○国務大臣(
田中角榮君) 大平、宮澤両大臣が、
業界の自主規制案なるものを認めておったことも、私は承知をいたしております。私自身が、宮澤君の
あとを受けて七月五日、通産大臣に就任をした直後の衆参両院の
委員会におきましても、自主規制が最良と考えております、こう公式に述べておるのでありますから、それはそのとおりでございます。私はまた、日米
経済閣僚合同
委員会においても、それが正しいことを十分述べてまいったわけでございます。ですから私自身が、この問題に対して、日米間では、いまの
段階において、自主規制といういまのやり方以外にいい結論を見出すことはできないだろうと考えておったことは、事実でございます。
ところが、その後、ケネディ案なるものを提示されて、そうして十月の十五日までに政府間協定が行なわれない場合は、こういう案で一方的に規制をいたしますと、明確に通告を受けたわけであります。まあ、その通告が現実的に
実施されるかどうかという、政治的な見通しもつけなければならぬことは当然でございますが、そういう見通しについては、非常に強い意思表示をしているということでございます。
それからもう
一つは、現実的にそういう一方的な規制が行なわれた場合、日本の
業界にどのような
影響があるのかも、 つまびらかに
調査をする必要がございます。そういう意味で、自主規制が行なわれておる過程における数字を、全部
調査をいたしました。そうしましたら、事実上
アメリカの一方的規制が行なわれるとすると、
輸出自体がとまってしまう。もう、向こうが提示をした数字以上に
輸出されておるものがございます。それのみではなく、いま契約をされておるものを完全に実行いたしますと、それでもう今
年度の
輸出はほとんどゼロになってしまうというようなものがあります。そういう意味で、私は、これではたいへんな混乱が起こる。何とかこれを
調整できないものだろうか、また、
調整することが日米両国の友好
関係を保持するためにも望ましいことである。こういうことで、いま私が申し上げているのは、では自主規制のままで何とかこれを緩和できないか、こう言ったら、できませんと。どうしてできないのかと。日本の言うことをたくさん長いこと聞いてきました、今度は
一つぐらい
アメリカの言うことを聞いてください、こういうことでありますから、相当強い意思表示が行なわれて、何回となく繰り返し折衡をした。向こうは、政府間協定を結ばない限り、提示をした数字を変更する意思は全くない、こういう私は確証を得たわけでございます。
もう
一つは、では政府間協定を結ぶとすれば、一方的規制よりも何かあるのかということをやはり聞かなければならぬことは、これは当然なことだと思うのであります。ところが、政府間交渉に切りかえる切りかえないは別にいたしまして、では、君
たちの言うとおり政府間交渉をしたならば一体どうなのかということを、私も米国側に対して考え、その場合には少なくともこういうものでなければならない、自主規制がそのまま置きかわるようなものに近いものでなければならぬというようなことも、私自身もこちらの意見としては述べております。自主規制でもこんなに
影響があるのだから、これを一方的規制などをやられれば、もうけんかになってしまう。そういうことは両国のために望ましくない。そういう意味で、もし政府間交渉に移行したとしたならば、どのようなメリットがあるのかということを私が考えるのは、これは職務上当然だと思うのです。
そういう意味でまあ話を詰めておるわけでございますが、政府間交渉をするという基本的な態度さえもはっきりしないで、ただ求めることばかりやっておってどうするんですかというのが、いまの
アメリカの
状態でございます。ですから、
アメリカ側の考えは、いまなかなか強い態勢にあるということは事実でございまして、ケネディ案はどういうものかと言うと、日米の、できれば最終案にしてもらいたい、そうすると、一方的規制をもし行なう場合にはどうするのかと言うと、これよりももっと強い案で規制をするのです、こう言うのでございますから、これは、日米間としては戦後初めてというぐらいに、具体的な数字をテーブルの上にしての交渉であって、甘いものではないということは事実でございます。しかし、そういうことに対しても、私は、これは少なくとも
輸出が全面的にストップになるようなことは絶対に避けなければならぬということで、鋭意検討し、交渉しておるというのが事実でございます。