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田代富士男君 第一班は、去る九月八日から十一日まで四日間にわたり、
長屋委員長、
西村理事、中沢
理事と私の四名で、兵庫県及び大阪府における
物価事情、
消費者行政の実情等を
調査いたしました。
以下、
調査の概要を申し上げます。
まず、日程を追って、兵庫県から申し上げます。同県は全国に先がけて早くから
消費者行政を推進しておりまして、県下全域にわたって、県民の活発な実践活動が見られるところであります。県当局の説明によりますと、本年度は生活科学化行政を推進するため、その目標を住民みずからが新しい豊かな生活を志向することに置き、消費者を守るための消費
対策と人間生活を創造するための新しい生活
対策を二本の柱として総合的に施策を進めることとしております。すなわち、消費者
対策の面では、市町立消費生活センター設置を補助するとともに、消費者
意識の啓蒙普及及び消費生活相談、苦情処理、家計収支の実態
調査を行ない、また創造的生活
対策の面では、コミュニティー活動の奨励、生活設計の指導、生活環境の保全等に力を注いでおります。
なお、昨年度は生鮮食料品の流通
対策と
物価安定
対策の一環として、複雑な流通部門の実態を解明するため、ミカン、バレイショ、タマネギ、キャベツについて、小売店から生産者に至る各流通
段階ごとの価格形成と流通経路について詳細な追跡
調査を行なっております。
県立の生活科学センターは、神戸、姫路、豊岡、柏原の四カ所に設けておりますが、ここでは生活科学化のための資料の展示、商品の使用テスト、苦情相談、消費者教育のための講座の開設等を行なっております。なお、従来行なわれておりました消費者モニター制度は、発展して消費者団体の自主的な研究グループにまで進んでおります。私
どもは、神戸生活科学センターを視察いたしました際、このセンターの講座を終了した方々が
中心になって結成した兵庫県生活科学促進グループと懇談いたしました。このグループは、本年七月から八月にかけて、教育玩具の価格
調査を行ない、その結果、おもちゃ業界にやみ再販行為の疑いありとして、きびしい監視と取り締まりをされたいとの陳情を受けました。この件は、その後、
公正取引委員会においても独禁法違反の疑いが強いとして、東京、大阪のおもちゃメーカーや問屋などに立ち入り検査をし、書類押収等捜査を行なったとのことであります。県側の要望としては、消費生活センター設置費に対する補助金の継続、各市町消費生活センターの設置助成、消費生活協同組合に対する設備資金貸し付けワクの拡大と貸し付け
条件の改善等が述べられました。
次に、灘神戸生活協同組合は、その規模と実力において
日本一を誇っておりますが、組合員二十四万世帯、出資金五十五億円、活動区域は阪神間九市にまたがり、事業所は支部を含めて六十三カ所、従業員四千五百人で、年間の供給高は五百億円に及んでおります。生協としては、そのモットーとする消費者が品質、価格、量目等安心して買える商品を供給するため、近代経営を積極的に推進し、生産施設の整備拡充はもちろん、厚生施設、消費者教育等にも力を入れておりますが、本年一月からは配送センターも活動を開始しておりますので、流通機構の合理化や産地直送システムの強化に大きな威力を発揮しているとのことであります。同生協からの要望としては、消費生活協同組合法で規制している生協の活動区域制限の
撤廃等について述べられました。
次に、神戸市においては、昨年四月に市民生活局を設置し、生活行政に、より重点を置くこととし、市民の台所に関係の深い生鮮食料品を
中心とした価格
対策を生産、流通、消費にわたって一貫した施策により進めようとしております。そのため、農産物の安定的増産と計画的出荷、中央卸売
市場の施設整備、
取引方法の合理化をはかるとともに、小売り
段階における経営の合理化を推進し、モニター制度、苦情相談、情報の伝達、公設
市場における標準小売り価格制度、共同仕入れ事業の拡充等を実施しております。神戸市のアンケートによりますと、市民の
物価に対する関心は強く、
物価高については、市当局に対するものより国に対する批判のほうが多く、
政府は抜本的な総合
対策を推進すべきであるとしております。
神戸市からの要望として、六大都市の要望にもあるように、現在、
公正取引委員会が行なっている商品の不当表示等の取り締まりは、大都市の場合、市に権限委譲したほうが適当であるとの意見が述べられました。
また、神戸市内の小売り
市場、水道筋商店街、ダイエー灘店等を視察し、神戸市小売り
市場連合会の方々と懇談いたしました。ここでは、小売り業者の
立場から、生産者の直売、原価販売等についての苦情、値段の高いものほどよいとする主婦の購買
態度に対する批判のほか、店舗の合理化、近代化のための融資期間の長期化、融資ワクの増額を要望しておりました。
次に、大阪府について申し上げます。
最近における大阪市を
中心とする都市部の消費者
物価指数の上昇率は全国の都市平均を上回っておりますが、府当局としては、当面の目標を府民の消費生活の安定向上と消費者保護に置き、消費者意向等の把握のため、モニターによる
調査、消費生活改善のための
調査を行なうとともに、府立消費生活センターにおいて相談と苦情の処理を行ない、消費者保護のため、監視取り締まり
体制の確立、商品テスト施設の整備に力を注いでおります。また、価格安定
対策として、中小企業等の構造
対策の推進、生産、流通機構の整備、消費生活協同組合の育成、公共料金の抑制につとめるほか、教育講座、リーダーの養成、巡回教育、啓発誌の発行などによる消費者教育とともに消費者団体の育成にもつとめております。
大阪府からの要望としては、昨年六月の
物価対策閣僚協議会によってきめられた当面の
物価安定
対策の早期実現、生鮮食料品需給
対策の拡充強化、中小企業の生産性向上策の推進と公害防止
対策の助成等の強化、生活協同組合に対する融資制度の充実、大都市勤労者のための賃貸住宅の家賃低廉化、地価
対策、水道事業に対する財政的てこ入れ等について述べられました。
次に、大阪市においては、高騰の目立つ生鮮食料品を主体に小売り物資の価格安定と需給の円滑化をはかるため、中央卸売
市場をはじめ、公・私立小売り
市場の施設整備と適正な販売価格保持のための指導を強化するとともに、消費者に対する商品知識の普及と相談など消費者教育活動を促進しております。特に公設
市場には標準価格日報を公報し、市民に対しては、テレビによる生鮮食料品の流通情報を放送しております。
大阪市内には、四十四年度に建設された出来島公設
市場を含めて四十二の公設
市場がありますが、本年度は、経営
管理に関する近代化講座を開催し、公設
市場連合会を通じて共同仕入れの協業化等を進めております。また、私設小売
市場に対しては、共同施設の設備補助を行なうほか、ボランタリーチェーンによる仕入れの共同化等を進めております。
大阪市中央卸売
市場は、私
ども早朝から視察いたしましたが、この
市場は開設後四十年を経過しており、建物が老朽化し、入荷量の増高、入場車両の増加と大型化に伴い、狭隘、過密化しております。このため、
市場施設を抜本的に整備するため、本年度は隣接用地を取得するほか、損傷のはなはだしい通路や
市場内の舗装等を行なっております。
市場関係者と懇談いたしました際、
市場用地の拡張と施設の整備、拡充の要望とともに、水産漁業者に対する助成、河川、海水の汚染等公害による漁獲の減少、養殖漁業の問題、また、青果物の計画栽培、仲買い業者の危険負担等、
問題点はすでに
政府にも要請しているので、これが早期
解決をはかられたいとの要望がありました。
大阪市からの要望としては、中央卸売
市場をはじめ、屠畜場、総合食料品小売りセンターの整備や市設消費者センターの商品テスト設備費、食料品改善放送事業等に対する補助金および補助制度について述べられました。
次に、
公正取引委員会大阪地方事務所について申し上げます。
当地方事務所の業務のうち、消費者保護に関するものとしては、違法な価格協定、再販、誇大広告等の規制や
調査等を行なっております。業務の運用にあたっては、地方公共団体との連絡協調、モニターの活用等に意を用いているほか、行政相談、広報活動等にもつとめておるとのことであります。これらの業務は、その他の業務とともに、年々増加の傾向にありますので、職員の定員増が望ましいとのことでありました。
次に、大阪マーチャンダイズ・マートと東大阪流通センターについて申し上げます。
大阪マーチャンダイズ・マートは、流通機構の近代化と都市再開発を目ざして、資本金十億円のうち、大阪市がその二五%を出資して、昭和四十四年八月にオープンした卸商センターであります。これは米国のシカゴ等の例を模したものといわれますが、ここには常時商品見本が展示されており、業者間の
取引が能率的に行なわれる仕組みになっております。この建物は地上二十二階、地下四階、延べ床面積十三万一千平方メートルの高層ビルで、倉庫、駐車場、大展示ホールのほか、諸施設が完備しており、わが国ではまだ類のない規模と近代的施設を誇っておりまして、今後の流通近代化のパイロット的
役割りを果たすものと
期待されております。
東大阪流通センターは流通業務市街地の整備に関する法律に基づいて、都市計画決定された流通団地の中に、一般トラックターミナルを中枢施設として、卸売り業施設、流通倉庫、コンテナデポ等の各種流通施設を適正に配置し、
一つの団地として整備したものでありまして、資本金二十億円のうち、大阪府が四九%を出資しております。大阪府はこのほか茨木市に北大阪流通センターを建設し、南大阪にも建設を予定しております。この種のセンターの持つ
効果として、輸送、保管、荷役などの流通活動の合理化、都市交通の混雑緩和、流通
機能の向上等があげられ、公共事業的色彩が濃いものでありますので、国としても、長期かつ低利な資金の融資等特段の措置が必要かと思われます。
以上のほか、ダイエーの品質
管理センターにおいて、食料品、衣料品等商品の品質試験及び
管理の状況を、また武田薬品工業の総合研究所において、医薬品の開発、研究の状況を視察するとともに、関係者と当面の問題について懇談いたしました。
最後に、大阪タクシー協会及び全大阪個人タクシー連合会の方々から、タクシー業界の実情について説明を受け、その際、最近とみに悪化しつつあるタクシー経営の窮状を立て直すため、早急に料金の改定を認めてほしいとの陳情を受けました。
以上、報告を終わります。