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中村説明員 お手元に配付申し上げております「
参議院議員通常選挙結果調」によりまして、ごく簡単に、ただいま
大臣から申し上げました御
報告の補足を申し上げます。
二ページを
お開きをいただきますと、今回の第九回
参議院議員通常選挙の
投票率が、
都道府県別に
掲記をされておるところでございます。今回は五九・二%、男性と
女性の差がほとんどない、わずかばかり
女性が上回るという結果になっております。
投票率のいいところは、一番いいのは
島根県でありますが、
投票率は七八・一四%ということで、三年前よりはかなり低下をしておりますし、つい二カ月前にありました
知事選挙が九〇%近くでありましたのと
比較をいたしますと、
島根県の場合におきましても、
投票率は低いほうでございました。なお、七〇%台の
投票率を示しましたのは
島根、鳥取、福島、高知、山形といった五つの県にとどまりました。また、
投票率が最も悪うございましたのは千葉県でございまして五〇・五九%、わずかに五〇%の台に乗ったという
程度・であります。その他神奈川、埼玉といったところが五一%そこそこということでございます。また、愛知県も五一%ということで、
大都市の
周辺県あるいは
大都市をかかえた県が、
比較的
投票率が悪いという形になっておるわけでございます。
それから次に一〇ページを
お開きいただきますと、
大臣から
報告のありましたところでありますが、
党派別の
得票数の推移があがっておるところでございまして、今回の
得票は
党派別に見ますと、「計」の欄の「今回」という欄にございますように、自民四四・四、社会二一・三、公明一四・一、民社六・一、共産八・一というような形になっておりまして、「差引」の欄にございますように、結局
共産党だけが
前回よりも
得票数から見ますと上回っておりまして、他の
党派は、
社会党は率としてはかなり上がっておりますが、
得票数におきましては
前回を若干下回ったというような姿になっておるわけでございます。
それから
地方区につきましては、一四ページにその数値が出ておるところでございますが、
傾向としてはほぼ同様でございます。
それから一七ページを
お開きをいただきますと、今回の
全国区
候補者の
当選点についての若干の特色が見られるわけでありますが、五十番目に
当選をされましたのは立川談志さん、
本名松岡克由さんでありますが、この方の
得票が四十四万三千八百五十四票でありまして、三年前の五十位がたしか四十七万七千票であったのでありますから、むしろ今回は
当選点が下がったわけであります。さらに、その後の繰り上げ補充ということで、四十万八千の方が
当選人になるという
事態が起きたところでありました。
最後に、
数字の
説明といたしましては、三五ページに
全国区
選挙についての
無効投票の
状況を
掲記をいたしておりますので、その点だけ御
説明を申し上げますと、今回の
投票にあたりまして、
全国区
選挙での
有効投票の総数は三千九百九十三万票でありまして、案分の
関係等でどの
候補にも属さないというものが幾らかありましたほか、
無効投票がここにあがっておりますように二百二十二万票ございました。これは三五ページの一番下の
無効投票率という欄に出ておりますように五・二七%に当たります。
前回よりも
無効投票率は若干上回った形に
全国区は出ております。しかし
地方区につきましては、一番
最後の四八ページでありますが、今回は
無効投票率は四・三四%でございまして、これは
前回よりも若干減っておるという姿になっております。いずれにしても、
無効投票は、ほかの
選挙に比べますと、
参議院選挙はたいへん多いわけでございまして、その
理由はと申しますか、
無効投票になる
原因は、約半分
程度が
候補者でない者の氏名を書いた票がある。そのために、
無効投票になったというのが約半分という形でございまして、普通の
選挙は
無効投票は二%台ということでございます。
以上、
数字の
説明はこの
程度にさせていただきまして、今回の
選挙管理をめぐりまして、特に特異でありました
事件一点だけについて、簡単に御
報告を申し上げます。
それは、今回の
参議院全国区
選挙におきまして、
選挙公報をめぐりまして、あるいはお耳に入ったかと思いますが、いままでになかったまことにレアケースな
事案がございました。その
事情をここで申し上げたいと存じます。
今回、百六人
全国区に立
候補されましたが、九十九番目に受け付けました
候補者で
窪田志一という人がおりました。その人が、ここに実物を持っておるわけでありますが、この右側にございますような形の
政見を持ってまいりまして、これをこのまま
選挙公報に載っけてほしいということでありました。見ますと、まず
見出しからいわゆる
差別を
浮き彫りにするような
表現が使われております。そこで、私
どもこれを受けます際に、もとより私
どもは決して
候補者の方の
政見の
内容に立ち入ろう、チェックをしようというようなことはさらさら考えないところでございますが、こういうふうな
差別を
浮き彫りになさるような
表現をお使いになりますと、非常に社会的に問題になるのではないでしょうか、したがって、この
表現をおとりにならないで、あなたの
政見が周知できるような御配慮がいただけないでしょうかということで、
候補者に対しまして、とくとくとお
話し合いをいたしました。
候補者の翻意を求めまして、実は十日間ほど
あとの段階では、ほとんど連日
候補者のお宅にまで参上をして、夜間にかけてお
話し合いをいたしたところでありました。しかし、
候補者は、やはりこの
表現が自分としては大事なんだという主張を変えませんでした。ところで、次第に時刻がたってまいりまして、
公報を
全国七千百万人の
有権者の
方々に、各
世帯に配らなければいけないということになりましたので、
説得につとめるかたわら、
都道府県にこの右のほうの原本を送りまして、
都道府県でそれぞれ
くじをして、
選挙公報の印刷に入る段取りを進めることにいたしました。その過程でこういう
差別、
賤称用語があるということが、やはり
関係者の間にもおのずからわかることになりまして、
関係者の間では、この
用語というのは、
関係者にとって単なる賤称というにはとどまらない。このことばだけをめぐって、
関係者にとっては、死を宣告されるよりももっともっと深刻な
事態が当然にあり得ることであるし、そういう受け取り方をせざるを得ないという声がだんだん強くなってまいりました。
そこで、私
どもといたしましては、これに対応をして、どうしたらいいか、
中央選挙管理会も異例に回数を重ねて
審議、討議をいたしたところでございました。もとより一番大事なことは、
選挙の際の言論は一〇〇%自由であるべきだ、いやしくも
選挙管理機関が、検閲的なにおいのするようなことをやるべきではないということは、
基本的なたてまえと存じてはおりました。そういう
意味で、決して
窪田候補に対して、職権で落とすというようなことで臨むような
姿勢はとらないで、御本人の納得の得られますように相つとめた次第でありました。しかし、いずれにしても、この
表現はいわゆるヒューマニティーと申しますか、
ナショナルマインドから見まして、非常に不適切な
用語であるということも事実であります。それのみならず、やはりこの
用語が使われておることによりまして、円滑に
選挙公報の
配布をするということはとうてい不可能であるということが、幾つもの
府県から次々と
中央選挙管理会に申し入れがあるという
事態になりました。
選挙公報は全
世帯に配られて、
候補者の
政見の周知の手段としては、現在のところやはり最も大切なものでございます。この
公報が配られないということになりますと、少なくとも
窪田さんを除いた百五人の
候補者の
選挙運動、あるいはそれよりももっと早い時期からお始めになった
政治活動、そういうばく大なエネルギーが、少なくとも部分的であるにしろすっ飛んで、
選挙無効ということになりかねないという
事態が考えられるところでありました。なお
候補者だけ、
関係者だけでなしに、多くの
有権者が加わって六月二十七日迎えるその
選挙が、みすみす
選挙無効の
原因をつくるということになったのでは、これは
窪田さんの
表現の自由を守ることももとより大事でありますけれ
ども、しかし全体の
選挙を円滑にとり行なうということをいろいろと
比較検討をして思いめぐらしますと、この際やはりそういう極端な
賤称用語だけは除かしていただく。この左側でございますが、極端な
賎称用語だけは除かしていただくということを、
中央選挙管理会の
責任で、そういう問題が予想され、あるいは現実化しておる
府県についてはとらざるを得ないと
判断をいたしたところであります。
そういう経緯をたどりまして、最終的に二十六
都府県につきましては、この左にありますように、
候補者が出しましたもののうち三カ所、
見出しの部分、それから次の
一つの
フレーズとそれからその次の
フレーズの二字を落としまして
配布することを
中央選挙管理会の
責任で認めました。残りの二十県につきましてはこっちのほうの、
候補者が前に出した
内容で
配布をいたすことにいたしたのでございます。こういう形でございまして、私
どもといたしましては、
公職選挙法上は確かに明文の規定のないところでありましたが、事後の
裁判救済というような手続をもってしては、とても回復することができない著しい障害がある。しかも守るべき公共の福祉ということをいろいろ
比較検討してみますと、この際円滑に
公報を
配布をし、
選挙無効の
原因をつくらないで、今回の
参議院選挙を、とにもかくにも円滑にとり行なうということが大切なのではないだろうかと
判断をいたしてとった次第なのでございます。しかしながら、もとよりこの
措置につきましては、
窪田候補におきましては、
中央選管の
措置に異議を唱えておりますので、最終的には、あるいは法廷の
判断を仰がざるを得ないところかと思います。
なお、二十県につきましては原文のまま出しました。これは申し上げましたように、
中央選挙管理会として検閲的にすぽっと落とすということではなしに、
手順に
手順を重ねて
候補者の
説得につとめましたわけであります。したがって、技術的に円滑に
公報を所定の期日までに配るには、これを刷り直すとかいうのに限度がございました。そういう面もありまして二十県は従来のまま、二十六
都府県は削除したものという形になったのでございますけれ
ども、考え方の
基本は、決して検閲をしたという
意味合いでないことを
最後に申し上げまして、今回の特異なる
選挙公報事件の御
報告にいたしたいと存じます。