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政府委員(
青鹿明司君) それでは公的年金制度調整連絡会議の審議の経過と概要を御報告いたします。
この会議は、社会保障制度審議会のお申し入れもございまして、各種の公的年金に共通する観念を見出しまして、物価、生活水準等の変動に対応して年全額の改定について共通の基準なり方式が適用可能であるかどうかということを
検討する目的のために、四十二年の七月に次官会議の申し合わせでもって設置されたものでございます。以来、総会六回、幹事会十回、小
委員会十一回、その他非公式の個別の
交渉も含めまして各角度から
検討してまいったわけでございますが、これを便宜項目別に整理いたしまして、事項ごとに概要を御報告いたします。
まず第一は、改定の対象となる給付をいかに考えたらよろしいかという点でございますが、そもそも公的年金が共通する目的として持っておりますことは、長期的な所得の喪失に対しまして年金を支給することにより国民の生活の安定をはかるものでございます。したがいまして、物価、生活水準等の変動によりまして改定すべき年金はすべての制度において必要であると、それから遺族給付、老齢給付のほかに障害給付等についても調整の対象にすべきであるという点について各
委員の意見の一致を見たわけでございます。ただ問題は、これを具体的にどう実行するかという点でございまして、その第一の問題は、改定の対象となる
部分は一体どう考えたらよろしいかという点でございます。これについて一部の
委員から、各年金が生活保障的機能を有するものでございますので、その
部分を最重点に考えるべきではないか。具体的に申し上げますと、被用者年金の中核でございます厚年の定額
部分、これを共通な基準として考えるべきことが適当であるというような意見が一部の
委員から述べられたわけでございます。これに対しまして、観念的にはともかく、共済組合には具体的に定額
部分に該当するものがないという意見、それからさらに年金額を二つの
部分に分けてその取り扱いを異にするのは適当ではないという反対の意見もあったわけでございます。
それから三番目の問題は、改定の対象となるものをどう考えるかという点でございますが、これにつきましては、他に収入のない、稼得活動から離れた一定年齢以上の老齢者を優先的に考えるべきではないかという意見が一部の
委員からございまして、これに対しましては、公務員年金等については制度本来の趣旨に照らしまして、年齢によって取り扱いを異にするのは適当ではないという意見が述べられたわけでございます。
それから事項の第四は、改定にあたってどういう指標を求めたらよろしいかという点でございますが、これにつきましては、消費者物価が一番重要な指標になろうという点については各
委員の意見がおおむね一致を見たわけでございます。ただ、消費者物価指数は、そのウェートのとり方から見まして、必ずしも年金受給者の消費生活に適合するものであるかどうかという意見もございます。それからまた、公務員年金につきましては給与を基本的な要因として考えるべきではないかという意見も述べられております。
それから問題点の第五でございますが、一番重要な問題でございますけれ
ども、年金の改定の時期並びに方式をどうしたらよろしいかという点でございます。これについては、御
承知のとおり、いわゆる自動改定方式というのがございまして、一定の指標が変動した場合に、その指標の変動をスケールとして年金給付額を改定するという方式でございますが、
わが国の制度では、これを適用すべきであるという意見は
委員の間からございませんでした。第二の方式として、いわゆる半自動改定方式というのがございます。これは一定の指標が一定の幅で変動した場合に改定をする、ただし、その内容は、その時の情勢によって政策的に判断を加えて改定を実施すべきであるということでございまして、一部の
委員の意見から、
わが国の公的年金につきましては、この半自動改定方式をとるべきであるという御意見が出たわけでございます。これに対しまして、年金額の改定と申しましても、これはある
意味では、
経済成長の成果を年金受給者にどう及ぼしたがいいかという側面を持つものでございますので、やはりその制度の特質なり、沿革等にかんがみながら、国民生活の状態、物価給与水準等を総合的に勘案して政策的に判断すべきである、いわゆる政策的な改定方式をとるべきであるという意見が述べられて
結論が得られなかったわけでございます。
それから最後の問題でございますが、現実的には一番重要な問題でございますけれ
ども、財源をどうするかという点でございまして、これについては、そもそもこの議論をする前に、財源負担の方式をどうするかということを先決しないと議論が進まないだろうというような意見もございました。それからまた、具体的な負担の方式につきましては、各制度の本来の負担の原則、いわゆる三者負担でもってこの費用をまかなうべきであるという意見、これに対しまして、公的年金制度の使命からして、国としても相当の
責任を持つべきである、その
意味で、財源については国庫負担を十分に考慮すべきであろうという意見も述べられまして、結局は
結論が得られなかったわけでございます。そこで、ただいままで申し上げましたように、各項目につきまして、各
委員の意見がなかなか一致を見がたいということで、実は今後この連絡会議をいかに取り進めたらよろしいか、先般総会を開いて、各
委員の意見を求めるかたがた協議したわけでございます。その結果、従来のようにその共通する改定の基準なり、方式なりを直ちに求めるという考え方ではちょっとこれ以上進展が望めないのではないかということになりまして、そのため、公的年金をその目的なり、沿革なり、背景なりから類似性のあるものをグループ別に整理いたしまして、そのグループごとに適用すべき基準なり、方式なりを考えることが最も現実的ではなかろうかというような
委員の意見が一致を見たわけでございます。具体的に申し上げますと、グループといたしまして、民間グループに入りますものは厚生年金、船員保険、国民年金、それから公務員グループといたしまして、国家公務員、地方公務員、公共企業体職員共済、これらを公務員グループにいたしまして、それからその中間にございます私学職員と、それから農林漁業団体の職員のグループを
一つ、まあこの三つのグループに分けましたほか、あと
一つは災害補償がございまして、これは当初は、この調整会議の対象にしないということでおったんでございますが、いま申し上げましたように、いろいろグループごとに
検討するということになったものでございますから、この機会にあらためて災害補償も調整会議の議題に加えて別途
検討をしようということで、大体各省の意見の一致を見たわけでございます。まあ会議といたしましても、今後各グループごとの
検討状況を見守りながらなるべく早く
結論が得られるように、また各グループ間の意見の間に矛盾撞着することがないように十分配意して運営をしてまいりたいと、かように考えておるわけでございます。