○
国務大臣(倉石
忠雄君) 総合農政につきましては、先ほど私
どもの考え方を
杉原さんにもお答え申し上、げたわけでございますが、十年前に制定されました農業基本法に即しまして、その後の
一般社会経済、国際情勢の変化に対応いたしまして農政をどういう方向に持っていくべきであるかということで、この基本法の精神に立ちながらの総合農政という考え方を打ち出したことは、ただいま
お話がございましたとおりであります。で、基本法にも言っておりますし、また総合農政でも強調いたしております一つは、やっぱり規模の大きな自立経営農家を育成したい、これがたてまえでございますが、
中尾さん御存じのように、ただいま現実のところでは、農業全体の就業人口の中で自立し得る専業農家というものは二〇%以下でございます。大体八割近いものが兼業農家になっております。しかも、その兼業農家の中のまた五割以上はいわゆる第二種兼業農家でございますし、それから農業者の所得を見ましても、半分以上は農外所得で構成されております。今日の日本の経済社会の変転に伴って現実はそういうことでありますが、私
どものやるべき仕事としていろいろな面があると思うのであります。つまり農業というものを考える立場、それから農民という人たちのことを考える立場、それからもう一つは農村という考え方、これをどうするかということ。御存じのように、外国などではそういう地域的に農村地帯の仕事は農務
大臣の所管であるというふうなことをやっている国もありますが、私
どもは農村地帯に対する一つの重要な任務を持っております。もう一つは全体の食糧省的な立場であります。いまや流通機構の問題であるとか、消費者の問題も私
どもは当然重要な任務として考えていかなければなりません。そこで現状はやはりどうしても農業として自立し得るりっぱな農業をまず眼目として育成していくというたてまえは動かしておりません。ところが、ただいま申し上げましたように、かなりな兼業農家がございます。そこで、兼業農家というものをいろいろ調べてみますというと、やはり離農して他産業に転換したいという希望をお持ちになっておる方もありますし、それから規模の大きな自立経営をやるために、離農しやすくするということもやはり時代に即応した一つの考え方でありますので、昨年農業者年金制度というものをつくりました。そういうのはやっぱりそういうことに対応するつもりでありますが、私
どもといたしましては、やはり過疎過密の問題等、国全体として考えなければならないこともございまするし、また農村の人たちの、最近これは私
ども農林省で
調査をいたしまして、今月の一日に
新聞にも発表いたした次第でありますが、たとえば、農業従事者の今後の就業に対するお考え方の傾向を調べてみますというと、八六%は農業を希望していらっしゃいます。そして七一%は現在のこの状態を続けていきたいという方でありまして、この
調査の中で出てきている他の働き口を求めている人は一四%というような状態であります。それで規模拡大を望んでおる方々、つまり農業というものを持続してまいりたいという思考を発表しておられる方々が六六%であります。それからまた、これも同時に
調査いたしたのでありますが、全国の市町村で農業は将来とも基幹産業として拡大をはかってまいりたいという市町村の回答が六五%ございますが、同時にまた、いま御
指摘のありました地方に産業を分散していくということについての市町村長たちの考え方の中の六〇%というものは、農業の振興と両立し得る限りでそういう方向を進めたいと、こういう答えを出しておられます。これはかなり時間をかけて
調査いたしました一つ二つの例でありますが、私
どもはやはり基本法農政がいっております、また総合農政の推進についてという態度を
政府が発表いたしましたそのことは、やはり規模拡大でしっかりした営農を営ませるようにいたしたい、それが中核になってもらうようにしたい。しかし、先ほど申し上げましたように、現実の姿は、また将来かなりの長い時間兼業農家というものはあるんではないかと私
どもは思っております。したがって、そういう人たちがやはり太平洋のメガロポリスといったような地域に全部集まってしまうという傾向は、私
どもとしては好ましい傾向であるとは存じません。したがって、なるべく地方においでになります方々の労働力というものはやはり地方で、この
調査の中にもありますが、自分のうちから働きたいという希望を述べられておる人たちが圧倒的であります。そういう傾向を私
どもは考えてみますというと、やはり今度法律案も
提出いたし、通産労働両省と協力をいたしております方向というものは、やはり地方におられる、しかも農業を専門におやりにならないで済むような方の労働力を効率的に使って、しかも、現金所得を得ていただくことがいいのではないかと、しかし、私
どもはどこまでもやっぱり農業振興地域に関する法律がありますので、あれとうまく調和のとれるような仕組みに、
計画立てるのは市町村長及び県知事等でございますので、私
どもと常々話し合ってまいりまして、その地域に合うような産業を持っていくということ、これはもちろん大事なことでありますし、公害を伴なわないようなものを持っていくことも大事でありますし、それから農村の美観を損ねないように・緑をできるだけこわさないようにというような前置きはございますけれ
ども、私はいわゆる農工両全の方式を採用していくことが、地域の住民も喜ぶことではないかと思いますし、国全体としてもそういうことが必要な状態ではないかと、こう思っておるわけでございまして、農業の面から見ては矛盾していないのではないか、こう思っております。