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国務大臣(
佐藤榮作君) ただいま誤解はないだろうと思いますが、カナダやイタリアと違っていると申しますのは、これは現実に戦った日本、また現実に負けた日本、カナダやイタリアは中国とは戦争はしていない、こういう
状態でございますから、それから後に発展した、あるいは台湾
国民政府と条約を結んだとか結ばないとか、そういう問題とはやっぱり基本的に根本的に違うのです。そうしていまわれわれが取り組んでおる
姿勢も、そういう
意味から取り組んでおる。やっぱり中国
自身、これ当時蒋
政権、これと戦争したこと、これはだれも否定する者はない。また、その蒋
政権のもとで敗れた、これと平和条約を結んだ、講和条約を結んだ、これもだれもふしぎには思わない。しかしもうそれからずいぶんたっておるじゃないか。たっておると、その現在の
状態においてどういうように選択するかと、こういうところに追い込まれておるわけです。しかし現状を、いわゆるわれわれが日華条約の相手方として講和条約を結んだ相手は中国大陸には施
政権は及んでおらない、これも事実でございます。また、北京
政府自身が、これは武力解放はしないと、そういうことで台湾省に対しては手が
伸びておらない、これも事実であります。しかしそれは小なりといえ
ども台湾にある蒋
政権、これが過去においてわれわれの相手として、時には近衛内閣みたように相手とせず、蒋
政権を相手とせずというようなこともございましたが、とにかく戦争したことは事実であります。そのもとで敗れたことも、これもはっきりしておる。だからいま中国大陸に対して、いま時分に反省しろとか、いろいろなことを言われると、勝った国が一体どういうつもりでそんなことを言っているのか。どうもそこらにも、勝ったら勝者としての誇りを持ってやっぱり対したらどうなのかと、こういうような感じが出てくるのですよ。こういうところも、やっぱり中国大陸の方々も、自分
たちは戦争した、そうして日本は過去において悔い改めた、そうして現在のような平和国家に生まれかわったと、これはそのまま承認したらどうかと、それはぜひ認めてもらいたいと、かように私は思いますがね。いままで日本の中にもやっぱり、中国大陸で日本軍があばれた
状態でわれわれは中国に対して頭を下げなければいかぬのだ、こういう感じがいまなお残っておる。私はどうも過去の、それは乱暴な、ずいぶん残虐な行為、そういうものについては、戦いの勝負でもう結末がついたものだと、かように
考えざるを得ないのじゃないか、
考えるべきじゃないかと、かように私思いますけれ
ども、日本
国民になおそういうような
意味で中国大陸にあらためて謝罪しろとか、こういうような気持ちが、まあ絶えずそういう
意味の反省はこれは望ましいことです。望ましいことですが、ややオーバーではないかなと、どうも敗者としてそんなにいつまでも、子々孫々までもそういうことがいわれると、ややオーバーではないかな
あと、かように私は思うのですがね。これはまた御批判もいただきたいと思いますけれ
ども、さような
意味も含めて、とにかく中国大陸と仲好くしていかなきゃならぬことは、これはもう間違いのないことですから、それについてもっと積極性を持てという、さらに鞭撻しようという、ことに前提は、その基礎的な
考え方は
政府と同じような
考え方でいま
質問するのだと、かように言われるそのことは私もそれなりに承っておきますが、私はそういう
意味で鞭撻をいただく、そのことこそ大事なことではないだろうかと、かように私は思います。とにかく中国問題は、これは一朝一夕にして片づく、そういうものではないようです。これはずいぶんいろいろな誤解や不安、危倶、そういうものを過去の戦争が生み出しておりますから、今日なおそういうものが続いておる、そういう
状態でありますので、それがやっぱり氷解すると、そういうところにまでいかないと、話し合いは簡単にはつかないのでないだかろうか、かように私は思います。