衆法第一号)  沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案(内  閣提出第一号)  沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律  案(内閣提出第二号)  沖繩振興開発特別措置法案内閣提出第三号)  沖繩における公用地等暫定使用に関する法律  案(内閣提出第六号)  国家公務員法第十三条第五項および地方自治法  第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院の  地方事務所設置に関し承認を求めるの件(内  閣提出承認第一号)      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  細谷治嘉君外十六名提出にかかる沖繩平和開発基本法案議題といたします。     —————————————
  3. 床次徳二

    床次委員長 提出者から提案理由説明を求めます。細谷治嘉君。
  4. 細谷治嘉

    細谷議員 ただいま議題となりました日本社会党、公明党、民社党、三党共同提案にかかる沖繩平和開発基本法案提案理由とその趣旨を御説明申し上げます。  沖繩本土より分離せられ、アメリカ軍事優先支配に組み込まれて以来、すでに二十五年余の年月が経過しております。過ぐる太平洋戦争により、本土の防波堤として、約二十万人にものぼる民間人の犠牲と国土の荒廃を余儀なくされた沖繩とその県民にとって、その傷のいえぬまま、二十五年余の長きにわたってアメリカの異民族支配に放置せられたことは、何としても納得のいかぬところであります。しかも、この間、朝鮮戦争を契機として、アメリカ軍によって沖繩戦略的機能は太平洋のかなめ石として、著しく強化されてまいりました。  アメリカ軍キャンプから解放され、住みなれた村に帰ったとき、自分たち田畑が金網に囲まれ、住むべき土地なき県民が肩を寄せ合って住んだ家、やっと開墾した田畑が、アメリカ軍の銃剣とブルドーザーによって強奪され、島ぐるみ土地闘争が全島に巻き起こった事実は、まだわれわれの記憶に新しいところであります。  この結果、面積わずか二千三百八十八平方キロメートルしかない沖繩で、その一二・五%もの広大な土地軍事基地として占有され、沖繩群島に至っては、一三・三%もの土地軍事基地として占有されている状態であります。しかも人口が一番密集している沖繩本島軍事基地の比率を北部、中部、南部別に分けますと、それぞれ、一一・八%、三二・八%、四・一%となっており、いかに軍事基地の占める割合が高いかがわかります。そればかりか、これら軍事基地は、沖繩全島平坦部を占有しており、経済的に開発可能な地域はすべてアメリカ軍が握っていると申しても過言ではありません。  こうして開発可能な土地アメリカ軍の手によって奪われ、生活基盤を失った県民は、好むと好まざるとに関係なく、生きるために年とともに巨大化するアメリカ軍基地基地労働者となって働かなければなりませんでした。基幹部門たる第一次、第二次産業の停滞と第三次産業の異常な発展は、すべて巨大なアメリカ軍基地の存在によるものであり、これが基地依存経済と言われる沖繩経済の根源であります。  しかも、この基地依存経済のもとで暮らす沖繩百万県民生活はきわめて不安定であるとともに、本土における国民所得の七割にも満たぬ所得水準は、必然的に、福祉医療社会保障等県民生活のあらゆる部面においても低水準状態を余儀なくされております。こうした沖繩県民生活を向上させ、基地依存経済からの脱却による平和経済への転換は、日本政府本土国民に課された義務であります。そのためには、アメリカ軍事基地全面撤去がはかられなければなりません。政府が去る六月に調印した沖繩返還協定によるアメリカ軍基地全面的存続のもとでは、沖繩経済平和的発展は全く不可能であります。沖繩戦争恐怖アメリカ軍事的重圧から解放するばかりか、さらに沖繩平和的開発推進し、沖繩百万県民生活物心両面にわたって豊かなものとすることは、国民総生産第二位を誇る日本経済にとっては可能なことであります。  したがいまして、ここに提案いたしました沖繩平和開発基本法案は、沖繩経済社会を平和的に開発させるため、開発の目的、主体手続開発計画内容及び開発行政機構基本を定め、もって国の責任を明らかにいたしたものであります。  以上が本法案提出理由でありますが、次にその内容の概略について御説明申し上げます。  まず、第一章におきまして、沖繩戦争恐怖と他国の軍事的重圧とから解放し、進んで一体たる日本沖繩として平和開発をはかることを明らかにしております。そのため、沖繩からの軍事基地全面的撤去沖繩平和開発基本であることを明らかにいたしております。  さらに、沖繩平和開発は、本土との格差をすみやかに解消するばかりでなく、同時に、東南アジア諸国平和開発に寄与することを基本方針として明らかにしております。そして、政府は、沖繩自治権地方自治の本旨に沿って尊重しつつ、必要な法制上、財政上及び金融上の措置を講ずべきことを明らかにいたしております。  第二章におきましては、沖繩総合開発計画内容とその策定手続を明らかにしております。すなわち、沖繩総合開発計画は、アメリカ軍基地あと地その他の土地平和利用に関する事項産業基盤整備に関する事項生産条件沖繩に適する農畜産物振興流通機構整備及び価格安定に関する事項、林業の振興利用に関する事項遠洋漁業及び沿岸漁業育成に関する事項製造加工業育成及び輸出増進に関する事項中小企業共同化近代化に関する事項観光資源開発及び旅行関係施設整備に関する事項社会福祉医療施設整備及び医師、看護婦確保に関する事項生活基盤整備に関する事項、僻地を含む学校教育施設整備及び社会教育施設整備に関する事項離職者技術教育及び職業紹介推進に関する事項公害防止環境保全に関する事項、その他沖繩開発に関し必要な事項を定めることとし、長期計画及び年度計画とすることを明らかにいたしております。そうして、この沖繩総合開発計画は、沖繩の離島の開発について十分考慮を払ったものでなければならないことを明らかにするとともに、東南アジア諸国との経済的、文化的交流に特に配慮すべきことを明らかにしております。  次に、沖繩総合開発計画策定手続につきましては、沖繩県は、関係市町村意見を聞いて沖繩総合開発計画案を作成し、政府は、沖繩県計画案に基づき、沖繩開発審議会の議を経て定め、国会承認を受けなければならないことを明らかにしております。また、国は、沖繩において、沖繩自治権確保東南アジア諸国との交流をはかるため、水道事業電力事業を県営化するための必要な措置及び亜熱帯農業調査研究機関の設立に必要な措置を講ずることを明らかにしております。  第三章におきましては、沖繩平和開発推進するために必要な行政機関設置について明らかにしております。すなわち、沖繩平和開発に関する施策を総合的かつ積極的に推進するため、計画調整機関としての沖繩開発庁と、その付属機関として委員三十三人以内からなる沖繩開発審議会設置を明らかにいたしております。さらに、沖繩平和開発に必要な資金を融通するため、沖繩開発金融公庫設置することを明らかにしております。  なお、念のため申し上げますと、本法案に基づき、沖繩県及び市町村財政力を充実強化し、戦後の格差解消行政水準の向上をはかるため、各種補助率の大幅引き上げ、地方交付税の強化、特例交付金支出等内容とする復帰に伴う沖繩財政特例法案(仮称)及び計画調整推進事業執行沖繩県への委任を内容とする沖繩開発庁設置法案、及び沖繩にある琉球開発金融公社大衆金融公庫及び琉球政府各種特別会計を一本化し、それに政府資金の出資による沖繩開発金融公庫を設立し、その管理、運営について沖繩県意思を反映させる等を内容とする沖繩開発金融公庫法案の三法案提出する予定でございます。  以上が、本法律案を提案する理由並びにその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願い申し上げます。(拍手
  5. 床次徳二

    床次委員長 提案理由説明は終了いたしました。      ————◇—————
  6. 床次徳二

    床次委員 長引き続き、内閣提出にかかる沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法律案沖繩振興開発特別措置法案沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案及び国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し承認を求めるの件、並びにただいま提案理由説明を聴取いたしました細谷治嘉君外十六名提出沖繩平和開発基本法案、以上の各案件を一括して議題とし、これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。國場幸昌君。
  7. 國場幸昌

    國場委員 沖繩百万県民の長年にわたる願望、まさに血のにじむような願いでありました祖国復帰が、今臨時国会におきまして審議されつつある返還協定並びに関連国内法成立を待って、明年早期に実現する運びとなり、まことに喜びにたえません。  異民族支配のもと過酷な生活環境に耐えつつも、復帰を希求し続けてきた沖繩県民の立場から、ここまでこぎつけていただいた政府並びに一億国民各位に対して、深く感謝を申し上げる次第でございます。(拍手)  御案内のとおり、敗戦で失った沖繩施政権を、平和裏話し合いによって返還されるということは、法理論上はともかくとして、文字どおり世界史上まれに見る快挙でありまして、なみなみならぬ努力を積み重ねてこられた政府当局外交力を高く評価し、すなおにこの事実を喜びたいものであります。もちろん、交渉によって妥結した協定内容自体については、多かれ少なかれ不満のあることは事実であります。返還協定そのものは別の委員会審議されますので、ここではその内容に触れることは避けますが、しかし、私は、ここで強く要望しておきたい点は、返還協定並びに関連法案早期批准及び成立であります。と申しますのは、沖繩住民の大多数が真に望んでいることは、多少の不満はあっても、一日も早く復帰することであると信ずるからであります。(拍手返還協定が、本土国民及び沖繩県民意思を反映していないので、再交渉してやり直せという議論もありますが、しかし、私は地元沖繩各地を機会あるごとに歩いて回り、県民各層の多数と意見の交換をした結果、はだで実感として感じ取ったことは、やはり、大多数の者が一日でも早く復帰して、不安を解消したいと考えているからであります。(拍手)また、本土沖繩各紙による世論調査の結果を分析してみると、たとえ米軍基地はそのままでも、施政権返還を受けるべきだという意見核抜き本土並み返還を支持する意見などが少なくとも過半数はあると考えられ、最近の朝日新聞全国調査、九月二十七日発表では、返還協定内容不満はあるが、復帰できることを支持している者が実に六八%もあり、不満だから復帰が延びてもよいというのかわずかに一二%にすぎないのであります。現地はもちろんのこと、本土においても一日も早く返還されることを望んでいることは明白であると考えます。  沖繩返還は、日米友好関係を基礎として達成された成果であって、反米、反安保闘争では、沖繩祖国復帰はあり得なかったということを銘記すべきであり、基地全面即時撤去アメリカ出ていけというような刺激的、反米的スローガンで、米国施政権を手放したものとは考えられないのであります。もしも、そうした力による沖繩奪還闘争を続けたならば、米国沖繩施政権を手放すどころか、みずから合法的権利と信じておる施政権を、おそらく実力的対応を持って守ろうとしたでありましょう。私は、このような奪還闘争の帰着を自覚するがゆえに、そうした反米、反体制略線を拒否するものであり、あくまでも日米関係の結実として、沖繩返還を評価するものであります。  現在、協定及び関連法案内容に対して、幾つかの不満点があるとして激しい論議を呼んでおりますが、私はここで想起することは、かつて、第二次世界大戦の結果による米軍占領状態に終止符を打つために、サンフランシスコ条約が締結された当時のことであります。当時においても同条約は、日本国民の要求を完全にいれているものではなく、屈辱的なものであるから締結すべきではないという論議がやはりあったのであります。しかし、日本の今日の繁栄、発展はこのときを出発点として、その後の外交交渉及び主体的努力によって築き上げられてきたのではないでしょうか。当時指摘された多くの不満点も、不断の努力話し合いによって着実に解消されてきたのでありまして、一例を本土国内米軍基地の例に見ても明らかであるとおり、当時千三百五十二平方キロ存在したものが、現在では二百平方キロ余りに減少しておるようであります。  そこで私は、沖繩復帰という歴史的転換期を意味づける場合に、これを新生沖繩への出発点であると考えるべきだ、こう思うのであります。不満があるから再交渉せよ、完全なものでなければ受け入れられないとする論議は、現実というものを全く無視した論争のための論争になりがちであり、最善の理想を直ちに実現せんとすることは、ものごとの順序、過程というものを全く無視した責任のない考え方ではないかということを考えるわけでございます。  現在、地元沖繩県民は、復帰を目の前に控えて、ドル・ショック、物価の上昇等現実生活不安をかかえ、さらに干ばつ、台風災害に見舞われ、まさに三重苦の様相を呈しており、一日も早く本土同胞のあたたかい支援を求めておるのが偽らざるところの心情でありまして、復帰が一日でも延びると、その被害、損失をこうむるのは沖繩住民であるということを強く訴えたいのであります。沖繩復帰の問題は、日本国民の問題であることは当然ではありますが、それ以前に沖繩県民の問題であるはずであります。新聞紙上の見出しで見るがごとく、繊維、日中問題と並んで、沖繩の問題が政治闘争の手段とされることを沖繩県民は決して歓迎するものではございません。沖繩県民にとっては、一日でも早く祖国復帰することが、何ものにもかえがたいところであり、復帰した後における日本政府国民の深い御理解とあたたかい施策に期待することまことに大なるものがあります。どうか政府当局におかれましても、沖繩県民の真の願望が那辺にあるかを十分にお考えの上、対処していただきますようお願い申し上げます。  そこで、ただいま委員会議題となっております沖繩復帰に伴う特別措置に関する法案沖繩復帰に伴う関係法令改廃に関する法案沖繩振興開発特別措置法案国家公務員法第十三条第五項および地方自治法第百五十六条第六項の規定に基づき、人事院地方事務所設置に関し国会承認を求める件の各法案につきまして、御質疑を申し上げたいと思います。  まず最初に、沖繩県民は、日本復帰することを望んでいないのではないかという間違った考え方が一部にあるようでありますが、総理としては、沖繩県民世論及び民心をどのようにお考えでございますか、総理の御意見を承りたいわけでございます。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 國場君にお答えいたします。  ただいま質問に入る前に、沖繩住民の一人としてその心情を訴えられました。私は、あのお話を聞いていて、私が施政方針演説でもお答えしたように、戦時中は本土防衛の第一線となり焦土と化した。そして二十数万の方がとうとい犠牲者とかられた。そうして戦後は米軍施政権下にあって、非常に長い御苦労を重ねられた。私は、ほんとにいま祖国復帰協定、これに対する御審議をいただくに際しまして、心から皆さん方に長い間御苦労でした、かように申し上げる以外にことばを知らない、かように申しましたが、これが先ほど言われたあいさつ、それに答えるものでございます。私は、何よりも早く祖国復帰し、そうして、一億国民と百万の沖繩県同胞、これが一丸となって、そうして豊かな、平和な沖繩県をつくる、これがわれわれの願いでなければならない、かように思うのであります。  お話のうちにもありましたが、今日戦争で失ったこの地域がこうして祖国復帰をしようという、これは申すまでもなく沖繩県民百万、この熱願、同時にまた、本土一億の国民願いが、米国理解と同時に友誼のうちに解決されようとするのであります。なるほど、返還協定そのものについてはいろいろの御議論があるようでございます。しかし、おそらく先ほど来お話しになりましたように、県民の方々は、また同時に一億国民は、祖国復帰を実現すべく、また本土の一億の国民はあたたかく沖繩を迎える、そういう気持ちでただいまふるい立っておると思います。先ほど来、そういうことが新聞の報ずるところであり、あるいは反対だとかあるいは無関心だとか、いろいろの批判的意見が報道されておりますが、しかし私は、現状において、皆さん方もまた本土の一億国民も、大多数の方は復帰を心から願い、またあたたかくこれをお迎えする、そして一体となって豊かな沖繩県づくりにスタートをしよう、こういう気がまえでいること、それを私は確信するものでありまして、たいへん長いあいさつになりましたが、以上をもって私の所見を述べた次第であります。ありがとうございました。
  9. 國場幸昌

    國場委員 外務大臣にお伺いいたします。  沖繩復帰の時期について、日本政府側は来年四月一日を要望し、アメリカ側は七月一日を主張しておるということを再三答弁されております。このように、目前に迫った今日になっても決定し得ないということはどういうわけでございますか。いつまでも並行線のままでは諸準備に支障を来たすおそれがあると思いますが、外務大臣、その点に対しては、日米交渉の中でどういうようないきさつになっておりますか、お伺いいたします。
  10. 福田赳夫

    福田国務大臣 日米交渉にあたりましては、もとより、いまお話がありましたが、わが日本といたしましては、四月一日復帰ということを念願し、話をしておるわけであります。ただ問題は、日本側ばかりでなくてアメリカ側双方にあるのであります。双方で協力して、そうして円滑なる復帰という返還、これが諸準備相整わなければならぬ、そういうふうに考えるわけでありまして、この準備は、非常に広範なかまえをとらなければならない。いま精力的にわが日本でも取り組んでおる、またアメリカでも取り組んでおります。  アメリカ側の方面を見てみますると、とにかくあそこに二十六年間居すわっておった、それをきれいにしてわが日本に引ぎ継ぐ、こういうのでございますから、これはなみなみならぬ諸対策、諸準備が必要であろう、こういうふうに考えます。そういうようなことで、どっちかというと慎重を期する意味からいいますると、米側におきましては七月一日ということを言いたがる、現にそういうことも言っておるわけでございます。これは引き継ぎを完ぺきに円滑にやっていこう、そういう趣旨からなんです。わが日本で取り急いでおるわけでございますが、今回、とにかく協定案、またこれに関連する諸法律案、これに伴う沖繩福祉向上あるいは建設、開発、そういうための諸法案、これの御審議をお願いいたしておるわけですが、何よりもわが国といたしましては、これらの諸法案また協定早期成立する、こういうことが前提だろうと思います。その成立いたしました諸法案の線に沿いまして諸準備を進める、わがほうにおいては、何とかして四月一日には諸準備万端相整ったという状態にいたしたい、こういうふうに存じておりますが、米側にも督促いたしまして、米側準備を取り急いでいただく、そして七月一日ということでなくて、なるべくわれわれの念願をする四月一日が実現するようにと、いま最大の努力をしておる最中であります。
  11. 國場幸昌

    國場委員 請求権の問題に関してお伺いいたします。  沖繩住民の対米請求権は、日本政府が放棄したことによって、沖繩住民には損害は与えないという御意見を承っております。沖繩住民としては、日本政府が肩がわりして補償していただくことを要望しておるわけでございますが、そこで、沖繩の人々の不安を解消する意味におきまして、この肩がわり補償に対して、何ものかの特別立法をする御意思はございませんか。ぜひそのようにして沖繩住民を安心させていただきたいことを希望するわけでございます。
  12. 福田赳夫

    福田国務大臣 協定第四条によりまして、アメリカが補償する分野がきまっております。しかし、これでは國場委員が御指摘のように、おそらく沖繩住民の希望は満たされない、そういうふうに考えるわけであります。そこで、請求権と申しましても千差万別いろいろのものがあるのです。これを整理しなければならぬ。この整理にあたりましては、もとより琉球政府当局の御協力を得なければなりませんけれども、いま協定締結の段階においてはっきり整理し得たものは、講和条約締結前の人身損害補償、この問題であります。これにつきましては、この国会におきまして、皆さんに御審議をいただきお許しを得たい、こういうふうに思っておりますが、その他精力的にこの問題の調査をしてみたい、そういうふうに考えておるのであります。  調査の結果、これは政府において補償しなければならぬというような性格のものがありますれば、妥当な、適正な措置をいたしたい、こういうふうに考えます。つまり、その措置とは何ぞやというと、予算措置で片づくものもあるかもしらぬ、あるいはいま御指摘がありましたが、立法措置を必要とするというものもあるかもしれません。しかし、いずれにいたしましても、適正な措置をするということにつきましては御安心願いたい、かように考えます。
  13. 國場幸昌

    國場委員 ただいまの請求権の問題に対しましては、沖繩住民が一番関心を持つ問題でございます。ただいま土地問題裁判において、十項目にのぼる提訴がされております。その問題にしましてもいまだに解決を見ておりません。でありますから、いろいろアメリカ側と地主あるいはその他の一般住民の、今日まで米軍関係で人身傷害あるいはその他におけるところの請求権というのが多発しておるわけでございますが、満足な解決は見ておりませんので、その点に対しては十分に御留意をされて、沖繩県民の期待に沿うような解決をしていただきたい、これを希望いたします。  次に、自衛隊の配備問題に対して総理にお伺いいたします。  沖繩は、第二次大戦によって全島が焦土と化し、十余万人という、全住民の三分の一に近い犠牲者を出した悲惨な戦争体験を持っており、自衛隊に対しても、戦前の陸海軍を連想し、感情的に嫌悪する傾向があることは否定できないところであります。したがって、自衛隊の沖繩配置に際しまして、沖繩住民に対して十分納得のいく説明が必要であると考えますが、まだまだ自衛隊に対する多くの偏見と誤解があるようであります。日本の一部になるのであるから配置は当然であるというような態度では、決して沖繩住民理解するところとはならないのであります。この際、自衛隊の性格、沖繩配備の必要性、またその規模等について、佐藤総理沖繩住民に対する納得のいく説明をいただきたいと思います。  たとえば、ニクソン訪中声明、中国の国連加盟以後、米中接近によって極東の緊張状態が緩和した以上、沖繩基地の役割りも減退しつつあるのだから、米軍基地の大幅な縮小とともに、自衛隊の配備は必要でないという意見があるが、御見解いかがでありましょう。  また、自衛隊の沖繩配備によって自衛隊の性格が変わり、日米共同作戦を実現するためであるという意見、さらに米軍の肩がわりに配備され、軍国主義の再復活であるという意見もあります。さらにまた、沖繩の基地は本土並みどころか、密度においては二百倍であり、百万人口の地域に自衛隊六千八百名の配備は、不当に多過ぎるなどの指摘もよくされておるようであります。  以上の疑問に対しまして、まとめて総理の御見解をお願いいたします。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩祖国復帰すると、当然私どもが沖繩の防衛、沖繩を守る、こういうことになる。これはもう理の当然でございます。しかし、ただいまおっしゃるように、沖繩はさきの戦争で十余万、当時の人口から見ればこれはその三分の一にも当たる、そういう方が戦死者として出てきた、そういう状態ですから、本土防衛の第一線とはいえ、実に戦争の惨苦というものをまざまざと見せつけられておる。したがって、どんなことをしてくれても兵隊と名のつくようなものはごめんだ、そういう気持ちがあるだろうと私は思います。したがって、ただいまの米軍そのものについてももっと理解を深めなければならないし、またそこを守るにしても、自衛隊についての認識を十分持ってもらわなければならない、かように私は思います。  まず米軍について申せば、ただいま米軍は自由に出動し、自由にその基地を使用しております。また、いろいろわれわれの考えられないような特殊部隊もいる、また核、そういう問題についてもいろいろ心配がある、こういうのが現状だと思います。私は、この米軍自身が、今度沖繩祖国復帰したその暁においては、日米安保条約のその範囲内、そのワク内において基地施設を使用できる。また、その行動もその範囲内にとどまる、ワク内にとどまる。またそのワクの外へ出ていく、いわゆる出撃というような問題になると、これはあらためて事前協議の対象になる。事前協議は、日本の国益に照らして、そうしてわれわれがノーあるいはイエス、これを言うということを申しております。国益になるかならないかという、もっとはっきり申すと、日本自身が戦争に巻き込まれるような、そういうことが二度とあってはならない、こういう観点から、ただいまの協議についての日本政府の態度を決定したい、かように思っております。  そういうことでございますから、いま野党の諸君からいろいろ質問を受けますのは、現状は一体どうなんだ、また現状ではこうではないか、こういうお話がありますが、私はそれに対して、返還時においては核はないんだ、これはアメリカの最高の責任者と私は相談したのだ、したがって、大統領の言っていること、それはそのままひとつ信頼してください、かように申しておりますが、しかし、なかなかそれだけではないようであります。しかし私は、最近の上院委員会におけるパッカード国防次官、あるいはまたロジャーズ国務長官等の証言によりまして、返還時には核はないという、これははっきりした証言をいたしておりますから、このことを国民の皆さまも、同時に沖繩の方々もぜひ了承していただきたいと思います。  また、さような立場に立つならば、もっと縮小されてしかるべきじゃないか、かように言われること、返還協定をつくるに際しましても、ずいぶん外務当局もいろいろ苦心し、また米側理解を得るために努力はいたしました。しかしながら、現実の問題として現状を変えるということ、それには相当の期間を要する、時間のかかること、それはわれわれも認めざるを得ないということで、ただいまのような協定ができたのでございます。  また、米軍がかわればそのかわりを自衛隊がするのではないか、こういう話が出ております。私は、もうすでに御承知のことだと思いますが、わが祖国はわれわれの手で守る、これが基本的な方針でありますから、自衛隊が担当するのは当然であります。しかし、それにしても、沖繩県民の十分の理解を得るということでないとこれはできないと思います。ただいま國場君が、ただ自分たちの国は自分で守るのだ、かように言っただけでは、過去の惨禍、あの戦争の惨禍をこうむった沖繩県民はなかなか理解しない、また自衛隊の性格もまだまだもっと話がわかるようにしていただきたいと言われること、それはそのとおりだと思います。私どもは専守防衛、もっぱら守るために自衛隊を持っておる。攻撃的な要素はございません。これがまた日本憲法の命ずるところでもあります。また自衛隊法にいたしましても、外地への派遣などは禁止しております。それらのことを考えて、むしろ自衛隊がいままでも努力したように、あるいは災害時において、地域住民の利益に協力してやはり災害防除に対している、こういうような実績も見ながら、いまの自衛隊派遣についてはこれを実情に応じたように、また県民理解を深めるような、理解を得るような、その形において駐留を考えるべきだ、かように思います。ただいままでいろいろ考えられておりますが、それらの点については防衛庁長官からお答えすることとして、基本的な考え方はただいま申し上げたとおりでございます。  私は、わが国の安全を確保するために、本土沖繩をも含めて、われわれ日本国民の手で防衛の任につく、これをわれわれの手で守る、これが本来のたてまえであります。しかし、われわれの手で及ばない点がある、それらを補うために日米安保条約がある、それは補足的な考え方であります。したがって、ただいま一部でいわれるような軍国主義的な、また軍国主義化する、こういうものでは絶対にありませんし、また、米軍自身がただいまの状態で自由使用し、あるいは自由出撃している、そういう状態は、もう危険はない、祖国復帰すれば事前協議の対象になるのだ、こういう事柄を十分御理解いただきたいと思います。
  15. 西村直己

    西村(直)国務大臣 基本的には総理からお話いただきまして、多少つけ足しをさしていただきます。  沖繩の基地が、返還に向かって強化されているんじゃないかとよく一部の方はおっしゃいますが、私どもが現在見ておるところでは、それは逆行しておると思います。実際の人員の傾向からまいりましても、昨年の四月には五万八千名ぐらいの米軍人がいたのが、その後にはかなり減ってきておりまして、一万数千名もうすでに減っております。したがって、現在は四万四、五千というような状況に立っております。これにあわせて、軍属方面も減っておる。それからもちろん機能的にも、いろいろいわれるようなものも、日本がナイキなどを引き受けますれば、明らかにこの内容というものはもう核に関係のないものに改装されるわけでありまして、核兵器というようなものは使えないものになるわけであります。したがって、よくアメリカ中心に、沖繩をキーストーンということばを使っておりましたが、最近はそういうことばも使われていないというような状況であります。もちろん、率直に申しまして、基地が非常に不合理に使われておる。私どもは、これを効率的に活用すべきだ、そうして少しでも縮小の方向へ返還後も努力をする、これは政府全体の態度だと思います。  それから自衛隊の問題につきまして、性格はもちろん御存じのとおり、自衛隊法に基づいて私どもは行動をいたし、また、さしてもらいます。特に、現在は民生協力などは全部米軍の手でやっておりますが、こういうものなどは当然自衛隊が、救難あるいは民生協力、それからあわせていわゆる自衛隊本来の任務だけはさしていただきたい。しかし、配置にあたりましては、十分住民各位の御理解なりいただくように極力努力をいたします。それからいま一つは、非常に沖繩だけにたくさんな自衛隊を配置するんじゃないかと言われますが、実は全体から申しますというと、自衛官の配置は、内地全体の平均では、一人当たりの密度が少し多い。しかし、たとえば北海道のようなものはまた四個師団も存在しておる、密度がはるかに高い。それから、内地全体が低いのは、東北とか山陰とか北陸とか四国をきわめて手薄にいたしております。そこで下がる。しかし、九州は沖繩の密度よりは対一人当たりの、人口と陸上自衛隊の人員を比例すれば少し高い。むしろ沖繩より高い。そういうような意味で、一つの地域的な立場というものも多少加味され、特に離島が多かったり、遠隔地でありますから、多少は密度が高くなるのはやむを得ない、こういうように御理解をいただきたい。しかし私どもとしては、最小限の基幹部隊と、それからそれの支援部隊だけを持ってまいる。何か事があったときに、一々内地から送るんではいけないという意味で、支援とかそういうものがつくということも御理解をいただきたい。しかし、基本的には、沖繩の、戦火を受けられました過去の歴史、感情、こういうものを十分心得、また、私どももその御理解をいただくように努力をしてまいりたい、こう思います。
  16. 國場幸昌

    國場委員 次に、沖繩における公用地等暫定使用に関する法律案に対してお尋ねいたします。  本法律案は、沖繩という一地区にのみ適用されるものであるから、憲法第九十五条の特別法に当たり、住民投票に付すべきものであるという論議もあり、日弁連及び琉球政府からも意見書が提出されておるということを聞いておりますが、その問題に対していかがな御見解を持っておられますか、お尋ねをいたします。
  17. 西村直己

    西村(直)国務大臣 公用地等の暫定法案の趣旨は、先般ここで御説明申し上げましたように、公用あるいは公共用に提供されるもの、公用の中には、安保条約に基づく米軍基地、それから先ほど来お話があっております国土防衛のために使わしていただく自衛隊基地、また、水道、ガス、電気あるいは道路等々、いわゆる引き続いて、復帰と同時に空白をつくらないで国のファンクションと申しますか、機能を維持していかなければならぬ、あるいは安保上の機能を維持しなければならぬために、原則としては、できる限り民有地の方々に対して契約でもってお願いをする。大多数の地主の方々は、私ども今日現在折衝する範囲では、御理解はいただきつつあります。しかし特殊な、日本の国内と違いまして、施政権下にありまして、なかなか、復帰の日までにすべての地主さんの御協力を得るということは、時間的にもいろいろな事情で制約をされる。そこで、ある一定の期間暫定使用だけはさしていただく、保障のような意味で法律をつくらしていただいております。そこで、この法律が憲法九十五条に、あるいはその他の憲法の条章に触れるというような日弁連等の御意見も私は聞いております。先般、他の、予算委員会等でも法制局長官が詳細な説明を申し上げましたが、私といたしましても憲法九十五条、いわゆるこれは、特別地域に対して特別措置をとるんだから住民投票に問えと、こういうふうな九十五条の趣旨をいっておられるのではないかと思うのでありますが、この憲法九十五条の特別法ということになりますと、特定の地方公共団体の組織、権能、運営について特例を定める法律、このある法律がその特別法として住民投票に問われるかどうかは、最終的には国会でおきめになるものでありますが、今回の法律が憲法九十五条に値するのかどうかということについて、政府はどういう見解を持っているかというと、この法案は、沖繩という地域にある土地について、公用等のため暫定使用をさしていただく、できるということを定めたもので、沖繩県または沖繩の市町村等の特定の地方公共団体の組織、権能、運営について特例を定めたものでない、これが実態的なものであろうと思いますし、それから同時にこの法案は、事柄の性質上、沖繩復帰と同時に施行してまいらなければならない。そのためには復帰前に制定される必要がある。復帰前においては、沖繩はまだ憲法上の地方公共団体ではない。こういう手続の面、実態、手続、両面から見て、政府としては憲法九十五条の特別法には当たらない、住民投票の必要はない、こういうふうに解釈をいたしておる次第であります。
  18. 國場幸昌

    國場委員 もう一点。  現在の沖繩の地籍は非常に不明確であり、このようなあいまいな状況のもとで使用することは非常に困難なことではないか。非細分地、所有権の喪失土地などの取り扱いに対してはどうなされるわけでございますか。総理府長官にお願いいたします。
  19. 西村直己

    西村(直)国務大臣 防衛施設庁の関係になると思いますので申し上げます。  市町村の非細分土地については、現在市町村が自分で登記して整理をしておりますが、復帰後は本土土地制度になじまないものでありますから、制度としては認められないことになりますので、これは使用権取得の対象にはなりません。現在市町村に市町村非細分土地借料に相当するものを払っております、この相当料を。これはその土地が、軍用地が返還されるまでの間は当該市町村に対する財政措置の一環として特別措置を講ずることに今回なっておるのでありまして、そして、これの具体的内容については関係省庁で相談いたしますが、とりあえず私どものほうの防衛施設庁で所要の経費を概算要求をいたしておる次第であります。
  20. 國場幸昌

    國場委員 あと一点だけをお伺いしておきます。  この暫定使用法と土地収用法、特別措置法とのそれぞれの関連はどうであるか。自衛隊法は百三条に、自衛隊が土地を収用するときは防衛出動のみに限ると、こうあるわけでございますが、施設等の確保に際しても適用されるものであるかどうか、その点もお伺いしておきます。
  21. 西村直己

    西村(直)国務大臣 この暫定使用法案であります。これは先ほど来申し上げているように、安保条約上の義務の履行、自衛隊の国土防衛上の必要あるいはその他の一般の民生のための公共用のために用いる必要等で、これで本来の法律上の根拠を持たしていただく。それは中心は契約でいく。しかし、どうしてもできない場合に暫定使用をさしていただく。これに対して、内地では、講和条約の際に、六カ月という期間をもちまして一応暫定使用を終わる、と同時に内地の米軍適用の土地に対しては特別措置法をつくって、土地収用に準ずるような手続法があるわけであります。それでございますから、今回の暫定使用法案の中にもそれに準ずる扱いはしますが、できる限り私どもはそういうことでなく契約でいけるように、一定の暫定使用期間の間にこの問題を解決したい、こういう考えであります。  それから、自衛隊が土地収用法を使えない、防衛出動以外にはないじゃないか。防衛出動の際には、明らかに徴用というような権力的操作ができるようになっております。なお、自衛隊の土地の取得も土地収用法の対象になり得る、私どもはこういうふうに解釈をいたしております。
  22. 國場幸昌

    國場委員 当局はいままで軍用地主との折衝を持ってきたことと思いますが、これまでの交渉経過とその内容を承りたいわけでございます。  また、特に軍用地地主連合会の契約に対する考え方と態度を、当局としてはどのような受けとめ方をしておりますか。また、地主連合会が要求しておる借地料は幾らであり、防衛庁はこれに対してどのような予算を考えておるのでありますか。その二点に対してお伺いをいたします。
  23. 西村直己

    西村(直)国務大臣 地主連合会の方々には私も数回東京でもお目にかかった。それから同時に、私どものほうの役所の防衛施設庁を中心に、ときによってはとの法律案等ができる場合には、政務次官を中心にしばしば沖繩へおじやまいたしまして、そうして、琉球政府それから同時に関係市町村長あるいは地主連合会の方々に御説明を申し上げております。そこで、地主連合会とされましても、ある程度は私どもの運びを御理解はいただいておるということはできると思います。地主連合会は、役員会、総会あるいはそれを下へおろしていくというようないろいろな御相談の計画を持っておられる。なお、私どもは、続いて今月中にもさらにわが政府の借料等に対する態度の説明のために、さらにまた人を派遣したい、こう思っております。なお、防衛施設庁といたしましては、現地に現在二十名いる以外にもさらに人員を相当数出張させまして、そういうような契約締結、まあ仮契約と申しますか、御理解をいただくことに努力をしてまいりたい。  それから、地主連合会といたされましては、私どものほうへ一応言ってこられているのは、二百十五億という数字をワクとしてとってくれ、従来は軍用地については二十九億くらいでございましたが、これをよく世間では六・九倍というワクでございます。具体的地主さんにこれがどういうふうに当てはまるかは別としまして、ワクとしまして。そこで、これらを勘案いたしまして、防衛施設庁では、現在百八十八億円の軍用地関係の概算要求を大蔵省に要求し、ぜひこれを実現すべくわれわれは努力をする。その内容は、百五十二億というのが借料そのものであります。しかし、折衝事でございますから、いろいろな過程を経ますので、それに三十六億を調整費的なもので加えまして、百八十八億というのを現在防衛施設庁では大蔵省に来年度予算に要求をいたしておる、これが現状でございます。
  24. 國場幸昌

    國場委員 ちょっと防衛庁長官、いまの説明によりますと、二百十五億概算要求として請求はしておるが、その中で、軍用地として支払うべきものは百五十二億で、しかし、やはり借地契約をする地主連合会との今後の調整として、目的は百八十八億、これが地主の要求であり、その点に目的を置いて今度交渉されるというわけでございますか。それとも——二百十五億というのは、百八十八億からはみ出す分に対しての内訳はどういうぐあいになっておりますか。
  25. 西村直己

    西村(直)国務大臣 國場さん、私の説明をちょっと逆におとりになったかと思いますが、地主連合会が私どものほうに軍用地関係で二百十五億というのを要求されております。その後に多少の経緯がありましたり、ほかの省の、たとえば道路であるとか水道であるとか、いろいろな借地関係の方がそれぞれの省庁から出ております。少し動いておるようでありますが、一応経過的には二百十五億を要求された。それが従来の借地料から見ると六・八三倍ですか、六・九倍とよくいわれておる。それに対して、本土のことも考えますが、私どもは、沖繩の特殊事情を考えまして、二百十五億の要求に対しては、百八十八億は、少なくともいろいろな行政でございますから、ただつかみ金を出すわけにいきません。やはり一応のいろいろな沖繩の特殊事情を加味して、と同時に、基準は内地のいろいろな土地の基準がありますから、それとからみ合わせて、百五十二億というのはまずとにかく借料だ。しかし、それは御存じのとおり、あるいはこれは宅地にすべきだとか、あるいは山林であったものが宅地になるべきだというような、いろいろな個々の地主あるいは部落等で御折衝の過程でお話し合いがある場合があるだろう、その場合に、固めたものでただ押しつけるというわけにいきませんから、調整費的なものを三十六億持って、百五十二億に三十六億加えますと百八十八億になります。それが政府に対する——政府と申しますより防衛施設庁が大蔵省に対して来年度予算に要求をしておる、こういうふうにお受け取りをいただきとうございます。
  26. 國場幸昌

    國場委員 おっしゃるのもよくわかりますが、御承知のとおり、現にアメリカからきておる使用料は二十九億、この二十九億は、いまから二カ年前かに四〇%の値上げをして二十九億になったわけなんです。そこで問題は、日本本土のいわゆる軍用地、公用地と沖繩と比較されてはこれは困ります。二十六カ年間において、沖繩の地主のほうが精神的にも物質面においてもそれだけの犠牲を受けてきたということからしましてでも、政府としましては、これに対するところの報いるというようなお気持ちをもって、この軍用地問題に対しては特別なる計らいをしていただきたい。  私は、承るところによりますと、二百十五億は地主に対して約束をするんだというようなことも話し合いの中から出ておるということを漏れ聞いておるわけでございますが、長官、ひとつこの点に対しては、どうぞ、地主の要求は日本本土と比べて少々高いかはしれませんが、また、私の調べたところにおいては、この利用価値に対しての問題の評価のしかたでございます。そういうような面から見ましても、沖繩の二十六年間においてのその損失というものも御配慮をされまして、ひとつ特別なる計らをしていただきたい。これを希望するわけでございます。
  27. 西村直己

    西村(直)国務大臣 お気持ちはよくわかります。従来二十九億に対して、私どものほうは百五十二億で、さらに三十六億の予備費的な調整費を持っております。これで六・五倍。地主さんのほうの要求は六・九倍ですね。わずかの差なんです。しかし、できるだけそれにはつけたいけれども、私どものは、内地に一つ基準があるのです。しかし、内地の基準だけを当てはめておるのではございません。内地の基準にもちろん沖繩の特殊事情を加えたもので計算をして、そういう要求をいたしております。行政でございますから、全部団体からいわれたからそのままをぽんとのむということは、政治としては一つのあり得る場合もありますけれども、行政官庁としては、ただいわれたから、そのままぽんと大蔵省へ持っていっても、大蔵省にも納得させるだけのわれわれは努力理由を立てていく。  そこで私は、さっき申し上げましたように、沖繩の地帯については、本土の基準もとるが、同時にもうすでにわれわれの要求の中にも、沖繩の過去における低かったこと、あるいは御苦労であったこと、同時にまた、地目などが、山林として二十年もほっておられるのがすでに宅地に扱わなければならぬものを幅広くいろいろ取り入れていく。そういう意味で、もうすでに概算要求でもその状況は取り入れながらやっておるわけであります。
  28. 國場幸昌

    國場委員 この軍用地問題というのは、過去において大きな問題を残しております。いま復帰を目前に控えまして、ましてや返還協定の中でも、政府土地使用に対しての補償をするというような、これは重要なる条件を持っているわけでございます。でありますので、三万八千という多数にのぼる地主でございますので、これが一致するというのもなかなか困難ではございますが、しかし、貸地料の適正なる要求に政府話し合いになるのであれば契約もいたしましょう、こういうような姿勢であるわけでございますから、ひとつ大蔵大臣、これは何としましても大蔵大臣の責任の上になさなければいけないと思いますが、いまの防衛庁長官土地借地料に対しての要求に対して、いかなるお考え方をお持ちでございますか、大蔵大臣、御返答願います。
  29. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いま防衛庁長官が言われたような金額の要求が出ております。それからまた、この問題については、現地にいろいろの要望のあることも聞いております。予算査定の過程におきまして、現地のいろいろの要望も私どもは十分取り入れて、防衛庁といまいろいろこの話をしている最中でございますから、現地の要望を取り入れた最後の解決はしたいというふうに考えております。
  30. 國場幸昌

    國場委員 それでは、最高の決定権を持たれる総理大臣に、いまの問題に対してお伺いいたします。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの大蔵大臣、ずいぶんしぶい大蔵大臣ですが、これも大体私が聞くところでは、現地の皆さん方の要望を入れたいような気持ちで答えておる、かように私はいま聞き取ったのでございますが、なお最終的決定は、まだいましばらくかかりますけれども、これは十分御期待されるようにあっていいのじゃないだろうかと私は思いますから、来年度予算ができ上がる際に十分注意したいと思います。
  32. 國場幸昌

    國場委員 どうぞよろしくお願いいたします。  基地周辺整備の問題に対して申し上げます。  本土における基地周辺整備法に基づく基地対策内容、予算は大体幾らでございますか、防衛庁長官
  33. 西村直己

    西村(直)国務大臣 基地周辺につきましては、沖繩のいわゆる地方財政の御窮屈である面も顧慮いたしまして、市町村以外に県というものを一つの対象にいたしました。それからものによっては十割までできるというような——今回の防衛庁関係法律を改正する法案の中にも、はっきりこれを明示いたしておるわけであります。  そこで、沖繩の基地周辺の整備状況はどうかというと、率直に申しまして、米軍施政権下においては、本土よりはるかに沖繩のほうがおくれております。そこで私どもは、これをかなり大々的に技術的な調査をやって、計画を持ってこれを進行してまいりたい。そこで、そういうようなことを考えまして、来年度さしあたり十億円という要求を全体としてはいたしております。
  34. 國場幸昌

    國場委員 長官、十億円というのが沖繩の予算で、本土における予算は——その対照するところがございますので、ひとつお伺いしたいわけです。
  35. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 本土におきます昭和四十六年度の周辺対策関係経費は、総額二百三十五億二千八百万円でございまして、その内容は、現実に基地の運用等から障害が生じます場合の事業といたしまして、河川改修等の事業として四十八億七千二百万円、それから騒音対策といたしまして、学校等の防音事業として九十七億九千八百万円、道路改修事業といたしまして二十五億六千万円、それから民生安定施策といたしまして水道等の生活環境改善施策の助成事業として三十八億四百万円、それから飛行場周辺の集団移転事業といたしまして二十四億二千三百万円、その他の補償関係が七千万円でございまして、合計が二百三十五億二千八百万円でございます。  なお、来年度の要求といたしましては、これに見合うものとして三百四億九千六百万円を現在要求中でございます。
  36. 國場幸昌

    國場委員 いまの三百四億九千万円というのは、これは本土におけるところの整備費用としてそれだけあるわけでございますか。それに対応して沖繩は幾らでございますか。
  37. 島田豊

    ○島田(豊)政府委員 沖繩関係の来年度予算の問題でございますが、ただいま防衛庁長官からも申し上げましたとおりに、この種の周辺対策事業は本土に比べまして沖繩の場合非常に遜色があるわけでございますので、私どもといたしましては、基本的にはできるだけ早期本土水準並みに持っていきたいという考え方で予算の積算をいたしておるわけでございます。そこで、来年度はいろいろこの種の事業を行なうにつきまして、実態を把握するということがまず何よりも先決でございますので、そういう障害の実態を把握して補助事業の全体計画を立てたい、こういうための調査経費といたしまして、約五千八百万円を計上いたしておるわけでございます。しかしながら、とりあえず来年度におきまして処置をしなければならないという各種の事業がございますので、そういう緊急に対策を講ずるものとしまして、先ほどの項目別に申し上げますと、河川改修等の事業のために二億二百万円、学校等の防音事業のために五億八千八百万円、水道等生活環境施設等の助成事業のために一億六千二百万円、道路改修事業のために一億一千四百万円、合計十億六千六百万円を概算要求いたしておるところでございます。
  38. 國場幸昌

    國場委員 いま御報告のありますとおり、これは私に言わしめれば不満でございます。と申しますのは、基地の役割り、その規模——基地の中に沖繩があるということも言われておるわけでございますが、住民福祉面においても立ちおくれたところの、沖繩の基地あるがゆえにそれに障害を受けて、あらゆる面におくれておる点もあるわけであります。十億に対して三百四億、基地の範囲からいきますと、その機能力といいましょうか、三に対して二である。逆に沖繩のほうが三で、本土においては二である。こういうような規模から見ましても、また二十六年間において沖繩では軍事優先でございますので、そういう面に対しては立ちおくれておるのも御案内のとおりでございます。でありますから住民福祉、民生の安定、その役割りそのものにおいての比重からしましても、やはり国家においてできるものだけでも沖繩住民に対しては与えていただきたい、これを希望するわけでございます。でありますから、来年度の予算に対しては、沖繩基地周辺の住民の納得のいくように予算の確保をしていただきたい、これを希望するわけでございます。  なお、補助率に対しての問題も、いまさっき長官はお話をされておりましたのですが、沖繩は市町村の公有地あるいはまた社会資本にしましても経済的に脆弱でございますので、特別なるお計らいをもちまして、そして振興開発のような別段の補助をしていただきたい、これを希望するわけでございます。  時間がございませんので、たくさんありますが飛ばしまして、総務長官に一言お願い申し上げます。  沖繩復帰不安が叫ばれ始めたのは、日米共同声明によって復帰が確実になったころからであります。二十六年間にわたる本土との分離によってあらゆる部門に格差を生じているといえども、この復帰不安の基底をなすものは経済生活不安であって、復帰不安とは経済不安であるといっても過言ではありません。  私は、このことを機会のあるごとに主張し続けてきたのでありますが、すでに復帰関連法の提出を見ておる今日、県民の多くはいまだにその不安をぬぐうことのできずにおることは、否定できない事実であります。私としては、本土法との関連もあり、沖繩だけの特別な立法をすることの困難さも十分理解しておるわけでございます。沖繩側の要求も相当に考慮いただいており、その努力を高く評価申し上げたいと思うのであります。しかし、豊かで明るい沖繩県に対する県民の期待はまことに大なるものがあり、それゆえにいままで御発表いただいた施策の範囲では、いま一つ説得力に欠けるきらいがあると考えるのであります。  そこで、これら一連の特別措置法案によって、沖繩経済生活面は、復帰によって悪化するものではなく、希望の持てる出発点になるのだという説得力のある御説明を、物心両面の援助を惜しまないと言っていただいた佐藤総理及び担当大臣である総務長官から承りたいわけでございます。
  39. 山中貞則

    ○山中国務大臣 広範な質問でありますから、簡潔に私のほうで問題点を指摘して答弁をしてみたいと思います。  まず、現在の沖繩の制度、生活様式というものが、全面的に二十六年の間に本土と異なっておるために、本土生活に移行する場合における心配、その点については復帰に伴う改廃法あるいは特別措置によって、それらの手落ちを万全にいたしておるつもりであります。生活のための物資の輸入に関する税制上の配慮、数量、あるいはまた沖繩において今日本土との間にとられておりました関税が撤廃されることによる沖繩側の立場からする心配、それらの問題について配慮をいたしておりまするし、また、県民個人の一人一人の問題としての税負担の問題等については、所得税、住民税、すなわち新しく起こされる県民税も含め、市町村税に至るまで、少なくとも沖繩県民の納税者のほとんどの方が、今日の負担よりも安くなるような配慮をいたしております。  また、今後の沖繩県の未来についても、沖繩振興開発特別措置法あるいはまたそれの裏づけの金融公庫法等によって、沖繩の未来図を十カ年の目途に設計をしながら、そして補助率を別表において明示して、本土のいかなる地域立法の高度な政策補助よりも低からざる補助をもって沖繩側に対応することにいたしておりますし、また、交付税その他の新しい県並みの制度としての自己財源等も大きく見込まれるわけでありますから、沖繩県民並びに沖繩県の今後の生活というもの、あるいは県政の伸展というものは、少なくとも復帰以前の年に比べて飛躍的な新しい前進を期待できるし、また、その中で沖繩の特殊な階属や職業の方方のみが特別復帰に伴って自分たち生活が困るというような問題等については、十分の措置をいたしておるつもりであります。  たとえば、たばこが専売に移行することに伴う業者並びに労働者の問題、あるいは塩あるいは通関業その他の問題から、基地関連の人々の今後の生活の不安に対処する労働立法あるいは転業その他の措置等について配慮いたしておりますので、県民の皆さんが祖国一体になられて本土の中に入られても、今日以上に状況が悪くなるという人をほとんどないようにするということをもって私は今日まで臨んでまいりましたので、今後逐条その審議をいたしていくにつれて、県民の皆さま方にも議場を通じ、あるいはまた報道等を通じて、自分は、自分の家庭は、職場は、会社は、そして自分たちの町やあるいは県はという問題に対する具体的な説明と回答をしてまいりたいと存じます。
  40. 國場幸昌

    國場委員 重要な問題でございますので、総理にお尋ねを申し上げます。  先般の通貨対策は、沖繩住民の手持ちドル確認作業によって、復帰時の一ドル対三百六十円の交換を保証していただいたことは、政府の英断と考えますが、県民にはドルが通貨なるがゆえにやはり大きな損失をもたらしておるのも事実でございます。そこで私は、このドルの交換というものに対して、何とか一日でも早くこれを円に交換していただきたい。実はせんだって、政府といたしましては、ドル・円に対する変動相場制による差損の補償をするというようなことで十一億円を措置していただいたわけでございますが、沖繩の貿易の昨年度の実績から申し上げますと、四億七千七百万ドルに対しまして本土からの輸入が約この七六%でございまして、約三億七千万ドルというのが本土から沖繩に輸入されておるわけでございます。ことしに至ってもおそらくその輸入高というのは下がるわけではないだろう、こういうようなことでございますが、新聞報道においては四百四十品目に対してワクを広げて何とかの措置を講じてやるんだ、こういうようなことでございましたが、いまさっきも申し上げましたとおり、月間において約三千万ドル以上なる本土からの輸入がいまでも続いておるわけでございます。一〇%の変動相場制にしますと、約三百万ドルが月に沖繩においてのいわゆる変動相場制による差損になるわけでございます。その金額は約十億円でございます。復帰が七カ月おくれますと七十億円といういわゆる差損が出てくるわけでございます。でありますから、いまさっきも申し上げましたとおり、十億円の差損補てん、一億円の学生送金に対するところの補てん、こういうことははっきりしておるわけでございますが、その後においてのドル変動相場制による差損に対しての措置が十分にまだできておらないというようなことを承っております。これに対するところの措置はどうなっておるでありましょうか。
  41. 山中貞則

    ○山中国務大臣 先般、予備費の支出をもって決定いたしました十億円の物資の安定のための基金、それの支出並びに学生の送金に対しての一億円の措置は、確かにおっしゃるとおり四百四十品目を内容としたものではありませんでしたために、沖繩においては公共事業の発注等においても著しい渋滞を来たしておる実態を見まして、四百四十品目に拡大すること、さらにまた十億円ではもちろん足りませんから、その物資に関する限り、本土復帰の時点までいまの差額補てん方式と申しますか、琉球政府のほうのの基金に本土政府から支出を続けていくこと等について大蔵と合意をいたしておりますが、先月、琉球政府も十億円の制度が実質上出発をいたしましたので、この金がもうすでに食い込んで、十億円が食いつぶされつつあるわけでございますので、これが切れることのないように措置をするつもりで予算の準備もいまいたしております。  一方、一億円の学生の送金の問題についても、なお変動相場幅がその後上がりましたために、対象人員等もさらにふえましたことも手伝って、約八千万円ほど不足するという前提もございますから、これらの問題は三カ月ごとに精算をいたしておるようでありますので、一応当初の一億円で十二月末まではいけるわけでありますので、それを見合わせながら、その後の復帰までの予算措置をいたしたいと考えます。  なお、先般落としておりました長期療養者等については、ほぼその確認等もできたようでございますから、それについても財源の手段を講じたいということで、いま財政当局とほぼ合意に達しつつある次第でございまして、あとはその決定を待つばかりということになっておるわけでございます。
  42. 國場幸昌

    國場委員 大蔵大臣にお尋ねいたします。  コナリー米財務長官の来日後、大蔵省は折衝を持ったようでございますが、新聞報道によりますと、コナリー米財務長官は、日本の円を一五%引き上げをするというようなことをおっしゃっておるようでございます。それからアメリカ向けの輸出課徴金一〇%、この問題、あるいはまた本土国内においての防衛武器、それに対してもアメリカのほうから、注文をしなければいかないとか、輸入規制に対しての全面開放だとか、こういうようなことの条件を持ち込まれ、そのためには一〇%課徴金を撤廃しましょう、それで一五%の円の切り上げをというようなことに話し合いがなされておるということを承っておりますが、この一五%にもし円が切り上げされた場合には、沖繩のまたドル通貨というのに大きく影響してくるというようなことでございます。  沖繩は、御案内のとおり消費地でございまして、本土みたいな中間加工産業というような沖繩産業にはなっておりません。でありますから、資材を買うにしましても、ドルの値打ちが下がるということになると安く買えるから、輸出品物は少々ぐらい落ちてでも、それだけの価格において値上がりがくるんだから、これでいいじゃないかという考え方もあるようでございますが、沖繩の現状というのはアメリカ施政権下にあるといえども、アメリカ向けに対しては課徴金、本土からの輸入に対してはドル通貨なるがゆえに円の切り上げ高に対するところの物価の値上がり、ダブルパンチを食っておるというのが今日の状況でございます。でありますから、今度円価切り上げに対しては大体幾らぐらいの見通しがありますか。それでまた、沖繩の円の交換が復帰前には不可能でございますかどうか、いま一度念を押してお聞きしたいわけでございます。
  43. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 コナリー長官が来日いたしましたが、これはもう長官自身が記者会見で申し上げておりますとおり、今回は、自分は日本に具体的な問題の協議に参ったのではない、ベトナム大統領の就任式を機としてアジアを歴訪し、日本に表敬に立ち寄って、そのついでに日本のいろいろな実情を知って帰りたい、そのためにあらゆる人と会って、いろいろ意見の交換もしたいということでございまして、今回、各関係閣僚そのほかそれぞれ会談いたしましたが、そういう目的で来ておりますために、いまおっしゃられたような円の切り上げ幅というような問題、そのほかの問題に、今回、コナリー長官が触れたということは一切ございません。  これは、御承知のとおり、いまこれをきめる国際的な会議がすでに開かれており、来月早々もまた開かれようという協議の場がございますので、そういう場を通じて、こういう問題は協議されるということになろうと思いますが、その場合に、円の切り上げというようなもの、各国の平価の調整ということはひとり沖繩だけではございませんで、日本経済全体にも影響があることでございますし、同時に、各国もそれぞれの国に影響のある問題でございますので、それぞれその各国の国益を踏まえたいろいろの協議が行なわれるということでございまして、あらかじめ自分のところはこれくらいの幅による変動を考えておるなんというようなことを、各国ともいまお互いに示し合っておる段階ではございませんので、この点については、この席で申し上げることを遠慮したいと存じます。  それから、現在沖繩には米国施政権が行なわれておるときでございまして、いかなる通貨を通用させるかということは、これは施政権を持ったものの権限でございまして、そういう点から考えて、沖繩本土復帰する前に沖繩に円を通用させるということは、実際問題として、私は不可能な、困難な問題であると考えます。
  44. 國場幸昌

    國場委員 時間がございませんので、急を要する問題に対して……。  宮古、八重山の干ばつ、追い打ちをかけて襲いきたところの二十八号台風、これによるところの宮古、八重山住民に対しての救済措置として、政府としてはあらゆる面から手を尽くされておるようでございますが、私はいま政府のほうでやられておるのは、承りますと、一番最初に三億一千万円の緊急措置に対しての援助、その後一億六千万円という追加をされたようでございますが、しかし、総理府長官も御案内のとおり、私はあの干害の後、三回四回と宮古、八重山を訪れたわけでございます。ところが、まことにみじめなものでございます。いまより十何年前に、終戦後各地から敗戦のため押し返されたところの沖繩住民本土において生活の償わないという政府政策をもって八重山に移住させたわけでございます。ところが、琉球政府としましては、移住政策をもってできることはやってやろうというようなことでございましたが、何ら資金的な裏づけがない。十何年になんなんとして今日まで、零細なるあるいはまた離農、その政府の政策が手の届かないものでございますので、せっかくの移住をしたようなものの、日雇い人夫として、農業を離れて町に行くというようなさなかにおいて、御案内のとおり、さる二十八日には嘉永五年以来八十年来の大干ばつというのに襲われ、追い打ちを食らって二十八号台風、家屋の崩壊、全壊が千戸余りにものぼっておるわけでございます。よんどころなくして、米軍としましてはテントを与え、その中にありて、私は戦争中に南方もずいぶんかけ回ったわけでございますが、あの移住地におけるところの八重山の移住民、ああいうような生活をしている者は見たことがございません。私は、同じ日本国民であり、法域は違うといえども、どうしてあれに救済の手を伸ばすことができないのか、どうか。いまさっきも申し上げましたとおり、干害においては四億か五億に近いだけの援助はなされたということでございますが、長官も御案内のとおり、宮古、八重山というのは全く純農業でございます。  この経済を大まかに申し上げますと、宮古、八重山の農生産物は約四千万ドルでございます。四千万ドルに対して、これが八〇%の損害を受けておるというのは、生活の根拠を皆無にしたということにひとしいわけでございます。でありますから、たとえ法域が違うにしましても、特別なる何とかの御配慮をしていただいて、あの苦しい、あのみじめな移住地においてはもちろんのこと、離島の多い宮古、八重山、あの住民に対して、何とか政府のあたたかい手を伸ばしていただきたいというのが、宮古、八重山の住民の姿でございます。話を聞きますと、一日に一回あるいは二回おかゆをすするという、全く生活の根拠を失った、今日まで二戸当たりの負債、赤字というのが千六百ドルから二千ドルという、借りるに際しましても担保がない、中金にしましてもやはり見返り財源のない者には貸すわけにはいかない。これは農民のみならず、宮古、八重山の経済というのがほとんどがいま破壊されておるのが現状でございます。  でありますから、どうぞ政府の大臣の方々、各分野にわたって通ずるわけでございますから、それに対するところの措置、これを火急な問題として、何とか救済していただきたいということを考えるわけでございます。山中長官、その点に対しまして、いかような経過をもち、いかような手段を講ぜんとするものであるか、御所見を承りたいわけでございます。
  45. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、琉球政府の正式の文書が企画局の予算担当責任者の手によってもたらされたのが今週の月曜でございます。したがって、それから私の手元で昼も夜も作業を急がしておりますが、大蔵のほうと協議をいまいたしておりまして、昨夜ずいぶんおそくまでやりまして、本日おおむね大蔵省の意向も聞くことができました。しかしながら、その中で、私自身がまだこれでよろしいと返事をするまでに至らない、ちょっと疑問な点がありますから、最終妥結に至っておらないわけでありますが、少なくとも今日じゅうには、私として時間が許せば、もつれ込んでもあしたにはしたいと思います。  沖繩の台風の被害に対して、すなわち、具体的には住宅あるいは仮設住宅等は、すでに米軍あるいは琉球政府もすでに発注をいたして建設中でございますが、あるいは高級住宅にしたいという人人の希望もございますし、当然の御要求でありますから、それらのものに対する予算措置、あるいはまた救農土木事業、すなわち、事業費の九〇%は労賃収入として生活のかてになるような性格の事業について、予算もおおむねこの点は順調にいっております。また、本土にはありませんので、たいへん予算としては難航いたしておりますが、ただいま御指摘のように、ことしの収入もゼロ、来年の収入も見込みが立たないというキビ作、パイン作農家で占められる宮古、八重山の農家の人たちの実情から見て、琉球政府の御要請は、生活資金を、それぞれ宮古、八重山の生計指数による単価を出して貸してほしい、これは一年分というような復帰後の金額も含まれておるわけでありますが、これは一応復帰までの時点の計算でいたしても差しつかえないわけでありますから、そこらの仕分けは別として、本土にない制度でございますし、この生活資金も、また貸し出します場合の利子の十分の十の補助を本土政府に求めてきておられます。これらの点も、財政当局として、そのままの姿ではなかなか話がつきませんので、いまこれにかわる便法を琉球政府がとられることに対して、本土政府が援助するという形において、何らかの手段が得られるのではなかろうかと考えておりますので、当面の生活資金、そして救農土木事業による収入というものを確保しつつ、おくれました夏植えのキビその他の種苗等の補助等もいたしますから、手当てをいたしまして、そしてすみやかに有利な条件下においてのみ生産されるキビ、パイン等が順調な生産に戻りますように、そして、その間にも換金作物としての落花生、タマネギその他ニンニク等、これが生産が軌道に乗りますように、落花生の問題等についてもよく相談をいたしておりますので、どうぞ、少しおくれておりますけれども、正式な報告を受けて、今週の月曜でありますから、土曜までにきめるといえば、六日間できまるわけでありますので、その点はおくれたように見えますけれども、琉球政府のほうで処理できる点はどんどん処理してもらっておりますから、御安心をしていただきたいと考える次第でございます。
  46. 國場幸昌

    國場委員 時間がございませんので、最後に、最近起きたところの、新聞でも御案内のとおり、沖繩における過激派がめった打ちにして、警官を火だるまにして殺したという記事がございます。これは読売新聞の昨十一日の朝刊でございます。御案内のとおり、沖繩は、今日まで曲がりなりながらも独立国並みなる形態の上に立って、治安維持に対しても、沖繩住民に対しては、施政権者であるアメリカといえども、それに対して全然干渉してくれなかったのが今日のこの姿になってきたのも事実であります。  沖繩の警察官は千八百名おるわけでございますが、本土とは違いまして、治安維持という問題に対しましては、「守礼の邦」といわれたところの沖繩、戦前においては世界に例のないような平和な「守礼の邦」でございました。戦後におきまして、こういうようなことになるというのは、まことに残念しごくでございます。で、私は、この復帰に備えて、やはり孤立した離島でございます。御案内のとおり、沖繩は七十余りの離島を持っておるわけでございます。そこで千八百名という警官では、いざ事が起きたときに動員といいましても、せいぜいいっぱい動員しまして千名そこそこでございます。でありますから、いまのようなデモのはやりのときに、このようにやって治安維持に対してのいわゆる整備をなさなかった場合には、それこそたいへんでございます。この新聞を見まして、まことにこれはむごたらしい、こう思いますのは、これは野球のバッター棒、これで打ち殺したものに、あたかも現行犯を隠すがごとき、全く動かれないというような死人に対して、火炎びんをぶち込んだんじゃないかということが、この新聞ではっきりと見えております。私は、人命尊重といういまの社会におきまして、集団ならどうでもいいんだ、アメリカが事を起こすことも、沖繩の者同士でも、やはり国内においての同じ日本国民同士でも、暴力、死傷、こういうことは絶対否定するわけでございます。  そこで私は、今後沖繩県民の治安維持に対しまして、政府はいかなるような措置を講ぜんとするものであるか、その問題に対しましては、ひとつ総理大臣、責任ある御発言をお伺いいたしたいと思います。
  47. 中村寅太

    ○中村国務大臣 國場委員に私から一応お答えさしていただきます。  御承知のように、いま御指摘なさいましたように、沖繩の今日の治安情勢は非常に憂慮されるものがあることは、一昨日の状態でもわかるのでありますが、私どものほうといたしましては、いま御指摘なさいますように、まず定員をできるだけ増員をしていくという方向でいくことが一つと、それから装備を整えまして、いままでもあらゆる点で援助してまいりましたが、国内にやがて帰ってきますと、装備も本土並みにできるだけ早く整備いたします。そういうことで、あらゆる面における警察体制というものを本土並みあるいはそれ以上に整備いたしまして、沖繩県民の不安が将来起こることのないように、また、不祥事等を起こすことのないように、万全の配備と配慮によって、沖繩県民に御安心をして生活していただくことのできますような努力を続けてまいる決意であります。
  48. 國場幸昌

    國場委員 質問を終わります。
  49. 床次徳二

  50. 細谷治嘉

    細谷委員 最初に総理にお尋ねするわけでありますが、総理のいままでの予算委員会なり、あるいは協定特別委員会なり、あるいは先ほどの國場委員の質問に対する答弁からいきますと、大体沖繩返還協定には多数が賛成しているんだ、こういう意味の御発言でございますが、実は私の手元の、琉球新報社が調印後調査したアンケートの結果によりますと、返還協定に対して満足だというのはわずかに九・四%であります。この返還協定には不満である、こう答えた人が四七・六%でございます。さらに、復帰を一年後に控えて不安を感じるか、こういう質問に対して、感じる、こう答えた方が六四・八%と、圧倒的ということばを使っていいぐらいに多数を占めております。このことについて、総理としてはどうお考えなのか、まず承っておきたいと思います。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 数を限っての調査、これが真実、またその傾向を伝える、こういうこともございます。しかしまだ、一番大事なことは、いまの点で復帰がおくれてもいいという調査はなかったようでございます。ただいまこの辺の議論をしていることは、どうもちょっと実情に合わないんじゃないのか、かように思います。
  52. 細谷治嘉

    細谷委員 私の質問に対して、総理がお答えいただかなかったことをたいへん遺憾に思います。しかし、これは後ほど具体的にこういう問題について質問をいたしてまいりますから、そのときひとつ正確にお答えいただきたい、こう思います。  そこで、山中総務長官にお尋ねいたしますが、同じようなアンケート調査によりますと、政府復帰対策要綱について、沖繩の要望が受け入れられておるかおらないのか、こういう質問をしておりますが、これに対して、要望があまり取り入れられておらないというのが四四・三%、全く取り入れられておらない一方的な処理である、こういうふうに答えておるのが一九・三%、これをサムアップいたしますと六三・五%、これも圧倒的な多数が、政府復帰対策要綱には沖繩の要望がいれられておらない、こういうふうに結果が出ております。  実は、この総理府で編集されております「時の動き、政府の窓」というのを拝見いたしますと、後ほど個々にまた指摘していきたいと思うのでありますけれども、山中長官が「沖繩本土との二十七年の隔絶がもたらした格差というものを埋め、そして沖繩が置かれている立地条件のプラス」云々と書いて、最上の努力を払って最上の復帰対策要綱をつくったんだ、ことばは適切じゃありませんけれども、総務長官の自画自賛と言ってもいいような対談記が出ております。これほど総務長官が努力したにかかわらず、なぜ一体その努力が報いられないで、圧倒的に沖繩の要望がいれられておらない、こういうふうに沖繩県民は答えておるのでありましょうか。この点が一つであります。お答えいただきます。
  53. 山中貞則

    ○山中国務大臣 この点は、私もその世論調査を見まして非常に反省をいたしました。しかし、具体的にどこが県民意思に沿ってないかということについては触れてないわけであります。したがって、私が思い当たる点があるとすれば、行き違いが、かりに前後したといえども、その後一応県民の間で議論が起こりました教育委員会の任命制度、こういうもの等に対する反対等の問題は、そのほうに影響が出ておるのではないかと思いますが、一次復帰対策要綱をきめまする際においては、琉球政府との間に合意は一応見ていたものであったわけでありますけれども、しかし、その他の点については、これはこれから逐一質疑応答で明らかになると思いますが、まだなお政令等にゆだねられて不明であるという国会議員の中からも意見があるくらいでありまして、政令をなるべく全部そろえるように、いま予算関係以外は、予算は予算の編成時を待たなければなりませんので、そろえるように督励をして作業をさしておりますが、それらの問題等が県民の前に具体的にどうなるのかという、たとえば税の問題でも、税率がどのように適用されるのか、あるいはそれは五年間といっているが、どのようにその期間中処理されるのか、五年後はどうなるのかというような問題等がまだ明らかにされておりませんし、私自身としては、相当連絡は琉球政府と公式にとっておりますけれども、それが県民各界各層に伝わってないという点を私としては反省したわけであります。  ただ、しかし、国会で具体的な法律案提出いたします前に、いわゆるてまえみそ的に、私のほうでこうなる、こうなるということを申し上げることは、これはまたある意味の越権でもあります。私が、それは「時の動き」のほうでしょうか、それに書いておりますのは、自画自賛というふうに受け取られてもしかたがない節もありましょう。しかし、私にとっては、沖繩の人たちの立場から考えて、自分の全力をあげて今日まで取り組んできたつもりでありますので、その理解が及んでいない。したがって、そのような世論調査の結果が出たことは、深く反省をいたしておりますが、今後すみやかに、しかも復帰前にほとんど全部の県民の方々の御理解を得るように、私が努力をしなければならぬと考えます。
  54. 細谷治嘉

    細谷委員 山中長官の努力を認めつつも、いま長官がたとえば教育委員の公選制とか、こういうのを持ち出しましたけれども、私は、あなたの努力にもかかわらず、六四%近い人が、この要綱については沖繩県民の意向、要望がいれられておらないというのは、そういう具体的な問題よりも、もっと本質的な返還協定そのもの、それから出てくるここにかけられておる法案基本的性格、こういうものに私はあるのではないかと思っております。  そういう意味で、あなたの努力にかかわらずこういう結果が出たことは、これはまあ総理大臣の責任でもあり、外務大臣責任であろうと思うのです。まず、これをひとつ総理大臣、外務大臣、どうお考えですか。
  55. 福田赳夫

    福田国務大臣 私も、今回の協定に対しまして沖繩の現地において反対の動きもあり、不満の動きもある、それは承知しております。しかし、全体として一体どういうふうに受けとめておるのだと、こういうことになりますと、これを正確に把握する方法は実は非常に困難です。そこで、まあ私どもが最も信頼しなければならぬ、これは立法院の意見だ、こういうふうに思うのです。立法院はどうだというと、不満はある、しかし、一日も早くこの返還を実現さしてくれ、こういっておるのです。これが私は、やはり私どもとしてはよりどころとして、この問題に取り組まなければならぬゆえんじゃないか、そういうふうに考えております。
  56. 細谷治嘉

    細谷委員 この問題については、逐次質問の過程においてそういう問題に触れていくかと思うのでありますから、一応これ以上ここでは立ち入りません。  そこで、これは山中長官にお尋ねしたいのでありますけれども、一体、今度のこの国会沖繩国会といわれておるわけでありますけれども、この沖繩国会に御承知のように返還協定と付属文書、そして七件の国内法の改正案が出ておるわけですね。私は、その七件の国内法、特にこの特別委員会にかけられておる問題を中心として少しお尋ねしたいのでありますけれども、一体沖繩本土に渡ってくる場合に、どのくらいの法律が直されなければならぬのですか。今度のこの国内法の改正には、一体特別措置法、改廃法とありますけれども、その中には何本くらいの法律改廃されようとしておるのか、あるいは特別措置法として経過措置を盛り込まれようとしておるのか、それをひとつ正確に教えていただきたいと思うのです。
  57. 山中貞則

    ○山中国務大臣 設置法の改正その他も含めますと、約六百一本であります。
  58. 細谷治嘉

    細谷委員 六百一本というのですから、かなり正確だと思います。そのほかに、沖繩の法がこっちへ移ってくる場合に、政令なり省令等であるいは要綱等で乗っかってくるのか。沖繩琉球政府が調べたものが、本土法適用に関する準備措置、昨年の六月にできたものですね、これが本土に渡るにあたって、何件くらいの法律がそのままそっくり適用になるのか、あるいは経過措置をもって適用されていくのか、あるいは暫定措置として適用されていくのか、あるいは特例措置として適用されていくのかという法律をあげておるのですよ、国内法を。九百九十件あるのですよ。六百一件と九百九十件の間はどうなっておるのですか、御説明いただきたい。
  59. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは、数え方にもあるいはよるかむしれません。しかしながら、法律の本数としては先ほど私がお答えしたとおりでありまして、したがって、改廃法等も全部ひっくるめての本数であります。   〔「細谷さんのは法令だよ」と呼ぶ者あり〕
  60. 細谷治嘉

    細谷委員 私は例をあげたのじゃないのですよ。この琉球政府があげました法律を一ページ一ページずっと数えていったのですよ。ちょうど九百九十あるのです。ですから、あなた、六百一件だ、こう言っていますけれども、六百一件と——大体新聞等では千件といわれておったのですね。それが数えてみたら九百九十。一体、その差はおおよそ四百件近くあるわけでありますけれども、それはどこへ消えうせているのですか。消えうせたのではなくて、それは九百九十件というのが六百一件になっているのだというお答えですか。
  61. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そのとおりであります。たとえば激甚法等は政令で手当てをいたしておりますから、その意味において、法律改廃そのものの全体の提案してあります法律の中には入っておりません。それは一つの例でございます。
  62. 細谷治嘉

    細谷委員 どうもこれは非常に重要な点だろうと思うのですよ。私はいまの答弁では納得いたしません。そこで、この琉球政府がきちんと措置としてきめて、法律の一々の件名まであげて議論している。いまのやつは要綱であるから、こういう話ですけれども、その辺の事情は、きょうでなくてもよろしいですから、きちんとして資料として明らかにしていただきたい。よろしいですか。
  63. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは法律の数え方の問題ですから、資料として提出いたします。
  64. 細谷治嘉

    細谷委員 そこで、もう一つお尋ねしておきたいのでありますけれども、この七件の法律案が出ております。人事院のほうは法律じゃありませんから、総裁いらっしゃっておりますけれども、これは失礼します。その七件の法律案で、ちょっと開いてみましても、何でもかんでも政令に委任しちゃっているのです。政令に委任した部分は何件ありますか、お答えいただきたい。
  65. 田辺博通

    ○田辺政府委員 お答えいたします。  復帰に伴う特別措置に関する法律案の中におきまして、政令にゆだねている件数は百九十ぐらいだと思います。
  66. 細谷治嘉

    細谷委員 百九十ということでありますが、私のつかんでいる数字と違うのだな。申し上げますよ。沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案、条文百五十七条、政令委任された個所百八十七カ所、関係法令改廃に関する法律案が百十条の条文で二十三カ所、その他を拾ってみますと、二百九十七件政令に委任してあるとなっているのですけれども、いまのとだいぶ数字が違いますね。
  67. 田辺博通

    ○田辺政府委員 ただいまお答えいたしましたのは、申し上げましたとおり、沖繩復帰に伴う特別措置に関する法律案に関する政令委任事項の概数でございます。
  68. 細谷治嘉

    細谷委員 そうしますと、私が申し上げた数字はほぼ正しい——長官、いいですか。
  69. 山中貞則

    ○山中国務大臣 御質問もいろいろありますが、実は率直に言って、私も、政令にゆだねた数までは数えていなかったのです。したがって、怠慢でもないと私は思いますが、そういう御質問をきのう教えていただければ調べておいたのですけれども、抜き打ちでありますから、したがって、そういう質問でありますれば、正確な本数をあらためて数え直して、これもまた答弁なり資料提出なりをいたします。
  70. 細谷治嘉

    細谷委員 抜き打ちだ——私は別に、この数字が違うとかなんとかということであなた方と争っているわけじゃないのですよ。私どもはこの特別委員会をやる際に、最近の法律案の傾向あるいは法律の傾向というものは、政令委任事項というのがもうめったやたらに出てきている。言ってみますと、特別措置法では百五十七条しかないのに百八十七カ所も、一つの条文の中に二カ所も政令でやっている。こういうような激しいやり方というのは、国会は常任委員会審議が中心ですが、国会審議権を政府は軽視しているあらわれだ、今度の国会にこれが最も端的に出ている、こう思うのですよ。これはどうなんですか。
  71. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私はそう思いません。したがって、国会審議の便に供するために、政令というものは、法律国会で制定されました後、閣議において決定すべきものでありますけれども、しかし、今回のような重要な、沖繩県民生活の今日からあすへ、そして未来への問題を審議する国会でありますから、間に合うものはすみやかに法案と同時に提出できるように、開会の冒頭においても、でき上がっているものは差し上げましたけれども、その他、先ほど申しました予算の決定を待たなければ明示できないもの等を除いては、来週の初めごろには提出できるようにいま作業を急いでおりますので、これはあくまでも政令ではありませんで、政令案の内容についての参考資料として御配付を申し上げて、そしてその内容についても、手続的な簡易なものもあれば例示的にすぎないものもあり、中には政令で税率等を定めたもの等、重要なものもありますから、十分にそれらの内容も含めて御審議願いたいと考えておりますので、決して国会を軽視したものでなく、法律を提案したとほぼ同時に、政令の内容についてすべてを国会提出しようとする誠意は、これは珍しいものであると思います。
  72. 細谷治嘉

    細谷委員 私ども、この特別委員会理事会が開かれた当初から、やはり総理が言われるように、沖繩国会といわれる、しかも世紀の重要性を持った国会だというだけに、本土はむろんのこと、長い間苦しんだ百万県民に報いるためには、十分な審議を尽くさなければならぬ。そのためには、抽象的な法文だけじゃなくて——めったやたらに政令に委任されておる、それはもう政府におまかせします、こういうことでは相済まぬことでありますから、きちんと、法律、それに基づく政令の内容については明らかにして、沖繩県民が、ここまでやってくれたのだと、これだけの責任ある審議をしなければならぬということで申し入れたのですよ。しかし、肝心かなめのものは出ておりません。いま長官が、補助率等で詰めなければならぬものについては、これはまだ詰まっておらぬ、こういうことであります。しかし、ほんとうはそれが必要なんですよ。拾ってみますと、いまの沖繩の落ち込み、それから今後十年間どうやって本土とり格差を埋めていくかという、その中心である振興開発特別措置法、その中には、あなたも言っているように——これにもこう言っております。自画自賛じゃないでしょう「要するに本土の離島振興法とか、新産都市とか、あるいは低開発地域工業誘致促進法とか、辺地、過疎、これらのいろいろな地域立法がありますが、沖繩ではそれをすべて上回る待遇をする」こう言っているわけですよ。それならそれらしく——大蔵大臣と話が詰まっておらぬというけれども、補助率なんというのは、政令にゆだねないで、ぴしゃっと法律で書いてあるべきですよ。  それで私が、総務長官でありませんけれども、これが非常に重要な問題なんだから、政令では全部それ以内、それ以内と書いてあるわけですから、それ以内ということになりますと、十分の九なんといってそれ以内ということになると、十分の五だってそれ以内ですよ。そういうことではいけませんから、私はその政令を出してくれと言いましたら、出ないですよ。大切なやつが出ないでしょう。やっとこさ大蔵省と折衝中だということで、ちょっと聞いてみましたけれども、容易に言わぬ。容易に言わぬけれども、まあ大体どの辺で話が詰まっております、こういうところの状況を聞いたのは、何とあの法律の政令にゆだねられた部分が全部で三十一件ぐらいあるのですよ。その三分の一も出ていないのですよ。この資料には出てないのですけれども、大体大蔵と詰めたところはそのくらいしか出ていない。こんなことで責任ある法律審議ができますか。きわめて抽象的じゃないですか。あとはおれたちが煮て食おうと焼いて食おうとかってだ、こういうような形でしょう。どうですか、これは。
  73. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は補助率等について触れたつもりはありません。それは補助については、別表に定める一応の補助負担率がございます。それに関する政令については、最終的には予算措置であることは間違いありませんが、しかしながら、どのような待遇をするかというその個々の補助率については、答弁をする用意は持っておるわけであります。
  74. 細谷治嘉

    細谷委員 答弁をする用意があるのならば、ひとつ総務長官、政令に委任されたものを——私は前もってあなたにお願いしておかなかったことは悪いけれども、ひとつきょうあらためて、政令に委任した個所がどのくらいあるのか、あるいはこれならばという固まった政令の具体的内容は、ひとつ早急に資料として提出していただきたいと思いますが、いかがですか。
  75. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは先ほど御答弁いたしました。来週の初めには全部提出をいたします。
  76. 細谷治嘉

    細谷委員 総理にお尋ねしたいのです。  私は、今度の、六百一件になんなんとする本土法を、言ってみますとたった一本の法律、極端に言いますと特別措置法と改廃法に集中しているわけですが、せいぜい二本の法律にまとめて、何条から何条までは大蔵省、何条から何条までは郵政省、何条から何条までは自治省なんという、こんな形の法律を出すということは、これも私は問題だと思うのです。極端に言いますと、毎年、百五十日の通常国会に百十件程度の法律案が出て、これを一本でやれということになりますと——国会審議は常任委員会が原則ですよ。それを無視したこういうやり方は言語道断であって、こういうことであればどんなことでもできる、こういうことになると思うのでありますけれども、総理いかがですか。
  77. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そうは思いません。というのは、各省にばらばらに法律を分けることは簡単であります。しかしながら、やはり沖繩県民の方々全体、そしてまた国民沖繩を迎える立場から見ても、この各省にまたがる特別措置、経過措置あるいは振興法等のそれぞれの分野が、やはり全般的に展望ができて、バランスがとれており、そしてまたそれぞれの間に食い違いがないということで、各省庁一斉に、所管行政もこのようにいたしておりますということに足並みをそろえて出さなければならないと私は思ったわけであります。したがって、国会の御意思でありますから、金融公庫法と設置法が別に私の分野で付託されておりますことは、私としては一生懸命説明努力はいたしますけれども、相なるべくんば全部を見てほしかったと思いますけれども、少なくとも出してあります法律はこのような形にいたしまして、それぞれ各省庁の長たる国務大臣も責任を持ち、合意し、そして全般的には担当大臣たる私が、すべての各省庁の法律内容について責任を負えるという気持ちでもって出しておりますので、その意味で国会軽視ではなくして、そのような角度から御審議していただくほうが、あるいは御審議をなさるほうが、沖繩県民のために私はよろしい、そういう考え方をもって出したつもりであります。決して国会を、このように束にしてぽいというようなつもりで出したものではありません。
  78. 細谷治嘉

    細谷委員 はからずもあなたのことばの中に、最後には沖繩県民に助けを求めるようなことばがあったんだけれども、それは各省、分かれておりますね。しかし、そこに斉合性を持つのは当然のことですよ、そのキャップとして総理がおるわけですから。行管庁もいつも指摘しておりますように、縦割り行政の弊害というのがいわれておるわけでありますから、これはどこの省が出ようと、全体的に国政の中において斉合性が保たれておらぬということはないわけですよ。ですから、あなたが一本にまとめたというのは、まとめなくたって、斉合性は当然内閣としてとっておかなければいかぬわけですから、一本にするなんという理由はないわけだ。私は、あなたが開発関係の三法案と言われているもの、これはあなたが言った違った意味において、開発法案というもの三つは、後ほど議論いたしますけれども、これは一本で出したほうが妥当である。ほかにねらいがあるからわざわざ三本になったんじゃないか、こういう点を後ほど議論したいと思うのでありますけれども、それを三本一緒に出すのが妥当だと私は思っている。しかし、分くべきものは、各省がちゃんと責任を持っている。そして常任委員会がちゃんと責任をもって審議するわけですよ。  こういうことでありますから、これは私はよく存じませんけれども、国家総動員法みたいなそういうものをやるときに、もう何もかもめちゃくちゃなやつを全部法律一本に出して、そしてこれが内閣の提案の法律だなんということで一気にやるということになれば、これは民主主義もへったくれもなくなるわけですよ。そういうことにもつながりますから、私は、あえて、簡素だということで、民主主義の原則を失うような、国会審議権を奪うようなことをやってはならぬということを申し上げておるわけです。総理いかがですか。
  79. 山中貞則

    ○山中国務大臣 総理も答弁していただいてけっこうでありますが、その責任は私にございますので、私から一応答弁をいたします。  それは、あなたの言われるような気持ちと今度は裏返しの誠意ですね。すなわち、各省庁でそれぞれ法案を出してもよろしゅうございますが、それぞれの別な委員会でばらばらに審議をされますと、沖繩に対して復帰の時点において、あるいは復帰を前にして、これから復帰の後においてどのようなことをなさんとするかという、祖国政府全体の姿勢というものがばらばらで議論をされた場合に、ややもするとそこで姿勢の違いが出てきたりなどいたしましては、沖繩県民に対して申しわけないことでありますから、したがって、全閣僚もここにそろっておることでありますし、必要ならばそれぞれの担当大臣が答弁もいたしましょうし、われわれはみんな沖繩のために一生懸命作業したものをここにまとめているものでありますから、その形式についての論争について、あるいはこれは賛否相分かれたまま意見が一致しないかもしれませんけれども、少なくとも誠意をもってやるためになるべくまとめたということについては、御理解を賜わりたいと思います。
  80. 細谷治嘉

    細谷委員 山中長官のなには、いよいよばらばらになってきているわけですよ。各省ごとにやったらばらばらになって斉合性がないなんて、そんな内閣ですか。そうじゃないでしょう。きちんと各省ごとに出てこようと一本一本出てこようと、ちゃんとやはり全体の中の一本として位置づけられて出てきておるわけですから、あなたが答えぬたって、通産大臣が答えたものは、斉合性がないじゃないですよ。ばらばらだってよろしいですよ。  総理大臣、この問題については、今後こういうやり方はやらないという、きちんとしたことをひとつおっしゃっていただきたい。
  81. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 実体的な関係については総務長官からお答えがございました。しかし、法案の作成につきましては、法制局長官がこれは何といたしましても責任者でございますので、私から申し上げます。  私どもから見ますと、この関係法律案は実は一本にするのが自然であって、分けるのが不自然であるという感じを持つものでございます。むろん、ばらばらにすることができないかといわれれば、できないとは申せません。申せませんが、第一、法案に盛られた政策がそもそも統一的なものであるということ、その結果として法案の趣旨、目的というものが一つであり、法案の体系が一つであることが望ましいということ、それから法案の条項が相互に関連をして、これをそれぞれ分離することが望ましくないということ、これをもっと具体的にいえば、一の省庁のみではなくして全省にわたるもの、あるいは他省庁の所管事項と密接に関連を有するもの、そういうものが複合して存在するものでありますために、私どもの専門的な見地からいえば、これは一本にするのが自然であるというわけでございます。  こういうような先例としては幾つもございますけれども、奄美群島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律もすべてを一本にまとめたわけでございますし、小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律も、また同じように一本にしたわけでございまして、われわれとしてはきわめて自然な形をとったという感じでございます。  法制当局としての責任上ひとつお答えをさせていただきます。
  82. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、法律が、これ一本にまとめたことが違法じゃないかとか、そういうことを言っておるのじゃないのですよ。国会法の精神から乖離しているじゃないか。ですから、私は国会政府との関係において、これはやはり最高責任者である総理から、これは政治的な問題としてやはりきちんと承っておかなければ、これより先に進めぬですよ。
  83. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来総務長官、さらにまた法制局長官答弁をいたしましたから、これでいいかと思っておりましたら、どうしても私の意見を聞く、こういうことですから立ち上がりました。  私は、国会審議を無視する、こういうような立場ではございません。国会はどこまでも尊重する、これは民主主義である限り当然のことでございます。だから、その点では、ただいま細谷君の御指摘になった点が、あるいは政令事項が少し多過ぎる、こういう点は、確かにお述べになりましたような論陣を張りやすい状況だろうと思います。ただ、しかし、私は細谷君もよくわかっておると思いますが、これは全然いままでないところへ新しい政令をやる、こういうのではございません。わが国の施政権下にない、アメリカ施政権下にあって、いろいろの布令のもとで経済政治活動をしている、そういうものが日本返還された、そのときに暫定的な措置としての、移り変わりの措置としてやらなければならない、こういうものを取りきめる、こういうものでございますから、さっき言うように、奄美大島のときでも、あるいは小笠原群島のときでもそういう処置をとったのだ、こういうことで、これが直ちに国会の軽視あるいは審議を軽んずる、こういうものでないことだけは御了承いただきたいと思う。そういう意味で反対されることはたいへん私どもも心外ですから、これを先ほど来山中君も、また法制局長官も、述べた、かように思いますので、御了承をお願いいたします。
  84. 細谷治嘉

    細谷委員 小笠原の例とかあるいは二十八年の奄美の例とかを持ち出されて、あのとき一本だったからということでありますけれども、先ほど来話がありましたように、(「規模が違うよ」と呼ぶ者あり。)規模が違うのですよ。しかも、総理も言ったように、沖繩返還なくして日本の戦後は終わらないという重要なけじめ、だから沖繩国会といわれているのですね。それに、言ってみますと、六百一件の法律が一つか二つの法律案にめったやたらに持ち込まれて、そして常任委員会審議という原則を破ってこういう形で審議しては、百万の県民にこたえるゆえんではないじゃないか。同時に、こういうようなやり方はよろしくない、こういうふうに考えますので、ひとつ、今後こういう点については十分に配慮していただくように、強く要請をしておきたいと思うのであります。  そこで、次にお尋ねいたしたいのでありますが、総理施政方針演説の中に、「沖繩現地の要望をほぼ全国的に取り入れた」ということで、これを前提といたしまして、「軍用地等の継続使用は、返還の前提ともなっている」こういうふうに言われております。これは軍用地等の暫定使用法だけをさしているのか。このほかに返還の前提となっておるものがあるかないか、あるとすれば何なのか、これをひとつお聞きしたいと思います。
  85. 福田赳夫

    福田国務大臣 今回の協定実施のために、いまここで御審議を願っておる法案、それが前提であるか条件であるか、そういうような議論をしてみたことはあります。しかし、これは前提条件ではない、しかし前提ではある、そういう結論になったわけであります。つまり、先ほど私から申し上げましたように、沖繩返還は円滑に実現をしなければならぬ。そうしますと、何としても沖繩がこれから本土の一環として、沖繩県として内地並みを目ざしていかなければならぬ。それには、今度御提案申し上げておる諸案件成立をしておるということが前提にならなければならぬ、こういうふうに考えておるのでありまして、総理大臣が演説で申し上げたのも、そういう趣旨をさして言っておる、かように御理解願います。
  86. 細谷治嘉

    細谷委員 総理は、前提ともなっている、こういうことを御理解いただいてと、こう言っておるのですよ。いま外務大臣から、前提条件ではないけれども、前提である。どこがどう違うのですか。前提条件ということと前提であるということと、どこが違うのですか、ちょっと御説明いただきたいのですが……。
  87. 福田赳夫

    福田国務大臣 法的に条件というわけではないが、前提として考えなければならぬ問題である、こういうふうにいま申し上げておるわけです。つまり、協定の批准発効のための条件、これは法律的な意味において条件だ、こういうふうには考えない。しかし、返還を円滑に実施させるためには、どうしてもこれは、前提としてこういうことが成立しておらなければならない、そういうふうに考えるのだ、そういう趣旨でございます。
  88. 細谷治嘉

    細谷委員 前提ということは、こういうものが成立しておらなければならない。これは条件じゃないですか。前提の条件でしょう。そうでしょう、常識的に。
  89. 福田赳夫

    福田国務大臣 法律的な意味におきまして条件にはなっておらぬけれども、返還の実施を円滑にするためには、その前提といたしましてこういう案件成立をしておるという状態、これを踏んまえておかなければならぬ、こういうことを申し上げておるわけであります。
  90. 細谷治嘉

    細谷委員 そういたしますと、法律的な前提条件ではないが、前提なんだからということでありますと、この法律は、いわゆる総理施政方針演説で述べました、軍用地等の継続使用というこの法案沖繩返還の前提で、これがくずれたらだめということですか。
  91. 福田赳夫

    福田国務大臣 法的にだめだ、こういうわけじゃないのですけれども、円滑なる沖繩復帰実現のためにはどうしてもそれが必要である、こういうことなんです。これは総理の演説のときの問題の話なんです。いままであなたがお聞きになっておることもそうだ。それから私が答えていることも、総理の演説のお話です。  しかし、事態が少し変わっておりますのは、アメリカの上院がこの協定を一昨日可決をいたしました。そして、いつでも批准の状態に入るわけでありますが、アメリカ側の上院のコメントといたしまして、日本協定関連法案成立することを前提として考えたい、こういうことを言っております。そういうことを考えると、いよいよこれらの法案成立をするということが必要になってきたなあと思っておるのであります。
  92. 細谷治嘉

    細谷委員 法律上と——しかし、事実上はこれは前提だというのですから、どうも効果はあまり変わらぬでしょう。  そこでお尋ねいたしたい点は、総理がおっしゃった、この軍用地等の継続使用についての土地暫定使用法案は前提だということでありますが、いまのお答えによりますと、そのほかにもありますか、ありませんか。あるとすれば何があるのですか、前提になるものは。
  93. 福田赳夫

    福田国務大臣 前提になるものはいろいろあるわけですが、これは土地の収用に関する法律案だけじゃございません、いまお願いしておる諸案件ですね、これが全体として成立することが望ましい。これが成立して初めて沖繩返還が円滑に実施される。これが一部でも成立しないということになると、円滑に実施はされません、こういうことを申し上げているわけです。
  94. 細谷治嘉

    細谷委員 国内法の法律七本が通らないと、それが前提である——総理の発言と違うでしょう、施政方針演説と。総理は、軍用地等の継続使用——軍用地等の継続使用というのは、総理の演説では土地暫定使用法案だけじゃないのですか。あと前提になっているものはないんでしょう。何もないように総理は演説していますよ。そのまま私は持ってきている。おかしいでしょう。あるのならば、具体的にどこの個所、どの法案のどこの個所がどうなんだということを、はっきり言ってくださいよ。
  95. 福田赳夫

    福田国務大臣 総理が演説で言いましたのは、まさに土地の問題だけについて言っているのです。しかし、あなたがいま、ほかにもあるかと言うから私は答えているので、ほかにもあります。ありますのは、ただいま御審議をいただいておる諸法案、これが成立いたしませんと、沖繩返還が円滑に実施されない、こういうことを申し上げているわけであります。
  96. 細谷治嘉

    細谷委員 それではお尋ねいたしますが、ほかにあるというのは、法律のどこの部分とどこの部分ですか。あげてくださいよ。わからぬ。さっきも言ったようにたいへんな法律ですから、どこの部分とどこの部分なのか、あげてください。
  97. 福田赳夫

    福田国務大臣 御審議をお願いしている案件全部のことを申し上げているわけであります。
  98. 細谷治嘉

    細谷委員 まあ、上院の審議の経過あるいは付属文書等から想像しますことは、特別措置法に含まれておる、たとえばVOAの部分、あるいはアメリカ企業が沖繩に入ってきておりますから、そういう問題についての愛知書簡に関係するようなそういう問題等々が、これはアメリカの上院でいわれておりますね。そういう法案内容のいま私が申し上げた部分、この返還協定の二条ですか、安保条約ばかりじゃなくて、日米通商航海条約、そういうものが協定の中に入っているわけですから、経済的な問題も当然出てくるでしょう。いま私が申し上げたようなものですか。ほかにもありますか。
  99. 福田赳夫

    福田国務大臣 私は、いま御審議をお願いしておる案件全部が成立しておることが円滑な沖繩返還に必要である、こういうふうに申し上げておるわけでありまして、ぜひともひとつ御審議の上すみやかに御成立になるようにお願いを申し上げます。  それから、アメリカのほうはアメリカのほうでまた、わが国とは違う。アメリカでは、上院外交委員会におきまして、この協定は全員一致で採択すべきものときめたわけです。しかし、そのコメントといたしましてつけてあることがある。付帯意見といいますか、それには、この協定が批准されるには、日本側の本協定審議に関連する諸法案が可決されていることである、こういうことなんです。  そこで私は、アメリカ一体どういうことを諸法案というんで言っているのだ、こういうことを尋ねさしてみたわけです。そうすると、アメリカは、日本国会でどういうことが審議されているか、詳しいことを申し上げるわけにはいかぬ、しかし、沖繩に関連して審議さるべき議案がまあ一括というか、抽象的に、それらの議案が成立しておるという状態だ、こういうように特定してどれがどれというわけではない、こういうふうに言っておるわけであります。
  100. 細谷治嘉

    細谷委員 どうもわからない。この基地の問題に直接関係するであろう公用地等暫定使用法案等はわかりますけれどもね。それ自体も、すでに予算委員会なりあるいは返還協定委員会なり本会議で、これがなければ沖繩は返ってこぬぞというおどかしじゃないか、日本の自主的な国会の結論、こういうものを妨害するんじゃないか、こういう意見すら述べられたわけですね。一見関係のないような開発設置法とか金融公庫法、こんなものまで何もかも含めて全部アメリカが、その前提として全法案が通ることがいいんだなんということになると、いよいよこれはおかしいですよ。(「内政干渉だ」と呼ぶ者あり)まあ内政干渉でしょう、これは。しかもアメリカの力をかって日本の国内法まで通しちゃおうなんということは、不届きですよ。はっきり言ってくださいよ。
  101. 福田赳夫

    福田国務大臣 アメリカは、そうですから、別にどの法案がどうだ、こんなことを言っておるのじゃないのです。関連法案成立を期待する、こういうことを言っておるわけなんです。で、私のほうではどういう立場であるかといいますと、いま御審議をお願いしているのは、土地法案もあります、VOAの法案もあります。そういうものは、アメリカから見ると非常な関心のある案件でございますが、しかし、福祉関係あるいは開発関係、こういう関連のいろいろな御提案、これらが成立しないで一体円滑なる沖繩返還ができるか、こういいますと、それはその返還の絶対条件というわけじゃありませんけれども、しかし、沖繩返還が円滑に実施される上におきましては、どうしてもその前提としてそういうことがなければならぬ、こういうふうに考えておるんだということを申し上げておるわけです。
  102. 細谷治嘉

    細谷委員 これは、政府は自分で出したもんですから通したい。まあおぼれる者、わらというような気持ちであんなことをおっしゃっておるのじゃないかと思う。私は納得しません、これは。関係ないでしょう。そういうことをおっしゃるから、日本アメリカの核のかさ、ドルのかさの中で呻吟しているのだ、こういうふうに言われるのじゃないですか。これ以上やっても平行線ですから、もう申し上げません。  そこで、ちょっとお尋ねしたいのでありますが、先ほど國場委員も触れられたのでありますけれども、今月の二日あるいは十日あたりの新聞記事を見ますと、一体政府と自民党というのはどこに境があるのか、私は見当つかなくなったんですよ。そこでお尋ねいたしますが、先ほど来ありました、この土地について、総理は、あらゆる努力を払うけれども若干残るかもしらぬ、だからこの法律は必要なんだ、こういう形で出てきておるわけでありますけれども、問題の軍用地の問題について二百十五億円、現地の連合会の要求をそっくりそのままのんだ。まあ水田大蔵大臣は少し難色を見せていると新聞に書いてありますけれども、二百十五億円をそっくりそのままのんだ、こういうふうにいわれております。十一月二日ごろの段階では、了解事項として、自民党の小坂政調会長とそれから向こうの比嘉連合会長あるいは副会長が協定書を結ぶと、こういうことが書いてありましたけれども、急遽それが延期されたように書いてあります。しかし、十日ごろの新聞によりますと、これがまとまった、こういうふうにいわれております。ひとつこの経過と結果を簡単に防衛庁長官にお聞きします。
  103. 西村直己

    西村(直)国務大臣 政府と自由民主党とは、十分一体的な関連はあります。しかし、同時にまた、自由民主党は政党の立場でございますから、政党の立場から、あるいはいろいろな会議等を持たれたり、あるいは現地にも自由民主党がございます、そういう間で地主会等と接触していろいろな検討はされていることは、私もうすうす知っております。しかし、政府といたしましては、まだそれの話し合いに入っているわけではありませんで、先ほど申し上げたような立場で大蔵省と折衝を、これからやるわけであります。
  104. 細谷治嘉

    細谷委員 琉球新報という現地の新聞によりますと、内容をちょっと見ますと、これはたいへんなことが書いてあるわけですね。ちょっと参考に読んでみます。  「沖繩基地の借地料引き上げに関する覚書案一、沖繩返還後、残存する基地の借地料は社団法人・沖繩市町村軍用地主会連合会の要求どおり、現行地料の平均六・八三倍、総額二百十五億円に引き上げることとし、これに必要な予算措置を講ずる。二、沖繩市町村軍用地主会連合会は責任をもって全地主の了解をとりつけるものとする。」と。  不届きですよ、これは。金に糸目をつけぬで、何でもかんでも、権利であろうと何であろうと金でやっちゃえという、そうして二百十五億円、要求どおりのむかわりに、全地主の了解をおまえのほうで取りつけろなんという、そういうやり方は、これは言語道断だと思う。これはまあ延期されて——二日のことでありますから延期されましたけれども、その後にやはり同じ内容で、同じ二百十五億円で了解がついたということでありますから、どうも私は、この問題に大きな疑念を持っております。内容はどうなんですか、防衛庁長官
  105. 西村直己

    西村(直)国務大臣 そういう覚書等がかわされたことは、私は聞いておりませんし、事実はないと思います。ただ党は、何と申しましても政策を立て、あるいは内部機関において大いに検討する、こういうことは当然あってしかるべきである。私ども政府といたしましては、先ほど御説明したような筋で、地主会に正規に折衝をいたしております。
  106. 細谷治嘉

    細谷委員 そうしますと、お聞きいたしますが、十一月二日、小坂政調会長との間に調印まぎわまでいったということは、しかもその内容はこういうものであるということは、認めますね。新聞に書いてある、これは認めますね。いかがですか。
  107. 西村直己

    西村(直)国務大臣 われわれはそういうことは聞いておりません。
  108. 細谷治嘉

    細谷委員 まあ言ってみますと、いまの答弁は——これは現地の琉球新報ばかりではないのですよ。その日の朝日新聞なり読売新聞でもやはり出ている内容なんです。そうしますと、事実無根、それは新聞の書き誤りだ、こういうことになりますね。それならば、大体二百十五億円というのは間違いないのでしょう。この了解事項内容は別として、二百十五億円というのは間違いないのでしょう、お答えいただきたい。
  109. 西村直己

    西村(直)国務大臣 軍用地に関して二百十五億円を私の手元へ要求したことは、それは事実であります。したがって、先ほどのように、私のほうとしてはこれを合理的に、しかも沖繩の特殊事情を加えて、百八十八億円を要求いたしておる、これが政府の態度でございます。
  110. 細谷治嘉

    細谷委員 まあ、政府は百八十八億円を要求しているのだ。しかし新聞の伝えるところでは、小坂政調会長は、調印したならば、責任をもってこれを大蔵省にのませるとこう言っているのでありますから、そういうことなんですから、どうも百八十八億円にならぬで、要求どおりということだと思うのですけれども、そうだといたしますと、現在の値段のまあ七倍近くになるわけですね。これが妥当なんでしょうか。百八十八億なり二百十五億掴というのは妥当なんですか。妥当だと言えぬなら、妥当に近いとお考えになっているのですか。いかがですか。
  111. 西村直己

    西村(直)国務大臣 防衛施設庁といたしましては百八十八億、先ほどの内容をもって、そうして行政庁でございますから、やはり一つの理由をもって、先ほど申し上げましたように本土の基準が、いわゆる民有地を軍用地として借り上げる場合の基準等もございますので、これも基準にしながら、同時に、過去における沖繩のたとえば山林は山林で長い間ほうりっぱなしにされて、まわりが宅地化しているようなところは宅地化に上げるとかいうこと、さらに、その間におけるいろいろな特殊事情も考え、そして全体のワクとして百八十八億。個々の地主は、したがってこれから折衝をして、それぞれのまた地目についていろいろな事情を調べて折衝をしてまいるわけであります。百八十八億というのはワクでございます。
  112. 細谷治嘉

    細谷委員 そういたしますと、百八十八億か——まあどうも二百十五億円ということがほぼ決定に近い、決定だと私は見ているのであります。いずれにいたしましても、いままでは約一千万ドルですね、まあ三十億円そこそこでしょう。それが一気に七倍ぐらいになるのですから、これはもう地主にとっては、いままでは不合理ということになるわけですね。いままでは安過ぎたということになるわけですよ。これは間違いなく、やはりさかのぼって補償すべきだと思うのですが、どうなんですか。
  113. 西村直己

    西村(直)国務大臣 先ほど来申し上げましたように、アメリカのほうは五年ごとの更改であります。われわれのほうは、やがてこれが返還されれば一年ごとに更改してまいります。したがって、五年なりあるいは十年なり、まわり近所が宅地化しても依然として山林に残されておったような場合もあります。そういうような意味も考えまして、私どもは、ある程度沖繩の事情を勘案し、本土の基準も入れて、そして一応の概算要求を百五十二億プラス三十六億ですか、いわゆる調整のための費用として要求をしているわけであります。
  114. 細谷治嘉

    細谷委員 私の質問に答えていらっしゃらないのですが、きまったものは一応合理的なものでしょう。と考えますと、これはいままでのやつが六倍も七倍もなるわけでありますから、いままでの地主はやはりたいへんな被害、損害を受けているということですよ。これは補償しなければならぬでしょう。請求権を放棄してしまったというのか。しかし、沖繩の人たちは、きのう協定特別委員会でも論議があり幸したように、人権も無視され、たいへんな経済的な被害を受けながら今日までやってきた。安過ぎたわけでありますから、それは合理的に金額が算定されて補償されるというのが、これはあたりまえでしまう。どうなんですか。
  115. 西村直己

    西村(直)国務大臣 これは全体としてのワクを百八十八億、一応の見積もりで取る。しかし、個々を積み上げるということは、まだ折衝の過程ですから、これからやっていくわけです。しかし、その間において本土の基準もございます。同時に、沖繩が地目等が変わっていないかどうかというような事情も入れる。と同時に、過去においてあるいは安い部分もこの機会に計算に入れていくというようなことであります。特に、施政権下においては五年ごとの変化でありますから、その時点においてはまた、施政権下における合理性はあったかもしれません。ですから、必ずしも直ちに補償という問題に結びつく問題でもないと私は思う。しかし、沖繩の特殊事情は入れてわれわれは考えていかなければならぬ。これは見積もりでございます。百八十八億円くらいかかるということで要求し、これをさらに具体的に積み上げていくわけです。
  116. 細谷治嘉

    細谷委員 それはちょっとあやふやなのですけれども、これは今度きまりましたら、人権を無視され、いやおうなしに取り上げられてきた、たいへんな被害を受けておるわけでありますから、決定されたいわゆる合理的なものとの差額、過去のものはさかのぼって補償してやるべきだと思うのですよ。総理これはいかがですか。
  117. 西村直己

    西村(直)国務大臣 重ねて申しますが、本土には本土の基準があります。本土並みでありますから本土の基準と言うが、向こうの算定方法は算定方法で、五年ごとの別の算定方法をやっております。そこいらをやはりわれわれとしては今回合理的に直すという、それではあの五年前の時点からずっとやってきたようなことが直ちに相手に損失を与えておったか、それは簡単には結論は出ない。これはわれわれがやってみて、その上でもって補償すべきものがあればあるいは補償の対象になるし、今回の地代でそれがカバーされるかもしれぬ。そこらは今後の問題になってくると思います。
  118. 細谷治嘉

    細谷委員 あまり時間をつぶすのももったいないから、最後にこの問題について西村長官にお尋ねしたいのであります。  ことしの三月三十日に、アメリカ下院歳出委員会の秘密聴聞会でランパート高等弁務官が、沖繩返還のプラス面の一つは、われわれが地主に毎年支払っている一千万ドルの地代を返還後払わなくてよいということだ、こう発言しているわけです。これはサイミントン委員会のジョンソンの発言とも同じなんですよ。こういう発言をどういうふうに受け取りますか。肩がわりじゃないですか。防衛庁長官、こういう問題を向こうが発言されておる。そして大蔵大臣は向こうの言うことが前提なのだ、こうおっしゃっているのですから、私は国民の一人として、こういう発言に基づいて、そして今度はそれの七倍近い金を払うということ、そしてその裏は、いままでたいへんな被害をかけてきたわけです。それに対しても補償もしないというのでありますから、これは問題ですよ。いかがですか。
  119. 西村直己

    西村(直)国務大臣 アメリカ国会にはアメリカ国会の特有な立場がありましょう。したがって、いろいろな説明はなされております。われわれは日本国会でございます。そこでわれわれとしては、返還されましてそして本土に戻りますれば安全保障条約の中にこれが入る。したがって、地位協定で基地というものを提供する、それに対するわれわれは地主に対して対価を払っていく。あくまでも日本の自主的な立場でそういう安保体制を受けてやる仕事でございます。
  120. 細谷治嘉

    細谷委員 きわめて不満な答弁です。日本国会日本国会アメリカ国会アメリカ国会とおっしゃっておりますけれども、はっきりと前提なのだという衣のそでからよろいをちらつかせているやり方ですね。しかもその基本的性格、これは問題です。まあしかし次に移ります。  外務大臣、ちょっとお尋ねしたいのですが、いままで国会沖繩返還の三原則というのは七二年返還核抜き本土並みだ、こう言っておる。その核抜きはもうきわめて簡単でありますけれども、一体本土並みというのは、国会の主要な議論というのが、基地の態様が安保条約がかぶさるのだから本土並みだ、いやそうじゃないのだ、こういう議論であったわけでありますが、本土並みというのはこれはアメリカ日本との関係じゃなくて、祖国に帰ってくる沖繩県本土との関係からいきますと、一体本土並みというのはどういうことを意味するのか。  外務省が吊されました「沖繩返還について」というあれを見ますと、かくのごとく生まれ出た返還協定が、米国との合理的な国益調整に立つものであり、かつ、日本国憲法の精神に従って締結され、またその手続によって承認され、批准されたものだ、こういうことでありますから、これは本土並みという総理のおことばは、当然のこととして核の基地ばかりではなく、沖繩県民が人としてあらゆる面においてこれは本土並みということを、いわゆる安保条約でなくて憲法が沖繩にきちんとかぶさっていく、こういうことではないかと思うのでありますけれども、外務大臣どうなんですか。
  121. 福田赳夫

    福田国務大臣 本土並みと申し上げますのは、沖繩が安保条約の適用において内地並みになる、こういうことを申し上げておるわけであります。ただ、政策的な意図におきましては、生活水準でありますとかあるいは開発状態でありますとか、沖繩におけるあらゆる事態が本土水準を目ざして進行しなければならぬ、こういうふうに考えておりまするけれども、私どもが法的に——法的にと言うとぎしぎししますけれども、申し上げておりまするところの本土並みというのは、安保体制の適用上、沖繩がわが日本におけると同様の立場になる、こういうことを申し上げておるわけであります。
  122. 細谷治嘉

    細谷委員 総務長官にお尋ねします。  安保条約がかぶさること、そういう問題についてはこれは前提だけれども、沖繩県民がいろいろな憲法がかぶさることはこれは本土並みでなくていいのだ、前提じゃないのだ、こういう意味のことを外務大臣がお答えしましたが、それでいいのですか。
  123. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは三原則とおっしゃいましたが、それはいわゆるアメリカとの返還協定交渉というものに対しての三原則であって、それを目ざしてその三原則を踏まえて返還協定を締結をしたという、いわゆる調印をしたということをいままで言ってきているわけであります。しかしながら、それは同時に本土に戻ることでありますから憲法のもとに戻ってくることでありますし、裁判管轄権等においてもこれは当然属地主義に内地並み、本土並みになりますし、その他万般の、人権から始まるすべての本土国民が受けておる憲法下の享受すべき条件が、全部沖繩の人々には適用されるということを私としては目ざさなければならないし、それがほんとうの本土並みであると考えております。
  124. 細谷治嘉

    細谷委員 そういたしますと、憲法が保障する諸権利というのは当然沖繩県民のものだと、こういうことですね。はっきり言ってくださいよ。
  125. 山中貞則

    ○山中国務大臣 そのとおりです。
  126. 細谷治嘉

    細谷委員 そこでお尋ねいたしたいのでありますけれども、予算委員会でも議論があったわけでありますが、公用地等暫定使用法、これは本土並みですか、どうですか。
  127. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私は、日本憲法の中において許される一つの法律を御審議を願うわけでございます。案でございますが、成立しますれば法律、これは当然本土並みの中でのワクの中で暫定措置、こう解釈いたしております。
  128. 細谷治嘉

    細谷委員 私は法律のしろうとですから、あまり法律論を展開するなんということはできませんけれども、これはやはり常識なんですよ。一体公用地等暫定使用法案、こういうものを本土並みなんというのはかけらもありませんよ。でありますから、防衛庁の野呂政務次回が屋良主席に、沖繩公用地等暫定使用法案内容説明して理解と協力を求めたのに対して、琉球政府は強く反対して、本土政府意見書を出しておりますね。  その内容を申し上げますと、一つは、「この法律は強力な強制収用法である。」二番目、「この法律沖繩県民本土国民と差別するものである。」三番目、「この法律は五年後期間延長される可能性がある。」四番目、「この法律は適用範囲に疑問がある。」申すまでもなく法律は、アメリカが使っておる軍用地あるいは自衛隊用地、あるいは水道公社の用地あるいは道路、そういうものまで含んであるのでありますから、これは適用範囲に疑問があるというのは当然なことでしょう。それから五番目に「自衛隊のための特別措置は問題がある。」言ってみますと、自衛隊法第百三条、この範囲を逸脱しておる、こういうことを指摘しております。六番目に「土地または耕作物の使用に伴う損失の補償にも問題がある。」七番目「憲法から見ても相当な疑問点がある。」こういうふうに指摘いたしております。  この意見書を、私は正しいと思うのでありますけれども、いかがですか。
  129. 西村直己

    西村(直)国務大臣 私は、屋良さんのそういう意見書を政務次官の手を通して、私も拝見しました。それは、一つのそういう意見書が出たということは知っております。あわせて日弁連からもそういうような似たような意見書が出ておることも知っております。しかしわれわれのほうとしては、政府サイドでは、先般来他の委員会でも申し上げました、またこの委員会でも趣意書を申し上げましたように、憲法の中の各条章には許されるものである、それからその中でもって特に、公用地あるいは公用地等いわゆる公用並びに公共用地を暫定使用さしていただく、これは必ずしも全然例がないわけではない。たとえば講和条約発効後におきまして、軍用地につきましては期間は短かったけれどもこの形をとって、暫定使用を経ていく形をとったわけであります。小笠原の先例においてもそういうこともございます。必ずしも、私は沖繩だけについてこういった特殊な状況をたっておるわけではない、こういうふうに政府はきめておるわけであります。
  130. 細谷治嘉

    細谷委員 山中総務長官、お尋ねいたします。  新聞紙上で拝見したのでありますけれども、この法案が、いわゆる防衛庁の法案がつくられる際に、山中総務長官としてはこの防衛庁の二つの法律案は筋違いだ。その前の新聞等によりますと、どうもこれは外務大臣言うように、協定と国内法というのは不可分の関係があるんだから、一本で、場合によっては強行採決ででも通すように、何もかにもがんじがらめに一本の法律にしちゃえという、そういうことが報道されておりましたけれども、さすが私は山中さんの見識だと思った。これは切り離すべきである、こういうふうにいって、結果を切り離されたんですよ。山中さん、どういうわけからこれは切り離すべきだということを主張なさったのか、その見識をひとつお聞かせいただきたい。
  131. 山中貞則

    ○山中国務大臣 閣僚は個々に意見を持っておりますが、最終的に政府の態度がきまりましたならば、その経過の発言を公的な場所において公開すべきではないと思います。
  132. 細谷治嘉

    細谷委員 公的な意見を発言すべきじゃないと思いますと言いましたが、私は、この「時の動き政府の窓」これは九月十五日号でありますけれども、先ほどの座談会、さすがにやはり見識と自信を持っておると思ったんですよ。ちょっと読んでみます。「しかし日本側の国内事情で、あるいは私の守備範囲で、ということは返還協定と防衛庁の関係を除くわけですが、それ以外の内政問題で臨時国会成立しないような法案をつくろうとは、私は思っていません。」と言っているんですよ。そうでしょう、見識ですよ、これは。いま出ておるやつ、いろいろな私も意見がある、いまからやるわけですけれども。ところが、これは臨時国会成立しないような法案だということを暗に言っていますよ、暫定使用法案は。そうでしょう、このことばは、日本語をすなおに読んでいけば、山中長官……(「すなおに読まぬでもいいよ」と呼ぶ者あり)いや、これはすなおに読まなきゃ……。こういうふうにあなたが反対なさったこのあれが、くしくもその一端がこの座談会で出ておるんですよ。ですから、その閣内で言ったことを言わないとかなんとかって、この心境はいまも変わらないかどうか、ひとつお聞かせいただきたい。
  133. 山中貞則

    ○山中国務大臣 政治家としての信念が変わるはずはありません。しかしながら閣内において意見が統一された結果は、それに閣僚として従うべきであると考えます。
  134. 細谷治嘉

    細谷委員 山中さん、わかりました。それならば山中さん、もう少し筋をお通しになって、VOA等を、あなたは何でまたこれだけの見識を持ちながら、あの特別措置法の中に入れたんですか、電波法を、三条を改正する。山中見識からまことにこれはきずですよ。これをどうして一緒に入れたんですか、お尋ねいたします。
  135. 山中貞則

    ○山中国務大臣 返還協定並びにそれに伴う交換文書等において、当然に国内法で処理をしなければならないものがありますが、そのうち防衛庁の所管であるべきもの、すなわち施設、区域の提供が本来関連するものでありますが、それ以外のものはその他の国内法であります。したがって、私としても意見はありましたけれども、所管の当時の郵政大臣と外務省との間に意見が一致したものを、それはなじまないからといって、この法律の中からはずすというには、そのほかにも極東放送会社の問題もありますれば、あるいは弁護士の問題その他いろいろと、やはり返還協定付属文書等に付随する内容を持ったものもありますので、それは自分一人がいい子になって、つらいところはほかの大臣に押しつけようというそういう姿勢をとらない限りは、やはり厳然と区別さるべき分野は大別して、外務省のもの、防衛庁が立法すべきもの、そしてその他内政問題として国内法で処理すべきもの、その三本に分けた次第であります。
  136. 細谷治嘉

    細谷委員 それは厳然としておって、VOAはきょうの午前中の協定特別委員会でも、あるいは極東放送の問題、かなり議論されたわけですよ。ですから、私は、山中さんのこの公用地等暫定使用法という観点から見るならば、これはやはり別の法律にはずすべき、これは防衛庁だってあるいは郵政省だって一つの省なんですよ、と思います。  ところで、これ以上これを言ってもしようがないから進みますが、いま私が申し上げたこのような立場から、山中さんも政治家としての信念、変わってない、こういうことでありますが、これは予算委員会におけるわが党の安井委員が発言いたしましたように、あの席上では、時間の関係で憲法九十五条の観点から問題がしぼられて取り上げられたわけでありますけれども、私は、これはもう議論せぬでも、法律家の解釈を待つまでもなくきわめてずばり、憲法十四条、法の下の平等という規定に違反しますよ。憲法二十九条の財産権を侵害するんですよ。憲法三十一条の法定の手続の保障、これにも違反するんですよ。この法律協定の前提だと外務大臣おっしゃっていますけれども、これはもう議論の余地なく憲法違反の法律ですよ。住民投票にかける必要がないと法制局長官も予算委員会で安井吉典委員に答えましたけれども、これはもうこの条文からいってもきわめて明瞭ですよ。でありますから、この種法律は撤回さるべきじゃないかと思うのでありますけれども、総理、総務長官のひとつ断固たる——断固たるとなると、また固執してはいけませんよ。私のあれは筋が通っていると思うのですよ。ですから、お答えいただきたいと思います。
  137. 西村直己

    西村(直)国務大臣 先ほど来、これは憲法に触れるか——詳細は法制局長官から申し述べさせてもいいのでありますが、私といたしまして、これは過去におきましても、講和発効のときにも、米軍の、駐留軍のいわゆる基地については、期間は別でありますが、国会の御審議を得て、特別措置法で暫定使用という特別措置をやっておりますし、それから小笠原は必ずしも先例にはならぬかもしれぬけれども、やや似ておる形において、この法律案と同じ趣旨の法律案国会の御審議成立をさせておる。私は、そういう意味で憲法の条章の中において、沖繩のいわゆる国家あるいは公共団体の機能を円滑に引き継いでいくという趣旨の法律である。こういう意味で、私どもは、しかし法律の第一条第二項にはできる限り契約で円滑に進める趣旨は述べておりますが、最後の歯どめとしてこういう形をとっておる。したがって、法律の提案を撤回する意思は全然ございませんです。
  138. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 ただいまの御指摘は、憲法十四条、二十九条、三十一条、それから九十五条、この四条文について御指摘があったようでございますが、この一々について申し上げればよろしいのでございましょうか。もしそうであれば申し上げますが、質問はそういうことだとしてお答え申し上げます。  まず第一に、憲法第十四条一項に違反するのではないか。つまり、法の下の平等に反するのではないかということでございましたが、それにつきましては、確かに沖繩公用地等暫定使用法案は、沖繩地域における土地等に関する権利につきまして、特別の制約を行なおうとするものであるわけでありますが、しかし、十四条一項との関係について申し上げれば、何も沖繩の住民を、憲法の明文にあるような人種、信条、性別、社会的身分または門地により、人格の価値がすべての人間について平等であるという、憲法上の理念にそむいて差別しようというものでないというのが第一点であります。  ただ、沖繩にある土地等に権利を有する者が、公共の利益のための特別の必要性に基づき、その権利を制限する法律が適用される結果として、他の地域に権利を有する者との相違が生じてくるにすぎない。この相違は、事柄の性質に即応した合理的な内容を持つ法律の適用の結果によって生ずるものでありまして、合理的根拠に基づくものでありますから、御存じのように、憲法十四条一項の趣旨は合理的な差別といいますか、合理的な理由に基づくもの、そういうものについては、憲法十四条一項は、何もこれを問題にしていないというのはこれは普通の定説でございますが、いま申し上げたようなあるいは先ほど防衛庁長官が言われたような、そういう合理的な理由に基づいて、そういうつくられた法律の適用の結果として生ずるものでございますので、憲法十四条一項に反するということはまずないというのが一つでございます。  それから二十九条と三十一条は一緒に申し上げますが、この法案暫定使用の対象としている土地等は、条文をごらんになればわかりますように、第一には復帰前に公用、公共用等の目的に供されていたものであるということが要件であり、それから第二に、復帰時以降も引き続いて同様の公用、公共用の目的に供される公益上の必要があるものであるという第二の要件を具備するものであることが、法律上明記されております。このことは実態面においていえば、公共の利益のための特別の必要性があることを示しますと同時に、手続面において、復帰による供用の中断、それを避けるための制約が、実態面における、いま申した公共の必要に照らしてやむを得ないものであることを示すものであると言えます。  この暫定使用については、正当な補償が与えられることはむろんのことでありますし、対象としての区域等を定める告示とかあるいは権利者に対する通知とかいうものも備えているのでありまして、憲法二十九条三項とか、御指摘の三十一条とか、そういうものに違反するものとはむろん考えておりません。われわれは法律案をつくるときに何よりも大事なことは、憲法に違反するかどうかという問題でございますので、その辺は、われわれとしては十分な審議を尽くして結論を出したつもりでございます。  最後に、九十五条の……
  139. 細谷治嘉

    細谷委員 九十五条は聞いていません。
  140. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 それでは、これで答弁を終えます。
  141. 細谷治嘉

    細谷委員 いまの法制局長官の解釈などというのはもうなっておらぬ。でたらめですよ。これは何だってできる。こんなばかな答弁は答弁として受け取ることはできません。この問題は、もう間違いなく憲法上問題があるどころではなくて、明らかにこれは違反です。ですから、この種法律は撤回する意思がないならば、きちんと一般の人でも、これならば憲法に違反でないとわかるように出し直す、こういうことをすべきであると私は思います。  そこで私は次に移りますけれども、本土並み、こういう観点から若干質問をいたしたいと思うのであります。  その前に、先ほども質問がございましたけれども、十月八日に三百六十円レート保証ということで政府がとられた措置はどういう結果になっているのか、まずお聞きしておきたいと思います。
  142. 山中貞則

    ○山中国務大臣 大体手持ち現金が六千二百万ドルということが明らかになりました。さらに、預貯金等債権債務等の照合は相当長時間を要しますので、これはまだ推測の域を出ませんが、おおむね一億ドル前後に達するのであろうと見られておりますが、一説には全体で八千四百五十万ドル程度であろうという説もございますが、これは目下作業中でございます。
  143. 細谷治嘉

    細谷委員 六千二百万ドルあるいは一億ドルとか八千数百万ドル、こういわれております。そうなると、大体これは沖繩の一割ぐらいにしか当たりませんね。残りの九割の被害はどうなりますか。総理も山中長官も、沖繩復帰前にはドル・円のレートは変わらぬ、こういうことを確約しておったのですが、変わったのです。これはいまのお答えですと、一割ぐらいにしか当たりませんよ。これはたいへんな問題が起こっているわけですね。どうなさるのですか。
  144. 山中貞則

    ○山中国務大臣 復帰前に一ドル三百六十円の基本レートを標準として一応の対策要綱を定めておりましたが、変動相場制に移行したことにより、一ドル三百六十円の基本レートこそ変わっておりませんが、実際上の生活物資その他変動相場の幅の中で、ドル圏にあって、対本土貿易八〇%の沖繩の人たちの生活に甚大な影響ありということで、このチェック手段を講じたわけであります。したがって、説明するまでもなく復帰の時点において、たとえば当時百万円の現金を持っていた人が、一銭も持っていなくても、その人はその復帰の時点における変動相場、もしくは切り上げられた固定レートと三百六十円との差額を、交付金として国家から支給される権利を認めたわけであります。ただそれが一割とおっしゃいますけれども、意味がよくわからないのでありますが、私としては、個人の通貨並びに通貨性資産というものに対して全部手を打ったつもりでありますので、その一割という意味がよくのみ込めませんので、お教えを願いたいと思います。
  145. 細谷治嘉

    細谷委員 これは六月末でありますけれどもね、現金通貨、市中流通高、銀行手持ち、対外預金、これは二億二千二百万ドルくらいあるわけですね。預貯金が八億八千五百万ドルくらいあるわけですね。合計いたしますと十一億ドルくらいあるわけですね。ところがいまの六千二百万ドルくらいしかチェックされたドルというのは——無チェックドルもあるわけですね。営々として人権を無視されながらためてきた。しかもきわめて貧弱なドルというものが変動相場制移行によって——これはもう沖繩にとってはたいへんな問題だと私は思うのですよ。そういうことを私は申し上げているのですよ。先ほども話がありました、一日おくれればおくれるほどたいへんな損害がいくのだと、ある新聞にもこう書いてあります。四十億くらいの金は簡単にもうけさせておいて、そして沖繩の人に十一億円出して得々としている、こういうふうに言っている人がありますよ。そういう点を私は申し上げたいのです。どうですか。
  146. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは事柄が二つでして、いまの十一億の話はまた別な話で、先ほど答弁いたしましたように、復帰まで四百四十品目琉政と合意した品目について予算措置を講じよう、こういうわけでありますから、これはまた別な問題です。  それから、いまのチェックの問題でありますが、これはどんな零細な、いわゆるコインに至るまで、全部個人の手持ちのものはチェックを終わっておるわけでありまして、あとは預貯金等については、債権債務との間の相殺の結果残ったものが、最終的に琉球政府から金融検査庁の正式な報告として提出されたものに対して、本土政府がそれを確認する手段が残っておるだけでありますので、法人を対象から除いたという点を指摘されれば別でありますが、これは沖繩の自己資本比率が二〇%くらいでありますから、相殺してみてもおおむね負債のほうが大きくなるばかりであるということは事実でありますので、いまのちょっと表現といいますか、ものの問いかけのしかたが、ちょっと現実と違うのではないかと思うのです。
  147. 細谷治嘉

    細谷委員 物価は上がる、かせいだドルの値打ちは減る。先ほど私が申し上げました十一億円と連関させたことは、まあ混乱したでしょうけれども、そういうものについての山中長官が平素言っているのとずいぶん違っておって、これではとてもじゃないが沖繩の不安というのは解消しないじゃないか。ですから、一日も早くこういう問題については、沖繩の人が安心されるような措置を講じてやらなければならぬ、こう私は思うのです。先ほど國場委員もそういう点を指摘しておったわけですね。そういうことを私は申し上げているわけです。  そこで今度の法案に関連いたしまして、直接出てくるかどうか別としまして、たとえば日本政府の援助というものが円だ。これが琉政に行きますとドル建てになってくる。あるいは今度沖繩本土に返ってきますと、沖繩の公務員が本土の格づけにされていく。こういう場合にもこれはたいへんな不安がありますね。この辺は基本的にどうなさるのか。お伺いしておきます。
  148. 山中貞則

    ○山中国務大臣 公務員に関する限りは不安はありませんで、現在の実質の職階並びに手取りというものが現実にそのまま保障されるように、しかもまた初任給から三十歳前後までは現地が高うございますから、その高いところは特別給付金をもって手取りが減らないようにしたいというような措置をいたしておりますから、そのような立場において何ら変更はありません。また本土復帰が、これはなるべく早いほうがよろしいわけでありますけれども、復帰の際においては、当然円と交換をするわけでありますから、そして沖繩は円圏の中に入るということでありますので、それらの問題点は一挙に全部解決するものと私は思っております。
  149. 細谷治嘉

    細谷委員 沖繩の人たちが迫害されながら、人権を無視されながら営々としてやってきて、そしていまそういう面において非常に不安がつのっておるということは、現地の國場委員も指摘したとおりであります。でありますから、私は、早急にこの不安を取り除くために万全の措置を講ずべきである、こういうことを重ねて申し上げておきたいと思います。  そこで、次に移ります。自治大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、昭和二十八年に奄美大島が返ってきたわけでありますが、それから前期、後期十カ年の復興計画が進められて、そしてその後五カ年の振興計画、現に後期五カ年の振興計画のまっただ中にあるということであります。この初めから、二十八年から今日まで十七、八年、復興計画なり振興計画が行なわれてきたのでありますけれども、その成果を自治省としてどう評価しておるのか、沖繩との関連がありますからまずお聞きしておきたいと思います。
  150. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 昭和二十八年に奄美大島が返ってまいりまして、昭和二十九年から三十八年まで十カ年の復興計画を実施いたしました。現在、昭和三十九年から四十八年までの十カ年間の振興計画の進行中でございまして、現在までに行ないました公共投資、事業費といたしまして大体五百六億、国費といたしまして二百六十億余りになっております。  御指摘のように復興計画をどのように評価しておるかということでございますが、大体この復興計画振興計画は、戦前の、すなわち昭和九年から十一年並みの生活に復興したいということで行なってまいりました。その当時奄美大島は、実際におきまして、対鹿児島県八〇%、対国平均に対しまして四二%ですか、それらの所得という姿でございましたが、現在ではその数字はこえまして、対鹿児島県にいたしましても八七%にまで上がっております。この意味におきましては、奄美大島の復興、産業振興というものに対しましては、多大の成果をあげておることは事実でございます。しかしながら、現在もなお本土等に比べまして格差のあることは事実でございますので、昭和四十八年になります姿のときの実態までに、ぜひとも所得水準を上げるために、さらなる計画も含めまして実施計画を検討を加えたいということでいま検討をいたしておるのが、奄美大島に対する振興計画状態でございます。
  151. 細谷治嘉

    細谷委員 山中長官にお尋ねします。  あなたのこの対談の中で、「ですから奄美大島は昭和二十八年に返ってから二十年めんどう見たわけです。」これはかなり成果があがったように言っているわけです。いま自治大臣が言っておるように、十七年、八年、いま十八年目でしょう。十八年かかって日本のビリっこのほうの——鹿児島県というのはビリかビリから二番目ですよ、失礼でありますけれども。それのまだやっと八〇%と、こういうことなんですよ。私は、これから十カ年計画のあなたの構想について質問していくわけで、これはまた奄美群島のあれが十八年かかってこんな状態。あなたはしかも鹿児島の人ですよ。よくそういう事情はわかっているでしょう。あなたのところよりも七五%か八〇%しかないわけですよ。ですからこれは、奄美の問題については十八年かかってこんな状態でありますから、沖繩とともに考えてやらなければいかぬということは当然でありますけれども、沖繩の復興十カ年計画なんかといっても、文字どおり絵にかいたもちになる心配があるのでありますが、まずこの辺、ひとつ総務長官、決意はどうか、お聞きします。あなた、鹿児島の水準でものを申してはいかぬですよ。
  152. 山中貞則

    ○山中国務大臣 すでに沖繩県という表現をいたしますと、沖繩県県民所得は鹿児島県よりか現在でも高うございます。したがって、鹿児島県の水準でものを言うつもりは決してありません。奄美大島は、鹿児島県の中の離島のみで構成される一郡でございますので、したがって、先ほどの自治大臣の表現がちょっと私はわからない点がありましたが、たしか復帰した時点においては、郡民所得を対本土、鹿児島県民所得に比べると四五%ぐらいだったと思うのです。それが八七%まで上がってきたと思います。それは県民所得の問題で、キビの保護とかその他作物の問題とか、いろいろ土地の生産性の問題等もありますが、その他にも公共投資を底辺とする種々の投資が行なわれておりますから、もちろん義務教育施設、社会保障に関する諸政策、福祉政策、あるいはまたほとんど漏れなく与論島の予算もいまついておりますが、まだ完成しておりませんが、——除いてはほとんど飛行場もできておりますし、奄美の人たちの生活というものは飛躍的に豊かになっておりますし、奄美大島名産のつむぎ等も非常な近代的な生産を続けて、売り上げ高を年々伸ばしておる実情であります。これは戦前よりかはるかにすぐれた状態になっております。しかしながら、沖繩の場合においては、われわれは奄美大島において行なった方式というものを踏襲しようというつもりで、そこに私が申しました奄美大島でも二十年の計画をやったということを言ったのは、沖繩についていえば、もっとそれ以上の長い期間特別なめんどうを見なければならぬだろう、特別努力を国がしてあげなければならないだろうということを背景に持って、ものを言ったのであります。しかしながら、それを二十年計画とか二十五年計画とかいう長いものでは、やはり社会情勢の見通し、その他経済動向等について少しばく然とし過ぎますので、この法律においてはとりあえず十カ年計画を定めて、その初年度を来年度予算において初年度とみなすことにして、その後の計画は、琉球政府主席が沖繩県知事に変わったあと提案いたす原案をもとにして審議会で決定をしていくということで、新しい沖繩御苦労に対するわれわれ祖国の償いと、そして沖繩が持っている南西亜熱帯地方にある立地条件を生かした明るい、所得の豊かになる県づくりをしたいと考えております。
  153. 細谷治嘉

    細谷委員 それは本会議でとうとうとお聞きした内容で、一つも新味はないわけであります。そこで、話の順序として、対策要綱ではこの振興開発特別措置法というものはできておりますけれども、これは琉球政府がっくりました沖繩長期経済開発計画、そういうものを尊重して、こういうことになっているわけでありますけれども、この振興開発十カ年計画沖繩長期計画はありますけれども、その基本というのは尊重するわけですけれども、どういう基本態度で臨もうとしているわけですか。
  154. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまの計画といわれるのは、現在の琉球政府が作成している計画だと思うのです。これはことしを初年度として計算がされておりますし、十年後には基地が全然ないということを前提の計画であります。また先ほど社会党の提案をされました法案にもそのようなことが書かれてあるわけでありますから、その点においては平仄が合っているわけでありますけれども、しかしながらやはり責任をもって十カ年の計画を達成するためには、四十七年度を初年度とみなしながら、そして具体的には沖繩県知事たるべき琉球の現在の政府代表としての立場にある者が原案を作成して提出する権利を認める、そしてその原案を作成した知事の案をもととして審議会が定めていくということになっておりますから、今後の新しい県づくりに対する、またこの法律のもとの沖繩県知事の役割りというものが、大きくそこにまた提起されていくものであると考えておる次第であります。
  155. 細谷治嘉

    細谷委員 私の質問も悪かったかと思うのですけれども、どうもきちんとした答弁じゃないのです。私が十カ年計画でどういう——計画の手順じゃありませんよ、手順は法律案に書いてあるのですから。どういうふうに進めたら、十カ年にどうなるのか、さしあたっての来年度の予算編成等には一体どうなるのか、こういうものはあなたつかんでいると思うのですよ。これもたびたび「政府の窓」というのを利用して恐縮でありますけれども、たいへんけっこうなことを書いてあるのですよ。ちょっと読んでみます。「沖繩の十カ年計画では、だいたい百五万ぐらいになるだろうという推定なんですね。私の場合はふえていく沖繩県にしたいと思います。」琉政もやっぱり百五万くらいになると言っているのですよ。この点一致します。いいですか。そしてうまいことを言っているのですよ。この資料は非常に重要です。「東京や大阪を、テレビなどで見てどうもパラダイスみたいなところなんだなということで一ぺん行ってみたい、これは押え切れぬ気持だと思うんですね。しかし行っても空気は悪く、都会よりもやっぱり故郷がいい、所得も似たようなものだ、そんな気持で帰ってもらう。」沖繩に、とこういうことですよ。そして大蔵大臣に対して「私のところで全部まとめてということですが、大蔵省には「山よりでかいイノシシをつれていくぞ」ということをいってある」というのです。ですから、山より大きいイノシシを連れて、百五万の人口で、そして公害のない沖繩というのですから、ひとつ基本的なものはきまっているのでしょうから、ここで明らかにしてもらいたい。
  156. 山中貞則

    ○山中国務大臣 それは、当然私たちはそうしなければならない義務があると思います。沖繩がいま施政権の壁にあって、出入域の管理等がチェックされておりますために、本来ならば何もしなければおそらく沖繩も、隣県鹿児島やあるいはその他の東京、大阪から遠い地域に見られる過疎県になっていた可能性も非常に多かったと思うのです。しかしながらその施政権という壁があったことも大きな原因でありましょうが、沖繩の人口は着実にふえ続けておりますし、四十五年度の国勢調査で九十四万五千と予想よりやや低い数字が出ておりますことは心配になっておるわけでありますけれども、本土に入りました後、私たちは沖繩から人口が、ことに働き手が流出をしてしまって、せっかく沖繩の青写真をかいても働き手がいない、過疎の島になってしまう、そして結局は貧困な島になってしまうというようなことがあっては絶対にならない。したがって職場の問題も、あるいはそれの前提としての沖繩の現在の企業の保護も、それからまた立地条件を利用した新しい企業の誘致促進あるいはそれらの南の亜熱帯地方の風土によってのみ存在し得るキビやパイン等に対する新しい国の保護策を講ずることによって、皆さんが自分たちの島を、生活するためにも誇りを持てる島にしたい、そして、自分たちの島としてみんなが定着し、着実に人口のふえていく島にしたいというのが私の念願であります。したがって、十カ年計画は、当然それらのものに従って前進を開始しなければなりませんし、来年度の大蔵省への予算要求についても、閣議決定をもって沖繩対策費のみ——来年は沖繩県の費用になるわけでありますが、こればかりは、一般の各省庁の一般予算である対前年費二五%以内というワクをはずしてもらって予算要求をするということで、その姿勢を整えておるわけでございます。
  157. 細谷治嘉

    細谷委員 もう一つ。何かぺらぺらとしゃべっちゃっただけでわからぬのだけれども、一体総務長官、琉政がつくった基本計画があるわけです。それを尊重するということで、そして山よりでっかい予算も考えておるというわけですから、公害のないところを考えておる、こういうことでありますから、その場合に、あなたが想定される十カ年後の、たとえば産業構造の目標というのはわかっていますか。  それともう一つ、屋良さんは、基地の問題は十年後にはないようにするというわけだ。あなたは、基地はそのままにして、そういうふうにやるのかやらぬのか、その辺もはっきり明らかにしてください。
  158. 山中貞則

    ○山中国務大臣 基地の問題をそのままにするとは、私は言っておりません。しかしながら、十カ年計画を定める場合に、基地が全然ないことを前提に作業をすべき現実の立場にあるかどうかは、先ほど来返還協定に伴う基地提供等についていろいろと議論がなされておることでわかりますとおり、本土にも、いまだに二十七年の独立以来基地があるわけでありますから、全然ないということを前提の作業は困難であろう。  しかしながら、私は当然自分の腹中にいろいろの考え方を持っておりますけれども、これはここまで法律を出して御審議願いますると、当然に新しい沖繩県知事が原案作成権を持つわけでありますから、その知事の原案作成権を尊重して、子してその知事の提案したものに従って十カ年計画を、正当な過程を経て、審議会その他を経て決定をしていくという手順を踏むべきが至当であろうと考えております。したがって、その来年度の予算については、少なくとも私が念頭に描いておりますようなものと離れないように、初年度の予算について、琉球政府は、出発の年でありますから、新生沖繩県のために悔いのない予算をつくりたいという念願をしておるわけであります。
  159. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、琉球政府がつくりました基本計画なるものも、これは基地が十年後にはなくなったものとするといいますけれども、その辺の基地の問題についても明確じゃないのですよ。これは琉球政府のこの基本計画も欠陥があると思うのです。われわれはきょう基本的な姿勢を示したわけですけれども、琉球政府のその辺も、基地の問題についてはきわめて抽象的で、何のものもないわけですよ。あなたのやつになると、全くそれがないわけですよ。いわゆる基地経済というものでいくというわけですから、平和経済への方向なんというのはみじんだにもない。これはあとで少し議論したいのですが、そうなってまいりますと、あなたのやつは、あとでこの問題も、原案は琉球政府がつくるというのですから、そのいまの琉球政府議論をあれにしてひとつ聞いてみます。  琉球政府計画によりますと、一次産業は大体現在よりも半分ぐらいの構成比になる、二次産業というものは大体本土の現在の並みにしよう、三次産業というものが圧倒的に多いんだから、いまそれを減らそう、こういうようなことになっております。  そこで、これは通産大臣と環境庁長官にお尋ねしておきたいのでありますけれども、この琉球政府がつくるであろう原案、そういうものにおいても、たとえば、県民所得を見ますと、第一次産業というものは現在の約二倍ぐらい、第二次産業というのが現在の三倍ぐらい、三次産業というのが七倍ぐらい。第二次産業というのは二・何倍ぐらいなんですよ。こういうことになりますと、これは完全な工業偏重ですよ。ですから、一九六〇年代に本土が歩いた公害国日本、これを沖繩に押しつけるということになると思うのですよ。そういう点で、あなたのほうは法律は出ているけれども、十年後のビジョンなんてものは出てないわけですけれども、いまのこういうようなやり方で抜本的に——総理は所信表明演説の中で、今後の経済政策というものは抜本的に転換しなきゃだめだと言っておったのですけれども、通産大臣、どうもいま政府がつくるであろうそういうようなものを考えますと、これは公害沖繩県、そうして通産大臣が最近やった田中構想というような、工業分散計画にも沿わないようなかっこうのものになるんじゃないかと思うのでありますけれども、この点についてひとつ両大臣の所見を伺っておきたいと思うのです。
  160. 田中角榮

    田中国務大臣 復帰後の沖繩経済計画につきましては、知事を中心にして沖繩県民意思が反映できるような状態で理想的なものがつくらるべきであることは申すまでもありません。しかし、いまの状態を直視いたしますと、沖繩県は豊富な労働力を持っております。しかも、本土の一〇%という一次産業比率に比べて、一次産業比率も高いということでございます。それから二次産業比率は本土よりもぐっと低いわけであります。三次産業比率は本土よりも非常に高いということ、全国平均よりもはるかに高いということでございます。そこに基地依存経済とか、いろいろな評価もあるし、また、復帰後はそのような状態沖繩県が経営できるわけはないということもいわれるわけであります。でありますから、すなおに沖繩県のあしたを見ますと、このままの状態で線を引き延ばしてまいりますと、生産労働力は本州に大きく移るようになります。ですから、本州に移らないで労働力を定着させながら沖繩県民所得を拡大していくためには、やはり二次産業比率を上げていくということでなければなりません。これはもう言うまでもないことであります。二次産業比率を上げるということはどういうことかというと、それは公害をふやすことであるというふうに端的には言えないわけでありますし、公害のない二次産業比率の拡大へと結びつけなければならないというのが新しい沖繩の青写真でなければならないと思います。  そういう意味で、アメリカの企業が進出をする予定であったアルミの工場に対しても、沖繩地元民の要請に基づいて、国内アルミ五社で約千億の投資を行なおうということで、いまボーリングを行なっておるわけでございます。ですから、知識集約産業的なきれいな仕事というものにこれから移らなければならないというのは、あに沖繩のみならんやということでございます。重工業的な問題をずっと引き延ばしてはまいりません。いまのままの重工業偏重でまいりますと、昭和五十五年の日本に搬入する石油の量は、自由世界の石油貿易量の三分の一をはるかにこすわけでございますから、そういうことから考えてみても知識集約的な産業に移らなければならない。これは日本全体の姿であって、沖繩も例外ではないということでございまして、沖繩に対しては新しい、ほんとうに日本全体の将来図というもののテストケースというか、テストケースと言っては悪いので、ひとつ理想的な姿をつくろうということで前向きに取り組んでおるわけでございます。
  161. 大石武一

    大石国務大臣 沖繩県民は、二十六年の苦難の道を経て、いまようやく本土復帰の喜びの日を迎えつつあるわけでございます。このような二十六年の間に沖繩に残されました、ただ一つとは言いませんけれども、非常に大事な宝は、公害のなかったことだと思います。やはりすばらしい、豊かな、健康な生活環境が残されたということが、私は大きな沖繩県民の宝であったと思います。そういう意味で、本土復帰になりましても、それ以後はこのような地域に公害を起こさせないように、りっぱな自然環境を守るような経済発展をはかることが、何よりも大事であると私は考えます。  それにはいろいろなことがありましょうが、ただいま通産大臣が申されましたように、やはりそこに興る産業、そこにもたらさるべき産業の種類も、これは考えなければならぬと思います。いたずらに公害を多く発生するような産業は、ここにできるだけ寄せないようにするということ、そしてまた、そのようないろいろな企業が入ってまいります場合にも、立地条件その他の十分な検討のもとに、大きい構想のもとに、公害のないような考えにおいてこれらの企業がもたらされなければならない、こう思います。  また、ことに沖繩の今後の産業開発の一つの大きな資源は観光にあると思います。この観光事業は、何と申しましても健康で、清潔で、豊かな自然環境が何より大事な基盤でございますから、そういう点も十分に考えまして、われわれ環境庁は、この産業開発の場面とは十分に連絡協調を密にいたしまして、できるだけ公害の少ない、明るい健康な自然環境を守ってまいりたいと考えておる次第であります。
  162. 細谷治嘉

    細谷委員 いま、私は三人の大臣に聞いたわけですけれども、それぞればらばらですよ。法律が出ているけれども、一体十年後にどういうようなことになるのか。観光の話も出た。公害のない企業だという。現に通産大臣、今度のあれで、外国企業が、かけ込みの企業まで愛知書簡によって完全にやって、これはもうたいへんな問題が出てきているわけですよ。そしてもうすでにこれは公害への素地というのは十分できておるわけですよ。そして圧倒的な形で二次産業育成、こういうことになってきますと、これは六〇年代に歩んだ本土の姿、こういうものを再現するということは必至だと思うのですよ。どだい、柱が何かわかりゃせん、こういうことだと思うのです。こういうことでは、沖繩は、またぞろ環境庁長官なんというのはたな上げされちゃって、山中長官が言うように、所得は同じだ、空気はいいわ、だから東京や大阪よりも沖繩がいいなんというような、そんなことはもう全く夢物語りになっちゃうのじゃないかと私は思うのです。  ところで、そういう問題で、私は全然具体的な構想、柱すらもないことをたいへん遺憾に思うのでありますけれども、もう一つのこの問題で、基地の問題になると、てんでだめ。現に沖繩の問題で、基地を存続させながら経済開発社会開発をやるなんということはできないですよ。  都市計画の問題だってそうですよ。たとえば、ある村ではもう九〇%ぐらいは基地に占められておる。こんなことで都市計画ができますか、農業計画ができますか、こういうことなんですね。いま那覇市でも、戦後不当に取り上げられた、それが個人に払い下げられた、そういうものを都市計画上絶対必要だから返してくれ、こういっておりますけれども、それも今度の協定なりいろいろな中においては実現しそうもない。不当な形がそのまま存続されようとしているのですね。こんなことで沖繩振興開発なんてできっこないと思うのですよ。そう私は思うのですが、総理、いかがですか。
  163. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩における基地の、ことに中部地区の密度というものは異常なものがありますから、たとえば、沖繩の本島に高速自動車縦貫道路をつくりたいといっても、名護から石川あたりまで、その先は軍用地がはばんでいて、海岸線のいまの道路に合流しなければ中央を突破できないというようなこと等が一例でもありますし、あるいは那覇市の都市計画でも、牧港住宅街というものを撤去させなければ那覇市の都市計画というものは基本的な青写真が書けないだろう、これは私もそのとおりだと思うのです。  先ほどあなたは、山中の考えは基地経済というものはそのまま残しておいてという、それが違うのだというお話でありますが、それは総理も自分で答弁しておられますように、沖繩における基地の密度、あるいはまた特定地域にかたまっておる異常な状態というようなものが沖繩経済開発の妨げになるから、今後返還協定が調印されて、そして復帰をしても引き続きアメリカ側に向かって折衝をしていくつもりだということを言っておられますけれども一やはり沖繩の未来の経済の青写真を描くために基地というものが非常に大きな障害になっているということは、そのとおり私も異論はございません。したがって、われわれが見て、どうしても必要であり、そして米側が見て、この地点は必要ないと思われるものは、逐次経済開発計画の中に組み入れられていくように、そういう努力は、不断に、断え間なく続けられていかなければならぬと考えますし、したがって、そういうことを予想しておりますから、アメリカの兵隊の撤退とか、あるいは予算の縮小とか、基地の返還とかによって失職する人たちの再就職の資金のあっせんとか、あるいは技能その他の職業指導の手当てとか、そういうようなもの等についても配慮をしておりますのは、そういう姿勢をとって基地を減らしていかなければ、沖繩の未来はどうにもならぬということをわれわれも考えているからであります。私が先ほど言ったのは、十年後には基地がなくなっていることを前提に計画を書くのは、少し現状から見てむずかしいのではないかという疑問を提示しただけでございます。
  164. 細谷治嘉

    細谷委員 総理、先ほど私ども三党で基地の全面撤去というものを基本として、沖繩のあるべき平和的な経済を建設すべきであるということを主張いたした法案を出したわけでありますが、私は、基地に触れない、基地を減らすと言っておりますけれども、全く具体的にめどのない、そういう形において沖繩経済開発して、そうして百五万の人口を擁して、公害のない、そうして所得も東京と同じだなんという、そういう沖繩なんというのは、これはもう沖繩県民をだますにもほどがあると思うのですよ。そういう点で、沖繩県民にこたえる道というのは、沖繩県民が望んでいるような平和な沖繩、公害のない沖繩、豊かな沖繩、そういうものを建設するには、基地の全面撤去以外に私はないと思うのですよ。この点について、総理、どうお考えですか。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これも社会党の多年の主張で、安保は反対だ。安保さえなければ、基地はございません。だけれども、私どもは、安保条約のもとでわが国の安全を確保する、こういう立場に立っておりますから、全然基地のない日本というものは考えておりません。これははっきり申し上げておきます。  ただしかし、沖繩はあまりにも基地が、その密度が過ぎている、かような意味で、私どもこれをやはり本土並みにしたいし、また装備にいたしましても、それらのものについてはこれをなくするように、ことに最も日本人のきらっておる核、核兵器、そういうものがあっては困りますから、これはもう返還時にはなくなる、その他特殊部隊というものがいろいろ特別な任務を持っておる、こういうものもできるだけ縮小する、こういうことで努力しなければならぬと思っております。ただ、返還時において直ちにそれができない。これはまことに残念でございます。総務長官も先ほど、十年に全部なくなるわけにいかぬだろう、かように申しておりますのは、基本的に私どもの考え方、いわゆる安全保障条約のあることを前提とし、同時にまた、そのもとにおいてもできるだけ縮小はし、整理はいたしますけれども、全然なくはならぬだろう、こういうことでいろいろの計画は立てておるのだと思います。  ところで、先ほど来お話がありまして、いかにも内閣が開発について意欲がないような、あるいは相当の意欲は持っているが三人三様のような考え方じゃないか、こういうお話でありました。私はそれについても責任を感じますが、同時にお聞き取り方もやや間違ってないだろうか。私ども、だいまは総務長官の提案しておる十カ年計画、これは見方によっては長い、こうも言えましょうし、見方によってはまた短い、もっと長期計画で立てるべきだ、こういうような考え方があるだろうと思いますが、とにかく十カ年計画を立てる。そうして問題は、やはり中央よりも地域住民でその基本計画を立てるべきだ、かように私どもは考えております。中央は中央で、その地域で立てられるそういうものにいかに援助ができるか、これが中央政府のやるべきことじゃないだろうか。  しかし、沖繩県沖繩県ということは申しますけれども、まだ県が誕生しておるわけじゃありません。したがって、ただいまの初年度は、中央政府において一応計画は立てますが、自後において、これは知事が各界の意見をまとめて、そうして計画を立てられる。そうして沖繩県でやるべきこと、中央で援助すべきこと、それぞれのものをまとめて、そうして県の発展をはかっていく、これが最近のはやりになる公害のない、また近代産業地域にする。  公害というのは、ただ単に産業が流す公害だけではございません。先ほど来、一番最初に申しましたように、基地公害に一番悩んでおられる沖繩県の方々でございますから、基地公害についても対策はもちろん立てなければならない。それらのことを考え、そこに初めてまとまった再建計画と申しますか、あるいは経済増進計画というか、そういうものが明らかになると思います。いまこの時期において、中央政府だけでいろいろな意見を述べることは、これは必ずしも地域住民の意見を全部代表するとは思いませんから、私はそのほうはしばらくおいていただくということで、いま各大臣の考え方がそれぞれ違っていると言われるけれども、そうじゃないんで、いまのところは、それぞれの担当しておる自分たちの職分の範囲内において、いかにすれば沖繩県にしあわせをもたらすか。きょうはちょうど農林大臣が出ておりませんから、農業の話を聞くことはできませんけれども、農業などは、沖繩県においてやはり亜熱帯地域の農業、これは本土におきましても私ども非常に望みを嘱しておるものであります。  そういう意味からも、やはり基地が平地を占領しておる沖繩のその現状を考えたときに、これはもっと縮小されなければならない、かように私は思うのでありまして、先ほど来、どうも産業振興といいながらその振興の柱になるものがない、こういうことを御指摘でありますけれども、私はそれぞれの大臣がそれぞれのものを柱にしたいとただいまがんばっている最中ですから、あまり水をかけないで、むしろけつをたたいていただいて、そうしてりっぱな県づくりにひとつ邁進しようじゃありませんか。
  166. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、沖繩振興開発計画の柱は、何と申しましても土地利用計画基本だと思うのです。その土地利用計画は、申すまでもなく基地の問題なんであります。ですから、その基本にたる、土台になるものを明らかにせぬでおいて振興計画をつくるなんといったって、これは夢物語、こう私は思うのです。  そこでひとつ総理に端的にお伺いいたしますが、私は、即時こういう基地なんていうのは撤廃すべきだ。即時といいましても、現にあるわけですから、これはまあ暫定期間、経過期間というのは必要でありましょうけれども、少なくとも十年間という振興計画、その柱である、土台であるというものが土地利用計画であるとするならば、総理、その十年間に、いま一二、三%もある、しかも一番重要な地帯においては三分の一もあるそういう基地についての、十年後にはこうなるのだ、たとえば本土の程度の基地になるのだ、そういう目標が掲げられなければ、これはもう振興開発計画はできないのでありますから、総理基本的な目標を聞かしていただかなければ、これはもう振興計画なんて信用できないと思うんですよ。総理、ずばり、一番土台はそれなんでありますから、十年計画で基地はこうするのだという見通しといいますか展望といいますか、そういうものをひとつはっきりとお聞かせいただきたい、こう思うのです。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの十年、その間に基地はどんなになるか、そういうことをずばり言え、こういうお尋ねでございます。これはずばり言うことはたいへんむずかしいことです。私は、これはずばりは申し上げません。しかし私は、基本的に立っておる立場が、皆さんと私どもの間には大きな差がある。安全保障条約を否定される皆さんと、安全保障条約は必要だという私どもとの間には非常な相違のあること、これはまず第一に指摘しておきます。私どもは、日米安全保障条約はわが国の安全、同時に繁栄のために必要だ、かように考えております。しかしそれにしても、いままでの米軍基地、これは安全保障条約のワク内にこれをとどめるとすれば、よほど整理総合すべきものではないか、かように思っておるのでありまして、そうしてそれには相当の時間がかかる。それは十年後に一体どうなるか、これはまだこの際に申し上げるのは早い、かように思いますが、しかし、沖繩にいる米軍も、日本本土と同様に、日米安保条約のワク内において区域、施設、これを私どもが提供するが、それを使用する権利を持つ、かように御理解をいただきまして、そうすればこれがやはりよほどその性格が変わる。性格が変わると同時に規模も変わってくるだろう、このことを私は期待しておる。  以上でございます。
  168. 細谷治嘉

    細谷委員 総理の答弁をお聞きいたしますと、やはり沖繩かなめ石論なんですよ。安保条約がかかっておる。これが本土並みというのならば、これは、基地も態様も密度もやはりもう本土並みということでしょう。ですから、総理のおっしゃる安保体制というものをかりに認めたとしても、沖繩かなめ石論でこの問題をとらえない限りにおいては、それは十年後の振興開発をやらなければならぬというのでありますから、その辺の展望なりめどというのをこの席で明らかにしていただくことが私はしごく当然であって、それができなければ、とてもじゃないが、どんなに有能だって、山中長官、これは計画はつくれませんよ。こう私は思います。しかし、どうも総理沖繩かなめ石論にこだわっておりますから、どうなんですか、沖繩かなめ石論をはずさなければだめですよ。
  169. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 太平洋のキーストーンだとかかなめ石だとか、さようなことは、私は申しません。これが安保のワク内になったらさようなものは取りはずせるのではないか、かように言っているわけだ。そこに質的な変化があると申しておる。それがいまあるままなら、いわゆるかなめ石、まさしくそういう議論だと思います。その点をどうぞ御理解いただきたいと思います。
  170. 細谷治嘉

    細谷委員 どうも総理の答弁、納得できないのですよ。やはりかなめ石論に固執しておると思います。  総理、私は重ねて申し上げますけれども、いろいろな大臣から所見をお聞きいたしましたけれども、その辺の柱がきちんとしておりませんから、これはうまいこと言ったって砂上の楼閣じゃないか。それでは沖繩の人たちが期待しておる振興開発なんてとてもできない、こう私は思うのです。琉政から出された、十年後には基地がないのだといっておりますけれども、それの具体的な展望というのがないのを非常に遺憾に思っている一人なんでありますけれども、総理からも、この問題について聞き出せない、展望等も述べていただけなかったことをたいへんに残念に思います。時間の関係で、この法案がこの特別委員会で出されている過程において、ひとつぜひ具体的に明らかにしていただきたい、こう思います。  そこで、この振興開発計画に関連して、たいへんなことなんですね、沖繩開発庁長官のもとに、膨大な沖繩総合事務局というのができるわけなんですよ。それでこの山中長官の談話、またこれを利用しますけれども、ほかのところはたいへん山中さんらしいすなおな書き方をしているのですけれども、この五ページのところにきますと、こういうことをやっても地方自治の侵害でないということを明確にした内容の出先機関を集約して、本来、沖繩だけならば置かれるはずのないブロック機関としての沖繩総合事務所をつくる、こう言っているのです。自治大臣にお聞きしますが、山中長官の言っていることはほんとうでしょうか。これで自治権が守れますか、お尋ねいたします。
  171. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私がしゃべったことについて言われるのですから、一応私から言って、自治大臣が必要ならば答弁してもらいます。  私の姿勢あるいはつくり上げましたもので、本来の本土の各県知事が持っている権限あるいは市町村長の権限というものを侵している内容は、私は絶対にないと思うのです。したがって、沖繩事務局をつくるといっても、その総合事務局というものは、いわゆる許認可事業とか、あるいは国の直轄工事を行なう場合等における、その必要な機関が出ますし、さらにまた単独には、普通ならばブロックとして、一県だけに置かれないような機関も沖繩のためには必要であるということで、たとえば第十一管区海上保安本部をつくるとか、そういうようなことも含めてやってありますので、これは国の権力を上から押しつけるものではなくして、国の行なうべき施策を現地において身近に行なうし、あるいは現地の住民、県民の方々が、それぞれブロック機関まで来られなくても、そこで用事が果たせるような権能をおろしたいということでございますから、決して自治権の侵害ではないと思いますが、なお自治大臣から答弁があると思います。
  172. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 ただいま総務長官から答えられましたとおり、沖繩に設けられます総合事務所、これも、本来国の行なうべき事務について、各個ばらばらに行なうよりも、総合的に推進していくという効果的なことをねらいましてつくられるものでございまして、沖繩県並びに沖繩県の市町村の行ないます権限を侵害するものでないと思いますので、自治権の侵害は行なわれないと考えております。
  173. 細谷治嘉

    細谷委員 自治大臣もずいぶん苦しい答弁だと思うのですよ。この法律案を見ますと、先ほど来議論しておりました計画、そういうものは、原案を沖繩県知事がつくって内閣総理大臣提出する、内閣総理大臣は、振興開発計画を決定したときはこれを沖繩県知事に通知する、そして内閣総理大臣は何をやるかといいますと、開発審議会にかける、その開発審議会というのは、沖繩県の人はわずかに三分の一くらいしかおらぬ、こういうことである反面、今度は開発設置法のほうを見ますと、この総合事務所は何をやるかといいますと、沖繩振興開発計画の作成及びその作成のため必要な調査を行なうというのですから、膨大なあれができるのですね。一室五部ですか、言ってみますと、この総合事務所というのは、各ブロックにあります地方建設局を握るわけですよ。大蔵省の出先の財務も握るのですよ。農政局も握るのですよ。陸運局も握るのですよ。こういうことであらゆる機能を握った、そしてそれぞれのブロックの、いまの地方建設局なら地方建設局の権限を持つというわけです。その最後の権限というのは上の大臣にあるということでありますけれども、これほど強大な、しかも人数は千八百人ともいわれるし、千百人ともいわれる膨大な機構を持った、でき上がるであろう沖繩県よりもはるかに膨大な機構を持つわけですよ、法律上も。そうなってまいりますと、もはや沖繩県自治権といったって、これはありません。ですから山中さん、どう考えてもあなたのこの部分に関する限りは、ちょっと自治権を守るためにこうしたなんということはさか立ちしている。自治大臣の見解も私は理解できません。  そこで、この問題について少しお尋ねしたい。この問題によく似ているのは北海道開発庁の問題です。せんだって安井委員の予算委員会における質問に対して、また法制局長官が三百代言以下のことをおっしゃった。  そこで法制局長官、昭和二十五年四月にあなたが当時の政府委員をしているときに、北海道開発法をつくるとき、その機関の一つとして、このあとでできたわけですけれども、これは憲法九十五条の適用を受けない、こういうことをおっしゃった。その理由は何かというと、北海道というのは地名にすぎないのだ、ですから九十五条の適用を受ける必要はない、こう言っておるんですね。それから東京都の場合の建設局のときには、これはかけておる。おっしゃるところは、地方自治体が対象であって、その組織、運営と機能に関係を持たないのだから、憲法九十五条の適用をせぬでいいのだと、こういうことに尽きる。そしてずっと歴史的に調べますと、さすがに三百代言といわれる法制局長官、あちこちで年とともに矛盾が起こっちゃっている。こういうことだと思うのですよ。  そこで、私はお尋ねしたいのでありますけれども、法制局長官、北海道開発庁が北海道開発法に基づいてできたときに、あなたは、組織、運営に関係ないと言った。ところが、その翌年改正しているわけですね。当時、この法律ができたときに、九十五条を適用すべきかどうかという議論があったときには、北海道開発庁に出先は置かれなかった。そしてその第六条に、計画はやるけれども、その事業実施というのは北海道知事にまかせるんだ、こういう条文がちゃんとあったんですよ。ところが、その翌年に、たった一年しかたたない翌二十六年になりますと、その六条を削除してしまって、そして新たに十二条と十四条が設けられて、みごとに計画とそれから事業も全部北海道開発庁の出先の開発局がやることになったんですね。この経過を見ますと、北海道庁の知事の組織の運営と、これでも機能、権限に関係ないとおっしゃるのですか、どうですか。
  174. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 私も政府委員六十回ばかりやらしていただいておりますので、その間いろいろなことを申し上げておりますが、私の感ずる限り矛盾したことを申し上げたことはまずないと思っております。  ただいまの御質疑でありますが、昭和二十五年のことのようでありますが、北海道開発法というのが当時確かにございまして、それが憲法九十五条の特別法ではないかという質疑を受けたことがございます。それについては、まず第一に、北海道の開発というのは国の事務である。これがなるほど北海道という地域について適用される法律ではあるけれども、要するに地方公共団体という、北海道としての地方公共団体に適用される法律というものとは違う。要するに九十五条は、条文をごらんになるとわかりますが、一の地方公共団体のみに適用される特別法、特別法の対象が地方公共団体そのものであるわけです。したがって、勢い地方公共団体の組織、権能、運営に関するものであるということになるわけです。  ところで御疑問の所在は、おそらく知事を使ったり——使ったりというと語弊がありますが、知事にその事務の委任をしたり委任をしなかったりする場合のことについてのお話かと思いますが、それは国の事務の執行について、ある場合には知事にお願いをし、あるいは国が直接に行なうということはよくあることでありまして、そのために、その法律地方特別法になったりならなかったりということにはならないわけであります。その本体の理由は、まさに九十五条が適用の対象としているのは、自治体としての地方公共団体そのもの、したがって、その組織、運営、権能に関するものであるということからくる結論でございます。
  175. 細谷治嘉

    細谷委員 これはせんだっても指摘されましたし、あるいは参議院の当時の議事録からいっても、私は百歩譲って、二十五年に出された法律は、これは北海道の知事に、計画された事業というのは全部委任する、こういう形をとっておったんですが、一年過ぎました翌年には、事業は全部北海道に設けられた出先の開発局にやらせる、こういうことになってまいりますと、これは北海道の組織と運営、あるいは権限に決定的な影響を与えてくるわけですね。これをしもそれは憲法九十五条の適用にならないんだというのは、ちょうどある場合には、東京都については九十五条の対象だと言った、ある場合には都というのは一つじゃなくて一般のものなんだという理屈で、その場でごまかしていくというやり方だと私は思うのですよ。この北海道開発法の法律を変えたいきさつというものも、当時の記録を見ますと、たいへんいろいろなことが指摘されておりますよ。いろいろ当時の、阿部真之助さんは、かたちんばの北海着開発ということで、私がいま申し上げていることを昭和三十年の六月十一日の新聞できびしく指摘しておりますよ。  安井委員が指摘したように、今回のこの沖繩の総合事務所というのは、北海道開発局が持っておるような農林とか建設省とか、あるいはそういうものでなくて、もっとあらゆる広範な権限を持っておるわけでありますから、沖繩県の組織と運営、市町村の組織と運営に影響することはもう間違いない。ですから、あなたもこの間言ったように、これは国会がきめるべきだ、九十五条をかけるかどうかきめるべきだとおっしゃっておるのですが、この法律は、やはりできるであろう沖繩県にとってはたいへんな問題である、圧倒されちゃうのでありますから。自治権の侵害でありますから。これはひとつ九十五条を適用すべきではないか。と同時に、この案というものは、やはりもっと下から盛り上がったものでなくてはいかぬのでありますから、総理大臣が県知事に通知するなんという一方交通ではなくて、ある意味では、沖繩県知事に拒否権的なものを与えるくらいのものでなければならないのじゃないか。それが、先ほど総理も答えておりましたが、現地の意向というのは重要なんだ、こうおっしゃっておりましたから、単に通知するだけじゃなくて、九十五条を適用すると同時に、この住民の意向というのは十分織り込まれた形で、一方的な通知じゃなくて、場合によっては沖繩の県知事がそれについて拒否できるぐらいのことをしておく必要があるのではないかと思うのでありますが、いかがですか。
  176. 山中貞則

    ○山中国務大臣 いまの問題は、これは沖繩のために本土がなさなければならない数多くの仕事について、集約的に現地でこれを効率的にやろう、あるいは許認可業務等はサービス業務を現地で処理しようというだけでございます。沖繩県知事が本来行なう権利を奪っておるものはございませんし、沖繩県知事が、たとえば全額国でやってほしいと要望した道路やその他については、やはり県知事の申請を待って初めてそれを受け付けることにしておりますし、その他港湾等も管理者が申し出た場合にそれをやることになっております。また、それらの背景を含めての出先事務局でございますから、それが沖繩県の自治を侵害するものでもありませんし、したがって、憲法九十五条によるものも、住民投票も、私としては必要のないものと思っておりますし、現に琉球政府自体も、沖繩の出先に総合事務局をつくることについて合意を見ておるわけであります。
  177. 細谷治嘉

    細谷委員 これは高辻さんの答弁要りませんよ。要りませんけれども、私は、この開発庁というのは、重大な自治権の侵害になることはほぼ確実と思うのです。それだけに、問題が重要なだけに、この開発設置法あるいは私が冒頭申し上げたように、振興開発法とそれから金融公庫法とわざわざ三本にしたというのは、これは開発そのものよりも、沖繩をもっと中央直轄のものに実質的にしようという意図からわざわざ開発三法がつくられたのではないか、こういうふうに私は思うのですよ。ですから、これは最終的には国会がきめることでありますが、ひとつ総務長官、考えを改めて、九十五条による住民投票を行なうようにすべきだと思うのでありますが、重ねて答弁を願います。
  178. 山中貞則

    ○山中国務大臣 あなたのいままでの御質問を私は総合事務局の話だと思ったのですが、開発庁とおっしゃると、野党三党でおつくりになったただいまの提案されましたものの中にも、「(沖繩開発庁)第八条 沖繩開発に関する施策を総合的かつ積極的に推進するため、別に法律で定めるところにより、総理府の外局として、沖繩開発庁設置するものとする。」これは、あなたの提案された法律であります。したがって、開発庁の議論じゃないわけでしょう。出先の総合事務局の機構というものだと私は思うのです。そうでないと、話が合いませんから。したがって、先ほど来私が説明しておりますように、もっぱら沖繩県民のために出先をつくるのであって、そのために沖繩県知事、市町村長というものの、本来本土ならば持っておるべき権限がいささかも侵されていないということを申し上げたいのであります。
  179. 細谷治嘉

    細谷委員 いま私どものほうは、同じ名前の沖繩開発庁というのをつくっておりますが、政府考えと同じものじゃありません。名前は同じでありますけれども、内容は違うのですよ。金融公庫も名前は同じでありますが、内容は違うのです。ですから、あらためて法律を出せと言っているのですよ、つけ加えてです。しかし、もう時間もありませんから、最後になりますけれども、財政問題でひとつお尋ねしたい。  自治大臣にお尋ねしたいのでありますけれども、山中長官が、十分の十なんという補助をやっているのを自画自賛しておりますけれども、地方がやる仕事を十分の十の補助をもらってやるということはよろしいと思うのですが、自治権上、自治上よろしくないと思うのですが、その辺いかがですか。
  180. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これはまた異なおしかりを受けるものであります。沖繩県財政の現況、さらにまた沖繩をすみやかに本土並みにするということは、これは衆議院与野党一致した意見でありますから、財政的には、できるならば全部法令の制限を排除して、十分の十の補助をして差し上げたいという気持が一ぱいでございますが、しかしながらそれも限度のあることでございますので、十分の十が全部というわけにまいりませんが、なるべく沖繩県に負担のかからないように、補助率を国が大幅に引き上げていくということは、どうしても私は沖繩のために必要なことだと思いますので、そのことと自治権の問題とは関係ない。すなわち十割の補助をしたから、国がそこにつくっちゃいかぬとか、あるいはそれは認めぬとかということをいうわけではないのでありまして、県の行なう事業について、それについての補助を十分の十やるということでありますから、その点はお互いに好意的な立場で考えていただきたいと思います。
  181. 細谷治嘉

    細谷委員 私は総務長官に聞いていたんじゃないけれども、大体国民が納める税金の七割は国が取った。そして自分で使うのはその半分くらいしか使わぬで、そしてあとの半分というものは補助金と——あるいは地方交付税もありますけれども、そういうものによって、補助金によって、地方自治あるいは自治権というものは漸次侵害されつつあるということは、これはまぎれもない事実だと思うのですよ。その辺の議論はまたやっていると平行線になっちゃうから……。  そこで問題は、地方がなぜ補助金を当てにするかというのは、補助率を上げてくれというのは、自主財源がないからですよ。自主財源を与えておいてやれば、補助金を上げてくれなんて言わぬわけです。ですから、税金の七対三というのがおかしいのですよ。これから改めなければなりませんけれども、沖繩の場合にも、補助率だけ上げてやったから万事足れりということじゃなくて、それの裏づけにすべき、あるいは沖繩独自で推進すべき単独事業についての財源を与えてやらなければだめですよということを私は考えているわけですよ。自治大臣、同感でしょう。一言言ってください。
  182. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 沖繩本土との格差を一日も早く縮める、また、積極的に沖繩の特殊性を生かして産業振興開発をする。そのために沖繩特別の国庫補助負担金の特例を設けて、これをかさ上げして支出をするということをいま総務長官申されたとおりでございますが、それと同時に、いま申されましたように、自由な判断で処理することのできる一般地方財源も充実してやらなければならない、このことはいま申されたとおりでございます。また、そのように処置いたしたいと考えております。
  183. 細谷治嘉

    細谷委員 そこで、時間がありませんから、自主財源の問題について、今日の税、財政の国、地方の間の配分状況からいきますと、地方交付税という問題が出てくるわけです。新聞で承ったところによりますと、来年度の予算に関連して、総理府総務長官と自治大臣との間に見解の差があるということを私は言わざるを得ないと思うのであります。この間の調整はできましたか。
  184. 山中貞則

    ○山中国務大臣 これは見解の差がございます。しかしながら、これは予算編成の際においては完全に両者一致し、あるいは大蔵省も含めて最終的にきめなければならないことだと思います。その意見が一致しておらないまま予算要求をしました唯一の例が、自治省の交付税のあり方でありますけれども、私の考え方としては、やはり沖繩県本土の一県と同じように、国税を納める金額は多かろうと少なかろうと、やはり本来の交付税の算定方式によった交付税というものは、沖繩は当然の財源として付与さるべきであるという考え方でございます。  しかしながら、自治省としては、来年度の地方財政の問題等も背景にはあると思いますが、沖繩の本来納めておる国税の酒税、法人税、さらに所得税の三税の三二%分ではごくわずかな数字しか出てこない。したがって、これを一年間に一〇%ずつ沖繩のほうへ組み入れていくことによって、十年目——九年かかって十年目に本土の各県並みの交付税方式にしたい、こういう意見であります。したがって、いずれも善意から出たものではございますが、これは地方財政の困窮の問題とは別に、やはり沖繩に対してあるべき交付税の方式はどちらが正しいのかということは、今後予算編成までに詰めてまいりたいと考えております。
  185. 細谷治嘉

    細谷委員 調整するということでありますが、その前に自治省から大蔵省に出た中においても、沖繩に二十六年間の集積したたいへんなものがあるわけですね。たとえば今度移ってくるにあたって、特殊職員なり超過職員の給与の問題とか、税制上の特別措置による問題とか、あるいは特別会計の繰り出し金とか、あるいはつぶれ地については借料も払っておらぬし、土地も買ってないまま道をつくったり学校を建てたりしておる。やむにやまれない形でずっと過去の赤字、地方債が山積しておる。そういうものについては総務長官、責任を持ちますか。それでなければ、沖繩は、これは帰ってきてもいいこと何もありませんよ。まずそういうどうにもならないもの——学校を建てる、道をつくるには、市町村でも県でも金を払わぬで道だけつくっておるのですよ。そこまで追い込まれているのですから、そういう過去のものについては、これは特別なものとして、全額これは調査費も含めて見てやらなければいかぬ。これはそのとおり、いいですか。
  186. 山中貞則

    ○山中国務大臣 予算のことでございますから、最終的にはそういうふうにしたいと思いますが、ただいまの時点では、御発言のとおりに処理したいと考えております。
  187. 細谷治嘉

    細谷委員 大蔵大臣、これはやはり金が決定的に沖繩に影響があるのですから、そのとおりやりたいというのですが、大蔵大臣いかがですか。
  188. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 来年度の予算編成の過程で、沖繩の問題はいろいろこの際片づけなければならぬ問題がたくさんあると思います。しかし、本土復帰するということでございますから、やはり本土の各府県並みの取り扱いをするという原則で、いろいろ懸案になっている問題を片づけることが私はやはり一番いい筋だと思っております。いま総務長官から言われましたが、沖繩にとってみますというと、行政水準格差がある、この格差を解消しなければならぬとか、あるいは特別開発振興の事業を促進しなければならぬ、そういうもののために財政需要というものは特別に多い、これはわかります。もし多いとするなら、これに対応する方法としては、基準財政需要を算定する場合において、いろいろ地方の特殊性に応じてこれを補正する方式というものも現在ございますし、それによっても捕捉できない需要が残されるというようなことでしたら、特別交付税制度というものもできておる。しかも、今回の場合は法律によって非常にかさ上げした高率の補助金もきめるということでございますから、そういうようなものをみんな動員して、沖繩の実情に沿うようにするということにしますれば、やはり現存内地の各府県に適用されている普通交付税制度というようなものの中へ沖繩を入れて解決するのがいいので、そのワク外に出していろいろの解決をするということは、私は方法としてはぐあいが悪いというふうに思いますので、予算編成の過程においては、そういう原則問題から始めて、合理的な解決を必ずしたいと考えております。
  189. 細谷治嘉

    細谷委員 私の質問について答えなかったのですけれども、総務長官、大蔵大臣は普通の制度に乗っているものと考えているのですよ。乗ってないですよ。学校をつくるには、琉政は金がないか一市町村に出せといって高等学校もつくらして、金は払わぬ。地主には借料も払っておらぬ。その額においては二束三文の借料でありますけれども、アメリカが払っておったのですよ。今度は肩がわりさしたけれども。市町村は払ってないのですよ、住民に。それほど貧困だったのですから。そういうことでありますから、それはきちんと整理をしてやらなければいかぬ。  この問題について、特に自治省から大蔵省に要求されましたつぶれ地等の内容で、残念ながら自治省の通癖でつかみにくかったんでしょう、県のことについてはわりあいに正確に調べていますけれども、市町村の実態については、私がつかんでいる数字とまるっきり違うんですよ。ですから、やはり市町村が学校をつくったり道路をつくったり河川をつくったりした場合を的確に調査をさして、的確なやはり大きなそういうものについて埋めてやらなければならぬのじゃないか、こう思いますから、これはひとつ総務長官、自治大臣、特に配慮していただきたい。  そこで、いま大蔵大臣が言った点なんですが、私は自治大臣を前に置いて恐縮でありますが、自治大臣はどうも来年度の地方財政危機だということ、危機感にあおられて、先ほど山中長官が人の分まで説明した、一部交付税に持っていったということは、自治省の、来年度の地方財政危機から反映する切迫感から、ああいう案が出たんだと思うのでありますけれども、私は筋としては総務長官の考え、特殊な経費についてはそれは特別に全部見てやりなさい、その上に立って大蔵大臣が言ったように、今日の日本地方制度の中に乗せていくべきである、これはもう私はそう思うのです。この点については、ひとつ自治省は、追い詰められておる今日の地方財政からああいう考えが出たのだと思うのでありますけれども、きちんと仕分けすべきじゃないか。  そこで山中長官、そういうことであるならば、大蔵大臣が言ったように、私が計算したところでは、本土並みに移ったと仮定した場合に、五年後ですよ、大体沖繩県から納まるであろう国税三税というのは、交付税に計算いたしますと、三二%かけますと、大体五十六億円くらいしかないのですよ。それが経過措置でいきますからそうはならぬわけですね。そうなってまいりますと、山中総務長官、あなたの考えを押し通すためには、五百億とか六百億という交付税をやらなければならぬわけですよ。幾らになるかわかりませんけれども、少なくとも私は六百億円をこすのではないかと思う。そういうものをやりますと、いま本土の、沖繩がない本土の制度できた交付税率三二%というのは、重要な基準財政需要額の変動というのが起こってくるわけですから、国の財政がどうあろうと、地方交付税率の三二%というのは前提が狂ったのでありますから、交付税法に基づいて、交付税率を変えなければならぬというのがあなたの方針から出る結論ですよ。どう思いますか。
  190. 山中貞則

    ○山中国務大臣 私は、そこまでは申しておりません。沖繩についてもやはり正常な交付税の算定要領による交付税を交付すべきである、そして、その他沖繩の特殊事情に関するもろもろの交付金というものは別ワクで、また、これは私のほうの予算になると思いますが、支出をしなければならないものが一ぱいあるということを言っているわけであります。沖繩に対してかりに五百億をちょっとこす数字が出るか、あるいは四百六十億になるかわかりませんが、そういうものが計算して自動的にかりに出たとしても、そのことによって、それはなるほど来年の地方財政の実情からいえば、全体的にほかの府県にも、それだけ迷惑をかけることになるかもしれません。国税を納める率が少ないわけでありますから。しかしながら、交付税の思想というものは、一番貢献しているはずの東京あるいは大阪、神奈川、愛知というような県には交付していない。いわゆる不交付団体として最も貢献しておる、税を納めているものに交付してないということは、そういうところはがまんをしてもらって、貧乏なところの県に傾斜配分をしようというのが思想でありますから、沖繩が国税をどれだけわずか納めようと、沖繩にはきちんと交付税は出してもらいたい、そしてその他の需要について、沖繩のために格別の配慮するところがなければならぬ、こういうことを言っておるわけであります。したがって、そのことによって三二%が窮屈であるかないか、それは国の財政全般との問題で議論さるべきことでありますから、私は、三二%を三三にすればちょうど沖繩にやる分だけ出るじゃないか、そういうようなことを計算して言っているわけではありません。
  191. 渡海元三郎

    ○渡海国務大臣 沖繩に対しまして、国庫補助負担金の特例を設けて、多額の補助を行なうだけでは十分でない。沖繩本土との格差を是正し、あるいは振興開発をやるために、沖繩の特殊な財政需要というものを見積もって、それだけの一般財源を与えなければならない。この点におきましては、総務長官と私の意見は完全に一致しております。ただ、その一般財源の措置の方法につきまして意見が分かれておる。これは、予算の編成の過程において調整する、私たちも関係省庁とやりたい、こう考えております。いま、交付税法に当然措置すべきであるとわれわれも考え、本則として交付税法に組み入れることを考えております。  ただ、いま来年度の財政の危機感から、これをはずすのはどうかと思うという細谷さんの御意見でございましたが、ただそれだけではございません。現在の沖繩の町村あるいは県、非常に行政の姿が変わっております。いま、複雑なあの交付税法の単位計算をそのまま持っていくことは困難でございますから、むしろこれとは別に、沖繩の必要とするところの地方一般財源を、沖繩だけを積み上げての制度をつくって、暫定期間の十年間かかって、徐々に行政水準の上がってくるのと同時に交付税法に持っていく。そのための暫定期間の十年間は、沖繩臨時特別交付税という形でつくってはどうかというのが私たちの意見でございます。いま細谷さん、沖繩には相当多額の交付税が要るであろう、そのためには交付税率を引き上げねばならぬだろうと言われたのは当然のことでございますが、来年度の予算編成の概貌を見ました場合に、現在、昨年度より二〇%増しの予算要求をいたしておりますが、これだけ、現在の経済の見通しからでは、はたして入り得るかどうか。国税三税の収入の状態で、まだ見通しは十分でございませんが、おそらく率の引き上げ等も考えなければならないような状態でないかと思います。こういうふうな状態考えあわせますときに、むしろ方法論としても実際の具体的な案としても、私たちの考えております十カ年間の仮定措置をもって、円滑に行なっていくことが、沖繩のためにも、また沖繩を除く本土の各府県のためにもよいのではないか、このように考え、予算折衝をいたす覚悟でおります。そのような状態でございます。
  192. 細谷治嘉

    細谷委員 最後に、総理に、沖繩の税財政問題というのは容易ならぬことでありますが、やはり国の絶大なる協力を得て、沖繩の方々の生活なり経済というのを復興し振興しなければならぬ。その場合の一つの重要な問題点というのが、自主財源をいかにして与えるか、こういうことです。私がかつて、前の前の通常国会で山中長官に、沖繩が返ってきた場合には、交付税率を引き上げることが必要ではないか、こう申し上げたところが、総務長官は、日本の制度の中に乗ればよろしいのだ、もしそれで足らなければ、交付税率の引き上げというのが必然的に起こってくるのだ、こういうふうに答弁をいただいております。きょうのところは、その最後の重要なところをぼかしておりますけれども、いま大蔵大臣も、全体の制度の中で変えるべきである、交付税法六条の三には、著しい基準財政需要額の変動等があった場合には、交付税率を変えるということまで書いてあるのですから、著しいというのは何かといいますと、一般的な解釈は百億円をこした場合とこう言われております。でありますから、これはひとつ総理においても十分な調整をしていただいて、沖繩県民にこたえるように強く要望しておきたいと思います。  このことについて、総理から前向きの答弁をいただければ、私の質問をこれで終わります。
  193. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御意見は、私は沖繩にとりましてはたいへんな問題だと思いますし、また、沖繩県皆さん方も、細谷君がそれを代弁しておられる、こういうような気持ちで先ほど来熱弁をふるわれた、かように思います。  しかし、国の交付税率、これを一%上げるとかこれをいじるということは、これまたたいへんな問題でございます。そう簡単にこれはすぐいじられる、こういうようなわけにはまいらぬと私は思っております。この辺は、大蔵大臣の苦心の存するところでもありますが、交付税率をいじるということでなしに、とにかく現行のもとにおいて、自主財源あるいはまたみずから使い得るような、また振興策に寄与するようなそういう財源を見つける、こういうことについては私もやぶさかでございませんけれども、ただいま言われるように、交付税率でこれをまかなうのだ、こういうことは、前向きにしろちょっと今日の段階では無理のように私は思いますので、それはひとつ前向きにしないことにお許しを得たいと思います。
  194. 床次徳二

    床次委員長 次回は、明十三日午前十時から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十三分散会