運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-09-02 第66回国会 参議院 外務委員会 閉会後第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年九月二日(木曜日)    午後一時三十四分開会     —————————————    委員異動  七月二十三日     辞任         補欠選任      橘  直治君     八木 一郎君  七月二十四日     辞任         補欠選任      長谷川 仁君     林田悠紀夫君  七月二十六日     辞任         補欠選任      林田悠紀夫君     長谷川 仁君  八月二日     辞任         補欠選任      松平 勇雄君     塚田十一郎君  八月三日     辞任         補欠選任      重宗 雄三君     林田悠紀夫君  八月九日     辞任         補欠選任      林田悠紀夫君     増原 恵吉君  九月一日     辞任         補欠選任      塚田十一郎君     西田 信一君  九月二日     辞任         補欠選任      西田信一君      塚田十一郎君     —————————————    委員長異動 七月二十四日松平勇雄委員長辞任につき、そ の補欠として八木一郎君を議院において委員長選任した。     —————————————   出席者は左のとおり。     理 事                 石原慎太郎君                 山本 利壽君                 西村 関一君     委 員                 木内 四郎君                 今  春聴君                 杉原 荒太君                 塚田十一郎君                 長谷川 仁君                 増原 恵吉君                 秋山 長造君                 田  英夫君                 森 元治郎君                 渋谷 邦彦君                 星野  力君    国務大臣        外 務 大 臣  福田 赳夫君    事務局側        常任委員会専門        員        小倉  満君    説明員        外務省アメリカ        局長       吉野 文六君        外務省条約局長  井川 克一君     —————————————   本日の会議に付した案件理事補欠選任の件 ○国際情勢等に関する調査  (中国代表権問題に関する件)  (日中国交回復に関する件)  (当面の沖縄問題に関する件)  (ヴィエトナム問題に関する件)     —————————————   〔理事山本利壽委員長席に着く〕
  2. 山本利壽

    理事山本利壽君) ただいまから外務委員会開会いたします。  八木委員長所用のため本日の委員会に出席できませんので、委託を受けました私が委員長の職務を行ないます。  まず、委員異動について御報告いたします。  去る八月九日林田悠紀夫君委員辞任され、その補欠として増原恵吉君が選任され、また本日西田信一君が委員辞任され、その補欠として塚田十一郎君が選任されました。     —————————————
  3. 山本利壽

    理事山本利壽君) 次に、理事補欠選任についておはかりいたします。  委員異動に伴い、現在理事一名が欠員となっておりますので、この際、理事補欠選任を行ないたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山本利壽

    理事山本利壽君) 御異議ないものと認めます。  それでは、理事佐藤一郎君を指名いたします。     —————————————
  5. 山本利壽

    理事山本利壽君) 次に、国際情勢等に関する調査議題といたします。  この際、福田外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。  福田外務大臣
  6. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私、去る七月五日に外務大臣に任命されたのであります。ところが、私、多年の痼疾がありまして、胆嚢炎というんですか、胆石でございます。その手術並びに療養のために約五十日間役所を休んでおりました。その間、国務に対しましてたいへんな支障を及ぼしたかとも思いまして、遺憾に存じておる次第でございます。就任早々皆さんにお目にかかりまして御指導を得たいと、こういう念願でございましたが、そういう事情で延引今日に至りましたことを皆さんに対しまして深くおわび申し上げます。  ところが、当面外交案件は山積をいたしておるわけであります。特に重要な問題は、九月下旬からの陛下の御訪欧の問題、また国連における中国代表権問題、さらに日米間の経済を中心とする国交諸問題、また、さらには十月中旬になりましょうか、臨時国会が開催されると思います。それに対しましては、政府沖縄協定並びに関連法律案等の御審議を願わなければならぬ、こういうようなことでたいへんいろいろな問題があるわけでありますが、まずさしあたり、私は来週月曜日に東京を出発いたしまして、日米合同委員会に臨むわけであります。そういう際でございますので、それに先立ちまして皆さんからいろいろ御教示また御意見開陳等を願えますれば幸甚である、かように存ずる次第であります。何とぞよろしくお願い申し上げます。     —————————————
  7. 山本利壽

    理事山本利壽君) これより本調査質疑に入ります。  御質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  8. 森元治郎

    森元治郎君 大臣には、きょうは、国会を通じて申したとおり、代表権をめぐる質問と、新しい外務大臣ですから、いろいろな問題を伺って、大臣のお考えをただして、本物はあなたがお帰りになってからの質問になるかと思います。  第一番目は、私が中国代表権と言ったのは、あなたが記者会見で、当面の重要な問題は中国代表権の問題である、とおっしゃったから、それを議題に選んだわけです。対策についてどういう態度を持っているか。その対策といえば、もうぎりぎり詰めていけば、代表権の問題である。で、逆重要事項方式をどうするか、あるいは二重代表制をどうするかという問題に狭まってくると思うのですね。そこで、いままでは、三十日の総理外務大臣相談の結果、いわゆる逆重要事項方式というのが、これでいくのだと、意見が一致したというふうに伝えられておったのですが、どうもあなたのほうの党内を見ても、大平さんのきのうの発言にしても、たいへんな問題が出てきて、しばし保留、大臣が帰ってきてからというふうになったと伝えておるのです。あくまでも総理の線で押し切っていくつもりか。みんなの意見をまとめて一致点を求めて、時間をかけてもそうやるのか。どういうふうな態度で臨みますか。
  9. 福田赳夫

    国務大臣福田赳君) 私はこの間——三十日でありましたか——総理にお目にかかりまして、日中問題に対する基本的な考え方、主としてこの問題につきまして意見の交換をしたのです。時あたかも国連開会を前にしておるというので、自然、国連の問題にも話は移りました。国連の問題につきましては、これは言われておる二重代表権問題、それから重要事項指定方式問題、こういう二つの問題があるわけなんです。それのうち二重代表の問題につきましては、いわゆる単純二重代表にすべきか、あるいはいわゆる複合二重代表、そういう方式にすべきか、まだ見当がつきかねておる。したがって、これに対処する方針もまだ打ち出せない。重要事項指定方式につきましては、逆重要事項指定方式というような形で、わが国、またわが国友好諸国との間で話が進められている。そういうようなことで、私、箱根の山からおりてまいりまして外務省に出勤してみると、まあだいぶ逆重要事項指定方式につきましては、これは賛成、またこれの共同提案国になるかならないか、これについても、なったらいいじゃないかというような空気が多いのだ、こういうことを総理に申し上げたわけでありますが、いずれにいたしましても、まだ時間のあることでありますので、結論はきょうは承らぬでよろしゅうございます、そういうことでありまして、新聞にもそのとおりのことが伝えられておる、こういうふうに思います。今日まで大体さような状態で推移しておるのであります。きょうはたまたま皆さんからいい機会を与えられておりますので、野党の皆さんの御意見、また当然与党自由民主党の御意見、こういうものをよく承りまして、ひとつ最終的な結論を出さなければならぬ、こういうふうに考えております。  それで、お尋ねはないのでありますが、これは基本的な問題でありますので御承知おき願っておいたほうがよかろうと思いますのは、私、外務大臣としての中国問題処理に関する基本的な考え方であります。この問題につきましては、私は、中国という国が人口七億ともいわれ八億ともいわれる大国であります。しかも、建国二十余年にわたっておる。文化革命を経まして、政情から見ましても経済状態から見ましても安定を取り戻し、前進を続けておる。こういう国がわが国の隣に位しておりまして、しかもわが国との間に正常な国交が開かれておらないということは、世界の平和から見ましても、世界の繁栄、発展から見ましても、特にアジアの立場から考えますると、はなはだ不自然であり、不幸なことである、こういうふうに考えます。そこで、わが国外交というか——外交ところの話じゃない。わが国政治全体です——の当面する最大の課題一つは、この中国との間に国交正常化をはかることである、いわゆる日中問題を解決することである、こういうふうに考えておるのであります。この問題に対しまして私はいま——私ばかりじゃない、いろんな方がいろんな形において接触をされておりまするけれども、政府といたしましてこの問題をよけて通るというような態度ではいかぬ。もう積極的にまっ正面にこれに取り組むという姿勢で臨まなければならない、こういうふうに考えておるんです。  この歴史的課題解決を指向いたしまするけれども、しかし、この歴史的課題解決にあたりまして、わが国国際社会においてよって立つ根拠は何であるか。これは国際社会からの信頼感であると思う。この国際社会信頼を失うようなことがあってはならない、こういうふうに考えるのであります。そのことも十分踏まえながらこの問題に対処する、こういうふうに考えておるのです。そういう基本方針ですが、今度はこれを国連の場においてどういうふうに適用していくか、こういう問題になるだろうと思うんですが、いままでは中国国連加盟を阻止するという態度をとってきたわけでありますが、それはよろしくない。これを変更いたしまして国連に迎え入れるという態度をとる。しかし、同時に、だからといって、問題の国民政府国連から追放するというような態度にここで出るということは、これまた日本の長きにわたる国際信頼関係という立場からいきまして妥当でない、こういうふうに考えるわけであります。それを一体どういうふうに国連議事運営の場面で具体化するかということが問題であろうと思うんですが、そういう技術的な問題になりますると、まだ結論は得ておらない。こういうのが現状でございます。
  10. 森元治郎

    森元治郎君 基本的な所信はわかりました。あとで触れますが、いま事実のほうを先に伺います。  何といっても、抽象論ばかりやっていても、現場で、追放するという人もあれば守るという人もあるんですから、それはあと二週間足らずで国連も開かれ、大臣演説も月末にはやるというときに、追放されてしまいますから、あなたの立場からいけば。そこで事実を伺う。共同提案国にはどうしても政府としてはなる、こういう決心をお持ちなんでしょう、逆重要事項について。それからもう一つ。その場合に、逆重要事項だけでは、これに有力な賛成国の中にも、やはりいわゆる複合代表制提出してやらなければ戦えないという声がありますから、これについて一体どう考えるのか。中共安保理事国にし国府一般議席に置いておくという複合ですね、これも日本共同提案国になって押すんだ、リードをとって押すんだという決心政府はおありですか、党内のいろいろなことは別として。
  11. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま申し上げましたように、政府といたましては、この間総理大臣と私相談いたし、経過の話は私のほうからしておるんですが、結論はまだ出しておらないんです。自由民主党のいろんな御意見も伺わなければいかぬ。また、衆参両院外務委員会皆さんからのいろんな御意見もありましょう。こういうことも承らなければならない。その他各般の意見を承りまして最終的な意見をきめる。こういうので、まだ政府の最終的な意見決定というまでに至っておらない。こういうふうに御了承を願います。
  12. 森元治郎

    森元治郎君 いつまで時間が——そういうもたもた状態をやり得る期限はどの辺まであるんですか。こういうものは議題提出、いよいよ本番になるまできめなくても、そのときに総会の議題になってチャンバラが始まるときまでにきめればいいものなんですか、どういうものなんですか。
  13. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは友好諸国相談をしなければならぬ問題なんです。いつだれが決議案を出すか、その決議案に対しましてだれが提案者——あるいは単数の場合もありましょうが、複数の場合のほうが多かろうと思います——になるか。いろいろ打ち合わせなきゃならぬので、まあ、そういうことになれば、国連が開かれるのは二十日過ぎ、そしてまあ二十日過ぎまして一般演説、まずそういう過程になりまするから、まあぎりぎりいったらまだ時間はあるわけでございますけれども、また同時に、同じ考え方を持っておりまするわが国並びにわが国同志は、その態度をきめて、仲間に、こういう態度でいこうじゃないかという勧誘もしなきゃならぬという場合が起こってくるわけです。そういうようなことを考えますと、これは早く態度をきめて、そうして同志の方をなるべく獲得するような行動に出なきゃならぬ、こういうこともあるわけであります。いまどういうタイミングで、どういう形でこの提案を行なったらいいだろうかというふうなことについて友好諸国相談中である。私はそうじんぜんと待っておるわけにはいかぬだろう。早く態度をきめてきちっとして、そして、日本はああいう考えだ、これはいろんな人の御批判も、いろんな国からの御批判もありましょうし、あるいは御賛同もありましょう。そのほうが私は国際連合国際社会において日本立場というものを明瞭にし、わが国の意図するところに共感をかちえるというために有効である、こういうふうに考えておるわけです。なるべく早く方針をきめたいものだ、かように考えております。
  14. 森元治郎

    森元治郎君 そこで、いまのように政府も不決断、党もごちゃごちゃになっている。とてもこれはどの案にしたって成功する要素はないのですね、見ていくと。また、アメリカから来る新聞、ニューヨーク・タイムスをはじめとして大きな新聞通信日本特派員の方々の記事を見ても、アメリカがどこまでほんとうなんだろうというきわめて不信感が強い電報が来ておるのは御承知のとおり。さっぱりどうも、アメリカのほうで指導権を握って同志を獲得してアルバニアに対抗するんだという強さがあるような情報は、過去一カ月間の新聞切り抜きをゆうべ拝借して見てみたんだけれども、ない。これは負けますよ。負けることを望んでおるのかどうか。この代表権の問題では日本及びアメリカは負けると思うが、勝敗について大臣の予測を伺いたいと思う。大臣は、もちろんそれは勝つようにやるんだという答弁でしょう。しかし、もうここまで来てみると、世間は見ているんですよ。昔は、電報もラジオもテレビも宇宙船もなかったころは別ですが、いまは早いですから、情報があふれ返っているんですから。それが全部わがほうが不利。わが日本アメリカ陣営でさえ、不利と言っている。向こうは準備は早いし、議題提出はもちろん団結はよくしている。こちらは連携はない。大臣仲間の国にいろいろ指導していくんだと言ってるけれども、指導する自分の頭が固まらなくて指導なんかできやしない。しかも、日米間はもたもたしている。そこへ持ってきてドル・ショックだの、いろいろ問題が山積している。悪い条件がそっくりそろっている。私は負けると思うが、大臣、勝てると思うなら勝てる、これとこれとこれによってという根拠を示されたい。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は自分で票読みをしているわけじゃないんです。みずからやっているわけじゃございませんが、しかし、外務省事務当局出先機関、これは相協力いたしまして、こういう議案ならどういうふうな結果が出てくる。またこういう議案ならどういう結果が出てくるだろうというような検討はいたしておるんです。そういう検討の総合結果を見てみますると、ちょっと、いま森さんから勝てるかどうかというようなことでございまするが、どうも逆重要事項指定方式、二重代表方式、このワン・セットですね、これで勝てないんだというふうな報告は私は受けておりません。しかし、いずれにしても非常にきわどい表決になってくるのじゃないか、こういうことを見ておるのが率直な現状でございます。
  16. 森元治郎

    森元治郎君 もう百二十七カ国くらいの間ですから、態度不明というのはもうごく少ない数ですよ。もうこの期に及んで大勢中国有利、国民政府不利、アルバニアの風がますます勢い盛んになっておることは、だれも、両方陣営も知っている。僅少の差だということは期待であって、負けるのだ。それを御希望になっていれば別ですよ。私は負けると思うのです。大臣はなかなか強気の方だから、なに負けるものかと言ったってだめなんだ。あなたが病気に勝てないのと同じでね、だめなんだ。大勢はそっちに向いている。そこで、時間がないから飛ばして質問しますが、アルバニア案が私は勝つと思う。その勝つもう一つの理由は、これは審議の事務的なことですが、いまのところ、外務省説明でしょう。新聞を読むと、手続事項が先で実質はあとだ。だから、逆重要事項で勝てば云々と言っていますが、これはやっぱり議運の場で運営をきめるわけですね。ことしは、聞くところによると、副議長の選挙があって日本もそれになるのだとか、十五名とか聞いていますね、副議長が。それで国連委員長が七名、議長が加わって二十五名の構成でやる。どんな顔ぶれが出てくるか存じませんが、ここもまた勝負ですよ、議運の場も。いま申しましたように、審議の順序が、手続が先で逆重要が云々だと言っておりますが、どういうどんでん返しが出るかわからないという不安な要素もあるわけですね。なかなかにうかうかはしておれないと思うのです。もし追放になった場合に、アルバニア案が通った、そうすると、こちらは全敗、完敗ですね。中国議席を持ち安保理事国になり、国民政府はいなくなる、追放になる。名前は「追放」と言っていますが、交代だということになる。その際、日本はどういう態度をとりますか。国連決定というものは、これはすなおに受け取らなければならぬと思いますね。国連決議が採択された場合、これには服従するのでしょうね。どうでしょう。
  17. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) それは、もちろん国連決定でありますれば、そのとおりです。
  18. 森元治郎

    森元治郎君 一体、追放された中華民国、いわゆる台湾政府というのはどういう風なんでしょう。国連できめるのは新加盟ではないですね、代表権交代。いままですわっていたのが、おまえはほんとう中国代表してないから、合法的なただ一つの国は中国だというふうに国連できめられると、すわっているのはもう国連唯一のという肩書きはない、代表ということもなくなる。ただ旧名、古い名前中華民国という旗をかかげて中華民国代表台湾に帰る。その台湾という国と称するのは一体国なのか。中華民国と唱える台湾にある一つ政府というのですかね、どういう実体でしょうか。それを私伺うのは、日本国際信義を重んじてこれとの国交は持っていくんだしときょうまでは言っておられますから、国連から追放された、国連からはずれた台湾というものは、一体国であるか、区域であるか、何という存在なんでしょうかね、これは。そういう認識を聞きたいのですね。それから、国連決議を尊重する以上、当然世界の場で、もう台湾というものは国としては扱われないのですよ。国が中共になるのですよ。アルバニア案が通れば中共中国全土代表で、そうすると台湾は何でしょう。
  19. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国連の場で追放という決議が行なわれたといたしますると、その国は国連構成員じゃないんだということになるんじゃないかと思いますがね。その場合に、国連でそういう決議があったから、国連構成員でなくなったから、その国なりその政府性格上の変更が来たんだというふうには私としてはちょっと考えられませんが、これは別個の問題である。国連構成員であるかどうかという問題以前に本質的な問題があるんじゃあるまいか、そういうふうに考えます。
  20. 森元治郎

    森元治郎君 しかし、通るというそのアルバニア案の趣旨というのは、台湾はもちろん中国のものであるというたてまえで、そういう理解で中国国連における権利回復——いままで中華民国中国代表と僣称していたが、今度は本物が来たんだ、したがってあれは中国のものであるという立場が、賛成幾らになりますか、六十数カ国が決定すれば、百二十七カ国全部がこれを承認しなければならなくなるんですから、どうしてもこれを独立国というような扱いは国連からはみなしないと思う。日本と二国間の関係では何か独立国のような感じは持ちますが、そのものは、国連の場、世界の共通の場では、どうも中国の国といっても通用しないんじゃないか。その点どうでしょう。通用しましょうか。
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 国連構成員であるかないか、それは私はその国自体の本質には影響はないんじゃないか。除名になった場合もありましょうし、あるいは逆に新規加入というような場合もありましょう。ありましょうが、除名になろうがあるいは新規加盟というようなことになりましょうが、その国なり政府性格にそのこと自体影響があるんだというふうには私にはちょっと考えられません。
  22. 森元治郎

    森元治郎君 中華民国独立の国であったならば、除名追放されても、国連構成員ではないが十分一つ独立国として世界の中を歩くことはできるが、台湾に蒋介石が旗を持って立っていても、中国の合法的な権利回復北京政府に与えられたあとは、何か山の奥のほうに立てこもって旗を持っているような山賊といいますかな、そんなような存在になるんじゃないかと思うのですが、どうですかね。法律論現実論両方で。
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま条約局長から条約上の見解を述べてもらいます。
  24. 井川克一

    説明員井川克一君) 国連の場におきまする、ただいま森先生おっしゃいましたけれども、これはまさしくいままで中国代表していた政府が別の政府と取ってかわる問題である、その取ってかわられた場合にどうなるかというお話でございますが、ただいまの御指摘に従いますならば、国連におけるその代表の問題と、その何と申しましょうか、よその二カ国関係とは法律的には全く関係がない問題であるというのが従来よりの考え方でございまして、これは単に日本政府考え方ではございません。たしか一九五〇年に事務総長の、国連加盟問題と政府承認の問題というメモランダムが出ておりまして、これもこの二つの問題を峻別して、関係ないということを言っております。そうでございませんと、たとえば、現在中共政府唯一正統政府と承認してこれと外交関係を持っております国々が、国連の場におきましては国府代表と同席し、その投票の価値を認めているわけでございます。したがいまして、そのことと二カ国関係というものは法律的には関係がないということはこの事実でも明らかであると思います。
  25. 森元治郎

    森元治郎君 ちょっと考えて二国関係ということばが出てくるのですがね。国連ではたとえそうはきまってもおれと台湾との二国間の関係だと、ついこう常識でしゃべるのですが、その二国間の相手がもう国の実体を私は失っていると思います。と申しますのは、台北自身でさえ中国一つであるというたてまえ。彼らの議論を拝借したって、もう向こうの中へ入っちゃう、北京の治下に。現実に手を押えなくても彼らの宗主権の中に入ったような形になってしまうと思うのですね。だから、これは幽霊だと思うのです。あとは幽霊。国際社会を乗り切るには幽霊とはこれはっき合っておれないと思うので、その場合に日本態度は、十分それは御検討されるかもしらぬが、あえて幽霊と依然信義ということを口にしてやっていくのか。もう国連に行けば、国交のない中共が安全保障理事国の五人のうちの一人になって厳然とすわっておる。拒否権を持って世界の安全保障について軍配をふるう立場になる。日本は平ですよ、平関取。向こうは横綱だよ。そういうところへ行って、口もきかない。これはあわれな姿になる。アメリカはりこうですから、見ていると、なかなか、今度の逆重要事項であろうと、複合制であろうと、何かニクソンの訪中を前に、深入りをしないようにじょうずに、台湾を助けるような、メンツだけを薄く残しつつ動いているような形勢がある。ばかを見るのは日本だけ。国民全体は、それ見ろ。国民全体の意向に反しているばかりでなく、自民党の五人の次の総裁、総理候補のうちの二人は、(笑声)早くもそれはだめだと言って、残ったのはあなたと台湾だけになっちゃうでしょう。やっぱりそれは醜態ですよ。そのとき一体日本はどうするんだ、そこまで考えなければ、共同提案国のがんばり方も中途はんぱになりますよ。もしアルバニア案に負けた——勝った場合は乾杯でしょう。負けたときはこれはもうみじめなんです。日本国の醜態をさらす。そのときの態度をやっぱりここで新大臣、どういうふうになさるか、政治的な太いところを。
  26. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほども申し上げているわけでございますが、わが国は長きにわたる外交の姿勢といたしまして国際社会における信義を保つ、こういうことでなければならぬ、こういうふうに思うのです。そういうような立場からいたしますと、先ほど申し上げましたような客観情勢から見まして、この際、中国国連参加、これの実現に賛成する、これは私は機宜の措置である、こういうふうに思いますが、同時に、二十六年間にわたって国連で重きをなしてきた、また誠実に国連の仕事をしてきた、こういう国民政府、これに対しまして、さあ形勢がどうも変わってきたからということで、これを——まあ語弊があるかもしれませんけれども——弊履のごとくというような状態でありますれば、私はこれはほんとう国民政府関係の方々ばかりじゃない、これは広くアジア諸民族あるいは世界の皆々さまからの信頼を失う、こういうことにもなりかねない、こういうふうにも考えるわけであります。私はこの表決の結果につきましては、まだ正確にこれでもう多数をもっていけるんだと、こういうふうには考えません。まだ努力をしなければならぬと思いますけれども、努力した結果、まあ不幸にしてこの表決が少数であったと、こういうような結果になってもこれは私はしようがないんじゃないか、信義を失うよりも信義を世界に保つということのほうが貴重ではないか、そういうふうに思うんです。とにかくその辺の技術的な扱い、つまり共同提案国になるかどうかというような問題につきましては、なお皆さん方からもいろんな御意見もありましょうし、自由民主党の御意見もあり、あるいはまた各界の御意見もあり、そういうものをよくそしゃくいたしまして妥当な結論を得たいと、こういうふうに考えております。
  27. 森元治郎

    森元治郎君 佐藤総理福田大臣もよく言う信義というのは、これはきわめて主観的な面があるんですよね。一人の人にとっては信義。それじゃほかの台湾を否定するやつは不信義なやつらですか。日本だけは特別な関係だから信義があるんで、ほかは利害しかないんだと、こういうことですか。信義というのはなかなか主観的な面が多いんですね。私はおもしろくないのは、大臣のことばの中にも、中国国連からいつまでも締め出しておくのは歴史の流れに反するとか、大平さん大平さんで、世論の動向とか——世論の動向じゃなくて、ものの道理なんですよ。そうじゃなくて、ものの道理は、中国を承認して台湾との関係はなくする、あるいはなくなるということがものの道理なんです。時間がないけど、一言言いたいのは、私はちょっと違って、終戦——四五年まではまだ本土の中では内乱があって形勢悪いけれども、まだ蒋介石であり、五大国のうちの一人として蒋介石はがんばっていましたが、サンフランシスコの会議で講和条約にサインするころはもうすでに実体はなくなっている。もしそのときに普通の穏やかな世の中であったならば当然北京がかわるんですが、何ぶん東西対立の中であったために今日までもたもたしたんですから、ものの道理に考えれば、実体のほうへ戻るのが当然だと思う。不幸にしてそういうふうな東西のごたごたのあおりを食って中華民国も変に浮かび上がり今日に縁をつないできたというだけであって、ものの道理は北京だったんですね。そこへ戻ることはこれは本然の姿、道理である。決して一信義の問題だけではない。これは私の意見です。この点をよく考えないと日中問題の取り扱いはできないと思います。  そこで、最近言わないが、政府もだんだんずるくて、三原則から二つ取っちゃったんですね、国益にどうだ、安全保障にどうだ、信義と、この三点でわれわれに答弁してきたのに、安全保障はなくなっちゃった。国益がなくなった。やっと信義にぶら下がっているんですね。これもいまの大臣の話を聞くと、残念ながら負けたならば、大臣考えでは、信義を尽くしたんだ、おまえのためにやってやったんだ、それで信義は終わりですか。安っぽい信義だと思うんだね。一生懸命やって負けた、失敬と。これは選挙だってそうですよ。負けるとせっかくあれほどやったのに残念ですと、これはほんとうに信義を全うすることにはならないんですね。信義を少しやったんですよ。この際はやはりものの道理に返って中華民国との関係は切れる方向で決断していくということが一番大事だと思います。追放ということばがいやなら別な使い方もありましょう。私はこの際はきれいに中国国連の合法な権利回復して安保理事会にすわってもらって、アジアの平和をともに語り、世界を語っていく。新大臣も大きく動いてもらいたいと思うんですね。  そこで最後に伺いますが、時間がないから立て続けに伺いますが、例の三原則、五原則という中国の言い方がありますね。五原則は、互恵平等、相互不可侵、相互内政不干渉、主権、領土の相互尊重、平和共存とか、三原則は、二つ中国をつくる陰謀に加わらないとかあるでしょう。もう財界の人は、けっこうだ。あなたのバックはみんな向こうを向いてしまったんですよ。ちょうどわれわれの総評や同盟が向こうを向いてしまったようなものです。これについて大臣はどうお考えになるか、この趣旨はそのとおりと思うかどうかが一つ。  それから大臣は、新聞記者の質問に答えて、国交正常化とは外交代表の交換、外交関係の樹立を意味する、これを検討する時期だ、こうおっしゃっておるんですね。この場合、もう一回「正常化」の意味、これを合わせてお答え願いたいんです。その場合に正統政府中国——中国というのは台湾を含んでおることは両方が証明しておりますね、蒋介石、毛沢東も証明しておるんです、一つと証明しておるんですから一つに違いない。正統政府は北京だということを腹に入れて国交正常化をおやりになるのか。その二点だけ伺って終”わりとします。
  28. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は記者団に対しまして、当面の日中問題の解決、これはもう真正面から取り組まなければならない問題だ、こういうふうに申し上げておるんです。では、日中問題の解決とは一体何だ、こういうことにつきましては、国交正常化正常化とは、これは国交を開くということである。こういうふうに申し上げておる。そういうふうに私は考えております。その正常化の過程で、いま森さんから御指摘のような、一つ中国だ、台湾との関係は一体どうするかとか、そういうような問題、これは解決をされてくる問題である、こういうふうに思うんです。その話し合いの過程でいろいろな問題が出てくる。それは話し合いの結果結論が出てくる、こういうふうな認識でございます。
  29. 森元治郎

    森元治郎君 そこで、日中国交回復の場合に北京と話し合うときの態度として、相手の人はだれかと思って交渉がされるかと質問している。これが中国の正統の代表だと思って乗り込んでいくのか、二つあるが、こんにちはでいくのか、たいへん違いますよ、これは。話の過程でもって、あっちがほんとうですか。そんなばかなことはない。やはりあなたが正統な代表だと思って話をして、その過程でぞうりのごとく捨てるか捨てないかという話は出るでしょう。それを正統としなければ向こうはばかばかしくて話ができないんですよ。この正統は台北だと思ってだれが話しますか。正統だと思っているから国交回復をこれからしょうと言うんでしょう。そのお答えがないんですが、北京と正常化の場合に、相手を唯一の正統政府と腹の中にしまって乗り込みなさるかということです。
  30. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま中国の事態は非常に現実的に複雑だと思うんです。これは異例の状態にある。つまり台湾、膨湖島を含む中国大陸、これに対しまして正統主権を主張する方が二人おる。北京におるし、台北におる。こういう状態です。その状態でありますから、この両者に対しまして話のしかけ方、これもなかなかむずかしい。尋常なやり方ではできないんじゃないか、そういうふうに思います。そういうぎくしゃくした点が出てくるので、これは割り切って考えなければならぬ問題じゃあるまいか、そういうふうに考えますが、とにかく話をしてみる、これが先決じゃないかと思います。その過程でいろいろ論議さるべき諸問題、その帰結というものが出てくる。おそらくそういうことじゃあるまいかと思うんです。いま米中で話し合いが始まったという。けっこうです。私は、おそらく米中で何か結論が出てそれから大統領の北京訪問だと、こういうことじゃないと思うんです。訪問をしてみて、そこでいろいろな議論をやってみる、そういうことじゃないかと思います。それはやはり異常な中国大陸の状態から非常に解釈しにくい問題が出てきておる、こういうふうに思う次第です。
  31. 森元治郎

    森元治郎君 非常に残念だな。そこまでいったんじゃ、ずっと半年前か一年前に戻ってしまったような気がするね。ちょっと行ってみていろんな話をしてみようということではだめで……これでやめますが、大臣、今晩考えて、森のやろういやなことを言ったけれども、どうだろうとお考えになったほうがいいと思う。あなたは明治の四書五経で育ったような感じが非常に強いですね。近代性がないよ。  さっきの質問の残り——三原則、五原則についてけっこうだと理解なさるかどうかを伺って質問を終わります。
  32. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 五原則というのはいま森さんからちょっとお聞きしたわけでありますが、大体私は、もう当然なことだ、当然なことを五カ条書いたことだろう、そういうふうに思います。  三原則のほうはちょっと聞き漏らしましたので、まことに恐縮でございますが……。
  33. 森元治郎

    森元治郎君 三原則は、二つ中国をつくるような陰謀に参加しないということだな、一つは。あと二つは何だったけな(笑声)「日中国交回復を妨げない」だな。もう一点は……。じゃ私が言った二原則だけでいいからひとつ。
  34. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いわゆる三原則について書いたものがありますが、第一に、「中国敵視政策をやめること」、これは敵視政策をとっておりませんし、今後も敵視政策をとる考えはございません。  第二、「二つ中国をつくる陰謀に加わらないこと」、これもそのとおりでございます。  第三、「日中両国の正常関係回復を妨げないこと」、これもさように考えておる次第であります。
  35. 森元治郎

    森元治郎君 それなら国交回復できるわけだな。
  36. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 私、いささかやぼかもしれませんけれども、中国問題に関して非常に基本的で抽象的なことをあえてお尋ねしたいと思うんです。これはむしろ質問というよりも、ある意味で陳情の形をとるかもしれませんが、私がこうした質問を、名前をあげて恐縮ですけれども、前愛知外務大臣や木村外相代理にしなかったわけ、あえてきょう福田外務大臣にこういうことを申し上げるわけは、やはりこれからのこの次の時代に首相として一番強いポテンシャルを持っていらっしゃる外務大臣中国の問題に対してどういう言動をとられるか、どういう自覚を持っていらっしゃるかということによって私たちこの日本という国家社会の命運の、全部とは申しませんけれども、非常に多くの部分が、好むと好まざるとにかかわらず左右され、表象されるからであります。  私、中国の問題を討論し、考えれば考えるほど、非常に強い不安に襲われるんですが、現にいま、社会党にはまれなるコスモポリタンである森さんの質問をお聞きしておりましても、やはり森さん御自身が非常に大きな誤謬をおかしていらっしゃる。たとえば国連という非常にあやふやな議決機関、国際政治の場を何か神のジャスティスの場のごとく一種のアプリオリティーのものごとの発想をしている。それからいわゆる日中議員連盟に所属していらっしゃる与野党の皆さんの話を聞きましても、私は私なりに中国との国交回復すべきであると思いますけれども、非常に消極的な理由しか見つかりませんが、より具体的な積極的な理由があるかと思ってお聞きしますと、そういったものが一向に答えとして返ってこない。返ってくるものは、「アジアの平和」であるとか、あるいは「世界大勢」であるとか——世界大勢」というのは、言ってみればホットパンツの流行みたいなものでありまして、何もそんなもの争ってはく必要は全くないんで、外交の問題のリーゾナブルな要因とはなり得ない。そういうところで非常に論が進められていて、国連というあやふやな国際政治の場というものに対する一つの疑心というものをもう一回持たれて、あるいは「世界大勢」もけっこうでしょうけれども、日本人自身のコンセンサスとまでいかなくても、日本人の大勢がどういうメンタリティーでこういう問題をとらえているか、非常に中には二律背反したアンビバレントな要素があると思いますけれども、そういった要素を踏まえて日本中国問題に対する姿勢というものが一向に論ぜられないということに対して非常に不安を感ずるわけであります。私は過去に論文にも書きましたけれども、お目にとまったかどうかわかりませんが、現在あるいは将来の中国というものを日本の国益にとってあまり評価できない国としか考えられない、そういう表現は控えるにしましても、日本の将来にとって経済的にも、国際政治の上でも、防衛の上でもきわめて非常にアクチブに影響を与える国家であるとしか考えざるを得ない。そういう中国の現在から将来にかけての本質的な性格というものを踏まえて、さらにその上に日本の国益を考え中国をどう扱うかという議論がほとんどなされないし、たとえば日本にとって非常な影響力を持ったアメリカに対してもそういった日本側の原則というものが明示されないままに今日になってしまいました。私はやはり流動的であっても、非常にアンビバレントな要素があっても、そういった国民なら国民のメンタリティーというものを十分分析した上で政府国連における一つの言動というものをきめていくべきだと思いますし、そういったものをしっかり踏まえた上で言うべきことははっきり言う。たとえば、先ほど森さんがしきりにおっしゃいましたけれども、国連でかりに政府が逆重要事項というものの指定に破れたとしても、私は別にそれはたいした問題ではないと思う。国連の議決に敗れただけでありまして、それによって政権がひっくり返ったり世界に恥をかくということはない。私たちは私たちとしての国益を踏まえてそういう手続をとるべきなんでありまして、どうも何か政府は、話が飛躍しますけれども、たとえばこの問の全日空と自衛隊機の衝突事件を見ても、調べれば調べるほど全日空の責任というもののポテンシャルが強くなってくるにもかかわらず、そういう要因というものについては全く発言されずに、一方的にどろをかぶるといいますか、何か言うべきことを言わなさ過ぎて、中国の問題も国民に非常な多くの不安を与えているような気がいたします。私は、このままでいきますと、中国問題は日本経済あるいは防衛の問題をゆさぶるだけではなしに、一番おそろしいのは日本人の精神構造というものに非常に強い影響を与える。過去にも中国は、たとえば仏教、儒教、文字といった非常に精神的に大きな影響というものをほとんど一方的に日本に与えてまいりました。現に国際政治というものを通じていま日本人に非常に強い影響を与えつつある。特に日本人の精神構造というものに大きな影響を与えつつある。日本のジャーナリズムがほとんど信用ができなくなってきた現況の中で、国民というものは、たとえば世論調査というものをしてみますと、中共の戦力に対する畏怖心というものをかなり強く持っている。あるいは同時に国連における中共の参加というものを六〇%が支持しておりますが、同時に、台湾追放というものを支持する国民は、一番最近の調査でも二〇%に満たない、非常にアンビバレントな要素があるわけです。私は、やはりそういったものを踏まえて、政府というものが、まあ結果として逆重要事項というものを持ち出すにしてもしないにしても、日本人自身の国益を踏まえた中国問題に対する対策というものを、もっと声を高らかに、自分の主張として、世界に向かって、あるいは国内に向かって主張されるべき時期に来ているのじゃないかという気がいたします。  そこで私は、あたりまえのことをお聞きするようですけれども、確認という意味でお聞きしたいのですが、もちろん日本の国民のまだ統一し切れないコンセンサスの要素として、中共国連加盟をほとんどの人間が認める。六〇%が認め、支持する。同時に、台湾追放を認める者は三〇%に満たない。あるいは中共の核戦力というものに対する畏怖心というものを八〇%をこす日本人が持っている。こういう要素というものをあくまでも政府は冷静に踏まえて中国に対する指針というものをきめていかれるべきだと思いますけれども、この点、いかがでございましょうか。
  37. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いろいろいま石原さんから御意見の開陳がありました。その前段の点につきましては、いろいろ私も傾聴した諸点もあり、また私として違った見解を持った点もあるのですが、お尋ねの点ですね、この点につきましては、まさにそのとおりの考え方に立脚しておるのです。私は、まあいろいろの御意見がありますが、もうこの段階になりますと、世界の平和のために、また、したがってアジアの平和のために中共国連に迎え入れる。たとえば核の問題一つにいたしましても、これを最終的にどういうふうに処理するかという点、これは中国を度外視して考えることはできないような状態になってきておる。まあ、とにかく七億、八億の民を擁する中国、これを度外視して世界政治というものを考えることはできない時代になってきておる。そういうようなことで、国連の場に迎え入れるということは妥当な時期に来ておる。こういうふうに考えるわけでございますが、同時に、わが国国際社会における信頼、この点につきましては、これも傷つけることができない。これはわが国といたしまして、内外に対しまして、まあいろいろむずかしい問題に当面しますけれども、これは私よくお話しいたしますればわかっていただけることではあるまいか、そういうふうに考え、この二つの点を眼目として中国問題に臨んでいきたい、こういう考え方でございます。
  38. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 そうしますと、政府がいま考えていらっしゃる逆重要事項というものは、先ほど私がるる申し上げました、日本人のすべてとは申しませんが、非常に多数の日本人が持っている、ある意味でアンビバレントな中国問題や中国に対する心理と申しますか考え方というものに立脚した案と解釈してよろしゅうございますか。
  39. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さような考え方でございます。
  40. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 まあ外務大臣経済、財政のエキスパートでいらっしゃいますけれども、何も中国問題を踏まえただけではなしに、時期的にも、日本という国家社会が経済国家としてこれから国際社会の中に繁栄していくために経済国家としての性格というものの変更を余儀なくされざるを得ない。そういう修正の時期に来ているんじゃないかという気がいたしますが、非常に抽象的な質問になりますけれども、その「修正」というものをお考えならば、その考え方の基底の中に、中国との関係、つまり中国との何らかの影響関係といったものを想定されますでしょうか。
  41. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) どうも、非常にむずかしいお尋ねで、あるいは私の申し上げることがお尋ねに合っておるのかおらないのか、ちょっと私も自信がないんですが、いま、わが国のこの経済政策のかじのとり方、考え方に対する基本的な転換を必要とする問題ありとすれば、私は内外にわたって、内は日本国内、外は国際社会に向かって、最近、戦後ずっとそういう風潮だろうと思いますが、マイホームイズムですね、自分だけよければそれでいいんだというような風潮がずっとあった。これは私はそうだと思います。この風潮では、国内政治の正しいあり方とは言えないし、国際社会でも正しい国際社会でのあり方というふうには言えないのじゃないか。私は最近アワーホームイズムということを言うのですが、もう日本がここまで経済が発展してきた、こういう段階になりますると、わが国だけでわが国の今後の発展繁栄ということを考えることはできない。わが国は、世界全体が富み栄えなければわが国の発展はない。また平和ということを考えましても、これは世界全体が平和でなければわが国に平和はあり得ない、そういうふうに思うんですよ。まあ、いま問題は中国問題であるということでございまするけれども、中国問題を見ましても、私は、中国日本の間に良好なる関係ということがなければ、これはわが国の安全というものは期し得られない。同時に、やはり近隣である、しかも七億、八億の民を擁する中国との間に経済交流の関係が確立せられるということによって、わが国の発展とまた中国の発展、相ともに期し得るんだと、こういうふうに思います。そういうようなことを考えましても、とにかく経済、政治各般の方面にわたりまして中国との間に国交を開くということは、わが国の国益から考えましても、また世界の平和、繁栄から考えましても、これは妥当な考え方である、こういう考えを持っているわけです。
  42. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 いまのおことばが、最近日本にしょうけつ(猖獗)しているやや根拠を欠いた過剰な中国に対する贖罪意識とかかわりないことを期待いたしますけれども、そこで、もう一つお尋ねしたいんですが、端的に言って、日本の財界の考えている中国問題における国益と、政府が、経済を含めて総括的に政治という視点でとらえている中国問題における国益とは、ある場合には当然違い得る、そこに差があり得ると考えてよろしいですか。
  43. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国の財界が深く国益ということを考え、また政府考えていることを理解して行動するということでありますれば、私は政府の行動と財界の行動、これはもう矛盾することはそう大きくは出てこまいと、こういうふうに思うのです。ただ、現実には自由主義社会であり、自由経済であります。と同時に、やっぱり財界には商売優先というような気風もありますので、まあ私、率直に見ておりまして、国益と反する経済活動というものが間々見られる。これはまことに遺憾なことである、こういうふうに思っております。
  44. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 それともう一つ、当然わが国アメリカとの中国問題における国益の考え方というのは違ってくると思います。それはもう説明するまでもなく、台湾に対する配慮あるいは中共の核戦略に対する畏怖心といったものの違いから見ても、中国問題における両国の国益は違ってくると思いますが、この間ニクソン大統領が北京訪問を約束して非常にそれが大きな衝撃を与えたわけでありますけれども、ジャーナリズムは、たいへんわれわれはおくれをとったとか、ニクソン大統領の前に佐藤総理大臣が北京を訪問すべきであるとか、日ごろ日本の外交がアメリカ一辺倒であることを非難しているジャーナリズムにしてはいささかおかしな話で、つまり、ニクソンに先んじて日本が対米追随の外交姿勢をとれというような論拠が二、三ございますようですけれども、私は、ニクソンの北京訪問というのはどうも日本の社会全体が取り違えている。何らの条件というか、妥協点を踏まえたものではなしに、両方がある問題に関しては意見が一致していないということを確認するための、つまりアグリー・ツー・ディスアグリーという性格を持った訪問であると思います。またいままで何らの話し合いが行なわれているわけでもありませんので、これによってアメリカ中国関係が急に友好的になったということではなしに、ある人も表現しておりましたけれども、ディスェンゲージメントと申しますか、つまり非常にいままでのホットなコンフロンテーションというものが一応冷却されて、まあいわば力士が取り組んでいたものが、手を放してにらみ合った、これから今度違った形での戦いがあるんだというふうに解釈するのが正当だと思いますが、その場合に、今秋の国連における中国問題の去就を見て、さらにその上に、ニクソンの北京訪問に対して日本側が、つまり、先ほど申しましたように、日本の国益にのっとった中国問題に対する原則というものを、やはり何らかの形で北京訪問の前にニクソン大統領と確認し合うということが必要なんじゃないかというふうに思うんですけれども、その用意はお持ちでしょうか。
  45. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は今月の六日出発いたしまして、九日、十日とワシントンで開かれる日米合同委員会に出席するわけですが、そういう機会に当然ロジャーズ国務長官とは十分話し合ってきます。できたらニクソン大統領にもお目にかかって、今回の北京訪問の意図、そういうものにつきまして十分な説明を聞きたい、こういうふうに考えております。同時に、それに関連いたしまして、中国に対する考え方、またはソビエトロシア、そういう対処のしかた、基本的な諸問題についてお話も承り、当方の意見も申し述べたい、こういうふうに考えておりますが、いま石原さんのお話しのように、いま米中間で何か基本的な原則がきまって、そうしてこの訪中になったんだ、なるんだというふうなとらえ方はしない、問題はこれから話し合いが展開されるんだ、こういうふうに見ておるわけでございますが、どういうふうな話をするのか、こういうことも含めましてよく伺い、また意見も申し述べたい、そういう考えであります。
  46. 石原慎太郎

    石原慎太郎君 ニクソンのあの声明のあとアメリカでも非常にニクソンのそういった行動に不安が抱かれて、米中関係よりも日米関係というものを再確認するほうが必要であるという論調が強いようですけれども、この際、いま申しましたことの繰り返しでありますが、われわれが北京を訪問する、どうも佐藤総理が行くと言っても向こうが呼んでくれそうもないんで、ニクソンをして日本のために働かしむべく、これの日本側の原則というものをニクソンの北京訪問の前にやはりニクソンに確認させる、アメリカに確認させるという形で、もう時期としても、日本側の国益を踏まえた原則というものを国の内外に明示するその心がまえを持っていただきたい。それがこの中国問題に対する日本人の不安、迷いというものをある形で消去して、やはり好むと好まざるとにかかわらず新しい議論が起こってくる。つまり、議論のあるところには決して不安がないわけでありますから、新しい議論というものはまあ新しい分裂を生むかもしれませんけれども、やはりそこに何らか効用があるはずでありますから、何か一方的にパッシブに日本人の精神構造までがゆすぶられるような中国問題に関する状況というものを、ことしの秋から来春にかけて政府の当事者が払拭されるべく努力していただきたいということをお願い申し上げます。  終わります。
  47. 田英夫

    ○田英夫君 私は一年生で、先ほどから皆さんのお話を伺っていて、まあこれは質問をする前に一言感想を申し上げるのは時間がもったいないですが、一言聞いていただきたいのです。  言うまでもなく、現在日本の外交は非常に重要な時期に来て、福田外務大臣に初めて御出席をいただいて御意見を伺うということは、たいへんまた貴重なことですけれども、同時に——まあいま石原さんもいろいろ意見を言われましたけれども、私はもちろん必ずしも一致しない点がたくさんある。国会というのはふしぎなところで、本来与野党の間でそういう意見をかわして、その討論を外務大臣外務省皆さんに聞いていただいて、そういう中からほんとう日本の国益に合致した外交方針というものを打ち出していくべきじゃないかというような気がするのですが、従来の国会委員会というものは、一方的に野党が政府と話し、やり合いをするという仕組みになっているので、この点はひとつ将来先輩の皆さんにもお考えいただきたいという気がしておりますので、よけいなことですけれども、一言申し上げておきたい。  で、きょうは福田さんにおいでいただいたので、私も新米ですから、大臣の基本的なお考えを、あまりこまかいことは私もわかりませんから、基本的なお考えを伺いたい。  そういう意味で最初に伺いたいのは、たしか八月三十日だったと思いますが、総理大臣とお会いになっていろいろ話されたあとで、自分中国に行くことを辞さないという意味のことを言われた。これは私新聞を通じて知っているわけですが、これは事実ですか。
  48. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そのとおりです。
  49. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、先ほどからのお話を伺っていると、客観的に見て、現在の情勢、この時点で福田さんが中国に行けるということではどうもないんじゃないかと思うのですが、一体どういう時期にどういう条件が整ったら自分として行きたいのだ、そのときの情勢と条件ですね、こういうふうになったら行くという点をひとつ話していただきたい。
  50. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今回のニクソン大統領の北京訪問、あれを見ておっても、これは一朝一夕でああいうことになったわけではないのですね。つまり、ニクソン大統領は、就任いたしますと、そのときから、対決じゃない、対話の外交だ、こういうことを言っておられる。そうして中国に対しましては、すぐに記者交換のワクを拡大するとか、いろいろそういうこまかい配慮を始めておる。そうしてグアムに飛んで行きまして、グアム・ドクトリン、つまりアジアから兵を引くということですね。これは中国との関係においては緊張緩和ということのための非常に大きな手だてである、こういうふうに思って、そうしてその足でさらにルーマニアを訪問した。これは私は今度の非常に大きな訪問ということにつながっていくことかと思うのですね。いろいろの手を尽くしておるわけです。そして一番中国が気に病む第七艦隊の随時出動、常時駐留体制を改めるということまでもやってのけておるのです。私はやっぱりそういう積み上げを通じましてかなりの雰囲気というものができた、ムードができた、こういうふうに思うんですが、私は日中間のことを考えてもそうじゃないかと思うのです。つまり、どういう段階だからどうだ、こういうのじゃない。私が北京を訪問する、また、これを北京が受け入れる、そうしてその訪問によって何事かが生まれるであろうという期待感が双方で生まれる、こういうムードですが、ムードが私のそういう問題の具体化をきめてくれるんじゃあるまいか、そういうとらえ方であります。
  51. 田英夫

    ○田英夫君 よくわかりますが、ということになると、まあ福田外務大臣福田総理大臣になる時点までも大きく目ざしていまからひとつ着々とそういうムードをつくっていこう、まあ、こういうふうなお考えのようにも受け取れるんですけれども、実はニクソンが訪中するということになった以上は——実は中国はちょうどニクソンが大統領に選ばれた一九六八年の十二月にいち早く北京政府の外交部の発表として、台湾並びに台湾海峡からアメリカ軍を引き揚げろ、それを約束することが米中話し合いの原則である、こういう意味のことを、いきなりニクソンが選ばれてまだ大統領に就任する前にぶつけているわけです。こういうことは、中国が原則を重んずる国ということを考えると、おそらくキッシンジャーが北京で話し合った中でその点をすでに約束しているんじゃないか、こういうふうに私は思うんですけれども、いま言われたように、着々グアム・ドクトリンからずうっと手を打ってきた。今度最後にその点を譲った——譲ったというか、アメリカとしては認めた、約束した、こういうふうに私は受け取るんですが、この点はどうですか。
  52. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) どうも周恩来・キッシンジャー会談、その中身につきましては公式の発表というものがないんです。ですから、これは揣摩憶測をするほかはないんですが、私が、まあ私の情報網を総動員をいたしまして集約いたしましたところによりますと、どうもこの会談におきまして米中間に横たわる問題につきまして約束事があったというふうには私は受け取らないのです。問題点がはっきり浮かび上がってきておる。中国側はこういうたとえば台湾の問題、たとえばベトナムの問題、たとえば国連における対処のしかたの問題、そういう問題につきまして、中国側はこういうスタンド、アメリカ側はこういう立場だ、そういう問題点がはっきり浮き彫りにされた。これはあるんだが、その間どうも合意点が重要な問題について打ち出されておるんだ、そういうふうな見方は私はしておりません。
  53. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、先ほどからのお話をずっと総合して考えると、冒頭森委員質問にお答えになった中で、中国との国交正常化という方向で進みたいんだ、これは外務大臣としてはっきりおっしゃったのですね。あと台湾の問題があるのでということがつきますけれども、とにかく中国との国交正常化という方向に進むという大方針は先ほど打ち出された。しかも、アメリカの場合はこうこうこういうふうな手を打ってきてニクソンが訪中をする。それを比べれば、福田さんもこれからいろいろ手を打っていって、やがて条件が、そういう積み上げの中で自分中国へ行きたいんだ、行くんだ、こういうふうに受け取れるんですけれども、そうなると、いまから手を打っていかなければいけないわけですね。ニクソン・ドクトリンと同じように、国交正常化の方向に向かって、福田外務大臣からあるいは総理大臣の段階に入るのかもわからぬけれども、まず何をやるか、福田さんとしては。たとえば、四次防などというものがあるということは、私の理解では、中国にとっては許しがたいことである。日本軍国主義化のまさにあらわれであるというふうに受け取ると思います。そういうものはやめるのか、あるいはいま台湾から引き揚げようとしておる第七艦隊もすでに引き揚げ、ベトナムからも引き揚げる。沖縄にはしかし厳然としてアメリカ軍の基地があるという現実は、中国にとって見るなら、日本中国敵視政策がそこに残ってあらわれている。むしろアメリカが引っ込んで日本がそこへ出てきている、肩がわりしている、こういうことになると思うのですが、それなら、その沖縄返還協定をこの際改めてあんな返還協定でないものにしていくとか、いろいろ考えられるのですが、福田さんとしてはまずどういう手を打つのか。いままでのとおりじゃ、とてもそれは中国との国交正常化なんてできないし、福田訪中ということはできないと思うが、その点、いかがですか。
  54. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、いろいるそういう日中間接触の回復というものはあると思います。しかし、一番重要なことは人的交流、こういうことじゃないかと思います。政府間接触ということは長い間言われておって実現いたしませんけれども、その辺から手がけていくのが一番いいんじゃあるまいか。アメリカではいろいろな手の込んだことをやってきたようでありますが、またアメリカ日本は違う。人的交流、これをどういうふうにしかけていくか。この辺に私は日中間接触の第一接点の目標を置くべきである、こういうふうに考えております。
  55. 田英夫

    ○田英夫君 ということは、大使級会談、米中ワルシャワ会談というようなものをお考えですか。
  56. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まだ具体的に大使級会談がいいのか、あるいは政府代表者を特別に出すという方式がいいのか、あるいは自由民主党に依頼をするのがいいか、その辺のことはまだ考えておりませんけれども、とにかくアメリカよりはもっと直接的な人と人との接触から始めていいんじゃあるまいか、そういう考えであります。
  57. 田英夫

    ○田英夫君 そこで、沖縄の問題に移りたいのですけれども、つまり、沖縄の問題というのはいまのような前提に立って私はとらえなければいけないのじゃないかという気がするわけです。つまり、一昨年の佐藤・ニクソン共同声明の時点と明らかに国際情勢、特にアジア、日本をめぐる情勢は変わっている。ところが、沖縄返還協定というのは明らかに共同声明を基本にして結ばれたものだということになると、これは非常におかしなものですね。現にたとえば、第八条のVOAというようなもの、あんなものが沖縄から出される必要は全くない。米中で話し合いが行なわれているという中で謀略放送と思えるようなVOAが出されている。しかも、日本の一部から出ているというようなことは、私はきわめて世界の時流に逆行していると思うのですが、これに象徴されるように、あの返還協定——だいいち、米軍の基地が八十八もそのまま残るというようなことですね、こういうことは、外務大臣立場から、日本の外交をこれから進めていく上でぐあいが悪いというふうにはお考えになりませんか。
  58. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) アジアの情勢ですね、これはまだニクソン・ドクトリンというようのがあって変わっていくという展望はできるわけなんです。しかし、現実に変わったという実績はまだ出てきておらない。一番私はアジアの情勢で注目すべきものは、ニクソン大統領と周恩来首相との会談がどういうふうな展開になるのであろうか、どういうものを生み出すのであろうかということにあるかと思いますが、しかし、それがまだ具体化してない。先ほど私の見方を申し上げましたが、いわゆる両国の間に何らの結論めいたものは出てきておらない。これからその結論が出るか出ないかという、こういう段階なんです。そういうので、将来の展望としては、アジアの情勢が転換をするということは、これは見られると思うのですが、まず具体的なものとしてどういう変貌をするのか、そこまでは読み切れない。そういうことを考えまするときに、一昨年の客観情勢と今日の客観情勢とが具体的に変わったかというと、そう変わりはない。あのとき想定されました点、またこまかい点につきましては、自今二年間にわたりまして、いろいろ論議されました結論である沖縄協定、しかもその調印は済んだばかりである。こういう沖縄協定の調印が済んだばかりなのに、またその情勢が変化したという想定に立ってここで改定するというと、それは非常に私はかけ離れた議論になってくるんじゃないかと、そういうふうな気がいたします。
  59. 田英夫

    ○田英夫君 そうすると、外務大臣としては、たとえば返還協定の、いま私がVOAの例をあげましたけれども、これも、調印されたばかりにしても、いまの情勢に合わないんだから、今度アメリカにおいでになる機会に、ひとつロジャーズ国務長官などに話されてひとつVOA存続の条項ははずそう、あるいは一刻も早く引き揚げてもらおう。実際、条約を手直しすることは別にしても、VOAは二年後に相談するというのじゃなくて、すぐにでもひとつ引き揚げてもらおうというおつもりはありませんか。
  60. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 沖縄問題につきましては、いろいろ言いたい点はあるんですが、たとえば御指摘のVOAにつきましては、あれはずいぶん議論に議論をいたしまして、そしてああいう形になった。それを、情勢があの後変わったんだから、ニクソン訪中が出てきたんだから変えたらいいだろう、こういうような言い方はまだできない段階じゃないか、こういうことを申し上げておるんです。沖縄につきましては、いずれにいたしましても、協定に調印をした。この調印をして、批准をし発効させなけりゃなりませんけれども、まあアジアの情勢も変わって参りますし、この変わり方に応じまして、逐次、返還というものがいろいろきずがある、瑕疵があるというふうにいわれておる。そのきずや瑕疵、そういうものにつきましては、是正をしていかなければならない、これはそう考えております。
  61. 田英夫

    ○田英夫君 もう少し具体的に実はお聞きしたいんですけれども、最後に沖縄に関連して、もう一つ、これは外務大臣としてというよりも、前大蔵大臣ということかもしれませんが、沖縄のドルですね。現在いわゆるドル・ショックの問題で、沖縄の県民の皆さん、たいへん心配をしているわけですね。そこで政府としてこれはひとつめんどう見るんだ、具体的に言われることはたいへんむずかしいということはよくわかります、いろいろ影響が大きいから。しかし、その点をひとつはっきり、この席で約束をしていただきたいと思うんですが、損害はかけない、めんどうを見るんだということをはっきり言っていただきたいと思うんですが、いかがですか。
  62. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 沖縄のドル問題を中心にいたしましていろいろ問題がある。この間水田大蔵大臣から、わが国において変動為替制を採用するんだというので、私にも相談があったんです。私、それはやむを得なかろう、しかし、沖縄のこれに伴う影響というもの、これについては十分考えておいてもらいたいんだということを申し上げたわけでございますが、とにかく沖縄にとりましては、この変動為替制、またそれの今後の発展、これにつきましてかなり大きな影響がある。それを私はとにかくできる限り政府対策をとっていかなけりゃならぬと、こういうふうに考えておるのであります。いま大蔵大臣、また総務長官、この間でどういう対策をとるか、これは相談が進められておりますが、この相談は、たとえば沖縄県民の本土における旅行者あるいは留学生などとか、そういう者、あるいは沖縄島における物価対策の問題、そういうような当面の問題についてでありますが、これは何らかの処置がとられるんじゃなかろうかと私は見ておりますが、ただ、その基本的というか、非常に大きな問題であるドルをいかなる換算率をもって処置するか、この問題は非常に機微の問題でありまして、こうするがよかろうとか、あるいは、こうすべきであるとか、そういうような所見は、私から申し上げるのはいかがかと思いますので、この点だけはお答えを差し控えさしていただきたい、かように思います。
  63. 田英夫

    ○田英夫君 最後に一つ、これは前外務大臣が出された書簡ですけれども、沖縄協定が調印された六月十七日に、愛知外務大臣からマイヤー大使あて書簡という形で出されているものの中に、沖縄における外国の企業の取り扱いに関する書簡というのがありますね。その一番最後に、第八項に、極東放送の運営に関して、極東放送というものの放送を沖縄で認めるという条項がある。これは前外務大臣のことですけれども、こまかいことですから、大臣御存じなければ担当の方でけっこうですけれども、これはまことにおかしなもので、実は私この間沖縄に行ってきましたけれども、沖縄に極東放送というものはありますけれども、この書簡の中に、「財団法人極東放送による日本語の放送を」返還後も許すということが書いてある。「財団法人極東放送」というものは存在しないんですよ、沖縄には。現在ある極東放送というのは、アメリカの法人である極東放送財団というのがある。これはアメリカの法人ですね。それが現在存在をして放送しておりますけれども、アメリカの法人が日本国内で電波を出すということは、明らかに電波法第五条に違反をするということですから、何で愛知さんが電波法違反になるようなものをここで認めるようにしているのか。どうぞ吉野さんで……。
  64. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) お答えいたします。  現在、御指摘のとおり、極東放送は、アメリ方法人として沖縄において放送事業を営んでおるわけでございますが、返還と同時に日本の法令が適用されるわけでございますから、したがって、もし事業を続けるならば、日本の法令によって続けていかなきゃいかぬ、こういうことになるわけでございます。そこで、日本語放送につきましては日本の財団法人としてひとつ放送していこう。すなわち、財団法人として許可していく。こういうことで財団法人として許可する、こういう趣旨で手紙を書いた次第でございます。
  65. 山本利壽

    理事山本利壽君) 持ち時間がわずかですから簡単に。
  66. 田英夫

    ○田英夫君 はい。  それはわかりますけどね、財団法人の申請は去年の十一月十二日に出ていますね。しかし、認められていないんですよ、まだ。存在をしない財団法人極東放送というものを、あたかも存在するかのごとく、一国の外務大臣が一国の大使にあてて手紙を出しているということはどうも納得できないんですが、この点は、きょうは時間がありませんから、いずれ詳しく伺いますけれども、たいへんおかしな書簡が出ている。これは前外務大臣がお出しになった公式の書簡なんで、それをひとつ新外務大臣、直すべきことは直しておいていただかぬと、これはたいへん国の正式の書簡としておかしなものだという気がいたします。答弁はいいです。……吉野さんから、その点だけはどうですか。
  67. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) いずれにせよ、日本法令による財団法人というものは、日本法が適用されない限りは、財団法人としても、日本法のもとにおける財団法人ということにならないわけなんです。愛知外務大臣の手紙は、復帰後の状態に対する方針を書いたわけでございます。
  68. 田英夫

    ○田英夫君 それは実はおかしいので、吉野さんまだ勉強が足らぬと思います。去年の十一月十二日に琉球政府に財団法人の設立申請書というのが出ているんです。日本に復帰しないうちに琉球政府に財団法人の申請が出てきているのです。ところが、琉球政府はそれを認めていないから、現在存在しないんです。日本政府への復帰後とか復帰前ということは関係はない。琉球政府が認めればそれは日本人が設立した財団法人になる。それがなっていないという問題です。ですから、それは復帰前、復帰後の問題ではない。この大臣の書簡には、ほかのところには「極東放送会社」と書いてあって、「日本語の放送を許す」という部分だけ「財団法人極東放送」とちゃんと使い分けている。私はそこにちゃんと何か打ち合わせがアメリカとの間にできているように思いますが、この点はいかがですか。
  69. 吉野文六

    説明員(吉野文六君) 今後この極東放送をどのように日本法令のもとにおいて処理していくかということは、一つには、今後法律技術的にこれをどう処理していくかという問題に尽きるだろうと思いますが、いまのところ考えておりますのは、極東放送は、御存じのとおり、五年間英語で放送することも許されることになるだろうと思いますが、その範囲内においては、これは特別法律をつくりまして、そうして特別な事業団として英語放送を続ける、一方、日本法令に基づく財団法人としての放送局である極東放送は日本語で放送することを許可していく、こういうことになるだろうと思います。
  70. 田英夫

    ○田英夫君 もう時間がありませんから、答弁はいいのですがね、それはたいへんおかしなことだと思います。特別の法律をつくるということをいま実は初めて言われた。VOAについては、電波法に違反をするから特別の法律をつくるということがすでに明らかにされており、つまり、VOAと同じようにアメリカの民間放送を沖縄で存続させるために日本でわざわざ特別の法律をつくるということは、私はたいへん重大な問題だと思います。この問題については郵政省の関係にもなるので、いずれまた別の機会に郵政大臣なり関係の郵政省の方においでいただいて、外務大臣を含めてひとつ御検討いただきお話しいただきたい。こういう宿題を残しまして終わりたいと思います。
  71. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先ほど来からいろいろな質疑応答をお伺いもいたし、また冒頭に大臣はきわめて短い所信の一端を述べられたわけですが、何といっても、山積するもろもろの外交問題の中で日中関係解決ということがやはり相当大きなウエートを持っている。大臣御自身もたいへん意欲的には何とか前向きに取り組んでいきたい、そういう印象を受けたわけです。その点ではまことにけっこうだと思うのでありますが、ただ、答弁をずっと伺って私なりに整理もし考えたことは、いままでも佐藤さんが本会議なりあるいは予算委員会等で述べられた中国に対する基本的な姿勢というものはいささかもくずれていない。そういうことを踏まえてはたしてこれから日中の関係の打開ということが望めるんだろうかきわめて心配だ、そういう判断をいま私自身が持ったわけですが、先ほど、機会があれば大臣御自身も訪中することにやぶさかではないということも述べられましたし、また大使級会談等についてもチャンスを何とかつくって強力に推進することにも決してやぶさかではない。こういったこともいままでも繰り返し述べられてきた問題であります。いまわれわれが期待したいことは、どこでどういうチャンスをつかまえて——確かに世論の趨勢としてはやはり日中国交の回復正常化ということが望ましいという方向に傾いている時期だけに、大臣御自身も日中国交を開くというお立場に立っていろいろと申されたんだろうと思うのでありますが、そこで第一番目にお尋ねをしたいことは、先ほどもちょっと御質問がありましたが、中国というのは一度きめた原則論というのはなかなかくずさない。これは中華人民共和国政府が革命に成功していまの北京政府をつくって以来二十数年間にわたっておそらく一回もくずれていないはずだと私は理解しております。先般私どもの訪中団が参りまして公明五原則ということが確認され、それが日中国交回復への最小限度の手がかりであるということが双方の間で確認をされております。先般松村さんの逝去に伴ってわざわざ来られた王国権さん自身がいろいろな方々に会い、とりわけ民社党の春日委員長に会われた際にも、この五原則は絶対くずせないということを重ねて強調されたというような一連の経過を考えてみた場合に、いま大臣がるる述べられ、いろいろ意欲的なことはわかるにいたしましても、はたしてこれから具体的にその突破口が開けるのだろうかというたいへん心配な点が残される。この点、いかがでしょう。私、これから申し上げる点については少々いままでのやりとりと重複する点があるかもしれませんが、それは確認としてお尋ねしてまいりますので、その点、よろしくお願いいたします。
  72. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公明五原則というものですね、これは私もたいへん関心を持ちまして、渡部さんが、何新聞でしたかな、連載をされましたあれで、そのいきさつなり意図するところを拝見したんです。しかし、あれは、いまわが国がああいうふうにきめてそうして中国と接触をするという前提としてなかなかこれを採用することは私どもの立場とするとむずかしい問題がある。ああいう問題は、とにかく私が先ほど田さんのお話にお答え申し上げましたように、何をおいても人的接触、これが大事じゃないか。そういう人的接触の過程におきまして御論議をさるべき問題である、こういうふうに思うのです。それは中国には中国の主張がありましょう。それが全部取り入れられなければ話が始まらぬと、こういうものではないと思うのです。わが国にもわが国の主張がなければならぬ。わが国としての主張を、私は堂々とわが国の主張というものを展開していいと思うのです。それで、初めのうちは私は熱い議論があっていいと思う。そのあとに私はほんとうの理解というものが生まれてくるんじゃあるまいか、こういうふうに考える。何が何でも好々(ハオハオ)、とういうような考え方でいったのでは私はかえってあとでもんちゃくを起こすんではあるまいか、そんな感じがするわけです。うんと初めは議論をしてみる。これが大事じゃないかということを申し上げておるのです。
  73. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 もちろんおっしゃられるまでもなく、すべてが好々(ハオハオ)でいったのでは、これは日本の自主的な意思というものが全然ないということになりましょうし、それは究極から見れば国益に反するようなことにもなりかねない。その点はまことに同感だと思うのでありますけれども、しかし、やはり向こうで、一つの方程式といいますか、一つのパターンをつくった場合に、日本がそれに応ずるだけのものを用意をし、これとこれはのめるけれどもこれはこうだという具体的な一つ考え方の提示がやはり何らかの形で表明され、従来からしばしば言われてきました敵視政策——先ほど大臣は敵視政策をとった覚えはないと言われましたが、大臣のみならず、いままでの政府の一貫した考え方はそうでございましたけれども、しかし、受け取るほうはそうではない。ここにやはり考え方のズレがあるんではないだろうかというようなことを考えてみた場合、そのズレをどこで一体調整をしなければならないのか。いま大臣は、人的な交流をはかってそれを積み重ねて、そうしてそれを議論を通じて相互理解を通じて国交回復への糸口にしたいという御意向のようでありますけれども、はたして具体的なこれからのスケジュール等を実はお考えになっていらっしゃるのか。そしてまた、国連総会もある程度そういういろんな含みを持って臨まれるのだろうと私ども判断するわけですけれども、この席上でもしそのお考えが述べていただけるのであれば、ぜひともお聞かせいただきたい。
  74. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、冒頭申し上げたのと重複をいたしますが、大事な点でありますので申し上げますが、どうもいまこの七億、八億の民を持った中国というものが国際社会に入らない。これはまあ非常に異常な事態であります。核軍縮はもとより、軍縮、世界の平和、そういうことを考えてみましても、これは世界の重要なるそれらの問題というものも解決できない。こういうような状態ではないか、こういうふうに思うのです。ですから、国際社会中国が入ってもらいたい。同時に、わが国といたしましては、この隣の国、隣国としてのつき合いができるような状態に早くしたい、こういうふうに考えておるわけです。そういう方向でこの問題に真正面から取り組みたい、こういうことを申し上げているのです。これはひとつ御理解願いたい。しかし同時に、国際信義というものがある。これは非常に大事な問題と考えるのでありまして、失われた国際的信頼感、これを取り戻す。これは容易なことじゃない。私はそういうようなことを考えまするときに、この問題の解決の過程でそういうあやまちをおかしては相ならぬと、こういうふうに考えておるのです。ですから、まあこの公明五原則と言われるような問題につきましても、初めからこれはそのとおりだと、こういうふうに言えない問題を多々含んでおる。こういう問題をどういうふうにするか。日本考え方もある。中国考え方もあります。それらは、話し合いの過程において、どういうふうに考えるのが両国のために適当であるか、また世界のためアジアのために適当であるか、こういう結論がおのずから出てくるのだろうと、こういうふうに思うのです。
  75. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 従来からも話し合いということはしばしば佐藤さん御自身もおっしゃられましたし、私も何回か伺っておりますが、まあ今後の中華人民共和国の取り扱い方については、国連でも、先ほどのお話のごとく、どう一体日本として態度をきめるかという問題につきましても、友好諸国といろいろ相談もしなければならないと、もうだいぶ前に伺っております。それから、こちらにそういう意思があっても、何せ相手のあることである、向こうさんがうんと言わない限りは話し合いの場所を持てない等々のことがございました。しかし、もうそういうことを伺ってからずいぶん久しい期間になるわけです。政府としてその間どういう一体具体的な話し合いの場を持たれるための接触をされたのか。その辺はいかがでございましょうか。
  76. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 具体的な一番大きな考え方、これは私は野田訪中団だと思うのです。この自由民主党代表するような資格において、野田氏を団長とする訪中団というものが行く、こういうこと。これは私は日中問題の解決の打開という上において非常に意味のあることだと思うのです。まあ、野田さんという特定な人に私は限って言うわけじゃございませんけれども、ほんとうわが国政府と緊密な関係にある、わが国政府をささえる自由民主党というものが出ていって、そうしてほんとうにこの日中問題というものの話し合いをやってみる。これは非常に私はいいことじゃないかと、そういうふうに思うのです。まあその他、あらゆる面で人的接触ですね、私はそれが一番先に先行すべきものじゃないかと、そういうふうに考えておるわけでございますが、まあ就任早々で、いかなる仕組みでそういう人的接触を構成するか、そういう点までまだ思い及びませんが、話してみればおのずから打開の道というものが出てくるだろうと考えております。
  77. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 何かこれは伝え聞いたことでございますけれども、今度大臣アメリカへいらっしゃいますね、その帰路か——おそらく帰路だと思うのですが、カナダへ寄られる。そのときには中華人民共和国の承認国であるカナダの知恵も借りたい。たまたま最近中国の大使が赴任したばかりである等のこともございまして、まあそういうことを背景にやはり会われて、いまおっしゃったとおり、具体的に人的な交流の一環として大臣御自身がやはり積極的に当たられるおつもりなんですか。
  78. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は中国のカナダ駐在大使、この方とお目にかかるいま段取りはしておりません。しかし、この方とカナダ政府、これはかなり接触しておると思うのです。カナダ政府を通じまして、接触の状況、それからさらに中国承認後のカナダと中国との関係、そういうもの、また中国問題につきまして、わが国にとって参考となるべきいろんな諸点、これらの問題につきましてはできる限りひとつ話を聞いたり集めたりしてまいりたい、かように考えております。
  79. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 そうしたところにも、まあいままでと違った、一つの隘路であったようなものが開けていくという感じを抱くのですけれども、いま野田訪中団等々のお話がございました。それも必ずしも特定の人に限ることではないだろうと。まあ従来用意されたそういうような政府派遣という形になるだろうと思うのですけれども、中国のほうではそれに難色を示している。どうしても受けるわけにはいかない、まあいろんな事情、いきさつ等がございましょう。そうした場合に、やはり変わり身が早いといいますか、直ちに次の手を打たねばならないというようなことも当然踏まえてこれからも外交折衝に当たってもらいたいと思うのです。いまおっしゃったように、大臣自身が積極的にひとつ行動していただくということも、これは大きな収穫があるのではないか。  いま御答弁されたことも一つの問題点だろうと私思いますし、それからいろいろ申し上げたいのですが、先ほども問題になりました一つ中国二つ中国かということがしばしばいままでも議論の対象になってまいりました。ただ、いままで政府自由民主党の一貫した考え方は、一つ中国論の立場に立つと、こういうことでございます。しかし、伺ってみますというと、どうしても二つ中国論という考え方にお変えになったのではないかという印象を受けるのですね。というのは、いまも論議されてまいりましたように、二重代表制の問題等々考えてみますと、その辺矛盾は感じられないのか。両方認めるというような、まあ端的に申し上げれば、そういうようなことになりはしないか。そうすると、事実上、一つ中国ではなくて二つ中国を認めることになるのじゃないか。この点の御判断、ということよりも、むしろこちらのほうに教えていただきたいのでございますが、いかがでございましょう。
  80. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まあ政府は一貫して一つ中国、そういう立場をとっておるわけです。しかし、一つ中国に正統なる主権国家であると主張する二つ政府がある。きわめてこれは異常なことであります。その異常な事態でありますので、いろいろまぎらわしい現実というものが起こってくる。これはまあやむを得ないことじゃないかと思うのですが、あくまでも考え方一つ中国である、こういう考え方にまあ徹しておるというのが政府立場でございます。異常な事態に伴いましていろいろまぎらわしさというものができてきておるということ、これは私も率直にそのように思いますけれども、ただいま申し上げましたような考え方であると同時に、この考え方は曲げることなくずっと持ち続けていかなければならぬという考え方である、こういうふうに考えております。
  81. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 おっしゃることはよくわかるんですけれども、しかし、今回の逆重要事項指定方式といい、二重代表制といい、これは国として認めるという場合には、国として認めるわけですから、たとえ政府二つあろうと三つあろうとそれは問題外であって、国として認める以上は、やはり二つ中国を認めることになるのではないか、その疑義が、いまずっと御説明を伺っていましても、どうしても晴れない。しかし、基本的には一つ中国として認めるんだ。何かそこに相反する矛盾というものがどうしても理解できない。おそらく国民が聞いても、そういう何かふっ切れない疑問をあとあと残すんではないか。いかがでしょうか、もう一ぺんその辺を整理していただいて御答弁いただきたいんです。
  82. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私どもは一つ中国論をとっておるわけです。しかし、国連中国問題の扱いが、そういう私どもの一つ中国論という中国の本質、これに影響を与えるものであるというふうには考えておらないんです。国連におきましては国連の舞台としての立場がある。そういう立場のタクティックスというかテクニックというか、いろんな処置がとられるであろう。しかし、それだからといってその処置なりタクティックスが、一つ中国というたてまえ、これに本質的に影響を与えるものではないし、また影響してはならないものである。こういうふうな認識を持っておるわけですが、ただ、要するに、中国には、おれが正統なる主権者であると主張する人が二つあるものですからまことにまぎらわしい事態になる。これもきわめてすっきりしたものにならないという点は、これは私も率直に認めます。認めますけれども、もうこれは一つ中国である、この考え方は、これはまぎらわしさがありましても、それに惑わされることなく、どこまでもその考え方を推し進めるべきものである、かように考えます。
  83. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 先般ですか、総統府の秘書長をやっておられる張群さんが来られましたね。佐藤さんとどういうこまごまとしたお話し合いをされたか、寡聞にして私わかりませんけれども、しかし、少なくともあの当時伝えられたいろんな報道を考えますと、いわゆる台湾政府自身も昨今の国際情勢の変化、とりわけ国連における中華人民共和国の承認という趨勢はいかんともしがたい、日本としてもそういう方向へ行かざるを得なくなってもやむを得ないだろうという、そういう感触を示されたとか、まあわれわれは受け取っているんですが、そうなった場合、台湾自体としても、そういう世界の趨勢というものにさからえないという判断に立って一つの方向をこれから台湾政府台湾政府としてきめていかれるだろう。そういった場合に、日本としては後手を踏むような——ニクソンの訪中問題等々を考え合わせるまでもなく、またもや後手を踏むようなことがありはしまいか。これはちょっと先走ったことかもしれませんけれども、決してそれも全くないということでもなさそうな気配も感じられます。台湾政府がもしそういうような考え方に立って、中華人民共和国政府が承認され自分たちが追放されてもやむを得ないんだというようなときにでも、国際信義という立場をあくまでも固執されて、そして、どちらかといえば日本の国益に反する、先ほどもおっしゃられた七億八千万という人口、また台湾の二百五十倍という面積をかかえておる、それから産業の問題、貿易の問題、文化交流の問題でも、そういったいろんな問題を想定してみた場合、どちらが一体メリットが多いかということになれば、これは常識的に、詳しい専門的な知識を持たずとも、これは中華人民共和国との新しい道を開くことのほうが望ましい。こうなることは言うまでもない。そういうこと等を踏まえて、台湾政府も、一つのそういう趨勢にさからえない、もう放棄しちゃうといった場合に、日本政府としての判断というものを明確にできるのかどうなのか。そういう問題も含めて台湾というものも考えていかざるを得ないのじゃないかということなんですが、いかがでしょうか。
  84. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 渋谷さんのおっしゃるとおり、台湾政府がどういう考え方を持っておるか、これもつぶさに検討しております。検討した上に立っての日本政府としての行動ということになっておるわけです。そういう間において日本がどういう態度をとるべきかということについては、私は先ほど信頼基本方針ということを申し上げたわけであります。後手後手というようなお話がありますが、そういうことのないように十分心がけて対処したいと思います。
  85. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 まあ、十分さらに突っ込んだ質問ができないことは残念に思うのですが、あまり時間もありませんので、最後に一つだけお尋ねをしておきたいのですが、沖縄の問題でちょっとお伺いしておきたいと思います。  先ほどの御答弁は水田大蔵大臣の御答弁と全く同じであることは、これは当然でございましょう。ただ問題は課徴金の問題があるのです。これはいままでの米国政府の言明では、沖縄といえども例外ではない、こういう言明をされておる。大臣御自身がこれから日米貿易経済合同委員会ですか、御出席のためにいらっしゃる。そういったことも当然これは問題にされるだろうと思います。ドル・ショックの中でも課徴金の問題も決して無視できない。しかも、依然として米国の施政権下にありながら、こうした問題が沖縄に課せられるということ自体これまた大きな問題じゃないか。どう考えてもその辺が整理できないという点をどう考えられておるか、どうこの問題の処理に当たられるか、お聞かせいただきたいと思います。
  86. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私も、沖縄からアメリカに輸出される品物につきまして課徴金がかけられるのだという新聞記事を見ましてたいへんびっくりしたのです。これはきわめて不自然だなという気がしておったわけでありますが、なぜかかるのかということを聞いてみますと、これは沖縄はアメリカの関税領域となっておらぬ。したがって、他の関税領域となっておらないアメリカ統治下の諸島あるいはグアムなどの南洋群島と扱いを同じくしなければならぬ。つまり課徴金がかけられるのだということにしなければならぬという考え方に基づくものだという話であります。一応そういう考え方も成り立つかもしれない、これはアメリカ・サイドからいいますれば。しかし、わが国がいま沖縄の問題という非常に困難な問題と取り組んでおる、そういう際でありますので、何とかこの沖縄の問題につきましては特例措置はできないかということを日本政府といたしましてアメリカ政府に申し入れをいたしております。ただいまアメリカ政府のほうでは検討中であるということでございますが、きのうもトレザイスという方が私をたずねて参りました。私、会談の冒頭に、この問題を要請をしておくというお話をしておきましたし、またアメリカ駐在のわが国の大使館当局も、これは鋭意アメリカ当局と折衝しておりますし、また問題が解決しなければ九月九日、十日の日米会談、これにおきましても強くこの考え方に沿って努力をしていきたいと、かように考えております。
  87. 渋谷邦彦

    ○渋谷邦彦君 最後に一点、そうした問題を通じまして、やはりいま非常に神経過敏になっているような状況でございます、沖縄の返還を通じまして。どうか沖縄県民の方々が、たとえどういう問題であろうとも、復帰ショックなんということがだいぶ前にいわれたことがありますけれども、みじんもそういう不安を与えないように、特に外交折衝を要するような問題でありましても、早く結論を出してあげるとか、とにかく不安感に対していろんな形で政府は積極的に手を打って、そして沖縄県民の方々のためになるような方向へ進んでいただきたい。これは要望であります。  それを申し上げて私の質問は終わります。
  88. 星野力

    ○星野力君 時間が非常に少ないので、かけ足でまいりますから、御答弁も簡明でけっこうでございます。  大臣は先ほど、中国国交のないのは不自然、こう言われた。また、中華人民共和国政府国連に入るのを拒否してきたこれまでの日本政府方針は捨てる、こうも言われたわけでございますが、大臣は外交面で佐藤内閣を代表して発言しておられるわけでありますが、少なくともことばの上では、最近までの政府発言に比べてかなりの変化であると思うんであります。ところで、七月の臨時国会でも佐藤総理は、一つ中国二つの政権が存在する、そのために迷うのだと、ハムレットもどきの心境を繰り返して述べておられました。先ほど大臣二つ政府存在について言われたわけでありますが、しかし、北京と台湾と、この二つの政権の存在ということなら、何もきのう、きょうのことではございません。二十二年前に、現実に中国大陸を統治する政府として中華人民共和国政府が成立し、日本政府はそれから二年半たった後に、台湾に逃げ込んで、アメリカの武力にささえられて中国一つの少さな地域を押えている蒋政権を、みずからの選択で——まあアメリカの圧力もあったでしょうが、結局はみずからの選択で、明らかにそれが中国代表するものでないにもかかわらず、中国代表する政府であるかのようにみなして日華平和条約を結んで、これで日本中国との戦争の問題は一切解決した、こういうことにしてしまったと思うのです。これは明らかに虚構の上に立っております。その虚構を歴代の自民党政府が受け継いできた。そのことがもうどうにも通用しないところまで情勢は来てしまったと思うのであります。ところで大臣は、中国国連に入るのは当然だと、こう言いながら、国民政府追放には反対だと言われ、そして逆重要事項や二重代表制、ここに逃げ道を求めようとしておられると思うのであります。その点、結論はつけておらないと言われますが、はっきり方向はそうだ。それでは、他の委員から申されましたけれども、口では二つ中国立場をとるもんじゃないと幾ら言われても、まぎれもなくこれは二つ中国立場に立つものであると言わなきゃならぬと思うのです。口では中国との国交正常化をうたっておりますが、実際にはいままでと同じように中国国連議席回復に反対する立場である、そう言っていいと思うのでありますが、まあ、過去の選択の誤りはこれは歴史的な事実でありますから何ともいたしがたいのでありますが、その誤りをいつまでも続けるのではなしに、ここらでほんとうに現実的な立場に立って、逆重要事項とか二重代表制とか、そういう策謀や小細工を弄するのではなしに、またそういう策謀に同調するのでもなく、中華人民共和国の国連代表権というものを認めて、台湾の問題は中国内部の問題として中国自身にまかせる、そういう態度をとる、まずそのお考えはないか、ここからひとつお聞きしたいと思うのです。
  89. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど申し上げたのですが、中国国連にこれを迎え入れる、そういう基本方針をとる。しかし同時に、とにかく二十六年間国連において国連活動に忠実に協力してきた国民政府、これを、まあ先ほども申し上げたのですが、弊履のごとくというか、そういう形でいわゆる追放ということになっていいものかということを考えまするときに、私どもは、これはもう非常に重大な問題である。そこでその重要事項審議方式、そういう方式によるべきじゃないか。ただ単なる普通の決議としてきめるということ、これは妥当でないという考え方なんです。まあそういう考え方でありますので、現実に中国にこの中国代表する二つ政府があるものですから、いろいろまぎらわしい現象が出てくる。これは私も否定いたしませんけれども、私どもの意のあるところもまた御理解願えるのではあるまいか、さように考える次第であります。
  90. 星野力

    ○星野力君 たいへん丁寧に答えていただいて、そう丁寧でなくてもよろしゅうございますから……。  私も、国連総会で逆重要事項指定決議案が通る可能性があるかどうかという問題をお聞きしようと思っておったのでありますが、森議員からも質問がございまして、大臣は、きわどいところだと、こういうふうにおっしゃった。まあ、負けるだろうとは言えないだろうと思いますが、この逆重要事項指定決議案が敗れる公算は私も大きいと思います。敗れたとしてもアメリカにとってはどうということはないのではないかと私は思います。アメリカ中国の間で話し合いのレールというのはすでにその辺は敷かれている。逆重要事項の表決に敗れることによってかえって話し合いがやりやすくなる。その辺のことはアメリカとしてはすでに計算しておるのではないかと思うわけです。また、アメリカその他の国府支持国にしましても、逆重要事項に敗れたからといってたいした問題ではないだろうと思います。それらの国が次々と中国国交樹立に向かっていくのではないか。ところが、佐藤内閣、そして福田外務大臣がいまとられようとしておるような方針でいきますと、中国国交のない国として最後に残るのが日本ということにもなりかねないと思うのですが、そういうような状態を招来してよろしいのかどうか。これは仮定の問題ではなしに、現に事態はその方向に進行しておると思いますが、どうですか。
  91. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、冒頭にも、中国との間に国交正常化をはかる、これが当面している最大の政治課題であるというふうに申し上げた。日本世界に百幾つある国の最後に中国国交を結ぶものだと、こういうふうに考えておりません。
  92. 星野力

    ○星野力君 中華人民共和国を承認して台湾関係を絶つ、そういう立場をやはりはっきりさせる。国交正常化の道というのはそれしかないのじゃないですか。おそかれ早かれ私はそこへ落ち着かざるを得ないと思うのでありますが、外務大臣国府に対する国際的信義というのを非常に強調されておる。しかし、過去に日本国際信義にもとることを最もひどくやってきたのは中国人民に対してであります。大陸に住んでおる中国人民に対してこそ信義を尽くすという立場に立たないで、そのことを忘れてどうして日中の国交正常化ができるはずがあろうか、できはしない、こう思うのですが、まあ先を急ぎますから、これはあとでお答えくださるならばお答えくださってけっこうです。  次に、ベトナムに関連してですが、ベトナムはアジアと世界の緊張と不安の最大の焦点になってると思いますし、それから、ベトナム戦争の成り行きというものが、沖縄をはじめ日本国土の軍事基地の役割りということとも重大な関係を持ち、大臣は先ほど、世界全体が平和でなければ日本の平和もないと、こう言われたんでありますが、政府考えておられる沖縄の施政権の返還の時期までにベトナム戦争が終結する可能性があるとお思いになっておられますかどうですか。
  93. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) さあ、あの深みに入ったベトナム戦争が最終的に終結だと、こういうことはまあ時間がかかるんじゃないかというふうに思いますが、だんだんと終息の方向に急速に動いていくと、こういう見通しを私は持っております。
  94. 星野力

    ○星野力君 ベトナム戦争の終結を早めるために日本政府としてそれに貢献する用意があるかどうか、あるとするなら、実際にその方法を考えておられるかどうか、簡単に伺います。
  95. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ベトナム戦争はわが日本が直接関与してやってる問題じゃございませんのですから、わが日本がこれ、先々をどういうふうに変えてくかということについて指導的な影響力というものは私は持っておらぬと、こういうふうに思います。ただしだ、間接的な面におきまして影響力はなしとしないというふうに考えますから、とにかく日本側のふるまいがベトナム戦争の終息に向かっていい影響を与えていこうという方向でやっていかなきゃならぬと思いまするし、やっておる……。
  96. 星野力

    ○星野力君 やっておる。——まあ時間がないから先へ進みますが、アメリカ、いわゆるニクソンの新経済政策の中で、対外援助費を減らすという方針を含めておる。その方針に基づいてサイゴン、ビエンチャン、プノンペンといったインドシナの反共政権、これへの援助の一そうの強化を日本に求めてきておると思うんです。あるいは求めてくると思うんでありますが、それらの政権への援助について政府は今後どういう方針で臨もうとしておられるのか、また、どの程度の規模の援助を考えておられるのか、伺います。
  97. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国の海外に対しまする援助、協力ですね、これは何もニクソン・ドクトリンとか、アメリカの援助が後退するからその肩がわりとして日本が援助するという性格のものではありません。そういう性格のものであるべきではないと思います。そうじゃなくて、わが日本はやはりこれだけの経済力を持つに至ったならば、その一部をさいて世界の発展のために貢献する、それがまたわが日本の繁栄、発展にはね返ってくるんだと、そういう考え方で自主的にこれはしなけりゃならぬ、これは崇高なる国際的使命であると、こういう認識に立つものです。いまベトナムのお話ございますが、そういう考え方でベトナム——この戦争激化のために作用するような経済協力をしちゃこれはもとより相ならぬ。しかし、この戦火がおさまり、戦後復興ということになりますれば、それは南といわず北といわず、その復興に役立つような援助をいたす、これは私はぜひ日本として積極的に考えなきゃならぬ問題である、さように見ております。
  98. 星野力

    ○星野力君 大臣はそう言われますけれども、現実にサイゴン政権その他への援助というのはやっておられる。アメリカは戦争のベトナム化でサイゴン政権を盛り立てて、南ベトナムからアメリカ自身の軍隊は減らしながらも、南ベトナムの侵略、インドシナの経略ということを続けていこうとしております。そういう場合に、日本がそれらの反共政権を援助する——最近は開発援助とか経済復興援助とかということを言っておられますけれども、結局は、アメリカの戦争のベトナム化などに協力して、ベトナムで戦っておる一方の側だけを援助するということになると思うのですが、サイゴン政権というのは、私は南ベトナム人民の抵抗の前にとうてい生き長らえることのできない政権だと思っております。日本の援助がそのような反共政権に結局てこ入れしておること、それでは戦争の終結を早めるのではなしに、平和を早めるのではなしに、戦争を長引かせる、ベトナム人民の苦しみを長引かせる、そういうことでしかないと思うのでありますが、その点についてのお考え、あるいはそれからまた現在のグェン・バン・チュー政権のようなああいうサイゴンの政権のようなものが存続し得るとお考えになっているか。それから、援助というものはおやりになっておられる。これからもやられる。新聞なんかいろいろ報道しておりますが、有償でやるのですか。無償も有償もあるのですが、有償の援助もやられると思うのですが、その辺のところ簡単にひとつ。
  99. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 南ベトナムに対する援助には無償のものもごくわずかにあります。それから有償のものもありますが、基本的な考え方といたしまして、南ベトナムの軍事力を強化する、つまり南北ベトナムの争乱に日本国が介入するという性格のものであってはならない、こういうふうに考えております。しかし、今後は戦火がおさまる、そういうことになりますれば、南北を問わず、これは戦禍からの復興、そのための協力はいたしたいと、いたすべきである、かように考えております。
  100. 山本利壽

    理事山本利壽君) もう一問。
  101. 星野力

    ○星野力君 それじゃ……。  戦後のことをお聞きしておるわけじゃないのですが、現在のこと、これからやられることをお聞きしておるわけですが、戦争をやっておる相手に対して援助なんかやめたほうがいい。戦争の終結を早めるためにたいして貢献はできないとしたら、何もしないほうがよほどよろしい。援助をおやめになるお考えがないかということが一つでございます。  それから、あわせてぜひお聞きしたいと思いましたのは、例の円対策八項目の中にある貿易自由化、特に農産物の自由化がありますが、あの中でグレープフルーツに続いてオレンジ、ジュース、牛肉などが日程にのぼってきておりますが、これは農民諸君は絶対反対、こういう立場をとっておることは大臣も御存じと思いますが、われわれも反対ですが、自由化品目からオレンジ、ジュース、牛肉、こういうものをはずすことに対して外務省福田外務大臣自身が難色を示しておられるというが、この問題についての大臣のお考えはどうかということが二つです。  もう一つは、先ほど田委員質問にお答えになった、円・ドル問題について沖縄県民の二重三重の苦しみ、これに関係する問題でございますが、詳しくお聞きすることができないので、円・ドル交換の問題について大臣は、具体的にどうするとここでは言えないと、こういうことをおっしゃった、あれは、具体的にはどうするとここでは言えないけれども、沖縄県民にその問題では損をさせない措置をとるというふうに考えておいでになるものと理解してよろしいですか、どうですか。
  102. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) まず、沖縄の円・ドルですね、これは私からお答えいたすということになりますと、いろいろ影響がありまして、弊害もかなり大きい。さようなことで、まことに恐縮でございますが、お答えを差し控えさせていただきたいのです。  それから自由化。自由化につきましては、これはいまわが国の輸出が非常な勢いで伸びておるんです。各国の市場にわが国の工業製品が進出しておる。しかるに、わが国においては、わが国への諸外国からの輸出——つまりわが国の輸入ですが、輸入に対しましては各種の制限を設けておる。これは各国からどうしても注文、もの言いがつく。そういうことになりますが、そういう状態はよろしくない。やはり各国へわが国の製品が出ていくなら、わが国も各国の商品を迎え入れるという態勢をとるべきだという主張をいたしておるわけでございます。しかし、具体的な、どういう商品の自由化を進めるか、そういうことにつきましては、関係省でその関係するところがずいぶん多いわけですから、十分検討いたしまして結論を得るということになろうと思いますが、私どもは、そういうことで、国際社会に臨むわが国の姿勢という立場で自由化の基本的方向というものを強調しておる。こういうふうに御理解願います。
  103. 星野力

    ○星野力君 ぎりぎりのところで関連した問題ですから、もう一つ願います。
  104. 山本利壽

    理事山本利壽君) 外務大臣よろしいですか、時間が来ましたが。
  105. 星野力

    ○星野力君 外務大臣質問に答えておらないわけですよ。  私が、自由化の問題は、オレンジなんかの具体的な問題について大臣が反対しておられる、反対らしい、難色を示しておられるということが新聞などで報道されておりますから、大臣のお考えを聞いている。日本がいろいろな制限を設けていると言われますけれども、それは日米貿易は、なるほど総額としては日本の大きな出超かもしれませんけれども、農産物だけを考えれば、あべこべですね。こちらからの輸出は一割にも及んでおらないような状態。そこへさらに農産物の自由化を押しつけてきておる。要求してきておる。各国といいますけれども、この問題はアメリカですから、これではますます農民に犠牲をしいることになるという点からお聞きしておるわけです。オレンジやジュースや牛肉なんか、具体的な問題について、もうこの問題は決定するぎりぎりまで来ているわけでしょう。
  106. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、ただいま申し上げましたように、自由化ということをわが国としてやらなければならぬ。これは私、わが国のもう大きい立場から見た国益である、こういうふうに考えておるんです。農作物といえどもその例外ではない、こういうふうに考えますが、具体的にどういうものを自由化したら、どういう反響、影響があるだろうか、この辺もよく見ていかなければならぬことはもちろんであります。その辺のことにつきましては、関係各省、ことに農作物につきましては、農林大臣が責任を持って検討しておる次第でございます。
  107. 山本利壽

    理事山本利壽君) 本調査に対する質疑は、本日はこの程度といたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三分散会