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政府委員(
高橋国一郎君)
四ツ木橋の
事故の直後に、
昭和四十四年四月の四日でございますが、当時の
建設省の
土木研究所長でございました
福岡所長を
委員長といたします新
四ツ木橋事故調査技術委員会を発足しまして、一年
有余にわたります
調査の結果、答申があったわけでございますが、この
委員の構成は、先ほど
大臣から
お話がございましたように、
日本のこのほうの
技術の
最高権威者をもって網羅した
調査委員会でございますが、その結果を簡単に申し上げますると、六段目の
リングビームに加わった力が仮締め切りの
内部地盤の急激な
強度低下によって増大しまして、また
リングビームも予想していた値以上の大きな力に耐えてはおりましたけれども、最終的には
面外座屈という
現象を起こしまして
破壊したものであるというふうに推論されております。なお、この
委員会におきましては、このような
現象は従来世界的にもまだ解明されていなかった非常に
特異性を示すものであるということを
指摘しておりまして、そういう面から当時の
技術においては
不可抗力であったというふうな
結論を下しておるわけでございます。
ただいま
先生の御
指摘のように、先般
起訴されたわけでございますが、その
起訴状等につきましてはまだ
手元に到着しておりませんので、内容についてはつまびらかにしませんので、それに対する私
たちの正式の見解が述べられないのは残念でございますが、
新聞等に報道されるところによりますというと、第一点は、どうも
安全率を過小に取ったのじゃないかというふうな御
指摘のようでございます。第二点は、
リングビームにあらかじめかけます
ストレス、力の、抗力が予想以上にかかったのではないか、第三点は、どうやら掘
さくの際の深掘り、掘り過ぎたために力がかかったのじゃないかというようなことが
起訴の中心になっているやに聞いておりますが、第一点の
安全率につきましてはいろいろ議論があるところでございますけれども、
永久構造物となるべき橋の
基礎であるとか、
橋そのものにつきましては、これはたとえば
日本の
設計の場合は
関東大震災級の地震まで想定いたしまして、しかも
安全率も非常に取っておるわけでございますが、ただいまの
リングビームというのは仮
設備でございます。これは二、三カ月
程度でもってまた取り除くようなものでございまして、こういう仮
設備につきましては
安全率の取り方につきましてはいろいろ
意見がございまして、通常一ないし一・五
程度を取るのが
常識かと思います。なお、この
安全率と申しましても、それをこえたらすぐこわれるというものじゃありませんでして、
材料にはそれぞれ
許容応力、アロアブル
ストレスと申しておりますが、
許容応力以上の力に耐えるような
材料性質がございます。したがって、
材料そのものによって実際の
破壊程度とはかなり違っているようでございます。そういうようなもので、あまり詳しく
技術的になりますが、その
安全率がどうも論点の
一つになろうかと考えます。それから、深掘の件でございますが、深掘りし過ぎたのではないかという疑いのようでございますが、これは
技術委員会においても
相当詳細に検討いたしましたが、最終的な
結論は得ることができなかったようでございます。ただ、
技術委員会におきましては、たとえ予定よりも深く掘っても、たとえば二十センチ、三十センチ
程度深く掘っても、そこにかかる力は
計算上出てまいります。その力に対しても耐え得るというような
計算がなされております。したがって、実際にどこまで深掘りしたか、私ども全くあれはないわけでございますけれども、そういうような
計算までしましても、かつ、それが直接の
破壊原因ではないかというような
計算もやっているようでございますが、いずれにいたしましても、われわれが通常使っております
計算方式、
軟弱地盤におきます
土圧の
計算方式をはるかにこえる異常な力がかかったということが、今回の
破壊の大きな
原因でございまして、たとえば、先ほど
先生が御
指摘になりました
久宝教授がいろいろあげておりますことにつきましても、個々に一々
技術委員会では検討したようでございます。その一々の問題につきましてそれぞれ検討して結果、それぞれに若干の、あるいは
施工上、
設計上若干違ったようなことがございましても、それが重大な
破壊に至る
原因になっていないのではないか。最大の
原因というのはやはり異常な
土圧、つまり力学的、工学的に世界でだれも思いつかなかったような大きな力がかかったという
結論に到達したやに聞いております。詳細にわたりましてこまかくなりましたが、こういういずれにいたしましても今回の問題につきましては、純粋な
技術論争になろうかと思います。これは
法廷において争われることだと存じますが、まあ私
たちは、
調査委員会が一年
有余にわたり、たいへんな
努力をされた
調査結果を答申されておりますことが真実であるというふうに信じておりますので、おそらく
法廷におきましても
——まあこれは
法廷でもって明らかになることと思いますけれども、われわれは
調査委員会の結果を正しいというふうに信じているわけでございます。