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1971-09-25 第66回国会 参議院 内閣委員会 閉会後第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年九月二十五日(土曜日)    午前十時四十分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柳田桃太郎君     理 事                 町村 金五君                 上田  哲君                 水口 宏三君     委 員                 菅野 儀作君                 土屋 義彦君                 長屋  茂君                 細川 護煕君                 山本茂一郎君                 沢田  実君                 峯山 昭範君    国務大臣        国 務 大 臣  西村 直己君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君    説明員        防衛庁防衛局長  久保 卓也君        防衛庁経理局長  田代 一正君        防衛庁装備局長  黒部  穣君        防衛施設庁長官  島田  豊君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○国の防衛に関する調査  (国の防衛問題に関する件)     —————————————
  2. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。上田君。
  3. 上田哲

    上田哲君 冒頭に、委員長を含めて当局側に要望を申し上げておきたいと思います。  本日閉会中の内閣委員会を招集されるにあたりまして、私ども質問者立場から、防衛庁長官及び運輸大臣出席を求めておりました。その決定は十七日に行なわれているわけでありますけれども運輸大臣出席ができないという旨の通告がありましたのは二十二日過ぎになっております。運輸大臣出席が不可能であることはやむを得ないとしても、その場合審議を進めるために、本来の問題であります、本委員会の課題であります全日空機事故についての調査委員会からの御意見あるいは経過報告を求めたい、こういうことで折衝を続けてきたわけでありますけれども当局側の御説明は、いまもって中間報告をまとめる段階にない、したがって報告することもないので、出席ができないということでありました。参考人としてお招きをしたいという立場でありますから、強権をもってこれをすることはできないことは了解をいたしますけれども、十分に時日をかけて出席を求めることである以上、当然国費をもってあがなわれている調査委員会が、調査の公式の結果を報告するということでなくとも、私どもとしては、調査経過がいまどの段階にあるか、あるいはいつごろにそうした結果が出るか等については、あるいはそれを全面的に否定される場合についてもこの御意見を求めるべき立場があり得ると思います。にもかかわらず、ただ中間報告がまとまっていないからというようなことで、出席そのものを拒まれるということは、まことにわれわれ委員会としては残念であるということについて、ただいま理事会で認識を共通いたしましたし、この点についてただいま委員長冒頭の御説明があったことをその限りで了解をいたします。つきましては、来月上旬に本委員会を再度開くという了解にも立っておりますので、そこに調査委員会の御出席を求めるべく日時の調整をしていただきまして、現段階において話し得ること、あるいは話し得ないことの段階で御意見を徴することができるように、十分にお取り計らいをお願いいたしたいということを申し上げておきます。
  4. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 国の防衛問題に関する件を議題といたします。  御質疑のある方は御発言を願います。
  5. 上田哲

    上田哲君 というような経過で、私の用意いたしました質問がきょう十分熟し得ないので、防衛庁長官のお時間のこともあり、二、三の問題についてのみ御質問を申し上げたいと思うのですが、新聞その他の伝えるところによりますと、沖繩に行かれた防衛政務次官が、沖繩返還協定アメリカ側批准を得るためには、沖繩における自衛隊配備と、それから土地提供ということの二点が確保されなければならないのであるということを言明されたと伝えられております。このことの真意はいかがなものでありましょうか、お伺いいたします。
  6. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 沖繩協定を皆さまに御審議していただく、また関連法案を提出いたします、それに対してもいろいろな事前実態状況をよく把握する意味で、政務次官並びに事務当局を付随させまして、たしか一昨日ですか、沖繩派遣をいたしておるのは事実でございます。その間に、新聞で私見ておりますが、ただいまの上田委員発言のようなことがあったように新聞をもっては承知しておりますが、現地からまだそれに対する正式な私に対する伝達がないのが状況であります。
  7. 上田哲

    上田哲君 新聞でというお話で、たいへん遁辞を弄されたように思いますが、私はやはり新聞報道というのはもう少し権威をもって読まるべきだと思います。新聞で聞いておるが私は正式に聞いておらぬというのは、これはやはり答案としてもよくできていないですよ。新聞に対するこれはたいへん失札な言い方ですよ。新聞が誤報したとおっしゃるならばこれは別でありますけれども、そうでなければ、私はその御答弁ははなはだ受け取りがたい。新聞報道権威をひとつ踏まえながら、もう一言お答えを求めます。
  8. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 新聞を別に下に見たわけではございません。新聞新聞なりの権威があると存じます。ただ御存じのとおり私も責任ある立場でありますから、正式にちゃんとしたものを帰りましてから聞いてみたい、こういう意味で御答弁申し上げたのであります。
  9. 上田哲

    上田哲君 もう一つ新聞報道というものをそういう形でお扱いにならないようにぜひ申し上げておきますけれども、さて、防衛庁政務次官がこのような重大な問題を発言をされた。しかも公式報道としてそういうものが各紙に載っている。それが二日前であります。防衛庁長官はそのことを、帰らなければ確かめられないというような状況には私はないと思います。確かめられていないと言われることを非常にふしぎに思うのですが、もしそういう発言があったとすれば、当然われわれの理解では、防衛庁幹部の基本的な考え方を表明されたものと理解をするべきものだと思います。そうした報道の真偽はともかくとしても、そうした発言があるとすれば、それは防衛庁当局の基本的に考えられておるところと合致するのでしょうか、背馳するのでしょうか。
  10. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 国会審議過程におきましてなかなかこの問題が一つ議論になる点でありますから、私は報道報道なりとして受け取るが、同時に、これに対してどういうような中でどういうふうに発言したかということははっきり確かめてみたい。ただ御存じのとおり沖繩協定等は、何と申しましても単に日本内部の問題ではありません。相手あっての仕事であります。また、これは御異論があるかもしれぬが、政府立場におきましては、佐藤ニクソン共同声明等中心にしてできた一つ協定案並びにそれに対する実行上必要なる関連法案が出るわけであります。したがいまして、協定アメリカサイドにおいてもこちらにおいても論議される過程において、それらの随伴する事柄が円滑な中で行なわれないというと、いろいろそこに時間的にも、また批准あるいは批准のあとにおいての行為においても、いろいろなまだ支障というか、さわりができやすい状態であるというような趣旨で私は話したのではないかと思うのであります。
  11. 上田哲

    上田哲君 防衛庁長官の御見解としてお伺いすることにいたしますが、沖繩返還協定アメリカ側批准のための条件として、あるいは前提として、自衛隊沖繩配備、それから土地提供ということが必要であるというふうにお考えになっておりますか。
  12. 西村直己

    国務大臣西村直己君) もちろんその前提になる日米間の安保条約上の義務遂行、これに基づく協定に出ておる部分、これは当然批准をして、正面からわれわれも用意をしていかなきゃならぬ、これは当然だと思います。  それからさらに自衛隊配備そのものも、御存じのとおり、これは本土に復帰する、本土に復帰する以上は、本土におけるところの、たとえば防空の任務というようなものが円滑に引き継ぎをできなければならないという一つの基礎になっていると思うんです。
  13. 上田哲

    上田哲君 よくわかりません。おっしゃるところは、返還協定批准をされた後、段取りとしては次に配備が行なわれ、提供が検討されるということになるんですか。それとも協定批准前提として、その二つが確約されなければならぬとお考えになるんですか、どっちなんですか。
  14. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 安保条約上の義務、これは直接には、御存じのとおり米軍に対する協定に出てくるところの基地提供、これは御理解ただけると思うんです。協定としてはっきり出ております。自衛隊配備そのものは、本土としてのわれわれの自衛、そのためにはやっていかなきゃならぬ、これも御理解はいただける、本土の一画は自衛は捨てるというわけにはわれわれはまいらない。しかし、これが沖繩復帰協定の中からは直接出てこないかもしれぬけれども、その協定を実行するにあたっては、御存じのとおりに佐藤ニクソン共同声明等もあるわけであります。その中にはアジアの安全、それから局地における防衛日本がやるんだという、そういう趣旨事柄が書いてあります。したがって、それに基づいて、たとえば久保カーチス協定のような自衛隊配備に対する事務手続上のものも出ているわけであります。したがって、米軍配備とは質は違うが、しかし一面日本本土に復帰する、そうならば当然日本本土はやはり自衛力によって自衛されなければならないという一つ状態が発生する。したがって、それに対する考え方、準備、こういうことは当然われわれとしては責任がありますから、やってまいらなければならない、こういう関連が出てまいると思います。
  15. 上田哲

    上田哲君 お話久保カーチス協定ですね、久保カーチス協定事前に取り結ばれております。つまり、それの意味するところは、事前にそうした取りきめがなければ、少なくとも政治判断として、アメリカ協定批准というものはむずかしいだろうというふうにお考えになるわけですね。
  16. 西村直己

    国務大臣西村直己君) まあアメリカサイド日本サイドとは、沖繩返還についてそれぞれ違った立場で、お互いに折衝したわけであります。アメリカとしては、やはり安全というものが中心になって、できるならば基地保存という一つ考え方もあるでしょう。あるいは返還必ずしも賛成でない向きもあったでしょう。しかし、それは譲ってもらわなければならない。日本としては、異質の人によって、異質の民族によって百万の県民が支配をされる状態は脱却すべきである。これは国民全体の願いである。したがって、それが中心に出てまいります。外交折衝でありますから、そこにおのずからよい意味の妥協というものがある。そうなるというと、安全保障上の条件としての米軍基地提供、これははっきり協定に出てまいります。第二段として、局地防衛のほうは日本側がいたすんだという前提のもとにアメリカ理解をしているでしょう。われわれのほうはしたがって、局地防衛とは何ぞやと言えば、自衛隊によるところの最小限度兵力配備、こういうふうになってまいると思います。ですから、それぞれの要求する立場は違いますし、それの要求目標もやや違いが、そこは外交折衝の結果、協定が調印され、国民の、あるいは国会を通じての御批判を願う、こういう形になってくるのではないかと思います。
  17. 上田哲

    上田哲君 わかりました。そうすると、やや違いはあるけれども基地提供並び自衛隊配備ということが確認されなければ批准ということはむずかしいと、こういうふうにお考えになるわけですね。
  18. 西村直己

    国務大臣西村直己君) むずかしいとまでは私は断言できないと思います。これはアメリカ側におきましても必ずしもそれだけの、アジアの安全とか、そういう安全問題だけの観点からお考えになってない。あちらさまにも国会の両院のメンバーもおられると思います。それぞれのお考えがあると思います。やはりあの協定に出ておりますように、安全というものは協定の中にはっきりした条項になって、日米安保条約義務遂行を具体的に書いたものが出ております。と同時に、佐藤ニクソン共同声明、これも国民の間では御批判はありますが、政府サイドから申し上げると、局地防衛については私のほうでやるのだというような思想が出ております。そうすると、具体的には自衛隊配備、そうしてそれを円滑に遂行するためには久保カーチス、それぞれの間での運びの段取りについての協定書が出ている。それがまたアメリカ国会のほうにも参考文書として提案されるように私は承っておるわけであります。
  19. 上田哲

    上田哲君 むずかしいということでなくても、それは必須条件であるということですね。
  20. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 必須条件といって、私のほうは、これは事務的にそれを運ぶための文書と解釈しております。しかしアメリカとしては、一体それではその部分は、日本に帰ってくる場合に日本の空になるのじゃないか、日本の海になるのじゃないか、日本の陸になるのじゃないか。それをやはりみずからの手で守るだろうという強い期待感と申しますか、そういうものは私は当然あちらさまでも持つのじゃないか、そういう中においての皆さんの御審議をお願いしたいというのが私の立場であります。
  21. 上田哲

    上田哲君 政治判断としては、そのことがアメリカ議会承認のための前提であるだろうということですね。
  22. 西村直己

    国務大臣西村直己君) ですから、上田さんがさっきおっしゃった必須の条件かとおっしゃると、これは私は必ずしもたてまえとして自衛隊配備は必須だとは言えない。しかし強く期待を持つのは、あちらさまの立場と歴史、経過をたどってまいりますと、返還交渉経過をたどってまいりますと、当然強い期待、強力なる期待というものは出てくるのではないか、こういうふうに考えております。
  23. 上田哲

    上田哲君 わかってまいりました。そうすると、政務次官現地で述べられたことがもし事実であるとすれば、防衛庁長官としてはそれを否定されることはない。政府当局の、防衛当局の御見解であるということでありますね。
  24. 西村直己

    国務大臣西村直己君) そこで、ですから真実確めたいというのは、絶対の条件だというふうな表現をされていると、そこは私も是正しなければならぬ。私のただいまのことば国会を通してのむしろ正式のことばになる。そこで確めてはみたいが、政務次官がどういう表現で言ったか知らぬが、私がただいま申し上げたようなことが、私の立場からは、国民なり沖繩県民に御理解を願いたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  25. 上田哲

    上田哲君 必須とか何とかということばでなくて、そうしますと、どういうことばでおっしゃるんですか、政治判断としては、これをやはり政治的な要件と考える、そういうことでしょうか。
  26. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 政治判断としてはきわめて重要なものだと考えるわけであります。
  27. 上田哲

    上田哲君 私どもはそこはたいへん見解が異なるところでありますが、それもいままでの経過からすれば、伝えられる政務次官発言というのは真意だろう、防衛庁側あるいは政府側の本意だろうと思うのです。しかし、それはやはり今回の返還協定というものからは論理がさか立ちしてないか。主権が帰った、施政権が帰った後、自衛隊配備は少くともそれ以後行なわるべきものであって、それを前提として久保カーチス協定が結ばれているということ自体もたいへん順序としてはさか立ちをしているというふうに判断しております。しかし、まあ、そういう御見解でありますから、以後またそうした立場議論をかわしていきたいと思います。  次に話が飛びますけれども、次回の委員会にまたいろいろと段取りをととのえていただいて論議をしたいと思うのですが、全日空機事故の問題について、さき防衛庁側は次官以下の一定処置をされました。だが、これはまことに無責任風聞だと思いますけれども、最近この事故については、全日空側に負うべき責任があるではないかという一定キャンペーンが行なわれているということを、私はこれは防衛庁のためにとりませんけれども、そういうことを多く耳にいたします。今日、防衛庁長官にその点でお伺いいたしたいけれども、後ほどまた必要があれば運輸省側からも御答弁いただくが、一体さきに行なわれた防衛庁幹部への処置というものは、従来防衛庁側がなされていた、これは自衛隊側の引き起こした事故であるという立場をお取りになるのか、あるいはまた、その中に若干全日空機側にも責任ありということをどこかに持たれているのか、あるいはまた、言うまでもないことではありましょうけれども、そうしたキャンペーンに類するようなことを行なわれておられるかどうか、念のためにつけ足してお伺いをいたします。
  28. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私ども政府であり、官庁でございます。そういうキャンペーンなどは全然関係もございません。民間がそういうことをなさる、これはそれぞれの言論の自由だ、許されるものだと思います。  それから、全日空機責任はゼロであって自衛隊が一〇〇%だ、私、着任の夜、上田さんから質問がありました。それに対して私はそれを全面的には肯定いたしておりません、上田さんの御質問に対して。なぜなれば、これは裁判過程事故調査過程において明らかに出てきたことをわれわれは謙虚に受けとめようという姿勢であります。裁判におきましては、もちろん被疑者には被疑されるべき理由もありましょう。しかし同時に、人権として守られるべきものもまたなくてはいけない。それは裁判過程において、訴えるもの、また被疑されて訴えられたものが堂々と法廷においてその真実を明らかにしてまいる、これは当然のことであります。したがって、私としてはそういうような立場から、部内としては、これはやはりあれだけの被疑者を出した、大ぜいの方をとにかく死なしておるという事実にかんがみまして、部内処置というものは、部内処分はいたしたわけであります。
  29. 上田哲

    上田哲君 私が伺いたいことは、いま防衛庁側事件発生の当初から今日までの経過の中で、全日空機側にも、当初考えられていたよりも感覚的にも実証的にも責任ありというような心証を強めておられるかどうかということが一つです。
  30. 西村直己

    国務大臣西村直己君) この心証を強めているかどうかというのは、これは各人によって違うと思います。問題は事故調査あるいは裁判過程において、ことに私ども航空技術についてはしろうとであります。しかもあの広い空間において突然に起こった事柄であるだけに、なかなか実態は想像だけではつきません。しかし、ただ、少なくとも客観的に見まして、よく言われるのは、全日空機が、速力の早い飛行機が後方から来た、あの日視界が、私も空にありましたが、三、三十キロのほんとうにいい視界の日であった。したがって、衝突がどういう形で起こったかという事故調査実態、そのときにおける操縦の、いわゆるいま被疑に立っている諸君のいろんなこれから裁判上においての意見も出てまいりましょう。それらを見て私らはいかなきゃならぬじゃないか。なかなか事実は私らには、ただ形の上では、あのときも、全日空機に対して自衛隊機がぶつかったという形で出ていることに対して、まことに申しわけないと着任の晩にも私は申し上げた次第でございます。
  31. 上田哲

    上田哲君 ことさらな意図がどこかにあるとすれば、これは私は非常にゆゆしい問題だと思うので、今日はある種の風聞その他を材料にして討議することを差し控えますけれども、そうした形での討議に付するべきことではないと思いますけれども、念のために申し上げておきたいのは、裁判が決定するまではいかなる者も、つまり裁判担当者以外はこれについて是非、理非曲直を明らかにすべきではないというのは当然なことであります。また、そういう立場で一〇〇%と言えるかどうかということについての御見解もあり得るし、被疑者においても人権があるということも当然なマグナカルタでありましょう。しかし、この際はその辺を混同していただきたくないことは、そうした司法上の、法廷上の結論というものにゆだねなければならないという市民社会のルールとは刑に、政治判断として、当然自明な理について負うべき一〇〇%という表現意味もあります。少なくとも一義的にどちら側が引き起こした事故かということについての政治責任が、司法結論が出るまで全く表現することができない、すべきでないというようなことになれば、政治責任ということばの存在も失ないます。そういう立場で、私どもは少なくともこの事故については、政治責任として政府あるいは防衛庁当局が十分な見解をゆくりなく表明さるべきものだということをまず申し上げるのであって、この点を、司法制度なりそれに伴う市民意識との問題、あるいはいかなる極悪人といえども被疑者としての人権があるのだというカテゴリーをここに導入されるということは、場が違うと思います。いやしくも、私どももまた事故を引き起こした当事者に人権がないなどということを申し上げておるつもりはないし、殺人の意思をもって何かをしたなどということを、事故を引き起こす故意の結果がこうなったなどということを申し上げておる部面は全くありません。こういう体制がこういう事故をどういうようにして引き起こしたかということについて政治はどのような責任を負うべきであるか、こういう立場での明確な見解というものが、たとえばあの日、全日空機側のほうがわずかにスピードが早かったとか、うしろからぶち当たったなどという、まるでタクシーとバスがぶつかったのと同じような議論をなさる。十数秒の差がなければ避け得られないものでありますし、あの場合全く一秒ないし二秒というような場で、スピードの問題とか追突の問題などというのは、議論としては児戯に類します。あるいはティータイムであるとか、あるいは有視界飛行妥当性などというものはどこへ持っていってもこれは議論の対象となり得る意味を持ち得ません。法規の解釈からいっても、これはただ裁判官の判断を待つとか待たないとかということ以前の理解として、これは議論材料とされることが私は不見識だと思います。この点、もちろん最終的な結論は刑法の判断を待つべきだということで異存はありませんけれども、その際、政治的な発言であるゆえんのものは、むしろこの場合は、われわれとしても守るべき人権があるとかあるいはスピードの早いほうの追突であるなどということを責任ある政府当局者が口にされることのほうがきわめて正しくない、妥当でない政治的発言だということになろうかと思うのです。そういう点については、ひとつこの際もっと客観的に問題を煮詰めるということと、政治的な責任というもののあり方というものをしっかり区分をして意見を表明されることを求めておきたいと思います。御見解をいただきます。
  32. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私のほうは冷静に、かっこれだけの事故が起きておりますから、客観的な事実を一日も早く確かめることが望ましい。そのためには航空技術なりあるいはまた、第一私自体が、別に被疑されておる諸君と会って意見を交換したわけでもございません。そういうようなものはすべて客観的事実として第三者が明らかにすべきだと思うし、またそれを期待いたしております。したがって、政治責任ということばのとり方にもありますが、あるいは行政上の問題もありますが、それにつきましては、すでに御存じのとおり各般の手を打っておるということだけは私らは明らかに申し上げておきたいと思うであります。
  33. 上田哲

    上田哲君 次にもう一点伺います。  先般私ども内閣委員会の視察、成規委員派遣として九州各地を歩いたのでありますが、その中で一つ問題となりましたのは——三菱長崎造船所に参りました。そこで、三菱長崎造船所からこういう文書が前の中曾根防衛庁長官あてに出ております。これは造船所からでなくて日本造船工業会というところから出ておりますから、当然御理解ただけると思うのですが、長い文章ですから全部は読みませんけれども、この中で、簡単に申し上げると、いわゆる「利益なき繁忙」期を脱して、艦艇の建造についても一定のペースで行なわなければならないところにきているんだ、これを理解してくれということが書いてありまして、この中で中心的に言っていることは、長期予約建造方式を改めて特命随契制の採用を求めるということを強調をしているわけであります。長期予約建造方式から特命随契制ということの要望について、防衛庁はいまどのようにお考えでありますか。
  34. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 上田さんのおっしゃる三菱造船の要望書というのは、おそらく三菱造船からの要望書でなくて、日本造船工業会からの政府に対する要望書、その写しをおそらく言っておられると思います。これは他の委員もいらっしゃいますから、内容は三点ございます。  造船業界が繁忙のおりから、かりに四次防計画ができるような場合には、計画艦艇の概要を前広に知らせてくれ、それから計画的な建造ができるように、造船所を早く決定してもらいたい。それから適正船価で発注されるよう、出血になってはたまらぬという裏がございましょう、そういう三点がございます。  そこで、長期予約制度ということばは私どもはっきり受け取れませんが、一応今日やっているのは、継続費、国庫債務負担行為  特に国庫債務負担行為につきましては、国会の御承認をいただいてその中でやっているわけであります。長期予約建造制度という趣旨もわかりませんが、すべて防衛庁のそういった計画は、予算なりあるいはそれに付随する債務負担行為、あるいは継続費、そういうものを通してやっているわけでありますから、業界の単に要望として考えていいのではないか、そういうふうに私は受け取っております。要望としてはわかりますが、国の財政法に基づくたてまえとしては、いまの財政法を改正してそういうふうにするわけにはいかないのじゃないかと思っております。  それから随契の問題は、装備局長からお答えいたさせましょう。
  35. 黒部穣

    説明員(黒部穣君) 工業会からの要望には「長期予約建造方式→特命随契制の採用」ということになっておりまして、長期予約建造方式をやめて特命随契制にせよという要望であるかどうかはっきりいたしませんが、現在は特命の随契制も採用してございます。
  36. 上田哲

    上田哲君 特命随契制を採用しているのですか。具体的に言ってください。その特命随契制というものの内容です。
  37. 黒部穣

    説明員(黒部穣君) 特命随契制はございます。それと見積もり合わせ随契制と、両方ございます。
  38. 上田哲

    上田哲君 だから特命随契制というものの制度の内容を一ぺん説明してください。
  39. 黒部穣

    説明員(黒部穣君) 特命随契制は、技術的観点から、競争入札方式によらずにある特定の一社に対して契約を行なうわけでございます。
  40. 上田哲

    上田哲君 あなたのおっしゃった長期予約建造方式から特命随契制にすぐそうせよというのかどうかわからぬがというのは、そこのところにひっかかるわけですね。特命随契制の中にも長期というのがあるわけですね。そうでしょう。
  41. 黒部穣

    説明員(黒部穣君) その辺が実は私よくわからないわけでございますが、現行方式によれば、継続費による特命随意契約になるわけでございます。
  42. 上田哲

    上田哲君 それがあるわけですね。どこにありますか。
  43. 黒部穣

    説明員(黒部穣君) ございます。
  44. 上田哲

    上田哲君 どこにありますか。
  45. 黒部穣

    説明員(黒部穣君) 現在の契約がさようになっております。
  46. 上田哲

    上田哲君 ちょっとよくわかりませんが、そういうものもあるというのじゃなくて、いま全部そうなんですか。そういう意味ですか。あるならどことどこがそうなっておるということを具体的に出してください。
  47. 黒部穣

    説明員(黒部穣君) 艦艇の契約につきましては、特命の随意契約方式もしくは見積もり合わせの随意契約方式をとっております。
  48. 上田哲

    上田哲君 全部そうなっておるのですか。
  49. 黒部穣

    説明員(黒部穣君) さようでございます。
  50. 上田哲

    上田哲君 これは、いま、あなた自身のことばにもありました継続予算ということですね、今日わが国の憲法に基づく財政制度は継続予算を禁止しているわけですね。これがわれわれにとっては非常に重大な点だと思うのです。まさにこの特命随契制ということを打ち出してきていることは、これは艦艇建造に対する継続予算化への要求ということになるわけですね。継続予算ということになると、これがすなわち政府当局もしばしば口にされておるようなかつての軍事予算という形にずばり帰っていく、こういうことが問題になるはずですよ。継続予算ということが事実存在をしているというような理解に立たれるならば、これは非常に問題が出てくる。
  51. 黒部穣

    説明員(黒部穣君) 私のほうで申し上げました点は、現在の財政法に基づきます継続費でございます。継続予算ではございません。
  52. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 経理局長からわかるように……。
  53. 田代一正

    説明員(田代一正君) 技術的な財政法規の説明になって恐縮でございますけれども、現在の国の支出の形態、契約の形態というのが三つございます。  一つは、御案内のとおり普通一般の場合に使われておりますように、その年度に契約をいたしましてその年度に支出を全部終わるというたてまえの予算が普通でございます。  それ以外に、工事の期間その他がございまして非常に長期を要するという場合に、一つは国庫債務負担行為という制度がございます。これは何かと申しますというと、たとえばことしの防衛庁の予算等々でとりますというと、航空機、航空機は建造にかりに三年かかるといたしますと、三年間の国庫債務負担行為をとらなければならない。そのとき、国庫債務負担行為の場合には、四十六年度にとりました場合には四十六年度にすべての契約を了しなければいかぬ、あと代金の支払いその他が二年、三年目に残る、こういう形でございます。  それ以外に、ただいま御質問がございました継続費でございます。これは現在、財政法の十四条の二という規定がございまして、継続費の予算が、制度が認められております。これは契約をいたしましてから用役が全部終わるのが他年度にかかるということにおきましては国庫債務負担行為と同じでございますけれどもただ違っております点は、継続費の場合には、たとえば四年なら四年の継続費をとりますというと、初年度に全部契約を終わらなくてもよろしい、一部は二年目に契約をしてもよろしいということで、契約権限といたしましては二年目、三年目にまたがるという点において国庫債務負担行為とは違っております予算でございます。  以上、現行の財政法で認めております契約の形態としてはこの三件がございます。  で、船舶——艦船の場合でございますが、防衛庁の場合にはいろんな艦船がございます。護衛艦もございますれば潜水艦もある、あるいは哨戒艇もあればということで、非常にたくさんの種類の艦船がございますが、防衛庁で過去やっております契約のしかたといたしましては、護衛艦とか潜水艦とか、非常に複雑な工程を要する艦種につきましては継続費の制度をとらしていただいております。それから、それ以外の船舶につきましては、これは国庫債務負担行為で現在やっているというのが状況でございます。  それからもう一つお話しの途中で若干混線があったと思いますが、その契約に付する場合の契約のしかたという問題がいまも問題になっていると思うのです。これは大きく分けまして、競争入札制度と随意契約という二通りが現在あるわけでございます。で、一般的には競争入札という制度が支配的ではございますけれども、特殊なものにつきましては随意契約ができるということであります。で、随意契約につきましては、さっき装備局長から若干お話があったと思いますが、ものによっては、特に艦船の場合、これにつきましては随意契約をとる場合が多いと、こういう御説明でございます。
  54. 上田哲

    上田哲君 そこで問題になるんですよ、随契というのが。つまり艦艇については随契以外にないんだということになっていくという傾向、実態、それから継続費というものはそういう形で認められているということがあっても、事実問題としては、その方向に傾斜していくということは、この点に関してはいわゆる継続予算ということにならざるを得ないのではないか。この予算の骨組みの傾向というものが問題になるだろう。しかも重要な問題として考えなきゃならないのは、それ以外には、たとえば戦艦「武藏」をつくった由緒ある大造船所は、そういう形以外にはもういい軍艦はつくれませんよというはっきりした姿勢の中にある。そういう傾向が、幾つかの区分がありましてその中にはこういうこともございますということにはならぬのじゃないか。そういう効果というものが、いま大きな、かつての軍事予算への形態に推移していく傾向というものがありはせぬかということを非常に心配をするんです。長官、この点はいかがですか。精神論じゃなくて、お答えいただきたい。
  55. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 予算の、財政制度のあり方が一つでございます。それから第二は契約方法の問題がある、この二つの点だと思います。まあ、財政制度のあり方を防衛庁長官が直接論ずるのもどうかと思いますが、関連いたしますから申し上げますと、私はやはり特殊な艦艇、これは必ずしも利益が出るとか出ないとか、こういう問題じゃなくて、非常に試作的なものなんです。艦艇というのは、そう同じ型のものを何ばいも何ばいもというわけにいかない。かなり特殊な技術を要するものがある、こういうようなところから、どうしても一つは随意契約にならざるを得ない。競争入札によってただつくりゃいいんだということには——そこに防衛というものの性格の違いが、単に経済性だけでいけりゃいいというものではないという性格が私はあると思う。そこで契約の形態が特殊である、これが一つ。それから、財政のほうから見た継続費なり国庫債務負担行為——国庫債務負担行為というのはほかにもございますが、継続費制度についてはおそらくあまりないと思う。なぜ海上自衛隊のほうの艦艇だけにこういうものがあるか、これはやはり艦艇の非常な、普通の商船をつくるのとは違うような、製作で一定の期間を見通して、かなり精密な技術を試作しつつやっていくような私は経過があると思う。そこに継続費というものの性格を平和憲法になりましたもとにおきましても残されて、財政法が許されておるんじゃないか。じゃ、これからそれによって直ちにかつての旧軍時代のような軍事費的な膨張の芽ができるか、これは私は上田さんのおっしゃるのとは考え方が違うのであります。これだけの平和憲法のもとで、国会が最高機関として権限を持ち、継続費自体も単年度予算の中の継続費として御審議を願うのでありますから、私は、いわゆる軍事費の巨大な膨張の方向というのはこれとはちょっと性格が違うんではないか、こういう考え方を持っておるのでございます。
  56. 上田哲

    上田哲君 水かけ論にならないために、一言で結論を伺いますけれども、継続費というものが膨張していくということは好ましくないということは当然お認めになるでしょう。艦艇というものはこれから四次防にかけては大きなウエートを置いていく、これまでの日本の艦艇建造なんて知れたものですから、これからそういう問題がベースが上がっていくんだということを考えると、この部分が、これは特殊なものだから、防衛はちょっと別なものだからというならば、ちょっとの部分が非常に問題になっていくのじゃないかという不安を持つ。したがって、その継続費という問題をやはりかなり神経質に考や、その膨張化を防ぐということは当然な心がまえでなければならないと思います。その点は御同意をされるだろうと思う。  もう一つ、こういう日本の造船工業会からもそのことを強く主張しておられる要望書に対して、いまのところどういうふうに考えるか、これを採用するかについてですね、どのようにお考えになるか、あわせて御説明願いたい。
  57. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 継続費はただ数的に膨張するからいかぬとか、そういう気持ちでなくて、私どもはいまの平和憲法のもとにおいての財政のあり方というものはやはり当然尊重される、その中においてそれぞれの——防衛も国の任務でありますから、防衛の任務が達成せられるような形での、あるいは国力国情に応じての艦船整備、これは行なわれていかなきゃならぬ、こう考えております。  また、ただいまの造船工業会等の長期予算ということば自体がわからぬので、私は現在の継続費なりあるいは国庫債務負担行為等の運用によってその目的はある程度果たされるのではないかというふうに考えております。
  58. 上田哲

    上田哲君 日本造船工業会のいま意図しておるところに対しては直ちに反応をしないのだ、現状を悪しき方向に拡大をしないように考えていくというふうに理解をしておきます。そういうふうに理解をしておきます。いいですね。  最後に四次防ですけれども、まあドル・ショックその他の中で非常にまたおくれが目立っております。四次防を一年延期したらどうだろうというふうな声すら部内にも聞かれるとも聞いておりますけれども、まず一点は、四次防計画の中では二兆円近い装備費が考えられ、国産化ということにウエートが置かれておりましたけれども、いうところのドル防衛政策の協力といいますか、反応という中で、兵器を買い入れるという方向にまたウエートをかけ直すという方向も聞いておるんです。あるいはアメリカ駐留軍の防衛費の負担ということもその意味の間接的肩がわりということも言われている昨今でありますけれども、まず一点ですが、これまでの四次防の計画の中でいう国産化の方針を、アメリカからの兵器購入という方向にどの程度切りかえられるのか、またそうでない立場に立たれるのか。
  59. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 日米貿易経済合同委員会がございまして帰りました閣僚の諸君にもお伺いしてみましたら、別にこの防衛費の分担とか、兵器の購入を迫るとか、こういうような点は議題にならなかったということでございます。ただ、ドル防衛全体の中で、われわれとしても日米間の経済がお互いに円滑に動くことがいいという面ではこれは協力し得るものは協力してもいい。ただし、私は兵器の国産化の基本の原則を曲げてまでこのドル防衛に協力していくというほどの考えは持っておらないのであります。やはり兵器というものは日本人の実用し得るもの、また日本人が開発した技術、それから、かりにそれが必要な場合に、部品等に至るまでうまく組み合わせていけるような兵器体系というものがやはり望ましいのではないか、そこに基本を置くわけであります。
  60. 上田哲

    上田哲君 アメリカからの兵器購入のパーセンテージはふえないということですか。
  61. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 四次防自体が、まだこれ自体一つのたたき台と申しますか、出しておるだけで、これが今後国内外の、特に国際経済、国民経済の運行いかんによって十分これは弾力的に考えていかなければならぬものがありましょう。したがって四次防が成立をしても、どういう形で成立をするかというまず前提があると思います。かりに成立をいたしました中でも、兵器の国産化の基本原則は私は変えない。ただ、その中でものによっては多少輸入したほうがいいというものがありますれば、従来も輸入しておるのでありますから、そのときに従ってやってみたい、検討してみたい、こういう考えであります。
  62. 上田哲

    上田哲君 つまり今回のドル防衛策の関連では変わらないということですか。
  63. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 今回のドル防衛策そのものでは、対米の兵器の購入の増強というものをいまは考えておりません。
  64. 上田哲

    上田哲君 もう一つ、念のために伺いますが、アメリカ駐留軍の駐留費ですね。総額どれぐらいですか。
  65. 久保卓也

    説明員久保卓也君) 約六億ドルと承知しております。年間約六億ドル。アメリカの上院で政府側が発表したときには五億七、八千万ドルと、少し下回っておりましたが、上の数字もありますから、大体六億ドル前後だと思っております。
  66. 上田哲

    上田哲君 これについて、負担をするという点については検討されておりますか。また可能性はどうですか。
  67. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 大事な問題でありますので、関係閣僚が帰られまして、そういうような点が議題になったかというと、なっておらないわけであります。かりにまたこれが駐留軍の軍費そのものをするとすれば、地位協定その他の面からこれを直すか直さぬかのような問題まで出てくるのではないか。いまのところは防衛分担金そのものを直接どうということは、政府の閣僚の私は一人として、防衛庁長官というより閣僚の一人として、そういう考えはございません。
  68. 上田哲

    上田哲君 最後に、四次防のおくれですか、ことしじゅうにということはもうほとんど不可能というようなことが常識になってきているように思いますが、年を越す——いつごろ四次防というのは固まるか、つまりオーソライズされるのでありましょうか。
  69. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 私、必ずしもまだ、ことしが十月、十一月、十二月と、三カ月ございますし、したがってことしじゅうに固まらぬということは考えておりません。私もまた着任早々でありますが、努力しまして、各方面の意見を聞いて、できれば来年度予算と関連しつつ、これは進めさせたいと考えております。
  70. 上田哲

    上田哲君 ことしじゅうにやり遂げるということですか。これは非常に、つまり一年延期のなにが出ておるわけですから、その辺の政治判断をひとつしていただかなければならぬときだと思うのです。ことしじゅうに防衛庁長官としてはどうしても通すということでありますか。そこら辺のところをはっきりしてもらいたいと思います。
  71. 西村直己

    国務大臣西村直己君) これからいろんな国会の論議もございましょうが、しかし私としては年内にできる限りこれをまとめ上げたいと、こういう考えであります。
  72. 上田哲

    上田哲君 その際、財政当局その他の反応からいっても、五兆八千億といわれている従来の構想、これは相当削減されざるを得ないだろうというふうにいわれております。また私もそれは必至の形勢だと思うのですけれども、長官としては大蔵省当局とどのような交渉をされておるか。あるいは大蔵省当局のどのような反応をキャッチしておられるか。規模はどのくらいになるとお考えか。
  73. 西村直己

    国務大臣西村直己君) まだこれは事務の段階で、閣僚折衝までは至っておりません。またその間に国防会議の事務局というものもあるわけであります。そこいら辺、関係者が集まりまして、いろいろな意見を検討、戦わしておるのが現状であります。もちろん国民経済がドルの扱いによってかなり変化します。そこらも十分これは弾力的に受けとめていく考えはあるわけであります。しかし、そういう中でも長期の計画というものは成立はし得るし、またすべきじゃないかというのが私の現在における考え方であります。
  74. 上田哲

    上田哲君 削減あり得るということですね。
  75. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 五兆八千億、これは公務員のベースアップまで入れての計算であります。実体、五兆一千何百億でありますから。それからまた伸び率が国民経済の一八・何%——伸び率は現在の経済社会発展計画等を前提にしてやってきておりますので、単年度予算におきましても、従来、最近における伸び率で計算したものであると思います。したがってそういうような国民経済を運行していく中において妥当であるか妥当でないか、こういうものは十分弾力的に受けとめてまいりたいと思うわけであります。
  76. 上田哲

    上田哲君 削減あり得るということですね。
  77. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 御存じのとおり五兆八千億と称せられるものは、ベースアップをどう扱うかということの問題になります。実体的に五兆一千何百億でありますから、ベースアップを除けば。しかしそれ自体も、いまの国民経済の中でどういう形に位置づけるべきかということは十分関係方面と努力し合う。しかし私は長期の見通しはやはり立てるべきだと、この基本観念は現在持っておるわけであります。
  78. 沢田実

    ○沢田実君 私は、在日米軍基地の中期返還関連をいたしまして若干質問いたしたいと思います  御承知のとおり、わが党では四十三年に米軍基地の総点検をいたしまして、まず返還の要求を大体三段階というようなふうに考えまして、その第一段階といたしましては、日本防衛外の用に供されておるもの、あるいは都市近郊にあって国民大衆に悪影響のあるもの、あるいはわが国に危険を及ぼす可能性のあるもの等については大至急返還を要求しよう。第二段階といたしましては、連絡通信施設を除くすべての基地の撤去を要求しよう。第三段階といたしまして、その他一切を要求しようというような基本線に基づきまして総点検をいたし、当局の皆さまに対してもこの参考資料を御提供申し上げたことは御承知のとおりでございます。  さらにまた、昨年度でございますが、在日米軍基地の再調査をいたしまして、早期返還要求をすべきであることを主張申し上げていることも御承知のとおりでございます。それが国民の大きな世論ともなり、また当局の皆さまの御努力もありまして、若干基地の縮小あるいは一部返還等が行なわれたこともあるわけでございますが、私は、わが党が要望いたしましたこの全部についてきょう議論する時間もございませんので、それは資料といたしまして、その後どのような要求をし、米軍ではどのような態度であるか等については、あとで書類でお願いをいたしたいと思うのでありますが、先ほどもお話がございましたように、私ども内閣委員会は先日九州の視察をして参りました。その際、長崎県の佐世保の前畑の弾薬庫の返還の要求の陳情がございましたので、その点について質問いたしたいと思います。  昨年度、わが党の再調査で要求をしてあります比較的早期に返還を要求すべきだというような資料の中にも、その前畑の弾薬庫のことは出ておりますが、長崎県へ参りまして県の要望等いろいろ聞いて回ったわけでありますが、御承知のとおり佐世保の現在の状況を見てみますと、船舶の航行が非常に多くなりまして、海上交通に非常に危険を生じているというような状況、あるいはまた佐世保の周辺に住宅街が迫りまして、宅地の造成等に迫られているような状況等、いろいろな点の現状の説明がございまして、返還の要望の陳情があったわけでございます。その点については、すでに佐世保市のみではなしに、佐世保、横浜、那覇等で構成している基地渉外連絡協議会というような名においても四十五年の六月に要望をしておるようでございますし、また長崎県といたしましても四十五年の十二月に政府関係機関に要望したというようなことを言っておりますので、この前畑の弾薬庫の返還要求については、その後どのような交渉をなさり、現在はどういう状況になっておるかということについて御答弁をいただきたいと思います。
  79. 島田豊

    説明員(島田豊君) 佐世保市におきます米軍の施設はまだかなりございます。佐世保市は旧軍港だったという関係で、米軍はかなり海軍関係の施設を保有いたしておるわけでございますが、市当局におきましても米軍施設の返還なりあるいは移転なりということについていろいろ要望がございます。私どももしばしばこの要望に接しておるわけでございますが、御質問の佐世保弾薬補給所、いわゆる前畑弾薬庫につきましては、われわれの調査したところによりますれば、現在ほぼ全面的に使用いたしておるという状況でございまして、いまのところこの前畑弾薬庫の返還をする、あるいは移転をするということにつきましての米側としての見通しはないというふうに考えておるわけでございます。
  80. 沢田実

    ○沢田実君 弾薬庫が先にできたのか住宅が先にできたのか知りませんけれども、現在弾薬庫の周辺に相当の住宅あるいは工場あるいは倉庫等々、県の資料によりますと約五十棟の建物が三百メーター以内にあるというような状況でございまして、火薬類取締法施行規則というような規則によりますと、米軍のことですから何が保管されるか内容はわかりませんけれども、最大限三百メーターといたしますれば、大体五十棟くらいのそういう住宅等がある現状であるというような状況なんですが、そういう点に関して、非常に危険を伴うのではないかというふうに考えますが、その点に関しては施設庁ではどう考えておりますか。
  81. 島田豊

    説明員(島田豊君) 御指摘のように、前畑弾薬庫の周辺におきましては逐次宅地造成が進められまして、保安上もいろいろ考慮しなければならないという点があることは事実だと思います。しかしながら、米側は現在御指摘のように五十トンばかりの弾薬を隧道式あるいは上屋式の形におきまして維持をいたしておりますが、米側の保安関係の規則もございまして、ことに保安距離等につきましてはむしろ日本本土の場合よりもさらに厳重に規定をいたしておるような状況もございまして、現在のところ私はこの弾薬庫の存在が周辺の住宅に直ちに危険を及ぼすということにはならないというふうに考えておるわけでございますが、今後また周辺の住宅がだんだん造成が進められますと、そこにいろいろ問題が出てくるということも考えられますので、その辺については、私どもとしましても米側と十分そういう保安上の問題については注意の喚起いたしていきたいというふうに考えますが、さしあたり現在のところでは特に保安上の問題はないというふうに承知をいたしております。
  82. 沢田実

    ○沢田実君 そうしますと、取締法施行規則の三百メーターということについては、あなたはその必要がないのだとお考えですか。
  83. 島田豊

    説明員(島田豊君) 現在のところ問題はないというふうに考えております。
  84. 沢田実

    ○沢田実君 三百メーターの以内にあるけれども、要するに保安施設が十分だからその心配がないと、こういう意味ですか。
  85. 島田豊

    説明員(島田豊君) 国内法規におきましても応保安設備の基準がございまして、その距離と弾薬庫の構造との関係が出てまいりますが、現在のところ私は、米側のほうの現在の弾薬庫の構造からしまして、三百メートル程度の保安距離があれば格別に問題がないというふうに考えておるわけであります。
  86. 沢田実

    ○沢田実君 国内法は適用しないのでしょうけれども日本のそれが弾薬庫である場合には、当然どこかへ撤去するなりあるいは民家が引っ越すなり何かしなければ法律に反することになりませんか。
  87. 島田豊

    説明員(島田豊君) これは通産省の問題でございますが、確かにそういう弾薬庫等のいわゆる危険物の貯蔵所がございまして、一定の保安基準があり、それに基づきまして保安距離も設定せられておりますが、その距離が基準の外になりますれば当然危険を生ずるというふうに考えておりますけれども、現在佐世保の弾薬庫の配置につきましては、地形等も十分利用している、また外部の建物の状況等によりまして、保管弾薬の入れかえ、あるいは保管量の減少等の措置を講じておりますので、そういう点についてはアメリカとしても十分配慮しているというふうに承知いたしておるわけでございます。
  88. 沢田実

    ○沢田実君 県当局の考え方では、この前畑弾薬庫を返還してもらって、できることなら針尾にある集積所ですか、そちらに移転をして、アメリカのほうの必要はそのほうで満たしてもらうわけにいかないのか、こういう希望を持っているわけですが、そういう希望について米軍当局と折衝をしていらっしゃいますか。
  89. 島田豊

    説明員(島田豊君) 佐世保市当局からも、現在の前畑弾薬庫の地区を港湾施設あるいは港湾開発等に利用したいということで、あの弾薬庫を針尾の現在の集積所に移転をしてもらいたいという要望がございます。しかしながら、現在私どもも内々米側とも折衝いたしておりますけれども、針尾の弾薬集積所におきましてもほぼフルにこれが活用されているということでございまして、将来情勢の変化によりまして弾薬の数量等に変化がありますれば、これはまたおのずからその段階において検討を要するというふうに考えておりますが、現在では両方の施設をほぼ完全に利用しているという状況でございますので、いま直ちにこれの移転というものは非常に困難であるというふうに考えております。しかしながら、現地の非常に強い要望もございますし、針尾集積所には若干の余地もあるように考えられますので、この点について今後引き続き米側と折衝してまいりたいというふうに考えております。
  90. 沢田実

    ○沢田実君 というようなあなた方の米軍との折衝については、県当局については何ら御返答がないというようなことで、要望しっぱなしになっておりまして、どういうことだろうということを心配しておりました。それから、現地現地なりにいろいろな接触を続けているようですが、佐世保は特に米軍との協力関係もいろいろよろしいので、これらの要望についてはいれてくれるだろうという確信を持っていたようです。そういう状況ですから、もっと前向きに返還の要求をしてくださること、それから米軍のほうの場合には心配なかろうということですけれども、住宅が近くにどんどんできてまいりますと、私はそれだけではないのじゃないかというような心配をいたします。そういうふうに、住宅もございますし、石油関係の建物、そういうものが近くにたくさんあるように聞いております。ですから、弾薬庫の近くに石油関係の建物があって、それで危険じゃないというふうに考えていいのかどうか。国内法においては新しく建築することの規制等でできないのだろうと思いますが、そうであれば、そのような何かの対策をしなければならないのじゃないか。私は非常に危険なように感じますので、その危険の問題、それから針尾のほうに余裕があるのだからそちらにやって、いわゆるどんどん発展する佐世保の民生安定の措置を要望しているわけですから、早期返還を要望するという姿勢ですね、その点を特に要望いたしたいと思います。その点についてお考えをひとつ伺って、次に質問します。
  91. 島田豊

    説明員(島田豊君) 佐世保市当局としては、将来佐世保の商港としての発展あるいは経済開発というふうなことを非常に強く熱望しておられまして、いろいろ各施設につきましての御要望がございます。前畑弾薬庫の移転もその一つでございます。したがいまして私どもといたしましては、今後情勢の推移を見きわめながら、できるだけそういう佐世保の強い御要望に対しましては実現をはかるべく努力をしたいというふうに考えておるわけでございます。
  92. 沢田実

    ○沢田実君 いま、一例を佐世保の例で申し上げましたけれども、わが党はそういう調査を二へんやりまして、特にそういうことの要求をしているわけです。それに対していまあなたの御答弁を伺いますと、アメリカがどうしても必要なんだからやむを得ないのだというお考えですけれども、地域住民の立場国民立場に立って言いますと、これは不要じゃないか、不急じゃないのか、あるいは一部縮小ができるのじゃないかというものがここにありますので、これについてはひとつ先ほども申し上げましたように資料として、現在の交渉の経過をお願いをしたいと思います。その資料はお願いできますか。
  93. 島田豊

    説明員(島田豊君) 提出の御要求がございますれば、できるだけ御回答申し上げたいと存じます。
  94. 沢田実

    ○沢田実君 その資料を要求しておきます。  次に、同じようなことに関連するわけなんですけれども、いまの弾薬庫の近くに民家が建つという危険性という問題について、もう一カ所私どもが視察をしてまいりましたので、福岡県の高良台の分とん基地ですね、ナイキの基地ですが、そこの弾薬庫の近くに宅地造成がなされ、すぐ近くに新しい家も建っておりました。というようなことで、どんどん弾薬庫の近くまで民家が建ちつつあるわけですけれども、これについては要するに国内法で取り締まるというような法律はないようでございますので、現地においては、特に委員長から、現地の施設庁の福岡のほうの担当の方々にその必要な土地を購入するというような方法を考えたらどうかというようなことが、特に内閣委員長から話がございましたが、私はこの問題も非常に重要な問題ではないか。近所にどんどん住宅が建って、あとから弾薬庫を撤去しろと言われても、これは防衛上からも困る問題ではないか。また、近くに家が建って、それが住民に危険になったんでは、どちらかが撤去しなくちゃどうしようもないじゃないかというような問題がございましたので、その問題については、施設庁としてはどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、お願いしたいと思います。
  95. 島田豊

    説明員(島田豊君) これは前畑弾薬庫あるいは高良台の弾薬庫のみならず、弾薬庫の所在する地区につきましては、周辺が逐次開発されるに伴いまして、同様の問題が出てまいります。したがいまして、われわれとしましては、あくまで危険防止といいますか、保安上の措置ということについては十分配慮いたしてまいりたいと考えておるわけでございますが、必要によりますれば、周辺の土地自衛隊による確保、それによる危険防止ということも考えていかなければならないと思います。高良台の現地のそういう実情につきましては、私も十分調査いたしまして、適正な措置を講じたいというふうに考えておるわけであります。
  96. 沢田実

    ○沢田実君 最後に防衛庁長官の所信を承りたいのですが、在日米軍基地返還の要求については、いま一例を申し上げましたけれども国民が非常に要望しておるたくさんな個所の返還が遅々としておるというような現状でございますので、その返還要求についての所信を承りまして、私の質問を終わりたいと思います。
  97. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 前々長官の際にも、ある程度集約整理というような方針で、米側と折衝して多少の効果は出たわけでありますけれども国民の生活の状況、またいろいろな状況も変わりつつある中で、私どもとしても米軍基地は効率的に使ってもらいたい、いま一つは、住民との接触地点における調整問題も十分考えてまいりたいと思います。ただ、一面におきまして、これが国全体をあげての安保上の必要性から、自衛隊基地提供ただ、すべて要望があるから、それによって基地をどんどん狭めていって、そこへまた民家ができる、また困る、こういうような悪循環はしないようにやっていかなければならないだろう、そういう点も配慮しつつ、そういう中で効率的な使用というものに向かって私どもも不断の検討を加えてまいりたい、こういうように考えております。
  98. 柳田桃太郎

    委員長柳田桃太郎君) 本件に関する本日の調査はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午前十一時五十四分散会