○
朝田参考人 日本航空の
社長の
朝田でございます。
本日、当
委員会で
意見を申し述べることになったわけでございますが、まず、
二つの問題に分けて御
説明を申し上げたいと思うわけであります。その
一つは、私
どもの
会社でとっております
安全対策、二番目は、
政府各部門に
要望をさせていただきたい
事項、こういうことでお話をさせていただきたいと思うわけでございます。
私
どもの
会社でとっております
安全対策の、
経営の
基本的な
姿勢からまず申し上げたいと思うわけでございますが、当然のことでございますけれ
ども、
航空輸送事業を
経営いたしておりまするものといたしまして、
安全性の
確保というものが何ものにもまさる最
重点的な
施策としてこれを
運営しなければならないことは、申すまでもないところでございます。私
どもの
会社が、
自主運航以来約二十年近くになっておりますが、旅客の
死亡事故がゼロであるという
実績を有しておりまして、この伝統的な精神はあくまでも守り抜かなければならない、このことが、
経営の上におきまして、他の問題と競合いたします場合にもあくまでも妥協をしない、かたくなだと言われましてもそれを守り通す絶対
前提条件であるということを常に鮮明にいたしておるわけでございます。特に、
整備の
施設に多額の
投資を今日まで続けてまいりまして、
設備、
施設だけでも三百億円にのぼっております。
各種部品を含めまして五百三十億円の
投資を今日まで続けてきております。なおかつ、
技術の
開発にも続けて努力をいたしておる状態でございます。
いま申し上げましたように、私
どもの
会社の
経営方針として、少しでも
安全性向上のために非能率であったり、あるいはやりにくくなっておったりすることが現場でもしありといたしまするならば、直ちにこれを取り除く、
経営の側において一刻もすみやかにこれを取り除くことにいたしておるのが、
経営における
方針でございます。特に、私
どものほうで
重点を置いておりますことは、
品質管理と
ZD運動の
推進でございます。
ZD運動は、御承知のように、
グループ活動でございまして、
目標指向活動であると同時に、また
提案活動でもございます。各
職場を通じまして
経営に参画をするという意識の高揚として、いまや各
職場に私は定着しつつあると考えておるようなわけでございます。
およそ
航空安全について私は
六つの
要素があろうと思うのでございまして、その
六つの柱、重要な
要素として考えられますことは、まず第一に、
航空機とその
整備でございます。第二は、
乗員及び
運航管理者の問題でございます。第三番目に、
飛行場あるいはその
滑走路、
誘導路の
施設、四番目には
航空保安施設、五番目に
航空交通管制、第六番目に
航空気象、こういうことであろうと考えるわけでございます。いま申し上げました
六つの
要素の中で
航空会社で直接管理できますものは、最初に述べました
航空機と、それから
乗員及び
運航管理者の問題でございます。
あとの四項目につきましては、機会あるごとに
政府に対しましても
要望を重ねておる次第でございますが、私
どもの
会社といたしまして、
運航の安全について、先ほど申し上げました
経営の
姿勢以外に、具体的な諸
施策を進めておるわけでございますが、まず第一に、多くの
人員と
機材を駆使して行ないます
近代航空におきまして、
運航あるいは
整備に関する
ルールというものが確立していなければならぬ、これが不可欠の
要件であろうと思います。第二に、
安全運航の
基本的な
要件といたしまして、高度の
技術を修得させるための
訓練というものがございます。第三に、この
技術を体得した上で、さらに、先ほど申し上げました
ルールを徹底的に順守する
資質をつくり上げるということが必要であろうかと存じます。
こういった
基礎の上に立ちまして、
信頼性のある
機材を
運用することによって、初めて乗客の生命を預かる
安全運航の
実施が自信を持ってできるのでございます。
ところが、
安全運航の維持というものは、こういうことばかりでございませんで、
自社の
運航経験だけでなしに、あらゆる世界じゅうで起こりました
事故を自分の
会社の場合に照らし合わせて、あらゆるインフォーメーションあるいは
データを収集して不断の
改善をはかるということをつとめておるわけでございます。
まず第一に、りっぱな
マニュアル、
ルールをつくるということが必要でございまして、人によって異なる判断を生ずる余地のないりっぱな
マニュアルをつくる、その
マニュアルが、わかりやすくて、かつ、守りやすい規則でなければならない、また、かりに
一つのミスを犯しましてもなお安全が保障されるようなバックアップ・システム、こういったものをつくって実行しておるわけでございます。
訓練につきましては、いま申し上げましたように、そういう
マニュアルを、
自由裁量をはさむことなしに、厳格に徹底的に守り得る
資質をつくり上げるということに
重点を置いておるわけでございますが、特に
シミュレーターを活用いたしておりまして、わが社においては、いま747、いわゆる
ジャンボジェットの
シミュレーターを
一基、DC8の
シミュレーターを三基、そして727の
シミュレーターを
一基、合計五基を保有いたしておるわけでございます。
訓練基地といたしましては、
実用機の
訓練のために、
アメリカのワシントン州のモーゼスレークに
自社訓練施設を持っております。また、
仙台におきましては、いわゆる
基礎訓練課程のために、日航独自の
方式によりますところの
基礎訓練所を持っておるわけでございまして、この
訓練所においては、
航空大学校の
修習課程の最後の
課程を私
どもは委託を受けてこれを
実施いたしておるようなわけでございます。第三番目の
人格養成の点につきましても、
基礎課程を、この意味から言いましても、重視いたしまして、国際的にもすぐれた機長としての
人格識見を備えることを
目標といたしまして、
訓練生の時代から一貫した
教育を施しておるわけでございます。いま申し上げましたような
ルールメーキング、
マニュアルあるいは
ルールをりっぱなものをつくる、それを守り通すだけの
資質を養成することが
教育訓練でございまして、そういうところに加えて、さらにオペレーションの
実績に応じてそれをフィードバックしていく、そしてまた、その規定なり
マニュアルというものを修正してそれに
改善を加えていくという
方式をとっておりまして、特にどの部にも
制肘を受けないで独自に
運航の
安全監査をやる
航務安全監査室というものをつくりまして、全体にこれをにらんでさらにまた
ルールメーキングにフィードバックをしておるというような
方法をとっておるわけでございます。
時間の
関係もございますので一そういう
施設につきましても、私
ども、先ほど申し上げましたようなことで、
品質管理あるいはは
ZD運動の
定着化とともに、ただいまの
安全保障対策あるいは
機材と安全、あるいは
安全性の上から見て
機材を改修していく、こういうこと、あるいは
整備技術の
開発といったような点にも
重点を置きまして、新しい
技術の
開発にもつとめておるようなわけでございます。
政府に
要望いたしたいことを率直に申し上げさしていただきますならば、
現状の
航空行政というのが、一言にして申し上げますならば、
航空界の、
飛行機のほうが日進月歩の
技術革新でどんどん進んでまいりまするにもかかわらず、特に
地上施設がこれに伴わないということでございます。諸外国の
航空行政と比較して著しく劣るところがございます。率直に申し上げまして、
安全性確保において重大な
要素でありますところの、
政府のおやりになる
施設と
技術、
行政運営面が十分でないということを申し上げたいのであります。すでに国会の審議でもあるいは一般にも指摘されておりますように、
航空交通管制の面におきましても、
運輸大臣が委任をしておられる
自衛隊のほうがはるかに
施設と
人員が整っておる。
本家本元の
運輸省のほうがあまりにも貧弱な
施設と
人員であるというのが
現状でございます。五カ年
計画で
整備をされることになっております
空港の
整備計画を、最近累次の
事故にかんがみまして、繰り上げて
実施をするということもいわれておりますが、それにいたしましても、三年ぐらいはかかるんじゃないか。特に、
施設ができましても、
管制官あるいは
通信盲あるいはその他の
技術者というものが、一朝一夕に整うべくもないと思われるのでございます。
そこで私
ども、
米国の一九三〇年以来の
航空行政機構の
改革の
経験を通じまして、
行政改革が
アメリカでも逐次行なわれてまいったのでございます。私は、そういった
施設の一元的な
運用、
人員の一元的な
運用ということに、単に緊密な
連絡をとっておやりになるというようなことでなしに、この際
行政機構をひとつ思い切って
整備していただきたいと思うわけでございます。
アメリカで
航空の
行政機構の
——先ほど
経験と申しましたが、一九三〇年には、いわゆる
CABというのが設立されております。シビル・エビエーション・ボードでありますが、現在の
運輸省の
航空局のごとく、いわゆる
航空事業の振興あるいは政策あるいは
安全面、
事故調査など、すべて包含をしておった
組織でございます。ところが、一九三五年におきまして、
CABと
CAAと
分離いたしまして、
CAAというのは、シビル・エビエーション・オーソリティー・エージェンシーでありますが、これが
航空安全行政を担当したわけでございます。いわゆる
航空局の
監督行政と
航空安全行政と
分離いたしたわけでございます。一九五八年には、
CABと、それからこの
CAAというのが、軍と
民間航空とをあわせた
交通安全行政というものを担当する
FAA、いわゆるフェデラル・エビエーション・エージェンシー、
連邦航空局と申しましょうか、そういう
組織になったわけでございます。一九六六年に、この
CABと
FAAに加えて、いわゆる
交通事故調査機関と申しますか、
NTSBというのが
設置されております。ナショナル・トランスポーテーション・セーフティー・ボード、こういう
交通安全庁のようなものが
設置をされまして、最近に至りまして、商務省とかそういったような
行政機構に属しておりました
航空行政も、いわゆる
運輸省というものが設立されまして、
FAAと、いま申し上げました
NTSBがこの配下に置かれたわけでございます。
CABは、以前からでございますけれ
ども、
大統領の
直属になっておるというようなことでございます。私は、こういう
アメリカのような
機構をまつまでもなく、
運輸省の
海運行政を見れば、同じ
思想の上に立って
機構がつくられていると思うわけでございます。
海運は、もちろん、伝統と歴史のある
行政においても、あるいはその
産業界においても、造船を含めて非常に大きなウエートを持っておったわけでありますが、
運輸省の
内局に
海運、船舶、船員、港湾という四局がございまして、
海上におきますところのロー・エンフォースメント、法令の順守、執行にあたりまして、あるいは水路とか灯台といったような、
海上の
航行保安施設の
運営にあたっております
海上保安庁というものがございます。また、
海難の
事故審判にあたって、戦前の
海員懲戒法から、
海員を懲戒しただけでは
事故は絶滅できない、そこで真相の
探求主義に移行いたしましたのが
海難審判法でございまして、その際に、戦後できましたのが
海難審判庁で、いわゆる
NTSB、先ほど申し上げましたような
機構と全く相応しておるわけでございます。こういう
体制が、
CABは
大統領直属の
機構でありますが、これが
運輸省の
内局に該当しておる、
FAAが
海上保安庁に該当しておる、いま申し上げましたように、
NTSBが
海難審判庁にあたるわけでございまして、
米国の例を持ってくるまでもなく、
運輸省自体でそういう
思想を同じくするりっぱな
行政機構を持っておられるわけでございます。独立いたしました
航空事故調査庁の
設置は、私
どもが従来から
陳情、お願いを申し上げておるところでございますが、
事故ごとに臨時に
調査委員を任命されてその
原因究明にあたっておられますが、恒久的な
常設機関がなければ、
事務当局の
組織、そういったものを駆使して
原因を探究するのになお不十分であると思うわけでございます。
そこで私は、先ほど申し上げました、
自衛隊にすでに二十四カ所の
レーダーサイトがあり、そしてそれを
管制と結合いたしまして一元的に
運用をはかるということは、
米国において先ほど申し上げました
FAAのつくられた事情から考えて、この際ぜひとも実現をしていただきたいと思うわけでございます。
レーダーコントロールによりますところの
航空交通管制を一元的に行なうことによりまして、
航空機に対して
航行援助を与える、誘導していく。箱根と
福岡の二カ所しかない
運輸省の
レーダーのカバーする
範囲は一部でございますので、早急に
自衛隊の
設備と
人員を活用し得る
体制をとるべきであろうと思うわけでございます。
また、
気象につきましても、
気象庁だけでなしに、
自衛隊に相当大きな
組織の
気象群というものがございます。そういう
気象群による
観測データをあわせて活用すべきであろうと思うわけであります。
このように一元的な
運用が政治の面で特に処断されなければ、とうてい実現し得ないように思われるわけでありまして、
行政当局の
事務レベルでの
協議にまかしておいては、私は百年河清を待つがごときであるというふうに感ずるのでございます。
時間の
関係で、
あとは端折って申し上げますが、
航空法の改正を、私
どもはすでに私が専務で
航務本部長をつとめておりましたときから
陳情を出しております。プロペラ時代の
航空法が、いま申し上げるような日進月歩の
技術革新に即応しないという面が多々あるわけでございますので、
航空法の改正ということも取り上げていただきたい。
それからまた、地方
空港の
整備、VORあるいは、DME、ILSの
設置を
整備五カ年
計画においてお考えになっておりますけれ
ども、そういうことに対処いたしまして、私
どもも
航行援助サービス料というものを負担しております。受益者負担の原則からいって、当然私
どももこれに協力をいたしておるわけでございます。
空港の過密状態に対する道は、私
どもはこれを
大型化あるいは新鋭
機材による
大型化ということによって対処してまいりたいというふうに考えておりまして、
航空が国民大衆の足として定着してまいりました現在、需要の増大にこたえて、しかも便数を総体的にふやさないで、しかも
安全性が向上いたしております新鋭の大型機でこれに対処する、私は、むしろこれのほうがそういう
安全性の見地からいって好ましいというふうな考え方に立っておるのでございます。したがいまして、今日、四十五年と比べまして、私
どものキャパシティを大きくして
機材を投入いたしました結果、私
どもの
会社の四十六年度の国内線の増便は著しくないわけであります。むしろ減便をいたしているくらいでございます。離発着の回数も少なくて済むというようなことで、これに対応する地上の航行安全
施設というものの完備を待ちまして、
空港の処理能力の限界と相まって、過密状態に対処する道は、
大型化をもってせざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
時間が過ぎたようでございますから、これで失礼をいたします。