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1971-10-09 第66回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年十月九日(土曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君   理事 小宮山重四郎君 理事 武藤 嘉文君    理事 中村 重光君 理事 吉田 泰造君       海部 俊樹君    神田  博君       左藤  恵君    田中 正巳君       中川 一郎君    本名  武君       松浦周太郎君    松永  光君       山田 久就君    加藤 清二君       中谷 鉄也君    横山 利秋君       相沢 武彦君    近江巳記夫君       川端 文夫君    米原  昶君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君  委員外出席者         外務省経済局長 平原  毅君         大蔵大臣官房審         議官      藤岡真佐夫君         通商産業政務次         官      稻村佐近四郎君         通商産業省鉱山         石炭局長    莊   清君         中小企業庁長官 高橋 淑郎君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君 委員の異動 九月二十二日  辞任         補欠選任   米原  昶君     田代 文久君 同日  辞任         補欠選任   田代 文久君     米原  昶君 十月八日  辞任         補欠選任   相沢 武彦君     浅井 美幸君 同月九日  辞任         補欠選任   北澤 直吉君     田中 正巳君   塩崎  潤君     本名  武君   羽田野忠文君     松浦周太郎君   増岡 博之君     中川 一郎君   松尾 信人君     相沢 武彦君 同日  辞任         補欠選任   田中 正巳君     北澤 直吉君   中川 一郎君     増岡 博之君   本名  武君     塩崎  潤君   松浦周太郎君     羽田野忠文君   相沢 武彦君     松尾 信人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商及び中小企業に関する件(最近の国際経済  情勢に伴う通商及び中小企業対策等)      ————◇—————
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  通商に関する件、中小企業に関する件について調査を進めます。  最近の国際経済情勢に伴う通商及び中小企業対策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。左藤恵君。
  3. 左藤恵

    左藤委員 ただいま繊維問題も非常に大きな問題になっております。過日のドル・ショック、この関係中小企業がいろいろといま窮地におちいっておるわけでございまして、幾つかの問題がその対策として考えられねばならない。しかも、そのタイミングが非常に問題になっておるときだと思うわけであります。九月二十三日に、政府におかれては、この中小企業に対する対策として幾つかの項目についてその構想を閣議決定されたことが報ぜられておるわけでありますが、この点について私は一、二御質問申し上げたいと思います。  まず第一に、中小企業業種というものがたくさんあるわけでございますが、中に輸出のパーセンテージが非常に高い業種がありまして、燕の洋食器だとかいろいろといわれておりますが、私も一、二聞いております例として、大阪で生野にレンズの工業があります。こういった業種は七割とか八割が輸出されておる。しかもまた、その仕向け先の七割、八割がアメリカであるという問題に関連いたしまして、そういった業種に対して、業種指定という形でこういった中小企業対策考えておられるのか。融資の場合に、長期低利災害並み指定業種ワクとして一千億を緊急融資する、滞貨融資するというふうな考え閣議決定の中に盛られてありました。そういった一定の業種というふうなのは、どういうふうなことをお考えになっておられるのか、これは中小企業庁長官にお伺いしたいと思います。
  4. 高橋淑郎

    高橋説明員 このたびの特別金融措置につきましては、輸出比率の高い産地輸出比率の高い業種対象として考えます。かつ、個別の中小企業をとってみた場合に、輸出比率がきわめて高いというような場合もやはり対象として考えます。
  5. 左藤恵

    左藤委員 その比率が高いとか低いとかいうことにつきまして非常に解釈がむずかしいと思いますが、現地ではそういう点について非常に不安感を持っております。特に先行きのいろいろな契約が、現在の変動相場制では契約はしがたい、そういう不利な条件の中で、そういった滞貨融資なりつなぎ融資的なものがほんとうにわれわれの業種については指定されるのであろうかということについて非常に心配を持っております。この点について、たとえば融資はどのくらいのワクまでを考えておるかとかいうふうなことについて現在お考えのようなところを、中小企業人たちが非常に動揺しておるという点をお考えいただいて、もう少し具体的にお示しいただけないかと思うわけですが……。
  6. 高橋淑郎

    高橋説明員 仰せのとおりでございまして、一刻も早く実施細目をつくって関係のところへ徹底させなければいけません。それで関係都道府県あるいは関係業種関係方々から意見を十分伺いまして、現在ほぼ成案を得つつございまして、来週早々にでも、とりあえず第一次分といいますか、一番緊急度の高い対象者に対して融資措置がとれるような通知を出すように準備いたしております。産地の場合おおむね輸出比率が三〇%、それから業種の場合も輸出比率がおおむね三〇%、そういう大体の基準で考えております。
  7. 左藤恵

    左藤委員 いま言われましたように、とにかく業種別の、あるいは産地別決定というものが非常にむずかしい場合は、非常に比率の高いものから一次、二次、三次に分けてでもこれをぜひ早急にやっていただかなければ、タイミングを失するということが非常に大きな影響を及ぼすのじゃなかろうかということを私は心配するものであります。  それから次に、こういう表現はどうかと思いますけれども、いまの通産省のいろいろな御指導の中に、工業中心的な行政の面が非常に強過ぎるのじゃないか、流通面がちょっと無視されておるような面が非常にあるように私は思うわけであります。全国二十二万の企業の中で十四万も流通関係があるということがいわれておる。さらにまた、その中ではほんの千足らずのものだけが大企業に属しておる。十三万九千以上のものが中小企業である。そういうことで、通産省では、最近何か流通システム化推進会議というものを持って、その基本方針を策定すべくいろいろ専門組織等つくっておられますけれども、その中に、たとえば中小企業代表というのが入っておられる率が非常に少ないように思います。たとえば、通産省ではボランタリーチェーンの問題を具体化されようとしましても、実際それは大経営企業系列化だけに役立って、中小企業のほうには実効があがっていないじゃないかというふうな問題もわれわれ耳にするのでありまして、こういった点から考えまして、ひとつ今後の行政に実際に実業についておる中小企業代表の声も十分反映するように、これは要望としてお願いをいたしておきたいと思います。  そこで、全国に約八千の貿易商社がございます。そのうち実際大手といわれているのは十四社だということでありまして、残りが中小商社だというふうにもいわれるわけでありますが、その八千のうち関西にも現在四千の貿易商社があります。現在組織化されているのはそのうちのまた八百足らずでありまして、こういった中小商社人たちが、一体今回の閣議決定のいろいろな措置為替措置金融措置、税制の措置、こういったものの恩恵に浴することができるかどうかということを考えてみました場合に、やはり資本金一千万円以下あるいはまた従業員五十人以下というようなワク中小企業基本法関係でありますので、それを少しこえた段階というところが非常に大きなウエートを占めておる、それが非常に困っておるのじゃなかろうか、しかも恩典に浴し得ない面が非常にあるのじゃなかろうか、このように思うわけであります。船積み後の期限つき輸出為替日銀買い取り制、この問題につきましては、今度十月一日から復活して実施していただくことになりましたので、これは恩典があると私は思いますけれども、それ以外の問題について一体どうしたらいいのか。滞貨融資の問題を考えた場合に、下請のメーカーが実際は半分ぐらい稼働するように、つまり全部それが破産してしまっては元も子もない、何とかその人たちが食っていける程度のものはこの中小商社のほうから発注せざるを得ないような情勢というものが現実にはあるわけであります。こういった点を考え——商社はとにかくそういったことまで配慮しなくてもやっていけると思いますけれども、中小商社というのはやはり中小メーカーあるいは零細メーカーと一蓮托生的な性格が非常にあると思います。景気がよくなったらまたそのときには無理を言っていろいろやってもらわなければならない。しかしそのかわり、景気が悪くなってもそういう人たちを殺してしまうわけにはいかないというのがいままでの中小商社立場じゃなかろうかと思うわけでありまして、そういう意味でメーカーにいろいろ波及するわけでございますが、この点についての御配慮を特にされておられるかどうか、中小企業庁長官にお伺いいたしたいと思います。
  8. 高橋淑郎

    高橋説明員 推定の数字でございますが、いわゆる貿易商社のうち、現在の中小企業の定義に入りますものは九五%程度だろうと推定されます。ただし、先生御指摘のように、あとの五%の中に相当数貿易商社の方がおられますから、その方々に対する配慮というのは、今回の輸出関連中小企業者に対する措置では直接はカバーされません。しかし、中小企業製品を扱っておられる商社に対しましては、いま申されましたように、船積み後それから今般決定を見ました船積み前の措置によって、間接的に対策が講ぜられることになっております。ただし、実態については十分調査をいたして、今後の施策に資する必要があろうかと考えます。
  9. 左藤恵

    左藤委員 中小商社の場合は、大商社と違いまして、メーカーでつくられたものを仕向け地を変更して、たとえばアメリカからヨーロッパに回すとか、特に繊維製品の場合なんかその点がむずかしいだろうと思います。そしてまた、さらに金利の負担をしなければならないし、滞貨がたまりますと、無理に発注して生産させるわけでありますから、その倉敷料が非常にかさんでくるという、二重の負担をしなければならないと思うわけであります。繊維製品につきましては、特に湿気をきらうとかいうことで、倉敷料がほかの商品に比べて高いということもあろうかと思います。いろいろな面で二重、三重の負担をしなければならない。そういったこともありますので、ひとつこの辺は大臣におかれまして、十分そういう中小商社中小メーカー一体として、そういう滞貨なり、緊急の急場しのぎにでも対策を御配慮賜わることを特にお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  10. 鴨田宗一

  11. 武藤嘉文

    武藤委員 左藤君が中小企業問題をやりまして繊維の問題を私に譲るということでございますので、私から繊維の問題につきまして、少しお時間をいただいて、大臣にお答えを願いたいと思います。まず私は、経過を振り返ってみますと、一昨年五月に本会議決議をされ、その前四月にはこの委員会決議をされ、それに基づいて、それ以来いろいろと日本アメリカとの間にやりとりがあり、昨年の暮れには、牛場フラニガン会談がある程度まとまるのじゃなかろうかというようなところまでいきましたが、これが必ずしもうまくいかないで暗礁に乗り上げ、そこで、アメリカにおいてはミルズ委員長を中心としていろいろの工作が進み、日本日本でいろいろと政府がそれとなく業界方々お話をして、そして業界自主規制宣言というものが三月に行なわれ、そのときには政府は、官房長官談話として、これを歓迎する、こういう姿勢をとり、それに基づいて政府が数百億の救済策を打ち出して、業界自主規制に踏み切った。そして九月には、大臣御自身も日米経済貿易合同委員会においては、非常にすっきりした御発言をいただいた。これが私は今日までの経過だと思うのです。  そういう経過をたどってきてまだ一カ月とたたないうちに、なぜこのように——政府間協定を結ばなければならなくなったようなもう新聞論調でございます。私はその辺のいきさつが全くわからないわけでございますので、もしその辺大臣の判断として、こういうことだからどうも政府間協定に踏み切らなければならぬじゃないかということであれば、ぜひその辺を教えていただきたいわけでございます。
  12. 田中角榮

    田中国務大臣 日米繊維問題につきましてはきのうも参議院で質問に答えて申し上げましたように、政府間交渉をなさなければならないような情勢でございます、場合によっては日米政府間協定を結ばなければならないようになるかもわかりません、こういうことを申し上げました。それは、いま武藤君から述べられたような経緯から考えると、突然変異のようにお考えになられるかもわかりませんし、私もまだ通産大臣就任後三カ月を過ぎたばかりでございますが、そのうちの三分の二の間は、自主規制以外に方法はないという議論をしておったわけでございますし、私もそのように考えておりました。あとの三分の一ぐらいの間が、田中も変節をしたんじゃないかとさえ一部にいわれておるのでございますが、そうではなく、あと三分の一ぐらいの時間は、私は先ほども申し上げたように、どうも政府間協定をせざるを得ないのかなという情勢にだんだんなりつつあるということでございます。これはいま武藤君述べられたことよりも、もうちょっと先があるようでございます。  この日米繊維交渉というものは、一九六八年八月のニクソン大統領輸入制限宣言から端を発しておる。そしてまた、スタンズ長官日本に来たり、日本から調査団を出したり、また宮澤・愛知・スタンズ・ロジャーズ会談が行なわれたりしまして、アメリカはずっと政府間交渉を望んでおったわけでございます。日本も、当初は政府間交渉をやらざるを得ないのかなというようなことで、外交ルートに乗せてやっておったわけです。そして、いろいろな経緯を経まして、七〇年、すなわち二年たった昨年の十月、ワシントンにおいて佐藤・ニクソン会談がございまして、ここで繊維政府間交渉再開ということがきまったわけでございます。それで牛場フラニガンという外交ルートを通じて交渉をやっておった。その後いろいろなことを考えた結果、結論として、日本繊維産業連盟は一方的な自主規制を行なうということで、一応日本側はけりがついたということになっておるわけであります。ですから、牛場フラニガン会談から、この日本繊維産業連盟の一方的自主規制宣言が行なわれましたときに、内閣も官房長官談話を出して、これ以外にいいものはない、事態収拾には最良の策であろう、こう言っておるわけです。私も当時自民党幹事長として、いいことであった、こういう声明を出しておるわけでございますから、あの当時日本としてはそれ以外には方法はない、こういう結論が出たわけでございますが、アメリカでは、六八年八月のニクソン大統領宣言から今日まで、この話は切れておらないのだ、そこに日本側との見解の相違があるわけです。日本側だけは、もうこれでおしまいだと言っておるんだが、アメリカ側は、日本自主規制なるものでこの問題は終わったんだ、ザ・エンドになっていないのだということでございます。ですから、アメリカ政府は、日本のとった自主規制なるものに賛成はしないとの態度でずっと今日まできておることは事実でございます。(「それは一部だよ」と呼ぶ者あり)在野は知らず、政府側はそのようでございます。  そこへ、八月十五日に御承知ニクソン政策というものが発表せられました。ですから、繊維に対しては六八年八月の輸入規制宣言がずっと続いておるところに、八月十五日のニクソンの新政策なるものが重なって、エコノミックパッケージといわれたように、ワンパッケージの中でもってこの問題をみんな片づけようというふうに、アメリカ側はそういう姿勢でおるということでございます。でございますので、私たちのほうの日本繊維産業連盟宣言の一方的自主規制、これはあくまでも一方的なものでございます。一方的自主規制向こうがのんでおらない。今度はアメリカ側が一方的に日本に、ちょうど繊維連盟が一方的自主規制宣言をしたように、今度は向こう側が、十月十五日までに妥結をしない場合には一方的に規制を行ないます、そういうことになってまいったわけでございまして、新しい事態が起こった、こういうことをいわざるを得ないわけです。新しい事態が起こったから、新しい事態自主規制との間を比較をいたしまして、いずれが日本産業のために是なりや、こういうことをいま検討中であるということであります。
  13. 武藤嘉文

    武藤委員 きょうは時間がありませんので、ここでいろいろとこまかくまで私も論議する時間がございませんが、ただ、いま大臣お話しの、事情が変わったということでございますけれども、私どもの耳にいろいろと入ってくる情報では、必ずしもアメリカ全体が……たとえば平価調整を早くやれとか、あるいは資本貿易自由化をもっとやれとかいう声は、私は、アメリカ全体として日本へ向かっているという感じがするのでございます。ところが、この繊維の問題は、いろいろと政治問題、御承知のとおり、大統領選挙の問題がからんでおりますので、必ずしもアメリカ全体がそういう姿勢であるとは私は考えていないし、実際、情報としても、どうもアメリカ全体としてはそういう声でないような、たとえばミルズ周辺などは、しきりに、この問題については政府間協定というものは好ましくない、こういうことを流しておられますし、きょう、何か聞きますと、ミルズさんが演説をぶたれたようでございますが、そういうことにおいて、これは日本として大きなかけじゃなかろうか。ニクソンにかけるのか、あるいは民主党にかけるのか、どうもその辺、はたしてどっちが強いのか、私もわからないんですけれども、ニクソンが絶対的に強いなら、日本の国益からいって、いま大臣お話のように、向こうが一方的な輸入制限をやるというようなおどしをしておりますので、この際ひとつ、ニクソンが絶対に強いならニクソンにかけていくというのも私は一つ方法だと思いますけれども、必ずしもいまのところ、ニクソンがそう強いとも私は考えられない。実際、民主党のほうが議会においては強いわけでございますから、そういう点は私は少し考えていかなければならないのじゃないかということと、もう一つ、いまの一方的輸入制限という動きに対しても、アメリカの国内においても、これに対しては非常に反対の声があることも、もう大臣、御承知のとおりだと思うのです。そういう点を、私はもう少し冷静というか、客観的にお考えをいただく必要が政府にあるのじゃなかろうか。もちろんやっていただいておると思うのでございますけれども、私はそういう点をぜひお願いをしておきたい。  それから次に、いまのようなお話で、三分の一のところで変わってきて、政府間協定を結ばざるを得ないのじゃないかということでございますが、これに伴って、あくまでわれわれは、業界反対を押し切ってまでやるべきでないという姿勢自民党もとっております。業界反対を押し切ってまで絶対おやりになるのかどうかということをまずお聞きをしたいことと、第二点は、日本政府間協定をやった場合にアメリカ課徴金ははずさない、そういう場合でも政府間協定をおやりになろうとするのか、あるいはいまいわれておるケネディ特使なるものの案は非常にきびしいものでございます。あのような案が、どうもいまジューリックが来ておっても、まだなかなかこの案はやわらかくなっていないと新聞では書いてございますけれども、実際ああいうきびしい案でも、なおかつ政府間協定をおやりになろうとするのか、この三点についてお聞きしたいと思います。
  14. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、基本的に自主規制が一番いいんだという考えを持っているのは皆さんと同じです。いいんでございますが、あなたのように私も与党、同じ政党所属議員でございますが、私は議員の上に国務大臣という一つまた別の職務を持っているわけでございます。でございますから、所属議員としては同じ考えを持っているんです。自主規制がいいんだ。だから、幹事長のときは賛成声明をやったんです。ところが、アメリカは新しい要請をしてきておるわけでございます。そうして八月の十五日から新政策を行ないまして、十月十五日まで協定ができなければ、新聞に伝えられるようなきびしい、過酷ともいわれる一方的規制を行ないます、こう言っているのでございまま。(「やらしてみればいいじゃないか」と呼ぶ者あり)やらしてみればいいというようなことは、やはり国務大臣の職におるとそんなに簡単にやれるものではない。きのう繊維企業方々が来て同じような議論があったときに、反論するわけではないが、やはり国際的にやらしてみればいいというような考え方、いま同じような御発言があったのですが、それではお互いが世界の平和を維持はしていけないのだ、では労働組合との間に、やるならロックアウトやらしてみろ、こういうやり方でよき労使関係の生まれるはずがない、お互いが誠意をもって話し合いをするというものでなければなりません、私がそう言ったら、繊維業界代表方々は、そういう卑近な例を引かれるとよくわかる、こういうことでございましたが、やはり日米間は、困難な沖繩返還さえも実現をしておる。野党側が声援をすれば核兵器もみんな取り除く、こういうことになっておるのは話し合いだからであります。それを、やるならばやらしてみろというようなことを日米間でとることが日本繊維産業を守るゆえんではない、私はこういう考え方も持っておるわけでございます。また、日米のまじめな話であります。日米貿易実態考えますときに、貿易の三〇%以上が対米貿易であるという事実に徴して、日米間がそんなにいいかげんな交渉ができるものではない。私は責任ある立場でそういうことを考えておるのであります。  しかも、いまの一つ質問のポイントである繊維産業了解をしなければ——これはもう理解了解を求めるということは当然のことであります。ですから、きのうも総理大臣異例ではありますが、繊維産業代表者と会っておる。近く労働組合代表とも会って相協力を求めようとさえしておるわけでございます。また繊維産業理解を求めるために、異例ではあったが一方的自主規制というようなことさえも政府は支持をしてきた。三年間の歴史をかけてこの交渉に当たっておるという事実が繊維産業というものの理解を求めようという基本的姿勢のあらわれであるということは立証されておると私は思います。ですから、私は、大会で全部政府間交渉賛成という決議が得られるかどうか、なかなかめんどうな問題があると思いままが、まあ政府は最終的な段階まで——またこれが終わってもこの問題は終わるわけではありません。十月十五日が過ぎても産業の保護もしなければなりませんし、各般の施策を行なうについて立法手段に訴え国会の議決をも求めなければならないということもありますので、意思の疎通をはかるだけでなく、理解を求めるという基本的な態度はどこまでも貫いてまいろうということでございます。  それから一方的規制をさせようという考えはありません。日本が自主的に一方的にやったから今度は向こうの番だというようなことは日米間の望ましい姿ではない。また、われわれが政府間交渉もまたあり得るということを申し上げておるのは  一方的な規制よりもはるかにいい条件でやろう、そういうことでなければ日本繊維産業は困るということを前提にしていま考えておるのでございますから、もう一方的な、いま公表されておるような、ほんとうににっちもさっちもいかないような状態では結論は出さないということであります。その一例を申し上げると、糸は入れることになっておりますが、糸は昨年の実績に比べますと韓国が二十四年分、台湾が二十三年分、日本が三年半分出ているわけであります。このままでいくと三年くらいとまるわけでございます。とまらないためにはどうするかということをいま真剣に考えておるわけでございまして、これは日米間では私は合意に達し得る、また達しなければ日米間のためにならない、日本産業のためのよりよい協定にはしがたいということで、いま苦慮いたしておるわけでございます。  課徴金は、もうこんな問題が起きる起きないにかかわらずよろしくない制度でございますから、これは政府間交渉が行なわれ、協定が妥結をすれば、当然排除せらるべきものだ。向こうはよく言っておりませんが、これは課徴金が排除されるだけでもメリットがあるのではないか。その程度では困ると思いますが、これは綿製品協定によるものが除外されておるということからいっても当然のことだと思います。
  15. 武藤嘉文

    武藤委員 いま私の申し上げました三点は、それぞれからんでおると思います。どうしても相手がほんとうに一方的に輸入制限をしてしまう、だからそれよりは、こういういまのような案でなくて、いま大臣お話のように、業界も納得し得るような案をつくっていただく、あるいは課徴金もはずれるのだということをはっきりしないと、いまのような状態では、私は業界はちょっと納得できないと思うのですが、やはり業界を納得させていただくためには、はっきり業界にもおっしゃっていただいて、そうして、ほんとうに業界も納得して、もう泣き泣きかもしれませんけれども、とにかく業界に協力していただける姿勢をとっていただかないと、たとえば政府間協定をやるといたしましても、もし業界がこれにあくまで反対をして訴訟を起こされた場合、裁判に持ってこられた場合には、私は実質的に、はたして政府間協定がスムーズに進んでいくのか非常に疑問だと思います。裁判の決着がつくまでは、この政府間協定をやりましても問題じゃなかろうか。またそういうことになっては、それこそ政府業界とが全くお互いに裁判でやり合うなんてことは決して好ましいことではございませんので、私はぜひそういう点をひとつがんばっていただいて、そうして業界に十分理解を求めて、どうしても政府間協定に踏み切らなければならぬというときには、ぜひそれをやっていただきたい。  それからもう一つ最後に、政府間協定をした場合と向こうの一方的輸入制限の場合。輸入制限の場合には、たとえば品物がストップする、これは当然考えられる。私どもは、政府間協定を結んでも一時的には輸出をストップせざるを得ないのじゃないか、これも実は心配をしておるわけでございますけれども、その点についてちょっとお願いしたいと思います。
  16. 田中角榮

    田中国務大臣 一方的規制は避けるということでございますが、しかし、一方的規制が行なわれた場合はという御質問でございますから申し上げると、これはもう全面的ストップになります。これは全面的ストップになるのです。どういうことかというと、もう指定をされておる数量は変えません、こう言っておるわけですから、数量を変えないと、いま輸出契約を済んで通産省輸出認証をしておるものがその数量を大幅にオーバーをしておりますから、この輸出認証したものをとめるということになると裁判が起こるわけです。これは非常に困る。ですから、私たちはどうしても政府間交渉をすることによりまして輸出を全面的ストップにしないようにしなければいけない。そのためには七月一日では困るのです。どうしたって困るのです。ですから、それをいま言ったいつまで延ばせるのかという問題もあると思います。それから課徴金の排除の問題もございます。それからもう一つは糸をはずしたいという問題もあります。これははずれるかはずれないかわからないにしても、はずしたいという問題もあるのです。それから、とめないでいくためには既契約分を経過措置でどうするのか。やはり日米間は裁判所のように一方的通行はよくありません。繊維自主規制一つには一方交通でございましたが、これは日本が事情をよく見て一方交通の形式をとっただけでございますが、アメリカのように、ほんとうに裁判所の決定と同じように全面ストップをいたします、こういう一方規制は絶対に困る。日米間の基本的姿勢の上で困ると同時に、日本産業界は、やらしてみればいいじゃないかなどというような簡単なことで片づくものではありません。ですから、そういうものをどうしても排除しなければならないというところに通産大臣としてのむずかしさと困難さと、どうしても業界のためになさなければならないという一つの目的があるわけでございます。ですから、一方的に行なわれて一切がストップするということは避けなければいかぬというのがポイントになっておりますので、これらがみんな避けられるようなことであれば、しかも日米間だからそんなにものわかりの悪いことはなかろうという、こういう考え方で私は交渉をするということになると、やはり最終的には、交渉してみてすべて条件が片づいたら、それをまた政府間協定ではなく自主規制にしましょうというにはあまりにもひどいようでありますから、そこまでいくと政府間協定ということにならざるを得ないのかなあと、こういうことをすなおに申し上げておるわけでございます。
  17. 武藤嘉文

    武藤委員 持ち時間がございませんから、これをお願いだけしておきます。  いまのようなお話で私まだどうもはっきりよく理解ができないのでございますけれども、大臣のお気持ちとしては、とにかくストップはさせたくない、課徴金もはずす、しかもいま言っているような案ではなくて業界理解をしてくれるような案にする、できればそれが自主規制でいくのが一番いいけれども、万が一、向こうの事情を考えれば、内容は同じでも、どうも政府間協定のほうに踏み切らざるを得ないのじゃないかというお気持ちだと私はいま推察をしたのでございますけれども、あくまでもそういうことで、しかしながら業界をぜひひとつ納得さしていただいて、やはり業界が喜ぶ——喜ぶか喜ばないかは別にしても、とにかく業界と話がつけば、これは私どもはまた話は別だと思うのです。だからひとつ、一方的はよくないので、政府業界も一方的は私はよくないと思いますから、やはり合意の上で踏み切っていただくということをぜひお願いしておいて私の質問を終わります。
  18. 鴨田宗一

    鴨田委員長 加藤清二君。
  19. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 お許しを得まして質問をしたいと思いますが、与えられた時間が非常に短うございます。したがって系統的に質問することができません。飛び飛びにいきますので、賢明な大臣は、ひとつうろこ一枚を見たら魚の大きさを知っていただいての答弁をお願いしたい。  ところで、いままで聞いておりますると、私は、田中大臣を長年のおつき合いでございまするから信頼をしておる。頭のいい、腹のすわった非常に敏感な人だとこう思っていた。人評して、コンピューターつきのブルドーザーとかどうとかいう人があるそうだが、名前は何でもいいです。私は信頼しておった。しかし、事この問題に関する限りはどうもわからない。いま武藤委員質問にお答えになっておる様子を見ていてもどうもわからない。これじゃ業界はわかりっこないと思います。したがって、業界のほうでは声あっていわく——これはほんとうです、私のところへ電話やら何やらで、私はノイローゼくらいになっているのです。どうなんです、もう繊維局なんというものは要らぬ、アメリカの言いなりになるような繊維局ならもうそんなものは要らぬ、なくしたほうがいい、こういう声まで聞こえてくるのです。ということは、それを指揮、指導していらっしゃる大臣、あなたの責任ということになってくるわけですなんです。  そこで第一に承りたいことは、飛び飛びにいきますけれども、あなた一体だれと交渉してみえるのですか。いまさしあたって、そこから………。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 加藤さんとは非常に長いおつき合いでございますし、私は商工委員時代から加藤さんの繊維に対する政策等はお聞きしておりますから、私も、もうくどくど申し上げませんで端的にお答えをいたすということで御理解をいただきたいと思います。  だれと交渉しておるのか、交渉しておるのじゃありません、接触して情報を集めておる、こういうことであります。
  21. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 はい、わかりました。それではただいまはまだ政府間交渉ではない、接触である。その接触が終わった後に、それでは政府間協定という限りにおいては、だれか相手を選ばなければならぬ。本件に関する向こうの指揮者は何と申しましてもニクソン。なぜかならば、その発端は彼が大統領選挙のときにこれを約束したからである。経済ベースではない。政治ベースである。したがって、ニクソン日本へ来られますか。聞くところによりますと、欧州へは行かれるそうであります。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 ニクソン大統領が訪日をする計画があるのかないかは、私は承知いたしておりません。
  23. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 十五日には結論を出すという話なんです。調印の運びだという。それが新聞の誤報であるとするならばいざ知らず、十五日に調印を、業界に向かってまでものめ、のめと言うておるあなたが、交渉の相手がだれであるかがわからぬでは承知ができぬ。
  24. 田中角榮

    田中国務大臣 交渉するというときには、何ぴとを交渉相手にするかは私も目標をつけております。
  25. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 だれです。
  26. 田中角榮

    田中国務大臣 だれです、とこういう端的な御発言でございますから、まあ私はいまこの問題に対しては、日米経済閣僚会議のときにも三十一項目だと思いますが、これらの問題を詰めるのに、二時間有半の時間をかけたわけでありますが、繊維問題に対してはこのうち約半分ぐらいの時間をかけております。でありますから、そのときにはスタンズ商務長官であり、ピーターソン氏が同席をしておったということでございます。その後アメリカでは外交ルートを遮断して、繊維に関しては一切ケネディ大統領特使とジューリック顧問をしてこの折衝の衝に当たらしめるという公式な報告がございますので、ジューリック氏もしくはケネディ氏ということが当面考えられます。もう一つの相手方は、一方的な規制を行なう場合の担当者は財務長官である、こういうことをアメリカはほぼ公言をしておりますので、今度の緊急政策の窓口の責任者として交渉すれば財務長官コナリー氏ということになるわけでありまして、大体この五人くらいが考えられる対象人物である、こういうことが想定せられるわけであります。
  27. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 大臣、私は、コナリーさんとかスタンズさんとか、少なくとも政府間協定を結ぶ以上、大臣であるというならばこれはある程度理解ができます。しかしながら、このケネディさんにしてもジューリックさんにしても、これはあくまで代理なんです。こういう人と接触を保たれることについて、いなやは言いませんけれども、少なくとも本件は、日本の国会は反対をしていることなんです。日本の国会決議である。業界の意向にもこれまた反対のことをやろうとしていらっしゃる。重大なる案件なんです。したがって、これは後々政治問題が惹起すると思います。いかなる方途において制限を実行に移されようと必ず政治問題が惹起いたします。いわんや、中小企業を救うにあたってのいろいろの手当てについては、これはすべて政治問題なんです。かかる重大案件を、次官だとか代理だとかそういうところで事が運ばれていくということは、日本が軽べつされているといってもこれはやむを得ない。したがって、この点はひとつ十分に慎重に、あとあと禍根を残さないような方途に出ていただきたいと思います。  第二番目、これはもう言わずもがなのことでございますが、あなたの認識は正しいと思うけれども、先ほどの武藤委員に対する答弁の発言が間違っておる。何やら日本業界が一方的に相手に自主規制をのませたような言い分でございますが、日本業界も、インジュリーなきところ規制なしという態度ですよ。それが自主規制に出たということは、アメリカのそれぞれの要人が、せめて自主規制に踏み切っていただければこれで受けて立つと言うたからこういうことになったのだ。決して一方的じゃないのです。一方的というならば、インジュリーなきところ規制はなしということなんです。これが一方的なんです。これが日本の変わらざる態度なんです。自主規制に踏み切ったということは、何も業界やら一部議員の一方的な意見ではない。アメリカ交渉を再三したあげくの結果なのだ。ただしそのときにジューリックが入っていなかっただけだ。ニーマーはうしろに控えておったはずです。おかしいじゃございませんか。そんなことをあなたがおっしゃると、新聞記者に、何やら日本が最初に悪いことをやったような印象を与える。おかしいよそれは。一方的な意見、一方交通である。ということは、これはお取り消しを願いたい。  次にお尋ねしたいことは、もう一つ誤謬がある。それは、アメリカはこぞって政府間協定を要求しておるような御発言なんです。そこでお尋ねする。大臣もかつて日米経済閣僚会議にお出ましになって非常におがんばりになった。頼もしい大臣だという評価だった。しかし君子豹変、もう一週間たたざるうちにどんでん返ししたわけだ。芝居ならこれでおもしろいでしょう。しかし現実はそうはいきませんわ。ところでアメリカの、これは名前をあげて申しましょう、ミルズ下院歳入委員長、スコット、フルブライト、私はたくさんの長年の友人を持っております。したがって、そういう方々にお目にかかる機会がありました。つい最近です。帰ってきたばかりです。この人たちは、自主規制でけっこうである、政府間協定をゴリ押しすることは間違いである、それはやがてアメリカの威信を傷つけることである、こう言うておられる。それがうそかほんとうかは、あなたは情報網を持っておる、コンピューターをたくさん持っていらっしゃるそうだから、そこでお尋ねする。きのうミルズさんが商工会議所でどういう演説をやられましたか。通産省でわからなかったら外務省で答えてもらいたい。
  28. 田中角榮

    田中国務大臣 きのうは参議院の委員会で一日答弁しておりましたので、まだ聞いておりません。
  29. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 では外務省……。
  30. 平原毅

    ○平原説明員 ただいま十五分前に私こちらに参りましたが、それまでのところ、ミルズ委員長発言内容というものは私らに伝わっておりません。
  31. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そんなことでどうするのです。そういうばかなコンピューターを持っておって。よくもあなたは外交ができるのですね。では私が申し上げましょう。ミルズ下院歳入委員長は八日ニューヨーク商工会議所において演説し、日米繊維問題について声明を発表された。その要旨は大体次のとおりである。表題は、ニクソン政府に対する警告を行なうということなんです。これは初めてではございません。二週間も前、関係業者、特にゴム製品関係の業者を集めて同じような趣旨の演説をしておられる。課徴金なんということは、これは日本の円を切り上げさせるために使うことならばいざ知らず、その他の案件に使うということはこれは無謀もはなはだしい、そういうことはよろしくないということが振り出しで、繊維に触れておられる。そこできのうの問題ですが、ニクソン政府が二年以上にわたって繊維交渉に努力した云々と、まずその努力をほめて、なぜミルズ日本繊維産業自主規制を行なうことを支持したかということについて述べておられる。賛成どころか、支持しておる。次には、それは日本繊維業界の意図を高く評価したからである、同時に、私ミルズ日本繊維産業のイニシアチブ的な努力を歓迎したからである、それはやがて世界の自由貿易の流れをこんとんに追い込ませずに、スムーズな外交、経済が行なわれる原因となるであろうと言うて、次に、にもかかわらず——日本流に翻訳するとこういうことである。この翻訳は間違いありません。にもかかわらず、いまニクソンさんのおやりになっていらっしゃることは憲法違反の疑いがある、すなわち、アメリカ憲法第一条第一節には、すべての立法権は議会にあると規定している、通商面における憲法上の完全な権限は議会にある、大統領は議会に協力する必要があるということを強調し、そうして、私は米国の経済が国際的困難に逢着していることを理解し、ニクソン大統領の緊急措置というか緊急な解決に協力してきたが、しかし貿易政策のバックグランドを検討し、私は大統領に広い自由裁量の余地を与えることにやぶさかではないが、しかし、さりながら、さりながら、ただあくまで議会が認めたスタンドのワクの中だけにおいてそれは行なってもらいたいと、こう言うておる。憲法違反であるということを言うておる。このことは、あなたは私よりもなおアメリカのほうはよく御存じでございましょうから申しますが、これは民主党なんですよ。歳入委員長を十何年もやっている人ですよ。ものすごいパワーがある。いまアメリカ民主党のほうが多数党ですよ。必ず議会で問題になる。そのときに、日本田中通産大臣は、一方的な意見を聞いて、アメリカの議会を混乱におとしいれたというような種は、いま刈るほうがおりこうじゃございませんか。
  32. 田中角榮

    田中国務大臣 加藤さんの言われることも理解しなくはないのです、私自身も、でき得べくんば自主規制で続けられないかということを考えておるわけでございますから。しかし、アメリカ側が一方的規制を行ないますと、この一方的規制を行なわせないような権限をだれかが持っておってくれれば日本には被害が起こらないわけでございますが、いまそれを一方的に行なう権限を持っておるのです。ですから外交交渉権を持っておる。右の手では沖繩返還という協定をやるだけの力を持っておる。また野党やわれわれが要求をすれば核兵器を除去するという力も持っておるのです。同時に課徴金制度をしくという力も持っておるわけです。課徴金を免除することもできるわけでございます。ですから、自主規制にかわる一方的規制を行ないます——しかもミルズさんから日本に対して非常に同情的、理解のある御発言をいただいておることはありがたいことでございますし、繊維自主規制に対して支援をいただいたということもよく理解をいたしております。おりますが、それは民主党であると加藤さん言われましたが、今度の対敵法の窓口をあずかっておるコナリー財務長官もまた民主党の人である、こういうことでありまして、あまり党と言うよりも、日本政府にいま要請されておるアメリカ政府からの外交案件をどう処理するかという問題もあるわけでございます。そういう意味で、私先ほど申し上げたように三年間も継続しておる、それでまあ、私もきのう被害のないところに規制なしということを強く述べたわけでありますが、八月十五日の新政策の規定には、やはり被害があるということでございます。その被害に対しては私数字を持っておりますが、これはアメリカ政府にかわって私がそれを裏づける必要もないと思いますから、御要求があれば申し上げたいと思います。
  33. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 時間がありませんので、私は申し上げたいことを簡単に申し上げます。これは私が一方交通が好きで行なうわけじゃありません。時間の制限があるからです。それに協力するという約束があるからです。申し上げます。  脅迫されたの、無理だの、限度があるのとおっしゃいますけれども、いまの大統領はそれはそのとおりだ、そんなことは初めからわかっていることなんだ。しかし、それじゃ同じ共和党のスコットさんは、過ぐる国会においては、一九七〇年法案、貿易制限法案を上院でつぶしてくれましたよ。これは、あなたも幹事長だった、スコットさんも幹事長ですからよくおわかりでしょう。その後日本へ来られましたね。私は感謝の意を述べましたけれども、これは共和党ですよ。  そこでもう一つ申し上げる。ジューリック、ケネディなりが参りましてあなたを脅迫したという話、対敵通商法を適用するぞという話だ。そこでお尋ねする。対敵通商法によって一九七〇年度を基準に三%の伸び率にするとかいうお話のようでございますが、大臣さん、対敵通商法の何がそんなにこわいのです。  質問の第一番、対敵通商法を日本だけに適用するのですか。その場合に安保はどうなるのですか、ドルのかさはどうなるのですか。対敵通商法を適用した場合に、これは当然のことながら基本が経済でございまするし繊維でございまするから、世界じゅうの関係国を相手にしなければなりません。さすれば世界全体で解決をするということになって、むしろ対敵通商法は受けて立ったほうが解決しやすいということにも相なると私は思う。これについてあなたはどうお考えであるか。  第二番目、時間に制限がありますので、あなたの名演説を聞くと時間を食っちゃいますから、それともう一つあとで大事な案件がありますので、別な機会を与えてもらうようにとさきの理事会の話でございましたから、そういうこともあわせてお願いしておきます。第二番目は、かりに繊維政府間協定の原因がニクソンさんと佐藤さんの密約であったとしても——これは事実です、日本においては秘密だけどアメリカにおいては公然たる事実なんです。それを佐藤さんがうそを言っておるだけだ。しかしそれはいざ知らず、かりにそれがあったとしても、私は、今日の段階における状況ではこれは自然解消したと思います。なぜ自然解消したか、それは相手が破っているからです。なぜかならば、繊維と交換で行なわれました沖繩、これは次の国会で長時間やりますが、これは核抜き、本土並みという約束があった。にもかかわらず核は残る、これが守られていない。第二に、ニクソンさんは中国へ頭越しの交渉をなさった。これはたいへんなことなんです。おみやげが何であるかはまた別の商工のときにやりますが、これは行って、国連へ新中国を加盟させたというとどういう結果になるか。しかも、おみやげにビッグスリーやらデュポンやらがあるとなると、これはプラント輸出だ。これはアメリカと中国は友好通商条約を結ばなければならない。さすればこれは友好国となる。安保とは何ぞや、敵視政策が基本である、ゆえに沖繩基地が必要である。ここに至って、沖繩返還と抱き合わせの繊維政府間協定はすでに二つの前提条件が、相手国の態度によって変わってきているから、情勢はすでに変化したと見なければならない。それをいまもって後生大事に繊維政府間協定だけを遂行しようとしていらっしゃる外務省、通産省、解せぬというもまた愚かである。いずれ本件についてはゆっくりと個人面談をしたい。  同時にもう一つ大きな問題は、日本中小企業がやられるということ。皆さんがおやりになるから申し上げますが、極東三国が目をさらのようにしてこれを見ている。しかも極東三国の伝えるところによれば、アメリカとの現在の交渉の伸び率は、一〇%から、下っても七%である、そういう有利な交渉をしようとしておられるときに、日本だけがウールは一%だの化合繊は五%だのというようなことをやれば三国は非常におこるであろう。同時に欧州輸出関係諸国もまた日本態度を注目している。もし日本アメリカに対して全面屈服をするならば、必ずや欧州は日本に向かってまた同じような態度でくるでしょう。カナダがさっそくくるでしょう。ということは、コットン二国間協定がSTAとなり、LTAとなり、二年と約束したことが十七年も続いている今日の状態を静かに振り返っていただけばよくおわかりのことでございます。コットンは二年が十七年も続き、これが、いつ断ち切れるかわからない。約束違いである。いわんやこのLTAの第一条、第六条には、かかる問題は絶対に他の品目に及ぼすべきではない、なぜかならば、これは例外中の例外で各国間の自由貿易を阻害するからであるとある。時間ですからこれで結論にしますが、そのことは私が言わなくても、これを結んだトレザイス氏は、私の政治生活の一生の間のあやまちであったと自著に書いているところを見ても明らかな事実である。アメリカ人もまたこれを認めておる。私は決して一方交通を言いません。よく御勘案の上、信頼する大臣です、田中さん、こっちを見てください、私はあなたを信頼している。この信頼は私一人ではないでしょう。業界はみなあなたの腕を期待している。その期待にそむかないようなことをしてください。まず第一番急がば回れでございます。あまり急ぐ必要はありません。十五日なんということは考える必要はない。以上でございます。
  34. 田中角榮

    田中国務大臣 アメリカが対敵法を準拠法としてやるのかどうかということは、いまさだかではございません。私は、一体何でやるのか、対敵法でやるのかと言ったら、返事をいたしません。対敵法でやるとすれば日本を敵と思って見ているのか、こう言ったら返事をいたしませんから、対敵法を必ずしも使うかどうかという返事はわからないのです。そうすると、この対敵法だけということを考えるのは間違いだろうと思うのは、日本だけではなく、画一、一律的に全世界に対して行なう、そうして交渉が行なわれ、協定ができた国からはずしていくというのでございますから、いまの課徴金制度と同じようなことを考えておるので、全世界を敵に回すというような、そんなことは文字だけのことではございますが、それだけでもいやな感じであるということは事実でございます。   〔委員長退席、小宮山委員長代理着席〕 ですから、対敵法だけが窓口にならないだろう、こういうことで、安保の問題その他の問題をからみ合わせることは間違いだろう、こう思います。  それから多国間協定がこの種のものにはいいんだという考えには私は賛成をいたします。経済原則は、少なくとも縮小均衡に向かうべきではなく、第二次大戦の後は世界の平和維持のためには拡大均衡の方向をとらなければならない。それがIMFを生み、世銀を生み、第二世銀を生み、ガットを生み、OECDに発展をしつつDACになっておるのでありますから、これはもうどこからいっても縮小均衡のような二国間の経済的な制約というものは全くよろしくないことであるということは間違いのないことでございます。やむを得ないものであっても多国間協定によるべきである、ガットの規定の上に乗らなければいかぬ、これは当然のことでございます。でございますが、しかし当面する国際収支問題を改善するためには、十四条国の特別な規定もあるように、やはりそこには救済規定というものが存在することもやむを得ない現実だと思うわけでございます。  それから沖繩との交換だということをしばしば言われますが、私は全くそのようなものではない、こういう自信を持っております。糸を売って縄を買うがごとき議論であるならば、私は断じて承服するものではない。そういうことでございまして、そういうことは絶対にない、こういうことでございます。  極東三国との問題はすでに台湾、香港が協定に踏み切っております。韓国も近く調印をいたします。(加藤(清)委員「いや協定を結んでないですよ。しておりません。それはうそです」と呼ぶ)そうですか。あなたもなかなか国際的情報に詳しいから、私もよく通産省を督励して、できなければ外務省機関を通じて調査をいたします。いずれにしてもそのような状況のようでございます。ですから、これは日本だけでどうこういうのではなく極東三国に対しても同じような交渉が進められておるわけでございますし、またヨーロッパに対してもいろいろな交渉があるようでございます。なお、カナダ及びメキシコ等この問題に対しては一番影響の大きい国々に対しても、並行して接触が保たれておるということでございます。以上。
  35. 小宮山重四郎

    ○小宮山委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕   〔小宮山委員長代理退席、委員長着席〕
  36. 鴨田宗一

    鴨田委員長 速記を始めて。  中村君。
  37. 中村重光

    ○中村(重)委員 先ほど来の大臣の答弁を聞いていると、率直に言って私は非常な憤りを感じるのですよ。もう少し私は、権威のある田中通産大臣らしい、まじめな答弁をしてもらいたいと思うのです。欺瞞に満ちた、きわめて無責任な答弁だと私はもう端的に申し上げたい。少なくとも、いままで私はこの繊維問題について大平大臣から宮澤大臣、あるいは佐藤総理大臣も出て質疑を展開をしてきたんです。もう少しまじめに真剣にこの問題に答弁をしてもらいたい。あなたも、福田外務大臣が、まあ政府間交渉をしなければならぬ、そうした態度を明らかにしたときに、それはだめなんだ、自主規制というものが最善だ、そういったことをあなたはきっぱりと言い切った方なんだ。三分の二はこうであった、三分の一はまあ事態の重要性から変わってきたんだ、そんな漫才みたいなことで、そういう態度でもって事態に終始されたのでは、私はむしろ議会に対する侮辱だと申し上げたい。先ほど来あなたは同僚議員質問に対していろいろお答えになった。ニクソンは新経済政策の中でいろいろなことを要求している、繊維の問題についても十五日までに政府間の交渉に入らなければ一方的な規制をする、そう言っておるようです、私どもが新聞で知る限りは。あなたは非常にそれを心配している。ことばとしてはそのことを一番重視していると、こういうことなんですが、それならばニクソンの新経済政策、それは日本に対しては関税障壁を撤廃をしろ、あるいは残存輸入制限の撤廃、農作物の自由化あるいは電算機の自由化、また日本も円切り上げ八項目の中でいろいろなことをきめている。それじゃアメリカの要求したことはすべておのみになりますか。電算機の自由化もやるのですか、あるいは農作物の自由化もやるのですか、どうなんです。
  38. 田中角榮

    田中国務大臣 私はまじめに答弁をしておるつもりです。事態が変わったということを申し上げて、変わったことに対応する政府姿勢を述べておるのでございますから、その点は理解をしていただきたい。  いまの問題については、私はアメリカ側が期限づきで一方的自主規制を行なうということを宣言しておる以上、これに外交的にこたえなければならないということと、もう一つ自主規制を一方的な規制に移行させることによって日本業界の利益を守ることができるかできないかを比較検討しなければならぬことは当然の責任だと思います。相手側が十月の十五日までに協定を結ばなければ私のほうはこういたします、無通告でもうすでに課徴金制度は行なわれておるのであります。そのために日本変動相場制をとらなければならない状態に追い込まれております。そのために中小企業は倒産を余儀なくされておるのであります。その第二弾が、期限づきの一方的規制を行ないます、しかも日本だけではない全世界に向かって画一一律的に行ないますという不退転な決意をのべている限りにおいて、その新しい事態の中から日本産業を守るためにはどうしなければならないかということを考えるのは私はあたりまえのことであり、当然の責務ではないかと考えておるのでございます。  もう一つ第二の問題は、いま中村さん発言されましたのは、ではアメリカの言うとおり全部のむのかという前提でございますが、のむのではありません。一方的なアメリカの意思による規制を避けるためにいま接触を続け、向こうが一方的にやれば糸などに対しては三年間もとまってしまう、そんなことで日本繊維産業が持つわけはない、そういうことを避けるためにいま接触をしてアメリカ側理解を求めておるのであります。ですから、いまの自主規制に近いような案で業界の利益が守られるということが確立されるならば、一方的規制よりもはるかにそれが合理的であり、業界の利益を守るゆえんであるならば、われわれは政府間交渉もまたやむを得なくなるかもわかりませんという実情をすなおに述べておるのでございます。ですから、その意味においてアメリカの言うことを全部聞くという前提ではありません。それこそ日米両国が折衝をして、合理的な結論を見出すべきであるということを考えておるわけでございまして、あと自由化その他を全部アメリカの言うことを聞くなどということは全く考えておりません。
  39. 中村重光

    ○中村(重)委員 そのとおりだと私は思うのです。聞くべきではない。アメリカが言っておるのは、ガットの精神を無視したきわめて無謀な要求なんですよ。新しい事態が起こった、こうあなたはおっしゃるのだけれども、ただ十月十五日までに政府間交渉に応じなければ一方的に輸入規制をするのだという、日にちだけをきめてきたにすぎない。先ほどあなたがおっしゃったように、アメリカ政府間協定をやるんだやるんだという態度はおろしてなかった。そこを政府・与党が業界を説得して、業界政府・与党の言うことを信頼をして、忍びがたきを忍んで自主規制に踏み切ったのじゃありませんか。そういうことをさせながら、繊維業者の要求を無視して、そうして政府間交渉に応じていこうとあなたはしているのですよ。農作物の自由化あるいはまた電算機の自由化、これはそういうところまでいってないけれども、これを拒否するという態度をとっているのです。繊維の場合は、いま言ったように信頼をさせて、それに協力をしてきている。それを犠牲にするというととはあまりにもむちゃであり、無謀じゃありませんか。そういうことをやったのでは、アメリカという国はいい気になって、さらに犠牲を求めてきます。第二の繊維業界、第三の繊維業界が起こってこないという保証はありますか。あなたには確信がありますか、それを答えてもらいたい。  もう一つは、協定成立の場合は課徴金をはずすことが当然だと武藤君の質問にお答えになりました。これは条件ですか。きわめて重要ですからこのこともお答えいただきたい。時間の関係があるので、一応この二点に答えてもらって……。
  40. 田中角榮

    田中国務大臣 課徴金の問題は、政府間交渉を行なえば当然除外さるべきものだということを考えておりますから、これはもう除外をされるという前提に立っております。また課徴金制度そのものが不当であるということは、これは申すまでもないことであって、こんなものを、右手にケネディ・ラウンドの精神を掲げ、左手に課徴金制度というのは何たる姿であろうかというのは、私が日米経済閣僚会議で声を大にして詰め寄ったことでございますから、これはもう全く首肯しがたいものであるということは事実でございます。  それから、これをやったらほかのものが一体やってこないという保証があるか、ここらは問題なんです。確かに問題でありまして、それをやらないためにいかにアメリカとの間を話を詰めるかということがやはり接触だとしか述べられないわけでございます。  課徴金制度ができたときに、課徴金が不当である、こういって不当を鳴らしておったら、その頭にすぐ第二弾として今度の繊維の一方通行、こういうことの案が提示されたわけでございますから、案の中には何%以上両国間で輸出入のバランスを協定をして、それを上回るものに対しては両国で協議をしようというようなことをなすべきだという議論が一部にあることは承知をしておりますが、政府が物品間で全部一方的なこんなことをやってくるとすればもう世も末だ、こう思っておりますので、そんなことはしないようにということはアメリカにも望むつもりであります。それこそガットの場においても、相当強く、そのような縮小均衡の方向での移行には反対をしなければならない、こう思っております。
  41. 中村重光

    ○中村(重)委員 時間がないので議論はできないのですが、先ほど政府間協定をやらなければならないことになるのではないか、こうおっしゃったのですよ。もう一つ交渉にあたっては業界理解と協力を求めなければこれはできないことなんだからと、こうおっしゃったのです。業界理解と協力を求めるということは、協力してもらえないような協定をやっても、これは実施は事実上不可能なんだというような考え方もあるだろうと思うのです。そうなってくると、政府間協定をやる場合、業界理解と協力を求め得られないような内容の政府間協定はやらない、こういうことに理解してよろしいですか。
  42. 田中角榮

    田中国務大臣 理解が得られるまで努力を積み重ねていくということを先ほど申し上げました。業界は私は理解は求められると思います。なぜならば、いまの段階においては、私は相当——きのうの総理との懇談におきましても強い意見が出ました、そんなことはアメリカはやれるわけがない、やれるならやってみたらどうですかという意見も出ましたが、しかしそれは、やらしてみたらどうですかというのにウエートを置いているのではなく、そんなこととてもやりませんよ、やりませんでしょうというところにウエートが置かれておる。やった場合の、十月十五日実行された場合の一切がとまるということは、とまったらたいへんなんだということはちゃんと考えているのですから、私たちが最終的にあらゆる角度——いままでこのような歴史の上に立って政府間協定を結ばなければならないとしたらよほどの事態で、やむを得ない結論ということに踏み切るわけでありますから、その日米協定案ができれば、私は少なくともこれを比べてみて、なるほどこういうことで救済をされるのかという問題で、そこからも理解が生まれてくると思うのです。初めから、交渉でございますから、一切とにかくもうこっちの言うことを聞かなければ結びませんよということでもなかなか話はいかぬ。私は日米間であっても、われわれ自体でも初めはむずかしいだろうと言っておった核兵器の問題も、その他の問題も、野党の協力や世論の動向によって全部撤去ができるようになっておる。こういう事実を考えると、やはり日米間には、私は意思の疎通をはかって理解を求めれば、必ず理解の到達点はある、こういうことで、その点に到達ができれば、その場合には政府間協定もあり得るのではないか、移行せざるを得ないのではないかという衷情を披瀝しておるにすぎません。
  43. 中村重光

    ○中村(重)委員 そうなってくると、このケネディ案では業界がとうていこれは納得するものじゃない。かといって、今度はアメリカは、現に実施している業界自主規制ではこれは向こうが応じないですね。足して二で割るというわけじゃないけれども、そこらは歩み寄って妥結をしていかなければならない。そこらあたりが調整の焦点だというように、こう考えられるのですが、そういうことですか。
  44. 田中角榮

    田中国務大臣 ほんとうに考え方はそう考えていただけばいいのです。第一、もう糸はどういうふうになっておりますかというと、一九七一年の上半期ですでに三五一%、昨年同期の三倍半分も出ているわけです。それをケネディ案によると前年比一〇五%でありますから、一〇五%と三五一%が合うわけはないのです。そうすれば輸出を三年半もとめるのかというとそんなにとめられるわけがない、そういうところに私の非常に困っているところがあるのです。化合繊糸の輸出についてみると、台湾は前年同比二三二五%、韓国は二四二二%出ておる、驚くべき数字が出ておるわけであります。これは糸だけの問題でありますが、化合繊織物にしても、日本が一六七%、香港が八〇四%、台湾が一八八%、韓国が一八七%、その他が二七四%、こういう実勢において、アメリカが一方的にも踏み切らざるを得ないということで案を出しておるわけですが、いかにアメリカが困るからといって、何カ月も何年も全面的にストップなどが可能なわけがない。私は、全世界の織物を全部とめるということでなければ、これはそんなことできないじゃないかということで接触をしておるわけでございますので、足して二で割ったような合理的な案が出るかどうかは、にわかに申し上げられませんが、日本業界が、完全ストップになったら生きていけないんだという事実に対しては強い主張をしているわけであります。
  45. 中村重光

    ○中村(重)委員 それから、先ほど被害のないところに規制なし、これはいままでの政府態度でもあった。また、国会の決議の精神もそこにあるわけですよ。いままで政府も、アメリカ繊維業界というものは決して不況ではない、被害はないんだ、こう言ってきた。業界も、もちろんあらゆる角度から調査をしてそうした主張をしてきたのです。先ほど、被害が出ているんだ、まあしかし、向こうさんの立場になってここで説明するまでもないが、尋ねられれば答えるとおっしゃったのですが、時間はできるだけ短くして、あなたはどういう被害がアメリカが受けている被害だというふうにお考えになっていらっしゃるのですか。業界はそれを認めているのかどうか。いかがですか。
  46. 田中角榮

    田中国務大臣 こんなことを私はあまり申し上げたくないのでございますが、繊維だけを取り上げてきたのは、全世界に対して画一、一律的であり、それはいま数字的に簡単にちょいちょいと申し上げましたが、化合繊維に対しては日本が一八一、香港が一二六、台湾が二〇一、韓国が一七八、その他が一七五、これは向こう側の五%という、国民総生産の伸びと国民消費の伸びの新政策から見ますと、もう非常に大きな伸び率になっておるというのが全品目に対して指摘をされております。それからもう一つは、台湾や韓国に対しては、いまの率でいうと二十年分も出ておるということで政府間交渉に入らざるを得なくなったという事実もございます。もう一つは、六・一%ないし六・二%という失業率が恒常化しており、その数は五百万人でございます。その中で最近に出たものとして、私もこれは十分ひとつ最終的には調査をしたいと思っておるわけでございますが、繊維企業からの新しい失業者約十万人、こう指摘をされておるわけであります。そういうものが、新政策の中で一番初め、課徴金の次には繊維だ、こういって第二弾に取り上げてきたのには、それなりの数字的な根拠というものを示されておる、こう理解をいたしております。
  47. 中村重光

    ○中村(重)委員 これも先ほどお答えになったのです。私が受け取り方が違っておったのかどうかわかりませんが、国会の議決を求めなければならないんだからというようにお答えになった。しかし、新聞報道等では、反対決議があるので国会の協力というものはなかなか得られない、したがって、国会の議決を必要としないガットの例外規定で実施する以外にないのではないか、こういうことが報道されておるのですが、そのようなことはお考えになっていらっしゃらないかどうか。やはり国会の決議というようなことにおいて、円満に問題を処理していこうとするお考え方であるかどうか。
  48. 田中角榮

    田中国務大臣 それはどういうふうに報道されているかわかりませんが、アメリカとの接触の過程において、私がある時期に、国会には超党派的な決議がございますから、法律を出しても、それは日米政府は合意したけれども、国会が法律を通さなかったのだからやむを得ませんというような無責任なことになりますので、法律で処理をするということはできません。そうすると現在の貿管令でもって整理をするかというと、百六十万ないし百七十万も繊維労働者がおり、百五十か二百の組合があるということで、この協力を得ないとなかなか輸出調整というものがスムーズには行なわれません。ですから、業界の支持と理解がどうしても前提になるのですということは述べたわけです。そしてそのためには、全面ストップというようなケネディ原案では業界の支持も理解も得られない、大混乱をするだけでございますから、これはもうこちらと数字を詰め合って、こちらがとにかく混乱を起こさないような状態まで譲歩しなければ、そんなものは協定案にならないと、こういうことを言っているわけであります。ですから私は、報道されたものがどういうものであるかはさだかにしておりませんが、それはそういうことをかって述べておるということが一つでございます。  もう一つは、政府間協定を行なうならばそれは国会の議決案件になるのかどうかということだろうと思いますが、いま向こうから持ち込んでおるのは五年でございますから、五年になれば、ケネディ原案五年となれば、これはもう国会の議決を必要とする案件であることは当然でございます。しかしこれが最終段階においてガットの規定にかぶさったものであり、短時日のものであれば、これは行政権の範疇に属するものであって、これが国会案件になるかならないかはいま法制局や外務省で検討してもらっておるということでございまして、これはもう最後には国会とのお話になるのであって、それは協定が何年になるか、内容がどういうことであるか、立法を必要とするかというようなことで、国会の案件になるのかならぬのかという問題はおのずからきまるものだと思います。
  49. 中村重光

    ○中村(重)委員 いま期間の問題について、五年であれば国会の議決が必要である、それから三年、短期間のものであれば行政権の発動によってやれるんだ、こうおっしゃった。私はそういう形式的なことにおいてこれを処理すべきじゃないと思う。やはり業界の協力を得られないような妥結はしないということが今日までの政府の一貫した態度であり、議会に対する答弁であった。さらにまた国会も、アメリカのそのようなガットの精神に反するような無理押し、そういう一方的な規制、それに応ずべきではないということが決議であったわけです。だから、五年であるか三年であるか、長期であるか短期であるかという形において、この問題は行政権によってこれを処理するというようなことでやるべきではない。やはり業界の納得と協力を得られる内容であること、国会の反対決議があるわけだからして、あくまで国会が承認し得る法的措置が講ぜらるべきことである。それが私は絶対的な条件であると思います。あなたが自民党との折衝を行ない、三野党との書記長会談等、最大限の努力をしておられるということは私は評価をいたします。それなりの努力を評価をいたします。しかし、それは単にこういう形式をやったのだ、やるだけやったんだけれどもこれは同意は得られなかった、だがしかし、これをほっておいたならば日米間の友好親善もない、繊維に続いて他の商品に対しても一方的な規制が行なわれ、日本貿易が大混乱になるんだ、これは業界にもあなたは言っておられるようだけれども、そういうようなことをもって、これはあえて私は言いわけということになると思うのですけれども、そういうことをやるべきではない。あくまで民主政治を、ガットの精神を貫くということ、これを貫かない限り、いわゆる自由貿易、自由主義経済というものの存在ということもあり得ない、私はこう考えているわけですから、あくまであなたは通産大臣として、この前提条件というものを十分守ってやる、国会の承認、法的承認、それから業界側の協力、これを行なう、その線に沿ってやるということをこの際明確にしておいていただきたいと思います。
  50. 田中角榮

    田中国務大臣 業界の利益を守ろう、日本産業の利益を守ろうということに対しては全力を傾けるつもりでございます。  国会の案件とするかどうかという問題、これは私だけできまる問題ではございません。これは法律的な問題でございますし、三権の憲法上の規定もございますので、これは法制局また外務省等の意向が十分そこまでいけば結論が出ると思いますので、私は政府と国会との問題として……(「これは承認事項ですよ」と呼ぶ者あり)私はそこまで、技術的なこまかい法律家としてのあれがありませんので、そういう意味では、これはまた十分国会でもこうして御発言がございますし、政府も法律的に考え結論が出されるものだと理解をいたします。
  51. 中村重光

    ○中村(重)委員 いや違う。アメリカも国会にかける、こう言っているんですよ。予算がこれは伴うんです。いいですか。いまあなたは、法制局の意見であるとかなんとかいろいろな、そういったような答弁だと、何とかして国会の法的措置を、法的承認を受けるということを回避をしていこうというような考え方の上に立っている、そうとしか聞こえない。少なくともあなたは、事務的なことについていろいろなことがあるということはそれはあるでしょう、しかしそれを問うているのではない。あくまであなたは通産大臣として、国務大臣として、私がいま要求したようなその線に沿って最大限の努力をする、またしなければならないという考え方の上に立っておる、立つというようなことをお答えいただけばいいわけなんです。
  52. 田中角榮

    田中国務大臣 現在、五年以上の原案であるならば国会の案件となると思います、このお答えをしておるのでございますが、しかし、国会と行政府との間の、どれを議決案件とすべきかという問題に対してはいままでも長い例がたくさんございますし、例だけではなく、法律に準拠してやっておることでございますから、私だけでいま答えることはできないわけでございまして、政府と国会との間でしかるべき結論が出るものだと思います。
  53. 中村重光

    ○中村(重)委員 ガットの精神をじゅうりんする、これを崩壊させる共犯者になってはならないということ、業界に対するところの背信行為をおかしてはならないということ、議会政治、民主政治を否定するそういったような行為を絶対にやるべきではないということを強くあなたに要求いたしまして、もう時間も超過をいたしましたから、私はこれで質問を終わります。
  54. 鴨田宗一

    鴨田委員長 近江君。
  55. 近江巳記夫

    ○近江委員 日米間のこの経済的な摩擦、戦後かってないそういう状況を迎えておるわけでございます。通産大臣としても非常にたいへんな中で就任されたわけでございます。これだけの過熱した状態の中で登場された大臣でございます。それだけの実力大臣であると私たちも思っておるわけです。しかし最近のこうした繊維の問題等一連の問題を見ておりますと、確かに立場は非常にきびしいことはわかるわけでありますが、いまこそほんとうに通産大臣としての真価を発揮していただくときがきたんじゃないか、私はこのように思うわけです。今回のこの繊維交渉にいたしましても、まるで短刀を突きつけて、さあ返事をしろと言ってくるようなアメリカ態度のように思います。日本交渉態度というものが、そういう非常に追い込まれた中でやらなければならない。私はここに日本政府のそういうアメリカに対する弱さといいましょうか、そういう切歯扼腕の気持ちを、私だけではない、国民の皆さん全部が持っておると私は思います。  そこでアメリカのそういう強い態度がそこに出てくるにはやはりそれだけの、ただ輸入が超過しておるとか、そういう経済的な問題だけではなく、政治的に非常に大きなそういう約束があるんじゃないか。まあ沖繩と繊維の問題を交換したんじゃないかとか、いろいろなことがいわれておりますけれども、こういう密約という点において、政府は打ち消してはおられるわけですが、依然としてその疑問というものはぬぐい去ることができぬわけであります。この交渉において何か裏であるのではないか、非常に不明朗なものを私たちとしては感じるわけであります。この間も、業界が暴露した繊維で密約覚え書きというようなことも一部新聞に出ておったわけでございますが、こういうような不明朗なことは絶対にございませんか。
  56. 田中角榮

    田中国務大臣 密約その他によって一方的な交渉をしいられているものでは絶対にないということは明確に申し上げておきます。それはニクソン政策というものが出されて課徴金が一律、画一的にとられておるということをまず考えていただきたい。これは日本からの輸入の急増というもの、アメリカの数十年来初めて迎える貿易収支の逆調、それが二十億ドルである。日本からの出超が二十億ドルである、だから相手は日本なんだ、しかし課徴金制度をとれは一番影響を受けるのは、日本ではなくカナダとメキシコだ、そう言いながらも、画一、一律的な課徴金制度をとっておる。その中の第二弾として今度繊維問題が起こっておる。日米間だけであって、日本に対して、十月十五日までに政府間協定を結ばなければ一方交通をやりますよというなら、これは密約説であるとか何かあったんだろうといってもいいと思いますが、そうじゃないのです。もっと強く韓国や、台湾や香港にやられ、そればかりではなくて、すでにヨーロッパ諸国に対しても、十月十五日を期して全世界に画一、一律的に原案どおりやります、そうして協定が行なわれなければその原案を一歩も引かず実行いたします。——ですから、言うなれば世界の通貨調整でも行なわれない限り、またアメリカが言った、ニクソン・エコノミック・パッケージという三つの政策政策効果をあげない限りにおいては強行するという、それは表から見るとほんとうにおかしい。アメリカもそこまでも考えるのかというようなことは言い得ると思いますが、何か特定の前提があっての交渉の要請ではない、こういうふうに見ていただきたいと思います。
  57. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、先ほどからの大臣の答弁をずっとお聞きしておりますと、政府間協定に踏み切らざるを得ないというようなニュアンスが非常に強いように私は思うわけです。きのうも異例の、総理と業界の方が会われた。しかし、総理のお話を承っておくという程度で終わっておる。業界としてははっきりと、そういう政府間協定というものは反対ということを言っております。あと十五日まで数日あるわけでございますけれども、この業界のこういう説得という点において、大臣として最後まで努力を続けられると思いますけれども、しかしそれがいれられない場合は、やはり見切り発車ということはお考えになっていらっしゃるわけですか。
  58. 田中角榮

    田中国務大臣 業界との接触や業界理解を得るために、業界の利益を確保するために最善の努力をいたします。そのためには業界とも接触をいたします。それだけではなく、労働組合とも懇談もしなければならぬと思いますし、これはあらゆることをやらなければならないと思います。私はアメリカに対して、繊維問題というのは戦争のもとになったんだよ、こういうことを言ったら、向こうもびっくりしておったことがございますが、過去の歴史ではそのくらいむずかしい仕事であります。非常に世界的なむずかしい仕事であるという理解に前提として私も立っておりますので、どこまででも利益を守るためには全力を傾けなければいかぬ。こういうことでございます。  見切り発車ということがどういうことだかわかりませんが、そこはアメリカの要求もある。こっちも目的貫徹という任務もある。業界態度表明もありますから、ここらを、どんなことをしても政府がやることに対しては、正面的には賛成はできないが、だれが考えてもこのような結論しかないのだろうというような理解が得られるとすれば、それは見切り発車ということではないと思うのです。反対があるにもかかわらず、時間が来たからベルを押せば、これは見切り発車でございますから、いずれにしても日本の利益を守ることですから、理解を深めることには全精力を傾ける、こういうことだと思います。
  59. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この国会決議あるいは商工委員会における決議ですが、先ほどからも中村委員のほうから話があったわけでありますけれども、われわれとしても過去三年間、特にこの繊維の問題についてそれぞれ決議をとってきたわけであります。いま何か五年とか三年とかいうような、そういう五年であれば議決をしなければいかぬ、政府としては承認を得なければならぬということはいまおっしゃっておったわけでありますけれども、私は、そういう期間がどうであるとかそういうことではなくして、あくまで国会議員の私たちは国民の代表である、それだけは自覚をしておりますし、国会のそういう決議ということは国民全部の総意だと私は思います。したがって、そういう国会の決議あるいは商工委員会決議ということに対して、大臣としてはどういう基本的なお考えをもってこの問題に対処されるか、明確に答弁をお願いしたいと思うのです。
  60. 田中角榮

    田中国務大臣 国会の決議は、委員会決議、本会議決議たるとを問わずこれを尊重しなければならぬことは当然であります。私もいやしくも二十五年国会に議席を持つ者でありますから、私も新憲法下第一回の当選者であります。私は、そういう意味で非常に厳密な考え方を持っておるということだけは、これは信じていただきたい。  国会に対しては政府は連帯して責任を負っているわけでありますから、一国務大臣の専権だけによってかかるものをきめられるわけではありません。もちろん、政府が連帯して国会に責任を負うためには、国会で存在する決議に対して政府が何らかの意思表示をする、この決議というものと違う行政的な権限を行使する場合には、それなりの国会に対する意思の表明があってしかるべきであるということはもう当然なこととして考えております。
  61. 近江巳記夫

    ○近江委員 結局、国会に対して責任をとられる、こういうことですか。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 議院内閣制でございますし、内閣はもとよりのこと、憲法に定めるところにより、連帯して国会に責任をとるということは憲法に明文の存するところであります。
  63. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、この間から商工委員会の視察等で私たち繊維のそうした地帯も見てまいりましたが、具体的な問題に入りますが、この七月一日からの自主規制に対して、政府としては設備の買い上げ、その他財政措置を講じられたわけでありますけれども、まだ非常に買い上げをしてもらいたいというようなところは、どこへ行きましてもやはり殺到しているわけです。そういう点、こういう自主規制に対する救済措置がこれで済んだとお考えになっているのかどうか、お聞きしたいと思います。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 繊維産業に対する救済、対応する政策施策の実行というものは、これで済んでおるなどと考えておりません。対米貿易そのものが約六億ドルないし七億ドルと推定をされます。ですから、ことし相当伸びるとしても、そのような予想数字でございますから、二千億ないし二千二、三百億ということでございます。それに対して、第一回財政支出を含めて六百五十億余の措置をしたわけでございますが、七十万台もある織機の買い上げを五万三千台やってこれで片づくものではない。私はそういう考えから、もっと織機の買い上げもやらなければならないし、同時に事業転換を行なう方々に対しても処置をしなければならないし、それから場合によれば製品の買い上げもしなければならないし、いろいろなことを考えなければならないのであって、私はある意味でいいますと、日米間の自主規制マイナス政府間協定——もしした場合の数量の差額を補てんするようなものではなく、長期的な視野に立った繊維産業の安定化に資するためには相当大幅な救済措置、対応措置を必要とする、こういう考えでございます。
  65. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから中小企業、これはもちろん繊維も全部含めてですが、かつてないほど、国際的、国内的にそうした経済環境というものは変わってきておるわけです。わが国の中小企業施策というものにつきましては、中小企業基本法を柱に世界に類を見ないほどきめこまかな施策が行なわれておる。これは私たちも認めるわけですが、しかしその内容、実際のそれが業界に対してどれだけきめこまかにいっておるかという点になりますとその点は疑問があるわけですが、このような国際経済下に対処するための施策として、中小企業の近代化促進法による構造改善あるいは特恵対策としての臨時措置法、こういうものがあげられておるわけですが、しかし、いまの各それぞれの施策というものは、国際経済下にはたして対処できるかどうかという問題であります。中小企業基本法というのが昭和三十八年に制定されておりますけれども、これは昭和三十年代、大企業との二重格差の是正ということを前提としたものでありまして、そういう国際経済下の現状に対した基本法という点からいいますと、非常にかけ離れたように私たちには映るわけであります。この際、この基本法を改正するとか、あるいは各施策についても洗い直して現状にマッチしたものにするべきではないか、このように思うわけです。また、かねて私たちが主張しております中小企業省を設置すべきじゃないか、このように思うのです。特にいま申し上げました基本法の問題、各施策の洗い直しの問題、中小企業省の設置についてはどうお考えか、この三点をお聞きします。
  66. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業基本法の問題については、審議会等学識経験者の検討もお願いしておるわけでございます。しかし相当時間がたっておるということも御指摘のとおりでございます。中小企業基本法とか農業基本法とかをつくったときと情勢が変わっておるということもまた事実なんです。私も商工委員会のメンバーとして、中小企業基本法とか輸出入取引法とかその一部改正法とかを議題にしたわけでございますから、相当長い年月がたっておる。特にあのころは自立経済体制でございまして、やがて国際経済への参加ということが考えられたときであったのですが、今度は待ったなしに開放経済、国際経済に移行することになったわけでございますので、中小企業対策の洗い直し、見直しということは私は当然時期を迎えていると思います。特に、いままでは中小企業の自然発生を全部認め、それを中企業、大企業へレベルアップしようということが法律の精神になっておりますが、電気になれば石油ランプはやめる、石油ランプになればまきをやめる、炭をやめるという時代になっておるのですから、そういう意味で、新しい長期的展望のもとに日本産業体系の中に中小企業や零細企業がどう位置するものであるかということを考えて、それに対応する政策をやることが必要であるということは避けがたいものである、そういうことで中小企業問題に対しては私も今度の日米問題、繊維問題等を契機にしまして特に積極的に検討いたしたいと考えております。  特に私のいなかの燕などは二千五百万ダースから三千万ダースの洋食器をつくるだけの能力があるのです。よくも製造機を入れたものだというぐらい入っておる。アメリカには千九百万ダース輸出していた。ところが日米間の自主交渉できめたのは千百万ダースであります。その上、タリフクォータが残っているので輸出量を九百万ダースから千万ダースに確保できるかどうか問題である。その場合三分の一しか機械は動かないこととなる。繊維も例外ではないと思うのです。七十万台の機械のうち、ほんとうに動くものは半分もあればいまの輸出をまかなっていけるというぐらいの能力を持っておる。ですから、買い上げても、またちょっと景気がよくなるとどこからかクモの巣を払って持ってきて稼働するという、そんなことをやっておったのでは日本の中小零細企業は浮かばれないと思う。やはり明確な計画を出して、それに合うような政策を進めるということがどうしても必要である。私はそういうことに意欲的な姿勢をとりたいと思います。  中小企業省というのは実際は昔からやっているのです。そういう前提で中小企業庁ができたのです。できたのですが、どうも外局化したためにかえって責任の所在が明らかでないということで、じゃ省にするのか内局にするのか、こういう議論もあるわけでございますが、将来は、貿易省の問題、中小企業省の問題、いろいろな問題が通産関係ではいわれておりますけれども、それよりも中小企業というものに対して絶えず国会でもって具体的なものを指摘をしていただき、とにかく行政を活発に動かすということが一番の問題じゃないだろうか、こう思いまして、中小企業省というものには、私自身もあなたと同じようにこの委員会委員として詰め寄ったこともございますが、でもなかなかできなかったということもあるので、必ずしも行政機構を拡大することだけがいいかどうか、にわかに結論が出ません。
  67. 近江巳記夫

    ○近江委員 政府中小企業の救済対策を出されたわけですが、そのうちに何点か問題があるのですが、もう時間がございませんので一点だけお聞きしておきたいと思うのです。  先ほど中小企業庁長官もお答えになっておりましたが、金融措置、税制措置対象を、中小企業者の全生産量に対する輸出量が三〇%以上の業種、保険特例措置については同じく二〇%以上の業種、このように政府案では出ておるのですが、この割合以下の輸出関連中小企業者をどう扱うかという問題なんです。この出された閣議決定によって輸出関連中小企業者全部を救済できるとお考えになっていらっしゃるかどうか、これについてお聞きしたいと思います。
  68. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、中小企業対策はもうすでに行なっておるわけでございますし、これからも何回も何回も万全な対策といわれるまで対策を重ねてまいらなければならない、こういう考え方でございます。  いまの問題に対しましては、通産省及び大蔵省で詰めますときに、無制限なことになっては困る、それは大企業というものとの間に区別をしなければならないと思うということが一つ。それからもう一つは、一般的な中小企業対策はまた別にやっているのであって、それに対して、日米問題の輸出等にからむものは、特にそれを二重、三重にやろうということであるから、これにも限界がなければならないということで、一つのめどとして、両省の合議がなって、きのうの閣議決定を行なったわけでございます。しかし、あなたがいま申されておるように、適用によるとその限界すれすれのものは一体どうするんだという問題が起こってくるから、そういう問題はひとつ案件ごとに両省でもって詰めよう、こう言っておりますから、私はそういう限界を設けたことによって全く差別待遇が行なわれるというような心配はない、こういうふうに考えております。また、これだけをもって中小企業に対する対策が万全であるというふうな考えは持っておりません。
  69. 近江巳記夫

    ○近江委員 以上をもって終わります。
  70. 鴨田宗一

    鴨田委員長 川端君。
  71. 川端文夫

    ○川端委員 先月の二十日の日に、田中通産大臣とも質疑をいたしまして、かなり歯切れのいい御答弁をいただいて、私が聞かぬでもいいくらいとうとうとお答えになっていたと思うのですが、けさからの答弁を聞いておりますと、あっちに行ったりこっちに行ったりはなはだあいまいで、何とかして今回はほおかぶりで通したいという、何か通産大臣が人変わりされたのじゃないかという印象を受けてならないのです。  そこで、たとえば今度の繊維問題の日米交渉の問題は、単に日本だけではない、世界各国にも影響があると言いながら、片方においては、日米間の意思疎通が欠けておったから、意思疎通を十分にすれば日米間の経済関係は円満に解決されるともおっしゃっておる。こういうところに、何かアメリカ側に立ってわれわれを説得しようという努力のほうが多いように見えるのだが、田中大臣のその心の変わり方の中に一番何がポイントであるかということをまずもって明らかにしていただきたいと思います。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 私は日米問題に対して基本的に考えは変わっておりません。しかも国際的に自由貿易論者であり、拡大基調を堅持すべき論者でもございますし、しかも、一九四五年、第二次大戦終幕以後に世界の平和維持につくられた機構は維持し拡大していく思想の持ち主であるということに対してはもう全く変わっておりません。しかしなぜこの繊維問題に対して変わっておるのかというのは、私の気持ちが変わってきたというよりも、前提となる事態が変わってきておるということでございます。ですからこれは、アメリカ側が八月十五日に新政策を出しましてから事態は非常に具体的になってき、タイムリミットを置いて交渉しなければならない、結論を出さなければならないということになっておって、基本的な思想は変わっておらないにしても、具体的な問題には何らか対応策を出さざるを得ない、こういう事態になっておるということでございます。その最も明らかなものが、繊維政府間協定ができない場合は十月十五日から右の案によって一方的に規制を実施します、そんなことできるものか、こういう議論がありましょう。私も当然考えたのです。考えたのですが、もうその前段として課徴金をやっておるのです。課徴金に対してはイギリスが二年、カナダが一年だからアメリカは半年だろう、こう言うと、カナダドルで一年、ポンドで二年もやったのだから、キーカレンシーであるドルなら二年や三年はというふうに、全く事態が変わっておるという問題、それを前提にして、もう十月十五日という期限づきでアメリカの意思がはっきり通告をされ、それをそのまま推移させると業界は大混乱になる。それはもうわれわれは貿管令ではできませんと言っておるが、どんどん積み込むことになると思います。積み込めばどうなるか。向こうの埠頭でもってずっと野積みになる。野積みになっておって、通関の職員をふやすのですか、ふやしません、こう言っておるのだから、そうすれば当然もう大混乱が続くであろうということは、それはどう考えてもそうなんです。そうなれば、それを避けるためにどういうことをするかということを一つずつ具体的に詰めざるを得ないのであります。私は、そういう意味で非常に深刻な気持ちで毎日情報を収集したり接触を保ったりしておるわけでございまして、私の思想は、この委員会で、この前述べたとおり、何ら変わっておりません。そこだけは申し上げておきます。
  73. 川端文夫

    ○川端委員 心情と現実は違っておる、このようにお答えになっておるわけですけれども、しかしながら、そのアメリカ繊維問題に対するいろいろな問題の出し方に対しては、新聞等でわれわれも知らぬわけではございません。しかしながら、先ほどからお話がありますメキシコなりカナダなり、それらの国々の影響も大きいし、欧州も大きい。さらに極東四カ国と申しますか、台湾、韓国、香港、日本を含めての極東四国の中に、接触はしているようでありますが、韓国はまだ明らかに情報が出ていないようであるし、香港も台湾も協定を十五日まできめるというような情報が出ていないのにかかわらず、日本が先ばしらざるを得ないその事情はどういうところにあるのか、もう一ぺん聞かしてもらいたいと思うのです。
  74. 田中角榮

    田中国務大臣 これは私が信ずべき筋から得た情報でございますから、国会の御発言でございますので申し上げたいと思います。  台湾は、期間は一九七一年十月より五年間、一九七〇年四月から一九七一年三月までを基準年次とする、対象範囲は毛、化合繊三グループ、織物、衣類その他でございます。特定品目は化合繊十、毛二、計十二品目、伸び率は化合繊平均七.五%、毛は一%でございます。シフト率は、グループ間一〇ないし五%、カテゴリー間は五%、これが原案として最終的にイニシアルが行なわれたものでございます。  香港も大体同断でございまして、十月より五年間、基準年次は同一でございます。それから、化合繊等三グループであることも同じでございます。特定品目の化合繊十、毛二、計十二品目であることも事実でございます。この伸び率は平均七%でございます。シフト率に対しては、いまちょっと最終的な詰めがあるということは、これは品目別な問題がありますので……。ただし綿より一〇%移動可能とするようにいま交渉中でございますということが、いま加藤さんから得た情報でございまして、私が確かめた情報ではないが、加藤さんからは事前にそういうことの注意を受けておりますので、これも日米間で折衝する場合には非常に重要な示唆である、こう思って私もここに記録をいたしております。  それから韓国、これは最終的に妥結に至っておりませんが、いま向こうから出しておる数字は、伸び率は、年次別に一一、一〇、九、八、七%というふうに下げてくれないかという案、一〇、一〇、一〇、四・五、三・五でいってはどうかというようないろいろな案が出ておりますが、十五日まで、政府間協定を行なうという姿勢で詰めておるということだけは、これはもう、どうにも私はそう判断せざるを得ないような状態でございます。  ですから、一番大きな日本、ベースの違うこれら三国と日本との比較でございますから、日本が先というのがほんとうのようでございますが、日本は、世界各国の情勢を見なければということで、相当慎重に対処しておるつもりでございます。
  75. 川端文夫

    ○川端委員 しかし、伝えられている台湾、香港等のいま答弁がありました内容と、日本に押しつけているというか、強圧しているというか、アメリカ側から出されている案というものにかなりの開きがあるように思うのですが、これらに対しては、大臣は自信を持って、台湾なり香港と同様なものでなければきめない、こういうことをここで言い切れますか、どうでしょうか。
  76. 田中角榮

    田中国務大臣 非常にむずかしい御質問でございますし、なかなか微妙な問題でございます。しかし日本は、業者の利益というよりも、産業の利益、日本の国益を守るために私は全力投球をやろう、もうなりふりかまわずということを考えておるわけでございますから、そういう意味ではひとつ全力投球を続けようということでございます。しかし、香港や台湾と同じでなければならないかというと、これは香港と台湾の数字がもう違っておりますように、基本的なベースが違いますし、いろいろ対米輸出の状況そのものが違うのでございます。そういう意味で私は同じようにということは言えないと思いますが、しかし対米輸出実態を見るときに、皆さんのような専門家が見ると大体うまい状態になったなというぐらいのところまではどうしても持っていかなければ、これは大体日本繊維業界そのものも承知をしないし、日米間の友好をつなぐゆえんではない、こういうところにウエートを置いておるわけでございます。とにかく、あの伝えられるケネディ案なるものをやられれば一切とまってしまうということでございますし、通産省輸出認証したものが出せなくなったら、これは全部裁判を受けて立たなければいかぬ。こんなことを通産大臣がやるわけがないのです。そういうところに非常に通産大臣の苦衷がある。自分で輸出認証しておって、アメリカが一方規制したから全部だめなんだ、そんなことが一体できるのかどうかという問題もありまして、そういうところが非常に今度、やむを得ざればというところは、そういう問題にもぶつかっておるということを理解していただきたい。
  77. 川端文夫

    ○川端委員 角度を変えてお尋ねしてみたいのですが、アメリカがこのように繊維問題に非常な強力な力をいま用いておることは、伝えられていることはわからぬわけじゃないけれども、そのもとになっておるものは、アメリカの八月十五日の新経済政策から来る、やはりアメリカの経済問題から出発していると言っていいのではないか。ニクソンの選挙対策だという見方を伝えられてはおりますけれども、何ぼ選挙対策をやりたくても、やはりそうはいかない。経済全体のワクの中で調和のとれた、アメリカとしても国際間の信頼というもの、信用を考えれば単独にはできる問題ではなかろうと思う。そうであるとすれば、経済の一環である、いわゆるドルの信用失墜の回復への道の一つであると考えた場合においても、私どもの聞いておる範囲においては、アメリカ経済がこの問題で立ち直れるという条件にないという情報があるわけですから、これは単なる意思疎通をはかっていく程度で今後、先ほどからも同僚からの質問の中にありましたが、再びこれと似たような問題が出ないという約束が、大臣、できるかどうか。私は、アメリカの経済が本質的な立ち直りをするために、大きなアメリカとしての反省の道もあったはずだし、あるんだけれども、それらはそれにしておいて、他の国に対しての大きな要求を出してきているところに、二年なり三年後に、今後再びまたアメリカの経済危機が来ないとだれが保証できるのか、こうこうことを考えたときに、こういう機会にアメリカに経済再建への問題をも含めて考えてもらうというためには、強い態度こそほんとうの隣人、親善友好の立場にもなるのではないか、こうも考えて先ほどから申し上げておるわけですが、大臣は、これこれならば繊維の問題を解決すればだいじょうぶだという自信をお持ちの上での今度の腹の変え方をされたのかどうか、これをもう一つ承っておきたいと思います。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどからのいろいろな御質問の中にもございました選挙対策とか密約とかということばがございましたが、いまのあなたの御質問で非常に明確になると思いますが、私は、そんな狭義のものではないというふうに理解すべきだと思います。アメリカ経済が課徴金制度をとったり、そして平価の変更を求めたり、それから一方的規制を行ないますよと言わざるを得ないような状態になっておる、そこからやはり出ておるのである。選挙であれば、減税をするとか、いいことばかり言うはずでございますが、港湾ストに対してはタフト・ハートレー法を発動しておる、それから賃金はストップしておる。こういうことから考えますと、八月十五日に非常な事態を迎えた、やはりこういう観念が先行しておるものだと私は理解いたします。かって世界の六五%、七〇%の金を保有したことがあるというアメリカが、第二次戦後二十六年間を経たことは事実でございますし、いろいろな支出に応じたこともまた歴史的に明らかでございますが、金の保有高が百億ドルを割った、世界に公表するものが百工億ドルであるというような事実、数十年ぶりでアメリカ貿易収支さえ逆調になった、こういう事実は、これが前提にならなければ、私は、こんな政策をやるはずはない、こう思います。ですから、日米間での話のときでも、第一次戦争後に国際連盟をつくりながらみずからは国際連盟に入らず、アメリカモンローに閉じこもって利益追求を行なったために第二次戦争が巻き起ったじゃないか、まさかアメリカは再びアメリカモンローに閉じこもる意思はないでしょうな、というところまで私は友人として言っておるのです。非常に強いことを言っておるのです。アメリカはリーダーシップをとって今日まで二十五年間、四分の一世紀世界の平和に貢献してきたんです。だからドルの価値を維持しなければならない。キーカレンシーとしてのドルを守ろうということを共通の利益としてわれわれも同感の意を表するが、まさか自分だけで孤立して鎖国経済をやろうというんじゃないでしょうな、世界を縮小均衡に持っていくつもりはないのでしょうなと言ったら、それは拡大基調を維持するためにドルの価値を維持したいのだ、アメリカがしっかりしなければならないのです、こういうことを言っていますから、私はその意欲がなければこんな政策は絶対に出てこない、こういうふうに思います。そういう意味から考えると、繊維だけで済むのかどうかということですが、(「済みません」と呼ぶ者あり)済みませんか、それは済まないと困るのです。困るのですが、今度私が求めてきたのは、国外に求めることよりも国内に求めなさい、六百億ドルないし七百億ドルの海外投資があるのですから、これを二割、二〇%引き揚げることによって困る国もあります、一部においてはアメリカ資本の進出に対して異議を申し述べている国もあるのですから、そういうところは日本お互いに石油などは共同経営してもいいから、それでそういうものを引き揚げて、もう少し国内に産業政策をやらるべきである、私は友人としてそういうところまで述べてきたのであって、対外的に矢つぎばやに繊維の次には電算機、電算機の次には自動車があり、電卓でございますとやられてきたならば困るのであって、今度は私は、少なくとも最終的に日米政府間協定をつくらざるを得ないような状態になっても、次には来ないのだろうなというようなことを詰めて、ここで何らかの発言ができるようでないとそれは私は国会に対する責任を果たすゆえんでもないということで、ほんとうに深刻な立場に立っておるということだけ御理解いただきたい。
  79. 川端文夫

    ○川端委員 なかなか雄弁なものだから、時間がもう来てしまって困っているのですが、そういう意味において答弁をいただく時間がないかもしらぬが、二、三私が気づいていることを申し上げながら、最終的な答弁を願いたいと思う。  一つは、先ほどからも話し合って、一方的に自主規制をやったという業界に対しての発言は、その後の質疑の中である程度修正されておりますから、これはきのうの発表、宣言によっても、業界政府及び自民党の強い要請によって自主規制をやったのだ、こういうことでありますが、自主規制が七月に行なわれて今日に至るわずかの二カ月そこそこの間に、もう六十件も倒産し、そのために失業者がふえて、福井であるとかあるいは知多等においては労働問題すら起きている。したがって、今後の対策には労働問題を無視してはならないし、私は、この問題を通じてやはり当時の石炭の問題に取り組んだと同じような重大な問題として取り組まざるを得ないのではないかという考え方を聞きたかったわけです。この点は十分要望として、いま業界救済にいろいろ考えられている問題の中にはそういう労働問題、労働対策がないということに対しては、考えていただきたいという要望を申し上げます。  最後に、先ほどからるる言われておったわけでありますが、いわゆる国会にかけるかけぬかという技術的な問題の前に、田中通産大臣はやはり五年とか三年とか法律の一つ政策技術にこだわらないで、少なくとも国民の総意として国会の本会議における決議もあるのだし、いわゆる繊維の一方的な制限協定はなすべきではないという決議もあるわけですから、腹をきめられた場合においては国会において皆さんの前で十分審議をいただきますということをはっきりここで明らかにできるかどうかということを最後の質問にして、私の質問を終わりたいと思うわけですから、はっきりした態度を明らかにしていただきたいと思います。
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 繊維問題で労働問題、労働対策等、施策の上で考究すべきであることは当然のことでございます。  それからあとの問題でございますが、これは私が先ほどから申し上げておりますように、国会の議決を必要とする案件として国会に提案すべきものかどうかということは、内容にもよりますし、また三権の権限にもよることでございますから、これは政府として法律違反を行なうようなことはいたしません。  それからもう一つは、議決を求める案件でな、行政協定のように政府間でもってできるものであっても、これが内容等に対しては国会で十分御議論をいただけるように、私はいつでもこの内容等に対しては申し上げますし、国会の審議と同じように国会ではあらゆる御発言を賜わって、政府施策を行なうことに遺憾なきを期せるように私はいつでも御質問にお答えいたしますし、内容的にも国会には何でも御報告を申し上げたい、こういうことでございます。ただ、議決を必要とする案件になるかどうかということは、これは法律問題でございまして、私がここでにわかにお答えできないということはひとつ理解していただきたい。
  81. 川端文夫

    ○川端委員 一言だけ。答弁は十分ではございません。したがって、私どもはまだ流動的と判断して、十分見守るというか監視することをここで申し上げて、十分決意を新たにしてがんばっていただきたいと存じます。  質問を終わります。
  82. 鴨田宗一

    鴨田委員長 横山利秋君。
  83. 横山利秋

    ○横山委員 大臣朝からお疲れでございますが、いままで繊維関係を中心にして質疑応答がなされてきましたが、私は、ドル・ショック下における一般的な中小企業の問題について、短い時間ではありますが、大臣の意見をただしたいと思うのであります。  承れば、九月二十三日に閣議決定をもって当面の緊急中小企業対策をおきめになり、それが次の通常国会の中小企業対策の土台になるようであります。話を聞きますと、その対策については、主として金融上、税制上の二点が柱となり、それを補強する財政上の措置になっておるように思います。私が思いますことは、この対策が、大きな影響をこうむることとなる輸出関連の中小企業に対しと限定がされておることであります。今日、輸出に関連するといなとにかかわらず、全国中小企業は非常に不安にさらされており、そして輸出に関連あるといなとにかかわらず、甚大な影響を受けています。たとえば工作機メーカー関係を調べてみますと、対前年比、作業工具では一五%から二五%、工作機メーカは五〇%、準工作機メーカーは四〇%というような数字が出ています。かりに輸出関連産業という、関連の中小企業という範囲をかなり手広くやりましても、この範疇から漏れる圧倒的な中小企業につきましては何らの考慮がされないのであります。ですから私は、この閣議決定の内容についても問題を若干持っておるのでありますが、少なくとも閣議決定の恩恵を受けない一般の中小企業対策はどうなさるおつもりであるか、まず伺いたいと思います。
  84. 高橋淑郎

    高橋説明員 ようやく不況下から脱しようとしているやさきにニクソン声明が出されて、それ以後一連の措置がとられてきて、まあ出ばなをくじかれたということで、一般の中小企業の受ける影響というものははなはだ憂慮されるべきものがございます。しかし当面一番懸念されますことは、中小企業製品が主体となりまして全国各地にもろもろの業種について産地を形成いたしておりますこの産地において問題が起こるということは、社会的な不安を巻き起こすということで、とにかくこの輸出関連中小企業を主体として、また輸出にウエートの高い業種をとらまえて対策を講ずるということが骨子になりまして閣議決定がなされたわけでございまして、こういう一番むずかしいところにまずてこ入れをするということが、間接的には一般中小企業に対する影響の波及を少なくするということにもなりますし、また、一般中小企業に対する対策は従来からのものをさらに中身を充実させていかなければならないということで、これは予算上の措置その他、来年度において新政策として取り上げていただきたいということで考えておるわけでございます。
  85. 横山利秋

    ○横山委員 要するに、いま喫緊の問題はやるけれども、それをやることによって他の一般中小企業にも恩恵を及ぼす、あとのことについてはまだ別に固まっていない、こういうふうに承りました。私は、この中小企業政策をとるにあたってそういう格差をつけるべき状態ではない、こういうことを痛感いたしますがゆえに、そこで政府中小企業政策は非常に誤りをおかしているのではないかということを考えます。  それから、ずっと町を回りまして中小企業の意見を聞きますと、一番言いたいことは、政府中小企業の一番痛いところに手を触れてくれない、こういう言い分が非常に多いのであります。一番痛いところというとどういうことかといいますと、たとえば担保のないものはどうしてくれる。これは信用補完の制度があるにはありますよ。承知はいたしておりますが、それが必ずしも十分ではない。それから融資の場合には、結局資産もあり、比較的営業成績もよし、収益もある、返済能力もある、そういうところが優先される。これは金融のベースでありますからやむを得ないといたしましても、政府金融機関のみならず一般の金融機関でも、一番助けなければならないボーダーラインに力点が置かれてない。これが第二番目です。第三番目は零細なところが恩恵が受けられない。第四番目にはむしろ融資よりも仕事がほしいのだ、仕事がないのだ。仕事をやるという施策が何にもない。それから第五番目には、税金を繰り延べしてやる、こう言う。しかし、それは前年度及び前々年度において黒字があったところが救済されるのであって、前年度も前々年度も赤字のところは何の恩恵もない。それからその次に、新規に借りることよりもいままで借りた金の返済を延ばしてくれ、このほうが重要だという。今度の閣議決定では、近代化資金についてはそれが取り入れられています。けれども、一般的にはそれが取り入れられてないわけですね。それから、確かに政府関係三機関については考えられておるけれども、それは全体の中小企業金融の一割にしかすぎないのですね。あとの町の民間金融機関に対してその措置が及んではいないではないかということ。それから、町の中小金融機関、これが安い金利で金を借りられるように、金利が下げられるように政府措置をしたか、こういうことなんです。たとえば信用金庫だとか信用組合だとかそういうようなところに、金利が下げられるような公定歩合の安い金利の金が回っていくようにしてやるのか、こういうことなんです。その次には、団結しろ、組織を持てと言いながら、国民金融公庫や中小企業金融国庫よりも商工中金のほうが金利が高いとはどういうわけだ、こういう声ですね。中小企業がやってほしいという一番痛いところ、一番傷口のところに政府は手を触れない。もう少し上のランクのところへ政策が全部当てられておる。こういう点をこもごも私は伺いました。これは非常に政府にとって反省すべき諸点ではないか、私はこう考えるのですが、いかがですか。一ぺん大臣にその感触をちょっと聞きたいな。長官はあとでもいいから……。
  86. 田中角榮

    田中国務大臣 現実的な問題として、あなたからいま指摘をされたような問題がたくさん存在いたしますことを私も理解いたします。そこが日本中小企業、零細企業のむずかしさであり特性でもあります。特性でもありますが、ほんとにいま表に出ておる政策以外に、もっと具体的に掘り下げて政策を実行しなければならない面があります。  世の中は、一つ申し上げますと、金はいままでにないほど政府は散超であります。同時に、政府がこれから七千億、八千億、一兆円近い国債さえも、二つ返事で引き受けましょうというような状態でございます。また一部には、第五次の公定歩合の引き下げが行なわれるんじゃないかとさえ報道せられております。コール市場も非常に下がっておる。にもかかわらず中小企業が金繰りに困るというのはどういうことか。これは担保余力の問題でございます。信用補完の問題に対して、もっと抜本的なものの考え方をしないとだめになる、こういうことが一つございます。それからもう一つは、生産が非常に上がっておるにもかかわらず下請代金の支払いは延びておるという問題もございます。そういう目につかないところ、実際は一番息の根がとまりそうなところでございますから、そういうものに政策の焦点を当てることが必要であるということは事実でございます。  もう一つは、まあ当面する対策と恒久対策は分けなければいかぬと思うのです。やはり自然発生、現状是認という思想から脱却できないで、全部が全部を中小企業から中企業へ、大企業へレベルアップしようということでやっていると、応急対策が過ぐるときにはまた規模が拡大をして、やはり日本の国民総生産の伸び率を平均幾らにするのか、その中で中小企業だけはもう少し率を上げて合理化をはかるとか、そういうことをやらないと、何年後には何年後にはということで、同じことを繰り返し悪循環を続けておる。それで、大きくなっただけに、今度は中小企業が破滅的な状態になると、小さければ立ち上がれたのに、うちも残ったのに、大きくしたために田地田畑も全部なくなってしまうというような非常にむずかしい問題も起こっておるわけでございますから、やはり長期的なものと当面する対策とを分けて、実効のあがるような政策を別な角度からも見るべきだろうというふうに思います。  いま、制限の問題その他輸出に関連をして政策が行なわれておりますし、これからは臨時国会もございますし、また四十七年度予算編成期にも入るわけでございますから、具体的な問題として、中小企業庁だけではなく通産省全体をひとつ督励をしまして、新政策の立案を考えたいと思います。
  87. 横山利秋

    ○横山委員 長官から御答弁があるとは思いますけれども、短い時間でありますので私の言いたいところを言っておきますが、沖繩国会ではあらためて具体的に論じたいと思います。  それで大臣にもう一つ認識をしてほしいのでありますが、歴代の大臣が、こういう国会におきましては中小企業に非常に好意のある態度なんであります。けれども現実、政策に行なわれる場合においては決してそうではないのです。気持ちと実際とは違うのであります。  私はこの問題でこの際特に指摘をしておきたいことが一つございますが、それは四十一年に、中小企業の官公需の確保に関する法律というのが与野党満場一致、議員提案で通過をいたしました。それを四十三年の三月、予算委員会で私が総理大臣質問をしたのでありますが、そのとき私が指摘しましたのは、まことに奇妙なことに、中小企業に官公需を確保させるという法律が通る前よりも通ったあとのほうが中小企業の官公需が減ったという事実であります。これは数字をもって指摘し、当時の中小企業庁長官も遺憾ながらそのとおりだと言いました。そこで佐藤内閣総理大臣が、「横山君からおしかりを受けましたが」「各省庁に対しまして十分趣旨が徹底するようにいたしたいと思います。」と約束をし、翌日、総理大臣の厳命をもって各省の担当官が中小企業庁を中心にして集まり、そうして予算委員会の総理大臣のお声がかりということでこれは実行をしたわけです。しかるにかかわらず、以来四十五年に至るも、年々歳々この法律が通ります以前のパーセンテージよりも落ちておるわけであります。これは通産大臣の所管なんです。この法律は。今回公共事業の繰り上げ発注だとか、来年度予算ではこの問題について相当公共投資が多くなるといわれておる。この法律は一体どうなるのか、これはまさに死文である。きのうも実情を聞くために中小企業庁から来てもらいまして、一体何が問題であるかということを伺いました。承るところによりますと、本年二カ月にわたって、この法律を円滑に実施するために、中小企業庁では各省の担当官と相談をされたそうであります。ところが、私の調査によりますと、四十五年、去年は目標が九千億くらいでありました。官公需を中小企業に確保するのに九千億くらいだったそうであります。これは中小企業白書に載っております。ところが、実績がたしか七千百億ぐらいです。お声がかりでやかましく言っても、九千億の目標を立てて、そうして実績はたしか七千百億ぐらい。これではとてもこの法律の運用は全うできない。だから、この際私は、きょうは簡単にいたしまして、あとで念押しの方法をとるわけですが、これではどんなに大臣中小企業に仕事を回そう、いろいろなことをやろうといっても、どこかでたがが締まっていないと痛感をするわけであります。大臣の御意見を伺いたい。
  88. 田中角榮

    田中国務大臣 中小企業に対する中小企業向け官公需契約を促進しなければならない、これは毎々申しておるわけでございますし、御質問をいただいておるわけでございますが、確かに三十七年三二・九%、四十一年二五・九%、四十二年天・〇%、四十四年二七・四%、四十五年二五・五%これは数字的に見ますと、確かに下がっております。これはどういうことなんだと聞いてみましたところ、官公需は総額としては伸びております、伸びておりますが、この中に占める中小企業が担当できる部門というものの伸び、それは事務費の中に含まれるもの、御承知のように、印刷とかその他中小企業が一番いいというものでございますが、事務費とか印刷だとかそういうものの伸び率よりも、中小企業以外が担当する部門の伸び率のほうが金額的に大きくなる、そういうことでこういうふうに伸びてないのです、こういうことでございますが、これは一ぺん官公需の内訳を全部つくってみます。これは何も大企業にやろうなんという気持ちは一つもないのです。ないのですが、国費支弁に基づく支出というものは非常に分極されておりますし、統計的なものしか出てこないというところにも問題があるのだと思います。私たちはそういう意味で、調達庁でもつくって、アメリカのように一括購入したらどうかということさえも考えたことがあるわけでございますが、なかなか各省縦割りシステムであって、そこらがうまくいかないというところもあるようでございますが、これはこのまま指摘を受ける問題でありますから、きょうの質問を契機にひとつ内容を、これだけの数字が出ているわけですから、この内訳は全部できておるはずであります。この内訳をつくって勉強をいたします。
  89. 横山利秋

    ○横山委員 その整理ができましたあとで、私も行政上並びに立法上について御意見を申し上げたいと存じますから、きょうのこの質問だけで打ち切りにしないで、政府側としては十分ひとつこの問題の成果の上がるように御努力をお願いいたします。  次は、中小企業のドル・ショックの問題で各地を回ってみますと、結局、為替差損を補償してもらいたい、こういう要求が圧倒的であります。大臣は、この間為替差損の問題についてはまあまああとのことにして、さしあたりと言ってお逃げになりました。為替差損もさることながら、私が会いました中小企業で痛切にこういう訴えをしております。それは変動為替相場制になる前、自分が銀行へ行って——富士銀行なんであります——銀行でドルを交換してもらいたいと言っても、どうしてもうんと言わなかった。大商社だけ交換をして、われわれ中小企業には交換をしなかった。これにはいろいろな経緯や内容がありますが、省略をいたします。  第二番目の訴えは、こういうことなんです。大商社は一ドル三百六十円で交換してもらった。しかし、その商社メーカー、その下請、そういうところには三百六十円の交換レートで支払いをしてくれない、こう言う。これはその実績を私は持っておるわけでありますが、明らかに為替差益はばく大なものであります。だから、私は為替差損の補償と為替差益の問題とは一体の問題である、税制上においてもこれを捕捉しなければならぬと思います。いずれにいたしましても、中小企業為替差損について、この間お逃げになりましたが、この際明確にしてほしい。  それからもう一つは、いま言ったように、一ドル三百六十円のレートで為銀と交換しながら、その品物のメーカー、そうしてその下請に三百六十円の交換比率で支払わないというのは言語道断ではないか、こういう点についてどうお考えになるか。
  90. 田中角榮

    田中国務大臣 為替差損の問題は、将来の問題としてやはり国会でもって御審議をいただくことになると思います。当面する問題は、大蔵省が来ておりますからいずれお答えをいたしますが、大きな問題として、為替差損を、どういうふうな対策をして救済するか、これは税制上の問題以外にないと思います。為替差損をこまかく計算をして、何億何千何百何十何万というふうに積算することは事実上むずかしい問題でありまして、これは変動相場制がどうなるかといういろいろな問題がございますから、これはやはり三年とか五年とかいう会計経理の上で救済措置が税制上とられるという問題が一番合理的であろう、私はいまそのように考えております。  それで、いまの最後に述べられた、三百六十円の代金をどうして払わないかというような問題ももう少しあとから具体的な問題として御指摘になればお答えできると思いますが、これはよくそのケースを存じませんので、それらの問題に対してもう少しはっきりすればお答えをいたしたいと思います。  それで、当面する問題は、大蔵省から専門的にお答えいたします。
  91. 藤岡真佐夫

    ○藤岡説明員 ただいま御指摘の中小企業のドルを買ってくれないというお話は、私思いますのに、多分、八月十六日にニクソン・ショックがございまして、御存じのように、その日、それから翌日と市場で相当な額のドルの売りがあったわけでございます。そこで、十九日に外貨の借り入れをストップするとか、あるいは円転換規制というのをやっておりますが、それを厳重に守ってもらうというふうな指示を為銀にしたわけであります。これを受けまして、これはたいへんだということで多少戸惑いまして、その日の午後あるいはその翌日あたり、一部の銀行におきましては、手形の買い取りをしなかったとか、あるいはその手形の買い取りをするにしても金額の制限をつけるというような現象があったのじゃないかと思いますが、ただ、その件につきましては、その後二、三日いたしまして、通常どおりに戻っておりまして、手形の買い取りを拒否するということはいまないはずでございます。  それからなお、中小企業だけ三百六十円でないというふうなことはございませんので、これはそのときには、まだ変動相場制に移る前でございますので、三百六十円を基準といたしまして、当時の変動幅、つまり〇・七五%になりますけれども、その範囲内で、大企業中小企業の差別なく、同じレートによりまして、各行ともでございますが、買い取りをしたという状況でございます。
  92. 横山利秋

    ○横山委員 田中大臣がおっしゃったように、ほんとうはこれは具体的な事実を明らかにしなければなりません。しかし、それには特定の銀行、特定の中小企業に波及効果が多いものですから、特にまた、いま時間がございませんので、これは省略をいたします。いたしますが、必要があれば、別途特定の銀行の名前をあげて政府に善処を迫りたいと思います。  最後に、長官にお伺いしたいのでありますが、この緊急中小企業対策というのは、あくまでやはり法律上規定を受けた中小企業であることは言うまでもないことだと思うのであります。今日、中小企業基本法並びに協同組合法による中小企業ワクがあります。けれども、今回のドル・ショックにおける中小企業の諸問題というものはとてもその範疇だけではうまくいかないということが痛感をされるわけでありますが、この緊急措置は、いわゆる法定の中小企業の範囲内にとどめられるものであるかどうか、弾力性を持つものであるかどうか、また基本的に法定の中小企業ワクをこの際変更する法律改正をする用意があるかどうかその点を伺います。
  93. 高橋淑郎

    高橋説明員 今回の閣議決定に基づく当面の緊急措置は、現在の基本法の定義による中小企業の範囲でございます。  それから第二の点は、先ほど大臣からもお話がございましたように大きな問題ではありますが、この機会に中小企業政策審議会の場等において、できるだけ早い機会に検討を開始していただきたいということで目下その準備を進めております。その場を通じて、あるいはその他の場を通じて十分に時間をかけて検討さしていただきたいと思います。
  94. 横山利秋

    ○横山委員 以上でございますが、むしろ御質問というよりは問題の指摘をしたということにとどめるわけでございます。適当な機会にこの問題の詰めをいたしたい。  以上です。
  95. 鴨田宗一

  96. 相沢武彦

    相沢委員 私は、現在閉山解雇の通知を受けております北海道の住友奔別、歌志内両鉱の緊急問題につきまして質問したいと思います。大臣、退席の予定の時間を非常にオーバーしておりますので、簡潔に項目を四つあげましてお尋ねしますので、簡単にお答えいただきたいと思います。  この事態を重視しまして、五日の夜に、衆議院石特委から通産大臣に対しまして、住友グループに対して再考を促すなどの事態の解決をはかるために緊急、適切な措置をとるように最後の努力を払うよう強い要請が出されておりますけれども、その後大臣としてどのような努力をなされたのか、まず明らかにしていただきたい。  それから、昨日、参議院の商工委員会におきます大臣の御答弁では、諸情勢からいって、閉山やむなしというお答えがあったようであります。しかし、両鉱の閉山に伴う地域社会に及ぼす影響は非常に甚大なものがございますし、また特に奔別鉱のように埋蔵量一億トン、しかもまた百億円からの政府の資金をつぎ込んでりっぱな立て坑がすでに完備し、坑道も整備されて、あと来年四月になれば払いの坑道もできましてどんどん有望な原料炭が出される。あと資金的にも数十億円の見通しさえつくならば、非常な大事な資源が活用されるということで、これをいたずらにこれまでの法律のたてまえから水没させてしまうということはまことに資源的にいってもったいないということから考えまして、質問の第二点ですが、この際政府は法律改正してもこの山を他の企業へ移管することによって新発足させる、あるいに合理化事業団の管理のもとにおいて保坑にする、あるいに現在問題になっております深部開発に伴う高温対策等の今後のいろいろなデータをとるための試験坑にしていく、こういったことをひとつ前向きに取り組んでいくべきではないか、こう考えますが、その点に対する御見解。  第三点としましては、今後住友石炭としては赤平一山に生産と再建を集中するといっておりますけれども、現状を考えますと非常にむずかしい条件下に置かれております。特に住友においては、新炭鉱発足してわずか二十日目で閉山通告を受けるという事態で、地元としては裏切られた、だまされたという非常な怒りに燃えている、また、政治に対する不信感が渦巻いておりますので、この際、この住友生産再建に対しまして、政府としてどれだけだいじょうぶだという保証、裏づけがあるのか、この点に対する明確なお答えをいただきたいと思うのです。
  97. 田中角榮

    田中国務大臣 具体的な数字その他につきましては政府委員からお答えをさせますが、私も就任以後、石炭鉱山の問題、なかんずく住友三山の問題については手をかけたものでございます。最終的に調整を行なってさあスタートしたという翌日、歌志内鉱の爆発事故を起こしたということでございます。  その後も、北海道から石炭をとると、ほかの地域と違ってたいへんな地域的な影響がございます。もう一つは北海道電力と九州電力だけが余剰電力を幾らか持っておるという状態でございますが、その北海道電力は火力で石炭を大量にたいておるということで、これを急に閉山をしたような場合タンクローリーなんかが一体間に合うのかということで国鉄当局等の意見もただしましたが、重油に切りかえるといってもとても簡単に切りかえられるものではないという報告でございます。そういう意味でいろいろな面から住友三山、なかんずく住友の中で地方自治体として一番大きな影響力を持つ三笠の問題については、最後まで何とか努力をしてもらいたいということで、北海道庁、地元市町村、北海道電力、また住友関係企業等といろいろな意見調整をしてもらい、何とかこれをひとつ再建しようという考え方で進めておったわけでございます。結果的には住友は二山を閉山するということに、おとといかきのうなったようでございますが、私もただその報告だけを聞いておるのでございますし、一体それを赤平だけにして赤平がうまくやれるかというと、うまくやれるということでございます。そのうち、三笠を助ける場合どうするんだ、無理をすると赤平まで影響があるかも知れないというところもございますということで、私もいま繊維の問題その他でがたがたしておりますので、そのうちに勉強したいと思っておりますが、いまのところ、二万五千人も対象従業員がおるという重大な問題があまりいい方向に向いておらないということは遺憾でございます。私は、北海道自体の石炭そのものを一体どうするのか、すぐまた、住友三山ばかりじゃなくて、いまここで固有名詞をあげては悪いと思いますが、ほかにも来年になれば閉山やむを得ないんだというところもあるやに聞いております。それでは困るということで、ここで抜本的にひとつ検討しようと言っているやさき、二山の閉山通告を受けたようでございますが、まだ私はその状況をつまびらかにしておりませんので、こまかい問題、具体的な問題については政府委員からお答えをいたします。いずれ私もそれらの問題に対しては十分勉強してまいろうということでございます。
  98. 相沢武彦

    相沢委員 大臣はけっこうです。
  99. 莊清

    ○莊説明員 大臣の御答弁に若干補足をさせていただきます。  お尋ねのございました奔別炭鉱が閉山やむなしということにかりになった場合、試験炭坑あるいは保坑ということで前向きにつなぐことはどうかという点でございます。こういう御意見は実は地元の責任ある方々からも私ども伺っております。閉山のやむなきに至った場合考えられる次善の前向きの策として、私どもも何とかできないかという基本的な姿勢で、実は技術的な面あるいは試験的な面、保安の面あるいは法制的な面等から検討いたしました。またそういう措置をとりました場合に、これが問題になっております住友三山の今後の再建策、たとえば赤平鉱一山体制での再建というふうなことにどういう関係、影響があるかという点等も含めまして、慎重に検討いたしたわけでございます。いままでの私どもの検討の結果では、はなはだ申しわけないわけでございますけれども、非常に困難な問題も多くて、こういう方策に踏み切るということが非常に困難ではないかと考えておるわけでございます。たとえば、資金の面一つとりましても、全山保坑するというふうなことになりますと、年々保存だけでやはり十億を下らない金額がそのために新規に必要になりますほか、所要の人員に対する人件費の問題等直ちに発生するわけでございますし、どうしても一部水没その他の問題が避けられないと思いますので、今後これを再開していくという場合に、またそれの取り上げとか、補修という大きな問題にどう対処していくかという資金面、技術面の大きな問題があるわけでございます。  さらに、私ども現在の法制のもとで、非常に困難を感じます点を一つ申し上げますと、保坑するといたしますと、坑口をあけたままにしておき、かつ鉱業権も存置するということが当然基本前提になるわけでございますけれども、その場合には、奔別については、閉山交付金の交付という制度を動かすことが認められなくなるというふうな関係がございます。そういうことで、へたをすれば、結局住友三山全体の再建という観点から非常に困難な新しい問題もまた発生してまいる、いろいろ申し述べましたが、こういう事情等もございまして、いままでの検討の結果では、私どもも非常に残念に存じておりますけれども、これを具体的な施策として講ずるということは非常に困難であり、むずかしいというふうに実は考えておるわけでございます。  その場合に、赤平一山でほんとうにこういう状況のもとでやれるかというお尋ねでございましたが、正直申しまして、現在企業の中で、経営のほうと従業員のほうとで住友三山、基本的にどうするかという点について突っ込んだお話し合いの継続中でございまして、まだ結論に達していないというふうに私どもも承知しておる段階でございますし、企業からも、それでは赤平一山体制での合理化計画を承認してほしいというかっこうで正式に意思が表明されて手続がなされておるという段階でもございません。そういう段階でございますから、私ども、事務的に軽々しく赤平一山絶対だいじょうぶであるというふうなことをこういう責任ある場所で申し上げる立場にございませんけれども、私どものいままでの検討の結果といたしましては、赤平一山ということになりました場合に、他の二山から優秀な労働力が予定どおりに大量に確保できる、そして定着ができるということで出炭能率を計画どおりあげることができますならば、これは赤平一山であっても再建ができるのではないか、その見通しが非常にいいのではないかというふうに実は考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、この問題は正規の問題になりましたならば、石炭鉱業審議会の経理審査会でも十分御検討いただくことになりますが、審議会のほうで御決定がありましたならば、私どもとしては最大限の政府の援助助成というものをここに集中するということにぜひいたしたい、かように考えておる次第でございます。
  100. 相沢武彦

    相沢委員 最後に石炭当局に要望しておきたいのですが、これから北海道はもう間もなく雪が降ってくる状況で、もしやむなく閉山になるとすれば、炭鉱に働く人たちは、現行法律のもとでかなり手厚いいろいろな対策を講じられておりまして、今後またさらに一そう次の就職に対する問題とかいろいろと派生しますが、一番問題なのはその地域に残される中小商工業者でありまして、特に産炭地域対策の中で、この中小商工業者対策として事業税の免税とか私有財産の買い上げとか、あるいは融資対策というものの確立の点において、これまでの閉山対策より以上に前向きの、また現行法律以上に新しい対策を講ずるような点で検討してもらいたいということを要望しまして、だいぶ時間が過ぎましたので、質問を終わりたいと思います。
  101. 鴨田宗一

    鴨田委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十六分散会