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石原慎太郎君 私、いささかやぼかもしれませんけれども、
中国問題に関して非常に基本的で抽象的なことをあえてお尋ねしたいと思うんです。これはむしろ
質問というよりも、ある意味で陳情の形をとるかもしれませんが、私がこうした
質問を、
名前をあげて恐縮ですけれども、前愛知
外務大臣や木村外相代理にしなかったわけ、あえてきょう
福田外務大臣にこういうことを申し上げるわけは、やはりこれからのこの次の時代に首相として一番強いポテンシャルを持っていらっしゃる
外務大臣が
中国の問題に対してどういう言動をとられるか、どういう自覚を持っていらっしゃるかということによって私たちこの
日本という国家社会の命運の、全部とは申しませんけれども、非常に多くの部分が、好むと好まざるとにかかわらず左右され、表象されるからであります。
私、
中国の問題を討論し、
考えれば
考えるほど、非常に強い不安に襲われるんですが、現にいま、社会党にはまれなるコスモポリタンである森さんの
質問をお聞きしておりましても、やはり森さん御自身が非常に大きな誤謬をおかしていらっしゃる。たとえば
国連という非常にあやふやな議決機関、国際政治の場を何か神のジャスティスの場のごとく一種のアプリオリティーのものごとの発想をしている。それからいわゆる日中議員連盟に所属していらっしゃる与野党の
皆さんの話を聞きましても、私は私なりに
中国との
国交を
回復すべきであると思いますけれども、非常に消極的な理由しか見つかりませんが、より具体的な積極的な理由があるかと思ってお聞きしますと、そういったものが一向に答えとして返ってこない。返ってくるものは、「アジアの平和」であるとか、あるいは「
世界の
大勢」であるとか
——「
世界の
大勢」というのは、言ってみればホットパンツの流行みたいなものでありまして、何もそんなもの争ってはく必要は全くないんで、外交の問題のリーゾナブルな要因とはなり得ない。そういうところで非常に論が進められていて、
国連というあやふやな国際政治の場というものに対する
一つの疑心というものをもう一回持たれて、あるいは「
世界の
大勢」もけっこうでしょうけれども、
日本人自身のコンセンサスとまでいかなくても、
日本人の
大勢がどういうメンタリティーでこういう問題をとらえているか、非常に中には二律背反したアンビバレントな
要素があると思いますけれども、そういった
要素を踏まえて
日本の
中国問題に対する姿勢というものが一向に論ぜられないということに対して非常に不安を感ずるわけであります。私は過去に論文にも書きましたけれども、お目にとまったかどうかわかりませんが、現在あるいは将来の
中国というものを
日本の国益にとってあまり評価できない国としか
考えられない、そういう表現は控えるにしましても、
日本の将来にとって
経済的にも、国際政治の上でも、防衛の上でもきわめて非常にアクチブに
影響を与える国家であるとしか
考えざるを得ない。そういう
中国の現在から将来にかけての本質的な
性格というものを踏まえて、さらにその上に
日本の国益を
考えて
中国をどう扱うかという議論がほとんどなされないし、たとえば
日本にとって非常な
影響力を持った
アメリカに対してもそういった
日本側の原則というものが明示されないままに今日になってしまいました。私はやはり流動的であっても、非常にアンビバレントな
要素があっても、そういった国民なら国民のメンタリティーというものを十分分析した上で
政府が
国連における
一つの言動というものをきめていくべきだと思いますし、そういったものをしっかり踏まえた上で言うべきことははっきり言う。たとえば、先ほど森さんがしきりにおっしゃいましたけれども、
国連でかりに
政府が逆
重要事項というものの指定に破れたとしても、私は別にそれはたいした問題ではないと思う。
国連の議決に敗れただけでありまして、それによって政権がひっくり返ったり
世界に恥をかくということはない。私たちは私たちとしての国益を踏まえてそういう
手続をとるべきなんでありまして、どうも何か
政府は、話が飛躍しますけれども、たとえばこの問の全日空と自衛隊機の衝突事件を見ても、調べれば調べるほど全日空の責任というもののポテンシャルが強くなってくるにもかかわらず、そういう要因というものについては全く
発言されずに、一方的にどろをかぶるといいますか、何か言うべきことを言わなさ過ぎて、
中国の問題も国民に非常な多くの不安を与えているような気がいたします。私は、このままでいきますと、
中国問題は
日本の
経済あるいは防衛の問題をゆさぶるだけではなしに、一番おそろしいのは
日本人の精神構造というものに非常に強い
影響を与える。過去にも
中国は、たとえば仏教、儒教、文字といった非常に精神的に大きな
影響というものをほとんど一方的に
日本に与えてまいりました。現に国際政治というものを通じていま
日本人に非常に強い
影響を与えつつある。特に
日本人の精神構造というものに大きな
影響を与えつつある。
日本のジャーナリズムがほとんど信用ができなくなってきた現況の中で、国民というものは、たとえば世論
調査というものをしてみますと、
中共の戦力に対する畏怖心というものをかなり強く持っている。あるいは同時に
国連における
中共の参加というものを六〇%が支持しておりますが、同時に、
台湾追放というものを支持する国民は、一番最近の
調査でも二〇%に満たない、非常にアンビバレントな
要素があるわけです。私は、やはりそういったものを踏まえて、
政府というものが、まあ結果として逆
重要事項というものを持ち出すにしてもしないにしても、
日本人自身の国益を踏まえた
中国問題に対する
対策というものを、もっと声を高らかに、
自分の主張として、
世界に向かって、あるいは国内に向かって主張されるべき時期に来ているのじゃないかという気がいたします。
そこで私は、あたりまえのことをお聞きするようですけれども、確認という意味でお聞きしたいのですが、もちろん
日本の国民のまだ統一し切れないコンセンサスの
要素として、
中共の
国連加盟をほとんどの人間が認める。六〇%が認め、支持する。同時に、
台湾の
追放を認める者は三〇%に満たない。あるいは
中共の核戦力というものに対する畏怖心というものを八〇%をこす
日本人が持っている。こういう
要素というものをあくまでも
政府は冷静に踏まえて
中国に対する指針というものをきめていかれるべきだと思いますけれども、この点、いかがでございましょうか。