○
国務大臣(
水田三喜男君) いま追い込められたというようなお話でございましたが、私が考えますのには、まあ問題は
日本の経常収支が非常にいいということを見て、
外国では
日本の総収支がいいのだというふうに思って、
日本の円の
切り上げについていろいろ要望が出ておるという現状でございますので、この
状況を私
どもはいろいろ分析してみますというと、
日本の経常収支はなるほどよくても、この中には臨時的な要素というものが非常に多く含まれている。その一番大きい要因は、やはり
日本の不況である。この不況を早く回復することによって対外収支の不均衡の形は非常に変わる。さらに一連のいろいろの
施策、
自由化を
中心とするいろんなもの、そういうものをやることによって
日本の対外不均衡の姿は変えられるというのが私
どもの考えで、あの対外
政策八項目の実施に取りかかった。これがもう少し早く実効をあげておるということでございましたら、また対外的にいろんな
情勢が出てきたと思いますが、それがなかなかうまく進まなかったときにこういう問題が起こったので、何か追い込められたというような印象を与えておるようでございますが、もともと
日本自体として、この問題に対しては内在的な要請からもやるべきことをやらなければならないときに、その実行に入っておった次第でございますので、引き続きこの問題は最初の予定どおり実施するということによって、今後相当の改善がなされると私は考えております。
で、その場合に、もし何らの変化なければある
程度政府の最初の考えどおりいけたと思いますが、急に今回のような事柄が起こって
アメリカがああいうことになり、
欧州諸国がみんなIMF体制から離脱するというようなことが起こってしまった以上は、この現実を土台に
日本は新しい考え方をしなければならぬということをいま考えておることは事実でございまして、これが迫られたというような現象になってあらわれておるんじゃないかと思いますが、こういう事実が起こった以上は、迫られたとかなんとかじゃなくて、
日本自身が自主的にこの現状に対して対処する方法を私
どもとしては考えなければならぬと思いますが、その場合に、かりに円の実力について、実勢についてやはりこれがある
程度変更される必要があるということになった場合、これはいいことか悪いことか申しますと、さっきおっしゃられていましたような、いままでの
経済運営上の欠陥というものが是正される、これはやはり私は
一つのいい転機ではないかと思います。
と申しますのは、円が切り上がって、実質的に円の
切り上げをやるというわけじゃございませんが、事実上いまのフロートにおいても実質上の
切り上げ状態になっておりますが、これによって
輸出価格が上がるということは、
日本はもう安売りをしませんよ、今後海外に対して安売りをしませんよということは、いままで
日本のコストの中から抜けておったいろいろ公害に対する当然コストと見るべき費用とか、社会資本の蓄積に要する費用とか、そういうものが計算外になっておって、あるいは安売りというようなことになっておったかもしれない、そうだとすれば、今度はそいうものを充実するからして、
日本はいままでのような安売りはしないよということにもなることでございますので、これは決して悪い面ばかりがあるというのではなくて、
日本の
経済の力がここまで出てきた以上は、この実勢に反映する新しい秩序を求めるという
日本自身の、これはやっぱり積極的な態度というものも、これからわれわれの国をもっとほんとうに体質を固める
意味でも必要であり、その転機にいま私
どもはいやおうなしに直面させられておるというふうにも考えますので、私はあくまで
日本はこうすべきであるという、ほんとうの将来の国益を考えたら、これを
中心に、この機会は、国際的な協調性を保ちながら、これにあやまちなきを期するなら、決してこれは
日本にとって困ることではないんだと、私は
日本にとって一段飛躍するほんとうのいい機会をつかんだのだというふうにも見られると思って、善処するつもりでおります。