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1971-10-12 第66回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月十二日(火曜日)    午後零時二十九分開会     —————————————    委員異動  九月二日     辞任         補欠選任      塚田十一郎君     西田 信一君      加瀬  完君     松井  誠君      羽生 三七君     野々山一三君  九月四日     辞任         補欠選任      山下 春江君     柴田  栄君      楠  正俊君     大竹平八郎君  九月二十七日     選任          野末 和彦君     辞任          佐藤  隆君  十月六日     辞任         補欠選任      桧垣徳太郎君     山崎 五郎君  十月八日     辞任         補欠選任      山崎 五郎君     桧垣徳太郎君  十月十二日     辞任         補欠選任      桧垣徳太郎君     津島 文治君      青木 一男君     梶木 又三君      棚辺 四郎君     古賀雷四郎君      戸田 菊雄君     伊部  真君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         前田佳都男君     理 事                 柴田  栄君                 嶋崎  均君                 吉田忠三郎君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 伊藤 五郎君                 大竹平八郎君                 梶木 又三君                 河本嘉久蔵君                 栗原 祐幸君                 古賀雷四郎君                 津島 文治君                 戸叶  武君                 戸田 菊雄君                 松井  誠君                 松永 忠二君                 鈴木 一弘君                 渡辺  武君                 野末 和彦君    国務大臣        大 蔵 大 臣  水田三喜男君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        大蔵政務次官   船田  譲君        大蔵大臣官房審        議官       前田多良夫君        大蔵大臣官房審        議官       中橋敬次郎君        大蔵省主計局次        長        平井 廸郎君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君    参考人        日本銀行外国局        長        藤本 巖三君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件) ○参考人出席要求に関する件     —————————————
  2. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る九月二日、塚田十一郎君、加瀬完君及び羽生三七君が委員辞任され、その補欠と一して西田信一君、松井誠君及び野々山一三君が選任されました。  また九月四日、山下春江君及び楠正俊君が委員辞任され、その補欠として柴田栄君及び大竹平八郎君が選任されました。  九月二十七日、常任委員の各会派割り当て数の変更に伴いまして、自由民主党の佐藤隆君が委員辞任され、第二院クラブの野末和彦君が大蔵委員選任されました。  また、本日、桧垣徳太郎君及び青木一男君が委員辞任され、その補欠として津島文治君及び梶木又三君が選任されました。     —————————————
  3. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) この際、理事補欠選任についておはかりいたします。  去る九月一日の大竹平八郎君の委員異動に伴う理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事柴田栄君を指名いたします。     —————————————
  5. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記をとめて。   〔速記中止
  6. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記を始めて。  次に、租税及び金融等に関する調査中、当面の財政及び金融等に関する件を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  7. 松井誠

    松井誠君 きょう私は主として為替相場変動制に伴ういろいろな問題についてお尋ねをしようと思っておったのでありますが、けさの新聞報道によりますと、補正予算の大体のワク組みがきまった模様でありますので、その点簡単に最初お尋ねをしたいと思います。  時間の節約の意味で、大体新聞報道中心にして、その数字は間違いないものという前提お尋ねをいたしますけれども、今度の補正予算を組むにあたって、歳入欠陥といいますか、そういうものは大体どれくらいに見ておるか。
  8. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 数字が相当大ざっぱの数字になりますが、税の自然減収が大体三千百億円程度。それに千六百五十億円の所得税減税を行ないます。それと、日銀からの納付金の減約七百億円入れまして、五千四百五十億円程度税収等の減がございます。
  9. 松井誠

    松井誠君 国債発行の額はどれくらいですか。
  10. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国債発行は七千九百億円という規模でございます。
  11. 松井誠

    松井誠君 歳入欠陥が五千四百五十億円、国債発行が七千九百億円、まあ二千億余りの差がありますけれども国債発行の大部分の原因というのは、減税を含めての税収減、それから日銀納付金減収その他を含めて、ともかくその赤字補てんという性格が非常に濃い、これはもう言うまでもないと思いますけれども、そういう性格を持っておる、これは承認をされますか。
  12. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 七千九百億円の国債発行するということは、いま申しましたように、歳入全体として五千億円以上の減収というものが見られますために、財政法で許された公共事業についての国債建設公債発行ということを、当初においてもっと多くやればよかったということでございましょうが、これをわりあいに少なくやったために、一般会計公共事業費を行なっているという形にいままでなっておりましたが、こういう減収状態が出てきましたので、やはり財政法上許されたところに従って、公共事業を、できるだけ多く建設公債発行によってこれを行なうということにして、一般会計負担を軽くするという措置をとらざるを得なかったということでございます。
  13. 松井誠

    松井誠君 つまり、それはどういうことですか、財政法四条にいういわゆる赤字公債には当たらないという趣旨なのか、あるいはそうではない、つまり、あれによって特別な措置をとらなければならない国債発行だという説明——御答弁たいへんあいまいでわかりません。
  14. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いわゆる赤字公債ではございません。建設公債発行するということでございます。
  15. 松井誠

    松井誠君 今度の補正予算公共事業費というのは、大体、どれくらい予定しておりますか。
  16. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 今回の補正におきまして、公共投資の追加は、一般会計において二千三百二十億五千万円でございます。
  17. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま棚辺四郎君が委員辞任され、その補欠として古賀雷四郎君が選任されました。
  18. 松井誠

    松井誠君 今度の補正予算公共事業に新しく回るのが約二千三百億円、先ほどの大臣説明ですと、いままでの公共事業投資が少なかったから、そちらによけい回すんだという説明でありますが、この経過そのものを見ても、あるいは今度の補正予算の組み方を見ても、これはもう純然たる赤字公債であることは、議論余地がないと思います。にもかかわらず、非常に詭弁を弄してこれが建設公債だと言う。本格的な論議は、どっちみち補正予算が提出された後になるでありましょうから、私は一言だけ実は申し上げておきたいのですが、こういうときに、ちょうど平和憲法の九条をなしくずし無視をしていったような、そういう形でこの財政法四条の規定をなしくずし無視をしていって、既成事実をつくる。つまり、そういう国債発行の是非という問題の以前の問題として、政治姿勢の問題としてやっぱり追及されなければならぬと私は思う。これはやはり正々堂々と赤字国債だということで、赤字国債発行が是か非かという議論をやはり国会の土俵の上に乗せるということ。そういうことを回避をして、明らかに、だれが考えたって赤字公債であるに違いないものを回避をしていく。なぜ一体そういうことをされるのか。私はいまからでもおそくないと思う。今度の国会に、やはり補正予算と同時に、そういう、あの四十年のときにやったような形のものを出して、当然国会の審議にかけるべきだと、そう思います。
  19. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昭和四十年度のときは、まだ公債発行というものはしておりませんでしたし、したがって、公共事業建設公債によって行なうということを当初予算においてやっておりませんでしたので、それを拡大するという措置がとれなかったというようなことから、これは、赤字公債として特別の立法によって行なったという例はございますが、今度の場合は違いまして、もう財政法上許された範囲が、本年度で見ますというと、まだ一兆五、六千億の余地のあるものに対して、四千億の建設公債発行しかしておりませんでしたので、この発行を拡大するという措置補正予算でとるということは、少しも法令違反でも何でもございませんし、それによって一般会計負担をそこからはずすということにすれば、いろいろな事態に対処できるということでございますから、私は建設公債発行を当初予算に比べて拡大するという措置をとったことでもって、この公債が即赤字公債であるということにはならぬだろうと思います。
  20. 松井誠

    松井誠君 特別に、一般会計の中でどの分だけが公共事業のためにというふうに色がついておるわけじゃありませんから、だから、結局総体的に見なければならないわけで、もしもこれがほんとうに今度の場合に、新たに五千数百億の国債あるいはそれに近いものを公共事業費支出増というものに充てるんだという形式で出てくるなら別です。しかし、大部分は実際上赤字補てんであって、何がしか公共事業支出増に充てるわけでありますけれども、それは比率は少ない。そういうときに、そういう議論を言ったって私は通らないと思うのです。ですから、これからあとまだ時間がありますから、私は、これがこういういわば議論国会の中が空転をすることのないように、あらかじめやはり準備をされてしかるべきではないか、そう考えまして一言お尋ねをしたわけです。  そこで、当面の変動相場制の問題についてでありますが、この間、大蔵大臣IMF総会に行って、SDRについて、まあSDR本位ということばは使っておられないようでありますけれども、そう思わせるようなことばで新しい国際通貨体制というものについて言及されておる。新聞の要旨を読んだだけでありますからよくわかりませんけれども、そういう趣旨に伝えられておる。そこで、一体それは大体どういう構想なのか。もちろんまだきちんと構想なんかまとまっておらないでしょうけれども、およその見当、たとえば金との関係はどうするのか、あるいはまたあとお尋ねをしますけれども、低開発国の問題を一体どう考えておるのか、いままでと同じように、いわゆる十カ国、G10というそういう国々だけが相談をして、いわば先進国のための通貨改革、新しい通貨体制というような形に依然としてお考えになっておるのか、その辺を含めて何か多少でも具体的な構想があったらお聞かせをいただきたい。
  21. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国際通貨の将来というような問題につきましては、もう長い間のこれは検討事項でございましたし、いまから四年前でしたか、リオデジャネイロで開かれたIMF総会のときに、すでに私はこのSDRの問題を提起しておったものでございますが、特定国通貨国際通貨とするということの矛盾というものは、もう当時からいろいろ議論されておりましたし、また金という自然の産物の増産される毎年の量が、世界経済の、世界貿易伸び率に沿っていかないということから、いろいろな問題が起こっていることも御承知のとおりでございます。したがって、この流動性の問題をどう解決するかというようなことから、SDRというものが生まれたわけでございますが、結局そういう金から離れても、また特定国通貨国際通貨とするということをしなくとも、各国が共同で一定のささえる通貨をつくり得るならば、そうしてそれを国際通貨に育てあげるということが行なわれるならば、いまよりももっと合理的な国際通貨ができるはずであるというようなことから、将来の国際通貨方向というものを、私どもは古いときからいろいろ検討しておりましたが、せっかくそういう一つの目的からできたSDRというものがあります以上は、これを育てていくことが現実的ではないか。このSDRによって、これを平価基準とするというようなこともこれから考えていいだろうし、またこれを外貨資産ということにできるだけ重きを置かせるという方向に持っていくことも一つの大事な方向であるということを考えますというと、たとえば、今後の残存ドルの保障問題とかいろいろのことになりますと、このSDRを使ってそういうものの解決をする方法ということもこれから考えられると思いますし、これを中心に将来の国際通貨のあり方を考えたいということで私どもはいまいろいろ検討しておりますが、まだそうこまかい具体的なものまではできておりませんが、方向としてはそういう方向国際通貨の問題は解決するということがいいだろうというのでいま検討しておるところでございます。
  22. 松井誠

    松井誠君 この金との関係結局わからなかったんですが、金と離れてもという言い方をなされましたけれども、具体的に一体切り離すつもりなのかどうかがはっきりしない。確かに自然の産物としての金というものの生産は制限されておる、しかし、きわめて形式的議論かもしれませんが、世界貿易が幾ら拡大しても、国際収支が均衡をしておれば、決済手段としての国際通貨というものはそうたくさん要るわけではない。それが非常にたくさん要るようになって、このSDRが必要になったのは、いわばドルが非常に過剰になって偏在しておるというところからきたわけでしょう。それから大臣演説の中で、SDRの誕生が、国際流動性が一ぱいになるときとぶつかったのは不幸だと言っておりますけれども、実はそうではなくて、それはいわばアメリカ解決するためにSDR発行を急いだ、そういう経過のあることは御存じだろうと思う。そうしてこの黄色い野蛮な通貨金属に人類の英知が負けてたまるかといってがんばってはみたけれども、結局金属に負けたわけでしょう。ですからそういうときに一体金とのつながりをどうするか、おそらくフランスなんかSDRを考えておるとしても、それは全く金と切り離れたSDRを考えておるのではない、日本SDRというものを言い出しましたけれども、言ってみれば同床異夢、そういう形でSDRは一体まとまると思えるかどうか。いざというときに、やはり金というものとのつながりがないと、単純なペーパーゴールドだけでやっていけるか。このことは先ほど大臣も言いましたけれども世界にある過剰ドルを一体どう処理するかということとも関連しましょうが、この点一体どうなんでしょうか。大体の方向はやはり切り離すことですか。
  23. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 将来の国際通貨ということを考えます場合には、私はやはり金から切り離されるべきだというふうに考えます。
  24. 松井誠

    松井誠君 私はその点非常に大きな疑問を持ちます。  もう一つは、いまのSDRという形を利用するということになりますと、御承知のようにこのSDR割り当てというものは、IMFの出資に応じて、SDRアメリカが圧倒的に多い、そういう形は根本的に変えて、ほんとうに低開発国にもSDRが潤沢に回る、そういう形式でないと、また同じようなことが、かりにSDR国際通貨にしたところで、その偏在ということが出てくる。いま、資本主義というものが、そういう均等的な発展を望めぬのはやむを得ない、言ってみれば宿命でありますから、それはいずれの日にかまたそういう矛盾が出てくるには違いありませんけれども、しかし、低開発国との関係について、もっと低開発国のそういう資金が潤沢になるような方法、そして、ドル支配と言われるそういうIMF体制の延長としてのSDRではなくて、もっと、できるだけグローバルなものとしての役割りを持ち得るようなSDR、そういうものにするということになりますと、いままでに考えておったSDRとは、ずいぶん性格が変わってきたものにならざるを得ない。十カ国蔵相会議で適当にまとめて、それで済むというようなものでは、私は、ほんとうの新しい国際通貨の秩序というものは出てこないんじゃないか。この点はどうか。
  25. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そのとおりでございまして、IMFにおきましても、十カ国蔵相会議におきましても、長期的な課題としてこの問題の検討と取り組むということで、当面の課題としてはこうであるといって、これを長期的な課題と、当面の課題とを分離することにしまして、当面の課題というのは何かと申しますと、現状において、何といっても、国際通貨基軸通貨としてほかにかわり得るものはなくて、やはり依然としてドル基軸通貨とする以外にはない。そうすれば、ドルの安定をはからなければ、現実の国際通貨の安定ははかれない。ドルの安定をはかるためには、金との交換が禁止されていようといまいと、一応米国の赤字国際収支赤字というものをなくすのでなかったら、このドル信用というものは出てこない。したがって、基軸通貨信用を回復することによって、それといろんな平価の新しい調整ということによって、ここで国際通貨の安定をはかるのでなかったら、たいへんな事態が起こる。第二次大戦の二の舞いをみんなやるわけにはいかないので、そのためにこういうIMF体制というものができて、この体制がいま根底からくずれておるんですから、これの立て直しが急務である、そのために必要な協力各国でしようということをきめて、その協力のしかたを先般の十カ国蔵相会議できめたということでございまして、将来の国際通貨のあるべき姿はこうであるということとは別に、私どもは、当面の問題として新しい通貨主義平価調整というものをここでやらなければならぬということをきめたわけでございますので、当面はその問題の解決がやはり当面の問題だろうというふうに考えております。
  26. 松井誠

    松井誠君 時間が三十分しかありませんから、私もできるだけ簡潔に聞いておるつもりですが、ひとつ簡単にお答えをいただきたいと思うんです。  私がいま聞いておりますのは、恒久的な対策としてのSDR構想を聞いておるのであって、ドルの問題はこれからお尋ねをします。  SDRの問題については、私がやっぱり言いたいのは、いまSDRというのはやっぱりIMF体制の一環としてのSDRドル支配をするSDR、そういうものを、もしこのSDRというものがドル支配から脱する、それこそ脱ドル体制というものをねらっておるんだとすれば、それ以外には、大臣の言われるように特定国通貨基軸通貨になること自体の矛盾というものは解決できないわけですから、ドルから離脱をするということになると、その前提としてのSDRということになると、いままでのSDRからやっぱり基本的に変わったものにしなきゃならぬのじゃないか。そして、低開発国も十分にその資金が回ってくるようなSDR、私は、それによって、たとえば社会主義の国がすぐに入ってくるかどうかわかりません。それが、たとえば、コメコンというものを解体をして、そういう形に入ってくるかどうかわかりませんけれども、しかし、そういうものが可能であるようなものにしなければ、社会主義国がそういう通貨体制に入ってくるわけはない。ですから、そういう展望を持ってやるとすれば、当面のドル対策として、私は、それなりの方向一つは持たなきゃならぬのじゃないかと思う。  この当面の問題になりますけれども、ちょうど私は八月十五日当時は外国におりまして詳しい事情はわからないのでありますけれども最初日本政府ドル切り下げ金価格の引き上げ、そういうものについては耳をかさなかった。前の大蔵大臣に私は質問したことがありますけれども、五月のマルクの変動相場制に移行したあとですね、当然そういうことは不可能であるということで耳をかさなかったんでありますが、最近は日本政府ドル切り下げということを言い出すようになった。しかし、それはIMF総会ではうたわれておらない、これはどういうことでしょう。
  27. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) IMF総会では、G10で当面の問題の中にはそういう問題が入っておりますので、当然問題としては出されておると思います。
  28. 松井誠

    松井誠君 そうすると、やはり西欧諸国と一緒になってドル切り下げを迫るという姿勢は変えていないわけですね。
  29. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ドル切り下げということは、さっき申しましたSDRとやはり大きい関係を持ちまして、SDRに漸次重要性を与えていくという方向をとるとしますならば、このドルがもう基軸通貨であるから、金と交換しようとしまいとこれが基準であって、どんなことがあってもこれは動かさない、他国の通貨のほうを動かすんだという立場は、これは困るということになりますので、やはりドル自身切り下げあり、切り上げあり、これが動くという方向へ持っていくことが、やはりいま特定国通貨国際通貨とする矛盾から脱却する一つの姿をここでつくることになると思いますので、やはりこの際ドルが動くということも重要性を持っているというふうに私どもは考えています。
  30. 松井誠

    松井誠君 このドル切り下げについてこういう議論があるわけですね。それは、経済的に無意味だというような議論、それもアメリカの人が言うのでなくて、日本経済学者の中にもそう言うのがあるわけです。つまりドル金平価を変えるということで、それは当然円の金平価が自動的に変わることになる。一ドル三百六十円という関係はちっとも変わらないという議論がありますけれども、私はこれは何かの誤解じゃないかと思うのですけれども、これはどうなのですか。
  31. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 経済的には同じだと思います。ドルが五%切り下げて円が五%上がったという場合には、円とドルと一〇%開きがあるということになりますが、これがドルがそのままであって円が一〇%かりに上がったという場合を見ましても、経済的には効果は同じだろうと思います。しかし、いま言ったように、そうでない別個の大きい意味が、将来のやはり国際通価の問題として大きい意味があるだろうというふうに考えます。
  32. 松井誠

    松井誠君 私のお聞きしたのは、そういう意味じゃないんです。それは日本アメリカだけの関係を考えれば、円の切り上げもドル切り下げも、言ってみれば同じようなものかもしれませんけれどもドル切り下げというのは、全世界通貨に対する切り下げということになる。当然なると思うんですね。それを為替平価を変えなければ、たとえば金平価は自動的に同じになるんだから、為替平価を変えなければ一ドル三百六十円という関係は変わらない。これは日本だけでなしに、ほかの国の通貨ドルとの関係もそういうことになるのだろうという議論、しかし、IMF協定の四条に書いてある平価が、金またはドルというそのドルというのは、特定の何年何月の幾日の金の量目を持つドルを書いてある。ですから、その金の量目が、ドルとの関係が変わってくれば、当然これは円との関係も変わってくる、自動的に変わってくる。だから、いまのそういうことに私は理屈として成り立つと思うのですが、どうですか。
  33. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいまの御質問でございますが、確かに御指摘のとおり、IMF協定に書いてございますドルと申しますのは、特定の時点における金の価格にリンクしたドルでございます。したがいまして、ドル金価格の改定と申しますか、それがございますと、それはまあいろいろな場合が考えられると思いますが、同時にそれがIMFに登録をされておりますパリティというのがございます。各国通貨にございますが、それがそのままであれば、ほかの通貨は動かないでドルだけが変わる、テクニカルに申しますとそういう結果になると存じますが、そういう場合には、それがそれだけでは済みませんで、おそらくそういう事態でございますと、ほかの国も同時に何らかの意味調整をやるということに、実際問題といたしましてはそういうことになるのであろうと思いまして、まさに先ほど大臣が御答弁申し上げましたように、そういうような多角的な調整と申しますのは、テクニカルにはいろいろの方法が考えられますが、その一環といたしまして、いま申し上げたように、各国平価がそれぞれ、あるいはドルに対してどういうふうになるか、どういうふうにするかということのまさに議論であると思います。
  34. 松井誠

    松井誠君 そういうことを私は聞いているんじゃないんですよ。時間がありませんから簡単にしますけれども、それは、ドル切り下げというのを多国間調整のいわば一環としてやる、そういう意味で、ドル切り下げはそれだけでいくのじゃなくて、ほかの為替平価の変更ともつながる、それはそう、だろうと思う。  私の聞いているのは、ドル切り下げは経済的に無意味だ、為替平価の変更をしなければ、自動的に各国通貨が金との関係で変わってくるだけで、ドルとの関係は同じだと言うものですから、そうじゃない。ですから、アメリカがたとえば金準備法によって一オンス三十五ドルときめてある。それを変更すれば、IMF協定の四条のあのドルというのは実質的に変わってくるわけです。したがって、日本なら日本としてIMFに特別に為替平価の変更をしましたという通告でもしない限りは、一ドル幾らになるかわかりませんけれども、それは当然変わってくる、ドルそのものが変わってくるわけですから変わってくる。そういうことになるわけでしょう。
  35. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) いまの御質問の点でございますが、IMF日本の、ドルであらわしておりますパリティ、これは同時にまた金の純分もあらわしております。したがいまして、ドルのほうが、しかもそのドルというのは先ほど申しましたとおり、一九四四年でございましたか、ちょっと正確ではございませんが、そのときの金の純分を有するドルということであらわしておりますから、したがって、それが変わるということによって、当然に円と一九四四年の純分を有するドルとの関係が変わってくるわけではございません。ちょっとおわかりにくいかと思うのですが、そういう関係になると存じます。
  36. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 松井君、ちょっと時間ですから……。
  37. 松井誠

    松井誠君 これで終わります。  じゃあ次にまたあらためてお尋ねをしますけれども、一ドル三百六十円というその一ドルの値打ちが、金との価格で変わってくるわけでしょう。
  38. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいまの問題は、日本できめております基準外国為替相場がどうなるかという問題であろうと存じますが、それは、私の記憶がもし間違っておればあとで訂正を申しますが、一ドル三百六十円というときのドルが、特に一九四四年のドルというふうに特定をしておらなかったと思いますので、したがいまして、その点はそういう次第で、国内法に基づくところの基準外国為替相場をどうきめるかということと別問題であろうと思います。
  39. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 初めに変動相場の問題でちょっと伺っておきたいのですが、これは大臣変動相場制に移ったと、そのときにすぐ感じたのでありますけれども、むしろクローリングペッグの方式をとるべきではなかったかということをすぐ思ったのです。大臣も御承知のように、経済の急激な変動ということは、これは絶対避けなければならないし、いま一つは、一体相場がどういうふうになるのかということがわからないで、いわゆる円のレートがはっきりしないということは、商行為を行なう上でも、貿易を行なう上でも最大の問題、これは現在中小企業の方々とお会いしても、あるいは都道府県のそういう関係をやっている方々に伺っても、一体一ドル幾らになるのかということが最大の問題です。これを早く固定してもらいたいというのが強い要求です。そういうことを考えると、やはりクローリングペッグの方式をとるべきではなかったか、いまからでもやろうと思えばできていくのではないかという感じがするのですけれども、その点をまず伺いたい。
  40. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 金とドルとの交換というものが停止されるということによって、IMF体制というものの根底が狂ってしまった以上は、世界の国にもう各国間の通貨の固定レートというものが事実上なくなっているというときに、新しい平価がどういうふうな形で出るか、つくられるかということが全くわからなくなった、ああいうときにとるべき方法としては、やはり市場閉鎖後にとった欧州諸国のような、ああいう変動相場制以外には、やはり私はやりようがないのだろうというふうに考えます。そうしますというと、日本だけの中でもし変動幅に大きい幅があるというようなことでしたら、これはまた対処する方法も考えられるかもしれませんが、全く余裕のない固定為替制度をとっている日本としましては、やはり各国並みのああいう変動制をとる以外には、私はいろいろ考えても方法がなかったような気がいたします。またこれが正しかったのではないかというふうにいまでも考えております。
  41. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 言われるのはわかりますが、それならば、いわゆる幅を広げる、変動幅を広げた上でとるということも考えられる、私は大臣の言うことに何もあげ足をとるわけじゃないのですけれども、最近の相場の動きというのが、だんだん何だか実勢を目ざして操作をされているのではないかというふうに考えられるわけです。徐々にだんだんと円高にしていって、そうしてある一定のところまで持っていったらば、その辺でまた日銀の介入をして、それ以上円が上がらないようにしようと、何か一つのステップを徐々に踏みながら、ある一定のところを見ているというふうな気がしてならないのですが、そういうようなお考えはあるのでしょうか。その辺がぼくらには、あるいは経済をやっている人たちにとっては大きな問題だろうと思うのですよ。どうなんでしょう。
  42. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 変動相場制という制度をとっておっても、全く自由な変動相場制をとっているという国はいま世界のどこにもございません。それは当然思惑を避けるとか、異常な事態に対して対処するということは、当然これはあり得ると思いますので、そういう意味でできるだけこれは実勢相場を出すようにするのが、これが変動相場制の基本でございますが、そういう意味で特別のことはいまいたしておりませんが、しかし、全く自由ではあり得ないというふうに私は考えます。
  43. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 私は、どうも一定のレートを目ざしているんじゃないかと思う。たとえば、現在の商取引ではすでに一ドル三百二十円というようなところでやっているのがかなり多いわけですけれども、そういうところから見ると、その辺を目ざして徐々に操作をしているんじゃないか。相場でありますから、操作はしていないとおっしゃるかもしれませんけれども、しかし、当初においてはわずか四%か五%程度というふうな話があったり、それを何だか守っているか防衛しているみたいに見えた、それがだんだんと一〇%と、こういうふうに変わってくるということは、私はいわゆる現在も商行為で実際使われている一ドル三百二十円という、そういうところを目しているというふうにしか見られないような気がするんですけれども、そういうことはないのかどうか。
  44. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いまのところ、絶対そういうことはございません。そういうものを私どもが目していることもありませんし、したがって、それを目ざして特別な介入をしているということはございません。
  45. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、いま大蔵大臣にその点で私一つだけ聞いておきたいんですが、いわゆる日銀が介入をしていくとするときは、いま申し上げたような投機とか、そういうものを避けるためという話がございましたけれども、一体どのぐらい急激に動いたときに介入させようというような、大体のガイドラインがおありなんでしょうか。
  46. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいま御指摘のような特別なガイドラインというものはございませんが、これは市場の取引を安定と申しますか、急激な相場の変動があってはいけませんので、その辺の点を勘案しながら、状況に応じて要すれば介入することもあるという感じで日銀に指示をいたしております。
  47. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 では、特別な変動があればというのは、どの程度のことをおっしゃっているわけですか。
  48. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) 特に、たとえば一日一円までとか、そういうようなことを指示しておるわけでは全くございません。そのときの取引の量その他によって急激な変動があっては取引の安定を害しますので、そうならないようにという趣旨でございます。
  49. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 ドルの問題よりも、ちょっと私景気と物価のことで大臣に、今回の減税や、明年度の減税の問題についてここで伺いたいんですけれども、経企庁が出した月例経済報告ですと、八月の鉱工業生産とか出荷指数とか機械の受注額、これがほとんどそろって低下している。一方で生産者の製品在庫これが急激にふえているというふうになってきて、六月、七月でせっかく回復してきたのが、逆にストップというか、帳消しのかっこうになっている。これは八月の主要経済指標というのは、はっきり申し上げればニクソンショックの問題は入ってこないわけです。そういうのは入らないとは言わないけれども十分には含めていない、そういう時点だと思うんですが、そうすると九月、十月以降は本格的にこのドルショックの影響が出てくる。そうなりますと、今度の不況というのは、四十年不況とは原因も大きく違うし、さらにこれが深刻化してくるんじゃないかと、こういうふうにわれわれには考えられるんですけれども、これは財政当局としての大臣としては、この景気ということは非常に大きな問題でありますから、見通しはどういうふうにいま考えられるでしょうか。
  50. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) おっしゃるとおりでありまして、六月、七月までは順調に回復しておったのでございますが、八月からの数字は悪いことは確かでございます。しかし、ニクソンショックも半分は入っているはずでございますし、八月の——特に六月、七月と傾向の違ったのは、やはりニクソンショックの影響があるものと私は思っております。そうしますというと、これからの問題を考えましたら、これは相当回復しかけた不況が長引くということを覚悟しなけりゃなりませんので、これを長引かせないためにというよりも、当面むしろあれ以上の落ち込みを防ぐということが一番必要だろうと思いまして、そうして予算の編成にいたしましても、いわゆる十五カ月予算構想で、すでにもう今年度も一部来年度の予算と一体になったものの実施を、今年度から始めるというような構想に基づいた補正予算を今回国会に提出することにした次第でございますが、企画庁の見通しを見ましても、民間の設備投資の落ち込みが約二兆円ぐらいもあるということになりますと、相当の刺激を与えても、さっきおっしゃられた物価との関係とか、そういうようなものとの関係は決して心配要らないと思いますので、この公共事業費の量の増加とかというようなもの、あるいは本年度きまったものもどんどん繰り上げて実行するというようなことをよほど強力にやっても、私はいまの需給状況から見まして、決して物価を懸念する程度にまではいかない、むしろそのほうがまだ足らないのじゃないかというほうを心配しているというところでございます。
  51. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そこで二つ問題があるのですが、一体、来年度の税収ですね、税収確保に対してどういうような考えを持っているかということ、来年の減税規模は約五千億ぐらいになるだろうというお話ですけれども、そういうふうにぼくらの耳に入ってきているのですけれども、来年度はいま申し上げたような不況が長引くとすれば、税収は、これは自然増収を多くは期待できない。そうなってくれば、これは極度の財源難ということになるわけでありますけれども、それでやはり先ほどの質問にもございましたけれども、いわゆる赤字公債としての無制限な国債発行ということはこれは慎まなければならない。一体どうするのか。  そこで私は、明年度の問題でありますけれども、やはり何か法人税を減税したらどうかというような話があるようでありますが、税収確保ということから考えれば、法人税についての据え置きは当然するべきだし、それからよくいわれております利子に対しての特別優遇措置の問題、こういうものは廃止すべきだろうし、租税特別措置についてもかなり大幅な改廃というものをやる、こういうことで税収についての確保の問題もかなり考えていかなければならないのじゃないか、いままで景気のいいときにこういうふうな特別措置等によって、はっきり申し上げれば利益を得てきたというか、そういうふうに優遇もされているわけでありますけれども、こういうような不況時ということになれば、当然私が申し上げたような優遇措置や何かを廃止する、法人税はそのままに据え置きにしていく、ようやくあれだってわずかなパーセンテージ上げるのにずいぶん苦労して上げたことは大臣が御存じのとおりです。そういうことから見れば、ここのところで軽々に法人税等は動かすべきではない、こういうふうに思うわけですが、そうしていかないとこれはいけないのじゃないかと感じるのですが、その点はいかがですか。
  52. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 来年度の税制についてはもう検討を始めておりますが、まだ最終の結論を得ておりません。しかし、いずれにしましても、いま五千億ということを言われましたが、まだ政府として五千億という数字を言ったことはいままでございませんが、かりに今年度の所得税減税を見ますと、当初予算の千六百何十億円と今度の千六百五十億と加えますと三千億円以上の減税でございますが、これは平年度化した減税ではございませんで、この二つの減税が来年度平年度化するということを考えますと、規模は四千八百億ぐらいになると思います。ややその程度所得税減税規模であろうかと思いますが、しかし、おっしゃられるようにまだ特別措置のほうの問題、いろいろなことを解決することによって増税部門というものも来年相当ございますので、最終的な減税の幅がどうなるかということはまだはっきりいたしませんが、やはり減税も筋の通った減税が必要だと思いますので、いま言われたようなこともやはり私どもは一連の問題としていま検討しておるところでございまして、できるだけ来年度の減税はそういう筋の通ったいい減税をやりたいといま考えているところでございます。
  53. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いまわかったようなわからないような、言わんとしていらっしゃるところが。いわゆるいままでは所得税減税でなくて、企業減税ばかりではないかと、こういうことが非常に言われてきたわけですけれども、そういう点で筋の通ったということは、私が申し上げた法人税も含めてのものと、こういうふうに解釈してよろしゅうございますね。
  54. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ一連の問題としてでございます。
  55. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そこで、いま一つは、ここで物価の問題で伺いたいんですけれども、はっきり申し上げて、非常にこのところで消費者物価指数が上昇してきた。東京都の区部の消費者物価指数を見ても、先月度に比べて五・九、一年前に比べれば一〇・三%という上昇率。全国指数でも一年前に比べて六・八%という急上昇を示して、このままでいけば九月、十月とさらに上をいくんではないかと、それがそのまま横ばいになったとしても、いままでの経企庁や何かの指数だと、今年度の上昇率は七%を上回るというふうに、こう言われているわけです。公共投資を大幅にやっても物価にはとおっしゃるわけです。また今回も減税をし、また所得減税もあるわけでありますけれども、一方で減税をしながら、他方で物価についての押えがなければ、その効果はこれはゼロだと、はっきり申し上げてそういう意味政府の経済見通しが大きく変わってくるわけでございますけれども、この減税とともに行なわなければならない物価抑制、これは大蔵関係にもあるわけです、いろんな問題がありますけれども、その点については、大臣としてせっかく減税をするというならば、それで潤っただけのことが片方になければならないわけです。その点は基本的な方向はどういうふうにおやりになる予定ですか。
  56. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 卸売り物価は御承知のようにこれは下がりぎみでございますので、いまのところ問題ございません。消費者物価が上がっておるということですが、この消費者物価も、最近の急騰は、これは災害のためであったり、冷害のためであったり、いろんな一時的な原因によるものでございますので、これはこの傾向が長く続くものとは考えておりません。そういたしますというと、この物価対策は、やはり本来の物価対策に返らざるを得ないということになりますというと、やはりいまの物価の高いのは、構造的な原因に基づくということになりますというと、この低生産性部門の近代化のために、思い切った投資をするというような、予算措置とか、いままでやってきた一連の措置と同時に、停滞している輸入をいかに進めるかというようなことによって、国内の物価上昇傾向を押えるというようなこと、そういうものをあわせて、やはり従来やってきた措置をここでゆるめないで、これを強化するということを、財政面において、またいろいろな施策面において、関税制度その他の面においてやるというよりほかはないだろうと私は考えております。
  57. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 はっきり申し上げまして、円の変動相場制と、物価とは関係がないわけじゃないわけで、いろいろ試算もされているわけで、円の、たとえば切り上げというかっこうになってくれば、これが平価より六%高くなったときに、消費者物価が〇・五%下がるとか、一〇%高であるならば〇・八二%下がるということが、経企庁で試算されているわけです。ところが、現在の上昇の状態からいけば、とうていこれは望めないことになってくるわけです。大臣もすでに新聞等でも御存じでしょうけれども、災害その他の理由によっていま物価が上がっているので心配はないと先ほど答弁になったのですけれども、魚がばか値段ということは、これは災害とは関係ないわけで、はっきり申し上げて、海の中全部ひっくり返るほどの災害があったわけではございませんし、キャベツについても、春にはロードローラーでぶっこわしていまは高くて話にならないとか、あるいはそういうことが一方にある。他方では国鉄についても農林物資に対する貨物運賃の割り引きが半分に削られるとか、そういうことが全部私はかかっていると思うのです。政府姿勢のほうが大きいのではないか。財政をあずかっているということは、はっきり申し上げれば、一方で減税して国民に潤したい、またその金を有効的に使いたいということ。ところが一方で、幾ら大臣がそういう気持ちになられても、物価を上げたのでは政治の効果はゼロです。一体これは何を政府はやっておるのだと、こういうふうに言われてもしようがないと思うのですが、そういうことも考えてみれば、一体物価高と円切り上げの問題をどういうふうに考えているのかということ、いまの物価について、先ほどの答弁のような、構造政策的なことだけで言うのは、これは毎年繰り返されてきている。強力な手を打つ打つと言われていながらずっと打たれていない。こういう点で、これは当然閣議でも取り上げていただくなりして、はっきり物価のストップ令程度のことはやらなければいけないのではないか、こういうことまで考えるべきではないか、これが一つ。  もう一つは、現在四十品目残存輸入制限があります。その中で、もし牛肉とか果汁とかそういうものを含めて十品目を自由化したとしただけでも、消費者物価は〇・五%下がるのではないかと、こういうふうに言われておるわけです。あるいは関税率の引き下げによっても、かなりの物価の引下げに影響が出てくることはわかっているわけです。そういう点についての意見はどうかという二つの点を。
  58. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 円の切り上げが物価を低めることに働くことはそのとおりでございますが、私どもが心配しますのは、なかなか日本の流通過程にはいろいろの問題がございまして、すぐ何%切り上がった円に比例して物価の下降があるかということになりますと、なかなかそういかない要素がたくさんございますので、できるだけ早くそういうものの改善をやることが急務だと考えております。それができれば、円の切り上げというものは、はっきり物価を下げる力に働くと思いますが、現状で見ますというと、私はほうっておけば上がっていく傾向の物価を、上げないで押える力に働いてくれば、一つの大きい効果ではないかと思う。まだまだ物価を下げるための流通過程の改善というものをよほどしっかりやらないといけない問題があることを、いま心配しているところでございます。
  59. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 あとの関税率の引き下げの問題について答弁のほういかがでございますか。
  60. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 関税率の引き下げは、今度は約三十品目の引き下げを行なうことにいたしました。
  61. 多田省吾

    ○多田省吾君 関連しまして、二、三、大蔵大臣お尋ねしたいと思います。  一つは、沖繩の円・ドル交換の隠密作戦は一応の前進だと思いますけれども、根源的な解決にはほど遠いということで、きのうも琉球立法院の星議長はじめ、円・ドル交換を早急にやっていただきたいと、こういう要望があったわけです。また一番問題になっておりますのは、十日以降復帰までの、いわゆる新たに得たドルについては実勢レートでしか交換されない。この問題で勤労意欲をなくするとか、現地議会でも与野党ともに指摘して大きな不満になっておりますけれども、また法人企業の救済の手が伸べられていないということで、強い不満を持っておりますけれども、やはりこれは根源的な解決として、円・ドル交換を復帰前に早急にすべきではないかと思いますが、その点いかがですか。  それから第二番目に、きのうも税調で減税の答申が出たようでございますけれども、いわゆる夫婦子供二人、四人家族で最低課税限度が百三万円まで引き上げられたということですが、三百万なり五百万なりの中高所得者に非常に有利な——こまかいことは申しませんが、減税だと、こう言われております。むしろ税調の一部の委員の方々が主張したように、低所得者あるいはその他の方々に厚い減税であっていただきたい、こういう要望が強いわけです。すなわち、最低課税限度額を百十万円にするとか、あるいは減税だけではなしに、景気浮揚対策といたしまして、むしろ、老齢福祉年金等を十一月から二千三百円ということでございますが、それを三千円なり四千円にふやすべきじゃないかと、そのほうが貯金に回らないで購買に回るじゃないかと、こういう意見も強いわけです。その点をどうお考えですか。  それから最後に、第三点といたしまして、九日の日に長洲教授はじめ、経済学者二十一氏がいわゆる提言をいたしましたけれども、その中で——先ほど松井委員が質問申し上げましたが、SDRに関連した大蔵大臣の新しい国際通貨体制に対する御発言の中で、将来は金と切り離した方向でいくべきじゃないかということをおっしゃっておりましたけれども、この、いわゆる経済学者二十一氏の提言、これもSDRを手がかりとしながら、新しい通貨体制を目ざして提言しておられる。大臣も御存じでしょうから、詳しいことは申し上げませんけれども、たとえばルーブルや元なんかの社会主義国通貨も将来考えに入れる、あるいは低開発国の問題も考えに入れてSDRに対してドルをフロートさして、ドル基軸通貨的な性格を除去さしていく。具体的な骨格といたしましてもインターナショナルカレンシー、ICというような姿で、金保証はつきますけれども、金には交換されないで、金の出資分については金交換を認めるとか、あるいは世界の中央銀行の性格を持つとか、こういう具体的な提言をしておりますが、それらに対してどのような見解を持っておられるか、この三点をひとつ明瞭に、簡潔にお答えいただきたい。
  62. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 沖繩のドルと円の交換は、沖繩の方の非常な強い要求でございまして、最初、復帰したときに交換する、交換の比率はその前の為替相場によるというようなことにきまっておりましたので、みんな三百六十円で交換されるものというふうに思っておったものでありますし、また政府もそのつもりであったという事実がございますので、これはやはり為替相場が変わった以上、沖繩の人に損にならないようにしたいということで、私どもはいろいろ研究しておった結果、八月十五日にああいうことが起こりましたので、ほんとうは八月十五日現在の調査ができて、その時点で全部、その時点の額については一切政府が保証するという措置をとっておけば、これは実施は復帰のときにやっても、すでに事実上は円とドルが三百六十円で交換されたということになるのでございますから、八月十五日の調査でできれば非常にいいと考えたのでございますけれども、それは不可能なことでございますし、この間の九日を期して沖繩政府との話がようやくできまして、ああいう措置をとったということでございますが、私はあの措置がとられて、そうして各人の持ち高がはっきり登録される。そうして銀行における預金と貸し金の差額も明瞭になる。そうしてその三百六十円と為替相場との差額が補償されるということがきまれば、復帰前に別にこの交換をする必要はないのじゃないかというふうに考えておりますし、また大体沖繩県民の方もその点は了承して、ただいま安心されておるのじゃないかと私ば考えております。もう事実上交換措置というものが行なわれたという結果に、いまのところなっておるのじゃないかと考えております。  それから税制の問題でございますが、これは今度の措置だけを考えていただかれると困るのでございますが、すでに長期的にいままでの税制の改革を見ますと、所得税のものを見ましたら、非常に中間に厚かったり、上のほうに厚かったり、下に厚かったり、この均衡をとりながら毎年所得税の改正というものは行なわれておりますので、したがって、この税率においてもカーブを描いてみますというと、ここに非常に層によって優遇されておる層と、そうでない負担の重い層と、いろいろ改正のたびごとになだらかにはいかなくて、これが段階、段階で処理しておりますから、そう、うまいぐあいにいかない節がある。そういうことが毎回改正が行なわれるたびごとに、均衡されてくるというようないきさつもございますので、今回の場合を見ましても、今度のような改正をしないというと、この次の改正のときに非常にむずかしい率の直し方になるというようなこともございまして、いろいろ私どもに希望もございましたが、税制調査会で非常な議論が出た末、いまのような程度の直し方が妥当だということに落ち着いたわけでございますが、千六百五十億円の分け方を見ますと、諸控除を引き上げるということによって八百三十五億円の減税になりますし、率を直すということによって八百十五億円減税と、大体率の直しと控除の引き上げと、金額から見たら半々にしたということでございますので、大体私はその辺は均衡がとれておるのじゃないかというふうに考えております。  SDRにつきましては、まだ具体的な問題は、これから十分私ども検討すべき問題だと思いますので、たとえば、英国あたりからも少し具体的な問題が今度提起されているようでございますが、まだこれらについてはもう少し私ども独自に検討してみたいと思っております。
  63. 多田省吾

    ○多田省吾君 学者の提言に対してはどういう見解をとられますか。
  64. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 学者の提言は、これも御承知のとおり、変動為替制度をとる前の……。
  65. 多田省吾

    ○多田省吾君 いやそうじゃなくて九日の。
  66. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 前の提言でございましたら——一ぺん各国がああいう制度をとってしまって、そのあとで、このままではどうにもならない。国際貿易というものはますます不安になり縮小になる。捨てておけないというところから、いま各国の交渉が始まっておるといういきさつからみまして、もうここで一カ国でかってな方式、かってな幅の平価の決定というものはできないということは御承知のとおりでございます。アメリカ赤字のうちで、各国平価調整によって負担すべき、負担するのが適当と思われる幅をやはりきめる必要がある。そうでなければ平価調整基準がないということから、いまその作業に入っておって、この十八日からこの問題を中心として会議が行なわれる。それによって逐次各国負担すべきものがきまっていくというような、もう国際協調の会議が始まっておるときでございますからして、いろいろな意見が出ておっても、もう列国間の協調で解決する以外に方法はないと私は思っております。
  67. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 現在われわれが当面している困難な状況というものを考えますと、あえて二つに分ければ、国際通貨秩序をどう確立するかという問題と、当面する不況をどうやって克服するかという二つになると思います。  国際通貨秩序の確立の問題については、望ましい効果とのかね合いで必要な期間というものもあると思います。時間もありませんので、この点深くきょうはお伺いいたしません。  もう一つの、不況の克服の問題なんですが、国際会議大臣が円の切り上げを各国から迫られたときに、基礎的不均衡はない。たまたま現在日本は不況なんで、結果として輸出ドライブがかかり、輸入が減った結果外貨がたまり過ぎたのだという御答弁をされたと新聞で伺いました。そういった意味で、いま目の前にある不況の克服というのは、今日の国際通貨情勢にどうやって向かっていくかということと無関係ではないと思いますし、それとのかね合いで、先ほど来の所得追加減税の話も構想されたのだと思います。  そこでその点にしぼって二、三伺いたいと思うのですが、先ほど来質問も出ておりましたけれども、今回の千六百五十億円の所得追加減税について、ねらいと、それからそれが大臣の意をほぼ満たしたものであるのかどうか。これは簡潔でけっこうです、御答弁いただきたいと思います。
  68. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、何度も言うようでございますが、いわゆる十五カ月構想というものによって一定の減税幅というものも大体目標を持っておりますが、そのうちで、当面の情勢に即応して、今年度の減税に相当重い比重を置きたいというふうに考えて、当初は一月から三カ月の減税をやりたいというような構想でおりましたが、いろいろ検討している間に、そうじゃなくて、やはり年内減税というものを相当大幅にやることが当面の不況対策にはいいんだというふうに考えるようになりまして、御承知のような千六百五十億円という幅の減税を決心したということでございます。
  69. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 質問を補足いたします。いま伺いたかったのは、今日の国際通貨情勢とのかね合いで、国内の不況という問題を見詰めていくと、たとえば、現在約九%からの変動幅になってまいりましたけれども、依然として輸出は増勢だと、きょうの新聞も伝えておりました。そういう中で、望ましい輸出を含めて将来の国際通貨情勢の中での日本のあり方というものを考えますと、内需をどうやって喚起していくのか、そういった意味合いでの不況対策というものが私はあるだろうと申したのです。それとの見合いでの、今回の千六百五十億円年内減税という異例な処置でもあったのだろう、それが大臣のねらいの一つではなかったのかという質問を実はしたがったのです。
  70. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 経済の内外均衡を早く確保するというための措置でございますので、この措置がうまくいくということによりまして、対外均衡の姿がよくなることは確かでございます。そうすれば、いまの国際交渉というようなものも非常に立場がよくなることは確かでございますので、この不況対策ということは、ひとり日本の国内経済の均衡という以外に、対外経済の均衡というところに相当の意味があることは事実でございます。
  71. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 その意味で、今回の千六百五十億円減税というものは、大臣の意を満たしたものであるかどうかを聞きたかったのです。
  72. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 非常に、さっき申しましたように、減収が三千億円以上に及んでいるときにつらいことでございますが、やはり私は当面の政策として、これくらいのものが必要だというふうに考えますので、まあ意を満たしたものだと思っております。
  73. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 では伺いますけれども、先ほど大臣のほうから、今回の追加減税というのは二つある。一つは所得控除であり、もう一つは税率の緩和である。ほぼ折半に分けたのだという御説明がありました。そこで、税率の緩和について対象になる人たちが、給与所得者の一体何%に当たるのか伺いたいと思います。
  74. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 今回の所得税減税は、ほぼいま所得税を納めている人全員にその恩典が均てんするように意図しております。それで、いまお尋ねの税率の緩和は、当然現在の所得税を納めている人全員にその恩典が及ぶことになりますから、給与所得者約二千七百万人くらい、あるいは申告納税者四百万人くらい、全体としまして約三千万人の人たちに及ぶことになります。
  75. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 これは、これまでも議論があったことですから、率直にお答えいただきたいと思います。  税率の緩和について、年収三百万から七百万くらい、額の多少の増減はあるかもしれませんが、そこに主たる焦点を合わせた処置であることは先ほども大臣答弁としてあるわけですから、その層が給与所得者の中の一体何%なのか、お答えいただきたいと思います。
  76. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 詳細な所得階層別人員というのは、最近の数字というものをまだ集計できていない状況でございますが、昭和四十四年の数字というのが一応まとまってございます。それで申しますと、人員で、所得百万円以下の人間が約二五%おります。それから百万円超五百万円以下の人たちは約三〇%おります。それから五百万円超の人員が約一%ということになります。で、私が申すまでもなく、その後の所得の上昇がございますから、その率というものはかなり変わっておると思います。
  77. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いま三〇%と言われたのは二百万までですか。
  78. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 百万円超五百万円以下でございます。
  79. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうしますと、国税庁が給与所得者の実態ということで出した数字とたいへん違うんで実は困っているんですが、参考までに国税庁で二百万円以上の給与所得者というものが五%くらいだったという報告も出ているようですから、数字の論議は一応はずします。いずれにしても一部の部分について減税政策をとったわけですけれども、その一部の部分について減税政策をとるということと、内需喚起、不況克服ということとどうつながると考えておいでになるのか、大臣に伺います。
  80. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) ただいま申し上げましたのは、納税人員の各階層別における割合を申し上げたわけでございますが、所得税額、その人たちの納めておる所得税額の分布で申し上げますと、四十四年の数字でございますけれども、百万円以下の納税者のところで納めておる所得税額は約一五%でございます。それから百万円超五百万円以下の人たちが納めております所得税額は約五五、六%になります。それからその次の上の階層、五百万円超の人たちの納めております所得税額は約二四、五%になっております。
  81. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 累進課税ですから当然のことなんですが、質問がどうもかみ合わないようなんで、もう少し具体的に御質問します。  現在の通貨情勢との見合いで不況を回復していく、克服をするということは、単に国際情勢だけにとどまらない、したがって、今回の異例の減税処置があったんだということで考えますと、国内市場をどうやって豊かにしていくか、それは一部の高い所得者だけではなくて、広く減税の実感というものを与えながら、内需喚起に踏み切っていくということになるはずだと思います。そういったことで、非常に素朴に質問させていただきますと、所得税と住民税との関係が従来から論議をされてきたと思います。ここで所得税と住民税の性格論をお伺いするつもりはありません。どちらにしても払っているという意味では全く同じなんです。そうしますと、いま、たとえば税収額でおっしゃったんですが、所得税の控除額を引き上げるということとあわせて、住民税の控除額を大幅に引き上げるほうが、従来の税の取り方という面で、不合理を直すという意味以上の実は必要性があるのではないのか、そういう議論が今回の所得減税の中でなぜ出てこなかったのか、たいへん奇異に感ずるので先ほど来実はお伺いをしているのです。
  82. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 今回の所得税減税に見合いますところの住民税の減税のお話でございますが、税制調査会等での議論でございますので、私からお答えさしていただきます。  確かに所得税と住民税との総合負担が国民の負担になっていることは事実でございますし、かなり住民税が最近の状態では重くなっておるという実感もございます。しかし、当面の緊急的に減税をするという段階になりますと、住民税は御案内のとおり前年の所得についてもうすでに徴税令書が出ておりますし、その金額に応じてそれぞれ毎月分給与所得者については特別徴収をすべき金額というものがきまっておりますので、いまここで地方税法を直し、各地方団体において条例を直して、また徴収してもらう金額を直すということは、技術的に非常に困難であろうということから、今回の措置としましては、住民税の問題は除外されたわけでございます。  しかし、ひるがえりまして、基本的に住民税の負担をどうすべきかという問題は、今後の税制の問題としまして各方面で論議されるところであろうと思いますが、一つには、いま御指摘のように所得税の課税最低限と、住民税の課税最低限とがどういうような関係にあるべきかという問題は確かにあります。一方におきましては、それを、一致すべきであろうという御意見もございますし、地方税としましては、やはり所得税を納めない人たちにも住民税を納めてもらっていいんではないかという議論もございます。それからもう一つは、住民税の税率の問題が実は多年にわたって据え置きになっておりまするので、これが最近の所得状況から見ましていかがであろうかという問題もございます。しかし何しろ、いずれも、二つの問題も、さなきだに今明年あたり苦しいといわれておる地方財政としましては、非常に大きな問題でもございまするので、財源状況ともかね合って、今後住民税の課税最低限の問題あるいは税率の問題というのに議論が及んでいくものと思われます。
  83. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 時間がありませんからこれでやめますけれども、その税のこまかいやり方を聞いているわけではないのです。大臣が羽田に帰られて異例の帰国声明を出された気持ちも含めて、いまわれわれの立っている時代というものはなみなみならない時期だと私は思うのです。そういう中で、ほんとうに内需を喚起しながら、将来の国際通貨秩序の確立の中で、どういう日本経済の世界における位置づけというものをやっていくのかということになりますと、単に従来の不況対策というものとは違うという気がするのです。そういう意味で、たとえば所得減税ということになりますと、従来からこの部分について不合理であった、したがって、それも一緒に直してしまおうという議論がなぜ出てくるのか、あるいは住民税でいまおっしゃったような議論がなぜ出てくるのか、私は時間がないからこれ以上申し上げませんけれども、物品税から関税から全部含めてどうしたらいいのかということを洗いざらい考える私は時期だと思うのです。  そういう意味で、今回の減税措置につきまして、税制調査会答申というかっこうがほんとうに正しいのかどうか、私はたいへん疑問な気がしてけさ以来朝刊を読んでいたのです。税制調査会ということになりますと、税の手続問題になってしまいます。しかし、いま必要なものは、そうではなくて、どうやって難局を乗り切っていくかという、実は政治であり、政策の問題だと思うのです。それも含めて税制調査会ということになりますと、また古い論議が持ち出されて、ほんとうに役に立つ千六百五十億円になるのかどうかという話もたいへん疑わしくなってくる。それを再々先ほどからいろいろ実は伺いたかったのですが、時間がありません。あとの論議に譲って、もしいまのことで大臣の御見解があれば伺いたいと思います。
  84. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま引き続いて来年の減税についていろいろ検討しておりますし、これを税制調査会にまた諮問するつもりでございますので、税制調査会は来年の減税減税としてこれから取り組んでくれるものと思っております。
  85. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は円切り上げ問題について幾つかの点を伺いたいと思うのです。  円の切り上げは、政府調査によりましても、輸出中小企業に大きな打撃を与えておりますし、またすでに採用のきまった高校生、中学生の採用中止も、労働省が調べたところによれば、九月末までに五万一千人をこえているというような状況ですし、また沖繩県民も非常に深刻な痛手を受けているというような状況であります。大臣は九月十八日の羽田での声明の中で、現在の国際経済不安の根本的な原因は、アメリカ国際収支の悪化にあるという趣旨のことを述べておられますが、アメリカ国際収支赤字ドル危機のしりぬぐいのためになぜ犠牲を受けなければならないのか、日本の国民は理解に苦しんでいるところであります。ドル危機のしりぬぐいのためになぜ円を切り上げなきゃならぬのか、その点を伺いたいと思います。
  86. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これはIMF一つの協定でございますから、一ぺんきめた固定為替相場はかってには各国は変えないということを前提として成り立っておるものでございますが、そのときに、たとえば国際収支が悪化したというときに、国内政策で解決できるものは当然国内政策で解決すべきものであるし、各国の責任でこの国際収支の悪化は解決すべきだ。あらゆる努力をしてみても、なおかつこの赤字解決できないというようなときに、いわゆる基礎的不均衡の状態に入ったということになるでしょうが、そういう状態のときに初めて各国はこの平価の変更をしてもやむを得ないということになっておりますので、普通の場合には、この平価の変更はできないということになっておるのですが、御承知のようにアメリカ赤字がああ恒常的になってきましていろんな措置をとる。ニクソン政策みたいな思い切った措置をとってもこの解決ができないというときには、アメリカ自身が基軸通貨国でありますから、それは別としましても、普通ならドル切り下げて、そうしてこの平価の変更をしてくる時期にきているんだろうと思います。それが簡単にできませんから、ああいう措置をとってきたんですが、いずれにしろドル自身がもう自分で基礎的不均衡、赤字の不均衡を認めてああいう措置をとったという以上は、これが基軸通貨であるために、全各国にこれが影響して、そうして世界の固定為替相場制度というものが全部くずれてしまった、こういう事態になったんでありますからして、これを解決するというためには、好むと好まざるとにかかわらず、この基礎的不均衡というものについて各国は何らか協力して、この基軸通貨の安定をはかるよりほかしかたがないという結論に各国が到達したのでございますからして、そのためのお互いの協調、お互いの負担というものは、これは当然みんなしようという約束で、この国際会議が成立しているということでございますから、それに対する何ぶんの負担といいますか、責任というものは日本も負うということを私どもはいま約束しているというわけでございます。
  87. 渡辺武

    ○渡辺武君 大臣の論理、少し飛躍しているのじゃないですか。基軸通貨の安定がなければ、資本主義世界経済の安定があり得ないということ、これまた当然のことですよ。しかし、問題はそのいわゆる基軸通貨の安定をどのようにしてなし遂げていくかという手段、方法の問題は、もう少し厳密にその基軸通貨ドルの危機の原因を調べてみなければ出てこない、どの手段が正しいかということは。そうでしょう。いま、アメリカ国際収支のこの赤字の問題についてちょっと触れられましたけれども、一体、この赤字の原因はどこにあると思っておられるか、そこがはっきりして初めてドル危機を解決するという政策が正しいかどうかという問題も出てくる。アメリカ国際収支赤字は、根本的にはどこに原因があると思っていらっしゃいますか。
  88. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあこれは原因は、アメリカ側で指摘する原因もたくさんございますし、各国が指摘する原因もたくさんございます。たとえば、ベトナム戦争というものも、アメリカ赤字の大きい原因でございましょうし、また各国に駐在するアメリカの防衛費の負担が相当過大であるということもその一つの原因でございましょうし、またこれは各国の責任ではないのですが、アメリカの他国への投資というようなものが相当多額に及んでおるということも、アメリカ国際収支悪化の一つの原因をなしておることは事実でございますし、また国内的な問題といたしましては、やはり宇宙科学の不均衡な拡充というような問題が、国内経済にどういう影響を与えておるかということを分析する学者もございますし、原因はたくさんだろうと思います。
  89. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま大臣いみじくもおっしゃいましたが、ベトナム戦費あるいは各国への軍隊の駐留費あるいは各国への資本その他の流出、やはりここにアメリカドル危機の一番大きな根本的な原因があるのじゃないですか。アメリカが発表している国際収支統計、アメリカ商務省のサーベー・オブ・カレント・ビジネスに出ておりますが、あの資料を一見しただけで、そのことは実に明確ですよ、ごく簡単に拾ってみただけでも、たとえば、一九七〇年のアメリカ国際収支百六億八千六百万ドル赤字が出ておる、ところでこの赤字の要因を調べてみますと、最大のものはベトナム戦費を中心とする四十八億三千八百万ドルに及ぶ海外軍事支出というのがあります。さらには、同じく世界支配を目ざすアメリカ政府の五十四億七千九百万ドルの海外経済支出というものがあります。もちろんこの点についていろいろな議論がありましょう。  たとえば、貿易収支の黒字が最近は大幅に下がってきておる。ことしになってからそれが赤字にさえなってきた。あるいはまたアメリカからの短期の資金の流出、これらのものも要因の一つだと思いますけれども、しかし最も根本的には、アメリカがベトナム侵略戦争を中心にして、全世界にわたって戦争と侵略の政策を進めている、ここに最も根本的な原因があると言わなければなりません。大臣自身開口一番、そのことを、ベトナム戦費あるいはアメリカ軍隊の海外駐留あるいはまた外国に対する援助、こういうようなことを言っておられるなら、その根本原因を解決しなければ、ドル危機というのは解決しないでしょう、どうですか。アメリカ政府に対して、ベトナム侵略戦争、これをやめるべきである、ベトナム侵略戦争を中心とする戦争と、侵略の政策をやめること、これこそがドル危機を解決する最も根本的な条件だということを主張すべきだと思いますけれども、どうですか。
  90. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いまアメリカ赤字に対して、各国がどういう協力をして国際収支の均衡を得せしめるかということについて、国際間の相談が始まっているときでございますので、その相談の中には、こういうものは各国が分担すべきもの、こういうものはアメリカ自身において解決すべきものとか、なおかつそういうことをやっても現状やむを得ないと認めるものは、この平価調整によって負担することもやむを得ないものと、こういうものの仕分けをして、合理的な解決をしようということをいま各国とも努力しておるところでございますので、そのうち、合理的な解決が必ずできるものと私は思っております。
  91. 渡辺武

    ○渡辺武君 そのうちとおっしゃいますけれども、いままで何回も、幾つかの国際会議が行なわれました、日米貿易経済合同委員会も行なわれれば、二回にわたる十カ国蔵相会議も行なわれ、さらにはIMF総会も行なわれておる。その席上で大臣アメリカに対して、アメリカ自身の責任でこのドル危機を解決すべきである、特にベトナム侵略戦争をやめれば、ドル危幾解決の根本的な条件になるということを主張されましたか。また、先ほどの御答弁では、今月の十六日ですかにもう一回十カ国蔵相会議が開かれるとも言われる。この席上でもそういうことを主張なさる御意思がありますか。
  92. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう問題については、もう各国とも、そういう問題が掘り下げられなければほんとう解決はできませんので、国際会議というものは秘密会議ではございますが、かなりいろんな問題にわたって検討しておるところでございます。
  93. 渡辺武

    ○渡辺武君 抽象論でお逃げになるのは私はひきょうだと思う。日米貿易経済合同委員会におけるこの大臣の演説、これは新聞に出ておりました。また、十カ国蔵相会議での大臣の演説、特にIMF総会における大臣の演説、ここにちゃんと私は資料をとってありますが、一言もこの問題に触れていらっしゃらないじゃありませんか。しかも、いま大臣、国際協調、国際協調と言われましたけれども、まさにこのことを抜きにして、そうしてアメリカドル危機を解決するにはどう国際間でこれを負担するのかというところに大臣の演説の中心は置かれている。私はいまの答弁、ごまかしだと思いますが、どうですか。
  94. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあごまかしの答弁をするはずはございませんし、私は一般の大ぜいの公開の席上における発言と、そうでなくて、国別のいろんな相談のときにおける話とは、おのずからこれは外交的な問題で別でございますので、そういう問題はもう十分各国において研究されておることだけ申し上げておきます。
  95. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 ちょっと関連して。大臣、そんなきれいごとの答弁をしたって、この段階で、あなた問題の解決になると思いますか。私もパリにおける国際会議に参りましたよ。これは経済問題を中心とするものじゃありません。ですけれども、この国際会議でも、日本を除いては、世界各国は、いま渡辺委員が言ってるような指摘をしているじゃないですか。ところがあなたのいまの答弁は、いろんなことが研究されているというだけの話で、あなた自体が——私はまだあなたの演説見ていませんが、やっていないから渡辺委員が質問しているわけでしょう。ちゃんと答えなさいよ。
  96. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) むしろ私が一番多く言ってるのじゃないですか。これはコナリーさんに聞いてみればよくわかると思いますが、決してそんなことはございません。
  97. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 持ち時間がもう四分間ぐらいでございます。
  98. 渡辺武

    ○渡辺武君 大臣もひとつ端的に真実を語っていただきたいですよ。本人が言ってるというなら、これは私ども信用しませんけれども、一応その問題は追及しませんけれども、とにかく八月十六日のニクソンのドル防衛政策、これの根本的な特徴の一つ、これはベトナム侵略をおもな原因として起こってきている。このドル危機を、ドルと金の交換の停止だとか、輸入課徴金だとか、他国の通貨の切り上げ要求だとか、こういうようなことで他国に犠牲をしわ寄せして、他国の犠牲で解決しながら、しかもベトナム侵略、インドシナ侵略はさらに続けていこうというところに根本的な特徴の一つがあると思います。御承知のように、アジア人をしてアジア人と戦わせろというのは、軍事の面におけるニクソン・ドクトリンですけれども、八月十六日のニクソンのドル防衛政策は、国際経済政策におけるニクソン・ドクトリンだと言って私は差しつかえないと思う。  ところが、大臣の現実にあらわれたこの演説ですか、これはIMF総会の演説で、ニクソンのこの措置を真剣な努力のあらわれとして評価するということで、称賛している始末じゃないですか。そうしてニクソンの要求に従って円の切り上げに踏み切った。さらには十カ国蔵相会議などで水田大蔵大臣が果たした役割りは、これはまさにこのアメリカの責任を追及しないで、各国アメリカ国際収支赤字をどう負担するかということで、協調したらいいということで盛んに活躍されている。これはもう実質上アメリカの別働隊としての役割りを水田大蔵大臣が果たしているというふうに考えます。これはアメリカのベトナム侵略戦争に実質上手をかしている行為だというふうに考えられますけれども、その点はどう思っておられますか。
  99. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ベトナム戦争がよかったか悪かったかということは別問題としまして、いずれにしろ現実的にはアメリカのああいう国際収支の恒常的な赤字というものが発生してしまった、そのことが国際通貨の不安を招き、国際貿易を阻害するということが現実の事実でございますので、それに対してどういう措置をとるべきかということについて、まずアメリカ自身があれだけの措置をとったということについては、私どもはやはりいままでの米国がいろいろ国内政策においてこういうものを解決しようとされなかったことに比べて、私は今度は評価すべき大きい決心であったというふうに思っております。これはベトナム戦争を応援するとかなんとかということじゃなくて、世界通貨の安定をはかるためには、アメリカ自身の措置は私はやはり高く評価して、これは間違いないというふうに思っております。
  100. 渡辺武

    ○渡辺武君 それは全く対米屈従的な態度もいいところじゃないですか。ニクソンのあの演説、よく研究してごらんなさいよ。ベトナム侵略戦争をやめるなんということは一言も言っていない。そうして賃金と物価の凍結その後の事態が明らかにしたところは、賃金だけの凍結で、利潤や利子は野放しという政策をとって、国内の労働者に犠牲をしわ寄せする。さらには先ほど申しましたように、輸入課徴金、円の切り上げ——他国の犠牲でもってドル危機を解決しようとするのがそのすべての内容じゃないですか。その努力を高く評価するとは何事ですか。円の切り上げが国民にどれほど大きな被害を与えているかということは、私が一番最初に申し上げたとおりです。一体国民の利益を守る立場に立っているのか、アメリカの利益を守る立場に立っているのか、その点をはっきりさせていただきたい。  時間がないので、特に最後の一問を付け加えてお尋ねしますけれども、日米安全保障条約の第二条には、大臣も御承知のように「締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。」ということが明確にうたわれております。先日開かれた日米貿易経済合同委員会も、この条項に基づいて一九六一年の六月に、ラスク・小坂交換書簡に基づいて開かれるようになったものです。その後日本政府は一貫してこの日米貿易経済合同委員会で、アメリカドル危機解決協力する、ドル防衛政策に協力するという立場から、貿易・為替の自由化とか、アジア諸国への、アメリカの肩がわりした援助の拡大とかというような政策を進めてまいりました。今度の円切り上げも、まさにこの日米貿易経済合同委員会で、アメリカ側から強い要求を出された水田大蔵大臣は、それをのみ込んで帰ってくるという状態だった。まさにいまの円切り上げ、これはニクソン・ドクトリンに従って、この日米経済協力という条項に基づいて行なわれてきているというふうにしか私は考えられない。これが事態の本質じゃないでしょうか。こういう日米軍事同盟を基本とした、アメリカに従属する、しかも危険きわまりない政策はおやめになって、そうして日本経済を自主的、平和的に発展させる方向に向かうべきだと私は考えますけれども、そのおつもりがあるかどうか。  この二点を伺いたいと思います。
  101. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま私どものやっておりますことは、さっき申しましたようなことで、これはひとり日本だけじゃなくて、各国共通の利益でございますので、したがって、各国が共通の問題としてこれを取り上げて解決に当たろうということで、いま国際会議も開かれておるということでございますから、私どもはもちろん日米の関係が重要であることは承知しておりますが、それよりも世界各国がお互いに協調し合った新しい通貨体制ができない限りは、日本経済の発展はもうあり得ないというところにきておるんですからして、多国間折衝、多国間の協調というこの会議を持っておるわけでございまして、日米の安保条約があるために、この国際会議を持っているというような性質のものではございません。
  102. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記を中止して。   〔速記中止
  103. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記を起こして。  ただいま議題となっております租税及び金融等に関する調査のため、参考人として日本銀行の役職員の出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  引き続き質議を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  105. 松井誠

    松井誠君 さっき中断されましたドル切り下げの問題をはっきりさしておきたいんですが、これは技術的な問題のようでありますけれども、実はそうではないと思うのですね。ドル切り下げ議論があって、それは私は、いまもありましたけれども、われわれがこのベトナム侵略のしりぬぐいをする必要はないという、そういう言ってみれば政治論がありましょうし、あるいはアメリカがインフレでドルが事実上減価をしておる。それをそのままほうっておいていいわけじゃないという議論もありましょう。いろいろな意味で、ともかくあのマルクが変動相場制になったときに、この次は円の切り上げだというような、そういう発想に、私は根本的に疑問があるということをあのときに申し上げた。そのときに、なぜドルの問題を考えないのかということを、一番先に言ったんでありますが、やはり節度を守っていないそういうアメリカに対して、一方的にわれわれがそれに応ずるという形じゃなしに、やはりドル切り下げというものを取り上げなければならぬと思うのですが、そういうものに対して、いや、それは経済的に無意味なんだという、きわめて技術論で一蹴をするような議論があるわけです。これはただ単に技術論じゃなくて、相当の意味を持っておると思いますから、もう少しそれをはっきりさせたいんです。  私が先ほど質問をしましたのは、このIMF協定の第四条に書いてあるこの規定によれば、たとえば、日本の円は金と合衆国ドルとで表示する。その合衆国ドルというのは、この四条に書いてあるのによれば、「千九百四十四年七月一日現在の量目及び純分を有する」ということになっておるわけですね。したがって、アメリカが一オンス三十五ドルというのを、たとえば、一オンス四十ドルにしたとすれば、ここに書いてある「千九百四十四年七月一日現在の量目及び純分を有する合衆国ドル」、これが変わってくる。で、これは一オンス三十五ドルという、そういういわば計算で平価の、合衆国ドル前提にしておるわけですから、したがって、それが変わってくる。しかし、一方金の表示というのは、これは変わらないわけですね、変わらない。たとえば、いまの金の表示といいますか、円の金平価、これは一円が〇・〇〇二四六八五三グラムですかね、これは絶対変わらない。ですからこの為替平価日本アメリカとのドル為替平価を積極的に変えようという意思があれば話は別でありますけれども、そうでないとすれば、一オンス三十五ドルが四十ドルになれば、それだけ減価をされたドル表示、この四条にある米ドルというのはそういうドル表示になるわけです。金平価は変わらないでそういう形になって——繰り返しますけれども、一九四四年七月一日現在というのは一オンス三十五ドルというのがいままでのところでしょう。それがかりに四十ドルになったとすれば、その米ドルで表示をするということになるわけです。  そこで、先ほどあなたが言われた国内法を変えなきゃならぬというのは、昭和二十四年につくった「基準外国為替相場及び裁定外国為替相場」という告示ですか、一ドル三百六十円というこの告示、これは確かに何とかしなきゃならぬと思うのです。この一ドルというのは、一九四四年七月一日現在のその金平価を持っておる一ドルであったわけですから、それが変われば当然このドルというのは変わってこなきゃならぬ。しかし、それは読みかえるというような、いわば技術的といいますか、もので積極的に為替平価を変動するという意思がなければ、言ってみればIMF協定の規定に合わせるためには、この告示をむしろ変えなきゃならぬ、それに応じて変えなければならないという、そういういわば国際的な義務みたいなものが生ずる。それだけの意味であって、これをかりに変えないでほっておいた場合に、日本アメリカとの為替の平価というものは変わったということになるのですか。この一ドルというのは、あくまでも一九四四年の七月一日の一ドルなんですから、これがそのままかりにあったにしたところで変わるということになるわけですか。
  106. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいまの御質問でございますが、先ほど御答弁申し上げましたように、このIMFにおきますパリティ表示と、それから国内法上の基準外国為替相場というものとの関係の問題であろうと存じます。これにつきましては、もうIMF協定自体、先ほどから大臣が御答弁申し上げておりますとおり、非常に基本的なところで一つIMFの協定の考え方の基礎が変わったというのですか、くずれた、そういう事態でございます。  今後これをどういうふうに持っていくかということにつきましては、相当時間をかけて多国的な検討を続けていかなければいけないということであろうと存じますが、ただいまの御質問の国内法上の基準外国為替相場、これは一九四四年の量目と純分を有するドル——金に対する量目と純分を有するドルというふうに書いてございませんので、これはやはり合衆国ドルということになっております。したがいまして、もしドル金価格の引き上げがあったような場合にどうすべきかということにつきましては、これはそういう新しい事態に応じてあらためて考えなければいけない問題ではなかろうかと思います。したがいまして、むろんその場合に、仮定の問題でございますが、ドルに対するたとえば一ドル三百六十円というのを変えると、その場合のドルは、むろんどういうふうに規定をいたしますかその状況によって検討すべきことであろうと存じますが、やはりこのままでは、そのときの状況に応じましてやはりこのままでおくというわけにはいかないのではないかという感じでございます。
  107. 松井誠

    松井誠君 まあ繰り返すようになりますけれども、私は政策論を聞いておるのではない。そうでなくて、そういう為替平価を変えようという、そういうことではなくて、アメリカドル金価格、金の買い上げ価格が変わったということで、当然この告示というのは変えなくちゃならない。その幅だけは変えなくちゃならない。そうしなければ、この告示に書いてある一ドルというのは、IMF協定四条に書いてある一ドル、そういうことを表面には書いてありませんけれども、もちろんそれを前提にしておるわけですから、したがって、それは変えなくちゃいけないのではないか、そういうことを聞いているので、政策的にそれにさらに日本が円切り上げの何がしかを加えて、そして新しい為替平価をつくるということは、それは話は別です。そういうことではなしに、円の切り上げという問題とは全然別に、ドルのそういう切り下げだけの問題として考えて、事務的にいえば機械的にそういうことになるのではないかということなんです、どうですか。
  108. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいまの問題につきまして、もし金の価格引き上げがあったときに、この基準外国為替相場に関します規定を当然に変えなくてはいけないことになるかという点につきましては、これはまあ私の感じでございますけれども、必ずしも変える必要が法律上あるかどうかという点は疑問ではなかろうかと存じます。
  109. 松井誠

    松井誠君 それはまあその程度にしておきます。私はやっぱりIMF協定というその条約の前提が変わったということ、それに合わせるという義務が国際法的にも出てくるのではないか、そういうことを実は考えるわけですが、それはまあいいです。  そこでもう一つ変動相場制に伴う問題として、例の前受け金の問題をやはりお聞きしたい。私はちょうどこのときに外国に旅行をしておりまして、出発前は、福田大蔵大臣は、もうマルクと違って日本の円は完全武装だ、だいじょうぶだと言って胸を張っておった。したがって、外国で、どんどんドルが入ってきて日銀が買いささえをしたということを聞きますと、一体どこから入ってきたのかと思ってふしぎでしょうがなかった。どこに大きな穴があいていたのか、全然見当もつかなかった。そこでわからないことがたいへん多いのでありますけれども、この間大蔵省からこの委員会に提出をする資料をいただいたのです。このことでお聞きしたいのですけれども、前受け証明書の検査をした結果の中で、特段のものを三種類に分けてあげてありますね。この「ゼネラル・マーチャンダイズ」ですか、これはつまり特定の商品でなくて、「一般商品」というような形で契約書が出て、それに証明書がついたと、こういう取引というものが実際あり得るのですか。
  110. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいま先生御指摘のとおり、このいまの輸出前受けという点が、今回の多額のドルが売られた一つの大きな原因ではなかったかということがだんだんはっきりしてまいりましたので、検査をいたしたわけでございますが、そのときに、前受けと申しますのは、一つの商慣習でございまして、それ自体をこれはいかぬというような性質のものではないと存じますが、しかし、まあ前受けというようなかっこうで、いわば将来入るべき、売ってくるべきドルを早急に、早めに売ってきたものも若干あるかと存じますが、そういうもの自体が、これは一種のリーズ・アンド・ラッグズと申しておりますそのリーズでございますが、その中でほんとう意味の前受けであるかどうかという点に検査の重点を置いたわけでございますが、そのときに、いま御指摘のとおり、「ゼネラル・マーチャンダイズ」という表示があって、特定の商品名でなかったというようなものが若干ございます。こういうものが商慣習としてあるという意見、見解もございまして、必ずしもこれがおかしい、投機的なものだというふうに断定することはできないかと存じますが、同時に、まあこういうようなかっこうで、ややこういう道をくぐって、何か投機的なものが入ったんではないかというようなことも考えられますので、そういう意味で、一つの問題点ということで、ここにあげてあるわけでございます。
  111. 松井誠

    松井誠君 こういう問題は、あとの祭りと言ってしまえばそれまでですけれども、しかし、やはりどうしても私は取り上げざるを得ないと思いますね。それは、かりにほんとうに前受け金であったとしたところで、いわばこの変動相場制で、ずいぶん国民がいろんな意味でたいへんなしわ寄せを受けている中で、一年先の輸出をこれで確保してもうけた、ということばが悪ければ、少なくとも損はしなかった、損をしなかったということだけで、何か他人がうまいことをやったのをやっかむという意味で言うのではない。そうでなくて、この結果が、いわば国民の税金に直接響いてくるわけです。しかも、政府自身が、円転規制の緩和なり、外貨の預託をやるなんという、いわばこういうことに力を貸した結果になっているわけですから、どっちみちこれは正当な前受け金であったにしても、問題にしなければならない性格のものであると思います。いわんや前受け金という形式をかりて、この投機ドルが入ってきたという疑いが濃いとすればなおさらです。  そういう意味で私は、済んだことでありますけれども、これはやはりできるだけはっきりする必要があると思う。しかし、いまの局長の御答弁ですと、この「ゼネラル・マーチャンダイズ」というのは商慣習として必ずしもおかしくないんだという説もあるなどというたいへん及び腰の御説明なんですけれども、どうなんですか、いままで一体そういう形でどれほどの前受け金の証明書というようなものが出ておったのか、これはこのときに突如として出てきたものではあり得ないかもしれませんけれども、しかし、全体のこの輸出契約の中で、おそらくは異常にこういう比重が高まっておったと思いますけれども、その辺のことはわかりませんか。
  112. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) この輸出前受けの問題につきまして、実は五月のマルクの変動相場制への移行がございましたときに、若干やはりこの動きがございました。この点につきましては、実は貿易決済、貿易の問題でもございますので、所管の通商産業省とも密接な連絡をして、打ち合わせをしまして、そのときはそういうような、いわゆるほんとう意味のものでないものは厳重にチェックしてほしいということを申し入れまして、そういうことでおさまったわけでございます。  今度の八月の際におきまして、それが再びやはりあらわれてきたという感じがはっきりしてまいりましたので、これをどうやって押えるかということで通産省ともいろいろ検討いたしたわけでございますが、先ほども申しましたとおり、まあ輸出の商慣習として前受けそのものをいかぬということにもまいりませんので、その意味ほんとうにこういう道を通して、何と申しますか、投機的なものが入ったということではいけない。もしそういうものがあれば、これはむろん厳重に措置をしなければなりませんが、いま言った検査をいたしましたところがこういうことが出てきた。これは過去におきましてそういうものがたくさんあったかどうかということにつきましては、現在のところ必ずしもはっきりいたしませんが、ただ、確かに八月のときに検査をいたしましたところでは、そういうものがあって、これはたとえばその次にございます「仕向地複数のもの」というようなものと同じように、若干中にはそういうような、いわばほんとうの輸出前受けでないものがこういうかっこうで入ってきたというようなものもあるいはあるのではないかということが推定をされますが、これにつきまして、具体的にこれはほんとうに仮装の前受けであるというふうに断定が必ずしもできません。むろん断定できるような事例のものがありましたら、厳重に処断をいたしたいと存じます。むろんこれは検査の結果こういうことがわかりましたので、九月一日からでございましたか、この前受けにつきましては、ドルで受け取ってもそれをドルのままでほかしておいて、円に転換を認めないで強硬な措置をとったわけでございます。
  113. 松井誠

    松井誠君 それは文字どおりあとの祭りですわね。前受け金という商慣習はもちろんあるでしょう。あるでしょうけれども、しかし、「一般商品」というような形で、どれだけのものをどれだけ輸出をするのかということがどだいはっきりしないような輸出の前受けというような制度があること自体私は常識的に考えられない。  それからその次に、あなたのさっきも言われました「仕向地複数」というのは、お聞きしましたところ、たとえば、「仕向地ヨーロッパ」というように書いて特定の国を書いてない、そういうのを言うのだそうですけれども、そういうものが、普通なら個々の商社なり、メーカーなりと、現地にある外国の商社なりとでやるのだとすれば、そういいかげんな契約書ということもできないと思うのですが、聞いてみますと、個々の日本の本店と海外支店との間の契約、海外支店に対する輸出という形式のものが六、七割を占めておる。そうしますと、自分の支店と約束するのですから、言ってみればどんなことでもできるわけです。そういうことで疑わなければならない条件というものはずいぶんたくさんある。しかも、この五月にそういう問題がすでに発生して、いわば警戒信号が出ておる。この問題について、事後でもいいけれども、きびしくチェックをするという、そういう姿勢が私はとられなければならぬと思う。  いまのお話では、この問題以前に、この「一般商品」というようなものがどの程度あったかよくわからぬということですけれども、そういういままでと、きわ立った特異な輸出の方式というものがあるとすれば、それはそれなりでやはり疑わなければならぬですし、それで、あれでしょうか、こういう形で入ってきたドルほんとうに前受け金であるかどうかというのは、一つにはそれがほんとうに実行されて、その品物が船積みをされる、そういうことを、十六日から、たとえば二十八日までの間のこの入った分について一つ一つ追跡していくということは技術的にできるのですか、できないのですか。
  114. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいまの追跡は、これは非常に数が多うございますので、実際問題としては非常にむずかしいことであろうと存じます。この点は通産省のほうともいろいろと話し合いをいたしましたけれども、先ほど申しましたとおり、基本的にいままでもこういうようなかっこうで出されていたものが、一種の商慣習としてあるという考え方もございますので、一がいにこういうものは全部違法であるというふうにも申せませんという点がございまして、その点が非常にむずかしいことであるわけでございます。
  115. 松井誠

    松井誠君 いや、私がお聞きをしますのは、これは全部が疑わしいとは言っておるわけではない。しかし、少なくとも疑わしい、疑わせる条件というものはずいぶんある。税関の関係がありますから、その通関の際に大蔵省はそれを一々チェックができるわけですから、だから通産省サイドでなくたって、大蔵省の段階でも、一体これに見合ったものがその後船積みをされたかどうかということは検査でもわかるかもしれませんけれども、やれるんじゃないですか。
  116. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) 実はこういうことがございまして、前受けの契約があって、それが今度はある時点でキャンセルになるという事態もございまして、それが初めから架空のものを目ざしてやっていたならば、むろんこれは為替管理法違反と申しますか、それで証拠を十分にあげれば処断できるわけでございますけれども、それがキャンセルされたということになりますと、これも一つの商慣習で、キャンセルはいかぬというわけにもまいりませんので、そのような若干いろんな問題がございました。詳細につきましては通産省のほうがあれかと思いますけれども、私の聞いております限りでは実はそういうような問題があるようでございます。
  117. 松井誠

    松井誠君 ですから、その入ってきたドルのどれだけがキャンセルになったかということを調べること自体に意味があると思うんですよ。キャンセルになった契約はやはりキャンセルという形になるかもしれませんけれども、それが一体どれだけ多くのものがキャンセルするような商慣習があるのかどうか疑わなければならぬ。ですからそれは何も通産省におんぶしなくても、大蔵省独自で私は通関というそういう関門を通るわけですからできるのじゃないかと言っておる。もしそういうことができない、大蔵省の段階でできないということになれば、もちろん輸出の認証の関係で通産省の問題になるかもしれませんけれども、何も通産省におんぶしなくてもできるじゃないか。そしてそのうちのどれだけが一体キャンセルという形で、実はまたドルがひともうけをして帰っていったかということがわかるわけでしょう。そういうきびしい追跡をやることが技術的に可能であるとすれば、やはりやるべきじゃないかということを言っている。
  118. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) この点に関しましては、通産省といたしましても、いまのようなかっこうで、あとでキャンセルになると、あるいはそうでなくて、やはり架空のものであったかどうかというようなことを追跡すべくやっておるところでございます。その結果が出ましたならばあとでまた考えたいというふうに思います。
  119. 松井誠

    松井誠君 これは一年先までの前受けですから、いまやっておってもすぐわかるわけではない。少なくとも一年の期間は見ていかなければならない。しかも、それを何も通産省におんぶしなくても、大蔵省だって為替管理法を一体くぐったのかくぐらなかったのか、そういうことは当然調べる職責もあるわけですから、通産省がこうだ、ああだということでなしに、まさに通貨価値を守ろうという通貨当局そのものがもっと真剣にやらなければならないと思うのですが。
  120. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) 確かに御指摘のとおりの点があると存じますが、何と申しましても、この点は貿易の関係でございまして、通産省のほうがこういう点については具体的な直接のあれをやっておりますので、その意味で通産省にやってもらうべきではないかというふうに考えます。
  121. 松井誠

    松井誠君 通産省にはまた日をあらためて来てもらいますけれども、しかし、為替管理というのは大蔵省の責任でしょう。そうしてそれは、大蔵省の段階でチェックすればできる仕組みになっているわけじゃないですか、だとすればやるべきじゃないですか。
  122. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) むろん大蔵省としてできる限りのことはいたすつもりでおります。
  123. 松井誠

    松井誠君 これをもっと早く言っていただけば押し問答をしなくても済んだのですが、ともかくこれを見れば、ほんとにおかしいことだらけですよ。ですから、それをやはり大蔵省としてもぜひひとつやってもらいたい。国民に対する疑惑を晴らすということが、これは政府自身が無理じゃないかと言われておるそういう問題ですからなおさらです。  たとえばここにもらった資料によりますと、これは金額を書いた分ですね、件数だけではなくて金額を書いたもので、二十七日に証明をした件数、金額を書いた検査の結果の資料をもらっているのです。これはありますね、これによりますと、銀行ですけれども、どの銀行かわかりませんが、一つの銀行は二十七日の一日で二億六千万ドル、もう一つの銀行が一億四千万ドル、こういうように膨大な、これは二十七日一日に証明した金額でしょう。
  124. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) これはいまの一億四千六百万ドルと言われましたのは、十七日から三十日までの間の金額でございます。それから二十七日に証明したものは、右のほうの欄にございます金額と件数でございます。
  125. 松井誠

    松井誠君 一億四千万ドルというのは二十七日一日じゃなくて、二十七日の一日というのは二億六千万ドルとあるほうの資料ですね。
  126. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) 二千六百万ドルでございます。D行のa店と書いてございますところに、二十七日に証明したものが二十二件で二千六百万ドルというのがございます。
  127. 松井誠

    松井誠君 二億六千万ドルじゃなくて二千六百万ドルですね。それにしてもこれはほかの銀行から比べれば格段に多いですよ。特段にこれだけが、この銀行が多いという理由がわからないのですけれども。  そこで、この間からいろいろ委員が資料の要求をしておるようですが、為替銀行なり商社なりが具体的にどれだけのドルを売ったのか、そういう具体的な商社なり為銀なりの名前をつけた資料というものはどうして出せないんですか。
  128. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) これは私的取引の関係でございまして、個々の商社なり銀行の名前のつきましたものにつきましては、やはり公にいたしますことは公務員の秘密順守義務からいたしまして適当ではないのではないかというふうに考えます。
  129. 松井誠

    松井誠君 まあ公務員の秘密順守義務というのは確かにあるんでしょうけれども、しかし、それもまさに国益のためには犠牲になってもいいんじゃないですか。そういう意味じゃ、国益のためにはそういう秘密をむしろ公開をすることのほうがいいんじゃないか、それがむしろ公務員の積極的な義務じゃないか。これはきわめて形式的な議論で、そういうことはとうてい納得させる議論じゃないですよ。これは普通の私的な企業の何か営業の秘密をあばいてわれわれがどうしようという問題じゃないわけです。先ほども申しましたように、われわれ自身の税金で一体払わなければならぬのか、そしてわれわれの政府が一体それに手をかしたのか、そういうことを調べなきゃならないのですから、当然やはりそういう資料というものは要求しなきゃできない。それが何も倒産を寸前に控えた私企業の経理を公開しろということではない。できないはずは私はないと思う。
  130. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) その点に関しましてはいろいろと検討いたしましたけれども、やはりいまのようなことで控えさしていただきたいというふうに存じております。
  131. 松井誠

    松井誠君 それじゃ、だんだん資料を出していただきたいんですが、私が一つ出してもらいたいと思いますのは、さっきも言いましたように、「一般商品」だとか、あるいは「仕向地ヨーロッパ」というような、そういうわれわれの常識では考えられないような輸出、それも何か、たとえば雑貨というようなものはそういう輸出というものも間々あるんだという話ですね。しかし、それならそれで、一体こういう「一般商品」、「仕向地複数」、こういうものは、件数は書いてありますけど金額は書いてない。雑貨ならそれほど大きな金額になるわけはないと思う。いままでの大体年間の輸出の総量、その中で、たとえば雑貨なら雑貨、そういうものがどれだけの比重を占めておるか、そういうものはおよその趨勢としてわかるわけですから、それとやっぱり私は比べてみたいと思う。  そこで、いわば八月の十五日までの間の日本の輸出における大体品目別の趨勢と、それからここに書いてあるこの「ゼネラル・マーチャンダイズ」、「仕向地複数」というようなものの金額ですね、これは二十七日に証明したもの、という資料とぴったりもし合っておるとすれば……。したがって、そういう疑いを持たなければならないそういう輸出契約の形式のものの金額と、それがその銀行ならその銀行で全体に占める割合と、そういうことは出ませんか。
  132. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) 御提出申し上げております資料は、表示してございますとおり、同じ検査をいたしましたところの結果でございまして、これはこれなりには同じものを扱っておるわけでございます。その点ではおっしゃいました件におきましてはある程度の資料が出ると思いますが、その一般的に「ゼネラル・マーチャンダイズ」というふうに書いたものが、たとえば全体の中にどれだけあるかということになりますと、それは全部につきましていまのような検査をいたしませんと出てまいりませんので、それは事務的に全く不可能であるくらいの大きなボリュームの仕事になると思います。その点では、検査をいたしました店につきましての問題につきましては、これは資料がございますから、さらに詳しくできますが、これを全体に及ぼしますということは、非常にむずかしいというふうに存じております。
  133. 松井誠

    松井誠君 そうしますと、とりあえず三種類、疑うべき形式のものの金額の総額はわかりますね。それとこちらのほう、番号を打っていないのでわかりにくいのですが、「追加提出資料」ということで、銀行がたとえばA行a店なら三十三件、これは件数は全く同じですから調査は同じわけですね。ですからそれとの比率は当然出てくる。少なくとも三十三件の中における、たとえばA行のa店なら、十件の総額は幾らかということは出てくるわけですから、比率は出てきますね。それだけは出てくるわけですね。
  134. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 関連して資料の出し方について聞いておきたいと思います。  変動相場制をとったのを大蔵省で発表したのは、ぼくの記憶に間違いなければ、たしか八月二十七日だと思うのです。午後の七時ごろじゃないですか、ニュースに入ってきたのは。そこで、二十七日にこれだけの金額のものを売っているわけですね。だから、いまのようないろいろな資料要求があるわけですが、実質的にしたのは二十八日でしょう。二十八日です。私が羽田を立ったのは八月三十日ですから、この事態承知をして、九月中に大蔵委員会をすみやかに開くような手続をとって、それを戸田委員に委嘱して、帰ってきてから戸田君からも私は報告を受けて、九月の二日に大蔵委員会が開かれて、この資料の要求はそのときに私が要求するように言っておったんですね。いま松井委員もおっしゃっておるように、これはあなた方の出されておる資料は、わずか九行ぐらいしかないものですね。だとすれば、二十七日にすでに大蔵省はそういう措置をとっておるわけですから、約五日間ぐらいありますね。出そうと思えば出るはずなんですけれども、ところが出さずしておいて、九月二十八日、二十九日に決算委員会が行なわれた。この決算委員会にこの資料を提示しておる。そしてあわてふためいて大蔵委員会のほうに、九月二十八日の日に各委員の方に配付をしておる。こういう事態がある。どうも松井委員との質疑のやりとりを聞いておっても、何か大蔵省がこの種の資料提示について隠蔽をしておるような感じがするのですが、このいきさつを松井委員の質問にあわせて答えていただきたい。
  135. 船田譲

    説明員(船田譲君) ただいま松井委員並びに吉田委員から非常な御注意をいただきましたこと、たいへん身にこたえて、大いに反省しなければならぬと思いますが、正直なところを申し上げますと、九月の二日にこの委員会で御要求がありまして、直ちに作業に入りましたが、御承知のように、九月九日、十日に日米経済合同委員会がございまして、さらに十五日、十六日、いわゆるG10会議、あるいはIMF会議等がございまして、責任者である稲村局長も海外に行っておりましたし、大臣もしばしば海外に行っておりました関係もございまして、なかなか同時に作業が進められない点もございましてたいへんおくれたわけでございます。決算委員会に出します書類と、大蔵委員会に出します書類が順序が逆になったのはけしからぬじゃないかというおしかり、ごもっともでございます。これは政務次官としての私の非常なミスでございまして、この点はこの機会に厚くおわび申し上げます。  なお、個々の銀行の名前をあかさないのはけしからぬじゃないかというおとがめもございましたが、実は為替検査官の数も限定がございまして、きわめて少数でございます。そうして、八月の十六日から二十七日までの間に起こりました件数につきましての検査は、悉皆検査ではございませんで、抽出的にやりまして、その検査をやるということによって、いわゆる御心配の向きの円投機と申しますか、ドル売りの、何と申しますか、走り過ぎを押えるというような波及効果を考えまして、抽出的にといいますか、ランダム的にやったものでございますから、したがって、たまたま検査に当たりました銀行の名前を出しますことは、そのランダムであるがゆえに、つまり言いかえますならば、悉皆調査でなかったがゆえに、そうでなくて免れて恥なしというと大げさなことになりますが、免れたということの銀行ができまして、不公平が生じてはいかぬという配慮もございます。同時に、先ほど局長が申しましたように、公務員の秘密保持の義務もございまして、実は、政務次官である私自身も、A行がどの銀行、B行がどの銀行であることはいまだもって知らないのでございます。そういう点を御理解をいただきまして、御了承いただければたいへん幸いだと思っております。
  136. 松井誠

    松井誠君 その資料提出のことについては、実はきょうで終わったつもりで私はございません。だんだんやはり政府自身が問題をはっきりさしていかざるを得ないような、そういうところへ私たちは実は追及をしていかなければならぬ義務があると思っておりますが、その点はそれにしまして、私が先ほど申し上げましたような、この件数だけでなしに、それの金額もひとつ資料としてとりあえず次回に提出をしてもらいたい。
  137. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) この検査をいたしました案件につきましての、たとえばここにA行a店の「ゼネラル・マーチャンダイズ」が六件とございますが、それが金額ではどのくらいになっているかというのは、資料を調べますれば出てまいりますからこれは御提出申し上げたいと存じます。
  138. 松井誠

    松井誠君 いままでの話から、私は、中小企業の現況に対して一体どうすべきかという、そういう問題について少しこまかいことをお伺いしたいと思うんです。
  139. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 松井さん、持ち時間が一応三時十五分までということになっておりますから……。
  140. 松井誠

    松井誠君 それではどうも時間がございませんから、中途はんぱにしてもしかたがありませんので、これは九月の二十三日に中小企業対策として出された融資や税制というよりも、むしろ信用補完の問題を中心にしていろいろお伺いをしたいと思っておったのですが、それは後日に譲ります。  私はただ一つだけお聞きしたい。それは、今度の課徴金の問題を含めて、変動相場制ということで二重のショックを受けた典型的な町として燕市がある。この燕市では、金属洋食器に携わるものが大部分でありますけれども、ともかく約二千四百くらいの小さな企業がたくさんある。その中で、いわゆる研摩業という下請企業がそれだけで千四百余りある。これは従業員が一人ないし三人という全く零細規模そのもの、ですから、この中小企業対策というのは、ともすれば特別の融資のワクというようなものは、いわゆる中小企業の上のほうに結局はいってしまって、ほんとうの零細な下請企業というところは素通りをしてしまう、そういう不満が前々からあるわけです。この下請企業というのは、親企業のほうから、ニクソン声明があった十六日の二、三日あとには、おまえのところの下請の工賃はもう一割下げろ、八%下げろというように、一方的に言ってくるわけですね。そういうことでありますから、どうしても下請企業に最終的なしわ寄せがいかないようにするためには、市で何とかしなければならぬ。  私が質問をしたいのは、実は地方財政の問題なんです。地方財政の問題というか、地方の財政ともからまる問題ですが、先ほど大蔵大臣にお伺いしようと思いましたが、時間がなくてできなかったのですが、今度の減収というのは地方に大きく響いてきている。そういう中で、今度は地方は地方としていろいろな手当てをしなければならぬ。そういうために、市なら市の財政というものが非常に窮迫をしてくるわけですね。で、小口特別保険だとか、何とか担保保険だとか、いろいろなものがありますけれども、それのところへさえも手が届かない。保険公庫で書いてあるようなああいう制限があったのでは、特別小口保険の該当にさえもならない零細な企業、そういう零細な企業を何とか救おうとすれば、市が独自な形で財政の支出をしてやる以外にない。そういうものをもっと何とかならないかという切実な希望がある。あるいは信用保証協会に対する保険公庫の融資なり、あるいは信用保証協会に対する補助がたった一億円なんということでなしに、もっとこの信用保証協会の機能というものを拡大をする、そのことがもう一つの柱にならなければならない。そうしないと、いつまでたってもこの下請というのは、いつでも融資のワクというのは素通りをしていってしまう、そういう問題があるわけです。そのためには、その地方自治体に対して何がしかの金を、できれば無利子の、そうでなければ非常に低利なものを貸してもらえないかとか、あるいはその保険公庫の融資なり、保険公庫の信用保証協会に対する補助なりというものをもっと大幅に、一億円などということでなしに、大幅にふやせないか、こういう要望です。どなたが御答弁になってもけっこうですけれども……。
  141. 近藤道生

    説明員(近藤道生君) 実は燕の関係につきましては、ただいま松井委員の御指摘になりましたとおりの実情を、現地の下請の方々が上京をして来られた際に私も十分伺ったわけでございます。まあ、先般の閣議決定によりまして、特別小口保険の別ワクが八十万円設けられた。あるいは保険料率を引き下げて通常の料率の三分の二にいたします結果、たとえば特別小口保険につきましては〇・三六五が〇・二一九になることとなります。それから普通保険のてん補率が八〇%に引き上げられましたこと等、そういう実情に対する一つの施策であったかと存じますが、ただいまの一億円の信用保証協会に対する補助ではまだ足りないというお話でございます。これにつきましては、まだ十分走り出しておりませんので、走り出しました実情をよく見ました上で検討をいたしたいと存じますが、一方、保険準備基金のほうは、中小企業信用保険公庫に対しまして二十億円を出資いたしております。それらの手を通じまして、特にただいま御指摘の下請の問題につきましては、非常に深刻な問題がいろいろあろうかと存じますが、今後とも研究努力いたしてまいりたいと存じております。
  142. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は、最初に主計局次長に、沖繩の対米資産の買い取りにつきまして若干御質問したいと思います。詳しいことは沖繩臨時国会が始まってから質問したいと思いますけれども、現在いろいろ言われている問題について若干質問したいと思います。  まず、国の歳出におきまして、項目別に積算根拠が非常に不明確な場合には、予算編成あるいは予算の執行にあたって、その理由とか、金額とか、積算の基礎なんかを明らかにした調書の提出を、財政当局が、各当該省庁に求めるということはできないものかどうか。これをまずお尋ねします。
  143. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 一般的な話といたしまして、それぞれの予算の要求項目につきまして必要な資料は、当然、各省各庁に要求することにいたしておりますので、それに基づきまして、予算の査定というものは行なわれているわけでございます。
  144. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、一歩進めまして、財政当局が要求した場合にも、各省庁から積算根拠が不明確な資料が出てきた場合、それでも財政支出を認める場合もあり得るものかどうか。この点はいかがですか。
  145. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 非常に広範かつ一般的な御質問でございまして、たとえば、国の政策を決定いたします場合に、各省各庁といえども、必ずしも決定的な見通しを持ち得ない場合もいろいろございます。たとえば、社会保険給付一つをとりましても、明年度における見込みが確実につかめるかということになりますと、これはもう一種の予測でございますから、絶対に確実なものということはなかなかむずかしいということが考えられるわけでございまして、そういった場合におきまして、お互いにできるだけの努力をいたして、なおかつ絶対に確実なものでないというようなものにつきましても、国民経済的な要請、あるいは福祉上の要請等がございますれば、予算編成等をいたすことは当然あろうかと思います。
  146. 多田省吾

    ○多田省吾君 そういう社会保険のような場合は納得できますけれども、いま問題にしようとしているいわゆる対米資産の買い取りの問題につきまして、今度の沖繩国会での重要問題の一つが、対米資産の買い取りの問題だと思いますが、すでに三億二千万ドル財政支出が問題になっております。ところが、返還協定では、一切明記されていないわけです。政府は、資産の引き継ぎ分として一億七千五百万ドル、軍労務者退職金の負担として七千五百万ドル、また核撤去費その他として七千万ドル、このように一応説明しているわけです。このようにはっきりしていないのに、どのような理由で、このような金額に財政当局が合意したのかどうか。また、米資産の価値評価にしましても、核撤去費は実際は五千万ドル程度だ、このようにも一部で言われておりますが、何ら積算根拠が明らかにされておりません。このように、財政当局はあいまいな積算根拠に対して、どのように理解、評価しているか。お考えを聞きたいと思います。
  147. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) ただいま御指摘の三億二千万ドルの問題につきましては、予算といたしましては、来年度以降の予算の問題でございまして、それ以前にもちろん返還協定に関連した大きな問題があることは存じております。したがいまして、その内容につきましては、当然それぞれの中身はあるということでございまして、それぞれにつきましては沖繩国会において御議論されることになろうかと思います。
  148. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、私は最初に、これは詳しいことは沖繩国会で質問いたしますがという前提で質問しておるわけです。先ほどから、積算根拠が明らかでないのに、社会保険等の問題は納得しましたけれども、こういったあいまいなことで、財政当局はこれを認可するのかどうか。その辺の根本的なお考えを聞きたいと、こう言っているわけです。
  149. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 最初に申し上げましたように 一般的な議論として、あいまいである場合にどうするかという処理の問題と、本件についての、具体的にそれがあいまいであるという前提のもとにおける議論とは別であると考えておりまして、三億二千万ドルの中身につきましては、当然沖繩国会において内容が明らかにされることになるであろうと申し上げているわけでございます。
  150. 多田省吾

    ○多田省吾君 そうしたら、これは仮定の問題になりますけれども、その沖繩国会において三億二千万ドルの分がその積算根拠がはなはだ不明確なまま出てきた場合でも、このような、三項目のような内容だけで財政当局はそれを認可すると、了承すると、そういうお考えですか。
  151. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 仮定に基づく御質問でございますから、私どもは、あくまでも、内容が明らかにされ得るものであり、かつされるものであると考えております。
  152. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、内容が明らかにされるものであり、またされなければならないというお答えですが、もしこれ以上の明確な答えがなされなかった場合はどうなりますか。
  153. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) あくまでも、先ほどから申し上げているとおりでございます。
  154. 多田省吾

    ○多田省吾君 じゃ、別の観点からお尋ねしますけれども、いま、三億二千万ドルの中に、アメリカ側が見舞い金として日本に支払うとされている四百万ドル相当が含まれているという疑惑もあります。それからもう一つは、返還協定の支払いとは別ワクに、施政権返還に伴いまして、米軍施設改良費の名目で今年度から六千五百万ドルを円払いするということで日米両国が合意したため、実際の対米支払い額は三億八千五百万ドルにのぼるではないかと、このようにも言われております。このようなことは協定外支出ということになりますけれども、このようなことは、主計当局で聞いているのですか。あるいは、このような支出がもしありとすれば、それを認めるつもりなのかどうか。このくらいは、仮定の問題だからといって、現実にそういう問題が云々されている、また事実疑惑の中にある問題ですから、それははっきりお答え願いたい。
  155. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 率直に申し上げまして、私いま手元に資料を持っておりませんので、その中身についていまここではっきりと申し上げるわけにはまいらぬと思います。
  156. 多田省吾

    ○多田省吾君 手元に資料がないといいましてもね、こちらは質問をきちっとしているのだしね、そういうことは全然聞いていないのですか。
  157. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 質問通告の内容、実は伺っておりませんでして、ほかの問題についての質問は前提としていろいろ勉強してまいりましたけれども、ただいまその話は初めて伺うわけでございます。
  158. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあこの問題はまたあとで聞きますけれども、先ほども大蔵大臣に質問したのですが、沖繩問題にからんでもう一つこの問題を質問しますが、この前九月二日の大蔵委員会におきましても、日銀当局は、沖繩に為替管理の機構がないのでどうしても投機が行なわれる可能性があるから、円・ドル交換は無理であるというような答弁をしておりましたが、復帰前に沖繩に為替管理の機構をつくることは物理的に理論的に、またこれは何も政治的な判断でやるとかやらないとかという問題を離れて、できないのかどうか。やろうと思えば私たちはできると思いますけれども、それはどうなのか。
  159. 前田多良夫

    説明員前田多良夫君) ただいまのは琉球政府のほうの実は問題でございまして、これは施政権のもとにある現状におきましては、私たちの意思では、一存ではできない問題であろう、こういうふうに考えます。
  160. 多田省吾

    ○多田省吾君 ですから、私はそれは政治的な判断ですから、それをやるとかやらないとか、そういう問題じゃなくて、物理的にできるものかどうか、その点だけをお尋ねしておる。
  161. 前田多良夫

    説明員前田多良夫君) これは政治的な問題になると同時に、やはり法律的に見ましても施政権が違う別の国の問題ということでございまして、やはりこれは私たちの一存ではできない問題ではないか、法的に見てそういうふうに考えられるわけでございます。
  162. 多田省吾

    ○多田省吾君 そういう法的な問題は、山中長官からもやりたいと、はっきり政府大臣が答弁されているのだし、政治的な判断がつけばできないということはないと思う、その問題は。ですから、私はそういう政治的な判断を離れて、ほんとうにいま現実的に、この前の質問で、為替管理機構がないからどうのこうのと日銀総裁が言っておりましたから、物理的にそういうものは、政治的な判断を別にして、つくろうと思えばつくれるものかどうか、その点を質問しておる。
  163. 前田多良夫

    説明員前田多良夫君) そういう問題を抜きにしてどうかというお話でございますけれども、これはある日ある朝突然にでき上がるということは、これはほとんど考えられません。したがいまして、相当の準備期間も必要でございますし、そういう為替管理をしくということを公表した段階で、すでに投機資金の流れというものはもう考えられるわけでございまして、しかも先ほど申しましたように、これは米側の了解も必要になる、こういうことでございますので、そういう実行上の観点からいたしましても、非常にこれは困難が伴うものである、こういうふうに考えられるわけでございます。
  164. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあそれは非常に対外的にも微妙な問題ですが、私は突っ込んで聞こうとは思いませんけれども、もうすでに琉球政府あるいは立法院自体も、そういう理由で円・ドル交換ができないのならば、早く復帰前においても為替管理機構を設けてもらいたいという強い要望も実はあるわけです。私は、この為替管理機構がないから、円・ドル交換に投機が伴う云々ということを一つの隠れみのにして、実際沖繩県民の要望が非常に強いにもかかわらずなかなかやろうとしない、こういう点ば非常に私は遺憾だと、このように思うのです。ですから、その問題をちょっと質問したわけでございますけれども、私はあくまでも先ほど大臣に質問したように、今回の措置は一応の前進ではありますけれども、まだ根本的な解決にはなっていない。そういう点から、為替管理機構をすぐさましいても、その時点で、すでに円・ドル交換の具体的な移行ということにはなると思いますけれども、まあ私は、技術的にできるものだとこのように考えますので、それを強く要望しているわけです。実際、大臣がいないのでそういう判断の問題については、私は聞こうとは思いませんけれども、現実に今回の措置によっても、まだまだ救われない面がある。たとえば、十日以降において復帰までに新たに得た現金等についての問題、あるいは先ほど言ったように、法人や企業には何も救済の手が伸べられていないという問題、そういった面で不満があり、この解決には、いまの措置がなってないということを率直に認めますかどうか。
  165. 前田多良夫

    説明員前田多良夫君) 本件は、琉球政府の側とも十分に密接な連絡をとりながら処理した問題であるということをまず冒頭に申し上げます。  それから、ただいまの十日以降の問題につきましては、これは十月九日に、あたかも通貨の交換が行なわれたと同じような、それに近い措置というものをとるということを念頭に置いてとった措置でございますので、これはその時点における資産、すなわち純資産というものを対象にするということで、これは当然のことであろうと思います。  それから法人につきましては——これは一つには、この措置趣旨が、長年にわたりまして沖繩県民の方々に御苦労かけましたという、そういう立場からの給付金の支給と、こういうことでございまして、そういう観点から、法人を除いておりますが、また実際問題といたしまして、法人の場合には、大部分がこの金融資産の面について見る限り、負債超過が大部分でございまして、実際上こういう措置から除外されたことによって特別な不利益は受けないものであると、こういうふうに考えておるわけでございます。
  166. 多田省吾

    ○多田省吾君 私の最初の質問にはっきりお答えになっていないわけです。  九日現在においてあたかも円・ドル交換をしたと同じような効果があると、それは私も認めますよ。しかしながら、円・ドル交換の一ドル対三百六十円の交換が九日に行なわれたと仮定しますと、その間に、十日以降の問題について相当なズレがあるわけです。というのは、やはり労働組合あるいは勤労者の方々が主張しているように、十日以降において働いたドルに対しては、新たに得た分に対しては、やはり差損の救済が認められないわけでございます。だから、勤労意欲をなくすとか、そういういろんな問題があるわけです。ですから、それでは根本的な解決になっていないということで、きのうだって立法院の星議長をはじめ多くの人が陳情に来ているじゃありませんか。一応今度の措置は了とするも、一歩前進とするも、なお根本的な解決になっていないから、なるべく円・ドル交換を早くやっていただきたいという要望が県民に非常に強いわけです。ですから、私はその十日以降の、そして復帰までに新たに得た現金については、やはり円・ドル交換を実際やったと同じ姿にはなっていないじゃないかということを認めますかということを言っているわけです。どうですか。
  167. 前田多良夫

    説明員前田多良夫君) 復帰の時点で三百六十円で交換できるというような、かりにそういう措置があれば、これは非常に、これにこしたことはないと思いますけれども、そういうことはもう現在におきましてはできない、そういう前提をとっているわけであります。そのできない理由と申しますのは、もしそういうことをやるということを申しますれば、それはもうたくさんの投機ドルが沖繩目がけて集中する。これはもう火を見るよりも明らかなことであります。それで、なるべくそういう投機が起こらないうちに、できるだけ早く現在の沖繩県の方々の手持ちのドルというものを確認しておこうということで、スタートしたわけでございますが、ほんとうを言えば、もっと早くやるべき、結論が出てもっと早く、実施すれば、もっと早目に措置がとれればよかったかもしれませんけれども、ちょうどたまたま十月九日という時点を期して、そういう措置をとることになったわけです。  かりに、おっしゃるように、また今後のドルについても、ふえた分は見ましょうと、あるいは減った分は差し引きますといったような、そういう調整を行なうというようなことを言いますれば、これはまた実際問題として多量の投機ドルというものがまた今後沖繩に流れてくると、こういうこともまたこれは非常にはっきりしているところでございます。したがいまして、理論的に見ましても、また実際上、実行上の問題を加味いたしました場合にはなおさらのこと、今後に生ずるところのドルの移動というようなものについて、これを調整するということは、もう非常に適当でないと、こういうふうに考える次第でございます。
  168. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ私の質問したことに直接にお答えになっていませんけれども、当然九日に円・ドル交換が実際に行なわれた。そういう姿よりも、今回の措置というものは、一歩後退の措置なわけです。ですから、まだまだ県民には不満が強いわけです。ですから私は、県民の要望というものは——いまからでもおそくない、今回の措置措置としてけっこうだから、円・ドル交換を一日も早く行なってもらいたいという希望がまた強いんだということをいろいろな理由をあげて申し上げている。それはあなただって率直にその差というものは認めるに違いない。この問題はこれで置きます。  次に、中小企業救済のために九月の二十三日に閣議決定した問題があります。で、九月二十五日から実施されている中小企業における輸出手形の買い取り、あるいは外為銀行の三億ドルに及ぶ外貨預託制度というもの、この利用の現状はどうなのか。
  169. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) 九月二十五日に実施をいたしました中小企業向けの輸出手形買い取りを促進いたしますための外貨預託及び日銀の手形買い取り制度、これは最近までのところ、外貨預託のほうにつきまして具体的に件数としてあらわれておりますものはまだ非常にわずかでございます。  それから日銀の買い取りのほうにつきましては、あるいは日銀から御答弁していただいたほうがよろしいかと思いますが、いままでのところ大きな実績は出ておりません。
  170. 多田省吾

    ○多田省吾君 やっぱり中小企業の手形買い取りが現在まだ進んでないという現況において、一つの理由として、中小企業の多くは直接貿易よりも、大手商社を通ずる分が多いという面があると思うんですが、これはその見分けというものをどうしてつけるのか。どういう証明書によって区分けするのか。
  171. 藤本巖三

    参考人(藤本巖三君) 日本銀行の中小企業輸出の手形買い取り制度につきまして、見分け方でございますが、これは中小企業と申しましても、中小企業基本法に定められております中小企業ということで、資本金、従業員の数、そういったようなものを前提にして、そのまま利用させていただいておるわけでございます。  それから、これが実際に輸出をされますそういう事実を、また為替銀行がその手形を買い取るに当たりまして、証明書を持ってまいりまして、為替銀行でそれを確認をするというかっこうにいたしております。
  172. 多田省吾

    ○多田省吾君 それでは、中小企業の範囲というものは、法律によった中小企業の範囲に限って対象としておるということでございますが、それが中小企業の救済策として手形買い取りを前面に押し立ててやっておりますけれども、実際運用があまり思わしくない、先ほど申しましたように、中小企業には必ず背後に大企業というものがついておるわけです。その大企業が中小企業をパイプで吸い上げてしまって、中小企業対策に名をかりた為替管理の抜け穴になるおそれがないものかどうか、これはいかがですか。
  173. 藤本巖三

    参考人(藤本巖三君) ただいまのお尋ねの点でございますが、これは私どもの窓口でも、為替銀行の窓口でも確認をしっかり励行をいたしておりますので、そういったおそれはないと私は考えます。  それから、一言つけ加えさせていただきたいと思いますが、先ほど国際金融局長からお答えのように、実績としてそれほど大きな金額になっていないわけでございますけれども、それは必ずしも手続きの問題ではなくて、私どもが実際銀行の為替担当者から聞いておりますところによりますと、これは中小企業といわず、大企業のものといわず、輸出手形の買い取りは最近は順便に行なわれておるように伺っておりますので、そういう意味で、必ずしもこの制度を利用しなくても、輸出手形の買い取りは行なわれておるものだと、私どもは理解いたしております。
  174. 多田省吾

    ○多田省吾君 主計局次長にお尋ねしたいのですが、さっき大臣お尋ねしたことで御答弁がなかったわけでございますけれども、今回の所得減税におきまして、千六百五十億円の減税ということでございますけれども、低所得者層に対する恩典というものが非常に少ない。  それからもう一つは、ここでやはり景気対策を考える上で、所得減税ももちろん必要でありますけれども、そのほかに、いわゆる公共投資という面でも、たとえば、道路とかいう問題だけじゃなしに、病院やあるいは老朽校舎の建てかえとか、こういったものも必要ではないか。あるいは老齢福祉年金が二千円、また十一月一日から二千三百円という現況において、このような所得減税よりも、こういった年金を増額する、老齢福祉年金等を増額することによって、それが購買力を増加させる上においては、むしろ所得減税よりも効果があるのじゃないか。こういう対策をなぜ立てないのかという強い意見があるわけです。この問題に対して、今回の措置、あるいは来年度の予算編成上の措置について次長はどのようにお考えになっているか。
  175. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 今回の予算補正にあたりまして、景気振興の観点から減税なり公共投資の追加が行なわれたわけでございますが、まず今回の公共事業の追加にあたりましては、ただいま先生御指摘のように、一般公共事業のみでなく、社会教育施設とか、あるいは国公立の文教施設とか、あるいは国立病院等の整備とか、社会福祉施設等の整備に相当額を配分いたしておりまして、その意味では先生の御要望にはおこたえ申し上げておるものと思います。  さらに、それでは政策の問題といたしまして、単に所得税減税でなしに、さらにそれ以下の低所得者に対する配慮と申しますか、福祉政策というものを進めるべきではないかという御意見もあることは、私どもも承っております。私どもといたしましては、こういう問題につきましては、七〇年代の財政の重点が社会資本の充実と社会福祉の促進にあることを念頭に置きまして、来年度以降重点的に検討を進めてまいりたいと考えている次第でございます。
  176. 多田省吾

    ○多田省吾君 ちょっとはっきりしないのですが、次に、この前あるマスコミによって、大型減税の財源にギャンブル税新設、五%のギャンブル税新設をはかりたいというような大蔵省の意向があるというようなことが報道されたのですが、そういったことは現在考えておられるのですか。
  177. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) まだ新聞に出ましたように具体的にわれわれが考えておるわけではございません。しかし、先ほど来も当委員会で議論がございましたように、いろいろ私どもといたしましても、景気浮揚という面で減税をやっていただく一方、あるいは国債発行していただく一方、景気とあまり関係のないところで財源を調達できる道はないかということを検討しておることは事実でございます。どうも最近ギャンブル的なものに対する売り上げというのが急速に伸びておりますので、それについて負担を求めるということも可能ではないかというようなところで研究はいたしておりますけれども、まだ具体的な作業に入っているわけではございません。
  178. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほども質問がございましたけれども、九月二日に、輸出前受け金問題で質問がありました。私も一点だけ質問しておきますが、私も、二十七日に二十六億ドルもいわゆるドル買いが日銀によって行なわれたということ自体非常にふしぎに思うわけです。また、決算委員会でも指摘されましたように、日銀から各為替銀行に出向いて、二十六日の晩から二十七日の午前にかけていわゆる説明が行なわれたと、このような問題もございます。これはだれしも、李下に冠を整さずという精神からすればおかしいじゃないかと、こういう非常な疑惑がございます。  私関西にこの前視察に参りましたときに、輸出の取り消しが九月の初旬に非常に多いということも関西地域で聞いたわけですね。こういったことで、そういうインチキな契約書が取りかわされたのじゃないかという疑惑も非常に強くあるわけです。特に、先ほども質問がありましたように、「一般商品」とか、あるいは国名を記してない契約書なんていうものは、私はこれはもうどうしても納得できない。こういった問題で、この輸出取り消しの問題なんかは国際金融局としてどのように押えておられるのか。また考えていらっしゃるのか。
  179. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいまの御質問でございますが、九月の初めに特にキャンセルが多かったかどうか私たちのほうで特に把握をいたしておりませんけれども、一般問題として申し上げますと、先ほども申し上げましたように輸出契約がキャンセルになるということはときどきあることでございますので、そういう一般の意味のキャンセルか、特に先ほど申しましたような、何か投機にこういう道を使ったということによるキャンセルであるのか、まあいわば架空のと申しますか、こういう為替管理法に照らして処断さるべきものであるのか、この点につきましては先ほども申しましたとおりいろいろとむずかしい問題がございますが、い、ずれにいたしましても、輸出がキャンセルになりますと、そういたしますと受け取った代金を逆に送金をいたさなければならないことになりますが、この点の送金につきましては、通産大臣の許可が要ることになっておりますので、そういう点を通じまして十分にチェックすることができるシステムになっております。
  180. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は八月上旬、下旬、また九月上旬、下旬に分けてどのような輸出契約の取り消しがあったか、通産当局とも御相談の上ひとつ資料を出していただきたいと、このように思いますが、ひとつ委員長お願いいたします。
  181. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) むろん通産省のほうに頼みませんとできない問題でございますので、通産省のほうとも相談いたしましてできるだけ御要望に沿うようにいたしたいと存じます。
  182. 多田省吾

    ○多田省吾君 時間ですから最後に一問だけ質問しますが、今度も国債発行が大幅に行なわれるわけでございます。また来年度におきましても相当な予想が立てられている。もちろん若干のメリットもありましょうけれども、デメリットも大きいと言わなければなりません。で、特にこれは日銀引き受けをしなくても市中消化ができるものと、ことしから来年にかけての国債発行についてお考えなのかどうか、これをはっきり、どういう見通しで国債発行を計画されているかお尋ねしたいのであります。
  183. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 本年度補正におきまして七千九百億の国債発行を、増発を予定いたしておりますが、これにつきましては、全額日銀引き受けによることなく、市中と資金運用部によって引き受けられることが可能であるという見通しを立てております。
  184. 多田省吾

    ○多田省吾君 まあ、来年度のことを聞きますとまたわからないとお答えでしょうけれども、来年度も相当な予想を立てられているようでございますが、やはりことしと同じように日銀引き受けにはしないで、市中消化ができるという見通しでやられようとしているのですか。
  185. 平井廸郎

    説明員平井廸郎君) 実は来年度の予算につきましては経済見通し等もまだ立っておりません段階でございますので、どのような財政規模になり、かつその内容はどのようなものになるかというのはなかなか申し上げにくいわけでございますが、確かに先生御指摘のように、来年度も相当程度国債発行に依存せざるを得ないであろうとは考えております。ただし、その場合におきましても、あくまで市中消化を原則として進めてまいりたいという気持ちには変わりはございません。
  186. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 先ほど所得減税のことでお伺いしたのですが、話半分のような気がいたします。この機会に財政当局の御意見、御判断を聞いておきたいと思いますので、続けた形で御質問いたします。  その前に、ひとつこれは国際金融局に伺いたいと思うのですが、変動相場制に移行しまして現在は九%前後の変動幅になっていると聞きますけれども、なおかつ外貨準備高がふえ続けているということはどう判断しておるんでしょうか。
  187. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) これは先ほども大臣から御答弁がございましたとおり、非常に微妙な問題でございますが、この市場に介入をいたしますかいなか、その場合のまあ考え方と申しますかそういうものにつきましては、先ほども大臣から御答弁ございましたとおり、変動為替相場制と申しましても、すべてフリーにいたしまして全く野放しにしておくということではございませんで、これはまあ各国ともそうでございますが、やはりある程度のコントロールをしながら、実情に応じてやっていくということでございまして、その意味におきまして市場の情勢からいたしまして、ほうっておけば非常に相場が、ドルが下がるというような事態の際には、やはり介入をいたさざるを得ないことになりますので、そういう意味のことで、やはり若干ずつ市場の状況によりまして介入をせざるを得なかったということでドルがふえておるということでございます。
  188. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そうしますと、介入の程度は別としまして、現在外貨準備高がふえている大きな理由は、輸出が実勢として伸び続けていると判断していいわけですか。
  189. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) その点につきましては、なかなか判断がむずかしい点でございますけれども、あるいは確かにそういう要素があるかとも存ぜられます。これは輸出のみならず、輸入のほうにもございまして、国内の景気が悪いということが、輸入の進みを押えているわけでございますから、輸出だけではなくして、輸出入両面にそういう要素はあるかと存じます。したがいまして、先ほど申しましたとおり、今後の景気振興策その他が効果をあらわしてまいりますれば、その点は様相が変わってくるということも考えられると存じますが、当面の問題として申しますと、ただいま申し上げましたようなことでございます。
  190. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 それでは本題に戻りまして伺いたいと思いますが、税調答申の中を見ますと、「積極的な景気振興策を早急に実施することが必要」だということで、今回の総ワクについては、「当面の歳出、歳入の状況や国債発行規模等から考えて、」千六百五十億円程度減税を実施する。そういうことで、千六百五十億円というのは景気振興という観点から、まず総ワクとしてきめられてきたということだと思います。  そこでわからないのは、実は先ほどの疑問もそうなんですけれども、「当面の景気浮揚対策として応急的なものであるとしても、」「昭和四十七年度以降の所得税制のあり方をも総合的に勘案しつつ検討する必要がある」云々、その後段のくだりがなぜここで入ってこなければいけないんだろうか。そこで、いただきました資料から見ますと、「所得税納税者の階層別分布」ということを、これは人の頭割りで考えますと、百万円以下が六六・九、これは四十四年実績です。それから二百万円までが二七・二、三百万円までが三・五、五百万円までが一・七、五百万円をこえる者が〇・六、こういう数字になるわけです。新聞等でうかがう限りでは、税率の緩和というのは、中堅層といいますか、中堅層といっても、年収二百万円なり、三百万円以上について緩和をしたということなんですが、人の頭数だけで、かりに三百万円以上ということにしますと、七%欠けるぐらいの数字になります。そこで、どう減税をしたって、金を出した結果として、それだけ購買力がついたということと同じじゃないかという理屈は、一面にあるかもしれませんけれども、景気浮揚という観点から見て、特にこの層にしぼった意味というのはあるのかないのか。もっと端的に伺いますと、所得控除を引き上げた八百三十五億円は、これは景気浮揚見合いとして、まずそれを第一の理由として考え、税率緩和の八百十五億円については、これは昭和四十七年度以降のことがあるので手直しということで考えたのか、直接景気浮揚ということが第一の発想動機ではない、こう考えてよろしいのかどうかなんですけれども
  191. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 今回の所得税の改正をまず取り上げましたのは、ここに書いてございますように、景気浮揚対策でございます。一体それが、何が特に景気浮揚と言えるかということは、おっしゃいますように、所得税の納税者の中でも、低いほうに多額を与えるということ、これもおそらく景気浮揚の道としては一つ考えられると思いますけれども、今回一番景気浮揚として考えられましたことは、早期に減税を行なうということでございます。実は、昭和三十年代におきましても、年度内減税と称せられて、三十六年の一月から三月までの、たとえば月給について、早くその所得税を軽減するという措置をとった例はございますけれども、今回のように、いわゆる年内減税——考え方といたしましては、ことしの四月にさらに追加的な減税をさかのぼって行なわれた減税はないわけでございます。千六百五十億円という減税額は、その大部分をこの年末ないしは事業者の確定申告時期に与えられるということで、さかのぼってこれだけの多額の減税を行なったということ自体が、まさに景気浮揚対策として今回の所得税制の改正というものを意識したあらわれだと私は思っております。  その際に、先ほど御質問のように、そのあと、後段に書いてあるのは一体何だというお話でございますけれども、それでは全く臨時的な措置として年内減税ということを考えます場合には、あるいはおっしゃいますように、低い所得者だけにききますようにやるという方法もございます。あるいはまた、こまかいいろいろ税率の緩和とか、控除の引き上げというようなものをこの際は考えないで、たとえば、所得税額の一律カットというものを考えまして、そのものを五%でも一割でもこの際は軽減する方法も、それは簡単には考えられるわけでございますが、しかし、所得税制をいやしくも改正いたします場合には、今回限りはっきりの減税としては考えられないわけでございます。今回減税をしまして、あるいは四十七年なり四十八年に、それと違って、それを取り戻すというようなことを予定いたしますならば、今回の措置を全く臨時応急的なものとして考えてもよろしゅうございましょうけれども、おそらく私どもとしましては、過去何年来所得税制を改正していただき、将来こういう方向で持ってまいりたいという所得税制を頭に置かない限りにおいては、臨時応急と申しましても、そのとき限りの減税というものはなかなかむずかしいわけでございます。現在までの所得税制が、どういうところに問題があって、今後漸次それをどういうふうに持ってまいるのであるかということもあわせて考えませんと、臨時応急と申しましても、なかなかむずかしいことだと思います。ある景気浮揚策が終わりましたあとで増税ということを予定すれば、それは簡単でございましょうけれども、やはり四十七年度以降の所得税制のあり方をも考えましてのこの減税であれば、将来四十七年度以降ものみ込んでいけるという財源の計算もあり、あるいはものの考え方もあり得るということで、今回の所得税制の改正を行なった。こういう意味におきまして、この後段が税制調査会の答申にも出ておるものと思います。
  192. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 その後段の配慮について、これは私必要なことだと思います。ただ、総ワクとして千六百五十億円ときまった場合の優先度ということになりますと、これはいろいろの論議があっていいと思います。  そこで、景気浮揚対策というと何が一番中心になるのか。これは実はいろいろな議論があるのでしょうが、非常に大ざっぱに言わせていただきますと、設備が過剰ぎみである今日のところでは、やはり国内市場の購買力というものがもっと豊かに育ってくれないと、景気浮揚にもならないし、輸出と輸入の見合いにおける日本の経済のこれからの姿というものは私はない気がします。  そこで、じゃそれはどういうことかと申しますと、非常に大、ざっばに言えば、自分で製品をつくっている人が買えるような経済だと思うのです。自分は一生懸命つくっているけれども、それは全部外国向けだとか、これは給料が高い人だというようなことではなくて、大まかな言い方ですけれども、そういう状態を日本の中でつくり出していくことが、実はこれからの新しい国際通貨秩序を求めていく中での日本の国内市場、国内経済のあり方ではないかという気がいたします。  そういう点で、景気浮揚ということを考えますと、所得が高い、安いというと語弊がありますけれども、なるべく数多くの人に、しかも、年内減税という異例の処置をやって、景気浮揚に真剣に取り組んでいくのだということがわかるようなやり方じゃないと、せっかくの金が死んでしまう。  そこで今回の、たとえば、年末調整で返ってくるよという話にしても、たとえば、年収百万、夫婦子供二人ということで考えれば、年末調整は二千七百四十円くらいだそうです。二百万なら八千七百円とか、三百万なら二万八千二百五十八円。まあそう考えると、先ほど申し上げたような、二百万、三百万以上という人の数の占める比率というものは非常に低いわけです。そうすると、単に税の公平論ということからだけではなくて、それももちろん含めてですけれども、いまの非常事態において年内減税をするというねらいから考えれば、千六百五十億円まるまる、より多くの人に渡るような減税がとれなかったのか。また、それでいろいろあっちこっちに不満が出るのだったら、それはゆっくり落ちついてからほんとうは直していってもいいんだろうと思います。その意味で、後段の必要性は否定はいたしませんけれどもほんとうにそれが優先度第一なのかというと、たいへん疑問に思うのです。  そこで、続けて先ほど話が出た住民税のことについて若干数字を含めて伺いたいと思うのですが、所得税と住民税について、課税最低限を合わせろという議論は、これまで何べんもございましたが、所得税、住民税の性格論があってなかなか決着がつかないところなんですが、その辺の話は一応抜きにして、所得税はかからないけれども、住民税がかかる、その部分の住民税徴収額と徴収費用とのかね合いというものは、どんなかね合いになっているのか、わかれば伺いたいと思います。
  193. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 所得税を納めていない人で、住民税だけを納めておる人というのは、およその人の数なり金額はわかります。   〔委員長退席、理事柴田栄君着席〕  それで、現在均等割りと所得割りというのが住民税にあるわけでございますけれども、均等割りの納税者が、ちょっと古い資料でございますけれども、約三千四百万人くらいございます。それに対応しましては、やはり所得税の納税者というものは約三千万人くらいでございますから、その差というのは所得税を納めていなくて均等割りだけを納めておる人たちの数になると思います。  それから、所得割りでございまして、所得がある人につきまして、所得税を納めていなくて、そうして住民税の所得割りを納めておる人というのは、約五百八十万人くらいございます。  それで、その人たちが一体どれくらいの住民税を納めておるのかと申しますと、先ほどの所得税を納めないで均等割りだけを納めておる人——推計を加えるのでございますけれども、四十五年度で約六十四億円ぐらいというのが推計されます。  それから、所得税を納めていなくて所得割りだけを納めておる人は一体どれくらい納めておるかといいますと、約二百三十億円ぐらい所得割りを納めておるという計算になります。  それにつきまして、一体府県なり市町村でどれくらいの徴税費がかかっておるかということは、それだけの抽出は実はむずかしゅうございまして、地方税全体を通じまして一体どれくらいの徴税費になっておるかということでございますが、四十四年度の数字で申しまして、国税は百円当たり約一円五十銭くらいの徴税費がかかっておるということでございますが、地方税で申しますと、それが約三円九十銭くらいになっております。これはあながち地方税のほうがべらぼうに高いというあれだけではございませんで、これは申し上げるまでもなくいろいろな税目の構成がございますから、そういう差が出ておるということでございます。
  194. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そこで六十四億、二百三十億足すと二百九十四億という数字になります。で、問題は、この二百九十四億、単純に計算ごとだけで言われては困るという意見は、あるいは自治省サイドにあるかもしれませんが、実際に納めている実感から言いますと、今回の景気浮揚という問題も含めて、確かにこれは真剣な取り組みで云々ということが、心理的なアナウンスメント・エフェクトも含めて広がっていくんだということを考えますと、ほんとうはこの部分は税のあり方の性格論だけではなくて、やはり今度はほんとうは手をつけておきたい部分のように思うのです。  そこで、先ほど、そうは言っても法律改正が必要なんだという話がありましたけれども、しろうとが簡単に考えますと、二百九十四億、先ほどの税率調整の八百十五億のうちの一部をさいて、交付税に回してやれば、地方自治体だって文句はないだろうという感じがしますが、これまで、いろいろな性格論はあったとしても、これから必要になる景気浮揚とのかね合いで、今後住民税の減税について、とりわけ課税最低限の引き上げについて、あえて一本化というと、これはいろいろ語弊が出るかもしれませんけれども、まず、とにかく引き上げについて、今後近い将来、当然これは考えるべきだと、まあ私は思うのですが、御意見はいかがでしょうか。
  195. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 住民税の問題につきましては、自治省自体いろいろな考えがあると思いますが、この場では、私どもの考えを述べさせていただきます。  確かにいま、栗林委員御指摘のように、所得税の課税最低限と、住民税の課税最低限がどういう関係にあるべきかということは、かなりいろいろなお考えの方が多うございます。しかし、一方、所得税といいますのは、やはり所得の再分配効果をねらうというところに視点を当てまして、かなり高い課税最低限を漸次現出してきております。   〔理事柴田栄君退席、委員長着席〕 それから考えますと、はたして住民税を、そういうところまで課税最低限を引き上げるべきであるのかどうか、いま、たまたま栗林委員御指摘のように、徴税費の観点から申せば、これは一体化しておくのが一番よろしいわけでありますが、やはり一方、地方行政とその住民との関係からいうならば、所得税は納めなくても、何がしかの住民税を納めてしかるべきであるという考えも、やはり傾聴に値するのだろうと思います。その場合に、所得税を納めない人には、均等割りだけでいいではないかという考えもあると思いますけれども、その場合にも、やはりいま府県市町村合わせまして、三百円、五百円、七百円という均等割りだけでいいのか、あるいはまた段階的な均等割りをとるべきであるのか。そうしましたときには、かなり所得計算というものが必要になってまいりますから、そういうことならば、同じように、現在のような所得にスライドした住民税というものを、所得割りというものを払ってもらってもいいんではないかというような議論になると思います。  それで景気浮揚のために、所得の低い層のところに減税の恩典を及ぼすべきではないか、少なくとも減税に関してそういうふうな考えを取り得ると思いますけれども、なかなか地方団体といたしますと、この減収補てんという問題が出てまいりまして、私どものほうでは、やはり住民税というのは、これは府県なり市町村の根幹をなす独立税でございますから、まずやはり地方自治体自体が、自分の歳出の効率化ということを考えて、その財源を捻出するように努力をいたしまして、できるだけ住民税の負担軽減をはかっていくのが第一でありまして、ある場合には、独立税といい、ある場合には国から財源補てんができないと、やはり減税が行なえないということも、妙な話でございまして、まず第一には、この課税最低限の問題であれ、住民税の長年据え置きになっております税率の改正であれ、地方団体みずからが、自分の歳出と歳入の状態を勘案して、そういう方向に税制改正の方向を考えてもらうということが先決ではないかというふうに考えております。
  196. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 今後またこの問題は機会をとらえていろいろ伺ってまいりたいと思いますが、なるほど、独立税という、まあ地方自治に根ざした考え方から今日の地方税体系はでき上がっておりますし、考え方は確かにわかるんだけれども、かくも広域化し、しかも、変動きわまりない日本経済の最近の変化の中で、そのたてまえを貫くことがほんとうにいいんだろうか。実はそれを問われているのが昨今の国際通貨情勢でもあろうかと思いますし、大胆にこれはメスを入れるべきだと私は思います。しかも、それが財源との関係ということであれば、今回の税率緩和八百十五億円、余りが幾らでも出るわけですから、そういう実は大胆な論議をほんとうは期待したい。  実はその関係で物品税についても伺いたいと思うんです。物品税はこれまで奢侈税という、奢侈品に対する課税ということで沿革的にはつくられてまいりましたけれども、最近は性格がずいぶんいろいろ変わってまいりました。ただ、先ほどの、採算割れだろうと思います、そういう無理をしてまで輸出をしている姿を、これもまた素朴に見てみますと、一生懸命に自分でつくりながら、結局自分は買えず、それを外国に売って、やれおまえのところは輸出をし過ぎるというかっこうで、円が強いという、言うならば架空の非難を受けているわけですね。そうなりますと、はたして従来から嗜好品ということで続けてきた今日の物品税課税というものがほんとうに正しいんだろうか。例を申し上げれば、カラーテレビはどうなんだ、ルームクーラーはどうなんだ、自動車はどうなんだということになれば、みんなほしいものばかりじゃないか。なぜこれを安くして国内で売れるようにできないか。これが、実はこれを含めて見直しだと思うんです。  で、これも伺いたいんですが、たまたまニクソンの新経済政策の中で、乗用車消費税七%撤廃による雇用確保ということが冒頭に浮かんでおりました。これは向こうのそういう市場経済の経済構造から出るんです。日本もそれに向かって変質しつつあるのが今日ですし、いまのクーラーにしてもそうでしょうし、カラーテレビにしてもそうでしょうし、写真機、時計にしても同じことが言えるかもしれませんが、必要以上に輸出比率が高くなってしまった国内要因の一つとして、私は、物品税がやはり従来から同じような水準で残ってしまった原因もあると思うんです。この辺の見直しが、実は今回の所得減税にからんでされたのかされなかったのか、あるいは近い将来の課題としてする予定があるのか、伺いたいと思います。
  197. 中橋敬次郎

    説明員中橋敬次郎君) 今回の減税におきましては、もちろん、まず何税をもって行なうべきかという議論がございました。で、結果としましては、所得税一本、最優先ということで行なったわけでございますが、それに関連しまして考えられますのは、御指摘の物品税を含めますところの間接税、法人税というものが俎上にのぼるわけでございます。  まず法人税でございますけれども、これも当委員会で先ほど来御議論がございました点も考慮いたしましたし、最近のように、いわば非常に設備が過剰ぎみになって不況を招来しておったところに起こりましたニクソンショックでございますから、法人税というものを軽減することによりまして、設備投資を行なって景気浮揚をするということはなかなか期待しがたいんではないかということで、法人税という問題はまず第一にドロップしたわけでございます。  それから間接税、特に物品税につきましては、これはもちろん多額の減収を充て得るならば、あるいはおっしゃいますように、いま御指摘のようなもろもろのものについてかかっておる物品税が軽減されることによって物の値段が下がりまして、購買力が、消費購買がふえるというようなことは期待されるかもしれませんけれども、これにはかなりの金額をまず投じなければならないと思います。なまじの金額でございますと、物品税を含みましたところの小売り価格に端的に反映しがたい。と申しますのは、やはりかなりラウンドナンバーの小売り価格でございますから、少々の軽減では、むしろその金額というのは企業にのみ込まれてしまうおそれがあるわけでございます。そういう点がまず一つでございます。  それから、日本の税体系を考えます場合に、直接税にかなりウエートがかかってきておりますが、その中でも一番最近来伸びてきておりますのが所得税でございますから、今後の日本経済を考えてみまして、やはり相当の所得の伸長ということがありますれば、ときたま、こういう税率の軽減を含めての所得税制の改正をやっていただきましても、所得税によりますところの税収入というのがだんだんウエートを高めてくることは想像にかたくないわけでございます。それも一つ方法でございますけれども、どうしましても所得が急激に上がってまいります場合には、所得税に過度に依存しておりますと、執行上も、あるいは税制に対するものの考え方からいいましても、かなりフリクションを招かざるを得ないわけでございます。そういう場合には、どうしても法人税負担を考えるか、あるいは間接税の負担を考えざるを得ないわけでございます。  で、七月の税制調査会の答申におきましても、法人税のウエートというのは、大体、いまぐらいが最低考えていいのではないかということを考えましたし、直接税の中でも、特に所得税がウエートを高めるのを押える意味において、間接税のウエートをもう少し高めるということを考えてもいいのではないかということもいわれておるところでございます。  物品税は、御指摘のように、かつて戦争中に設けた税金でございますし、ぜいたく品をねらってやったということがございますけれども、だんだんその課税物品は一般化して、多くの家庭で使用されておるものにかかっておるではないかという御批判は全くそのとおりでございます。しかし、かなり高い物品税として依存しておりますところの自動車でございますとか、カラーテレビでございますとか、宝石でございますとかいうものは、まだまだ、われわれの消費生活から見ますれば、何がしかの税負担を負って消費していただいてもいいのではないかという点も考えられるわけでございます。将来としましては、もちろん自分たちがつくっておるものの、そういった便益品を家庭生活に導入し得るのはそれは望ましいことではございますけれども、その場合にも、やはり何がしかの負担をしていただいて、あえてそれを購入できるほどの所得が高まるのが一番手っとり早いわけでございまして、減税よりは、むしろ、そういう方向のほうで豊かな家計というものを招来すべきではないかと思っております。
  198. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 時間がなくなりましたのであと一問だけにいたします。  いまの御意見たいへんよくわかるような気がいたします。で、税金の問題を財源確保という点から考え、税負担の公平という点から考えますと、おっしゃるような議論がおのずと出てくると思うのです。ただ、日本経済そのものが変わってきてはいないのかという点で考えますと、多少負担してもらってでも、そのうち全部そろえてみんな豊かになるのじゃなくして、早くみんなそういったものをそろえて、苦労してきたんだから、今度はおれたちが豊かになる番だと、またそれが結局円の競争力の問題を含めて外国から理解され、日本経済の、生活水準のあり方になる。そう考えますと、その財源確保なり、税の理論は別としまして、いま急いでしなければいけない部分というのはほんとうはあるのだろうと思う。  そういった意味で、それが何かといいますと、よかれあしかれ大衆消費社会というものを背景にして、今後の経済が進むべきとしますと、やはり下に厚くという減税がこれから必要になりますし、その点で、たとえば、今度の千六百五十億を考えますと、たいして十分な額だとはもちろん思いません。しかし、それがそういう政策の転換なんだ、これからそういう日本をつくっていくんだということで、もし考えるなら、実は、ここに高額者に対する税率緩和が出てくるのは時代の逆行みたいな、一体どこを見ているのかという印象を国民に与えるような気がする。むしろ、多少は額が少なくても、所得税もまける、住民税も控除を上げましょう、加えて物品税も下げます、そういったものが寄り重なり合って、これからの新しい時代に対する希望をはぐくむ私はアナウンスメント・エフェクトになると思うのです。そういった大胆な議論をぜひお願いしたいと思います。  実は、先ほど税制調査会について申し上げたのはその辺の気持ちなんです。税制調査会になりますと、どうしても財源とか公平感とかすぐ議論に走ってしまうのですけれども、そういう時代に私はないような気がしますし、ことしの暮れから来年をどうやって渡っていくのか、一番日本の危機だと思います。その意味で、せっかく八百十五億円の税率緩和の点を考えますと、非常にもったいない気がいたしますし、このあとの論議はまた次の国会で伺っていけばよろしいんですけれども、以上申し上げて今後の御検討をお願いしたいと思います。
  199. 渡辺武

    ○渡辺武君 私もこの前の委員会で資料要求をいたしまして、先ほど松井委員が問題にしましたような資料をいただいたわけです。ところが、この資料をいただいて、私、端的に思いましたことは、大蔵省は大蔵委員会をなめているんではないか、あるいは最低限いっても委員会の資料提出要求に対して真剣な態度で資料の提出をしようと思っているとはちょっと考えられないというふうに思いました。なぜかと申しますと、この提出資料を見てみますと三つの内容になっております。  一つは、「八月中の外貨準備増加要因分析」、もう一つは、「外貨準備高および為銀ポジションの推移」、それから、もう一つが、「輸出前受証明書の検査結果」そういうことになっております。  その1と2のほうはこれは委員会で資料要求をして、あなた方の御苦労を労さなくても、大蔵省がこれは普通公表している数字ですよ。こういうものは、もう御記憶だと思いますけれども、あのとき私どもがお願いしましたのは、これは八月十六日から二十七日までの間の、特に輸出前受け制度でドルを手に入れて、これを円にかえた人たちの売ったドルの総額と、そうしてその銀行別及び業者もしくは個人別の詳細をこのまま資料として要求するというのが内容でしたが、何一つそれにこたえていないですよ。しかも、一番最後の「輸出前受証明書の検査結果」これを見てみますと、大蔵省が立ち入り検査をしたと、大蔵省と通産省がいう立ち入り検査の一部分がこうやって出ているにすぎない。私は、この前の決算委員会で伺いましたところが、この立ち入り検査、四行五社、これはほんの一部分だと、決してこれで全局を判断することはできないと、はっきり国際金融局次長が答弁されているわけです。そういうものを出されてあの期間のドル売りの実相がわかるか、私はわからないと思います。  しかも、私、決算委員会でこの資料を、ほかの委員が要求して決算委員会でもらったんです。大蔵委員会には先ほどから議論があったように、あとから出てきた。で、決算委員会ではこれは最初「輸出前受証明書の検査結果」で数字の入らないものが出てきた。そこで委員会としてこんな数字の入らないものはだめだと、少なくとも数字ぐらい入れろと強く要求して、やっと、いや計算が間に合いませんでしたというような口実をつけて出てきたのがこの数字の入っているものです。委員会が強く要求すれば何とかかんとか出してくる。委員会が、決算委員会がそのまま受け取っておけばこの数字の入った、金額の入った資料さえ出てこなかったというふうに思われるような状態なんです。一体こんなことで委員会の要求に真剣にこたえていると考えられましょうか。私は、もっと正式に、委員会として資料の要求をしているんですから、真剣になって取り組んで、委員会の要望にこたえるような資料を私は出すべきだと思うんです。そのおつもりがあるかどうか、まず最初に伺いたいと思います。
  200. 船田譲

    説明員(船田譲君) 先ほども吉田委員並びに松井委員のお話、御質疑にお答え申し上げましたように、八月の十六日から二十七日までは、私どもことばで言わしめればおもちゃ箱をひっくり返したような状況の中でございました。その中で、特に責任者の大蔵大臣なり国金局長なりが、しばしば海外に行っておりましたような関係で、なかなか御要求のあったような資料がまとまりませんでしたことは先ほどおわび申し上げたとおりでございます。  また決算委員会と当委員会との資料の提出の順序の問題につきましても、先ほどおわび申し上げましたように、私どもの手違いがございました。ただ先ほども申し上げましたように、検査そのものが悉皆調査ではございませんので、全部のものについて克明に一々固有名詞を入れて、金額を入れてという御要求に対しましては、できるだけ御要望にこたえるけれども、できないこともございますという意味で私はお受けいたしまして、資料の提出に努力したつもりでございますので、この点は御了解いただきたいと思います。
  201. 渡辺武

    ○渡辺武君 いや、それは了解できませんよ。そんなばかなことないです。なぜかといえば、これは為替検査員の数が少ないから悉皆調査は困難だ困難だと先ほどもおっしゃいましたけれども、大体この輸出前受け制度でドルを手に入れて円にかえる人たちは、輸出前受け証明書を持たずに、もしそれをやらないでドルを手に入れて円にかえたら、これは非合法ですよ、非合法もいいとこですよ。そういう状態があるのかないのか、これを調べるのも、これも一つの重要な点ですよ。しかしあなた方は、立ち入り検査したら合法的なものだった、合法的なものだったと言っているから、かりにあなた方のおっしゃることを信用したとしても、輸出前受け証明書をこれは出しているはずです。為替銀行にみな出しているはずです。大蔵省の権威をもって為替銀行に、この期間の輸出前受け証明書、これの総額は一体どれくらいなのか、これは為替銀行別に、またその証明書を提出した業者もしくは個人別に報告せよと言えばすぐ集まってくる、これはそんなことは簡単なことですよ、そうでしょう。これは為替検査員の数が少なくたって私はできると思う。これは一つの例ですけれども、とにかくできないなんというはずはないですよ。それはやろうとしないからいつまでたったって資料は出てこないわけです。  もう一つ言います。先ほど公務員の守秘義務だ、その点からもちょっと提出に応じられないのだということを言われました。なるほど公務員には守秘義務というのがあるけれども、国権の最高機関だと憲法でちゃんときめられているこの国会が、国政調査権に基づいて正規に要求しているのです。この国会の国政調査権を公務員の守秘義務で妨害することは私は許されないと思う。大蔵省としてもう一回この問題は再検討して要求にこたえて資料を提出すべきだと思う。やっていただけますか。
  202. 船田譲

    説明員(船田譲君) ただいまの渡辺委員の御要求につきまして、私も専門家でございませんので詳しいことはわかりませんけれども、事務的に非常にむずかしい問題であろうと思いますが、なお国金局長のほうから答弁をいたさせたいと思います。
  203. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいまの御要望でございますが、われわれ事務当局といたしましては、誠心誠意できる限りのことをむろんいたすつもりでございますけれども、ただいまのように全為替銀行について全部こういうものを出せというふうに申されましても、それはたいへんなボリュームになりまして、非常に事務的に考えましてむずかしいという感じでございます。
  204. 戸叶武

    戸叶武君 関連質問。私はきょうは黙って彼我の問答を聞いておったのですが、国会の審議というものは、具体的データを要求して、それに基づいた論議でなければ価値はないので、そういう意味において委員会の請求というものはなされておるのであって、ガバメントのほうでは官吏としてのいろいろな制約ということを考えるでしょうが、それは小乗的な立場です。そうでないとすると、国会の審議権というものを無視していくのであって、国会の権威というものはなくなるのです。この今回の問題に対しては、諸外国で見ていることであって、白日のもとにおいてこんなばかなできごとが日本にあるということが各国で笑い話になっているのです。国民としては笑われている側です。あほうもいいかげんにしろと。  これはあんたも御承知のように、一九二九年からの世界経済恐慌、一九三二年からの金融恐慌のときにも、御承知のように、ただ通貨の問題だけでなく、あのデトロイトの銀行が二軒つぶれたということが金融恐慌を巻き起こしたきっかけになった。そういうことが絶えず政府側に去来しているのだと思いますが、あまりに大蔵省あるいは通産省、日銀と銀行並びに商社との関係が癒着し過ぎであって、国民の側に向かって通貨政策なり、金融政策をやっているのか。それとも、為替銀行なり、あるいは外国に支店を持つ商社が手持ちのドルによって打撃を受けないようにということを配慮してやっているのか。この点が国民にきわめて注目されているところでありまして、私はこの十六日の午前十時、日本の、あの日からの、ずっと新聞関係、もう詳細に全部データをとっておりますが、大新聞ですらも、すでに十七日の段階においてもう政府の動き、大蔵省と日銀とは、国内の商社、銀行が手持ちのドルを損しないように、十七日から配慮した模様であるということが明確に出されております。これは、私も朝日新聞の記者上がりですが、日銀なり、大蔵省なりに行っている経済部の記者という者がやはりその動きのデータはとっていると思います。  それから、その次において、やはり大蔵省と日銀の中において、特に大蔵省いろんな問題があったと思いますが、十七日の臨時閣議で佐藤首相は、円平価の維持という従来からの「基本姿勢を変えない」と言って、そして佐藤さんも田中通産大臣も軽井沢のゴルフ場に行っていますが、一方、大蔵省の中では鳩山事務次官、相澤主計局長及び竹内官房長などは、為替市場は閉鎖したのだから、日本もこれにならったらどうかという意見を出したが、柏木顧問、細見財務官、稲村国際金融局長などは、ドルこそ切り下ぐべきだと、フランスと同じような筋論でこれに対抗した。これはその内部を、私はいまあんたから答弁を求めません。  とにかくこのような、内部にいろんな議論があってもいいと思うのです。しかし、これがほとんど、一部の専門の新聞記者は大体その動きをキャッチしているが、それが為替銀行なりあるいは外国に支社を持つ大商社なりに筒抜けであったとしたならばどうするか。そのドルかえの動きというものがずっと出ているのです。新聞自身においても、十六日、十七日、十八日、十九日、二十日あたりまでのヨーロッパの動きが明らかになっている。新聞の論説はもう全部、ヨーロッパの、立場は違うが、フランスやドイツも立場は違うが、ならうべきであるというのは、経済同友会の人たちもそうだが、全部財界をあげて、私は常識であったと思う。そのときに、ガバメントにおける一番責任あるコントロールをやるところの大蔵省なり、通産省なり、日銀の動きというものは、きわめて不明朗な印象を国民に与えている。これは私は今国会において、今後において追及しなければならない。それが私どもの、渡辺君の言っているように、とにかくあなたたちにはあなたたちのいろんな弁解の立場があるでしょう、われわれはわれわれとして——この見方や議論は別だ。  そういう足どりの具体的データを大蔵省なり、日銀なり、あるいは通産省なりが出せないというならば、政府国会との対決です。とにかく、そんなことをやって国民の疑惑を解くことができるかどうか。しかも、そういう形において1私は当時朝日新聞記者として、あのあらしの中で、昭和五年に浜口さんが殺され、昭和七年の二月九日に井上準之助が殺され、団琢磨は殺され、五・一五事件が起きた。単なるファシズムじゃないんです。政府のやっているでたらめな財政金融政策に対して、ひとつの、国民が窮乏におちいったときに、農民自身の抵抗力というものに軍部ファッショなり何なりが迎合したわけです。その根底においてああいうテロリズムまで起きているのです。  私は、この一年間は非常にきびしいと思います。もし政府がそのような怠慢な説明をするならば、われわれは国民に対して、国会の機能というものは一体何をやっているか。これは非常にきびしい中に今国会を迎えなくちゃならないので、堂堂の論陣を張りましょうが、堂々の論陣を張るにあたっては、具体的なデータを中心としての論争に入りたい。そうでなければ論争の意味がない。われわれは陳情じゃない。その点において、これは私は渡辺君と民社の人たち——政党政派を抜きにして、野党の人全部が具体的なデータを出してくれと。今日の足どりは、これは苦悩に満ちたものだと思うが、ともに悩み、ともに模索し、そうして国民に対して明快な回答を与えるという姿勢政府並びに国会にあらねばならぬ。政府が怠慢ならば国会がこれを行なうという気魄がなければ、政治への不信というものは失墜するばかりだと思います。  そういう意味において、出せないということじゃない、努力するという程度じゃない、出してもらいたい、出すべきだということをわれわれは要求しますから、要求に応じないときには、これに対して両院議員総会なり何なり開いて、このあらしの中における、きびしい、国際世界からも見られている監視の中における、こんなでたらめなことはないです。二十六日、二十七日、日銀総裁と大蔵大臣とが会ったあとにおける筒抜けなんかは、世界の——私は恐慌の時代、イギリスにいましたが、イギリスなんかの例では直ちに首です。大蔵大臣なり、日銀総裁にそれだけのきびしさがあって初めて政府の責任というものは問えるので、企業に対して影響があるからとか、官吏の責任においてそういうことをきちんとできないとかいうことよりも、もっと、国の全体の利益を擁護するために官僚は何をすべきか、そのことを考えることのできないような官吏というものは、公吏というものは怠慢です。そういう点において、いま責任なり何なりを追及をするのじゃない。われわれの要求するところの資料請求だけは忠実に守って出してもらいたい。その上で政府国会で論戦をやろうじゃないですか。
  205. 船田譲

    説明員(船田譲君) ただいま戸叶委員並びに先ほど渡辺委員からいろいろと御注意がございました。私も国会に議席を占めましてごく歴史は浅うございますけれども国会調査権を尊重すべきことは十分わかっているつもりでございます。ただ、先ほども吉田委員並びに松井委員にお答え申し上げましたように、具体的な名前をあげますこと、このことは、いま先生がいみじくも言われましたような配慮もこれあり、また、悉皆調査でもございませんので、特に、一部の、たまたま検査をいたしましたところの名前が出るということにおいて、その銀行なりが非常な不利をこうむることによって、いわば金融の恐慌というと大げさでございますけれども、混乱を起こしてもいけないという配慮もございまして、先ほどもお答え申し上げましたように、政務次官である私も、どの銀行であるか名前を知っておらないのでございます。したがいまして、具体的な名前、固有名詞につきましてはごかんべんをいただきたいのでありますけれども、全体の資料を全部出せというお話につきましては、いま稲村国金局長が答えましたように、物理的に非常にむずかしい問題でございますが、私どもも決して国会の審議権を無にするとか、軽く見るとかいうことじゃございません。きわめて尊重していかなければならないというたてまえから、できるだけの努力をいたしてまいりたいと思います。
  206. 渡辺武

    ○渡辺武君 できるだけの努力をするということでありますので、私はあらためてこの八月十六日から八月二十七日までの間の輸出前受け制度でドルを手に入れて円にかえた人たちですね、これの総額と、円に転換したドルの総額ですね、それと銀行別及び業者もしくは個人別の内訳の資料を、これも委員会として要求することをお願いしたいと思う。  それからさらに、これはこの前の決算委員会で伺いましたが、かねて林国際金融局次長は、この立ち入り検査は何回もやっている、今後もやりますということを言明しておられる。そこで、ここに一回だけの立ち入り検査の検査結果が出ておりますけれども、その後の立ち入り検査の資料、これも提出していただきたいと思う。  また、先ほども松井議員その他から要求がありましたけれども変動相場制移行以来輸出契約のキャンセルが非常にふえてきている。私はきょうこれを詳しく伺いたいと思いましたが、もう質問もあったのでやめますけれども、しかし、この輸出キャンセルの資料ですね、特にいま申しました八月十六日から二十七日の間の輸出前受け制度でドルを円にかえた人たちの中で、輸出キャンセルだといっている額ですね、これを特にその中でも要求したいと思う。  以上の三つの資料、これを委員会として要求していただきたいと思います。
  207. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいま渡辺さんからいろいろ資料の御要求がございましたが、この点につきましてはよく理事会に一応はかりまして相談をして、そして要求をいたしたいと思います。
  208. 渡辺武

    ○渡辺武君 それでは質問に移ります。  こういうことで輸出前受け制度で、一応形は合法的だという形をとりながら、わずかな期間に出来高でいえば五十六億二千七百万ドルもの出来高があの期間にあったというのですね。この前の答弁によりますと、概略、八月中の外貨準備増加要因の中で、企業の前受け、短期資金取引等二十六億三千万ドルの増加の中で、そのほとんどが前受け金だろうという御答弁がありました。かりに二十億ドルとしても、円がかりに一〇%切り上がれば七百億円近いもうけが一ぺんにふところにころがり込むというような事態にあるわけですね。この輸出前受け制度でドルを手に入れて円にかえた人たちは、先ほども国際金融局長の御答弁を聞いていますと、もしキャンセルになった場合は、そのドルを送り返さなければならぬ、こういうことを言っているんですね。つまりこれは別のことばで言えば、これはこの人たちの権利ですよ。いま日本人は普通円を売ったり買ったりすることはできない。ところが、輸出前受け制度でドルを円にかえた人は、これはキャンセルになった場合は、いわば権利としてこの円でドルを買い戻す、そしてこれを外国に送金するという権利を持っている。これは権利ですよ。あなた方は法の上の処罰だと言うけれども、この人たちはいま円を持って政府が公式に円の切り上げをやるのを見ている。あるいはすでにもう九%ぐらい円が変動相場制で切り上がっているから、ぼつぼつキャンセルをして、そして円をドルにかえよう、こういうことでやっている。こんな合法的な形を装いながらのスペキュレーション、これは許すことができない。はたしてこの人たちの手に入れた差益ですね、これはどうなさいますか。その点どういうようにお考えでしょうか。
  209. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) 先般もお答え申し上げましたとおりでございますが、この輸出前受けということ自体が、もうすべて非合法であるというわけにはまいらないことだと存じますが、と申しますのは、輸出の取引におきまして前受け金ということが国際的な商慣習としてございます以上は、それが全部いけないということにはまいらないだろうと思いますが、確かに御指摘のように、この道を通じましていわば投機のようなことに使った、そういうことがはっきりいたしますれば、これはむろん本来の輸出前受け制度の乱用でございますから、これは当然法令上の処断をしなければならない問題であると存じます。  それから、この輸出のキャンセルでございますが、これも通常の場合やはり輸出のキャンセルということも起こりますので、これはやはりこれを仮想したものである、つまり投機的なあれで、初めからほんとう意味の輸出前受けでなかったものが、そういうもので仮想したものであるということがわかれば、むろんこれは法令上の処断をいたすことができますが、他方、しかし普通の場合、輸出のキャンセルということもあり得ますので、これは全部が全部違法である、あるいは処断すべき行為であるということにもまいらないと存じます。その点につきましては、通産省とも打ち合わせをいたしておりますが、もしそういう架空のことでこういう道を通じまして投機的な利益を得ようということであれば、これはむろん厳重に処断をいたしたいというふうに存じております。
  210. 渡辺武

    ○渡辺武君 厳重に法律上の処断をするということは、それはどういうことですか、具体的な内容は。
  211. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) これは為替管理法の違反となりますので、その意味で処断をいたしたいということでございます。もっともこれはわれわれがやることではございませんが、法令違反でございますから司直の手によって行なわれることであると存じます。
  212. 渡辺武

    ○渡辺武君 この前、九月二日の大蔵委員会で私が伺ったら、法令上の処断があります。その内容は何かと言ったら、これはむろん輸出前受けで手に入れたドルですから、キャンセルになったらこれは送り返さなければならない、これが処断だと言っておる、ほかに罰則何もないじゃありませんか。その罰則というのは、つまり法律上の処断というのは、いま私が申しましたように、この人たちの持っておる円でドルを買い戻すという権利、それしかない、そのほかにありますか。特に私が伺っておるのは、こういうやり方でもって彼らの手に入れた為替差益はどうするかというんです。
  213. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) 先ほども申しましたように、輸出キャンセルになった場合にドルの送り返しができるかいなかという点につきましては、これは自動的に権利としてできるわけではございませんで、通産大臣の許可が要るわけでございます。それはその段階で主務官庁といたしまして審査をするという仕組みになっております。  それから、先ほど法令違反と申し上げましたが、それは外国為替及び外国貿易管理法の第七十条に、外国為替管理法関係の法令に違反した場合の処罰が出ております。そのことを申し上げたわけでございます。     —————————————
  214. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま戸田菊雄君が委員辞任され、その補欠として伊部真君が選任されました。     —————————————
  215. 渡辺武

    ○渡辺武君 きょうは時間がないので、その問題はこの次あらためてもう少しあなたのいまの答弁も検討して追及したいと思いますけれども、この前、大蔵大臣の御答弁ですと、為替差益を手に入れた人たちは税金で取りますというような趣旨のことを御答弁であったんですがね、しかし、あなた方は立ち入り検査をしたらほとんど合法的なものだと言っておる。だからあなたの言ったその為替管理上の処断云々というようなことは、あるいは通産省の許可云々というようなことも、これは国民はまゆにつばつけて聞いているんです。問題は、私は、こういう投機で、国民が円の切り上げでたいへんな被害を受けているときに、一部の連中がわずか十一日間で為替投機でべらぼうな差益をふところに入れる、こういう不正を許すことはできないということ、したがって、私は重ねて提案しておきますけれども、合法か非合法かは別として、この期間に輸出前受け制度でドルを手に入れて円にかえた人たちが、もし円が切り上がってドルを買い戻して差益を手に入れた場合、捨てておけばそういうことになりますから、したがって、円でドルを買い戻すときには、これは売ったドルの値段、一ドル三百六十円という公定レートがまだあった当時に売ったドルの値段で、ドルを買い戻させるということを私は義務づけるべきだと思う。そうすれば、やれこれが不正な投機か、あるいは合法的なものかというようなことを争う必要はない。とにかくキャンセルしたという事実は明らかなんだ。輸出しないという事実は明らかなんだから、彼らに差益を与えないためにはその手段しかないんです。その点はあなた方、真剣になって検討する用意ありますか。これを伺って次の質問に移りたいと思います。
  216. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいま先生御指摘のとおり、こういう時期に投機的な行為によりまして不当な利得を得るというようなことにつきましては、むろん政府といたしましても厳重に処断をしたいと存じておりますけれども、われわれといたしまして行動し得る範囲は、むろん法律その他できめられておりますので、それに基づきまして、いまのような事態に対してどういう措置をとり得るかということの限界もございますので、まあそういう点をあわせ考えて検討いたしたいと存じております。
  217. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 渡辺さん、大体五時までということなので……。
  218. 渡辺武

    ○渡辺武君 途中で関連質問が入ったものだから、その分だけちょっと。  それでは、きょう、これから伺うことを聞きたかったんですが、いただいた資料で、第二番目に「外貨準備高および為銀ポジションの推移」という数字があります。この数字を見てみますと、為替銀行のポジションが、七月は十三億三千七百万ドルであったのが、八月には二億五千万ドルに激減しているんですね。この為替銀行ポジションの激減の理由、これは資料要求としてお願いしてありますけれども、ですから準備は整っていると思いますが、時間がないので簡潔にその理由を明らかにしていただきたいと思います。
  219. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) 御指摘のとおり、この八月末と七月末の為銀ポジションを比較いたしますと、約十億ドルの変化がございますが、これは主として為銀の借り入れの増加でございます。
  220. 渡辺武

    ○渡辺武君 大蔵省が発表した八月の国際収支の統計を私いただいて見てみますと、八月は前の月に比べて資産が二億五千百万ドルふえている。負債のほうが十三億三千五百万ドル。負債が激増しているわけですね。一体この負債の中のどの項目がふえたのか、どのくらいふえたのか、それをおっしゃっていただきたい。
  221. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいま申し上げましたとおり、借り入れ金がふえているわけでございます。
  222. 渡辺武

    ○渡辺武君 借り入れ金といっても、これを何でしょう、外国銀行からの借り入れ金でしょう。どうですか。
  223. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) そのとおりでございます。
  224. 渡辺武

    ○渡辺武君 どのくらいふえたのか、一ぺんにちゃんと言ってくださいよ、金額も。
  225. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) 十億九千五百万ドルでございます。大体これのあれに見合っているわけでございます。
  226. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますとこれは大問題だと思うんだ、私。この前の二日の委員会で、多田委員の質問に答えて佐々木日本銀行総裁はこういう——時間がないからちゃんと読みませんけれども、あなたがたあと速記をちゃんと読んでくださいよ。外国銀行からの借り入れがふえる傾向があったので、これをニクソンのドル防衛政策発表以来ふえないように規制したんだと答えている。そうして日本銀行が外国為替資金貸し付け制度で為銀の借りているものですね、それを期限前に二回にわたって返済を許した。なぜ許したかといえば、その規制によって外国銀行からの借り入れがふえないということが明らかになったから返済を許した。こういうことを言っている。ところがいまのお話ですと、外銀借り入れが十億九千五百万ドルもふえている。これは一体どういうわけですか。円転換規制をゆるめたわけですか。
  227. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいまの御質問でございますが、ニクソンの演説がございまして、十六日に当方にわかったわけでございますが、それをいたしますと、これは非常に国際通貨情勢が混乱をするということでございまして、この余裕のあります限りで銀行が外銀からの借り入れをいたしたわけでございます。それで、日銀総裁が先般御答弁申し上げたと存じますが、十八日でございましたか、そういう借り入れをやめるべきだということを措置をとられたわけでございます。したがいまして、そのときまでに入って、その後はこの借り入れがとまっておるわけでございます。
  228. 渡辺武

    ○渡辺武君 その答弁はどうもあやしいですね。この外銀借り入れが八月の十六日ですね、日本時間で言えば、ニクソンの発表は。十六日までにどのくらいの残高であったのか、それからその後二十七日までにどのくらいの残高になったのか、これの資料ありますか。
  229. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいま申し上げましたとおり、十八日に外銀の借り入れをストップする措置をとりました。したがって、それまでに借り入れ金の増が十億幾ら、先ほど申しました額に達してたわけでございます。しかしそのうちの非常な部分は十六日の措置が発表になりましたあとで生じたと思われます。
  230. 渡辺武

    ○渡辺武君 そういう答弁ではわれわれはもう納得できないんですよ、あなた方の答弁のあいまいさでは。だから八月十六日の為銀の外銀からの借り入れの残高は幾らなのか、八月十八日は幾らなのか、八月二十七日は幾らなのか、それを言ってください。
  231. 稲村光一

    説明員(稲村光一君) ただいまの資料は、数字がいま手元にございませんので検討さしていただきます。
  232. 渡辺武

    ○渡辺武君 それじゃ最後に。ただ数字が手元にありもしないのにいいかげんな答弁するのはやめてほしい。ちゃんと資料要求して、この間も増加の資料をほしいと言っている。大体これは大問題ですよ。なぜかといえば、あなた方は円転換規制で外貨負債と外貨資産、これは大体バランスすると、しかも外貨資産の中からは自由円勘定と、それから日本銀行から外国為替資金の貸し付け制度で借りたものを引いた額、これが外貨負債とバランスするという形で円転換規制をやってきたでしょう。だからあなたのもしおっしゃるように、八月の十八日までに外銀借り入れが急増しているならば、資産のほうもそれに見合ってふえていなければいかぬ。その点を証明できるようなものがほしい。とにかくこの間のこの為替銀行の資産、負債の詳細な資料を私は要求します。委員長、これも一緒にお願いします。  これで終わっておきます。
  233. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。  本日はこれにて散会いたします。