運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-07-20 第66回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十六年七月十四日)(水曜日) (午前零時現在)における本委員は、次の通りであ る。    委員長 田中 榮一君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 永田 亮一君 理事 山田 久就君    理事 松本 七郎君 理事 大久保直彦君    理事 曽祢  益君       池田正之輔君    石井  一君       宇都宮徳馬君    大野 市郎君       大平 正芳君    北澤 直吉君       鯨岡 兵輔君    小坂徳三郎君       田村  元君    竹内 黎一君       西銘 順治君    野田 武夫君       福田 篤泰君    福永 一臣君       豊  永光君    勝間田清一君       河野  密君    戸叶 里子君       堂森 芳夫君    中川 嘉美君       西中  清君    松本 善明君 七月十四日  田中榮一委員長辞任につき、その補欠として  櫻内義雄君が議院において、委員長に選任され  た。 ————————————————————— 昭和四十六年七月二十日(火曜日)     午後三時九分開議  出席委員    委員長 櫻内 義雄君    理事 青木 正久君 理事 坂本三十次君    理事 正示啓次郎君 理事 永田 亮一君    理事 山田 久就君 理事 大久保直彦君    理事 曽祢  益君       宇都宮徳馬君    北澤 直吉君       鯨岡 兵輔君    小坂徳三郎君       竹内 黎一君    野田 武夫君       福永 一臣君    豊  永光君       河野  密君    戸叶 里子君       西中  清君    松本 善明君  出席国務大臣         外務大臣臨時代         理       木村 俊夫君  出席政府委員         外務政務次官  大西 正男君  委員外出席者         外務省アジア局         長       須之部量三君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省条約局長 井川 克一君         外務省国際連合         局長      西堀 正弘君         外務委員会調査         室長      吉岡 俊夫君     ————————————— 委員の異動 七月十四日  辞任         補欠選任   大野 市郎君     櫻内 義雄君 同月十五日  辞任         補欠選任   田中 榮一君     正示啓次郎君 同月二十日  理事田中六助君同月九日委員辞任につき、その  補欠として正示啓次郎君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 櫻内義雄

    櫻内委員長 これより会議開きます。  この際、一言あいさつを申し上げます。  今回、はからずも再度外務委員長の重責をになうことになりました。まことに微力ではございますが、練達なる委員各位の御協力を得まして大過なきを期してまいりたいと存じます。何とぞ各位の御支援をお願い申し上げます。  簡単ではございますが、ごあいさつといたします。(拍手)      ————◇—————
  3. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次に、理事補欠選任についておはかりいたします。  去る七月九日、理事田中六助君が委員辞任されましたので、理事が一名欠員になっております。この際、その補欠選任を行ないたいと存じますが、先例によりまして、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって、理事に正示啓次郎君を指名いたします。(拍手)      ————◇—————
  5. 櫻内義雄

    櫻内委員長 引き続き、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  本委員会といたしましては、国際情勢に関する事項について調査をいたしたいと存じますので、この旨議長承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 櫻内義雄

    櫻内委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 櫻内義雄

    櫻内委員長 この際、木村外務大臣臨時代理及び大西外務政務次官よりそれぞれ発言申し出がありますので、これを許します。外務大臣臨時代理木村俊夫君。
  8. 木村俊夫

    木村国務大臣 このたび、先般の内閣改造で御就任になりました福田外務大臣が御病気のため、はからずも不肖私が外務大臣臨時代理の大任を仰せつかることになりました。  内外の情勢がきわめてきびしいおりでございますので、微力ながら全力を尽くしてまいりたいと思います。何とぞよろしく御指導、御協力を賜わりますよう、切にお願い申し上げる次第でございます。  まことに簡単でございますが、一言あいさつを申し上げます。(拍手
  9. 櫻内義雄

  10. 大西正男

    大西政府委員 新任の政務次官大西でございます。  私の名前は大西と書いてございますが、西も東もわかりません。しかし、時節柄私なりに最善の努力をいたしたいと存じております。どうか練達たんのう先生方の御指導、御鞭撻を心からお願いいたすものでございます。よろしくお願いいたします。(拍手)      ————◇—————
  11. 櫻内義雄

    櫻内委員長 国際情勢に関する件について調査に入ります。  質疑の申し出があり、ますので、順次これを許します。青木正久君。
  12. 青木正久

    青木委員 私は日中問題につきまして、大臣にお伺いをしたいと思います。時間が限られておりますので、端的に御質問申し上げますので、端的にお答えをいただきたいと存じます。  十五日に発表されましたアメリカニクソン大統領中共行きは、世界じゅう衝撃を与えたわけでございます。わが国にとりましても、頭越し巨頭会談ということでございまして、外交方針の一番基本にも関連してくるような大きな動きであった、こう考えるわけでありますけれども、まず最初に、政府はこの新しい発展をどう受けとめておられるか、この点についてお伺いしたいと思います。
  13. 木村俊夫

    木村国務大臣 今回の米中接触、これは世界的にいろいろ衝撃を与えております。しかしながら、わが国中国問題に対する基本的な態度、これはいまさら申し上げるまでもなし、わが国国益を踏まえまして、極東の緊張緩和に資する、こういう態度で貫いております。したがいまして、わがほうは今回の米中接触の今後に及ぼす効果を十分認識しながら、今後新しい事態に対処していきたい、こういう考えでございます。
  14. 青木正久

    青木委員 今度の発表は突然行なわれたという印象をわれわれ持つわけでございますけれども、この点につきまして、ある意味では日米間の信頼というものに疑点を持たなくちゃならない、そういう深刻な問題であるという声も聞かれるわけです。また一方、わが国アメリカに対する甘えのムードというものも考え直さなくちゃならないのではないか、こういう意見もあるわけであります。アメリカ日本に対する態度というのは、やはり友好国、同盟国としての日本を見ていると思いますけれども、同時にまた、わが国の経済が大幅に発展をいたしまして、大きくなり過ぎると、アメリカ国益に合致しないというような経済的な面もあろうかと思います。  それやあれや考えますと、今度の発表日本に伝わったのが非常におそい、こういうことがいわれているわけでありますけれども、この重大ニュースをいつ政府連絡があったか、あるいはこれまでにこういう大きな動きがあることにつきまして何らかの徴候があったのかどうか。きょうの電報によりますと、牛場大使ロジャーズ国務長官にこの点について不満を述べて、また抗議をしたとも伝わっておりますけれども、この何らかの徴候があったかどうか、あるいはいつ知らされたのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  15. 木村俊夫

    木村国務大臣 今回の米中接触、これは、その面についての連絡がわがほうにございましたのは、牛場大使に対するロジャーズ国務長官からの連絡でございます。したがいまして、日本政府にとりましては、前々からそういうようなことがある可能性はもちろん考えておりましたが、今回の接触につきましては、この米中接触が公表されました約一時間ほど前でございます。
  16. 青木正久

    青木委員 日本のこれまでの中共問題に対する態度といいますと、北京とも仲よくしたい、しかしながら台湾との関係は従来どおりの線を維持したいという、そういう一線で足踏みをしている感じがしたわけであります。ところで、日本中共に対する接近テンポアメリカ中共に対する接近テンポというものは、どうもこのニュースがあって以来だいぶ差があるように思いますけれども、その点どうお感じになっておられるか、お願いいたします。
  17. 木村俊夫

    木村国務大臣 日米間での中国問題に対する接触、あるいはその接触のもとをなす国益の差と申しますか、そういうかかわり合いの差に相当開きがあることはもう当然でございます。したがいまして、米国にとりましてはベトナム問題、あるいはその次のランクとしましては中近東問題、そういうような問題が大きな問題になっておると私は認識しておりますが、そういう意味で、わが国に比べますとアメリカのこの中国問題に対する取り組み方は、全般の中でわが国国益に比べますと数等差があるのではないか、こういう考えをしております。
  18. 青木正久

    青木委員 ニクソン大統領中共に行くというわけですけれども国交のない中共に元首が行くという点ですね、アメリカ中共承認に踏み切ったと思われるわけでございますけれども、この点はどう御解釈になりますか。
  19. 木村俊夫

    木村国務大臣 まだ今回の米中接触内容をつまびらかにはいたしませんけれども、これによってアメリカ北京承認に踏み切ったとはまだ断定しがたい点があろうかと思います。
  20. 青木正久

    青木委員 それでは、今度のニクソン訪中ということ、この動きにつきまして、これはアメリカが中央との国交回復ということに重点を置いているのか、それとも、古い友人犠牲にしないと言っておりますけれども台湾国連における議席を守ることにポイントが置かれているのか、どちらにその重点が置かれた措置であると御解釈になっておられるか、お願いいたします。
  21. 木村俊夫

    木村国務大臣 現在の接触段階におきましては、まだそれをつまびらかにはし得ないと思いますが、アメリカといたしましては、北京との国交回復に至るまでの措置として何らかの手段を講じなければならぬという国内的な必要、しかしながら、現在までアメリカがとりきたった台湾との国交についてどの程度の犠牲を払うべきか、その断定的な考え方はまだ固まっていない、こう考えます。まだまだ、いまお話のあったような段階に立ち至ってはいない、こういうような考え方であります。
  22. 青木正久

    青木委員 これは新聞報道でございますけれども、わが党の小坂政務調査会長が昨日のアジア調査会で、台湾中国全体の代表であるという考え方世界大勢から見ても考え直すべき時期に来ている、こう発言したと報道されております。これに関連いたしまして、日本中共に対する政策をこの時点におきまして変える必要があるとお考えですかどうか。変えると言っては何ですけれども修正する——どう修正するかは別にいたしまして、全くこれまでどおりでいいとお考えですか。それとも、やはり修正しなければならないとお考えですか。
  23. 木村俊夫

    木村国務大臣 この中国問題について従来政府のとってきた態度、これは現在においても変える時期ではない、こういう考え方をしております。
  24. 青木正久

    青木委員 そうしますと、ニクソン訪中ということがありましても、いままでの態度を一切変える必要はない。もう一度この点お答えを願いたいと思います。
  25. 木村俊夫

    木村国務大臣 御承知のとおり、わが国中国代表権の問題についてきわめて慎重な態度をとってまいりました。また、中国一つなりとする段階におきまして、できるだけ中国大陸との友好関係もこれを増進していきたい、こういうような態度で進んでおりますので、まだいまお考えのような、そういう最終的段階に立ち至っていない、こういう考えでおります。
  26. 青木正久

    青木委員 それでは、米中接近ということによりまして世界は三極化したというようなことも言われております。これまでのいわゆる冷戦体制、これは当然変わってくると思いますけれども、この点はどうお考えか。  さらに、今回の動きソ連への影響をどう御解釈になっておられるか、これも伺いたいと思います。
  27. 木村俊夫

    木村国務大臣 私は、この世界冷戦構造、これはすでに変わりつつある、こういう認識をしております。  また、これがソ連にどういう影響を与えておるか。ソ連においていろいろな反響がもうすでに出ておることは、新聞紙上等承知しております。おそらくソ連といたしましても、この米中の接触というものを相当重要視してそれに対処する考え方を早晩発表するのではないか、こう考えております。
  28. 青木正久

    青木委員 それからもう一つ、いわゆる国連代表権の問題でございますけれども、これも今回の動きに伴いまして世界じゅうでいろいろなことがいわれております。先ほど引用いたしました小坂政調会長も、昨日、二重代表制というようなことには賛成できないということをはっきり言っておりますし、また、重要事項指定方式につきましても、日本は棄権するんだというようなことも発言されたと報道されております。もう何カ月もたたず国連が始まるわけでありますけれども、この国連代表権について、政府はどういう態度でお臨みになるのか。小坂発言政府態度は同じなのかどうか。その点をお伺いしたいと思います。
  29. 木村俊夫

    木村国務大臣 国連における代表権の問題につきましては、政府としては、諸般の情勢をいろいろ注視しておりまして、正確な考え方にはまだ固まっておりません。
  30. 青木正久

    青木委員 それから、重要事項指定方式というのはちょっと無理じゃないかということを総理が韓国で発言されましたが、この点はいかがでございましょうか。
  31. 木村俊夫

    木村国務大臣 そういう意味におきまして、次に行なわれる国連総会におきまして重要事項指定方式がどういうような結果になりますか、そういう点をあらかじめ踏まえまして、現在検討中でございます。
  32. 青木正久

    青木委員 それでは最後に、牛場ロジャーズ会談が行なわれたと思います。その報告がもう外務省に到着していると思いますけれども、差しつかえのない限りにおきまして、この報告についてお伺いしたいと思います。
  33. 木村俊夫

    木村国務大臣 ただいまのところ、外務省に届いております電報によりますと、牛場ロジャーズ会談におきましては、今回のキッシンジャー特別補佐官訪中について、きわめて簡単な報告が届いておるだけでございますので、まだつまびらかにはいたしませんけれども、今回のキッシンジャー特別補佐官訪中米中間の決定的な結果をもたらすような内容のものではない、こういうことだけ、報告に接しております。
  34. 青木正久

    青木委員 坂本理事に交代いたします。
  35. 櫻内義雄

    櫻内委員長 坂本三十次君。
  36. 坂本三十次

    坂本委員 私は以前、佐藤総理大臣に、中国政策転換を求めまして、この際総理中国腹中に入ってものを考え、行動をしたらどうかと御質問をいたしましたら、総理は、いやなかなか腹中は広いようだから、出口を見つけてからでないととんでもないことになる、こういうお話でございました。それに比べると、今度のニクソン訪中ということはずいぶん差があるなと、私は非常にびっくりした感じであります。頭越し訪中を決定せられたわけでありまするから、内閣外務省も、十分ここで中国政策の再点検を、転換をも含めて御研究なさっておられると私は思うておるわけであります。  いま木村外務大臣代理お話を聞けば、慎重に——政策転換はないような御発言でありましたけれども、やっぱりこの際、日米関係というものは日本アメリカ信頼友好の上に立っておるんだという、その一枚看板だけではいかぬのじゃないか、日米関係について、特に日本姿勢について、やはり重大な反省を必要としておる段階に来ておる、そういうふうに私は感ぜられてなりません。六〇年代ならばいざ知らず、七〇年代に入りまして、総理も言われるように、中国問題が最大の課題だということになりますれば、ここに、先ほど木村さんもおっしゃったように、日本アメリカ立場中国についてはずいぶんと開きがあるわけでありまするから、もう日米友好、何でもアメリカの言うとおりというような姿勢ではとてもいけないということになっておると私は思います。やはり、アメリカあとを行って、悪くいうと汗をかかずに日本はうまいことをやろうなどというような気配がみじんでも感じられますと、アメリカ日本ほんとうの友だちとしてやっていくに足りない国だというくらいに思いやしませんか。やっぱり独立気力なき者国を思うこと深切ならずということばがありましたけれども独立ほんとう外交をやろうという気力がないときには、アメリカといえども日本はあまり信用しない、尊敬しない、だから相談しない、こういうふうに私は感ぜられてなりませんけれども、こういう問題は反省の問題でありまするし、賢明な大臣でありまするから御承知のことと思いますけれども、先ほどのお話を聞いておりまして、米中関係とそれから日中関係は違うのだとおっしゃいました。これについて、ちょっとお尋ねをいたしたいと思います。  佐藤総理大臣は、ニクソン訪中は歓迎をする、しかし日本は非常に慎重でなければならぬということをおっしゃっておられました。これは、アメリカあとからついていく、そのうちに台湾問題であろうとそれから国連代表権の問題であろうと、日本は苦労せずにうまくやれるのだという、こういう考えはまさかないだろうとは思いますが、こんなぬれ手でアワのような考え方はとても中国に通ずるはずはございませんけれどもアメリカ朝鮮戦争までは中国友人でありますし、日本はやはり中国大陸を侵略した、迷惑をかけた国でありますから、絶対にそこには歴史的にも政策的にも違うはずであります。私はおとといか、オーストラリアの労働党の党首でありますホイットラムさんにお会いをしましたら、中国へ行ってびっくりしたことには、中国最大の敵は、ソ連のことは非常にむずかしいですから言いませんけれどもアメリカだと思って行ったら、アメリカに対するよりも日本に対してきびしかったのにはびっくりした、こういうお話でありました。そうすれば、やはり日本アメリカよりももっときびしく、自分の日中国交回復への道を進んでいかなければならぬ運命にあると覚悟をしておいででございまするか。米中関係日中関係基本的に通うのだ、日中関係に当たるときにはもっときびしい認識姿勢が必要なのだとお考えでございますか。そこのところをひとつお聞かせをいただきたいと思います。
  37. 木村俊夫

    木村国務大臣 いまお話のありましたとおり、米中関係日中関係とは根本的な性格上の違いがあると私ども認識しております。したがいまして、アメリカ政府が今回のような措置をとりました。しかし、あくまでこれはアメリカ国益考え措置であろうともちろん思います。また、わが国わが国としてのアジアにおける基本的な立場、利益というものを踏まえてこの中国問題に対処しなければならぬ、そういうところから、アメリカ日本立場の相違が生まれてくる、こう認識しております。
  38. 坂本三十次

    坂本委員 アメリカ中国に対して荷が軽いから、日本中国に対してたいへん荷が重いから慎重にならざるを得ないだろうというようなお話でありましたが、しかし今日ここに至りましたらやっぱりものごとの最も原点に返ると申しましょうか、本質を見きわめて外交姿勢を確立をせられる必要があろうかと思うわけであります。佐藤総理大臣は、大陸も大切だが台湾も大切だという御答弁でございました。そうすれば大陸台湾どっちも大事だ。てんびんがつり合うておるからどっちが重いとは言えない。そういう判断の中では中国問題の前進は私はないと思う。ないどころか、一つ迷いではなかろうかと私は思うのです。  余談ではありまするが、常本武蔵の五輪の書を読んでおりましたら、必死の戦いの中で、真剣を交えるときの目のつけ方というのが書いてありまして、それには観剣二様の目つけがある。その二つの目のつけ方があって、観の目強く剣の目弱しと書いてある。ですから私どもに、言わせれば、台湾日華条約はある。しかしやはり日本が長い問迷惑をかけた中国大陸に対して国交回復をしなければならぬ。この両方見比べるときに、やはり台湾に対する日華条約にはあまりこだわらないで、そうしてこれは剣の口でありますから、観のほうの目の日中国交回復のほうに強く目を向ける。この選択政治衣選択であろう、私はこういうふうに思うわけであります。  さきごろの委員会におきましても、何かものごとに迷うたら何かに一つ決断基礎根拠というものを求める。たとえば吉田さんが日華条約をつくったときに、この条約台湾とその周辺の島に及ぶ、それ以外の大陸には及ばないのだ、そういうことであの条約もできておるのではないでしょうか。そうすればその古田さんの原点に返って、ひとつ決断根拠というものも求められてしかるべき時期にきておるのではないか、私はこういうふうに思うわけです。国民の声をお聞きになっても、世界大勢を聞かれても、そこはわからぬはずがないと私は思いますが、一番根拠に、一番大切なところでてんびんにかけて、どっちも中途はんぱだという迷いが起これば、これはもうそんな戦術戦略外交技術上の問題ではありません。ここのところがやはり一番大切でございまして、やはり決断の時期にきておるのではなかろうか。  先ほど中国政策について、政府はまだ何の変わったこともない、転換考えてないというような御答弁でありましたけれども、ここらでやはり転換の時期がきておるのではないかということを、しっかり今後お考えをいただきたい、その時期にきておる、こういうふうに思うのです。これは総理お一人のお考えではなしに、国務大臣内閣全体の御決断ですから、ここらで転換の第一歩でも踏み出す気持ちはあるのかないのかというようなことをやはりようくお考えいただいて、そして御感想を承れればいいと思うわけです。国交回復に向かって一歩進めば、当然の帰結として国連代表権中国の加盟ぐらいは少なくともじゃましない、この二つぐらいは簡単な結論であろうと私は思います。これからはそれはむずかしいですよ。むずかしいけれども、一番基礎がやはりきまってないと、それからどう歩み出していいのかわからぬじゃないでしょうか。そこのところの一番の基礎、腹がまえというものについて、ひとつ木村さんの御意見を聞かしていただきたいと思います。
  39. 木村俊夫

    木村国務大臣 率直に申し上げて、中国国際社会に復帰する条件はすでにもうできておると私は考えております。したがいまして、そういう観点からできるだけ早い機会に北京が、中国国連に復帰することは政府としても希望するところでございます。それと同時に、わが国の従来の基本的な立場、これをあくまで貫くことは必要でございますが、新しい世界情勢、流れに応じてこれに弾力的に応ずるということも、これまたきわめて必要だと思います。そういう意味におきまして、政府といたしましては従来の基本的立場は踏まえながら新しい情勢の推移に対応していきたい、こういう考えをしております。
  40. 坂本三十次

    坂本委員 いま非常に弾力的な御答弁がございました。世界には中国国連に復帰する機運がみなぎっておる、復帰をわが国政府も希望しておる、われわれもこれから弾力的に応ずる、私は非常にけっこうだと思うわけであります。けっこうだと思えば思うほど、そのスタートになる、やはり判断原点になるものを、先ほども申し上げましたように、ひとつここで決断の時期であるということをはっきりと御認識をいただくように御努力をいただくように特にお願いいたしまして、終わります。
  41. 櫻内義雄

  42. 戸叶里子

    戸叶委員 中国問題につきましては、きのうの本会議でも質問がありましたし、ただいまも自民党の方からいろいろ御質問されたわけです。私もこの点についてお伺いをしてみたいと思いますが、きのうの佐藤総理答弁を聞いておりましても、中国問題に取り組む姿勢といいますか、そういうものがちっとも前進しておりません。一九七〇年代は中国問題の解決である、こういうふうなことを前におっしゃっておきながらちっとも前進しておらない、一体政府が何をしようとするのだろうということを国民は非常に聞きたがっているのじゃないかと思います。ことに木村さんはこれまでの官房副長官のころに非常に前向きの姿勢中国問題に取り組んでいられるように私はお見受けいたしておりましたので、ぜひ率直な御意見をこれからの質問にお答えいただきたいと思います。  私も第一にお伺いしたいことは、今度のニクソン訪中ということに対して、木村さん御自身はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか、たとえば歓迎をするということと、それからいま青木さんの質問に対して、米中間の、いまいろいろな新しい時代に対応するような措置をとっていきたい、こういうふうなことをおっしゃったのですが、どういうふうな基本的な姿勢でどう対応していくかというところが私たちは伺いたいわけでございまして、いろいろな国益考えながら、アジアの諸情勢を思いながら世界の趨勢に対応するような措置考える、こういうことは一体そのものずばり言ってどういうことを考えていらっしゃるかということを承りたいと思います。
  43. 木村俊夫

    木村国務大臣 この中国問題、たいへん日本にとっては緊切な問題でございます。したがいまして、これによってアジアの平和がどのように今後維持されるかということが最も大きな問題でございますが、同時に終戦後二十数年間におけるアジアの状態、またそれに関連するわが国の置かれた状態、これはもちろん単に対外的な問題だけではございません、国内問題にきわめて密着した関係で、この中国問題がいろいろ尾を引いております。したがいまして、私の考え方をもってすれば、中国問題は単にわが国アジア外交の問題だけにとどまらず、大きな国内的な問題にもなっておる、こういう認識を持っております。したがいまして、アメリカにおける中国問題への取り組み方と、わが国における中国問題への取り組み方には相当大きな開きがあるというととは、これまた認識せざるを得ないところでございます。したがいまして、またこの中国問題へのアプローチと申しますか、そういう面につきましては、アメリカが今回とりましたような措置、そういうものがはたしてわが国においてとれるかどうかということも比較検討いたしますと、おのずからその間に中国問題の国内において占めるウエートの差がはっきり、私は、あると思います。したがいまして、またこの中国問題への打開を考えます際に、私ども政府におきましては国内における中国問題のいろいろな諸点、すなわちある新聞のとりました中国問題への世論調査を見ましても、これはたいへん恐縮ですが、社会党、民社党あるいは公明党を支持なさる国民の階層の中でも、この中国問題への取り組み方、考え方には非常に差異がございます。したがって、北京承認すべきだ、国交回復すべきだというそういう世論の中に、同時に国府との関係を断絶すべきではないというような意見が、パーセンテージが五〇%を上回っておるという事実から見ましても、この中国問題への取り組み方が、欧米とは、また特にアメリカとの関係を見ますと、非常にむずかしさがあるということを正直に認識せざるを得ないと思います。そういう意味におきまして、わが国が今後中国問題に取り組みます場合に、もちろんこれは国益を第一に判断すべきではございますが、この国内における世論の亀裂というものをなるべく吸収しながらこれに対処していくのが政府としてのつとめではないか、態度ではないか、こういうような考えでおります。
  44. 戸叶里子

    戸叶委員 いま木村長官のお考えのほどを伺ったわけでございますが、アメリカのやったような——中国とのアプローチのしかたはしないにしても、しかし日本としても何らかの形でのアプローチ、国内のいろいろな意見というようなものをまとめながらアプローチをしていこうという、そういうお考えははっきりしていると思います。  そこで、きのうの佐藤総理答弁などを伺っておりましても、北京に、要請があれば行ってもいいんだというような答弁はされておりますけれども、私はこれは非常に投げやりな答弁だと思うのです。そういうふうではなくて、それなら一体どうやってアプローチをしていくか、どういう基本姿勢で取り組んでいくか、こういうことを決定すべきときではないか、それに向かって早く意思を固めていくべきときではないか、こういうふうに考えますけれども、前進をお考えになる木村さんとしてはどうお考えになりましょうか。
  45. 木村俊夫

    木村国務大臣 もちろん、この中国問題への取り組み方、先ほど申し上げましたとおり、日本アメリカ立場においては相当な差があると思います。これは正直に、率直に認めざるを得ませんが、しかしそれにせよ、この中国問題へのアプローチのしかた、これは今後わが国外交を決定する一番大きな方策ではなかろうかと考えます。したがいまして、また今後この中国問題へのアプローチのしかたは、もちろんこれは世論をよく考えて行なわなければなりませんが、いま申し上げましたとおり、いまだこの世論は、先ほどの世論調査にもあらわれておりますとおり、まだまだこれはそこまでの段階にはなっていない、こう考えますので、漸次そういう中国問題への世論の成熟とともに、これに対応するような措置を、当然その際には国民世論というものをよく見分けながら政府としてはこれに対応したい、こういう考えでございます。
  46. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの木村さんの御答弁を伺っておりますと、国益ということとそれから世論ということに非常に力を入れていらっしゃる。そこで国益ということから考えてみましたときに私は二つあると思います。その一つは貿易上の点、もう一つは安全保障の点、こういった面から考えてみましたときに、たとえば中国、つまり大陸との国交回復して国益にならないかどうか、お考えになっていただきたい。  貿易の面におきましても、千何百万の台湾とそれから七億五千万、八億になんなんとする人口を有する中国との貿易、こういうものとを考えてみたときに、一体どっちが国益になるかということはいわずともわかることだと思います。それからまた大きな中国を相手に友好関係にあれば、まさか友好関係にある国に対して友好的でないときよりもぽかんとやってくるというようなことはあり得ない。そういう二つの面から考えても、私は日本国益という面から考えても、中国との友好は必要じゃないか、こういうふうに考えます。  世論ということを考えましても、それはいろいろと世論というものはあるでしょう。しかし、一体それほど世論に気がねしながら今日まで自民党政府外交というものをやっていらしたでしょうか。外交をやるにそんなに世論、世論なんて気にしてやってきたことは私はなかったと思う。いままで長い間私もこの委員会におりましたけれども木村さんのようにまじめに世論ばかりを考えている、そういうような外務省態度を私は見たことがない。ある程度外交というものはその衝に当たる人が日本の国のことを考えて国民を引きずっていくという外交でなければならないのじゃないかというふうに思いますけれども、この点についてあまりそういうことばかり言っておられますと、中国との国交回復の問題等も非常におくれてしまう。隣の国であり、歴史的にも地理的にも関係の深い中国と一体なぜ手をとらないのだろうということが国民の多くの人のまず疑惑だと思いますけれども、この点はいかがでございましょうか。
  47. 木村俊夫

    木村国務大臣 もちろん世論に亀裂を生ずるということは当然避けなければなりませんが、しかしながらある場合においてはその世論をある程度リードしていく。これは民主主義社会ではまことにことばは当を得ませんが、外交政策の遂行につきましてはある場合にはそれが必要だということもわかります。したがいまして、今回のキッシンジャー補佐官の訪中に見られたようなああいう非常に不意打ちの、アメリカ国民に対して全然知らされずにやるような措置がはたしてわが国にとって合うかどうか、国民世論に合うかどうかということも考えなければなりませんし、またそのことの重要性が、アメリカにとっての重要性とわが国にとっての重要性と相当格差がある、私はこう考えますので、この点につきましては政府として十分日米間の国民的な風上、そういうものも考えて慎重に対処していきたい、こういう考えでございます。
  48. 戸叶里子

    戸叶委員 木村さんのお心の中では相矛盾したものがあるのじゃないかと私はお察しをいたします。何とかこの問題を解決すべきであるという気持ちと、そしてまた一方においては政府の責任にあるからあまりいろいろなことを、行き過ぎても悪いのじゃないかというようないろいろな考えが錯綜しているのじゃないかというように思いますが、ともかく先ほど来のおことばを聞いておりますと何かもう一歩私たちが理解できないものがある。中国との国交回復の必要性は感じていながらも何かこう、うしろに引っぱられているというようなそういうものを感じるわけでございまして、私はこれからそれでは順を追って中国との国交回復が必要であるということについての御質問を申し上げていきたいと思います。  そこで第二に質問をいたしたいことは、かつてこの委員会で私は、中国問題については日米両国が緊密に連絡をするという、そういうことばを踏まえまして質問をしたことがありました。そのときに、愛知外務大臣でございましたが、非常に中国問題は重要な問題であるからお互いに連絡をとりながら、協議をしながらやっていくのだ、こういうことを言われたわけです。ところが今回のニクソン訪中については、中国問題でのたいへんに重要な問題であるにもかかわらず、いま伺いますと一時間前に通告があった、つまりこれは事前通告——まあきまっちゃってからの事前通告、しかもこれはある意味では事後通告といってもいいような形でなされていたわけです。そこで私たちは、パートナーであるアメリカとの日米の緊密な連絡というのはこういう程度のものだろうかということを考えさせられたわけです。これは国民全体がそうではないかと思う。  こういうふうな点をよく考えてみますと、やはりいままでの政府姿勢というものが、対米外交というものが追従外交アメリカに対するおんぶの姿勢であったということが間違っていたと思う。そこでそういうふうな点を私はこの際政府も直していかなければならないのじゃないかと思うのです。ことにアメリカはパートナーであるといわれている、それでありながら、こういうふうなアメリカ外交を見ていた人はやはり対米不信というものを抱かざるを得なくなったと思うのですが、こういう点に対してはどういう措置を今後おとりになるか伺いたいと思います。
  49. 木村俊夫

    木村国務大臣 今回のアメリカの非常に出し抜けの対中接触と申しますか、これはたいへんわれわれとしても遺憾に存じております。しかしながら、こういう措置はどうもやはり非常に比較された形で遂行されるのがいままでもずいぶんございます。したがって、この問題の重要性から考えますと、アメリカがこういう接触をやる前にわが国政府連絡があるべきであったということについては、すでに牛場駐米大使をしてロジャーズ国務長官に申し入れをしたところでございます。まあしかしながら今回の措置、たいへん出し抜けではございましたが、これもまたある意味で裏返してみますと、アメリカのとった措置アメリカ中国問題に占める世論的なウエート、そういう点から申しまして、とうていわが国の比ではございません。わが国中国問題に占める地位とは比較にならないほどアメリカにおいてはベトナム問題の影が強く尾を引いておるところでございますので、そういう意味におきまして、今後わが国がこの中国問題へのアプローチをいたします際に、どういうようなアプローチをすべきかということについては、今後日本政府としまして十分考えていかなければならぬかと考えております。
  50. 戸叶里子

    戸叶委員 いまも木村さんがおっしゃったところでございますが、今回の措置をめぐりまして、特に日本アメリカとの間で、やはりいろいろな問題について外交方針のあり方なりなんなりを再検討していく。たとえば安全保障の問題にしても外交方針の問題にしても、もう少し違う角度から再検討していくというような御意思はないかどうかを伺いたいと思います。もう少し詳しく申し上げますと、私も今回のアメリカのとった措置を見ておりまして、政治の世界というものも非常にきびしいものであるけれども、やはり外交というものも非常にきびしいものであり、これがほんとう意味での一国の国益考え外交の任に当たる人のとるべき外交措置ではなかったか、こういうふうに考え、また非常にきびしさというものを考えたわけです。そういうことを考え合わせてみましたときに、これまでのような形で対米外交というものをやるのじゃなくて、アメリカ基本的にいろいろな面での考え方の相違というものを全部日本が洗い直してみて、そして対米外交というものを再検討していくべきときじゃないか、いままでのような形でいくべきじゃないのじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
  51. 木村俊夫

    木村国務大臣 その点につきまして、もちろんこれは日米間の信頼関係をそこなうという意味ではなしに、わが国が置かれた特別な、特殊な地位を十分認識いたしまして、アメリカ連絡はとらなければなりませんが、わが国独自の考え方で今後外交を進めるべきだという考えは持っております。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 政府自身がやはりいままでの外交方針というものから一歩考え直して、自主的な立場に立っての厳木政策のもとにお互いに話し合っていくという、こういう態度をおとりになるようでございますが、私にして見ればおそきに失したと思いますけれども、ぜひそういう態度で、今回のことを教訓としてやっていただきたいと思うわけです。  そこで次の問題に移りますが、一国の国家元首にもあたる人が、国交のない国を訪問するというのは、国際法上からいって事実上の承認行為になるのではないかと思いますが、この点はどうでございましょうか。
  53. 井川克一

    ○井川説明員 確かに仰せのとおりに、一国の元首が、承認関係にない、また外交関係もない国を訪問いたしますということは非常に異例のことでございまして、きわめて高度の政治的行為でございますので、これが黙示の承認になるかならないかというふうなことはたいへんむずかしい問題だと思います。しかしながら承認と申しますのは、御存じのとおり、結局一国の政府の行為でございますので、その意思の問題でございますので、新聞報道などを通じて存じておりまするところによりますると、たとえばニクソン大統領訪中の結果、外交関係が樹立されるかどうかというふうなことに対しましても、それは現在の時点で予断をすることは差し控えたいというふうなことがアメリカ関係筋から出ているというふうな新聞報道もございますので、そのような意味からいたしまして、現時点においてこれをアメリカとしては黙示の承認であるとは考えていないのではないかと私は判断いたしております。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの条約局長の御答弁でございますけれども、これまで政府政府の高官を北京に派遣して北京との交渉をすべきではないかというような質問がたびたび委員会でされましたときに、政府答弁から推して考えられたことは、政府の高級官僚等が行くのは、まだ日中間に国交がないので事実上の承認になるのではないかという疑義があるからこれを避けていたように私どもは伺っておりました。そういうふうな点から推せば、これは当然承認行為になるというふうに思ってもいいのじゃないかと思うわけでございますが、いまの井川さんの答弁では、法律的には非常に答弁することはむずかしい、こういう例はないことですから、国際法的に考えるとそういうことはむずかしいのだというふうに受け取っていいわけでございますか。そうするといままでの政府答弁とは少し違うのじゃないでしょうか。
  55. 井川克一

    ○井川説明員 私はたしか、政府の高官が参りまして直ちに黙示の承認になるということを実は申し上げた記憶はございませんでございます。たとえば、私たしか、答弁いたしました記憶によりますると、政府間協定を結んでも、それが承認でないという意思を明示するということによって黙示の承認でないということがあり得るというふうなことを申し上げたことはあると思います。そのように、一にかかってその国の政府の意思によっているわけでございまして、私の想像によりますると、新聞情報などによりまするものを判断いたしますると、そのような意思はアメリカに現在ないのではないか、こう判断いたしているわけでございます。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 このことで条約局長と論争してみてもしかたがないですからいたしませんけれども、いまのところアメリカにはその意思はないのだろうというふうに条約局長考えているわけですね。だから、それは現在のところはそうだけれども、これからの国際情勢の推移によっては変わってくる、こういうふうに余音を残しての御答弁と私も了解をいたしたいと思います。  そこで、今後の国連での中国に対するアメリカ態度というものも、私は変わってくると思うのでございますけれども日本は一体国連でどういう態度をとるのか、こういうことに対して、先ほど青木委員からの御質問がありましたけれども、慎重に考慮をするというような答弁しか得られなかったわけです。私はきょう朝テレビで見ましたところが、アメリカも今月じゅうに何か国連での態度というものを示すように言われておりますが、日本としては大体いつごろをめどに国連での態度をお示しになるわけですか。たとえば国連に行ってみてあたりの様子を見た上でおきめになるというような定見のない態度をとられるのか、それともきちんといつごろまでに出すというような基本姿勢を持っていられるのか、この点についてお伺いしたいと思います。
  57. 木村俊夫

    木村国務大臣 国連代表権の問題につきましては、米政府とあるいはその他の国連加盟国といろいろ連絡をしてまいりました。今回のキッシンジャー補佐官の訪中によりまして、その関連においては何ら変更は出ておりません。したがいまして、米政府との間に今後もいろいろ相談を、協議をしつつある段階でございますが、いまだ米国政府も今回の国連総会に臨む中国代表権の問題の扱いについては結論を出していないというのが現実のようでございます。したがいまして、そういう点を踏まえ、また一方にはすでにアルバニア決議案が国連に提出されております。それに対する先議権をとるという意味におきますと、もうすでに内容を決定するような決議案についてはアルバニア決議案に先議権をとられております。したがって、今後どういうような案をこれから煮詰めますか、これはもちろん国連の総会に臨んで議事運営上そういう決議案をその場で考えるというようなことではなしに、もちろん国連加盟国の多数を得るような案でなければならぬという見地に立ちまして、今後政府としてはその案の内容を煮詰めてまいりたい、そういう段階でございます。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 アルバニアの決議案とかあるいは二重代表制あるいは逆重要事項指定方式、まあ重要事項指定方式は大体消えたと思いますが、そういったような案が具体的にあるわけです。そこでアメリカとしては、今回はそのどれにもおそらく提案国にならないだろうというふうに考えますけれども日本としては一体提案国に、アメリカがならなくてもなるというようなお考えがあるのかどうか。  それからもう一つは、たとえばアルバニアの決議案に対してアメリカは反対はしないにしても、たとえば棄権をするとかというような態度に出るかもしれない。そういうような場合に、日本は一体アルバニアの決議案に対しては反対をするのか、どういうふうにするのかというような点はまだ煮詰めていらっしゃらないという御答弁しか伺えないでしょうか。この点の基本姿勢だけでも伺えないでしょうか。
  59. 木村俊夫

    木村国務大臣 現在のところあらゆる議案をいろいろ検討しておりますが、いかなる議案が出されますか、その結果はわれわれとしてはまだ把握しておりません。今後の事態に応じていろいろ考えてまいりたい、そういう段階でございます。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 それではもう一点伺いたいのは、いまの木村さんの御答弁を伺っておりますと、いまの段階ではさまっておらない。そこで国連の総会に行くまでにいろいろな情報を集め勘案した上で態度を決定する、大体そのめどとしてはいつごろまでに置かれているのかということが一つと、もう一つは、いままでのように中国国連復帰ということに対してじゃまをするといいますか、妨げるような態度は絶対にとらない、国連復帰を支持するような形の態度で臨むのだ、こういうふうな基本姿勢だけは確認していいかどうか、この点を伺いたいと思います。
  61. 木村俊夫

    木村国務大臣 いまだどういう決議案に賛成するかあるいはどういう決議案に対してわが国立場考えるかという内容に至るまでまだ実は煮詰まっておりませんが、いずれにいたしましても、中国国連に参加することをじゃまだてすると申しますか、阻害するような案に賛成をするような立場ではないということだけ申し上げておきます。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 その基本姿勢だけを伺ったわけですが、そこでなるべく早く一つの案を日本政府としてはまとめ上げていただきたいと思います。  もう一つ伺いたいことは、ニクソン訪中の裏にはおそらく台湾の地域からの撤兵の問題等が話されていたと思いますし、またそうなるのではないかと思います。そこで非常に気にかかりますのは、一九六九年の十一月の日米共同声明であるわけですけれども日本政府がプレスクラブで演説をしました韓国の平和に対する問題あるいは台湾地域の平和の維持もわが国にとって重要な要素である、こういうふうなことを共同声明として出されているわけです。そこでアメリカ外交政策というものが今度は大きく前進したといいますか、転換をしたわけですが、そのパートナーといいますか、一緒になって共同声明を出した日本政策もこれに伴って変わるのか変わらないのか、この点をお伺いしたいと思います。
  63. 木村俊夫

    木村国務大臣 今度のキッシンジャー特別補佐官訪中をもってすべてのそういう中国問題を取り巻く情勢、あるいはこれに関するアメリカ政府考え方が根本的に変更されたとはまだ受け取っておりません。したがいまして、私どもは今後この中国問題については従来の立場に立ちながら今後の変化に応ずるような考え方でいかなければならぬと思います。したがいまして、この中国問題、特に国連における代表権の問題も含めまして私どもはきわめて弾力的な考え方で今後進めていかねばならぬ、こういう根本的認識は持っております。
  64. 戸叶里子

    戸叶委員 すべての外交政策アメリカで変わった、こういうことは私も言っておりません。中国関係について変わってきたということと、もう一つはおそらく台湾からの撤兵の問題等が話し合いの中に出てきたんじゃないかと思いますが、そのようなことを仮定いたしました場合に、それでは共同声明を見ましたときに、そしてさらにまた先ごろのレアード長官が日本に来て言われたようなことば等を勘案してまいりますと、結局日本アメリカの肩がわりを台湾地域においてするというような政策が強化されるのではないか、こういう点を非常に私たちは憂えるわけでございまして、そうなってまいりますと、中国日本との関係中国大陸との関係というものは非常に悪化するというふうにしか考えられない。アメリカのほうは訪中によって非常にいいけれども、しかし日本は、アメリカ台湾からもしも撤兵した場合には、日米共同声明がそのまま残っているために、それに縛られて、台湾地域の安全は日本の安全であるというようなことで、そこへいろいろな面での、安全保障の面での強化を肩がわりさせられる、そういうことによって日本中国からは、軍国主義とかいろいろな面でもってかえって非常に不信を招くような結果になるのではないか、こういう点を心配するものですから、私は日米共同声明をしたときといまのアメリカ中国政策というものとが変わってきておるんだから、アメリカが変わったんだから日本のほうもそのまま受け継ぐ必要がないのではないかということを質問したわけですが、この点をどういうふうに了解したらよろしいのでしょうか。
  65. 木村俊夫

    木村国務大臣 この日米共同声明に盛られた内容と申しますか、これはもう当然でございますが、日米政府台湾海峡の緊張にどう対応するかという考え方を共同してまとめたものでございます。したがいまして、この点について台湾海峡における緊張に対する米政府考え方あるいは米中の実態的な関係が、たとえば今回のキッシンジャー補佐官の訪中によりまして局面が非常に変わってくるということになりますれば、当然実質的にこの日米共同声明の運用も変わってこなければならぬと思います。したがいまして、たとえばソ連中国との相互防衛条約が、その後におけるソ中間の国境衝突等によりまして非常に緊張度を加えた当時もございましたように、すべて条約というものがその当時の、そのときどきのお互いの実質的な国と国との関係を投影するものだという考えにおきましては、私はこの日米共同声明の文言にかかわらず、その環境の改善によりまして、その文言そのものは一つの大きな実質的変化を遂げる、こういうような考え方でおります。
  66. 戸叶里子

    戸叶委員 それではもう一点中国問題について伺いたいのは、いま国対委員長のベースで日中国交実現の決議案というようなものを国会に提出しようというふうなことが考えられておりますし、これは当然だと思いますけれども政府としてはこれに対してどういうふうにお考えになるか、それは国会でおやりになることだからというふうなお返事だけでなくして、政府としてもそういうものは好ましいものだというふうにお考えになられるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  67. 木村俊夫

    木村国務大臣 まだ私、その決議案の内容等を承知しておりませんので、是非の論評は差し控えたいと思いますが、その内容がいかなるものになるか、いままでの政府のあるいは自民党の中国問題に対する考え方を根本的に変改するような決議案の内容ではないのではないかということを私いまのところ承知しております。しかし、いずれにいたしましても、国会でそういう決議案がかりに上程されまして、とれが採決を見るときには、当然政府としては、その決議案の趣旨に従ってそれに対する努力をいたさなければならぬ、こういう考え方でございます。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 私、あと沖繩の問題を二、三点伺いたかったのですが、沖繩協定の問題で質問しますと、ちょっと時間が、私の割り当てられた時間を超過いたしますから、まだ七、八分残っておりますけれども、次の機会にまとめてしたいと思いますので、同僚の議員にお譲りいたしたいと思います。
  69. 櫻内義雄

  70. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 選挙中ではございましたけれども、私ども公明党が訪中代表団を北京に派遣をいたしまして、日中国交回復の具体的な五項目を織り込んだ共同声明を出しましたことは、大臣も御承知のことと存じますが、あの五項目、実は私ども公明党の主張を中国側が支持をした形をとっておるわけでございますが、その理由は、ごらんいただくとわかると存じますが、すべてあの五項目、台湾に関する問題でございます。それだけ台湾問題がきわめて日中間の大きな一つの問題である、こういう認識に立って、また、私たち、日本こそ台湾に対する問題の解決に発言をしなければならない、こういったことから、あの五項目がまとまったわけでございますけれども、この台湾に関する問題にしぼりまして二、三御質問をいたしたいと存じます。  一つは、台湾の領土の帰属の問題でございますが、初めにお伺いいたしたいことは、一八九五年の馬関条約によりまして、わが国が当時の清国から台湾を一部割譲して日本の統治下にした、そういった歴史的な事実があるわけでございますが、馬関条約締結までの台湾の帰属は、中国の固有の領土であった、この認識は間違いないものだと私、判断いたしておりますが、この点についてはいかがでございましょうか。
  71. 井川克一

    ○井川説明員 下関条約第二条に、「清國ハ左記ノ土地ノ主權竝ニ該地方二在ル城壘、兵器製造所及官有物ヲ永遠日本國二割與ス」とありまして、二つ目に、「臺灣全島及其ノ附属諸島嶼」と書いてございますので、この条約によりまして、台湾全島及びその諸島嶼に対する主権が清国から日本国に譲渡されたわけでございます。
  72. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 といいますことは、馬関条約締結以前は、台湾中国の固有の領土であった、こういうことでよろしいわけでございますね。
  73. 井川克一

    ○井川説明員 清国の主権が及んでおりました清国の領土でございました。
  74. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そういたしますと、一九四三年のカイロ宣言におきまして、わが国が、ハズ・ストールンという英語を使っておりますけれども、盗取した——満州、台湾及び澎湖島のごとき日本国が中国人から盗取した一切の地域を中華民国に返還すべきであるというカイロ宣言、このカイロ宣言を織り込みました一九四五年のポツダム宣言、第八項目、カイロ宣言の履行ということがうたってあるわけでございますが、このポツダム宣言を受諾して、日本は降伏文書によりまして第二次世界大戦の終結を行なったわけでございますが、この降伏文書の中にもポツダム宣言の履行ということは明確にうたわれております。この段階において、台湾中国——まあ現時点ではチャイナならチャイナという表現を使いたいと思いますが、中国に返還をしたということはきわめて明確な歴史上の事実であると私は思いますが、これは外交問題のベテランである大臣から御答弁願いたいと思います。
  75. 井川克一

    ○井川説明員 この点は、従来外務大臣の職にあられました方がたびたび御答弁申し上げましたとおりに、確かにカイロ宣言にございます。日本政府が降伏条件を定めましたところのポツダム宣言を受諾いたしました、そのポツダム言宣にカイロ宣言が引用されております。しかしながら、領土の変更、領土に対する主権的な処分というものは平和条約によらざるを得ないということ、これは国際的に確立した問題でございまして、平和条約、すなわちサンフランシスコ平和条約におきましては、これらの土地をわが国が単に放棄するということを定めてあるのみでございまして、したがいまして、それがどの国に帰属するということはサンフランシスコ平和条約及び日華平和条約には定めがないところでございます。
  76. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 領土移管の問題は平和条約によらねばならない、これは従来外務省がとってまいりました統一的な見解であることは私どもも重々存じております。しかし、ポツダム宣言で日本が無条件にこれを受諾したその文書の中で、日本が盗取したものを返還する。盗取したということをのんだ後でも平和条約によらなければ領土の移管ということはあり得ないのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  77. 井川克一

    ○井川説明員 領土の処分は当然平和条約において明記せられるべきものだと思います。
  78. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 盗取したものであるということを認めた後も平和条約によらなければならないというそういう前例がありましょうか。
  79. 井川克一

    ○井川説明員 戦争中一方の側がその戦後の処分についてその政策的意図を発表いたしました際に、このような盗取した地域というふうなことばを用いました先例は、私は存じません。
  80. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 私は、この辺がやはり日本中国政策一つの大きな災いを残しておる問題ではないかと思うのです。いま日本政府一つ中国論というたてまえをとって中国政策を遂行しておるわけでございますが、一つ中国というのは、あくまでも台湾大陸をその認識基本的な問題として置いたればこそ一つ中国論というものは出てくるのである。であるならば、その一つ中国ということを片方では言いながら、その一つ中国の中に含まれるはずである台湾の帰属について、日本政府はまだ言を明確にしていない。その辺のところが、中国から見れば、きわめてふかしぎといいますか、日本政府態度について鮮明さを欠くところであると思うのですけれども、私、いまの条約局長の御答弁に対してさからうようで恐縮でございますが、それでは、こういう例は一体どういうふうに判断をされるか。わが国があるAならAという国といくさをいたします。そうしてそのいくさに敗れまして、九州なら九州をその終戦の条約によりまして一時割譲されてA国の統治下に入った。しかし、その後にまたそのA国といくさを起こして、わが国が連合軍とくみして、そのA国を打ち破った。そのわが国並びに連合国の解釈は、その前のいくさのときに日本から割譲していった九州の領土は、本来日本の固有の領土であるがゆえに、それはA国が盗取したものとしてわが国に返還をすべきものである、こういう宣言がなされたとします。その宣言を相手側のA国がまるまる受諾をした。そのわが国並びに連合国との宣言がそのまま相手国が受諾をした、こういう状態において、その九州は当然わが国固有の領土としてわが国に返還されるはずである。その場合にも平和条約というものがなければ、九州はわが国の領土として認められないのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  81. 井川克一

    ○井川説明員 ただいまの御設例の前に、日本国は台湾の領土についてまだ云々しているというおことばがございましたけれども日本国は台湾の領土権を放棄したこと、これは明白なることでございまして、わが国の領土としては放棄された、平和条約において明白に放棄されているわけでございます。その帰属の問題が残っているわけでございます。  御設問の例でございまするけれども、まずA国と戦争をいたしまして九州を割譲する。おことばの中に、その割譲は休戦がおこなわれてというおことばがございましたけれども、そのときにおきましても、休戦ということのみにおいて九州は割譲されないと思います。まず第一に、A国との間に平和条約が結ばれまして、その中に領土条項がございまして、日本国の九州をA国の領土とするという平和条約がなければならないと思います。第二点に、その後再びほかの国と組みましてそのA国と戦います。そのとき固有の——固有という法律的意味は別といたしまして、固有の領土を返還するという降伏条件を、こちらが勝ちましてA国が受諾いたしましても、その降伏条件がいわゆる私どものことばで休戦協定であります限り、領土処分の効果は生まれません。やはりそこに平和条約というものがなければ領土処分というものは確定いたさないわけでございます。したがいまして、御設問が第一にA国と日本との間に二カ国間の、平和条約ができて一たん領土権がA国に移った後に、再び戦争が起こって、今度はこちらが勝ちましたというふうな場合には、それはさらに平和条約によってその領土が返ってくる、こういうことになると思います。
  82. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 A国の初めの戦争の終えんが平和条約という形で結ばれて、その後なおかつわが国とともにくみした連合国が、ともに領土問題について宣言をした。それを向こうが無条件で受諾した段階においても、そういう平和条約の必要があるということは、私は認識できないのですけれども、そういう先例があるのでしょうか。向こうが日本国から取っていったものだということを認めているのですよ。終戦後、盗取したということをA国が認めているのですよ。ということは、本来の所有権は日本の固有の領土であるということを大前提にしてのこれは認識だと思うのです。あらためて平和条約を結ばなければその領土返還はあり得ないのか。こういう解釈は私はあり得ないと思うのですが。
  83. 井川克一

    ○井川説明員 おことばを返すようでございますけれども、宣言の受諾と申しますのは、それはやはり私どもが申します、いわゆるそのときの休戦協定であると思うわけでございまして、やはりその領土を動かすということにつきましては、平和条約、その領土割譲のための条約が要るということは、私、確信をもって申し上げることができると思います。
  84. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そこまで確信を持たれておっしゃるのならば、私は違う面から伺いますけれども、それでは今年の四月十四日の当外務委員会におきまして、佐藤総理に対する私の質問に答えて、総理大臣は、「中国のものだと言われること、これは北京政府か、台湾の中華民国か、これは別として、とにかく中国のものであることには変わりございません。」こういう御答弁を私はいただいているのですけれども、現在日本政府の統一した見解としては、台湾中国の帰属である、台湾の領土権は中国に帰属をするのだ、こういう見解に立っていると判断してよろしいのでしょうか。先ほど条約局長台湾の帰属という点について日本政府云々という御発言がありましたから、私は伺っておきたいのですけれども、その点いかがでしょう。
  85. 井川克一

    ○井川説明員 私が申し上げましたのは、サンフランシスコ平和条約で明定されて一おりますのは、台湾及び澎湖島に対する日本国の主権がなくなった、日本国はそれを放棄したということはきわめて明白である。したがいまして、日本国と台湾、澎湖島との縁は切れている。その縁の意味でございますけれども、主権的な意味の領土関係においては完全に切れている、こういうことを私は申し上げたわけでございます。そしてあえてふえんさせていただきますならば、それは日本国の側の事情によるものではなくて、あちら、連合国側の事情によるものの結果として、これは歴史的事実でございましょう、台湾の領土権の帰属に関する最終的決定がなされていないというのが事実だと思います。
  86. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 一九五一年のサンフランシスコ平和条約第二条(b)項ですかでいわれていることを、いま条約局長はおっしゃっているのだと思うのですけれども、それだけがいわゆる台湾の領土権に関する公式な文書であるならば、私も条約局長の御発言には賛成するわけです。しかし、その一九五一年に結ばれた平和条約、そこで日本台湾に関する権利を放棄する、その前に、四三年、四五年のカイロ宣言、ポツダム宣言並びに日本降伏文書に、台湾の帰属は明確に中国に返したのだという、そういう歴史的な事実を踏んまえて、さらに五一年に日本が平和条約でそれを放棄した、こういう歴史の筋道でございますから、これは当然五一年の時点でも台湾の領土権は中国に正式に辺還された、こういう認識に立って、これは間違いでございましょうか。
  87. 井川克一

    ○井川説明員 先生のおっしゃいましたことはまことに歴史的過程における真実でございます。しかしながら、そのような歴史的過程を経まして、最終的処分を国家間の急患として、戦争を終わり、平和状態を回復し、そしてその領土関係を定めるのが平和条約でございます。その、平和条約には、わが国はそれを放棄すると書いてあるのみでございまして、何国に引き渡すとか、何国の領土になるということが書いてない。くどいようでございますけれども、もう一ぺん申し上げますならば、これはしかしながらまた当時の歴史的事実に基づきまして、日本側の事情によるものでないということも事実でございます。
  88. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 大臣、これ以上条約局長とやっておりましても問題でございますが、カイロ宣言、ポツダム宣言並びに日本が戦争を終えんいたしました日本の降伏文書等に、その領土問題が多々うたわれております。これはいわゆる平和条約が結ばれなければ無効である、こういう認識を持つことはどこから考えてもできない。やはりカイロ宣言、ポツダム宣言に取りきめられた領土の問題は、わが国はいくさに負けたわけですから、当然その文書は有効であって、国際的にもきわめて明確な有効性を持つ、このように私は判断するわけです。そうなりますと、こういう歴史的事実を踏んまえた上でかわされたサンフランシスコ平和条約——私はその後のトルーマン声明、またその後の朝鮮動乱等のいきさつも知っておりますけれどもわが国に関する限り台湾中国への帰属ということは、これはきわめて明確な問題ではないか。いま日本政府がここで言を左右にして、その平和条約云々、また平和条約第二条(b)項で放棄した先がさだやかでないから、やがて国際間で協議しなければ台湾の帰属はきまらないがごとき発言をすることは、きわめて日中間にプラスの発言ではない。私はどう考えても、歴史的に見ても、事実の上から見ても、台湾のこの中国への帰属の事実は間違いない。これは私たちがここではっきりさせなければならない問題だと思いますので、くどくど食い下がっているわけなんですけれども、この基本的な認識一つさえ日本政府が明言できないということであるならば、これは日中間の前進なんてことはきわめて悲観的にならざるを得ない。どう考えても、だれが日本がそういう見解を持つことに反論を加え、また非難をするか。だれも非難なんかしないと思います。私は、むしろ今回のニクソン大統領訪中によりまして、大統領が台湾問題にコメントしたら、日本は一体どんな立場になるのか。世界の、国際的な社会の中で日本はきわめてみっともない立場になりゃせぬかという配慮から、こういう質問をいたしているわけです。台湾問題、キッシンジャー補佐官の訪中におきましてもほぼ合意はできているやの情報も流れております。私は、この中国問題を前進させる場合に、また日本の将来の国益考えた場合に、この問題くらいはいまこそ私たちは明確にして、新しい日中問題の転換をはかるべきではないのか、このように考えるわけですが、大臣からの御答弁をお願いしたいと思います。
  89. 井川克一

    ○井川説明員 私、事務屋でございまして、領土権に関する問題は、ほんとうに何ら政策的意図を持って申し上げているわけではございません。平和条約解釈として申し上げておるということでございまして、この点につきましては先般来も申し上げましたけれども、カナダ、イタリアなどがいわゆるテークノート方式をとったこともその趣旨からきているものと判断——帰属が最終的にきまってないということからきているものと判断するわけでございます。あるいはこういうことを引きましていいかどうかわかりませんけれども、サンフランシスコ条約会議におきましてソ連代表の方は第二条の問題につきまして、このことは日本が単に台湾ばかりでなく、北のほうの問題もございまするけれども、単に日本が放棄すると書いてあるだけで、どこに引き渡すと書いてないのはこの条約の欠陥であるということを発言されてもいるわけでございます。このようにこれはまさしく平和条約解釈条約上の解釈の問題でございます。
  90. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 そうしますと、井川さんの御見解は、今後どういう措置がとられれば台湾の帰属は明確になると思っていらっしゃるのですか。
  91. 井川克一

    ○井川説明員 わが国台湾の領土権というものを放棄いたしたわけでございます。したがいまして、この台湾の領土権に対する発言権はないわけでございますが、当時のサンフランシスコ条約時代からの推移を見ましても、少なくとも主たる連合国諸国の合意によって当時は決定するという考えがあったと思われますし、現在までそれがまだ行なわれてないということだと思います。
  92. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 これ以上やってもむだだと思いますけれども、一九五〇年一月五日のトルーマン声明、台湾の領土問題に対するトルーマン声明、それ以降六カ月後に行なわれました朝鮮動乱の勃発までは、この台湾の帰属問題というのは、歴史的に見てもきわめて明確になっておりました。この朝鮮問題が起きてからトルーマン声明の去就につきまして論議がかわされ、また台湾の帰属問題についての態度があいまいになってきているわけですけれども、これはアメリカ台湾をその基地とする場合にその帰属云々に言及することは、私たち日本とは直接何のかかわり合いもない。日本は本来のわが国政府の見解をそのまま続行していれば、これはそれできわめて明快なことだと思うのです。私、この問題についても佐藤総理からも、台湾の帰属は中国であることは疑う余地がないという御答弁をいただきながら、何か先ほどおっしゃった事務屋さんのほうで、その総理の見解はただ政治的判断であるとかなんとかいう御発言があったように伺っておりますが、これは私はわが国にとって明確にしなければならない第一歩ではないか、このような認識を持っております。  先ほど同僚委員からの質疑の中での大臣の御答弁の中で、私国連の復帰問題についてお伺いしたいと思うのですが、大臣は、前の発言中国国連復帰、あと発言中国国連参加という御発言をなさっておられますが、こまかいことで恐縮でございますけれども、この復帰か参加かということは中国にとってはきわめて重要な意味を持つ二字でございます。大臣が意識して使い分けられたのか知りませんが、この中国国連に復帰するのかまた参加するのか、この点はできればことばを統一してお願いいたしたいと思いますが、いかがでしょうか。
  93. 木村俊夫

    木村国務大臣 時に復帰と言い時に参加ということばを一般に使っておりますが、いずれにいたしましても国連における代表権の問題、これが国連の場という多数の場でどう解決されるか、それによってことばの意味もことばの使い方も変わってくるものである、こういうふうに考えております。まあ政府といたしましても、あるいは参加と言いあるいは復帰ということばを使っておりますが、いずれにおきましても多数の場である国連にてどういう解決がなされるかということによって、そのことばの内容も決定されるのではないかとこう考えております。
  94. 大久保直彦

    ○大久保(直)委員 時間もあと四分しかございませんので、いろいろお伺いしたいことがあるのですけれども、最後に日台条約の問題について、私の意見を述べまして大臣の御所見を伺いたいと思いますが、日台条約そのものが虚構であって、中国の成立の歴史から見ましても虚構の上にでき上がったものだという論議は、当外務委員会におきましても論議し尽くされて今日までまいっております。しかし現在の政府一つ中国という立場をとりながら、台湾中国の内政問題である、こういうことを同時に発言をされている。ということは、中華人民共和国の存在というものはもう無視し得ない現在に入ってまいりまして、一つ中国と言いながら台湾一つの内政問題だ、そしてその片方の元来虚構であると思われていた蒋介石グループと日本条約を結んでそれで事足りるということは、これまた虚構と言わざるを得ないのではないか。先ほど大臣の御発言の中で世論云々ということがございましたけれども、この認識は少し違うのではないか。私、昭和十一年生まれですけれども、今日まで中国の問題について正式な教育を受けたことはございませんし、いままで日本国民は、日中間の問題についての正式な正しい認識を持っている人はきわめて少ないのではないか。あくまでこの虚構から出発して二十数年間虚構の上にとり続けてきた中国政策、それのみしか知らされてない。そういう国民世論が不統一だからといって、日本が歴史上大きなあやまちをおかそうとしていることは、私たちは断じて許せないと思います。私たちはいまこそ日本国益、真の日本の国民の利益と合致する外交姿勢がとられてこそ、これからの日本の将来、前途に責任を果たし得る政府の役割りではないか、このように存ずるものでございますが、この台湾の蒋介石グループと日本政府が結んだ日台条約、これに対する考え方わが国が明確にしない限り、幾ら小手先でその場その場をつないでいこうとも、私たちは、この日中間の問題を前進させることはできない、このように思います。日本政府にそれに取り組む姿勢があるかどうか、いま伺っても御答弁はないと思いますけれども、私は、この中国の問題が、いままで政府が口を開けば御発言になっていたアメリカとのパートナーシップ、これが現在打ち破られて、頭越し米中接近が行なわれている。ここで先ほどから同僚委員のいろいろな質疑に対する御答弁を伺っておりましても、私は勇断をもって、いまこそ中国問題は決断のときであり、実行のときである、ここでただ論議をかわすだけでは何らの前進はあり得ない、このように思うわけでありますが、これからの中国との国交正常化、また中国の国際舞台への復帰を心から歓迎する、こういう立場に立たれての大臣の御発言を最後に伺って、質問を終わりたいと思います。
  95. 木村俊夫

    木村国務大臣 いまおことばにありましたとおり、いまやもう中国国際社会への復帰、これは単に国際的な世論の背景のみならず、わが国においても世論の統一されたところであると思います。したがいまして、政府としましては、従来の歴史的現実、それに根ざすところの国内的な関係、また国際世論における中国問題の推移、そういう諸点を総合いたしまして、今後この問題に取り組みたい所存ではございますが、ただ、わが国の置かれました中国問題に対する立場、これは単に国際的環境だけでなしに、非常に強く国内的な根ざしを持っております。そういう国際的、国内的な意味におきまして、世論の分裂を極力回避いたしまして、しかも国際現実に合うような前進をしなければならぬと思います。そういう意味におきまして、いままで承りました御意見等、政府としても十分これを心にとめまして、ただ、そういう政府考え方を率直に申し上げかねる点もございますので、その点については政府の意とするところを十分ひとつ御理解を賜わりたいと思います。
  96. 櫻内義雄

    櫻内委員長 曽祢益君。
  97. 曾禰益

    曽祢委員 去る前国会のちょうど末期の五月二十四日の当委員会で、私は、前外務大臣にこういう趣旨の御質問をしたのです。それは、日華平和条約の、われわれから見て正しい解釈は、やはりだいぶ前ですけれども、十九年前に私自身が二十七年六月二十六日の参議院外務委員会で吉田総理に質問いたしまして御答弁がございましたその趣旨にはっきり返るべきではないか。つまり、その趣旨というのは、この日華平和条約がいろいろな経緯でできたけれども、その原点は、これより先、二十六年の十二月二十四日付の吉田首相のダレス国務長官に対する書簡である。その趣旨の重要な点は、わが国はやがて中国全体の政府と全面的な国交を結びたい、その趣旨を踏まえて当面、そこから先はダレス国務長官の強力な圧力に屈してそう言わざるを得なかったのでしょうけれども、国民政府との間に友好条約を結ぶ、これがやはり吉田書簡の原点に返れという私の意向であるし、日華平和条約はさらに、平和条約という名前を使ったり、領土放棄あるいは賠償等のことばは使っておりますけれども、やはり御承知の付属交換公文によれば、吉田書簡の趣旨は貫かれている。形は平和条約でも実体はやはり友好条約、その点を吉田さんに私は相当食い下がって、吉田書簡のスピリットは変わってないのか、変わっておりません、これは友好条約だ、それは制限的な承認なんだな、そのとおりです、こういう御返事を得ているわけですね。ところが、遺憾ながら、その後の歴代の保守党内閣は、ますますこの条約によって動きがとれないように、国民政府日本とのこの条約が、国民政府だけが唯一無二の正統政府である、したがって、大陸との関係は政経分離だ、経済だけはやりましょう、そういうふうにどんどんいってしまって、それは間違っているんではないか。私自身の考えによれば、いかなる事情があるにせよ、わが国条約を結んだ以上は、わが国がこの条約を破棄するなんかということはあるべからざることである。しかし、原点に返って解釈すれば、その後十九年間に、あるいはその時点では国民政府大陸をもう一ぺん支配するという夢が原理的に見れば実現不可能とも言えなかったかもしれないけれども、そんなことは全然問題にならなくなった。いま正確な解釈をしても、やはりわが国は、この台湾とのいわゆる平和条約、実質的の友好条約を、廃棄とかということでなく、そのままにしながら、なおかつ、大陸との——大陸の支配者は何といっても、中国全体の支配者としての資格を持つ。現実には台湾を解放していないけれども、資格としてはこっちのほうが大きいんです。その大陸の支配者である中華人民共和国政府と何らかひとつ、戦争終結、平和国交回復努力をするということが、これは当然きわまるほど当然であるし、そのことは、日華平和条約の私なりの解釈からいっても十分に合理づけられるのじゃないか。これをおやりなさいということを申し上げて、外務大臣は、時間もないもので研究しますで逃げたという、こういう一つの挿話がある。私は、これは挿話であるとともに、何もそういうことを言って、その後にニクソン訪中というものがあったから、だからという、先見の明だとかなんとかいうことを申し上げるつもりはございませんが、やはりアメリカも、大陸の支配者である中国との間に国交調整を、これは七〇年代の課題であるというので、まあ思い切った手を打った。また、人民政府のほうも、アメリカ帝国主義の元凶であるべき大統領みずからを招待するという思い切った手を打った。こういう時点から考えれば、どうもわが国の現在の佐藤内閣外交が後手後手にあまり行き過ぎているんじゃないか。もうこの辺で——いま私の申し上げたのは、同僚坂本委員、党は違えども、同じことを言っていらっしゃるのじゃないかと思うのですね。それが国民の常識じゃないんでしょうか。外務大臣が言われたように国民の八五%は、なるべくすみやかに大陸の中華人民共和国との国交調整をやるべきである。ただし、六八%は、これは毎日新聞の世論調査によれば、台湾との関係もやはりなるべくそのままにしたい。これは私は、民の声は天の声だと思いますけれども条約があるからできないなんか言っている間に、日本頭越しに両巨頭会談ができるという、こういう情勢なんですね。  私は、そこで政府に、総理大臣みたいな逃げ腰ではだめなんで、もっとこれは政府がこの難事業に当たる、こういう決意を持って真剣に努力されるのがいいんじゃないでしょうか。日本のいろいろな民間の団体が行かれるのもけっこうです。けっこうでございますけれども、やはりほんとうの交渉の資格があるのは政府なんであり、政府は、日華平和条約の存在にかかわらず、国交調整に努力する権利をはっきり持っている。国民政府に対する説得、納得はけっこうです。これは私は必要だと思う。しかし権利としては持っているし、時期としてはもうやらなければならない、こういうところに来ていると思いますが、その点はどうお考えですか。
  98. 木村俊夫

    木村国務大臣 その点では、私もきわめて同感でございます。したがいまして、この国連における代表権の問題あるいはもっと直接的な、中国を一体どうわが国との関係で扱うべきかということのいろいろからみ合いもございますけれども、この面につきまして、まず先ほど申し上げましたとおり、日本の国内世論というものがそこまで成熟しているかどうかという点は、いま仰せのとおり、もうすでに日中国交回復を主張する意見が多数を占めておりますことは、政府もよく存じております。しかしながら、この問題が二十年来長く台湾との問題とのからみ合いで非常に複雑な世論形成を経ておりますので、これを政府が、どう一体イニシアチブをとって、この世論形成に対してどういう対応をするかということについては、きわめて複雑なむずかしい問題が国内政治的にも残されております。そういう意味におきまして、今回ニクソン大統領がとりましたあの措置、これは必ずしもわが国の政治的風土、国民的風土にはマッチするとは、私は思いません。しかしながら、今後のこの日中問題に対する重要性、これはいまや日本外交最大課題であるという認識のもとに、政府といたしましては、この問題に対する取り組み方をより真剣にやらなければならぬ時期に達しておると考えます。しかしながら、これを行なうにつきましても、従来の世論の複雑な内容、また国際社会がこの二、三年でこそこういうような結果になりつつございますけれども国際社会における中国問題の認識すらこの段階になりましたのはきわめて近い、この二、三年のことでございます。そういう意味におきまして、日本が他の諸国とこの中国問題に対する立場の相違、これは十分認識しながら、しかも国際情勢の中における中国問題の発展、これを十分把握しまして、ことばはきわめて間接的でございますが、ある時期に勇断をもってこれに当たるべきだ、こういう考えを持っております。
  99. 曾禰益

    曽祢委員 似ているようで、だいぶまだ遠いと思いますけれども、勇断はもう必要になってきていると思いますし、この勇断というのは、何も台湾条約を破棄しろとか、そういう前提に立った国交調整に入れということを私は申し上げておらない。これはいろいろな——ニクソン大統領のように、ほんとうにほとんど交戦国に近いような関係であった中華人民共和国に大統領が行くのですから、それこそ勇断であるとともに、これが即通常の意味承認であろうなかろうにかかわらず、もっと大きな外交意味ですね、そのくらいなことをやはり政府がやらなければいけない。民間にまかせておいてはいけないという時期に来ているのじゃないか。このことを申し上げているので、私は、日華平和条約に関する私の解釈は、一方において政府に勇断を促し、他方においては日華平和条約を破棄してから、それで交渉に入るという態度でなくていけるはずである、こういう意味において、両面に向かって、私はそういうことをぜひ提唱したいわけです。真剣なお考えを求めます。  それから国連代表権の問題については、もうすでにこれも同僚各委員の御発言の中から、いま外務大臣答弁の中にもこれでいい線が出ていると思うのは、来たるべき国連総会の機会に、中国国連代表権を妨げない。私は、これはミニマムだけれども、これがポイントであると思うのですね。つまり理屈はあります。どちらの政府こそが中国代表者であるかという問題が、手続問題であるが実質問題。いろいろありましょう。しかしそういったような、かつては中国代表権問題で、たな上げ案を提案してみたり、あるいは日本の議運の手続論みたいな、いわゆる三分の二の重要事項指定方式ということで、中華人民共和国に、当然国連の普遍性から見ると議席を与えなければならない、その与えることをあるいは討議することをブロックしよう、そういうような小細工はもうやめるべきである。そうしてそこから先がなかなかむずかしい問題だと思いますけれども、たとえて言うならば、アルバニア決議案の第一項、中華人民共和国に総会の議席を与えろ。私は、趣旨からいえば、安保理事会も与えるべきだと思います。まず総会に議席を与える。そのことに対しては、反対する理由はないのじゃないか。こういうふうに考えるのですが、先ほどおっしゃった、そっちの面ですね、国民政府の処遇の問題、いろいろあります。アルバニア決議案の第二項、これはなかなかわれわれは賛成しがたいと思います。しかし第一項をさっと通すということもあり得るのではないか。こまかいテクニックに入らずに、外務大臣が先ほど答弁の中で言われた、少なくとも日本政府の新しい国連対策というものは、中華人民共和国政府国連における当然の、正当な地位回復あるいは獲得、代表権承認、何でもいいですけれども、それは妨げない、このくらいなことははっきり言えるのじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  100. 木村俊夫

    木村国務大臣 いま御指摘のとおり、中国がどういう形で国連に復帰するか、これはたいへん国連の法律的な立場からいってむずかしい点もございます。したがって、アルバニア決議案のごとく、正当な代表権回復するというような形もございましょうし、また従来国連理事国の席を占めておりました中華民国政府との関連をどう一体国連の場で解決するか。いろいろ国連における方策の問題はございましょうが、ただ率直に申しまして、いまや中国国連の舞台に、国連社会に復帰すべきであるということは、当然これは世界大勢でございますし、またわが国ももはやそういう意味において、十分国際社会に成熟した中国を迎えることについては、いささかの反対もすべき立場ではないと思います。そういうような関係を多数の社会である国連の場で、一体いかなる方式、決議案の内容でこれを実現するかという、そういういわば方法論の問題もございましょうが、あくまでそれは方法論として現在国連中国を迎え入れるべきだという国際世論、これはわれわれもこれに対して賛成をしなければならぬ段階であると思います。ただそのために、いま曽祢委員が御指摘になりましたように、従来国連社会に席を占めておりました中華民国政府をどういうふうに国連の場で今後扱うべきかということについては、これはもちろん政府考え方もございましょうが、国連という多数社会における取り扱いの点でもございますので、これはもう少し時をもって各国政府との話し合いの中でその道を見出していくべきではないか、こう考えておる次第でございます。
  101. 曾禰益

    曽祢委員 少なくとも国連における中華人民共和国政府代表権承認については、これを妨げない、迎える、こういう意味においてその基本的な態度はいままでよりか一応明確になったと思ってこれを了とします。  次に、沖繩協定といいますか、ニクソン訪中ということがもたらしたいろいろな日米関係あるいはアジア、極東の緊張が、私は大体緩和の方向だと思いますけれども国際情勢に与える影響、いろいろあると思うのですが、全体として、日本政府がまごまごして自主的な外交をやらなかったために戸惑いしている点はまことにみっともないと思うのです。同時に、やはりこの冷厳なパワーポリティックスからいえば、やっぱりビッグツーが出てきて本番になったような気もいたします。緊張緩和への展望が一応開いた、開きつつあるということはいいことだと思う。ただ、この場合に、同僚議員からも御指摘があったように、わが国考えなければならないのは、緊張緩和でいい、いいだけでも言えないじゃないか。たとえば米中関係の改善等についてどこまで話は進んでいるか、これこそまだわからないのですけれども、おそらく台湾海峡の緊張緩和について、米軍の台湾海峡並びに台湾からの撤退ということが一つの主軸である。もう一つのもっと大きな主軸はベトナムからの撤収だと思いますし、それらの問題に対する中国側のかなり弾力的態度ということが、今回のいわゆるキッシンジャー特使のやってきた結果だと思うのですが、そういう面はたいへんにいいようだけれども、同時にたとえば日米関係、特に沖繩返還交渉等をめぐる情勢からいうと、これはもう完全な冷戦構造の所産なんですね。確かにわれわれも、ベトナム戦争の見通しがないのにとにかく早期核抜き本土並みという、おぼろげながらそういう形の方向で返還ができるということは、やはりいいことだと思うけれども、しかしその背景において非常に沖繩の冷戦下における地位、したがって沖繩が本土になり、本土そのものも安全保障条約、それが持っている極東条項等々の心配というものはあるわけです。ところが、そういう所産である協定がここにできて、時代はかなりがらっと変わって、まだ少し早いけれども、大体冷戦構造がかなり緩和する。その点ではいいんだけれども、はたして日米関係、それから沖繩返還後の基地の内容等から見て、日本は、アメリカがそういう意図である、ないにかかわらず、米中は接近しようとする、台湾海峡は第七艦隊、それから在台米軍というものが撤収する、しかし、日本列島と沖繩を第一線的な冷戦構造としての基地というものが、依然として残るというようなことになる心配が皆無ではないと私は思う。私は、この沖繩協定ができたことも、やはり大きく見れば、ニクソン・ドクトリン、アジアからの、無理な前進基地からの撤収という基本方向においては、今度の米中接近と相反するものじゃない。しかし、どうも協定の個々の内容等には、いろいろ冷戦の所産そのものみたいなものが多々ある。たとえば、基地を一つ考えても、非常に——たとえば嘉手納基地なんて考えれば、ベトナム戦争がほとんど終結に向かう、台湾海峡からも第七艦隊が撤収する、台湾におけるアメリカ兵力も撤収するという場合に、嘉手納基地をそのまま残したような協定のままでいいのかどうか。必ずしも私は、この際アメリカに対する不満だけぶつけて、全部御破算に願いまして、もう一ぺん沖繩協定をやり直せというほどのことを申し上げるつもりはございません。しかし、いままでの交渉の結果のままでおいて、そしてこの十月の国会であのままで承認するということがいいのかどうか。もう一つ、たとえば基地返還の内容をもう一ぺん検討してみる。さらに日米関係全体を考えてみると、今度のアメリカの仕打ちも、一時間前の全くの形式的な通告である。そういうことをもたらした日米間のすき間風ということについても、やはり繊維交渉の際に官房長官が、日本の民間業者とミルズ歳入委員長との話し合いができたら、政府間交渉はいきなりもう取りやめたという、これは大統領に対する平手打ちにひとしいくらいのまずい、アメリカに対しやはり信義的に決してよくなかったと思うのです。そういう問題があるし、日本政府全体がやはり飢餓輸出というか、公害を持ちながらただ輸出だけに狂奔し、そして日本のための、日本の中小企業や農業の体質改善のほうをやらずに、ただ自由化だけをおくらすというようなことに対する不信感、そういう点もございましょう。また安全保障の問題でも、こういうふうに変わってくると、やはりわれわれが根本的に言っておるように、日本の再軍備というような方向を絶対にわれわれはとるべきでない。アメリカとの限定された防衛協力は私は必要だと思う。しかし、日本におけるアメリカ軍の極東の平和のために出撃する基地というような形は、こういうものもこの際ひとつ考え直していかなければならないのではないか。いろいろ前提がございますが、そういったような一連の関係から、沖繩協定そのものについてもうあれはできたのだ、もうあのままでいいのだというような安易な考えではなくて、新しい波にかんがみて——冷戦構造的なもので政府としてもこれは遺憾だと思っておるところが多々あると思う。そういう点をもう一ぺんひとつ新しい情勢から検討し直して、前向きの姿で両国ともにこれを検討するようなお考えはないのか。特に基地の整理等については、もう一歩進めていかないと、沖繩及び日本本土が最先端的な冷戦構造の前進基地になるという皮肉な結果を招来してもまずいのではないか。だからこそ、一方においては日本みずからの姿勢中国大陸との和解、国交調整に努力することは当然であるけれども、同時に日米関係における安全保障、基地のあり方等についても、なかんずく沖繩協定等の内容に触れたもう一ぺん新たな観点からの検討を必要とするのではないか。そういう検討の中からこそ、日米の新しい時代における協力関係の正しい位置づけがされるのではないか。あえてそういうことを——くさいものにふたでなくて、そういう勇断をひとつふるわれんことを政府に要望したいのですが、外務大臣のお考えを伺いたいと思います。
  102. 木村俊夫

    木村国務大臣 私もその点におきましてはきわめて同感でございます。したがいまして、一つ条約機構または政府間の協定、そういうものがそれを取り巻く情勢の推移によって、形そのものは残りますが、実質的に非常に変化を経るということは、これは国際的な現実でございます。したがいまして今回の、まだその結果は確認し程ませんが、かりに米中間において緊張緩和がきわめて顕著にもたらされた場合に、次の国会で御審議を願うことになっております沖繩返還協定の形はそのままにおきましても、その内容的な現実、また運用、特にその中に含まれております米軍基地のあり方、運用は、当然実質的に変わらざるを得ないと思います。そういう意味におきまして、わがほうもいままでの日米関係、とにかくそういう相互防衛関係は、もちろんこれは現実に踏まえながらも、その運用の面でアジアにおける緊張緩和のために十分考えをしていかなければならぬと思います。  お答えになっているかどうかわかりませんが……。
  103. 曾禰益

    曽祢委員 先ほど同僚委員の御質問に対して、外務大臣はこういう趣旨のことを言われましたね。米中の接近は一昨年十一月の沖繩返還に関する日米共同声明を実質的に変える。これは主として台湾地域の平和と安全が日本にとって非常に重要である、これに触れられて言ったことだと思うのです。むろんあれは台湾という国と日本とが運命共同体だというような意味ではなくて、台湾地域において一大戦争でも起こったら、これは日本の安全なんか吹っ飛んでしまうというふうにもとれるのだけれども、私はよけいなことを言ったものだということを、朝鮮に対する言及よりなお私はこの点は政治的によけいなことであり、まずいという感じがしたのですけれども、そういう点が台湾海峡における緊張が緩和できるとすればたいへんにいいことではございます。しかし、同様に、そうであるとするならば、沖繩の基地のあり方、内容も、いままで協定はできちゃったのだ、もう一ぺんやり直すと、とてもアメリカの上院を通りそうもないやという考えでなく、やはり私は検討をする必要があるのではないか。それこそほんとう意味緊張緩和になるし、また沖繩の島民諸君の希望にも合致するのではないか。こういう意味で、少し原則的なことで、時間がありませんから、この程度にとどめますけれども、十分にお考えの上、どうもこのままで漫然と十月の国会を迎えられるよりも、もう一ぺん新しい米中接近動きに応じて沖繩協定の内容の検討をするということを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。  なお、もう一ぺんいまの点に関する外務大臣の御答弁を要求します。
  104. 木村俊夫

    木村国務大臣 国際的な従来の約束ごと、これがそれを取り巻く情勢の変化によって、形は残っても、その内容あるいは運用が変化するということは国際的な現実としてわれわれもよく見るところでございます。そういう意味におきまして、次の国会で御承認を仰ぐ予定の沖繩返還協定の中身も、それを取り巻く国際現実のあるいは緊張緩和によって、また今回の米中接触によってまた内容的変化を受けるであろうということは当然想像できることでございます。したがいまして、従来のいろいろ条約機構がそれを取り巻く現実な環境によってその内容——形はそのままに置いても内容、運用が非常に変化するという従来の例から考えまして、そのような面にこれから日本として、政府といたしまして努力を傾注しなければならぬ、こういう考えでございます。
  105. 櫻内義雄

  106. 松本善明

    松本(善)委員 本日の委員会で、木村外務大臣代理は、いままでとはかなり違った新しいことを言われたと思います。中国国際社会に復帰する条件はすでにできている。それからできるだけ早い機会に中国国連に復帰することを希望するということに始まりまして、いま言われたように、国連社会に中国が復帰するということは世界大勢である、国際社会中国を迎えることに賛成せざるを得ない、こういうところまで言われるということになった。  私は、そこで外務大臣代理に伺いたいのは、こういう方向で事を進めていきます場合に、手探り外交というわけにもいかないわけであります。やはり見通しを持って進まなければならないと思いますが、このことしの秋の国連総会には中国が復帰をするということは大方の見通しとして言われておりますが、外務省といたしましては、この中国国連復帰の見通しについては、どういうふうに考えて事に対処をしておられるのか、この点についての御所見を伺いたいと思います。
  107. 木村俊夫

    木村国務大臣 国連の場におけるこの中国復帰の問題、非常に流動的でございます。したがいまして、中国の問題に非常に重大な関心、また利害関係を持っておる国々は別といたしまして、それほどの関心あるいは利害関係を持たない国の動向がきわめて流動的でございますので、まだ政府におきましてはその成り行きを把握するにまた時間を要すると思います。しかしながらそういう国際的な傾向とは別に、わが国がこの中国国連加盟にどういう一体態度をとるべきかということについては、先ほどから申し上げましたとおり、いまや中国国連社会に復帰すべきであるという根本的な考え方に基づきまして、いま友好諸国とせっかくそれについての協議をしておる最中でございます。
  108. 松本善明

    松本(善)委員 ついでにいろいろお伺いしたいと思いますが、安保理事会で、中国が常任理事国になるということについては、どのようにお考えになっておるか、お聞きしたいと思います。
  109. 木村俊夫

    木村国務大臣 安保理事会に中国が席を占める、あるいはその結果安保理事会から従来の台湾が、国府がそれから外へ出るということ等も含めまして、たいへんこれは今後国連の将来を決定する非常に大きな影響を持っておりますし、またそれがわが国はじめ各国の中国に対する方針決定に非常に影響を与える問題でもございまするので、いまだそれに対して政府の、また各国間の話し合いは結果を見ておりません。
  110. 松本善明

    松本(善)委員 新聞の報道するところによりますと、ニクソン訪中関係してアメリカ政府筋の背景説明で、アメリカ訪中までに国交樹立ということはないかもしれないが、訪中中に国交樹立はあり得る、その可能性はないではないというようなこともいわれております。この点については政府はどういうふうに情報を把握しておられるか、お聞きをしたいと思います。
  111. 木村俊夫

    木村国務大臣 今回のキッシンジャー補佐官の中国訪問、いろいろ情報はございますが、私どもの見ておりますところでは、まだそこまでの段階米中間が進むようには受け取れておりません。
  112. 松本善明

    松本(善)委員 中国国連復帰には賛成せざるを得ないということを言われたわけでありますが、その場合に、中国国連に復帰をして日本中国国交回復をしていないという事態はあり得るかどうか、この点についての御所見を伺いたいと思います。
  113. 木村俊夫

    木村国務大臣 従来もそういう例はございます。わが国国交のない国が国連に入りまして、事実上の関係であるということは従来もございます。ただ、その際に、この国連加入につきまして、賛成をすれば事実上の承認関係に入るという前例はあったことも事実でございます。
  114. 松本善明

    松本(善)委員 それでは、ベトナムの問題について伺いたいと思います。  外務大臣代理は、アメリカの国防総省の秘密報告書に関する記事をお読みでございましょうか。お読みであるといたしますと、これをいろいろお読みになっての御感想、これをまず最初に伺いたいと思うのであります。いかがでございましょう。
  115. 木村俊夫

    木村国務大臣 私は報道されたものを見ておりますが、これに対して政府立場でかれこれ申し上げる筋ではない、こう考えております。
  116. 松本善明

    松本(善)委員 このベトナム政策というのは、いま世界で最も戦争の火をふいておるところでありまして、世界の平和を願う者にとっては最も重大な関心事でなければならないと思います。いやしくもアメリカの国防総省の秘密報告書で世界の世論が、ニクソン訪中の前など、特にアメリカの中でも非常に大きな問題になっていた。いままでのベトナムでのアメリカの軍事行動について再検討しなければならない。これはアメリカの中では世論といってもいいのじゃないか。先ほど外務大臣代理は、アメリカではベトナム問題は非常に大きな比重を占めているということを言われました。そうだとすれば、このベトナム政策について、この秘密報告をもとに政策を再検討するということはどうしても必要なのではないかと思います。そういう必要を外務大臣代理はお感じになりませんでしょうか。このベトナム政策について、日本のベトナム問題についての対応のしかたについても、あらためてこの秘密報告に基づいて再検討をする必要があるのではないか、こういう問題をお考えにはならないか、こういうことでございます。
  117. 木村俊夫

    木村国務大臣 いま御指摘になりました点だけでベトナム問題の政府の取り細み方を変えるということは考えませんが、このベトナム問題についてはわがほうは御承知のとおり全く中立的な立場を堅持しておりまして、いまお話のあったようなことは現時点では何ら考えておりません。
  118. 松本善明

    松本(善)委員 報道だけではなくて、原文があるわけですね。あれだけのものがアメリカの裁判所でも公表が認められているわけです。日本政府としてその原文を取り翻せて、アメリカ政府に要求して、そして日本の自走的な判断でこのベトナムの問題についてどう対処するか、世界の平和を確立するためにどうすべきかということを検討するのは当然外務省の任務ではないかと思いますが、そういうことをおやりになるお考えはありませんでしょうか。
  119. 木村俊夫

    木村国務大臣 今回出ております機密文書、これは国防総省にかかる機密文書であります。したがいまして、アメリカ政府全体として、ホワイトハウスあるいは国務省としてはこれについての何らの見解をまだ述べておりませんし、またそういうような米政府内の経過につきまして、わが政府といたしまして一々これに対する言明あるいはそういう意見を申し上げる段階ではない、そういう性質のものではない、こういう考えでございます。
  120. 松本善明

    松本(善)委員 この秘密報告によりまして、アメリカはベトナム戦争を遂行する思想的な手段の大半を失ったというふうにさえいわれております。正当な戦争ではないということが、これは非常に明確に、だれの目にも明らかな形で出てきておるわけです。私はまだその成文をお取り寄せになっていなければ、新聞報道だけでまだ何とも言えないというならまだわかりますが、それについて正確な資料を入手をして、日本の進路について誤りなきを期するように検討するということさえ考えないというのは、まことにいかがかと思うのですよ。もう一度その資料を入手をして検討するという意思が全くないのか、伺いたいと思います。
  121. 木村俊夫

    木村国務大臣 当然政府といたしましては、外務省といたしましてもそういう文書を正当なルートで入手する筋のものではないと思いますが、いまいろいろ出ておりますそういう事実については、十分検討をいたしたいと思います。
  122. 松本善明

    松本(善)委員 このベトナム戦争と日本との関係の問題でありますが、これについては、アメリカの古い資料から申し上げますが、六六年に行なわれましたアメリカ上院の軍事委員会で、ベトナム追加戦費可決報告書というのがあります。その報告書では、日本本土はベトナム戦争のための最も重要な補給基地であり、アメリカによる在日施設の利用は急増する見通しである。アメリカ本土よりベトナムに近く、高度の航空機産業を持っている日本では、ジェット機その他の軍用機の修理ができ、電気機器、建設資材、さらにはジャングルシューズ、砂のう、鉄条網、米兵用のカメラ、テープレコーダーなどの調達が行われている。ということがいわれております。そして、日本と沖繩が後方補給支援地域という規定で、二億ドルの緊急の資金をつぎ込むということになっておる。こういうこともありますし、また、六七年のアメリカ上院軍事委員会の軍備調査分科委員会でのベトナム戦参加のアメリカ海軍、海兵隊戦力の実情調査報告書によれば、ベトナム戦争で出動中のアメリカ海軍は、日本台湾の艦船修理施設に大きぐ依存している。これらの施設は非常にすぐれたものを持っている。特に日本の横須賀、佐世保なしでは東南アジアにおける作戦は重大な困難におちいるだろう、こういわれておるわけであります。これは日本がこのベトナムにおけるアメリカの軍事行動に対しまして、直接の公然たる出撃基地にこそなっていませんけれども、補給、休養その他の重要な後方基地になっておることは、アメリカ自身がいっておることです。私は、このことについて、日本世界の平和について非常に重要な責任を持っていると思うのであります。こういうことを私はやめる必要があるのではないか、これは日本のベトナム政策であると思います。その問題について、いま木村外務大臣代理は就任されたばかりでありますけれども外務省としてほんとうに真剣に検討しなければならないというふうにはお考えにならないかどうか、伺ってみたいと思います。
  123. 木村俊夫

    木村国務大臣 御承知のとおり、アメリカとの間には日米安保条約を結んでおりますので、その範囲内における米軍の補給その他については、その目的が那辺にあるかということは別といたしまして、日米安保条約に基づく当然の義務でございます。
  124. 松本善明

    松本(善)委員 私が申し上げておりますのは、このベトナムでのアメリカの軍事行動に日本の基地をそういう形で使わせるということが、安保条約の目的の範囲内かどうかということについて、検討しなくていいのかどうかという問題なのであります。その点についてはいかがでございましょう。
  125. 木村俊夫

    木村国務大臣 ベトナム戦争ができるだけ早く終息するという面においては当然政府考えておりますけれども、ただ日米安保条約の運用という面で、その面における米軍の行動について、日米安保条約に基づくいろいろな条件内において行なわれる問題につきましては、従来政府としては、そこまで介入することができないということになっております。
  126. 松本善明

    松本(善)委員 私は、安保条約の目的に反する基地の使用のしかたということがあった場合には、日本政府としてそのような基地の使い方をするなということを要求するのが当然であるというふうに思います。あらためてこのことを外務省が検討されるように要求いたします。  もう一つお聞きしておきたいのは、レアード国防長官に総理が約束をされました経済援助の問題であります。  この経済援助は、総理は本会議では、経済援助はするが軍事援助はしないということを言われました。サイミントン委員会の議事録によりますと、軍事援助とはっきりわかる経済援助は日本の国会においておそらく将来とも問題を起こすだろう、しかし経済援助という名が冠されていても実質は補給援助——これは外務省の仮訳によるものですが、原文はサポーテイングアシスタント、まあ支持援助と言うほうがいいかと思いますが、補給援助と呼べるような極数の援助があり得るのであって、そのようなものであれば日本も供与することが可能であるかもしれない、こう言っております。これは経済援助という名の実際上の軍事援助ということが言われておるわけです。私がこのことを特に申しますのは、ビン七項目提案で、グエン・バン・チューを支持するような一切の策動というのは、これは自決権の尊重に反するんだ、こう言って非難をしているのですね。いまの時期にこういう性質の経済援助をするということはベトナムの和平提案をぶちこわす、挑戦を意味するのですね。だからベトナム民主共和国のニャンザンもこれを非難しております。私は、こういうことは慎重にやらなければならない。私の考えからするならば、日本のあり方としては絶対にあり得てはならないと思います。政府としても軽々にこういうようなことをやることはいかぬのじゃないかと思うわけです。この点について、私が申しました問題点、時間十分ありませんけれども外務省としてあらためて検討をされる考えがあるかどうか、伺いたいと思います。
  127. 木村俊夫

    木村国務大臣 先ほどお話のありましたレアード国防長官との話し合い、御指摘のような話の内容はございません。ただベトナムに対する民生安定のための援助、これは国際人道上からいっても当然あるべきものだと思いますし、もうすでに相当戦火のおさまりました地域に対する経済建設のための援助、これも当然私はやってしかるべき問題だと思います。ただ、現時点では北ベトナムに対するそういう援助はまだ実現しておりませんけれども、ある時期が来れば当然、私は、ベトナムの南北を問わず、そういう人道的民生安定のための援助は行なわれるべきだ、こう考えております。
  128. 松本善明

    松本(善)委員 経済援助と民生安定のためというふうに言われますけれども、実際の評価というものは違うわけです。アメリカ側の評価も違うし、ベトナム側の評価も違うんです。事実上は軍事援助と受け取られているわけです。私は、日本の国会の答弁でそういう軍半援助じゃなくて民生安定のための援助だ、こういうふうに言われましても、国際社会では通用しないのじゃないかと思うのです。そういう意味で私はあらためていまの時点で——これはニクソン訪中の背景にもベトナム問題があるということは論ずるまでもありません。私は、外務大臣代理がこのベトナムの問題について、日本立場に立って、世界の平和を着実に実現をするという立場に立って深く再検討するということ、先ほどその示唆もありましたけれども、そのことを強く要求して、その点についての外務大臣代理の最後の御意見を伺って質問を終わりたいと思います。
  129. 木村俊夫

    木村国務大臣 その点につきましては、御意見として十分承っておきます。
  130. 松本善明

    松本(善)委員 終わります。
  131. 櫻内義雄

    櫻内委員長 次回は、来たる二十四日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時四十六分散会