運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-07-21 第66回国会 衆議院 予算委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十六年七月十四日)(水曜日) (午前零時現在)における本委員は、次の通りであ る。    委員長 中野 四郎君    理事 小平 久雄君 理事 田中 正巳君    理事 坪川 信三君 理事 藤田 義光君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       愛知 揆一君    赤澤 正道君       荒木萬壽夫君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    小川 半次君       大坪 保雄君    奧野 誠亮君       賀屋 興宣君    川崎 秀二君       上林山榮吉君    木村 武雄君       笹山茂太郎君    園田  直君       田中 龍夫君    灘尾 弘吉君       二階堂 進君    西村 直己君       野田 卯一君    福田  一君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森田重次郎君    阪上安太郎君       辻原 弘市君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    原   茂君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       相沢 武彦君    浅井 美幸君       矢野 絢也君    渡部 一郎君       岡沢 完治君    佐々木良作君       谷口善太郎君    不破 哲三君 七月十四日  中野四郎委員長辞任につき、その補欠として、  瀬戸山三男君が議院において、委員長選任さ  れた。 ————————————————————— 昭和四十六年七月二十一日(水曜日)     午前十時八分開議  出席委員    委員長 瀬戸山三男君    理事 大坪 保雄君 理事 佐々木義武君    理事 田中 龍夫君 理事 長谷川四郎君    理事 細田 吉藏君 理事 大原  亨君    理事 田中 武夫君 理事 鈴切 康雄君    理事 今澄  勇君       足立 篤郎君    相川 勝六君       赤澤 正道君    荒木萬壽夫君       植木庚子郎君    江崎 真澄君       小川 半次君    奧野 誠亮君       川崎 秀二君    笹山茂太郎君       中野 四郎君    灘尾 弘吉君       二階堂 進君    西村 直己君       根本龍太郎君    福田  一君       松浦周太郎君    松野 頼三君       森田重次郎君    阪上安太郎君       辻原 弘市君    楢崎弥之助君       西宮  弘君    原   茂君       細谷 治嘉君    安井 吉典君       浅井 美幸君    西中  清君       樋上 新一君    正木 良明君       渡部 一郎君    岡沢 完治君       竹本 孫一君    林  百郎君       東中 光雄君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 前尾繁三郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 高見 三郎君         厚 生 大 臣 斎藤  昇君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  田中 角榮君         運 輸 大 臣 丹羽喬四郎君         郵 政 大 臣 廣瀬 正雄君         労 働 大 臣 原 健三郎君         建 設 大 臣 西村 英一君         自 治 大 臣         (北海道開発庁         長官)     渡海元三郎君         国 務 大 臣         (内閣官房長         官)      竹下  登君         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君         国 務 大 臣         (国家公安委員         会委員長)         (行政管理庁長         官)      中村 寅太君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      平泉  渉君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 増原 恵吉君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)         外務大臣臨時代         理       木村 俊夫君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君  委員外出席者         防衛庁防衛局長 久保 卓也君         最高裁判所事務         総長      吉田  豊君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         予算委員会調査         室長      野路 武敏君     ————————————— 委員異動 七月十四日  辞任         補欠選任   藤田 義光君     瀬戸山三男君 同月十五日  辞任         補欠選任   木村 武雄君     根本龍太郎君   小平 久雄君     佐々木義武君   田中 正巳君     草野一郎平君   坪川 信三君     長谷川四郎君 同月十六日  辞任         補欠選任   谷口善太郎君     東中 光雄君 同月二十一日  辞任         補欠選任   相沢 武彦君     正木 良明君   浅井 美幸君     樋上 新一君   矢野 絢也君     西中  清君   佐々木良作君     竹本 孫一君   東中 光雄君     谷口善太郎君   不破 哲三君     林  百郎君 同日  辞任         補欠選任   竹本 孫一君     佐々木良作君   西中  清君     矢野 絢也君   樋上 新一君     浅井 美幸君   正木 良明君     相沢 武彦君   林  百郎君     不破 哲三君 同日  理事藤田義光君同月十四日委員辞任につき、そ  の補欠として大坪保雄君が理事に当選した。 同日  理事小平久雄君、田中正巳君及び坪川信三君同  月十五日委員辞任につき、その補欠として佐々  木義武君、田中龍夫君及び長谷川四郎君が理事  に当選した。     —————————————本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  閉会中審査に関する件  予算実施状況に関する件      ————◇—————
  2. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これより会議を開きます。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  このたびはからずも予算委員長選任せられ、その職責の重大なることを痛感いたしております。幸いにいたしまして練達たんのうなる委員各位の御協力を賜わり、誠意をもって円満なる委員会の運営に努力し、もって国政の審議に遺憾なきを期してまいる所存でありますが、何ぶんにも不敏の上にふなれのものでありますから、何とぞよろしく各位の御鞭撻と御協力をお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  3. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 まず、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、予算実施状況に関する事項につきまして、議長に対し、その承認を求めることとし、その手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。直ちに、委員長において所要の手続をとることといたします。      ————◇—————
  5. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 次に、理事補欠選任の件についておはかりをいたします。  委員異動によりまして一現在理事が四名欠員となっております。この際、その補欠選任を行ないたいと存じますが、これは、先例によりまして、委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長は、       長谷川四郎君    田中 龍夫君       大坪 保雄君    佐々木義武君 を理事に指名いたします。      ————◇—————
  7. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 それでは、これより予算実施状況に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。楢崎弥之助君。
  8. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、臨時国会冒頭に行なわれた総理所信表明並びに今日の日本を取り巻く内外情勢について質問をいたしたいと思うものであります。  そこで私は、所信表明なりあるいは本会議における代表質問に対しての総理の御答弁を聞いておりまして、一体総理はどれだけの意欲を今日の難局を乗り切るについて持たれておるのか。何か佐藤内閣メンツというか、意地というか、あるいはむしろ総理個人メンツなり意地を通して固執なその姿勢を変えられようとしない、そういう感じがしてならないんです。そこで私はまず現在佐藤内閣政治姿勢から質問を展開したいと思うわけであります。  所信表明の中には総理はこういうことを言っておられます。「政府は、この二つ選挙を通じて明らかにされた国民世論動向を的確に把握し、今後の国政の進路にあやまちなきを期したい」一体その「明らかにされた国民世論動向」というものをどのように佐藤内閣は把握されておるのであろうか。われわれが見るところによれば、二つ選挙における自民党の後退、さらに参議院における重宗体制の崩壊は、国民世論動向同一線上にあるものであると私たちは考えるわけであります。こうした現象というものは、今日の佐藤内閣政治の変革なりあるいは政策の変更というものを国民は求めている、このように判断しなくてはならないのではないか。つまり、佐藤内閣がいままでと同じような漫然とした形で政局を担当されることに国民は大きな批判を持ち、それを拒否していると思うのであります。で、こういう問題に対しての総理の御見解なり反省があればお伺いをまずいたしたいと思います。
  9. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 本会議質問に対しましてもその態度を明らかにしたつもりでございますし、また、私のやっております内閣改造等もその一端である、かように御理解をいただきたいと思います。  私、ただいま言われますように、漫然と政治をしておるわけではありません。また、国民のために、国運のために、やはり絶えず伸展をはかっていく。そのためには飽きあるいは人心がうむ、かようなことがあってはならないと思います。ただいまの議会政治のもとにおきましては、私ども民主主義を尊重すると同時に、人心をしてうまざらしめる、そういう方向人心一新も必要ではないか、かように考え、新たな組閣もしたような次第でございます。また、いままでやっておる事柄について私は別にメンツにとらわれるとか、さような小さな考え方でやっておるわけではありません。どこまでも国益、また同時に、私どもが平和であるように、そのことを念願しつつ、国際社会の一員としての先進工業国責任を果たしていく、そういう立場で取り組んでおるつもりでございます。その意味では、党派は違っておりましても皆さま方の御鞭撻、また御協力をお願いする次第であります。
  10. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どうもただいまの御見解を承っても、抽象的でわからないのでありますが、国民世論動向を把握しない、あるいは国民動向なり願望、そういうものと無縁の存在であれば、私はもはや佐藤内閣の存立の理由はないと思うのですね。それで、そういう点から私は具体的な問題に入っていきたいと思うわけであります。  まず残念でならないのは、改造後の第一回の臨時国会、しかもニクソンの訪中に見られるとおりの目まぐるしい内外情勢の中にあって、外務大臣がここにおられない。総理内閣改造の大きな理由一つとして、病気の人が多いからということをたしかおっしゃっておったと思うのです。福田外務大臣はすでに胆石の持病をお持ちのことはわかっておるのですね。もう入院も既定の事実であった。それをわかりながら、あえてその外務大臣に任命された。福田さんだけは例外であるとお考えになっておるのでありましょうか。私は、こういう重大なときに入院なさることがわかりながら外務大臣に任命されたという事実は、国民を冒涜し、私ども国会を軽視する改造である、そのように思うわけでありますが、御見解を承りたい。
  11. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、ただいま御指摘がありますように胆石を持っていた。かねてからのことでございます。それが十二分に活動ができないというようなことがあってはならないというので、今日それに対する対処をして十二分に働く、その意味の手術でございます。したがいまして、私は今日のわずかな期間の空白、これはごしんぼう願って、他日の活躍をひとつ期待していただきたい。その意味で御了承願いたいと思います。
  12. 楢崎弥之助

    楢崎委員 他日を期してと、佐藤内閣はいつまで続くのかわかりませんが、えらい長くこれから続くような印象を受けたのでございますけれども、それはまああとで聞くといたしまして、いま問題になっております黒住氏の選挙違反の問題であります。  これは、今日の段階では違反の事実があがっておるのは業界だけに限られておるのか、それとも運輸省関係にも及んでおるのか、その点をまずお伺いいたします。
  13. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいま楢崎委員からの御質問でございましたが、違反は、私の聞いておりますところ、運輸省には一人もただいまのところ及んでおりません。
  14. 楢崎弥之助

    楢崎委員 運輸省には全然違反が及ばないと確信を持たれておりますか。
  15. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 選挙違反につきましてはまだ的確な報告を受けておりません。いま捜査中でございますので、私ども新聞紙上で知った程度でございますから、大体の状況によりますと、平生から、前大臣のときからその方面に十分注意を払っておりまして、ことに地位利用につきましては厳重な注意をしておりますので、運輸省には及ばないと思っておる次第でございます。
  16. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、運輸省の幹部がこの黒住氏の選挙運動関係があると思います。以下、われわれがつかんだ事実をまず先に申し述べたいと思うわけであります。  これはたくさんありますけれども、特に徳島県と高知県の分だけ申し上げます。これらの県で当該の陸運局長業界会合を持たしております。四月二十七日、徳島トラック協会総会場所もわかっております。同旅客自動車協会総会、同自動車整備振興会、全部二十七日であります。場所が違います。四月二十八日、高知トラック協会総会、同自動車整備振興会。これらの総会陸運局長が開かせたものである。以上あげた総会黒住さんは全部出られております。黒住さんの随行者は、日本自動車整備士連盟専務理事堀山健氏であります。これは前自動車局整備部長である。また前高松陸運局長であります。  そこで、高知トラック協会総会内容を明らかにしたいと思います。これはことしの四月二十八日であります。一時から、高知市浦戸町の料亭得月楼出席業者約百人。全日本トラック協会区域運賃委員長西山正道氏がまずあいさつをいたしております。どういうあいさつかというと、「業界を知り過ぎるほど知っている黒住局長が、われわれの発展に尽くしてくれる方向で進み出られたので、政治的地盤を獲得するために皆さん協力をお願いする。業界発展にはこの人を送り出す以外に方法はない。」として、このような黒住さんの経歴を書いたものが配られておるのであります。総会には全部配られております。そして、午後二時五十分ごろになって総会が終わり、業者大会に移るまでのほんのしばらくの休止の間に黒住さんが姿を見せられた。どのようなあいさつをされたかというと、「私は、自動車畑一筋に生き抜いてきた男であります。路線トラック運賃認可になったが、区域トラック運賃の改定はまだである。この改定問題を一〇〇%解決するまでは努力を続けたい。これまで皆さんにたいへん御心配をかけた御恩返しをしたいので、黒住皆さんの仲間として、御協力をお願いする次第です。」これは御承知のとおり、黒住さん、今度、補欠で上がってきたわけですが、言ったとおり、区域トラック運賃値上げは六月二十九日に認可になっておりますね。これは全国区域トラックの約六〇%に当たるものを値上げしております。値上げ率は、一二%アップであります。  そこで、これが済んで、今度は犬丸陸運局長が出てあいさつをするわけであります。この会合には、運輸省から犬丸高松陸運局長小黒秀夫高松陸運局自動車部長ほか課長クラスがずらり出席しておるわけであります。それで、犬丸陸運局長はどうあいさつしたかというと、区域運賃値上げ問題についてこうあいさつしております。「政治的措置を講じて、トラック運送業の経済的、社会的地位の向上をはかりたい。」この問題は、「政治的措置を講じて、」というくだりでありましょう。  そこで、私は、具体的にさらに話を進めたいわけでありますが、陸運局長というのは、いわゆる許認可権を持っておる人ですね。それで、いかにも政治的な解決をはかるということをにおわしておる。そして、いかにも黒住さんが当選しなければ運賃値上げは認めないと思わせるがごとき微妙な発言をしておるわけであります。これは、公選法にいうところの官僚としての地位利用、つまり利益誘導ではないか、私はそう思わざるを得ないわけですが、御見解を承りたい。
  17. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 ただいまの御質問でございますが、そういうような事実があったかどうか、私まだ承知しておりません。また、そういうようなことにつきまして、あるいは警察事案として取り調べを受けたとか、あるいは警告を受けたということも、私承っておりません。しかし、内容が重大でございますから、後刻十分これを調べまして、そして検討したいと思う次第であります。
  18. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは、先ほど運輸省関係ないということを確信をもって言われたばかりでございますが、ただいまの御答弁は何となく危うくなってきたわけであります。  そこで、私は、佐藤総理にお伺いしたいのですが、「バス月報」というのがあります。これは日本バス協会が発行をいたしております。これに第百三十三回役員会の議事が載っておる。この中で、黒住さんがやはり出席をして、こういうことを言われておるのですね。いろいろありますが、大事なところだけ抜いて読みます。「先般の運輸省異動にあたりまして、大臣あるいは総理大臣から強いおすすめがございましたのと、先輩の皆さまから、ひとつおまえも、この際思い切って政治の、面に出たらどうかというおすすめがあったわけでございます。」佐藤総理は、黒住さんが政界へ出ることをおすすめになった。しかも自民党に入党している。佐藤さんは、総理であると同時に、総裁であると思うのです。私は、この黒住さんの選挙違反問題については、自民党総裁としての総理——総裁としての責任もありましょうが、総理としてすすめたというのですから、総理としても重大な責任がある、このように思わざるを得ないわけです。御見解を承りたい。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私のすすめ方黒住君に決意を促したとか、あるいは最終的な決定をしたと、かようには私は考えておりませんが、自民党公認候補でございますから、そういう意味で私の推薦、これはもうはっきりしておるわけであります。もちろんそれまでにはいろいろの経緯があるだろうと思いますが、それらの詳細について私が一々存じ上げておるわけではありません。しかし、私が推薦者として公認したこと、これは責任を問われても当然かと思います。
  20. 楢崎弥之助

    楢崎委員 大事なことは、ことばではなくして行動であります。佐藤総理は、その責任をどのような行為によって示されようとなさいますか。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申しますように、推薦した以上その責任は私にある、かように申しましたが、ただいま選挙違反事件捜査段階である、最終的な結論が出たわけではありません。この段階において私どもがとやかく処置をする、そういう段階でまだない、かように私は判断をしております。ただいまの段階においては、本会議でも申しましたように、やはりその本人にまかすべき段階ではないかと、かように私は考えておるので、しばらくその経過を見たい、かように思っております。
  22. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、まさに自民党とそれから官僚業者と、この政官財の結託と申しますか結合によるこのような選挙違反が公然とまかり通ることについて、これを見のがすわけにはまいらないのであります。この私があげました以上の事実だけ——ほかでもたくさんあります。以上の事実に対して警察当局としては何か御見解がございますか。
  23. 中村寅太

    中村国務大臣 警察といたしましては、取り締まりを通じまして選挙の公正を確保することをたてまえといたしまして、厳正、公正に取り締まりをやっておるものでございます。個々の事犯につきましては、ただいまいろいろ捜査中でございますので、この時点でいろいろ申し上げる段階でないと思いますので、御了承願いたいと思います。
  24. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いま私が指摘した問題について、これを取り上げる気がありますか。
  25. 中村寅太

    中村国務大臣 すべての問題について、全般的にいま取り調べ中のもの等がありますので、個々の問題につきまして、いまの時点で私が申し上げる段階でないと思いますので、御了承願いたいと思います。
  26. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それはおかしいではありませんか。私は、この予算委員会を通じて公の場で指摘をしておるんですよ。調査する気もないとおっしゃるのですか。
  27. 中村寅太

    中村国務大臣 具体的にそういう事例があれば調査をいたします。
  28. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そこで、私はここで要求をいたしたいと思います。当委員会の終わるまでに御報告をいただきたい。  ただいま私が指摘をした犬丸局長なりにそういう事実があったかどうか、それが一つ。  それから、なお本省自動車局武石貨物課長、これは近畿の霊柩協会総会出席をいたしておる、六月八日であります。それから六月十五日、本省自動車局小林業務部長、これは全国バスブロック会議出席をいたしております。岩手県の御在所温泉。ほかにもありますが、とりあえずこのお二方の公務出張の日程、その目的を、出張名簿によって当委員会報告をされたい。どうですか。
  29. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 調査をさせまして、報告をいたさせます。
  30. 楢崎弥之助

    楢崎委員 本件については、御報告があった後、さらに質疑を進めたいと思いますので、この件については保留をいたしておきます。この委員会が終わるまでに御報告をいただきたい。そして、この問題は保留をいたしたいと思います。  この問題についての最後に、私は、総理は何か刑事的な責任がなくては措置ができないような御答弁のように承ったのですが、自民党という政党は、政治家としての政治的な道義なり折り目なり、そういうものは無視されるのですか。私はおかしいと思うのですね。自民党党員でしょう。そうして、これまでの違反事実が明白になっている。それでもなおあなたは、刑事責任が明確にならないと処置をしないというわけですか。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いままで申しましたように、いまの段階で私自身が処置するのは早い、かように申しておるのです。したがいまして、いま言われますように、必要があれば、また私が決意すれば、そのときにはもちろん処置したい、かように思います。いろいろ不規則発言もありますけれども党員でございますから、党のほうで十分相談して、そのことは処置いたします。
  32. 楢崎弥之助

    楢崎委員 なお、念のため申し添えておきますが、先ほど申し上げた日本バス協会第百三十三回役員会、これは七月二十一日午後三時から丸の内の日本交通協会の大講堂で行なわれた。そうして伊能議員も出席をされて、これに伊能さんのあいさつもあります。やはり伊能さんも、黒住さんの選挙協力してくれというあいさつがこのとき行なわれておるのですね。だから、これもひとつ御調査をいただきたいと思います。  それでは、中国問題に入りたいと思います。  私は、まず冒頭に、われわれも残念ですが、総理もさぞや残念だと思っておられると思うのですが、自民党は、佐藤内閣だけでなくて、歴代内閣を通じて、対米協調というものを基礎に置かれた。総理は、昨年十月の国連の二十五周年記念総会を終えてニクソンと会談されたあと、このようなことを発表された。対中政策の調整、そのための緊密な連絡と協議、これは世界に公表されたわけであります。また、せんだってレアード国防長官が訪日したときも、総理は会われて、その点の確認をされたはずである。しかるに、今回のニクソン大統領訪中の件については、三分前というのですから、これはもう事前の通告に当たらない。もちろん緊密な連絡、協議をする時間もない。つまり日本の頭越しにこの米中の接近が展開されようとしておる。こういう事実に対して、総理自身もそうでしょうけれども総理の口を通じて私どもは非常にだまされたという気がするのですね。ニクソンさんと、いままで緊密な連絡、協議をするなんとおっしゃっておって、何を一体やっておられるのかという気がしてならないのです。これはいわゆるニクソン大統領と総理の約束のルールを破ったことになるわけですね。私は、まことにこの点はうかりな話であるし、またその不明に対する責任は重大であろうと思うのですね。かつての昭和十四年の平沼内閣の総辞職のあの理由以上に重大さを持っておる、このようにわれわれは感ずるのでありますが、総理の御見解はいかがでありましょうか。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 このたびニクソンの訪中、そういう問題が発表された、また、そういうことが計画されていた、そういうことについて事前の相談を受けなかった、かようなことで、そしてしかも日本は特別に米中関係を重要視してきたではないか、それが裏切られたのではないか、こういうような趣旨のお尋ねがあったと思います。  私は、いまもなお変わらないのは、やはり日米間は、何と申しましても日本の繁栄、日本の安全のためには日米協力すること、これはもう絶対に必要だと思っております。ただいまの事柄がありましてもこのことは変わらない、かように私考えております。したがって、その基調に立って今回の事案を想定いたしておりますのに、これが悪い方向であれば、これは何をかいわんやであります。しかし、私どもが平素からどうしたら日中間の関係がよくなるだろうか、あるいは世界の平和のためにはこのことをなし遂げなくては真の世界の平和はもたらされないじゃないかと、絶えずニクソンさんとも話し合ったことであります。私は、おそらくニクソンさんの考えの中には、この世界の平和を増進する、緊張を緩和する、そういう方向のための訪中ということを自分は決意したのだから、あるいは日本側でもこれを了承してくれるのではないか、かように思ったことが多分にあるのではないかと思っております。これはあの事件を発表した後において、ただいま言われるように発表の直前の連絡ではあったが、この事柄について非常にアメリカ側も扱い方としてその点が不十分であった、ただし、これはただひとり日本だけの関係ではなく、多数の友好国に対しても秘密のうちにこの交渉を遂げなければならない、そういう羽目であったのだから、これはぜひ了承してほしい、あるいはまた日米間の関係について、これによっていままでの関係を清算するとか、あるいは破棄するとか、そういう考えもないこと、これは十分理解してほしいとか、あるいはまたその他の点につきましても日本側の了承を求めるような十分の配慮をしておりますので、私は、このこと自身はただいま申し上げますように世界の緊張緩和の方向への踏み出しでございますし、私ども心から願っておる日中間の正常路線を建設したいという、そういう考え方と合致しておる、かように思っておる点がアメリカ側にあったのではないかと思っております。しかし、それにいたしましても私は、アメリカ側が日本にああいうような発表の態度では、これはどうも満足はいかない。したがいまして、私どもも十分秘密を守るぐらいな、それだけの用意はございますから、もっと話のしかたはあるのではないか、この点は十分に注意もしておるということであります。(「佐藤総理は無視されておるんだ」と呼ぶ者あり)ただいま不規則発言がありますけれども、無視されたというものではないように思います。関係の諸国にもいろいろ波紋を投げかけておる、そのことは認めなければならないと思っております。
  34. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの御答弁を承りましても、この種のことは秘密を保たなければならないから、アメリカとしても発表寸前に連絡したのであろうというおことばであります。もしそうなら、いまも総理のことばの中にあったとおり、むしろそれならば日米の信頼関係が欠如しておる。ニクソン大統領は佐藤総理大臣を信頼していないということになるのじゃないでしょうか。つまり信頼の欠如、あるいは悪く言えば無視だ、こうとらざるを得ないのじゃないでしょうか。どうでしょうか。
  35. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのように無視あるいは信頼しない、かような結論を出すのは早いのじゃないかと思っております。したがいまして、この事柄はこの事柄として、あとの説明その他等から、私は、無視をするとかあるいは信頼していないとか、こういうような結論を出すのは、これは早い、かように思っておりますので、いましばらく皆さん方も冷静に、私ども日米間の関係についての経過をごらんおき願いたいと思います。
  36. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は、もうあぶなくて見ておれないわけです。いまにしても対米追随外交と申しますか、お伺い外交と申しますか、おすがり外交と申しますか、すべてが米国の言いなりになる。これはあとから取り上げますベトナム戦争に対する日本協力についてもそうでありますが、私はこの辺で、自分の国のこと、自分の国の外交は自主的に判断してきめていくという姿勢に変わらなくてはたいへんなことになる、いま日本は重大な選択の岐路に立たされている、このように思うのです。それはまたあとで議論を展開いたしますけれども、いまの総理の御趣旨はまだ納得がいかないわけです。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、日本の独自性を主張することにおいて楢崎君に劣らない、やはり独自性を主張いたします。この独自性の立場から、私は日米協調を選択しておるのです。独自性の立場から、何事によらずアメリカにたてつけとかあるいはけんかしろ、こうおっしゃるのでもないだろうと思いますが、私は、その独自性の立場から日米は協調すべきだ、かように考えてただいまの外交を進めておるのであります。この点は、独自性だからといって何事によらずアメリカに追随したのだ、かように考えられることはいかがかと思います。この点では立場がちょっと違うようでありますから、この点は御了承いただきたい。
  38. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私が後ほど取り上げる国連における中国代表権問題に対しての日本の態度も、なかなかなんですよね。これはあとで取り上げますけれども……。  そこで、私はニクソン訪中の問題について、これは明らかに米国の中国に対する政策の変化であると思わざるを得ません。そこで、まずニクソン大統領の訪中目的について、声明を読みますと、米中の国交正常化をあげております。この米中国交正常化の意味内容を、総理としてはどのように判断しておられるかという問題であります。つまり米国の元首である大統領が夫承認国を訪問するわけであります。しかも国交正常化を願って行くというのであります。とするならば、私は、このニクソンの訪中という行為は、形式的にはともかく、実質的には事実上の中国承認行為であると見ざるを得ないと思うのです。これはいかがでありましょうか。
  39. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私もさような考え方をいたしております。未承認国に対して一国の大統領が出かけるということは、なかなかないことだと思っております。しかも、ただいまのところ来年の五月まで、かように申しておりますが、その時期は明示されてはおりません。しかし、あるいは本年のうちにもそれが実現するのではないかといっております。また、これもうわさでありますが、承認の時期等についてもすでに明示しておるものもありますし、それなどを考えますと、少なくとも承認ということを前提にして、しかる上で初めて訪中の決意ができたのだ、かように思います。これは自然のことだ、かように思っております。
  40. 楢崎弥之助

    楢崎委員 なかなか意見が合わないのですが、いまの点については、私は完全に意見が一致したわけであります。  そこで、今度のニクソンの訪中は、国交正常化を願って行くわけでありますが、その中には、いまも総理指摘されたとおり、中華人民共和国の承認問題も含めて行くわけです。そこで、先ほども総理答弁になった点に関係がありますけれども、訪中することはいいことだ、これは緊張緩和のためにいいことだ、確かにそうであります。しかし、問題は、波及するところはそれだけではないと思うのであります。この点はどうお考えになっておりますか。つまりアメリカは、ニクソン・ドクトリンによってだんだん中国封じ込めのアジアの戦略体制から手を引いていく、これは当然だと思うのです。台湾海峡からもすでに七艦のパトロールもやめてしまった。だから、米中の接近ということは、つまり中国封じ込めを中心とするアメリカのアジアの戦略構造、これが根本的に変化を来たす、このようにわれわれは判断をするわけですが、総理の御見解はどうでしょう。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカのいわゆる封じ込め政策、これは私が過去においてワシントンに出かけた際に、そういう政策をはたしてとっているのかどうか、しばしば聞いたことでありますが、いわゆる世間で言われておるような封じ込め政策はすでにとっておらないこと、これは御承知のとおりであります。ことに最近は非常にはっきりして、みずから民間の貿易の関係、さらに禁止品目その他もないようにしておる、そういうことなどを考えると、いわゆる封じ込め政策というものは、言われておるがとってはおらないということ、したがって、アメリカ自身の態度はよほど変わってきておる。そのことは、やはりそれなりに認識してやってほしいと思います。また私は、アメリカのそういう態度は、日本の態度に対しても非常な影響があったということも考えていただきたいと思います。日本はいわゆる中華人民共和国をまだ承認はしておりません。しかしながら、民間貿易はすでに八億二千万ドルにも達しておる。また交流は、社会党をはじめ公明党もこの際出かけた、こういうようによほど行なわれておる。なお戦争状態があるんだというところにやはりひっかかりがある。こういう状態が行なわれておる。世の中は、そういう意味では非常に緊張緩和の方向に向かっておる。それをやはりアメリカも一役買わなければならない。ましてやベトナムで戦争は遂行されておる、そういうことにも関係がある、かように考えた結果ではなかろうかと私は想像するのでありまして、日本も影響を与えておる、またこれによって与えられもする、かように考えてしかるべきではないかと思います。
  42. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はそのことを言っておるのですよ。米国は政策を変えつつあるということを言っておるのです。だから、アジアの冷戦構造にも変化が来るはずだ。いま総理もおっしゃったとおり、緩和の方向に向かっておるのですから。  それで、もしそうであるならば、アジアにおける防衛体系と申しますか、SEATO、日米、米韓、米台、米比などの二国間の防衛条約についても、これは再検討の時期に入るはずである、このように思いますが、どうでしょうか。緊張がだんだん緩和していくのですから……。
  43. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 緊張緩和、たいへんけっこうなことであります。また、戦争が将来なくなる、そういうはっきりした見通しが立てばたいへんけっこうでございます。しかしながら、ただいまのところは、私どもは仮想敵国は持ちませんが、わが国の安全のためにはただいま自衛隊は必要だと言う。また、その意味において日米安保体制も必要だと言う。この点では、社会党の方々と私どもの考え方は、基本的に食い違っております。私はそれを否定するものではありません。食い違っておる。しかし私は、現状においては、やはり一国によって一国の安全を確保するということはできないことだ、やっぱり集団防衛体制が望ましいことではないか、かように私は考えておりますので、いままでの防衛体制は、これは従前同様の考え方で進めたいと思っております。  もちろん私どもは歓迎はいたしますから、いわゆる仮想敵国を持たないとか敵視政策はとらないとか、こういうことははっきり相手方に十分理解していただくように——相手方というのはいずれの国に対しても申し上げることですが、そういう国柄があってはならない。誤解をされないように日本の行き方を進めていくつもりであります。  私は、中国を訪問された方々からいろいろの話を聞いておりますが、日本の軍国主義化ということが一つの問題になっておる、そうしてその事柄を非常に強く指摘しておるといわれておりますが、私は、日本が軍国主義化したとは思っておりません。また、いまの日本の憲法はさようなことを考えていない。われわれは忠実にこの憲法を守っていく。したがって、どうか皆さん方も北京にお出かけになる場合には、日本の実情を十分理解するようにしていただきたい。本来なら政府がやるべき事柄です。しかし、政府が、ただいまの状態ではまだ受け入れてもらえませんから、みずから日本の態度を説明するわけにまいりません。しかし、皆さん方のお出かけになる機会があれば、そういう点も十分理解を深めていただきたい。正しい認識を与えていただきたい。
  44. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この点は議論になりますから、私は指摘だけにとどめておきたいと思うのです。つまり、何としてもアメリカは今後アジアから順次手を引いていく、これはもう確実なんですね。手を引くということは、アジアの冷戦構造から手を引いていくということです。したがって、もし日本がこの段階に立って真剣に考えないと、私は、取り残されていくと思うのですね。そういう意味では非常に重大な選択の岐路に立たされておる。過去の冷戦構造の中に日本が依然として生き続けるならば、これはますます、アジアの諸国が懸念しておる、特に中国が懸念しておるような軍事大国化あるいは軍国主義化の方向に向かう。重大な岐路に立たされておると思うのです。したがって、こういう岐路に立って、一体政府は今後どのような対中政策を具体的におとりになるつもりであろうか。本会議における御答弁を聞いておりますと、総理の対中政策の中には、言われておることばだけ取り上げても、ずいぶん私は混乱と矛盾があると思うのです。それはやっぱり苦悩されている姿だと思う。わかります。しかし、もう少し整理しなくては、国民皆さんは、あの本会議における答弁では、一体これからどうするのかということはきっぱりわからないのです。おそらく総理自身もおわかりになっていないのじゃなかろうかと思うわけであります。  そこで、私は具体的に、これはきめつけるばかりが能じゃありませんから、お互いに考えてみたいと思うのです。  まず、本会議における答弁を聞いておる範囲では、やはり国府に対する義理をたてにとって、慎重に慎重にということばが多うございましたですね。過去の佐藤内閣の実績から検討するならば、慎重にとおっしゃることは何もやらないということなんです。過去の実績がそれを証明しておるのですね。しかしそれではもういけない。  そこで、本会議総理はこういうことをおっしゃいました。北京さえ応ずれば、国交正常化を含めて両国の懸案事項を解決するために政府間交渉を用意しておる、こうおっしゃいました。ところが、よく考えてみると、このことばはまさに、ニクソン大統領が訪中を受諾するにあたって声明を出した、その中のニクソンの文句と同じです。国交正常化を含めて両国の懸案事項の解決にいく。ニクソンも言っておるのです。あの声明の中で。私はまねされたわけではないと思います。ところが期せずして同じ文句が出てきておるわけです。ニクソン訪中については、米中の国交正常化ということは、当然北京の承認問題が含まれておるという総理の御推測であります。しからば、同じことばを使われた日本の場合も、佐藤総理が言われる日中国交正常化を含めて両国の懸案事項を解決するための政府間交渉といろものは、その日中国交正常化の中には、佐藤総理は、承認問題も頭に描いての国交正常化を考えておられるのかどうか。大事なところですから、ひとつ御答弁を明確にしていただきたい。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 問題を別にそらすわけではございませんが、理解していただく上から申し上げます。  私どもは、戦争状態、これをやはり、戦争したのは蒋政権だ、これに対して戦争をした、そしてそのもとで敗れた、こういうことで、やはり蒋介石政権と講和条約を結ぶのがまあ筋道の当然だろうということで、サンフランシスコ条約の後に日華平和条約を結んだこと、その歴史的状況は御承知のとおりであります。もうすでにその際も、北京にはただいまの政権、中華人民共和国の政権があった。そういう状態でございますから、われわれが選択をいずれにするかということ、そこに問題が一つあった。そうしてただいままでも中国は一つだと言っている。北京政府も、また国府も、これは一つだと言っている。私どもはこれに反対はいたしておりません。また、北京政府からも要望されておるように、北京を敵視するな、また二つの中国の陰謀に加担するなというこのことも、私どもは考えておらない。したがいまして、中国は一つだという、この二つの政権がそのことを主張し、二つの政権が正統政府を主張しておる。これは本来同一民族の間でありますから、民族間の同士で話し合っていただけば、これにこしたことはない。われわれは干渉するつもりはございません。そうして初めてそこに一つの中国が実現するのだ、かように考えております。しかし、今日の状態はそこまではいかないから、いわゆる政経分離という形で中国大陸との交渉は民間ベースで続いておる、政治的な関係は除いて、さような状態でございます。しかしこれでは不満足であることは確かであります。私は、何としても中国の問題として、これは中国人同士が話し合って、その二つがやはり一つになること、これを心から希望するものであります。望むものであります。  したがって、私が北京あるいは中国を訪問するという、それには.いまのような前提を踏んまえて、そうして中国は一つだという、やはり共存への道を歩んでいこうじゃないか。しばしばいま差でも言ったとおりであります。したがって、いま楢崎君の言われることも、私の言っていることも、おそらくあまりかけ隔てはないのじゃないかと思っておりますが、ただ問題は、過去の歴史的経過をいかに見るか。これにいつまでもこだわっておるのか、その辺はどうでもいいから、それは無視して先に進めと言われるのか、そこに問題があるようであります。私はそこにやはり、こだわりとは申しませんが、国際的信義の関係から、過去は過去としてやはり効果があったこと、それを十分評価し、そうして新しい事態をつくり出す、そういうことが望ましい形ではないか、かように思っておる次第であります。ただ、どうもそこらで、やや次になりますと、過去においては一応了承できても、いまとなりますと、そこらの変化に対応するだけのものがないじゃないかと言われますけれども、その点では政府も柔軟性は持っておるつもりでありますから、そこで、いまのように、私が出かけて、そして承認をも含めて正常な状態にする、こういうことになるわけでございます。ただいまの状態でこれを十分理解していただくことが何よりも大事なことであり、私は、ニクソン大統領を迎えられる北京といたしましても、この雅量があれば日本を迎えることはもっと容易ではないか、かように思っておりますので、近いだけにそのことを強く願っておるような次第であります。
  46. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ただいまの御答弁は、たいへんデリケートだが、若干の前向きの御答弁が含まれたような感じがいたします。  そこで私は、きのうも参議院の本会議総理は言われたようでありますが、いまも言われた柔軟性ということ、中国に柔軟性を求めるということを言われた。自分のほうも柔軟性はある。柔軟性ということは、これはたいへん失礼ですけれども、私も中国の外交問題をいろいろ研究をいたしております。過去の中国の外交の具体的なあとをたどってみると、原則が明確にされた場合に初めて柔軟性が出てくるのですね。つまり原則の適用の問題についてはたいへん柔軟性があるのです。しかし原則だけはっきりする。そこなんです、問題は。だから、原則をはっきりせずして柔軟性を幾ら佐藤総理が求められても、それは無理なんです。もう過去の歴史がそれを証明しておる。  そこで、いま一つお伺いいたしますが、過去の経緯があるから、それを十分双方が理解し合えば、国交正常化の問題の中に承認問題も含めて自分は行ってもいいのだ、そういうふうに聞いたわけでございますが、それでよろしゅうございますか。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大体いいように思います。
  48. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はこの点については、これは私の判断であるかもしれませんが、その点は非常な前進だと思います。つまり、国交正常化の中に承認問題も含めて政府間の交渉を持ちたい、そうして自分も出かけていい、こういう御発言のようであります。そこで、それならば私は、その条件次第では日中の国交回復もあり得る、こう理解してよろしゅうございますか。
  49. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 条件次第では日中回復もあり得ると言われる、その条件次第というのがどういうことを意味しておるのか、そこがちょっとわからない。私は、過去の問題、そのことが理解されればこの問題を解決するのにやぶさかでない、かように思っております。
  50. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その過去の問題の相互理解と申しますか、解決さえすれば日中国交回復に賛成するということばのように承りました。首をこうされましたから、そのとおりだと思います。そうすると、いま各党で、今臨時国会において日中国交回復決議案を出したらという話し合いが進められておりますが、趣旨としては賛成でございますか。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この各党の主張はずいぶん離れておると思います。したがって私は、各党が十分の意見を交換されて、しかる上でただいまのようなお話——どもは敵視しておる政策はとっておらないのですから、したがって、隣の国、ましてや隣の国同士が仲よくしようという、また国連へも加盟をしてもらおう、こういうような事柄に反対するはずはございませんが、しかし、ただいまの問題は、各党の立場をもう少し整理する必要があるのじゃないか、かように私は思いますので、これはよけいなことですが、それだけを申し上げておきます。
  52. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまおっしゃった前段のことは、各党の話し合いが行なわれるということは当然のことであろうと私は思う。  そこで、そうすると、今秋に予定されておる国連における中国の合法的な地位の回復には、論理的な必然として、積極的に賛成されるわけですね。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままでもアルバニア案には反対してまいりました。また、おそらくアルバニア案そのものをそのまま受け入れるということはなかなか困難だ、かように私はこの段階でも思っておりますが、しかし、中国自身がやはり国連に入らないで、国連、世界の平和機構というのにしてはあまりにも大きな存在を無視している、かように思いますので、それへ入ることはけっこうだということになると思います。しかし、それにはそれぞれの手続があるだろうと思いますが、まだまだ紆余曲折はあろうかと思いますけれども方向としてはその方向じゃないかと思っております。
  54. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、いまアルバニア案ということを言われました。アルバニア案を例にとれば、あのアルバニア案のうち、中国招請のほうには賛成するが国府追放のほうには賛成いたしかねる、こういうことでございますね。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いままで、国府、これがやはり国連の創設の一人で毛ありますし、また国連憲章を忠実に守った国だし、そういうものを追放するということはいかがかと思っております。したがいまして、そこらに調整を要する問題がなお残っておるのじゃないか、かように思います。
  56. 楢崎弥之助

    楢崎委員 先ほどからの御答弁を聞いておりますと、いままでよりは前進した見解の表明があったと私は思うのです。問題は、これからはことばではないのですね。何をするか。つまり原則ははっきりしておる。では、その原則をことばとして言われても、それのあかしがなくてはだめなんですね。アメリカは、振り返ってみますと、いままでそのあかしをしてきたのですね。たとえば、ワルシャワ会談が再開されるために、アメリカはこの一月非常に努力しました。それからおみやげ品に対する制限を緩和した。それから台湾海峡の第七艦隊のパトロールをやめた。あるいは渡航制限の緩和をやった。あるいは通商制限の緩和をやった。で、この渡航制限の緩和というのは三月十五日にアメリカがやったわけですが、このアメリカの具体的なあかしに対して中国はこたえたわけです。何でこたえたかというと、いわゆるピンポン外交の展開であります。つまり、ことばで幾ら言ったってだめなんです。行動で示さなくちゃだめなんです。私は佐藤総理の内閣の任期がどのくらいあるかわかりませんが、おそらくその具体的な国交回復は佐藤内閣の手では無理かもしれませんけれども、しかし私は、佐藤内閣でいまやれることがあると思うのですね。つまり、いまあなたが言われました、そのあかしをするための行動がとれる。何かというと、一つはやはり吉田書簡の撤廃であります。これはいままで総理は経済面からのみとらえておられた。吉田書簡の撤廃というものを、経済面からとらえるのではなしに、政治面からとらえてこれを撤廃する。これはやれることであります、明確にそれを言明されることは。  二番目に、いろいろありますけれども、沖繩返還協定の中で尖閣列島が一緒に返されることになった。これは領土の帰趨については、いろいろ中国も抗議をしておるし、台湾も抗議をしておるし、アメリカは、尖閣列島の問題に介在するとたいへんなことになるということで、せんだっての上院の外交委員会の小委員会でも、米国は尖閣列島の領土権には絶対介入しちゃいかぬ、そうしないと、せっかくなりかかった米中改善がこれだけでこわれるという警告を発しておるぐらい、この尖閣列島の領土問題は中国はきびしく見ておる。したがって私は、少なくともこの尖閣列島に——返還協定を見てみると、返還後、依然として米軍基地を提供するようになっておる。少なくともそれはやめるべきである。米軍に基地を提供することはやめるべきである。  次にADIZ、防空識別圏、これをいまの防衛庁案では、防衛識別圏の中に案として含めておる。これも含めるべきではない。これも総理さえ決断すればすぐできることであります。  そして最後に沖繩の特殊部隊、これも私は認めるべきではない。こういうことは総理の決断次第でできることであります。御見解を承りたい。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 アメリカの今回とりました処置、また最近とった処置は高く評価しておられますが、日本がいままで中国大陸に対してとったことはどうもあまり評価しておられないようであります。これはやはりそれなりに評価していただくことが必要じゃないでしょうか。(楢崎委員「野党の努力です」と呼ぶ)私はもうそれは、野党の努力でもだれの努力でもけっこうだが、日本国民の努力であることは確かですね。そうしてこれだけ交流も盛んに行なわれており、また貿易額も八億二千万ドルになっておる、これはたいへん評価してしかるべきじゃないか。アメリカはいまようやくそういうことを始めようとしておるのです。したがって私どもは、もうすでにそれはやってきた。ただ問題は政治的におくれておる。ニクソンは、私どもよりも早く北京を訪問するという、そこに非常な政治的な意義がある、それをやっぱり考えるべきだ、かように私は思います。したがって、いまの言われます問題は、やはり政治的なおくれをいかにするかという、それを先ほど楢崎君から私に問いただされた。したがって私が、いままでは表現をするのが、中国を敵視はしない、そういう政策をとり、お互いが十分認識を正しくして、しかる上で干渉しないような、そういう形で交渉をしようじゃないかということを呼びかけていたが、これもなかなか功を奏しなかった。その点はそれなりにやっぱり評価していただきたい、かように私は実は思うのであります。  そこで、過去のことは過去として、これから先が問題だ。これから先に私どもも、いままでの姿勢、これにつきましてずいぶん困難はあると思います。いろいろな困難があると思いますが、その困難を乗り越えて、やはり隣同士友好であるべき筋の国柄でありますから、そういう形の方向へ進むべきだ。そのときの具体的な支障になるものが例の吉田書簡だと言われる。これはもう政府がたびたび申しますように、吉田書簡は政府間の協定ではない。したがってこれも、廃棄するとか廃棄しないとか、そういうことを言うべき問題ではない。具体的な問題についてケースバイ・ケースできめていこう、こういうことをただいま申しておりますから、これは、いまさら廃棄とか廃棄しないとか、こういう問題とは別であります。具体的なケースについてケース・バイ・ケースでやる。  次は尖閣列島の問題であります。尖閣列島の問題は、ただそこに米軍基地を置くことを、施設として提供するなというだけの問題なのか。もっと基本的な問題があるのか。けれどもいまの問題では、たださしあたり、そういう基地を置くという、そういう考え方はないように思っておりますから、その点は御意見としてよく伺っておきます。尖閣列島はもともと無人島でありますし、そういう意味の問題は、ただいまのレーダー、あるいはそういう基地としてどういうことに使われておりますか、その辺には問題があろうかと思いますけれども、これは私は御意見として承っておきます。  さらにまた次の航空識別圏ですか、こういうなかなかむずかしい問題になりますが、これなども、いろいろいま専門的に検討しておる最中だと思いますけれども、これも他国に刺激を与えないような処置をとりたいものだと思います。  そうして最後は、ちょっとわかりかねたのですが……。
  58. 楢崎弥之助

    楢崎委員 沖繩の特殊部隊……。
  59. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 沖繩の特殊部隊、これはここでの外国の訓練はやめるようであります。またこれは、そういう意味で特殊部隊というものは、米軍自身の駐在の意義も変わってまいりますから、それに沿うということ、そういう意味で安保の範囲において駐留が認められるということでありますから、これは御安心をして、お約束もできることじゃないか、かように思います。
  60. 楢崎弥之助

    楢崎委員 総理はちょっとよく見られていないと思うのですが、返還後、尖閣列島に米軍の射爆場がいままであるのですが、協定はそれを引き続いて提供することになっておるのです。だからそれは、さしあたっておやめになったがいいのではないか。佐藤内閣としてできることを言っているのです、領土問題に触れる前に。それを私は言っておるのです。  そこで私は、あとの問題がありますから締めくくりたいのですが、きょうの佐藤総理の御答弁をお伺いしておりますと、過去の経過はあるけれども、この過去の経過を解決をして未来の展望の中に日本の国益を求めていくという姿勢がうかがえたものと思います。したがって私どもとしては、やはり原則を明確にするということ、これなくしては日中改善はあり得ない。その原則とは何か。それは一つの中国である。この点は佐藤総理も御賛成である。台湾は中国の内政問題である。これも御賛成のようである。いま一つ、これが大事です。この中国を代表する唯一の政府は中華人民共和国の北京政府である。この点が重大でありますから、これをやはり原則として認める。以後の過去の経過のその整理については、私はいろいろやり方があろうと思うのです。そういうことでひとつ御解決をはかっていかれるように要望をしておきたいと思います。  そこで、次に私は重要な問題として、例の米ペンタゴンのベトナム戦争に関する秘密報告書の点について触れたいと思うのであります。これはたいへんな衝撃を全世界に与えたわけです。この中にはどういうことがあるかというと、アイゼンハワー政権が誕生間もない北ベトナムに対して数々の破壊活動を行なった事実、ケネディ政権が一九六三年のゴ・ジン・ジェム南ベトナム大統領暗殺クーデターを強力に推進しようとした事実、それからジョンソン政権下の一九六四年二月一日に、例のトンキン湾、八月のずっと以前に、すでに北ベトナムに対する全面戦争を目ざす隠密作戦、つまりいわゆる34A作戦計画を練って、そしてその実施を指令しておりますね。そしてしかも六五年の三月二十四日、マクノートン国防次官補がマクナマラ国防長官に提出した文書によれば、南ベトナムのための行動計画の目的は、七〇%が保護者としてのアメリカの名声を守るためとなっておるのですね。もういままで政府が言われてきたことは全部うそである。つまりアメリカの表面的に言ってきたことをうのみにされて答弁された。本会議においてもそうですね。依然として国連憲章を出された。このペンタゴンの秘密報告書は、アメリカのベトナムに対する介入が、国連憲章に挑戦するものであり、国連憲章を冒涜するものであり、国連憲章に違反するという事実が私は明確になったと思うわけであります。  そこで私は、これだけをお尋ねをしておきたいと思うのです。つまり一九六七年十一月の第二回目の佐藤・ジョンソン共同声明の四項にベトナム戦争の支持がうたわれておる。これは時間がありませんから、ここを読まれるとわかるとおり、あの中でジョンソン大統領が言われたことは全部うそである。これがペンタゴンの秘密文書によって明らかにされた。したがって、あの共同声明というものは、そういう虚偽の事実によって結ばれた共同声明ですから、これは共同声明というものは条約に匹敵するところの重要な約束ごとでありますゆえに、条約がもし守られないときは条約は破棄されるわけでありますから、この共同声明も当然有効性がなくなる。私は、したがってこの共同声明は破棄あるいは取り消されるべきものである、このように思わざるを得ないわけですが、その点はいかがでありましょう。
  61. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうでしょう、楢崎君。新聞の記事、これが全部全面的に正しいといたしましても、これは国防総省だけの関係書類のように思いますが、アメリカの全体としての考え方をそれだけで云々することはいかがでしょうか。私はいまその真偽を言っておるわけではない。少なくとも、それはそれなりに認めても、それはアメリカの一部の意見であった、かように評価すべきではないだろうか。その評価の上に立つと、ただいま言われるような、私とジョンソン大統領との声明を取り消せとか、こういうところまでは議論は発展しないのではないか、もう少し事態を掘り下げてみる必要があるのではないだろうか、かように私は思います。
  62. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はこの点は次の国会に残したいと思うのですね。で、われわれの考えだけ明らかにしておきます。  私は、いまから言います二つ理由によって、沖繩返還協定は日米安保条約とともに、完全にもう一ぺん再検討されなくてはならない。これは論理的にも事実関係においてもそうなると思うのです。その理由一つは、当然有効性のない、破棄されるべき一九六九年十一月の佐藤・ニクソン共同声明、並びに日米信頼関係が今度のニクソンの訪中問題でもくずれたわけですから、日米信頼関係に基礎を置いた返還協定である、それが一つ。二番目に私は、先ほど申したとおり、アメリカの対中政策の変化によって、当然過去のアジアにおける冷戦構造は再検討される。とするならば、過去の冷戦構造の中に、そのワク組みの中でつくられた沖繩の返還協定というものは、当然再検討をもう一ぺんされなくてはいけない、このように私どもは思うわけであります。で、いま十分論議をしなければならないという総理の御見解ですから、私はこの点で資料を要求いたしておきます。  直ちにアメリカ国務省に対して照会をすること、そうしてこのペンタゴン文書の全文を、わが国会にも関係がありますから、提出をされたい、このようにお願いをいたしておきます。どうでしょうか。
  63. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は再検討すべしと言われることが……(楢崎委員「これは議論しませんよ」と呼ぶ)これはいま議論せぬとおっしゃるが、私、たいへん心配なのは、再検討することによって返還の時期がおくれる、そういうことを指摘しておきたいと思います。私は返還された上での処理のできる事柄は、できるだけ早く祖国復帰、それを実現すべきではないか、かように思いますので、この点ではもう一度お考えを願いたいと思います。  それから資料、これは外国の政府のことでございますから、そう簡単にこの際に承知しました、かように言い切れないと思います。私も、いまのせっかくの御要望でありますから、そういう方向で、ただいまの話がどういうことになりますか、十分交渉の経過を見守りながら前向きでありたいと思いますが、ただいまそのことのお約束はちょっといたしかねる、かように御了承いただきたいと思います。(楢崎委員「何をですか」と呼ぶ)資料を提出する、アメリカの資料ですから。
  64. 楢崎弥之助

    楢崎委員 少なくとも一九六七年の両首脳の共同声明について疑義をはさんでいる、その疑義をはさむ資料であるこのペンタゴンの秘密資料、これは外務大臣、五カ国がすでにその照会をしておりますね。サイゴン政府もそうだしカナダ政府もそうだし、タイもそうです。日本は黙っておくわけですか。当然私は照会をしてその文書をわれわれ国会に提示してもらわなくては、われわれもだまされておることになる。当然じゃありませんか。
  65. 木村俊夫

    木村国務大臣 御承知のとおりこの機密文書、いろいろ発表はされておりますが、アメリカ国内におきましてもまだ裁判事件にもなっております。まだアメリカ政府全体の公表文書ではございません。正式的に公式の立場で政府がその材料、資料要求をする立場ではございませんが、しかしながら、すでにもう報道されておりますので、そういう意味におきまして入手する考えはございません。
  66. 楢崎弥之助

    楢崎委員 最後のところ、わかりませんが……。
  67. 木村俊夫

    木村国務大臣 まだアメリカ国内における正式の措置がきまっておりません。政府同士のルートでこれを要求するというようなことでは、まだ時期尚早であろうかと思います。
  68. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そのことについて国務省に照会もしないんですか。
  69. 木村俊夫

    木村国務大臣 事実上の照会はいたします。しかしながら、政府間の話し合いとして、正式にこの文書を要求する、あるいはそれを取り寄せるという立場ではございません。
  70. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これは時間がありませんから……、当然次の批准国会で問題になると思います。われわれはこれを納得することはできません。  それでは、中国に刺激を与えるような措置はなるだけやめなければいけないという一つの問題として、私が先ほど取り上げた沖繩のADIZの問題、防空識別圏の問題について進めたいと思います。  尖閣列島を防空識別圏の中にいまお入れになるつもりですか、防衛庁長官
  71. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 ADIZの問題は、沖繩が返還をされました際に、日本としてどうするかという問題でございまして、現在米国でやっております識別圏は、尖閣列島を含んだ範囲でございます。その問題についてはただいま検討中でありまして、現在米国のやっております範囲のままでいくかどうか、検討をいたしておるところでございます。
  72. 楢崎弥之助

    楢崎委員 航空自衛隊の制服組としては、米軍のADIZをそのまま今後自衛隊が使いたいということを言っております。おそらく内局とどの程度の対立があるか知りませんが、非常に心配されるところでございます。  そこで、私はさらにお伺いをしますが、そうすると沖繩のADIZは日本に返ってくる。現在では沖繩を含めて台湾を中心とする米国のADIZがありますね。それで、日本政府、防衛庁でもよろしょうございますが、米国のADIZは全部確認しておりますか、アジアの範囲について。
  73. 久保卓也

    ○久保説明員 私どもでわかっている分野とわかっていない分野があります。たとえば韓国、台湾、グアム、その辺はわかっておりますが、サイパンその他の地域については私どもはまだ承知をいたしておりません。
  74. 楢崎弥之助

    楢崎委員 日本政府は米軍のADIZにどのようなかかわり合いを持っておりますか。
  75. 久保卓也

    ○久保説明員 米軍のADIZとは関係ございません。
  76. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私は時間がありませんから議論はしませんが、航空交通管制に関する合意第三附属書を見れば明白であります。つまり、日米のAMISは情報を府中に提供する、あるいはSSレーダーサイト及びADCCに提供する、そして松前・バーンズ協定によって、それは隣接する国、つまり韓国、台湾のレーダーサイトと連結をすることになっている。しかも今度沖繩返還によって自衛隊が沖繩に行く日米取りきめをやっております。北山委員が本会議総理質問をいたしました。ここで沖繩のレーダーサイトを引き受ける、もちろん防空識別あるいはスクランブルも引き受けることになります。ところが、残る台湾のアメリカの防空識別圏には、中国の奥深くそのADIZが入っておりますね。この点は間違いありませんか。
  77. 久保卓也

    ○久保説明員 入っております。
  78. 楢崎弥之助

    楢崎委員 私はそのADIZの地図をひとつ政府のほうにお渡しして御見解を承りたいのですが、これを見ますと、中国の奥深くこのADIZが入っておりますね。そしてこれは松前・バーンズ協定によって日米が連携し合うことになっている。これは非常に重要な問題であろうと思うのです。しかも防衛庁長官、尖閣列島は防空識別圏の中に入れるのですよ。あなたは検討中と言うが、入れるのですよ。この前防衛局長はそう答弁している。よく習っておってください。私はこれは非常に重要だと思うのです。こういう防空識別圏があって、しかも、特殊部隊の一つをあげてみます、SR71このスパイ機は沖繩に残すのでしょう。安保条約のワクで縛るといったって、こういう識別圏が米軍に存在しておってできますか。一体その保証はあるのですか。木村代理大臣、保証がありますか。SR71を安保条約のワク内に縛るという保証がありますか、こういう防空識別圏があるのに。
  79. 木村俊夫

    木村国務大臣 今回の沖繩返還におきましては、当然、返還される沖繩におきまして、安保条約、これに関連する取りきめが実施される。それにおきまして、事前協議制度の中の運用によりまして、いまお話のあった点は確認されておると思います。
  80. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何か文書で確認されておりますか。
  81. 木村俊夫

    木村国務大臣 これは日米安条約、これに関連する取りきめによって、文脈上当然のことであると思います。
  82. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そんなことを聞いているのじゃないですよ。VOAの場合はちゃんと協定上ありますね。合意議事録まである。SR71については、その種のものがありますか、それを聞いているのです。ないなら、ないと言ってください。
  83. 木村俊夫

    木村国務大臣 VOAのような国内法に関係するものではございませんし、文書ではございません。しかしながら、国際法上当然のことであると思います。
  84. 楢崎弥之助

    楢崎委員 かつてスパイ機で国際的に問題になったでしょう。アメリカのスパイ機、U2で。だから、そんな保証はないですよ。しかも、こういう台湾に及ぶ防空識別圏を依然として持っておるのです。それなのに、スパイ機であるSR71を文脈上縛れるなんといったって、何の保証がありますか。私は、これは問題を残しておきたいと思います。  最後に、一点聞いておきます。  核抜きの問題で、総理は協定の第七条を言われる。われわれはいままで、事前協議で非核三原則があるからノーと言うでしょうというようなやりとりを国会でやっておりましたが、しかし、もうばかくさくなったわけですね。大体事前協議にかからないのですね。向こうはかけないのです、核の問題は。マクマホン法があって。そしてレアード長官も言っておるでしょう、核の有無も明確にはできないんだと。核の有ということは存在するということと持ち込むということです。無という字は、引き揚げる、核を抜くこと。その有無について明確にできないというのです。だから、事前協議にかかるわけがない。非核三原則を幾ら言ってみたって、それは単なる願望にしかすぎませんよ。  じゃあ、非核三原則を実効あるものにするには何が必要かというと、査察以外にないのです。それが一つ。いま一つは、核抜きの費用をあげておるから、これで明確ではないかと言われる。じゃあ、費用は七千万ドル。これは二百五十二億円でしょう。これを核抜きの費用に充てるとおっしゃるのです。しかし、これは、返還が実現して、復帰して一週間のうちに、まず三億二千万、ドルのうちの一億ドルを払う。あとは四年間ですか、年次払いする。そうすると、返還の時点で核がないというのですから、アメリカは立てかえ払いで核を抜くのですか。そのことは約束できているのですか、立てかえで抜きますという。どうですか。
  85. 木村俊夫

    木村国務大臣 七千万ドルの内訳でございますが、これは積算の基礎を事柄の性質上明らかにすることはできません。しかし、その中には当然共同声明第八項に基づく核の撤去費用を含め、またその他ある特殊部隊の撤去費用も含めて積算したものでございます。
  86. 楢崎弥之助

    楢崎委員 立てかえ払いをすることを了承していますかと聞いているのです、積算の基礎でなくて。
  87. 木村俊夫

    木村国務大臣 立てかえ払いということになっておりませんが、共同声明第八項の実施に当然伴う費用として米政府としては考えておるわけでございます。
  88. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いいですか、もしおっしゃるとおりなら、金は返還後払うのですから、ところが返還の時点で核はないことになっておるというのですから、当然核抜きにするためには立てかえ払いしなくてはできぬじゃないですか。それは話し合ってない。それから、七千万ドル、二百五十二億円の内容については積算基礎は言えない。われわれ、調査によると、少なくとも千発以上は核はあるという、そうすると、一発について二千五百万円ですよ。こんな費用を見積もっておる。核は毒ガスよりも危険です。毒ガスについては、撤去の方法を明示して、そして詳細な撤去の方法を講じて、沿道の沖繩県民の方にも協力を求めておる。核抜きについては一切それが知らされないわけですか。一体どうなるんです。これでは私どもが核抜きと言ってみたってその保証はない。結局は核隠しだといわざるを得ぬじゃないですか。これは批准国会で大いにやりたいと思いますけれども、その点についての総理の御見解。事前協議にはかからないということと、それから核抜きの証明にしておるその費用の問題にしても、全然これは根拠がない。核抜きの方法等も明確にされない。これをもってなおあなたは核抜きはだいじょうぶだと国民に納得させられますか。
  89. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 立てかえ払い、立てかえ払いと言われるから何かと思っていたのですが、いまの、返還の際に核抜き、それをアメリカは約束しているが、そのためにはアメリカがまず金を出さなければできないだろう、それを指摘しておられるので、一体どういうことをお尋ねかなあと首を実はひねっていたのです。
  90. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それは金のことですから確認しておかなければいけませんよ、向こうも予算委員会があるのだから……。
  91. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これはしかし、もうすでに約束済みでございますから、私どもが支払う、立てかえる、その時期というか、アメリカに支払う時期は、これは返還前に私どもは払わないということでありまして、いまの金は約七千万ドルというものを計上しておるということであります。したがって、その意味においては、アメリカは立てかえ払いする、あとで日本が払ってくれるからということだと思います。私は、核の問題について、ただいまのような点があるいは誤解を生んでいたのか、かように思いまして、意外に思っておるのです。これは申すまでもなく、アメリカが私どもと約束をしていることですから、これを信頼しなければただいまのようなお話にもなる。しかし、その一つの信頼のできないことの理由として、立てかえ払いがないからだ、かように言われることが非常に私は意外でございます。(楢崎委員「事前協議にかからない」と呼ぶ)  また、事前協議の問題を十分説明しろと言われる。私はすでに共同声明でも申しました。日本政府の考え方については十分理解しているから、その意思に反しない、また今回の返還協定におきましてもその点をさらに明確に規定した、こういうことで、私はもうそれより以上の処置は実はないように思っております。  そこで、いま言われるように、あとに残されたものは点検だ、こういうことになろうかと思いますが、これは点検は外国軍隊の点検でありますから米政府の了解のもとに初めてできることであります。だから、それは後の問題としてその問題が残る、かようなことですが、私はいまの約束を現状においては信頼すべきものだ、かように思っております。
  92. 楢崎弥之助

    楢崎委員 核抜きの方法について……。
  93. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 核抜きの方法、沖繩から撤去するその方法についてですね。(楢崎委員「毒ガスと同じように」と呼ぶ)これは、ただいまのところまだ具体的に相談ができておりません。しかし、これはもちろんもうすでにそういう時期になっておりますから、急いでやらなければならないことだ、かように思っております。
  94. 楢崎弥之助

    楢崎委員 これでやめます。核抜きの方法は、毒ガス撤去の方法もあるわけですから、それはいまからその方法をどうしてやるかの相談をされるということでありますから、それはしかと承っておきます。  私の質問を終わります。
  95. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 大原君より関連質疑の申し出があります。楢崎君の持ち時間の範囲内でこれを許します。大原亨君。
  96. 大原亨

    大原委員 私は、内政の当面する最大の課題である保険医総辞退をめぐる医療制度の改革の問題につきまして端的に質問いたしますので、総理以下明確に答えていただきたいと思います。  第一は、私がこの質問に入ります前提として厚生大臣にお聞きしたいと思うのですが、現在厚生大臣国民注視の中で斎藤・武見会談——いや、そうじゃなしに武見・斎藤会談をやっておられるようでありますね。保険医総辞退の真意は国民にはよくわかってないのですよ。武見医師会長は、最初は中医協に政府が出しました審議用メモを撤回せよということを言っていた。その次には、医療費値上げが目的ではないかというふうにいわれておった。だんだんと変わってきておるわけでありますね。ですから、医師会の皆さんに聞いても最前線においてはよくわかっていない。どことなく神がかっておるのであります。斎藤厚生大臣は、保険医総辞退における目標というか要求、これは一体何であるというふうにお考えであるか、お答えいただきたいと思います。
  97. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 保険医総辞退の原因は、これは総辞退をした当時の医師会の声明やその他もございますが、いろいろあわせ考えまして、保険制度の抜本改正案その他医師会側のいままで要求していたいろいろな事柄がほとんど実行されていないというところにあるのじゃないか、かように思います。  そこで、具体的に医師会長から総辞退の真意はどこにあるのか、これをただいま確かめているわけでありまして、二回会ってその意見を聞きましたが、まだ言い足らないということで、もう一回さらに詳しく話をするということでございます。私もできるだけ詳細にいままでの不満を聞き、そしてどれが一番の要点になって総辞退をやったのかということをはっきりと確かめたい。それをああいった形でやっておりますのも、政府と医師会の間だけの話し合いではわかるまいから、国民皆さま方にもわかるような形式をとりたい、こういうことで、それももっともであろうということで、ただいま会談を続けているような次第でございます。
  98. 大原亨

    大原委員 私は、事態の推移をじっと見ておりまして、やはり問題は医療保険の抜本改正にあるというふうに考えるわけであります。その他十年来日医との間において話し合ったことが何も実行されていないということを斎藤さん言いましたね。あなたは一年半前までは厚生大臣をしておったわけであります。そのときには特例法の改正案を提案をしておきながら、会期の末におきましてきんちゃく切りのように本法を改正いたしまして大混乱になりました。そのときに抜本改正についても、ここに議事録がありますが、あなたは何回か国会で政府を代表して答弁をいたしております。まあ十年間何もやらなかったという追及に対しましては、これは佐藤政府が全部負うわけでありますが、それにいたしましても抜本改正が今日の主要な課題であることは私は間違いないと思うわけであります。私は、この抜本改正についてはそれぞれ国民の各分野において意見が若干ずつ違う点があることが問題であると思いますし、そうしてこれを国民コンセンサスの上に立って改革をすることが佐藤内閣の当面の一番大きな仕事であるというふうに思うわけであります。佐藤さん、いかがですか。
  99. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま言われますように、この保険の問題は国民健康保険、国民の健康維持、さらに治療、こういうことを考えると、どこまでも早く問題がないように、関係者が納得がいくようにしてこのことを進めないと、国民に不安が残っておっては私はたいへんだと思います。したがいまして、本会議における私の発言も、診療を受ける国民の側に立って問題を解決すべきだ、取り組むべきだ。どうもそれぞれがあまりにもかってな言い分ではないのか、それぞれの団体の要求が相当表面に露骨には出ているが、無視されているのは治療を受ける国民ではないか、診療を受ける国民ではないか、これでは本末転倒もはなはだしい、こういうことを実は考えてこの問題と取り組む、その中にはただいま仰せになるように抜本改正の問題があるだろうと思います。その抜本改正を審議する機関、いわゆる三者構成だといわれておるこの審議機関がどうしても意見をまとめることができないで適当な答申を得られない、ここに問題があるのです。いわゆる三者構成から医師会は脱退する、したがってコンセンサスができないという、お互いがそれぞれがあまりにも自分たちの権利を主張するのみで、やはりもう少し譲るべきは譲るという、そういう大局的な見地に立たない限り、これは政府だけで責任を負え責任を負えといっても、なかなかむずかしい問題だと私は思います。したがって、私の発言も非常に弱いようでありますが、本会議でも、関係各方面で協力をして譲るべきは譲って、そうして成案を得ると、こういうことでありたいと思います。  私は、抜本改正の案が出れば必ず国会で賛成、反対の大激論が展開されるだろうと思います。そういうような状態であって、この問題が解決しようとは思いません。したがって、私は皆さん方のお知恵も拝借し、そして全体が納得いくようなその方向でこの問題と取り組む、これが政府の決意でございます。
  100. 大原亨

    大原委員 私も佐藤内閣が成立いたしました当時の三十九年末、四十年の国会以来、この問題は総理大臣と論戦をしてきたわけであります。総理大臣もきのうやきょうの総理大臣ではないわけでありまして、あなたは厚生大臣の首をたくさんすげかえましたけれども総理大臣はあなた一人であります。あなたはよく勉強しておられるはずであります。それにいたしましては、私は先日来の本会議におけるあなたの御答弁というものは少し総理大臣としては不見識ではないか、失礼ですがそう思っておるわけであります。国民責任があるのであるとか、あるいは各分野のわがままが問題であるとかいうようなことを言われるわけですが、これは私は責任を転嫁するものであると思います。  そこで、私は具体的な問題についてお尋ねをするのですが、前の通常国会で健康保険の改正案を出しまして、これは廃案になったんです。私はいままでのことを振り返ってみますと、昭和四十二年に特例法を出しまして非常に大きな政治問題になりました。二カ年の時限立法でございましたから、赤字対策として特例法を出しておいて二カ年のうちに抜本改正に手をつけて解決のめどをつけて本法を改正する、こういう趣旨で昭和四十二年、政府は臨んだのであります。しかしながら、抜本改正を約束しながらじんぜんと日を過しまして、何ら前進がなかったというのが現状であります。続いて昭和四十四年、斎藤厚生大臣のときでありますが、四十四年にも特例法の延長を出して、今度は、申し上げたように、きんちゃく切りのように本法を変えたのであります。また昭和四十六年にも、前の通常国会におきましても出したのであります。そういうふうに健康保険の赤字対策という消極的な対策だけを二年ごとに繰り返して、政治上の大問題をここで起こしながらじんぜんと日を過ごしてくると、政府はもちろん、国会も、関係委員会等におきましてもその問題に力を集中いたします。したがって、抜本改正などというふうなことは逃げ口上として答弁するだけであって、何ら前進していないのが現状であると思うわけであります。ですから、昭和四十六年の通常国会で廃案となりました赤字対策の改正法、若干のプラス面もありますが、これは次の沖繩国会の臨時国会や次の通常国会には提案をしない、そして、先般の改正のときに五%の定率補助ということが問題となりましたが、政府が補助金で、政府の金で穴を埋めながら、抜本改正に政府も国会も全力をあげて取り組むような、そういう態勢をとることが必要ではないか。次の臨時国会や通常国会に本年初めに廃案となった健康保険の改正案をもう一度出してまた騒動するようなことがあれば、事態をますます紛糾させるんではないかということが一点であります。  第二点は、佐藤内閣になりましてから政府管掌の健康保険の赤字が累積をいたしまして、このままで進むと、昭和四十六年末には政府の資料で二千四百五十三億円になるわけであります。これは佐藤内閣になってからどんどんふえているのです。三K赤字といいまして、国鉄と食管とこの健康保険。原因はそれぞれ違いますが、私は政治の貧困だと思うのです。佐藤さんは確かに人事はうまいけれども、政策はどうもお留守のようである、いままでこういうふうな議論があったと思うのですが、そういう点が佐藤内閣の最終段階になって出ておると私は思う。  ですから、私は、抜本改正に取り組む態度として、政府は、この佐藤内閣の最終段階において、そういう健康保険の改正案で赤字対策だけのような対策を出すのではなしに、保険を需要する国民の側——需要面と、保険医療を供給する側——供給面、それらの総合対策を考えた抜本対策について方向づけをするという決意をもって佐藤内閣は全力投球をすべきであると考えますが、佐藤総理見解をお聞きいたしたいと思います。
  101. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御趣旨、賛成もあり、また反対もあります。私は、いま言われるように、診療を受ける国民の立場に立って問題を解決しろ、関係諸団体はそういう方向で意見の統一をしろ、こういうことを実は言っておるのであります。その音頭をとるのは政府であること、これはもちろんであります。政府国民責任を転嫁する、こういう意味ではありません。それぞれがそれぞれの立場において自分たちの利益のみを主張するからまとまらないんだ、しかし大事なのは国民自身、診療を受ける側だ、かように私は思うから申したのであります。ただいま言われますように、赤字対策だけでなしに抜本的改正を立てろ、その場合には国民の立場において考えろとおっしゃること、これは私も賛成であります。  ただ問題は、何かどうも、一年間五%だけ政府の金でまかなえと言うが、政府の金とは一体何ですか。これは申すまでもなく国民の負担ではないですか。私はこれこそあまり賛成のできない一つ理由でございます。私は、いま言われましたうちから、この具体的案をつくるべきだ、ただいま補助金を上げることだけによってこの赤字を片づけるという、そういう形でなしに、これはあるべき姿だ。大原君に賛成できない点はこの点、賛成できるのは前半でございます。
  102. 大原亨

    大原委員 そういう答弁であるから、佐藤内閣の政策が一貫をしていないと言うのですよ。佐藤さん、あなたの御答弁はまるでうそなんですよ。あなたは反対されました、五%の国庫補助に。そうではないのです。前の通常国会のときに大蔵省が予算をつけて出している案は、二百五十億円の政府管掌に対するつまみ銭を五%の定率補助にしたのですよ。二百七十億円にしたのですよ。あなたは、それがいかぬということをおっしゃるのでしょう。あなたは、政府がやったことはいけないと言うのですか。あなたは、通常国会に提案されたことはいけないと言われるのですか。
  103. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いけないと申すわけじゃありません。しかしながら、何か、私、聞いておると、政府の金で片づけろ、そうして抜本改正と取り組め、その間はとにかく政府の補助だ、こういうような言われ方に聞いたのであります。そうでしょう。そうすると、政府の金というのは一体何かというと、これは申すまでもなく、国民の負担ではないか。かようなことを考えると、政府自身が別な金を持っておるわけじゃありませんから、そこの関係を十分理解されると、簡単に五%云々は言われないはずだ、かように申すわけであります。
  104. 大原亨

    大原委員 政府管掌健康保険に五%の定率補助をやっておるのですよ、政府が出しているのですよ。あなたはそれを否定されるのですか。私は、それは少ないから、それを増額するならば、当面の財政対策だけですったもんだやらないで、抜本改正に全力を尽くして集中できるではないかということを言っておるのです。あなたは、そういう土台のことについて、政府がやったことについて知っておられない、佐藤内閣がずっとやってきておりながら。それだから、こんなにこんがらかるのですよ。  じゃ、申し上げましょう。私は質問の予定を少し変えますが、つまり、いまの昭和四十五年度に例をとってみますと、国民が負担をしている総医療費は二兆五千億円です。その中には保険料で負担している面もある、自己負担もある、あるいは公費負担もある、精神病、結核、原爆、そういうふうなものがある、あるいは国が金を出しておるのもある。しかし、どれにいたしましても全部国民が負担しているのですよ。その二兆五千億円の国民の負担を、国民医療の立場に立って、国民が納得できるような、信頼できる医者と国民との関係を確立していこうというのが抜本改正の問題なんですよ。税金だけが国民の金じゃないのですよ。二兆五千億円の中で、たとえば政府管掌の医療費が六千六百億円あるといわれておりますが、その一割とすれば六百六十億円です。五%の倍です。そして二割とすれば一千三百二十億円ですよ。二兆五千億円の中で、こういう金を国の税金の中から浮かして、そして抜本改正について全力で取り組んで、需要面だけ、財政面だけ、保険制度の面だけでなしに、供給面も一体として総合的な抜本対策を立てようというのがいまの課題ではないか。そういう立場に立って考えるならば、佐藤総理発言というものは、私は、総理大臣だからあれもこれもあるし、忙しいとは思いますが、ずうっと続いてきた問題に対する認識といたしましては、私は非常にさみしい。国民としてさみしい。頭の中もさみしいと私は思うわけです、失礼ですが。  そこで、斎藤さんにお尋ねいたしますが、あなたは一年半前の厚生大臣のときに、抜本改正の大綱をつくって、国会にも報告し、関係審議会にかけるということを約束いたしました。いま社会保障制度審議会や社会保険審議会では、前者では八月、後者では九月、中央医療協議会も、診療報酬体系は日本医師会が脱退いたしておりますから審議できない状況ですが、関係審議会で審議が進んでおるのです。私は、そういう審議が進んでおるときに、日本医師会の要求が抜本改正にあるということが明確になったならば、私は、あなたはまず日本医師会の武見さんに対しまして、その関係審議会に復帰して、その場所において十分日本医師会の議論をし、そうして論戦を重ねながら、その中で国民的な合意を得る、それに不安であるならばさらに国会で態度をきめるというふうな、そういう手だてをもって臨むべきであると私は思うわけですよ。誠意を尽くして話をすべきだと思う。であるのに、のこのこ出ていったかどうかは別にいたしまして、まるで赤子の手をひねられるようなかっこうで聞く一方である。私は非常に不見識だと思う、あなたの態度は。あなたはきのうきょう厚生大臣になった人ではない。初めて厚生大臣になったのなら私はそういうひどいことは言わないけれども、もう経験者だ。そういうことをいたしておりますと混乱はますます増大するのではないか、混乱に輪をかけるのではないか、あなたの態度は。いかがです。
  105. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 二年前に抜本改正のお約束を、総理もいたされましたが、私も当時の担当大臣としていたしました。したがいまして、二年後には必ず抜本改正をやりますと、こう申しておったわけでございますから、次の通常国会には何らかの形においてお答えをしなければならないと、かように考えております。したがいまして、その点はいま関係の審議会において審議をしてもらっておりますけれども、その答申が出るまでは手をつかねておらなければならぬということではないと思うのです。むしろそれまでにでもほんとうの抜本改正はどういう点でいくか。この前の試案のとおりでいいか、さらに検討する必要があるかという点をいまから検討に入らなければならない、かように考えているわけでございまして、私は、審議会の答申待ちだというて、手をつかねているわけにはまいらぬ、かように考えておるわけであります。  医師会との話し合いは、医師会の総辞退をいたしたその最も大きなものが何かということをいまいろいろと聞いているわけでありますが、おそらくいまおっしゃいます抜本改正にあるだろうと思います。抜本改善につきましては先ほど申し上げたとおりでありまして、先般の通常国会に提案をいたし審議未了になりました法案も、そういった審議未了になった経緯も踏んまえて、しかも衆議院の社会労働委員会では、国会の閉会中でもこの問題についていろいろ話し合おうという申し合わせをなすってくださったそうであります。これもおそらく抜本改正に及ぶ話し合いではなかろうか、かように考えます。そういう場も踏まえまして、抜本改正をやれやれと、野党の方々もみなそうおっしゃるわけでありますから、抜本改正の根本的理念は何かということも話し合って、そして次の国会に何らかの形で皆さま方に御賛成を得られるような基礎をつくっていきたい、かように考えているわけでございます。
  106. 大原亨

    大原委員 だから、私は、あなたの態度は不見識であると言っているのです。あとで議論いたします。やはり法律でちゃんと踏まなければならぬ舞台があるわけですよ。そこで議論をしなさいと言うのです。そこでコンセンサスを得たように努力をしなさい、そういうことに集中するのがあなたの役目ではありませんか、そしてそこに出てあなたの意見も堂々と言ったらどうですか、こういうことを言っているのです。そうすれば、ああいう公開の形でやることは形式としては私は悪いことではないと思うが、労働団体であれ経営者団体であれ健保団体であれ、そういうところと全部やらなければならないですよ。  そこで佐藤総理、いままでの質問の中から私はもう一つの提案をいたしますが、一つ私の質問にお答えのない点があるので、それをまず答えてもらいたいのは、健康保険の特例法とか赤字対策というふうなものをいままで三回ほどあなたはお出しになって、最後の昭和四十六年のことしの国会では流れたわけです、廃案になったのです。これはもう赤字対策としては、臨時国会、通常国会にはお出しになりませんね、抜本改正について全力を尽くして佐藤内閣は取り組みますね。それに対応するような国会の対応のしかたも必要であるというふうに私は申し上げているのですが、この点に対する見解一つであります。お答えがまだないわけであります。  もう一つは、私ども社会党は今日のこういう事態においてそれぞれのサイドには真剣な要求があることは承知いたしております。医師会の要求の中にも正当な要求があることを承知いたしております。たとえば技術を非常に不当に評価しているというふうなこと等は、これは政府責任です、施策の責任政治責任であります。ですから、そういう点を考えながら、私どもはいまのような保険医総辞退というふうな異常な事態——たとえば宮城県等では子供の健康保険の家族になっているおばあさんが、この子供に現金を払ってもらうのがつらさに、自殺をしたという報道もあったでしょう。命の問題ですから、深刻な問題です。ですから、私どもかねて提案をいたしておりますが、二カ月間ほど凍結状況をつくって、そして保険医の総辞退を六月末の状態に返して、予告一カ月間の——そこで返しておいて、そしてそこで早急にこの二カ月間に、問題の所在はわかっておるのですから、それを集中的に議論をしながら政府は施策を立てて、抜本改正についての方向づけをしていく。全部が全部でない、方向づけをしていく。そういう中でこの問題を本格的におさめていくような方法をとるべきではないか。  前のことは答弁の漏れであります。後者のことは一つの提案であります。これについて総理大臣のお考えを聞かしてもらいたい。後者の問題は八月、九月と、たとえば八月から始まるといたしまして二カ月間、社会保障制度審議会の答申も出るのです。保険審議会の答申も出るのです。そしてそれぞれ中間報告がいままでもう出ているのです。大体の方向はわかっているのです。それらを踏まえながら政府や国会はどうするかということを考える時間的なリミットはある。こういうふうに考えて、私どもが何のはったりもなしにこのことは国会の場所において合意を得ることが必要である。一つの圧力団体との関係で、斎藤さんがやっておるように、そういうことで合意を得ても混乱を助長するばかりである。そういう点において私どもが虚心たんかいに党派の立場を越えて提案をいたしておるわけですから、この二つの点について、政策のイニシアチブをとっている佐藤さんから、お考えを聞かしてもらいたい。
  107. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 答弁漏れがあったということで、赤字対策——抜本対策だけで片づけろ、こういうことですが、しかし、経過的な問題もありますから、赤字対策もやはり一部立てざるを得ぬのじゃないでしょうか。私はそこらの取り運び方はもう少し——抜本対策だけで積み重ねの赤字が消えるというわけのものでもないだろうと思いますので、赤字対策も一部経過的なものとして考えざるを得ないだろう、かように思います。ここらは大蔵大臣の意見もひとつよく聞いてみたいと思います。  次に、第二の社会党提案。これは私、本会議でも申しましたように、一つのたいへん有力なる御示唆と、かように考えて、それを参酌させていただきたい、かように申しましたが、私、ただいま二カ月間の凍結期間とかそういうことができればたいへんけっこうですが、ただいまの状態では非常に大急ぎで総辞退自身をとにかくやめさせて、そして診療をいままでのような状況のもとに返すことが一つの課題だと思います。そのために凍結期間という表現でこれを返そうとなさるのだと思いますけれども、私はその凍結期間といわないで、これはやっぱり話し合うべきだろう。武見・厚生大臣の会談だ、こういうような言い方をされますが、厚生大臣もそういう意味で、非常に問題を国民、診療を受ける立場から不都合がないように、かように思ってその総辞退を早く平常な状態に返したい、こういうことで努力している。その努力はそれなりにひとつ買ってやっていただきたい、かように思います。政府の立場もそういう意味でございますので、表現は違いますけれども皆さんと同じような考え方で、ただいま総辞退をできるだけ早く、そういうような形でなくて受診、診療する、こういうことにしたいし、またその赤字は中間的な問題、経過的な問題としてやはりひとつくふうしなきゃならぬだろう。同時に、抜本的な改正を立てない限り、この問題はいつまでも尾を引く、かように思いますので、政府責任たるやまことに重大だろう、かようにいわざるを得ない、かように思います。
  108. 大原亨

    大原委員 佐藤総理大臣が社会開発を提唱して組閣をされて以来の答弁をずっといまの答弁までを聞いておりますと、全然前進がないわけです。佐藤内閣も命脈が尽きたかというふうな私は感慨がいたします。  佐藤さん、抜本改正というのは、いままでずっと矛盾だらけに積み重なってきたのを、医療の需要と供給面について整理しようというのですよ。そこで国民が負担する面において真に必要な医療費を負担しようというのですよ。いまの総医療費というものは、申し上げたように、二兆五千億円ですが、それを分析いたしてみますと、その中には薬剤費や注射代が四二%も占めておるわけです。総医療費のワクからいいましたら国際レベルなんです。四二%というのですから、一兆円は薬になるのですね。馬に食わせるほどということばがありますが、薬をもらって帰って、その使用を調べてみると、追跡すると、三割ぐらいは飲んでいないのがあるのですよ。しかも、今日公害汚染の問題、環境汚染の問題と一緒に、直接食品添加物や薬品によるサリドマイドその他人間汚染の問題が問題になっているのですよ。明らかに医療費の増大は二〇%近くなって、国民所得を増してふえているわけですから、赤字対策だけを追っかけていたのでは問題が矛盾を増大するだけではないか、こういうことを指摘いたしておるのですよ。  そこで、総理大臣がイニシアチブを発揮して——それは武見さんにも会うだろう。しかし、これはルートに乗せるのですよ。斎藤さんは、私は罵倒する意思はないけれども、あなたはもう少し積極的に政府の施策について発言をすべきですよ。国民はあの状況を見ておれば、どこまで不安が続くか、どろ沼だと思っているんだ。だから、私はそういう点について抜本改正の問題を議論いたしておるわけですが、そういう態度に政府が立つことを私は強く要求したいのです。  つまりこういうことであります。抜本改正で取り上げる大きな方向は、医療の技術評価が不当に低いから技術を正当に評価する。そして薬を売れば売るほどもうかるような、そういうさやかせぎのシステムをなくする、売薬医療を克服する。薬というものは薬でなかったら毒ですから、最小限度使用の法則でやっていく。そういうことを通じて、ほんとうに技術を媒体として医者と国民との信頼関係を回復していくということが一つです。  それからもう一つ、保険制度の問題で議論されているように、政府管掌は低所得者で過重労働の人が入っておるわけです。ですから、それを制度上改変するにいたしましても、そのほうには国の金を厚みをかけて出していく。そういう方向づけをするために、私は一割五分とか二割という提案をしておるわけです。二割までという提案をしておるのですよ。そういう基礎をつくりながら保険制度の統廃合を考えていく。  私どもは被用者保険と地域保険の二本立てにするという案です。そういう方向づけをしていくことが必要ではないか。あるいは七十歳以上のあるいは六十五歳以上のお年寄りの医療と年金については、老人総合対策として政府も機関を設けてやっておるわけです。もう三本立て——地域、職場、老人という三木立てというものはなくなって、老人医療は公費でやるようになっている。政府のほうもそういう方向なんです。ですから、公費負担の分野は、老人医療の問題あるいはべーチェットやスモン病やそういうような問題、原爆被爆者の問題等、そういう問題等を公費負担の面を整理して、公費負担はここまでやるのだということをやれば、保険財政にも影響があるわけです。  私はそういう方向について方向づけをする三つの点をあげたわけですが、そういうことだけを取り上げてみましても、そういう方向づけをしながら当面の政策をやるというふうに政策を切りかえるべきであると思うが、総理見解いかがですか。
  109. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 大体医療保険の抜本改正の構想は、ただいま大原委員のおっしゃいました点も主要な点の一つであると思います。それだけではないと思いますが、全面的にいまのお考えはやはり抜本的な考え方の中に取り入れていかなければならない考え方だ、かように思っております。  なお、医師会との交渉がどろ沼に入るのじゃないか、したがってここで停戦をということでございました。私はどろ沼に入らないで早期収拾をいたしたい、かように思って努力をいたしておるわけでありまして、どろ沼に入るおそれはないという確信のもとにやっているわけでございます。
  110. 大原亨

    大原委員 時間も参りましたので最後ですが、つまり抜本改正は全部が全部そろえなさいというのではないのです。当面何が必要かということを考えながら方向づけをすることが必要である。そのことが保険医総辞退の問題を解決する道でもある、国民的なコンセンサスを得る道でもある。たとえば政府がいま直ちにできることは、この聞の会談にもありましたが、公的医療機関間——国、県、市町村あるいは日赤その他公的病院にいたしましても、全体の医療機関の中においては位置づけがばらばらなんです。これを明確にいたします。そして独立採算制をいまとっておりますが、それを排除いたします。あるいはベッドの規制なども、これは時代おくれですから排除いたします。そして公的病院の医療機関が持っておる医療供給の面における責任分野というものを明確にしながら、たとえば定員等人件費や設備費等も国の費用で負担する。いま独立採算ですから、薬をどんどん売ってはそこから出すような仕組みでしょう。一番ひどいのは、開業医よりもいまは薬を売りまくっているのは公的病院なんです。ですから、そういう独立採算を廃して、人件費や設備費等は国が出していく。消防にいたしましても学校の教育にいたしましてもそうでしょう。そういう方針を出せば、二千八百有余の無医地区、僻地の医療機関はその経営の中で解決できるのです。二年間なら二年間僻地に派遣をする、そういう方法をとっていく。医師の技術や待遇を思い切って尊重する。看護婦の養成その他医師の養成についても考える。医者の養成一つをとってみても、厚生省、文部省の連携が非常に悪い。そういう点を、問題はわかっているのですから、一つ一つを取り上げて政府全体で取り組んで方向づけをすることが、方向づけをすることにおいて問題をすみやかに解決するゆえんであって、そういう上に立って当面の政策を考えるべきであって、いまはまるで逆ではないかということを言っているのであります。  佐藤総理、あなたのその苦衷はわかりますけれども、私はそういう点は虚心たんかいにこの討論を通じてお考えを変えていただいて、しっかりした方針を持ってやってもらいたい。  私の要望を申し上げて、それに対する最後の見解をお伺いいたしたいと思います。
  111. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大原君にお答えいたします。  たいへん御熱心に、また私ども建設的な御意見と、かように拝聴いたしました。先ほども厚生大臣からお答えいたしましたように、もちろん大原君の考えられておるようなそういう線も考えながら、ただいま抜本改正と取り組むその姿勢でございますから、この上とも御鞭撻賜わりますようお願いいたします。ありがとうございました。
  112. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて楢崎君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  113. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、おはかりいたします。  本日の竹本孫一君の質疑に際し、日本銀行総裁を参考人として出席を求め、意見を聴取することにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  114. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  午前の会議はこの程度にとどめ、午後は零時五十五分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十分休憩      ————◇—————    午後一時二分開議
  115. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。正木良明君。
  116. 正木良明

    正木委員 私は、公明党を代表して、佐藤総理並びに関係大臣皆さん方に日中問題と沖繩問題を御質問申し上げたいと思っております。午前中、楢崎委員が日中問題、沖繩問題等について佐藤総理といろいろとお話がございました。先日来の本会議における衆参両院の代表質問に対するお答えからはやや前向きの姿勢が見られるように感じられまして、国民のために非常に御同慶にたえないと私は思っておるわけであります。どうか私の質問に対しましても前向きで積極的な御発言、御答弁をお願いしたいと考えております。  実は、佐藤総理もずいぶん驚かれたようでございますが、実際私もニクソン訪中の決定ということについては驚きまして、かねてからこういう事態は必ず起こるであろうということは再三にわたって申し上げておきましたが、こんなに早くとは私も思っておりませんでした。それぐらいアジアにおける、また世界における中国をめぐる情勢というものは急速に動いておると考えなければならないと私は思うのです。  総理の御心境を聞く前に私のそのときの心境を申し上げますと、はっきり申し上げて、最初はそれ見ろという気持ちは確かに一瞬ありました。しかし、私も日本国民の一人として冷静に考えたときに、日本が中国と一番近い隣国でありながら、また戦争状態も終結していないような両国の間柄において、アメリカのほうが先に中国政策について大転換を行なったということについて、これはたいへんなことになったというふうに考えました。同時にまた、中国問題についてわが国が非常に手おくれになったということもございますが、もう一つ私が大きな関心を持ちましたのは、日本はアジアにおいてもう全く損な役割りだけを押しつけられるに違いないということを痛切に感じたわけであります。  御存じのように、ニクソン訪中が決定いたします前にアメリカのキッシンジャーさんが周恩来総理と会談を行なっておりまして、それによってこのことが決定したわけでございますが、時期を同じくしてアメリカのレアード国防長官がわが国にやってまいりまして、いわゆるグアム・ドクトリン、ニクソン・ドクトリンに基づくアジアにおける防衛、この問題について、私の言い方から申し上げますと、日本に肩がわりを押しつけてまいりました。これに対して政府はそれを引き受けたようであります。これは軍事的な面もございますし、同時に経済的な面もございますが、これは非常に重要な問題でございまして、いままで中国封じ込めというアメリカの極東政策においてアメリカは中国と正面から対決をいたしておりましたが、今度のニクソン訪中によって、ニクソン・ドクトリンによる立場からいうならば予定の行動であったかもわかりませんが、アジアから手を引き、同時に中国との対決をかわそうといたしております。そのアメリカにかわって中国と正面から対決されようとしているのがいまの日本の立場でありまして、こういう点から考えますときに、私は単に国会の中で政府をやっつけるということだけではなくて、日本国民としてこれからの日中問題、これからのアジアの情勢の分折、しかも総理がいつも口にされる自由を守り平和に徹するために、いまこそ日本政府が大英断をしなければならない時期が来ているのではないか、これは日本の将来のためにもアジアの将来のためにも重要な問題である。このようにニクソン訪中の決定の知らせを聞いたときに私は率直に感じたわけであります。  そういう意味において、今後アメリカのアジア政策というものは大きく転換されるに違いないと私は感じておりますが、そういう点について総理の御見解をあらかじめ承っておきたいと思うわけであります。
  117. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ニクソン大統領の訪中が発表された、これが各方面にたいへん重大な、また深刻な影響を与えておることは事実であります。しかし、それがただいま御指摘になりましたよりに世界の平和へつながるというか、緊張緩和、こういうことに役立つなら私どもも歓迎すべきことだ、かように思いますので、政府としての見解をいち早く、実は感じとして発表したような次第であります。正木君御自身はおそらくこの時期よりもやや早目に北京にいらっしたんじゃないか、かように思います。おそらくそういう関係から、驚かれない、こういうこともあろうかとお感じ取りになったような点はなかったかどうか、おそらくあったんではないだろうかと私は思いますが、私はそういうことも考えながら皆さんの先見性というかそういうものにたいへん敬意を表する次第であります。  ただ、ニクソン大統領の訪中が発表されたその時期にレアード国防長官が来た。そうして日本は、アメリカがニクソン・ドクトリンを忠実に実行する、そういう国策の線に沿って訪中もするが、そのかわりを日本が引き受けたんじゃないか、これは軍事面並びに経済面あわせてだ、こういう立場では、日本はいわゆる損な立場をいつも引き受けることになるんだ、こういうように結ばれたように思うのであります。しかし、レアード国防、長官の来たこととただいまのニクソン大統領の訪中と、その間には関係はございませんようです。関係がないようですじゃなくて、ありません。これははっきり申し上げてよろしいと思っております。その後、ワシントン政府筋から日本の出先大使に発表しておるところから見ましても、これは極秘のうちに進められたことであって、だれも知らない。だから、そういう点は国務長官自身知らないようでもありましたし、だからこれは全然新しい事実であり、そうしてその事柄は極秘裏に進められた、かように私は理解しております。したがって、このことがあっても、日米間やあるいは米合間の関係に重大なる影響を及ぼすものでないということを、重ねて政府筋は発表しております。私どもは、それをそれなりに受け取らなければならない、かように思っておりますが、それはそれとして、ただいまお尋ねがありました米国の肩がわりという、そういう問題でありますが、軍事的に私どもがアメリカの肩がわりのできない、そういう力のないこと、これは御承知のとおりであります。したがって、軍事的な肩がわりなど、レアード長官と私どもが話し合うはずはございません。ただ問題は、沖繩の基地が、沖繩が返還されることによって、今度はアメリカの思うままには基地は使えない、安保条約の範囲内にとどまる、そういう意味の拘束を受けますので、日本の自衛隊がある程度、いま果たしている沖繩防衛、そのことをアメリカ軍から日本の自衛隊にかわるという、そういうことについて誤解のないように話し合いをしたこと、これはもう間違いはございません。これが一つでございます。  またもう一つは、いわゆる経済協力の問題でありますが、これはむしろ在来から日本のとってきた経済協力、しかも発展途上国に対する援助その他に変化があるかないかということ、そういう点をレアードから確かめられた、こういう程度でありまして、これもいわゆる肩がわりというようなものではございません。したがいまして、私は、肩がわりした肩がわりしたとおっしゃることは当たらないと思います。何か具体的にそういう意味でわれわれがさらに誤解を解く必要のあるような点がございましたら、御指摘を願いたいと思います。  また、米国自身の態度が、今度は政策的にいわゆるニクソン・ドクトリン、これと取り組んでアジアから後退するんではないか、こういうような感じのお話がございましたが、いままでの政策、それには変化はないものだ、私はかように理解しておりまして、むしろ今度の訪中の結果は、より極東の緊張の緩和に役立ち、また、そのことが同時に日本の自由を守り平和に徹する外交路線、それにも沿っておる、かように考えますし、同時に、私は、こういうことが日中間の関係にも好影響を与えるのではないだろうか、かようにすら実は考える次第であります。  しばしばいわれておりましたように、日本が米中間の橋渡しをすべき役割りだ、かようなことをいわれてきたのでありますが、どうもそれが今回の米国の訪中によって先になった、むしろ、米中の橋渡しを日本がやるんではなくて日中間の関係を米国が果たしてくれるんじゃないか、こういうような、ずいぶん逆な立場にもなったんじゃないか、かように思いますが、いずれにいたしましても、今回の事柄はただいま発表されただけで、いつのときにこれが実施されるか、これが一つの問題だと思います。年内にもそういうものが行なわれる、そうして行なわれるときには、けさほども話をいたしましたように北京政府承認という問題が出てくるだろうし、その他の両国の関係の深い事項、それらについても懇談が遂げられる、こういうことですが、ただいまは抽象的な発表だけで、具体的にどういうようにするという話はまだ出ておりません。でありますから、私どもも、それはただいま推測するだけでそれより以上のものでございません。こういう機会でお話をすることはいかがかと思います。差し控えさしていただきます。
  118. 正木良明

    正木委員 いろいろたくさんお答えいただきましたが、そこで一つ一つこなしていきましょう。  ニクソン訪中とレアード国防長官の来日とは直接関係がない、国務長官さえニクソン訪中の決定ということを知らなかったのだから、ましてやレアードさんが知っていたわけはありません、こういうことでこの関係を否定されましたが、私は、こういう関係で知っておったとか知っておらなかったということを御質問申し上げているわけではないのであって、これは歯にきぬ着せず言いますと、それは総理の非常に悪い癖でありまして、そういうふうなすりかえですぐ答弁をなさる。私どもが中華人民共和国政府との間に、いわゆる中国との間に戦争状態が終わっていないのではないかということを質問すると、戦争状態が終わっている証拠にあなた方だって行くじゃないですかというような答えをなさる。これは聞いている国民がほんとうに納得できる答えではないわけです。そんなことを聞いているわけではないのであって、これはいわゆるアメリカの最高首脳がニクソン訪中を決定したのでしょう、またレアード国防長官日本へよこしたのでしょう、そういう最高のアメリカの政策決定というものについては全く関連がないというふうに、もしかりにこのアジア情勢について佐藤総理が分析をなさっているとするならば、これは今後日中問題だけではなくて、アジアに臨むところの日本の立場、将来というものについて先見性がないといわざるを得ないと私は思うのです。そういう意味において、もしかりにそういう連絡また脈絡というものについて佐藤総理はとても推察できないというならば、じゃ結果的にどうなったかということをお考えいただけばよくわかるではないですか。ニクソン訪中が事実上決定して、しかも佐藤総理は、すでに一国の元首が未承認国へ行くということは承認ということを前提にしたものであろうというふうにまでおっしゃっている、そういうニクソン訪中が決定した、その限りにおいては、これはまたあとでもっと詳しく聞きたいと思いますが、アジアにおけるところの緊張は緩和されるであろうという御認識を持っておられる。ところが、片方では日本はアジアにおけるところの防衛というものを、アメリカとの間に明らかに話し合いが続けられているではありませんか。しかも、四次防以上の軍備を増強しなければならぬ、いわゆる日本の自衛力はもっと増強されねばならぬということを何べんもレアードさんは日本に対して念を押して、政府はそれをうべなっているではないですか。そういうことから考えると、私が申し上げているように、アメリカはアジアから一応いわゆる中国と対決するという正面から身を引いて、そのかわりに日本が中国と対決するというような形に——この間に何らかの形でいわゆる佐藤総理の大英断があるならば別ではありますけれども、そのままでいくならば、必ず日本が中国と正面から対決しなければならないような情勢はつくられつつあるという認識は、私は決して間違っていないと思うのですが、いかがでしょう。まずそれを聞いておきましょう。
  119. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は重ねて申し上げますが、レアード国防長官が訪日するということは前内閣というか、中曽根前長官との約束でございまして、それでその約束を果たされただけであります。したがって、これと訪中問題とは直接の関係はない、これについては重ねて申し上げておきます。これは中曽根長官との約束、それを国防長官レアードさんが果たしたということでございますから、これはそれとしてお聞き取りをいただきたいと思います。  それから、ただいま日中の関係日本が矢面に立つんだ、まつ正面からさような仰せでございますが、私どもは、いずれの場合におきましても仮想敵国なぞを持つはずはございません。日本の憲法を忠実に私は守る考えでございますから、そういう事柄を日本国内で言われることが、私はまことに残念です。外国で日本の実情を十分知らない者がとやかく批判することは別として、国内の、われわれの国会の同志が、日本が何か軍国主義化するような方向に走っている、こういう観察、これについては私もこれは黙って聞いているわけにはいきません。したがって、そのことはさようなことはない、はっきり申し上げておきます。
  120. 正木良明

    正木委員 これは、私は総理とは全く逆の見解を持っておるのです。こういう問題は国内でこそ十分に論議すべきである、国外で自分の国を悪く言うような形での論議はいかぬ、私どもはそういう信念で訪中してまいりました。したがいまして、共同声明をごらんいただけばわかると思いますが、そういう意味では、佐藤政府を名ざしにして非難したりしたことはありません。私は佐藤総理が退陣すべきであるという考え方を持っておりますが、外国へ行ってまで悪口を言いたくなかったわけであります。しかし、日本の将来に関することをこの国内で論議しないでどこで論議するのですか。それを考えないで、あなたはどういう意味でそれを逆襲なさったのかよくわかりませんが、佐藤総理ほど賢明な方であるならばそのことはよくわかっていただけると思いますが、私どもはそういう信念で訪中もしてまいりました。同時にまた、それであるがゆえに、私どもは、今後日本が平和であるために、またアジアの平和のために大きな力を尽くしていくためには、どうしてもこういう問題については国内で十分に論議しなければならない、こういうふうに思ったから私はあなたに聞いているのであって、こういう問題を聞かれては困る、こういうことを言われると私は黙っておれないというようなことであるならば、これからの議論なんてできないじゃないですか。これははっきりしてもらいましょう。
  121. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は論議をやめなさいと言っているわけじゃないのです。真正面から日中対立の方向日本が役割りを買ったじゃないか、かように言われることを私は、さようなことはない、それははっきり申している。幾らでも日本の防衛についての論議はなさるがよろしい。私は、進んでやられる、またそれがお互いのつとめじゃないかと思います。つとめじゃないかと思いますが、ただいま言われるように、アメリカにかわって日本が中国との関係で真正面に立つのじゃないか、かように言われることは、さようなことは全然ございませんから、その点では私何か逆ではないか、何か思い違いをしていらっしゃるのじゃないか、こういう私の発言でございます。幾ら御発言なさっても、議論をやめなさいと言ったことはございません。はっきり申し上げておきます。
  122. 正木良明

    正木委員 アメリカの極東政策が中国封じ込め政策であったということは常識です。これはアリューシャンからベトナムに至る二国間条約ないしは多国間条約において、完全に封じ込めをしておったということは明らかなことであります。その一翼に、完全に日米安保体制等において日本は組み込まれておるということは明らかなことです。これは全部アメリカのリードのもとに行なわれてきたのです。そのアメリカが、いわゆる正面から姿を消そうとしているんじゃないですか。ニクソン・ドクトリンというものはそういう形のものじゃないですか。同時にまた、今度のニクソン訪中というもので中華人民共和国政府を承認するという前提のもとに訪中するという佐藤総理のことばをかり、同時にまた、それによって世界の、アジアの緊張が緩和されるということであるならば、そういうことは当然考えられるわけじゃないですか。そのときに、片方では軍事力の増強ないしは経済援助等、日本——あなたは肩がわりということばはおきらいのようでありますが、一番わかりやすいことばとして肩がわりをさせられているということは、これはもう事実であって、大体評価も一致しているところであると私は思いますが、そうなると前面に出ておったアメリカが引っ込めば、そのうしろにいるものは、前にはもうなくなるのだから正面に立たざるを得ないということになるじゃないですか。私はそのことを申し上げているのです。  そこで、佐藤総理がおっしゃっておるニクソン訪中によってアジアの緊張が緩和されるとおっしゃいましたが、あなたのお考えは、どういう形で緩和されるというふうにお考えになってこのことをおっしゃったのですか。
  123. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま問題は、まず一番先に考えられるのはベトナム問題です。ベトナム問題については、おそらく両国の間で話し合いが行なわれるだろう。幸いにしてパリ会談も新たな段階にいま来ているようでございます。これをもし話し合によって解決すれば、これはたいへんな効果じゃないかと思います。あるいはまた、中国承認というようなことにつながり、同時に台湾にある国府との間の関係の調整ができるならば、これまたしあわせじゃないか。私は、それらの一、二の事例にとってたいへんしあわせじゃないか、かように考えておるのです。そのことは、おそらく正木君も御同感じゃないかと思っているのです。
  124. 正木良明

    正木委員 ですから、そこでそういう緊張緩和が行なわれようとしておるという見通しのもとにある現在において、佐藤総理日本と中国との間の問題について積極的ではない。しかも片方では、いわゆるニクソン・ドクトリンに基づくところの軍事力や経済力の肩がわりという問題をアメリカから押しつけられておるということについて、やはり冷厳な視点に立うてこの問題を分析してわが国の行くべき道というものをきめなければならないのではないでしょうかというこをと申し上げているわけです。
  125. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は日本総理でございます。アメリカの出先でもございません。私は、自主的な考え方から、やはり日米の関係はたいへん大事だ、かように考えております。したがって、これは自主的な立場でそのことを考え、また経済的援助も、諸外国に対する援助も、今日の国力をもってすればこれは当然の果たすべき日本の責務だ、かように考えております。したがいまして、発展途上国に対する援助は私はやるべきだ、かように思っております。アメリカからしいられたとかアメリカの要望によってとか、かようには私は考えておりません。自主的でございます。
  126. 正木良明

    正木委員 アメリカから押しつけられたものではないが、しかし、日本の軍事力の増強政策はおとりになっているということですね。
  127. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本の軍事力の増強、かように言われますが、日本の軍事力という、いまの自衛力というか、それはございますよ。自衛力はもっと近代的なものにしなければならないという、それはございます。しかし、いわゆる軍事力だとかあるいは他国に脅威を与えるようなものだ、かように私は考えておりません。いまのままで自衛力は十分だ。後にもあるいは出てくるかと思いますけれども、私は、いまの日本の安全のためには、アジアの安全も大事ですが、同時に、みずからがみずからの力でこの国を守る、その足らないところを日米安全保障条約で補う、その基本的態度は今日も変わりはございません。おそらくこれは後ほど出てくるんじゃないかと思いますから、私は申し上げておきます。
  128. 正木良明

    正木委員 他国に脅威を与えない、自衛力である。それは自衛力の中身は実際は軍事力なのであって、私が指摘しておる第四防なんというのは、これはもう明らかに軍事力であって、これを経済力だとか政治力だというふうに判断はできません。そういうふうに、いわゆる軍事力増強というものは自衛力という名前のもとに増強されているんです。あなたは、これは他国に対する脅威ではないというふうに言っているけれども、いつも戦争というのは自衛という名目で行なわれたと同じように、日本の国が、幾らこれは脅威にならぬ、脅威にならぬと言ったって、受けるほうが脅威だと思っているなら、これはもう明らかに脅威なんです。したがって、そういう点については、もうこれは中国だけではなくて、東南アジア諸国においても、やはり日本の軍事力の増強というものについては脅威を感じているということはもう事実なんですから、そういう意味においてはそういう強弁をなさらないほうが私はいいのではないかと思います。  そうして同時に、いま日米関係の協調ということを非常に強調なさいました。そこで、これは去年ですか、国連へおいでになったときに、ニクソン大統領とお会いになっているときに、中国問題ではこういう発表をなさっておりますね。「両首脳は中国問題について簡単な意見交換を行なった。両首脳は、日米両国が中国問題について十分にその政策を調整して行く必要があることを認め、将来の発展について緊密な連絡と協議を続けるべきであることに合意した。」去年の十月、佐藤総理はニクソン大統領とお会いになったときに、日中問題について完全に今後とも調整をしていくのだということを合意してこられた。ところが、今度、それとそ青天のへきれきのごとく、日本の頭越しに訪中が決定いたしました。こういう点について、先ほどの御答弁では、内心非常に不満足であるというような意味の答えをなさっているようでありますが、事実、内心御不満であったでありましょう。そういうふうにやられちゃったわけですからね。これは、佐藤総理、一九五七年、ジョンソン大統領とお会いになったときもそういうことがございましたね。あのときも、日米共同声明の中で、ジョンソン大統領が、あの当時ベトナムの北爆をやっておりましたが、イギリスをはじめ諸国はベトナムの北爆というものについて非常に批判的でありました。そのときに、必要やむを得ないという前提はあったかもわかりませんが、佐藤総理はそれを支持なさいましたね。それが共同声明に北爆支持が盛り込まれました。そのあと、何日もたたないうちに、ジョンソン大統領は、次の大統領選に出ないということを条件にして、そうしてこの北爆の縮小ないしは停止ということを発表いたしました。両国の首脳が会見をして、会談をして、共同声明にまで盛り込まれたこのような重要な問題を、私は、舌の根もかわかないうちにと言いたいのでありますが、すぐさま政策変更が大きくなされた。こういうことでは一ぱい食わされているわけです。何か非常にことばが悪くて申しわけありませんが……。  それと、それよりもなおひどいのは、いわゆる対米協調を強調なさっておる総理の立場から言えば、今度の場合であろうと私は思うのです。今度のニクソンの訪中決定の場合であろうと私は思うのですが、そういう点について、私は、もちろん、いろいろ従来のことを調べてまいりますと、アメリカもよくないと思いますけれども日本の側の日中問題についてはきわめて不熱心であったということが問題じゃないかと思うのです。例のサイミントン委員会で、こういう記録が出ております。アメリカのポール議員が「佐藤総理は、自由民主党の多くの党員をはじめ他の日本人よりも中国との関係改善に熱心ではない」ではないかという質問に対して、佐藤総理を知るアメリカ人としてはジョンソン次官というのは相当な方であろうと私は思うのですが、この人が率直にこう言っていますね。「そうだ。それは全くそのとおりであるといえる。」「現在の日本政府の指導者は中共との関係樹立のためにもつと多くの努力を費やすまでのことはないとの感触である」こういうふうに証言しております。したがいまして、アメリカではおそらく、佐藤総理は日中国交の改善調整という問題についてはきわめて不熱心だ。したがって、これは向こうに相談したってブレーキをかけられるだけだから相談せずにやっちゃえというのでやったのではないかというようにも私は考えられるのですが、そういう点御感想どうですか。
  129. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま感想はどうかといって尋ねられたのですが、とにかく人、人によってそれぞれの感じを持つものだな、これが私の偽らない感じです。いろいろ解釈もあるものだな、かように思います。
  130. 正木良明

    正木委員 そこで、やはりサイミントン委員会で、公式な席上において公式な発言としてジョンソン次官がこのようにおっしゃったのですからね。これはやはり不熱心であるということは金箔つきだと私は思うのですが、そこで、今後日中の国交回復という問題は、先ほどからも申し上げましたように、非常にアジアの緊張緩和のためには必要なことであると私は確信をいたしておるわけでありますが、おそらく佐藤総理もそうであると私は思うのですがね。そこで具体的にいろいろ手をお打ちになろうとなさっておるようにも考えられます。  そこで、これは政府の代表である佐藤総理に聞くのはちょっとおかしいかもわかりませんが、これは自民党総裁としてお答えいただきたいのですが、けさのある新聞によりますと、野田訪中団について、中国に訪中の意向を伝えたということが報道されておりますが、この点どうでしょうか、事実なんでしょうか。
  131. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も野田訪中団につきましてはいろいろ相談をしております。おそらくそういうような手続をとった、かように思います。
  132. 正木良明

    正木委員 これは今度初めてですか。
  133. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 初めてのようです。
  134. 正木良明

    正木委員 いままでわが党からも訪中団というようなことをしばしば選挙中にもおっしゃっておりまして、だいぶこれで中国問題の前向き姿勢をお示しになったようでございますが、いままで伝えなかった理由は何でしょうか。
  135. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも適当な方法がなかった、かように思っております。
  136. 正木良明

    正木委員 それで今度お伝えになったのは、ただ訪中したいという御意向だけでしょうか。
  137. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私も中身は詳細は知りません。
  138. 正木良明

    正木委員 おそらく自民党のことであって、私は総理大臣だから知らないと言うのでしょう。それならそれでよろしい。  そこで、これは大使級会談というのか、政府の問題ですが、大使級会談の呼びかけというのをしばしば、特に選挙のときには非常に大幅に国民に訴えられておるようでありますが、これは具体的にどういう経過をたどっているのでしょうか。
  139. 木村俊夫

    木村国務大臣 政府はしばしば大使級接触をやりたいという希望を申し述べておりますが、それに対する相手の反応はまだございません。
  140. 正木良明

    正木委員 これはいわゆる中華人民共和国に対してその申し入れをなさっておるという意味ですか。
  141. 木村俊夫

    木村国務大臣 まだ両国との外交関係がございませんので、しかるべきルートを通じてその接触を申し入れております。
  142. 正木良明

    正木委員 いわゆる第三国を通じるとかなんとかそういう方法で大使級会談の呼びかけをなさっておる、申し入れをなさっておるということでしょうか。
  143. 木村俊夫

    木村国務大臣 考えられるあらゆるルートを通じて接触を申し入れております。
  144. 正木良明

    正木委員 ここでもう一度外務大臣代理にお聞きしたいのですが、その反応はどうですか。
  145. 木村俊夫

    木村国務大臣 これまでのところ反応はございません。
  146. 正木良明

    正木委員 そこで私は、野田訪中団が訪中をなさるということに不賛成でも何でもないのです。私は、積極的に応援できるものなら応援したいと思います。同時に、大使級会談等を積み上げて日中国交回復のたとえ一歩でも半歩でも前進できる方法があるとするならば、私たちでお手伝いできることがあれば何でもお手伝いしたいと思いますが、しかし総理、ただ訪中したいというだけじゃだめなのであって、ここにはやはり原則があり、その原則が幾つかありますが、この原則というものをはっきり踏まえるかどうかということが一つの大きな問題点であるわけです。そういう意味においては、原則をはっきり踏まえた訪中の申し入れをなさっているのかどうか、そういう点、野田訪中団でお知りになる限りのこと、ないしは外務大臣代理からは大使級会談の申し入れについて御存じである限りのことについて、原則をどういうふうに踏まえて向こうに、中国に対して、ないしは第三者を介して申し入れをなさっておるのか、お聞きしたいと思います。
  147. 木村俊夫

    木村国務大臣 とにかく接触をして話し合うことが前提でございますので、原則等については先方にまだ提示しておる段階でございません。
  148. 正木良明

    正木委員 じゃ、ただ行きたいというだけですな。
  149. 木村俊夫

    木村国務大臣 単に訪問したいということではなしに、日中国交の正常化について話し合いに入りたい、こういう接触でございます。
  150. 正木良明

    正木委員 そこで私は総理にも申し上げたいわけでありますが、中華人民共和国政府との間に横たわっておる障害になるべき問題は幾つかあります。  実は私どもが訪中をいたしまして、すでに共同声明をごらんいただいておると思いますが、あの中で五つの主張がございまして、それを中国側は全面的に支持をいたしました。同時に、この共同声明に忠実に申し上げてみますと、こういうふうに言っているのです。「もし日本政府が上記の主張を受入れ、しかもそのために実際の措置をとるならば、中日両国の戦争状態を終結し、」——これは中国側の発言ですから中国の中が先にきています。「中日国交を回復し、平和条約を結ぶことができると認め、さらにその後において、情況の発展に応じて、平和共存の五原則(主権と領土保全の相互尊重、相互不可侵、相互内政不干渉、平等互恵、平和共存)の基礎に立って、中日相互を不可侵条約を結ぶ可能性があることを認めた。」実はこれは公明党の五つの項目によるところの主張を向こうが全面的に受け入れたというのと同時に、これはこの共同声明を通じて日本政府に対する呼びかけでもあると私は思うわけであります。  この中には佐藤総理としてはがえんじがたい問題もいろいろ含まれているかもわかりません。しかし、中国はこの五つの項目を原則といたしております。したがいまして、このあと原則を適用するという問題についてはきわめて柔軟な態度が期待できると私は思いますが、やはりこの原則というものについてははっきりするということが非常に重要な問題であろうと私は思うのです。  私どもが帰りましていろいろな方々といろいろの場所で話し合いをいたしました。そのときにやはり外交専門の方々とお話しいたしましたときに、こういうことを言っておりました。私は外交はしろうとでございますので、そんな詳しいことはわかりませんけれども、外交というものは一種の交渉でございますから、なかなか自分のほうの手札を見せないというのが通例である、ところが中国側は明らかに日中国交回復のためにはずらりと手札を並べた、これは大きな問題であって、このようにさえするならば日中国交回復もできるし、平和条約を結ぶこともできるし、やがては日中相互不可侵条約さえ結ぶことができるというようなことを、政府に対してこのような措置をとるならばという形で言ったということは、明らかに手のうちを見せたことだ、この点については非常に重要な問題が含まれておるのだというふうな論評を聞きまして、なるほどそうかというふうに感じたわけでございますが、こういう中で、私どもはこれは当然のことであると思いますが、佐藤総理の立場としては中にはこれに賛同しがたいものもあるかもわかりません。  そこで、基本的にやはり日中の国交回復という場合にはこういう原則というものが必要でありまして、ごらんいただければよくわかると思いますが、この五つの項目はすべて台湾に関連したものであります。したがいましてもっと煮詰めて考えますと、日中国交回復のために最も必要な原則とは何かといえば、台湾に対する考え方、台湾の処理という問題についてやはり前向きの政府の考え方というものが出なければ、糸口さえも見つからないのではないかというふうに私は考えるわけでございます。したがいまして、この台湾という問題についてしばしば先日来から佐藤総理発言がございますが、全くこれについての前向きの姿勢が見られないように私は考えるわけでございますが、この点についてあらためて佐藤総理のほんとうに率直な御意見というものを聞いてみたいと思うわけであります。
  151. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 台湾についてあるいは国民政府について、これはもう本会議でも昨日も一昨日も衆参両院で申し上げたとおりでございます。私は、何と申しましても日華平和条約のあること、しかもそれが国会の承認を経てあること、これを簡単に無視はできない。これが現状でありますし、またわれわれはサンフランシスコ条約でも、さらにまた日華平和条約でも、台湾並びに澎湖諸島に対しましては権利、権原一切を放棄しておりますから、そういう状態のもとでいまとやかく申し上げる筋のものではない、かように私は思っております。問題はどこまでも中国内部の問題、中国自身でおきめをいただく問題ではないかと、かように思っておりますので、それにかくあるべしとかどうしろとか、かような意見を私どもは申し上げるべきものではない。これは放棄で事柄は済んでいる、かように私は思っております。
  152. 正木良明

    正木委員 佐藤総理一つの中国論に立つんだということを盛んにおっしゃる。それで、そのあとは台湾と中華人民共和国政府との話し合いによってやってもらいたい。これをわれわれは内政問題と称しているのだというのですね。これは決して私は一つの中国に立ったものではないと思うのです。ほんとうの意味における一つの中国に立ったものではないと私は思うのです。あなたの一つの中国というのは、中華民国を全中国を代表する唯一の正統政府と認めておるという立場です。この台湾を、いわゆる中華民国を唯一の正統政府、しかも全中国を代表する正統政府だというふうな考え方のもとで、幾ら内政問題の何のというふうにあなた方がおっしゃいましても、これは解決のできる問題ではない、私はこのように思うのです。そういう考え方の中に、佐藤総理——どもは台湾の問題は、これは少なくとも日華条約というのはもう虚構にすぎぬのだ。実際の支配するところの国土の大きさ、人口の問題また政権成立の合法性また中国人民の支持ないしはこれを承認する世界の国際的に有力な国々、こういうものの承認の数、こういうものからいったって、これは明らかに台湾は虚構である、日台条約は虚構であるという立場に立っておるわけでありますが、そういう虚構の上に立った日華平和条約、しかもこれはアメリカのダレスのどうかつによって結ばれた日華平和条約、こういうものを基本にして、幾らあなたが、一つの中国論に立っているのです、内政問題として向こう側で話してください、こういうことを言っても、論理の発展また日中国交回復というものの発展というものはあり得ないつもしかりに佐藤総理の言われるように、双方とも相互否定的に一つの中国論を、いわゆる台湾も中華人民共和国政府も出しているのだから、一つの中国論に立ちましょう。そして、内政問題ですというならば、どちらとも条約を結んでいないならば、そういう選択というものもあり得るかもわかりませんが、中華民国というものを正統政府と認めたという形での一つの中国論で、内政問題という考え方、こういう問題は全くいま日本が置かれている現状において議論にならない問題である、こういうふうに私は考えるのですが、その点どうでしょうか。
  153. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、いわゆる一つの中国論、これはわれわれが考える、相手にしておる二つの政権北京にある中華人民共和国も、また台湾にある国民政府も、それは正統性をみずから主張し、そして中国は一つだと言っている。その状態において、私どもはそれを否定する何もない。一つの中国だ、かように思います。ところが政権は二つあるのだ、これは現実ではないでしょうか。もちろんその大きさからいえば、これはもう比べものにならない程度だ。しかし、私は北京政府が台湾を支配しているとは考えておりませんし、ましてや台湾が中国大陸を支配している、こういうようなものはございません。だけれども、現実には二つある。しかも、日本の場合は、さきの戦争は台湾に残っている蒋政権、これと戦争をし、そのもとで打ち破られた、負けた、こういう状態でありますから、日本はサンフランシスコ条約の後に、この現存した、その当時あった中華民国と講和条約を結んだ。しかもこの中華民国自身が、国連といわれる世界の平和機構の創立者の一員でもある。国連というものは一つの支配機構である、平和機構であるそういうことを考えると、これを相手にして平和条約を結んだのは、これは当然のごとじゃないだろうか。私はかように考えます。しかし、われわれが選択をした国民政府は、その後二十年たちましても支配は台湾だけにとどまっておる、そういう厳粛なる事実は私どもも認めなければならないと思います。北京政府は北京政府それなりにやはり考えていくべきだろう、かように思っております。いままでの経過を見ると、あるいは政経分離といいながら、その他の事柄で一時非常に接近した場合もありますが、その後は政経分離が定着して、そうして経済的な交流はやっておる。さらにまた人的な交流もやっておる。どこにも戦争は継続しておるような形はございません。しかし、いまなお戦争は継続しているという、これはどうも虚構といえばこれも虚構だろうと思うし、八億二千万ドルの貿易額がある、行なわれておる。それは戦争状態のもとで、あろうとはどうも思えない。しかし、国交のないことは事実であります。国交のないことが直ちに戦争状態であるのかどうなのか、さように考えると、あるいは日本は東独とも戦争しておるのか、あるいは北鮮とも北ベトナムとも、そういうような事態にまで発展するように思います。だからそういう点は基本的なものの考え方でありますから、とにかく過去において私どもが中国人民に与えた戦争の惨禍などを考えれば、まず話し合って、そうしてこれらのいきさつについての十分な理解がほしいと思います。先ほども正木君からお話しのように、五つの基本的原則が認められるならば、平和条約を結ぶにもやぶさかでないと言われた。それは正木君御自身がお聞き取りになったおことばだろうと私は評価しながら、ただいま承ったのであります。したがって、その原則のもとに立って、そうしてそういうような話ができるのだとするなら、それらの条件問題はもっと話し合いのつく方法もあるのではないだろうか。そこらにお互いが心をむなしくして、それぞれにはそれぞれの立場があるのでありますから、それぞれの立場はそれぞれの立場なりにこれを認識して、お互いに内政には干渉しない、そういうところで仲よくできないものか、かように私は実は考えるのであります。  やや問題がこうかみ合わない点もございますけれども、私はただいまのお話で、正木君の率直な御表現で中国の考え方もある程度わかったような気がいたします。しかし同時に、私どもはわれわれのいままで貫いてきておる国際上の信義というものは何よりも大事なことでありますから、それでやはり今日もかたくなに申し上げており、むしろ、かたくなだ、かような批判すら実は受けていながらも、ただいまの国際的な信義を第一に押し出しておるというのが私どもの態度であります。しかしこれはおそらく両国の間で話し合いをすれば、同じ民族のことでございますからおそらく話し合いはうまくつくだろう、かように思いますし、またそういう事柄についてわれわれがとやかく言うべき筋のものではない、かように思っております。
  154. 正木良明

    正木委員 そこで、午前中の答弁の中で、日中間に政府間の折衝を行なう用意があるということを、所信表明を引いておっしゃいましたが、その中で、やはりその中には中華人民共和国政府の承認をも含むというふうにお答えになったというふうに私は聞き取ったわけでございますが、この点もう一度確認いたしておきます。
  155. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど楢崎君に答えたとおりであります。
  156. 正木良明

    正木委員 私の聞き間違えじゃありませんね。
  157. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 答えたとおりでありますから、聞き間違えはございません。
  158. 正木良明

    正木委員 そうなりますと、総理のおっしゃっている一つの中国論というものが、もうくずれてきているわけですよね。いま、中華民国を一つの中国という形で、一つの中国論が政府では成り立っているというふうにおっしゃる。ところが、政府間折衝というものも非常に期待をなさっておる。そのときには、日本政府が中華人民共和国政府との折衝ということになると、これはもう承認が前提となるということは常識的に考えられるわけで、そのときにはあくまでも一つの中国に立つということになると、中華人民共和国政府を承認するということに、帰結としてはならざるを得ない。もしそうでないならば、一つの中国一つの台湾方式か、もしくは二つの中国論という形にならざるを得ない、こういうふうに考えるわけでありますが、議論を発展させるという意味において、その点をお答えいただきたいと思います。
  159. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は基本的に、中華人民共和国の政府国民政府も、いずれもが正統性を主張し、われこそは正統政府なりと言い、また中国は一つだ、かように言っておるわけです。私は、そのとおりを承認すべきだ、かように考えております。したがいまして、両者、その二つが並び立たずというのは、これは当然ですから、そういう事柄は、これは中国自身の問題じゃないか、私どもがとやかく言う問題ではないんだ、こういうことで割り切っておるつもりでございます。
  160. 正木良明

    正木委員 日本政府の代表が、これは佐藤総理が行かれたら一番いいと思いますが、日本政府の代表が中華人民共和国政府を訪問して、そしていわゆる政府間の折衝を行なわれる。そのときに、原則がきまっていなければ私は訪中できないと思うのですが、そのことは別の問題として、かりに訪中できたとして、そうすると佐藤総理は、中華人民共和国政府へ行かれまして、あなたのいわゆる大陸に中華人民共和国政府という政府があるのも、これは冷厳なる事実です。台湾に国民政府という政権があるのも冷厳なる事実です。したがって私ども——どもというのは佐藤総理のことですよ——台湾に政権があるということを認めるならば中華人民共和国政府を承認しましょう、というような交渉をなさるわけですか。
  161. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 なかなか表現はむずかしいことですが、そういうようなことではなくて、とにかく両者とも正統性を主張し、両者とも中国は一つなり、かように言っているんですから、その立場にそのまま立たないと、台湾があるのですから台湾も云々では、それはなかなか了解できないでしょうね。また、北京があるのですから台湾はもう無視だ、こういうわけにもいかぬだろう、かように思います。だから私は、最初申しましたように、両者とも正統性を主張し単一を主張している。その事柄はわれわれが、いずれが正しいとか間違っているとか、こういうことを言う力がないんだ、そういう権限はないんだ、こういうことを申し上げておる。
  162. 正木良明

    正木委員 そうすると、さっきからおっしゃっている、承認ということが前提となって中華人民共和国へ訪中なさるということは、ちょっとあぶなくなってくると思うのですが、その点どうなんでしょう。
  163. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは私まだ、この考え方が向こうへ伝わってどういうような反応になりますか、許してくれなければ行くわけにいきません。
  164. 正木良明

    正木委員 だからそれは別の問題です。
  165. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だから、向こうで出てこいと言えば私は出かける。君はそんなことを言っているのではだめだ、来ちゃだめだ、こう言えばまた別です。したがって、ただいまその話は、先ほど申し上げたとおり、行く限りにおいては、それはもう承認ということを前提にしないと、それはできるものじゃないということを申し上げておる。
  166. 正木良明

    正木委員 いまの場合、中華人民共和国政府に対して接触を持ちたい、話し合えるならば話し合いをしたい、その場合中華人民共和国政府を承認するという前向きの立場で訪中したい、台湾問題についてはそのときに話し合うが、一つの中国論に立つことは事実である、こういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
  167. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま正木君から観念的に押しつけられても、そのとおりはまだちょっと困るのですが、私の考え方は、ただいままだまだ流動的なものではあります。とにかくいま迎えてくれるということがまずわれわれで確認できれば、それから後にさらに明確にいたしたいと思います。  先ほどの五原則というもの、また公明党の訪中につきましても、おそらく事前にいろいろの折衝が行なわれたのだろうと思いますが、そういうことが行なわれてやはり行かれるようになった、かように私は理解するのですが、そういうような経験等をも考えながら、私どもの野田訪中団というものが出かける、さらにまたその次に私が出かける、そういうようなことになろうかと思います。したがいまして、ただいま言われるように、観念的にこれこれの前提でというわけにはいかない、かように御了承いただきたいと思います。
  168. 正木良明

    正木委員 一つの中国論に立つ、承認を前提として中華人民共和国政府を訪問したい、これは公明党の五つの主張の中の第一項目はほぼ満たされたものであると私は考えます。  そこで、非常に議論になっておりますのは、台湾の帰属の問題でございます。きのうの外務委員会でも相当問題が出たようでございますが、台湾帰属未定論というものが、私に言わせれば横行しておりまして、はなはだけしからぬ話であると私は思うのです。こういうことになりますと現実問題を離れて法律問題にすりかえ、戦争状態の話になると法律問題をすりかえて現実問題にお答えになる。これは非常にけしからぬことであると私は思うわけでありまして、これはもうとかく申し上げる必要もないと思いますが、台湾の帰属というものは明らかにチャイナに帰属するというのは、これは弔う世界の常識でございまして、これをあえて、台湾の帰属は未定であって、サンフランシスコ平和条約に調印をした四十八カ国、しいて言うならば、中華民国を入れるならば四十九カ国の話し合いによらなければ帰属がきまらぬなんというような、とんでもない非常識な問題を、しかも権威ある国会の中で議論しなければならないということは、私は恥ずかしくてしようがないわけなんですが、そういう点で、いまも非常に率直、前向きに総理がおっしゃいましたが、これはもう日本が放棄したんだからあとは知らないから、放棄をきめたサンフランシスコ平和条約調印国できめてくれなんということを言わずに、やはり何十年間日本が領有をして、そうして日本が放棄をしたのでありますから、条約の形からいっても、放棄を規定して帰属先を規定しないなんて、こんなとんでもない条約というものはあり得ることではないので、これはふしぎな条約なんですから、この際やはり放棄をした側としての日本政府が、これは中国へ放棄したのである、このことを、やはりカイロ宣言並びにポツダム宣言、降伏文書等の現実の問題からいっても明らかなことでございますので、いま率直におっしゃるわけにはまいりませんでしょうか。
  169. 木村俊夫

    木村国務大臣 サンフランシスコ条約で放棄したのでございますから、放棄した本人がその帰属をいまさら言うわけにはまいらないと思います。
  170. 正木良明

    正木委員 いまさら言うことはないといって、これは私はもう時間が惜しいので、長々と経過は申し上げられませんけれども、実際はこんなことは、朝鮮戦争が起こらなければもうはっきりしているのです。朝鮮戦争が起こったためにああいう問題が起こったので、まあこれをテレビを通じて国民皆さんがお聞きになっておるという形で、皆さん方には釈迦に説法かわかりませんが、一応経過を申し上げてみましょう。  カイロ宣言において、明らかに台湾は放棄されなければならぬということについては御存じですね。すなわち一九四三年十一月のカイロ宣言では、「日本国が清国人ヨリ」——「清国人」というのはチャイナのことです——「盗取シタル一切ノ地域ヲ中華民国二返還スル」、このときには、中華人民共和国政府がないから中華民国といっただけであって、これは中国へ返したという意味です。こういうことは国会の答弁でもおっしゃっているようです。このカイロ宣言を受けてポツダム宣言、いわゆる日本の降伏が決定したポツダム宣言では、「「カイロ」宣言ノ条項ハ履行セラルベク」というふうに明らかに出ております。したがいまして、カイロ宣言におけるところの台湾の放棄、中国へ返すということは、ポツダム宣言において明らかに日本は受諾をしたわけであります。しかもなお受諾した上に、一九四五年九月二日、東京湾ミズリー号上において署名された降伏文書では、「下名ハココニ「ポツダム」宣言ノ条項ヲ誠實ニ履行スル」ということを明らかにしております。これでもう台湾、澎湖島という、日本が放棄したこの旧領土は中国に返還されたということは明確であります。  当時アメリカは、トルーマン大統領が一九五〇年一月五日の公式声明で、カイロ宣言、ポツダム宣言並びに日本の降伏文書をあげて、「これら宣言によって台湾は中国に引き渡されたものであり、過去いずれの国もこの島に対して中国の権能が行使されることを認めてきたのである」として、「アメリカが台湾問題に介入する意図がない」ということを明らかにいたしております。このトルーマン大統領の声明を受けて、アチソン、当時のアメリカの国務長官は、新聞記者会見においてこのように言っています。「戦争のさなかにアメリカの大統領とイギリスの首相及び中国の総統は、カイロにおいて台湾は中国に返還すべき点について合意した。日本の降伏後間もなく、台湾島は宣言及び降伏条件に従がい中国人に引き渡された。中国人は四年間台湾を統治してきたが、アメリカも他のいかなる同盟国も中国人の権原や占領について争わなかった。台湾が中国の一州とされたときもそれについて何人も法律家として疑いを起こさなかった。」日本語に訳すと法律家になりますが、これは三百代言という意味です。何も言わなかったということです。こういうふうに、明らかに台湾、澎湖島というものは中国に帰属するということがわかっていながら、あの朝鮮戦争が起こってから、急遽台湾に第七艦隊を派遣するというような問題が起こりまして——その前に一九四九年に中華人民共和国政府が成立をいたします。その時点で蒋介石は台湾へ逃げて、私は政権とは認められませんけれども総理の話によると、向こうで中華民国、国民政府が存続しておるということになるわけなんです。そのあと、あの朝鮮戦争によって第七艦隊が向こうへ派遣をされるという形で、アメリカの世論が変わってきたのですね。  経過から申しますと、そういう形で、サンフランシスコ平和会議に際して、中国の代表を中華民国にすべきか、中華人民共和国政府にすべきかということが、イギリスとアメリカの間に争われて、そして結局は、中国をオミットしよう、中国は日本と単独で平和条約を結ぶべしというので平和会議に招請されなかった。そういう経過があって、そのときに、いわゆるサンフランシスコ平和会議二つの中国論でもめて、どこへ帰属させようかということについて決定することができなかった。それを受けて一九五二年四月二十八日調印の日華平和条約においてもやはり帰属先はきめられなかった。しかし、もともとの発生から考えると、第二次世界大戦の結果、日本が、満州だとか朝鮮だとか樺太だとか、また台湾、澎湖島というものを放棄したのですから、もともとの発生は第二次世界大戦の敗戦です。その敗戦はカイロ宣言並びにポツダム宣言であり、降伏文書だということになれば、これはだれが考えても、世界の常識からいっても、台湾は中国に帰属されるものである、こういうふうに考えざるを得ないと私は思うのですが、それを先日からの答弁を聞いておりますと、連合国できめてくれなんて、そんないいかげんなことをおっしゃっているようでございますが、その点どうなんでしょう。率直に日本側として、これは中国へお返ししたのですと、こういうふうにおっしゃったほうがはっきりするのじゃないでしょうか、この際。しかもアメリカは、朝鮮戦争で政策転換を大きくいたしまして、中国封じ込め政策に踏み切って、台湾をできるだけ切り離すという方向へ行きましたが、今度のニクソン訪中によってまた大転換が行なわれた。だからそういうアメリカの政策それ自体も変わってくるでしょう。そういう点についてひとつはっきりしておいていただきたい。  もう一つ申し上げておきますが、アメリカと台湾との間に結ばれたいわゆる米台防衛条約におきましては、明らかに台湾の領土ということを言っておりますよ。そういう点、アメリカははっきり台湾の領土を認めておるのです。それから考えると、それを帰属未定だなんと言ったら、中華民国は領土のない国だということじゃないですか。
  171. 木村俊夫

    木村国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、日本としてはサンフランシスコ条約で放棄しておりますから、さてそのあとどういう国際的処理がなされたか。もちろんなされておりません。しかしながら、その後における歴史的ないろいろな変遷、これがございまして、いま御指摘のような国際的情勢のもとにおいて、先ほど御指摘のように、台湾はチャイナのために放棄されたというようなヤルタ協定からの流れをくんで、今後一つの中国がどういうふうに実現されるかということは、これは両当事者の間の話し合いがおそらく国際的世論のもとに裏づけられるであろう、こういうような意図でございます。
  172. 正木良明

    正木委員 両当事者というのはどういうことですか。中国とアメリカという意味ですか。
  173. 木村俊夫

    木村国務大臣 これは申すまでもなく、中華人民共和国と中華民国政府の間の話し合いできまるべきものだと思います。
  174. 正木良明

    正木委員 中華人民共和国政府と中華民国政府との間にきめられるということは、どちらが正統政府であるという議論をたな上げにするならば、中国の領土であるということをお認めになったということですね。
  175. 木村俊夫

    木村国務大臣 私はそこまでは申しておりません。
  176. 正木良明

    正木委員 だって、あなたが言ったことは、中華人民共和国と——だから私は、両国の間において決定されるべきであるというのはアメリカと中国の間かと聞いたら、そうじゃなくて、中華人民共和国と中華民国との間で話し合われるのだというふうに、あなたはいま言ったじゃないですか。それなら、どっちにしたって中国の領土じゃないですか。
  177. 木村俊夫

    木村国務大臣 これは両側二つ政府があることは現実でございますから、望むらくは一つの中国をどういうふうに実現するか、二つ政府間で話し合わるべきが当然でございますが、しかしそういう結果を、国際的処理という形でどういうふうにこれをまた裏づけしますか。私は、国際的処理と申しましても、再びサンフランシスコ条約に基づくそういう会議を招集してという意味でなしに、大きく言って国際情勢の国際世論の中でそういうものは現実的に今後処理されるであろう、こういうような考えを申したわけでございます。
  178. 正木良明

    正木委員 それはまた、あいまいな話になってしまいましたね。それじゃいけません。  それじゃ重ねて聞きますが、日華平和条約の交換公文において、現に支配する地域と将来支配する地域に分けていますね。そして先ほどの総理答弁を聞いておりますと、現に支配している地域は台湾で、二十年間ずっと台湾だけだ。大陸は及んでおりません。したがって、中華民国というのが現に支配しておる地域は台湾、澎湖島だけです。そう考えていいですね。そうすると、その台湾、澎湖島が帰属未定であるということになるならば、中華民国政府というものは、現に支配する地域に領土権を持っていないということになりますが、それだよろしいのでしょうか。
  179. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だいぶ話がこじれましたから、私も立ち上がって申し上げます。  御承知のように、日本は台湾、澎湖諸島、これを放棄した。権利、権原、すべてのものを放棄した。そして放棄した後に、これを占拠しているのは国民政府ですね。しかもその国民政府は中国は一つなりと言っている。かように先ほど来申しておるのですから、これは現実から申しましても、どこへ放棄したとかなんとかいう議論よりも、現実には中国が支配しておること、これははっきりしているのじゃないですか。その辺でただいまの議論をあまり進めないほうがいいのじゃないだろうか、かように思って私立ち上がったのです。それで、現実に支配しているのは中国。その中国が、気に食う気に食わないは別ですよ、正木君がこれを了承されないかもわからないが、しかし、われわれが相手にしたいわゆる中国政府が、ここに国府がいる、こういうことだと思います。  それで、先ほど歴史的な史実をずっとお述べになりましたが、サンフランシスコ条約の前に国連の決断があると思いますね。そうしてそのときの国連は一体どういう国々でできておるか。そのときにはまだ毛政権はなかったかと思いますが、蒋政権がそのときのメンバーである。国連の創設者である。そしてサンフランシスコ条約があって、このサンフランシスコ条約には、ただいま言われるように、いずれを呼ぶべきかということでずいぶん議論があった。そこで、両当事者ははずして、サンフランシスコでいわゆる多数講和が成立した。しかして、日本自身が放棄したその地域に対して、中華民国政府がこれを占拠しておる、こういう事実がいまの論争に終止符を打つのじゃないだろうか、かように思いますので、実は私立ち上がったような次第であります。
  180. 正木良明

    正木委員 おそらく現実の姿から見て、中華民国、中華人民共和国いずれも正統政府というのは、これはやったらきょう一日かかっても解決はつきませんので、私はそれを総括して、中国という形で、現に中国が支配しておるからこれは中国の領土であるということについては、当然推察がつくではありませんか、こういうふうに佐藤総理がおっしゃったと了解したいと思います。  そこでこの問題で、中華人民共和国政府を唯一の正統政府に認めるということがあれば、ばたばたっと片づいてしまいます、この第二項も。台湾の帰属未定論も、いま佐藤総理のおことばで破られました。したがって、ほぼ第二項というものについても御了解がいかれたようで、喜ばしいことでございます。  したがいまして、二つの中国論に立たない限り、一つの中国論に立つ場合、いわゆる承認行為、すなわち中華人民共和国政府との間に平和条約が結ばれるということになりますと、日台条約というものは当然効力を失います。無効になります。したがいまして、これの廃棄というものも当然考えられる。こういうふうに推論してまいりますと、第三項もほぼいけるのではないかというふうに考えます。どうですか。
  181. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私とあなたとの間ではたいへん話が了解に達しやすいようですが、どうもそこらはまだまだむずかしいのじゃないでしょうか。いままでの問題は、やはり過去の歴史等の場合に、関係国との条約がそのまま引き継がれるとかその他のことはうたわれるのですけれども、この場合においてはそういうことはないようですから、ただいまのようには簡単にいかないように思っております。
  182. 正木良明

    正木委員 そこで、時間もだいぶ迫ってまいりましたので、いよいよこれはもう先へ延ばすことのできないのが、この秋に開かれる国連総会におけるところの日本政府の態度でございますが、これについて、牛場駐米大使とロジャース国務長官との間に何か会談が行なわれて、合意が行なわれたとかなんとかというようなことが新聞に報道されているようであります。あまり前向きじゃなさそうなので、新聞もあまり大きな扱いをいたしておりませんが、この点についてむしろ総理から、どういうことであったのかということをまずお聞きしたいと思います。
  183. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま日米間でいろいろ話し合いはしておりますけれども、まだ結論が出ておらないというのが実情ではないかと思っております。したがいまして、いわゆる慎重に取り組んでおるというのが、やはりワシントンでも同様に慎重に取り組んでおる、かように言わざるを得ないか、かように思います。まだこの段階で結論が出た、こういう状況ではございません。
  184. 正木良明

    正木委員 そこで、アメリカはこの問題についても、もしかりに独自の行動をとるということがあると因りますので、あらかじめ日本政府としても腹をおきめにならなければならないだろうと思います。私は総理にこんな説教めいたことを言いたくはございませんが、ニクソン訪中決定というときに感じたことの中の一つに、外交というものはきびしいものだなということがわかりました。それは、協調姿勢をとり、同盟姿勢をとり、パートナーシップだということを幾ら強調しても、結局は、自分の国の利害に関係したものであるならば、そういうものを乗り越えた政策決定が行なわれるものである。日本もやはりこういう外交の問題については、みずから意思を決定するということがあたりまえということでなければならないのではないだろうか。もちろん、協調を破ったり協調を失ったりするということに積極的になる必要はありませんけれども、最終的には自分で自分の意思はきめなければならぬのではないかというふうに考えます。そういう冷厳なものであるというふうに考えてまいりますと、やはり国連におけるところの、今回のいわゆる中国の国連復帰という問題についての日本の態度というものは、あらかじめきめておかなければならないのではないか。まだだいぶ時間があるからなんということを言わずに、チャンスとしてはこの国会しかありません。次に召集されるところの国会においては沖繩問題が中心になるでありましょうし、国連総会が過ぎてからということになるかもわかりませんので、ここで総理の御存念のほどをお聞きしておきたいわけでございますが、まず具体的に中国の代表権問題で、わが国はやはり従来と同じように、形式はどうあろうとも事実上中華人民共和国政府の国連復帰を妨げる、はばむというような何らかの行動に出るのかどうか。いわゆる台湾を捨て切れないという立場でそういう行動に出ざるを得ないのかどうか、この点をまずお聞きしておきたいと思います。
  185. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの問題は、それこそ非常に緊急を要する重要課題でございます。緊急を要する重要課題であることは御承知のとおりであります。したがって、お尋ねになるほうはたいへん簡単にお尋ねでございますが、答えるほうといたしましては、どうもこれはなかなかむずかしい問題でありまして、また慎重かとおしかりを受けるかわかりませんが、ただいままでの御忠告は御忠告として十分承っておくつもりでございますが、事柄の性質上これこそ慎重にならざるを得ない、かように御了解いただきたい、かように思います。しかし私は、先ほど来から正木君のお話しになりました、また慎重で追い越されるぞというような御注意もございますから、そういうことのないように、友邦諸国との連携を緊密にして、そして最終案を決定したい、かように思っております。
  186. 正木良明

    正木委員 それで終わってしまいますと、私は質問した価値が全然ございませんで、聞いていらっしゃる国民皆さん方もさぞかし不満足だろうと私は思うのです。そこで、もっとこまかくお聞きしましょう。もしかりに中華人民共和国政府が代表権を得る、いわゆる国連に復帰する。台湾問題は別の問題として、それだけの問題なら賛成はできるわけですか。
  187. 木村俊夫

    木村国務大臣 中華人民共和国が国際社会に復帰することは歓迎する、こういうことはもう従来政府の申してきたところでございます。そういう意味におきまして、ある時期に中華人民共和国が国連に参加するということ、これを妨げる何の理由もないと、こう考えております。
  188. 正木良明

    正木委員 これはよけいなことかもわかりませんが、中国が国際社会へ復帰するって、復帰はしておるのですよ。私の聞いておるのは、国連に復帰するかどうかという問題で、国連に復帰してないから国際社会に復帰してないなんという論理を持ち込んでくると、西ドイツや東ドイツだって、あれはもう国連に入ってないから国際社会に復帰してないことになる。私が聞いておるのは、そんなことじゃなくて、国連に復帰するかどうかという問題です。  そこで、それを妨げる何ものもございませんというお答えでございますので、国連に中華人民共和国が復帰する——あなたは加盟としか言いませんが、私は復帰と言いますが、復帰するということについては妨害はしない、ただ困るのは国府追放という問題である、こういうふうに考えてよろしいわけですか。
  189. 木村俊夫

    木村国務大臣 私はあえて追放とまでは申しませんが、この国連の原加盟国であり、また忠実なメンバーであるところの中華民国政府が、この国連から外へ出るということについては、まだ国際世論はそこまで熟してはおりませんし、また、政府としてもそういうことには賛成しがたいという態度でございます。
  190. 正木良明

    正木委員 ということになりますと、現時点におけるところの日本政府の態度は、国連において二つの中国を認めるという以外に道はないと、こういうことでしょうか。
  191. 木村俊夫

    木村国務大臣 それが二つの中国を意味するものとは私どもは考えておりません。したがいまして、一つの中国の中の、客観的に申しまして北京に中華人民共和国政府あり、台湾に中華民国政府あり、これは客観的事実でございます。それを国連の中にどういうふうに迎え入れるかということは、その国連という国際社会における世論動向によってきまることでございます。それについての意見を申し上げただけでございます。
  192. 正木良明

    正木委員 そうすると、いわゆる国府を国連から除名する、ないしは追放するという決議案、従来は重要事項指定方式という形で行なわれたわけでございますが、アメリカがどうなるかということはまあこの際やめましょう。日本としては、それじゃ、国民府政が国連から追放される、除名されるというようなことを防ぐために、他の国はどうあろうとも、積極的にそういう意味におけるところの重要事項指定方式の提案国になるというおつもりはあるわけですか。
  193. 木村俊夫

    木村国務大臣 私が先ほど申し上げましたのは、国連の場における中国問題の取り扱いの基本を申し上げただけで、それがどういうような方式になりますか、今後当然日本の国益の立場、それから国際緊張の緩和という立場から、関係友好諸国とこれから連絡、協議をしていくということでございます。
  194. 正木良明

    正木委員 相談した結果、賛成が多ければそれにするし、反対が多ければ、その、あなたがいま発表はしないけれども頭の中で考えていることを捨てる、そういうことですか。
  195. 木村俊夫

    木村国務大臣 当然わが国の国益の問題でございますから、自主性を保ちながら、しかも国連という多数の場でございますから、これにたえ得るような決議案でなければならぬと思います。そういう意味におきまして、友好諸国と十分連絡していく、こういう意味を申し上げたわけであります。
  196. 正木良明

    正木委員 私が心配しますのはそのことなんです。日本政府が独自の立場において意思を決定するということは非常にけっこうなことであるし、そうでなければならぬと思いますが、かりに、先ほど申されたように中華人民共和国政府の国連復帰という問題については賛成であるが、国府が国連から除名され追放されるということについては反対である、そのことについては友好諸国とよく協議して何らかの方式を考えたい。ということは、国連から国府が追放されることを防ぐための何らかの方式について日本が積極的に動くということを意味すると私はとらざるを得ないわけでございますが、その点はどうでございますか。
  197. 木村俊夫

    木村国務大臣 国連の議席から中華民国政府がいわゆる追放の形で出ることについては賛成しがたいと、こういう立場であります。
  198. 正木良明

    正木委員 積極的な役割りを果たすかどうかということについてお答えください。
  199. 木村俊夫

    木村国務大臣 先ほど申しますとおり、これは多数の場における決議でございますから、そういうことについては今後友好諸国とともに連絡をしていく、こういうことを申し上げます。
  200. 正木良明

    正木委員 要するに、まだそのことについてはきまっていないということですな。みんなの前にはちょっと言えるような問題ではないということですな。ただきまっていることは、中華人民共和国政府が国連に参加することははばまぬ、国府が追放されるということについては反対する、その方式はまだ考えておらぬ、それは友好諸国とよく相談した上できめる。国府を追放することは反対だ、中華人民共和国政府を迎え入れることには賛成だということまでは自主的にきめられましたが、そのあとどうするかということは実に自主的ではないというふうに解釈してよろしいか。
  201. 木村俊夫

    木村国務大臣 これは国連の場できまることでございますから、国連の場できまったことは国際世論の動静をきめるものとして政府としてもそれに従う、こういうような……。
  202. 正木良明

    正木委員 私は、国連の場でどういう結果になるでしょうか、はたして国府が追放されるでしょうか、中華人民共和国政府が迎え入れられるでしょうか、そういう予想をあなたに聞いているのと違うのです。ぼくがいま聞いているのは、日本がこの秋の国連総会においてどんな態度をとるのか、その態度についてはこの二つの面について明らかになりました。しかし、それについて、独自の見解でそのまま進むことはけっこうです。私は必ずしも賛成でありませんが、独自で進むということについてはけっこうです。しかし、それを、日本の意思というものを——明らかに私はうしろ向きだと思うのです、あの国府を追放することについて反対するということには。それについて積極的に友好国に説得し回って国連からの国府追放を防ごうとする、こういう形をあなたは考えているのかどうかということなんです。予想を聞いているわけじゃありませんよ。それをやるかどうかということを聞いているのですよ。そういう重要な役割りを果たさないなら果たさないでいい、そう言ってください。
  203. 木村俊夫

    木村国務大臣 なかなか困難な問題でございますが、政府はそのような積極的な——国連の議席を維持するにおいて、従来の立場からやはり積極的な姿勢をとらざるを得ない、こう考えます。
  204. 正木良明

    正木委員 先ほど佐藤総理は、訪中について、いわゆる日中間の関係改善についてやや前向き、積極的な——相当と言ってもいいでしょう、相当、いままでの態度からいえば踏み出された。ところがこの秋に、そんな積極的に国府追放を反対する動きをするということは、これは逆行ですよ。明らかに国連の中に二つの中国論を持ち込むことになると私は思います。外務大臣代理は、それは二つの中国論ではありません、二つの政権があるんだから二つ入れればいいじゃないですか。そんな、事は簡単に考えているけれども二つの中国論になることは当然です。どの論評を読んだって、それは明らかな帰趨ですよ。こういうことで台湾も中華人民共和国も承知するはずはないですよ。それでいながらそういう非常に非常識な形でそういう二つの中国論を国連の中に持ち込んで、しかも、その二つの中国論を積極的に推進していこうという、そういう外務大臣代理の考え方というはきわめて私はおかしいと思うのです。これはあなたは代理のことであって、いま石を出している福田さんがどんなに考えているかわからぬ、だからそれ以上のことは言えませんというならばそれでけっこうですから。  総理、どうですか、そこまで外務大臣代理が答えているわけですから、総括してそういうことについて、国府を追放するということについても、日本の意思はそうであるけれども、そのことについて極積的な動きを国連の中ではいたしません、こういう前向きなものがないと、訪中どころの話じゃないと私は思いますがね。
  205. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 別に木村君と変わった考え方を申し上げるわけじゃございませんが、ただ表現のしかたでやや受け取られ方も違おうかと思います。これは、先ほど私が申しましたように、重大なる緊急課題だから慎重の上にも慎重だ、こういうことを申しました。この慎重だということは、友好諸国との考え方も十分打診して、そうして私どもの態度をきめるということであります。したがって、ただいま言われるように、わが国の立場で友好諸国の考え方を統一しようという、そういう積極的な意図があるわけじゃありません。そこらにも十分御理解をいただきたいと思います。  事柄の重要性のあることは私が何度も申しておるように、北京も大事ならば、台湾も大事だ。ことに台湾に対しては過去の経緯から申しまして、いきさつから申しまして、特に私どもは重要なる責務があるように思いますので、——道義的な責務ばかりではございません、さらに日華平和条約というそういう条約上の義務もありますから、そういう点でこれは慎重に考えざるを得ない。ましてや国連憲章についても忠実であり、創立当時の基礎的なメンバーでもある国府を国連から追放するということについて、私が、日本がこれは慎重であることは御理解をいただけるだろうと思います。私はそういう意味でありますが、日本が慎重だからといって、その国府追放には反対だからといって、すべての国にそのことを呼びかけるという、そうして国際世論をつくるとか、こういう働きまでするとは御理解なくてよろしいと思っております。私は十二分に友邦諸国の考え方を尋ねて、そうして日本は自主的に日本の行く道をきめる、こういうことであります。その重要性については、先ほど来木村外相代理からも説明しておりますように、これは否定のできないことであります。  私は重ねて申し上げますが、私どもは北京も大事だが国府も大事だ、かように言わざるを得ない。ましてや国府に対しましては、戦争をし、そのもとで敗れ、しかもたいへん迷惑をかけ、しかも平和条約はたいへん寛大なものであった。そういうことを考えると、日本は当然国府に対しての国際的な義務ばかりでなく道義的な責任も果たすべきだ、かように私は思いますので、そういう点を先ほど来申しておる。このことを御了承いただきたいと思います。
  206. 正木良明

    正木委員 国府追放については積極的な役割りを果たさないようにしたい、こういうふうに了解してよろしいですね。国府については非常にいままでの関係が深くて、なかなか追放には踏み切るというわけにはいかぬ。国府は国連における優等生であった。まあ、こういうことでしょう。しかし、これは非常に意地の悪い言い方で申しわけありませんけれども、優等生にならざるを得なかったというところもあるのです。いつボイコットされるかわからぬからよく言うことを聞いて、できるだけおとなしくしていようというふうに国府が考えたのかもわかりません。そういう考え方も私はできると思うのですが、しかし、中華人民共和国政府も国共合作の当時に、そのあと内戦になってしまいましたけれども、国連に代表を送っているわけでございまして、そういう意味では中国が国連復帰といっているのはこれは無理もない話でございますし、先ほど申されましたように、戦争をしたのは蒋介石と戦争をしたのであって、その日本が負けたにもかかわらず非常な寛大な措置をとってくれたことは恩に着なければいかぬ、こういう意味のことをおっしゃいましたが、確かに形式としてはそうであるかもわかりませんが、しかし、実際は蒋介石政権と戦争をしたのではなくて、私たちが考えをいたさなければならないのは、中国人民と戦争をしたのだということであります。したがいまして、大陸には八億になんなんとするような、もっと多いともいわれておりますが、中国人民がおりまして、そういう人たちとも戦争したのだ、被害を与えたのだという謙虚な気持ちがいまなければ、蒋介石とは戦争したけれども、毛沢東とは戦争しなかったのだから中国大陸には関係ないのだというような考え方は大きな誤りではないかというふうに私は考えますし、同時にまた、あだに報いるに徳をもってするという、蒋介石が言ったから恩に着なければならぬということが巷間よくいわれております。私はりっぱなことであると思いますが、しかし蒋介石軍、国民政府軍とだけ戦ったのではなくて、当時やはり八路軍とも戦っておるわけでありまして、その八路軍もやはり無傷でちゃんと帰してくれておるわけで、そういう意味においては中国人民、いわゆる蒋介石政権、毛沢東政権というふうに分けて考えるわけにいかない問題でもあるのではないか、このように私は考えておるわけでございます。  そういう意味からいって、いわゆる世界の趨勢からいい、アジアの平和という大きな観点からいっても、いま日本がきめなければならない進路というもの、こういうものはいま独自できめなければならぬ。友邦諸国といろいろ調整をし相談をしていく。友邦諸国の最大なものはおそらくアメリカでしょう。ですからアメリカともよく相談してということになるのではないかと思いますが、私の観測では、アメリカの国連に対するこの秋の考え方というのは相当大幅に変わるのではないか、そういうふうにも考えます。したがいまして、そういう意味においてどうかひとつ、総理においてもこの際積極的な役割りをしないというふうにおっしゃったのですから、少なくとも積極的な役割りだけでもやめてください。提案国になったり、共同提案国になることすらやめてもらいたい、このように私は考えるわけであります。  そこで、もう一つ中国問題で確かめておきたいことがございます。これは沖繩問題とも関連してまいりますが、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明の中で三つの生命線論をあなたはおっしゃっていらっしゃいます。一つは、中国に関連いたしましては台湾の問題であります。台湾の安全は日本の安全にとって非常に重要であるとおっしゃっております。朝鮮の問題については、韓国の安全は日本の安全にとって緊要である。ことばは使い分けていらっしゃいますが、非常に重要な問題としてこれを提示なさっております。これは竹入委員長質問の中にもございましたが、この点についてさらにはベトナムにおいて重要な役割りを果たしたいというふうにもおっしゃっております。私どもは少なくともこの三つ、しいて言うならばこの前二つ、これは明らかに生命線論というものを復活した考え方であるというふうに考えるのです。佐藤総理はアジアの安全というものは直接日本の安全に影響するのは当然であるというふうにお考えになっていらっしゃいますけれども、しかし、日本の生命線は満州であるというので中国に対する侵略戦争が起こりました。そういうことから考えると、他国の領土や領海に線を引くというような、少なくともそういうふうに受け取られるような形で日本の安全というものを策定していくことは非常な行き過ぎではないか、このように私は考えるのですが、佐藤総理の御見解をいただきたいと思います。
  207. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 台湾、韓国、ベトナム、それと日本との関係ですが、昔のような生命線議論はもう日本にはないことは御承知のとおりです。新しい憲法のもとではさようなことを考えるわけではございません。ただ私どものおそれておるのは、隣の火事、これはやはり飛び火をしやしないか、そういう心配はいつでもあります。したがいまして、隣国韓国や台湾において武力の紛争が起こる、戦争が起こるということ、これは等閑視するわけにはいかぬのです。対岸の火災だ、こういうわけにはいかない。そこにもやはり、平和、平静であってほしい、かように思いますから、そういう事態が起こらないようにということを申しておるわけであります。  ベトナムはこの二国とは違いまして、むしろ日本の役割りは、ベトナムの戦争が一日も早くやむことだ、かような意味で、日本も即時撤退、停戦を呼びかけておりますし、また、経済的な難民救助等については日本もいたしますけれども、これは人道的な立場でございますから、とやかく言われる筋のものではないと思っております。  新しい憲法のもとにおいて、外国を自国の安全の生命線と考えるような考え方のないこと、これはもうはっきり申し上げておきます。ただ、隣に火事が起こればやっぱり私どもも家財道具をしまったり立ちのきの用意をする、こういうぐあいに防火はやはりしなければならない。それほど重要なる近接地域の問題だから、これが紛争が起こらないことを心から願っておる、かように御理解いただきます。
  208. 正木良明

    正木委員 アジアに紛争が起こらないように、アジアの平和が確保できるように、これを願うという気持ちは私も十分わかります。そういう言い方は、佐藤・ニクソン共同声明の中の幾カ所に出てまいります。したがって、そういう一般的な意味においてそうおっしゃるというならば、私は、わざわざ台湾の問題、朝鮮の問題を抜き出しておっしゃる必要はなかったのではないかというふうにも考えます。  そこで、わざわざこれを抜き出して、しかもそこに何らかの武力衝突ないしは紛争が起こるということを願っているわけじゃないけれども、起こったときにはこれを対岸の火災視するわけにはいかぬ、立ちのきの用意をしなきゃいかぬとおっしゃいましたけれども日本から立ちのくわけにいかぬのですから、何らかの形で対応策を講じられると思うのですが、それではその対応策というのは何でしょうか。
  209. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもがその戦争に巻き込まれないこと、これが私どもがまず第一に考えるべきことです。また同時に、私どもがその戦火の中に巻き込まれて侵略を受けるというようなことのないようにする、これが第二の問題です。第一の問題が成功すれば第二の問題の心配はない、かように思っております。
  210. 正木良明

    正木委員 かりに、実際問題として朝鮮半島において武力衝突が起こったときに、在日米軍の出動について、それでは便宜を与えるとかなんとかということについては全然考えていない、それは戦争に巻き込まれるという意味においてノーと言わなければならぬというふうに考えるわけですが、これはついでですがお聞きしておきましょう。
  211. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ついでにお尋ねになった事柄がたいへんな意味を持つように思います。そういう場合に、韓国で戦争状態が起きたら必ず駐日米軍が出動するという場合も起ころうかと思います。そういう場合に事前協議の対象になる。これは事前協議なしにさような事態が起ころうとは思いません。そういう事前協議の場合に、大局的に、私どもは事態に巻き込まれないように処置をとりたいと思います。  そこで、はっきりノーと言えとかあるいはイエスと言えとか、こういうようなことが問題だろうと思いますが、それこそ具体的な事案についてそのときの状態で判断すべき問題で、いまからとやかく言う筋のものではございません。そのことだけはっきり申し上げておきます。
  212. 正木良明

    正木委員 いろいろ聞きたいことがたくさん沖繩に関してあったのですが、ちょっと時間がございませんので、沖繩問題で重要な点だけ二、三お聞きいたしておきます。  沖繩におけるところの核の撤去ということについて、これは必ず撤去するのだ、こういうふうにおっしゃっておりますが、これは返還前に、要するに返還時にすでに撤去されておるのか、返還後に撤去するという計画なのか、どうですか。
  213. 木村俊夫

    木村国務大臣 当然返還実施時期になくなっておるということでありますから、実際は返還前にそういうことが行なわれるだろうということは予測できます。
  214. 正木良明

    正木委員 この間の代表質問で、返還の実施時期というのは一九七二年四月一日をめどとしたいというふうに総理はお答えになりましたね。そうすると、もう四月まで幾らも日がございませんが、そろそろそういう計画に取りかかって実施をしなければ、実際問題として返還前までに核撤去を完了するというわけにいかないのではないか。毒ガスだけでもあれだけの計画があり、あれだけの日にち、時間がかかっているわけですが、その点どうなんでしょうか。
  215. 木村俊夫

    木村国務大臣 当然撤去作業は米軍が行なうことですから、政府としてかれこれ言う筋ではございませんが、御承知のとおり、今回の協定の内容は、批准書寄託から二カ月ということになっております。政府としては、できるだけ一九七二年中の早い機会にということで四月一日を希望はしておりますが、両国側の立法機関の審議を経なければなりませんので、まだその点については合意を得ておりません。
  216. 正木良明

    正木委員 アメリカの国会におけるところの批准の問題もありますが、この核の撤去という問題に時間がかかって、結局は返還時期が延びるなんということはあり得ますか。
  217. 木村俊夫

    木村国務大臣 核の撤去作業が遅延するために返還期日がおくれるということがないように両国政府は努力しなければならぬと思います。
  218. 正木良明

    正木委員 核があるかないかわからぬというふうにかねがねおっしゃっておりましたが、七千万ドルの予算を計上して核を撤去するというんだから、これは核があるということが明らかになったんだろうと思うのですが、この核を撤去するのにはどんな方法でやるつもりですか。船でやるのですか、飛行機でやるのですか。
  219. 木村俊夫

    木村国務大臣 これは米軍が行なう作業でございますから、政府としては関知しないことであります。
  220. 正木良明

    正木委員 そうすると、七千万ドルぽんと渡して、そっちで適当にやってくれ、こういうことになるわけですか。
  221. 木村俊夫

    木村国務大臣 当然返還協定に基づく義務として米軍が撤去作業を行なうことでございますから、その経費として、その他の経費も含めて七千万ドルということを予定しておるということであります。
  222. 正木良明

    正木委員 そうすると、あなた、いま信頼ということばを使わなんだですけれども、結局アメリカを信頼するよりほかに道がないわけですね、撤去されたかどうか。まさか、ないのにあるといって七千万ドルただ取りするわけはないだろうと思いますが、あるとして、撤去するのにそれだけかかった。もう実際は、なくなりましたよというのは向こうの言い分を信用するよりほかに道がないわけですね。
  223. 木村俊夫

    木村国務大臣 経費が計上されたから撤去を確認するということは、私は逆だろうと思います。当然協定に基づく——それをさかのぼって日米共同声明の第八項で約束したことを今度は条約文で明定することですから、すべて条約は信頼関係でございますので、これ以上の確証はない、こういう考え方であります。
  224. 正木良明

    正木委員 その信頼がもうこの間ひっくり返されたところじゃないですか。去年の十月に約束して、日中間の問題についてはちゃんと相談をした上でやりますよといったのに、向こうは日本に相談せずに訪中を決定したというほど、いま日米間の信頼関係というのは、ある言い方をすれば、もうくずれてきているともいえるのです。そういう関係の中で、この核の撤去というものについてあくまでも信頼するよりほかに道がないのですか。日本の全国民の側に立ったとして、それは信頼するよりほかに道がないのですか。
  225. 木村俊夫

    木村国務大臣 これは条約に相当する協定に基づく義務でございますから、当然米政府はこれを実行しなければならぬ。すべて日米安保条約も、これは両国政府の信頼がなければ立たないということから申しまして、当然これはアメリカが義務を履行するということを確信しております。
  226. 正木良明

    正木委員 ちょっと話が横にそれますが、あなた、いま重大なことをおっしゃった。日米共同声明に基づいてこの条約が——協定ですね、条約と同じだというふうな意味でおっしゃった。条約のいわゆる協定の前文には、一九六九年の佐藤・ニクソン共同声明の基礎の上に立ってということになっている。ということになると、共同声明というのは単なる共同声明であるかもわかりませんが、これは国家間におけるところの条約にも準ずべき、条約ともいうべき協定だということになると、この沖繩返還協定において佐藤・ニクソン共同声明というものは、明らかに法的な根拠を持ち出したというふうに解釈してよろしいか。
  227. 木村俊夫

    木村国務大臣 協定の文章には基礎の上に立ってということがございます。したがって、いまおっしゃりたいことは、台湾条項あるいは韓国条項がそのまま協定の中に盛り込まれたのではないかというお考えだと思いますが、そういうことはございません。
  228. 正木良明

    正木委員 先回りせぬでもよろしい。そのほかにもいろいろあります。しかし、それじゃあなたの言い方を聞いていると、佐藤・ニクソン共同声明を基礎にするというのだから、こことこことここだけが基礎になって、こことここは基礎になりませんというふうに分けられるのですか。全体でしょう。全部が含まれるのじゃないか、基礎にするということは。選別できるのですか。佐藤・ニクソン共同声明全部が基礎になっているのじゃないですか。
  229. 木村俊夫

    木村国務大臣 共同声明は、政治的なお互いの了解と、それがその後において条約に相当するものになる、両方の性格を持っております。したがいまして、今回の協定は、その中で沖繩返還のための国際協定的な部分のみを協定の中に盛り込む、そういうふうに御解釈願いたいと思います。
  230. 正木良明

    正木委員 したがって、沖繩の施政権の返還、これについてこの協定において内容が締結されるわけでありますけれども、それは全部佐藤・ニクソン共同声明というものを基礎にしているということでありますから、佐藤・ニクソン共同声明の中に盛られた問題というものは、この沖繩返還協定、あなたは条約とおっしゃいましたが、この条約において私は非常に法律的な拘束力を持つというふうに考えざるを得ないのです。この点については、もう時間がありませんから、次の沖繩国会で徹底的にやりましょう。あなたとやられるかどうかわからないけれども、それはやりましょう。  そこで、いよいよ時間が迫ってまいりましたので、最終結論に入りたいと思います。  総理、きょうはやや前進した前向きの答弁が出てきたようであります。しかし、まだまだ日中国交回復というような、非常に日本の将来をかける重要な問題についての積極姿勢というものは、いま一歩足らないようなうらみが残ります。いろいろ周辺の事情もありましょう。そういう点について深く考慮をめぐらされているのであろうと思いますし、またこの二十五日には日華協力委員会で張群さんが来るというので、その点も配慮があるかもしれません。これまた考え過ぎと言われるかわからないが、いずれにしても、日中国交回復、日本と中華人民共和国政府との間の関係提善というもの、こういうものは何としても七〇年代の課題としてでも大事なことであると私は思います。ある人はこう言いました。アメリカは米中問題について、国民のほうはおくれているけれども政府のほうが進んでいる。日本はその逆に、日中国交回復という問題については、国民のほうは進んでいるけれども政府のほうがおくれている。これは当たらずとも遠からずというふうな論評だと私は思います。いずれにしても国民はアジアの平和、日本の平和ということを求めているのでありまして、そういう意味からいって、日中国交回復がアジアの緊張緩和にもたらす効果というものはきわめて大きい、このように私は考えておるわけであります。特にこの秋の国連総会における日本の態度というものがきわめて重要であると思います。  そういう意味において、佐藤総理がなお積極的、前向きにこの日中国交回復という問題に取り組んでいくのだという決意を最後に表明をしていただきたい。これを私の質問の締めくくりといたします。
  231. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来いろいろ政府の所見をただされました。また多くの御忠告も、御進言も承ったように思います。ことに中国問題につきましては、最近北京から帰られたばかりでありますだけに、たいへん迫力のある御忠告をいただいた、かように思いまして、この点はありがたくお礼を申し上げます。  問題は、やはり何といいましても、私どもは自由を守り、平和に徹するその国柄でありますだけに、またそのことを考えますだけに、隣国との国交調整にはこれより以上に力をいたさなければならない、かように思っております。私の答弁はあるいは予期されたこととあるいは筋違いのものがあろうかと思いますけれども、私も最善を尽くして国交の調整には努力したい、かように思いますので、最後にそのことを一言づけ加えて申し上げておきます。ありがとうございました。
  232. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて正木君の質疑は終了いたしました。  竹本孫一君。
  233. 竹本孫一

    竹本委員 私は民社党を代表いたしまして、現下の外交、経済の問題の重要なるものについて質問をいたしたいと思います。  日銀総裁においでをいただいて、時間の制約もあるようでございますから、きわめて簡単に初めに総裁にお伺いをいたしたいと思います。  御承知のように、最近日本の経済特にその景気は不景気の様相がだいぶ深刻化してまいっております。五月の鉱工業の生産も前月に比べまして四・七%落ちる、あるいは景気の先行きを見る指標になる機械の受注というものを見ましても、特に製造業におきましては、五月には前月に比して九・九%も落ちておる。このままでまいりますならば、今年度の設備投資、日本の景気を引っぱっていく設備投資というものは、政府の最初の見通しからうんと減りまして、一、二%ぐらいの増にとどまるのではないかとさえ言われております。したがいまして、最近では経済成長も一〇・二%はとてもおぼつかなくて、あるいは八%ぐらいにとどまるのではないかという観測も出ております。これらのいろいろの情報あるいは観測を中心として考える場合に、景気の落ち込みはあるいは予想以上に深刻であると思いますが、その点について日銀の総裁はどう見ておられるかということが一点。  時間の関係二つずつ申しますが、もう一つは、との落ち込みがずいぶんひどいのだけれども、その回復はいつからという、きわめて具体的な時期の見通しの問題であります。これにつきましては、私は春の予算委員会におきまして、やはり日銀総裁に当時、三月あるいは四月には景気が回復の歩調を整えるであろう、こういうふうに新聞等では言われましたけれども、私はこの落ち込みが深刻であることを考えまして、七月ごろに上昇過程に入るのではないかという私の意見を申し上げましたところが、日銀総裁も大体自分もそう見ておると言われたことを記憶いたしております。その七月が現に参っておるわけでございますが、これについて、その後の情勢の変化もありますが、やはり七月からは景気は上り坂になるというふうに考えておられるか、この二点についてお伺いいたしたいと思います。
  234. 佐々木直

    佐々木参考人 ただいまの最初の御質問でございますが、おっしゃるとおり、経済の実態はなかなか回復しておりません。ことに御指摘がありましたように、五月の生産の指数は大幅に落ち込みました。これにはストライキがあった等いろいろ特殊な事情があるとは思いますけれども、その落ち込みは意外に大きかったことは事実でございます。  なぜこういうように生産が停滞しておるかという理由につきましては、やはり一番大きなものといたしましては、設備投資の急速な鈍化であろうかと思います。この設備投資の伸びが非常に鈍化いたしました原因につきましては、第一は、やはりここ数年、非常に大幅な設備投資が行なわれ、それが非常に急速に生産力化しつつある、そういう状態、それによりまして、後に申し上げますが、生産調整、在庫調整がおくれておるという面が一つあろうと思います。それから第二に、この設備投資の伸びを鈍らしておりますことは、生産コストの上昇その他の理由によりまして、企業の収益が低下しておりまして、設備投資のために向かう刺激と申しますか背景ができ上がっていないという面があろうと思います。実は四十六年度の財政支出の繰り上げ、いろいろ政府のほうで努力しておられますが、選挙などの関係もございまして、多少おくれぎみになっておるかと思います。そういうことも経済全体の動きを鈍くしておる原因であろうと思います。  第二番目の回復の時期につきましては、確かに先般、この予算委員会で二月に竹本先生から御質問がございました。大体七月ごろではないかというお話で、私もそれとあまり違わない感じを持っているということを申し上げたのでありますが、どうも正直に申し上げまして、まだ七月が現実に上昇に転ずることになるかどうか、いまのところは見通しが立っておりません。六月の生産の指数は、五月の落ち込みのあとを受けまして、ある程度の上昇は予想されますが、それが傾向的な上昇に結びつくかどうかということにつきましては、正直に申して、まだ見通しが立ちません。まあ私どもとしては、できるだけ早く上昇に転じ、わが国経済が安定成長の路線に乗ることを期待しておるのでございます。  それから、いまの落ち込みがわりあいに大きい、伸びが鈍いということに、在庫投資の調整がおくれている点があろうと思います。これは先ほども申し上げましたように、非常に大きい生産の増大がありまして、新規設備が去年の秋ぐらいからこの春にかけまして相当多量のものが相次いで動いております。こういうことが生産調整を非常におくらせているということが今度の特徴というふうに思われるのでございます。
  235. 竹本孫一

    竹本委員 今回の不景気は、人によっては、四十年の場合の不景気よりもさらに深刻ではなかろうかという意見もありますが、総裁はその点はどういうふうに見ておられるか。また、需給のギャップというものもいろいろ御議論、御説明もありましたけれども、どういうふうに見ておられるか。  それから次に、生産力化してくる設備投資が非常に多かったという御答弁がございました。これにつきましては、われわれは常に設備投資にもう少し総合的な計画性がなければうそだということを指摘しておりますけれども、いまの総裁の御説明は、われわれの言っているように、設備投資に計画がなさ過ぎたということをお認めになったのであるか。同時に、銀行の貸し出し態度にも、あるいは貸し出し競争あるいは自由企業の必然の流れとしてのいろいろの行き過ぎがある。そういう銀行の姿勢なりあるいは態度なり、貸し出しにも計画性もなかったし、節度もなかったではないかという点もお認めになった上でのお話であるか。その点についてひとつお伺いいたしたい。
  236. 佐々木直

    佐々木参考人 四十年との比較でございますけれども、確かに最近の落ち込みは、四十年の停滞のときと似た形になってきておる点が多々ございます。しかしながら、設備の稼働率、そういうものを見ますと、確かに低下はしておりますけれども、四十年のときに比べると、その低下の幅は小さいように思います。それからもう一つ、御承知のように、四十年の場合には、大型の企業に相当倒産が起こりました。また、証券業界においてもいろいろ波乱が起こるというようなことがあったわけでございますが、今度は幸いにしてそういう大きな、非常に経済全体に混乱を生じかねない大きなそういう倒産というものはございません。そういう意味から申しますと、四十年のときに比べますと、総体の経済の基盤が強くなっておることもあろうかと思いますが、その落ち込みはそれほど大きくないということが申し上げられるかと思います。  それから、需給のギャップの問題でございますが、これはなかなか計算が具体的にむずかしいのでございます。ただいまちょっと例にとりました稼働率をとってみますと、昨年からことしにかけまして約一割、一〇%の低下を見ております。それから推測いたしますと、需給ギャップはそれほど大きくはないのではないか。これは正確ではございませんけれども、そういう感じがいたしております。  それから最後に、設備投資についての計画性の問題でございますが、確かに民間設備投資というものが経済全体に及ぼします影響というものは非常に強いわけでございますから、もう少し設備投資が計画性を持って行なわれることが希望されるのでございます。一部の業種につきましては、いろいろ政府の指導、相談によりましてある程度の計画性が与えられておりますけれども、総体として見ましたときに、この計画性が必ずしも十分ではない。これは自由主義経済の持つ一つの悩みであろうかと思います。  銀行の設備投資に対する態度でございますが、どうも設備投資の問題は、金の要りますのが、設備投資に関連したたとえば機械の発注その他に比べますと、だいぶおくれる関係もございまして、どうも銀行との話が必ずしも十分詰まったところでないところで設備投資が開始されることもあります。そういうことで、それぞれいろいろ関係があるかと思いますけれども、いまの状態では、銀行の責任とかあるいは企業の責任とかいうふうにこれを分けて考えるわけにはなかなかまいらないように思います。結局は、総体として企業が全体の経済との関連において責任を十分考えられ、特に大きな規模の企業についてはその点を十分考えられた計画性を持った設備投資が今後行なわれることを強く希望しておる次第でございます。
  237. 竹本孫一

    竹本委員 あと一、二問お尋ねして終わりにしたいと思うのでありますけれども一つは、私はきょうは円の切り上げの問題をあとで詳しく論じたいと思うのですけれども、円の切り上げ、円不安というものを控えて、たとえば輸出産業の設備投資なんというものはいまなかなかできない。この間もある民間の輸出貿易あるいは輸出産業に関係しておる方に会って聞いてみますと、輸出産業なんかはいま設備投資をやればこれは背任罪を構成するかもしれない、設備投資をして、金をかけて、いよいよでき上がるころに円の切り上げでもあったら、輸出は、一割切り上げれば一割割り高になるわけですから、たいへんな打撃を受ける、そういう不安があるときに思い切って設備投資ができるはずがないではないか、こういうことを言っておりました。もちろんこれは一部の意見でありますが、私は、最近における設備投資が、先ほども申しましたように、今年において一、二%しか伸びないというような停滞をしておるのには、あるいは需要面の喚起という問題もありましょうが、やはり日本の景気を引っぱっていく大きな力は設備投資にありますから、その設備投資が、いま言ったような円不安に妨げられて思い切ってできないんだという面がはたしてあると総裁は見ておられるかどうか、その点だけ伺いたい。
  238. 佐々木直

    佐々木参考人 円不安の問題は、確かにいま日本の経済の各方面にいろいろな影響を与えておることは事実でございます。ただいま御指摘がございましたように、輸出を目的とする設備投資というものが、今後もし円の切り上げなどがございましたときに、輸出産業の受ける強い影響を考えてちゅうちょされるということは十分あり得ることだと思います。私どもとしては、この円不安の問題が一日も早くぬぐい去られますようにできるだけの努力をいたしたい、こう考えておるのでございます。
  239. 竹本孫一

    竹本委員 最後に、公定歩合の第四次引き下げの問題が具体的日程にのぼっておるようでございますけれども、私は、日銀の基本的な姿勢として、今日景気が十分に立ち直ることができない、あるいは立ち直りがおそいという問題は、単に金利の〇・一%あるいは〇・二五%を引き下げるか引き下げないかということで左右されるような問題ではない、むしろもっと深刻なところに問題はあるんだ。したがいまして、財政金融の緊急施策についてはあとで議論をするわけでございますけれども、そういう基本的な取り組みが行なわれて初めて景気の上昇というものが期待されるのであって、この際、いまお話がありましたように、収益も企業においては低下しておる。いま借り入れてももうけにならない。そんなところに〇・二五%引き下げてみても一体どれだけの魅力があり、どれだけの拍車がかかるかということについてはきわめて微々たるものである。むしろ公定歩合を三回も四回も上げたり下げたりするということは、いままで日銀の態度は、佐々木総裁にも私は申し上げたことがありますけれども、どちらかといえば公定歩合を固定歩合のように考えているまずいところがあるじゃないかと私は苦言を呈したことを覚えておりますが、今度は逆に少しひんぱんに上げたり下げたり——今度は下げるほうですけれども、やり過ぎるではないか。もっとことばを悪く申しますならば、政府の財政金融政策の基本的な矛盾なり行き詰まりというもののしりぬぐい役を追随的に日銀がやられるというようなことは、日銀の態度としてたいへんな問題である。私は金融政策というものは、もちろん財政経済全体の政策と協力し、一環としてやらなければならぬと思いますけれども、独自性というものがなければ日銀総裁の権威を大いに失墜することになる。そういう意味から申しますと、需給のバランスその他基本的な問題が、これはあとで詳しくやるわけですけれども、ほとんど根本的に解決ができないままにいま公定歩合を少し下げてみる。そして総裁自身が、若干の心理的効果があれば幸いであるといったようなことを言っておられるようだけれども、その心理的効果もたいしてない。そういうときに、公定歩合をもてあそぶとは申しませんけれども、下げるということは効果があまりないのみならず、日銀の権威あるいは公定歩合の大きな役割りというものを軽んずるものになりはしないか。私はむしろもう少しこれに対しては慎重であってほしいと思うが、どうか。  さらに最後にもう一つ、長期金利の問題についてもこれとあわせて御見解を承って、総裁に対する質問を終わりたいと思います。
  240. 佐々木直

    佐々木参考人 当面、金融政策の目標は、わが国経済を安定した成長の軌道に乗せるということであることは、先ほど申し上げたところでございます。したがいまして、その目的を達成いたすためには、金融政策はそのときそのときの必要に応じて弾力的に運用すべきものと考えております。ただ、現在の金融情勢を見ますと、数回にわたります公定歩合の引き下げ、都市銀行に対する貸し出し規制の廃止、それに加えまして外国為替特別会計の多額にのぼります資金の流出、支払い超過、こういうものが集まりまして、金融は全体として非常に緩和いたしておりまして、経済成長の金融面のそういう環境はだいぶ楽になっておることが現状でございます。  それから第二の長期金利につきましては、現在公社債市場における既発債の条件、利回りがだんだん低下してまいりまして、新しく発行されるものの条件よりも下回るというような状況も出ております。公社債市場の発行条件というものは、市場のメカニズムを尊重してきめていくのが筋であると思いますので、そういう実情に合わされた発行条件の検討が今後は進められるもの、そういうふうに考えておりますが、これはやはりいろいろ事情がそれぞれ違う面もございますし、十分各方面の調整を済ませて決定さるべき問題である。こういうふうに考えておるのでございます。
  241. 竹本孫一

    竹本委員 ちょっと総裁答弁漏れのような感じですけれども、第四次引き下げを単なる心理的効果だけでやるということはなかなか問題がある、もう少し慎重に考えるべきであると私は思うが、どうですかという点を伺いましたので、その点に対するお答えをいただきたい。やるのかやらぬのか、やるとすればどういう意図のもとにやろうとしておられるのか。
  242. 佐々木直

    佐々木参考人 公定歩合の問題につきましては、ただいま全く白紙でございます。
  243. 竹本孫一

    竹本委員 総裁への質問は終わりますから、どうぞ。  本論に返りまして、私、まず外交の姿勢のほうから総理大臣にひとつお伺いをいたしたい、あるいは外務大臣にお伺いいたしたいと思います。  今回発表になりましたニクソンの訪中の問題でございますけれども、これは私はフルシチョフがアメリカに参りましていわゆる冷戦が雪解けの時代を迎えたという歴史を思い出すのでございます。今回のニクソンの訪中も、これによって米中共存外交の新しい幕あけが行なわれる。この幕あけのおかげで、総理のおっしゃるように、アジアの緊張緩和もひとつ大いに期待ができるのではないかと私も期待をいたしておるわけであります。  そこで、まず第一に総理大臣にお伺いしたいことは、あるいはお願いしたいことは、日本の外交の情報の収集というものが常に片寄っておる。前回もここで繊維問題について私は申し上げました。大体において外交というものは、私は自主、協力でなければならぬと思います。自主性のない外交というものは、どうも戦後少しあるようでいろいろ議論が出るわけでございますけれども、外交ではない。戦前には協力、協調性の分野がどうも欠けておった。戦後は自主性の分野が欠けておったというのを私は残念に思うのです。いずれにいたしましても、自主的な立場に立って国際関係は協調を旨としていかなければ平和に徹することはできないと思います。その自主的立場において行動を決定する場合に、一番大事なものは国際情報、外交の情報であろうと思いますが、どうもアメリカ大使館を中心として、日本の情報の収集というものは、外務省全体としてアメリカに片寄り過ぎておる。しかもアメリカでもわれわれと同じような意見があるにかかわらず、ウエートの置き方が足らないので情勢判断を誤るというようなことで、情報の収集が全面的に行なわれていないし、判断が総合的、科学的に行なわれていない。これが総理の判断をときどき大きく誤らしめる原因であると私は思っておるわけであります。  たとえば今回の場合におきましても、キッシンジャーがいつどこへ飛んでいったということは、私は大きな問題ではないと思うのです。これは新聞等においてはミステリーだというふうに書いた新聞もありますけれども、まあ庶民の感覚ではミステリーでいいと思うのでございますけれども、私は日本の国の外交をきめる立場からいうならば、米中の会談が持たれるような情勢にいま世界があるいは米国が流れておるかどうかということを、なぜも国と前に科学的に、総合的につかむことができなかったかということに一つの大きな問題があろうと思うのであります。  その点で、きわめて簡単でけっこうです、時間の関係もありますが、今後、前向きに申しますけれども、重大なアジアの平和の柱にならなければならぬ日本の使命からいっても、情報というものはアメリカだけではいけない、共産圏の情報も十分にとってもらいたい。さらにアメリカの情報判断も、一大使の情報だけではだめである。もう少し民間の声、庶民の声、流れといったようなものも的確につかみ、それを科学的に判断し、総合的に判断してもらいたいと思いますが、その点だけ簡単にひとつ総理のお考えを伺いたいと思います。
  244. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 お説はまことにごもっともです。かように申しますと、いかにも木で鼻をくくったような答えになりますが、いかに情報収集の困難かということは竹本君にも御理解をいただけるだろうと思います。また各国それぞれが発表する時期というものがございますし、またそれまでは極秘のうちに事を運ぶという、そういうこともありますから、情報網をあらゆる方面に伸ばしましてもなかなか的確に把握はできない、こういうことがあるのでございます。それらの点はただいま御注意がありましたそういうことを一そう踏まえて、今後とも努力して正鵠を得た、科学分析もできるようなそういう情報収集のもとにわが国の外交を進めていく、こういうことにいたしたいと思います。
  245. 竹本孫一

    竹本委員 ぜひさように願いたいと思うのですが、私は一つの例を申し上げます。  たとえばわれわれ民社党、微力でございますけれども、中国問題は非常に重要だということを考上えまして、去年の十月の五、六、七の三日間、中国問題セミナーというのをやりました。そしてイギリスからは、チャイナ・クォータリーの編集長デビット・ウィルソンさんという方が見えた。アメリカからは、世界でも有名なミシガン大学の中国問題研究所の所長の方がこちらに見えた。そしてその所長さんがいろいろとりっぱな、エクスタインという人でございますけれども、御意見を述べられたが、その中にカナダの動き等もいろいろ御紹介があった最後に、きわめて端的に、アメリカはきわめて近い機会に台湾問題をたな上げにして中共と手を握ることがあり得ると私は判断しております、こういうことを言われた。これは十月の初めなんです。しかし、そのときのエクスタインさんのいろいろな議論の立て方その他を私は静かに聞いておりまして、これは私は大きなショックを受けて聞いたのでございますが、こういうまじめな研究者、もちろんこれは政府関係にもいろいろ深い関係があるようでございますが、それにしても外国の中国問題のセミナーにおいて、きわめて大胆に、アメリカは台湾問題をたな上げしている、さらに言うならば、台湾問題に触れるか触れないかも言わないで結果において触れないような場合、あるいは話し合いでたな上げするようなやり方をやる場合、いずれかの場合を一つ方法を選んでたな上げにして中国と手を握ることがあり得ると思いますということを十月の初めに言われたのです。私はいままで、その当時まで、どの辺まで行くかなということについてはいろいろ疑問も持っておりましたけれども、この先生の、エクスタインさんの意見で、いよいよ問題は決定的だなという私自身の結論を下しました。その一つをもってすべてを語るわけにはまいりませんけれども、彼が当時申しましたのは、文化大革命が済みますと中国の一番大きな課題は、文化大革命の過程において外交はもうめちゃくちゃになっておる、その外交を、中国のこれから一番大きな仕事はリペアすることである、外交を取り返すことである、修理することである、でありまするから、中国の文化大革命が一応落ちついた後における中国の外交は大いに積極的に展開されるものと見なければなりませんということまで、彼はきわめて科学的な分析の上に立って申しました。そういう意味で、私はこの意見は貴重な意見であるということで、私の判断にも重要な要素として受け取ったわけであります。  私は、政府にはいろいろの機関があるし、海外の情報機関もあるわけでございますから、やはりもう少し、総理も言われるように正しい判断が下せるような情報収集には、大きな努力を払うべきではないかと思うわけであります。中国は——アメリカには、あとで申し上げますアメリカの地盤沈下の問題として、私はひとつ総合的に論じてみたいと思うのでございますが、中国だって、いまのエクスタインさんが言うように、文化大革命ができて、そして党づくり——支部組織、全国づくりが一通りできたあとは外交に力を入れる。これはこの教授の話だけではなくて、当然に考えられる。中ソの対立ということも、これはもう一般の常識になっておる。対立ということは、一方から言うならば、アジアにおける外交のイニシアチブをソ連が握るか中共が握るかという問題になるわけですね。そういう意味から言えば、いつ中共が外交的に新しい手を打ってくるかということも考えなければならぬということだと私は思います。  さらに、東南アジアの平和の問題、平和を希望する問題、いろいろの問題がありますし、また最近におきましては米ソが核兵器の問題を中心にして交渉を進めておりますので、この米ソの接近に対して中共が新しい手を打ってくるということも外交の常識として考えられる。これらを総合的に判断してみれば、中共が新しい動きを始めるだろうということは、あとからうしろへ向いた予言者のようなことを言うわけではありませんけれども、私はやはりまじめに考えるならば、総合的、科学的に一つの結論が得られるはずだと思うのです。それを外務省が、ミステリーと言ったわけではありませんけれども日本の多くの政治が、このキッシンジャーが飛んだりあるいはニクソンが北京に訪れるということをもって、何かミステリーが行なわれているようなおもしろ半分な受け取り方ではありませんけれども、とにかく表現があるということは、私は非常に残念に思う。世界の政治の動きというものは、ある意味においてきわめて科学的に動いていると私は思うのですが、その点について、もう一度総理の御所感を伺っておきたいと思うのです。
  246. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話、私どもにもたいへん参考になることです。昨年の十月にすでにさようなことを予言した、こういうことを民社党では握っていた。さらにその発展を、それをもとにして追跡をしていたら、必ず今回の事件も、あっと驚いた、こういうことはなかったろうと思います。総体といたしまして世界自身が平和の方向に大きく動いておること、これは私が申し上げるまでもないところであります。最近の米ソ間の話し合いにいたしましても、SALTの話し合いにいたしましても、これなどは世界を大きくいま変えつつある、かように判断してもしかるべきではないかと思います。また、レアード国防長官が来た最近の状態におきましても、やはり核の抑止力というものの無意味さというか、あまり抑止力のないことを極論しておりました。そういうことなども、やはりこれからの新しい世界の行き方に大きな一つの示唆を与えるものじゃなかろうか、かように私は思います。ただ残念なことは、先ほどのような、せっかく民社党がつかまえられたその材料が生かされなかったこと、これは私はまことに残念に思います。私は、皆さん方からもいろいろ御忠告を受け、その御忠告のもとでただいまの政治を行なっておりますので、そういう意味から申せば、そうあっと驚かないで済んだのじゃないか、かように思っておる次第であります。
  247. 竹本孫一

    竹本委員 まあわれわれは、民社党がそういう勉強をしたり手に入れた情報に基づいて政策を立て、声明を出しておるわけでございますから、必ずしもそういうものをわれわれが独占したということではないと思います。  さらに、この問題の締めくくりとして、もう一つ私はこの機会に総理にお願いしておきたいと思うことは、日本の外交の自主性の問題でございますが、実は私はヨーロッパを一、二回続けて回りました。たまたま私どものクラスメートがいま大使をいろいろやっております。そこでコンフィデンシャルにお互いが話し合いをしておる中で言われておることを、この機会についでに総理にも聞いていただきたい。それは二つあるのです。  一つは、日本はアメリカとの間にもう少し距離を置いてもらいたい。そうしなければ、ヨーロッパで外交官としてわれわれはどうも立場がなくて、やりにくくてしようがないということであります。これは何人もの大使から私は直接に聞きました。  それからもう一つは、日本の外交に、自主性の問題になりますが、おれはこう行くのだという、先ほど来友好国との話し合いというおことばがよくございましたけれども、話し合いをするにしても、われわれはこう行きたいのだという一つの結論といいますか、ある一つ方向を持たなければ話し合いもできない。それについて特にジュネーブその他で私が指摘されましたのは、アメリカがベトナムで行き詰まってしまった、ソ連はチェコに侵入して道義的な威信は落としてしまった、ジュネーブその他において国際会議をやった場合に、世界の外交の一つの指導者、リーダー、オピニオンリーダーがいまなくなった。アメリカはベトナムでもだえておる。ソ連のほうはチェコで失敗した、権威を落とした。そうなれば、だれが考えても次は日本一つのリーダーのような役割りをしなければならぬはずであるけれども日本の外交の中には、今度のこの国際会議においては、こういうふうな点を日本は考えて、こういう点を指向しておるのだから、その趣旨に沿って大使は動けというような指令はあまり来たことがない。だから、一つの積極的な、おれはここの道を選んでこう行くのだという積極的なものがなければ、もうわれわれは国際会議に臨んで恥をかくだけだ、こういうことをコンフィデンシャルに私は、一人ではないのです、何人からも話を聞いた。  要するに、アメリカとの間に距離をもう少し置いてもらいたい。そうでなければ、アメリカべったりでは、われわれが特に新興国その他からあまり尊敬されないということにおいて困る。日本はいかがですかと日本の意見を聞いてあしたの会議はまとめようというような場合に、まあ皆さんの御意見を聞いた上で慎重にというようなことでは、われわれはせっかくこちらの意見を聞きに来た人にあなたの意見はどうですかと聞くようなものだから、全くナンセンスであるというような、切実なる訴えを私は聞きました。どうかそういうことのないように、これからはわれわれはアメリカに対しても自主性を大いに発揮して、ある程度距離を置いてやってもらいたい。同時に、あらゆる国際会議に臨む場合、たとえばけさのテレビでしたか言っておりましたけれども、今度中共を国連に受け入れる場合に日本は一体どういう態度をとるか、まだアメリカがはっきりした考えを言ってくれない、かってなことを言ってアメリカと食い違ってもおかしいし、日本の案が否決されるような場合も困るし、いまアメリカ待ちで何とも言えないというようなことを、けさのテレビで、国連に中国を招く問題を中心に言っておりました。たまたま私はジュネーブその他で聞いた話が、やっぱりそのとおりに今度の場合もやっているんだなあという感じを持ったのでございますが、これは感じの問題として、経済大国日本でございますから、この辺ではもう少し積極的な自主性のある姿勢が必要ではないか、総理大臣に要望を兼ねてお伺いしておきたいと思います。
  248. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 自主性を持つこと、これはもちろん必要なことです。ただ、その自主性を持って選んだのが、私どもいまの日本のあり方といたしまして日米関係を最も最重点に置く、そういう態度であります。どうもべったりくっついている、何もかも追随だ、かように言われますが、それは御批判は御批判として承っておきますが、私どもはアメリカと距離を置けという、そのことばは一体どういうことなのか。その距離を置くこともけっこうですが、とにかく日米間で今日の日本の繁栄、また安全も確保されておる、かように思いますので、この点では自主的にその方向でものごとをきめていきたい、かように思っております。  もう一つは、会議その他について、まあ日米間を重要に考えるにいたしましても、やっぱりその場においての方向というものをはっきりつかまなければならない。だれがさようなことを申したか私も想像がつかないわけではありませんが、ただいまのようなことを言うようでは、これは日本の代表として外国で大使の役を果たす、そういうことはなかなか困難ではないか、かように思っております。私は、そういう意味から、それぞれの会議について、本国からももちろん方向を示す訓令は出ておりますが、また、ときにみずから意見を本国に進言することも可能でありますし、私どもは、その辺はもっと自由濶達に働いていただきたい、かように思います。そういう点では、ただいまのことはそれより以上には申しません。ただ、お互いに相当もう年をとってまいりまして、いまいます外交官、いわゆる第一線で働いておる大使諸君、これが相当まだ経験が足らない若いように思える。これはどうも私が年をとったせいじゃないだろうか。または竹本君が各方面で働いておられる、そういう意味からも、各国の大使に接しられて、日本の大使についてやっぱりただいまのようなお気持ちの御希望が出てくることも当然だろう、かように私は思います。   〔委員長退席、田中(龍)委員長代理着席〕
  249. 竹本孫一

    竹本委員 もう一つだけ私はいまの問題に関連して申し上げますが、日米関係の問題も、先ほど新しい時代が来るんだというお話が出ましたが、これらに関連しまして——最近、私はドゴールがいろいろ論じておるのを読みまして、非常に私には参考になりました。総理もあるいは読んでおられるかもしれませんが、大体ポイントが三つありました、私がおもしろいと思った点がですね。一つは、日本がアメリカと協力するということは当然だということもはっきり書いておる。まあ総理は、その点特に努力をされておる問題でありますから、御議論はなかろうと思います。第二番目には、日本その他海洋国というものは、外国への貿易その他の面でも依存度が非常に大きくなっておる。そこで、うっかりすると商人になり下がって国の栄光とか意気、アスピレーションといったようなものはなくなってしまうから気をつけなければならぬということを注意しておる。これは私、やはりすなおに受け取っておきたい。第三番目にこういうことも言っておる。日米友好関係は中共に対するおそるべき武器である、日米関係がかたければかたいだけ中共を軽くあしらうことができる、逆に、中共が日米間のすき間に食い込むことができれば、外交上の大成功であろうということを書いておりました。これは、きょうは時間がありませんからかれこれ申し上げません。ドゴールはドゴールなりにおもしろい見方をしておるということで——先ほどのように連絡が悪いと言われると困りますから、申し上げておきます。  最後に、との問題に関連しまして、先ほど来これは御議論がありました。確かに九カ月前の佐藤ニクソン会談のときに、これからの外交の政策、ことに中共に対する政策については、その将来の発展につきお互いに緊密に連絡協議をすると言っていたことに対して、どうも私は、しかし今度のアメリカ政府のやり方は非常に失礼というか、けしからぬというか、私は国民の一人としてえらく義憤を感じておるのです。あるいは怒りを感じておると言ってもいい。非常に残念でもあるし、しゃくにもさわります。十九日にはアメリカの牛場大使は向こうの国務長官に会ったそうでありますけれども、これは総理大臣の指令といいますか、訓令に基づいて会ったものであるかどうか。そのことをひとつ伺いたい。  もう一つ、そのときに彼らがというか彼が言ったことばの中に、今回ははなはだすまなかったというような——いろいろ言ったんでしょう。そのときの説明に、事の性質上これは言えなかったのだというようなことを言っておる。しかし、これはたいへんな問題でありまして、今後はパートナーシップで大いに協力し連絡もしますと言うけれども、事の性質上、場合によっては連絡をしない場合があるということをまた意味しておるということになれば、これはたいへんな問題だ。そこで私は、先ほど来御議論もありましたけれども、牛場大使は総理の訓令に基づいて会ったものであるかどうか、またそうであるならば、一々これは外交上の機密を言えないようなこともありましょうけれども、やはりこれは半分は抗議の意味を含めて会ってもらいたいと思うのですね。これは国民の気持ちだろうと思うのですね、率直にいって。何だ人をばかにしておるということで、アメリカに対して怒りの感情を持たない日本人はあまりいないと思うのですね、今回。一体それであるのにかかわらず、結論が、アジアの緊張緩和に役立つのだからいいではないかというような御答弁が先ほど来繰り返されておる。外交上の考慮もいろいろおありでありましょうから、おこってしまえと私は言いはしませんけれども、やはり総理のおことばの中に、このやり方に対しては一つの批判がある、きびしい国民の怒りがあるということが一つも代弁されていないように私には感ぜられるのは、私の錯覚であるかどうか伺いたいのであります。また閣議におきましてもこの問題が議論せられて、ある閣僚がテーブルをたたいて憤慨したという話も聞かない。一体日本の閣僚は何を考えて、この問題をどう受けとめておるのか。時間があれば一々お尋ねしてもいいくらいでありますが、(笑声)総論として総理からひとつ——これは笑いごとではありません。国民の怒りを一体あなたは代弁する気持ちがあるのかないのか、その点だけ伺いたい。
  250. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ロジャーズと牛場君との会見、これは一番最初の問題が電話連絡でございますから、ロジャーズが西海岸から帰ってワシントンで会うという、それが月曜日に行なわれたわけであります。その際に当方から牛場君に、ただいま言われましたような意味の訓令を出しまして、そうして十分アメリカ側の真意を確めろ、こういうことは言ったのであります。したがいまして、それから後の状況報告はされております。しかし、なお不十分な点がありますので、重ねてそれらの点を明確にするように私のほうから牛場君に訓令をしておる、こういうのがいまの現状でございます。したがいまして、このことはアメリカ側から私のほうへ、牛場君に会いたい、こういうことでありまして、これは最初の事柄が事柄であっただけに、そういうような、いなかったということもありますが、そういうことで行なわれた会談だ、こういうことであります。  なお、もうすでにわかっておることだと思いますが、国府に一番先に会い、その次の時間に日本の牛場君に会った。したがって非常に、会談が次々に行なわれますので牛場君との会談の時間も短かった、そういうこともありますが、要を得ていない点もある、かように考えましたので、それらの点をいま確かめておる最中でございます。
  251. 竹本孫一

    竹本委員 そこで私は、総理もなお遠慮しながらおっしゃっているので、国民の諸君もどうももの足りない感じを持つのではないかと思いますが、まあその問題は別といたしまして、もう一つ私は具体的に、先ほど来お話のありましたように、ニクソンの訪中によってアジアの緊張緩和も行なわれるであろう、そういうことも総理が期待しておるとおっしゃっておるとおりでありまして、私もそうなると思いますが、そういう体制になるということになれば、軍事的面につきましては先ほど来いろいろお話がありました、朝鮮戦争以来十七年間でありますか、何となくわれわれは中国封じ込め政策のお先棒をかつがされたような、ことばが適切であるかどうかは別といたしまして、国民としては感じを持っておる。これに対してひとつこの機会に終止符を打つべきだといったような問題につきましては、先ほど来いろいろと御議論があったので、私は重複を避けてまいりたいと思いますが、積極的な面で、ひとつ私は、アジアにそれほどの緊張緩和が行なわれるということであるならば、従来われわれがアメリカから強制されたといいますか、しいられたといいますか、あるいは協調してと申しますか、とにかくココム、チンコムの問題であります。今日ではココムの問題でございますが、日本政府がこれからの考え方、あり方として一体百六十七品目でございますか、戦略物資は中共には出さないんだ、われわれと相いれない共産主義の国の経済体制を強化することに役立つということは一切やめるべきである、避けるべきである、こういう考え方で百六十七品目でございますかの多数の品目にわたってわれわれは中共に対する輸出を押えられておるというか、遠慮しておるというか、形になっておる。最近におきまして、はたしてそれがどうなっておるか、いろいろ議論もしたいけれども、時間がありませんからやめますが、結論として、このココムにいつまでも縛られておるということは、一つはアジアの大きな情勢の変化に対応するゆえんでない。一つは、アメリカも今度のようにある意味においてかってな行動をとっておるのだから、われわれもいつまでもそれに制肘されるということは、アメリカに制肘されるという遠慮は要らない。この辺で日本日本の独自の立場でアジアの緊張緩和を進め、日中国交回復毛進めるという立場に立って、中国にこういう品物は輸出しませんとか、してはならないとかいったようなココムの制約からは脱すべきであると思います。その点について総理大臣外務大臣、通産大臣のお考えを承りたい。
  252. 田中角榮

    田中国務大臣 ココムの品目、日本が加入したころ四百項目あったわけですが、百六十七に減っておるわけであります。漸減傾向にあるということは数字で明らかでございます。ココム十五カ国の加盟国、これは日本との経済上、また友好関係にある自由主義諸国家でございますので、これとの友好関係を進めていく立場においてもここから脱退をするということはむずかしいことでございます。しかし、戦略的な物資としての評価等は全く変わっておるわけでございます。もうレーダーがなければ飛行機も売ってよろしい、日本等からは銃座や砲座のない一般的なトラックであれば、広州交易会で展示をしましてどんどんと直接中国にも出ておるということでございますから、品目は当初と違ってどんどんとしぼられておるわけでございます。共産圏に対する戦略物資という考え方もだんだんしぼられてきておるわけでございまして、原則的にはここから脱退はいたしませんが、しかし、禁輸品目というものはかってと違って非常に狭いものになっていかなければならないし、またそのような方向で努力を続けてまいるつもりでございます。
  253. 木村俊夫

    木村国務大臣 ただいま通産大臣からお答えしましたとおり、ココムの規制緩和について今後関係諸国と協議していきたい、こう考えております。
  254. 竹本孫一

    竹本委員 総理大臣、これは私はアメリカに対するしっぺい返しも少し含めて、日本もそれを脱退するぐらいの元気があってほしい、田中さんのような元気のいい人はそのぐらいの御発言があるかと思ったけれども、どうも慎重に答えておられますが、日本の立場からいえば、そのくらいのことの姿勢をひとつ示したらどうか。しかし、少なくとも脱退ができなければ、一体このように中共と手を握ろうといっておるときに、あなたのほうへ物資は送らない、送ってはならないという制限は逆行しているでしょう。矛盾しているでしょう。こういうあり方は間違っておるんだからやめようではないかという御提案をなさる意思があるかどうか。ココム全体をやめようという、ひとつ提案をされる意思はないか。  さらに、今度は十月にパリで会議があるので、またそのうちから三十品目から四十品目、品目を少し削り落としてもらいたいということを日本としては要望されるお気持ちのように聞いておりますが、これはニクソンの訪中がある前の話です、大体において。だから情勢がすっかり変わったんですから、品目を少しふやして取引を自由化すれば大体これで問題が解決するといったような次元の低いことではなくて、アジアの情勢が一変しておる、その大きな激変した事情に即応した新しいやり方をやはり政府は考えなければならぬと思うが、外務大臣、いかがですか。
  255. 木村俊夫

    木村国務大臣 仰せのとおりでございますが、今後規制緩和のテンポを早めていきたい、こう考えております。
  256. 竹本孫一

    竹本委員 ちょっと外務大臣、最後のところよく聞こえなかったのだが、私が言うのは、新しい情勢に即応してこれはやめようではないか、あることがおかしいということをおっしゃる意思があるかないかを承っておきたい。
  257. 木村俊夫

    木村国務大臣 規制緩和以上に出る、すなわちココム自体を廃棄する、こういう仰せと思いますが、その点も含めて今後関係諸国と協議をしていきたい、こういう考えでございます。
  258. 竹本孫一

    竹本委員 ぜひもう少し力のこもった——答弁の技術の問題じゃありませんよ、政治姿勢としてアジアに緊張緩和して、あなたと手を握りながらあなたのほうに戦力がついてはいけないからこういう物資は百六十七品目送りません、輸出しませんなんというようなばかな、論理が合わぬじゃないか。私はその辺が、そういうところに決意がないから追随外交なんといわれるのですよ。やはりもう少し日本がアジアの一つの大きな力になっておる——大体日本は、総理大臣は非常に遠慮をされるから、国民は納得できないだろうとぼくは思うのだが、何を読んでみても、一体遠慮し過ぎていますよ。私が少しアメリカから離れろというのは、そのことを言っておるのです。  たとえば、ここに朝日、ジャーナルがありますが、これに今度の問題になりましたアメリカの国防総省の秘密報告書のことがいろいろ出ている。そしてこの東南アジアの情勢報告、これは最高首脳部に回らんをするのだということをこう書いて、そして回らんすることについていろいろ詳しく書いてありますが、その中で、この情勢の変化について一応連絡しなければならぬ国がずっと書いてあります。A、B、Cこう書いてある。第一は「主要な同盟国」、「イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン」と書いてある。これに協議する。第二はいろいろこうありまして、第三番目のところに「共産主義諸国」、とれが書いてある。そして最後にHとして、「その他の諸国」というのがある。その「その他の諸国」に連絡をしていかなければならぬが、それにはこう書いてある。「われわれの重大関心をカナダ、インド、フランスなどの主要関係諸国に伝えるが、考え方を全面的には伝えない。」こう書いてある。私はこの文書が、国防総省が言ったのか、あるいはどれだけの権威があるか、そういうことをあまり問題にしたくない。問題は、この中に日本という字は一つも出てこないということです。時間があれば、一体アメリカがあらゆる外交的ないろいろの問題について、連絡協議をしなければならぬという表を書いている中に日本が何回出ておるかということを、ほんとうは聞いてみたいのです。おそらく日本は初めからしまいまで、へたをすると落ちているかもしれない。ここにインドが書いてあり、フランスが書いてあり、カナダでも書いてあるけれども日本とは書いてない。大体アメリカの頭の中には、重要な事項について連絡先として日本というものは書いてない、あるいは心の中に、第一置かれていないということのほうが、私は問題なんです。だから総理大臣として、先ほど言ったように、アメリカは失礼な日本の頭越しにやったような場合には怒りをもってこれに抗議をするぐらいの姿勢がなければ、いつまでたっても日本という字はここに出てこない。私は、保守党がこれは本気にほんとうは議論すべきことだと思うのです。しかし、われわれでも日本国民の一人として怒りを感ずるから、私はこれを申し上げるのです。要するに、何だか日本の国は経済だけは経済大国と言っておきながら、政治面、外交面ではみずからを卑下して、全く、世界の中の日本という自覚というか、誇りというか、使命感というか、どうも欠けておるように思うのです。  外務大臣に伺いたいが——これは総理大臣に聞きましょう。たとえば中共を国連に迎え入れるということがいろいろ議論になりました。それでそのときに問題になるのは、常任理事国というポストは中国に与えるのか与えないのか、あるいはこれは、その問題についてはまだ十分確かめることができなかったというような牛場大使の御報告か何かの記事が出ておりました。われわれは、中国が入るか入らぬか、これも重大な関心があります。そして常任理事国になるかならぬか、これも重大な関心があります。しかし、そんなところにばかり興味を持っておるけれども、経済大国日本は一体いつ常任理事国になるのでありますか。いつ常任理事国にわれわれをしろということを、だれがどういう機会に要求するお考えであるか。われわれの経済の実力からいっても、アジアにおける平和の面でわれわれが果たす大きな役割りからいっても、私は国連において日本は常任理事国であってよろしいと思う。少なくとも日本総理大臣外務大臣は、それを要求してしかるべきであると思う。中国が常任理事国に入るだろうかなんかという、よそのことばかり一生懸命言っておるけれども、われわれ自身は、経済だけ考えて政治的、外交的な国際的地位の向上については忘れておるのか。これがエコノミックアニマルだ。どうかそういう意味で、その点について一体政府は、どれだけの積極的な誇りと使命感を持って日本は国連常任理事国になろうとしておるか、なろうとしていないか、ひとつお伺いをいたしたい。
  259. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのお話は、私もかねてから考えている一つでございますが、そのためには、国連憲章をやはり直していかないと、これはむずかしいことです。取り組めない状態です。だが、これが一体いつになったら取り組めるか。たとえばいま国連の分担金といいますか、われわれの拠出金、それを考えてみると、日本は五番目だといま思っておりますが、そういう状態になっていて、その常任理事国でもないということ、そういう状態はいかにも実情に合わない。   〔田中(龍)委員長代理退席、委員長着席〕 まだ敵国条項なるものが国連憲章にはあるということ、そういうことを考えると、いまの時代には合わない、変わってきているのだ、だから新しい憲章をつくるべきだということ、これが私どもの主張であり、昨年私が出かけたのもそういう意味合いからです。そういう問題とも取り組みたい、かように思っておるのであります。  私も、ただいま竹本君から御鞭撻をいただきまして、たいへんうれしいのでございますが、私ただ喜んでおるというわけじゃありません。私どもの立場、日本の国のあり方というもの、そういうところにおいて国際的な役割りの大を果たす、そういう積極的な意味合いからも、常任理事国、かようなことが国連で考えられてしかるべきではないか、これは当然のことだというふうに私も思うのでございます。それから一言。いまの、さようには思っても現状はそう簡単でない、できないということも御理解おき願いたい。
  260. 竹本孫一

    竹本委員 困難な事情、いろいろ諸条件があることは私もわかりますが、敵国条項の問題については、ドイツあたりでも相当な気魄と信念を持って取り上げておるわけでございますから、ひとつ日本も、先ほど申しましたように、経済大国といつまでも言わないで、もう政治大国になるべきだ。そういう意味で、ひとつ総理がそれこそ勇断をもって、やはり国連憲章全部を再検討する、日本は常任理事国に当然入るべきだ、われわれはアジアの平和にそれだけの関心を持っているのだということを、ひとつ自信と誇りを持って話を進めていただきたい。要望いたしておきます。  アメリカのやり方がしゃくにさわるものですから、いろいろと私はついでに申しますが、もう一つ申し上げておきたい。これは通産大臣だ。  繊維の自主規制の問題について政府もいろいろ苦心をされました。総理もいろいろ苦心をされたが、民間も事態のむずかしさということを理解いたしまして、自主規制ということを宣言して、すでに実行の段階に入っておる。この問題につきましては、ニクソンは初めからどうもあまり賛成ではなかった。アメリカの政府から言わせるならば、佐藤さんは政府間協定でまとめると思ったのに、それはいつの間にかはずしてしまった。民間が自主規制で立ち上がった。日本政府が民間に対して法律上何をする権限もあまりないということは、アメリカは十分御存じがない。そういうこともありまして、政府が民間の自主規制を歓迎すると言ったことについては、何だといったような批判があるということも私は聞いておる。けさのこれもテレビでありましたか、ピーターソン補佐官がやはりこの問題についてまだ執念を持っておるということを言っておりましたが、また、たまたま一方、政府のほうの話としては、この問題について政府も何らかの締めくくりといいますか、補償といいますか、何かやらなければならぬというようなことの考えがあるやに一部の新聞は伝えておる。しかし、これは御承知のように、いまの法律のたてまえからいえば、政府が繊維の自主規制についてコントロールの権限はありません。大体、法律的にそれはできないからこそ自主規制になったのでしょう。ここでいま政府がへたに介入すれば、法治国家の根本、たてまえからいってもいろいろ議論があるのみならず、政治的にいえば、つまらぬどろ沼に政府はみずから求めて踏み込むことになる。さらに政府は、この問題を取り上げれば、ピーターソンも言っておる、大統領も言っておるようだが、何といってもアメリカは個別規制にとらわれておりますから、まあいい結果は一つもない。要するに、これは政府が、さきに保利官房長官の声明のたてまえから見ても、介入すべきではないし、諸般の事情を総合判断しても、これはタィチすべき問題ではないと思うが、政府は最後まで自主規制の成果を忠実に見守るという態度を貫かれる御意思であるかどうか、その点を伺っておきたい。
  261. 田中角榮

    田中国務大臣 日米間の重大な問題として業界は自主規制に踏み切り、七月の一日から実施に入ったわけでございます。いまの段階においてはこの成果を見守る。またこれが、業界が自主規制を行なった精神にのっとって、両国間の紛争を起こさないような業績をあげ得るという考え方に立って、いま静かに見守るということでございます。
  262. 竹本孫一

    竹本委員 ただいまのところ介入の意思はないというふうに理解してよろしゅうございますね。
  263. 田中角榮

    田中国務大臣 そのとおり理解してけっこうです。
  264. 竹本孫一

    竹本委員 そこで私は、アメリカのもう一つ、全体的な地盤沈下という問題について、ほんとうはきょう本格的にやりたいのですけれども、これだけで二時間もかかるでしょうからやりませんが、これは繊維のときにも私申しました。ただ単に繊維の問題ではない。アメリカは地盤沈下をして——いままでわれわれのアメリカに対するイメージは、アメリカは大きな国である、強い国である、経済の豊かな国である、場合によっては正しい国であるというようなイメージをわれわれは持っておったのです。しかしそれが、全部とは申しませんけれども、幾多の点で大きく穴があいておる。一番大きな一つに経済問題があります。アメリカの地盤沈下というものは、経済においては特にはなはだしい。だから繊維の問題も起こっているのです。  私は、簡単に申しますけれども、ベトナムの問題、これはジョンソンさんが一九六八年ですか、大統領はもうやめます、そうして兵もだんだん引き揚げますということを言ったときに、世界はそれこそ大きなショックを受けました。そしてこれはジョンソンの英断であるとか、勇断であるとかいうことで、非常に称賛のことばが大きく出ました。しかし私はあのときから、アメリカの経済の実体的な地盤沈下ということを科学的にまともに受けとめて考えてみると、あれは当然だ。私は非常にわかりやすく、総理、こういう話をした。あれは御承知のように、金の二重価格制の問題が起こりましたときに、ヨーロッパがアメリカに対して非常に条件をつけた。それを私は中小企業にわかりやすくこういうふうに説明した。アメリカは経済が非常に放漫経営になっておる、そうしてどうにもならなくなってヨーロッパの金融機関に応援を求めた。金の二重価格制その他の問題でゴールドラッシュのときに応援を求めた。ところが、ヨーロッパの金融資本は、金は貸してやる、二重価格の制度には協力をする、そのかわりに条件がある。ちょうど、銀行に再度の融資をお願いに行った中小企業の社長さんが、銀行から言われるとおりなんです。あなたの経営は放漫経営だ、放漫経営、赤字財政、赤字インフレの責任をとってジョンソンさんおやめなさい、社長はおやめなさい、そうしてベトナム工場という——ベトナム戦争は、御承知のように六九年あたりは、一カ年に二百九十億ドルに近い、毎日三百億円に近い金を使った。この放漫経営のたたりなんです。だからそういう放漫経営をやった社長は交代をしなさい、ベトナム赤字工場は閉鎖しなさい、こういうことにすぎないのです。きわめて簡単なんです。ジョンソンの英断でも勇断でも何でもない。私はそういう説明をしたら、みんなもたいへんよくわかってくれたが、その後のアメリカの動きを見ているとそのとおりだ。今回のニクソンさんが言ったのも、アジアの平和を愛するとかいろいろ理屈はつくでありましょうが、根本はそれ以外にはアメリカはもう打つ手がない。アメリカの経済の実体はそういうところまできておる。それを認識しなければ、今後のアジアの緊張緩和の問題等についても、全体的な正しい見通しはつかないと思う。  しかし、それを詳しく申し上げられませんから、きわめて簡単に例示的に申し上げますが、たとえば貿易収支のごときも、多いときには六十億ドルの黒字が出たけれども、アメリカはことしなんかははたして十億ドルあるかないか疑問でしょう。シェアについて申しますならば、世界の先進国における輸出全体のシェアの中で、アメリカの占めるシェアはだんだんに落ちておる。アメリカの国内市場において外国の商品の占めるシェアはだんだんにふくれておる。アメリカの生産性のごときは日本の約七、八分の一しかない。生産性の面においてももう立ちおくれておる。全体としての経済の体質はどうにもならなくなっておる。でありまするから、ジョンソンはついに破産経済学に締めくくりをつけなければならぬから、ベトナムの問題は、平和を愛するとかなんとかではなくて、アメリカの経済の必然的な動きとしてこれを切り上げざるを得なかった。いまの五十五万の兵隊を二十万近くにまで引き揚げていったかもしれませんが、これもできるだけ早く引き揚げたいということなんです。できれば今年じゅうにでも引き揚げたいのでしょう。そのためには、中共にも手を打たなければ引き揚げられないじゃないか。というととは、ベトナム工場を閉鎖するについて、うしろにおる銀行屋さんと話をつけなければ話がつかないから、自分から出かけていって、銀行の頭取に会おう、中共の親方にも会おうということなんだ。中小企業の例でとったほうがよくわかる。  アメリカは、そういう意味から申しますと、経済的にはいまのニクソンも全く進退両難なんです。たとえば失業問題。最近におきましては、御承知のように五百万をこえたでしょう。失業者というのは、アメリカは三%から四%が大体最高といっていいくらいです。それが五%をこえ六%をこえて、ある都会に行けば一三%になっておる。しかたがないから、ことしになってニクソン経済報告は、インフレでこれを乗り切ろう、そうしなければ選挙に勝たぬということになりまして、金融緩和の措置をとって通貨の増発は、大蔵大臣もよく御承知のように、初めのころは二%前後でしょう。それが最近は大体一〇%前後にまでいっているのは、それだけ増発している。佐々木総裁は帰られたけれども日本はそういう点においてはインフレ的で、最近でこそ日銀の通貨増発が二〇%を割りましたけれども、一時は二〇%あるいは一八%までいっておった。アメリカは、ニクソンが失業救済、選挙のことも意識して大いに景気をふるい起こそうということで考えても、二%を六%か七%にすることを限界にしておる。しかしそれでも乗り越えて、いま一〇%近くになった。そこで今度はごく最近FRBが、〇・二五だけれどもプライムレートを引き上げざるを得なくなった。これはインフレの破産のほうがこわくなった。しかしいままでは、インフレもかまわない、物価の値上がりもかまわない、とにかく失業救済をやらなければ選挙がやれないということできておる。いずれにしましても、進めばインフレである、退けば失業者の増加である。進退両難なんです。  おまけに、ドルの問題についても、景気がよくなれば物価が上がる、物価が上がれば輸入がふえる。ドルは流れて出ます。不景気になる、金利が下がる。金利が下がれば、金利採算の上からユーロダラーは逃げてしまいます。アメリカはいま、景気がよくても景気が悪くても、ドルは流れ出る一方なんです。だからアメリカのドルというものの立場は非常に弱くなっておると私は思っておる。ドルが弱くなっておるだけでなくて、アメリカの経済が実質的に弱り切っておる。そのためにいろいろの政策路線を変えなければならぬというところにアメリカは追い込まれておる。  このことは、ぜひ総理に私は的確に理解していただいて、これからのニクソンの打つ平なんというものは、ミステリーでもミラクルでもないんです。全部このアメリカの経済実態からくるきわめて当然な、きわめて必然な道行きを歩んでおるのだということをひとつ理解していただいて、先取りしてこれを受けとめてもらいたいということであります。  私はアメリカの悪口を言うだけではありませんけれども、どうかひとつそういう意味で、アメリカの問題についてはいままでのわれわれのイメージをやめて、アメリカは正しい国である、金持ちの国である、強い国であるというようなわれわれの古い考え方をこの辺で再検討してもらいたいと要望をいたしておきたいと思います。  そこで、時間がありませんからまとめて……。  こういう関係ですから、アメリカのドルはもうどうにもならないんですね。よくても悪くても、金利が高くても低くても、どちらでも出るんです。出ざるを得ないように運命づけられておる。でありますから、本来ならば、ドルはこれは切り下げるべきであると私は思うのです。ところが、アメリカの、ドルを切り下げるということについては、キーカレンシーであるということから、これはやらぬのだということがいわれておる。そこで、ドルはドルであるからドルであるということばがあるんですね。要するにドルは弱った。弱っても切り下げることができない。世界のキーカレンシーだ。そしていばってドルはドルとして通していくんだ。ドルはドルであるからドルである、こういうんだ。この考え方には二つの間違いがある。すなわち、アメリカが世界の最強大国として世界に君臨し、命令する時代は終わったんだ。いま申しましたような、詳しくは申しませんけれども、実情から終わっているんだ。したがって、そういう考え方はどうにもならない、間違っているんだ。しかも、そのドルのあふりを受けて世界じゅうが迷惑をしておるのであります。  私は、きょうの日経で、アメリカのファースト・ナショナル・バンク・オブ・シカゴの会長の方が日本に来て、そしていろいろ話をしておられるのをちょっとけさ拝見をいたしましたけれども、最近において、日本の円を切り上げろという意見は非常に多いのだが、円が強いのじゃないのです。ほんとういえばドルが弱いんですよ。だから私に言わせると、これまた日本政府の方一人くらいは、アメリカのドルが弱いのはアメリカの責任だ。ヨーロッパでよくいわれるように、病人のために健康な人が手術をするなんというばかなことはないんですよ。アメリカのためにわれわれが腹を切ったり手術をするばかなことはない。アメリカのドルはアメリカで処置したらいいんだ。アメリカのインフレはアメリカが節度をもって措置したらいい。そのぐらいのことも日本政府からひとつ言ってもらいたいと思いますが、とにかくアメリカはそれをやらない。そこで、最近また国際通貨不安が出てきょうとしておる。御承知のように、マルクがまた五%ぐらい上がってきた。フランスはドルの流入が今月だけでも三億ドルになっておる、こういうんですね。そういう国際通貨の危機と矛盾は次々に出てまいりますよ。どうしてかといえば、本質的にドルは弱いのだ。アメリカの経済の矛盾が大きい。  そういう意味でこれは大蔵大臣に伺いたいのだが、アメリカのドルの矛盾を日本の円の切り上げというような妙なお先棒かつぎによって解決するということは根本的に間違いであると思うが、大蔵大臣のお考えを承りたい。
  265. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 いまから三年ぐらい前の国際通貨不安のあったときは、各国の通貨に弱味があったというために、これの切り上げということでいろいろ解決をして通貨の小康を得ているというのが現状でございますが、最近の状況は、いまおっしゃられたように、他の通貨には問題がなくて、ドルが非常に弱くなっておる。しかし、キーカレンシーである以上、ドルの切り下げができない。この切り下げをやる場合には、各国の通貨へ全部影響を及ぼすということでございますので、必然的に強い通貨の国、マルクとか円というものに切り上げの圧力がかかっているということはそのとおりでございますが、そうだからといって、それをそのままほうっておくということはなかなかむずかしいということはわかりますので、私どもは、こういう問題の解決に、必ずしも日本として平価の切り上げというもので対処しなくて切り抜ける方法はたくさんございますので、御承知のようないろいろな方法をとって、これからこの問題と、いますでにもう取り組んでおるところでございますが、さらにこの八月中には本格的な取り組みをしようという、いまいろいろ諸般にわたって検討をしておるときでございますが、同時に一方、米国においても財政政策その他において、ドルについての対策をやはりしてもらう必要がある。これはすでに欧州の各国においても、会議ごとにアメリカに要望しておる問題でございまして、この両面をそれぞれがやるのでなかったら通貨安定の責任が持てないというのが実情でございますので、おっしゃられるとおりだと思います。
  266. 竹本孫一

    竹本委員 これは日本のほうも、もちろん協力すべきものは協力すべきでありましょうが、とにかくアメリカの態度は、自分だけは全く正しいのだ、ドルはドルであるからドルであるといったような感じで、経済面も外交面も軍事面も、われわれをお先棒かつぎというようなことにしていこうというような、きわめてなまいきというか、傲慢な態度が私には感ぜられるから、われわれ特に野党の立場から大いに政府鞭撻して、はっきりした態度をとってもらいたいということで声を大きくしておるわけであります。御理解をいただきたい。  しかしアメリカの中でも、たとえばきょうのファースト・ナショナル・バンク・オブ・シカゴのフリーマン会長はこういうことを言っておる。「私はドルを他の通貨に対して切り下げることを主張しているが、これは金価格の引き上げを意味するものではない。金をやってはいかぬ。そしてドルの再検討については、「ドルと他の通貨の平価調整のためにはブレトンウッズ会議のような国際会議を招集して各国経済を再検討し、新平価を決めるべきだと思う。そのような会議は来年中に開くことが望ましい。」こういうことをけさの日経に書いておりますが、アメリカにもそういう良心的な声はあるのです。だからやはり日本日本として、ちょうどわれわれが沖繩問題について核抜き本土並みを最初に叫んだと同じように、自信を持って、アメリカも節度ある経済運営をやらなければ、そのためにわれわれがお先棒をかついで手術をしたり円の切り上げをしたりすることはまっぴらだというぐらいのことは、はっきり言ってもらわなければいかぬと思うのです。円の切り上げ問題については、きょうは時間がありませんから私は論じませんが、とにかくアメリカに対して、そういう意味で自主的な態度をとってもらいたいし、ヨーロッパでは、ドイツやフランスでも、もう御承知のように最近は、特にEEC諸国では、共同でドルに対しても変動幅でも広げようかというような動きがある。フランスのごときははっきりしておって、金価格を引き上げたらどうかという意見も一部にあるぐらいですから、世界の通貨混乱をやはりこの辺で根本的に改善するためには、何といってもアメリカのインフレあるいはアメリカのベトナムインフレというものにメスを入れなければどうにもならぬということについて、大蔵大臣も正しい理解を持っていただいておるようでございますから、ひとつ勇気ある態度をもってアメリカに当たっていただきたいと思います。  最後に総務長官に沖繩の問題について一言だけ伺いたい。これは核兵器についてはいろいろと議論がありましたから、私は本土並みということを経済面についてもやってもらいたいと思うのです。そこで総務長官にお伺いしたいことは、一体、日本と沖繩に、生活の面、ことに経済面においてどれぐらいの格差があるとみておられるかということが一つ。時間がありませんからまとめてやってまいります。  次には、本土並み本土並みということがあるけれども、沖繩の県民の皆さんは、復帰不安ということで、経済の復帰不安については六十数%の人が不安の意思を表明しておる。まことに重大な問題で、私はこの委員会においても、実はそういう問題をもっと本気に論じたいと思うぐらいですが、この経済復帰不安を解除するためにはもう少し真剣な努力が要るのではないか。そこで真剣な努力の一つとしてお伺いするのだけれども日本政府自体は、沖繩の経済開発振興計画というものを政府として——ほかの団体ではない、政府として今日立てておられるか、立てようとしておられるのかということをひとつ伺いたい。  さらに次に伺いたいことは、私も沖繩にこの間行って帰ったばかりですが、これからの総合開発計画を立てる上には幾多の矛盾と困難がある。その第一は、いわゆる基地経済という問題なんです。沖繩を見てみると、基地の中に沖繩があるということばもありますが、大きな問題は、基地に大事ないいところはみんな取られている。これはことばが悪いのですけれども、簡単に言うと、将来沖繩の経済開発計画を立ててみても、それは残飯の計画みたいなものだと思うんですね。いいところはみな食い荒らして、あと残飯が残っておる。これを計画を立てるということになると、なかなか困難と矛盾が多いのじゃないかという心配をするのですが、その点についての総務長官の考えはいかん。  もう一つ、これに関連して、この基地がいつ全面的に撤去されるかということになると、なかなか問題が多い。特に大きな問題は、これはひとつ防衛庁長官に聞いておくが、基地が大いになくなった、なくなった、こう言われますけれども、基地の数ではありませんよ、面積の面から見れば、今度基地は一体何%なくなるのであるかということをちょっと聞きたい。  それと関連しまして、あとは、いつ撤去されるか、基地がなくなるかということについては不確定要素ばかりです。その不確定要素を前提にして、われわれはこれからの沖繩の経済開発計画を立てなければならぬ。非常にこれは困難が多い。それらの諸困難をどう克服していかれるつもりであるか、これを伺いたい。
  267. 山中貞則

    ○山中国務大臣 沖繩の現在の経済水準が本土に比べてどの程度であるかという問題は、環境が全く違いますから非常にとりにくいのですが、県民所得を国民所得に置き直してみますと、大体五年おくれぐらいであろうというふうに見ております。  それから、復帰ショックについての県民の世論というものが、まだ五〇%をこえる水準で不安を持っておる、この点は私に大半の責任があります。これは、いわゆる第一次、第二次復帰対策要綱に加うるに、残りました県民の身近な生活に関係のある税制その他の問題を中心にした三次要綱ができておりません。これを発表するところまで至らない理由には、琉球政府のほうの正式な回答がないという点もあるわけでありますけれども、いずれにしても、琉政の県民会議等の議を経て合意を得た上で、すみやかに一致点を求めて、そうしてこれを発表しますと、大体この復帰ショックに伴う個人の生活の面の不安は解消するのではないかと思うのです。  その基本的な考え方ですが、それは現在の沖繩県民の生活に関する問題で、現在の沖繩の制度のほうがすぐれているものはこれをなるべく残し、そうして本土の制度のほうがすぐれているものはこれを沖繩にも及ぼすというつもりで作業をいたしております。沖繩の復帰後においては、大体十カ年計画ぐらいの振興開発計画を策定しまして、そしてそれを法律で、沖繩振興開発法をもって裏づけたい。そうして沖繩振興開発金融公庫をつくりまして、そういうものの背景をつくっていきたいと思います。税制については、既存企業の保護という問題と、生産される消費財、生活物資の価格の構成の問題とは、非常にむずかしい、理論的にも現実的にも矛盾する面がありますから、これを最大限に衝突の起こらないような処理をしたいと考えて、いま苦労をいたしておる最中でございます。  さらに、基地経済をどのような形で新しい県民の未来の発展計画に結びつけるかという問題は、これは沖繩にとっては非常に重大な問題である。ことに中南部にとっての基地の密度の異常な高さというものから考えますと、那覇市の将来の県庁所在地となるべきその市内における牧港住宅街の広大な面積が、いまだに設計書が書けていません。これは日米の関係もありますが、ABCランクのいずれの中にも書き込めないで、目下調整中・であるという点等も含めまして、鋭意努力して、そして沖繩の基地依存経済というものから正常な経済の状態に脱却できるように、一次産業は亜熱帯の特性を生かしてパイナップル、キビ、畜産等を加味して振興をはかってまいりたいと思います。二次産業は沖繩においてほとんど見るべきものがありませんので、したがって、雇用需要に貢献するような造船、あるいはすでに進出いたしております石油、あるいはアルミ等の進出を促進をいたしまして、これらの地域がもたらす、沖繩県民に対する雇用、所得水準への影響というものを促進いたしてまいりますと同時に、沖繩についてフリーゾーン等の構想についても最終的な詰めに入っているのでございます。三次産業については、先ほど申しましたとおり、基地経済依存との関係がございますので、相なるべくんばやはりそのような三次産業の形態でもって所得の向上も生活の展開もあり得るように、観光等の政策も大きな柱に据えていくつもりでございます。
  268. 竹本孫一

    竹本委員 ちょっと具体的なことを一つだけ伺っておきたいのですが、本土の企業の進出の問題でございます。銀行、保険、海運、陸運、それからスーパー、デパートといったようなものについて、これがどの程度、どういうテンポで出てくるかということは、沖繩の経済の建設計画にも大きな問題がありましょうが、沖繩の県民からいえば、特に重大な、なで切りをされるんではないかという不安、心配があると思うのです。これをどういうふうにコントロールするかということは、今後の県民の、沖繩の心を大切にするわれわれの立場からいえば非常に重大であるので、そのことが一つ。  それからもう一つは、これはいま沖繩でも問題になっているようでございますが、国際海洋開発博覧会の問題、調査費は四百七十二万円か、ことしの予算にもついているようでございますが、沖繩の話というと、総理、われわれは何となく気の毒なような気持ちがまずしますが、全体として、非常に苦しい、暗いようなものが非常に多い。一つぐらいは明るい話題もあっていいではないかという意味で、私は一つ明るい、大きな復帰記念事業として、また、日本のこれからの海洋発展という大きな観点からも、これはぜひ成功さしてやりたいと思いますが、この点についてのお考えを、時間がありませんので簡単にお答えいただきたい。
  269. 山中貞則

    ○山中国務大臣 本土企業の進出は、二十七年間にわたる占領治下の中で沖繩の人たちがみずから築き上げました企業について悪影響を及ぼさないように、競合し、あるいはそれをつぶすような結果になるような企業の進出には、行政指導あるいは場合によっては法律等の強行手段をとるなどして、企業の保護をはかるような配慮をする反面において、そのことが沖繩の県民である日本国民の一人たる消費者の人に不当な高いものを買わせる結果にならないような配慮をしてまいりたいと思います。  さらに、海洋開発については、本年度予算で、通産大臣と私と相談をいたしまして、四百七十二万四千円の調査費を一応計上いたしました。これは引き続き、なるべく早く実行できるように、沖繩側も自主的に、いまそういう対策室をつくったようでありますから、よく相談をして、なるべく早く実施できるようにいたしたいと存じますが、この問題には、他面、万国博覧会条約の中の特別博としての、いわゆる国際条約のもとで行なうということをねらいとしておりますので、またそれが理想でございますから、はたして万博をやったばかりの日本でそれが許容されるかどうかについて、外交ルートを通じて内々の打診をいたしております。しかし、もし条約に基づく海洋博が開催できなくとも、日本独自の、国の主催による海洋博的なもので、後世に研究機関として、研究施設として、あるいはまた観光の、海のよりどころとして残るようなものはぜひやりたいというふうに考えておるわけであります。
  270. 竹本孫一

    竹本委員 最後に文部大臣一つだけ。  これは総理大臣、私は、教育の問題は七〇年代の一番重大な問題だと考えております。われわれ民社党、微力ながらも、教育国家の建設ということが七〇年代の一番大きな政治課題として、これを取り上げました。大学問題についてわれわれが一つの具体的な基本法を提案したことも総理御承知のとおりであります。そういう立場から、中教審の今回の答申についてはわれわれも重大な関心を持っておる。そこでこれを最後にまとめて質問いたしますから、文部大臣から特にお答えをいただきたいのであります。また、最後に総理大臣に伺いたいのであります。  一つは、六・三・三制が一応定着をしようとしておるときにこれを出されて、いわゆる先導的試行とかいうようなむずかしいことばが書いてあるが、一体それは、あまりにこの結論は軽率ではないか、あるいはわが国の教育界を混乱させることになりはしないか。やや定着しつつあるものを、また先導的試行の名のもとにおいて一つの混乱におとしいれるということは、教育政策の上から見てもたいへんこれは問題があるのではないかという点について、ひとつ総理からもお伺いをいたしたいのであります。  それから文部大臣から伺いたいことは、こういう大きな改革問題は、それこそ日教組ともひざを交えてこういう問題を具体的にお話し合いをなさることが適当であろうと思うが、日教組と話し合いをされるか、話し合いをされる場合に、この問題こそが一つの大きなテーマではないかと思いますが、それはいかがでありますか。  特に、私がこれから最後にお伺いをいたしたいことは、先導的試行ということで十年程度にわたってひとつ実施してみよう、こういうのです。総理大臣、ここは大事なことなんですが、四歳から十七歳までということになると十四年間かかります。その新しい教育制度を十年間だけにおいてひとつ先導的試行をやってみようというのはどういう意味か。四歳から七歳までじゃありません、四歳から十七歳まであるわけだ。それを十年間で、十四年間あるものを途中で、十年間でひとつ効果を見ようというのは、私はどうも数学的に見七も成り立たない話ではないかと思うんですね。それは一体どういう考えであるか。  それから、次にはこの学校の選び方は、五十九校か選んでやるというのでありますが、五万からある学校の一%ならいいが、〇・一%にしかならない、そういうものを選んで、これではたして全体の参考にすることができるであろうかという問題。それからさらには、そういう選ばれた五十校か六十校の学校は、ただ一部の教育ママがまた狂奔を始めて、ろくな結果にはならぬだろうということを心配するが、どうか。  それからもう一つ、一番大きな心配は、先導的試行であるから、場合によったらこれはやめる場合だって絶対ないわけはないでしょう、やってみるんだから。必ずやるということならまだ話がわかるが、先導的試行ということでやって、その五十九校に入れられて、まあ私から言えば十四年間やらなければおかしいと思うが、十年間だけ試験のためにためされた連中は、これは一種のモルモットみたいなものだ。実験の道具に使われただけで、あとその制度が変わってしまえばまるっきり、たとえば履歴書を書く場合にも何かわけのわからないようなものが、そこにページができてきちゃうですね。これはそういう学校へ入った人は、との先導的試行のためにとんでもない犠牲になるということになりはしないか、非常に心配をいたします。  教育の問題は特に重要であるが、この問題を、私は本来ならばもう少し真剣にこれは論議すべきだと思いますし、またテストをするにしても、もうちょっと慎重にやってもらいたいと思うのだけれども、それらの点について総理大臣並びに文部大臣からお答えを得て、私の質問を終わりたいと思います。
  271. 高見三郎

    ○高見国務大臣 お答えいたします。  お話しのように、六・三・三制は戦後の教育制度でございます。したがって、いろいろな議論はありましても、日本の経済、政治、文化、あらゆる面にほぼ定着をいたしてまいりましたし、また非常に大きな貢献をいたしてきておるのであります。しかし、一部にはやはり就学年齢の引き下げなどという議論が相当根強く動いておるのであります。今度の中教審の答申は、そういう動いてまいりますところの社会の情勢に即応いたしまして、ひとつ教育制度の改革の一環として、これはいろいろな公聴会等で御議論がございまして、その結論として先導的試行という姿が出たようであります。  十年間というのはおかしいじゃないかという御議論もごもっともだと思いますけれども、これはかりに四、五歳児を対象といたしまするというと、小学校課程が約八年ということになります。そこで厳密な評定をいたしますためには、少なくとも十年間はやってみなければならぬだろうというので、八年というのを十年という期間に延ばしたわけであります。もっと的確に申しますると、竹本先生のおっしゃるように十四年ということになるかもしれませんが、小学校の課程というものから申しますると八年でいいわけであります。それをわざわざ厳密な評価をするために必要だということで十年ということにいたしたわけなのであります。  と同時に、どうもこの問題を先導的試行という形でやりまする場合に、答申でもたびたび述べておりますように、これがエリート学校をつくるというような意識がもしあるといたしまするというと、これはたいへんな趣旨の間違いであります。私どもこの仕事を進めてまいりまする上におきまして一番心しなければならない問題は、教育ママさん方がエリート学校に入れたいのだという意識が働いてはならぬ。だから、できるだけ学力、能力というものの程度を普通児ないしはそれ以下でもいいと思って、そういう行き方でもいいという答申も出ておりまするが、普通の形においての姿のものにいたしたい。いま中教審が答申してまいっておりまする試案は、国公私立合わせて百二十校ということになっておりまするが、これはあまりにも少ないじ心、ないかということにあるいは先生の御意見のような意見もあるかとも思います。けれども、私どもは、この百二十校という数字につきましては、まだまだ検討の余地があると考えております。ただ、答申をいただいたばかりのところでありまするから、数字についてはさらに検討いたしますが、とりあえずこれをやりますためには、まず法律の制定をいたさなければなりません。校舎の施設、設備も、あるいは教員組織も整備しなければならないというような問題を持っておるわけであります。  いずれにいたしましても、六・三・三制が定着しているこの際でありまするので、教育改革などというものが平常時において行なわれるということはなかなか容易なことではないのであります。日本の教育改革の過去の歴史を見ましても、なかなかこれは平常時には行なわれておらない。明治の初年の教育改革にいたしましても、戦後の教育改革にいたしましても、いろいろな社会的な背景があってできたのでありまするから、その意味において、私どももこの問題についてはきわめて慎重にこれから検討を進めていきたいと思っておるのであります。国民各層の御支持をいただきたい。そのためには先生御指摘のとおり、教育界はもちろんのことであります。民間の皆さま方の御意見も十分伺うつもりでおるのであります。どうぞさよう御了承をいただきたいと思います。  日教組の問題は、いま申し上げましたように、教育界は日教組だけではございません。教員団体は幾つもございますので、日教組が会いたいということならいつでも会いまするし、また、その他の教育団体とも進んで私のほうからお目にかかりたいと考えておるわけであります。
  272. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま高見文部大臣からお答えいたしましたように、詳細にお答えいたしましたからおわかりかと思いますが、私も、六・三制の戦後の教育改革が国民の間に定着しているこの際に、しかも平常時にこの改革をやるという、これはたいへんなことだ、かように思っております。しかし、四年間の長きにわたっての中教審の研究の結果でありますから、これは私ども十分これと取り組む、かような考え方でただいまいろいろ検討しておる最中でございます。そういう意味で、具体的な成案を得ましたら、何とぞよろしく御協力のほどお願いいたします。
  273. 竹本孫一

    竹本委員 終わります。
  274. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて竹本君の質疑は終了いたしました。  この際、おはかりいたします。  細谷君の質疑に際し、最高裁判所長官の指定する代理者の出席説明の承認をいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  275. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  細谷治嘉君。
  276. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、主として内政問題について質問をいたしたいと思います。  せんだっての総理所信表明演説、新聞等の批判を見ますと、どうも先見性がない、総理としての意欲がない、あるいは所信表明について具体性を欠くと、大体新聞の論調も合格点をつけておるとはいえないと思うのであります。私自身も数回にわたって総理所信表明演説を聞きますけれども、今回ほど空疎なものはなかったのではないか、こう思います。  そこで具体的な問題をとらえて政府政治姿勢をお尋ねいたしたいと思うのでありますけれども、最初に、非常に重要な問題としてずばり総理にお聞きいたしたいのであります。国民の非常に重要な関心を寄せておる問題でありますし、けさほど来の質問を通じてもどうもはっきりいたしておりません点であります。それは、沖繩の復帰は来年の四月一日だ、こういうふうにいままで総理は公約をしてまいったのでありますが、間違いないのかどうか、はっきりしていただきたいということであります。
  277. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 細谷君も御承知のように、私は早いほうがいいということ、そういうことは申し上げております。そうして、その意味で四月一日というのがいろいろ論議の対象になっておる、さように説明をいたしておるはずであります。いわゆる公約というのはやや言い過ぎではないかと思っております。
  278. 細谷治嘉

    細谷委員 四月一日というのは公約としては言い過ぎではないかと、こういうことでありますが、まあ私もいろいろ聞いておりますと、早くて四月一日、あるいは六月ごろになるんではないか、こういういろいろなことを聞くのでありますけれども、四月一日ということは公約したことはないということは、それ以降になる可能性もある。ですから四月一日はここではっきり言えない、こういうふうにとってよろしいですか。
  279. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、協定は立法府の承認を経て、それから後にこれが発効するのでありますから、ただいま言われます四月一日という日はいろいろ賛成、反対相半ばしております。縁起の悪い日でもあるというような話もありますし、どうも四月一日は新しいそのときでもあるから、その辺に返してくれ、こういうような話もございます。だから、少なくとも国会の両国の批准がそれまでに終えて、所定の期間を経過しておらないと、ただいまの四月一日ということには言えないわけであります。したがいまして、いわゆる協定の条文の書き方からその点がはっきりしてきますが、いずれにいたしましても、まず批准国会を経なければただいまきめるわけにいかない、かように私は思います。   〔「エープリルフールだから」と呼ぶ者あり〕
  280. 細谷治嘉

    細谷委員 いま四月一日というのはエープリルフールと、こういうことばまで聞いたのでありますが、批准の問題もあるということになりますと、どうやらやはりほんとうのところは四月一日は怪しい、こういうふうに考えざるを得ないのでありますが、どうも両国の批准の問題、そしてエープリルフールまで加わったわけですから、これはもういよいよ四月一日の可能性は佐藤総理確信がない、こういうふうに考えざるを得ないのでありますが、重ねてひとつ……。
  281. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あの協定で、両国の批准を得て批准書交換を済ましてそれから二カ月ということでございます。私どもの希望するのは、できるだけそれらの手続を早く済ましてということでありますから、必ずしも四月一日にこだわるわけじゃありません。それより早くできればそれにこしたことはない、かように私は思っておるのであります。しかし、いろいろの諸手続等がございますから、批准書交換にいたしましても、諸法案等の御審議を願う上から見ても、相当の時間的余裕を考えておくのが当然ではないだろうか、かように思います。そうすると、四月一日というのは、批准書の交換を済まして所定の期間を経たその辺がなり得るのではないだろうか、かような予測を立てておるというのが現状であります。
  282. 細谷治嘉

    細谷委員 総理の重ねての答弁をお聞きいたしまして、両国会が批准をする、そして批准のいろいろな事務手続をする、そして発効する二カ月、こういうものを考えていきますと、大体総理は四月一日ということは期待にすぎないんだ、こういうふうにとらざるを得ないと思うのです。そこで、四月一日というのはずいぶん順調にいった話で期待にすぎない、こういうようなことを伺うと、次に、復帰時期はおくれていく、そういたしますと総理の任期、自民党総裁としての任期、そういう問題とやはり重大なかかわり合いがあると私は思うのです。  そこで、ずばりひとつ、これは国民も関心を持っておることでありますから、総理は政権をそれまで担当されるかどうか、ずばりとしたところをひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  283. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ずばりとお答えいたします。  たいへん御心配をいただいておるようですが、私の任期はまだございます。来年の十一月ですかな、それまで任期がございます。御安心願っておきます。
  284. 細谷治嘉

    細谷委員 ただ安心ということじゃなくて、国民の一番関心のポイントはここであろうと思うのです。しかし、任期だけをおっしゃって決意のほどはお聞きできなかったのでありますが、まあこの程度にして次に進みます。  この所信表明の演説を読みまして、けさほど来指摘があったのでありますけれども、私は特に経済に関係する点について質問をいたしたいと思うのであります。  この演説で、経済発展を遂げたその結果として、国内では公害問題などが起こった、また対外的には日本に対する誤解や非難が起こっておる、そういうものがあるとするならば、われわれの進もうとしている方向を忍耐強く誠意をもって訴え続けると、こういうふうに総理は言っております。ところが、公害問題や対外的な摩擦というのは、これは誤解だとか非難だとか、私はそういうものではないのではないかと思うのです。これは申すまでもなく、政治姿勢あるいは政策の誤り、変化への対応に欠けておった、これが最大の原因と申さなければならぬと思うのです。具体的に申し上げますと、局部的な摩擦ということで表現されております繊維の問題、あるいは貿易なり資本の自由化、あるいは対外援助、国内的には物価、公害、各種の災害、過疎・過密問題、医療問題、こういう問題が起こっておるのでありますが、これらは基本的な姿勢に問題があったと同時に、総理の有言不実行という点が原因であったと思うのであります。  そこで総理は、われわれの進もうとする方向とは一体何を考えているのか、それを明らかにしなければ、国民として、勇気をもってそれを乗り越えろといっても協力できないのではないかと思うのであります。この点について、ひとつ総理の所見を承りたい。
  285. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 細谷君も、せっかく協力してやろう、かように考えても、どうもいまの姿勢では協力できないというような御発言だと思いますが、まず問題を整理して国内問題と対外問題と二つに分けてお答えをいたします。  国内問題は、それぞれの原因が明らかになるようにそれに対応することはできると思います。したがって、まず公害対策といたしましては、いわゆる公害国会といわれるものを臨時に開いて、そうして法案を整備したり、あるいは環境庁を発足したりしてこれと取り組む。さらにまた、物価や交通問題等々の問題あるいは過密・過疎、かような現象に対してもやはり国土総合開発というような長期にわたる基本的計画を立てて取り組んでおります。私は、これがやはり政府として、国内問題としての態勢であり、これに処する姿勢である、これはひとつ国民皆さんにも御理解をいただきたいと思います。  また、対外的な問題で、これは誤解やあるいは非難ということばだけで申しておりますが、あるいは日本が軍国化するとか、あるいはエコノミックアニマルだとかいうような批判が行なわれております。さような事実のないこと、これはひとつ忍耐強くわれわれはこれに対応していこう、こういうことでありますので、これは皆さん方にも十分、日本の進路についてあやまちなきを期したい、こういう意味で御協力願い、ただいまのような点の誤解やあるいは非難があれば、それにやはり国民として御協力の上こたえていただきたい、かように思います。簡単に御説明いたします。
  286. 細谷治嘉

    細谷委員 誤解があればということでありますが、具体的に以下質問をしてみたいと思うのであります。  先ほど竹本委員の繊維問題についての質問に対して、通産大臣は、自主規制が業者の一方的なあれで行なわれておるんだから、それをしばらく見守りたい、現状では政府はくちばしをいれる意思はないと、こういうふうにお答えになりました。なお、この繊維問題の背景というのは、予算委員会でもずいぶん詳細に検討、質問されたわけでありますから、私はそれに触れないのでありますけれども、巷間伝えられるところによりますと、たとえば沖繩の返還の問題について、表面には出ないけれども、繊維問題というのはもはや局部的な問題ではなくて、日米経済の大きな問題になっておる。そして経済についてのアメリカの圧力というのは非常に多いということでありますから、現状ではくちばしをいれない、こういうことでは、二、三カ月もしたら、状況が変わったから政府間の話し合いに持っていこう、こういうことも起こらないとは限らないのであります。私はその辺心配しております。こういう点について通産大臣、ひとつはっきりとお空目えいただきたいと思う。
  287. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカの経済の状態、ドル保有の状態等は御承知のとおりでございます。その反面、日本においては外貨の積み増しが行なわれており、輸出は好調でございます。対米向けの輸出は三〇%ないし四〇%年間を通じて増大をしておるということも数字的に事実でございます。そういう中で日米間の経済的に大きな問題として指摘をされておるもの、特にアメリカ側から指摘をされておるものの一つには、自動車は倍増されておるじゃないかということがあります、カラーテレビは六〇%ふえておる、それから対米貿易三〇%の中で、繊維問題は中には倍になっているものもある、中には三〇%のものもあるということで、刺激的な要因の一つとして数えられ、政治的な立場からも議論をせられておることは事実でございます。しかし、繊維は、御承知のとおり、カテゴリー別に見ますと、季節的なものもあるし、嗜好も変わってきますし、そういう意味で、年々去年出たものの半分になるものもあります。また去年出なかったものの倍増というものもあるわけであります。そういうことで、減ったものは言わず、ふえたものは非常に目に余る、これは現実の問題として当然のことだと思うのです。  日米間は経済的にも友好を増進していかなければならぬことは言うをまちません。いまドルの問題に対しても、アメリカのドル防衛だけではなく、国際通貨としてのドルの不安定というものは直接日本の経済に影響を与えるものでございますから、そういう意味で、アメリカの経済の堅調、正常な状態に戻ることは私は日本の利益でもある、これが日米間の共通の利益であるという考えの基本にあるものでございます。しかし、御指摘にございました繊維問題は、お互いが理解をしながら、日米の正常な経済関係を確保、維持、増進をしていくという立場から起こった問題でございまして、これはいま日本の法制上からいうと、政府間協定ができ得ない状態でございます。政府間でもってやるとすれば、貿易管理令等でもって規制を行なうか、そうでなければ、日本の言うことをみんな認めてもらって政府間協定をするかということしかないわけでございまして、非常にめんどうな問題であることは事実でございます。  そういう意味で、民間が自主規制というものを行ない、しかも七月一日から実施をしておるわけでございますから、民間の自主規制というものが守られて、アメリカ側にこれを理解してもらえるということになることが一番望ましい姿でございますから、しばらく状態を見るということはもう当然のことだと思います。だから、現段階において政府間交渉をあらためて行なうことはいたしませんと、こう申し述べておるのでございますから、すんなりおとりいただきたいと思います。
  288. 細谷治嘉

    細谷委員 この問題ではかって国会決議もあったことでありますけれども、この問題に関連して農林大臣にお尋ねしたいのであります。  グレープフルーツの自由化というものを六月三十日になさった。とここが、この問題については現農林大臣はともかくとして、当時の農林大臣なりあるいは農林政務次官は、国会においてグレープフルーツの自由化というのはこの十二月までは、場合によっては、答弁を見ますと、四十六年度中は絶対にやりません、こういうことを答えております。もう一つは、グレープフルーツの自由化を四十六年末なり四十六年度末にやる場合には、前提の条件として、これは日本の温州ミカンの輸入を禁止している州がありますから、それを解禁してもらって、実質的に日本のミカンが拡大するという条件、それをはっきりと確約しなければ絶対自由化をしない前提条件である、こういうことを答えております。にもかかわらず、参議院選挙が済んだ直後の六月三十日にこの自由化を決定してしまった。しかもけさの新聞によりますと、荒勝局長を渡米させて、そしてミカンの輸入禁止州に対して解禁してもらうようにということでアメリカ政府に働きかける、こういうことがけさの新聞に出ております。国会で何べんも約束した大臣や政務次官の約束というものをあなたは破っているじゃないですか。いま業界はどうなっているのですか、ミカン問題で。これについてお答えいただきたい。
  289. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 一般に貿易の自由化ということが世界の趨勢でもございます。また日本の経済も成長した今日、やはり大局的から見まして自由化の方向に進める、こういう態度をとっております。  そこで、グレープジュースでございますが、——フルーツです。グレープフルーツにつきまして、いつまでは自由化しないというような公約は、私はしてないのじゃないかと思いますが、そういう引き継ぎはございませんでした。ただ、そういう意図を持っておったということはうかがわれます。  それからもう一つ、グレープフルーツを自由化する場合に、温州ミカンを相互的に、アメリカのほうの禁止しておるのを解禁する州を拡大させたい、取引のようなことを考えておったとも思いますが、これは私も初めからそういうふうに考えておりまして、またここにおる長谷川農林大臣のときなどもそういうようなことをやっておったことはよく承知しております。でありますが、私は相互的な問題としてこれは取り上げていきたい、こう思いましたので、グレープフルーツのほうは自由化のほうに踏み切りましたが、さらに解禁州をふやすということの手は打つべきだ、こう思いまして、けさ新聞にあったそうですが、荒勝園芸局長を、この前にも行ったのでございますが、さらに近く派遣しまして、その方面の折衝を進める、こういう態度でおります。
  290. 細谷治嘉

    細谷委員 赤城農林大臣は、自由化のことについては国会ではこんな約束はしてないのじゃないかということであります。これは農林省自体がまとめました国会の予算委員会なり農林水産委員会等の議事録をお読みになれば、至るところにはっきりと出ております。さらにことしの五月二十一日に農林水産委員会は、草野一郎平委員長の提案によって満場一致で「果樹農業の振興に関する件」という決議をしている。その二項目目に「昭和四十四年十月の日米協議の経緯に基き、政府は、米国側における温州みかんの解禁州の実質的拡大に見合って、その実施時期を定めるべきである。」と、五月の二十一日に与野党満場一致、農林水産委員会できまっておるのですよ。にもかかわらず、参議院選挙が済んだ直後の六月三十日、政府自体が国会で答えたこと、国会の農林水産委員会が決議したことと全く違ったことをやっておるじゃないですか。その後に大臣になったのでありますから、御存じないということなんでしょうけれども、赤城さんというのは初めて農林大臣になったわけじゃないわけですから、農政の言ってみれば専門家でしょう。知らぬ存ぜぬでは、これはおかしいです。はっきりしておるのですよ。大臣、どう思うのですが。
  291. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまのお話のようなことであったと思います。しかし、情勢がそういうことにもならなかったような情勢から踏み切ったようなことに私も承知しておりますので、これはまたそれでいくよりほかないと思います。
  292. 細谷治嘉

    細谷委員 これは答弁にならぬですよ。国会の決議がどうあろうと、大臣がどう答えようと、情勢がそうなったんです、やむを得ません、これではどうにもならぬです。これは不満です。
  293. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いろいろ問題があると思います。委員会の決議が国会の決議ということになる場合もあるし、また少し——場合もあるようでございます。まあそういういろいろな情勢はありますが、その趣旨は私どもも体して、これからの措置に対していきたいと考えておりますので、いまのところこれをやめるというような考えは持っておりません。
  294. 細谷治嘉

    細谷委員 委員会の決議に——ものも——ものもある、これは——扱った、これではこの五月二十一日の満場一致の衆議院決議というのは一体どういうことなんですか。決定されたものに————もありませんよ。大臣、これは取り消していただかねばいかぬ。
  295. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ————というようなことは取り消しますが、私は、委員会の決議だとか国会の本会議の決議だとか、いろいろの決議が国会の決議としてありますので、そういう点にいろいろ考慮する面もあったというような気持ちがしましたから、委員会の決議に——をつけるということではございません。それに——をつけたような発言については、私は取り消しておきます。
  296. 細谷治嘉

    細谷委員 まあ、決議の——は取り消したのでありますが、問題は残るのですね、このグレープフルーツ。でありますから、いまたいへんな問題が関係生産団体の間に起こっておることは御承知のとおりであります。私は、国際情勢の中において自由化が何でも反対だなんて言っておりません。自由化をおやりになるのならば、やはり国内のそういう関係者が生計が立っていくような条件をつくってやるというのが政治じゃないか、こういうふうに考えるのですよ。そういう観点から、公約を破ったことについては先ほど申し上げて、大臣がその辺についてはわびたわけでありますけれども、この決定を取りやめる意思がないというならば、一体これについてどういう対策を講じようとしているのか、これを明らかにしていただきたい。
  297. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 果樹農業全体にも関係しますが、当面のグレープフルーツの問題に対しましても、果樹全体の問題として考えていかなくちゃならぬと思います。少し大きな先々のこともありますが、何といたしましても、日本の農業のいろいろなものも、国際競争に耐え得るような体質に改善する。それには相当予算も金融もつけなくちゃならぬ、こういうふうに思っていますが、グレープフルーツの問題等につきましては、品種の改善とかあるいはまた出荷、流通の面とか、果樹全体の中のフルーツの問題としても、特にこれが成り立つような、あるいは競争力を持てるような、そしてまた農家がこれによって困らないような措置を検討中でございます。また直接にこれに対して、生き返るようなあるいはやっていけるような措置もとっていきたいと各方面から考慮中でございます。
  298. 細谷治嘉

    細谷委員 手を打っていくつもりだ、こういうお考えであります。先ほど御質問いたしました繊維の問題については、きわめて不十分でありますけれども、規制に関連して措置を講じたですね、予算上の措置も講じた、あるいはニシンの問題については、抱卵ニシン等についての財政措置も講じてきた。寡聞にしてこのグレープフルーツについては何らの財政措置が行なわれたということを私は聞いておりません。これは具体的にひとつお答えいただきたいと思います。
  299. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 季節関税を設けたということが、一つの具体的ないままでやりました措置であります。あと、ニシンの問題とかあるいはまた繊維の問題とかのような財政的に措置をとるということはまだ決定しておりません。いま鋭意検討中でございます。
  300. 細谷治嘉

    細谷委員 重ねてお伺いいたしますが、この秋、日米経済会議がアメリカで行なわれるわけですね。新聞等によりますと、農産物の残存制限品目がありまして、それについても自由化を急いでいく、こういうことになっております。特にアメリカが関心を寄せておりますのは、オレンジとか、あるいは先ほど誤って言ったジュースとか、あるいは各種の糖類とか、牛肉とか、肉加工品とか、乳製品だと伺うのであります。そうなってまいりますと、私はその実体というものについて理解できないのでありますけれども、総合農政、その重要な柱というのは、酪農であり、果樹、園芸であることは、これは申すまでもありません。そういうような柱がどんどんどんどんと倒れていく。残念ながら、やはりこの面については国際競争力がまだないわけですから、そういうことになっております。食管制度は確実に崩壊しちゃったのですね。いま一体農家はこれからどうやっていくのか。農業生産についての意欲すらもおびただしく落ちておる。そういう中に、二段、三段という爆撃を与えるようなものだと思うのであります。そういうことが新聞に出ております。この九月の日米経済会議でさらに進めるのか、こういう点が一つと、そういう問題に対して、どういうように農家が立っていけるような措置を講じていくのか、まとめてひとつお答えいただきたい。
  301. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 残存品目につきましていろいろ新聞等に、あるいはその他出ている品目もございます。しかし、どれをとりましても、農林物資というのは農業に対しては影響力の多いもので、その選択といいますか、選び出すのは非常にむずかしいのでございます。しかし、約束もありまするし、いきさつもありますので、残存品目のある程度のものは自由化する、そういうような方向を持っております。それにつきまして、いまお話しのように、確かに食管の問題もあり、あるいはまたせっかく果樹、畜産等に転換しようとする際に、国際競争力の弱い品物等の自由化による影響は私はあると思います。それにつきましては、先ほどから申し上げておりますように、農業政策の全般に対して転換をする相当強い指示をしていく、こういうような諸政策をもって対処していくよりほかない、こういろので鋭意その対策等も練らしておりまするし、私も指示しております。その対策は具体的にまだまとまっておるというような段階ではございませんが、農業が立っていけるような、不安を持たないような方向に強く推し進めていくつもりでございますので、その点も御了承願っておきたいと思います。
  302. 細谷治嘉

    細谷委員 総理に。いま農林大臣ではまことにおぼつかない話であります。  御承知のように、米が柱でありましたけれども、これは倒れた。そうしてまあ自由化という波に洗われて果樹、園芸、酪農も危機に瀕しておる。こういう中でありますから、一体農家は今後何にたよって農業生産をしていいのか、生産意欲というのが落ちるのはあたりまえだと思うのであります。そこで、こういう時期において、ひとつ農家が安心できるような、総理としての基本的な方針だけをこの席で明らかにしていただきたい、こう思います。
  303. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 農家の方にもまた一般国民の方にも申し上げますが、これからの経済は一国経済ではございません。自由化の方向に向かっていくのが経済の動向であります。いわゆる自由化の方向に立ちおくれないようにそれぞれの業界においても努力していただきたいし、政府もやはりその方面で援助する、救いの手を差し伸べる、これは当然のことであります。  しかして、皆さま方、どういうようにお考えか、国民といってもやはり消費者、生産者ばかりじゃなく消費者の立場に立ってものごとを考えないと、真の経済的な効果はあがってこないんじゃないか、私はさように思います。いわゆる全業生産の場合においても、消費者の立場を考えろというこの声が、農産物においても同じように言われるんじゃないか、かように思っております。したがって、国内で不足するものあるいはまた国内だけにたよっておれば非常に高価につくもの、もっと安いものが外国にあればそういうものはやはり自由化して輸入する、そうして関税も高いものをかけないで済む、そのまま消費者の手に入る、こういうようなことでありたいものだと思います。しかしながら、かように申しましたからといって、急激な変化を与えることはこれはよくないことでありますから、私は各業界に対する影響度を十分考えて、さような方向で順次消費者本位に経済が向かっていくというか転向していく、これが望ましいのではないだろうか、かように思います。  したがいまして、自由化ということを簡単に考えないで、これがどこから要請されたとかということでなしに、今日の国内の経済から見れば自由化の方向にものごとは考えていかなければいかぬのだ、この基本的姿勢だけについては、十分の御理解がいただきたいと思います。  また別な表現をするならば、国内におきましても利己的な考え方では済まされないが、国際的においてもやはり国際エゴイズムはもう通らないんだ、やはりお互いに平等な立場において、また経済性のある方向においてわれわれは経済活動をするというか、そういう方向姿勢を改めていかなければならぬ、かように私は思います。
  304. 細谷治嘉

    細谷委員 これは申すまでもなく、消費があるから生産がある。したがって、その生産ができるような、再生産ができるような、そういう体制は、自由化をやっていくにあたっても当然政治の面で考えてやるべきだと私は思うのであります。総理もそういう意味でお答えになったと思いますから、この点はこれで次に進ましていただきます。  次にお尋ねいたしたい点は、新聞等を読みますと、たいへんな災害が毎日の新聞に出ております。鉄砲雨が降って兵庫県に災害が起こった、あるいはこの間日航機が北海道のほうに向かうときに落雷で危機一髪のところであった、こういうような状態であります。あるいはコカコーラのびんでけがをする、こういうことで日常生活の中にも危険が一ぱい迫ってきておる、こういうことであります。  そこで私が具体的にお尋ねしたい点は、これは通産大臣に尋ねますが、十七日の午前、北海道の住友歌志内炭鉱でまたしても——またしてもというのは、四十四年の五月にあたったわけでありますから、二年半もたたぬ間にまた大爆発があったわけです。入坑者五十七人のうち三十人が死亡をいたしたわけですね。十五人が入院をいたしております。私は従来の石炭の災害を見てみますと、再建問題というのが起こりまして、そうして話がきまった直後あるいは若干の月日が流れた後にこういう事故が起こっております。  私は、この住友炭鉱の再建の問題が石炭特別委員会で議論になったときに、再建もよろしいけれども災害には特に気をつけるようにしてくれと通産省の係の人にも申し上げたのでありますけれども、十日もせぬうちに爆発事故が起こりました。その詳細はいま衆議院のほうから調査に行っておりますけれども、このガス爆発はガス突出によるものであることは明らかであります。この住友歌志内炭鉱は、一トンの炭を掘るのに八十立米のガスが出るというのでありますから、たいへんな危険な炭鉱であるわけです。そこでいろいろ保安に気をつけたということでありますけれども、一トンについて八十立米もメタンガスが出てくるわけでありますけれども、そのわずか四〇%程度しかガス抜きをしていないわけですね。あとは回ってくる空気、それによってメタンを薄めようというわけであります。メタンというのは二%もまざればもう非常な危険な状態になるわけでありますから、これで安全だとは私は言えないと思うのであります。ですから、突然ガスの突出が起こりますと、これはもう爆弾が破裂をするようなものであります。炭の粉がどんどん当たってくるのでありますから、呼吸困難の前に粉じんによる鉄砲で大体の人間は死んでしまうだろうと私は思うのであります。こういうことを見ますと、天災ということではなくて、私はやはり人災ということが言えるんではないかと思うのであります。詳しいことはいま調査中でありますけれども、通産大臣、簡単に、この災害は起こるべくして起こったんだと私は考えるのでありますが、どうお考えですか。
  305. 田中角榮

    田中国務大臣 住友石炭の歌志内鉱における災害につきましては、たいへんに遺憾なことでございまして、罹災者及び罹災者御家族に対しまして心から弔意とお見舞いを申し上げたいと存じます。  炭鉱、石炭エネルギーというものが曲がりかどに来ておることは御承知のとおりでございます。スクラップ・アンド・ビルドというようなたいへんむずかしい仕事をやりながら、約三千四、五百万トンの炭を掘っておるわけでございますが、炭鉱災害というものが間々起こりますので、これを排除するために相当努力を続けておることは事実でございます。この住友石炭については二カ月、三カ月間再開をするかどうか労使の間にも問題があったわけでございますが、ようやく百二億円という大きな金額をおおむね折半するような状態で政府も最終的な支出をきめた翌朝かかる事態が起こったわけでありまして、ほんとうに遺憾だと存じております。  いま災害の状況その他はつまびらかにいたすべく調査をいたしております。おりますが、この歌志内鉱はいま御指摘のとおりガス突出の多いところであるということで、ガスと水抜きは相当やっておるようでございます。特に四十二年は四十七回も突出回数があった。四十三年三十三回、こういうことでございましたので、保安上の施設も行ない、十分注意をした結果、四十四年七回、四十五年一回、四十六年四月から六月までゼロということであったわけです。そういう意味で炭鉱労働者の確保のめどもつき、再開に踏み切ったということでありましょうが、その翌日あのような大事故で二十九名死亡確定いたしております。一名不明でございますが、全く皮肉な現象だとしみじみたる思いでございます。私は政務次官、札幌鉱山保安局長本省局長等急派をしまして、との問題を徹底的にひとつ究明をしなければならないということで、鉱山労働者等に不安が起こってはなりませんから、この問題は政府及び住友で協調しながら事業継続をするという原則的確認のもとに災害状況調査を行なっておるわけでございます。  人災ではないかと言われても、私はそれに反論をする気はございません。ございませんが、ガス突出という非常にむずかしい状態の中で炭を出さなければならない、出しておるという事実に対しまして、これから保安の施設や整備に対しては全力を傾くべきだと存じます。かかる災害はもう絶対に起こしてはならないというほんとうに痛切なる感じでございます。また、石炭特別委員会等の御意見等もお聞きをして、万全の処置を講じてまいるつもりでございます。
  306. 細谷治嘉

    細谷委員 ガス突出について手を打ってその後小康状態を保ってきたというけれども、この炭鉱というのはさっきも申し上げたように、大体一トンの炭を掘るのに八十立米ものガスが吹き出す。日本でトン当たりのガス量というものはおそらく二番目くらいでしょう。そのうちの半分もガスを抜かないで掘るというのでありますから、これはガス突出が起こるのはしごく当然、こういうことをやっておったところに問題があるのであって、そこで私は労働大臣にお尋ねしたいのであります。  けさの新聞にも、ある新聞の社説で取り扱っておったと思うのでありますけれども、今日の災害というのは、大体法律を守らないために起こった事故というのは二割くらいだ、法律を守っておった、法律が示す基準を守っておったにかかわらず事故が起こったのが八割だ、こういうことがけさの新聞の論説にも取り上げられております。ここに私は今日の問題があると思うのであります。したがって、労働災害の大部分は法律を守っておっても起こるのでありますから、この問題について労働基準法研究会の報告というのが最近労働大臣に出されたようでありますが、一体こういう問題について労働省としてはどう対処していくのか。あるいは後ほど質問いたしますが、環境庁ができましたが、公害問題については横断的に環境庁が問題をチェックするということでありますけれども、労働問題については労働省はチェックできないでしょう。運輸省の問題は運輸問題、通産省の問題は、石炭は通産省ですね。そういう形でばらばらなんですよ。こういうところに、この労働災害というものは起こるべくして起こった。そういう点についての対策が今日的じゃないのだ、私はこういうふうに申さなければならぬと思うのであります。この点についてひとつ労働大臣、そして総理のお考えをしかと伺っておきたいと思います。
  307. 原健三郎

    ○原国務大臣 細谷委員にお答え申し上げます。  大体質問二つございまして、第一は、今日の労働基準法によりましては安全は維持されないであろう、公害も起こるであろう、こういう御趣旨でございますが、今日公害が国の最大の問題となっておりますので、労働省といたしましても、昨年九月そういう総点検を行ないまして、不十分であるという結論が出ましたので、本年五月新たなる規定を制定いたしました。その規定は特定化学物質等障害予防規則というのを新たにつくりまして、五月から実施いたしております。八章四十二条にわたる膨大なもので、これを新たに制定いたしまして万全を期していきたい、まずこの規制によって監督指導を十分いたしていきたい。のみならず本年は、そういう産業の安全衛生融資制度というのを新たに制定いたしまして、ことしの予算では三十五億入っております。来年度はもっとこれを増大いたしたいと思っております。  第二のお尋ねの労働基準法研究会から提出された報告書を去る七月十三日に私は受け取りました。石井会長はじめ各界の権威の方々が労働基準法の中の安全衛生に関する基本的事項について、現状の問題点を指摘して報告がございました。この報告書は、行政体制の面では従来重点を置いてきた最低基準の確保ということ以外に、第二に実態に即した指導、勧告を含む幅広い行政の展開、行政部門における人手不足解消のための行政体制の整備などを指摘いたしております。また公害防止の問題については、事業場における職場環境の整備により、労働者の安全衛生の確保とあわせて公害源の解消につとめることを提言いたしておるのであります。非常に時宜に適した報告であると思いまして、われわれはいま細谷先生の御指摘もございましたので、労働省といたしましては今後この報告内容を十分尊重し、従来の安全衛生対策に抜本的検討を加え、来通常国会には総合的な立法措置を特別に考えて善処いたしたい。積極的に取り組んでやる考えでありますので、御了承を願いたいと思います。
  308. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 炭鉱ガス爆発、ガス突出、特別なことばを使っておりますが、どちらにいたしましてもたいへん希有な災害だといわれております。この炭鉱自身、歌志内炭鉱がそういうようにガスの多い炭鉱だ、先ほど御指摘になったとおりです。ガスの多いところならばなるほどに、できるだけ事前にガス抜きをもっと忠実にやらなければならないだろう、かように思いますが、最近住友系の炭鉱の閉鎖が伝えられた際でありますし、ようやくこれが持続するときまったときにこういう事故が起きたのでございますので、私は特に保安上手抜かりでもあったのではないか、こういうことも実は注意したのでありますけれども、もちろんあとからのことですから、その注意が、いたしましてもこれは役立たないことです。けれどもとにかくたいへん問題を起こしていた炭鉱でありますだけに、私どもといたしましても残念にたえない次第であります。もちろん罹災者の方々に対して丁重な弔意を述べるとともに・これに対する手当ては、処遇はいたさなければならぬ、かように思いますが、それはそれとして、いまも労働大臣からお答えいたしましたように、石井先生から出ておる炭鉱災害についての保安基準等についてやはり再検討すべきような筋のものもあるのではないだろうか。あなたは三池にもおられたことだと思いますが、あそこらの炭鉱についての災害予防、こういうことにも特段な留意がされておるのだろうと思いますので、私は、各方面の衆知を集めて、こういう事故が再発しないように最善な対策を立てるべきだ、かように思います。ただいま事故が起きた後にかようなことを申しましても、たいへん残念で追いつかない次第でございますけれども、御指摘がありますならば、なおそういう点をも参酌して対策について万全を期していきたい、かように思います。
  309. 細谷治嘉

    細谷委員 時間がありませんから、まだお聞きしたい点がありますけれども、次に進みます。  せんだっての所信表明で、総理は、中教審答申について、これを積極的に推進してまいる決意であります、とこう述べられたのであります。ところでこの中教審答申というのは中間答申と基本的にはほぼ同一なものでありまして、中間答申が出た際に、国民の中でもいろいろと関係者あるいは専門家から意見が出されたものであります。あるいは疑問が提起され、反対を表明された団体も多かったのでありますけれども、そういう点はほとんど手直しされることなしに、言ってみますならば、憲法と教育基本法に対立するような内容を持っておると私は思うのであります。この問題について先ほど長々と文部大臣が言われたのでありますけれども、十九日の新聞に西岡前文部政務次官が「教育改革前夜の仕事」という一文を載せられております。その一部分を御紹介いたしますと、「私は、現状ではその実現」——この答申の実現ですね——「について大きな疑問を持っている。なぜなら、現在の文部省には、教育改革を断行するだけの力が与えられていないだけでなく、教育改革の基本について、国民的合意が全く存在していないからである。このことを中教審はどのように認識しているのか、不思議でならない。」こういう内容。他にありますよ。あるいは教特法。前国会で強行採決をやった教特法について、現実にこれを実行するにあたって、政務次官としてずいぶん苦労されたといっておりますが、関係団体と労をいとわず話し合いでこの問題を解決したことも私は承知しております。そういう苦労の中からこういう一文を私はものしたと思うのであります。国民的合意がなければならぬ、いろいろな人と話し合っていかなければ、国家百年のいしずえである教育というのはやり得ないと私は思うのであります。総理は西岡前政務次官のその新聞に出た文章をお読みになっておらないかもしれませんけれども、私は、あれを読みまして、一、二異議のあるところはありますけれども、その全体の彼のかまえというのは同感であります。これについて一体総理大臣どうお考えになるかお聞きいたします。
  310. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 西岡政務次官のどういう論文か、私は読んでおりません。おりませんが、中教審の答申、これはやはり何といいましても教育費の父兄負担の軽減あるいは私学振興、もっと私学に対する補助が強化されてしかるべきだ、あるいはまた校舎等の施設の整備だとか、あるいはまたもっと大事なことは何といっても教師の資質を高める、こういう意味で、実は、教師の処遇等の広範にわたる答申だと思います。私は、それぞれがただ単に教科科目の立場から議論されるよりも、その基本的な取り組み方としては、いま欠いておるものをそれぞれが指摘されておる、かように思います。しかし、学校施設にいたしましても、あの大きな金額では急にこれが整備されるとも思いませんが、私は、何よりも一番大事なことは、いまの教師の処遇の問題、そうして資質を高めるということ、そういう基本的な問題からやはり教育改革に取り組むべきじゃないか、かように思っておりますので、私、この取り組み方とすればいろいろありますが、そういうような問題を含んでおりますから、おそらくそれぞれの関係者の意見は一致をもたらし得るのじゃないか。先ほど高見君もちょっと一言触れたように、教育界の諸君とも話をしたい、そうしてその意見も徴してと、かようなことを申しておりますから、私はそれは可能なことではないか。今度、難事業には違いありません。私は森戸会長から答申書をいただいたときに、この答申書は重いですよ、ただたいへん分厚なものだというだけではありません、中身も非常に重いものです、しかしどうかこれを誠心誠意で取り組んでください、かような答申を受けております。さような意味で、この答申と取り組む、その姿勢だけをこの際は述べておきたいと思います。したがいまして、細谷君もやはりこの中身についてのいろいろの批判はあるだろうと思いますが、一番私どもが心配しておるのは、政府自身が教育制度に、あるいは教育の内容に介入するのじゃないか、こういうような議論がもうすでに出ております。私は、さような意味でこの問題が取り上げられるのではないのだから、そういう点で誤解のないように願いたいと思いますし、私はいまの現状の六三制ではどうも不十分な点が幾つも指摘されるように思います。それらの点を考えながらやはり真剣に取り組むべきだ、かように思っております。一言所見を述べてお答えといたします。
  311. 細谷治嘉

    細谷委員 総合的、長期的に積極的に取り組む。問題はその方向であり、大前提というのはやはり国民の合意というのが土台でなければならぬと思う。先ほど文部大臣も、そういうためにもいろいろな人の意見を聞く、話し合う、こういうことでありますから、きょうはこれ以上申し上げません。  そこで、政治姿勢に関連して、七月一日に発足したばかりの環境庁長官にお尋ねしたいのであります。けさの新聞によりますと「環境庁仕事初めは自然破壊?」、こういう見出しの記事が出ておりますよ。自然を守らなければならぬということで発足いたしました環境庁が、「仕事初めは自然破壊」むろんその下にクエスチョンマークはついておりますよ。クエスチョンマークはついておりますけれども、この記事を読んだ限りにおいては、私はせっかくでき上がった環境庁でありますけれども、これでは期待ができないんじゃないか。今日の重要な公害問題、たいへんな背景を持っておるわけでありますから、これに取り組む姿勢ではないのではないか、こういうふうに率直に感じました。まずこの点を承って次に進みたいと思います。
  312. 大石武一

    ○大石国務大臣 ただいまの御質問でございますが、まことに残念でございますが、事実でございます。  そのいきさつを簡単に申し上げたいと思います。  北海道の北のほうに網走国定公園がございます。その近くの斜里という町にホクレンで経営するでん粉糖、ビート糖の工場がございます。その工場は十年以上前から運転しておりますが、去年その拡張工事を行ないまして、廃液が増加することによりまして、その廃液の処理に困りまして、網走国定公園の内部に、約二十二ヘクタールの地域にろ過沈でん池を通した廃液を流して、それに吸い取らせようという計画を立てまして、その旨を北海道庁に申し入れたのでございます。それが一年間の間に、北海道庁におきましては、たとえば自然保護協会であるとか自然保護審議会、北海道の、そういうものの了解を得まして、本年の六月十二日に厚生省に、その行政指導による協議という目的をもって申し出てきたわけでございます。厚生省の国立公園部におきましては慎重に検討しました結果、やむを得ないという判断のもとに、六月三十日に国立公園部長の決裁をもってこれに同意を与えたのでございます。そうしたことがこのてんまつでございます。  せっかく七月一日から環境庁が発足いたしまして、みな日本の自然を守り、公害から国民を守ろうという情熱に燃えておりまして、国民も大きな期待をこれに寄せておりますのに、このようなことがございましたのはまことに残念でございます。まことに申しわけないとも思いますし、また国立公園、環境庁の前途にも一まつの不安を与えたことになりますので、私としても残念でございますが、これはでき上がったことでございます。何としてもこの汚名を挽回して、ほんとうに環境庁が国民の味方として、自然を守り、公害に対するという熱意を今後とも持ち続けてまいりたいと念願する次第でございます。  なお、どのような自然の破壊になるのか私わかりませんので、できるなら早く現地に飛んでまいりまして実態を見て、できるだけの対策を立てまして、このあと始末をよくいたしたいと思います。  また、残念ながらこの国立公園部が許可を与えましたのは、これを押えるだけの権限がございません。今度は幸いに環境庁ができましたので、日本のすべての自然を守り得るような、そのような権限を持ちたいと思いまして、来たる通常国会には、そのような権限を持った自然保護法をつくりたい、そうして日本の自然を守る権限を持ちたい、こういうことを念願しておる次第でございます。  以上が実態でございます。
  313. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、この問題については時間がありませんから、これ以上申しませんけれども総理、けさのこの新聞に出たのに、私は、これは新しく発足した期待される環境庁になっていただきたいという意味でこの問題を質問しようということになりましたら、私に質問をやめてくれという圧力が現にかかるのですよ、総理。公害というのはこれほど大きな問題、むずかしい問題なんですよ。国会議員の質問もひとつやめてくれぬかということで、公のものを通じてひそかにそういう圧力がかかってくる。  次に進みます。そこで私はお聞きしたいのでありますけれども、去る六月にイタイイタイ病の第一次の訴訟判決が行なわれたことは、総理御承知のとおりであります。公害問題というのは法律ができたらいいんだというそんなものではない、深刻なものであるということはいまの一例をもってもおわかりであろうと思うのでありますが、この判決について総理はどう評価されておるのか、簡単にひとつお答えいただきたい。
  314. 大石武一

    ○大石国務大臣 恐縮でございますが、細谷委員、もう一回質問の御趣旨をおっしゃっていただきたいと思います。
  315. 細谷治嘉

    細谷委員 この富山裁判は公害史上私は画期的な判決であろうと思うのであります。これについては総理どう評価されておるのか。御承知のように、被告は控訴しておるのですね。そしてすでに第二次の裁判、訴訟の公判は始まっておるのですよ。ですからこの富山の裁判をどう評価しているのかということをお尋ねしておる。
  316. 大石武一

    ○大石国務大臣 総理にかわりましてお答えをいたします。  率直に申しまして、この判決が出たとき、私はのどにつかえたものがすっと下がったような感じがいたしました。われわれはこの病気の原因、結果につきまして厚生省と全く同じ見解を持っております。したがって、その感が深いのでございます。われわれは今後とも公害から国民を守らなければなりません。そういう意味で、さらに企業責任を明確にして、そして無過失賠償責任制度を何としても次の国会に提案してこれを創設したいという熱意を持つに至ったのでございます。
  317. 細谷治嘉

    細谷委員 総理にかわって環境庁長官が今度の富山の判決については高く評価している、こういうことであります。  そこでやや具体的にお尋ねしたいのであります。  この裁判の争点というのは、原告側は疫学的調査による究明と病理的な研究、外国等の例からの究明をなさった、動物実験によってそれを裏づけた、これでも因果関係がはっきりするじゃないか、こういうことであります。ところが被告側はこれに対して、人間がカドミウムを経口的に摂取する場合の体内のカドミウムの吸収率は一体どういうふうになるのか、カドミウム体内蓄積量と腎尿細管の機能障害の関係をはっきりしろ、イタイイタイ病の発生メカニズムは一体どういうものなんだ、こういう自然科学的な問題を持ち出しました。自然科学的究明なら、これはひょっとしたら、ドイツの例のあの睡眠薬の裁判のように、これはもう果てしないでしょう。そんなことではいかぬのだということで、法律的な因果関係がはっきりすればこれはよろしいのだというのが判決の重要な点であります。あなたはそれを高く評価なさったのでありますから、私がいま申し上げた点でよろしいですか。
  318. 大石武一

    ○大石国務大臣 先ほど申し上げましたように、厚生省の見解、これは因果関係を認めておるのでございますが、これをわれわれもはっきりと受け継いで支持いたしておるのでございます。
  319. 細谷治嘉

    細谷委員 もう一度申し上げますと、因果関係というのは法的な因果関係であって、むろん法的な因果関係であるからには、自然的な因果関係の存在を前提とするけれども、自然的な因果関係そのものじゃないのだ、ですから、際限のないような自然科学的論争にすりかえるような、そういうことでは公害問題は片づかないのだ、こういうふうに私は思うのであります。このとおりでよろしいですね。  そこでお尋ねいたしたいのでありますが、最高裁の事務総長さん、いらっしゃっているでしょうか。——この第一次の裁判をやる際に二十一名の患者が判決を知ることなく死んでいっているのです、長くかかっていますから。ところがこの裁判をやっている三人の判事が、ことしの四月一日、二人転勤されちゃったのです。事実ですか。
  320. 吉田豊

    ○吉田最高裁判所長官代理者 このいわゆる富山地方裁判所に係属しておりましたイタイイタイ病訴訟事件を担当しておりました三人の裁判官のうち、二人が転勤いたしましたことは事実でございます。
  321. 細谷治嘉

    細谷委員 仄聞するところによると、三人のうちもう一人も動かそうとした、ところがこれは弁護団なり、地域住民の反対でできなくて、一人だけ残した、こういうふうにいわれております。問題の四日市の場合でも、この問題の海の汚染に一生懸命取り組んだ係官が和歌山の奥のほうに吹っ飛ばされちゃった、こういう新聞記事が出ております。私は、この問題は、いわれる司法の反動性、今日の最高裁の態度、こういうものと一連の関連があるのではないかと思うのでありますが、総理、いかがでしょうか。
  322. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私もいまのお尋ねを取り違えているかと思いますが、聞きかえたように思いますが、裁判は、もちろん私が申し上げるまでもなく独立して行なわれるもので、その裁判の結果にとやかく私どもが批判することはいかがと思いますから、その点は避けさせていただきたい。私は、裁判の独立、これは守られておる、かように思っております。
  323. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、三年間もかかるような公判で、やがて結審という段階で担当の三名の判事を動かす、まあ結論としては二名動かしたということでありますけれども、この辺に今日の公害問題の真相の一つがあるのではないかと思うのであります。しかし、これはいまこれ以上申し上げません。  そこで、ひとつ最高裁にお尋ねしたいのでありますけれども、すでに今月の十七日から第二次の訴訟の口頭弁論が行なわれております。このイタイイタイ病だけでも六次まであるわけです。そして原告の人数は五百名をこえるわけです。そのほかに第一水俣病、第二水俣病、あるいは四日市病、さらにはカネミライスオイルというようなことで、四大公害裁判、五大公害裁判といわれておるわけでありますけれども、私は、第二次公判、第三次公判とこのイタイイタイ病は続くわけでありますけれども、スタートからやるようじゃこれはまた長くかかってかなわぬ。せっかく環境庁長官も高く評価される、内閣総理大臣も評価されるというような結論があるわけでありますから、第一次の公判というものを尊重して迅速にこの判決を下すべきではないかと思います。この点どう考えるか。  もう一つは、先ほど申し上げたように、原告が非常に多いわけでありますから、裁判の公開という原則が満たされないような地方裁判所の狭さで、そしてなかなか入れない、こういうことであります。でありますから、全員関係者が入れるような大法廷というようなものをつくって、関係者が全部入れるような態勢を整えることが必要ではないかと思うのでありますが、この二点についてお答えいただきたい。
  324. 吉田豊

    ○吉田最高裁判所長官代理者 さきにお尋ねになりましたいわゆるイタイイタイ病訴訟事件の裁判官の二人は転任いたしましたが、もう一人も転任させようとしたのではないかというお話がございましたけれども、そういう事実は全然ございません。二人の裁判官が転任いたしましたのは、特に裁判長にりきましては、御承知かと思いますけれども、裁判所では毎年四月一日前後に在勤三カ年に達する裁判官を定期的に異動さしております。この富山のイタイイタイ病訴訟の裁判長であった裁判官も、定期異動の一環として転任されたわけでございます。第二次、第三次、第四次とイタイイタイ病訴訟が富山地方裁判所で係属しておりますので、その意味からいいますと、担当裁判官が転任しないほうが非常に便利でございますけれども、全国的、いわゆる全国民の訴訟上の利益を考えますと、どうしても裁判官の異動を行なわなければなりませんので、ある程度は訴訟の利益を害することがあるかもしれません。その点は、はなはだ遺憾だとは存じております。
  325. 細谷治嘉

    細谷委員 公害裁判でありますか、第一次の訴訟はきわめて長期間を要して、そしてりっぱな、因果関係を明らかにした判決が出たのでありますから、これをひとつ十分活用して裁判の迅速化をはかっていただきたい、こう思います。  時間がありませんので、まとめてひとつ質問をいたします。  まず、総理にお聞きいたしたのでありますけれども総理はたびたび無過失責任の法制化というものを公約されておるのでありますが、今度の富山の裁判、これは幸いなことに、鉱業法の百九条に無過失賠償責任の条項がありますから、すんなり行なったのでありますけれども、同じような因果関係を持っておる水俣病ということになりますと、これは鉱業法によるわけにいきませんから、民法という形になってまいりますと、これはたいへんな問題になってまいります。でありますから、これは民法の特例として、どうしても早くこの無過失賠償責任制度を確立しなければならぬ事態に今日ある。そうでなければ、同じような因果関係なのに、一方は鉱業法の百九条で救われた、一方は救われない、こういうことになる。因果関係の無過失の問題で、過失責任があったかどうかということの問題が出てきますから、不公平になってくると思うのであります。ですから、今日この段階には、一日も早く無過失責任を確立する必要があると思うのでありますが、いかがでしょうか。
  326. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私もさように思います。前国会でも、会期がもうちょっと長かったら出すことができたかと思います。それが出せなかった。今回は通常国会に必ず提案する、これはもう本会議でもお答えしたとおりでございます。
  327. 細谷治嘉

    細谷委員 そこで、環境庁長官、お尋ねしたいのでありますけれども、あなたはこの間四日市に参りまして、見て、そうして政府が考えておる、国会には出されませんでしたけれども、成案を得つつある、あるいは委員会の意見を聞いた、その内容は不十分である、そこで亜硫酸ガス等もつけ加えなければならぬ、いわゆる複合公害、こういうものもつけ加えなければならぬ、こういうことを発言なさいました。  そこで、私は、もう時間がありませんからお尋ねしたいのでありますけれども政府が考えておる内容というのは、大気汚染防止法の中の一条として無過失責任制度の条項を入れよう、水質汚濁防止法の中に無過失責任の条項を入れよう、こういうきわめて限定されたものなのであります。私は、今日この段階において、無過失責任賠償制度を確立するには民法の特例としてやらなければならぬ。そして大気汚染だとか水質汚濁だとか、そういう一本一本の法律についてそういう条項を加えるのではなくて、やはり無過失責任の民法の特例としての法律をつくらなければならぬ。当然その中には、亜硫酸ガス等複合汚染を加えるべきであろう。複合汚染を加える場合に、いわゆる共同不法行為という問題として相手が、加害者が特定できるか特定できないか。コンビナートの場合には、私ははっきり特定できると思うのです。その場合の寄与率等の問題がありますけれども、特定できると思うのです。東京の空気汚染は一体どうなるかということになりますと、これはまあなかなか特定できないと思うのであります。でありますから、そういう問題については、当然被害者、公害病患者については救済法等で救済をする。そういうようなことで、特定できるようなコンビナートに起こった、四日市等に起こったようなものについては、公害病患者は無過失責任という形ではっきりと救済される。むろん過去にさかのぼるのかという問題があります。しかし、時間がありませんからそれは言いませんけれども、やはりつくるならばきちんとしたものにしなければならぬと思うのでありますが、これをお尋ねします。
  328. 大石武一

    ○大石国務大臣 複合汚染物質をこれにつけ加えたいと考えております。  なお、この無過失賠償責任の制度につきましては、いま庁内で一意その成案を得ることに努力中でございますので、具体的な成案はございませんので具体的には申し上げられませんけれども、一応問題になっている点だけを申し上げたいと思います。  これを一本の法律にしたらいいのか、水質汚濁防止とかあるいは大気汚染防止の法案に入れたらいいのかということにつきましては、私も一本の法案がいいと思います。ただ、前国会におきましては、まあ時間的な問題もございましたが、いろいろな事情によりまして一本の法律案にまとめることができませんでした。われわれはそのような事情も十分に勘案いたしまして、とにかく次の通常国会——前に私、次の国会と申しましたが、次の通常国会でございます。次の通常国会には何としてもこの無過失賠償責任制度を打ち立てなければなりませんので、できるならば一本の法案でいいと思いますが、それはどちらになるか、そのときの、今後の努力次第でございます、はっきり申し上げられませんが、いまのような考えでございます。  それからもう一つ、なるほど四日市のようなところでは損害賠償請求をすることができると思います。できますが、その場合にも、はたして一つの企業だけでそれが責任にたえ得るかどうか、はたして他の企業が、その一つの企業が損害を賠償した場合に、それを責めを負うかどうかというむずかしい問題もございますので、そういうものにつきましては、それがすっきりとすればその賠償をなし得るような、ひとつそのような形のものをつくりたい、こういうものをいま考えておる次第でございます。
  329. 細谷治嘉

    細谷委員 もう私の時間がないのですが、総理、やはり総理が冒頭おっしゃっておったように、民法の特例としてオーソドックスに無過失賠償責任制度を確立することが今日の公害問題にたえ得る唯一の道であろう。ですから、大気汚染防止法の中にとか水質汚濁防止法の中に入れるとか、その他のあれに入れるとか、こういうことではなくて、きちんと法体系の中でこれを確立していただきたい。これは今日非常に大きな問題であります。私は、この公害問題で時間があれば産業立地の問題あるいは地盤沈下の問題等について、やはり公害問題と非常に重要な関係がありますし、被害者をどう救済するのか、こういう問題等について質問を進めたかったのでありますけれども、時間がありませんから、最後にこの点について総理のお答えを聞いておきたいと思います。
  330. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御意見を伺うと、私どもの考えておるものとずいぶん変わっておるようでございます。いわゆる民法の大原則、これについて全面的に例外を設けろ、こういうような御趣旨のようですが、しかし、わかりいいように、いままでできました各種法案、法律を、その中から関係のものを引き抜いて、そうしてまとまりのいい特別立法をするか、あるいは現存の法律を改正するか、まあその辺のところはだいぶん細谷君と私どもの考えとの間に開きがあるようですが、いずれにいたしましても、私どもの考えられる範囲でこの無過失賠償責任、その制度も明らかにしたい、かように考えております。
  331. 細谷治嘉

    細谷委員 総理、最後に、環境庁長官も、やはりこれをまとめて民法の特例としてそういう制度を確立することがベターだ、こう言っているわけですから、いろいろなひっかかりがありましょうけれども、ひとつ進んできちんとした制度を確立していただきたい、これを要望しておきます。
  332. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これで細谷君の質疑は終了いたしました。  次に、東中光雄君。
  333. 東中光雄

    東中委員 私は、日本共産党を代表して、ベトナム問題、日中問題について若干お聞きしたいと思います。  ベトナム戦争に関連をしまして、御承知の米国防総省の秘密文書が暴露されて、いま米国内はもちろん、世界的に大きな問題になっておるわけです。総理も新聞でその内容は読んでおる、こうおっしゃったわけでありますが、ひとつその内容についての総理のお考え、感想をお伺いしたい、こう思うわけです。
  334. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 新聞と私どもも、いろいろ扱い方についてしばしは問題を起こしますが、なかなかアメリカの新聞記者も腕があるな、機密文書を手に入れて、そしてそれを記事にする、えらいものだな、これにまず第一驚いた。また、はたしてこれがそのままであるかどうか。と申しますのは、この中にはやはり取り扱った人の感想も入り、そして記事になっておる面もありますし、またこれが国防総省だけの中間的な段階での取り扱われた書類でもあるようですし、そこらのところを考えながら、ちょっと全体を判断するのにはいかがかな、かように私は思っております。
  335. 東中光雄

    東中委員 この文書の内容は、意見の部分もそれはあります。しかし、資料部分というのはずいぶん膨大なものがすでに出されているわけです。しかも国防総省の文書であって、国防長官を取り巻く、要するにベトナム戦争そのものの性格を規定するような内容のものがずいぶん出ております。政府が、あるいは佐藤総理が発表されてきたベトナム戦争についての考え方、それを根底からくつがえすような内容というのがずいぶん事実としてある、こういう状態でありますが、ですから、その内容についての総理の感想、お考え、これを明らかにしていただきたい。
  336. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 東中君に申しますが、いままでたびたび答えたように思いますので、私はこの新聞記事が出たからといって、ベトナム戦争に対する政府のいままでの所感、感じ方を変える考えはございません。それだけはっきり申し上げておきます。
  337. 東中光雄

    東中委員 外務大臣代理は、先ほどの質疑で、この文書を米国政府に公式に要求する段階ではない、政府として正式に話し合うことはそういう立場でないけれども、事実上入手するようにしたい、こういうふうに答弁されておるわけですが、なぜ正式に取り寄せる、あるいはそのことについて話し合うことができないのですか、ひとつ。
  338. 木村俊夫

    木村国務大臣 いま総理がお答えいたしましたとおり、このベトナム機密文書なるものは、国防総省における作戦段階において出てきた部分が非常に多いということと、その内容にかかわらず、この機密文書が目下アメリカ内においても裁判事件として扱われております。そういう種類、性格の文書であるがゆえに、政府から正式にアメリカ政府に対してこの文書を入手するべく措置をいたすことは適当でない、こういう考えでおります。
  339. 東中光雄

    東中委員 いま外務大臣、作戦段階のことについての文書だ、こう言われているのです。まさにその作戦段階のことがベトナム戦争の性格を規定してくるわけです。そういう点でいえば、総理がこの間の本会議でも言われておりますように、北越の浸透に対抗する南越、南ベトナム政府ですかの要請に基づく集団自衛行動だ、こう言われておるわけでありますけれども、この見解とまつ正面から作戦行動そのものでくつがえすような文書が、現にもうすでに資料として出されて明らかにされているわけですから、それについて事実上取り寄せて検討する、事実上入手できるように外務大臣代理は努力すると言われているのですが、それは当然検討する必要があるから取り寄せる、こういうことなんだと思うのですが、そうじゃないですか。
  340. 木村俊夫

    木村国務大臣 当然、わが国は参戦当事者でもございませんし、戦闘作戦行動の個々についてコメントする立場におりませんが、事ここにいろいろ報道されております以上、政府といたしましてもこれを非公式に入手する努力はいたしますということを申し上げております。
  341. 東中光雄

    東中委員 この国防総省の秘密文書によりますと、たとえば一九六四年の二月一日、いわゆる34A作戦計画という暗号名で北ベトナムに対する精巧な隠密軍事作戦計画が開始されたということが書かれています。しかもその内容は、U2型スパイ機による北ベトナム偵察飛行、情報収集のための北ベトナム市民の誘拐、北ベトナム領内への破壊・心理作戦班の降下、鉄道や橋を爆破するための海上からの奇襲上陸攻撃、魚雷艇による北ベトナム沿岸施設の砲撃など、こういうものが含まれているということが書かれています。こういう行動というのは、これは武力攻撃、しかも作戦計画としてやられている組織的な、計画的な武力行使になると思うのですが、こういうような計画は、佐藤総理がこのベトナム戦争についての性格規定をされる場合に、そういう計画がやられておるということをすでに知っておってそういう規定をされておるのか、そういう情報はないままで規定をされておったのか、その点を明らかにしていただきたい。
  342. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 米国の国防総省でどういうことをやっているか私は知りません。ただ、あそこに出ているベトナムに行なわれている戦争自体について、私はいままでのような解釈をしております。
  343. 東中光雄

    東中委員 ベトナムでの戦争の組織的な、計画的な武力行使の行動が行なわれている最初のものだということになっているわけです。だから北越の浸透とおっしゃいますけれども、これはまさに全く逆であって、最初の行動は計画的にアメリカがやったんだということが出ているわけですから、戦争の性格を規定されておるわけですから、規定されるのだったら、最初の行動というのが一番問題になるわけだと思うのです。そのことがいま国防総省のつくった文書によって明らかにされているということなんですから、これは当時御承知なかったのだったら、いまそういうお話ですけれども、それなら戦争の性格を規定する最も重要な問題点がここで新しく出されてきておるわけですから、当然検討されなければいかぬのじゃないか、こう思うのですが、いかがでしょう。
  344. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど木村外相代理からも申しましたように、米政府とも十分連絡をとってみたい、かように申しておりますが、その上で私どもが判断する以外には方法がない。新聞に出たから、これで全部この新聞記事のとおりだ、かように判断することは即断といわざるを得ない、かように私は思います。したがって私は、あの記事だけではただいままでの考え方を変える考えはない、かように申しておるのであります。
  345. 東中光雄

    東中委員 総理総理大臣に就任されたすぐあとに、あの例の北爆問題が起こったわけです。北爆が一九六五年の二月七日ですが、その翌日に総理が国会でこれについての見解を出されております。それによりますと、これは部分的な報復手段であって、拡大ではない、こう言われておりますし、そのすぐあと十六日には、やむを得ないアメリカの行動だというふうに言われておるわけです。もちろんその前提として、いまわれわれの得ている情報によれば、こういうのがついておりましたけれども。  ところが、その問題についていま明らかにされておる問題は、34A作戦の開始の一週間前にテーラー統合参謀本部議長が、もっと大胆な作戦をとる用意の必要性をマクナマラ国防長官にひそかに進言したということが書かれております。これは北爆の一年以上前のことになるわけであります。ですから、部分的報復手段とか拡大でないとかいうような問題でなくて、もっと大胆な作戦をとる用意が必要だということを一年前から言われて、そして計画的に進められた。北爆及び北ベトナムの海上輸送路の機雷敷設作戦のため、サイゴン政権に武器、装備を供与し援助することが必要だ、サイゴン政権が責任をとる形でアメリカの飛行機が北の重要目標を爆撃するということもいっておる。さらに、北ベトナムに対する直接行動のため必要に応じて米軍を投入する、こういう提案をしたということが明らかにされています。これは北爆の一年前のことであります。そして当時のマクナマラ国防長官は、六四年の三月、戦争を北ベトナムにまで拡大する方法を慎重に検討しておるということを語っています。ですから、トンキン湾事件が起こる前に、そういう計画が慎重に検討されておるということであります。しかもその計画内容は、宇宙ロケット打ち上げのときの秒読みを思わせるような、三十日間にわたる綿密な計画がつくられておるというふうにいわれております。六四年の六月のホノルル会議で爆撃目標のリストを決定した、これも書かれています。九月七日のホワイトハウスでの戦術会議で北爆の時期について合意に達した、年が明けたらやろうということの合意ができた、こういわれております。こういう状態で北爆が日本時間で二月の七日行なわれたわけであります。  こういう事実が、これは国防総省内のことですから、そして実際にやられたことですから、この資料だけで全貌が明らかにされておるといってもいいわけであります。そうなりますと、総理のあの当時の、やむを得ない、あれは拡大ではなくて部分的反撃だ、報復的な反撃だと言われたのは、これはほんとうに根底からゆらいでくる。そういう性質を持った内容がいまこの文書で出されておるわけですから、総理、これについてどうお考えになるか明らかにしていただきたい。
  346. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろお話しになりましたが、在来から私が主帳をしておるその考え方を、この際変える考えはございません。したがいまして、ベトナム戦争は北からの浸透に対して、これに対する対策として南ベトナム軍からアメリカに援助を求めた、そこでアメリカがこれに援助をした、これが集団防衛の対策の一つでございます。いわゆる国連憲章でも認めておる五十一条によっての協力だ、かように私は考えております。
  347. 東中光雄

    東中委員 問題は事実認識の問題であります。佐藤総理はかつて国会でもそういうふうに言われておる。事実認識として北からの浸透があったというふうにつかんでおると言われるなら、そういう事実はどういう事実について言われておるのかということを明らかにしていただきたい。そして、ここで出ておる——これは一私人のだれかの観測じゃないわけですから、ペンタゴンでつくった文書で具体的な事実が出ておるわけですから、それは北越の浸透じゃなくて、まさに逆であるということが出されておるわけですから、事実認識として総理がいままで考えておったことそのままを維持される根拠が全くないのじゃないか。その根拠を明らかにしていただきたい、こう思います。
  348. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 当時の状況は、米国政府の説明、それを私はそのとおりを信じて、そして今日もいる、これが実状でございます。
  349. 東中光雄

    東中委員 この国防総省のいわゆる秘密文書によりますと、事実と他の国に説明することと違う、違うようにやるということがあり得るのだということ、これも書いていますね。だから、いま総理が言われておることでいけば、全くアメリカの対外的な虚偽の宣伝に対して、まあ言えば、だまされていたということになるのじゃないでしょうか。ここに出ておるのは、これはほかならぬ米国政府の当該の担当のところが出した報告書なんですから、総理が事実認識について、アメリカの言うこと、当時与えた情報はそのままもううのみにして、あと何が出てこようが絶対変えない、そういうことじゃないと思うのですけれども、どうでありましょう。
  350. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 絶対に変えないというわけでもございませんが、ただいまの段階では、私はいままで説明したとおり、その考え方を変えておらない。
  351. 東中光雄

    東中委員 これは考え方の問題ではなくて、結論を言われておるのであって、結論を出された事実については目をおおうておられるということになります。北越からの浸透があったというなら、それは事実をはっきりすべきだ。さらに国連憲章五十一条による集団自衛権の行使だというのだったら、それはやはり具体的な事実を特定して、それでこそ評価ができるわけで、この点は法制局長官どうでしょう。事実がはっきりせぬままで結論を出しますか。いま事実について重大な問題点が起こってきておるわけですから、長官どうでしょう。
  352. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 どうも私が出て御答弁する筋合いの問題ではないように思いますが、要するに、個々の作戦行動についてのいまの御指摘の文書、日本政府がもしもそういう作戦行動について公式の通報でも受けておれば、それはそれなりに考える余地もあるかもしれませんが、国防総省のいわば公的なものというよりも一つの資料として作成したものがたまたま新聞に載ったというようなことを基本にして責任ある答弁をすることができないというのが基本ではないかというふうに思います。
  353. 東中光雄

    東中委員 米政府がこの機密文書を最高裁まで持っていって、とにかく発表させまいという努力をした。何でもない、真実でない問題だったら、そんなことをする必要はないわけですね。それは虚偽だということでいいわけですから。事実の経過からいえば、きわめて重大な問題、しかもそれは日本政府が加担、協力してきたこのベトナム戦争、その戦争の性格がどうなのか、これは侵略戦争だということに結論づけざるを得ない。この秘密文書ではそうなります。そういう事態が起こっておるのですから、これは佐藤総理、事実をはっきりと確かめる。とにかくアメリカが与えてきた情報だけをうのみにして、それで結論を出して処理していく、こういうことは改めるということをひとつはっきりしておいていただきたいのですがね。
  354. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これからもあることでしょうが、とにかく、いろいろ提示されたもの、それをみんな一々、これは間違いじゃないかといって疑ってわれわれが突き返すとかいうわけのものではない。ただこの問題自身は、新聞にも出たことですから、そういう経緯を確かめたい。先ほど外相代理がお答えしたとおりであります。これもまだ、こちらから交渉いたしましても、どういうような反応を示しますか、それもわかりませんが、やはり問題になっただけに、私どももいきさつを十分確かめておく必要はあるように思います。さように御了承いただきます。
  355. 東中光雄

    東中委員 事実が明らかになっておる。アメリカからの公式の連絡のあった情報だけで判断をするというような自主性のない態度を日本政府はとっておったということになると、これは全くアメリカへの追随といいますか、お先棒をかつがされているということになってしまいます。そうじゃなくて、情報もあるだろうけれども日本政府は自主的な立場でその事実をやはり検討して、そして協力するということに当然なるはずですね。そうすると、その事実を自主的に判断する資料としては、アメリカの当の国防総省が出したその文書、しかもそこで引用している資料というのは、当時の国防長官なり、あるいは統合参謀本部議長なり、こういった戦争を遂行していく一番中心になっている人たちの正式の文書なんですから、これは、自主的な立場に立っての判断をする、そういう点で当然この文書について検討する、こういうふうにお聞きしてよろしいですか、どうでしょう。
  356. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど来申しますように、ただいま新聞記事に載ったことが全部そのとおりだ、かようなワシントン政府からの通告はまだございません。したがって、これは一体どういうことになっているのか、最高裁まで発表を押えたとか、その押えたこと自身が、あるいはいたずらに人心を動揺さすからというようなこともあるかもわかりませんし、あるいは事実そのとおりだからというようなこともあるかもわからないし、また、国家の機密事項だからそういうものは公表されてないんだ、そういうものをどういうルートでとったのかとか、いろいろな問題があって、ただいまのような裁判の問題になっておるのだろうと思います。しかし私は、やはり同盟国の一つとして、アメリカから実情をよく聴取することは必要だ、かように思いますので、出先の機関をしてその点は明確にさすつもりでおります。  しかして私どもは、何によらずアメリカに追随すると言われますけれども、軍事的に私ども協力してはおらないこと、これははっきりしているから、この点では誤解はないと思います。そういう意味から、私どもの一音半句がやはり気勢を添えた、かように言われてはこれは困りますから、正確を期する、こういう意味で、ただいまのような資料は資料としてとってみる、しかし今日のこの段階では、いままで声明したこと、それを取り消すような考えはない、これだけははっきりしておきます。
  357. 東中光雄

    東中委員 私は、アメリカ側の言うておることだけではなくて、アメリカ側から出たこと、その他の資料も含めて、自主的にベトナム戦争について佐藤総理は判断をされなければいけないということを言っているわけです。いま言われていることだったら、結局、アメリカ側から正式に言ってないからということに、文字どおりうのみにしているというふうにしか考えられぬわけであります。  しかも、ベトナム戦争には軍事的に加担していない、協力していない、こうおっしゃいますけれども、たとえばアメリカの上院軍事委員会の軍備調査分科委員会は、一九六七年の四月六日、ベトナム戦参加の米海軍、海兵隊戦力の実情調査報告書を発表しています。それによりますと、「ベトナム戦争で、出動中のアメリカ海軍は、日本と台湾の艦船修理施設に大きく依存している。これらの施設は非常にすぐれたものをもっている。とくに日本の横須賀、佐世保なしでは東南アジアにおける作戦は重大な困難におちいるだろう。」こういう報告を発表しています。まさに、日本なくしてベトナム戦争なしということを、アメリカの上院の機関が発表しているわけであります。  また、一九六五年の二月十一日、米上院軍事委員会のベトナム追加戦費可決報告書にも、やはり同じようなことをいっています。日本本土はベトナム戦争のための最も重要な補給基地であるということを認めておるといわなければなりません。「アメリカ本土よりベトナムに近く、高度の航空機産業をもっている日本では、ジェット機その他の軍用機の修理ができ、電気機器、建設資材、さらにはジャングル・シューズ、砂のう、鉄条網、米兵用のカメラ、テープ・レコーダーなどの調達が行なわれている。」と、明確に指摘しています。こういうことでベトナム戦争というのはやられている。まさに日本のそういう協力がなければできない、非常な困難におちいるといっているわけですから、こういう加担をされているということになる。そうすると、このベトナム戦争が、秘密文書で明らかにされた内容でいけば、侵略戦争、戦争犯罪になるわけですから、犯罪行為に対する加担行為ということになってくるわけであります。非常に重要な問題だと思うのです。  さらに、先ほど申し上げた心理作戦なんかの問題について言うても、心理作戦のためのビラがまかれておりますけれども川崎市の木月住吉町にある在日米軍印刷出版総局が、今日でもベトナムで大量にまかれておるいわゆる謀略ビラ、心理作戦用のビラを印刷しておるといわれております。日本の特需としてもそういうものが印刷されている。板橋区の凸版印刷で三千万枚、新宿区の大日本印刷で千五百万枚印刷された。こういう形でベトナム民主共和国に対する謀略活動にやっぱり協力している。こういう事態が起こっているわけであります。  そういうものとして見るならば、こういう協力、これに対して、これが戦争犯罪行為の加担か、あるいは犯罪行為になるかならぬかという問題をこの秘密文書は提起しているわけですから、そういう点で、佐藤総理、やっぱり事実をはっきりとさして、責任を明らかにしていただきたい、こう思うわけです。いかがでしょう。
  358. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのような点は私はよく存じませんので、よく調べてから御返事をいたします。やや論理の飛躍もあるのではないか、かように思っております。
  359. 東中光雄

    東中委員 外務大臣にお聞きしますが、こういう協力ですね。特にアメリカで、先ほど言いました委員会報告、こういった内容が出ていますけれども、こういう問題が日本でやられている。そういう根拠になっているのは一体何なんでしょう。
  360. 木村俊夫

    木村国務大臣 決して日本がベトナム戦争に協力しているとは思いません。  先ほどからお話がありましたが、御参考までに申しておきますが、一九六二年六月、在ベトナム国際監視委員会、ですからこれは国際機関でございます。その英ソ共同議長国あて報告書におきまして、北越が南越に対する浸透破壊活動を行なっている旨公式に認め、したがって米政府としては、このように最初に北越側が一九五四年のベトナムに関するジュネーブ協定に違反して南越に軍事介入を行なっている以上、これに対抗するため、南越も自衛手段を講ぜざるを得なく、したがってまた国連憲章五十一条に基づく集団自衛行動に移った、こういうことを報告しております。
  361. 東中光雄

    東中委員 その決議自体に問題があるし、それから第一事実を何にも言われてないです。いわばレッテル張りをしているだけなんですよ。結論だけを言っているだけなんです。いま出されておるのは、きわめて具体的な事実が出されているのです。その事実によって判断をする、結論を出すべきなんです。何にも出されていない。まさに、そういう形で言うならば、アメリカの言っていることそのままうのみにしているということ、こういわざるを得ぬわけです。それと同時に、こういう協力がやられている。たとえば日本の本土で謀略ビラが印刷されている。これは安保条約に基づいてやられておるのですね。日本本土には、たとえば第七心理作戦部隊の日本派遣隊が埼玉県の朝霞にいます。ここでベトナムヘの謀略ビラあるいは心理作戦の行動も関連を持って動いていく。あるいは第七艦隊が横須賀に入ってきて、そしてベトナムへ行っておる、こういう問題。結局は、安保条約でこのベトナム侵略戦争に協力、加担している、戦争犯罪行為に加担している、そういうもとになっている。米側の情報をそのまま信頼して、そのままでいきよったら、いまのニクソン訪中の問題もありますけれども、とにかく緊密な連絡をとるといってもとってなかったり、こういう重要な問題についても事実と違うことを報告されて、いわばだまされた形で戦争に入っていく、そういう根拠に使われているのが日米安保条約じゃないか。私たちは安保条約そのものはこれは反対ですけれども政府の立場から見ても、安保条約に基づいて協力をさせられるその行動が侵略行動であるということになれば、これは安保条約のワクを越えた、実は安保条約を侵略行動に利用している、そういう問題になってくるわけですから、そういう点で言うならば、これは当然政府の立場から見ても、こういうアメリカの態度の中では、安保条約をなくしていく、なくさなければいけない非常に危険な問題だというふうに思うのですが、いかがでございましょう。
  362. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、日米安保体制、そのもとでやはり日本の安全と繁栄が期待される、かように思っておりますので、安保体制をやめろという御議論には賛成できまません。
  363. 東中光雄

    東中委員 私が申し上げているのは、現実に起こっているベトナムの戦争、それについては具体的な根拠がなしに、アメリカ側の結論だけで、あれは自衛行動だ、国連憲章による自衛権の行使だということで協力をしているという体制になっている。事実は違うじゃないか。違うということが、すでに具体的な事実として次々と明らかになってきているわけですよ。それは、当時政府は知らなくて——知っとってやっておったと言ったら、これはまさに共犯者ですけれども、知らなかったというのだったら、知らされないような状態の中でその戦争に協力する、あるいはその戦争の補給基地として、あるいは通過基地として、あるいは補修基地として使われてきている。そういう根拠になっている安保条約は非常に危険なものじゃないか。これは政府の立場から見て——私たちの立場から言っているのじゃないです。政府の立場から見たって非常に危険じゃないか。だから、当然そういう問題として、ベトナムの戦争におけるアメリカの実際の行動はどうだったのかということを、政府としては正式にアメリカに追及をし、事実を明らかにする。単にたまたま暴露されたものだけだからというのではなくて、たまたま暴露された問題の中に非常に重要な問題が入っている。日本の安全、アジアの平和にかかわる最も重要な問題、あるいは戦争犯罪への協力者ということになりかねない、そういう事実が入っているのですから、それについて、事実はどうかと当然追及されるべきじゃないか。実質的な立場に立っている限り当然そうあるべきだと私は思うのですが、いかがでございましょう。
  364. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 先ほど外務大臣代理からも、その問題についてはワシントンの政府と十分交渉して材料を確かめたい、かように申しておりますから、その点ではそのほうにまかしていただきたい。また、国内において印刷物あるいはビラを刷ったとかどうしたとかいうような点は、いわゆる直接作戦行動の問題ならばこれは事前協議の対象になりますけれども、施設区域の使用、そういうような問題は、これは別個の問題のように思います。別に事前協議の対象にはなっておらない。これはなっておれば、いままでもイエスもあればノーもあるということを申しておりますから、そういう処置がとられると思いますけれども、ただいま言われるように、どうも施設区域を安保のもとで提供しておりますから、その施設区域の使用、これがいわゆる直接作戦行動の問題でない限り、これは自由にある程度使っておる、かように私は理解しております。
  365. 東中光雄

    東中委員 時間がありませんので質問を終わりますが、事前協議の対象にならない行動として、実は日本にある施設区域を使って侵略的行動がやられておるということになれば、いよいよもってたいへんなんです。そういう事態が起こっておるのではないかということを申し上げておるわけであります。そういう危険な事態が起こっておるということを、この秘密文書によれば私は断定していいのじゃないか、こう思うのですけれども、正式にそれは政府としてはちゃんと追及をされるべきものであるということを申し上げておきたいわけであります。  時間がありませんので、質問を終わります。
  366. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 これにて東中君の質疑は終了いたしました。  この際、午前の楢崎君の質疑に関し運輸大臣から発言を求められておりますので、これを許します。丹羽運輸大臣
  367. 丹羽喬四郎

    丹羽国務大臣 午前中の委員会楢崎委員から御質問がございました点につきまして、御報告を申し上げます。  武石貨物課長は、四十六年六月八日から十日までの三日間、近畿地区霊柩自動車運送事業者大会出席のため、大阪に出張いたしております。小林業務部長は、四十六年六月十五日より十七日までの三日間、東北ブロック、バス事業者大会出席のため、青森、八幡平へ出張しております。犬丸高松陸運局長は、四十六年四月二十七日及び二十八日、自動車関係総会出席のため、徳島及び高知に出張いたしております。  公務員が関係団体の総会等に出席いたしますことは、行政の運用上や慣例上必要な場合が多いと存じている次第でございます。御指摘のありました事例におきましても、事業の現況及び問題点に関する説明をいたしておりまして、選挙のことに関しましては一切触れておらないとのことでございます。ただ、公務員の出張に関しまして、いやしくも疑惑を招くことのないよう、今後とも厳重に注意してまいる所存でございます。
  368. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 楢崎弥之助君。  楢崎君に申し上げますが、持ち時間を相当超過いたしておりますので、簡潔にお願いいたします。
  369. 楢崎弥之助

    楢崎委員 ただいまの報告でありますが、選挙運動とからんでどういう事実があるかは追って明らかにしたいと思います。  いずれにしましても、公務員が公務出張の形でかつての上役の選挙運動に公然とかり出されている事実が非常に多くなっております。巧妙きわまる高級官僚地位利用による利益誘導型の選挙違反は、目に余るものがあります。政官業界三者癒着のいわゆるぐるみ選挙運動は、まさに議会制民主主義の基盤を破壊し、行政の綱紀と秩序を紊乱させるものであります。私ども調査によれば、この種の違反黒住氏だけではありません。他に数例事実をつかんでおります。したがって、これらの事実については、本日は時間を与えられておりませんから、他日機会を得て、さらに追及を続けていくつもりであります。  この際、政府自民党総裁として、また行政府の長として、佐藤総理は、綱紀粛正のため、さらに政治姿勢を正すために、立法あるいは法改正を含めて厳粛なる態度で適切、迅速な指示と措置をやられるべきであると思いますが、総理の御見解を最後に承っておきたいと思います。
  370. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いわゆる高級官僚の立候補、これはもう今回の選挙におきましてもたいへん多数にのぼりました。その高級官僚が、もちろんやめて立候補はいたしておりますが、出身者の現職の職員諸君がこれを応援するというようなことでいろいろ問題を提起しておる、この御指摘でありますが、もしかようなことがあればそのことは私はきわめて遺憾なことだと思います。そのこと自身がもうすでに公職選挙違反だと、かように考えております。きわめて綱紀粛正という点において、いやしくもさような疑いを持たれるだけでもこれはたいへんなことだと思います。  行政の長といたしまして私は責任を痛感して、この際あらためて綱紀粛正、こういう意味におきましても、厳にかようなことのないように戒めたいと思っております。また総裁として、ただいまの状況では当選した諸君に対して辞退とかいうことを言うのはいかがかと思っておりますが、しかし、これがもう少したってその事態が明確になりますれば、もちろん本人自体もいろいろ考えるでありましょうが、もう少し事態の推移を見ないと、私自身が処断するわけにいかない、かように思っております。この点はいままで申し上げたことでありますが、前段の現職職員の公職選挙違反、またその地位を利用しての応援、これなどは厳に戒めなければならぬ、あるいは綱紀の点、粛正の点で十分戒心するつもりでございます。
  371. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それではこれで終わります。      ————◇—————
  372. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 この際、閉会中審査に関する件についておはかりいたします。  予算実施状況に関する件並びに予算制度等に関する件、以上二件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたすこととし、その手続については委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  373. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  次に、おはかりいたします。  閉会中審査案件が付託されましたならば、予算制度等の調査のため、小委員十名よりなる予算制度等調査委員会を設置するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  374. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、その小委員及び小委員長選任、また選任後における小委員補欠選任等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  375. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、小委員及び小委員長は、公報をもって御通知することといたします。  次に、閉会中の委員派遣の件についておはかりいたします。  閉会中に委員を派遣して現地を調査する必要が生じました場合には、派遣委員の選定、派遣地等の決定につきましては、委員長に御一任願い、議長の承認を求めることにいたしたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  376. 瀬戸山三男

    瀬戸山委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  本日は、これをもって散会いたします。    午後七時七分散会