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1971-07-24 第66回国会 参議院 公害対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年七月二十四日(土曜日)    午前十一時開会     —————————————    委員異動  七月二十二日     辞任         補欠選任      加藤  進君     塚田 大願君  七月二十三日    辞任          補欠選任     塚田 大願君      加藤  進君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         加藤シヅエ君     理 事                 田口長治郎君                 寺本 広作君                 杉原 一雄君                 内田 善利君     委 員                 赤間 文三君                 菅野 儀作君                 棚辺 四郎君                 原 文兵衛君                 柳田桃太郎君                 占部 秀男君                 工藤 良平君                 小平 芳平君                 栗林 卓司君                 加藤  進君    国務大臣        国 務 大 臣  大石 武一君    政府委員        環境政務次官   小澤 太郎君        通商産業政務次        官        林田悠紀夫君    事務局側        常任委員会専門        員        中原 武夫君    説明員        環境庁企画調整        局長       船後 正道君        環境庁企画調整        局公害保健課長  山本 宜正君        環境庁水質保全        局長       岡安  誠君        水産庁次長    藤村 弘毅君        水産庁漁港部長  瀬尾 五一君        通商産業省公害        保安局長     久良知章悟君        通商産業省化学        工業局窯業建材        課長       原野 律郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○理事選任の件 ○公害対策樹立に関する調査  (公害対策樹立に関する件) ○継続調査要求に関する件 ○委員派遣承認要求に関する件     —————————————
  2. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ただいまから公害対策特別委員会を開会いたします。  この際、御報告いたします。  去る二十日の委員会において指名を保留いたしました二名の理事のうち、一名につきましては、本日、委員長において寺本広作君を指名いたしましたので御了承願いたいと思います。     —————————————
  3. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 次に、委員異動について御報告いたします。  去る二十二日、加藤進君が委員辞任され、その補欠として塚田大願君が選任されました。  また昨二十三日、塚田大願君が委員辞任され、その補欠として加藤進君が選任されました。     —————————————
  4. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 大石環境庁長官より発言を求められておりますので、これを許します。大石環境庁長官
  5. 大石武一

    国務大臣大石武一君) ごあいさつを申し上げます。  第六十六回国会における参議院公害対策特別委員会における審議に先立ち、就任のごあいさつを申し上げますとともに、環境行政に関し所信一端を申し述べたいと存じます。  わが国経済の急速な拡大と都市化進行の過程で生じつつある公害と自然の破壊が、今日ほど国民の注視の的となっているときはありません。このことは、ひとりわが国のみならず、世界各国においても同様でありまして、国際連合をはじめとする各種の国際機関におきましても、環境問題を全地球的見地から取り上げ対処していこうとしているのであります。まさにそのような時期に、皆さま方の御尽力により環境庁設置され、環境行政が新しい段階を迎えることとなりましたことをまず御報告できますことは、私の深く喜びとするところであります。  新環境庁の前途には、早急に取り組むべき課題が山積しておりますが、私は、当面、次の事項に重点を置き、行政運営を進めてまいる所存であります。  その第一は、公害行政一元化であります。ここ数年来、公害行政は急速な進展を示してきたのでありますが、従来、ややもすれば、責任の所在が不明確となり、その実施面でも統一性を欠き、不徹底となる面があったことはいなめないところであります。今回環境庁設置により、公害行政一元化され、従来にも増して強力な公害行政を展開する基礎ができたわけでありまして、私といたしましても、早急にその実をあげ、国民期待にこたえてまいる覚悟であります。  また、下水道、廃棄物処理施設その他の公害防止施設整備等関係省庁の所管として残されている行政につきましても、環境庁は、予算面調整をも含む強力な総合調整権限を持っているのでありまして、各省庁一体となって総合的な公害行政実施し得るよう、この調整権限を活用してまいる所存であります。  第二に、環境保全見地からは、自然環境保護し、その整備をはかることが重要な課題であります。美しい国土、豊かな自然環境を確保し、これを長く子孫に伝えていくことは、われわれの重要な責務であると考えます。従来、自然公園や林野については、各般の施策が進められてきたわけでありますが、自然環境全体を対象とした総合行政は、これまで確立されていなかったのであります。  環境庁におきましては、環境行政を総合的に進めるという見地から、自然環境を全体としてとらえ、その保護及び整備をはかるための基本施策をすみやかに樹立し、豊かで快適な生活環境をつくり出すべくつとめるとともに、国民自然保護思想の普及をはかってまいりたいと考えます。また、従来の自然公園行政鳥獣保護行政につきましては、環境保全総合的見地から、これまでにもまして拡充強化してまいる所存であります。  第三に、環境保全に関する長期ビジョンについてであります。われわれを取り巻く環境は、一たびこれが破壊されると再びこれをもとの姿に戻すことはきわめて困難であって、公害自然破壊が生じてからこれに対処するのでは、すでにおそ過ぎるのであります。  したがって、今後の環境行政実施にあたっては、公害自然破壊事後的解決に終わることなく、これらを未然に予防すべく迅速かつ適切な措置を講ずることが必要であると考えます。このため、その指針となるべき将来の日本列島環境をいかに改善すべきかという環境面からみた長期ビジョンを検討してまいる所存であります。  第四に、公害関係法施行であります。公害対策のための法制につきましては、皆さま方の御協力により、先般来の国会で体系的な整備をみたところでありますが、私といたしましては、地方公共団体との緊密な連携のもとに、その適切かつ円滑な施行全力を注いでまいる所存であります。また、公害に係る事業者民事責任につきましては、無過失責任制度立法化を検討しているところでありまして、次の通常国会には法案を提出いたす考えであります。  第五に、不幸にして公害被害を受けられた方方の救済には、万全の措置を講じてまいりたいと考えます。現在、公害病認定患者に対しましては、医療費のほか、医療手当介護手当の支給が行なわれており、その内容も逐次改善されてきたところでありますが、今後ともこれら施策改善につとめてまいる所存であります。  第六に、公害に対する研究体制等整備であります。公害に関する研究を進め、情報集約化をはかることは、科学的行政たる環境行政基礎であると考えます。環境庁におきましては、国立公害研究所公害研修所設置を急ぐとともに、他省庁試験研究機能についても、必要に応じその総合調整を行ない、公害に対する効果的な研究体制整備をはかってまいる所存であります。  また、当面、各方面から対策を迫られております光化学スモッグ、PCB、重金属汚染等については、その発生機序、人体に与える影響等について未解明の分野もあり、引き続きその調査研究を進め、早急に効果的対策を確立してまいる所存であります。  第七に、国際協力推進であります。環境問題は、今や国際的視野から取り組むべき課題となっていることに留意し、世界各国国際機関との情報交換技術協力充実につとめるなど国際協力推進をはかってまいりたいと考えます。  以上、所信一端を申し述べましたが、これら諸課題を達成するためには、予算面におきましても、また制度面におきましても、環境行政の一そうの充実をはかる必要があると考えます。  私は、健康で文化的な国民生活を確保するという見地に立ち、環境行政基礎を築くため、全力を傾けてまいる所存であります。  皆さま方の格段の御協力をお願いする次第であります。
  6. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 速記をとめて。   〔速記中止
  7. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 速記を起こして。  次に、小澤環境政務次官
  8. 小澤太郎

    政府委員小澤太郎君) 今回環境政務次官に就任いたしました小澤太郎でございます。  今後よろしく御指導、御協力を賜わりますようにお願い申し上げます。     —————————————
  9. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 公害対策樹立に関する調査を議題とし、質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  10. 杉原一雄

    杉原一雄君 きょうの委員会は、環境庁長官をお迎えしての最初委員会でございまして、従来、公害問題で国会の中で与野党一体になってその対策を樹立した一人として、非常にきょうの日を迎えたことをうれしく思います。  十二月の臨時国会、 いわゆる公害国会において、われわれは環境保全省設置を要望してまいりました。しかし結果的には、現政府環境庁設置ということで最終的な決定を見、七月一日から専任の国務大臣を置いて、公害行政一元化のために今後御努力なさる体制ができたことを、次善の策とはいいながら非常にうれしく思います。いま大臣からあいさつがございまして、そのあいさつの中身につきましてはいささか抽象的な感もありますけれども、決意のほどを伺いまして、非常にうれしく思うところでございます。  きょうは、私は、六月三十日、三年数カ月にわたる長い長いイタイイタイ病公判判決、その後の動き、また判決に対する考え方、そうした問題等をめぐっていろいろお伺いをしたいと、こう実は思うのであります。  実は、私は、三十日、三日間にわたってテントを張りながら傍聴券を獲得するために努力してくれた同志の手で獲得していただいた傍聴券第八号の券を手にして傍聴さしていただきました。私も、歴史的な裁判に大きな期待と不安をもって実は臨んだわけでございます。幸い、公明党の小平委員もそのときは御出席をいただいておりましたので、後ほど相関連しながら質問があることを期待しているわけでありますが、三十日の十時十四分であったかと思いますが、われれの立場から言うならば、全面的に原告側の勝利に期する歴史的な判決が下ったのであります。その限りにおいては、私たちは、長年戦ってきた者として実はほっとしているところであります。ただ、裁判の流れの中から察知できることは、裁判提起が四十三年の三月、しかも、そのあと四十三年の五月八日に、厚生省から、いわゆる「富山県におけるイタイイタイ病に関する厚生省見解」というのが表明され、引き続いて通商産業省もそれに相呼応するような見解を表明されたわけです。これはこの三年間の長い戦いの中で原告側に大きな勇気を与え、なおかつその見解に従って公害病患者認定あるいは医療費助成等があったりして、その問題に悩む患者並びに家族、また遺家族の皆さんたちも、また裁判闘争をする側の者も非常に勇気づけられて今日まできたことについては、率直に私は認め、かつ感謝をしたい。  その意味で、いま非常にうかつな質問になると思いますが、昭和四十三年五月八日、厚生省並びに通産省と言いたいのでありますが、きょうは通産関係の方が出ておらないと思いますから、統一して環境庁立場から、当時の見解に誤りがなかったか、この見解を修正し、今後どう変えようというような意図が一点もないのか、私たちが信頼をかけたように、今後ともこの路線に従って行政が進められるものと信じていいかどうか、このことを長官から明確にお答えいただきたいと思うのであります。
  11. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 昭和四十三年度の厚生省見解は、われわれも、そのままそっくり受け継いでおりまして、その見解を今後とも支持してまいる決意でございます。
  12. 杉原一雄

    杉原一雄君 そうしますと、くどくどと申し上げる必要はないわけですけれども、見解の中では、「現在までの経緯について」という章とあわせかねて、その発生原因が五点にわかれて明確に分析があるわけですが、その中で、特に第一点の「イタイイタイ病の本態は、カドミウム慢性中毒によりまず賢臓障害を生じ、次いで骨軟化症をきたし、これに妊娠、授乳、内分泌の変調、老化および栄養としてのカルシウム等の不足などが誘因となってイタイイタイ病という疾患を形成したものである。」、これは原告小松みよさんなどの闘病の生活記録を見ればきわめて明瞭です。  二点として、「対照地域として調査した他の水系及びその流域ではカドミウムによる環境汚染や本病の発生は認められず、本病の発生神通川流域の上記の地域にのみ限られている。」、でありますから、一級河川神通川には井田川熊野川などが注いでおりますけれども、井田川熊野川という流域にはその患者発生がありませんということを、これは地理的にも立証されることでありますし、この見解も正しいと思います。  第三点の「慢性中毒原因物質として、患者発生地域を汚染しているカドミウムについては、対照河川の河水およびその流域水田土壌中に存在するカドミウムの濃度と大差のない程度とみられる自然界に由来するもののほかは、神通川上流三井金属鉱業株式会社神岡鉱業所事業活動に伴って排出されたもの以外にはみあたらない。」、明快にここでその見解を表明いたしているわけです。  このほかあるわけですけれども、こうした主として私いま三点あげたのでありますが、その原因と結果との関係発生源者認定、ゆるぎなきこの確信、この見解、私は、これを基礎にしてこれから議論をしたい、こう思っているわけであります。  その後でございますが、ちょうど公判があった翌日、七月一日でございますけれども、私は、原告の人、いわゆる被害者、それから弁護団事務局長島林弁護士等とともに同行いたしまして、実は三井金属本社を訪れ、最初は副社長を中心とした常務取締役連中を向こうに回してのいろいろな要請をいたしてまいりました。後ほど尾本社長出席してまいりました。  この交渉の焦点は、ここでそんなことを申し上げるのもどうかと思いますが、とにかく判決は下ったのである、とりわけ公害という悲痛なこうした問題に対するやはり裁判判決の受けとめ方の問題につきましても、会社側は道義的にももっときびしい態度で臨んでもらいたい、だから、名古屋高裁金沢支部に対する控訴をなさったそうであるけれども、すみやかにこれを取り下げてもらいたい。第二点として、被害者原告皆さんにあやまっていただきたい。こういうきわめて常識的な要求をしたのでありますが、社長は、第一点の控訴は取り下げません、また第二点の謝罪はいたしません、なぜかならば、裁判は誤った認識の上に立ったものである、だからその誤った認識——それを最高裁とは言わなかったのでありますが、高裁等で明らかにしていきたいと思うので、それが明らかになった時点で、白か黒か明確になった時点で、私は、黒ということになれば謝罪をいたしましょうと、こういう実に淡々たるというよりも、私たちの目から見れば憎らしいようなつらがまえで答弁をしておられたのを忘れることはできません。  青年のこの、マルクス資本論を読んで私の政治の方向がきまったのでありますが、資本論が指摘したことが現実的に具体的な姿となってあらわれてきたような感じがいたしました。  で、それだけではございません。こういう事実があるわけです。これも明らかにしておかないといけませんから、新聞社の名前も出します。七月の八日に北日本新聞深山編集局長三井金属鉱業本社において尾本信平社長と会っているわけです。そのことが——全面速記ではないでしょうが、概要速記の形で、写真入り北日本新聞が七月九日にこれを明らかにいたしました。この中でいろいろ問題点がありますけれども、やはり尾本が指摘していることは、先ほど私が申した七月一日の私たちに対する回答とその主張は一貫しております。「一審判決では納得できない。」、「まさに裁判官の主観だ。これは三井金属だけの問題でなく、社会全体に混乱を起こさないためにも必要だと思う。控訴取り下げはかえってよくないのではないか」、つまり控訴を取り下げない理由をこのように申し述べているわけです。なおかつ、この中でこういうことを言っていることを、これは長官として十分お聞き取りをいただきたいのであります。「道義的責任というのはどういう意味か、よくわからない。」、これはわれわれが追及しているところですが、「カドミウムイ病を起こしたことでの道義的責任追及なら、私たちはそう考えていないので……。」、このあと切れていますが、「世間を騒がせたことが道義的責任なら、それだったら騒ぎを起こしたのはむしろ四十三年に見解を出した厚生省が負うべきだ。因果関係が明白にならない以上、株式会社としては株主に対しても私が勝手に答えようがない。」、こう言っているわけであります。このところをもう一度繰り返しますが、「世間を騒がせたことが道義的責任なら、それだったら騒ぎを起こしたのはむしろ四十三年に見解を出した厚生省が負うべきだ。」、この項であります。この点について大臣はどうお考えになるか。  重ねて、これと相類似した検討が別にあるところで行なわれております。それは二十日の経団連環境改善委員会委員長堀越禎三経団連副会長)が環境改善委員会を開き、「イタイイタイ病裁判三井金属鉱業が敗訴した問題を検討した。約六十人の財界人出席富山地裁判決に強い不満が続出、「この判決が前例となることは重大な問題なので、公害裁判対策研究する」ということで」一致した意見が全体で四つあがっております。  一つは、「鉱山監督行政が行なわれているのに、企業だけに無過失賠償責任を負わすのは疑問がある」、これが第一点であります。イ病原告側の訴状の中で、やはり根拠法規鉱業法百九条でございますので、これはあくまで無過失賠償責任ということが非常に大切な骨組みになっておるわけです。この問題は、あとで無過失賠償責任に関する法案の準備ないし提出の時期等についてお伺いいたしますけれども、このことがまず第一点、経団連の諸君は大きく問題にしている。このまま正直に承っていけば、鉱業法そのものを改正しようという運動に継続発展をする可能性を持っている。  二番目には、「刑事事件でも時効があるのだから、公害事件にも時効を設けるべきで、何十年も昔の責任を問われるのはおかしい」、イタイイタイ病の問題を検討しながら何十年ということばを使っているんですから、確かにイ病は長い長いキャリアを持っております。三十年なり四十年たたないと、今日のような骨がぼきぼき折れるような症状にはなりません。しかし、だからといって、これは時効の問題とからませて論ずべきものかどうか、ここに大きなまた問題が一つひそんでいる。  第三点として、「因果関係の推定が行なわれているが、イタイイタイ病は医学的、科学的に十分究明されておらず、因果関係と十分な科学的根拠があるか疑問である」、これは岡村裁判長判決文をお読みいただければよくわかるのであります。  四番目に、これはまた先ほど申したことに戻ります。「厚生省公害病に関する見解を発表するのは被害者救済を急ぐ必要からだが、この厚生省見解裁判での重要な資料になるのならば疑問がある。」と書いてあります。私は、この公害裁判の三年何カ月の裁判の中で、時間がありませんで、傍聴に行ったのは判決の日と裁判の途中で一ぺん傍聴いたしました。ところが幸か不幸か、一ぺん傍聴したときの被告弁護団発言の中で非常に重大な発言をしているわけです。それは、原告皆さん昭和四十三年五月八日の厚生省見解を鬼の首を取ったように喜んでいるけれども、あんなものは何だ、こういう言い方を弁護士がしております。今度弁護士は総入れかえになりましたので、個人的な発言内容を追及する必要はないと思いますが、これは三井本社社長思想でもあり、被告側の一貫した思想であると思います。そうしますと、ここで環境庁長官勇断をふるって、先ほどおっしゃった見解に対して間違いないという、私は四十三年の見解を継承するんだということをおっしゃったわけですから、そのことを踏まえながら再確認をしていただく、こうした発言等について見解の相違ということで流すことができるかどうか。このことについてお尋ねすることはたいへん無理かもしれませんが、きょう、実は私ここに尾本社長出席要求したのであります。不幸にして自民党理事がきょうようやく寺本理事が一人だけきまりました。まだ一人きまりません。そうしたような委員会運営上支障の起こるような今日の事情の中で、ついに私の参考人をお呼びするという目的は達せられませんでした。寺本理事説明によりますと、目下裁判係争中である、係争原告被告当事者国会参考人として呼ぶことは妥当でない、こうおっしゃるわけであります。私は、そうした慣例等もあるのかないのか、国会に入って日が浅いもので自分はわかりませんから、きょうは、とりあえず参考人出席できなかったことを留保いたします。今後、機会を見て、参考人として尾本社長出席をねばり強く要求していきたいと思います。  私は、ここで、いま名古屋高裁金沢支部控訴され、審理され、なかんずく第二次以後の四百数十名の訴訟が十七日から審理に入っております。第一審であります。こうした状況に現在あるわけですから、そういう中で、いま自民党を代表される意見として、ここへ呼び出すことは妥当ではないとおっしゃる意味は、私は、一面、三権分立の立場から理解できますけれども、しかし、私は、ここで名古屋高裁金沢支部のような問題をこの場へ移してやるというような気持ちは持っておりません。私の言っているのは、先ほど申し上げました厚生省見解に対してまっこうから否定をしているような会社発言被告発言に、私は、行政的な政治的な関係から考えて、きわめて重大であるという判断に立ったから社長出席要求したわけであります。しかし、事志と違って実際実行に移されませんでしたから、いま、長官として、いま申し上げた問題点——たくさんしゃべったからぼけますかもしれませんが、特に見解に対する見解、その見解に対するまたあなたの見解、こういうことでお伺いしたい。経団連堀越委員長のあの四つの決定をめぐって、なかんずく厚生省見解に対するきびしい批判等も含めて、ひとつ決意をもって勇断をもって明確な御答弁をいただきたいと思います。そのことは、私は、いま進行中の裁判を妨げたり介入する、司法に介入するものとは考えません。政治次元の問題としてきわめて重大な問題でありますから、環境庁長官の懇切な決意を込めた御答弁要求いたします。
  13. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 経団連見解並びに三井金属社長見解というものをただいま承ったわけでございますが、私どもは、先ほど申し上げましたように、昭和四十三年に発表された厚生省見解というものをそのまま引き継ぎまして、それを一番妥当なものと考えまして、そのとおり進んでまいる考えでございます。したがいまして、とのような——それはもちろんいろいろな事態にはいろいろな見方がございますから、いろいろな判断もあるでしょうけれども、わが環境庁のものの考え方は、ただいま申し上げましたとおりでございます。
  14. 杉原一雄

    杉原一雄君 視野を変えますけれども、きょうのある新聞の大きなニュースの一つに「汚染広げる下水処理、都の施設、東大調査」、きのうのことですが、東大工学部衛生工学教室が東京湾への投棄汚泥について重金属がきわめて多い、鉛は二百七十トン、水銀は六百キロ、こういうショッキングな調査発表が実はありました。しかし、このことは、私、まだ確認する段階ではございませんけれども、こうした状況を受けて、汚水の処理を担当しております西脇晋一郎都・下水道局長の談話は、きわめて短いですから全部申し上げますが、「工場から排出されている重金属を、水、土、大気へと、ただふりわけているだけではないかといわれれば、まさにその通りで情けないと思う。これは、都内の工場が違反をしている歴然とした証拠だ。」、ここは非常に大事だと思います。「現行法では、これ以上どうしようもない。いいチエがあれば借りたいぐらいだ。」、こういう都の下水道局長の話。東京湾を汚染しているカドミあるいはクロム、それから水銀、これは記事の内容等で見ますと、やがてこれは東京湾から外洋にまで広がるおそれ、危険が大である、こういう推定が行なわれているわけであります。でありますから、その西脇下水道局長の悩みに答えるような、簡単でよいのですが、お答えをいただきたい。  と申し上げますのは、なかなか発生源がわかっておっても、行政面で十分それをキャッチして問題解決を進めていくことは困難であることを下水道局長が告白していると思います。こうしたことについて、国の行政担当の責任者としてやはりこれは黙視できないことではないでしょうか。だから国家として、環境庁として打つべき手は何か、そうしたこと等について私にも答えていただきたいし、都民にも答えていただきたいし、下水道局長にも環境庁長官から、心配したもうな、国家でそのようなめんどうをみますから安心したまえというような示唆等をこの委員会を通じて出していただければ、私は非常に幸いだと思いますが、いかがでございましょうか。
  15. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) いまお話の点は、下水道の処理に伴いまして発生します汚泥等につきまして、有害な重金属その他が含まれている場合の処理のお話かと考えますが、環境庁といたしましては、そのような汚泥の処理とあわせまして、廃棄物の処理等につきましても処理の基準をつくるということで、現在作業をいたしておるわけでございます。それもそういうような汚物の処理に伴いまして、さらに周囲の環境が汚染をされるということは絶対防止しなければならないというふうに考えておりますので、いまお話のような処理の方法等も含めまして、私どもは、基準をつくり、またさらに指導をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  16. 杉原一雄

    杉原一雄君 これは二十一日であったと思いますが、衆議院のたぶん予算委員会だと思いますけれども、社会党の細谷政審の事務局長質問があって、大石環境庁長官がこれに答弁しているわけですが、細谷氏はイタイイタイ病について質問をしておりますね。「富山裁判公害史上画期的なものだが、被告控訴している。どう思うか。」、長官は「この判決は胸のつかえがとれたような気がした。この病気の原因、結果についての見方は環境庁厚生省と同じだ。」、こう言っておられるわけですが、これは先ほどの答弁で足りるわけですね。そのあとのことですよ。いま申し上げたような下水道局長も困っているのは、やはり企業の責任の問題なんです。たれ流しの問題なんです。それで、それを受けて下水道局長が、陸海空に巻き散らしているという今日の実情を率直に認めておるんですから、抜本的解決ができないということを非常に良心的に苦しんでおるわけです。そこで、長官答弁の中で、そのあとが大事ですが、「企業責任を明確にし、無過失賠償責任制度をつくりたい。」とおっしゃられているわけですが、これは問違いないですね。そうしますと、無過失賠償責任制度というのは、それぞれの立法の中にその精神を入れるということなのか、単独立法としてわれわれが主張してきたその線の法案を、無過失賠償責任法案を単独立法としてお考えになっておるのか、その辺のところを、また細谷氏に答えたのは新聞記事で間違いないと思いますが、確認しておりませんから、誤っておったら訂正してください。どうでしょう。
  17. 大石武一

    国務大臣大石武一君) われわれも、このイタイイタイ病裁判に関連いたしまして、やはり勇気をもって、この際、無過失賠償責任の制度を確立いたしたい、創設いたしたい、こう考えておるのでございます。その法律の提出につきましては、昨年提出しようとして客観的な経過から提出できませんでしたが、そのとき考え責任制度の法律的な形は、水質汚濁防止法、大気汚染防止法の二つの法律の一部改正によってその目的を達成しようとしたのでございます。率直に申しまして、私どもは、この次の通常国会にこの制度の法案を提出する考えでおりますが、いまの段階では、やはり同じように二つの法律の一部改正によってその実績を得たいと考えておる次第でございます。形から言えば一本の形もございますし、そのほうがかっこういいように見えますけれども、いろいろなむずかしい問題がございます。ことにこの無過失賠償責任制度は、何と申しましても、これは民事訴訟の一つの例外でございますので、非常に一つの法案に盛り上げるとむずかしいという技術的な話もございます。そういう点で、私としましては、とりあえずとにかくこの制度をまず打ち立てること、そしてそれが患者救済のために、同時にまた企業に対して一つの戒めとして、公害を起こさせないという方針を持たせるために、その二つの面から効果をあげたいと願いますので、効果のあるような内容にして、法律の形態はいずれにせよ、まずこの制度をつくることが必要であると考えまして、いまの段階では、大体二つの法律の改正になるような方向に進んでおるのでございます。
  18. 杉原一雄

    杉原一雄君 その考え方、方向はそれで了といたしますが、やはりそこで引っかかってくるのは、経団連堀越委員長が、まとまった意見の中で、第一項の鉱山督監行政が行なわれているのに、企業だけに無過失賠償責任を負わせるのは疑問であると——反対であるとは言っておりませんが、でありますから、神岡鉱業所にしたところで、それぞれ鉱山督監行政の中で必要な施設なり、いろいろなものをやって許可をされて仕事が始まっているわけですから、だから許可をし、その操業開始を認めたのは通産省の何々局ですわね。そういうところにも責任があるという言い方をしているのだろうと思いますけれども、しかし、これをふえん拡大すると、鉱業法等の百九条ですか、そうしたものの中にある無過失賠償責任考え方、そういうものを削れと、やめちまえということに発展するおそれも——発展というのは、提起されるおそれもあると思います。いま長官がおっしゃったように、基本的に無過失賠償責任制度を確立していくんだと、こういう観点から各諸法案を十分検討してみて、単独でいくか、各法案にそのことをぶち込んでいくか、まあいろいろ技術上の問題は、これは専門の皆さんにおまかせするわけですが、基本的には、あくまで考え方として無過失賠償責任制度を今後近い機会に、特に通常国会をお指しになっていると思いますが、国会にはこの制度を明らかにしていくという所信の表明だと思いますが、そのように受け取っていいわけでしょうね、いかがですか。
  19. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 私の考え方を正しく御理解賜わりまして非常にうれしく思います。おっしゃるとおり、次の通常国会には何としても提案をしまして、成立をいたさせたい決意でございます。
  20. 工藤良平

    ○工藤良平君 私は、大分県の臼杵市の風成という一漁村で発生をいたしました大阪セメント誘致の問題をめぐりましての大分地裁における判決が一応出ましたので、これらの問題について若干お聞きをいたしたいと思うわけです。  最初に、農林省のほうにお伺いいたしますが、この問題が提起をされました際に、水産庁といたしましては、一体、どの程度のこの問題に対する行政的な指導というものを行なわれてきたのか、まずその点についてお伺いをいたしたいと思います。
  21. 瀬尾五一

    説明員(瀬尾五一君) この地区の埋め立てにつきましては、昭和四十五年ごろからいろいろお話があったわけでございますが、非常に公害問題等いろいろなことがございまして、私どもといたしましては、県当局に対しまして、大阪セメント工場がそこに埋め立てを行なってセメントの諸般の作業をするわけでございますが、そういうことにつきまして十分地元の了解等をとって円満に作業ができるようにということ、またこの埋め立て地は漁港区域内にございますので、漁船の利用上あるいは漁港の保全上支障があるかないかということも十分調査をいたしまして、この問題を知事の埋め立ての免許に対しまして認可を与えたわけでございますが、この認可を与えるまでの期間はかなり長うございまして、知事が免許を出すまでにかなりの審査検討も行ないまして、また、知事のほうから認可がほしいということが水産庁に出されてからも、約二カ月あまりも検討いたしまして、県の意向等も尋ねて、まあこれで大体反対者の納得も努力をして得られるというような段階におきまして、昨年の十二月、認可をいたしたような次第でございます。
  22. 工藤良平

    ○工藤良平君 県から水産庁のほうにこの申請がなされたときに、すでにこの公判というものは行なわれていたと思うわけでありますが、その際に、特に問題になりました臼杵市の漁協を相手といたしました漁業権確認の請求と、それから大分県を相手といたしました工場予定地の公有水面埋め立て免許取り消し請求、したがってその免許執行停止の仮処分の申請と、こうなっているわけでありますけれども、すでにそのことが具体的に公判廷でも争われている、その状況を踏まえて、農林省としては認可を与えた、こういうことになると思うのでありますが、その辺の具体的な内容について十分に承知をしておられたかどうか、もう一ぺんお聞きをしたいと思います。
  23. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) ただいまの御質問でございますが、組合の漁業権を放棄いたしまして漁業権の登録抹消になりましたのは五月でございまして、五月七日に漁業権消滅の不存在の訴えをしております。それにつきまして、その後に埋め立て申請が出ておりますが、埋め立て免許取り消し請求をいたしましたのはその免許になってからでございまして、埋め立て免許をいたしました四十五年の十二月二十四日の時点では、免許登録取り消し請求の訴訟がなされていたのでございます。  その時点で、私どもとして検討いたしましたのは、前に香川県におきまして同様の事件がございまして、高松地裁で判決が出ておりまして、今度の判決と全く反対の判決が出ております。それで、私どもといたしましては、高松地裁の判決と同様の見解を持っておりまして、といいますのは、共同漁業権といいますのは、地先の漁場を地元の漁民に管理させるような権利でございまして、それが一種から四種までございますが、その漁業権全体が一つの漁業権となっている場合が多うございます。そこで、そういう漁業権を管理させる、組合に漁業権を持たしておきますが、実際にそれを行使する行使規則をきめる場合には、行使権者の意見を聞かなければならないというのが漁業法の八条の三項でございます。ただ八条の一項には、各自営む権利があるんだという規定がございまして、高松地裁では、各自営む権利を持っているんであって、実際に権利者は組合側であって、組合側の決議によってこれを一部放棄することもできる。漁業権行使規定をつくる場合と、漁業権の変更あるいは放棄、得喪変更の場合の規定とは違うという見解が出ておりまして、それは、今度の大分地裁の見解と全く反対の見解でございます。そういう見解を踏まえまして、県を通じて、現地の漁業者の同意が、円満な同意が得られるように指導いたしておりましたが、いま申し上げましたように、非常に時間がかかっておりますので、十二月の時点におきまして、そういう見解をもとに地元の漁業者が納得できるというような見通し、納得させられるという見通しで免許した次第でございます。
  24. 工藤良平

    ○工藤良平君 この漁業権確認の問題については、すでに申請が出されて、その際に、結局、臼杵の漁協におきましては、その総会における議決そのものについてきわめて問題があるということが指摘をされていたと思うんでありますが、この点については、認可の際に農林省としてはどのような判断がされておられたのか。さっきの四国のお話でありませんが、四国の場合でも、総会の議決というものがこのような問題をはらんでいたのかどうか。公有水面を埋め立てるということにおいてはあるいは同じ事例かもわかりませんが、この漁協の議決においてなお不審があるというような判断を農林省としてはされていたのかどうか、その点についてお伺いいたします。
  25. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 香川県の場合におきましても、埋め立てでございますが、漁業権放棄という全く同様のケースでございまして、香川県の場合は、漁業協同組合連合会有の漁業権でございまして、今度の場合は単独の協同組合の組合有の漁業権という違いはございますが、漁業権放棄という点では全く同じでございまして、香川県におきましても、総会の成立についても議論がございましたけれども、これにつきましても適法に総会が成立したというふうに考えておりますし、今度の場合につきましても、大分県の係官が出席しておりまして、適法に総会が成立したというふうに認められたという報告がございまして、私どもも、それをそのように解釈いたしております。
  26. 工藤良平

    ○工藤良平君 そこが非常に重大な問題でありまして、今度の公判における第一のやはり論争点というのはそこにあるわけでありまして、もちろんその内容につきまして、県の申請書に基づいて判断をしたと思いますけれども、漁民の反対する側の人たち意見というものも、別の形において農林省に対してその内容というものが説明をされているはずでありますけれども、その点について、農林省としてはどの程度の把握をされておるのか。地方庁を通じてのそういう意見でなければ、住民の意見というものは農林省は無視されるのか、その点について明らかにしていただきたいと思います。
  27. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) この件につきまして反対派の陳情もございまして、それも聞いておりますけれども、一部の人の意見でございまして、私どもとしては、最終的にきめますのは県から出ました正式な書類によってきめざるを得なかった次第であります。
  28. 工藤良平

    ○工藤良平君 県の書類の申請というものをもちろん信用するということ、現在の官庁機構からいたしますとそうかもしれません。しかし、こういうような結論が出るということは、大方の意見としては、私どもの間にはあったわけで、その点に対する水産庁の認可の過程における——これまでのあるいは将来における重要な問題ではないかと実は思うわけでありまして、したがって、この許認可の問題について、一体、農林省として、主務大臣としてどのような権限をもって、どの範囲の行政的な指導をされるのか。あるいは具体的に言いますと、このような重大な問題がはらんでいるだけに、書面だけによる審査でもってそういうことがきわめて可能なのか、それとも、でき得ることならば、農林省みずから出かけていってそれらの実情を調査をし、正しい判断を下すということが必要なのか、そこら辺についての御意見をひとつ聞かしていただきたい。
  29. 瀬尾五一

    説明員(瀬尾五一君) 漁港区域内の埋め立ての問題につきましては、漁港法三十九条第四項の規定に基づいて農林大臣が認可を与えるわけでございますが、農林大臣としての考え方は、漁港の利用上、保全上その埋め立てが支障があるかどうか、こういう観点に立って審査をいたす次第でございます。しかしながら、その場合、今回の問題といたしましては、漁業権の放棄の問題あるいは公害問題等いろいろございましたので、そういう事柄等も十分調査をし、見通しを立ててやった次第でございます。しかしながら、そのやり方といたしましては、先ほどもいろいろお話が出たんでございますが、私のほうへも反対の陳情が来ておったということは事実でございます。ということで、非常に問題のあるところでありますから、そういう免許案等をつくる場合、県の当局のほうへも、十分地元と話し合ってこういう問題を処理するようにということで、県のほうへも十分そういう指導をしてまあ出てきたということでございます。  それで、先ほど農林省のお話が出ましたが、農林省といたしましては、漁港行政上のたてまえといたしましては、漁港の保全上、利用上支障がなければ、そういう三十九条の関係におきましては認可をする、こういうたてまえでございます。しかしながら、問題は非常に重要な問題ですから、そういう問題も慎重に検討しておったということでございます。それから順序としましては、知事が免許をする場合に、農林大臣の認可を受ける場合には所在地の市議会の意見を徴します。漁業協同組合の意見も聴取いたします。それからそれに権利を有する方々の承諾書もとらなくてはいけないわけでございまして、そういうものが全部適法にそろって農林省のほうへ来ているわけでございます。しかしながら、私も先ほど申し上げましたが、それが出ましてからも、認可を与えるまでに約二カ月ばかりあるわけでございますが、その間に認可を与えるにあたりまして、かなり地元にも問題があるようでございますから、そのようなところについて十分調査をし、地元の納得のいくように、あるいは地元の納得のいく見通しを立ててからということでいろいろ検討いたしまして、十二月の二十四日ですか、に認可をしたということでございます。したがいまして、私どもが認可をした以前に、適法であるかどうかということが問題になりましたけれども、それはすでに漁業協同組合でも意思決定をしてから同意をして出してきておるわけでございます。
  30. 工藤良平

    ○工藤良平君 そういたしますと、農林省としては、その内容については別に手落ちというものは認められなかったと、そういう判断に基づいて認可をしたと、しかし結果というものは全くそうではなくて、逆の結果というものが現在出てきた。これに対して結論的に言いますと、一体、農林省としては、これからどうするのかということになるわけでありますけれども、その前にもう一つ私お聞きしたいと思いますのは、まだ詳しい公判判決内容を見ておりませんので、その点については申しわけないのでありますが、公有水面埋立法に基づいて県が非常に主張をいたしておるわけでありますけれども、これは、埋め立てによる漁民の損害よりも、経済的な影響がきわめて大きい、こういう判断の上に立ってこの埋め立てを認可をした。こういうことが言われているわけでありますが、この点について、公有水面埋立法の関係に基づく判断について、どのように考えていますか。その点についてお伺いしたいと思います。
  31. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 公有水面の埋め立てそのものにつきまして、この判断は、私どもじゃなくて県知事がやるのでございますが、先ほどから申し上げておりますように、漁港区域において農林大臣が埋め立ての認可を与える場合には、関係漁民との円満な話し合いをつけてからということを私ども原則といたしておりますが、今回は、埋め立てについて円満な話し合いがつくという見通しのもとにやった次第でございます。原則としては、あくまで事前に円満に話し合いをつけてからというふうに指導してまいりたいというふうに考えております。
  32. 工藤良平

    ○工藤良平君 特にこの中で第四条の第二号、いま私が申し上げました第四条第二号をたてにとりまして主張しておるようでありますけれども、これはあくまでも、いま次長がおっしゃいましたように、やはり地元、この漁民の納得のいくということが一つの前提条件だろうと思うわけでありまして、第二号の問題を出すという場合には、私は、特に私権と公権という問題についての重要な問題が提起されるような気がするわけであります。この場合の経済的にきわめて利益の程度が高いということですね。これは持ってまいります企業というのはもちろん私企業でありますから、その私企業の経済的な利益がきわめて大きいということと、実際に漁業権を持っておる漁民が権利を奪われて損害を受けるという——これは比較をすれば問題にならないでしょうけれども、これはきわめて私権に対して、私企業というものの企業の進出に対する重大な問題として提起されるだろうと思うわけです。これは将来におきましても各地で起こってくる問題でありますから、この点に対する基本的な考え方というものをいま少し明確にひとつお答えいただきたいと思います。
  33. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 公有水面埋立法の第四条の免許にあたりまして、免許いたしますのは県知事でございますので、この判断は県知事が最終的な責任者でございますが、今回の場合には、県といたしましては、この第四条の第一号の「其ノ公有水面ニ関シ権利ヲ有スル者埋立ニ同意シタルトキ」ということで、権利を有する者の同意をつけて回ってまいりまして、かりにそうでないとしてもということで第二号のほうを論じていると思いますので、その点につきましては、私のほうとしては、第一号のほうで処理したものというふうに考えております。第二号のほうの判断は、県知事が、かりに第一号のない場合でもこうこうだという論を吐いて、その点については判決も明確な答えが出ていないようでございますけれども、かりにという県の言い分だと私ども理解しております。
  34. 工藤良平

    ○工藤良平君 これは水産庁がそういう解釈ではたいへん困るわけでありまして、あくまでも権利を、いわゆる私権ではありますけれども、漁業権の権利を持っている人たちの了解というものが前提条件でなければならない。それは理解がとれないけれども、しかし、これはきわめて経済的に、しかもそれは公的な問題——たとえば公営住宅をつくるとかあるいは道路をつくるとか、こういう場合と私企業の場合とはおのずから異なると思うのです。判決の主張しているところは、私はそこら辺に中心があるような気がするわけでありまして、したがって、今後の公有水面の埋め立ての問題について、この判例というものはきわめて重要な私は問題の提起をしていると思うわけです。特に、水産庁として、行政的な指導、地方庁がやるからそれでよろしいということで、水産庁としては、そういうことを認めていくのか。あるいはやはりこれはあくまでも第四条の第一号というものが中心である、第二号というものはこれは最悪の条件だということに解釈されるのか、その点が明らかにならないと、今後の問題処理についても、私は、あいまいな態度で問題の処理が行なわれていくのではないかと思いますから、その点について明らかにしていただきたいと思います。
  35. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 第四条の解釈につきましては、私どもも、先生の御指摘と全く同じように考えておりまして、第一号の「公有水面ニ関シ権利ヲ有スル者」の同意があるのは大原則だろうと思います。第二号を適用する場合は、最悪の事態であろうと思います。その場合に、今度の判決にもありますように、単なる私企業について同様に見るのはおかしいという先生の御指摘も、私も全く同じ意見でございます。
  36. 工藤良平

    ○工藤良平君 そういたしますと、今後、これらの問題については、農林省としては、どのような形で行政指導をされるのか。控訴してあくまでも争うと、こういう形をとるのか。いま次長が申しておりましたように、やはり地元の漁民が納得がいくという大きな基本的な原則の上に立って問題の処理に当たろうとするのか。きわめて重要な問題でありますから、その点についての考え方をお聞きをしておきたいと思います。
  37. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) この問題の当事者といたしましては県知事でございますので、私どもは、控訴するということはございません。いまのところ考えておりませんけれども、今度の判決につきまして、漁業権の放棄に関する手続については、私どもは、大分地裁の判決には異論を持っておるものでございます。その他の点につきましては、私ども、いま申し上げましたように、大分県知事にまかしておる次第でございます。
  38. 工藤良平

    ○工藤良平君 まかしておるといいましても、これはやはり行政のたてまえとして、県から、それではこの問題処理について農林省の御見解をと、こう問われたときに、あなたたちがどのような御指導をされるのか。これは重要な問題であります。特に日本のいまの行政というものが上意下達の状態になっておりますから、おそらく、さっき申し上げましたように、漁民の中から意見が上がってきても、なかなかそれは行政の機関を通じなければ意見がいれられないという状態でありますから、私は、今後の指導の方針として、やはりいま次長が私の質問に答えたように、あくまでも住民の私権というものを尊重しながら話し合いの場で解決をしていくという姿勢、このことが堅持されていくのか。非常に重要な問題であります。おそらく県としても、農林省に対してその見解を求めるでありましょうから、その点に対する考え方を明らかにしていただきたいと思います。
  39. 藤村弘毅

    説明員(藤村弘毅君) 今度の裁判の結果につきましては、私ども、ただいま申し上げたような考えでございまして、埋め立て自体につきましては、埋め立ての考え方、この公有水面埋立法四条の考え方につきましては、先ほど申し上げましたとおり、先生のおっしゃるとおりだと私は思っておりますが、ただ、今度の大分地裁の判決につきまして、どういうふうに措置をとるかという点につきまして、その限りにつきましては、私どもとしては、漁業権の免許手続については私どもと考えが今度の判決は違うということを主張しておりますが、その他の点につきまして、漁民の同意を得る得ないという点、これはまだ問題がございますので、県として十分検討するように指導してまいりたいと思っております。
  40. 工藤良平

    ○工藤良平君 どうもあいまいではっきりしないのですが、時間がありませんから、これはまた後日時間をいただいて私はさらに詰めてみたいと思いますけれども、特に近ごろのような海水の汚濁によって漁場が荒らされ、だんだん狭められてくる、こういうような状態の中で、やはりいま生活権を守ろうとする漁民の要求というものはきわめて大きいわけであります。もちろん産業の発展というものも、私は、全く無視するというわけではありませんけれども、きわめて重要な問題でありまして、この点については、今後、水産庁として、どのような対策を講じていかれるのか。  これはまた農林水産委員会でも私は機会をあらためていろいろと基本的にお聞きをいたしたいと思いますが、この点について環境庁長官にお伺いをいたしますけれども、公害関係法規ができまして、公害の防止という問題についての基本的な姿勢が打ち出されているわけでありますが、こういうきわめて予防的な、しかもこの企業誘致というきわめて重要な問題の過程の中に、このような紛争というものは今後なお起こってくるのではないかという気がするのです。と同時に、特に海水の汚濁あるいは大気の汚染というものを予測しながら、このような問題が出てきた場合、環境庁として、今後どのような姿勢で取り組みをされるのか、その点についてお伺いをいたしたい。
  41. 大石武一

    国務大臣大石武一君) たまたまこの臼杵の埋め立ての問題につきましては、漁業権者と埋め立てとの間の問題でございまして、環境庁としては、いま口を出すべき範囲でもございませんので、これを黙って見ているわけでございますが、一般的に申しまして、やはりわれわれは国民の正しい清らかな生活環境、自然を守るわれわれには義務がございます。その考え方を中心として、その埋め立てなり、そのような問題がこのようなわれわれの考えと調和できるような方向においてこれを進めてまいりたいと、しかし、ただいま御承知のように、われわれ環境庁には、あまり大きな権限は、いまないのでございます。で、今後とも、いまわれわれがこのようないろいろな自然の保護あるいは環境保護のために規制できる面は、わずかに自然公園法とかあるいは森林法とか、都市公園法、そのようなものに守られた国土の一部だけでございます。したがいまして、今後この範囲を広げまして、そしてできるだけ日本のどの自然に対しましても、どの地域の自然に対しましても、これを守り得るような権限を持つことにいたしたい、そういうふうに考えまして、次の通常国会にはそのような法律案の提案をいたしたいと考えておる次第でございます。
  42. 工藤良平

    ○工藤良平君 最後に、通産省にお伺いいたしますが、これから特にセメントの需要と供給関係において、このような住民の強い反対の中で工場建設というものが進められるということについて、通産省としては、どのようなお考えを持っておられるか。特に大阪セメントの進出にあたりまして、今後なお問題が公判でさらに上告をして争われるということになりますと、相当長期にわたるわけでありますけれども、そういう問題についての現在のセメント業界における需要と供給の関係をあわせながら、今後のひとつ方向というものを、もしわかれば明らかにしていただきたい。
  43. 原野律郎

    説明員(原野律郎君) 今回の地裁の判決は、先ほど来お話のございましたとおり、漁業権の放棄の有効性について争われたものでございますので、特に私どもとして意見を申し上げることはないかと存じます。  工場立地そのものの一般論といたしましては、私どもは、できるだけ現地住民と意見調整をはかって、円満な工場建設が進められるという方向で従来から指導してまいっておりますので、この方面での指導は、今後とも一そう強く進めてまいりたい、かように思っております。  なお、セメント工業につきましては、現在の生産量はほぼ五千万トンから六千万トンの間で生産が行なわれておりますが、将来の需要予想といたしましては、昭和五十年度には、おそらく八千万トンの量に達するであろうというふうに考えております。したがいまして、今後のセメント工場の新増設ということも幾つか考えられる段階がございますので、それらの工場の新増設につきましても、ただいま申し上げましたような方針で工場立地の指導をしてまいりたい、かように考えております。
  44. 工藤良平

    ○工藤良平君 大体時間でありますから、問題は今後もこれは残ることでありますので、私は、機会をあらためてさらにいろいろと検討してまいりたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、特にこの問題の処理にあたっては、農林省としては、特にこの地域住民の非常に貴重な意見なりあるいは立場というものを尊重しながら、今後、県に対する指導等についても万遺漏なきを期していただきたい、こういうことを申し上げまして、ちょうど時間でありますので終わらせていただきたいと思います。
  45. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は一時に再開いたします。    午後零時十五分休憩      —————・—————    午後一時十三分開会
  46. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) ただいまから公害対策特別委員会を再開いたします。  この際、御報告いたします。  休憩前の委員会において指名を留保いたしました残り一名の理事について、田口長治郎君を指名いたします。御了承願います。     —————————————
  47. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 引き続いて質疑に入ります。
  48. 内田善利

    ○内田善利君 時間が限られておりますので、端的に質問しておきたいと思いますが、その前に、先ほどの答弁の中で、大石長官は、次期通常国会で無過失賠償責任制度を必ず提出すると、こうおっしゃったのですが、いままで公害の大多数は複合汚染であります。特に大気汚染では亜硫酸ガスの汚染、これは十年計画で川崎とか、四日市等は対策が講じられておるわけですが、これに対して救済あるいは公害対策として無過失賠償責任制度はどういうように考えられておるのか、あるいはまた光化学スモッグに対しても無過失賠償責任制度をどのように組み入れていかれるつもりであるか。また、この複合汚染をはずしては公害防止はできないのじゃないか。抜本的な公害対策としては、こういった複合汚染に対する制度をはっきり計画を立てて組み入れるべきじゃないかと、このように思うのですが、この点はどのようなお考えでいらっしゃるのか、お伺いしておきたいと思います。
  49. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 無過失の賠償責任制度につきましては、できるだけ実効がありますように法案をつくってまいりたいと思います。その中には、非常に困難な事情がございますけれども、何とかして硫黄酸化物のような複合汚染物質を取り入れたいと、こういう考えでいま作業をいたしております。  なお、光化学スモッグ等につきましては、まだ本体がよくわかっておりませんし、また東京都のような、いろいろの自動車——どこに責任を求めていいか、多数の自動車の排気ガスとか、いろいろのものが入っておりますから、そのような光化学スモッグのようなものの発生する場合におきましては、この制度は、いまのところ適用いたさない方針でおります。
  50. 内田善利

    ○内田善利君 光化学スモッグの話が出ましたが、長官は、この光化学スモッグ公害考えられるかどうか、お聞きしたいと思います。  いま非常に光化学スモッグがエスカレートしておって、町を歩いておっても非常に歩きにくい感じがするわけですけれども、実は、昨年は学校において相当大きな被害があったわけでありますが、山中長官は、天災のようなものだと、頭の髪につけているヘアピンに雷が落ちたみたいなものだと、そういうことをおっしゃられたわけですけれども、大石長官もそういうふうに考えておられるのかどうか。私は、公害として、もし万一ある日ばたばた倒れるような事態になったとしたら、これはたいへんなことだと、まだその実体は、本体は究明できませんけれども、救済対策だけはとっておかなければならないのじゃないかと、こう思うのですけれども、この光化学スモッグ公害であるかどうか、まずお聞きしておきたいと思います。
  51. 大石武一

    国務大臣大石武一君) おっしゃるとおり、光化学スモッグは、私は、公害と思っております。これは当然いろいろの発生原因その他はまだわかっておりませんが、確かに自動車の排気ガスが大きな原因であることは確かなことでございます。したがいまして、これは当然公害としてわれわれは考えてまいります。ただ、幸いに——ほんとうに幸いといいますか、それほど大きな被害を起こしておらないのは幸いでございます。しかし、今後どのような事態が発生するかわかりません。こういうことにつきまして、われわれは、何とかしてそのような緊急事態の発生することのないようにできるだけの努力をしなければなりませんし、また、もし不幸にしてそのような応急な、緊急な手当をしなければならないような事態が発生した場合には、それに対処しなければならないことも考えなければならないと思います。  そういうことで、残念ながら、われわれのほうの公害研究施設がまだ整備されておりませんので、いろいろの各研究機関に委託をいたしまして、光化学スモッグの実体につきまして基礎的な研究をいろいろお願いしておりますが、とりあえず、庁内におきましても、技術者を集めてチームを編成し、応急対策をいま考究するような努力をいたしておるわけであります。そのようなことで、一日も早くこの光化学スモッグに対する対策を立て得るような状態に立ち至りたいと願っておるわけであります。
  52. 内田善利

    ○内田善利君 その問題については、また後ほどの委員会で触れていきたいと思いますが、きょうは、私は、隠れ水俣病について若干質問したいと思います。  と申しますのは、昨年、当委員会で熊本を視察いたしまして、いろいろお聞きしたわけでありますが、当時の知事もいまここにいらっしゃるわけですけれども、そのときは、三十四年から水銀が流れておりません、サイクレーターはできたし、全然水銀は出ておりませんということをお聞きしたわけです。それと同時に、したがって患者も新しい患者発生しておりませんと、確かに、昨年いただいてきた書類では、三十六年からはずっとゼロになっております。ところが、最近いろいろの新聞その他で見聞きしましたところでは、新しく患者が最近は十三人公害病認定された、その中には四十六年発病した方もあると、また、工場からはサイクレーターの効果がなかったというようなこと、あるいは八幡プールから漏水しておったという、そういったことなどで水銀がたれ流しされておった。また、新しく患者もそのようにして認定されておる。あるいはまたいままで考えられなかった、ちょうど水俣から十キロ離れた島々ですね、天草方面の住民の中から向こうのほうの病院を訪れてくる、私は水俣病ではないでしょうかといって訪れてくる患者の方々の中から二人もそれらしい者がおられる。そういうようなことで隠れ水俣病という名前がついたんだろうと思いますが、このことにつきまして質問していきたいと思いますが、髪の毛の中に水銀が非常に多量に含まれておるということですが、これを現在の水俣病患者の頭髪の水銀の量と比較してどのような状況になっておるのか、お聞きしたいと思います。
  53. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 私、ただいま正確なところを記憶しておりませんので、つぶさにお答えできなくてまことに恐縮でございますけれども、毛髪中の水銀量と申しますのは、水銀の体内の濃度が高まりました場合に、それが毛髪中に排泄するという形で出てくるということでございます。それで、過去の数字におきまして、現在の患者のそれよりもたいへん高いというケースがあったことは聞いております。正確な数字は実はいま記憶しておりませんので、もし御必要でございましたら後ほど資料として提出いたします。
  54. 内田善利

    ○内田善利君 水俣病を認定する場合に、頭髪の中の水銀の量というのは、どの程度参考になるものですか。非常に大きなファクターになるのか、この点をお伺いしたいと思います。
  55. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 審査会が認定される場合に、当然臨床的な所見とあわせましていろいろな条件を多角的に判断して審査されるものと存じております。毛髪中の水銀量につきまして、私が記憶しておりますのは、阿賀野川の水銀中毒のケースにおきましても、毛髪の長さを何区画かに分けまして、それの中の水銀量をはかりまして、過去におけるその人の体内の保有量を推定するというようなことをやったケースがあるように聞いておりますけれども、水俣病につきましては、実はその程度のこまかいのをやったかどうかについては存じませんが、一応常識的に臨床的な判断をする場合にも、そういったようなデータは当然参酌されるものと考えられます。
  56. 内田善利

    ○内田善利君 天草方面の住民の方々の頭髪の中の水銀量を調査したことがあるんですね。熊本県の衛生部で調査したことがあるんですが、これは御存じですか。
  57. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 私、まだその報告は聞いておりませんが……。
  58. 内田善利

    ○内田善利君 これは熊本県衛生研究所の第一報、第二報、第三報という、こんながっちりした報告なんですね。この衛生部の報告を環境庁は御存じないんですか。これによりますと、相当これはもう驚くべき数字が出ているんですね、御存じないんですか。
  59. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 私、ちょっと不勉強でいまのデータを存じませんでした。熊本県の衛生研究所がかつて地域につきまして——私存じませんでしたが、天草であったかどうかは存じませんでしたが、毛髪中の水銀量を調査したデータを発表しておったということは伺っておりますけれども、さだかな数字を現在覚えておりません。
  60. 内田善利

    ○内田善利君 私は、この内容を見まして、これは新聞にも発表になったのですから、非常に驚くべき数字だと判断するわけですが、これを環境庁のほうで御存じないということはたいへんなことじゃないかと思うのです。——このデータをちょっと見せてあげてください。そのデータを見ますと、御所浦といって、水俣から八キロぐらいの対岸に、これは不知火海の、そこから見れば水俣のほうは手にとるようによくわかるような御所浦という島があるのですが、ここでは、最高を申し上げますと何ですが、最高は九二〇PPMですね。これは千百六十名調査している。非常に膨大な調査だと思うのですが、昭和三十五年度は千六百四十五名調査して、御所浦は千百六十名。そのうち五〇PPMから一〇〇PPMまでの人が百二十九名、一〇〇から一五〇までが十九名、一五〇から二〇〇までが一、二〇〇から三〇〇までが一、三〇〇PPM以上が三名もあるわけです。最高が九二〇PPM。普通の常人は一から二PPMということですが、このことからいきますと、一〇PPMから五〇PPMまでの毛髪の水銀量の方が七百八十四名もいらっしゃるわけですね。このときに水俣市内の調査が百九十九名なされておりますけれども、これは水俣のやっぱり非常に魚をたくさん食べておったとか、そういった地域住民の中で怪しい方々ばかりなんですが、これと比較しますと、非常に対岸の天草方面の住民の方々が水銀を含んだ魚類を食べていらっしゃったのじゃないかと、そのように判断されるわけです。三十六年度も同様です。全く同じようなデータが出ております。三十七年度の第三報も同じようなデータがそういうふうに出ております。それを抜き書きして書いてみたのですけれども、このように隠れ水俣病が云々されるようになりまして、また、昨年私たち委員会調査に行ったときの報告に比べましても、非常にまだまだ不顕性水俣病というのも学者の間ではお話があるようです。これは私のお聞きしましたお医者さんの話では、不全型というのですね。全部出てこない不全型あるいは遅発性、おそく発する病気、これはネズミ等に三分の一ずつ水銀を与えていけば発病するのがやっぱり三年おそく発生してくるというので遅発性と、そういうふうに簡単にわかりやすいように説明していただいたのですが、そういったものも考えられる。そういったことなどで、これはたいへんなことじゃないかということで、県の衛生部にお聞きしましたが、まだ第一次検診というようなことは考えていない、理由は何でしょうかとお聞きしましたら、そういったお医者を動員することがむずかしいし、また非常に専門的なことになるので、一斉検診というのはむずかしいと、こういうお話だったのですが、それでは新潟はどうなのかと思って調査しましたら、新潟は一万名とか、二千名とか、たくさんの方々を調査していらっししゃるわけです。こういった点について、どのようなお考えなのか、お聞きしておきたいと思います。
  61. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) お尋ねの、私がたいへん不勉強でございまして、この三十六、七、八年当時のこのデータを存じませんでした。  それからもう一点、地域の一般住民に対する検診が新潟では行なわれているけれども、熊本では行なわれておらないというようなお話でございますが、それにつきまして、県が一斉検診をすることを考えているような話は、私も伺っております。
  62. 内田善利

    ○内田善利君 環境庁はやられるんですか。どういうお考えですか。
  63. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 新潟県が独自にお考えのようでございましたし、熊本のほうも県が独自の考え方でやられるというような意向が、非公式でございましたが、私のほうへ来ております。
  64. 内田善利

    ○内田善利君 環境庁は、一斉検診を、いまのお話を聞いて、やられる計画がおありかどうか、聞いておきたい。
  65. 大石武一

    国務大臣大石武一君) これは、一斉検診というものはできるだけ広くやりまして、そうしてまた処理されない患者の発見につとめることが大事だと思います。ただ、どこが主体となってこの検診をやるかと申しますと、やはり県自体が中心となることが望ましいと思います。われわれが幾らやろうとしましても、手足もございませんし、公害に関するいろいろな権限というものは、みんな大きな権限を地方自治体に移譲してございますので、ただ、それも十分な指導あるいは調査を行ないまして、それが自治体においてそのような一斉検診を行なうべきであるという方針をとっておるわけでございます。
  66. 内田善利

    ○内田善利君 私は、いまの実態から、もう少し環境庁が音頭をとってでも、この水俣については、広域一斉検診をすべきじゃないか、このように思うわけです。  と申しますのは、昨年はもうゼロだ、もう水俣病発生は終わったんだ、このように聞いて帰ったわけですけれども、再び四月、十三人——十八人ですか、大量の公害病認定が行なわれておりますし、またその中には、毛髪の中に水銀の多量にあった方が入っているわけです。その認定された中に、そういったことを考えましても、広域的な一斉検診をこの際環境庁が音頭をとって、助成金ですか、補助金ですかを出してこの際思い切ってやるべきじゃないか、このように判断するわけです。天草の町立上天草病院を訪れましていろいろお聞きして、患者の方々にも何人か会ったんですけれども、私は医者じゃありませんからよくわかりませんが、いままでは水俣のほうだけ問題にされておりましたけれども、こちらの島々にはそういう方々がいらっしゃるんじゃないか、このように思いますので、ぜひひとつ環境庁長官、一斉広域検診をしていただきたいと思います。いかがでございましょうか。
  67. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 御趣旨はよくわかりました。なるべくそのような一斉検診を行なって、できるだけ未発見の患者を発見するような方向で努力してまいりたいと考えます。
  68. 内田善利

    ○内田善利君 それから、先ほど申しましたけれども、十年前にこのような重大な毛髪中の水銀検査をしておきながら、これが環境庁のほうで掌握されていなかったということは、十年たった今日、重大問題じゃないか、そのように思うのですが、その点いかがでしょうか、環境庁長官
  69. 船後正道

    説明員(船後正道君) 十年前の資料でございまして、私ども想像いたしますに、厚生省においてはあるいは御存じだったかもしれませんが、環境庁発足後まだ二十日程度でございます。その点不勉強でございますが、まことに申しわけないことと存じます。さっそくこの内容につきましては検討いたしまして、今後の参考に資したい、かように考えます。
  70. 内田善利

    ○内田善利君 私は、そのために厚生大臣をきのうは要求したんです。そうしたら、厚生省のほうでは、一切環境庁にお譲りしましたのでと、じゃこの問題もそうかと言ったら、そうですと、このように言明されておりましたので、いまの発言は無責任な言い方だと思います。私は、環境庁責任を持っていただきたい、このように思いますが、いかがですか。
  71. 大石武一

    国務大臣大石武一君) ちょっと、私、質問の御要旨がちょっとのみ込めませんでしたので、恐縮ですが、もう一ぺん簡単に要旨を説明していただきたいと思います。
  72. 内田善利

    ○内田善利君 いまの毛髪中の水銀の量を県の衛生部が調査したわけです。その調査した事項を、所管の厚生省が当時のものも知らなかったということは、私は、重大なミスじゃないかと思うのです。もしこれが何の役にも立たない調査ならばいいですけれども、この中から、この間、四月二十日に認定になった患者の方々も毛髪中の水銀量が多かったのです。そういったことから、非常に重大な資料じゃないか、そのように思うのですけれども、それを知らなかったということは重大なミスじゃないか、そのように思うのですけれども、その点いかがお考えですか。
  73. 大石武一

    国務大臣大石武一君) これは残念ながら私たちもいま初めて聞いたのでございますが、厚生省が知らなかったのでございますから、環境庁もこれは知らないのは当然でございまして、はなはだ申しわけありませんが、いま、事実われわれはここで初めて聞いた話でございますが、このように毛髪中の水銀量が多い場合には、おそらくは水俣病患者認定の判定をする場合の私は一つの基礎的な標準ではないかと想像いたしますけれども、そういうものは、熊本県においてそのような水俣病を認定する場合には、おそらく判断の一つの基礎として使っていらっしゃるのではないでしょうか。私は、ただの想像でございますが、いまの毛髪中の水銀量については、相当患者認定の場合役立っているんじゃないかと思うのでございますが、いま初めて聞きましたので、推定の範囲で恐縮でございますが、こんなことが答弁でございます。
  74. 内田善利

    ○内田善利君 これ以上申しませんが、要するに、これは大きな資料だと思うのです。これを県衛生部が発表しなかったのかどうか、その辺よくわかりませんが、これを発表すれば企業側が非常に困る、また天草のほうに新しい患者がたくさん出てくるということになるとたいへんだ、そういうことで発表を差し控えられたのかどうか、このように思うわけです。と申しますのは、昨年、この委員会委員派遣して調査に行ったときには、もうこれで水俣病は終わりました、このように四十五年まで書いてあるわけです。ゼロ、ゼロ、ゼロと書いてあるわけです。そして説明も、熊本のほうの工場からは水銀は出ていない、こう言ったわけです。ですから、もしこの毛髪中の水銀量が——ばく大な資料ですから、一人々々住所から氏名と、毛髪中の水銀の量が書いてある資料なんです。それをまとめたのがいま差し上げました資料なんですけれども、そういった重要な資料をうやむやにされておったということは、私は、重大な行政上のミスじゃないか、このように思うわけです。ひとつそういったことから、その資料はもし御存じないならば、これをひとつ検討いただきまして、公害認定の資料にしていただきたいと思うのですが、ところで、いま厚生省のほうに行政不服審査請求をしていらっしゃる方は何名いらっしゃいますか。
  75. 船後正道

    説明員(船後正道君) 九人の方でございます。
  76. 内田善利

    ○内田善利君 その九人は、いつ認定決定になりますか。また、その場合認定しろと、こういうこともあり得ると思いますが、あるいはこれはもうだめだ、全部だめだ、こういった場合、その後の患者といいますか、病人には違いないと思うのです。厚生省まで申請されたのですから、病人であることには間違いない。そういう方々に対する環境庁の姿勢はどのようにされるか、お聞きしたいと思う。
  77. 大石武一

    国務大臣大石武一君) その九人の認定棄却の患者につきましては、いま不服の申し立てがございますので、それをわれわれが検討中でございます。これは態本県における認定審査会がその決定をすることになっておりまして、われわれは、そのような判断を中心として一応は不服の裁定をしなければならぬことになるわけでございますけれども、御承知のように、このいろいろな公害に関する法律は、広く疑わしい者もできるだけ救済するような精神になっておるわけでございますから、われわれは、その精神を十分に体しまして、できる限りその水俣病棄却の患者が広い見地から認定患者として救われるような気持ちでいろいろ検討してまいりたいということだけを申し上げる次第でございます。
  78. 内田善利

    ○内田善利君 聞くところによりますと、熊本の認定は非常にきびしいと、新潟のほうはそうでないと、こういうお話を聞くわけです。そして水俣の場合は認定認定しないかの両方どっちかだけれども、新潟の場合はその間に要観察制度というものが設けられておるように聞いているわけです。その要観察の方々は、認定にはならなかったけれども、一日の医療費とか、あるいはいろいろな生業資金の貸しつけとか、いろいろしてあげて、行政上の救済がなされておるように聞いているわけですが、こういったようなことで、熊本の場合と新潟の場合と違うということについて、どのようにお考えですか。またどうなさっていくおつもりなのか、お聞きしたい。
  79. 船後正道

    説明員(船後正道君) 御承知のとおり、公害による被害者認定は、各県に設けられました認定審査会の意見を聞いて知事がきめるわけでございますが、新潟の場合は、疾病が発現するまでの期間が比較的短かった。これに対しまして、熊本の場合は相当長期であったというような、疾病態様のほうの相違がございますけれども、審査会の診定あるいは県の認定自体につきまして、両県の間で差異があるというふうにはわれわれは考えておりません。また、御指摘のように、その認定に至らない患者の取り扱いの問題でございますが、はっきりと認定できないという者はあるいは保留ということにいたしまして、その間の措置といたしましては、先生御指摘のように、新潟県では、これを要観察者といたしまして、県の単独の措置として医療費の支給等のことを行なっております。他方、熊本県におきましては、これも県の単独の措置といたしまして、認定に必要な各種の検査に要する入院費用とか検査料等を県単独で持っているという措置をとりまして、この扱いに両県若干の差があるようでございますけれども、認定以後の扱いにつきましては全く同様でございます。
  80. 内田善利

    ○内田善利君 やはり熊本の場合も要観察者制度をつくったほうがいいと思うのです。特に未認定患者というのは、熊本県の場合は、大きな社会問題にこの調子でいったらなるのじゃないかと、このような不安を持つわけです。というのは、先ほどから申しますように、天草——離島のほうは、いままで原因対策に追われて、そういった一斉検診も行なわれていないし、健康調査も行なわれてないし、放置されたままたくさんの方がいらっしゃる。この中で九二〇PPMであった方はもうなくなっておられるのです。そういった方々がいらっしゃることを考えれば、この未認定患者救済といいますか、そういった意味からも、せめて新潟と同じような要観察者制度を設けて、未認定患者の中から、やはり病人は病人なんですから、救済していくという制度を設けるよう環境庁のほうで指導していただきたい、このように思いますが、いかがでしょう。
  81. 大石武一

    国務大臣大石武一君) それはまことにけっこうなお考えだと思います。やはり疑わしい者につきましては、ある期間いろいろな手当をしながらこれを観察することが私は正しい行き方だと思いますので、熊本県のほうにもそのような連絡をいたしまして、おっしゃるような措置に出るようにひとつ指導いたしたいと思います。
  82. 内田善利

    ○内田善利君 非常にありがたいことばだと思いますが、もう一つお聞きしたいことは、先ほど申しましたように、遅発性というやつですね、おそく患者として出てくる遅発性。それから不全性、五つの条件があって、そのうちの一つとか二つとか、あるいは毛髪中の水銀の量が多いとか、いろいろ出てくるようなそういった不全性、あるいはマスク水俣病といわれているそうですけれども、そういった病人の方々をやはり一斉検診等によって調査して、やはり基準を設けるなりして、公害病とまではいかなくても、こういった方々にも基準を設定して、何らかの救済措置——通院の費用等を差し上げるとか、そういったことをやれないものかと、このように思うわけですが、上天草病院の江頭という先生は、わざわざ船が着くところまで迎えに行って、足がしびれてかなわない、あるいは頭が少しおかしいというような方々を自分で自動車に乗せて病院まで連れてきて診察して、そして昼食も自分の給料の中から差し上げてやっているというような話を直接お医者さんから聞きました。そういうようなことをしているお医者さんもおるのですから、この際にそういった不全性、遅発性というような患者に対しても何らかの基準を設けて、少しでもそういう方面で救済していったらどうかと、このように思うのですが、この点はいかがでしょう。
  83. 大石武一

    国務大臣大石武一君) まことにけっこうな御趣旨でございます。ことに天草の病院の医者がそのようなあたたかいヒューマニズムに生きていることは、非常にうれしいことでございます。いま、とかく医者の倫理性が批判されていることが多いものですから、特にうれしいお話でございます。いま遅発性、不全性というお話がございました。遅発性でも、不全性でも、そういう名前がつくからには、これは水俣病の患者だと思います。いまはやぶ医者になりまして忘れましたが、ともかくどのような患者にしても、教科書にあるような病状が一〇〇%そろっている患者はございません。やはりどれかの主要な病状の一つなり二つなり、あるいは五つなり六つなり必要なものを取り上げて、われわれは、それによって患者の診断を下すのが医学上の常識でございます。そういう意味で、遅発的なものであろうと、あるいは症状が全部そろってなくとも、十分に検討すれば、その患者が本病であるかどうかということは大体見当がつくと思いますし、また疑わしい者につきましては、先ほど申し上げましたような要観察者というような立場をとらせるとか、あるいは法の精神からもっとあたたかい気持ちで広く包含するとか、いろいろな方法がございますので、そのようなひとつできるだけ患者のためになるような措置に出るように、熊本県のほうに十分に指導してまいりたいと考えております。
  84. 内田善利

    ○内田善利君 最後に一問お聞きしたいと思います、時間が参っておるようでございますから。通産省の方、見えておりますか。——  先ほども申しましたように、三十四年から水銀はたれ流していないということであったのですけれども、チッソ工場からの工場廃液の中に水銀が入っていたということが熊本大学の入鹿山教授の論文の中にも書いてあるわけですが、特に、私たち見せていただいたサイクレーター、二度も三度も見せていただいたのですが、帰りがけにあそこの水を飲んでみせようとされたわけですけれども、あの八幡。フールの漏水あるいはサイクレーターの効果がなかった、こういうことについては、どのように掌握しておられますか。  それと、まとめて質問しますが、塩化ビニール製造工場をつくった件で福岡の通産局に申請したときには、申請したのは昨年の十一月ですか、十二月ですか、ところが、もうそのときは二月から操業していた。操業する場合に廃液の処理を考えないで、廃液処理も全然やらないまま、考えないまま工場を設立した、そして第十管区海上保安本部には海上投棄まで申請したと、非常にこれは有機物の悪い廃液をそういうことまで考えたということですが、そういうことについては、どのように指導していただいたのか、掌握されておるのかお聞きしまして私の質問を終わります。
  85. 久良知章悟

    説明員久良知章悟君) ただいま先生から、チッソの水俣工場が三十四年以来水銀を流していないということであるが、若干場合によっては流したこともあるのではないかということ、それから第二には塩化ビニールの工場が申請から操業に至る期間があまりにも短い、それから廃棄物の処理の施設が不備である、海上投棄の申請もしておるというふうなお尋ねがあったわけでございますが、このお尋ねの具体的な点については、ただいま申しわけない次第でございますが、私どもデータを持っておりませんので、至急調査をいたしまして御回答さしていただきたいと思います。
  86. 小平芳平

    小平芳平君 大石長官がたいへんに積極的な姿勢で公害地を視察され、あるいはきょうの内田委員質問に対する御答弁でも、積極的に公害と取り組もうとなさっておられる点、私は、たいへんうれしく思います。  きょうは、わずか三十分の時間でありますので、長官におもに姿勢につきまして、具体的な問題を二、三取り上げながら公害に取り組む姿勢につきましてお尋ねをしたいと思います。  初めに、いま隠れ水俣についての質問がございましたが、これは阿賀野川流域においても毛髪の水銀蓄積の検査はやっているわけですから、発病者が何PPMから何PPMくらい、それから発病してない人がどのくらいという結果報告はもうとっくにされているのに、それに対して何ら御答弁がないということ、こういう点は環境庁がもっと組織を拡大するなりあるいは充実をしていく必要があるのじゃないかと思うわけです。  それからもう一つは、イタイイタイ病についても富山の衛研で潜在的な患者が相当数いるということを発表したか、一部新聞に報道されております。そういう点、事務当局では報告を受けておられますか、イタイイタイ病の潜在患者については。
  87. 山本宜正

    説明員(山本宜正君) 私、新聞報道でありましたのを読んだ記憶がございます。日にちはさだかに実は覚えておらないわけでございますけれども、県のほうからは公式に報告は受けていないと記憶しております。
  88. 小平芳平

    小平芳平君 したがいまして、熊本県では十年前にあのような発表をしている、水俣病についてはですね、しかもそれが九〇〇PPMなんです。全く常識はずれのとんでもない高い数字が十年前にもう出ていたということ、しかもまた、いまの富山県のイタイイタイ病についてもそういう報道がなされているにもかかわらず、環境庁がそれを把握してないということ、そういう点、やはり長官としてより一そうの内容充実が緊急の問題ではないかと思いますが、いかがでしょう。
  89. 大石武一

    国務大臣大石武一君) お説のとおり、われわれは、できるだけいろいろな実態を十分に把握して、それに対する対策を立てることが肝要でございます。不幸にして環境庁は発足してわずか三週間ばかりでございますけれども、まだ準備が不十分でございまして、十分なお答えができないのはまことに残念でございますが、以後心して、できるだけそのような手落ちのないように努力してまいりたいと考えております。
  90. 小平芳平

    小平芳平君 それから、これは公害裁判についてですが、この点については、午前の委員会杉原委員からいろいろイタイイタイ病判決をめぐる御質問があり、御答弁があったと伺っております。したがいまして、私が重複して申し上げることは避けますが、やはりこの公害裁判は、長引けば被害者の方が非常に苦しむわけでありますね。これは長官が四日市でお会いした藤田さんという方、この方も四日市では裁判を起こしていらっしゃる一人ですが、非常に衰弱をしていらっしゃるということ、また、なお四日市のほうは、九名のうちすでにもう二人がなくなってしまったということです。したがいまして、公害裁判は早く判決を出していただきたいことと、それからまた企業の側としても、判決が出たにもかかわらず——それはまあ憲法に保障された裁判を受ける権利ですから、これに対して立法府や行政府がとやかく言えないわけでありますが、公害被害者という特別な立場の方々に対する環境庁としての配慮、私は、この配慮については予算委員会で佐藤総理にも質問したことがあるのですが、佐藤総理は、イタイイタイ病判決の出る前でしたが、もし判決が出たような場合には、会社控訴控訴で十年裁判、百年裁判を続けるよりも、早くけりをつけ、そして総理のことばの表現でいえば、被害者の方に安心して療養していただきたいと、このように総理は言っておられましたが、長官のお考えはいかがでしょう。
  91. 大石武一

    国務大臣大石武一君) いま私の気持ちとしては、やはり総理と同じ気持ちでございます。ただ、ほかの水俣なり、四日市の裁判につきましては、詳しく申し上げることもなりませんけれども、イタイイタイ病につきましては、幸いに無過失賠償責任の方針が明確にされまして、それで一審の判決があったわけでございます。まことにけっこうなことだと私は思います。その後も第六次までですか、いろいろな裁判が残っているようでありますが、これも、このような第一回目の一審の判決がありました以上は、必ず私はそれは残りの裁判も促進されるものと確信をいたします。そういうことで促進されると思いますし、また会社側控訴されまして——それはそういう権利はございましょうから、われわれがとやかく申すことはできません。強制もできません。早くきまればいいという気持ちは持っておりますが、われわれは何も申し上げませんけれども、御承知のように、裁判は仮執行の宣言といいますか、そこでとりあえず裁判判決のあった金額は一応被害者たちに、原告側に引き渡すような仮執行の処分が行なわれまして、そうして一応のそういう手が打たれたわけでございますから、そういう方向を見ましても、私は、患者に対するそのような賠償の道は早く開かれていくのではないか、こう考えて、それを希望しているわけでございます。
  92. 小平芳平

    小平芳平君 仮執行の宣言は、確かに裁判所としては、被害者のほうにできるだけの配慮をしてくれたわけですが、いかんせん会社控訴しますと、その第二審、第三審の判決を待たざるを得ないというのが今日の実情で、その点についてはとにかく公害裁判は、公害被害者はそもそも本人の不注意とか本人の不摂生ということではないわけですから、一刻も早く争いがけりがつくようなことを私は望んでおります。その点は、長官も望んでいるとおっしゃいますので、けっこうだと思います。  それから、長官がこの四日市の公害地を視察されたそのときに、私は、新聞報道を読んだだけでございますので、実際は長官のお気持ちはいまからお尋ねするわけですが、四日市の空は思ったよりきれいだと、そして公害防止対策は進んできたというような趣旨の発言をされているように報道され、患者は憤慨しているわけですが、これは四日市がきれいになったどころではなくて、この研究報告によりますと、汚染の広域化があらわれ、かつ増産を考慮するとき、必ずしも満足すべきものではなく、さらにその対策の強化が望まれるということを三重県立大学医学部産業医学調査所でもって報告をしているし、公害白書を見ても大気汚染は深刻化し、広域化しているという、そういうことが前提でこれから長官取り組んでいただかないことには、それをぼっと公害地へ行きましてこれはきれいだ、だいぶ効果があがったというようなことは、長官おっしゃったのではないかもしれませんが、そういうことじゃだめじゃないでしょうか。
  93. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 私は、確かに新聞報道にありますとおり、わりあい思ったよりきれいだったと言ったと記憶いたしておりますが、率直にそう感じたのでございます。私は、もっともっとどろどろしたきたない、ほんとうに煙だらけの——あまり公害地に行ったことがありませんので、海はごみだらけで、ほんとうによごれたものと想像して参ったわけでございます。その想像よりは——もっとも当日は公害研究所、公害研究センターですか、ちっとも何も悪いデータが出てこなかった。そういう天気でもあったと思いますが、わりあいに思ったよりきれいなものですから、率直に言ったわけでございまして、それですっかりうまくいっているというのではございません。ただ、私は、いろいろあそこで感じたことでありますけれども、一度ぶっこわした生活環境というものは、これを取り直すにはとうていなみなみの努力ではできないということを痛感いたしました。おそらくこわすのは簡単なことだと思います。各企業がいいかげんなことをしている間にあのような——いいかげんと言ったら失礼ですが、仕事をしている間に、いつの間にかあのようなものすごい公害の町になってしまったのです。それを取り直す、もとの姿の町に返すことは、おそらくまたもとの姿に返すことはできないかもしれませんが、多少でも回復するには、知らず知らずの間にそれをこわすことに払われたエネルギーなり、費用なり、時間なりに比べますと、それの何百倍何千倍の金なり、時間なり、努力が要るように私思いました。これはたいへんなことだ、何としても公害というものは予防しなきゃならぬ、未然に防ぐことが一番大事であるということを痛感してまいりました。同時に、やはりいろいろと県でも市でも努力はいたしております、いろんな様子を聞きますと。その効果が多少あらわれている感じがいたします。これはやはり努力するものにはある程度、はなはだ失礼でありますが、ほめてやっぱり努力させることが大事だという気がいたしました。そういう気持ちから、やはり努力すれば効果はあるというあかしを見出した、ほんとうのあかしでございます。そういうことを言ったのでございまして、私の気持ちはそういうことです。御了承願いたいと思うわけでございます。
  94. 小平芳平

    小平芳平君 努力すれば効果があらわれる、それはけっこうだと思います。ただ、私たちがある企業を視察させてくださいと言いましても、あとから聞けば、もう二、三日前から大掃除をしてたいへんだということを何回も経験いたしました。そしてまたこの四日市の方々の発言は、大臣が来れば空もきれいになって、においもなくなる、毎度のことさ、きっとコンビナートの工場が加減しているんだろうというふうに言っておりますのですよ。したがいまして、大臣がいついつ行くよと言って、それで行ってみた、きれいだと、これはきれいだで済まされないんじゃないですか。
  95. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 大臣が行くからといって三日前、一週間前あるいは半年前から、かりにそのきたないところを隠そうとして幾ら努力をしても隠せるものではございません。必ず実態はわかります。そういう意味で、これはやっぱりたとえ前ぶれをしても見て歩くことだと思います。見て歩くことが大事だと思います。全部一〇〇%実態を隠すことはできません、何といいましても。ですから一%か二%か、五%かしりませんが、ある程度のごまかしはできましょうけれども、大きな本件は隠すことはできないと思います。そういう意味で、私は見て歩きます、努力をして。たとえばいろいろと四日市にしても公害防止の整備計画をいま立てておりますが、大体七、八億の金を出してやろうという、それでも一部しかできないんですが、それでも努力を重ねておりますことについて、ある程度その努力を促進させるように、その努力の働きかけをある程度認めてやらなければならないと思います。そういう意味でございます。
  96. 小平芳平

    小平芳平君 努力は認めてやらなきゃなりませんが、それじゃ大臣、工場の煙やガスは二十四時間全く同じように出ておりますか、三百六十五日全く同じように出ておりますか。
  97. 大石武一

    国務大臣大石武一君) ちょっとどういう御趣旨か、いまの御質問の御趣旨はわかりませんけれども、どういうことですか。
  98. 小平芳平

    小平芳平君 要するにガスならガスが、煙なら煙が三百六十五日毎日同じように出ているんではないんです。ですから大臣が四日市に住みついて、そうして三百六十五日住んでいたらよくなった、悪くなったということは実感としてわかると思うんですが、行ってみただけでこれはきれいだ、これは実際に効果があがったというようなぐあいにはいかないということをこの報告書は述べているから私は言っているんです。私も、四日市に三百六十五日住んでいるわけじゃありませんけれども、こうした報告書が、研究した結果広域化し、深刻化しておると述べておる。それに対して大臣が、思ったよりきれいだということじゃ済まされないということ、それが一つと、もう一つはぜんそくは精神だ、それももう医学の上からぜんそくも気からということは、お医者に聞いてみましたら、そうしたら大臣の趣旨は、これこれこういう趣旨だということを私は聞きました。かといって、公害地で自分の不注意や何かでぜんそくになった方々ではないわけですから、したがって、これから公害と本格的に取り組もうとおっしゃる大臣が、そういう公害で病気になっておる方々に対して、ぜんそくは気持ちが大事だよというのは適当じゃないじゃありませんか。
  99. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 私は、いまの小平委員のお話のようなことをあとで実は新聞記事を見まして、なるほどと感じました。これは私の思慮が足りなかったと思います。私の申しましたことは、私自身も長い間医者をやっておりまして、私自身もぜんそく持ちでございます。実はぜんそくの経験はありますので、ぜんそくの場合は、もちろんぜんそくを起こす原因がある、おそらくいろいろな排気ガスだと思います。四日市の場合にもいろいろな原因がある。私の場合には大体小さな綿くずでございますが、そういう原因があって、それが私の気道内にそれが入った場合に非常に反応を起こしてぜんそくが起こるのでありますが、とにかくそういうことでありますけれども、ぜんそく患者の一番の共通なことは、精神的にもその病気が促進されることでございます。ぜんそくになりはしないか、なりはしないかという不安がありますと、どうしてもやはり神経質になります。ぜんそくをより起こしやすい状態は確かにございます。そういうことで、患者に対してぜんそくは気持ちを強く持たないと起こりやすいから元気を出しなさい、これは医者として普通の発言だと思います。医者としてはもっともな発言だと思いますが、そのもっともな発言があのような非常な悲惨な、しいたげられた方々に対しては通用しないということがはじめてわかりました。やはり別の感覚をもって、別の思いやりをもって接触しなければならないということをはじめて痛感しました。自分の思いやりの足りなかったことを恥じ入ったわけでございますが、そういう気持ちで今後対処してまいりたいと思います。
  100. 小平芳平

    小平芳平君 ですから、私は、お医者さんの御意見は十分伺いました。私がいま申し上げた趣旨は、大臣も同感だとおっしゃいましたので繰り返しませんが、要は大石長官が来られたが、お医者さんが診察に来たと受けとってないわけですから、長い間何年来のぜんそくの苦しみ、家庭の悩み、その根本的な解決、その最高責任行政上の責任を持った長官が来られた、その長官がいつもお医者さんが言われると同じことを言っておられたんでは、聞いておるほうががっかりするし、また、そういうことで一体公害対策ができるのかということになると思います。この点はけっこうです、大臣同感だとおっしゃいましたから。  それから次に煙突を高くすること、これは通産省の問題かもしれませんが、煙突を高くすることも感心しませんですね、長官。結局、煙突を高くしろ、それで高い煙突を何本もつくる、そこで今度は増産体制になったりしますと、結局は基準以内だといっても汚染が広域化する、深刻化する。煙突を高くするだけではもう何ら解決にもならなくなってしまう。したがいまして、煙突を高くすること、そういうことは私は賛成しません。できませんが、もう一つは、地域を拡大しなければいけないと思うんですね。要するに被害者救済地域内に住んでないと対象にしてくれませんから、そこでもって地域内に住んでないために同じ発作が起き、同じ病気をしていても対象に入らない人が出ているわけですから、これは四日市もそうだし、それから川崎でもそうだし、したがって、この際そういう隣接地域を拡大することと、そしてまた、いろいろな意味でクローズアップされた静岡県の富士市とか、こういうところも指定地域にするような検討をこの際大至急進めていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  101. 大石武一

    国務大臣大石武一君) できるだけ実態に応じまして、対象地域を拡大することは当然だと思います。ただその対象地域をさらに追加する場合には、やはりそれだけのしっかりした根拠によって、無制限というわけにまいりませんから、やはりしっかりした根拠によって科学的な厳密な検討の上で対象となるものはできるだけ広げてまいりたいと私は思っております。
  102. 小平芳平

    小平芳平君 その科学的な根拠でも、明らかに汚染地区と対象地区を比べまして、そして罹病率も、そういうことも科学的な根拠になるわけですが、そのことを示して私が声を大にして言っても、それはまだ地域が広域化してないとかいろいろなことを言って、いままで厚生省地域拡大をしなかったところがたくさんあるわけですが、そういう点、私は、環境庁長官環境庁発足にあたりまして、従来のそういうまだ広域化してないとかいう単純なことじゃなく、積極的な姿勢で取り組んでいただきたいということを私要望いたします。  それから時間が参りましたので、足尾の鉱害につきまして、この点は環境庁でどなたか——足尾の鉱害につきまして最後に質問して終わりますが、第一には明治三十八年、九年、廃村になって北海道へ移転した人がいらっしゃるわけですね。その方たちが六十年ぶりに故郷の土を踏む、復帰の期待を胸に秘めて、こういう報道が出ております。現にいらっしゃっております。こういうことについて、足尾の問題は明治以来の問題でいろんなことがたくさんありまして、ちょっといまここで全部やるわけにはまいりませんが、こうした足尾のいまの廃村になったこの部落、この村は、足尾の鉱山から見ると百キロくらい下流の村です。そしてまた山の製錬所周辺では、明治以来煙突をつくってはいけない、那須の御用邸か何かあるために煙突をつくってはいけないといって、わざわざ煙を谷にはわせたというようなことをしきりと会社説明をしております。ですから、こういうような足尾周辺の惨たんたるはげ山、そしてまた流域の農業被害、これがいま問題になりつつありますが、こういう点についてどのように取り組まれるか。
  103. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) 足尾銅山の問題につきましては、いまおっしゃった問題二、三あると思いますけれども、一つは、周囲のはげ山云々の問題につきましては、これは私ちょっとしろうとで、直接関係はございませんけれども、おそらく排気が主ではなかろうかというふうに考えるわけでございますけれども、それにつきましては排気のほうで対処するということになろうかと思っております。  それから水質の汚染につきましては二つございまして、足尾から出る水をかんがい用水に使いまして農作物に被害が出るというような場合の水質の維持の問題と、それからその水が土壌に関係を及ぼしまして、銅等が土壌の中に蓄積しまして農作物に被害を起こすというような問題があるわけであります。こうした二点でございますけれども、現在、まず水質の維持につきましては、四十三年に旧水質の保全法によりまして水質をきめてございます。渡良瀬川の高津戸というところでございますけれども、そこにおいて農業の関係やその他を勘案いたしまして、銅の含有量が〇・〇六PPMに維持されるというようなことを目標にいたしまして施設をするということになっておりまして、現在、大体かんがい時平均〇・〇五くらいの水準が維持されているというふうに私ども考えております。その場合におきます鉱山の山元におきます排出基準は一・五PPMということになっておりますが、大体そういうようなことで現在は維持がされておるというふうに考えておるのでございます。  それから、あとの問題の土壌の関係でございますけれども、昨年の国会におきまして土壌汚染防止法が成立いたしまして、土壌につきましては有害物質を指定をいたしまして、地区を指定し、対策を樹立をするということになっておりますけれども、現在まだその有害物質の中に銅を指定しておらないわけでございます。と申しますのは、銅がどれくらい蓄積をしたならば農作物にどれだけの影響が起こるかというような因果関係が必ずしもまだ現在明らかになっておりませんので、現在その調査を進めておる段階でございまして、できるだけ早くそのような関係を明らかにいたしまして、法律に基づきます地域の指定要件を、これは政令でございまするが定めまして、それによって地域を指定し、対策を樹立し、客土その他の事業をするというような段取りになるわけでございます。私どもは、その要件の策定を現在急いでいるという段階でございます。
  104. 小平芳平

    小平芳平君 ちょっと長官、いまの御答弁では満足できないわけですが、足尾銅山、足尾からの煙による被害、そしてまた水質汚濁による被害、これはきわめて深刻なものがございまして、それが〇・〇五PPMを保っているから安心だというようなことにはならない。きわめて深刻な被害がたくさんございます。私たち調査し、分析をやっているところですので、結論は出ておりませんですが、しかし、この鉱害に取り組む取り組み方としまして、現在の水質基準に合っているからというようなことではとても済まされない。長年の被害があるわけです。長年の問題を流域の方がかかえていらっしゃる。したがいまして、きょうは、もう一歩積極的な取り組み方を要望いたしまして終わります。
  105. 大石武一

    国務大臣大石武一君) これは非常に大きな問題でございます。もうこれをもとの姿に戻すのは容易な努力ではありませんが、おっしゃることは妥当だと思います。私も、そのような方向に向かって前進するように努力してまいりたいと思っております。
  106. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 御質問いたします。  今日、公害を出してかまわない、環境を汚染してかまわないということを本気で考えている人というのは、私はいないと思うのです。何とかなくしたいということだし、そのためにどうしたらいいか、口先だけ言ってみてもなかなか公害はなくならないものだというのが現在私たちの立っている時点だと思います。ところが、実態を見ますと、なくしたいという気持ちとうらはらに、たいへん利害関係が複雑に錯綜しておりまして、現実にどうやってその糸目をほぐしていくかといっても、なかなか解決ができない。それぞれに生活なり健康がからんでくる。どうしようかと言っているうちに事態がどんどん悪くなってきたというのがこれまでだったと思います。そういう中で環境庁が発足いたしまして、国民環境庁に対する期待というものはたいへん大きなものがあると思います。そういう意味で、これから新しい仕事に取り組んでおいでになる長官の基本的な考え方を伺いたいということで二、三御質問をいたしたいと思います。  最初に、環境庁の任務と役割りということについて、あらためての御質問になりますが伺いたいのですが、公害を防止する、環境を保全するということは、平たく言いますれば、日本をどういう状態で保っていくかということになりますから、たいへんすその広い、幅広い問題に対して取り組んでいくということだろうと思います。そうなりますと、今日の縦割りの行政の中ではなかなか解決ができない。しかも、行政の対象自体が利害関係が入り組んでいるということになりますと、縦割り行政を越えた何らかの機関が必要になる。これが環境庁ができた一番大きないきさつでもあったと思います。その意味で、任務の目的を拝見しますと、やはり出てまいりますのは、基本政策の樹立なり推進ということになりますが、その前提としての調整業務、さらには基準の確立と監視ということになると思いますが、そうなりますと、たいへん大きな仕事を環境庁としてはしょっているということになるのですが、先ほど午前中の質問でしたか、長官のお答えに、残念ながら現在たいへん力がないので、自然公園とか国定公園というところが、まあできるせい一ぱいだと、たいへん正直なお答えだとは存じます。しかし、目的の中では十何番目かのところを例示としておっしゃったわけで、気持ちとしては基本政策の樹立、推進、さらには非常にむずかしい問題ではありますけれども、縦割り行政の中でどうやってそれを調整をしながら国民の合意が得られるような政策を打ち出していくか、これが環境庁の最大の任務ではないかと思います。あらためての質問ですが、長官の御意見を伺いたいと思います。
  107. 大石武一

    国務大臣大石武一君) ただいまの栗林委員の御見解なり、御方針は全く妥当で、私もそう思います。そのような考えで私もこの行政を進めてまいりたいと思っております。
  108. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 そういう観点に立って、多少はみ出すかもしれませんけれども、二、三伺いたいと思うのですが、その前に、これまでの質疑の中で多少疑問が残りましたので、二点ばかり補足的に伺いたいと思います。  一つは、無過失賠償責任の問題ですけれども、次の国会になるべく内容充実した形で提案をしたいという御意見、たいへんけっこうだと思います。この無過失賠償責任の問題というのは、考え方として、まあ産業なり企業の社会的責任を明確にしていくんだというねらいが一方ではありますけれども、もう一つは、不幸にして公害が起こった場合に被害者救済を急ぐというねらいも反面ではあるんだと思います。その場合に、これは現在の実態でも実はある問題ですけれども、無過失賠償責任ということになると、差が出てくるであろう問題として、払えなかったら一体どうするのか、そのことを含めてこの問題というのは取り組んでいかないと、から証文になってしまいます。払えなかったらどうするのかについて、長官の御意見対策を伺いたいと思います。
  109. 大石武一

    国務大臣大石武一君) お説のとおりでございます。われわれも、これをつくる場合に、いま払えない、つまり中小企業だけが多くて払えない場合にはどうするか、あるいはその中にかりにたくさんの大きな企業がありましても、一つだけねらい撃ちにされたら、あとはそれだけが、その大きな企業の一つだけが倒産してあとのものは涼しい顔をすることができると、いろいろなむずかしい問題がございます。こういうものは、われわれの環境庁の直接の責任でありませんけれども、そういうことまで考えなければこの法案は簡単には通せないと思いまして、そういうことでいま検討さしているわけでございます。どのような形にしたらいいか、つまり全体としてそこにある賠償責任を負うべき、全体の企業は全体としてその賠償に応ずることができるような体制をつくりたい。それにはどうしたらいいか、私も、ほんとうにこれは思いつきのようなものでございますけれども、たとえば基金制度のようなものをつくってみんなが一様に金を出し合って、それを土台にするとか、あるいは保険制度のようなものをつくるとか、何かそのような措置が必要ではなかろうかと考えまして、局長を中心にいまそのことを十分に検討いたしている最中でございます。
  110. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの長官がおっしゃった点、確かに一つの案だと思いますし、いろんな案を御検討いただいて、無過失賠償責任を非常な立法技術上のむずかしい問題をこえてつくろうという、国民期待にほんとうに合うような形にしていただきたいと思うのですが、先ほどの質問に対して、非常に突き詰めて簡単に申し上げてしまえば、最終的には国が責任を負うということだろうと思います。基金にしましても、見方を変えれば、ある税金をとって国がプールした基金ということだって、どう呼ぶかという違いだけの話でしかございませんから、最終的には国が責任をとっていくんだという覚悟に立ってやはりこの問題というのは取り組んでいかないといけないんではないかと思います。深くは議論いたしません。  もう一つつけ加えて伺いますと、光化学スモッグの話題が出ておりました。よく原因がわからないんだとおっしゃっておりましたけれども、そうは言っても、現実に光化学スモッグの注意報というのは出ているわけですから、原因がわからなくて警報だけ出るというのは、残るものは不安しかない。これをいつまでほうっておいたらいいのかということになりますと、おそらく長官は、御自分の部下に対してはなるべく早くやれという指示をなさっていると思いますし、なるべくといったって、めどとしては、どこまでという御指示までおそらくはされているんだろうと思います。そういった意味で、言質をとるつもりはありません。いまのめどとして、とにかく急がなければいけないことだけははっきりしているわけですから、大体どのようなめどで現在この原因追及にあたっておいでになるのか、伺いたいと思います。
  111. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 光化学スモッグがことにこの一、二年非常な話題の中心になりまして、日本国民に大きな、ことに東京都を中心とする地域の人々に非常に不安を与えておることは、まことに残念でございます。何とかしてそのような不安を除きたいものだと、ほんとうにこれは不幸中の幸いでございますけれども、まだ大きな障害を及ぼしておらないですね。これが何よりもありがたいことと思っているのです。しかし、いつどのように変化するかわかりませんから、そのような重大な時期がこないうちにこれの解決策を見出さなきゃならぬと願っておるわけでございますが、率直に申しまして、いつまでというめどはとてもつけられておりません。これは大体アメリカのロサンゼルスあたりからそのような症状があらわれてきたわけでございますが、アメリカでもまだこの光化学スモッグ発生機構とかいろいろなことについては、まだ何もわかってない状態でございます。アメリカでわからないから日本でわからなくてもいいんだということは許されませんが、日本ではさらにアメリカよりもっと複雑な機構のようでございまして、御承知のように、アメリカでは太陽のあたる紫外線の多いときには出るんでございますが、日本ではそうでなく、曇天のときでも、夜でもオキシダントの濃度が高まってくるというようなこともございますし、たとえば人間に対する反応にしましても、ロサンゼルスの場合では目がちかちかする程度のことらしいんですが、日本の場合には、目のほかにのどとか、あるいは吐きけがするとか、いろいろなことまでありまして、非常に状態が変わっております。これをまず最初に、何といっても一番大事なことは、なぜこのようなオキシダント濃度が高まるのか、オキシダント濃度が高まればなぜそのような影響をするのかという基本的な、根本的なことから解明しなければほんとうの対策はできないと思いますけれども、それはいつ——一年か二年先かわかりません。これはいろいろと研究を依頼しております。幸いに国立公害研究所ができますので、それを十分活用さしたいと思いますが、まだそこまでわかっておりませんので、とりあえず庁内に技術者を集めまして、チームをつくりまして、対策班というものをつくりまして、とりあえず、どのような一体症状をあらわす者がどのような事態に起こるのかというようないろいろなあらわれた現象面をとらえて、それだけでも対症的な応急的な対策はできると考えまして、そのような働きをさしておるわけでございます。これもやっとできたばかりで、活動を始めたばかりでございますから、二カ月できめろ、三カ月できめろということは言えませんけれども、あまり長く時間をかけますことは皆に非常な不安を残しますから、できるだけ早くその糸口でも見つけてほしいということを願っておるわけでございます。
  112. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 とにかく一日も早く原因究明をお願いしたいと思います。アメリカの場合よくわからないという、いま長官のお話がありましたけれども、ロサンゼルスの場合には、地形と気候と、それから現象面と、まあ東京の光化学スモッグに比較すれば、わりあいに単純な形をしておりますけれども、東京の場合にはロサンゼルスとは違った形で、しかも硫酸ミストまでからんで、どうこんがらがっているのか、風向きはどうなっているのかまで含めて、新しい問題のように思いますから、むしろアメリカよりもむずかしい問題をかかえたと十分御自覚の上で、鋭意一日も早く原因を究明していただきたいと思います。  それでは、戻りまして、たいへん広い質問で恐縮なんですけれども、先ほどの無過失賠償責任保険のほうで、長官から中小企業というお話がございました。公害をなくしたいということを、スローガンではなくて、ほんとうにやっていくんだとしますと、やはり避けて通れないのは中小企業問題だと思います。  それからもう一つの問題は、公害対策をしていくということになりますと、それがコストアップ要因であることは、これは否定できないと思います。その意味ではこれは、物価問題だと思います。これで中小企業問題とか、物価問題ということになりますと、それぞれの所管庁があることは重々承知しております。ところが、一方では公害倒産という話も、うわさではなくて、現実には出始めておりますし、冒頭に申し上げましたように、打つ手がなかなかきまらないまま状態がどんどん悪くなっていくことになりますと、中小企業問題、物価問題にもっと目に見えて影響が出てくる心配は十二分にあると思うんです。そのときに、環境庁としての役割りの最大の問題である基本政策の樹立、推進、さらには各省間の意見調整ということも踏まえて、中小企業問題、物価問題について——物価問題というのは、コストアップ要因だから物価を上げていいと申し上げているのでは決してないのでありまして、その意味で、この点、長官としてこのむずかしい問題にどうやってこれから臨んでおいでになるのか、伺いたいと思います。
  113. 大石武一

    国務大臣大石武一君) これは非常にむずかしいことでございますが、これはやっぱりどうしても対処していかなければならない問題でございます。やはりこの公害発生するものは、やはり自分の責任において公害防止の対策を立てなければならぬと思います。ただし、その場合に、この公害防止のいろいろな設備をするということは、あまり生産には役立たない、直接には役立ちませんから、それだけやはり企業者の負担になると思います。そういうことがやはり一つの物価に組み入れられれば、それだけ物価高になるという要因になりますけれども、しかし、たとえかりに物価が多少そういうことによって上がるといたしましても、この公害を押えるということは、国民の最上使命だと思います。そういう意味で、私は、ある程度かりにそのことによって物価が多少でも上がることが避けられないとしても、やむを得ないことだと基本的に考えているわけでございます。しかし、物価を上げないということは大事なことでございますから、それをどのようにして押えるか。やっぱり企業努力によって——そう言っちゃ、はなはだ無責任のようになりますけれども、企業努力によってやはりできるだけその物価が上がらないように、全体の面から物価を上げることがないように、そのようなやはり企業の合理化をやってもらいたい。こういうことが一つの私の願いでございます。  もう一つは、ことに中小企業がそのような公害対策をするには、当然それは企業者の責任でありますけれども、資金的に技術的に容易でございません。こういうものに対して、政府ができるだけの援助を与えなければならないと思います。でありますから、いままでは融資とかあるいは税制の面において、いろいろとめんどうを見るようにいたしておりますが、今後さらに検討を進めまして、もっとほかにできる援助があったならば、それは環境庁だけではできませんし、通産省とか農林省にもいろいろ協議しなければなりませんけれども、そのような方法においてよりよい援助を与えて物価コストを上げることに対する押えにいたしたいと思います。  もう一つは、何といっても、公害防止には防止の技術開発というものが一番大事だと思います。これは一番金を食うと思うのです。ですから、この技術開発に対しましては、国ができるだけの援助をしまして、補助を出しまして、ほとんど国の研究のような形においてこういうものを助成していくべきではなかろうか。こういうことがやはり一つの大きな物価を上げない公害対策ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  114. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの質問の続きとしまして、中小企業が公害対策ということで、現在、倒産を含めてどういう実態にあって、将来は——将来といっても遠い将来ではなくて、これからどういう問題点をかかえながらいくんだろうかという調査研究が、環境庁の中でそういう部署を置いてなされているのでしょうか。
  115. 船後正道

    説明員(船後正道君) 中小企業の公害問題は、やはり中小企業対策の一環といたしまして、従来通産省の中小企業庁で担当してまいったのでありまして、今後も私は基本的にはその分担には変わりはないと思います。やはり中小企業のほうで主として仕事をおやりになり、私どもも公害防止という点からそれに取り組んでいくということで進んでまいる、かように考えております。
  116. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの御回答なんですけれども、たいへんよくわかるし、そういう回答しか出せない実態から、実は公害対策というものはなかなか思い切った手が打ててこれなかった。この現実は否定できません。そういった意味で、いまやっている、いないということを含めて言いたかったのは、みんながそれぞれお互いに情報交換をし合って、努力をし合いながら、この問題は一日も早く解決をしていかなければならないわけですからね。それぞれ主管庁があることは十二分に存じております。しかし、それはあっちの分で、それはこっちの分でということを環境庁が言い出したら、一体だれがやってくれるのだという話になると思うのです。その意味ではたいへん御苦労な仕事だと思いますけれども、全部を含めて、せっかくこういう機構ができたわけですから、視野としては全部を見渡しながら、必要な意見、注文は各省庁から受けて、それで一日も早く実りのあるような仕事を心からお願い申し上げたいと思います。  次に、環境保全ということに関係して考えてまいりますと、基準をつくるということも、これは当然だと思います。と同時に、なるべくよごさないということは、よごれるものがなるべく出ないということのほうが先決だろうと思いますし、その意味で大気汚染、水質汚濁に関する問題とあわせて、製品の事後処理、市場に回ったあとの処理をどうするかということも、これは今日の大量消費時代では無視できない問題だと思います。  そこで、これまでもよく話に出ておりましたものを例示し、御意見を伺いたいと思うのでありますけれども、今日内海、湾内で航行する船舶の悩みというのは、海中に浮遊しているビニールと聞いております。これがくっつきましてなかなか取れないで事故のもとになる。これ一つとってみても、ビニールというものが将来大きな問題を生みそうだということははっきりしておりますし、これまでもずいぶん論議してまいりました。こういうものについて、これは一つの例示として申し上げたのですけれども、新しい製品が開発され、それが市場に流通してやがては廃棄物になっていく。こういうものについて、環境庁として、これは別だとお考えになるのか、これも自分たちの分野だとお考えになるのか、その場合にどう対処しておいでになりますか、伺いたいと思います。
  117. 大石武一

    国務大臣大石武一君) これは、このようなものをいわゆる廃棄物ということばでいま使っておるようでございますが、その処理につきましては、やはりわれわれは責任を感じております。われわれの仕事の一部でやらなければならないと考えております。  ただ、直接の廃棄物に対する処理につきましては厚生省が担当いたしておりますけれども、それはそのような仕事面では厚生省にお願いしますけれども、いろいろな方針なり、やり方なり、そういうことにつきましては十分にわれわれの意見調整いたしまして進めていきたいと思います。  ただ、この廃棄物の処理は、私もしろうとで、どうしたらいいか、よい話があったら、いま水質保全局長からお答えさせたいと思いますけれども、新しいものがどんどんつくり出されるのはまことにけっこうですが、やはりつくり出す場合には、それをどのようにして処理するかということもあわせて今後考え研究してもらうことが大事ではないかと思うのです。いまのビニールを溶かしたり、何か処理する方法があったら世界的な発明だといわれておりますが、全くそのとおりでございます。  で、どうしたらいいか、新しい構想が打ち立てられなければならないと思います。たとえばいま田子の浦でヘドロ等が問題になっておりますが、あのような紙の処理をするには、紙を食うようなカビみたいなものをひとつ見つけ出して——きっとあると思うのです。そういうものを見つけ出して、それを処理させるとか、何か思い切った新しい開発をしなければならぬと考えておるわけでございますが、そんなことで、答弁にはなりませんけれども、あと、その他のことはひとつ、恐縮ですが、水質保全局長からお聞き取り願いたいと存じます。
  118. 岡安誠

    説明員(岡安誠君) いまのお話、廃棄物の処理でございますけれども、法律で申しますと、廃棄物の処理の法律は厚生省の所管でございますけれども、最終的な処理の基準は環境庁でつくるということになっております。したがって、いま大臣からお答えいたしましたとおり、私どもといたしましては処理の基準をつくりますが、なかなか処理のむずかしいものもあります。それにつきましては、処理の方法といいますか、さかのぼって生産のところにも入りますけれども、私どもは、やはり希望をつけまして、処理がしやすいような方法をあらかじめ講ずるように私どもとしては希望いたしたい。  たとえば一般の廃棄物になりますと、なかなか区分して処理するということが困難でございますので、それらにつきましては企業にあらかじめ回収等の責任を持たせる、また企業につきましては、処理の方法ができてから製品を販売する、そういうようなことを私どもは担当の官庁とも相談いたしまして、事前に手を打ちたい、かように考えておるわけでございます。
  119. 栗林卓司

    ○栗林卓司君 いまの御回答と関連しまして、二つ伺いたいと思うんですけれども、できたもの、廃棄物について基準をつくっていく、これはわかります。  時間がありませんので、簡潔に二つだけ申し上げますと、たとえば薬品なんかについては、市場に出回る前にやはり認可検査をしているわけです。それはもちろん当然だと思うのです。ただ、いまの廃棄物の問題というのは、大量生産、大量販売。大量消費時代になりますと、個々に取ってみれば何でもないものが、数が多いので、さてという話になるというと、やはり製品を開発して、それを市場に流す、そこのところでもうやはり環境庁がかんでいくべきなんではないだろうか。かむおつもりを将来課題としてお持ちかどうかをまず伺いたいと思います。  それからもう一つは、先ほどのプラスチック、ビニールに関連してですけれども、いろいろな論議の中で、ポリ容器が認可されて現在いるんですけれども、それを含めてプラスチックが現在使用されている実態を調べながら、一体どうしたらいいのかということを至急取り組む計画が環境庁としておありかどうか。これはぜひ取り組んでいただきたいというお願いを込めての質問でございます。
  120. 大石武一

    国務大臣大石武一君) あとのほうからお答えいたします。  ポリ容器、これはだいぶ前から出回っているようであります。最近は牛乳業者にポリ容器を許可したわけでございますが、あれは企業のほうでそれを回収処理するという条件で許可になったということだと思いますけれども、ただ、はたしてほんとうにこれを回収しているのかどうか。回収して自分で焼却炉をつくって、そしてそれをほんとうに焼却しているかどうか。それをもう少し厳重に取り締まることが、これは厚生省の役目でしょうけれども、必要だと思います。われわれは、そういう権限があるかないか、よくわかりませんが、そのような権限を持ち得ますならばそういう権限も持って、そのような厳重な監視をいたしたいと考えます。  それから、いまの廃棄物の問題でございますが、これはもう実際何とお答えしていいかわかりませんが、われわれも、そのような大きな問題に取り組んでいきたいと思います。ただ、どのようにして、どの段階でということはわかりませんが、そういう意欲は持っておることだけは申し上げるものでございます。ただ、二、三日前の新聞を読んだんですが、アメリカのニューヨークでいろいろな市民運動が起こりまして、そのような廃棄物の処理なり、それから、むだにしない——いろいろな、たとえばビニール製品は一ぺんで捨てないでそれを三回、四回使えとか、そうすれば使用量が減るでしょうから。そのようなさもないことですが、いろいろな市民運動が起こりまして、そのような共鳴者があるということを聞いております。これは幾ら役所が努力しましても——役所の責任の言いのがれをするわけではありませんが、国民全体のやはりそのような公害をなくそう、われわれの生活環境をよごすまいというやはり公衆道徳的なといいますか、そのような連帯意識を持って努力をしてもらうのでなかったならば、役所がどのような努力をしても、そう大きな効果をあげることはできないと思います。そういう意味で、私は、日本国民全体が同じような一つの生活環境をお互いに守るのだという意識に目ざめてもらえるように、そのような方向に日本の国のものの考え方があるような教育のあり方を望んでおるものでございます。そういうことは、これは決して役所の責任のがれではございませんので、その点御了承願いたいと思います。  いろいろときょうはあたたかい親切な御意見を賜わりまして非常にありがとうございました。
  121. 加藤進

    加藤進君 環境庁は無事発足し、初代の長官決定した。いよいよ環境庁の仕事が始まる。国民はおそらく非常な大きな期待をもって環境庁の仕事ぶりを見たと思います。  ところで、その環境庁がまさにそういう国民期待する前でどんな仕事を始めたか。これは私はこまかいことは申し上げません。新聞にも大きく出されております。非常に貴重なお花畑の原生花園で有名な北海道の網走国定公園の中に、事もあろう工場廃液処理場をつくる、こういうことがまず仕事の手始めとして行なわれたわけでございます。これでは一体環境庁が今後ほんとうにやる気なのか、環境庁によって公害の防止、自然環境の保全ができるのだろうか疑わざるを得ない、こういうのが私は国民の率直な声だと思います。事実、こう書いています。「国家的視野で、自然を守るのが環境庁の任務だ。先に立って自然破壊を認めるようでは、これからが思いやられる。」、こうあります。これは有名な方のことばです。私は、この一つを取ってみても、いま仕事を始められる長官の心境も複雑だろうと思う。ぜひとも私はこういう国民のいま持っている不信に対して積極的に長官にお答え願いたい。このことをまず希望いたします。いかがでしょうか。
  122. 大石武一

    国務大臣大石武一君) そのただいまの新聞紙上に出ました北海道の網走の国定公園の問題でございますが、これは私も非常に遺憾に存じております。せっかく国民期待をになって、非常な希望を持って発足したこの環境庁でございますが、その出発早々にしてこのような問題が出てまいりましたことは、ほんとうに国民に対しても大きな失望を与えたでしょうし、私にとりましても非常に残念なことでございます。これはまことに申しわけないことでございますが、どうしてもでき上がったことはやむを得ませんので、これをひとつ反省の土台にいたしまして、このような間違った行政を二度と繰り返させないように、それでなくてもいろいろと自然は破壊されております。そういうことでまさか環境庁がその手先になることはない。これは手先になりたわけではございませんけれども、そのようないきさつは、申し上げれば長くなりますけれども、そのいきさつを簡単に申し上げますと、北海道の北の網走国定公園の近くに北見の国斜里という町がございます。その斜里にホクレン——北海道農業協同組合連合会ですか、ホクレンの経営するビート工場、最近はでん粉等をつくる仕事もやっているのでございますが、おそらく昭和三十四年あたりから私動いていると思いますが、そういうのが動いております。それが昨年工場の拡張をいたしまして、大量の排水を流すことになったわけでございますが、それを沈でん池を通しましていままで斜里川に流しておりましたが、その斜里川はサケやマスの有名な産地であり、これ以上流されては困るという漁民の反対からその処置に困りまして、いろいろ検討しました結果、その網走国定公園の一部の二十二ヘクタールの砂地に目をつけまして、そこに沈でん池を通った廃液をしみ込ませるという方法を考えまして、それを北海道庁に申し入れをいたしまして、北海道庁がそれを残念ながら指示をしてあらゆる手配をいたしまして、北海道内における北海道自然保護審議会とか、自然保護協会とか全部まとめまして、あらゆる手配をして、六月の十二日に厚生省の国立公園部にその話を持ち込んだのでございます。  なぜ持ち込んだかと申しますと、一応形式的には行政指導の立場から、厚生省と協議をするということになっておるわけでございます。実際の権限は何もございません。道庁が断行するといえばそれ以外にないんであります。一応形式的にそのような形になっていたわけでございます。そのために形式的に六月の十二日にそれを持ち込んできたということでございますが、実際の手配、手続は全部道庁で済んでおりまして、ただ厚生省から差しつかえないという言質を待つだけの状態になっていたようでございます。  そこで、厚生省の国立公園部でも、ずいぶん悩んだのでございますが、結局は、最後の六月三十日、それを部長名で決裁をして、その協議に応ずるという旨の返事をして、翌七月一日には、そこにある農林省の林野庁関係の防潮保安林は七月二日にそれが解除になりました。それで決定したというのがいきさつでございます。  まことにこれは国立公園部としては、新しい環境庁の発足をすぐ目の前に控え残念だったと思いますけれども、これにはいろいろないきさつもありましょうし、また考えてみれば新しい環境庁にこのような問題をかかえ込んでいったんではどんなに困るだろうから、一切片づけておこうという前進的な気持ちもあったでありましょうし、いろいろな圧力もあったと思います。われわれは知りませんけれども、いろんな圧力がよそからかかっているように考えられます。そのようなわけでその決定をしたわけでございますが、まことに残念でございます。今後ともそういうことのないように努力いたす決意でございます。
  123. 加藤進

    加藤進君 長官発言を一応了解いたしますけれども、長官自身もまたその言動において相当国民の批判を受けられておる。それは四日市の問題、私は、あえて具体的な内容には触れませんけれども、長官もまた心してひとつ行政の担当を進めてもらいたい。まず要望しておきます。  私は、環境庁の発足にあたって、いま国民が一番望んでおることは何か、そのことに真剣にこたえていただくような仕事をぜひやってもらいたい、こう考えます。  その一つとして私が長官に要望を申し上げます。それは公害基本法をはじめとする諸法規は、一応整備いたしました。改善も行なわれました。御承知のように、経済との調和条項、この調和条項が削除されたということも非常な前進だと思います。こうして公害発生源で食いとめる、そのために企業の責任をある程度法規の上で明確にした、こういう積極的な内容を持っておると思います。しかし、こういう法案がいろいろ準備されて提案の過程において何が起こったかというと、これは政府の原案の当初から見ると、いろいろな外部の圧力に屈したと見えて、その原案の内容が非常に後退しておることは、これは御承知だと思います。たとえばその最もいい例として、公害罪法のいわゆるおそれ条項がその中で削られました。こういう状態の結果、今日の公害法案すら、いまや国民の十分な期待にこたえないものになってきておる、こう言ってもいいではないかと思います。したがって、私は、まず長官に要望いたしますのは、今日の段階において、さらに今後起こり得る自然の破壊あるいは公害の深刻化という事態を考えつつ、このような諸法案を前向きに改善していく、前向きに改正していく、こういう用意があられるかどうか、このことをお伺いしたい。
  124. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 加藤委員のおっしゃることは当然でございます。われわれは、どんな場合でも常に前進を考えておりますから、新しい時代に対処し得るような新しいものの考え方にいつでも進んでいくような決意を持っております。
  125. 加藤進

    加藤進君 言うまでもなく、公害を防ぐのには、それを発生源で防止するということが最も適切な措置だと思います。ところが、今日までのいわゆる公害対策の欠陥はどこにあったかといえば、公害が大きく発生した、人類にも危険が及びつつある、ほうってはおけぬ、こうしてあとを追っかけるような事後対策、手おくれの対策に終始したというのが、私は、一言をもってすれば、内容だと思います。したがって、こういう状態が幾度も国会の段階においても論議され、叫ばれたにもかかわらず、依然としてこれが改まっておらないわけであります。私は、その点において、特に具体的に次のことを長官にただしたいと思います。  まず、長官が、先ほど私の申し上げましたような前向きの方向で今後は進んでいくと言われるなら、第一に、公害罪法におそれ条項を新たに挿入する決意がありやいなや。第二には、公害発生源に防止装置を義務づけるという御決意があるかどうか。それから公害規制を厳守すべしということを企業に義務づける用意があるかどうか。私は、この三点の内容をぜひとも今後の法改正において早急に盛り込んでいただきたい。このことを要望いたしますけれども、長官はいかがでしょうか。
  126. 大石武一

    国務大臣大石武一君) その発生源に公害の予防装置を取りつけるということ、これはまことにけっこうな御指示でございます。できるだけ早くそれが行なわれますように努力してまいりたいと思います。これは幾らそういうことを要望しましても、きょう、あす中にというわけにまいりません。いろいろないままでの実態がございます。実態を無視して政治を進めるわけにはまいりませんので、いままでの実態を十分に把握した上で、それができるだけ早い期間に実現されるように努力してまいりたいと思います。  その他、おそれの条項、これはちょっと私いまそのことを詳しく存じませんので、はなはだ恐縮でございますが、かわって局長からお答えさせたいと思います。
  127. 船後正道

    説明員(船後正道君) 公害罪の問題は、先生も御存じのとおり、法務省の所管の法律でございまして、私どものほうといたしましては、公害に関する法律としての意味においてのいろいろな作業がございますけれども、このおそれ条項を挿入するかしないか、そういった問題は、私どものほうで、ただいま責任をもってお答えするという立場でございませんので、御了承願いたいと思います。
  128. 加藤進

    加藤進君 時間もございませんから、この問題は今後の私の質問に譲りたいと思います。  次に、新全総計画に関連する問題でございます。御承知のように、政府は新全総計画を推進する、こういう長期の計画を立てております。この問題に関連いたしまして、わが党の春日議員が参議院の予算委員会でこう質問いたしました。公害列島と言われるような深刻な公害原因が産業開発にあることは明らかである、新全総開発計画をこのままにしておかないで、この手直しを行なうべきだと思うがどうか、こういう趣旨の質問をされております。これに対して佐藤総理の答弁は、明確なことばではありませんけれども、公害などのような新しい事態が起きるようなら手直しも検討する必要がある、こういう意味にとれるような答弁でございました。この点について、特に環境庁環境の保全、公害の防止を担当する庁でございますから、その立場から見て、新全総計画をこのまま推進さしていいと考えられるのか。それに対して、環境庁立場から何らかの手を打ち、手直しをしなくてはならぬと考えられるのか、その点をひとつお聞かせを願いたいと思います。
  129. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 日本の衆知が集まりまして、せっかく新全国総合開発計画をつくったわけでございます。これはやはり推進するに値するものと考えます。ですから、これがすなおに効率的に推進されることを望んでいるわけでございます。同時に、そのことがわれわれの自然環境生活環境に大きな影響を与えることは確かでございます。われわれは、この総合開発計画がわれわれの環境の保全ということと調和——ということばは、まあ日本人にはきらわれることがありますが、調和ということは、元来いいことばでありますので、調和するような方向においてこれを進めてまいりたいと思います。しかし、その計画が大きな影響をわれわれの環境保全にあるいは自然の保全に与えるような場合があります場合には、これと戦ってまいらなければならないと思います。そういうような戦うということは、やはり改定すべき必要がある場合には改定すべき方向に向かうと、こう私は考えております。
  130. 加藤進

    加藤進君 長官も、政府部内の意見に対してあまり注意を払っておられない感じがいたしますね。というのは、建設省は、すでにこの新全総計画が今後進められるならどのような事態が発生するのかということについて、広範な調査資料を出していますよ。特にその中で、こまかいことは申しませんけれども、建設省の「七〇年代の国土政策の基調について」というパンフレットがございます。これを見て私も認識を新たにしたわけでございますけれども、たとえば先ほどの自然破壊の問題です。もしこのままの状態で進んでいくなら、国内産の木材ですね、いわば樹木ですが、一九七五年までには、二十三年生、二十三年までの程度のものは残るけれども、二十三年をこえたような樹木は全部伐採される、それから一九八五年になると、十五年たった樹木までは伸ばすけれども、生かすけれども、あとは全部伐採する、こうせざるを得ない、こういうことまで強調していますよ。そして災害、交通事故の増大、これはきわめて危険な事態に至るであろうということを警告しているのです。こういう警告は、これは長官もしっかり胸にとどめておいていただかなくてはならぬと思う。そういうことを予想しながら進められておるのが新全総計画なんです。そのことによって起こるような公害自然破壊について一つ一つ手を打とうなどということでは、全く手おくれと言って過言ではないと思います。この点について、私は、政府部内の建設省までがこのような認識に立っておるのに、公害を担当し、自然環境を保全するための仕事をやっておられる環境庁長官が、このことについて、もし事が起こるならというような、いわば将来のことのように考えておられるのは、これは国民が承知できないところではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  131. 大石武一

    国務大臣大石武一君) この総合開発計画をつくる場合には、日本の衆知が集まりましたから、そのようないろいろな公害問題、自然環境保護というようなものについて無視するような計画が立っておるはずがないと思います、私は。いまのようなお話は、建設省でそのようなことを考えておるのではなくて、無計画に何もしなければそのような状態になるということだと思います。そんなようなおそれがあるという考え方だと思います。ですから、国は、われわれ役所は、みな行政一端の最高の責任をになって働いておるわけでございますから、お互いにそのような事態が来ないように努力するのがこれは役所の働きでございますから、手をこまねいてほうっておけばそのような事態になるおそれがあるという私は話だと思うのです。そんなようなことをするという計画では断じてないと思いますから、そのような御心配はないように願います。しかし、やはり何と申しましても、今後ともいろいろ経済は発展してまいりましょう。その場合には、東京に工場が建つことができなければ、大阪に建つことができなければ、どこかの過疎地帯に建つことになりましょう。これはやむを得ないことだと思います。しかし、そのことによってわれわれの自然環境が大きく破壊されない、できるだけ保全されるような対策を立てること、それがわれわれ環境庁の仕事だと考えております。ですから、政府部内の意見は別に違っているとは思いません。
  132. 加藤進

    加藤進君 長官ね、四日市公害で名を上げている三重県、三重県がいま中心的な施策として進めているのが中南勢総合開発計画、これは新全総計画の重要な内容になっております。この新全総計画をそのまま進めていったら、これは四日市のような事態になるということをいま県民も非常に心配し、そしてもうこの問題については知事さえ、県会で、このままの状態を許すわけにはいかぬ、どうしてもこれを訂正しなくてはならぬと、こういうふうにはっきり言っておるということをひとつ頭にとめておいていただきたいと思います。  続いて、時間もございませんから、私は、被害者救済の問題についてお尋ねしたいと思います。  今日、被害者救済ということは、先ほど来、各委員が心を込めて言われたように、なかなか実現されておりません。その最も大きな問題は何かといえば、ほかの公害関係法案はやや前進した。ところが、救済関係する法案については全然手直し一つやられていない。こういう事態が端的に示しておると思う。ただいま長官発言によりましても、無過失賠償責任制を確立する、これは一歩前進であろうと思います。もちろん、その内容につきましては、今後十分にわれわれも検討しなくちゃならぬと思いますけれども、その方向については私は認めていいと思う。しかし、もう一つの問題、被害者の医療、生活、そして営業をどのように救済し補償していくか。こういう問題について、ただ一つのよりどころになっているのは、御承知のように、救済特別措置法ですね。この措置法が今日あるだけでございます。そしてこれは従来から全く改正されないままで、今後やっと手当を若干増額するという措置をとられたにすぎません。こういう点で、この被害者救済特別措置法について何らかの改正の意思があるかどうか、意図があるかどうか。このことをお尋ねしたいと思います。
  133. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 健康被害救済法ですか、これにつきましては、われわれは、次の通常国会におきましても、これをさらに拡大するいま考えを持っております。たとえば公害地域指定の追加であるとか、あるいは医療手当あるいは介護手当の増額であるとか、あるいは所得制限の緩和であるとか、そのようなあんまり大きな問題ではございませんけれども、さらによりよい手当になりますように、そのような方向で進めてまいりたいと考えております。
  134. 加藤進

    加藤進君 時間もございませんので、最後に簡潔に申し上げますけれども、いまの救済制度は、何がゆえに問題になっているのかといえば、これはその適用範囲が非常に限定されているということ、それから医療負担も全くいまおっしゃるような不十分さであるということ、指定区域はあるけれども、その区域から一歩出たらもうこれは適用されない、こういう事態があるということ。特に手当その他につきましては、看護料、何と一日三百円、これでは雇う方法さえない。こういうような状態をこのままにして、本来の被害者救済がほんとうにできるかどうか。こういう問題だと思います、問題点は。  そこで、私は、特に長官に要望いたします。この救済法のたてまえをこういうところに置いてほしいということであります。基本法の趣旨に基づいて企業責任をはっきりさせるということ、これは当然お認めいただけると思います。それから公害被害者に対してはこれを全面的に救済する立場に立ってもらいたい。一部の医療だけの問題ではないということ、こういう点をたてまえとしながら、私は、次の三点のことをぜひとも内容とする法改正に踏み切ってほしいということでございます。  その一つは、事業者負担で被害者の医療、生活、営業の補償を行なうということ、企業の負うべき負担をさしあたって政府の立てかえ払いにするという制度、さらに被害者の適用範囲を広げて広域公害である光化学スモッグ、このスモッグの被害者に対してもこれが適用されるようにするということ、このような内容をぜひとも含む法改正に、環境庁長官、踏み切っていただく決意があるかどうか、このことをお尋ねいたします。
  135. 大石武一

    国務大臣大石武一君) ただいまのいろいろな画期的な御提案でございますが、これにつきましては、十分に検討さしていただきたいと思います。
  136. 加藤進

    加藤進君 じゃあ、前向きに検討していただくということで了解していいですね。
  137. 大石武一

    国務大臣大石武一君) 前向きに検討できるものが中にあると思います。そのものにつきましては十分に考慮いたしますが、できないものもあるかもしれません。こういうものにつきましては、あとでまた十分にお答えする機会があると思います。
  138. 加藤進

    加藤進君 救済特別措置法についての改正を検討していただく、このことをまず御確認いただいたと思います。  これで私は質問の時間も終了いたしましたので終わりますけれども、なお、ひとつ委員長さんにお願いがございますけれども、お許し願えましょうか。簡単なことでございます。——これはいま参議院のあり方ということが非常に問題になっていることは、われわれが心にとめて置かなければならぬことでございますし、私たちも有権者の委託を受けて国会に出たわけでございますから、本来、委員会における委員発言その他については、当然のことながら、これは平等であり、公平であるのが私はたてまえだと思います。こういう点につきまして、従来、特に大きな政党間の話し合いその他を通じてつくられた慣例というものが今日もなお基礎になって、いろいろ質問者の時間の制限その他が加えられるようなことも今後起こるかもしれぬと憂えるわけでございまして、こういう点は、きょうスタートいたしました公害特別委員会の今後の委員会の運営におきましてぜひ改めていただきたい。各委員にはそれぞれ平等の発言の権利がある。したがって、同時にそのような発言の問題につきましては、協議の上で、その発言者の意向を十分にくんで発言の時間等々を決定していただく、このような措置をぜひおとりいただくということを心から要望いたしまして、ひとつ委員長さんのその点についてのもし御意見がございましたら表明いただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  139. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) この委員会は、非常に重要な問題を審議いたしますので、十分に公平にいたしてまいりたい。いままでもそうであったと思いますけれども、特に参議院のあり方が問われております今日では、一そうただいまのお申し出の点は考えまして進めなくてはならない。その点につきましては、理事各位も十分に御理解でございますので、理事各位とも、そのつどよく御相談申し上げるわけでございます。  ただ、時間の割り当てを十分に公平にいたすことはもとよりでございますけれども、それはやはり会派の議員の数というようなものが基準になっておりますことが、これはやはりたいへん平等の原理の上に立っていると思うわけでございます。本来ならば、自民党は非常にたくさんの議席をお持ちでございますから、たくさんの発言の時間をおとりになろうと思えば取れるわけでございますけれども、全部それをお取りにならないで、こちらのほうにみんなお譲りになっちゃっているわけです。これは、私、ちょっとふしぎに思うわけです。自民党さんは公害に対してあまり御関心がないのかしらと、長官が一人で戦っていらっしゃる。そんなことも自民党の先生方にも考えていただきまして、公平ということであくまでも進めてまいりたい。したがいまして、きょう、加藤委員のお持ち時間は超過いたしましたけれども、少しもそれを追及いたしませんで進めてまいったわけでございます。
  140. 加藤進

    加藤進君 おことばありがとうございました。  ただ、最後に、各会派の委員の数によって割り当てをきめる、これがいままでのたてまえだということでございますけれども、そのたてまえについては、これから始まる委員会の運営についてひとつ十分に御検討いただきまして、この点についての改善を含めて、先ほどの私の希望を受け入れていただけないものであるかどうか。  こういうことを最後に要望として申し述べさしていただきまして発言を終わりたいと思います。
  141. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 本日の調査はこの程度にとどめます。     —————————————
  142. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 次に、継続調査要求に関する件についておはかりいたします。  公害対策樹立に関する調査につきましては、閉会中もなお調査を継続することとし、本件の継続調査要求書を議長に提出いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  なお、要求書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  145. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 次に、委員派遣承認要求に関する件についておはかりいたします。  公害対策樹立に関する調査のため、委員派遣を行ないたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 御異議ないと認めます。  つきましては、派遣委員、派遣地、派遣期間等の決定は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  147. 加藤シヅエ

    委員長加藤シヅエ君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時十六分散会