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1971-08-03 第66回国会 衆議院 社会労働委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年八月三日(火曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 森山 欽司君    理事 伊東 正義君 理事 小沢 辰男君    理事 澁谷 直藏君 理事 田邊  誠君    理事 大橋 敏雄君 理事 田畑 金光君       秋田 大助君   小此木彦三郎君       小金 義照君    中島源太郎君       橋本龍太郎君    箕輪  登君       向山 一人君    小林  進君       後藤 俊男君    島本 虎三君       八木  昇君    山本 政弘君       古寺  宏君    古川 雅司君       渡部 通子君    寺前  巖君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 斎藤  昇君  委員外出席者         参  考  人         (日本医師会会         長)      武見 太郎君         社会労働委員会         調査室長    濱中雄太郎君     ————————————— 委員の異動 七月二十四日  辞任         補欠選任   渡部 恒三君     小平 久雄君 同日  辞任         補欠選任   小平 久雄君     渡部 恒三君     ————————————— 七月二十四日  一、厚生関係基本施策に関する件  二、労働関係基本施策に関する件  三、社会保障制度医療公衆衛生社会福祉   及び人口問題に関する件  四、労使関係労働基準及び雇用・失業対策に   関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件(医療保険に関  する問題)      ————◇—————
  2. 森山欽司

    森山委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  本日は、医療保険に関する問題について、参考人として日本医師会会長武見太郎君の出席をいただいております。  この際、委員会を代表して一言ごあいさつを申し上げます。  参考人には、御多用中のところ、当委員会調査のため、御出席をいただき、まことにありがとうございました。何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、この際、委員各位並びに参考人に申し上げます。  先ほどの理事会で協議いたしましたが、本日は参考人の御出席の時間も限られておりますので、参考人の御意見委員質疑に対するお答えの中でお述べいただくことといたしたいと存じます。  それでは、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田邊誠君。
  3. 田邊誠

    田邊委員 きょうは、武見日本医師会長が当委員会に最近初めてお見えになりました。われわれの質問に対して答えていただくことをたいへん感謝をいたします。  さき保険医辞退という、国民にとってはいろいろな面で影響のある問題が起こりましたけれども、これが中止をされましたことは何はともあれ喜ばしいことである、このように思って御同慶にたえないわけであります。ただ私は、ここでもって武見さんに率直にお話を申し上げたいのは、当委員会としてはさき通常国会における健保法審議もあり、いま非常に国民関心を持っておる医療問題について、できるだけ各方面の意見を聞きたいというその一環として、武見医師会長にも当委員会おいでをいただきたいことを実は再三申し上げておったのでありまするが、なかなか御都合がつかなくて委員会出席をされなかったのでありますが、その点非常に遺憾だと思っておるのであります。やはり国民に対して医療問題に対する意見を開陳できる国会場所にできるだけおいでをいただいて、あなたの意見を聞かしてもらうということは、国民医療の進展の上に立っても非常に私は意味あることだ、こう思っておりましたので、そういった意味合いでいままで御出席ができなかったことに対して非常に残念だと思っておるわけです。  さて、きょうは実は非常に時間がございません。武見さんの御都合でわずか二時間の間でございまするが、その間に各党がいろいろとお聞きをしたいということでございますので、私の質問もできるだけ簡潔にいたします。  この事態が起こりましてから、武見さんのいろいろ出されておるところのパンフレットなり、あるいはまたテレビ会談なり、あるいは厚生大臣との会談あとの新聞報道なり、ラジオ放送なり、大体私も漏らさずに聞いておるつもりでございますので、そういった意味合いで、武見医師会長のいろいろな御意見のあるところについては推察をしておるわけでありますから、きょうは、ひとつ、総辞退関連をする問題に対して武見医師会長の御認識なりお考えを聞く、できるだけこういうことにとどめていきたいと思いますので、そういった点でひとつぜひ、まあいろいろと耳なれない武見さんの御発言もあるのですけれども、それはそれとしてまたいずれ聞くことにいたしたいと思うのであります。それから率直に言わしていただければ、必ずしも私ども質問武見医師会長の耳に耳ざわりのいい質問ばかりではないと思います。しかし、それはやはりそれぞれの立場の中で、今後医療問題に対して取り組んでいきたいという考え方に立っているわけでありますから、ぜひひとつそういった面でできるだけ御理解をいただいて、簡潔な御答弁をいただきたいということを、あらかじめ各委員を代表する形でお願いしておきたいと思います。  最初にお聞きをしたいのは、何といっても、この保険医辞退という問題が日本医師会の手によって行なわれたのでありまするけれども、この総辞退をなぜやらなければならなかったかという理由について、いろいろな場面でお話はお聞きをしましたけれども理解をしているようでいてなかなか理解ができていないという、こういう面が多いと思うのであります。また日本医師会なり武見さんの御発言も、時間を追うごとにその中心がかなり移されているという印象を受けているのであります。あるいはそういう質問をしますと、いや、それは全部関連があるから、それを全体的に把握してもらえばわかるのだという御意見もあろうかと思うのですけれども、しかし、いずれにいたしましても、やはり二月の中医協における審議用メモが出ていた時点の中から、これはけしからぬ、こういう御発言があり、その中で総辞退という問題もいろいろと考えられた。次いでは、国会における健保法審議の際には、再診料の新設を含めて、改悪である、これはわれわれとしては何としても反対である、こういう御意見が強く表明されました。  さて通常国会健保法が廃案になりますると、そういう事態の中では、今度はやはり何といっても健康保険法なり医療保険抜本改正が必要である、これが最大の目標だというお話がありました。その中では三十六年の政府・与党との約束がほごにされているということもあります。しかし総辞退に入られる前後からは、その主目標はいわゆる組合健保の解体にあるというふうに言われている。事実私の属する群馬県の医師会なり地元の前橋市の医師会でもパンフレットをお出しになっておりますけれども、これを見ますると、組合健保というものはけしからぬのだ、これをわれわれとしては何としてもつぶさなければいかぬ、これが医療近代化の重要なポイントであるというふうに言っていらっしゃるわけですね。こういうふうに、関連性を持っておるけれども、その重点が移ってきているということに対して、国民は非常に戸惑いをしたと思うのであります。一体医師会の真のねらいは何なのか、その重点的な目標一体何なのか、こういうことに対してわれわれは十分な理解ができなかったのじゃないかと思うのであります。最後に七月二十七日の厚生大臣武見さんとの会談で、一応収拾のめどをつけられました。それから二十八日の総理との会見でそれを確認されました。これを私ども拝見をいたしましても、いろいろなことが書かれておりまするが、その中で一番はっきりしているのは、何といっても医療費の問題、いわゆる物価、人件費にスライドして診療報酬を上げていく、こういうことがいわばきわめて具体性を持った事項として出されているのであります。  私どもは実ははたと気がついて、やはり今度の総辞退の主要な目標はこの医療費値上げであったかと、こういうふうに実に思ったのであります。これは私が思っただけではなくて、おそらく国民がそういうふうに思っただろうと思うのであります。このよしあしは別として、それならば私は納得がいきます。医師会が現在の低医療政策の中でもって十分な診療ができない、当然医療費はもっと上げてもらわなければならぬ——その中身は別ですよ、中身はいろいろございましょうが、いずれにしてもそういう意見があるということについては、私は理解がいくと思うのです。それならば、まず最初からそういうことを国民の前にもっと鮮明にしておくほうが適切ではなかったか、最も大きな旗じるしとして掲げておったほうが一番適切な道ではなかったか、こういうふうに私は思うのです。おそらく武見さんのお話を聞いておりまして、それをただ単に単純に言うべきものではない、その基本には日本医療をめぐるいろいろな問題があるということを、実は七月二十五日のテレビ対談であなたが図を書かれて説明されたのを私もメモいたしました。ここにございますが、こういう問題が基本にあろうとは思います。しかしやはり端的に言って、総辞退をしなければならなかったいわゆる医療担当者、お医者さんとしての立場からする一番主要な目標は私はここにあるのではないかと実は判断をいたしたのですけれども、その点に対してひとつ武見さんのお考え方をこの際国民の前に明らかにしておくことが今後のために必要ではないかと思いますので、ひとつ端的なお答えをいただきたいと思うのです。
  4. 武見太郎

    武見参考人 ただいまの御質問でございますが、診療報酬の引き上げだけなら最初から診療報酬という旗じるしを出します。包括的抵抗体制ということばを私は最初から使っているのでございますが、健康保険法は、十年前に政府・自民党と約束をいたしましたが、抜本改正が少しもされておりません。その間に人口の老齢化あるいはインダストリアリゼーションというふうなものが盛んになりまして情勢が変わってまいりました。また医学も、かなりな医療意識革新というふうなものも変わってまいりましたが、健康保険法大正期法律でございまして耐用年数を過ぎた法律でございます。社会立法耐用年数を過ぎたということは、これはたいへんなことでございまして、私は診療報酬だけの問題でこの辞退闘争を展開したわけではございません。この点ははっきりと御記憶を願いたいと思います。耐用年数を過ぎた法律社会立法として君臨しているということに対して、ことに十年前の約束が今日まで行なわれていない、起爆剤になりましたものがたまたま中医協審議用メモであったということでございます。
  5. 田邊誠

    田邊委員 私は武見さんの御意見なりについてかなり理解をする立場に立っているつもりなんです。かなり日本医師会なりが主張されている中には、政府の現在までの無為無策公約違反、また医師会との約束のほご、こういうきわめて大きな怠慢が、今日の医療の混乱を招き、また医師会の不満を招来をしてこういう事態に追い込んだ一つの大きな要因であることは、私は間違いない事実だと思うのです。そういう意味合いで、言うなれば耐用年数の過ぎた健保法ということばを使われたと思うのでありますが、私はそのことを一応理解をする上に立って見ても、今度の総辞退というのが、いわゆるそういう皆さん方目標があればあるほど、それに対するところ意見を出されるあらゆる場所を駆使されて医師会意見を貫かれ、あるいはまた医師会意見国民に知らせるということは、私は決して不可能でなかったと思うのです。あとでお聞きをしたいと思いますけれども制度審議会なり社会保険審議会はいわば無用の長物だといいましょうか、そういう御発言がございました、落第坊主だという御発言がございましたが、しかし私はそれはそれなりに皆さん方意見を吐く場所ではあると思うのです。そしてまたそれがどうしても——医療という専門的な問題ですから私もわからない点がありますけれども、そういった点に対してどうしても必要あればまた新しい審議機関の問題についても、私は提起をされてしかるべきだろうと思うのですが、そういうことをいわば抜きにした形で皆さん方主張を貫かれようとするところに、国民は非常に奇異を感じておると思うのです。政府に対して要求を掲げることはもちろんけっこう、しかし国民がいろいろな面で迷惑を受けた総辞退というこの問題との中にどうしてもつながりを持つことが、必然性を持つことがどうもでき得ないんじゃないかという気がしてならないわけであります。したがってそれが医療費値上げであれ、あるいは医療保険の、あるいは医療制度を含めた抜本改正の問題であれ、皆さん要求が高きものであり、将来にわたるものであればあるだけに、そのことはいまいわば突如として起こったものではないわけでして、そういう意味合いで、長い間の積み重ねの中で皆さん方主張というものがより大きく吐かれる場所がないものではないというふうに思っておるわけであります。そういった点でこの要求と総辞退との間における必然性、これを国民の側から見てどうしても理解ができない、認識ができないということにあるのではないかと思うのであります。その点をどう考え、こういう事態に踏み切られたのか、もう一度お聞きしたい。
  6. 武見太郎

    武見参考人 ただいまのお話でございますが、私は過去十五年間医師会長といたしましていろいろな審議会等にも出ましたが、既存審議会既存法律を守る、あるいは運営する形で運用されておりまして、その法律を根本的に直すという立場に立つ審議会一つもございませんでした。まことに残念でございますが、法律の中に規定されております審議会では、現状を打破して新しい世界をつくるということは不可能なことが事実として証明されておりますので、必要のない審議会委員を引き揚げたわけでございます。
  7. 田邊誠

    田邊委員 それは社会保障制度審議会においてもいわゆるコミッションということを実は言っておるわけでありまして、いろいろと実はこれらの審議機関の中においてすらも医療問題についてはまた別の形をとったらどうかという御意見も私はあると思うのです。武見さんの要求なり発言の中にそのことについても若干触れておるわけですけれども、その点はどちらかというと、他の要求事項に比べて非常に不明確であります。一時は、新しい審議機関をつくるべきである、こう言いましたけれども、またその後言い直されて、実はそれは医師会の中におけるいろいろな研究機関をつくるという意味だ、こういう御発言に変えられたような経過も実はあったわけでありまして、私はもし武見さん自身が、そういう既存審議会では十分な医療問題に対するところ審議ができないということであれば、そのことに対してやはり終始一つの新しい構想なり新しい考え方主張されれば、そのことについては私どもも十分理解でき、十分前進的に考えられる面があったと思うのでありますけれども、その点はどうもあなたのせっかくのいろいろな御発言の中できわめてあいまいもことしておったんでないか、何かいろいろな関連性があるから明確には言えないという御発言もあったようでありますけれども、私はそういった面に対してこの際やはり武見さんが、将来の医療問題に対する討議場所としてかくあるべきである、こういう御意見があればひとつ重ねてお伺いしておきたいと思っております。
  8. 武見太郎

    武見参考人 いま御発言をいただいたのでございますが、私は実は日本医師会の中に、関係各界の人を網羅いたしまして、新しいそういう問題を、医師会員だけでなく討議をいたします研究的な機関を設置する形で、四十六年度の予算に相当大きなものを計上いたしたわけでございます。政府関係の方から、それは厚生省のほうか内閣のほうに譲ったほうがいいんじゃないかというお話もございまして、折衝も受けました。しかし私は、一部の人にはもう委員就任を依頼いたしましたので、いまさらそういう形をとっていいか悪いかということは私自身としていささか考えざるを得なかったわけでございます。そこで政府がおつくりになるなら御自由であるという形をとらざるを得なくなったのが、あいまいもことしたとおっしゃる理由であろうと思います。私の考え方の中にはあいまいもこたるものはなくて、医療の問題を医者だけでやってはならないという考え方で、日本医師会に特殊な委員会をつくるという考え方であったことをはっきり申し上げておきたいと思います。  それからアドミニストレーティブ・メディシンというふうな新しい学問の領域が開けてまいりまして、その領域に立ちまして医療問題を論議しなければなりませんが、そういう専門的な問題を論議いたします専門家日本にはきわめて少ないのでございます。こういう点で、それに関連しております人々を集めましてごく専門的な委員会日本医師会につくって、大きなものは政府に譲ってもいいというふうな考え方に現在なっているわけでございます。
  9. 田邊誠

    田邊委員 あなたの御意見の中におけるいろいろな矛盾について私はここでもって、あえて再三にわたって質疑討論をしようとは思いません。日本医師会の中でいろいろと勉強されることについては、私どもはもちろん、医療中心である医療担当者がそういう場所をつくられることについてはとやかく言うものでありません。しかしやはりこれを法制化し国民に享受をさせるという立場からいえば、政府なりあるいはまたわれわれの側でもって、皆さん方のやはり理解医師会協力を得た形で審議機関なりをつくらなければならぬと思うのです。ですから、ことばじりをとらえるわけじゃありませんけれども政府政府でかってにおつくりなさい、こういう意味ではないと思うのでありますけれども、そういう意味合いで、ひとつ皆さん方立場に立った御意見があればはっきり聞かしていただくほうが、なお今後において事態をより前進させる意味でいいのではないかというふうに思いまして申し上げたわけでありまするから、十分ひとつ御理解をいただいて今後に対処していただきたいと思うのであります。  そこで、一月にわたるところの総辞退が起こりました。私、は何といっても、これによって国民は多大の迷惑を受けたと思うのです。いま武見さんもおっしゃったように、医療の問題は医者だけでできるものじゃない、国民との間におけるところのコンセンサス、いわば両方が一体となった形で今後にわれわれは臨むべきである、こういう御意見がありました。そのとおりだと思うのです。そういった面からいって、この事態というものは、逆説的に言えば、医療の問題に対して国民関心を呼んだ、こういう効果は私はあったと思いますけれども、しかし、こういう異常な事態の中でもって国民理解を求めることは、私は決して正常でないと思うのです。そういう意味合いで、実は国民はたいへんな迷惑を受けたと思うのであります。したがってこれに対する、医師会も当然国民の側に対して——政府の側に対しては、これはいま言った責任を追及するのは当然のことでありまするし、また皆さん方一つ法律に基づいた行動であるという、こういう御認識、これが正当であるかどうかという点は私は別だと思うのです。しかし、あくまでも国民に対して道義的にやはり、迷惑をかけたというところ責任なりそういう気持ちというものは、これは私は表明されてしかるべきだと思うでのす。武見さんの全部を通ずる発言というものが高姿勢だというふうに見られておるから、あるいは、あなたの二十八日における記者会見の模様というものも、必ずしもそういうふうに率直な気持ちが出ておらないかもしれませんけれども、私はやはり総辞退において国民にたいへんな迷惑をかけたという、こういう気持ちというものの意思表示はあってしかるべきではなかったと思うのでありまして、その点が非常に残念であります。あなた方の行動がせっぱ詰まったものであり、あなた方の目標がより高いものであればであるほど、私は国民の受けたところの、いわば被害といいましょうか迷惑、こういったものに対して、やはり率直に皆さんの側からそういう気持ちが出てしかるべきであったかと思うのでありまするけれども、どうもその点が少し足らなかったというか、誤解されているといいましょうか、あなたの気持ち国民に伝わっておらないと思うのでありまして、この際ひとつ当委員会を通じて、武見日本医師会長という立場に立って、この総辞退というものが国民に与えた影響に対する、この際の気持ちを表明していただきたいというふうに思うのです。
  10. 武見太郎

    武見参考人 私は、国民にあやまる意思は絶対にございません。
  11. 田邊誠

    田邊委員 そういうぶっきらぼうな御答弁で、今後国民理解協力を得られるという、こういう御認識には私は立たないと思うのです。私は、一つ一つことばじりをとらえて質問をしないつもりで心がけておりまするから、あなたの御発言の中に、いわば国民に対していろいろな批判があるかもしれないけれども、これは大衆の利益を考えていることだから決して国民大衆反対は気にしないというふうな御発言もありました。しかし私は国民医療に対して無知であり、あるいは甘やかされておるというようなことがたとえあったにしても、それはいわば法のしからしむるところでありまして、国民側責任ではないと私は思うのであります。したがって、今後われわれが医療保険抜本改正医療制度の全体的な前進をはかるために必要な起点は何かといえば、やはり国民医療であり、国民のそういった面におけるところ理解協力であり、認識の深さである、私はこういうふうに思うのです。したがって、今度のものがいわば大乗的なものであればあるほど、私はそれに対するところの十分な理解国民に与えるところ責任はあなたの側にあったのではないかと思うのでありまして、そういった点で、今後に対処することは私どもはできないというふうに思うのであります。私どもはやはり、いわば国民というものを背にしょって、これから先医療問題を検討していかなければならない、こういうふうに思っておるわけでありますから、せっかくの御答弁でありますけれども、もう少しくあなたの真意を国民に知らしてもらいたいというふうに思うのですけれども、どうでしょう。
  12. 武見太郎

    武見参考人 今度の辞退前に、いろいろ問題がございますし、私ども国民理解を得べく努力はいたしました。しかし私ども努力では、国民理解を得るスケールの活動はできません。事があまりに専門的でございます。このような専門的なことを、大衆理解を待っておりましたならば永遠にできないというのが私の見解でございます。あまりに専門的なことを、八さん熊さんまでも全部理解してもらって御協力を願うということは、現状においては不可能であると判断しております。しかし私は、究極において新しい世代で国民の生命を尊重するのはわれわれの考え方でなければできない、いまの国民の意を迎えている形ではできないという自信に満ちて行動をいたしておるわけでございます。ですから、法律で定められました一カ月間をわれわれは待機をいたしましたし、それから市町村長に対しまして特殊な御用意もお願いを申し上げておりますし、あらゆる手段を尽くしまして、国民に迷惑のかからないような対策はとったはずでございます。  しかしながら、保険者政府医者の切りくずしだけをいたしまして、国民の迷惑に対する対策を一カ月間全然とっておりません。国民の迷惑というものの内容を見ますと、保険診療でなくても、診療を拒否されたという事実は私はないものと確信いたしております。診療拒否でございますならば非常な国民の迷惑だと存じますけれども保険診療をやらないということだけでは、私は国民の迷惑という段階は、いまの段階で断定することはむずかしいのじゃないかと考えております。
  13. 田邊誠

    田邊委員 まあ論争はいたしませんけれども、やはり医療が専門的なものであり、そうしてまた医療担当者としての抱負と経綸があればあるほど、国民のそれに対するところの十分な認識理解を得る道がなければ、私はあなたのいうところ国民医療の確立はないと思います。そういう意味合いで、ひとつぜひ今後に対処する場合において、一考をわずらわしたいと思うのでありますが、他の委員質問もございますから、私はもう一つだけ質問して譲りたいと思います。  二十七日の厚生大臣との会見、二十八日の総理との会談事態を収拾されましたね。これで大体日本医師会要求というものは、原則的には受け入れられたという御認識ですね。
  14. 武見太郎

    武見参考人 日本医師会要求と申しますよりは、医学を社会に適用いたしますために、これだけの条件は、最小限度必要なものが認められたと考えたからでございます。日本医師会の全く団体的な個人的意見と申すものではございません。これは明確にしておきたいと思います。
  15. 田邊誠

    田邊委員 まあ、あまりことばの中に——明確にといいますけれども、私どもはやはり常識で見た場合には日本医師会のいわば意向であり、日本医師会一つのまとまった要求として政府に対していろいろなことを主張され、そうしてまたその要求の原則的な面が受け入れられたから総辞退というものが終止符を打った、こういう認識に立つわけでありますから、それが学問的に見た場合におけるいわば要求が実現をしたというふうにとるかとらないかということについては、これは私はあまりかけ離れたものではない、表裏一体のものである、こういうふうに思っているわけでありますから、そういう立場でもってあと厚生大臣質問いたしますので、あなたのほうのそういう御認識というものがほんとうに医師会要求として受け入れられたかどうかということについては、なお確かめておきたいと思うのであります。  というのは、かなり抽象的な面もありますし、かなり大上段に振りかぶられた面の組合健保の解体等の問題についても、いわばかなり龍頭蛇尾になっておる、抽象的になっておる、こういう面もございます。さっき申し上げたように、医療費値上げだけがかなり具体的に前面にクローズアップされた形で終止符を打たれたという認識に私は立つわけでございます。  質問は私は譲りまするけれども、ぜひひとつ最後に、これから医療問題、いろいろと審議をいたします。われわれもしろうとでありまするけれども、しかし、やはりさっき申し上げたような立場で、ひとつぜひ国民理解協力を得、国民においてもできるだけ各党あげてこの問題に対して取り組みたいというふうに思っているわけでございまするから、たいへんお忙しいでしょうけれども、今度私どもが要請をいたしました限りにおいて、できるだけひとつ当委員会に御出席をいただいて、また武見さんの御意見も開陳してもらいたいということを強く要望しておきたいと思います。ありがとうございました。
  16. 森山欽司

    森山委員長 次に、島本虎三君。
  17. 島本虎三

    ○島本委員 この際でございますので、私自身はそうでありますけれども国民もこの点はぜひとも聞きただしておきたいということばを耳にします。その一、二を聞きたいと思います。それと、そのほかに二つばかり新たな構想として伺いたい、こういうような発想でお伺いします。  まず、その一つでございます。それはいままで七月の十三日、それから七月の二十日、二十七日、それから二十八日、それぞれ会談厚生大臣並びに、最後は総理と会談をしてございます。保険医の総辞退という、こういうような名目で、総理との会見で解決を見たのが二十八日でございました。そうして、私どもはやみ取引はしないし、政治的解決をするつもりはないのだ、まあ堂々と改革論をわれわれ耳にしてまいりました。その意味におきましては、私どももそのことばと結果に対しましては、あるいは尊敬の念を持っておったのでございまして、しかし最後はやはり総理官邸の中での収拾を見たわけでございまするけれども抜本改正、この大義名分はあくまでもこれを唱えてくだすった、これは私は正しいと思います。しかし、いま田邊委員がおっしゃいましたように、それと同時に医療費値上げ、これを約束した。しかし、これが目的だったんじゃないのかという不信、こういうようなものは国民としてはやはり去らないんじゃないかと思います。抜本改正医療費値上げ、場合によっては抜本改正を言いながらも医療費値上げで終止符を打ったのが今回のいわば保険医辞退じゃなかったのか、こういうような声さえ耳にするのであります。私は、このいずれがどうなのか、この際会長にはっきりしていただきたい、こう思ってお伺いするのが一点であります。
  18. 武見太郎

    武見参考人 医療費の問題は、健康保険法の構造的な破綻から派生してまいりましたひずみでございます。したがいまして、構造的破綻を問題にすれば、おのずから医療費の問題が出てまいります。  二十七日の話し合いにおきまして、医療経済に関しまして、資料的な御説明を申し上げまして、大きなひずみを大臣御自身もお認めになったのでございまして、賃金ストというふうな形では決してございません。これは労働組合の運動と、学術を社会に適用する場合の形との非常な相違点であると、私はかたく信ずるものでございます。
  19. 島本虎三

    ○島本委員 それと同時に、第二点として会長に聞きたいのは、やはり会長の一つ発言でございますけれども、これがやはり会長の意思そのままなのか、またまたそれを、ことばのあやで、逆に国民がとっているのか、これも、この際ですから、はっきりただしておきたいと思うことがございます。  それは、総辞退法律に従ったもので、道義的な責任は感じません、こういうようなことばを新聞報道によってわれわれ耳にいたしました。しかし成規の審議機関である中医協、こういうところからも委員を引き揚げておいて、ここでやるというのを委員を引き揚げておいて、いまに入ったということに対しましては、これでいいのか悪いのか。むしろ逆に、このほうに対しては、当然やるべきことをやらないで一つ行なってしまったことじゃないか、こういうような声がもちろんございます。  それと同時に、医療費のかさむのを苦にして自殺された人があったということを、この一カ月の間に耳にいたしました。そういうふうにしますと、これは当然法律に従ったもので道義的責任を感じられないということば、これはそのまま国民の耳に対しましては、医師に対してはやはりこれは誤解を招くことばではないかと思います。この点については、はっきりとこの際私た所見を承っておきたい、こう思うわけでございます。
  20. 武見太郎

    武見参考人 その私の発言は、法律に基づいた行動に関しましては道義的責任を負いませんと申し上げたのは事実でございます。私は、もし一カ月の待機を待たないで、国民側保険者サイド、政府サイドで準備をしないうちにいたしましたならば、これは私は法律的な責任よりも道義的責任をよけいに感じたであろうと思います。私は、その間の一カ月間につきましては、いろいろ医師会に対しまして注文をいたしまして、救急患者の処置の問題その他重症者の場合の問題等、こまかい指示をいたしておりますので、私が道義的責任という表現をみずから考える段階にはないと思いました。  死んだおばあさんかなにかの語がございますが、これはその人の主治医の話を聞きますと、保険の辞退とは無関係であるという話を聞いてきております。新聞では関係があるというふうにつくられたように見ておりますが、私自身の確認したところではそうでございませんでした。
  21. 島本虎三

    ○島本委員 今後中医協に対して委員をお出しになるという構想のように承りました。これは間違いないのかどうか。  それと同時に、いろいろ疑念もあり、また論難もされているようでありますけれど、社会保障制度審議会、これは総理の諮問機関であります。もういかに愚鈍たりといえども、八月中に抜本改正の骨子をまとめるために日夜営々としてやっておるのであります。その中にやはり丸茂参議院議員も出て、発言もなすっておるのであります。しかし、そういうようなところにも委員を出さないということになりますと、せっかくこの抜本改正の大義名分、こういうようなものを今後はかるべきだ、またその諮問機関がやっている、いかに愚鈍たりといえども……。その機関の中にやはり丸茂参議院議員も入ってやっておる。こういうふうになってみますと、その所見なり、高邁なるその意思なり意見なり、これを成規の機関にはかって当然その反映をはかるのが医師会としての一つ立場じゃないか、こう思います。社会保障制度審議会に今後委員を派遣されるお考えでありますかどうか、中医協に対する考え方と一緒にお伺いしておきたいと存じます。
  22. 武見太郎

    武見参考人 中央医療協議会に出ました審議用メモと申しますものは、一つ起爆剤でございます。これは起爆剤でございましたが、この取り扱いにつきましてはきわめて私は遺憾な点があったわけであります。たとえば流感がはやって患者をよけい見れば診察料を安くしなければいけないなんというばかばかしいことが出ております。これは常識では考えられないことであります。このような案が公益委員の原案として出されたということに対して、私は憤りを感じたわけであります。これが起爆剤となったわけでございますが、その取り扱いに関してはいろいろな御配慮をいただくことになりましたので、今回は委員を出すことにいたしました。  それから社会保障制度審議会は、私自身昭和二十五年に委員をいたしておりました。そして第一次の勧告をいたしましたが、そのときに、現在は医療保障は各種保険を一応現状のままで行なうということでございまして、一応という暫定的な文句をはっきりつけてあったのでございます。その後出ました勧告にはそういう問題は一切触れておりませんで、社会保障制度審議会は、私どもが道理を尽くして話しましても数で否決されてしまいます。ことに私が最も憤慨いたしましたのは、全員一致を原則としているから、おまえは反対しても全員一致の答申であるということを当時決定されました。これで出ないことに決定いたしたわけでございます。
  23. 山本政弘

    ○山本(政)委員 関連。  私は、日本医療制度をよくするためには、各種の専門家を集めて、そして衆知を集めてよくする、そういう謙虚さというものが医師会にあっていいと思うのです。いまのお話を聞きますと、どうもそういう点で、私は、配慮が足らぬというか、何かそういう慎重さがないというのか、思いやりがないという感じがいたします。同時に、武見さんのおことばをとらえるようでありますけれども、かつて、国民の家庭教師じゃないのだから理解されなくてもいいのだというようなことをおっしゃったことがあったと思います。そういう意味では私は、良医というものは教育的でなければならぬのじゃないだろうか、名医といわれる人は教育的であるべきである、私はこう考えます。そういう点でひとつお考えを聞かしていただきたいと思います。
  24. 武見太郎

    武見参考人 国民の家庭教師は私にはできません。これは明確に申し上げまして、高度な学問を社会に適用する考え方に立ちますときに、家庭教師の役はマスコミでございますとかほかの人に頼まなければできない問題であります。そういう点で、私が直接家庭教師になることは不可能でございますが、日本医師会といたしましては健康教育制度というものを考えまして、健康教育委員会が各地区にできております。それで健康教育委員会がそういう役割りをすることになっておりまして、私が家庭教師であるということにはなりません。それから今日の段階におきましては、国民の教育も組織的に行なわれなければならないのでございまして、個人が家庭教師をするということは私はないと考えております。  それから日本医師会に学問的な謙虚さがないという御意見でございますが、私が会長になりましてからは、医師以外の人を多数委員に頼んでおります。法律家も経済学者も社会学者も入れまして、いろいろな委員会を、医師の独断でやることを強く戒めております。これはもう三十三年以来、法律、経済等におきましても一流の先生方をお願いいたしまして、またそのスタッフをいただいて事務局を構成しております。それから各種委員会にも医師以外の人に多数入っていただいて勉強をしていただくことになっておりまして、その謙虚さと申しますものよりは、これからの学問はかなり——私たちが立っております立場は人類生態学的な立場に立っておりますので、医学一本ではいかないわけでございます。そういう点で、道徳的な表現では謙虚かもしれませんが、ほんとうの学術的意味におきましては各種の専門家意見を導入することにつとめておりますので、誤解のございませんようにひとつ御理解を願いたいと思います。
  25. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、もう一度お伺いいたしますけれども社会保険審議会あるいは社会保障制度審議会には、つまりそういう日本医療制度についての学識経験者はおらぬというふうに御判断になっておるのですか。その点ひとつ、簡単でけっこうでございます。
  26. 武見太郎

    武見参考人 医療制度についての専門家と申します者は民間にはおりません、と私ははっきり申し上げます。医療評論家とか医事評論家という人たちはおりますが、これは専門家ではございません。それからほんとうのアドミニストレーティブ・メディシンというものは、外国には大学に講座がございますが、日本ではまだそれができておりません。日本医師会でそういうものの委員会をつくって勉強しているだけでございまして、厚生省設置の各種の委員会にはそういう専門家と称する方はいらっしゃらないというのが私の判断でございます。
  27. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それでは、私と武見会長との見解の相違で、これはすれ違いの議論になりそうですから、時間もありませんので、次に移ります。  私は、医師が働き過ぎているからとか、あるいは、そういう結果平均寿命が七年間も短いとか、あるいは技術料が無視されているとかということについては、よく理解をしておるつもりなんです。ただ、これはそういうこととの関連になると思いますけれども武見会長の言うところには、私はそういう意味では聞くべきところがあると思う。たとえば地域医療の制度の確立が急務であるとか、あるいは健康管理体制も急務であるとかということに対して、私は同感であります。予防医学もそうであります。しかし現在患者で手一ぱいといわれる医師に、武見会長がおっしゃるように、地域医療制度の確立とか健康管理制度ということが急務であるということを言われておるが、一体医師にそこまでいま手が回るだろうかどうだろうか、一体それをだれが行なうんだろうか、これを武見会長は発言をしておらないような気がするわけであります。その点はいかがでしょうか。
  28. 武見太郎

    武見参考人 これにつきましては、やはり都道府県医師会におきまして地域医療の体系化という問題で組織ができております。その組織がいたしております。たとえて申しますと大分県なんかにおきましては、特殊な調査でございますが、栄養地理調査というものをいたしております。それから公害地域におきましては公害調査もいたしております。患者の診療の時間以外におきまして、頭脳的な提供によりまして相当膨大な調査がされておりまして、それらは厚生大臣に先日資料として差し上げたわけでございます。患者を見るのが忙しいからそういうものができないんだということじゃなくて、頭があればできるという証拠は、膨大な資料が日本医師会にございまして、厚生省にも差し上げておりますし、そういう点では社会労働委員会がそれらの資料を御存じなかったということでございますので、御希望がございますならばいつでも差し上げたいと思っております。
  29. 山本政弘

    ○山本(政)委員 薬を使い過ぎるという点だけれども武見会長は、昔は一つの薬に何種類も成分が入っておった、いまは錠剤化が進んでおるから、一つ一つの成分が一錠になって、五つくらいで昔の一つの薬になる、そしてヒートシールになって値段も高くなる、費用負担も当然多くなる、こういうふうにおっしゃっている。私は、なるほどそういう点では患者がもらう薬が多くなるかもわからぬと思うのです。しかしそれは、今日の医療が薬療だといわれておる、そういうことに対してはすれ違った言い方じゃないだろうか、少なくともマクロ的に見たらそんなことは言えないだろうと思うのです。外国に比べて、はるかに薬の代金が高い。たとえば医療保険総額の四二%が薬であるということは、外国のどこにもありませんよ。そういうことに対して、私は、答えをずらしておるというような感じがするわけであります、薬を使うことが多いということに対してですね。その点はいかがでしょうか。
  30. 武見太郎

    武見参考人 薬の値段と申しますものは、アフリカへ参りましてもニューヨークへ参りましても、一〇%と違っておりません。日本の場合もそのとおりでございまして、国際価格で薬の価格が構成されております。しかし診療報酬は国際価格よりもはるかに低うございますから、医療費のワクの中で四〇%をこすということは、医師の技術料がいかに安いかということを証明しているわけでございます。ですから、薬の多用の問題は、現在の予算規模の中で多用という議論は私は成り立たないと思うのであります。もう一つ申し上げますと、ヒートシールにいたしましても、ああいう錠剤化をいたしまして、私は、薬剤管理の面ではたいへんな進歩であったと思います。しかしさっき申し上げましたように、一錠一成分を原則といたしました錠剤化によります場合には、どうしても種類が多くなるのは当然でございます。ですからこれは、いろいろな費用を国民が負担しなければならなくなるわけでございますが、これはやはり薬剤技術の進歩という点で、私は、いたし方がないだろうと考えております。それからもう一つ、薬剤療法というものがいまの医療の主流であるということについてもう少し御認識をいただきたいと思うのでありますが、それは、たとえて申しますと、抗生物質は非常な勢いで今日使われております。抗生物質を使いますときには、肝機能を保護いたさなければなりません。ビタミンB2やB1の消費が非常に高まってまいりますので、これらを同時に補給しなければなりません。それから消化管障害も起こしますので、これらを保護いたさなければなりません。一つの抗生物質を使います場合に、それだけの薬が必要であるということになってまいりまして、昔の薬のように一剤一剤が独立して働いているという薬の考え方には立っていないわけであります。私は、医療費の中で、日本の薬の使い方が一七、八%か二〇%になるくらいに技術料を高く評価していただくことが、将来の問題として考えなければならないと思っております。
  31. 山本政弘

    ○山本(政)委員 それではちょっとお伺いしますが、国際価格に対して低いと言うけれども、どれくらい低いのでしょうか。
  32. 武見太郎

    武見参考人 これは国によって違いますけれども、大体八分の一から三分の一くらいの範囲でございます。たとえて申しますと盲腸炎、これは虫垂炎ですが、これの手術料が昭和二十五年には二千五百円でございます。そのときの国立病院の外科医長の俸給が九千八百円、それから大学卒業して、盲腸手術のできるお医者さんの初任給が六千円でございます。そうすると、二つか四つやりますと、月給が出たのでございますが、現在は六千円でございまして、四つ手術いたしましても看護婦さんの俸給にも足らないというほど技術評価がおくれているわけでございます。少なくともこれは現在の、二十五年以来の人件費の推移で申しますならば、おそらく三、四万円になるであろうと考えますが、そういろ点で、薬のほうが非常によけい取っているということでございます。
  33. 山本政弘

    ○山本(政)委員 そうすると、そういうことで、日本医師会で四十六年の六月に出された、新しい考え方に基づく点数表について、日本医師会は薬剤料として、購入価格二〇%プラスをしろ、それを請求しろ、十円以下は四捨五入しろというものが出てきたのかということが第一点。  第二点は、時間がもうないそうですから……。武見会長と厚生大臣の日医会館での会談の中で、薬局のあり方に触れて、公営薬局をつくれ、そこで無料調製すればただで薬がもらえる、これが一番進歩的な医療体系である、こうおっしゃられている。私がお伺いしたいのは、公営薬局を設立して無料にするという考え方、これは私は、そうすれば国民医療のためには有益であるという考えであろうと思うのでありますけれども、それならば当然、医療機関も公営にすべきではないか。誤解のないように言っておきますけれども、私は開業医の存在を否定するものではありません。論理的に発展すればそうなるのではないだろうかということを言っているのであります。その点どうも筋が通らぬのではないか。  しかも、薬局を公営にしろといっても、これはおそらく物品販売に薬局が走っている、そういうことに対する批判もあるかもしれませんけれども、しかし公営薬局をつくっても、処方せんが出なければ赤字になってしまう。公営だから赤字になってもいいという議論にはならぬだろうと思う。もし公営薬局論を打ち出すなら、医薬分業制度の確立というものを先に出すべきだと私は思う。これが第三点であります。  同時に、地域医療とかあるいは専門病院とかということをおっしゃっていると思うのですけれども、それならばなぜ、過般東京都が老人医療病院をつくろうとしたときに医師会反対をなされたのか。これが第四点であります。  第五点は、この健康保険総辞退にあたって、たしか最終段階では日本医師会というのは三点を、医療近代化ということでお出しになったと思う。そのときに武見会長は、いまの健保というのは帝国主義、軍国主義にできた健保だから云々と言われておる。それならば私は武見会長にお伺いしたいと思うのです。あなたは防衛医科大学設置の準備委員会の議長におなりになった。かつてそういうことを批判をされておって、自分みずからは防衛医科大学の設置委員会の議長になっておるということは、これは筋が通らぬと私は思う。その点をひとつお伺いしておきます。
  34. 武見太郎

    武見参考人 薬局の問題でございますが、私は医療の社会化供給体制というものを考えます場合に、物の面から社会化するのが一番早道であると考えております。医療における物というのは薬でございますから、薬の面からの社会化を考えるのは、私の考える順序としては当然であると思います。  それから現在日本医師会で出しました点数表で二〇%と申しましたのは、これは使い古しが出てまいります。全部使うわけではございません。その中のロスを大体勘定いたしますと、二〇%ではまだ少ないぐらいでございますが、そういう考え方に立つわけでございます。ロスを考えないで一〇〇%使うということは、薬の場合にはあり得ないことでございます。そのかわり、錠剤あるいはカプセル剤については調剤料を取らないということを言っております。これは調剤を必要としないのでありますから、調剤料を取らないのはあたりまえであります。こういう点で製剤技術の変化というものは、昔と違いまして製造元で期限をきめて品質管理をやりますので、私は調剤料は要りませんということを申し上げたわけであります。そういう点は、新しい社会化の考え方に立ちますと、物の面から社会化するということを順序として考えたわけであります。  それから、私自身が昭和十三年開業以来今日まで医薬分業をいたしておりまして、私はおそらく日本では一番多くの経験者であると自負しておりますが、いまの日本におきましてかってに分業がやられました場合には、医師は患者の生命に対して責任が持てなくなります。こういう点で、薬を公営薬局にしていただきますならば、私はその点で医師と政府とが一体になって責任がとれる体制が出てくると信ずるものであります。公営薬局の設置をいたしましても、プライベートの薬局を否定するわけではございません。どちらがサービスがよくて正確で迅速であるかということで国民の選択がよけいされるという点で、私はむしろ喜ぶべきことではないかと考えております。  技術面の社会化というものは実際には不可能でございます。そこで日本医師会におきましては、医師会病院が全国に五十ほどできておりますが、技術と経済が公開されております、この共同病院におきましては。チームワークもできております。使う機械もみんなが使うということでございまして、こういう医師会が全国に五十すでに設置いたしました医師会病院は、医療の技術面の社会化という問題について一石を投じてあるわけでございます。これはまだ全国的に広がっておりませんが、それは財政的な余裕がございませんのでその社会化方式ができないわけであります。  もう一つ、私どもは全国で四百くらいの医師会の臨床検査センターをつくっております。この臨床検査センターは、一人々々の医師が検査機械を買い、または技術者を雇うことは不可能でございますので、その地域の共同利用施設をつくっているわけでございまして、これも社会化の一つ考え方で発展しているわけでございます。  ですから分業の問題に関しましては、私は物の面からの問題、私自身が分業をやってみて、あやまちない分業をやるというためには公営薬局はぜひ必要であると考えるものであります。  それから老人病院の問題でございますが、この老人病院と申しますものは、スイスあたりでももう困り果てております。入れたきり出られませんで、ベッドが全然回転いたしません。東京都のお考えになりましたような老人病院では、これは入れっぱなしの老人ホームになってしまいます。ですからああいうふうな考え方の老人病院には私ども反対でございまして、老人の機能回復というふうな問題に関しましてもっと合理的な、そしていわゆる老人病院だけでなく、老人施設というものと並行いたしまして病院ができなければ意味がないと考えるものであります。学問的に申しましても、ジェロントロジーとジェリアトリクスというはっきり分かれた分野がございます。東京都立の老人病院のお考え方はジェリアトリクスも非常に古いジェリアトリクスでございまして、ジェロントロジーが全然取り入れられておりません。こういう点で、東京都の地域医療の展開に関しましてはもっと新しい方法で考えてもらいたいという考え方に立つわけでございます。  それから防衛医大のことについてですが、私は、医科大学の増設というものは、公的な医科大学の増設には賛成でございます。私立医科大学をよけいつくるよりは公立医科大学がつくられることを希望しております。それから防衛医科大学は、現に防衛庁があり隊員がおりまして、軍医がいなくて事故を続発しているということは人道問題だと私は考えております。事故の続発しましたところは全部軍医のいないところでございます。私が防衛医科大学に協力をいたしますのは人道上の見地から協力をいたすものでございまして、防衛政策のあり方いかんは国会でおきめをいただきますならば、私どもはその中で医療面については責任ある努力をしたいと考えているものでございます。
  35. 島本虎三

    ○島本委員 私の質問からの関連質問でありますから、これで最後に締めくくるわけであります。それで、私はこの際、いまの山本委員質問関連して構想を三点にわたって聞いておきたいと思います。  その一つは、国民の健康を守るための保険は国民だれもが安心して充実した医療を受けられる、こういうふうにすべきであります。いわば医療の底上げをすべきであります。いまの保険には政管健保あり組合健保、共済組合健保国民健康保険あるいは船員保険、いろいろございます。この中で医師会としては組合健保、これはわりあいに充実した医療を施しておるようでありますが、これに目標を当てている、この理由を承りたい。それが一つであります。  次は、医師も犠牲をしいられないで堂々と医療を行なえるような待遇をすべきであることは論をまちませんが、そのために医師養成の手段、方法並びに無医村解消の具体策、あわせて技術料を今後どのようにしようとしてお考えになっているのか。  以上、伺いまして私の質問を終わりたいと思うわけであります。
  36. 武見太郎

    武見参考人 国民が安心してかかれる医療というお話でございますが、ここで一つはっきり申し上げておきたいことは、国民が安心してかかれる医療と申しますのは、国民の健康度をより高める医療という意味に私どもは解釈しております。現状維持的な健康のあり方を考える医療は過去の医療でございまして、国民が安心するという現段階は、過去の医療で安心感というものを一応考えるわけでございますが、専門家といたしましては、将来建設的に健康時の健康擁護をやっていくということがなければわれわれ医師は不安医療でございます。現在の制度が将来の建設的な医学、健康時の健康擁護体制というものを考えておりませんところに、国民は安心してかかっていらっしゃるかもしれませんが医師は不安医療をやっているということでございます。  それから組合健保のことでございますが、これは青壮年期の、人生で一番働き盛りで所得も多いときでございます。疾病率も少ない、一件当たりの日数も少ない、大きい病気はしないというときだけをとりますと、健康管理がよくても悪くてもそう大きな病気は出てまいりません。健康管理がすぐれております大企業におきましては非常に無病息災で働けるわけでございます。組合健保におきましても、五十歳を越しますころになりますと慢性病がそろそろ出てまいります。五十五歳で定年になりますが、私の知り合いのある銀行の支店長が五十五歳で定年退職するときに計算をしてもらいましたら、健康保険組合にちょうど七十万円残してくることになるという計算でございました。もちろんその方は途中でお使いになった分は全部差っ引いて、利息計算もなさったようでございます。高額の人の場合には三百万円くらいの金が健保組合に残されてまいります。ですからこれは、ほんとうは老齢期の医療というものがそういう形で確保されてまいりますならばよろしゅうございますけれども、壮年期の人々だけがお互いに保険し合うということについては矛盾があるわけでございます。ですから老年期の人は老年期の人同士で保険し合う、壮年期の人は壮年期の人だけで保険し合うということでは、これは全体がばらばらになってしまいます。  それから、組合は実質的には保険料を雇い主がお出しになっておりまして、御本人は全然お出しになっていない方もございます。これは月給の一部と申しますならばそれまででございますが、国民健康保険や政管健保は全部自分が出しておりますが、組合健保は大部分は雇い主が出している場合もございます。それからまた、家族の療養費分につきましても半額が持たれているということでございまして、負担と給付がきわめて不公平でございます。で、一億国民が一億国民を保険するという形になりますならば、私は組合健保を排撃する理由はないと思います。  それから医師養成と無医村の問題でございますが、医師の養成と申しますものは、私はできるんならば国費で養成してほしいと思います。英国等におきましても十九の医科大学、今度は四つほどふえておりますが、それができまして、一つの大学にたいへんな補助金が出ております。それから学生にはグランツを与えておりまして、ほとんど自分の費用なしで出てまいります。こういう養成のしかたならば、私はほんとうに公益的な医療というものは国民の利益に従った医療というものをやれる体制ができてくるのではないかと思うのでございます。  それから医学の教育の場合に、日本の大学のカリキュラムは百年前のドイツのカリキュラムをそのまま持ってきた教室の縦割り制度でございまして、新しい医学の領域が全然入っておりません。たとえば臨床検査が盛んになってまいりまして、アメリカ、ヨーロッパにおきましても臨床病理学という講座はどこの大学へいってもございますが、日本の医科大学には臨床病理学が設置されておりません。講義もしていないというわけでございます。こういう点で、医師の養成というものが学問の将来の発展の方向を見越して養成しているかどうかというところに私は非常に問題があると思います。学問の世界の先見性というものなしにただ過去の積み重ねによって学生を教育しておりますいまの医科大学には非常に問題があると思います。  それから、微細な教育は非常に行なわれておりますが、マクロ的な教育が全然考えられておりませんし、カリキュラムがないのでございます。そういう点で医学のこまかい点は、技術面は充実した教育ができることになりますけれども、マクロ的なアプローチにつきましては、全然アイデアがない人間が育って医師になってくるということであります。このマクロ的アプローチの能力のない医師を養成しているということは、私は無医村解消その他の問題につきましても非常に問題があると考えるのでございます。  無医村という問題は、私は簡単には言えないと思います。これは解消すべきものでございますけれども、人間のいるところ医者がいなければならないという形での解消は不可能だろうと思います。
  37. 森山欽司

    森山委員長 次に大橋敏雄君。
  38. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 八月一日をもちまして保険医辞退の問題が終止符を打たれたということについては、国民の一人といたしまして非常にうれしく思っていることでございます。しかしながら、突入されまして以来、国民が受けた不安あるいは混乱というものは、これは想像以上のものでございました。武見会長さんがおっしゃるとおり、その最大の原因は確かに政府の厚生行政の怠慢にあります。しかしながら、だからといって今回日本医師会のとられたこうした総辞退という手段というものは、われわれは遺憾でならないのであります。新しい時代の国民のためのよい医療を確立したい。今度の事件を通しまして、私ども武見会長さんの気持ちはわからぬでもございませんでした。国民のためのよい医療を確立したい、しかしながらその確立というものは、あくまでも政府とそれから日本医師会とだけ、その力によってのみできるものではないと私は考えるのであります。言うならば国民理解あるいは協力は不可欠の要件であろう、私はこう思うのでございますが、まずきわめて常識的な質問でございますけれども、この点をお答え願いたいと思います。
  39. 武見太郎

    武見参考人 国民理解協力という点がなければほんとうに国民の幸福な医療にならないとおっしゃる点、私は全く同感でございます。ただし低いレベルで国民が安心してかかってくるのではいけないので、さっき申し上げましたような健康時の健康養護という点から自分の健康をより高めるという医療基本原則がございませんと、医師のほうは安心して治療ができないということでございます。その点が国民感情と医師の見解との相違を来たす点がたまたまあると思います。そういう点が健康保険制度の中にもございまして、健康保険制度ではそこまではやらないでよろしいということになっておりますが、それは法律が古いためにそういうことになっているんでございまして、いま新しく法律ができますならば、そういう点はもっと解消されるだろうと思います。要するに、非常に古い時代の、百年前のドイツに生まれました法律の精神をそのままとってまいりまして、新しい日本憲法のもとにおける基本的人権というふうなものが考えられていないわけであります。たとえて申しますと、健康保険の被保険者は、こういう新しい治療法がある、こういう新しい薬がある、これをやれば必ずいいんだということでございまして、医師も患者も同意いたしましても、それを使いますときには保険の権利を一切放棄しなければ使えないのでございます。これはインチキな医者がするんではなくて、一流の大家が学問的に認めたものでも、健康保険でまだ採用していないものを一つでも使いますならば、全部の権利を放棄しなければなりません。こういう法律のもとにおいて安心した医療がほんとにできるだろうかどうかということを私は常に考えているわけでございます。要するに、耐用年数を過ぎた法律と申し上げましたのは、この基本的人権の問題と、それから社会保障の理念が全く入っていない制度でございますので、表面が安心したように見えましても、その中には非常に不安が残っておりますので、私は深くに存在する不安をなくすことがわれわれの使命であると考えておるのでございます。
  40. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 確かに医師という職業は高度の専門的な知識と技術を要求されるというわけでございますけれども、今度の辞退問題を通して、これは感情的な問題になるかもしれませんが、私も武見会長さんを深く存じませんでした。したがいまして、いろいろのお医者さんに会いましてお話を聞いた限りにおいては、非常に武見会長さんは勉強家でもあるし、謙虚な方でもあるし、また礼儀正しい人である、高潔な人格者である、こう聞きましたけれども、私はそれをうそとは言いませんが、テレビだとかあるいは新聞の報道に出てくる武見会長さんのことばというものは非常に強烈でいただけない感じでございました。ということは、これは先ほど言いました国民協力を得る、理解を得るというその立場に立った場合、重要な問題であろうと思うのです。それこそ希代の勉強家である武見会長さんですから、これから発言なさる場合はそこのところまで配慮なさって発言をしてほしい。たとえば先ほども話が出ておりましたように、私は国民の家庭教師ではない、総辞退の真意はわからなくてもけっこうなんだというようなことを言われますと、一般の国民になれば、なるほど武見さんというのはどんな人だろうかという逆の印象を受けていくわけです。そういうところも踏まえまして今後のお答えを願いたいわけでございますが、武見会長さんは、当初事態収拾の条件といたしまして、医師会というものは薬の添付禁止や監督強化などの筋の通ったことをやってきた、だから単なる医療費値上げではだめなんだ、これは六月二十五日だったと思います。また医療保険抜本改正が軌道に乗り、安心して医療ができるのを見届けるまでは辞退はやめない、それは六月二十八日だったと思います。それから企業内保険にすぎぬ組合健保の解体は、抜本改正の前提条件の一つである、このようなことを前提に掲げられまして進められてきたわけでございますが、こういう内容を私どもが聞きましたときに、この問題は長引くぞ、こう思っておりました。それが予想よりも早く事態が収拾されたことについては、非常にうれしく思うのでございますけれども、どうも武見会長さんの当初の考え方事態収拾の条件になりました内容とが、あまりにもかけ離れているような気がしてならないのでございますが、この点についてはどのようなお考えをお持ちでしょうか。
  41. 武見太郎

    武見参考人 辞退が始まったときの考えと収拾したときがたいへん違うとおっしゃいますが、収拾いたしましたのは、これは一つの要点、要点をまとめていったものでございまして、最初出しましたようなことではございませんが、あれだけの条件がそろえば、いまの健保法近代化ができれば最初私が申しましたことは絶対に実現するという確信を持ちましたし、また総理大臣の御熱意と斎藤厚生大臣の真実味を私は買いまして、おさめたわけであります。
  42. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 この事態収拾の中身としまして、四項目、八項目といわれるものがございますが、私もそれを読ませいただきました。しかし、武見会長さんが常におっしゃっておりましたような抜本改正が軌道に乗り、安心して医療ができるといわれるような具体的な内容を含んだものではないと私は感ずるわけでございます。むしろいままで行なわれてきましたこの二つの会談政府側がはっきりと打ち出した点といえば、医療費値上げ、つまり物価、人件費へのスライド制であった、このように私たちは考えるわけでございます。すると抜本改正要求要求として、直接のねらいは医療費値上げにあったのかという国民一般の疑問というものは、あながち否定できない、こう思うのであります。というのは、この四項目、八項目の内容があまりにも抽象的であり、これがはたしていつも武見会長さんのおっしゃっていた中身の具体的なものがこれで見通されたのかどうかという問題ですね、その点について……。
  43. 武見太郎

    武見参考人 これは四項目、八項目で具体的な見通しと申しますか、将来の法律をどう改めていくかということにつきましての基本点が入れられるわけでございますから、これを法制化するのは政府のお仕事だと私は思っております。これは法制化の段階にどう持っていくかということになりましたときに、この内容が一つでも漏れているということになりますと、非常に問題が出てまいります。私は現段階におきましては、総理大臣との約束をもって一応終止符を打たなければならないと考えましたので、その誠意を信頼して終止符を打ったわけでございます。そういう点でございまして、私が今度考えましたのは、診療報酬の引き上げというふうなものが、もしいつも政府が使いますようなあめちょこでございましたならば、そう簡単には済みませんよということは、はっきり申し上げておきたいと思います。
  44. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 限られた時間でもう一人わが党のほうから質問しますので、もう一、二問簡単に聞きますが、先ほど医薬分業の話が出ました。私は、今度の問題の奥底に隠されているものは、やはり医者の技術と物とが混在した今日の欠陥制度にあろうと思うわけでございますが、医薬分業は促進されねばならないと思います。医師会長さんから、先ほど公営薬局云々という話が出ておりましたけれども、この医薬分業についてもう一言具体的につけ足していただきたい。それが一つ。  もう一つは医師の技術評価でございますが、このお医者さんの技術はどれだけだ、これだけだということは、第三者から見れば見るほど、これは重大な事柄であろうと思います。その医師の技術評価はだれがどこでやれば一番公平にできるのかということですね。その点をお尋ねいたします。  それからもう一つ、今度中医協における医師会の復帰が約束されたと聞いておりますが、医師会代表の中には、公私立病院代表というのが入っていないと思うのであります。公私立病院側の代表をその中に加えて出すお考えがあるかどうか、それもあわせて答弁願いたいと思います。
  45. 武見太郎

    武見参考人 医薬分業の点でございますが、先ほど申し上げましたように、私は開業三十年医薬分業をやっております。そして現在のまま医薬分業することにつきましては全く反対でございます。  私自身のおもしろい話を一つ申し上げたいと思いますが、警視総監の奥さんのおかあさんが御病気でございました。私が処方を書きました。全然薬がききませんので、どうも薬が違うんじゃないかということで薬局に問い合わせをいたしました。しかし、その答えは、絶対に正確でございますということでございまして、その薬をいただいてまいりまして分析をしましたら、大事なものが入っていなかったわけであります。これで私は、これはけしからぬということで、その薬局に、入ってないじゃないかということで電話をかけましたら、若い女の子がべそべそ泣きながら参りまして、私は免許証を貸してやっている薬剤師なんだが、これを公にして処罰されると私が免許を取り消されることになるからごかんべんを願いたいということがございました。これはもう非常に昔のことでございまして、その薬局も戦災後はないようでございますが、この事実はただごとじゃ済まされないことであります。  もう一つ、私は、外国の大使を診察いたしまして投薬をいたしましたところが、それも適切なる薬がちゃんと入っていなかった事実がございます。その大使は、わざわざ外務省に対しましてこの点の抗議申し入れをされております。  こういうことはほんの一部のことでございますが、国民が安心して調剤してもらえるという条件ができなければ、私は医薬分業には簡単に賛成いたしません。これは分業の経験者といたしまして、患者の生命を尊重するために分業をするとすれば、そういうことが一例でもあってはならないはずであります。近ごろいろいろ問題がございますが、いまの体制で分業はできません。私ははっきり申し上げます。もし分業するんなら、公営薬局をなさいということが私の主張になるわけであります。そのほかに、まだ日本医師会調査をいたしまして、どんな正確な調剤がされたかということは、以前に実態調査をしたこともございまして、非常に危惧の念が強いわけであります。  また、現在社会保険で使っております薬はたいへんな種類でございます。ああいう薬をずらっと並べまして、ほんの一グラムか〇・五グラム使って、それっきり使わなかったら採算が合わないのです、口をあけてしまったら。そういう無理なことを個人薬局に要求すること自体が私はおかしいと思うのです。それなら備蓄センターをつくって、そこから分けてやりますなんというくらいなら、私は調剤センターをおつくりくださいと申し上げておる。私は、日本医師会が検査センターをつくっておるように薬剤師会で地域に調剤センターをつくりなさい、そこで技術と経済が公開されてつくられることを希望しますと言っておりますが、薬剤師会は一カ所もそういうものをつくっていないのでございます。私は、薬剤師会がほんとうに分業に熱心なのかどうかという実証をまだ持っていないのでございます。  それから、薬の問題をそういう形で考えますときに、薬品の種類はこれからますます多くなると思いますけれども、薬品の使われます年限というものは、大体寿命が二年ないし四年でございます。非常に新陳代謝も早いのです。ですからストックしておくというわけにまいりません。そういう点で、個人の企業としての収益性は分業したら非常に少なくなると思います。こういう点で慎重に考えていただかなければならないと思います。私はおまけをやめろということを強く主張いたしましてやめさせました。これはおまけというのはけしからぬ話なんで、要らない薬をもらったら使わなきゃ損だということになりましたら、これは医療じゃなくなります。これは日本医師会長の責任で断固やめさせるという強い決意のもとにやったことでございます。  また、悪徳医もないわけではございませんので、それらの指導、監査というふうなものも当然やられていいことでございます。そういう点に対して私どもは決してゆるやかな態度で会員の指導はやっておりません。  それから技術評価の問題でございますが、これは非常にむずかしい問題でございまして、現在の診療報酬は最低以下でございますから、これはランクをつける段階までいっていないわけであります。これが将来の問題といたしましては、大先生は高い診療報酬、診察料をおとりになったり手術料をおとりになっても、私は自由経済ならばいいかと思います。しかし、お金のない人が必要な場合に大家の診察を受けたり手術を受けられない制度は、私は人道問題として許すべきじゃないと思います。ですから、所得に応じまして、そのとき必要があるということになって主治医から依頼されれば、大家が診察しても安い金でできるという制度をつくりたいと思います。ドイツはすでにそれをやっております。大先生が診察をいたしましても、所得の低い人の診察料は低くなっております。法律家に聞きましたら、立ち小便の罰金も所得に比例しておるそうであります。こういう点も画一的な制度ではできないことでございまして、あまり画一的に法律できめるとできなくなります。しかし私は、大家の最高の技術が所得の少ない階層の人にも及ぶということは、絶対に皆保険下で考えていかなければいけないと思っております。  まあ、そういうことでございまして、いまの全部のお答えになっておるかどうか知りませんが、非常に大事なことを御質問いただきましたが、実際にやった経験者として、私は分業問題は慎重に扱ってほしいと思っております。
  46. 森山欽司

    森山委員長 古寺宏君。
  47. 古寺宏

    ○古寺委員 時間があまりございませんので、簡単に御質問申し上げたいと思いますが、日本医療制度の中で特に供給体系の理想的な姿というものについて武見会長はどういうふうに考えていらっしゃるか、二、三御質問申し上げたいと思います。  まず最初に、公的病院というものの定義でございますが、最近は御承知のように国立あるいは地方自治体病院、日赤、健保病院あるいは農協、厚生連の病院等たくさんございまして、いまの医療法の定義から見ますと非常にかけ離れているように考えられるわけでございますが、公的医療機関というものはどういうものをさすのかということについて会長の見解を承りたいと思います。  次に、この公的病院の性格でございますが、こういう公的病院がどういうような機能あるいは特徴を持っていればその性格を十二分に発揮できるか。特にこれは僻地の問題等もございますので、その配置等についてもあわせてお伺いしたいと思います。  次には公的病院の運営の問題でございますが、最近は公的病院は独立採算制をとっておりますが、この公的病院のあるべき姿は独立採算制でいいのかどうか、こういう点について承りたいと思います。  次には私的病院あるいは診療所等の将来あるべき姿、この点についての御見解を承りたいと思います。
  48. 武見太郎

    武見参考人 現在病院の分類が開設者の別にされております。社会的な機能という面では全然分類がされていないのでございます。公私医療機関を、社会的機能からあるいは学問上の機能から分けないで開設音別の区分をしているということは、非常に原始的な明治の初期の考え方でございまして、今日はもう古典的な考え方に属するものだと思っております。  それから公的病院の定義をおっしゃっておりましたが、私は、独立採算制の問題とあわせて考えてみまして、公的病院はどういう機能を持つべき病院であるかということが最初にきめられなければいけないと思います。たとえば地域の医療の教育センターというふうなものを一緒に持っている、これは私は私は非常に大事な考え方だと思います。町のお医者さんもそこの病院にいる人も、あるいはほかから呼んでくる先生も一緒にして、そこで一つの教育センター的な役割りをする、それから大学を卒業したてのお医者さんを、二年とか四年間そこで徹底的に卒後の研修訓練がやれるというふうなことの教育的機能を持つことが一番大きな公的要素であると私は考えております。今日の公的病院と称するものは、この公的要素を非常に欠いているのは残念でございますが、事実であります。たった一つ沖繩の中部病院は、これは公立病院でございますが、学生が八人ぐらいに教官が九人ぐらいおりまして、朝九時から夕方五時までつきっきりで教育をする、そしてローテーションをいたしまして各科の勉強を徹底的にやらせる。それからまた夕方五時からは語学の勉強もやらせる、寄宿舎制度である、そしてフルタイム医学の勉強をさせる、月給も学生にも出すし、インストラクターも相当な月給を取っておる。こういうふうなことが公的病院の基本的な姿であると私は考えております。  こういうふうに考えてまいりますと、教育病院というものをまず公的病院の第一段階で考えてほしいと私は思うのであります。現在教育病院の指定をされている病院がございますが、諸外国と比べてみますと全く教育病院には値しないものでございます。  その次の問題は、私的医療機関や採算ではできないような診断、治療の設備を持つ、そして高度な技術を持つということがその地域になければなりません。たとえて申しますとガンセンターのようなもの、あるいは小児センターのようなもので、そういうものが次々とできてこなければなりませんし、精神衛生センターのようなものもできてこなければなりません。そういうふうなものはリサーチと大衆教育というものと医師の教育というものとを一緒にあわせて行なうということで、地域にそういう病院が数多くできてくることが望ましいわけであります。  現在子供の問題がございましても、総合病院へ参りましても小児科があるだけでありまして、小児外科があるかないかはわかりません。小児精神科があるかないかもわかりません。そういう点から考えてみますと、小児病院が、小児センターがございますならば、そこへ行けば内科も外科も精神科も、眼科でも耳鼻科でも全部あるというふうな形に再編成されなければなりません。私は、公的医療機関のあり方といたしまして、いまのあり方は全く意味を失ってしまっている、こういう新しい編成をいたしまして新しいスタッフと入れかえるのが原則であると考えます。  そうなってまいりますと、私的病院をどうするかとおっしゃいますが、私は将来の問題といたしましては、私的病院は、その人の専門技術が非常にすぐれている者だけがその地域に存在すると思います。私的病院というふうな形はむしろなくて、開放病院の形を、社会化の問題と供給体制としては私は希望したいのでございます。開放病院にいたしますと、そこで技術と経済が公開されまして、技術が公開されるということは低い技術の人が高いレベルを知ります。それからあとの治療は大きく進歩いたします。そういう点で、技術と経済が公開されますオープンシステムの病院というものが非常に大事になります。いまの公的医療機関は全部クローズドシステムでございまして、地域との関連性というものを何も考えておりません。こういう点でいまの公的医療機関の再編成が私は急務であると考えます。これができますと、診療所やその他のものはほんとうの受付のような形になってまいりまして、それからその専門病院に送っていく、救急処置だけをそこでやればよろしいということになりますし、そこで得ました情報が、データバンクのようなものが健康センターにできておりますならば、そこでデータ化されまして保存されておりますと、どこの病院へ行っても、前にこの人はどこの病院に行ってどう言われた、どういう治療を受けたということもはっきりわかるようになります。いわゆる乱診乱療とかむだを排除するということがございますが、情報科学を導入いたしましてそういうセントラルシステムを採用いたしますと、そのようなむだは全く排除されると思います。そして国民は最高レベルの医療を僻地にいても受けられるという形になるわけでございまして、私はそういう形に医療制度がすみやかに改変されることを希望しているわけでございます。  それから僻地医療の問題でございますが、私は今日の段階は、僻地問題は健康管理と輸送の問題であると思っております。僻地の健康管理というものを特殊な健康管理方式を考えますと、この冬はこの雪で閉ざされたところに置いてはあぶないという人は里のほうに持ってさておけばいいわけでございますし、またヘリコプター等も利用されるならばそれはできると思います。  独立採算制の問題がございましたが、私は、独立採算制は現在の公的医療機関はやむを得ないと思います。しかし、このような形で公的性格と教育面とか臨床面、リサーチ面をそこでやりまして、ほんとうに地域のセンター的な問題になりましたときには独立採算制はあり得ないと思っております。そういう点で、現状の改革は、できれば私的医療機関医師会病院中心に再編成する、それから専門病院を充実していく、それから公的なものはセンター方式を採用していって、そこで教育病院の機能を盛んにしていくということになりますと、将来の日本医療の需給というものの質的向上が非常に大きく進むと思います。医療の供給の質的発展というものを考えないで数だけふやすという現在の医師養成の考え方には、私はあまり賛成できないわけでございます。
  49. 古寺宏

    ○古寺委員 次に医療費の引き上げの問題でございますが、厚生大臣との話し合いの中で、きわめて近い将来において医療費の引き上げが行なわれる、こういうふうに私どもは考えておるわけでございますが、この引き上げの点について、どういう方向で引き上げをお考えになっていらっしゃるか。特に技術料の問題についてはいろいろ論議をなされました。また、総辞退中には医療費医師会の料金も出されました。こういうものとの関連について会長のお考えを承りたいと思います。
  50. 武見太郎

    武見参考人 医療費の引き上げの問題は、本質的には医療制度との関連でなければならないと思っております。ですから、現在の医療費の改定と申しますものは、基本法ができまして健保法が改正されますまでの暫定的な措置というふうに考えております。その暫定的な措置で、決定的にやらなければならないと申しますものは、二十五年のときに二千五百円だったものがいま六千円しか手術料が取れない、これで外科病院がやっていけるはずがございません。こういうものは、技術料が非常に押えられて医薬品費が伸びてきたという、医薬品の伸びに対応して技術料が圧迫されてきたという歴史的事実がございます。これは資料によって大臣に御説明申し上げたのでございますが、この点の手直しをやっていただくということが一つの問題になります。これがございませんと、看護婦さんやあるいはレントゲンの技師さん、それからリハビリの技術者の給与改定が全然できません。いまの日本のリハビリの点数では、将来日本のリハビリは伸びる可能性がないというほど低額に押えられております。そういう点で、そういう面の緊急の手直しというものはぜひ必要であると思います。  それから、物価、人件費にスライドしないということは、これは何と申しましても現在の物価、人件費の上昇が相当強うございまして、これは満足な医療従業員の質的向上をはかっていくわけにはまいりません。そこでどうすればいいかという問題でございますが、たとえて申しますと、入院料の三食三百円でございます。三食二千三百カロリーやって、卵を一つつけて、くだものをつけて、牛乳をつけて、これでたった三百円なんです。ですから、私のほうである特定な病院を調査いたしますと、残飯の出が非常に多いのです。これは病院給食を食べてないという残飯でございます。これは非常なむだなんです。三百円の給食費の中で、実際に原材料費として使いますものは二百円、三食分二百円では、とにかく牛肉は使えない。入院して初めて鯨の肉を食べたという患者さんの実感もございますが、これは非常に問題があると思います。こういうふうに非常識な値段を強要したという点は、早急に直していただきたいというふうに考えているものでございます。
  51. 森山欽司

    森山委員長 次に、田畑金光君。
  52. 田畑金光

    ○田畑委員 昭和三十六年に医療費の引き上げに伴うて保険医辞退が起きたわけでありますが、そのときは辞退の回避策として、合意四原則ができて、一つ医療保険抜本改正、第二は医療研究と教育の向上と国民福祉の結合、第三点は医師と患者の人間関係に基づく自由の確保、第四点が自由経済社会における診療報酬制度の確立、こういうことで保険医辞退をおさめたわけでありますが、それが実行されないままに今回の紛争の導火点になっておるわけです。約一カ月近くの保険医辞退をやって、ようやく七月二十七日に斎藤厚生大臣武見会長とが四項目の合意点に達されて、そうして今回事態の収拾、こういうことになったわけであります。今回の四項目については述べる必要もないわけでありまするが、十年前から約束したことができないで、そうして日本医師会保険医辞退という異常な措置をとられたわけでありますが、その最終的な締めくくりとしては、先ほど来武見会長のお話を承っておりますると、総理の熱意と厚生大臣の真実味に信頼を得てほこをあさめられた、こういうわけでありますが、武見会長はこの四項目なり、また日本医師会が提案された八項目に基づいて医療制度の改革はなされるということをほんとうに信じていらっしゃるのかどうか。とにかく今度の騒動をめぐって、斎藤厚生大臣武見会長とは、一そう肝胆相照らす仲のようにわれわれはお見受けをいたしたわけでありまするが、ただ心配することは、武見会長も御承知のように、昭和四十二年の健保特例法の騒ぎ、そうして昭和四十四年におけるあのまた健保改正法の騒ぎを見たときに、いずれも歴代の内閣が十年前の約束を踏みにじってあのようなことになったわけでございますが、今回はどうも武見会長ともあろう方が、総理並びに厚生大臣は今度はだいじょうぶだ、このように確信を置かれたようでありますが、その心証のほどをひとつお話しをいただきたいと思うのです。
  53. 武見太郎

    武見参考人 たいへんむずかしい御質問をいただいたわけでありますが、佐藤総理大臣は、第一次の佐藤内閣をおつくりになりましたときに、社会保険の統合を国会で御発言になっております。ついに御在任中、レコードは一番長くても、やらずにおしまいになるかという点を私は佐藤総理に尋ねましたら、絶対にやるよというお話でございました。まあ情勢はいろいろございましょうが、総理大臣がそこまで言われるものを、あなたは信頼できませんというのもこれは道理が通りませんし現実的ではございません。私は最高責任者を信頼することは、日本人の一人として当然の責務と思ってこれをのんだわけであります。
  54. 田畑金光

    ○田畑委員 武見会長が常に言われておりますように、予防から治療からリハビリテーション、こういう一貫した健康管理体制という面から見た場合に、いまの厚生行政は一体どうなのか。あるいはまた保険と医療というものは一体であるはずなのに、先ほど来のお話のように、医学の進歩に基づく学問的な研究に基づく成果が現実の医療の中に取り入れられていないという今日の医療行政のあり方等を考えたときに、常に武見会長は、厚生官僚を目してげすのサル知恵等と言われておるわけでありますが、そのげすの知恵の最高責任者である斎藤厚生大臣と今回はうまく話し合いがまとまったようなことでございますが、最終的には結局七月二十七日の斎藤厚生大臣から提案された当面の医療費値上げの問題、これが出たので話も急速にまとまったという経過のようにもお見受けいたすわけでありまするが、前段申し上げましたような今日の厚生行政についてはどのようにお考えになっておられるのか。  さらに私たちも、今日の特に病院経営の実態などを見ますると、医療費の引き上げ措置は早急に講じらるべきである、こういう立場に立って、わが党といたしましても、政府にその点は善処することを申し入れておいたわけでありますが、武見会長としては、いまの医療費というものについては先ほどの説明でわかりましたが、どれぐらい引き上げ措置を講ずるならば当面の医療危機を乗り切るという御自信があるのか。特に私は、今日の医療費は、診療所や開業医よりも、組織医療をやり人件費、物件費の値上がりをもろにかぶっておる病院経営に傾斜すべきであると考えておりまするが、こういう点について武見会長の所見を承っておきたいと思います。
  55. 武見太郎

    武見参考人 厚生行政全般についての意見とおっしゃいましたが、ごく簡単に申し上げますと、私は一体厚生大臣がどの局に属する大臣であるかということをいつも考えながら問題をお話しするわけでございます。きょうは保険局の厚生大臣であり、あしたは医務局の厚生大臣である、あしたは薬務局の大臣でありまして、厚生省の大臣ではないと私は思っております。たとえて申しますと、結核のリファンピシンのようなものは薬務局の厚生大臣はもう発売を許可されております。保険局の厚生大臣はこの許可をいたしておりません。その他そういうものを例をあげてまいりますとひどいものでございまして、もう日本にはほんとうの厚生大臣というのはいないわけだと私は考えております。で、まあ将来は私は厚生省の厚生大臣に斎藤さんになっていただきたいと思っておるのでございます。  それから、げすの知恵といいますのは、これは私がつくったことばで、官僚に対して申しわけがないとはちっとも思っていないのです。とにかく、かぜ引きが出てきて患者をよけいみるようなときがあれば、診療報酬を安くするなどというスーパーマーケットみたいなのは医療に携わってほしくないと思うのです。あの審議用メモにあらわれましたものは徹底的に大資本に奉仕する形で健保を改正しようという腹でございます。これは大資本に奉仕で、国民不在の考え方があの審議用メモであります。そういう点で私はあのものには賛成ができないので、これはげすの知恵であると考えました。  それから組織医療の病院にとおっしゃいましたが、日本の病院の特色は、さっき申し上げましたように非常にむだが多うございます。食べられない食事も食べさしております。それから人事面、配置面その他におきましても非常にむだが多うございまして、在院日数が、精神、結核も入っておりますが、三十二日間というのは世界で最長の入院日数でございます。入院医療の効率化というものをはかりませんと将来の医療は非常にむずかしくなってまいります。日数が長くなりました一つの原因といたしましては、人口の老齢化がございますから、老齢慢性病が出てまいりましたが、こういうものは、将来はいわゆる病院医療というものの限度と、あとの静養の限度とを考えなければならないと思います。  それから病院に傾斜するというお話でございますが、物価、人件費にスライドして病院に傾斜すべき部分も確実にございます。しかし入院日数の短縮ということなしに、ただ現状が足りませんから足りませんからといって補給しておりますならば、いつになっても合理化された病院医療はございません。そういう意味におきまして、私ども日本医師会に病院委員会がございまして、都道府県の公的病院と私的病院と両方から一人一人の代表が出てきております。また専門の病院管理学者等を集めまして病院課も持っておりましていろいろ検討いたしておりますが、公私病院連盟その他が言っておりますようななまやさしい形でこれに補給して赤字解消をするということで、質的向上は望めないような費用の出し方は、私はしてほしくないと思うのです。大きく質的向上がどうやればできるかという点でされなければならないと思います。そういう点は私は公私の医療機関全く共通であると考えます。  今度の中医協委員には、私立病院で全日本病院協会の常任理事の人と理事の人が二人出ておりまして、病院の事情も十分わかるはずでございます。日本には病院団体が十四団体ございまして全部が主張が違っております。ですから、これを集約いたしましたのは日本医師会の病院委員会でございますので、そのように御理解を願いたいと思います。
  56. 田畑金光

    ○田畑委員 医療費の引き上げについて中医協が近く再開されて医師会代表もこれに参加するということで、これはまことに喜ばしいことだと思いますが、さらにあの問題が解決したあとは、当然今後の診療報酬体系適正化の問題、これを議論してもらうということになろうと考えておりますが、いま審議用メモというものがございまして、先ほど来、そしていまのお答えにもありましたように、これこそげすの知恵の典型的なものだ、こういうお話でございましたが、いずれにいたしましても診療報酬体系適正化の問題、これは今日世論の要求であり、また先ほど来医師会長のおことばにもありますように、もっと技術を適正に評価する、こういう立場に立って診療報酬のあり方を組みかえるということは緊急の課題であると考えるわけであります。したがいまして私がお尋ねする点は、今後審議用メモの取り扱いはどうなるかわかりませんが、いずれにいたしましても審議用メモの中の大きな柱というものは、技術評価に重点を置いた今後の医療体系のあり方、これが私は柱の大きなものであろうと考えておりますが、これの審議にあたりましても、中医協に戻られた医師会の代表も、単に医療費を引き上げる場合だけでしなくて、今後の医療体系のあり方の審議にあたっても、私は当然今後は中医協はじめ関係協議会に参加をされて、正常な形で今後の医療行政に協力されるものだ、このように考えておりまするが、さよう理解してよろしいかどうか。
  57. 武見太郎

    武見参考人 診療報酬体系の適正化と申しますものは、医療制度、保険制度ができませんと、診療報酬体系だけが適正化はできないものでございます。たとえて申し上げますと、開放病院ができましても、現在の診療報酬では支払い方法がございません。ですから中央医療協議会というところで実はこの診療報酬の制度の体系化なんということはできないところでございます。これは中医協でやるごと自体が間違いでございます。あの場を利用して大資本に奉仕しようとする一群の官僚群がやったことでございまして、私どもといたしましては、診療報酬の体系化と申しますものは、医療制度、保険制度を体系的に整備しませんと診療報酬の体系化はできません。こういう点で中医協の存在だけではいけないので、それを総合いたしまして調整するところがなければできないと信じております。中医協だけでできます合理化というものと診療報酬の体系化とは非常な違いがございます。中央医療協議会は現状の合理化はできましても体系の合理化はできません。する場所ではございません。そういうふうに私は理解をいたしております。  それから今後医療行政に協力するということでございますが、私は悪いものができれば反対をいたしますし、協力するものがあれば徹底的に協力いたします。
  58. 田畑金光

    ○田畑委員 今回の事件で、私は、国民が今日のわが国の医療のかかえておる矛盾や問題点というものを理解を深めたということは、これは武見医師会長の大きな功績である、こう評価申し上げたいと思うのです。しかし同時に、今回の武見医師会長の号令一下でとられた保険医辞退という問題は、医者と患者の人間関係というものに非常なひびを入れたんじゃなかろうか、医師に対する国民の信頼というものを失墜させた、こう私は申し上げたいわけです。特に日本医師会というものは、やはり公益を守る社団であり、公益法人として認可を受けておる団体だと私は理解をしております。それが保険医辞退し、結果において患者を苦しめたり患者に迷惑をかけたということ、国民に迷惑をかけたということ、これはいかに武見会長の先ほど来の答弁を聞いてみましても私は納得ができないのです。保険医辞退はなるほど診療拒否でないことは確かでございますが、低所得者層にとっては事実上診療拒否と同じ性格のものだと私は思います。先ほど来の武見医師会長の話を聞いておりますと、どんなに所得の低い者であっても学問的な高度の医療が受けられる、そういう人道主義の立場に立ったわが国の医療のあり方を追求されておる、こういうことでございますが、もしそうであるとすれば、その人道主義の上に立って医師会を指導されておるとするならば、今回の総辞退については言うこととやっておることがどうも矛盾しておる。国民皆保険下であって、国民はいずれかの保険に強制加入を要請されておるし、保険料の納入というものは義務化されておるわけです。ところ医療の供給者だけは、なるほどお話のように一カ月の予告期間を終えて保険医辞退する。保険医機関保険医保険医療を担当するというのがいまの制度であるが、肝心の供給者だけが一カ月の予告期間でもって辞退が自由にできるというような、こういうことは医療の公共性、社会性という面から見ると、この辺はやっぱり医療担当者医療供給の義務化をはかるということが大事な点ではないか。先ほどいろいろ社会化の問題について、ものの社会化であるとか技術の社会化、こういうことをお話ございましたが、いずれも武見会長の卓見であるし、われわれもそうだなという感じを深く受けるわけでありますが、やはりものの社会化、技術の社会化と同時に医療担当者の社会的な責任、これは私は免れない一番大事なことだと思うのです。私は医療担当者協力なくして今後のわが国の医療国民の望むための医療に持っていくことはできないと思うのですね。私はそういうことを考えましたときに、今回の保険医辞退の問題は、ショック療法で、そして政治と行政に警鐘を発せられたという点ではわれわれも一面うなずけるわけであるし、共鳴を禁じ得ないわけでありますが、事が患者であり、事が国民、特に所得の低い人方を相手に保険医辞退の迷惑がかかるということを考えてみるならば、私はやはり武見医師会長としても、今回の措置等については、道義的に責任があるとか法律的にどうこうとかいう問題ではなくして、すまなかったなということくらいは言われるほうが武見大先生の姿勢としてこれは当然のことじゃないかな、私はこういうことを考えるわけでありますが、もう一度武見大先生の心境を伺って、私の質問を終わることにいたします。
  59. 武見太郎

    武見参考人 どうも大という字を入れられますと大居士か何かになったようで、まだ生きておりましてこれから活動するつもりでおりますから、あまり大の字はありがたく思っておりません。大臣は別であります。  いまのお話でございますが、公益法人であるからこそ、唯一の学問的団体であるからこそ、行政の学問上の誤りが十年後に日本国民の運命にいかなることを及ぼすかということの予測をできる団体は私の団体だけでございます。このような状態でございますと十年後の日本医療は東南アジアの最低の医療になるかもしれません。そういう予測のもとに行政が間違っているときに敢然として戦いをいどむのは専門団体の社会的責任でございますので、少しその点は先生と考え方が違います。  それからもう一つ大事でございますことは、私どもは未来を建設する中で現状を処理していくという形を今度とったわけであります。いままで国民感情としていろいろ言われておりますが、私は国民感情はそれでいいと思います。しかし私は、国民感情に引っぱられたために未来の学問を失うようなことは私の責任において断じてする意思がないことを申し上げておきます。
  60. 森山欽司

    森山委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  医療保険抜本改正につき所要の法案が次の通常国会に提出されるとのことでありますから、従来の経緯にかんがみ、隔意のない意思疎通が何より肝要と考えられますので、将来必要ある場合、参考人としてお気軽に本委員会出席方を要望しておきます。  この際、午後一時四十分まで休憩いたします。    午後一時六分休憩      ————◇—————    午後一時五十二分開議
  61. 森山欽司

    森山委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  引き続き、医療保険に関する問題について、政府当局に対する質疑を続けます。小林進君。
  62. 小林進

    ○小林(進)委員 大臣に御質問をいたします。  時間の関係上一点だけでよろしいのでございますが、ここに「厚生大臣日本医師会長との了解事項」という資料をちょうだいをいたしておるのでございますが、この資料についてお伺いいたしたいと思うわけであります。  午前中からもいろいろの質問がございました。その経緯は私は繰り返して申し述べるようなことはいたしません。ただ、結論から申し上げて、ここにありまする了解事項の中の、一、二、三、四、五とありまするけれども、この五であります。「右実施についての了解細目」というこの五の中で、アラビヤ数字の1から8まで書いてありますが、私は率直に申し上げまして、この了解の細目は非常によくできていると思っています。私どもも長い間、医療保険制度の抜本改正については、社会党といたしましても十数年間、草案をつくったり草案を改正してみたり、また草案をつくったり、そういうことを繰り返してきたわけでございまして、古い歴史をいえば堂森君あたりが中心でつくったのを先がけにいたしまして、いまは国会を去っておりますけれども、滝井君だの八木君だの、そういう諸君が引き継いだりして、私もそれに加わっていろいろ原案をつくってきたわけでありまするが、それが積もり積もって今年度もまた社会党は一つ抜本改正の草案をつくっております。つくっておりますが、その長い歴史といまなおできておりまする社会党の草案等を見ましても、この項目は、私は率直にいって、社会党の主張がそのままここにあらわれているじゃないか、こういう感じも私は持っているわけです。実にけっこうなことだ。この文章だけは、この項目だけは、私は実にけっこうだと思っている。思っているんですが、これはどうも文章だけで終わるのかどうか、それが一つであります。将来、了解細目として並べられたこのアラビヤ数字の八つを、どのように一体大臣は具体化されるのか、まずその具体化される前に、大臣も医療問題の専門家武見会長はその道のベテラン、両者が会われて了解の細目をつくられたからには、単なる文章の検討ではなくて、それぞれ具体的な内容を話し合った上で、この八つの項目ができ上がったものと私は実は考えているわけであります。単なる抽象的な文章の羅列じゃないと私は思う。この八つの項目それぞれ内容にわたって両者の間にちゃんと了解事項ができ上がっておるものと、私はこれを解釈しておるわけです。その内容が、私どもが長い間苦労してつくり上げてまいりましたわが党の内容と一体同じなのかどうか。私が自分の頭の中で考えておる内容と、大臣と武見さんの間でつくり上げられた内容が似通っておるのか、あるいは全く別な方向にいっているのか。それは私はわからない。  そこで、限られた時間でありますけれども、いま私が大臣にお伺いいたしたいというのは、この一点だけです。この八つの項目、項目別にこういうことば——まず第一でいえば「国民の連帯意識の高揚」、こういう抽象的なことばが出ております。この「国民の連帯意識の高揚」という抽象的な1項の中にはどういう内容が含まれて、そして両者の間に一致点を見出されたのかどうかという点、これを私はお伺いいたしたい。幸いにしていま私どもが考えておる内容と一致しておれば、私は実に喜ばしいことだというふうに考えておるわけでございまして、ひとつ、限られた時間でありまするけれども、1項から8項まで、了解点に至ったその内容をつまびらかにお聞かせをいただきたい、これが私の質問であります。
  63. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 お答えをいたしますが、武見会長との会談はフジテレビの会談を含めて四回、すべて公開で行なわれました。その中でこういう事柄に触れて応答がございましたから、御承知のとおりであります。これを保険の中にどう組み込むかという内容の話は、一つもございません。したがいまして、たとえば「国民の連帯意識の高揚」、これは私からも言ったわけでありますが、国民皆保険下における社会保障としての、しかも国民が相互扶助という連帯意識のもとにおいて、抜本改正はいかにあるべきかということを考えなければならない、こういう点で一致したわけでございまして、他のそれぞれの点もここに書かれてありますとおりで、抽象的でございます。これを抜本改正にどう入れるかというのはこれからの問題だ、かように考えております。
  64. 小林進

    ○小林(進)委員 先ほどの大臣との非公式の話し合いの中にも、あなたの答弁が各大臣の中で一番どうもわからないですよ。つかみどころのない答弁をされるのではないかというのが野党の一致した意見だ、きょうはひとつそういうことのないように具体的な御答弁をいただきたいということを先ほどから申し込んでおきました。「国民の連帯意識の高揚」、この抽象的なことばを言えば、国民皆保険だから相互扶助でひとつ持っていってもらいたい、こういうお話なんだという。それだけでは抽象プラス抽象でございまして、どうも私ども理解に苦しむ。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理着席〕  たとえて言えば、私ども理解の上でいけば、いまの国民皆保険の中に各種の医療保険がある。地域保険、国民保険もあれば被用者保険もある。被用者保険の中にも八種類も十種類もある。その中には黒字保険もあれば赤字の保険もある。組合健康保険のようにだれが見ても非常に恵まれた保険もあれば、恵まれない保険もある。その恵まれた保険にあるものが、積極的に自分たちの保険だけを守り抜いていっている。あとはどうでもよろしい、そういうふうな組合エゴイズムといいますか、そういうエゴイズムではやはり国民皆保険あるいは国民相互扶助には当てはまらぬから、そういうことをやめて、有利な保険も不利な保険もともに相手の立場を尊重しながらお互いにひとつ助け合っていこう、こういうことを「国民の連帯意識の高揚」ということばで表現されたのではないか。だから言いかえれば、この「国民の連帯意識の高揚」ということばの裏には、現在の各種の保険というものをある程度統合をして、差別をなくしようという思想といいますか、具体的な内容がこの中に含まれているんじゃないか、私はこう推定するから、けっこうです、こう言っているわけなんでございまするけれども、私の質問をしていることが、一体そこまでいっているのかどうか、そういうことを私が問わないうちに、いま少し具体的に私は大臣から御答弁いただきたい、これを私は先ほどからお願いしているわけであります。
  65. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 おっしゃるとおりでございます。抜本改正がとにかく長い間いろいろ論じられ、それぞれのところで研究をせられ、それにもかかわらず、これがいままで日の目を見ないということの裏には、やはり一番いいものはそのままでありたいということ、困っているものはこれではいかぬということ、その間の調整ができなかったというのが一つの原因でございましょう。この点を払拭するためには、やはり抜本改正国民の連帯意識というものの上に立って考えていただきたい、これをまず国民の皆さま方の合意を得たい、かように私は思っております。  私、ここで申し上げるのが適当かどうか存じませんが、しかしひとつ与野党ともぜひ見解を聞かしていただきたいと思いますのは、こういった情勢のもとにおけるいわゆる皆保険下の医療保険というものを考える場合に、被用者の保険とそれから被用者でない農民その他の自営業者の保険と二本立てという考え方は、どうしてもこれを維持していかなければならぬかどうか。維持していかなければならぬというなら、その理由はどこにあるか。これは与野党ともに、ここにある、だから二木立てでいけということであれば、それを二本立てをもとにして考えていかなければならぬと思います。保険の技術的な意味で二本立てが必要であるならば、これはまた技術的な面で考えなければなりませんが、基本的な考え方においてこれが間違っているかどうかということをぜひ私は伺いたい、かように思うわけであります。この点について与野党とも、あるいは国民の合意が得られるなら抜本改正は非常にたやすくできるだろう、これが根本ではなかろうか、かように思いますので、これは経営者側、資本家側から見てどう思われるか、労働者側から見てどう思われるか、社会保障という見地から見てどう考えられるかということを伺いたい、かように私は思います。  今回の保険制度は、御承知のように労務管理の一環として最初出てきたことは間違いございません、次から次へと必要に応じてできてまいりました。そして今日国民皆保険、こういわれておりますが、国民はどれかの保険に入っているというだけであって、そこに一貫した社会保障的な考え方がない、これが一番根本ではなかろうか、かように私は思うわけです。  そこで、さような考え方におきまして、ただ同一条件のもとにある人たちが集まって組合をつくっていく、それが集積されて今日である、これだけでいいかどうか。そこに一本筋を通すとすれば、この二本立てというものをどこまでも堅持していかなければならぬのかどうか。さらに申し上げますると、この二本立ては労使の協調あるいは労務管理という面から、やはり保険の中にこれがどうしても必要なんだということを各界すべて認められるかどうか。労働者側に立たれてもそういうことが必要なのかどうか、そういう点と全然切り離して国民医療をいかに保障していくかという観点だけで考えていけ、こう言われるか、その点を与野党ともに、もしできるなら御意見を一致させていただければ私は非常にありがたい。組合健保にもいいところがございます。組合保険のメリットもございましょう。しかしこれは保険技術の問題でありますから、保険技術の問題はまた技術の問題として、そういうメリットをどこへどう生かしていくかということも考えられるわけでありますが、その基本的な考え方をできたら与野党とも一緒になって御意見を聞かしていただければ、われわれ抜本改正をやる場合に非常にありがたい、かように思いますので、これは、いまの小林委員の御質問に対してお答えをするというだけでなしに、各与野党の先生方に申し上げるというつもりで私はいま申しましたから、よろしくお願いいたします。
  66. 小林進

    ○小林(進)委員 私はいまの大臣の御答弁を聞きまして、非常に感ずるところがあったわけです。私どもの党も、先ほどから申し上げますように、長くこの改正問題に取り組んできたわけでありますが、終局的には国民が一本の保険に統合せられて、ほんとうの自分の力に基づく保険料を支払って、そして完全な公平な医療の給付を受けるという形が一番理想じゃないか。しかしそこまで一挙にいくことは技術上あるいは国民の意識上困難ではないかということで、そこに至るまでのステップを置こうじゃないか。そのステップが、いまあなたのおっしゃったように、地域保険と被用者保険の二本立てにして、まず被用者保険の中に幾種類もあるものを一本にしよう。共済から船員保険から組合から政管に至るもろもろの保険をまず被用者保険というものに一本にして、それと国民健康保険との二本立てにして、それから後に今度はさらにその二本を一本にするという段階を踏もうじゃないかということを私ども常に考えてきたわけでありまするけれども、たしか私どもの党の案もそんなぐあいにできていると思うのですが、いま大臣のおことばで飛躍的に、その被用者と地域との二本立て自体がどこに一体合理性があるのだ、一本でもむしろ理論的には正しいのではないかという主張は確かに、私は同感でありますが、それは私は非常に進歩的な御意見だと思います。具体的に一体そこまで持っていけるかどうか、次に残るのはその問題じゃないかと思うのでありまするが、大臣、そこまで御答弁いただきましたから私はそれにひとつ続いてお尋ねしたいのは、その基本的な態度について、医師会といいますか、武見さんのほうでは具体的に三つ案をお持ちになっている。どういうことかというと、さっき私は簡単に聞いたのですから若干間違っているかもしれませんけれども、地域保険に一本にする考え方、これはおっしゃるとおりです。これは大臣のおっしゃったとおりで、地域保険に一本にする。そのほかに産業保険というものを設ける。これは労災を中心にして産業災害だとか公害等、企業から出てくる原因で病気にやられた者は、これはひとついまの地域保険から切り離して企業に責任を持たせる。こういう産業保険というものを設けて、これは企業に責任を持たせる、いわゆる保険金その他から……。そのほかに老人保険というものを設けて、これはひとつ国に責任を持たせる。こういう形の三本立てでいきたいという案を何か医師会がお持ちになっているというふうに聞いているのでありますけれども、このことを大臣は一体承知をしておられて、そこまで突っ込んでこの第一項目で武見会長との間で完全な意見の一致を見られたのかどうか、お伺いいたしておきたいと思います。
  67. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ただいまの点は、日本医師会側がそういう意見を持っているということは前々から私も承知をいたしておりました。しかし、この総辞退に関係をして論議をした中に、保険制度をいまの三本立てにするとか二本立てにするとかいろ議論は何もいたしておりません。その点御了承いただきたいと思います。
  68. 小林進

    ○小林(進)委員 この数字の一に関する基本的な考え方は承りました。私も非常にけっこうだと思います。どうぞひとつ大臣の基本的な観念が、具体的な抜本的医療改正の基本構想の中にあらわれてくることを私は心から御期待を申し上げるわけであります。  次の2であります。「生存期間の一貫保障」ということでございますが、私はこれを見て、1がもし横の関係、「国民の連帯意識の高揚」が保険制度の横の連帯をいっているとすれば、第2は私は縦の連帯をいっているのではないかという感じがするのでありまして、おぎゃあと生まれた子供のいわゆる健康の保障から死んでいかれる老人の医療まで、これを一貫して基本的な医療体系をつくり上げるということに私は両者の意見の一致を見たと思うのでございます。でありまするから、この中には当然幼児の保険、老人の保険、これをどう扱うかという問題が私は含まれていると思うのでありまするが、この点について大臣はどういう内容を予定せられているのか承りたいと思うのであります。第2項についてであります。
  69. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 これは保険の面においてもまた医療保障という面から考えても、これは生まれてから死ぬまで一貫して医療保障の面から見るべきであるという意見で一致をしております。これは当然のことだと思います。  そこで問題は、いまおっしゃいましたように、それだからといって、必ずしも幼児の保険、あるいはまた老人の保険と、こう分けなければならぬとは思いません。それは給付の点でも考えられるでありましょうし、また公費負担をどう見るかという点の中にも入ってくる、かように思いますので、これを実現する技術のやり方はいろいろあろう、かように考えます。
  70. 小林進

    ○小林(進)委員 第三番目の問題でお尋ねをいたしますが、「労務管理と社会保障の分離」ということがうたわれております。  この問題についても私ども若干苦々しく感じておりましたことは、やはり組合保険等でともすると経営者や企業者がこの社会保障とか医療保障等を労務管理の一環としてこれを利用している、悪く言えば悪用して、組合対策あるいは労働組合の鎮圧といいまするか、懐柔対策等を行なっているという形が間々見受けられた。私はその意味において、私の了解するように、そういう社会保障とか医療保障などというものは労務管理やそういうものとはやはり画然と分けて、医療保障をそれ自体として国民の健康や生命を守るべきものだという本然の姿に返すという、こういう考えならば、私は非常に正しいと思っているのです。これも大臣は一体どういうことを内容として両者の一致を見たのか、お伺いをいたしておきたいと思うのであります。
  71. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 考え方としては、ただいま小林委員のおっしゃるとおりであります。  ことに保険料で、事業主も負担しておるといっても、その保険料の収入の中から、会社で当然やるべき厚生施設というようなものをあまりにやっていることは、これはいけない。一言で言えば、そういうわけでございます。
  72. 小林進

    ○小林(進)委員 時間が限られておりまするので、ほんの簡単で中心だけ大臣のお考えを承っておきまするが、次から最後にかけて、次の国会までに具体的にお伺いするために骨組みだけ伺っておきたいのであります。  次に、四番目に参ります。「負担と給付の公平」という問題でございまするが、これはやはり現在あります各種保険の中に、国保と被用者保険の中に負担と給付の非常な差別がある。また同じ被用者保険の中にも、それぞれ負担と給付の公平を欠いている点がある。そういうことを私は端的にさしているものというふうに理解をいたしておりまするが、この点はいかがでございましょうか。
  73. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 これは前々から論じておりますように、私も前の在任中もこれは申しておりました。ただいまおっしゃるとおりであります。時間をとりますから詳しく申しませんが、いまおっしゃるとおりでございます。
  74. 小林進

    ○小林(進)委員 五番目、「低所得層の有病率の高いことの考慮」という、これは私は先ほど申し上げました医師会が出された基本的構想の一つにある老人医療の無料といいますか、老人保険に関連する条項であると思うのでございますが、それと加うるに、やはりこの中には、例の、大臣をあなたがおやめになったあとのあなたの前任者の大臣のときにやられた実に改悪法でございまして、これは武見会長の言う、官僚の、何と言いましたかな、げすの知恵で、ついに日雇健保なるものを改悪をせられて、一番有病率の多いあの日雇労務者が日雇健保から追い出されて高い保険料を払わなければならないという、聞くも涙の改悪の物語があったのでございまするが、私はこういうことを含んでいると思う。「低所得層の有病率の高いことの考慮」というのは、私は現在ある老人医療の問題だとか日雇健保、あるいはこの中には政府管掌保険も含まれたかもしれませんが、こういうことをさしてその問題をひとつ改正をしようという含みであると思われますが、大臣いかがでございましょうか。
  75. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 大体おっしゃるとおりでございます。いま同じ健康保険の中においてもやはり有病率の高い人たちが大体所得からいうと低い、給料が低い、それが一つのグループをなしている。さらに大きく申しますると、国民健康保険は、大体有病率の多い者、幼い者、子供、老人というものが国民健康保険に追い込まれている。国民健康保険の中にでも特別健康保険組合というものがあって、これはわりに所得が多くて、病気をあまりしないというものが組合をつくるということのできる制度をつくって、いまそういう制度で運営をされている。そういう面を考えますると、現在の制度はこの点から見ても非常に不合理である、こういう意味でございます。
  76. 小林進

    ○小林(進)委員 次の6の「医療従事者の質的向上」という問題でありますが、この中には何が一体含まれるのか。現在の医学教育、医師の資格そのものをいっているのか、これは例のインターン制度等の問題で非常にもめたのでありますけれども、そういうことの改革も含めているのかどうか、あるいは看護婦や検査技師等に限定されている問題であるのかどうか。たとえていえば看護婦の問題につきましても、私ども国会の中でたいへん迷惑を受けたといってはなんでありますけれども、准看制度などで、高校卒一年で准看をつくろう、私どもはそういうインスタントなつくり方は反対だということで前の国会ではたいへんもみ合ったのでありますが、そういうことも含めて、医療従事者の質的向上というからには、医師も看護婦もあるいは検査技師——検査技師法というものを前の国会で改正いたしましたけれども、これはまだ不完全であります。もっとこれをも改革して質の向上までに持っていこうというのかどうか、そこら辺をいま少しきめこまかくこの際伺っておきたいと思うのであります。
  77. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 全部含まれております。ことに医師の問題が一番重要だと思います。これは医学教育の問題、この点は先ほど武見会長からもお話がございました。これは全部含まれておるわけでありまして、たとえば医学教育がいまのままでいいかどうか、これは文部省の所管でございますが、厚生省から言うべきことは言わなければならないという点も多々ある、かように思います。他の医療従事者、あるいは検査技師、看護婦その他の問題につきましても質的の向上ということが必要である。どこをどうするかというこまかい点にまで私はまだここで御答弁を申し上げるものを持っておりませんが、しかしこのままでよろしいとは考えておらぬということでございます。
  78. 小林進

    ○小林(進)委員 私は、7と8、これは当然なことでございますので、あらためて大臣の御答弁をちょうだいする必要はないと思います。これは全面的に賛成でありまするし、ぜひそのようにやっていただきたいと思います。  以上、私は、大臣のお考えを拝聴いたして全面的に賛成でありまするし、ぜひひとつそのお考えのとおりに推進をしていただきたいということを心から要望する次第であります。ただこれは私が言わぬでも、御承知のとおり大臣一人で自由にできるわけではありません。医療協議会もありましょう、制度審議会もありましょう、けれども、私はこういう抜本的な問題は、武見会長のことばを盗むわけではありませんけれども、現在の中央医療協議会あるいは制度審議会ではたしてこれがやり得るのかどうか、私はその意味において、たしか社会保障制度審議会じゃなかったかと思いますが、こういう医療の抜本問題のために何か別個の審議会をつくったらいいじゃないかという進言が、大臣のときでありまするか、あるいはほかの大臣のときでありましたか、そういう答申がなされたというように記憶いたしますが、これだけの大きなものを——いま大臣は明快にお答えいただいた。珍しく明快に御答弁をいただいた。やはりこれをやるためには、どうしてもこれをやり得るようなもっと強力な制度というものをひとつつくり上げて、まあ大臣、話が飛び飛びこなりまするけれども、これをやるためには、それは各種の保険、特に安田会長を頂点とする組合保険等からも、あるいは企業からも相当大きなで抵抗が出てくるんじゃないかと私は思いますが、その中で国民の同意を取りつけながら、これだけのものを歴史的に仕上げるとなったら、いまの機構じゃ困難じゃないか、この点大臣はどういうお考えでこれを完成をせられるのか、私は承っておきたいと思うのであります。
  79. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 ごもっともでございますが、医療保険抜本改正につきましては、先ほどもおっしゃいますように、もう長い間各界、各団体の御意見が出ているわけであります。なぜこれが実現がむずかしいのか、いまおっしゃるように、いろいろ、いまの制度が一番いいという人たちとそうでない人たちの意見の調整ということでございましょう。そこで、それをやるのには別の審議会をつくったらどうだということでございますが、私はこの国会審議会をつくって、そうしてもう少し議論を戦わして出せ、次の国会に出さなくてもいいということであれば、それも一つの手と思うのでありますが、次の通常国会というのがもうかねての約束であって、政府としてはどうしても次の国会には抜本改正皆さんに御審議していただかなければならない、私はこういう責任を痛感をいたしております。さようにいたしますると、いまからまた審議会をつくって、そこで審議ということでは、政府の公約といいますか、責任が果たせなくなる。もう事柄はすでに論じ尽くされておる。そこでいま制度審議会、保険審議会に諮問をいたしておりますが、これも私は根本方針を聞かしてほしいということがねらいでございます。そこで、先ほどもおっしゃいましたが、小林委員の所属せられるところでの抜本改正意見も出してあると言っておられますが、私も拝見いたしましたが、先ほど申しました一番の根本である、被用者保険とそうでない保険を一つにするほうが社会保障のもとにおける保険としては望ましいんだという御意見は、どこにもないのであります。いまだございません。いま小林先生がおっしゃいましたが、それが望ましい。しかしやるのには、すでにでき上がった制度があるから急にはむずかしいかもしれぬが、逐次それに沿うようにやっていけという御意見で各党とも、あるいは労働者もあるいは資本家側も意見が御一致いただけるなら、私はそういう審議会を設けなくてもいいんじゃなかろうか。そこで一番の問題は、やはり国会国民の総意を代表しておられるところでもありまするし、労働者も資本家側もみんなの意見を代表しておるわけでありますから、与野党ともそういう点について何らかの方法で合意いただければ非常にありがたい、あるいはまちまちの意見でもけっこうでありますが、二本立ては必要だというなら、必要の理由を伺わしていただいて、なるほどと思えばそういうようにやっていきたいし、そうでないということであればそういうようにやっていきたいし、政府が出しましても、やはり国会で円満に、国民の合意のもとにやっていただきたいと考えまするので、私はその根本問題について、与野党ともできるなら意見をきめていただければ、抜本改正がきわめてスムーズに行くんじゃないだろうか、かように思いますので、重ねてお願い申し上げる次第でございます。
  80. 小林進

    ○小林(進)委員 私は大臣のお考えに全面的に賛成です。関連がありますから、ここでひとつ譲ります。
  81. 島本虎三

    ○島本委員 関連。大臣、いまのような大きい構想をやる、実行する、それも期限つきで十月である。そういうようになると、私はここで二つただし、おきたい点があります。  まず一つは、厚生省の中で、技官か何か知りませんけれども医師会の会員である人たちがずいぶんおられるということを聞いておるんです。いま武見会長から、各部局の局長クラスの大臣ではだめだ、ほんとうの意味厚生大臣はあなただ、こういうおほめのことばがあってあなたはにっこり笑った。しかしながら、やはりその中で、依然として医師会の会員であるあなたの部下が厚生省の中に一体何人おられるのか。いま前の政務次官もそこにおられますけれども、しかし前の内田厚生大臣は、やはりそれじゃ真の厚生大臣たり得ないから、この役所にいる人は医師会の会員であることをちょっと遠慮したらどうだという発言をしたけれども、それがうやむやになった、こういうことが報ぜられている。それならば真の国民のための大臣として抜本改正をやる上において、はたしてそれがいいのか悪いのか、前の大臣の構想に対してどう思ってこれに当たるのか、ひとつ所感を聞かせてもらいたい。まずこれが一つ。  もう一つは、先ほどの武見会長のいろいろな意見の開陳の中で、社会保障制度審議会、あれは総理の諮問機関なんです。社会保障全体を扱ってやっているんです。大綱を指向し、大綱をきめるのです。それに沿って肉づけをし、専門の諮問機関がまたいろいろやっていくんです。いわばこの大綱をきめる社会保障制度審議会委員の中には医師会の代表もいたんですけれども、何年か前に武見会長が委員として入っておったころに、われわれの意見もいれないで、そして満場一致ということで排撃されて、専横なる意見を出した。そんなものには入れない。何年前ですか、いまそんなことをしているんですか。少なくともしてないと思う。そうであるならば、やはり中に入って、二カ月なり三カ月の間に堂々と意見を戦わし、りっぱな成案を得て答申するのが道じゃないか。説教を聞くのはいいが、その方面の説得に大臣が欠ける点があっては困ると思います。  二つについて明快なる御答弁を賜わりたい。
  82. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 第一の点につきましては、この了解事項の一番最初の点にございますが、厚生大臣は三つの性格を持っている。それがばらばらであるというような表現であったように私も聞きました。結局私は、これはかねて思っているのでありますが、国民医療という面からの要請と、それから保険サイドから見た要請、それが保険サイドから見た要請のほうが強過ぎたということが医療側から見た不満であったろう、かように私は思います。いわゆる医者の良心というものを満足させるような、そういう治療をやろうとすると、保険サイドから制約をされるというとであろう、こう私は翻訳して解釈し、そして武見会長もまあそれはそのとおりだ、しかし保険制度には保険制度の持つ制約というものがあるから、それは完全に良心的な治療ができないという点があってもやむを得ないだろうと思うけれども、保険制度のほうが治療のあるべき姿をあまりにも侵し過ぎるということは、これはいけないことだと思う。保険関係を担当している人たちは、やはり保険制度側から見る発言というか、考え方というものが主になってきたということは、これは十分反省しなければならない、こういうふうに私は思い、この点で意見が一致したということでございます。  それから制度審議会、この問題は、私は対談の中でも申しました。それだけのりっぱな御意見をこの審議会において十分話をしてもらえば、あるいは採用されるされないにかかわらず、いずれにしても世間でもっと評価するものはするであろう、いまからでもぜひ復帰をされたらどうだということを言ったのでありますが、先ほどお聞きのとおりの答弁でございました。
  83. 島本虎三

    ○島本委員 私の聞き違いであったならば、これはお許し願いたい。厚生大臣立場はやはり国民医療、また国民の健康、すべて国民の側に立って考えられるのが私は妥当だと思う。保険の側だとかいろいろなことを言いますけれども、保険そのものは国民の側に立った保険でないとだめなんです。いわばあなたは国民のための厚生大臣である、こういうふうに私ども思っているのです。それがどの側じゃだめだ、この側じゃだめだ、セクト的に考えておやりになっている。それでは厚生省の中はセクトの争いになってしまっているではありませんか。そして内田厚生大臣は前に、やはり医師会の会員のまま、そのまま意見を反映するようなことがあっては、真の国民の側に立てないということで、暫時の間でも資格を返上なすったらどうだということをやったとかやらないとかということを聞いておるのです。したがって、そういうような必要がいまあなたはおありと考えるかどうかというのですが、あなたからこの答弁はないのであります。何人ぐらいいるのでしょうか、それをそのままにして今後やっておいてもいいとお考えですか。抜本改正するための前提としてこれを伺っているのです。
  84. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、厚生省に医師会員が何人いるかまだ聞いたことはございませんし、そういうことは必要はないと私は思っております。要は、おっしゃいますように、国民のための医療保険ということを考えればいいので、その考えのもとに部課長を指導あるいは指揮あるいは監督してまいるというのが大臣の責任だと思います。私はその責任を果たしたい、かように思っております。
  85. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 田邊誠君。
  86. 田邊誠

    田邊委員 きょうは時間がありませんから、今後の問題について大臣にいろいろと聞くことができません。とりあえず厚生大臣日本医師会長との了解事項、小林委員から五項目の中身の八つの事項につきまして質問がありましたから、私は一、二、三、四について簡単に質問いたします。  いま大臣の発言を聞いておりまして、私は一面、大臣もずいぶん変わったなという気がしてならないのです。医療保険制度のあり方について、あなたは、与野党でもっていろいろ討議してもらいたい——ども討議します。これが一体最終場面でどうあるべきかということについて、私ども実は真剣に討議をしておるわけです。そのプロセスの中で、被用者保険と地域保険に二分類することについて私どもも論じております。しかし、それには幾多の前提があるはずですね。制度的にも、それから財政的にも、いわば政府が考えなければならぬ重大な問題が幾つかあるはずなんですね。それを抜きにして実は将来のあるべき姿というものをにわかに私どもはここに断定的に言うことはできないわけなんです。そういうような点からいうと、大臣が武見会長と会談をしているのを聞きまして、いま国民皆保険だというけれどもこれは形式だ、内実はいろいろばらばらだと言っておったのです。翻然として悟ってそういうことを言われておったのか、医師会のそういう言い分を聞かなければならぬ立場に追い込まれたからそう言ったのかわかりませんけれども、私は、斎藤さんがこの前の大臣のときにやはり委員としてお相手をいたしました。そして、あの健康保険法の改悪について実は反対をいたしました。政府与党はあれを押し切ったのであります。そういうことを考えてくると、一体この形式的にばらばらであったというところ責任はどこにあるのかということについて、やはり斎藤大臣自身が明確に反省をして、従前のあり方なり従前の考え方は聞違っておったという認識の上に立って事は運ばなければ、私は問題の解決にならぬと思うのですよ。それについて口をぬぐって、何か自分は翻然として悟りを開いたような、そういうやり方というのは、やっぱり政府責任ある立場としては私はとるべきでないと思うのです。そういった点から、この了解事項について、第一項目で従前の点に対して反省をしている、こういうふうにあなたもおっしゃり私も認識をいたしまするから、その上に立ってひとつ今後に対処してもらうとするならば、新しい事態でありまするし、新しい認識の上に立ったわけですから、したがって、いわゆる当面を糊塗し、小手先のことでは相済まないということになったと思いますので、第二番目に書いてありますこの抜本改正については次の通常国会に提出をするということを約束されたというのでありますが、この抜本改正というものが一体中身はどういうものかについても、またいろいろと意見がありまするが、いずれにしても、当面を糊塗して、いままで政府が考えてきたような、たとえば財政対策、赤字対策というようなことでは、これはもう処理できないのだということについては、武見さんもおっしゃりあなたもおっしゃってきたのですから、したがって、よもや次に予定されているところの臨時国会に、さきに廃案になったような健康保険法の改正案というものはお出しにならないと私ども認識してよろしゅうございますね。
  87. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 次の臨時国会には、私としてはただいまのところ出す意思はございません。
  88. 田邊誠

    田邊委員 大蔵当局では、次の沖繩国会に、さきに廃案になった健保法のようなものを出すというようなことをおこがましくも言っておるのでありまして、私ども実はあらためて大蔵大臣の所信を問う機会を得たいと思っているのですけれども、いま大臣の話を聞いて、私は当然そういうふうにならなければものの本質をとらえたことにならないというふうに思っておりますので、したがって、そういった点に対するところ考え方をひとつ推し進めていただきたいと思うのです。  ただ、抜本改正といっても、言うなればいま言われたいわゆる保険制度の問題、それから診療報酬体系の問題、あるいはまた公的医療機関診療所との配置の問題、任務分担の問題、医学教育の問題、特に公的医療機関については、武見さんもおっしゃっておるように、この独立採算制の問題を一体どうやっていくか、それから医薬分業に対するところのプロセスはどういうふうになるのか、いろいろな問題があるわけですけれども、一挙にこれに対するところの解決策をとることはできないと思います。そうなってくれば、次に予定されている抜本改正に対するところのいわゆる法案の提出というのは、私はその中の一つ段階を画することにならざるを得ないのじゃないかと思うのですけれども一体何を重点に置いてあなたは抜本改正の組み立てをしようとされているのか、こまかくなくていいですから、あなたの構想の第一着手は一体どこから手をつけようとするのか、お伺いしたいと思います。
  89. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 先ほども申しますように、まず被用者保険とそうでない自営業者保険とは、これは制度上どうしても残さなければならぬものかどうかという、この点が私は一番大事な問題かと思う。その点について国民的合意が得られますならば、あとは私は大体保険技術の問題、制度をつくる技術の問題だ、かように考えておりますので、この点について先ほども申しますように、できるだけ——私もいままで勉強が足りなかったというか、皆さんの御意見を聞き足りなかったと申しますか、私は一年半休んでおりましてつぶさに考えておりました中にも、さように考えております。制度審議会それから保険審議会に諮問をいたしましたときにも、そこまではことばに出しては申しませんでしたけれども、まず基本的な考え方がどうでしょうか、しかし、それをやるのには先ほどお話がありましたように、ある程度現在の機構を大きく変革するわけでありますから、さしあたって二年以内にやるとすればこんなことではどうでしょうかという厚生省試案というものを出しておいたわけであります。もう二年すでにたってしまいましたし、やはり基本的な考え方国民合意のもとに一致させておくということは、それを目標に計画的に進めていくという点もありましょうし、もしほんとうに合意が得られるなら一挙にでもやれるという問題ではなかろうか、これが基本だ、かように考えておるわけであります。
  90. 田邊誠

    田邊委員 技術論としての問題は、実は私はきょうこまかく言いませんけれども医師会組合健保を解体しろ、健保連というか組合健保側は、いわゆるいまの組合健保に吸収しよう、引き上げろといいましょうか、こう言っているのですね。私は、健保組合というものの現在の機能的なものが、一面においては医療中身について捕捉しやすい点はあると思う。しかしまた、これが労務管理との区別の問題やいわゆる企業別の格差を生むという問題や、実態的に逆の面におけるところのいろいろなマイナスの面もある。したがって、技術的にこれをいかに処理するかということについては議論があると私は思うのです。ですから、これらについてはまたあらためて論争していきたいと思いますけれども、しかし問題は、いずれの場面をとるにしても、現在国民が受けているところのいわば給付の水準、それから負担の現在の状態、こういったものをより悪くするという、負担を極端にふやす、あるいは給付をレベルダウンをするというような、そういったことは私はとるべきではないと思うのです。より高いところ医療の給付、そうしてまた、国民の負担をなるべく増加させない形でもっていわば国民医療を確立する、こういうことが私は要請されると思うのです。とすれば、あるべき形というものについてのいろいろな構想はありますけれども、そのどこに行きつくにしても、政府がとるべき措置の中でもっていままでのようなちゃちな財政負担、国庫補助のあり方では、とうていこれは克服できない大きな山である、こういうように私は思っておるわけであります。そういった点で、いままでのようないわば当面の政管健保の赤字をなくすというような、そういう狭い視野に立った国の補助のあり方だけではなくて、いわば医療保険なり医療制度を含めたこれから先の行くべき道を問うためには、政府はかなり思い切った財政措置を私は要求されると思うのでありまして、そういう決意なしには、ただ単に制度をいじってみても、これはどうにもならないということは逆説的に言えると思うのです。そういった点に対してあなたは相当な決意を持ってこれに立ち向かわなければならぬというふうに思いますけれども、その点に対しては、総理と武見医師会長との最後の確約の中にも出ていたと思うのでありますが、これを含めてあなたは一体どういうお考えをお持ちですか、決意のほどをひとつ端的にお伺いしておきたいと思います。
  91. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 現在の給付を維持しながら、ということは私は絶対要件だと思います。これを悪くするということはあってはならない。  そこで、抜本改正をやった場合にその抜本改正のやり方いかんにかかると思うのでありますが、いまよりも政府の負担はうんとふえるであろうという予想はいたしますが、どの程度の負担になるかということは抜本改正の構想をきめませんと数字が出てまいりません。しかし、これは国民のためにぜひ必要であり、抜本改正はこうでなければならぬという合意が得られるなら、私は政府といえども必要な負担はしてもらえるだろうと思いまするし、総理も必ず抜本改正はやるということもたびたび国会の場でも言っておられるわけでありますから、これは大蔵大臣も了承してもらえるものと、かように思っております。
  92. 田邊誠

    田邊委員 財政調整に単に終わらないように私どもお願いすると同時に、具体的な数字の面については、新しい構想をわれわれも打ち立てる中で、具体的な面で詰めていきたいと思うのです。  時間がありませんから終わりますが、最後にこの四番目にあります診療報酬を物価、人件費にスライドするということ、これは中医協でこれから審議してもらう、しかしあなたは中医協審議がどこまで続くかという一つの見通しも立てなければならぬと同時に、医師会とかなりこういった面について約束しているわけでから、中医協審議もあまり進まぬ、いままでも長くかかってなかなかできないのですから、そういったときには職権告示もやらざるを得ないという、そういう含みを持った発言もされておるわけですから、私どもはこの問題は、他の制度の問題やその中身が薬の問題等との関連の中で、いろいろと処理しなければならない重要問題を含んでおりまするから、十分な審議が必要だろうと思うのですけれども中医協なりで十分な審議のないままに、医師会約束というものをあまりにも重んずるというか、急ぐために、あなた自身の手でもってこの値上げなり、あるいはスライド制の実施なりというものを単独でやるということはないだろうと私どもは確信するのですけれども、これに対しては慎重な対処をするというおつもりですか。
  93. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 もちろん私は慎重でなければならないと思います。それはやはり政府責任であると私は考えます。したがって、軽率にはいたさない所存でございます。
  94. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 大橋敏雄君。
  95. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 今度の日本医師会保険医辞退に至るまでの経緯、また突入して以来の政府の収拾に対する努力、またその収拾のめどをつけた内容について、われわれはかなり疑問を抱いておりますけれども、時間の関係で全部打ち出すわけにまいりませんが、その中の二、三をお尋ねしてみたいと思います。  まず、斎藤大臣はすでに両審議会に対して抜本改正を諮問なさっているわけですね。着々とそれは進んできて、社会保障制度審議会などは八月をめどにその作業が進められております。ということは、ほとんどその中身が煮詰まってきたということであろうと思うわけでございますが、今回の日本医師会との了解事項といままでの諮問内容との大きな相違点はなかったかどうかというのが一つ。それから、もしあったとなれば、その点はどのような姿で調整なさろうとしておるのか、この二点をまずお尋ねいたします。
  96. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は諮問内容と何ら背馳している点はない、かように考えております。
  97. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それではお尋ねいたしますが、今回日本医師会が強く言っておったことは、先ほども話が出ておりましたように、組合健保の解体を含む抜本改正云々、このような発言が強く出ておったわけです。また、この了解事項を見ましても、「右実施についての了解細目」という中にもそれらしきものを示唆している項目がございます。となれば、これはかなり大きな開きがあるんではないか、こういうように感ずるわけであります。日本医師会が言っておる抜本改正と、すでに斎藤大臣が諮問なさっているその諮問内容と大きい開きがないとおっしゃいますけれども、私はあると判断しております。  その一つの例を取り上げますと、まず日本医師会のほうは産業保険を創設せよと言っております。これは現在の九つにわたる保険制度を地域一本に統合せよ、そしていまの経済発展に伴う工業化、いわゆる鉱工業の発展のその中にあっては、産業医学というのは当然考えられなければならないし、その産業社会に対応していく医療制度といいますか、それをくみ上げねばならないということは、前々から日本医師会がその諮問案に対して強烈な批判を下しているわけでございますが、その点についてはどういうことになっているんでしょうか。
  98. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、保険制度をどういうようにするという点について何ら合意はございません。またその話もいたしておりません。また武見会長も先ほどここで答弁されたと思いますが、必ずしも組合健保を私は否認するものではないという発言もございました。私は会談の中で、今度の総辞退は、医師会組合健保のけんかではなかろう、そのけんかはやめてもらいたいと私は言ったわけでありますが、ただ私は申し上げることは、抜本改正はかくあるのがよろしいという姿になれば、あるいは組合健保もなくなるかもしれない、国民健康保険の中の特別国民健康保険組合というものもなくなるかもしれない。それはその抜本改正のあり方の問題であって、医師会長の言うのには、先ほどお手元にも配りましたように、そういったような要件の満たされるような保険制度であり、あるいは医療制度であり、あるいは国民の健康管理体制であり、こういうものが必要であるというので、それは必要だとこう合意をいたしたわけであります。  なお、医師会の産業保険という問題については、私から答弁をする限りではないのでありますが、しかしいろいろと医師会から発行されたものを見たり、意見を聞いたりしてみますると、やはり産業医学というものを今後もっと発展せしめなければならないし、産業医学の見地に立ったいわゆる職場管理というものが必要であり、そこで起こる産業疾病あるいは産業の身体障害というようなものは、これは事業主の負担すべきものだというので武見医師会長の考えのようでございます。
  99. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それは日本医師会側、特に武見会長さんとの了解事項でございますけれども、いわゆる医療保険抜本改正は、これは現在審議されているものに一任いたします、ただしわれわれの考え、いわゆる医師会の考えは、こうこうこういう内容を含んでおりますよ、しかしそこできめられる抜本改正中身については何ら文句はつけません、こういうふうに理解しておっていいわけですか。
  100. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 お間違えのないように願いたいのでございますが、諮問をいたしております審議会からの答申は十分尊重をいたしますと言っておるのであって、これに一任しておるのではございませんから、その点は御了承いただきたいと思います。
  101. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 いや、私がいま聞いているのは、武見会長さんとの了解事項というものは、何ら抜本改正中身についていろいろ言ったのではない、あなたはさっきおっしゃったですね。そこで、ここにあげられている項目というのは、単なる医師会側のゼスチュアといいますか。今回の事態収拾のための項目として並べられただけのことであって、その制度がどうなろう、こうなろうという中身については、医師会は何ら疑義を差しはさむものではない、かりにでき上がってしまえば、答申が出てしまえば、それについてとやかく言うものではない、こういうことかと聞いておるのです。
  102. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 それはそうではございませんので、抜本改正の中には、こういう要件が満たされることを必要とするということについて合意をしたわけであります。  そこで、抜本改正の姿はいろいろあろうと思うのであります。先ほど申しましたように、被用者保険とそうでないものとの保険を一つにしてしまうか、どうしても残さなければならぬという、国民の皆さま方に問うてみてもそうだとおっしゃる合理的な理由があれば、これは二本立てでいくでありましょうが、どういう形になろうと、その保険の内容がこういうような事柄を満たすようにというのが合意をいたした点でございます。
  103. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私がくどいようにお尋ねするのは、かりに次の通常国会抜本改正が出される、出しますと、こうお約束をなさっているわけですね。その内容が今回の合意事項、了解事項中身とはずいぶん離れているではないか、かりに医師会が開き直った場合は、これはまた今回のような事態が起こるのではないか、このように懸念するからであります。その点はだいじょうぶですね。
  104. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 こういうような要件を満たすような抜本改正がどうしてもできないということであれば、それは私の非力であったという一語に尽きるわけであります。私はそういう満たすようなものをつくり上げたいということで、皆さま方にも先ほどから申し上げますようにお願いを申し上げているわけであります。
  105. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 厚生大臣は謙遜なさっておっしゃっているようでありますが、もし非力であった場合、再び日本医師会が総辞退のようなことを繰り返してやらないとは、われわれは断言できないわけですね。もしそうなってもやむを得ないという考えですか。
  106. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 もし違約をした、ああ言っておきながら何にもしなかったときには、あるいはそういう事態になるかもしれません。しかしながら、いろいろ努力をしてみて、そうしてそこまでやったのなら誠意は認めざるを得ないということになるかもしれませんし、それはそのときのことだと思いますが、最後の会談の際に笑い話に、非力でできなければそのときはまた総辞退ですかと言って笑ったようなわけでございますが、そういうことのないようにいたしたい、かように思うわけでございます。
  107. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 私たちもそう願うのですけれども医師会のいわゆる学問的な抜本改正中身を見ていきますと、従来の諮問内容も相当批判されております。先ほどの産業医学の問題から見ましても、もうすでに諮問されている政府案というものは、産業医学の導入については全く考えられていないと、ここまで批判しているわけですね。  この問題、続けてもけりがつきませんので次に移りますが、私は率直に申し上げまして、今回の四項目ないし八項目の了解事項を見ましても、非常に抽象的であって、やはり日本医師会のねらいとしたところ医療費の緊急是正だったんだな、このように感じるわけであります。この四番目にもはっきりそのことが示されておりますけれども、先ほど武見会長も、今度約束したことについていいかげんなことをしてもらったのでは黙っておりませんよというような意味お話をなさいました。診療報酬を物価、人件費にスライドしていくというスライド制の導入あるいは緊急是正についてかなりの決意をなさっておると思いますけれども、またそれでなければできる仕事ではないのですが、今度の医療費値上げ問題が中医協で具体的に進められるということになっているわけですけれども、大体どの程度の引き上げをお考えになっているのか、もちろん医療費の引き上げというのは、厚生大臣の権限だけではきめられるものではないということは知っておりますけれども厚生大臣としては大体どの程度のことをお考えになっているのか。
  108. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 医師会長との話し合いの中に緊急是正の約束は全然いたしておりません。緊急是正をやるということは約束いたしておりません。  四項にありますのは、そういう原則を、これは当然であるという約束をいたしました。緊急是正が起こるか起こらないか、これは中医協が開かれた後の問題になると、かように考えます。  そこで何%上げることを腹の中で思っておるかとおっしゃいますが、これは中医協の場で診療担当側からどういう要求が出るか、またこれに対して支払い側がどういうように言われるか、それらを見ませんと、いま何%どう、そうしてそれをいつやるかということもちょっと申し上げかねるわけでございます。
  109. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは医師会との合意事項の中には緊急是正は含んでいない、あくまでも医療費改定の問題は物価、人件費に対応するスライド制だけだ、こう考えていいわけですか。
  110. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 これは形式的に言うとそういうわけでございます。ただ、いまの医療費が必ずしも十分でないという点は合意をいたしておりますが、それをいつ、どういう形でやるかという点は、これはこれからの問題でございます。
  111. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 われわれは、今度の事件を通しまして、確かに医者医療費が低いということは、特に諸外国の例に比べましてはっきりしたわけでございまして、具体的な中身を知れば知るほど、やはりこれは何とかしなければなぬなといらう気持ちは実感として受けました。斎藤大臣もそういう点では同感ですか。
  112. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 同感でございます。
  113. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それでは当然人件費とか物価のスライド制のみならず、医療費の緊急是正も含めての検討をなされるであろうということは予測つきますね。
  114. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 中医協では問題になるだろう、それが検討材料になるだろうという予想をいたしております。
  115. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 その際何%引き上げになるかが問題でありますけれども、かりに是正をなされるとすれば、いままでのような低いものではおそらくおさまりがつかなくなるのではないか、相当大幅な引き上げになるのではないかと、こう予測するわけであります。そうなれば、結局保険料にそのはね返りが出てくる、また国民大衆が非常に負担をしなければならぬのじゃないか、こういう懸念もするわけでありますが、かりにいままでにない大幅な引き上げが検討内容になって煮詰められたとした場合、それに対して国として、そのはね返りをどの程度に抑えていく考えがあるかどうか、そういう点についてお尋ねいたします。
  116. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 これはまだその結果を見ませんと何とも申し上げられない、かように思います。抜本改正をした後の場合と、いまの制度のままでどの程度負担ができるかという問題もありましょうし、いろいろな問題がからんでまいりますから、これは現実性を帯びてきたときに考えたいと、かように考えます。
  117. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それではちょっと話は変わってきますけれども、いずれにいたしましても医療費値上げがなされば、当然保険料にはね返ってくるのではないかと私たちは懸念するわけでありますけれども、いまの保険料というのは、支払っておる国民立場からいけばかなり高いものに感じられております。そこで要望でございますが、国民大衆に負担をかけないような姿で何とかその問題が解決されていくような措置をとってもらいたいということでございます。  それから、先ほど武見会長にお尋ねしたのですが、診療報酬の適正化については、どこでどのような人がやれば一番いいのかという質問をしたところが、現在のわが国の医療費というのは、それこそ最低の医療費である、医者のランクをつける段階にまでいっていないのだというような話があっておりました。問題は、今回医療費の是正あるいは物価、人件費に対応するスライド制を審議する中医協の問題でございますけれども武見会長は、現在の中医協の会長さんに対して能なしだとまで強烈な批判をなさっておりますが、はたしてここに医師会代表が帰りましてスムーズな運営ができるのかどうかという疑問を私は持っておるわけでございますが、その点についてはどのような話し合いになったか、その点をお聞かせいただきたい。
  118. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は中医協がスムーズに運営されることを心から期待をいたしております。
  119. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それは期待なさっているのでしょうけれども日本医師会長があれほどまで強烈な批判をなさった中医協に帰るわけですね。復帰するわけですよ。それが簡単にもっとうまく運営されるとは、われわれとしては考えられない。そこには何らか裏話といいますか、何らかの話し合いがあったであろうと私は思うわけですね。そこのところを正直に具体的に話してもらいたいというわけです。
  120. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 けんかをしたときは、それはいろんなことを言い合いますよ。しかしながら、これではいかぬというようになったときには、またそういうようにいくものだと、さように私は思います。
  121. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 時間の関係でこの辺でやめておきますけれども中医協の問題のみならず、先ほどからも話があっておりますように、社会保険審議会社会保障制度審議会、両面にもまだ医師会側の代表は席をはずしております。この点についてはどうなったのか。また、厚生大臣としてその点についてはどう努力なさろうとしておるのか、その点についてお尋ねいたします。
  122. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 審議会医師会側が出ていないということは、いろんな意味においてまことに遺憾であり、残念である、かように思っております。
  123. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ただ残念だけで、それに対する努力はなさろうとするのか、しないのか。
  124. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 先ほども申し上げましたように、たびたび努力をいたしておりますが、まだその実現に至らないことはきわめて遺憾でございます。
  125. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 ではもう一問だけ。  産業保険の問題にまた返るわけでございますが、現在労災保険では業務上のみを取り扱っておるわけでございます。産業保険の立場からまいりますと、一般疾病もその中に組み込まれる、一体的に組み合わされるということになるわけでございますが、斎藤大臣の諮問内容を見ますと、あくまでもこれは不便な立場であるというようなことで考えられているようでございますけれども医師会側のこの主張からいきますと、ここに大きな考え違いがある。工業化に対しての健康管理体制というものを全く無視した考えではないかという強い批判があるわけでございますけれども、今後の労災保険のあり方について、またそれと健康保険との関連性について御意見をお伺いしたいと思います。
  126. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 医師会のいっておられる産業保険というものは、われわれのサイドで考えている国民医療保険というのとは別でございまして、医師会の考えておるのは、勤労者の一般疾病まで産業保険でカバーしようという考えではないのでございます。さように私は了解をいたしております。少なくとも産業側に責任のある疾病ということだと私は了解をいたしておるのであります。
  127. 大橋敏雄

    ○大橋(敏)委員 それじゃ時間がございませんからこれで……。
  128. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 古寺君。
  129. 古寺宏

    ○古寺委員 まず最初に、日本医師会長との了解事項の第五番目の八項目でございますが、そのうちの七番目に「大学研究費の公費負担」という問題がございます。そこで私は大臣にお伺いしたいのですが、本来、大学病院あるいは教育病院というものは研究と教育という二つの大きな目的を持っておるわけでございますが、現実に大学病院や教育病院の実態を見ますときには、非常に医療保険というものが全面的に取り入れられているために、その教育と研究という目的の達成が思うようにいっていない、こういうことがとかく問題になっておりますが、こういう点について「大学研究費の公費負担」という問題で話し合いがなされたのかどうか、お伺いしたいと思います。
  130. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 この点は、大学の研究費はきわめて少ない、それを医療保険の中から研究費を出させるというような考え方は間違いであるということであって、これは私どもも全面的にさように思うわけでございます。
  131. 古寺宏

    ○古寺委員 そういたしますと、来年度からこういう研究費については厚生大臣としては具体的に公費で負担するお考えですか。
  132. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、大学の研究費がどの程度出ておるかよく存じません。文部省のほうで大学の研究費というものをどの程度とっておられるかも十分承知をしておりませんが、この原則を了解いたしました以上は、それも私はよく文部省側からも確かめ、また厚生省も研究費というものを持っております、科学技術庁も持っておりますが、一体そういうもので大学の研究費がまかなえるものかどうかということも、厚生省側として考えなければならぬと思います。基本的には、先ほど申し上げますように、いわゆる保険収入の中から研究費を生み出させるという考え方はだめですよということで、それはだめです、こういうように合意を見たわけでございます。
  133. 古寺宏

    ○古寺委員 時間がございませんが、もう一つお伺いいたします。  この抜本改正の定義でございますが、いままでの厚生省の考えている抜本改正というものは、財政対策がその抜本改正のようにわれわれは受け取ってまいりました。しかしながら、医師会長が言っているところ抜本改正というのは、地域保険が中心のように考えるわけでございますが、この抜本改正の定義について厚生大臣基本的にどういうふうにお考えになっているのか、明らかにしていただきたいと思います。
  134. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、従来の考え方も、単に財政調整ということが抜本改正の目的であるということで考えていたのではないと、かように考えます。抜本的に改正をすれば、財政調整というようなことなんかも考えなくても済むのじゃないか、あるいはまた、その抜本改正のやり方いかんによって、その制度間の財政調整ということも必要になろうと思いますが、要は、負担が公平で、そして給付が平等でと、それをやるのに最も都合のいい、そしていわゆる国民全体のための医療保険はどうあったらいいのかというのが私は抜本改正のねらいだろうと思いまするし、従来もその考え方でいろいろと考えておったと思います。記録を見まするとずいぶんいろいろなことを考えておりますが、これを国会に提案をし、そしてやるというまでにはいままで至らなかったということでございますので、御了承をいただきたいと存じます。
  135. 古寺宏

    ○古寺委員 まだよくわかりませんが、この了解事項の中には医療基本法の制定もお考えになっているようでございます。保険制度の抜本改正とあわせて当然医療制度抜本改正というものも必要になってまいりますが、そのような抜本改正の進め方、手順というようなものについて厚生大臣はどういうような構想をお持ちになっていらっしゃるか、承りたいと思います。
  136. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、本来から言うならば、国民医療のあり方はどうあるべきかという基本方針を定めて、そしてその方針に沿った抜本改正が一番望ましい、かように思うわけでございます。前者のほうは、やはり政府がこう考えるというだけでなしに、国民の合意を得た基本法的なものにして——これはその考えを一挙に実現はできませんから、まず基本をきめる、そしてそれを法律にする、その線に沿うた抜本改正が一番望ましいと思うのでありますが、しかし再々申しておりますように、抜本改正は次の国会に提案をいたしますということは、医師会との話し合いが始まって言ったのではなくして、もう二年前あるいは三年前にも言うており、私が前に厚生大臣をしておりましたときにも、あの健康保険法の一部改正の際にも、二年以内には必ずやりますと私も申し、総理も御約束をいたしておるのでありますから、その時間的な点から考えますると、いわゆる基本法というものを先に審議をいただいて、その後に抜本改正審議をいただくということになれば、これはまた一年あるいは二年おくれることになりますので、これはなかなか国会でも御了承をいただけないであろう。そこで基本法的な考え方をある程度まとめて、そして抜本改正の際にこういう考え方であるということを申し上げることのできるような程度まではいたしたい、かように考えているわけでございます。その点御了承いただきたいと存じます。
  137. 古寺宏

    ○古寺委員 それじゃ時間でございますので、これできょうは終わります。
  138. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 寺前君。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕
  139. 寺前巖

    ○寺前委員 抜本の問題その他については、またの機会にやらしてもらいたいと思います。  先ほど大臣がおっしゃった中で、この了解事項の中には緊急是正は約束をしていない、これからの問題だという答弁をされました。ところが、事態の発展というのは、昨年の暮れに緊急事態の旗を高々と掲げられ、大会でも緊急是正を要求して、そして今日まで医師会の方々はこられたと思います。これは単に医師会の方だけじゃなくして、先ほども話が出ましたように、たとえば入院費三百円、これで食事代を百五十円で押えよという行政指導がなされている。しかし、実際には二百円から二百五十円かかる、あとの五十円でもって人件費とか光熱費とか、そういうものをまかなえということでは実際上やれないという問題が発生しているし、また看護婦さんの問題にしても、基準看護をしていない中小病院、中小診療所では、それが計算の中ではゼロになっているという事実から考えて、あるいは評価の最も高い患者四人に看護要員一人という、あの第一類の看護料の場合でさえも、患者一人につき三百十円という状況では、一カ月に三万七千二百円にしかならず、ボーナスも出せないというような問題をめぐって、経営をやる側だけじゃなくして、そこで働いている労働者の側から見ても、緊急是正をやってもらわないことにはどうにもならないというのが、現実にこの一年間、声を大にして唱えてきたところの内容だったと思うのです。  そこで、大臣はすなおに、今度の了解に達する上において緊急是正を約束をしていないからこれからの問題だという観点でほんとうにおられるのか、いや、緊急是正はやはりやらなければならない、少なくともこうしなければならないという気持ちに立っておられるのか、私は、この問題について第一点聞きたいというふうに思います。
  140. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私は、武見医師会長との会談の中で、緊急是正をぜひやれということが向こうの要求でもなかったし、私からもその点は、緊急是正をやると言うてはおらぬということを申し上げておるのであります。ただ、今日の状況をながめて、これは総辞退があろうとなかろうと、そういうことが必要ではなかろうかというように思うておりますということを先ほども申し上げておるとおりであります。
  141. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ大臣は、緊急是正問題は、せめていつごろまでにはこういう処置をしなければだめだろうという計算をしておられると思うのですが、その点についての意見を聞きたいと思います。
  142. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 申しわけございませんが、いつごろまでにやらなければなるまいというところまで、まだちょっと計算いたしておりませんので、もうしばらく中医協の様子なりそれを見たい、かように思います。
  143. 寺前巖

    ○寺前委員 それではやはり政府当局が今日までの医療危機をつくってきた責任は免れない。そんな無責任なことで通るのか。私はほんとうに腹の底から憤りを感じます。大臣、先ほどから武見さんがここで報告されたような、あのような手術料の問題、あるいはいまも私が言いましたところの入院費の問題、これを考えたときに、患者の側から見ても、そういうようなお医者さんの態度では安心して医者にかかれないじゃないか。これについては、私は、もっと積極的に打って出てもらいたい。大臣、もっと早く積極的に打ち出す必要があるのじゃないだろうか。ほかの項目については次の通常国会に提出するとか云々しておられるけれども、緊急に処置をしなければならないという問題に対して、緊急の態度がないということになったら、私は一体何をほんとうに武見さんと政府との間に話し合われたのか、まず国民の側から見ても納得できないと思うのです。急いで緊急是正について取り組みますか。再度聞きたいと思います。
  144. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 私も同様に考えましたので、なるべく早くこの総辞退を解消し、そして中医協に早く復帰をして、中医協を早く円満に開いてもらいたい。そうすれば、そこで必ず議論が出るであろう。一日も早く中医協を正常に戻して、そうして早く開いてもらいたい。このためにも、私はできるだけ早く総辞退を解いてもらいたい、かように申しておったわけでございます。
  145. 寺前巖

    ○寺前委員 それじゃ私はもう一度大臣に。  できるだけ早くというのは、一体どの時刻までをできるだけ早くと考えておられるのだろうか。私は率直に、次の臨時国会までなのか、通常国会までなのか、大臣としての期待はいつまでだということを明確にしてもらいたいというのが一点。  第二番目に、武見さんと大臣との間に話をされた。基本的にはここに書かれているようなスライドしていくことについて努力するということを約束された。それじゃ、その場合にわれわれの負担にかからないだろうな、というのは、すでに健康保険の改正案がこの間の国会に出されたときに、再診料の問題が出てくる、あるいは保険の料金引き上げの問題が出てくる、ああいう形においてもしもこのスライド問題が考えられるとするならば、冗談じゃありませんということを国民は言わざるを得ないと思う。だから、そういう方向でないということを大臣は考えておられるのかどうか、これが第二点。  第三番目に、先ほどもここで出た話ですが、国民の総医療費の中に占めるところの薬代の位置が四二%から占めてきている。非常に高いじゃないか。ところがその薬代という中には流通機構面を通ずるところのあれの問題もあるでしょう。しかし、もう一つ言うならば、一番最初に製造するところの利益金が非常に大きいじゃないかということは国民のみんなが言っています。それはいろいろな資料によっても言えることです。それはたとえば武田薬品が四十五年度に一千七百十億円売り上げて、税引きの利益が百三十四億円もある。あるいは過去五年間に売り上げ高で一・八倍になっているのに、税引き利益で二・三倍にも上がっている。また国際的に見ても、医療費に占める位置は日本の薬代は西ドイツの二・五倍だ、イギリスの四・五倍だ。いろいろなところから見ても、日本の製薬独占会社の医療費全体に占めている位置が非常に高いという疑惑をみんなが持っているのです。そこで外国の場合には、製造原価との関連性を見ないことにはその薬をつくるということに対して許可をしないということまで生まれている。ほんとうに大臣が財政問題を抜きにして保険問題は考えられないとするならば、そこの独占製薬におけるところの利益率、これをもっと押えるということの方法を考えて財政問題を考えられるかどうか。私はこの三つの問題について大臣に最後に聞いて終わりたいと思います。
  146. 斎藤昇

    ○斎藤国務大臣 診療報酬を引き上げて、そして国民の負担にならないように、これは私は無理だと思うのであります。それは税金でやるか保険料でやるか、とにかくそれがなければできないわけだと思います。ただ一つありますのは、いわゆる乱療乱診といわれている点、これを私は真剣にやりたいと思いますが、しかし、それをやることによって、いまおっしゃるような診療報酬が低過ぎるということをカバーできるかというと、できないだろう。結論からいいますと、税金の形か保険料の形か、それはやはり覚悟しなければ——いずれにしても国民の負担であります。何にもなしに診療費を上げてだれが払うかということになるわけでありますから、それはやむを得ない、かように考えております。しかし、それは国民の健康を守り、そして命を全うするという意味からでありますから、必要なものは忍んでもらわなければなるまいか、かように考えております。  それから医療費と薬との割合の点でありますが、これは武見会長も言っておられるように、薬品の値段は大体国際価格で、日本の薬はそう高いとは思わない、こう言っておられますが、私も日本の薬は外国製品に比べて非常に高いとは思っておりません。これは自由価格で大体きまっていくわけであり、また薬品を許す際にはその点も見ているわけでありますから、いま独占価格であるかどうかという点は、私は独占価格とは思っておりません。今日のいわゆる流通経済のもとにおいて決定せられておる価格だ、かように思っております。  ただ、薬の使用度が高いということは、これは武見会長のあれによれば、本来の技術料その他が低過ぎる。その点もありましょう。ただそれだけであるか、やはり薬の使い方がひどいのか、これは私は厚生省の関係当局にも命じまして、各国で一人当たり使う薬の量というものをさらに検討するように言っておりますが、大まかに言って、各国で生産をし、そして輸出輸入を差し引いた分量、それを国民一人当たりに割ってみると日本とあまり違わない、今日はそういう計算になっておりますが、はたしてそうなのか、もう一度洗い直してくれ、こう言っておるわけであります。
  147. 寺前巖

    ○寺前委員 反論されましたので、私は一言だけ言って終わりたいと思います。  日本銀行の主要企業経営分析を見ますと、製造業において、ここ十年間の売り上げ高、利益率というのは六%前後です。化学工業において七%前後です。ところが医薬品工業については、大手十二社、その状況を見ていると二二%から一五%前後で、ここ十年間ずっと売り上げ高、利益率が上がっておるのです。こういうことを見たら、いかに医薬品工業関係の利益が高いか、ここにメスを入れる必要がある。それは総医療費の中に占める薬の位置が非常に高いという問題とも関連性があるだけに、私はどうしてもここにメスを入れることが政府にとって必要だということをあえて提起したいと思います。  それからもう一つは、先ほど提起しました問題で、診療報酬を引き上げるとその財源が要る。それは税金でするか、それとも個人に持ってもらうかということだと言われましたけれども、今日、いまの保険機構の中において赤字になっておるのは政府管掌の健康保険でしょう。そうすると、この政府管掌の健康保険を見た場合に、やはり国の負担において責任を果たすというのが今日の処置でなければならぬ。健康保険全体の問題ではないと思います。ここが一番の赤字の問題点なんだから、それは今日保険にかかる人がこの十年間に二倍になってきておるという状態を見ても、それはやはり全体の労働強化との関連性においてこういう悲惨な姿が生まれてきておるのだから、医療というのは国民全体が共有するところの性質のものだから、私は税金で支払ってしかるべきだというふうに思うわけです。  そういう点において、大臣が緊急是正に即刻取り組んでいただくということと、その財源については国の負担においてやってもらうということと、それから薬代についてメスを入れてもらうということを要求して終わりたいと思います。
  148. 森山欽司

    森山委員長 次回は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十八分散会