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1971-09-04 第66回国会 衆議院 沖縄及び北方問題に関する特別委員会公聴会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年九月四日(土曜日)     午前十時四十四分開議  出席委員    委員長 床次 徳二君    理事 池田 清志君 理事 宇田 國榮君    理事 大村 襄治君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 中谷 鉄也君       國場 幸昌君    田中 龍夫君       西銘 順治君    本名  武君       山田 久就君    豊  永光君       上原 康助君    美濃 政市君       中川 嘉美君    川端 文夫君       安里積千代君    瀬長亀次郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣         (総理府総務長         官)      山中 貞則君  委員外出席者         総理府総務副長         官       砂田 重民君         防衛施設庁総務         部調停官    銅崎 富司君         沖繩北方対策         庁長官     岡部 秀一君         沖繩北方対策         庁総務部長   岡田 純夫君         外務省アメリカ         局長      吉野 文六君         外務省経済局長 平原  毅君         大蔵大臣官房審         議官      前田多良夫君         大蔵省理財局国         庫課長     宮崎  尚君         大蔵省国際金融         局企画課長   山田 久治君         通商産業省通商         局市場第三課長 堀  嘉道君         沖繩及び北方問         題に関する特別         委員会調査室長 綿貫 敏行君     ————————————— 委員の異動 九月一日  辞任         補欠選任   小平  忠君     川端 文夫君 同月四日  辞任         補欠選任   桑名 義治君     中川 嘉美君 同日  辞任         補欠選任   中川 嘉美君     桑名 義治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  沖繩問題に関する件      ————◇—————
  2. 床次徳二

    床次委員長 これより会議を開きます。  沖繩及び北方問題に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。西銘順治君。
  3. 西銘順治

    西銘委員 ただいま、沖繩立法院議長並びに祖国復帰協議会会長代理から、沖繩におけるドルと円の切りかえの問題について、切実な陳情がなされたのであります。政府は、第一次復帰対策要綱におきまして、沖繩ドル切りかえの基準といたしまして、一ドル三百六十円の公定レート基準として切りかえるということがはっきり打ち出されておりまするし、外務大臣並びに主管大臣も、一ドル三百六十円を基準として、ドルと円の交換を行なうということをたびたび言っておられるのであります。私たちはこの点について一まつの不安を持ちながら、たとえ円の切り上げがあっても、沖繩に関する限り一ドル三百六十円の公定レート基準として換算されるのは間違いない、かように楽観をいたしておったのであります。ところが、突如といたしまして八月二十七日、私たち日本が、二十余年間堅持してまいりました固定相場が一夜にして変動相場制をとることになりました。沖繩県民の不安はたいへんなものでございまして、それに伴って、現地における消費物価は日一日と高騰いたしまして、消費物資について申し上げましても、約一五%から二〇%の上昇を示しているわけであります。いま沖繩におきまして預貯金残高が約八億五千万ドル流通貨幣が一億ドルもあるといわれておるのであります。したがいまして、変動相場制がいよいよ固定相場に落ちついて、これが一〇%の切り上げになったということになりますると、沖繩全体の受ける損害は九千五百万ドルから約一億ドル近い大きな損失をこうむるわけになるわけであります。われわれにとりまして、戦後営々としてかせいでためた預貯金であります。しかしながら、本土外貨保有高、大体百三、四十億の残高から申し上げますと、わずかに一%足らずの沖繩損失でございます。これに対しまして、政府恒久対策緊急対策いろいろ苦心をして、技術的にこれを救済する道を考えておられるようでございます。  そこでお聞きしたいことは、八月二十七日突然大蔵省当局の発表によって、変動相場制に切りかわったのでありますが、その際に、沖繩に対するドル切りかえの配慮がなされたのかなされなかったのか、われわれとしては非常に疑問に思え、かつ情けなく思っておるわけでございますが、これについての山中大臣の御見解をただしたいのであります。
  4. 山中貞則

    山中国務大臣 まず、私の本問題に対する基本的な考え方から申し上げておきますが、沖繩復帰まで二十七年間祖国と隔絶された社会の中に置いたことの責任、その責任の上に立って、沖繩にこれ以上犠牲をしいることは本土はできないし、やってはならないことであるというふうに考えております。したがって、今回の変動相場制移行に伴う沖繩現地の現実の混乱、あるいはまた復帰前に一ドル三百六十円が交換をしてもらえばすべてがおさまるのであるという当然の御主張というものに、担当大臣として私も耳を傾け続けておるわけであります。しかしながら、これを実施する際においては、極端に、高度の秘密と水も漏らさない手配をやった後でなければ表に出せない事柄であることは、議員諸公においては御存じのことでありますので、まず、今回の変動相場制採用にあたって、政府としてどのような考え方をしてそれに踏み切ったかについてお答えをいたしますが、水田大蔵大臣より私のほうに電話がありまして、総理の御意思もあり、了解を得たいということでありました。総理意思とは、変動相場制採用するにあたって、沖繩の問題は本土と違い、国民一人一人の問題である、本土においては、外国と何らかの接触を持つときに問題が起こるのであって、国民生活においては変わりはないことであることを念頭に置き、担当大臣ともよく相談をしてほしいという要請があったことの裏づけでありますが、私はその際、その当日のドル買いが十四、五億ドルに達するという状況の中でありましたので、やむを得ず、変動相場制採用円切り上げよりもよろしい、円切り上げをやる場合には、事前にもっと具体的な手を打たなければできないことであると思いましたし、私自身は、変動相場制はあくまでも一ドル三百六十円というものが根底にあって、そしてその上に立って採用されるものであると思考する。具体的にいうならば、日本にとって、一ドル三百六十円に対し、上下〇・七五%の変動幅採用していたわけでありますし、IMFの設定した一%幅の中の数値を日本はとっていたわけでありますから、実質上その上限、下限が撤廃されるということだけであって、三百六十円の基本的なレートというものには変わりはない旨を大蔵大臣に念を押しました。大蔵大臣も、その点は変動相場制がそのような立場に立つものである以上、異論はないということでありましたので、一ドル三百六十円というものが消えていない限り、私においては措置する手があると考えて、やむを得ないものと了承いたしました。  当然、事前に公的な琉球政府への立場をおもんぱかって連絡をしなければならなかったのでありますが、屋良主席宮崎知事会議に行かれまして、台風の関係で混乱しておりましてつかまえることができなかったということで、お会いしたのは土曜日の夜になったわけでありますけれども、事前にそのような連絡ができなかったことは申しわけないことであると思いましたけれども、直ちにみずから筆をとって、そして総務長官談話沖繩県民皆さんに発表した次第であります。  私は、単に口先だけで冷静に受けとめられ、そして慎重に対処されたいということを言ったつもりではありません。冷静に受け取っていただくためには、自分がこれから答えを出さなければならない立場にあることを十分承知いたしております。原則は、あくまでも沖繩のいっておられる復帰前の交換であり、その際のレートは一ドル三百六十円であるということは当然の前提でありますけれども、実行には相当な手順を要しますので、それ以前になさなければならないことの、いわゆる混乱状態が起こるであろうということをおもんばかったわけでありますが、先ほどの陳情にもありましたし、ただいまの西銘君の質問にもありましたように、私どもの手元で集計いたしましたところでも、物価変動というものが、その変動相場制採用によると思われる部門が相当大きく影響しておることも否定できないわけであります。  そこで、全物資について一〇%の幅を見てという御要求に立った一応の金額等もいただきましたけれども、全物資といっても、これはなかなか押えにくい問題であり、したがって、差しあたり県民日常生活に必要な物資というものに限定せざるを得ないだろうと考えまして、物資について相談をいたしながら、最終的に一応の暫定基準をもったものをはじき出したのが、七億円に若干の余裕を持った十億円という金額でありました。このことは、すでに現在起こっております本土からの必需物資の積み出しに伴う決済のしかた等について、混乱が起こっておりますことを鎮静させる役目は持つものと思います。しかしながら全物資ではありませんから、そのほかに必要と思われる物資の値上がりというものが予想されるであろうし、あるいは本土業界においても、リスクをカバーする意味の変動相場の五%前後、あるいはリスクをさらに見て、一〇%前後の契約の上積みを認めなければ積み出さないという業界もあるであろうことも察するにかたくありません。  そこで、ただいまとったような措置において、琉政も現地行政責任当局として、生活必需物資についての配慮は一応してあるわけでありますから、その品目についてはしかるべき行政措置をとってもらいたい。そして、なおかつ県民日常生活に重大な支障のある具体的な事象を発見した場合においては、さらに対処していこうということでいま話し合っているところでございます。  基本的な問題については、私、ここで本日はできるだけ御答弁をするつもりでありますが、具体的な事例の一定の限界にまいりますと、私でもやはり答弁しにくい面がありますことだけは、事柄事柄でありまするだけに、また、私が通貨担当大蔵大臣でありませんこともありまして、ある一線において明確さを欠く答弁になると思いますが、誠心誠意答弁いたしますので、具体的な御質問もしていただきたいと思います。
  5. 西銘順治

    西銘委員 わが国の円が早晩切り上げられるだろうということは、ニクソン大統領課徴金を取るという時点以来想像されたことでございまして、国際経済、特に自由経済を基調とするわが国経済が、高度成長によって、今日二十余年間の一ドル三百六十円の固定相場から変動相場制をとりまして、これがさらに幾らに落ちつくかわかりませんけれども、それは日本のために政策よろしきを得れば、もちろん喜ぶべきことかもしれないわけであります。ただ、私たち沖繩県民にとりましては、たとえ変動相場制時点で切りかえられても、またこれが切り上がりまして固定相場に落ちついたにいたしましても、少なくとも三百六十円を基準として、その差損の分だけについては特別配慮をいただきたいということが、県民のたっての要望であるのであります。しかも、緊急の対策といたしまして私たちが急いでおりまするのは、復帰時点を待たずに、日米双方外交折衝を通じまして、復帰の以前に早くドルを円に切りかえていただきたいということが、当面の一番重要な要請となっておるのであります。  この点について外務省当局にお聞きしたいのですが、施政権下にあるのでドルは円と切りかえることができない。ただそれだけが復帰前の円切りかえの交渉の一番大きなネックになっておるのであるかどうか。それ以外に、円を復帰前に切りかえるについて障害となることがあるのか、また対米交渉されたことがあるのか、お聞きしたいのであります。
  6. 山中貞則

    山中国務大臣 外務省答弁してもおそらく技術的な答弁になると思いますが、布令第十四号によって、沖繩通貨米貨であることを、米、ドルであることを明記されておることは御承知のとおりであります。しかしながら、これはアメリカ施政権下であっても、B円の通行していた時代もあるわけでありますから、その事柄自体については交渉できないことではないと私は思います。しかし、そのことをなぜやるのかということは、その次に、日本政府本土政府沖繩県民に対して何かをするためにその要請をするわけでありますから、したがって、アメリカ側交渉を開始をする瞬間、した瞬間は、その何のためにと思われるはずの行為は同時に行なわれていなければなりません。でありますので、その点は外交交渉に乗せて交渉したことがあるかどうかという問題は、実はほかの問題と次元が違いまして、外交交渉に乗せたら最後である、その点が非常に微妙な問題でありますので、私は外交交渉をしないとは申しません。するようなために努力をしておるといいますか、した瞬間はあることを完全に同時に遂行するときでなければならぬ、断行するときでなければならぬと思いますので、その点、外務事務当局答弁では無理だろうと思いますので、私から答弁いたします。
  7. 西銘順治

    西銘委員 それでは、復帰前においてのドルと円との切りかえはないというふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  8. 山中貞則

    山中国務大臣 私はないということも申しませんし、あるということも申しません。しかし、私は沖繩人々の置かれておる現在の混乱、そして不安、そして御質問もありましょうが、一次、二次、三次、苦心を重ねて、沖繩のために祖国の償い得る最大限の努力をした復帰対策要綱沖繩人々の受けとめ方も、そのことはさりながら、まずこの問題で全部吹き飛んでしまったという、私も非常な被害者意識を持っておりますし、沖繩県民の方々は、アメリカ人たちよりも倍の苦痛を味わっておるわけであります。アメリカドルドルです。しかし、沖繩の人は、アメリカ物資を輸出すれば一〇%の課徴金外国並みに扱われ、しからば日本国民であって沖繩県民であるから、円の恩典を享受させようとすれば、施政権の中のドル流通圏としてさえ切られ、そして物資流通日常生活に甚大な影響を与え、まさに二重、三重の影響を受けておるわけでありますから、そのことについて私は決して無視してはならないし、すみやかにこの混乱を収拾しなければならぬと思います。これは復帰への道のりとか、あるいはその途中における混乱ではなくて、沖繩復帰意義そのものすらぶちこわしてしまいかねない問題になっておると思いますので、全力を尽くします。全力を尽くしますが、復帰までにないとも言いません、復帰までにあるとも申しません。まことに申しわけない答弁でありますが、お許し願いたいと思います。
  9. 西銘順治

    西銘委員 政府当局緊急対策といたしまして、生活必需物資並びに学生送金等に対する差損補償と申しますか、補てんをやることについて閣議決定を見ておりますが、まことに時宜を得た施策であると心から歓迎をいたしておりまするけれども、一つだけお聞きしたいのであります。  現在、生活必需物資学生送金だけに限って約十一億円の補助金が出されているわけでありますが、これはいうなれば、沖繩における物価騰貴を未然に防ぐという効果をねらったものだと思っておるのであります。しかし、はたしてこの十一億円の金で、沖繩現地における物価騰貴上昇を押えることができるかどうかということになりますと、きわめて疑問であります。もちろん、昨年の本土からの輸入実績は、一年間の四億七千万ドル輸入実績の中で約その七〇%を占めておることは御案内のとおりであるのであります。ところが、この生活必需物資に対する七億円、これに三億円、計十億の補助金をもってしては、私は物価騰貴を押えることができないと考えているわけであります。日本側の輸出するサイトにとりましては、従来一ドル品物を送れば三百六十円ちょうだいいたしておったのでございますが、変動制相場に切りかわったために、その差額、差損の分については常にリスクを感じているわけでございまして、このリスクの負担にいたしましても、差損の分を現地側輸入側五〇%、輸出側五〇%ということでリスクを上乗せしまして取引が行なわれる場合もありますし、一〇〇%輸出サイト輸入サイドにおいて、それぞれリスクを負担して取引が行なわれる場合もあるわけでございまして、私は十億円の補助金によって、従来滞りがちであったところの物資の交流が円滑になったという点においては非常に高く評価し、ある点、現地における物価騰貴の原因の一つを押えることになるわけでございますけれども、それだけでは足りない。たとえて申し上げますと、せっかく第三次復帰要綱あるいは第二次復帰要綱の中で、現地における企業を保護するために、税制、財政上の特別措置が講ぜられることになっているわけでございますが、これらの現地における産業の原料は、ほとんど本土からの輸入でありまして、これが円滑にいかないということになりますと、現地における企業はつぶれてしまう。せっかく対策要綱の中で、大臣特別配慮によって、何とかして沖繩企業を生かしていこうという、その精神が薄れるということになるわけでございまして、問題は、補助の対象となりました生活必需物資だけに限らず、原材料等あるいは肥料あるいは医療器具、薬品、幅広く広げていってこれを補助するのでなければ、現地における物価騰貴を押えることはできないじゃないか、かように考えているわけでございますが、これについての大臣見解をいただきたいのであります。
  10. 山中貞則

    山中国務大臣 確かに全資材についてこれを認めることが原則的によろしいと思うのです。しかしながら、それについて、まずその根拠とするところについて何を目標にやるのであるかということになりますと、これは政府部内の話でありますから、私の見解ではありませんが、琉球政府の予算の援助で、本土政府の円で決定しましたものの価値は、フロート幅に、逆にその価値が高まっているということもいえないことはないと思います、対、ドルの問題については。しかしながら、本土との、将来は移入、移出になる物資、現在は輸入ということをいえるわけでありますが、そういう問題について全品目となりますと、いまわれわれはアメリカ課徴金の撤廃を求めております。これはおおむね、きのうの段階でも明るい見通しを得つつあるわけでありますけれども、一方において、沖繩に出す全物資について措置をいたします場合、もっとも沖繩側要望は、一〇%という危険幅と申しますか、あるいはこれは将来の思惑で、切り上げ幅一〇%になった場合でもというつもりかもしれませんし、あるいは実際に商売をやっております本土側の業者の諸君が、一%だけとりあえず別にリスクを積み立てるか、それだけよけい、ドルを払う契約をしなければ港から船を出さない、物資を積まないという、そういうことを反映したのかもしれませんが、そこらの押え方等も非常に困難でありましたので、いままでまだ発表いたしておりませんでした品目について、さらに琉球政府等も木材とか紙とか、そういうもの等もつけ加えてほしいという要望がありますから、そういう要望のあることを前提にして、一応押えた品目を申し上げますと、食料品ではミルククリーム魚類、イカ、タコ、魚類調製品気密容器入りカン詰めのことであります。かつおぶし、魚のソーセージ、魚類調製品その他。甲殻類または軟体動物の調製品。ビスケット、リンゴ、バレイショ、タマネギ、チョコレート、大豆油かす、干しコンブ、なたね油及びカラシナ油化学工業製品では、グルタミン酸ソーダ抗生物質製剤ビタミン製剤、医薬品、クリーム化粧品調製香料等洗たく石けん機械類では、家庭、で使うと思われる電気洗たく機あるいは電気冷蔵庫、扇風機。雑製品では木製のものの家具、男子用ズボン女子用乳幼児用洋服女子用乳幼児用和服類アンダーシャツ等の下着、セーター及びジャンパー、ドレス、スカート類、靴、ぞうり及びサンダル、腕時計、書籍、雑誌その他刊行物、こういうものを全部押えまして、すでに御説明いたしております計算様式をとってはじき出した数字が七億であります。しかしながら、その前提は、一応その時点変動幅〇・〇五をとってありますので、これが動くであろうし、あるいはまた一九六九年の貿易の、いわゆる税関で押えました実績である生活必需品にかかる輸入総額二百億という数字も、これはまた少し動くかもしれないというようなことの若干の分を念頭に置いて、三億円上乗せをして十億にしたということになっておるわけであります。したがって、まだ品目について、琉球政府あるいは国会等皆さん方の御要望のあることは私もわかっておりますので、さらに今後検討は続けてみたいと思います。
  11. 西銘順治

    西銘委員 沖繩における、ドルの救済につきましては、政府当局といたしましても非常に苦心のある、これを実施するにあたって、技術的にもいろいろ詰めなければならない点もたくさんありまして、苦心の存するところであると思いますが、問題は、沖繩地域だけに限って一ドル三百六十円で切りかえるということになりますと、世界じゅうのドル沖繩に集まるといういわゆる投機が出てきますので、その点、投機を押えながら、しかも沖繩現地の、沖繩県人財産預貯金流通貨幣を救済するという点に非常にむずかしい点があろうかと思いますが、私は復帰の前だろうが、あとだろうが、変動相場あるいは切り上がって固定相場になるかもしれませんけれども、少なくともその時点における相場によってドルを円に換算する、ただし、沖繩の分については、その差損の分だけ何とか補てんしていただきたい。そこに大臣も非常に苦心のあるところだと思いまするけれども、預貯金につきましては、何とかこの差損補償する道もあろうかと思いますが、現に流通している、米軍人、軍属、沖繩県人、同じ貨幣でもって毎日品物を売り買いしている中で、消費物資等が上がるということに対して効果があがるかどうか。技術的にはよくわかりませんけれども、少なくとも流通面におきましては、この差損補償するということはきわめてむずかしい問題だと思うのでございますが、その点は特別の御配慮をもって、県民が二十数カ年間営々としてかせいでまいりました財産損失のないように、特別の御配慮をいただきたいのであります。  私たち沖繩県民は、戦後五回の通貨切りかえにあいました。終戦直後旧円から新円の切りかえがあり、さらにその新円が四八年B軍票に切りかえられました。このB軍票が十年後の五八年、ドルに切りかえられました。わずか二十数カ年あまりの間に五回の通貨切りかえにあいまして、絶えず通貨不安の中に包まれて生活をしてきたのであります。その点技術的に、沖繩県人ドルを救済するという点で、非常にむずかしい技術的な困難が伴うのかと思うのでありますけれども、特別の御配慮をもって、県民要望する線で、沖繩ドルを救済していただきたいということを要望いたしまして、ドル問題に関する質問を終わります。  最後に一点だけお聞きいたしたいのでありますが、復帰対策要綱の中で、対米請求に対する肩がわりの方針が何も打ち出されてないということで、大臣にさきの委員会におきまして強く要望いたしておきました。これがどうやら第三次復帰要綱の中で取り上げられるやに聞いておりまして、非常に喜んでおります。ただ、その取り上げられる問題につきましては、返還協定第四条の二項、三項で規定された、認められた請求権以外の、たとえば人身傷害等に対する補償については特別措置をするということをうたっておるのでございます。問題は、認められた請求権を処理するために、現地に係官を置いてこれを救済するということになっておるのでございますが、認められた請求権、これが満足な回答が得られない場合、たとえば漁業権の問題でございますが、米軍演習等によって入漁地区が制限されました補償についての対米請求が、土地裁判所を通じまして七件提案されております。これについて今日まで回答されたのはたった一件、しかもその一件はゼロ回答であります。こういうふうに、返還協定の中で補償された請求権というものが満足な回答を得られない場合、本土政府はこれを肩がわりするのか、しないのか、これが質問最後でございます。長官の御見解をお聞きしたいのであります。
  12. 山中貞則

    山中国務大臣 本土政府配慮しろという御要請は、これは実は私にとっては配慮でなくて、やらなければならない義務だと思っておりますので、その姿勢でもって貫いてまいりたいと思います。締めくくりとして提案された問題は、やはり依然としてもとの問題に戻るわけでありますので、慎重かつ積極的な検討は進めていきたいと考えます。  なお、対米請求権の問題と俗称いっております問題は、第三次要綱で例示的に「講和前人身傷害未補償者」等ということで例示をいたしまして、その他、入会権その他について残っておる問題も今後さらに詳細に調査した上、本土政府において処理することを明確にいたしましたが、ただいまの問題は、返還協定で合意されて、米側が処理することになったものの中で、それが思うような処理を結果得られなかった場合に、本土政府がそこまでやるか、さらにやるかという問題だと思います。これは、いまあげられた事例等ばかりでなくて、ほかにすでに示談になったもの、あるいは裁判の結果、許される限度内の外国人損害賠償法等に根拠を置いた補償が支払われているもの、あるいは却下されたもの、支払われていても、満足な人はいないでしょうが、極端にいうと不満である人たち、それらの人たちまで全部、合法な手続を一応とられて、法律上は処理されたものについて、本土政府がさかのぼってやるとなりますと、これは私の一存で答弁はできませんし、私の立場からであっても、きわめて困難な事柄である。これは純法律的な問題としての事柄であって、そのような返還協定に際しての、外務省を通じての日本政府の態度というものは、そこまで議論されたものではないということだけはお答えできるかと思います。
  13. 西銘順治

    西銘委員 このたびの内閣改造で残られたのは山中大臣だけであります。それは、大臣の人柄と沖繩復帰対策要綱に対する熱意、実績が高く評価されまして、沖繩のすべての関係団体の人々要請がありまして留任されたわけでありますが、せっかく一次、二次、三次の復帰対策要綱と、りっぱな要綱ができあがりまして、ここに沖繩復帰対策もようやく完成を告げようとするさなかに、いわゆる変動相場制に切りかわったということは、私たちにとりましてこんなショックはございません。大臣にとりましても、これが県民要望するとおり、一ドル三百六十円を基準といたしまして、その差損の問題についての特別な解決がないということになりますと、大臣の九仭の功を一簣に欠くと申しますか、大臣だけでなく、これはわれわれ県民にとりましても、せっかくここに復帰対策要綱が完成して、ようやく復帰を迎えようとする時点においてドルが切り下げられまして、逆に変動相場になって、沖繩県民損失をこうむったということになりますと、これはせっかくここまで努力したかいもなかったということになるわけでございまして、県民が一番心配いたしておりますることは、この差損補償の問題についてでございます。どうぞその点特別な御配慮をもちまして、関係各省とも密接な連携の上に、りっぱな措置ができまするように要望いたしまして、時間がございませんので、私の質問を終わることにいたします。
  14. 床次徳二

  15. 國場幸昌

    國場委員 祖国復帰も、あと、予定どおりいきますと七カ月でいよいよ復帰でございます。今日まで私どもは、百万県民の絶大なる期待にこたえるべく、過去国会始まりまして今日まで努力してきたわけでございます。本委員会を中心にしまして、理解ある総理府長官のもとで、沖繩復帰要綱は一次、二次、三次ともほとんどが沖繩県民要望にこたえるところの要綱になっておるのに対し、県民はひとしく喜んで、これから迎える復帰にということに大きな期待を持ったわけでございます。  しかしながら、このたびの予期もしないようなドル・円通貨変動相場制沖繩においての流通通貨ドルなるがゆえに、日本本土国民とは違いまして、私ども沖繩県民は、その日その日の生活に大きな不安と損失をこうむっておるのが現実でございます。  私は、今日まで、このことあるをおそれて、各大臣あるいはまた委員会の中におきまして、ドル通貨を円に切りかえるときには、あくまでも一対三百六十というようなことに対し質問をなしてきたのも事実でございます。ところが、その間において、この不安を解消する意味においては、復帰以前においてでもドルを円通貨に切りかえていただきたい、またそういうことができるかどうかということに対しましても、ただしてきたのも事実でございます。  ところが、その質問の中でも、あるいは各大臣のお答えの中でも、決して円貨の切り上げはしない、こういうようなことで、また復帰の暁には三百六十対一という線に沿うて、固定相場、すなわち一%もしくは〇・七五%、こういうようなことにおいての変動幅以外には絶対に動かしはしない、こういうようなことを今日まで信じてきたわけでございます。  しかしながら、抜き打ち的にこのたびいわゆる変動制に移行したがゆえに、沖繩経済と住民の生活は、現在現実に困難の渦に巻き込まれておるというのは御案内のとおりでございます。ここで、私は、この変動相場制移行が、ドル貨の流通圏にある沖繩にどのような影響を及ぼすか、政府は、そのことがこの変動制に移行する以前において、頭に浮かんでそういうことをなしたことであるかどうかということをまずお尋ねしたいわけでございます。どうぞ、これは秘密事項になっておるということもよくわかりますが、しかし、当局である大蔵省においては、これは十分に御承知であった、こういうことを考えるわけでございまするので、まず大蔵省の方が御出席のようでございますから、御答弁をいただきたいわけでございます。
  16. 前田多良夫

    ○前田説明員 大蔵省は、事前にいろいろな点についてわかっていたのではないか、こういう御質問でございます……。
  17. 國場幸昌

    國場委員 いまの変動制に移行する前に、沖繩ドル通貨を利用し、それに変化が起きてくると、日本本土とは違いまして、ドル通貨であるので、県民生活沖繩住民の生活が一体どうなるか、こういうようなことを念頭に置いてこの変動制は実施されたものであるかどうか、それをお聞きしておるわけです。
  18. 前田多良夫

    ○前田説明員 通貨の問題につきましては、非常にこれは、すべて秘密の事項あるいは微妙な点も多いわけでございまして、どういう事情で、どういう考慮をしながらどうしたというようなことは、ちょっと申し上げかねるような事態でございます。もちろん、沖繩の方々がこういう事態に立ち至りまして、いろいろ御苦労をなさっておる点につきましては、十分いろいろな点について配慮をしている次第でございます。そういうことで御了承のほどをお願いしたい、こう思います。
  19. 國場幸昌

    國場委員 沖繩通貨は、沖繩県民がこれを欲してやったわけでもございません。去りし日本の終戦後外貨の乏しいときには、沖繩にコンスタントに基地から落ちるドルは、コンスタントにほとんど八〇%まで日本にいわゆる吸収されたわけでございます。そのときのドル日本本土におけるところのいわゆる貢献度というのは、まことに大きなものがあるということを信ずるわけでございます。このたび日本が、御案内のとおり、世界の自由陣営の中では第二位というだけの大発展を来たしてきた。このいしずえをなした一役を買ったというのも、沖繩は一県でありながら、このいわゆるドルの収入によって大きな貢献をもたらしたということも考えるわけでございます。ドルを持ち過ぎるがゆえに、円貨の切り上げをせなければいかないというような事態に落ち込んで、それで、またいままでの貢献度は、全然無視された逆のほうに、また犠牲を払わねばいかないというようなみじめな目にあう沖繩を、私はもっともっとそれにタッチされる大蔵省のほうでもやはり沖繩住民のいまの立場というのを御理解いただきまして、この変動制に移行する前に——私が承るところによりますと、ある大臣は、その変動制になるのはいいが、しかし沖繩がどうなるかということを考えてくれということも言われたということを承っております。  そこで、私は過ぎ去ったことは申しません。しかし、現実において、沖繩の住民がいかような不安を持ち、そして一人一人が流通するドルを持って、きのう一ドルで買えたのが、きょうは一ドル二十セント、こういうように現実においてそれだけの損失を受けておる。そして先行きに不安を持っておる、こういうような現実を見ました場合に、はっきり輸出、輸入というものもいままでの統計上出ております。  参考までに申しますと、ドルの保有高から申し上げましょう。これは一九七一年六月末の琉銀調査によるところの資料でございます。ドルの保有総高は十一億七百五十万ドルでございます。その内訳は現金通貨が二億二千一百九十万ドルでございます。それでこの一億二千一百九十万ドルの内訳は、流通高が八千四百万ドル、銀行手持ち金が二千九十万ドル、対外預金が一億一千七百万ドル、合計して二億二千一百九十万ドル、それから預貯金残高が八億八千五百二十万ドルでございます。合わせて約十一億七百万ドルでございます。  それから貿易におきましては、一九七〇年度の統計でございますが、四億七千七百二十六万九千ドル、それに対する約七五%が本土からの輸入でございます。沖繩県民が欲しておることはこの七五%、すなわち三億五千七百七十五万ドル、去る一日現在のドル相場高は約六%の値下がりでございますから、それに対するところの沖繩の全需要に対して、いままで取引されたものの実情を踏まえ、それに対してのいわゆる差損金に対して、政府は何とかひとつ救っていただきたい、こういうような切なる願いでございます。  いまさっきの総理府長官の御答弁を伺いますと、アメリカにいま輸入課徴金撤廃を頼んでいるところだ。輸入課徴金という、アメリカに輸出されるものは一千万ドルにも足りないものでございます。それにおいて一〇%といいましても、もちろんこれは施政権を持つところのアメリカ責任を負うべきだ、こういうようなことも私は考えるわけではございますが、しかし内政問題として解決のできるような、同じ日本国民の中にありて、沖繩県民が長年にわたる異民族の支配の中で忍従に耐えてきた、こういうことを考えました場合には、やろうと思えばできることでございまして、私はそれに対するような私案を持っておるわけでございます。  と申しますのは、まず日琉間の貿易におきましては、特別なるいわゆる貿易制度を設けるということで、これを両政府の管理下に置き、そして認証制にするということ、それにおいて円建てをし、貿易させて、それに対するところの差損金を政府が補てんとか、そういうことは政府間においての管理でございますので、政府制度によってやりますれば、いま言うところの認証制、これにはこれこれは適用させる、こういうことになりますから、それにはおっしゃるとおりの横流しとか、いろいろこういうことはないではないか、こういうことを考えるわけでございます。承りますと、これの範疇に入るという品目もございますが、また、いまさっき総理府長官のお話も承っておりますが、いま一番問題になるのは、もちろん食料品あるいは必需品でもございますが、沖繩の立ちおくれたところの復興、振興、それに対するところのせっかくの日本からの援助をいただきましても、それが消化できないという現実というものを理解していただきたい。  と申しますのは、政府も予算はその予算で組む。と申しますと、約四五%が援助で持っておるわけでございますから、五五%は地元財政をもって構成されておる。それにまつわるところの市町村もそのような構成で、やはり援助というものに対しての、いわゆるドル建てをやっておるわけでございます。でありますから、市町村の事業にしましても政府の事業にしましても、その変動そのものによって、それだけの狂いがもうすでに出てきておるわけでございますから、請負師にしましてもあるいは政府にしましても、そのリスクをだれが買うか。ましてや日本からの資材輸入にいたしましても、日本のいわゆるサプライヤーあるいはメーカーそういう方たちは、日本政府そのものの沖繩に対する輸出に対してはこうだというような保証制度がないがゆえに、もちろん犠牲を払うわけにはいきません。でありますから、貿易はとまったり凍結状態にあるというようなことで、そしてまた、一番問題になるのは沖繩の住宅難、日本復帰すると物価が高くなるであろう、こういうようなことで、いわゆる住宅を、いま住宅ブームとよういわれております。それは借金をして、それでいままでの一ドルに対する相場においての建築をなしておるわけでございますが、こういうようなことも、途中において執行ができないというような現実を考えました場合に、私はいわゆるそういう諸問題を、この復帰前において何とか住民に対して、安心して、母国としての日本、慕われるところの、信頼するところの、信ずるところの日本、それに対して、親心を持って何とか御援助していただきたい、こういうことを考えるわけでございます。どうぞ大臣、いまの私の注文に対しまして、いかなる御所見をお持ちでありますかお尋ねいたします。
  20. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいまのお話のいわゆる心情的な立場からは私も同感であります。しかし、具体的に提案されましたものについては非常に困難だと思うのです。それは、まず何に対して差額を負うのかという問題について、政府全体として、私は踏み切ってもいいと思いますが、政府全体としての合意は得られない、またかりに、それは一ドル三百六十円というものを前提にして、貿易において、お使いになったことばを利用すれば、差損を埋めるための国家管理貿易をやるのだということになるでありましょう。そうすると、当然沖繩においていずれかの日、おそくとも復帰の日にはそれが円とドルとの交換が行なわれる、当然日本政府意思は明確であるから、一ドル三百六十円でかえられるのだということになりますと、これは私自身が考えてもそのことを証明する行為になりますから、おそらくその後の国際投機ドル等について、たとえばアメリカ系の、ドルだけであっても、防衛は非常に困難になるというふうに考るわけでございまして、私たちはやらなければならないことと、やるためにはどういうことを心がけておかなければならないかについて、きわめて慎重にやらなければなりませんので、日本政府意思が、復帰の場合に、あるいはそれ以前に、交換の際に、いずれの場合でも一ドル三百六十円であるということを国家の行為において明確にするということについては、私自身もなかなかむずかしい問題だと思います。したがって、今回の十億円並びに学生諸君のための育英会の一億円の補助にしても、少なくとも公的にはそれを一ドル三百六十円と対比して計算した比率なり、あるいはまたそれの月割りなりを計算したものではないという、そういう立場を一応とっておりますので、したがって、私の立場としては、三百六十円の交換レートの基本は変わっていないのだ、そのことは私も認めます。しかし、いまここで、ある行為を国家の意思においてなすことによって、それが世界の投機ドルに及ぼす影響というものを考えた場合に、軽はずみな発言はできにくい問題であると考えますので、せっかくの具体的な御提案、私はまことにありがたいと思いますけれども、その提案そのものに非常な危険が伴うということで、採用できないと考える次第であります。
  21. 國場幸昌

    國場委員 まあ、沖繩のことを寝食忘れて考えておられる大臣のおことばを聞きまして、私はまことに残念でございます。  それでは大臣、さっき申し上げました昨年の貿易実績に対しましての補てんする十一億というのがいわゆる門開きしておるわけでございますので、その十一億というのが、昨年の貿易実績からいきますと、六%の差損を見積もった場合に、去る一日は六%以上になっておりますので、まあ大体一%からコンマ五%、こういうふうにいま上昇しつつあるということを考えました場合に、さっきも申し上げましたとおり建設資材とか、あるいは一番問題になる農民の肥料とかまた農薬とかあるいは農機具とか、こういうようなものもそれの中には入っていません。でありますから、いまおっしゃるようなリストの中にこの幅を広げ、そしていまの差損補助に対してのワクを広げる、こういうようなことはお考えになり、またやるような御意思があられるかどうかということを承ります。
  22. 山中貞則

    山中国務大臣 担当大臣の私の口から、そのような答弁を聞くことは残念だとおっしゃいましたが、私自身が、実は今回の措置についてはたいへん残念な措置であることをしみじみ思っておるわけでございます。したがって、私としては、ふだんの山中であるように、明快に私の考えを述べたい気持ちは、のどもとまでことばとして出かかっておりますけれども、これは大蔵省がやはり大蔵大臣責任において答弁しなければならぬ範囲のことでございますので、山中大臣答弁らしくない、残念だといわれることに私自身も残念であります。しかしながら、それは事柄の性質上、いかんとも私がここで明快にし得ない職責上の限度もありますし、また政府自体の、大蔵を中心とする国際金融通貨の政策の基本的な問題でもありますので、その点はまげて、私の沖繩県民に対する誠意がいささかも変わっていないことだけは理解をしていただきたいと思います。  さらに、ただいま物資をあげて木材、肥料、農薬等についてのお話がございました。あるいは肥料であったか、飼料であったか、いずれもやはり同じような影響があると思いますが、これらの点については実情をよく調べて、たとえば木材は確かに沖繩において現地ですでに値上がりとか、あるいは品物の在庫も全然店頭に出さないといううわさ、あるいはそういう報告等を受けております。在庫も出さないということは、どういうことなのかということなどは、私どもには疑問に思われますけれども、しかしそれらの点、一応国の政策としては木材は自由化されておる。そして関税もかからないということに本土のほうもなっておるわけでございます。したがって、大蔵省との間に、私はもちろん交渉もしなかったわけではありません。しかし、どこからどんな木材を入れても、外国から持ってきても、非課税にして、数量の制限もない、そういうものであるということもありまして、今回の対象品目の中に取り入れておりませんが、しかしながら、ただいまの御提案は、私としても検討するに価値のあるものであり、また現状沖繩において見過ごしがたい現象が起こっておる品目の中の一つであるとも思いますので、ただいまの輸送する物資品目をさらに拡大する意思はないかという点については、これは検討をいたしたいと考えます。
  23. 國場幸昌

    國場委員 ありがとうございます。  では大蔵省のほうにもう一点だけお伺いをいたします。  いまの変動相場制は自由変動相場制と理解しております。この自由変動相場制というのは、やはりその日その日違うものでございまして、いつしかはこの自由変動相場制というものが、安定したところの国家の経済政策を持つためには、限定変動相場制に変わっていくのではないか、でなかったら円の切り上げをするのではないか、私はこういうようなことを考えるわけでございますが、自由変動相場制というのをいつまでも通すわけでございましょうか。あるいはまた——と申しますのは、これは沖繩において大きな影響を受けるわけでございますから申し上げるわけでございます。といいますのは、ドルが一体幾らの値打ちがあるものか、これがわからないものですから、それには思惑をもって物価をぼんぼんつり上げていく。それから本土のほうにおいても、ドルがあしたは一体幾らになるかということに大きな疑惑を持っておるわけでありますから、そういう不安定なことになるわけであります。新聞で最初この変動制に変わったときに、承るところによりますと、二、三カ月なら二、三カ月の一定の期間、自由変動相場の実情を見て限定変動相場制にし、政府がこれに対していわゆるタッチするというようなことを承ったわけでございますが、その点いかがでございますか。きょうは大臣とかその責任のある方はいらしておりませんのですが……。
  24. 前田多良夫

    ○前田説明員 今後、通貨の制度が、相場の制度がどういうことになるかという点につきましては、これは私どもといたしましてもこの際全くわからないという状態でございます。そういうことでございますので、今後どういうふうに進んでいくかという点については、そういうふうに御了承いただきたい、こう存ずるわけであります。
  25. 國場幸昌

    國場委員 それでは時間のようでございますからお願いだけをしておきます。  とくと事情も御理解のことと思いますので、沖繩県民の現在置かれておるところの切なる立場、それをおくみいただきまして、血のにじむような嘆願でございますので、その点に対しましては御理解をいただきまして、何とか願望の線に沿うべく、最善を尽くしていただきたいことを希望いたしまして、質問を終わります。
  26. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩県民の願望に沿い、沖繩県民に結果御迷惑をかけないように、担当大臣の職を賭してやる決意であります。
  27. 床次徳二

    床次委員長 中谷鉄也君。
  28. 中谷鉄也

    ○中谷委員 質問にあたりまして、最初次のようなことをし申上げたいと思うのです。  本土において、アメリカの新しい経済政策について、ドル・ショックということがいわれておりますが、本土人たちに対しては、自分の友人たちに対してはショックということばを使わないようにしよう、日本経済を新しい体質改善をするのだという、困難ではあるけれども、やりがいのある仕事をしようといって私は話をしている。しかし私自身、沖繩特別委員会に先輩の委員人たちのあとについて、席を置かしていただいてからちょうど五年になりますけれども、基地経済というきわめて困難な状態の中において、豊かな沖繩県づくりということを、どういう答案を書くかということをわれわれ今日まで努力をしてきた。非常に困難な答案をわれわれは書かなければならなかったわけであります。しかも、今日、今度はドル問題、この場合、もうどんな強気の立場に立っても、沖繩県民、同時に沖繩問題に取り組んでおるわれわれにとっては、非常なショック、これはもうドル・ショックということばを使わざるを得ない、私はこういう気持ちであります。したがいまして、そういうふうな前提の上に立って、しかし、だからといって問題を避けて通るわけにいかない、打開をしなければならない、こういうことで私はお尋ねをいたしたいと思います。  いわゆる一ドル三百六十円という問題についての一番基本的な問題、一番大事な問題についての質問はあとに回します。  ひとつお尋ねをいたしたいと思いまするけれども、八月十六日から今日九月四日までの消費者物価の値上がりというのはどの程度の指数として把握しておられますか。  そうして次にお尋ねをいたします。十億円の措置によって、消費者物価の値上がりを押え得るところの寄与率は一体どの程度になるのでしょうか。この点についてまずお尋ねをいたします。
  29. 山中貞則

    山中国務大臣 まず、農産物関係で申しますと、九月の一日付で押えた値上がり関係でありますが、卸売り価格で、農連の市場調査によりますと、島内産品としてのピーマン、キャベツが一五%値上がりしております。ニガウリ、ヘチマは変動ありません。輸入品ではバレイショが二五%程度値上がり、タマネギ三%、ハクサイ五〇%、スイカ六〇%というような値上がりのようでございます。  水産物関係は横ばいでございます。  牛肉については、豪州肉でございますが、輸入価格は一応安定している。ただし小売り値については、お盆と、さらにビッグサイクルにぶつかった豚肉の値上がりにつれて上昇傾向にある。しかし、まだこれははっきり上昇の比率は出ておりません。豚肉は島産品でございますけれども、出荷の価格で三〇%アップしております。これは先ほども申し上げましたビッグサイクルに当っておりますし、一方、本土においては豚肉の高値のシーズンでありますから、いわゆる琉球政府においては奨励金までつけて輸出を奨励する、過剰なときには。そういうこともあって、本土市場への流出ということもかかわりがあるようであります。  輸入品の中で、かん詰めについては目下のところ値上がりは見られておりません。みそ、しょうゆ、これは主として島産品であり、一部本土産でございますが、値上がりはありません。油は県内から産出するものでございますが、サラダ油一〇%アップ、大豆油一一%アップ、これは原料はアメリカ産でございますが、昨年乱売競争がありまして、値上げできなくて、私どもから見れば若干便乗値上げではないかと思われる点があるようでございます。揮発油については産油国会議の原油二〇%アップに応じて、二五%の値上げを民政府に申請中であるというだけでございまして、これは今回の事柄とは関係ありませんし、今回の事柄が関係あれば、これは下がるべきものであるというふうに考えております。育児用ミルクは本土からの輸入でございますが、値上がりはございませんが、これは普通在庫品が一カ月ぐらいストックしてありますものが、台風シーズンでありましたために、おおむね二カ月ほどストックがあったということによるものではなかろうかと思われております。自動車については、九月六日以降、本土メーカーから一〇%の値上げを一応要求された。しかし、それは為替差損についての補償がない場合を前提としたものであって、もし補償があれば払い戻すと言っておるそうでありますが、しかし、日産、トヨタ、それぞれありますが、トヨタは在庫品については旧価格で売ると言っておるそうであります。一般的にはデパートでは値上げ状況は見られておりません。これは概括的なものでありますから、琉球政府物価の一斉調査をしておるようでありまして、この集計されたものをいずれもらえると思いますが、それに基づいてさらに判断をしてまいりたいと思います。  そこで、今回措置いたしました品目日常生活に占めるウエートでありますか、あるいは輸入物資の中で占めるウエートでありますか、あるいは物価上昇を鎮静させるための貢献度という意味でありますか、受け取り方がちょっとはっきり私はつかめなかったわけでありますが、いずれも先ほど答弁いたしました品目については、値上がりはしないで済むはずである。何となれば、従前と同じような十億の財源を取りくずしていくことによって、その補てんがされることを財源的にはっきりと仕組みの上で形づけたわけでありますから、円建ての契約を行なって、そこに危険はないということになるわけであります。それ以外の物資の占めるウエート等については、統計のとり方にもよりましょうが、私たちは一応日常生活をまずこの混乱状態から救わなければならないという立場で取り組みましたので、現在何に対比して何%ぐらいの寄与率になるか、貢献度になるかということについての計算と申しますか、そういうことをいま現実にやっていないということであります。
  30. 中谷鉄也

    ○中谷委員 対策庁の長官にお尋ねをいたしたいと思います。  七一年の消費者物価の指数はどの程度前年比として見ているのか。これは資料がございますね。そこで、今度のアメリカ経済政策の影響によって、それはどのように変更を来たすのか。このあたりの試算は私必要だと思います。要するに、十億円が焼け石に水なのかどうかという問題で私は関係してくると思う。そういう試算がありますかどうか。
  31. 岡部秀一

    ○岡部説明員 七一年の消費者物価指数はまだできておりません。
  32. 中谷鉄也

    ○中谷委員 値上がり見込みですね。
  33. 岡部秀一

    ○岡部説明員 見込みもまだできておりません。
  34. 中谷鉄也

    ○中谷委員 一体どういうことなんですか。七一年の消費者物価が一体どれだけ前年に比べて上がるのかということについての見通しがないはずはないでしょう。そうして、結局今度の問題がどういうふうに影響するのか。沖繩県民のことを考えている、考えているとおっしゃるけれども、一体何を考えているのですか。  じゃ、次に質問を続けていきます。  生活必需物資というものについて、それを一応二百四十二億円と押えて、そうして〇・〇五かけて、結局七億円ぐらいにして、リスク三億円を足して十億円としたとおっしゃっている。円の切り上げによって、本土においては卸売り物価については試算によれば下がりますね。そうすると、沖繩においては卸売り物価となるそういう品物については何ら手を打ってない。先ほど國場君も質問した点です。一体卸売り物価については、どの程度の値上がりが指数として試算されますか。対策庁で試算していないのだったら、経済企画庁答えてください。
  35. 山中貞則

    山中国務大臣 先ほど私が答弁した、いま捕捉しておるものについては、これは卸売り物価であります。ものによっては小売り価格のものもあります。農連調べ等のものは卸売りについて調べたものであります。  さらに、本年度の予算編成の前提としての、見通しについての景気成長率あるいは消費者物価というものの琉球政府側の予算試算で、最終的に合意したものは事務当局が持っておりますので、答弁いたさせます。
  36. 中谷鉄也

    ○中谷委員 質問はこうなんです。国民経済研究所の試算によりますと、たとえば一〇%から一〇・五%程度円が切り上げになった場合には、卸売り物価については〇・四%下がってくる。とにかくこういうふうな試算がございますね。だから私は、沖繩経済は一体どうなるのか、ということは、卸売り物価が一体どうなるんだ、そういう試算がまず前提にならなければならないからお聞きしているのです。個々のミクロ的なものについてお聞きする前提として、まず全体としての試算をこの際われわれは急いですべきではないか、こういう点でお聞きしているのです。変動相場制の中において、これは六%と見て一体どのくらいのものになりますか。
  37. 山中貞則

    山中国務大臣 事務当局に答弁いたさせます。
  38. 岡田純夫

    ○岡田説明員 手元にあります資料によりまして、御質問の趣旨そのままではないかもしれませんけれども、状況なり今後の沖繩の総合開発計画との関連におきまして、関係あると思いますものを申し上げます。  消費者物価指数につきましては過去数年の上昇率を申し上げます。一九六七年度ぐらいから申し上げますと、対前年度上昇率は年率で六・九%でございます。それから一九六八年度は四・四%、一九六九年度は四・九%といったようなことで、五、六%の傾向を示しておりまして、一九七一年から一九八〇年にかけては、三ないし四%の見込みであるということを念頭に置いて、今後の作業を進めてまいるというふうな考え方をとっておるわけでございます。  そこで、この問題は精密にはもう少し検討をしなければなりませんけれども、消費者物価本土との輸入関係に関連いたしまして、どのような影響が考えられるかということの試算でございますが、総合的に見まして、本土からの輸入品を約百二品目拾いまして、それのウエートは三二・五%になっておりますが、その品目につきまして、一割上がるかどうかは問題がございますけれども、かりに一割上がるといたしますと、全体的には二・二%上がるのではあるまいかというふうな状況でございます。
  39. 中谷鉄也

    ○中谷委員 円の切り上げというのは、大蔵当局がどういうふうにおっしゃろうとも、九月十五日にある蔵相会議のあと、とにかく外圧もあろうし、何としてでもわが国の決断においてもなさなければならなくなってくるでしょう。そうすると、その円切り上げによって、本土においていろいろな問題が生じてくる。ただ、しかし試算の限りにおいては、卸売り物価上昇率については、本土の場合にはマイナスという面が出てくる。沖繩においては卸売り物価についても結局上昇していくということになってくると、そのことがとにかく消費者物価影響を及ぼしてくることは当然。そういう状態の中で、生活必需品価格安定資金としての十億円を組んだ。要するに生活必需物資というものに限定をしたということは、沖繩経済全体から見れば必ずしも適当ではない、というよりも、私は不適切だと思うのです。たとえば、百億という要求の陳情を立法院の諸君がされましたけれども、とにかく本土から沖繩への輸入総額は七〇年で三億七千万ドル弱と見て、そして五%ということで計算をしてみると、大体七十億ぐらいになることは当然であります。そういたしますと、十億というのは、先ほど山中長官が物価の鎮静に役立つだろうということをおっしゃったけれども、現実に政策的に物価抑制の強力なものにはなり得ないのではないか、私はこんな感じがいたします。いろいろな数字を私はきょう準備をしてまいりましたけれども、数字について総務部長もお答えがない。したがいまして、そういう点についての質問は私はいたしませんけれども、十億というふうなことでは不十分ではないのかという、きわめてストレートな素朴な質問をいたします。大臣、お答えをいただきたい。
  40. 山中貞則

    山中国務大臣 これは全物資をとれば、ただいま中谷君の言われた六十五億ですか……。(中谷委員「六十六億。まあ七十億」と呼ぶ)まあ大体その見当だろうと思いますが、しかし、それは年間を通じての金額でありますから、したがってそれの七掛けということになりますね。したがってそれを前提にしても、まあ四十五、六億という見当になるかと思います。私のほうの試算では大体三十億ぐらいであろうと思うのですけれども、差損ということばをなかなか使えないのですが、要するに必要な金額を支出すれば、いままでの本土との貿易に関する限り、原材料一切を含めて、全物資についていままでどおりにやっていけるのだということであれば、おおむね三十億ぐらいで操作できる範囲であろうと考えますが、しかしながら、その限りにおいては寄与率と申しますか、沖繩本土貿易の全体の影響の中の、県民日常生活という面からだけとらえた部分が、全体との対比からいえば、その意味で三〇%前後ということになるかとも思います。そういう比べ方をすればですね。したがって、これが沖繩の現在のあらゆる物資の不安を全部除去することに完全に効果があるとは私も言っておりません。いまお盆を控えたときでもありましたし、要するに、本土のほうから沖繩の必要とする物資でさしあたり船が動き出さなければならない。しかも、船を動かすには一〇%上積みしてドルを払えというような要望等もある現実を踏まえて、そういうようなことが解消されるならば、本土業界といえども大体今後も長く沖繩とつき合っていく業界でありますから、あこぎなことをしようとしておるようには私も思いませんでした。したがって、これらの措置をとることにより、琉球政府沖繩県内における行政措置、そして私どもは、本土においてこのような措置をとったから、物資は円滑に流してもらいたいということで措置をいたしましたので、その限りにおいていま物資流通は円滑にいっておる。ただし、これは生活必需品に限って行なわれておるということであります。
  41. 中谷鉄也

    ○中谷委員 私は、やはり十億というふうな金額で、消費者物価の異常な値上がりを抑止することはできないと思います。しかしこの点については、これは記者発表をされたかどうかわかりませんけれども、百億から百五十億ぐらいのものを考えているんだということが報道されたこともあるわけですから、そういうような点からいうと、私が十億というような金が少ないものだということは言わなくても、大臣御自身おわかりになっていると私は思うのです。  そこで、これは当然のことだと思われることを質問をいたします。これは仮定の問題として私申し上げますが、そうすると、かりに円が切り上げになった。切り上げ幅がとにかく一二・五%だとか一〇%だとか、あるいは一〇%以下におさまったということになってまいりますると、この生活必需物資の安定資金というものはそのパーセントがかかって、そうして補助されていくことに相なるわけでしょうか。
  42. 山中貞則

    山中国務大臣 これは円を切り上げるということもきまっておりませんし、切り上げる際の幅も、もちろん、御質問の中にもそれは仮定のことだと言っておられますからいろいろありましょう。しかしながら、いずれにしても、現在の積算の根拠というものから見て、そういうことを前提にして考えるとすれば、また金額の問題よりももっと基本的な発想の転換というものを持たなければ対処はできないだろうと私は思っておりますので、柔軟に、そのときは不足分をどうするかという議論ではなくて、もっと基本的に発想を転換して、姿勢を変えて、本土政府責任をどういう角度から果たすかという問題になると思います。
  43. 中谷鉄也

    ○中谷委員 基本的な発想というのは、長官の頭の中でどの程度のものが構想されているかお答えいただきたい。
  44. 山中貞則

    山中国務大臣 お答えできかねます。
  45. 中谷鉄也

    ○中谷委員 次に外務省に、あたりまえのことですけれども、お尋ねをしておきたいと思うのです。  返還協定の七条によりますと、米国資産の引き継ぎ等の費用、総額三億二千万ドルを協定の効力発生の日から五年の期間にわたって支払うことになっておりますね。これは、もうとにかく、はたして平和条約三条の関係において、そういうものを払わなければいかぬのかどうかという問題は、最後まで臨時国会において問題になる点だと私は思うのです。しかし、この三億二千万ドルというのは、かりに——これもかりにですよ——円が切り上げになった場合には、そのときの円・ドル関係においても、当然三億二千万ドルであることは、全く素朴なと申しますか、あたりまえのことを確認的にお聞きするわけですけれども、それでよろしいわけですね。もうその席から、そうだと答えられてけっこうです。
  46. 吉野文六

    ○吉野説明員 そのとおりでございます。
  47. 中谷鉄也

    ○中谷委員 それで、大臣にお尋ねをいたします。山中さんにお尋ねをいたします。これもかりにの話ですが、とにかく一二・五%、一〇%、九%課徴金があるというふうな、そういう非常な理不尽な前提があれば、六%とか七%とか、きょうは円の切り上げの率の問題を論議しているのではないのだけれども、そうなってまいりますと、かりに円切り上げ幅だけはとにかくアメリカに対する支払い額は減るわけでございますね。結局そうなりますね。その分については、これは当然沖繩県民に対して還元さるべきものと私は理解をするし、そういうふうに要望いたしたいし、担当大臣としては、そのように政府において措置をさるべきものだ、こういうふうに考えるわけなんです。三億二千万ドルというものをわれわれは払う必要はないと言っておった。また、私は現にそう思う。どうしてもそれを払うといって、円のとにかく切り上げになった。そうなれば実質的に支払いが減る勘定になる、その分は沖繩県民に還元されますね。これは、基本的な構想はどうかというような話が出たから、この問題について、そういうようなこともこの機会に、そういう観点においてひとつ考えてみようというような御答弁をいただきたい。
  48. 山中貞則

    山中国務大臣 中谷委員が、何とかして沖繩に財源をひねり出して何かしてやる道を開きたいという一念から、そこに目をつけられたこと、このことは私も敬意を表しますが、しかし、大蔵、外務の答弁の範囲でありますし、私としては、そのようなことから財源が理論上ひねり出せようとひねり出せまいと、沖繩人々祖国はこのような形で犠牲をしい続けることは許されないし、したがって、すみやかにその収拾をしなければならぬのだという決意を持っておりまして、総理も、金額の問題じゃない、本土の政治責任の問題だということを閣議の席で申しておりますから、総理の姿勢も変わっておりませんし、私としては、先ほどお答えできないという珍しくつれない返事をいたしましたけれども、そのお答えできない内容をさらに真剣に詰めて、そうして沖繩人々に一日も早く安心してもらいたいと念願をしております。
  49. 中谷鉄也

    ○中谷委員 外務省にお尋ねをいたします。  先ほどの課徴金という問題ですね。沖繩の対米輸出というのは、金額からいうと、本土の目で見ると必ずしも多くないし、問題ですけれども、私は、これは一つ施政権とは何かという根本問題にも関係してくる問題だというので、この問題については重視せざるを得ないと思うのです。沖繩に対して課徴金が課せられるという問題については納得ができない。先ほど大臣の御答弁によりますと、明るい見通しを得たというふうに私はお聞きした。一体課徴金問題について、どのように対米交渉され、どのような経過、そしてどのような見通しをお持ちになっておるか、大臣答弁を補足される意味で外務省の御答弁をいただきたい。
  50. 吉野文六

    ○吉野説明員 本件につきましては、課徴金の賦課の決定があって以来、まず、在米大使館におきまして、アメリカ側に、課徴金それ自体に対しても抗議するとともに、特に沖繩について課徴金を免除してほしい、こういう交渉をやっております。また、先般トレザイスが日本に来たときも、外務大臣からそのように申しておりますし、また、いまだにこの交渉は続けておりまして、ワシントンにおいて先方と交渉しております。この交渉は、われわれとしては最も高いレベルでやっておるわけでございまして、おそらく課徴金が続く限り、一日も早く撤廃を要求してやまない、こういう姿勢でやっております。  ただ、先方の立場をここに説明させていただきますと、一つは、沖繩は残念ながら米国本土といわゆる関税領域が違う、この点につきましては、すでに沖繩の産品について、米国の一般の関税がかかっておったという点から見ましてもそういう地域にあった。したがって、その点は、バージン諸島とかグアム、サイパン等の南洋の諸島と同様であるというような技術的な困難さがございます。しかしながら、中谷先生が御指摘のとおり、沖繩の特殊な地位、ことにアメリカ施政権を行なっておるという現状にかんがみまして、なおアメリカ側に再検討を要請しておる次第でございます。
  51. 中谷鉄也

    ○中谷委員 課徴金というのは、切り上げでいうと大体七%くらいに相当するといわれておるわけですよ。  そこで、もう一度お尋ねをいたしますけれども、そうすると、外務省の姿勢としては、沖繩課徴金を課することは、不当あるいはとにかく理不尽、不合理、違法、いろいろなことばがあると思いますけれども、そういうふうな感じ、そういうような姿勢でこの問題に臨んでおられるわけだと思いますが、お尋ねをいたしたいと思うのです。課徴金を免除してほしい——相手のあることですから、交渉ですからどういうことになるかは別として、私は、どう考えても施政権というものとの関係において、不合理なこと、理不尽なこと、非常に非条理なこと、そういうような感じです。そこで、この問題については経済問題と同時に、二十七年間も異民族に支配をされておって、そうして課徴金をかけるというそのことが私は納得がいかない。交渉の姿勢をひとつお聞きいたしたい。
  52. 吉野文六

    ○吉野説明員 ただいま中谷先生の御指摘のとおり、われわれも全く同感に感じております。この点につきましては、アメリカ政府部内においても一部そのように考えておる方面がございまして、彼らもいわばわれわれの味方となって、財務当局に当たっておる次第でございます。何ぶん、これは彼らの内輪の問題でございますから、ここでこれ以上お話しするわけにいきませんが、ただいま先生のおっしゃったような同じ気持ちでわれわれは強く交渉しております。
  53. 中谷鉄也

    ○中谷委員 次に、先ほどから同僚議員が繰り返し繰り返しお尋ねをいたしております、復帰前即時円に切りかえという問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  これについては、もうすでに前回の連合審査のときに、あとで質問する上原委員に対する山中大臣の非常に明確な答弁があります。それから、さらに、九月一日あるいは九月二日の大蔵委員会における大蔵大臣答弁もあります。  そこで、最初大蔵当局にお尋ねをいたしたいと思いますけれども、大蔵大臣答弁というのは、この点については十分に配慮をして、沖繩県民には決して迷惑のかからないようにいたします、これは一貫した答弁でございます。  それで、審議官にお答えいただきたいと思いますけれども、その答弁の具体的な内容、これは一体どういうことになるわけですか。きょうは大臣おられませんけれども、大蔵当局から御答弁をいただきたい。
  54. 前田多良夫

    ○前田説明員 具体的な内容については、目下いろいろ検討中でございまして、現在成案を得ておりません。
  55. 中谷鉄也

    ○中谷委員 まず最初のお答えはそれでやむを得ないとして、一ドル三百六十円で直ちに交換してもらいたい、こういうふうなところの質問、これに対して一ドル三百六十円で交換すると確約できないが、沖繩県民に迷惑のかからないように必ず配慮する、こういうふうに大臣は述べておられますね。したがって、これはこういうふうに理解してよろしいのですね。沖繩県民に迷惑がかからないということは、いずれにしても県民が持っておる一ドル、それは三百六十円として、結局県民のふところから、円切り上げになった分だけがどこかへ飛んでしまうようなことはないんだ、沖繩県民のふところがそういうかっこうで、県民責任でないところにおいて被害を受けることは全然ないのだ、私は、こういう意味の答弁として理解しております。それでよろしいでしょうか。
  56. 前田多良夫

    ○前田説明員 大蔵大臣の申されましたとおり、万全の措置を講ずるということでございますが、その内容につきまして、ただいまのようなことであるというようなことは、これは申し上げられないことでございます。あくまでその措置の内容については、目下いろいろ検討をしている最中でございます。
  57. 中谷鉄也

    ○中谷委員 二回目の質問に対するお答えもその程度でけっこうです。  そこで、もう一度お尋ねをいたしますけれども、沖繩県民百万で割ってみると、大体一〇%で五万円以上ということになるのではないでしょうか。沖繩県民一人一人が円の切り上げがあっても、大蔵当局は、具体的に検討している内容はさておいて、少なくとも一円の損もしないかっこうで措置をするということでごいざますね。沖繩県民に損をかけることもあり得るのですか。この配慮するということばの中には、要するに損はかげないのだ、損をかけずに措置をするということだ。その損というものは、とにかく一円の損もかけないのだという、そういうふうな御答弁として受け取っているのですけれども、いかがでしょうか。
  58. 前田多良夫

    ○前田説明員 これは先ほど来申し上げておるように、あくまで万全の配慮をする、こういう趣旨でございます。
  59. 中谷鉄也

    ○中谷委員 そこで、私はもう一度審議官にお尋ねをいたしますけれども、万全の配慮というのは、結局沖繩県民のふところからいうと、損をするか得をするか、もともとかという以外にないわけですね。万全の配慮というのは決して損をさせないのだ、そういうふうに理解をしてよろしいのですね。
  60. 前田多良夫

    ○前田説明員 これは、再々の御質問に対しまして、まことにそっけない答弁でございますけれども、これはそういう表現のとおり十分の配慮をする、こういうことにひとつ御了解いただきたいと存ずるわけでございます。
  61. 中谷鉄也

    ○中谷委員 山中さんにお尋ねをいたします。  要するに一ドル三百六十円で交換をする、若干の幅はあっても、とにかくそれは三百六十円だということなんですよという答弁は、ずっと政府答弁でございましたね。そうして円切り上げの意見もなければ意思もない、こういうことでずっとやってまいりました。そこで、結局変動相場制にとにかく移行した。そうして十五日には十カ国蔵相会議がある。それは限定的であれ何であれ、ここで円切り上げをしますということは言わないけれども、見通しとしてはとにかく必至だろうということは言える。そういうふうな状態の中で政府の御見解を、大蔵大臣答弁を引いて重ねてもう二人同じ質問をしましたけれども、あらためて山中さんにお答えいただきたいと思います。沖繩県民が一円も損をしないのだ、方法は言えない。結局もうけもしないけれども損もしないのだ、もともとの措置をするのだというふうにお答えをいただけるわけですか。
  62. 山中貞則

    山中国務大臣 表現のしかたがいろいろあると思いますが、私たち本土は、沖繩に対して犠牲をもう一度しいることはできない。したがって、沖繩側要請の表現をとれば、復帰前に交換をしてくれ、一ドルはその際三百六十円である、その沖繩側の表現というものは担当大臣の私の姿勢でなければならぬ、そこまでは言えます。しかしながら、それを具体的に政府として、大蔵省も含めて、どのように処理することができるかという問題については、ただいまの中谷君の言われる、沖繩県民に今度は経済、直接ふところの中の金の問題で御迷惑をかけることはできないんだ、かけないということではなしに、できないということ、われわれ祖国はそういうことはできないんだということを前提にやります。やるについて、これ以上担当大臣としても言えない範囲がありますから、したがって、沖繩側の表現を私自身の立場であると私は受けとめて行動をしております、ということにとどめさせていただきたいと思うのです。
  63. 中谷鉄也

    ○中谷委員 外務省にお尋ねをいたします。  新聞の報道によれば、マイヤー大使が立法院の代表に対して、復帰前の、ドル・円交換は不可能ではない、ドルの大量流入防止については非常に困難な問題だけれども、日本政府琉球政府で解決すべき問題だというふうに述べたと新聞に報ぜられております。この点について、外務省として大使の発言の真意をただされた事実、あるいはまた、この問題について外務省としては——この問題というのは円・ドル復帰前即時交換ですね。この種の問題について対米交渉をされた事実はありますか。
  64. 吉野文六

    ○吉野説明員 最初にマイヤー大使の発言につきましてお答えいたしますが、これにつきましては、さっそくわれわれは米国大使館に照会したわけでございます。先方の回答は、いや実は、マイヤー大使は新聞に報道されているようには発言していない、おそらく何らかの誤解に基づいてあのような形の報道がされたであろう、こういう返答でございました。  第二点の円と沖繩ドルとを直ちに交換する交渉をしたかという点につきましては、この問題につきましては、われわれはすでにアメリカ側に対しまして、技術的にこういうようなことが可能であるならば、一体どういうようなことになるんだというような形で、非公式に先方の考えを打診しております。しかしながら、御存じのとおり、この問題は政治的に重大な問題でございますし、また、先方も、そのような交渉にはいまのところ応ずる気配がございませんから、いまのところはこの程度にとどめております。
  65. 中谷鉄也

    ○中谷委員 終わります。
  66. 床次徳二

    床次委員長 上原康助君。
  67. 上原康助

    ○上原委員 まず、私も、先ほど来議論されておりますドル問題について、最初にお尋ねをしたいと思います。  最初に基本的な問題といたしまして、八月十五日にニクソン米大統領が発表した新経済政策のねらいというもりは一体那辺にあるのか、政府としてそれをどう受けとめておるのか、そのことについて、外務省の所見を賜わっておきたいと思います。
  68. 平原毅

    ○平原説明員 お答えいたします。  今回のアメリカの新措置のバックグラウンドといたしましては、アメリカの国内経済がインフレ、失業というような点で、かなり困難の度を加えております。そして対外面におきましては、アメリカの国際収支というものの赤字がふえてきておる。ことに貿易収支におきましては、過去七十八年来初めて、アメリカの貿易収支というものがことしは赤字になる見通しが立ってきたということで、アメリカといたしましては、この際、自国の経済の立て直しということで国内措置をとりますと同時に、対外政策の面におきましては、経済援助の一〇%削除、それから国際平価の調整及び輸入課徴金、この三つの対外措置をとったものだと見ております。  この点に関しまして、わが国といたしましては、根本的には世界経済全般から見まして、アメリカ経済が健全化するということは、世界経済全般のためにも好ましいことだという考えではございますけれども、そのためにとりました輸入課徴金というようなものは、明確にガットの規約の違反でございますし、こういう点は一日も早く直さなければいけない。また、国際平価の調整の問題に対しましては、これは二国間の問題では決してなくて、多角的な国際間の場において解決を見出すべきものである、このように考えております。
  69. 上原康助

    ○上原委員 こまかい議論までは入るゆとりはございませんが、ことばの上ではいまの説明を了解いたします。  そういうアメリカ経済の破綻、いわゆるベトナム侵略戦争による戦費の多額の支出によって、その破綻が今日の事態を招いている。対内的には、確かにいま説明がありましたように、経済の立て直しということで行なわれたでありましょうが、対外的に及ぼす影響はきわめて重大である。しかも、その責任アメリカ自体がとろうとはせずに、日本あるいは欧州諸国、そこにもろにかぶせようとしている。その意図に対して、やはり政府としてもっとしっかりした経済政策なり対外政策というものをとらなかったことが、私は今日の沖繩問題をはじめ、国民政府に対する大きな不信となってあらわれていると思うのです。  そこで、アメリカ経済の基礎的な不均衡から出た破綻というもの、このことをアメリカみずからが責任をとらないところに問題があるという基本的な受けとめ方をやって、初めて蔵相会議に臨む政府の姿勢なり——あるいは沖繩問題に対しての真剣なる取っ組みがないところに、先ほどから議論をされている沖繩に対する新たな犠牲をしいない——現に沖繩県民は犠牲を受けている。このことに対して、アメリカがそういう新経済政策を立てるならば、おそかれ早かれ円の平価というものは切り上げになる、変動相場制か何かとらなければいけない、その事態というものは、外務省にしても大蔵省にしても、総理府にしても予測できたと思うのです。  さらに、沖繩通貨ドルである。先ほどからことばの上でいろいろのやりとりを聞いておって感ずることは、私たちがいまここで何を言うかではなくて、何を実行するかということを沖繩県民は望んでいると思う。なぜ今日の事態に至るまで事前対策がとれなかったか、その原因について、大蔵省なり大臣の御所見を賜わっておきたいと思います。
  70. 山中貞則

    山中国務大臣 ニクソンのとりましたエコノミックパッケージと呼ばれる一連のそういう措置は、政治家から見ると、このままではニクソンは来年の大統領選挙にとても勝てっこないというようなことも背景にあるのであろうと私は見ておりますが、そのためにやった、いわゆるなりふりかまわぬ政策であるというふうにも私は見ております。しかしながら、その政策決定発表後、これが日本に対してどのようなことになるかについては、わが国の為替管理というものは世界で例のないほどきちんと整備されたものである、したがって、少なくとも日本全体としては、投機ドル等の問題による為替市場の混乱はたいしてなくて、旬日にして落ちつくところに落ちつくだろうというねらいが、実は日本のとっておる為替管理制度の中でも相当こね回したやり方をすれば裏がかけるということで、金曜日、二十七日についに観念をせざるを得なかった。やはり一つ日本の現在の為替管理制度というものの盲点をつかれたという点で、観念をせざるを得なかった点であろうと思います。  私、金融通貨問題の担当の責任者ではありませんが、この事柄沖繩に及ぼす影響というものは、第一次要綱の表現のとき以来絶えず念頭に置いたことであります。〇・七五%上下幅の変動が、天井と床がある。それがいずれも三百六十円は残るんだ。残るけれども上下限は無限になる。理論的には無限になる。落ちつく場所は落ちつく場所がありましょうが、一応理論的には無限になるとして、三百六十円というものがその中心にあってのいわゆる上下の変動が自由であるということを確認した後、先ほど申しましたとおり、抜き打ち切り上げよりかこのほうがいいということで、私自身もやむを得ないとは考えたわけでありますが、それまでの間の政府の見通しについて、甘かった点のあることは、私も含めて、そういう御指摘に反発できない点もあるというふうに考えております。
  71. 上原康助

    ○上原委員 確かに日本のとっている為替制度によって、投機ドルが防げるという金融政策の一面もあったかと思うのですが、実際申し上げて、ニクソン新政策が発表されて以来、変動為替相場制度に決定をする段階においては、日本は四十億ドル余りのドルを買っている。買いだめているのです。そこには投機的な思惑はなかったにしても、国民全体の上からいっても、ドル価値が現在減退をしていくということが見え透いている段階で、国益上の立場からもこれはゆゆしい問題だと思うのです。六八年にアメリカが金の二重価格相場制度をとった時点から、おそらく円を切り上げるであろうということは国内において議論されてきた。そのことを踏まえて、私どもは、特にドル通貨としている沖繩においては、復帰前に切り上げられた場合には重大な県民の犠牲、損失をこうむるということで、これまで当委員会においても、予算委員会においても、いろいろ見解を賜わってきたんですが、そのつど政府の御見解は、復帰前に切り上げをしない。さらに沖繩の婦人代表が去る十日に来たときも、その時点まで、復帰前は切り上げをしないと関係大臣は言っておられる。だが、あとで聞いてみると、お金のことはうそをついてもいいというような便法もあるらしくて、結局現在の混乱というものを招いているわけなんです。  そこで大臣に、私はもう結果論だけ言っても問題というものは解決をしない。そのことも踏まえながら、ここで、何か大臣、中座なさるようですので見解を賜わっておきたいわけです。  先ほどから沖繩県民損失をさせない、万全の措置を講ずるということを再三言っておりますが、その場合に、個人個人の預貯金や持っているドルに対しての損失をせしめないというのか、あるいはプールにした形で差損分を補償していくというお考えなのか、この点についてはまだ明確な見解というものは賜わっておりません。たとえ一ドル三百六十円で、どの時点交換することができる、できないの明確な答弁はできないにいたしましても、二十六年間営々と県民一人一人が積み立ててきた個人の財産や持ち高の金額に対して、損失をせしめない保証というものをおとりになるという前提で、いま円問題を検討しておられるという立場での御回答だったのか。またどういうふうにその件についてはお考えなのか。その点をできれば明確に御答弁を賜わっておきたいと思います。
  72. 山中貞則

    山中国務大臣 たいへん表現がむずかしいのですが、別な次元からの議論として、時期を問わず、あるいは三百六十円ということばを使わないで、そういう表現を使わないで別な方面からものを言うとすれば、流通ドル、すなわち手持ち流通を含めた、県民のそれぞれのたんす預金まで含めたものですね。さらに銀行その他金融機関への預貯金、ただし、これには債権債務の関係がありますから、そこらのところはやはり考えなければなりませんが、それらを措置するとして、やはりこれは、全部ひっくるめて、県民一人一人の対策ということであるとお考えいただきたいと思います。
  73. 上原康助

    ○上原委員 ひっくるめて、県民一人一人のことに対しての対策であるというふうに受けとめてもらいたいということですが、最近までの政府のお考えなりあるいはマスコミ等で報道されていることをいろいろ拝見しておりますと、個々人の差損分についての補償というものは非常にむずかしい。減免をするとか減税をするとか、あるいは公共投資をして、差損分をプールにした形で政府が補てんをしていくのだというような見解もあるやに承っております。私はこういう形での差損分の補償というものは、県民は決して納得しないと思う。もちろん方法論においてはいろいろあると思うのです。あくまでも個人の受ける損失というものを補償していく、その前提は、一ドル対三百六十円である。そしてすみやかに円に切りかえるべきである、これが県民の偽らざる、また、単に革新とか保守とかお金持ちとか貧乏であるとかを問わず、県民の切実な要求であるということを御理解をいただいて、その方向での対策をおとりになっていただきたいと思うのです。  そこで、御案内のように、現在通貨に関する高等弁務官布令十四号で、米国ドルを法定通貨とするということを明記をしております。先ほど、水も漏らさない対策でやらなければいかない、アメリカ交渉する段階においては、政府の方針というものがきまったことでなければいかないということでしたが、円を通貨に切りかえていくといろ最大のいわゆるネックとなっているもの、今日までは施政権の問題だといわれた、あるいはなかなか投機ドルというものが防げない、そういう立場でむずかしいということがありましたが、きのうの大蔵大臣復帰協の代表とのやりとりを見ておりましても、日本政府の権限でできるんだという判断をしておられるとわれわれは見ております。一体、切りかえが一番むずかしいということは、投機ドルということなのか、やはり施政権そのものがネックなのか、そこらについて、いま一度大蔵省なり大臣見解を賜わっておきたいと思うのです。
  74. 山中貞則

    山中国務大臣 確かに施政権下になおまだあって、布令第十四号に通貨の定めがなされておることもネックではありましょう。しかし、アメリカはもう日本を二回けっ飛ばしたわけでありますから、そのようなことをあまり念頭に置いて考える必要もないだろうと思うのですけれども、私としては、やはりこれは国際通貨というものから考えると、とても考えられない手段で、現金ならばチェックできます。外国から飛行機で来るのは那覇空港しか着陸しないわけですし、時間をおかない限りは、船ではとても持って来る余裕は、その瞬間において現実の問題としてはないだろうと思うのです。そうすると、やはり国際投機ドルあるいはユーロダラー、四百六十億ドルともいわれておりますが、そういうものが、可能性は全くないという手段をとことんきわめ尽くさなければ、やるにしても踏み切れないという事情が一番大きな問題だと思うのです。私は、さっき対米折衝をするとすれば、それはその瞬間に政府が行動を起こしているときだと言いましたけれども、それは政策の決定ではなくて、すでにそのこと自体を——私はそのことが何であるとは申しませんが、そのこと自体を行なった瞬間ということでなければ、これはできないだろうと思っております。
  75. 上原康助

    ○上原委員 確かに通貨交換ですから、前々から大きなふれ込みをするわけにはまいらないと思うのです。その点は理解いたします。  そこで、そういう作業もいろいろ進めなければいかないと思う。そういう対策を立てるには、沖繩の金融事情なりいろいろな面について、調査なり、資料等の収集というのも必要だと思うのですが、大蔵省にお尋ねいたしますが、沖繩の主要な金融機関あるいは預貯金等について、どういう調査をしておられるのか。先ほど来、預貯金が大体八億、一般流通通貨が一億前後だという議論もあるわけですが、政府としてはどうつかんでおられるのか、説明をいただきたいと思うのです。
  76. 前田多良夫

    ○前田説明員 沖繩預貯金につきましては、琉球政府の金融検査庁が把握しておりまして、当方といたしましては、金融検査庁と連絡しながら計数の把握をしている次第でございます。  沖繩の全金融機関の預貯金総額は、本年三月末で八億四千九百万、ドルというふうに承知しております。これは銀行、信託、相互銀行、各種組合、郵貯、外銀を含んでおります。本年七月末の全体の計数については、まだ調査、集計は終わっていないようでありまして、現在までにわかっており  ますところの銀行とか相互銀行、信託等の預金量は約六億三千万ドル程度、その他金融機関についてまだ判明していない部分を推計いたしますと、全体でおおむね九億ドル、こういうふうに見ております。
  77. 上原康助

    ○上原委員 いまの大体九億ドルというのは、BOA、アメックス等の金額も含めての金額なのかどうか。
  78. 前田多良夫

    ○前田説明員 含んでおります。
  79. 上原康助

    ○上原委員 特に問題になろうかと思うのは、BOA、アメックスの預貯金の取り扱いでもあると思うのです。この両金融機関に対しての非琉球人あるいは沖繩県民預貯金高、そういうものもつかんでいらっしゃるのかどうか、それが一つ。  さらに、先ほどは七月末現在の資料についてはまだ入手しておられないということでしたが、少なくともニクソン声明が出された以降、あるいは政府変動為替相場制度に移行した時点で、沖繩の金融事情はどうなっているかという手は打つべきだったと思うのです、今後の対策を講ずる意味で。おそらくとっておると思うのだけれども、それが発表できないで言えないのか。そういう面に対しては、琉政なり金融検査庁と連絡をとり合って、その後の金融事情の推移についておつかみになっておるかどうか。大蔵省にあらためてその点を承っておきたいと思います。
  80. 前田多良夫

    ○前田説明員 第一点の非琉球人、琉球人の区別をしているかどうか、この点、私現在のところちょっとはっきりいたしておりません。  なお、その後の推移につきましても、できる限りの連絡は目下とっておる次第でございます。
  81. 上原康助

    ○上原委員 そこで、大臣にいま一度お尋ねいたしますが、先ほどお聞きいたしましたように、通貨を円に切りかえるのはあくまで三百六十円で切りかえてもらいたい、また切りかえるべきであるとわれわれは思っております。その場合、あくま右沖繩県民預貯金について考えているということ、非琉球人が沖繩の金融機関なりBOAあるいはアメックス等に預金をしてあるものは、対象にならないと私は考えますが、政府見解はどういうものでしょう。
  82. 山中貞則

    山中国務大臣 これは、ドルの圏内で将来も生活できる諸君を対象にすべきことではありませんので、沖繩県民だけであるということでございます。
  83. 上原康助

    ○上原委員 そうであるならば、一応非常にむずかしい問題であるということは理解をいたしますが、こういう方法もあるのじゃなかろうかと思うのです。すみやかに円に切りかえなさい。これ以上いまの状態が続けば続くほど、県民損失というもの、政府に対する不信、あるいは県民同士のいろんな問題というのが私は起きてくると思う。それをどう解決をしていくかというのが、お互いの共同の責任だと私は思いますので、沖繩にも為替管理制度をしくということ、これは方法はあると思う。さらに、ある一定の時限を押えて預貯金のチェックというものを行なっていく。そして一般流通通貨に対しても、大体一億ドル前後ということがいわれております。しかし、模合いなりたんす預金というものが相当あるかもしれない。そういう限度をきめて、先ほど山中大臣がおっしゃるように、水も漏らさない極秘の対策というものを立てるならば、某月某日、沖繩県民預貯金流通貨幣については、こうこうこういう方法でかえる、そしてなおかつ差損とういものが出る、見込み違いというものが出た場合に、差損についてはさらにそのものについても補てんをしていくという、二段がまえの対策を立てるならば不可能ではないと思うのです。この点について、すでにお考えにはなっておると思うのですが、もし見解なり御意見がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  84. 山中貞則

    山中国務大臣 たいへん微妙なところでありますから答えにくいのですけれども、交換をすれば、それは差損等の問題が生じない措置を講ずる。いわゆるいま議論がされているような問題は、ドル圏に置かれたままであって、そして日常生活物資まで本土に依存をしておる実情というものがもたらしたものでありますから、それと、精神的に復帰の際どうせ交換してもらえる円というものを期待していたその数量と価値がともに減ずるという、沖繩県民のみにいえる環境というものが、一人一人を不安におとしいれているであろう。でありますから、それを全部解消するための手でなければ、中途半端な手を打ってみても、それがまた問題を起こすということでありますから、手を打てたとしたら、そのあとには問題が残らないように手を打つべきであると思います。
  85. 上原康助

    ○上原委員 なかなかきょうは明快な答えは得られないわけですが、むずかしさはわかりますが、損失を与えない、そういうまたあとに問題を残さないということでおやりになりたい。当然そういう慎重さはあるべきことだと思うのですが、現に損失を受けている。私も百ドル持っている。これはかえたって、三百三十四円だから実際には三万三千四百円にしかならない。復帰協の代表や公務で来られる方々も非常にお困りになっておられる。その現実に受けつつある被害というものをどう補てんをしていくのか。これを最小限度に食いとめるということは、やはり円に切りかえる以外にないと思う。そういう一つの方法として、先ほど申し上げたような一方策もあるのじゃないかということでございます。  そこで、先ほどちょっと問題になりましたが、十一億円の緊急対策としての補助については、琉政側は納得したのかどうか、それが一つ。さらに、生活必需品の面だけ差損分を補償していくということですが、一般の旅行者あるいは公務で来られる方々、さらに本土で病気療養なさっている方々に対しても、当然何らかの緊急対策をとるべきだと思うのです。こういうものについては、日銀に円口座を設けて差損補償せしめる、琉球政府に渡すのでなくして、日本政府責任を持ってめんどうを見るというのが私はいまのたてまえ、筋だと思うのです。こういう件については御検討なさっておられるのかどうか、あらためてお聞きをしておきたいと思うのです。
  86. 山中貞則

    山中国務大臣 くれぐれも御理解を願いたいと思うのは、琉球政府責任を押しつけて知らぬ顔するという気持ちは毛頭ありませんし、ただ、手段として本土のほうで決済をいたしますると非常にむずかしい問題が起こってまいりますので、それを、ただ本土政府の金を沖繩にお渡しして資金をつくってもらって、そこでずっと落としていってくださいということにしただけでありますから、琉球政府は何も仕事が特別にふえるわけではなくて、瞬間タッチ的なものであるとお考え願いたいと思います。  しかし、基本的には、ただいま述べられたような要望を持って宮里副主席以下来ておられますから、その限りにおいては要望はなおございますし、話し合いの結果として、さしあたり現在本土政府のとったこの措置を受け入れよう、資金もつくろう、そうして育英会の補助も受けとって、間違いなく一億育英会に渡そうということの合意は見ましたが、なおかつ、ただいまお話のありましたように、先刻来の問題点でもありますが、物資の幅を広げろという要求、できれば全物資という要求もあります。さらに、全物資が不可能であっても、もっと必需品というものを考えるべきだ、広げるべきだという意見があります。これは検討しなければならないことばだと思いますし、さらに、まだ詰め残した感じになっております、本土に長期療養に来ておられる方々やその他の人たち、これは、やはり当然ほっておけない問題として、さらに検討してまいりたいと思います。  なお、沖繩側からの本土旅行について、公務員であります限り、琉球政府、市町村あるいは議会の議員の人たち、それらは、琉球政府が、こちらに設けておる円勘定というものの活用によって、本上政府沖繩対策費、これは円でやってあるわけでありますから、それによって、何とか円払いの旅費でもって支障のないように、いわゆる本土に住んでいる者が持っている円と同じような形でお渡しすればいいのではないか等については合意を見ております。しかし、それからさらに出て、旅行者について全部やるについては、手段が非常にまたむずかしい問題も生起いたしますので、まだ詰め残してある問題であるということでございます。
  87. 上原康助

    ○上原委員 あと外務省に一、二点だけお伺いしておきたいと思うのです。  今回のドル問題、円の切り上げ変動相場制への移行等との関係で、六月十七日に調印されました返還協定と何らかの関係があるのかどうか。先ほど米国資産の買い取り問題では回答いただいたわけですが、そのほかに返還協定、合意書すべてを含めて関係のある部分があるかないかという点をお聞かせ願いたいと思います。
  88. 吉野文六

    ○吉野説明員 この点につきましては、非常に重要な問題でございますから、なお検討さしていただきたいと思います。
  89. 上原康助

    ○上原委員 こういう重大な問題を、みずから調印なさった主管者がまだ検討を加えていない。そこいらにやはり沖繩問題に対する外務省の認識の浅さ、冷たさがあるのじゃないですか。  一点だけ確かめておきたいのですが、先ほどアメリカ人、いわゆる非琉球人というものは対象にしないということでしたが、協定の中に、復帰後の沖繩における外国人及び外国企業の取り扱いに関する書簡があります。その中の外貨送金の二項「沖繩復帰時点において沖繩の銀行にドル預金を保有している外国人居住者は、復帰の後、引き続き当該、ドル勘定を保有し又はこれを円勘定に交換することができる。」こういう問題が実はあるわけですね。これはどうなさるのですか、外務省は。
  90. 吉野文六

    ○吉野説明員 先ほど申し上げましたように、現実に円の切り上げなり平価の変更というような事態が起きましたときに、その事態に即して対応していかなければいかぬ問題だろうと思います。その意味で、いま何とも申し上げることはできません。
  91. 上原康助

    ○上原委員 そのほかにも、いろいろこの返還協定と今回のドル問題とは関連をいたしてまいります。基地労働者の退職金の問題をどうするかというような問題も出てくるでしょう。あるいはアメリカ資産の取り扱いという問題、そういう意味で、返還協定そのものに重大な影響があるということ、さらに沖繩県民の私生活と密接につながっているということ、その認識のなさが今日の沖繩に対する新たな犠牲なんだ。そのことをもう一度十分お考えになっていただいて、この面については、大蔵省なり外務省と次の機会にまた議論を深めてまいりますが、ほんとにことばだけのやりとりではいけない。現実に受けている県民損失や被害というものをどう救っていくのか。われわれは正当の権利としていま要求しているわけなんです。そのことを強く要求いたしまして、さらに次の機会に質問をいたしたいと思うのです。  第三次要綱に対しても質問を四、五点準備してありましたが、時間がありませんので、これで質問を閉じたいと思います。
  92. 床次徳二

  93. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 総務長官、いまちょっと席をはずされておられますので、その前に二、三お聞きをしていきたいと思いますが、現在アメリカは、直面しておるところの経済の不振、それからドル不安とに関連をして、いわゆる日本の安保ただ乗り論が再燃してきておる。そういう不満の結果として、米国においては、日本政府にそういう防衛分担金を負担せよ、こういった意向が強まってきている。こういうふうにいわれておりますけれども、現在まで米国政府の当局から、公式あるいは非公式に、防衛分担金についてわが国の意向を打診してきたという事実があるかどうか。まず最初にこのことについてお答えをいただきたいと思います。
  94. 吉野文六

    ○吉野説明員 そのような、わが国に対するいわゆる防衛分担金というような表現であらわされる問い合わせないしは照会というものは、いまだかってございません。御存じのとおり、防衛分担金ということばあるいは思想は、旧安保協定、旧地位協定時代にあったことばでございまして、現在の安保条約及び地位協定は、全然別の立場に立ってつくられております。
  95. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、政府としては、米国の当面している情勢というものを勘案して、そういう要請があるかもしれないという想定のもとに検討しておるかどうか、この点はどうでしょうか。全然ないということはいまここで断言できないのではないだろうか。いろいろな情勢の変化を勘案すると、当然こういったこともあるいは要請があるかもしれない、こういうことなんですけれども、はたして外務省として、こういった問題について検討されておるかどうか、この点はいかがでしょう。
  96. 吉野文六

    ○吉野説明員 先ほども申し上げましたように、いわゆる防衛分担金というような形でのアメリカ側わが国に対する要請はございませんし、また、今後も現在の安保条約、地位協定の体制が続く限りないだろうと思います。しかしながら、おそらく一般的に防衛分担金という観念の中に考えられておる、わが国の自衛隊が米国ないしは外国から武器を買う、あるいは装備を買う、こういう意味合いのものでございましたら、これは現在防衛庁が一般の問題として検討していることだろうと考えております。
  97. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 将来、もしそのような要請がなされた場合、私自身の見解では、日本政府としてこれはもう断固拒否すべきだ、このように思うわけですけれども、政府見解をこの際ぜひお聞きしておきたい。今後の問題もあろうかと思いますので、こういうふうに要求がもし万が一なされた場合には、政府としては断固拒否するかどうか、この点について伺っておきたいと思います。
  98. 吉野文六

    ○吉野説明員 万一、先生の言われたような要請がある場合につきましては、これは重大なことでございますから、われわれ一局長答弁する範囲でないと考えておりますが、少なくとも、先ほど申しましたように、現状の安保条約及び地位協定に照らして、われわれは応ずるべきものは応ずる、応ずるべからざるものは応じない、こういう態勢であるだろうと思います。
  99. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 応ずるべかざるもの、ことばじりを云々するわけではありませんけれども、いままで断固拒否したとか、正々堂々と主張すべきも  のを米側に主張したという、そして結果を生んだという例がない。私たちが記憶する範囲においては、すべてアメリカの一方的な、言いなりといってはあるいはおしかりを受けるかもしれない。しかしながら、そのように今日まで日本側が米側に対して、あらゆる問題について堂々と主張した例が少ない、全くないといっても過言ではないのではないかと思いますけれども、私が反対する理由は、サイミントン委員会において国務次官が、日本にある米軍の目的というものについて話しておりますけれども、この米軍の目的は、日本の防衛  のためではないことをはっきりと証言しておる。したがって、こういう点からも拒否するのも当然ではないか。私は、そういう意味において政府見解をお聞きした次第であります。  この点は、いまの御答弁を一応伺っておくといたしまして、次に、アメリカが当画しておるところの、先ほど来たびたび話題になっておりますドルの問題にまた関係いたしますけれども、経済の不振あるいはドルの不安、こういった主たる要因というものは、言うまでもなくベトナム戦費であり、あるいは海外の米軍の駐留費であり、そしてドミノ理論によるところの米軍の軍事・援助費、こういったものであるわけですけれども、米国がもし本土、そして将来は沖繩、そういったところにおける米軍維持費が非常に過重であるということならば、アメリカわが国に、先ほど来申し上げているような防衛分担金の負担を要請してくるかもしれない。こういうことで先ほど来伺っているわけですけれども、このようなことが現実に起きないように、アメリカが、そういった要請をする前に、まず本土なり沖繩から基地を縮小して軍隊を撤退させるならば問題は解決するだろう、私はこういうふうに主張しているのですけれども、この点に関して、政府はどのように考えておられるか、お答えをいただきたい。
  100. 吉野文六

    ○吉野説明員 基地の縮小問題につきましては、われわれとしても沖繩県民経済の繁栄ないしは心理的な問題その他を含めまして、鋭意交渉を続けておりますし、また、今後も続けていくわけでございます。しかしながら、一般に安保条約のもとに米国と協定を結んでいる以上、日本を含める極東の平和のために必要な防衛体制というものは、これはやっていかなければならないわけでございますから、そういう点も考慮しまして、今後とも基地の縮小につきまして交渉を続けていきたいと考えております。
  101. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 縮小自体はいまお聞きしたのではないのですけれども、外務大臣もいらっしゃらないということで、要するに防衛分担金の負担について、絶対そういうことはないかどうかの確認は残念ながらとれない、こういうきょうの委員会であります。  それでは、現地沖繩には米軍が約五万ぐらいですか、そしてまた軍属あるいは家族を加えるとその数は相当なものになるのではないかと思います。したがって、これらが沖繩で消費するところのドルは、これはもうたいへんなもので、相当の額にのぼるのではないかと思いますけれども、政府においては、本土における米軍関係者の消費するところのドル、そしてまた沖繩における同じように消費するところのドルを大体幾らぐらいと踏んでおられるか、概算でけっこうですけれども、お答えをいただきたいと思います。
  102. 吉野文六

    ○吉野説明員 アメリカ軍及び軍属、家族が日本に落としておる、ドルないしは沖繩に落としておるドルの正確な額はわかりません。     〔委員長退席、宇田委員長代理着席〕 というのは、これは毎月、毎年変わっていく状況にございますから。ただ、われわれの概算では、本土におけるいろいろの支払いを含め、大体五億ドルくらいあるのではないか。それから沖繩につきましては、われわれは直接知る方法がございませんが、わが国及びアメリカ、その他の国からの輸入の外貨の額が、ならしてみれば大体それに当たるのではないか、こういうように考えております。
  103. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、相当額というそういう前提でこれからまた伺ってみたいと思いますけれども、沖繩が返還されたあとでも変動為替相場がとられ、また円切り上げが行なわれるとすると、米軍人あるいは軍属、家族の受け取るところのドル価値というものはもう当然実質的に低下したことになるわけですけれども、これに関連して二、三また伺ってみたいと思います。  まず最初に、米軍人、軍属がこの本土あるいは沖繩で消費するドルに対して、一種の固定相場制を要請してくるのじゃないかという不安がありますけれども、この点についてはどうでしょうか。
  104. 吉野文六

    ○吉野説明員 御存じのとおり、日本におる米軍関係の支払う、ドルに見合う円価につきましては、先般日米合同委で、前日の中心相場を使う、こういうことで合意ができた次第でございますが、沖繩におきましては、御存じのとおり依然としてドルが通用しておるわけでございますし、また、日本の平価が変わったわけでもありませんから、いまのところこのような問題は起きてきておりませんし、またおそらく当分の間起きてこないのじゃないかと考えております。
  105. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、もしもそういうような事態が発生したといいますか、要請を受けたというような場合に、はたして政府はどのような措置をとられるか。はたして変動相場制そのものを変えずにそのまま行なうのかどうか、この辺はどう、でしょう。
  106. 前田多良夫

    ○前田説明員 これは、本土と同じようなふうに当然やるべきだと思います。
  107. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 変動相場制度あるいは円切り上げ、こういったことによる米軍人、軍属の為替変動に伴うところの差損分を、日本政府が補てんするように要請してくるようなことはないですか。この点はどうですか。
  108. 吉野文六

    ○吉野説明員 御存じのとおり、これは経済問題でございまして、一般に通貨というものは大体その相場によって交換されることになっておりますから、そのような要請はないものとわれわれは考えております。
  109. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 もしあれば、政府としてどのような措置を講じられますか。
  110. 前田多良夫

    ○前田説明員 そういうような点は、全く考えられないことであると私は存じます。
  111. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 私も、いまの答弁どおりであれば何らこんなことを心配し、あるいは質問する必要はないのですけれども、御答弁をお聞きしておりますと、「全く」というふうにおっしゃられたことばじりが、思います、こうなってしまう、非常に残念な思いで聞いておるわけですけれども、それでは変動為替制と円切り上げを見越して投機目的のドル沖繩への流入ですね。これをどのように防止するか。この問題もいま一つの大きな問題になっておりますけれども、どういうふうに防止するかについて考えがあればひとつ聞かせていただきたい。
  112. 山中貞則

    山中国務大臣 これを防止する手段が沖繩においてはございません。したがって、琉政との間においても、琉球政府立場において、為替管理的なものができるかどうか等については検討はしてもらっておりますが、それに対して十分な協力もしたいと思いますし、現在の時点においては投機ドルであろうと、あるいは正常な流通ドルであろうと、それをチェックする手段は実はないというのが偽らざる実情でございます。
  113. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いたずらにこの決断をおくらしておる間に、やはり投機目的のドルはどんどん流入してくるというおそれが考えられます。そういった意味において、早急に決断すべき——いまの御答弁からいきますと、すぐにどうこうするということはなかなか困難である、チェックする方法もないというような御答弁でございますけれども、何らかの形をとって早急に決断しないことには、どんどん流入してくるおそれが出てくる。こういった意味において、一応質問ということではなしに、何らかの早急な検討をここでお願いしておきたいと思います。  沖繩返還協定になりますけれども、第七条のさっき同僚委員がちょっと触れられた問題ですけれども、米国資産の買い取りの問題です。この核兵器及び特殊部隊の撤去あるいは撤退費、あるいは労務者の退職金等を合計して三億二千万ドル、このようにいわれておりますけれども、これは、変動為替制度やあるいは円切り上げにははたして一切影響されないものかどうか、あとになって何か言い出すのじゃないかということなんですけれども、この点はどうでしょうか。
  114. 前田多良夫

    ○前田説明員 これは協定にはっきり三億二千万ドル、こういうふうに書いてありますので、三億二千万ドル払えばそれで協定上の義務は達するわけでございます。
  115. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 ただいまのお答えを信じて、それでは次に進みたいと存じます。  土地の問題が二、三ありますが、沖繩の土地問題に関連をして、まず返還協定第六条の三項で、琉球諸島及び大東諸島において、アメリカ合衆国政府が埋め立てた土地があるわけです。具体的な質問に入る前に、その埋め立て地の所在地あるいは面積といったものを、そこにデータがありましたらひとつ教えていただきたいと思います。
  116. 銅崎富司

    銅崎説明員 お答えいたします。  全体で六十三万三千二百平米と聞いております。場所は牧港サービスエリア、本部採石所、那覇港、三号線の道路、キャンプコートニー、カルテックス・バルクオイルターミナル、六カ所でございます。
  117. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 同じくこの協定第六条三項によりまして、この協定がそのまま成立すると、日本政府財産となるというふうに出ているわけですけれども、このことについては、日本政府財産となったときに、これらの埋め立て地は無償で返還されますか、この点はどうですか。
  118. 吉野文六

    ○吉野説明員 協定発効後は、日本に無償で帰属することになるわけでございます。
  119. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 それでは、いま埋め立て地ということで伺いましたけれども、この埋め立て地の上に、もしも米軍の施設、区域がはたして継続して存在するかどうかという問題です。もしそうならば——ちょっと施設、区域について伺いますけれども、この面積はどのくらいありますか、施設、区域についての面積です。
  120. 吉野文六

    ○吉野説明員 御質問の趣旨がはっきりくみ取れなかったかもわかりませんが、埋め立て地は現在のところ大部分施設、区域になっておるはずでございます。
  121. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そうであれば、単なる埋め立て地であれば、先ほどの御答弁も一応あのままで次のテーマになったかもしれませんけれども、施設、区域が埋め立て地の上にあるということになりますと、継続的に存在するということになりますと、先ほど御答弁をいただいた無償ということについては、将来何らかの形で、また施設の買い取り問題なんか起きないかどうかということなんですけれども、これは全く起きない、このように了解してもよろしいわけですか。
  122. 吉野文六

    ○吉野説明員 何も将来起きないはずでございます。
  123. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 これは、起きないはずでございますといま御答弁いただきました。そうであれば、ほんとうにこれまたこんなこと、がたがた聞く必要はないと思うのですけれども、米側施設については、われわれは何べんもこの委員会で、元愛知外務大臣の当時から、いろいろと御質問を繰り返してまいりましたし、最初の段階では、そういったものに対しては日本側は負担する必要はないと考えるという御答弁であったのが、だんだん変わって、ついにあのような協定になってしまった。そういうことがあるので、私は根拠なしに聞いているのではないのです。そういった意味で、六条三項に、単に日本国の財産というふうに表現がしてありますけれども、これではあまりにも具体性に欠けているのではないだろうかと私は読んだわけです。そういった意味で、今後こういうこまかい問題が出る、あるいは出る可能性があるとしても、どういう形で米側と交渉が行なわれていくかということについて、もしお考えがあれば聞かしていただきたいと思います。同類のものがたくさん出ております。
  124. 吉野文六

    ○吉野説明員 先生の御質問を的確につかんでおるかどうか疑問でございますが、少なくとも二十万坪にわたる埋め立て地に関しましては、返還前にその一部、おそらく二万坪余のものを、現在海没地として扱われております土地の所有者に衆側から補償として返還してもらうことになっております。この点につきましては「海没地の問題の解決に関する交換公文」がございます。その他につきましては、先ほど御説明したとおり、国有財産として日本に帰属することになるわけでございます。
  125. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 いま海没地の問題が出たわけですけれども、言われたとおり、日米政府間の協議の上で、これが代替地として充当するということですね。その場合に、問題は、地主たち生活とかあるいは農耕をするためのいろいろな問題がありますけれども、その埋め立て地がそういったことの目的に適当でないという場合には、代替地をもらって云々というようなことには、簡単に同意しないということも実は現地で聞いております。もしこのような事態が現実に発生した場合に、政府はそれではどういう措置をとるか。たとえば返還された土地、この場合埋め立て地ですけれども、これはコンクリートでずっとおおわれておるというような場合には家屋も建たない、農耕もできない、こういったことも当然起きてくるのじゃないかと思います。その場合に、それでは、はたして埋め立て地以外の代替地を与えるかどうかという問題ですね。この点はどうですか。
  126. 吉野文六

    ○吉野説明員 いずれにせよ、米側が土地所有者に対して、海没地につきまして直接交渉するわけでございますが、これにつきましては、日本政府と協議するということになっております。また、海没地の地主が何らかの形でそのような合意に到達することを拒む場合には、場合によっては各戸の埋め立て地自体を換価し、金銭によって地主を補償する、こういうことももちろん可能であるわけでございます。
  127. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 海没地に対する土地の代価と、それから埋め立て地に対する土地の代価の換算ですけれども、これはどういうふうになっていますか。一対一ということはないと思うのです。埋め立て地が大体どのくらいで——要するに海没地のほうがもとは場所とか条件が非常にすぐれておったということもあるでしょう。そういったことで、価値的問題があると思いますが、一対一であるかないか、この辺はどうですか。
  128. 吉野文六

    ○吉野説明員 この点は、まさに純然たる経済問題でございますから、おっしゃられるとおり、土地の条件あるいはかえ地の条件その他によって、協議がまとまるだろうとわれわれは考えております。なお、海没地につきましては御承知のとおり、従来これは基地として提供しておったわけでございますから、その範囲内において地主に対して借料を払っておりましたから、それが一つ基準ではあり得るだろうと思います。
  129. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 時間がだんだんなくなりましたので、それでは次に基地に関する了解覚書の中に、A表の八十八番、「沖大東島射爆撃場」というのが載っております。これは継続使用を認めるということになるわけですね。ここで伺っておきたいのは、現在の沖大東島の状態、これがどういうふうになっているか、もしわかればそういった状況ですか、これを説明していただきたいと思います。
  130. 銅崎富司

    銅崎説明員 詳しいことはわかっておりませんが、面積は百三万六千平米あります。これは全部国有地と聞いております。  現在の演習状況というのは、私ども情報を得ておりませんが、使用目的といいますか、そういうものは艦砲射撃、空対地の射撃、照明弾の投下というような演習をするというふうに聞いております。
  131. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 そこは人が住めますかどうですか。人が住めるような条件に置かれているのか。いわゆる居住するための条件が整っているのかどうか。全くいまみたいに人が住める可能性がないか。その辺、わかっておればあわせて御答弁いただきたいと思います。
  132. 銅崎富司

    銅崎説明員 わかっておりません。
  133. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 聞くところによると、この島は日本精糖の所有地であるというふうに聞いているわけですけれども、これは琉球政府もこの点については明らかじゃないので政府に伺うわけですが、いまの御答弁ですと、ちょっとこれ以上出てこないような気がしますけれども、参考までにこれからもし機会があれば、早急にその点を調べておいていただければと思います。ちょっとこれはここで中座した形になりますけれども、その場合に、もしもそういった民有地といったような場合、米軍の使用した軍用地の賃貸料がどうなっていたかとか、そういったところをあわせてお調べをいただければと思います。  最後に、A表のことについてもう一つ伺いたいのですが、安波訓練場というのがあります。A表の二番ですね。三番には川田訓練場というのがありますけれども、この継続使用を村全体が拒否しておる、こういうことを現地で言っておりますけれども、これは知っておられますか、どうですか。
  134. 銅崎富司

    銅崎説明員 私ども聞いておりますのは、米軍としては引き続き使いたいということで、鋭意折衝しているというふうに聞いております。
  135. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 訓練場には公有地があるわけですけれども、米軍が施設、区域として継続使用することを地方公共団体が拒否した場合ですね。議決やなんかという形で拒否したという場合に、政府が強制収用するというようなことになったときの法的な根拠がはたしてあるのかどうか。この点について具体的に明示してもらいたいと思います。
  136. 銅崎富司

    銅崎説明員 お答えいたします。  施設庁といたしましては、できるだけ話し合いによる契約に持っていきたいと考えておりますが、もし、かりにそういうふうになりました場合に、どういうふうな取り扱いにするかということは慎重に配慮しなければいかぬことだと思いますが、土地収用法等の場合におきましては、その使われる土地そのものを問題として取り扱うというふうに聞いておりますので、その所有者が地方公共団体あるいは国ということでありましても、その使う土地そのものを問題として取り上げて解決していくということになろうか患いますが、私どもまだまだ十分に詰めておりませんので、今後関係方面とも詰めたいと考えております。
  137. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 話し合いによる契約というふうな御答弁がありましたけれども、これは政府とやるのじゃなくて、現地の地元と米軍がやっておるということはもうすでに御存じだと思います。せんだって現地へ行きましたときに、国頭村あるいは東村の村長さんと直接話し合った。地元の人とも懇談をして、実際の訴えを聞いてきたわけです。村と米軍との契約書がここにあります。日本語と英語と両方ありますけれども、それ自体別にどうということはありません、これは契約書ですから。これには一九七一年六月三十日まで使用することに同意したということである。それ以降は契約をしてないわけですね。ですから「国頭村長はここに関係地主に代り、」云々とこう書いてあるのです。政府は話し合いによる契約とおっしゃったけれども、これはあくまでも村長と米軍ですね。これは「ランドディビジョン」というのですか、「オーソリゼーション フォア ユースオブランド ツー コンダクト ミリタリー トレーニングエクササイジズ」というのが出されている。   〔宇田委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、米軍とあくまで個々の契約なんですね。しかも、両方の村は、もうかんべんしてもらいたいと村で決議もしている。東村あたりは、質問に対して、村長さんは一切これから米軍には使わせないとはっきり答弁もしている。答弁だけじゃしょうがないので、何かないかと言ったところが、ここにあるような、一部だけ読んでみますけれども、「部落地域内に於いての演習については特に婦女暴行危険の恐れがあるとして又農作物被害や農業に山作業等精神的にも物質的にも不安が残るものと思って居り右の件につきましては契約に固くお断りします。以上戸主会の名に於いて決議する 一九七一年六月二十日」これは国頭村の玉城区長ですか、そのほかの方々の捺印がありますけれども、現地としてはとんでもない、もうこれ以上危険に脅かされるのはたいへんだということを盛んにわれわれに訴えておりますけれども、それじゃ、A表にあったのは御存じなかったかということで、私たちは聞いたわけです。とんでもありません、新聞を見てぶったまげた、こういうことなんですね。そういうことが行なわれているとたいへんなんで、これは法的に詰めていかなければならない点がたくさんありますけれども、要するに、この間実態調査に行きましてほんの一つだけ飛び込んだところがそうだ。とにかく、この安波、川田両訓練場における現地の土地所有者及び地方公共団体に対して、いわゆる事前の通告であるとかあるいはこの了解をなしに、このA表の提供する地域として、区域として、リストに入っているというのは非常に問題である。住民の意思を全く無視してしまった。そういった意味では、権力主義という以外の何ものでもないというふうに私はあのときに直観したのですけれども、要するに、ほんとうに住民が新聞を見てびっくりしちゃった、村長さんはじめみんなそう言っているわけですね。現地の関係住民及びその地方公共団体自体が、もしもそういったことに反対運動でも起こしてきたら、もう絶対使わせないんだと反対運動を起こしてきたということになれば——その可能性は非常に強いわけですよ、実際行きましてね。だから、国と地方公共団体の紛争が起こる可能性が十分に考えられるというふうに私は直観したわけですけれども、政府は、どうして関係住民、すなわち国頭村なり東村なりそういうところの人たちの地主なりに個々に当たるなり、そういった公共団体と接してよく実態を調べなかったのかということをちょっときょうは、これはほんの万分の一の話なんですけれども、お聞きしておきたかったわけですが、これはどうでしょうか。
  138. 吉野文六

    ○吉野説明員 御存じのとおり、沖繩返還協定交渉の一部として、日本政府は米側に、安保条約、地位協定に従いまして基地を提供する、こういうことになっておるわけでございます。米側の主張は、現在米側が使っておる基地はすべてそのまま使わしてくれ、こういうことでございます。そこで、いろいろ交渉した結果、多少一部につきましてその解除を約束してもらったわけでございますが、その他につきましては、日本政府がこれを提供する、こういうことになっております。そういうような事情で、今後われわれは、地元の関係者と話し合いによって必要な土地、施設を提供してもらうように交渉していくことになるだろうと考えております。
  139. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 答弁がなかなか苦しいように私ほ聞こえるのですけれども、いまになってそれじゃもうすでにおそいわけですよ。ですから、アメリカの言うなりに提供してくれというのは、いまの御答弁わかります。もう住民の意思は踏みにじってもかまわないということであれば、これは住民の意思を全く無視したということであり、かつ米側の言うなり、一方的な米側に対しての譲歩しか考えられない。前々からこれを言っておるわけですけれども、こういう実態が実際にあらわれてくる。アメリカが占領中に沖繩の住民を追い立てて、ブルドーザーでずっとやって、そうして基地にしてしまったという事実があるけれども、こういった、村民に通告をしない安波とか川田訓練場をA表に入れてしまったということは、アメリカの態度とあまり変わらないのじゃないか、このようにさえ私はここで申し上げたいのです。こういった事実に対して沖繩県民が反対した場合に、強制収用になる。そんなことになれば県民は実力で対峙する。それには今度は自衛隊がそれに対して出動しなければならないということになっていったら、何のための施政権返還かわからない、こういうことですよ。この一例を見ても、協定がほんとうに喜ぶべきものかどうか。私がきょうお話しするのは、もうたった一つの例です。まだまだいろいろな例を検討中ですけれども、こういう証拠が出てきているわけですね。これは協定そのものに問題がある証拠なんです。きょうは長官がお見えになっておるので、山中総務長官にこの点に関連して伺いたいわけですけれども、こういった不合理な点をもう一度再検討して、現に地元の人たちはもう相当な反発をしておるということを勘案されて、もう一度アメリカ交渉し直すべきだと私は思うのですけれども、長官、閣僚のお一人としてこういうことに対する見解をお聞きしたい、こう思います。発効してないから、まだ交渉の余地があるのじゃないかということの点で一つ伺いたいと思います。
  140. 山中貞則

    山中国務大臣 私が沖繩の振興開発特別措置法に基づく各種の施策を策定いたします場合にも、那覇市の都市計画の遂行一つを例にとってみても、非常に軍用地の所在というものが問題を大きくして、設計すらしにくいという点は、私もかねがね考えているところでありますが、今後それらの具体的な復興計画に基づいて、日本として必要な地域については緩急いずれも度合いがありましょうから、逐次返還を求めていく姿勢をとり続けていかなければならぬと思います。しかし、私は外務大臣でありませんから、いまここで断定的には申し上げられませんが、すでに調印を終えた協定というものを、国会でまだ批准してないということはおっしゃったとおりでありますけれども、それを調印をした国の一方から中身を変えるというようなことは、おそらくできないのではなかろうかと思っておるわけでございます。
  141. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 長官の御見解として承っておきたいと思います。これはおっしゃったとおり、外務省のほうからはっきりとした責任ある実は御答弁をいただきかった。しかし、大臣もおられないということで、ほんとうはきょうはここに責任ある答弁をされる方を呼んできていただきたい、こういうことでありますが、そういった意味において、これは非常に重要な問題で、山中長官は、いまさらその変更はきかないであろう、こういうふうに言われておりますけれども、やはり住民第一主義と考えれば、ここでは再交渉なり何なり、私は外務省責任において詰めていかなければならないのではないかと思いますけれども、まだあと同僚委員質問されますので、この委員会が終わるまでにこの問題はっきりしていきたいと思うのです。どなたか責任ある答弁をしてくださる方があれば、ぜひひとつこの委員会の終わるまでに出していただきたい、このように思いますけれども、どうでしょうか。
  142. 吉野文六

    ○吉野説明員 この点に関しましては、すでに山中長官が御答弁なさったとおりでありますが、何ぶん沖繩自身が返ってこなければ、われわれとしては一般問題として基地の削減の交渉ができないわけでございます。したがって、ともかく現在の協定を発効させて、その上でさらに基地の縮小を交渉する、これ以外には基地を縮小させる最も有効な手段はないというのが、また実利的に考えてもわれわれの見解でございます。
  143. 中川嘉美

    中川(嘉)委員 さっきから申し上げているように、住民の不幸といいますか、きょうは円とドルの問題からいろいろ論議されております。これは、住民本位に考えるがゆえにわれわれが論議をしている。ただいま申し上げたことも、それじゃ住民が当座もうどうなろうと、これはやむを得ないんだというふうにしかいま私には聞こえなかった。そういった意味で、私はきょうたった一つの問題を取り上げただけですけれども、一応そういう御答弁であるならばそのようにお聞きしておいて、また逐次これからほかの問題にも触れていくときの参考に大いにしてまいりたいと思いますけれども、どうかひとつ、そういう問題が多々あるものですから、最後に御要望しておきたいことは、あまりにも事務的という感覚が私は強いのではないかという感じがします。あるいはこういう理屈が通ればそれでいいじゃないか、そういうことでなしに、あくまでも私たちがこの委員会においてたびたび発言している県民のしあわせのためにというこの時点に立って、これからひとつ大いに外務省も勉強していただきたい、このように最後要望して終わりたいと思います。
  144. 床次徳二

  145. 安里積千代

    ○安里委員 昨日、閣議決定されました復帰対策要綱の第三次を予想して、この委員会はずっと前から予定されておったものだと思いますが、復帰対策どころじゃなくして、ドル問題が起こりまして、本日の委員会ドル問題を中心にいたしまして、沖繩の現実に迫っておる諸問題が一々質疑されたわけでございます。  すでに言い尽くされたようでありまするけれども、沖繩におきましては、八月の十六日にニクソン声明が出たその反応は敏感にきたのであります。そうして立法院におきましても決議をし、またわれわれ沖繩出身の議員も急遽上京いたしまして、政府各当局にそれぞれ当たっていろいろな御意見も承りました。二十七日に大蔵大臣にお会いしたときにも、今度の変動相場制度に切りかわるということにつきましても、一言も感じ取らない間にあの声明になったわけであります。以来、ドルを使っておりまする沖繩におきましては、本土国民の皆さま方が観念的に感ずるものが、沖繩には庶民に至るまで現実の生活に問題が迫っておるということはもう御承知のとおりであります。  九月一日に県民大会が開かれて、その代表も派遣されて、きょうのこの委員会の前におきまして、立法院議長並びに代表の方の陳情があったわけでございます。事が事だけに、この委員会におきましても、大臣からもあるいはまた関係する省の方からも、明確な御答弁を得ることができないということは理解するものでございます。しかし、考えてみますと、今度のことが起こりましてから今日までの全体を通じて見ました場合に、山中長官の非常な沖繩に対する熱意にかかわらず、はたして政府全体として、少なくともこの通貨問題に関する限りにおきまして、沖繩の問題というものを無視というよりは、その対策が全然頭になかったのじゃないかというような感じを受けるわけであります。と申しまするのは、もちろんいま十一億の緊急対策、あるいはまた、あの直前におきまする貿易決済のいろんな措置、いろんな問題が行なわれてはおりまするけれども、本来、ほんとうに政府に、アメリカの施政下にあって現にドルを使っておる沖繩であるということが、頭のどこかにでもありますれば、日本の金融政策としても、経済政策でも重大な問題でありまするけれども、その場合に沖繩をどうするかということに対する腹づもりと申しますか、それがなければならぬはずです。そうして、変動制に変更したというような場合におきましても、あわせて、ではこれが沖繩にどういう結果を及ぼすかということが、当然そのときに同時に具体策としてあらわれなければならなかったのじゃないか、このように考えるわけであります。  そこで、そういう点から見て、いま事が起こって沖繩には物価高が来たした、あるいはまた、学生の送金あるいはまたいろいろな問題にも差しつかえておる、こういう事態になって、何となくばたばたと急遽、策を講ずる、事が起こってあわてふためいているということは当たらないかもしれませんけれども、対策を講じておるというふうな感じを受けるわけでございまして、長官の頭の中には、すでにそういう問題があったろうと思います。けれども、このドル問題に対して沖繩の受ける影響、それと沖繩に対する対策、こういうことが政府全体として確立してなかったのじゃないか。今日におきましても、いろいろ抽象的なことばはおっしゃっておりまするけれども、たとえば投機的な問題がある。いろいろな問題があるので、軽々しくは言えないということばに隠れて、ほんとうに、具体的にどうするかという問題がないのじゃないか。それとも具体的な、こうするという方向はあるけれども、これを発表するところの段階じゃないのだ、こういうようなところであるのか、もし私がそのように、政府として沖繩に対する問題というものが頭になかったのだと言ったことが誤っておることであるとしますならば、これは是正するにはばからないわけでございますけれども、結果的にはそのように感じます。それが復帰に対しますところの、また日本政府に対しまする沖繩県民の非常な不信にもつながってくると思います。経済問題だけじゃなくして、大きな不信に通じまする政治問題として重要な段階に来ておると私は思っております。  そこで、いま一度政府自体といたしましてのほんとうの腹と申しますか、長官の腹を伺うこともけっこうでございまするけれども、むしろ私は、総理を中心といたしまする政府全体として、もっと具体的なことに対しまして考えておるかどうか。総理はわれわれが会いましたときには、どんな事態があっても、沖繩の庶民大衆に迷惑はかけないという趣旨のことばを使っておりました。庶民大衆に迷惑をかけないということの意味がどういうことであるかということも、いろいろな想像もされ、憶測もされるわけでございますけれども、そういうことばの中から総務長官とされまして、むしろ日本政府全体を代表されるという気持ちで、大蔵担当大臣も代表されるという、各省というよりも、政府全体としてのお考えを、沖繩に対する対策につきまして、もう一回ひとつあらためて承りたいと思います。
  146. 山中貞則

    山中国務大臣 まず政府の姿勢の問題でありますが、ニクソン声明が出されました直後に、アメリカに参ります日米閣僚会議のメンバーの皆さんの打ち合わせ会が行なわれることがわかりましたので、私は閣議の席で発言を求めて、この問題の成り行きいかんによっては沖繩影響が出てくるおそれがある、したがって、自分は関係閣僚でないが出席を求めるということを発言をいたしまして、閣議の了解を得てその席に出席をいたしました。ところがその席では、ニクソン声明並びに日米関係の現状と未来について種々分析が、相当な時間をかけて行なわれましたけれども、いままでの日本の平価を維持するという点について、全然方針の変更はないということで会議が終わりましたので、そこで会議の席においては、そのようなことが、沖繩影響の起こらない会議で終わりました。しかし、そのあと一名の閣僚が席を立っただけで、そのまますわっておいてもらいました。もちろん総理もおってのことでありますが、沖繩についてそのようなことが起こらないように、そして、ニクソン声明そのことによって沖繩に起こるであろう波紋というもの、影響をカットするための措置というものを、主として大蔵当局等を中心に相談をいたし、それに対する手は一応打ったわけであります。しかし、やはり日本も持ちささえられなくなって、結局は御承知のとおりの、日本政府自体としての変動相場制への移行という行動に移行をいたしました。その移行までの間は、全然政府の中でそういう方針を検討しておるという節もありませんでしたし、したがって、私自身もある意味では被害者的な立場に置かれたわけでございますけれども、しかし、相談を受けたときには、それを断わるという環境は私から見ても非常に困難な事態にありましたし、また沖繩側に対して一ドル三百六十円という基本レートというものは変わっていないんだということをはっきりと大蔵大臣に取りつけることにより、これは変動相場制を——当然基本レートはあるわけでございますから当然のことでありますが、一ドル三百六十円というものの確認を取りつけることにおいて、私も最終的に閣僚として同意をせざるを得なかったという経緯がございます。したがって、われわれとしては、政府全体として、沖繩に無用の、しかもまた復帰直前になって、不必要でかつ不当な御迷惑をおかけする結果にいまなっておりますことを、心から申しわけないと思っております。しかし、通貨が、国際通貨の議論の場において、日本沖繩に対する問題だけでどこまでささえられるだろうかという点は、私もやはりある程度自信を必ずしも最終まで持ち得るところがございません。したがって、そのような場合において、沖繩において最大限譲れるところは、一ドル三百六十円の基本レートは変わっていないという点が確認されることだろうと思ったわけであります。したがって、日本政府沖繩に対する主権者としての態度が、誠意が足らないというような見方もされておりますことも、これは、一言も私たちとしてはこれに対して反発をする資格もありませんし、またそのようなことはでき得べくもないことであると思っておりますので、要するに、具体策を幾ら聞かれても言えないというだけにとどまってしまうわけでありますが、沖繩県民人々に結果として迷惑はかからないで済んだ——いまの物価変動その他の点は迷惑はかかっておりますから、完全には言えないと思いますけれども、通貨価値の問題について、迷惑はかけないで済んだということを実行し得たときに、あらためてそれは本土政府として、ほんとうに誠意のある精一ぱいの努力であったかどうかについて御批判を賜わりたいと思います。
  147. 安里積千代

    ○安里委員 大臣のその会合に出られたことに対しましては、新聞でも読みました。それだけに、そういう見通しと熱意を持って出られたのに、大事なその問題が議題にのらなかったということでお帰りになったということも新聞にございました。私は、いま、じゃどうするかという問題が起こっておるときに、過去のそういった問題をかれこれ言うということは、これは何も意味をなさない、こう思いまするけれども、少なくとも大蔵当局というものは、こういった問題に関するエリートぞろいの方々が事務当局にもいらっしゃるだろうと思うのです。ですから、政府が政策として打ち立てる前には、当然事務当局の中におきましても、あらゆる情勢の変化、あらゆる見通しというものはつけておったはずであります。その中には、当然沖繩に対する考えというものが頭にあったはずであります。これは予定していない質問でございまするけれども、大蔵省の事務当局の方がいらっしゃいましたならば、この変化を来たしまする事態にあたりまして、ドルを使っておりまする沖繩はどうなるのだ、沖繩に対する具体的な問題はとにかくといたしまして、この問題が決定する前に、沖繩に対してどうするかということが論議されたか、あるいは何らかの線というものが二十七日の発表前に考えられておったかどうか、答えられる範囲内において、大蔵当局の方のお答えを願いたいと思います。それとも、何の考えもなかったのであろうか。
  148. 山中貞則

    山中国務大臣 まことに申しわけありませんが、ここら辺、誤解されると非常に大きな問題になるので申し上げておきますが、私がことさら閣議で断わって、許可を得て出席した会議で、議題にならなかったから発言をしなかったというふうにおとりになるとお間違いでございますので、私は議題にならなくとも問題があれば発言をする男でございますから。その会合においては、日米間の問題としてこの問題は、日本の円の問題は取り上げない、アメリカもまた要請をしてこない見通しであるし、こちらからももちろん言わないし、二国間において議論はしない、これは多国間の移りかわりの問題であり、ECの諸国の蔵相会議においても意見が分かれて決裂状態であるというような観測から、日本が円の切り上げ——そのときは切り上げ議論でありますが——に追い込まれる必要はないという基本方針が確認されたものでありますから、そこでこの問題については発言をしないで終わって、そのあと、しかしながらニクソン声明によって、沖繩に現実に本土沖繩物資流通の面で影響が出る可能性があるということで、大蔵当局にその旨を説明し、総理以下の閣僚のいるところで、主として鹿児島から現在積み出されておる生活物資については、いままでどおりの契約でもって、円滑に出すようにという指示をさしあたりそのときにしたという経過でございますので、念のため申し上げておきます。
  149. 前田多良夫

    ○前田説明員 沖繩の情勢につきまして議論されたかどうか、こういう御質問でございますが、そういう変動相場制への移行に関して、どういう議論がなされたかということ自体、ここで申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、現在の沖繩の方々がいろいろと御苦労なさっておる、そういう点については十分肝に銘じまして、いろいろな対策について対策庁と協議をいたしまして今日まで進めてきておりますし、また、今後ともそういう方向で進めていきたい、こう存ずる次第でございます。
  150. 安里積千代

    ○安里委員 通貨の問題が非常なデリケートな問題を持っておることもわかります、また、それが大蔵省の所管であるということもわかります。しかし、私は、及ぼす結果というものは、政府の各省に関係ある問題だと思います。政府の機構の中のいろいろな——よくわかりませんけれども、政府全体としてどうもこういった問題を処理するにあたって官僚的になってしまって、非常に各省ばらばらで、それが結局統一した政府の方向にブレーキをかけたのではないかという感じを、今度の問題を通じて私たちは非常に痛感するわけであります。どうも及ぼす結果というものが大きいだけに、私は高い立場もけっこうでございますけれども、もっと深く掘り込んだところの検討も、各省間においてなさってしかるべきでなかったか、こういうふうに思います。この問題について発表できない、そういうことさえも発表できないということであれば、われわれが受ける結果には何の話もなかったのだ、起こってみてびっくりしたというような感じを受けて、たいへん残念であります。しかし問題はこれからでございますので、いまのお話にありましたとおり、どうかこの通貨問題に対して、少なくとも本土と違った沖繩におきまして、沖繩県民損失の起こらないようにしてもらいたいと思います。ところが、さしあたってとられましたいまの十一億の措置でございましても、発表されたところによりますと、六九年度の生活必需物資輸入額を二百億円と押えて、これが基準になってきておるように承っております。問題は、生活必需品というものをどの範囲にとるかということによっても関係すると思いますけれども、しかし、常識的に生活必需品というのはある程度わかります。私、ここに沖繩の商品部類別の個別輸入額の表も持っておるわけでございますが、私の目から見る生活必需品基準とした額というものは三百億をこす。私の計算ではそうなります。とり方が違うかもしれませんけれども、二百億を基準としましたところのこれは、どういう点をとらえての二百億でありましょうか。この数字には間違いないだろうか、対策庁の事務当局の方にお答え願いたいと思います。
  151. 山中貞則

    山中国務大臣 一応これは権威ある機関としての税関統計に基準を置きまして、そこで生活必需品品目、範囲のとり方の問題でおそらく最初から違っておると思います。そこの点が、やはり木材が入ってないとか、いろいろ先ほど来飼料は、肥料は——農薬は——農薬は入っておりますが、そういうような意見等が出ておるわけでありますけれども、そこで初めから品目の設定なりが完全に合意していない計算でありますから、その点は確かに前提が一致しないはずでありますけれども、六九年の生活必需品輸入額というものを一応二百億に押えた根拠は、先ほど私が品目を読み上げましたが、そういうことを基礎にして計算をいたしまして、六九年から七〇年へ、七〇年から復帰までの七一年度末までの伸び率——本土からの輸入実績の伸び率です、これを一〇%ずつ二カ年間かけまして、それで出てまいりました二百四十二億円に、その当時の、変動はいたしておりましたが、おおむね世間的には日銀が介入しておる、実質上は変動相場ではないというようなことをいわれておる背景等もありますが、まあ一応五%ということで計算をいたしますと十二億になるわけであります。その十二億の月割りの七カ月分を、十二分の七をかけますと七億円がそこに出てまいるわけでありまして、まあ一応のアローアンスを三億見たと申しましても、まるめて十億になるわけでありますが、したがって、この変動相場制、文字どおり変動するものでありますから、〇・〇五というかけ方の率も変動があり得るわけでありますし、前提にとった二百億も、先ほど私が検討もしたいと申しましたが、場合によっては変動する数字でありますし、また伸び率も趨勢をとった伸び率まで入れてありますので、これまた変動あり得るとして、一応の三億円の幅をとったわけでありますが、これは、この方式をとるということをきめたわけでありますから、十億円を支出して琉球政府の資金からその決済を瞬間タッチでしてあげさえすれば、この物資については円滑な流通ができるし、それを便乗値上げするものは、琉政のほうにおいて手を打つということにしてもらっておるわけであります。でありますので、品目その他が違ってまいりますれば、結果としてこの十億も違わざるを得ないということになる数字でございます。
  152. 安里積千代

    ○安里委員 計算の基礎はわかっておりますが、私が申し上げましたのは、生活必需品として二百億をどの範囲内において、そしてどの金額で押えたかということが明らかでなかったので申し上げたわけであります。そして、これだけではとうてい及ばないということは先ほどからもお話がございましたし、これだけによって物価が押えられるというようなこともほとんどない。現実にあらゆるものが値上がりをしておるということも指摘されたとおりであります。そうしてそのこととあわせまして、取引の関係からいたしまして、資材の納入がない、あるいはまた工事の見通しがつかないということで、市町村におきますところの事業、政府におきますところのいろいろな関係の事業さえもこれが実施できない。実施できないということは、請け負う人自身が自信が持てない。こういう関係もありまして、単に一般の消費物価あるいは消費物資ばかりではなしに、政府自体、市町村自体の仕事の上におきましても、非常なこれは現実にしわ寄せが来ておる問題でございます。そこで一応の措置としてこれだけとられておるわけでありますけれども、抜本的な策につきましては、英知をしぼって、われわれも協力申し上げまして、ない知恵をしぼって意見を具申申し上げます。どうぞひとつ、この事態のさわりのないような措置がとられることを強く要望申し上げたいと思います。  そこで、あとで参考にしたいと思い、ますが、いまの二百億に押えました内部の、生活必需品として考えております資料と数量を、公の資料でなくてけっこうでございます。お示しいただけますれば幸いだと思います。  そこで、私がこの通貨の問題でいま一番心配しておる問題がございます。おそらく、延びれば延びるほど沖繩生活は苦しくなり、物価は上がる。さらにまた、その後の給与、いろいろな問題にも関係ありましょうし、あるいは政府財政にも関係が出てきましょうし、あらゆる問題がしわ寄せしてくると思います。それで一番おそろしいのは、庶民の生活に非常な圧迫がくるということであります。そうしてそれが直接響くのは物価であります。こうなってきますと、往年の沖繩におきまして、一九五六年、アメリカが軍用地の一括払いということで島ぐるみの闘争が沖繩で展開されました。あのときもやはり経済問題でありますけれども、直接関係するのは地主、これを中心にするものでありますけれども、沖繩全体経済に大きく影響するものであり、政治的にもたいへん大きな問題でありますので、ああいう戦いになりましたが、もし私の杞憂に終われば幸いでありますけれども、もしほんとうに政府が誠意をもち、あらゆる手を使って、このドル通貨の問題に対します変動相場、あるいは円の切り上げというような問題もあるいはくるかもしれませんけれども、そういったことに対処して、もし誤ってしまうならば、沖繩県民の中におきましては非常な問題が起こるのじゃないか、私ほこういうふうに危惧するわけであります。あえてこのことを申し上げまして、大蔵当局も総理府当局も、ほんとうに真剣に、十分に、これは日本全体の経済から見るならば、たいしたことはないと思います。日本政府の予算から見るならば、何でもないと思います。問題は、それに便乗し、あるいは投機的に入ってくるものをいかに防止するかといったような問題があるかもしれませんけれども、そこは技術的な問題として、打つ手があろうと思います。そういう不側の事態が起こらないことを私は特に申し上げて、善処をお願いしたいと思っております。  そこで対策要綱の中で二、三、私お聞きしたいと思います。  電力問題につきまして、今度明らかにしましたのは、琉球電力公社の業務は、復帰に伴い新設の特殊法人に引き継ぐということが示されてまいっております。そこでお聞きするのは、この新設の特殊法人に対しましては、どういう性格、なお具体的に言いますならば、政府も出資者としてこの特殊法人がつくられるものであるかどうか、これをお伺いしたいと思います。
  153. 山中貞則

    山中国務大臣 復帰要綱の御説明をいたします前に、私としては、この問題の処理を誤ったならば——いますでに誤りかけておるわけでありますけれども、一部誤って影響を与えておるわけでありますが、これを収拾することができなかったならば、廃藩置県、四・二八、八・二七として、永久に沖繩人々の歴史に刻み込まれるできごとになるであろうと思っておりますので、担当大臣一人の力ではできないことでありますが、私の全力をしぼって、そして政府沖繩人々に、再び本土経済的な面で、復帰を直前にして二度と取り返しのつかない、終生忘れ得ない打撃を与えたということを、結果的にそうでないようにする責務があると考えて努力をいたしますので、具体的な答弁をしないことのもどかしさはむしろ私のほうにございます。そういう意味で、しばらくお見守りをいただきたいと思います。  そこで、電力に関してでございますが、当初これは無償で沖繩に渡せ、買い取るのもけしからぬという御意向であったことは御承知のとおりでありますが、その後、五配電が自分たちで受け取りたい、無償とはいわないが有償で、安くて、しかもそれは国が資金を手当てしてくれという御希望がありましたし、琉政もそのような希望を持っておりました。しかし、五配電は、御承知のようなことで、復帰までも見通しが立たないということで、そこで私どもは、やはり無償で県に渡せという御要望があったわけでありますから、琉球政府にお引き受けになりませんか、国のほうで資金その他は手当てをいたしますと申し上げたのですが、県営電力というのはうまくいったためしはない。したがって、これは当初基本的な理念としての無償で沖繩に渡せと言ったことはなかったことにしてもらってよろしい。国のほうで、将来の展望も含めた、沖繩の未来の電力開発も含めた構想として、責任をもってこれを預ってやってくれ、こういうことでございましたので、電源開発株式会社の構想も一応通産省と相談をしてみたのでありますが、当初設立された電発と今日の実情とは大きく・実情が変わっておりまして、九電力をはじめとする民間の株も相当入っておりますから、ここにほうり込んだら、沖繩の卸売り価格をいまと同じように据え置くという考え方、あるいは従業員もそのまま引き継ぐという考え方、そしてまた未来に向かって新しい沖繩の将来を設計するために、必要な電力を安価に供給するというやり方が保証されないという判断に立ちましたし、通産当局もそれはお断わりしたいということでございましたので、そこで最後に、思い切って新設の特殊法人を設立するということにいたしました。政府が設立する特殊法人でございますから、もちろん出資もいたします。財投の措置もございますし、税制その他においても原則非課税で、燃料あるいはその他の課税が免除されることになります。したがって、今日までの電力料金の維持はもちろんのこと、新規の発送電についても、国家の行なう発送電として、ほかに例のない割り安の開発というものが可能であるというふうにお受け取り願いたいと思います。結果としては、私はこのほうがよろしかったと思います。
  154. 安里積千代

    ○安里委員 その中には、一番初めに基本的に有償で政府が引き受けて、沖繩県に無償でやるという基本線、そこでそういう立場からしますならば、この特殊法人というものは、政府の出資はもちろんでありますけれども、沖繩県に無償でやった。沖繩県もやはりその政府から無償で受けたものを出資のあれにするというような意味を含めておるのでしょうか。それとも有償で引き受けたものがすなわち政府からの出資、こういうような考えでおるのでしょうか。沖繩県に無償で譲渡するという、そこを前提としての特殊法人でありましょうか。
  155. 山中貞則

    山中国務大臣 おそらくこういうことだと思います。沖繩県に無償で渡して県営電力にした場合には、国の評価した価格によって、それが沖繩県の持ち分出資として、沖繩県営電力が行なわれるであろうということだと思うのですが、国のほうでやるとなりますと、やはり国のほうは、基本的には、まず出発のときにおいてアメリカとの間に妥結いたしました資産引き継ぎの内容の資産を出資とみなすことになるでありましょう。さらにまた、それだけでは足らないわけでありますから、一般会計からの出資等も今後それに対して追加されていかなければ、現在の規模の電力維持も、人件費その他から考えて電力料金の維持は困難になりますから、当然、今後政府の出資も続けられ、財政もつぎ込まれていくということになると思います。
  156. 安里積千代

    ○安里委員 そうしますと、新たにかりに出資するならば出資するといたしまして、有償で政府アメリカから引き継いだその財産につきましては、沖繩県そのものとしては、何の財産の対象にはならない、持ち分の対象にはならない、こういうことになりますか。
  157. 山中貞則

    山中国務大臣 でありますから、沖繩に無償でお渡ししますと申し上げたのですけれども、民営構想も御破産になりましたし、県は、やりたくないということでございますので、国のほうで、原則としてこのような会社は、電発もそろそろ形態が違ってしまっておりますし、つくる構想が国にはなかったのでありますけれども、あらためて沖繩側要請というものを受けてつくるわけでありますので、これは、別段この出資されたものがどこかほかのところに全く使われるわけでありませんで、沖繩県の地域のみに投入される原資になるわけでありますから、そこらのところは、もう了解に達しておることだとお考えいただきたいと存じます。
  158. 安里積千代

    ○安里委員 対策要綱に関連いたしまして、固定資産税に関連いたしましてちょっとお聞きしたいのですが、復帰後におきます沖繩の市町村の財政の強化ということはもちろん大事な問題でありますが、沖繩におきましては、市町村によりましては非常なばく大な軍事基地を持っております。ですから、その軍事基地の所在に対しましては、基地交付金というものも本土と同様に出てくる、こう思いますけれども、問題は基地内にありますアメリカの建物その他の施設に対します固定資産税、これは当然取れないと思うわけですが、それにかわるべきものは日本の基地においてもあるわけであります。沖繩におきましてこれはどのようになるか、これは市町村の財政に非常に大きく影響するものでございますが、この点どのように考えておられますか。
  159. 山中貞則

    山中国務大臣 沖繩においては、基地の所在する市町村には、基地交付金といわれております交付金が新しく財源としてまいることになります。さらに、米ドル資産等の調整金も、沖繩に対しては特別なウエートがございますから、それも考慮されることになろうかと思いますし、非細分土地等の関係のありましたものにつきましては、それについても財政措置の一環として考えるということになっておりますので、今日までの現状よりか、市町村の財政の段階としては相当大幅な潤いが得られる、財源面についてだけ言えば、そういうことになるかと思います。
  160. 安里積千代

    ○安里委員 お聞きいたしたかったのは、その基地調整交付金であります。これは、基準になりますのは、やはりそこにあります財産の評価ということが基準になるかと思います。そこでお聞きしたいのは、そのようなことが加わってくるわけでございますけれども、問題は、そのアメリカの基地内におきますアメリカの資産というものの評価、これが握られておるか、はっきりしておるかどうか、まだ調査中なのか。これは対策庁の関係の所管であるか、あるいは自治省の所管になるかどうかわかりませんけれども、現在におきまして基地内におきまするアメリカの資産の評価というものができておるかどうか、それがなければ基地調整交付金の算定の基準が生まれてこないのでありまするけれども、これはいかがでありますか。
  161. 山中貞則

    山中国務大臣 これは賃借料のトラブルがいま起こっておりますが、そういうことにも関連をしてくるわけでありまして、いわゆる固定資産税評価をどのようにするか、評価額の設定のしかただと思うので、これについては、やはり沖繩の県の政府も、それから本土の私たちも一体となって、その評価に努力しなければならぬと思います。本土の基地交付金は、固定資産税のおおむね二分の一というものが評価に従って出されておることになっております。金額において二分の一になっておりますが、したがって、沖繩においてそれだけの率でいいのかどうか、これらの問題も踏まえて、基地をやむなく提供しておられる町村の財政の貧困、窮乏というものに対処できるような案をつくっていきたいと思います。
  162. 安里積千代

    ○安里委員 私が申し上げるのは、いまの基地交付金、土地に対する問題じゃなくして、アメリカの資産がある、これに対するアメリカ資産の評価であります。これは、いまの基地交付金とは別のものとして、基地内におきまするアメリカの資産に対する固定資産税があるわけであります。これにかわるものとして、基地調整交付金があるはずでありますが、それには、アメリカ財産の評価がなければならぬじゃないかというのがいまの私の質問ですが、もし間違っておったら……。
  163. 山中貞則

    山中国務大臣 防衛施設庁がおりませんが、防衛施設庁のほうが米軍に対し、ただいまそういう評価の照会をしておるという段階だそうであります。
  164. 床次徳二

  165. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは日本時間でありますが、十六日に発表されたニクソンの新経済政策を出さなくちゃいけなかった原因は、すなわちドル危機の進行、アメリカ国内における不況と失業の増大、インフレの激化など、アメリカ経済の八方ふさがりの状態。これがどうして生まれたか、これは、基本的にはアメリカ帝国主義によるインドシナ侵略、対外侵略政策の強行、独占資本のもうけを保証する経済政策の結果であって、特に日本国民がその犠牲をしいられる筋合いのものではないということは、これは申すまでもないことであります。本土国民といいましても、一番打撃を受けるのは中小零細企業、さらに労働者であり、ひいては農民である。もうすでにこのドル危機のしわ寄せによって、首つり自殺まで出ておるということを新聞は報じておる。とりわけアメリカドル通貨を強制されておる沖繩に至っては、いままでいろいろ質疑の中でも出ましたが、九十四万人の生きている県民だけではないわけなんです。きょうは盆の最後の日、きのうの電話では、二日から始まってきょうにかけて三日間、御先祖さまを迎えてきょうはお送りする日である。ところが仏壇に供えられたものは去年の半分しかない。この心理的影響は実に大きいものがある。いわゆる生きている人間だけじゃなしに死んでいる人間の魂までが——魂があるかどうかは別として、そういったものまで震撼させておるという実に深刻なものがある。したがって、このことを根本的に解決する道は、佐藤内閣が対米従属ではなくて、日本経済発展の進路を自主的、平和的発展の方向へ切りかえること、そうして国際通貨、金融問題、貿易為替管理、関税措置など、日本は自主的な立場をとること、この中でこそ抜本的な政策が生まれてくると思いますが、いままでの佐藤内閣の政策はほとんどこれに逆行しておる。だから、その面で、私は最初に外務省質問をいたしたい。  現在のドル通貨の法的根拠は何か、これを簡潔に述べてもらいたい。法的なことを明らかにしないと、ドル通貨を円に切りかえるということは基本的にまだ討議されていないということになる。その意味で、外務省はどういうふうに法的な見解を持っているか説明してほしい。簡単にお願いします。
  166. 吉野文六

    ○吉野説明員 直接の根拠は布令十四号だと考えております。
  167. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 関連いたしまして、もしドル通貨を、いわゆる高等弁務官布令で出ておりますね、これを日本円に切りかえる場合にはこの布令に触れないでもできるのか、布令は廃止して、そしてあらためて日米の合意事項、何らかの形で協定を結ぶようになるのか、この点を明確にしてほしいと思います。
  168. 吉野文六

    ○吉野説明員 そこら辺の法律関係は少し研究させていただきたいと思いますが、要するに施政権を持っておる米国が、この問題につきまして最終的には権限がある、こういうことでございます。
  169. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 外務省は対米折衝したことがあるかどうか、これはしておらないらしいので別にそれは聞きませんが、少なくともアメリカ局長は、そういった点をはっきり知っておられると思うわけなんです。ドル通貨を強制されたのは高等弁務官布令十四号である。この十四号があって円通貨にする場合に、これは立ち枯れになるのか。たとえば復帰した時点では布令は全部無効になりますが、復帰するまでは施政権があるということになると、布令は生きておる。だから、これはあっても、日米両政府がやる意思があれば、その布令はそのままにしてでもドル通貨から円に切りかえることができると考えているのかということを聞いているわけなんです。
  170. 吉野文六

    ○吉野説明員 この点につきましては、形式的な問題と、もっと深い法の権限が一体どこにあるかという問題になるだろうと思いますが、要するに施政権を行なっておる米国政府自身が、円を沖繩通貨として使用することに同意する意向があるならば、あとの問題はたいして支障がなく行なわれる。形式的にはおそらく布令第十四号を改正する、こういうことになるだろうと思います。
  171. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 次に大蔵省に……。  ニクソン声明が出て以来、変動相場制を二十七日にとった。それまでにいわゆるドルを求めて円を買うという操作、アメリカドルが下がるといかぬということで、為銀や大商社はそういったような見通しのもとで相当ドルを買いだめて、それを円にかえた、この十六日以降二十七日までに、外貨準備高は幾らふえているのか、簡潔に数字だけお聞きしたい。
  172. 前田多良夫

    ○前田説明員 手元に数字がございませんが、相当額ふえておると思います。
  173. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 相当額ではいけません。私は、沖繩ドルの額と——あなた方大蔵省、日銀、協力して、為銀や大商社の利益を守る、あるいは不利益にならぬようにするためにいろいろの手を尽くされた。これに対して一体どのぐらいの外貨準備高が累積してあるのか、これを聞きたいわけなんです。大体わかるでしょう。大臣はわからぬかもしらぬが、事務当局がわからぬということはないでしょう。絶対にわからぬですか。
  174. 前田多良夫

    ○前田説明員 いま手元に準備しておりません。
  175. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そういうことで局長や審議官がつとまるのですかね。珍しい政府だ。  それでは、きのう時点かあるいは九月二日時点でいいと思いますが、日本の外貨準備高は幾らありますか。
  176. 山田久治

    山田説明員 お答え申し上げます。  ただいま手元にないと申し上げましたのは、ニクソンショック以後二十七日までどれくらい入ったか、こういう御質問でございましたので、その一点につきましては私ども数字を持っておりませんが、御存じのように月々で外貨準備高を御報告いたしておりますので、八月末の外貨準備高は百二十五億一千四百万ドルございまして、それを七月末に比べますと、四十五億八千万ドル増加したということになっております。
  177. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 引き続きその件についてですが、百二十五億ドル余りのうちから、金がありますね、その金と、アメリカドルではない外貨を差し引いて、アメリカドルの準備高は幾らですか。金が幾らあって、アメリカドルのほかに九億か八億かあって、差し引いて幾らあるということがはっきりすると思います。
  178. 山田久治

    山田説明員 まことに申しわけございませんが、この場に数字を持ち合わせておりません。
  179. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 大体百十億ドルぐらい見積もられておるが、これが五%でも切り上げられると、いわゆる二千億というのはそこら辺を言っているのではないかと思うのですが、大蔵省の係官がこういった数字まで即答できないということになると、これは沖繩の問題は、いま大蔵省が発表された、約九億ドルぐらいだろうといわれていた、こうなりますと、ほんとうにその腹になれば、なに、切りかえなどということは、そんなにたいしたことないのじゃないか。差損金が二千億円ももうすでに出ておる。これを国民の血税あるいは公債、そういったもので補う方向かもしれませんが、これは沖繩の問題については関連ありますので、大蔵大臣は、こういったようなドル買いあるいは円を買ってドルを売り出すという操作の中で外国からドル投機があったかということに対しては、ほとんどなかった、少なかった、これは為替管理が完ぺきに近いということまで言われておる。現在沖繩はそれがない、だから沖繩ドルを円に切りかえた場合には多額のドルが流入するだろうという。  ところで、大蔵大臣やその他閣僚からも言われたように、外国からの、非居住者のドル投機がないのが、管理制、いわゆる為替の管理制度にあるとするならば、外務省に最初に布令のことを聞いたのはそこなんです。これをなくして本土並みに為替の管理制を沖繩にしくとすれば、幾らか流れて投機屋が来ることは予想されても、それを十分保証し得るだけの法制的な措置がとれるのではないか、この点について大蔵省どう考えておるか。  現在のああいった、十六日から二十一日までのあの変動があった、そのときに外国から流れ込む、これはほとんどなかった、少なかったという表現で使われておる。沖繩はそういったのがない。ないから、切りかえについては、困難性はいまそういった二点である。ドルの流入、管理制がない。この管理制を本土並みにする。佐藤内閣は本土並みとよく言っておる。いまこそ本土並みを要求する。沖繩県民の統一された要求は、ドルをすぐ円に切りかえろ、本土並みに円を使いたい、いわゆる日本民族の誇りからいっても、そういうふうなことは前からの要求である。そういう意味で、この為替管理制度を本土並みに沖繩にするという問題について、大蔵省はどう考えておるか。さらに、これについては、山中総務長官のこれに対する簡潔な答弁をお願いしたいと思います。
  180. 山中貞則

    山中国務大臣 施政権下に不幸にして置かれておる琉球政府の立法の権限で、完ぺきな為替管理制度が施行できるかどうか、そこらのところは非常に疑問なところでありますが、その点等は現在琉球政府相談をしておる中の一つに入っております。
  181. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 それでは、いま申し上げましたように、通貨ドルにさせた布令十四号、これを撤廃する問題と、さらに為替管理法、こういったような法制面と制度を結合してやるならば、確実にできるという展望が切り開かれていかなければ、沖繩県民の不安は絶対に解消しないというのが現実なんです。だれに聞いても、どうするということを、基本的方針が一つも出されていない。問題はここにある。だから、その点については、これは当然検討されて、いわゆる為替管理の面でもはっきりさせまして、ドルを円に通貨をさせていくという基本態度、それこそいわゆる本土並みなんです。これを私は強く要望して、時間がありませんので、さらに次に移りますが、山中さんにお伺いします。  琉球政府の七二年度予算、これは二億六千一百万ドルちょっとこしておる。その中で日本政府出資金が一億一千六百万ドル、これは四四%余りになっております。これを差し引きますと五五。四七%、すなわち一億四千万ドル。これはドル表示なんです。したがって、ドル価値はもうすでに下がっております。この場合、一億四千万ドル金額が一〇%落ち込むと一千四百万ドル価値が低下してくる。そのかわり円の表示のものは幾らかふえるが、そういったものに対して検討し、この予算面からの落ち込みの手当てについて、幾らくらい出したらいいかという見当がついておると思いますが、その数字面の発表と同時に、いま、十億円、学生の送金その他を含めて十一億円、この十億円は焼け石に水だということは、琉球政府主席だけではありません、業者も口をそろえて言っております。ひでりがもう八カ月も続いておる。そういったような割れた田に、十ミリや二十ミリくらいの雨が降ったって、降ったのか降らぬのかわけがわからぬという状態を焼け石に水といっている、そういう表現をしている。十一億円出したのが焼け石に水であれば、総務長官としては、大体何百億くらい要求してやれば焼け石に水にならないのかという数字的な検討をなされたか。なされたとすれば、それを発表してほしい。発表されれば、沖繩県民もあげてこれをかちとるために奮闘するだろうと思いますので、この二つの面御答弁お願いしたいと思います。
  182. 山中貞則

    山中国務大臣 いまの予算の、あげられました本土からの沖繩復帰対策費、それの比率の仕分け方は、どうも私には比率がぴんとこなかったのでありますが、本土政府は比率においてはもっと援助しておる。本土から支出しておる金は、財投も、これは元利の償還等について交付税がやがていくわけでありますから、そういうものを入れますとそういう比率ではないかと思っております。したがって、それらのものは実質ドル圏においてはそれだけ価値高く、五%なら五%分ふくらんだものとしての使用価値が理論的にはあり得るわけだと思うわけであります。  さらに、第二点の流通物資を全部の物資について適用したら幾らになるかという問題については検討もいたしましたし、復帰までの間だけの差額ということ——差損ということばも差額ということも根拠はどこにあるかということになりますから、なかなか使いにくいのですが、そのようなことを念頭に置いて計算をしますと、おおむね三十億から多くても五十億くらいで済むのではないかと思ったわけでございますけれども、やはり全部の物資となりますとなかなかむずかしい問題で議論が詰まりませんでしたので、私の一存でできることならばやれたかもしれませんが、やはり政府の関係省庁の合意ということになりますと、大臣折衝までいたすわけでございますので、現在のしぼった生活必需品というものに限っては、一応十億で処理できると思いますが、これが焼け石に水という表現になるかどうかは——生活必需物資については一応これこれの品目と先ほど答弁申し上げましたものについて措置はいたしましたので、この物資についてはだいじょうぶである。しかし、沖繩県民復帰までの歩みの中の生活環境その他を含めた、あるいは公共事業等の発注の問題まで踏まえた問題としてとらえて完全であるかといわれた場合に、私もそれを完全だと申し上げる自信はありません。
  183. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 通産省にお伺いいたします。  課徴金が取られるようになってまだ撤廃するとも何ともいっていない。そこで、沖繩からアメリカに輸出される量は一体幾らになっておるのか。さらに、課徴金がニクソン政策によって、変更されずに取られたならば、どのくらいの打撃を受けるのか。倒産する業者がいるかどうか。この点、通産省調べたことがあれば説明してほしいと思います。
  184. 堀嘉道

    ○堀説明員 沖繩からの対米輸出は約八百万ドルあると聞いておりますが、そのうち衣類あるいはトランジスタラジオ、こういうものが相当部分で、約八百八十万ドルくらいあるというふうに統計では出ております、七〇年でございますけれども。これが課徴金が撤廃されない限り、相当な打撃を受けるということは予想されるわけでございますが、現在のところ、通産省としてはどの程度の被害を受けるかということは調査がまだできておりません。
  185. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは通産省としては、沖繩の業者のためになるように調査したいという意思はあるのですか。
  186. 堀嘉道

    ○堀説明員 私のほうに沖繩対策室というのがございまして、そことも十分連絡しまして早急に調べまして、先生のほうに御連絡したいと思います。
  187. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 これは、沖繩対策室があるにかかわらず、ここまで沖繩の事態が発展しておるのに、そういった対策がとれていないということは、課徴金は撤廃する方針だなどといってもちっとも政府を信用しないと思うのです。まだそういった対策すら立っていないんですか、倒産に近いような業者が出ておるんです。
  188. 堀嘉道

    ○堀説明員 何ぶんともに調査影響度というものは非常に困難でございますので、われわれとしても出したいという気持ちは十分ありますけれども、その被害がどのくらいあるか、現在日本全体で課徴金による被害すらもこれはいろいろ説でございまして、ただいまは二十一億ドルという数字が出ておりますけれども、沖繩だけに限りましてどのくらいあるかということは、統計上これを出すことが現在のところ非常に困難であります。
  189. 山中貞則

    山中国務大臣 これは私の手元にございますが、いまここに持ってきておりませんので明確に申し上げられませんが、ベニヤとかトランジスタラジオあるいはグローブ、ミット、こういうようなものが中心のようでございまして、綿製品と、実際上はありませんが砂糖は免除ということになっておるようでありまして、一〇%だぞということになったら、もうまともに八十万ドルというものは、それだけコストの上乗せでアメリカ側にはそれだけ、課徴金をかけられた金額で出さざるを得ないわけでございます。それらの企業は決して大企業ばかりではありませんので、相当な打撃を与えるであろう。その他またランパート高等弁務官の要請してくれておりますもう一つの項目の、アメリカ現地調達物資をバイアメリカンを適用しないで、いままでどおり現地調達を認めろという部門も、やはり沖繩にとっては沖繩の生産物にかかるものとして、相当なウエートがありますから、それらの問題もやはりアメリカ側に対して考慮を促す一つの点かと思っております。具体的な金額品目、数量等については、いまここに持ってきておりません。
  190. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 私はその数字を出してほしいということに焦点を置いているのじゃないわけなんです。そういったような課徴金がまだ廃止も知らされない、一〇%かけられると、その業者が相当経営が苦しくなり倒産せざるを得ないところにくるので、特に通産省あたりではその対策が、数字がなければ対策がとれない、実情を知らなければ対策がとれぬから、その対策を実際聞きたかったわけでありますから、別に数字にはこだわっておりません。  次に時間がありませんので大蔵省にお伺いしたいんですが、大蔵省では、八億四千九百万ドルとかという何か通貨の問題を言っておりましたね。この通貨は、いわゆるドル交換をする場合に、これだけのドルがあるので円を持っていかなくちゃいかぬというふうな、現在の通貨と銀行手持ち、さらに預貯金、そういったものを全部含めての話ですか。この点を明らかにしてほしいと思います。
  191. 前田多良夫

    ○前田説明員 先ほど申しました数字が、預金の総額が本年の三月末で八億四千九百万ドルと、こういうことでございます。しかし八億四千九百万ドルの預金は現金通貨とは異なります。
  192. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 現金通貨は幾らですか。
  193. 宮崎尚

    宮崎説明員 先生も御承知のように、現在沖繩には発券銀行がございませんし、為替管理をしておりませんから、実際にドルがどれだけ流通しているかということは正確にはつかみがたい実情でございますが、私どもは、一応日本及び諸外国国民総生産に対する流通通貨の割合を参考にいたしまして、沖繩の場合には約七千万ドルから一億ドルにわたるドル通貨流通しておるであろうと推定いたしております。
  194. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 そうなると、大体十億内外ということになります。これが現在でも変動相場制がとられたために約六%ドルは切り下げられてしまった。現在の変動相場制で大体差損金は幾らぐらい見ておるのか。この点を明らかにしてもらえば、どうあっても沖繩通貨は、一日も早く円に切りかえなければいかぬなという国策が出てくると思いますので、この点の見通し、展望など大蔵省の試算としてあると思いますので、明らかにしてほしいと思います。
  195. 前田多良夫

    ○前田説明員 これは、そういうことができないのが変動相場でございまして、これは日々市場レートが変わってまいるものでございます。したがって、今後もどういうふうになりますか、全然そういう見当はつきませんし、したがいまして、そういう試算というものはございませんので、御了承いただきたいと思います。
  196. 瀬長亀次郎

    ○瀬長委員 時間がありませんのでこれで質問を打ち切りますが、最初に申し上げましたように、特に山中総務長官をはじめとして、各省がほとんどばらばらで、統一された意思というものが、すなわち沖繩県民の要求の基本である三百六十円を基準にして、即時円に切りかえろという何らの方針も持っていないということが明らかになっている。したがって、この面においては、現在のドル通貨制になった根拠である高等弁務官布令十四号、この廃止の問題と、完ぺきに近いといわれておる為替管理制度、これをほんとうに沖繩にかぶせて、すなわち沖繩本土並みにしていくという基本を検討しない限り、沖繩県民の統一された要求である円切りかえの問題、さらにそれに至るまでの一切の損失を日米両政府補償せよ。決して日本政府にだけいっておるのではありません。統治権を持っておる限り、あくまでも統治者としての義務は、この大統領行政命令に書かれております。そういう意味で、日米両政府沖繩県民の要求を基本的に解決する面で、しかも日本政府は、いまこそ自主的な態度をもって臨まない限り、決して抜本的な政策は打ち出せないし、沖繩県民ドルに対する不信と日本政府に対する不信、これはだんだんだんだん大きく広がり、怒りとなって燃え上がるだろうということは予想にかたくありません。したがって、そういう面で、ぜひ日本政府は腹を据えてかかって、いまこそ自主的な日本経済政策を打ち立て、その一環として、沖繩県民の統一要求を実現してほしいことを要望いたしまして質問を終わります。
  197. 山中貞則

    山中国務大臣 ただいまの最後のお結びのような決意でもって当たる覚悟であります。  なお、いま数字も手元にないと申し上げましたものがございましたので、念のためにただいま届いた数字を申し上げますと、琉球政府調査による七一年度の対米輸出実績は、綿製品が四百万ドル、これは課徴金が免除になります。ベニヤ百二十万ドル、トランジスタラジオ二百十万ドル、グローブ二十二万ドル、おおむね八百万ドル弱でございますけれども、四百万ドルが対象外ということになります。さらに、今年度において予想される軍関係の現地調達物資とその額でございますが、ベニヤで二百五十万ドル、鉄鋼で百万ドル、セメントは若干ということであります。弁務官もこの二点を配慮するように打電しておるようでありますから、これを踏み台にして交渉を進めたいということであります。
  198. 床次徳二

    床次委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後三時五分散会