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1971-09-09 第66回国会 参議院 文教委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年九月九日(木曜日)    午前十時十分開会     —————————————    委員異動  九月一日     辞任         補欠選任      楠  正俊君     大竹平八郎君  九月四日     辞任         補欠選任      大竹平八郎君     楠  正俊君  九月八日     辞任         補欠選任      宮之原貞光君     小野  明君  九月九日     辞任         補欠選任      金井 元彦君     白井  勇君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大松 博文君     理 事                 楠  正俊君                 久保田藤麿君                 鈴木  力君                 安永 英雄君     委 員                 金井 元彦君                 志村 愛子君                 内藤誉三郎君                 永野 鎮雄君                 濱田 幸雄君                 宮崎 正雄君                 小野  明君                 片岡 勝治君                 鈴木美枝子君                 内田 善利君                 萩原幽香子君                 加藤  進君    国務大臣        文 部 大 臣  高見 三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君    説明員        大蔵省主計局主        計官       青木 英世君        文部大臣官房審        議官       奥田 真丈君        文部省初等中等        教育局長     岩間英太郎君        文部省大学学術        局審議官     安養寺重夫君        文部省大学学術        局審議官     犬丸  直君        文部省社会教育        局長       今村 武俊君        文部省管理局長  安嶋  彌君        文化庁長官    今 日出海君        文化庁次長    安達 健二君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○教育文化及び学術に関する調査  (昭和四十七年度文部省関係予算概算要求等  に関する件)  (学校施設整備に関する件)  (原子爆弾被災記録映画に関する件)  (教職員の行政処分に関する件)  (文化財保護に関する件)  (幼児教育に関する件)  (筑波新大学に関する件)     —————————————
  2. 大松博文

    委員長大松博文君) ただいまから文教委員会を開会いたします。  まず委員異動について御報告いたします。  昨九月八日、宮之原貞光君が委員辞任され、その補欠として小野明君が選任されました。     —————————————
  3. 大松博文

    委員長大松博文君) 次いで、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動に伴い理事が一名欠員となっておりますので、この際その補欠選任を行ないたいと存じます。  選任は先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じます。御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 大松博文

    委員長大松博文君) 御異議ないと認め、それでは理事楠正俊君を指名いたします。     —————————————
  5. 大松博文

    委員長大松博文君) 教育文化及び学術に関する調査を議題とし質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 安永英雄

    安永英雄君 まず四十七年度文部省概算要求が一応固まった時期でありますし、この問題について質問をいたしたいと思います。  まず第一番に、非常に素朴な質問でありますけれども文部省概算要求を一応決定をいたしました。一般会計で一兆二千三百十億、あるいは財投で三百六十一億と、まあこういうトータルを出したようでありますが、例年であれば大体これは削られることはあっても、このトータルを増加させる、伸ばすということは今日までなかったわけでありますが、この点の基本的な考え方はどこに置いてあるのか。従前のようにもう概算要求一ぱい一ぱいでやって、これ以上は要求しないし、むしろ削られることについても、その削ることについて防衛をしていくんだという従前文部省態度であるのかどうかお聞きしたいと思います。
  7. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 予算要求は一応の前年度対比二五%のワク内でするということになって要求をいたしました。ただ従前から申しますと、この中で問題はことしの経済情勢というものから見ますというと、景気刺激の必要上いろんな公共投資などというものをふやさなければならぬという問題が起こり得るだろうと予測はできます。その場合にはその場合に対処するというつもりで文部省としては一応積算いたしました。この基礎に基づきまして二五%のワク内での要求をしたわけでございます。
  8. 安永英雄

    安永英雄君 関連がありますからこれもお聞きをいたしたいと思いますが、本年度補正予算について文部省としては要求された、こういったものはないのかどうか。またこの補正予算に対する文部省態度といいますか、これについて原則的なお考えをお聞きしたいと思います。
  9. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 補正予算編成方針はまだ実は明らかになっておりません。大蔵大臣日米経済閣僚会議から帰ってまいりまして、規模なり範囲なりをきめることと思うのでありますが、私ども景気刺激という観点から公共投資で大幅な補正をするということでありますならば、今年積み残しになっておりまする公立文教施設というものにつきましては積み残しの分だけはこの際全部入れてもらう、あるいは先取りしてある程度のものを要求するということは当然起こり得ることだというので、実は内々準備はいたしておりますけれども、いまのところまだその補正予算をどうするという具体的な方針が立っておりませんのでこの席でどうこうということを申し上げかねるのであります。
  10. 安永英雄

    安永英雄君 大体基本的な考え方はわかりましたけれども、私は非常に消極的な文部省予算要求というものではないかというふうに感じます。たとえば一般予算の今後の何といいますか伸びを要求していくという立場についても、あるいは経済的な変動があればという立場である。あるいは補正予算要求についても私はこの点についてはあと質問をずっとしていきたいと思いますけれども補正予算もまだ方針が出ていない。方針が出ていないので、内々幾らか考えておるけれども——こういう程度にとどまっておると思いますけれども、私はその点については非常に不満なんです。  と申しますのは、結局いまの経済的な変動というものがあるであろう。あるいは設備投資の方向であるいは補正予算を組むような方針が出るかもしれないというような予測がありますが、私はいまの状態からいけば明確に例年とは違うと思う。これはいまさら私がここでドル防衛のこのニクソンの声明、これをめぐって日本経済がどうあるべきか、あるいはまた、いま景気浮揚というふうな問題もちょっと発言されましたけれども、はたして日本経済がそういったこの当面の目先の景気浮揚、こういった形ではとうてい克服できない問題であるし、これはもう基本的にこの際抜本的に経済政策を変えなければならぬという立場を持っておりますが、これはまあ予算委員会等で私はやろうと思って場所は変えたいと思いますけれども、いずれにせよそういう態勢になっていることは間違いないし、あるいはこの十五ケ月予算、こういったことを公然と大蔵大臣も言明したこともありますし、あるいは公共設備投資というものを拡大していくとか、あるいは社会資本充実というものを打ち出してみたり、あるいは減税というものも打ち出しておるわけでありますから、当然本年度補正予算明年度予算というものについては大きく変動していくことは私は間違いないと思う。したがって、いま大臣がおっしゃったようなことでは文部省としては何といいますかむしろ逆な場合で、大蔵省筋あたりからこれだけのものを使えといってあわてて名目をつくるような状態が私はくるのではなかろうかくらいに心配する。そういう状態が非常に好ましいというふうに大臣思われるかもしれないけれども、私は立ちおくれだと思う。  この点私はちょっと調べてみたんですけれども建設省あたり他省ですよ、他の省は、もうほとんどこの点についての検討を日夜やっておる、こういう状態を私は見てきたわけでありますが、たとえば建設省あたり都市公園整備五カ年計画これに一兆円、あるいは第四次の治水事業の五カ年計画、これが四兆七十四億、それから第三次の水道整備の五カ年計画二兆六千億からの計画をすでに立てている。そしてこれを明年度予算とそれから今年度補正予算というものの中に完全に組み入れようという形できておりますが、特にこの事業費あたりは私はびっくりしたんですけれども、四千億から五千億の金を予備費の中で要求することを出している。あるいは国庫債務負担行為あたりも当然相当額の金額を入れるということで、もうすでに折衝に入っているという状態なんです。  そこで、いまもおっしゃったけれども、当然四十七年度文部省要求というのも一大きく変化をすることは間違いないし、特に補正予算の問題については、いま大臣のほうで、内々まあ一応検討はしておるということでありますが、この点について明年度予算補正予算の問題について文部省考え方をもう少し詳しく、こういう時期でありますから表明をしていただきたいというふうに考えます。
  11. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) 補正予算についてのお尋ねでございますが、基本的には大臣から御答弁申し上げましたように、政府全体としての補正予算の扱いがきまっていないものでございますから、大蔵省に正式に要求をするという段階に至っておりませんので、私どもといたしましてはどういう事態にも対処できますように具体的な数字検討をすでに始めております。一応の数字を持っておりますが、基本的な政府態勢がきまりませんので、まだこれを大蔵省に提出をするという段階に至っておりませんので、内々の話は、これはしばしば主計官等と話し合いをいたしまして、意見の交換はいたしておりますが、正式には出していない、こういう状況でございます。  内容を多少申し上げたいと思いますが、昭和四十六年度公立文教について申しますと、予算額が五百三十九億円、事業量が三百六十八万平米ということでございますが、実際の執行にあたってみますと、児童生徒急増市町村における事業量でございますとか、あるいは過疎地帯における学校統合でありますとか、あるいは小・中学校の屋体の整備でございますとか、かなり大きな要望がございまして、その要望に全部必ずしも応じ切っていないという状況でございます。その面積は、私ども一の推計によりますと、約二十一万平米ということでございます。今年度大臣積み残しとおっしゃいました面積がそうした二十一万平米という面積に達しております。それから来年度予算でございますが、来年度公立文教施設といたしましては一千三十三億の要求をいたしております。千億をこえた予算というのはもちろん今度が初めてでございまして、積極的な姿勢で臨んでおるわけでございますが、これを前向きで本年度補正予算である程度整備することができないかということを検討いたしております。しかし、いずれにいたしましてももう九月でございまして、これから事業を始めるということになりますと、町村における自己資金の用意の問題でございますとか、あるいは年度内工事が終わるということがこれは予算をつけるたてまえでございますから、年度内にはたして工事が終わるであろうかといったような問題がございますので、そこにおのずから限度もあるかと思いますが、できるだけ極力前向きでこの問題には対処していきたいというふうに考えております。
  12. 安永英雄

    安永英雄君 そうすると、四十七年度予算というものについては大体伸ばしていくという考えはないけれども補正予算の中に何らかの形で、そういう機会があれば文部省としては要求していくと、こういうことですか。
  13. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) 四十六年度のいわゆる積み残しの二十一万平米につきましては四十六年度補正機会がございますればぜひこれはお願いしたい。それから四十七年度予算につきましては、千三十億をこえる要求をいたしておるわけでございますが、前向き整備という観点から、できるだけこれを繰り上げて施行するということを検討したい、こういうことでございます。
  14. 安永英雄

    安永英雄君 私は項目ごとにもう少し聞いていかないと、平米の問題ぐらいで、いまの大きく変わろうとする予算編成の流れの中で、何といいますか、文部省が取り残されるような気がするのです。これは他省に行ってごらんなさい。とにかく文部省だけですよ、ゆっくりしておるのは。内々考えておるなんということじゃなくて、積極的にどんどんあれして、むしろアメリカに行っている経済閣僚あたりが帰ってきたときには、こっちのほうで補正予算方針などはほとんどでき上がっている状態になってきて、その割り当てをもらってそれから考えるというようなゆうちょうな時期では私はないと思う。もちろん文部省予算の中で政府考えておるような景気浮揚とかそういうことの関係はこれは建設省ほどの問題では私はないと思う。これはわかります。しかし、社会資本をこの際充実することが、いままで取り残された教育関係の国の予算、こういったものを、この際、やはり大きく今度の経済変動に基づいて国の経済の立て直し、こういう中ではっきり伸ばしていかなければならぬ、こういう絶好の時期だということを私はつかんでおかなければならぬということで申し上げておるわけでありますが、聞いてみますというと、いまのことは、私は文部省としてはまだまだ足らない、平米の問題ぐらいではないのじゃないかというので、項目ごとに私は聞いていきたいと思う。  特に、いま、校舎、施設、こういった問題について多少触れられました。そしてこれは私は当然補正予算の中に入ってくるものというふうに考えますから、一応その点はあとに回しまして、幼稚園設置という問題について、概略今年の計画、これをお示し願って、そしてこの幼稚園設置という問題について、全国市町村要求というのが現在どういうふうになっておるのか、満たしておるのかどうか、予算が。こういう点について説明を願いたいと思います。私が言いたいのは、この際、幼稚園というものの設置というものについては、今度は昨年に引き続いて大幅という説明があるだろうと思うけれども、これは長い間の懸案であって、ようやくいま緒につこうとしておるわけでありますが、この時期を逃がしたら、幼稚園十カ年計画などというものは途中で挫折するというふうに私は考える。こういった点について、いまの予算の中でどう出ておるのか。また、要求がどうあっているのかということについて説明願いたい。
  15. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 本年度予算要求につきましては、本年度の初めに大体前に七カ年計画を立てました際の六三・五%というパーセンテージが六〇%程度の充足まではいくだろう、そういう予想のもとに、四十六年慶におきましてはその既定の計画を完了するというふうな形で予算要求をしておるわけでございます。  それから、四十七年度におきましては、新しくいままでの七カ年計画基礎に立ちまして、新しい幼稚園振興充実計画を十カ年計画で策定をいたしまして、とりあえず四十七年度におきましては、幼稚園新設七百五十校、それから学級増千五百学級要求をいたしておるわけでございます。その前提になりますものは、中教審の答申にもございますように、十年の間で希望する四歳児及び五歳児を全部幼稚園に就学させることができるようにするというのが基本的な考えでございます。同時に、予算要求といたしましては、公立私立のいわゆる父兄負担格差というものをなくしていこうという、この二点に重点をしぼりまして予算要求をしておるわけでございますけれども内容としましては、ただいま申し上げましたように、来年度はその初年度といたしまして、新設幼稚園七百五十校の計画、それから千五百学級の増設、それに伴ないまして公立幼稚園につきましては人件費の三分の一の補助を実施したい。それから私立幼稚園につきましては、公私立格差をなくすために、公私立の現在授業料に差がございますが、それを三カ年計画で埋めてまいるために来年度はとりあえずその三分の一の一万円につきまして国が三分の一の補助をしたいというふうな考え、さらに設置を促進いたしますためにスクール・バスの購入費補助を行ないますとか、あるいは公立幼稚園、それから私立幼稚園につきまして現在行なわれております施設費、それから施設費補助につきましては、その補助率を高めるというふうな措置、さらには私立幼稚園で現在法人立だけに認められております融資の範囲を広げていくというふうな要求、そういうものを総合いたしまして、来年からは十年計画でもらて希望する四、五歳児を全部幼稚園に収容できるように、それから公私立格差をなくすことができるようにということを目ざしまして要求いたしているような次第でございます。
  16. 安永英雄

    安永英雄君 私はそういうことを聞いているわけじゃないので、私はこういった時期に七百五十校というのを私は私なりに計算したときに、一応十カ年計画あるいはその途中の五カ年の時期というのを区切っていった場合に、私は少なくともここで千校に踏み切ったほうがいい、あるいは千五百学級というのを二千という形に私はこの際要求し直すべきだという考え方を持っているから聞いたわけです。私は全部のデータいま集め切らずにおるからはっきりしたことを申しませんけれども、この十カ年計画、五カ年計画聞いて直ちに着手したいという市町村ずいぶん多いわけです。これを機械的に三分の一とかなんとかという形で割っていくといった場合に、これは全国に配置する区分というのはずいぶん混乱してきますよ。私は具体的に全国の各市町村公立、特に公立という問題について設置要望しておるという問題についてあまりに機械的過ぎます。私はこの際もう一回市町村のこの要求というものの実態を調べて、できる限りとにかくこの際、初年度のいまの時期に、この幼稚園設置という問題について大きく一歩を踏み出すという時期じゃなかろうかと思うので、この点について、これはかたまった考え方なのかということを私聞いているわけです。その点どうです。
  17. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) この十カ年計画を立てます際に、私ども過去の実績等も考慮しながら来年度要求をしたわけでございますけれども先生がただいま申されましたように、非常に市町村でそういうふうな熱意があるということを承りまして、私ももしそれがほんとうであれば非常にうれしいことだというふうに考えております。ただ、十カ年計画を立てます際に、いままでのデータが非常に不足なもんでございますから、私どものほうで個々の市町村設置等につきましてどういう希望を持っているか、そういう点をまだつまびらかにいたしておりません。そこで、来年一年間どういうふうな計画でもって市町村幼稚園を建てていきたいのか、そういうことを徹底的に調べまして、そこでもう一度十年計画を練り直してみたいという考えでございます。来年度の七百五十校という数は一見少ないようでございますけれども、従来からの実績に比べますと倍程度になっております。学級増にいたしましても、私どもとしましてはこれはまあかなりの大きな数字じゃないかというふうに考えておりまして、これができましたら私どもは第一歩としては成功じゃないか。さらに来年、二年目からは先生指摘のようなことでございますれば、これをまあ大きく計画を変更いたしましてその推進をはかりたいというふうに考えておる次第でございます。
  18. 安永英雄

    安永英雄君 先ほども言ったように、去年までとの比較比較になりませんよ。何回言ったってなかなか予算出さない。これは比較の上からいけば非常に飛躍的という評価はありますけれども、私の従前から言っておったように、行きたい人は全部幼稚園に入れるというふうな立場からの要求からすれば下のほうであって、私はいまおっしゃったように、いまから各市町村要求というのは非常に上がってくると思いますが、十年計画の機械的な配分にこだわることなく思い切った措置をやってもらいたいし、要望として私は早急に調査されまして、明年度予算というものの大きな変更をもってことしは進んでもらいたいというふうに考えます。  次に、医科大学設置の問題にからむのですけれども予算の中だけでは二校というものを一応設置するというふうな意向でありますが、ごく最近私学あたり医学部入学金の問題、納付金の問題、寄付金問題等が非常に問題になっておりますが、しかし、やはり何といっても医者不足ということはこれは当然何とか考えなきゃならぬし、厚生省にだけにまかせるわけにはいかない。文部省としても相当大きな力を入れなきゃならぬと思うのです。私はそういう時期にきておると思うし、公立国立あたり医科大医学部設置、こういったものにこれは画期的に取り組んでいかなければならぬ時期がきているわけですよ。私は二校の要求というのについては不満なんです。この際やはりこの大きく変わろうとする予算編成方針、特に補正予算、こういったものの中で大胆にこの医学部関係医者養成、これあたりばこの際やらないと、なかなか今後はむずかしい問題なんですよ。設置基準その他の問題もありますけれども設置基準のほうがきちっとそろえばどんどん認可し、そうして国がこれについての設置を促進していく任務があると私は思うのてす。聞くところによると、相当設置をしたいという希望も出ているということですけれども、そうして二校に限っておりますけれども、これについてはこの際追加でもしてそうしてこれをふやしていくという考え方はないのか、この点についてお尋ねをしたいと思うのです。
  19. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 安永先生指摘のとおりでございます。私もこの際、不景気下における社会開発というものが実は日本経済政策で一番大きな問題であろうと思うのでありまして、そういう観点から申しまして医師不足の問題を解消するという問題をいままであまりにも私立にまかせ過ぎておった。それがまあいろいろな弊害を生んでおることは御承知のとおりであります。これはまことに申しわけないと思っておりますが、今後はひとつ国・公立相当医師養成の面に本格的に取り組みたい。また私学の現状にかんがみましての助成も同時にいたしたいと考えておりますが、二校ということになっております。けれどもこれはまだ予算編成段階におきまして相当の弾力を持たして要求をいたしておるのであります。それがどういう形になりますかはわかりませんが、二校に限定しようという気持ちは持っておりません。この点を御了承いただきたいと思います。
  20. 安永英雄

    安永英雄君 時間がありませんから、二校に限定した考え方ではなく、むしろ条件その他が整ったところではどんどんやっぱりこの際この三校にこだわらず三校、四校、五校というふうな形で要求は追加していくというふうにお考えだというふうにお聞きしますが、そのとおりでございますか。
  21. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) そうでございます。
  22. 安永英雄

    安永英雄君 それではそのように、この際、この文部省の二校にこだわらないでぜひ医学部の問題、医者養成、この点については抜本的にひとつ飛躍的にこの計画を立てて折衝をしていただきたい。私はこの時期をのがすとなかなかむずかしいと思います。  次に、やはりそういった予算との関係で、予算編成の大きく変わろうとする情勢下で、特に私はお願いをしたいし、考えをお聞きしたいわけでありますが、今度のドルという問題について、関連して、一番しわ寄せを食らうのは中小企業、これは相当現在でももう倒産が起こっておるという状態なんですが、この学校教育の問題から考えていきますというと、中小企業に働く青少年、これが主として定時制に通っておるわけであります。現在でも定時制に通う場合に企業の態度としては、宣伝をして、うちの会社に入ってきたときには定時制の学校にも通わせてあげます、授業料もみてあげます、給食費もみてあげますと宣伝をしているわけです。現実の問題としてはなかなかそうではないので、定時制がいつの間にか通信教育のほうに切り変わるような動きも現在出てきておる。私は通信教育が悪いとは言わないけれども、そういった方向に持っていこうとする中小企業の苦しさがあると思う。これがますます今度のドル問題で拍車をかけていくというと、私は中小企業がかかえておる従業員の青少年を定時制に通わせるというこの問題に非常にしわ寄せがくるだろうと思う。この委員会でも私はたびたび申し上げたのでありますけれども政府のほうとしても大きく減税という問題を考えておるようであります。私は今日まで中小企業に、これは定時制に通わせる場合にその企業に対してある程度の減免的な恩恵を与える、こういう形でそしてしかも定時制に通わせる、義務づけまではいかないけれども相当勧奨をしてそして定時制にやるという立場をとったらどうかということを主張し続けてきたわけです。政府のほうも今度はこの法人税とか、あるいは所得税の減免その他ドルでたまったものを国民に還元しょう、こういった意向も非常に強く押し出されてきておるし、減税問題については当然出てくる問題でありますが、せめて文部省のほうは減税の問題については、この定時制の生徒にしわ寄せがくるという問題を、税の問題として考えてこれをひとつ文部省から強く要求をして、この際そういった定時制の生徒の立場考え、あるいは定時制は危機に瀕しておるわけです。だんだん減っている。こういったものを歯どめをするといったような立場の絶好の時機と考えますが、この点については従前から私どもとしては主張し続けてきたわけでありますけれども、ぜひとも文部省としては考えてもらいたいと思いますが、この点どうでしょうか。検討する、検討するではきたのですが。
  23. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 御指摘のことにつきましては、私ども一非常に関心を持っておりますし、それから現在まだ定時制、通信教育に行けない子供が六十万人ばかりおりまして、対象になっておりません者をそれを何とかして定時制、通信教育の制度の中に引き入れていきたいということで来年度予算要求も重点的に考えておるわけでありますけれども、ただいま御指摘のありました税制の面につきましても、従来から雇用主が授業料とか、あるいは給食費とかいろいろめんどうを見ておるというようなことを伺っております。そういう場合におきましては、私どもとしまして事業主が授業料、給食費等を負担している場合には法人税法上給与とは別個にこれは損金として算入してほしいということを、このたびの予算要求と並行いたしまして財政当局のほうに要望いたしておるような次第でございます。
  24. 安永英雄

    安永英雄君 この点は、これはぜひひとつ実現できるように大臣のほうからも格段の努力をしていただきたいと思う。いま定時制、通信教育この問題については危機ですよ。今度の不況ということに名をかりて定時制あたりつぶれますよ。ぜひひとつ何とか税の問題、いま岩間さんおっしゃったように、授業料とか何とかいう問題は、これは生徒に対しての配慮は今度の予算の中にうかがえることは私は評価しているのです。しかし問題は、仕組みとして事業所がこの定時制に行けるような立場をこの際とっておかないと、これはただ単に個人の授業料を少し減らすとかなんとか、手当をちょっとつけるというふうなことでは解決できないような事態に定時制教育は追い込まれていくだろうと思いますので、ぜひそういった点を実現してほしいと思います。  たくさんありますけれども、時間がありませんから簡単でけっこうですが、たびたび私は申し上げたのですけれども、沖縄復帰に伴う問題なんです。教育の問題なんですが、きのうもちょっと説明文部省から聞いたのでありますけれども、私はぜひともこの補正予算というものの中で復帰前にもう少し文部省のほうで力を入れてほしい。私はたびたび琉球大学日本の国立大学並みの形にしておいてそれを返還時に迎えるという形でぜひともひとつ——少なくとも沖縄返還前におけるいろんな沖縄の教育のおくれているその問題についてのあれを復帰後に考えるというのじゃなくて、復帰前にできるだけのことはやってほしいということを要望し続けてきたのでありますが、きのうの説明では補正予算にもあまり関係ない、明年度予算についてはありきたりというふうな感じを受けるのでありますが、簡単でけっこうでありますが時間がありませんから、補正予算なりあるいは明年度予算というのでこれは前でも使用できるような形というふうな方法はないものかということで内部で、細部の問題は必要ありませんが、少なくとも沖縄返還を目の前にしておいて補正予算の中で、この沖縄の問題では一般予算にないのですから補正予算の問題で何かぐらいは復帰前に片づけておくという文部省の努力は必要でないのかというふうに私は憤慨しておるのです。この点補正予算に沖縄復帰前における沖縄の教育の問題についての対策というものに考えが及ばないのか、この点についてもお伺いをいたします。
  25. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) この沖縄の問題につきましては、御承知のようにいまのところでは援助資金で出しております。沖縄政府というものに援助しておりますが、援助資金で出しておるのでありますから、復帰前にこの援助金を急にふやす、補正でふやすということは必ずしも筋の通った話じゃないということが言えるのじゃないかと思います。御指摘の琉球大学の問題は、これはもう何としても政府は思い切って力を入れなければならない。とても内地並みにはなりませんのでこれは来年度予算措置いたしますけれども、ただいまのところこれを補正予算で処理するという方向には持っていけないのじゃないか、かように考えております。
  26. 安永英雄

    安永英雄君 私の言ったのは、補正予算という形の中で援助費という問題と項目が違うということで私はできるというふうに考えております。ことしの援助費という問題との関係で私はできるというふうに考えたから聞いたのですけれども、この点は知らないという立場ですから私はこれ以上申しませんが、今度の沖縄国会で徹底的にやるつもりです。  次に、やはり今度の補正予算方針あるいは明年度予算方針がずいぶん変わってくるだろうと予想される中で海外援助という問題が出てくると思います。この問題について文部省のほうで海外援助の問題について大きく、これが全部背負っておるというふうな立場で私も力んでこの委員会で言う筋合いのものではないことはわかりますけれども、しかしこの予算をよく見ますというと、後進国に対する開発援助ということで、アジア・アフリカ地域の教育文化面の協力援助という問題について予算項目が出ておるようでありますが、ことしまでの予算の中ではとにかく留学生の問題とか、あるいは教育指導者の交換とか、とにかくありきたりの、そして場当たり式な援助というのが文部省方針でなかったかというふうに私は考えるのです。項目はずらりずらり並べられてあって、どういう目的でどういう形でというふうに総合的にはなっていないのです。これは毎年質問しましたが……。そこで今度のアジア地域に対するユネスコの負担金、これあたり新規に出てきておる。あるいはそのほか、このアジア地域の教育文化面の協力という問題が予算項目の中に出ておるようでありますが、端的に聞きますけれども、この日本の海外援助というのは非常に人気が悪いわけです。せめてこの教育の問題、文化面の問題については、妙なアニマルみたいな呼び方をされないで、ほんとうに教育面についての純粋な立場の援助というものをしなければ、何かのおりに、フジアの盟主みたいな形で教育面についてもこうだ、こうだというふうに、妙な文化あるいは教育の援助、そこに精神的な問題等がついてのひもつき、これは経済とは変わった意味の、私はひもつき等があってはならないと思うんです。これにはやはり一つの脈絡、一貫したものが援助の中にはなければならぬと思うんですが、いままでは項目ごとに、ここは留学生が来ますからこうしますというふうな項目だけになっておりましたが、これについてのユネスコの負担金等を皮切りにして、この際、そういった教育文化面のこの援助、こういったものについての基本的な方針というものについてお伺いしたいと思います。
  27. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 安永先生指摘のとおりであります。私も、アジア・アフリカに対する、開発途上国に対しまする教育援助というものは、できるならば多国間援助というものをやってまいりたいと考えております。これはまあ原則であります。もちろん二国間でやる場合も出てまいりますけれども、できることならば、日本がひもつきの金を出したというような印象を与えないで、国連のユネスコの場を通しまして、ユネスコの場を通して援助の金を出す、助成の金を出すというような形で金を出したいというつもりでおるのであります。たとえば、教育センターなどというようなものに対する援助というものはいままでいたしておりませんでしたけれども、来年度予算で、物に対する援助もやろうじゃないかということにいたしましたのは、いま安永先生が御指摘になりましたような、少なくとも精神的な、そういう負担をアジア・アフリカ各国にかけちゃならぬという配慮から出ておるということを御承知をいただきたいのであります。
  28. 安永英雄

    安永英雄君 私は予算説明のとき、今日までなかったわけですが、アジア教育協力研究協議会というのが編成されたそうですけれども、これはどういう目的で、そしてどういう構成メンバーでなっておるのか、これをお聞きしたいと思う。
  29. 安達健二

    説明員(安達健二君) アジア諸国に対する教育協力の基本的なあり方というものをこの辺でもう一度根本的に検討し直す必要がある。そういうことで文部省に事務次官の裁定によりまして、教育協力研究協議会というものを先般発足をしまして、学識経験者十九名からなる研究協議会でございます。この研究協議会の会長には国立教育研究所の平塚所長にやっていただきまして、この中には同時に外務省の経済協力局長、あるいは文化事業部長も入っていただきまして、教育協力というものの基本的なあり方を早急に検討するということでございますが、同時にこの研究協議会と並行いたしまして、このアジアの国に調査団を派遣いたしまして、これも四十日、五十日以上、一カ国に滞在いたしまして、その国の教育制度と、それからその国の教育援助の要請というようなものを基本的に検討して、どのような教育協力のあり方が最も望ましいかということを基本的に検討しよう、こういうことで研究協議会と調査団の派遣とを一体といたしまして、このアジア協力の、アジア諸国に対する教育協力のあり方を検討する、こういうことで、でき得れば今年度じゅうまでに、来年三月までに一応の結論をお願いいたしたい、こういうことで進んでおるわけでございます。
  30. 安永英雄

    安永英雄君 文化庁のほうから答弁されたから、おそらくこの任務、こういう発想、これは文化庁的な発想ではないかというように考える。私はこの問題については、文化庁を担当には入れてはいけないと思う、任務の関係から言って。教育文化の海外援助というものの問題については基本に触れる問題なんです。これは文部省のほうでしつかり握ってやらなければならないと思うのですが、私はこれに不満が一つあるわけです。びっくりしたわけです。それから具体的に話がどんどん進んでおる。この問題については、文部大臣、御存じですか。私は、文化庁の一つの文化事業あたり関係考えてやっているのじゃないかという気がする。重要な問題ですよ。また、この問題は、特にいまの編成、構成の面から考えてみますと、外務省よろしいでしょう、学識経験者もよろしいでしょうが、この中には財界人は入っていませんか。私は時間がないから意見も言いますけれども、こういう編成で、そうして今度九月ごろから東南アジアを五十日もかかって回って、何を見て来るのですか、このメンバーで。そこから出てくるものは何ですか、これは私はもう少し考えなければならないと思う。たとえば構成メンバーの中には現場の学校教育、あるいは社会教育に携っているような有能な人を入れなければだめだと思うのでありますが、現場教師は、現場教師の世界的なこの機構があるのです。そういった社会的な機構、東南アジアには一つのグループがあって、現場教師の機構がある。現場に飛んで行って、現場教師の意向というものを聞かなければならない。こういった意向というものを検討し、そういった教育をどう援助するかという問題について十分私し合いをしなければならないし、すでに話し合いをしておるのですが、そういったものも入れなければ、ほんとうの意味のこの東南アジア地域における教育文化の援助にはならないと思う。その計画は立たないと思うのですよ。私は練り直すべきだと思うのです。大臣、どうでしょうか。私は、これは一文化庁の中で、こういった東南アジアにおける、今後の大きな海外援助というような範囲における教育文化面における援助というもの、精神面における援助というもの、こういった問題については、私は大きな任務があるし、今後大きな使命があると思う。これをただ単に文化庁の中で発想して、そうしてちょこちょこと財界人やら外務省、学識経験者、中教審といった、平塚さんあたりがあれしておりますけれども、こういった片寄った方々の中では、このような方針は出ませんよ、発足はしましたけれども。大きく文部大臣の直轄くらいに、一つの問題としてつかんで、そうして編成をもう少しやり直すというようにしなければ、アジアの教育協力研究協議会なるものは非常に片寄ったものになってしまう。また何といいますか、日本の海外に対する信用もなくなりますですよ。権威がないです、第一。こういった問題は、大臣として改廃することはむずかしいと思うけれども、構成とか何とかという問題については、大臣、これは考える必要があると思う。この点は海外援助の予算の中に出てきて、陰にかくれて具体的にこういうことが進められているということを聞いてびっくりしたのですが、この点は何か改善策というか、大臣の御所見を伺いたいと思います。
  31. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) この協議会は各方面の方が入っておられます。もちろん文化庁が窓口になっておるのでありまして、文部省全体として取っ組んでおるのでございます。したがって、ユネスコのほうも参画いたしまして、そうして同時にまた、本省としても官房で対処しております。ただ問題は、御承知のように外務省との関係もありますので、一応の窓口を文化庁といたしたわけであります。まだ発足したばかりであります。一応その成果を見まして、その上で考えることがあれば考えていきたい、かように考えております。
  32. 安永英雄

    安永英雄君 私は、実際はいま発足しましたけれども、これを早く改善しなければならぬと思う。実績を見てなんていうと、たいへんな方向に行きます。したがって、私、重要でありますから、このアジア教育協力研究協議会、これの性格なり構成なり、あるいはこれについての予算、こういったもの一切について資料をひとつ出していただきたい、資料要求をいたしておきます。それから改善の方法は、資料を見て、直ちに改善できるものはひとつやってもらうように、私は次の委員会等でやりますから、早急にひとつ出してください。  時間がありませんから、最後に、予算の中で出ております問題で、先導的試行ということをそろそろ始めるという予算になっているような気がする。この前の委員会で大臣質問をいたしましたときに、この中教審の答申そのものをまるまる内容的に現在文部省がそっくりこれは適当である、したがって文部省の政策としてこれを直ちに全面的に実施していくんだという立場ではない、いまから国民の皆さんに十分この中教審の案なるものを検討をお願いするというふうな基本的な考え方を承っておったわけです。したがって、私はその際幼稚園の拡充とか、特殊教育の拡充、振興とか、こういったものについては、これは大臣がおっしゃるように、従前から文部省が基本的に持っておった問題であるし、私どももこれについては十分要求をしてきた問題である。したがって、一応これは中教審とのつながりがあるようではあるけれども、しかし、これが中教審の答申の内容とは別個に進行していくということについては、私はこれは評価できる、こういう立場で私のほうは進んできておったわけです。しかし、何といいましても、先導的試行という問題は、中教審の答申の中で初めて出てきた新語なんですよ。明らかに先導的試行そのものというのは中教審の答申を受けてやっているという以外にはないわけです。私はここでつまみ食いということばを——この前、大臣みずから使われて、つまみ食いはしませんということを言われましたけれども、中教審の中で、いまから国民に広くその意見を聞こうというふうな前提の中で、先導的試行だけが胎動しているような気がするのです。しかし、この前も聞きましたところが、四十九年から先導的試行というものに入れという中教審の答申が最後のほうについております。するかしないかはきめていないということを局長もおっしゃったわけです。ところが、まとまりました今度の概算要求の中の先導的試行という内容があまりにも明確に出てきておるわけです。そこで、時間もありませんから、四十九年度から先導的試行に踏み切ったという立場をとっておられるのかどうか、この点について端的にお答え願いたいと思うのです。
  33. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) この前も大臣あるいは私から御答弁申し上げました線は変わっておりません。したがいまして、四十九年度からということをきめているわけではございません。
  34. 安永英雄

    安永英雄君 それでは、この中教審の答申の中にある四十九年度からこれこれこういうふうにしなさいというふうになっておりますが、四十九年度より幼児学校四歳児から七歳児、国立十、公立四十六、私立十、合計六十六校、あるいはまた全段階、四歳児から十七歳児まで一貫して、国立三、公立四十六、私立十、合計五十九、これが先導的試行に入ろうとしている中教審の意向なんです。今度の予算を見ますというと、そこに調査研究会の設置、先導的試行に関する研究委託、先導的試行に関する研究費の助成、先導的試行に関する海外調査、これだけが出ておるわけです。この点について、まず一番に、この調査研究の委託というものの内容について、これはごく簡単でけっこうですから、説明を願いたい。
  35. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 中教審の答申では、ただいま先生指摘になりましたようなこまかいことは答申の中には私はないと思うのです。いろんな付属資料にはそういうことはございますけれども、中教審の答申そのものはかなり先導的試行については幅のある答申をしておられます。簡単に申しますと、学問的な基礎の上に立って十分検討して、それをどうするかということについては、まあ幅のある答申をされているというふうに私どもは理解をしておるわけでございます。そういう意味で、私ども、そういう幼稚園とそれから小学校の関係あるいは中学校とそれから高等学校の関係、あるいは教育方法の改善の関係、そういうもの全般につきまして調査研究を進めていくということでございまして、ただいま御指摘になりましたような調査研究の委託ということは、ただいまいろいろな問題でもって研究をお願いをしておりますけれども、そういう考え方と同じでございます。幼稚園先生あるいは小学校の先生、両方で連携をして、十分連絡をとりながらその四、五歳児あるいは小学校の一年、二年、こういうものをずっと進行するとすれば、どういうふうな教育内容教育方法あるいは組織、編制、そういうような点を学問的に掘り下げて十分研究をしてもらうという意味で予算要求しておるわけであります。
  36. 安永英雄

    安永英雄君 そうするとこういうことを先導的試行ということで、これは資料付属についておりますけれども、明らかにこれは中教審の具体的な内容なんですよ、やっぱり。それを志向しているわけなんです。ところが今度、いわゆる道徳教育とか、何とか教育、職業指導教育とかいうふうに文部省が研究指定校をつくる、これと同じようなものをつくっていくというわけですから、少なくとも幼稚園の五歳児とそれから小学校の三年生、このくくりと、これがどうなっていくかというので、あるところでその指定校というのが、小学校と幼稚園が併置してあるというところで特別の学級なんかをつくって、いま学問的にとおっしゃったけれども、実験的にもこれはやるんですか。あるいは中学校と高等学校、このくくりと、こういったところで、付属の中学校と高等学校とくっついておる、したがってある学級、こういったものを実験的にも一学級をつくってみて、そのくくりとくくりを一応つくってみて、その実験的な研究、こういう事態が生まれるのですか、生まれないのですか。
  37. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 本格的な先導的試行をやるとなりますと、これはもちろん法律の改正が必要でございます。それからまた児童、生徒というものをいわば——悪いことはでございますけれども、モルモットみたいに実験の対象にするということは、これは当然避けなければならない問題と思います。そういう意味で、たとえば中学校と高等学校の場合を考えていただくとはっきりすると思いますが、高等学校はこれは都道府県立でございまして、中学校は市町村立、両方が兼ねておるという場合はこれはほとんどないと思います。そういうことで、結局、中学校の先生とそれから高等学校の先生とが連携し合いながら、中教審の言われておりますような教育の方法、内容等がどういうふうになっていくかということを具体的に研究していただく、そういう意味でございます。
  38. 安永英雄

    安永英雄君 私はこれは相当混乱を招いておる。いまおっしゃったように、明らかに現行法で、あるいは制度でいけば、そういった私が先ほど言ったように実験的に一部分だけでも、一学級だけでもそういうくくりが、一応実験的につくってみるという立場はとれない、当然カリキュラムの問題があるし、教員の資格の問題が出てくる、施設の問題も関係をしてくるということで、当然できないとは思うけれども、しかし文部省の指定をする場合にはこれはひっついた立場をとりませんか、必ず。これの配分、これはどういうふうなことに考えていきますか。幼稚園と小学校との関係、これが三十校、中学校と高等学校の一貫教育、これが二十六校、これを指定する場合に、どういう配慮で指定されますか。
  39. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 幼稚園と小学校というような場合には、やはり大体同じところにあるということが、先生方の連絡等につきましては望ましいんじゃないかと思います。それから中学校、高等学校の場合も、まあ近くにあるということが望ましいということが言えると思いますけれども、具体的に、どういう学校にお願いするかということは、そこの予算にも書いてございますように、これをお願いをする経費でございます。都道府県とか、市町村関係の団体とか、あるいは私学でございましたら私学の団体とか、そういうところにお願いをして、適当な学校を選んでいただこうというつもりでございますが、私どものほうから、この学校がよろしい、あの学校がよろしいということで特に指定をするというようなことはしないつもりでございます。先生指摘になりましたようないろいろな弊害の問題もございます。その点につきましては、十分に慎重に行なってまいりたいというふうに考えております。
  40. 安永英雄

    安永英雄君 私は、いままでの道徳教育の指定校とか文部省の指定校というものの実態を、これはかつて鈴木委員からもずいぶん追及があったわけでございますが、そういう実態を、文部省が鼻くそみたいな金を出して、そうして朝から晩まで実験のお墨つきをもらって実験学校になっておって、そうして予算を取り、印刷物あたりも出さなきゃならぬ。PTAから金を取り上げる、町村からも取り上げる、こういうことになっている。文部省実験学校——指定校、こういうことはいけないということでしたが、先導的試行の先導的試行をやるんですよ、これは。私はこれは、第一受けるところがあるだろうかと思いますけれども、少なくともいまの、大臣がおっしゃったような基本的態度をとる場合には、私はここ当分の間、もしも研究するとしても、こういう指定校に研究をさせるというのはむごいと思う。またすべきではないと思う。私はもう少し学問的に研究をし尽くして、そうしてそれに対しては現場教師の意見とか、いろんな各方面の意見を聞いて、ある程度の理論的な固めをしておいてかからないと、私は、これは三十何校というわずかな数でありますけれども、この学校は相当全国に対する影響が大きいですよ。妙な考えを持っておるのが、その学校を見に来たり、自慢げに発表してみたり、これは私は先導的試行の先導的試行で先ばしってしまって、現在の教育をとにかく混乱におとしいれることがあると思うのです。ただ単に道徳教育の研究を委託します夫という問題じゃないと思うのです。この中教審の答申の中にもそう書いてあるんですよ、具体的な実験には直ちに入らないように、少なくとも二歩引いて、あなたのところでいま構想として持っておる、予算を取ってある調査研究会の設置、ここらぐらいでとどむべきだと私は思うのですよ。各方面から先導的試行について根本的にやるべきでない、こういう意見もあるんですから、先導的試行をやるという方向の中で、そうしてしかもそれが理論じゃなくて実験の段階に入っていくという形は、私は明らかに、あなたがどう言おうと、四十九年から実験をするかしないか、先導的試行に突入するかしないかはまだきめてないと言われるが、もう必ずその方向に走っていくという状態が生まれてくる。私は今度のこの予算審議の中で徹底的にこれは反対するところです。教育考えている人は、これはほとんど賛成してくれると思う。こういう先ばしった、わずかな金ではあるけれども、また従前から道徳教育の問題は指定校をやったけれども、その一つ一つの質が違うのですよ。私はその点で撤回する意思がないかどうか、なければ私どもとしてはつぶさなければならぬ、この予算。数はわずかな数でありますけれども全国に与える影響は非常に大きい。しかも学校と学校とが、別個ではあるけれども一緒の実験になれば幼稚園の生徒と小学校一、二年生を一緒にした学級をつくりますよ、どうしたってつくります、これは実験的にやれというんですから。理論的にはこれは現場に持っていく必要はない。現場に指定校をつくるということは、もうこれは実験的にやれということなんですよ、この趣旨は。そうするとその方向に走っていくおそれがあり、これは大臣の意に反しますすよ、結果は。私はそう思う。もうそういう実験なり理論的にやってみてするかしないかをきめるというのでは、もうこれは突っ走りますよ。三十何校ではありますけれども、これはその研究をどんどんやっていって、あれよあれよという間に幼稚園と小学校がいつの間にかくっついてしまって、先導的試行の先導的試行で先ばしる学校が幾らも出てくる。文部省が指定すれば県も指定する、町村も指定するということになって、あそこもここも全部できますよ、この実験は。文部省だけではこのわずかな金額でありますけれども文部省が指定すると県が指定します。町村が指定します。これはもう三十何校の数じゃありません。そういう私は危険性があると思う。私はこの問題については、予算を出しているから引っ込みがつかぬということになれば、この実験指定校というのはあってなきがごとく、やらせるとすれば非常に限定された中でやらせなければたいへんなことになる。たとえば、文部省はこうやるけれども、県ではつくってはならぬ、市町村ではつくってはならぬ、先ばしってはならぬとか、よほどの通達か行政指導がない限り、これは野放しになりますよ。私は先導的試行というのは国民の中で非常な議論を持っておると思う。中教審の中の一番最たるものですよ。飛び級と先導的試行と幼稚園の問題なんですよ。そういった点についての政治的配慮も必要なんです、これは。そういった点で、再度この指定校についての考え方というのをもう少し具体的にお話し願いたいと思う。
  41. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 私ども全く安永先生と同じような考え方基礎に立ってこの問題を処理していきたいというふうに考えておりますので、先生がいろいろ御心配いただきましたようなことを、これを私どもも非常に心配しているわけでございます。でございますからそういうふうな心配がないように、しかも学問的な態度でもって研究できるようなことでこの問題に対処したい。その結果、この先導的試行、幼稚園と小学校をくっつけたような学校というものをつくることがいいか悪いかという判断をしたい。これは中教審でもそういう弾力的な考え方を持っておるわけでございますから、そういうつもりで非常に中正と申しますか公正と申しますか、そういうふうな態度でもってこの問題に取り組みたいということでございます。御心配の点につきましては重々私どものほうも留意いたしまして、これに対処したいというふうに考えている次第でございます。
  42. 安永英雄

    安永英雄君 時間がきましたから。私はいまの局長のことばでは、予算は引かないという立場ですから、ぜひとも私どもとして反対をして、これはつついていきますよ。その覚悟でおってもらわなければならぬし、私は委員各位に協力していただきたいと思う。これはとんだことになりますよ。あなたが幾らこの問題について配慮しますと言っても、これを出発さしたらもう学制改革は妙な方向に走っていきます。幼稚園関係あたりも大騒動、幼稚園をふやすどころの話じゃないですよ。まあ私は、そこまで覚悟してやるんだったら、これは中教審じゃない、文部省考え方なんだから、次の委員会では私は先導的試行についての考え方を徹底的にいまから追及していきたいと思います。これをもって終わります。
  43. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 初めて議員になりましての質問でありますので、いままでの慣例、慣習等存じておりませんから、あるいはポイントのはずれるところ、失礼な点になることもあると思います。御容赦のほどをお願いしたいと思うわけであります。  私は主として文教施設、なかんずく義務教育予算についてお伺いをしたいわけでありますけれども、私もかつて自治体の議員をやっておりまして、小学校、中学校、高等学校の施設の問題について、議会でいろいろと教育委員会当局と論議をし合ったわけであります。突き詰めていくと、どうやら学校施設が非常に貧弱である、しかも特に過密状態の都市における学校建設が間に合わない、こうした問題について追及をしていきますと、その基因するところは文部省にあるというようなことを私自身も感じてきたわけであります。本日、大臣をはじめ、ここに相まみえてこの問題を話し合えるという機会を与えられまして、私もたいへんうれしく思っているわけであります。そういう立場からひとつ端的に申し上げますので、文部省側のほうもひとつ具体的にお答えを願いたいと思うわけであります。  まあ、いま日本は非常に経済成長が急速に伸びまして、GNPが世界第二位だとか、あるいはたまり過ぎてしまった外貨で逆に困っているというそういう日本でありながら、一たび都市、特に人口急増の地域に参りますと、バラック建ての小学校、中学校、ブレハプの学校がある。まさしくこれは日本の政治のゆがみといいますか、教育を阻害した日本の政治の象徴であろう、これはひとつ何とか是正をしていかなければならぬ。たまたま人間尊重の政策に転換をしなければいかぬというふうな情勢になってきたようでありますので、この際、ひとつ大臣も大いに決意を新たにしてこの問題に対処していただきたいということを冒頭申し上げておきたいと思うわけであります。  さて、具体的に質問に入りますが、初めてのことでありますので、非常に初歩的な質問をしたいと思うわけであります。第一番目に、義務教育施設、つまり校舎とか屋体の建築についての基本になっておる法律は、義務教育施設の国庫負担法であるわけであります。そこにはどういうことが記載されておるかというと、不足教室の解消をはかるんだということ、そしてそれに対して国は二分の一、あるいは三分の一の負担をするのだということが明らかに書かれておるわけであります。御承知のように、生徒がふえて教室が足らないということはこれは許されない、何としても教室はつくらなければならない。教室が足らないから入学生徒を一年延期して来年入ってもらうというわけにはいかぬわけでありますから、そういう意味でこの負担法ができておる。つまり国と自治体が協力してお互いに責任を分担してこの不足教室の解消をはかる、こういうふうに理解をするわけであります。ところが実際にはなかなかそういうことにはなっていないようでありまして、最初にこの国庫負担法の趣旨というものについての文部省側の取り組みの基本的な態度についてお伺いしたいと思うんです。つまり負担法の趣旨というものは、不足教室について国と自治体が任務を分担して、この不足教室という最悪の事態を解消していくんだ、つまり任務分担だ、責任分担だ、こういうふうに私は理解するのですが、この負担法はそういうことで文部省としても対処しているのかどうか、非常に抽象的な質問になりますけれどもひとつこの点お答え願いたいと思います。
  44. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) 義務教育諸学校の施設費の国庫負担法の国の負担の考え方というものは、これはただいま片岡先生おっしゃったようなことであろうかと思います。ただ国がその施設費を負担いたしまする場合に、やはり一定の基準がございまして、負担法の五条におきましてそのことが規定されておるわけでございますが、まず面積についての基準、それから単価についての基準、あるいは面積につきましてはその算定日についての基準というものが定められておりまして、その部分につきまして国が二分の一、三分の一等の負担率によりまして施設費を負担する、こういうたてまえになっております。したがいまして実際問題といたしましては地方公共団体が建設をいたしまする建物の実際の面積なり、あるいは実際の所要経費の二分の一を、あるいは三分の一をそのまま負担をするということには実はなっていないわけでございます。繰り返しになりますが、一定の坪数と一定の単価の範囲内におきまして二分の一または三分の一を補助する、こういうことでございます。しかしながら町村の実際の需要というものを無視することも適当ではございませんし、教育上必要な質の校舎を確保しあるいは面積の校舎を確保するということもこれは当然必要なことでございますから、面積の増加あるいは単価の改善、もっと大きく申しますならば事業費全体の改善ということにつきましては年来努力を続けておりまして、実際の工事費との格差が極力少なくなるように努力をしておる、こういう実情でございます。
  45. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 答弁の最初のほうは私どもまことにそのとおりだろうと思うのです。したがって、つまり負担法の趣旨というものは国と自治体が任務分担をし責任分担をして不足教室の解消をはかる、教室がないということはこれは許されないことですから、国も責任分担をするということで、そこでその分担の幅というものは二分の一ないし三分の一ということがこの法律の条文になっておるわけですね。いろいろ補助金や交付金あるいは負担金の中でも奨励的な意味を含めてのいろいろな負担金、補助金があるわけであります。それとはおのずから趣旨が違うわけなんです、これは。たとえば産業教育のような場合に一部負担をすることになっておりますけれども、何分の一負担をするということは法律には載ってないわけです。しかしこの負担法は明らかに二分の一ないし三分の一を負担するということがわざわざ法文の中に載っているということは、行政ベースの中でこの比率をくずすわけにはいきませんよ。文部省はこの法律を執行するにあたっていわゆる行政ベースの中で実質的に二分の一が三分の一になった、三分の一が四分の一になるということはこれは許されない。そういう意味からわざわざ二分の一ないし三分の一というような負担比率をきめていると思う。しかし実際はどうかといえばそれはあなたがいまおっしゃったように面積あるいは坪単価で、つまり二分の一ないし三分の一という法律できめられたことを実は面積とか、あるいは建築単価によってくずしてしまっているわけですよ。これは明らかに私は法律の趣旨に反していると思う。もし坪単価によってくずす、あるいは面積によってくずすということが許されるならば、わざわざここに二分の一ないし三分の一ということは書〈必要はないと思う。この点ひとつもう一度お答えを願いたい。
  46. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) 私ども国の負担率を行政的にくずしているというふうには考えていないわけでございますが、ただいまもお話がございましたように、基準坪数というものがあり基準単価というものがありその範囲内で国が負担するということでございますから、実質的には必ずしも二分の一あるいは三分の一になっていないという事態が起こり得るわけでございます。そこでその坪数あるいは単価が実情に合っているものかどうかという点が問題になるかと思いますが、単価につきましては実行上の単価と、鉄筋の場合におきましては一六%程度、鉄骨の場合は二一%程度、木造の場合は二三%程度国の補助単価が実際の単価より下回っております。しかしながら、じゃこの単価をそのまま見ることが至当であるかということになりますと、国の補助方針といたしましては、標準的な設計というものを前提にいたしまして、標準的な単価をつくる、その範囲内において補助をするということでございます。ですから、そうなりますと、標準的な設計というものの内容がはたして実際にマッチしておるかどうかということが問題になるわけでございます。そこで、私どもは来年度予算におきましてもその標準的な設計というものの中身を改善してもらいたいということを要求したいというふうに考えております。たとえば、床の張り方でございますと、現行単価でございますと、モルタルを塗りっぱなしということになっておりますが、実際の学校におきましては、これはビニタイル等が張られておるわけでございます。そういうところを標準単価の中に組み入れて、単価を改善してもらいたい、そういう方向で努力をしていきたいというふうに考えております。かつまた最近は労務費あるいは資材費等の値上がりもございますので、そういうものを見てもらいたいということで、来年度は大体一〇%程度の単価の引き上げを要求するという方針概算要求をいたしております。単価につきまして、実際単価とそうしたズレがある、そのズレを私どもはいま申し上げたような方向で改善をしていきたいというふうに考えております。繰り返しになりますが、その実際上の単価をそのまま補助単価とするということは、これは補助の大前提が標準的な経費を見るということでございますから、必ずしも適当ではないであろうというふうに考えております。次に、面積でございますが、これも現在の面積基準は、三十九年度から四十一年度にかけて改定された面積でございます。私ども決してこの面積が十分であるというふうには考えておりませんが、しかしながら、全国的に見ますと、この基準面積になお不足するという面積が来年度当初の見込みでございますが、なお九百九十万平米あるというような状況でございます。したがいまして、もちろんこの面積基準の改定ということも大きな問題ではございますが、現行基準に到達しない面積がなおこういうふうに大きな面積にのぼっておるということを考えますと、やはり現行の不足面積の解消をはかっていくということがむしろ適当ではないか。基準面積の改定という問題は次の課題というふうに考えております。単価と面積の両方についてお答え申し上げますと、そういうことでございまして、そういう実情から補助対象にならない坪数というものが現在若干出ておる、その解消につきましては、いま申し上げましたような方法で、今後も努力をしていきたいということでございます。
  47. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 十年ぐらい前に出された教育予算の解説書のような本があるわけであります。たまたま夕べちょっとそれを見たところが、同じような答弁をしているわけなんですよね、十年前と。いま具体的に単価のお話が出ましたけれども、いわゆる文部省考えておる標準の規模、建物、材料、そういうものをこえて、たとえばいまお話のあった廊下の標準以上に何かを張ろうとかあるいは外壁をもつときれいにするために、化粧のれんがを積むとか、まあ大理石なんか使うところはないと思うのですけれども、そういうふうに標準以外に自治体で、あるいは学校で、あるいはいいことではありませんけれども、PTAが負担をしたというようなこと、これは除外されて私はいいと思う。しかし、実際に文部省の標準で計算をしたいわゆる標準的な規模、それでもなおかつ相当の開きがあるということは文部省自体も私は認めざるを得ないと思うのです。ここに全国の資料や各市町村の資料、私はたまたま横浜でありますから、横浜の資料もありますけれども平米で約一万円の格差があるわけです。私も横浜の財政よく知っておりますから、決してプラスアルファをして、文部省考えている標準をオーバーしていいものをつくろう、あるいはきれいなものをつくろうというようなことをやっておる学校は、私はほとんどないと思うのです。ただの一つもありません、率直に言って。しかし、なおかつ小学校の文部省の単価は、平米三万六千百円です。これに対して、実際に要した費用は四万五千六百円ですか、ほぼ一万円に近いわけですよ。おそらくこの傾向は、横浜だけじゃなくて、東京でも大阪でも、あるいは大都市あるいはその周辺においては同じような傾向であろう。そういたしますと、つまり文部省考えておる標準の建築費に対して、なおかつ五千円も一万円も削るということは、この負担法の、先ほど申し上げました趣旨から許されるのかどうなのかということなんです。いや、それは許されるのだ、いいのだということは、私は出てこないと思う。現実に、いま言われたように、労務費の値上がりとか資材費の値上がりがあるということは、いま局長も触れられておりますけれども、現実にそういうことで予算不足を生ずるということであれば、そういうことが明らかであれば、これは是正しなければならぬと思う。これはもう十年来同じようなことがおそらく文教委員会でも論議されて、なおかつ今日こういう問題が言われるということについて、私も非常に残念でありますけれども大臣、この点について現実に建設費が非常にオーバーしてしまっている。ぜいたくなものを建てるわけじゃありません。大臣考えておる標準的な建物について、なおかつ平米一万円の格差があるという現実に一体どう今後対処していくか、これをどうお考えになっておるのか、ひとつお伺いをしたいと思う。
  48. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 片岡先生指摘のとおり、私も実は横浜の学校というのは私の目で見てまいりまして、よく承知をいたしております。飛鳥田さんと御一緒に見ましたわけで、ぜひ見に来てくれと言われるから見に参りまして、確かめまして、これはたいへんだ、これじゃ地方自治体はこれだけでつぶれるだろうという感じを持ちました。それが校地取得費になって、ようやくあらわれたわけでありますが、御指摘のように、文部省の標準設計というものをみんなオーバーしたものをおつくりになる、これはおつくりになるだけの社会的な要請があっておつくりになったと思うのです。そこで、御指摘のような、あれが違うじゃないかということになってくるだろうと思いますけれども、これはむしろ考え方といたしましては、市町村要望されるようなデラックスとまではまいりませんけれども、せめて父兄の気持ちにぴったりするくらいなものまでは文部省考えてあげたいものだという気持ちで、実は来年度予算におきましては単価の一〇%引き上げということを要求いたしております。それから標準設計につきましては、これは考え直さなければならぬという考え方でおるわけであります。まあ、そうは言いましても、それが地元の皆さんの御要望の全部を満たし得るかどうかということになりますと、なお不足であるということであるならは——間違いなく不足であろうと思うのであります。前向きにこの問題に取り組んでおるということだけは御了解をいただきたいと思うわけであります。
  49. 鈴木力

    鈴木力君 いまの大臣の御答弁で、前向きにということで、非常に私はいいと思うのだけれども、この際、文部省は、この基準を洗い直してみる必要があると思うのですよ。見た目に父母も納得するようにということばでは、私はやはりどうも納得できない。校舎を教育をする場であるという考え方から洗い直してみなきゃいけない。要するに、生徒が入っておる建物という考え方に今日までの学校の基準がある。ところが、学校というのは、子供が教育を受け、そこで生活をする場所です。そういう子供の心理的な発達の段階から学習をしていくというところに基準を置いた考え方を導入をしないと私は非常にあとに悔いを残すようになると思うんです。特に最近は永久建築がどこでもやられておるでしょう。その永久建築をやられておるときにいまの標準そのままで建ててしまっていつまでも不完全な校舎にずうっと進んでおる。これは私は教育的には教育サイドからの標準だとはどうしても言えないと思うんです。これは一つ一つ例をあげることもありませんし、私関連ですから、簡単に一つだけ申し上げておきますと、そういう点で低学年の校舎の標準はどうなんだ。教室と廊下があれば低学年の一年生や二年生の教育ができるはずがない。廊下からはみ出してすもうをとる場所も教室に付随した面積としては必要ですよ。そういうような観点に立った学校の面積の標準なり一はでなも一のではない。しかし子供の心理とか学習に耐え得る校舎とは何かというサイドからの検討が絶対必要だと思うんです。いま片岡委員から出た問題は、そういうことがすでに文部省より地方のほうが進んでいると、教育的に。だからどうしても標準をオーバーするという問題が一つあるわけですから、一番おくれているのは文部省だと思うんですよ、この校舎に対しては。何か、新聞に机、腰かけの高さを総点検する、現場の教師が気がつかないのはばかだというようなことをしゃべっていた文部省のお役人がおりましたけれども、それだけ感覚があるならば、教育そのものを見直さなければいけない。そのことから洗い直すということが、前向きにというついでにこれをお忘れなくやっていただきたい。質問ですか要望ですか、関連で申し上げておきたい。
  50. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 ことしの予算概算要求を見ますと、いま答弁にもありましたとおり、単価改善については一〇%引き上げを要求しているということであります。四十五年度から四十六年度におきましては、文部省の資料によりますと、九・七%、単価にして平米三万二千二百円を三万六千百円にしておるわけでありまして、つまり前年度においては九・七——約一〇%引き上げ、今回も一〇%ということになりますと平米単価三万九千七百円ということになるわけですね。しかし、私が先ほど指摘しましたとおり、四十六年度、横浜の建築費を見ましても、すでに四万五千六百円、平米これだけかかっておるわけです。今回のつまり一〇%是正改善をしてもなおかっこのままこの単価が値上がりするということがないという仮定に立ってみてもなおかつ平米五千円内外、坪にすれば一万五千円内外の格差が出てくるということであって、つまり、依然として文部省が改善をする、物価は上がる、材料費は上がる、労務費は上がるというおっかけっこですよね。おっかけっこといったって文部省のほうがあとあとになっている。先ほどから先導的試行などということばがいろいろ出ておりますが、文部省の実際やっておることは、校舎、施設についてはもうずうっと五十メートルも百メートルもうしろをおっかけている。先導的試行どころの騒ぎじゃない。まずそういうところでも追いついてからこれからの教育はどうすべきかということならばまだまだ私もわかるんですけれども、そういう単価の問題についても、一〇%というこの問題について、私どもは冗談じゃない、一〇%でもなおかつ坪一万ないし二万円の格差があるじゃないかと。ですから私は、概算要求としては一〇%ということじゃなくて、現実に標準的な建築を考えて、ずばりそのまま平米四万五千円なら四万五千円をここに出して私は大蔵省要求すべきだろう。つまり、これはすでに文部省が割り引きしたものを大蔵省要求をしている。ずっとそういう長い慣例になっているから、何%値上げということではなくて、現実に一坪幾らかかるんだ、最低これだけかかるんだということであるならば、文部省大蔵省に対して当然そういう要求はすべきじゃないか。みずから割り引いたものを大蔵省要求していれば、これはたまたまこのとおり通過したとしてもなおかつ大きな超過負担というものがつきまとうわけであります。こういうところに私は文部省の姿勢が、どうも特に地方にいるわれわれとしては理解に苦しむわけであります。なぜそのまま建築費そのものをずばり要求しないのか、私はこの点非常に不満であります。  それからもう一つは、特に面積差の問題についていろいろいまお話がありました。これも地方のそれぞれ自治体の要求、父兄の要求あるいは教師の要求等がありまして、昔のような規模、施設、それがだんだんよくなるということはこれはまた当然でありますし、それにこたえて自治体も、あるいは文部省も逐次改善をしていくというその過程は私も否定するわけではありませんが、しかし、たとえばこういう非常に矛盾した例があるわけです。六校舎を建築をした。しかしどうせまた来年六校舎を建てなければならぬということで、別々に、六校舎を建てたときの付帯施設をつくり、次の六校舎を来年建てたときに付帯施設をつくる、こういうことでは実際学校運営としては非常に大きな支障を来たすと思うので、この際ひとつ十二学級の規模としての構想のもとに建築をするという場合に、これは文部省の査定によってプラスアルファは許されませんよね、いまの基準でいけば、そういう場合でも。ところがそれはそれとして、それも非常に大きな問題でありますけれども、つまりプラスアルファを自治体がやった。翌年さらにこの六教室を増築するという場合の査定の中では再びそのプラスアルファ分が保有施設として控除される。これはいま鈴木さんもちょっと触れたと思うんです、こういう大きな矛盾がある。つまり自治体が努力をしてプラスアルファをつくった。その努力は文部省は永久に認めないのですね。そういう私は行政というものはあるのか、許されていいのかどうか。それを、そうした方式をことしもおやりになるのかどうか、この点ひとつお伺いしたいと思います。
  51. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) ただいまお尋ねの点は、施設前向き整備の問題かと思いますが、この前向き整備の問題につきましては、現行法におきましては、団地における大規模の集団住宅が建設される場合におきましては、一団地三百戸以上の場合に限りまして一年半の前向き整備というものが認められております。一般の場合は、当該年度の五月における不足坪数の充足ということでございますが、一団地三百戸以上の集団的住宅が建設される場合には、翌年の九月における見込み数を基礎にして整備をするということになっております。それから団地住宅の場合ではなくて一般の場合でございますと、児童生徒の急増が見込まれる場合におきましては二割の割り増しというものが認められております。ただいま先生の、特別なプラスアルファをしたという場合の扱いでございますが、二割という範囲内であれば前向きにこれを整備することが現行法におきましても認められているわけでございます。そこでこうした前向き整備がはなはだ不十分であるという御批判もいろいろ伺っておりますので、来年度におきましては一年半前向きを三年前向きにいたしたい。それからこの三年前向きの対象でございますが、これは団地住宅の場合だけではなくて一般の場合にも広げてまいりたいというふうに考えております。そういうことがぜひ実現したいものと考えておりますが、そうなりますれば、ただいまおっしゃいましたように、毎年度学級ずつ建築をしていくということは、おおむね解消できるのではないかというふうに考えております。
  52. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 これは人口急増の規模、傾向等によって違いますけれども、いま文部省考えておる二割というようなことではとても追いつかない非常に激しいところもあるわけですよね。そういうところについてはやはり弾力的に、その地域の、あるいは都市自治体の実情に応じて、これは法律事項じゃないんですから、行政のワクの中で弾力的に運用もできる面が多々あると思うんです。そういう点についてやはりぜひ改革をしてやっていただきたいと思うわけです。もちろんこの非常に大幅ないわゆる先行投資的なものは法律改正ということが必要かとも思いますけれども、この点はひとつ、特に自治体が非常に苦労し、あるいはそれ以上に直接生徒児童が苦労しているというような問題でありますので、これについてひとつ抜本的な改正を、改革をやっていただきたいと思うわけであります。  次に、来年度要求を見ますと、負担率を改善をすると、授業料の増加ということが一つの大きな目標になっておるわけであります。つまり急増地域におきましては二分の一ないし三分の一を三分の二に改善をしていきたいということであります。聞くところによると、これは毎年こういう要求を出しておるやに聞き及ぶわけでありますけれども、しかし、現実にこういうことが文章に出てきますと、各自治体では非常に大きな期待をするわけですよね。私は、この際この負担率を改正をいたしまして、もちろんその前にいま言った単価の問題とか面積の問題を現実に見合った数字に改定することによって相当大幅な改善ができる。まずそれを現実に合わした問題として対処するということが基本的な一つの方向だろうと思うんです。その上に立ってなおかっこの負担率を改正をするということが望ましいと思うわけであります。これについてはひとつ大臣の決意をこの際お伺いしたいと思うんです。これは毎年出しているんで、これはまあということを私はちらっと聞いたことがあるんです。しかし、少なくとも高見文部大臣相当の力もあるようでありますので、これはひとつこの際何とか実現をわれわれも期待するわけであります。ひとつ大臣の決意をお伺いしたいと思うわけであります。
  53. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 実は力がございませんが、この問題につきましては自治省とも十分打ち合わせしておりますし、ぜひ実現をいたしたいと思って、ことしはそういう覚悟で臨んでおりますので、いままでも出しているからことしも出すんだというようななまぬるい考え方でこの要求をいたしておるんじゃないということを御了解をいただければまことにけっこうだと思います。
  54. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 非常に力強い決意が表明されましたので、私もその期待を大きく持ちまして、やがて出てくる予算案を見てみたいと思うわけであります。  次に、これもいままでちょっと触れました点に関連するわけでありますが、この生徒急増、これは過疎の場合にも同じようでありますけれども、原則としていままで先行投資ということが許されておらないわけであります。特例として若干の幅が出てきたようでありますが、この先行投資ということがないために非常に教育現場は苦労しておるわけであります。特に郊外地で人口がどんどんふえているところの学校は、二年、三年、四年にわたって建築現場になっているわけです。毎年二教室、三教室でき上がると、次の年生徒児童の教室が足りないからまた工事を始める。私のいま住んでいる地域も非常に人口急増地域であります。行ってみるとこの四、五年もう工事現場ですよ、ずうっと。これは教育というものを非常に大きく阻害いたします。何となく落ち着かないし、がたがたがたがたやっているということであります。しかし、人口急増という予測もいろいろな資料からすればある程度できるわけでありますから、そういう予測に立って一定の学校を先行投資的につくるということを私はもうそろそろ文部省、国としても考えていいのではないか、この点ひとつ文部省側の見解を承りたいと思うわけであります。  それに関連して、これは直接文部省の責任というか、行政の範囲ではないと思いますけれども、非常に広大な地域で区画整理が行なわれる。山や畑をつぶして市街化の都市計画的なそういう区画整理が行なわれる。これについて、もちろん市ないし県あるいは国の非常にきびしい規制があるのでありますが、どういう規制をするかというと、まず第一に道路がどういう状況でなければいけないとか、幅がどうだとか、それから公園です。これだけの規模の区画整理の場合には公園は何坪、何平米なければもう許可をしない、こういう点で公園と道路、それから排水です。これについてはもう非常に法律がきびしく規制をしている。それに多少でも抵触すれば認可をしないという。しかしそれができ上がれば広大な何十万坪という区画整理ができてそこにだあっとうちが建ってくる。私は少なくともそういう広大な土地の区画整理をやる以上はもう必然的に学校用地が必要なわけであります。それは公園がどうしても必要だと同じように学校用地だって必要なんですから、そういう区画整理あるいは都市計画的な事業をやる場合には公園と同じように学校用地を確保する、そういうことをしなければもう認可をしないという法律的な規制をしない限り、都市近郊地帯においても校地を取得するということが非常に困難になりはしないかと思うわけであります。何かこれは人口急増市町村における公共施設整備等のための特別措置要綱案なるものがいま準備されておるやに聞いておるわけでありますけれども、私はもしそういうような法律が検討されているとするならば、これは文部省側としてひとつ強く要求をして、こういうものを組み入れるべきであると思うわけであります。  さらにもう一点は、逆にこの市街化地域の中において最近は土地が非常に高いものですから、高層住宅が建てられる。これも地元の例をとってたいへん恐縮でありますけれども、横浜のある町に、住宅公団が町のどまん中に三十階建てとか四十階建ての住宅を建てた。七百世帯か千世帯がそこにどかっと入る。町のどまん中でありますから、学校に行くったって学校が満員で増築もできない。改築もできない。しょうがないから、その住宅団地の一番下に六つの教室をつくって、文部省もよく御存じだろうと思うのですけれども、団地の一階を教室にした。こんな学校がありますかと人が見れば言われるようなそういうことをやらざるを得ない。したがって、私は、この都市改造という問題についても、今後学校用地、学校施設をどうするかということはたいへん大きな問題になってくるであろう、そういう点についても政府全体として抜本的な対策を立てなければ、市街化地域の中における文教施設不足ということが出てくるだろうと思うわけであります。これらの点についてひとつ文部省側の見解を承わりたいと思うわけであります。
  55. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) 学校用地の確保の問題でございますが、実は、私、去る七月、横浜市の港北区を中心とする児童生徒急増地帯の小・中学校を数校見せていただきまして、聞きしにまさるたいへんな状況に驚いたわけでございますが、何とかしなければいけないという感じを非常に深めまして、帰っていろいろ相談をいたしました。その結果、結論といたしまして、ただいま先生お話がございましたように、都市計画法、土地区画整理法、新住宅市街地開発法、都市再開発法等の諸法令があるわけでございますが、これらにおきましては、道路、公園等は、これは公共施設ということで、かなり優先的に必要な用地が確保できるような仕組みになっておりますが、学校施設につきましては、これと区別されておりまして、公益的施設ということで部分的には道路、公園等に準じた扱いもなされておりますが、必ずしもその扱いが十分ではないという点があるのでございます。  そこで、一応文部省としての考え方を整理をいたしまして、まだ最終案を得ておるわけではございませんが、中間的な考え方を整理をいたしまして、建設省計画局と現在折衝中だということでございます。  考え方の基本は、ただいま申し上げましたように、学校施設も一道路、公園等の公共施設に準じた扱いができないかということが考え方の基本でございます。そういう方向で今後さらに努力をしてまいりたいというふうに考えております。  それから横浜におきまして、非常に大きな小学校が高層住宅の一階に設けられたということは私どもも伺っております。そうした問題につきましては、実は文部省に大都市学校建築計画研究会というものを先般発足をさせまして、今後ふえるであろうと予想されまする大規模高層住宅と学校との関係を、教育的な観点と建築的な観点の両方からもう少し深めて検討してまいりたいというふうに考えまして、この研究会での検討を始めておるわけでございます。こうした大規模高層住宅が今後ふえていくということになりますと、学校用地をどこに求めるかというような問題もございますし、また学校が非常に大規模なものになるということも当然予想されるわけでございます。それからまた、土地が非常に得にくいために、その建物の一階ということは適当ではないかと思いますが、しかし、その近隣に学校用地が求められるということになりますと、住宅と学校との関係がいろいろな点で非常に問題になる。先生なり、あるいは児童生徒は絶えず住宅から見られているというようなこともございますし、それから住宅と学校の間の騒音の問題でありますとか、あるいは日照権の問題でございますとか、いろいろ関連する問題がたくさん派生してまいると思います。そういう点を教育学者、建築学者、現場の校長先生等あるいは教育委員会の建築担当の方々等の御参加をいただきまして、いま申し上げました研究会を発足させ、いろいろな問題を多角的に検討してまいりたいというふうに進めておる次第でございます。  それから最初の、前向きで新しい学校が整備できないかという点につきましては、やり方が二つあるかと思いますが、急増地域におきましては、横浜市等では現実に行なっておるわけでございますが、ある学校の分校というものをつくりまして、そこで前向き整備分の校舎を整備する。でき上がりましたら、それを分離、独立をいたしまして新しい学校として発足させると、こういう方式、それから条例上分校じゃなくて、独立校をつくりました場合にも、そこに必要な資格面積が算定されます場合には、これを補助対象にするということも現実に行なっております。したがいまして、問題は前向き整備の幅と申しますか、その量をどれくらいとるかということが、実質的な問題であろうと思います。その点につきましては、先ほども申し上げましたように、一年半前向きを三年前向きという方向に改善することによりまして、事態の改善をはかってまいりたいというふうに考えております。
  56. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 それでは最後に、今年度初めて発足をみました児童生徒急増市町村公立小・中学校施設特別整備費でありますが、これは学校用地に対する補助制度ということであります。今年、来年、再来年三カ年で六十億ということに当初なっておりまして、来年は二百二十億ですか要求するというこの意気込みや壮なるものがありまして、これまた大いに大臣に期待をするわけであります。ことしの二十億についての具体的な配分といいますか方針、個々にじゃなくて配分の方針がきまっておれば、どういう方針でこれを補助していくのか基準、そういうものについてこの際お伺いしたいと思います。  二番目としてこれも負担法と同じような方式、負担法の中で土地問題の解決をはかる、補助をする、そういう考えは持っていないのかどうか。  それから最後に、先ほど安永さんのほうからの質問の中で、補正予算の問題が出てきました。特に私は文教施設費の中において先ほど安永さんの答弁の中でも、いわゆる不足面積——本年度不足面積ですか、要求面積が二十一万平米あるということでありますから、これは負担法の趣旨からすれば、政府全体の補正予算方針云々ということじゃなくて、法律に基づけば、負担法の精神に基づけば二十一万平米というのが当然補助対象、負担せざるを得ない、そういうことですから、私は政府に対して積極的に要求をしていく、補正予算を組んでくれ、そういうことでなければ私はおかしいと思う、これは大臣が言う積み残しということですから。これはやっぱり補助の積み残こしだからことし積んでもらわなければ、それだけ教育というものが大きく立ちおくれるということは明らかです。そういう積極的な私は姿勢を示すべきだろうと思います。この点について再度ひとつお伺いをしたいと思います。
  57. 安嶋彌

    説明員安嶋彌君) 用地購入費補助の問題でございますが、御承知のとおり、本年度国庫債務負担行為で六十億、その中で現金分二十億を含めた予算が初めて計上がされたわけでございます。全体の事業量といたしましては、二百六十万平米の用地の購入面積を予定したわけでございますが、去る五月に買収計画市町村からとってみますと、三百二十八万平米という坪数が上がってまいっております。ところが、これをさらに精査いたしてみますと、すでに設置されておる学校の用地買収費が含まれておりましたり、また買収できるかどうか必ずしも確定されていない分も含まれておるようでございますので、ただいま申し上げました坪数をさらに精査をいたしまして、大体それが実際上買収可能であるかどうかということがほぼ——これは全国的でございますので、見当のつきますのが十二月ごろかと思いますが、その時点で坪数をさらに確認をいたしました上で配当をいたしたい。現在のところは配当を保留しておるような状況でございます。配当の考え方といたしましては人口と申しますか、児童生徒数の急増市町村ということでございまして、過去三年における児童の増加率が比率で五%以上、実員で千人以上。または比率で一〇%以上、実員で五百人以上。これは小学校の場合でございます。中学校の場合は、その千人が五百人、五百人が二百五十人というふうに半減されるわけでございますが、そうした市町村設置する学校の必要な用地について補助をするということでございます。そういう基本方針で配当案を考えたいというふうに考えております。  それから、用地費の補助につきまして建築費と同じように法的な根拠を与えてはどうだというようなお話もございました。が、これは今後の課題といたしまして私ども前向きで検討いたしたいというふうに考えております。  それから、いわゆる積み残し分の補正予算における扱いでございますが、大臣からは特に私どもに強い御指示がございました。この問題につきましても先ほど来御答弁がございましたように、積極的な態度補正予算要求してまいりたいというふうに考えております。
  58. 片岡勝治

    ○片岡勝治君 時間ありませんのでここで終わりたいと思いますが、いまいろいろ私のほうから指摘しました問題は、各自治体において非常に現実的に苦しんでおる課題でありまして、率直に申し上げまして、まあ大臣をはじめとして非常に強い決意のほどをお伺いをして私は大いに期待をしておきたいと思うわけでありますが、少なくともこういう論議を今後は繰り返さないように、文部省はよくやったという、そういうひとつたまには私どもにもほめるような質問をする機会を持ちたい、そういうふうに考えるわけであります。ひとつ補正予算あるいは来年度予算、そういうものを含めて大臣を先頭に、先ほど示された強い決意が具体的な数字になってあらわれるように御奮闘いただきたい、そういうことを最後に強く要望いたしまして私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  59. 大松博文

    委員長大松博文君) 午前の会議は、この程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時十三分休憩      —————・—————    午後一時十六分開会
  60. 大松博文

    委員長大松博文君) ただいまから文教委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、教育文化及び学術に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  61. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 先般、八月十九日の文教委員会で、今先生をはじめ皆さまに、私と映画を一緒にとらしていただいた被爆者の方をこちらに参考人として呼んで、そして被爆者の方たちから、映画をとったときの状況や、それからまた二十六年間広島で生活してきたことその他をお聞きすることは、ここへ参考人としてお呼びした一人の人ばかりじゃなくて、広島にいらっしゃる大ぜいの被爆者の方たちに勇気を与えることができるんじゃないかと思うから、どうぞお呼びしていただきたいというお願いをいたしましたが、きょうはお呼びすることができなくなってしまいました。で、お呼びしないというこの事実にかんがみて、それにはそれなりの理由がおありになるだろうと思いますし、その理由をお聞きしたいのでございますけれども、私は幾たびか被爆者の人と映画をとらしていただきましたので、その方たちがここへ来なくても、私がその人たちのかわりになりまして——かわりというよりも、ともどもの気持ちで、ここでしゃべらしていただこうと思います。  先日は原爆の映画を上映していただきたいというお願いを申し上げました。そして、そのためにも参考人の方をお呼びしたかったのでございますけれども、それでこの間のお話し合いを終わりまして、きょう、あらためて、引き続き被爆者の人を呼ぶことができませんでしたので、最初に、この映画を上映できないという——アメリカがこちらへ戻してまいりました二時間四十分のほうの映画なんです。つまり、アメリカで題をつけた場合は「原子爆弾の効果」。これはアメリカだったら当然「原子爆弾の効果広島・長崎」という題をおつけになると思いますし、また、私たちが映画という立場、また、日本人の立場から言いますと、原子爆弾の世界に平和に貢献する立場、こういうふうな形で上映したらいいんじゃないかという気持ちが一点ございますので、その二時間四十分のフィルムが大学学術局にあるそうでございますけれども、映画のプリントは焼き増しすることもできますので、できれば——できればじゃなくて、上映していただきたい。世界に平和を貢献する立場において上映していただきたい。題もそう変えていただきたいのです。「原子爆弾の効果」ではなくて、「世界に平和をもたらす原子爆弾広島・長崎」、こういう題に切りかえて上演していただきたいと思うのです。そのできない理由を——私はそう思うのですけれども、一度聞かしていただきたいというふうに思います。お願いいたします。
  62. 犬丸直

    説明員(犬丸直君) 前回もお答えいたしましたが、この原爆記録映画は、もともと学術的な立場から広島・長崎における原爆の影響について、土木、建築、あるいは物理学、生物学、あるいは医学、そういう学術的な見地から撮影をした学術的記録映画としてそもそもつくられたわけであります。そうしたものが昭和四十二年に米国からわが国に引き渡しを受けたわけでございます。それでその際に、この間も申し上げましたように、文部省といたしましては、学識経験者二十三人の方にお集まりをいただいて、これをどのように利用したらいいだろうかということを御議論いただいたわけでございます。そして、そういう方たちの御議論の結果に基づいてその利用を続けてまいっておるわけでございますが、さきに申しましたように、本来的にはこれはやはり学術映画的な性格のものである、したがってこれは学術的な利用をすべきであるというのが中心的な意見でございます。特にその医学関係の人体に及ぼす影響につきましては非常になまなましい記録でございまして、被災者の顔ももちろんはっきり見えますし、だれであるかということも確認できる、そういう種類のものでございます。まだ被災者も生存されている方たちもたくさんおられますし、またそういう遺族の方たちもおられるし、そういう人たちのプライバシーの問題もある。そもそもそういう被災者の方たちを写さしていただくときに、これは学術用の記録映画であるというようなことを御了解を得て写させていただいたということもございますので、先生のおっしゃる原版の、英語版の二時間三十分余にわたります原版につきましては、学術用に利用する場合だけ、学術用でも特に医学関係に必要な場合だけに利用するというたてまえをとっておりまして、それ以外の関係の利用のために別に日本語版のものをつくりまして、その部分からはそういう直接だれかわかるような人体の被害状況についての部分はカットいたしまして、日本語版のものをつくりまして、それを医学以外の学術関係の場合の、あるいはそれ以外の教育的なもの等に使う場合におきましてもそれを使う、そういう方針をとっておるわけでございます。
  63. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 いまプライバシーの問題でその映画の上映はストップになっているということと、それからその学者の方たちのお集まりによってのストップということがうかがわれているのでございますけれども、その一つずつを分析してみますと、プライバシーの問題でしたら、もう五年ぐらい前にその映画に登場の方で二十一人の方たちのうち十一人の方は身元がわかりまして、そして十一人の方は確認をとって、御自分たちのその苦しみを乗り越えたところで平和に貢献したい、公開することは平和に貢献したいという意味が含まれているというお返事をいただいておりますし、それから五人の方が死亡していらっしゃいまして、その死亡した方の親族を調べましたところによりますと、その死亡した人たちのことですから、親族の方がかわりに、どうぞ公開してください、これが平和のためならば公開していただきたいというようなお返事をいただいているわけでございます。そしてあとの行方不明の方がございます。  それから学者の方たちがお集まりになっておきめになった三十分に省略した映画の置き場所なんでございます。仁科財団法人ですか、それは科学的な場所、映画というものはフィルムを通して見るものでございますから、科学的な資料はすでにフィルム以上に、平和原子力にお使いになるそういう科学はどんどん御研究になっていると思いますし、それからまた広島大学医学部にあるとしたならば、それは広島大学の医学的な立場、ABCCの立場から人体に及ぼす影響をもう研究していらっしゃると思いますし、フィルムの持っている効果は人体にさわるということではございませんから、これは平和に貢献するという意味において、医学の立場と別個のところですでに公開してもいいのじゃないか、というふうに、長崎大学医学部と広島大の医学研究所にあるのはもう少し発展的にもう一度学者の方とそれから一般大衆の私たちを含めて討論されなきゃいけないのじゃないか。学者はやっぱりあくまでも学問ということでありまして、文化にかかわる問題は人間にかかわる問題ですから、平和ということは人間を中心に考える問題として私はそのことをお願いしたいというふうに思っております。それは、以前にきめられたプライバシーの問題以後の発展的な資料でございまして、それをどうぞもう一度発展的に平和に貢献する、アメリカで二時間何分の映画が原子力における効果、原爆を落したときの人体における効果、それからいろいろな資料における効果ということを世界の平和的な問題への効果というふうな形に原爆の映画も置きかえることができるのじゃないかというふうに思います。それはなぜかといいますと、この間も申し上げましたように、アメリカのコロンビア大学の中のマスコミセンターでは五百本のフィルムを世界に売っておりますし、売っておるということは二十六年前の原爆を落したときのことではなくて、原爆時代、科学時代における原爆の効果という立場、そうでなくて平和の立場、こういうふうに私は世界的に受けとめているのでございます。だから、日本の場合にもそれを若い学生さんたちに公開するということによってより以上に、アメリカの公開以上に世界の平和に貢献するのだという一つの勇気を持つことが必要なんじゃないかというふうに思うのは、この教育基本法の中にあります第二条なんですけれども、「教育の目的は、あらゆる機会に、あらゆる場所において実現されなければならない。この目的を達成するためには、学問の自由を尊重し、実際生活に即し、自発的精神を養い、」——まあ自発的精神によってそれを公開していただきたいし、「自他の敬愛を協力によって、文化の創造と発展に貢献するように努めなければならない。」私は、映画の大衆的文化に参加している人間でございますけれども、もし文化の貢献に参加するということができるとしたら、この原爆映画をほんとうに、それはどこで上映しろという形を指定されてはちょっと困るのですけれども、場合によってはそのくらいまでいって、自分がそれを手に持って巡回して歩いてもいいからそういう形の中で平和への貢献、文化への貢献ということをしたいというふうに望んでおります。どうぞその点についてお願いしたい、これはお願いしたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。  それから、きょうは被爆者の人がおいでにならないので、被爆者の人のかわりというのでなくて、十年この方、広島にたびたび行きましてABCCの中で、被爆者の人と見学に行ったことがございます。それは全くの映画の俳優が一人の被爆者を表現する場合には、ここでは、映画の中ではABCCのことが出てこなくてもつまりここでは勉強して、そしてその事実の中、真実の中、私に真実があるというわけではないのでございますけれども、その真実に迫るといいましょうか、自分に真実がないために真実へ迫る、そういう意味で勉強する機会がものすごく必要になってまいります。そこで、ABCCの中へ入りまして、そのお話をABCCの方でなくて被爆者、あそこにいらっしゃる被爆者のお話によりますと、広島の二十万の方たちのリストがつくられていて、そして人体について調べていらっしゃる、被爆者の人のお気持ちからしましたら、自分たちが調べられても放射能による被害ですね、肉体の被害です、放射能の原因によって一番このごろ悪くなるところはやっぱりガンだそうですね、ものすごく放射能の影響ではガンが悪くなる、あるいは内臓が悪くなるというようなことで、ABCCがあるからには、また日本の厚生省と共同してつくっているからには、早くそういう治療の薬を発見してもらいたいのだ、そうして、もちろん自分たちもなおりたいけれども、それが世界にまた貢献する、原爆が世界に落ちるようなことがあってはいけませんけれども、ABCCがあって研究している限りはその発明される薬によって世界の人にも貢献したいという、そういうことを言っておりました。そしてまた、調べられることによってより大きな原爆ができることを自分たちは危惧する、だけれども調べられることによって世界の平和のために貢献したいのだというようなことを言っていらっしゃいました。そして、二十万の人たちが——あるいはこういうことをまた私は聞いたことがあります、つまり、お葬式代を払う、なくなった方に対してお葬式代を払う、そうすると解剖したものから内臓をもらってくる。そして内臓のものでもやっぱり放射能の結果を調べている。近ごろのことでは、死産した子供を調べている、やっぱり放射能の結果を調べているというようなこと。これは広大でもやっていらっしゃるそうです。となりますと、原爆を受けた一代目の方、それからその二代目の人、今度生まれた赤ん坊となりますと、三代目の人、三代にわたって放射能の結果、それを調べているということは、早く治療する、ガンになる以前の白血球の問題を治療する薬が発明されて、その人たちに治療ができる、と同時に、世界の平和のために貢献すると、二十六年苦しんだその上にそのぐらいまでに考えていらっしゃる被爆者の人たち、だからこそ参考人としてお呼びしたがったし、そしてまた私は原爆を受けていないから、傷が違うから、同質に傷がなることはできないけれども、そういう平和を願っている人が写っている映画を、イデオロギーを越えて日本が先頭に立って平和のために貢献するためにも、二時間四十分の映画を、もし場所を選んでやらなきゃならないなら、また選んでやるという形の中で、上映するという方向へぜひ持っていっていただきたいんです。これは高見先生に伺いたいんじゃなくて、やる方向をつくってくださるという御返事をいただ奏たいと思います。どうぞ答弁をお願いをいたします。
  64. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 人体の問題につきましては、公開をしないということに被爆者の方に申し上げて実は軍さしていただいたといういきさつがあるんであります。そこで、日本語版につきましては、これはいつ公開してもけっこうなんです。どんどん学術用、教育用、それぞれの目的に応じて公開をいたしております。御希望があれば、いつでも公開をいたすつもりであります。しかし人体部分につきましては、その当時、これは公開しない、学術の研究のために写さしてもらうんだからという御了解を得てやったいきさつがございます。その辺は御了解いただきたいと思います。
  65. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 先ほども申しましたが、先生、プライバシーの問題で、私、二十一人の方のうち十一人の方はいいとおっしゃいましたし、死んだ方はお聞きするわけにいかないから、その遺族の方たちにいいということを聞きました。で、そこに写っている方たちの了解を得たというふうなことをおっしゃいましたけれども、プライバシーの問題から別れたままになっておりますので、了解しているという点において、これは、気持ちはわかります、いまさらということと、それから、いまそれを上映して何になるんだということと、きっとそういうお気持ちが一ぱいあると思うんですけれども、私たちも知りたいと思うんです、私たちいま二十六年見ていないわけですから。ここにもほとんど見ていらっしゃらない方たちばかりじゃないかと思うんで、まず国会の中の私たち議員は、皆さん御希望するかどうかわかりませんけれども、せめて日本の私たちがそれを見る機会を与えていただきたい。そしてまた外へ発表していただきたい。  今先生文化的な立場から、先生は先ほど破壊——私も破壊じゃなくて平和のためにお願いしているんです。お願いします。
  66. 今日出海

    説明員(今日出海君) いま犬丸審議官がお答えしたように、文部省がこれを保管しております。したがって、ある部分はいけないとか公開しないというような約束があるということも、私、いま大臣の御答弁で知ったようなわけであります。しかしながらあなたがどうしてもこれを見せたいとこの間からおっしゃっておる。私はそのような場合に、文部省は、おそらく、いまも審議官が答えられたように、貸し出しをするだろうと思います。あなたが持ってお歩きになってもいいといまおっしゃった、それならお貸しするように私からもお願いしてもいいと思います。しかしこれがすべて日本国じゅうの人にみんな見せなければならないのか、また見なければならないというようなことは、私の口からは申し上げられない。これは博覧会のときにも、一つの日本の歴史的な事件として、原爆を受けたというこの事実をほおかむりしては通れないという議論と、あの事実をもう一度ここで見せるということはどうかというので非常な議論がございました。見せてよろしくない、あるいは見たくないというような議論もこれは半々ぐらいございました。出すべきであるというのと、出すことないじゃないかというような議論が半々ぐらいありました。私は結果においてあの政府館の一部の責任者として、写真を出すことにいたしました。ごらんになったかどうか存じませんが、これは一つの日本の歴史の中の事実として、一室写真を掲げたことがございます。したがってその賛否はおそらくまた半々になるんじゃないかと思いますけれども、ただ、あなたがどうしても見せろとおっしゃるならば、おそらく文部省は見せていけないと言う権限は持ってないと思います。したがって、それは犬丸さんもお貸ししていいとおっしゃるのですから、これはそういう場合がありましたら、お貸しできるだろうと思います。  それから一般にどういうように見せるかというと、私どもには映画館というものがございませんから、そのときはそのときで、どういうようなことになりますか、なるべくあなたの言われるようにお手伝いはいたします。
  67. 犬丸直

    説明員(犬丸直君) 誤解が起こるといけませんので、ちょっと補足さしていただきますが、映画二つございますことはすでに御承知と思います、英文のものと日本語のものと。それから英文のものにつきましては、これは学術研究の用に供するということが中心でございます。いずれにいたしましても、絶対に見せない、秘密にしておるというものではございません。それぞれの目的に従った利用方法において利用していただくということはこれはできるものでございます。ただしそれぞれのコピーの性質によりまして、その性質に従った正しい用い方をしなければならない、その意味において制約があろうかと思います。直ちにこれを一般に公開してしまうということはいろいろ問題がございます。そういう意味におきまして、いま長官も申されましたが、事と次第によりましては、お目にかける、ある特定の人に見せるということは、これはできるわけでございます。ただ、その目的が、いま申しましたように、いわゆる英文のものにつきましては、その人体部分を含むものにつきましては、学術的なものであるという前提のもとにひとつお考えいただきたいと思います。それから、なおちょっと補足して申し上げますが、その日本語版にいたしました、人体部分の全部じゃございません、人体部分の特に人の顔がわかるような部分を除いたものにつきましては、これは広く教育的に使っていただいてけっこうなものでございます。これは単に学術的な観点だけじゃなくて、原爆というものはどういうものであるか、あるいはそれの歴史的な意味というような場合に使っていただくということはけっこうなことでございまして、いままででもたびたび利用を許可しております。そういうことでございますので、まあ具体的な場合になりましたらそのケース、ケースに応じまして公開する、見せる人の範囲、それから目的等に照らしまして検討させていただきたいと思います。
  68. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 今先生どうもありがとうございました。  もう日本に返ってきたのですから、「原子爆弾の効果」という、アメリカがタイトルつけたという形ではなくて、どうぞ原爆が世界の平和に貢献するというような、かりに題にお変えになって大勢の方たちに見せるときにどうぞよろしくお願いいたします。どうもほんとうにありがとうございました。
  69. 鈴木力

    鈴木力君 ちょっといまの話、あんまりあいまいだとあとでまたおかしいことになりますから。文化庁の長官が鈴木委員要求に従ってお手伝いをする、文部省側のほうは利用に供する、こういうことになるだろうと思いますけれども、はっきりしておかないとほんとうに厳重な条件で、いまの質問者に限って見せるなり、あるいはその見る人を文部省側のほうできびしく限定をして見せる、こういうことではいまの質問者の意図がはっきり通ったことにはならないわけです。そうじゃなくて鈴木委員が、見たいという人たちがいるわけだからその人に借りていって見せるということを、いま文化庁の長官もそういう方向にいきたいと、こういっているわけですから、文部省側のほうでもあとでけちをつけないように、ここはそうしますと、きちっと言ってもらわないと都合が悪い。
  70. 犬丸直

    説明員(犬丸直君) 私どものほうでは先般最初に申し上げましたように、あの映画が引き渡しを受けた際に学識経験者の方たちに御相談をしてきめたという経緯もございますので、その原則をはずれることをもしやるといたしますれば、これはちょっと簡単にそういたしますということにお答えできないわけでございます。それでいま長官のおっしゃいましたその幅の中で何か利用をおさせする方法はないかという、こういう趣旨に私とりまして申し上げたわけでございます。
  71. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 いま今先生とは前の委員会のときからお願いするとか、いろいろな立場で言っておりましたので一私はそのことばを信じたわけです。日本の行政の機構の中にある判こを押さなきゃならないというようなことではなくて、今先生がいまおっしゃったことを、信じたことをそばで聞いていらっしゃる大臣にも、それから犬丸さんにも、その線の中でお願いした。で、私はお礼を申し上げたと思います。判こを押さなくても人間が人間として信じられる立場においてどうぞお願いします。そしてそれがまただめならもう一回このことを繰り返し繰り返しやらしていただきます。そういう意味で私は信じさしていただいて、お礼を申し上げたのです。今先生ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
  72. 安永英雄

    安永英雄君 いまの使用する場合の制限を学識経験者か何か知らないけれども、そういう人たちというのはどういう機関なんです、どういう権能を持っているのか。ここのところはっきりしてもらわないと何かあなたが、犬丸さん一人がやっておるんじゃなかろうし、文部大臣がまたあなたはっきりしていない。学識経験者などというのは大体どういうメンバーなのか、大体どういう権能を持ってこんな映画は見せない、こういう場合は見せるとかこういう場合は見せないとか、どういう権限でそういうことをやっているのか。
  73. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 そのときに集まった方たち二十二人いらっしゃったらしいのですね。国立教育研究所長の平塚益徳さん、東大教授の中尾喜久さん、早大の篠原建一さん、映倫の池田義信さん、原子力発電副社長の嵯峨根遼吉さん、広島大研究部長の志水清さん、それらの方が集まった中で、立教大学の理学部長の田島英三さんが、これは大勢の人に見せないほうがいいのじゃないかということをおっしゃっているし、それから評論家の浦松佐美太郎さんが、カットしないで見せてくださいという、自分たちの手によって、「原子爆弾の効果」というアメリカの題をつけるということは考え方ですけれども、それを平和のほうへ持っていく題に編集し直したいという、そういう意見の中で、プライバシーという問題について話がそのままになっているということなんですけれども、私自身はそういうことの中でいま今先生が、それらのいまあげました学者を含めた代表的なことばとして受けとめるということの中で——今先生そうでございますね、どうぞ御返事お願いいたします。
  74. 今日出海

    説明員(今日出海君) 私はそういう委員会があったことは存じません。まあ役所にはよく諮問委員会とかいろいろ委員会をつくりまして、それは大体において一般の学識経験者というようなことばが、どの程度に学識があるのだか、どの程度に経験があるのか存じませんけれども、そういうことばを使っております。ですからこれは疑ってかかればどうにでも、あれは経験薄いのじゃないかとか、いろいろ言えるのかもしれませんが、私はまあそう厳密にとらないで、文部省のほうでそういう方々に一通り質問をして、参考に意見を聞いたのだろうと善意に考えまして、そうかな、そういう事実があったのかなと、こう思います。しかしこれは映倫の問題でも非常に微妙なもんなんです。映倫の委員がしからば厳密に言えば、どうにでも文句がつけられる。やはりこれはカットをしたほうがいいとか、いろいろなところがございますから、これは私一々存じません。存じませんが、そういう一つの結論に達したならば、これは私文句言いません。ですからいま大臣がおっしゃったように、そういう個人のプライバシーとおっしゃったかどうか、そういうものはあまり大げさに見せないというお約束をなすったそうで、これをひるがえしてくれというような考えは私は毛頭ございません。どういうところをカットするかしりませんけれども、そんなにアメリカのとったものをそのまま見せるべきであるというようにも私考えておりません。だからこれは良識に従ってでき上がったものはそれでいいのじゃないのかと私は思うんです。これは重大なカットを——切ったのだというようなことになりますと、これはまた別ですけれども、まあ一般にはこのくらいのところがよかろう、いいのじゃないか、このくらいまでなら許容できるのじゃないか。まあ文部省の良識に私はいま従っております。
  75. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 時間がございませんので、先ほど今先生を信じた、そしてそれをいままで公開しなかったのですから、今度公開するというようなことをおっしゃってくださった、このことばを第一歩といたしまして、私の最もいままでお話しました中の結論は、アメリカが原子爆弾を落とした効果の、落としたということを除いて、題を「原子爆弾の効果」といったのを、いまここで今日の時点において、日本が平和への貢献という題に切りかえても、日本人である私たちが見せていただけるというような第一歩が出たのですから、どうぞよろしくお願いいたします。
  76. 犬丸直

    説明員(犬丸直君) 題名につきましてちょっと補足しておきますが、文部省で編集いたしました日本語版では原爆の効果という名前ではなくて、原爆被災記録映画、被災の記録、こちら側の立場で名前をつけております。念のために。
  77. 鈴木美枝子

    鈴木美枝子君 じゃどうぞよろしくお願いいたします。
  78. 小野明

    小野明君 八月の下旬に、七月の十五日に行ないました教員組合の休暇闘争、これに対しまして福岡の県教育委員会が懲戒処分を、いわゆる行政罰を行なっているわけであります。このことはすでに大臣も御承知であろうと思いますが、この処分の理由、並びにその概要について簡潔にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  79. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 私どものほうにまいりました報告によりますと、昭和四十六年五月二十日及び七月十五日の争議行為に参加した者に対します処分を八月の二十八日に行なったということでございまして、処分を受けた者の総数は一万八千八百三名、一般の参加者では減給一カ月が一万五千九百十七名、戒告が二千七百六十名、文書訓告が四十六名、幹部につきましては停職六カ月が一名、停職三カ月が一名、停職一カ月が八名、減給三カ月が百三名、減給二カ月が五名、減給一カ月が八名、以上のような報告を受けております。
  80. 小野明

    小野明君 この処分の理由というのは、いま局長は御説明になりませんでした。それはどうせ大臣からあると思いますが、この前に、この八月二十八日の前に全国教育委員長会か、教育長会か、これが持たれまして、その席上大臣が出席になり、いわゆる争議行為に対しましての見解、あるいは方針などをお述べになったようにお聞きをいたしております。これについては、この処分についての文部省の、大臣の御見解をここであらためてお伺いをいたしたいわけです。
  81. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 地方公務員の争議行為を禁止しております地方公務員法三十七条一項が憲法第二十八条に違反しておらないということ、それから教職員の争議行為は次代の国民の教育に停廃をもたらすものであって、地方公務員法三十七条一項に違反するものであるということにつきましてはすでに昭和四十四年四月二日に最高裁大法廷での判決で明らかにされておるところであります。文部省としても教職員の従事しておりまする職務は次代の国民の育成ということからしても公共性が非常に高く、また下級審の判決ではございまするけれども、公務員の五分間とか、二分間とか、二時間とかいう職場集会も違法な争議行為であると判断されておりますることからして、従来から教職員組合が行なっておりまする半日とか、一時間、あるいは三十分の一斉休暇闘争やストライキは違法な争議行為であるという考え方に変わりはございません。したがって、文部省としては、従来から各教育委員会に対しまして教職員がこのような争議行為に参加することのないよう職務の指導について遺憾のないような措置、あるいは非違をおかした教職員に対しては厳正な処分を行ない、また処分にあたりましては適正な方法で処分をいたしますように指導をしておるところであります。なお、具体的に任命権者が違法な行為に対していかなる処分をもって臨むかにつきましては、それぞれの県の実情に応じ、任命権者の判断で行なうべきものでありますので、特に具体的な指導はいたしておりません。  いずれにしても、佐賀地裁の判決は、現在、福岡高裁に控訴されておるところでもあり、また、従来行なわれてまいりました教職員の争議行為は地方公務員法三十七条に違反するものであるということの考え方は現在においても変わってはおらないのであります。
  82. 小野明

    小野明君 教職員の職務の公共性から、まあ短時間であっても業務の停廃を来たす。こういうのがおもな理由であったように思います。ただ、今回は佐賀地裁の判決が八月十日でありましたか、出されたわけですが、この判決は、まさに行政処分は違法という判断が示されております。この判決は、形式的な点をとれば多少大臣の言われるようなことがあるかもしれません。しかし、四十一年にありました全逓中郵の判決並びにいま大臣が引用された四十四年の都教組、大法廷の判決、これらの延長の線の上にあると、こういうことは私は言えると思うのです。この点について大臣はいかがですか、内容から言いまして。
  83. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) お話のように、この問題は任命権者並びに各府県の実情に応じてやっぱり違ってくると思います。また同時に、争議行為の態様によっても一違ってくると思います。したがって、国が地方の教育委員会に対しまして、この処分は重いとか、軽いとか、と言うことはできないと私は考えております。それでこの救済の道は訴訟に待つよりしかたありません。したがって、佐賀地裁の判決に対しまして佐賀県の教育委員会が控訴の手続をとりました以上、福岡高裁の判決を待ってみなければ何とも申し上げかねる次第でありまするけれども、私は任命権者である佐賀県教育委員会が、その争議の態様から見て今度の争議行為が教育の停廃を来たしたものであるという判断に立って処分をいたしたとするならば、国としてこれにとやかくを申す理由はない、かように考えております。
  84. 小野明

    小野明君 そうすると、それぞれの任命権者の判断、個々のケースによって文部省としてほやる以外にないんだ、それに待つんだと、だから文部省がすべての県教委に対してこれをどうせいという指導はやらないということですか。
  85. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 先ほども申し上げましたように、まず争議行為をしないように服務についての適正な指導をしろということを第一条件で指導をいたしております。それでもあえて非違を犯した者については厳正な措置をとれ、ただし、その厳正な措置をとるにあたっては、公正な扱いをしなければならないという指導をいたしておるということは先ほど申し上げたとおりであります。したがって、任命権者であるものが処分をいたしますが、その処分の内容につきまして、私どもはとやかくは申し上げない、こういうことを申したつもりであります。
  86. 小野明

    小野明君 どうも、内容がきわめて明確でないんですけれども、そうすると、従来の文部省のとってまいりましたこの争議行為に対する方針、これに変更があったと、こう見てよろしいわけですか。
  87. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 従来の指導方針に変更は加えておりません。
  88. 小野明

    小野明君 これは大臣にひとつお尋ねしておきたいと思いますが、全逓中郵の判決は、これもやっぱり佐賀地裁の判決に生かされていると思うのですが、憲法二十八条、二十五条の根本精神を踏まえて地公法三十七条は限定解釈をしなければならぬ、この労働基本権の保障とこれを制限している実定法との間には調和と均衡を保たなければならぬ、これが最初に出た四十一年の全逓中郵の判決なんです。それから四十四年の四月の二日に、大臣がいま引用されまし夫都教組の最高裁の判決というのは、要点は数多くありますが、数点あげてみますと、いままで文部省はすべての地方公務員の一切の争議行為を禁止し、これを処分をする、こういう態度であったと思うんです。従来の方針が変わっていないとすれば、この都教組の最高裁判決は次のように述べています。「一切の争議行為を禁止し、これらの争議行為の遂行を共謀し、そそのかし、あおる等の行為をすべて処罰する趣旨と解すべきものとすれば、それは、公務員の労働基本権を保障した憲法の趣旨に反し、」こうあるわけです。ですから、当然、私はこの都教組最高裁判決の根本精神というものは、これは、文部省が十分この内容を吟味しあるいは検討を加えてしかるべきではないのかと思います。同時に、また、いま大臣が述べられましたが、争議行為といってもいろいろな態様があるんだ、ただ、その点で国民全体の利益、国民生活に重大な支障をもたらすおそれがあるということは、短時間の同盟罷業あるいは怠業では考えられない、これも都教組の判決にあります。これらも指摘しておりますが、大臣は、この最高裁判決の形式的なものではなくて内容に流れておる精神というものについて、どのようにお考えですか。私は、いまのような大臣態度であれば、これは処分権の乱用であって、この最高裁の示す判断に違反をしておる、いわば違法である、こう言わなければならぬと思います。
  89. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 小野先生の御指摘になっておることは、最高裁判決は刑事免責の判決であったのでございます。中郵事件の場合も、刑事免責の問題でございました。今度新しく行政免責の問題が佐賀地裁の判決において出てきたということであります。したがって、これらは目下訴訟係属中である。私どもの判断では、最高裁の判決の場合にもこれは違憲ではないということをうたっておるのであります。したがって、争議行為がたとえ三分間であろうと五分間であろうと、争議の態様によりましては、被害者は、これは地域住民ではございません。子供に対する事態でございますから、争議の態様によりましては厳正な処分をやらなければならぬ場合があると考えておるわけであります。
  90. 小野明

    小野明君 全逓中郵にしましても、都教組最高裁にしましても刑事免責であるということは私も百も知っておるわけです。ただ、この考え方というのは、勤労者の団結権あるいは、団体交渉その他の団体行動権というものを、これを尊重しなければならぬ、そしてこれを実定法で制約するのはきわめて慎重に扱わなければならぬのだ、こういう精神は一貫して流れておる、これは佐賀教組の今回の地裁の判決にも流れている精神ではないか、こう私は申し上げておるわけです。だから、これからいくならば、当然これは行政処罰に対しましても従来の文部省方針に再検討を加えるべき内容を含んでおるではないか、私はこう申し上げたいわけです、この点はいかがですか。
  91. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 小野先生のおっしゃる労働基本権の尊重ということにつきましては私どもも同様に考えております。しかしながら、公務員の公共性、特に教育公務員の公共性の重要性というものにつきましてはなお深刻に考えざるを得ないという立場に立っておるということを御了承いただけるならば、私どもの従来の指導が間違っておったと申し上げかねるわけでございます。
  92. 小野明

    小野明君 これは教育公務員も憲法二十八条の保障を受ける勤労者ですから、大臣、そのことは十分踏まえておっしゃっておられると思うのです。特に教育公務員、教職員の場合にこの違法性が強いのだ、こう言われるわけですね。この点については具体的にこの佐賀の地裁の判決が、従来なかった教育公務員の場合に適用される具体的な事実をあげておりますことは大臣も御承知だと思います。その佐賀地裁のあげております考え方大臣も現場の経験がおありになるように私は伺っております。佐賀地裁のあげております内容は、大臣はそういうふうに言われますけれども、教職員の職務の停廃というものが短時間にとどまる、そして授業への影響というものが容易に回復できるような範囲のものである場合には、教育計画全体への影響のおそれはなく、地方住民への影響は必ずしも重大でない、このように述べております。これは施行規則によって教育計画の基準というものは定められておりますね。別表によってきめられておる、学校の時間割りというものは、授業計画というものは、教育計画というものはその基準を上回ってきめられておりますね。事実そうなるのです。ですから、これは七月十五日、五月二十日にいたしましても、いずれもわずか三十分、二十九分ですか、三十分という非常に短い争議行為である、そうしますと、この授業への影響というものは、これは考えてみれば、三十分ぐらいのものだったらその日のうちに取り返される内容だといえる、教育計画というものは年間を通じてやるものですからね。そういうきわめて短い争議行為だとすれば、当然これはこれを制約する、いわば労働基本権を制約するということになりますが、そう考えますときに、あまりにも一切の争議行為を処分をするという態度に過ぎるのではないですか。
  93. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 判決内容についてのとやかくのことはこの際申し上げないほうがいいと思います。  佐賀の場合は、特別の、初めての判決だと申し上げてよろしいのでありまして、これは目下係争中の問題でありまするから、どういう最終判決が下されるか、それを待ってみなければ何とも申し上げられませんけれども、私どものいま立っております立場は、教育公務員の地位というものが非常に高い公共性を持っておるのだと、そういう意味から申しますというと、争議の態様というものから任命権者が適正な処分をするということは、これは当然やるべきことであるし、あってしかるべきではないか、かように考えております。もちろん労働基本権を尊重することは申すまでもございません。
  94. 小野明

    小野明君 これは、佐賀地裁の判決というのは、具体的に教育計画そのものに触れておりますから、佐賀地裁の判決がどうだ、こういうことからはずれているといっても、今回の佐賀地裁の判決がやはり大法廷に示された判断を踏まえてこの判断が出されておるわけですから、どうしても大臣が一審だからということでこれを聞かないということは私は納得がいかない。頑迷固陋と言われても私はしかたがないと思う。あくまでも一切の争議行為を憲法に違反して処分するという態度であるならば、そうだ、と、こう言ってもらってけっこうですよ。
  95. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) いまおっしゃっている問題が実はその控訴の争点になるわけなんであります。最高裁のあれによりましても、「本件の一せい休暇闘争は、同盟罷業または怠業にあたり、その職務の停廃が次代の国民の教育上に障害をもたらすものとして、」という前提に立っての判決が下されておるということを一つ踏まえておいていただきたいと思うのであります。私が頑迷固陋というよりは、私はそういういま先生が御指摘になった問題が今後の裁判の争点であろうと、かように考えておるのであります。
  96. 小野明

    小野明君 同じくことしの三月二十三日に、これは最高裁第三小法廷で判決が出されておる。これは福岡県教組並びに佐賀県教組三・三・四の問題ですがね。この県教組の場合には一斉休暇があって、この最高裁第三小法廷で示されておる判断は、この本件争議行為は、その目的、手段方法、期間、国民生活に及ぼした影響等に照らして違法性が強くない。違法性は強くないのだ。これが都教組大法廷の判決に続いて出された判決なんです。教職員の場合には違法性が強くないという判断が出されておるのです。この事実についてはどうお考えですか。
  97. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 私どもの場合には、都教組の最高裁の判決というものが非常に参考になるわけでございますが、ただいま大臣からお話ございましたように、「本件の一せい休暇闘争は、同盟罷業または怠業にあたり、その職務の停廃が次代の国民の教育上に障害をもたらすものとして、その違法性を否定することができない」、でございますから、都教組の場合には、これは「違法性を否定することができない」というふうにはっきり評価があるわけでございます。  それから先ほど御指摘になりました佐賀県の判決でございますけれども、これはほかの場合とだいぶ事情が違っておりまして、これを基礎にしてほかの場合の判断に資するということは、これは困難ではないか、むしろ、というふうな考え方で従来の文部省方針というものを引き続きやっているわけでございます。  それから短時間の場合に、先ほど小野先生から御指摘がございましたが、やはり最高裁の判決の中には、その時間的な問題につきましても、いまお述べになったのと同じような趣旨でございますが、もう少し厳格な判断が下されておりまして、「ひとしく争議行為といっても、種々の態様のものがあり、きわめて短時間の同盟罷業または怠業のような単純な不作為のごときは、直ちに国民全体の利益を害し、国民生活に重大な支障をもたらすおそれがあるとは必ずしもいえない。」ということでございまして、これは平たく申し上げますと、きわめて短時間の場合でも原則としては違法なんだと、しかし必ずしも国民生活に重大な支障をもたらすおそれがあるとは言えない、例外的には違法でない場合もあるというふうなことでございます。それと佐賀の場合、いま申し上げましたように、憲法の二十八条と憲法十五条との比較考量という点が一番大きなその説示の筋でございますけれども、その比較考量いたします場合に、どういう理由で争議行為を行なったかということと、それからどういう態様で行なわれたかと、その二つを比較考量するわけでございますが、これはちょっと質が違っておりますので、なかなか比較の場合がむずかしいわけでございます。したがって、ほかの場合にこの判決を例にして判断するということがきわめてむずかしいわけでございます。したがいまして、大臣から先ほど申し上げましたように、この二つの判決からいたしましても、従来のこちらの方針を変更するということがきわめて困難であるということではないかと思います。
  98. 小野明

    小野明君 局長が、きわめて短時間の同盟罷業あるいは怠業のような単純な不作為のごときは国民生活に重大な支障をもたらすおそれがない、必ずしも言えない、こうなりますと、この判断をとるとなると、あなた方の、教育に影響があるという意見と異なってくるのじゃないですか。特にまた三月二十三日の小法廷の判決は教職員の争議行為、一日休んでも違法性が強くないと、こういうふうに述べておる。特に具体的に一つ佐賀地裁の判決が出ておりますし、これは教育の現場の実体に合っておりますから申し上げたいのですが、農村では農繁休暇がある、あるいはお祭りがあればお祭りの休暇もある、あるいは学校行事もある、研修もある、出張もある。こういうものを織り込みながら学校教育計画と授業時間数というものは考えておるのだ。だから、一たん編成された教育計画というものを学校の自主的な計画によっていろいろ変更修正できる内容のものである。ですから、教科の進度というものは平均されておりますけれども児童生徒の理解がおくれておる場合にはこの遅速が勘案されるようになっておるのだ。そういうきわめて具体的な学校現場の実態に即しまして判断がされておる。同時にまた、いま申し上げたような教職員の職務の短いものであれば、停廃は国民生活に重大な支障がない、こういうふうに言っておるわけですよ。そうしますと、いままでの処罰の方針に変わりがない、こう言われることは、やはり最高裁とは——まあこれは一佐賀地裁ではありますけれども、それらに耳を傾けないでがむしゃらに、何か実際に教育計画に支障がないのに他の目的をもって教職員組合の運動を罰する、処罰する。こういう憲法に違反して罰するという意図がありありと見えるんですがね。大臣そのところをもう一度御答弁をいただきたいと思うんです。
  99. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 先生、私はこう思うんですがね。教育公務員はスト行為を行なうこと自体がこれは禁止せられておることなんですね。そこでスト行為を行なわせないように地方教育委員会では指導しろということをまず前提に置いているわけです。あえて非違を犯すものについては処分もやむを得ない、処分は適正に行なえということを言っているわけです。この方針に私は変更を加える必要は毛頭ないと思いますね。これは別に憲法にも地公法にも違反しておるわけじゃない。ただ佐賀判決の内容になりますというと、比較考量してみて行政罰の対象にすべきでないという判断を下されたという意味において、私は教育の本質というものを考えてみて、これでいいだろうかという考え方からおそらく教育委員会の控訴というものももっともだと、こういうふうに考えておるわけであります。
  100. 小野明

    小野明君 ですから大臣は、やはり一切の争議行為というものはしてはならぬと、こういうふうにまあ非常にかたい頭でお考えになっておる。ところが裁判所は処分すべき争議行為と、そう違法でない、処分せぬでもいい争議行為とあるのだ。それは憲法二十八条で労働基本権が保障されておるんだから、実定法ではその制約をきわめて必要最小限にとどめなきゃならぬ、こういう判断になってきておるわけですよ。ですから大臣のその一番前提になっておる考え方を、やはりこの裁判所の判断を多少でも入れまして、いままでの処分一本やりの文部行政というものを多少でも改める必要はないのかと、こう私は申し上げたい。
  101. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) ただいま先生がおっしゃいましたことは、それはそのとおりでございます。憲法二十八条と憲法十五条との調和を保ってそのことは判断しなければいけません。ただこれは刑事事件の場合には非常にきびしくて、きびしくそういうことを考えながらやらなければいかぬということでございますが、行政事件につきましてはまだ最高裁のあれも出ておりませんし、それから第一審判決につきましても、ただいま御指摘のような佐賀の判決もございますけれども、神戸の地裁の判決では、これは五分間でもいけないというふうなあれがございます。いまのところ最高裁の判断は出ておりませんので、私どもといたしましてはまだ従来の方針を変更することはまあ非常に困難じゃないか。もしこういうものが積み重なりまして新しい方向が出ますればよろしいわけでございますけれども、それは最高裁の判決の場合でもきわめて短時間、それから佐賀地裁の場合は短時間、両方言っておりますが、それが五分間であるか、十分であるか、あるいは三十分であるか、一時間であるか、そういう点もよくわかりません。いままでのあれでは非常にまちまちでございます。でございますから、まず従来の、大臣から申し上げましたように文部省方針というものを変更するということは非常に困難であるということを申し上げているわけでございます。
  102. 小野明

    小野明君 最後にこの問題、もう一件質問は別にありますが、大臣、現場の教育実態というものを考えてみますと、先ほど私が述べた年間の教育計画を定めて、三十分や一時間お祭りの休暇もあれば農繁休暇もある。先生の研修、出張というものもある。そうした場合に三十分くらいの修正というものは当然できる現状にある。回復できる実情にあると、こういうふうに大臣、お考えになりませんか。
  103. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) これは私、小野先生とちょっと意見を異にしますけれども、原状回復できるから争議行為を行政罰の対象にしないとかするとかいう性質のものでは私はないだろうと思います。教育公務員という身分に照らしまして争議行為というものが適正でないという場合には、時間でとやかくいうことじゃない。争議の実態について考えなければならぬ。それは御指摘のとおり農繁休暇などというものを現にやっているんですから、そのこと自体が直ちに教育の停廃ということとは結びつかないといたしましても、争議行為そのものの実態というもの、態様というものについて任命権者が処分するということについては、実はこれは従来の方針をいま急に変えるという法はないだろうと、こういうように考えておるということを申し上げておるつもりでございます。
  104. 小野明

    小野明君 大臣は、教職員は聖職であると、こういうふうなお考えの前提に立つものですからね。憲法二十八条あるいは生存権に裏づけられた労働基本権を持っている勤労者なんだ、そうすればこれらの行動についてはその制限は必要最小限でなければならぬ。実際教育計画が多少三十分や一時間落ちましても、一日落ちましてもこれは回復すれば国民生活に重大な影響はないと、こう裁判所が判断をしておる。もう少し頭を切りかえてもらいたいと思うのです、私はね。まあこれはできることかどうかわからぬが、その点を再度考え直すわけにはいかぬかということをひとつお願いをしたいと思うのです。
  105. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 教育というものが持っておる公共性の高さというものは最高裁の判決にも、あるいは佐賀地裁の判決の中にも出ておるところであります。私は、この問題についてえらいがんこなことを言うようでありますけれども、私どもが処分しろといって処分したわけじゃない。私どもが控訴しろといって控訴したわけでもない。しかし私は佐賀県教育委員会がその自主性に立って控訴するということであるからこれは援助しなければならぬと、かように考えておるということを申し上げたので、いますぐこの方針を佐賀地裁の判決があったから変えたらどうだといわれましても、先ほど管理局長が申しましたように、神戸地裁ではたとえ五分間といえども違法行為は違法行為であるという判決もいたしておるので、さらに上級審の判決を待って文部省としての方針考え直す必要があるならば考え直すと、かように考えておるわけであります。
  106. 小野明

    小野明君 まあ、そういう地裁の判断が積み重ねられ、あるいは上級審の判断が出てこないと変えないのだと、こういう御方針のように承りましたが、ひとつもう少し進歩的な教育行政あるいは労働行政をおやりになっていただきたいと思います。  それから次に、時間もありませんからもう一件通告をしておりました問題についてお尋ねをいたしたい。  北九州市の若松の高等学校長が最近減給処分を受けて降格されておりますね。これは一体いかなる理由によりますか。
  107. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 福岡県の教育委員会に電話で照会いたしましたところによりますと、若松高等学校におきましてはこの四月に県の教育委員会に提出いたしました教育指導計画というものを成規の変更手続をとることなく、一部の教員がかってに変更して授業を行なっているという事実が判明いたしました。七月二十二日付でもって監督不十分ということで校長を減給三カ月、教頭を減給一カ月、また、かってに計画を変更いたしました教員を減給一カ月の処分に付したということでございます。  なお、これは校長御自身の意向もございまして、この校長を教育研究センターの研究員に転任させたということがそれに付帯して報告がございました。
  108. 小野明

    小野明君 まあ教育計画というのは、これは局長、これに違反をしておったと、こういうわけですね。県立学校管理規則を見ますと、四月に提出さして、そうしてそれがそのとおりやられておるかどうか、変更がある場合には前もって県教育委員会にやれというんです。県下には百十余りの高等学校があります。一つの学校には八十人から百人の先生方がおられるということになりますと、やっぱり研修があり、病気があり、あるいは休暇がある、こういう場合には県の教育委員会に事前に届けるということが間に合わぬことが多いと思うんです。だから年の初めに出した初めの教育計画のとおりにいっておらなければ、これは管理規則違反だと、こういうことで処分をするというのは、これは私は学校運営の実態に合わない、管理規則自体に非常な無理があるんだと思う。こういうことで処分するのは私は酷だと思いますが、いかがですか。
  109. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) おっしゃるとおりであると思います。そのとおり、県のほうも恒常的な変更につきましては、これは県の教育委員会の承認が必要であるけれども、臨時的なものは別である、ただいま先生が御指摘になりましたようなものは別であるというふうに聞いております。先生の御指摘のとおりであると思います。
  110. 小野明

    小野明君 それが届けどおりでなかったということで処分を受けているところに、私は納得がいかない。とにかく教育計画というものはこれは高等学校の場合は施行規則ですかね、施行規則で見ますと、施行規約の六十三条の二で、高等学校の課程の修了を認めるのは校長に権限があるわけですね。校長が認めるわけです。そうすると、指導要領の基準というものもありますけれども、それらを勘案をしながら校長が全教育計画というものを立てればいいわけですね。それが県教育委員会に届けるというのは付随的な業務でなければならない。それがそのとおりになっておらぬからということで処分をするというのは校長の権限を侵すことにもなるし、はなはだ実態に沿わない。この事実をもって処分をするというのは、私はたいへん変則的な県教委のやり方だ、不可解だと思うんですがね。いかがですかね。
  111. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) その点の先生の御指摘のとおり、こまかい具体的な問題、それから、あるいは臨時的な問題につきましては仰せのとおりであると思います。が、しかし、県の教育委員会としては、やはり基本的なことはきめてそれを守ってもらう。たとえば教職員が六日勤務するのに一日研修日とるのを認めるかどうかというふうな基本的な問題につきましては、やはりこれは県の教育委員会できめまして、その方針に従って県下全般でそういうことが行なわれている。それを変更しようとするときには、やはり県の教育委員会の承諾を得る、そういう基本的な事項につきまして、県の教育委員会は基本的な管理規則を定めましてこれを実施させる、これはこれでよろしいんじゃないかというふうな感じがするわけでございます。
  112. 小野明

    小野明君 それでは原則的には局長ももう同意されましたので、次に進めますが、この教育計画というものが届け出て、教育委員会に届け出たとおりに実際やられておるのかどうかということで、県教委の指導主事がかつての同僚を使い、それから、これは田川商業高校の場合、その同僚が高等学校の子供を使って子供に調査をさしておるのですね。それで、おまえの学校の二年生の何組の授業はだれが受け持ったか、こういうようなことを県教委の指導主事が教育長の命を受けて調査をする。ですから、子供をいわばスパイに使っておるのですね、スパイに。それは笑いごとじゃないです。事実だ。大問題になっておる。こういうことをやって、この教育計画のとおりにやっておるかどうかということをやっておる。これは田川東高校です。そのとおりやっておる。特に組合役員というのをねらって、組合役員といったって専従的にやっておる人じゃないのですよ。たとえば分会長とか評議員とか、こういう人がやっておるかどうかということを授業担当の子供を使って調べておる。こういうことをやらずに、こういう子供にスパイをさせるというものですから、父兄も非常におかしいと思い、何で県教委はそういうことをやるのか、指導主事を使ってそういうことをやらなければならぬのか、そのことを意図がはっきりしたものですから、田川の市民の方も非常な不信感というものを持っておる。調べるならば堂々と、何ですよ、表門から入って調べるべきであって、裏から子供を使ってやるなんという非教育的なあるまじきことをやっておるのですね。こういう点は局長御存じですか。
  113. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 事実につきましては、お二人の方からその事実の認識について御意見を承りますと、違っているということは、これはやむを得ないことじゃないかと思いますが、県の教育委員会の報告によりますと、これは父兄から、学校で教育計画と違っていることをやっているようだというふうな話があって、それを調べるために子供に実情を聞いてみたというふうなことであるというふうに伺っておるわけでございます。もちろん、先生がおっしゃいましたように、子供を教育の目的以外に使う、まあ、悪いことばでございますが、スパイまがいのことをやらせるというようなこと、これはもとよりいけないことでございます。そういうことは絶対慎まなければならないというふうに考えるわけでございます。ただ高等学校の生徒ぐらいになりますと、これは一人前の分別もあるわけでございますから、そういう者に事実を確める、強制するわけではなくて、事実を確めることは、これはものごとの正確を期する意味で、あるいはあり得ることかもしれません。しかし、全般的に申しますと、子供を教育の目的以外に使う、こういうことは慎しまなければならないということは言うまでもないことです。
  114. 小野明

    小野明君 それは授業がおかしいということを投書があった、こう言われておるわけです。県教委に投書があったということを言わせておるわけです。その前段でこの指導主事が生徒の家に行って、四月以来の時間割変更があったか、関係クラスの時間割を写してこい、あるいは九名ばかり生徒に当たりまして、この内容をひとつ私のところへ郵送してくれ、こういうことを一々生徒のほうへずっと当たってやっておるわけですよ。ですから教育計画自体がそういうふうに学校の突発的な事故によりまして変更をしながら、あるいは補欠を入れながらやらなければならない事態、こうなっておるのに硬直した管理規則でもって、そしてそのとおりやられておるかどうかを子供をスパイに使って調べる、その上でもしその先生が授業を欠けてそしてほかの先生がやっておったら、いま最初に質問しましたような高等学校長に減給処分と、これはちょっと福岡県の教育行政のあり方は間違っておるんじゃないか。目的のためには手段を選ばないというやり方でやっておると思いますが、これはどうですか。
  115. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 事実の認識というのはたいへんこれはむずかしいあれでございまして、私ども遠くにおりますものですから、どういう実態であったかということをはっきり確かめるわけにいきませんけれども、県の教育委員会、行政当局とそれから現場の間でぎすぎすした関係があるということは、これは教育上好ましくないことでございます。私どもも円滑に教育行政が行なわれるように念願しておるわけでございます。そういう意味から申しますと、今後私どもも十分そういうふうな円滑な行政あるいは円滑なる教育指導というものは常に心がけてまいりたいというふうに考えております。
  116. 小野明

    小野明君 いま私が申し上げました点は、はなはだ非教育的でおもしろくない教育の実情であることはもうおわかりのとおりでございます。ですから十分ひとつ円滑な教育が行なわれますように、また管理規則の中にひそんでおります問題性ですね、非常に硬直した、四月十五日に届け出た教育計画のとおりにやっておらなければ処分だ、しかもその調べ方は子供を使うとか、そういうことはひとつぜひ改めるように御指導をいただきたいと思います。その点について大臣も事情はおわかりでしょうからひとつ大臣の御見解を最後に承りたいと思います。
  117. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 私も実はあまり詳しくは存じておりませんが、質問内容については一応の報告は聞きました。まことに好ましからぬことである。ことに子供を使ったということについては、これはあまり感心したことではない、私はかように考えております。そのときの事情もあることだろうと思いますので、よく調べてみなければ何とも申し上げかねますけれども、教員の処分をするのに調査のために教え子を使ったというようなことは望ましい姿じゃない、これは申すまでもないことでございます。かように考えております。
  118. 小野明

    小野明君 もう一言。十分ひとつ実情を御調査いただいて今後そういうことが起こらないようにひとつ善処をしていただきたいということを要望いたしまして終わります。
  119. 内田善利

    ○内田善利君 私は文化財の保護について質問したいと思いますが、高度経済成長が人間の生命をむしばむほどの公害をもたらしましたが、いまはわれわれ祖先の国民遺産である文化財が開発によって破壊されつつあるということを強く感ずるわけですが、この文化財の中で特にきょうは埋蔵文化財についてお聞きしておきたいと、このように思うわけですが、最初に文化財の予算関係について聞きたいと思います。この開発関係予算文化財の発掘、保護関係予算との比率は大体二百対一と、このように聞いておりますが、そうですが。
  120. 安達健二

    説明員(安達健二君) 最近いろんな意味での開発が進められておるわけでございますが、特に住宅開発、住宅のための宅地開発というのが非常に進んでおるわけでございます。ただいま仰せになりました二百対一というものにつきまして私も十分どういうものがその基礎になっておるかということにつきまして承知いたしませんのでわかりませんが、まず、その宅地開発の面から申しますると、経済企画庁の推計によりますと、今後二十五万ヘクタールの住宅地の開発をするということになっておりまするし、また道路におきましては第六次整備計画では十兆三千五百億円の巨費というようになっております。したがいましてその比率から申しますると、正確なことは申し上げられませんけれども、もっと開発のほうの比率が大きくて文化財保護関係の史跡等のほうの経費のほうが少ないのではないかと存じております。
  121. 内田善利

    ○内田善利君 二百対一よりもまだ大きいということですが、来年度の史跡等の買い上げ補助金についてですけれども、昨年度概算要求で十七億七千万円、実績が十四億八千万円、本年度概算要求は二十五億一千六百万円ですね。同時に史跡等の環境整備を促進し史跡公園等として活用するための環境整備補助金、これは昨年度概算要求が三億三千万円、実績が二億二千三百万円、本年度要求が百三十件で六億三千万円ということですが、そのとおりですね。
  122. 安達健二

    説明員(安達健二君) ただいまお示しのとおりでございます。
  123. 内田善利

    ○内田善利君 いま開発か保護かということで最初質問したわけですが、開発には二百以上対一の割合で文化財保護予算を組んでおる、こういうことで、私はこれを見たときに昨年よりは増しておりますけれども非常に弱い、このように思うわけです。現状は開発がどんどん進んで文化財はもうブルドーザーの下にどんどんどんどん破壊されていってしまっておる、そういう状況です。私もあちこち見ておりますが、まことに悲惨な状況を呈しておるわけです。もう少し文化庁この点主張してもらいたいと思うのですけれども、大体この概算要求の基準はどういうことでされておるのか、どういうことで要求されておるのか、まずお聞きしたいと思います。
  124. 安達健二

    説明員(安達健二君) 史跡の指定地の約三分の一が私有地でございまして、その私有地の三分の一につきましてこれを買い上げしていくということを基本にいたしまして、そのうち特に緊急を要しますところの八百四十ヘクタールにつきましてこれを十年計画によりまして買い上げをするという計画で進んでまいったわけでございますが、そのペースでいきますと来年度は十七億程度でございまして、土地は年々一割程度の増価を見ておりますので一日も早く買い上げをする必要があるということで、来年度要求といたしましてはその従来の計画の十七億に八億をのせまして二十五億円の要求をいたしておる、こういうことでございます。これの買い上げにつきましては同時に所有者との関係もございまして、所有者の協力を得て買ってまいりますので、一つの史跡につきましても三年ないし数年の計画をもって順次買い上げをしていくということも、現実的にはそういう必要もあろうかと思うわけでございまして、そういう事態も考慮いたしまして、もちろん二十五億が多いとは申しませんし、さらに増額の必要があるかと思いますけれども、実行の問題その他から考えまして、これだけは最低線として要求をいたした次第でございます。
  125. 内田善利

    ○内田善利君 埋蔵文化財は緊急に調査費を必要とすると思うんですね、補助金を。私は文化財の保護はあくまでも国に責任があると、このように思うわけですが、そういったことから補助金を大幅に増額しなければ、もういたずらにブルドーザーの下に破壊されてしまって、国民的な財産を将来に伝えることはむずかしいのじゃないかと、このように思うわけですけれども、この原因者負担による埋蔵文化財の調査費の負担軽減措置、これを講ずべきじゃないかと思いますが、この点はどのように考えておりますか。
  126. 安達健二

    説明員(安達健二君) 現在、埋蔵文化財の調査につきまして、原因者負担で、工事を直接行なう者が負担いたしておりますのが約十億でございます。それに対しまして、現在緊急調査といたしまして、国が約一億円の補助をいたしております。それは実体的には半額でございますので、約二億円がいわゆる公費による、まあ公費と申しますか、国なり公共団体が調査をするというようになっておるわけでございます。で、原因者負担の中では、たとえば鉄道建設とか、あるいは道路建設とかいうのが主眼でございまして、中小企業とか個人等の場合には、すべてこの補助金によってまかなっておるところでございます。
  127. 内田善利

    ○内田善利君 先へ進みますが、太宰府遺跡のうしろのほうの山に大野城祉があるわけですね。この大野城祉について、文化庁はどのように評価しておられるのか、お聞きしたいと思います。
  128. 安達健二

    説明員(安達健二君) 大野城祉は太宰府のうしろのほうにございまして、太宰府と密接な関連を持つ重要な遺跡でございまして、これにつきましてはその中の一部の土地につきまして、これを特別史跡に指定をいたしておるということでございますけれども、最近いろいろな工事等も行なわれてまいっておるわけでございますので、われわれといたしましてはこの指定をさらに範囲を広めていきたいと、こういうことを基本にいたしておるわけでございます。
  129. 内田善利

    ○内田善利君 この大野城祉は私もつい最近行ってみたんですが、この大野城祉は地図を見て初めてわかったんですけれども、太宰府の遺跡のすぐうしろにあるわけですね。私は太宰府政庁がこれを城としてつくって、あるいはその前にできておったかもしれませんが、これを使ったんじゃないか、そういう意味では非常に大事な遺跡だと、このように思ったわけですが、特別遺跡としていま指定されておりますけれども、山にできた朝鮮式の古い城ということですが、百何メートルですかね、非常に長い土塁がずっと築かれておるわけですが、これを福岡県の林務部で林道をつくるということで破壊してしまっているわけですね。土塁を破壊してしまっているわけですが、このことについて文化庁はどのよりに対策を講じられたのか、お聞きしたいと思います。
  130. 安達健二

    説明員(安達健二君) ただいま仰せになりました土塁につきまして、本年の六月に発掘届けと申しますか、その地域について工事をすると埋蔵文化財等がある場合にその届け出を出さなければならないわけでございまして、その届け出が出ましたので、文化庁といたしましては、この大野城の土塁の調査、保存につきまして、県の教育委員会に十分行なうようにということを指導いたしておったところでございますが、六月の二十七日に土塁が切断されたということを知りましたので、直ちに調査をいたしましたところ、屯水の東北約四十メートル先の土塁が、幅九メートル、深さ五メートルにわたって切断されておったわけでございますので、この点につきまして、文化庁としては非常に遺憾なことであるということで、この措置につきましては今後こういうことが行なわれないように十分現地当局に対しまして注意を喚起いたしたいと考えておるところでございます。
  131. 内田善利

    ○内田善利君 破壊される前に方法はなかったのかどうかですね。文化財保護法によりまして、工事にかかる三十日前に届け出をしたと、文化庁の指示を待ったけれども何ら指示がなかったので破壊したと、このように言っておるわけですが、これが事実かどうか。その前に、せっかくの土塁——下のほうは五メーター、上が三メーターという非常にいい土塁なんですが、これを何らかの方法でこわさない方法はなかったものかどうかですね。
  132. 安達健二

    説明員(安達健二君) このことにつきましては、実は福岡県が昭和四十二年に明治百年記念事業としてその大野城跡のうしろのところに「県民の森」を計画されておったわけでございますが、それと関連いたしまして、その大城林道というものが史跡指定予定地内の土塁を切断するおそれがあるということで、県の教育委員会は林務部に対しまして、この土塁の確認調査を行ない、そしてその保存方を林務部に実は申し入れておいたわけでございますが、その点内部の連絡が不十分のため、このようなことができたのではないかと考えておるところでございます。
  133. 内田善利

    ○内田善利君 これは文化財保護法第五十七条の二項に違反しているわけじゃないんですか、どうなんですか、この辺は。
  134. 安達健二

    説明員(安達健二君) 発掘届けは出ておるわけでございますので、その限りでは、その届け出はしておるという意味においては適法でございますけれども、それに対して、県の教育委員会に対しまして、それの調査、保存について申し入れをしておったわけでございますので、その点の申し入れの内容が、相互の連絡不十分のために十分できなかったというのが実態でございます。
  135. 内田善利

    ○内田善利君 これは文化庁に聞いてもわからないと思うけれども、あの林道は「県民の森」ということでつくられておりますけれども、はたして必要なのかどうかですね。私もあの坂を上がって行きまして、非常にながめがいいし、観光にはもってこいの場所のように思いました。もう坂を上がって行くときにはまだ日が上がっておりましたけれども、おりるときには夕方になっていたんですが、もう車が二、三台とまっておりまして、夕暮れの福岡市内をながめておるようなアベックの姿もちらほら見えましたけれども、観光道路にはいいかもしれませんけれども、山林伐採というような面はあまり考えられないような山に私は思いました。そういったことで、この大事な土塁を一体どういうことで破壊しなきゃならなかったのかまことにふしぎに思ったわけですけれども、どこか民有地があってその問題でごたごたしているということでもなし、やっているのは県の林務部がやっているし、こういうことで話し合いがつかないことはないんじゃなかったのかと、そのように感じたわけですが、できてしまったことはしかたがありませんが、これは私一例をあげたのですけれども、至るところでこういうことが行なわれているわけですね。ここだけじゃないわけです。そういったことで、最初、開発か保護かということで御質問をしたわけですけれども、こういったことが起こらないように、もっと調査費その他予算を組んでやっていただきたいと、このように思うわけです。ここにこういった遺跡がある、土塁があるということがはっきり研究調査されて、事前にわかっておれば、こういうことは起こらなかったんじゃないかと、そういうことを強く感ずるわけですが、そういったことでは福岡県あるいは九州には、東京あるいは奈良のような文化財の研究機関もありませんし、また大学等も九大の考古学教室に教授、助教授一名ずつおられて、学生も五、六人、これが唯一の研究大学陣で、私立に別府大学がございますが、そのほかには全然そういった研究機関もないし、あるいは県庁にしても、あるいは市にしても町にしても、こういった技術者が非常に少ないと、こういったことなどを非常に感ずるわけですけれども、これはやはり最初申しましたように、こういった二百対一の予算では明らかにつぶされていくと、このように強く思うわけです。そこで、この大野城址ですけれども、広域指定されるということですけれども、これはいつされるのか、また指定になったならば買い上げが問題になると思いますが、買い上げを必要とする民家、住宅があるのかどうか、そういった住民の承諾は得ておるのかどうか、あるいは買い上げ価格等についてまた問題になると思いますが、太宰府と同様に、こういった点についてお聞きしたいと思います。
  136. 安達健二

    説明員(安達健二君) まず追加指定の問題でございますが、ことしの三月に文化財保護審議会に大野町、宇美町にかかわるところのいわゆる大野山の全域の指定を諮問いたしまして、答申を得て、いまその地番の確定その他指定の事務手続を進めておるわけでございます。この大野町と宇美町につきましては、町当局並びに住民の方々の御協力を得ているわけでございます。もう一つ、大宰府町に近いほうの部分は残っておるわけでございます。この部分につきましても、町並びに住民との話し合いをつけまして、でき得れば来年二月ごろ——本年度じゅうくらいには追加指定のところまで持ってまいりたい、かように考えておるところでございます。それから、それに関連いたしまして、必要な土地の買い上げにつきましては、すでに四十五年度、それから本年度も、両年度合わせまして一億五千万円ほどの補助金によりまして、総経費二億円足らずの買い上げを行なうことにいたしておるわけでございます。来年度は一般の、先ほど申しました史跡買い上げ費の増額要求をぜひとも最低二十五億というところの線まで近づけるように努力いたしまして、支障なく買い上げができるように努力いたしたいと考えているところでございます。
  137. 内田善利

    ○内田善利君 この買い上げですが、太宰府の場合は、国が八、県が一・五ですか、太宰府町が〇・五と、約五%の負担ですけれども、太宰府の場合は三億六千万円で五%となりますと、千八百万円ですね。金額が非常に多いので、町の負担としては非常に多いわけです。飛鳥の場合は全額国庫負担です、国庫補助金を出しておるわけですが、特別交付税で見るというような、こういった措置はなされないものかどうか、この点はどうでしょう。
  138. 安達健二

    説明員(安達健二君) いま一般に史跡の買い上げにつきましては、市町村が買う場合を原則にいたしておるわけでございますが、その場合には五割の補助というのを原則にいたしておるわけでございます。ただ、この太宰府遺跡につきましては、この地域の重要性と、また太宰府町の財政負担能力から考えまして、八割の特別の増額の補助率を用いておるところでございます。そして、そのうちで、さらに県にお願いいたしまして、さらに一・五%を県に負担していただいて、太宰府町の負担は最小限にするように努力をいたしておるところでございます。奈良の平城、飛鳥につきましては、従来の経緯もございまするし、また特別史跡としての価値等から考えまして、国が直接買い上げる方式を用いておりますけれども、その他のものにつきましては、公共団体が買い上げて、その場合に五割の補助をするという原則でございますが、太宰府町あるいは多賀城につきましては、特別な補助をしておるということでございます。そうして補助をいたしましたものにつきましてはそれぞれ交付金、交付税等でその区分については見ておるわけでございます。
  139. 内田善利

    ○内田善利君 次にもう一つ、三沢遺跡ですけれども、これも非常に問題なんですが、日本道路公団の鳥栖のインターチェンジの土盛り用の埋め立てに県有地の三沢を選んだ、県有地ですから非常に手っ取り早いということで選んだのかどうかしりませんが、あくまでも県民の土地でございますし、こういった県有地の三沢を選んだがために、ここに非常に優秀なといいますか、遺跡があるわけですけれども、この三沢を選んだ理由はどういうことなんでしょうか。文化庁おわかりでしょうか。
  140. 安達健二

    説明員(安達健二君) 私ども、大体土取りの場所として三沢を選び出された事由等について、必ずしもわれわれとしては十分明らかにいたしておらないわけでございますが、伝え聞くところによりますと、この土地はもと私有地でございましたが、部落にある三つのかんがい用池の水源池としてあったものでございまして、池の水が枯渇しないという条件はつけたそうでありますが、地元住民との間で話し合いがついて、この採土計画がきまったという程度のことしか聞いておらないわけでございまして、私どもといたしましては、そこの遺跡の価値その他からいたしまして、全部を保存するわけにはいかないけれども、主要部分だけでも保存ができないかということで、その対策につきまして、いま県当局と話し合いをいたしておるところでございます。
  141. 内田善利

    ○内田善利君 できるだけ残してもらいたいということで県当局と相談しておるということですが、文化庁はこの三沢遺跡をどのように評価しておられますか。
  142. 安達健二

    説明員(安達健二君) 弥生時代中期の初めにございました集落の遺跡というように考えておるわけでございます。そうして、遺跡は木の枝状に入り組んだ丘陵の上にございまして、住居あとと袋状の貯蔵庫が丘陵の上に発見されておるわけでございます。接続する丘陵地には墓地、それから丘陵の下の低地には水田が存在したというように考えられておるわけでございます。遺跡の保存状態もわりあいに良好でございますので、弥生時代の集落の構造を具体的に解明するのには意義のある遺跡であるということでございます。そういうのでございますが、なおまだ調査が十分行き届いてないということもございます。それから、先ほど申し上げましたように、従来の経過その他からいたしまして、これをすべてそのまま保存するということは非常に困難な事情もございますので、その土を取るところは学術調査をしてはっきりした記録をとっていく。特に重要な部分については原状のままの保存ができるような方途を県と相談をいたしておる、こういうことでございます。
  143. 内田善利

    ○内田善利君 学術調査をして保存しておくという、そういう姿勢が開発をざらに進めておると、私はこのように思うんです。それならばこの辺を削ってよろしい、けれども、ここはまず掘らしてくれ、掘ってから土砂はくずしてくれ、そういって保存しようということで、かえって開発を促進しておるというんじゃないかと、このように思うわけです。三沢遺跡は平城宮とかあるいは太宰府政庁あととかいった遺跡と違って、いまおっしゃったように先縄文、弥生、古墳期と連結した墳墓地、そういった民衆の生産、生活様式が当時のまま残っておる。特に九州地方が弥生文化が多いわけですけれども、特に先縄文も残っておる。こういったことで非常に貴重な遺跡群ではないかと、私はこのように思っておるんですが、こう言ったらなんですが、幸いに県有地なんですから、直ちにストップをして、民衆の古代の生活様式を知るという意味でこれは残すべきであると、このように思うんです。もう平城宮とか太宰府とか、そういったいわゆる何といいますか、権力側といいますか、そういうところの遺跡は大事に残して、民衆の生活様式、そういったものはできるだけ残しますということでなしに、三沢遺跡のようなこういう遺跡こそ私は残して将来の国民の参考にしていくことが大事じゃないかと、このように思うんですけれども、この点は文化庁どのようにお考えですか。
  144. 安達健二

    説明員(安達健二君) 先ほど申し上げましたように、三沢遺跡は木の枝状に張り出しておる丘が三つならんでおるわけでございます。その中で比較的東のほうにあたる部分につきましては遺構といいますか、そういうものがほとんどないというような部分もございます。こういうところはある程度やむを得ないといたしましても、そういうものの遺構等が十分集中的にあるものは、これはどうしても残していくということでございますので、私どもといたしましては、必要な大切なものはやはりこれを残していく、そして遺構等から見てそれほど価値が高いと思われないような部分は、ある程度開発のほうの関係に譲ると、私どもとしては単にすべてを守るということだけでなしに、やはり文化財の必要な部分は絶対守っていく、そうでない部分はある程度これを譲るというのがむしろ現実的な態度ではないかと思っておるわけでございます。  それから私どもといたしまして、政治的な遺跡とそれからいわゆる庶民的な遺跡との間でその価値を区別しておるとか、一方を高くして一方を低くしておるということは毛頭ございません。われわれといたしましても、弥生時代、縄文時代、そのいずれのものにつきましてもこれは非常に大事なものでございますので、こういうものにつきましては保存することについては非常な熱意を持っているつもりでございます。
  145. 内田善利

    ○内田善利君 三沢遺跡の土砂を削らなければ鳥栖のインターチェンジが、縦貫道のインターチェンジは絶対にできないのかどうか。重要文化財として指定して私は中止していただきたいと、このように思うわけです。ここは土砂を取っておる間に遺跡が発見されたんですね。そういうことですから、どうしても東京あるいは奈良のような遺跡の文化財研究所をつくっていただきたいと、このように思うんです。あるいは奈良の何といいますか、研究支所みたいなものでもけっこうですから、研究機関をつくって事前調査をどんどん進めていただきたいと、そういうことはできないものかどうか。福岡は何といいましても太宰府政庁があった所でありますし、西の都としての文化発祥の地でもありますし、邪馬台国も北九州かあるいは近畿かというようなこともありますし、ぜひとも九州にそういった研究所をつくっていただいて調査を十分にやっておけば、こういう削ってしまってから文化財が出てきたというようなことは出てこないんじゃないかと、このように思うんですが、この点はいかがでしょうか。文部大臣のひとつ御答弁をお願いしたいと思うんです。
  146. 安達健二

    説明員(安達健二君) 先に事務的なお答えを申し上げたいと思います。  実は全国各地で開発の波が押し寄せてまいりまして、埋蔵文化財の発掘調査の必要というものが非常に多くなってまいっておるわけでございまして、これは非常に全国的な傾向でございます。それで一つの問題は、各県に発掘の専門家が職員としていないところの県がなお十二県ほどございます。それでわれわれとしてはまずそういうところにその発掘専門の担当官をぜひ置いてもらいたいということをいま各県に強力にお願いをいたしておるところでございます。ただ県によりましては、相当数、十名内外ぐらいの発掘調査担当官を置いておられるところも相当あるようになってまいりました。福岡県におきましては数名の調査員がすでに置かれておるわけでございまして、その意味におきましては福岡県の体制は、比較的ではございますけれども、まだ整っているほうだという感じがいたすわけでございます。しかしながら、いまのような状況では十分でございませんので、この発掘調査体制を日本全体としてこれをどうやって確保していくかということが目下の急務であろうと思っておるわけでございますが、同時に、そういうものに当たり得るところの人材養成という問題からいたしましても、現在日本考古学協会の会員が五百七十名程度でございまして、こういう人たちをやはり専門家を十分活用するということと、そして県に中心的な人がおるというような形でこれをやっていくのがまず第一段の方途かというように考えておるわけでございます。  それからもう一つ、現在奈良の国立文化財研究所に約四十名ほどの調査をする職員がおるわけでございますが、この人たちは主として平城と、それから飛鳥の藤原の発掘で追われておりまして、なかなか全国的な点には及びませんけれども、必要に応じては指導等には行っておるところでございます。で、そういう状態からいたしまして、いまもお尋ねのように、特に埋蔵文化財の多い地域などには何か方法を考えなきゃならないとは思いますけれども、いま福岡県に研究所をつくるということになりますと、これはやはり全国的に見てもいろいろ問題はあるわけでございますので、こういう問題は全国的な発掘調査体制の整備と並んで将来の課題として考えなければならないのではないかと考えておるわけでございますが、実際には私どものほうでその発掘調査の県の方々につきまして、平城のほうで奈良文化財研究所で相当たんのうな人を具体的にあっせんを申し上げておるとか、あるいは直接その職員であった人を県のほうに移すとかいうようなことをいたしまして、実質的な御援助を申し上げておるところでございます。
  147. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) もう次長から御答弁申し上げましたので私から申し上げることはございませんけれども、幸いまあ九州には福岡県知事が九州歴史資料館を四十五、六年度で一億五千万でありましたか、建造中であります。この充実と相まってこれを充実することを先決のことといたしまして、お話のような問題を解決してまいりたいと、かように考えております。
  148. 内田善利

    ○内田善利君 先ほども申しましたように、大学関係の考古学教室も一九大に一つしかありませんし、九州には埋蔵文化財その他の文化財が非常に多いわりにはそういった研究機関が非常に少ないわけです。そういったことから大学の考古学教室をもつと拡大強化すると、そういうお考えはどうでしょう。
  149. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 現在、国立大学におきましては九つの大学に十の考古学の専門の講座がございます。主として文学部の史学科に属するわけでございます。そのほか授業はやっておる。ただし専門の講座はないというような学校もあるわけであります。いま御指摘の今後の計画でございますが、ただいまのところ考古学の専門の講座を計画的に増設をしていこうというようなことをあらかじめ予定しておるわけではございませんけれども、学問上の必要もございましょうし、現に幾つかの大学からは講座の新設のお話も要求としてございます。いろいろ考えまして、今後検討さしていただきたいと思うわけです。
  150. 内田善利

    ○内田善利君 私は先ほども申しますように、公害が高度成長によって生じたように、開発によって文化財がいつの間にか破壊されていってしまっておる、そういうことから調査が十分でない開発が先行して、文化財があとからついていっておると、こういう実情ですから、先ほどから研究機関を何とかして持ってもらいたい、あるいは大学の考古学教室を何とかできないものかと、そういったことで予算面ももちろんですけれど、そういった陣容と体制を整えて先行していかなければこれはもうほんとうに取り返しのつかないことになるんじゃないかと、このように思うわけです。だから言っているわけですが、博物館にしても国立博物館は東京と奈良と京都だけです。こちらに集中しているわけですね。そのためにいろんな九州の文化財は全部東京、奈良、京都へきてしまっているわけです。やはり九州のそういった文化財はやはり九州に国立博物館等をつくることによって保存したらどうか、このように思うんですけれども、この点はいかがでしょう。
  151. 安達健二

    説明員(安達健二君) 仰せのように、現在国立の博物館としまして東京、京都、奈良に三館ございまして、文化財研究所は東京と奈良に二つあるわけでございます。このほかに文化庁といたしましては新たにわが国全体の政治、経済、社会、文化、庶民生活等の各分野にわたる考古史料、歴史史料及び民俗史料を収集保管展示するための国立の歴史・民俗博物館をつくりたいということで調査費が数年間計上されておりまして、千葉県の佐倉市に建造する予定で準備を進めておるところでございますが、同時に地方におきましてもそれぞれの地方における歴史史料、民俗史料等を保管、展示してそれぞれの郷土の歴史と文化財に対する知識と理解を深めるということを目的に、地方歴史・民俗史料館の設置の助成ということに力を入れておるわけでございまして、県立のものを二館と市町村立のものを八館ほど補助をしておったわけでございますが、来年度はさらに地方の要望が非常に熾烈でございますので、市町村立をさらに二十カ所までふやしたいというように考えておるわけでございます。この関連におきまして昭和四十五年、四十六年度、先ほど大臣から申されました太宰府の近くのところに九州歴史史料館というものを一億五千万円でつくられるのを半額補助をいたして今年度中に完成をされるわけでございます。福岡県立とは申しますけれども、北九州一円の考古史料、歴史史料等を総合的に収集展示する中心的な機関ができるわけでございますので、われわれとしてはその充実を心から期待をいたしておるところでございます。私どもといたしましては国立の博物館あるいは歴史・民俗博物館と地方のこの種のものとは有機的なネットワークを形成してその系統的な展示のものはそれぞれの国立のほうで、中央のほうで集めるけれども、その地方特有のものにつきましては、地方に置いておく、あるいはその所有権は国にあるけれども、その物は地方に置いていくというような長期貸し出しをするというような形によりまして、またその記録は全部国立のほうで持っておる、どこに何があるかすぐわかるようにするというような歴史・民俗史料の保存展示につきましてのネットワークをこしらえていくというような考え方で進んでまいりたいと思うわけでございますので、国立と公立との間のそのような関係を立てることによりまして国全体、地方との連携を十分とっていくということのほうが好ましいのではないかというように考えておるわけでございます。したがいまして、さしあたり現在のところは九州に国立博物館を設置するというそういう考えは持っていないわけでございます。
  152. 内田善利

    ○内田善利君 聞くところによれば天草四郎の陣中旗もどこにあるかわからないような話題になっておりますが、文化庁のほうでははっきり所在していらっしゃると思うのですけれども、こういったことが起こるのもやっぱり九州に博物館がないからではないか、私はこのように思うのですけれども、その他福岡城のやぐら等とか、福岡城ごらんになったと思うのですけれども、電車通りから見れば平和台球場で見えないし、あるいは陸上競技場で見えない、中へ入って見ると、非常に広いりっぱな城址なんですね。もちろん文化庁から城址として指定されているわけですけれども、こういったものが何にもなくなってしまっているという状況ですから、博物館はいまおっしゃったような計画ですけれども、何とかしてこういったものを保存する、やっぱりブロックごとに保存をして小学校、中学校の生徒にはそこに行って実物による教育をする、自然保護に関する教育あるいは文化財等の保護の教育、そういったものがなされなければ山はこわれ、川はよごれる、こういう状況にもうなってしまっている、そのように思うわけですけれども、そういったことでぜひひとつ国立博物館をつくっていただきたい、このように思うわけです。  そこで、ちょっと福岡城についてお聞きしておきたいと思いますけれども、これは史跡として指定になっている関係で、この指定内に日赤とか裁判所とかあるいは英数学館とか、いろいろ史跡内に家が建っているわけですが、この点は文化庁は了承していらっしゃるわけですね。
  153. 安達健二

    説明員(安達健二君) 福岡城につきまして私どもといたしましてはその保存をはかると同時に、環境を整備していきたいという基本的な方針でごございまして、その中で不用になったものとかあるいは移ることの可能なものにつきましては順次これを移っていただいて整備をするということでございまして、いまお話の出ておりますような福岡城の南丸に位置するところの多聞やぐらにつきましては、西日本短期大学の建物があったわけでございますが、それは四十五年度におきまして国庫補助金で整備をいたしたわけでございます。それから、その近くにある中学校の問題とか、そういうような問題につきましては、市の当局、住民の方とも十分相談をいたしまして、この史跡として整備をし、また石垣につきましても十分修理をいたしまして、福岡城の史跡の昔をしのぶよすがというものを十分効果的なものにいたしたいと、かように考えておるところでございます。
  154. 内田善利

    ○内田善利君 この福岡城の復元ということについては、どのようにお考えでしょうか、無理でしようか。
  155. 安達健二

    説明員(安達健二君) 考え方でございますけれども、現在文化庁で考えておりますことは、史跡の上にお城があって、それがこわれた、そのものをもとに戻す、また新しく建て直すということは、基本的には、そういうことをいいことである、あるいはそれを進めるという態度はとっておりません。この史跡で、それが建造物等でございまして、それが一部残っておるというような場合のことは別といたしまして、一ぺん破壊されたものを建て直すということは、これはやはり史跡の保存という面からしますると望ましいことではないという考え方に立って指導しておるわけでございます。いろいろな考え方はあろうかと思いますけれども、現在はそういう考え方基礎にしておるわけでございます。
  156. 内田善利

    ○内田善利君 やぐらを指定地域内に持ってくる考えはありますか。
  157. 安達健二

    説明員(安達健二君) やぐらにつきましては、重要文化財に指定することを目途にいたしまして準備中でございますので、指定後においては解体修理ということをいたしたいと考えております。
  158. 内田善利

    ○内田善利君 最後に、九州は、先ほどから申しますように、最近新幹線も通るようになりまして、開発が進んでおるわけですけれども、と同時に、林野庁が九州山地の屋根に沿って大歩道の林道を大分、熊本、宮崎に四百六十五キロにわたって計画しておるわけですが、この九州山地の屋根にこういう道路をつくるということになれば自然破壊は必至だと思うんですが、ここに埋蔵文化財はないという保証ができるのかどうか、あるいは研究がされておるのかどうか、その点、まずお聞きいたしたいと思います。
  159. 安達健二

    説明員(安達健二君) いろいろな道路、その他の計画がある場合におきましては、その該当予定地に埋蔵文化財としての重要なものがないかどうかは事前に分布調査等をいたしまして、重要なものがある場合におきましては、それを避けてもらうとか、そういうことを協議をして進めておるところでございます。
  160. 内田善利

    ○内田善利君 山岳信仰、あるいは先ほども大野城址に土塁しろということで土塁が築かれているわけですが、そういったこと等で、やはり九州山地には、屋根の上には、やはり文化財が埋蔵されておるんじゃないかと、このように思うんですけれども、昨年は一千万円の予算調査をやっておるわけですが、総工費四千八百十八億円で大歩道林道をつくるという計画ですから、これは、やはり先ほどから申しますように、もし九州に文化財研究所があれば先行して調査ができるんじゃないか、あるいは博物館あるいはそういった大学の考古学教室等があれば、もう少し拡大、増大されておるならば、先行できるのじゃないかと思うわけですけれども、何しろ開発二百、文化財保護一の予算では、破壊される一方じゃないかと、このように思うんですけれども、その点はいかがでしょうか。
  161. 安達健二

    説明員(安達健二君) まあ具体的にいかにして調査を進めるかということに主眼があるわけでございまして、まあ国立の研究所をつくったから、直ちに非常に促進されるということは必ずしも言えないと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、民間の学者を動員し、その県の職員を充実いたしまして、その調査等につきまして、事前に適切なる解決ができるに資するような調査が行なわれるように努力をすべきものと考えておるところでございます。
  162. 内田善利

    ○内田善利君 最後に、大臣にお聞きしますけれども、どうしても一開発が先行しているわけですね。それでもう少し私たち全国民が自然保護、文化財保護、祖先のそういった遺産を大事にするという精神にもっとならなければいけないんじゃないか。簡単にこわして、あとはもうどうにもならない、こういう実情では困ると思うんです。それで、自然保護あるいは文化財保護等の教育を小学校、中学校時代から当然科目の中につけてでも、あるいは単元としてでも子供たちにそういった教育を——山の中に入ってすぐチョウ類を取って殺すとか、あるいは草花をすぐむしってしまうとか、そうじゃなくて、もう少し保護していくような子供たちをつくっていただきたい。あるいはそういった子供たちをもよりの博物館、まあ先ほどから博物館ばかり言っておりますけれども、そういったところに行って実物教育をして、祖先の遺産を見せながら教育をしていく、そういった体制を私はつくるべきじゃないかと思いますけれども、この点はいかがお考えでしょうか。
  163. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 御意見全く同感でございまして、ぜひそうした体制を進めていきたいと思いますが、これはひとり子供の教育だけの問題じゃないと思うんですね。だから、そういう社会環境をつくらなければならぬという意味においては、私は先生のおっしゃる博物館の問題もやはり取り組まなければならぬ問題だろうと思うんです。何さま限られた予算の中でやることでありますから、これは漸を追うてやっていくというとで進んでいく以外にないだろうと思います。御趣旨については全く同感でございます。
  164. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 前に引き続きまして、幼児教育についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  初めに、幼児教育内容についてお伺いをするわけでございますけれども昭和四十六年度予算では、幼稚園教育内容の改善等に関する調査研究費として三百三十三万六千円が計上されておりますけれども、その調査研究の具体的な内容について、まずお聞かせをいただきたいと思います。
  165. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 四十六年度におきまして、三百三十三万六千円の予算が計上されていますけれども、これは、一つは、教育内容の改善に関する調査研究、これが百五十五万九千円。それから、二番目が、幼児の使用する玩具等に関する実態調査、これが百七十七万七千円、この二つの内容が三百三十三万六千円のうちに入っておるわけでございます。
  166. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうしますと、現在、その調査研究はどのあたりまで進められておりますでしょうか。中間的な発表ができるものがあれば、お示しをいただきたいと思います。
  167. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 内容につきましては、この前もお話し申し上げましたように、大臣の諮問機関といたしまして、幼児問題懇談会というのをやっておるわけでございますけれども、第二回目をやはり今月中にでも開きたいというつもりでおります。これが第一番目でございます。  第二番目の、おもちゃに関する実態調査は、いま、調査を進めておるところでございまして、まだ、その結果が出ておりません。
  168. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 その御調査になっております段階で、これは問題だといったようなことがあれば、あわせて伺わせていただきたいと思います。
  169. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 幼稚園教育にどういう点を期待するかという点につきまして、これは内容でございますけれども、まずそういう一番根本的なことから始めたい、それから順次具体的な内容に入ってまいりたいということでございますが、先ほど申し上げましたように、幼児問題懇談会におきまして、基本的に幼児教育に何を期待するかという点をもう少し詰めていろいろ議論をしていただきたいということが第一でございます。その際に、最近の幼児を取り巻く環境と申しますか、だいぶ変わってまいりました。マスコミ、テレビの発達等の影響もございますし、また最近の核家族化と申しますか、非常に若い夫婦のもとで幼児が生活をしておる。つまり親との対話というものはございますけれども、子供同士の対話あるいは遊び、こういうものがだんだん少なくなってきているということでございます。そういうふうないろいろな幼児を取り巻く環境の変化によりまして、やはり幼児教育に対する内容というものも違ってまいるのじゃないか。そういうことを前提にいたしまして、いままで幼児教育につきまして非常な御経験の深い方々にこれからの幼児教育にどういう点を期待するのかという点を十分御検討いただきたいというふうなただいまの考えでございます。
  170. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 いま、親子の対話はあるけれどもというお話でございましたですね。その親子の対話というものの中でどういう対話が現在の親子の中で、幼児期における親子の中でどういう対話が行なわれているか、いかがでございましょうか、そういうことについて具体的にひとつお聞かせいただきたいと思います。
  171. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) どうも私もその方面あまり詳しくございませんので、いまここで申し上げるというのは申し上げにくいわけでございますけれども、これは核家族化いたしますと、いわゆるおじいさん、おばあさんと申しますか、長い間の経験に基づくいろいろな習慣とかそれから伝統とか、そういうものよりは、むしろ両親個人の感情とか、それから経験とかそういうものが強く出過ぎて、対話と申しましても、いわば非常に個性的と申しますか、特殊な経験、対話しか得られないのじゃないかという点が非常に心配をされるわけでございます。そういう点から考えまして、ほかの子供との接触が少ない、それからほかのいわゆるおとなとの接触が少ない、そういう点が一番問題じゃないかというふうな気がするわけでございます。
  172. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そういったようなことで、いまの親子関係というものも必ずしもその子供にとっていい環境でないという場合というものも考えられるわけでございますね。私は不幸な子供をつくらないという会に出していただきましたときに、先生から、小学校の一年生の先生だったと思うのですけれども、まことに私にとりましてはショッキングな話を聞かせていただいたわけです。それは、ある一人の子供が自分の仲間に対して、ぼくはおとうちゃんとおかあちゃんが失敗してできたんだよと、こういうことを言った。そこで一方の言われた子供は、一体失敗とは何だと、こう言ったら、何だか知らないけれどもママがそう言っていたよへとにかく——とにかくとは言わなかったでしょうと思いますけれども、ぼくの上にはほんとうはおにいちゃんがあるし、下には弟があるのだ、それをねママがこうしちゃったのだよ、こう力を入れてぞうきんでもしぼるようなかっこうをしたというわけなんですね。聞いていた子供はわからないから、ふうーんと言っていたそうですけれども、おとなである先生はまことにびっくりをした。こういったような話を幼い子供に対して母親がもし言っているとすれば、これはたいへんなことだと私は考えたわけでございますね。こういったようなことを考えてみますと、これはどうしても若いおかあさんたちの教育というものをもう少しやらないことにはほんとうに幼稚園でいろいろやってみても効果のあがらない面がある、そうしてまた、親子の関係といったようなものもこの子供が大きくなったときに、ぼくは要らない子供だった、失敗してできたのだ、失敗してできたぼくという存在は一体何だろうかということを考えた場合に、私はその親子関係はどうなるのだろうか、こういったような心配もあるわけなのでございます。そういうあたりは余分な話でございますけれども、これもまたひとつこの幼稚園教育の面として家庭教育の面、そういうところでお考えをいただきたいことだと思います。  この前の七月号の文部時報の中で、前の初等教育課長さんが、現在の幼稚園教育要領を中教審の答申に沿って全面的に改定をする準備作業を始めたと述べておられます。そしてまた、教育内容も全面的に改めると言っておられるわけでございますけれども、現在の幼稚園教育はどこに大きな問題点があるとお考えになっておりますか、承りたいと思います。大臣のほうからどうぞ。
  173. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) これは、私より萩原さんのほうがお詳しいのですが、幼児教育の一番の私はいま考えなければならぬ問題は、幼児教育が知的偏向が非常に強いと、これはもちろん学校教育の一貫ですから知育も必要でありましょうけれども、一番問題なのは知的教育の偏重というものが進んでおって、情操の教育だとか社会環境の問題とかいうような問題がおろそかにされておる、軽く見られておるというところに私は幼児教育の一つの致命的な欠陥があるのじゃないか、これを何とか直さなければいかぬのじゃないか、かように考えております。
  174. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 ところで、いま現在使われております幼稚園教育要領の中には、こういうことが書いてございます。これは釈迦に説法ということになるわけでございますけれども、「幼児の心身の調和的な発達を図り、健全な心身の基礎を養うようにすること。」「基本的生活習慣と正しい社会的態度を育成し、豊かな情操を養い、道徳性の芽ばえをつちかうようにすること。」「自然および社会の事象について興味や関心をもたせ、思考力の芽ばえをつちかうようにすること。」「のびのびとした表現活動を通して、創造性を豊かにするようにすること。」といったように、書いてあることを眺めてみましたときに、私はいまの幼稚園教育が必ずしも知育偏重になっているとは考えられないと思うわけなのでございますね。それを特に変えよう、全面的に教育要領を改定し、教育内容も全面的に改定しようと、こういうふうにお考えになっておりますのは、一体、文部大臣はどのような幼児教育観の上に立って幼児教育のこの教育要領を全面的に改定をしようとなさっておりますのか、正確なお答えを承りたいと思います。
  175. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) いま、萩原先生がおっしゃったような問題も取り上げまして、私はこの指導要領の考えております項目、一々賛成でございまして、なるほど知育偏重になっているところはないだろうかというような問題を考えまして、幼児教育懇談会なるものを発足させておるわけでございます。その結論をまちまして指導要領も変えていきたい、こういうふうに考えておるわけなのであります。
  176. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 いま、現状作業をしておるということでございますから、少なくとも文部大臣のこの中教審の答申に対する考えというものをしっかり踏まえてそういうことの準備作業にかかっていらっしゃると私は解釈をしたわけなのでございます。特に、同じ七月号の中で、中教審の答申に沿って改定するということでございますが、その中教審の答申の「幼年期のいわゆる早熟化に対応する就学の始期の再検討、早期教官による才能開発の可能性の検討」ということに焦点をお合わせになるといたしますならば、私はむしろ大臣のおっしゃったような人間性の芽ばえの育成よりかは、むしろ知能開発に傾斜をするような改定になるのではないか、こういうおそれを私は多分に持ったわけなのでございます。ところが去る八月十九日の本委員会で私の質問に対しまして大臣は、幼児教育の一番大切な問題は幼児期における人間的な豊かな情操の育成であり、知識、知育の先取りであってはならない、こういうお答えをしてくださいました。少なくとも幼稚園教育の大きなねらいは、最初の集団生活においての人間的な情操を中心に考えるべきだ、こういうお答えをいただきまして、私はこのたびの考え方でございますと、まことにありがたいことでございますとお礼を申し上げたかと記憶をいたしております。そこで文部大臣のこのお考えの上に立って現行の教育要領にどこに大きな欠陥がありますか、再度私は承りたいと存じます。
  177. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 私はまだ詳しくあれを見ておりませんが、確かにあなたに申し上げましたのは、私が直観しておる感じは、幼児教育というものがややもすれば知育偏重の小学校教育の先取り教育をしてやっておるという感じしか持てない、これじゃどうもほんとうに幼児にとってはふしあわせなことだと思う。そこで一番大事な人間性の芽ばえをすなおに育ててやる幼児教育、伸び伸びと育ててやる幼児教育というものを展開してやりたいという意図を持っているということを申し上げたつもりでおります。その考え方に立ちまして今度の幼児教育懇談会もその方向についての御検討を賜わりたいと思っておりますし、その結果指導要領の改定を必要とするのであれば改定をしなきゃならない、何も中教審の答申がこうなっておるのだからこうするのだというわけじゃございません、私はいまそういうふうなことをすなおに考えておるということを御承知おきいただきたいと思います。
  178. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 文部大臣、私はやはりこれに書いてありますことをすなおにやっていけば、ほんとうはもっと伸び伸びとした子供が育たなければならないはずだと思うのです。それを全面的に改定するとか、教育内容を全面的に改めるとかおっしゃることを考えてみますと、大臣は知育の先取りではないのだとおっしゃってくださるんだけれども、何かしら私自身にしますと、ちょっと不安な感じがするわけです。そこで大臣に伺いますけれども大臣のおっしゃいますような情操教育をより徹底するための幼稚園のカリキュラムのあり方をひとつ承りたいと存じます。
  179. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 大臣まだ御就任以来あまり御時間がなくて、こういうところまで御勉強になるひまがなかったわけでございます。ただいま大臣がおっしゃいましたような方向で私ども学習指導要領等を検討したいということでございまして、まあ座談会等で多少アクションが強過ぎてそういう表現になったと思いますが、問題がないことはないわけでございます。たとえば年齢に応じた区分とかそういうものがされておりません。そういう点はまあ検討すべき事項でございましょうけれども、全面的というのはちょっとオーバーな表現じゃないかと思うわけでございます。内容につきましては、ただいまこの学習指導要領でも十分やっていけるじゃないかということで私どももそういうふうな感じがいたします。ただ、新しいいろんな事態が生じておりますので、そういうものに適応するようにもう一度全面的に見直して見、いいものはいいもので当然残していく、そういうふうな作業をしたいということが真意でございます。その点補足して私のほうから申し上げます。
  180. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 重ねてくどくお尋ねして恐縮ですけれども、やっぱり幼児教育というのは人間性の芽ばえの育成に重点を置くんだと、そういうことでございますね。そこで知育開発、知能開発というものに傾斜をしますと、これはほんといって義務教育に行ったときに非常に混乱を起こすんだ、こういうことは十分お考えいただいているわけでございますね。それで、幼稚園教育要領の改定というものがどういう形でなされますか、これからこの大きな目を見開いて見せていただきたいと考えるわけでございます。どうぞその人間性の芽ばえにこそ重点をおいていただきたい、これはお願いしておきたいと思います。  ついで幼稚園教育の普及についてお伺いをいたします。  文部省幼稚園教育振興十カ年計画をつくって来年度初年度とする前期五カ年計画をまとめられたと聞いておりますけれども、その五カ年計画内容と、それに基づく予算についてお伺いをいたしたいと思います。
  181. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 先ほどもお答えしたわけでございますけれども、今度の十カ年計画の目標と申しますか、これは二点ございまして、一つは四・五歳児を全部幼稚園に収容できるようにしたい、これが一点でございます。  それからもう一つは、現在幼稚園の中では、私立幼稚園というのが非常に重要な役割りを果たしておるわけでございますけれども、父兄からみますと、父兄負担というのが私立公立ではかなり格差がある。そこでその格差をできるだけ早く解消してまいりたい。この二つが当面の目標でございます。  具体的な計画内容につきましては、ただいま申し上げましたような線に沿いまして計算をいたしますと、まず保育所に当然収容すべき子供がおるわけでございます。三〇%近くもおるわけでございます。それから遠距離で幼稚園に通えないという子供も、これはある程度やむを得ない。あんまり小さな幼稚園を普及するというところまでは、計画的に普及するというところまではまだいっていないということで、前期の五カ年については三十人未満の幼稚園は、これは設置をされることはもちろんけっこうでございますけれども、それを計画的に推進するということは一応後期の五カ年に延ばしておるいうふうな事情はございますけれども、まあ四、五歳児を全部だれでも収容しますと、五カ年計画では一応五歳児は六六%まで、それから四歳児は現在四一%でございますが、これは五〇%まで引き上げていく。それから十カ年の最終におきましてはほぼ七〇%程度になると思いますが、まだ正確な数字はわかりませんけれども、ほぼ四歳児と五歳児を全部幼稚園に収容できるようにしてまいりたい、もちろん希望するものでございます。そういう計画でございます。そこでさしあたり年度におきましては、いままでの増加の傾向を考えまして新設幼稚園七百五十園、それから増加学級の千五百学級というふうなものを増設したいということで、予算要求しているわけでございます。しかしいままでの経験から申しますと、たとえば新設幼稚園につきましては約倍のものをつくっていかなくちゃならぬというふうな事情でございます。  それから先ほど申し上げましたように父兄負担格差を解消するという問題でございます。そこで公立幼稚園につきましては教員の給与費を三分の一補助、あるいはスクールバスの新設あるいは施設等の補助率を引き上げるというふうないろいろな対策を講じて、公立幼稚園をできるだけ普及できるようにしたい。あわせて私立幼稚園につきましては委託費というふうな考え方で、三年計画でもって公立との格差を解消しょう、これが来年度予算内容のおもなものでございます。
  182. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 来年度予算につきましては非常に大幅な、今年度の約十数倍に当たる予算要求されましたのでございますから、従来から幼児教育の振興を念願し続けた私にとりましては、満腔の敬意を感謝をささげる次第でございますけれども、それが特にこの幼稚園先生たちにつきましても公立は三分の一、私立は幼児一人に一万円の補助ということはたいへんありがたいことなんですね。しかしこれでどの程度の待遇の改善になりますでしょうか。特に私立の場合の対象は学校法人だけに限られるわけでございますね。それはほかにもございますか。
  183. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 私立幼稚園に対しましては学校法人のみならずその他宗教法人、個人立まで格差の解消をはかろうということでいろいろくふうをしているわけでございます。
  184. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それはたいへんありがたいことでございます。幼稚園先生の中には無資格者とか、あるいは助教諭の方が非常に多いと思うわけでございます。そういう無資格者とか助教諭の数というのが有資格者と比較してどの程度現在いらっしゃるか、おわかりでございましょうか。
  185. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 四十六年五月現在でございますから、今年度の初めでございますが、園長が五千八百八十五人、教諭が五万三千二百九名、助教諭が七千九百九十四名、養護教諭が百八十六名、養護助教諭が六十六名、その他講師というのが千二百二十九名、したがいまして教諭と助教諭だけとりますと、助教諭の比率は一二%程度になっております。
  186. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうしたら、そういったような無資格のような方、あるいは助教諭の方の資格を取るためにどのような配慮を払っていただけるのでございましょうか。そのための予算というものはどういうふうなものになっておりますでしょうか。
  187. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) ただいま実技講習会等をやっているようでございますが、そのほかにも大学の通信教育その他、いろいろ手段はあるわけでございます。私どももできるだけ有資格の教諭を充実するという方向で今後も考えてまいりたいと、かように考えております。
  188. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 その待遇につきましては、ただ給与の問題だけではなくて、人数の問題も出てくると思います。そういうことにつきましてはまた日をあらためて伺いたいと思います。  次に、時間がございませんので、幼児教育に関する実態調査についてお伺いをいたしたいと思います。私は六十一国会の文教委員会幼児教育の実態面について質問をいたしました際に、この文部省調査が十分でないことが明らかになりました。そして四十五年度予算幼児教育に関する調査費として新規に五百八十三万五千円がついたわけでございますけれども、その調査の結果はどうなっておりますか、お示しをいただきたいと思います。
  189. 奥田真丈

    説明員(奥田真丈君) 幼児教育に関する実態調査につきましては、昭和四十五年に実施いたしました。昭和四十五年の五月一日現在日で実施をしたわけでございますが、その調査は大体三本の柱から構成されておりまして、一つは、幼児教育に関する社会的要請の調査と呼んでおりますが、父母の幼児教育に関する意識調査をしたわけでございます。それからもう一つは、幼稚園及び保育所に関する調査でございます。それから第三番目は幼稚園教育条件等に関する調査と、この三つで構成しております。で、昨年の秋以後におきまして調査表を回収いたしまして、一番の意識調査のほうは世帯数約一万名、それからそのほか二つは市町村の悉皆調査並びに公私立幼稚園悉皆調査をやりましたので、非常に膨大な調査表になりまして、調査表回収並びにその調査表の精査等に相当の時間を要したわけでございます。現在は集計が大部分終わりまして、分析作業を行なっております。ただいまの状況で申しますと、一冊の報告書としてはまだでき上がっておりませんが、集計の済んだもの、あるいは必要に応じて特別に集計、分析等をやりまして、逐次、施策の基礎資料として利用するように発表しております。まあそういう状況でございます。  なお、発表いたしましたものの中には、先般の教育白書の中にもいささか載せてございますし、さらにまた、そのほかに実施局等で必要とされる事項につきましては約四十事項ぐらいの集計は終わってデータになっております。
  190. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 そうしたものにつきましての資料をひとつお願いいたしました者といたしましては、ぜひその結果が知りたいわけでございますね。調査はしてくださいましても、それがどこでどのように使われているのかということが明瞭になりません場合には、この調査費の行くえというものはまことにわびしいものになってくると、こういうことでございます。中教審が今度六月に答申されたわけでございますけれども、昨年秋に大体まとまったということでございますし、教育白書の中にも出たということでございますが、この調査が中教審の中にどのように反映をされましたのか、その点ちょっと承りたいと存じます。
  191. 奥田真丈

    説明員(奥田真丈君) 調査の結果につきましては、実はコンピューターに一応記憶さしてございまして、素情報と申しますか、コードナンバー等をつけまして表になって出てくるわけでございますが、ですから、必要に応じましてコンピューターを回して必要な結果等を出しております。中教審の予測計量をいたします際に、幼稚園並びに保育所に収容する者の比率はどのようになるかということにつきまして、実態調査の結果の集計を調査項目を整理して出したわけでございます。この点につきましては先回も御答弁申し上げましたが、たとえば事項を母が共働きであるために保育所へ入所を希望する者の割合はどれぐらいかと、こういう事項で出しますと、共働きしているから保育所へ入所させたい者が二五・一%と、こういう計算が出てまいります。それからまた共働きをしているために保育の代替をしてほしいと、こういう希望を持っている者はどれぐらいかということで機械を回しますと二五・六%、こういうデータが出てまいりました。それからまた、現在、各市町村のいわゆる幼稚園、保育所等の施設状況はどうなっているか、こういうことを調べますと、これは二十数%になった結果が出たわけでございます。そういう結果を総合いたしまして保育所へ収容し得る者は二五%と、こういうように中教審は試算をしたわけでございます。その残りを百から引きまして七五%幼稚園に収容するように計算した。こういう過程を設けて中教審の答申の参考資料は試算されています。
  192. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 非常に調査費がうまく使われたというわけでございますね。  それでは伺いますけれども、この調査公私立幼稚園教育条件並びに内容にどのような格差がありましたか、実際例をお示しいただきたいと思います。
  193. 奥田真丈

    説明員(奥田真丈君) 幼稚園の実態の部分、つまり三番目の事項の調査内容にかかわることでございますが、現在、申しわけございませんが、具体的なデータは持ち合わせておりませんですが、幼稚園の実情につきましては、たとえば教員の勤務年数の状況、あるいは免許状の種類、職名別の教員数、あるいは給与段階別、学歴別、年齢別の教員とか、生徒等につきましても一応事項を定めて集計はしてございます。
  194. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 まことに意地の悪いお尋ねになって恐縮でございますけれども、やっぱりこういう調査をなさったときに、どのように公立私立幼稚園には、条件の問題と教育内容の問題ですね、それがどのように格差がありますかと、そういったことを実際例として私はやはりつかんでおいていただきたい、そういうことがこれからの非常に大事な問題になってくるんではないか、ただ外見だけの問題ではございません。やはり教育内容の問題で、公立私立ではこういったような実際的に格差がある、こういうことがつかめていただいて、初めてほんとうの幼児教育の振興ということがはかれるのではないかというふうに私は考えているのでございます。ですからこれらの格差というものをしっかりつかんでいただいて、そしてそういう格差を是正するための対策を立てていただきたい、こういうことをお願いをしておきたいと思います。  では次に、社会教育における幼児教育についてお尋ねをしてまいりたいと思います。  四十六年度の社会教育予算は従来にない大幅の伸びを見せておりまして、これも学校教育と社会教育は車の両輪だと考えておりました私は非常に喜んでおるわけでございます。特に社会教育の場としての公民館並びに図書館、こういったようなもの、また社会教育直接の担当者としての社会教育主事の養成あるいは指導員の設置などに特別重点が置かれておりますこともまことにうれしい限りでございますけれども幼児教育の重要性が叫ばれております今日、社会教育局としてはその幼児教育の問題についてはどういうことを特にお考えになっておりますのか承りたいと思います。
  195. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) お答えいたします。  社会教育関係幼児教育については、長年の間ブランクでございました。つい最近になりまして、幼児教育の重要性ということについて勉強を始めたわけでございますが、勉強すればするほどだんだんわからなくなるところも多うございます。しかしそれにしても、最近の幼児教育の重要性はうすうすわかってまいりますし、またそれについて若い両親の希望が多いというようなことも・ございますので、四十六年度はいろんな研究会を重ねてまいりましたが、四十七年度予算につきましては、幼児教育を社会教育局の事業のうちでは最大の仕事にいたしまして、幼児期の子供を持つ両親に対しまして個別に相談事業をするという問題で四億七千万円の予算要求をいたしておるところでございます。非常に至りませんけれども、おくればせながらその重要性を意識して努力を始めたところでございます。
  196. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 新規にこういう予算を組んでいただいたことはまことに私はけっこうだと考えておるところでございます。で、幼児教育と申しましても子供に対する教育は学校と家庭と地域の三者一体、こういうことになって実をあげるものだというように考えておりますけれども、そこでこれは文部大臣お尋ねいたしたいのですが、学校教育活動、社会教育活動の両者を包含したような広い教育活動を行なっているものに対して、国として、文部省としては助成の道をどのようにお考えになっていらっしゃいますのか承りたいと思うのです。
  197. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) いま先生が御指摘されましたように、学校教育と社会教育の不離一体的な運用が非常に重要なことはよくわかります。それで私どもも来年度の幼児期を対象とする家庭教育相談事業の仕事を企画する前に、全国の具体的な例についても婦人教育課を中心にいろいろ調べてみたわけでございますが、その際、兵庫県の幼児教育センターというのが過去三カ年の歴史を持っておられて、大きな施設も持ち、全県下にわたって非常にいい仕事をなすっておるということも研究したわけでございますが、具体的に調べてみますと、設置費に二億のお金もかかっておりますし、まあいかんせんワクの少ない私どもの局の仕事で、いまから初めて手を染めるわけでございますので、その重要性の非常に意義あることは十分認識しながら、さしあたってはがきを用いた家庭通信の相談事業とか、あるいはその結果をローカルのテレビに乗せて茶の間に届ける放送利用の手段だとか、その限度にとどめたわけでございまして、その重要性についてはもうすでに研究いたしまして十分わかっておるところでございますが、事務の点ではまだそこまではいけなかったというような現状でございます。
  198. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 実は、局長さん、私この間姫路の幼児教育センターへ行ってきたわけでございます。そこで、先生のオーバーワークなんということばがあそこでは全く当てはまらない、それは人のことばだというようなものですね。こういう兵庫県で県が独自でやっております幼児教育センターがどんな仕事をしておりますのかということについて、年間どれくらいの予算でやっておりますのか、それを御存じないのだろうかと思ったわけですけれども、よく知っておりますということでございますからお尋ねしますけれども、これ一体どれくらいの年間予算でこの仕事をやっているとお考えでございましょうか。
  199. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) いただいた資料では年間四百万円の予算だと心得ております。
  200. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 三百四十九万でございますけれども、その中には施設費が入ります。ですから実際に使えるお金は二百六十二万、それくらいのことで仕事をしているわけでございますね。そうして幼稚園先生の研修会それから幼児教育についての調査研究あるいは幼児教育のテキストの作成はじめ、ことしは母親を対象とする県民大学女性セミナー、こういうものもやっておりまして、幼児の教育相談、こういうものをあわせていろいろな角度から総合的に進めているわけでございます。それで二百六十二万というささやかな費用でやっているわけでございます。私はこれを見せていただいたときに、ほんとうに幼児教育が大事だとおっしゃるのなら、こういうところへこそ予算がいただきたいということをしみじみ考えながら私はその先生方にお約束をして帰りました。これは必ず文教委員会でこの話を申し上げ、そうして御理解の深い文部大臣はじめ社会教育局長さんにはぜひぜひ、補正予算の道もあるということでございますから、これは何とかして予算を組んでいただいて、県が二百六十二万を出すのなら、国も同額くらいは出して、兵庫県にただ一つ、そうして全国にただ一つのこの幼児教育センターを実らせていただきたいなと、こういうことを私は考えたわけでございます。この問題については高く評価をしているということでございますから私はもう多くを申し上げないでおきたいと思いますが、この点いかがでございましょう。予算化しようというお心組みがおありでございましょうかどうか、承っておきたいと思います。
  201. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 私も社会教育局長二年目になりまして少し全国の模様がわかってくるわけでございますが、全国的に社会教育行政の運営には、学校教育と違いまして非常に落差といいますか格差が大きゅうございます。兵庫県などは全県下あげて社会教育に非常な力を入れておられるところでございます。そしてなるほど実質上の運営費は二百六十何万の限度でございましょうが、建物をつくるにいたしましても二億くらいの金がかかりますし、それからまた全国の社会教育関係者が乳幼児を対象として両親の教育に力を入れ始めるのがことしから来年へかけてという、まだスタートの段階でございますので、研究はいたしましたし、多くは評価しながらも、まだ全国の仕事としていくのはもうちょうと先じゃないかというような判断をしておるわけでございます。したがって、そういうケースを直ちにほかの県へ奨励援助しようとしても、受け入れる力がないのじゃないか、それで先々への展望は描きながらも来年度予算やことしの補正予算で直ちに手を着けるというところにはまいらないのじゃないかという感想を持っております。
  202. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 それは私非常に残念だと思うのです。もうすでに手を着けてやって実績をあげているところでございますからね。ここはまず予算をつけて、そうしてそこは大いに仕事をやって、あそこへ行ってひとつ幼児教育センター見てきなさいと、そういうことで、やろうというきざしが見えたら順次予算化していただいてもいいわけですけれども、もう姫路は現に、ここに金井前知事さんもいらっしゃるわけですが、非常に県としては大きな負担をやりながらやっていただいた。このことについて、国は非常に高く評価しますけれども予算の問題についてはもうしばらく御遠慮願いたいということは、これは聞こえない話だと思うのです。ですからここらあたりでひとつ、とにもかくにも何とか予算をつけたい、予算をつけようというお話が私はお聞かせいただきたい。これは文部大臣からお聞きしたいと思います。
  203. 今村武俊

    説明員(今村武俊君) 大臣にお答えいただきます前に一つ申し上げますが、まあ社会教育行政費の予算で国費と地方費の分担は、国のほうが五%程度の分担になっております。府県、市町村が九五%ぐらいでございます。それで兵庫県のほうから補助金を出してくれというお話はまだ一回もないわけでございます。その意思表示がございましたのは兵庫県ではございませんけれども先生からそういうお話がいま初めて、公式の場でございますが……したがいまして県のほうえ補助金を出すという段取りにはなっておりませんが、これが非常に一つの幼児教育に対するいいサンプルである。そういう意味ではいろんな機会に取り上げて全国関係の方々に実情を知っていただきたいというふうに考えておるところでございまして、それに対してお金を出すという判断はまだ大臣のところへも一回もあげたことがないもんですから、つまり県からも何にも言ってきてないもんですから、そういう事情をひとつ御勘案の上で大臣の御答弁をお聞きいただきたいと思います。
  204. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 萩原先生のお話伺っておりまして非常に私も同感であります。私はことし社会教育局と体育局とに特に力を入れまして、まあ生涯教育のねらいをそこに置く。先ほど御指摘になりましたのは幼児教育の前の家庭教育段階、言いかえるならば母親教育というものをどうするかという問題をひとつ社会教育局で考えてもらいたいということも今村君には注文をつけておりました。予算は十数倍の予算要求になりましたけれども、もとは根っこが小さいんですからまだまだこれは十分なものじゃございませんけれども、ものの考え方としては私はそういう考え方をしていきたいと思っております。  いま兵庫県の問題ですぐ補助金出せ、前の知事さんおられますけれども要求も出ておりませんので金を出すというお約束もできませんけれども、将来そういう問題につきましては十分前向きに考えていきたいと考えております。
  205. 萩原幽香子

    萩原幽香子君 どうもありがとうございました。これは私のほうがたいへんぬかっておりました。それでは早速兵庫県の教育委員会のほうから文部省のほうに対しまして補助金の助成をお願いする書類を出させますので、そのときはどうぞひとつよろしくお願いを申し上げます。  どうもありがとうございました。時間がまいりましたのでこれで質問を終わらせていただきたいと思います。
  206. 加藤進

    ○加藤進君 私は筑波に創設される新大学の問題について若干質問をしたいと思います。新大学創設準備調査会の最終の報告によりますと、この大学昭和四十八年度に開設することを目ざす、こういっておりますけれども、文部大臣としてはやはり四十八年度に開設されるおつもりがあるかどうかお尋ねしたいと思います。
  207. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 新大学の発足は昭和四十八年に一学群、一体育学群、これだけはひとつ……。
  208. 加藤進

    ○加藤進君 もう一度。
  209. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 一学群と体育専門学群だけはまず開設したいと思っております。
  210. 加藤進

    ○加藤進君 最終報告によりますと、設置形態についてはさまざまな条件を考慮しながら当面はいまのような国立大学で、こう出ておるわけでございますが、文部省としましても国立大学でいかれるつもりかどうか、このことをお伺いしたいと思います。
  211. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) ただいまのところ国立大学でいくつもりでおります。
  212. 加藤進

    ○加藤進君 当面国立大学でいかれるとなると、ちょっと大きな問題が出てくるんじゃないかと思います。それは、最終報告にいわれておるように、新大学の組織管理運営体制について、もしこの報告のとおりに大学が組織されていくなら現行の学校教育法やあるいは教特法などについて相当抵触するところが出てくるのではないか、こういうふうに私は判断するわけでございますが、その点は文部大臣いかがでしょうか。
  213. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 当面、国立大学でスタートをするような考え方でおるわけでございますが、そのときにもこの最終報告にございますように、いずれこれはさらに準備会で細部について検討をやるわけでございますが、この大筋でやるとすれば御指摘のように現在の法令になじまない部分が相当ございます。そういう点を将来法律的にどう取り扱うかということも検討の材料に予定をしておるわけでございまして、このとおりとすれば御承知のように現行法それぞれ違いますところはこの趣旨が通るように新しく制定、改廃をするという形になるわけであります。
  214. 加藤進

    ○加藤進君 そうしますと、主としてどんなところを改正する必要があるのか、こういう点について簡潔でよろしゅうございますがお答え願いたいと思います。
  215. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) この報告をいただきまして早速われわれのほうでは本年、予算的にも準備をいたしておるわけでございますが、準備調査会で細部の検討を学識経験のおありの方にお集まりいただきまして練るわけでございまして、練りました結果で御説明できるといいのでございますが、とりあえずそういうことはいずれあるということをお含みの上できわめて事務的に形式的な御説明をさしていただきたいと思います。  これにはまず学校の設置自身を法制的にどう取り扱うかという問題がございます。それから内部に入りまして、学部であるというようなことが現在は他の国立学校には国立学校設置法をもちまして明記してございますが、新大学はそういった学部の機構をとらないというようになっております。学生の集団は、学群でする教育課程の編成というようなことに重点を置きまして組織づくりをする。教官の組織は学系という形で新しく考えるということになっております。  現行法の水準で申しますと、学部がなくなり、学部にかわるべきものが法制化さるべきかどうかというような議論が起こるわけでございます。それから、あと内容的に教育課程のいろいろ新しいくふうが練られるようになっておりまして、これらが現在学校教育法の関係部分並びにそれを受けまして大学設置基準等々にしさいの点が法令で書き上げてあるわけでございますが、そういう点との調整をいかがするかという問題がございます。
  216. 加藤進

    ○加藤進君 こまかい点はけっこうです。
  217. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) さらに大学の管理運営の規程というものにつきまして、現行のような教授会がなくなるわけでございます。そういう点をめぐって管理運営、人事行政その他の点について諸法令との調整をどうするかというような問題があるわけであります。
  218. 加藤進

    ○加藤進君 最後に触れられましたけれども、学校教育法の第五十九条ですね、この五十九条が改められなくてはならない。この五十九条には、言うまでもなく、大学には、重要な事項を審議するため、教授会が置かれなくてはならない。この教授会が置かれなくてはならぬというところが改められるのではないかと私は感ずるわけでございます。事柄はこの一つをとってみてもきわめて重大でございまして、そもそも今日の大学の自治が何によって保たれているか。それは学長一人の独裁によって保たれるなどということは言うまでもなくもちろんございません。教授会が中心となって教授会が大学自治を担当する、大学自治を代表する、そしてその教授会にはそのために大学教員の人事権、そして財政の配分権が与えられておる。こういうところに大学自治の実体的な柱が立てられておると私は思うわけでございますけれども、こういう問題について、この新しい大学構想なるものは大きな変更を与えるものと考えるわけでございますけれども、その点はどうでございましょうか。
  219. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) お話がございましたが、この報告書には「開かれた大学自治と学問の自由」というくだりで、大学の自治が従来の閉鎖的な教授会においてのみ保持されるべきではない、新大学教育、管理運営面において要請される機能性あるいは開放性は、これからの社会において大学自治を積極的に維持するためのむしろ不可欠の条件である等々の評価をいたしまして、しさいに新しい管理運営のいわば現在教授会が果たしておりますような機能を含めて示唆をしておるわけでございます。学長、副学長、あるいは参与会、あるいは新しい評議会、運営委員会等々によりまして管理運営のことが議せられ、また教育研究の面におきましても、それぞれ教員会議なり教育委員会等と関連のものを置き、人事につきましても人事委員会、こういうものを置きまして、このような中枢機能を有機的に調整することによって、新しい大学、開かれた大学をつくるべきであるという提案がございます。われわれこういうふうな趣旨をくみまして、今後具体的に検討いたすわけでございます。
  220. 加藤進

    ○加藤進君 そのことによって具体的には何が今後起こるかといえば、大学の学部にかわる学系の教官会議、また学科にかわる学群の教育委員会、この教官会議教育委員会には教員の人事をきめる何らの決定権もない。審議はするけれども、決定権は持たない。その決定権はどこに移るかといえばそれは学長直属の人事委員会、しかもそれは学外者が含まれる、こういう人事委員会に移るということは、これは明らかですね。こういう状態はいわば大学の自治に対するきわめて大きな侵害であるし、またこのことを通じて学長が思うままに学内の人事を左右するという危険な道が切り開かれるのではないか、この点を私はきわめて憂うるわけでございまして、こういう形で大学の自治そのものが侵されるような状態になれば当然のことながら憲法第二十三条で保障されておるような学問の自由がまさにその主柱を失う結果にならざるを得ない。このことはきわめて重大問題でございますから、文部大臣に所見をお尋ねしたいと思います。
  221. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 私はこの筑波新大学は新しい開かれた大学として発足をするものであり、そのために教授の身分が侵されるとか、学問の自由が侵害されるとかいうようなことをなくしようと思って準備調査会を発足さしたわけであります。それで、その結果、学問の自由が侵害され、教授の身分が侵されるというようなことは、万々いたさないつもりでございます。ただ、まあ筑波新大学と申しましても、新構想大学という中に教育大学の移転という問題を一つ含んでおるわけでございまして、その点については十分話し合いを進めてまいりたい、少なくとも現在おられる教授の方々が身分上不利益の処分を受けることのないように努力をいたしたい、かように考えております。
  222. 加藤進

    ○加藤進君 それではもう一つ具体的にお尋ねしますけれども、たとえば学問的な研究としてある教官が理論なり、あるいは教育内容なりで、時の政府方針について、あるいは施策について批判的であったり、あるいはこれに反した場合、こういうことは戦前の大学においては大きな大学に対する干渉のきっかけをつくりました。こういう教官の学問研究に制限や干渉を決して加えるものではないという保障は、この最終答申の中にどんなふうに出ておりましょうか。
  223. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 明言をもちましてそのような事柄が書き上げられておるわけじゃございません。もちろん、開かれた大学という新しいりっぱな大学をつくるというその主体によりまして、そういうことはない、先ほど大臣から申し上げましたように、いろいろ御意見ございますが、われわれといたしましては、現にある大学のいろいろな考え方もくみ入れまして、十分そういう点の配慮を加えたわけでございまして、今後もいたすつもりでございます。
  224. 加藤進

    ○加藤進君 そういう御答弁では満足できかねるのでございまして、大体、学問的業績について何も存知しないような校外者を加えて、そうして学長直属の管理体制のもとでどうして正当な学者あるいは大学人の学問の評価や、また、学問研究が絶対に侵されないという保障があるでしょうか。私はその保障があるということをはっきりお聞きしたいのであって、大臣やあなたの確信あるいは主観をお聞きしているわけではない、その点をもう一度確かめたいと思います。
  225. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 当初御議論ございましたように、いま、お話の筋からいたしますれば、現在教授会が機能いたしております教育公務員特例法というのは具体的な法規の形をもちまして、ただ心だけではなしに、やり方まで大学の自治ということの基本にかなうようにしているわけでございまして、今後お話のような趣旨がどこまでいまお求めになるような形で透徹されるかは、やはり今後の法制的な問題も含めまして、われわれ十分検討いたしたいと思っておるわけでございます。
  226. 加藤進

    ○加藤進君 その言われた教特法自身もおそらく今後改定を要するのではないかと私は考えております。それほど新大学の創設は波及するところが大きいと思います。そうして、これは単に新大学関係するばかりでなく、法制上の改定が加えられることを通じて国立の全大学に波及する、こういう重大な内容を持っているからこそ、私はあえてこの問題についてお聞きしているわけでございます。新大学は創設準備調査会、こういうことで発足を始めつつありますけれども、第一、この創設準備調査会のメンバー、その人、一人一人をとってみたら、はたして大学の創設に責任を持ち得るようなメンバーであるかどうかは、これは私のみならず多数の人が疑わざるを得ない状態だと思います。私はあえて大臣にも注文いたしますけれども、国民にほんとうに開かれた大学をつくり、真のモデル大学をつくろう、こういう御決意であるなら、どうして全国大学人の英知を結集されないのか。たとえば、その方法として学術会議から推選をいただいているような人を中心メンバーに据える、あるいは国立大学協議会——国大協があります。この国大協の推選を受ける、こういう保障の上で創設準備会をつくる、こういうことで発足されることが最も適切な方法ではないかと私は考えるわけでございますけれども、その点について文部大臣いかに考えておられるでしょうか。
  227. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 在来、お願いいたしました準備調査会の方々でございますが、確かにいま申されたような手続をとったものではございませんけれども、具体的に東京教育大学移転という問題を含めこの議論でございまして、われわれといたしましては大学の論議に十分の御見識のおありの、しかも直接関係もされるという方々を含めまして、広い層から最もりっぱな方をお願いしたつもりでございます。今後もそのようにやってまいるつもりでございます。
  228. 加藤進

    ○加藤進君 それではいま私の提案申し上げたことについては前向きに検討し、努力するとはまだ言っていただく段階ではないでしょうか。大臣からひとつ。
  229. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) この調査会のメンバーにいろいろな人をいま申されましたような形で考えることがいいのかどうか、ということについてまだ検討の余地は私はあると思います。いますぐここで前向きに検討するとお約束を申し上げるわけにはまいりません。検討の余地は十分あるということだけ申し上げておきます。
  230. 加藤進

    ○加藤進君 答弁はまだ十分だとは申し上げませんが、次に移ります。  こういう大学の自治についてきわめて不安な状態、こういう状態のもとで新しい大学が発足するわけですから、続いて私は大学の問題をさらにお聞きしたいと思います。  この大学は法制上、形式上から言うとこれは国立として新設される、しかし中身はどうかといえば、東京教育大学の移転である、これに間違いございませんね。
  231. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 前段は先ほどもお答えいたしましたとおりでございます。  後段につきましては、この移転を契機に新しい種々のくふうを加味いたしまして、大学の規模等も大きくなるわけでございますので、そういう意味をもちまして移転が行なわれるということでございます。
  232. 加藤進

    ○加藤進君 重ねて確かめますが、ともかく移転を行なう、ともかくのところ移転である、そういうことでしょう。まず移転を行なう……。
  233. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 法制的に、形式的に申しますと、東京教育大学の移転という実態を踏まえまして、ただし教育大学は廃止をされる、新大学が筑波研究学園都市に新設をされるということになろうかと思っております。
  234. 加藤進

    ○加藤進君 ですから、とにかく東京教育大学が移らない以上は新しい大学はできないわけですから、まず東京教育大学が移転し、その上に新大学の構想が具体的に前進する、こう理解すべきだと思いますが、それでお尋ねしたいのは、それでは、いまある大学の教職員の方たちのこの大学移転にからんでの身分保障はどんなふうになるのでしょうか。
  235. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 繰り返してまことに恐縮でございますが、移転を契機に新大学が創設をされるわけでありまして、したがって先ほど新しい設置の法制化を必要とするんじゃないかということが今後の具体的の研究の課題であると申し上げたわけでございます。移ってからそこで大きくなるという二段ロケットの発想ではございませんで、飛んだときに大きくなって新しいものであるということでございます。したがいまして形式的には一たん官職がそこで東京教育大学としてはなくなりまして、新しい大学で新しい官職が創設されるということになるわけでございます。具体的に御指摘の、いまおる人間の身分保障はいかがかというくらいの話になりますならば、これはもっぱら適正な人事行政の問題ということになるであろうかと思います。
  236. 加藤進

    ○加藤進君 そうすると、こういうことが起こる心配もあるのですか。この移転にあたって今日ある大学の教職員の諸君は不利益をこうむったりあるいは身分上不安な状態に陥る、こういうことを文部大臣考えておられるのでしょうか。
  237. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 私はこれはそういう不安をなくしようと思って準備会で鋭意検討をしてもらっておるのであります。たとえば思想、信条等によりまして差別がある、退職をさせるということは毛頭考えておりません。
  238. 加藤進

    ○加藤進君 ですから、あらためて確かめますけれども、とにかく現在の大学で尽くしておられる教職員の皆さん、これが筑波へ移るわけですから、その移るにあたっての人的な主体と申しますか、大学の仕事を担当されるのはまさにこの方たちであろうと思います。その方たちに対して何を置いても身分保障を行なって、こういう方たちについてあるいは意見の相違は多少はあろう、しかしこの方たちの不利益にならないような努力を払う、この所信は大臣にあられると思いますが、いかがでしょうか。
  239. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) お説のとおりであります。
  240. 加藤進

    ○加藤進君 それではそういう意味におきまして今日の東京教育大学の教職員の諸君に対しては身分保障と不利益は与えない、こういうはっきりとした御見解をいただいてその点では非常に私は敬意を表します。  そこで、ひとつこういう問題が具体的にあるのを大臣も御存じかと思いますけれども教育学部に、名前をお読みするのにちょっと困難を感じますけれども、寿というのに原と書かれた、スハラと読まれますかヨシハラと読まれますか、教授がございます。この教授は大学の移転が無理やりに行なわれるということについて反対する声明の呼びかけ人になられたわけでございますけれども、そういうことを理由にして教育学部の教授会では六九年の十二月に決議をもちまして、この教授は今後新大学には一切関係しないものとするという通告を行なったのです。これは書類はたくさんございます。通告を行ないました。この教授会には当日その先生——寿原教授は参加しておられませんし、いわば欠席裁判であります。そして議案の中にでも寿原教授の問題については何一つ議案として前には出されておらない。そんな無理なことは困る、反対だというような意見の方もあったにもかかわらず形式的にはその決議がやられたわけでございます。こういうことを、いよいよ移転し、新しい大学に入るという教育大学の内部に起こっておることについては、私は文部省が責任を持って調査していただきたいと思います、第一に。  そして第二には、そういう状態にあられる不当な取り扱いを受けておられる先生につきましても移転の際には差別を与えず、ともに大学の転出を行なっていただく、こういうふうに私はぜひともお願いしたいと思いますが、その点大臣いかがでしょうか。
  241. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 寿原先生のお名前は存じておりますが、不明にしましていま御指摘のような事情等について承知をいたしておりません。調べてみます。
  242. 加藤進

    ○加藤進君 よろしく。  それで大臣いかがでしょうか。その寿原先生について差別などということは絶対にするということはしない、こういう御確約はいただけますか。
  243. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) 御本人があくまでも新大学に来ないとおっしゃるならしかたありませんが、来たいとおっしゃるのを来ちゃいかぬと、これは申し上げません。
  244. 加藤進

    ○加藤進君 わかりました。  大学移転に一緒に行きたいけれども、しかし子供が学校へ行っているとか、あるいは共かせぎのために移転についていけない、心ならずも勤務員の中には一緒についていけない方が起こるのはこれはあたりまえのことだと思う。そういうことを予想いたしまして、こういう移転にともについていけないような教職員に対して何らかのいわば保障と申しますか、就職のあっせんと申しますか、その後のあたたかい配慮をどうしてもしていただかなくちゃならぬと思いますが、その点、大臣いかがでしょうか。
  245. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) 出過ぎて恐縮でございますが、在来も統合移転等いろいろ学校をよくするために、しかしかたわらそういうようなそれぞれのお立場から必ずしもそういう行動をともにできないというような事例がございました。今回もさぞかしそういうようなことがあろうかとも思いますので、在来のわれわれの経験に即しまして御趣旨のようにいたしたいと存じます。
  246. 加藤進

    ○加藤進君 教職員の問題について最後にひとつ。  どこの大学でもそうでございますけれども、定員が削られておるために、定員外の勤務員を多数擁していることは御承知のとおりだと思います。教育大学におきましても研究あるいは教育の必要上、どうしてもそういう方たちの協力が必要だ、いわば大学としてはなくてはならぬ方たちでございますけれども文部省の定員が非常に削られて少ないために、この方たちを特に正常な勤務員として置くことができない、こういう方たちが私の聞くところによりますと約二百人おられるそうでございまして、これは毎年契約であるそうでございますけれども、中には五年、六年と続けて勤務しておられる方もございます。こういう方たちにつきましても、移転に際しましてもし希望があり、一緒に行こうという方は連れていくという配慮、大学教官の活動をそのまま続けさせていくこういう方たちをぜひとも大学とともに筑波へ行っていただくという配慮をぜひしていただきたいということ、また、ついていけない方についてはこれは定員外であるというようなこだわりではなしに、あたたかい配慮をもってこの勤務員の方たちにつきましても配慮をお願いしたいと考えますが、その点、最後にひとつ確かめておきたいと思います。
  247. 安養寺重夫

    説明員安養寺重夫君) いろいろそのときにあたっての各人の御事情がございましょうから、これは一つずつ個別の問題でもございますが、大筋としましては先生のお話しのとおりでございます。
  248. 加藤進

    ○加藤進君 ありがとうございました。それで筑波新大学につきましての質問は終わりますが、続いて若干、幼児教育の問題について御質問申し上げたいと思います。  もうどこへ参りましても、三つになったらぜひめんどう見てほしい、これが全国の子供を持つ親の切実な気持ちだと思います。その中で特に、なぜもっと早く公立がつくってもらえないのか、こういう声が強いことも御承知のとおりであります。もちろん、こういう声が出るのには、私立がきらいだとか、私立が悪いというのでなしに、私立へ行けば父母負担が非常に高い、これではたまらぬからということももう御承知のとおりだと思います。このような幼児教育に対する国民の強い声にこたえていくという問題は、これはもう保育教育の問題ということにとどまらないで、いまや社会問題、政治問題化している、こういうことを言ってもいいと思います。また大臣もそのくらいのかまえでこの問題に対処しておられるであろうと私は考えるわけでございますが、ところで、そういう問題について今度出されました来年度概算要求の発表では、来年度中に七百五十園の設置、そのうち公立は四百四十園、私立は三百十園つくる、こういうふうにもう発表されているわけでございます。これは国民あるいは父母の要求からすればきわめて不十分だとは思いますけれども、しかし、こういう切実な声にこたえるものとしては私はぜひこれは全面的に実現してもらいたい、こういう希望を持っておるわけでございます。  ところで問題は、ただ希望やあるいはかけ声だけではできるものではありませんし、計画ができたからといって、これがすぐに実現するなどという問題ではございませんので、そこでひとつお尋ねしたいことがある。それは昭和三十九年から発足しました御承知の幼稚園教育振興七カ年計画、これは出初の計画では、公立をたくさんつくります、こういう約束と目標のもとで進められたはずでありますけれども、これが実情は最後はどうなったのか。当初の計画と、その最後の実績がどうなったかということをひとつ数字の上で御報告願いたいと思います。
  249. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 御指摘のように幼稚園教育振興七カ年計画におきましては、人口一万以上の市町村の就園率を六三・五%に高めるということで、新増設合わせまして一万五千八百学級整備計画いたしました。計画終了時点の四十六年度当初までにおきましては、幼稚園学級数は一万二千七百五十八学級ふえまして、就園率は約六〇%程度となっております。したがいまして四十六年度におきましては当初の計画目標を補うために千三百四十学級予算上の措置をいたしておるような次第でございます。
  250. 加藤進

    ○加藤進君 ちょっと私の質問からお答えのピントがはずれていると思います。私の聞きたかったのは、当初は公立をたくさん建てるとして発足された、ところが結果においては、はたしてそのとおり行ったかどうか、この点をお聞きしたかったわけですけれども私立公立とのいわば数字を発表していただきたい。
  251. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 当初公立に重点を置いてやるということは、私ちょっとそういうことを申したかどうか承知しておりませんけれども、おそらくそういうことではなかったんじゃないかというふうな感じがいたしますが、結果におきましては公立が二千八百五十四学級私立が九千九百四学級、これは四十六年度の当初でございます。そういうふうなことになっております。
  252. 加藤進

    ○加藤進君 最終的に数字で明らかになりましたように、ともかく私立幼稚園がたくさんできたためにやっとつじつまが合ったという状況だというふうに判断できると思うんですね、これは。そうしてこの私立幼稚園ができたというのはどうしてできたかと言えば、御存じのように都市周辺の人口急増地帯がある、そこで幼稚園の建設が始まったのであって、私立幼稚園であって、決して全国幼稚園の数が平均的にふえてそうしてバランスがとれたなどという状態ではなかった。これが私は偽らざる事実だと思いますね、この点は。そこで私は、十年計画を発足されるわけでございますから、公立をこれだけ、私立をこれだけと、こういう数字だけでは実現は依然として私立におっかぶっていく、私立におんぶしなければ目標は達成できないという危険があると思います。そこでこのようなことではなしに、確実に公立だけは、あるいは私立についても必ず目標を達成できる、達成する、こういう心がまえのもとでどのような手だてを取っておられるのか。確実なそういう実現の保証は一体どこにあるのか、その点をお聞かせいただきたい。
  253. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 別にそういう保証というわけではございませんけれども、私ども計画の中で、はっきり私立公立に分けまして予算措置を確実に講じていくということが一つの保証ではないかと思います。御指摘のように、七カ年計画におきましては人口急増地帯、都市周辺、そういうところに幼稚園ができました。あるいは東京都内でございますと、小学校に付設して公立幼稚園ができるというふうに、需要の多いところがら幼稚園ができたことは確かでございます。このたびの十カ年計画におきましては希望する四、五歳児を全部収容できるようにということでございますから、幼稚園の数におきましてこれは人口の少ない地域あるいは小都市、そういうところに重点がかかってまいるわけでございまして、どうしても公立のほうを優先的に考えないと、これは私立でつくろうと思ってもなかなか無理がございます。そういうことでございますから、私ども計画はもう一度来年度におきまして市町村の具体的な計画等を調査するということもございますけれども、いまのところでは私ども計画が大体このようにいくんじゃないか、なお、具体的には来年度もう一度手直しを考えるということにいたしたいと思います。
  254. 加藤進

    ○加藤進君 私から言っては何ですけれども、とにかく保育園をつくるつくると言ったって金が伴わなくてはならぬ。そのためにきのう発表されましたような、とにかく公私立施設、設備費については大幅に補助をふやす——これ、方針でしょう。これはいいですね。そこで私お尋ねしたいんですけれども、この大幅な補助をふやすという点で大蔵省文部省の気持ちを察して、よろしい、これは全部出しましょう、こういうふうに言っていただけるかどうか。そうしなければ文部大臣これは保証にならないんじゃないですか。その点ちょっと私は大蔵大臣に聞いて、文部大臣をひとつ応援したいと思うのです。
  255. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) これは加藤先生の御指摘のとおりで、大蔵大臣がうんと言ってくれなければどうにもなりませんが、私は少なくとも文教行政における一つの大きな柱は幼児教育と特殊教育、それに社会教育と体育、この大きな柱としてことしは出してみたいと、こう考えております。  私は日本幼稚園の発達の歴史から考えてみますというと、日本幼児教育というものを今日まで持ってきてくれたものは何と申しましても私立幼稚園であったと、この業績は高く評価しなければならぬと思いますし、さればと言って、きのうも私、幼稚園のPTAの大会に出てみたのでありますが、何と若い奥さんなんですね。そうしますというと、なるほどこれはみんな私立幼稚園にやっておられるというと負担がたいへんだろうということをしみじみ感じました。そこで、この場合幼稚園の振興方策として考えなければならぬ問題は、私立をできるだけ援助してやらなくちゃならない。私立に入ったことによる公立との間の格差を、できるだけ父兄の負担を軽くしてあげることを今日までつちかってもらった私立幼稚園に対する一つの目標にしてあげたいと、私は大都市など人口急増地帯なんかにおけるたとえば百五十人とか二百人という園児を持つようなところはむしろ公立をつくらないほうがいいんじゃないか、こういう気持ちさえ持っているのであります。そういうところはむしろいままでどおり私立でやってもらったほうがいいのではないか。むしろ過疎地帯の園児が三十人以下というようなところにこそ公立でやるべきじゃないか、そのためには父兄負担を軽くするために委託費等の方策を考えておるわけなんでありまして、私のいまの考え方はご〈率直なものの言い方でありますけれども、そういう考え方で進めておるということを御了承いただきたいと思います。
  256. 加藤進

    ○加藤進君 その点で大蔵省の所信をお聞きしたいと思います。
  257. 青木英世

    説明員(青木英世君) 文部担当の主計官の青木でございます。  幼稚園教育につきましては先ほどからもお話ございますように、三十九年度から七カ年計画ということで出発いたしまして、たしか三十八年当時の就園率が三五 六%かと思いましたが、それが先ほど初中局長言われましたように六割程度まで上がってきたということでございます。予算面におきましても四十六年度は前年度に比べまして約四割強というような補助金をふやしております。来年度以降の幼児教育の振興につきましては、いろいろ先ほどお話ありましたような社会教育の振興の問題とかあるいはスポーツの振興の問題とかたくさんございますが、できるだけそれらを勘案しながら努力をしていきたいとこう考えております。
  258. 加藤進

    ○加藤進君 重ねてお聞きしますけれども文部省はもう要求予算を出しているわけですね。この予算は全面的にとにかく引けますと、こういうふうに答えてもらえるかどうか。
  259. 青木英世

    説明員(青木英世君) ちょっと現段階では先ほど申しましたようにいろいろ多くの問題をかかえておりますので、それらを勘案しながら十分検討させていただきたいということで御了承願いたいと思います。
  260. 加藤進

    ○加藤進君 私はもう少ししっかり答えてもらいたいと思うのですけれども、文部大臣、それでいいですか、その程度で。文部大臣のことですよ、問題は。しっかりしてぜひとも一ひとつ大蔵省のほうを突っついてください。このことをまず注文します。  それでは続いて、いやそう言いながらも金はとにかく大蔵省から出ると言ってもなおかつ公立もできにくい大きな障害があることは、これは大臣も御存じだと思う。土地が買えないのです。これは小学校だってそうですから——小学校の用地買収だって困難をきわめていることは御承知のとおり。わけても人口急増地帯においてはたして用地買収ができるかどうか。このことがほんとうに解決できなければ結局計画倒れのから念仏に終わるおそれが私はあると思う。この点はぜひとも大臣突破してもらいたい。そのためにどういうことが必要なのかと言えば、これは私は、昨年の国会で、小学校の用地に対して大蔵省は初めて二十億円の資金を出した、予算を出した、これはけっこうだと思うのです。これはわが党の文教委員の諸君も奮闘されたそうでありますけれども、そういういわば努力が実ったとも言えると思いますけれども、二十億円出た。小学校にそれだけの気持ちで金が出せるなら、いま幼稚園をどうしてもつくらなくちゃならぬ、将来は義務化をしなくちゃならない、こういういわば心組みで幼児教育に取っ組んでおられるわけでございますから、この用地の先行取得についてぜひとも予算措置を適切にやっていただくことがなければ私は計画は進行できない、こういうふうに考えておるわけでございます。そのためには少なくとも急増地帯だけでも三年後の園児がどれだけふえるかということを推定し、それを基準にして用地購入を認めて、国が少なくとも二分の一補助します、これぐらいなやっぱり決断をとっていただく必要があるのではなかろうかと私は思うわけですけれども、文部大臣の所見はいかがでしょうか。
  261. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 御指摘いただきました義務教育に対する用地の手当て、これは本年度から始めたわけでございますが、その予算を実現いたしますにつきましては市町村計画、将来の予測、そういうものの基礎の上に出したわけでございますが、先ほど申しましたように幼稚園につきましては来年度具体的に市町村のいろいろ計画等もとってやりたいと思っておりますが、来年度予算要求につきましては用地の要求はとりあえずいたさなかったわけでございます。今後の問題といたしまして十分検討いたしていきたいというふうに考えております。
  262. 加藤進

    ○加藤進君 文部大臣、それでいいんですか。私は、文部大臣なら、いや私は本年度補正を受けてでもとにかくやり抜きます、これぐらいの決意を示していただかなくてはならぬと思いますけれどもどうでしょうか。
  263. 高見三郎

    国務大臣高見三郎君) お話ごもっともだと思いますけれども、ただいま要求いたしております時点においては用地の問題までは手が回りかねておるのでございます。正直なところを申しますと、何とかして私立公立との父兄負担格差を是正するということに精いっぱいというところがただいまの実情であります。その辺は今後の問題として十分考えますからおまかせいただきたいと思います。
  264. 加藤進

    ○加藤進君 私が納得したからと言って問題は解決しませんから、これは父兄の声ですからそのつもりでひとつぜひ取っ組んでいただきたいということを注文しておきます。  最後に、もう時間が来ておりますから私立の問題に入るわけでございますけれども私立に初めて今度委託費が組まれましたね。これは非常な私は前進だと思います。大いにこの委託費によって私立幼稚園の父母負担を積極的に解決してもらいたい、負担の軽減。そして少なくとも公立並みに引き下げる。こういうことをぜひともやっていただきたいと思いますけれども、委託費というものははたして私のいま申し上げましたような内容になって今後出されるものかどうか、その点ちょっとお聞きしたいと思います。
  265. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 委託費と申しますのは先ほど来大臣からも申し上げておりますように公私立に通わせている父兄負担格差をなくしていこうということでございまして、具体的なやり方等につきましては今後検討したいと思いますけれどもあとのほうの御質問の御趣旨がちょっとよくわからなかったのでございますが、まあそういう趣旨でやっているということを申し上げたいと思います。
  266. 加藤進

    ○加藤進君 御理解がいただけなかった点があるかと思いますけれども父兄負担の軽減のためにこそ今度は委託費を組んだ、これがやはり基本的な趣旨じゃないでしょうか。
  267. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) そういう趣旨でございますけれども、これは父兄に直接やるというふうなものではないことは一応御理解をいただきたいと思います。
  268. 加藤進

    ○加藤進君 いや私はそこまでは質問しておらないわけですけれども、いまの段階で、じゃ委託費は文部省としては組んだと、そこでもう一度大蔵省に委託費は十分必ず全面的に出しますという、こういう保証をひとつ出していただきたいと思いますけれども、どうでしょうか。
  269. 青木英世

    説明員(青木英世君) 先ほど来申し上げましたように、ただいま文部省から全般的な予算要求説明を聴取している段階でございますので、いまの段階で断定的なお答えをすることはひとつかんべんさしていただきたいと思います。
  270. 加藤進

    ○加藤進君 もう一度、文部大臣、それでいいですか、そういう答弁、これは困りますよ。文部大臣、これはしっかりやってもらわなくちゃいかぬし、大蔵省もそういう気持ちになってもらわなければ、委託費が名目になってしまっては困ると思います。  そこで、私は最後に、この委託費がはたして文字どおり父母負担の軽減という実効をもたらすものであるかどうか、この保証は一体どこに求めるのか、はたして父母の負担が軽くなったということが感ぜられるようにするのには一体どんなことが必要なのか、この点について文部省考えておられますか。
  271. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 委託費を市町村が個々の幼稚園に出します場合には、最低の条件といたしまして保育料等父兄の負担を公立並みにするということであろうと思います。そういう場合に限りまして委託費を出していただき、それに対して国のほうで補助金を出すという仕組みにいたしたいというふうに考えております。
  272. 加藤進

    ○加藤進君 私学にはいろいろ問題がございまして、たとえば入学寄付金などというようなことがもうあたりまえのことになっている。私は、できればこの問題についてももう少し現状を報告してもらいたいと思ったわけでございますけれども、これは略します。  そこで最後に、委託金として出すわけでございますけれども、もともとこれは国民の税金でございます。そしてそれが私立に支出されるわけでございまして、これが単に経営者に渡されたということによって、その結果ほんとうにこれが父母負担の軽減に実効的に役立っておるのかどうか、このことをはっきりさせなくては私は本物にならないと思います。そこで私は、私立幼稚園についてこういう委託金を支出するなら、これにあわせてその経理が明朗であるように公開してほしい、父兄、住民に公開してほしい、こういう手だてをとってもらわなければ私は真の父母負担の軽減という実効には至らないのではないか、この点を最後に私は申し上げまして、その所信をお聞きしたいと思いますがどうでしょうか。
  273. 岩間英太郎

    説明員岩間英太郎君) 私立学校の経理を公正にするということから、先般、私学振興財団法をつくります際に私立学校法の一部を改正いたしまして、会計基準を特別に設けてそれによって経理をしていただくというふうな方途を講じたわけでございます。経理を公開するということは考えておりませんけれども、まあ経理の内容を公正にするということはこれは当然考えなければならないことだというふうに考えております。
  274. 加藤進

    ○加藤進君 経理を公開せよというのは私は父母の強い要求でもあると思います。そしてまたそのことが最後の父母負担の軽減の実効をもたらす歯どめだと思います。その点でひとつ、いま考えておらないというのじゃなしに、ぜひ考えましょう、こういう積極的な方向を打ち出していただきたいと思います。言うまでもなく、私がこう申し上げましたのは、何も私立幼稚園の自主性を侵すなどということでは毛頭ございません。私立には私立の特徴がある、今日の幼児教育は主として私立によって今日までの発展を遂げた、こういう実績は明らかでございまして、この私立幼稚園の振興につきましても、子供たちの将来、またこのことにあわせて父兄の、父母負担の軽減についてひとつ文部省の努力をさらに続けてもらいたいことを心から期待しまして質問を終わりたいと思います。
  275. 大松博文

    委員長大松博文君) 本日の質疑はこの程度とし、これにて散会いたします。    午後五時十五分散会