○
武見参考人 現在病院の分類が開設者の別にされております。社会的な機能という面では全然分類がされていないのでございます。公私
医療機関を、社会的機能からあるいは学問上の機能から分けないで開設音別の区分をしているということは、非常に原始的な明治の初期の
考え方でございまして、今日はもう古典的な
考え方に属するものだと思っております。
それから公的病院の定義をおっしゃっておりましたが、私は、独立採算制の問題とあわせて考えてみまして、公的病院はどういう機能を持つべき病院であるかということが
最初にきめられなければいけないと思います。たとえば地域の
医療の教育センターというふうなものを一緒に持っている、これは私は私は非常に大事な
考え方だと思います。町のお
医者さんもそこの病院にいる人も、あるいはほかから呼んでくる先生も一緒にして、そこで
一つの教育センター的な役割りをする、それから大学を卒業したてのお
医者さんを、二年とか四年間そこで徹底的に卒後の研修訓練がやれるというふうなことの教育的機能を持つことが一番大きな公的要素であると私は考えております。今日の公的病院と称するものは、この公的要素を非常に欠いているのは残念でございますが、事実であります。たった
一つ沖繩の中部病院は、これは公立病院でございますが、学生が八人ぐらいに教官が九人ぐらいおりまして、朝九時から夕方五時までつきっきりで教育をする、そしてローテーションをいたしまして各科の勉強を徹底的にやらせる。それからまた夕方五時からは語学の勉強もやらせる、寄宿舎制度である、そしてフルタイム医学の勉強をさせる、月給も学生にも出すし、インストラクターも相当な月給を取っておる。こういうふうなことが公的病院の
基本的な姿であると私は考えております。
こういうふうに考えてまいりますと、教育病院というものをまず公的病院の第一
段階で考えてほしいと私は思うのであります。現在教育病院の指定をされている病院がございますが、諸外国と比べてみますと全く教育病院には値しないものでございます。
その次の問題は、私的
医療機関や採算ではできないような診断、治療の設備を持つ、そして高度な技術を持つということがその地域になければなりません。たとえて申しますとガンセンターのようなもの、あるいは小児センターのようなもので、そういうものが次々とできてこなければなりませんし、精神衛生センターのようなものもできてこなければなりません。そういうふうなものはリサーチと
大衆教育というものと医師の教育というものとを一緒にあわせて行なうということで、地域にそういう病院が数多くできてくることが望ましいわけであります。
現在子供の問題がございましても、総合病院へ参りましても小児科があるだけでありまして、小児外科があるかないかはわかりません。小児精神科があるかないかもわかりません。そういう点から考えてみますと、小児病院が、小児センターがございますならば、そこへ行けば内科も外科も精神科も、眼科でも耳鼻科でも全部あるというふうな形に再編成されなければなりません。私は、公的
医療機関のあり方といたしまして、いまのあり方は全く
意味を失ってしまっている、こういう新しい編成をいたしまして新しいスタッフと入れかえるのが原則であると考えます。
そうなってまいりますと、私的病院をどうするかとおっしゃいますが、私は将来の問題といたしましては、私的病院は、その人の専門技術が非常にすぐれている者だけがその地域に存在すると思います。私的病院というふうな形はむしろなくて、開放病院の形を、社会化の問題と供給体制としては私は希望したいのでございます。開放病院にいたしますと、そこで技術と経済が公開されまして、技術が公開されるということは低い技術の人が高いレベルを知ります。それから
あとの治療は大きく進歩いたします。そういう点で、技術と経済が公開されますオープンシステムの病院というものが非常に大事になります。いまの公的
医療機関は全部クローズドシステムでございまして、地域との
関連性というものを何も考えておりません。こういう点でいまの公的
医療機関の再編成が私は急務であると考えます。これができますと、
診療所やその他のものはほんとうの受付のような形になってまいりまして、それからその専門病院に送っていく、救急処置だけをそこでやればよろしいということになりますし、そこで得ました情報が、データバンクのようなものが健康センターにできておりますならば、そこでデータ化されまして保存されておりますと、どこの病院へ行っても、前にこの人はどこの病院に行ってどう言われた、どういう治療を受けたということもはっきりわかるようになります。いわゆる乱診乱療とかむだを排除するということがございますが、情報科学を導入いたしましてそういうセントラルシステムを採用いたしますと、そのようなむだは全く排除されると思います。そして
国民は最高レベルの
医療を僻地にいても受けられるという形になるわけでございまして、私はそういう形に
医療制度がすみやかに改変されることを希望しているわけでございます。
それから僻地
医療の問題でございますが、私は今日の
段階は、僻地問題は健康管理と輸送の問題であると思っております。僻地の健康管理というものを特殊な健康管理方式を考えますと、この冬はこの雪で閉ざされた
ところに置いてはあぶないという人は里のほうに持ってさておけばいいわけでございますし、またヘリコプター等も利用されるならばそれはできると思います。
独立採算制の問題がございましたが、私は、独立採算制は現在の公的
医療機関はやむを得ないと思います。しかし、このような形で公的性格と教育面とか臨床面、リサーチ面をそこでやりまして、ほんとうに地域のセンター的な問題になりましたときには独立採算制はあり得ないと思っております。そういう点で、
現状の改革は、できれば私的
医療機関は
医師会病院
中心に再編成する、それから専門病院を充実していく、それから公的なものはセンター方式を採用していって、そこで教育病院の機能を盛んにしていくということになりますと、将来の
日本の
医療の需給というものの質的向上が非常に大きく進むと思います。
医療の供給の質的発展というものを考えないで数だけふやすという現在の医師養成の
考え方には、私はあまり賛成できないわけでございます。