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1971-10-07 第66回国会 参議院 法務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月七日(木曜日)    午前十時二十八分開会     —————————————    委員の異動  七月二十四日     辞任         補欠選任      林田悠紀夫君     長谷川 仁君  七月二十六日     辞任         補欠選任      長谷川 仁君     林田悠紀夫君  八月三日     辞任         補欠選任      林田悠紀夫君     重宗 雄三君      星野 重次君     増原 恵吉君  八月九日     辞任         補欠選任      岩動 道行君     星野 重次君      増原 恵吉君     林田悠紀夫君  九月一日     辞任         補欠選任      羽生 三七君     野々山一三君  九月二日     辞任         補欠選任      野々山一三君     羽生 三七君  九月二十八日     辞任         補欠選任      中村 禎二君     平泉  渉君  十月五日     辞任         補欠選任      星野 重次君     岩動 道行君      平泉  渉君     中村 禎二君  十月六日     辞任         補欠選任      重宗 雄三君     星野 重次君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         阿部 憲一君     理 事                 原 文兵衛君                 佐野 芳雄君     委 員                 岩動 道行君                 木島 義夫君                 林田悠紀夫君                 星野 重次君                 佐々木静子君                 藤原 道子君                 松下 正寿君    国務大臣        法 務 大 臣  前尾繁三郎君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局総務局長   長井  澄君        最高裁判所事務        総局人事局長   矢口 洪一君        最高裁判所事務        総局家庭局長   外山 四郎君    事務局側        常任委員会専門        員        二見 次夫君    説明員        法務省民事局第        一課長      住吉 君彦君    参考人        日本弁護士連合        会・司法独立        に関する委員会        副委員長     堂野 達也君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○検察及び裁判運営等に関する調査  (司法権独立その他当面の司法問題に関する  件)  (少年法改正に関する件)     —————————————
  2. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  まず理事選任を行ないます。  前回委員会におきまして、欠員中の理事一名につきましては、その指名委員長に一任されておりますので、これより理事指名を行ないます。原文兵衛君を理事指名いたします。     —————————————
  3. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  検察及び裁判運営等に関する調査中、司法権独立その他当面の司法問題に関する件について、本日、日本弁護士連合会司法独立に関する委員会委員長堂野達也君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 検察及び裁判運営等に関する調査議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  6. 佐々木静子

    佐々木静子君 法務大臣に先にお尋ねさしていただきます。  去る七月二十四日の当法務委員会におきまして少し触れさせていただいた点でございますが、昭和四十五年五月十三日、参議院の法務委員会において、「今後、司法制度改正にあたっては、法曹三者の意見を一致させて実施するように努めなければならない。」との附帯決議がなされておりますことはもちろん十分御承知済みのことでございます。この附帯決議実現のために三者協議の上意見の一致をはかる方法として、法務大臣として具体的にどのような方法をもつて三者協議をお進めになっておられますか、その点を承りたいと思います。
  7. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 法曹三者がお互いに協力していかなければならぬことは、もう申すまでもないことであります。したがいまして、この御決議趣旨は当然われわれといたしましても実施に移したいというような考えから、法務省では二月十七日に日弁連会長に対しまして、法曹三者間の諸問題について三者の間に懇談を行なうということを提起いたしたわけであります。また本年六月二十四日、最高裁判所からの法曹界の当面する諸問題を随時取り上げて三者協議を行ないたいという申し入れに対しまして、直ちにその趣旨に賛同をいたす旨の回答をいたしたわけであります。  実は、私就任以来、何とか早くこの三者協議を開催したいというふうに考えておりましたが、多少感情的な面もあるやにうかがわれますので、極力感情的な対立のないようにと、そういう意味で、そういうバックグラウンドをつくらなければならないというので、私もたびたび最高裁長官あるいは日弁連会長と会食いたしましたり、鋭意その方面に努力しておるわけなんです。私は間もなしにそういう懇談会が開かれるというふうに考えております。
  8. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういたしますと、法務大臣としましてもできるだけ三者協議実現のために鋭意万難を排して努力していただく、そして最高裁あるいは弁護士会意見も十分に尊重していただいた上で法曹に関する問題をきめていくという御方針は間違いないわけでございますね。
  9. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 極力それにつとめておるわけであります。
  10. 佐々木静子

    佐々木静子君 このことにつきまして最高裁判所のどなたかにお伺いいたしたいと思うのでございますが、総務局長、ちょっと私から申し上げますと、これも前回法務委員会最高裁判所長官代理者として、この三者協議について話を煮詰めて、そしてこの三者の協議が円滑に行なわれるように、その場をつくりたい、鋭意努力中との御答弁をいただいているのでございますが、その後どのようにこの実現方法を進めておられるか、これ、裁判所の側についての御発言をお願いいたしたいと思います。
  11. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) 前回委員会でも御説明申し上げましたけれども裁判所といたしましては、昨年の暮れから三者の協議の場を持ちたいということで寄り寄りお話を願っておりましたわけでございますが、それが一応中絶いたしましたので、今年の六月二十四日に、最高裁判所事務総長から、法務事務次官及び日本弁護士連合会事務総長に対しまして、三者協議を早急に行ないたいと思うので御意見を承りたい、という書面を差し上げました。内容は、議題、目的、出席者等にわたっておりますが、それは省略させていただきます。これに対しまして、同じ六月の三十日に、法務事務次官から、三者協議について照会のあった件については、その趣旨に賛同します、ということで、三者協議開催についての、私のほうの最高裁判所事務総長としての照会に対して積極の御返事をいただきました。弁護士会のほうでも、この問題につきまして内々検討を進めておられるようでございまして、私的な問い合わせなども二、三ございましたけれども目下検討を続けておられるようでございまして、まだ日弁連事務総長からの御回答をいただく段階には至っていないというのがその後の経過でございます。
  12. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういたしますと、最高裁としては、これからは三者協議実現のために、万難を排してその実現に努力していただける。そして法務省並びに日本弁護士連合会意見も十分に尊重して事を進め、司法制度に関する問題を進めていくという、こういう御方針は変わりないわけでございますね。
  13. 長井澄

    最高裁判所長官代理者長井澄君) 再三申し上げておりますように、三者の協議を円滑に進められるように努力し、そのような日が一日も早くくることを念願しておるわけでございます。
  14. 佐々木静子

    佐々木静子君 この件につきまして、日本弁護士連合会のほうからの御意見を承りたいと思います。堂野参考人に御意見を求めます。
  15. 堂野達也

    参考人堂野達也君) その問題に入る前提として、日弁連最高裁あるいは法務省との関係につきまして、一応お聞き取り願いたいと思うのでございます。  御承知かと思いますが、弁護士会は、たしか昭和四十一年以来裁判所弁護士連絡会議というものを設けていたのでございます。その席におきまして、いろいろ裁判所弁護士会間におきまして、司法制度に関するいろんな問題を討議しようじゃないかということで始まったのでございます。ところが、この協議におきましては、いろいろないきさつはございましたけれども、昨年国会を通過いたしました簡易裁判所事物管轄の拡張と、この問題におきまして、弁護士会から申し上げますならば、法務省なり、あるいは最高裁判所は、弁護士会のいろいろな理由ある反対に対して、それを無視して強行されたというようなことから、弁護士会といたしまして非常に遺憾に思っておりますと同時に、いま法務省なり、あるいは最高裁判所がおっしゃるように、単に法曹三者の会議を持てばいいと、そういうような段階ではないと思うのでございます。日弁連といたしましては、御承知のとおり弁護士法弁護士に対して社会正義実現、人権の擁護という大きな使命を課しておるのでございます。私どもは、そういう意味におきまして、弁護士在野人でありますけれども司法運営の一部を担当する者という大きな資格を持って司法の問題には当たっているつもりでございます。そういう意味でございますから、そういう協議が聞かれましても、われわれ在野意見というものを十分に尊重していただかなければ意味がないのじゃないかという考えでございます。この法曹三者の問題にいたしましても、先ほど申し上げましたとおり、連絡協議、つまり最高裁日弁連との間においては従来パイプがございました。ところが、いま申し上げました簡裁事物管轄通過の際に国会皆さん方附帯決議として、将来司法改正に関する問題については法曹三者が十分意見が一致するようにつとめよという附帯決議をされているのでございます。私どもはその趣旨におきましても最高裁法務省におきまして、弁護士会意見というものを尊重してもらいたい。そしてまたさらに強く申し上げますならば、司法の部内におきまして直接国民と接して国民の息吹きを制度の上に反映させるものはわれわれじゃないかというような理由弁護士会としては持っているわけでございます。そういう意味で、私どもが申し上げることは、国民としての大きな希望要望というものをくんでいると考えているのであります。  従来、弁護士会は何でも法務省とかあるいは裁判所の行なおうとすることに対して反対するんじゃないか、こういう意見をよくお聞きするのでございますけれども、私どもは決して反対するための反対をしているのではございません。私どもの強いそういう趣旨国民の意向というものを取り入れていただきたい、これが私どもの強い希望でございます。ただいま長井総務局長からお話ございましたように、本年六月二十四日、法曹三者の協議をやろうじゃないかという御提案は確かに日弁連へきているようでございます。これは先ほど申し上げました裁判所弁護士連絡会議の昨年十二月十八日の席上におきまして裁判所から御提案になりましたものであり、ただ、私ども考えといたしましては、三者の協議を開くということ自体に対して何人も反対しているわけではありません。ただそれが先ほど申し上げました国会の、法曹三者が意見が一致するようにつとめよという、単なる形式的な材料になるような法曹三者の協議というものに対してわれわれとしては十分に考えなきゃならぬ、こういう立場でものを考えているわけでございます。そこにおきましてこの法曹三者の協議の御提案に対して弁護士会といたしましてもいろいろ検討いたしております。ただ単にそれでは開こうじゃないかというような安易な姿で法曹者協議というものは持てないんじゃないか。それはいま申し上げましたところの簡裁事物管轄のときに弁護士会が経験したように、単に協議をした、おまえたちが聞かなければわれわれはやるんだ、そういうことじゃ困る。そういう意味で、最初に三者協議に入る前に三者協議としてのいろんなルールをきめようじゃないか。それには私どもの言ういろんな意見を十分お聞き願って、そしておっしゃるとおりほんとうに実のあるところの法曹者協議というものを築いていきたいということであります。  これは繰り返し申し上げますけれども、私どもとしては決して反対しているのではございません。けれども、いま申し上げましたような意味で十分な検討をした上でこの三者協議にまあ応ずるようにしたい。まだ実は現在も検討中でございまして、この十六日に日本弁護士連合会理事会がございまして、おそらく、そこにどういう形で、あるいはどういう希望を申し上げてそれに応ずるかいなかということをきめるようになると思っておりますが、おそらく参加することになるだろうと思います。  そういう状態でございます。
  16. 佐々木静子

    佐々木静子君 重ねて法務大臣にお伺いしたいのでございますが、先ほどの最高裁判所あるいは日本弁護士連合会からの御答弁によりまして、法曹三者の協議というものは、単に形式的な協議をしたというだけのことではなくて、実質的にこの三者の意見がどこまでも尊重されていく、最高裁側意見、また国民がふだん接触の最も深い在野法曹意見を、国民主権主義をたてまえとしている憲法下において法務省としても十分に在野法曹意見も尊重していくというお考えであるということを先ほど承ったのでありますけれども、その点について御答弁をお願いいたします。
  17. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 協議をいたしますからにはただ形式的にやったというのでは意味がないことはもう当然のことであります。また、いろいろ最初意見が違っておるようでありますが、お互い立場を十分説明し合うことによって了解も得られる、私はさように確信しております。とにかくお互い不信感を持たずに打ち明けた話をし合う場を早く持つべきである、かように考えておるわけであります。
  18. 佐々木静子

    佐々木静子君 どうもありがとうございました。  それでは今度は別の問題に移りますが、また法務大臣にお伺いいたしたいと思います。これは、最高裁判所長官並びに最高裁判所判事の任免の制度について内閣としてのお考えを伺いたいと思います。  憲法並びに裁判所法によって、最高裁判所長官内閣指名に基づいて天皇がこれを任命する、最高裁判所判事内閣任命することとなっていることは御承知のとおりでございます。ところで、この内閣指名あるいは任命方法については現行法上特に規定が設けられておりません。極端な言い方をしますならば、裁判所で、あるいは法曹界でどのように反対意見が多かったところで、内閣が一方的に十五名の最高裁裁判官をきめ得ることも制度上可能なわけでございます。これは国民司法特に最高裁に対する信頼感を失わせる大きな原因の一つになっているのではないかと思われるわけでございます。  ところで、質問が長くなって恐縮でございますが、この最高裁判所判事指名あるいは任命方法についてさかのぼって考えてみますと、昭和二十二年の四月に、当時の第一次吉田内閣は、裁判官任命諮問委員会規程を閣令第十四号として公布して諮問委員会を設置しております。また、同年の六月には片山内閣が成立し、その十七日裁判官任命諮問委員会規程を政令第八十三号として新たに公布しております。そしてこの規程に基づいて諮問委員会が設置され、委員会は三十名の最高裁裁判官候補者を答申し、内閣は同年八月に右答申に基づいて最高裁判所長官並びに同判事指名あるいは任命しているわけでございます。ところが、その直後この委員会が廃止されており、昭和三十二年の第二十六国会において内閣裁判官任命諮問委員会関係の条項を加えた裁判所法等の一部改正法案提出し、当時の中村法務大臣右提案趣旨を述べておられるわけですが、この法案継続審議となって第二十八国会審議未了となった経過がございます。その後右改正法案提出がなされておらないのでございますが、最高裁判所長官並びに判事指名並びに任命するには、やはりいまのような諮問委員会があったほうが妥当ではないか、こういう委員会を設ける必要があるのではないか。特に、先ほども申し上げましたように、最高裁判所に寄せる国民信頼を回復するためにも、制度的にも国民がもっともだと納得する方法をとることが必要不可欠なことであると考えるのでございますが、国民要望にこたえるために法務大臣として、さきに提案された法改正と同じ趣旨において、諮問委員会設置実現するための法案提出のお考えがおありかどうか、承りたいと思います。
  19. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 最高裁判所判事任命につきましては、ただいまお話しのようないろいろな経緯を経てきております。率直に申し上げまして、もちろん公平を期さなければなりませんが、委員会制度にも一長一短がありまして、まあ実際にやった結果が長続きせずにやめたという理由一つは、おそらく非常に形式的なものになってしまったということで、あることが必ずしも意味がないという点と、もう一つ委員会制度ということになりますと、とかくどうも責任の所在がはっきりしないということでありまして、そういう点から考えますと、はたして人事の問題は委員会によったのがいいかどうか、これには非常な疑問があると思います。したがって、われわれも検討はいたしますが、私はただいまのところ、お話しのような委員会制度を設けるのがいいというような考えは、ただいまのところ持っておりません。
  20. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういたしますと、これは前回の、昭和三十二、三年ごろにおきましては、これは法務省としては、最高裁判所長官及び最高裁判所判事は、憲法にいう最高裁判所裁判官としてその任命国民審査する点についてはもとより従来どおりであるが、内閣がその指名任命を行なうについては特に慎重を期さなければならないために、裁判官検察官、弁護士あるいは学識経験者で組織する裁判官任命諮問委員会に諮問すべきであるという、これは当時の法務大臣提案理由として説明されておられるんでございますが、その当時と比べますと、法務省あるいは内閣において方針が変わってきたというわけでございますか。
  21. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 当時のことを私も記憶がありませんけれども、おそらく継続審査といいますか、法案が成立しなかったという点においては、かなりまた一面非常な反対もあったということだと思います。したがいまして、その後歴代の法務大臣もさような案について検討したり立案をしたことはないように伺っております。
  22. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは先ほどの法務委員会附帯決議というようなこととは全く次元を別にする話なんでございますが、その精神におきましては、法曹三者あるいはその他一般、これは学識経験者と、先ほど法務大臣述べておられるのは、これは世論代表者という意味じゃないかと思うのでございますが、そういう方々の意見を聞いて事を運ぶという点においては、全くその精神において同じことだと思うのであります。そういたしますと、先ほどのこれからの司法制度に関する問題、まあ司法問題に関する件について法務大臣が述べられました基本的なお考えからいきますと、やはりこれは広く法曹三者あるいは一般世論代表者というような人の意見を慎重に聞いた上で、憲法の番人といわれる最高裁裁判官任命していくべきだという姿勢に当然つながると思うんでございますが、大臣のお考え実現する方法として、この諮問委員会を設けるということを特にいまお考えになっておらないとすれば、ほかにどういうことをお考えでございますか。
  23. 前尾繁三郎

    国務大臣前尾繁三郎君) 私は、制度につきましては、これは衆知を集めるべきだと思っております。ただ人事の問題になりますと、これは制度と違いまして、その人をよく知った人という、まあ率直に言えば、任命者が十分知っておることがいいんでありますが、そうはまいりません。したがって、あらゆる方面のいろいろな意見なり、まあ平素からいろいろ人事についてはその周辺の人その他からいろいろの意見を聞いて公平な人事をやるべき問題でありまして、特定の数人の委員に、はかってやったのがはたして公平であるかどうか。ことに委員の中に、全部が御存じのある人もありますし、ない人もある。したがって、むしろそういう意味では、衆知を集めるという意味では、こういう固定した委員会でないほうがむしろいいんじゃないか。まあ私は、ちょっと考えたところではそういうふうな考え方に立って考えておりますので、せっかくのお話でもありますから、十分検討はいたしたいと思います。
  24. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのお考えで十分に検討していただくというようなことで、今後もその線について大いに法務大臣としても御検討いただきたいと思うわけでございます。  日本弁護士連合会のほうにお伺いしたいのでございますが、いま法務大臣に伺っておりましたこの最高裁判所裁判官任命の問題につきまして、日本弁護士連合会はどのような考えをお持ちかお答えいただきた.いと思います。
  25. 堂野達也

    参考人堂野達也君) ただいま御質問最高裁判所裁判官選任問題につきましては、日弁連としては現在いろいろ内部的には意見はございますけれども、ここで日弁連としての意見だといって発表する決定はございません。  ただ、日弁連といたしましては、この際申し上げておきたいのは、やはり最高裁判所裁判官十五名という定員の中におきまして、御承知のとおり従来は裁判官出身者五名、学識経験者五名、弁護士出身者五名と、こういうことが一つ不文律と申しますか、によって選任されてきたわけでございます。現在は弁護士側四人でございまして、裁判官出身者が六人という実情でございます。で、私どもから申し上げますならば、やはり最高裁判所が、最終的な裁判所の見解を表明する機関といたしましては、今日のいわゆる主権在民憲法という立場から申しますならば、やはり弁護士出身者というものを五名、むしろ五名以上入れてもらわなければ実質的な国民の意思というものがそれに反映しないのじゃないかというような憂いを持っておるのであります。いろいろ当面起こっているいろいろな問題にいたしましても、在野弁護士がそこに席を持っておりますならば、おそらくもっと違った形であらわれているのじゃないかというように考えているのでございまして、その問題は私ども一はむしろこの選任方法につきまして、もちろん弁護士会には法曹一元あるいは最高裁判所機構改革問題研究会というような趣旨委員会がございまして、いろいろ研究いたしております。たとえば現在の十五人の裁判官ではますますふえる訴訟事件を処理できないのじゃないかと、そういう意味では憲法裁判所最高裁判所——つまり最終審としての最高裁判所というものと機構を変える方法があるんじゃないかということを検討されたこともありますけれども、それにはまた学問的にいろいろな疑問が生じますので、一応それを公式のものとして発表はされておりません。けれども最高裁判所裁判官選任につきましては、ただいま佐々木先生が言われたように、諮問委員会というようなものをつくっていただくということは、これは弁護士会世論としては申し上げられるのじゃないかと、特に御承知のように、現在の自民党政府が十数年以上継続いたしておりますと、選ばれるところの最高裁判官の人柄といいますか、どうしても、これはそういう意味の傾向の方に片寄る。これはもちろん社会党の大きな責任だと私は思うのでございますけれども、政権が適当に交代していたならば、最高裁判所裁判官も適当な、いろいろな人が選ばれて、ほんとうにその民意ですね、民意が反映する最高裁判所、理想的な最高裁判所ができるんじゃないかというぐあいに考えております。
  26. 佐々木静子

    佐々木静子君 それでは、今度は最高裁判所に別の問題についてお伺いいたしたいと思うんでございます。これは、去る七月二十四日の法務委員会でお尋ねした件で、時間の都合で十分にお伺いできなかった点でございますが、あるいは七月二十四日の前回委員会以降の経過についてお尋ねさしていただきたいと思うことでございます。  さきに、宮本裁判官の再任の再願の書面を最高裁判所が受理しているが、この問題について、現在事務総局においてその処理方法を審議中で、まだ裁判官会議ではこの案件を審議しておらないとのお話でした。その後この案件が最高裁判所裁判官会議に付せられたのかどうか、付せられたとするならば、その日時並びに回数を承りたいと思います。
  27. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 宮本裁判官から五月の末でございますが、判事に採用してほしいという採用願いの提出がございました。その点につきましては、前回総務局長から御答弁申し上げておるのではないかと思います。その際にも申し上げておりますように、その件につきましては、その願い書が出ました際に、このようなものが提出されておりますので、ということを裁判官会議に御報告を申し上げたわけでございますが、その後今日に至りますまで、宮本裁判官判事の留保という問題につきましては、裁判官会議に御報告をすることなく、私、人事局の手元で留保された形になって今日に至っているわけでございます。
  28. 佐々木静子

    佐々木静子君 実は、これは今月の五日付の新聞に宮本裁判官の再任再願が本年の九月八日付で拒否されたという報道がされているんですが、これは事実でございますか。
  29. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) いまお尋ねの問題は別の問題でございまして、先ほど御答弁申し上げました宮本裁判官判事採用願いというものとは法律的には関係がございません。いまお尋ねの問題は、四月十三日に宮本裁判官判事補としての任期が終了いたしまして、いわゆる十年の任期終了により判事の採用、判事任命の名簿に登載されることを求めてきましたのに対しまして、私ども最高裁としては、内閣に送付すべき名簿に宮本裁判官の氏名を登載しなかったわけでございます。そういうふうに登載されなかったことがいけないので、この点を再考してほしいという、いわば行政不服審査法に基づく異議の申し立てでございまして、その異議の申し立てが九月八日付をもって却下されたということでございます。
  30. 佐々木静子

    佐々木静子君 これはいま申し上げました十月五日の読売新聞でございますが、そうしますと、これは異議の申し立てを却下されたということで、いまお話の名簿に登載されなかったという点についての再任再願に対する要望については、まだ何もきまっておらないわけでございますか。
  31. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) すでに名簿に登載されなかったという事実についての異議申し立てがあり、それに対してそのような登載されなかったということについての、いわば不服の申し立てば認められないという決定をいたしましたが、宮本裁判官としてはその後五月の下旬にあらためて判事採用願いというのを出しておられまして、その判事採用願いについては、まだどのような結論も出されていないということでございます。
  32. 佐々木静子

    佐々木静子君 その点はいまのお話でわかりましたが、そうすると、裁判官会議には事務総局とするとお出しになったけれども、まだ結論が出いないというわけでございますか。
  33. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 一般的に、これは弁護士さんその他も同様でございますが、裁判官の資格を持っておられる方が任官したいという御希望がございますと、口頭でそういう御希望をお伝えいただく場合もございますし、採用願いというものをお出しいただく場合もございます。そういうものをお出しになりますと、その具体的な案件によりまして適当な事務的な処理の方法をもちまして事務的な決定をいたし、それによりまして裁判官会議に御報告し、あるいは正式議案としておはかりを申し上げるものでございますが、宮本裁判官の場合は非常に世間の問題になっておることでもございますので、そのような採用願いが出たということを裁判官会議で御報告申し上げましたが、これは別に正式な案件としておかけしたという趣旨のものではございません。現段階としてはそういう御報告をした段階でとどまっているわけでございまして、いずれもそれ以上事務的な手続を進めているわけではないというわけでございます。
  34. 佐々木静子

    佐々木静子君 そういたしますと、宮本裁判官の再任の問題について、これは裁判官会議には御報告ということだとしますと、この件についての決定はそうすると事務総局でなさるというわけでございますか。
  35. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 事務的な取りまとめをいたしまして、最終的な最高裁判所の決定ということは、もちろん裁判官会議でおきめいただくわけでございます。
  36. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御答弁で、人事局長在り事務総局でおきめになって、単に裁判官会議に御報告するだけだというふうに前回お話になって、いまは、次の御答弁では裁判官会議で最終的にきめるというふうにおっしゃって、私伺っていますと非常に話が矛盾しているように思うのでございますが、もう一度お伺いしますが、結局きめる主体はだれなんでございますか。
  37. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 正確に申し上げますと、裁判官会議裁判官の採用につきましては、名簿を提出するかどうかということをおきめいただくわけでございます。おきめいただくにあたりまして議案を整理させていただきますのは私どもでございまして、その結果、長官裁判官会議に正式議題をお出しになりまして、それによって決定をいただくということでございます。通常はそういった願い書が出ましたような段階ではいまだ裁判官会議に御報告すらいたさないわけでございますが、特殊な案件でございますので、こういうものが出ておりますということを裁判官会議に申し上げたということでございます。したがいまして、これまでの段階では事実上そういうことを御報告申し上げたということでございます。正式の議題としておかけしたというものではないということでございます。
  38. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのこれは通常は一々裁判官会議に御報告もしないというお話だったわけですが、そうすると、まあいまのお話では、この裁判官人事問題というものは事実上は事務総局でおきめになっているというわけでございますか。通常の場合は報告もしない。宮本さんの場合は問題が大きいから御報告申し上げているということでございますが、ということは、事実上は事務総局で決定をしていられるということに承って間違いないわけでございますか。
  39. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官の採用等の問題といたしましては、通常供給源が司法修習生からの採用というふうに限られておりますので、時期的に一定の定期的な作業ということでございます。で、そのようなことでございますので、その時期、時期に適合して、それぞれ議案を正式に長官から裁判官会議にかけておきめいただいている。大体これは佐々木委員も御承知かと思いますけれども、春に採用いたしますので、それに合わせまして定期の異動ということをいたしているというのが実情でございます。ただ、それ以外に、いわゆる時期を問わず有資格の方から裁判官に採用してほしいとか、あるいは定期異動と関係なく、特殊の状態によって異動しなければいけないというような実情が地方裁判所、高等裁判所から申し立てられてくるというようなことがございます。そういうようなことがございます場合には、それぞれの時期に応じまして適切な手段を、事務的な手段を了しまして裁判官会議でおきめいただくということで、別に事務総局がきめておるという問題ではございませんで、当然事務当局といたしまして許されております範囲内のアロゥアンスの範囲内で事務を処理しておる。最終的にはすべて裁判官会議がおきめいただく、こういうことでございます。
  40. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、先ほどの御報告というのと、今度おきめいただくというのと話が違うと思うんですけれども、そうすると先ほど何を報告されるおつもりだったんですか。その点をちょっと明瞭にお答えいただきたい。私ども聞いていて全く話が違いますので理解できないんでございますが。
  41. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) たびたび申し上げておりますように、この定期の問題ではなくして有資格の方から個々に採用願い等が提出されたような場合には、事務的には一定の時期を画しまして、欠員状況等をにらみ合わせまして議案の原案を決定さしていただくというふうな処置をいたしております。これはどこの官庁でも、またどこの会社等でも同じことではなかろうかと思うわけでございます。したがいまして通常の場合には一々採用願いが出ましても、こういう採用願いが出ましたが、いずれこれは時期を見ておはかりさしていただきますというような御報告はいたさないのが通例ではなかろうかと思います。しかし宮本裁判官の場合は、新聞紙上等におきまして、当時新たな採用願いを出したというようなことが報道されましたし、まあことの性質上そういうことを裁判官のお耳に入れて、現在事務総局の手元に留保されておるということをお知らせしたほうがいいのではないかというふうな判断をいたしまして、そういう願い書が提出されました事実を御報告したと、これが御報告でございます。
  42. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、宮本裁判官の再願の申し立てに対してはまだ裁判官会議に付されておらぬというわけですね。まだ事務総局で握っておられて裁判官会議に回しておらないというわけでございますね。
  43. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 新聞等にも、留保されているというふうに記事が出ておったかと思っておりますが、いまお尋ねのとおりでございます。
  44. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、いつ裁判官会議にお回しになるおつもりですか。
  45. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 同じく新聞等にも出ておりましたが、宮本裁判官が何とか結論を急いで出してほしいということを強く御希望のようでございますので、その趣旨に沿って処理をさせていただきたいと考えております。
  46. 佐々木静子

    佐々木静子君 では次に、株式会社講談社発行の現代の九月号でございますね、これの一四四ページから一五四ページにわたって「石田最高裁長官沈黙を破って全疑問に答える」、こういう記事が載っていることは御承知だと思います。これは高村暢児氏との対談でありまして、この七月の中旬に最高裁判所の応接室において石田最高裁長官との対談をそのままテープにとり、そしてそれを文書にしたものであるということを取材に立ち会ったこの講談社の編集部の方から私は確認をとっているわけでございます。また、この記事を載せるについてこの原稿を最高裁判所に持参して石田長官に御一読願った上記事にしたということも同社の編集部から聞いているわけでございますので、責任のある記事ということで私お尋ねいたしたいと思います。  この一四六ページ、——お持ちでございますか、現在。一四六ページ中段ないし下段に、この宮本裁判官の十年の任期のことについてこの再任できるということばの解釈について石田長官が、「再任のプリビレッジ、そのプリビレッジが権利というような意味をもった法律用語であるか、もっと軽い意味を指すことばなのか……まあ、若ものは娘さんに恋をしかけるプリビレッジがある、そういった場合のブリビレッジをわれわれは中学時代から特権と訳してきた。そのあたりの解釈の違いです。この問題を最終的に、公式的に決める権限を持っているのは最高裁裁判官です。いずれはその問題ととっくまざるを得ないでしょうが、それが裁判官会議になるか、裁判になるか、いまのところはっきりしていない。」と、まあ述べておられるわけです。これから見ますと、このブリビレッジ、再任できるという問題の解釈について、この記事を——この対談に出られたことしの七月中旬にはまだ最高裁裁判官会議で決定しておらないということがこの記事でわかるんでございますけれども、そのあとで、その次の一四七ページで石田長官が、「新しい憲法の定めは、十年たてば裁判官として適任である人またはそうでなかった人の判定もつく、そういう場合の処置、運用を最高裁に委せる、という意味です。」ということを言っておられるわけですが、そうしますと、これは石田長官が、裁判官会議を経ずしてこの再任できる、プリビレッジの解釈上、非常にいろいろと解釈できる点について、裁判官会議の評議を経ずして御自分が単独でこのように解釈しているということになるわけでございますね。それはきょうは長官に出ていただくつもりだったところが、長官にかわる人として人事局長がお越しになったわけですから、これは長官にかわって全責任を持って御答弁いただきたいわけでございます。
  47. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) この再任の問題、いわゆる日本国憲法の英訳文にブリビレッジということばを使っております。それをめぐりまして議論のあったことは事実でございます。ただその間の事情を申し上げてみますと、まず裁判所法ができまして、初めて再任ということが問題になりましたのは三十二年の秋であるわけでございます。御承知のように、二十二年にできたものでございますから、それから十年たちましてちょうど三十二年の秋ごろに再任の第一号があったわけでございますので、そのときに問題になりました。で、その際に、確かに現在でも議論がございますように、プリビレッジということばをめぐりまして何らかの意味の権利があるのではないかという議論が裁判官の中でもあったわけでございます。  そこで、再任問題を現実に処理いたさなければならないことに直面いたしました最高裁裁判官会議としては、慎重に制定当時の資料あるいは英米のプリビレッジということに対する考え方、学者の意見また実務家の意見等を徴されまして、何回かの審議を重ねられました結果、この再任制度の運用ということについての最高裁の態度を決定されたわけでございます。その決定されましたのが、いわゆるプリビレッジというのは、特殊の法律上の権利を意味するものではないのであって、まあライト、既得権と訳すわけでございますが、ライトとかクレーム、請求権と申しますか、そういったようなものとは違ったもので、いまここで前段お読みになりましたような、石田長官がおっしゃっておりますような意味に使われておるものだということを御決定になって、以来その方針にのっとって事務的にも処理させていただいてきておりますし、裁判官会議もそのようにお考えいただいておったわけでございます。しかし、それは三十二年のことでございまして、当時最高裁裁判官会議を構成されております方は、もはや一名も現在はおいでにならないわけでございます。そこで、石田長官は、法律的には、一たん最高裁がそういう取り扱いを決定し、解釈を決定いたしております以上は、当然最高裁意見ではございますが、現在の裁判官の正式の御決定ということではございませんので、きわめてまあ大事をおとりになりまして、ここでこの問題を現在の裁判官にもあらためて十分御検討をいただくという趣旨でお述べになったのが、一四六ページの表現となっておるわけでございます。そういう意味では、少しことばが足りませんけれども、真意はそういうことでございます。で、このあとのほうは、そういうことではございますけれども、まあ、法的な組織の問題といたしましては、すでに決定のあるところでございますので、後段、何も自分の意見ということでなくて、当然、最高裁判所意見ということで、次のページのところはお述べになっておる、こういうことに御了解いただきたいと思います。
  48. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、このプリビレッジの解釈については、現在の最高裁判事においては、まだ裁判官会議は持たれていないというわけでございますね。正式にきまっておらないということは間違いないわけでございますね。
  49. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 裁判官会議の内容でございますので、詳細申し上げることは控えさせていただきたいと存じますが、先ほど冒頭でお尋ねのございました行政不服審査法に基づく異議申し立て、これが却下になったということをお尋ねでございましたが、私も九月八日付をもって却下になったということを申し上げました。その際には、当然、却下の理由がどういう理由であったかということが問題になるわけでございますが、これは佐々木委員も、すでに法律家であらせられますので、御承知かと思いますが、異議の対象となる処分がないということで却下になったものでございます。異議の対象となる処分がないということは、当然何らかの請求権あるいは既得権というものがあって、それに基づく申請があって、その申請を却下したという問題ではなくて、なんにも却下というような処分はないのだということでございます。そこに、この御決定をいただいたということと関連いたしまして、現在の最高裁を構成しておられます十五人の方の御判断、最終の御判断として同様の御判断があったということを申し上げ得るかと思います。
  50. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、いまお話異議の申し立てを却下されたときにはじめて、このプリビレッジについての解釈について最高裁裁判官会議が持たれたというわけでございますね。
  51. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 先ほど申し上げましたように、現在の構成しておられます裁判官といたしましては、そうであるということでございます。最高裁としては三十二年のときにすでに意向はきまっておるということでございます。
  52. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうすると、これまた、別のところになりますが、同じく「現代」の九月号の「石田最高裁長官沈黙を破って全疑問に答える」の一四五ページの最初のところでございますが、これは「司法独立がそこなわれているとする声がきこえる。錯覚でしょうか。」という問いに対して、石田長官は、「機会あるごとに、裁判所に対する国民信頼を低下させようとする動きが、ごく一部の人たちの間にある。」と答えていられるわけです。この「ごく一部の人たち」の中に、日本弁護士連合会が含まれるかどうか、その点お答えいただきたいと思います。
  53. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 「ごく一部の人たち」の中に日本弁護士連合会が含まれるかどうかということでございますが、私は、石田長官のお気持ちとしても、裁判所法務省日本弁護士連合会、これは法曹三者の柱でありまして、お互いに協力して司法独立というものを守っていかなければいけない、その限度におきましてお互いの目的は完全に一致しておるということを固く信じておられるわけでございますので、そのお尋ねに対しましては特にお答えを申し上げるまでもなく、いま申し上げたことによって御了解いただけるのではないかと思っております。
  54. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまのお答えで、これは含まれないという御判断だと私には解釈されたのでございますが、そういうことだとすると、この日本弁護士連合会は、これは御承知のとおり、司法独立の問題につきまして、昭和四十五年の十二月九日に臨時総会を開きまして、その臨時総会において、  「札幌高等裁判所昭和四五年一〇月二八日、 福島裁判官に対してなした司法行政上の注意処 分及びこれを支持する最高裁判所の態度は、訴 追委員会の不当な決定に追随して自ら司法権の 独立を放棄したものとの印象を与え、国民の裁 判所に対する信頼をあやうくするものであっ  て、誠に遺憾である。よって裁判所司法権独立を保持するためすみやかにその姿勢を正す  べきである。」との決議をしていること。あるいはこの昭和四十六年の五月八日に臨時総会を開いて、  「宮本裁判官らの再任拒否、あるいは裁判官希 望者に対して不採用にしたことは、司法権の独 立を脅かし、民主主義の基本にかかわる重大事 であるから、最高裁判所は直ちに再任並びに新 任をするよう強く要望する。」 こと。その他の決議をし、司法独立がそこなわれるということを、何回にわたっても、全会員の決議によって声を大きくしているわけでございます。これに対して石田長官はこの「ごく一部」の中に弁護士会が入らないというお考えのようでございますが、この司法独立のそこなわれるという声に対して、「機会あるごとに、裁判官に対する国民信頼を低下させようとする動きがごく一部の人たちの間にある。司法の権威が厳然としていたのでは、自分たちの思うような世の中にもっていけない。そういう意図が戦前からある。最近それがもっとも意識的に出てきたということでしょうか。」という答えだけをされて、ほんとうにまじめと見られる、しかも良識あるものが、司法独立がそこなわれるといって叫んでいるということについて、全然これを記事の上では是認しておられないのですが、そういう点はこれはどうなんですか。まじめな人が、しかもほんとうに国を憂える良識のある人たちが、司法独立がそこなわれると何回にもわたって叫んでいるその事柄については、それはもっともであると長官はお考えになっているわけですか。そのあたりをお聞かせいただきたいと思います。
  55. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 日本弁護士連合会がいろいろ御決議になっておるようでございますが、私ども日本弁護士連合会の設立目的というものは、弁護士法四十五条に定められておるとおりのものであるというふうに考えております。第六章の第四十五条の二項で、「日本弁護士連合会は、弁護士の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士会の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」これは法人でございまして、そういう目的をもって設立されておるものというふうに了解をいたしております。そういうことからいたしますと、先ほど佐々木委員がお読み上げになりました弁護士会決議というものは、必ずしもその目的本来のものとは受け取りがたい面も含んでおるわけでございまして、これをどういうふうに考えていくかということは一つ大きな問題があるんではないかというふうに考えております。しかし、そのことをいまここでとやかく申し上げようという趣旨ではございませんで、国民一般の中に司法独立が危ういのではないかというような危惧の声があるということは、このことは私どもといたしましてもまた石田長官といたしましても十分心に刻んでおられるところでございます。そういったことを踏まえまして、そういう声のあるということに対してはもちろん謙虚に耳を傾けて、それのような一部たりといえども一危惧の念のないようにいたしたい、対処していきたいということは石田長官日夜念願しておられるところでございますが、そのことと何にも持っていないのかどうかということとはもちろん別問題でございます。石田長官のおっしゃいました真意は、真に国を憂えておられる方々の声というものは十分に聞かなければいけないということを踏まえましてこのような御発言をなさったものというふうに了解しておるわけでございます。
  56. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまの御答弁で、石田長官司法独立について真に国を憂えておられるということを伺って私非常に喜ばしいと思っているわけでございますが、そうだとすればなぜ、司法独立がそこなわれているという声が聞かれることについて錯覚でしょうかという質問に対して、いや錯覚じゃありません、私も非常に憂えているんですがということをなぜ言われないんですか。なぜ言われずに、これは一部の者が——司法が危機に瀕しているということを叫んだら自分が得するというごく一部の者が、こういうふうな思惑があって、かってに言っているんだという答えをされたんですか。そのあたり——これ長官じゃないので非常に私やりがいないですけれども、あなた長官のかわりだと思って私お尋ねしていますのでしっかりお答えいただきたいと思います。
  57. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) もちろんそういう、先ほども申しましたようにそういった声に謙虚に耳を傾けておられることは当然でございます。しかしまた一部の——ごく一部ではこざいましょうが、そのことをあるいは政争の具に供しようとしたり、あるいは他の目的に使おうとしておる者もあるというふうに考えられることも事実でございまして、対談でございますので、学術論文ではございませんので、その後段を会話としては強調されたということに御了解いただきたいと思います。
  58. 佐々木静子

    佐々木静子君 私もいまおっしゃるとおりこれは学術論文じゃないのでそこまであげ足を取るつもりはないんですが、やはりこれは錯覚——個人じゃなくって三権の一つ最高裁の頂点にある最高裁長官が初めてこれは長い間の沈黙を破った、初めてお答えになる第一声ですから、ですからそれについては非常に片手落ちな御発言だと思うんです。特に裁判所というところは公平を旨とするところですから、大多数の考えのうちのごく一部を、このように司法の危機を叫ぶ者が一部の思惑があって一部の利益のために言っているんだという、ごく一部にそういう人があるとすれば、かりにそういう前提に立っても、そのことだけをお答えになるということは、これは国民司法に対する考え方を誤らせる問題ではないかと思いますから、その点十分に今後御慎重におっしゃっていただきたいと思うわけです。しかし私、全体とすると、石田長官がこういう雑誌に進んでインタビューに応ぜられて御自分の見解を述べられたということについては、非常にこれは司法の権威のためにも、また国民に対して自分の考えをはっきりさせるという意味においては非常に好ましいことだと思って、私、敬意を表しているわけでございます。  その次の同じページの、「最高裁の説明不足が危機感の原因だという批判についてはいかがですか。」という次の問いに対して、石田長官が、「言いがかりでしょう。」と答えておられるわけです。この、「言いがかりでしょう。」と答えておられるのですが、この、「説明不足が危機感の原因だという批判」はすべて言いがかりであるというお考えなのでしょうか。その点伺いたいと思います。
  59. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 実はこの点、まあこの背後には、いわゆる春の再任名簿不登載問題等一連の問題が前提になっておるわけでございますので、その際一番問題になっておりますのが、御承知のように再任名簿不登載の理由等について裁判所は何にも説明しない、それがいけないのじゃないかということが言われておるわけです。そのことをこれは踏まえたものでございますので、何も、理由を説明しないからどうだということではないということをお答えになったにすぎないもので、これもまあ対談でございますので、あるいは前後のつながりという、厳密に見てまいりますとおかしなところが出てくるかもしれませんが、そういう趣旨のものとして御了解いただければ別に変なことでも何でもないと思います。
  60. 佐々木静子

    佐々木静子君 この再任拒否の理由を明らかにしないということは、そうすると、明らかにしないことが司法の危機感の原因だという批判、それについては言いがかりだというふうに思っていらっしゃるわけですか。ほかのことはともかくとして、再任の拒否の理由をはっきりしないから危機感を呼ぶんだということについては、それは言いがかりとお考えになっていらっしゃるわけですか。
  61. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 再任拒否の理由を述べてはどうだということは当委員会におきましても亀田委員から再三御質疑がございましたし、また、衆議院の法務委員会におきましても二回にわたって詳細の御質問があったわけでございますが、それの述べ得ないゆえん等につきましてもこれまた詳細に当時事務総長あるいは私から御答弁を申し上げておるわけでございますが、まあ私どもといたしましては、そのように申し上げることによって十分御了解がいただけておるというふうに考えております。それ以上言えとおっしゃられましても、あれだけ明白に言えない理由を詳細申し上げておりますのになお言えと言われることはこれはいかがであろうかということでございます。
  62. 佐々木静子

    佐々木静子君 それは当委員会に対するさきの御答弁についてお聞きしているんじゃなくて、たとえばこの再任拒否理由の開示の要望というものは、これは衆議院とか参議院の委員会要望されているばかりでなく、たとえば四百名を上回る現職裁判官からその理由開示の要望が出されておるということ、これは先日の七月二十四日のこの当委員会においても最高裁のほうから事実認められておられることです。また、この十月二日に二百人をこえる現職裁判官が集まって裁判官の身分保障について最高裁の説明不足による不安、最高裁司法行政への疑惑等を訴える事実等も——これはこの記事をおとりになったあとですが——あるわけでございますが、このように、まじめといわれる第一線の裁判官理由開示の要望も、これも、理由開示が明らかにされないので非常に不安を感じる、司法の危機が感ぜられるという声も、これも言いがかりであるというふうにお考えになるわけですか。
  63. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 衆議院あるいは参議院の委員会で私ども御説明申し上げますのは、やはり国民の代表としての委員各位が国民を代表して御質問をいただいておるというふうに考え、また、国民にお答えするという根底を持って私どももこの席に列席させていただいておるわけでございます。そういうことでございますので、しかもその委員会の中でも、やはり裁判所の内部でいろいろと要望が出ておるではないかという御質疑が再三ございまして、何名程度の要望が出ておるかということもそのつど御報告を申し上げますとともに、今後裁判官のそういった不安というものは、これはまあいわばこういう人事行政と申しますか、そういったものについてどちらかというとふなれである裁判官たちの考えからも出てきておるように思われますので、あらゆる機会を通じて誤解と申しますか、御不安のないようにいたしたいという私どもの決意もそれぞれそのつど述べておるわけでございます。そういうことでございますので、決してすべてをただ言いがかりというふうに切り捨てておるというものではございません。私どもも十分にその点については留意いたしましてものごとを処理していこうと考えておる次第でございます。  なお、ちょっといまお話がございましたが、この二日の日に、何か裁判官の一部の方の集会が持たれたようでございますが、この点につきましては私ども詳細を承知いたしておりませんので、何とも申し上げかねるわけでございますが、もし新聞にございましたようなことが問題になったのだということでございますれば、またさらに今後そういった面にも力を入れて説明をし、了解を求めるようにいたしていきたいと考えておるわけでございます。
  64. 佐々木静子

    佐々木静子君 いまもおっしゃったように、国会における御答弁というものは、これは国民に対して答えていただいておりますので、その点においては御説明済みということになるのかもしれませんが、それでありましたら、国会においてこれは言いがかりであるというような、こういう不親切なお考え——説明できないという理由を十分にお話しになったおつもりであるとするならば、なぜこの雑誌社の対談においてその理由お話しにならないか、開示できない理由お話しにならないか、その説明不足が危機感の原因だということにはなっておらないんだという御見解であるならば、なぜそのように率直にお述べにならないのか。「言いがかりでしょう。」というと、いかにも最高裁の説明不足が危機感の原因になっておるという批判をしている人間が悪い人間である、間違った文句をつけているというふうな印象をこれはだれが見ても一般に与えると思うのでございますが、もしそういうことであるならば、この記事の内容といまの答弁、非常に食い違っておりますので、この「言いがかりでしょう。」というのは、これは本心でなかった、最高裁とすると、そのようには決して考えておらなかったという、そういうお気持ちでございますか。
  65. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 何ぶんにも、先ほども申し上げましたように、対談でございますので、こういうふうなおっしゃり方をなさったわけでございますが、真意は先ほど申し上げたようなところにあるわけでございます。
  66. 佐々木静子

    佐々木静子君 対談というものは何をしゃべってもいいというお考えのように私ども受け取れるんですが、それですと、これも対談だからということでお逃げになるかもしれませんが、この「石田最高裁長官沈黙を破って全疑問に答える」の一四九ページ、「しかしこんどのように弁護士会が一緒になって反対運動を起すという様相を見せてくると、法曹一元化のタガがゆるんだような不安を国民に与えませんか。」という質問に対して、長官が、「妙なもんでね、民主主義の運営上の難しさというのでしょうか、とくに自分で自分の意思をちゃんときめる訓練がうまくできていない日本人には特に苦手のことなのですが、一部の人が結束して会議なら会議をリードすると、どうしてもそれに支配されてしまう場合がある。  法曹一元化のタガがゆるんだというが、あなたは弁護士会は何人か知っていますか。九千人ですよ。全国九千人のうち、青法協なり、それをバックする弁護士が二千人ぐらいでしょうか。ところが会合があると、結局その二千人の人たちの手によって裁判所を批難する決議ができあがってしまう。」と、こういうふうな発言をしておられるわけなんです。この日本弁護士会のまあ九千人の名前において行なわれている決議が、これが二千人の人たちの手によって裁判所を批判する決議ができてしまったというふうに長官は言っていられるんですが、それはどういう論拠に基づくものなのですか。
  67. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) ある会議体が決議をいたしますときには、やはりこれに対する賛成派、反対派、中間派というようなものが当然あるわけでございまして、賛成派の中にも消極的な賛成、積極的にその決議実現を推進する力といったようなものもあることは、これは特にここであらためて申し上げる必要はないわけであります。そういう意味におきまして、積極的に推進する方というような意味で、この二千人という名前を長官はお出しになっておるというふうに了解いたしております。
  68. 佐々木静子

    佐々木静子君 どの会議におきましても、全員が最初から提案したら会議にならぬのでして、一部の者が提案して、それに対して会議を開いて、そうして議決するわけですけれども、その提案する者がかりに一これは私、数字をつまびらかにしませんが、二千人だったとしても、その結果全員がそうしようじゃないかということにきまれば、これは全員の決議じゃないですか。どの会議でもそうなんじゃないですか。そのあたり、かりに二千人が提案したとすれば二千人だけの意向で、ほかの七千人はそうじゃないという印象をこの記事で与えられますけれども、全員がこれ決議したのであれば、全員の意思と見ていいのじゃないですか、その点はどういうふうにお考えですか。
  69. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 当然弁護士会として正式の機関で御決議になれば、それは全員の意思と申しますか、弁護士会の御決議であるというふうに考えるべきだと思っております。
  70. 佐々木静子

    佐々木静子君 これは昭和四十五年の十二月十九日の日弁連の臨時総会についての資料ですけれども、これは「自由と正義」の一九七一年、ナンバー一、報告、七三ページから抜粋してきたのですが、この臨時総会においては、会員千八百二十三名より提案されて、総会の請求があって開かれた臨時総会において、当日出席者は四千二百九十五名そうして採択の結果、圧倒的多数で採択されている。反対者は七百三名というふうにこの議事録ではなっております。そのような事実があるのですか。そうした事実をお調べの上でこういうことを言っておられるのですか、どうですか。
  71. 矢口洪一

    最高裁判所長官代理者(矢口洪一君) 当然日弁連の「自由と正義」の記事は長官も御承知でございます。先ほど申し上げましたように、その実質的な推進者というものはこういったものであるということを述べられたわけでございます。なおこれは仄聞するところでございますけれども、私ども自身も承っておるところでございますが、会議の模様はややともすると相当長時間にわたって、年配の方等は御出席には一度はなりますけれども、退席されてしまうというようなこともあるやには承っております。
  72. 佐々木静子

    佐々木静子君 その点について、日本弁護士連合会のほうへお尋ねいたしたいと思います。その会議の内容とかそれからこの決議などがどういういきさつでなされておるか、あるいは全員の総意であるかどうかという点についてお尋ねいたしたいと思います。
  73. 堂野達也

    参考人堂野達也君) 日本弁護士連合会がただいまおっしゃった四十五年十二月十九日の総会を開いたのは、御承知のように先ほどから御議論になっておられる司法の危機という問題が迫っている、ことにこの翌年の春には裁判官の再任、新任等いろいろな問題もひかえておるし、ことにその前に起こりました札幌地方裁判所における平賀判事の福島裁判官に対する書面問題というような問題から発しまして、非常に裁判所内部におきましていろいろな問題が発生している。それは、しかも裁判独立というものに影響するような傾向を持って、エスカレートしつつあるというようなことから、非常に憂えたのでございます。先ほどちょっと局長からお話ございましたけれども弁護士会は、先ほど申し上げまするような理由から、司法部の問題につきましては、大きな関心を持ち、常に調査研究をして、司法の改善のために貢献したいという意向を持っているのでございます。したがって、他の大きな政治問題等には触れません。司法部の問題については、弁護士会はそうやる義務がある、権利があるという前提に立って、いろんな問題を研究して、裁判所なりあるいは法務省なりに建言し、そしてわれわれの意見実現していただきたいというような建言をしたいということで、いま申し上げるような準備をしているわけでございます。ところが御承知のように、平賀問題という問題が起き、そしてその十二月十九日ごろは、まさに、裁判所がいわゆる青法協の会員裁判官に青法協を脱退するようにというように、いろいろ試みられていたという時期に相当するのではないかと思うのでありますが、そういうような状態におきまして、弁護士会としては、要するに、裁判官といえども思想の自由、信条の自由というものがある。あるいはまた、現に、政党加入の自由もあることになっております、積極的な活動さえしなければ。そういう人たちが何か知らない青法協問題で差別待遇されるというようなことは、日本の裁判あるいは憲法、法律というたてまえから許されないんじゃないかという強い考え方があったのでございまして、それは期せずして、日弁連として何らかの意思表示をすべきなんじゃないかということがほうはいとして起こってまいりまして、この十二月十九日の決議となったものでございます。したがって、この決議はまさしく日弁連決議でございまして、正当な、いわゆる手続を踏んで全会員を招集し、そしてそれによって出席された、全国から出席された方々によって長時間にわたって討論の結果、導き出された結論でございます。したがって、それが一部のものが、あるいは一部のものがそれを指導してつくったんだという、そういうように導いたんだというようなことは、全くございません。それに引き続きまして、本年五月八日にも、この問題につきまして、いろいろ決議をしたのでございまするが、もし御質問がありますれば、詳しく申し上げます。  要するに、私どもといたしましては、この裁判所が、内部におけるところのそういう思想・信条というものが問題になってくるということは、まさしく裁判に対する国民信頼を裏切ることになり、裁判に対する信頼が持てない。こういうようなことになる重大なる結果をおそれて、いろいろとわれわれは心配しているのでございます。われわれ在野法曹でございましても、日本人を愛し、日本国を愛することにおいては、何人にも劣らないつもりでございまして、そういう私どもの真意というものを十分くんでいただきたいと考えるのでございます。そういう意味におきまして、いま言う十二月十九日の決議はそういう経過でできたのでございます。  それから、ちょっと先ほど、これは関連ないのですが、言い忘れたのでございますが、最高裁判所選任問題で、いわゆる最高裁判官選任諮問委員会とか、そういう何らかの機関をつくったらいいんじゃないかと、単なる政府任命ということはよい結果を得られないんじゃないかと、そして多くの人材を求める上におきましても、公平な各分野から採ったほうがいいんじゃないかという意味選任方法につきましては、弁護士会でも、先ほどいろいろ申し上げましたように、研究しております。最近におきまして、私どものこの委員会でも、この問題を取り上げて、そして最高裁判官選任方法については、単に政府の任命ということではなくて、広い意味の人材を求めるという意味から、何らかの意味の機関を設けて、それが諮問委員会でありますか、選考委員会でありますかは別といたしまして、そういうことに貢献したいというような考え方で進んでおります。これはちょっと先ほど忘れましたから。
  74. 佐々木静子

    佐々木静子君 あまり時間もないようですが、この日本弁護士連合会司法独立に関する委員会が設立された時期、あるいは設立された、あるいは設立されねばならなかったそのいきさつを簡単にお述べいただきたいと思います。
  75. 堂野達也

    参考人堂野達也君) いま申し上げました十二月十九日の決議ができまして、さらに、御承知のように、その後、新しい裁判官の新任が拒否された、あるいは司法研修所における阪口修習生が罷免された、あるいはまた、宮本判事補が再任されなかったというような問題がだんだんエスカレートしまして、いよいよ司法の危機というものが迫りつつあるというような考え方になったのでございまして、その意味におきまして、どうしてもこれをわれわれの一つの力によって裁判所に建言して、とめてもらいたいというような意味から、五月八日の日弁連の臨時総会におきまして、いま申し上げました宮本裁判官あるいは新任を拒否されました裁判官、それから阪口司法修習生の問題につきまして、臨時総会が開かれまして、この場合におきましても、当時弁護士会の全会員はたしか九千二百名と存じておりますが、出席者は四千四百五十五名でございました。その臨時総会におきまして、これらの宮本問題、新任拒否問題、阪口問題等について決議ができまして、そうして裁判所の善処を要望するという強い決議ができたわけでございます。それにつきましては、単に決議をしっぱなしでは何にもならない。どうしても強い行動を起こして、裁判所にも再考を願わなければならない。こういう意味におきまして、何らかの委員会をつくるということが附帯決議でできましたので、それに即して、いまおっしゃられました司法独立に関する委員会というのができたのでございます。  この委員会におきましては、要するに、たしか五月の末にできたと思うのでございまして、それから六月ごろ発足いたしまして、現在、これを三つに分けまして、広報企画部会と、それから制度部会と、それから、いま言う宮本再任、新任、罷免の問題を研究、対策する部会と、こういうぐあいに分けて活動を開始しているのでございます。ただ、私どもが宮本裁判官の問題あるいは新任問題等につきましていろいろと申し上げるのは、御承知のとおり、先ほど申し上げましたが、思想、信条の問題をとらえて、これを再任拒否する、あるいは新任を拒否するというようなことは許されないのじゃないかということと同時に、ことに宮本裁判官の場合、十年間まじめに裁判官としてつとめ、いろいろ弁護士会等の調査によりますと、非常に優秀な裁判官だと聞いております。この方が再任を拒否されたと、そうして再任を拒否された理由は、いままでの新聞・雑誌、あるいは当委員会等の速記録を拝見いたしまして、先ほども御説明ありましたけれども理由は明確じゃない。裁判所がおっしゃると、明確だとおっしゃるけれども、私どもとしては何としても明確にならざる部分があることは明瞭でございます。で、私どもから言いますならば、俗でございますけれども、少なくとも十年間まじめにっつとめた裁判官が十年目の期限が来たと、これは法律的に十年ときまっているんだから、今度選ぶか選ばないかは裁判所側の自由であるというような考え方は常識的に成り立たない、条理的にも成り立たない。御承知のように、裁判の中でよく使われることばでございますが、健全なる常識とか、条理というようなものからいたしまして、そういう人が再任されないということは、何人もこれは納得できないのでございます。これが病気だとか、あるいは何か特別な事情があるとかというような場合は別でございますけれども、いままでのところでは少なくともそういうことはうかがわれないのでございます。  ことに、御承知のように、最初はいろいろ表向き裁判所に対して、理由を公表したほうがいいという意見でございましたけれども、だんだん裁判所のほう自身が強い態度をとられるものでございますから、少なくとも宮本裁判官本人に対してだけでもその理由を言ったほうがいいんじゃないかと、説明したほうがいいんじゃないかというような世論まででき、宮本裁判官も、私にだけでもそのはっきりした理由をおっしゃっていただきたいということを言ったやに聞いております。そうしますと、それでもなお何も言わないということは、少なくともほかに理由があるのではないかと。そのほかの理由ということは、大きな声では言えない、堂々と言えない理由、それはいま申し上げたところの思想、信条にかかわる問題であるのじゃないかと、こういう疑いを持たざるを得ないのでございます。そういう意味で、もしまたそういう理由によって再任が拒否されるとするならば、裁判官の皆さんも安閑として裁判事務に携われない、あるいは正々堂々と裁判を行なわれないのではないかと思うのでございます。それでなくとも、御承知のように、労働、公安事件等でいろいろな判決が出ますと、あるいは偏向判決だというような批判もございます。そういうことがもし取り上げられるとしたならば、一人一人の裁判官のいわゆる裁判独立というものはあり得ないと考えるのでございます。そういう意味で、私どもはこれはやはり司法の危機だと、裁判官はあくまでも独立した裁判をしなければならぬ、また裁判所はあくまでも独立でなければならぬと、今度の問題は裁判官のあるいは裁判所の外から起きた問題じゃなくて、裁判所内部における問題のように感ぜられるから、なおさら私どもとしては在野法曹といたしましてこれを憂えて、そうしてこの問題に対処したいという考えに燃えているのでございます。  で、私どもはこの意味におきまして、特に宮本裁判官の問題にいたしましても、これはどうしても弁護士会のいろいろな委員会、いろいろな場所でいろいろな議論が論ぜられておるのでありますけれども、どうしてもこの問題は納得いかない問題だということは一致していると思います。なるほどきわめて少数の者は反対でございましょう。しかし民主主義の時代でございますから、反対のない色、一色の賛成論というようなものはむしろ意味をなさないのじゃないかと私は思うのでございまして、そういう意味で、日弁連がこの司法独立に関する委員会を持って、そうして強く裁判所等にも、また政府の皆さんに対しても善処を求めたいという意向でおります。
  76. 佐々木静子

    佐々木静子君 時間の関係もありますので、この司法独立の問題に関しましては、また次の機会に引き続きましてお伺いいたしたいと思いますので、このあたりで打ち切ります。  次に財団法人登記協会のことについて法務省にお尋ねしたいと思います。  去る七月一日、財団法人登記協会なる団体の設立が許可され、二日設立登記がなされております。本登記協会の構成員を見ますと、元法務局長クラスの人たちばかりで占められており、所在地も昭和四十六年十月からは、東京法務局内に移転する旨記載されておりますが、これは法務省の外郭団体になるわけでございますか。
  77. 住吉君彦

    説明員(住吉君彦君) いまのお話の財団法人登記協会という公益法人が設立されましたことは、お話しの日時に登記がなされております。  それから外郭団体であるかという御質問でございますけれども、外郭団体ということばをどのように理解するかは別といたしまして、登記所にはいろいろ問題がございますので、その問題を、法務省あるいは登記所独自で解決していける部面と、そうでなく他の御協力をいただく必要のある部面とございますので、そういう意味におきましてこの協会が設立されたということでございます、外郭団体ということを言えば言えるかとは思いますけれども。  それから役員といいますか、法務局長OBといいますか、法務局長出身者がその発起をしておるということは事実でございます。
  78. 佐々木静子

    佐々木静子君 この登記協会の目的として、登記に関する調査研究などその他があげられておりますことと、また登記協会発行のパンフレットに登記相談所を開設する旨の記載がございますが、その事業内容を詳しくお伺いすればいいんですが、結局この司法書士法第一条との関連において、司法書士の業務内容中最も重要な、登記に関する手続業務と、これは抵触するようなおそれはないでしょうか。
  79. 住吉君彦

    説明員(住吉君彦君) 協会のパンフレットに、登記相談という文言が入っておるやに聞いておりますけれども、そもそも司法書士法の規定によりますと、裁判所検察庁、法務局に提出する書類を嘱託人にかわって作成しまた申請することができるというのは司法書士に許された独自の権限でございますので、そのことを法人がかわってする、司法書士業務を協会が占奪するといいますか、その領域を侵すというようなことは絶対にあり得ないことだと思います。
  80. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、この登記協会の設立によって、司法書士業務がその権益を脅かされることがない、その点を明確に御確認いただけるわけでございますね。
  81. 住吉君彦

    説明員(住吉君彦君) 確認いたします。もちろん私どもも法律家の端くれでございますので、決してそういう法律の規定を占奪してこの協会が活動するというようなことは、主務大臣である法務大臣としても許されないことでございます。
  82. 佐々木静子

    佐々木静子君 それではまた話は変わりますが、これは最高裁判所の家庭局長に、時間の関係もございますので、少年法改正についてごく一部だけお伺いいたしたいと思います。  前回の七月二十四日の法務委員会におきまして、少年法改正問題に関し、法務省は、現行少年法は戦後間もない時期に制定された新しい法制で、現在までの運用の実情を見るといろいろ問題点がある、少年法改正を加える必要があるとの結論に達しているというふうな御答弁だったんですが、現実に少年事件をもっぱらと言ってよいほどおもに担当しておられる家庭裁判所において、現行少年法法務省の言われるように改正しなければならないほどの運用面において不都合なところがあるのかどうか、これはちょっと時間の関係がございますが、簡単にお答え願いたいと思います。
  83. 外山四郎

    最高裁判所長官代理者(外山四郎君) 御承知のように、少年法改正法が現在法制審議会少年法部会で審議されておりますが、この改正要綱の内容は、現在の少年法及び家庭裁判所の基本的な性格あるいは刑事裁判制度にも触れるきわめて重大な問題を含んでおると思います。私どもはそのような改正の必要性、緊急性には強い疑問を持っております。現在少年非行また年長少年の非行の激増とか、あるいは凶悪化というような実情はございません。また少年の特性に応じて刑事処分も含めまして最も少年の更生のために必要な処遇が選択されております現在の少年法の運用から見まして、このような改正にまず着手することなく、従来のいろいろな議論を通じて意見の一致しております少年審判手続のより一そうの充実あるいは保護処分の多様化というような問題についての実質的な改正を審議されるべきであると——このような基本的な問題に触れる改正に早急に着手すべきではないというのが私どもの基本的な態度でございます。
  84. 佐々木静子

    佐々木静子君 そうしますと、いまは少年事件も数から言っても減少している。また凶悪事件というものも以前よりも少なくなっている。そういうふうな社会情勢から見ても何ら基本的に少年法法務省の言われるように改正されるような必要はごうも認めないという御意見でございますね。
  85. 外山四郎

    最高裁判所長官代理者(外山四郎君) おっしゃるとおりでございます。ただ、私どもはいまの少年法がすべて完全だとは思っておりません。手を加え、改善すべきところはあると存じますけれども、先ほど申しましたような基本的な構造を改めるような改正はこの際行なうべきでないという考えでございます。
  86. 佐々木静子

    佐々木静子君 まあ時間の都合もありますので、この点につきましてまたいずれ少年法問題についてお伺いさしていただきたいと思いますが、きょうはこのあたりで終わらしていただきたいと思います。  それから委員長司法の反動の問題、司法裁判独立などの問題に関しましてもきょうは十分にお尋ねする時間がなかったものですので、問題が重要でございますから次回の委員会で引き続いてお尋ねいたしたいと思いますのでよろしくお願いいたします。
  87. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) わかりました。
  88. 原文兵衛

    原文兵衛君 時間がだいぶ過ぎましたけれども日本弁護士連合会から堂野参考人がおいでになっていらっしゃいますので、少々お尋ねをいたしたいと思います。  きわめて初歩的な質問でたいへん恐縮なのですが、まず日本弁護士連合会についてお伺いしたいのです。日本弁護士連合会というのは法人であるというふうに聞いておりますけれども、その性格、目的というようなことにつきましてお伺いしたいと思いますが、お答え願いたいと思います。
  89. 堂野達也

    参考人堂野達也君) 日本弁護士連合会弁護士法に基づいて設立しました特別法人と申しますか、法人でございます。それからそれに掲げられている目的は、先ほど民事局長がお答えになりましたように、四十五条におきまして「日本弁護士連合会は、弁護士の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士事務の改善進歩を図るため、弁護士及び弁護士会の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」こういうことが規定されております。
  90. 原文兵衛

    原文兵衛君 法人には監督機関と申しますか、所管の省庁があるというのがまあ普通のように心得ておるのでございますけれども日本弁護士連合会の所管の省庁というようなものはどこかございますでしょうか。
  91. 堂野達也

    参考人堂野達也君) 日本弁護士連合会の会員は二重構造になっておりまして、個人の弁護士が会員であると同時に、各地の弁護士会日本弁護士連合会の会員であると、こういうことになっておりまして、現在の法律では日本弁護士連合会のそういう監督的立場にある官庁というものはございません。完全であるかどうかは別といたしまして、一応独立という形になっております。
  92. 原文兵衛

    原文兵衛君 そういたしますと、日本弁護士連合会にはチェックする機関がない。もちろん弁護士さんは深い教養と高い品性をお持ちになっておられると思いますけれども、チェックする機関がないということになりますと、日本弁護士連合会というものはその行為につきましてその目的を逸脱しないようにきわめて慎重でなければならないと思うのでございます。  そこでお伺いいたしたいのでございますが、日本弁護士連合会裁判官の新任、再任など、裁判所司法行政上の問題につきましていろいろと、先ほどからも申されておりますが、決議とか宣言とか、あるいは会長の談話とかいうようなものを出しているようでございますが、これらは何かこう法律的な根拠があって出されているものなんでしょうか、その点をお伺いいたしたいと思います。
  93. 堂野達也

    参考人堂野達也君) 先ほども申し上げましたとおり、弁護士会は、あるいは弁護士は、その目的あるいは使命といたしまして、いわゆる社会正義の顕現、国民の人権擁護という立場に立っておるのでございまして、その意味におきましては、なるほど法律の趣旨からいいまして、こういうことばがございます、いま読み上げましたようなことばがございますけれども一つの団体といたしまして、先ほど申し上げますとおり、司法関係に私どもは、在野の会、在野の人といたしまして、司法制度に関しいろいろな改善意見を申し上げること、あるいはいろいろ問題になっていることに対して意見を述べるということは許されないことではない、許される行為であるという前提のもとにいろいろ申し上げておるのです。先ほど申し上げましたとおり、われわれとしては司法の健全なる発達、正しい道を歩んでいくという面からいろいろ建言しているのでございまして、これは決して許されないことでないと思うのでございますが、これは同時に、そういう解釈は同時に、もし言うならば、その使命感から来たやはり法律的な根拠があるのじゃないかというぐあいに考えます。
  94. 原文兵衛

    原文兵衛君 使命感から来ていろいろなことを申されるということは私はけっこうなことだと思うのですが、私がいまお伺いしましたのは、ただいま参考人弁護士法の四十五条の第二項の日本弁護士連合会の目的をおっしゃられました、お読みになりましたこの目的、弁護士法第四十五条第二項の日本弁護士連合会の目的の範囲には、いろいろなそういう御意見を申すことは含まれておらないと私は理解いたします。言うなれば、国民がだれでも持っているところの言論の自由による意見の発表と同様なものではないかと理解をしてよろしいかと思うのでございますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  95. 堂野達也

    参考人堂野達也君) 私どもは、いま申し上げました中に、「弁護士連合会は、弁護士の使命及び職務にかんがみ」ということばがございますが、それはもちろん弁護士会が、あるいは弁護士が品位を保たなければならないということは、同時に、先ほど申し上げます弁護士の使命からいいまして、いろいろな、おっしゃるような決議をし、建言することは決して許されないことではないという前提に立っておるわけでございます。
  96. 原文兵衛

    原文兵衛君 もちろん許されないことではなくて、大いにどんどんとおっしゃっていただいてけっこうだと思います。ただ私が申し上げましたのは、そこは、弁護士さんという方は社会正義実現あるいは人権擁護という目的があるわけでございます。いろいろと申されるのはけっこうでございますけれども日本弁護士連合会としていろいろな決議あるいは宣言をされるのは、弁護士法日本弁護士連合会の目的に基づいてやっているのではなく、それは国民はだれでも、司法独立が侵されるというような危機に対していろいろと意見を持っている、それを発表される。そういうような国民がだれでも発表できるそういう言論の自由、それと同様のものであるというふうに理解してよろしいんじゃないかと思うのでございますが、これはそうでございますね。
  97. 堂野達也

    参考人堂野達也君) 私はいま説明申し上げたつもりでございましたが、私どもは、弁護士会としては、いわゆる司法に関する限りということで——国民としてはいろんな他の政治問題についても意見を述べられるでございましょうけれども弁護士会といたしましては、少なくとも司法の範囲においては、会として意見を述べられるというような考え方でいるわけでございます。で、いまおっしゃるように、国民として何でも政治的な意見を述べられるじゃないかとおっしゃる意味とはちょっと違った意味弁護士会としては、司法に関する限りにおいては、そういう政治的といいますか、これは私どもはいろいろそういう議論がございました。それでその中で私どもの、いわゆる弁護士会は政治的活動ということばよりも司法的活動、その司法的活動の中において、いま言う司法に関するいろいろ制度に関する意見とか、あるいはそれが政治的な色を帯びるでしょうが、そういう意見というものは発言できるんじゃないかというような、現在の弁護士会の意向は、そういう立場に立っていると考えております。
  98. 原文兵衛

    原文兵衛君 もちろん発言ができますし、十分にいろいろな御意見を発表されるということは私はけっこうなことだと思うんですけれども、私は先ほど来申し上げているのは、それは弁護士法における日本弁護士会の目的、その規定によってやっているんではないんだ。それはやはりもちろん弁護士会でございますから、司法に非常に関係があるわけでございますから、特にいろいろと発言されるのはけっこうでございますけれども、法律上はやはり言論の自由の、そういう大きな原則の中でもってやっていらっしゃる。特に関係が深いからよけいおっしゃるということは別でございます。法律上はそういうたてまえではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  99. 堂野達也

    参考人堂野達也君) 私は一つの法人というものは、なるほど法律的に、当然現在ある法律では目的とかそういうものが記載されます。しかし、その法人の活動というものがそこに記載されたことより何事もできないんだというものじゃないと思うんでございます。そういう意味で、要するに、先ほどから申し上げておるとおり、弁護士の使命、任務というような面から関連しまして、当然その弁護士の集まりであるところの日弁連が、そういう趣旨発言ができるというぐあいに考えるのでございます。
  100. 原文兵衛

    原文兵衛君 もちろんでございます。私はそういう発言ができないなんというようなことを申しておるわけではございません。大いにやることはけっこうだと思うんです。ただ私がここで申し上げたいのは、日本弁護士会は法律に基づいて、弁護士法に基づいて、その目的の範囲内でやっているわけじゃないんで、やはりそういう、何といいますか、弁護士会という性格上、こういうこともできる、できることはできると思いますが、法律上何か弁護士法に基づいてやっているんじゃないということになりますと、いろいろな学者もこの問題について大いに議論を述べておるわけでございまして、そういうような、国民がいろいろとこの問題について発言をしているその中で、比較的弁護士会という、何といいますか、法律家の集まり、弁護士さんの集まりで司法に一番関連の深い方々の言動でございますから、相当な重みを持つということは当然でございましょうが、しかし法律的にはやはりだれでもが日本の国を思い、司法独立ということを思って発言しているその中の一つであろうと考えてよろしいんではないかと思うんでございます。  私は最高裁司法権独立のあり方につきまして、国民の声に耳を傾けるということは、これは当然だと思いますし、きわめて大事なことだと思うのでございます。ただしかし、司法権独立のあり方につきましての国民の声というものはいろいろございまして、決して一つだけではございません。日本弁護士連合会がいろいろ決議をされ、あるいは宣言をされているというようなことだけではなく、それに反対意見を持つ国民の声というようなものも多々あろうと思うのでございます。要は司法権独立は守られなければならないということでございます。そこで、最高裁司法権独立を侵してはならない、これはもちろんでございますけれども、また同時に侵されてはならないと思うのでございます。どうかひとつこの点を踏まえまして、慎重に対処されるように申し上げまして、時間もございませんので、私の質問を終わらしていただきます。
  101. 佐々木静子

    佐々木静子君 関連。日本弁護士会に伺いたいのですが、この弁護士の法律上の司法問題について発言するというのは、この弁護士法第一条の「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義実現することを使命とする。」に続いて、第二項「弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」この「法律制度の改善に努力」するというのが弁護士の義務といいますか、そういうことであるから、司法制度についていろいろ発言をするという意味で、普通の人の発言とはまた違うというのじゃございませんでしょうか。
  102. 堂野達也

    参考人堂野達也君) おっしゃるとおりでございますが、私どもはやはり日弁連としても、いま原先生からいろいろお話ありましたけれども、いま申し上げた司法の改善については日弁連としては意見を言えるのじゃないか、これはおっしゃるとおり、私ども最高裁判所のいろいろな行動が、いわゆる社会の批判——その非難的な批判を浴びないように健全に発展していってもらいたいということから発言しているのでございまして、このことは日弁連意見として主張することは、おっしゃるとおり、決して、ある意味では当然のことかもしれないと思うのでございます。  なるほどもちろん一つの会合でございますから、強く反対する方もございます、これはやむを得ませんと思います。しかし一つの会として、団体としての意見はこうであるという意味で建言申し上げている趣旨でございますから、これは十分日弁連というものもお考え願って御理解願いたいと思います。
  103. 阿部憲一

    委員長阿部憲一君) 他に御発言もなければ、本件に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  堂野参考人に一言ごあいさつ申し上げます。  本日はお忙しいところを本委員会に御出席を願いまして、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十七分散会