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1971-10-08 第66回国会 参議院 商工委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月八日(金曜日)    午前十一時三十八分開会     —————————————   委員の異動  八月二日     辞任         補欠選任      植木 光教君     岡本  悟君  八月十日     辞任         補欠選任      岡本  悟君     植木 光教君  九月一日     辞任         補欠選任      矢野  登君     柴田  栄君  九月四日     辞任         補欠選任      柴田  栄君     矢野  登君  九月八日     辞任         補欠選任      小野  明君     宮之原貞光君  九月十一日     辞任         補欠選任      宮之原貞光君     小野  明君  十月八日     辞任         補欠選任      矢野  登君     吉武 恵市君      赤間 文三君     長屋  茂君      植木 光教君     鈴木 省吾君      渡辺一太郎君     原 文兵衛君      須藤 五郎君     岩間 正男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         大森 久司君     理 事                 川上 為治君                 剱木 亨弘君                 竹田 現照君                 藤井 恒男君     委 員                 植木 光教君                 小笠 公韶君                 大谷藤之助君                久次米健太郎君                 鈴木 省吾君                 長屋  茂君                 原 文兵衛君                 山本敬三郎君                 吉武 恵市君                 阿具根 登君                 小野  明君                 大矢  正君                 林  虎雄君                 中尾 辰義君                 原田  立君                柴田利右ェ門君    国務大臣        通商産業大臣   田中 角榮君    事務局側        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        公正取引委員会        事務局長     吉田 文剛君        外務省経済局長  平原  毅君        大蔵省国際金融        局次長      林  大造君        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君        通商産業省繊維        雑貨局長     佐々木 敏君        通商産業省鉱山        石炭局長     荘   清君        中小企業庁長官  高橋 淑郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○産業貿易及び経済計画等に関する調査   (派遣委員報告)   (日米繊維問題に関する件)   (石炭問題に関する件)   (ドル防衛策に対処するわが国経済施策   に関する件)     —————————————
  2. 大森久司

    委員長大森久司君) それではただいまから商工委員会を開会いたします。  議事に先立ちまして、理事会の経過を報告いたします。  初めに派遣視察をしていただきました報告を、第一班の竹田委員から報告していただきまして、その次に、川上委員から第二班の報告をしていただくということになっております。  本日は、ドル問題をめぐりまして大蔵大臣出席が非常に要望されておったのでありますが、われわれも大蔵省に行きましていろいろ交渉いたしましたが、大蔵大臣が、あるいはアメリカに、あるいはカナダに、あるいはオーストリアにとずっと出張しておられまして、減税問題とか、あるいは予算の査定という問題に対して非常にいま忙しくて、自分の担当の委員会にもまだ出席しておらぬような状態で、十一日までどうしても手があかぬ、十一日以後ならと、こういうことでございまして、ドルの問題につきましては、田中通産大臣ドル対策本部長ということになっておるそうでございますので、田中通産大臣ドルに対する問題を聞いていただくというようにしていただきたい、かように存じます。  そうして質問者の順位でございますが、初めに、社会党の大矢先生に五十分やっていただく。その後休憩にして、そのあと小野先生にやってもらう。それを五十分。それから公明党の中尾原田先生は一時間やっていただく。そうして藤井先生にその後一時間。そして五時ごろに大体終了したいと、かように打ち合せいたしましたので、御報告申し上げます。     —————————————
  3. 大森久司

    委員長大森久司君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題といたします。  まず、先般、本委員会が行ないました電源資源開発及び産業事情等実情調査のための委員派遣について、派遣委員から報告を求めます。  第一班の報告を願います。竹田現照君。
  4. 竹田現照

    竹田現照君 第一班について申し上げます。  派遣委員は、大森委員長矢野委員、阿具根委員と私の四名で、期間は去る八月二十四日から四日間、視察いたしましたところは、関西電力株式会社黒部ダム黒部川第四発電所電源開発株式会社御母衣発電所岐阜羽島にあります長谷虎紡績株式会社本社工場平方工場西陣織物株式会社じゅらく三菱自動車工業株式会社京都製作所でありました。  以下、視察概要について簡単に申し上げます。  まず、電源開発関係から申し上げます。  北陸地方は雨の多い地帯で、河川の流量も多く、東北地方と並んで水力資源の豊富なところとされており、北陸東海地方には、現在各電力会社などが水力発電を行なっている地点が四百以上もあるということであります。  関西電力の黒四発電所は、黒部川上流で、北アルプスの山間、御前沢地点に高さ百八十六メートルのアーチダムを築いて大きな貯水池黒部湖をつくり、そこから約十キロメートルの下流地点地下式発電所として建設されております。発電設備水車発電機三台で、最大出力二十五万八千キロワットでありますが、発電機をもう一台据えつけられるようになっておりますので、できるだけ早い機会に増設して、電力の不足しているときに役立たせたいとのことであります。  この黒四は、自然の悪条件を克服しながら、七カ年の歳月を要して去る三十八年に完成されたもので、世紀の大事業といわれておりますが、その完成によって既設下流の各発電所出力増加に役立っており、黒部川水系一貫開発の基盤ともなっており、建設の意義は大きいのであります。  さらに、黒四の建設当時から懸案となっておりました、富山県側から長野県側へ通ずる観光ルートとしての、立山・黒部アルペンルートが今年から全通いたしましたので、観光開発の面にも貢献していると言えるのであります。  電源開発会社御母衣発電所は、やはり日本海に注いでいる庄川の上流、白川村の地点に、岩石と粘土を積み重ねた高さ百三十一メートルのロックフィルダムを築いて貯水池をつくり、ダムの左岸の直下に、最大出力二十一万五千キロワットの設備を持つ地下式発電所として建設されております。ここの水車を通った水は、約九キロメートルの放水路トンネルを通って下流に放流されており、下流既設の各発電所発電量が大幅に増加されることになりました。  私たちが参りました二つの水力発電所は、いずれも昭和三十年代に、当時急激にふえました電力需要を満たすために、早急な電源開発が要請された時期に、大規模貯水池を持った発電所として建設されたものであります。その後、火力発電技術の進歩、大容量の重油専焼火力等が出現し、電源開発主体水力から火力へと移り、いわゆる火主水従方式となってまいりました。しかも、水力地点開発は進んで、有利な地点は少なくなってきており、残された地点も奥地にあるものが多く、開発条件は悪くなっておりますが、電力を安定的に供給するためにも、また、国内エネルギー資源有効活用の面からみても、限られた地点最大限に利用し、水力開発を促進する必要があると感ずるのであります。  次に、繊維関係について申し上げます。  長谷虎紡績本社工場は六万錘弱生産設備を持って、綿糸、合繊糸スフ糸等生産を行なっており、平方工場は、三十六年に新設、英国から新鋭のカーペット機を導入し、化合繊のあらゆる種類の糸を使って各種カーペット生産を行なっており、製品の一部は輸出に向けておりますが、内需用が主となっております。  従来からの紡績業だけでなく、カーペットの製造を始めた動機について、長谷社長は、畳に座る生活様式から、腰掛ける生活様式に変わってきたこと、住宅構造木造建築からコンクリート建てに変わり、洋間が多くなってきたことなどから、カーペット必需品となる時代がくることを予想した、と語っておりました。  会社の業績も順調に伸び、現在、繊維業界を取り巻いている環境は悪化しているときでありますが、技術的にすぐれた、しかも値段が安く、一般消費者に満足してもらえる製品をつくって、業界における確固たる地位を確保しようとする経営者意欲がうかがえたのであります。  京都西陣では、織物工業組合理事長から、ニクソン大統領声明、それに伴う輸入課徴金実施は、中小企業の多い繊維業界にとって大きな影響が出るものと思われ、先行き不安の状況にあるので、影響を緩和するための対策、何らかの救済策を政府が一日も早く講じてくれるように、との要請を受けました。しかし、私たちが参りました当時は、ニクソン声明以来まだあまり日がたっておりませんでしたので、業界からの救済策等についての具体的要望は聞くことができませんでした。  また、小巾呉服流通過程で、問屋側からメーカーに対し、すでに取引が成立しているにもかかわらず、支払いの際に歩引きを要求するという商慣習がある。この歩引きは、協力費宣伝費という名目で要求されることもある。不合理だとはわかっていても、買ってもらいたいため、ついつい買い手の圧力に屈してしまうことが多い。歩引きがあることによって、メーカー側にとっては資金繰りにも困るし、経営計画を立てる上からも困難を来たすので、取引に際して歩引きは廃止するよう指導して欲しいとの要望もありました。  最後に、自動車関係について申し上げます。  三菱自動車工業は、自動車専業体制を確立するため、三菱重工業の自動車部門を分離して、昨年六月に新しく発足した会社でありまして、京都製作所は、同社の各種自動車エンジンをはじめ、産業用農業用エンジン専門工場であります。ここでは、各種エンジンの鋳造から最終組み立てまで、すべて一貫した流れ作業で進められております。  この製作所では、エンジン部門を担当いたしておりますので、排気ガスの中の一酸化炭素炭化水素窒素酸化物等有害物を浄化する浄化装置についての研究、実験を行なっており、商品化できるものはすでに車に取りつけているとのことです。しかし、いまだ排気ガスの無公害化は、技術的にも化学的にもむずかしい点がありますので、一企業だけの研究では不十分であるとして、三菱系各社協力も得て研究開発を進めており、さらには世界的な規模研究開発することも必要であるとして、フォード、モービル石油、フォルクスワーゲン等アメリカ、ヨーロッパの主要企業で構成されている「産業間排気汚染制御計画」という公害対策研究に関する国際グループにも加入しているとのことでありました。  御承知のように三菱自動車は、本年六月にアメリカクライスラー社との資本提携が認可され、クライスラー社は三回に分けて出資し、最終出資率は三五%となっております。この両社の提携のメリットとして、新車の開発安全公害関係技術の導入、対米輸出の増大ということがおもな点としてあげられております。四十五年度生産台数は約四十五万台で、そのうち輸出は約二万数千台でありましたが、今回の提携によってクライスラー社販売網を使うことになるので、対米輸出が大幅に増加することが期待され、五年後には生産台数約八十万台、輸出は、対米輸出も含めて約二十万台という計画であり、その計画に沿って、エンジン部門も含めて拡張し、量産体制に入る予定でありました。  ところが、今度のニクソン大統領声明によって、今後、国際情勢経済情勢の変化が予想されますので、これらの当初計画も余儀なく変更される可能性もあるということであります。  今回の視察にあたって、種々御協力を賜わりました関係者各位に感謝の意を表しまして、私の報告を終わります。
  5. 大森久司

    委員長大森久司君) 次に第二班の御報告を願います。川上為治君。
  6. 川上為治

    川上為治君 第二班の報告を申し上げます。  去る九月二十七日から三十日にいたる四日間、岩手秋田両県において、金属鉱物資源及び石油資源開発状況を、須藤委員と一緒に視察してまいりましたので、その概要報告いたします。  視察個所は、金属鉱物探鉱促進事業団広域調査遠野地域ボーリング現場日鉄鉱業釜石鉱業所同和鉱業小坂鉱業所及び花岡鉱業所秋田沖で操業中の海洋掘さく装置「第二日竜号」、以上であります。  まず、金属鉱物資源開発について申し上げます。銅、鉛、亜鉛など非鉄金属需要は、わが国産業経済の発展に伴って急速に増大し、需要量は米国に次いで自由世界第二位を占めるに至っておりますが、これに対する国内供給力は相対的に低下しておりますので、すみやかに効果的な探鉱実施して、新たに採掘条件のよい大規模高品位鉱床を発見することが、最大の課題となっております。しかも最近では、優秀な鉱床の多くは地表に露出することのない、いわゆる潜頭鉱床であるため、まず探鉱に先立って、地質構造の十分な調査を行ない、広域調査精密調査を経て企業探鉱に至る三段階計画的組織的探鉱実施することが必要となっております。通産省鉱山石炭局は、この広域調査精密調査の二段階を、全国二十七地域対象として、去る四十一年度からおよそ十年の計画で進めており、その実施主体金属鉱物探鉱促進事業団であります。  遠野地域広域調査は、さきに述べました全国二十七地域一つでありまして、四十四年度調査開始以来、主要鉱床地帯地質調査は本年度をもってほほ終了し、明年度以降は構造ボーリング及び周辺地域地質調査等を残す段階となっておりますが、これまで赤金、大峰の両鉱床が発見されるなどの成果をあげていることから、地元探鉱意欲は大いに高まり、四十七年度精密計画に同地域が編入されるよう、遠野市長及び岩手県知事から強い要望がありました。  次に、日鉄鉱業釜石鉱業所は、鉄鉱山としてわが国最大規模を有するほか、戦後の銅鉱床の発見によって、わが国屈指銅鉱山としての地位をも占めるに至っております。ちなみに、最近の年間生産実績は、鉄精鉱量五十万六千トン、銅精鉱量三万三千トンとなっております。  釜石鉱業所においては、坑内に入って、採掘切羽における掘進、積み込み、運搬の状況をつぶさに視察した後、選鉱場において選鉱作業を系統的に見学いたしました。  次は、同和鉱業小坂花岡鉱業所であります。  小坂鉱業所同和鉱業発祥の地でありますが、去る三十四年、埋蔵鉱量約一千万トンの内の岱黒鉱鉱床が発見されたことにより、現在月間銅量約九百トンに達し、国内第二位の生産を示しております。  私たちが注目したのは、鉱害対策でありましたが、廃滓粗粒細粒とに分離された後、粗粒坑内充填材として使用され、細粒不動沢ダムに送泥、堆積されており、上澄み石灰で中和した後、小坂川に放水されておりました。この不動沢ダムば、予想される限りの豪雨に耐えるよう設計されているとのことでありますが、あと数年で飽和状態となるため、次のダム用地が必要となります。この点については、同鉱業所用地三百五十万坪のうち使用面積が百万坪であるため、ダム用地の手当てには余裕があるようです。  また排煙について、地元農民組合との間に稲作減収の補償問題が発生しているものの、解決のめどがついたとのことでありました。  花岡鉱業所は、去る三十八年、埋蔵量約三千万トンの松峰黒鉱鉱床を発見したことにより、現在月間約一千六百トンという、わが国第一位の銅量を産出しております。  同鉱業所では、オープン・コラム工法による垂直掘さくの露天掘りを実施しておりますが、これは世界に例のないものであるとのことでありました。  同鉱業所鉱害防止対策には注目すべきものがありました。すなわち、堂屋敷松峰の両鉱山及び日本鉱業釈迦内鉱山廃滓を滝の沈澱池に送泥し堆積させた後、これを距離六八・一キロメートル、口径三百ミリのパイプで能代市海岸の終末処理施設に流送し、これに石灰を投入して沈澱させ、自然分離した上澄み水に薬剤を混入、無害な水として日本海に放水するというパイプ流送事業であります。この事業は、総工費二十四億一千万円で、去る四十四年完成し、その七割は公害防止事業団からの融資によりましたが、これは、この施設を利用する鉱山から分担金を徴収することによって返済することになっており、また施設の管理・運営は、財団法人秋田県パイプ流送鉱業公社が行なっております。  なお、堂屋敷地区及び松崎地区には採鉱による地盤沈下が発生しており、商店を主とする前者については立ちのき料支払いによって、また農家を主とする後者については移転によって、それぞれ解決しようという方針がとられているとのことでありました。  次に海洋掘さく装置「第二日竜号」について申し上げます。「第二日竜号」は、海底石油資源開発を目的とする移動式海洋掘さく装置であり、掘さく時の排水重量一万六千五百トン、世界最大級一つに数えられる国産第一号機でありまして、従来の「白竜号」及び「ふじ号」が甲板昇降型であるのに対し、半潜水型の掘さく装置となっております。  また「第二日竜号」の機能の特色は、第一に、最大風速毎秒六十メートル、最大波高十八・五メートルという荒天の海域においても稼働できること、第二に、稼働水深最大値は二百メートルで、通常は、浮上したまま四本のアンカーのささえによって掘さく作業を行なうが、水深二十メートル以内の海域においては、着底して掘さくを行なうことができること、第三に、最大さく深度九千メートルまでの坑井を掘さくし得ること、以上であります。  「第二日竜号」は、現在、秋田沖五キロメートルの地点において第二号井の掘さくを行なっておりますが、視察当日の三十日は、懸念された雨天の合い間を縫って、ヘリコプターによって離着船し、つぶさに新掘さく装置の偉容をまのあたり見ることができました。しかも国会議員として「第二日竜号」を実地視察したのは私たちが最初であると聞き、感激ひとしお新たなるものがありました。  「第二日竜号」による石油開発の成功を祈るや、切なるものがあります。  最後に、岩手秋田県当局からの要望事項について申し上げます。  まず鉱業政策でありますが、両県とも鉱物資源に対する県経済依存度がはなはだ大きいため、国の鉱業政策に対する両県当局の期待と要望とは、きわめて大なるものがありました。  岩手県からは、県内に幾つもの有望鉱床地帯が存在しているため、現行の第一期探鉱計画に引き続いて、第二期計画を策定し推進するほか、国際的金属市況の低迷と、全般的経済不況、特にドル・ショックによる金属鉱山の苦境を打開するため、金属需給調整機関の設置、休廃止鉱山離職者救済及び鉱害防止など、金属鉱山振興対策をぜひ確立してほしい旨の要望があり、また、秋田県からは、第二期探鉱計画の策定、推進のほか、ドル防衛策による金属鉱業への深刻な影響を打開するための根本的な鉱業施策の樹立、硫化鉱需要不振に対する抜本的対策の確立、国直轄天然ガス礎試錐実施、及び秋田沖大陸棚石油資源開発拡充強化要望がありました。  鉱業政策に関するこれらの要望のほか、さらに岩手県からは、ドル防衛策影響に対応する短期長期中小企業対策強化、及び県下雫石町における地熱発電計画自然保護との調整に基づく早期実現に力をかしてほしい旨の訴えがあり、また、秋田県からは、同じくドル防衛策影響に対する融資等対策強化秋田湾地区規模工業開発及び玉川揚水発電所建設促進等を強く望む旨の陳情がありました。  以上の要望事項にも盛られておりますように、ドル防衛策による影響が両県の非鉄金属鉱山にとってきわめて大きいことは、たまたま私たち岩手県庁を訪れた際の県議会の質疑が、この問題に集中していたことに徴しても明らかであります。  この対策を至急に講ずることを含めて、国の鉱業政策を一段と拡充する必要を痛感いたしましたことを申し述べまして、報告を終わります。
  7. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまの報告に対して御質疑ございませんか。
  8. 阿具根登

    ○阿具根登君 竹田委員報告に対して、主として公正取引委員会並びに局長質問申し上げます。  報告の中の京都西陣織の視察の場合、非常に深刻な陳情を受けておりますので、その点について一、二点お伺いしたいと思います。  報告にありましたように、問屋メーカーが約束をして品物を取引した場合、現金を支払う場合に、歩引きと称して数%の金を取られる。契約は双方きれいにやっておきながら、そして金を払うときには歩引きと称し、これが商習慣なりということで、金が支払われる。だから、帳簿には記載しておりながら、それだけの金がメーカーには入らない。金繰りに非常に苦労する。こういうことなんです。  時間がありませんので、私のほうで少し事情を申し上げますと、そういうことが今日まで悪習慣として続いておったが、何ぶんにも弱小のメーカーであるので、これにさからうということは非常に不利を招く。だから、さからうことを避けてきたけれども、今日の状態ではどうにもならないということで、何とか歩引きをやめてもらいたいという交渉をやった。ところが、歩引きをやめたところが、今度は直ちに、問屋側従業員ボーナスを払った、そのボーナス分としてこれこれの金をもらいたいといって、これを取り上げられる。家を新築をした、これについてお祝いを、これこれもらいたいということをやられる。だから小さい企業は泣きの涙だと、こういうことだったんです。  それに対して、独禁法もあるし公正取引法もある、どういう手続をとっておりますかという質問に対して、公正取引委員会に対して何とかこれを正常に戻してもらいたいという陳情を申し上げたところが、署名捺印の上に全員の連判状を出せと、極端にいえば。署名捺印してもらいたい、そうしてその被害者が全部それに捺印して出せと。こうなってまいると、弱いメーカーとして、名前を書いて公正取引委員会まで出したとするならば、今後自分たち生活に重大な支障を来たす。だから、そこまで私たちはできません、何とかひとつ公正にやっていただけぬでしょうかというのが、かいつまんだ陳情の趣旨なんです。これに対して、関係局長あるいは公正取引委員会局長が見えておると思いますから、ひとつ考え方を述べてもらいたいと思います。
  9. 吉田文剛

    説明員吉田文剛君) お答え申し上げます。  公正取引委員会としましては、これは法律は下請法でございますが、昨年、西陣を含めまして繊維製品卸売り業対象に、特別調査というのを行ないました。支払いの遅延あるいは長期手形サイト、そのほか歩引きなどが不当に行なわれたものに対しまして、行政指導を行ないました。その件数は、四十五年度において七件、これは大阪地方事務所の管内でございます。それから四十六年、まだこれは終わっておりませんが、現在まで五件、行政指導を行なって歩引きを直させております。  先ほどお尋ねのございました、下請業者が大阪地方事務所陳情した際に、全員署名をして申告するようにというような要求があったとのことでございますけれども、そういうことは、私どもとしては指導もしておりませんし、また、親事業所にわかればどういう不利益を受けるかわからないということで、そういうことはないと思います。私どもとしてかねがね、そういう指導はいたしておりません。ただ、調査の端緒といたしまして、具体的な事実を指摘してもらえば、それ以後の調査がやりやすいという点がございますので、親事業所の名前、それから歩引きの事実をある程度具体的に知らせてほしいということは、これはかねがね下請団体に対して要望しているところでございますので、あるいはそういうことが誤解をされたのじゃないかというふうに考えます。したがって、今後も、この歩引きにつきましては、下請法の四条の三号「下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、下請代金の額を減ずること。」つまり、初めに契約をいたしました下請代金の額から、理由なしに事実上それを減額していく、こういうのは違反であるということが明記してありますので、こういう事実があれば、びしびしこの法に従って処置をとっていきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  10. 阿具根登

    ○阿具根登君 大阪で七件歩引きを中止したということでございますが、このメーカー陳情を聞いてみますと、たとえば、十万円で問屋に渡した品物が、店頭に出る場合は三十万円から三十五万円と、こういう価格で売られております、というわけです。その上に歩引きで私たちは取られる。それを公正取引委員会に頼んだけれども、先ほど申し上げましたように、極端にいえば連判状を、みんな判を押して持ってこい、こういうことでは弱い者いじめじゃありませんか、こういうことなんです。さらに、先ほど申し上げましたように、大阪では七件、京都では何件か知りませんけれども、そういう歩引きは悪習慣だということで行政指導された。それも聞いております。ところが、そのあとは、先ほど申し上げましたように、それでは自分のところの従業員ボーナスを払ったから、その分に見合うあれはあなたのところから出してくれ、こうやってくると、私は、二つの大きな問題があると思うのです。一方は、正常な記載をした金額に満たない金額をもらって、税金の対象には記載されたものがなります。一方、問屋のほうはこれはボーナス自分のところで出したことにして、その金はメーカーから取り上げて払う。これは脱税行為なんですね。しかも三倍から三倍半に価格がはね上がる。これは西陣でございますから、大衆に非常に縁がない、高い品物でございますから、いろいろそれは商業上の問題もあるでしょう。しかし、そういうことが陳情されておりながら、何か公正取引委員会でさえ昔の悪習慣を是認されたか、あるいは弱い者に対して署名して持ってこいとか、全員の名前を書いてこいとか、こういうことが公正取引委員会の姿勢としていいだろうかと。いま、こういう商業問題については公正取引委員会が一番、やはりそういう方々のたよりになるものだと思っております。そして摘発もしていただいているものと思っている。たまたま私らがそういうところに行って、これは一つの例かもしれません。これをとことんまでここで究明しようとも思っておりませんし、また、時間があれば問屋側調査もしたかったのですが、そのほうもしておりませんので、一方交通的な質問になりますから、私も質問をあまり続けたくないのですが、その姿勢です。公正取引委員会の姿勢として、これは一体どうなんだと。そういうことがあるならば断固取り締まる、直ちに調査する、こういう姿勢がここで示されなければならないと思う。だれがいいとか悪いとか言う前に、そういう現実があるということならば、これは大きな自分たちの手抜かりでもある、直ちに調査して断固それは取り締まる、こういうような姿勢がひとつほしいのです。  それから通産省のほうにお尋ねいたしますが、そういうことが現在行なわれておるということを、一体どうお考えになるか。メーカーには十万円しか入っておりません。それが三十五万円で店頭に出る。これが常態なのかどうか。それに対してどういう行政指導をされておるか、お尋ねいたします。
  11. 林田悠紀夫

    説明員林田悠紀夫君) ただいま阿具根委員からの御質問歩引きの問題でございますが、これは悪習慣といたしまして長く行なわれておるということを、通産省もよく承知をいたしております。  それで、私たちといたしましては、この習慣をできるだけ早くやめさせたいという考えをもちまして、実は流通システム化委員会というのがありまして、その中におきましてこれを問題にしておるわけです。その委員会におきましても、この歩引きはやめるべきだということを打ち出しております。そうして、すでに東京織物卸商業組合というのがありますが、これでは調整規定の中におきまして歩引きをやめるというように、規定で書いておるわけであります。ところが、御承知のように、メーカーのほうは、非常に多くのメーカーが弱いというようなことがございまして、どうしても卸とか、あるいは中継ぎ、小売りという方面が強うございまして、繊維の特殊性から、そういう歩引きがなかなかやめられないというような状況でございます。私たちはこういう制度は悪いというふうに考えておりまするので、現在、そういう指導をいたしておりまするが、現実の問題としてやめないということなんでございます。それで、今後におきましても、そういう委員会とか、あるいはまた各組合の調整規定に歩引きを廃止するということをできるだけ盛り込ませまして、そうして強力な指導をしていきたい、かように考えておる次第でございます。
  12. 吉田文剛

    説明員吉田文剛君) 先ほど先生おっしゃいました御趣旨は、十分わかりましたので、今後、実態を至急調査いたしまして、法に従って適切な措置をとってまいりたいというふうに考えております。
  13. 大森久司

    委員長大森久司君) ほかに御発言もなければ、派遣委員報告は、これをもって終了いたします。  速記をちょっととめて下さい。   〔速記中止〕
  14. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記を起こしてください。  それでは午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十分休憩      —————・—————    午後一時三十九分開会
  15. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまから商工委員会を再開いたします。  委員の異動について報告いたします。  本日、須藤五郎君、矢野登君が委員辞任され、その補欠として岩間正男君、吉武恵市君が選任されました。     —————————————
  16. 大森久司

  17. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) この際、午前中の出席に対して釈明をいたしておきたいと存じます。釈明というよりも、おわびをいたします。  本日午前、本委員会がお開きになっておったことは承知をいたしておりますが、理事会がもう少しおかかりになると思っておったことも事実でございます。閣議が延びましたのと、引き続いて総理大臣が繊維業界七名の方々と懇談をいたしておったわけでございます。これに立ち会うようにということでございましたし、また、重大な段階でございますので、その間の事情も聞いて、こちらで当然質問も出ましたら、その間の事情も説明できるようにという考え方で立ち会っておりましたら、一時間半の長きにわたったために皆さんお待たせしたようでございまして、事情御了承の上お許しをいただきたいと存じまして、発言を求めた次第でございます。     —————————————
  18. 大森久司

    委員長大森久司君) 産業貿易及び経済計画等に関する調査を議題とし、これより質疑を行ないます。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  19. 大矢正

    大矢正君 私は、ここ数日来、わが国の大きな政治課題となっております対アメリカとの繊維問題につきまして、若干の質問をいたしたいと存じます。  新聞その他報ずるところによりますると、政府は、従来の業界が自主的に進めてまいりました、すなわち対米輸出の自主規制を、政府間協定に、あるいは政府間交渉を通じて政府間協定を結ぼうというような動きがあるやに報じられておりますが、実情どのようになっておるのか、まずお答えをいただきたいと思います。
  20. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 繊維の問題につきましては、長いこと日米間において協議をせられてまいったわけでございますが、今年三月に至りまして、七月一日から一年間の期間をもって自主規制に移ったわけでございます。  政府も、これが自主規制は、望ましい日米間の問題解決の方法として支持をしてまいったわけでございますし、私自身も、七月の初め通産大臣に就任の当時から、これが自主規制が最もいい方法だと考えておったわけでございますが、その後、アメリカ政府側から、新しい政府間協定を結ばれたいという正式な要請があったわけでございます。しかもこの要請は、ニクソン新政策の中の、一括的な政策の一つとして考えておるということでございました。なお、日本だけを対象としないで、世界各国に対して画一、一律的な規制を十月の十五日から実施をいたしたい、なお極東四国、日本を含めてでございますが、これらの国々のうち、もうすでに台湾及び香港政庁等は、アメリカの申し出を基礎といたしまして政府間協定がなったようでございます。引き続いて韓国及び日本等に対してもそのような強い要請がございます。  いま業界の考え等も十分聞きながら、十月十五日になれば一方的にも規制を行なうという意思表示がございますので、何らか合意的な結論を出さなければならないという考え方で、最終的にいま努力をいたしておるわけでございます。率直に申し上げれば、自主規制から政府間協定に移らざるを得ないのではないかという考え方も、私の頭の中にありますことを率直に申し上げます。
  21. 大矢正

    大矢正君 いまあなたのお話の中に、今月の十五日までに何らかの意思表示をするか、もしくは、交渉妥結ということを含めているのかわかりませんが、アメリカとの間に話し合いが了しない限り、一方的に十五日から実施をするということを、ただいま大臣みずから申されたのでありますが、そういたしますと、今月の十五日までに、政府は、現行実施をしておりまする自主規制ではなしに、別個な形で何らかの解決の方法を見出すという御判断を持っておられる、というふうに解釈してよろしゅうございますか。
  22. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 何らかの結論を出さなければならない立場にあるということでございまして、これだけの大きな問題でございますから、私だけでもってきめられるものでもないものでございます。責任は私負うにいたしましても、閣内でも議論をする必要がございますし、衆参両院の御意見もまた聞かなければならないことでございます。当然業者側の意見も聞かなければならないということで、きょうは総理大臣が、異例でございましたが、業界の代表全部集まっていただいて、意見交換を行なったという段階でございます。  私自身も、与野党問わず御意見をいま承っておる状態でございますので、アメリカ側との間、まあアメリカ側の一方的規制に待つということになれば別でございますが、これはきょうも業界との間で話をしましたが、これ、何かやらないとどうなりますかと。労働組合と無協約状態でいくようなものになるんです、やっぱり協約というものは、不完全なものであっても結ばなきゃいかぬと思います、と。自主規制いけないんですかと、こういうことでしたから、悪いところがあればお互いがだんだんと直していくということであって、そんなことが長続きするもんでないからやらしてごらんなさい、というような考え方でこの問題に対処はできない。三年間そういう態勢をずっと続けてきたために、だんだん話がめんどうになってきて、アメリカ側が、なお日本の対米輸出の全品目に対して調査を進めておるというような状態は、看過するわけにはいかないんじゃないかと思います、という現状における私の考え方を述べておるわけでございます。しかし、政府として、政府間協定を結ぶという結論に達しておるわけではないということだけ申し上げておきます。
  23. 大矢正

    大矢正君 私は、ことしの春以来、何回となく宮澤通産大臣あるいはあなた自身とも、日米間の懸案事項であります繊維問題について、ここの場で議論をいたしておるわけでありますが、結局のところ、わが国業界の一方的な自主規制というものが現在進められておるが、そのことについて、ニクソン大統領それ自身が反対であるという意思表示をなされておるということを確認した上に立って、宮澤通産大臣は、やはりこれは自主規制でいくべきであるし、そしてまた速記録にもありますが、業界がこのような決心をしたことについて、すなわち自主規制をすることについて、「その意のあるところを多として政府としても積極的に協力をする」と、こういう官房長官談話まで発表されて、業界が自主規制をすることについて積極的に支持をすると、こういうことを言っているわけでしょう。そうすると、その当時、すでにもうニクソンは、そういうことでは納得いたしませんと言っているのです。にもかかわらず政府は、自主規制でいいんですよと、自主規制について積極的に協力するんですよと、こういって答弁をされているわけですよ。それから変わったことができたのか。どうしてそれを直さなきゃならぬのか。  それから、もう一つお伺いをいたしますが、これから二カ月後、三カ月後、あるいは半年後という話なら、私はまた議論のしようもありますが、あなたが新たな決意ないしは判断を持つということが、ごく短期間のうちにそういう決意や判断を持たれるならば、この際、それを明らかにしてもらわなければならぬ、こう思います。
  24. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 大平、宮澤両大臣が、業界の自主規制案なるものを認めておったことも、私は承知をいたしております。私自身が、宮澤君のあとを受けて七月五日、通産大臣に就任をした直後の衆参両院の委員会におきましても、自主規制が最良と考えております、こう公式に述べておるのでありますから、それはそのとおりでございます。私はまた、日米経済閣僚合同委員会においても、それが正しいことを十分述べてまいったわけでございます。ですから私自身が、この問題に対して、日米間では、いまの段階において、自主規制といういまのやり方以外にいい結論を見出すことはできないだろうと考えておったことは、事実でございます。  ところが、その後、ケネディ案なるものを提示されて、そうして十月の十五日までに政府間協定が行なわれない場合は、こういう案で一方的に規制をいたしますと、明確に通告を受けたわけであります。まあ、その通告が現実的に実施されるかどうかという、政治的な見通しもつけなければならぬことは当然でございますが、そういう見通しについては、非常に強い意思表示をしているということでございます。  それからもう一つは、現実的にそういう一方的な規制が行なわれた場合、日本の業界にどのような影響があるのかも、 つまびらかに調査をする必要がございます。そういう意味で、自主規制が行なわれておる過程における数字を、全部調査をいたしました。そうしましたら、事実上アメリカの一方的規制が行なわれるとすると、輸出自体がとまってしまう。もう、向こうが提示をした数字以上に輸出されておるものがございます。それのみではなく、いま契約をされておるものを完全に実行いたしますと、それでもう今年度輸出はほとんどゼロになってしまうというようなものがあります。そういう意味で、私は、これではたいへんな混乱が起こる。何とかこれを調整できないものだろうか、また、調整することが日米両国の友好関係を保持するためにも望ましいことである。こういうことで、いま私が申し上げているのは、では自主規制のままで何とかこれを緩和できないか、こう言ったら、できませんと。どうしてできないのかと。日本の言うことをたくさん長いこと聞いてきました、今度は一つぐらいアメリカの言うことを聞いてください、こういうことでありますから、相当強い意思表示が行なわれて、何回となく繰り返し折衡をした。向こうは、政府間協定を結ばない限り、提示をした数字を変更する意思は全くない、こういう私は確証を得たわけでございます。  もう一つは、では政府間協定を結ぶとすれば、一方的規制よりも何かあるのかということをやはり聞かなければならぬことは、これは当然なことだと思うのであります。ところが、政府間交渉に切りかえる切りかえないは別にいたしまして、では、君たちの言うとおり政府間交渉をしたならば一体どうなのかということを、私も米国側に対して考え、その場合には少なくともこういうものでなければならない、自主規制がそのまま置きかわるようなものに近いものでなければならぬというようなことも、私自身もこちらの意見としては述べております。自主規制でもこんなに影響があるのだから、これを一方的規制などをやられれば、もうけんかになってしまう。そういうことは両国のために望ましくない。そういう意味で、もし政府間交渉に移行したとしたならば、どのようなメリットがあるのかということを私が考えるのは、これは職務上当然だと思うのです。  そういう意味でまあ話を詰めておるわけでございますが、政府間交渉をするという基本的な態度さえもはっきりしないで、ただ求めることばかりやっておってどうするんですかというのが、いまのアメリカ状態でございます。ですから、アメリカ側の考えは、いまなかなか強い態勢にあるということは事実でございまして、ケネディ案はどういうものかと言うと、日米の、できれば最終案にしてもらいたい、そうすると、一方的規制をもし行なう場合にはどうするのかと言うと、これよりももっと強い案で規制をするのです、こう言うのでございますから、これは、日米間としては戦後初めてというぐらいに、具体的な数字をテーブルの上にしての交渉であって、甘いものではないということは事実でございます。しかし、そういうことに対しても、私は、これは少なくとも輸出が全面的にストップになるようなことは絶対に避けなければならぬということで、鋭意検討し、交渉しておるというのが事実でございます。
  25. 大矢正

    大矢正君 結論だけ聞かしていただきたいと思うのですよ。私は五十分しか持ち時間がないし、石炭問題についてもやらなければならぬので、端的にお伺いしますが、政府は政府間協定というものを結ぶ決意を固めたのですか、固めないのですか。あるいは最も近い将来、そういうことが起こり得るのか、起こり得ないのか。端的にお答え願います。
  26. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 政府間協定に移行しなければならないと、現時点で私は考えております。
  27. 大矢正

    大矢正君 いまあなたは、業界のことをたいへん心配をされて、このままいって向こうでシャットアウトされてしまうと、もう輸出一つもできないものすら出てくる、だから自分は考えてやらなければならぬのだとおっしゃっておられますが、そういうあなたの理論が正しければ、業界は反対をあくまでもするはずはないのじゃないですか。あなたの言っておられることと本質と非常に違うところがあるから、そこに問題が起こっているのじゃないでしょうか、とらえ方の上において。いかがでしょう。あなたの説を聞いていると、業界を助けるために自分は政府間協定を結ぶのだというふうに聞こえるが、それならば、業界は反対をするはずはないでしょうが、いかがでしょうか。
  28. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 必ずしもそうじゃないと思います。業界だって見通しの違い等はあると思います。業界は、そんなことを言ったってアメリカが一方的にやれるものでないというような考え方。ですから、私はいい例ではないのですが、そんなことを言ったってロックアウトできないという考え方、ゼネラル・ストライキはやるのだという考え方、この対立をしておる団体交渉と同じことだ。しかし、日米間というものは、基本的に友好の大前提を置かなければだめですよ、労使の間もそのとおりです、こう言ったら、その基本的な考え方は大体同じことなんですが、ただ、やれるかなあという考え方、やっても、何年も続くかなあという考え方。それは、業者としてはそういう考えになるでしょうが、いやしくも日本の政府をあずかる者としては、そういう出たとこ勝負の外交ができるかどうかということで、そこにちょっと違いがあると思うのであります。目先きの問題だけではなしに、日米間という大きな問題を前提にして考えるときに、私はそういう立場からいって、私たちは政府間協定に移行することによって、いま一方的規制をされるよりもプラスがあるという見方でございますし、そこには多少意見がまだ合わないところが存在することは事実だと思います。
  29. 大矢正

    大矢正君 五月の十三日に私と宮澤さんと、この問題でやり合いをしているわけです。もちろん、将来政府間協定などというものがあり得るのかどうかということも議論の前提の上でやっていることなんです。そこで彼はこう言っているのです。「日本側の立場が、業界がともかく不承不承でも了承しないことではやれない、法的に規制する方法はないということは、すでにアメリカの交渉担当者はよく知っておるわけであります。」と、こう答えておる。言うならば、わが国から出す場合には、わが国自身が現在の段階では法律規制でも講じなければ、これは業界が納得しない限りできないのですよ。これが一つ。それから向こうのほうがシャットアウトする場合に、この問題については、実際上、事務的な手続上、向こうでチェックをするということは、これは不可能に近いことなんです。だから、日本に規制をさせるように、日本自身が規制をするように、そういう方向にし向けているのがアメリカ側の態度なんだということで、議論が展開されてきている。  ところが、この二つが、いつの間に一体ひっくり返ったのか。少なくともその当時は、通産省それ自身の判断では、アメリカが一方的にシャットアウトをしようとすること、そのこと自身、アメリカの現在の法律や法体系その他からいっても、あるいは手続上からいってもできないんだと、だから、そんなに日本が譲歩する必要性がないというのが、その当時の議論であったわけであります。そのことについて、大臣自身どうでございますか。
  30. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 私も、この間まで同じことを考えておったわけなんです。だから、日米経済閣僚会議でも同じことを言ったのです。繊維業界は、百六、七十万名の従業員、二百に近い各種組合を擁しており、これらの組合の協力なくしては、貿管令だけによる一方的な規制はできません。ですから、やるとしたら二つしか道はない。一つは、法律を提案して規制をすることであります。一つは、工業組合その他、組合の窓口の協力を得て、貿管令によって規制をすることです。その後段のやり方は、自主規制以外の何ものでもない。前段の問題は、国会における与野党共通で政府間交渉反対の決議案が成立をしておる現段階において、法律は通過の見込みはないにもかかわらず、あたかもあるがごときことを言って協定を結ぶことは、日米間の不信をより拡大することであって、やりませんとも言っているんですから、これは宮澤君と同じことを言っているんです。  ところが、私はその後、日米会議では、数字を出して、もう事実認識の違いはないところまで詰めてきたわけなんです。ところがアメリカ側は、どうしてもやってもらわなければ、アメリカ自体がこんなにも国際収支が悪くなっておるんです、切に協力を願います、こういう状態で、この国際収支改善という当面の目的を達成するためには、大統領特命でもって交渉団をつくってやっておるんです。  こういう状態になって、さて、どうしても政府間交渉が行なえない場合には、結局ストップをする以外にないと。ストップというのはうまくできるのかどうか。ところが、私はできないという議論でずっと今日まできたんです。いま一年間で五%官吏を減らそうとしているのに、いまの通関に立ち会っている人の五倍も十倍も人をふやさなければやれるはずがない。通関の職員をふやすのか削るのか、こう言ってやったときに、ふやしません、現状でやるんですと。現状でやるならどうなるか。答えない。答えなければ答えないでいいんだけれども、結果は明らかであります。現状の人間をふやさないで一方的規制をやれば、輸出は全面的にストップになるということになる。その間の日米間の混乱というものが考えられないはずはないんです。  私は、そういうものの事実を十分考えた結果、これはお互いに話し合いをしなければならない。もつれて、行き着くところまで行き着かしてはならないというような考えを、いま持っている。最後のどたんばまで努力をしなければならない、こう考えているのであって、私はやはり宮澤君と同じような考えを持っており、国会でもそう申し上げ、アメリカでの日米会談でも述べてきたものが、その後の情勢の変化によって、いずれがいいのかということの取捨選択を迫られているのが、私の現在の実態である、こうお答えを申し上げます。
  31. 大矢正

    大矢正君 話は若干飛び飛びになるかもわかりませんが、最近ジューリックというのが日本に来て、あなたにお会いをされ、何か話をされているようでありますが、私の知っている限りでは、あなた自身がジューリックをつかまえて、おまえは一体どこの代表だとお尋ねになったということがあるそうじゃございませんか。私は非常に不可解なことは、政府間協定をしなければならぬとか、政府間で交渉をしなければならぬとかいうような議論をする前に、そういうわけのわからない相手と、あなた自身も話をするというのはおかしいと思って、お聞きになったんでしょう。  ところが、その男が先に佐藤総理大臣に会っているということは、何を意味するかというと、あなたは佐藤総理大臣に、ぜひこの際、ねじ伏せて政府間交渉を結べという命令か何かを受けたのではないか。佐藤さんはその場で何をお考えになったかといえば、このままいったら沖繩が返ってこないことになるかもしれない、隠している部分があるから。それが明るみに出てしまったらたいへんなことになる。それをおもんばかったからあなたが今度こういう措置をとられたというのが、私は、新聞にも出ているが、事実に近いのじゃないかというような感じがする。そもそも、この種の外交問題を話しするにあたって、相手が何者だかわからないのに、ただニクソンの特使でございますよというのでそれと会うのもおかしいし、あなた自身もそこに疑義を生じたから、あなたはほんとうに代表かどうかという話もされたんでしょう。それから政府間交渉、政府間交渉とあなた言われるが、日本の業界の代表が、あるいは政府の直接の大臣じゃない別な方が、ジューリックと会って話をするなら、これは話はわかります。しかし、相手はあくまでも私的な意味の代表でしょう。それに日本の政府の最大の実力者のあなたがお会いになったということは、もうその時点で、政府間交渉をあなた自身始めておるということじゃないですか。
  32. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 必ずしもそうじゃないのです。これは非常に重要な問題でありますから……。ジューリック氏と私が話をしておるというのは、アメリカの考え方をたださなければならない。これは、政府間交渉をやりますということは、政府間交渉に切りかえますという両国政府の合意があって、その後交渉を始めて内容を詰めるならば、これは交渉になりますが、いまはまだ政府間交渉に切りかえるという、こちらの政府の合意は見ておりません。見ておりませんし、私自身がいままでの状態においては、自主規制というものが両国の間で一番いいことである、望ましい姿だと思っておったのですが、その後アメリカ側の強腰を見て、ずっと私はいろいろな状況をやはり判断しなければならない。  私がジューリック氏に、失礼な話でございますが、ユーは何者だと聞いたのは、これは自民党の繊維対策特別委員会で、彼は一体代表権を有する人なりやいなやということが問題になったのと、週刊誌か何かを読んでおりましたら、ジューリック氏の資格に対しても疑義を持つ業界もある、こういうことでございましたので、交渉ではないにしても、正確な事実をつかむためには、言いにくい話でも、彼の公的な立場を、また権限を明確にしておく必要があるということで、このような前提がございますので、失礼ではあると思うが端的に伺います、あなたはどういう資格で日本へ来ておるのか、こう聞いたら、大統領特命便でございます——。その問題は、私はある公的な筋から確かめたわけであります。これははっきり申し上げれば、在日公館というのがあるわけでありますから。そういう普通の外交ルート以外に、大統領特命使として、繊維の問題についてはジューリック氏は特使であるという明確な答弁を得ておりますので、彼の資格はそのまま認めざるを得ないというようなことでございます。  ただ、あなたとぼくとの間では政府間交渉ではございませんよ、日本がどのくらい強腰なのか、あなたも知らなければいかぬし、私自身も、アメリカがほんとうにやるのかやらぬのかを見違えてやったらたいへんなことになるから、お互いの間にはそういう意味で情報の収集をやろう、そういうつもりでやってもらいたいと。ですから、私は明確に日本政府がどうするなんという腹は、向こうには通じてはございません。ですから、いよいよ政府間交渉をやり、協定を結ぶということになれば、どういうルートでどういう人が相手になるのかということは、おのずからきめられることであると思います。
  33. 大矢正

    大矢正君 七月二十三日のこの委員会で、私はあなたにこう聞いている。「日本の繊維業界が自主規制を続けている限りにおいて、政府が干渉するようなことはないと、今後とも解釈してよろしゅうございますか」という私の質問に対して、あなたはそれに対して同意しているわけですね。それは御存じでしょう。
  34. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) はい。
  35. 大矢正

    大矢正君 それは、君子豹変という話はあるけれども、実力者豹変という話はあまり聞いたことはないのであります。あなたが日米交渉に行っておられるとき、私はヨーロッパにおりましたから、ヨーロッパでいろいろな人から話を聞いたら、田中通産大臣という人は非常にりっぱな人だ、アメリカの各閣僚を相手にして堂々と、繊維では一歩も引かないで日本へ引き上げていったそうだと、まことに見上げた通産大臣であると、ヨーロッパでも大評判だったですよ。その大臣が、いま、何日たちました、日米合同委員会から。なぜ一体変わらなきゃならないのか。しつこいようだけれども、あなたの心境はもっと別のところにあるのじゃないかという気がしてならないので、もう一回聞かしてください。  それから、これは何回もしつこいように聞きますけれども、政府間交渉を本気でやる気ですか、やらない気ですか。それとも別な案というものが考えられるわけですか。政府交渉以外の、別の形の何らかの、たとえば業界同士の協定ということもあるでしょう。いろいろやり方があるでしょう。鉄鋼の場合なんか、明らかにこれは業界が向こうの政府に対して、自分のところはこういうことをやるからという形で自主規制をやってますから、そういう形で、政府があくまで入らないでも、別途な形で業界の自主性に基づいて、たとえばアメリカ側との間に、それがアメリカの政府であるか、アメリカ業界であるかわかりませんが、一応の確認書をかわすとか、協定文をかわすとか、そういうようなことでも考えられるのかどうか。あくまでも政府と政府の間において協定を締結しなきゃならぬと、あなたは考えておられるのかどっちですか。
  36. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角君) まず前段の問題にお答えをいたしますが、それは先ほど来るる申し述べておりますとおり、いまでも私は、自主規制というものは新しいスタイルであり望ましいことである、二国間でこまごまとした協定を結ぶということは、自由をもととする貿易では望ましい姿ではない、こういう考え方を持ってます。持ってますが、なぜ政府間交渉にさえ応じなければならないような段階であるかというポイントは、アメリカは、ほっておけば十月十五日やりますよ、それは現実的に対米輸出が全部ストップするような事態である、ということです。私が広範な立場でもって調査をした結果、非常に強い姿勢である。米側は、現実的には通関の官吏を一人もふやさない。そうして非常にきびしい規制を行ないますと言えば、現実的には全部輸入はストップするということを、そのまま認めざるを得ません。それよりも、政府間協定に移行することによって、なだらかな何らかの処置が、道が求められないかということか、当然、これはやはり通産大臣として——豹変したのじゃないかとか、いろんなことを言われますよ、田中は変説したのじゃないかと。そういうことより、そういう目の前の現実に対して、それは処置を考えなければならないということが、私がこの問題に対していろいろ思いをめぐらしておるポイントは、そこであります。  もう一つの、第二段の問題、政府間協定以外にあるのか。いまの段階では、何とかして政府間協定でなく何かいい道がないか、そこが日米間じゃないか、よきパートナーとは何か、道を考えようじゃないかとも言っておりますが、アメリカ側の考え方は、依然として二者択一である。政府間協定を行なうか、政府間協定を行なわないか、イエスかノーかということかと、こう言うと返事はしませんが、イエスか、ノーか。ノーだということは、そんなこと言いませんけれども、とにかくどっちかを選んでもらわなければならない、どっちかを選ぶということは、もう言うまでもなく政府間協定をやってもらわなければ困るんじゃという一辺倒でありますから、私がいま、しいてあなたに詰められれば、どっちの道を選ぶか、政府間協定をやってメリットがあるか、このまま突っぱねて時間的解決を待ったほうが得なのかということを考えると、国益を考え、産業自体の実態を考えるときには、どうも二つの道のうち、政府間協定というもののほうがベターじゃないかなあという感じがするんです。私はそういう、いまそのような心境にあるということだけ申し上げておきます。
  37. 大矢正

    大矢正君 あなたが、まだそういうような不明確な、どちらかというと多少の疑問点を自分の心の中に持っているという意味は、裏を返して言うと、話し合いはかなり長期になると見ていいですか。簡単にお答えいただきたい。
  38. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 向こうは刻むがごとき秒読みを言っておりますが、交渉はやっぱりお互いの考えを、足して二で割ったとは言いませんが、やっぱり両方から寄ってくるところによき結論が出るのだろう、こう考えております。
  39. 大矢正

    大矢正君 お尋ねしますけれども、もしあなたが最悪の道を選んで、私に言わせれば最悪の道を選んで、あなたは国家の利益とか何とかおっしゃるのですが、私は、国家利益でなくて佐藤総理の利益だと思うのです、私に言わせれば。とにかく、それは見解の相違だからしかたがない。いずれにしても、あなたが最悪の事態である政府間協定というものをかりに結んだ場合には、日本の政府の責任において規制しなきゃならぬわけですね、業界が納得しない限りは。そうでしょう。そういたしますと、その根拠となるのは一体法律的には何なのか。それからもしその法律がかりに、業界にも一部ありますが、憲法違反であるという考え方、政府のそういうやり方は憲法違反だという考え方で問題にされたときに、政治責任を将来感じなければならぬことになると思うのだが、その辺の判断はどういたしておりますか。
  40. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) まだ明確な結論は出しておらないわけでございますから、その結論に対して出るであろうという問題に対して、軽々にお答えをするということは問題があると思いますが、しかし、私は、日米の政府間交渉が行なわれて政府間協定に移行するということになれば、現行の貿管令で調整をするようになると思います。思いますが、それは画一、一律的な技術論であって、その前に、日米間で業界が納得できるような状態というものをやっぱり考えなきゃいかぬと思う。ですから、日米間に、私がいままで現行法ではなかなか技術的に無理だよと言っているものをもしやるとすれば、やれるような協定案でなければだめですよと言っているのは、そういうところにあります。ですから、まあ業界は正面切ってみんなで賛成賛成と言えなくとも、まあどっちという案もあるが、政府の案もまた一つの道かな、というぐらいな理解が示されるというような状態こそ望ましいと、こう私はいまの段階においては考えております。  ですから、さっきの、もし結んだ場合どうなんです——あなたと同じようなことをやっぱり言われてましたよ、何でやるのですかと。それは諸君の協力を得ないではできないという話をしたときに、いろんな話のやりとりのときに、まあ自主規制でも相当困っておられるようだが、自主規制と、もし二国間協定ができた場合、その差額というものは、こういうものをお互いの努力でもって、政府が一部買い上げるとか、いろんな、どこかへ商品援助に出すとか、また延べ払い輸出をするとか、いろんな道を考えて、何とか腹の中ではこんな道しかないだろうなという、協力できるような態勢をつくろうといま努力しているのだ。こういうことに対して、返事はなかったですな、ああそうですかというだけの話で、賛成ですという話はたかったけれども、やっぱりある程度の理解というものが前提でないと、この問題なかなか、アメリカとの間にも相当な問題が起こると思います。押えきれない。業者はかってにどんどん出してしまう。それがアメリカの埠頭にうず高く積まれる。そんなことは、もう二国間でやっちゃならない。そのためには、業界最後まで協力を得るように全力をあげなければいかぬ。私は基本的にはそう思っております。
  41. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっと関連で質問しますが、大臣の話を聞いておると、何か私たちがいつか通ってきた戦争の思い出でも語られるように、イエスか、ノーかと言わぬばかりの詰められ方だと。そうすれば、これは一方交通であって、何でそうなってきたのか、ますます疑わねばならないことになってくるわけです。一方では人員もふやさないということは、日本の輸出はこれでまるまるとまってしまいますぞと、あなたはこうわれわれに対しては脅迫みたいなことを言われる。そうするとアメリカは、それでは日本の輸出は一切ストップしてもいいと。アメリカ国内はそういう事情であるかどうか、長く続くであろうかどうかという問題は、当然起こってくる。ここであなたの話を聞いておれば、政府間協定を結ばなかったならば、日本の輸出は一切ストップになりますよ、結局はもう結ぶ以外にないじゃありませんか、こう言って業界なり国会を説得しておられる、こういうような感じを受けるわけです。そうすると、いままで大矢さんが質問しましたように、長い間この国会で審議してきたものは何にもならない。その裏にあるものは一体何なのか。佐藤さんとニクソンさんが約束してきたのかどうか。だからそれをカタにとって、それで、政府間協定をしなければ日本は信用しませんよ、日本の輸出は全部ストップしますよと、こう言っておるのかどうか。もう少しはっきりしたところをお聞かせ願いたい。
  42. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) そのようにお取りになったとすれば、ちょっと私の御説明が足らないのでございます。アメリカがいま言っております繊維の規制というものは、日本に対してだけではないのであります。課徴金と同じように、画一、一律的にやります、ただ、日本というものが伸び率が一番大きいし、日本の基礎になっておるベースが非常に大きいので、そういう意味で影響は日本が一番大きくなるだろうということでございまして、これは対米繊維を輸出しておる全世界に対して画一、一律的に十月十五日から実施いたしたい、ただし、それまでに政府間協定に移り得た国に対しては、その中から除外してまいりましょうということでございまして、極東は四国ございますが、新聞で報道されるとおり、もう香港政庁も決定いたしましたし、それから台湾も決定いたしたわけであります。韓国は近く、十五日までに間違いなく政府間協定は決定できるというふうに報道されておりますし、また、われわれのところにもそのような状態のように映っております。  そうして一つ一つ片づけておるときに、日本だけが、一方交通でやっていきましょうというような状態でこの問題を、過去長いことそういう態度をとってまいりましたからどうぞおやりください、そちらでおやりくださいと言う前に、少なくとも日米間というものは、アメリカがなぜかかる措置に出なければならないかという前提の、アメリカの国際収支が非常に困難な状態になっておるということはよくわかります、わかっておるのでありますから、それでいま日本の平価調整という問題も、アメリカを中心にしていま盛んに協議が行なわれておるという事態、またいろいろ日本でもって、もうすでに対前年度比二一六という数字も出ておる自動車、倍に近いテレビの問題とか、いろいろな問題がここに出ておりますので、そういう問題を考えて、その中でまず最初に取り上げられた繊維問題、特にまる三年間、両国の間にわだかまっている問題に対して、よりよい道はないかということを考えるのは当然でありまして、沖繩問題とか、佐藤総理がどうしたという問題では全然ないわけです。今度出てきておる問題は、当面する国際収支の問題、ニクソン・エコノミック・パッケージと言っておりますが、これも一つのパッケージとして、この政策は、政策効果を上げるまでは絶対やらなければならないのだという非常に強い要請、その中の第一、第二というものに、課徴金が第一であり、繊維問題は第二である。第三弾はきょうあたり出るようですが、これは日本ではなくほかの国に影響があるようでありますが、そういうようなものを考えると、相手の結論だけを待っておるというわけにはいかないというふうに考えられます。
  43. 大矢正

    大矢正君 あなたの話は非常に回りくどい話で、いますぐにでも何かをしないと、これはもうぴしゃっと向こうは十五日から門を閉めてしまうのだから、たいへんなことになると言っているかと思うと、一方では、業界の納得が必要だから、多少日にちがかかってもやらなければいかぬということ自体、非常に矛盾が多い。それをここであなたとやっておると水かけ論になってしまって、あなたも最後まではっきりしたことを言おうとは考えておらぬだろうし、私も言うだけ自分の時間をつぶすだけの話で、ばかくさいからやめるけれども、ともかく私はこういうことは考えられると思う。あなたが政府間協定をかりに強引にやったといたしますれば、業界にとってはたいへんな被害を受けるわけです。当然、あなたの言っているような業界に対する救済措置になってくると思います。救済措置それ自身は、私は決して不当なことではない、当然政府が業界に対してそういうことをやらなければならないと思いますが、その出る金は別にあなたのふところから出るわけではない。自由民主党から出るわけでもない。国民の税金から出るわけでありますから、ですから、かりに、たとえば課徴金の問題がある、あるいはまた自動車、それから電子機器、あるいはまたその他鉄鋼にいたしましても、アメリカが引き続いて政府間協定とか、あるいは大幅な自主規制というものを求めてくるというような内容が具体的にあるわけでしょう、課徴金の問題にしてみたところで……。たとえば今度のこの繊維問題で課徴金を排除してみたところで、量的に押さえられておるのに課徴金だけいくら排除されても、こんなものは無意味な話で、私に言わせればそんなことは笑い話だと思う。それからまた、たとえば国際的には通貨問題が今日重大な問題としてありますから、わが国の平価の改定についてはアメリカが具体的にどういう協力をするとか、そういうようなものが個々に示されて、それは、そういうもののパッケージの中で日本がとるべきものをとる、したがってこういう譲歩したというのなら、まだ国民の税金を使っても多少は考える余地があるけれども、それが一つもないままに譲歩されるということは、これはあくまでも佐藤・ニクソン会談というものの中で約束させられて、しかたなくやっているのだなという解釈しか成り立たない。あなた、そのことを不自然だと思われないですか、国家的な利益から考えたら。
  44. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 大矢さん、そういう考え方もあるかもしれませんが、私はそう思ってたいのです。協定をしないで済むなら、なにもやらないでいいのです。私自身があまり好きじゃないのですから。新しいものは、政府間協定というかっこうよりも自主規制というものが望ましい。これは私、世界的な傾向だと思うのです。そうでなければ多国間交渉というような、ガットの場において基本的にきめていくというのが新しい正規のやり方だと思う。政府間でもって二国間協定をやらなければならぬというときには、よほどの事情がなければ、これはもうなるべくやるべきものじゃないと思っています。私自身もそうなのです。  ただアメリカ自身がこの繊維に対しては、十月十五日になったらやりますよ——やりますよ、やりますよと言ってやる人はないよとか、死ぬ死ぬと言って死んだ人はないよというような感じじゃ、私はこの問題を簡単に考えていけない、深刻な考えでいままでやってきたのです。いよいよ、これはどうしても言っていることはほんとうだなと思うと、そのときの、そういう状態に追い込まれた場合の日本の業界の困る状況、政府間交渉に切りかえることによって一方的輸入制限よりも救済される面ありとすれば、私はやはりその道を選ぶべきだろうという考え方は持っているので(「そこがわからない」「じゃどうしてアメリカが主張するのか」と呼ぶ者あり)アメリカアメリカ独自の主張をするのはしょうがないよ。それはそんな自分の国のことだけじゃない。相手がそういうことを世界各国に要求しておる。それに対して日本は、それをやられるかやられないかという見通しをつける。やられた場合に日本に与える影響はどういうものかということは、よく考えなければならぬことは当然だと思うのです。  だから、さっき卑近の例で悪かったけれども、繊維の産業の代表者の方々には、ほっておいたってだいじょうぶですよという考え方ではだめだ、とにかく労使の間でも、これはどうせだめなんだからほっておけ、ロックアウトやらんよ、ストライキにならぬようという考え方でよき労使関係は生まれるわけはない、同じことを日米間でいま考えておるのでありますと言ったら、御返事なかったですがね。もう三年間もやってきておって、こっちは自主規制やって、それはだめだといってアメリカが代案を出しておるわけでありますから、その両国間の調整をどうするかということを、やはり三年間の歴史の中でひとつ考えていただかなければいかんし、現実にそのような拍車をかけた理由は何かというと、アメリカの国際収支が逆調になって、にっちもさっちもいかなくなった。短期債務四百億ドルに対して手持ちの金は百億ドルを割っておる、こういう状態に対して非常措置を求めているのだ、こう言われると、われわれも深刻にものを考えざるを得ないというのが実態であります。
  45. 阿具根登

    ○阿具根登君 もうこれでやめますがね。あなたの話を聞いておって非常にわからないのは、自主規制をやっているよりも、政府間協定をやったほうが助かる道もありますよと、こうおっしゃるわけですね。それなら業界も反対するわけない。それなら、それをどうしてアメリカが主張するのか。どうも何か、たまたまおっしゃる中には、そういうふうに、政府間協定のほうがかえって業者を助けますよと、自主規制よりもかえっていいところもありますよと、こういうように聞こえるわけなんです。それなら業者が反対するわけない。それなら、それをアメリカは強く言うわけもないじゃないか、自主規制よりも緩和されるならば。何かちょっと引っかかるのですがね。
  46. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) この際ですから申し上げておきますが、鉄鋼は、こんな数字はあまり出したくないから出さなかったのですが、出さなければ理解を求められないということになると、みんな出さなければならぬということになります。一九七一年の上期における前年同期比の対米輸出の伸び率の数字を出しますと、鉄鋼が一三〇%、自動車が二二三%、二輪車が一六一%、テレビが一四五%、電卓が一二六%、合成繊維が一三〇%、以上六品目の合計一五七・七%、こういう数字が出ているわけです。今度は糸を見ますと(「それは知っている。資料持っている」と呼ぶ者あり)まあ聞いてください。これ、知っておれば私の言うことも理解されるわけです。これはやはりそういう問題なんですよ。日本の糸を考えると、三五一なんです。台湾は二三二五、二十三倍です。韓国は二四二二、二十四倍、二十四年分も出ておるのです。ですから、このままとめられないということになる。とめては困るから、政府間交渉に自動的に移らざるを得ないんです。ですから、そういうところに移らざるを得ないのか、移ることによって、それがなだらかな軌道へと移行するのかという、そこが政府間交渉に移ったもののメリットだと、そう計算しなければならないことは当然だと思います。
  47. 大矢正

    大矢正君 大臣、あなたの話はちょっとオーバーなんだよ。七月から自主規制やっていることは、あなた知っているわけでしょう。七月から自主規制始まった状態はどんな状態か、あなた知っているでしょう。それはちゃんと横ばいになったでしょう。それは、一挙にはアメリカの希望するようなことにはなってないけれども、しかし、もう伸び率というものはほとんどなくなって、先月に比べて〇・何%という程度しかないのであって、確かに一−六月が伸びているからことしはずいぶん伸びたというふうに見えるけれども、自主規制以降の七月、八月の実績というのは非常によくなって、言うならば、自主規制というものは順調に推移しているわけだ。にもかかわらず、あなた、政府間協定結ぼうというのだから、まずそこに根本から矛盾がある。そこを言っても始まらぬ話だし、時間があとわずか十二、三分しか残ってないから、石炭の問題やらなきゃならぬから、一つだけあなたにお伺いしますが、あなたが政府間協定を結んだ場合には、これは明らかに国会の決議に違反するわけですから、国会の決議というのは、あくまでもこれは業界納得の上で自主的に話をまとめさせなさいというのであって、政府間協定というものはもうくぎを打たれているわけですから、それをあなたがあえてやるというのは、あなた自身、国会に対してそれ相応の責任を負うというだけの判断をされてやっていると思うけれども、その点はどうですか。
  48. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 両院の決議のあることは十分承知をいたしております。ですから、その決議に沿うべく努力を続けてきたわけでございます。現時点においては  決議もずっと以前の決議でございます。現時点においては、私は彼此をちゃんと比較をして、いずれが正しいか、いずれが国民のために有利かということを、いま判断をいたしておるのでございます。ですから、私がもし政府間協定に踏み切らざるを得ないということをきめて、それを実行した後に国会がどういう、また同じ御決議になるということになれば、私はもう当然責任を負わなければならぬことは言うを待たないところでございます。私自身はいままで、国会に現に決議の存在することを考えながら、この決議に沿うように、万全の努力を続けてきたわけでございます。そういうことはひとつ御理解いただきたい。私は、国会議員生活やがて二十五年になろうという者が、国会の決議を踏みにじろうなんていうことは、毛頭考えておらぬということを申し上げておきたい。
  49. 阿具根登

    ○阿具根登君 いまの問題について、国会の決議に沿うように努力をしておるのだということはわかります。しかし、国会の決議は前のものであって、自分は慎重に考えて、そうして政府間協定を結んだあとで、国会から再度決議されたならば、私の進退を考えますと。それじゃ国会よりもあなたのほうが、行政府のほうが優先じゃありませんか。やってしまってから国会じゃあ、しようがないでしょう。そこの考えが私と違う。
  50. 大矢正

    大矢正君 それと関連して端的に。大臣、あなたもし政府間協定に踏み切られる際には、われわれのところに了承を求めるような気はあるんですか。その気はないんでしょう。どうも新聞の報ずるところによると、国会の案件にはしない、あくまでも政府の行政権の範囲内で押し通していくんだ、こういうお考えのように新聞等では報ぜられているが、いまの阿具根さんの話と関連させてお答えいただきたい。
  51. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 現に国会決議が存在するということは、国会決議に忠実でありたいという考え方は、ごうも間違っておりません。それだからこそ、自由民主党にも出て事情を述べておるし、三党書記長の方にも……。
  52. 阿具根登

    ○阿具根登君 事情を述べてじゃない、説得しているんだ。
  53. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 説得じゃありません。事実をありのまま述べて、中間報告をいたしておるわけでございまして、私は、国会の決議を守ろうということに対しては人後に落ちないということは、私の覚悟を見ていただいてひとつ御了承いただきたい。
  54. 大矢正

    大矢正君 大臣ね、時間もまいりましたので、お断わりしておきますが、衆議院と違って、参議院というところは、議長でもひっくり返えるところだからね。ちょっと十人くらい腹痛起こせば、大臣の問責決議案くらい、案外すらすらと通ることもあり得るわけです。そういうことを十分心してやってもらいたい。  それから次に、石炭問題について二、三お尋ねいたします。時間が相当経過いたしておりますので、簡潔にひとつお尋ねいたしますから、お答えを賜わりたいと思います。  大臣御承知のとおり、いま、住友石炭鉱業が三山ありましたが、そのうち二山、歌志内、奔別礦、この二鉱を閉山しなければならないという状況に立ち至っておるわけであります。今日までの政府の感触として、この両鉱をさらに存続していくことができるかできないのか。そのできない理由は、具体的にどういうことなのか。この際簡潔にお答えいただきたい。
  55. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 住友三山の再建につきましては、私も再建をしたいという考えで努力をしてまいったわけでございますが、結論としては、はなはだ遺憾な状態を迎えつつあることは事実でございます。大体、奔別、歌志内の両鉱は閉山もやむなしという結論になっておるようでございます。あとの赤平礦一山だけは、集中的にこれを経営していこうということになっておるようでございまして、私自身も、何とか助けられないかということで、いろいろ北海道庁とも意見調整をしたり、また地元の通産局にも調査をしてもらったり、また、鉱山局でもいろいろなことを研究させたりしたわけでございますが、遺憾ながら、結論としては、現時点においては赤平一山を助けるということで、あとの奔別と歌志内の二鉱は、廃鉱やむを得ないのじゃないかというような方向に進んでおることを申し上げておきます。こまかい問題は事務当局からお答えいたします。
  56. 大矢正

    大矢正君 大臣、いまの時点で万一この両鉱が閉鎖されるということになりますと、私の想定するところ、明年度は完全に出炭が三千万トンを割ってしまうという非常にきびしい情勢になります。そういう意味においては、単にこの両鉱が閉山するというだけにとどまらず、わが国の石炭政策に重大な影響を及ぼしかねない問題があるわけです。しかも財界の一部には、大臣の耳にも入っているかもしれませんが、石炭対策なんかもういいじゃないか、何か審議会でも検討しているようだけれども、石炭に関する補強策というようなものはやめてしまえというような、そういう非常に残念な意見が財界の一部にあるやに承りますが、大臣までそういう判断を持たれてしまってはたいへんなことになるのです。特に外貨問題はわが国はもうないとしましても、資源の保護ということは、やはりこれから考えていかなければならぬことでありまして、いまのところ簡単に資源を外国から受け入れることはできても、将来ともに資源が安定的に供給されるということの道は、必ずしも安易なものではないということを考えてまいりますると、私は、この面においては相当な配慮をしてもらわなければならぬ。住友二山の問題ももちろんそうでありますが、今後残り得る炭鉱についての補強策といいましょうか、いま審議会で検討中でありますが、政府においても、あるいは審議会においても、積極的にこの補強策について努力をするというお考えがおありかどうか、お答え願いたいと思います。
  57. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 石炭が、戦後二十六年間の日本の経済再建に対してどのように寄与したかは、私が申し上げるまでもなく、非常に大きな功績があったと思います。また、いま国際的競争力でもって計算をすれば簡単ではございますが、国内の持つ資源という意味から考えてみて、資源の多様化とか、いろいろな問題がいま検討されておるときに、ただ国際的に見てペイしないというだけでスクラップ・アンド・ビルド、全部スクラップにするというような意味に解すべきではない。私は、そういう意味で、特に北海道をみますと、北海道から石炭を取ってしまうと、えらいことになるぞ、石炭に対してつぎ込む金よりも、もっともっと北海道そのものへの救済融資のほうが大きくなるという面がありますので、広範な立場から石炭というものをやはり検討してまいる必要がある。私自身が石炭を、全部終閉山に持ち込もうというような考えは持っておりません。これは、新しい立場で石炭を各方面から検討を進めるということが望ましいことだ。基本的にはあなたと同じ考えでございます。
  58. 大矢正

    大矢正君 次に第二点は、先ほどの答弁の中にも若干触れられておりましたが、住友にはもう一山、赤平炭鉱というのがあります。それは全部有能な炭鉱なんだけれども、特にこれは原料炭の比率も高い炭鉱でもあります。しかしながら、これからの政府のやり方いかんによっては、この残った一山といえども非常に不安があるわけですね、率直に申し上げて。したがって、これはこまかいことはわれわれも事務当局から、この場ではなく、別の場でも具体的にお聞きもしたいし、希望もしたいし、その際に、ひとつ十分な大臣からの御配慮がいただけるかどうか。
  59. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 事務当局を督励いたしまして、できるだけ協力いたします。
  60. 大矢正

    大矢正君 それから第三点目は、いま会社が二山の閉山を提案し、政府も、大臣の説明によると、情勢としてやむを得ないというような話があります。もちろん、これにはまだまだ、これから労使間の話もありましょうし、それ以外の場所におきましても、再建というものが不可能なのかどうなのかという話し合いも続けられるとは思いますが、不幸にしてこの二山を閉山しなければならないというような事態になった場合に、行き着くところまで行ってしまったかっこうの住友石炭でありまするし、グループからも非常に冷たい扱いを受けておる。特にまた、買い上げ価格その他の面におきましては、必ずしも従来の労働者の退職条件を満たすほどの原資がないという問題があります。これはまあ技術的、事務的にいろいろむずかしい問題はあるでしょうが、できる限り、働く者が万が一やめていかなければならぬ場合においても、ある程度のものを保証していただけるような配慮を政府に求めたいと思うのですが、この点はいかがですか。
  61. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 制度的可能な、最高の措置をいたしたい、こう考えます。
  62. 大矢正

    大矢正君 最後に、同じくこれに関連して、三笠市、歌志内市の両市にとりましては、万万が一、この二山がなくなった場合には、これは財政的にも、地域経済にとりましても、たいへんな問題になるわけでありますね。したがって私は、どうしても二山の問題について再建か不可能だというような事態か発生をした際には、やはりこの両自治体に対して、財政面から、あるいは産炭地振興の面から、特別の配慮を願わなければ、これは市から一ぺんに村にまで没落するのでないかと思われるほど重大な内容を含んでいるわけでありますから、私はこの面におきましても、たとえば政府の産炭地振興事業団を動員して企業の誘致につとめるとか、あるいはまた、政府の自治体に対する財政交付金も予算上あるわけでありますが、その中で特別の配慮をするとかいうようなことで、地域経済に極力犠牲や負担や不安のない形で問題を解決しなければ、たいへんな事態になると思われますが、その面についても積極的に御協力を賜わりたいと思いますが、この点はどうでしょうか。
  63. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) この二山に関係する地方自治体住民等、二万五千人にも及ぶということも承知をいたしておりますし、これらがそのような事態になったときの問題も、いまから想定をしながら、自治省及び北海道庁なり関係市町村と十分意見を交換し、遺憾なきを期してまいりたいと思います。
  64. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  65. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記つけて。
  66. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっと技術的な問題にも触れますので、大臣に聞いてもらっていて、答弁はほかの方でけっこうなんですが、業者のほうからも、二つの山はもうあきらめざるを得ない、一つだけ残してくれというようなことをいわれたと聞いておりますが、この北海道の奔別というのは、実際、日本でも一番深い深部採掘をやるために、非常な期待を持たれて掘っているわけなんです。千二百メートルからあるわけなんです。そうなると、当然、そんな深部だからこれは熱いですね。非常に熱い。三十数度あるということを聞いております。しかし、ぼくらの調査では、炭層はきわめてりっぱな炭層があるのだ。だから深部採掘というのに非常な期待を持たれて、私はやっているものと思うのです。それが赤字だからというところで閉山になるとするならば、今後、日本の炭鉱では深部採掘は不可能だということを裏づけてしまうのじゃないか。そうすると、私はたいへんな問題だと思う。今後、日本の炭鉱はみな深部にいかなければいけないわけなんです。それを多少赤字が出たからといって、これはあきらめるというようなことでは、日本の炭鉱の将来にとって非常な不安がある。だから、これはあくまでも、多少赤字があっても、日本の将来の炭鉱を考える場合に、一つの試験炭鉱というのか、モデル炭鉱というのか、そういうぐあいにして、この深部を掘って、それで、たくさんあるその石炭がどういう状況で掘り出せる、またその間にはガスの問題も起こってくるでしょう、そういう問題について、どういうまあ技術的な問題があるのか、という問題も十分研究しなければならない。こういうことから考えると、ただ赤字だからつぶすということでなくて、相当な炭量もある、またこれを掘るだけの意欲もある、とするならば、将来を考えて、試験というかモデルというか、こういう炭鉱でも残していく。そうしなければ、もうこれから先の炭鉱は深部はやれない。とすれば、私はなだれ的に炭鉱はつぶれていくんじゃないか、こういう考えを持っておりますので、ひとつはっきり事務局のほうもお答え願いたいと思います。
  67. 荘清

    説明員(荘清君) お答えいたします。  日本の炭鉱が、特に原料炭の新鉱の場合に、一般に、非常に世界的にもほとんど例のないような深いところをこれから掘らなくちゃいけないという、困難な自然条件と取り組む宿命にあるということは、非常に残念なことでありますが、動かしがたい事実であろうと思います。したがいまして、こういう面につきましては、外国の露天掘りというふうな条件のいいところと違いまして、それなりの設備投資も必要になりましょうし、保安上も特別な配慮が必要であるというところから、経済的に見ますと、それだけコストが当然高くなるという状況にあるわけでございますけれども、私ども、ほかにも現在政策として進めつつある新鉱、先生御案内のように北海道にございますけれども、どちらかといいますと、温度でございますとか、あるいは全く新しい新鉱、非常に最初から計画的に掘進なども進めながらやる条件が整っておったというふうな、住友奔別の場合よりも比較的恵まれたといいますか、そういう有利な条件も実はございます。私どもはそういう点から、北海道等で現に進めておる他の原料炭新鉱が、今後ともだめだというふうには全然考えておりません。現在の制度のもとでの助成策の最高のものをやれば、こういう新鉱は、私どもは将来原料炭の新しい山としてりっぱにやれると思うし、やらなくちゃいかぬと思って進めておるわけでございます。  なお奔別の、いわゆる条件がよくないから閉山はやむを得ないとしても、試験炭鉱というふうな道は考えられないかという御指摘がもう一つあったわけでございますけれども、実は私どももこの点につきましては検討いたしました。で、検討したのでございますけれども、試験炭鉱ということになりますれば、その試験炭鉱として残すときの規模、全山残すのか、それともメイン坑道を残すのか、それからその期間はどうするのか、いろいろあろうと思いますが、本格的にやるとなりますと、十億近い新規の金というものを考えなくちゃいけない。そのために人間も、出炭を差しひかえた形で維持していかなくちゃいけない。こういう経済的な負担というものは、これはたいへんなことになりかねないということのほかに、法律上もやはり鉱業権というものを存続いたしませんと、ぐあいが悪い。閉山交付金を出して、鉱業権を消滅させ鉱区を閉鎖するという現在の制度のもとでは、両立ははかりがたいというふうな、いろんなジレンマがございまして、私ども現在のところ、残念ではございますけれども、ちょっと方法がないのじゃないか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  68. 阿具根登

    ○阿具根登君 大臣、皮肉なもんで、一方は、繊維の問題で、自分の国の産業を守るために、政府間協定結ばなかったら一歩もお前ら入れないぞと言っている。一方では、石炭はもう鉄鋼業界の方々が日本の石炭は要らないと言って、外国の石炭ばかり買ってくるという。これは非常に皮肉なものなんですね。ひとつ通産大臣も、アメリカのニクソンさんの言うことをまねてもらって、鉄鉱に対して、石炭なんか外国からあまり入れるな、日本の石炭みんなつぶれてしまうと、そのぐらいのことをして炭鉱をつぶさぬ線でやってもらいたい、かように思うわけです。いかがですか。
  69. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 石炭と繊維の問題、必ずしも軌を一にするものでございませんが、石炭というものはエネルギー政策の中で維持させなければならないということは、当然のことだと思います。石炭が、どんなに安い石油になっても、西ドイツやイギリスは見直しをして、ちゃんと石炭のエネルギーの中に占める位置というものをきめてやっておるわけであります。日本も、電力業界とか鉄鋼業界とか、そういうものも、石炭が、できれば同じ系列の資本であるべきだったと思いますが、まあ西ドイツやイギリスと違うような形態で、たいへんむずかしい状況を迎えておることも理解できます。石炭そのものに対しては、これは国の持つ数少ないエネルギーの一つですから、そういうような高い位置で長期的な見通しのもとに石炭を見なければならないだろうということは、もう私自身も理解をいたしておるわけでありまして、繊維だけやっておって、こっちをやらないというわけじゃございませんから、よくひとつ意見を聞かしていただいて、誤りのない石炭政策というものを樹立してまいりたいと思います。
  70. 小野明

    小野明君 大臣にお尋ねをいたしたいと思います。ニクソン声明以来、わが国だけではなくて、世界各国におきましても、国際通貨の不安にさらされておる。特にわが国中小企業というものは非常な混乱におちいっておりまして、きわめて深刻なものがあると思います。この責任は、ただアメリカが悪いのだ、アメリカだけにあるのではなくして、やはりドルのかさのもとに、GNP第一主義で突っ走った佐藤内閣にも大きな責任が私はあると思います。政府におきましては、今回のこのアメリカドル防衛策、このドル・ショックというものを教訓にいたしまして、新しい経済政策を求めてしかるべきではないか、経済政策の転換をはかるべきではないか、このように私は考えるわけであります。まず、この点について所見を伺いたいと思います。
  71. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 一つずつ分けて考えなければならぬと思いますが、まず日本の生産を中心にした考え方、これは一つには正しいことだと思います。それはなぜかといいますと、日本のまだ国民総生産は、十年たってようやくソ連並みくらいになるということでございますし、日本の国民所得そのものは、アメリカの三千九百ドルに比べて千六百ドルで、カナダの二千六百ドルに比べて千ドルも低い日本である。百三十五カ国のうち十六、七番目ということでありますので、このまま一〇%成長というものが続いて、そのうち一〇%ないし一五%程度の給与が引き上げられていくとすれば、十年ないし十五年のうちに、現在のアメリカ程度の国民所得が確保できるだろうということございますし、そういう意味で、私は、国際競争力に耐えなければならない、原材料を持たない日本が、やはり生産を上げられる体制になければならないことは、もう間違いないことだと思います。  ただ、そのために、二つの大きな問題を起こしてまいりました。一つは、国内的なアンバランスが起こってまいり、社会資本はアメリカに対して四対一であるという考え方、コストを引き下げるためには過度に集中して、全国土の二%というところに総生産の八〇%、九〇%が過度集中しておる。その結果、公害問題が起こる、コストアップになる。それがコスト・インフレにつながらぬ十いう保証はない。こういう社会情勢をつくっておるということが一つであります。もう一つは、輸出ドライブというかっこうで、日本の輸出はソシアルダンピングじゃないかということも、アメリカでもヨーロッパでも堂々と公の席上で言われるということは、これはやはり日本としては考えなければならない問題であります。つまり、そういう意味で私は方向としては間違っておらなくとも、やはり輸出に向いた力を、少なくとも社会資本の増大というほうにウエートを置きかえることによって、輸入が増大をされ、日本の対外的な輸出入のバランスがとれる。日本からも物は買うけれども、日本にも物を売るんだということになれば、私はこんなに非難は受けることはないと思います。  これは私もきのうの晩よく計算をしてみましたら、昭和四十年——ちょうど三十九年の十四条国から八条国に移行したときの外貨準備は二十億ドルでございましたが、このときから日本が不景気になった。四十年、四十一年の不況、不景気になったときには、対米、対外的な輸出は非常によけい出ておるわけであります。不景気になるものだから輸入は非常に押えられるということで、輸出が急速に伸びる。こういうことで、四十一年から対米貿易も日本の出超ということになって、二億ドルが四億ドル、六億ドルということでだんだんとやってきて、去年は十二億ドル、今年度は半期で十一億ドルというふうに変わってきておりまして、やはり国内的な公共投資、また量から質へ、社会保障もそのとおりでございますし、まあ東京の人たちが空地面積を二百カ所ぐらいしか持っておらないというような異常な状態から、やはり十倍、二十倍というアメリカに近づくような投資に切りかえていくということを、急速に変えていかないと、外圧というものは変わらないのであって、やはりそういう政策の転換というものは必要だと思います。
  72. 小野明

    小野明君 次に、いま繊維の政府間協定ということで追い込まれておるわけです。けさの毎日新聞によりますと、この繊維の政府間協定の、ニクソン大統領の大きな圧力になっている人との会見記が出ております。政府間協定は、繊維の次は鉄鋼だ、その次は自動車だ、その次は電子機器だと、こういうことを言われておるわけであります。まあ大臣は国際会議等にも出ておられまして、その辺の感触についても御存じでありましょう。先ほどは若干そういった輸出の伸びておる現状を、これら三つの問題については言われておりますが、この政府間協定の次に何か押し込まれてくる、こういう見通しについてはいかがですか。
  73. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 確かに繊維は伸びておりますし、それから鉄鋼、自動車、テレビ、電卓、二輪車、非常に伸びておりますが、私は、今度もし政府間交渉に移らざるを得ないような状態になり、政府間協定が行なわれても、それは繊維だけであって、繊維が終わったら今度は自動車、今度はテレビ、その次には……こんなことはもうないと、私はそう思っております。  これはやはり二国間で、日米間の貿易バランスをとるためにどうするかという問題でだんだんお互いが調整をしていくことは、ある意味で必要かもわかりません。これはカナダとの問題でも、カナダから買うのは材料を買うんだから、二次製品が入るのはあたりまえじゃないか、二次製品がよけい入るといっても、カナダからの日本に対する輸出のほうが多いんじゃないかと、こう言いましたら、二対一だったものが、だんだんともう狭まってきて、いまは一対一になりつつある、これはやっぱり何か考えてもらわなければいけませんということを、強く望んでおりました。それと同じことを、われわれは豪州に対しては言っているわけです。羊毛は買わなくちゃならないが、日本からも物を買ってくれと。こういうことで貿易バランスをとっておるし、対ソ連との問題も、九億ドルから十億ドル輸出入の中でございますが、これもバランスはきちっととれております。  ですから、まあどこかが日本から片貿易であるということはやっぱり限度がありまして、これは日米間でも、確かに年間二十億ドルもよけい入るのだということが、そのまま私は是認されるとは思いません。しかしそれは、さっきも申し上げたように、日本の景気が非常に下降線をたどっているからそういうことであって、日本がとにかく景気がよくなれば、輸入はうんとふえてバランスはとれるのだというような状態もありますから、お互い日米間でいろいろ協議することはあるとしても、また自主的にいろいろなオーダリーマーケティングというような、とにかく輸出秩序の確立という面からお互いが努力をしなければならないことであっても、繊維の次は自動車なりコンピューターであると、そういうことは絶対にないだろう、そんなことをやったらこれはもうたいへんだ、日米間そのものがほんとうに基本的にまいってしまうと、こういうことでございまして、繊維は三年間もやってきた最終的な問題であるということで、これから何か起きるにしてもまだ三年ぐらいはという、そう安直に考えているわけではございませんが、やっぱり両国で矢つぎばやにものが行なわれるということはあってはならない、こういう考えであります。
  74. 小野明

    小野明君 まあ大臣は、あり得ないというような観測でございますが、今回のドル防衛を見ましても、大臣も言われますように、アメリカ国内事情というのは、失業率六%、予想以上に深刻なものがあると思うわけですね。大臣は、そういうことはおそらくまあ相談があるだろうと、こういうふうな観測かもしれませんけれども、ニクソンの訪中でも、何分か前にしか相談がない。ドル防衛でも、何分か前にしか相談がない。それほど頭越しでやられておるのですから、どうも大臣のおっしゃることに信が置けないというか、観測を誤っておるのではないかという感じがするわけです。確かに繊維の次は何だ、鉄鋼あるいは自動車だ、こういうことはないということが言えますか。
  75. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) そういうことが起こらないように、日米は緊密なる連絡をすべきである、こういうことであります。
  76. 小野明

    小野明君 それでは次の質問に移りたいと思いますが、やはり日本の貿易市場の構造というのがアメリカに片寄り過ぎているということは、これは事実ですね。で、ここらで、このニクソン・ショックということから、やはり市場の転換というものをはかっていく必要があるのではないか。これは中国が、端的に言えば国連に加盟するのは時間の問題。現在は友好貿易ベースで八億二千万ドル程度ではありますけれども、アメリカがやはり中国を有力な市場として見ていることは事実なんですね。このごろ頭越しでやられますから、そういった先に、やられる前に、中国市場の開拓、市場の転換ということは十分考えてよい問題ではないだろうかと思いますが、この辺の御見解をいただきたい。
  77. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 基本的な姿勢としてはそのとおりでございます。これはもう、原料を確保する方向も多様化されなければならないと同時に、日本の輸出先も多様化されなければならないということは、もう全く当然のことでございます。ただ、一つ考えなければいかんのは、今度、アメリカに集中しておったというので、アメリカでとにかく見込み生産をしておったものを、さてどこかへ割り振ろうと思って、この間から実は研究しておったのです。で、私は一番手っとり早いのは、東パキスタンから千万人も流れ込んでいる難民に、こういうときにこそ商品授助をしてやったらいいと思ってやったら、どうもアメリカ行きと南方行きとは多少物が違う、アメリカ行きは暑くてだめですと、こういうので、もう少し風通しがよくなければいけません、こういう簡単な問題にすぐぶつかったわけでございますが、しかしそれを、いまある滞貨のものは別にしても、ほかの、これからつくるものをそういうものに製造業者が切りかえられないことはあるまいということで、いまいろいろなことを研究させております。ただ、集中しておったのと、日本が比較的にいい品物、高級品をだんだんだんだんとつくってきたというところに、多少、もっと多様化する産業というものを考える必要があったと思います。ですからいまの問題は、二〇%調整をする、その二〇%分を全然別なところへ振り向けようとしても製品が全然合わない、鉄板の要るところへ銅板がいくんだということでなかなか合わないという問題がございますが、これはもう私ども、そういう意味で地球上あらゆるところにシェアを求めて、一つのところでもって五〇%も大きなシェアを確保するよりも、一〇%ずつ五つの地域で確保するほうが安定である。こういうことで、新しい通産行政の中ではそういう問題をひとつ十分とらえて、研究させておるわけでございます。
  78. 小野明

    小野明君 そうしますと、原則的にはそのとおりだとお認めになるわけですから、これから積極的に中国貿易の拡大ということについても努力をするということでございますね。
  79. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 中国でも買っていただけるものは何でもお出しをしようと、こういうことでございます。ただ、先ほどちょっと、議論するわけじゃございませんが、アメリカは中国を大きな商売の先と考えておるようだがということでございますが、これはそんなに大きく急速に、アメリカがつくった品物がすぐ中国に入るというものではないようでございます。日本のほうがまだそういうところは、対応する物をつくるにはアメリカよりも合理的だろう、こう思っております。  いまアメリカ貿易は、去年六十九億ドルでございますが、ことしは七十億ドルぐらいを見ておったわけであります。それに対応する数字としては、大ざっぱに言ってソ連が九億から十億、それから対中国貿易が八億四、五千万ドルから九億ドル、対台湾が十億ドルちょっと、韓国が十億ドルから十一億ドルぐらい。ですから四つの地域の倍近いものが対米貿易であるということで、アメリカに集中しておるということが言い得るわけでございますので、これからやはりまわりの近隣諸国だけでなく、世界じゅうに日本商品の安定的市場を求めていかなければならない、こういうふうに考えます。
  80. 小野明

    小野明君 私もこれはちょっと申し上げておったわけですけれども、ニクソンが今度訪中しますから、そういった点から見まして、すぐに中国貿易ということにはならないと、こういう見方につきましては、若干私は再検討すべき点があるのではないだろうか、こう思いましたから申し上げたわけです。  それから課徴金の問題についてお尋ねをしたいと思うんです。先月十六日にガットの作業部会が、課徴金は違反である、こういう報告を正式に採択した。日本も入っておる。こういったガットの作業部会報告、ガットというものがどれだけの制約をアメリカに対して持つのか、その効果についてはどうなのか、あるいはこれに対する政府の方針というのはどうなのか、これらをあわせてお尋ねをしたいと思います。
  81. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) ガットは第二次大戦後、世界の平和維持のためにできた国際機関であるということは御承知のとおりでございます。貿易が縮小均衡にならないように、拡大均衡をたどっていくためには、やはり新しい財政、経済、貿易等の調整機関が必要であるということで、政治的な目的を持つ調整機関である国連の下部機構として誕生しましたのが、御承知のとおりIMFであり、世銀であり、第二世銀であり、ガットであり、やがてそれがOECD、DACに展開していくわけでございますし、それなりに南北問題等に対しては相当大きな実績をあげてきたことは事実でございます。日本も、ガットの勧告等に従いながら今日まで自由化を行なってまいったりしてきたわけであります。ある時期は保護を受け、ある時期には近代輸出国家へと脱皮をする過程において、ガットはそれなりの意義を持ってきたわけでございます。  しかし、一時よりも非常に——アメリカドル対策のために課徴金を設けたということでございますので、まかり間違えばIMFもガットもつぶれてしまうんじゃないかというくらいの議論さえ行なわれておる現在でありますが、事実は、何年か前のガットというほど高く評価はできないかもしれません。しかし、世界平和の機構としてガット体制を守っていこうということは、これは共通のことでございますので、やはりガットは、新しい機構として、新しい任務を持って育て上げられていくべきであるし、日本は当然ガットを維持し拡大していくという立場をとるということでございます。  この間はガットの作業部会で課徴金問題が議論され、アメリカに対しては勧告を行なうというところまできております。これは、かつてイギリスのポンドの問題のときに、二年間課徴金が行なわれました。なお、カナダ・ドルの問題のときにも一年間やられました。そのときには、ちょうどガットが勧告を行なうときに、その前日に課徴金をやめました。こういうことになって、ガットの存在というものはちゃんと認められておるわけでございます。ですから私は、ガットが動き出したというところに、二年でも三年でも課徴金をやめないと言っておったアメリカも、その後急速に、課徴金は、円平価、各国通貨の平価決定が行なわれるならば課徴金は全廃します、こういうことにすぐ結びついておることを考えますと、ガットというものが、アメリカに対して非常な大きな影響を与えておるということだけは事実だろう、これは評価をすべきだろうと思います。
  82. 小野明

    小野明君 大臣はドル対策本部長であるということでございますが……。
  83. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) しておりません。ドル関係ございません。
  84. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  85. 大森久司

    委員長大森久司君) 速記を始めて。
  86. 小野明

    小野明君 九月二十七日からのIMF総会で、アメリカが赤字国の責任ということを明確にしなかった。それで、当面しておる国際通貨危機というものに対しましては、何ら具体的な措置がなかった。いつになったら、この多国間調整、これを通じて新しい国際通貨制度ができるのか、その辺の見通し、おわかりになっておると思いますからお尋ねをいたしたいと思います。
  87. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 水田大蔵大臣がお答えすることが一番適当だと思いますが、一般的な問題として、私が答えられる部分だけ答えておきまして、あと必要があれば水田大蔵大臣も来て、答弁を求めていただきたいと思います。  日本の円平価の切り上げということが、一番国際的な問題になっておるということは事実でございますし、日米経済閣僚会議でも非常に大きく指摘せられたことでございます。しかし、平価調整ということはそんなに簡単にはできない。ということは、これは各国の平価の変更に対してなかなかできないということは、もう十分証明済みでございます。ただ、二国間とか、求められることなしでも自分の国でもって平価の調整を行なう例は、ないわけではありません。それは、もうすでにドイツが、二回もマルクの切り上げをやっておるという事実に徴すれば明らかでございます。ただ、その場合には前提条件があります。西ドイツのように、コストインフレぎみな、インフレ的な前提が国内に存在をしている、そういう意味で平価調整が行なわれるということはございますが、日本においては、卸売り物価は横ばいでございますし、食料品等を中心にした消費者物価だけが高い水準を維持しておるというので、国際的に見て、日本の平価を、日本がみずから切り上げなければならない情勢にないということは、これは、どこへ行っても通用する議論だと思います。  ただ、アメリカの今度の新政策の中で、ヨーロッパの主要工業国を含めた十カ国のうち、九カ国の平価調整というものが必要だと、こういうことがいわれておるわけでございますので、十カ国の蔵相代理会議、蔵相会議、IMFの総会、できればIMFの総会までに何か一つのめどができるのかなと思ったが、なかなかそうもいかないようでございます。ただ、日本においては、現象としては変動相場制に移行しておりまして、きょうも中小企業対策等を行なって、契約から船積みまで、船積みから輸出手形の買い取りまで、全部処置をいたしましたし、MOF会計からの外貨預託制等をはじめとして、中小企業輸出契約を結ぶことができるような措置を、きょうきめましたけれども、長いこと固定相場制のもとにあって、変動相場制というものになじまない日本としては、制度上どんなに完ぺきにしても、固定相場制が望ましいようなら、早く切り上げるなら切り上げなさいという荒っぽい議論さえも出てきておるという事実、それも、リスクカバーの問題に対してもきょうの閣議で処置いたしましたけれども、日本には内在する、そういう問題もございます。  そうしてもう一つは、IMFの総会の実態を見ますと、やはり日米間が、二国間で前向きの姿勢をとることによって、他の八カ国の同調も得やすい、こういうような問題もあるようでありますので、私はやはり近い将来、そして年を越すようなことがなく、日、米、残りの十カ国のうち八カ国というものが、非公式、公式を問わず接触が行なわれて、比較的に早く各十カ国の中で平価調整の案がまとまるのではないか。  これは、私が常識的に考え得る範囲でお答えをしたわけでございますが、私がいまお話しを申し上げたことは、もうすでに新聞にも水田大蔵大臣の発言として、できれば十一月一ぱいか、年内には結論が出るかもしれませんということを言っておりますので、そういうことを、日米経済閣僚会議でもって議論をしたようなものも前提にしながら、いろいろ諸般の情勢を勘案して判断をしますと、以上申し上げたような結論になるんじゃないか。これはただ、ほんとうに想定でございまして、明確な国務大臣としての答弁を求めるなら、水田君にひとつ御質問いただきたい、こう思います。
  88. 小野明

    小野明君 時間もありませんから、端的にお尋ねをしたいと思います。  変動相場あるいは輸入課徴金実施で、大きな影響中小企業に与えられておりますことは、いまお話しのとおりで、当面、景気対策ということが考えられなければなりませんし、特に、中小企業の被害の実情を克明に調べる、それに対応する対策を立てるということが重大ではないかと思います。それらについて、景気対策、特に中小企業対策についてお考えを述べていただきたいと思います。
  89. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 中小企業、特に繊維企業を見てみましても、私は、日米のいまの繊維問題に象徴されるような貿易の問題も、一つの原因ではございますが、これを別にして考えたときも、日本の産業、特に産業の中に占める中小零細企業というものに対しては、やはり戦後四分の一世紀たってきて、何か節を迎えているんじゃないか。その見直し。それからもう一つ、新しい視野と立場からの中小企業対策というものが必要なんではないかということを、このごろ痛切に考えておるわけでございます。  ですから、その意味で基本的に中小企業は、日米の貿易問題以外にも、金繰りの問題もありますし、特に非常にいま大きな散超でございまして、金利もまた下げようなどということが新聞にも出ておりますが、借りようとする意思があれば幾らでも借りられるような状態でありながら、中小企業はもう担保はほかになくなっておるというような問題もございますので、そういう意味で、金融的にも信用補完というような面、政府金融機関のワクをふやすというようなことだけではなく、新しい信用補完の制度をどういうふうにして拡充しなければならないかというようなこと。中小零細企業そのものの中でも、もうフル運転をしたらたいへんな生産力を持っておる。一つの例を言いますと、七十万台の織機がフル回転をしたら、どのくらい一体できるのか。五万三千台買ったけれども、ほんとうはどのくらい遊ばしても、いまの輸出量ができるのか。私が計算をすると、二十万台か二十五万台ぐらい織機をとめても、いまぐらいなものはできる能力を持っておる。そういう意味で、やっぱり設備過剰という面もあります。だから、スクラップ・アンド・ビルド、石炭のような言い方でまことに言いにくい話でございますが、やはりもう中小企業の中から、転廃業という新しい道を選ばなければならないものも確かにあると思います。あっても、なかなか転廃業しても退職金も払えないというものもありますので、そういう石炭企業にとっているような施策を、中小零細企業の中にどのくらい導入をすべきか。いままでは、自然発生を是認をして、税制上での金のめんどうを見るということだけであって、ますますそれを困難にしている面もなくはないというふうに考えられます。  そういう意味で、当面その中小企業対策、いま積極的に取り組んでおりまして、政府にも中小企業対策本部をつくりまして、私が本部長になっております。きょう第一回の会合を開きましたが、これは繊維の問題で私は出られなかったわけでございますけれども、これは、ここでひとつこまかいものを立案してまいるということでございます。いまは、金融措置、信用補完の問題、為替取引安定の措置、税制上の措置、事業転換円滑化措置、その他、下請け企業代金支払い等の問題、これはもういままでとは比べものにならないほどやっているつもりであります。そうでしょう、二千万円に特別ワクを二千万円、五百万円の貸し出しワクを五百万円の特別ワクで千万円にする。とにかく、もとと同じ以上にしようというのでございますから、画期的な施策であることは事実でございます。これをもってしても万全な対策じゃないという考えでございまして、中小企業、これから年末金融もございますし、いまの日米の問題とあわせて、中小企業対策を並行して進めておるというのが現状でございます。
  90. 小野明

    小野明君 いま大臣が言われました転廃業に対する通産省の指導ですね、その辺は、今回の措置の中ではやっぱり入っておるわけですか。
  91. 高橋淑郎

    説明員(高橋淑郎君) 九月二十三日の閣議決定の中で、事業転換の円滑化についてきめられた事項は、事業転換を行なうという意思のある中小企業に対しましては、共同して転換をやろうというときは中小企業振興事業団の高度化資金を利用させる。それから、単独で転換する場合は中小企業金融公庫の特別ワクを利用することを認めるということでございます。それから税制上の措置としましては、事業転換を行なう者に、所有する設備へ加速度償却を認めるという特別措置を講じましょう、なお、信用補完につきましては、いわゆる特恵転換並みの特例措置を認めよう、こういうようなあれを用意して、中小企業の創意に基づいて転換を行なう際には、以上申し上げたような施策を用意しておるわけでございます。
  92. 小野明

    小野明君 最後一つ大臣にお尋ねしておきます。いま、国民経済研究会とかあるいは通産省の調査、それぞれ見通しが甘い、あるいはきびしいと、こういうことで、どれを見ていいかわからないというのが実情ではないかと思うんです。たとえば、円の切り上げは一二・五%なら好結果である、結果はよろしいという、国民経済研究会が試算を出しておる。ところが、通産省の調査によると、五、六%の円の切り上げでは輸出が一〇%以上減るという試算、これらがいろいろ入り乱れておるわけですね。ところが、課徴金と円の切り上げ等で実質一五%以上の切り上げがもし行なわれるとするならば、一体産業界に対してはどのような影響になるのか。混乱しておるそれぞれの見通し、一五%以上切り上げになった場合、これらの見通しについて、もしお持ちであればひとつ御説明いただきたい。
  93. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これは一番むずかしい御質問でございまして、私には個人的な考え方はございます。ございますが、権威ある参議院の委員会でということになると、これはたいへんなことです。  私が通産大臣に就任した翌日、閣議がございました。そのときに、九月初めIMFの総会に出席をするときに、日本の外貨準備高は百億ドルをこすかも知れない。こしたら、それは最も最悪な事態であると、こう言ったら——言ったのは公式な発言でございましたが、これは当たったわけでございます。当たったけれども、これは百億ドルではなく、百二十五億ドルになったということでございます。異常な状態であって、その当時の手持ちから三倍くらいになる数字でありますから、当たったというのが不穏当でございまして、先見の明があったということではもちろんございません。しかし、円平価の切り上げ、平価の調整というものは、いままででも公式な発言としては、円平価の移動は行ないません、こう総理大臣以下全部言っておるわけでございます。しかし、変動相場制をとったということ自体、円平価の何らかの調整が行なわれておるということになって、水田大蔵大臣、IMFの総会に出てから、円平価の調整を含めて平価調整は、年末までには結論が得られると思いますという公式発言が行なわれておるわけでございますので、しいて御質問を前提にして申し上げるとすれば、一五%とか一〇%以上ということを考えることは、私は、日本としてはたいへん危険なことだと、こう考えております。通産大臣としては、一〇%以上などということを考えるべきではないと考えております。私が、何か一二・五%と言ったようなことを言われておりますが、これはちょうど割り切れて三百二十円になるということだけであって、何の根拠も全くありません。いま申し上げると、IMFの試算では二五%というふうになっているから、話半分にしても一二・五%と言っただけで、全く根拠のない数字でございます。まあ一〇%以上ということは、ほんとうに私は困るという感じでございますし、国際的に見ても、各国の平価の調整を考えると、日本の平価が一〇%以上なんかにはならない、こういうことを、私自身は個人として考えておるわけでございまして、これは国務大臣の発言として適当であるかどうかということは、私もさだかに確信が持てませんので、そういうことは言っちゃいかぬということになれば取り消さしていただきますが、現時点においては、御質問がございましたので申し上げれば、その程度のことしか申し上、げられないということでございます。     —————————————
  94. 大森久司

    委員長大森久司君) この際、委員の異動について報告いたします。  本日、植木光教君、赤間文三君、渡辺一太郎君が委員辞任され、その補欠として鈴木省吾君、長屋茂君、原文兵衛君が選任されました。     —————————————
  95. 大森久司

    委員長大森久司君) それでは続いて発言を願います。
  96. 中尾辰義

    中尾辰義君 さっきからの同僚の質問によりまして、いよいよ日米繊維問題も政府間協定に踏み切るように腹をきめた、このような大臣の答弁を聞いたわけですが、どうも日米繊維問題は、もう当初から例の佐藤・ニクソン密約説、つまり佐藤総理が一昨年十一月、アメリカニクソン大統領と会って、沖繩返還とニクソンの繊維輸入制限との取引をしたとか、しないとか、そういう密約が当初から根底に流れて、そして、そういうような状態で自主規制という方向で今日まできた。やっとまあ政府の了解のもとに、七月一日から自主規制ということで進んでおるときに、今度はまたこういったような、アメリカのほうから最後の通牒ともいうべき、十月一日までに政府間協定をきめなければ、もう十五日から対敵取引法を発動して、そして輸入割り当てをする、こういうようなおどしみたいな通告までしておるわけです。そしてあなたは、今度はこの前の日米合同貿易経済委員会におきましても、ゆうゆうとあなたの確信発表をなさっておいでになったと思うのです。  ですから、その辺の事情から、どうも今度の問題はもやもやしたものがあって、単に業界だけではございませんで、国民全体がどうもすっきりしないのです。業界が納得すればそれでいいという、そうはいきませんよ。これは、かりに繊維協定を結ぶ、それによって業界に対するところの救済措置を、何千億か財政措置するとなれば、これはどうしても国民の税金ですから、ですから、私はさらに質問の順序からいって、もう一ぺん納得のある大臣の答弁をお伺いしたい。政府間協定にどうしても進まなければならない、そこまで至った、国民が納得するひとつ答弁を、くどいですけれども、ひとつお願いしたいのです。
  97. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) もう御承知のことでございますが、日米繊維問題というものの経緯は、一九六八年——いまから三年前でございます、六八年八月、ニクソン大統領が毛・化合繊製品について抑制を行なう旨、公約をいたしました。これから考えると、三年余の歳月が経ておるわけでございます。それから六九年の五月、スタンズ商務長官が来日をいたしまして、繊維の輸出規制を日本に要請した。それからずっと日米間に、調査団が行ったり来たり、いろんなことをやっております。それで七〇年六月、ワシントンで閣僚レベルの、宮澤・愛知——スタンズ・ロジャーズ会談をやったわけですが、合意に達せず。これから今度やってまいりまして七〇年の十月には、佐藤・ニクソン会談で繊維の政府間交渉の再開に合意をした。合意をしておっても、牛場大使・フラニガン補佐官の会談がずっと行なわれておった。そして最終的には、七一年の三月、日本繊維産業連盟は一方的自主規制を行なうという宣言をいたしまして、政府間交渉を中断、今日のままに至っておると、こういう歴史を経ておるわけでございます。  それで、日本側は七一年、ことしの三月、自主規制でやります、政府間交渉ごめんでございますと、こうやったわけでございます。これは、ごめんでございますとは言わないけれども、民間がやったことに対して政府は、まことにけっこうなことであると、こういうことを言ったわけですから、これはもう間接的に日本側の意思を表明したわけです。その表明に対して、六月にケネディ特使来日、七月一日から自主規制、九月にはジューリック特使が来日と、こういうことでずっと三年間続いておるんです、三年何カ月。ですから日本としては、もう済んだことでございます。自主規制で、もう政府間交渉はごめんでございますということは、一ぺん済んだんです。と思っているんです。皆さんも、私もそう思っている。それが一番いいことだと。アメリカ側は、三年何カ月間交渉は続いておるんだと、こういう考え方なんです。で、日本が途中で乗りかえた繊維の自主規制というものには賛成ができませんから、あくまでも日米間の政府間交渉を求めると、こう言って聞かないんです、三年何カ月間。それで最終的には、どうしても日本がだめなら、日本は七月一日から自主規制でスタートしたのだから、今度はアメリカアメリカの案で自主規制をいたしますと、こう言ってきているのであって、ちょっとからんでしまったんですな、これ。  私は、まだ通産大臣になって三カ月でございますが、この繊維の問題は毎日毎日のように研究をしなければならない状態にありますので、いろいろ研究してまいりましたが、やはり繊維は三年間向こうは続いておるという考え方、そうしていまのニクソン・エコノミック・パッケージの中にそれが重なってきたというところに、非常に強い姿勢が生まれておるということは事実でございまして、いまのところで私たちは、やはりアメリカの今度のそういう態度に対して、どうすることが日米間の利益を守ることであるか、特に日本の繊維産業というものの利益を守るためにどうあるべきか、自主規制というものとアメリカの一方的規制を受けるということの、どっちが一体危険性があるのか、そしてわれわれが政府間交渉という新しい事態に乗りかわることによって、いままでの自主規制や一方的なアメリカの規制よりも一体どの程度メリットがあるのかという問題を、しさいに検討しておるというのが、いまの政府の実態でございます。
  98. 中尾辰義

    中尾辰義君 まあ、あなた、いま交渉の経過を述べられただけなんですがね。そういうことでは、われわれはちょっとまだ納得いかぬわけなんですよ。交渉の経過のあらあらのことはよくわかっておりますが、それであなた、ゆうべケネディ特使が来て、お会いされましたか。されたなら、どういう話があったのか、その点ひとつ。
  99. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) ケネディ特使はまだアメリカにおりますが、ジューリック特使がきのう参ったわけでございますが、私は接触をいたしません。この問題に対しては、通産省事務当局で何らか接触をしておると思います。まだ報告を受けておりませんが、この委員会が終了するころには、私もひとつジューリック氏に会って聞いてみようかなという気持ちもあります。まあ、とにかくきょう参議院でこのくらいおしかりを受けておりますから、たいへんだぞということは、これはもう交渉には当然披瀝すべきことでございます。まあ、まだ交渉ではないんです。情勢を判断しているわけでありますが、そういう意味でひとつ、接触の過程においては私は国会の意見も強く述べるつもりでございますし、そういう意味で、きょうはまだ報告を申し上げるという段階になっておりません。
  100. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、この政府間協定のベースになっております例のケネディ案は、新聞ではこれは存じておりますが、政府はこれを正式に公表したのですか。
  101. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これは公表ということではなく、向こうから非公式に提案を——向こうは公式提案だと言っておりますけれども、こちらはまだ……。そういう公式提案を受けてということになると、政府間交渉のようなものになりますから、それはだめだということで、いま私どもは受けておりませんから、そういうものは公表をいたしません。政府から公表した事実はありません。ただ、ジューリック特使が来て、あなたは何者であるかと言うと、大統領特使であると。あなたの案はと言うと、もうすでに提案をしてございますということで、向こうからもらうと悪いから、二通りの案がありましたから、このうちのどれかと言いますと、それだと、こう言ったから、みんな読んで間違いないか確認してくれと言ったら、これに間違いないと。こういうことで確認を求めたものを通産省は持っておるということでございまして、なかなか配慮しておるのです(笑声)。そういう意味で、ほんとうのものは持っておりますが、通産省が公表したことはございません。
  102. 中尾辰義

    中尾辰義君 こういうときですから、これはガラス張りで明らかにして、そして、こういう経過というものも報告をされないと、いろいろな疑惑を生ずるわけです。新聞に出ておりますが、新聞のとおり間違いありませんか。
  103. 佐々木敏

    説明員(佐々木敏君) ただいま大臣のお話にございましたように、通産省が公表するというような、ただいまの段階、文書ではございません。公表はいたしておりません。ただ、業界におきまして非常にその関心がございます。業界にはその資料はお渡しいたしてございます。新聞等に出ておりますものは、たぶん、そういった方面から出たものであろうと存じますけれども、各紙それぞれ少しずつ内容が違うようでございますが、全部照合はいたしておりません。
  104. 中尾辰義

    中尾辰義君 これは日本繊維産業連盟から明らかになったということで出ておりますけれども、六月二十九日に、繊維問題解決のため、ケネディ米大統領特使が来日して佐藤総理と会談をした、そして両者の間において、多国間協定の成立に努力をすると、そのような約束がされたというふうにも出ております。その点いかがですか。
  105. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) いつですか。
  106. 中尾辰義

    中尾辰義君 六月二十九日。
  107. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 私は六月にはおりませんから、政府委員から答えさせます。
  108. 佐々木敏

    説明員(佐々木敏君) その記事は拝見いたしております。実はそれは、ただいま大臣からお話ございましたように、ケネディ氏が六月、七月に参りましたときに、いわゆるケネディ案なるものを当方に持参したわけでありますけれども、そのうちの一部の付属文書であります。
  109. 中尾辰義

    中尾辰義君 佐藤総理と会談したことは事実ですね。その点どうですか。
  110. 佐々木敏

    説明員(佐々木敏君) そのような事実は、私は聞いておりません。
  111. 中尾辰義

    中尾辰義君 私がなぜこういうことを聞くかと言うと、こういうふうには新聞等にも出ておりますが、こういったような問題は、やはりもやもやする原因になるわけでありますから、私はこういう問題ははっきりさせておく必要があると思う。  あなた、さっき付属文書のことをおっしゃったけれども、その付属文書におきましてはどういうことが書いてあるのですか。
  112. 佐々木敏

    説明員(佐々木敏君) 七月のケネディ案なるものは、実は本文と付属別表といいますか、二つございまして、A表はケネディ案のカテゴリーの品目がそれぞれ羅列してあるようでございます。B表が、ただいま先生お話の、主文に続きます同じような内容の多国間協定を、将来検討すべきであるというような内容であります。
  113. 中尾辰義

    中尾辰義君 それは少し違うのですがね。じゃあ、私がこれをちょっと読んでみます。大臣も御存じでしょうけれども、知らぬ顔していらっしゃるかもしれませんが……。「付属書B」「毛・化合繊貿易の多国間協定に関する覚書」。こういうことが書いてある。「日米両国代表は、実施し得るもっとも早い時期に、両国政府は共同で」云々と、それから最後に「毛・化合繊貿易に関する多国間協定を結ぶことに努力することで合意に達した。」と過去形で書いてある。この点いかがですか。
  114. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 私は、それはあまりよく知っておりませんが、知っておって知らないなどと言う私ではございませんから、すなおに考えていただきたい。それは、私もいまちょっとおかしいじゃないかと、二十九日にそんなことがあったのかと。私は七月の五日に専任大臣になっているから、申し送りがないのですから、と思って、いま私もちょっと奇異な感じで聞いたのですが、そうじゃなく、それはアメリカからかってに書いて持ってきた、アメリカの案だそうでございます。なにも日本との合意に達したものでも何でもなく、こんなことでできればいい、という付属文書として持ってきたのだそうでありまして、それが何日に日本とケネディ特使の間に交渉があって得た結論ではない。アメリカが、もう出てくるときに決議案の案文を持ってきたようなものでありまして、そういうことだそうでありまして、向こうがかってに書いて、かってに持ってきたというものでございます。(「身元不明のわけのわからぬ者と会うから、そういうことになるのだ。」と呼ぶ者あり)いや、そういうことであるということを、七月五日以後のことに関しては十分承知しているのですが、いまそれを聞いてみたら、向こうが持ってきたものであって、こちらと合意に達したようなものではないのです。
  115. 中尾辰義

    中尾辰義君 あなたの答弁を信頼すればそうなるのですが。
  116. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 信頼してください。
  117. 中尾辰義

    中尾辰義君 またこういうところに、今回の繊維協定のもやもやしたものがやっぱり底流しているわけですね。それも引っかけて、やはり大臣は先ほどから、アメリカのほうの国際収支の問題、経済問題等によってこういうような方向になってきたということも、大矢君の質問に答えて、私も聞いておりますけれども、やはり何か政治的な高度な取引があったやに、もやもやしておる。そういうことが、やはり佐藤内閣けしからんじゃないかと、佐藤内閣不信になってくるわけですから、そういう点は、私ははっきりしなければならない。私もよく、とことんまで時間がないので調べてなかったので、あなたの答弁を信ずる以外にありませんけれどもね。ですから、この点はもう少し納得のいく国民向けの答弁をしてもらわないと、やっぱり大きな問題を引いてくると私は思うのですね。よろしゅうございますか。
  118. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) はい、わかりました。
  119. 中尾辰義

    中尾辰義君 そこで、問題を返しますけれども、そうしますと、結局大臣は、政府間協定の方向で今後会談を進めていく、そういうことですね。その点ひとつ答弁してくださいよ。それがはっきりせぬと次の質問ができない。
  120. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 先ほどから大矢さんに申し上げたように、政府間協定に切りかえなければならないような状態でございまして、その場合、政府間協定が、自主規制よりも、またアメリカがいま一方的に考えておるものよりも、よくなるかどうかということに対して、いま情報を収集すると同時に、アメリカ側と接触を続けておるわけでございまして、これがいまの一方交通、アメリカの一方規制よりもいいという判断ができれば、閣議に対して、政府間協定締結の方向で作業をするということになると思います。これはもうここ三、四日、少なくとも十五日までにはどうしても結論は出さなくちゃいかぬだろうと、こう思っております。
  121. 中尾辰義

    中尾辰義君 あなたは、聞いているとうれしそうに、にこにこと笑って答弁しているけれども……。
  122. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) そうじゃないですよ。
  123. 中尾辰義

    中尾辰義君 これから何回か、いろんな交渉をおやりになるでしょうけれども、基本的にはやはりケネディ案になるわけですか。あなたのいまのお考えで、これをどの程度までアメリカ側に譲歩させるような腹づもりがおありになるのか。おそらく、ケネディ案をそのままというわけにいかぬでしょう。その辺のところをひとつ、あなた責任ある担当大臣として、私は心のうちをちょっとお伺いしたい。
  124. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) とにかく、そのままの案でやれば、もうすでに糸などは、先ほども申し上げたように三五一という数字が出ておるわけであります。去年よりも三・五倍出ておるわけでありますから、これはもうだまって二年か三年とまるわけです。そのほかのものも、カテゴリー別に見ますと、ちょっとこんな表も書いておるのですが、これはいますぐ出すようなものじゃありませんけれども、実際において、ちょっと見ていただいてもわかるとおり、この赤いところはもうみんな向こうの案よりも低くなっているものでございます。こういうことになりますと、事実上はストップになっちゃうんです。現実的にストップになる。だから、ストップにしないで何とかやりたい。それはどういうことか。七月一日なんかはだめだ。そうすると、こういう問題が出てくるわけです。これは十月一日、十一月一日、一月一日という、無限大に私は考えたいことでございますが、相手のある話ですから、どこで一体片づけるか、どこで一体合意に達するかという問題もあるし、四月一日から三月三十一日という、基準になるものも何か一つ考えられないか。業者も、三年間もがたがたしてきたために、基準の数量よりも大きくなったことは事実であるということも、われわれも指摘をしておるわけでございますから、そういうものを、その上になお何カ月も延びるということを考えなくとも、全面的に日米間が一方交通によってストップになってしまうということは、どうしても避けなくちゃいかぬということがあります。そのほかにもありますが、これはもう交渉の内容を全部申し上げてしまって、それ以外に田中はもち要求がないのかと、こう言われても困りますから、まあ皆さんの意思を体しながら、国益を守り、日本の産業というものがストップにならないような態勢というものだけはどうしても確保したい。アメリカ側は相当強い決意であるということだけは申し上げておきます。
  125. 中尾辰義

    中尾辰義君 相当強いところに、われわれはやはり疑惑も考えられるわけなんだ。向こうさんのほうは、何といっても佐藤総理とのちゃんと約束があるから、これをたてにして強硬に突っぱねておるようにしかとれないですからね。だから私は先ほどから聞いている。あなたに聞いたって、それは佐藤総理のことだから知らぬとおっしゃるかもしらぬから、私はこれ以上言いませんが。  けさ、あなたは佐藤総理と大屋会長との会談に出ていらっしゃったんですから、その会談の模様、どういうことかちょっと聞かしてくださいよ。
  126. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これは協会七人の方々においでいただいたわけでございまして、私は立ち会っておったわけでございます。これは長いこと努力してまいりましたし、また業界も自主規制という犠牲を払っておりますが、日米間そのものの情勢の変化によって、どうも政府間協定やむを得ないというような、避け難い状態になるかもしれない。まあそういう場合、国内政策その他十分に考えなければならないことであるが、業界の理解もまた得たいという趣旨の総理発言がございまして、それに対していろいろ意見の交換を行なったということで、公式には政府間交渉反対ということは述べられませんでした。まあ、反対というのではなく、総理大臣及び立ち会いの通産大臣の意見を承りましたというだけで、この会談を終わったということになっております。率直に申し上げまして、業界は自主規制が一番いいんだ、日米のためなんだと。とにかく、何とか政府間交渉というもの、政府間協定に入らないで、何とか自主規制で進められないか、というのが業界の希望であり、願望であり意思であると、こういうふうに私は理解いたしておりますが、まあきょうは、総理から懇切な相談があって懇談したと、こういうふうに理解をいたしております。
  127. 中尾辰義

    中尾辰義君 ただ業界が承っておくということは、結局まあ反対ということだろうと私は思いますが、いよいよきょうは八日ですね。あと十五日まで一週間しかない。その間に業界の了解を得なければ、見切り発車ということになりますか。その辺どうですか。
  128. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) こういう大きな仕事は業界の支持と理解を前提にするということは、間々申し上げておるとおりでございます。ですから、業界の理解というものを深めてまいりたい、こういうことでございます。しかしまあ、腹でどう思っておっても、態度ではだめだということもあると思うのです。そういうところが非常にむずかしいことでございまして、そういうことで、これはそんな、いわば国益を守る、日本の繊維産業と輸出産業というものを安定的な状態に置かなきゃならぬということに関しては、政府でも与党でも、野党でも、業界でも、みんな同じ考えなわけでございますから、そういうことはよく理解をしていただく、理解を得るために最後まで努力を続ける、こういうふうに御理解いただければいいと思います。
  129. 中尾辰義

    中尾辰義君 まあ近ごろは国益論が、自民党寄りの国益論もあって、必ずしも私どもは国益ということばに惑わされるわけにはいかないんです。  それはそれとして、技術的な問題になりますけれども、先ほどから、繊維協定を正式に結ぶ場合に国会の承認を得るのかどうか、この話が出ましたけれども、これはケネディ案が基本になるわけですけれどもね、このケネディ案を単純に——単純にということはないでしょうけれども、しかし単純に政府間協定の内容とした場合において、こればガットの二十三条で定めた代償、報復措置を放棄することになるので、これは当然国会の議決が必要となる、こういうふうに解釈するんですがね、この点はいかがです。
  130. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 国会及び法制局等の御意見も承らなきゃいかぬと思いますが、いま私が、もし協定に応じなければならないといった場合にですな、そのケネディ案なるもので言っておるようなものを、そのままのものを考えておらないわけでございます。それから、ガットの規定にのる綿製品協定というようなものを頭の中に描いておるわけでございまして、法律上は国会の承認案件ではなく、行政府の権限で行なえるという範囲にとどめるべきであるという考えを、いま考えております。しかし、法制上なにも私は国会というものに、どうしても出しちゃ悪いんだという考えでおるわけじゃないんです。綿製品協定とか、ガットの協定とかいうものを前提にして、各国がそのように措置をできる程度の協定ということで足るのではないかというふうに、いま理解しております。
  131. 中尾辰義

    中尾辰義君 ガット違反にならないようにということになれば、これは具体的にどういうことなんですか。どういう協定になるんですか。
  132. 平原毅

    説明員(平原毅君) 私からお答えいたしますが、まあどういうようなものであれば国会の御承認を得ずに行政権の中でできるかと、これは抽象的に申しましても非常にむずかしいことでございます。具体的に協定がもしできまするとすれば、その協定の内容、形式によりまして、外務省の条約局、最終的には法制局の意見を聞きまして、これは国会の承認を得なければいかぬものであるというふうにきまるのが現実でございます。従来、抽象的にこれを言えば、やはり行政権の範囲内のものしか規定してなければ、これは行政府限りでというお答えにならざるを得ないだろうと思います。
  133. 中尾辰義

    中尾辰義君 よくわかりませんけれども、かりに日米間で、二国間で一般協定を結ぶ。ところが、これは繊維交渉は、韓国にしても、台湾にしても、やっているわけですね、香港にしても。将来はやはりそういう国際間の多国間協定にもっていく、こういう腹ですか。その辺のところをひとつはっきりしてください。
  134. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) やむを得ず二国間協定を結ばなければならないとしても、これが長期的な問題となる場合、当然ガットの規約の上にのる多国間協定が望ましい、そうあるべきだという考えを持っております。
  135. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますと、これはまあ国会の承認を得なくてもいいと、こういうわけですか。
  136. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) それは、いま経済局長が述べたことで——私は法律の専門家じゃございませんから、それは私いま、日米間の二国の間で自主規制から政府間協定に切りかえるものに限っては、国会の承認案件ではないのではないかと考えておりますと、そのように、長期を固定するものではないし、予算上法律上の、法律の改定等を必要とするものではない、現行法下における行政権の範疇に属する面だけで結ぶ協定というもので足るのではないか、と考えておりますということでございますし、将来、これまた繰り返し繰り返し、何年でもやるのかという全然別の問題に対しては、これはやっぱり将来の問題はいまにわかに即断はできませんが、この種の問題が二国間だけでもってずっとやれるのか、どうしても長くやるとすれば、多国間協定というようなほうが望ましいでしょうと、こういうことを申し上げたのであって、その後段の問題が、すぐ国会批准案件とは結びつかないことであるということだけ申し上げておきます。
  137. 中尾辰義

    中尾辰義君 そうしますと、今日まで国会におきましても、四回ですか、すでに輸入制限のことにつきまして国会の決議をしたわけですね。これからも、あなたさっきの大矢君の質問に、そんなものは古いあれだと、そういうような答弁もあったので、われわれは新しい政府間協定に反対する決議案を出そうと、こういう考えもあるわけですがね。それに対して、やはりどういうようなあなた態度をおとりになるのか、これを最後に聞いておきます。
  138. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 先ほど大矢さんに対したことばが、何か前に行なわれた決議に対して尊重しないがごとき口吻ありと御理解せられておるならば誤りでございますから、舌足らずの答弁であることを申し上げて、それは明確にしていただきたい。国会の決議がどんなものであろうとも、それを守らなければならないということは、いやしくも二十五年近くも国会に議席を置いた私が、そんな考えであろうはずはない。私は明確にしておきたい、こう思います。  次に、どういう御決議になされるかはわかりませんが、どんな場合でも国会の決議というものは、委員会であろうが本会議であろうが、守らなければならない。これはもう、ほんとうにそういう気持ちであるということだけは、これはひとつ間違わないように、御記憶のほどをお願いいたします。
  139. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃあ、一応繊維問題は、時間がありませんのでこれで終わりますが、一般的なドル・ショック問題と中小企業対策について若干お伺いしたいと思うんです。  九月の二十二日に中小企業対策が出ておりまして、私としても読ましていただいておりますが、いろいろ業界陳情等も私も聞いておりますが、あれは、いわゆる中小企業基本法に基づくところの、資本金五千万円、従業員三百人以下の団体に適用する、こういうことらしいんですが、そうしますと、ワクからはずれた、まあ大資本でもないし、中小企業よりか少し上のほうの、資本金一億程度の中堅の事業会社、これに対する救済措置、あるいはまた、零細のほうに対するところの救済の措置はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、その辺ひとつお伺いしたいと思います。
  140. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 自動的に、中小企業のワク内にあるもので、それに限って与えられた恩恵を受けるものという限界に対しては、五千万円で三百人というワクは変わっておりませんが、このワク以外の、御指摘のような零細企業、中企業、特に五千万円を一億に上げなければならない、三百人を五百人または千人にしたいというような企業に対してでも、これは当然個々の内容に即応をして救済措置が行なわれるように考えていかなければならないということは、言うを待たないわけでございます。まあ、きょうきめました為替リスクカバーの問題につきましても、大蔵省との問題のときに、あまりこまかいことを言わないでひとつやろうじゃないかということで、けさまでかかって詰めたわけでございますが、やはり国会で、大企業の利益を守るために特別な措置をとるかと言われない範囲において、当然、中小企業とあわせて行なわなければならないものに対する救済措置等は、区別なくやってまいりたいという考えが前提にあることを申し上げておきます。
  141. 中尾辰義

    中尾辰義君 もうちょっと具体的に聞きたいわけですが、まあこれはあとにしましょう。  いろいろ融資のことも出ておりますけれども、融資のワクの問題ですが、これは繊維なんかの場合は産地組合転貸し方式、あるいは個別融資方式というようなものがいろいろあるわけですが、これはどういうふうになるんですか。業種別、地域別のワクをおきめになるのか。その辺のところはどうなっておるのか、ひとつお伺いしたい。
  142. 高橋淑郎

    説明員(高橋淑郎君) 今回の特別措置による金融は、対象が非常に広うございまして、業種も多岐にわたりますし、そこで、考え方としては輸出依存度の高い産地に属する中小企業、また輸出に依存する度合いの高い業種に属する中小企業、それからまた中小企業を個別に見て、輸出割合の非常に高いところというのを対象にして特別措置を講じたいということでございまして、どういう産地に幾ら、どういう業種に幾らというようなワクを初めからきめてかかるというわけにはいかないと思いまして、現在各都道府県、それから各業種の実情、そういうものを全部聴取いたしまして、大体の具体的な実施を行なう要領の成案を得つつございますので、近々その要領に基づいて、とりあえず第一次分の一種の基準というものを公表いたしまして、実施に移したいということでございまして、一言で申しますならば、繊維のような方式とは異なるということでございます。
  143. 中尾辰義

    中尾辰義君 ワクは、業種別のワクあるいは産地別のワクとはきめない。けれども新しい基準をつくっていくということですが、その基準というのは具体的にどういうことですか。
  144. 高橋淑郎

    説明員(高橋淑郎君) 具体例を申し上げますと、ある産地の刃物なら刃物という業種をとってみまして、その産地、その業種の輸出比率というものが、その産地における総出荷額のおおむね三割程度という場合は、その産地、その業種に属する中小企業の方は、個別に幾らの輸出比率がなければならぬということではなくて、輸出実績があれば対象にするということでございます。それから、産地というとらまえ方をしませんで、全国的に見まして、合板なら合板という業種をかりにとりまして、その総出荷額のうち、輸出がほぼ三割以上というような場合は、これを特別金融措置の対象にする。それから個別の中小企業をとりまして、その輸出比率がおおむね三割という場合はこれをとる。それから、いろいろ事情が出てこようと思われますので、特に産地を形成しておるところで、いま申し上げたような一応の基準に合致しなくて、しかし、ほっておけばたいへんなことになるというような場合は、これはその事態に即しまして、対象として取り上げることを検討してはいかがかということが、いま現在検討中の案でございます。それは金融でございます。
  145. 中尾辰義

    中尾辰義君 時間がありませんから……。それで、為替差損の問題ですね、それと、為替差益の問題はあまり言われてないのですが、新聞等拝見しますというと、灯油の値上げをせぬようにされたというような記事も出ておりましたが、為替差損の問題も当然でございますけれども、差益の問題ですね。これは石油、あるいは鉄鋼、電力、こういうのは、今度の変動相場、円の切り上げ等において当然もうかるのじゃないかと、こういうふうな声が国民の声でありましてね、ここら辺のところに対する方針といいますか、どういうふうにお考えになっていらっしゃるか。これは国民感情の面から、大臣から答弁いただかぬといけないと思います。
  146. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 差損の問題は、これは非常にむずかしい問題でございまして、現金でもって税金を還付するというような計算のしかたはむずかしいと思います。むずかしいと思いますけれども、税制の活用によって、主税局の諸君来ておられますから御発言があると思いますが、これはやっぱり税の活用によって、企業が何年間かのうちにそういうものが補てんをされ、そういうものの苦痛、そういうものから受ける打撃というものが、営業の継続に対してマイナス面に働かないような税法上の措置は、考えられると私は思います。これもまだ、政府でさだかに決定したものじゃありませんから、税当局から発言があればお答えができると思います。  差益の問題は、確かに国民感情の問題でありますが、これは二つの問題、一つは灯油等を値上げしてはならない。ちょうど電力も値上げぎりぎり一ぱいの状態になってきたら、電力料金はちゃんときまった円で入るんだし、それから重油は少し安く入るだろうから、値上げは待ってくれというようなものになるわけでございます。しかし差損のある人もあるんだから、差益は何か徴収できないかというと、これは制度上行き過ぎのようであります。これは現に法人税とか所得税とかがあるんでありますから、そういうもので、利益があれば全部国が国庫に引き上げられるようになっておりますので、これは差益まで徴収しようというのはちょっと無理な話であって、これは損をしておる人もあるんだから、差益のある人はもちろん値段など上げてはならないといって、灯油等の引き上げは行なわないと、こういうことを申し上げておるのであって、これはおのずから分けて考えるべきだと思います。
  147. 中尾辰義

    中尾辰義君 今度は、輸出契約から船積みまでの間の為替リスクをカバーする措置として、外為会計による先物予約の制度を実施すると、これも新聞に出ておったようですが、この細目はどうなっているのか。いつごろ出るのか。この辺ちょっとお伺いしたいのですが。
  148. 林大造

    説明員(林大造君) ただいま御質問いただきました中小企業製品にかかる輸出成約の円滑化をはかるための外貨預託の制度でございますが、本日閣議決定におきまして、過日の閣議決定より宿題になっておりました本件の具体化の方針を決定いたしました。それによりますと、外国為替資金特別会計は外国為替公認銀行に対しまして、中小企業製品輸出関係の為替予約の額に見合う外貨預託を行なうことになっております。その預託の金利は、現在の状況のもとで九・三七五%といたしました。期間は四カ月といたしました。また、現契約、すなわち外国為替銀行と輸出業者との間の対象となります為替予約は、輸出に依存しております主要な産地、業種に属する中小企業輸出ということでございまして、予約コストは、船積み後の場合とは同様に三・六二五%の為替プレミアム、それに〇・二五%の予約手数料を加えまして、予約期間は原則として三カ月、必要に応じて六カ月まで認めることにいたします。本件は可及的すみやかに実施に移すべく、現在作業中でございます。
  149. 中尾辰義

    中尾辰義君 これで終わります。最後に私は大臣に、零細企業者の声を少し読んでみます。こういうことを言っております。私も、実はあなたの地元である洋食ナイフの燕市とか、関の孫六の刃物の産地だとか、あるいは名古屋の一宮、福井、あの辺ずっと回ってきたわけであります。あの辺の最末端の零細企業者の声です。これも、「政府は転廃業をしきりに主張するけれども、設備を設置するのに五十数万円もかけておきながら、政府の買い上げ価格は二十万足らず。やめても結局三十数万円の借金が残るだけだ。まして家族や従業員の身の振り方を考えると、政府が言うようにおいそれとは転廃業もできない。とどまるもだめ、退くもだめ、ほんとうに進むべき方向に戸惑っている。」これが実際の声ですよ。だから転廃業ということも、ただ簡単に転廃業資金が幾らというふうに私はいかないと思うんです。その辺のところを今後どのように指導なさるのか、大臣の答弁を聞きまして、それで終わりにいたします。
  150. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) いまお読みになった手紙の実感、私も同じ感じを持っております。なかなか日本の持つ中小企業、零細企業というもの、特に私はいま非常に深刻に感じておるのですが、産炭地等に進出した縫製工場等が、今度の繊維でまた打撃を受ける。非常に困難な問題だというふうに私自身も考えております。燕などでは洋食器千九百万ダース、実際には二千五百万ダースをつくれる能力を持っておりますが、今回、対米輸出の自主規制ワクで千百万ダースにしぼられ、しかもタリフ・クオーター制度でしばられています。この結果、能力の半分ぐらいが余剰という事態となります。そうなることを知っておってほうっておくことは、なお不親切である。ですから、やはり実情に合うように、業界からも案を出してもらわなければいかぬし、これから転廃業する者——私もよく知っておりますが、小さいところで商社から三分の一、設備投資資金を借りておる。それから自分が三分の一出して、あとは株主として田地田畑、自分の父祖伝来からの農家で家を担保にして三分の一。せめて最後自分の家や田畑が確保されなければやりきれない。非常に深刻な事態を私自身も理解をいたしておりますが、ただ画一的ではなくて、実情によく合った状態でもって転廃業等を指導し、特に、八〇%までめんどうをみたが、二〇%をめんどうをみないために、みな途中でもってもとに戻ってしまうということのないように、実情に即応した中小企業対策というものを持たなければならぬし、いままで何回もやったのが、また出してきて使ってしまう、景気がよくなると。同じことを、悪循環を繰り返しておる。今度はそういうことをやっちゃいかぬ。やはり国際開放下経済のほんとうのスタートをすべく、万全の対策をとるべきであろう。私自身がよく実態を把握して、中小企業対策、零細企業対策、特に転廃業に対しては皆さんの御意見も十分聞きながらやってまいりたい、こう思います。
  151. 藤井恒男

    藤井恒男君 私は繊維問題に関して、政府間協定をやめるべきだという立場から大臣に御質問申し上げたいと思いますが、先ほど来、大矢さんと中尾さんから、それぞれこまかい点にわたる質問もあったのですが、多少重複する点もあろうかと思いますけれどもお答えいただきたいと思います。  けさ、時間をかなり超過して業界の代表の方と佐藤総理はお会いになっておる。大臣も立ち会われたようでございますが、先ほどのお話ですと、まあ結論を得ぬままに話を聞いて帰ったということでございます。もちろん佐藤総理もあるいは大臣も、こういった状況に立ち至ったのだから、ひとつ政府間協定に協力してくれという気持ちでの会談だったろうと思います。その面からいくと、総理並びに大臣としては、所期の目的を達し得なかったという判断をしておられるのかどうか。あるいは、何とかそれがいくんだという感触を持っておられるのか。またきょう以降、タイムリミットの十五日までの間に、さらに業界の方と会う予定があるかどうか。この辺のところをまずお聞きしたいと思います。
  152. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 業界に対しまして理解を求めるということ、また、協力を求めたいという基本的な姿勢は、全く変わっておりません。いままでも事務当局が何回か接触をしておりますし、私自身も非公式、公式を問わず、接触をいたしてまいりました。なお、きょうは、総理大臣が業界に対して理解を求めたわけでございます。これからも業界とは随時接触を保たなければならないと思います。ただ成功したか、成功しないかというようなことよりも、誠意を尽くして実情を説明をして、理解を求めるという点では、誠意ある会談であったというふうに理解をいたしておりますし、まあ民間の方々は、でき得れば名実ともに了解をいたしました、一諸になってやりましょうと、こう言われることが望ましいことでありますが、先ほどから述べましたように、長い経緯を持つ本件でございますので、私は名も実もということは可能なのかどうか、まあそれを求めることが無理なのかということも考えてはおります。ただ、政府はあくまでも実情を十分説明をして、業界が実情を間違って把握をすることのないように、でき得れば名実ともに、最終段階においても政府の考えを理解していただきたいというところまでは努力を続けてまいるということでございます。
  153. 藤井恒男

    藤井恒男君 七月の二十三日のこの参議院の商工委員会で、私は大臣に御質問申し上げて、その当時、ちょうどケネディ特使が来ている最中でございまして、どうもわれわれの感触からすれば、韓国、香港、台湾を回遊して政府間交渉を迫っておる模様だ、大臣も会ったわけだけれども、どうだったかという質問をしたおり、大臣は、彼とは知らぬ仲でもないし、彼は表敬あいさつだというお話でございました。私としては政府間交渉を結ぶいまのところ考えはない、七月一日から自主規制をやったばかりじゃないか、それを見守るべきだ、というお話でございました。私も、すなおにそれを受け取りました。大臣もそのあと九日、十日の日米貿易経済合同委員会に臨まれたおり、はっきりそのことを主張されたことも新聞に報道されておるし、帰ってこられて記者会見で、できないものはできないと、きっぱり言ってきた、だからこれで一段落したと思う、という発表もなさったわけです。それからまさに三日後の九月二十一日に、降ってわいたように、二者択一を迫るアメリカの提案があり、そして大臣はその後、これはまさに新事態であるというところから、先ほど来の答弁によれば、大臣としては政府間交渉に移行せざるを得ないと、そういう心境に立ち至っているというお話でございますが、このように、これは三年続いた交渉に違いないけれども、その終末の段階は、きわめて短時日である。しかも大臣が、手を振り大声をあげて日米経済委員会でこちらの数字まであげて向こうによく説明した。大臣の感触なり、向こうもおそらく得心したのだろうと思われたけれども、その三日後に、イエスかノーかという状況の詰め寄り方をされたということについて、大臣、まあ新事態とは言っておられるけれども、率直に、一体大臣が言われたことはから振りであったのか、向こうは聞き流しであったのか、あるいはそれ以前に、やはりこの問題は根を張って、こういう方向をたどらなければいけないようになっていたのか、その辺の感触をざっくばらんに聞かしてもらいたい。
  154. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) このアメリカの新政策、これは、まあきまったのは、少数でばたばたと詰めたようでございますが、アメリカでニクソン・エコノミック・パッケージといっておりますように、ワンセットのものだ。ワンセットの中には、相当いろんなものが用意されておる。中身は、二年の余も相当長い歳月をかけて調査をした、用意をしたものだということだけは事実のようでございます。それは、私も多少不用意でございましたが、少し政府の行政機関と離れておりまして、少数の諸君が山荘へ閉じこもって新政策をつくり、それがばっと政策の発表が行なわれても、それに対応する数字というものが、そんなに簡単に用意をされるはずはない。アメリカは大体、そういう数字というものの用意はないわけであります。ところが、本件に関しては非常にこまかい数字が、何万何千ヤードを基準とする、年次別に非常にこまかい、年度をとればこうなる、新しい年度をとればこうなるという、非常にこまかいものを用意をしておった。それはやっぱり三年間の交渉経過があったので、各国別、特に一律、画一的な政策を十月十五日からスタートをするという前提においては、それだけ長い経過があったということがあると思います。  それは私はそういうことを、日米経済閣僚会議でそういう事実がないと考えたわけではない。それは私が日米閣僚会議に出ない前に、日本の新聞は、政府間協定に対して外務省へ圧力をかけておるということで、毎日大きな新聞の一面トップ記事になっておったさなかでございますし、私自身が行って、こういう事態に対してこそ真実を述べなければならない——私は、五一年から七〇年まで、二十年間の日米間の貿易の実態を全部さらけ出して話をした。最後に私はこういうことを言ったのです。では、あなたがほんとうにできると思うなら、コンピューターをアメリカに全部まかすから、繊維は全部日本にまかしなさい、できますか——。できない。できないことはこっちもできない、こういうところまでいったわけです。しまいには小型乗用車の問題に対して、乗用車の税金一〇%を八%に引き下げる、このときに、アメリカも大型トラック二五%を引き下げなさい、私はそういう要求をしたときに、チキン戦争からのいわくつきのものでございまして、これだけはちょっといま手がつかないものである、歴史的重さでもって引き下げられない、と言うものに対して、日本だけが私の考えだけで引き下げられるわけがない。私は三十一項目だけ詰めたわけでございますが、これが二時間ちょっとだと思います。このうち半分以上は繊維問題やったのですから、よくわかりました、こういうことでピーターソン氏とは十分よく述べて、田中通産大臣の発言に対して、ピーターソン氏その他、向こうの政府を代表する六、七名の方々は、反駁の御意見はありませんかということに対して、もう意見はないというところまで詰めてきたわけでございますから、よく理解をされたと思っております。  私は、いままでも理解をしていると思います。思いますが、これはもう、当面する国際収支を改善するための具体的処置だから、所管省よりも、財務省が中心になり、大統領府が中心になっておる。先ほども申し述べましたように、大統領特命使以外は繊維に対する各国の交渉権は持たない、こう明確に述べておるようなことでございますから、やはり私たちも事態を正確に認識をして、そして最終的な接触を始めたということでございまして、それが非常に甘い判断だったなといわれれば、私はそのまま甘受してもけっこうだと思います。何でもアメリカが一方的に、繊維の問題に関してこれだけの決意をすることは、私自身も、こんなことはアメリカはすまい。私は、一番初めにアメリカに行ったときに、一言だけ申し上げますと、課徴金制度をやめるべきである、学問的に言ってもこんなものやめるべきである、だから私は、イギリスが二年間、カナダが一年間だというから、アメリカは半年が限度だとこう言ったら、キーカレンシーであるアメリカドルを守るためには、カナダドルやポンドよりも長くかかるかもしれない、こういうような考え方、逆な立場からものを見てまいったというところに、多少行き違いがあると思いますが、国際収支の改善という面に対しては、貿易バランスをとろうという非常に強い決意というものが前提になっておって、行き当たりばったりで、やらしてみればというような状態で、この問題が片づき得るものではないという認識を持っておるものでございます。
  155. 藤井恒男

    藤井恒男君 そこに国民が疑問を持つわけなんで、いま大臣がいみじくもおっしゃったように、よもや繊維の問題、これほどまでに強硬な態度で出てくるとは思わなかった。また通産省が一昨年、調査団を派遣してアメリカでの調査を行なったおりに、被害立証はできない、こういう非公式ながら見解を持って帰国しておるわけなんです。しかも、アメリカ輸出されている繊維は、わずか消費量の二・五%。うち化合繊は一・数%。こういうような状況の中で こういったものが、アメリカ経済それ自体が均衡をくずしていることはよくわかるけれども、その繊維、しかも日本の繊維の輸入によってくずされておるとは、だれも認めないわけです。しかもこのように、イエスかノーかの強硬的な態度を示してくる。  まあ、こうなってくると、この問題は、まさに経済問題じゃなくて政治問題だ。しかも根を発しておるのがニクソンのやはり公約に基づくものである。しかも、その後二度にわたる佐藤総理とニクソンの会談というものを経過して、それが綿々と三年間続いてきた。これはもう、だれもが認めておる事実なんだ。私はむしろそういったものは、そうじゃない、これはアメリカ経済にきわめてばく大な影響があるんだから、こちらもアメリカの立場を察して多少遠慮しなければいかぬのだというなら、その数字が立証されれば国民は納得するし、それなりの方法を講じなければならない。それができなくて、しかもそういった約束は何もありませんと言いながら、イエスかノーの決断を迫られる。このことについて、やはり私は佐藤総理が、もし、ちまたに言われるように、沖繩問題というものに政治生命をかけ、それが国民的悲願である、それを最優先に考えるがゆえに、繊維もやはりニクソンの顔を立てて譲らなければいけないのだという約束をしたというのであれば、私は、率直にそのことを国民の前に発表して、やはり国民に対してわびるべきであろう。そうした中から、やはり国内における業界とあるいは政治の場での結びつきもできるし、また、それを土台にしたアメリカとの話し合いだって、私は行なわれぬこともなかろうというふうにさえ思うのだけれども、ひたすらそれは隠して、そんなことじゃないのだと、いわば保護的な立場で、業界によかれと思ってこの際政府間交渉をするのだでは、私はあまりにも問題が入り組んでしまっておるし、この疑惑は解けない。こういうふうに思うわけなんで、大臣は七月五日から大臣になられたので、たいへんまあ立場は苦しかろうけれども、その辺のところは、やはり明快にすべきところは明快にすべきだと思う。ひとつ、ざっくばらんな話を聞かしてもらいたいものだと思うのです。
  156. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 先ほど述べましたように、一九六八年の八月からでございますから、三年余かかっておるわけです。こっちは、もうことしの三月でもって、政府間交渉というものを自主規制に切りかえたんだから終わりと言っても、向こうは依然として、これでは納得をしない、継続をしておるという事実でもって、今度は、日本が案を出したら、それに対して、対案はケネディ提案であるということで出しておるわけでございまして、まあ非常に長期的な交渉であるということを向こうは理解しておるわけでございます。それで、これがいろんなところでもって、何か政治的にからんでおるんじゃないかということですが、私は、政治的にからんでおるということはないと、こう思います。ないと言うのが専断であれば、非常に少ないと思います。それは、佐藤・ニクソン会談において、政府間交渉の再開に合意したということですから、再開に合意しておれば、ネゴシエーションをしておいて、もとに返ってしまうということは言えないことであって、再開をしたんなら、どんなことをしてもまとめる。まとまらなかったら足して二で割るということにもなるので、そんなことはおかしいじゃないかということが外交上考えられれば、その一つだけであって、私はそんな、前に何か数字をもって約束をした、そんなことは絶対にない。私は、それだけは自信を持って申し上げます。それはなぜかというと、これから最終的なものに踏み切るにしても、そこには確かに交渉の余地があると思っておるし、私はそういうことには考えておらない。ただ、非常にほかが伸びておるんです、対米的には。対米的には、とにかく一九六七年、これが数字の比率でだけ申し上げますと、二四九であったものが、三二七になり、七一年、三年目には六〇二になっておるというふうに、急激に、倍ぐらいになっておるというところにちょっと問題があるのです。  確かに私は、これは日米経済閣僚会議のときに、向こうは私の質問に対して答えられなかったんですが、翌日、ずっと数字を持ってきて述べてみると、品目によってはアンバランスが非常に大きくなり、特に日本は、ちょうどアメリカが何十年ぶりかで貿易収支が逆調になるというときに、日本が半年で十二億ドル、一年間を通ずると二十億ドルちょうど出超になる。アメリカの貿易収支の赤字が、ちょうど二十億ドルである。日本が二十億ドル。とにかくアメリカに対して輸出をとめてくれれば、貿易バランスはパーになるのだ、こう言う。日本だけの数字と比べてもおかしいじゃないかと言ったら、日本がまず先べんをつけてくれるところに、他のほうも協力的になるのですと。この繊維問題などは、ヨーロッパから入ってくるもの、韓国、台湾から入るものが、日本よりもはるかに大きい。糸などは全部そうである。中には日本から、韓国や香港を通じて入ってくる糸も考えると、相当日本も大きいですよということを言うけれども、まあそれ以上のことは大臣ベースでは言いなさんな、そんなことを言っても日米間のプラスにならないというところまでやってきたんですから、言うだけのことは言ってきたというのがほんとうなんです。言ってきたんだけれども、向こうのその具体的な案を変えるまでになかなか至らなかったというのが、ほんとうなんです。
  157. 藤井恒男

    藤井恒男君 最近急に輸入が伸びたというのは、これはいまのこういった情勢をやはり踏まえたものだと思うし、さらにその他の、まあ不況というものが輸出ドライブに影響することは事実なんで、だから、その数字だけをなまで見るわけにはいかぬと思う。むしろアメリカ繊維業界の、私手元に資料があるのだけれども、アメリカの全米製造業と紡織業、衣類業の生産指数、あるいは雇用者数、さらには売り上げ、それから利益、売り上げ利益率、こういうものを調べてみますと、アメリカの繊維産業は日本の繊維産業と違い、非常に活況である、このことが言えるのです。だから繊維の問題に窓口をしぼって、日米の経済問題をそこに修正していくんだとすれば、そこで繊維がそこにあがってこなければいかぬのか。アメリカの繊維産業を日本の繊維産業と比較してみると、新聞でも発表されておるように、化合繊の大手企業では無配あるいは減配が続出しておるし、あるいは雇い入れる契約をしながら、新卒の採用もストップしたというような、非常に暗い状況にある。そういう中で、繊維だけがやり玉にあがってくるというところに、やはり私は何としてもこれは得心がいかぬ。これは大臣もそのようにお考えだと思うのだけれども、あえて繊維がやはり表面に出てくるということは、ことばを返すようかもわからぬけれども、糸を売って縄を買うというようにいわれても、これはしようがないんじゃないですか。どうですか、その辺。
  158. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 糸を売って縄を買うわけではないと思う。沖繩は、日米間の理解のもとに返還が実現することである。糸を売って縄を買うというところにウェートを置かれると、日米間必ずしも私はよき結果を生まないし、そんなことは考えていない。そんなことを考えるより、もっと別の角度から、アメリカの中における糸というものはどういうものかということを考えるべきだと思う。  私もそこまで、話は相当のことを言ってきましたよ。いま日本には二つの問題がある。一つはシナ大陸の問題だ。一つは繊維の問題だ。二つとも、かつての歴史では戦争のもとだ。たいへんなことなんだ。私はそこまで言った。これが過去二回の戦争のもとになっておる。それくらいたいへんな問題であって、糸というものから、日貨の排斥が日本商品のボイコットにつながった歴史から見れば、よほど慎重に考えなければいかぬとさえ言ってきたのでありますから、私は向こうの労働者に占める繊維労働者よりも、日本の労働者に占める百六十万ないし百七十万の労働者の比率がいかに大きいか、全部それを数字でもってやってきたのです。私も数字を持っています。しかし、まあ向こうのほうは、そういう数字を日米間でやると、必ずしもアメリカが強硬手段に出なければならないという数字は出てないと思いますが、ただ六%、きょうまた発表されたアメリカの失業率六・一%というのが手に入りましたが、六%というと約五百万人。この五百万人に対して十万人、最近出た失業者というのは全部繊維企業であります。向こうも対応する数字は一ばい並べておりますが、当たってみますと、案外そうなんです。  これは、ただ日本の製品が入ってくることではなくて、日本の品物が必要であり、大衆に喜ばれるから入ってくるのであって、それを考えればいいんじゃないかということを私も述べたわけですが、繊維の問題というのは、アメリカにおいてもなかなか政治的な、非常に政治的な強い色彩を持つものである、私はそういうふうに理解をして行ったわけでございます。いま起こった問題ではなく、私から見ると、七月の五日に就任して、七月の末までは絶対に自主規制でいきます、こう言っておって、どうも君子豹変したじゃないか、こういうことを言われることは、はなはだ私自身、まあ内心じくじたる思いでございますが、よく当たってみると、三年間継続をしておるのであって、アメリカはもう最終的な段階を迎えておる。今度は日本の最終的な回答を求めるべきだ。こういうところにこの問題の一番の焦点があるようでございまして、日本の立場からだけ見るよりも、この交渉の歴史、三年有半にわたる歴史の最終的な段階を迎えていると、こういう立場で見る以外にはないんじゃないかと思うわけです。
  159. 藤井恒男

    藤井恒男君 いま雇用者の問題も、私は一九六八年から一九七一年の一、二、三、四月の統計を全部持っておるのだけれども、そういう数字は出ていない。しかし、これは数字のことをここで言ってもしようがないからやめます。  もう一つお伺いをしたいのは、われわれから見たら脅迫としか思えないわけだけれども、ジューリックが持ってきておる考え方、要するに十五日を期限にして待ったなしでやるぞ、これを技術的な面から見て、本気にやれると思っておられるかどうか。私はやれないと思います。  少し私の考えを申し述べさしてもらうならば、まず法律の問題として、対敵取引法というのがあって、これを適用するということだけれども、現にアメリカでも、九月二十四日のニューヨークタイムズ、あるいは二十六日のワシントンポスト、これの社説ですが、このワシントンポストの社説は、ここにもコピーがあるのですけれども、明らかに世論として、今度のニクソンのとった措置に対して非常な非難の声をあげておるわけです。だから、この繊維の問題をとらまえて対敵取引法というものを発動できるはずがない。まずそれが一つ。  それから新聞などで言われておることだけれども、通商拡大法の二百三十二条の国防条項、これの適用もあるぞというおどしもあるようだが、これにしても、明らかにこれは国内産業が輸入品によって著しく阻害されたという現実の立証がなければならない。この立証はないわけなんだ。しかもこの条項がかつて適用されたのは、一九五九年、石油に適用されただけで、繊維の輸入品の国内消費量に対する割合がわずか二、三%というようなときに、この条項の適用というものは考えられない。最後に残るのは農業法。しかしその農業法をとってみても、繊維を農産物というなら別だけれども、化合繊ということになれば、これはアメリカでは化学というカテゴリーに入っておる。この適用だって考えられない。そうだとすれば、十五日にアメリカが一方的に実施するということは、まあくろうとから見れば、それはおどかしだというふうになってこざるを得ないわけなんです。  さらにもう一つ、かりにそういうものがあったからということで、日米で双方、政府間協定を結んだとするならば、当然結果は、ヨーロッパから均衡論というものが出てくると思う。やはり、すでにいまでもヨーロッパのほうでは、振りかえ輸出がくるのじゃないかということで警戒の声をあげているわけなんだ。そうなってくると、かえってこのことがあだをなして、繊維がまさに四面楚歌の立場に追いやられてしまう。アメリカとこのような形を結んで、欧州に規制の条約を結ばないというわけにはいかないということにもなりかねない。また先ほど、台湾、韓国、香港の近況もお話があったけれども、少なくとも私の入手した範囲では、韓国はまだ歯を食いしばってがんばっておる。どうか日本、がんばってくれというのが韓国の実情だというふうに、私は聞いておる。もうすでに香港、台湾は陥落したということだけれども、香港にしても、シフトの問題について、まだまだ交渉したいという要求を強く持っておる模様だし、台湾についても、韓国あるいは香港の出方をまだ見つめておるという状況のように聞いておるわけです。そういう点を考えたときに、先ほど申した輸入ストップということも、現実には考えられない。そして、いままわりにおる近隣諸国も、日本の出方を非常に注視しておるとするならば、これはあまりに時間がない。あるいはアメリカの態度がきついからといって、先走ったことをすることが、かえって将来に禍根を残すことになるのじゃないかというふうに私は思うわけですが、その辺についての大臣のお考えをお聞きします。
  160. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 台湾、香港等がすでに政府間交渉に踏み切ったことは、御承知のとおりでございます。韓国も——私はどうも内政干渉になっちゃ悪いんですが、学問的な立場で申し上げるとすれば、これはやっぱり十五日までに交渉が妥結をするという見通しでございます。私の考え、これは韓国政府から聞いたのでも何でもありませんが、私はそういう感じでございます。まあ日本も、いまの状態で——あなたの言うことは私もよくわかるのですが、実際、アメリカは対敵取引法ということは非常にいやなようであります。私自身も、日本を敵だと思うのかと言ったら、泣くような顔をしましたから、あまりそういうことはよくないのです。しかし、いろいろな専門家が、大統領が非常の場合行なわれる法律は確かにある。やるということを前提にして法律をさがしておるのですから、これは見つかると思います。そういうことで、必ずしも対敵取引法ということにこだわっておらないようでございます。農業法は、農業法二百四条というものに対しても検討してみたのでありますが、いろいろなことでもって、これはどこ、これは条文どこというふうに、確実な法的根拠をもって専門家が法律解釈をやっておるようでございます。しかしまあ、そんなにしてさがしてまで、一方的規制をやらなければならないのかという問題に対して、いま日本とアメリカが苦慮をしておるところでございます。そんなことをしてまで日本がアメリカにやらせるのか、そんなことをして日米間に何の得があるのかという問題も、やっぱり両国としてはまじめに考えてみなきゃならない問題だと思います。そういう意味で、日本が結んで韓国が結ばなかったらどうする、極東四カ国が全部結んで、ほかの国、まあ日本と同じようにアメリカに繊維が入っている国もヨーロッパになくはないのですから、それと交渉を一体どうするのかという問題は当然ございますが、そういうものを全部やってしまわなければ日本はやれないのだということでは、なかなかむずかしいのじゃないか。  私はさっきちょっとお答えにならないお答えを、御質問がありましたから申し上げましたが、平価の問題でもやっぱり日米間がどのようにしてその核となるか、推進力となるか、そのために日米間がどういう理解をして、どういうふうなプラスを得るのかという問題は、やっぱり高度な立場で評価をすべきであって、具体的問題だけ、右から左へという議論だけでできないのではないかというように、いろんな問題を私は俎上にのせて、テーブルの上にのせて、いずれが日本の国益を守り、日米友好の実をあげ、日本の産業に対しても壊滅的打撃を与えないようにするにはどうするのかということを、いま最終的には考えておるというのが実情でございます。
  161. 藤井恒男

    藤井恒男君 先ほど中尾さんからちょっと質問があって、私はまだ先ほどの御答弁でははっきりしないわけですけれども、いま交渉してないのだから案はないというふうなお答えもあったわけだけれども、ケネディ案というものがやはり基礎になって、一応プラスマイナスのそろばんをはじいたりしておるわけだけれども、ケネディ案というのをいつ、だれが手にしたのか。これは降ってわいたわけでもないだろうし、机の上に置いてあるのをそっと持ってきたのじゃないだろうから、いつ、だれがもらったのかということをお聞かせいただきたい。
  162. 佐々木敏

    説明員(佐々木敏君) ケネディ案、日付が、六月二十九日という日付と七月三日という日付がございます。その当時通産省にそれを持ってきたものであろうと存じます。
  163. 藤井恒男

    藤井恒男君 だれがどこに、通産省のだれに持ってきたか。だれが受け取ったか。
  164. 佐々木敏

    説明員(佐々木敏君) 田中大臣におかわりになる前後のことでありますが、当時の大臣のところへケネディが表敬にこられたときに、その文書を持ってきて、当時の大臣はお受け取りにならないままに、机の上に置かれたというふうに承っております。
  165. 藤井恒男

    藤井恒男君 そうだとすれば、先ほど私質問した七月の商工委員会のときには、とにかくその案というものは事務当局にはあったわけですわね。そしてその案というものは当然ケネディが持ってきて、これがアメリカの考えであるということは、その当時すでに田中通産大臣には伝えてあったはずでしょう。
  166. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) これは国会でありますし、誤解があっては悪いので申し上げますが、そういうことが継続しておるということを考えたのは、全くこの近くであって、こういう書類が出てきて、私が政府間協定もやむを得ないのかなと思うような転機になってからの問題であって、それまでにはそんなことは全然ない。私はケネディ氏が表敬に来たときも、明確に答えているのです。日本では自主規制が一番いいんだと。貿管令ではできないのだ。民間の協力を得なければできないのだ。立法措置をすれば、衆参両院において決議のある状態でもって立法をやっても、そんなものは通らない。通らないものを通るがごときことは、私はそういうことは考えてもみないのだ。そういうことで、友人としての表敬以外は、この問題は全然考えておらないということでピリオドを打ってある。事務当局にも一切そういう問題は終わりと。だから、私はそういう意味で、日米経済閣僚会議に必要な書類を持って渡米をして、あれだけ激しくやってきたわけでございますから、そういう意味では、政府当局は、そんなものはあったとしても、それは全く一顧だに値しないものである、こういうふうに考えておったものと理解していただきたいと思います。
  167. 藤井恒男

    藤井恒男君 それはおかしなことで、それは、そうであれば怠慢なのか、あるいは重大な私はミスであろうと思う。もちろん、この六月二十九日、七月三日は、大臣就任なさっていないわけですから、七月五日でしょう、だから、それ以前のことだから、この点については、私はいまの大臣に対してどうこう言うわけではない。しかし、大臣の机の上にのっかっておった、六月二十九日。いまその答弁ですからね、六月二十九日と七月三日。そのときに、大臣に表敬あいさつに行ったときに、その机の上に置いてあったということですから、それを事務当局が、この問題は関係ないから捨ててしまうというわけではないし、現にそれは翻訳して、表にして持っておるのです。しかも、それが現在の案になっておるわけですから、当然、私は二十三日の商工委員会のときも、あるいは日米の経済委員会のときにも、アメリカの現在抱いている案はこれですよ、アメリカ最後案はこれですよということで、当然大臣に伝えるべきである。これをやっていないということは、私はたいへんな日米繊維交渉におけるミスであろうと思うので、その辺のところをもう少しはっきりしてもらいたい。
  168. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) よく理解していただきたいのは、私はアメリカへ参りましたときも、アメリカから帰ってきたときも、一切もう自主規制以外はやらない、こういう気持ちであったのです。その後ジューリック氏が来て一方的通告を行ない、繊維を中心として画一、一律的な全世界的な政策をスタートしますよ、目標は極東四カ国ですよと、こう言ってきた。そのとき、あなたは案を一体持っておるのか、その案は一体どういうものであるかと聞いたら、それはあなた方のほうでもわかっているはずでしょうというような話でした。いつ持ってきたのか知らないと言うと、いないときにそれを持ってきた、と言うのです。事務当局が持っているのは二つあるが、そのうちどれかと言うと、よく読んだ上で、これだ、と言う。よく確認しなさいと言ったら、読んでみて、これに間違いないということでした。いずれにしても交渉の対象にしていないのだから、君とわしは接触しておるのにすぎないのであって、交渉ではなく、ただ確認を求めるだけであると言ったので、事務当局に置いて、さっと通ってしまったのであります。その当時、あまり重要でなかったということは、私の感覚そのものがそうであったのでありますから、そこはあまり深く追求されても、お答えができないということであります。
  169. 藤井恒男

    藤井恒男君 大臣とジューリックが会ったときの状況はそうでしょう。それは信用しましょう。しかし、そうだとしても、やはり私は六月二十九日、七月三日に、どっちがどうなっておるのか私にはわからないけれども、手渡されたものが現にその案になっておるのだというこの事実、これは私はきわめて重要な問題だと思う。だから、この点については、また後日私質問させていただきたいと思います。  それといま一つ、この案が、交渉に入っていないからということでオープンにされていない。そのために、新聞で報道されているものもそれぞれニュアンスが多少ずつ違う。しかも佐藤総理は、この間の一日内閣のあと記者会見をなさって、今度のこの政府間交渉をやるということは、現在の自主規制よりも、あるいはこれをやらなかった場合アメリカが行なうかもわからない一方的規制よりも業界を保護するためにあるんだ、という発言をなさっている。だとすれば、やはり、どれがどれよりも有利であるかということは、その案に基づく試算がなきゃならない。だから、その案は入手しているなら、やはりそれを、国民に公表する、せぬは別として、この委員会ならこの委員会にはっきり示して、そうして、こういう内容のものであるということを言うべきだろうと思うのです。  で、いままで全然出していないということですけれども、通産省が出した案というものですね、日本語に翻訳したものを私は持っております。それによりますと、この基準年次——基準年次がわからなければ何にもならないわけだけれども、基準年次を明確に通産省は記載している。一九七〇年四月一日から一九七一年三月三十一日ということになっているけれども、少なくとも原文、あるいはそれを翻訳した新聞記事によれば、基準年次というのはどこからも出てこない。少なくともあのジューリックの案には、基準年次はないわけです。どこからこの通産省の資料では基準年次が出てきたのか。また、これが出てこぬことには数量計算も何もできないはずなんです。そういう交渉を現にしておるのか、どうか。先ほどの大臣のお話だと、交渉に入ってはいけないのだから、案も示さなければ交渉もしておりませんということなんですがね。その辺のところを……。
  170. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 外交案件でございますから、交渉しておるというものであれば、これはなかなか公表はできないわけでございます。できないのでございますから、これは国会でもって提出を求められれば、秘密会などにしていただいて、これを国会——新憲法の精神から言えば、国会の要求があれば、ということになると思います。これは国民の前に全部出せるものではないと。これは外交案件の特性から見て、そう御理解をいただきたい、こう思います。ただ、いま外交をやっているんじゃなく、法律問題だから出せと、こういうことも言い得るわけですが、それはそうでございますが、途中から、これがアメリカの最終案だと言われてしまったわけでございますので、そこらの取り扱い方はひとつ御考慮いただければ幸いだと、こう思います。  これに全然基準年次がないということでございますが、基準年次はあるそうでございます。私は、これはこまかいところまで自分で読んでおりませんし、みんな、そういうことこそ政府の専門家がやるべきである、大臣は右から左に判断すべきであると言っておりますから、私は見ておりませんが、基準年次は七〇年四月一日から七一年三月三十一日までと、明記があるようでございます。
  171. 藤井恒男

    藤井恒男君 事務局にお聞きしたいのだけれども、大臣はわからないだろうけれども、基準年次は載っていないのです。新聞発表も全部基準年次は載っていない。で、もし基準年次があるなら、もう一通、別のケネディ案というのがあるのか。それを示してもらいたい。
  172. 佐々木敏

    説明員(佐々木敏君) 基準年次は、はっきり七 ○年四月一日から七一年三月三十一日というふうに、そういう規定がございます。
  173. 藤井恒男

    藤井恒男君 それでは、まあどのような形がとられるかはともかくとして、私はやはり、かりに、非公開であっても、そのケネディ案なるものをこの委員会に配ってもらいたいということを要求いたしたいと思います。しかもそれは、通産省が訳されたものと原文と、両方いただきたいと思います。委員長、それ、よろしくお願いいたします。  それからいま一つ、この内容について。先ほど来大臣は、今後交渉するということをおっしゃっておるわけなんだけど、交渉の手順ですね、向こうはまあ十五日までにはっきりしろということを言っとるわけなんで、十五日といえば、もう一週間足らず。とにかく政府間交渉に入るということを約束して、それから交渉に入っていくのか。そうだとすれば、その交渉というものはかなり長期化すると予測されるんだけど、その間はどういう形をとるのか。あるいはもう待ったなしで、十五日までにすべてきめてしまうのか。この辺、大臣のお考えをお聞きしたい。
  174. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) アメリカ側がいままで言っておりましたことは、交渉をする意思があるのか、ないのかは、十月一日までに明らかにされたい、それから、十月一日までに明らかにされない場合は、すでに交渉する意思がないものとして、十月の十五日からは一方的規制に入ります、こう言っておるわけです。かたき同士の話じゃないから、一方的に言ってきて、日程というものは打ち合わせるものじゃございませんかと、こう言って、私は答弁を求めておらないわけです。そんなに日米間というものは他人行儀ですかと、こう私は一流な表現で。あんまり早くから詰められても困ると思うので。そういう状態でさっと十月一日は通り越して、きょうはもう十日近くなっておるわけでございますから、そういうことで通り越しておるわけですが、十月十五日という関所はなかなか強いようでございます。ですから、これからまあいろいろなことをやって、きょうまたジューリック氏も来ておるようでございますし、ですから、まあ十五日までに全部日米間が合意に達してやれれば、これは向こうもこちらも比較的にはっきりすると思います。しかし、なかなか経過規定その他いろいろなものでもって救済しなきゃならないいろいろ現実的な問題もありますので、私十五日までにほんとうにすべてのものが片づくのかどうか、そういうことに対してはあまり自信がないんです。いずれにしても、政府間協定をするなら、政府間協定をきょうからいたしますということは、これは、政府が正式な態度をきめなければならぬことでございますから、そういうことは十五日前には当然やらなきゃいかぬだろうと、こう思います。ですから、まあ非公式な接触であっても、その間にお互いが納得ができることであってこれが最終的なものであるなんということになれば、一日か二日でもそれは詰まると思いますし、基本的に問題がなかなか詰まらなければ、それは時間的に十五日までに詰められるかどうか、なかなか、にわかに判断しがたいと思うのであります。
  175. 大森久司

    委員長大森久司君) ちょっとお尋ねします。ただいまの藤井君から要請のありました資料の御提出について、答弁を求めます。
  176. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) ただいまの御要請につきましては、後ほど委員長と御相談を申し上げ、最終的にきめたいと思います。外交案件でございますので、どういう提出の手続になるのか、私もよくわかりません。いま外務省の事務当局がおればちょっと相談しようと思いましたが、わかりませんし、これはそういう問題その手続上の問題がございますので、皆さんあとからおはかりできるようにしていただきたいと思います。
  177. 大森久司

    委員長大森久司君) ただいまお聞きのとおりであります。
  178. 藤井恒男

    藤井恒男君 いま御答弁があった問題についてですね、そうすると、私このように解釈していいかどうか、もう一度お聞きしたいんだけれど、いまの大臣のお気持ちとしては、十五日までの間に、できれば政府間交渉に入るという政府の態度をきめて、先方に伝えて、そしてその後詰めに入らざるを得なくなるだろう、そうだとすれば、その詰めの段階は十五日を経過して先に延びていくこともある、こういうふうに解釈していいわけですか。
  179. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) こちらから言えばそういうことになりますが、相手側は、最終的リミットは十五日でございますということを、依然として固守しておるということもありますことを申し添えておきます。
  180. 藤井恒男

    藤井恒男君 きよう、さらにジューリック氏にお会いになるそうですが、すでにいままで新聞紙上にも、このケネディ案なるものを修正したい、修正せざるを得まい、また修正するならここ、ここだというところが、これは正式なものかどうか知りませんが、たとえば実施月だとかいうようなものについて出ておる。これらについて、いまお話しになったように、政府間交渉に入りますと。そうして、いま大臣はそのような気持ちを持って言っておるわけだけれども、すでにアメリカのほうでは、十五日がタイムリミットということをはっきり言っておるし、簡単に変わりませんよということも言っておるわけです。さらにこのまま進んでいくと、ほとんどアメリカのケネディ案というものは変わらない。そうすると、いまの業界、十三日にも決起大会をやりたい、こういう情勢の中で、ますます離れていく。こういう経過が、結局三年間続いたがゆえに日米の不信を招いたのだと私は思うのです。やると言いながらやらない。あるいは、何とかしましょうと言いながら何ともならない。今度は何とかしますよと、わざわざワシントンまで行って言うから、こういうことにずっとなってきたわけなんです。今度の場合、また同じような轍を踏む危険性が非常に多いと私は思うわけなんだけれども、いたずらにこういったことを繰り返すことが、むしろ日米間のよきパートナーシップをくずすことになりはしないかというふうに私は思うのです。だから、これは早く手ぎわよくまとめろということを言っておるのじゃ私はないのですよ。同じような轍を踏むような気がするので、その辺はよく大臣も考えて、できないものはできないのだということを明確にすべきだと私は思うのだけれども、その辺のところをお聞かせいただきたい。
  181. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 私も、あれだけアメリカまで行って強く言ってきたものが、田中は君子豹変したのではないかとさえいわれながら、ここまで考えておるわけでございますから、事の重大性というものを十分理解をいたしておるつもりでございます。ですから、批判は、いろいろな批判というものが生まれると思いますが、誠意を尽くして国益を守らなければいかぬ。同時に、日米間の友好も保持しなければならないし、産業界の利益も守らなければいかぬということで、二兎も三兎も追っているわけでございますが、残された十月十五日というタイムリミットを明確に考えながら、これからの最もいい結論を出したい、こういう考えでございます。
  182. 藤井恒男

    藤井恒男君 時間がありませんので最後にお聞きしたいのだが、この救済措置というものについて、これはもう全部悪いほうに傾いた、最悪の場合のことなんだけれども、いろいろ貸し付けだとか、融資というような項目があげられております。先ほどもちょっとお話があったわけなんだけれども、現実に繊維産業は零細企業が非常に多い。そういう零細企業が、特恵関税の問題、あるいは課徴金の問題ドル・ショックの問題などで三重苦を負わされている。あるいは自主規制の問題もそれにおおいかぶさっている。こういったときに、もう金を借りる手段というものがない、金を借りられないという状況に立たされておるわけなんです。担保を取るにしても、担保ももうすでにない。こういう状況の中で、融資にどれだけを回すといっても、これはもう受ける側からすれば、そんなことをしてくれるよりも、アメリカ案けってもらったほうがいいのだということにつながってしまう。この辺のところをよく考えてもらいたいと思うのだけれども、その辺についてどういうふうにお考えかということが一つ。  それから、実は四十五年の三月二十六日に、大臣も御存じの繊維産業の組合ですね、全繊同盟が、その当時輸入規制が非常に問題になっておったわけなんですが、佐藤総理とお会いしております。そうしてその席で、輸入規制というものが行なわれたならばたいへんな失業者が出てくる。人の問題が最も大切だ。だからこのような重要な段階には、進んでやはり人の問題をどうするかということで労働組合の意向もよく聞いてもらいたいという申し入れをしておるのです。これに対して佐藤総理のほうからも、今後重要な段階に立ち至ったならば、遅滞なく労働組合にお会いして、意見も聞きましょうという約束をしておる。それなのに現在まで、次官はかなりの頻度で業界の人にはお会いになっておるけれども、組合のほうには、総理はおろか大臣も、そして次官も、一ぺんおまえたちの意見も聞かしてくれという話がこれはないわけなんです。やはり私は、もちろん業界も大切だけれども、そこで働いている者をどうするのか。現に失業者も出ておるわけなんだし、倒産になれば失業するわけです。アメリカだけじゃないのです、失業者は。そういった人たちの問題について、もっと真剣に考えてほしい。そういう意味からも、当然私は全繊同盟なら全繊同盟という組合があるわけなんだから、大臣もアメリカで全繊同盟の話も例に引いておるわけだから、その辺についてよく話し合いをしてほしい。  その二つについてお考えをお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  183. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 労働組合との間に意思の疎通をはかったり、いろいろ懇談をする必要があるということに対しては、そのとおりでございまして、何らかのことを考えたいと、こう存じます。  それから国内対策につきましては、財政、金融、税制上の特段の措置を講ずるということでございまして、大体いま三つくらい具体的に考えております。その一つは、もうすでに一部行ないましたが、過剰設備の大幅買い上げという問題が起こってくると思います。これは、繊維工業の過剰設備の抜本的解消をはかるため、設備を大幅に買い上げるということが一つでございます。  第二は、輸出減少額の補償問題が出てまいるわけでございます。これは、自主規制を下回る輸出減少額、自主規制ということがいま一つのめどになっておりますし、実際それよりも下回ってくるということになれば、これは計算が出てくるわけでございますから、そういう問題に対しては必要な救済措置を講じなければならないだろう。  第三点は、滞貨融資。滞貨資金等の融資を行なわなければならない。これは、業者に対しまして滞貨資金、生産調整資金、転業資金等の長期低利の融資を行なうということを当然考えるべきであるし、所要の信用補完措置を講じなければならない。場合によれば立法的処置が必要かもしれません。そういう問題はこれから十分検討し、実施をしてまいりたいと、こう考えます。
  184. 大矢正

    大矢正君 公明党、民社党両党の御了承もいただいた上で、私代表して、この際、大臣に要望申し上げておきたいと存じます。  それは、先ほど来、日米間の繊維問題については国会の決議もこれあり、政府も今日まで鋭意努力されてきたことは十分私どもも知ってはおりますが、事ここに至りまして、もし政府が一方的に見切り発車をして政府間協定を締結するということになりますと、そのことが国民と、また業界に与える影響、さらには今後懸念される他の業種なり品種の問題との関連を考えまする際に、あまりにも重大な問題ではなかろうかという感じがいたします。私どもは、質問の途中でも逐次申し上げましたが、委員長の手元に、政府は見切り発車をしないこと、それから一方的に政府間協定を、業界の了解も得ずしてやらないこと、ということを中心とした決議案を出したところでありますが、どうも理事会の結果、必ずしも自由民主党の方々の御賛同を得ることができない情勢にあります。よって、ここでかりに採決をいたすというようなことになりますと、あとあと影響するところも甚大でありますし、前の決議はあなたが尊重されると、こうおっしゃっておられるのであるからして、しいてここで再度の決議をする必要性はなかろう。特に明敏な実力ある大臣ですから、よもや国会の決議を無視するようなこともされないだろうとも思いまするし、逆にまた、決議が否決をされて、決議が否決されたから、これでもうわれわれは一方的にできるという解釈をされても、これはとんでもないことになりますので、この際、各党了承の上で、ひとつこの決議案は委員長、理事にお預けというかっこうで、本日のところは終わりたいと思っておりますが、どうかひとつ、先ほど来のわれわれの意見、それから希望を十分のみ込んで、これからの話し合いといいましょうか、私どもは希望はいたしませんが、もしおやりになるとしても、そのことを十分御判断いただきたいということを付加いたしたいと思います。
  185. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) この際、所信の一端を申し述べておきたいと存じます。  いま大矢委員が述べられたとおり、国会の決議もあることは、私も十分理解をいたしております。国会の決議に反しないように、全力をあげてまいりたいと、こう思うわけでございます。しかし、先ほどからの御質問にお答えをしております私の困難な状態も、ひとつ御理解を賜わりたいと思うわけでございます。私自身は、国会の議決に忠実でなければならないということと同時に、対外的な要請、日本とアメリカとの間の友好親善と、また、日本の産業そのものをほんとうに守るためにはどうあらねばならぬかということに対しては、当面する問題に具体的な政策と態度をきめなければならない立場にあるわけでございます。そういう問題に対しましても、慎重に判断を行ない、決意を行なうつもりでございますが、ひとつ、困難な状態に対し誠意をもって事に当たろうとしておる基本的姿勢は、いまからひとつ御理解をいただきたいと思うわけでございます。以上。
  186. 大森久司

    委員長大森久司君) 他に御発言がなければ、本日の質疑はこの程度にいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十四分散会