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1971-07-20 第66回国会 衆議院 公害対策特別委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年七月二十日(火曜日)     午後三時十二分開議  出席委員    委員長 小林信一君    理事 始関 伊平君 理事 橋本龍太郎君    理事 八田 貞義君 理事 藤波 孝生君    理事 山本 幸雄君 理事 岡本 富夫君    理事 寒川 喜一君       葉梨 信行君    浜田 幸一君       阿部未喜男君    加藤 清二君       古寺  宏君    寺前  巖君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大石 武一君  出席政府委員         環境政務次官  小澤 太郎君  委員外出席者         中央公害審査委         員会事務局参事         官       小熊 鐵雄君         環境庁企画調整         局長      船後 正道君         環境庁水質保全         局長      岡安  誠君         法務省民事局参         事官      宮脇 幸彦君         通商産業省公害         保安局参事官  森口 八郎君         参  考  人         (日本鉄道建設         公団理事)   北原 正一君     ————————————— 委員の異動 七月十九日  辞任         補欠選任   古川 丈吉君     八田 貞義君 同月二十日  辞任         補欠選任   米原  昶君     寺前  巖君 同日  理事古川丈吉君同月十九日委員辞任につき、そ  の補欠として八田貞義君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  参考人出頭要求に関する件  公害対策に関する件(水質汚濁対策等)      ————◇—————
  2. 小林信一

    小林委員長 これより会議を開きます。  理事補欠選任の件についておはかりいたします。  理事古川丈吉君が昨十九日委員辞任され、理事が一名欠員となっております。この際、その補欠選任を行ないたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 小林信一

    小林委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  それでは、八田貞義君を理事に指名いたします。      ————◇—————
  4. 小林信一

    小林委員長 この際、大石環境庁長官から発言を求められておりますので、これを許します。大石環境庁長官
  5. 大石武一

    大石国務大臣 このたび環境庁長官に就任いたしました大石武一でございます。どうぞ今後ともよろしくひとつ御指導、御鞭撻を賜わりますようにお願いを申し上げます。  第六十六国会における衆議院公害対策特別委員会における審議に先立ちまして、就任のごあいさつを申し上げますとともに、環境行政に関し所信一端を申し述べたいと存じます。  わが国経済の急速な拡大と、都市化の進行の過程で生じつつある公害と自然の破壊が、今日ほど国民の注視の的となっているときはありません。このことは、ひとりわが国のみならず、世界各国においても同様でありまして、国際連合をはじめとする各種の国際機関においても、環境問題を全地球的見地から取り上げ、対処していこうとしているのであります。まさにこのような時期に、皆さま方の御尽力によりまして環境庁設置され、環境行政が新しい段階を迎えることとなりましたことをまず御報告申し上げますことは、私の深く喜びとするところであります。新環境庁の前途には、早急に取り組むべき課題が山積しておりますが、私は、当面次の事項に重点を置き、行政運営を進めてまいる所存であります。  第一は、公害行政の一元化であります。ここ数年来公害行政は急速な進展を示してきたのでありますが、従来ややもすれば責任の所在が不明確となり、その実施面でも統一性を欠き、不徹底となる面があったことはいなめないところであります。今回、環境庁設置により公害行政が一元化され、従来にも増して強力な公害行政を展開する基礎ができたわけでありまして、私といたしましても、早急にその実をあげ、国民の期待にこたえてまいる覚悟であります。  また、下水道廃棄物処理施設その他の公害防止施設整備等関係省庁の所管として残されている行政につきましても、環境庁予算面調整をも含む強力な総合調整権限を持っているのでありまして、各省庁一体となって総合的な公害行政実施し得るよう、この調整権限を活用してまいる所存であります。  第二に、環境保全見地からは、自然環境保護し、その整備をはかることが重要な課題であります。美しい国土、豊かな自然環境を確保し、これを長く子孫に伝えていくことは、われわれの重要な責務であると考えます。従来、自然公園や林野については各般の施策が進められてきたのでありますが、自然環境全体を対象とした総合行政は、これまで確立されていなかったのであります。環境庁におきましては、環境行政を総合的に進めるという見地から、自然環境を全体としてとらえ、その保護及び整備をはかるための基本施策をすみやかに樹立し、豊かで快適な生活環境をつくり出すべくつとめるとともに、国民自然保護思想の普及をはかってまいりたいと考えております。また、従来の自然公園行政鳥獣保護行政につきましては、環境保全総合的見地から、これまでにも増して拡充強化してまいる所存であります。  第三に、環境保全に関する長期ビジョンについてであります。われわれを取り巻く環境は、一たびこれが破壊されると、再びこれをもとの姿に戻すことはきわめて困難であって、公害自然破壊が生じてからこれに対処するのでは、すでにおそ過ぎるのであります。したがって、今後の環境行政実施にあたっては、公害自然破壊事後的解決に終わることなく、これらを未然に予防すべく、迅速かつ適切な措置を講ずることが必要であると考えます。このため、その指針となるべき将来の日本列島環境をいかに改善すべきかという、環境面から見た長期ビジョンを検討してまいる所存であります。  第四に、公害関係法施行であります。公害対策のための法制につきましては、皆さま方の御協力により、先般来の国会で体系的な整備を見たところでありますが、私といたしましては、地方公共団体との緊密な連携のもとに、その適切かつ円滑な施行全力を注いでまいる所存であります。  また公害にかかる事業者民事責任につきましては、無過失責任制度立法化を検討しているところでありまして、次の通常国会には法案を提出いたす考えであります。  第五に、不幸にして公害被害を受けられた方々の救済には、万全の措置を講じてまいりたいと考えます。現在、公害病認定患者に対しましては、医療費のほか、医療手当介護手当の支給が行なわれており、その内容も逐次改善されてきたところでありますが、今後ともこれら施策の改善につとめてまいる所存であります。  第六に、公害に対する研究体制等整備であります。公害に関する研究を進め、情報集約化をはかることは、科学的行政たる環境行政基礎であると考えます。環境庁におきましては、国立公害研究所公害研修所設置を急ぐとともに、他省庁試験研究機能についても、必要に応じその総合調整を行ない、公害に対する効果的な研究体制整備をはかってまいる所存であります。  また、当面、各方面から対策を迫られております光化学スモッグ、PCB、重金属汚染等については、その発生機序、人体に与える影響等について未解明の分野もあり、引き続きその調査研究を進め、早急に効果的対策を進めてまいる所存であります。  第七に、国際協力推進であります。環境問題は、いまや国際的視野から取り組むべき課題となっていることに留意し、世界各国国際機関との情報交換技術協力充実につとめるなど、国際協力推進をはかってまいりたいと考えます。  以上、所信一端を申し述べましたが、これら諸課題を達成するためには、予算面におきましても、また制度面におきましても、環境行政の一そうの充実をはかる必要があると考えます。私は、健康で文化的な国民生活を確保するという見地に立ち、環境行政基礎を築くため全力を傾けてまいる所存であります。皆さま方の格段の御協力お願い申し上げる次第でございます。(拍手
  6. 小林信一

    小林委員長 次に、小澤環境政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。小澤環境政務次官
  7. 小澤太郎

    小澤政府委員 今回、環境政務次官を命ぜられまして、いろいろと御指導いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  8. 小林信一

    小林委員長 この際、おはかりいたします。  公害対策に関する件について、本日参考人として日本鉄道建設公団理事北原正一君に出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 小林信一

    小林委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。     —————————————
  10. 小林信一

    小林委員長 公害対策に関する件について調査調めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古寺宏君。
  11. 古寺宏

    古寺委員 去る五月の委員会におきましても質問いたしましたが、青函トンネル建設工事に伴いまして、坑内排水による公害が非常に発生いたしております。これについて、その後、建設公団においてはどういうような調査をし、どういう対策を考えていらっしゃるか、まず承りたいと思います。
  12. 北原正一

    北原参考人 ただいまの御質問は、青函トンネル排水につきまして、どういうような調査をし、対策を講ずるかというようなことと伺いましたが、そのことについて申し上げます。  青函トンネル排水が付近の漁業に悪影響を及ぼしてはいけないという観点から、青函トンネル調査坑を掘さくし始めました昭和三十九年から調査をしようということで、北大水産学部のほうにお願いして、もろもろの調査をやるように計画いたしました。多少問題がございまして、正式に北大水産学部お願いいたしましたのは昭和四十一年五月からでございます。  北大水産学部におかれましては、懸濁物の調査水質分析調査海藻調査底質及び海底生物調査、漁具、漁法、漁獲物調査というふうに、五つの班を編成され、それぞれを御担当されまして、調査をしてまいりました。たまたま——たまたまといいますか、昭和四十六年から工事線になりますので、本工事が始まることになり、いままで、昭和四十五年までに調査いたしましたものを調査報告書としてこういうような本をつくってくださいまして、報告書ができ上がりました。この報告書は、北海道庁、青森県庁並びに地元の町村及び漁業組合のほうにも差し上げまして、調査した結果を報告いたしております。この報告は、学者の方々が科学的に調査するということがすべての根底であり、これに基づきまして、もし被害があるとわかったならば、可及的すみやかに対策を講じて被害を起こさないようにするということが一番の目的でございます。  簡単にこの報告書のことを申し上げますと、まず、トンネルから出てまいりますものは、岩石を構成する鉱物質の懸濁物が多いということでございます。これは無機質のものが大部分でございまして、いわゆるカドミウムその他の有害物質というのは、一応ただいまのところ認められておりません。それらの懸濁物を沈でんさせるために沈でん池を設けまして、そこで沈でんさせて上澄みを放流するという方法をいままでとっておりました。しかし、その後、トンネル進機というような機械を入れるに至りまして非常にこまかい石粉が発生するようになりまして、その沈でん池だけでは不十分であるという事態が起きてまいりました。そこで、地元の人々も、やはり濁るというようなことをわれわれのほうへ言ってこられまして、われわれもまた、機械を入れましてから非常にこまかいものが出てくるので、沈でんしきれないで海に排出するという傾向がわかりましたので、今度は沈でん池だけではなくて、強制的に沈でんさせるシックナーという強制沈でん装置を設けまして、それで沈でんいたしまして、ただいまのところでは、SS濃度という一つ基準で一〇〇以下に押えているという現状でございます。いま申し上げましたのは、北海道吉岡地区のことでございます。  竜飛地区のほうでは、やはり同様な調査をしてまいったのでございますが、まだ岩粉を発生するトンネルボーリング・マシンを入れておりませんので、沈でん池だけでよかろうと思ってやっておったのでございますが、いよいよ本工も間近になり、大きな工事量が予想されるに至りましたので、これだけではいけないのではないかということで、ただいまシックナーのような強制沈でん装置を設けるべきではないかということで検討しており、方針がきまり次第すみやかにそれをつくる、来年の四月ぐらいまでにはつくるという方針でやっております。このことにつきましては、先般の古寺先生の御質問に対して、うちの総裁がお答えしましたとおりでございます。  それで、これは無機質の懸濁物の沈でんのことではございますが、そのほかに化学的な成分、先ほど申し上げましたように、水質分析あるいは海藻調査海底及び海底生物調査というようなことを行なってまいりまして、水質につきましては、セメントけが若干ございますので、PHが若干高いというような点はございますが、一応吉岡側のほうでは、川の水とまざって、海のところへ出るときには非常に希釈されるということでございます。竜飛のほうは、出てくるところに若干PHが濃い現象が起きておりますが、非常に海流が速うございまして、拡散する速度も速いということでございます。  それから、海藻アワビサザエ等の生育につきましても、懸濁物の影響がどのように出るかというようなことを北大水産学部でいろいろと実験をしていただいておりますので、そういう結果が出ております。しかし、海底生成物等につきましてはきわめて資料が少ないので、われわれの出した排水が非常に大きな害をなしておるかなしておらないかにつきましては、もう少し検討をしないと断定的なことは出ないのでございますが、わずかな数量のことではございますが、いろいろと報告書に載っております。  対策といたしましては、先ほど申し上げましたように、こういうことがわかってきまして、数量たくさんの排水になりますと被害が出てくる可能性もございますので、シックナーその他の構造物をつくって被害のないようにしたいというふうに考えております。  一応これで御説明を終わらせていただきます。
  13. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、もう一回お尋ねしますが、漁業被害というものについてはまだはっきり掌握しておらない、そういう関係で、現在はまだその補償問題その他については考えていない、こういうふうに承ってよろしゅうございますか。
  14. 北原正一

    北原参考人 この被害ということにつきましては、算定が科学的でございませんと非常にわかりにくいわけなんでございますが、これにつきましてもよく調査をいたしまして、はっきりと被害があるということがわかりましたときには、それなりの補償その他のことを考えたいと思っております。これにつきましても、特に竜飛側につきましては調査が不十分な点もございますので、ことしから来年にかけましてよく調査をして対策を講じたいというふうに考えております。
  15. 古寺宏

    古寺委員 そうしますと、いままで現地漁業協同組合からおたくのほうに、漁業被害が発生しておるから調査をしてもらいたいとか補償してもらいたいということを何べんも陳情しておりますね。そういうことに対してはいままでどうして放置しておったんですか。北大水産学部調査によってはっきりするまで待ってくれといままで延ばしに延ばしてきて、これからさらにまた調査を始めるといったら、一体いつになったらわかるのですか。
  16. 北原正一

    北原参考人 この被害につきましては、私どもこういうことで北大お願いをして調査をしております、その結果については御説明いたしますというふうに申し上げておりますが、具体的に、こういう被害ですぐ補償しろというふうなお話にはまだなっておりませんし、現地のほうではいろいろとそういうことの折衝といいますかお話をして、よく検討いたしましょうということになっておりますので、決して遊んでほったらかしたということではなくて、これからも可及的すみやかにその実態を相互に調査し、確認し合って処置をするということでございます。
  17. 古寺宏

    古寺委員 それでは、時間がないので簡単に御答弁願いますが、最初にこの工事を始める前に、なぜ漁業協同組合了解を得ないで工事をお始めになったかということが一つ。  それから、現在の坑内排水については、PH並びにSSについてはどういう目標海岸排水をなすっていらっしゃるのか、この二点についてまず承りたいと思います。
  18. 北原正一

    北原参考人 地元漁業組合了解がなくて始めたというお話でございますが、私どもは、地元三厩村、それから竜飛漁業組合、それから三厩漁業組合には一応連絡したというふうに考えております。比較的竜飛漁業組合のほうが近いものでございますから、ものによっては竜飛だけで、三厩のほうに御連絡しなかったことが、多少失策ではございますけれどもあったかとは思いますけれども、一応基本的には両方並びに三厩村には御了解を得てやっておると思っておりますし、事実したはずでございます。  それから、PHと懸濁物につきましては、いままで強い基準といいますか、われわれとしてもどのくらいのものが出るかということがよくわかりませんでしたので、一応こういうことでやりますとこういうことになる、また、それがどれくらいの被害になるかということを科学的に調べなければいけないということでやってまいりまして、その後だんだんいろんな基準等が出てまいりましたのですが、その基準以下であるようにこれからそれを処理していくという方針でやっておるわけでございます。
  19. 古寺宏

    古寺委員 現在の目標は幾らなんですか。
  20. 北原正一

    北原参考人 現在の目標は、SSにいたしますと大体一〇〇ぐらいを目標にしたいと思っております。一〇〇以下にしたいと思っております。それから、PHのほうは基準がございます。五・六ないし八・六でございますか、そういう基準に合格するように持っていきたいと考えております。
  21. 古寺宏

    古寺委員 いまのお話は、現地実情を知ってお話しになっているのかどうかわかりませんが、私は今月の十日に現地へ行ってまいりました。その場合には、竜飛漁業協同組合方々も、また三厩漁業協同組合方々も、おたくのほうから全然何もお話がなくて工事が進められてきた、まずこういうお話を承っております。  それから、海底調査をいたしました。サザエですとかアワビですとか、残骸がたくさん累積されて、しかもその貝がらというものは古いものじゃなくて、最近死滅した貝がらでございます。また、海草も非常に伸びが悪くなって、ほとんど生長ができない、こういう実態になっておるわけですね。  当日は何か事業所のほうでは、私が水を採取するものですから、きれいな水を流しなさいという指令が出たそうです。そのきれいな水をとってまいりました。それで、これは一応分析の中間の報告でございますが、沈でん池流入地点でもってPHが八・五七、SSが二二八です。それから、海岸への排水地点においては、PHが八・六〇、SSが二二、こういうふうになっているわけです。ここで私が申し上げたいのは、この沈でん池流入地点と、それから海岸への排水地点SSがほとんど変わりがないということなんです。実際にこの沈でん池の中へ棒を入れて、どういうふうになっているか調べてみました。そうしますと、二メートルぐらいの沈でん池の中で一・八メートルぐらいの懸濁物が累積されておるわけです。これでは全然沈でん池としての機能を発揮していないわけです。こういうような実情でございますので、当然この百メートル四方ぐらいは海が濁ってしまって何にも見えない、透明度ゼロというような状態です。  こういうような実情になっているわけなんですが、これに対して、いままで公団側地元漁民の訴えに対して何らこたえていなかった、こういうことで非常に不満を持っているわけです。北海道側は、いま御説明がありましたように、すでにシックナーをつくって、そしてPH六〇ぐらいですかに押えている、こういうふうなお話もありました。これでは青森県のほうの漁民はもう全部だめになってしまうわけなんですね。こういうことについて、一体公団側現地お話というものを、先日総裁はいままで全然知らなかった、一回も聞いたことがなかった、こういうようなお話がございましたが、函館の事務所でいままでこれをとめておったのじゃないか、こういうふうに思うのですが、その点はどうですか。
  22. 北原正一

    北原参考人 ただいまのお話でございますが、先生がおいでくださいますのを、われわれも現地でもお待ちしておりましたのですが、手違いがございまして、われわれが御案内できなくて、先生地元の一部の方が現地をごらんになったので、その点、われわれ非常に残念だと思います。しかし仰せの、沈でん池にどろがたまっていたということは、あそこの沈でん池は交代に掃除をすることになっておりまして、たまってきますとそれを掃除をするということになっておりますのですが、その辺、早く掃除をすべきであったのを若干おくれていたためにおっしゃったようなことがあったかと思いますが、これはわれわれが若干まずかったかもしれません。  それからPHのことにつきましては、一応八・六くらいですとまあまあというところではないかと思いますが、今後その点につきましては、十分きれいにやっていくつもりでございます。  それから、現地のほうとのいろいろな被害お話ということでございますが、私、つい最近まで函館におりまして責任者でございましたが、そういう地元の方からのお話があれば誠心誠意それとお話し合いをしておるわけでございます。事実、そういうことがありましたときには誠心誠意やっております。先生はそれをやっておらないとおっしゃいますけれども現地のほうではやっておるつもりでございます。その点、不行き届きのところがあったかもしれませんが、これからも誠意をもってお話し合いはしていきたいと思っております。
  23. 古寺宏

    古寺委員 御答弁を承っておりますと、誠心誠意やってくださったようなお話でございますが、この前に地質のボーリングをやった場合にも、現地では三千万円くらいの被害を受けて、そして補償問題が起きておりますですね。その場合には、こうりに三つも四つも書類をつくってきなさいと言われて、村の村長さんをはじめ漁業協同組合の役員の皆さんが、なけなしの金をはたいて何べんも陳情して、いただいたお金が百五十万円、そのために旅費その他が全部赤字になった、こういうようなお話を承っております。きょうのあなたがその当時の担当者でなかったかと思うのでございます。それと同時に、竜飛簡易水道があったわけですね。その簡易水道も水が全然飲めなくなりました。その水が飲めなくなったので、今度村のほうの水道から水をもらわぬといかぬ。百万円お金がかかる。ところがこれも全然補償しておりません。  こういうふうに過去のいろいろな経過を振り返ってみても、また現在起きておる漁業被害に対しても全然誠意が認められない、こういうふうに私は感ずるのでございますが、こういう点について今後どういうふうにやるのですか。シックナーも来年の四月までにはつくる、こういうようなお話でございますが、そういたしますと、現在のSSで来年までずっと排水を続けるわけでございますか。
  24. 北原正一

    北原参考人 いま補償のことをいろいろおっしゃいましたのですが、実は、そのお話は、公団の発足します昭和三十九年よりかなり前のお話であったようでございまして、いま一生懸命それを調べておりますが、この間お話がありましてからちょっとまだ時間がなくて徹底的に調べかねております。その後、海中タワーを建てまして、ボーリングをするということではちょっとあれですが、三百万円近くの御請求がありまして、竜飛、吉岡等でやっておりまして御不便をおかけしたということで、お見舞い金として二十万円ずつお払いしておるという実例はございます。  それから簡易水道等につきましては、そういうことは、実は多分、昭和二十何年かにボーリングをしましたところから湧水が出ておりまして、それの湧水をお使いになっておったことに関することかと思いますが、そういったことに対しては、私どもが沢のほうから引いておりました水その他につきまして地元のほうの方にお分けしてあげたり、あるいはその補償が若干あったかと思いますが、水道補償もたしか解決したというふうに考えております。  それからその沈でんにつきましては、確かにおっしゃるように掃除のしかたが悪かったという点があるかと思いますので、この点は十分気をつけまして、事前に早く掃除をしてやっていきますとSS一〇〇、あるいは基準によりますと、最大二〇〇で、平均して一日に一五〇というようなことになっておりますので、その線は保てるようにやれるのではないかと思いますので、ぜひそういうふうにやっていきたいと考えております。
  25. 古寺宏

    古寺委員 どうも……。この北大の中間報告も、私読ましていただきました。これをごらんになってもわかるように、現在の沈でん池では入り口でもって高いときには、これは昭和四十三年ですか、二二九OPPM。これを現在の沈でん池でもって二週間に一ぺんくらい、あの規模でもってかりに入れかえしてやったところで、これは効果は望めないと思うのですね。こういうことはもうはっきりわかっているわけです。現地の実際にこの仕事をしていらっしゃる方々も、再三にわたってシックナーをつくってもらいたいということをお願いしている。ところが、なかなかつくってくれない、こういうふうにおっしゃっているわけなんです。そういう点からいっても、これは当然つくるべきものを、いままであなた方がつくらなかったのだ、こういうふうにしか理解できない。これは予算の関係ですか。どういう関係なんでしょう。はっきり言ってもらいたい。
  26. 北原正一

    北原参考人 予算の関係でもなく、私どもは必要なときにはつくろうという覚悟でおりましたが、多少、全部が全部きれいにということができなかったという点はあるかと思いますが、とにかく早くそういうすっきりした姿にしたいというふうな努力はしていくつもりでございます。
  27. 古寺宏

    古寺委員 どうもぴんとこないのですがね。いままでこの沈でん槽の掃除の場合も、これは請負工事でやっているのです。ですから、その工事を請け負った業者は、人が見ていないときにはなるべく金のかからぬように全部海へ捨てているわけです。同じことをやっているわけです。そういうことをいままで再三繰り返してきて、現地のほうからは早くそのシックナーをつくってもらいたい、こういうふうに要請がきているわけですね。そういうことは、函館にいらしたのですから、よくわかっているはずです。吉岡側だけがシックナーをつくってくれということを要望して、青森県側だけが要望しないということはあり得ない。そういうことはあなたが一番よく知っていらっしゃるわけです。なぜ、いままでこういう必要なものをつくらないのか、そこをお聞きしたい。
  28. 北原正一

    北原参考人 吉岡は、先ほど申し上げましたようにトンネルボーリング・マシンを入れまして、非常に粉の粒がこまかくなったということで、この沈でんが非常にむずかしいということがよくわかりました。そこでシックナーを入れる。それと、掘さくの量が非常に多くなって本工事が間近だということでやることにしたわけですが、竜飛のほうはトンネルボーリング・マシンがまだ入っておりませんので、それで順序とすると吉岡のほうが先で、それからすぐに竜飛のほうヘシックナーを入れてやる、こういうことでございましたが、シックナーというものも初めてやりましたので、とりあえず北海道をやってすぐに竜飛のほうをやろう、こういうことでやっておりましたので、多少おくれているということはあるかもしれませんが、早くやるつもりでおりますので、御了承願います。
  29. 古寺宏

    古寺委員 そこで、環境庁にお尋ねしたいのですが、今度の新しい水質汚濁防止法によってはこういうような汚濁をどういうふうに規制していくのか、お尋ねしたいと思います。
  30. 岡安誠

    ○岡安説明員 お答えいたします。  先般施行になりました水質汚濁防止法によりますと、特定施設を持っております事業場につきましては排水規制がかかるわけでございます。この事業場につきましては、現在バッチャープラントを持っているということでそれは特定施設に該当いたしますので、特定事業場として、それから公共水域に排出をする場合の規制がかかるということになります。具体的には、排水基準は、この場合十二月の二十五日以降規制をされるということになります。規制の基準といたしまして現在公表されておりますのは、PHで五・〇から九・〇の間、SSでは日間平均で一五〇、最大二〇〇ということになっております。私どもは、十二月の二十五日にこの具体的な排水基準がかかるまでの間、少なくともこの限度が守られるようにこの事業につきましては十分な指導をいたしたい、かように考えております。
  31. 古寺宏

    古寺委員 そこで、今後、いまは試験工でございますが、本工事が始まります。そういたしますというと、現在の何十倍の排水もあるし、また汚濁も考えられるわけでございますが、そういう場合には、水質汚濁防止法でいった場合にはどういうふうになりますか。
  32. 岡安誠

    ○岡安説明員 先ほど申し上げました排水基準は、たとえば、まだこの竜飛崎周辺の海域につきまして環境基準の類型の当てはめというのが行なわれておりませんけれども、その当てはめが行なわれますと、環境基準におきましてはPH八・三以下というような基準を守るということになるわけでございます。私どもは、先ほど申し上げました排水基準が守られれば、いま申し上げました環境基準も守り得るものというふうに考えておりますので、現に排水基準を守るようにそういうような指導をいたしております。
  33. 古寺宏

    古寺委員 そこで、公団側一つ承っておきたいのですが、今度本工事が始まります。そうしますというと、当然最初から規制がかかってくるわけでございますが、そういう点について、公団側が実際に現在そういう準備というものを進めているのかどうか。本工事が始まった場合にこういう規制が今度かかってまいります。その場合に、十分基準を下回るような排水ができるような準備を整えていらっしゃるのかどうかということが一つ。  それから、きょうは先日取った水の分析の一部しか私申し上げられませんが、今後、いろいろな分析の結果によっていろいろな結果が出てくると思いますが、その際に、もしも漁業被害というものがはっきりし、また有害物質が含まれているということがわかった場合には、公団側としてはどういうような措置をなさるお考えか、この二点だけを承って、きょうは終わりたいと思います。
  34. 北原正一

    北原参考人 本工が始まりまして大きな掘さくと排水が始まるまでには、法律にのっとったような基準内になるように整備をするということでいま準備をしております。  それから、被害があったときには補償なり何なりするかという御質問でございましたが、それは被害があれば当然すべきであると思います。
  35. 小林信一

    小林委員長 岡本富夫君。
  36. 岡本富夫

    ○岡本委員 最初に環境庁長官に……。  先ほど御決意を承りまして、環境保全あるいは公害対策について相当強い決意を披瀝されたように思いますけれども、これが後退をしないようにしていただきたい。特に、今度の環境庁長官はお医者さんであるということで、被害者の皆さんを救済するについては非常に適切な手を打っていただけるのじゃないかという期待をいたしておりますけれども、先般、長官が四日市においでになったときに、ぜんそくも心の持ち方である——これはおそらく、そういったぜんそくも気力をもってなおすのだから、ひとつしっかり気力をもって病気に負けないようにしなさいというような激励であったと思うのですけれども、それに対して、報道機関を見ましても、相当被害者の皆さんが反発をしている。患者の気持ちがわからないのか、こういうようなことをいった報道がありますけれども、私は、いままで被害者があまりにもしいたげられてきたその反発があったのではないか、こういうふうに思います。したがいまして、長官は、今度の環境庁ができまして——きのうの総理の答弁を聞いておりましても、環境庁ができたのだからという非常な強い決意を言っておりますので、絶対にいまの決意から後退しないようにひとつよろしくお願いしたいのですが、まずそれについての決意発表をいただきたい。
  37. 大石武一

    大石国務大臣 率直に申しまして、この環境庁の発足ほど最近におきまして国民から支持されたことはないという感じがいたしまして、この長官になりましてから約二週間でございますが、そのような国民の期待を十分にはだにしみて感じておるのでございまして、おっしゃるとおり、この公害行政というものはあくまでも日本国民の健康と生活環境を正しく守るものだという決意をもちまして、後退しないように、できるだけ強い力になって国民の味方になる決意で進んでまいる考えでございます。  なお、先ほどの四日市の問題でございますが、一部朝日新聞に伝えてありましたことは大体事実でございます。私は医者でありますので、いろいろとぜんそく——私自身も多少ぜんそくの経験がございます、持病でございます。そういうことで、ぜんそくにつきましてはいろいろな体験もございますので、医者としての親切な気持ちから、ちょっと取り違えていらっしゃるのでありますけれども、ぜんそくというものは、もちろんぜんそくを起こす原因があってぜんそくになるのであるけれども、精神的に非常に不安な状態があると、なおぜんそくを起こしやすい状態になる。決して精神的でぜんそくがなおるとは申しません。起こしやすい状態になるから、できるだけ明るい気持ちを持ってがんばってもらいたいということを申し上げてありますが、そのことが一部誤解されたようであります。私は、あの記事を見ましてほんとうにがく然といたしました。と申しますのは、いまあなたのおっしゃるように、公害に痛めつけられた患者には特殊な気持ちがあることが初めてわかりました。これは普通の医者の気持ちではわからない点だろうと思います。そういうことを十分に認識しましたので、今度はさらにその気持ちを十分に推測できるようなあたたかい気持ちで努力することが理解されたわけでございまして、私としても非常な一つの勉強になったと思う次第でございます。そんなことで、この公害対策全力をあげて、後退することのないように努力してまいる決意であります。
  38. 岡本富夫

    ○岡本委員 非常にかたい御決意を承りまして、心強く感じますけれども、そこで、きのう佐藤総理から、公害に対する企業の無過失損害賠償責任の法案を次国会には必ず出す、こういうような答弁がありました。そこで長官は、この硫黄酸化物あるいはこうした大気、複合汚染、こういうものも含めた法案を出すのかどうか、これについてもう一度お聞きしておきたい、こう思うのです。ということは、長官が四日市でそういうお話をされたという報道をちょっと新聞で見ました。ですから、この点も後退することのないようにひとつお願いしたいと思うのですが、その点はっきりしていただきたいと思います。
  39. 大石武一

    大石国務大臣 ただいまのお説のような方向でこの公害無過失損害賠償責任の制度をつくり上げる決意でございます。
  40. 岡本富夫

    ○岡本委員 これをなぜ私が念を押したかと申しますと、今度六月三十日の富山県のイタイイタイ病の判決がございました。これは御承知のように、水俣病あるいはまた阿賀野川の水銀中毒事件、こういうものが十五年くらいずっと係争しておりまして、そのときに、四十三年だったと思いますけれども、当時の厚生大臣の英断と申しますか世論と申しますか、当委員会でやかましく言いまして、イタイイタイ病が公害病の認定になった。それから世論が大きくなったわけでありますけれども、そして今度の第一審でああいう判決が出ましたが、四日市あるいはまた川崎、こういう方面の大気汚染によって被害を受けている皆さんが裁判しましても、この複合汚染を含めたところの損害賠償、要するに企業の賠償責任制度がはっきりしていませんと、こういった結果が出ないということでありますので、これは長官、もう相当いろいろな圧力もあろうと思うのです。先国会も、実はこの複合汚染が入ってないそういう法案でも、とうとう与党の自民党さんのえらい反対によって出なかったというような経過もございますので、長官ひとつ相当熱意をもって出してもらわぬと出てこない、こういうことでございますので、特に申し添えておきます。  そこで、六月三十日のイタイイタイ病の判決のあとで、当時の内田厚生大臣が非常に歓迎したような見解を発表されておるわけでありますけれども、長い間こうしてしいたげられた被害者の人たちに対するところの勝利という判決が出ましたが、これに対する長官の感触と申しますか御見解、こういうものはいかがであろうか、これをひとつお伺いしたいのですが、いかがでございましょうか。
  41. 大石武一

    大石国務大臣 イタイイタイ病の補償についての判決でございますが、これにつきましては私なりに意見も考え方もございます。しかしこの問題はなお係争中でございます。したがいまして、いま長官の立場としては軽々に私の意見を申し上げることはひとつ遠慮いたしたいと考えております。そういうことで御了承願います。
  42. 岡本富夫

    ○岡本委員 大体そういうようなお答えをなさるんじゃないかという予想をしておりましたので、私実はどんなことがあっても後退をしないようにという——きょうは時間が二時からの約束だったのですがおくれましたので、なるべくぼくは率直に、時間を短縮して聞いておるわけでありますけれども、内田厚生大臣は判決のあとでこういう発表をしておりますが、環境庁長官と内田厚生大臣はやはり同じ大臣だと思うのですが、あなたのほうだけがそれは私は差し控えるというようなことでは、第一回の環境庁長官になられて、これからほんとうに被害者を救済するのだという御決意と少しニュアンスが違うのじゃないか、こういうように思うのですが、勇断をもって、ひとつあなたの私見でも発表をされるのがあたりまえではないか、こういうように思うのですが、いかがですか。
  43. 大石武一

    大石国務大臣 裁判の判決についての論評は、考え方は判決が終わってから申し上げたいと思いますが、一般的に私の考えを少し申し上げておきたいと思います。  このような患者に対しては、どのような手当てをしても、どのようなことをしても完全に取り返しがつくものではないと思っております。したがいまして、できるだけのことをしてあげたい、そういうのが私の気待ちでございまして、そのような努力をいたす決意でございます。
  44. 岡本富夫

    ○岡本委員 長官、この被害者とそれから企業である加害者と申しますか——私、裁判のことは関係せずに、被告とか原告とかいうことは言いません。この被害者と加害者の立場というものは対等ではありません、御承知のように相手は大きな企業ですから。その被害者が、いろいろと裁判を起こすにつきましても費用もかかります。それからその原因調査、こういうものはできないのです。ありがたいことには、このイタイイタイ病だけは厚生省が当時、カドミウムによるところのイタイイタイ病は病気である、しかも三井以外の、要するに神岡鉱業所以外の原因者は見当たらないというような画期的な応援があったからこそこうした裁判ができたわけなんです。いわば厚生省としても非常に、当時通産省が相当抵抗しましたものを、私たち当委員会でやかましく言いまして、それで結局正当な判断を下していただいたわけでありますけれども、そういった面から考えましても、何と申しましても、この公正な裁判をされるためにはそういった所管庁の応援というものがなければできない。要するに、弱い者に対するところのそういった被害の究明、そういうものがあって初めて裁判ができるというような状態です。これはおわかりだと思うのですが、そういった面から考えましても——私は別に三井さんに控訴を取り下げよ、そんなことを言っておるのじゃありません、これは自由でありますからね。自由でありますけれども、事このイタイイタイ病の問題につきましては、長官もお考えいただきたいのは、このまま係争していきますと、患者の皆さんが、被害者の皆さんがもうみな死んでしまいます。途中で一人なくなっております。これは被害者の年も全部出ておりますが、そうして病気の姿、六カ所も八カ所も骨が折れて、背が一尺何ぼぐらいもう低くなっている、歩くのでもたいへんだ。私は小松みよさんに一番最初に会ったのは四十二年の春でしたが、その時分はまだ動けなかった。それがやっと当時のあそこの開業医の萩野さんによっていろいろ治療して、やっと歩けるようになった。そうして厚生省、通産省にまで陳情に来たわけですよ。そういった状態をお考えになったときに——まあ、裁判に対して口出しはできぬのはわかります。これは司法権に対しては介入できませんけれども、ある程度の見解というものは発表できるのじゃないか。いまのような、ただ、これからこういうことがないようにしますというようなことでは、非常にぼくはお粗末である、こういうように思うが、内田厚生大臣は、無過失賠償責任が必要である、あるいはまた、こうしてスピード裁判ができて非常によかったというような、被害者の立場に立った見解を発表されておりますが、それについてもう一ぺんひとつ……。
  45. 大石武一

    大石国務大臣 くどいようでありますけれども、やはり裁判と行政と立法とは全部独立しておりますので、ことに行政責任の長である者が、やはりいま多少でも、ある程度の発言をいたしますことは、裁判の公正に影響するかどうかわかりませんけれども、そのような気持ちがいたしますので、あえて私としては、あの裁判が正しかったとかなんとかいうことはいま申し上げられません。ただ、このような人々に対しまして、その補償の道が開けたような感じがいたします。これは非常に私としてはうれしいことでございます。ことにこの裁判の結果は、仮執行の宣言ということができまして、そう多い金額でもございませんでしょうけれども、裁判の結果の金額がとりあえずその患者に補償として与えられることになったわけでございまして、これについても私は非常に喜んでおる次第でございます。  この結果については私は何も申し上げませんが、先ほどお話がありました無過失損害賠償責任制度、これを何としてもこの次の国会に提出するということが、この問題についての私の考え方を示すものだというふうに御理解を賜わりたいと思うのでございます。
  46. 岡本富夫

    ○岡本委員 なかなかその立場上、お答えがしにくいと思いますけれども、いずれにしましても、三井さんは今度控訴された。これは自由でありますけれども、この環境保全に対する企業の意識革命、これは今後どうしても必要ではないかと私は思うのです。すでにスイスにおきましては、本年の六月に九〇%の国民投票を得て環境問題についての、何といいますか、憲法を改正しておるというような国際環境から見ましても、やはりわが国の企業意識というもの、企業の意識革命、これをやはり私は、環境庁長官として要望する、あるいはまた、そういうように指導していくというような状態でなければならないと思うのですが、その点についていかがですか。
  47. 大石武一

    大石国務大臣 御意見には全く同感でございます。私はあまり法律のことは詳しくわかりませんが、いままでの法律の考え方も、やはり時代の進展に伴って、人間尊重、人間を大事にするという考え方を中心にした法律の変わり方も必要じゃなかろうかということさえ考えておるのでございます。御意見には同感でございます。
  48. 岡本富夫

    ○岡本委員 そこで、時間があまりありませんが、紛争処理法ができました。これも御存じだと思うのですが、環境庁の所管になっておりますけれども、やはりこういった紛争処理について裁判までいく。裁判すればよろしいけれども、裁判までいくというのはたいへんでございます。そこで、これは山中長官からも答弁があって、裁定まで必要ではないかというような、裁定制度を設けなければならない時代に来たのではないかというようなお話もあったのですが、この紛争処理法に裁定制度を導入する考えは長官はないかどうか、これをひとつ率直にお答えを願いたいと思います。
  49. 大石武一

    大石国務大臣 それはまだ私の所管外でございます。総理府の所管でございますが、第三者として考えまして、御意見につきましては十分に検討して、前進してまいりたいと思っています。
  50. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは質問の要旨を提出しておかなかったのですけれども、先ほど、私一番最初に、環境庁長官としての御決意を承った。どうしても被害者救済、被害者の立場に立って今後環境問題を取り扱っていく、あるいは後代の人たちのためにもというような、われわれ野党三党が出した環境保全基本法に基づいたような御答弁があったわけですが、そうなりますと、裁判までいかない紛争の処理につきましても、やはり裁定まで持っていかないと、早く被害者を救済できない。御承知のように、イタイイタイ病なんかこれは三年何カ月、非常に早いほうです。ほかはもう、十五年、十六年あるいは二十年とやっておるわけですね。ですからこれを早く処理するために、紛争処理法というものをつくった。それに対する長官の御意見はいかがだ、こういうことをお聞きしているのですが、各省に一ぺん相談してみます、そんなことじゃ、あれですね。
  51. 小熊鐵雄

    ○小熊説明員 ただいまの先生の御質問でございますが、公害紛争処理法に関しましては、これに基づきまして中央公害審査委員会が設立されたわけでございます。この中央公害審査委員会は、事の性質といいますか、中立を保つという性質から、現在、総理府に所属いたしておるわけでございます。先生の御質問の裁定制度につきましては、昨年、公害紛争処理法が制定されましたときに、衆参両院からの附帯決議もございまして、今後調停の仕事を、進みぐあいを見ながら、裁定制度も取り入れるように考慮すべきである、こういう附帯決議がございまして、これに基づきまして私どももいろいろ検討しておる段階でございます。
  52. 大石武一

    大石国務大臣 いま、はなはだ恐縮でございますが、この答弁は、また次の委員会までにひとつ考えさせていただきたいと思います。
  53. 岡本富夫

    ○岡本委員 良識をもちましてお待ちいたします。  そこで最後に、時間があれですからもう一つ。長官が公害病の救済適用の拡大を発表されておりますけれども、まず、地域の拡大はどこどこをおやりになるか。それからもう一つは、やはり、公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法の目的の中に「大気の汚染又は水質の汚濁が生じたため、その影響による疾病が多発した場合」こういうふうにございますが、長官は専門家だからよくわかると思いますが、鼻炎ですね。これが私の調査によりますと非常に多いわけです。この鼻炎も、私は、兵庫県の尼崎市の公害指定地域と地域外、こういうふうに二つに分けて調査をしたわけでございます。指定地域内においては全体の二〇・二九%、約二〇%余りの学童が鼻炎になっている。それから、指定地域外のところ、空気のいいところ、ここの小学校では五・三二%しか鼻炎になっていない。こういうようなことを考えますと、やはりこの公害病の中に指定すべきではないかと思うのですが、その点と、拡大について、二つですね。
  54. 大石武一

    大石国務大臣 地域の拡大につきましては、望ましいことではありませんけれども、そのような必要の出そうなところにはやはり拡大してまいらなければならないと考えております。しかし、そのような事態が少なくなることを望んでおるわけでございます。  なお、鼻炎につきましては、これはいま公害病の中に入っておらないようでございます。いま私も実態がよくわかりませんし、どの程度の患者に苦痛を与えておるのか、どの程度の疾病なのか、私もよくわかりませんので、これはもう少し検討いたしまして、入れる必要のあるものは当然入れなければならぬと考えております。検討してみたいと思います。
  55. 岡本富夫

    ○岡本委員 これは検討ではなしに、私は調査した、あるいは耳鼻咽喉科のお医者さんに全部調べてもらったわけですから、ひとつ要求しておきます。  最後に、これは法務省あるいは環境庁長官からと両方からお聞きしたいのですが、イタイイタイ病の被害者の皆さんが、訴訟をしようと思いましても金がなかったわけですよ。それで、私、当時、当委員会でやかましゅう言いまして、そして厚生省からわずかなお見舞い金をいただいた。あるいは県からも少し出してもらった。そういうものがもととなって訴訟費用ができたわけです。そうでありませんと訴訟する金もなかった。刑事事件ですと国選の弁護士がつくわけです。民事事件ですとそれがないということになりますれば、特に公害病にかかった方々はとてもそんな費用が出てこないという場合において、この民事訴訟に対する費用、国選の弁護士をつけるとか、あるいはそういったことを将来に考える必要があろうと私は思うのですが、それについての行政的な判断をひとつお聞きしたい。
  56. 宮脇幸彦

    ○宮脇説明員 ただいまの御質問の点でございますが、民事訴訟におきますいろいろな費用は、結局勝った当事者が負けた当事者に対してすべて請求できるというたてまえになっておりまして、その点からすべての問題が派生的に生じてまいります。先生の仰せの弁護士報酬も、もちろん現行法では訴訟費用として取れるわけではございませんのですけれども、すでに公害を含めまして不法行為の訴訟におきましては、全部請求額に含めて加害者から取れるというたてまえになっております。  ところで、先生の仰せの点は、それでは訴訟費用を当事者が一時負担しなければならないじゃないかという点を御指摘になっているのじゃないかと思いますけれども、幸い民事訴訟法には「訴訟上ノ救助」という制度がありまして、国に納めるいろいろな裁判上の費用も一時支払いを猶予する、あるいは国が立てかえるということになっており、訴訟上の救助を受けました場合には、弁護士報酬も、弁護士さんに負担は願うわけでございますけれども、支払いを猶予されるということになっております。ところが、それではおそらく訴訟活動に不便ではないかという御質問が次に出てくるかと思いますけれども、それは現在法律的な面でははっきり出てまいりませんけれども、法律扶助という制度がございまして、国が補助金を数千万円出しまして、主として弁護士会でそれを運用していただき、勝訴の見込みのあります当事者に対しましては、しかるべく補助するというたてまえになっておるのでございます。  いま仰せのイタイイタイ病の事件につきましてはその訴訟上の救助が出なかったようでございますので、おそらく原告側におつきになった弁護士がお立てかえ願ったことになっておるのかもしれませんけれども、制度のたてまえはいまのようなことになっておりまして、公害被害者でございます原告側が、それほど訴訟の遂行に差しつかえないような仕組み、あるいは運用になっておることをひとつ御理解いただきたいと思います。  なお、国選弁護の点は、なるほど国が国選弁護の費用を立てかえますけれども、その刑事裁判の訴訟費用の中に組み込まれまして、結局最後は有罪判決を受けました被告人が国に戻すことになっておりますから、決して国がまるがかかえということではございませんので、ひとつその点も御理解いただきたいと思います。
  57. 岡本富夫

    ○岡本委員 じゃ、こういうようになっておりますといいまして役所の中ではなっておるかもしらぬけれども、現実の被害者の皆さん、あるいはイタイイタイ病の裁判の弁護人になった人たちはほんとうに手弁当ですよ。そんならそれを親切に教えてやるというくらいのPRが必要ですよ、これは。あなたそう言うのだったら私もそう言いたい。だから、今後、長官のほうでそういった点についても御考慮をいただけるかどうか、ひとつ最後に決意をお聞きしておきます。
  58. 大石武一

    大石国務大臣 御趣旨はよくわかります。ただいま法務省のほうから説明があったようでございますが、なるほど一応あるようでありますが、十分ではないように思います。これはいま私の考えたことでありますが、これははたしてそのとおり実現するかどうかわかりませんけれども、検討して善処してまいりたいと思いますが、まず訴訟を起こす必要のある場合には、当然その費用を貸してあげるとかなんとかいう制度をつくりたいと思います。裁判がどうなるかということは裁判の判断でありますからわれわれは関与できませんが、そのような裁判を起こし得る手続、それをお手伝いだけはしてあげるような制度はつくりたいといま考えておりますので、今後検討する決意でございます。
  59. 岡本富夫

    ○岡本委員 では、終わります。
  60. 小林信一

    小林委員長 加藤清二君。
  61. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 お許しを得まして、私は、新しく長官になられました大石さんに二、三質問をしたいと思います。  最初に、いまのイタイイタイ病の問題でありますが、裁判係争中なるがゆえにその裁判に影響を与えるような発言行政の長官としてはいたしたくない、そこまではよくわかります。しからば、公害の問題にしろ交通の問題にしろ、事裁判が行なわれていた場合に、これに対して関与とか影響を与えることはできないにしても、ここでその真偽をただす、論議をするということについては、あなたはどうお考えです。
  62. 大石武一

    大石国務大臣 もう少し具体的にお話しくださいませんか。ちょっといま理解いたしかねるのですが……。
  63. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 順番に言います。この裁判、提起されてから三年と百十日もかかって審決がおり、ております。これから高裁、最高裁といけば、これは何年かかるかわからない。同時にまた、本件は一つの事案が終わっただけなんです。あとまだ五つ続いている、同じイタイイタイ病で。それはここで論議しちゃいけないということになったら、立法府は全然手つけずということになりますね。これについてどうお考えですかと、こう聞いておるわけです。
  64. 大石武一

    大石国務大臣 お答えいたしますが、これはどう答えたらいいか、ちょっと発言のしかたがむずかしいことになりますが、裁判の結果を左右するようなことは——まあしかし、かりに私が発言しましても、はたしてそれが裁判に影響するかどうかわかりませんけれども、そのようなおそれのある発言だけは慎みたいと思います。ただ、次々とたくさん裁判が起こってくるとおっしゃいますが、そういう場合は促進されるように祈っております。同時に、促進することがやはり裁判官のヒューマニズムでもあると考えております。
  65. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 祈っておるだけなら、国民一般だれでも祈っております。祈っている例を見せてあげます。これだけ大ぜいの人が祈っておるのです。祈っているだけなら、こんな、長官のやる仕事じゃありません。  そこで、じゃ前例を申し上げましょう。本件は初めてここであれしているのじゃないんですよ。あなたが長官になりなさらなかった以前、何回もやっている。しかも予算委員会でもこれはやっている。すでにそのときは裁判に提起されておる。通産省は逃げて逃げて逃げまくる。その企業の援護射撃をやっている。ところが、幸いなるかな厚生省が調査団をつくって、そして徹底的に究明をした。その結果、これは公害病に指定されたわけです。片一方、裁判は進行しておるのです。そういう事案なんです。通産省はだれか来ていますか。——通産省、どういう考えか。いずれこれは田中大臣に聞く予定ですけれども……。簡単に言えばいい、いまの問題ですから。
  66. 森口八郎

    ○森口説明員 お答え申し上げます。  第一次裁判の提起がございましたのは四十三年の三月九日でございます……。
  67. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そんなことを聞いているのじゃない。裁判係争中の案件は、国会で、裁判に対する悪影響なり好影響なりを与えてはいけないけれども、論議することのいかんはどうかと聞いておる。
  68. 森口八郎

    ○森口説明員 私個人としては、論議の内容になり得ると考えております。ただ、環境庁長官の御発言になりましたように、裁判に影響を与えるというような言辞は、当方としては慎むべきであるというように考えております。
  69. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 本件は一般事案と違うのですね。これは鉱業法なんです。鉱業法は初めから百九条に無過失責任をうたっているのです。そこで、あなた鉱業法を読んでください。鉱業法百二十二条、和解の申し立てがあった場合にどうするかということが書かれている。読んでみましょう。「鉱害の賠償に関して争議が生じたときは、当事者は、省令で定める手続に従い、通商産業局長に和解の仲介の申立をする。ことができる。」これを受けて次に百七十一条、「通商産業大臣は、この法律又はこの法律に基づく命令の規定による通商産業局長の処分についての審査請求があったときは、これを却下する場合を除き、審査請求を受理した日から三十日以内に、聴聞を開始しなければならない。」あと、聴聞会から審査会から何からずっと書かれておる。これは一般法規と違うのですよ。だからこそ無過失責任がうたわれておる。介入せよと書いてある。介入することができると書いてあるじゃないか。裁判係争中であったとしても、被告と原告とが話し合いをして和解の申し立てをすることは、幾らでも前例がある。そういう場合にどうするのですか。手をこまねいて見ているのですか。だからこういう結果になる。これは本裁判の弁護人の団長正力さん——これは読売の正力さんのおいごさんです。これがこう書いておられる。政府の態度、「我々弁護団が第一次の訴訟提起後、同年五月八日厚生省は、「イタイイタイ病の原因物質は神岡鉱山の事業活動により神通川へ放出した廃水、汚水に含まれた重金属カドミウムに基因する慢性中毒症である。」との最終見解を発表した。」これは厚生省ですよ。「この見解は原告が訴状、準備書面で明記した主張と殆んど同一内容のものであり、上記の如くイ病の加害者は被告三井であると断定したが、」——ここまでで言えることは、厚生省の見解は被告と同じ側に立っているということ。これは影響を及ぼすか及ぼさないかは、ここで論議いたしません。大石さん、よく考えてください。ところが、そのあとが問題だ。通産省、特に聞きなさい。企業責任の問題です。「今日に至るまで企業責任追及の行政措置は何一つ講ぜず、またその熱意すらも発見出来ない。」と断定しておるのです。これは百五十人の弁護団です。しかも、これは日弁連が応援をいたしております、日本弁護士会が。しかも、日本弁護士会の中には公害対策特別委員会があって、ここで取り上げて、われわれ国会議員までが呼びつけられて、みんな行って、かえって逆に叱咤激励を受けてきておる。一体国会は何をやっているか。ここでは政府当局の怠慢を断定しているけれども、われわれが行ったときには逆に叱咤激励を受けてきておる。手をこまねいて見ているではないか、なっておらぬ、それで国民に対して立法府の責任が全うできるというのか、こういう調子なんです。そこで、わずかに、公害と認め治療費の一部を国や地方団体で負担するの法案を提出したのみであって、抜本的に究明すべき企業責任には全然触れようとしていない。ここに他の公害関係をも無過失賠償責任に追い込めという理論的根拠、実体が出てくるわけなんです。だから私は最初に聞いた。長官が前向きでやるとおっしゃられた、しかも企業の無過失賠償責任の法案は提案するとおっしゃった。そうすれば、当然裁判の最中でも、介入というとことばは悪うございますけれども、相手の意思によって、被告、原告の意思によって、手を添えてやらなければならぬことになる。鉱業法はちゃんとそれはうたっておる。ところが、相手が三井だと逃げて逃げて逃げまくる。おかしいじゃないか、これは。そんなことでは責任究明の看過といわざるを得ない。緊急を要する職責の放棄にひとしく、この怠慢、無責任はとうてい許されるものではない、とこう言っておる。よろしいか。これに対して反駁してごらんなさい。
  70. 大石武一

    大石国務大臣 厚生省のこの原因究明に対する見解と、環境庁の見解、いま同じでございます。この見解でわれわれはこの問題に対処してまいりたいと考えております。  それから、いま非常に御説明が適切で、非常にわかりいい御説明でございましたのでだいぶわかってまいりましたが、鉱業法ですか、その法律も、仲介の問題につきましては通産大臣を環境庁長官にかえていただければ非常にありがたいと思います。
  71. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうですね。だんだんそういうふうになるのじゃないかと私も思っているのです。今度の環境庁の構成を見ておりましても、あまたあまたから局長が出ている。県からも局長が出ている。ところが通産省から一人も出てない。なぜそうなったか。それは通産省みずからが反省をしなければならぬじゃないか。私は、原因を言おうとか結果をどうこう批判はいたしません。しかし事実はそうなっているのですね。そうでしょう。あなたの配下にいらっしゃる局長さん、通産省出は一人もいないですね。いままでの予算、証拠、本委員会の審議でいきますと、厚生省は公害に対して前向きの姿勢である、しかし通産省はそうでないという印象を受ける。これは無理からぬことだと思う。私は通産省が悪いとは言いません。なぜかならば、指導、育成、強化がその任務なんですから。設置法によってそうきめられているんですから。それを一生懸命になさることはけっこうなことだと思う。しかし、いかに指導、育成、強化をしなければならぬ相手であったとしても、それがいま公害たれっぱなし、公害出しっぱなし、現に被害を与えつつあるという状況を見れば、それでもなおあと押しをするということはいかがかと思う。当然、企業を営むがゆえに発生する公害は除去するように指導してしかるべきだと思う。指導ということは、成長させることだけをやらせることではないと思う。何でももうければいいというなれば、人間生活を豊かにするはずの経済が、やがて人間生活をむしばんでいくという結果になる。これはインターナショナルシンポジウムにおいてもとらざる筋道なんです。  そこで、私はお尋ねしますが、長官、あなたこの間三重県へお行きになりました。就任早々、私はけっこうなことだと思ってテレビを見、新聞も拝見いたしました。結果のいかんより、まず行くということ、まず知るということ、これは大事なことだと思います。それでお尋ねしますが、イタイイタイ病の現地視察をどなたかおやりになりましたか。
  72. 大石武一

    大石国務大臣 御質問の意味は、環境庁発足以来ということですか。
  73. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 そうです。
  74. 大石武一

    大石国務大臣 これはまだ行っておりません。私が率先してできるだけ回る決意をいたしております。ただ御承知のように、現在は四日市には参りましたが、いまこのとおり臨時国会が開かれておりますので、これが終わりましたあとに、イタイイタイ病とか、あるいは水俣、阿賀野川など参る決意をしておりますが、御承知のように、八月は予算を編成する時期でもございます。こういうことで、いますぐというお話はできませんが、私ばかりでない、政務次官、官房長も局長もみんなで行ってまいりまして、その時間の許す限り努力して、実態を十分に把握してはだで感じてまいるように努力いたしたいと思います。
  75. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 けっこうなことだと存じます。ぜひそれをやっていただきたい。そうして先ほども理事会で始関先生や橋本先生、橋本先生あたり何度も行ってみえる。われわれも一緒に患者を見舞おうじゃないかというあれが始関先生から出ました。さすが公害の大先輩だけあると思いました。私は、そういうことをしてあげることが政府不信なりあるいは議会不信を取り除く一つの手だてになるではないか、ぜひそれを長官もやっていただきたいと存じます。私も小松みよさんには三度会っております。背が三十センチ縮んだとおっしゃっている。これはさっき六カ所、七カ所という話ですが、一人の人で七十一カ所骨の折れておる人がある。裁判が始まってから三年百日余りですが、その間に二十一名死亡しておる。公害病と断定されて以後、たぶんこれはその原因ではないかということが発見されてから今日まで、二百二十名の余死んでおります。小松みよさんという人、お年は幾つですかと言いましたら、大正七年生まれですとおっしゃった。そうすると私より若いですね。ところが私の母親より年とった顔に見える。で、こうおっしゃるのです。あなた、いま一番やってもらいたいことは何ですかと言ったら、背をもとの姿に伸ばしてもらいたいことだ。この鉱業法によれば、もとの姿に返せという項目がありますね。御存じでしょう、通産省。もとの姿にして返せ。しかし、これはもとの姿に返りませんわ。あなたお医者さんでプロフェッサーですからよくおわかりでしょうが、けい肺病にしてもイタイイタイ病にしても、もとの姿に返らないのです。死を待つよりほか手のない業病なんです。せめてお気の毒ですねと一言言うくらいの情けはあってしかるべきだと思う。それを通産省は一度も行ってない。これではおこるのがあたりまえじゃございませんか。もとの背にしてもらいたい。その次に何と言ったか。裁判を早くきめてもらいたい、こう言っておる。なぜかと言ったら、死んでいく友だちがかわいそうです。死んでいってしまう。もう目の前に二百名も死ぬのを見ておる。きょうは人の身、やがてあすはおのれの身だとおっしゃる。妻や母親としてのつとめができないことはあきらめました。あきらめたけれども、せめて三井の社長に、悪かったと一言言ってもらいたい、こうおっしゃる。銭をくれと言っておるのじゃないのです。もう銭をもらっても使うところはありません。なぜ。五分間と立っておれないのですから。小松みよさんは銭は要らぬとおっしゃる。ですから、頑迷固陋な三井、いずれこれは世界の、公害関係から糾弾を受けるときがくるでしょう。歴史が批判するでしょう。しかし歴史が批判したころには死んでいってしまうのですね。それを、いまの生きておる間にせめてあなたの言うカンフル注射なり、もう助からぬということがわかっておってもせめて名医に手をとってもらう、カンフル注射をしてあげるということがわれわれの任務じゃないですか。ぜひひとつほんとうに——富山まで行くのにたいしてかかりません。ヘリコプターで行けばすぐできる。できる証拠を申し上げます。仮執行がかかった。それっというので弁護団と執達吏が行って赤紙を張った。そうしたらどうした。その日、水曜日でしたよ。ところが水曜日の夜になって六千万の現金がぽんと出てきた。あれはどうやって持っていった。飛行機で持っていった。ですからすぐ行けるのですよ。一ぺんぜひ行ってあげてください。長官どう思われます。
  76. 大石武一

    大石国務大臣 ぜひ行って実態を見てまいります。
  77. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 その次、それでその対策はあれこれあるでございましょうが、しかし、いまここでそういう案件を聞いただけでも、これはわかることだと存じます。  それで対策でございますが、さしあたって被害者を見舞う、これも対策一つでしょう。それから何とか救済をしてあげるという手はないものでしょうか。もうなおらぬ業病だ。それに対して、これも厚生省の御協力のたまものでございますが、私は戦後特別病院をつくりました。いわゆるけい肺病院。前例があるとかないとかごてごて言っておられたのですが、ついに厚生省の良識は、このなおらないという業病を職業病に指定すると同時に、その病人の方々を、せめて生き延びる命だけは長くしてあげようというので専門病院をつくりました。それをつくるという声が出ましたら、とたんに地方自治体もそれじゃ土地は寄付しましょうということになった。そうしたら今度は、各大学がこぞって、協力しましょうということになった。しまいには、わが大学から教授をとってくれ、わが大学から教授をとってくれということになりました。ですから、ちょいと火をつければ、よいことは燎原の火のように広がりますね。そういうことが、いますでに行なわれている四大裁判、五大裁判ありますね、それを未然に解決することだと思います。私は、臼杵にも水産庁の大和田長官に行ってらっしゃいと言った。行ってきてからあなたの命令を出しなさい。せめて条件として——いまこれから条件をやりますが、条件としては、せめて風洞実験が済んでから、せめて裁判が済んでからと言ったのです。にもかかわらず、あなたたちは、こういう場合は裁判の最中でも企業の味方になって命令を出しなさるのですよ。御存じのとおりですね。企業が損することになると、いやじゃと言って逃げておきながら、企業が得することになると、裁判の係争中でありながら港を埋めてよろしいという命令を出した。そして大事件になった。どうです、裁判の結果は。阿部さんちょっとあとで説明してください。裁判は長官のほうが負けですよ。現地を見ずにやっている、実態調査せずに行政措置をするからです。強い者がやられるときには、それは係争中だから手を触れません、手を触れませんと言っておきながら、強い者が得をするときにはぼうっとその応援を出す。これが行政実態じゃございませんか。  そこで被害者の救済ですが、見ぬ先でもこれはできる。何か考えがありますか。被告のほうはキャッシュを判決の出た晩にぽんと出した。そうでしょう。さっきあなたもおっしゃられましたね。そういう前例はあるのですよ。長官何か手は打てませんか。
  78. 大石武一

    大石国務大臣 はなはだ恐縮ですが、御趣旨の真意を十分につかみ得たかどうかわかりませんので申し上げますが、医療とか患者を慰める上においての何か手だてでございましょうか。そういうことでございましょうか。
  79. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 慰めることもあれば、医療のこともあれば……。
  80. 大石武一

    大石国務大臣 そういうことにつきましてはいまはっきりとお約束はできませんけれども、私は四日市に参りまして見てまいりましたときから、やはり患者の医療を十分に整えてやることが大事であるという感じを持ってまいりました。それをどのような形で生かしたらいいか、いま具体的には申し上げる段階にはございませんが、十分な医療が行なえるような、医療面ではそのような対策を考えてまいりたいと思っております。
  81. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 じゃ、加害者に対する処置というとニュアンスが変わってきつう聞こえるといけませんから、指導ということばにしておきましょう。加害者と断定された企業に対する指導は何を考えていらっしゃいますか。
  82. 大石武一

    大石国務大臣 それは、まず加害者は十分に罪の償いをしなければならないと思います。罪の償いはどのようにするか。形においては補償という形になりましょう。賠償といいましょうか、そういう形になりましょうけれども、そういうものを十分にするということにまず力を入れたいと思います。
  83. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 この際よほど指導よろしきを得ませんと、これはたいへんなことになると思われますので申し上げます。  ということは、物理的にいって、同じイタイイタイ病で六つ裁判があるのです。一つの審決が最高裁までいきますと、これは一審で三年かかっていますから、次に三年ずつかかると十年かかるという勘定になる。それが済んでからといっていたら六十年かかる。弁護団の提出されました報告書によりますと、「被告三井の防禦体制は出来るだけ合法的に訴訟遅延を図り、無力なる被害者をして長期におよぶ裁判闘争に疲れさせ、物心共々に戦意を喪失せしめて、団結の乱れんことを秘かに期待しておることは至って明瞭である」、その具体策がずっと書いてあります。次に「今、被告の反対訊問の内容」云々と、こうきて、次々とたくさん書かれておりますが、時間をとり過ぎますから、それは省きますが、どうも被告側は誠意を示すということに対して怠っているということがありありとわかるわけなんです。  そこで、これに対して指導が全然できないという問題ではない。通産大臣はできるはずなんですが、長官としてはいかがでございますか。
  84. 大石武一

    大石国務大臣 ちょっと御意見のほどもよく理解しかねるのでございますけれども、係争裁判につきましてはどのような指導ができるかといいますと、なかなか私としてはいい考えがございません。もしお考えがあるならばひとつお教えいただいて、検討いたしてまいりたいと思います。
  85. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 わかりました。それではこの処置に対しては、私がここであれすると時間がかかりますから、いずれ理事会にもはかりまして、こういうことは社会党一人でそんな手柄顔をする必要はないことで、目標は、党利党略よりは、患者を救い、加害者を指導するということにあるのですから。それで理事会にもはかっていただきまして、与野党が一致してよい知恵を出しましたら、長官はそれについて行動に移されますか。
  86. 大石武一

    大石国務大臣 十分に自分が行動できると判断いたしましたならば、喜んで努力します。
  87. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 最後に、最初に質問申し上げました無過失賠償責任の問題ですね。これは先ほど岡本さんからお聞きになりましたから重複するのですけれども、念を押しておきます。  次期国会とは臨時国会のことですか、沖繩国会のことですか。それとも本国会のことですか、通常国会のことですか。どっちですか。
  88. 大石武一

    大石国務大臣 それは通常国会を考えております。
  89. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 沖繩国会ではない。そうすると、次期国会ではない、次の次の国会になりますね。
  90. 大石武一

    大石国務大臣 はい。それは、沖繩国会では沖繩の問題が中心になりまして、どうしてもこの問題に国会の力を十分に注ぐことは困難かと思います。また時間的にも、われわれはこのような決意を持っておりますが、それを実現するためには十分な時間と努力が必要だと思います。それはとうていいまの臨時国会では間に合わないと思いますので、何としても通常国会までにそのような体制を整えたいという考えでございます。
  91. 小林信一

    小林委員長 寺前巖君。
  92. 寺前巖

    寺前委員 先ほど大臣は、環境庁の出発にあたって非常に国民が期待をしているということをおっしゃいました。そして所信表明の中で、今日の公害が経済の発展の中で生まれてきているということを位置づけられたと思います。国民が期待している問題は、やはり一番、公害の現実的な問題に対してどう処理するかという問題に端的に、ことばの上ではなくして姿勢を率直に見るだろうというふうに思います。そういう意味で、先ほどから論議になっておりますイタイイタイ病の判決というのが最近出されました。したがって、これに対してどう見るか、どう受けて立っていかれようとしているのかということは国民注目の的だ。そういう状況の中で、係争中だから云々と言われたからこれは大論議になっているというふうに言わざるを得ないと思います。  大臣も御存じのように、一審提訴以来三年三カ月の間に死亡した患者は、この神通川では実に二十人にも達している。そういう状況の中で判決は出た。水俣病その他の問題に至っては、立脚する法律が少し違って、ここには無過失賠償の精神を持っている鉱業法という法律があればこそ、ほかの問題よりも早く一定の判決が出るという基礎をつくったと思います。それだけに、これに対する判決というのは、公害患者にとっては大きな注目の的になるわけです。  ところで、この判決が出た直後に、厚生大臣やあるいは通産省の諸君が一定の見解を表明しております。私は念のために厚生大臣の見解を読んでみたいと思います。「判決のくわしい内容は、まだ聞いていないが、被告会社の民事責任を認めた点は評価されるべきだろう。イタイイタイ病については、四十三年五月の厚生省見解で、本態と発生原因を明らかにしていらい、緊急対策を逐次進め、公害病患者への救済措置も昨年二月以降講じているが、今後とも十分な手当てを図っていきたい。また、今度の判決が比較的早かったのは、被告に鉱業法による無過失責任が課せられていたためと思われ、厚生省としては事業者無過失責任制度の必要性を、改めて痛感している。」そういうふうに積極的に問題を受けとめられたと思います。また通産省の官房長の談話があらためて出ております。その内容を見ますると、やはり「本日の判決は率直に受けとめる。」ということを言っております。「明治以来、カドミウムなどがきびしい規制もなく排出され続けられたことについて、政府も業界も認識が足りなかった。深刻に反省しなければならない。今後、排出規制を一層強めていきたい。」こういうふうにここでも提起しておられます。  そこで私は、ここまで政府当局がこの判決に対して見解を示している、あなたはこの見解を率直に受けとめて、そして今後の処置にどう臨んでいきたいのか。前任の関係しておる厚生大臣なり、あるいは通産局の担当者がこういう態度を表明しているというのは当然だとあなたは思われるのかどうか。これが表明されたあとで、今度は、当該の三井金属鉱業の社長はこういうふうに言っております。二十年も三十年も前にさかのぼって企業の責任だと殺人犯扱いにするのは少し酷じゃありませんか、規制もしないでほったらかしていた政府の監督の責任は一体どうなるんだというふうに逆に政府に食ってかかっているじゃありませんか。そうして、しかも控訴をやっている。私は、この三年半の中で倒れていかれた原告の、あるいは患者の皆さん方、いまもなおまだそれが続けられているこの人々の気持ちをくむならば、大臣は率直にこの会社の態度をどういうふうに見られるだろうか。国民は一国の大臣のこれに対する態度を聞きたい。ほんとうに国民の立場に立つのか、経済発展のために公害があったと口で言われるけれども、実際には企業の立場に立ってしまっておられるんじゃないか、どちらの立場に立たれるだろうかということを疑問に思われるのは当然だと思う。したがって、私はもう一度聞きたいと思います。率直に大臣はこの判決を受けとめるべきであるというふうに思われるのかどうか。
  93. 大石武一

    大石国務大臣 前厚生大臣の見解に敬意を表します。これが私の考えであります。
  94. 寺前巖

    寺前委員 それは、あなたは先ほどの答弁の中で、無過失賠償の私が提案する姿の中から見てもらいたいというふうに提起されました。それじゃ、ここであなたが準備しておられる無過失賠償のその法律の中で、次の点は一体どういうふうに取り扱われているのか聞きたいと思うわけなんです。  その第一点は、今度の鉱業法のもとにおいて、先ほど通産省の官房長が言っておりましたように、カドミウムというのがこういうものになるとは思わなんだということを言っています。そうでしょう。そうすると、無過失賠償の規定をするときに特定物質にしぼってしまっておいたら、今度の場合には鉱業法にそういうしぼった規定がなければこそこれが有効な役割りをしたということを見たときに——あの百九条です。特定物質にしぼってしまったならば、有効な役割りをしないことになると思うのです。  そこで、あなたが準備されるところの無過失賠償の中に、特定物質にはしぼらないという今度のこの鉱業法の成果を取り入れたいという気持ちがあるのかどうか、それを具体的に聞きたいと思います。
  95. 大石武一

    大石国務大臣 この無過失の責任の法案にはできるだけ私は——この法案をどういう気持ちで出したのか、二つの目的がございます。一つは、もちろん無過失にせよ、公害によって患者を発生したり健康をそこなった場合には、当然その賠償の責任を負わせるということと、もう一つは、それ以前に、こういう法律をつくることによってそのような公害を出さないような心がまえになってもらおう、企業のほうにできるだけそのような公害を出さないような予防的な気持ちを持ってもらいたい、この二つが私のねらいでございます。  そういう意味で、やはり観念的にはあなたのお考えに賛成でございます。
  96. 寺前巖

    寺前委員 それでは、同じく無過失賠償のこの制度の内容についてですが、今度の裁判の過程あるいは広範に公害の裁判がなされている過程の中で、一番問題になるのは訴訟の問題です。患者の側からこういう証拠があるから云々ということが非常に困難だという問題が裁判上一番問題になったわけです。ところが、ヨーロッパやアメリカなどにおいても、患者のほうから訴えたら、会社のほうがそれに対してそうじゃないという証拠を逆にあげなかったならば患者のほうが勝つという挙証責任の転換問題というのがあります。ほんとうに国民の側に立つならば、そういう制度の法律にしなかったら、この無過失の値打ちもない。この点について、あなたはどういうふうにお考えになっているのか、聞きたいと思います。
  97. 大石武一

    大石国務大臣 挙証責任の転換につきましては、私はそういう考えは持っておりません。
  98. 寺前巖

    寺前委員 非常に残念だと思います。今度の裁判の経過あるいは全体の裁判の経過から見るならば、この点私は率直に学んでもらいたい。国際的にも進んだ国々がこういう問題を検討している段階だけに、積極的に、世界に冠たるとまでこの前に国会で言われた人がおりますけれども、ほんとうに冠たるというのだったら、そのくらいのことを考えていただかなかったら私は値打ちがないと思います。  それではもう一つ聞いてみたいと思うのです。救済の対象の問題ですけれども、カドミウムの場合などは、過去にあった問題か蓄積されてあとから出てくるという形になってきます。時間がかかります。そういう点では、今度法律を出される場合に、法律施行後の排出についてだけということになったら、こういうものはパアになってしまう。だから、原因が過去から発生している、それが今日の時点であらわれるということを考えたら、これについても、法律施行後という限定にしないほうがいいというふうに思うのですが、その点は率直に、どういうふうにお考えになっておるか、聞きたいと思います。
  99. 船後正道

    ○船後説明員 若干法律技術的な問題でございますので、私からお答え申し上げます。  民法の例外といたしまして無過失責任を考えるわけでございますので、やはり、その法施行の日以後についてのみ無過失を適用する、これが原則であると考えております。
  100. 寺前巖

    寺前委員 それでは、せっかく無過失賠償の私の気持ちの中から判断をしてくれとおっしゃったけれども、これらの問題が今日の公害の争点になっているということから考えたら、せっかく国民が期待しているという問題点から見るならば、私は非常に後退している、もう一度再検討していただきたいということを申し上げたいと思うのです。  時間の都合がありますから、次へ行きます。  そこで、このイタイイタイ病の判決が出た段階において、政府の責任云々までが会社の社長から言われている。ところが、このイタイイタイ病の判決の直前に、閣議ですか、一つ水質基準を出されました。水失汚濁防止法に基づくところの基準ですね。そこで私は、ほんとうに率直に受けとめられるんだったら、この基準でいいのかどうかという問題の疑問が出てきます。たとえばいま問題になっているのはカドミウムです。そうしたら、そのカドミウムにおいて一定の基準まで排出していいという法律になっております。ところがああいう重金属については、蓄積していったらやはり同じ結果になってくるだろうと思う。一番大事な問題は、ああいうものは排出せずにたくわえて外に出さぬようにさせることが一番大切な問題じゃないか。蓄積することが日本の将来にとって非常にたいへんな問題だ。率直に反省をされるならば、そういう基準を明確にしなければいけない。排出するときに一定の量は出してもよろしいという基準だけではほんとうのところは救われない。出さぬほうがいい。出さぬように処理する施設をきちっと設けさせる。私は、反省されるならばそこまで反省されるべきだと思うのです。大臣、もう一度それは検討し直す必要があるんじゃないでしょうか。あなたの意見を聞きたいと思います。
  101. 大石武一

    大石国務大臣 考え方はあなたの考え方が妥当だと思います。しかし、この基準をきめた場合に、環境庁におきましてそれほど無制限なきめ方はしてないと思いますから、一応水質保全局長から説明の内容をお聞きとり願いたいと思います。
  102. 岡安誠

    ○岡安説明員 お話のとおり、カドミウムにつきましては、環境基準とそれから排出基準をきめておりますが、私どもは、カドミウムの摂取によりまして人体に影響があるという限度を慎重に検討いたしまして、環境基準におきましては全国一律でございますけれども、〇・〇一PPMというふうに定めておるわけでございます。ただ、おっしゃるとおり、カドミウム等の蓄積性のものにつきましては、土壌に蓄積いたしまして、それから食物を経て人の口に入るということがございます。そういう場合は、当然土壌汚染防止法の観点からも、さらに強い規制を加えるというような措置も法律的になっております。私どももそういう観点から、そういうおそれのある地域につきましては、さらに強い規制を加えるというようなことで措置をいたす考えでございます。
  103. 寺前巖

    寺前委員 私は、ただいまの問題については、最初に言いましたように、もう一度全面的にああいう有毒物については別に処理するということを徹底することを考えなかったら、将来憂慮すべき問題になってくるというふうに思いますので、再度その問題は提起をしておきたいと思います。  イタイイタイ病の問題については、以上で私は終わりますが、もう一つ、せっかくの機会ですから、緊急の問題として、いま社会的に問題になっております光化学スモッグの問題について聞いてみたいというふうに思います。  これも最近基準をやはりお出しになっているようです。私は、ここで考えてみなければならない問題は、この光化学スモッグ問題が最初に問題になったときに杉並の立正高校というんですか、あそこで事件が発生しているときには、〇・二七PPMでばたばたばたと倒れる事態が発生しておったと思います。そこで、東京都としては〇・三を一つ基準として、その〇・三というのが出てきたときに警報を出して、工場あるいはまた公安委員会に対する要請を出すというふうに処置を進めてくれという方向で努力されたと思います。ところが、政府のほうで出している基準は、〇・五PPMという段階にしている。それで、実際に起こっている事態の問題と、現実に警報を出す事態の問題とに非常に差がある。これじゃ、せっかく過去にわれわれが経験した事態を教訓として学び取っていないじゃないかというのが、国民のだれもが考えることであろうと思うのです。先ほども国会で大臣自身が答弁なさっておられたように、その原因についてよく究明するという処置もやっていかなければならないということを盛んに言っておられました。私はそういう意味においては、光化学スモッグ発生の今日時点で、こういうところが問題があるということは、共通した一定の意見はあると思います。もっともっとメスを入れなければならないとは思います。だけれども光化学スモッグの発生の要因となっている窒素酸化物と炭化水素の汚染を減らすために、工場や火力発電所の排煙規制、低硫黄の重油の使用あるいは自動車の排気ガスの交通規制、そういうものを総合的に、当面わかっている範囲内だけでも手を打たなければならないと思うのです。そういう意味においては、緊急にいまわれわれがやらなければならない問題は、光化学スモッグの予報が出された段階から、効果的に光化学スモッグの発生を防止するためには、第一番目に、工場、火力発電所などに対するきびしい排煙規制を行なう。それはさっきおっしゃった〇・五PPMの段階ではなくして、少なくとも東京都が示しておった段階にする必要があるのではないかというのが一つです。それから第二番目に、有害ガス除去装置をつけていない自動車の幹線道路上の運行を禁止することを検討してみる必要があるんじゃないだろうか。それから第三番目に、警報が解除されるまでの間で、お医者さんその他緊急に使用する以外の自家用乗用車の都心部での運転を禁止するというところまでメスを入れなかったならば、この光化学スモッグの今日の緊急事態は防げないのじゃないだろうか。その辺について、緊急にどういうふうにしなければならないと考えておられるのか。私のいま提起した問題を含めて御見解をお聞きしたいというふうに思います。
  104. 大石武一

    大石国務大臣 光化学スモッグの原因となるオキシダントの濃度につきまして、いま〇・三PPMに上げるのか、上げたらよかろうではないかという御意見がございました。これは御承知のように、環境庁基準としては〇・一五PPMになりますと、すでに警報に近いものを発しまして注意を促します。そして〇・五PPMになりますと、都道府県知事に、その工場の運転の規制をするなり、自動車の交通の規制をするなりの命令、要請をすることができる権限を与えてございます。〇・三PPMというのは東京都の一応きめた基準でございまして、これは強制権がございません。ただ警報を発するだけでございます。これはまことにけっこうなことでございまして、現在の段階では一応〇・五PPMにおいて初めて規制の処置をするということにいたしておるわけでございますので、別に〇・三と上げなくても東京都と意見がそう食い違っているとは考えないのでございますが、はたして〇・四PPMにしたらいいのか、〇・三PPMにしたらいいのか、〇・一PPMにしたらいいのか、これはやはり今後とも検討して、その必要に応じて基準を上げるべきときには上げなければならないと思いますので、急いで検討いたす覚悟でございます。  それから、おっしゃるとおり自動車の交通の規制の問題でございますが、いま東京のいろいろな状態を考えます場合に、どの自動車は通っていけない、どの自動車は交通量を何分の一に減らせということは、簡単に実態においてはできないと私は思います。ですから、できるだけ早い機会にこれを規制する、それには無公害の車を開発する以外に道はないと思います。これは、御承知のようにオキシダントの構成がまだわかりませんから、窒素酸化物なりあるいは炭化水素なり、いずれにしても全部自動車から出る。どのように自動車のエンジンを開発しましても、完全燃焼すれば窒素が出てまいりますし、不完全燃焼ならば炭素が出てまいりますから、これはどうにもならない。やはり電気自動車のような思い切った革新的なものを考え出す以外にないのでございます。幸いに、通産省でも五年以内には——五年というとずいぶん長いような気がしますけれども、やはり技術開発にはそれくらいのものが必要かと思います。きょうはっきりと通産大臣が電気自動車を開発する、そういうことを明言されました。アメリカでも四、五年中にできるようでありますので、そういうものを早く取り入れまして、一応光化学スモッグによる被害というものをなくしたいと思うのでありますが、何しろ実態がわかりません。実態を一日も早く把握することが何よりも大事だということで、その実態の究明にまず全力をあげてまいりたいというのが環境庁の考え方でございます。
  105. 寺前巖

    寺前委員 実態の究明を急いでもらうということは、私はけっこうなことだと思います。しかし、同時に、販売する場合の自動車自身に、現段階でここだという面を、大体一般的な常識的な面まであるのだから、それを前提とするところの緊急に自動車に対する排気ガスの除去装置をやはり販売する場合に規制をしていくとか、そういうところまでいまの範囲内で措置を進めなかったならば、この緊急事態というのは防ぐことはできないだろう、そういう点で積極的に進めてもらいたいと思うわけです。  もう時間が参りましたのでこれでやめたいと思いますが、最後に委員長お願いしたいと思います。  今日、日本の公害裁判史上で画期的なとまでいわれている今度のイタイイタイ病の判決に対して、当委員会としても現地を視察し、また先ほどから問題になりました原告なりあるいは三井鉱山の社長なりを当委員会に呼んでもらって、そうして率直に、日本の歴史上かってない問題だけに、ここで参考人としてわれわれの委員会において検討させてもらう、あるいは当委員会として、決して司法権の侵害を云々するのではなくて、やはり国民を代表して、いま三井鉱山の社長のとっておられる控訴していくという態度に対して、そういうのはおやめなさいとうせめて勧告なりをやるような検討を、当委員会としてもやっていただきたいということを要望して、発言を終わりたいと思います。
  106. 小林信一

    小林委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  107. 小林信一

    小林委員長 速記を始めてください。  次回は、来たる二十三日金曜日午前十時理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十六分散会