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1971-07-23 第66回国会 参議院 商工委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年七月二十三日(金曜日)    午後三時十四分開会     —————————————    委員異動  七月二十三日     辞任         補欠選任      須藤 五郎君     塚田 大願君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         川上 為治君     理 事                 竹田 現照君                 藤井 恒男君     委 員                 赤間 文三君                 植木 光教君                 大谷藤之助君                久次米健太郎君                 剱木 亨弘君                 矢野  登君                 柳田桃太郎君                 山本敬三郎君                 渡辺一太郎君                 阿具根 登君                 大矢  正君                 林  虎雄君                 中尾 辰義君                 原田  立君                 塚田 大願君    国務大臣        通商産業大臣   田中 角榮君        国 務 大 臣  木村 俊夫君    政府委員        経済企画政務次        官        木部 佳昭君        通商産業政務次        官       稻村佐四郎君        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査  (経済企画庁及び通商産業省施策に関する  件)  (派遣委員報告に関する件)     —————————————
  2. 川上為治

    委員長川上為治君) ただいまから商工委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、須藤五郎君が委員を辞任され、その補欠として塚田大願君が選任されました。     —————————————
  3. 川上為治

    委員長川上為治君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  この際、木村経済企画庁長官田中通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。木村経済企画庁長官
  4. 木村俊夫

    国務大臣木村俊夫君) 商工委員会が開かれるにあたりまして、所信一端を申し述べまして、委員各位の御鞭撻をお願いしたいと思います。  初めに、最近の経済情勢経済運営の態度について申し述べたいと思います。  わが国経済は、昨年後半以降、景気後退局面に入りまして、いまだにこれを脱し切っておりません。  この間、昨年十月以降三次にわたる公定歩合の引き下げ中心といたしまして金融緩和措置が実施され、企業金融には緩和感が一段と広がっております。しかし、在庫調整がなお進行しており、また、従来成長をリードしてきた主要産業中心とする設備投資意欲はいまだ回復いたしておりません。また、個人消費輸出、さらに財政面からの支出等は堅調に推移しておりますが、総じて生産活動基調は弱く、卸売り物価の軟調、企業収益減少傾向が続いております。  こうした中で、国際収支面においては、このところ大幅な黒字が継続し、外貨準備高も急テンポで増大いたしております。これは、国内景気後退影響輸入が伸び悩み輸出圧力が高まったこと、世界的インフレのもとで海外需要が強いこと、外人証券投資が増大したことなどの理由によるものであります。  このような経済情勢にかんがみ、当面の政策運営にあたりましては、景気動向を注視しつつ、財政金融政策機動的運用により、わが国経済を持続的な安定成長の路線に定着させるとともに、国際経済社会との調和を目ざした対外均衡の維持につとめてまいる所存でございます。  すなわち、景気対策としては、政府は、これまでの金融緩和政策に加えて、公共事業費の繰り上げ支出弾力条項発動を含む財政投融資追加等財政面からの措置をすでに実施いたしました。今後とも、これら諸施策の効果を見きわめつつ、機動的な政策運営をはかってまいる所存であります。  国際収支関係におきましては、総合的な対外経済政策を積極的に推進することとし、すでに輸出金利引き上げ決定海外向け直接投資証券投資及び不動産投資自由化などの措置を講じてまいりました。今後とも、残存輸入制限の撤廃、資本自由化関税引き下げ経済協力拡充等を積極的に具体化してまいる所存であります。  次に、物価問題について申し述べます。  最近の物価動向を見ますと、卸売り物価は、ほぼ安定的に推移いたしておりますが、消費者物価は、依然として根強い上昇基調にあります。すなわち、本年に入り季節商品が全体としてやや落ちつきを示しているものの、サービス料金中小企業製品等の値上がりはなお顕著であり、消費者物価の先行きは必ずしも楽観を許さない情勢にあります。  特に、最近における物価上昇は、経済の急激な発展に伴う経済部門生産性上昇格差に基因する面が大きいものと考えるものであります。私は、今後、農業、中小企業流通サービス部門の低生産性分野につきましては、構造改善を積極的に推進してまいらなければならないと考えます。  また、輸入自由化関税率引き下げ等輸入政策は、これまでも物価対策の重要な柱の一つでありましたが、特に今日の国際収支状況は、これらの施策を意欲的に展開していくことを可能にしているものであると考えます。したがいまして、政府といたしましては、過般決定を見た八項目にわたる対外経済政策につきましては、物価対策観点からもこれらの輸入政策を思い切って推進してまいる考えであります。  さらに、公共料金につきましては、今後ともその引き上げを極力抑制することを原則としつつ、企業等合理化を進めますとともに、合理的な公共料金体系あり方についても十分検討を加えてまいりたいと思います。  私は、物価の安定を経済運営の最重点課題一つとして格段の努力を傾注してまいる決意であります。  次に、国民日常生活にとって重要な消費者行政につきましては、消費者保護基本法の精神に従い、各般施策を鋭意進めてきておりますが、有害食品虚偽表示等事例はなお数多く見られる状況にあります。したがいまして、今後とも、有害食品防止、規格及び表示適正化、あるいは合理的な消費生活にとり必要な情報の提供等施策を強力に推進していく所存であります。  なお、最近発足した国民生活センター地方消費生活センターにつきましては、その充実をはかり、国民との対話を深めてまいりたいと思います。  最後に、国土総合開発推進について申し述べます。  今後より一そう国民の福祉の向上を実現するためには、環境保全を重視しつつ国土総合開発を積極的に推進し、国土全域にわたり新たな発展の基盤と人間性豊かな環境をつくり上げていくことが肝要であります。  これまでにおきましても、高速道路新幹線鉄道建設等国土開発基礎となる事業を進めてまいりましたが、今後は、これらの事業実施テンポを早め、わが国全土にわたる交通通信網のネットワークを整備するとともに、新しい大規模工業基地畜産基地等産業開発のプロジェクトを具体化していくことが必要であります。さらに、公害防止、自然の保護歴史的遺産の保存、レクリエーション地域整備等環境保全のための大規模事業長期的観点に立って力強く推進すべきであると考えます。  このような国土利用の抜本的再編成によりまして、公害のない豊かな環境のもとで、国民充実した生活確保されるよう、さらに一段と努力してまいる所存であります。  以上、私の所信一端について申し述べました。本委員会及び委員各位の御支援と御鞭撻を切にお願い申し上げて、私のあいさつといたします。
  5. 川上為治

    委員長川上為治君) 速記を中止してください。   〔速記中止
  6. 川上為治

    委員長川上為治君) 速記を起こして。  木部経済企画政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。木部政務次官
  7. 木部佳昭

    政府委員木部佳昭君) このたび経済企画政務次官を拝命いたしました木部佳昭であります。  委員会並びに委員の諸先生方の御支援と御鞭撻を切にお願い申し上げまして、ごあいさつにかえさしていただきます。
  8. 川上為治

    委員長川上為治君) 速記を中止してください。   〔速記中止
  9. 川上為治

    委員長川上為治君) 速記を起こして。  田中通商産業大臣
  10. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 今回の内閣改造に際しまして、通商産業大臣に任命をされました田中角榮でございます。どうぞよろしくお願いいたします。  たいへん重大な時局に通商産業大臣に就任いたし、責任の重さをいまさら痛感している次第でございます。  この機会に、これからの通商産業行政の進め方につきまして、所信一端を申し述べたいと存じます。  まず初めに、このたびの住友石炭鉱業株式会社北海道歌志内炭鉱においてガス突出事故発生を見たことはまことに遺憾でございます。  政府といたしましては、従来から鉱山、とりわけ石炭鉱山については、本来災害の危険が多いことから、人命尊重を第一の理念として保安確保を最優先に考えてきたところでございますが、今回の事故の教訓を生かし、再びこのような事故を繰り返さないよう全力をふるって保安確保につとめてまいりたいと存ずるわけでございます。  これからの通商産業政策基本は、七〇年代における日本経済をめぐる内外の環境変化の中にあって、国民の皆様に喜ばれ、信頼されるものであるとともに、国際社会においても評価され、尊敬されるに足るものでなければならないと考えるわけでございます。  このような観点から、私は次に申し述べる諸点に重点を置いて施策を展開してまいりたいと存じます。  まず第一に、対外面につきまして、わが国は今後、貿易為替資本自由化推進関税引き下げ対外経済協力拡充等経済国際化を一段と進めることが必要であると考えるのでございますが、私は、問題の生ずる事例には所要の調整措置を講じつつ、積極的にこの問題に取り組みたいと考えております。  また、わが国経済力は、いまや国際経済社会に大きな影響を及ぼすまでに発展、拡大をしております。わが国経済運営上対外関係重要性は今後ますます高まるとともに、その扱いに慎重な配慮が必要となってきておると存ずるのでございますが、中でもわが国対外関係基本である日米経済関係につきましては、国民理解支持のもとに、その改善全力をあげる所存でございます。  また、対中関係につきましては、ニクソン訪中決定という新たな事態をも念頭に置きまして、日中貿易の今後のあり方について検討を進めてまいる考えでございます。  第二に、七〇年代における日本経済は量から質への転換、つまり成長活用型経済への移行の時代でありますが、与えられた環境と人間の知的活動を十分に生かすべく、過去の重化学工業化の成果の上に、今後は知識集約型産業構造の実現をはかってまいる考えでございます。  第三に、公害問題につきましては、美しい国土、良好な生活環境確保するため、公害のない産業を目ざして国民理解支持のもとに産業政策を進めるとともに、特に産業立地政策については、産業都市集中を排除して企業地方分散を進め、二次産業比率平準化をはかるため、各般措置を講ずる必要があると考えておるのでございます。  第四に、わが国経済発展基礎である資源問題については、十年から十五年という長期的観点から各種エネルギー、資源について総合的な対策を講ずることが必要でございまして、外貨有効活用という意味からも、この際思い切った対策を打ち出したいと考えておるのでございます。  第五に、今日のような急激な変化に適応するため、努力をしている中小企業に対して、より一そう積極的に支援してまいりたいと考えております。  第六に、物価対策消費者保護安全対策につきましても、国民が豊かで快適な生活が送れるよう、きめ細かく、できる限りの対策を講じていく考えでございます。  最後景気の問題について申し上げますと、私は、さきに決定を見た弾力条項発動のみによって、冷えきった景気の回復を期待することは困難であると考えますので、さらに景気浮揚のために財政金融面において思い切った対策を講じ、社会資本充実民間設備投資活発化などを進めるよう努力したいと考えております。  私は、以上のような方向で、今後の通商産業政策基礎を固め、国民に豊かで幸福な生活をもたらす七〇年代を建設するために最善を尽くしてまいる覚悟でございます。  何とぞ委員各位の深い御理解と御支援によりまして、私がこの責めを果たしてまいることができますように、お力添えを切にお願いをし、私のごあいさつといたします。
  11. 川上為治

    委員長川上為治君) 次に、稻村、林田通商産業政務次官から発言を求められておりますので、順次これを許します。稻村通商産業政務次官
  12. 稻村佐近四郎

    政府委員稻村佐四郎君) このたび、はからずも通産政務次官に任命されました稻村佐四郎でございます。  たいへん、いろいろな問題が山積をいたしております。大臣指導のもとに、積極的にこれら諸問題に取り組んでまいりたいと思います。何とぞ委員長はじめ各委員先生方の御指導、御鞭撻を心からお願い申し上げまして、一言ごあいさつをさせていただきたいと思います。
  13. 川上為治

    委員長川上為治君) 次に林田通商産業政務次官
  14. 林田悠紀夫

    政府委員林田悠紀夫君) 今回、通産政務次官に任命されました林田悠紀夫でございます。  平素から各先生方にはたいへん御指導をいただいておる次第でございまするが、通産行政きわめて多事なときに当たりまして、今後ともよろしくお引き回しのほど、お願い申し上げます。どうぞよろしく。     —————————————
  15. 川上為治

    委員長川上為治君) では、一昨二十一日及び二十二日の二日間行なわれました住友石炭鉱業株式会社歌志内礦における災害実情調査のための委員派遣について、派遣委員から報告をお願いします。
  16. 大矢正

    大矢正君 住友石炭鉱業株式会社歌志内炭鉱災害実情調査につきまして、委員派遣報告を申し上げます。  派遣委員は、川上委員長原田委員及び私の三名であります。  七月二十一日、札幌において札幌通商産業局札幌鉱山保安監督局北海道労働基準局及び北海道庁の各当局から、今回の災害発生及びこれについて各当局のとった対策について概況の説明を聴取いたしました。  次いで二十二日、歌志内炭鉱におもむき、坑口に花束を捧げて黙祷した後、会社側、労組、職組説明を聞き、さらに歌志内市長など地元代表からの陳情を受けました。さらに、美唄市の労災病院入院中の傷病者十三名を見舞い、同日帰京いたしました。  まず、災害状況について申し上げます。  歌志内炭鉱登川、一斜坑及び文珠の三区域に分かれており、現在は文珠及び登川部内がおもな稼行区域でありまして、出炭量文珠区域が日産九百トン、登川区域が同じく七百トン、合わせて千六百トンであり、そのうち六三%が原料炭であります。また、従業員数は約千二百名であります。  今回災害発生したのは登川区域マイナス四二五レベル東三登川八番一号払いでありまして、六月二十四日から採炭を開始し、約三十二メートル進行しておりましたが、七月十七日午前九時十九分ごろ、登川八番層坑道ガス抜き坑道担当係員から坑外事務所砿務副長に対し、誘導無線によって、何ごとか発生したのではないかとの連絡があったので、副長は直ちに各所に対して異常の有無の検査を指示したところ、主要扇風機の電圧に異常を感じたこと、坑内がすべて停電したこと、登川区域排気坑道濃厚ガスが存在していること、マイナス四二五レベル東三登川八番一号東払い係員からの連絡がないこと、などの状況が判明しました。そこで、上席砿務副長は九時三十分ころ、登川区域全員退避命令を発するとともに、救護隊の召集及び出動を指示しました。災害発生時には登川八番一号払い及びその周辺に五十七名の従業員が就業中であり、そのうち二十七名は自力で脱出し、あるいは救出隊の手で救出されたのでありますが、残る三十名は救護隊及び救出隊全力をあげての救出作業にもかかわらず、不幸にも二十日十一時三十分までに全員遺体となって収容されたのであります。  今回の災害発生原因につきましては、一応ガス突出と推定されるのでありますが、二十一日から札幌鉱山保安監督局及び北海道警察本部合同検証が開始され、炭壁面状況等を精密に調査することによって原因の厳密な究明につとめております。  歌志内炭鉱においては、かつて四十四年五月にも登川区域においてガス突出災害発生を見たことがあり、それ以来ガス抜き励行の必要が叫ばれ、さらに学者等からなるガス突出特別対策委員会によって対策の研究も行なわれたのであります。  ガス突出防止対策につきましては、この種災害発生が主として掘進個所において見られるものであり、払いにおいてはきわめてまれであるため、対策も掘進個所についてのみ考えられるきらいがあり、鉱山保安監督局もこの点について幾ぶんの懸念を持っていたようでありますが、私は、これまで行なわれてきた、いわば学理的な立場からするガス抜き対策によっては処理しきれないところに、ガス突出のメカニズムが存在するのではないか、という疑念を禁じ得ないのであります。  さらに申し述べるならば、ガス突出対策委員会による検討の結論であるガス抜きボーリング及びゆるめボーリングが、ほんとうにガスの所在を突きとめていたのかどうか、不安の念を抱かざるを得ないのであります。  はたせるかな、会社側保安統轄者も、これらのボーリング方法のみでは対策としてきめ手にはならないことを認め、相当距離を退避することが必要であろうと述べているのであります。ところが、相当距離を退避することによる作業の中断は、必然的に出炭能率の低下を招き、さらには、請負給能率給などの賃金形態とも関連して、従業員の所得にもかかわってくるのであります。  したがって、問題はさらにハッパ回数を少なくすることによる退避回数減少など、ハッパ方法の問題にも波及してくるのであります。  問題はこのように複雑でありますが、この課題を解くことこそが、今後の石炭政策に課せられた義務であり、運命的な最期を遂げられた三十名の方々の霊を慰めるゆえんであると考えるのであります。  次に、医療対策及び労災補償について申し上げます。  災害発生当時の入坑者を診断した結果、メタンガス中毒の疑いある者十五名を美唄労災病院に収容して治療を行ない、次いで二名を追加入院させました。二十一日に至り症状軽快となった者四名が退院いたしましたので、二十二日現在の入院者は十三名でありまして、そのうち入院一カ月以上を要する者が四名、そのほかは入院必要期間一週間ないし三週間と診断されております。  なお、一酸化炭素中毒について延べ四百十八名の採血検査を行ないましたが、異常所見が全く認められなかったのは、不幸中の幸いということができましょう。  また、労災保険給付につきましては、請求手続が完了すれば早急に支払われることとなっております。ちなみに給付額の概算を申し上げますと、遺族補償年金総額一千四百六十二万円で平均約四十九万円、遺族補償一時金該当者が一名で百四十八万円、葬祭料総額四百三十四万円で平均十四万円となっております。  なお、関係者から行なわれた要望内容は、次のとおりであります。  労働組合からの要望事項は、予期しなかった採炭切り羽でのガス突出に対し、国の責任において抜本的保安対策を確立するとともに、これに必要な資金について助成措置を講じること、遺家族及び被災傷病者に対して万全の援護措置を講じること、歌志内礦再建過程における事故であったことを考慮して、その存続をはかること、簡易酸素救命器の設置など救急体制を至急強化すること、以上であります。  次に、職員組合からは、四十四年、四十六年と続いてガス突出事故発生したため、登川八番層に対する労働者の恐怖は著しいものがあるから、国の力によって原因究明保安対策確立とをはかること、また、生産再開までに必然的に生じる空白期間について、国の理解と援助とを仰ぎたいことなどの要望がありました。  また、歌志内市長など地元代表からは、歌志内礦の存否は、地域が崩壊するかいなかの分かれ目であるから、その災害復旧企業再建とについて国の強力な支援要望するという切実な訴えがありました。  会社はじめ関係者のこのような痛切な声を聞くにつけましても、企業再建生産再開には、何よりも労働者の生命の安全を確実に保証することが前提でなければならないことを強く強く申し述べまして、報告を終わります。     —————————————
  17. 川上為治

    委員長川上為治君) これより質疑を行ないます。質疑のある方は順次御発言を願います。
  18. 大矢正

    大矢正君 大臣に、先ほど述べられました所信表明に関連をしてお伺いをいたしますが、先般、内閣改造の際にも、新聞等の報ずるところによりますと、総理と大臣が会われまして、日米関係の特に経済問題についての改善には総力をあげてやらなければならないというような話し合いが行なわれたようであります。また、先ほど所信表明の中にもありますとおり「中でもわが国対外関係基本である日米経済関係については、国民理解支持のもとに、その改善全力をあげる所存であります。」と、こう言われております。問題は、この日米経済関係について改善をしなければならないという考え方だと思うのでありますが、日米経済関係において改善をしようとする内容というのは、具体的にいまどういうものがあるのか、どういうような問題が今日懸案となっておるから改善をしなければならないと考えておられるのか、お答えをいただきたい。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日米経済友好関係は、長い歴史の上に立っておることは申し上げるまでもありません。戦後の問題を述べるまでもなく、日米間の貿易経済交流というものが、日本貿易経済という問題に対して非常に大きなウエートを持っておるということは、数字の上でも事実でございます。ことしは対米貿易は三〇%ないし四〇%伸びておるわけでございます。なお、自動車、カラーテレビの類は驚くほど伸びております。六月などは対前年同月比三〇〇%というのでございますから、異常な数字であることは間違いはございません。カラーテレビも六〇ないし七〇、対前年同月比で見ますと、おそろしいほど大きな数字でございます。そういう意味で、日本アメリカ経済というものは密接不可分関係にございます。  そういう現状でございますが、アメリカは、御承知のとおり六・二%という高い失業率をかかえております。日本の対米輸出が伸びることと、アメリカ経済不振、ドル防衛というようなものと、直接私は関係があるものとは考えませんが、しかし、アメリカ国内における対日不信感と、日本経済攻勢、中にはこれは聞きようによって少しショッキングなことだと思いますが、日本経済攻勢は第二のパール・ハーバーだというようなショッキングな発言さえもする人もございます。そういうような状態であることは、両国のために願わしい姿ではないということは事実でございます。ですから、私は一つ一つの問題を解決することよりも、お互いが理解を深め、そして事実を十分認め合うということが一番問題である。だから、日本貿易為替自由化に対しても、基本的には皆さんと同じ考えなのだ、われわれがアメリカ経済を不振にするために経済侵略などをやっているんじゃありません、日本国内にも中小企業や零細企業の問題、かかる問題をかかえておるのであります、日本が、いま外貨が七十億ドルから八十億ドルに、やがて百億ドルになるかもしれませんが、しかし、それは外から見て端的に評価をされるほど、日本経済は強いものではないんだというような認識の問題、お互いが理解をし合うということは、やはり確認をしてやらなきゃならない。私は、それが日本のためである、こう考えておるわけでございます。
  20. 大矢正

    大矢正君 きょうは、時間が各党にそれぞれ割り当てられて、しかもそれは片道通行じゃなくて往復ですから、大臣の博学のほどは十分わかっておりますから、いずれそれはあらためて聞かしていただくこととして、きょうはひとつ集中的に御答弁をいただきたいと思います。  この中にもありますように、いまの日米関係ではやはりまずいんだから、改善をしなきゃならぬ、こううたわれているんだと思うのです。また、言われているんだと思うのです。そこでお尋ねをいたしますが、日米関係の中で改善をしなければならない一つに、長年懸案でありましたが、去る七月一日から実施に移されております日米の繊維問題、言いかえるならば、わが国の繊維業界の自主規制、この問題は日米経済関係改善の中に入っておるのでしょうか、入っておらないのでしょうか。
  21. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これは、七月一日から自主交渉を行なっております。この推移を見ていただくということでなければならないと、こう思います。ですから、これが新聞その他に報道せられるように、アメリカ側には強い意向が存在するようでございますが、日本としては、これにいますぐこたえていくというには、その前提である業界の自主規則が七月一日に発足したばかりでございますので、これが推移を見守ってもらう。しかも、繊維に対しては、アメリカでどのような影響や被害があるのかということに対して検討を進めるということ以外にはない、こう考えます。
  22. 大矢正

    大矢正君 これは前の通産大臣の宮澤さんは、何回か、この場での私との議論の中では、日本の繊維業界がいやだというものを、政府がかってにやるわけにはいかないんだ、だから、繊維業界の自主規制を、一方的にではあっても、すると言えば、それに一切をまかせる以外にはない、それ以上のものはない、したがって、日米間における政府間の協定であるとか話し合いであるとかというものは、今後はもう考えられないと思っていただいてもよいでしょうという、表現は多少違いますが、そこまで言われておるわけであります。いまの大臣発言を聞くと、現在の段階では政府間交渉はやる意思は持っておらぬが、状況によってはやらなければならぬだろうという、非常に将来、政府間協定を結ぶについての外堀を埋めるような解釈をされる発言が、いまあったようであります。たとえ一方的ではあっても、日本の繊維業界が自主規制を続けている限りにおいて、政府が干渉をするというようなことはないと、今後とも解釈してよろしいですかどうですか。
  23. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いまの段階において、宮澤発言と全く同一であると、こう理解してよろしゅうございます。
  24. 大矢正

    大矢正君 念を押してたいへん恐縮ですが、いま大臣考えられて、将来、政府間で話し合いをしなければならぬ、あるいは協定をしなければならぬということが起こり得る要素というものは、考えられますか、考えられませんか。
  25. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま端的に申し上げられる問題ではないと思いますが、こちら側は、宮澤通産大臣発言のとおり、いわゆる自主規制を発足したばかりでございますから、政府間協定を行なう意思はありませんと、こう言っておるのですが、ところが、向こう側が、相手のある話でございますから、では私のほうは立法いたしましょうということになるかもわかりません。立法すれば、繊維だけではなくて、鉄もやりますよ、何もやりますよという、こういう話も出てくるはずであります。そういう問題は新しい問題でありますから、そういう問題になれば、また別なことが起こってくるおそれもあります。しかし、いまの段階で、繊維自体の問題で政府間交渉を行なうといたしましても、現行法制のもとでは貿管令をもって押える以外にないので、ところが、この多様な業種のものを貿管令で押えられるはずのものではありません。これは、政府間に重大な食い違いもありますし、国会における決議もございます。ですから、そういう状態を前提として考えるときに、いま自主規制の成り行きを見守ってもらう以外に、新たに政府間交渉を行なう意思はない、こう申し上げる以外にないわけでございます。
  26. 大矢正

    大矢正君 アメリカわが国も、基本的には自由な経済という立場を貫いておるわけでございますから、物を売ったり買ったりすることにまで政府が干渉して、それを一つの協定にしてしまうというようなことは、本来的には正しいことではないですね。したがって、もし政府がそこまで踏み切るということになるといたしますれば、それは、国益上たいへんな問題が発生をするというような極端な場合でなければ、本来的に考えるべきことではないのではないかという私は解釈をいたしておりますので、当然これは自主規制の影響というか、効果というものが出てまいるでありましょうから、おそらく自主規制に関して、さらにそれを縛りつけるような協定というようなものは、私は絶対に行なうべきではないということを強く大臣に強調したいと思うのですが、よろしいですか——。  次に、先ほど私自身が御報告を申し上げました歌志内炭鉱災害に関連をして、政府保安確保の姿勢、それから対策等についてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、まず事務当局にお伺いをいたしますが、御存じのとおり、先般の事故のような規模の大きなガス突出事故というものは、世界的にもそうでありますが、わが国においてもそうめったにある事故ではないわけで、裏を返して言いますと、そのことのために、ガス突出防止するための試験なり研究というものが非常に立ちおくれておるのではないかということを、この際、申し上げなければならぬと思うのでありますが、今日までの経過の中で、特に二年前には、これより規模的には、人命の損傷は少うございましたが、規模的にはこの四倍にも相当するほどのガス突出事故があったのであります。それ以後、政府ガス抜き対策に対して、具体的にどういう試験研究、どういう対策、それから予算面ではどのような措置を講じてきたか、お答えをいただきたい。
  27. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) ただいまガス抜き対策と先生おっしゃったわけでございますが、ガス突出でよろしゅうございましょうか。
  28. 大矢正

    大矢正君 はい、ガス突出
  29. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 先生おっしゃいましたように、四十四年の五月十六日に、今回の災害が起こりました歌志内炭鉱で、かなり規模の大きいガス突出があったわけでございます。先生御指摘のように、ガス突出災害というものは、世界的に見ましても大規模なものは数が少ないわけでございまして、ヨーロッパ大陸の炭鉱におもに発生をいたしておるわけでございます。したがいまして、この対策、それから発生の機構を含むいろいろな技術的な研究というものは、まだ、ほかの技術のように完成の域に達しておりません。二年おきに世界各国から関係の学者、技術者が集まって、ガス突出についての国際的な研究会というものが開かれておるわけでございますが、前回の国際会議におきましても、決定的な意見並びに対策というものは、まだ出ていないように聞いておるわけでございます。  前回の突出災害のあとに、政府といたしましては、歌志内炭鉱ガス突出特別対策委員会というものを、関係の大学の教授、並びにガス突出の傾向の多い炭層を稼行しております大手の十社の中で特に経験の豊富な人を集めまして、設置をいたしたわけでございます。この委員会は、応急的には、歌志内炭鉱の前回のガス突出に対する対策を研究、決定するために設けたものでございますが、その後、四十五年度、四十六年度には、ガス突出対策並びにそれに必要な試験研究を実施するために、政府といたしましてかなりの予算を計上いたしたわけでございますので、この予算によります試験研究を実施いたしますために、ガス突出と、もう一つこれと非常によく似た災害に関連する山はねという現象があるわけでございますが、これをも加えまして、山はねガス突出防止対策委員会というものを、四十五年度には東京と札幌、四十六年度には、これはガス突出に限ったわけでございますが、東京、札幌、福岡に設置をいたしまして、目下研究を続行しておるところでございます。  その研究の内容は、先ほど申し上げましたように、ガス突出そのものの機構、それから防止対策について確定したものがない状態でございますので、ガス突出関係ありと推定をされるあらゆる事象をとりまして、これを一つは学問的に詰めていく。それからもう一つは、全国のガス突出の傾向のある山につきまして、そういう各種の研究対象事項が、現場的にどういうふうにガス突出と関連をして変化をしていっておるかというふうな点を調べておるわけでございます。  たとえて申し上げますと、貫層ガス抜きボーリングと申しまして、坑道を掘進しまして、炭層に着炭する前にその炭層を貫いてガス抜きをするわけでございますが、そのガス抜きの穴の直径を拡大をいたしまして、さらに高圧の水をそれに注水を行ないまして、貫層ガス抜きというふうに呼ぶわけでございますが、これの効果が普通の先進ボーリングに比べてどの程度増大をするかという研究。  それから地山応力の測定をいたしまして、ガス突出の可能性のあります区域ごとに、その地山と申しますか、岩石の絶対応力を測定をいたしまして、ガス突出との関係究明いたしますとともに、この地圧が採炭切り羽の移動によりましてどういうふうに変化をするかということの測定を行なっております。  三番目は、顕微鏡によります石炭くり粉の枝分かれ亀裂現象の観察でございます。先進ボーリング、ゆるめボーリングというふうな作業によりまして、当然、石炭のくり粉と申しますか、掘採された粉が出てくるわけでございますが、その出てきます粉が割れる際に、応力を受けておりますと、その割れ目が亀裂を生ずると申しますか、枝分かれを生ずるわけでございまして、そういう現象とガス突出との間に相関関係がないかということを、これは微小な亀裂でございますので、顕微鏡によりまして写真をとりまして、そういう統計的な究明をいたしております。  それから第四番目は、この炭層から出てきますガスの中に、これは大部分はメタンガスでございますが、その中に、微量ではございますが、メタンガス以外の特殊のガスが入っておるわけでございまして、この特殊なガスの含有量の変化というものが、ガス突出の前兆と何らかの相関があるのではないかということで、この微量炭化水素の発生状況というものをプロセスガスクロマトグラフを使いまして連続的に観測をし、研究をしているわけでございます。  そういうふうな、あらゆる可能性のある事項をつかまえまして、ガス突出の危険性と可能性と、どれがどういうふうに結びつくかということを中心にいたして研究をしておるわけでございますが、ただいまのところ、まだ、これがきめ手であるというものを確定するまでに至っておりません。むしろ、データを集積しつつあるという状況でございます。
  30. 大矢正

    大矢正君 局長も、長い間鉱山保安に実際に携わってこられて、炭鉱の保安の問題については十分理解があるとは思いますし、この種の事故を実際問題として防止することが、今日の学問的な立場においても、実務的な立場においても、できるかどうかというような具体的な点についての御判断は当然あると思われますが、いかがでしょう。この種の、規模の大きな突出事故というものは、絶対ということはなかなかこれは言えないことでありますが、絶対に近い形で防止することが、今日の学問や技術水準においてできると判断されておられますか。それとも、この種の事故は、今日の技術やあるいは学問的な立場においては、ある程度起こることはやむを得ないという判断をされておりますか。非常にむずかしい質問ですけれども、この辺をはっきりしておかないと、やはり現場の労務者は安心して働けませんから、ですから、政府自身の考え方や態度の中に、残念ながら今日の時点ではこういうことは起こり得るんだという認識なり判断なり、口に出しては言わないが、腹の中にそういうものがあって操業をさせておるということになりますと、これは非常にゆゆしい問題であると思います。非常にむずかしい御答弁かもしれませんけれども、お答えをいただきたい。
  31. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) ガス突出防止対策といたしまして、先進ボーリングガス抜きというのが、従来から最も有効なと申しますか、主要な対策として考えられておるわけでございます。ガス突出をするゾーンと申しますか、地帯に、作業上の必要から接近をし、その場所を採掘するという場合に、ボーリングというふうな、十センチとか二十センチというふうな寸法のもので穴をあける。この場合には、突出が起こらずにガスだけが抜ける。この性質を利用いたしまして、先進ボーリングなりガス抜きを行なってきておるわけでございます。  それからもう一つ、従来の定説として考えられておりますのは、二メートルなり三メートルなりというふうな寸法を持ちました坑道という形でガス突出のゾーンに不用意に近づきますと、ガス突出が起こる。しかも、これが災害に結びつくということでございますが、採炭払いと申しますか、長壁式の採炭払い、ロングウォールというふうに呼ぶわけでございますが、非常に広い面でガス突出ゾーンに近づいた場合には、応力の集中がある程度分散されるということから、ガス突出は起こらずに、むしろ緩慢にガスが抜けるというのも、一つの従来からの定説であったわけでございます。  したがいまして、歌志内炭鉱ガス突出対策を前回考えましたときにも、坑道掘進の場合に、ガス突出を絶対に起こさないということに視点が置かれまして、いろいろ対策考えられておるように見受けられます。事実、ある程度、この考えによりましてつくりました防止対策というものは、成功をおさめておりまして、前回の災害以後、当炭鉱における坑道掘進でのガス突出災害というものは、ほとんど防止に成功したというふうに見受けられるわけでございます。ところが、今回起こりました災害は、これは長壁払いで起こった災害と申しますか、先ほど私申し上げました、広い面でガス突出ゾーンに接近したときに、なおかつガス突出が起こり得るということが、この災害から認めざるを得ないという状況でございますので、ガス突出防止対策としては、非常にむずかしい問題がこの災害で提供されたというふうに考えざるを得ないと思っております。
  32. 大矢正

    大矢正君 局長ね、私もずぶのしろうとじゃなくて、多少のことは知っておるし、四十四年のこの山の事故の際も、当時は石炭の委員長をやっておりましたから、調査団長として行きましたし、払い面における突出というものは、従来、学問的には起こり得ないという想定であった。ところが、現にこれが起きてしまったという問題点は、新しい課題としてこれはどう解決をするか、対応策をとるか、ということが非常に重大問題だと思うんです。端的に、私が承っておりますところでは、絶対にこれを防止する方法がないんだという解釈なら、そこへ入っていって仕事をせいということに問題が出てくるわけですよ。そこが一番大事な問題なんで、これはむしろ大臣から率直に私は決意なり考え方なりを聞いたほうがいいんじゃないか。これは局長と議論をしておれば、どうしても技術論に走りがちで、単なる技術論だけの問題じゃないと思うんです。
  33. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私も、この問題が起こりましたときに直感したのでございますが、これを契機にして、ガス突出の問題に対しては結論はやっぱり出すべきである、こう考えております。  これは、技術的に、学問の上では突出は起こり得ないといっておったのが、現に起こっておるし、災害が非常に大きい。特に、ここはガスが多いところである。ガスが多いところでもって、全部ガスが抜ければいいわけです。抜くことは、私は金さえかければ抜けると思います。しかし、ガスを全部抜くのに膨大もないものをかければ、採算が合わないわけでございますから、私は、そこまでこの問題に対しては結論を出すべきである。災害防除が可能であるということでなければ、炭鉱労務者はおることはできない、労働者はおることはできないということであって、これはやはりこの問題に対しては、この事件を契機にしまして、ガスを含む地帯の採炭というものに対しては、もう結論を出して、閉山をするなら閉山をするというようなことに至るのじゃないかということを、私は直感したわけでございます。これは、その部分というものは非常にガスの多いところである。現に四〇%しか抜けない。四〇%抜くこと自体が非常にコストアップになっておるということであれば、この問題に対してはやはり相当強い態度で結論を出すべきである。そうでなければ、現実的に生命の保障のないところで労働力を確保できるはずはないのであります。ですから、この問題に対しては、私は就任して直ちに第一の仕事として継続を決定して、政府側が五億円出すといったものを十億、十億を十一億五千万円と言った瞬間に事故が起こったのであって、学問的にいろいろ言っても、現に事故は起こっておるのですから、これに対してはやはり炭鉱としての限界を決定すべきだというふうに考えます。
  34. 大矢正

    大矢正君 私は、大事なことが二点あると思うのです。少し長くなるようですけれども、この際、やはり大臣に十分認識していただかなければならぬと思うので申し上げたいわけでありますが、たとえば炭鉱事故の際には、ガス爆発とか——つまり今度のような突出とか、崩落、落盤とか、そういうようなところに、ガス爆発の場合には、爆発するに最適な条件のガスがそこにたまっておって、しかもそれに、どこかに火がなければ爆発をしない。したがって、なぜガスがたまったのか、その原因究明とか、なぜそこに火があったのかという火の究明とか、その原因というものは、究明がむずかしい点は往々にあると思います。これは私も率直に認めます。ところが、ガス突出というやつは原因というものはないのです。あるといえば、なぜそこにガスがたまっていたのか、たまっているのに、なぜ抜けなかったのかというのがあるだけの問題なんで、ですから、そういうところからいくと、原因とかなんとかということよりも、対策があるのか、ないのかということが大切なんだと、こう私は思うのです。  そこで、いま申し上げましたように、結局、特にこの炭鉱は、いま非常に採掘をしても、販売価格の安い炭、しかも、比較的ここはガスの少ないところで無難な文珠地域というところがありますが——さっき読み上げました——その地域から、事故を起こした同じ炭層の、ちょっと場所は離れておりますが、新しい区域にそこの人たちを持っていって、質のよい石炭を掘り出そう、そうして高く売ろう、こういう考え方でいま進めているわけですね。ところが、いままでそのような事故がなくても、なかなかそこに行きたがらない。非常に危険だというようなことを働く人たちは認識しておりますから。ところが、そこに持ってきて今度の事故ですから、そこに行けといいましても簡単に、はい、わかりましたといって働く者は行けないと思います。会社が少々のガス抜き対策なり対応策を出してみたところで、働く者はもう信用しませんよ。ですから、やはり監督官庁としての政府が、これならばだいじょうぶだというようなものがあるとすれば、それを示していただかない限り、私は労働者が納得して行かないという問題点が一つある。だから、そういう考え方のもとに、何らかの対策を早急に示してもらいたいというのが第一点。  それから、これは結局は金にまつわる問題でありますけれども、ああいう事故が起こらないために、これはこの山だけじゃない、ほかのガス爆発とか、いろいろな崩落とかいうような点を考えてみても、事故を起こさない方法はあるのですよ。それは、ゼロになるかどうかは別にして、事故を大幅に減らす方策はあるのです。それは、いまのようにやみくもに、前のほうが一体どういうふうになっておるのかわからないという形で採炭をしていく前進払い、前のほうにただ進んでいくという、炭がなくなったらやめて戻ってくるという、こういうやり方じゃなしに、ここにこれだけの炭があったとすれば、まず先にこういうふうに坑道を切って、そして、そこからもう全部ガスを抜いてしまって、逆にこっちの、反対のほうから退却しながらその炭を払ってくるという、後退払いというやつが非常に安全であるということを、通産省も現にそれを指導して、私どもも声を大にして経営に対してそういうことをしなさいと、委員会としても強調しているわけです。ところが、問題なのは、それをやる際には、どうしてもそれだけの準備期間と金が大量にかかるということです。ただ前へ進んでいくのじゃなくて、四角に切って、そこから反対にくるわけです。これだけ切るだけの金がたいへんかかるということ、こういうことが一つあります。それからもう一つは、これはこの事故と関連がありますが、まあ突出ということをある程度予測をして、相当距離、坑内で退避をすれば、今回のようなことがなかったのではないかと。まあいま、ハッパをかける際には、大体二十メートルか、その程度ハッパ個所から離れておればよいというような形で運用されておりますが、これを、ハッパをかける際には、三百メートルなり五百メートルなり遠方に退避をしてハッパをかけて、そのあと心配がないというところで、また入ってきて作業をする、こういうやり方は、方法としては——方法としてというか、考え方としては成り立つんです。ところが問題は、それが一日に一回のハッパならいいが、五回も六回も、そのたびに三百メートル、五百メートル逃げてはまた戻ってきて石炭掘ったんじゃ、今日のコスト上、合わないという問題になってきます。しかも賃金が能率給ですから、能率が上がらなければ賃金が、ひとりでに手取りが落ちますから、結局、何回も行ったり来たりしたら能率が半減しますから、そうしますと、個人の賃金も減ってくる。しかも、何回も上から歩いてくる。かなり、十度の傾斜を上がっていったり、おりたりしますから、そういう苦痛等を考えれば簡単なものではない。やっぱり根は金の問題にまつわるというならば、生産原価というものと販売価格という問題との差が、対策効果だけで埋められるかという問題に関連が出てくるわけであります。そういう意味におきましては、私はやはり近く開かれるでありましょう体制部会等々においても、十分これは保安面から見たこの山の骨格構造というものについて、検討をしてもらわなきゃならぬ点があると思うんでありますが、重ねて、いまの二点について大臣の所見を承りたいと思います。
  35. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 御指摘のとおり、コストの問題とすぐぶつかるわけでございますが、しかし、まあ石炭に対しては非常な大きな予算上の措置をいたしておりますし、その中で、ガス抜きについて四十六年度七億五千万円とか補助金合計十六億八千万円とか、こんなところにも問題があるなとは考えますが、しかし、石炭産業そのものに対しては、なかなか大きな支出をやっておるわけでございます。ですから、石炭鉱業というものが、エネルギー政策の中でどういうふうに位置するのかということを、もう一ぺん考えなきゃならぬとも思います。  同時に、一番考えなきゃいかぬのは、この事故を契機にして、人命災害というものは絶対に避けるということを、やっぱり第一にしなければならない。そのためには、学問的にもまた現実的な問題にしても、十分にひとつ掘り下げて、結論を出さないままにまた掘り進むというようなことをやっても、なかなかこれ以上成り立たぬと思います。だから、やっぱりある時期、タイムリミットを置きまして、この事件に一つの結論を出して、しかるべき予算措置をするならばするということで、事故だけは絶対に起こさないという確約を労働者にもしなければならない、こう考えております。
  36. 阿具根登

    ○阿具根登君 大矢委員の質問に、私も少し補足して御質問申し上げたいと思うんですが、いずれにしても、ガスの突出だということがいわれておるが、それでは原因は一体何であったのか。なぜ突出したのか。そして、登川炭層というのは、私も一昨年行って見てまいりましたが、これは一番ガスの多いところで、一昨年の五月に爆発したときも、ちょうどこういう質問もし、回答もいただいたわけなんです。そうして学者の力もお借りして、ガス抜きも相当やっておったはずだと、これも十分承知しております。それにもかかわらず、こういうのが起こったというのは、一体何なのか。一トン炭を掘るのに、八十立米ですか、ということを言っておりますが、はっきりひとつ数字を教えてください。そして、ガス抜きでどのくらい抜いておったのか、その点を教えてもらいたい。それから、私は今度行っておりませんからわかりませんし、また聞いておりませんが、ハッパを打ったのか、打たないのか、そういう点、ちょっと局長さんのほうから御説明願います。
  37. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) この突出災害の直接の原因と申しますか、引き金になったものは、やっぱりハッパであったろうというふうに推定しております。  それからガス抜きの量でございますが、この炭鉱全体のガス湧出量が、ガス抜きと、それから総排気の中に含まれますガスを合わせまして、四十五年の三月の調べでは百二・六立方メーター毎分、その中の三十三・八立方メーター分だけは、ガス抜きでパイプを通じて坑外に出しております。したがいまして、ガス抜き率は約三三%という数字であります。これはまあ季節なり出炭の状況その他によりまして、トン当たりでございますので、変動があるわけでございますが、三〇ないし四〇%くらいのガスを抜いておったというふうに見られます。
  38. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、突出によってふき出した粉炭は、大体どのくらいありましたか。
  39. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 歌志内の炭車にしまして八百車でございます。これは二立米の炭車でございますので、約千六百立方メーターくらいになるわけでございますが、トン数にいたしますと、大体その同じ数のトン数くらいではあるまいかというふうに考えられます。
  40. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうしますと、この事故を起こした切り羽では、五十数人の人が連日働いて、一日に大体四百トンの出炭です。その四百トンの四倍からの、一日五十数人の人が掘り出す石炭の四倍からの多量の石炭をふき出したということは、相当量のガスがたまっておったということになるわけです。それがガス抜きでどうして出せないのか、どうしてわからなかったのかということに私は大きな疑問を持つわけなんです。図面見てみますと、相当ガス抜きをやったという、もうボーリングのあとが相当示されております。これだけのボーリングをやっても、一日がかりで掘り出す石炭の四倍もの石炭をふき出すというだけの、大きなガスがたまっておったのが取れないとするなら、これは安心して仕事ができない。この点、どういうようにお考えでしょうか。そこだけ、極端にたまっておったところにボーリングしなかったのか、あるいはどうなのか。この図面で見てみますと、ほとんどガスはこれで抜けるんじゃないかというくらい、ボーリングのあとはしるされてあります。しかし、それがわずか三〇%であり四〇%であった。たまたまその中に大きなたまりがあって、その六〇%か七十%の中にこれがあったということであったとしても、それではとても安心して仕事はできない。こういうことになるわけですが、いかがでしょうか。
  41. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) ただいまガスの量として申し上げましたのは、この歌志内の炭鉱で年間に出てくる総量を申し上げたわけでございますが、ガス突出だけを考えますと、これは、その炭層の中に含まれておるガスが一体どのくらいあるか、それから、その中のどのくらいの比率のガスガス抜きによって抜き得るかということが問題になってまいりまして、一分間に一トン当たり百立米のガスが出ると申し上げたわけでございますが、これは古洞でありますとか、それから新山に埋蔵しております炭層から、採掘によりましてゆるみが出ますが、そのゆるみの裂罅を通りまして払いあと坑道に出るというふうな炭層もございますので、実際にこの未採掘のフレッシュな炭からどのくらい出るかということは、なかなかむずかしい問題ではございますが、前回の委員会の研究によりますと、約四十立米くらいのガスを炭は持っておるであろうというふうに結論が出ております。その中の少なくとも二〇%のガスを抜く必要がある。これは炭の包蔵しておるガスでございますが、そういういま結論に従いまして、この区域で計算をいたしますと、約二十四万立方メートルのガスを抜かなければならないという計算になるわけでございますが、この区域、実際には約二十八万を少しオーバーするくらいのガスを抜いておるわけでございます。  それから先生御指摘になりました、災害によってどのくらいのガスが出たかという量は、不幸にして主要扇風機についてございました計器は、ガス量が一・五%まではかれる計器でございましたが、これが振り切っておりまして、主要扇風機でのガス量、風量からの計算というのができないわけでございますが、先ほどおっしゃいましたように、やはりおそらく数万立方メートルというふうなガスが出たものと考えられます。
  42. 阿具根登

    ○阿具根登君 図面にはっきり切り羽の名称が出ておりませんから、わかりませんけれども、この前もらったやつでは、まだ遺体が残っておったんですが、この突出個所であろうと思われている付近に断層があるわけですね。
  43. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) ございます。
  44. 阿具根登

    ○阿具根登君 これはもう、しろうとでもわかることだと思うんです。断層付近にはガスが充満する。炭と断層の間には相当ガスがあると思わねばならぬというのは、これは常識なんです。なおそういうところでこういうことが起きたのだと。先ほど局長は、マイトを使ったあとがあるとおっしゃった。私が前に聞いた範囲内では、全部これ済んでおりませんので中間報告でしたけれども、そのときは、マイトを使った形跡がないということでした。しかし、マイトを使ったということになれば、大矢委員も先ほど言われましたように、一方では九人の人が——この人たちは私は確かにマイトを避けておったんだと思うんです、この倒れた配置図から見てみますと。ところが一方の、十数名という人は並行した坑道におられるとするならば、これはどうしてマイトを打つときに、多少の距離はあったかもしれぬ、距離相当あるようですけれども、そういうところになぜおられたか、こういうことに疑念を持つわけです。一方は九人だけかたまって、ちょうどその時間も休憩の時間じゃないはずです、九時何分ですから。だから、おそらくこれはマイトを打つために避けておられたんだろうと、こういうような見方が成り立つ。一方では、そうじゃない、ちっとも曲がり角のないところに、上下はあるようですが、しかし、そこで数名の人がかたまって倒れておるということになってくると、マイトそのものに対する会社の管理はどうであったのか。このときの、この監督に当たる人は、一体どこまで退避させてマイトを打ったんだろうか。これが常態であったろうか。しかも、ガスが非常に多い。二年前、多数の人が死んだ。非常な大きな世論の指弾を受けながら、しかもたくさんの学者の知恵まで借りて、そして警戒に警戒してやっていかなければならないところで、どうも私は何か釈然としない点があるわけなんだ。これは、一体どういうことなんでしょうか。
  45. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 払いでのハッパ作業は、おそらくこの払いの一番下というか、とい口付近でかけておったと思われます。といいますのは、とい口のところ、普通、ゲート坑道と申しておりますが、この払いでは、むしろゲート坑道を先進するということを、ガス突出対策上、故意に避けておったわけでございますが、先進ボーリングをこのとい口から断層に沿いまして新しくやろうということで、ボーリングのための座をここに準備をいたしておりました。その関係上、おそらくこのゲート坑道の詰めあたりでハッパをかけたのではないかと考えられます。  したがいまして、この坑道の下部は、坑道の詰めにハッパをかけますときには、かなりの距離を退避しないと、飛び石その他の危険がある。それから長壁の払いのほうは、これは後山側に飛びますので、そんなに距離を避難をいたしませんでも、普通、まあ十メートルから十五メートル程度の退避で間に合うという関係で、払いの中央部に約十名の方がかたまっておられたというふうに考えております。
  46. 阿具根登

    ○阿具根登君 十メートルから十五メートルとおっしゃっても、大体二十メートルですね。
  47. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) はあ。
  48. 阿具根登

    ○阿具根登君 そうすると、それが、それでいいのかという問題が起こってくる。こういう特殊なところ、しかもマイトを打つところ、これは火がついてなかったからよかったわけですね。火がついておったら、たいへんなことになる。まあこれは火がなかったから、不幸中の幸いかもしれません。あるいは火が出ておったならば、おそらく一酸化炭素も相当出ておったと思うのです。  まあそういう問題もいろいろありますが、ひとつ時間もございませんが、先ほど大臣も御答弁になりましたが、大矢さんの報告を聞いてみましても、今度は地方自治体としては、あるいは残っておる方々としてはですね、人間というものは何か冷たいもので、もう済んだことはしょうがないじゃないか、あと何とか再開してもらわねば自治体はつぶれます、あるいはもうほかの人がどうにも生活ができないようになりますという点に、ついつい行きがちなんです。私らもこれは反省しなければならぬと思っておるんです。しかし、今度のガス突出説明を聞いてみましてもですね、私たちは、さあこれが完全になくなるというような考え方を持ちません。まだまだ危険がある。まだいまの技術では、とてもこれだけガスの多いところを、もう今度は大丈夫ですというような自信は、私たちも持ちませんし、専門家の方々もおそらくお持ちにならぬじゃないか。しかし、そうだといっても、山をつぶしていいかという問題が今度は出てくる。自治体としては、それではもう地方自治体がつぶれてしまう、こういうお気持ちになられると思う。また、残った方々も、何とか遺家族のめんどうは十分見てください、今後はこういうことのないように注意してください、そうして早く再開のできるようにしてください、こういう気持ちになってくると私は思う。いままでも、災害のときはすべてそうでございました。しかし、先ほど大臣も言われましたように、生命に対する自信がない。まあ、炭鉱に対して完全な自信を持つ者はないと思うのです。これは船乗りも一緒だと思うのですが、だから、完全に一〇〇%ということをやるならば、炭鉱をやめたほうがいい。炭鉱がなかったならば一〇〇%助かる。しかし、そういう危険な個所であればあるほど、より以上のやはり注意と政府の援助も要ることと思う。そういう点について大臣の御答弁をお願いして、私の質問をやめたいと思います。
  49. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 非常に大きな災害でございまして、これを契機に、少なくとも人命の事故というものは完全に防止できるという結論は、どうしても出すべきだと思います。そして、その結論を出すためには、あらゆる努力政府も、それから自治体も、また企業者側も、学問的にも現実的にも、いま考え得る最大の結論を出して、その上でなければならぬと思う。安易な状態においてこの坑道を再開すべきで私はないと、非常に強い考え方を持っております。
  50. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 大臣経済問題で若干、もう時間もありませんから包括的にお伺いします。  日米関係は、ずっと見ておりますと、最近、非常に外交の面でも防衛の面でも、あるいは経済の面でも、どんどん追い込まれておるような感じがするわけです。ニクソンの中国訪問によってまた政府の対中国政府は追い詰められたような感じがいたします。また、防衛の面を見ましても、自主防衛ということで日本がどんどん四次防を強化させるように、これもまた何となしに追い込まれたような感じ、経済問題を見ても、最近はまた次々と自由化が促進されて、電算機の問題にしても、あるいは農業問題はグレープフルーツの問題一つとっても、あるいは繊維問題をとっても、だんだんと追い込まれたような感じがする。一体、これから日米間の調整を促進しなければならないということできておりますけれども、今後、何をどういうふうに調整されるのか。外交、防衛は別にして、その点からちょっとお伺いしてみたいと思います。
  51. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 日本側においては、どうもニクソン訪中問題をとらえてみても、アメリカに追い込まれておるというふうに発言される方がございます。アメリカ側に聞いてみると、日本に追い込まれておる、こう言っておるので、日本に追い込まれているというよりも、ある経済ミッションなど、行って帰った人たちの意見を聞きますと、少し極端だと思いますが、日本の対米攻勢は第二のパール・ハーバーだ、こう言っておるわけであります。私は、日米間というものの重要性ということを考えますと、日米の間にそんな考え方のあることは、不正常の状態だと考えておるのでございます。ですから、やはり日米間の正常な状態——正常な状態というのは、まず先入観として持っているものを解いて、で、実際日本経済進出ということでアメリカの六・二%という失業が続いておるのか、日本がほんとうに規制をすれば、アメリカ経済は立ち直るのかというようなことを、お互いに、ざっくばらんに話してみる必要が私はあると思う。そういう、まず先入観を持っているところから、まず精神的な面から、ひとつ排除してかからなければならないと、こう思っておるわけであります。
  52. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 日米間の問題は、沖繩交渉の過程におきまして、いろんな沖繩返還の問題もからんでおり、そういうことも言われておりますけれども、それは抜きにして、しからば、日米関係の調整の中心点になるようなものは、どういうことになりますか、経済問題。
  53. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いまは対米輸出は、ことしの一月から非常にふえております。これは、対前年に比べると三〇%ないし四〇%、この中には、三月が三六・四、四月が三三・七、五月が三六・四、こう伸びておるわけであります。しかも、それだけではなく、品目別に見ますと、あまり私は言わないわけでありましたが、自動車、同年同月比、三月は二三二、四月は二二六、五月は二二八、六月は二七三、鉄鋼などは規制いたしておるわけでございますが、一三七、一三五、一五五、一四五というふうな状態でございます。テレビは、四月においては一八〇、こういうことでございます。これは必ずしも年間を通じての数字ではございませんし、また、港湾スト等が予測せられたので、輸出急ぎということもございますし、前年度の輸出不振というもので、今年度前年同月対比の数字が必ずしも正確じゃございません。しかも、日本から出るものが、アメリカのシェアそのものから見れば二%から六%、一〇%以内じゃないか。イギリスにおけるアメリカ製電算機のシェアは九〇%以上に及んでいるじゃないかということに比べれば、問題ではありませんが、とにかく、そういう具体的な問題に対して、日本経済攻勢は第二のパールハーバーだと言っておるわけでございまして、こういう問題は、ひとつ、自主規制もやっておりますし、特に繊維などは七月一日から自主規制をやっておるわけでありますので、日本輸出秩序を保つということで相手の理解を求めるということは、望ましいことであり、なさねばならぬことだと存じます。
  54. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 通産大臣は実力者大臣ですから、私は総合的に聞きますけれども、あなたは、貿易の面だけいま取り上げておっしゃったわけですが、最後日米関係の調整の中心になるのは、先ごろ発表になりました例の円対策八項目、あれが中心になってくるのじゃなかろうかと思うわけですね。貿易資本自由化関税引き上げ等、あれを実行して、確かにそれは輸入も増加するでしょう。輸出入のバランスもとれるでしょう。しかし、それだけでは、これは目的を達成したとはいえないし、あるいはまた、輸出入のバランスはとれても、依然としてドルは減らない。それで、結局は円の切り上げに追い込まれるようなこともなきにしもあらず、私どもはそう見ていますから。また一面からいうと、国民生活からいうと、景気対策でどんどんやる。この円の防衛対策それ自体が一つ景気浮揚対策になっておりますから、景気がよくなっても、片方、物価の問題がどんどん上がっていく。これはもう必然的でありますから、ですから、国民はそういう点を非常に心配しておるわけですよ。だから、ここは商工委員会ですから企業中心になりますけれども、私は今度は総合的にあなたに聞いてみたい。その点をひとつ御説明願いたい。
  55. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 貿易資本自由化貿易為替自由化というものは、これは国際的な問題でございますし、日本も十四条国から八条国に移って、もうすでに七年目を迎えるわけでございます。国際的な機構の中で、援助も受け、戦後の経済復興をなし遂げ、繁栄の基礎を築いてまいったわけでございますから、今度は日本の国際的機関の中における責任というものも当然ございます。いま日本は、貿易為替自由化は外圧によって強いられるという感じでございますが、素直な立場で見ると、貿易為替自由化自体は、戦前の日本の要求でございます。これは貿易立国、貿易によってのみ国民生産を上げ、国民所得が増大できる日本といたしましては、しかも原材料を持たない日本が、持てる国と同一市場において競争に打ち勝たなければならないという宿命、そういう意味から、貿易為替自由化は戦前の日本の要請であったわけです。日貨の排斥が、日本商品のボイコットは不当である——これが戦争の発端になったわけでございますから、そういう意味では、これは国際的な新しい要請いかんにかかわらず、日本も、究極の目的としては貿易為替自由化に踏み切って、ケネディ・ラウンドの推進者になる——賛成者になるということよりも、推進者になるということだと思います。  それからもう一つは、東西問題よりも南北問題に移ってきておる現在、原材料を低開発国に求めている日本でございますから、やはり低開発国の援助というものは、これは、国連貿易開発会議の決定によって国民生産の一%などということよりも、やはり日本はやっていかなければならないという大勢の中にあると思うのでございます。でありますから、そういう意味貿易為替自由化を進めておるわけでございますし、また、いまは外貨準備高が、今年一月に比べますと、約倍増でございます。四十五億ドルが七十五億九千九百万ドル、いまはもう八十億ドルをこすという状態であろうと思います。まごまごすると、八月、九月では百億ドルをこすかもしらぬということでございます。ドル保有高からいうと、西ドイツ、アメリカ日本、イタリー、こういう順序になるわけであります。そうするとやっぱり、数字の上から見ると日本の状態はそれほどでないにしても、中小企業や零細企業という特殊な形態を持っておりますから、とてもたいへんな状態であるにもかかわらず、やはり外圧の強くなるということは避けがたい事実だと思うのでございます。  そういう意味で、外からの情勢考えるときに、国内的には景気は非常に低迷をいたしております。一〇・一%当初予定しております成長率は、八%ぐらいまでは押し上げなきゃいかぬ。いま、もっと低いということでございます。そういう意味で、このままでいけば、輸入は伸びない、輸出ドライブは現実的にかかったようなかっこうになって、外貨の積み増しが行なわれる。外圧はますます強くなる。円の切り上げ問題も、いまは絶対にしない、でありますし、また、やれるほどの実力はないんです。にもかかわらず、ますます外圧は強くなるということでございますので、貿易為替自由化というものに前向きに対処をする。そればかりではなく、八項目の推進をやり、しかも、あれだけでもってほんとうに景気が浮揚するかどうかわかりません。そういう意味で、もうすでに議決をいただいております四十六年度予算の、七、三の割合に逆転をして公共投資をするようなことではなく、もう四十六年度分の公共投資は全額発注しよう。また、必要があれば追加補正を行なっても刺激をすべきである。そうして、その後にくる設備投資意欲のかきたてによって輸入をふやし、一〇%に近い成長確保しよう。それによって円切り上げの外圧等は避けよう。こういう考え方をいまとっておりますが、もう考える段階ではなく、直ちに行なおうということで、大蔵大臣とは、七月一ぱいにはもう今度やらなきゃならぬ政策は全部やろうと、こう言っておるわけでございまして、この国会に出席をしておりながら、一面においては、関係省でもって新しい景気浮揚政策八項目の中身をいま鋭意検討して、実施に移すべく努力をいたしておるわけでございます。
  56. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それで、結局は、輸出入のバランスをとらなきゃならぬ、あるいは外貨は減らなきゃならぬということですが、いま、減らすということが適当であるかどうか知りませんけれども、一つ中小企業対策の問題が出てくる。これは、本会議であなたの答弁をお伺いしました。いずれ手を打ってくださるでしょう。また、手を打たなきゃならない問題です。もう一つ物価の問題、これがどうもはっきりしてないですがね。一番国民の心配するところは、この物価問題ですよ。その点、もう少し明確なる答弁をお伺いしたい。
  57. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) いま、物価は最大の問題でございます。最大の問題でございますし、長いこと国会の議論にもなっており、院の外においても議論になっておりますが、物価は依然として上がりつつあります。はなはだ遺憾なことでございます。しかし、卸売り物価は、横ばいというよりも、世界的にも非常に安定をいたしております。ただ、消費者物価というものが上がっておる。これはまあ二つの問題があると思います。  一つは、国民生活の質の問題が変わっております。これは、教育費などに対しては、質は全く変わっておるわけでございます。質が変わっておることによって、物価指数そのものはそのままの計算をやっておりますから、物価は押し上げられておるという面もございますが、いずれにしても昨年年率七%台という、まあこれは定期預金の金利を上回っておるのでございますから、これは消費者物価は押し上げられておるということを認めざるを得ません。  ただここで、私は今度の、まあ次の国会までには、これはもう十分考えなきゃならぬ問題の一つの結論が出ると思っておりますのは、いま輸入は増大をしない、それから公共投資の面は、これは参議院選挙のあるときはいつもそうなんですが、参議院と地方選挙があるときには、どうも公共投資は全部ストップするわけであります。人がかわるかもしれぬから、新規事業はみなストップしておる。六月現在の調査におきまして調査をいたしましたら、例年現金支払いベースで一一・五%というときに、今年は九%でございますから、二・五%現金ベースで押えられておるわけでございます。ですから、いわゆる上半期三〇%、下半期七〇%が逆転しまして、ことしは上七〇%、下三〇%としておるのでございますが、そんなことよりも、もう四十六年度で御決議願っておる公共投資は一括発注しようということを考えておるわけでございます。その上になお、二千六百億円の財投追加を行ない、新聞を見たら一兆円の国債を出せと、まあ一兆円という問題に対しては、まだ少し私も納得しておりませんけれども、そのような状態、新聞に書いてあるわけでございます。そういうことからいいますと、(「新聞って、自分でラッパ吹いたんじゃないのか」と呼ぶ者あり)いや——財政でもって景気刺激をするというときに、一番大きな問題は物価問題なんです。  ところがね、私は今度皮肉にも、いままでもそういう現象があったのですが、思い至らずということでございますが、不景気物価高なんです。不景気物価高である。この勢いでもって、一兆円と言わずとも、二千六百億円も財投の追加を行ない、しかも、たまっておる上半期のものと下半期のもの、全部一ぺんに発注をするということになると、これは、えらい財政刺激をするわけでございます。そこで、ほんとうに財政刺激をした場合に、これから、この次の国会にですな、国会で御審議をいただくときに、ストレートに物価につながるかどうか、消費者物価につながるかどうか。私は、必ずしもつながらないという感じを持っておるのでございますが、これをメスを入れるのに好機である。実際、いままでのような考え方で、財政投資というもの、財政による景気刺激というようなものや景気浮揚策というものが、直ちに消費者物価につながってくるということであるなら、ことしの物価は八%、一〇%になるわけでございます。私は、そうはならぬ。ここはメスを入れて、いままでの、何度となく考えてき、何度となく承認されてきたものに対しては、やっぱりこれは関係のないものは関係ないのだ、そういうことに一つのメスを入れるときだと考えております。  しかし、いずれにしても景気は浮揚しなければならない。しかし物価は絶対上げちゃいかぬということでございまして、当面の責任者でございまして、評論家のように、半年ばかり指数を見ましょうと、こんな無責任——無責任というか、そういう考えではございません。ですから、中小企業対策とか、零細企業対策とか、流通対策とか、いろいろなこと、輸入政策も、均衡をとった輸入政策を弾力的に併用することによりまして、消費者物価を押えながら、景気浮揚というものをはかろうということに対しては、これはもう万全ということかどうかわかりませんが、全精力を傾けてやってまいるつもりでございます。
  58. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 まあ田中大臣ですから、答弁としてはね、それでいいか知りませんが、結果的にはどうなるかということが問題です。まあ私は、あなたの答弁に対してあまり信頼できないような気がする。すでにいままで高度経済成長政策をとってきて、そういったような物価対策の答弁も何べんも聞いておりますけれども、事実はやっぱりどんどん上がってきておりますからね。  実際、物価に一番影響されるのが、御承知のとおり給与所得者、そのほか年金所得者、年金等で生活しておる人です。その辺のところも、もう少し目を通してもらわないというと、これはもうドルが余ったからどうだ、景気が悪いからそれやれというような田中式でぽんぽんやられたんでは、国民経済というのは破綻しちゃうのですよ、実際。家賃は高いし土地は高いでしょう。もう、私は今度選挙やったんですがね、あまりむずかしいこと話をしても、選挙民の皆さん、失礼だけれども通じない。やはり何といってもこの物価の問題、どこへ行ってもこれでやられるんですからね。  ところが、答弁は承りましたけれども、私は、いまの大臣の答弁を全面的に信頼するわけじゃございませんで、これはここで議論したって詰まらないので、これで終わっておきますけれども、それで、いまも質問がありましたが、繊維の問題ですが、これは一日から自主規制がなされておることですが、大臣は、衆議院におきましても、繊維問題は政府間協定は絶対やらないというような御答弁があったようです。ところが、福田外務大臣は就任直後また、この繊維問題は解決を要すると、こういうような柔軟な答弁をしていらっしゃるし、なおかつ、新聞等を見ますというと、ケネディ前財務長官がニクソン大統領特使として二十一日、日本においでになっていらっしゃる。このケネディ特使がおいでなったということは、まだ繊維問題、結着がつけてない、何とかもう一押し日本と交渉して、きちっとかっこうをつけたいと、まあ、そういうようなふうに新聞等にも出ておるんですが、今後、どういうような態度をもって交渉なさるのか。どうせ、いずれまたケネディ特使とあなたお会いになるんだろうと思いますが、お会いになりませんか。総理大臣だけですか。その辺のところもちょっと聞かせてもらいたい。
  59. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ケネディ特使が来られたことは承知いたしておりますし、向こうのほうに帰られるとき——この前こちらにおったんですね。で、私が通産大臣に任命をせられた直後、東京におるので表敬に行きたいということでございましたので、まあいらっしゃい——これは私が大蔵省に在職しておりますときに、コンチネンタル・イリノイという銀行の会長だったようでございます。そうして、日本の支店設置等でもって折衝がございましたし、私も、アメリカの市場で電電債を出すときなど、いろいろごめんどういただいたような間柄でございますので、どうぞいらっしゃい、こういうようなことで、表敬だけ受けました。やあやあということでございました。それで帰られたんです。  それですから、何でもないと、こう思っておりましたら、今度また来て、また来たときには、今度は新聞に出ておりますから、これは会いたいといえば、旧知の間柄でございますし、いつでもお会いする。これは、会わないというわけにはまいるわけじゃないし、日米友好の関係からいっても、会いたいと、ああどうぞ、いらっしゃいということになってお会いすると思いますが、しかし、繊維問題に対しての政府間交渉を始めるということではないことは、明らかにしておきます。  これは前に宮澤通産大臣からも、当委員会で十分お述べになったと思いますが、これは、日本の法制のたてまえからいって、政府間協定を行なって実効をあげることができるのかどうかという問題には、相当大きな問題がございます。政府間協定を行なうことになれば、数量を規制するということになると思うのです。そうすると、一体、業者が聞くか聞かぬか、聞かなきゃどうするか。現行法によれば、貿管令によって押える以外にない。押えられるものではありません。数の多い、これだけのものが押えられるかどうか、これはとてもたいへんだということでございます。そうでなければ、法律を出すということになります。法律は、与野党一致の決議が両院で出ておる。これは通る予定はない。通る予定のないものを出すとすれば、これはゼスチュアでしかない。それは日米不信の原因を増すことであって、そんなことはできるわけはない、こう思っておるわけです。ですから、いま自主規制を行なって、七月一日からそれに入ったんですから、やはりこの状態を見守っていただく、こういうことが一番の問題であるということで、われわれも輸出の秩序維持のために、政府と業界いろいろ話し合いをしながらやってまいりますから、ひとつそれで御理解いただけないかというのが、現時点における私たちの考えでございます。  しかしアメリカ側は、これはまだ、こんなことでは済まぬぞという気がまえのように、新聞等では承知をしております。ですから、日本が、もうこれしか手がないんだということになれば、たとえばアメリカ側で立法するということになるでしょうし、立法が、繊維だけではなく、鉄鋼も何もみんなやるぞということになるかもしれません。ですから、それは今度向こう側の問題でございますから、そうならないように、お互いがやはり日米間の意思の疎通をはかってまいるということは、これは必要なことだと思います。繊維交渉自体を政府間協定というものに切りかえられるかどうかという問題に対しては、現時点においては、とにかく自主規制の状態を見守り、被害のあるなしということを十分検討していただきたいということが実態でございます。
  60. 中尾辰義

    ○中尾辰義君 それではこれで終わりますが、新聞等見ますと、こういうふうに書いてあるでしょう。政府は、日米経済関係の緊張を解消するため、日米繊維交渉について、米側に「政府レベルでのなんらかの保証」を与えることを考慮している。それで、一つは、七月から実施する自主規制が実質的に効果をあげるよう、政府として最大限努力をする。二番目が、自主規制が実効があがらない場合、米側が極東二国——つまり台湾とか韓国あるいは香港等でございましょう——極東二国と政府間協定を結んだら、政府も応ずるかまえである。こういったようなことが出ておるんですが、これは、大臣おっしゃったのか、どうなのかですね、この辺のところをちょっと見解聞きたいわけです。
  61. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、全然申し上げておりません。それは外電じゃございませんか。ピーターソン大統領補佐官等が述べられたということじゃないかと思います。私は、きのうの夕方承知をしたのはそれだけでございます。私がそんな柔軟なことを申し述べられる立場にはないということだけ、御理解いただきます。
  62. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 いま大矢委員、それから中尾委員が、繊維問題についていろいろお尋ねいたしました。たまたま私、繊維出身でございますのでたいへん関心が深うございます。なるべく重複するところを避けて御質問申し上げたいと思いますが、いまのケネディ特使がお見えになって、表敬の目的でお会いになったということでございましたが、私の聞くところ、ケネディさんは韓国、台湾あるいは香港と、しばらく回遊して、繊維問題について、るる政府と話し合いたいということの希望を持っておるように私聞いておるんですが、大臣、その辺についてどのような感触をお持ちか聞きたいと思います。
  63. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ケネディさんと会いましたときには、旧知として、やあやあということでございました、これは私その当時、まだ通産省に参りましてから日も浅うございまして、各局のレクチュアも全部終わっておらなかったわけです。ただ、宮澤前通産大臣からの事務引き継ぎは受けておりましたが、宮澤前通産大臣は、ケネディ特使との会談はやっておりません。ですから、引き継ぎ事項にはございません。私も、そういう問題に対してはそう理解をいたしております。ところがその後、ケネディさんがこちらへ来られるときに、来られる日でしたか、来られてからですか、いずれにしても、新聞でもって発表したわけです。向こうで大統領補佐官が発表されました。そういうことで、台湾、香港等の間も交渉しておられるということが新聞報道等によって明らかになったわけでございますが、いまはそういうことで滞在をしておられるということは、理解いたしております。おりますが、私自身がケネディさんと会いましたときに、早々の間でもございますが、五分か十分だと思います。そういうことで、退庁まぎわにちょっとお会いしたということで、これは表敬でございます。
  64. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 このピーターソン補佐官が報ぜられておる話なんだけれども、七月一日から自主規制を現に行なっているにかかわらず、政府間交渉を行なって政府間協定を結びたいという目的は何かという、大臣のお考えが聞きたいんです。現に七月一日から自主規制を行なっておりますね。それであるにかかわらず、なおかつ政府間協定を結ぼうというねらいをつけておるように、外電は報じておりますね。ピーターソン補佐官も言明しておる。何を目的としておるのか、どういう協定を結ぼうとしておるのか、その辺のところをお聞かせいただきたいと思います。
  65. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはさだかに私も聞いておりませんが、やっぱり極東四カ国一括ということじゃございませんか。いわゆる香港、台湾、韓国と話を話めておるということになると、これは、日本だけが自主規制ということになると、みなそうなるわけでしょうから、平仄を合わせるためにということじゃないかと思います。私がいま理解しておるのは、そのように理解ができると、こう思います。
  66. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 私が思うのは、やはりアメリカとしては、品目別の規制をしたいというのが真のねらいだというふうに思うんだけれども、その辺はどうですか。
  67. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 向こうはそう思っておるかもしれません。しかし、そこが問題で自主規制になったわけでございますから、カテゴリー別にやるということは、これはむずかしいのです、実際。これは御承知のとおり、あなたのほうが専門ですから、釈迦に説法ということになるでしょうが、これは、きわもののように、ことしはいいものでも来年は半分になってしまう品目もございますし、ことしは日本でもって一〇%しかいかないものが、来年は向こうの要請によってうんと大きくなれば、これは五倍にもなるわけでございますから、これを年次の計画でもって、総括的な中でもってやるというなら話はわかる。しかし、カテゴリー別にぴしっと押えられてしまって、減ったのは減ったところである、ふえたのだけは何%で押えるというのでは、それは禁輸である。それは対米禁輸であるということで、日本は自主規制を行なったわけでありますので、そういうことまで考えておられないんじゃないかと思いますが、これは相手の心をそんたくして申し上げるわけにはまいりませんので、これは、私はいまの御質問にオウム返しに答えると、そういうことになるんじゃないか、そういうふうに御理解いただきたいと思います。
  68. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 佐藤総理が、九月の日米貿易経済合同委員会までに、冷たくなりつつあるこの日米経済関係を回復しなければならない。それにつれて、先ほども御質問があったわけだけれども、大蔵大臣は、繊維問題について、現に、これは重要な問題であるということも新聞に発表されている。先ほど来の大臣のお答えによると、技術的にも、現在アメリカが欲しているところの政府間協定は無理だ、しかも七月一日から自主規制というものを行なっているさなかであるから、当然これで進むべきだというお答えですね。だとすれば、一つの大きな懸案である繊維問題については、この問題に関する限りは、日米の友好というものの、これはアメリカの言うことは聞けませんというふうに解釈していいわけですね。
  69. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 佐藤内閣は継続をいたしておるわけでございます。この繊維の自主規制が発表せられた直後、内閣を代表して当時の保利官房長官談話は、これを歓迎すると言っておるのでございます。私はその佐藤内閣の閣員の一員でございますから、宮澤前通産大臣考え方をそのまま踏襲いたしております。ですから、内閣全体、政府全体として別途考究すべき新しい事態が起こらない限り、何らかの指示を受けざる限り、私は所管行政に対しては、いま申し上げたとおりでございます。
  70. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 先ほど来の御答弁、それから衆議院の予算委員会でも、わが党の竹本議員あるいは社会党の細谷議員からの質問に対して、大臣お答えになっておるわけだけれども、それをよく読んでみますと、たいへん巧みな御答弁があるわけなんです。文章にする限りにおいては、どの項目を見ましても、この政府間交渉についての大臣の御答弁の中身は、いまの段階においてはその成果を見守る、これは自主規制を見守るというわけですね。あるいはさらに、いまの状態では技術的に不可能だ、だから当分の間はいまの自主規制でいかざるを得まい、このような答弁をなさっておる。いまの段階、当分の間。それは、いまの段階を過ぎれば、あるいは当分の間を過ぎれば、アメリカがさらに圧力をかけてくるなら、日米友好問題というものを見つめて、これはまた話に応じなければいかぬじゃないかという考えが底にひそんでいるように、邪推かもわからぬけれども、私は思えてならないわけです。私は、繊維が、いままで苦難の中から自主規制をしているわけなんだから、その辺のところを見越して御答弁いただきたいと思います。
  71. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は舌足らずのところもございますが、日本語としては比較的に率直に申し上げているはずでございます。ですから、まあ私が申し上げているとおりお考えいただきたい。それは実際問題としては、絶対的ということを言えるわけはありません。それはお互いに相手のある話でございますし、これはうまくいかなければもっとひどいことになる。昔は戦争もあったわけですが、今度はそんなことはないわけでございますから、そんなことは申し上げませんが、ものには軽重がありますから、それは絶対的に、どうも死んでもどうしろというようなことを、私は行政の主管者として申し上げるべきではないと思います。しかし、私は、宮澤前通産大臣が当委員会で述べたと同じように、その立場を踏襲いたしております。私は、より高い立場から政府としての指揮がない限りにおいて、新しい事態がない以上は、これはもう全然宮澤前通産大臣が言ったとおりでございますと、こう述べておるのでございますから、これは新しく通産大臣に任命された、緊張しておる私として申し上げておるのでございますから、発言どおりひとつ御了解賜わりたいと思います。
  72. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 田中さんは非常にざっくばらんな方だと、前々から承っておるので、そのとおりに受け取っていきたいと思います。  もう一つ、そのような考えを持っているにかかわらず、アメリカとして現に六・二%の失業者がおるし、また、政府間交渉をやって、政府間協定を結びたいということを現に主張しているわけですね。しかも、先ほど大臣がおっしゃったように、これは双方がやはり話し合わなければだめだ、そうして相手の立場を理解すると同時に、こちらの態度もよく理解させなければならないという意味のお話があった。私もそのとおりだと思うのです。昨年から繊維交渉がたいへんやかましくなったおりに、業界としてもアメリカに対して、アメリカの業界に会おうじゃないか、あるいは被害の立証をしてくれ、ほんとうにアメリカが被害があるなら、話し合おうじゃないかという申し出を再三行なっておるにかかわらず、アメリカがそれをやりませんね。また、労働組合の立場としても、全繊同盟が全米被服労組に対して、こちらに来いとは言わない、ハワイででも、あるいはパリででも、あるいはスイスででも会おうじゃないかという呼びかけをしても、全部拒否されておる。だから、いままでの日米繊維交渉に関する限りは、こちらは全く紳士的な態度で話し合おうじゃないか、テーブルにつこうじゃないかという話をしても、向こうは問答無用でやってきておるわけなんです。今度の場合も、一たんこれは断わった。そうすれば、当然アメリカの出てくる手というのは、やはり同じような態度で私は出てくるのじゃないかという気がするのだけれども、その話し合いというものを、あるいはこっちの立場をよく説明して理解せしめるという行為は、どういう場所でどういう形で行なうのか、大臣のお考えをお聞きしたい。
  73. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私がケネディ特使と会ったり、またケネディ特使が外務大臣と会ったりした場合、政府間交渉だ、政府間交渉が始まったんだということでやるなら、これはなかなかむずかしいと思います。しかしそうじゃなく、よきパートナーであると、こう言っておるのですから、友あり遠方より来たる、それを面会も断わるというのじゃ、これは日米間よくなるはずはないわけでございます。ですから、私はそういう意味で、向こうがお話があるなら、どうぞお聞きいたしましょう、私のほうでは実情はもうこのとおりでございますからと申し上げるということは、これはとびらなく、また四角張って考えることでもないし、業界もそういうことを、特にあなたもそういう御専門家であられるというなら、もしケネディ特使が通産省にたずねてきても、そういうことで政府間交渉が始まったのだというような考え方でおとりにならないように、ひとつそうではなく、お互いが理解をし合うために、実態を認識し合うために、あなた方が、パリででも話そう、スイスでもいいじゃないかと言うことと同じような気持ちで双方が話し合うのだと、そう理解していただいてけっこうだと思います。
  74. 藤井恒男

    ○藤井恒男君 大体、大臣の現在の心境としては、技術的にもこれを政府間で協定することは不可能だ、したがって、両院の決議もあることだし、しかも業界は自主規制を行なっているのであるから、これは当然いまの姿で推移すべきだという決意を、いまお持ちだというふうに理解してよろしいのでございますか。
  75. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) はあ……。
  76. 川上為治

    委員長川上為治君) 速記をとめて。   〔速記中止
  77. 川上為治

    委員長川上為治君) 速記を起こして。
  78. 塚田大願

    塚田大願君 きょうの大臣所信表明の最初に、この歌志内炭鉱事故の問題が出ておりますので、私は時間がございませんから、この歌志内炭鉱事故について質問をしたいと思います。  今度のこの歌志内の事故が非常に大きな大惨事であったということについては、これはもうみんな理解が一致しているところだと思うのでございますが、しかし、その原因が一体那辺にあったかという問題になりますと、これはまだ必ずしもあまり明快にされていないと思うのでございます。科学技術上の問題につきましては、非常にまだまだ解明しなければならない多くの問題があろうかと思います。しかし、とにかく結論的には、先ほど大臣もおっしゃいましたけれども、とにかく人命尊重を第一にしなければならないんだと、そのためには、再発を防止する施策を行なうということも言っておられたわけでございまして、その保安第一主義、人命第一主義については私ども同感でございます。しかしながら、現実の今度の事故が起きた原因を私ども考えましたときに、やはり最大の原因は、生産第一主義といいますか、出炭第一主義といいますか、経営第一主義といいますか、とにかく、少々人命に危険があっても、炭は掘らなければいけないんだと、生産はあげなければいけないんだという、この考え方に、私は根本的な問題があったのではないかと思うのでございますけれども、その点について大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  79. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど、阿具根さんのような専門家からの御質問もあったわけでございますが、とにかくガス突出というものは、これはなかなかむずかしいケースの問題であるということは事実のようでございます。学問的には、これだけのことをやっておれば、この時点においてはガス突出は起きないと言っておったものが起きた。現実に、三十名の被災者を出したという事実が生まれたわけでございます。ある意味においては、学問よりも外の問題、まだそこまで至らないという分野の問題かもわかりません。この問題、前回起きましたときから、委員会をつくったり、学問的にもいろいろな検査を行ない、調査を行ない、それに対して予算措置も行なっておることでございますから、まあ万全でなくても、誠意をもって対策をとっておったということだけは事実でございます。しかし結果としては、このようなものが起きましたから、今度は第二段的には、これを学問的にも徹底的に究明をするということでございます。いままでこれをもって、ガス突出事故に対してはこれ以上にはなせないと言っておったもの以外にも、まだ処置をしなければならない問題が今度必ず出てくると思います。私は、そういうところまで手を尽くすべきだということが一つでございます。  もう一つ、この問題は、閉山をするかどうかという問題。相当、赤字が大きな炭鉱でございます。それで、閉山をするか、継続をするかという問題は、労使の間で相当長いこと検討しておったものでございます。私が通産大臣に任命された直後に、審議会においても労使がいろいろな角度から検討しまして、これを再建、継続ということに決定したわけでございます。それで住友関係者も、いままで出しております相当な赤字負担以外にも、これは百二億円だと思いますが、当面する問題を、政府と折半して出そうということで、政府側も五億円を十億円に、十億円を十一億五千万円というふうに拡大をして、いままでのものプラスということで、労使がお話し合いで結論を出されるならば、政府も協力いたしましょうということで措置をした翌日、この問題が起きたわけでございますから、政府が少なくとも企業第一主義とか、出炭第一主義でもってやったものでないことは、これはひとつ御了解をいただきたい。  もう一つ、山の経営者も、労使の間で、これも二カ月も三カ月も検討検討を重ねた結果、とにかくスタートしましょうという結論に出たのであって、山の経営者は、これを機会に閉山に踏み切るかというような意見もあったようでございます。しかし、これはさっきも阿具根さんちょっとお触れになりましたが、いろいろなまわりの地方自治体も全部で話し合いをして、研究に研究を重ねた結果、経営継続に踏み切ったわけでございますので、俗にいわれる営利中心、経営最優先のための犠牲というには、多少別なケースのものであって、学問的にもっともっと掘り下げて、もう次回からはかかるものは決して絶対に起こさないという一つの結論にしたい、というケースのものだと理解をいたしております。
  80. 塚田大願

    塚田大願君 大臣はそうおっしゃられておるわけでございますが、しかし、現実に、私この間、実はこの歌志内に行ってまいりました。委員会で行ったのではなくて、党として行ったわけであります。で、炭鉱の保安統轄者である野口所長にも会いまして、いろいろ聞いてみました。たいへん技術上の問題については詳細な説明がございました。ガス抜きは完全にやっていたんだと。じゃ、完全にやっていたんだったら、どうして炭鉱のガス突出が起きたのかと、こう追及いたしますと、所長はやっぱり黙して答弁ができない、こういう実態でございます。で、そういう話の中で、いろいろ話をしておりました所長が、やはりこういうふうに結論的には申しました。私どもやはり経営をやっておるんですからと、どうしても企業の範囲内でしか保安の問題はできないんですと、こういうところに話がいってしまうんですね。で、やはり私は、こういう態度に問題があるのではないか。こういう点につきまして、住友のような、あるいは三井、三菱の場合でも、しょっちゅう事故が起きているわけですが、こういう企業側の態度あるいは考え方に対して、通産省としては、どんなふうな見解を持っていらっしゃるのか、それをお伺いしたい。
  81. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあその所長がそういうような発言をされたということは、事実でございましょう。しかし、それは所長の発言どおりではないと思うんです。これは鉱山保安基準というものがありますから、ですから、基準があるにもかかわらず、経営の限度がこれを許さないから手抜きはいたしましたというのであれば、それはそのままでは不問には付しません。しかし、経営というよりも、法律に基づくもの、通産省の行政に基づく基準をちゃんと守っておったということであるならば、それは、経営の範囲内でございますからやることもやれないんですとは、私は言えないと思う。ですから私は、考えなきゃいかぬのは、やはり人命災害ということを起こさない絶対的な保安基準というものを、どうしてもつくるべきである。そして、それを基準にして、採算ベースに合わなければ、事業はスクラップ・アンド・ビルドのスクラップのほうにいかなければならぬ。スクラップというのは山を捨てることではなく、国が買い上げるとか、いろんな道があるんでありますから、私はそういうことで調整を行なうべきであって、企業をやっておりますというので危害予防もしないで、昔の、女工を働かせ少年工を働かせ、公害災害に巻き込んだというような事態は、少なくともいまの産業、炭鉱においてはない。これはちょっと、所長さんがあなたに端的に言われた発言としては、ちょっとどうも不穏当の発言のようでございますので、これは私の立場から申し上げておきたいと思います。
  82. 塚田大願

    塚田大願君 大臣、たいへん自信のある答弁をされたわけですが、しかし現実に私、現場の諸君ともずいぶん会って話を聞いておりますが、一体現場はどうなっているんだ、会社側はこういうふうに完全にやっていると言うけれども、現場はどうなんだという話を聞きましたら、いろいろ出てまいりました。  その前に、会社側が発表したことだけでも、これはゆゆしい問題だと思うんでありますが、今度の炭鉱の爆発は、御承知のとおり七月十七日。ところが六月二十日に、今度の事故の起きた現場の真上の採炭現場で、やはりガス突出が起きておるという事実。そしてまた、今月の二日におきましては、払いの中部で約三十メートルの、三十二メートルと聞きましたが、崩落事故が起きた。で、六月二十日、七月二日、そして七月十七日という事故になったわけですが、ところが会社側は、この六月二十日と七月二日の事故は、これは人身事故はなかったから監督局に届け出ませんでしたと、こういう話なんですね。私は、これでほんとうに法律が守られているのかどうかということを、まず一つお聞きしたいと思うんです。これはまた監督局のほうで、鉱山局のほうで知っていらっしゃったのかどうか、その点をお聞きしたいと思います。
  83. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 先生いま御指摘の六月二十日と七月二日の二つの災害と申しますか、事実があったということでございますけれども、私どもの調べましたところでは、六月二十日の日に、前の四十二年でございますので約四年ほど前になるわけでございますが、そのときにやはり突出をいたしました現場の採掘をやる必要上から、かなり事故に備えて、高ばれをしたところを囲うというふうな特別な作業をしたということを聞いております。  それから、七月二日の崩落でございますが、これについては報告を受けておりません。これは先生おっしゃるとおりに、人の災害と申しますか、人災はなくて、いわゆる施設だけの問題だったようでございます。
  84. 塚田大願

    塚田大願君 二十日のやつはあったんですか、そうすると。
  85. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 六月二十日の問題は、報告はもらっておりません。これは私どものほうで調べた結果でございます。
  86. 塚田大願

    塚田大願君 いまお聞きのとおりです。こういう事故が続々起きていても、必ずしも法律はちゃんと守られていない、届け出がされてないというのは、私は一つ重大な問題だと思いますし、それからもう一つ、今度の事故が起きます前兆というものが、やはりいま申し上げた問題だけでなくて、ほかにもかなりあったということを私は現場で聞きました。  たとえば数日前から、十七日の事故の起きる二、三日前からだそうですけれども、山鳴りというものがしばしばあった。地元の人たちは、山鳴りというのは、要するに炭鉱のガスが山の中を動くときに起きる現象であって、相当すごい音がするそうであります。これが何回か起きた。だから、今度は非常に危険だぞ、四十四年の大事故のときにもこういう現象があった、また山鳴りがあった、だからこれは非常に危険だということを、現場の労働者は盛んにうわさしておったそうであります。このことを会社が知らないということは、私はないと思うんです、やっぱり専門家ですから、みんな。これが一つ。それから七月十四日、つまり事故の三日前でありますけれども、これも現場の労働者の話ですが、今度の採炭切り羽のところで先進ボーリングが行なわれた。ところが、先進ボーリング作業を準備していたところが、そんなことをやってたんじゃ採炭が間に合わないから、おまえ、それをやめろといって、その作業が中止されたという話を聞いているわけです。こうしますと、いろいろ前兆があった。そして非常に危険な状態だ。だから、ガスボーリングも、より精密にやらなければならない段階でむしろボーリング作業が中止をされる、こういう事態があった。  あるいはこういう話も聞きました。あの現場は、引っ立てと申しますか、局長はよく御存じでしょう、資材なんかを置いたり、あるいはボーリングをする場所ですね。その引っ立てが、たった五十メートルしかなかった。普通なら百五十メートルないと満足に資材も置けないし、ボーリングもできない。ところが、たった五十メートルの引っ立てしがなかった。こういう状態で仕事をやっておった。ですから、保安についてはまことにゆゆしい状態の中であの事故が起きたんだということを言っておりましたけれども、この点について、通産省はどういう見解を持っていらっしゃるか、あるいはいかなる指導をなされたか、その点をお聞きしたいと思います。
  87. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) 先生いま三つのことをおっしゃったわけで、山鳴りの問題と、それから先進ボーリングの問題と、引っ立ての問題であったと思います。  最初の山鳴りの問題でございますが、炭鉱では、下を採掘いたしますと、上の上部の岩石がゆるみまして、少し離れたところに亀裂が生ずるというときに、これが山鳴りというふうな形で作業者に響いてくると申しますか、必ず鳴るわけでございます。大きな亀裂が少し離れたところにできるというときにこれが鳴る、というふうなことが通常あるのでございます。ガスが動くということとは関係がないように私ども考えております。と申しますのは、先ほど阿具根先生からもいろいろお話があったわけでございますが、この山のガスが抜けないということは、ガスが炭層なり岩石の中でほとんど動かないと申しますか、動きが少ないというところに抜きがたい原因があるわけでございます。岩石の中で、ガスというものは音を伴うほどは動き得ないのではないかというふうに私ども考えております。  それから先進ボーリングの問題でございますが、これは私、先ほども申し上げたわけですが、この払い座の下部で先進ボーリングの座をつくる作業をしたのではあるまいか。そのためのハッパが、今回の突出の引き金になったのではあるまいかというふうに考えております。ですから、やはり座をつくる必要があったことは事実でございます。規則では、先進ボーリングというものは、進行に伴いまして順次やっていくわけでございますが、前回の先進ボーリングをやりました穴を、五メートル以上残して次の先進ボーリングをするという規則になっておるわけでございますが、この現場の場合には、まだ前回やりましたボーリングの穴の残が五メートル以上残っておりました。短かくなったから、五メートルに近づいてきたから、座をつくろうとしたというふうに私ども見ております。  それから、この引っ立て五十メートルの問題でございますが、ちょっと私、引っ立てという意味がよくのみ込めないのでございますが、作業現場の下の、炭車を一時とめておく部分の長さなのかなというふうに見ておりますが、これはちょっと、現場の図面と比べてみまして、短か過ぎるのかどうなのかということは、いまちょっと私はっきりしたお答えがいたしかねるわけでございます。
  88. 川上為治

    委員長川上為治君) 速記をとめて。   〔速記中止
  89. 川上為治

    委員長川上為治君) 速記を始めて。
  90. 塚田大願

    塚田大願君 時間がきたようですから、最後に監督体制ですね、こういう問題がしばしば起きるわけですから、私は監督体制をもっと強めなければいけないと思うんですが、これも山で聞きましたら、あそこの管轄は滝川監督署だそうでありますが、署長以下全部で十人しかいない。この十人の監督官が管内の三十の山をとにかく見なきゃいかぬ、炭鉱を。とても手が足りなくて、回りきれたものではないんだ。しかも現場では、炭鉱では、きょうは監督官が来るということになりますと、そのまわり、坑道だけはたいへんきれいに掃除してしまっている。だから、実際には実情というものは監督官はあまり知らないんだ、こういう話を聞きました。こういう状態では、全くこれは監督官庁としての責任は、私はとれないのではないかと思います。それが実情ではないか。おそらく局長もその辺はよく、エキスパートですから御存じだろうと思うんですが、この辺の問題を今後どのようにするか。  それと、最後に被害者に対する補償ですね。やはりこれは政府の直接責任じゃございませんけれども、最大限の私は補償はどうしてもしてもらう必要がある。その辺の見解をお聞きして、私の質問を終わりたいと存じます。
  91. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 補償の問題につきましては、被災者はもちろんのこと、家族に対しても万全の態勢がとれるような配慮をしたいと存ずるわけであります。  それから鉱山保安の強化、これはもうこういう事故が起こった直後にはいつも言うのでございますが、そうして以後の問題その他でいろいろな障害があるようでございますが、人命災害が起こって、かかることを再度起こさないということを言明する以上、万全の人的配置も行なわなければならないし、また、事前に通報をしておいて、掃除をしたところだけ回るということでなく、真に監督官制度が、保安官制度が実際に効力をあげるような状態をつくるべく努力してまいりたいと、こういうふうに考えております。
  92. 川上為治

    委員長川上為治君) 他に御発言がなければ、本件に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  次回は明二十四日午前十時三十分から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十四分散会