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最高裁判所長官代理者(
長井澄君) 札幌高等
裁判所函館支部の廃止につきまして地元の関係者から御
指摘のような反対の
要請がございましたことは存じております。この点につきましては、札幌高等
裁判所長官を経由いたしまして、函館の地方
裁判所、函館の弁護士会の
意見を徴しまして地元の
意見を把握するように
努力いたしました。またこの案につきましては、
裁判所に設置されております一般規則
制定諮問
委員会におきまして諮問事項として御
検討をお
願いしたところでございます。その
委員の方々の御
意見承りました。この中には弁護士会の代表の方も六人入っておられます。そのほかに学識経験者、法務省、
検察庁、
裁判所の関係者が
委員として入っておられまして、反対の
意見もございましたし、賛成の
意見もございました。弁護士さんの中にも賛成、反対の
意見もございました。御
指摘のように連合会からは反対の
趣旨の御
意見が提出されておりますが、基本的な問題といたしましては、札幌高等
裁判所の函館支部が裁
判事務の
処理についてどの程度の仕事をしているかという基本的な問題がございます。申し上げますと、
裁判官にはそれぞれ年間に
処理できる事務
処理の限界といいますか、期待された
処理の能力がございますが、各般の統計、実態の
調査等によりまして
検討いたしましたところ、
昭和四十五年末の未済事件について見ますと、その事務量は〇・八七人分の事務量が未済事件として残っているという状況でございました。御
承知のように、高等
裁判所は三人の
裁判官でこれを合議
処理いたしますから、これを三で割りますと〇・三人に満たない事務量ということになりまして、あとの〇・七というのは手待ちの状態で執務しておるという関係でございます。
一方、北海道
内部を取り上げてみましても、釧路を中心といたしまして道東方面は非常に発展の
過程にございまして、事件数、法曹事件も非常に多くあります。そのような
観点で、御
指摘のように地元住民の
裁判を受ける
権利を奪うのではないかという御
意見がございます。それももっともでございますが、釧路方面、道東方面の事件関係者の事件
処理に対する期待というものは、函館方面に比べますというと、非常に不利益な状況に置かれまして、
司法的な救済をもっと平等の形で分配することは、やはり
司法行政上真剣に
考えなければならない問題であるという
観点から、原案を提出いたしまして各機関で御
検討をいただいたわけでございます。その結果といたしまして、諮問
委員会におきましても四人の弁護士さんは反対されましたが、あと二人の弁護士さんを含めて多数からやむを得ない措置であるという御
意見をいただきました。で、その諮問
委員会の御
意見、
審議の経過はつぶさに
裁判官会議に御
報告申し上げまして、御
検討いただきました結果、これはやむを得ない措置である。そして函館支部廃止によりましてできました人員は札幌本庁に戻しまして、北海道全体の事件
処理に当たることにいたしますれば、
裁判を受ける
権利といいますか、受け得る期待というものはきわめて平等に行なわれることになります上に、函館には御
承知のように、〇・八七人分の事件でございますから、一部を構成する三人の
裁判官しか配置されておりません。これがぎりぎり一ぱいのところでございますけれども、御
承知のように高等
裁判所には民事事件、行政事件、刑事事件というような、本庁におきましてはそれぞれの専門の部におきまして
処理いたしますべき事件が三人で全部一まとめにして
処理されるというようなことで、
裁判官にとりましても
処理上たいへん気の毒な状態にございますし、人間の能力にはその
意味でやはり限界がございまして、専門的な
処理をしていただくことが適正と迅速の
要請にもこたえるゆえんでもございますので、やむを得ない措置として函館支部の廃止をさせていただいたわけでございます。
なお、三者協議で進めろという当
法務委員会の御決議、これはもう十分に尊重いたさなければならないところでございまして、残念ながらいま三者協議の
機会というものが得られておりません。何とかこれを実現いたしたいと思いまして、過日
最高裁判所の事務総長から、法務事務次官、日弁連事務総長にあてまして三者協議の
機会を持ちたいが御
意見を承りたいという書簡を差し上げました。法務省当局からは異存はないという御
回答をいただきましたけれども、弁護士連合会のほうからは、いろいろ御
意見があるようでございまして、一カ月以上
——ちょっと発簡の日時をいま資料がございませんが、経過いたしましたけれども、まだ御返事がいただけないという状態にございます。なおこの点は話を煮詰めまして、三者の協議が円滑に行なわれるようにその場をつくりたいと鋭意
努力中でございます。