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1971-09-01 第66回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年九月一日(水曜日)     午前十時五分開議  出席委員    委員長 齋藤 邦吉君    理事 宇野 宗佑君 理事 木野 晴夫君    理事 藤井 勝志君 理事 広瀬 秀吉君    理事 松尾 正吉君       奧田 敬和君    木村武千代君       倉成  正君    國場 幸昌君       坂元 親男君    地崎宇三郎君       中川 一郎君    原田  憲君       坊  秀男君    松本 十郎君       村上信二郎君    毛利 松平君       森  美秀君    吉田  実君       佐藤 観樹君    平林  剛君       藤田 高敏君    堀  昌雄君       貝沼 次郎君    坂井 弘一君       伏木 和雄君    二見 伸明君       河村  勝君    小林 政子君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         通商産業大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君  委員外出席者         大蔵政務次官  田中 六助君         大蔵大臣官房審         議官      中橋敬次郎君         大蔵省主計局次         長       平井 廸郎君         大蔵省関税局長 谷川 寛三君         大蔵省銀行局長 近藤 道生君         大蔵省国際金融         局次長     林  大造君         通商産業省貿易         振興局長    外山  弘君         中小企業庁長官 高橋 淑郎君         参  考  人         (日本銀行総         裁)      佐々木 直君         大蔵委員会調査         室長      末松 経正君     ————————————— 委員異動 八月二十三日  辞任         補欠選任   伊藤卯四郎君     河村  勝君 同日  辞任         補欠選任   河村  勝君     伊藤卯四郎君 九月一日  辞任         補欠選任   中島源太郎君     國場 幸昌君   伏木 和雄君     二見 伸明君   伊藤卯四郎君     河村  勝君 同日  辞任         補欠選任   國場 幸昌君     中島源太郎君   二見 伸明君     伏木 和雄君   河村  勝君     伊藤卯四郎君     ————————————— 七月二十四日  一、国家公務員共済組合法等の一部を改正する   法律案広瀬秀吉君外六名提出、第六十五回   国会衆法第二二号)  二、公共企業体職員等共済組合法等の一部を改   正する法律案広瀬秀吉君外六名提出、第六   十五回国会衆法第二三号)  三、貸金業者自主規制の助長に関する法律案   (藤井勝志君外四名提出、第六十五回国会衆   法第三四号)  四、国の会計に関する件  五、税制に関する件  六、関税に関する件  七、金融に関する件  八、証券取引に関する件  九、外国為替に関する件  一〇、国有財産に関する件  一一、専売事業に関する件  一二、印刷事業に関する件  一三、造幣事業に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国の会計税制関税金融証券取引及び外  国為替に関する件(最近の国際金融情勢等)      ————◇—————
  2. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制関税金融証券取引及び外国為替に関する件について調査を進めます。  なお、本日の議事に関し、参考人として日本銀行総裁佐々木直君の出席を求めております。  この際、水田大蔵大臣から、最近の国際金融情勢等について発言を求められておりますので、これを許します。水田大蔵大臣
  3. 水田三喜男

    水田国務大臣 最近の国際通貨情勢にかんがみまして、八月二十八日より、現行の円平価は維持しながら、従来平価の上下〇・七五%の範囲としていた変動幅制限を暫定的に停止することにいたしました。  御承知のとおり、欧州主要通貨は二十三日の為替市場再開以来、IMF協定に定める変動幅をこえる相場を示し、その結果、円は欧州のほとんどすべての通貨に対して実質的に切り下げられた形になり、このままでは国際協調上問題を生ずるおそれがありました。  その後、国際通貨体制再建のため主要諸国による多角的協議機運も高まり、九月十五日にはロンドンで十カ国蔵相会議の開催が予定されております。私としましては今回の措置を通じ、諸外国協調して新たな国際通貨体制の確立に向かって進むとともに、早急に対外取引の安定を回復したいと考えておる次第でございます。  そこで、先般当委員会から、委員会を開催して私の出席を求められましたが、ちょうどそのときにこの通貨問題について具体的な措置を検討しておる最中で、微妙なときでございましたので、公開の場において発言することは影響もあることと存じまして、そこで委員長に対しまして、私が出席する委員会をもう少し延期するかなんかしていただけないかという御相談を理事会でお願いできないかということを私から申し出たわけでございまして、幸いに皆さまの御了承を得まして(発言する者あり)委員会を変更していただいたということ、本日こういうことを発表する機会を得ましたので、冒頭において御了解を得る次第でございます。  今回の措置米国輸入課徴金賦課等が、ようやく回復の兆が見られるようになったわが国経済動向に好ましくない影響を与えることのないよう、公債政策の活用による予算補正とか、財政投融資計画追加等、積極的な景気対策をはかると同時に、金融面財政面からも十分な施策を講じてまいる所存でございます。     —————————————
  4. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 質疑の通告がありますので、順次これを許します。藤井勝志君。
  5. 藤井勝志

    藤井委員 問題の性質きわめて重大である当委員会の本日、時間の制約極端でございまして、私は質問そのものずばりいたしますから、答弁をしていただく側もひとつ内容をずばりお答えいただいて、審議の能率に御協力を願いたい。  ただいま大蔵大臣からお話がございましたことを聞きまして、二十三日の大蔵委員会開会は、事の性質上やむを得なかったというふうに私は了解をいたします。  ところで、二十八日から変動相場制に移行して、やはり、どのような説明をいたそうとも、円は実質的に切り上げられたというのが経済の常識的受け取り方ではないかと思うのでございます。円の平価は堅持するということを繰り返し政府は強調されて今日まで来ておった。これが百八十度政策を転換されたというのは一体どういうことなのか。特にわれわれは非常に遺憾に思いますことは、ニクソンショックに対応いたしまして欧州各国は即座に為替市場を閉鎖いたしたわけでございますが、わが国ひとり為替管理をやっておるからだいじょうぶだというこの大蔵省の自信のもとに、為替市場を開いて、過剰ドルを買いささえて、成り行きにまかせて二十八日まで続いたということは、どう考えても国民の側から見るといかにも無為無策、まことに主体性のない財政運営のあり方ではないかと、このように映ずるわけでありまして、これに対してひとつ担当大臣の明快な御答弁を願いたい。
  6. 水田三喜男

    水田国務大臣 欧州は御承知のように、ニクソンショックによりまして為替市場を一斉に閉鎖しました。日本は、ニクソン声明があったときにはすでに為替市場を開いておりました。その翌日、欧州市場が全部閉鎖しましたから、日本も閉鎖するかどうかということは当然私たちが一番考えた問題でございます。  そこで、欧州諸国日本の違うところは、これも御承知のように、欧州諸国は、英国におきましてもフランスにおきましてもドイツにおきましても、自国の通貨建て取引部分が非常に多い。したがって、為替市場を閉鎖しても取引支障がそうない。日本とは違って、たとえばイギリスのごときは旧英領との取引は一〇〇%ポンド建て取引でございますから、市場が閉鎖されてもそう混乱は生じないということでございますが、日本の場合は対外取引はほとんど、八〇何%、九〇%近くがドル建てでございます。したがって、日本市場を閉鎖するということは非常に対外取引に大きい支障を来たして、混乱を来たすおそれというものは、これははっきり見通せるということでございます。この混乱によって生ずる国民経済の問題をいろいろ考えますときに、私どもは、これは日本では簡単に為替市場の閉鎖はできない、やはり対外取引の安定ということを確保するためには、日本においては欧州と違った方向考えなければならぬということで、私ども日本においては為替市場を閉鎖しなかったということでございます。これが、私ども欧州に追随しなかった一番大きい理由だということが言えようと思います。
  7. 藤井勝志

    藤井委員 二十七日までの態度としてはお話しのとおりであり、また外貨建て取引というものがほとんどであるという特殊事情、こういう点については事情はわからぬことはないですけれども、その結果がどのようになるかということを考えた時分に、私はもっともっと大蔵省としては準備があってしかるべきではなかったかというふうに思うわけでございますが、これは済んだことを幾ら責めてもしょうがございませんから……。  私は次に、いわゆる円をフロートさせておるわけですね。今後どのようになるのか。先ほど申し上げたように、私はこれはもう常識的に考えて、この円の切り上げということを前提にしているという、切り上げ幅と時期の問題はいろいろ考え方がありましょうけれども、ここら辺、私はなぜこういう質問をするかということは、事柄の性質、非常にデリケートだということをよく承知しておる。ただやはりわれわれは貿易立国、大いに輸出を伸ばし、あるいはまた輸入もどんどんやらなければならぬ、その取引決済手段が全然きまらないということではこれはたいへん困ります。そういう点からいって、私は、この切り上げということについて、政府のほうではおそらくこの立場現時点において簡単に大蔵大臣としては答えにくいということはよく心得ておる。しかし、当面経済活動を日々やっておる産業界の実態から見れば、一刻も早く落ちつくところへものごとを落ちつける、こういう態度がなければならぬ。  したがって、もう一つ具体的にいいますと、今度のフロートは切り上げ前提と心得ていいか。同時にまた、切り上げる時期、幅、こういう点についてはどのような検討がなされておるか。特に今度はいわゆる多角的な通貨調整ということで、ヨーロッパあたりと十分相談して、EC並びにアメリカあたりとよく調整をとりながら落ちつくところへ落ちつけようという考えを持っておられる、そのこと自体考え方は私は正しいと思うのです。ただ問題は、そういったことが、従来住々にしてとられたように、ECとか欧米あるいはそれ並みに、自分自身考え方というものをしっかり腹に締めておらない、きわめて波のまにまに動いておるというふうに国民側に誤解をされるおそれがある。私はこの点は、この場を通じ、そういうものではないのだ、事の性質上やはり沈黙を守らなければならぬ時期がある、こういった点をしっかりとひとつ大蔵大臣立場意見を開陳していただきたい。  結局、国際通貨調整問題の焦点は、何といっても力のついた円ということに一般にいわれているのですから、円がみずからの立場においてどう考えるかということは、やはり前向きで考えなければならぬ当然の帰結ではないかと思うのですが、大蔵大臣、この問題どうですか。
  8. 水田三喜男

    水田国務大臣 欧州為替市場を閉鎖したあとで、これを開くにあたって、御承知のようにEC諸国協議が始まりました。何らか協議がまとまるものと私ども考えておりましたが、とうとうまとまらない。各国、別々にフロートして市場を再開するということになりました。そのことは同時にIMF体制がくずれたということでございまして、国定為替相場制度を堅持することを基礎にして成り立っておるIMFが崩壊しているということでございます。同時に、ドルはいつでも金にかえるということを一つのたてまえにしたものが、これもくずれておるということでございまして、したがって、そうなった以上今後どうするかという問題でございますが、御承知のようにIMF総会が今月の末に開かれるという情勢を前にして、IMFが崩壊のままでこれを開くことができるか、グループテン責任としてそういうことができるかというようなことが、これ以後急速に関係国間で問題になってきていることは事実だろうと思います。  したがって、私どもは、各国がまとまらない以上、これは多国間の調整というようなことは相当むずかしい、長期的なことになるだろうという予想を最初は持っておりましたが、最近の事情を見ますと、急に協調的な機運が出てまいりまして、十カ国蔵相会議の日取りもきまりますし、明後日からこの下準備である代理会議も開かれるという情勢になってきました。そうなりますというと、わが国が実質的に欧州に対して円の切り下げになっておる形で今後国際協調の実をあげられるかということになりますと、非常に立場は苦しくなりますので、一応みんなと同じ基盤に立つということも必要だということからやはり今回の措置をとった、これも一つ理由でございますが、そういうことになりますというと、やはりIMFをこのまま崩壊させてしまうということはできないとしますなら、各国で何らかの協調によってやはり新しい通貨体制の安定というものを考えざるを得ないということになります。  そうすると、その形が、たとえば日本に対してはどういう形になるかと申しますと、これは簡単にいま予測はできません。全体として、アメリカドル切り下げっぱなしでほかのほうには影響なくてこれで済んでおさまるのか、そうではなくて、各国みなそれぞれお互い平価の再調整ということが行なわれるということで終わるのか、あるいは最初他国考えておったように、日本ドイツだけに切り上げを迫って国際通貨の安定をはかろうというようなこと——もうその方向はないと思いますが、どういう形でこれから国際協調が行なわれるかということはいまのところわかりませんので、いまおっしゃられましたように、円の切り上げ前提とした措置かと言われると、それを前提とした措置というふうには言い切れませんが、しかし新しい体制考え前提である、その措置であるということは間違いございません。これを土台にして、お互いにこれから列国の協調ということによって新しい通貨体制考えるのでなかったら、これは国際通貨の安定がはかれない。国際取引の安定ができない以上は、世界はもう貿易の拡大ということは望めなくて、縮小貿易方向へ行ったらこれはたいへんでございますし、IMFがくずれるということも、これはグループテン責任としてできないことでございますので、私どもはやはり国際協調方向に向かってこれから努力しなければならぬ、そういうふうに考えております。
  9. 藤井勝志

    藤井委員 ひとつぜひ私は、この国際協調ということがただ単なる国際追従、あるいは対米追従ではないことは申し上げるまでもございません。すなわち、協調はあくまで主体性を持って、そして自分たち考え方というものはこうあるんだと、しかし問題の性質が、相手がある話ですから、先にざんごうから飛び出すわけにはいかない、じっくりかまえている、こういう意味において問題を取り組むという、こういう姿勢をとっているんだということをよく国民に理解してもらうように、担当大臣も御努力願いたい。  同時に、それが口実になって、ただ米国ECの出方を見守って、そして打つ手を考える、こういうことではいかぬと思う。問題の性質は、あの終戦直後やせ細った日本経済というものが、重量あげの国際チャンピオン級の選手権をとろうかという、こういうことになったのですから、一ドル三百六十円というこのレートというものが過小評価であったという、これはもう私は好むと好まざるにかかわらずそういうようなことにならざるを得ない。もうちょっと早くいろんな手当てを国内でやっておけばよかった。もう勢いこうなったのですから、そこら辺のほぞはひとつきめてかかっていただかなければならない、こういうふうに思います。いまの御答弁で私は言外に、私が質問をしたいろんな問題については十分方向は私なりにつかめた、こう考えまして質問を次に譲ります。  ニクソン声明以後二週間近く、市場を先ほど申しましたようにそのままに開きっぱなしで、四十億ドルを突破するようなドルがたまったわけですね。で、いたずらにこのようなドルをためたことは、よくいわれるように、投機筋にもうけさせて国民大衆に大きな損害を与え、国益に反したというのが一般国民のこの問題に対する受け取り方なんです。これに対して、大衆の疑惑を除き、不信を一掃するために、大蔵大臣、明快な御答弁を願いたい。  同時に、日銀総裁にも関連しまして、二十六日、日銀の為銀資金貸し返済を認められたですね。ああいう一連の措置をとられた。これは為銀の救済策に終わっておるではないか、こういう受け取り方があるのです。私も結果的に見ればそのとおりだと思う。これは一体どういうふうにこの問題を理解するか。前段と両方、大臣並びに日銀総裁にお答えを願いたい。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 日本ひとり為替市場を開いておられた理由一つは、日本為替管理は非常に行き届いておるということのために、短資思惑資金の流入というものはある程度防げるということを考えておったことも理由一つでございます。したがって、私どもは相当この短資の流れてくることを、思惑資金の流れてくることを注意をして、立ち入り検査まで実はしてこのことの警戒に当たったわけでございますが、いままでのところを見ますというと、輸出代金を早めた問題は相当ございますが、そのほか非居住者思惑資金が流入した、欧州諸国に見られるようなこういうことはいまのところない、大体なく済んでいる。投機者をもうけさせたというような事実はあまりないというふうに私どもは見ております。ただ、前受け金の問題については、はたしてどういう取引の前受け金であるかということについて、二、三まだ説明が十分でないというような問題は、いま通産省のほうで非常に説明を詳しく聞いておるというようなことがあるそうでございますが、全般として、いわれているようなそういう問題はないというふうに、いまのところは私どもは見ております。
  11. 佐々木直

    佐々木参考人 外国為替資金貸しを二十六日以後返済を認めてまいりました件につきましてでございますが、まず外国為替資金貸し付けというものの性格を簡単に御説明したいと思いますが、これは日本輸出に際しまして、船積みされて四カ月あるいは五カ月後に決済されます外貨表示輸出手形日本銀行に担保として持ってまいりまして、それに対して円を貸し付けるわけです。それで、その円によりまして為替銀行はその輸出手形買い取り資金を調達する、こういうことになっております。  したがって、これが実行されました姿を見ますと、円を借りて外貨を持つというふうに外国為替銀行立場はなるわけでございます。したがって、そういうことから申しますと、為替の持ち高から申しますと非常に大きな米ドル——いま大部分米ドルでございますが、ドルの買い持ち超過になるわけでございます。したがって、この為替リスクをどうやってカバーするかということになりますと、普通いろいろ輸入関係の予約をとりましたり等々、カバーをとるわけでございますが、最近の為替情勢から見ますと、それのカバーがなかなかとりにくい。したがって、外国為替銀行は非常に大きなリスクにさらされるということになります。したがって、外国為替銀行自衛手段として、この資金貸しを返したいという希望がありましたが、これを返すことになりますと、そのために決済が早くなりまして、ドルが非常に早く入ってくるおそれがあります。ですからそれを、希望は入れておらなかったわけです。ところが十九日になりまして、外国為替銀行外国銀行から金を借ります額をもうこれ以上ふやしてはいけないということで押え込みましたので、その結果、こちらのほうの資金貸し返済を認めましても外貨の急速な波乱が起こらないということがはっきりいたしてまいりましたので、そこで資金貸し返済についての制限をゆるめてまいったのでございます。
  12. 藤井勝志

    藤井委員 日銀総裁の御説明わかりますが、実質的にはやはり為替リスク補てんしたということになるわけですね。まあ銀行金融機関というものがたいへんな恐慌状態になるというのは、これは経済の動脈ですから十分配慮しなければならぬことはわかりますけれども、このようなことを考えるんならば、私はやはりこの精神といいますか、こういう考え方を、いわゆる産業界機械団体あたり通産大臣に陳情しておるようですけれども差損の補償をしてくれ、特に外貨債権を持っている造船あたりは二兆円くらいになるだろう、こういうことを言っています。こういう問題に対して通産大臣大蔵大臣に対してどのような考えで対処されるか。為替銀行の場合にはいまのような手当てが操作上、結果的には為替リスクカバー日銀によってなされたということになる。産業界全体に対して、やはり担当大臣通産大臣大蔵大臣に、どういうこれが救済措置をされるか。いきなり過去のことを補てんするということはむずかしければ、税制上の問題もあるでしょうし、いろいろ配慮すべき点があろうと思うのですが、所管大臣として御意見を承りたい。
  13. 田中角榮

    田中国務大臣 御質問のように、各業界から、円平価切り上げ等が行なわれた場合の為替差損等に対して補てんを行なわれたいという申し出を受けております。特に一兆八千億にものぼるという造船延べ払い輸出等にとりますとたいへん大きな金額でありますから、これを補てんせられるよう格別の処置を求める要請が出ておりますが、現に円平価異動は行なわれておりません。おりませんから、現時点においてそのような措置をとることはできないわけでございますが、将来、仮定の問題でございますが、そのような問題が起きたとしたならば、これを業界の負担だけにできるものでもないと思います。しかし、これを財政補てんをするということになるとたいへんなものでございますから、いま述べられたように税制上の問題、その他各般の施策によって、日本産業自体がどうにもならないような状態におちいったり、輸出企業そのものが根本的な被害を受けることのないように、措置は当然考えていかなければならない、こういう考えでございます。
  14. 藤井勝志

    藤井委員 よくひとつ御配慮願いたいと思います。  そこで、大蔵大臣通産大臣、御両者御答弁をいただきたいのですが、特に今度のアメリカ経済政策によって、輸出中小企業、これはもう円は実質的に切り上げということに事実上なっております、説明はどうあろうとも。それへもっていって今度はいわゆる輸入課徴金平均一〇%という、まあ平均はちょっと下がりますか、とにかく一〇%というこういった線、それへもっていって八月一日から特恵関税供与という、ダブルでなくて、三つも、スリーパンチという、こういうしかけになっておる。これはたいへんなことですね。  たまたまこの十日、十一日、日米経済閣僚合同委員会貿易関係であるわけですから、この課徴金はもともと、かつてイギリスが一九六四年から六六年ですか、貿易収支改善策としてやったとき、アメリカはどのようにイギリスに対しやかましく申し立てたか。ところが、その口のかわかぬきょう今日、背に腹はかえられぬというて、もともとガット体制の本山であるアメリカがなりふりかまわずやったという、こういうことに対しては堂々と主張すべきことを主張すべきである、このように思います。  同時に、このような一連の新政策前提として考える場合、これはかつてこのようなことが想像されなかったとき、政府は総合的な対外経済政策八項目をかけられたのですが、中でも残存輸入制限撤廃の件とかあるいは輸出振興税制の廃止、停止、そのほか数点ありましょうが、こういう問題は特に私は洗い直し、考え直さなければならぬ、こう思います。八項目そのものの意義も薄れたけれども、いまのような問題は、こちらが何も開き直るという意味ではなくて、まず対等の立場でものを言うという、こういう線を合同委員会においては出すべきであると思うが、大蔵大臣通産大臣、いかがでございますか。
  15. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は、政府が前に決定した対外政策八項目は、これはアメリカ課徴金と交換するとかいうような性質のものであるとは考えておりません。これは日本の対外均衡を得るためと同時に対内均衡を得るための手段であって、そうして日本経済自体としても体質を強化するためにやらなければならぬ問題をたくさん含んでおる。したがってこの問題は、そういうアメリカの問題が起ころうと起こるまいと限らず、日本としては、ここまで来た日本としては、これは当然今後の対外政策としても、対内政策としても、すべきものだということをきめたものでございますから、この問題は別に後退させる必要はどこにもない。この方針に従ってあくまでやっていくべきだと私は考えています。ただ、その間、こういう課徴金の賦課というような問題が起こりましたので、あるいは若干の検討すべき問題が起こったとしましても、大筋においてはいま言ったような問題でございますから、これはこれとして日本としてやるかわりに、交換として考えるという、向こうがやらなければこちらはやめるという性質のものではないので、こちらはあくまでやるという立場に立って、私は、向こうがこういう課徴金の賦課というようなものはこれはやめてもらいたい、これをやめさせるという方針で臨むのが本筋であろうというふうに考えています。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 課徴金の撤廃に対して強く求めなければならない、これは当然のことでございますし、もうすでに通告済みでございます。  八項目につきましては、日本が国の内外に明らかにした基本的な姿勢でございますから、基本的な考えに対してはいま大蔵大臣述べたとおりだと思います。しかし、通産大臣立場から申し上げますと、何かこの八項目をきめた当初のころの風潮は、日本輸出がどうもでき過ぎて、輸出が罪悪のような風潮さえ一部に見たわけでございます。ところが課徴金制度がとられ、すでに今度の変動為替相場制に移行し、その上なお何らかの処置が予想せられるとしたならば、もう一ぺん検討する、もう一ぺん読み直すということは当然だと思います。しかも、輸出税制というようなものの中には、日本輸出を守るために最低なものとしていままで施行してまいったものもございます。新しい事態に対処しなければならない政策、強化しなければならぬものもおのずから生ずるわけでありますから、画一、一律的に論ずるというよりも、検討するということは必要だと思うわけでございます。  もう一つは、この八項目を行なうための国内体制の整備という面、国内に対する施策に対してはもっと付加すべきものがあるということを申し上げておきます。
  17. 藤井勝志

    藤井委員 時間がだいぶ参りましたので……。  いまの大蔵大臣の御答弁ですが、これは通産大臣、ひとつ大蔵大臣にもよくお話し願いたい。いささかニュアンスが違うような御答弁になっておる。私は、通産大臣、大いにがんばっていただきたい。あなたの説は正しいと思う。輸出振興税制はガット違反ではない、そういう線でいっているのですから、これは堂々とこの際、事情変更の原則というのは古今東西の鉄則なんですから、ひとつ大いにやってほしい。  ところで、総合的な景気浮揚策ですね、いろいろ新聞に出ており、特にきょうの朝刊を見ますと、水田さんがどこかの研修会でいろいろずっと述べられている。これは非常にいいことだと思う。これはもう時間がございません、一々確認したかったのですが、この記事はおそらく大臣は見られていると思う。これは間違いなくこういう線でいくかどうか。ぜひこの線でいってほしいということを希望してあなたの見解を求める。  同時に「沖繩不安解消急げ」ということで、ゆうべの夕刊を見ますといろいろ出ています。当然のことだと思うのですが、政府はきょういろいろ対策をされる。三つばかりの項目、生活必需物資の流通を円滑化するため云々とか、本土への留学生の問題あるいは本土への旅行者のドル・円交換に支障のないようにという、こういうことは当然当面の緊急対策だと思う。沖繩は本土復帰を目前に控え不安を抱いていることは現実です、ドルを持っているのですから。それは円の現在の貨幣価値の問題を考えると当然のことでありますが、こういう問題について大蔵大臣としてひとつどのような配慮をされるか。  前段と後段、また具体的なこまかい問題も指摘したかったのですけれども時間がございませんから、総ぐくりの結論として、沖繩不安解消対策、国内の景気浮揚対策、この箱根研修会のあなたの発言、まさにそのとおりだと思うので、これに対するあなたの御見解を、ひとつ公の場である大蔵委員会ではっきり御言明を願いたい。
  18. 水田三喜男

    水田国務大臣 私は忙しくて、けさ新聞を一つも読んでおりませんので、その記事が、どういう記事が出たか申し上げることはできませんが、要するに、私が先ほど冒頭に所信を申し述べましたように、ニクソン政策わが国の不況を長引かせるおそれが非常にございますので、それに対する対策は総合政策をもって臨む。そのためには、本年度のこれから開かれる国会に必要な補正予算は提出して本格的な対策をするつもりであるというふうに考えております。  それから沖繩の問題は、恒久的に考えることと応急的に考えなければならぬ問題があると思います。今回の措置によって応急的に考えなければならぬ問題がたくさんございますので、ただいまこの問題の詰めをやっておりますが、明日には大体の措置が決定するということと存じますので、沖縄の人たちに迷惑のかからないように、できるだけ善処するつもりでおります。
  19. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 堀昌雄君。
  20. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に、ただいま実は藤井委員に御答弁になった大蔵大臣答弁に、少し事実と相違をするというか、筋が通らないというか、その点がありますから、その点をちょっと最初に確かめておきたいと思います。  大蔵省事務当局にお伺いをいたしますが、大体いま日本の一カ月の輸出入契約ですね、貿易取引の一カ月の輸出入合わせての平均的なドル建てでの金額というのは幾らですか。
  21. 林大造

    ○林説明員 現在の輸出入関係の貿易は、最近の六月の計数で申し上げますと、IMFベースで輸出が二十億ドル輸入が十三億六千万ドルでございます。
  22. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると輸出入合わせて約三十三億ドルと、こういうことになりますね。八月の十七日から八月の二十七日までの十日間、この間における輸出入契約というのは一体幾らありましたか。
  23. 林大造

    ○林説明員 毎日の統計は私どもとっておりませんので、したがいまして八月の十七日から二十七日までの輸出入の計数は現在把握しておりません。
  24. 堀昌雄

    ○堀委員 把握してないということで、それならちょっと通産省の事務当局に聞きますけれども、あなたのほうでもわかりませんか。この重要な時期に——為替市場を開いておいて、対外取引を安定的に行なうといま大蔵大臣が言ったんですからね。安定的に行なっている時期に一体どれだけの輸出入の契約が成り立っておるか、そんなこと調べていないで対策を講じられますか、政府は。だれか答えなさい。
  25. 外山弘

    ○外山説明員 輸出の契約自体は一々わかるようにはなっておりません。しかし認証のほうは大体一日八千万ドル程度の、あまり変化のない数字に推移しております。
  26. 堀昌雄

    ○堀委員 認証と契約は違うんじゃないですか。問題は、認証するのはこっち側のかってですよ。要するに、相手側との為替取引を通じて契約が成り立つか成り立たないかということが、為替市場をあけておく必要があるかないかに関係しておるのでしょう。どうですか。
  27. 外山弘

    ○外山説明員 認証と契約は確かに違います。しかし契約の一々を統計でとっておりませんので、したがいまして、まあ聞き込みで、契約状態が若干停滞しているとか新規契約ができにくくなっているとかというふうな話を最近いろいろ調査しているわけでございますけれども、統計的には契約をつかめるようになっていないわけでございます。しかし認証と契約が違うことはそのとおりでございます。
  28. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは、ちょっとこれは日銀総裁にお伺いをしたほうがいいのか大蔵大臣にお伺いをしたほうがいいのかわかりませんが、十七日以来、外国為替市場で先物の取引は成り立っておりますか。ちょっとどちらでもいいからお答えをいただきたいと思います。——総裁いかがでしょう。
  29. 佐々木直

    佐々木参考人 先物取引はきわめて少額しかできておりままん。
  30. 堀昌雄

    ○堀委員 先物取引はきわめて少額しかできていないということは、少なくとも現在の貿易は一覧払いが大体五〇%、ユーザンス五〇%とすれば、ユーザンスに見合うものは実際上貿易の契約はここで停止をしておるということと同じになりますね。さっき大蔵大臣は、要するに、欧州諸国為替市場を閉鎖しても自国の通貨取引ができるのが大きいから閉鎖をしておるけれどもわが国ドル建てだから、閉鎖をしたら事実上貿易取引は停止をすることになると同じだから閉鎖をしなかった、こう言われました。しかし事実上は先物取引はほとんど皆無になっておるということは、貿易取引はここで停止をしておるのじゃないですか。これはあとでさっそく調査をして直ちに当委員会に、この十日間における輸出入成約の状態を報告をしてもらいたいのでありますけれども大臣が、為替市場を開いておくのは貿易の安定のためだと言っておりながら、事実上貿易が停止しておるのなら、安定のために開いたという理由になないじゃないですか。大蔵大臣いかがですか。
  31. 水田三喜男

    水田国務大臣 開いておるのと閉鎖するのとは全くこれは違うと思います。あの場合、閉鎖した場合に起こる混乱は、新しい取引ができるできないというのじゃなくて、もう金融が、一日を争っておる中小の輸出業者あたりが、金融上の措置の狂いによって倒産しないとも限らない。為替市場の閉鎖が及ぼすいろんな影響は、新規にどういう商談ができるかできないか以外の問題を含んだ問題でございますので私は閉鎖しなかったということでございますが、あとから申しましたように、そういう目的で閉鎖はしなかったとはいうものの、現実にはドルが非常に弱過ぎるために、いつかは円の切り上げとかなんとかいう措置があるだろうという思惑が世の中にびまんしておるのですからして、事実上新規の取引というものはもう停止と同じような状態になった。そうすれば、これ以上市場を開いておく価値というようなものも云々ということで、私は、やはり取引の安全を確保するという意味からもここでフロートすることはいいんだという、二つの理由——フロートした理由を、国際協調の場をつくる、同じ立場に立つという理由と、いま言ったような理由、二つからこれを踏み切ったというふうに説明したつもりでございます。
  32. 堀昌雄

    ○堀委員 後段のほうはあとで伺いますけれども、前段の、いま為替市場を閉鎖したら中小企業が倒産をするとおっしゃいましたね。しかし、事実上、為替市場が開かれておる間に、ここで資金を手に入れたのは中小企業ですか。要するに輸出前払い代金の受け取りというのは、いま佐々木総裁がお話しになったように、日本銀行日本の外為銀行外国銀行から外国で融資を受けることを遮断したわけでありますから、輸出前払い代金というのは、結局向こうの企業から直接に取り入れられるもの以外には、事実上これは中へ入ってこないんじゃないですか。日本の商社のほうは、こちらでは押えたと、こういうことのようでありますけれども、事実上は現地法人が向こうの企業から前渡し代金の送金を受けて、それを国内に送ってきたのが三十三億ドルということは、要するに現地に法人がつくれるような大企業だけがこの恩典に浴して、現地でドルを調達できない中小企業は、この為替市場を開いたことによって何らの恩恵も受けていないじゃないですか。事実関係が違うじゃないですか。大臣がさっきから答弁しておることは事実に一つ一つ違っておる。そんなあいまいな態度でこの重要な国益に関する問題を処理してもらっては困る。大蔵大臣、もう一ぺん答弁してください。
  33. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは、そのとおりのことは言えないと思います。と申しますのは、私どものところにはすでに、これをもし閉鎖するようなことがあったら自分たちはたいへんなことになるのでこの事態は早く解消してもらいたい、むしろもう一定の率をきめた引き上げに踏み切ってくれることのほうがわれわれにはいいんだというような、中小企業の輸出業者を中心にした意見が出てきて、そこから問題が出てくるというような情勢を見ましても、これが中小企業の問題にどれだけの響きを持っておったかということは大体おわかりができることと思います。
  34. 堀昌雄

    ○堀委員 答弁になっておりません。全然答弁になっていない。要するに、中小企業の倒産に対する措置というのは国内金融で処理ができることです。それを外為市場にひっかけてあなたはここで答弁しておるけれども、外為というものの本質をあなたが十分理解していない答弁だと私は思います。ですから、いまの答弁は意味がありません。  あとの問題はあとの問題でまた質問をいたします。  もう一つこれに関連して伺っておきたいのは、あなたは、そういう西欧との諸条件の中で日本変動相場制に移行するんだ、要するに平価は現状のままとして変動幅を拡大するんだ、こういうふうにさっき所信をお述べになりました。一体この、為替市場で使われておる国際金融上のことばであるフロート、変動相場制に移行するということは、日本のように厳格な為替管理をやっていてフロートと言えますか。現在の日本がとっておるやり方は五%ないし五・五%のワイダーバンドだ。変動幅を拡大して、その拡大の幅の範囲で処理をしておるんであって、ここには自由がない。変動相場というものは、本来的には自由に動くというのが変動相場なんですよ、幅がないわけですから。そこで自由に動く。これまでは上下〇・七五の幅があった。〇・七五の幅だけに押え込んでおった。そのためには平衡操作をした。今度は変動相場制になったんだからワクはない。もちろんどこかで介入することはある程度やむを得ないでしょう。しかし事実上は為替管理をがんじがらめにした変動相場というものはありますか。佐々木総裁にちょっとお伺いをいたしたいのです。——ちょっと佐々木総裁のほうから先に伺います。
  35. 佐々木直

    佐々木参考人 今度の政府施策にあたりましての説明は、変動幅制限の一時的な停止である、こういうふうに説明されておりまして、フロートとか、そういうようなことばは使っておられないはずでございます。したがいまして、そういう意味で、いま堀先生のおっしゃいましたことは、もし幅が拡大されるということはワイダーバンドの一種であるというふうにも理解できるという御発言ならば、そういう言い方もできるかもしれません。しかしながら、これは今後どういうふうになってまいりますか、いまのところでは介入の可能性はあり得ると思っておりますけれども、どういうふうな相場が立つか、まだ非常に不安定な状態でございます。したがいまして、当面といたしましては変動幅制限が停止されておるという事態でございます。
  36. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの総裁答弁では、変動幅制限が停止——これは大蔵大臣談話で、さっきもお話しになりましたが、「最近の国際通貨情勢にかんがみ、現行の円平価を維持しつつ、外国為替の売買相場についての従来の変動幅制限を八月二十八日より暫定的に停止することとした。」こうなっていますからね。ですから、その限りにおいて佐々木総裁の発言はそれでいいと思うのですが、しかしあなたはさっきからフロート、フロートと言って、何回か発言されておるわけですね。そうすると、大蔵大臣は自分がきめたことに、事実と相違した問題をここで国民の前に答弁しておるということは、これは大蔵大臣の権威としてきわめて重要な問題だと思うのです。フロートでないのにフロートと言っておるということは一体どういうことなんですか。そこをひとつお答えいただきたいのです。
  37. 水田三喜男

    水田国務大臣 最初に新聞発表するときに私は断わってございますが、定義の問題であって、制限を暫定的に停止したということはフロートであるかどうかという質問が出ましたが、フロートであると言ってもいいし、しかし介入するフロートですから、あるいは制限つきフロートという名前をつける人もあるでしょうし、あるいは幅が少し広過ぎるワイダーバンドと見る人があったとすればそう見てもいいかもしれませんし、これは定義の問題だ。性質は、いま日銀総裁がおっしゃいましたように、為替変動幅制限を停止したということだという説明をしたのでございまして、フロートということを言いましたが、いわゆるフロートということではないということははっきりしております。(堀委員「そんな日本語があるか」と呼ぶ)だから、これは定義の問題だということを、もう最初から断わってあります。
  38. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣は、これから十カ国蔵相会議に御出席になるのだと思うのですよ。——よろしいですか。要するに、国際通念としてのフロートということに対して、あなたがかってにつくる定義は通用しないのですよ、そんなものは。  ちょっと佐々木総裁、たいへん恐縮でございますが、国際通念に基づくフロートというのはどういうことか、ここでひとつ御解明をいただいて、大蔵大臣の見解がいかに誤っておるか、ちょっと立証したいので、よろしくお願いいたします。
  39. 佐々木直

    佐々木参考人 フロートということばは俗語でございまして、これはいろいろな人のいろんな使い方がございます。したがって、このフロートというものは国際的にこういう定義であるというふうにきまったものは……(堀委員一般概念でけっこうです」と呼ぶ)一般概念といたしましては、一番典型的なフロートは、そのことばがあらわしますように、全く自由にふらふらふらふら動くことをフロートと申します。しかし、これにも完全なものがなかなかないのではないか。ですから、これはいまも申し上げましたように、それぞれの使い方によって差があることばであるというふうに御理解願いたいと思います。
  40. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いま大蔵大臣は介入するフロートとおっしゃったのですね。そうすると、日本銀行は、現在の為替変動幅制限の停止は介入するフロートだ、こういうふうに理解をしておいでになりますか。
  41. 佐々木直

    佐々木参考人 必要に応じて介入することがあるであろうというふうに申しておりますので、いまの非常に完全に放任されたフロートということではなくて、変動幅制限を停止しておりますが、それも野方図に動くものではなくて、いわば管理されたる変動幅の拡大であるということに実質的にはなろうかと思います。
  42. 堀昌雄

    ○堀委員 これでさっきの藤井質問に対する私が納得できなかったことをちょっと解明をさせていただいて、これから私の質問に入ります。  最初に、私はこの質問に入ります前に、私ども日本社会党の考えております現在の通貨問題についての考え方をちょっと申し述べておきたいと思うのでありますが、私どもは、ここにも書いてございますが、「現行の円平価を維持しつつ、」とありますから、私はまだ現行の円、平価は維持されておるという前提に立っておるわけであります。そういう前提に立って、この円平価を変更する、要するに円を切り上げることはわれわれ日本国民のプラスにならないという判断から、円の切り上げに対して私どもは反対であります。  その理由をちょっと簡単に申し上げておきますと、大体、円が強いということは、これは相対的な問題でありますから、相手側の通貨との関係で、片一方が弱ければこちらが強くなくても相対的には強くなる、こういうふうに認められる性格のものだと私は考えておるわけです。そうすると、はたして円がほんとうに強くなったのか、相手方のドルが弱くなったのか、ここに私は一つの問題があると思います。ドルが今日このように信任を失い、ついに国際通貨基金の規約である金の交換をするという国際通貨基金の一番の基本原則をとりやめて、金の交換停止に踏み切ったということは、事実上私はいまの国際通貨体制というものは崩壊をした、こう実は認識をしているわけですが、そういうことになった経過の最大の理由は、私はアメリカのベトナム戦争の結果だと思うのであります。このように、本来平和のために使われるべきものが戦争のために多額の費用が軍事に投下をされ、そうして軍需生産が拡大をした今日、このことのとがめが実は米国経済の中に非常にはっきりあらわれてインフレとなり、その結果通貨の価値が下落をしてきた、これは非常に一つのはっきりした事実だと思うのであります。  さらに、長い間にわたった中ソ封じ込めの戦略——非常に現在のアメリカ態度は変わりましたけれどもニクソンが中国を訪問しようということでありますからおそらく変わってくると思うのでありますが——そのための軍事援助その他の費用に多額の金を使ったことも、私はドルを弱める大きな理由になったと思うのであります。  さらに、アメリカでは御承知のようにコングロメラートというのが海外にどんどん出かけて、アメリカの雇用を確保できる機会があるにもかかわらず、自分たちの資本を外国に投資をして、要するに諸外国の雇用を増大することによって相対的にアメリカの雇用の機会を失わせたという海外進出企業の問題も、私は非常に大きな問題としてあると思うのです。  さらに、鉄を一つの例にとれば、USスチールその他の大企業が競争を行なわないで、管理価格のもとに設備近代化を怠ってきた。この中に、たとえば日本の鉄鋼業との間の競争力に大きな差が出た。これらもアメリカ自身が解決すべき問題であるにもかかわらず、それを解決しなかったというような問題もあります。  こういうような問題の結果、実はアメリカのインフレが高進をしてきて、相対的にアメリカドルが弱くなったということは、これは世界周知の事実だと思います。おそらく大蔵大臣もこの点についての御見解はわれわれと変わりはないと思うのであります。  さらにもう一つ、もしここで平価を動かするということはどういうことかといえば、いまアメリカの賃金は日本の賃金の大体三・五倍から四倍近くになります。労働時間はILOの統計でも、向こうは一週大体四十時間、こちらが四十四時間、これはILOで、われわれはちょっとどうかと思うのですけれども、ILOの統計で見るとそういうことになっておる。あるいは社会資本ですね、要するに上水道、下水道、道路の舗装、いずれをとっても、われわれの生活環境から見て、日本アメリカというのは、大体日本アメリカのまだ三分の一から四分の一程度という状態にあるというのが現在の状態です。  こういう状態になっておるときに円を切り上げるということは、われわれの国民生活を低賃金に押えつけ、社会資本への投資も思うにまかせず、さらに企業が生産したものが輸出がしにくくなるということの結果、国内における雇用の問題についても重大な影響が起こるおそれがあるということで、私たちはこれらの観点から見て、今日円を切り上げることが日本国民全体にとって決してプラスではない、こういう判断に立っておりますので、われわれはこういう観点から実は円の切り上げについては反対なのであります。  そこで、その円の切り上げ反対ということでいま私がいろいろ申し上げましたが、大蔵大臣は、アメリカのそういう通貨の力が下がったということについては私と意見が違う点があれば、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  43. 水田三喜男

    水田国務大臣 世界の通貨体制混乱の原因はドルの弱くなったためであるということはもうはっきりしたことでございまして、そのとおりであろうと思います。ですから、新しい通貨体制の安定ということをはかるためにはこの問題を中心として、どう今後の多国間の調整があるべきかというのがこれからの問題になることは当然でございますが、今回の処置はそういう問題とは別個の応急の措置であって、これからどういう形で円の切り上げが行なわれるかとか、その幅をどうするかとか、あるいは行なわれないかというような問題は、いま言ったようないろいろの問題がからんでこれから協議される問題だろうと思います。
  44. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、これは三大臣及び日銀総裁に一人一人お答えをいただきたいのですが、今度のニクソン声明を各大臣総裁はどういうふうに受けとめていらっしゃるかということをちょっとお伺いをしたいのです。  実はここであげられております三つの問題であります。一つは失業対策の問題であります。一つはインフレ対策であります。一つドル防衛であります。この三点が実はニクソン演説の主要な柱であります。この三本の柱のどれに一体ニクソンは一番比重を置いて、二番目はどれで、三番目はどれだ、こういうふうにこれを御理解になっておるか。大蔵大臣からひとつ逐次お答えをいただきたいと思います。
  45. 水田三喜男

    水田国務大臣 ニクソンは、いま言われました三つの問題の総合施策として打ち出したものであるということをはっきり申しておりますが、やはり何といってもそのうちの中心はドルの防衛ということであると思います。
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 国内景気を浮揚せしめ、それから失業を吸収するような状態ができなければドル価値の維持ができないわけでございます。ですから、究極の目的はキーカレンシーとしてのドルの維持、それが世界の機構の中に占めるアメリカの主要的地位を確保するためには不可欠なものであるということでドル価値の維持、ドル防衛ということであって、他の二つのものはそれを達成するための手段である、こう思います。
  47. 木村俊夫

    木村国務大臣 私も大蔵大臣と同意見でございまして、ニクソン大統領としては全部パッケージディールとしての政策であろうと思います。
  48. 佐々木直

    佐々木参考人 私はこの三つは完全に総合的に考え合わされたものだと思います。しかしながら、われわれにとって一番大きな重点は最後のドル対策であろうと思います。
  49. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私は、いまのお話しの認識がこの対策に非常に重要な影響があるということを申し上げたいわけであります。あの演説原文を全部お読みになったのでしょうか。私はこの演説原文を五回ぐらい読みました。五回ほど読んでみれば、一体何が重要かといえば、ニクソンが次の選挙に当選するためには失業率を下げることが最大の課題だということがはっきりとこの中で読み取れておるわけであります。アメリカでいわれておることは、失業率が一%ふえることは投票の上では二%の票を失う、こういうふうにいわれておると私は報道で承知をしておるわけでありますが、ニクソン大統領が来年の大統領選挙を目がけて、どれだけこれに重要な関心を払っておるかということは、まずこの前の繊維問題で明らかではありませんか。この前の大統領選挙の際に、要するに繊維業者との間に取りきめがあるために、あるいはミルズさんがあっせんした自主規制の問題についても、大統領はあれではだめだ、こう言っておるという事実もここにはっきりしておるわけですよ。だから、あの行間に出ておることば、アメリカの雇用をいかにして拡大するかということのためにどれだけ多くのことばがさかれておるかという点をまず認識をしておいていただかなければならぬと私は思うのです。そうして、その失業率を下げるということのためには景気浮揚政策をやらなければなりません。景気浮揚政策として一番彼らが最初に据えておるのは減税なんですよ。一九七三年一月一日に予定しておる所得税の減税を来年の一月一日に繰り上げる、これによって刺激をしましょう。自動車の七%の消費税を撤廃して自動車一台について二百ドル安くしましょう、それによって雇用の機会は二万五千人ふえます。こういうふうに、一つ一つの問題はすべて雇用につながって実は述べられておるわけであります。その雇用を安定させるためには、要するに物価を安定させなければいかぬということで、不十分でありますけれども九十日間の賃金・物価の凍結だとか、あるいは、私は課徴金の問題も雇用政策だと思っておるわけです。要するに外から入ってくる輸入を押えることによってアメリカ企業の操業を拡大して、それがやはり雇用につながるわけであります。だから、これらの一連の問題を見てくると、確かにこれは全部が不可分な一体になっておりますけれども、重点は雇用政策、国内政策が重点であって、国内政策を遂行するために必要だからインフレ政策ドル防衛をやりましょう。これが、ニクソン演説を何回も何回も読み返してみれば、はっきりと浮き彫りにされておることなんです。それを皆さんのほうは、アメリカの国内政策として打ち出されて、あわせて国際政策となっておるものを、国際政策ドル防衛が一番重要な課題だと受けとめれば、当然私はいまのようなかっこうの受けとめ方になると思うのです。私は、それは違うのじゃないか。  そこで、私はいまこの重要な問題について最初経済企画庁長官にお伺いをいたしますが、いま非常に不況だといわれております。この不況な状態は、アメリカもまだ景気が回復しないから一生懸命やっておるわけですが、こちらも不況で何とかしなければならぬところに来ております。おまけに課徴金のようなものが置かれれば不況が促進されるのは間違いありません、品物が売れなくなるわけですから。そういうときに、私はやはり国内の経済政策をまず優先的に処置をするということが、当面における日本国民に対する政府責任だと考えるのですが、経済企画庁長官、どうお考えですか。
  50. 木村俊夫

    木村国務大臣 なかなかわが国の不況が回復しない。そこへもってきて今回のアメリカ措置でございます。この不景気の回復がこれによっておくれることは明らかでございます。そういう意味におきまして、わが国の対内経済政策、これはもう当然不況対策と同時に、この機会は、わが国のおくれておった社会資本の立ちおくれを取り返す最もいい好機であろうと思います。お説のとおり私は考えます。
  51. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、現在のこの不況を取り戻すためには公共投資が確かに非常に役に立つと思いますが、実はこの間の大蔵委員会水田大蔵大臣と議論いたしまして、公共投資は予算をつけたらすぐできるようになっておりません。要するに、用地取得の問題、図面を引く計画の問題、いろいろと実はネックがありますから、予算をつけたら直ちにそれが需要にはね返るというものではないことは明らかであります。やはりニクソン大統領の例にならって、この際ひとつ臨時国会で所得税の大幅減税を提案をして、アメリカと同じように来年一月一日から——日本の場合ですと年度だということでいつも四月からですけれども、一月一日から所得税の大幅減税を行なうことによって景気浮揚策を考える。これは私は当面一番緊急な問題だと考えるのですが、経企庁長官はそういう経済運営の立場からはどうお考えでしょうか。
  52. 木村俊夫

    木村国務大臣 私は、公共投資の増大、これも決して御指摘のようでなしに、景気回復に対して相当乗数効果があると思いますが、しかしながら最も即効的なのはやはり所得税の減税だろうと思います。いま御指摘のような時期にこれをやるべきかどうかは、これは財政当局の判断でございますが、私は大いにそれはやってほしいと思います。
  53. 堀昌雄

    ○堀委員 大蔵大臣、ここで財政当局が一番考えなければならぬことは、やはりこの際、国民に利益になることを行なうということが私は非常に重要な問題だと思うのですね。アメリカですら、要するに来年の一月一日から所得税減税をやろうというのだから、私はこの臨時国会に提案をされて、もちろん財源については現在の成長率が下がっておるところでありますから来年は不十分かもしれません。しかしそれならば国債を発行してでも、所得税の減税を行なうことは国民は決して反対をするものではない、こう考えるのでありますが、大蔵大臣は来たるべき臨時国会で所得税減税を大幅に行なうことによって、現在の景気浮揚対策を実行する意思があるかないか、お答えをいただきたいと思います。
  54. 水田三喜男

    水田国務大臣 来たるべき臨時国会への構想をただいま練っておる最中でございますが、私の考えでは、まだ公式に申したことはございませんが、ばらばらな景気対策をするというのではなくて、やはりいまから昭和四十八年の三月期を終期としたいわゆる十五カ月予算というような構想を立てて、そのうちの三カ月分をすでに本年度において実施するというような構想のもとに計算された補正予算をこの次の国会に出したい、こういう構想でいろいろな準備を進めておるときでございます。したがって、この十五カ月構想の予算の編成の中にはおっしゃられるような所得税の減税というようなものも考えますが、この三カ月繰り上げて本年度実施するものの中にこれが入るか入らないかということは、まだいま検討事項になっておりますので、もう少しこれは検討したいと思っております。しかし、いずれにしましても公共事業だけではない、景気浮揚策はやはり国民の購買力を刺激するというような問題もあわせて入ることは望ましいことでございますから、そういう意味で減税、金融、あわせた総合政策考えたいと考えております。
  55. 堀昌雄

    ○堀委員 御検討のようですが、アメリカがやるぐらいのことを——アメリカのほうは外へ押し出してやっている中でやることでしょう。日本は受け身になっているときにやるのですから、アメリカよりももっと早くやって私はあたりまえと思うのであって、どうかひとつ一月一日から所得税の大幅減税を行なうように、国民の声として要望いたしておきます。  次に、通産大臣にお伺いをいたします。  今度の課徴金というのは確かに非常に大きな問題で、さっきもお話がございました。しかし、この課徴金の問題と通貨調整の問題は、皆さんのほうでは、通貨調整をやるならば課徴金を撤廃しろ、こういうかまえでおやりになることでしょう。私はそのことはちっともかまわないと思いますが、どうもアメリカはそう簡単に課徴金撤廃をやらないようなふうにわれわれは新聞で承知をしておるわけであります。しかし、ここでちょっとわれわれが考えてみなければならないのは、日本の一方的な立場だけを私はここで主張しようと思っておりません。やはり現在のアメリカ日本の間における貿易のギャップですね、日本からの輸出が多過ぎて、アメリカのほうから日本への輸入が少ないということのために起きておるギャップを何らかのかっこうですみやかに埋めるということ、バランスをとらせるということは、私はアメリカ側に対して日本が十分考慮しなければならぬ重要な問題だと思います。いかがでしょうか。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 今年度の日米のバランスは、アメリカ側で指摘をすると、大体二十億ドル輸入超過ということで計算をしておるようでございます。もうすでに七カ月で十四、五億ドルということでございますから、いままでの状態からいうとそのような趨勢にあるということは否定できないことだと思います。特に日米間に対しては、日本からの出超二十億ドルアメリカの年間貿易収支の帳じりマイナス二十億ドルとちょうど平仄を合わせるということで、日本製品が注目の的になっておるわけでございまして、日米輸出入のバランスをとるためにどうするのかということがテーマになっております。これは日米経済閣僚会議を皮切りにしまして、やはり日米間の収支バランスをとるためにはどうするか。しかも日本の打撃がないようにどうして調整をとるのかということが一番日米間の大きな問題だと理解をいたしております。
  57. 堀昌雄

    ○堀委員 ニクソンの演説によりますと、輸入数量規制をとるよりも課徴金でやるほうがいいと思う、こういうふうに実は演説の中で述べておるわけです。ところが、そう言いながら実はアメリカはかなり日本に対して数量規制を要求しておりますね。繊維においてしかり、洋食器においてしかり、鉄においてしかり。そこで、私はアメリカが世界全体に対して数量規制をやることはできないと思いますが、日本に対してはすでにかなりそういう要求がある。ですからここで通産大臣にお考えをいただきたいことは、貿易調整の問題によって生ずる日本国民全体の不利益と、通貨調整によって生じる日本国民全体に対する不利益ですね。貿易調整というものはアメリカとだけの貿易調整でありますから、言うなれば日本貿易の三〇%くらいのところの中におさまる問題だと思うのです。しかし通貨調整となりますと貿易一〇〇%に全部かぶってくる問題であります。ですからそこらの問題を考え合わせますと、この問題については貿易調整のほうが通貨調整よりも日本国民にとっての不利益は少ない、こういう判断を私はしておるのですが、通産大臣立場ではいかがお考えでしょうか。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 一つ考え方でございます。なかなか有益な示唆に富んだ考え方でございます。確かに、課徴金日米間の問題でございますから解決の方策がないわけではありません。しかし平価切り上げということになりますと、これは永久的なものでございます。平価切り上げに対して、ほかの国は自主的にやっておるのに日本だけはなぜやらぬのだ、人に要求されてもやらぬじゃないかということを海外で非常に議論をしておるようでございますが、しかし、国益の立場に立って通貨問題は考えなければならない問題であるし、各国ともみんなその立場でもってやっておるのです。西ドイツだって簡単に切り上げたわけじゃありません。二年間も三年間も外圧に耐えながら、しかもそれはいまの日本とは違う立場、コストインフレにつながるおそれのある国内的な情勢に対応してマルクの切り上げが行なわれたのでありますから、これはやはり非常にめんどうな問題として、私は端的に平価切り上げに進むべきだという議論をとらないのはそこにあるわけでございまして、少なくとも平価調整ということが最終的に結論づけられなければならない状態であっても、その過程において十分取捨選択をせられ、そしてその結果が、世界全体が長期間において日本の円レートというものに対して確定をするような状態でなければそのような問題を前面に押し出すべきではない、こういう考えでございます。
  59. 堀昌雄

    ○堀委員 お話を聞いておりますと、大蔵大臣通産大臣とだいぶニュアンスが違うと思うのです。そしてその点は通産大臣のほうがやはり日本国民立場に立った答弁だというふうに受けとめたいと実は思うのです。なぜかというと、いまお話しのとおりであって、通貨切り上げるというのは要するに実はこちらの判断なんです。切り下げるほうは、諸経済情勢でにっちもさっちもいかないところへ追い込まれて切り下げるということになるのであって、切り下げ切り上げというのは全然性格が違うわけです。そこで、かりに切り上げるということを考えるならば、日本切り上げられるような態勢にあるときに切り上げるのでなければ、現在不況で非常に困っておるときに切り上げるなどということは、少なくとも経済の問題を頭に置いて仕事をしているわれわれとしては想像もできないことだというふうに考えておるわけです。ですからそういう点ではいま通産大臣がお答えになったように、どうしても日本立場というものを、日本国民の問題を十分頭に置いて、できるだけ切り上げないのだ——われわれは反対なんですから——そうやってがんばっていく間に貿易調整その他で話がつけば、アメリカとしては、貿易調整で全部話がついておるのに何も通貨の問題で処理しろということにはならないのじゃないか。  かりにもし切り上げるという問題が議論の中で、アメリカやその他との間で出るならば——大体アメリカ切り下げられないのは、IMFのブレトン・ウッズ協定参加の法律という法律の中で、アメリカ平価調整は議会に出さなければならないということを法律で書いているわけです。それならわれわれも次の臨時国会に、平価調整は国会の議決を要するという提案をしたいわけなんです。アメリカ自分たちだけ特権的な立場にいて、その他の国は、おまえたちはかってに自由に動かせよ、アメリカは法律があるから動かせないのだ、こんなあなた、国際の関係でこういう一方的な考え方というのは許すことはできないと思うのです。ですから、私ども国民の利益を守るためには、少なくとも次の臨時国会に、平価調整については国会の承認を要する、ブレトン・ウッズ協定と同じような効力を持つものを出して、それを皆さんの御協力で成立をさせた上でアメリカと話し合いをしてもらえば、ここで初めて私は対等になると思うのです。よきパートナーシップというのは、片一方は高いところにいて片一方は低いところにいて、そうしてこれで話し合いをするというのはよきパートナーシップじゃないですよ。お互いが民主的に対等の立場で話し合うというのが私はよきパートナーシップだと思うのですが、通産大臣いかがでしょうか。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 私がお答えをすることではございません、大蔵大臣の答えでございますから……。これは、私は一言申し上げると、確かにアメリカは法律でということでございますが、私は、アメリカが法律だから日本も立法事項でなければならないとは考えておりません。あの一九四五年に新しい国際的平和維持のためにつくられた機構、これは御承知のとおりIMFとか世銀とかガットとかDACとか、いろいろなものがございますが、そういう中において、戦後の日本が、金の一かけらも持たない日本が、国際機関の協調の中で今日の繁栄を築いておる、円価値を維持しておるということ、今度は、いままでサポートを受けておった日本が、国際通貨や流動性をささえなければならない時代に立場が変わったというにすぎない。ただキーカレンシーとしてのドルは何とかこれを保たなければならない。これは三十九年の東京総会においてSDRの制度を採用し、それから世銀債の発行という形で一応ドル防衛に対する一つの結論が出たわけでありますが、しかし百億ドルを割るというアメリカの保有金量の問題から今度の問題が出ておりますから、私はアメリカの法律よりもIMF、いわゆる十カ国の蔵相会議で、専門家会議でもって、ほかの国際的な各国通貨レートはこうするが、一オンス三十五ドルというドル価格も下げなければいかぬという結論が出れば、それは当然国内法規よりも優先をするものでございますので、そういう考え方の中で日本がどう主導的な立場をとっていくかというのが新しい国際協調の基本線であって、私はここで臨時国会にすぐ、日本が立法事項として円平価を議題とするというような立法はなすべきではない。これはただ御質問に答えて言うことでございまして、財政担当大臣はまた別な考えがあれば披瀝されるはずであります。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 いや私も国際慣行は、あまり目には目をでやる必要はないと思うのですが、そのくらいの気持ちはわれわれ国民としては持っておるわけですから、皆さん方がアメリカと話をされるときにはそういうき然とした対等の立場でやってもらわなければ困る、こういうことを強く要望しておるわけであります。  時間がありませんので、あと二点だけお伺いをしておきます。  そこで、新しい通貨制度の問題でありますけれども、私はすでにSDRの問題以来、この大蔵委員会で何回か提案をしておりますが、今度こそ私は新しい第三の国際通貨考える段階に来た、こう考えておるわけであります。現在、ニクソンの訪中という問題は、いろいろありましょうけれども、私は経済立場から判断をして、要するに西欧も日本も中国といろいろと貿易をやっておるのにかかわらず、アメリカが中国との貿易から遮断されておることは、必ずしもいまのアメリカの置かれておる貿易収支の状態から見ても適切でないから、そこでニクソンが訪中をし、パイプを通じて、新しい中国との貿易を開きたいということも一つの要素になっておると思う。今日の問題は、資本主義圏の諸国だけで問題を考えるのではなくて、やはりグローバルに、中国を含めた社会主義圏全体、やがてこの秋には中国の国連加盟も実現するでありましょうが、国連加盟国全体が一つになった新しい中央銀行、世界銀行というものができて、そこに、一国の通貨が新しい基準通貨になるのではなくて、新しい中央銀行である世界銀行、ここが造出するところの基軸通貨をもって新しいキーカレンシーにする。それにアメリカも幾らかのかっこうでリンクをしてくださいということになれば、私は今後の問題というのは、東西貿易が拡大される上にもたいへん好都合であり、そのことは単に資本主義圏だけでなく、社会主義圏における世界の国民の役に立つことでありますから、これをひとつぜひ考えていただきたい。これは私もう数年来大蔵委員会で、おそらく田中さんが大蔵大臣のときも申し上げておるかと思うのでありますが、水田大蔵大臣、これについて、時間がありませんから簡単にお答えをいただきたいのです。
  62. 水田三喜男

    水田国務大臣 世界の通貨体制は新しい体制へ向かって、今度を機会に私は一歩前進するのではないかと思います。やはり金を離脱した方向で進んでいくことと、いま言われましたように国連の参加国がふえるに従って、ブレトン・ウッズ会議には参加しておった国もIMF体制には入っていないということが、今後は入るというような形で変わっていくかもしれませんし、SDR、ドル、金との関係、こういうものを中心とした新しい通貨議論というものがこれから展開していくだろうと私は考えております。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 さっき藤井さんにもお答えになりましたが、私は沖繩の通貨問題、非常に重要だと考えております。これは現在私どもが伺っておるところでは、個人その他を含めてでありましょうが、預金が八億ドルくらい、流通通貨が一億ないし一億五千万ドルですか、そのくらいあるというふうに伺っておるわけでありますが、私は、沖繩の皆さんが長い間あの廃墟の中から今日まで働いてこられたこれらの蓄積、預金等については少し考慮を払う必要があるのではないか、こう考えておるわけです。これはもう答弁は要りませんが、一つ考え方としては、われわれ国外における自由円の勘定を認めておるわけでありますから、沖繩というのはいまは少なくとも日本の本土ではありませんから、沖繩におけるドルを自由円勘定として、少なくとも八月の十五日以前にあった個人の預金については三百六十円のレートで自由円勘定として認めてあげればこの問題は処置ができるのではないか。そうしてこの問題はそういうことで、預金勘定以上の問題については自由円としては認めないということになれば、ここでスペキュレーションの対象の問題等も起こることはないかと私は思いますので、この点はひとつ大蔵大臣財政当局で十分御検討いただいて、沖繩の方が今度の問題で不測の不利益を受けないということを前提としてひとつお考え願いたいのですが、原則だけちょっと確認しておきたい。不測、不当の不利益を受けないという点について大蔵大臣の御答弁をいただきたいと思います。
  64. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま私どものところへの要望は、どういうことがあってもやはり最後は三百六十円の率をもって換算するということをひとつ考えてくれ、それをはっきり約束してくれればいろいろ不安というものはなくなるという要望でございます。これは非常にむずかしいことでございまして、これはもう皆さんが御想像できることと思います。そのお約束はできませんが、しかし沖繩の方たちに迷惑をかけない措置というものは他に方法はいろいろございますので、政府は十分の考慮を払うということでいま皆さんの御了解を願っておる段階でございますので、この点については十分考慮するつもりでございます。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 最後に日本銀行総裁大蔵大臣にお願いをしておきます。  実は現在、さっきちょっと伺いましたように、先物の取引が外為市場で起きていないということは、事実上外為市場が機能していないと私は考えておるわけです。これは一カ月に往復三十三億ドルもあるし、問題でありますから、いつまでもこのような形では困るのです。要するに、輸出前受け代金の問題も、一体一年もの期間をそのままにほうっておいたというのは、私は大蔵省としてはまことに手抜かりなことであって、昨日の発表では、要するに取り入れについては許可制にするということをけさの新聞で拝見をしましたが、大体のものが終わったころにやるなんというこの後手の対策は私は全く遺憾だと思うのです。しかしそれはともあれ、輸出入が少なくとも正常に動けるように、これだけはひとつ政府にすみやかに考えてもらいませんと、これは為替市場を閉鎖したと同じことになっているわけですから、この点について日本銀行として対策をとり得る部分政府としてとり得る部分、私はいろいろあると思います。時間がありませんから中身に触れませんけれども、この点をどうかひとつ十分に御検討いただいて、さっき大臣がおっしゃったように、輸出入が安定的に行なえるように、一日もすみやかに輸出金融を正常化することのために十分な御配慮をお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  66. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 関連質問として平林剛君。
  67. 平林剛

    ○平林委員 ニクソン大統領の演説が行なわれましてから、にわかにわが国におきましても国際通貨の問題を中心にして平価調整問題、わが国経済の行くえ、それに伴う国民生活ということが盛んに議論をされるようになったのでありますけれども、従来私どもがこうした事態につきましてしばしば指摘をしてまいったことは、政府でも御承知のとおりであります。特にアメリカドルの弱体化、ドル危機の存在ということは、ベトナム戦争が一つのどろ沼に入ったときから指摘をされてきたことであります。遠い話を言わなくとも、ことしの五月、欧州で西ドイツのマルクの切り上げの問題が起きたときも、やはり欧州におけるドルの信用低下ということはいなめない事実であったし、最近のフランスのフランの投機等に至るまでの間には、絶えずドルも動揺と混乱というものがあったことは御承知のとおりであります。ところが、これまでの国会において私どもが、これらの情勢を踏まえて円という問題についてどう考えるべきか、あるいはそういう事態に追い込まれないようにするにはどうすべきかということを指摘をしてまいったのですけれども、歴代の大蔵大臣はみんな、円の問題は頭の片すみにもないと言ってにべもなく突っぱねてきた。いま頭のどの辺にありますか。心臓にありますか。腹の底からしみ渡ってありますか。私はまずその点を、政府の今日までのとってきた態度から見てお伺いをいたしたいと思います。
  68. 水田三喜男

    水田国務大臣 頭の片すみにもないと言ったのは私じゃございませんが、しかし、そう言った大蔵大臣のとった対策がいわゆる八項目でございますが、この八項目は何かといいますと、この国際摩擦のもとになっておる日本の対外不均衡というものをどう解消するかということをやはり一つのねらいとした対策でございますので、御承知のような八項目を早急に実施するということをきめたわけでございます。これをきめるということは、円の問題が頭のすみに相当たくさんあってこの問題をきめたということでございまして、片すみになかったことじゃなかったと私は思っております。これを受け継いだ私は、もうこの問題が頭一ぱいということで今日まで来た次第でございまして、万全の策をとるつもりでございます。
  69. 平林剛

    ○平林委員 頭の中に一ぱいなら私これからいろいろお尋ねをいたしますが、ニクソン大統領の演説の冒頭に、今日の米国は、その最大の理想の二つを実現するための今世紀最大の機会に恵まれている。その理想とは、平和の完全な世代を実現することと、新たな戦争のない繁栄をつくり出すことである。ここからうたわれておることは御承知のとおりでございます。戦争のない繁栄は三つの戦線で行動を必要とするということで、より多く、もっとよい仕事をつくる、失業の問題。それから生産費の高騰をストップさせるということ。ドルを国際的な投機屋の手から守る、つまり国際通貨投機を防ぐということがうたわれておるわけであります。  私は、ニクソン大統領の演説は、アメリカの新しい経済政策の克服すべき目標は、失業、インフレ、国際的な通貨投機ということにあると思うのでありまして、先ほど堀委員からも質問がありまして、どこにウエートがあるか、私はその答弁を聞いておりまして、それぞれあまり点数を差し上げるわけにいかなかった。私は、今日ニクソン大統領がアメリカにとっては決定的な声明をせざるを得なかった最大の理由は、またこの事態を招いた最大の原因は、すでにどろ沼化しているベトナム戦争とこれに投じた膨大な軍事支出にある。それから、世界に進出して、その王者として各国の企業に投資をしてきたいわゆる海外流出の資金、またアメリカの対外援助によるドルの流出、こういうことにあると思うのであります。ですから、単にアメリカ課徴金を課したり、あるいはまた金とドルの交換を停止したり、世界の黒字基調国に対して平価切り上げを要求したら、それで解決すべき問題ではない。問題は根本的なところを解決しなければ、そこでかりに一時的に平価調整が多国間で行なわれたとしても問題の解決にはならぬ。私はこれが一番大事な認識じゃないだろうかと思うのであります。  そこで、日本アメリカとの間には、佐藤総理しばしば言っているように、パートナーシップがしかれておるというのであります。この際率直に日本として、アメリカにこれらの基本的な問題についてむしろ主張し、強調すべきじゃないか、こう思うのですけれども、これから日米経済協力委員会出席される閣僚としてひとつお答えをいただきたい。
  70. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほどの堀さんの御質問もございましたが、この失業問題とインフレ克服の問題とドル防衛の問題、三つはもう全部つながった問題でありますが、本質はドル防衛であると私は思っております。しかし、現象形態としては、差し迫っている問題がアメリカでは失業の問題であり、インフレの問題でございますので、ニクソンの声明、私も読み返してみましたが、これは選挙の問題もございましょうが、国民に訴えるのにはああいう形式をとったとしましても、あの背後にひそむニクソン政策の本質はやはりドル防衛であるというふうに見なければならぬと私ども考えております。したがって、それを中心とするこれからの国際協調の問題がどうあるべきかを私どもはいま一番重要視しているこのやさきに、多国間の協議が始まる前に日米委員会が先に開かれるという事態になりましたので、まずこれがいろいろな国際会議の皮切りということになろうと思いますので、この機会をとらえまして、私どもは国益を十分に主張し、日本立場も述べるところは述べ、米国に対して求めるところは求める。そうしてほんとうに理解による協調というようなものが両国にできるということが、やはり両国の経済のために必要だという立場をもってこの会談を成功裏におさめたいということで、いろいろいま関係閣僚の間で相談して、出発前には諸般の打ち合わせを了するというつもりでございます。
  71. 平林剛

    ○平林委員 そのドル防衛についてニクソン大統領はアメリカ経済政策の劇的な転換を決定いたしまして、賃金とか物価の九十日間の凍結とかあるいは一〇%の課徴金をかけるための国家非常事態宣言を行なったわけであります。しかし、伝えられるところによりますと、一番の焦点は西ドイツとか、いやむしろ日本に置かれておる、こういう観測が支配的であると思うのであります。しかし今日までの総合的な状況から判断すると、私は、日米経済協力委員会に臨む政府は、少なくとも日本アメリカ二国間だけでこの問題をすべて解決をするということは得策ではない。二国間だけの調整は避けるべきである。少なくとも今月予定をされておる十カ国蔵相会議、その他IMF総会など考えられておりますけれども、多国間の調整の中で解決すべきであると基本的に考えておりますが、この際、基本的な考え方でございますから、これを確認をしておきたいと思います。
  72. 水田三喜男

    水田国務大臣 過般、日本側も大蔵省の顧問である柏木さんが向こうへ行ってコナリー長官とも会ってまいりましたが、そのときの意見は、平価調整の問題というようなものは二国間の話し合いで解決する問題じゃないのだ、これはやはりマルチの場でみな相談すべき問題であるということを、アメリカ側でもはっきりとそういう意見を持っておったそうでございますので、私は今度の会談で、はたして円レートの問題が議題になってくるかどうかとすらいま考えておるところでございまして、これはお説のとおりだと思います。また日米両国だけの協議で解決する問題であるというふうには考えておりません。
  73. 平林剛

    ○平林委員 その態度は確認をしますが、八月二十三日の新聞の報ずるところによりますと、いまお答えの中にも出たように、柏木大蔵省顧問とボルカーアメリカ財務次官との会談がありまして、日本はそのときに五%の金価格引き上げを要請して、これによって事実上円切り上げに応ずる方針を明らかにしたと伝えられております。しかしアメリカは金価格引き上げは反対で、多面的な平価調整の一環として円の切り上げを要求したとも伝えられる。そして切り上げ幅は相当大きいことを言っておる。私は、相手の考えを知る意味での接触ということは否定はいたしませんけれども、事実上、柏木大蔵省顧問とこのボルカー財務次官との会談の話し合いというものは、二国間折衝で日本の腹を示したんじゃないだろうかと疑問を持っておる。特にこの場合、新聞の報道でございますが、輸入課徴金の問題は続行されてもやむを得ないというようなことを説明したと伝えられておるのでありますけれども、これは一体真相はどうなんでしょうか。
  74. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のとおり、顧問が向こうへいろいろ交渉する権限を持って行ったわけでもございませんし、日本側の提案をする立場にあるわけでもございませんで、それらの事実は全くございません。こちらから、向こうがこうしてくれればこちらはこうするというような提案をしたこともなければ、いまおっしゃられたようなことを協議をした事実も全然ございません。
  75. 平林剛

    ○平林委員 先ほど昌頭お話がありましたように、政府としてはこれから多国間協議国際通貨調整に協力するという態度を示したわけであります。しかしこれは結局は円の切り上げに追い込まれるんじゃないかという懸念を私どもは持っておるわけです。そうすると、従来、円の平価は維持すると、これはあなたの場合でも述べておられたように、何十回となく確認をしておることが結果的にそこに追い込まれるということになると、政府責任というのは非常に重大であると私は思うのであります。しかし政府はこの際諸般の事情から考えて、円の切り上げを求められるよりは、むしろ元凶はドルにあるわけでありますから、ドルをむしろ切り下げるべきであると基本的な主張をすべきだと思いますし、アメリカの議会においても国際収支に関する分科委員会では、強い通貨切り上げが期待できない場合にはドル切り下げるべきであるというような勧告さえしていると伝えられておるわけであります。私どもは、国際通貨体制を改善するために最も望ましいのはむしろドル切り下げである。日本は今日までIMF体制にも協力しておるわけでありますし、また今回だって、通貨危機に際して外国為替市場を閉鎖しないで対ドル協力姿勢を示したわけであります。輸入課徴金のごときはこれはもってのほかの措置でありますから、そういう意味から、やはり円の切り上げはこれを回避するという基本的態度でこれからの国際会議に臨むべきだと思いますけれども、この点ははっきりしておいてもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  76. 水田三喜男

    水田国務大臣 ドル切り下げということは円の価格を引き上げるということでございまして、これについての問題はまた別個の問題を生ずることでございまして、SDRとの関係とかということで、いまおそらくIMF当局はそういう問題をめぐって何らかの対案を考究しているんじゃないかと考えられる節もございます。これは将来の通貨体制に関係する問題でございますが、そういう問題をめぐっての議論が、さっき申しましたようにこれから出てくるということでございますから、したがって、今後のいわゆる平価調整というようなものがどういう形をとって展開するかということはいまのところまだ予測はできない状態でございます。ただ日本としましては、もっと早くこの不況の回復ということが急がれておったら、これによりいまのような対外不均衡というものが非常に直っておって、私どもは円の切り上げをしなくても、変更しなくてもやっていけるという事態が早く来たんじゃないかとすら思うのでございますが、そういうことをやりかけておる過程において、今度はいまのニクソンのこういう措置がきたために秩序が全部違って、欧州各国がみんな協調できなくて、一たん市場をしめて、ばらばらにフロートして市場を再開するという事態に直面してしまったのですから、この新しい事態に立って各国との協調ということを中心に今後の事態に処する。それよりほかに方法はないというところにいま来ているわけでございますので、今後その間に処して、十分国益を私ども考えて善処するつもりでおります。
  77. 平林剛

    ○平林委員 時間がありませんから、最後に、今回政府変動相場制に移行する決意を示された。私はこれは入る前からこういう話をしていました。アメリカの偉人で最もアメリカ的なフランクリンという人が、一九二七年に、あの金解禁当時、一つの恐慌が起きる前に、時は金なり、そして信用は金なりということばを、若い商人に与えることばとして述べておることを承知いたしております。アメリカは今日、国際的にはそういう意味では信用を失った。日本は今日まで、ニクソン大統領の声明以降の動きを見ておると、まさにもたもたして、あと追いで時を失っておる。アメリカアメリカなら、日本政府のやり方も応じ方も、どうもそういう点では時を失っておるという批判を実はしたわけであります。  お尋ねしますが、変動相場制に移行する決意をしたのはいつのことですか。
  78. 水田三喜男

    水田国務大臣 それは、これだけのショックが世界に与えられて、欧州市場閉鎖するという事件が起こりました以上は、私どもは、日本としてどう対処すべきかについての方法は幾つかございますので、これについては十分検討の上、事態を見て、そのいずれの措置をとるのが妥当であるかということは、一つ方向以外にもいろいろ検討の上考えておったわけでございますが、やはり欧州がばらばらにフロートしてああいう市場の再開ぶりということを見ましたあとで、やはり日本も変動為替制度に移行する。これはまたことばの問題で、定義の問題になりますが、やはりいまの制限を拡大するという措置をとりあえずとって対処する必要があるというようなことは、一応私どもは、自分たち考えとしては相当前から持っておったということは言えると思います。
  79. 平林剛

    ○平林委員 きょうは私時間がないからこれ以上突っ込んで質問ができませんが、変動相場制に移行したのは、もちろん外圧もあっただろうけれども為替市場に押し寄せたドルの殺到がこのままでは買いささえできない、市場閉鎖に追い込まれる、こう判断したためではないかという問題資料、これからいろいろ聞きたいところなんです。あなたはこういう歴史的な時の大蔵大臣におられて、あとで回顧録を書くときに、いや実際に変動相場制を決意したのはいつごろなんだということは、これは何も回顧録に書くだけではなくて、国会にも明らかにしておいてもらいたい。その期日によって、私はほんとうはこれからいろいろの質問を展開したい点があるのです。いつなんですか。きょうはそれをちょっと聞いておきたい。
  80. 水田三喜男

    水田国務大臣 少なくとも、いまおっしゃられたようにもう追い詰められてとった処置であるとは私ども考えておりません。と申しますのは、月末には円転規制によりまして為替銀行の買い戻しということも行なわれることを考えておりますので、月末になればそういうドル売りというものがそんなに多くならない。あの日には相当多かったのですが、その翌日からはそう多くならないということも予想を一応しておったところでございますので、やはりそうささえ切れなくなって、追い込められてあわててやったということではございませんで、前からいろいろ検討した線で、ここらで断を下すのがいいという判断のもとにやったということは間違いございません。  ただ、それを検討しておる最中が、ちょうど国会でこの大蔵委員会が開かれるときで、出席を求められたときでございましたので、私の発言がまたいろいろ影響を与えるようなことがあってはと考えて、私は何とかこれを延ばしていただくか、私のきょうの出席を見合わせてもらう方法はないかということを、わがままを言って委員長にお願いし、理事会に相談していただいたということでございましたので、もうそのときはそういう問題をわれわれは検討しておったということをひとつ御承知願いたいと存じます。
  81. 平林剛

    ○平林委員 結局、平価の堅持と強力な為替管理を誇って、これを前提として為替市場を開いてドルを買いささえていた政府日銀が、ついにドル売りの前に屈服をした。変動相場制の移行はそのためだ。私は、外圧もあるけれども、国内の為替銀行、大手商社、輸出産業、いわば身内の造反、これが今日の変動相場制に追い込まれた一つの動機になった。これは許しがたいことである。国民全般が一体これからどうなるんだろうかと心配をしておるときに、一部の投機を許し、このために大きな国損を招いておる、これは今後問題にせなければならぬ。きょうはその問題の具体的な経過、資料を指摘いたしまして、政府責任を追及したいと思ったのでありますが、時間がございませんので、次回にこれを譲りますが、このことは今後においても十分政府考えてもらわなければならぬ問題であるし、この問題のけじめは後にきっぱりつけてもらいたいということだけは要求いたしまして、私は質問を終わっておきたいと思います。
  82. 齋藤邦吉

  83. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣は頭の中が円で一ぱいだそうでございますので、どういう形で大蔵大臣の頭の中に円が入っているのか、若干まずお尋ねをしたいと思います。  二十七日の大蔵大臣の談話によりますと、「円の実勢は過去二十余年にわたる国民の努力を反映してとみに高まり」と、円の実勢はとみに高まったという評価を大蔵大臣は下しているわけなんです。高まったという以上は何かの基準があってしかるべきなんです。一ドル三百六十円ときめられたときに、一ドル三百六十円というレートではこれはあまりにもきびし過ぎるではないかというのが当時の声だった。その後、日本の国力が国民の努力によってついてきた。そうして一ドル三百六十円というレートに、適正な水準にまで円の力が高まってきたというふうに大蔵大臣考えているのか、あるいは一ドル三百六十円をこえて円が高まりたというふうに評価を下してこういう談話を発表されたのか、まずそこからお尋ねをしたいと思います。
  84. 水田三喜男

    水田国務大臣 最初は、三百六十円がきまるときには、甘い見方であるとか辛い見方であるとかいうことをいろいろ言われたことは御承知のとおりでございます。しかしその後、日本の国際収支を見ますというと、決して順調な過程はとっておりません。本来ならあるいは日本が円の切り下げをやらなければこの事態は切り抜けられたんじゃないかと思われるときがございましたが、しかし平価は軽々しく変更すべきものではございませんので、平価はあくまで堅持するという一点を守って、そうして他のいろいろな対策によってそのつど国際収支の不均衡を切り抜けて今日まで来たことは御承知のとおりだと思います。  ところが最近になりまして、非常に日本の国際収支の基調が変わってしまった。この変わり方を見て、一部には基礎的収支がもう不均衡になったんだという見方が世界の中にたくさん出てきて、円のレートの変更を迫る声がたくさん出ておることも御承知だと思いますが、しかし私どもは、これは基礎的収支の問題と簡単には言えない。というのは、たとえば日本のいまの不況というようなものを解決することによって相当の、対外不均衡というものはこれは姿が変わる可能性がございますので、こういう点をわれわれがやることによってこの問題は必ず解決できるという信念を持って、いままで平価は変えない、そうしてこれこれの政策を実行する。そのうちで手っ取り早く有効なことは、やはり景気を回復することによって、この黒字幅の急速に大きくなったこの姿を直すということが必要だということで始まっておって、その緒についたときにニクソンのこういう政策を浴びせられたということでございますので、それならこれに対してどういう措置をとったらいいか。  で、非常に日本が外圧によって云々というふうに一般に受け取っておられますが、問題は一体どこから起こっておるかと申しますと、本質はドルが弱くなったことであって、決してこの円のどうこうという問題じゃない。むしろこれは、いまの姿は、日本の国際収支がよくなり、それだけ競争力が出て、恒常的というか、基礎収支がもう黒字基調になってしまったのだと世界から思われるくらい日本の国力が出て、円が強くなってきた。これがやはり一番大きい原因だ。犯人が円であるというふうにすら思われている状態でございますので、私どももこの事実を否定することはできない。少なくとも国民が今日まで二十年間努力した結果円が強くなってきて、この強くなった実勢を反映した新しい秩序というものへ何らかの動きを示さなければ、これはやはり国際間の安定というものは得られないというところへ来ていることは事実である。これは円が弱くなった結果じゃないんだ。強くなったんだ。それは国民の努力の結果だということだけは、これは間違いない事実であろうと私は思います。
  85. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣答弁、よくわからぬです。私は、一ドル三百六十円という現在のレートを基準として、それ以上に高くなったと判断しているのか、一ドル三百六十円というレートが適正だという、適正なところまで上がってきたのだという立場で高まったのか、どちらの判断なのかと聞いたのだ。  また、円を切り上げるかどうかという問題は、もう大蔵大臣もたびたびおっしゃっていましたように、これは日本がきめることであります。このように不況のときに円を切り上げることが日本にとってプラスかマイナスか、あるいは、たとえばアメリカ日本との経済状態、社会資本の状態国民生活の状態、賃金の状態、そういったことを総合的に考えて円の切り上げあるいは切り下げという問題を判断すべきものだろうと私は思います。いまの大蔵大臣答弁を聞いていると、円切り上げはやむなしというようにとれるし、あるいは円はこのまま据え置いていくのだというようにとれるし……。大蔵大臣は一ドル三百六十円という現在の円のレートを適正だというふうにお考えになっているのですか、それとも適正ではないというふうにお考えになっているのか、その点はいかがでしょうか。
  86. 水田三喜男

    水田国務大臣 いままでのところは、この問題に関する限り水かけ論に終始するよりほかしかたがないと思います。外国で二五%といったり二〇%といったり一〇%といったり、事実上円高にしなければならぬというようなことがいわれていますが、何を根拠にそういうことがいわれるかということについては、これはみんな見方が違うので、日本においてもこうだと、三百六十円は甘いとか辛いとか言ってみても、その根拠を示すというわけには、なかなか根拠を示すわけにはいかぬと思いますが、幸か不幸か、今度のような為替変動幅を広げるという事態になってみますというと、ここで需給関係によって円の実勢というものがこれは客観的にきまってくるということでございますので、この制度をとることによって、円が非常に弱いものであったか、やはり世界の中で強いものであったかというのは一つの実績として出てくると思いますので、これによってある程度判断するよりしかたがないと思います。そこでもうこの問題は水かけ論でなくて強かったか弱かったかというのは大体わかってくるだろうと私は思います。
  87. 二見伸明

    二見委員 ところで、大蔵大臣は同じ談話の中で「諸外国協調して国際通貨体制の新たなる確立に向かって進む」、こういう非常に高邁な理想を述べておられますけれども、この「国際通貨体制の新たなる確立」というのは、大蔵大臣はどういう構想をお持ちでおっしゃっているのか。いわばドルというものを、一国の通貨をキーカレンシーという形でもって新たなる国際通貨体制というものをつくろうと考えているのか、そうではない別の国際通貨体制というものを大蔵大臣はここで考えているのか、その基本的なお考えはいかがでしょうか。
  88. 水田三喜男

    水田国務大臣 これからの世界通貨の動向というような大きい問題は、もっと時間をかけて論議される問題だと思いますが、当面、各国がばらばらでいまのような形でおって、国際取引の安定をお互いの国が期し得られるかということを考えますと、ここで何らかの国際協調がなされなければ、これは世界貿易の安定というものはあり得ないというところに各国ともいま直面しておる問題でございますので、したがって、この安定をはかる方法が、一、二カ国の通貨の価値をいじるということで解決するのか、全体の国がそれぞれいじって、新しい調整のもとに出発するというようなことになるのか。これはもう一国の問題じゃなくて、多国間の協調によって何らかそういう形のものができることによって、私は新しい通貨体制の安定というものが得られるだろうと思う。それなくしては、これはもうIMFも崩壊せざるを得ないし、世界貿易の拡大というIMFの望んだ目的というものは、これは達することができない。世界の不幸になるということは明らかでございますので、応急的なこの問題だけは、やはり先進国間の責任において解決しなければならぬ問題だと考えております。
  89. 二見伸明

    二見委員 結局これは、新しい通貨体制国際協調、多国間調整の場であなたはきめるとおっしゃっている。きめるというのは、手ぶらで行って、おれは何も考えておらぬけれども、何とか話し合いでできるだろうという簡単なものじゃない。われわれは今後の通貨体制はこうあるべきだという、日本としての基本的な考え方を持って臨まなかったらば何もならぬじゃないですか。だから、あなたはここで「国際通貨体制の新たなる確立に向かって進む」と言ったから、これから行なわれる国際会議でもってわが国はどういうことを主張するのか。もう一度、当面の処置として金に裏打ちされたドルというものでもって安定をはかっていこうというふうに主張されるのか。何か基本的な構想がなかったらこういう発言は出てこないのです。あなたのいまの御答弁は評論家が言う答弁であって、当面する当事者の答弁じゃないのです、それは。これを持たずに国際会議へ行ってどんな実のある国際会議ができるのか。だから明らかにしてもらいたいと思うのです。
  90. 水田三喜男

    水田国務大臣 日本は、この問題の解決のために国際的に協調するという態度だけは持って会議に臨む。で、どういう方向日本がこれから主張するかというようなものは、これから私はそういうものを持って各国との交渉に臨むわけでございますから、その問題については、いまここでいろいろ事前に、こうするああすると言うことだけは差し控えさせてもらいたいと思います。
  91. 二見伸明

    二見委員 なぜそれが言えないのです。いいですか。国際協調という観点から、今度変動相場制をおたくはとられた。国際協調でもって新しい通貨体制考えていこうというのが大蔵大臣のいまの答弁だ。じゃ、その構想は何かと言ったら、それは言えないと言う。考えられる構想は、たとえばドルではない新しい通貨をつくるというのが一つの構想にあるはずです。もう一つは、いまの一オンス三十五ドルという金価格を、たとえば一オンス四十ドルにするとかという金価格の引き上げだとか、ドル各国とのレートはいままでどおりに据え置いて、金価格だけは上げるという形でもって解決しようという考え方もあるだろう。あるいは、ドル切り下げろ、他の平価調整しようじゃないか。いろいろな考え方があるはずなんだ。まあ、当面の処置としてはどうしても金・ドルでいかなければまずいんだというならばそう言えばいい。国際会議に臨むからいま言えない。こういう基本的な考え方を言うことが、なぜ国民の前で明らかにできないのか。もう一度あなたの考えている基本的な考え方だけ教えてもらいたいと思うのです。
  92. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま問題は、アメリカは多国間調整というものがうまくいかぬ限りは課徴金はとらぬという態度だけははっきりしております。しかしどう考えてもわれわれは、国際協調によってもし多国間調整というものをやろうとするなら、これは各国に対してそれぞれ効果の違う課徴金制度というものがある限りは、なかなか各国調整というものはむずかしいだろう。そういうことになりますと、それに対する態度は、お互い各国協調の場において共通の一つの目的というようなものがそこに出てくるかもしれません。そういうような問題をどうするかとか、そうしてそのあげく、その次に来る問題をお互いにどう考えるかというようなことにつきましては、各国それぞれむろん考えは持っていますが、いま十カ国会議を開く前にまだ各国ともその問題の意思を表明している国は一つもございませんし、したがって、日本はこういう考え方で臨むという通貨に対する考えをいま述べるのはまだ少し時期ではないような気がいたします。
  93. 二見伸明

    二見委員 それでは理論としてお尋ねしますけれどもドルを基軸通貨とすることは是とお考えなんですか、それは非とお考えなんですか。
  94. 水田三喜男

    水田国務大臣 私はかつてイギリスのキャルハン蔵相と会ったときにしみじみ述懐されたことをまだ覚えているのですが、ちょうど蔵相と会っているときに、アジアに一つの共同圏ができて、そしてアジア通貨の中心に日本の円がなるとかなんとかというような構想が向こうの新聞に出ておったときで、イギリスの蔵相が、これだけはよしなさい、基軸通貨国になる悩みというものはたいへんで、これほどつらいものはないという、イギリスが、ポンドがキーカレンシーであるための苦悩というものをしみじみ語られたことだけはまだ覚えておりますが、それと同じことで、アメリカドルをキーカレンシーにするとするなら、するための責任というものはこれは相当厳重に持ってもらわなければならぬということで、これに対する、今度の会議においては欧州各国から相当の、日本からも同様でしょうが、相当の希望も出る。それによって、アメリカがその責任をいれるということによってドルが依然としてキーカレンシーの地位を保つのか。そうでなければこれはドルが世界の基軸通貨としての資格を失わなければならぬというような、ドルにとってもこれは大きい問題があるものでございますから、それに対してやはりこれからの会議は非常に重要な会議であると私は考えております。
  95. 二見伸明

    二見委員 それでは、大臣はあまりお答えになりたくないようですので、もう一点お尋ねしますけれども、国際会議の場で大臣は金価格の引き上げをきびしく要求いたしますか。
  96. 水田三喜男

    水田国務大臣 会議でどう主張するかということは、いま申しましたようにこの際差し控えさせていただきたいと思います。
  97. 二見伸明

    二見委員 日銀総裁にお尋ねしますけれども、十六日以来おたくのほうで平衡買いをおやりになりました。この平衡買いはどうも為替銀行のためにおやりになったのだとわれわれは判断しておりますけれども、いまここで円の切り上げを云々するのは問題ですけれども、もし万が一、円が切り上げられますと、当然おたくのほうで買いざさえた四十何億ドルですか、評価損が出ますね。その評価損というのはおたくのほうではどう処理をされますか。ただ単に評価損ということにするのか、あるいは国庫へ納付する納付金を取りくずして、納付しないで穴埋めするのか、その点はどうでしょうか。
  98. 佐々木直

    佐々木参考人 いまの状況は為替相場の変動の幅の制限が停止されている状態でございまして、円がどういう地位にあるかということについてはまだきわめて不安定でございます。また基準相場は全然動かされておりませんので、現状におきましては、私ども日本銀行の持っております外貨資産の価値につきまして、これを評価がえするとかいうような問題については、まだ具体的に考えを固めてまいります段階に来ておりません。
  99. 二見伸明

    二見委員 日銀総裁、おたくはまだ一ドル三百六十円というレートを守っているわけですね、いまの御答弁でいきますと。
  100. 佐々木直

    佐々木参考人 いま私どもの持っておりますアメリカドルは三百六十円で評価いたしております。
  101. 二見伸明

    二見委員 これはどう処理するかわからないとおっしゃいますけれども、たとえば一〇%切り上げられたとします。その結果、一〇%の評価損が出る。その金額が千何百億円かになるでしょう。そうなった場合に、四十六年度の予算でいくと納付金は千四百十一億八千三百万円、これがもし評価損が出て国庫に納付されないことになれば、国にとっては歳入の減である。国民立場から見れば国からそれだけサービスが受けられない、ということは結局は国民の負担だ、こういうことになりますね。
  102. 佐々木直

    佐々木参考人 納付金を今後できるかどうか、その問題につきましては、先ほども申し上げましたように評価を今後どうするかということがまだ全くきまっておりませんので、その点についていま申し上げられる状態ではございません。
  103. 二見伸明

    二見委員 しかし日銀総裁、そういうこともあり得るわけでしょう。あなたはまだその点きめてない、きめてないとおっしゃるけれども、そういうことだって予想されるでしょう。そういう場合にはこうなる、一つのそういうモデルを考えればそうなりますという答弁はできるはずではありませんか。いかがですか。
  104. 佐々木直

    佐々木参考人 それはあり得ないとは申し上げられません。あり得ると思います。
  105. 二見伸明

    二見委員 ということは、もしいまここで円を切り上げれば、それは最終的には国民の負担になり得る。これは日銀総裁答弁です。私はいまの答弁をそう判断いたします。そういう状況下においては、私は水田大蔵大臣に冒頭に申し上げたこういう不用意な、「国民の努力を反映してとみに高まり」という、どこを基準としてとみに高まったのか、とりようによってはもう円を切り上げるのだともとれるし、やっと一ドル三百六十円のレートにまで来たのだともとれるし、こういうあいまいな談話を出すということ自体が私は問題だろうと思うのです。この点は大蔵大臣にはとくと御反省をしていただきたいと思います。  ところで、通産大臣にお尋ねしますけれども、いわゆる課徴金の問題であります。通産大臣の判断と見通しですけれどもアメリカ課徴金をかけておりますけれども、あれは撤廃するときには一挙に撤廃するというふうに政府考えているのか。あるいは各国が、たとえば鉄についてはお互い課徴金を撤廃してもらおうじゃないかというアメリカとの交渉があって、じゃ鉄は除外しましょうとか、あるいは雑貨は除外しましょうとか、自動車は除外しましょうとかいうふうに、各国協調していくと個別的に適用除外がはかられるという見通しに立っていらっしゃるのか、その点はいかがでしょうか。
  106. 田中角榮

    田中国務大臣 課徴金という制度そのものが望ましいことではないということはもう言うまでもありません。特に世界の拡大基調をたどらなければならないということに逆行することであるということも間違いのないことであると思います。かかる制度は直ちに撤廃すべきものである、これはもう結論でございます。しかし、現に行なわれました課徴金は、これは画一、一律主義をとっております。各国ともアメリカ貿易を行なう者に対してはすべて課徴金制度をとりますということで、利子平衡税のように日本及びカナダの除外をいたしておりません。そのために、ちょっと理不尽だとも思いますが、現にアメリカの国内と同じようにアメリカの施政権下にある沖繩からの品物に対しても課徴金の除外を行なわないといっておるのですから、いかに画一、一律的であるかはこの一例をもっても明らかであります。  品目別に申し上げますと、必ずしも全部とっておるのではありません。これは政府間協定により公示をされたものに関しては課徴金制度を適用しない。日本に対しては御承知の綿製品協定によって公示されたものはその範囲から除外されております。もう一つ第二の問題としての特徴は、品目別であってしかも相手国との間にいろいろな問題があって交渉ができたようなものに対しては別な、一〇%ではないものをかけておる。これは自動車に対して六%とか鉄鋼に対して何%とかいうことで、これはなかなか向こうから見ると合理的なんでしょう。かけられるほうから見るとはなはだ遺憾である、こういうことでございますが、非常にきめこまかいものをやっておりますから、相当いろいろな抵抗をすることはあらかじめ予測をしながら腹をきめて課徴金制度をとっておる、こう見ざるを得ないと思います。  われわれは課徴金の早期撤廃に対して外務省から正規な申し入れをいたしました。課徴金という問題に対しては過去にも例がございました。これは六十四年から六十六年、二カ年間にわたってイギリスが一五%、二年目は一〇%、そしてイギリスがやめる瞬間にガットが通告をしようとした。通告書が届かないうちに向こうはやめた。こういうことでございますから平仄の合った行動が行なわれておるわけでございます。またカナダ・ドルにおいてもしかりでございます。しかしイギリスのポンドが二年、カナダ・ドルが一年でございますから、キーカレンシーであるドルの防衛に対してはその半分、六カ月以上はなすまいというのが私のものさしをもっての考えでございます。アメリカが九十日という数字を出したので、そのまた半分を限度としているのかとも考えますが、しかしいま申し上げたようないろいろな内情を見ますと必ずしもそうでない状態もある。ここらが日米交渉のポイントだ、こう思うわけでございます。
  107. 二見伸明

    二見委員 通産大臣は今後この課徴金撤廃に対して具体的にどういうような方策をおとりになっていくか。ただ単にやめろ——われわれもやめてもらいたいと思う。撤回すべきだと考えています。ただ、やめろ、やめろと言ってやめるものではないだろう。その点はどうでしょう。
  108. 田中角榮

    田中国務大臣 この課徴金問題という一つの問題でいま見られておりますが、これはニクソン・エコノミック・パッケージ、これは全部のものが一つだ、こういうことでございますから、日本もそういう意味でインターナショナル・エコノミック・パッケージでもつくらなければならないかなということでいまいろいろ検討いたしておるわけでございます。これは両国の間においては当然課徴金の撤廃ということの基本的な交渉で参るということでございます。しかし、非難を覚悟して課徴金制度に踏み切ったわけでございますから、向こうはこの非難に耐えられる限界までは耐えると思います、望ましいことじゃございませんが。そうするとその間に、ドル価値が維持ができるか、一オンス三十五ドルというところまで戻し得るかどうかという問題が出てくるのです。これは金価格を上げることには、金本位制には反対でありますから、そうするとドルの一オンス三十五ドルは変更しない、こう言っておって必ず変更しないで済むようなところまでいくかどうか、これはなかなかむずかしいと思います。そうすると、そこで各国平価切り上げなさいということでございますが、これは日本だけ平価を変更して他は全然変更しない、そんなことで一体こちらが応じられるわけがありません。日本が二国間交渉で上げたら、ではちょうど上げたあと、ヨーロッパの国々が、今度日本課徴金をとるからもっと上げろ、こういうことになったら——これは保証のないことでございますから、こんなことはなかなかできるわけはありません。そうすると対米の二十億ドルをどう調整するかという問題が解決の方向としては出てまいります。これはさっき堀議員が言ったように、二十億ドルという出超があるのだから、これをパーにすれば文句はなかろうということでございます。これは日米間においては文句はないけれども、他の国は、ドルでさえ二〇%も切り上げを要求しているのじゃないかと世界的話題をさらったほど価値の上がった円をそのままでもって据え置くかどうかという問題が残るわけでありますから、まあ私は、IMFの中で基準通貨ドルとして守っていくということをまず前提にしてお互いが話をすると同時に、貿易の面としては課徴金を可及的すみやかに廃止をして、拡大均衡の方向を維持していくためのお互い貿易上の協定を具体的にどう積み重ねていくか、こういうことがもう日米問題であり、十カ国の問題であり、また十カ国の問題がきまらなければ加盟諸国百カ国という問題もきまりません。そうでないと、いままで国連の下部機構であったこの経済機構に入らなかったソ連とか、これからいろいろな共産圏の国々との拡大する貿易に対する決済の問題等がいまみんな——まあ場合によれば、うまい基軸通貨ができるとかいうことになればそういう問題さえも解決できる問題であって、流動する世界情勢の中で、やはりこの課徴金問題をどうしてとり得るかということが一つの試金石になるのだ、私はそのように考えております。
  109. 二見伸明

    二見委員 ところで、課徴金が現実に賦課されておりまして、日本の不況が長引くのじゃないかという状況に置かれておりますけれども経済企画庁長官は大体、実質成長率はこれでいくとどの程度になると見込んでおられますか。
  110. 木村俊夫

    木村国務大臣 課徴金わが国のGNPに対する影響、大体四十六年度中で輸出額にしまして十億ドルをこえるであろう、また率にして一%マイナスである、こう考えております。
  111. 二見伸明

    二見委員 経済企画庁でもまた大蔵省でも、今度の補正予算で景気刺激策をとろう、国債を発行して景気刺激策をとろうという考えをお持ちのようでありますけれども、その場合スタグフレーションというおそれは——四十六年度の経済白書ではスタグフレーションではないという経企庁のほうでは認識ですけれども、今後はスタグフレーションという問題はわが国にも起こり得るのかどうか、その懸念は非常に強まってきたのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  112. 木村俊夫

    木村国務大臣 ヨーロッパに見られるようなスタグフレーションの典型は、むしろ不況下において消費者物価でなしに卸売り物価まで連動して上がるということがスタグフレーションの一つの大きなサンプルだと思います。幸いにしてわが国においては、不景気は継続しておりましたが、卸売り物価は落ちつきぎみでございます。しかしながら消費者物価はまだ上昇傾向を続けておりまして、決してこれは楽観できません。したがいまして、今後起こり得べき考え方といたしましては、そういう不況対策を強力に進めること、またそのもとにおいて財源配分を思い切って転換することであります。また、その財源配分の転換の中で物価の構造政策、これを強力に行なっていく、これは必要であろうと思います。そういう意味において私どもとしましては、特に物価政策を担当する当庁といたしましては、不況下においてもスタグフレーション的な形が出ないようにあらゆる総合的政策をとっていきたい、こう考えております。
  113. 二見伸明

    二見委員 現在変動幅拡大という方針をとっておりまして、実質的には円高になっております。これは、輸入製品についてはいわば安くなっておりますね。たとえば石油では、第三次の値上げを現在石油業界では考えておりますけれども、いわばこういう変動幅拡大をとっていて実質的には安くなっている輸入に対して、不況でもある、物価高が心配されているおりだ、むしろ石油業界変動幅の拡大でもって利益を得ているんだから、石油の値上げはすべきではないとか、そういった手もお打ちになりますか。
  114. 木村俊夫

    木村国務大臣 確かに今回のドル防衛措置から生ずる影響がいろいろございます。あるいは直接または間接の影響がございますが、総じて申し上げれば、一般的に輸入品の価格は低下する、こう考えなければなりません。したがいまして、そういう面での物価政策に与えるいい意味のインパクトはあろうかと思いますが、しかし、それが実際に小売り価格として消費者の手元に渡るまでに、いろいろ中間加工過程とかあるいは流通過程の中で、輸入自由化あるいは輸入品の増加によって生ずる物価政策に与える効果が減耗しないようないろいろな措置をとらなければならぬ。たとえばその追跡調査とかあるいは独占禁止法の適用とか、そういうことは考えなければいかぬと思います。  いまお話のありました石油問題、これはいろいろ石油価格の構成要素がございますので、直ちにこれが石油価格の小売り価格まで引き下げの要因になるかどうかは、私はこの際まだ検討しなければならぬ点があると思いますが、たとえば石油ガス、これはタクシー運賃の問題につながってまいりますが、タクシー運賃——いま私のところへはまだ参っておりませんけれども、運賃値上げを要請しておりますが、企画庁といたしましてはこの問題については今後、昨年一月に引き上げたばかりでございますから、その後における企業努力がはたして完全にあるかないかという問題、それからまたもう一つ、石油ガス燃料の価格でなしに、今回の運賃値上がりを要請しております実際の状況が、むしろそういう燃料費よりも人件費にあるということから申しまして、もう少し検討した上で運輸省といろいろ協議をしたい、こう考えておる次第であります。
  115. 二見伸明

    二見委員 いずれにいたしましても、不況は課徴金でもってさらに長引くだろう。私はそれで公共投資という景気刺激策を否定するわけではございませんけれども、直接的な効果としては所得税の減税をやるべきだろうと私は思います。先ほど大蔵大臣は、いま直ちに臨時国会に出すかどうかということは検討中だとお答えになりましたけれども、むしろ私は、臨時国会に所得税の減税はやるべきだ、そこまで大蔵大臣に勇断をふるってもらいたいと思うのです。その点をまず大蔵大臣に、その決意をここで披瀝をしていただきたい。  それからもう一つは、これは通産大臣ですけれども、これからの不況というのは単なる景気刺激策では解決しない要素がある。というのは、輸出の鈍化ということによって輸出企業はかなりの影響を受けてきているだろう。なかんずく中小企業に対する影響というのは非常に甚大であろう。これは単なる景気刺激では解決し得ない問題だ。したがって、ここでは当然私は臨時国会に中小企業に対する減税処置であるとかあるいは金融措置、しかも金が借りたくても借りられないというところに対する政府の対策というものを考えるべきだろう。もう一つ重要になってくるのは、今度は転廃業という問題が起こってまいります。言うなれば、これは日本が中小企業にとっては台風にあったようなものだ。これについても私は当然通産省としてしかるべき方向が打ち出されるものであろうと信じておりますけれども通産大臣はその点はいかがでしょうか。  所得税については大蔵大臣に、それから中小企業については通産大臣に、基本的な考え方をお尋ねしたい。
  116. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほど堀さんにお答えいたしましたように、私は十五カ月予算の構想で総合対策を進めておりますので、その十五カ月予算の構想の中で十分所得税の減税というものは思い切ってやりたいと考えておる次第でございます。
  117. 田中角榮

    田中国務大臣 今度の事件が中小零細企業に最も影響をもたらすものであるということは御指摘のとおりでございます。財政税制金融、各般の施策をもって措置しなければならない、こう考えております。特に信用補完という面は抜本的な制度をつくってやらなければ、担保余力を持たない中小企業がどうにもならないという事態がありますので、そういう意味では根本的な施策考えてまいりたい、こう考えます。税制上の問題や金利の問題、量の問題等々、いろいろな問題をいまたくさん個条をあげて財政当局に持ち込んでおりますが、できるだけ早く臨時国会にも、また臨時国会を待たずできるものはいますぐにも——もうすでにいままでに下請企業に対する協力その他は行政的な措置もやっておりますので、この中小企業の問題に対しては積極的な姿勢で対策をとってまいりたい、こう考えます。いま御指摘があったように、いままでは現状是認で、これを育成強化するということでございましたが、今度は、言いにくいことでございますが、スクラップ・アンド・ビルドを、どうしても転廃業しなければならないというものもあるわけでございますから、こういうものに対してはひとつ具体的に対応策を十分とってまいらなければならない、こう考えております。
  118. 二見伸明

    二見委員 大蔵大臣の所得税減税大幅の構想は十五カ月間予算だそうですが、十五カ月間予算の最初の月からこれはやっていただけるわけですね。それが来年の四月からなんてことじゃなくて、補正予算を含めての十五カ月間構想ならば、補正予算が実際に行なわれるたとえば来年の一月から所得税の減税は行なわれるのだ、こうわれわれは判断してよろしいでしょうか、それが一点。  それからもう一点、ここで話が変わります。沖繩の問題ですけれども、一ドル三百六十円でかえてくれという沖繩の切実な要求に対して、大蔵大臣はむずかしいとおっしゃった。この問題に対してもわれわれ公明党は、二十六日に佐藤総理大臣にその旨の要求を突きつけております。そして政府部内でもこのことについては検討することになっておりますけれども、むずかしい、むずかしくないと言う前に、アメリカに私は交渉してもらいたいと思うのです。そして、これは沖繩県民の要望に沿うように解決をしてもらいたいと思いますが、この二点はいかがでしょうか。
  119. 水田三喜男

    水田国務大臣 税制には非常に技術的問題が伴いますので何日からやるということはむずかしいところがございますので、この十五カ月構想の中で実現するということをさっき申しましたので、したがって、来年度予算においては確かでございますが、今年度の補正予算にこれが間に合うかどうかというのはただいま検討中と申した次第でございます。  それから沖繩問題、これは向こうと交渉するという性質の問題ではございません。御承知のとおり沖繩というところはドル圏でございまして、たとえば他国へ行って仕切りをして、この仕切りの範囲内の通貨はこういう兌換率で交換いたしますよということを約束することはどれだけ困難ないろんな問題を伴うかというような問題もございますので、そういう形をいまからはっきりと約束するというようなことは、これは実際において不可能な問題であると思いますが、それならこの協定の際において、沖繩の人たち希望しておった、期待しておったいろいろのものについて考慮を払わないかというと、そうではございませんで、これは別個の考慮を払わなければならぬ問題だというふうに考えて、十分対策を講ずるつもりでおるということを申し上げたわけでございます。
  120. 二見伸明

    二見委員 要するに実損はしないで済むというふうに解釈してよろしいですか。
  121. 水田三喜男

    水田国務大臣 全くの実損はさせないということを言うことはまた三百六十円で交換するということを言うのと効果は同じになりますので、そういう形のお約束はむずかしいということをいま言うことはできますが、そうでなくても、沖繩については別の考慮をいたしますと言って、いまいろいろ政府でも具体的なことを相談している最中でございます。
  122. 二見伸明

    二見委員 最後にもう一点だけお尋ねいたします。  ニクソンの声明の中に、防衛費を公平に負担するときが来たということばがあります。その後、アメリカでは防衛費の分担金の増額を要求したという新聞報道がございますけれども、われわれはこれに対しては断固として反対であります。大蔵大臣の御見解はいかがでしょうか。
  123. 水田三喜男

    水田国務大臣 日本に分担の要求をしてきた事実はございません。しかし、アメリカが今度の措置をとると同時に、NATO諸国に対しては何かそういう負担の要請があったというような話は、公式ではございませんが、非公式には聞いておりますが、日本に対してはございません。
  124. 二見伸明

    二見委員 私は、日本に対して来た、来ないのことじゃなくて、いままでは来ないとしても、これから来ることも考えられる。そのときにわれわれはそれは反対だと言っているのです。大蔵大臣アメリカのそういう要求を断固としてけ飛ばすならけ飛ばす、あるいは認めるなら認める、二つきりないのです、答えは。これは検討の問題ではなくて、二つきりないのです。これに対する大蔵大臣のはっきりした態度を明らかにしていただきたいと思うのです。いかがですか。
  125. 水田三喜男

    水田国務大臣 その種の問題は、もう十分われわれを御信用願いたいと思うのです。
  126. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 河村勝君。
  127. 河村勝

    河村委員 すでにいろいろな角度から議論されておりますので、なるべく重複を避けてお尋ねをいたしたいと思います。  まず最初に、今度のニクソンのやり方というものは、われわれとしても非常に不愉快きわまる措置だと思っております。先ほどから議論がありますように、ドルの凋落というのは、これは第一次的にとにかくアメリカ責任であって、それにもかかわらずアメリカ自身がやり得る体質改善ということを何にもやらずに、そうして黒字国に責任を全部転嫁しようというやり方はほんとうに私どもも憤激にたえないところであります。でありますが、同時に政府にも責任がないとはいえないのであって、今度の場合も非常なショックであったように思われます。この前の米中頭越し接近、この前のニクソン声明というものは、これ自体も問題がありますけれども、あれはキッシンジャー中心の特殊なやり方であって、米国の中のおも立った人でも驚いたようなことであるから恕すべきところがある。しかし、今度の問題は経済問題でありますから、そうした特殊なルートがあるわけではなしに、国と国との間でそれがいろいろな角度で接触もし、情報も持ち、判断する材料があった。それにもわわからず、こうして頭にピストルを突きつけたような形でもって通貨調整を迫られるというような事態を招いたこと、これはやはり政府責任だと私は思います。  それから、少なくともそういう事情でありますから、何かあったとしても、当然とるべき対策というものは準備してあるべきはずのものであります。ところがふたをあけてみますると、ヨーロッパの為替市場は全部しめたにもかかわらず、十日以上も市場を開いて、なおかつそこでもってドルの買いささえをずっと続けて、五十数億ドルドルの買いささえをやって、これはいままでの議論でいろいろな理由があるように言っておられますけれども、われわれにはどうにも納得できないし、いまなお通貨を変更してないのだと言っておりますけれども、結果的に大きな損失を国民の負担において解決をするという危険を招いておる。このことは私はやはり大きな政府責任だと思います。それについて一体大蔵大臣どうお考えになっておられるのですか。それをまずお伺いをいたします。
  128. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは先ほど申しましたように、二度実験のきかない問題でございますからなかなか評価はむずかしいと思いますが、外国と違う事情にある日本で、為替市場を閉鎖することによって対外取引を阻害する、そこから起こる直接間接のいろいろな混乱、これが国民経済に与える損失、影響というものと、それを避けるために市場を開いておった、そのために十日間で四十億ドルではございましたが、その何%かは、むろんこれは差損が出た場合には、差損が生じることは当然でございますが、その損失というものとの比較はどっちがいいかというようなことは、私は簡単には言えない問題であって、あの場合日本がこれを開いておったということは、私は日本としてやむを得ない措置であったのではないか、自分としてはそう考えます。  また、最近外国から来ている人たち欧州におけるいろいろな批評も伝えるのですが、日本から世界の夜は明けるのですから、日本市場を見て欧州市場を開く。また日本もしめたあとでどうこれを再開するかということについては、やはり欧州市場を見て開こうというようなことで、あるいは各国市場再開が少しおくれたかもしれぬ。おくれても、日本のほうがやはり先に開く順序になると思いますが、その場合に、あの何日間のこの売ったものが一度に日本市場に集中してきたということでしたら、あるいはまたもう一ぺんしめなければいかぬと感じたかもしれませんし、それによって欧州市場もまた開くのをやめたかもしれぬ。いろいろな混乱が起こったかもしれない。そういう意味からいったら、日本がき然として開いておってくれたことが世界の通貨混乱を救うことに非常に寄与したという評価すらいま出ておるというようなことまで言われているくらいであって、私はこの処置がそう悪い処置であったというふうにはいま考えていない次第でございます。
  129. 河村勝

    河村委員 まあ、外国からはほめられているということは私も知りませんけれども、少なくとも、とにかく為替差損国民全体でかぶらなければならぬという危険が多分にあるような措置がいいわけはないので、どう言いましてもそれは重大な責任だと思います。しかし、大蔵大臣としてはそういう返事以外にはおそらくきょうの段階ではできないと思いますから、これ以上追及することはやめます。  そこで、これから十五日の十カ国蔵相会議以降、多国間の平価調整が問題になってくるわけでありますが、わが国として、この際、大蔵大臣政府もお考えになっていると思いますけれども、安易に圧力に負けて平価切り上げるようなことがあればそれはたいへんなことでございます。そういう意味で、どうしてももしなかなかまとまらなければ、長期でもがんばれる体制がなければならないはずだ、そう思いますが、いま為替変動相場制をとっております。しかし西ドイツなんぞと違いまして、厳重な為替管理下の為替変動相場制でありますから、そこで一体、ほんとうに長期にわたって貿易取引が持続できる自信がおありかどうか、それを伺いたいと思う。これは大蔵大臣でも日銀総裁でもけっこうでございます。
  130. 水田三喜男

    水田国務大臣 おっしゃられますように、私も、これが早期に解決しない場合には長期化の覚悟もしなければならない。そういう場合を考えますと、一応変動為替相場制といいますか、名前が非常にむずかしくなりましたが、この制度をとっておくことが、持久しなければならぬ必要が迫ったときに耐えられることであって、固定為替相場制度をとっておって持久するということは非常にむずかしくなる、日本の交渉を弱くするということも考え措置であったということを申し上げたいと思います。
  131. 河村勝

    河村委員 いや私は、ですから、その為替変動相場制をとって、それが厳重な為替管理下にある異常なものですね。そこで一体取引がほんとうにこれから順調に行なわれるかどうか。たとえば、さっきも議論のありました先物相場が立つのかどうか、為替ヘッジの問題はどうするのか、その点は一体日銀総裁としては自信がおありですか。
  132. 佐々木直

    佐々木参考人 ここ数日は変動幅が広がっておりまして、それが最初の経験でもございますし、まだ市場も模索という感じでございます。しかしこれ、日を重ねてまいりますと、大体こういう取引の見当がついてまいります。したがって予約についてもぼつぼつ増加してくるんだろう、こういうふうに見通しを持っております。
  133. 河村勝

    河村委員 そこで、これから交渉に臨まれる、どういう態度で臨むかということについてさっきから議論がありまして、大蔵大臣、それは交渉に臨む際で、微妙な段階だから言えないということで終始しておられますが、私、大体大蔵大臣考えておられるのはこんなことじゃないかと思いますので、それに対するお考えを聞きたいと思うのですが、おそらく大蔵大臣あるいは政府としては、今後の通貨制度をほんとうに改革するためには、金から離れるかどうか、これは別にして、おそらく金から急に離れられないであろうけれどもドルとかなんとかいうような特定国の通貨に依存するような体制はやめたい、そういうようなことを考えていきたいが、とりあえずは、現在の通貨不安定な状態を収拾するためには一応金・ドル体制を復元する以外にはない。そのためにはドルと金との交換を回復して、一応そこでもって安定をはかる、それしかない、そうお考えになっているのじゃないかと思いますが、いかがですか。大体そんなことじゃないかと思いますが、いかがでございますか。
  134. 水田三喜男

    水田国務大臣 とにかく各国とも、こうなったら、知恵をしぼったいろいろな考えがこれから展開されるだろうと思います。
  135. 河村勝

    河村委員 それじゃまあ深追いはしませんが、これだけ一つお答え願いたい。これから交渉に当たるにあたって、とにかくまず課徴金を撤廃すること、それから金とドルとの交換性を回復すること、この条件だけは満たさなければならない。それが前提で、少なくともそれと同時でなければ平価調整には応じない、このくらいのことは言えるだろうと思いますが、いかがでございますか。
  136. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは非常にまじめな御議論としてきょうは拝聴したいと思います。
  137. 河村勝

    河村委員 この程度のことは大臣、そこまで慎重にならなくてもいいんです。ここでもってそう言ったから、失敗したから大臣に別段責任をとれとかなんとかいうわけじゃなしに、それくらいの態度で臨むのが当然であって、それでなければ国民の不安はおさまりませんね。それだけはおっしゃってもいいんじゃありませんか。これはおっしゃれるであろうというぎりぎりの限界をおもんぱかって私お尋ねしているので、再度お尋ねをしたい。
  138. 水田三喜男

    水田国務大臣 先ほど申しましたように、きょうはいろいろの御意見を、これから会談に臨む御意見は十分拝聴いたしますが、きょうは私の意見はちょっと差し控えさせていただきたいと思います。
  139. 河村勝

    河村委員 まあこれじゃ何のために会議を開いているかわからない。政府の中を分裂工作をはかるわけでありませんが、中小企業対策というのは非常に大きな問題ですね。いま——いや、通産大臣、所管のことしか伺いません。中小企業の場合ですね、もし課徴金が撤廃されないで、これで切り上げが行なわれるようなことがあったら、これはもうほんとうに死命を制するようなものですね。ですから当然結論は、その金・ドル交換の問題をお聞きしませんが、課徴金の問題については、それなくして平価調整に応ぜられないというのは当然とお考えであろうと思いますが、いかがですか。
  140. 田中角榮

    田中国務大臣 課徴金が撤廃されないからいまの変動相場制に移っておるわけでございます。ですから、まず課徴金の廃止ということを強く求める。廃止しなければどうなるかというと、変動相場制でずっといくということになります。これは両方とも意見が合わないわけですから、これは遺憾な話でございますが縮小均衡の道をたどると思いますし、またガットやIMFの制度が崩壊するとか国際流動性がそこなわれるとか、いろいろな問題はありますけれども、これはどうにもならないことでございますから、それ以外にはないと思います。しかし、こういう異例なことは長く続けべきではありません。そういう意味では、私は課徴金撤廃ということは実現すると思います。実現するときにはどのような要求をして——撤廃をするからこうしてくれということだと思います。それだけじゃ困るからということで、人の国の引き上げを求めるときには御自分のほうは引き下げるのですかという問題が出てくるので、そこで金価格三十五ドルという問題が出てくるわけでありますから、これは必然性としてそういうところに話がまいります。まいりますが、後段の問題よりもまず課徴金を一〇%負っているということでは日本輸出がどうにもなりません。ですからこれは、課徴金に対しては課徴金の撤廃、と同時に日米間の輸出入バランスをどうするかという具体的問題の調整がありますから、それは簡単に円平価にすぐ私の仕事は結びつくわけではございませんが、具体的には課徴金の撤廃ということでやらなければならない、こう思います。
  141. 河村勝

    河村委員 だいぶ大蔵大臣の領分まで入ったお答えで、大体そんなところでこれでやめますが、これは通産大臣、いまの御返事はけっこうですが、しかし、いまこの課徴金あるいは通貨不安、全体の問題で、中小企業の中でも繊維の二次製品、それから雑貨、こういうところの中小企業というのはほんとうにひどくなっておるわけですね。ところが通産省としていままで格別な手を打ったということを私は聞いておりません。府県の段階でささやかな手当てはやっておりますけれども政府関係機関、金融機関を動員してどうやれというようなことをさっぱりやっておられないのは怠慢ではないか、そう思うのですが、いかがですか。
  142. 田中角榮

    田中国務大臣 やっております。基本的な税制の問題その他制度改正等の問題に対しては財政当局といま鋭意検討中でございます。広範な問題に対して打ち合わせをしておるということでございます。しかしこれを待つわけにはまいりませんから、応急的な対策はいたしております。まず金融の量を確保すること、それから信用補完のワクを拡大をすること、それから融資の限度額を倍ぐらいにすること、それから下請企業に対してはしわが寄らないように元請に対して特別な配慮を求めること等、諸般の問題を八月の二十三日付で通達をしておりますし、また九月一日から千万円の融資ワクを二千万円にするとか、いろいろなことを通達をいたしておりますし、それだけではなく現に検討しておるものもたくさんございます。中小企業や零細企業の輸出の寄与率四〇%という高い率でございますので、これに対して漫然として日を送るということはできないことであって、緊急な問題に対しては施策を行なっておることを念のために申し上げておきます。
  143. 河村勝

    河村委員 時間が限られておりますから、お願いだけしておきます。  応急対策も応急対策でありますが、先ほどちょっと通産大臣もお触れになりましたが、実際、特恵の問題とそれから今度の問題と重なりまして、それはほんとうにいまひどい状態が来つつあります。そこで手当てをするというのは、何でもかんでも温存しろという意味で私は申しておりません。それで、この前の国会で中小企業特恵対策臨時措置法というものが成立をいたしまして、それで特恵に関連して非常に影響を受ける業種を特定業種に指定して、それに対する業種転換等について手当てをする、大きな助成をすることができる道が開けております。でありますから、これをこの際思い切ってやって、いまの状態を、災いを転じてもうちょっと根本的な対策ができるようにぜひやっていただきたい。これは要望しておきます。  それから沖繩の問題でありますが、私二十八日まで沖繩に行っておりまして、ちょうど二十七日に変動相場制移行の発表がございました。これはたいへんな騒ぎであります。もう二十八日の朝になりますと、商店は一斉に内地からの輸入物資については全部正札のかけかえです。全部上げていくのです。中には締めちゃって様子を見ているのもある。非常な騒ぎです。沖繩の県民にとりましては、とにかく戦前でもほとんど内地からめんどう見てもらったことがない。戦後長い間占領下で苦しい思いをした。今度は返還されるのはよろしいけれども、基地はほとんど返ってこないでいままでのままだ。そこへもってきて水飢謹——水飢饉は天災ではあるけれども、同時に社会資本投資の不足でもあるわけですが、それに加えてこのドルショックで非常に深刻な事態を迎えております。  そこで、先ほどから大蔵大臣、非常に抽象的な発言で、十分考慮をするというようなことを言っておられますけれども、ほんとうにこの状態というものは、内地で考える以上の、想像を絶する深刻な問題なんです。何とかこれをそういうあいまいなことじゃなしに、絶対に損失をかけないと言ったからといって、一ドル三百六十円で交換するという予告をするわけでも別段ないわけですからね。その点はひとつこの際沖繩県民の不安をなくするために、とにかく損失はかけないということをはっきり言っていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  144. 水田三喜男

    水田国務大臣 沖繩の持つドルの交換問題よりも先に、応急問題として、たとえば沖繩の学生がここにおられますが、そこへの送金が今度の措置によって内地で相当苦しくなる問題をどうするかという問題も深刻でございますので、これに対する対策、それから内地から向こうへ行く物資、特に生活必需物資がここで急速の値上がりをしていくということについてのいろいろな不安が沖繩の人たちにございますので、この問題についての対策もこれは急務だろうと思います。これに対する措置を至急とる必要がある。これを明日の四時ごろまでには全部、こういう措置をとるというのは政府部内において決定をするという段取りになっておりますので、まずこういう急ぐ問題だけは急いで対策を立てて、次のもう少しゆっくり考えていい問題はゆっくり考えるということにしたいと思います。
  145. 河村勝

    河村委員 ドルと円との平価の問題はなかなか御返事しにくい問題だと私も思います。そこで私、現地でいろいろ多くの人たちから要望や要求を受けました。その際に大体こういうことを申しております。おそらく、政府に幾ら一ドル三百六十円でかえてくれと言ったってそれはだめだと言うにきまっておる。それは当然なことだ。だけれどもおそらくは、ちょうど戦後の内地の新円切りかえみたいに、ある日突如として預金が封鎖をされて、その段階でもってそういうような新円のような形でもって交換が行なわれる以外にはあるまい、そういうような返事をしておるわけでございますが、大体そんなような感じであるというふうに考えてよろしいですな。
  146. 水田三喜男

    水田国務大臣 方法については申し上げられませんが、いろいろ御迷惑のかからないような措置考えたいと思います。
  147. 河村勝

    河村委員 やむを得ないでしょう。  そこで、企画庁長官おられますから物価の問題で伺います。  スタグフレーションという話が出ましたが、スタグフレーションという問題はともかくとして、実際、消費者物価の上昇が依然としてことしも七%台になりそうですね。最近、不況対策が始まってから以降、もう物価のほうは不況が回復するまではどうでもいいやという空気が政府部内にみなぎっているように感じられます。特に今度こういう状態になりまして、不況はますます、少なくとも一時的にはきつくなります。ところが、輸入自由化をやりましてもそれがさっぱり物価にはあらわれてこない。これは企画庁長官だけでできることではもちろんないけれども政府全体の姿勢が少しおかしいのではないかと思うのですが、一体それをどうやって締めて安定させていくのか。不況の上に物価まで上がって、それはもうほんとうに踏んだりけったりでありますが、それをどうお考えになっておりますか。
  148. 木村俊夫

    木村国務大臣 政府部内でそういう空気がみなぎっているという御指摘でしたが、そういうことはございません。したがいまして、この不況下における物価高、これはあくまでも私どもとしてはその対策を強力に推進しなければならぬと思いますが、その中で、特に輸入の増加によって生ずる、あるいはデフレ効果によって生ずる物価に及ぼす影響、私どもはその点をよくわきまえまして、それに対応する適切な措置をとっていきたい、こう考えております。
  149. 河村勝

    河村委員 非常に抽象的で、何をやるか一つもわからないのですけれども……。  一つ提案があるのですけれども、少なくともこの辺でもって政府が物価の抑制に対して非常に強い意欲を持つということを証明するためにも、とにかく一番問題のあるところとして地価の問題ですね。今度公共事業費を大幅に拡充をしようとしております。その際にも、いろいろな事務能力、工事能力のほかに、やはり土地の問題がからんできまして、これだけ拡充すればまた地価は上がります。すべての物価の根源が地価にあるというくらい問題でありながら、いままで放置されて何ら手を打っておらない。日本経済もいま一種の非常事態ですね。ですから、非常事態なら非常事態らしく、一つくらいは思い切った手を打ったらどうだ。この際地価を現在の時価で凍結をして、それで、それを基準価格として当分の間固定してしまう。地価だけがいまもうべらぼうに上がって、他の物価上昇と比べても相対的に比価はうんと高いのですね。だから当分それで固定してしまって、それ以上の価格で取り引きされた場合には一切譲渡所得税なり何なりでもって吸収してしまう、そのくらいの——アメリカでも、所得・物価凍結、というのができるかどうか知りませんが、あれだけの看板をあげております。日本でもせめて地価凍結くらいのことをこの際出せば、やはり国民はそういう意味ではずいぶん安心すると思うのです。ちょうど重要な関係のある閣僚もおそろいでございますが、いかがです、長官、そのくらいのことを思い切ってやったらどうですか。
  150. 木村俊夫

    木村国務大臣 なかなか、地価を凍結するような蛮勇をふるうことは私ども考えておりませんが、ただ地価の問題は、もう少し総合的な政策をやることによって押えなければならぬと思います。そういう意味で、いまお尋ねの地価の凍結ということは現在考えておりません。
  151. 河村勝

    河村委員 いま考えていますかという質問をしたのではなしに、これから考えてやる気はないかという、そういう御質問をしているのであって、いままで考えておらないであろうことは承知しております。積極的にそれをやってやろうという意欲があるかないか、それを伺いたい。
  152. 木村俊夫

    木村国務大臣 少なくとも、地価だけを凍結するということは、どうも経済的に申しましてもたいへん無理があると思います。現在のわが国経済社会体制の中で、はたしてそういうことをやることが適切かどうかというまた政治的判断もあろうかと思いますので、私の考えのもとにおいては、そういうことをやる考えはございません。
  153. 河村勝

    河村委員 地価だけやるのはおかしいと言いますけれども、先ほど言いましたように、地価だけが異常に上がっているのです。ほかの物価も上ががっておりますけれどもね、その上がり方がまるきり違うわけでしょう。商品としての性格もまるきり違うのですから、もう一ぺんお考えをいただきたいと思います。  時間が来たようですから、最後に為替差損の問題について大蔵大臣にちょっと伺いますが、いま造船その他でドル債権をたくさん持っているところが困っております。一体民間全体で債権債務——債権をたくさん持って困っておるところもあるし、逆に債務を持って思わぬ得をするところもあるわけですが、その辺のバランスというのは大体大づかみにどんな見当になるのでしょうか。
  154. 田中角榮

    田中国務大臣 いま数字が的確なものはありませんが、大体債権が三兆円、債務が一兆円ぐらいだと思いますが、差し引き二兆円、こう見ればいいと思います。
  155. 河村勝

    河村委員 先ほども為替差損手当てについて、何らか心配せねばなるまいというお話も出ましたが、片方でもうかるところがあって片方で損するところがあるという矛盾があるわけですね。ですけれども考え方としてどうなんでしょうか、被害が大きくて個々の企業努力ではとうてい吸収できないような業種については手当てをする、大体そういう感じで考えてよろしいのですか、いかがですか。
  156. 水田三喜男

    水田国務大臣 全般的な為替差損は補償するという原則を立てるということはできないと思いますが、いま言われましたように、差損と差益の出るものと二つございますので、こういうものの調整はやはり税によって処理するのが一番公平にいくのではないかと思います。得したものについては当然課税をいたしますし、損したものについてはそれについて長期にこれを見てやるといういろいろな税の方法が考えられますので、この税制による救済が一番公平にいくのではないかというふうに考えております。
  157. 河村勝

    河村委員 時間が来ましたからこれで終わりますが、最後に、他の社会党、公明党からも主張がございましたが、減税の問題です。これは国内の有効需要喚起と同時に、なかなか物価問題が解決しない状態で物価調整という意味も含めて、ぜひともこの臨時国会で大幅な減税を提案されることを要望しまして、私の質問を終わります。
  158. 田中角榮

    田中国務大臣 念のためでございますが、正確な数字ではないと思いますが、債権、船舶が二兆五百億円、産業機械が六千五百億円、重電機が千五百億、それから通信機七百億、繊維四百億、鉄道車両三百億等で大体三兆円。それから債務は、鉄鋼が千六百億、石油が千七百億等、合わせて一兆一千億ということのようであります。
  159. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 小林政子君。
  160. 小林政子

    ○小林(政)委員 ニクソン米大統領が新経済政策を発表してから、政府が二十七日の夜、円の変動相場制採用決定までの二週間、この間に政府米国に対して輸入課徴金の撤廃を強く要求すべきであったというふうに考えます。また、ドル・金の交換停止などの米国の不当な一方的な措置について抗議すべきであったというふうに考えますが、欧州諸国為替市場が閉鎖をしているときに、わが国だけがばく大なドルを買いささえ続けてまいりました。このことは国民からの強い非難となって現在あらわれてきておりますけれどもアメリカ大統領が発表以来、この間、日銀が買いささえた額というのは具体的にどのくらいになるのか、お伺いをいたしたいと思います。
  161. 佐々木直

    佐々木参考人 八月中の外貨準備高の増加額は四十五億八千万ドルになっております。
  162. 小林政子

    ○小林(政)委員 新聞などにもいろいろとこの問題については取り上げられておりますし、またこのことについては国民からも非常に強い関心が寄せられているわけでございますけれども、ともかく、現在変動相場制のもとでも、これに対しての差損というようなものはばく大な額になるのではないんだろうか。一体この損失はだれがその負担をするものなのか、どう処置をしようとしているのか、この点について非常に大きな関心が強まっております。このことについてお伺いをいたしたいと思います。
  163. 佐々木直

    佐々木参考人 この点につきましては先ほども申し上げましたけれども、まだ変動の幅が不安定な状況でもございますし、基準相場も動かされておらない状態において、この問題を具体的に検討する段階には至っておりません。  しかし、国民の方がいろいろ御心配になっておられる点から、ドイツの例を御説明申し上げておきたいと思いますが、ドイツは一九六一年に五%の引き上げをいたしました。それから六九年に、これは九%以上の引き上げをいたしました。今回、また変動相場で上へ上がっておるわけです。そのときに、第一回の中央銀行の損失につきましては、政府から預り証と申しますか、一種の国債、交付公債のようなものをもらいました。それで、それを逐次中央銀行の収益によって償還してまいりました。結局、それですからその間は納付金が減っておったことになります。それから六九年の場合には、中央銀行の内部留保で返済いたしております。したがってこの場合には、納付金にはそのときにはあるいは関係があったかもしれませんが、内部保留で全部完済されておりますから、その完済された後には納付金は普通どおり納められたものと思います。それから、現在の状況はわれわれにもわかっておりませんが、ドイツでは変動相場に入りました最初に旧平価に戻るというようなことを一応いっております。そういうことから考えて、まだ措置が確定されたのではないんじゃないかという——これはまだ全くわれわれにもよくわかっておりません。前の二回の例はわかっておりますので、御参考のために申し上げました。
  164. 小林政子

    ○小林(政)委員 今回については、具体的な対処策等についてまだ考えてないということでございますけれども、私はやはりこの問題については、結局はこの損失の穴と申しますか、こういったものを国民へ負担させるような結果になるんではないだろうか、このような不安が一つにはあるわけでございます。政府がもしこのような措置をとって、この差損国民に転嫁するというような、こういう形になるならば、私はこれは重大な政治責任になるというふうに考えますけれども、この点について、そのようなことはあり得ないのかどうなのか、はっきりとさせていただきたいと思います。
  165. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま日銀総裁が言われましたように、まだ差損がどういうふうな形で出るかどうか全くわかりません。いまのところ三百六十円の円レートを維持しておるのですから、評価がえがまだできる段階ではございませんし、これから円の切り上げがあるかないかもまだわからないというときでございますので、これは先がどういうふうになるかということはいまのところはわかりませんが、しかしその差損の問題がかりに出ましたとしましても、これは、たとえばその損を埋めるためにすぐに国民の税に響くとかいうような直接の問題ではなくて、これはいろいろ処理のしかたはあることは、準備金の取りくずしとか内部留保の問題とか、いろいろの方法がございます。そういう積み立て金も現在日銀会計の中には相当たくさんございますし、外為会計の中にもございますので、その金額がきまらない以上はどういう処理をするかもまだきまらないということでございますが、これはすぐに国民の負担に直接はね返ってくるんだというようなことではございません。
  166. 小林政子

    ○小林(政)委員 時間がないので論議が続けられませんけれども変動相場制への変更は実質的な円の切り上げでありますし、具体的にいまこの差損が出ていることは、これはもう、不安定ではあってもはっきりしておるわけでございますし、このツケが結局は最終的には国民に回ってくるのではないだろうか、このような不安に対して明確な御答弁を得られなかったことはたいへんに残念に思いますけれども、もしそのような事実が出てまいりますれば、私はいまの政府の重大な政治責任になるであろうということだけ申し上げまして、次の問題に入りたいと思います。
  167. 佐々木直

    佐々木参考人 ちょっといまの点につきまして一言補足させていただきますけれども日本銀行の貸借対照表は、資産のほうに最近は非常に外貨がたくさんふえてまいりました。負債の一番大きいのは日本銀行券でございます。それで、今度日本銀行券を日本銀行に持っておいでになりますれば、それに対してドルをお渡しすることができるわけです。国民の方はその場合には、たとえば一万円札を持っておいでになりますれば、前よりも一ドル札が一枚か二枚たくさんもらえることになるわけであります。そういうことで、円をお持ちの方はドルとの関連においては、支払いといいますか、力が強くなりますから、たとえばアメリカに送金される場合にはいままでより円が少なくて向こうのドルが獲得される。国民全体としては、円をお持ちの方はドルとの比較においては、それだけプラスが出るわけであります。そういう点はひとつ御理解をいただきたいと思います。  それからもう一つ日本銀行には内部留保がございまして、償却準備金といたしまして約二千億円、それから積み立て金その他の形で二千四百億円、合計して四千四百億円の内部留保がありますことを申し上げておきたいと思います。
  168. 小林政子

    ○小林(政)委員 大量のドルが出てきたということについても、一体このドルはどこから出てきたのだろうか、これも国民のやはり素朴な関心であり、大きな疑惑の的になってきております。私は、この点についてその実態というものを、この疑惑を解消するためにも国民の前に明らかにすべきではないだろうか、このように考えますが、お伺いをいたしたいと思います。  政府がすでに変動相場制移行というものを前もって態度をきめておきながら、具体的には二十六日にも円転換規制を緩和するという、こういう措置をとられたわけですし、そのためにその翌日には今度は十二億ドルドル売りが出たということがいわれております。このことは結局政府が商社や銀行をもうけさせてやろう、こういうことの結果ではないだろうかという素朴な疑問が出るのは、私はこれは当然のことだというふうに考えますし、またこれだけの売りが出たということは、輸出にいろいろと名前をつけた、短期資金だとかあるいはまた前受け金の名目で、海外の取引先だとかあるいはまた子会社などから直接ドルを送ってきて、そして一斉に売りに出たのではないだろうか、こういうことをだれしもが考えるということは、こういう時期でございますので当然のことだろうというふうに考えます。十六日以降に大量のドル売りが出たというこの実態について、これを調査し、国民に誤解を解くために発表される意思がおありになるかどうか。また不当なこれらの投機利益というようなものが調査の結果明らかになれば、これを没収をするというような措置もおとりになるということが必要であろうと考えますけれども政府の見解についてお伺いをいたしておきたいと思います。
  169. 水田三喜男

    水田国務大臣 この大量のドルはどこから来たかという問題でございますが、その大半はニクソン声明以後に為銀がお客からみな買い取ったものでございまして、その中にはかなりの額の輸出前受け金というものが含まれておったことは想像できますが、それ以外は為銀がいままで手持ちしておったドルということになろうと思います。私ども思惑資金が流入することについては相当注意をしておりましたので、立ち入り検査までいたしましたが、しかしさっき申しましたように、非居住者の投機資金がこの期間に外部からたくさん流れてきたというような事実は大体ないというふうに、いまは調査した結果出ておりますので、その点についてはやはり正常取引を中心にしたドルの流入であったというふうにいままでのところは見ていいのではないかというふうに思っております。
  170. 小林政子

    ○小林(政)委員 立ち入り調査もおやりになられたということでございますので、このような疑惑を招くような問題については、その実態等できるだけ国民に明らかにしていくということが必要ではないだろうか、このことを強く御要望をいたしておきたいと思います。  時間がもうないということでございますけれども、あと一、二点簡単にお聞きをしておきたいと思います。  九月の九日、十日、日米貿易経済合同委員会、あるいはまた十カ国蔵相会議、これに臨む政府の基本的な態度、こういうものについて一点だけお伺いをしておきたいと思います。  いろいろ言われておりましたけれどもドル危機の最大の原因というのは、いままでにも各党から言われておりますとおり、アメリカのベトナム侵略戦争、インドシナ政策、こういうものに対する膨大な軍事費の支出というものが、非常に大きな額がこのような事態を招いたんだということがいわれておりますけれども、いま国会で、このような問題について政府がはっきりとした態度を認められるのかどうか。今回のドル危機というものの根本原因はドルそのものにあるんだ、そしてその原因というものはアメリカのこのような一連の侵略戦争の政策というようなものによって出てきているんだということをはっきりと認められて、国際会議に参加して対処されるということでなければ、私は結局は日本の国益を守り、そしてほんとうにその立場に立った解決ということはできない、このように考えるわけです。いまアメリカが要求をしているというふうに伝えられております貿易あるいは資本の自由化の問題、あるいはまたその他円の切り上げも含め、いろいろと取りざたされております。防衛費の肩がわりなどというようなものまでもいまいわれておりますけれども、これらの問題をも含めて、結局は私は日本は押しつけられるというような結果になるのではないだろうか。政府はどういう基本態度を持って臨まれようとしているのか、その点についてはっきりとした態度をひとつお伺いをしておきたいと思います。  それから沖繩の問題等についても、いろいろお話が出ておりますけれども、マイヤー駐日大使が三十日に立法院の代表団に対して、復帰前でもドルと円の交換は不可能ではないということを言っておりますけれども木村臨時外相代理は二十五日に沖繩の屋良主席とこの問題についてお話し合いをされたときに、この問題については非常にむずかしい問題なんだというふうにお答えになられたというふうに聞いております。日本政府は対米交渉を一体やったことがあるのかどうか。先ほど対米交渉の必要はないというお話がございましたけれども、具体的に積極的にこの問題について解決をしていくということがいま非常に重要になってきている時点でございますので、これらの点を含めてお伺いをいたしたいと思います。
  171. 水田三喜男

    水田国務大臣 いま各国の関心はやはり世界の通貨を安定させたいということでございます。そのためには、金という自然の産物になるたけ左右されたくないということ、基軸通貨国の国内政策に左右されるということも困る、こういう二つの方向でこれから人類が英知をしぼろうという方向でいま動いているときでございますので、やはり私どもも、国際通貨の安定という方向の線に沿って、自国の国益を擁護しながら、国益のためにやはり国際協調の実をあげるという方向で私はこの会談に臨むつもりでございます。
  172. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 小林委員に申し上げますが、予定の時間が過ぎましたので……。
  173. 小林政子

    ○小林(政)委員 一言要望だけ申し上げておしまいにいたします。  沖繩県民の保有ドル、一ドル三百六十円、これについては私はぜひとも早急にこれで交換すべきである、こういうことを強く要望申し上げまして私の質問を終わりたいと思います。
  174. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 松本十郎君。
  175. 松本十郎

    ○松本(十)委員 午前中からわが党の藤井委員をはじめ、各委員からいろいろ質問もありまして、御答弁も得られましたので、私としましては補足的な意味と申しましょうか、締めくくる意味において、むしろ要望を申し上げながら二、三の点についてお尋ねをいたしてまいりたいと思います。  まず第一の点でございますが、これからグループテンの蔵相代理会議あるいは蔵相会議、またその間には日米貿易経済合同委員会、また、終わったあとはまた蔵相会議IMF大会、いろいろな国際会議の場なりあるいは二国間の協議の場が出るわけでございますが、その場におきまして、何としましてもわが政府としては主体性を持って臨んでいただきたい。特にイニシアチブをとって、リーダーシップをとってやるのだ、こういう気がまえでひとつお願いしたいと思うわけでございます。  と申しますことは、これから多角的調整ということで平価問題が出てまいりましょうが、しかし、われわれの見るところでは、今度の一カ月ほどの間のいろいろの会議で決着がつくとは必ずしも予想できない。なかなか、次第によっては長引いて持久戦になるのではないか、こういう感じがしないでもないわけであります。したがいまして、そういうことになってはやはり日本の国のみならず、世界の貿易経済にとって大きなマイナスでありますから、むしろ日本が言うべきことを言い、またほかの国に対して説得すべきことは説得しながら、できればこの会議の場を通じて決着がつけられるほどの気概を持って出ていっていただきたい、こういう感じがするわけであります。  と同時に、これからの国際通貨体制IMF体制はすでに空洞化し、崩壊寸前にあると水田大蔵大臣答弁されましたが、しかし何としてもこれをもう一回立て直しまして、そして世界の貿易の発展のためにしっかりした新しい通貨体制というものを、さらに共産圏側、反体制側も含めまして何かつくるべき必要があるだろう。現在までのドル本位制というものがむずかしければ、複数のキーカレンシー、基軸通貨、あるいはまたその背後に、金をできれば部分的にも国際管理をして、そして確固たる基礎の上に新しい体制をつくるべきだろうと思いますが、そういったことにつきましても、日本としても今度は思い切って前向きの提案をしていただく。この議論は当面の通貨調整のあとの問題にもなりますから長いことでありましょうが、その辺についてもいまからひとつ大胆な雄大な構想を打ち出していただきたい。これをお願いしたいと思うのであります。  と同時に、やはり主張すべきことは主張する、これは特にお願いしたいわけでありまして、今度のニクソンの特別措置の声明というものの第一の原因というものは、われわれ見まするに、やはり基軸通貨でありましたドルが弱くなった。キーカレンシー国であるアメリカが節度のない財政金融政策をとった結果こういうことになったということでありまして、われわれ国際協調もやります。あるいは日米協調の基調もはずすわけにはまいりません。しかしながら、根本の原因は基軸通貨国が責任ある節度ある政策をとらなかったということでありますので、われわれも国際協調の場から応分の協力はいたしますが、しかし根本はまずアメリカがみずから責めを負うべきである。したがいまして、ドル切り下げと申しましょうか、金価格の引き上げと申しましょうか、これはどうしてもやって、われわれもまた応分のことをして、そうして話をまとめる、こういうふうにやるべきだと思うのでありますが、これに対する大蔵大臣の御見解はいかがでありましょうか。  時間の都合もありますのではしょってまいりますが、あわせて課徴金のことで通産大臣にお伺いしたいと思います。  十年ほど近く前に利子平衡税が出まして、当時私はワシントンにおりましたが、当時の田中大蔵大臣の訓令を受けながらほとんど毎日毎日アメリカ政府と交渉したわけであります。日本は当時は貿易上対米入超でございまして、毎年毎年赤字が出ておる。日本経済を運営するためにはこの赤字をアメリカからの外資導入によって補わなければどうしても正当な運営ができないんだ。したがって利子平衡税のような課税をつくられては日本経済の運営ががたついてくる、何とか日本に対して減免をしてくれないか、こういうことを再三やったわけでありますが、アメリカ側の言い分は常に、貿易の収支というものはバイラテラルに考えるべきでない、マルチラテラルに考えるべきである。日米間だけでバランスがとれないからといってとやかく言うのはおかしいのじゃないか。その固い壁をもって臨んだことがいまだに思い起こされるわけでございますが、いまになってアメリカが論理を変えて、やはり日米間の貿易収支の赤字は何とも耐えがたい、何とかしろ。これは少し論理的に、向こうの窮情はわかりますが、かって過ぎはしないかということでございまして、事、課徴金につきましてはガットの場で作業部会がつくられまして、堂々とこれに対する、ガット違反ではないか、何とか撤廃したらどうだという議論もありましょうが、近く開かれます日米合同委員会におきまして田中通産大臣から、何としてもこれは自由貿易の旗頭のアメリカがやるとはひどいじゃないか、やめろ、こういう意味で強力な御主張でひとつ撤回を望んでいただきたい、これをお願いしたいと思うのでありますが、これに対する御感触をお伺いしたいと思います。
  176. 水田三喜男

    水田国務大臣 基軸通貨国の国内政策によって通貨不安が起こることは困るというようなことは当然でございまして、各国ともその点についての批判はいま相当強いものがございますが、この点については、この間のニクソン声明には予防線と申しますか、一つのことが言われていまして、アメリカは今日まで千何百億に及ぶ多額の援助をしておる。この援助によってアメリカ経済が今日になった原因もここにあるんだ。自国の経済を相当犠牲にしてまで今日世界を助けてきたんだ。この援助によって立て直ってよくなった国が、今度はやはりいろいろな形において責任を分担してくれるときが来たんだというようなことをはっきりとあの声明で言っておるところを見ますと、基軸通貨国の責任についても、向こうでも相当言い分をやはり国際会議の場では私は主張するだろうということを考えております。したがって、こういう問題を中心として、今後の国際会議通貨の安定ということを中心にして論議され、各国ともこの状態をとにかく協調によって脱しなければ世界貿易の縮小という重大なことになって、IMFを崩壊させるというもう危機に立っておるのでございますからして、私どもは主張すべきものはおっしゃられるように十分主張する。そうして日本の国益がどこにあるかという、これを堅持して、決して主体性を失うなんというような、そういうことのない交渉によって、やはり国際協調の実はあげるという方針のもとにこの会議には協力しなければならぬというふうに考えています。
  177. 田中角榮

    田中国務大臣 世界の貿易拡大基調を維持していくためには、各国協調してまいらなければならないことはもう言うをまちません。その意味で、課徴金のような制度が特別な処置であるということは事実でございますし、全く真にやむを得ない状態からとられたものであるとしても、かかる制度はガットの決定を待つまでもなく早急に排除せらるべきものであるということは強く要求をしてまいるつもりでございます。  しかし、これにはこれだけの措置をとった背景がありますから、この背景に対しては、われわれもかつて利子平衡税の免除を求めて、日本とカナダだけが適用除外をしてもらったときもございます。それからわずか六、七年しか歳月は経ておらないわけでございますが、しかし二国間の友好増進という問題、また輸出秩序の確立というような日本自体がやらなければならない問題に対しては、私は積極的にそういう体制をつくるべく努力をいたします。そして、このアメリカ課徴金制度を除去をして、新しい結束というものが固められるように、また二十六年も世界のために効果を発揮してきた国際的な機関が維持されていくように、両国では真にひとつ前向きな姿勢で結論を出すべく努力をしてまいりたい、こう思います。
  178. 松本十郎

    ○松本(十)委員 次にお願いしたいと思いますことは、やはり国民に安心感を与えるといいますか、それがむずかしければ、せめて危惧感をもっと減らすという努力も、政策責任者といいましょうか、政府責任ある立場でつとめていただきたいということでございます。十六日にあのような発表がありましてから数日の間、証券市場を見ましても為替市場を見ましても、われわれが影響ありと思います以上の動揺、混乱があった。これはおおいがたい事実だと思うのであります。日本としては初めての経験でもありますし、また新聞その他の報道を見て実際以上に驚いたこともわかります。しかし、何と申しましょうか、目先こういう動きがあることはマイナス要因ではございましょうが、もともと日本経済は強い、円は強い、長い目で見てやはりそう心配することはないのだということでもありますので、いまからでもおそくはありませんから、これからいろいろ手を打っていかれる過程におきまして、国民の一人一人の心に訴えると申しましょうか、いろいろマイナス要因も出ましょう、影響もありましょう、しかし大きな目で見て心配は要りません、政府は打つべき手は適時適切に打っていきます、こういう態度を前向きにひとつ宣明していただきたい。大事なことだからなかなか言えない、うっかりものを言うと変に勘ぐられる、それだけでは議会制民主主義のいまの世の中では私はまずいのではないか、こう思うわけでございまして、その辺のところについて特にお願いしたいと思うわけでございます。  と同時に、口で言われます以上はやはり大きな目で、日本経済輸出停滞その他に基づいて、せっかく底入れしかけたのにまたこれが延びそうだということでありますので、先刻来ずっと御答弁いただいておりますように財政主導型でどんどん公債を発行し、そうしてその金を公共投資、特にこれまでと違った意味での社会福祉あるいは生活関連施設に投入いたしまして、欧州その他の国国から、日本はフローの国ではあるがストックの国ではないじゃないか、こういうふうな批判なりからかいを受けないように、どんどん社会資本をふやすような方向で、従来の経済のかじのとり方を思い切って方向転換をしていただきたいと思いますし、さらにまた、今度のことで特別に犠牲を受けると申しましょうか、被害を受けると考えられます輸出依存度の高い業界あるいは長期債権を持った業界輸出依存度の高い企業、さらにまた沖繩、特にまた中小企業はどうしてもそのしわが寄るおそれが多分にある、こういうことでございますので、そういった方面につきまして十分の手を打っていただきたい。  また、消費をさらに喚起する意味において所得税の減税、法人税の減税ももちろんやられるべきだと思いますが、消費税体系についてもしばらく放置されておりましたので、この辺でメスを入れて、どうしたらいいか、これらもあわせてお考え願いたいと思うわけでございます。  時間もありませんのでむしろ要望のほうが多くなりましたが、これから国民に向かって少しでも安心感を持たせるようにひとつ御努力を願いたいということをお願いしたいと思うのでありますが、大蔵大臣の御感触はいかがでございましょうか。
  179. 水田三喜男

    水田国務大臣 私もおっしゃられるとおりだと思います。これは国が悪くなったための動きというものではない。国民に、やはり強い、明るい気持ちを持って、新しい日本をつくる再出発の一つの転機としてこれを受け取っていただきたいということについて、これから私どもいろいろな場を通じてこれを国民に知ってもらうことも、当然政府の義務としてやりたいものというふうに考えております。
  180. 齋藤邦吉

    齋藤委員長 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後一時五十一分散会