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1971-09-02 第66回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年九月二日(木曜日)    午前九時五十二分開会     —————————————    委員異動  九月一日     辞任         補欠選任      西田 信一君     塚田十一郎君      柴田  栄君     矢野  登君      大竹平八郎君     楠  正俊君      松井  誠君     加瀬  完君      野々山一三君     羽生 三七君  九月二日     辞任         補欠選任      矢野  登君     山下 春江君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         前田佳都男君     理 事                 嶋崎  均君                 多田 省吾君                 栗林 卓司君     委 員                 青木 一男君                 伊藤 五郎君                 河本嘉久蔵君                 楠  正俊君                 栗原 祐幸君                 棚辺 四郎君                 塚田十一郎君                 桧垣徳太郎君                 山下 春江君                 加瀬  完君                 竹田 四郎君                 戸叶  武君                 戸田 菊雄君                 羽生 三七君                 松永 忠二君                 鈴木 一弘君                 渡辺  武君    国務大臣        大 蔵 大 臣  水田三喜男君        通商産業大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣  木村 俊夫君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        大蔵政務次官   船田  譲君        大蔵省国際金融        局次長      林  大造君        農林省農林経済        局長       小暮 光美君        通商産業省貿易        振興局長     外山  弘君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○参考人出席要求に関する件 ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件) ○派遣委員の報告     —————————————
  2. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨九月一日、柴田栄君、西田信一君、大竹平八郎君、松井誠君及び野々山一三君が委員辞任され、その補欠として矢野登君、塚田十一郎君、楠正俊君、加瀬完君及び羽生三七君が選任されました。  また本日、矢野登君が委員辞任され、その補欠として山下春江君が選任されました。     —————————————
  3. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) この際、理事補欠選任についておはかりいたします。  去る七月二十三日の玉置猛夫君の委員異動に伴い、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長にその指名を御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事嶋崎均君を指名いたします。     —————————————
  5. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 次に、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  租税及び金融等に関する調査のため、日本銀行総裁及びその他の役職員出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  7. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 次に、租税及び金融等に関する調査中、当面の財政及び金融等に関する件を議題といたします。  まず、水田大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際これを許します。大蔵大臣
  8. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 最近の国際通貨情勢にかんがみまして、八月二十八日より、現行円平価は維持しつつ、従来、平価の上下〇・七五%の範囲としていた変動幅制限を、暫定的に停止することといたしました。  御承知のとおり、欧州主要通貨は、二十三日の為替市場再開以来、IMF協定に定める変動幅をこえる相場を示し、その結果、円は欧州のほとんどすべての通貨に対して実質的に切り下げられた形になり、このままでは国際協調上問題を生ずるおそれがありました。その後国際通貨体制再建のため、主要諸国による多角的協議の気運も高まり、九月十五日にはロンドンで十カ国蔵相会議の開催が予定されております。私といたしましては、今回の措置を通じ、諸外国と協調して、新たな国際通貨体制の確立に向かって進むとともに、早急に対外取引の安定を回復いたしたいと考えております。  なお、今回の措置や、米国輸入課徴金賦課等が、ようやく回復の兆が見られるようになったわが国経済動向に好ましくない影響を与えることのないよう、公債政策の活用による予算補正財政投融資計画追加等、積極的な景気対策をはかるとともに、金融面税制面からも、十分な施策を講じてまいる所存でございます。
  9. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止
  10. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記を起こしてください。  それでは、これより質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  11. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は、円切り上げには反対なのでありますが、今回の円切り上げに伴って国民の皆さんは、生活や、あるいは産業経済が今後どういうふうになっていくか、こういう点についてたいへんな不安を持っておる情勢にあるかと存じます。したがって、それらの経済政策について、いままで水田大蔵大臣はいろいろな声明を行なってきたのでありますが、ことに税制金融あるいは財政等、あらゆる施策を講じてその乗り切り策に積極的な意向を示してきた。  それで、私は質問してまいりたいのでありますが、第一に物価の問題、これは一体どうなるのだろうか。文字どおり円切り上げ方向にいくわけでありまするから、一般論としては一国の平価切り上げは、その国の物価を安定させる効果を持つ、こういうような効果を持つだろうと思うのでありますが、はたしてそのような状況に移っていくのかどうか、この辺の見通しについてまずお伺いをいたします。
  12. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 円高ということになりますというと、これが物価にどう響くかということは、理屈のとおりにいきませば、これは輸入物資値段が下がるということになりますので、ほとんど原料を海外に依存しているわが国でございますから、その原材料でつくる一般品物値段もそれに引きつれて下がる傾向になり、物価を上げる傾向にはこの円高は働かないということになりますので、この点は国民生活には非常にいい影響を与えるということになろうと思います。  ただ、ドイツでやった結果を見ますというと、最初ドイツで予想したとおりの物価値下がりというものは実際にはなかったというようなことはございますが、この流通機構そのほかの合理化がほんとうにうまくいくのでしたら、円高になった部分は物価安になってあらわれる、こういうことにならなければならないだろうというふうに考えております。
  13. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 その比較対照は、私は西ドイツマルク切り上げが一番いい一つの例ではないかと思います。二回にわたって実質的な切り上げをやっているわけでありますが、一九六九年に一応マルク切り上げドイツではやりました。その結果を見ますると、一九六九年の一月から九月までは、大体工業製品生産者価格指数というものは一応二%台できたわけでありますが、このマルク切り上げ以降においては、約その倍程度まで実は物価が急上昇をした。あるいはまた生計費指数についても同様のケースが見られるわけであります。ですから、これは明らかに一般論としては、確かに物価抑制という方向に向かうのがたてまえでありますが、現実はそういっておらない。私は、現在の日本経済情勢からいけば、この西ドイツケースと、その状況と大体同じような情勢になっていくのじゃないか、こういうふうに判断しまするけれども、いま大蔵大臣としては、当然抑制方向に向かうだろうというようなことをおっしゃられたのでありますが、そのとおりまいるのでありますかどうか、もう一度その辺の見解をお伺いいたしたいと思います。
  14. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一般論としてはそういうことでございますが、西ドイツの場合は、別個の理由からインフレが起こっておるということでございますから、そのためにマルク切り上げ物価に対する効果をほとんど減殺してしまっているということがあろうと思いますが、日本の場合は非常に違いまして、御承知のようにいま経済が鎮静しておるときでございますので、日本においてはまだ別に円を切り上げているわけでもございませんが、為替変動幅についての制限を停止するということは、いま見られますとおり、円の事実上の切り上げ状態に見られておる。実勢が上がっておるときでございますからして、それに応じたやはり物価安という方向へ働く力というものははっきり出てくるだろう。日本においては、少なくとも物価が上がっていくという方向を押える力としては、私は十分働くのではないかというふうに考えております。
  15. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 企画庁長官見解はどうでしょうか。
  16. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) いま大蔵大臣が申されましたように、物価に及ぼす影響、その基盤と申しますか、それが西ドイツの場合と、わが国の場合とはやや違っておると思います。西ドイツの場合は、もうすでにインフレ傾向が非常に激しくなっております。したがって、マルク切り上げはむしろそういうインフレを押えるという国内経済的な目的がおもであったというふうに伝えられております。したがいまして、当時はもうすでに卸売り物価上昇しておりましたし、また賃金もきわめて早いテンポで上がりつつあったというのが、その当時のドイツ情勢であったと思います。そういう点から考えますと、わが国は幸いにして、消費者物価は相当上昇しておりますが、卸売り物価はこの不景気のために相当持ち合いと申しますか、上がるというよりむしろ横ばいの傾向でございます。ある月においてはむしろそれが下がりぎみでございました。また賃金の問題も、その是非は別といたしまして、その上昇が鈍化されておる。こういうような状態から見ますと、ドイツ切り上げに転じましたときと、わが国の現在置かれている問題、経済的な現象、おのずからそこに基盤の相違があると思います。同じようには論じられないと思います。
  17. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 かりに円が一〇%切り上がった場合にはこういう物価趨勢になるのではないかという一応企画庁の、ことしの春にその物価安定効果等についての試算が行なわれたわけですね。これは企画庁わかりますか。知っておりますか。
  18. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 試算をいたしましたが、これは全く事務的な試算でございます。したがいまして、物価安定効果に及ぼす輸入自由化、これについては基本的に考え方を申し上げれば、当然これは物価安定効果がございますけれども、ただ警戒すべきことは、その輸入自由化によって流通過程とか、そういう面で、そのせっかくの効果が減耗されることになる。したがいまして、たとえば三十七年には自由化しましたバナナ、三十八年に自由化しましたレモン、その後における価格の足取りをたどってみますと、昭和三十八年に自由化いたしましたレモンのごときは、当時より比べまして約百円の値下がりをしておる。またバナナに至っては約六十円の値下がりをしておる。こういうように、ある時期を経ますれば、当然これは物価安定効果が生ずるというのが筋でございます。ただ、先ほど申し上げましたとおり、なかなかその輸入する相手国におけるいろんな産業構造流通構造、あるいは輸入をいたしますわが国におけるいろんな産業構造等が、この輸入効果を非常に減耗するというおそれがございます。したがいまして、今後輸入自由化に伴いまして、その物価安定効果をフルに発揮させるためには、その流通過程にメスを入れなきゃならぬ。私どもはその流通過程において、たとえば実績調査をやるとか、あるいは強力な行政指導をするとか、そういうことによって輸入自由化物価安定効果を減殺しないように努力したいと思っております。
  19. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 ただいま企画庁長官からたいへんな力強い方針が示されたわけですが、そういうことは何回も聞いているんですね。しかし、それでも物価抑制はできかねておる。逆に上昇しておるいうような状況だと思うのです。いまやっぱり西ドイツにおける物価上昇割合と、日本上昇割合というのはやや似ているんですね。そういう状況の中での円切り上げですから、私は結果的に、いま両大臣説明になったような結果にはいかないだろうと考えておるわけでありますが、たとえば、一つの例でありますが、タマネギとか、あるいはグレープフルーツ、レモン、こういったものを輸入しても一向に安くならない。逆にレモンなんか一個五十円くらいしている。暴騰しておる状況ですね。だからこういう形においていま円切り上げが焦点でありまするから、ことに国民生活を守る最大のものは私は当面物価対策ではないか、こういう点について十分御配慮をいただきたいと思うのでありますが、時間がありませんから、一つの問題だけで質問するわけにまいりませんので次に進みます。  次に、中小企業対策なんでありますが、けさの毎日新聞を見ましたら、中小企業対策について従来の貸し付け限度額を一千万から二千万、こういう暫定措置をそのまま継続する。こういう報道がなされておりましたけれども、今回のこのアメリカ経済緊急対策発表によりまして、たいへんな私は痛手中小企業は受けるだろうと思うのです。ですから、通産大臣にお伺いしたいことは、さしあたって、大企業中心とする為替差損問題は除外いたしまして、中小企業に集中をして私は質問をしてまいりたいと思うのであります。  その一つは、中小企業輸出関係差損、たとえば新潟の燕市の洋食器関係、あるいは玩具の問題、織物関係、こういったものはたいへんな痛手を受けておるわけですね。こういうものに対して具体的な金融政策というものは私は行なっていくべきだと思うのですが、さらに大企業関係の造船、自動車、家電、鉄鋼、こういった下請会社けさ報道によりますると、下請会社に対する賃金支払い遅延防止関係をより行政的に強めていくということがありました。それだけでは私はこの大打撃を受ける中小企業対策としてはなまぬるいんではないかというふうに考えるわけです。もっと、やはり金融面から、ことに国民金融公庫なりあるいは中小企業金融公庫なりあるいは中小企業信用保険公庫、こういったいわば中小公庫等に対して、もっと大幅な政府投資をして、そこからストレートで中小企業のほうに融資体制がいくように思い切った措置を私はとるべきじゃないかと思うのですが、これに対する通産大臣見解を承りたい。
  20. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ニクソン政策発表から一番当面影響を受けるものは中小零細企業でございます。特に輸出に大半の商売上のウエートを置いておる輸出企業とも言われる中小企業打撃は非常に大きいものがございます。当面する政策と、恒久的対策に分けて考えております。八月二十三日に中小三機関に対して資金量確保、また中小企業に対する貸し出しの促進等指示をしておりますし、また信用補完制度に対しても、九月一日からも、いままで期限のきたものを延長する等の措置をとっておるわけでございます。しかし、このようなことだけでもって万全の対策が行なわれるとは考えておりません。これから資金量の問題、また金利の問題、既往債務のたな上げの問題、救済融資の問題、転廃業資金の手当ての問題等々きめこまかな問題が残っておるわけでございます。この中に対しては、法律改正を必要とし御審議を仰がなければならぬものもございますので、財政当局とも十分連絡をとっておるわけでございます。特に大企業等下請関係につきまして、中小企業や零細なメーカーにしわが寄らないように、特に本件については大企業側の協力も求めておるわけでございますし、それに対する金融措置等も考えてまいらなければならぬと考えております。  最後に申し上げたいのは、もうすでに担保余力を全然持たない中小企業に対して、どのようにして応急的な金融を行なっていくか。またある意味におけるスクラップ・アンド・ビルドというふうに分けなければならない金融もございますので、このようなものをどう措置するか。さしあたりは限度一ばいになっておる担保余力のない中小企業に、組合等の名義を使う等によって救済融資ができるようなことを考えて実行に移しておるわけでございます。
  21. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 通産大臣に。三日ほど前に、こういういわば経済上の大異変が起きたような場合については、今後国会にすべてはからなくとも、国際経済調整権というものを国でもって何でもできるというような、いわば経済上における非常大権であると思う。こういう構想のあることを見たのでありますが、そういう内容については大臣としてはおわかりですか。あるいはまたそういう構想あるんですか、この点。
  22. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) アメリカでも、今度のニクソン政策というものについては、ニクソン・エコノミックパッケージというふうに言われておりますが、いろんな政策をセットにして行なわなければ所期の目的を達成できない。こういうことで国会に対してもまた法律改正をお願いする面もあるようでございますが、過半成立せられた通商拡大法を基礎にしてこのニクソン政策が行なわれておる。これに対応するわれわれは、いまのところ資金ワク確保とか、いろいろななし得るものもございますが、国会の議決を経なければならないものもたくさんございます。私はそういう意味で、中小企業零細企業というようなものに対して特典を与えるような面について、幾ばくかの幅を持たしていただくことは、すべてを立法手段に訴えるという現行の新しい憲法の精神からはみ出すものではない。これは増税するとかそういうことなら別でございますが、一定のものから変動する国際情勢に対応して、臨機応変なる措置をとらなければならない。それが中小企業零細企業育成政策であるとしたならば、そのような幅を持たしていただくというような制度を開くことは、国会審議権を拘束するものでも何でもなく、私はやはりそういうものがある時期必要である。こういう考えは依然として持っておるのでございます。七月五日に通産大臣を拝命した直後から、激動する国際情勢に対応する国内経済調整という意味法律を必要とすると考えて、いま作業をいたしております。おりますが、ニクソン政策発表から、なおその必要性を痛感いたしておるわけでございます。
  23. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私はあの報道を見まして、非常にこの日本のいまの政治の情勢というものが危険な方向に行くんじゃないかという印象を受けた。単に経済関係だけではなくて、今後防衛や各般の問題にまでそれらの波及というものがいくような、そういう内容を持ったものではないかと考えております。いずれこの問題については、沖縄臨時国会等にもしそういう法案が出されてくれば、当然審議することになるだろうと思いますから、ここでは差し控え、次に進みたいと思います。  次に、生活上の問題でもう一点でありますが、農産物に対する貿易自由化の問題、これは、いま四十品目規制品目があるわけでありまするけれども、このうち、牛肉とか、あるいはコンニャクだとか、あるいは果汁、こういった各般品物を今後さらに自由化に持っていこう、さらに農林省所轄の二十八の規制品目に対しても、今後アメリカとしては全面貿易自由化を要請してくる。いま、アメリカ貿易収支を見ますると、工業製品の赤字をすべて農産物輸出でまかなっておるという状況ですね。そういう状況でありまするから、まさしく貿易面で見た場合に、アメリカ農業大国、そういう状態できておるわけでありまするから、いまのアメリカ貿易収支状況からいっても、あるいは国内経済状況からいっても、今後農産物に対する自由化というものについては、全面的に日本に対して攻勢をかけてくる、こういうように考えるのでありまするけれども、その辺の見解について——きょう大臣が出られないそうでありますから、局長ですか、お答えを願いたい。
  24. 小暮光美

    説明員小暮光美君) 御指摘のように、アメリカ農産物貿易にはかねてから非常に大きな関心を持っております。したがいまして、今回の通貨の問題が起こりますはるか以前から、事あるごとにわが国残存輸入制限、その中の特に農産物残存輸入制限について、ガットの精神に基づいてこれをできるだけ早く撤廃するようにということをしょっちゅう言っておりました。それに対して私どもは、貿易拡大という世界の大勢は十分われわれもたてまえとしては了解しておる。しかし、農業の置かれておりますきわめて具体的な現状から、自由化を急いでもできないものがあるということをはっきり申し上げまして、これらの要求にこれまで対処してまいったわけです。現在、従来以上にさまざまな客観情勢の重圧が大きくなっております。したがいまして、アメリカのこの面についての要求が強まっておることも事実でございます。しかし、私どもといたしましては、農産物自由化につき、日本農業の根幹に触れるようなものにつきまして、適切な対策が確立いたします場合以外、軽々にこれを自由化いたさないという姿勢は堅持いたしておる次第でございます。
  25. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 次に、政府資料によりますと、九月三日以降、過般のアメリカニクソン声明に基づく経済関係国際会議が軒並みきまっておるわけであります。九月三日を初めとして、九月九日には日米貿易経済合同委員会、こういうことでいろいろ行なわれておるわけでありますが、そういう国際通貨体制の問題について、当然議題になって検討されるわけでありますが、この国際通貨体制の今後の展望について、大蔵大臣としてはどういう展望をお持ちですか。その内容についてお答え願いたいと思うのでありますが、なかなか、この国際会議を控えて非常に微妙なところでありましょうけれども、その点がやはり明確にされていかないと、こういう重要事態だけに、日本国民としてもたいへんな心配をしておる。こういうことでありますから、その辺をぜひお聞かせを願いたいと思う。  それからもう一つは、円切り上げのいわゆる幅と効果についてであります。一体どの程度切り上げるか。いままでの諸外国の例を見ますると、いま、日本は大体一〇%程度ではないか、こういうことを言われておるのでありますが、その程度なのか。あるいはワイダーバンド方式をとっていくのか、あるいはクローリングペッグ方式をとっていくのか、いろいろあると思うのでありますが、そういう問題について大蔵大臣はどの程度の、円切り上げをやった場合でも、課題というものを、中心というものをどの辺に置かれるのか、その辺の内容についてお聞かせを願いたいと思う。
  26. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、いま米国がドルと金の交換を停止するということをいたしており、そのために国際通貨のこういう混乱が生じてきて、欧州市場は各国それぞれみなフロートすることによって再開されるというような事態が起こり、日本も実質的には欧州に対して円の切り下げ状態になるというようなことから、日本もまた同じ基盤に立つという考えで、今度のような措置をとったということになりますというと、すでにIMFの存立の基礎というものが実際には崩壊しておるというような状態でございますので、このままで何にもしないでいるわけにはいかない。国際経済の安定をこのままではかるというわけにはまいりませんので、来たるべき幾つかの国際会議は、当然にこれからの新しい国際通貨体制の安定をはかるということを中心のいろいろな論議が展開されると思います。その場合には、やはり金という自然の産物に左右される国際通貨という方向がいいのか、それを離脱した方向でいくべきであるのか、あるいは基軸通貨国の国内政策によって、やたらに国際通貨が混乱するような形のものは、これは何としても困ることでございますので、その辺の問題を中心とした議論がこれから出て、新しい体制の方角というものが当然今後展開されるということでございます。  といいますというと、問題は非常にむずかしくて、これからの、もう少し時間をかけたことでなければ解決しない問題をたくさん含んでおると思います。で、そうかといって、それを待たなければ当面の問題を未解決のままほっておいていいかと申しますと、これもなかなかそうはまいりませんので、いまの事態を収拾するために、何らかの国際協調が必要だということははっきりいたしておりますので、私は、やはり、IMFの総会を前にして、いままでのG10が責任を持って、ここで何らかの協定を行なって、そうして国際通貨の安定というものをはかる義務があるというふうに考えますので、当面それを中心とした国際協調のいろいろな動きが見られるだろうと思います。そういう意味において、日本も当然この協調に参加して、国際——多国間の協調による新しい何らかの通貨の安定をはかる措置を生み出すために協力したいという立場で、私どもはこれから国際会議に臨む。あくまでもやはり国際協調の線をもって日本は今後の国際会議に臨むという方針の上に、私は、これから十分日本として主張すべき問題はたくさんございますし、国益も十分考えた上で国際協調の実を果たすということに骨を折りたいと思っております。
  27. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 長い答弁ですけれども、要点は、結局大臣の言っていることは、IMF体制にかじりついているということじゃないですか。そういうことでは、これから国際会議に臨んで日本の態度というものは、いまおっしゃられたように、明確にしてかつき然たる態度はなかなかとり得ないのじゃないか。やはり私は、アメリカに気がねせずに、自主中立の立場で、この辺にきたらもうきちっとした態度を持つべきじゃないかと思うのですが、そういうことは残念ながら大臣の答弁の中からは感じ取れないんです。私は、一つの案でありますけれども——経済企画庁で、四十六年の春にすでに、円切り上げ一〇%した場合に、国際収支関係貿易収支がどうなるかということを試算しておりますね。一〇%でいった場合には、結果的に大体十六億一千七百万ドル見当の赤字になる。だから、少なくとも今後貿易収支がすべて赤になっていくという中では、私はできないと思うんです。そうだとするならば、当然一〇%以内に上げ幅というものを押えていかざるを得ない。こういうふうに考えるんでありまするけれども、その辺に対する大臣見解をお聞かせを願いたいと思います。時間がありませんから要点をひとつ回答願いたいと思います。
  28. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) はたして日本は円の切り上げに賛成するのかしないのか、こういう問題もこれからの会議において私どもは考えることでございまして、いまあらかじめ日本はこうするということを、会議を前にして言うべき問題ではございませんし、問題は、多国間の協調によって新しい一つの調整ができるかどうかという問題で、その際には私どもは十分国益を考えて主張すべきものは主張するという態度を持つだけでございまして、いまからそれをどうするというようなことは、この場で言うことは差し控えさしていただきたいと思います。
  29. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 これは大臣に要望ですけれども、今後国際基軸通貨としてドルは、私は役割りを果たし得ないんじゃないかと考えるわけです。そうなった場合に、ブロック体制の通貨体制というものが考えられるんじゃないか。一つは、やはりアメリカのドルを基軸とした、私たちから言わせれば、隷属国家という、カナダとか、そういった国が入って——日本はどうなるかわかりませんが、そういうものが一つあるいはできないか、もう一つは、中国の元を中心とした通貨体制というものができはしないか、あるいは——ECはもうすでにIMF体制を離れているんですから、これは独立して国益がとれているんですから当然それはもう独立していくでしょう。もう一つは、ソビエト体制を基軸としたそういう通貨体制というものが考えられないか、こういうことでいくとするならば、今後やはり日本としては、あくまでも社会主義国を含めた国際通貨の体制というものを確立するよう、そういう努力をいずれにしてもやっていく必要があるんじゃないかと思うんですけれども、その辺の見解はどうですか。
  30. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) さっき私が申しましたような、これからの国際通貨のあり方をどうするかという問題の中で、そういう問題はやはり今後列国との間で討議される問題の一つであろうというふうに考えますが、いま申しましたように、おそらく差し迫ったこの十五日以後の国際会議におきましては、そこまでの問題にはならないんではないかというふうに私は考えております。
  31. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 今回のドル買いささえの問題でありますが、約四十億ドル、日本円価に換算して千四百四十億円ですね、この商社、企業、個人ごとのドルを売った金額がわかればひとつ。これは事務当局にお願いしておいたんですが、資料がないので教えてもらいたい——これはきのう資料として出してくれということでやって、オーケーになっておる、それがどうして出せないんですか、まずその理由から。
  32. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 委員長から申し上げますが、それは委員部を通しておりませんので……。
  33. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 会社名まで全部教えてください。
  34. 林大造

    説明員(林大造君) ただいまの御質問でございますが、大蔵省勘定に対しまして、民間から売り上げられますドルの金額は、全部外国為替公認銀行を通じて売り上げられてまいります。その内訳といたしまして、一体どれだけの金額が、どこの民間の会社から売り上げられたかということになりますと、これは通貨当局といたしまして直接に把握することができませんで、しかも名寄せその他の方法も一切そのような方策が講じられておらないということでございますから、実際問題としてそのような金額を把握することはできないわけでございます。ただ一般的に大体輸出契約の状況がどうであったかというようなことでございますれば、輸出関係の認証統計でございますとか、あるいは輸出関係の信用状統計でございますとか、そういうものでおおむね明らかにすることはできるわけでございますが、それも会社別にということになりますとなかなかむずかしいわけでございます。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 八月一ばいの外貨準備高から逆算してみたわけでございますが、大体八月中に四十六億ドルばかり外貨準備高がふえておるようでございます。これを通産省当局から見ますと、輸出の前受け金及び輸出代金等で決済されたものがそのうち三十三億ドルくらいだと思います。残りが外為銀行及び商社等の手持ちのドルをおもに売ってきたのではないかというふうに見えますので、大体十三億ドルくらいではないか、これは私がほんとうに大ざっぱな輸出とその他のものはどうだろうということで、通関実績その他輸出信用状等の上で概算した数字は大体その程度だろう。私が七月五日に通産大臣に就任した第一回目の閣議だと思いますが、このままの数字でまいりますと、輸出の伸びが激しいので、輸入はふえておらないので、九月初めの日米経済閣僚会議出席するころには日本の外貨準備高は百億ドルをこすおそれがあるという公式の発言をしたわけであります。それからずっと見ておったわけでございますが、大体通関実績その他から見ると、四十六億ドルのうち三十三、四億ドルが前受け金及び輸出代金であって、あとの十二、三億ドルが手持ちドルの売りではないか。これは私がいまの状態において見た数字でございまして、さだかなものではないということを念のために申し上げておきます。
  36. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 それはあとで資料で詳細に出していただきたいと思います。委員長に要請しておきます。  それからもう一つは、外貨準備の保管場所ですね、これはたとえば外為会計にどのくらいあって、日銀にどのくらい、あるいは商社の手にどのくらい、この内容についてもきのう資料を出すからということだったんですが出ておらない、どうして出ないのかちょっと委員長確めてください。
  37. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 委員長から伺いますが、ただいまの要求しておる資料は……。
  38. 林大造

    説明員(林大造君) 八月末の外貨準備高は約百二十五億ドル余りあるわけでございますけれども、そのうちおおむね政府が二割弱、十数億ドルを保有し、日本銀行が百億ドル余り保有いたしております。その総額はいずれ外貨準備高の総計といたしまして毎月明らかになるわけでございます。
  39. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 そうしますと、大体総額で百二十五億ドルということ、いま報告されたとおり。いずれにしてもこれらのドルは、円が切り上げられることによって私はたいへんな損害を受けることになると思う。そういう損害に対して政府はどういう処理をやっていくのか、またそういう損害は一体だれの責任なのか。まさか大蔵省の国際金融局長の責任じゃないでしょう。これは明らかにいまの政府の責任じゃないかと思う。そういう責任の所在というものはどこにあるのか、これをはっきりしてもらいたいと思うのでありますが、さらに日銀関係でありますけれども、日銀納付金がございますね。四十六年度の予算書を見ますと、千三百二十五億四千二十万円あるわけですね。かりに一〇%円切り上げが行なわれたということになると、これも帳消しになる。そういう損害に対しては一体どういう処理をやっていくか、そういう内容について質問をしたい。
  40. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように外為法によりまして、保有外貨の評価がえは、平価を変更するというようなときは評価がえの必要がございますが、そうでないときには評価がえの必要はないということで、現在平価は変えておりませんし、まだ為替相場の変動しているときでございまして、これからこれがどういうふうになるかということがわかっていないのでございますから、現在これが為替の損益はどういう形で出ているかということはまだ確定していない状況でございます。かりにこれが将来確定して、差損というようなものが出ましても、これは保有外貨の評価損というようなものは、貸借対照表の損として出てくる問題で、歳入歳出の決算として直ちに生じてくるものではございませんので、したがって、外為会計の中にはいろいろ積み立て金とか、あるいは差益金、資金、いろんなものがあって、内部留保による利益の取りくずしということもできることになっておりますので、この差損が直ちに赤字となってそのまま出てくるわけでもございませんし、したがって、これが国民の損で、すぐに何か税金で埋めなければならぬというようなことをよくいわれるんですが、そういう性質のものではないということでございます。  日銀のほうのやり方もおそらく同様なことになっておろうと思いますが、これは日銀総裁のほうから御説明願いたいと思います。
  41. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) ただいま大蔵大臣からお話がありましたと同じように、日本銀行につきましても、所有しております外貨の価格が変動する可能性に対して、銀行の中に内部留保を用意いたしております。償却準備金が最近の決算時におきまして約二千億円、積み立て金その他のものが合計いたしまして二千四百億円、合計して四千四百億円の内部留保を持っております。  それから円が強くなりました場合にそういう損失が出ますが、その逆の場合を考えますと、もし国力が弱くなりまして、円の切り下げをいたしますと、その場合には日本銀行に利益が生まれる、こういう計算上の性格を持っておることを御承知いただきたいと思います。
  42. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 私は、そう遠くない将来いずれにしても通貨体制というものがきめられなければどうにもならないと思います。日本の場合には変動相場制を採用するということは決定していますね。ただその上げ幅はどの程度にいくか、方法はいろいろあるでしょう。さっき質問したけれども、それはいまのところお答えできない。いずれにしても、そういうことになって平価切りかえということになってくれば、私は、いまの政府全体の予算上から言っても、当然それは税金で埋めていくという姿になっていくのじゃないか。ことに、たとえば日銀に百億ドルあるということになれば、その一〇%かりに上がったということになれば、日銀の納付金すら帳消しになってしまうような状況であります。どうしたって補てんをしなければならない。あるいは政府自体においてもそういう状態は免れない。そういうことになれば、持ってくるところは税金しかないじゃないですか。ですから当然そういう点について国民が損をかけられるということに結果的に私はなってくると思う。そういう意味合いにおいて、本問題については明確な責任問題が生じてくるのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。そういう問題について十分ひとつ御検討を願いたいと思うのであります。  最後に私は、景気見通しが非常に重要だろうと思う。大蔵大臣発表によりますと、さしあたって臨時国会に対して補正予算を提案をするという考えを明らかにされました。その財源はもっぱら国債に依存するということですね。今回のやつは明らかに、臨時国会に提案される予算というものはその財源が赤字補てんですね、国債発行。そういうことであれば、一つは、財政運営上明らかに財政法に基づいて私は特別措置をつくるなり何かして、その処置というものを明確にしていかなくちゃいけないんじゃないか。  それからもう一つは、国債に対する歯どめが私はきかなくなってくる。この点を一体政府はどう考えるか。もうすでに四十年以降発行された国債総額は相当膨大なものであります。四十七年度からこれが償還期間に入ってくる。そういうものが一体返せるのか返せないのか。四十七年度の予算においては一兆円台の国債を発行していこうという、こういう構想のようでございます。そういうことをすれば、私たちがいままで指摘をしてまいりましたように、この国債というものは雪だるま式にふえていく。これは結果的に国民の税金でまかなっていくしかないのでありますから、これもまた国民がたいへんな損失をこうむる、こういう結果になってくるわけですね。ですから、そういう財政運営上の問題をどうするのか。国債の歯どめをどうするのか。来年の償却を一体どうしていくのか。こういう問題について明確に御見解を示していただきたい。
  43. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 公債問題のお尋ねでございましたが、いままで発行した分は、御承知のように減債基金で積み立てておりますので、これは従来発行した公債の返済計画はできておりますのでこの点の御心配はございません。  今後の公債の問題でございますが、歯どめといたしましては、これも御承知のように、財政法によって公共事業費出資金及び貸し付け金の範囲内で国会が承認する金額を公債発行できるということになっておりまして、一応限度がございます。この限度を本年度の予算で見ましたら一兆四千億円くらいまでは発行できるということでございますが、御承知のとおり本年度は四千三百億円の国債発行を予定しておりましたので、この限度ではまだまだ幅が十分あるということでございますので、一兆円くらいの発行の法律上の余地というものはございますが、しかし、公債の発行はこの余地によって全部発行すればいいというものではございませんので、経済事情あるいは市中の金融事情、いろいろ財政事情全部を総合して運営すべき性質のものでございますので、そういう点を私どもは十分考えておりますが、ただいま御承知のような金融緩慢の時代でございますし、特に外貨蓄積がこういうことになって、そのために外為会計からの散超が、出方が非常に多いというときでございますから、私はこの際公債政策を活用しても、これがすぐインフレにつながるという情勢日本はないということを考えまして、この際不況対策に思い切って公債政策を活用することがいいのだというふうに考えております。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 関連。ただいまの質問に関連をしてお尋ねをいたしますが、公債政策の本質論はまたの機会にいたします、関連でありますから。  問題は、この不況対策をやることは私は異議はありません。だが、どのように、何のためにやるかということが問題だと思うのです。だから、今日、日本がGNPで世界の二、三位、世界第一級の経済大国にのし上がったのは、過去の設備投資主導型あるいは大企業優先の経済政策が今日の結果をもたらしたと思います。ところが、これは今日のドルショックにも若干の関連がありますけれども、これはアメリカの責任が大いにありますから、それは別の問題として、日本自体に関連して考える場合に、いままでのような経済政策の従来型をそのまま踏襲する意味での景気回復策を考えておるかどうか、これは非常に問題だと思いますね。そういう結果として起こったのが公害であり、物価騰貴であり、もろもろの社会的なひずみでありますね。だから、これを是正するために、いわゆる人間優先といいますか、人間の生活環境整備等、いわゆる社会資本優先の施策に切りかえることが、いま日本が要請されておる重要な問題だと思います。だから、そういう発想に基づいて景気政策展開、景気回復策を考えなければ、ただ従来型の政策に若干色をつけたという程度でこの問題を考えるならば、やがてある時期がくれば、もう一度、再度円の切り上げを求められるような事態が起こらぬという保証はどこにもありません。でありますから、根本的なそういう経済政策を民主安定ということに置いて考えておるのかどうか。公債の本質論は私は他日の機会にいたします。それがまず第一点。  それから、ついでにもう一点だけお伺いしたいことは、前の福田蔵相は、機会あるごとに実質一〇%程度経済成長率を想定されてきた。昭和四十六年度の経済成長の見通しは一〇・一%、実質。したがって、この現在の局面から言うならば、これは落ち込むに違いない。しかし、それにしても、やはり一〇%程度維持しようとして景気対策をもし考えるならば、やはり従来型の政策にウエートがうんとかかるのではないか、これが一つです。だから、そういう意味で民生重点にするならば、若干この成長率というものは下がるのではないか。いまの局面とは別の意味で下がるのではないか。それでもなおかつやはり一〇%ラインということに重点を置いて今後の経済成長政策を考えられるのかどうか、あるいは欧州のように、成長率は低くとも国民生活の重点ということを考えられるのかどうか、その辺は非常に私、今日政府が景気回復策を考えているということはよくわかりますけれども、そもそも何のために、どのようにして景気回復を考えられるかということが非常に重要だと思いますので、いまの成長率の問題と関連をしてお答えをいただきたいと思います。
  45. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その点は、私が就任早々この委員会において財政方針の転換ということで劈頭御説明いたしました、所信を申しましたとおりでございまして、ちょうどいまこそが日本で社会資本の充実をはかる好機である。いままでやろうとしておったことが国際収支の天井の低さに制約されてできなかった、いろいろのことからできなかった社会資本の蓄積が、初めてここでやろうとすればできる条件を備えてきたのがいまであるというふうに考えますので、この機会に、公債政策もそういう方向の充実に活用するということを私どもは考えております。したがいまして、従来のやり方とは違って、私はこの公債の活用によって、生産力の増加ということとはすぐにつながらない仕事が多いということを考えますので、したがって、おっしゃられましたように、一〇%の成長率というようなものをあくまで確保するというようなことは、方針を転換する以上は事実上の問題としてやはりできない。それは成長率を下げるということを覚悟しなければ、社会資本の充実というものはできないというふうに考えますので、この点は全く同感でございます。
  46. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 時間がありませんので、最後になりますが、一点だけお伺いをいたしまして終わりたいと思うのでありますが、大臣がいま言われましたように、今後の経済政策について、もっぱら社会資本充実、生活向上、こういうことで所信を述べられた。これはいままでも何回も大臣がおっしゃられてきたのですね。しかし、そういっていない。結果は大独占本位でありますね。その結果は、国民は——けさNHKの放送でもやっておりましたけれども、老人が七百万人、一人身の老人が四十万人、こういう状態ですね。国民賃金が上がっても、それは名目だ。実収入というものはさっぱりふえない。あるいはまた重症身体障害者、そういった人たちは非常に悪い環境で、いま生活をやっておる。こういう各般国民生活というものが次々に破壊をされてきている。こういう問題について、私はやっぱり、こういう経済の大転換期にきておるわけでありまするから、経済構造そのものを転換し得るような前向きの姿勢で、私はほんとうに実行していただきたいと思う。いま、政治の不信が一番どこからきているかというと、政府がりっぱなことを言うけれども、実行が全然なされていないということにあるわけです。そういう結果が、国民の政治不信となっていっているわけですから、こういう問題について、私は十分、ひとつ今後政府でも真剣に取り上げて、この国民生活の向上、社会資本充実、こういう部面で、ひとついっていただきたい。  最後に、公債発行との関連でありますが、いまの軍備費は、政府が国民生産の一%限度に押えると、こういうことを言っている。しかし、国民総生産というものは年々向上してきているのですから、昨年は六十兆円だ、ことしは八十兆円台ですよ。来年はもっと上がっていく。実質的に使われる金は大きい。そのほかに第四次防衛整備計画、ことしの予算の要求を見ますると、防衛庁は二〇%に近い増要求をやっているじゃないですか。こういう問題はもっとやはり大臣が言うように社会資本充実なり国民生活向上に向けるというのなら、真剣に予算編成の際にそういう点を検討していただきたいと思うんであります。公債を発行して景気浮揚政策を手助けをしていくというなら、そういう部面に私は注入をしていくべきじゃないかというふうに考えるのでありますが、その辺の見解を聞いて、私の質問を終わりたいと思います。
  47. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いままでの、私もいろいろ経験いたしましたが、社会資本の充実ということは、財政が担当すべき実際は仕事でございますが、財政のこの役割りを果たそうとしましても、国際収支の壁にぶつかって、実際にはやれない。もし、これを公債政策によってやろうといたしましても、民間の設備意欲が旺盛で高度成長を遂げている時代におきましては、政府が財政主導型の運営をしようとしたら、これはもうどうしてもインフレを起こしてしまう、物価高を起こしてしまうということになりますので、したがって、政府は終始一貫そういう事態には引き締めをやらざるを得ない。そうして国際収支の均衡をはかるために消極的な財政政策をとらざるを得ないということで、いままで苦心させられてきたのが実情でございますが、今回初めて、いままでのこういう高度成長の成果というもの、それから国際収支のゆとりというものを、初めて今度は政府の財政主導に結びつけるということができる環境に、いまきたということは、先ほど申しましたとおりでございまして、ここで民間に金が相当余裕のあるときでございますから、これは財政がこういう役割りを担当するのには最もいい条件のときであるということでございますので、いまおっしゃられたような方向で、この次の予算はそういう方向の予算を、遺憾なく考えて組みたいということをいま考えて、これがかたがた日本のただいまの経済不況を回復することに役立つということであったら、これこそ一石二鳥の対策であるというふうに考えて、この際こそがやはり、いろいろ言われておりますが、公債政策の活用を最も真剣に考えるべき時期だというふうに考えている次第でございます。
  48. 桧垣徳太郎

    桧垣徳太郎君 国際金融問題のかってない混乱の中で、アメリカドル防衛政策というものが進んでおるわけでございますが、またそれを受けまして、わが国もついに為替変動相場制をとらざるを得ないということになってまいりました。日本経済界は、為替差損のばく大な損あるいは差益の得というような問題をめぐり、あるいは今後の輸出の不振あるいは不景気の深刻化、不況の深刻化というような問題で、たいへんな衝撃を受けておるわけであります。また国民もかねて経験のないことでございますから、この大きな激変に際して、戸惑いながら、国民生活に対する影響について深刻な不安を持っておるということは事実であろうと思うわけであります。で、そういうような立場を念頭に置きながら、時間の制約もございますので、要点をしぼって関係大臣の御所信を伺いながら、政府の見解を明らかにしていただきたいと思うのであります。  まず第一に、現行円平価、対ドル三百六十円というレートは、昭和二十七年IMF加盟以来十九年、約二十年続いてきたのでございますが、今日のようにそれはもう維持できなくなったということは、そのバックには、それぞれの関係国の経済力の変化と申しますか、あるいは生産性の格差といいますか、そういうものが累積しておったと見ざるを得ないと私は思うのであります。これは平価問題は多国間にわたる問題でございますし、また非常に相対的な問題でもございますから、一義的に割り切るというわけにはまいりますまいが、円・ドルの関係において日米間におけるそういう経済事情の変化という問題があるはずでございますから、その実情と、よって来たりました原因について大蔵大臣の御見解を承りたいと思います。
  49. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国民の戦後二十数年にわたる勤勉と努力というものが今日の日本経済のやはり強味を築いたものと私は思います。そうして、何といっても国際競争力というものは確かに日本は現在出ておるということは間違いのない事実だと思います。これに反して、米国がいろいろな事情から、米国経済が非常に競争力を失って失業に悩まされ、インフレに悩まされ、そうして、国際間において基軸通貨国でありながら、その基軸通貨が非常に弱くなったというこの事実もまた否定できませんので、ここに新しい、いままで均衡しておった為替平価というようなものに大きいいろんな変動がここにあらわれてきたということも、これは当然なことであるというふうに私は考えます。
  50. 桧垣徳太郎

    桧垣徳太郎君 たいへん、何といいますか、大づかみな抽象的なお答えでございましたけれども事態についての大体の御認識は理解することができます。  で、そういうことをバックにして、今度のアメリカのドル防衛策というものが決定をされて発表された。対ドル金兌換の停止、輸入課徴金一〇%の徴収、対外援助一〇%削減、それからさらに新たな国際通貨体制の樹立ということがついておるわけであります。こういうことから考えますと、今度のドル防衛措置というものは、大臣のお答えにもございましたが、単に暫定的なドル防衛の考え方というよりも、明らかに現行IMF体制のもとにおけるドルの国際通貨基軸としての位置を放棄したということであると思います。ということでございますなら、そういう発表がありまして、日本がこれに対していかなる為替政策をとるかということは、非常にむずかしい問題ではございますが、少なくとも国際通貨対策金融対策としては、その実態に即した措置をとるのが私は至当ではないかというふうに思うのであります。ヨーロッパがニクソン声明直後直ちに為替市場を閉鎖をいたしまして、ドルも対金フロートをさしておるのでございますから、為替相場の変動制をとったということは当然でございますし、日本も今日ではそれに追随——追随というのはよくないかもしれませんが、それと同様の措置をとっておるということでございますが、なぜニクソン声明直後、フロートするドルを、固定相場制を堅持して買い続けたかということについての御見解を承りたいのであります。
  51. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ニクソン声明が出たときには日本為替市場はすでに開かれておりました。欧州為替市場はまだ開かれておりませんので、したがって、この声明の出たあとで一斉に閉鎖され、開かれなかったという結果になりました。したがって、日本としましては、翌日から為替市場を閉鎖するか、引き続き開いておるべきかというのが当然問題になってきた次第でございますが、その場合に私どもの考えましたことは、欧州諸国と日本は違って、欧州諸国のように自国の通貨建ての取引が非常に多いというところでは、為替市場が閉鎖されてもそう対外取引に大きい支障のない国と、日本のように、ほとんど大部分が輸出入取引が自国の通貨建てではない、ドル建ての国におきましては、為替市場を閉めるということは輸出入取引に大きい支障を来たす。この支障はひいては国内経済にいろいろな影響を与え、混乱を与えるということは目に見えておりますので、この混乱を避けることがいいのかどうかというのが問題でございますが、やはり政府の責任としましては、市場を安定させて、この対外取引の円滑な遂行ということを確保することがやはり政府の責任でございますので、日本の場合はそういう特殊事情から考えて、閉鎖しないことがいいということと、もしこれが非居住者の思惑資金などにゆすぶられていろいろの問題が起こるという危険性がございましたら問題でございますが、これも為替管理が相当行き届いておりますので、そういう心配というものは日本では防げるという自信を私どもはある程度持っておりましたので、したがって、そういう理由からこの為替市場は閉鎖しないということで二十七日まできたという次第でございます。  で、二十七日にやはり変動幅制限を停止したということは、先ほども申しましたように、もう諸外国が、欧州の諸国が全部話がきまらないで一応ばらばらにフロートしたということになり、それではいけないという現実が出てきましたので、これは国際間の協調によって何らかの解決をしようという機運が出てきて、G10の会議の日取りまでがきまるという情勢になりましたので、日本もやはり同じ立場に立つ必要を認めたということと、同時に、やはりドルが弱過ぎるものでございますから、いつかは円についての変化があるだろうという考えは消えませんので、したがって、新しい商談というようなものがこの場合に起こるはずはございません。事実上やはりそういうものは大きく停滞するおそれが出てきましたので、そこでいま言ったような措置をとった、これが実情でございます。
  52. 桧垣徳太郎

    桧垣徳太郎君 ニクソン声明のあと、直ちに市場を閉鎖するか、あるいは市場を開いたままで平衡買いを続けながら、円価値、ドル価値を平衡さしていくという努力をするか、これはそれぞれ議論の分かれるところであると思います。  ただ、いまのお話で、為替市場を開いてドルの市場価格を安定させておけば貿易取引の支障を防げるというお話でございますが、少なくとも円高ということがもう目の前にあります場合に、少なくとも先物としての貿易取引が新しく起こるというのはちょっと考えられないのではないかということになりますと、ことに国際金融についてベテランの水田大蔵大臣がそういうことにお気がつかないはずはないということになりますと、やはり世間でいろいろ伝わっておりますように、このドル防衛対策というものに対応します日本のいろんな分野における損失の中で、ドル為替を持っておるものの損失を最小限に食いとめるといいますか、そういうことに政府あるいは日銀が肩を入れてやろうという気持ちがあったのではないかというふうにどうも思われてしかたがないということでございますが、そういう配慮ではなかったということが言い切れるのでございますか、お答えを願います。
  53. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先ほど申したような理由で、市場は閉鎖しないということでやりましたが、その結果、先ほどお話がありましたように、十五日から十日間、十一、二日の間にドルが四十億ドル前後売られたということがございましたので、何かその期間に売った者を助ける意図を持って開いたのじゃないかというようなお話があるそうでございますが、そういう意図は全然ございません。  で、いまどういうドルが売られておるかを私どもも調べましたが、先ほど通産大臣が言われましたように、大部分、七、八割がこれは顧客から為銀が買ったものでございます。で、そのほかが為銀が自分で手持ちしておるドルを売ったということでございまして、もし投機資金が入っておるというようなことがあったら困ると思いまして、大蔵省では立ち入り検査までいたして警戒はしたのでございますが、いまのところこの非居住者の投機資金がこの期間に流れ込んだというようなことはほとんどございませんので、したがって、正常の取引を中心としたドルを平衡買いしたんだというのが結果でございますので、これは結局市場を開いている以上やむを得ないことではなかったかというふうに考えております。
  54. 桧垣徳太郎

    桧垣徳太郎君 政府はかねがねわが国は他の国と違いまして厳重な為替管理をやっておるから違法な外貨の流入は防止できるのだということをおっしゃっておられましたので、私も実は今回のこういう激動のときに大蔵省がいかなる違法資金の流入を防止する措置をとったか伺おうと思っておりましたが、ただいまのお話では立ち入り検査までして調べた。その結果違法なものはなかったというお話でございますが、そうしますと、ちょっと意地の悪い御質問になるのですが、ちょっとわかりかねますので……。先ほどどういうところからドルが売られておるのかということについて戸田委員のほうから、その態様がわかれば示してほしいということでございましたが、それはわからぬというお話でございましたけれども、立ち入り検査ができるという権限を持ちながら、かりに為銀を通すにいたしましても、どこから流入をしてきたか、どこから入ってきたかということはほんとうにわからないものでございますか、どうか。それが一点。  いま一つは、先ほどちょっと、これは私の聞き違いかもしれませんが、大蔵大臣は、外為の会計ではドルバランスは同じ——私の受け取り方が違っているかもしれませんが、百ドルのものを買えば百ドル残っているんだから、それは直ちに国損ではない、あるいは財政負担ではないというお話でございますが、しかし、元来はドルというものは、日本の貨幣の立場から見るならば、これは一種の物でありますから、物について評価というものがないはずはない。したがって、かりに直ちにそれが財政負担にならないにいたしましても、含み損あるいは潜在的な財政負担としては残るということだけは間違いないと思いますが、その点の御説明をいただきたいと思います。
  55. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 立ち入り検査というのは外為法上の行政指導のためのものでございまして、刑事訴訟法上の犯罪捜査の臨検というような性質のものではございませんので、全部について犯罪捜査的に調べるわけにはまいりません。要するに、こういう間違いがないように行政指導的な立ち入りでございますから、これをそうでなくて、全部綿密に調べたらこれは調べられない、不可能だということはこれは言いませんが、ただ、いままでやった大ざっぱな傾向をいいますというと、この七、八割の顧客から買ったドルの中には、いわゆる輸出の前受け代金というものが相当大きい部分で含まれておるということはこれは確かでございますので、それがはたしてほんとうの契約に基づいた前受け金であるかどうかというようなことについて、相当通産省と一緒にこれはいろいろ注意して、その点も特に警戒をしたところでございますが、いまのところはそういうことはございませんでした。しかし、今後はやはりそういう心配もございますので、為替管理はそういう点においてもう少し強化する。そうして、思惑資金の流入というものだけは十分に抑制するという態度をとりたいというので、その措置はごく最近においてとった次第でございます。
  56. 桧垣徳太郎

    桧垣徳太郎君 為銀あるいは輸入商社というもの、その救済を目的に平衡買いをしたのではないということは理解ができるといたしましても、反射的にそういう損失を免れた、あるいは利益を得たということだけは間違いないと思うのであります。ということになりますと、こういうような激変そのものが予定をされております時期における問題でなく、その前に安定的な為替市場というものを前提にして国際的な通商貿易をやってきました商社、あるいはメーカー等がこうむります不測の損害というものについて、私はやはり政府としては何らかの真剣な配慮をしなければ、一種の経済公平の観念に反すると私は思うのでございます。  もう一つ大きい問題は、きょうの新聞で、沖縄の米ドルの扱いについて、応急的な措置についてはおおむね政府の方針がきまったというふうに報ぜられておりました。この応急的な措置というのは、大体どういうことをお考えになっておるのか。また恒久的にはどういう方向で御検討になるのであるか、その点もしお答えできる情勢でございますれば伺わせていただきたいと思います。
  57. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 応急的な措置としましては、日本から、こちらから言えば輸出、沖縄から申せば輸入でございますが、輸入される物資が値上がりするために、沖縄の国民が非常に因るという問題を何とかしてくれというのが、沖縄の人たちにとっての切実な問題でございましたので、これはやはり私どもも考えたいということで、応急対策一つとして、私どものところと総理府でいままで検討しておりましたが、きのう一応結論が出ました。  それからもう一つの問題は、沖縄から内地に留学生がたくさん来ておりますが、この送金が今度の措置によって実際には内地で交換される場合に減る、ドルで送金してきたものが減る、そういうことを何とかしてくれないかということがまた一つの問題でございましたので、当面この二つの問題の解決に当たったわけでございますが、この解決はやはりきのうできました。  これは沖縄の政府にまかせることにしまして、政府に必需物資の安定基金というようなものを設けてもらって、そこへ日本政府から十億円補助をする、そうしてそれによって必需物資の調節をしてもらうという、大ざっぱに言えばそういう構想。  それから留学生につきましては、やはり沖縄政府へ支出しまして、政府から沖縄の育英会にこれを渡して、留学生が受ける打撃分のいろいろな補助を育英会が見るというような形で計算しますというと、いまから七カ月分、本年度分で見ますというと、相当余裕をもって見ましても大体一億円あれば足りるという計算でございましたので一億円支出する、これは政府の予備費で支出するつもりでございますが、そういうことで応急策はきまりました。  そのほかの問題は、やはり沖縄の要求は三百六十円で交換してほしいという要求でございましたが、これはもう御承知のとおり非常にむずかしいことでございまして、きのう衆議院でもお答えしましたように、これは政府としてそういう交換を約束するというようなことはとうていできないことでございますので、これはむずかしい。しかし、沖縄の人たちに迷惑がかからぬようにいろいろな知恵をしぼって、特別なことをわれわれはこれから考えたい。そうして関係省で相談をするということで相談はいたしていますが、そのむずかしさはもう御承知だと思いますが、これを旧平価でちゃんと、何日基準においてはそのとおりの比率で交換を約束しますというようなことは、これは事実上むずかしい問題で、私はやはりできないということで、この点ははっきり申し上げておいた次第でございます。
  58. 青木一男

    ○青木一男君 関連質問。ニクソン声明によってドルと金との交換が停止されまして、IMFの制度の根幹がくずれたわけでございます。先年金の二重価格制度採用以来一部はくずれたのでございますが、今度は全面的にドルと金の関連が切れてしまったのであります。国際通貨制度の根幹がここにくずれてきた。アメリカとしても非常に残念なことだと思いますが、この一つの大きな動機は、アメリカの金保有高が百億ドル余りに減ったということでございます。この国際通貨制度の崩壊の一体原因はどこにあるか、これは日本が一体責任があるのかどうかということであります。日本の外貨準備について金の保有の割合が少ないということは、一部の人から前から言われておった。しかるにもかかわらずドルを保有する、ことに政府は中央銀行勘定のドル勘定は金にかえることのできた最近までも日本は金にかえておらなかったと思います。それでありますから、このアメリカの金保有高の減少に日本は責任がないと思います。フランスその他欧州の諸国は金を引き出したわけであります。一体日本は自由に金にかえることができた当時において、なおそういう措置をとらなかったのは、IMF制度の擁護、あるいはドル擁護の精神であったと私は思うのでありますが、当時の政府の考えはどこにあったかをお伺いしたいのであります。  私はそういう意味においては、この国際通貨制度の崩壊に日本は責任はないのだ、むしろこの擁護に徹頭徹尾当たった、それがためにいまから見ると非常に損をしておる。早く金にかえておけばばく大な利益を得たのに、そういうことをしなかったのはばか正直というか、国際通貨制度に対する日本の立場、ドル防衛に対する協力の精神であったと思うのでありますが、その点に対して政府の所見を伺いたい。  またもしそのとおりであれば、国際通貨制度に対する日本の成績は私は優等生であると思う。ガットの場においては遺憾ながら大きなことは言われません。まだ日本のなすべきことがたくさん残っているから、私はこれは優等生では絶対ないと思いますけれども、少なくもこのIMF制度に関する限りにおいては日本は優等生であったと思う。それならば、今後の国際会議、あるいはアメリカとの国際協議の場において、優等生の発言というものは私は相手方も相当謹聴すべき立場にあるんじゃないかと思うのであります。私はややもすれば、このいまの世界の国際通貨危機において、日本が非常に責任があるといいますけれども、少なくともIMF制度の擁護という点においては、私はいま申し上げたとおり、日本は優等生であると思うのであります。したがって、今後の国際通貨会議その他の場においては、十分にこの立場を説明して、今後の発言権を確保していただきたいと思います。  なお、ついででございますが、一部の新聞によると、大蔵省は近くデノミネーションを実行されるようなことをきめたようでありますが、私は、この問題は、そう簡単に結論を出せるはずはないと思うのでありますが、その真偽について伺いたいと思います。
  59. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 金にかえない、各国が所有するドルを持っていってアメリカで金に交換することをしないということは、日本だけではなくて、各国とも最近は自粛しておったことでございまして、それは結局、いまおっしゃられたような、やはりIMF体制を維持して国際通貨制度の安定を期するという目的から各国は自粛しておったことでございますが、特にそのうちの優等生は日本であるということは言っても差しつかえなかろうと思います。ただ、日本は最近急にふえたことでございまして、いままではこれを金にかえる余裕というものがあまりなかった。この外貨の保有の余裕がなかったということと、もう一つは金にかえたほうがいいのか、これをそうじゃなくて、ほかの形で運用して国の経済成長に役立てるほうがいいのかというような考慮から、やはり金はかえなかったというような問題もございますが、いずれにしても、アメリカの金が減ったことについて直接日本はそういう責任はない地位にあることは間違いございません。ただ、いろいろ言われておりますことは、最近の日本の対外不均衡の問題でございまして、特に対米で言いますというと、アメリカが言っていますとおり、いまのままでいったら、今年度の対米不均衡は、おそらく二十七、八億ドルの日本が黒字になるというようなものがだんだん目に見えてきましたので、そこで貿易中心にする問題がいま非常に向こうの関心深いものになっておるということは事実でございますので、やはりこういう問題を中心としていろいろこの相談があることが、今度の日米合同委員会の主要な一つ議題になるのではないかというふうに考えております。  それからデノミは、こういう際でございますので、まだいろいろ十分デノミというものはどういうものかというようなものについてのPRも行なわれていないときで、これはいたずらに混乱させてもと存じまして、今回のこういう措置をデノミを組み合わせるということはいまのところ考えておりません。
  60. 桧垣徳太郎

    桧垣徳太郎君 今後の国際金融体制の樹立の問題あるいは国内の長期経済運営の方向等について御質問いたしたかったのでございますが、時間がまいりましたのでこれはまた別の機会に譲りまして私の質問は終わります。
  61. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあ今回の円の切り上げ問題、変動為替相場制の問題、こういう点を新聞等で拝見していきますと、何かこれは一方的にアメリカが悪いのだ、こういう論調がかなり多いし、また政府においてもそうした発言が非常に多いわけでありますが、確かにアメリカに対しまして——六八年でありますか、例のポンドを中心とした国際通貨危機のときに、西欧の財務関係の閣僚は、アメリカにその財政運営の節度を非常に強く求めた。このことは私どももそのとおりであると、こういうふうに考えていたわけでありますが、それにもかかわらず、佐藤政府はベトナム戦争の支援ということを発言したりいたしまして、そうした点ではアメリカ財政運営の節度を日本としてはあまり求めていなかった。いまこういう時期になって、ドルの切り下げをしろ、こういうことを強く要求しているわけでありますが、私は、日本政府自体としても、この際強く自己批判、自己反省をしていかなければならないと思うわけであります。  円の切り上げ問題については、ここ一カ月、具体的な動きとしては一カ月でありますが、すでに去年あたりから円の切り上げを要請する世界の世論というのはあったわけであります。決して一朝一夕でこの問題が出たわけではないのであります。そういう世界の世論に対して、日本の政府は耳をかすことはしてこなかったわけであります。私ども為替の相場がこうしたことになる、大きな変動をするということは、これは国民生活にとってたいへん大きな問題である。円が切り上げになる、あるいは円が切り下げになる、いずれにしても一般国民は大きな損失を招かざるを得ないのが現実であります。先ほど円の切り上げをやれば輸入品が安くなって物価が下がるようなお話があったのですが、これも一般国民は信用していないわけです。私どもは今回の円の切り上げという事態を招いた政府の責任というものを十分自覚してもらわなければいけない、このように思うのであります。  たとえば公害はたれっぱなし、公害規制に対する設備投資というものに対して積極的に政府が指導する、こういうこともいたしませんでした。あるいは消費的な社会資本の充実、こうしたことも実際には遅々として進まない。GNP世界第二を誇るならば、当然そうした面に対する投資をやっていかなければならないにもかかわらず、非常に消極的であった。社会保障にしてもしかりであります。あるいは労働者の賃金にいたしましても、アメリカ賃金に比べてはるかに少ない賃金で働かせている。そして一方では、輸出金融を非常に優遇する、あるいは輸出に関する税制を優遇する。このような輸出ドライブを政府が中心となって行なってきた。ここに私は今日の円切り上げを極端にせざるを得ない、こうした事態に追い込まれた、このように思うわけであります。  こうした際に、政府としては今後の日本経済行動、こうした面で十分な私は反省をしているのではないかと、このように思いますけれども、ひとつ水田大蔵大臣のこれに対する反省がありましたら、反省の御意見をひとつ聞かせていただきたいと思います。
  62. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いま追い込められたというようなお話でございましたが、私が考えますのには、まあ問題は日本の経常収支が非常にいいということを見て、外国では日本の総収支がいいのだというふうに思って、日本の円の切り上げについていろいろ要望が出ておるという現状でございますので、この状況を私どもはいろいろ分析してみますというと、日本の経常収支はなるほどよくても、この中には臨時的な要素というものが非常に多く含まれている。その一番大きい要因は、やはり日本の不況である。この不況を早く回復することによって対外収支の不均衡の形は非常に変わる。さらに一連のいろいろの施策自由化中心とするいろんなもの、そういうものをやることによって日本の対外不均衡の姿は変えられるというのが私どもの考えで、あの対外政策八項目の実施に取りかかった。これがもう少し早く実効をあげておるということでございましたら、また対外的にいろんな情勢が出てきたと思いますが、それがなかなかうまく進まなかったときにこういう問題が起こったので、何か追い込められたというような印象を与えておるようでございますが、もともと日本自体として、この問題に対しては内在的な要請からもやるべきことをやらなければならないときに、その実行に入っておった次第でございますので、引き続きこの問題は最初の予定どおり実施するということによって、今後相当の改善がなされると私は考えております。  で、その場合に、もし何らの変化なければある程度政府の最初の考えどおりいけたと思いますが、急に今回のような事柄が起こってアメリカがああいうことになり、欧州諸国がみんなIMF体制から離脱するというようなことが起こってしまった以上は、この現実を土台に日本は新しい考え方をしなければならぬということをいま考えておることは事実でございまして、これが迫られたというような現象になってあらわれておるんじゃないかと思いますが、こういう事実が起こった以上は、迫られたとかなんとかじゃなくて、日本自身が自主的にこの現状に対して対処する方法を私どもとしては考えなければならぬと思いますが、その場合に、かりに円の実力について、実勢についてやはりこれがある程度変更される必要があるということになった場合、これはいいことか悪いことか申しますと、さっきおっしゃられていましたような、いままでの経済運営上の欠陥というものが是正される、これはやはり私は一つのいい転機ではないかと思います。  と申しますのは、円が切り上がって、実質的に円の切り上げをやるというわけじゃございませんが、事実上いまのフロートにおいても実質上の切り上げ状態になっておりますが、これによって輸出価格が上がるということは、日本はもう安売りをしませんよ、今後海外に対して安売りをしませんよということは、いままで日本のコストの中から抜けておったいろいろ公害に対する当然コストと見るべき費用とか、社会資本の蓄積に要する費用とか、そういうものが計算外になっておって、あるいは安売りというようなことになっておったかもしれない、そうだとすれば、今度はそいうものを充実するからして、日本はいままでのような安売りはしないよということにもなることでございますので、これは決して悪い面ばかりがあるというのではなくて、日本経済の力がここまで出てきた以上は、この実勢に反映する新しい秩序を求めるという日本自身の、これはやっぱり積極的な態度というものも、これからわれわれの国をもっとほんとうに体質を固める意味でも必要であり、その転機にいま私どもはいやおうなしに直面させられておるというふうにも考えますので、私はあくまで日本はこうすべきであるという、ほんとうの将来の国益を考えたら、これを中心に、この機会は、国際的な協調性を保ちながら、これにあやまちなきを期するなら、決してこれは日本にとって困ることではないんだと、私は日本にとって一段飛躍するほんとうのいい機会をつかんだのだというふうにも見られると思って、善処するつもりでおります。
  63. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 ことばの上では最後のほうは私も同感でありますけれども、しかし、財政投融資の追加だとか、公債の大幅な発行とか、こういうことを見ますと、あるいは新聞論調等を見てみますと、どうも再びいままでのあやまちを繰り返すのではないだろうか、また再度こうした事態に追い込められる危険性というものも感じないわけではございません。大蔵大臣の最後のほうのおことばはいただいておきますけれども、私どもは、いまおっしゃったことを現実的にやっていくかどうか、このことは十分監視をしてまいりたい、このように思います。  第二番目の問題は、アメリカが一〇%の課徴金をかけておるわけです。この課徴金と円の切り上げとの関係をお聞きしたいと思います。大蔵省の見通しで、あるいは政府の見通しで、一体、円の切り上げが大体どの線にいくならば課徴金は撤廃されるのか、簡単にお答えをいただきたいと思います。
  64. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これはむずかしい問題で、この席で何とも申し上げられません。
  65. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあ、おそらくそういうお答えであろうというふうに思っていたわけでありますけれども、こうした変動為替相場というものを一体どのくらいお続けになるおつもりか。おそらく私は、貿易はもちろんのこと、国内におけるところのいろいろな商行為、こうしたものもこれによってずいぶん停滞をし、進めるべきものが進められない。そうしたことで、政府の施策によってさらに景気の落ち込み、経済活動の停滞というものが今後起きるのではないか、このように思うのですけれども、一体いつまでこういうものを続けていくのか。おそらく国民は固定相場制を望んで、経済活動の円滑なことを一日も早くしてほしい、こういうふうに望んでおると思います。その点いかがですか。
  66. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これは暫定的な措置でございますので、一日も早く平常な体制に返りたいということは、日本だけでなくて、各国の望むところでございますので、したがって、これから各国はやはりそういう国際通貨の安定ということを目標に、多国間のいろいろな折衝が始まろうというわけでございますので、必ずこれがうまくいけば早期に何らかの結論を得るのではないかと思いますが、これがもしそうでないというと、長期化せざるを得ないということは、やはり国際貿易にとっては非常な不幸でございますので、何としてもやはり今後必要なのは、国際協調の強化という方向であろうかと思いますので、日本も、決してかってな態度をとるというようなことはしません。あくまで多国間の話し合いの過程で十分協力の実は示すという覚悟をいま持っておる次第でございます。
  67. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 今度のこの国際通貨危機に対しまして、私ども非常にふしぎに思うのは、どうも日本の政府は右を見たり左を見たり、自分の自主的な態度というものはどうもちっとも感じられない。しかし世界的には、いま一番国際通貨の危機について日本が一番多く強く批判されている。こういう立場にあって、いまの問題にいたしましても、私はやはり日本が大体どのくらいまでにこの問題は片づけたいという意向というものを強く世界各国に私は示すべきである。一体いつ——いまの大臣の答弁でも、一体いつまでこういう状態なのか、もう少し——いつということは、何月何日ということはおそらく明示できないでしょうけれども、おおむね九月の半ばあたりとかなんとか、そういうおおむねの目標というものをひとつ示していただきたい。
  68. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 十カ国の代理会議が明日から開かれるということになっておりまして、日本からも大蔵大臣代理が参っておりますが、まだ各国ともそれぞれの国の態度というものは、この代理会議の前にどこも表明した国はございませんし、その会議でどういう意向が初めて出てくるかということも、この会議を開いてみないと、いまのところまだわからないという状態になっております。したがって、情勢が長引く情勢であるかい早期に解決できそうな情勢であるかということも、いまなかなか判断はむずかしいところでございますが、しかし、いずれにしましても、この十五日には蔵相会議が開かれる。この日取りはさまっておりますので、おそらくそのときまでには何らかの話し合いにこぎつけたいという努力は各国間で行なわれることだろうと思います。
  69. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 それからもう一つお聞きしたいのですが、大体政府の希望では、円の切り上げは大体何%くらいにしたいと、その点をはっきりお聞きしておきたい。
  70. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) これもどうもちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  71. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 時間がございませんので、さらにお聞きするわけにいきませんが、ひとつ、あとで資料として、時間がありませんからお示しいただきたいと思いますが、たとえば円切り上げ五%、課徴金一〇%ということで、日本の今後の経済成長率が一体どのくらいになるのか、あるいは円の切り上げ、課徴金なしで一〇%とした場合に、一体日本経済成長率はどのくらいになるのか、こういうものをひとつお示しいただきたいと思います。きょうこの場でお答えいただかなくてもいいことでございますから、委員長のほうでお取りはからいいただきたいと思います。  それから、私ちょうど二十七日から昨日まで、実は沖縄に行って参りました。沖縄の日本国土に対するところの、日本国政府に対するところの怒りというものはたいへんなものであります。連日の朝夕刊の新聞は、すべてこの円の切り上げ問題、生活の不安の問題、これに集中されております。おそらくきょうあたりから沖縄は旧盆に入るということで、本来ならば沖縄の主要な商店街の商売というものは、活況を呈するはずであります。ほとんどこれが日常と変わらない。いま金を使ったらたいへんだ、こういう状態であります。私ども、あちらこちらで接する人々からも、早く円とかえてくれないか、あなたは持っていませんか、こういう質問を実はたくさん受けたわけであります。またきのうは与儀公園でたいへん大きな集会を持たれました。おそらく、その代表を中心として、きょうあたり上京されて、政府の各当局に折衝をされる。こういうことで島ぐるみこの問題が取り上げられておりますし、たいへんな不安にかられているわけであります。ニクソン声明以来、リンゴ等におきましても、十四、五セントのものが二十セントから二十五セントになっている。あるいはバナナ、ミカン類、まあそういうものにいたしましても、大体バナナの場合にも、十八セントのものが二十五セントに上がっている。一割以上のものが上がっているだけではありません。各官公庁などの工事契約、こういうものもすでに停滞をして、業者が少し延ばしてくれ、もう少し先行きを見なければ工事契約をするわけにはいかない、こういう状態にもなっております。また、本土の輸出業者は、このドル差損についてはすべて沖縄側が持て、それを持つことができないということならこの契約はキャンセルするぞという、脅迫じみた言動もこの中にはあるわけでありますけれども、詳しく申し上げる余裕はございませんけれども、そういうことで、沖縄の怒りというのはたいへんなものであります。田中通産大臣もここにいらしゃいますけれども、二十五日ですか、通産大臣は沖縄の立法院の代表に対してもう絶対に円の切り上げはしない、一ドル三百六十円である。こういうようなことをおっしゃられていたそうでありますが、私は現場にタッチしておりませんからわかりません。あるいは郵政省の為替送金にいたしましても、初めは三百六十円で送る、こう言っていながら、三十日ですか、になりますと、それが三百四十二円ということにしてしまって、これも約束を裏切った。こういうことで、どこへ行きましても日本の政府はどうも当てにならない、こういう評判でありますけれども、ここでひとつお聞きしておきたいことは、いまの段階で沖縄のドルと円と一体交換できないものか。現地の代表の皆さんがマイヤー大使とお会いした結果は、非常にむずかしいことであるけれども、全部が不可能だということではないのだ、日本の政府がその気になればそれはできるのだ、こういうふうにマイヤー大使は代表におっしゃったそうでありますけれども、一体それができるのかできないのか。これを早くやってもらわなければいけないと思いますが、いかがでしょうか。
  72. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) まず、委員長から先にお伺いいたしますが、先ほど竹田君から要求されました資料は政府において御提出いただけますか。
  73. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 御要求のありました資料、たいへん大胆な試算にはなりますが、提出いたします。
  74. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) またその他の御質問に対しまして大蔵大臣
  75. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 一番最初に、先ほど答弁を差し控えさせていただくと言いましたのは、何かもう切り上げを、円の切り上げをきめておいて、何%にするかをちょっと言えないからというふうに取られると困りますので、はっきりいたしておきますが、切り上げるかどうかもこれはわかりません。ましてそれがその場合に何%とかなんとかいう——要するに国際間の調整の問題でございますから、今後どういうふうにこちらがするかということは、これからの交渉の過程できまる問題でございますので、切り上げないかもしれないという問題もございますので、この際は一切その種のことを御答弁を差し控えさせていただくという意味でございますのでよろしくお願いします。  それからさっき沖縄の問題について緊急対策を申し上げましたが、また誤解があると困りますので、たとえばさっきの中に、円建ての契約による本土からの輸入確保されるようにと、それでないというと問題解決しませんので、これが抜けましたから、一ぺん全部、きのうきまったものを、わずかでございますから、間違わないようにお読みすることにいたします。  「1、生鮮食品など生活必需物資の本土と沖縄間の流通を円滑にし、その値上りを抑制することに資するため、円建契約による本土からの輸入確保されるよう復帰までの間、品目を限り、所要の措置を講ずる。(琉球政府に設けられる沖縄生活必需物資価格安定資金(仮称)に十億円を補助する。)  2、復帰までの間、本土に留学中の学生について、おおむね従前の生活水準を維持することができるよう、国は必要な資金について琉球政府を通じ琉球育英会に補助する。(一億円)」  これが正確なことばでございます。  それからいまの最後の御質問の問題でございますが、アメリカの高等弁務官がどう言われたとかいう話も聞いておりますが、これは高等弁務官の言われたことばはともかくとしましても、問題としてはむずかしい問題でございますので、いま簡単に約束はできない。しかし、何回も申しますように、沖縄の人たちが最終的に迷惑にならぬような措置は十分政府において考えると、そういうことをいま申して関係者の御了解を願っておるところでございます。
  76. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 大蔵大臣、いま高等弁務官と言っておりましたが、これはマイヤー大使との話し合いですからお間違いのないようにしていただきたいと思います。  おそらく——あの、ちょっとここで確認しておきたいのですが、本土から沖縄が輸入をするものについては円建てだと——沖縄からこっちへ来るものはどうなんですか。それはドル建てですか、どうなんです。
  77. 林大造

    説明員(林大造君) 沖縄から日本への輸入がドル建てで行なわれているか、円建てで行なわれているかということでございますが、この点につきましては法制上は格別の制限はございませんが、実際問題としてはたぶんドル建てのものが多いと理解いたしております。
  78. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 どうするのかね、それは。
  79. 林大造

    説明員(林大造君) 沖縄から日本への輸入につきましては、ドル建てでも格別の支障はないと存じますので、現在業界からの要望も受けておりませんし、格別の措置を現在この段階でとる必要はないと存じております。
  80. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 まあおそらく私はそれだけではいまの沖縄の人たちの怒りというものを静めるわけにはいかないと思います。なるほど一部——その金額にいたしましても、とても損失を補い切れるものではないと思います。一般物価がこれによってたいへん上がってきておる、こういうことを考えてみますと、一般住民にとっては、彼らが汗水たらしてためた預金というものが五%なり一〇%なり一挙にしてこれを失うわけであります。われわれの考え以上に非常に切実なものがあるわけですから、この点についてはおそらく十一億円あたりでは全然沖縄の人々を満足させるものではなかろうと思うんです。これはもっとひとつ積極的に考えていただかなければならないと思います。  それから先ほど、いま直ちに円・ドルの交換はできないというお話でありますが、復帰時点においては一体一ドル幾らでかえるようにするわけですか。
  81. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) そういう問題につきまして、迷惑はかからないように特別の配慮をしたいといって、いまいろいろ本島の関係者と相談をしているということでございますので、まだその方向はいまのところきまっておりませんが、しかし、復帰時においてもこういう形で交換をしますというお約束は、やはりこれはむずかしくてできないだろうと思います。
  82. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 迷惑はかけないということばは何回か新聞に載り、沖縄の人もその点は耳にタコがいくほど聞いてるわけです。何ら具体的な方針を出さずに、変動相場制にして、そしていまなお迷惑をかけない、こういうことでは沖縄の人々の私は不安を解消することはできないと思うんです。いつごろまでに具体的に迷惑をかけないという措置をお出しになるつもりですか。これは私は時期の問題はたいへん重要だと思います。いかがですか。
  83. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まだ沖縄の中でドルはドルとしていま通用している最中でございますので、復帰のときまでにはこの処置は当然私どもきめるつもりでございますが、いま別にこの問題についての支障というものはございません。ただ、内地から輸入するものについて必需品物資の値段が上がるというようなことは、沖縄の人たちの生活影響がございますので、そういう問題についての配慮は私ども十分いたしますが、いまドルはドルとして通用しておるのでございますから、差し迫った問題ではないと考えます。
  84. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 差し迫った問題ではないといって、きわめてのんびりかまえていらっしゃるわけでありますが、現地の人はドルを持って、一体このドルがどうなるのか、どのくらい値段が下がるのか、生活はどうなるのかということにきわめて不安を持っているわけです。大蔵大臣そこにどっかとおすわりになって、きわめてのんびりしたお顔のように私は拝見します。現地の人々は、一人一人が内地から行ったということになりますと、何とかドルをかえてくれないか、全くその点はきわめて不安の状態におとしいれられているわけです。ただ単にそのときになればというわけです。私はもっとその点は前に、こうこうこういう方針をとるのだということを明示しなければいかぬと思うのです。それば大体どのころにという時期的にもわからないわけですか、どうなんですか。復帰時点にならなければわからない問題なんですか、どうなんですか。
  85. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 沖縄の復帰要綱の第三次の要綱が大体大詰めになりましたが、これによりまして沖縄の人たちは、日本に復帰した場合に、いままでのいいところはわりあいに温存されて、復帰して不利だというところについてのいろいろな配慮がなされて、事実上不利についての対策は十分考えられているというようなことで、この復帰要綱によって非常に安心されたという報告もきておりますが、そうしますというと、残るところはいまの問題だけで大体あろうと思いますが、それはひとつ決して悪く計らわないからというので、私ども関係者に毎日お会いしてその説明をいたしておりますが、大体最近はけっこう信用していただけるようになっていると思いますが、必ずこれは御迷惑のかからないようにわれわれは善処するつもりでおります。
  86. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 これもたいへんのんびりしたお答えで、私はがっかりしているわけですが、では、なぜ沖縄の本島全体に島ぐるみでという形の運動がなされているのか、これは自民党の人ですら、とにかく何とかしなくちゃならぬということでたいへんな騒ぎです。あるいは主婦の人々というのは、もうたいへんな動員のしかたでこの問題をやっているわけです。それにいままで日本の沖縄県民に対する措置というものが、私も当初言いましたように、必ずしも信用されているとはいえないわけであります。まあ、かつては若干信用されていたかもしれませんが、いまの時点においては圧倒的に信用していない、これが私は実態であろうと思います。  そういう点では、時間がありませんから、もうこれ以上お聞きはしませんけれども、早期にその問題を出してあげなければ、せっかく日本に復帰してくるという県民がやはりほんとうに喜んで帰ってくるという事態には私はなり得ないと思う。私は新聞も持ってきましたが、新聞の大半がこの問題です。いまほかの問題を書いている余裕はないということです。そういうことをひとつ大蔵大臣ももっと心に銘記をして、この問題については復帰の時点まで信用してくれといってもなかなかそうはいかないです。その点はもう少し真剣に考えてほしいと思うのですが、どうですか、それだけお聞きして終わりたいと思います。
  87. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私も毎日そのお話を聞いておるところでございますから、真剣に考慮しているつもりでございます。
  88. 竹田四郎

    ○竹田四郎君 じゃあ、終わります。
  89. 多田省吾

    ○多田省吾君 いま竹田委員から沖縄対策の追及がございましたので、私も引き続いて沖縄問題についてお伺いしたいと思います。  私も八月の十七日から二十三日まで党の調査団長として沖縄に調査に行って参りました。いままでもお話がございましたように、昭和二十年のあの沖縄戦争の苦しみ、あるいは二十六年間の異民族の支配下にあった苦しみ、そしてまた現在は干ばつ、水不足あるいはパインやサトウキビは全滅する、毒ガス輸送では午前三時から付近住民が起き出して、握りめしをつくって遠くまで退避する。その際相当老人の方や子供さんにけが人も出ております。また、基地は縮小されるといいながら、事実はほとんど縮小されない、返還される基地はコザの憲兵隊詰所十五坪というような返還のしかたでございます。そうして基地地主も三万八千人、ほとんど引き続いて米軍あるいは自衛隊が使用することに強く反対しております。  また毎年二万人の若い労働力が本土に来ておりますし、本土の経済進出によって沖縄の経済も危機に瀕している。その上に今度のアメリカの新経済政策によって、ドル防衛政策によって、またさらにわが国のとったこの変動相場制によって、どれほど沖縄の方々が苦しんでおられるか、いままでお話もたくさんあったとおりでございます。そしてその上に、沖縄の復帰対策要綱の第一次分にははっきりと、通貨交換は、公定の交換比率を基準とし、交換の手続については県民生活に支障のないよう円滑に実施のことと、このようにありますし、佐藤総理は屋良主席に対して一ドル三百六十円を約束したとも言われております。またさらに佐藤総理は、復帰前に円の切り上げはやらない、こうたびたび言ってまいりました。さらに山中長官は、復帰前に円の切り上げがあれば腹を切るということで、沖縄の方々はこの腹切り論で、もう十日前ごろは、ずいぶんうわさが立っておりました。しかし山中長官に腹を切ってもらっても何の役にも立たない、このように言っております。しかるに水田大蔵大臣は、八月二十七日のあの変動相場制になったときの談話では、直接沖縄に触れておりません。記者会見で追及されて初めて困難であると、このように円とドルの交換の困難さを答弁しているにとどまっております。  昨日の衆議院の大蔵委員会におきましても、二見委員がこの円・ドル交換について質問したのに対し、アメリカと交渉する問題ではないと、このように交渉さえ拒否している。これは非常におかしい態度だと思う。いまも竹田委員から話がありましたように、沖縄の議員の方々がマイヤーアメリカ大使に陳情に行ったときに、むずかしいが不可能ではなかろうと、このような答弁があった。それなのに、日本大蔵大臣が交渉する問題ではない、アメリカに交渉さえしないという態度は、私ははなはだこれは遺憾だと思う。まあ政府は、当然外国資本の投機等に対しても心配しておられるかと思いますけれども、それはアメリカ政府にも強く要求して、また本土からのそういう投機は絶対ないように、本土は留意してやるべきだと思うんです。  琉球大学の経済研究所の久場政彦教授らの試算では、もし一〇%の円切り上げが行なわれれば、まあ仮定の問題でありますが、五百十六億円の損害を受ける。貿易面で百十七億円、預金や貯金で三百十九億円、その他現金通貨で数十億円、こういう試算を出しております。十三年前、昭和三十三年にB円をドルに切りかえた際は、向こうアメリカ日本政府に了解を求めたと伝えられておりますけれども、そのとき同意を与えたのは、当時の佐藤大蔵大臣であったと、このようにも言われております。こういう現状において、投機がないように十分留意しながら、やはり円・ドル交換をこの際政府はアメリカに強く要求すべきである、このように思います。あの国政参加だって超党派の努力によって実現したではありませんか。まあ先ほどからの大蔵大臣の答弁がありますけれども、私はもう一回強く大蔵大臣にこのことを望みたいわけです。  まあ緊急対策にいたしましても、十一億ドル使ったと申しますが、貿易面の損害は考えられるだけでも百十七億円だ、もう十分の一以下にしか当たらない、このように沖縄の方々は言っております。  またさらに、この次やりますけれども、ドルの買いささえによってすでに二千億円損したような姿があるじゃないか。それなのに、日本政府はどうして沖縄にこのような冷たい態度をとるのか、もうすでに爆発寸前でございます。何といっても大蔵大臣として、私は沖縄の方々のしあわせを第一番に考えて、この対策を講ずべきではないか、このように思います、いかがでございますか。
  90. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 最初のお約束は、復帰のときに交換するということでございますので、復帰のときに決して御迷惑をかけないような措置を私どもは考えるということを言っておることでございまして、当時においては、日本がこの平価に変動があるというようなことの予想もしなかったでございましょうが、御承知のような状態になってきたときに、一番世界でドルを高い値で取りかえるということを、いまここではっきり宣言することによって、どういうことが今後出てくるかというようなことについても、いろいろ考えなければならぬ問題がたくさんあることは、御承知だろうと思います。  沖縄には為替管理はございませんし、いろいろ事情を見ますというと、一番高い値段で取りかえますというような形のことを、いま私どもが言うときではない。しかし、沖縄の方に、復帰のときにはこうすると言った。いろいろなことも承知しておりますので、御迷惑はかけない措置をとるということを言っておるわけでございまして、このことは、私どもの考えでやれることであって、別に施政権者と交渉していろいろやることでもございません。これは私どもが沖縄の人たちのために、どうしてもこういうことをするんだと、決して迷惑はかけない、これがいい措置だということを私どもが考えるときには、大体やれますので、これをアメリカ政府に、今一々相談してやるというような措置をとらなくてもいいというのが、私の考えでございまして、こういう問題は、むしろ私は相談しないでやるほうがいいんじゃないかとすら思っておるくらいで、決してこれを後退させるために、アメリカへの相談を渋っているんだというようなことでは決してございませんので、この点は誤解のないようにお願いしたいと思います。
  91. 多田省吾

    ○多田省吾君 私は強く、円とドルの交換が早急に行なわれることをお願いいたしまして、次の問題に移ります。  沖縄の為替差損につきましては、今後それを補償する特別措置を講じていくお考えがあるかどうか、これはぜひ講じていただきたいと思います。現在だって相当な差損が生じておると思いますが、この問題についてはどうですか。
  92. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 為替差損という問題につきましては、内地の、本土の国民も沖縄の国民もこれは同じでございますので、為替差損というようなものの補償とかいうようなことは、いまのところ考えておりません。一方、もし円が実質的に上がるというようなことでございましたら、上がったときの円というものは、いままでの円よりも強いのでございますから、これが対外的な力と申しましたら、いままでの円よりは外国品物を多く買える力を持つというようなことでございまして、実質的には円は非常に強いものになってきて、差損ではなくて、円自身はそういう差益も持つというようなことがございますので。ただこれによって、一部の人に為替差損金が出るからといって、それを全部補償するというような考え方を、私どもは今回のこういう措置に伴ってとるということは考えません。しかし、現実にそういうことによって収益が減り、損をこうむるというものについて、どういう対策をとるかと申しますと、これは一方差益の出る人もございますので、これはやはり税で取ることが正しいでしょうし、同様に差損を生ずる人については、これは税によって救済の方法をとることがいいと思いますので、税制の適切な活用ということが私は必要だと、いまそういう方向で検討中でございます。
  93. 多田省吾

    ○多田省吾君 これは私は、もしこの円とドルの交換がなされないときには、という前提があったわけでございますが、まあ大体了解したわけですが。  もう一つ問題は、沖縄からアメリカ輸出する際にも輸入課徴金が取られるという状態があるわけでございますが、これについては、福田外務大臣もトレザイス国務次官補に、沖縄の輸入課徴金は取らないように約束するように要望した、あるいは大河原公使もこれを強く言っている、こういう話がございますが、私は、アメリカの施政権下にあるこの沖縄において輸入課徴金を取る、これは非常におかしい問題だと思うのです。これは、日本輸入課徴金もなるべく早く撤回するように望むことは当然でありますけれども、特にこの沖縄についての輸入課徴金は、政府の大蔵大臣、外務大臣等の一体となった努力で早急にこれは撤回させるようにお願いしたい、このように思うわけでございますが、その見通しはいかがでございますか。
  94. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 現に沖縄はアメリカの施政権下にあるわけでございますから、返還以前の——見方によってはアメリカ国内と同じとも言えるわけでございます。日本に返還を予定しておるからというゆえをもって、沖縄からのものに対して課徴金を課すということ自体が非常におかしいことでございまして、もうすでに課徴金の全面撤廃の申し入れよりも、それ以前の問題として、課徴金の撤廃に対しては強く申し入れておりますし、また日米経済閣僚会議の主要な議題として、各閣僚から一斉にこれが免除に対して、こんな制度をかけること自体がおかしいということを、まあアメリカは画一、一律的ということを真に証明するための一つの手段として考えたということもわかりますが、これはもう積極的な撤廃交渉を行なうということでございます。
  95. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 関連。日銀総裁に一つお伺いしたいんですが、復帰前の円とドルの通貨の即時交換、この問題がいまも質問にあったわけでありますけれども、それについて日銀のほうとしてのスケジュールは、四月一日を一つのめどにしたいわゆる通貨交換のスケジュールだと、こういうような話も聞いているんですけれども、一体日銀としてその通貨交換を早めていくというような考え方は現在のところはないんですか。  また、実際通貨交換の時期は一体いつごろにしようというように考えられていらっしゃるのか、この二つを伺いたいと思うのです。
  96. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) 沖縄に流通しておりますドル紙幣、ドル貨幣、そういうものを円に取りかえます仕事は、非常に島がたくさんあります関係もありまして、相当時間をかけて準備をしなければ実行できないものでございます。しかも、現実にそういう日本円紙幣その他を持って参りまして向こうで安全に保蔵しておきます施設も全然ございません。いまは、アメリカの銀行券はアメリカの基地の中に保蔵されておりまして、それは日本としては利用できない性格のものでもございます。そういうことを考えますと、私どもいま鋭意準備を進めておりますけれども、大体いまお話がございました来年の四月には何とか間に合わせられるというめどは立っておりますけれども、これをいますぐ早く繰り上げるということは、現状においてはなかなか困難でございます。
  97. 多田省吾

    ○多田省吾君 次に私は、八月の十六日から二十七日まで、日曜を除いて十一日間続きましたいわゆるドルの買いささえの問題についてお尋ねいたしますけれども、まず私は、政府が初めは非常に自信を持ってこの為替市場を開き続けたわけでございますけれども、結局、日本為替管理は鉄壁であるし、投機資金が殺到するおそれはないとか、あるいは流動性が過剰になってもインフレの心配はないとか、あるいは過剰流入したドルラッシュでも、日銀の振り出し手形売却によって吸収できるとか、まあこういった考えで為替市場を開き続けたんだと思いますけれども、これによってすでに八月中に四十六億ドル、またこの十一日間で約四十億ドルのドル買いが続いた、こう言われておりますが、現在の時点から判断すれば、日銀並びに大蔵省のこれは誤算ではなかったか、見通しが誤ったものではなかったか、このように思いますけれども、これは日銀総裁、どのように思われますか。
  98. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) 先ほど通産大臣からお話がございましたように、こういう多量のドルの売却がありました裏には、日本の相当多額にのぼっております輸出代金の売り、売却、これが大部分を占めておったわけでございます。したがって、こういう金額につきましては、われわれとしてはもちろんある程度予測はしておりました。ただこういう問題がいろいろ話と申しますか、変動相場に移るかもしれないというようなうわさが出ますと、手元に持っておりますものもできるだけ早く売りたいという考え方が広まってくるのも、これは自然の勢いでございまして、そういう部分がまた乗っかって金額をふやしたことは確かにあったと思います。そういう意味で、いまから考えて、あの市場を引き続きあけていたことがよかったか、悪かったかという問題に相なりますが、しかし先ほどもお話がありましたように、日本のいろいろ貿易の構造から考えますと、やはり市場は引き続いてあけておったほうが結果においてはよかったのだ、大局的に見てよかったといまでも考えております。
  99. 多田省吾

    ○多田省吾君 きのうの衆議院の大蔵委員会でも、大蔵大臣が、この為替市場を開いていたのは取引の混乱を防ぐためである——ところが堀委員の追及から、これは中小企業を守るためだ、このように弁明したわけでございますけれども、私たちは当然十六日の午後あるいは十七日あるいは十九日の正午等の時点で、欧州諸国等の動向を考えながら市場を閉鎖すべきではなかったか、このように考えるわけであります。  まあそれはそれといたしまして、特に私はふに落ちないのは、いま日銀総裁が変動為替相場に移るのではないかといううわさが流れて、ずいぶんドル売りが行なわれたと、はっきり申されましたけれども、十六日から十九日午前中まで約二十億ドルのドル売りがあり、十九日の正午に規制強化した。ところが二十四日に至って、日銀の外国為替資金貸しの借り入れを期限前でも返済できるように規制をゆるめた。ところが二十六日は、無制限にこの返済を認めるという措置をとった。大幅にいわゆる規制緩和が行なわれたわけでございます。ところが二十七日の午前十時半ごろ、為替市場では、もう日銀総裁のおっしゃったように、変動相場に移るのではないかという思惑から大量のドル売りが行なわれた。当日は平常より二十分市場取引を延期いたしまして、三時半から三時五十分までの二十分で二億ドルよけいに売られた。で、二十七日一日で十二億五千万ドル売られた。二十六、二十七両日で十八億ドル近く売られた。このようにいわれております。  この問題でいろいろうわさが流れているわけです。二十五日に大蔵大臣と日銀総裁がすでに変動為替相場に移行することを大体きめたのじゃないかとか、それが週末の二十八日、土曜日の午後に行なわれる予定ではなかったかとか、あるいはそのうわさが流れてドル売りがあまりにひどいので、二十七日の午後八時四分に急遽やったのではないか、こういういろいろなうわさが流れて、国民にとってもなぜ為銀や商社だけをもうけさせる必要があるのか、二十六、二十七の両日だけで十八億ドルといえば、変動為替相場に移って五、五%いわゆる円高になった姿を見れば、約それだけでも二百七十億円という金が、為銀や商社がもうけていると申しますか、あるいは為替差損の損害をなくなるようにできたとか、いろいろいわれておりますけれども、そういう二十六、二十七日になぜそのようにいわゆるドル売りが殺到したかという問題です。  そして、その結果、やはり、先ほどもいろいろ話がありましたけれども、結局、円の切り上げが行なわれるとすれば、また現在の変動相場制の状況下にあっては、これが全部国民の損になってしまうわけです。先ほど大蔵大臣は、国民の損とはいえないとおっしゃいましたけれども、事実は、国民の損になる可能性が強いわけです。その問題に対してです。そういう状況があったのかどうか。そして、二十四日と二十六日に、続けてどうしてそのように緩和をしたのかどうか。日銀総裁にお伺いをしたいと思います。
  100. 佐々木直

    参考人(佐々木直君) ただいま、市場を開いておりまして、その間に外国為替資金貸しの返済を緩和して、そのためにドル売りがふえたのではないかと、こういう御質問であったかと思うのであります。  実は、外国為替資金貸しと申します制度は、日本輸出を振興させるためにつくられましたいわゆる制度的なものでございまして、日本為替銀行が日本銀行から円を借りまして、その円で外国向けの輸出手形を買い入れる制度でございます。大体、輸出手形というものは、四カ月ないし五カ月ぐらい先で代金が入るような、いわゆるユーザンス手形になっておりますので、その期間は、ドルの先物が買い入れを予約されておるかっこうになります。そういうことで、為替銀行は、それだけのドルの買い持ちが生じておるわけでございます。最近は非常に減ってまいりましたけれども、その金額は、一兆円を一時こえておりました。三十億ドル以上のものがあったわけでございます。しかしながら、これを早く返すということになりますと、それだけドルが早くこちらの日本の手に入ってくることにもなりますので、その返済につきましては、期限がきたものしか返済を認めないということでやってまいったわけであります。  ところが、ニクソン声明以後、日本為替銀行が外国銀行から金を借りましてこれを返済し、あるいはそのドルをこちらに売ってくるというような傾向が見えましたので、先ほどもお話がございましたように、為替銀行の外銀借り入れを増加をとめるという措置を講じました。そういう措置を講じましたので、この資金貸しの返済を緩和いたしましても、それによってドルが大量に入ってくるという道がふさがれておりますので、緩和をはかったわけでございまして、この緩和を二段がまえにいたしましたことは、一ぺん緩和してみて、その模様を見てさらにもう一段の緩和をはかったほうが市場に対する影響が軽かろうというふうに考えて、二段がまえをとった次第でございます。
  101. 多田省吾

    ○多田省吾君 結局、それで、日銀は、国庫に対する納付金を減らしてまいりますし、また、大蔵省も、外為特別会計でもし赤字なんかになれば、補てんしなければいけない。国民の損ということになるわけでございます。  先ほど大蔵大臣は、立ち入り検査をしたと申されましたけれども、二十六日、二十七日の時点においても立ち入り検査をなされたのか。そして、いわゆる輸出前受け書がきちんとしたものであるかどうかをチェックされたのか。うわさによれば、もう日本の大きな商社は、外国の支店等に言いつけて相当ドルを借りあさったとか、あるいははっきりした品物の名前も書かないで、商品なんという名目で輸出前受け書に書いてあるとか、そういううわさまで流れている。こういう乱雑な姿になったらこれはたいへんなことだと思う。大蔵大臣は二十六日、二十七日の時点で立ち入り検査をしたかどうか。そして輸出前受け書等をチェックしたのかどうか。お答え願いたいと思います。
  102. 林大造

    説明員(林大造君) 大蔵省がいたしました為替検査についてでございますが、今回の通貨不安が起こりまして、各方面から外貨が流入してまいりますので、大蔵省といたしましても、累次にわたりまして、銀行及び商社につきまして——商社につきましては通商産業省と共同でございますが、検査をいたしました。その結果、特に法律に違反するという事件は見当たらなかったわけでございますけれども、従来から、輸出前受けにつきましては、その取り扱いが、必ずしも完全に、何と申しますか、今日のような事態を予想したような厳格なしきたりになっておりませんでした。そこで、この輸出前受けという形をとります資金の流入につきまして何らかの措置をとることが必要であるということを考えまして、通商産業省にお願いをいたしまして、外国為替銀行及び商社を集めていただきまして、手続に特に留意するようにということを注意していただきました。で、その後いろいろ考えました結果、とりあえず、九月の一日以降外貨で受け取りました輸出前受け金を円にかえることにつきましては、従来自由になっておりましたのを、当局の認可にかからしめるというような措置をとった次第でございます。
  103. 多田省吾

    ○多田省吾君 先ほど戸田委員からも資料の要求がありましたけれども、私はやはり、商社ごとというわけにはいかないと思いますが、できるだけ詳しい資料を、契約書の資料をお願いしたいと思います。これはあとでお願いしたいと思います。  それから、大蔵大臣に最後にお願いいたしますが、一つは、やはりこのような不景気を回復するためには、どうしても消費刺激、景気刺激をしなければならない。そのためには、所得税減税が最も必要だと思います。大蔵大臣は、昭和四十七年の一月から十五カ月の予算を組むとも申しておりますが、その際、この減税額、一般新聞では、所得税減税三千億あるいは法人税減税二千億とか、五千億の減税だとか、こういうような観測も行なわれておりますけれども、具体的にはどのようなお考えに立っているのか。  それからもう一点は、いま、大蔵大臣は否定されているようですが、デノミの問題があります。これは、流動する経済情勢のもとにおいては、私は、そういう論があるのはよくないことだと、こう思います。もう少し安定してから、そしてしっかりした内閣ができてから、また便乗値上げなんかにはならないような態勢、そして国民に不満をあるいは不安定を与えない状況をつくってから、国民に強くPRしてからやるべきだ。このように思いますが、この二点いかがでございますか。
  104. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 減税の額についていろいろ新聞に想像の記事が出ておるようでございますが、まだ、私どものほうで、どの程度の減税をするかということについては、現在固まっておりません。しかし、構想としましては、今度の国会に臨むにあたり私どもは補正予算を準備するつもりですが、ただばらばらな場当たりの補正予算を出すということを避けまして、この不況対策として、また先ほど申し述べましたような一つ財政方針から見まして、来年度一ばいを入れて、今年度からの少なくとも十五カ月予算とでも称すべきものを構想して、そのうちの一その構想の一部としての三カ月を本年度においてすでに実施するというような補正予算をお願いしたいというような構想でいまいろいろ作業をやっておるときでございますので、したがって、その間、減税の幅をどうするということは、きまるところまではまだいっておりません。しかし、この不況克服のためには、ひとり公共事業の問題だけではございませんで、国民の購買力によって需要を刺激するということも一つのりっぱな対策でございますので、そういう意味で所得税の減税も十五カ月構想の中では当然考えたいと思っておるところでございます。  それからデノミの問題、これは先ほど申しましたように、必ずしもこの機会に一緒に考えなければならぬ問題と限ったわけではございません。しかし、いつの日かはこれはやはり私は考えていい問題であるとは思いますが、今度のこの措置と一緒にこれをするということは避けた次第でございます。
  105. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) なお、ただいま多田君から資料の要求がございましたが、政府にて御提出いただけますか。
  106. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) いまの資料の問題でございますが、個別のものは出せないけれども、検査の結果によって得た例示的な資料というようなものをまとめて出すことは可能であるということでございますので、これはまたあとでひとつ御相談の上、資料をつくらせていただきたいと思います。
  107. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 質問の時間がきわめて限られておりますので、これまでの質問と重複する点は避けながら、二、三政府の御見解を伺いたいと思います。  その前に一つ確認として伺いたいんですが、今回のニクソン大統領の新経済政策をどう見るかという問題です。先ほどもお話がありましたように、幾つかの経済政策がからみ合ったものだと思いますし、昨日の論議では、そこの中でドル防衛が一番大きな重点になっているんだという御答弁もあったように記憶しております。それはドル防衛が大きな一環であることは否定はしませんけれども、あわせてアメリカの失業問題の解決、さらには国際収支の改善——まあこれが今回の新経済政策ニクソンが期待する非常に切実な問題だと私は思います。御異論はもちろんないと思いますが、一応念のために確認としてお伺いしたいと思います。
  108. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ニクソン声明の中にもございますし、またコナリー財務長官も特にこれに説明を加えておりますが、非常に多くなった失業率、それから強いインフレ傾向、それから国際収支の赤字と、これを同時に一挙に解決したいというための総合政策であるという説明をしておりますが、やはりそのための思い切った措置であったと私どもは考えております。それなりにアメリカの努力というものは私どもはやはり評価すべきであろうと思いますが、それによってこうむるいろいろな問題について、また私どもが主張すべき問題はたくさんございますので、それは別問題といたしましても、一応これは思い切ったこの三つの解決策を打ち出したものであるというふうに評価しております。
  109. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 結局アメリカの失業問題、それから国際収支問題、これをいまおっしゃったように、何とか一挙に解決したいということで金・ドル交換の一時停止あるいは輸入課徴金一〇%というたいへん非常識なと言えるような手段をかざして諸外国に対応策を迫っているというのが現状だと思うんです。そのときに対応策を見るニクソンの目というのは、やはりそれがアメリカの失業問題の解決、さらには国際収支の改善に具体的にどう結びつくのかということではないのかと思うんです。したがって、極端なことを言うと、手段はどうでもかまわない、とにかくアメリカの国際収支が改善され、失業問題が解決されればいいとさえ思えてならないわけです。そういうことに対して、これまで政府がこのニクソンの新経済政策に取り組んできた取り組み方というのは、どちらかというと国際通貨の問題なんだと、円の問題なんだという角度で、その面を非常に重要視し過ぎて取り組んできたような気がいたします。  大蔵省のいただいた資料を見ましても、ニクソン経済政策の中身として失業対策インフレ対策あるいは国際収支対策とこう分類がありますけれども、その国際通貨問題の一環として輸入課徴金が整理をされている。ところがニクソンの言っていることばをそのまま反すうすれば、国際収支の改善、失業問題の解決、さらにはドル防衛の一環として次の一つ政策を私は打ち出したいと言っているわけですから、当然のこととして失業問題、国際収支問題とからんでくると思うんです。そうすると、それを円の問題としてかりに受けとめたといたしますと、重要な問題というのは、事実において対米——日本からのです、対米輸出が減り、アメリカからの輸出がふえるという事実関係が生まれない限り、やはりニクソンとしては困るということになりますと、ニクソンがなるほどと言えるかりにたとえば円の切り上げということになりますと、日本輸出打撃を与えるまでの大幅切り上げをしないと、これは話が成り立たぬということになると思うんです。ところがそれはいやだ、円はあくまでも平価を維持する、あるいはやったとしても小幅の切り上げなんだというと、当然のこととして課徴金は存続されてまいります。こうなりますと、今度のニクソンの新経済政策を、国際通貨の問題、円の問題として受けとめてしまうと、かえってにっちもさっちもいかなくなるんじゃないか。これは確かに片方では国際通貨の重要問題が提起されていますからそれはあるとしても、対米関係ということでつかまえますと円問題はきめ手にならないし、交渉材料に使ってはならないと私は思うんですが、大臣の御見解いかがでしょうか。
  110. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) その点はアメリカのほうの考え方も私は最近ややはっきりしておるように思います。と申しますのは、日本はすでに対外八項目の政策発表していると、こういうものを日本がやるということの評価によって、この平価の調整問題というようなものもどうにでもなることであって、これは最後の問題であって、決して日本平価を何%切り上げろとかなんとかいうことをアメリカは言わないということをはっきり言っておりまして、そういう問題は二国間の問題ではないんだと、やはり国際情勢の場における問題であるというようなことまではっきり申しておるんですから、私は、向こうのもう受け取り方も——私どもの受け取り方もそうでございますが、向こうも十分その点はもう本質を承知しておるものと考えております。
  111. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 円問題が対米関係の中で最初に登場するわけではないし、これは多国間のこれからの国際通貨のあり方の話として論議をしていくんだという話はよく理解できると思います。  そこで、また話が振り出しに戻りまして、アメリカの失業問題あるいは国際収支問題ということ、その直接の原因が日本にあるかどうかは大きな論議があるところだと思います。しかしそういう雰囲気で現在日本が見られていることは事実だと思うんですが、かりに事実関係として失業率を引き下げたい、あるいは国際収支を改善したいと、来年の大統領選挙を控えてニクソンが真剣に考えているとしますと、判断として今回のニクソンの新経済政策というのは日本に対する要求の全部なんだろうか、一部なんだろうか、今後さらに第二、第三がやっぱり予想されるのではないかという取り越し苦労も私はあり得ると思います。  そういう状況の中で、これは通産大臣に伺いたいんですが、昨日輸入課徴金はあと六カ月ぐらいまあ続いたとしても、そんなところではないかと御発言になったという記事がございましたけれども、これはできるものならそうしたいんだということなのか、あるいは何らかのほかの条件があって私はそう思うということなのか、一応これも念のために伺っておきたいと思います。
  112. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 輸入課徴金制度は望ましい姿ではないということでございます。特にアメリカは自由貿易の促進拡大の論者であり、ケネディラウンドの推進の中心勢力でございます。また一九四五年第二次世界大戦後にIMFとか世銀とか第二世銀とかガットとか、そういう国際調整機関の主要的役割りをなして、貿易拡大中心勢力をなしてきたものでありますから、いかにつらくとも課徴金制度をみずからとるというようなことが望ましい姿でないことは言うをまちません。ですからニクソン大統領はこの政策をみずからとりながらこの政策に心から賛成をしておらないということを確信をいたしております。もう当面する状態がやむを得ない、真にやむを得ない、アメリカだけではなく、まごまごすると縮小均衡へ移らなければならないし、国際機関も全くその機能を停止をしてしまうということを前提にしてこの処置がとられたものだと理解をしておるのでございます。  ですから、六四年にイギリスがポンドの問題で課徴金一五%を取りましたが、これは一年、二年目は一〇%であります。ガットから通告を受けようとする瞬間、課徴金を廃止をしたわけであります。また、カナダドルの場合は一年でございます。これはちょうどイギリスの半分であります。自由貿易拡大のチャンピオンであるアメリカが、キーカレンシーであるドルの価値維持のためであるとは言いながら、どう考えてみても、常識的にはカナダの半分以上のものをとることはできないだろう。これは学問的にも、日本の立場からもそう考えておるのでございますが、しかし日本が、あなたがいまいみじくも指摘をされたように、国際通貨の中で大きな犠牲を払ってくれない限り、場合によってはアメリカのよきパートナーとして、日本が指導的立場を押えておって、この問題を解決しない限り、一年でも二年でも続くんだということであるならば、この政策の前提になるアメリカ経済がもっとたいへんな状態であるということになるわけでございます。ですから、われわれは課徴金は全面的に廃止を求める、そして国際通貨制度という新しい問題にも対処しなければなりません。SDRの制度はもうすでに検討したわけでございますから、そういうような問題もあわせてこの問題を解決するのであって、課徴金は全廃を要求をしてまいるということは筋だと思います。
  113. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 時間がございません。なるべく簡潔な答弁をお願い申し上げます。  そこで、大蔵大臣に円の競争力をどう見るかということをひとつ伺いたいと思います。前回の大蔵委員会大臣の所信表明演説の中で、また先ほどもございました、これまではしたくてもできなかったけれども、これからはできる時代に入ってきた、積極的にやっていきたい、同感な気がいたしますけれども、引っくりかえしていくと、これまではしたいことも十分できなくて、その結果として、言うなれば今日の見かけの円の競争力がいかにも高いような印象があるのではないか。これから、先ほど大臣が御説明になったように、社会資本投資、公害対策等を含めて積極的にやっていくんだということになりますと、これは将来の円の競争力というのは低下する方向だと思います。こういう判断についてまず伺いたいと思います。
  114. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 当然社会資本の蓄積というようなことに要するコスト分が加わったとすれば、競争力はいまのようであったかどうかということを考えますと、こういうものをやはり加えなければならないということになりますというと、それだけいままでと違った競争力になるんだと、しかし、それがほんとうの姿になって、円の体質が変わっていくのだということで、ほんとうの姿になるのはそういうことであるというふうに私は思っております。
  115. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 ほんとうの国際競争力の姿になっていくんだと、またコストに入るものとして公害対策、さらに社会資本投資等と先ほどおっしゃいました。  一つ抜けていることを最後に伺いたいのですけれども、これまで円の競争力をささえてきたものはたくさんの働く仲間、人たちであったと思います。その意味でこれからの労働時間、あるいは賃金水準ということも、円の力を本物にしていくのだということの重要な中身だと私は思うのです。それを含めて、これからの円問題にどう取り組んでいくかということになりますと、結論を急ぐようなんですが、とにかく円問題については、あくまでも慎重に対処すべきであって、しかも産業政策経済政策はきわめて果断なものでなければならないと思うのです。  そういう前提において、たとえば週五日制なり、あるいは労働条件、賃金の引き上げということについて、昨今いろいろな不況風が吹きますと、来年はどうかなんて先走り苦労が多いんですが、先ほど大臣がおっしゃったほんとうの力にしていくんだという意味では、これから賃金ももっと上げていかなければいけないでしょうし、労働時間もやはり国際水準化ということが私は要請されると思います。これは所管事項とは違うのかもしれませんけれども、これからの経済政策も進めていく上で重要な問題だと思いますので、時間がございません、大蔵大臣、それから通産大臣一言だけこの労働時間並びに賃金についてのこれからの考え方を伺っておきたいと思います。
  116. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 大体おっしゃられるとおりだと私は思います。
  117. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今度のアメリカ政策の中で、一番われわれが考えなければならない問題として指摘をされておる中に、日本輸出はソシアルダンピングだと、こう言っております。私たちは必ずしもそういうものではないと思います。ないが、しかし、その指摘の中に具体的な指摘もあります。住宅もない、社会資本も不足である、もちろん社会資本の不足に対してはアメリカ日本は四対一であります。そういうようなものを全部、社会環境を整備をすることに努力をすれば、輸入もふえて日米間の輸出入のバランスはとれて、こんなことにならないですむかもしれないとさえ指摘をされておるのでございますから、今度こそそういう面もしありとすれば、われわれも国内政策の中でウエートを置いて施策を行なっていかなければならないということは事実でございます。アメリカの四千ドル国民所得に対して、千六百ドルであるということでありまして、いまのままで一〇%成長を続けていっても、十五年かからなければアメリカ並みにならないということでありますから、とにかく国際競争力を維持し、確保していくという前提の中で、指摘をせられるようなもののレベルアップに全力を傾けなければならぬことは言うを待たないということであります。
  118. 渡辺武

    ○渡辺武君 アメリカニクソン大統領がドル防衛政策発表した十六日の日から、大蔵大臣が変動相場制の採用を発表をしました二十七日の日まで、わずか十二日間の間に、政府・日本銀行が買い応じたドルは約五十六億ドル、実質は四十億ドルとも言われておりますけれども、とにかく大量のドルを買い応じたわけです。国民が、これは政府自身も結託したアメリカ日本の大企業の大規模の為替投機じゃないかという疑いを持っております。なぜかと申しますと、こんな短期間の間に、これだけ大量のドルを動かすことができるというのは、これは大企業以外にない。しかも、いまの為替管理制度のもとでは、政府や日本銀行の助けがなければこんなことはできょうはずはない。で、伺いますけれども、この十二日間にふえたドルの内容——内訳ですね、これをお聞きしたいと思います。
  119. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先ほどから申しましたように、為替銀行が顧客から買い取ったドルが大部分で、七、八割は買い取ったものである。その残りが為替銀行自身で手持ちしておった大体ドルだろうと思います。先ほど通産大臣が言われましたように、十二、三億程度が大体為替銀行の手持ちドルであったろうと思います。そのあとは為替銀行が顧客から買ったドルでございますが、そのドルのうちの相当部分が、いま言われております輸出前受け代金であるということは間違いないだろうと思います。先ほど申しましたように、私どもこの内容について相当調べて、通産省と一緒にいろいろ当たって、商社に対してもいろいろ警告して、十分為替銀行にも気をつけてもらっておりますが、一、二どうも説明のできないようなものも見られたということでございますので、したがって、やはりこれはある程度の規制をしなければならぬと考えまして、この輸出の前受け金につきましての規制を九月一日からさらに強化するという措置をとって、この投機的な資金が入ってこないという措置をとった次第でございます。
  120. 渡辺武

    ○渡辺武君 いま大臣がおっしゃられた数字、これは八月一ぱいのものじゃないですか。八月十六日から二十七日までの間の数字はどうですか。  それから、もう少し、七、八割とかあるいはまた大部分とかおっしゃらないで、もう少し具体的にお答えいただきたいと思います。
  121. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この十一日間のものを調べた大体の結果でございます。
  122. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、先ほど通産大臣は、為替銀行の手持ちが約十三億ドルで、そして輸出代金としては三十三億ドルだと言われましたですがね、この十二日間はどのくらいのものですか。
  123. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 外貨資産の手持ち高、七月の残高と八月の末の残高を比べますと、四十六億ドル八月中に増加しておるという数字でございますが、そのうち十六日以後のふえた分というものが大体四十億ドル前後になっております。
  124. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないので、私の質問の焦点をはずれておりますけれども、次に移らざるを得ません。  いまおっしゃったそのいわゆる輸出金融の中の大部分を占めているという輸出前受け制度によるドル売りですね、これを私は一つ問題にしたいと思うのです。これはほかの委員も問題にしましたけれども、この制度はこれは輸出認証を受けなくても事前にドルを手に入れることができるという制度であって、こういう事態の場合には、スペキュレーションをやるにはこれは絶好の制度だと私は思うのですね。それがこのように急増したというのは、この制度日本銀行も大蔵省も野放しにしておる。日本が外貨——為替管理をやっているから、こういう事態でも短期資金の入るようなことはないんだということを前からしばしば言明されながら、しかもふたをあけてみれば、まさにこの輸出前受け金制度で急速に短期資金が入ってきているという状態だと思うのですね。  ところで、この制度でドルを入手した者が、今後これから先ほんとうに輸出をするかどうか。その辺はどうでしょう、保証ありますか。
  125. 外山弘

    説明員(外山弘君) 正当な輸出契約が前提とならない限り、これは前受けとしてはおかしいわけでございます。  で、私どもも、先ほど来諸大臣がおっしゃっておられますように、そういった角度で立ち入り検査をしたり、それから銀行に十分確認するようにと、輸出契約書をよく見て輸出前受けを受けるようにという指導をしております。したがいまして、そういう指導にのっとってやっている限り全部輸出は進むと、こう思っております。
  126. 渡辺武

    ○渡辺武君 大体おかしいじゃないですか。わずか十二日の間に、四十億ドルもこのドルが入ってきている。そのうちのかなりのものが輸出前受け金制度で手に入れたドルだ。普通じゃ考えられませんよ。こんな短期間にこれほどの輸出契約がばたばたと成立する、これはどうしても投機のにおいが非常に大きい。  いま正規の輸出契約がなければと言われましたが、正規の輸出契約があると言って、この前受け金制度でドルをとった人が、もし輸出を現実にしなかった場合、一体そこに罰則がありますか、どうですか。またキャンセルになりましたと言って輸出をしなかった場合はどうなりますか。
  127. 外山弘

    説明員(外山弘君) かりに輸出しなかった場合は、輸出前受けがなかったわけでございますから、これは法令違反になるわけでございますね。で、おそらくその人たちは為替管理法上返済を命ぜられると思います。つまり外国に送り戻すということを命ぜられると思います。
  128. 渡辺武

    ○渡辺武君 キャンセルはどうですか、キャンセルは。
  129. 外山弘

    説明員(外山弘君) キャンセルした場合も当然返済をしなければならないと思います。
  130. 渡辺武

    ○渡辺武君 そうしますと、この制度によれば、これはあなたがたのほうがよく御存じだけれども、標準決済方式によれば、輸出認証前のものですね、これは一年以内に決済する、船積み後のものは半年以内、こういうことになっていますね。そうすると、いまその返済を命ぜられるんだとおっしゃったけれども、少なくとも一年間は持っておられる。船積み後のやつは半年間は持っておられる、ドルを、ね。そうでしょう。いまこれらの人たちは、あの短期間にばく大なドルを手に入れて、円にかえて、円を持って、政府が正式に円の切り上げをやる、公式にね。その期間を、時期を待っているのですよ。もし円を公式に切り上げたら、そうしたらドルの買い戻しをやる。その差益はばく大なものですよ。かりに四十億ドルと考えてみれば、たちまちのうちに、まあ一〇%引き上げられたとすれば、一千数百億円の差益がふところの中に入る。たいへんなことです、これは。  しかも、私ははっきり申したいのです。あなた方は合法的なものだということを盛んに言っている。立ち入り検査をしたけれども、違法なものはないんだと言っているけれども、形式上合法的であるということが、これがまさにスペキュレーションを非常に有利にしているじゃないですか。どうですか。つまりこれらの人たちは、いま言ったような制度輸出をしない場合には、これはドルを買い戻さなければならない。つまりその権利を持っている。キャンセルになった場合もドルを買い戻さなければならない権利を持っている。だとすれば、しばらく円を持って待っていさえすれば、そのうちに政府は円を公式に切り上げるであろうということで待っている、こういうことじゃないですか。  私はこんなスペキュレーションを許すことはできないと思う。そうしてまたいままでの皆さんの答弁ですね、これはもう実際いいかげんなものだと思うのですよ。立ち入り検査をしたけれども法律違反のものはありませんでした、こう言っているのですね。形式は幾らでも法律違反でないものができますよ。問題はその形式的な合法性の中でこの大規模なスペキュレーションが行なわれているということです。その点ははっきりと見ていただかなければなりません。  私は、この短期間に、少なくとも十六日から二十七日までの間に、ドル売りをやり、円を握った人たち、これの会社名と氏名を公表すべきだと思う。それをやるおつもりがあるかどうか。同時にこれについての資料を私は要求したいと思います。
  131. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ただいまの渡辺君の資料の要求は、先ほど多田君の資料の要求と同じでございますので、その点はよくあとで御相談して処理することにしたいと思います。
  132. 渡辺武

    ○渡辺武君 問題は、今度の円の切り上げで、国民生活上その他に大きな打撃を受けるだろうとみんな心配している、そのまっ最中で、短期間の間にべらぼうな為替差益を手に入れることができるという事件です。しかもそれを政府が見のがしていた、あるいは公然とこれに協力してきた。そうでしょう。輸出前受け金制度、これをこの現在の為替管理制度のもとで、押えもしないでやりっぱなしにさしてきた。先ほどの御答弁によれば、あとで調べてみたところがルーズなところがあったから、九月一日から認可制にいたしました。問題は為替変動相場制を採用したあとのことじゃないんです。その採用する直前に、円が切り上げになるだろうということを予想して行なわれた投機、これが問題なんです。ですから私は、資料はこれは詳細なものをほしいと思う。その点も含んで御検討いただきたいと思う。  それからもう一つ、いま申しましたように、投機の疑いが非常に濃い。したがって、この投機を防ぐために輸出前受け金制度でドルを手に入れた人がいま円にかえて持っております。これがキャンセルになったとか、あるいはまた契約を実行しないとかいってドルをまた買い戻す。その場合はこの売った値段でこの買い戻しをさせるということを私は義務づけるべきだと思う。その点どうお思いですか。
  133. 林大造

    説明員(林大造君) 民間の外国為替取引がいかなるレートで行なわれるかということにつきましては、現在特に規定はございません。まあ為替銀行が民間と売買することにつきましては従来は基準外国為替相場の上下適当な幅でやるようにという通達が出ておりますが、上限下限が現在暫定的に停止されております関係上、市中におきます外国為替の売買相場は実勢に応じて上下しているわけでございます。これをただいま仰せになりました輸出前受け金の返済ということにつきまして、特に法令をもって一定の相場をもってその返金させるということにつきましては、現在の法令下ではむずかしいと存じます。
  134. 渡辺武

    ○渡辺武君 一般論を私は伺いたくて質問しているのじゃないのです。大臣御答弁いただきたい。いま申しましたような事態、スペキュレーションを防ぐために不当な投機利潤を押えるために、彼らがドルを買い戻すときに、売った値段でもって買い戻さなければならないということを義務づけるべきだと思う。それをおやりになるおつもりがあるかどうか。
  135. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) もしほんとうの契約に基づかない擬制のものであったとすれば、これはいま申しましたように為替違反の問題がありますので、処罰されますし、これによって利益が出たとすれば当然課税の対象になってまいりますし、これは不正をすればこれはまあ厳重に処罰しますし、そうでない正当な契約に基づいたものであるとすれば、早晩は支払うべきものが繰り上がって支払われたということであって、これはやむを得ない措置であるというほかにはしかたがないだろうと思います。
  136. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  137. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 速記を起して。
  138. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間がないので、もうなんですから、最後に一問だけ伺いたいと思います。  このように大企業に対して野放しの投機をやらしている。しかもそれだけじゃない。時間がないからはしょらざるを得ませんが、日本銀行は、先ほども多田委員からも御指摘がありましたけれども、二十五日、六日の両日にわたって外国為替資金貸し付け制度、これの期限前の返済をみております。このことによって、外国為替銀行の持っていた大量のドルが、これが売られているのですよ。これは約二十億ドルといわれている。こうして銀行、大企業、これのスペキュレーションを大大的に政府が協力してやらしておる。  それなのにもかかわらず、沖縄県民の持っているドル、これが戦後二十六年間、アメリカの占領のもとで塗炭の苦しみを受けて、その汗と油の結晶ですよ、それを円と交換するのをいまだにうんと言わない。一体どういうことですか。また中小企業は今度の円の切り上げで深刻な打撃を受ける、農民も深刻な打撃を受ける、これらについて早急にやはり対策を立てて実行すべきだと思います。特に沖縄県民の……。
  139. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 御発言中ですが、簡潔にお願いいたします。
  140. 渡辺武

    ○渡辺武君 アメリカ大使が返還前にドルと円の切りかえは不可能じゃないということをはっきり言っているわけですから、早急にアメリカ政府と交渉して、復帰前一ドル三百六十円のレートで交換するようにすべきだと思う。その措置をとるおつもりがあるかどうか。
  141. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この問題は先ほどからお答えしておるとおりでございまして、必ず私どもは沖縄の人たちに迷惑をかけない措置をとりたいと考えております。
  142. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 本件に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。     —————————————
  143. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 次に、派遣委員の報告に関する件を議題といたします。  先般、本委員会が行ないました租税及び金融等に関する実情調査のための委員派遣について、派遣委員から御報告願います。戸田菊雄君。
  144. 戸田菊雄

    戸田菊雄君 北海道班の派遣報告を申し上げます。  派遣委員は、吉田理事、河本委員と私の三名で、期間は八月二日から七日までの六日間でした。  調査は、財務局、税関、国税局、国税不服審判所、北海道開発局、専売公社地方局のほか、札幌市内及び苫小牧、室蘭の各税務署、苫小牧港管理組合、函館市、小樽市等から概況を聴取するとともに、民間及び政府系金融機関、酒造組合等と意見の交換を行ないました。さらに、サッポロビール、日本清酒、ニッカウイスキー、王子製紙、新日本製鉄、函館ドックの各工場と北海道農業試験場を視察して参りました。  調査の概要について申し上げます。  第一は、財政金融情勢についてであります。私どもの参りましたときは、全国的な景気沈滞と先行見通し難もあって、道内の鉄鋼、紙パルプ等の主要業種が生産調整を実施中であり、その関連企業や、地場産業等、中小企業を主とする設備投資は停滞基調とのことでした。  この動向を反映して、金融面では、市中銀行、相互銀行、信用金庫等の民間金融機関が、預金環境の回復とともに、積極的な融資態度をとっているにもかかわらず、設備資金などの前向きの資金需要が減少しているようでした。  なお、中央において、六月末から七月にかけて、政府が、財政投融資の追加等一連の景気浮揚策を講じたものの、道内の一部政府系金融機関の出先までは、その意図が運営面で浸透されていないのではないかとの問題提起がありました。そのほか歩積み両建て問題とか、政保債等と民間金融機関の資金コストとの逆ざや問題等について意見の交換を行なったのであります。  第二は、税務についてであります。  北海道における昭和四十五年度の国税収入は、前年度より一八・七%の伸びを示しております。これは、冬期オリンピック関連事業の好況と、使用自動車の増加による揮発油税等の増収がおもな理由といわれております。酒税についてはウイスキー等洋酒への移行やビールの増産によって税収は伸びておりますが、清酒について、特級、一級の分野で、道外酒の割合が高いため、道内酒の前途には、問題が残されているとのことでした。この点は、清酒業の構造改善計画の見通しとも関連して検討せねばならぬことと思いました。  税務執行面で、国税局及び税務署から、およそ次のような要望がありました。  第一は、税務職員の処遇改善についてであり、その給与体系は当初一七%程度一般公務員より水準差があったのに、現在は一〇%程度に縮まっている。最近は税収もふえ、一人当たりの業務量も多くなっているので、少なくとも当初の線まで回復すべきものである。また赴任旅費なども増額改訂されたい。第二に、特別税理士試験制度を将来も継続されたい。第三に、税の仕組み等について総理府なり、納税貯蓄組合を改組してなり、あるいは義務教育の教師に対する租税教育を通じてなりして強力なPRを推進されたい。第四に、道内都市署の人員の増加をはかられたいというものであります。なお、老朽化した余市税務署の新築についての要望もありました。  処遇の点では、国税不服審判所から、当該職員の税務職員より優位に立つ俸給表の新設と副審判官への特別調整額支給の要望がございました。  人員の面では、函館税関でも、その不足を訴え、今後、管轄区域内港湾の拡充、千歳空港の対オリンピック関係者の受け入れ等、その業務量の増大に伴う人員配置に苦慮しているようでした。  第三は、道内の開発についてであります。  北海道の開発は、今年度から十年間にわたる第三期北海道総合開発計画に基づいて、盛りたくさんの工事を実施し、道内開発が最盛期に入るわけであります。  私どもの視察いたしました苫小牧における掘り込み港湾方式による工業港と臨海工業地帯の造成・立地、室蘭港の増深と拡張、函館・小樽港の整備等について鋭意進捗中でした。  しかし、この第三期計画は、期待の大きい反面、道外大企業優先に傾き、地場産業や農林漁業等北海道はえ抜きの産業等の育成や、道民所得の全体的なレベルアップにどの程度寄与できるのかに問題があり、資金調達の面とか、冬期間の克服、公害防止、過疎問題ともあわせて検討すべき余地があるのではないかとの印象を深くしたのであります。  以上、きわめて概略を申し上げましたが、現地の関係者では、今後の景気見通しに多大の関心を寄せ、また造船などでは、円の切り上げ問題を特に気にかけておりました。  さらに冷害につきましては、農業試験場で技術的な研究が進んでおりましたが、気候不順が続けば本年度は大きな冷害をこうむるのではないかと心配しておりました。  以上で報告を終わりますが、今回の派遣において、調査にお力添えいただきました関係行政機関、団体、事業場の方々に対し、この席をかりて厚く御礼申し上げます。  終わります。
  145. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) この際おはかりいたします。  ただいま御報告がございました北海道班から別途文書をもって詳細な派遣報告書が委員長の手元に提出されておりますが、これを本日の会議録の末尾に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 前田佳都男

    委員長前田佳都男君) 御異議ないと認め、さよう取りはからいいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十三分散会      —————・—————