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1971-07-23 第66回国会 衆議院 商工委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十六年七月十四日)(水曜日) (午前零時現在)における本委員は、次の通りであ る。    委員長 八田 貞義君    理事 浦野 幸男君 理事 鴨田 宗一君    理事 進藤 一馬君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君 理事 吉田 泰造君       石井  一君    稲村 利幸君       内田 常雄君    遠藤 三郎君       小川 平二君    大久保武雄君       大橋 武夫君    海部 俊樹君       神田  博君    北澤 直吉君      小宮山重四郎君    佐藤  恵君       坂本三十次君    始関 伊平君       藤本 孝雄君    前田 正男君       増岡 博之君    松永  光君       山田 久就君    石川 次夫君       岡田 利春君    加藤 清二君       中谷 鉄也君    松平 忠久君       横山 利秋君    相沢 武彦君       近江巳記夫君    松尾 信人君       麻生 良方君    川端 文夫君       米原  昶君 七月十四日  八田貞義委員長辞任につき、その補欠として  鴨田宗一君が議院において、委員長選任され  た。 ――――――――――――――――――――― 昭和四十六年七月二十三日(金曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 鴨田 宗一君   理事 浦野 幸男君 理事 小宮山重四郎君    理事 進藤 一馬君 理事 橋口  隆君    理事 武藤 嘉文君 理事 中村 重光君    理事 岡本 富夫君 理事 吉田 泰造君       稲村 利幸君    神田  博君       北澤 直吉君    坂本三十次君       始関 伊平君    塩崎  潤君       田中 榮一君    羽田野忠文君       前田 正男君    松永  光君       山田 久就君    石川 次夫君       加藤 清二君    松平 忠久君       近江巳記夫君    松尾 信人君       川端 文夫君  出席国務大臣         通商産業大臣  田中 角榮君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      木村 俊夫君  出席政府委員         経済企画政務次         官       木部 佳昭君         通商産業政務次         官      稻村佐近四郎君         通商産業政務次         官       林田悠紀夫君  委員外出席者         警察庁刑事局長 高松 敬治君         経済企画庁総合         開発局長    岡部  保君         法務省民事局第         三課長     枇杷田泰助君         大蔵大臣官房審         議官      松川 道哉君         国税庁直税部法         人税課長    垣水 孝一君         通商産業省通商         局次長     中村 俊夫君         通商産業省企業         局長      本田 早苗君         通商産業省重工         業局長     矢島 嗣郎君         通商産業省繊維         雑貨局長    楠岡  豪君         通商産業省鉱山         石炭局長    莊   清君         運輸省港湾局長 栗栖 義明君         運輸省港湾局管         理課長     満所 清吾君         建設省計画局宅         地部宅地政策課         長       関口  洋君         自治大臣官房参         事官      立田 清士君         参  考  人         (日本長期信用         銀行常務取締         役)      小田 豊次君         商工委員会調査         室長      藤沼 六郎君     ――――――――――――― 委員の異動 七月十五日  辞任         補欠選任   石井  一君     小平 久雄君   大橋 武夫君     羽田野忠文君   藤本 孝雄君     田中 榮一君 同月二十一日  辞任         補欠選任   小平 久雄君     塩崎  潤君 同月二十三日  理事鴨田宗一君同月十四日委員長就任につき、  その補欠として小宮山重四郎君が理事に当選し  た。     ――――――――――――― 七月十四日  兵器の輸出禁止に関する法律案伊藤惣助丸君  外一名提出、第六十三回国会衆法第二九号)  寡占事業者の供給する寡占商品価格等の規制  に関する法律案辻原弘市君外十名提出、第六  十五回国会衆法第一七号) 同月二十一日  中小企業振興対策推進に関する請願鈴木善  幸君紹介)(第一二三号)  山村開発促進のための法律制定に関する請願  (笹山茂太郎紹介)(第二四五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 七月二十一日  商店街振興組合法に基づく組合設立条件緩和  に関する陳情書  (第三二号)  中小企業金融緊急対策に関する陳情書  (第三三号)  商店街店舗近代化資金融資制度の創設に関する  陳情書  (第三四号)  中小企業設備近代化資金わく拡大等に関する  陳情書  (第三五号)  日ソ沿岸貿易振興に関する陳情書  (第六九号)  第四次資本自由化に関する陳情書  (第一一〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  小委員会設置に関する件  国政調査承認要求に関する件  参考人出頭要求に関する件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ――――◇―――――
  2. 鴨田宗一

    鴨田委員長 これより会議を開きます。  この際、一言ごあいさつ申し上げます。  このたび、はからずも商工委員長選任され、まことに光栄に存じております。  わが国経済発展はまことに目ざましく、かつ国際的な地位の向上は著しいものがあります。今後の産業経済政策はますます複雑多岐となりまして、本委員会の責務はまことに重大なるものがあろうと存じます。  幸いにいたしまして、練達たんのうなる委員各位の御協力によりまして重責を全うし、円満なる委員会運営を期してまいりたいと存じます。  何とぞよろしくお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————
  3. 鴨田宗一

    鴨田委員長 理事補欠選任についておはかりいたします。  私の委員長就任に伴い、理事が一名欠員となっております。  この際、理事補欠選任を行ないたいと存じますが、選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、委員長小宮山重四郎君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  5. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  すなわち、  通商産業基本施策に関する事項  経済総合計画に関する事項  公益事業に関する事項  鉱工業に関する事項  商業に関する事項  通商に関する事項  中小企業に関する事項  特許に関する事項  私的独占禁止及び公正取引に関する事項  鉱業と一般公益との調整等に関する事項の各事項につきまして、本会期中、国政に関する調査を行なうため、議長に対し承認要求を行なうこととし、その手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  手続をとらせますので、ちょっと速記を中止してください。   〔速記中止
  7. 鴨田宗一

    鴨田委員長 速記を始めてください。      ————◇—————
  8. 鴨田宗一

    鴨田委員長 この際、小委員会設置の件についておはかりいたします。  先ほどの理事会で御協議願いましたとおり、前国会同様、小委員十五名よりなるエネルギー・鉱物資源問題小委員会並びに流通問題小委員会をそれぞれ設置することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、小委員及び小委員長選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は追って指名いたします。  次に、小委員及び小委員長辞任補欠選任等に関しては、あらかじめ委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  11. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  12. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についておはかりいたします。  長崎県の工業用地問題等について調査をするため、日本長期信用銀行常務取締役小田豊次君を本日午後参考人として御出席を願うことにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  13. 鴨田宗一

    鴨田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  14. 鴨田宗一

    鴨田委員長 この際、田中通商産業大臣から、通商産業基本施策について所信を承ることにいたします。田中通商産業大臣
  15. 田中角榮

    田中国務大臣 今回の内閣改造に際しまして、通商産業大臣の任命を受けました田中角榮でございます。たいへん重大な時局に通商産業大臣就任をいたし、責任の重さを痛感しておる次第でございます。  この機会にこれからの通商産業行政の進め方につきまして所信一端を申し述べたいと存じます。  まず初めに、このたびの住友石炭鉱業株式会社北海道歌志内炭鉱においてガス突出事故の発生を見ましたことはまことに遺憾でございます。  政府といたしましては、従来から鉱山、とりわけ石炭鉱山については、本来災害の危険が多いことから、人命尊重を第一の理念として保安確保を最優先に考えてまいったところでございますが、今回の事故の教訓を生かし、再びこのような事故を繰り返さないよう全力を傾けて保安確保につとめてまいりたいと存ずる次第でございます。  これからの通商産業政策基本は、七〇年代における日本経済をめぐる内外の環境変化の中にありまして、国民の皆さまに喜ばれ、信頼されるものであるとともに、国際社会においても評価され、尊敬されるに足るものでなければならないと考えるわけでございます。  このような観点から、私は次に申し述べる諸点に重点を置いて施策を展開してまいりたいと存ずるのでございます。  まず第一に、対外面におきましては、わが国は、今後貿易、為替、資本自由化推進関税引き下げ対外経済協力拡充等経済国際化を一段と進めることが必要であると考えるのでございますが、私は、問題の生ずる事例には所要の調整措置を講じつつ、積極的にこの問題に取り組みたいと考えておるのでございます。  またわが国経済力は、いまや国際経済社会に大きな影響を及ぼすまでに発展拡大をしており、わが国経済運営上対外関係重要性は今後ますます高まるとともに、その扱いに慎重な配慮が必要となってきておるわけでございますが、中でもわが国対外関係基本である日米経済関係につきましては、国民理解支持のもとに、その改善全力をあげる所存でございます。  また、対中関係につきましては、ニクソン訪中決定という新たな事態をも念頭に置きまして、日中貿易の今後のあり方について検討を進めてまいる考えでございます。  第二に、七〇年代における日本経済は量から質への転換、つまり成長活用型経済への移行の時代でございますが、与えられた環境と人間の知的活動を十分に生かすべく、過去の重化学工業化の成果の上に、今後は知識集約型産業構造の実現をはかってまいる考えでございます。  第三に、公害問題につきましては、美しい国土、良好な生活環境確保するため、公害のない産業を目ざして国民理解支持のもとに産業政策を進めるとともに、特に産業立地政策につきましては、産業都市集中を排除して企業地方分散を進め、二次産業比率平準化をはかるため、各般措置を講ずる必要があると考えておるのでございます。  第四に、わが国経済発展基礎である資源問題につきましては、十年から十五年という長期的観点から各種エネルギー、資源について総合的な対策を講ずることが必要でありますし、外貨有効活用という意味からもこの際思い切った対策を打ち出したいと考えておるのでございます。  第五に、今日のような急激な変化に適応するため、努力をしております中小企業に対しては、より一そう積極的に支援してまいりたいと考えておるのでございます。  第六に、物価対策消費者保護安全対策につきましても、国民が豊かで快適な生活が送れますようきめこまかくできる限りの対策を講じていく考えでございます。  最後に、景気の問題について申し上げますと、私は、さき決定を見ました弾力条項発動のみによって冷え切った景気回復期待することは困難であると考えますので、さらに景気浮揚のために財政金融面における思い切った対策を講じ、社会資本充実民間設備投資活発化等を進めるよう努力してまいる考えでございます。  私は、以上のような方向で、今後の通商産業政策基礎を固め、国民に豊かで幸福な生活をもたらす七〇年代を建設するために最善を尽くしてまいる覚悟でございます。  なお、私は、去る三十年三月より同年十二月までの約九カ月間当委員会委員長、三十二年七月までの間当委員会委員をつとめたことがございます。かつての同僚の一人でございますので、何ぶん委員各位の深い御理解と御支援をお願いしまして、職責を全うできるようにいたしたいと考えるわけでございます。  以上をもって私の発言を終わります。(拍手
  16. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、木村経済企画庁長官から、経済総合計画について所信を承ることにいたします。木村経済企画庁長官
  17. 木村俊夫

    木村国務大臣 商工委員会が開かれるにあたりまして、所信一端を申し述べまして、委員各位の御鞭撻をお願いしたいと思います。  初めに、最近の経済状勢経済運営の態度について申し述べます。  わが国経済は、昨年後半以降景気後退局面に入り、いまだにこれを脱し切っておりません。  この間、昨年十月以降三次にわたる公定歩合の引き下げ中心として金融緩和措置が実施され、企業金融には緩和感が一段と広がっております。しかし、在庫調整がなお進行しており、また、従来成長をリードしてきた主要産業中心とする設備投資意欲はいまだ回復いたしておりません。また、個人消費輸出、さらに財政面からの支出等は堅調に推移しておりますが、総じて生産活動基調は弱く、卸売り物価の軟調、企業収益減少傾向が続いております。  こうした中で、国際収支面においては、このところ大幅な黒字が継続し、外貨準備高も急テンポで増大しております。これは、国内景気後退影響輸入が伸び悩み、輸出圧力が高まったこと、世界的インフレのもとで海外需要が強いこと、外人証券投資が増大したことなどの理由によるものであります。  このような経済情勢にかんがみ、当面の政策運営にあたりましては、景気動向を注視しつつ、財政金融政策機動的運用により、わが国経済を持続的な安定成長の路線に定着させるとともに、国際経済社会との調和を目ざした対外均衡の維持につとめてまいる所存であります。  すなわち、景気対策としては、政府はこれまでの金融緩和政策に加えて公共事業費の繰り上げ支出弾力条項発動を含む財政投融資追加等財政面からの措置をすでに実施いたしました。今後とも、これら諸施策の効果を見きわめつつ、機動的な政策運営をはかってまいる所存でございます。  国際収支関係におきましては、総合的な対外経済政策を積極的に推進することとし、すでに輸出金利引き上げ決定海外向け直接投資証券投資及び不動産投資自由化などの措置を講じてまいりました。今後とも、残存輸入制限撤廃資本自由化関税引き下げ経済協力拡充等を積極的に具体化してまいる所存でございます。  次に、物価問題について申し述べます。  最近の物価動向を見ますと、卸売り物価はほぼ安定的に推移いたしておりますが、消費者物価は依然として根強い上昇基調にございます。すなわち、本年に入りまして季節商品が全体としてやや落ちつきを示しているものの、サービス料金中小企業製品等の値上がりはなお顕著であり、消費者物価の先行きは必ずしも楽観を許さない情勢にございます。  特に、最近における物価上昇は、経済の急激な発展に伴う経済部門生産性上昇の格差に基因する面がきわめて大きいものと考えるものでございます。私は、今後、農業、中小企業流通サービス部門の低生産性分野につきましては、構造改善を積極的に推進してまいらなければならないと考えます。  また、輸入自由化関税率引き下げ等輸入政策は、これまでも物価対策の重要な柱の一つでありましたが、特に今日の国際収支状況は、これらの施策を意欲的にかつ積極的に展開していくことを可能にしているものであると考えます。したがいまして、政府といたしましては、過般決定を見ました八項目にわたる対外経済政策につきましては、物価対策観点からもこれらの輸入政策を思い切って推進していく考えでございます。  さらに、公共料金につきましては、今後ともその引き上げを極力抑制することを基本としながら、企業等合理化を進めますとともに、合理的な公共料金体系あり方についても十分検討を加えてまいりたいと思います。  私は、物価の安定を経済運営の最重点課題一つとして格段の努力を傾注してまいる決意でございます。国民各位におかれましても、十分な御理解と御協力とを寄せられるよう強く期待を申し上げる次第でございます。  次に、国民日常生活にとって重要な消費者行政につきましては、消費者保護基本法精神に従い、各般施策を鋭意進めてきておりますが、有害食品虚偽表示等事例はなお数多く見られる状況にあります。したがいまして、今後とも、有害食品防止、規格及び表示適正化、あるいは合理的な消費生活にとり必要な情報の提供等施策を強力に推進していく所存でございます。  なお、最近発足しました国民生活センター地方消費生活センターにつきましては、その充実をはかりまして、国民との対話を深めてまいりたいと思います。  最後に、国土総合開発推進について申し述べたいと思います。  今後、より一そう国民の福祉の向上を実現するためには、環境保全を重視しながら国土総合開発を積極的に推進し、国土全域にわたり新たな発展の基盤と人間性豊かな環境をつくり上げていくことが必要でございます。  これまでにおきましても、高速道路新幹線鉄道建設等国土開発基礎となる事業を進めてまいりましたが、今後は、これらの事業実施テンポを早め、わが国全土にわたる交通通信網のネットワークを整備いたしますとともに、新しい大規模工業基地畜産基地等産業開発のプロジェクトを具体化していくことが肝要であります。さらに、公害防止、自然の保護歴史的遺産の保存、レクリエーション地域整備等環境保全のための大規模事業長期的観点に立って力強く推進すべきであると考えます。  このような国土利用の抜本的再編成によりまして、公害のない豊かな環境のもとで、国民充実した生活確保されますよう、さらに一段と努力してまいる所存でございます。  以上、私の所信一端についても申し上げました。本委員会及び委員各位の御支援と御鞭撻とを心からお願い申し上げて、私のあいさつといたします。(拍手
  18. 鴨田宗一

    鴨田委員長 以上をもちまして両大臣所信表明は終わりました。     —————————————
  19. 鴨田宗一

    鴨田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤 二君。
  20. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、委員長のお許しを得まして、この際両大臣に対しまして、日米経済問題、公害問題、中国との国交回復並びに経済交流問題等について二、三お尋ねしたいと存じます。   田中大臣は、先ほどのごあいさつにもありましたように、かつての本委員会における名委員長、歴代中その前例を見ないほど功績をあげられた方でございます。今度は、新名委員長鴨田委員長もと田中新大臣がりっぱな功績をあげられますることを国民ひとしく望んでいるところでございます。私もまたその一人でございます。由来、通産大臣をうまく切り抜けたという実績が次の総理へのコースに相なるやに聞いております。それがジンクスのようでございます。国民もまたそれを期待していることと存じます。ぜひひとつその国民期待にこたえるような実績委員長大臣との連携よろしきを得て期待にこたえていただきたいと存じます。  経済企画庁長官外務大臣兼任大臣でございますが、またベテラン中のベテランで、内閣の大黒柱の本筋を長年守り抜いてみえた腕達者な方でございます。ぜひひとつ、日本の、先ほどのあいさつにもありました冷え切った日本経済、困り抜いている日本国民経済中小企業経済等々にも心をいたして、りっぱな業績をつくり上げていただきたいことを最初に要望いたします。  そこでお尋ねいたしまするが、過ぐる本会議におきまして、総理大臣施政方針演説を述べられました。その一節が、実は期待をいたしておりまする国民の神経にぴいんと来ているところがございます。理解に苦しむ点でございます。お尋ねいたします。「繊維問題など一部に摩擦が生じていることも御承知のとおりであります。しかし、このような局部的な摩擦のために、日米両国の大局的な友好協力関係基調に乱れを生じさせてはならないと思います。今後とも、相互信頼互恵互助精神に基づいて、まずみずから行なうべきことはこれを行ない、かかる摩擦の防除につとめ、」とこうあります。一体、この原稿はどなたがお書きになったのでございましょうか。
  21. 田中角榮

    田中国務大臣 私はこの原稿を書いた当面の責任者ではございません。総理大臣施政方針演説は、各省から持ち寄りましたものを官房長官の手元で取りまとめて成案を得るということでございますから、今度の最終的責任はもちろん総理大臣にでございますが、原稿を作成した当面する責任者官房長官である、こう理解していいと思います。
  22. 加藤清二

    加藤(清)委員 その官房長官は新官房長官ですか、さき官房長官ですか。その点はさき官房長官をやってみえたお方にお尋ねいたします。
  23. 木村俊夫

    木村国務大臣 新しい所信表明でございますから、当然新官房長官の手でまとめられたものであります。
  24. 加藤清二

    加藤(清)委員 ほんとうにそうですか。私は調べてきたのです。ほんとうですか。
  25. 木村俊夫

    木村国務大臣 私が申し上げましたのは、政府部内の責任においてまとめる立場を申し上げたわけです。
  26. 加藤清二

    加藤(清)委員 まとめることは新官房長官がまとめたかもしれません。しかし、原稿を書いたのはどうもほかにあるようです。しかし、そのことを追及するのが本日の目的ではございませんので、これはいずれ後ほど明らかにするということにしまして、次へ進みますが、しかし、これは閣議を通っておることでございますね。——しからば、お尋ねいたします。「まずみずから」とはだれでございますか。みずからなすべきことをなさなければならない。繊維問題で摩擦が起きていることは日米友好に差しさわりがある、だから日米友好の基盤を保持するためには繊維問題はしんぼうしなければならぬ、犠牲にならなければならぬというニュアンスなんだ、これは。そこで、まずみずからなすべきはなせという総理のおことばでございまするが、みずからとはだれのことで、なすべきとは何をなすのですか。
  27. 田中角榮

    田中国務大臣 日米友好増進のためには、日米双方がそのような基本的姿勢で実効をあげていかなければならないということは言うまでもございません。また一つの目的を達成するためには、相手だけの努力でできるわけではないのであって、この究極な目的を達成する前提としてみずからなさなければならない責めをまず果たすということは、これは当然のことでございます。ですから、それと、前提になっておる繊維問題だけを考えるのではなく、日米双方の経済的協調のためにはお互い両国が協調しなければならない。まずその前提としては、日本自体がなさなければならないものはひとつ進んで行なおうというふうに理解すべきだと思います。
  28. 加藤清二

    加藤(清)委員 その「みずから」とは日本政府でございますか、それとも日本の繊維業界でございますか。
  29. 田中角榮

    田中国務大臣 そのことば、その文字は、繊維だけに直接かぶさるものではなく、日米両国ということを前提にして述べておるものと理解されたい、こういうことでございます。また繊維の問題に限っていえば、いま日本は自主規制をやっておりますので、自主規制を宣言した以上、これが実効があがるようなことに専心努力をすべきであるという当然のことを述べたものでございます。
  30. 加藤清二

    加藤(清)委員 すでに業界は自主規制を宣言している、しかもその宣言が七月一日実行に移された早々である、ゆえに日本としては業界のこの自主規制が実行に移されるよう努力する、こういうことでございますか。そういうニュアンスでございます。
  31. 田中角榮

    田中国務大臣 繊維に関しては業界が自主規制宣言を行なっておるわけでございます。政府はこれを見守っておるのでございます。ですから、国内的には政府と業界というものが分離されて考えられますが、対外的、アメリカというものに対しては、アメリカの政府、アメリカの国民というのではなく、日米両国親善のためにという大きなことに対処してはこれは日本側はということでございますが、事繊維に関してはいま業界が自主規制に踏み切っておるのであって、この自主規制が実効をあげるようにということでございます。
  32. 加藤清二

    加藤(清)委員 それは政府の一致した意見でございますか。
  33. 田中角榮

    田中国務大臣 当然の発言でございます。
  34. 加藤清二

    加藤(清)委員 それではお尋ねいたします。七月十九日の日経新聞に大見出しで出ていることは皆さん御存じのとおりだと存じます。見てください。これによりますると、「繊維、新譲歩へ傾く対米規制、政府レベルの保証考慮効果あげねば協定結ぶ」と出ております。しかもこの問題は外務省筋から出ている、こう書いてございます。したがって、木村外務大臣代理にお尋ねするわけでございます。これは外務省のどなたが発表なさったのでございますか。
  35. 木村俊夫

    木村国務大臣 先ほどの通産大臣の御説明にもございましたが、私どもの理解するところでは、ただ繊維問題のみならず、輸入自由化資本自由化に対するアメリカをはじめとするいろいろ外国からの主張がございます。それに応ずるためには、対応するためには、みずからなすべきことをなすべきであるということが今回の対外経済政策八項目に具現されておりますが、その実施を政府としましては着実に推進するということを申し述べておるわけでございます。  なお、いま御指摘の新聞の報道については、私はまだ外務省から出た記事だとは聞いておりません。もし必要とあれば、どこから出た記事であるか、それは調査をいたしたいと思います。
  36. 加藤清二

    加藤(清)委員 おかしな話ですね。外務省から出ていないとするならば、かかる重大ニュースは当然あなたがチェックすべき立場にいらっしゃるのです。それが知らずにいままで放置されていた。片や次から次へと政府間において新政策を打ち出さなければアメリカが承知しないような印象を受けるようなことを発表なさっていらっしゃる。実におかしな話なんです。そこで、これを外務省が知らないとするならば、新聞社に抗議を出されますか。なぜかならば、この案件は、ここに書かれておりますることは明らかに国会決議違反なんです。同時にLTA違反なんです、もしこれを行なわれたとすれば。ガット精神にそむくことなんです、これは。いわんや本委員会並びに本会議において決議された内容は、インジュリーなきところ規制はなしということなんです。あれ以来、調査を何度重ねてもインジュリーは出てきておりません。私もアメリカに渡りました。そうして関係者にも会い、フルブライト外交委員長から、上院のちょうどさき田中幹事長と同じ役をやっているスコットさんにも会いました。こちらに見えたときにも、また会いました。インジュリーがあるとは一言も言っておられません。インジュリーなきところなぜ国会の決議を破ってまでもこのような発表をしなければならぬのか、私は理解に苦しむ。また、このようなことを推し進めていくことが、つまり政府間協定を結ぶことが「外務省筋はこの日本側の対案に対して米側は好意的な反応を示すものと予想している」とこうきている。アメリカの意向をうかがってなぜ日本の衆議院の議決に違反する行為をしなければならぬのですか、承りたい。
  37. 木村俊夫

    木村国務大臣 いま御指摘の記事は、アメリカの元財務長官のケネディ特使が韓国、台湾、香港等を歴訪いたしまして、新たなる繊維問題についての規制、政府間協定をいろいろ交渉しております。そういうような周囲の情勢を客観的に踏まえて書かれた推測をまじえた記事であろうと私は思います。したがいまして、はっきり申し上げられることは、先ほど通産大臣が申し上げましたとおり、現時点において政府といたしましては、また外務省といたしまして、政府間協定の交渉を開始するという考えは正式にございません。
  38. 加藤清二

    加藤(清)委員 外務省の考えは、今日の状態を変えるという意思はない、こうおっしゃったのでございますか、もう一度確認したいのです。
  39. 木村俊夫

    木村国務大臣 現在のところ七月一日から開始されました業界の自主規制、この推移を見守るという見地でございます。
  40. 加藤清二

    加藤(清)委員 田中通産大臣の意見と外務省は同じでございますね。
  41. 木村俊夫

    木村国務大臣 もちろんこれは通産省、外務省といわず政府部内の一致であります。
  42. 加藤清二

    加藤(清)委員 政府部内の一致した意見と受け取ってよろしゅうございますか。
  43. 木村俊夫

    木村国務大臣 私が政府を代表して申し上げる立場におりませんが、少なくとも通産大臣が先ほど申し上げましたとおり、また外務省もそういう意見でございます。
  44. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は当然そうあってしかるべきだと存じます。なぜかなれば、さき官房長官は三月八日、業界が自主規制を宣言したとおりに政府を代表してこういうことを言うておられる。見出しは、政府は業界の宣言を歓迎、内容として、政府は八日、わが国繊維業界の一方的自主規制宣言を歓迎する保利官房長官の談話を発表、業界の自主規制により困難な問題が円満に解決する見通しが立ったと考える、この新たな事態にかんがみ、日米政府間の交渉はこれ以上継続する必要がなくなったものと考える、これが保利官房長官政府を代表してのことばでございます。これには間違いございませんか。いまも間違いございませんか。
  45. 木村俊夫

    木村国務大臣 当時私は官房長官をしておりまして、それを確認しております。
  46. 加藤清二

    加藤(清)委員 いまも間違いございませんか。
  47. 木村俊夫

    木村国務大臣 その後において政府部内で何らの変更も行なわれておりません。
  48. 加藤清二

    加藤(清)委員 そうあってしかるべきだと存じます。しかるに、この以後において佐藤総理は新内閣発足のとき記者会見を行なっておられます。そして何やら政府が自主規制に追い打ちをかけて何かしなければ気が済まないようなことを言うておられる。詳細は時間がないから私ははしょりますけれども、あなたお帰りになってから詳細読み上げます。  同時に福田外相は日米繊維問題はまだ未解決だと発言してみえる。しかも総理所信表明演説において、まだこれからなすべきことをなさなければならない。何やら閣内不統一の印象を受けるのは私一人ではありません。田中大臣が横にかぶりを振っていらっしゃるが、あなたは勘が鋭いですから内輪でよく存じてみえるから心配はないかもしれません。しかし、団民一般は心配をして、もはやあちらでもこちらでも業界がそらたいへんだということで集まりをしてみえる。きょうもそうなんです。きょうもこの時間に集まっておられます。そんなに国民に心配をかけるような何か新しい事態でもあるのですか。政府が追い打ちかけて政府間協定を結ばなければならないような何か原因があるのですか。ケネディ特使はいまこちらに来ておられる。ケネディ特使が日本に向かって脅迫でもしておるのですか。そういう事実があったら承りたい。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどからるる申し述べておりますように、業界は自主規制を七月一日から実行に移しておるわけでございます。でございますから、日本としてはこの実効があがるかあがらないかということを見守らなければならない、こういうことでございます。ですから、日本側の立場は一貫しておるわけでございます。その後のいろいろな事情は、対外的な動きがあるから、そのような意味から論じられ記事になっておると思います。いまアメリカ政府当局からこの問題に対して新しい要請が正式に出されておる事実はありません。
  50. 加藤清二

    加藤(清)委員 通産大臣は予算委員会において野党の質問に答えていわく、この状態を変える意思はない、しかし当分の間これをながめる、こういう答弁であったようでございますが、当分の間とはどのくらいの日にちのことでございましょうか。三日坊主なんですか。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 加藤さんお近しい間でございますから、すんなり言わしていただくと、当分の間というのは太政官布告から九十何年間も法律の上で当分の間が続いてもおります。しかし当分の間ということは、日本語として少なくともいまきめたものが明確な理由があって改めなければならないというような事態が起こる場合があれば別でございますが、いまは自主規制の実効があがるかどうかということを見守らなければならない、こういうことを言っておるのでございますから、そういう意味では当分の間というものはこの実効があがるかあがらないかということと、それからもう一つは、あなたが先ほど指摘をされた日本の対米輸出というものが一体被害があるのかどうかというようなものがわかるまでの間は当分の間の中に入る、こう理解していいと思います。
  52. 加藤清二

    加藤(清)委員 被害が発見できる、あるいは被害が発生したということが確認できるまでは変化をさせない、追加政府協定などということはしない、こう受け取ってよろしゅうございますか。——それならば与党、野党を通じて議員もほっとするでしょう。それは本会議の決議に沿うところであり、与野党が業界の大会にこもごも出まして立ってあいさつをしたときの約束に一致するからでございます。もしそれができないとなると、与党の側でも大会に出て必ずやります、必ずと言うてきたのに三日坊主で変わったということになりますと、自民党のりっぱな議員さんたちがうそを言ったという結果に相なることを私は非常におそれるのでございます。ますます国会不信、議員不信を招く原因になるからでございます。ぜひひとつ期待をかけられている田中大臣の腹でもって、いまのその覚悟をずっと継続していただきたいと存じます。インジュリーが発生するまでは継続していただきたいと存じます。  さてそこで、それでも懸念かございまするので、これはここから先は政府側の明快な答弁によって、この新聞から疑心暗鬼を生じておりまする国民の皆さんにわかるような説明をしていただきたいと存じます。  すなわち、この新聞によりますれば、農業法二百四条の発動を待たずにでも、他の二国間が協定を結んだときには日本側もこれを受け入れなければならないと書いてある。臨時外務大臣急いで出かけられたので残念でございまするけれども、そういう法解釈は私は間違いであると存じます。政府の見解をお願いしたい。
  53. 田中角榮

    田中国務大臣 多数国間において協定が結ばれた場合、アウトサイダー規制によって日本が規制を受けられるかどうかということでございますが、農業法二百四条の発動ということが、アメリカと韓国、アメリカと香港とで協定が行なわれたということを前提にしての御質問だと思うわけでございますが、これは農業法であって、化学繊維というようなものがこの農業法二百四条に該当する品目なのかどうかもまださだかにわかっておりません。検討しておりません。それから多国間協定ということに一体なるのかどうかという法解釈もございます。こういう問題、いま御指摘がございましたので、そんな問題が起こってはならないと思うのです。両国の間には自主規制をやっておるのでございますし、われわれは日米間の協調を進めようという論者でございますから、そういう意味ではそういうようないろいろな議論のある法律の適用等が行なわれるようにならないように、−事前にお互いが理解を進めていくということを前提にいたしておりますが、法律解釈としての問題はもう少し考える余地があると思います。
  54. 加藤清二

    加藤(清)委員 私もこの法律解釈の問題を、余された時間ほんの少ししかございませんので、ここで詳細検討することは避けて、宿題にしておきます。  私の調査いたしたところによりますれば、農業法第二百四条とは、これはLTAの発足のおりに、アウトサイダー規制するために新たに挿入された条項でございます。しかもこれは農産物、すなわち綿花、それを加工したコットン、これに適用するために行なわれた法律でございます。合成繊維は石油製品でございます。どうしてこれが、農産物適用の法律が石油製品に適用されるのでございましょうか、きわめて不可解でございます。同時にまた、それでは足りないのでというて、次に去年行なわれました一九七〇年通商法案、日本の繊維全体を規制しようとしたあの法案、しかし、上院のスコット院内総務をはじめとする良識によってこれは踏みつぶされた法案、それによってもなおアウトサイダー規制の場合には二国間が協定をかりにしたとしても、二国間の総数量が世界貿易数量の五〇%をこえるという条件がついておることは、田中大臣もよく御案内のとおりだと思います。  そこでお尋ねします。化合繊のアメリカ輸出につきまして、いま二国間と目されているのは香港、台湾、韓国、これでございます。その二国間が協定を結んだ場合に、はたしてその二国間において、世界貿易ということですが、この際はアメリカ貿易でもけっこうです、五〇%以上になりますかなりませんか、まずそこをお尋ねします。
  55. 田中角榮

    田中国務大臣 もちろんならないと思います。
  56. 加藤清二

    加藤(清)委員 じゃ、繊維局長答えてください。
  57. 楠岡豪

    ○楠岡説明員 アメリカの輸入の中の比率を調べてみますと、たとえば化合繊製品をとりますと、極東の三国、韓国、台湾、香港を合わせましてわずか二八・八%でございます。したがいまして、化合繊製品全部をとりますと、世界貿易の中に占めるこれらの比率というのは、さらに下がってくると思います。ただ、個々のものにつきましては、若干の例外もあろうかと思いますけれども、非常ないわば例外的な少ない品目とお考えいただいていいかと思います。
  58. 加藤清二

    加藤(清)委員 通産大臣、お聞き及びのとおりでございます。どの二国間をとっても、五〇%には満ちません。したがって、アウトサイダー規制はできないということになる。もし私の調査が正しければ、香港、台湾、韓国、三つ合わせても五〇%にはなりません。それは香港が八・五%、台湾が二一・八%、韓国が一五・四%だからでございます。もしここが二国間の協定を結んだがゆえに、その規制がアウトサイダーである日本にも適用されるという、そういう理不尽なことが適用されるとするならば、これは国際的な慣例を打ち破る、たいへんな世界的な不祥事でございます。国際連合で重要事項指定方式というて、三分の二以上の賛成がなければ通過しない。五〇%以上賛成がなければ通過しないというのは世界の定石でございます。もし二〇%前後のもので、残りの八〇%に適用ができるとするならば、社会党はとっくに天下をとっておるはずでございます。やはり多数決原理でいくというたてまえからいけば、境は五〇%が世界共通の原理のようでございます。したがって、この原則からいきますると、外務省が新聞発表いたしておりまするこれは、どの道どう押えてみても誤りである。もちろんLTAにおきましては、農業法二百四条はLTAを結ぶときに付属的に行なわれた法律でございまするが、LTAの本法そのものからいっても、第一条並びに第六条には、この法律は他の品目には絶対適用しないとはっきりうたっているのでございます。アメリカ側がうたっているのでございます。にもかかわらず、日本はなぜ議決を破ってまでも阿付迎合をしなければならないのでございましょうか。日本の繊維は、インジュリーがないというだけじゃございません。化合繊、化合繊というけれども、アメリカ全消費量からいけばわずかに三%足りません。ものによって一%、三日分なんです。二〇パー、三〇。八一というのは、輸入量を一〇〇とした場合の二〇%、三〇%なんです。アメリカのオール生産、オール消費から見ればわずか一%か二%なんです。それでどうしてインジュリーがあり、それでどうして規制を受けなければならぬのですか。そんなことが適用できるのだったら、あなたがやられた電算機、あれはどうなるのですか。アメリカからの輸入が四七%以上なんです。もしあれを自由化した場合にどうなるか。アメリカからの輸入が八〇%をこえるということになる。それでもなおあなたは自由化をおやりになった。それじゃ今度日本からアメリカへ繊維を輸出するときに、なぜそれを逆に適用なさらないのですか。日本のフィルムしかりです。アメリカは、日本に向かって輸出するものについてはフィフティー・フィフティー以上にならなければ、これに対して制限禁止をすることは相ならぬということをいってきておるじゃありませんか。それを受けて立っているのが通産省の通商行政でしょう。なぜ日本だけが三%や二%で制限をしなければならないのですか。国民のひとしく疑問に思う点であり、国民ひとしく自民党政府はアメリカの言うなりに追随外交を続けているといわれる具体的ゆえんでございます。私は、新田中大臣の腕に心から期待しておるものでございます。それは私一人のみではございません。ここ数日間、特にケネディさんのいらっしゃる間は、あなたの動きをこの関係三国も、EEC諸国も注目しております。ぜひ世界の注目、国民期待にこたえるような態度をとっていただきたいと存じます。  時間が参りましたので、これで失礼します。所見をお伺いしたい。
  59. 田中角榮

    田中国務大臣 繊維に関しましては、いま御指摘のような新聞報道がなされたということもございますが、しかし、日本政府がとっております基本的な考え方は、七月一日からの自主規制を見守って、その実効があがるように努力をするという一点であることを、念のため重ねて申し上げておきます。
  60. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に武藤嘉文君。
  61. 武藤嘉文

    武藤委員 きょうは時間がたいへん限られておりますので、当面の問題といたしまして、いま加藤委員から御質問のございました繊維の問題、それから昨日決定して新聞発表になりました電算機の自由化の問題、それから時間があれば長期的な問題としてエネルギーの問題、あるいは国際経済調整法の問題にまで話を進めていきたいと思いますが、時間がわかりませんので、ストップされるといけませんので、とりあえず当面の問題からお聞きしたいと思います。  いま、いろいろ加藤委員と質疑が取りかわされておったわけでございますけれども、最後に特に加藤委員がおっしゃいましたが、何も政府、与党すべてがアメリカに追随外交をしているものでは決してない。少なくとも繊維の問題については、いま加藤委員も御指摘がございましたが、われわれも繊維の大会に出て決して理不尽なことをやらない、屈辱外交によってアメリカの言うなりにはならない、こういうことを言ってきたわけでございます。その点は党のかなめとして、幹事長としておつとめいただきました新大臣もよく御承知をいただいておると思います。私どもはそういう観点から、後ほど申し上げますが、日本資本自由化とかあるいは輸入自由化とか、こういうものはできる限り進めなければならない。しかしながら、相手に対してもやはりいまのようにインジュリーのないものまで向こうが輸入制限をやるような動きは排除しなければならないし、またこちらの業界が自主的に規制をやっておるのにもかかわらず、政府間協定を結ぶということは何ら必要がない、私はこういう観点に立っておるわけでございます。特にこの日米繊維の問題につきましては、昨年の暮れまで政府間でいろいろ協議が進められておりました。そして最終的にはたしか六グループだったと思いますけれども、六グループに分けて規制をしようではないかという案まで出て、なかなか相手がのまない。相手は結局十九品目そのものの個別規制を固執をした、こういうような経過からミルズさんが仲へ入って、現在の自主規制宣言までいったわけでございます。それを考えれば、いまここでミルズさんが仲に入ったことがニクソンさんとしてはおもしろくないのだ、民主党が仲へ入ったから、共和党の大統領に来年ぜひもう一度なりたいということからいくとおもしろくないというようなお気持ちでやられることは、日本にとってはまことに迷惑だと思います。私はそういう点のいきさつからいけば、決して相手の言うことは筋が通らない。  もう一つ、私がたいへん心配をいたしておりますのは、ちょうどLTA協定が、綿製品協定が結ばれたときに、最初は期限も切ってあった。また、その規制の内容についても、必ずしも個別規制までいっていなかった。ところが、だんだん期限は延ばされいまなお続いております。そうして規制の内容はそのつどきびしく改正されてまいりました。そういう点からいっても、政府間協定というものが結ばれるならば、少なくとも現在の業界の自主規制とたとえ形は同じものであるということで出発をしても、後々はたいへん問題が起きる可能性がある。こういう点からも、自主規制をやっておって、先ほどのお話で相手に被害を及ぼしたりあるいは業界が自主規制をしっかりやらなかったというときには政府が乗り出していただくことはけっこうかと思うのでございますけれども、少なくともそれまでは政府は乗り出してもらいたくない、乗り出すべきではない、こういう考え方でおりますが、この点について大臣は先ほど来だいじょうぶだとおっしゃっておられますが、いまケネディ特使が来られて、これからもう一度旧知の間柄だということで大臣と話がまたあるだろうと思うのでございますけれども、そういうときにおいても、断固として政府間協定というものには乗らない。乗るとすればいま言ったような、あなたのほうに被害が起きたりあるいは日本の業界が自主規制をしっかり守らなかった場合だけであって、それ以外においては政府間協定を結ぶ気持ちはないから、ひとつその点はあなたのほうも理解をしていただきたい、こういうことをもしケネディに会われたときにははっきりとおっしゃっていただきたいと思うのでございますが、その点はいかがでございましょうか。
  62. 田中角榮

    田中国務大臣 繊維問題につきましては、先ほどから申し上げておりますとおり、自主規制というものが宣言をせられておる。その実行期間は七月の一日から入ったばかりである。ですから、現在の宣言問題に対しては、その実効があがるように推移を見守る以外にないということを政府は明確に申し上げておるわけであります。特に去る予算委員会におきましての質問に答えて、政府政府間協定を行なう考えはありませんと、こう言っておるのでございますから、これでピリオドを打たれたものとしてひとつ御了解を願いたいと思います。  それから、日米間でございますから、ケネディさんが来ておられてお会いしたいというなら、これは会ったって一向さしつかえないと思います。これはさまっておるのでございますから会わないというような日米間の間柄ではないわけでございます。やあやあということでございますから、向こうからアプローチを受ければそれを受けるということもあると思いますか、いずれにしても日本の法制下において、いま政府間協定を行なって業界を納得せしめられるような法制の体系にないということ、自主規制は現に進行形の形をとっておるということを述べて理解を求めるということには変わりはないということでございますから、会うこともないと思いますが、もし向こうからアプローチされれば、拒否することはないわけでございます。そんなことがあっても、とにかく本心は変わっておらねのだということを理解していただきたいと思います。
  63. 武藤嘉文

    武藤委員 それは大臣の先ほどからの御答弁でよくわかっております。私がお願いしたいのは、ケネディ特使にお目にかかられたときに、特に大臣は旧知の間柄でございますから、ひとつ遠慮なく、あくまで日本の立場というものを向こうによく理解をさせていただいて、せっかくニクソンから頼まれてこられたかもしれないけれども、日本のいまの立場はこうなんだから、これは見守ってくれよ、こういうふうにはっきりと言っていただきたいというお願いをしたのでございますが、その点はいかがでございましょう。
  64. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいまの御発言、十分理解をいたしました。
  65. 武藤嘉文

    武藤委員 そういう理解をしていただいたので、賢明な大臣のことでございますから、そういう点を十分相手にお伝えいただけるというふうに解釈させていただきます。  次に、繊維問題と非常にからみ合っておると私は思うのでございますが、電子計算機の自由化の問題でございます。一時は自由化にならない、いわゆるネガリストに入るだろうといわれておりました電子計算機の自由化が、とにかく大臣並びに業界、またその他の方々に非常に御協力いただいて、あのような形でまとまったことに対しては、私はたいへんいいことだ。特に繊維の問題で、こちらが相手に対してあくまでも理不尽な要求はいれられないと言う以上は、日本側としてもやはりある程度、業界の体制ができていない今日ではございますけれども、この問題に対しては自由化をのまざるを得ない。これは私はよくわかります。そういう意味で、今度の案というものは非常に御努力なさった結果の案であると思っております。ただ、この中で特に問題は、資本自由化のほうは、日本にIBMの子会社ができておりますし、工場もつくっておりますし、また工場で三六〇もつくっておりますし、こういう点からいけばそう大きな問題はないだろう。それよりも、いわゆる輸入自由化のほうが大きな問題になってくるのではなかろうか、私はこういう感じがいたしておるわけでございます。輸入自由化はとりあえず周辺機器からで、周辺機器のうちで記憶装置と端末機を除いて、それ以外のものは大体自由化する、パーセンテージからいけば大体五〇%くらいだろう、こういわれておるわけでございますけれども、これは時期が、新聞によってはどうもまだはっきりしておりません。この輸入自由化のほうはいつおやりになるのか、それを承らせていただきたいと思います。
  66. 田中角榮

    田中国務大臣 来年の四月ごろになると思います。
  67. 武藤嘉文

    武藤委員 それでは来年の四月からはそういうことで周辺機器が中心でございますけれども、本体そのものの自由化、これは資本のほうじゃなくて、本体の輸入自由化というものについては、今度の案には何ら触れられておりませんが、この点については、将来の計画としてどのような考え方に基づいてお進めいただくのか、それを承りたいと思います。
  68. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のとおり、電算機については、全部輸入自由化に踏み切ったほうがいいという強い議論もございます。自動車さえやったじゃないか、その結果、日本の技術は、自動車がアメリカに対して三〇〇%、対前年同月比出ておるような状態にまでなったじゃないかという積極的な議論もございます。しかし私は、就任早々ではございましたが、事務当局を中心に業界と連絡せしめたのでございますが、電算機というものに対しては、将来というよりも四、五年後からの日本の輸出商品としては非常に大きなものであるということが一つ。これはある意味においては代表的なもの、いま日本を代表しておるものの中には鉄とか造船とかございますが、それに匹敵する大きなものであるということが一つ。  もう一つは、この自由化のタイミングを誤ると、日本の社会構造の中の頭脳部分をほかの国に許してしまうという非常に大きな問題がございます。これは、いまレンタル制度で四千億程度の品物が返るか返らぬかというような問題よりもはるかに大きい問題であるという一つの前提を持っております。  もう一つは、諸外国はどうかということを考えますと、西ドイツにおいてさえも、早く踏み切ったために、自国内におけるシェアは一〇%である。  フランスやイギリスにおいては二、三%ということを考えますと、これは国益を守るという立場からと、世界的に見た自由化ということと、両方のメリットを十分考えてかからないと悔いを残すという考え方で、短い時間ではございますが、衆知を集めて、しかも業界が納得できる体制ということを前提にいたしたいわけでございます。  でございますので、そういう基本的な考えのもとに、今般の、二十七日に予定されておる外資審議会に提案をしなければならないという時間的な制約もございましたので、きのうの夕方最終案を決定したわけでございますが、他のものについては国内政策を行なう、また六社ばらばらになっておるものを協業化を行なう、共同研究をやる、合理化をやるというようなことを進めることによって国際的競争力がついて、日本の目玉商品として世界に十分シェアを確保できるようなことを一日も早く、いっときも早くと望みながら——それはその条件が具備しない限り自由化の対象にはならないということでございます。しかし、これはおくれますと、いつまでもおくれて済むものではありません。日本の頭脳自体を整備しなければならぬのであって、現在日本の官庁においてもIBMの電算機を入れておるという事態、かかる事態が看過できるわけはないのでありまして、おのずから時間的制約はありますが、技術開発というものが前提になっておる、こう理解していただきたい。
  69. 武藤嘉文

    武藤委員 そうすると、今度の自由化の案に対しまして、電算機の産業に対する対策案がいろいろ練られておりますが、それは私ども承っておるのでは、電算機の技術開発補助金として、四十七年度が五十億、四十八年度が百二十五億、四十九年度が二百三十億、このくらい金をかければIBMの三七〇に対抗できる機種ができるだろう、こういう考え方のように承っておりますが、たとえばその三七〇の機種に対抗できるものが完成をして、それがいまのお話のように外国にも輸出できるような一つの目玉商品にもなってきたというときには、一応力ができたものとして、本体についても輸入自由化をされる、こういうふうに判断をしてよろしゅうございますでしょうか。
  70. 田中角榮

    田中国務大臣 望ましいことは、一日もいっときも早く自由化ができるような日本の電算機生産体制が確立されることが望ましい。これは国益を守るためにもそうでございます。これが開発されないと日本自体の頭脳が外国製品に占拠される、世界に対するシェアも確保できないということでございますので、それに対応する施策は国内的に十分とってまいるということでございます。
  71. 武藤嘉文

    武藤委員 時間がありませんのではしょって申しわけございませんが、もう一つコンピューターの問題で、いまお話をいたしておりましたのはハードウェアの問題でございますけれども、私は正直にいって、たいへん心配いたしておりますのはソフトウエアの問題ではなかろうか。特にハードウエアはともかくとして、日本の現在のソフトウエアというのは、外国の企業と比べればまことにお粗末なものでございます。しかしながら、幾らハードウエアが発達しても、ソフトウエアが発達しなければ、これは情報社会においては何も効力がないわけでございますから、そういう面においてソフトウエアの育成ということがたいへん望ましいことでございますが、なかなかこれは一朝一夕にはできないであろう。そういう意味において今度もソフトウエアについては資本輸入自由化しないというほうに入っておると聞いておりますが、これについてはいまハードウエアの問題よりももっと相当長期にわたって私は逆にこれは自由化してもらうべきでない、こういう考え方を持っておりますが、この点につきましての大臣のお考え方を承らせていただきたいと思います。
  72. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおり、自由化に対応できるまで当分の間ということで、当分の間は、先ほど申し上げましたが、これは非常に都合のいいことばでございまして、事態が変わればということ、事態が変わるということは国際競争力にたえ得るような状態になれば、新製品ができれば、これがIBM製品に十分対抗できるような状態になればということでございます。それから同時に、太政官布告以来ずっと九十余年間も当分の間が法律的に続いているということでございますので、いまは時間的に明示をしておらぬということでございます。
  73. 武藤嘉文

    武藤委員 もう一つソフトウエアの問題で大切なことば、国産であろうがあるいは国内の企業であろうが、外国の経営の企業が進出をしてこようが、とにかく企業によって、将来においては個人のいろいろな秘密が収録されていくわけでございますから、そういうソフトウエアそのもののいわゆる権利保護といいますか、何かそういうものを、いまのところ法律にもございませんけれども、たとえばこの間著作権法というものが改正になりましたが、私は、何かこのソフトウエアについてはしっかりと保護をしてやる、こういうものが緊急に必要ではなかろうか、こういうことを考えておりますが、大臣としてそういうものに早急にお取り組みいただくお考え方があるのかどうか、承らせていただきたいと思います。
  74. 矢島嗣郎

    ○矢島説明員 先生の御指摘のとおり、ソフトウエアの法的な保護は非常に重要なものでございまして、通産省といたしましては、四十六年度、本年度から省内にソフトウエア法的保護調査委員会というのを設けまして、このソフトウエアの権利保護をめぐる諸問題について体系的な検討をやっている次第でございます。
  75. 武藤嘉文

    武藤委員 体系的な検討検討でいいのでございますが、そういうものを早急に法律化しなきゃならないということであれば、法律化をするという方向で検討していただいているわけでございますか。
  76. 矢島嗣郎

    ○矢島説明員 検討中でございますが、何ぶんこれは非常に複雑な問題もございますし、既存の特許権あるいは著作権それぞれになかなかなじまない点もあるというわけで、なかなかむずかしい問題でございますが、もちろん法的保護検討する委員会でございますから、方向は当然先生のおっしゃるとおり、何らかの法的措置ができるかどうかということを目標としてやっているわけでございます。
  77. 武藤嘉文

    武藤委員 要望としてできるだけ早く法的措置をきめていただけるように、案をきめていただけるように、ぜひ委員会に督促をお願いしたいと思います。  それから次に、時間がなくなりましたので、長期的な問題で一つだけ、この委員会でもたしか先々月決議がなされております石油エネルギーの問題でございますが、たしか四月には参考人もお呼びをしていろいろと意見を承ったわけでございます。けさの新聞を見ておりますと、またOPECがいろいろの動きを出してきておるようでございまして、少なくともあのOPECとメージャーとのいろいろの値上げの問題に発生をいたしまして、非常に世界の石油資源というものについての環境は変わってきた、私はこういう考え方を持っております。従来は日本の石油確保のめどは、大体どこでもそう心配しなくても買える、だからせいぜい安いところから買ったらいいんじゃないかという考え方だったと思うのですけれども、最近のOPECのああいう動きから見ますと、私は、これからはそういうわけには済まされないだろう、どうしてもOPECにある程度イニシアチブをとられた形で石油資源を確保せざるを得ない、そういう方向にいくんではなかろうかという感じがいたしますが、まず、この考え方というものは大臣は御理解がいただけるのかどうか、お聞きをいたします。
  78. 田中角榮

    田中国務大臣 石油消費国としては一番大きな日本とさえいわれておるものでございますし、いまのような状態で将来の石油資源が確保できるとは考えておりません。そういう意味では、長期的な計画のもとに、一つのところだけではなく、地域的にもまた形態的にもいろいろな問題を検討しながら、新しい石油資源の長期的確保というものに来年度はどうしても踏み出さなければならない、こういう考えでございます。
  79. 武藤嘉文

    武藤委員 そういたしますと、従来日本に入っておるものはほとんどがメージャーを経由して入ってきておる。しかし、OPECなどの動きを見ており、特にこの間うち私どもは新聞紙上で見ておりましても、たとえばイランだとかサウジアラビアだとかこういうところが、日本とひとつ直接でもやろうじゃないか、こういうことが具体的に話題になってきておると承っておりますけれども、そういうことを考えた場合に、やはり積極的にこちらが出ていくべきではなかろうか、それが経済協力の形になるのかあるいは資本参加の形になるのか、いろいろのやり方はあろうと思いますけれども、少なくとも従来と違った形でそういう産油国そのものと日本とがタイアップをしていくという考え方、これは私は推し進めていって非常にいいことではないか、こう思うのでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  80. 田中角榮

    田中国務大臣 ヨーロッパ諸国においては年間大体二千億円程度、イタリアの国営企業においても七百億、八百億、日本も数年間というところ五、六千億程度の投資を必要とするということから考えてみても、日本がいま石油公団で二百三十億というような問題で確保できるはずはない。しかも低硫黄の良質な石油を必要とするということを考えてまいりますと、多方面から長期的な、また質のいい原油を確保しなければいけない。そのためには、やはり原油そのものをどこからでも買えばいいじゃないかという、行き当たりばったりに日本エネルギー源を求めるわけにはまいらない。そのためには鉱区権を確保したりまた投資をしたりしなければなりません。イランやインドネシアやいろいろな問題がいま対象になっておりますし、イラン等はすでに北スマトラ石油を中心にした業界で入札に応募し、落札をしておるという面もございますが、こういう問題は、まだ一つずつどれをきめるということではありませんが、いまあなたが述べられたような方向、これから長期的なものに対して安定的な良質のエネルギー確保できるためには、いままでと全然違った合弁会社もやらなければならないし、ある場合においては有力な企業の参加を得てお互いにジョイントベンチャーの形で開発を進める、外国の国営企業と合同でやる、それは当然のことだというふうに考えております。
  81. 武藤嘉文

    武藤委員 それに関連いたしまして、相手が国家企業的に参りますので、日本側としても純粋の民間企業よりは、たとえば石油開発公団あたりがそういう仕事がし得るような形にしておくということは、私は非常にやりやすいことになるのではなかろうか、こういう感じがいたしております。そういう意味合いにおいて、いま大臣も御同意をいただきましたが、ひとつ今後日本がそういう仕事を進めていく上においては、まず石油開発公団法そのものを思い切って改正をいたしまして、石油開発公団そのものが向こうの鉱区権を持つことができるとか、向こうの探鉱あるいは場合によればある程度プロジェクトまでつくっていくことに参加できるとか、こういう形にまで開発公団法を改正して、思い切って石油開発公団をりっぱなものにしていきたい、していったほうがいいのじゃないかと考えておりますが、その点についてはいかがでございましょう。
  82. 田中角榮

    田中国務大臣 石油開発公団法の改正等は当然のことだと思っていま検討しております。石油開発公団がそのままでいいのか、特別会計をつくってそれとの調整をはかるほうがいいのか、とにかく積極的な仕事をやれるようにしなければならない。特に予算でもってがんじがらめになっておりまして、いい仕事が出てきてもそれに対してさっと入札をして直ちにその仕事をとれるような状態にないという弾力性を欠いておる、機動性を欠いておるということに対しては、しかも規模もいまのような状態ではとてもアメリカの一企業にさえ対抗できないということでございますから、これは当然法的な措置を必要とする、こういう考えであります。
  83. 武藤嘉文

    武藤委員 時間がないようでございますので、そういう点からいって私は、石油開発公団法の改正だけでなく、いま大臣からもお話をいただきましたが、特別会計そのものも設置をいたしまして、それから石油業法も改正をいたしまして、とにかくいままでの石油業法にしても公団法にしてもみんな古い昔からのものがそのままきておるので、こういうふうに石油資源そのものを確保する上においては非常に時代が違ってきたという認識の上に立ってすべての法律に再検討を加え、それから特別会計を設け、場合によっては石炭特別会計のいわゆる原油関税の割り振りそのものにまでメスを入れて、思い切ってひとつ大きな石油なりエネルギーの特別会計というものをつくってやっていくという姿勢が私は大切だと思うのでございますけれども、これは大臣が御就任になりまして、もう来年度の予算というものはそろそろ始まってくるわけでございますけれども、それに対処されて、ひとつ思い切って四十七年度から間に合うようにやっていただきたいと思うのでございますが、その点についての大臣の御所信を承りたいと思います。
  84. 田中角榮

    田中国務大臣 方向も具体的な問題も大体あなたと同じ考えでございます。ひとつ御鞭撻を得てこれが実現のために全力をあげたい、こう存じます。
  85. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に石川次夫君。
  86. 石川次夫

    石川委員 私は、きょうは日米経済関係と、それからそれに関連をいたしまして貿易自由化資本自由化、それから最後にいま武藤委員のほうから質問のありましたコンピューターの自由化、こういう問題について質問をするつもりであったわけでございますけれども、時間が何しろ三十分というのでは、どれをとっても一時間以上かからなければ満足な質問はできないと思うのであります。したがいまして、要点としては第三の電算機の自由化という具体的な問題にしぼった形に重点を置かざるを得ないと思うのでありますけれども、その前提といたしまして、日米経済が最近相当険悪な状態になっておる。たとえばニューヨーク、ワシントンで日米民間経済外交というものが行なわれた際に、各種自由化についてはことばではなくて実行だというような強い発言があった。アメリカのほうではちょうど日米経済戦争が始まったのじゃないかと思われるぐらい険悪な空気であるというようなことがしきりに宣伝をされておるわけであります。アメリカの立場に立ってみると、アメリカの経済は停滞をいたしておりますから、アメリカの経済がある程度成長しておる場合には日本貿易は伸びてもその中で消化ができる。ところが停滞している限りにおいては、日本貿易が伸びればそれだけ失業問題その他にも波及するところが大きいということで非常な関心を持たざるを得ないという事情は容易にわれわれとしても理解はできるのであります。  しかしながら、アメリカとヨーロッパの関係ではお互いの意思の疎通というものは歴史的にもかなりとれるのでありますけれども、日本とアメリカの間ではお互いにかなり理解の度合いが少ないのではなかろうか、あるいはまた錯覚というものが相当あるのではなかろうか。こういう点から、民間外交もさることながら、政府間のベースでもっていろいろ交渉の場もあるわけでございますから、相当積極的に日本の立場を理解をさせるという努力をしていただかなければならぬということを強く要望したいという点で二、三申し上げたいのであります。  特に問題になりますのは、日本外貨がやみくもに蓄積され続けておる。去年の初めに私はいろいろ円シフトその他で外貨を隠しておるけれども、おととしだけでもどう考えてみても、私の計算でも十五億ドル以上になるのではないかという関係で、これは遠からず外圧によって円切り上げという事態が必至になるのではないかという警告を発した質問をした記憶があるわけでございますが、それが幸か不幸か的中しつつあるという状態になっておるわけであります。しかし、日本外貨がたまっておるという事情はドイツやその他の事情とはだいぶ違うということについての認識を、はたしてアメリカは持っているかどうかという点であります。一面で批判の対象になるわけでありますけれども、日本人くらいよく働く民族はない。食うものも食わず、着るものも着ず、ろくなうちにも住まないで一生懸命かせいだ外貨であるというような点が忘れられておる。あえて私は経営者の態度について申し上げますというと、向こうの金持ちの度合いとこちらとは比較になりませんけれども、ヨットや飛行機を乗り回して優雅な生活を楽しんでいる向こうの経営者と、日本のように夜おそくまで飲んでも働いても翌朝腕まくりして時間どおり来て、そうして部下を集めて叱咤激励する、こういう勤勉な度合いが全然違う。そういうようなところから、もたらされた外貨の蓄積であるという点の理解というものは、これはある面では批判の対象になるでしょう。労働時間が長過ぎるとかなんとかいうような批判の対象になるでありましょうが、そういう事情というものは理解されておらない、これが一点。  それから、社会資本日本はまことに貧弱である。これは東京から汽車に乗って郊外へちょっと出れば外国の先進国の郊外と比べてまさに貧民くつ同様です。この一点だけを見てもいかに社会資本生活環境というものが貧しい状態にさらされておるかということが忘れられておるのではないか。それからわが党の立場からいえば、中小企業や農業というものが無視されて重化学工業だけを重点視した、こういう中小企業者や農民の犠牲の上に立って高度成長政策をやった、そういう成果として輸出というものにドライブがかかり外貨が蓄積された。それにかてて加えて最近は御承知のように、非常な不況というものが輸入を停滞させ、輸出に相当なドライブをかけて外貨の蓄積に拍車をかけるというようなことになったのでありますけれども、社会資本充実というものを考えなければならぬ立場に日本は追い込まれている、国民生活の福祉の向上を相当積極的に考えなければならぬ、その場合に外貨というものを活用しなければならぬ、こういうところに置かれておる日本とヨーロッパとではだいぶ事情が違うのではないか、こういう点が第二点であります。  それから第三点としては、外国では金を持つことも民間でドルを持つことも自由であります。日本は法律でもって完全に禁止していますから、民間で金を持つこともドルを持つことも全然表へ出てこない。したがって、ヨーロッパの表面へ出てきている外貨の蓄積というものと日本の表に出ている外貨の蓄積というものは全然質が違うのだ、こういう事情がよく理解をされておるのかどうかという点について、私は非常な疑問を持たざるを得ない。こういう点で十分にこれを理解をさせるという努力が欠けているのではないかという点をどうお考えになりますか、私はそれを新大臣に伺いたいと思うのです。
  87. 田中角榮

    田中国務大臣 日米間における一番大きな問題、どうも日本の輸出攻勢が非常に激しいということ、もう一つは急激に外貨の積み増しが行なわれておるではないか、こういうことでございますが、その原因は広範にわたっていま御指摘になられたとおりだと思います。これはことしはちょうど引き締めをやってその効果が上がるようなときに選挙にぶつかったわけでございます。選挙にぶつかるときには大体そうでございますが、その年の公共投資の実行が非常におくれるわけでございます。これは選挙があると選挙が終わるまで新規事業は全部とめようということになるわけでございますから、いまのベースで考えますと、例年一一・五%程度の現金支払いベースが現に九%くらいでございます。でございますので、社会資本の不足はますます拡大をしておるということでございます。そういうことで公共投資さえも行なわれないということでありますので、民間設備投資が行なわれるはずはないのでございます。結果としては輸出ドライブになっているような現状がございます。しかし外貨は、ただ数字で申し上げますと、一月が四十五億三千二百万ドル、これが六月には七十五億九千九百万ドル、現に七月になると八十億ドルですからちょうど倍でございます。この数字だけでもって非常に外圧が強くなり、アメリカの日本に対する批判があるわけでございますが、この状態は、御指摘にあったとおり、とても円を切り上げるような状態ではない。日本中小企業や零細企業の状態、社会資本不足の実態、特に景気浮揚が行なわれないために輸出というものになり、輸入が行なわれないということによって外貨が積み増しされているということでございますので、この実態をもっと日米間で十分理解できるような状態、私は特に先日もアメリカの友人と会ったときに申し述べたのですが、日本外貨の積み増しをしたといっても、日本の金はみなニューヨークのアメリカの銀行のウインドーの中にあるんだから、日米はとにかく一体になっておるということを理解してほしい、こう私は述べたわけでございますが、なかなか理解いたしません。そういう意味で、いま御指摘になられたような実態、日本のもろさ、外から評価されるほど強いものではないということに対してはもっと積極的に理解を求むべきだ、これは事実そう考えております。
  88. 石川次夫

    石川委員 理解のある答弁をいただいたわけですが、日本の終戦後の経済の再建、これはアメリカに負うところが多いという点で、われわれとしても率直にその恩義は感じなければならぬ、こう思うのでございますけれども、しかしながら、アメリカみずからが国際収支改善とドルの信認保持のためにどれだけの努力をしたんだ、こういう点で大きな疑問を私は感ぜざるを得ないのです。  その端的な一つの例をあげるとベトナムの例があるのであります。ベトナム戦争というのは、私どもの立場から言わせると白色人種によるところの黄色人種に対するいわれなき理不尽な残虐な殺人行為だ、これに対して協力をするというような考え方、政府の態度に対しては強い批判を持っておりますけれども、ここの委員会で論ずる対象ではありませんからその点はあえて申し上げませんけれども、このベトナム関係の費用だけを考えてみましょう。これはユタ大学のクレイトン教授という博士が自信をもって発表した数字でありますから、必ずしも荒唐無稽であるとは思いません。必ずしも全部信頼できるとは思いませんけれども、ベトナム関係が終了をして、そのあと始末のために、一番ピーク時に一体どのくらい費用がかかるかというと二千二百億ドルという数字が出ております。七十兆円以上です。こういうような状態にしておいてドルの権威が推持されるなんということはいかに裕福なアメリカといえどもとうてい考えられない。こういった点の、このドルの信認を保持する努力をこういう面だけから見てもほとんど放棄をしておるという実態の反省をドル自体がしてもらわなければならぬ。アメリカ自体がしてもらわなければならぬ。アメリカはキーカレンシーになっておりますから、アメリカががたがたすると、ほかの国全部切り上げを要求するというのじゃなくて、ほんとうはアメリカ自体がドルの切り下げをやればいいのですよ。そのくらい強い態度でアメリカの反省を求めることこそが、政府のいわれるところのいわゆるパートナーシップの真髄ではなかろうか、こういう感じがするのでありますが、この点の所見があれば承りたいと思います。
  89. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘のとおりだと思いますが、しかし、ドルそのものは国際通貨としては非常に重要に考えていかなければなりません。われわれは、かつてポンドの暴落に対して、十カ国を中心として四十五億ドル、五十億ドルの金を出して、これをささえました。同じように、フランの動揺に対してもささえたわけでございます。ドル防衛というものはアメリカのためだけではなく、自由世界の貿易を、また経済を、通貨価値を守っていくためのどうしても避けがたい一つの問題であるということで、キーカレンシーとしてのドルに対しては、やはりアメリカも日本も共同な関係、それが共通の利益を守ることだということでささえていかなければならない、こう思います。この原則的な考え方は誤りないと思いますから、これはこういう施策を遂行してまいるつもりであります。ただ、一つの現象を見ますと、日本の繊維がふえたり日本の自動車やカラーテレビなんかアメリカに輸入されたりしても、そういうものを制約することによってアメリカの景気が必ずしも浮揚するのかどうか、こういうことと直接関連があるのかということは、すなおな第三者的な批評から見ても、私は必ずしもそう思いませんが、しかし、マイナス的な現象がたくさん露呈しておるときには、やはり反対の人たちの自粛を求めるということになりやすいということも理解できないわけではありません。ですから、日米経済閣僚会議などでは、共通の立場に立っておりますので、具体的に指摘してアメリカの理解を求める、こういうことはいまあなたが発言された趣旨、方向は大体同じであります。
  90. 石川次夫

    石川委員 時間がないので、たいへん残念ですが、二点だけこの問題に関連して申し上げたいと思います。  不況が外貨の積み増しに非常な拍車をかけておるということは定説になっておりますけれども、そのためにいわゆる財政金融政策の機動的運営ということばのもとに、いま財政の支払いが非常に少ない、おくれておる、だからこれを何とか追っかけなければならぬ、景気を浮揚させなければならないというような程度なら話がわかりますけれども、財界の要望に従って国債を大幅にふやすというようなことで景気の浮揚をはかることになれば、これは当然の結果としてインフレに基づくところの物価の上昇ということにつながらざるを得ない、こういう懸念を強く持っております。その点をどうお考えになっておるか。  それからあと一つ外貨というものを有効にわれわれは使いたい。先ほど海外資源の問題、特にエネルギー資源の問題について適切な質問があったわけでありますけれども、これは重要問題でありますから、機会を改めてまた大臣の所見を問わなければならぬと思いますけれども、日本のこまかいプロジェクトを全部合わせたって、向こうのメジャー一社の分にも及ばないというようなきわめて貧弱な、しかもベイルートにたった二人海外情報員がいるだけだということで、ほかの国では四十九カ国ぐらい情報員を回している。まことに大きな立ちおくれです。この外貨を適切な海外協力——もちろんインフラストラクチュアという、向こうの技術を上げる、生活環境を上げる、それからその工場だけつくるのではなくて、あるいは道路も港も全部つくってやるんだというふうな、非常に好意的、積極的な、軍国主義的な意識を向こうに払拭させながら、そういう努力をするということでなければとんでもないことになるのではないかということを懸念せざるを得ないのでありますけれども、この外貨をそういうふうに有効に使おうじゃないかという質問を何回もしているのでありますけれども、担保物件がどうのこうのということで、いままではすんなりと有効に使いましょうという答弁はなかなかいただけなかったわけなんです。しかし今度は、田中実力大臣就任されたので、この点大いに私は期待しております。この外貨というものを有効に使うためには、国内の社会資本充実もそうでありますけれども、海外にも平和的な協力、そして海外資源の獲得に思い切ってこれを使えという体制を早く開いてもらわなければならぬ。困難なことはよくわかっておりますけれども、この二つの点について御意見を伺いたいと思います。
  91. 田中角榮

    田中国務大臣 景気の問題につきましては、私も在野当時、どうも日本経済のベースが大きくなっておりますから、引き締めもなかなかきかない、と同時に、これを浮揚せしめるときもたいへんな時間がかかるだろうということを常に述べておったわけでございますが、やはり結果的に見ますと、景気の状態は低落状態をたどっておるようでございます。大体年率一〇・一%を予定しておりました今年度の成長率は、うまくいって八%、もっとうんと低いという数字がはじかれておるわけでございます。しかもその上に、在庫率も伸びておりますし、鉱工業生産指数も非常に落ちておるということでございます。それは、どういうことなのかと思っておりましたらば、先ほど申し上げましたように、ことしは例年と逆にいたしまして、第二・四半期まで、上半期までに公共投資の七割を発注し、下半期に三割にしようといっておりましたが、参議院選挙までに——引き続いて行なわれた選挙の結果もあるでしょう。公共投資の消化が非常に悪い、そういう意味で公共投資のあとから来る設備投資意欲もなかなかうまくいかない。特に円の切り上げ問題がありますから、どうもいろいろ外貨を使って投資をしても、利息が一体どうなるのかというような問題でなかなか投資意欲もわかないというようなことで、それが輸出ドライブの形になり、外貨の積み増しという悪循環、言うなれば悪循環という形になっておるわけでございます。公共投資を大幅にと言っても、国会の議決を経なければなりません。でありますので、  二千六百億の財投の追加ということでまず第一段を進めたわけでございますが、私たちは、この次には四十六年度予算として現に持っているものがあるのですから、これを全額発注するくらいな積極性をまずとることが第一である。そしてその次にはより合理的な、総括的な景気浮揚政策というものを発表し、実施に移そうという、言うなれば三段階くらいが考えられるわけでございます。いま御指摘になったように重要な点でありますが、公債を一兆円も出してやると、物価問題、その問題は確かにございます。私は、いまの状態で議決をせられた予算の繰り上げ支出を行なうということは相当な効果のあることだと思いますので、その限りにおいては、物価問題と直ちに関連をさせて考える必要はないと思います。  それから第二の財政刺激を行なうということになると、ここで一つのいいテーマが出たと思います。これは景気低落のときにいつでも問題になるのですが、財政景気を刺激するということになると、すぐそこで物価問題が起こるのですが、いまは不景気物価高というような情勢が出ておるわけであります。今度はその財政で刺激をした場合、物価とどこでつながるのか、それは学者や評論家として指数を静かに見るということではありません。物価を押えるためには万全の対策はとりますが、私は、今度は物価問題に直接つなげないで景気浮揚ということが考えられる体制であるというふうに理解をしておるわけでございます。いずれにしても、今月に入ってからの鉱工業生産指数は、対前年度同月比四・数%上がっておるようでございますので、やっとここで景気回復のきざしが見えたかなあというようなところでございます。しかし、相当積極的な施策を必要とすることは事実でございます。手持ち外貨、これは八月、九月になると百億ドルをこすかもしれぬということでございますが、これはいまのような事態に金をためて定期預金にしていくというような状態ではないわけでございます。先ほどの石油エネルギー一つ見ても、いまの何倍、何十倍にしなければならぬというようなことでもございますので、外貨貸し、外貨投資というようなものも十分行なうべきでございますし、同時に円の切り上げは外貨を有効に使えば避けられるのだ、絶対避けなければならぬのだ、そのためには投資意欲というものをかき立てるような状態を政府自身がつくっていかなければならない、こう思うわけでございます。  同時に、個々の企業やプロジェクトだけではなくて、IMFや世銀債の引き受けとかアジア開発銀行に対する出資とか、日本が新しく外貨を使う分野もあるわけでございますから、しかも個別のケースよりも安全な、また日本が応分な協力ができる面もございますので、いままでのようにため込めばいいのだという考えではなく、総合的に外貨はあしたのために合理的な活用をはかるということに切りかえてまいりたい、こう思います。
  92. 石川次夫

    石川委員 時間があと五分では、肝心なコンピューターの自由化重点を置こうと思ったのですが、時間がなくなってしまったのですが、いまの答弁でいろいろ意見もあります。意見もありますけれども、いままでのいわゆる官僚的な答弁でなくて、法律的な制限があるとかいろいろなことではなくて、思い切って外資を活用するのだという道を田中大臣は必ず開くであろう、こういう期待を持っておりますので、その点ぜひ実行できるようにお願いをしたいと思うのです。  円の切り上げの問題について申し上げたいのだが、これまた時間がありません。それでただ意見として申し上げます。これは外国から盛んにいってきますけれども、あくまでも主権に属する問題であって、ほんとうに円の切り上げが必要だということを日本国が判断するまでは断じて外圧というものに負けてはならぬということが一つ。  それからクローリングペッグ制の提唱というものが学者間で出ておりますけれども、本来的にはIMF体制の基盤になっておりますところのアジャスタブルペッグ制というものが基本ではなかろうか。こういうことで国際的な解決をはかっていくべきではなかろうかという感じを私は持っております。  それから円の切り上げの前に先ほど申し上げたようになすべきことがたくさんある。貿易自由化その他を含めてあるのだということで、円の切り上げというものはき然たる主権を確立した上に立って判断をしてもらいたいということを強く要望しておく。これはおそらく御異論がないところであろうと思いますのでそのくらいにいたします。  それで肝心なコンピューターのことについては、武藤さんからも若干の質問があったわけでありますけれども、私もある会社で日本でほとんど最初にIBMを入れたというときの責任者であったという関係でいろいろ関心を持って今日臨んでおるわけでありますが、今日のような発展をするとは夢にも思わなかったわけであります。そこでいま簡単な質疑応答の中で、新大臣はよく重点的に勘どころを押えておられると思って実は感心して聞いておったわけでありますが、このコンピューターの場合は、たとえば繊維問題があり、グレープフルーツの問題があり、いろいろ問題があります。それはそれなりにそれぞれ重要な課題ではありますけれども、このコンピューターのそれとは比重が全く違うという形で重大な問題をはらんでおるという点をひとつ御理解願いたいと思うのであります。これは成長率が年大体三〇%、先ほど来ソフトウェアの問題かありましたけれども、ソフトウエアの分野というのはたいへんおくれておりますが、同時に、日本ではこれはすこぶる成長の可能性の開けておる分野であるという点で、これは日本経済的な立場からいってもたいへんな比重を持つものであるという点が第一点であります。  それから第二点は、この間ランドのほうから極秘文書が暴露されたということもあって、シンクタンクなどがだんだんできてまいりますと、その中心になるのはやはりコンピューターだと思います。その秘密を盗むということも簡単になりましょうが、 ハードウエアを入れればソフトウエアもついてくる。それからいま自由化ということになればIBMに切りかえたほうがよろしいという判断も出てくる。そういう中でシンクタンクでどういうものを扱うかということについては、私は政府と意見が違うのでありますけれども、国の機密に属するようなものもシンクタンクで扱うようになれば、これは全部シンクタンクの記憶装置の中に入るというようなものも全部さらけ出さなければ、向こうのソフトウエアの資料は受けられないということにならざるを得ない。それから端末装置が各家庭の中に入るということもそう遠い将来のことではないということになれば、中枢神経であり、末端神経である、頭脳である、こういうものが外国の資本とそれから本体の自由化、ソフトウェアの自由化ということでどんどん入ってきてしまうということになると、日本の死命を制せられるという危険性がきわめて強いという点は、先ほどの質疑応答で十分御納得のようでありますから、あえて申し上げませんけれども、これはたいへん重要な問題であるという点であります。  それから第三番目に、日本エネルギー産業消費量はどんどんふえるばかりであります。これは例をとっていいますと、二十万トンタンカーをだっと並べて入れてこなければ、十五年後には間に合わないというようなことは、実際問題として不可能であります。どう考えても、エネルギー産業というものと頭脳集約産業、これははしなくもきょうの所信表明の中の第二、第四の中にちゃんと明確にうたっております。頭脳集約産業に集中して転換をはかっていかなければならぬというときの中核産業も、またコンピューターであるということを考えなければならぬ。こういうような点から考えて、ほかのものと同じような同列の順位でこれを考えるわけにはいかぬ。これはさきにネガリストに入れるということにつきましては、外資審議会におきましても、この場における政府の答弁におきましても、はっきりきまっておったわけなんですね、個別審査品目というふうなことに名前は変えましたけれども。ところが、やはりアメリカからの圧力といいますか、そういう強い要望といいますか、それに負けた形でもって急遽態度を変えなければならぬという事情は理解できないことはありませんけれども、電算機に関する限りはその点をよほどしっかり踏まえた体制でもって臨んでもらわなければならぬということを強く要請をしたいと思います。同時に、これはフランスや西ドイツや英国なんかも四苦八苦です。ほとんど席巻されておるというような状態になっているということを見ても、日本はよくもハードウエアの分野では持ちこたえておるといって私は感心をしておるわけなのでありますが、これを何とかさらに伸長して、外国に出ていくという体制にまで切りかえていくためには、自由化の問題を相当慎重に考えてもらわなければ困るという点を申し上げたいし、それから向こうの資本日本資本では二けた違うのです。一けたじゃないのです。とても対等の自由化なんというのでは対抗できないという実態も御認識を願いたい。  それから、いまJECCの強化ということを盛んにやっておりますけれども、この程度のものでは不十分であって、二割程度は官公需なんですね。その分補っている程度、財政投資はその分くらいにしかなっていない。だから思い切ってこれを買い取ったらどうだ。買い取るということも一つの方法ではなかろうか。  それから、標準化という問題がぼつぼつ部分的に行なわれておりますけれども、思い切った統合ができればいいのです。それを目標として標準化というものを徹底的にやらないと、非常にむだな二重役資、二重研究というものが行なわれておる。これに対して政府は強力な指導を行なっていかなければならぬというようなことで、実はこれらについて御感想があれば承って、ほんとうはまだ聞きたいことがたくさんあるのでございますけれども、時間がありません。簡単な御答弁をいただいて終わりにしたいと思います。
  93. 田中角榮

    田中国務大臣 電算機の自由化及び将来の育成強化等に対する考え方は全く同一でございます。私もそのように理解をいたしております。  とにかく端的に申し上げますと、このごろ団地の電話が、非常に安い電話が入ったら全部盗聴ができるということが書いてございましたが、私はその週刊誌の一ページを読んで、それどころではなく、日本の頭脳が全部外国製になった場合、これはえらいことになるぞということを、端的にそう感じておる次第でございます。  電算機そのものが日本の将来のかせぎ高としてのほんとうに大きなものになるということと、それが外に出るように発達をしないと日本の頭脳が外国まかせになってしまうということであって、これはどうしても一年もいっときも早く国際競争に耐え得るような最高のものをつくれるような体制にしなければならない。そのためには政府も思い切った措置、いまのレンタル制度の四千億をどうするとか、それから官公需の二割を買い取るとかというようなことは具体的な当面の問題でございますが、やはり三年というような短い時間に世界最高のものをつくるためには、これは集約化もしなければなりませんし、協業化もしなければなりませんし、また政府も思い切った税制上、金融上、財政上の措置を行なう。これは、エネルギー源を確保するよりももっと積極的な姿勢で行なっていかなければならないものである。これはやはり七〇年代の日本の国内政策、産業政策のポイントだということを考えておりますので、施策に遺憾なきを期してまいりたい、こう存じます。
  94. 鴨田宗一

  95. 近江巳記夫

    ○近江委員 限られた時間でございますので、その中で何点かの質問を申し上げたいと思います。そういうわけで、かけ足の質問になろうかと思いますが、御了解いただきたいと思います。  まず初めに、日中問題についてお聞きしたいと思いますが、大臣所信表明にもこのようにおっしゃっております。「また、対中関係につきましては、ニクソン訪中決定という新たな事態をも念頭に置きまして、日中貿易の今後のあり方について検討を進めてまいる考えでございます。」と、このようにおっしゃっておられるわけでございますが、あくまで念頭に置いてということであって、そして今後検討を進めていきたい、このようにおっしゃっておられるわけですが、大臣はどういう決意で、また基本的な姿勢でいかれるのか、中身をひとつここで述べていただきたいと思うわけです。
  96. 田中角榮

    田中国務大臣 ニクソン訪中を待つまでもなく、日中間は長い歴史のもとにあるわけでございますし、いうなれば日本の今日の文化は中国文化の恩恵を受けて今日にございます。しかも一衣帯水、隣国でもございます。また三十五億の地球上の人類のうち、八億に近いともいわれる八億有余ともいわれておる大きな国が隣に存在をするわけでございます。一九四五年、第二次戦争終結のときから二十有六年も正式な交流のないこと、これは遺憾と言わざるを得ません。そういう立場で、日中の友好増進のために、国民の大多数がそういう考えであると思います。  私は、通商産業行政責任者でございますので、その立場から申し上げると、まずほかの問題にはやはりいろいろな問題が現実的にあると思う。しかし商売の上では、これは必要な品物はどこの物であっても買うわけでございますし、だれだから売らないということでは商売道は成り立ちません。これはそういう意味で、過去も現在も将来も、貿易拡大ということはぜひ続けていかなければならない、こういう考えでございます。日中間の貿易過去十年間をとりましても、大きくはなっておりません。大きくはなっておりませんが、少なくとも年々前進を続けておるということでございます。日中間八億数千万ドルでございますが、この間輸入、輸出の状況から見ますと、三分の一が輸入であり三分の二が輸出であるという片貿易である。まあ買っていただく分くらいは当然こちらも買わなければならない。これは商売道徳でございます。八億という隣国の状態から見ますと、この八億ドルというようなものがいかに小さい数字であるかということがわかりますが、しかし、これはだんだんと大きくなっていきますように努力を続けてまいるということが基本的な考えでございます。また、この貿易をしていくことによって、いろんな未解決の問題についておのずから解決の糸口になるだろうという希望も持っておるわけでございますので、私自身は、日中貿易量の拡大ということについては積極的な姿勢でまいりたい、こう考えます。
  97. 近江巳記夫

    ○近江委員 そこで、もう少し内容に入りたいと思うのですが、その解決の糸口としていろいろな問題が現実にあろうと思います。  そこで輸銀の使用の問題これはもちろん吉田書簡にからんでおるわけでございますが、この輸銀使用についての大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  98. 田中角榮

    田中国務大臣 対中国貿易で輸銀を使用いたしませんということではございません。これは、私は大蔵大臣在職中、昭和三十八年には、倉レのビニロンプラントは私のときに踏み切ったわけでございます。実行したわけでございますから、これはそういう前例を持つ私であるということをもってお考えいただけばいいことではないかと思います。
  99. 近江巳記夫

    ○近江委員 それほどの前例をお持ちの田中大臣でございますが、ところがケース・バイ・ケースということになっておりますが、実際上は行なわれたことはないし、あるいは結局政府へ出してもケース・バイ・ケースということではねられるということで、輸銀を使用する潜在的なプロジェクトというのはたくさんあると思うのです。ところが、現実には通産省のほうにもなかなか出ておらない。これはケース・バイ・ケースと言うけれども、それは結局ことばだけであるということはみんな知っておるわけです。そういう点で、ぜひともこの実行については力を入れるべきではないかと思うのです。繰り返すようでございますが、もう一度大臣にお聞きします。
  100. 田中角榮

    田中国務大臣 バイ・ケースで処置いたします、こう言っておるんでございますから、実際それは出てこないというのではなく、出させないのだろうというような話もございます。私は、通産省がこれを押えるというような意味で行政指導をやって出させないのでは絶対ないということを明確に申し上げておきます。いままでもしありとすれば、これは全くの憶測でございますが、他の貿易に対する影響等のためにお出しにならなかったのか、もしくは適当なプロジェクトがなかったのかということだと思います。しかし、このごろの新聞を見ても、社会的な情勢を見ても、また情勢は変わっておるようでございますから、適切なプロジェクトがあって出てくれば、当面する問題としてバイ・ケースで処置いたしたい、こう思います。
  101. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、ココムの緩和については、この前拡大していくという表明もあったわけでございますが、食肉の輸入でございますけれども、御承知のように、大石さんあるいは田川さんを長とした調査団が口蹄疫の心配についてはないというようなことを発表されておられるわけです。政府も一時食肉の輸入決定されたわけですが、結局それがストップになってしまっておる。そういう点で食肉輸入ということが非常に大きな問題になっておるわけでございますが、これについて大臣は今後どういうお考えで臨んでいらっしゃるか、この点についてお聞きしたいと思います。
  102. 田中角榮

    田中国務大臣 肉の消費量はどんどん上がっておるということも事実でございますし、また物価の問題から考えても、食肉の輸入は弾力的に考え輸入量をふやしてまいらなければならないということも事実でございます。中国には買っていただくものが非常に多いわけでございますが、しかしその見返りとしてこちらが買う米も現実的には買えない状態でございます。そういう意味で日本が必要なものといえば、肉などは当面する最もいいものであると思います。ただ、そこに口蹄疫の問題がございますが、これは私も自由民主党の役員の当時、政府側との折衝でこれらのものの輸入に踏み切った立場のものでございます。しかし、その後農林省の技術官の異議等で実行されておらないようでございますが、この口蹄疫の問題に対しては処理する方法はあるわけでございます。これは船の中で煮沸するとかかん詰めでもって入れるとか、また島を使うとか、そんなことはしなくても、日本の技術は現地で十分口蹄疫などに対して判断ができると思います。私はこういう問題に対しても、日中間の貿易の推移によって当然出てくる問題と思いますので、まあ国民の健康を守らなければならぬということは当然のことでございますが、入れないための理屈をつけてというようなことは排除しなければならない、こう思っております。
  103. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、関税の問題でございますが、いま二十三品目について非常に格差があるわけでございます。こういう点、今後日中貿易拡大考えていかれる基本的な大臣のお考えからいきますと、やはりこれはまずいのじゃないか。国内業者の保護という点であれば、別途のそういう対策は当然立てるべきである、このように思うわけです。たとえば生糸なんか中国は一五%関税がかかっておりますが、韓国は七・五であるというようなこともございますし、この点、二十三品目のこういう格差の問題についてどういうお考えであるか。もしなんでしたら、こまかい点になれば局長さんでもけっこうでございます。
  104. 中村俊夫

    中村説明員 お答えいたします。  ケネディラウンドを実施いたしますときに、中国が国交関係回復いたしておりませんために、国定税率を適用しておるということから関税格差ができまして、これの改定につきまして政府といたしましても努力をしてまいりまして、四十四年度にはエビ、ロジン等三百五十一品目、四十五年度に干しブドウ等四十品目、四十六年度に活性炭その他で三十一品目、現在御指摘のように二十三品目なお関税格差が残っておりますが、これは今後とも中国が主として関心のある品目について、国内産への影響考えながら前向きに格差解消につとめてまいりたいという方針をとっております。
  105. 近江巳記夫

    ○近江委員 前向きにということはいつもおっしゃっておるわけでございますが、大臣、重ねてえらい恐縮ですが、その問題について大臣からお答えいただきたいと思います。
  106. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、先般の予算委員会での質問に対してもお答え申し上げましたように、ココムの品目等も大幅に減じていくべきであるということを申し述べたわけでございます。中国との国交がないために特別な関税率を適用しなければならないというようなことは、いまの状態からだんだんと、というよりも積極的にこれが解消につとむべきである。そのために影響を受けるということになれば、影響を受ける国内産の保護政策をあわせて行なうべきでございます。しかもこれらは国民生活の必需品でございますから、物価問題等から見ると、特に消費行政という面から見るとどうしても関税は下げなければいかぬし、特にケネディラウンドの推進中心的な役割りを日本はになっておるわけでございます。大体自由化政策というのは、戦前の日本の要求がそうなんです。そういう意味で、かかる問題ありとせば解決のために迅速な手段をとるべきだ、こう考えます。
  107. 近江巳記夫

    ○近江委員 もう一点だけ中身のことでお伺いしたいのですが、この事前許可制度、四十六品目あると思うのですが、これも現状からすれば非常にずれておるのじゃないか、このように思うわけです。この事前許可制度については今後どのようにしていかれるのか、それについてお聞きしたいと思います。
  108. 中村俊夫

    中村説明員 お答えいたします。  御指摘の四十六品目につきましては、アメリカが中共からの禁輸品目がございまして、その関係から日本の輸出に悪影響のないように日本側で現産地証明をとり、また中共からの輸入につきましては事前許可をいたしておったわけでございます。これらの品目につきましては、最近アメリカ側も禁輸を解除いたすことになっております。したがいまして、現在四十六品目の大部分につきまして事前許可の廃止を検討いたしておりまして、近く決定を見る予定になっております。
  109. 田中角榮

    田中国務大臣 いま事務当局が申し述べましたような方向で検討を進めておりますが、鶏卵、クルミ等若干の品目、約六、七品目と考えられますが、これについては国内産保護という観点から直ちに行なうことはむずかしいと思いますけれども、残余の四十品目近いものは事前許可の対象からはずすという考え方でいま作業を進めております。
  110. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、特に政府は今後総合的に対外経済政策推進について八項目の対策をお立てになっておられるわけですが、国内の中小企業に与える影響一つずつ検討していきますとかなり出てくると思うわけです。その点、この中小企業に対する対策ですが、その根本的な姿勢といいましょうか、ひとつ大臣の決意を聞かしていただきたいと思うのです。
  111. 田中角榮

    田中国務大臣 まず第一番目に、円の切り上げを行なうということになれば、これはもう中小企業、零細企業たいへんな影響でございますから、これは絶対に、中小企業や零細企業という特殊な業態を持つ日本としては厳に円切り上げを行なわない、円平価の切り上げは行なわない、こういうことです。そのためには全力をあげますと言っているわけです。これは一つには中小企業、零細企業対策でもある、こう考えます。しかし、同時に自由化は進めなければならない。自由化を進め、一次産品等の自由化が進むということになりますと、これはもう国内の中小企業、零細企業、一次産品業者の業態として、自由化に対応できないものがたくさんあります。これは国際競争力に対応できるような保護措置を行なうということと、業態の整理もまたやむを得ないものに対しては、適切な表現じゃないかもしれませんけれども、スクラップ・アンド・ビルドということにもなる面もあると思うのです。そういう転業をどうしてもやらなければならない面については、転業資金等を出したり税制上の優遇措置を行なったりということは迅速にやらなければいかぬ。どうも、もう二、三年後には明らかに転業しなければならないものについても、あたかも永久に営業を続けていけるような錯覚を起こされることは適切な政治ではなかろう、適切な行政ではない、こういう考えでございますから、やはり日本的に、日本の状態として長い歴史を持つものの中で、意思ある者に対しては助成を行なう、そして転廃業するものについてはそれなりの措置も行なうということも具体的に考えながら、処方せんどおりに政策を実行していく、こういうことだろうと思います。
  112. 近江巳記夫

    ○近江委員 その次に、少し角度が変わるのですが、沖繩の海洋博が通産省を中心に進められているわけでございますが、大臣として今後の沖繩の復興ということを考えますと、この海洋博というのは現地でも非常に好評をもって迎えておるように思います。そういう点、今後この海洋博についてどういう基本的な姿勢で臨んでいかれるか、また具体的に進んでおられるようでございましたら、この機会にお話し願いたいと思います。
  113. 田中角榮

    田中国務大臣 沖繩返還を契機として海洋博を実行したいということはそのとおりでございます。いま調査費五百万円ばかりで沖繩の琉球政府及び日本の財界、産業界等と十分連絡をとって、その規模、実施の様態、その他——ただ沖繩復帰に対する記念事業ということではメリットが少ない、これは将来実効あるものにしたいということで、いま検討を進めております。  私は、通産大臣として通産省に参りまして、やはり沖繩に対して二つ考えを持っております。その一つは、軌道に乗りつつあるこの海洋博というものをひとつ実現をしたい。しかもこれはいろいろ法律上の、国際法に基づくものでございますから、国際的慣例に基づくものでもあるので、この間大阪でやったではないかといいますが、しかしそういうことよりも、沖繩博の実現ということに全力を傾ける、こういうことで実現をしたいと思います。この沖繩博というものは、将来の沖繩の姿がちゃんと図面や数字で描かれるような希望あるものにしたいという考え、熱意を持っております。  もう一つは、沖繩で生まれ育った人たちが本土に全部渡ってこなければならないということでは困るので、沖繩に対する二次産業開発というものをひとつ考えて、沖繩の労働力は沖繩に定着できるようにして、それで本土との所得の平準化を早急に進めよう、そのためには相当大きなプロジェクトが考えられなければなりません。そういうことで、やはり沖繩の国民総生産、国民所得を上げるための二次産業、ワンセット開発というものに対するものに対しては思い切った税制上の優遇が必要である、こういうことでこれから財政当局とも真剣な協議を進めてまいりたい、こう考えております。
  114. 近江巳記夫

    ○近江委員 それから、実はこの前スウェーデンのほうに対潜水艦用のヘリコプターですか、スウェーデンの海軍に対して川崎重工が七機を輸出契約をした、こういうニュースが伝わったわけでありますが、この点相手は海軍でございますし、明らかにこれは軍用であるということであります。従来政府は共産圏あるいは紛争当事国あるいは国連が武器輸出を禁止している国、これは三原則として輸出を認めないという態度でこられたわけであります。そういう点、スウェーデンはこれは該当しないかと思いますけれども、御承知のようにいま非常に四次防におきましても五兆八千億というような計画もされておりますし、今後やはり国内の兵器産業が非常に成長をねらっておる、こういう姿勢で兵器産業が来ております。昭和四十四年の五月二十八日と思いますが、日本兵器工業会の総会で、一、防衛産業における生産協調体制の確立、二、国防技術の開発、情報交換など部会活動の強化、三、東南アジアへの兵器輸出の実現などを決定したということを一部聞いたこともあるわけでありますが、そういう姿勢で今日来ておりますし、将来そのように生産体制ということが整ってきますと、当然この武器輸出ということが考えられるわけであります。そういう点、政府のこの三原則だけではたして歯どめがきくのかどうか、こういう点いま非常に心配しておるわけであります。この七機を通産省が許可されたかどうかまだ知りませんけれども、こういうことが一つの前例となって、さらに東南アジア方面へも今後そういう武器が輸出されるということになってきますと、それでなくても日本の立場というものはむずかしい状態でございます。その点この武器輸出に対する根本的な考え方、また政府の姿勢をひとつ伺いたいと思います。
  115. 田中角榮

    田中国務大臣 世界に類例のない平和憲法を持つ日本でございますから、いかに輸出のためとはいいながら死の商人にはならない、なってはならない、こういう基本的な姿勢を持っていることだけは御理解いただきたい、こう思います。日本でつくった兵器によって直接戦闘が開始されたり、戦争が拡大されたり、紛争が長期化したりというような、実戦に直ちに採用するような、影響するような武器の輸出については、従来どおり三原則を厳に順守してまいるということには変わりはございません。  それから、ウスェーデン向けのKV107という問題については、これはスウェーデン向けの輸出について川崎重工業と、同社のスウェーデン代理店との間にすでに輸出契約が締結されておる話を聞いているだけでありまして、同社からの輸出の許可申請は出ておりません。早晩出てくるかもしれません。出てくると思います。出てきた場合には慎重に対処いたしますということよりもこの基本的な問題、これを契機として将来無制限にこれが拡大していって三原則そのものが空文化しては困るので、そういう問題とも関連して十分検討の上慎重な結論を出したい、こういうことでございます。しかし、戦闘ということではなく、これはなかなか兵器というものとの区分けはむずかしくなってくると思うのです。きのうも参議院でもちょっと問題がございましたが、いままではだめであった飛行機でも中国にも共産圏にもちゃんと売っておりますし、日本から広州貿易によって銃座や砲座を持たない大型トラックでもどんどん買っていただいておるということでございます。銃座や砲座をつくればすぐ戦略物資になり戦闘用具になるじゃないかというけれども、これはやっぱりそんな考えではなく、新しく評価をされるものだと思いますので、新しいものさしをつくりながらその中で対処してまいりたいと思います。
  116. 近江巳記夫

    ○近江委員 いま大臣も新しいものさしというお考えをお述べになったわけですが、われわれ公明党としまして、この間の六十五国会におきましても、当委員会にも兵器の輸出の禁止に関する法律案提出しておるわけです。ですから、政府のほうもただ三原則ということではなくして、大臣も将来心配されておられるわけでございますから、兵器の輸出を禁止するという法律までつくられる、そこまでの決意はおありかどうか、お伺いしたいと思います。
  117. 田中角榮

    田中国務大臣 必要があればということになるでしょうが、しかし、こういうものは出さないのだということを法律にすることまでないのじゃないか、こう思います。私は研究した結果じゃありませんが、オウム返しのお答えになるわけでございますが、これは国際的にも議論をされておりますし、多角的な角度から検討し結論を出されておるものでございます。特にこういう会議がございまして、与野党の間でこんなものを出してはいかんじゃないか、これは出したほうがいいじゃないか、こういうことが議論をされる中でございますので、必ずしも準拠法、制限法が必要であるとは考えませんが、これはやはりお互いに議論しながら日本が非難を受けない、少なくとも平和に背反をするようなことの起こらないということを原則にしていくべきだと思います。
  118. 近江巳記夫

    ○近江委員 終わります。
  119. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次は川端文夫君。
  120. 川端文夫

    川端委員 大物大臣といわれる田中通産大臣を迎えていま質疑することを非常に喜びとするものでありますが、きょうは時間の制約もありますので、二点にしぼって質問してみたいと思うのです。  まず、対米経済改善の問題と、もう一つ大臣就任直後に新聞記者発表において国際調整法をつくっていきたいということを発表されたと伝えられておる問題について、大臣から答弁をいただきたいと思います。  そこで、私ども民社党としましても、いたずらにアメリカ帝国主義なんというような非難をしないで、できるだけ友好を深めながらアメリカとも仲よくする、どこの国とも仲よくしたいという党の方針の上に立って今日まで努力しておるわけですが、いま起こっているいろいろな諸問題の、特に経済問題のアメリカとの関係の中に、やはり七〇年代に入って大きく変化を求めてきているような動きを察知せざるを得ないのじゃないか。特にアメリカの繊維の問題にしろ洋食器の問題にしろ、幾つかの問題の折衝の中に、われわれが理解に苦しむような問題点を多くかかえてわれわれに投げかけてきておるように思えてならぬのです。このことはアメリカの現在の国際通貨という立場から見て、ドルの信用を回復するために一面アメリカの立場に立てば理解はできるとしても、われわれ日本としての立場からいえば、戦後の国際経済はガットの場において自由主義経済という立場でお互いに国際信義の上に立って今日まで貿易が行なわれてきたと思うのですが、最近のこのアメリカからのいろいろな日本に対する要望というか圧力というか、こういうものはほとんどが保護貿易主義にかわってものを言っているとしか考えられない、こういうふうに受け取らざるを得ない面が多いように思います。  そこで、これも新聞の報ずるところによるわけですが、田中通産大臣が生まれたということは、この険悪化しているアメリカとの経済事情を改善するための使命を帯びて大臣になったのだということを新聞は伝えておるわけですが、これらのいま申し上げた問題点に対して、大臣はどのような方法でアメリカに対しての経済険悪化を改善するのか、方策をお持ちであるならばお示し願いたいと思うのです。
  121. 田中角榮

    田中国務大臣 日米間が一面険悪な状態とさえいわれるようなことになっていることは不幸なことであり、これはどうしても一日も早く解消するべく全力を傾けなければならない、こう考えております。またそのためには、九月の初めには日米貿易経済合同委員会がございます。引き続いて日加経済閣僚会議も行なわれるわけでございます。またそれに引き続いてIMFの年次総会も行なわれるわけでございまして、改府の経済閣僚はほとんど全員渡米をする機会を持つわけでございます。そういう意味で、われわれはその機会をとらえ、またそれまでに至る期間でも日米間でいろいろ協議をしながら、官民一体となって日米間に誤解ありとすればその誤解を解かなければなりませんし、また日米間で再確認することによってもっとなごやかになることであるならば再確認をすればいいということでありまして、やはり日米間に一部存在することに対してはすなおに認めて、それを解決するための強力な行動を起こすべきだと考えております。私は率直に言って、通産大臣就任と同時に、まず日米間というものを軌道に乗せよう、こう申し上げたのはそれを意味しておるわけでございます。  なお申し上げれば、そこまで申し上げる必要ないかもわかりませんが、やはり一つ日米間の歴史的な背景というもの、それはマーシャルプランによって日本経済を復興し、ドレーパー勧告によって賠償の撤去が取りやめられたというようなことを申し上げなくても、十四条国から八条国に移行する過程において、どのようにアメリカを中心としする国際機関が日本経済のささえになったか、またアメリカの輸銀やアメリカの市場が日本経済のためにどのようなひいきをしてくれたかということも事実でございますし、また現在も将来も日米関係というものは、これはウエートが非常に大きいものでございます。ですから、対米貿易が三〇%、四〇%ふえておるというような事態、同時にアメリカにおいて現実に六・二%という高い失業率の中にある。日本製品が三〇%、四〇%アメリカに入ることが直接の原因だとは思いません。これはシェアからいえば二%から四%、多くても六%というのですから、たいしたことではないと思いますけれども、しかし、やはりお互いの間に誤解やわだかまりがあることは不幸であり、将来の経済交流に対してマイナスはあってもプラスはない、こういうことで両国の信頼回復のために全力を傾ける、こういう考えでございます。
  122. 川端文夫

    川端委員 先日来の、国会が開かれてからの総理大臣田中大臣の予算委員会等における質疑の答弁から見て、そのまま受け取れば何も心配することはないじゃないか、こういうふうにも理解できるのですが、業界はそう見ていない。あるいは一般国民はそう見ていない。ここに問題を明らかにしていただきたいとわれわれが質疑せざるを得ない理由があるんじゃないか、こう御理解いただきたいと思います。たとえば新聞に出ておる中においても、いま言うように繊維問題においては七月一日から日本の業界の自主規制が始まったのだから、いま直ちに何らの動きをなす必要はない、しばらく見ようということは幾たびか総理大臣通産大臣もお答えになっていることを私も聞いて知っております。しかしながら新聞等の動きを、ときどき報道を見ると、そうではない一面が絶えず動いておる形において報道されておるから、いまは国会の開会中はそういう答弁しておくけれども、相手に対して、アメリカに対して九月の日米経済会議の前に繊維問題を切り札として犠牲にするのではあるまいか、こういうことが伝えられておるわけです。しかもこの新聞等によりますと、今月の九日の日に佐藤総理は近日繊維業界の委員長というか会長になられる帝人の大屋会長に会って、政府間交渉を現在のいわゆる業界の自主規制をそのままに切りかえることでどうだろうかという相談をかけられたと新聞の記事では伝えておるわけです。しかしながら業界としては、自主規制そのものをそのまま政府間交渉に切りかえるということをいわれても、一度そういう政府間交渉の形になれば、やはり順次圧力によってくずされていくおそれがあるのじゃないかという懸念をして、そこでこの新聞によれば、田中通産大臣の動きを注視しなければならぬと書いておるわけです。これらの問題は当面の国会答弁と違った動きが出ておるところにやはりいまの政府の言われていることそのまま信用できないという問題になっているのじゃないか、こう思うのですが、この点いかがですか。
  123. 田中角榮

    田中国務大臣 日米間の繊維の問題に対しては、いま申し上げておるとおりいま自主規制が行なわれ始めたばかりでございますし、しかも被害の程度も判明しない状態でございますので、誠意をもって自主規制が行なわれること、この自主規制に対してアメリカ側業界も政府理解を示されることが望ましいという態度以外にはございません。しいて申し上げれば、アメリカ側はどうしても日本の自主規制に不満があるということになれば、これは日本に対して政府間交渉を求めるといっても、いま法律上政府間交渉、政府間で妥結ができるような状態にない、そういう法律下にないということでございますので、やはりアメリカとしては今度は立法手段に訴えるということになるかもしれません。その場合は、繊維だけではなく鉄やいろんなものまで含めてくるかもわかりませんが、そういう事態が起こらないように、そこまでいけば先ほど第一段に申し上げたように日米間の感情は破局的になるわけでございますので、そんなことが起こらないように私たちも繊維問題に対しては誠意をもって自主規制が実行され、向こうに認められるように努力を重ねてまいる、こういうことでございます。こちらのほうもいまの状態において現行法で政府間協定をもし行なわれると仮定をしても、業界がとても聞くような状態ではございませんので、そういう状態において繊維の自主規制なるものが発足をしたという歴史的な事実、これはミルズ法案を成案をせしめないためにはどうしても不満であっても自主規制を行なわなければならないというその対案として踏み切った一つの政策でございますので、これはやはり見守っていく、現時点においてその姿勢が一番正しいと思います。
  124. 川端文夫

    川端委員 ポスト佐藤といわれておる田中さんから、そういう強い決意を聞いて私どもも安心していいように思うのですが、巷間伝えられるところによれば、ニクソン・佐藤会談において沖繩返還話し合いの中にこの繊維の問題をある程度約束されて帰っておいでるというのが一般に流されている情報です。したがって、いまアメリカとしては不信行為であるということで佐藤さんにかなり非難が出ておるとも伝えられておるのだが、そのことが先ほど冒頭に言いましたように、われわれは何もアメリカに横車を押そうとしておるのじゃない。ガットの精神に立脚して、国際経済を平和裏に円満に遂行していく努力をお互いになすべきだということで先国会以来この問題に取り組んできているのだから、いまの形が、いま新聞を朗読しましたように、国会では強い態度を言いながら、裏面ではもうすでに妥協の道を探しておるということのないように決意をもってこの問題を処理できるかどうかということを申し上げようとしているわけで、この点を十分理解して今後さらに決意を固めて日本の国益のためにがんばってもらいたいことを特にお願いしておきたいと存じます。時間の関係上、そこで対米問題はしばらくの間新大臣の行動をわれわれは監視というわけではないけれども、先ほどからのお話によって見守りたいということを申し上げておきたいと存じます。  そこで、大臣就任早々に記者会見等において国際経済調整法の構想と、あるいは一般会計予算の中に産業関係調整費の項目を新しくつくりたいということを発表されたと伝えられておるわけですが、事実でありましょうか。事実であれば内容をできるだけ具体的にわれわれにわかるように説明願いたいと思います。
  125. 田中角榮

    田中国務大臣 産業経済国際化が進んでおることは私が申し上げるまでもないことでございます。なお、日本の国際的な地位、特に経済的な面における日本の地位が格段に大きくなっておることも事実でございます。またこれから、いままでは管理をされるような状態、言うならば十四条国の日本でございましたものがもうすでに八条国に移行してから足かけ七年目でございます。七年目にしては異常なことといわれるほどの経済成長、特に八十億ドル、百億ドルに手特ち外貨がなるのではないか、こういわれておるわけでございますし、日本経済攻勢というふうに相手国にとられておる。特にアメリカにそうとられておるというような状態でございますから、国際的な面に対しても日本は今度責任を負わなければならない立場に立っておることは事実であります。そうすると、先ほどあなたが御指摘になられたように、ガットとかOECDとかDACの会議とか、またアジア開発銀行とかIMFとか世銀とか、そういう国際的な機関の中において避けがたい日本の地位や義務も生じてきております。また特にもう時代は東西問題から南北問題に移行しつつございます。そういう意味からいって、ケネディラウンドの推進ということに対しては日本はその主要な、言うなれば自由諸国家の十の国家の一員としてこれを推進しなければならないという立場でございます。特に自由化は戦前の日本の要請でもあったと思うのです。貿易立国をもって立たなければならない日本、これは戦前、戦中、戦後、将来を通じての日本一つの宿命だと思います。そういう意味で自由化に対応していかなければならない。貿易為替の自由化ということでございますが、これは国内的に見るといろいろな問題がございます。特恵関税一つ与えるということに対しても、その面に対する国内産業というのはたいへんなものがある。ところが、戦後つくられた憲法、諸制度、諸法規は全部国会中心主義、というよりも法律主義をとっておるわけでございます。その意味では、非常にテンポの早い国際的な問題に対処するにはちょっと不向きなところもございます。これは関税率の問題もしかりでございます。物品税率もしかりでございます。産業的な面に対する応急的な予備費制度の問題もしかりでございます。予算総則にそれを書くことによってできるじゃないかということもございますが、しかし、なかなか一般会計の問題に対してそういうことだけではできない面がたくさんございます。そういう意味で、特にその上に中小企業、零細企業というものもございます。そういうことから考えると、国際経済の動きに対応する調整的な機能というものを政府に与えてもらわないと、臨機応変な処置というものができない。これは長いこと研究されたものでございます。財政当局もこの試案は持っているはずだと思います。特に外務省当局もそうだと思いますが、そんなことで私たちも党におる時代からこのような問題を考えておったわけでございます。しかし、国会の権能の問題もございますし、議員立法の限界という問題もあるでしょう。また、現実的に対応しなければならないいろいろな制度とどう調整するかという問題でございますので、私は無理にこれをどうしようというのではありませんが、次の国会ぐらいには政府部内の意見をまとめて、国会の皆さん、各党との間に御相談をいただけるようなことが望ましい。そうでないと、日本は後手後手になって、実際においてテンポの早い国際情勢、特に日本の国際場裏における協定に対応できる政策が適確に行なえないという面もありますので、でき得べくんばそういう制度が望ましい。ただこれはいま願望の状態でございまして、これは具体的に試案を出せといえば出せると思いますが、政府としてまとまっておるということではないわけでございます。
  126. 川端文夫

    川端委員 大臣の今日の国際経済化という時代、これに対応する構想というか、推進力というものに私は敬意を表しながらお尋ねしておるわけですが、日本のような特殊的な事情というか、中小企業の多いこの経済事情の中においては、この構想は中小企業を対象にして考えておいでると承っておいてよろしいかどうかということです。
  127. 田中角榮

    田中国務大臣 その主たる分野はやはり中小企業、零細企業、国内産業ということでございます。
  128. 川端文夫

    川端委員 産業調整費の問題になるわけですが、次の予算編成前に項目を起こして一つ予算を立てたいという大臣の構想のように承るわけですが、この調整費は輸入自由化なり、あるいは外資の進出等の問題がありますから、必要であることは私は認めるわけですが、その中身の中に、今年ですか、特恵対策臨時措置法を法律化したわけでありますけれども、これらの中のものとして考えられる一つの方法としては、産業構造の変化に伴って当然、先ほどからの御発言の中にもあったわけですが、中小企業の転廃業を含めたこれらの問題を考えざるを得ないという見方をされているのかどうかということ、あるいは転廃業に対して、したがって補助金を出すとか、従来のような金融税制処置だけでは不可能という見方に立っておいでるのかどうかという点を承っておきたいと思うのです。
  129. 田中角榮

    田中国務大臣 実態を考えてまいりますと、いままではただ育成強化という面だけを言っておりましたが、現実問題としては避けがたい転廃業もあるわけでございます。そういう意味では、石炭に対してスクラップ・アンド・ビルドということばを初めて出したわけでございます。スクラップということばを政治的に出すことは、なかなかこれはむずかしいわけでございますが、これは石油やその他のエネルギーの状態から見てスクラップ・アンド・ビルド、両方一緒であるが出さざるを得なかった、中小零細企業の問題に対しては、避けがたい面があると思います。そういう場合に、いつまでもいつまでもやっていけるのだというような錯覚を持たしめて適切なる施策を行なわないとすれば、その責めはやはり政治が負わなければならないと思います。そういう意味で転廃業も事実必要であるとするならば、政府責任でしっかりとした政策をスピーディーに合理的に行なえるような制度はどうしても必要である、こう思うわけでございます。
  130. 川端文夫

    川端委員 まとまっていないせいもあるが、お話はまだ十分われわれ納得できない。従来の法律との違いが、言うなら特恵対策法なり繊維工業構造改善——特繊法のような問題とどこが違うのか、どこをどう違わしていったほうがより効果的か、こういう点は私どもは新聞を通して田中構想なるものを感ずる場合に、従来の単なる融資や税制だけではだめだ、思い切って補助金も出して転廃業の踏み切りの機会を与えていきたいという構想のように考えてみておるのですが、そう受け取ってよろしいですか。
  131. 田中角榮

    田中国務大臣 転廃業がこの主目的ではありません。国際情勢変化、国際協調という現実的な問題に対して起こり得る国内問題に直ちに対応できるような政府の力、制度というものがどうしても必要である。ところが予算は単年度主義でございますし、制度は全部法定主義でございます。しかも款項別に法律を制定するなど非常に強い法定主義をとっております。そういう意味で、いままで長い間新しい憲法制定後弾力条項が入れられたものは、私は考えて次の二つくらいしかないと思うのです。その一つは、予算総則に特記することによって、その期間内の収入費用が特定の款項目に流用できるというようなことが行なわれました。それによって電電公社などは大きくなったわけでございます。もう一つは年々勧告される人事院勧告というようなもの、これは予見しがたいものではなくて、予見されるものでございますが、千億円という予備費を拡大してこの中で処理をするというような二つぐらいしかないと思うのですが、経済問題はとてもこのような状態で処理できるものではない、私はそう思います。特に国内産業、特に零細中小企業は、まともに影響を受ける問題でございますので、やはりもう少し弾力的なものが必要である、こういうことでございます。
  132. 川端文夫

    川端委員 私は、新構想でない、前から研究されておった問題であるとの御意見でもあるし、この点に対して強力なものをつくっていただきたい。いままでこの委員会でたびたび申し上げておりました国際化とあわせて、日本中小企業の分業化というか、専門化というか、こういう方向に向かっていくためにもやはり強力な施策なくしてはできないのではないか、こういうように考えて、いままでもそのことを主張してまいっておるわけですが、新しい構想としていま発足を見ようとしている前夜に対して、勇気をもってひとつ英断をお願いしておきたいと思います。  ただ一つつけ加えたいのは、この国際調整法の中に、いま大臣は適用変化していくいい面を言われているわけですが、やはり最悪の事態の場合に、転廃業やむを得ないというときに、企業だけを見るのではなくて、特に今日の中小企業には中高年の、年齢層の高い従業者が多いわけです。これらの従業員のことも考えて、それらのことも含めていくというお考えがあるかどうか、承っておきたいと存じます。
  133. 田中角榮

    田中国務大臣 御指摘になられたようなもの、特に地域的なものもございます。それぞれの特性を救済できるような、調整できるような、真に調整法に値するものを考究してまいりたい、こう存じます。
  134. 川端文夫

    川端委員 時間が間もなく……(「時間だ」と呼ぶ者あり)まだあるんだよ。無理に時間を引っぱらぬでもいいけども、おくれていたんだから。  ただ、大臣にこの点に対してはぜひやってもらいたいという考え方をもって、内容的には後日また大臣に申し上げる機会もあろうと存じます。ただ、いまの景気の問題に対して、先ほどからの質疑の中にありましたけれども、言うなら円切り上げの問題がもやもやしているものでありますから、いわゆる日本経済を浮揚化するのには、設備投資がやはりある程度活発化してこなければ、全体の動きとしては景気浮揚しないんじゃないか、こう見られる場合があるけれども、その場合においても円の問題がどうなるであろうか。円の問題はいろいろやりませんといっても、先日の佐藤総理の発言の中にも百六十億ドルたまれば円の切り上げをせざるを得ないだろう、こういう発言もあったわけですが、これは新聞記者会見において言われたようですが、百六十億というものは十分の根拠をもって言われたかどうかわかりませんけれども、これを裏から言うならば、やはりある程度日本外貨がふえた場合においては円の切り上げをやりますということを宣言されたようにも聞き取れるように思うのです。この点では、やらないと言いながら、ある時期がくればやらざるを得ないというこの迷いが、かえって産業界に影響を与えているのではないか、こういうふうにもとれろので、この点は言いにくい問題もありましょうけれども、円の切り上げに対しては、表のたてまえと腹とは違うという態度でなしに、一つの方針をすみやかに立てるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  135. 田中角榮

    田中国務大臣 総理大臣も述べておりますように、円平価の切り上げは絶対に避ける、こういうことでございます。いま御指摘になったように、こういう問題はやらないやらないといってすぐやったり、公定歩合の引き上げ引き下げと同じようなことでございますので、それだから信用しないのだ、そういう意味で切り上げた場合のリスクをどうするのだということで、外貨そのものも投資はできないのだということもございます。私はそういう意味でこの問題たいへん重要な問題と思いますが、いまの中小企業や零細企業をかかえておる実態からいって、円平価の切り上げというのができるような状態じゃないのだ。だから絶対に行なわない。行なわないための施策はあわせて行なっていく。こういうことで円平価切り上げだけは絶対に避けるということで、これは腹も口も一緒でございます。
  136. 川端文夫

    川端委員 終わりますが、答弁要りませんが、ただ一つ、そうであるとすれば、佐藤さんの繊維交渉の問題に対する発言を見ても、一方では政府間交渉はやらぬと言いながら、業界にいろいろ圧力をおかけになっている。こういう姿が信頼できないということになれば、早くやめてもらって、田中総理大臣をしてこの条件を早く実現してもらうように、言行一致の政策をとっていただきたいことを要望申し上げて私の質問を終わります。
  137. 鴨田宗一

    鴨田委員長 午後二時十分再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時三十六分休憩      ————◇—————    午後二時二十一分開議
  138. 鴨田宗一

    鴨田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。松尾信人君。
  139. 松尾信人

    松尾(信)委員 けさほどからだいぶん質疑がかわされまして明らかになったのでありますけれども、重複を避けまして、そしてさらに強力に推進していくべきであると思う点について申しますので、次々と回答願います。  最初に、社会資本充実の問題でございます。いま保有外資が七十億ドルとかというようなお話しも出ましたけれども、これは成金みたいなものでございまして、内容的には非常に貧弱だ、ストックがない、こういうことであります。でありますから、弾力条項発動で大いにやっていこう、これはまことにけっこうなことである。さらに二千六百億から二千億を追加していこうかというような姿勢も出ておりますけれども、いままでのこの道路だとか、または住宅、下水、また公害その他を考えますると、いかにもそういう社会環境の整備というものが非常におくれております。他方、国民総生産と所得というものの格差も非常にございます。そういう面におきまして、思い切って社会環境または社会保障というような問題を含めましてうんとやっていくべきである、いまのお話のようなことではこれは足らない、こういうことを私は強く感じまするので、午前中のお答えで大体わかっておりますけれども、さらにそういう面において思い切った施策をなさる考えが今後あるかどうか。午前中のお答えでは不十分である、このように私は感ずるから、重ねて聞いておる次第であります。
  140. 田中角榮

    田中国務大臣 社会資本が不足をしておることは御指摘のとおりであります。このような状態になりましたこと自体に対しては、予想以上に成長が伸び過ぎたということもございます。また、都市集中が行なわれましたので、社会環境の整備が非常におくれ、社会資本の立ちおくれになっておるということでございます。しかし、いま申し上げたような結果、予算規模もだんだん大きくできるようになりましたし、外貨そのものが七十億ドル、八十億ドルというふうに積み増しをされており、景気刺激をして輸出の促進をしなければならないような状態にありますことは、一つには社会資本充実にとっては好機であるともいえるときでございます。  実質的には四十七年度予算から長期的な見通しに立った社会資本の拡充が大きく浮かび上がるわけでございますが、当面する問題としましては二千六百億の財投の追加、これだけで済むとは思いません。新聞に財界方面一兆円の国債などと報道せられておりますが、これが一兆円という国債発行が可能かどうかということは別にいたしまして、いずれにしても相当大型な財政刺激を行なわなければならないような状態であることは事実でございます。いままでは政府の見込みが小さかったのです。私がいまから五年ばかり前に、政府に六十年の国民総生産の試算をしてもらったことがございますが、七十五、六兆円ということでございました。あのとおりの試算であるならば、今日もうすでに七十五、六兆円になっておるわけでございますから、十七、八年間の予測が五、六年間で達成をしておるということになるわけでありますので、公共投資社会資本の拡充がアンバランスになったことはまずここにあると思うのであります。ですから昭和六十年度国民総生産七十五、六兆円、四十五年度ベースに一〇%ずつかけていきますと、昭和六十年には三百兆円になるわけでありますから、三百兆円になるか二百七十兆円で押えるべきかは別にいたしましても、それから逆算をしてバランスのとれた社会資本とはどうあるべきかということでひとつ進めたい、こういう考えでございます。
  141. 松尾信人

    松尾(信)委員 大いにそういうことを考えてやろう、私はこのように理解します。  次には貿易資本自由化の問題です。これはいままでも事あるごとに業界その他の反対がございます。そして混乱といいますか、きょうもグレープフルーツ等で長崎県からもはるばる参りまして、困ったというような実情を訴えておりますけれども、一つ一つにこのような反対、それに伴う混乱というものが起こっては相ならない。いままではそういうことがあるものですから、どうして補償するか等の問題でややおくれたという面もありますけれども、今後ともにこの資本自由化とまた貿易自由化につきましては、やはり基本的なものをがっちり固めておきませんと、一つ一つの問題でまた反対が起こったり混乱が起こるんじゃないか、こう思います。で、これはこうやるんだという一つの歯どめですね、そういうものをひとつ政策的に確立されまして、そして納得の上にどんどんそういう施策を必要な施策でありますから進めていく、これが大切ではないか。  まず、農業関係で申しますると、いまもわあわあ言っておりますけれども、やはりそこには政府基本的な姿勢が確立されていないんじゃないか。これはこの重要商品につきましてどのぐらいの需給度でいくんだ、これはどのようにやってどの分を輸入するんだというような、やはり需給度等を中心考え一つの大きな基本がなくちゃ、一つ一つの問題でやろうとする、反対する、そこにごちゃごちゃ混乱が起こる、また補償の問題等でそれが長引く。これはやはり私は納得させない、基本というものを確立しない政府にも大きな責任があるんじゃないか、こう思いますが、まず農業関係につきまして農産物、今後どのようにしてそれの自由化をやっていくのだという、その自給度等の歯どめの問題、これをまず伺いたいと思います。
  142. 田中角榮

    田中国務大臣 国民が消費をする食糧は、主食ばかりではなく、食糧そのものが自給体制にあることは望ましいことで、ございます。望ましいことでございますが、しかし、そういう公式論が必ずしも通用する世の中ではないわけでございます。地球上百三十余の国がございますが、この問題の中で一番重要な問題はもう力、バランス・オブ・パワー、要するに東西の対立時代ではないとされております。これは南北時代、いわゆるこれらの国々、言うなれば三十五億の地球上の人類が同一水準で生活できるようにすることが一番望ましい、それが平和維持の唯一の道だ、こういうことでケネディラウンドの推進とかいろいろな国際機構が設けられておるわけでございます。七〇年代の一番大きな課題として各国が取り組んでおるものでございます。特に日本貿易立国の国でございますから、低開発国、後進国等から原材料を得ておるわけでございます。原材料を得ておると同時に、これが生産品は諸外国に買ってもらわなければならないわけでございますので、やはりいつまでも食べるものは自給自足するのだというのでは通らないわけでございます。ですから、外国から入れるためには低関税、ある場合には関税を設けない、フリーにするということ、これはやはりある意味では避けがたいものでございます。またそうしなければ、日本貿易立国としての立場も堅持されないわけでございます。ところが長いこと十四条国時代からずっと貿易為替の管理が認められてきた特別の国が八条国に移行しても十四条国時代のものが抜け切らないという面もあると思います。もう一つは外圧によって、外国から圧力をかけられたときに、ネゴシエーションをして、それで一つでも少なくしようということをやっているわけです。ですから、あらかじめ年次計画等を立てて、そしてこうせざるを得ないと思いますので、国内的政策はこうしましょう、予算的、税制的な措置はこうしましたということをやると手の内を見せるような感じになりますので、どうしても自由化はやらないのだ、やらないのだと声を大にしておって、最後のどたんばで調整ができたのでこれだけやることにいたしました。そうなると、国内政策は常に後手、後手になってくる。問題の欠陥はここにあると思います。  ですから避けがたいものであり、言うなれば日本自体が自由化政策を進めなければならない、それを主張しなければならない、国是ともいうべきことであるということであるならば、やはり中小零細企業を持つ日本としては、もっと長期的な青写真を国民の前にちゃんと出して、そしてもう少し明確な転廃業まで含めた至れり尽くせりの万全の措置をとるべきである。どうしても石油が入ってきてから石炭のスクラップ・アンド・ビルドをやったのですけれども、民主政治としてはぶつかってからのほうが納得しやすい、しかしけがも大きい、こういう調整は政治みずからがとるべきものだ、基本的にはそう考えておりますし、通産行政はそんな角度から積極的に進めてまいりたい、こう思います。
  143. 松尾信人

    松尾(信)委員 わかりますけれども、そういう趨勢である。しかし、一つ一つの問題を起こさないように、やはり園芸作物についてはこうするのだという一つ日本の自給度をある程度きめて、こういうものはこういうように輸入するのだ、そういうものを策定して納得させて、そうして自由化というものを進めていくべきであろう、私はこういうことを言っておるわけです。簡単に……。
  144. 田中角榮

    田中国務大臣 そのとおりでございます。
  145. 松尾信人

    松尾(信)委員 次は、工業製品関係でありますけれども、これはなかなかアメリカの要望が強うございます。資本自由化の問題これも千分おわかりのとおりでありますけれども、アメリカの国際企業、多国籍企業、現在一千百億ドルの海外投資の残がある、こういわれておりますけれども、これは資本自由化を要求するのは当然だと思います。現在そのようにして世界じゅうにアメリカ資本は進出したわけでありますから、その結果、ぼくはちょっとここは大臣と意見を異にするのでありますけれども、先ほどのお答えの中からイギリスの例なんかをあげますと、もつ製靴機械だと  かカーボンブラック、カラーフィルム、ミシン、  タイプライター等の企業におきまして、アメリカ資本の市場占有率がすでに八〇%以上占めておる。農機具とかアルミニウム、電子計算機、ライター等々の企業は六〇%から七九%をアメリカ資本で占めておる。五〇%を占めておる企業も相当ございまして、一口にいえばほとんどアメリカ製品がイギリスの経済を支配しておる、このようにいわれています。  先ほど電算機につきましてお話がありましたけれども、これもすでにやはりフランスは五%、西独二〇%、イタリアは一六%、そういう非常に低いからこの際やはり外国のものを導入していくのだというようなお説と先ほど解しましたけれども、それは私の誤解かもしれませんので、間違っておれば訂正していただきますけれども、やはりここには資本自由化についても一つの限度があるのじゃないかということなんです。どこに歯どめを置くかということなんです。これをやはり考えていきませんと、自由化を急ぎますとこのようなイギリス等の例を踏んでいくのではないか。そうして失業率の問題にいたしましても、この膨大な投資をしておるアメリカの多国籍企業が国内産業というものに目を振り向けていくならば、相当アメリカ国内における雇用率はふえるわけでありますから、日本の輸出の増加によって失業率がふえたというようなことはほとんど当たらぬのではないかという感じもするわけです。  もう一つは、アメリカには国内から出ることのできない企業というものがあります。これは一生懸命になってアメリカの市場をやっておるわけでありますけれども、これは資本自由化でどんどんアメリカから出ていくということになるのは反対じゃないか。その従業員だとか組合は、それだけ投下される資本が外国に出るわけでありますから雇用の機会は減るでありましょうし、失業率の緩和にはならぬというような面もありまして、幾ら日本資本自由化を進めましても、こういうグループの企業保護貿易的な傾向というものは阻止することはできないのではないか、こう思うわけでありまして、アメリカにも二つの企業がある。やんやん言っておるのは多国籍だ、もう一つの分は一生懸命になって日本の急激な輸出の伸長の自主規制を望んでおる、こういう両々相まった問題をかかえておるわけでありますけれども、やはりここにはわが国としては歯どめというものをつくっておきませんと、ことごとに問題を起こすであろう。残存ネガ個別審査の分もやがて十業種、八業種、七業種というふうにどんどん来ますけれども、やはりここは基本的にものをきちっとされて問題の起こらないようにみんなが納得した上でこれを進めていかれるというふうなものをお考えになっていらっしゃるかどうか、こういうことをあわせて聞きたいと思います。
  146. 田中角榮

    田中国務大臣 OECDに加盟をいたしておりますので、資本自由化を進めなければならない、これは原則でございます。しかし、資本自由化を進めなければならないということと、お互いの国がお互いの責任を持ちながら、安定した経済の状態を保持しながら諸外国に迷惑をかけないようにしていくためには、一定の限度を守らなければならないということは背反することではない、こう思います。これはポンドがたいへんになると課徴金制度さえ認めるわけでございます。お互いが金を出して、そして課徴金制度を認めてポンドをささえなければいけない。フランにおいてもしかりであります。ドル防衛に対してもしかりでございます。それは、そういう国々が経済的不安定になったり破産をしたりすれば、その国だけで済まないで、全世界に影響するということでございますから、それはもう原則的には、総論的には当然自由化を促進しなければいかぬ。しかし、各国の特別な事情によっては、いろいろな調整が行なわれることは当然のことでございます。私が先ほど申し上げた電算機に対する自由化の問題は、逆におとりになっておるようでございます。電算機は将来の日本の代表的産業、輸出製品になる、もう一つは、早く国際競争力をつけないと、日本の頭脳自体が外国製のものになってしまう、こういうことですから、せめて日本人の頭脳だけは日本確保したいということ。そういう意味では技術革新を進めなければならぬ。だから、自由化というものにはおのずから限度がございます。これを誤って早く自由化をやった例はヨーロッパにございます。その結果、西ドイツでさえもシェアは一〇%でございます。イギリスやフランスは二%、三%になったから、前車のくつがえるを見て後車の戒めとなすということで、電算機もあえて半分しかやらなかったのです。こういうのですから、これは逆でございますので、御了承のほど願います。
  147. 松尾信人

    松尾(信)委員 やはり歯どめをきちっと、そうして言うべきは言い、認むべきは認める、このような姿勢を今後ともに貫いていただきたい。  それから日中の問題は、同僚議員が先ほど質問しまして非常に明快なお答えをいただきまして、私のほうからはもうあえて聞くことはありません。おっしゃったとおりに、今後はそれを実行してもらいたい。これを一言要望しておくにとどめます。  次は、外貨準備の問題でございます。先ほどもおっしゃったとおりに、現在日本が七十一億ドルですね。この内訳でございますけれども、米ドルが五十五億ドル余あります。特別引き出し権、SDR、これが二億七千六百五十万ドル、それから金が六億四千百万ドル、IMFの準備が六億五千、このような内容でございまして、先ほど、たまった外貨をじょうずに使っていくんだ、うまく資源その他のためにも使っていくというお話で、基本的には了解しております。わかります。しかし、この外貨準備の内容自体もやはり大事ではないかと私は思う次第です。でありますから、この米ドルの保有が多いではないか、金の保有をだんだん多くしていったらどうか、公的にも、または民間のいろいろの金の需要がございますけれども、そういうものをある程度金の輸入自由化したらどうか、このような意見も相当出ておりますけれども、外貨準備の内容自体から申しましても、また日本における金の値段というものは非常に高うございます。調べたのがあるわけでありますけれども、一オンスの公定価格が三十五ドル、ロンドン相場が三十七、八ドル、四十一ドルになったこともございます。日本の市場における現在の相場が約六百八十円ですが、三十五ドルという公定価格は円に直すと四百三十二円になります。これに比べて相当高い。ロンドンの相場が円に換算して四百九十七円になります。これから見ても高い。また、金の密輸入が相当多いわけですよ。私もあなたが大蔵大臣のときに税関の監視部長をしておりまして、このような密輸入を一生懸命防いだものでありますけれども、なかなかこれがわからぬ。やっと税関等であげましたのが、四十三年が二百一件、六百八十二キログラム、四十四年は八十七件でうんと減っておりまして百三十四キログラム、四十五年が百十二件で二百五十三キログラム、これは密輸入を発見して押えたものでございます。これを押えますのは、十ぺんに一回見つかっても、もともとだというくらいの彼らの密輸の商売でございますから、発見し得なかったものがどのくらいあるか、これは想像にかたくありません。この四十五年の密輸の二百五十三キロも、いまの日本の相場にしますと約二億円近くになります。やはりいま日本にたくさんの金の需要があるわけですよ。そういうものがいま為替管理その他で押えられておる。また外貨準備の内訳から見ましても、金の保有というものは少ないのじゃないか。両々相まちまして、ひとつもう少し金に対する輸入を認めていくとか、外貨保有の内訳を変えていくとか、こういう考えはございませんか。
  148. 田中角榮

    田中国務大臣 一月に四十四、五億ドルだったものが、六月の末には七十五億九千九百万ドル、現在はそれよりもはるかに大きくなっております。この中に占めふ金の保有が六億ドル近くだと思います。これが十四条国から八条国に移った三十九年現在では二十億ドルのうち三億ドルくらいだと思いましたから、二十億ドルと七十五億ドル以上といいますと、金の保有量はもう少しふえてもいいのじゃないかという計算は成り立ちます。成り立ちますが、金は御承知のとおり、へたをすると金価格をつり上げたり、また金本位制問題をかつてフランスが持ち出したようにいろんな問題が起こります。ですから、いまIMFにおきましても金価格の引き上げということの表現には非常に慎重な態度をとっておるわけでございます。日本としては、できるならば外貨保有高の中に占める金を多くするにしくはありませんが、しかし日本はそうでなくともドル保有でもっていろいろ文句を言われているときに、金相場維持に対してさえも何かやったような考え方を持たれることは、どうも芳しいことではないわけでございます。ですから、IMFの債権を肩がわりするとか、それから南アでもって売り出したときに国際機関を通じて買い入れるとか、それから国際機関そのものが金でもって日本に割り当てるとかというようなことで、今日の外貨準備の中に占める金が積まれたわけであります。これこそ対米協調の中でアメリカと日本が十分了解をして金というものをだんだんとふやしていく、これは減らすことは反対でございまして、ふやすことですが、しかし特に産金国が喜ぶようなこともできませんし、そういうことで慎重にしながら、外貨保有高の中に占める金保有額はふやしていくということでございます。  それで、民間の金の需要量が多いのでこれを自由にしたらどうかということにも問題がございます。しかし、問題があるが、押えることによって密輸がどんどんと行なわれるということでは困りますので、これらの問題は財政当局とも十分連絡をとりながら通産行政の中でうまく処理してまいりたい、こう考えます。
  149. 松尾信人

    松尾(信)委員 いまお話がありましたけれども、この外貨準備の中で金の保有というものの各国の実際をお調べになったらいいと思うのです。日本はけた違いに低うございます。その点はひとつよく今度は検討されまして、いまおっしゃったとおり、方向をひとつはっきりさせていただきたい。  最後に、輸出金融、税制の問題でありますけれども、中小企業に対する配慮ですね、八項目の中で輸出助成措置としての金融、税制を逐次廃止していくんだというような一つ考え方が盛られておりますけれども、これはそういう金融、税制によって輸出を量的にふやそうというのじゃありません。あくまでも内容を変え、構造を変え、そうしてりっぱな新製品をつくって、多様化する市場にこたえていこうというのが本来の輸出金融または税制の措置なんです。それをやみくもに削ろう、削ったらいいんじゃないかという考えには賛成はできません。特に中小企業関係につきましては、ただ一つ、製品を多様化し、頭を生かした新たな商品をつくって、輸出の面におきまして伸びていく以外に中小企業の生きていく道はないわけです。ですから、こういう輸出金融、税制につきましては、そういう意味におきまして大いに日本の輸出産業の内容を変えていくんだ、多様化していくんだ、特に中小企業に対しては思い切った施策をいたしませんと、特恵関税等の追い上げ等で非常に困難になってくるんじゃないか。またアメリカの保護貿易的な傾向、また資金がかねがね非常に足らないというような面も勘案されまして、今後これをどのようにやっていこうとなされるか、これを最後に聞いて終りたいと思います。
  150. 田中角榮

    田中国務大臣 輸入為替の自由化は進めなければならない。しかし、日本には中小、零細企業という、これに対応する施策を必要とする特殊な業種がございます。しかもこれは歴史的にも長いものであるし、日本固有のものであります。人口比率から見ると、千数百万人の人口を擁するものであります。また輸出に寄与しておる率から考えても、この中小企業の取り扱うものは膨大もないものでございます。ですから、自由化は進めなければならないが、中小企業、零細企業に対する施策というものは徹底的にやらなければいけない、こう思います。これはただ中小企業に対する対応策をやるということではなく、国際競争力を持たせるようなものに指導、育成をしなければならない。これは金融だけではどうにもならないと思うのです。私は、税制上の問題一つ考えますと、自由に直接市場から資金を得られるような大企業は低い税金でやって、同族会社だけが高いというのは、これは逆だと思うのです。私は大蔵大臣時代から言っておるのです。危険負担の大きい中小企業は、市場から資金を得るわけにはまいりません、これは親類縁者、友人知己から金を集めて、危険をおかしながら営業しなければならない。この税率は逆に半分でなければならないのです。なぜ同族会社なるがゆえに高いのか、これは税の学問の上で誤りがあると私は考えております。そういう面にまでメスを入れなければ、中小企業というものは救われない。やはり中小企業がスクラップ・アンド・ビルドに面した場合、みずから業種変更さえもしていけるようなものを持たなければならない。それはやはり税制をほんとうに抜本的に考え直し洗い直す中小企業、零細企業対策が必要だ、こう考えております。
  151. 松尾信人

    松尾(信)委員 以上で終わります。
  152. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次に、中村重光君。
  153. 中村重光

    中村(重)委員 きょうは、鴨田委員長初の委員長席においての委員会ですが、きょうは日程に従って時間はみんな厳守しておるわけです。ところが、各党を問わず委員出席率の悪いこと、これではもうどうにもならぬと思うのです。けさも理事会で、委員長にそのことを強く要請をしたわけですが、明日からこういったことがないように、私ども理事も注意をしてまいります。委員長もその点強くひとつ委員各位に要請をしていただきたい、そのことを要望しておきたいと思います。
  154. 鴨田宗一

    鴨田委員長 了解しました。
  155. 中村重光

    中村(重)委員 田中通産大臣就任されまして、実力大臣らしく通商政策の重要な点について諸施策を発表しておられるわけです。きょうは、入閣されまして以来六年目の入閣であろうと思うのですが、そうした大臣が発表された諸施策中心に、各委員からそれぞれ質疑が行なわれたわけです。それに対しましてもきわめて的確な答弁が実はなされているわけです。  私は、きょう大臣がお答えになりました中で、中国問題についていま一度ひとつ大臣の決意のほどを伺っておきたいと思うのです。  先ほど来、中国貿易の振興というものが、日中友好のとびらを開くものであるという意味のお答えがありましたし、未解決の問題がこれによって解決をしていくであろう、輸銀使用の問題についてはみずから実績を持っておる、今度は輸銀の使用が申請に基づいて認められるような措置を講じていきたい、そのような意味のお答えが実はあったわけであります。私どもは総理大臣からも各大臣からも、いわゆるケース・バイ・ケースなんだ、申請があればこれを認めていく方針であるけれども、申請がないのだ、また吉田書簡にいたしましても、これは私信であるからこれを廃棄するとか廃棄しないとかいう問題ではないというような、きわめて通りのいいことばでもって、長い間日中貿易あり方、輸銀使用の方向を見守ってきたわけであります。きょう田中通産大臣も、やはり申請があったならばこれを認めていくという態度であるということを明らかにされましたが、従来の通産大臣からお答えがありましたケース・バイ・ケース、きょう田中通産大臣がお答えになりましたケース・バイ・ケース、何かしらことばは同じであっても質的に変わってくるのではなかろうかという期待が実は持てるわけであります。通産大臣はきょうお答えになりましたような、明らかにされました方針に基づいて、むしろみずから積極的に業界に対して、プラントの延べ払い輸出、輸銀使用ということについての意思がないのかどうか、どうして申請がないのかという業界の意向を聞くという積極的な態度が望ましいのではないか、その上に立って、申請があったならばすみやかに輸銀使用を認める決意であるということをこの際再度明らかにしていただきたい、そのように思うわけです。
  156. 田中角榮

    田中国務大臣 この問題は私も佐藤内閣の閣員の一人として申し上げておるのでございますから、私の発言に対して佐藤総理大臣、外務大臣、その他歴代通産大臣が述べておることと本質は変わっておりません。変わっておりませんが、いままでは何か政府が、輸銀使用案件を出しても、プロジェクトを出しても認めないんだと言っておるのじゃないかとか、こういうふうな見方をされておりましたが、いまの時点において政府がそんなことをしておるとお考えにはならないと思います。私はそういう情勢だと思います。そこで、私は日本通商産業省の代表でございますから、必要なものは共産圏がらも買います、共産圏が必要とするものは売ります、チンコムはもうすでにない、ココム品目も大幅に緩和すべきである、そういう提案もいたしたいと存じます。いたしたいと存じますということは、いたしますということを述べているわけでございます。ですから、私はそれなりの申請があればその時点において処理をしてまいります。ということは、政府や通産省が、業者にそういうような意思があってもそれを何らかの形で押えようという立場には絶対に立っておらない、こういうことだけは十分理解していただきたいと、こういうふうに思います。
  157. 中村重光

    中村(重)委員 ただいま通産大臣のお答えですね、情勢変化、全くそのとおりであると思います。そういったような意味からも、ケース・バイ・ケースで申請があったならばこれを認めていくという態度、きわめて積極的な態度である、そのように私は理解をするわけです。ところが現実問題として考えてみなければならないことは、吉田書簡は私信である、廃棄すべきとか廃棄すべきでないという問題ではないということにしましても、この吉田書簡というものが、台湾と日本との間の約束事として延べ払い輸出、輸銀使用というものを拘束をしておったという事実は私は否定することのできないものであると思うのです。そこで今度は政府が輸銀使用を認めていくということになってまいりますと、台湾がすなおにこれに同意をするのであろうか、私は抵抗が予想されると思うのです。その点からいたしますならば、当然私は台湾との調整というものがなされなければならないのではないか、政府はこれに対してどのようにお考えになっておられるのか、すでに輸銀使用という問題について台湾政府との間に話し合いが進められておるのか、情勢変化に基づいてこれから積極的に調整に乗り出そうとお考えになっておられるのかどうか、その点いかがでしょう。
  158. 田中角榮

    田中国務大臣 私は、就任をしてからこの問題について中華民国政府と交渉したという事実はありません。私はあまりそういうことを考え理解を求めてということになりますと、これは私信でございますといっておるようなことよりも、もっと新たな問題が出てくるわけでございます。バイ・ケースで処理してまいりますということは、政治的な配慮がなくそう言っておるとしたらば、私はそれが一番いい姿だと思います。だから私は、輸銀使用でなければならないとかいろいろなことにこだわっておること、これは中華民国政府と中華人民共和国との二つの問題の中に介在するいろいろなむずかしい問題と軌を一にして論ずることになると思うわけでございます。しかし、商売というものはそうではなく、ちゃんと進んでおるのでございます。日中貿易も一九六七年から五億五千八百万、五億五千万、六億二千五百万、八億二千三百万と、とにかくふえておるのです。そのうち覚書貿易にウエートが置かれた場合もありますし、友好貿易に戻っている場合もございます。一つずつ解決してきております。私はこういうことさえもいま検討しておったわけでございます。またいろいろ聞かれておるわけでございます。いまスエズがとまっておる、いま現金払い、キャッシュ払いでもってやっておる肥料の輸出という問題に対して、これは何か市場の支払い条件などいまよりも変わりませんか、こういうような話も問われております。私はそういう問題に対しても、お隣の中国がそれを望むならばわれわれも真剣に考えるべきじゃないか、こういうことであって、輸銀使用というものだけにこだわるということではなく、中国貿易というものを解決していくための具体的な問題をバイ・ケース、一つずつの申請に基づいて条件を考え、またそのときの支払い条件、金利その他を考えていくということで十分消化できるものだというふうに考えております。
  159. 中村重光

    中村(重)委員 輸銀使用の問題については、まあいままで歴代大臣、私も商工委員会に十数年いるわけですが、各大臣からこの吉田書簡の問題、輸銀使用の問題については実は聞いてきておる。たとえば椎名さんの答弁、これは実に率直な答弁であったと思うのですよ。輸銀使用、これをやりたいと思うのだけれども、何としても台湾の了解を受けなければならないのだ、これが一番難問題だというお答えであった。それから宮澤通産大臣も、輸銀使用の問題についてはこれはプラントの種類ということだけではなくて、台湾との通商上の問題、それらの点を配慮しなければならない、いわゆるケース・バイ・ケースというのはこの点に相当ウエートがかかっておるということを明らかにされた。この点は検討事項として、どういうことを考えておるのかということについて田中通産大臣の見解も伺ってみたいと思うのですけれども、そういった点からこの輸銀使用というような問題は重要な問題なんですから、これはどうしても議論しなければならないのです。いま大臣は数字をお示しになって、輸銀使用という形で、いわゆる長期延べ払い輸出に対する輸銀使用は行なわれていないけれども、相当伸びておるではないか、こう言われた。縮んだ年もあるが、伸びておるということはこれはそのとおりです。しかしながら輸出入の、貿易というもののいわゆる伸びの絶対額というものから考えてまいりますと、八億の人口を持つ中国との貿易という面については、私はこれはもっと大きく伸びる余地というものはあるであろうということを考えるわけなのです。それといま一つは、ヨーロッパ諸国が中国市場をめざして相当活発な貿易の展開をやっておること等と比較をいたします場合に、現在おあげになりましたような数字、現在あらわれておりますような数字というもので満足しておってはならないと思います。  それから、いま大臣が新たな構想、実は私は新聞を読んだとき感じたわけでありますが、日中貿易拡大全力をあげる、それは輸銀使用問題などという小さなことよりも、もっとほかにまだ日中貿易拡大の方法は絶対にある、このように述べておられるわけですね。これは新語というか、これもきわめて通りのいいことばなのです。では実際問題としてどういうことを構想しておられるのであろうかという点、またとり方によっては、輸銀使用というようなものが台湾との関係上やっかいな問題なんだから、まあそれはできるだけそっとしておいて、ほかにもっと積極的にやることがあるのだから、通産大臣にみずから就任した以上はそういうことでやるのだからこれを信用しろ、こういうことで業界を説得し、議会に対してもそういう了解を取りつけるという底意なしとしないというようにも私は考えるわけです。だから、それじゃ具体的にどのようなことを大臣が構想しておられるのか、それらの点をひとつこの際明らかにしておいていただきたいと思うのです。
  160. 田中角榮

    田中国務大臣 具体的には、具体的な要請があったときに考え、決断をすべき問題でございますが、しかし、私が過去の問題から述べますと、倉レのビニロンプラントに対しては、これは前の、佐藤現総理通産大臣のときにきめたものが、ちょうど私が大蔵大臣のときに最終的に処理をしなければならなくなったと思います。ですから、そういう事実は前に存在したわけであります。そのころもうすでに輸銀問題が起こりつつあったのですかな、起こりかけておったと思いますが、実際的な要請があるならば、民間金融機関が一つや二つやっておるので問題になるので、いまは中国側に問題がございます三原則、四原則、その当時は別なほうに問題があったわけです。ココムを規制するというような方向で別なものにあったわけです。そんなことであるならば、民間の金融機関がシンジケートをつくって窓口になるという方法もあるじゃないかと、真剣に検討したことがございます。この問題、村田省蔵さんが訪中をせられたころの問題でございます。それから、前の答弁で私は申し述べましたが、いま肥料問題に対して、キャッシュ払いということが原則でございますが、新通産大臣就任後の問題として、これを延べ払いということが適当であるかどうかはわかりませんが、少し分割払いでできる道はありませんかと、こういう要請があります。こういうものに対していまさだかな結論を出しておるわけではございませんが、こういうものが必要であるとしたならば、それを消化するにはどうすればいいのかということをいま考えておりますと、こういうことでありますから、まあものによっていろいろな交換条件や対価の支払いはあるのですよ。いろいろあるのですから、そう狭い立場でだけこれを処理しなければならないということではなく、まあ売り手と買い手の間にはいい知恵が出そうなものだ、あるんだというふうに考えておって、いろいろなものが出てからじゃおそいぞ、出ないうちに出る可能性のある事態を想定して通産事務当局はいろいろなことを研究すべしと、こう申し上げておるのでございます。
  161. 中村重光

    中村(重)委員 議論をしても議論をしても、弁舌さわやかな、そして巧みな田中通産大臣の弁舌にどうも巻き込まれてしまうような感じがする。  そこで、参議院の商工委員会から通産大臣に二時間質疑をしたいという連絡を実は受けております。二日間の常任委員会、一日は参議院ということが、これはまあ当然だろうと思いますから、いまからおいでになっていただきますが、そこで、冒頭申し上げたように、通産大臣は従来の経緯にとらわれることなく、プラントの延べ払い輸出に対する輸銀の使用をやる決意であるのかどうかということを、この際きっぱりとお答えをいただきたいということと、いま一つは、中国に対する特恵関税供与、これもさきの国会において実は相当議論されておる問題でございますから、これに対する方針をこの際ひとつ明らかにしていただきたい。
  162. 田中角榮

    田中国務大臣 特恵の問題につきましては、時間もちょっとありませんが、考え方だけは前から申し上げておるとおりでございます。これは中国自身が後進国ということで申し出るわけはないわけであります。また申し出なければ特恵を与えることはできないというような制約があるようでございますが、この問題に対しては、いままで答弁申し上げておるとおりと理解していただきたい。また別なことが考えられるならば、それはその後の問題として申し上げたいと存じます。  輸銀の問題は、私がいままでるる申し上げておりますように、輸銀の問題そのものについては、輸銀というよりもバイ・ケースでそのような問題が出ましたら、日をおくことのないように結論を出します、しかも対中国貿易に対しては、通産省としては買っていただいておるものが大きいだけに、あまり片貿易にならないように向こうのものも買えるようなことで努力をいたしたいと存じますし、また中国貿易拡大をする方向に対してあらゆる努力をいたします、こう申し上げておきます。
  163. 中村重光

    中村(重)委員 いや、大臣、私は先ほど来申し上げておるように、プラント類の延べ払い輸出に対して輸銀使用を、申請が出たならばすみやかにこれを認める決意であるのかどうか、輸銀使用の問題についてしぼってお尋ねをしておるわけですから。全体的な考え方はわかるのです。
  164. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、私も継続しておる佐藤内閣の閣僚の一員でございます。本件に関しては佐藤総理大臣が答弁しておるとおりでございます。この答弁に対して食い違い、間違いはありません、こう申し上げておるのですから、これでひとつ御理解ください。そして日中貿易拡大の方向については対処いたします、こう申し上げておるのですから、これで御理解いただきたい。
  165. 中村重光

    中村(重)委員 大臣、けっこうです。  それでは、企業局長鉱山石炭局長に崎戸の製油所の問題について簡単に質問をしますから、お答えもひとつ簡単に願います。  長崎県西彼杵郡崎戸、かつての炭鉱があったところです。ここへ製油所を建設するという計画が着々進められておる。もう具体案もできているやに実は新聞報道されているわけですが、通産省はこれを御承知であるのかどうか、またそうした具体案をもって設置をしようとする業者からの申し出を受けておられるのかどうか、ある程度の検討はなされておると思うのですが、これに対する御方針はどうなのかそれをひとつ伺っておきたい。それぞれお答えください。
  166. 莊清

    ○莊説明員 三菱鉱業の崎戸の製油所の問題につきましては、最近企業側から、将来崎戸に製油所を建設する意向を持っておるという話は聞いておりますが、たとえば企業形態をどうするかとかあるいは生産規模等具体的にどうするかという内容につきましては、私、まだ具体的な説明を受けておらない、そういう状況でございます。今後そういう点について具体的な企業計画が企業側で固まりまして、正式の申請がありました場合には、石油業法にのっとりまして慎重に検討の上措置をいたしたい、こういうことでございます。
  167. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、時間がないから企業局長もうよろしいです。  そこで、四十九年を目ざしておるようですが、それに間に合うためには四十六年度の審議会にかけなければならないのだと思うのです。いまのような、まだ検討もできていないということのようですが、四十六年度に審議会にかけて四十九年を目ざすということが、はたして間に合うのかどうか、その点いかがでしょう。
  168. 莊清

    ○莊説明員 お説のとおり、四十九年度に間に合わすためには、今年秋に予定されております石油審議会に付議いたしませんと間に合わないと思いますが、大体九月か十月ごろ予定いたしておりますので、そのときまでに企業計画が具体化するかどうかは——いろいろな企業化には問題がございますので、それらの問題がすべて調整がつきまして、具体的な計画がかたまるかどうか、これは今後の問題であろうと存じます。
  169. 中村重光

    中村(重)委員 見通しはどうですか。
  170. 莊清

    ○莊説明員 見通しにつきましては、これは何ぶん企業関係方面ともいろいろ打ち合わせの上で練り上げてくるということでございますから、私の一存で、間に合うかどうかということは、こういう席でちょっと申し上げかねるわけでございます。
  171. 中村重光

    中村(重)委員 通産省が検討する上において、一番大きなウエートを置かなければならない点はどういうことですか。
  172. 莊清

    ○莊説明員 石油業法にも明示されておるところでございますけれども、全体の石油の需給とのにらみ合わせの問題等、当然重要な点だと思いますが、同時に石油審議会の審議の基本的な姿勢といたしまして、最近は公害問題その他地域問題との関連が非常に重要になってまいっておりますので、そういう点につきまして、地元との調整が十分事前についておるかどうか、こういう点につきましても審議会で十分検討し、地元の都道府県知事等の意向も聴して慎重を期する、こういうふうにいたしております。
  173. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、次の問題をお尋ねすることにいたします。  工場立地の問題についてお尋ねするわけですが、この点は通産、経企、また大蔵であるとか、大蔵は財政的な関係、建設、運輸、それぞれの省に実は関係があるのだろうと思うのですが、時間の関係がありますから、それぞれの省にお尋ねすることはできませんが、工場立地計画の基本的な考え方、いま荘局長からお答えがございましたように、公害の問題なんか相当重要な問題点となってまいりましたから、政府の構想というようなものも、工場立地決定の場合にきわめてむずかしくなってくるだろうと思うのです。  そこで、それらの問題を含めて政府考えておる工場立地計画の基本的な構想というものはどういうことなのか、これは一応通産省からお答えをいただきますか。
  174. 本田早苗

    ○本田説明員 お答えいたします。  工場立地の現状につきましては、いまも御指摘ありましたが、公害問題あるいは過密・過疎問題等の現に起こっておる実情もございまして、御承知のように、太平洋ベルト地帯、特に大都市集中が進んでまいっておりまして、これらの地域で四分の三の出荷が行なわれるというような工場立地の現状になっておるわけでございます。これに伴いまして、大都市におきましては、あるいはその周辺において過密、公害の現象が進む、他面、広大な地方におきましては、過疎の弊害が進むという状況になっておるわけでございます。しかも、今後わが国経済発展を長期的に、持続的にはかっていくということを考えますと、これらの過密・過疎、公害問題を抜本的に解決をはかる方向で工場立地を考える必要があろうと存じます。そういう意味で、自然環境を破壊しないで、資源、エネルギーの消費の少ない産業構造、言いかえますれば、現在よくいわれます地域集約型の産業構造に変えていく。  第二点といたしましては、工場の地方分散を、環境を破壊しないで積極的に進めていく。これによりまして過密、公害の解消と同時に、均衡のとれた産業の地域構造を実現していく。これに伴う問題として先ほども出ておりましたが、社会資本充実をはかるとともに、生活環境の整備をはかるということが基本であろうと思いますが、こういう基本に沿うて工場立地の施策を講ずることが必要である、こういうふうに考える次第でございます。
  175. 中村重光

    中村(重)委員 立地計画を策定してこれを実行に移していく場合、各省間の調整ということが私は重要であろうと思うのです。工場立地の関係で通産省が先般法律案の制定をしようとしたことがある。ところが、これに対して建設省はじめ自治省その他関係各省の意見一致が見られない、ついにこの法律案の提案を見送ったという経過も実はあるわけです。  きょうは田中通産大臣にその点もお尋ねしたい、こう思っておりましたが、これはいずれ後日にお尋ねすることにいたしますが、私がこの調整が必要であるということを特に強調したいとことは、具体的な問題としてこの委員会でも私は申し上げたことがあろうと思うのですが、たとえば長崎港の外港計画に基づいて埋め立てを行なった。島との締め切りをやった。ところが、そのために潮流が変わらなくなってしまうというので、次から次に外港に対して工場は進出をしてくる。また下水道の不備といったような点から、家庭用水というようなものがさらに公害を多く発生させるという結果になって、まさに長崎港は死の海と化しつつあるというこの現状を考えてみるとき、これから環境庁になるわけですけれども、いままでは経済企画庁であった。その経済企画庁は、水質汚濁を防止しなければならぬ、その保全をはかっていかなければならぬという所管の省になるわけでありますけれども、この計画に対して経済企画庁は参画をしていない。公害が出て、水質保全のためにあと追いをするというような結果が生じてきておる。経済企画庁は、なぜこれに同意をしたのか、同意をするにあたっては、水質がどうなるかということについてはお考えにならなかったのかどうかということを大臣にただしました際に、これは全く失敗でしたということを率直に大臣からお答えを伺ったことを記憶しておるわけですが、そういったような例がある。したがって、この各省間の調整、そのことがきわめて重要であろうと思うのでありますから、地方自治体との関連を含めて、今後工場立地計画の策定並びにこれの執行にあたってはどのような考え方を持って進めていこうとお考えになっておられるのか、その点をひとつお答えをいただきたいと思います。これは経企庁からお答えになっていただきたいと思います。
  176. 岡部保

    ○岡部説明員 いま先生のおっしゃいましたような一つの具体的な開発のプロジェクトというもので、各省のいろいろな行政上の分担という点での横の調整というものは全く非常に重要な問題だと存じます。これは確かに過去においてそういう点での行き違いと申しますか、不備な点があったことは否定できない事実だと存じます。最近そういう点につきましても、私ども関係するようなプロジェクトでは、各省とも横の連絡という面について相当に努力をいたしているところでございます。具体的に、どういうプロジェクトについてどういうという点については、ここで御説明いたしませんが、確かにそういう点についてこれからもわれわれとして十分努力をして、それで初めてたとえば工場の立地の問題、そういうものに対しての誤りない進め方に進んでいけるのじゃないか、こう考えております。
  177. 中村重光

    中村(重)委員 次に、長崎港の第二次外港計画の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのですが、第二次外港計画の構想、それがまとまり、もうすでに実行の段階に入りつつあると実は思うわけですが、この具体的な構想についてこの際明らかにしていただきたい。いつから着工し、この完成年次はいつごろになるのか、また事業費といったものはどういうことなのか、それからその第二次外港計画に基づいて工場の誘致等が行なわれるわけですが、具体的な構想というものがまとまって、地方自治体との間に合意ができておるのかどうか、それらの点に対して……。
  178. 栗栖義明

    ○栗栖説明員 長崎港の外港第二次計画の概要について簡単に申し上げます。  昭和四十五年の十二月の港湾審議会の四十四回の計画部会で一応決定されているわけでございますが、この内容の発想につきましては、それ以前に、昭和三十八年の七月の第十九回の計画部会におきまして、長崎港に対しましては、三十八年当時では、昭和五十年の港湾の貨物を扱う目標が約四百万トンということで計画が策定されたわけでございますが、四十四年、一昨年に相なりますが、四十四年ですでに四百万トンに達したのでございます。したがいまして、すでに長崎港は大体一ぱいの状態になってきたということから、第二次の拡張計画をやりたいというふうな話が出てまいりまして、いろいろ検討いたしました結果、昭和五十五年を目標にいたしまして、五十五年の港湾の取り扱い貨物量の目標が、約千百七十六万トンを目標といたしまして、おもな内容といたしましては、皇后、神ノ島地区に公共埠頭をつくる。五千デッドウエートトン級のバースを六バース、その他二千デッドウエートトン級のバースを二つつくる。それから香焼西地区に公共埠頭といたしまして二千デッドウエートトン級のバースを二つつくる。それから小江地区でございますが、これは主として木材を扱う地域といたしまして一万五千デッドウエートトン級の船を二はい入れる。そういうふうな基本的な構想でございます。  なお、こういう公共埠頭の背後地その他に関連いたしまして、神ノ島、福田地区に二百二十ヘクタールの用地造成をする。それから香焼西地区に百十二ヘクタールの用地をつくる。それから小江地区に三十二ヘクタール、これはわずかでございますが、木材団地でございますが、そういうものをつくる。合計三百六十四ヘクタールの用地を造成するというのが計画の骨子でございます。  大体の経費の概要といたしましては、外港計画の現在の見積もりで、約三百三十億円というふうに相なっておるわけでございます。  御承知のように、長崎港は現在造船、機械工業が盛んでございますし、先ほど申し上げましたように、それに関連した機械工場あるいは木工団地をつくりまして、木材の製造工業をやるというふうな管理者の計画も出てまいりまして、それを受けて審議会で計画を御審議願いました。そういう経過であります。
  179. 中村重光

    中村(重)委員 お答えがあったのを聞き落としたのかもしれませんが、着工と、それから竣工年次というのはいつごろですか。
  180. 栗栖義明

    ○栗栖説明員 申しおくれましたが、まだ着工をいたしておりません。その一部につきましては、新しい第四次の港湾五カ年計画で取り込んで考えてまいりたいというふうに存じておりますが、先ほど申し上げましたように、昭和五十五年を目標にした計画でございます。
  181. 中村重光

    中村(重)委員 いまおあげになりました神ノ島ですか、神ノ島、小瀬戸、これは小榊地区ということになっているわけですが、この埋め立てをめぐりまして、長崎県議会で活発な議論が展開をされたわけです。そのことは御承知だろうと思うのですが、県のほうからも連絡が実はいっておるのではないかと思います。これを御承知になっていらっしゃるのかどうか。
  182. 栗栖義明

    ○栗栖説明員 申しわけありません。最後のことば、ちょっと聞き漏らしましたので、おそれ入りますが……。
  183. 中村重光

    中村(重)委員 じゃ、いいです。時間の関係もありますから、私から申します。  実は、この小榊地区の埋め立て地の買収をめぐりまして県議会で問題化した。  それは買収価格が土地原価に比較をして非常に高いということ。  それから買収した機関か、県議会のチェックが及ばない、県の分身である開発公社であったということ。  次には、買収資金として借り入れられた資金は、日本長期信用銀行から五億九千万円借り入れられている。そのほかに約二億五千万が地元銀行から借り入れられておるようでありますが、この長期信用銀行から借り入れがきわめて安易に行なわれている点。  次には、開発公社の借り入れ限度額は当初は七億円であったが、一挙に二十億円、現在三十億円になっておるようでありますが、議論されました当時は、二十億円ということが中心になって議論されておったようでありますが、この二十億円に増額された点。  買収した埋め立て地が約八億一千万円であるのに、この承認の問題とあわせて借り入れ限度額を二十億円にふやすことを、公社理事会の正式な議案とすることもなく、持ち回り理事会でこれをきめられているという点。  次には、県条例で定められてある用地特別会計の基金は四億円であるのに、これを二倍以上上回る八億一千万円の用地買収を土木部長の買収依頼の公文書をもってした行為は債務負担行為というような点が実は議論の中心になったわけであります。  そこで、私は自治省にお尋ねをしたいと思うのですが、いま私があげました点は、知事は、その批判というか、指摘が当たらないものであるということを反論をいたしております。あとで時間がありますれば、知事が反論したことについての議事録を私は読ましてもらいたいと思っておりますが、これはあとにするといたしまして、自治省にお尋ねをしたいのは、最近公社の運営に関連して問題か非常に多く発生をいたしておるようであります。そこで自治省は、これらの公社の運営に対する歯どめをするための立法化を考えておるということでございますが、どのような構想を持っておられるのか、その点について一応自治省の見解を伺ってみたいと思います。
  184. 立田清士

    ○立田説明員 地方団体に置かれております各種の公社でございますが、御承知のとおり、それぞれいろいろな目的を持って設立をされております。いずれも形といたしましては、民法法人のかっこうでできておりますものと、それから特別法によりまして設けられております住宅供給公社あるいは道路公社というようなものがございますが、相当数は民法法人で設立をされております。もちろん地方団体が、相当寄付行為あるいはその他の方法によって、公社の設立あるいはその運営について関係をしておるわけでございますが、その公社と地方団体との関係につきましては、地方自治法上におきましても所要の規定が実は設けられております。  それで、ただいまお尋ねの公社に関しまして何か立法措置考えているのかどうかという点でございますが、この点については、私たちのほうといたしましても、地方に設けられております各種公社についての位置づけというものを考えて、そういう点についての検討をいたしておりますけれども、現在のところ、まだその検討の結論は得てない、そういう状況でございます。
  185. 中村重光

    中村(重)委員 長崎県で問題化した中で議論の中心になりましたのは、債務負担行為の点であったわけです。それは先ほど申し上げましたように、土木部長名による買収依頼書の中身を読んでみるとき、これは債務負担行為に該当するものである、それが議会の承認を求めることなく行なわれたということは、これは違法であり、不当であるといったような点であります。私は、本日質問をすることに対しまして、自治省に、あるいはその他の関係各省に対しまして詳しくお話をいたしておりますので、特にこの土木部長が開発公社に出しました依頼書の内容についても、県当局との間の話し合いは十分なされ、検討されておるところでございましょうから、特にこの債務負担行為の問題は、ただ長崎県の問題だけではなくて、私は県と公社、県と議会という関係におきまして全国的な問題であろうと思いますから、この際、この債務負担行為の問題に対しまして、そして長崎県で起こっております問題は、具体的な問題でございますから、この点についての考え方をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  186. 立田清士

    ○立田説明員 一般的に、地方におきます開発公社で土地を取得いたします場合に、公社みずからの目的に従いまして取得いたします場合と、公社の目的の中において、いわゆる県の開発計画等との関連において取得いたします場合と、いろいろな形が公社にはございます。  そこで、いまお尋ねの点でございますけれども、債務負担行為ということになりますと、御承知のとおり、その都道府県と開発公社との間で、その土地を明らかに取得するということの契約がございまして、その場合において地方団体のほうといたしまして、御承知のとおり、地方自治法の二百十四条における債務負担行為として予算でそれを定める必要がございます。そこで、かりに県のほうでいずれそれを取得するから、公社のほうで取得をしておいてほしいということで、その内容が契約という形をとらない、いずれ将来取得する場合において、さらに契約という問題か出てこようかと思いますが、その前の段階におきましては、私たちのほうとしては債務負担行為には当たらないというふうに考えております。
  187. 中村重光

    中村(重)委員 いまの御答弁は、私は納得できないのです。債務負担行為がどのような構成がなされなければならないかということについては、私も承知をしております。しかし。土木部長が開発公社に提出をいたしました書類、これは開発公社が西日本開発KKから買収をいたしております全坪数、しかも地目を明らかにし、埋め立て地あるいは山林、宅地等詳しく一筆ごとに明記をしてあるわけです。そして取得価格もここに記入をして提出をしてありますが、開発公社が購入いたしましたものは、その買収契約を締結いたしましたのが四十五年八月十五日でございますが、土木部長が提出をいたしましたこの買収依頼書は七月三十一日、この提出をいたしまし期日に、記入をいたしましたとおりの金額でもって開発公社は買収をしております。単価だけではなく、総額だけではなく、申し上げましたようにすべて買収をいたしました山林、宅地等々が一切同じ数字であり、あるいは同じ地番であるわけであります。それだけではありません。購入総額に対する利息、所有権移転登録免許料、買収土地の測量に要する経費、不動産鑑定上の鑑定評価料金、買収後の土地に対する公租公課、事務費として土地買収代金の〇・五%に相当する額、これまでも一切県が総額計算をするということを明らかにして関発公社に提出をしておるわけであります。そして、きょうは参考人からあとでお尋ねをいたしますが、県開発公社はこの公文書を長期信用銀行に示して、県がこれを引き取るのだということを信頼をしてもらって融資をしてもらっておるという事実、それらのことを考えてみますとき、明らかにこの土地は、県が必要な土地として後日買収をしてもらうことに間違いはないのだというようなことで、開発公社は単にこれを形式的にその買収事務を行なったにすぎないのであります。  それならばこれは明らかに債務負担行為的なものである。ただ債務負担行為としての正規な手続をとっていないというだけのことであります。私は、正規な手続をとっていないから、したがって、これは後日発生をすることであるから債務負担行為でないというようなことで処理すべきではない、当然正規の手続をして、議会の承認を受けなければならないのに、これを受けなかったその行為こそ問題視されなければならぬと思うのであります。  にもかかわらず、ただいまの自治省の見解というものは、私は当たらざるもはなはだしいと思います。これらのことが、いま自治省でそういう考え方で指導しておられるとするならば、全国にこれらの問題は発生をしてくるでありましょう。私は大きな弊害をかもし出してくると思うのであります。  したがって、私はいま詳しく申し上げましたから、重ねて、いま私が申し上げましたことに対してでも、これが債務負担的な行為ではないというお考え方であるのかどうか、各都道府県と公社の間に、あるいはその他市町村の間にこのような行為が起こっても、自治省はこれは当然であるという考え方をお持ちなのかどうか、その点をひとつ明らかにしておいていただきたいと思います。
  188. 立田清士

    ○立田説明員 若干私の御説明が不足だったのかと思いますが、県のほうで、それを公社に取得を依頼されたというふうに考えられるわけでございます。もちろん、その際にただいまお述べになりましたとおり、非常に具体的な指示、依頼をしている、こういうことはそのとおりだと思います。そこで、その場合において県としては将来において買いたいという意思は確かに表明されているというふうに考えられます。その場合に、今度は県といたしまして、それを買うという手続上義務を負担するかどうかという問題は、また別に新たにそういう手続を必要としてくる、こういうことになろうかと思います。  そこで、いま具体的な事例につきましては、その県におかれまして、その場合これはここでいう債務負担行為に当たらないのではないかというふうにお考えになったということであろうかと思います。ということは、また別に、今度は公社のほうから県が買収される段階におきまして、これは将来のことでございますが、その買収意思を具体的に実現される場合においてまた所要の手続をとっていかれる。そういう場合に、公社から県が買収される場合の方式におきまして、さらにそこで債務負担行為のかっこうをとっていくかどうか、あるいはその年度において全額買収していくかどうかという問題は、また別にそういうような手続はあろうかと思います。
  189. 中村重光

    中村(重)委員 それでは、開発公社が買収した土地を、県が必要な坪数を必要な単価で開発公社から買収をする、その場合は、それに伴うところの諸手続が行なわれるであろう、それは、そうなることは当然であります。ただ、私が言っておるのは、県が必要であるからといって、先ほど読み上げましたように詳細にわたってこれを明記し、これを公文書として提出をした。開発公社はこれを信頼して買収をした。いいですか。開発公社がこの土地を必要とするのではないのです。開発公社みずからの計画をもってこれを他に売買をしようという考え方を持っておるのではないのであります。ただ、県の依頼によってこれを買収したのであります。そのこと自体を問題にしなければならないのではないか。議会もそれを問題としているのであります。開発公社が恣意的に、この埋め立て地が必要であり、この山林が必要であるからといってこれを買収したのであるならば、議会は問題にしません。土木部長の公文書によって開発公社にこの土地を買収せしめた。したがって、開発公社は、県がこの土地を全部引き取ってくれるものという考え方の上に立っておった。いいですか。それならば、当然これは当初から債務負担行為という手続をとって行なうべきものであって、これを行なわなかった行為という男は、違法であり、不当であるのではないかということが、県議会で指摘されたことであるし、私自身もそのように考えているわけであります。  そのことに対しての答えをしてもらわなければ——債務負担行為というものはどういうものなのかということを私はあなたにお聞きしておるのではないのであります。具体的なこのケースに対して、自治省はどうお考えになるのか。こういうことがよろしいというならば、この後各都道府県の開発公社と県の関係におきましては、このことが次から次へ起こってくるでありましょう。あるいは市町村の段階におきましても起こってくるでありましょう。議会は完全にこれをチェックすることはできないのでありますから、議会というものは疎外をされてしまうということになるのであります。そのことを自治省の行政指導の上において明確にすることなく、ただいまのようなあいまいな態度をとっておるところにこのような事態が発生をするということを、私は反省をしてもらわなければならぬと思うのであります。具体的な問題について答えなさい。
  190. 立田清士

    ○立田説明員 ただいまのお話の内容につきましては、具体的に長崎県当局がどういうふうにお考えになって公社との関係でお話しになったかという点は、私たち必ずしも十分には承知はいたしておりませんけれども、県のほうから開発公社に先ほどお話がございましたとおり御依頼し、具体的な指示があったということはそのとおりであると思います。  そこで、その土地を取得します場合に、公社は県の指示あるいは依頼によりまして取得をするわけでございますが、具体的な土地取得については、その土地所有者と公社との関係のさしあたりは契約になってまいります。それから、今度はまた公社が県に売却します場合には、当然先生御指摘のとおりまた県との間に契約が必要になってまいります。そこで、こういうような土地の取得のやり方についていろいろな方法があるわけでございますが、ある意味では、さしあたりといたしましては公社自体が当事者になって取得をいたしておるということで、後ほどまた県との契約、県が買収する場合にはそういう段階が出てまいります。  それから、若干そのあとのことになりますけれども、今度は公社のやりましたその事業の計画の実施の状況等につきましては、県議会に所要の書類が地方自治法の手続によりまして提出をされるという仕組みがございまして、その関係では県議会におかれまして、また公社の運営自体についてのいろいろ御検討の問題があることは御承知のとおりでございます。したがいまして、いろいろ県によりまして、その土地を先行的にどういうかっこうで取得するかというようなことは、それぞれの県の御判断がございますので、先ほど私のほうから申し上げましたのは、県として債務負担行為に当たるかどうかという判断で、この場合はそういう意味で公社と土地所有者の問題である。県として将来買う意思があるということでこういうようなことになっているのではないかというふうに考えておるわけであります。
  191. 中村重光

    中村(重)委員 どうもかみ合わないのだな。知事は、あなたのような答弁をしておるのです。これは知事が来てないから、欠席裁判になっても悪いが、私は知事が県議会において答弁したことを明らかにするということも必要であろうと思うのです。  知事は必ずしもこの開発公社が買収した土地を、全部県が必要地として買収するかどうかわからない、道路にするものもあるであろう、あるいは県が必要な施設としてこれを使うものもあるであろう、あるいは開発公社から直接工場に売却するものもあるであろう、したがって、これは不確定であり流動的である、そこでこれは債務負担行為ではないのだ、県がどれだけの土地を、どこを買収するということがきまったときに、そのことを予算化して県議会に提出して議会の承認を得たい、こう答弁しておるのであります。私は、債務負担行為というものは、そういう手続をとらなければならぬということは認めるのであります。指摘しておるのは、県の土木部長がはっきり公文書として、開発公社が買収しました全体の坪数、し  かも地番まで明らかにしておる、単価も明記しておる、この買収に伴うところの諸経費の公租公課、そういうものも一切県が負担をいたしますよという文書を出しておる、このようなことが県議会において、その行為は債務負担行為ではないかという指摘があったということであります。いいですか。そこを間違わないでもらわなければ……。もっと、平らに申し上げるならば、このようなことはいわゆる物議をかもすということになるが、これは自治省として好ましいとお考えになっておるのかどうか。  副知事が私のところに参りました。副知事はこう言っておる。私ならばこういう文書はつくりません。あの埋め立て地が必要であるから埋め立て地を買収してもらいたいというようなことを文書に書いて出します、こう言っておる。それから先の判断というものは、開発公社が恣意的に行なうものであるということである。それであったならば、県議会で問題にならぬのです。いいですか。これは明らかに県がこれだけの土地が必要である、単価はこれだけにしてもらいたいのだということです。そうしてかかった経費は一切県が負担しますという文書を出しているのです。ならば明らかに、流動的でもなければ、不確定でもないではありませんか。これは債務負担行為的なものであるから、それならばこれは前後に開かれていた県議会においてこれを報告し、了解を求める措置を講ずることが当然ではなかったのかということを県議会が指摘したのであります。私もそう思うのであります。だから、あなたは債務負担行為はこうするんだということだけの答弁ではなくて、具体的なケースを指摘して私が言っておるのでありますから、この後あなたのほうの行政指導の上にも関係を生じてくるわけでありますから、このことに対して的確なお答えをしてもらわなければならないのであります。いかがですか。
  192. 立田清士

    ○立田説明員 県が開発公社に出しました指示なり依頼というものは、あくまでも依頼であるというふうに私たちは考えております。したがいまして、依頼とその内容との関係につきましては、公社運営におきまして、県、公社の間において、一般論でございますが、そういうような依頼であるという点について十分配慮していく必要があるのではないかというふうに私たちは考えております。
  193. 中村重光

    中村(重)委員 まだ盛りだくさん質問事項があるので、この問題だけでもだいぶ時間がかかって、私だけで時間をあまりとることは適当ではないのですが、好ましくないということであったわけですから、この後的確な指導をしてもらわなければならぬということになります。よろしいですね。再びこういうようなケースが起こらないように、自治省は十分具体的なケースを問題として、この後間違いのない指導をなさいますね。もう一度的確にお答えください。
  194. 立田清士

    ○立田説明員 公社の運営につきましては、私どものほうとしても、地方団体において十分その運営の適正を期していただくようにお願いをしていきたい、そういうふうに思っております。
  195. 中村重光

    中村(重)委員 私がこの質問をするということを十分承知をしておられて、土木部長の名前で出したのだからこれは債務負担行為ではないんだ、知事の名前ならば債務負担行為であるけれどもという解釈も実はあったそうであります。ところが、土木部長でありましても、これは土木部長みずから専決権がある、代決権がある、それから表見代理という、その責任の問題が実はあるのであります。銀行の支店長がみずからの与えられた権限を越えて融資をしたといたします場合、その契約は無効なのか、対外的には契約は無効にならないのであります。そのように、土木部長の公文書というものは、知事が提出した公文書と同時にこれを解釈をしていかなければならぬ重大な問題であるということであります。しかし、この点は、いまそういうことで公社の問題点としてお答えがあったわけでありますから、この後十分注意をしてもらいたいということを要望しておきます。  それから、日本長期信用銀行の方が参考人として御出席でございますね。これは前にまだお尋ねしたいこともありますが、時間の関係ではしょります。  長期信用銀行から、この土地の買収資金として五億九千万円借り入れをしておるということを実は公表いたしております。県議会において答弁しておりますが、これは私が大蔵省にお尋ねをいたしましたこと、また私自身がその後調査してみまして、五億九千万円ではない、五千万円はその前に長崎市の立山団地の用地買収のために借り入れをしておるようでありますから、これは知事あるいは開発公社の専務理事が県議会に報告しておるその数字が間違いであります。したがって五億四千五百万円というのが的確な数字であるように思いますが、そのとおりであるのかどうかという点が一点であります。  それから、実はこの融資は、無担保融資がなされておるということであります。この点に対して、長期信用銀行はどのようにお考えになっておられるのか。御承知のとおりに、長期信用銀行法の第七条において「長期信用銀行は、長期資金に関する貸付等に基く債権については、その特殊性にかんがみ、その保全及び回収の確保を図るため、確実な担保を徴し、又は分割して弁済をさせる方法をとる等特別の考慮をしなければならない。」とあるわけであります。この条文をどのようにお考えになって融資をされたのか、参考人として御出席をいただきました日本長期信用銀行常務取締役の小田豊次参考人のお答えを伺いたいと思います。
  196. 小田豊次

    小田参考人 お答えいたします。  先生のただいまのお話の第一点でございますが、私のほうの融資金額の点が第一点かと存じます。この融資金額につきましては、ただいま先生から御指摘のございましたように、長崎市神ノ島地区の工業団地の土地の取得資金としましては五億四千五百万融資いたしております。それでその以前、これは四十五年の四月でございますが、五千万円は立山住宅団地の土地取得のために御融資いたしております。いずれも契約は別にいたしてございます。  それから第二点の担保の点でございますが、私どものことばでは担保留保ということばを使用いたしておりますけれども、担保留保に関する差し入れ書というものを徴しまして担保措置をいたしております。
  197. 中村重光

    中村(重)委員 金額は合いましたが、あとが合いませんね。あなたのほうは担保留保ということで公社のビルを担保にとっている、こういうことを伺ったのですが、いまの答弁はそういう意味の答弁でございましたか、具体的にひとつお答えください。
  198. 小田豊次

    小田参考人 具体的にお答えいたします。  ただいまの御質問は、長崎市の神ノ島地区の五億四千五百万の取引についてと存じますが、これにつきましては開発公社の本社ビルを登記留保で徴してございます。そのほかに、ただいま申しました担保留保で当該土地を担保措置いたしております。
  199. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのほうは、私が国会においてこの質問をするということで、県開発公社に福岡支店より連絡し、どうしたんだ、金は貸せないではないか、そういうことを言っておられるようであります。  いま一つは、担保留保ということでお話がありましたが、この開発公社のビル、これはターミナルの中に一部開発公社の所有のものがあるのであります。なるほど、それを物件表示という形においてあなたのほうは契約書の中に書き込んではおるようでございます。しかし、これは正規の手続をしておりません。これを担保としてとる場合は、あらためてこれは書類を作成して判こを押して、そして銀行のほうに提出して、初めてこれはいつでも担保ができる書類が作成されるのであります。そういう手続はとられておりません。したがって、長期信用銀行法の第七条にいういわゆる確実な担保ということにはなりません。   いま一つ、融資対象の土地、これは物権の表示すらなされておりません。ただ、この土地を処分する場合あるいは担保に提供する場合は、長期信用銀行の了解を受けなければいたしませんという言質をとっておるにすぎないではありませんか。何がそれが担保ですか。いやしくもこの委員会においての発言でありますから、私は責任を持って調査をし、責任を持ってお尋ねも指摘もしておるわけです。事実に相違する答弁は迷惑をいたします。大蔵省、お答えなさい。
  200. 松川道哉

    ○松川説明員 ただいま先生の引用なさいました条文にございますように、長期信用銀行といたしましては、債権の保全、回収の確保のために特別な考慮を払わなければならないということが義務づけられております。そしてまた、その例示といたしまして、ただいまお読みになりましたように、確実な担保を徴するとか、分割払いのことを配慮してやるとか、そういったことが並べてございますが、それに加えまして「等」ということばが入っておりまして、その他いろいろそういった債権保全、回収確保のために別な方法もあろうということで、そういうことも中に認めておるわけでございます。そして具体的な例に当たりまして、どういう形で債権確保の方法をとるかにつきましては、これは債権者となる、すなわちこの場合の日本長期信用銀行が債務者の内容その他のことを勘案いたしまして、適宜判断いたすものでございます。  この場合は、私どもが報告を聴取いたしましたところによりますと、債務者が優良な地方団体であるということをもちまして、ただいまも御説明がございましたような抵当留保というような担保措置をとったものでございます。この抵当留保というようなものは、債権者の請求があればいつでもそこに抵当権が設置できるということでございます。また、私どもが聴取いたしました報告によりますと、そういった担保措置は、去年の九月この債権が設定されましたときに措置がなされておるように聞いております。したがいまして、私ども監督する立場におるものといたしましては、このケースにつきましては十分な担保措置がとられておるもの、このように考えております。
  201. 中村重光

    中村(重)委員 あなたのいまの答弁はきわめて重大な答弁なんだ。いいですか。「債権の保全等」という「等」を、あたかも私がいま指摘をいたしましたようなことをやってもよろしいというような「等」であるというふうに受け取られる。詭弁なんだ、そういうことは。これはあくまでこの条文にあるところの確実な担保を徴する。「等」という場合といえども、この確実な担保を徴するというようなことを薄めるということにはつながってこないです。きょうは傍聴席にも長崎県の県議会議員の人たち、その他この問題に対して関心を持っておられる人たちが来ておる。したがって、私はきわめて重大な問題点としてこれを取り上げた。傍聴の方には自民党の方もいる、あるいは社会党その他の方々もいるのであります。したがって、あいまいなことを指摘してはならない。そういうことで、私は毎日地元との電話連絡をとっておる。内容も聴収しておる。隠れてやるのではない。堂々と県に電話をし、あるいは開発公社に電話をして、その真否を確かめておる。法務局における閲覧もしておるのであります。昨日私が閲覧をして、電話をかけておることもあなたにお見せしておる。  いま申し上げたとおり、土地については物権の表示すらないのであります。建物についても完全な書類の作成がないのであります。これは担保の留保ということが言えますか。銀行は大蔵省の手前、政府官僚の皆さんの手前でありますから、これは多少はカモフラージュした答弁をすることがあるかもしれない。しかし、少なくとも大蔵省があいまいな答弁をされることは、私は許せないと思うのであります。間違いがあるなら間違いがあるということで、率直にこれを認めて、的確な指導をするということが正しい大蔵省の態度でなければならぬと私は思う。  長期信用銀行というのは、私から申し上げるまでもなく、これは金融債発行銀行であります。国も三百七十億、この多額の金融債を引き受けておるのであります。これらのこと等々を考えてみますとき、長期信用銀行の——銀行自体といたしましては、相手が県である、開発公社といえども、県知事が理事長であるということにおいて信頼をしたと思います。また、長崎県の事業協力しようという誠意を持って対処されたと思うのであります。私も長崎県民でありますから、そういう立場においては長期信用銀行に敬意を表したい、そのように考えているのであります。しかし、国会の場におきましては、このことがどのような影響を及ぼしてきたのであろうか。先ほど買収しました土地の問題についても私は申し上げました。きわめてあいまいな形において、大きな物議をかもすようなことをやっておる。そのことは県の負担となり、県民の負担となっていくのだ。このようなことを野放しにしたならば、議会のチェックは及ばない、いわゆる秩序というものは完全に乱れてしまうのだ。融資をされる側におきましても、それらの点を十分配慮しながらこれに対処してもらうということが、特殊性を持った銀行の態度でなければならないと私は考えているのであります。だからして、そのことを指摘しておるのであります。すなおにお答えいただきたい。いかがですか。
  202. 松川道哉

    ○松川説明員 お答えいたします。  まず、初めの債権保全の方法、法律に明確に書いてございます二つの方法だけかどうかという点につきましては、当時の立法者が解説を書いておりますが、この中にも、たとえばネガティブクローズであるとか、いろいろほかの方法による債権確保の方法もあり得るのだ、したがって、そこに「等」ということばを使ったのだ、こういうふうに解説いたしておりますので、これは債務者との相対関係で、その場その場に適応した方法によって債権確保措置をとっていく、これが適当であろうと考えております。  次に、具体的に今回のケースにつきまして、私先ほどから伺っておりましたが、債務者のほうの側に、県そのものの場合と、今回のような場合とに若干違いがあるのかどうかというような問題が残るかと思うのでありますが、長期信用銀行が貸し付けの決定をいたしましたときに、県の内部関係にどの程度明るかったのか、この点は私どももつまびらかにいたしておりません。したがいまして、もしそこに法律上の欠陥があるならば、この債権が確保できるかどうかという点に問題があるとすれば、その点は今後とも研究していかなければならないであろうと思います。  さらに、もう一つつけ加えますならば、抵当留保という措置の中には、債権者のほうの要望があれば、請求があれば抵当権を設置しますという取りきめになっておりますので、その債務者の内容をつまびらかにしなかったことが、本債権の確保の上に支障を来たすかどうかという点になりますと、いまの段階では支障はないのではないか、私はこのように考えております。
  203. 中村重光

    中村(重)委員 債権の保全というものは、具体的なケースとしていま出ておるようなものは、手続的には債権の保全ということにはならないと私は思う。先ほど指摘したとおりですから……。土地においては物権の表示すらしてないという事実、建物におきましては申し上げたように物権の表示はしておるけれども、具体的な完全な書類の作成はなされていない。ただ、後段あなたがお答えになった、この債権の保全ということについては不安はないのではないか、それは相手が県であるという事実、そして開発公社は県の分身であるけれども、知事が理事長をしておる。これは出資は実は五千万にすぎないのであります。県としては五千万の責任があるにすぎません。したがって、その数字からだけ申しますならば、これは有限責任でありますから、五千万以上の責任は負わぬということになりますから、その点からいえばきわめて不安でありますけれども、開発公社がかりにつぶれても、県は知らないというわけにはまいりますまい。したがって、その責任は県が負うでありましょうから、そういう意味においては私は債権保全というものはなし得るというようには考えます。しかし、だからといって無秩序にそのようなことをやってよろしいということにはつながってこない。やはり長期信用銀行というのは、長期信用銀行法によって——議会の議決を経てこの法律は制定されておるということをお忘れになってはなりません。私が指摘しているようなことを、必ずや政府において実行しておるであろう、金融機関においてもそれをなしておるであろう、なしていない場合は大蔵省はきびしくこれを監督指導しておるであろう、私どもは法律を制定しておるのでありますから、そのように考えておりますので、そのことを無視してしまって、便宜主義的に、この債権保全というものはできるのだからいいじゃないかというようなことで、どのようなことをしてもよろしいということにはならぬと私は思うのです。そういう点は十分反省をしてもらいたいということを強く御注意を申し上げておきたいと思います。  次に、公有水面の問題についてお尋ねをしたいと思います。  この埋め立て免許目的に相違する土地の処分ということですが、これは法的には規制できないのではないか。いろいろ解釈があるようですが、埋め立ての免許を都道府県がいたします場合に、工場用地なら工場用地ということで申請をする。ところがその埋め立て地が竣工した。竣功認可を受けた。その場合、埋め立て目的に明記しておりました以外の用途にこの土地を使うという場合は、これを規制されるのかどうかということに対しましては、法律に明文がないようであります。これは規制できないのではないかと思うのでございますが、この解釈について運輸省からお答えをいただきます。
  204. 満所清吾

    ○満所説明員 お答えいたします。  埋め立てる場合には埋め立て命令書、免許命令書というものが出ます。その中に、たとえば工業用地なら工業用地として埋め立て免許をします、住宅用地であれば住宅用地として埋め立て免許をいたします、こういうことになるのでございます。それができたあとで、たとえば工業用地であるものをほかの用に転用するという場合に、その規制の方法は、おっしゃるようになかなかむずかしいということでございます。
  205. 中村重光

    中村(重)委員 埋め立て目的以外にこれを使っても、規制をするということはむずかしい、こういう意味のお答えであったと思うのですが、具体的な問題として、埋め立てのことについてお尋ねしたいのですが、神ノ島の埋め立て、いわゆる小榊地区の埋め立てについては、埋め立て免許にあたっては何らかの条件というものが付せられておったのかどうか、これはいかがですか。
  206. 満所清吾

    ○満所説明員 神ノ島の埋め立て免許は昭和十七年と昭和十八年、二口にわたって免許が与えられております。このときは、その埋め立ての権利の移転あるいは権利の制限については、条件は付されておりません。
  207. 中村重光

    中村(重)委員 そこでお尋ねしますが、実はこの土地の買収にあたって、この埋め立て地を埋め立て目的以外の用途、いわゆる宅地として売買をされるという計画がある。そうなったのでは県の第二次外港計画に支障を来たすというので、いろいろと折衝をした末に、合意して坪当たり一万八千九百円で実は買収しているのであります。県議会におきましてこの買収というものが緊急性の面において、あるいはまた買収価格の問題においていろいろと議論になりましたが、実は時間の関係がありますから、その点は省略しなければなりません。  ただ、私は考えますのに、第二次外港計画というものはすでに策定され、遠からず実施に移されるであろうと思いますが、これは大切な土地である。第二次外港計画を進める上において、この神ノ島の埋め立て地というものはいわゆるかなめ石であると言われておるのであります。それほど重要な地点でありますから、その場合は都市計画法というものがある。それから、都市計画法に基づいての臨港地区の設定というものがなされてくるでありましょうし、その臨港地区の設定がなされたならば、いわゆる分区の設定というものがなし得るのではないか、これは可能である、そのように考えるのでございますが、その点はいかがでございましょう。
  208. 満所清吾

    ○満所説明員 先生のおっしゃいます臨港地区の設定、それから分区の指定は法律上可能であると思います。
  209. 中村重光

    中村(重)委員 問題は、この際自治省にもお聞きおきを願いたいと思うのですが、実はいまお答えがありましたように、都市計画についてのお答えはありませんでしたが、これは明らかに法律によって都市計画の設定というものもでき、それに基づいて臨港地区の設定、それから分区の指定というものがなされる。したがって、これに反する建築物等がなされる場合は、これを規制することが可能であります。そういう措置がとられておったならば、実はこれを買い急ぎをする必要はなかった。これをしたところに、高い価格で買わなければならないという結果になったのではないか。このことが実は県議会におけるところの議論の中心になったということも、ひとつこの際十分頭に置いておいていただきたい。ただいま運輸省からも、そういう措置がとられるということを明らかにされたわけでありますから、その点は十分ひとつ指導の面に生かしてもらいたいということを要請をしておきます。  それから、当該埋め立て地というのは、当初いろんな経緯をたどっておりますが、丸善商会あるいは旭興業というのが埋め立て免許をとりまして、丸善商会と旭興業とが実は竣功認可を受けておるのであります。そして、この竣功認可を受けて芙蓉興発というものに売却をしておる。芙蓉興発はこれを西日本開発KKに売却をしておる。そして西日本開発KKは、昭和四十四年三月二十二日に保存登記をしておるのでありますが、ここに実は問題を感ずるのであります。  実は丸善商会が、昭和四十一年五月ごろこの土地を芙蓉興発に売却をしておる。ところが、これはまかりならぬということになった。県が認めなかった。免許権を持っておる丸善商会においてこれを竣工しなさいということで竣工させ、丸善商会に竣功認可を与えておる。それに基づいて実は不動産取得税というものが、公有水面埋立法二十四条において課税をされた。異議申し立てをしたけれどもこれは却下された。ところが、ふしぎなことに、昭和四十四年三月二十二日の西日本開発KKの保存登記には、その登記の原因は埋め立てとなっておるということであります。このことは、詳しく御承知いただかなければ質問ができませんから、私は連絡をして詳細に話をいたしておりますので、十分調査をしておられると思いますから、この関係はどうしてこうなったのか、お答えをいただきたいと思います。
  210. 枇杷田泰助

    ○枇杷田説明員 お答えいたします。  登記の経過を申し上げますと、昭和四十二年の三月二十二日に、西日本開発株式会社から、新しい土地が生じたということで土地の表示の登記の申請が出ております。その申請によりますと、昭和四十二年二月九日に公有水面が埋め立てられて新しい土地が生じたということで申請がなされておるわけでございます。その際に、一般の添付書類のほかに、所有権を西日本開発株式会社が持っておるということの証明といたしまして、まずその土地が公有水面埋立法によって埋め立てられた土地であり、それが竣功認可を受けておるということの書面、それからその認可書の名あて人は旭興業と丸善商会でありますが、その丸善商会と旭興業から芙蓉興発株式会社が譲渡を受けて、その芙蓉興発株式会社から西日本開発株式会社へ譲渡されておるという譲渡証書が添付されておりまして、それに基づきまして表示の登記をいたしておるわけでございます。引き続きまして、同じ日に、昭和四十二年の三月二十二日でございますけれども、西日本開発株式会社から所有権の保存登記がなされております。この場合には、登記法の手続から申しまして、表示の登記の申請にありました所有者が保存登記をする場合にはそのまま登記をするという手続になっておりますので、保存登記を受理しておるわけでございます。
  211. 中村重光

    中村(重)委員 そこであなたにお尋ねをするんだけれども、いまお答えのとおりなんです。丸善商会は四十二年二月九日に竣功認可を受けた。そして先ほど申し上げたように、不動産取得税がかかったのですね。それから芙蓉興発に移った。そこで西日本開発がこの土地を買って、これまたお答えがあったように、四十四年三月二十二日に保存登記をしているのですよ。いいですか。  ところが、その保存登記の原因がどうして埋め立てでしょうか。すでに埋め立ては丸善商会において完成をして、竣功認可を受けて不動産取得税も納めているんだから、この埋め立て権の譲渡というものはあり得ない。これは土地の譲渡でなければならないはずであります。土地の譲渡であるならば、これは所有権の移転でなければならないはずであります。それがなぜに埋め立て権の譲渡という形になったのか、その点いかがですか。
  212. 枇杷田泰助

    ○枇杷田説明員 その実際の背後関係、経過につきましては、登記所のほうでは必ずしもつまびらかにはできないわけでございますけれども、書類の面から申し上げますと、先ほど申し上げましたように、竣功認可が旭興業と丸善商会にあててなされており、それ以前にその両者から芙蓉へ、芙蓉から西日本へという譲渡証書になっておるわけであります。この関係につきましては、登記所の審査のたてまえからいたしますと、書面上は一応埋め立て権そのものが譲渡できないものでもございませんので、したがいまして、そのような書類が一応そろっておりますために、現に土地が生じたということは明らかでございますので、表示の登記をしたという経過でございます。
  213. 中村重光

    中村(重)委員 この埋め立て権あるいは登記等の手続が、あなたのそういったような解釈で運営をされるということになってくると、将来大きな問題が起こる。丸善商会から芙蓉へ移ったんです。芙蓉から西日本へ移ったんです。そして芙蓉には何らの手続がなされていないでしょう。丸善の段階でその土地はもう竣工した。埋め立てというものは消えたのです。したがって、残るものは土地以外にはないのです。当然丸善商会において土地の登記がなされて、その所有権を芙蓉なり西日本へ移していくということでなければ正規の手続ではない。そういう正規な取り扱いをしていかなければ、将来大きな問題をかもし出すということを私は申し上げておきたいと思う。  ところが、先ほど来言っておりますように、時間の関係が実はあるわけであります。まだこれから警察庁に簡単にお尋ねをしたいと思っております。それから国税庁もお見えでございますから、簡単にお尋ねをしなければなりません。したがいまして、これで終わりますが、連設省に伺いたいのは、実は先ほど来お答えがございましたように、この土地を芙蓉興発あるいは丸善商会等々が現実には売却をし、その保存登記をする前に土地の売却がされている。そして売却をされたものを便宜的に西日本開発が土地の保存登記をしたものですから、他の会社が前に売っておった土地を、今度は後日、この土地を登記してから西日本開発KKが売買登記をしたという実に無理なやり方、あとで問題が起こるようなやり方をしておるのでありますが、こういった土地の売買というものをやるからには、当然私は不動産の登録というものがなされなければならぬと思うのであります。この点はどのようにお考えになっておられるのか、伺っておきたいと思います。
  214. 関口洋

    ○関口説明員 お答えいたします。  昨日先生から御指摘をいただきまして、西日本開発につきましての態様を調べたわけでございますが、当会社はいわゆる事務所の所在地が一度変わっております。初め神奈川県にございまして、それから現在岐阜県に移っております。そこで、その両県及び現実にここで開発公社との間に土地の売買を行ないました行為県でございます長崎県、この三県に問い合わせたのでございますが、どうも現在までのところ他に不動産の取引をしたということがないようでございます。それで、いわゆる宅地建物取引業といたしましては、業という名前がつくとおりに、その行為が反復継続して行なわれることが必要でございますので、一回きりのものであるとすれば、これについて西日本開発をもって宅地建物の取引に当たる、こういうふうに言うことは困難かと思います。  なお、現在のところ、会社の実情は、ほとんど業務を行なってないようでございますので、その面からも、現在までの間にこのほかに大体宅地建物のいわゆる取引をしたことはないのじゃないか、現在のところかように考えております。
  215. 鴨田宗一

    鴨田委員長 中村君、時間が来ております。
  216. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど申し上げたとおりです。  実は芙蓉興発は、この埋め立て地を四十件ぐらい売却をしている。一件じゃないのです。そしてその登記は、西日本開発になってから登記をしているのだから、したがって、実質的には西日本開発が、その土地を複数の人に売ったということになるのであります。これは明らかにいまあなたがお答えになったようなことではなくて、複数の者に売っているのだから、当然不動産業としての登録を受けなければならぬということに私はなると思う。しかし、それがなされていない。しかし、この会社はあるようなないような、そういう形でございますから、私の解釈が間違いなのかどうか。いまあなたは一件というようなことでお答えがあったのですが、これは四十件もあるのだから、四十人の人にこの土地を切り売りしているのだから、これは明らかにまたその他にもそういう行為をやるであろうということは考えられる。これは不動産業としての登録を受くべきであると、私はそのように考える。あとでお答えいただきます。  それから、確定申告について国税庁にお尋ねをいたしますが、実は新聞報道によりますと、この西日本開発が八億一千万円でこの土地を売った。そしてその土地原価が二億六千万円、一般管理費が八千八百万円、そして売り上げ利益というのは四億五千万円、しかも四億五千万円の中で三億四千万円は会社の役員に貸し付けておるというようなことから、税金が納まっていないので、法人税の追及をしておるということが、いわゆる差し押えという形においてなされておるということが伝えられておるのでございますが、そのとおりなのかどうか。  それから、先ほど来申し上げましたように、次から次にこの土地は売られて、そのつど譲った人には利益が生み出されてきている。それに対しても税金の追及がなされたのかどうか。  それから、芙蓉興発と、さらには西日本開発KKとの間に仲間割れがして紛争が起こった、それに対して和解金というものが二千万円出されている。これらの問題に対しても、税の追及というものがなされておるのかどうか、この後の進め方とあわせてひとつお答えをいただきたいと思います。
  217. 垣水孝一

    垣水説明員 お答えいたします。  ただいま先生おっしゃいましたように、西日本開発からは本年の四月末に申告書が出されておりますが、全額未納でございましたので、役員に対する貸し付け金について債権差し押えの措置がとられておるように所轄国税局のほうから報告を受けております。  それから各段階の課税でございますが、丸善商会に対しましては、四十三年ごろ調査をいたしまして課税措置をとっておりますが、異議の申請が出ましてただいま再調査中でございます。  それから、次の芙蓉興発につきましては、その関係調査を実施いたしておりますが、無申告であり、さらに住所その他を鋭意調査中でございますが、会社の実態が明らかでございませんので、いまのところまだ調査が終了しておりません。  以上でございます。
  218. 中村重光

    中村(重)委員 先ほど来申し上げたように、転々と埋め立て権あるいは埋め立て地の譲渡というものがなされてきている。それから仲間割れ等におけるところの和解金等も出されてきている。それはすべて追及されていかなければなりません。それから会社に対して、あるようなないような形になっているんだから、しかし、役員はいる。その役員に対しては第二次税金の追及というものが当然なされなければならない。そこまで徹底して進める御意思があるのかどうか、その点もう一度はっきり私はお答えいただきたいと思う。
  219. 垣水孝一

    垣水説明員 関係国税局、税務署を督促して鋭意調査中でございます。調査の指令をいたしております。
  220. 中村重光

    中村(重)委員 最後に、警察庁にお尋ねをいたしますが、実はいま捜査中の事件でございますので、私はあまり深く入ることを避けたいと思っておりますが、この西日本開発KKというのが安く買った土地を、先ほど来申し上げましたような数字で売却をいたしましたために四億五千万円、一般管理費というものは八千八百万円、これは非常に大きいと思うのですが、これは国税庁がいま追及しておりますからその真相は明らかになってくるでありましょう。西日本開発KKが確定申告で提出をいたしました書類を見ましても、いま言うような四億五千万円という利潤でございますが、きわめて大きい数字であるわけです。このお金をめぐりまして実はいろいろと黒い霧という形で伝えられているのでありますが、このことも県議会で実は問題になったのであります。警察当局といたしましても相当前からこの捜査を続けておるということでございますから、その進展の状況、そこを一応伺いまして、お答えによりましてさらに二、三お尋ねをしてみたいと思います。
  221. 高松敬治

    ○高松説明員 本件につきまして、いろいろうわさがあったようでございまして、地元長崎県警ではかなり前からこの問題についていろいろ調査を進めている、かように私ども聞いております。ただ、どういうふうにいまそれをやっているか、現在はどの段階にあるかというようなことは、何ぶんにもいまそういう調査を進めている最中でございますので、これは申し上げることをお許しいただきたい、かように思います。
  222. 中村重光

    中村(重)委員 警察当局が調査中でありますが、県議会におきましては、いまあなたがお答えになりましたよりももう少し詳しく実は本部長のお答えがありました。私も実は傍聴しておったわけであります。県議会で指摘されました中に、この土地の売買をめぐりまして、買い主側、売り手あるいはその他の人たちが、某料亭において会食をされた事実があるのかないのかというような指摘も実はある。そういううわさが多く出ているのであります。おそらく長崎県警本部といたしましては、ある程度、もうつかんでいるのではないかというように私は思われます。  さらにまた、私がこの資料を見て考えてみましても、八億一千万円の中の七億円は、実は開発公社から西日本開発KKの、当時の所在地でございました川崎のほうに送金をされているのであります。その残りの約一億円であります。これは、二千万円というのは県も中に入りました和解金であろうと思うのでありますが、これが水田法律事務所に送金をされておる。それから約六千万円も、これが同じく水田法律事務所に送られておる。三千万円は、当初は三島という社長でございましたが、それがかわりまして高山ということになっておりますが、その委任があったということで、会社の役員に直接渡されている。これらのこと等を総合して判断をしてみますと、どうしてそういうような送金がなされたのであろうか。  いま一つは、先ほど来私が、時間の制約もありまして、きわめて抽象的にお尋ねをしたのでありますが、公有水面埋め立てをめぐりましてもいろいろと問題があるのであります。次から次に移っている、そして税金も納めていない、こういう事実もある。しかも、土地の登記をしなければならないにもかかわらず、そういうことがなされていないで、もっと深く突っ込んでお尋ねをすれば、ある程度明るみに出たのじゃないかと思うのでありますが、何かそこに公文書偽造というにおいもなきにしもあらずであります。長崎県警本部長の、四十一年当時からの書類を押収していま調査を進めておるということも、実は県議会でもって明らかにされましたが、それは私が指摘をしたような一点が中心になっておるのではないかというように思われます。  それから、私が承知をいたしております——これはうわさといえばそれまででありますけれども、大体間違いないのではないかというように考えておりますが、私が聞いておりますような点でも、数回高級料亭においてそれらの関係者が飲み食いをやっておるということであります。  それからいま一つは、四億五千万円のそうした利益を上げておりますけれども、全然税金を納めていないということであります。法人税も納めていないということであります。そのお金はどこかに消えておるということであります。ともかく本事件は、投書によって、これは県と某国会議員その他へ、いろいろな形においてこの金が流されたということが、実は警察にも、 あるいは報道機関にも、その他相当広い範囲に投書が実は出されたということ、それがきっかけとなりましてこの問題がずっとクローズアップされてきたのでありますが、ともかく奇々怪々であります。ともかくそれだけに、あまりにも調査が長引いておりますために、何かしら特殊な圧力によってこの問題がもみ消されようとしておるのではないかというような、そういう批判すら出ておるという事実であります。県警本部長が県議会においてどのような答弁をしておるか、私はここに議事録の写しを持っておりますけれども、これを朗読いたしますのは、時間の関係もありますから省略をしなければなりません。ともかく、いまあなたがお答えになりましたが、直接の捜査をやっております県警、それから現地の県警ではございませんが、また福岡県警もやっておるということでございますが、警察庁としてはあまり詳細なお答えはできないにいたしましても、これらの問題に対してのある程度の決意を含めた答弁は私はあってしかるべきではないかと思います。  長崎県は御承知のとおり、不名誉なことでありますが、県議会議長の刺殺事件があった。いま二回忌がございましたが、まだその事件すらいつどういうことになるのか、見通しがあるのかどうか、迷宮入りするのではないかというような、そういう状態に実はあるのであります。いま申し上げましたような問題等々含めて、何か県政が暗いものにおおわれておるような感じがしてなりません。そういうことが県政に対する県民こ不信感という形になってくるでありましょうし、政治に対する不信あるいは警察当局に対する不信という形に発展しないという保証はないと私は思うのであります。したがいまして、私は、刑事局長は直接その面における最高責任者であるわけでありますから、いま一つ、この問題に対してどういう態度で臨もうとお考えになっておるのか、その決意のほどをこの際ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  223. 高松敬治

    ○高松説明員 本件につきましては、私どももかなり早い時期から長崎県警からの連絡を受けております。かなり長い期間をかけて、それから非常に多方面に手を伸ばしていろいろ調査をしていることは事実でございます。そういう点で積極的にこれの捜査をやっているということは申せるのでございますが、ただ問題は、私もこの間の県会の議事録の写しを一応全部見てみました。それらにおけるいろいろな問題点というものも一応拝見いたしましたが、やはりそこでも問題は、犯罪を構成する点はどの点になるか、具体的にどの事実がそうなっていくか、それからそういう具体的な犯罪を構成するかどうかということの、もし犯罪を構成するものがあるとすれば、それに対する証拠をどうつかんでいくかというふうなことには、まだいろいろこれから問題があろうかと思いますし、またそういう点での捜査も今後続けてまいるはずであります。具体的に犯罪になるかどうかは、いまのところそういう状態で、はっきりとは申せませんけれども、そういう点の努力は、長崎県警としても今後とも十分にやってまいるというふうに私は考えております。  御指摘のありました四十四年の議長刺殺事件という事件につきましても、相当に努力いたしましたが、残念ながらいまだ犯人は検挙できません。しかし、これも現在十五名ばかりの専従員をかけて、なお捜査を継続しております。これも非常に重要な問題でございまして、県警としては前本部長、それから現在の本部長を通じて、一番の大きな問題としてなお努力をしている、こういう状態でございます。そういうことで、私どもといたしましても、そういう警察のやり方というものについて今後一そう指導を深めてまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  224. 中村重光

    中村(重)委員 時間をはしょって質問をいたしましたが、すでに時間を超過いたしました。委員長並びに同僚諸君に御迷惑をおかけしました。また、政府委員に対しましてもいろいろと御迷惑をおかけいたしました。恐縮に存じております。先ほど来申し上げましたように、これは長崎県に起こった問題ではございますが、全国的な問題でもあるわけであります。また、申し上げましたようにこの海の埋め立て地が、土地所有者である西日本開発KKにより売却され、税務署に確定申告をしておりますものだけでも、八億の中に四億五千万円の利益をあげておる。この過度の利益が県民に対する大きな負担となる。そのことは言うまでもなく、これが国民の負担になるということ。公社の運営よろしきを得たならば、また政府の指導よろしきを得たならば、私は法解釈の面その他において、もう少しとるべき措置があったのではなかろうかという感じがしてならないのであります。また、この利益をめぐっていろいろと流布されておりますところの黒い霧、これは単なるうわさではないと私は思います。いま高松刑事局長の御答弁、それに期待をするわけであります。  最後に私は、自治省に公社のあり方としてお答えをいただきまして、この質問を終わりたいと思います。  今日、土地の値上がりがどんどん行なわれておるという中において、ともかく地方自治体が先行取得をしなければならないということは事実であると思います。革新首長のところといえども悩みは同じであると私は思うのであります。したがいまして、議会のチェックの及ばないようなそうした公社に、秩序を乱すような形の取得をやらせるということではなくて、地方自治体に対して先行取得の道を開く、交付公債を発行するような方法をもって財政措置を講じていくというようなことが、積極的に講じられなければならないと思うのであります。さらにまた、公社等を存続する場合といえども、少なくともその構成は議会の中から複数の理事をこれに参加せしめる、絶えず公社のあり方というものが議会の中に十分知らしめられていくということでなければならない。それから公社のそうした経営の内容等々、少なくともこれらが住民に公表されるという措置等々が講ぜられなければならないと考えます。そうした点に対して自治省はどのようにこの後対処していこうとお考えになっておられるのか、その点をひとつお尋ねをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  225. 立田清士

    ○立田説明員 地方団体におきまして、土地を先行取得する必要のあることは御指摘のとおりでございます。そのために現在すでに各地方団体におかれましても、土地開発基金あるいは先行取得のためにいろいろな措置をとっております。それに対しまして、国のほうといたしましても、いろいろな方法で起債措置等も含めましてその措置をとっておりまして、またその点についても今後その充実をはかっていきたい、そういうふうに私どもは考えております。  なお、その地方におきます開発公社につきまして、その土地の中においても、開発公社でその都道府県あるいは地方団体との関係で取得していくというようなことも今後行なわれてくると思いますので、そういう公社の運営につきまして、これはもちろん都道府県あるいは市町村における公社もございますので、それぞれその公社運営について、十分その地域の、本来設立されました公社の目的に沿いながら地域住民の福祉に寄与するようなやり方で運営されるように、私たちといたしましても地方団体に適正な運営を期待するようにお願いしていきたい、そういうふうに思っております。
  226. 中村重光

    中村(重)委員 最後に、政務次官御出席ですから、まあいままでの質疑応答をお聞きになりまして、この際、地方自治体に対処し、あるいは政府の法運営の面においてどのように対処していかなければならないとお感じになられたか、ひとつお考え方を、いまお聞きになりましての構想と申しますか感想と申しますか、こうあらねばならないというようなことについてのお答えをいただきたいと思います。
  227. 木部佳昭

    ○木部政府委員 先ほど来、先生のたいへん高い次元のお話をいただいたわけでありますが、やはり疑惑を持たれないような公平な運営を旨として、そうして住民の福祉をはかるということが一番大事じゃないか、こう私は考えておるわけであります。
  228. 鴨田宗一

    鴨田委員長 次回は明二十四日午前十時理事会、十時三十分委員会を開くことにし、本日はこれにて散会いたします。   午後四時五十九分散会