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1971-03-06 第65回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月六日(土曜日)    午後一時二十一分開会     —————————————    委員の異動  三月六日     辞任         補欠選任      大松 博文君     江藤  智君      玉置 猛夫君     高田 浩運君      塩見 俊二君     後藤 義隆君      稲嶺 一郎君     山崎 竜男君      金丸 冨夫君     初村瀧一郎君      植木 光教君     上田  稔君      黒柳  明君     中尾 辰義君      阿部 憲一君     鈴木 一弘君      向井 長年君     田渕 哲也君      春日 正一君     岩間 正男君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         古池 信三君     理 事                 小林 国司君                 白井  勇君                 林田悠紀夫君                 森 八三一君                 山崎 五郎君                 竹田 四郎君                 吉田忠三郎君                 三木 忠雄君     委 員                 上田  稔君                 江藤  智君                 後藤 義隆君                 郡  祐一君                 斎藤  昇君                 杉原 荒太君                 高田 浩運君                 初村瀧一郎君                 平泉  渉君                 平島 敏夫君                 堀本 宜実君                 三木與吉郎君                 山崎 竜男君                 山本 利壽君                 吉武 恵市君                 木村禧八郎君                 杉原 一雄君                 鈴木  力君                 達田 龍彦君                 西村 関一君                 松本 賢一君                 塩出 啓典君                 鈴木 一弘君                 中尾 辰義君                 田渕 哲也君                 萩原幽香子君                 岩間 正男君                 春日 正一君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  植木庚子郎君        外 務 大 臣  愛知 揆一君        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君        文 部 大 臣  坂田 道太君        厚 生 大 臣  内田 常雄君        農 林 大 臣  倉石 忠雄君        通商産業大臣   宮澤 喜一君        運 輸 大 臣 橋本登美三郎君        郵 政 大 臣  井出一太郎君        労 働 大 臣  野原 正勝君        建 設 大 臣  根本龍太郎君        自 治 大 臣  秋田 大助君        国 務 大 臣  荒木萬壽夫君        国 務 大 臣  佐藤 一郎君        国 務 大 臣  中曽根康弘君        国 務 大 臣  西田 信一君        国 務 大 臣  保利  茂君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣審議官    城戸 謙次君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        内閣法制局第一        部長       真田 秀夫君        近畿圏整備本部        次長       播磨 雅雄君        経済企画庁国民        生活局長     宮崎  仁君        科学技術庁原子        力局長      梅澤 邦臣君        外務省条約局長  井川 克一君        大蔵大臣官房日        本専売公社監理        官        大塚 俊二君        大蔵大臣官房審        議官       吉田太郎一君        大蔵省主計局長  鳩山威一郎君        大蔵省理財局長  相澤 英之君        大蔵省銀行局長  近藤 道生君        文部省大学学術        局長       村山 松雄君        文部省体育局長  木田  宏君        厚生省公衆衛生        局長       滝沢  正君        厚生省環境衛生        局長       浦田 純一君        厚生省環境衛生        局公害部長    曾根田郁夫君        農林大臣官房長  太田 康二君        農林大臣官房技        術審議官     加賀山國雄君        農林省農林経済        局長       小暮 光美君        農林省農政局長  中野 和仁君        農林省農地局長  岩本 道夫君        農林省蚕糸園芸        局長       荒勝  巖君        食糧庁長官    亀長 友義君        食糧庁次長    内村 良英君        水産庁長官    大和田啓気君        通商産業省通商        局長       原田  明君        通商産業省公害        保安局長     莊   清君        通商産業省繊維        雑貨局長     楠岡  豪君        通商産業省公益        事業局長     長橋  尚君        建設省河川局長  川崎 精一君    事務局側        常任委員会専門        員        首藤 俊彦君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十六年度一般会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十六年度特別会計予算内閣提出衆議  院送付) ○昭和四十六年度政府関係機関予算内閣提出、  衆議院送付)     —————————————
  2. 古池信三

    委員長(古池信三君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  昭和四十六年度一般会計予算昭和四十六年度特別会計予算昭和四十六年度政府関係機関予算、  以上三案を一括議題といたします。  昨日に引き続き、杉原一雄君の質疑を行ないます。杉原一雄君。
  3. 杉原一雄

    杉原一雄君 きのう文部大臣から説明を受けました財団法人日本武道館借り入れ金のことについてでありますが、吉田理事から資料提出を要求したところ、資料がいま手に入りました。ところが、ここで文部大臣に重ねてお伺いしたいのでありますけれども、この資料によりますと、本件借り入れについては、「大臣昭和四十三年十一月二十五日当該借入金について承認した。」と、こう書いてあるわけです。しかして、契約においては十一月二十七日そのような借り入れを行なったわけでありますが、きのうの大臣答弁と食い違っているような気がいたしますが、いかがですか。
  4. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 詳しい、いろいろ法律問題もございますから、担当局長から答弁をいたさせたいと思います。  それから、昨日御質問にお答えした中で、川島先生理事長と申し上げましたが、これも私の記憶違いでございまして、川島先生会長でいらっしゃいました。で、安西さんが理事長であって、安西さんがおやめになって、そのあと赤城さんが理事長代行ということになっておるということも訂正さしていただきたいと思います。
  5. 杉原一雄

    杉原一雄君 承認したかしないか。
  6. 木田宏

    政府委員木田宏君) お手元資料を差し上げましたように、四十三年の十一月に六億円の融資につきまして申請が出てまいりましたものでございますから、それにつきまして審査の上、文部大臣承認をいたしました。そのときの認可申請書に出ておりました担保物件と、それからその後、今回新聞紙面指摘がありまして調査いたしまして判明いたしました担保物件とには、ズレがあったわけでございますが、承認をいたしましたときに担保物件として申請書に出てまいりましたものは、そこにあげてございますように、旧偕行社土地、その上の建物、それから日本武道館本館の横にくっついております付属建物の三件でございました。で、今回問題になりまして確認をいたしましたところ、担保に入っておりましたものは、旧偕行社土地建物のほか、武道館本館も一応譲渡担保に入っておるということが判明した次第でございます。
  7. 杉原一雄

    杉原一雄君 私の質問に実は答えていないわけですが、理事会の議決を経て、それから大臣承認を得るということが、この寄付行為定款ですか、それには第八条で明確になっているわけですが、大臣は、きのう承知していないようにおっしゃったように私は覚えていますが、しかし、このいただいたこれによりますと、大臣が承知をしておることになっているので、その点のことを確認したいと思います。
  8. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 実を申しますと、私きのう申し上げましたのも、一応この三つ担保物件につきましては承認したと、借入金について承認したと申し上げたのです、一応。ところが、調べました結果は、いま担当局長から申し上げましたように、その担保が、第三番目の本館でございますね、本館はしてはならないことになっておるのを、してしまっておったという事実が判明したと、こういうことであります。
  9. 杉原一雄

    杉原一雄君 それを含めて承認したわけでしょう。
  10. 木田宏

    政府委員木田宏君) いま大臣が申し上げましたように、私どもといたしましては、承認をいたしましたときは、武道館本館担保に入ってないという書類承認をいたしたわけでございます。しかし、今回問題になりまして調べましたところ、本館譲渡担保に入っておったということが判明いたしました。そこで、昨日大臣が申し上げましたように、大臣からの指示もございまして、昨日午前中でございましたが、赤城理事長代行にお目にかかりまして、これは認可をしたときの実体と違いますので、御善処方をお願いするというふうに申し入れた次第でございます。
  11. 杉原一雄

    杉原一雄君 局長、ちょっと待って。これは、じゃ、一言半句も間違いないですか。
  12. 木田宏

    政府委員木田宏君) はい。
  13. 杉原一雄

    杉原一雄君 そうしますと、小さいことを言うようだが、「財団法人日本武道館理事長赤城宗徳」となっているのですが、これは間違いありませんか。四十三年時点ですよ。
  14. 木田宏

    政府委員木田宏君) 四十三年のときは理事長赤城宗徳氏でございまして、会長は正力さんでございました。
  15. 杉原一雄

    杉原一雄君 ちょっと大蔵大臣も気をつけていただきたいのでありますが、この株式会社日本不動産銀行とのやりとりでありますが、しかし、この建物は、いま大臣承認してないと言われる建物は、持ち主がだれであるか、それはきまっていない。そういう状況の中で、担保物件銀行に、それを担保として認めることの妥当性ですね、金融関係諸立法から見て。いいのですか、認めていないのです、ここにきちっと。大臣はどうですか。
  16. 木田宏

    政府委員木田宏君) この武道館本館は、東京オリンピックのための施設にするという事情がございまして、武道館昭和三十七年に財団法人としての認可を得まして、そうしてこれが、あの北の丸の森林公園として決定されましたあの地区に、政府の使用の許可を得まして、国有地の中にいまの財団法人を建てたわけであります。その建てるにつきましては、政府から、三十八年、三十九年の二カ年間にわたりまして、それぞれ五億円、十億の補助金財団法人武道館に出しました。で、武道館は、それに他の一般募金を集めまして、約二十億強の経費で武道館施設として、国有地を借りて、あの上に自分の建物をつくったわけでございます。ですから、現在の武道館所有主というのは、この担保に入れます前の段階におきまして日本武道館であることははっきりしておると考えます。で、それを譲渡担保という形で六億円のカタに入れるということは予期しておらなかったところでございますけれども譲渡担保という形で担保に入れたということが判明いたしましたので、至急その善処方武道館申し入れたと、こういう次第でございます。
  17. 杉原一雄

    杉原一雄君 手続が完了していますか。
  18. 木田宏

    政府委員木田宏君) この武道館本館は、ただいま申し上げましたような森林公園として決定されました国有地の上に国の補助金を入れまして関係者の総力をあげてつくられたということでございまして、でき上がりましたあと保存登記は、まだできておりません。これは、おそらくは、そのときの関係者の気持ちからいたしますならば、特別の国の許可を受けまして、森林公園——現在では厚生省所管国民公園になっておりますが、国民公園の中に、ごらんのような施設ができたということで、これを他にどうこうするという、何といいますか、流通の可能性等を、おそらくはどなたもお考えにならなかったからと思います。  そこで、日本不動産銀行から六億円の資金を借り受けます際に、登記ができておりませんので、譲渡担保にするという形で担保にされておりました。しかも、そこの御説明にちょっと触れてございますように、必要があって不動産銀行からのお申し入れがあればいつでも登記をして移転登記をいたしますという念書を武道館のほうが入れておったわけでございます。したがいまして、現在の段階で、まだ日本不動産銀行から登記をして移転登記をしろというお話もないまま、一応両当事者間におきましては譲渡担保に供するという意思の合意は行なわれておりますけれども、対外的にそれを立証する登記処理は行なわれていないのが現状でございまして、この点の是正を、昨日即刻赤城宗徳氏に会いましてお願いを申し上げましたところ、武道館不動産銀行関係者の間では、すみやかにその改善の措置をとるというふうなお話が進んでおるように聞いておるところでございます。
  19. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 関連文部大臣にお伺いします。  この武道館運営については、寄付行為、つまり定款によって運営されているんだと私は思うんです。この定款資料として求めまして、読んでみますと、役員理事評議員会等々が第二十一条以降に明記されております。そうして、役員会あるいは理事会評議員会意見を求めなければならない事項も第二十七条に記載をされております。この意見を求めなければならないということは、評議員会を開かなきゃ意見が聴取できないと思いますから、具体的に私は評議員会の招集ということになるんだと思いますが、一つは「事業計画および収支予算についての事項」、二つは「事業報告および収支決算についての事項」、三つ目は、ただいま同僚の杉原委員質問いたしております、この「不動産の買入れ、または基本財産の一部処分もしくは担保提供についての事項」、こういうことになっておりますから、当然、私は評議員会が開かれ、意見が求められているんじゃないかと思うんです、ただいままでの質疑応答状況を伺っておりますと。これはそういう手続がなされたかどうか、これは文部大臣に伺っておきたいと思います。
  20. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 体育局長からお答えを申し上げます。
  21. 木田宏

    政府委員木田宏君) 昭和四十三年に、この寄付行為の十二条の規定と考えますが、六億円の債務を負担するにつきましての認可申請書が出たにつきましては、理事会評議員会の議を経たと、こういうように、その時点において聞いておるところでございます。
  22. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いまの答えでは、十二条のことを引用されまして、評議員会がやったんじゃないか、こう言っておりますが、では、その当時の議事録を私は求めます。で、十二条は収支決算であります。問題は、やっぱり二十七条だと思うんです。なぜかならば、この物件担保に入っておりますね。物件保存登記はしていないけれども担保に設定されて六億という金が融資されておるわけですから、担保に供するということになりますと、二十七条の第三に該当すると思いますね。これは間違いないと思う。ですから、当然この段階で、評議員会を招集して意見を求めなければならぬという二十七条が私は適用されると思いますから、そういう経緯があるかどうか。これは、担当官じゃなくて、この承認を与えておるのは文部大臣が与えておるわけですから、文部大臣、答えなさいよ。
  23. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) ただいま局長が申し上げましたように、第二十七条にございます「不動産の買入れ、または基本財産の一部処分もしくは担保提供についての事項」とございますから、当然、理事会におきまして評議員会意見を聞いてやったと思っております。
  24. 吉田忠三郎

  25. 木田宏

    政府委員木田宏君) 先ほど私が寄付行為の十二条と申し上げましたのは、収支決算で定めるものを除くほか、新たに義務を負担する場合に理事会の議を経て文部大臣承認を経なければならない、その文部大臣承認をこの規定によって求めてきたというふうに考えて申し上げたわけでございまして、当然、法人内部手続といたしましては、御指摘がありましたように、その年の事業計画または不動産買い入れ等大きな事項を決定いたしますにつきましては、「理事会において、あらかじめ評議員会意見を聞かなければならない。」という二十七条の規定が働くわけでございます。でございますから、そのときの関係記録、私どものほうの認可書類の上におきまして理事会評議員会の議を経てこの書類提出されておるというふうに確認したわけでございますが、その理事会評議員会議事録は、いま手元に持っておりませんので、後刻取り寄せまして提出さしていただきます。
  26. 吉田忠三郎

    吉田忠三郎君 いま手元にありませんなら、やむを得ませんが、後刻すみやかに出してください。  それから、おそらくは評議員会の議を経ているだろうという意味の答弁ですね。私は、あえて名前は言いませんが、二、三の評議員に聞きましたが、私どもそういうことについて一切相談を受けていない、こういう事柄等も聞いておりますから、そのことも含めまして資料提出していただきたいと思います。できますか。
  27. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 本件融資は、銀行法上適正であるかと、こういうお話でありますが、担保を徴しておる、それから本館につきましては、登記がしてありませんものですから、便宜上譲渡担保という形をとったわけでありまして、実体上は担保ですが、形式は所有権移転、こういう形をとったものでありまして、適正であります。
  28. 木田宏

    政府委員木田宏君) 関係書類には評議員会出席者名前もあがっておるようでございますので、全員が出席されたわけではないと思いますが、関係書類を後刻差し上げたいと思います。
  29. 竹田四郎

    竹田四郎君 関連。  文部大臣に伺いたいと思うのですが、監督官庁文部大臣になっているだろうと思います。実際にこういう事態を起こした責任というものを一体どう考えているのか。この返済というものは確実にこの規定どおりにできる可能性武道館収入から見てできるのかどうなのか、その辺をお聞きしたいと思います。
  30. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 私といたしましては、監督庁としての責任は私にあると、またそのように感じております。私といたしましては、昨日赤城理事長代行申し入れをいたしまして、そして是正方を要請し、またこれに対しまして善処をするという確約を得ておるわけでございます。私はそれを信じたいと思っております。
  31. 竹田四郎

    竹田四郎君 返済計画の見通しはどうですか。
  32. 木田宏

    政府委員木田宏君) 返済計画につきましては、元本を昭和四十五年から昭和五十三年十二月までの間に三十四回に分けて返済するということになっておりまして、昭和四十五年度におきます返済金額は、一応武道館昭和四十五年度の予算といたしましては五千四百万円を償還金として計上いたしております。しかし、これは御指摘のように、経常の収入からはこの返済金の余裕が出るはずがございませんので、当初から財界の募金その他広く一般募金予定するということでございまして、当初約九億近い募金計画予定がございました。
  33. 竹田四郎

    竹田四郎君 これからの返済募金でやるの。
  34. 木田宏

    政府委員木田宏君) これからの返済につきましても、かなりの金額募金にたよらなければなるまいと考えております。
  35. 竹田四郎

    竹田四郎君 その募金計画というのはまだできていないのですか。できたら早く出してください。その募金をいまからするいとうのだけれども、具体的な募金計画はいつまでにできるのですか。
  36. 木田宏

    政府委員木田宏君) 募金につきましては、一応九億ほどの募金計画を立てまして、現在の段階で一億一千万ほどの歳入が、募金寄付収入が上がっておる段階でございます。これから当初の予定に比べますと若干募金の成績が落ちておるというふうに考えておりますけれども昭和四十五年から五十三年までの償還でございますから、その期間にまた武道館としては新たな目標を立てて募金を始められるものと聞いております。
  37. 杉原一雄

    杉原一雄君 この件については、先ほどのやりとりで十分わかりました。われわれもまた武道館の設置には賛成をし、理事を送り、評議員を送って経営の遺憾なきを期するように努力はしてきましたけれども、今後十分戒心をして努力をしていただきたい、このことを最後につけ加えて次の問題に移ります。  ずいぶん新聞をたよりにして申しわけないのでありますが、きょう朝日、毎日の記事から得た材料でございますけれども、見出しだけ簡単に申し上げますと、「盗まれていた大学入試問題、大阪刑務所——法務大臣も気をつけていてくださいよ。「一億五千万円荒かせぎ」と出てきているわけです。それが毎日の中では、大阪大学、それから大阪市立大学、「一人一千万円」という表現すらあらわれてきているわけです。きわめて重大だと思います。でありますから、文部大臣にはこうした結果に対する事後の処理、同時にまた、どうしてこういうことが起こるのか、それは入試の問題並びに学校制度の問題、大きな角度から文教政策全般の視野からこの問題をどうとらえるか、これを大臣に聞きたい。法務省は、こうしたことがどうして起こるのか、刑務所管理運営について十分検討されたと思うが、その実況の報告をいただきたい。以上です。
  38. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) 私もまた新聞を読みましてまた驚いたわけで、実際そうなんです。直ちに大阪大学に対しまして調査を求めたわけでございますが、現段階ではまだ大阪大学としては事情がわかっておりません。おそらく警察当局捜査が進行いたしました過程においてその事実等がはっきりしてくる、またどういうぐあいにしてそういうことが行なわれたかという経路やなんかが明らかになりませんと、大学でどういう手落ちがあったか、あるいは大学自身の問題であるかどうかというようなところがはっきりいたしません。私は警察当局捜査が進み、かつ当該大学におきましてみずから調査をいたしましたその結果を見まして、十分考えてまいりたいと思います。しかし、万一学生が不正な形で入学をしておるということが判明をいたしました以上は、当然当該大学がこの学生を除籍をするというふうに考えております。
  39. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 今回の大阪におきましての事件は、私のほうにおきましても、まだ警察当局から詳細なる報告を受けておりません。送致もまだ受けておりませんから、内容は詳しくはわからないのでございますが、どうやら四十三年、四十四年、四十五年、三年に続いての事件のように思われます。しかし、それは、実態はいずれもその場合における同一人の犯罪とか、あるいは同一の間違いから起こったんではないようでありますから、これはなるべく早く事態を明らかにいたしまして、刑務所当局に看守上の、取り締まり上の不十分があれば、あるいはこれも注意しなければなりませんし、どうやらいままでのきわめて簡単にちょっと報告を受けましたところでは、かつて中におった囚人が、もうすでに刑を終えて出ておりまして、それがどうやらいたずらをしたらしい、間違いを起こしたらしい、こういうのであります。したがって、いままでのところは、幸いまだ所員とか、あるいは看守等に間違いがあったんではないように思われるのでありますが、まだ調査の途中でございますから何とも言えない、こう思うのであります。一般的に申しまして非常に少ないのであります。全国でこの試験問題を刑務所にお預かりして、そして印刷をしてお渡しをすることはあるので、非常に厳重な方法を従来はとっておりますので、事例はまれでありますが、絶無ではないので非常に残念に思っております。
  40. 杉原一雄

    杉原一雄君 法務大臣のおっしゃる意味はちょっとわかりにくかったのですが、こういう事例が少ないと言うのか、それから試験の答案用紙を刑務所の中で刷るというのが少ないと言うのですか、どっちですか、かなりあると思うのです。高等学校の入試問題でも刑務所でやっていただいておる事例が非常に多いですから。
  41. 植木庚子郎

    国務大臣植木庚子郎君) 試験問題を刑務所内において印刷をいたしておる。その学校当局の依頼に応じてしておる例はたくさんあります。少ないと申しましたのは、間違いを起こした事例は非常に少ないのですが、まれにときどきあるような感じがいたしますので、まことに申しわけなく思っております。
  42. 杉原一雄

    杉原一雄君 文部大臣ね、カビというものは適当な湿度と温度が必要でありますから、こうした現象は、急に悪の花が咲いたわけではない、悪の花が咲く根源がある。そのことにつきましては大臣は触れておらないのでありますが、きょうお答えいただけねば、同僚から文教委員会等で追及していただくことにしますから、いいですか、答えていただければ答えていただきたいと思います。いやですか。
  43. 坂田道太

    国務大臣坂田道太君) まだそこのつながりがよくわかりませんので、もう少し捜査が進みますと事件の全貌が明らかになるし、また、大学当局としてもいろいろわかってくるところが出ると思います。それが出てきました過程において私自身としても十分考えてみたいというふうに思います。
  44. 杉原一雄

    杉原一雄君 次に、公害行政の一元化の問題であります。十二月十八日の本会議において公害基本法反対討論に立ったとき、私は、特に最後の段階で、環境保全省の設置方を政府当局に要望したことを忘れてはおりません。しかしその後、きわめて速いスピードで山中長官を中心として環境庁をつくるところまで、法案としてもすでに提案されているような形でございますので、その蛮勇と申しますか、勇気を非常に私は評価したいと思います。ただこれをおつくりになるにあたって、かなり御苦労をされたと思います。しかもいま出された法案の内容は別の委員会で検討すると思いますが、長官、特に苦労しながら、いまなおかっこの点とこの点とまだ不十分だ、いわゆる公害行政一元化になっていないという点があったら、大臣自身、作業の過程の中で御承知だと思いますので、その点をお漏らしいただいて、私たちは別な形で協力したい。お聞きしたいと思います。
  45. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) どうもご質問がきわめて危険な伏線のある御質問であるかとも思いますが、私としては努力をして、また総理の公害対策本部長としての意向も受けてつくったものであります。ことに公害行政のあり方について前の臨時国会でいろいろ議論いたしましたときに、公害が起こってしまってからあるいは起ころうとしている現象についてだけ取り組もうとしている日本の姿勢は、諸外国に比べておかしいのではないかという指摘がずいぶんありました。このことはやはり私どもから見ても、どうしても自然保護、環境保全ということが基本でなければならない、国際的な通念としてもそれでなければ耐えられないと思いましたので、今回の環境庁の大きな柱は、現在の厚生省の国立公園部を中心にして、農林省の鳥獣保護関係まで含めました自然保護というものを大きな柱にいたしまして、その他の行政についてはいわゆる公害防止にあたっての必要な各種規制法を全部所管いたし、そしてそれらの環境基準、規制基準の設定を行なって、権限を大幅に委譲しました地方自治体と、円滑な運営が保たれるように配慮をいたしたところであります。なお、下水道その他直接の公害防止の事業そのものは環境庁でやらないということに初めからいたしておりましたので、その分野は取り上げられておりませんから、その点については諸外国と比べたり、あるいは国内の意見でもなお賛否の分かれるところであろうかと思います。さらに併置して、これは建物をつくらなければなりませんので、若干政令でもおくれることにしてありますが、国立公害研究所というものをつくりますし、さらに地方公務員の研修を主にした国立公害研修所も併置いたすことにいたしておる次第でございます。
  46. 杉原一雄

    杉原一雄君 長官のいまの答弁の中でこれは下水道はしかたがなかったんだ、通産省に企業の監督権を委譲したのもしかたがなかった部類に入るんですか。
  47. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 私はしかたがなかったと言っているのではありませんので、そういう現業的なことはやらない、環境庁としては、わが国における行政のあり方として、一つの役所で環境庁として出発いたします場合にやらないというたてまえをとったということであります。通産省の行政の中で法律で分離されている電気、ガスに関する、それぞれの法律の規制を別途受けております適用除外の問題、これはもう環境庁ができたからといって解決できるものではない、法律論でございますたら、その点を別にいたしますならば、各種の取り締まり法規あるいは規制基準その他の権限は全部取っておりまして、その他についても各省において行ないます公害行政に対しては完全に勧告権を持ち、あるいはまた報告を求め、あるいは意見を徴し、あるいは勧告をした場合には、その勧告を受けた大臣はとった措置について環境庁長官に報告しなければならないことにしてありますし、環境庁長官は、内閣法第六条による閣議の決定によってきまった方針について総理大臣が指揮を行なう、各省庁の長たる大臣を指揮するというその権限の発動を要請するという立場も持たせてありますので、普通の各省大臣よりも強力な権限を与えてございますから、総理大臣に対するそのような措置等を場合によっては要請することによって公害行政の、いわゆる衆議院の段階において議論されました行政と一部分が今日まで癒着の批判が絶えなかったという問題等については、今後は起こり得ないだろうと確信をしておる次第でございます。
  48. 杉原一雄

    杉原一雄君 いろいろ御注文なりしたいところはあるわけですが、ただ一点だけしぼって申しますと、規制、防止のための基準の設定、承認に関する権限等を環境庁は完全に掌握していないように私は理解いたしておりますが、これはたいへんむずかしかったのですか。
  49. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 各種規制法、取締法に基づく権限は完全に掌握をいたしておりますし、具体的な点で御指摘になればまたお答えをいたしたいと存じますが、一応体制は整えたと思っております。
  50. 杉原一雄

    杉原一雄君 それではもう一問山中長官に——悪臭防止法を議会へ送りましたか。
  51. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 昨日の閣議で決定をいたしまして、衆議院に提出をいたしました。
  52. 杉原一雄

    杉原一雄君 それはいろいろ閣内での、政府内での論議の中で、権限の重点を都道府県に置くか市町村段階に置くかでかなり議論があったわけですが、結論は変えるわけにいかぬと思いますが、われわれとしては、やはり下に置いておくほうがより企業との接点が幅広く、深いですから有効だと思うのですけれども、その辺のところはどうです、いまさら変えるわけにいかぬと思いますが。
  53. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) これは市町村の固有事務として当初原案をつくって研究いたしたわけです。ところが、悪臭防止法という法律をつくりますと、なかなか具体的な悪臭を発生する物質ごとにそれぞれを測定する分野においても非常にむずかしい問題がありますし、蓄膿症の人はどうなんだとか、風向きによってにおいの到達する方向も距離も違うのではないかといういろんなむずかしい議論がございましたし、そこでやはり町村長さんの手には負えないだろう、すぐに町村固有事務では処理しにくい点があるだろうということで、自民党、私どもの与党のほうの御意見等でも、親切な意味で都道府県がやはりタッチしていって、市町村と密接な連係をとって、大体市町村単位の問題だと思いますので、固有事務にはなりませんでしたけれども、連絡をよくとっていくならば、初めてのことでございますからいろいろむずかしい問題があるとしても、大きく前進するのではなかろうか。むしろ市町村に権限を与えられた結果かえってまずくなるようなことがあってはならないということを考えたわけでございまして、この点は考えようでございますから、どちらのほうがより親切かということで、それは県に置いたら企業と癒着するという問題とはまた別な問題でございますから、私どもとしては、より親切なものとして別段後退その他という姿でないことですなおに受け取ったわけでございます。
  54. 杉原一雄

    杉原一雄君 次に厚生大臣にですが、国の基準で、患者が続出している亜硫酸ガス等について——そこで厚生省としては、この大阪府成人病センターの調べに対して厚生省の見解等が示されているわけですが、これはきわめて早くその方向で努力されるのかどうか、この時点を通じて言明していただきたいと思います。
  55. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 環境基準は、これはまあ全国一律に今日の水準から決定されておりますが、それを達成するための規制基準がございます。その規制基準はしっかりやっておるけれどもなかなか環境基準に達しないというような地域が、現在大阪ばかりでなしに、他の地域においても見られておりますので、こういう地域に対しましては、個々の企業に対する規制基準、排出基準、そういうものを漸次強化していくと、こういう方針をもって対処をいたしておるわけでございますので、大阪でありますとか、あるいは川崎でありますとか、そういうところにつきましてもそのような方向で処理をいたしております。  なお、新しくつくります企業につきましては、従来存在する企業に対する規制基準よりも、別個に特別排出基準というものを設け得るたてまえになっておりますので、新企業がそこに参りましたときには、非常にきつい排出基準の適用を受けざるを得ないということをもって対処をいたしておる次第でございますので、さような御指摘のような事態は一日も早く解決するつもりでやっております。
  56. 杉原一雄

    杉原一雄君 亜硫酸ガスならば〇・〇五規制基準、国の示した基準ですが、しかし、いま大阪のセンターから出てきているデータは〇・〇二七でもなおかつ出るということですね、このぜんそく、その他の病気が。そういうデータが出てきておるので、結局国の基準そのものが問題だ。だから、国がそれを変えていくということを、厚生省が何らかの機関を通じて言明をしておられるように受けとめるんですが、いまその点はどうです。
  57. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 環境基準そのものは比較的最近きめたものでございまして、これは健康項目にいたしましても、あるいは環境の保全という項目にいたしましても、私は必ずしもゆる過ぎるものとは思っておりません。しかし、これも環境基準などにつきましての意識というものは、国際的にも、また日本におきましても、一ぺんつくったらそれでいいというようなものでなしに、常に反省し、見直して、必要がある場合には強化していくべきであると、こういうことを公害対策基本法にもうたっておりますので、亜硫酸ガスにつきましても、〇・〇五というものが私は絶対的なものであるとは思いません。さしあたりすぐ直すというものではございませんけれども、各般の事情に即しましてこれの改定ということも今後考え得るものであると私は思います。
  58. 杉原一雄

    杉原一雄君 きわめて最近、和歌山県と和歌山市が住友金属との間にきめた防止協定の中で〇・〇一二、横浜、川崎よりもはるかにきついのを協定しましたがね。それは政府の政策よりもっと先に進んでいると私は評価します。大臣はどうでしょうかね。
  59. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私は可能な限り、環境基準というものはもうこれ以上よごれてはいけないという行政目的でございますので、新しい地域などにおきまして企業を招致する場合に、可能な限りにおきましては、それよりもさらにいい状態の環境を保たせるという協定ができますことは、私はけっこうなことであると思います。
  60. 杉原一雄

    杉原一雄君 厚生大臣ね、それからたばこの問題、ぼくはのまないからざまあみろと言いたいくらいなんですが、表に有害とかなんとか書かぬことになったように聞いているんですが、大臣としてはどうでしょう、国民の健康管理上。
  61. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私の耳が悪いせいであるかもしれませんが、いま杉原さんのお話では、包装の表に有害とかなんとか書かぬようなことになったと思うがという話でございますが、なっておるのはアメリカとかアイスランドとか、あるいはオーストラリアのある一州だけでございまして、国際的にもたばことガン、ことに私ども日本の研究によりましても、ガンのみならず循環器系統の疾患にも、疫学的にはたばこが影響があるという結論になっておりますけれども、たばこを禁止するとか、あるいはまた、非常に多くの国がたばこの包装に、たばこは有害であるからのむべからずとか、自制しなさいということを書くような状況にまでは実は至っておりません。厚生省は決してたばこはいいものであるというような結論は出しておりませんが、御承知のように、食品衛生法で規制する対象ではございませんで、別にたばこ専売法というものがありまして、その法律によりまして、たばこの事業が国家的に行なわれておるわけでありますので、前々から大蔵大臣には、厚生大臣の顔色を見ながらたばこの政策をやってほしいということを述べておる次第でございます。
  62. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは最後に、希望になると思いますが、これはこういうものをたよりにしてものを言うのは私非常に残念に思いますが、三月十二日の週刊朝日では、「公害はなくならない」、「〃安全基準〃のこのおかしな決め方」というので、中間見出しにこういうのがあります。「行政に伸びる企業の黒い手」、「企業ペースの〃万全の措置〃」、それから「基準作成段階で骨抜きに」、しかも厚生省の段階の内容等を暴露しております。「イタイイタイ病を考えぬコメの基準」というような見出し等が出てきておるわけです。しかし、これは国民全体が持っておる不満が表明されているし、事実上あるような気もします。ここは通産大臣もひとつきのうえらいことをおっしゃったのですが、よほど行政上気をつけてもらわないと、ここにあることが事実であるとたいへんです。私、いまさら石原産業を引っぱり出そうと思いませんので、行政上十分介意して、気をつけてやっていただかないと、国民の不安なり危険にはこたえることができない。こういうことで公害問題を一応終わりたいと思います。  次に、農政問題に触れたいと思います。  私、ここに三月四日の「朝日」の一枚の写真を手にしているわけですが、小屋前に仁王立ちしているある婦人が鎖でからだをゆわえつけております。それを公団のほうが出ていって切っておるわけですね。この姿を見て、これが今日の農民の農業に対する心からなる、私、気持ちを表明していると思います。成田空港反対以前の問題、 つまり、私たちがここでともに政府意見を一致させていきたいところは米の問題、日本における米の問題、その原点についてしっかりした意思統一がない限りは、常に議論は平行線をたどらざるを得ないと思います。今日の米の問題をやはりこのような形に追い込んでいる問題として、あるいは経済合理主義とかいろいろな問題が中に介在しながらある方向に引きずっていくような感じすらあるわけです。  そこでまず、政府は、佐藤政府の以前であったと思いますが、農業基本法というのをつくったわけです。それを大々的に鳴りもの入りで基本法農政だというふうに言ったのであります。それが一体どういう筋書きで、しかもそれが総合農政というふうに変わったわけです。そうしますと、基本法農政というもののうたい文句は何であって、ビジョンは何であって、それは結果的にどういう成功をし、どういう失敗をして総合農政に移ったのか。この辺の経緯を農林大臣のほうから明確にお聞きしたいと思います。
  63. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) いまから十年前だと思いますが、農業基本法が施行されましてから、この間農業は、国民所得水準の向上に伴う食糧需要の高度化、多様化に対応いたしまして、生産の選択的拡大を進めるとともに、欧米諸国に比較いたしましても劣らないような生産の発展を遂げながら、食糧供給を増大いたしてまいりました。それからまた技術の向上、機械化の進展を通じまして、農業の近代化を進め、農家生活水準の向上を果たしますとともに、労働力、土地等の資源の供給を通じてわが国の経済成長に貢献いたしてまいったことは御存じのとおりであります。農業基本法によって定められました農政の方向、すなわち農業基本法が一番希望いたしておりました国民経済の成長発展と社会生活の進歩向上に即応して農業の近代化をはかり、他産業との生産性及び所得の格差を是正することを目標とする農政の基本的方向は、今日においても妥当であると私どもは考えております。  そこで、この法律施行後今日までの間に生じました経済の国際化、あるいは公害問題、物価問題等、わが国経済社会の変化や、これに伴う新しい農業の動向を十分に配慮いたしまして、総合農政の本格的な展開をはかってまいりたいと、こう思っているわけでありますが、ただいまお話のございましたように、基本法農政が失敗をして、どういう経過で総合農政というふうに変わってきたかというお話でございますけれども、私どもは、ただいま申し上げましたように、十年前に農業基本法を制定いたしましたあの当時の当事者たちも、それからああいうことについていろいろ御協力をいただきました方々の御意見を徴し、そして、つまり私どもといたしましては、先ほどもちょっと申し上げましたように、国際情勢、国内の経済情勢等のもろもろの情勢の変化に対応いたして、この農業基本法の精神に即して、今日までの間に生じましたいわゆる食料の構成変化、経済の国際化、それから先ほど申し上げましたように、公害問題、物価問題等、わが国社会の変化に対応して、それに即応し得るような姿勢をつくり、情勢をつくっていかなければならないのではないかというので、総合農政の推進について、という考え方を発表いたした次第でございます。  あまり長くなりますから、この辺にしておきます。
  64. 杉原一雄

    杉原一雄君 一々とらえて言おうと思いませんが、かりに選択的拡大とおっしゃったんですね、基本法の路線。そのとおりどんどん成功していますか。それとも一またもう一つは所得格差の問題ですね。これも農民はふところが豊かになって、たいへん自民党さんありがとうございました、ということになっているでしょうか。その辺のところを……。
  65. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 杉原さん御存じのように、十年前に基本法をつくりました当時、これは私どもも当時国会におりまして賛成をいたした一人でありますが、あの時代から考えまして、私どもにとって非常な変化を生じてきておる、一つ取り上げてみましても、私はわが国の地価の高騰等。実は一昨日来十八、九歳から二十歳前後の、いわゆる若い人たちの、農業会議所の人たちの会合が東京にございまして、幸いにして私はその若若しいあと継ぎの諸君と懇談する機会を持ちました。彼らはいろいろな、あるいは水稲に主力を置き、あるいは花卉、果実それから畜産、それぞれの分野で、みな自分の抱負経綸を一人ずつお述べになりましたが、私どもはそういうことを考えてみますというと、やはりいわゆる総合農政の中で水稲というものが非常な生産の過剰であって、したがって、いま生産調整をしなければならない、こういうことのほかには、これは御存じのように、選択的拡大の目標に向かって鋭意努力をしてまいりましたし、なかなか計画どおりには進んでおりませんけれども、大体そういう方向に向かって進んでいくわけでありますし、そういう方向でやってきております。  ただ、この間も木村さんの御質問にもお答えいたしましたけれども、比較生産性においては確かに製造業等に比較して、逐次改善はされてきておりますけれども、最近ここ一、二年は落ちてきている。これをやはりどういうことで挽回していくかということ、これがわれわれに与えられました重大な任務ではないか、このように考えておるわけであります。
  66. 杉原一雄

    杉原一雄君 通産大臣に通告はしてなかったかと思いますが、あなたは頭は明敏ですから簡単にお答えいただけると思いますが、いま大臣が、経済の国際化と、そういうことは日本の農業に影響があると、こうおっしゃった。私もそうだと思う。その中で、やはり貿易の自由化と、これをどうしても通産行政の立場でとらなければならない。その理由は聞きませんが、そのことが今日の米の生産制限等には大きな影響があるとぼくは見るのですよ。あなたの立場から見れば、そうしてもらうほうが都合がいいと、こういうことになりやしないか、どうでしょう。
  67. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 農産物の貿易上の自由化が今日の米の生産制限という事態を来たすような原因になったかと、こういう御質問でありましたら、私どもその点はさように考えておりません。御承知のように、これらのいわゆる政府所管物資というものは、自由化の上では自由化義務を国際的に免除されておるものでございますし、また、その点を別にいたしましても、自由化を進めてまいりますときには、現在の総合農政というものをずっと頭に置いてやってまいりまして、現にことしの九月がまいりましても四十品目残るかと存じますが、その七割は農産物、しかも数で申しまして七割——二十八でございますが、そのうち飼料一つを除きますと全部食糧になるわけでございますので、ただいま仰せられましたような連関については、私ども最も注意してまいりましただけに、そういう原因にはなっていないというふうに考えます。
  68. 杉原一雄

    杉原一雄君 ずいぶん古い話ですけれども、マンスフィールドが日本なりアジアのほうを回って上院に対してレポートを出しているのですね。その中に、やはりアメリカの小麦の余ったことなどの始末をつけるために日本には買ってもらわなければならない。だがしかし、それはそうやると日本も文句を言うだろうから、若干おもちゃとかいろいろなものを買ってやるまいか、ということを国会に報告しているわけですよね。そこらあたりに非常に関連がぼくは実はあると思うので、大臣はあっさり答えているけれども、私たちは長い歴史の中で見ていると、必ずしもそうとはとれない。また、東南アジアから開発輸入という、学者のことばが正当かどうかぼくは知りませんが、いろいろと聞きますね、いまでは米が入ってくることはほとんどないようですが、従来、それでもまだ幾らか入っているのですね、こまかい砕けた米なんか入っていますね、そうしたことなど。あるいはアメリカの小麦がどんどん——農林大臣から聞けばわかるのですが、四、五百万トン入っているんじゃありませんか。これも日本の国民の好みだと、しかたがないと、こうはいけないと私は思うのですよ、こうはいけない。これは貿易政策の問題であり、外交の問題だとぼくはにらんでおる、つかんでいるわけです。そういう点で通産大臣が言うようにすんなりと言えるのですか。きのうも貿易黒字の問題を言いましたが、このことが非常に圧力になって、外国のものを買わなければならない、そのかわり売らなければならない、こういうような関係があるんじゃありませんか。ぼくらしろうとでもそのような気がしますがね。この考え方はきわめて古いということになるでしょうか、やはり。現実はそういう形で動いているんじゃありませんか。
  69. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 事実について考えますと、わが国の国内産の小麦は確かに非常に少なくなりましたが、これはいまから過去の十何年の間の事実に徴して考えますと、国内の麦の栽培のほうが先に減り始めまして、しかも、価格的にはむろん輸入のほうが安く、品質もいいわけでございましょうけれども、そういうことから自然にアメリカ等からの小麦輸入がふえてきた。アメリカの小麦の輸入がふえたから国民の食生活の選択が変わったということではないように私は考えておるわけでございます。しかも、農林省でもいろいろ考えられまして、このごろはそういう小麦のうちでできるだけ多くのものをオーストラリア等々にも広く各方面に分けて輸入をしようというふうに考えておられるわけだと思います。そういうことでございますから、確かに一般論といたしまして、こっちが工業製品を売り、向こうは農産物を売る、貿易はバランスする。それは好ましいことでありますけれども、小麦について御指摘がありましたことは、私は過去十何年の事実に徴するとそのようには考えない。また、米につきまして、たとえば加工用の砕米をタイ等から買っておりました。これは価格等の関係もあってそうしておったと思いますけれども、これはまあたかだか数十万トン、多い場合でも——でございますから、それがわが国の米の過剰をもたらしたというふうにも考えられません。むしろ、このごろはわが国の米がタイあたりから輸出しないようにということを言われておるような逆の状況になっておるわけでございますから、一般論として、農産物の輸入の増大ということは貿易量の増大でございますから、それがこちらの輸出の助けになるということは間違いございませんけれども、しかし、いかにも総合農政というものは大切なむずかしい問題でありますから、むしろそのほうの考慮が今日まで優先してまいったというふうに申し上げて私は間違いではないというふうに思います。
  70. 杉原一雄

    杉原一雄君 日本の麦づくりが少なくなったからアメリカから入ったと、高きから低きに流れるというふうな論法ですが、昭和三十四年の四月四日にアイゼンハワーがゲッティスバーグで三十分間演説しているんですよ。記録はあなたもよく知っていると思います。どういう演説をしていますか。その中では、日米経済提携という美名の中でアメリカのものを日本にどうしても消化してもらいたい、同時にまた日本は、アジアにアメリカが進む場合の——そのときは軍事まで要求してないですよ、兵たん基地として日本が要求されている大演説があるわけです。これは私は絶対忘れません。その歴史からながめてきて、あるいはそれ以前に行なわれた学校給食その他の経過等から考えて、日本に小麦が足らぬから向こうから来たんじゃない。向こうに余ったから納めたんです。そこで小麦は日本の生徒が食べた、食べたらなれた、こういうことで食生活が変わったというゆえんがあるわけです。米がうまいか。パンがうまいかということをいま議論しようとは思わない。そういう経過がある。だから、日本の米がだんだんと過剰になってくる要因の中にそうしたものもあることを念頭に置いていただかないと、やはり権力をもって生産調整を押しつけるというようなことは、万々佐藤内閣にはないと思いますが、私の耳にはそういう受け取り方をする人はかなり多い。そういうことなどありますから、農政の出発点にあたって、生産調整にあたって、そうした歴史的な経過等も、政府皆さんの責任でありますから、十分配慮していただかないと困るわけです。そしてまた、農基法農政は、先ほど農林大臣からきれいなことばで並べられましたけれども、私たちあの当時は反対したんです。農民の首切りだ、貧農首切りだと言って反対したんです。そのとおりの結果になったように思います。特に最近労働力が足りません。だから今度は少年、いわゆる金の卵はだんだん手に入らなくなるから、中高年がほしいから農業関係からとっていくということになる。そういう意味では、通産行政の側では、労働力を確保するという意味で今日の農政が非常にプラスになっている。そしてまたいま農村に工業が進出するなどという法律が出ている。しかし、これはりっぱなようでありますけれども、いま資本家が求めているものは人と米じゃない。人と土地なんです。土地がほしい。いまの都会周辺では非常に世論がかまびすしくて、公害等の問題がありますから、地方へ進出しなければやっていけない。私の県の山奥でさえ抵抗器をつくる工場が来ましたよ。それは抵抗器は問題ない。しかしながら、いまこぶつきの、公害つきの工場等が、地方分散しようとするその先導を、誘導するのが工業法であったらたまったもんじゃない。しかし、いまの行政の中では、そういうやむにやまれない企業、資本の要請、資本の論理が私は働いておると思います。そういうことを抜きにして生産調整を私は考えてないと思うけれども、これは通産大臣、非常に御不満でしょうから、私やっぱりここで黙って押えておくわけにはいかないからお聞きします。あなたの不満な意見をお聞きします。
  71. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) そういうことを資本の論理だというふうに片づけてしまうのがよろしいのでありますか、あるいはわが国のような国柄の国は、高度の工業国家——このごろはまた脱工業社会というようなことも申しますけれども、付加価値の高いものを国全体として生産をしていくという、それだけの国民が素質も持っていますし、また国柄であるのではないかということを基本的に考えます。しかし、昨今のように、ある程度生活水準が満足をしてきた、そうして、そういう場合に、ただそれでいいのかという反省もまた出つつあるわけでございます。ことに今日、一次産業に働いておる就労人口というのが、やはりまだ一七、八%ございますわけでございますから、そういうこと等も考え合わせますと、虫食いのような工業進出というものは、生活環境のためにもよくありませんし、また、工業自身のためにだって実は問題なのでございますから、その辺を調整していくのにはどうしたらいいかということが、今回の農村工業化の法律でございます。私どもこの十数年における日本の経済あるいは経済社会の変貌というものを、いわゆる資本の自己の利益追求の論理の結果だというふうにとらえるにしては、あまりにできごとの動きが複雑であるのではなかろうかと、そういう一面的な見方ではとらえきれないものがあるのではないかというふうに思っております。
  72. 杉原一雄

    杉原一雄君 もちろん、私はすべてであるというような言い方はしてないつもりであります。  それはそれで終わりますが、ただ農林大臣、基本法なり総合農政の問題をいろいろ聞いたわけですが、生産調整——去年しつこくやられたわけですが、百三十何%になったと、まあ成功だと、こういうことになるかもしれませんね、あなた方の立場からいうと。しかし、成功だという受けとめ方と、今度逆に、政治的判断もさることながら、農民はこれをどう受け入れてきたかというと、ある地域ではこう受けとめ、京都ではこう受けとめ、新潟ではこうだと、いろいろあるわけですが、しかし、そういう。パーセントの問題じゃなくして、はたして農民は心から農林大臣のこうした生産調整に対して協力したのかどうか。そうした点を調査点検をなさったら、できれば簡単に個条書きにお聞きしたい。
  73. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 一口に二百三十万トンと申しますけれども、これはやはりかなりの数字でございます。これを自発的に御協力を願ってこれの生産調整をやるということにつきましては、これはもうなみなみならない努力が必要でありますし、やっていただく農家の方々に対しましても、たいへんいろいろそれぞれの立場で御心配なさっている。さっきちょっと申し上げました二十歳代の若い人たちのお話を聞いておっても、非常にそういうことについて真剣でありますが、地域にとって違うところもありますが、府県段階で、さっきちょっとおっしゃいました、あるところでは非協力であるとかというふうなうわさはありますけれども、ありがたいことに、もうすでに最近の締め切りでは三十七道府県、それから逐次ふえてきておりまして、今月中旬には全国の下部までおりていくものであろうと思っておりますし、それからまた生産調整ということをやらざるを得ないということにつきましては、おそらく米づくりの方々がそれぞれはだ身に感じてよく御存じでございます。ことに飯米農家の方々にまで生産調整をお願いしていることを考えますと、私ども農政担当者にとっては、たいへん何と申しますか、複雑な気持ちがあるわけでありますが、これがもし行なわれなかったとしたら、一体農業はどうなっていくであろうかということを逆に考えますというと、農業者御自身の立場にとってもこれは大事件でございますので、私はさすがに日本の方々というものは——去年は一三八%お願いできました。ことしはいまの状況で申せば、私は政府が希望いたしておるものは必ず実行できると思うんでありますが、大事なことは、それについてできるだけ早く安定いたしますように、他作物への転換について全力をあげなければなりません。私ども、これを強権でやるわけではありませんが、地方地方といま寄り寄りそういうお話を農業団体、自治団体等とお話をして、それぞれの地域に一番向くようなものを、地域指標等を参考にいたしまして、地方の出先を通じましてとくと御相談をいたして、その転作が早く定着するように指導いたしてまいりたいと、一体になってやってまいるつもりであります。
  74. 杉原一雄

    杉原一雄君 大学の教授の皆さんと研究会を一つ持っておるわけですが、そこの討論会で、ある大学の教授が提起した、昨年の生産調整の結果がどういうふうに処理されたかというのがあるわけで、まあ、農林省ではおつかみになっていないかもしれませんから、惜しいけれどもちょっと申し上げてみたいと思います。「個別農家が自分の好むところを休耕または転作する」、こういうのもあります。これは皆さんの一番好ましい姿。二番目には、「地域で立候補制をとり、申出のあった農家の減反面積で、割当を消化する。ばあいによっては、休耕しなかった農家は、反当または一俵当り、若干の負担金を拠出して、減反農家の補償金に上のせする」、こういう、非常に農民の創意のあるのが出てきています。三番目には、「集団休耕。転作にもっとも、好都合な個所を指定しあるまとまりを団地化して休耕する。農家ごとのアンバランスは、2の立候補制と同じように、休耕したい農家が、上積み金を負担する」。それから四番目は、「基盤整備などの、通年施工をかみ合わせる」。これはあなた方の推奨された方法。五番目は、「反対して休耕しない」。京都、新潟等あるわけです。こういうとらえ方をしているわけです。これについて意見を伺う必要はありません。ただ私は、生産調整額が内示されてきたわけで、それが各三十七都道府県が下部まで浸透したといわれているわけですがね、去年からことしにかけて、非常に私のようなものでも心配しておったのは、去年の二月、佐賀県の池田知事にも会って、佐賀の農業のこの生産制限に対する受け入れ体制を聞いたときに、佐賀のいまの状況の中で今日までいたした集団化、協業化の線でかなりこなし得ると自信を持って報告されたわけですが、結果的にはそうなっていない。つまり、新しい農業の形態を県ぐるみで努力したことが、今度の生産制限の中でがらりと条件が変わって非常に苦労しているという事実が出てまいりました。あるいはまた現地を見ておりません。たとえば岐阜の大垣南農協のように法人を組織して、土地配当三万何千円を渡しながら、オペレーターを置いてどうにかやってきた新しい農業の方向が、今度の奨励金の金額と照らし合わせてぺしゃんこになってしまった。こういう事実も私はあると思います。いま一つ、非常に頭を痛めているのは、先般テレビ等で紹介があっていささかほっとしましたが、八郎潟の始末はどうなるんですか。いまどうなっているんですか。計画とどういうふうにそごしているか。これだけはひとつ明確な答弁をしてほしいと思います。
  75. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 八郎潟の新農村建設事業は、御存じのように、四十五年までに、農地が全体計画の約五五%に当たる六千五百ヘクタールが水田になりました。それから入植戸数も四百六十戸に達しておりますが、最近の米のきびしい需給事情にかんがみまして、四十六年度におきましても新規入植は中止することといたしております。しかし、現状では新農村建設の所期の目的は達成しがたいと思っておりますので、残っております土地は、これは畑として利用する基本方針のもとに、作目、機械化体系、営農方針等を決定いたしまして、そういう方面の事業を推進してその達成を期するようにつとめてまいりたいと思っております。
  76. 杉原一雄

    杉原一雄君 伝えられるところの、空港にするとか工業団地にするということはないですね。はっきり聞きたいと思います。
  77. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) たいへん私は残念だと思いましたのは、これは大農組織の試験的な事業としては非常に興味のある事業でありましたが、米の需給がこうなりましたので、申し上げましたように、中止せざるを得ませんでした。そこで秋田県知事その他の方々とも御相談をいたしまして、先ほど申し上げましたように、他作目に転換をしてこれを生かしていくようにいたしたい、このような考えで研究しておるわけであります。
  78. 杉原一雄

    杉原一雄君 最後に総理にお願いします。三月四日の新聞に伝えるところによりますと、三日の午後四時に北海道で減反を苦にして農事組合長が自殺しておるわけです。それを念頭に置いて次の質問に答えてください。  昭和四十四年三月二十四日の本会議において、農業白書をめぐって総理大臣にこのような質問をしたとき、総理大臣の答えがあるわけです。「「農は国のもとである」という私の政治的信念には、何ら変わりはありません。従来から、私は、健全な農業の発展なくして健全な社会経済の発展はあり得ない、」「いままでもその考えでまいりましたが、今後もこの考え方に基づいて農政を進めてまいる決意であります。」「食管法は、政府による全量買い上げを義務づけたものではありませんので、今日のように米が過剰になった状態では、自主流通米を認めても、別に法に違反するもの、かようには私どもは考えておりません」。他は省きます。そういう答弁をしておいでになりますが、時間も経過しておりますので、これには変わりはないでしょうかどうか。もし変わりないとすれば、いま、生産制限その他を進めようとする農林省の行政について大臣はどのように——これはやむを得ないんだと、これが正しい道だと、日本の農村の発展の方向だというふうに積極的な意図を持って指導しておいでになるのか、所信表明をお聞きしたいと思います。
  79. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 農業に対する基本的な考え方は今日も私変わっておりません。また、先ほど来質疑のありました農業基本法、同時にまた、最近展開しようとする総合農政との関係におきましても、農業基本法は農業基本法としての目的を十分達しておると、かように私は感じております。しかし、いま最近の問題になります点は、いわゆる農業基本法農政、ことに米を中心にした農政、非常に片寄った農政だと言わざるを得ない、かように私は思うのでございます。いまの食糧にいたしましても、自給度は八〇%を切っておるというような状態でございます。しかしながら、米に関する限りたいへんな余剰を持っておる。古古米まで出る。おそらく三年分あるいは四年分は出てくるというような状態に、このままほうっておいたら、なっておるんではないかと思います。これは最近、先ほども議論のありましたような農産物の選択的拡大、それと取り組まなければならぬ、こういうことを農林大臣が答えましたが、この選択的拡大という観点から見ますと、非常に片寄った農業生産が行なわれておる、かように申してもこれは誤りではないんじなゃいか。そのとおりなんである。私ども、いまの選択的拡大というようなことは、やはり均衡のとれた拡大が必要なんだと、かように思っております。しかして、われわれの食糧から見て農産物、その観点から見ると、どうも畜産あるいは果実あるいは野菜等々、ずいぶん不足がちのものがございます。したがいまして、そういう点がこの上とも整備されていく、いわゆる総合農政が展開されていく。そうしてほんとうにやっぱり農は国のもとだという本来の姿に帰ってもらいたいと、かように私は思います。そういう意味から、農業基本法の果たした役割り、これは高く評価してしかるべきだと思うし、これからいま展開しようとする総合農政、これはただいま私が申し上げますようなその状態のもとにおいて、幾ら工業が発達いたしましてもやはり何といってもわれわれの食糧でございますから、この食糧の自給度を高める、そういう意味において、その生産に従事される方々もまた工業従事者と同じようにその所得が高まるように、そういう道を考えていかなければならない、かように私思っておりますので、今回均衡のとれた総合農政を展開しようと、こういうのでございますから、どうか御了承いただいて、御協力をお願いいたします。
  80. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって杉原君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  81. 古池信三

    委員長(古池信三君) 次に、中尾辰義君の質疑を行ないます。中尾辰義君。
  82. 中尾辰義

    中尾辰義君 質問に入る前に、総理に一点だけお伺いをいたしますが、本日の新聞報道でも明らかなように、藤山愛一郎氏は、北京からの帰国の途中に香港に立ち寄りまして、日中正常化に臨むには日華条約の廃棄が必要であるという原則を認むべきであるとの考え方を明らかにしておるようでございますが、佐藤総理はこの発言につきまして率直にどのようにお考えになりますか、お伺いをいたしたいと思います。
  83. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまは新聞記事の段階でございます。はたして藤山君がさような見解を持っておられるかどうか、これは帰られることですから、いましばらく帰られた後のまた話す機会がありましたら、十分その意向を確かめたいと思います。とにかく中共、北京から帰ってくる人でございますから、どういうような感じを持って帰られるか、ここはよく伺って、しかる上で私の感じを申し上げたほうが間違いがなくてよろしいんじゃないかと思います。
  84. 中尾辰義

    中尾辰義君 なかなか慎重な答弁でございますが、それではもう一点だけ。まあ台湾は結局中国の内政問題であると、こういう周恩来首相の言明から見まして、日中間の国交正常化をはかるには、やはり前提として日華条約の無効ということを考えなければ、幾らこちらのほうが国交正常化を唱えましてもなかなか前進しないのじゃないかと、こういうふうに思うわけでありますが、お伺いをいたします。
  85. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この点については、私、しばしば申し上げております。私ども日華条約を締結しておる日本と国民政府との間、その国交は厚みを増しておるのが現状でございまして、私はこれを守ることが国際信義を重んずるその国の立場と、かように考えておりますので、この点はしばしばいままでも何度となく繰り返して申し上げております。別に今日のこの段階におきましても変わりはございません。
  86. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、質問の第一項は、日米繊維問題に関しましてお伺いをいたします。この三年越しの日米繊維交渉が、ここにまいりまして急転直下、業界の一方的な自主規制という形で解決をすることになったようでございますが、その背景なり、業界が自主規制を決意するに至った動機といいますか、判断はどういうものか。その点をまず通産大臣にお伺いをいたします。
  87. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) まだ事柄が落着をいたしておりませんので、いまの段階で考えられることを申し上げることになりますが、御承知のようにこの問題は佐藤総理並びにニクソン大統領の間におきまして話し合われたことでございまして、ことに昨年の十一月には、できるだけ早く交渉によって解決の道をさがそうではないかという合意がなされたわけであります。他方で、昨年いっぱいアメリカ側で、繊維に端を発しまして広く保護貿易主義の傾向が高まってまいったことは御承知のとおりでありまして、そのための立法がアメリカの議会を、少なくとも下院は通過をし、上院においても最終的までその帰趨についてお互いに心配をいたしたようなわけであります。こういう経緯の中でわが国の業界の首脳は、ともかくわが国のこれからの、ことに対米輸出について、やはりある程度の秩序のあるマーケティング、俗にオーダリー・マーケティングと言わせていただきますが、そういうことは考えなければならないのではないだろうか、それは繊維産業自身のためでもあるし、またアメリカで広がりつつある保護主義というものについてその動きを緩和する意味からも必要ではないかということは、昨年の夏ごろから実は業界では考えておりましたようなわけであります。しかるところ、佐藤総理、ニクソン大統領の合意によりまして行なわれました政府間交渉がかなり回を重ねまして、そしてアメリカ側の意のあるところ、またわれわれとして譲歩し得る限界というようなことも会談を通じて明らかになってまいりました。そういたしますと、業界としても、やはりそういう環境の中でいつまでも従来と同じことをやっておってはやはり業界自身のためにもよくない、もう少し広く自由貿易、あるいは日米間の国交ということはもとよりでございますけれども、そういう考えから、もし今年、アメリカにおいて昨年起こりましたような保護主義的な立法を食いとめることができるのであれば、自分たちが従来考えておったオーダリー・マーケティングという思想に基づいて、自分たちの譲り得る限度というものをひとつ自分たちで考えてみようではないか、こういう動きにただいまなっておるように見ております。しかし終局的にはそれがどのような結果になりますか、今日まだ確たることを申し上げられない状況であります。
  88. 中尾辰義

    中尾辰義君 業界のほうは明後日の八日に自主規制の宣言をするように放送がございましたが、この業界の宣言は多分ミルズ法案の趣旨に沿ったものであると思うのでありますが、これは、従来提案をされてきたものに比べまして業界の自主規制案はどの点が有利なのか、その辺のところをひとつ説明を願いたいと思います。
  89. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 先ほど申しましたように、ただいま事がまだ結着していない段階において、しかも業界の立場からどう見えるかというお尋ねでございますから、それについて考えますと、ただいま業界では、従来のように化合繊についてこまかく品物を分けて規制をするという方式でなく、化合繊だけでなく、もう少し広い範囲において、しかもこまかな仕切りを設けずに、ある程度オーダリーな伸び率を確保する、そういう自主規制案を考慮しておるように聞いております。そういたしますと、御承知のように繊維は嗜好製品でございますので、たえず流行というものは変わってまいります。しかも、わが国のように労働力がとうとくなりました国では付加価値の高いものへと高いものへと動いてまいりませんと、開発途上国との競争がむずかしい、そういう状況におきましては品物を一つ一つとらまえられまして、その伸びを何%とされますことは非常につらいわけでありまして、全体のヤーデジということで規制していきますならば、その間に付加価値の高いものへ生産を変えていくという弾力性があるわけでございます。これは経済の高度化ということから見れば、実は私はきわめてもっともな要求だと思うのでございますが、そういう希望にこのたび業界が考えておりますところの方式はかなうものである、そういう希望をより弾力的に満たすものである、これが業界側から見ました、ただいま議論されております案のメリットではないかというふうに見ております。
  90. 中尾辰義

    中尾辰義君 それではいま提案をされておるミルズ法案、これは新聞報道でも見ておりますけれども、もう少し詳しく——私はわからぬのですが、その内容について説明願いたい。それとどういう点が従来から出された制限法案に比べましてこのミルズ法案というものは、わが国にとって有利であるか、大体大まかにはいま聞きましたがね。
  91. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいまミルズ法案と言われましたのは、おそらく伝えられておるところのミルズ委員長の提案といいますか、示唆といいますか、そういうことを言っておられるというふうに理解してお答えいたします。ミルズ委員長がどのような案を持っておるかということは、実は私ども公式には一度も聞いたことがございませんわけでございます。したがって、政府の公に知り得た知識として申し上げることはできないわけでございますけれども、業界に伝えられておるといわれますところの、そううわさされておりますところのミルズ委員長の考え方は、ちょうど先ほど申し上げたことが重点になるわけでございますけれども、綿なり化合繊なりあるいは毛なりを全部一緒にいたしまして、そうしてその間で、基準年次に対してことしの伸びは何者というような規制のしかたをするというのであれば、全部の種類のものがみんな毎年伸びていくわけではなく、多少減りつつあるものもございますから、その間で融通ができるではないか、しかも同じ化合繊の中でも品物にいろいろ流行のはやりすたりがございますから、そういう融通も可能ではないか、こういう点が一つ一つの品物をとらえる規制よりははるかに合理的でもあるし、輸出側から見れば弾力性がある、こういうものとして伝えられておると聞いておるわけでございます。
  92. 中尾辰義

    中尾辰義君 大臣答弁より新聞のほうが詳しいですよ。だから、私大臣に、概要はわかっているのだけれども、ちょっと聞いてみたのですがね、それはけっこうです。  今度は、自主規制の見通しは一体どういうふうに皆さん方政府は判断をしておるのか。アメリカのほうではニクソン大統領も日本側の一方的自主規制を支持するいわゆるミルズ委員長の意向を了承した、このように伝えられておるわけです。また米議会の最有力繊維議員であるホリングス上院議員もこれをやむを得ないものとしておるように思われるわけですが、しかしそう簡単に事が運ぶようにも思われませんし、そこでアメリカ側の、政府あるいは議会、業界の動向、その辺のところを政府はどのように判断をしておるのか、はたして日本が一方的自主規制宣言でまとまるものなのか、その辺の見通しですね。これは総理にひとつお伺いしたいのですが。——じゃ通産大臣でけっこうです。
  93. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) 確かに報道のほうがいろいろ詳しゅうございますし、またそれだけに先行性も多少ございますので、ただいまの段階で正確に申しますと、来週早々に繊維業界の代表者たちがこの議論をいたすわけでございます。で、御承知のように、なかなかいろいろな業態が集まっておりますので、利害関係が一致しにくいところでございます。ですから、かなり激しい議論になるであろうということは、これはもう当然予想されます。  さて、そこで一つの結論が出ましたとかりにいたしましたときに、それが先ほどから仰せになっておられますミルズ氏の考えておるところとまずまず一致するものであるかどうかという確認が、実はまだできておらないわけでございます。たいていこんなところだろうというので業界のほうで考えておられると思うのでありますけれども、実はそこのところはだれもまだはっきり確認をいたしておらないわけでありますから、いわんや来週早々の議論の末でまたそれがどうなりますかということがございます。この点をやはりよほどしっかり確かめておきませんとならないと思います。  それにいたしましても、それは下院の歳入委員長は、自分としてはまあまあ満足すべきものだと、かりに思ったということになりましても、アメリカの政府がそれをどう考えるかということは、ただいまのところ全く未知数でございまして、私どもは業界がどういう案を出すかということをまだ存じませんので、これをもってアメリカの政府の考え方を、いわばリアクションを聞いてみるということが現在の段階ではできないわけでございます、具体的なものがございませんから。  いずれにいたしましても、アメリカの業界一般がこれに対して強い不満を持つであろうということは、これはおそらく間違いございませんで、それでありますから、昨年来立法をずっと主張してきたわけでございます。私どもがしたがってただいま最も重点を置いて考えておりますことは、そうやって案ができましたときに、従来、日米間でずっと政府間の交渉が行なわれておるわけでございますから、そういう政府間における信頼感、友好関係というものに悪影響を及ぼすことがあってはならない、そういうことではわれわれが考えておる一つの大きな目的を達せられないことになるのでございますから、その辺は十分に外交的に配慮をしていかなければならない点だというふうにただいま考えております。
  94. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ、いま最後のほうにも少しございましたが、このアメリカ側の不当な要求に対しましても、日米友好関係の堅持という大義名分のもとに政府間交渉が今日まで続けられてきたわけですが、結果はどうも政府間交渉がまとまらないということで今回の業界の自主規制宣言のように民間ベースによって決着をつける、こういうふうになりつつあるわけでありますが、そうなる場合に、外交面から外交ベースで取り上げた問題を、これは外交で解決できずに民間ベースで決着をつけるということが日米外交上から見て好ましくないような気もするし、その辺はどのようにお考えですか。外務大臣がいらっしゃったらお答え願いたい。
  95. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この繊維問題はただいまも通産大臣からるる御説明があったように、長い間にわたって非常に複雑な問題でございますが、その大きな焦点は、結局、方法論としては日本側の業界の自主規制ということになるわけでございます。したがいまして、これは政府間交渉もずっといままで努力をしてまいりましたけれども、国会の御決議のたびたびの御趣旨もございますし、そうして、それがまた国益を守るゆえんであると思いますが、その範囲内で関係の業者の方々が納得をしてそして自主的に規制をしてくれなければこのことは成り立たない、そういう性格の問題でございます。これは、さらにお話をすれば長くなりますし、また、よく御承知の問題でございますからその必要もないと思いますけれども、要するに、そういう性格の問題でございますから、私は、日本の民間の業者の方々が一致して自主規制ということをやられる、そしてそれがまとまるきっかけになるということでございますならば、たいへんこれもまたけっこうなことではないかと、こういうふうに考えるわけでございます。こういう性質の問題でございますから、やれ、これが政府間ではできなかったではないかとか、民間だからできたであろうとか、あるいは、こういうまとまり方がかりにうまくまとまった場合に日米外交上のしこりを残さないであろうかと、こういう御懸念をお持ちいただくのはごもっともだと思いますけれども、私はさような心配はないと思います。しかし、念には念を入れまして、民間の自主的な規制というものがアメリカ側の全体の要請とうまく合致していく。そもそも問題は、双方とも百点が取れたというような問題ではなくて、互譲妥協をしていくのでなければならない筋合いの問題でもあるわけでございますから、この辺のところで、先方もまあまあこの辺でというような状況になれば、これはたいへんありがたいことであると同時に、しかし、外交当局といたしましても、このまとまり方が、いまおあげになりましたような、かりそめにもあとにしこりを残すことのないように今後ともわれわれの職責として大いに努力をいたしたいと考えておりますが、何ぶんにも、いま通産大臣からお話をいたしましたように、まだそこまでのところへ来ておりませんので、どうも申し上げますことが抽象的になりますことをお許しいただきたいと存じます。
  96. 中尾辰義

    中尾辰義君 自主規制でまとまればけっこうだというお話ですが、業界のほうとしては、これは自主規制がまとまっても、台湾や韓国、香港などが日本に同調してくれないというと、日本だけ自主規制したんじゃ、これは日本が非常に不利になる、そういうことも強く要望しているわけですがね。ところが、きのうあたりの報道を見ますというと、国府のほうでは、繊維品対米輸出特別小委員会、ここでは、「日本は先進工業国であり、繊維が工業全体に占める比重は大きくないが、台湾は開発途上国であり、繊維のウエートも大きい。したがって輸入制限強化で経済発展に重大な影響を受けるので、日本には同調できない」と、こういうふうに言っておるようですがね。これに対して政府としてどういうふうに対処していくのか、その辺のところをお願いしたいと思います。
  97. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) それらの国と一番競合いたしますのは、繊維品の中でもいわゆる縫製加工といわれておりますところの、労働力が、一番賃金が響く種類の品物でございますので、それらをやっております人たちはその問題に非常に強い関心を当然ながら持っております。したがって、来週早々に業界の総会が開かれますと、ただいまの点をめぐっては相当激しい議論になるのではないかというふうに私は予測をいたしております。いずれにいたしましても、業界の首脳としては、それらの国の参加ということを、何かのやはりわが国の自主規制との関連においては考えておかなければならない。ただその関連のつけ方でございますが、それをどういう条件にするか、停止条件にする方法もございましょうし、解除条件にする方法もございましょうし、いろいろなやり方があるかと思いますが、そこいらが業界が最終的な意思をきめますときの一番の問題になる問題点の一つであろう。ただいまのところ、帰趨をはっきり私から申し上げることができません。したがいまして、政府がその点をどうするかということは、業界の案がどのようにまとまるかということを見ておりませんと申し上げることができないような段階でございます。
  98. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ、どうも業界の案がまとまらぬのではっきりした答弁はできないと、こういうことで一つはっきりしないのですがね。これは総理にお伺いしますけれども、業界が一方的な自主規制宣言という形をとるにいたしましても、結局は、被害のないところに規制がないというこのガットの精神を曲げて規制せざるを得なかった、こういうふうに思われるわけです。そこで政府は、長年の懸案事項がようやく解決の方向にあることで、まあ肩の荷がおりるような気もしていらっしゃるかもしれませんけれども、陰に陽にわたって政府が行なってきた業界への助言、悪く言えば圧力ですね、これはやむを得ず規制せざるを得なかったものと思われますし、その間における業界の苦しみ、あるいはその自主規制実施の陰には多くの中小繊維業者が被害を受けている、あるいは脱落していくであろうことを考えるならば、私は、この日米間の形式上の収拾がついても一問題はまだまだ残っておる、少しも前進をしないのじゃないか、難問が山積しておるように思うのであります。そこで、業界のこの一方的な自主規制宣言という形で繊維問題が収拾の方向にあることについて、総理はどのような御見解をお持ちなのか、その辺のところを、やむを得ないのかどうか、御答弁願いたいと思います。
  99. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたしますが、先ほど来通産大臣並びに外務大臣から、まだ業界の自主規制という案も具体的にはわかっておりません、こういうお話がございました。何だか、政府政府間交渉をしたこと、これ自身が業界の自主規制でないような話にもとれるのですけれども、私どもが交渉を持ちました際も、衆参両院において決議その他を受けておりますし、政府自身が立法措置をするわけでもございませんし、したがって、よし両政府間で話がまとまっても、業界が納得してくれない限りこれは実行できないのだと、こういうような総体的な、総ワク的な一つの限度があったわけであります。その限度を一体どういうようにして日本の業界を説得し、また、アメリカ側はアメリカの業界を説得するかと、こういうような問題があったと思います。しかし、いま、全然いままでの交渉の経路を変えて、今度は別の案でいま始まろうとしておると、これが先ほどから言われておる、ミルズさんの意見を中心にして自主的な規制をしたらどうかと、こういうようなことになっておるんだと思います。したがって、ただいままだその段階だと、かように思います。ところで、私どもは、産業のあり方については絶えず政府としても責任がございますから、これはたいへん好況な状態に、波に乗っておっても、時に救済を要する事業があると、これは自主的だろうが、自分たちの努力に、相応したにかかわらず、報いられない場合もございますから、そういう際には、やはり適当な施策をして、やはりその業界を守ってやると、これがいままでのやり方であります。今回の問題が自主的規制、そういうような方向で話ができたとしても、それがどんなに業界に影響を与えておるか。これはもう繊維業界と一口に申しますけれども、一つの紡績会社から末端まで考えるといろいろな業態をしておると思います。中小企業あり、また系列下に入っておるものもあり、またアウトサイダーもありいろいろ影響はあちらこちらに及んでくるだろう、かように思います。そういうものについて十分の実情を把握して、そうして、そのつど適切なる対策を立てる、これがまあ政府の当然の役割りでございます。したがって、ただいまの自主規制というものもさることながら、業界の実態を絶えず把握して、そうして、適切なる対策を講ずる、こういうことが望ましいことであり、政府としては当然やるべきことだ、かように私は考えております。
  100. 中尾辰義

    中尾辰義君 それはまあ政府は行政に対しましては責任がある、これは当然でございますが、この繊維問題は、どうも前々から総理がニクソン大統領の選挙に、公約に端を発して、沖縄返還がきまった一昨年の佐藤・ニクソン会談で繊維密約がかわされたと、そういうようなことが公然の秘密として新聞、雑誌等には報道されておる。本会議における総理の言明を私は聞いちゃおりますが、事実そういうことが流れておる。また、業者はそういうように考えておる人もかなりあるんですね。ですからまた、今度の自主規制に関しましても宮崎化繊協会長はこういうことをおっしゃっていますよ。「自主規制に応じなければ政府が被害救済などのめんどうを見ない印象を受けた。」と。そういうことでこの自主規制というものもまあきれいなことばで言えば、助言ということになるのでしょうが、このミルズ案の線に沿って自主規制という方向でやってもらわなければめんどう見ないというふうな圧力をかけた、そういうふうにもとれぬこともないんですね。そういうところから、やはりただ単純なる行政府としての責任というよりか、そういう問題が過去にいろんな、からんでおりますからね。したがって、まあその政府責任というものを私は特に申し上げるわけです。  まあ、もうちょっとはっきり言いますと、沖繩の問題と繊維の問題は全然別なんだ。総理が、頭に少しおさわりになるかもしれませんけれども、その点はひとつよくお考えになって、その救済に対しましてはどういうふうに総理として誤解を受けないように手をお打ちになるのか、その辺のところが、私は総理にお伺いしたい。
  101. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これはもう御承知のように、沖繩問題と繊維問題はからんでおる問題ではございません。これは全然別個の問題でございます。私は、その日米間の関係は最近の日本経済をもってすれば必ず繊維だけではない。他の部門においても同じような問題が必ず起こると、かように思います。ただいまの日本経済の力はそこまできたんです。かつてアメリカから太平洋渡って一方的に日本に輸出をされていた。日本は、輸入を——製品の輸入もそうですよ、原料の輸入もアメリカからずいぶん仰いでおった、そういう時期がございますけれども、しかし経済が成長して、この段階になる、自由陣営で第二の経済国だ、かような状態になってきますと、一と二がときに競争もし、また摩擦を生ずると、こういうことはあり得ると思います。私はひとり繊維の問題だけではないと思います。もうすでに自動車だろうが最近そういうような問題がちょいちょい出ておるではございませんか。鉄鋼業界ももうすでに自主規制を始めて数年たっております。これなどもいいあらわれであります。私はやっぱりその業界が出ていくと、こういうような状態になることは、これは当然予見されることではないだろうかと思っております。きょうも私はフォード二世に午前中一時間ばかり、参内する前に会いましたが、自動車をいままではアメリカから迎え、そうしてアメリカの関税を何とかしてくれろ、そういう時代でございましたが、いまや日本の自動車がどんどんアメリカへ行っておるあるいは東南アジア諸国においては、アメリカや欧州製の自動車と競争しておるような状況になっております。こういうようなことを考えれば、経済成長をすればいまのような競争、摩擦、ときに利害衝突する、こういうことはあり得るんだ、かように思っております。しかし、私どもが戦後ここまで来た道を顧みますと、やはりアメリカにもずいぶん依存し、アメリカの指導、援助のもとに発展したと、かように私は思っておりますが、その成長した経済がアメリカ、まあ恩義といってもなに、義理があるという、そういう表現もどうかと思いますが、とにかくフォード二世にはきょう言ったのですが、いまあなたのほうと私どもの自動車が競争するようになっておる、しかしりっぱな、完全な一人前の問題として、競争相手を倒すというようなことでなしに、提携して仲よく育っていくように、弟分を育てる、そのくらいの気持ちでひとつ見てくれないか、こういうような話をしたのでございますが、私はいまの繊維問題で、ともすると沖繩問題とからませてこれを理解すると、どうも日本の中にそういう方もあるようです。その点は私まことに遺憾に思う。そうじゃない、日本の経済が今日のような段階にまで成長してくると、やっぱりいろんな各面で摩擦、衝突、これが出てくる。しかしそれを平和のうちに処理すると、こういうことが望ましいのではないか、かように私は思いますので、仲よく競争すると、こういう立場で業界の姿もあってほしいと、かように私は思うのでございます。
  102. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、総理には、ひとつ結論がそういうわけで被害を受けられました中小企業に対して、総理としてはどのようにあたたかい手を差し伸べておやりになるのか。そこがいまの答弁で抜けておったのですが、そこをひとつ。——それは具体的なことはあとで聞きますよ、大蔵大臣には。総理から、そこが肝心なんだ。
  103. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 肝心なことはいま答えないで、先ほど答えたのです。どんな場合でも、政府責任を持って国内の業界のめんどうはみます。これが政府の積極的な姿勢でございますし、これは当然でございます。そういうことを先ほど申したので、重ねて申し上げなかったから落としたように言われますけれども、落としたわけじゃございません。
  104. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃただいまの総理の発言によりまして、積極的にまあ救済策を講ずると、こういうことでございますが、その裏づけとして、大蔵大臣はどういうふうにお考えになっているのか。
  105. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほど来通産大臣、外務大臣からお話がありますように、まだこの問題は見通しがはっきりしてないんです。したがって、この結果がどうなるかわかりませんが、かりに民間自主規制が、これが実現されると、そういうような場合に、その措置がどういう影響を与えるか、こういうようなことを通産省としてはつぶさに検討をされると思います。その結果どういう対策が必要であるかというような意見も述べられると思うのです。ところがまだ、その段階にきていない。さようなことで、せっかくのお尋ねでございますが、まだ具体的な考え方はない。ただ総理が、いま申し上げましたが、政府は産業界に対して責任を持つ、こういうことでありますが、それはそのとおりなんです。つまり今後日米の関係もありましょう、あるいはその他の国の関係もありましょう、いろいろの事態がある、あるいは景気のいろいろ消長もある。そういうような際に、繊維産業が、これに対処していかなければならぬ。そのための固めが非常に大事だというふうに考えておりまして、昭和四十六年度の予算でも、予算上あるいは税制上あるいは金融上、まあ体質を強化していこうというための措置をずいぶん努力をいたしておるわけでありまして、特に繊維工業につきましては、体質の強化の重点はどこにあるかというと、設備が老朽化しておる、それから設備が過剰である、つまりスクラップ・アンド・ビルドを必要とすると、こういうことなんであります。それを助長する、これを中心にいたしまして、まあいろんな施策をとっておるわけでございますが、とにかく問題の日米繊維問題、これがいかなる決着になるか、その決着がいかなる影響を及ぼすかと、そういうような点を通産省でつぶさに検討したる上、意見の開陳があろうと、その際とくと相談をすると、かように考えております。
  106. 中尾辰義

    中尾辰義君 大体荒々なことはいまお伺いしましたが、それでまあ時間の関係もありますので、簡単にいたしますが、二月の二十六日の政府系の中小三金融機関の貸し出しのワクが百九十五億に追加拡大になりましたね。これはもうただ貸し出しワクを広げたということだけで、特に繊維関係とか、あるいはまた貸し出し条件を有利にするとか、そういうことではないわけですか。それをまあ一つ答えてくださいよ。
  107. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは条件の変更なんかは考えていないんです。ただワクを拡大すると、こういうことでありますが、しかし、一番重点を置いておりますのは繊維なんです。この繊維と言いましても、日米問題がどうなるかという具体的な措置として考えたわけじゃないんでありまして、繊維がたいへんないま不況状態にある、これには特別の配慮をしなければならぬと、そういうふうに考えた、そういう次第でありまして、繊維だけじゃありませんけれども、特に重点は繊維に置いておる、かように考えております。
  108. 中尾辰義

    中尾辰義君 それからこれはいまだけの答弁ではまだこれからどうなるかわからないので、具体的な答弁できないとおっしゃったんだけれども、いまの自主規制がかりにまとまるとして、救済策としていま検討していらっしゃるでしょうが、繊維品買い上げ機関の新設だとか、あるいは老朽機械の買い上げ、補償金の給付、こういった点に対して通産大臣、並びに予算の面から大蔵大臣はどのようにお考えになるか。その辺までやらないと、ただいま総理がおっしゃたような積極的に救済をするというその線に合わないように思うんですが、その辺のところをもう少し前向きの答弁をしてもらわぬと、これからの問題でどうもまだ検討中だと、これじゃ審議にならぬですよ。その辺のところをひとつ考えて答弁してください。
  109. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) たいへん御無理なお話かと思うんですが、まだ話がきまらないんです。そこで対策もまだきめられないと、こういう時点なんです。この話がどういう具体的な決着になりますか、そういう決着を見まして、その影響がどうなるか、さようなことを検討しまして、通産大臣のほうから私のほうにいろいろ対策についての御相談があろうかと思いますので、そういう際には前向きでひとつお答えしたい、かように考えております。
  110. 中尾辰義

    中尾辰義君 前向きでというところでずいぶん力が入った御答弁でございましたので、私はまあこれで一応了解をいたしますが、これはいままでも政府部内におきまして検討をされておった事項だと私は思うんですね。なお、いまのほかにこういう繊維産業調整援助法というような立法措置も検討をしておると、その辺のところはどうなんですか。だから、まだこれも前提になるか知りませんが、ひとつ最後にお伺いをしておきたいんです。
  111. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ただいま大蔵大臣のおっしゃっていらっしゃいますことは、実際ごもっともなことなのでございまして、そういう規制案がかりにきまりましたときに、これからその輸出権をどういうふうにしてだれに与えるかといったようなやり方によりまして、いわゆる中小についての輸出関係の影響はかなり変わってくるわけでございます。私ども端的に申しますと、大企業については、これはそんなに私どもは同情をすると申しますか、政府が特別にすることはない、むしろ中小に施策の重点を置くべきだと思いますので、規制のやり方について、やはり中小に大きな負担のかからないようにということを一番これは大切に考えていかなければならないと思います。でありますので、それがきまりませんと、大蔵大臣のほうへどのようなツケを私が持ってまいるかということがきまってまいりませんので、できるだけそういうことにならないように、まあそれでも何ぼかはどうしてもなるかと思いますけれども、じょうずな規制のしかたをやっていくべきだと、これが私どもの当面の仕事でございまして、それがきまりましてから大蔵大臣といろいろまた御相談もし、お願いもするということになろうかと思います。  それから後段に言われました調整法のことでございますけれども、これは私どもいままで構造改善でいわゆる設備の織機の買い上げ、スクラップ・アンド・ビルド等をやっておりますので、四十六年度にもただいま御審議願っておりますように相当大きな予算を盛っております。ですから、その延長で考えていけばよろしいのではないかと、私としてはただいまそう考えております。
  112. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは次に農政に入りますが、農林大臣にお伺いをいたします。  まず、総合農政と自立経営の関係でございますが、農業の近代化を進めるためには農業で自立し得る生産性の高い家族経営をできるだけ数多く育成すると、これが総合農政においても考え方の大きな柱になっていると、このように理解するわけでありますが、昨年あるいはことし、この生産調整が進みますと、零細な農地をさらにこまかく細分化して利用することは、これは生産性の高い経営を指向する農政とは逆の方向じゃないかと、そういうように思われる。あるいはまた農村地域へ会社、工場等を導入して、そうして米価の据え置きによる農業収入を補正するものとして農家所得の引き上げをはかると、こういう兼業の機会を与えるということはまあ有意義であるとも考えるわけです。しかし一面におきましては、このように農家で自立し得る経営を育成するという方向とは全く逆の方向だと、その辺に多少わかりにくい点もあるんですが、ですから、この農業基本法あるいは総合農政のうたい文句である生産性の高い自立経営農家を育成するという方針が現実の農政の中で非常に無視されているんじゃないかと、そうして総合農政がいかに実体のないものであるかを如実にこれは物語っておるように思われるわけですが、その辺のところをまず最初にお伺いをいたします。
  113. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 総合農政につきましては、先ほど私どもの考え方を杉原さんにもお答え申し上、げたわけでございますが、十年前に制定されました農業基本法に即しまして、その後の一般社会経済、国際情勢の変化に対応いたしまして農政をどういう方向に持っていくべきであるかということで、この基本法の精神に立ちながらの総合農政という考え方を打ち出したことは、ただいまお話がございましたとおりであります。で、基本法にも言っておりますし、また総合農政でも強調いたしております一つは、やっぱり規模の大きな自立経営農家を育成したい、これがたてまえでございますが、中尾さん御存じのように、ただいま現実のところでは、農業全体の就業人口の中で自立し得る専業農家というものは二〇%以下でございます。大体八割近いものが兼業農家になっております。しかも、その兼業農家の中のまた五割以上はいわゆる第二種兼業農家でございますし、それから農業者の所得を見ましても、半分以上は農外所得で構成されております。今日の日本の経済社会の変転に伴って現実はそういうことでありますが、私どものやるべき仕事としていろいろな面があると思うのであります。つまり農業というものを考える立場、それから農民という人たちのことを考える立場、それからもう一つは農村という考え方、これをどうするかということ。御存じのように、外国などではそういう地域的に農村地帯の仕事は農務大臣の所管であるというふうなことをやっている国もありますが、私どもは農村地帯に対する一つの重要な任務を持っております。もう一つは全体の食糧省的な立場であります。いまや流通機構の問題であるとか、消費者の問題も私どもは当然重要な任務として考えていかなければなりません。そこで現状はやはりどうしても農業として自立し得るりっぱな農業をまず眼目として育成していくというたてまえは動かしておりません。ところが、ただいま申し上げましたように、かなりな兼業農家がございます。そこで、兼業農家というものをいろいろ調べてみますというと、やはり離農して他産業に転換したいという希望をお持ちになっておる方もありますし、それから規模の大きな自立経営をやるために、離農しやすくするということもやはり時代に即応した一つの考え方でありますので、昨年農業者年金制度というものをつくりました。そういうのはやっぱりそういうことに対応するつもりでありますが、私どもといたしましては、やはり過疎過密の問題等、国全体として考えなければならないこともございまするし、また農村の人たちの、最近これは私ども農林省で調査をいたしまして、今月の一日に新聞にも発表いたした次第でありますが、たとえば、農業従事者の今後の就業に対するお考え方の傾向を調べてみますというと、八六%は農業を希望していらっしゃいます。そして七一%は現在のこの状態を続けていきたいという方でありまして、この調査の中で出てきている他の働き口を求めている人は一四%というような状態であります。それで規模拡大を望んでおる方々、つまり農業というものを持続してまいりたいという思考を発表しておられる方々が六六%であります。それからまた、これも同時に調査いたしたのでありますが、全国の市町村で農業は将来とも基幹産業として拡大をはかってまいりたいという市町村の回答が六五%ございますが、同時にまた、いま御指摘のありました地方に産業を分散していくということについての市町村長たちの考え方の中の六〇%というものは、農業の振興と両立し得る限りでそういう方向を進めたいと、こういう答えを出しておられます。これはかなり時間をかけて調査いたしました一つ二つの例でありますが、私どもはやはり基本法農政がいっております、また総合農政の推進についてという態度を政府が発表いたしましたそのことは、やはり規模拡大でしっかりした営農を営ませるようにいたしたい、それが中核になってもらうようにしたい。しかし、先ほど申し上げましたように、現実の姿は、また将来かなりの長い時間兼業農家というものはあるんではないかと私どもは思っております。したがって、そういう人たちがやはり太平洋のメガロポリスといったような地域に全部集まってしまうという傾向は、私どもとしては好ましい傾向であるとは存じません。したがって、なるべく地方においでになります方々の労働力というものはやはり地方で、この調査の中にもありますが、自分のうちから働きたいという希望を述べられておる人たちが圧倒的であります。そういう傾向を私どもは考えてみますというと、やはり今度法律案も提出いたし、通産労働両省と協力をいたしております方向というものは、やはり地方におられる、しかも農業を専門におやりにならないで済むような方の労働力を効率的に使って、しかも、現金所得を得ていただくことがいいのではないかと、しかし、私どもはどこまでもやっぱり農業振興地域に関する法律がありますので、あれとうまく調和のとれるような仕組みに、計画立てるのは市町村長及び県知事等でございますので、私どもと常々話し合ってまいりまして、その地域に合うような産業を持っていくということ、これはもちろん大事なことでありますし、公害を伴なわないようなものを持っていくことも大事でありますし、それから農村の美観を損ねないように・緑をできるだけこわさないようにというような前置きはございますけれども、私はいわゆる農工両全の方式を採用していくことが、地域の住民も喜ぶことではないかと思いますし、国全体としてもそういうことが必要な状態ではないかと、こう思っておるわけでございまして、農業の面から見ては矛盾していないのではないか、こう思っております。
  114. 中尾辰義

    中尾辰義君 その議論はありますけれども、時間がありませんのであとに回します。  そこで米の生産調整に協力をして休耕田がたくさんあちこちにできておりますね。御承知のとおり、非常に草がぼうぼうはえている。そういうところに日本住血吸虫病の媒介体である、ミヤイリガイが大量に発生している。特に山梨県が一番多い。山梨県ではミヤイリガイが住んでいるあるいはまた住む可能性のある休耕田は二百三十四・七ヘクタール、これは山梨県の休耕田六百十四・五ヘクタールのうちの約三分の一に相当するわけです。それで県当局もこの住血吸虫病という風土病の絶滅のために、薬剤散布やコンクリート畦畔への改良事業を進めてきたが、手入れの行き届かない休耕田はアシ等がはえて、ミヤイリガイの好繁殖場所となっているために、今回のような発生状況になったものと思われるわけです。それで県ではこの繁茂しているところに薬剤をまいたり、あるいは焼却作戦等もやっているんですが、その辺の実情はどうなっているんですか、それをまずお伺いしたい。
  115. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 事務当局から御説明申し上げます。
  116. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) ただいまミヤイリガイの発生、山梨県の例をお引きになりました。確かに米の生産調整対策を実施しまして、当面休耕いたします場合に、御指摘のような事態があり得るかと思います。特に管理不十分な場合はそういうことになります。その場合に山梨県あるいは岡山、広島、福岡、佐賀等が風土病の一つとして、先ほど御指摘の日本住血吸虫病がございますので、われわれといたしましては、去年もそういう指示をしているわけでございますが、休耕田の管理に十分注意をするということと、それからPCP剤等による除草その他の良好な管理をするということで、徹底を期するようにいたしますと同時に、山梨県におきましては、本年度の生産調整はできるだけ転作をすすめる、休ませないという方法をとっております。なお具体的な対策につきましては、厚生省とも十分御相談を申し上げたいというふうに考えております。
  117. 中尾辰義

    中尾辰義君 山梨県はどうなっているのですか、いまの実情は。それを聞いているのです。
  118. 中野和仁

    政府委員(中野和仁君) ただいま御指摘のように、昨年度の生産調整は山梨県で面積推定をいたしますと、千七百四十九ヘクタール休耕、それから転作をいたしましたが、その中で休耕いたしましたのは、われわれの推定では八百六十ヘクタールということになっております。そのうちでミヤイリガイが発生したと思われますのは、ただいまお話のありました二百三十四ヘクタール程度というふうに聞いております。これに対しましては、PCP剤等による除草あるいは雑草等の焼却をするという対策をとっておるわけでございます。
  119. 中尾辰義

    中尾辰義君 そういうわけで、これからも生産調整であっちこっち休耕田ができるわけですが、それに対して予算措置等はどうなっているのですか、援助措置は。
  120. 太田康二

    政府委員(太田康二君) 休耕田につきましては、一応生産奨励補助金を出すということにいたしておりまして、三カ年間継続して休耕田に奨励補助金を出すことにいたしております。その単価といたしましては、単純な休耕につきましては三万円、それから私たち休耕の場合に、いまお話のありましたように、管理の万全を期するというような意味で、市町村とか農協に寄託して休耕する、あるいは農事組合法人等に賃貸するというような形で休耕が行なわれますことは管理上非常によろしかろうということで、これにつきましては三万五千円の奨励補助金を出す、こういうことにいたしております。
  121. 中尾辰義

    中尾辰義君 あなたね、何答弁しているのですか。私は休耕田に幾ら金を出しているのか、それを聞いているのじゃありませんよ。休耕田に三万円から三万五千円の金を出しても、そこに草がはえてミヤイリガイがどんどんふえてきて、日本住血吸虫病の媒介体となれば、これまた薬まいたり、いろいろな焼却作戦をやらなきゃならない。それにまた金が要っちゃうんです。三万円なんかふっ飛んじゃうじゃないですか。そういうことで、ミヤイリガイの撲滅に対してはどの程度の予算措置を講じておるのか、それを聞いているのです。
  122. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 厚生省のほうから買って出たような形になりましたが、これ実は住血吸虫病というものが、いまお話の山梨県、あるいは岡山県、あるいは佐賀県、福岡県等の一部に限られた病気でありますために、なかなか政府のほうでも従来はお取り上げにならないような状況がございまして、一部の罹災県では非常に苦労をいたしてまいったところであります。そこで議員立法が先年、御承知のとおり、行なわれまして、これが法定寄生虫病の仲間入りをすることになりましたし、その撲滅対策としては中間宿主のミヤイリガイが生息しにくいように水たまりや溝渠をコンクリート化する、そのための助成費を国が三分の一出し、県が三分の一出し、地元が三分の一持つということにいたしまして、十年のいわば国家計画昭和三十年ごろから立ててまいりまして、非常に進捗をいたしてまいりました。しかし、やはり十年間で終わるものではございませんで、その後も計画を一度変更——延長いたし、さらにまた大蔵省が理解を持たれまして、二度目の計画延長が終わりまして後も、溝渠のコンクリート化の予算でありますとか、あるいはまた主として水田等水の多い地域に殺貝薬剤の購入費等の補助を続けております。ところで、今度水田が休耕になりますと、お話のように、草がはえたりいたしまして、ミヤイリガイの生息がふえるという面もなきにしもあらずでございますが、しかし、むしろこれはたんぼをつくりませんために、それだけ田に水を引くことがないというような状況、ことに転作などの場合には結局畑作とか、あるいは果樹というようなことになりますると、いままでよりも一そうミヤイリガイが生息しにくい、そういう状態になりますので、その面ではプラスになる面があるようでございます。  現在、予算といたしましては大体一億七、八千万円の国の助成費が出ておりますが、正直に申しますと、それは休耕があるために、休耕分については特にいまお話のような趣旨から草などがはえてミヤイリガイがふえるかもしれないということを考慮して、上乗せはしていただいてはおりませんが、私どものほう、実は白状いたしますと私、山梨県でございますが、私どものほうの県などで申しますと、休耕させたほうがミヤイリガイの撲滅にはむしろよろしい。したがって、上乗せ分というものは私のほうの県では必ずしも要らない。全体の予算をもっとふやしていただいて、一年でも二年でも早く全体の溝渠をコンクリート化するというようなことに全力を尽していただくように、これは山梨県ばかりのためではなしに、官房長官佐賀県でもいらっしゃるわけでありますから、大蔵省にも大いに圧力を加えておる、こういう次第でございます。
  123. 中尾辰義

    中尾辰義君 私がこれだけ発言をしたわけですから、ですから今後ひとつ力を入れて、そういうような病気が広がらないようにしていただきたいと思います。  それから消費者米価の物統令適用廃止のことでございますが、これも何回となく委員会等で聞いておりますけれども、問題は、要するに物統令適用廃止になりまして米が上がるのか、下がるのか、横ばいなのか、その辺のところが非常に問題になって論議になっておるわけですが、私もこれは二、三聞いてみたいと思うので、上がらないようにするために政府はどのような措置をおやりになるのか。くどいけれども、もう一ぺん、こういうことをやるということをお答え願いたいと思います。
  124. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 消費者米価のことで、物統令の適用を廃止いたしますという、これは予算編成のときにそういう方向が出て、何か突如として出てきたような感じが一般にあったかもしれませんが、これはかなり前から検討いたしておったわけであります。  そこで、ただいまお話のような物統令につきましては、上がるのではないかという御不安をお持ちの方もあるようでありますが、とにかく現在のように大量のストックを持っておるときでありますし、さらにまた、私どもは四十六年度産米が出てくるころまでには農林省といたしましてもそういうことについていろいろな手を打つことで検討を進めておるわけであります。たとえばいまいろいろ流通段階では制限がございます、御承知のとおり。そういうことの制限をはたしていまのように持っておる必要があるかということは、これはみな研究課題でありますが、私どもといたしましては、最近でも急激に人口の伸びてきたような地域の付近にはスーパーマーケット等にも小売りの参入を許しておるといったように、だんだんとそういうふうなことで、流通段階において競争原理を採用し得ることのようにどういうふうにしたらいいかというようなことを研究いたしております。  それからまた、関東と関西ではだいぶ事情も違いますが、御承知のように大阪あたりでは大口精米がずいぶんございます。東京は少ないようでありますが、できるだけそういう大口精米をつくることにいたさせまして、そしてとにかく小売りの段階で競争し得るようにもう少し規制をゆるめてまいる。  そういうようないろいろな措置を講じまして、物統令適用を廃止することによって上がるという心配がないようにいたすつもりでありますが、とにかくいまこれだけ政府は手持ち米を持っておるわけでありますから、その様子を見ながらいろいろな操作をやることはこれはもう当然なことでありますが、四十六年産米が出てまいりますころまでには、そういうことについて万全の措置を講じてまいるつもりであります。
  125. 中尾辰義

    中尾辰義君 ですから、競争原理の導入について私は聞いているわけですよ。スーパーマーケットにこれを許可することはいま答弁がありましたが、その辺が、米穀小売り販売業者、スーパーマーケット、それから何ですか、それがちょっと教えてもらわぬと判断できないですよ、上がるとか下がるとか。それを聞いているんですよ。もう一ぺんお願いしたい。
  126. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 御存じのように、政府が持っております流通段階の米というのは、御承知のように、集荷業者から——つまり、農協等も大きな集荷業者でありますが——集めて、それが卸、小売りに参ります。いままでは、卸から小売り、小売りから消費者に参りますその卸・小売り価格について物統令が適用されておったわけでありますから、今度はそれが廃止されるわけであります。したがって、そういうことについて、いままでは、まあ最初のうちは非常に登録制がきびしくございましたが、あれがだんだんゆるまってきて、同じ町内ならばどこからとってもいいようにはゆるめてきましたが、さらに、そういうことについて、さっき申しましたように、競争原理を取り入れるために、小売り人を多くして競争させるとか、それからまた、政府が米を売り渡すときにその状況を見ながら操作をいたすということも大事な一つのことでございましょう。そういったように、十分に競争させる原理を取り入れておりますので、まずい米で高けりゃその小売り屋さんからは買わないようになるのでありますから、やっぱり皆さんが勉強してやってもらえるように、そういうことをいたしますためには、今日のようにたくさんの米を持っているときでないとうまくはできないじゃないかと、こういうことでありますので、そういうような競争をさせる原理をことしの産米が出てくるころまでにいろいろ検討してその措置を講じますと、こういうことを申し上げているわけであります。
  127. 中尾辰義

    中尾辰義君 競争原理の導入といいましても、要するに、これは米屋さんがもうからんことには、そういうマージンの少ない魅力のないものを許可すると言っても、やり手がなければふえないですからね。ですから、米穀小売り販売業者が一体何軒ぐらいあるのか、それが十一月の物統令廃止までどのくらいふやすのか、そうしないと、はずしたとたんに上がっちゃうですよ。それをお答え願いたい。
  128. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 現在、米の配給販売業者は大体五万六千軒ほどございます。その中にも、現在でも、これは若干でございますが、スーパーあるいは農協等で小売りの登録を持っておるものもございます。新しく物統令廃止に伴って具体的にどういう措置をとるかはまだ検討中の問題でございますが、私どもとして、もちろんこれは御指摘のように希望者があってはじめて府県知事が登録をするという段取りになりますので、いま計数的にこれを明らかにするということは不可能でございますが、現在、私どものところにも、スーパーあるいは生協等は米の販売をいたしたいという希望は、かなり公式・非公式にございます。  以上のような状況でございます。
  129. 中尾辰義

    中尾辰義君 それならば、スーパーマーケットをふやすと。これもそうたくさんふえるものじゃないですからね。大体、都心のまん中にはスーパーマーケットは少ないですよ。大体、周辺の新興団地のあの辺には多いようですが、土地の関係等もありまして、そうまん中辺にはスーパーなんかはふえない。そうすると、やはり米をちゃんと家まで運搬をしてくれるようなところに頼みやすいわけですね。そうすると、やはり小売り業者というものをかなりふやさぬことには、競争原理の導入といいましてもできない。しかも、それがマージンがなければですが、私が聞くところによりますと、配給米十キロで千五百二十円、小売りで七%ぐらいしかもうからぬ。まあ百円ぐらいしかもうからぬ。その程度では、米屋さんは、やれやれと言ったって、そんなもうからぬものをつらい目をしてごめんだということになるでしょう。そうすると、こんな物統令廃止で、やはり、自主流通米、あるいはやみ米等、その辺をうまく調和しながら、どうしても生活維持のために上げざるを得ない。その辺はどうですかね。
  130. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) さっき申し上げましたように、秋ごろまでには諸般の施策を講じてまいるというつもりで予算決定のときに物統令廃止の方針をきめたのでありますが、私どもといたしましては、いま私が申し上げ、食糧庁長官から申し上げたわけでありますが、秋の米の出回りまでにはいろいろ検討をいたして対策を講じてまいることにいたしておりますが、大体、いまのように大きなストックを持っておって、そうしてその米が政府の考え方で出ていくのでありますから、私は、普通に考えましても、そのために米価が上がるとは考えられないのでありますが、現在、たとえば昭和四十六年度予算でも、取り次ぎのマージンを、たしか一俵六十五円でありますか、これを引き上げました。引き上げたということは、逆に今度は、消費者に渡る米はそのままにしておいて、政府のほうの取り分が減ると、こういうことでありますから、六十三億ほどたしか予算が出ておるはずであります。そういうふうに、現在でも、マージンを考えて、そして末端の売り渡し価格については変動のないような措置をやっているわけでありますが、そういうようなことについては、もちろん、そのときの情勢に応じて手を打つことを農林省は考えております。いま申し上げたようないろいろな手段を講じまして御心配のないようにいたす計画であります。
  131. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでは、いまの大臣答弁関連して、物統令適用廃止によりまして、従来米審にはかって決定するという消費者米価の決定、これは今度はなくなるわけですね。消費者米価を米審にはかってこれを決定した、これはなくなるわけですね。それが一つと、それから今後、それならば、消費者米価の改定を意図して行なう政府売り渡し価格の改定については、消費者米価の改定に準じて、事前に米価審議会に諮問をし、その内容を国民の前に明らかにするとともに、各界の権威者の公正な論議の中で決定すべきであると、こういうような考え方もあるわけですが、その辺はいかがですか。それとも、まあそういうものはやめて、政府が幾らにおろそうと御自由と、そういうふうになるのか、その辺をちょっとお伺いしたい。
  132. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 米審では、「米価その他主要食糧の価格の決定に関する基本事項調査審議」すると、こういうぐあいに米価審議会令第一条になっております。これによりまして、米の販売価格に関しましては、従来、物価統制令に基づく小売り販売価格の統制額——いわゆる消費者米価でありますが——の改定に関して、米価審議会の意見を求めておったわけであります。消費者米価につきまして物統令の適用を廃止いたしましても、政府売り渡し価格は食管法の規定によって、これはもちろん食管法にありますように、家計の安定を旨として定めるとともに、末端消費者価格の安定をはかる方針には変わりはございません。したがって、米審で相談していただくことは、「価格の決定に関する基本事項調査審議」すると、こういうことでありますから、どういう基本方針について米審に諮問するかと、こういうことになるわけであります。
  133. 中尾辰義

    中尾辰義君 どうもあとのほうがもやもやっと聞こえにくかったのですがね。政府売り渡し価格の改定は米審にかけて決定してもらうのかどうか、もう少しその辺はっきりと答弁してくださいよ。
  134. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) もうすでによく御存じのとおり、従来やってまいりました米審に対する諮問は、いまも申しましたように、そういうことについて諮問をいたすということでありまして、米審の意見を聞きと、こうなっておるのでありますが、米審がこれこれの価格で売れとか買えとかということは答申しておらないわけでありますので、米審につきましては、いまのような基本の方針を御相談してその答申をいただくと、こういう形——まあ、そのときによっていろいろな聞き方がいままであったようでありますが、原則として、いま申しましたように、その方針について諮問をする。しかし、これから行なわれる米審に対してどういうふうな諮問をするかというのはまだきめておりませんからして、これからやはり検討して、その諮問のやり方についてこれから検討するわけであります。しかし方針はいま申し上げましたようなことでありますと、こういうことです。
  135. 中尾辰義

    中尾辰義君 その基本方針だけ聞いて、売り渡し価格の価格そのものについては聞かないのですか。その辺をもう一ぺん答弁してください。
  136. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 従来、生産者米価でも消費者米価でもそうでありますが、これこれの金額が、売却値段が妥当であるというふうな答申はいただいておらないのでありまして、いろいろこちらから御諮問申し上げることについての御答申をいただいておると、こういうのであります。
  137. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ、自主流通米の制度におきまして、今日までは、集配業者が全販連、全集連の全国団体に限定をされておった。これが今度の物統令の適用廃止になりましてどうなるのか。県の経済連あるいは県の集連、各農協自体が直接販売ができるようになるのかどうか、その辺のところをお伺いしたい。
  138. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) 自主流通米の販売を経済連、それから県集連や単協でもできる道を開いたらどうだという御意見がいろいろ出ております。農協等でもそういうお話のあるところもありますが、こういう問題につきましては、それが全体としての自主流通の円滑な推進にどのような影響を及ぼすかということを、私どもとしては十分検討してみなければなりません。で、食糧管理との関係がございますので、われわれのやっております食糧の管理は、やはり御存じのように、秩序ある流通をしてもらわなければならないわけでありまして、そういうことから、生産者の共販体制というような面もございますし、どのようなふうにしたらいいかということについては検討をする必要があると思います。ただいま生産調整にいろいろ御協力を願うために、農業団体ともお話し合いをいたした過程においても、いろいろな御希望も出ておるところが、ありますが、要は、先ほど申し上げましたように、やはり米の流通の秩序をちゃんと維持していくということが大事なことでありますので、したがって、自主流通米の流通経路の簡素化ということ、いまお話しのありました基本的には望ましい方向でございますが、いろいろな方策の効果や問題につきまして、事態の推移を見ながら、これから十分に検討してまいりたいと思っております。
  139. 中尾辰義

    中尾辰義君 いろいろお伺いしたいんですけど、時間がありませんので次へいきますが、これもいわゆる三井物産だとか、丸紅飯田、日商岩井等の大手商社が、米への参入をウの目タカの目でねらっておるわけですね。これらの商社は、米の産地の県の経済連と提携して、最も味のよい銘柄米の大量集荷を確保し、そうしてスーパーマーケット所在地の大精米工場において精米をし、袋詰めにしてスーパーに販売をさせる、こういうような構想を持って、すでに米の自由販売を前提にして、いまでもダミー等も使ってやっておるわけですね——というように私は聞いておるわけです。こういった商社に対して、卸、小売りの段階で販売を認めていくのかどうか、それをお伺いしたい。
  140. 倉石忠雄

    国務大臣(倉石忠雄君) ただいまそういうことを考えておりません。
  141. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ次へまいりまして、琵琶湖の公害と総合開発の件につきましてお伺いをいたしますが、最近琵琶湖の南湖、つまり南のほうは、急速な人口増加、工業立地に伴う汚染が非常に進んでおりまして、昨年夏には琵琶湖の水がくさいということで、県民の批判を買ったが、プランクトンの異常発生であることがわかったと。地元滋賀県では水質、湖底の汚染問題に対してカドミや水銀の検査を行なっているが、若干のカドミも検出されている。琵琶湖は滋賀県にとっても、京阪神にとっても貴重な水資源であるが、政府は、最近における琵琶湖の水質、泥質についてどのように掌握をしていらっしゃるのか。これは経企庁ですか、お伺いしたい。
  142. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 琵琶湖につきましては、御指摘のように、最近湖の汚染が全般として問題になっている中におきまして、われわれも注目をしております。そういう意味で、御存じのように、できるだけ湖の水質基準設定を急ぐという見地から、目下それの調査をやっておる最中でございます。
  143. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃあ——私がお伺いしたいのは、そんな大ざっぱな答弁でなしに、水質の状態はどの程度掌握しているのかというのですよ、それをお伺いしているのですよ。
  144. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) これは御存じのように、従来から県に委託をいたしまして、そうして県みずからこれの調査をやっております。まだ結論が出ているわけではございません。そういう意味において、中身を直接いま申し上げるところまでいっていない、こういうことであります。これの水質の基準というものを早急にきめる、そのデータを目下求めておる、こういうところであります。
  145. 中尾辰義

    中尾辰義君 そのデータはどうやって求めているのですか。
  146. 佐藤一郎

    国務大臣佐藤一郎君) 県に委託いたしまして、県でもっていま調査をしております。
  147. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、県のデータは企画庁御存じありませんか。県のデータでいいですから、一ぺん発表してください。
  148. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 湖につきましては、全般的には、いまお話しの経済企画庁が管理をしておりますけれども、私どものほうでは水は何しろ水道——飲む上水道の水源でございますので、琵琶湖の水が淀川を通じまして滋賀県、大阪府等の住民の水道の基礎をなしておるものでございますので、この水質検査をごく最近もいたしております。どういう方法でいたしたかと申しますと、まず、いま経済企画庁長官から話がありましたように、県に委託いたしまして、具体的には滋賀県の衛生研究所とそれから滋賀大学の臨湖——湖水に臨む研究所、臨湖研究所というものがございます、この両方で調べました。主としてこれは重金属について申し上げますと、水銀、カドミウム。カドミウムについては両方の調べとも全く問題はございません。検出せず、こういう結果が琵琶湖の五カ地点、第一地点、第二地点、第三地点、第四地点、第五地点を分けまして調べましたところが、いずれも検出せず、こういう状態でございます。これはカドミウムでございます。それから水銀につきましては、水につきましても、第一地点、これは南のほうだと思いますが、若干のよごれの報告がございます。これは臨湖研究所の調べが〇・〇〇一PPMということでございまして、経済企画庁の水質の環境基準、これはたしか〇・〇二であったと思いますが、それから比べまして水銀のほうも問題がございません。滋賀県の衛生研究所のほうにつきましては、水銀は、水につきましては、これもカドミウムと同じように全く検出せずということでございます。ところが底質、ヘドロといいますか、底質のほうにはかなりのよごれが検出されて報告をされております。高いところでは、水銀については、これはヘドロで五・九〇——一〇・八六PPMというような数字が報告をされております。いずれにいたしましても、琵琶湖はほうっておきますと、よごれる一方でございますので、カドミウム、水銀等につきまして、これ以上よごさないように注意をすることはもちろん、他の重金属等につきましても、私どもはさらに調査を進める所存でございますが、従来は、御承知のように、この琵琶湖は水質保全法上の指定水域になっておらなかったと私は思いますけれども、今度は先般の法律の改正によりまして、水域指定主義というものがなくなりましたので、当然琵琶湖にも環境基準が及ぶことになりますし、したがってまた工場排水の規制も当然にかぶる。今度は両方の法律が一緒になりましたので、当然にかぶりますので、その点の心配はなくなりました。ただし、まだ下水道等につきましては、流域下水道の整備を建設省にも要望しなければならない点があると考えますので、そういう各省の御協力のもとに琵琶湖、これはまあ実は私ども琵琶湖に限らず、湖、沼など全般的に非常に関心を払っておるところでございますが、琵琶湖につきましてはそのような状況でございます。
  149. 中尾辰義

    中尾辰義君 それほどまあ私、琵琶湖に対して、あんまり力を入れていらっしゃらないような感じがするのですがね。それで、厚生大臣答弁をお伺いしましたけれども、どうもはっきりしませんので、私のほうからはっきり申し上げます。いまおっしゃったのはちょっと間違っているのですよ、県のデータが。つまり滋賀県立の衛生研究所で発表したデータ、それが非常にデータが低いものだから、今度は地元の有志で結成されました琵琶湖をきれいにする会というのがございまして、その会が国立滋賀大学の——臨湖じゃございませんで、湖沼研究所というのがあるのです。湖と沼、その研究所の所長が大学教授の堀太郎先生、そこにお願いをしたのと非常に差があるわけです。データで申し上げますと、県のほうは、水にはたいしたことはない。ところが、琵琶湖のどろの中には、まず水銀のほうは、〇・〇九から八。いいですか。ところが滋賀大の発表は、水銀が一〇・八六から五・九だと。今度は、カドミウムのほうは、県のほうは〇・二五から〇・二、あるいは〇・一六となっている。ところが滋賀大学の発表によりますと、四・〇七あるいは二・〇PPMと、こういうふうに非常に差がある。ですから、これは滋賀県に限ったことじゃございませんが、えてして国や県のほうの発表はデータが低いというようなことで、あまりこれは、私どもも信頼ならぬのですけれども、こういうようなことで地元としては県側のデータ、それから滋賀大学のデータが新聞に出るたびに非常に不安を持っているわけです。まあそういうことで、ちょっとこれは抜けましたけれども、滋賀大のほうは中間発表ですが、五回測定した一回分が九八PPMのカドミウムが出た、これは中間でございますけれども、そういうふうに非常に地元としてはショックを受けているわけです。それで厚生省として一ぺん取り上げて、全国の注目の的ですから、おやりになってみたらいかがですか。そして正確なデータを出すことが、これはもう公害対策になるのですから。
  150. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私が申し述べましたのも、中尾さんがいま読まれたのと同趣旨のことを申し上げました。私が先ほど、水については、これは滋賀県衛生研究所の調べも、また滋賀大学——私は臨湖研究所と申しましたが、あるいはこれは湖沼研究所が正しいのかもしれませんが、それは大体同じで、おおむね検出せず、あるいは湖沼研究所のほうでも〇・〇〇一PPMというような、これはほとんど問題にするに足りない、問題にする必要もない低い状況であるが、底質といいますか、底の質、ヘドロについては高いものがあるといって私が読み上げました第一地点で五・九〇PPMとかあるいは一〇・八六PPMというものは、私は厚生大臣ですからなるべく高い危険のほうを読み上げる一こういう状態であっては困るというほうを読み上げましたもので、お説のとおり、滋賀県の衛生研究所のほうは、私は申し上げませんでしたけれども、それから比べますと低い数字があらわれておるわけでありますので、高い数字を私は申し上げたのであります。これは、いま係員も私のところへ説明に来ましたが、両研究所の研究方法が違うし、時期も若干ずれておるというような、方法の結果によることであって、別に滋賀県をかばうわけではございませんけれども、そういう時期の違い、あるいは検査方法の違いによって、県のほうがかなり低くあらわれておる。したがって、これはクロスチェックをする必要がありますので、そういうことについても私どもは留意をしたい。幸い、まだヘド口の段階で、厚生省が一番関心を持ちます水道水源につきまして、水については先ほども申しますように、よろしいものですが、これはほうっておきますと悪くなりますので、先ほど申しましたような対策を私どものほうは十分とらしてまいりたいと、こういうようなことでございます。
  151. 中尾辰義

    中尾辰義君 水のほうは、たいしたことがないからというような答弁でございましたが、それと、滋賀大が発表したのは県が依頼したのじゃありません。あれは、県には県の衛研というのがあるのですよ、滋賀大の湖沼研究所の権威ある堀教授に依頼したのは民間団体の琵琶湖をきれいにする会、それが依頼して正式な発表を滋賀大でやったのだ。そこのところを間違わないようにしてくださいよ。  それから、その大学の発表によりますと、今度は琵琶湖の底のほうに瀬田シジミというような代表的な貝がおりますが、それは生後二年か三年のものでカドミウムが二・一二から一・一あると、こういうような検出をされたわけです。これは貝のほうですよ、今度は、水じゃございませんですよ。ところが二、三年もののシジミというのは一番食べごろの貝だそうですね。それで、堀教授はこう言っています。シジミのえさの三〇%は泥だと、その泥に重金属が一ぱいの状態になっている、あらゆる手で汚染を防止する必要がある、こういうことも言われておりますが、それで、従来も水銀マグロの問題、これはまあ非常に騒がれたことですね。あるいは有明湾における貝のカドミウム、そういうものもあるけれども、国の環境基準というものは、カドミウムは〇・〇一だとこれはさまっておりますが、魚介類の安全基準というものは、これはどういうふうになっているんですか。野放しになっているのか、野放しになっておるとすれば、今後こういうものをきめてはどうか。
  152. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 琵琶湖等に生息する貝のカドミウムの含有状況等につきましても厚生省は資料を握っております。私がながめましても一見かなり高いものもございます。しかし、一般論といたしまして、これ決して弁解をいたしたり、厚生省が健康管理を怠るという意味ではございませんが、貝類とかイカ類とかというようないわゆる軟体動物は、カドミウムの蓄積性がございまして、琵琶湖に限らず、日本近海のみならず、他の方面におきまする軟体動物のからだにもカドミウムがかなり蓄積しておるようでございます。ホタルイカでありますとか、いまシジミのお話もございましたが、スルメイカあるいはバイ貝というようなものは、実に一見驚くべき九〇とか一〇〇以上の、つまり九〇PPM、一〇四PPMというような高いカドミウムの蓄積状況でございまして、これは私ども注目をいたしておりますが、ただこれまでのところでは、貝類は、あるいはこれらの軟体動物は、米などと違いまして常食するとかあるいは大量に食べることがないというようなことで、いまの程度あるいはもう少し詰めて食べても、国内の一般の学者のお話ですと、人体に危険はないといわれておるわけです。しかし、厚生省はほうっておくつもりはございません。現状におきましては、カドミウムにつきましては、米だけにつきまして御承知の一PPMとか〇・九PPM以上のものを限界許容量といたしておりまするし、また農薬等につきましては、かなり多数の生鮮食料品につきまして残留許容量というものをきめておりますが、いまのお尋ねの軟体動物、貝等につきましてはカドミウムの残留許容量というものを現在ではきめておりません。しかし、これは私は放置すべきではないということで、学者の諸先生にお集まりをいただきましてこの問題につきまして研究班をつくって進めるということになっておりますので、そういう方向で処理をいたしてまいる所存でございます。
  153. 中尾辰義

    中尾辰義君 それはいろんな貝にもカドミウムは自然に含まれてまいりますが、毎日朝昼晩この貝を食べているわけじゃないです。私が申し上げるのは、貝は泥の中におるわけだ、その泥を食べて、貝の中にカドミウムが入っておる。ですから、貝が泥のカドミウムの含有のバロメーターになっておるわけです。その泥がよごれると琵琶湖の水がよごれる、そのカドミウムでよごれた水を今度は淀川から大阪、京都なり神戸の人が飲むと、こういうふうになるわけでしょう。それで私は言うわけですよ。  それから最後に一点、これは山中長官にお伺いしますが、水質の問題が非常にそういうふうによごれておる。ところが琵琶湖は御承知のように工場が最近非常にたくさんできてきた、工場廃液もどんどん出る、あるいは汚水、あるいは時と場合によっては屎尿投棄等も暗がりにおいてあると聞いておりますし、そのほかにその辺の観光ホテルが汚物あるいは廃棄物を流す、そこへ遊覧船あるいは水上モーターボート等の油あるいはまた汚水ですね、そのほか周辺の製紙工場等のヘドロが琵琶湖の水面に頭を出しておる、繊維のヘドロが。そういうような状態で、やはり京阪神の水資源ということに重きを置いて考えるならば、これは海洋汚染防止法というようなものも前国会でできたんですが、こういった湖等をきれいにする湖沼汚染防止法というふうなものは考えてないか、その辺をお伺いしたい。
  154. 山中貞則

    国務大臣(山中貞則君) 海洋汚染防止法をつくりますときに、一応私どもの入ります角度が、国際条約の海洋油濁防止という立場を踏まえて国内法の整備という関係で入ったものでありますから、その際に内水面においては河川、湖沼等の底質、水質の悪化その他については触れましたけれども、法律として内水面、湖沼等のそういう船なんかによる油の汚染その他については研究不足な点がございます。でありますので、これらの点は日本にはそう船がしょっちゅう走り回るような大きな湖はよけいはないわけでありますから、比較的つかまえやすい問題でもありますので、これからの研究課題として、ただいまの屎尿や固型廃棄物等はきちんとしてありますけれども、そういう遊覧船等も含めた船の油というような問題についてどう処理するか、これから検討して、場合によってはお話しのような法律化ということも考える必要があろうかと考えます。
  155. 中尾辰義

    中尾辰義君 まあ琵琶湖は京阪神の水資源という点もありますけれども、京阪神のレクリエーションとしてよくあの辺で海水浴するわけです。それもひとつ考えていただきたいと思います。  それじゃ琵琶湖を終わりまして、次にもう一つ、最後に原子力問題でちょっと質問を申し上げたいと思いますが、最初に電力需給が非常に逼迫をしている現状から、エネルギー供給源として原子力発電をどの程度まで増設するのか、その位置づけあるいは将来のビジョン並びに原子力発電所の現況と建設計画について、出力規模、完成年月日、設置者等をお伺いしたい。
  156. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 原子力発電は現在エネルギー供給の主力となっておりますところの石油火力等に比べまして、まだその比率は低うございます。しかしながら燃料の輸送でありますとかあるいは備蓄、こういう点から考えてみましても、原子力のほうが多くの利点を持っておりますから、そういう意味では今後かなり原子力のほうが伸びていくだろう、ことに発電コスト等におきましても、将来は相当この火力なんかに匹敵して十分コストの低減が考えられます。こういう面からいたしまして、将来のわが国の膨大なエネルギー需要の有力な供給のにない手になるであろう、こういう見通しを持っております。  そこで、現在のわが国発電設備の容量におきますところの原子力が占めております地位は、昭和四十四年度におきましては、パーセントにいたしまして一%でございますが、五十年ごろになりますとこれが八%ぐらいに、五十五年度になりますと一七%ぐらいに、さらに六十年度ぐらいになりますと二八%ぐらいに上昇していくという見通しを持っております。さらにその先のことはよくわかりませんが、六十五年前後になりますと、おそらく火力と原子力とはこの比率が逆転するのではないだろうか、こういうようなことも考えられます。  そこで、次は現在の発電設備はどうなっているか、具体的にということでございますが、現在日本原子力発電株式会社の東海発電所、それから同じく敦賀発電所、それに関西電力の美浜発電所一号炉、これが商業運転を行なっております。それからまた、東京電力の福島発電所一号炉が近く動くことになりまして、これによりまして合計四基、百三十二万三千キロワットになります。このほか現在九基の発電用原子炉の設置がすでに許可されておりまして、その建設が進んでおります。将来のことは、先ほどもパーセントで申し上げましたが、数字で申し上げますと、五十年度におきましては大体八百六十万キロワット、五十五年度では二千七百万キロワット、六十年度では六千万キロワットぐらいになるものであろう、というふうに見込んでおります。
  157. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ、一つわからなかったんですがね。いま建設中のもの、それから申請中のもの、これをひとつもう少しはっきりおっしゃってください、出力規模、完成年月日、設置者と。
  158. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 現在運転中のものは、先ほど申し上げたとおりでございます。建設中のものは、東京電力福島発電所二号炉七十八万四千キロワットでありまして、四十八年に運転開始。それから同じく三号炉は四十九年に運転開始、容量は七十八万四千キロワットであります。それから、関西電力の美浜発電所の二号炉、これは五十万キロワットでありまして、四十七年。高浜一号炉は八十二万六千キロワットでありまして、四十九年。同じく二号炉は八十二万六千キロワットでありまして、五十年。中国電力の島根原子力発電所というのがありますが、四十六万キロワット、これは四十八年。東北電力の女川発電所は五十二万四千キロワットでありまして、五十年。それから中部電力の浜岡発電所が五十四万キロワットでありまして、四十九年。それから九州電力の玄海発電所は五十五万九千キロワットでありまして、五十年でございまして、建設中のものはトータルいたしますと、五百八十万三千キロワット、運転中のものと合わせますと、七百十二万六千キロワットになります。  申請中のものを申し上げますと、関西電力の大飯発電所一号炉百十七万五千キロワット、五十一年にでき上がる見込みであります。同じく二号炉、容量は同じでありまして、五十二年。東京電力の福島原子力発電所五号炉、これは七十八万四千キロワットでありまして、五十年。こういうふうになっております。
  159. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、原子力発電の安全性が問われているわけですね。火力発電等の公害防止の面も非常にやかましいですけれども、そういうおりから、東海村の原電では放射能漏れがたびたび起こってきた。最近では日本原子力発電株式会社の敦賀発電所では、昨年の三月以来運転を開始してからまだ一年にも満たない同工場において、三たびも事故が起こっている。一々読みますと、非常に時間がございませんが、どういうことで事故が起こったのか、それからどういうような処理をしたのか、それをまずお答え願いたいと思います。
  160. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 敦賀原電のことにつきまして御質疑がございましたが、最近に敦賀地区につきまして政府側の調査におきまして、ムラサキイガイ等からコバルト六〇が検出されたことを御指摘になっているかと思います。しかし、これはいま専門的に政府委員から答弁申し上げますが、その量はきわめてごく微量でございまして、一ピコキュリーと申しますから一兆分の一になるんでありましょうか。人体等にも何ら影響はないということでございまするけれども、その原因等を究明いたし、そして十分その安全性の万全を期するように努力をしております。
  161. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 御説明申し上げます。一つは、先ほど大臣が申し上げましたムラサキイガイの件が一つございます。これにつきましては実は一般観測ということではなくて、今後将来に対しまして、早く放射能を見つけるものとしての研究ということで農林省でやっていただいたわけでございます。それで先ほどお話ございましたが、魚よりも貝のほうが底に一定しております。したがいましてそれで見つけるほうが早いんじゃないかということで分析しましたところ、一ピコキュリー出たということが一つございます。しかし観測体制といたしましては、科学技術庁のほうあるいは各省で、関係省で一定の観測をいたしまして、それで十分その辺の安全性の観測はいたしております。  それからもう一つ、この前定期検査を敦賀炉でいたしました。そのときに実は四本、成績が悪そうなので燃料を入れかえております。それにつきましては肉眼的には全く問題ございませんが、内部をもう少し精密に見てはどうかということが一つございました。なお、去年の七月だと思いますが、従業員の一人が大体二レム程度の被爆を受けたことがございます。これは修理中に受けたわけでございますが、基準といたしましては三レム三カ月ということになっておりまして、二レムは安全の範囲内でございますが、本人の健康状態、管理状態をよくしているところでございます。
  162. 中尾辰義

    中尾辰義君 どうも答弁あと先になってうまくないですね。敦賀の発電所におきまして昨年は事故が起こっているわけなんですよ、これは。この事故、この事故、この事故と、こういうように答弁をしてくださいよ。その事故の裏づけとしては、発電所の浦底湾という海の底から、水産庁が検査をしてみたら放射能が出たと、こういうふうになるんでしょうが、科学技術庁長官はムラサキイガイが出たと、ムラサキイガイは事故じゃございませんでしょうし、発電所の事故を聞いてるんだ、私は。
  163. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) ただいま先生のおっしゃいましたとおり、私の先ほど申し上げましたものは、法的事故ではございません。ただ、あそこの発電所がこの一年動いておりますが、その動き始めましたときに、営業運転に入るときに、先ほどのムラサキイガイの調査のデータが出ました。それから営業運転に入りまして、途中で定期検査したときに燃料の入れかえをいたしました。その途中で、七月でございますから、そのちょっとてまえでございますが、そのてまえのところで一人被爆を受けたという段階でございます。これはすべて法的な事故という範囲内には入るわけではございません。
  164. 中尾辰義

    中尾辰義君 それじゃ私がお伺いしましょう。事故の一つは、敦賀発電所の原子炉内ウラン燃料棒の被覆管のピンホールから放射性同位元素ヨード一三一が、炉内の第一次冷却水に放出され、燃料集合体の四個を取りかえた事件、これが一つ。それから二番目は、さっきおっしゃった同発電所の従業員が、タービン建屋内で放射性放出ガス漏れの修理をしていた作業員が被爆をした事件。三番目は、発電用タービンケースの接着剤が溶解をした事件、このことを聞いているのですよ。これがどうやって起こって、どういうふうな結果になったのか、いまさっきの作業員の被曝はいいですから、あとのほうをひとつ答弁してください。
  165. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 先ほど申し上げましたとおりに事故ではございません。それから燃料は、新聞等で。ピンホールがあったというような報道がございました。しかし、肉眼その他で見て。ピンホールはございません。ただあれを実は取りかえる必要も初めはなかったわけでございますが、まあ最初でございますので、慎重に成績の悪そうなものを四本取りかえたわけでございます。それで今後も燃料につきましては、そういう疑いがあり得たということで、いまも慎重にその燃料の監視をつとめているところでございます。
  166. 中尾辰義

    中尾辰義君 もう、こまかい議論をする時間がありませんが、これはことしの一月二十五日、水産庁が敦賀発電所の排水口付近でムラサキイガイから放射性のコバルト六〇が検出された、こういうふうに明らかにしておるわけですが、これはひとつ水産庁のほうから答弁願いたい。
  167. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 水産庁の東海区水産研究所で、この敦賀の原発の排出水が漁場環境にどういう影響を及ぼすかということの基礎調査をやっているわけであります。その一環といたしまして、四十五年の一月二十九日から二月四日に原電の排水口から約二キロのところで採取いたしましたムラサキイガイから一ピコキュリーのコバルト六〇の測定をいたしたわけでございます。また、四十五年の十一月十三日に原電の排水口より約一キロのところで採取いたしましたホンダワラから〇・一ピコキュリーのコバルト六〇の測定をいたしたわけでございます。詳細申し上げますれば、なおコバルト六〇のほかに、マンガン五四、鉄五九等がごく少量検出されたという報告があるわけでございます。  なお、つけ加えて申し上げますれば、これらの含量はいずれも人体に影響はないという専門家の判断でございますが、問題としては、今後もなかなか重要なものを含んでおるのでございますから、私どもといたしましては、注意深く基礎的な研究をなお今後も進めたいというふうに考えております。
  168. 中尾辰義

    中尾辰義君 それでお伺いしたいことは、人体にその程度の放射能は害はない、それはいいんですがね。結局、原電の排水口から出たということは間違いないのか、その辺はいかがですか。
  169. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 専門家の見解によりますと、天然のものではなくて、原電の排出水から出たものであろうということでございます。
  170. 中尾辰義

    中尾辰義君 そういうことで、いつも政府答弁は、従来からの公害の問題でもそうですが、いつもこの程度はたいしたことはございません、人体にたいした害はない、このような答弁があるのですがね。ところが、非常に原子力発電が必要なことは認めても、そういうような事故がちょこちょこあったとか、いま言ったようなコバルト放射能が出たとか、そういうことが現地の新聞に出て、原子力発電所を建設するにおきまして、非常に住民が不安に思い、それが進められていかないわけですが、だから、これはやはり日本の原子炉の放射能規制というものが濃度の規制であって、つまり薄めさえずれば幾ら出してもよい、そこに問題があると思う。薄いんだから幾ら出してもいい、そのうちにだんだんだんだんと、そういった特殊の貝が濃縮をして人体に影響を及ぼす、こういうことになるわけですからね。その辺一つ、これは時間がないので、いろいろお伺いしたいことたくさんあるんですけれどもね。今後の原子力建設の障害になっておるその辺の対策を、住民対策をどうするか、また、放射能が漏れないようにせないことには、——技術庁長官は将来におけるビジョン、建設計画発表になりましたけれども、あれだけたくさんのものがはたして計画どおりできるかできぬのか、その辺まで問題になってくるんじゃありませんか、これを答弁願います。
  171. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) 先生おっしゃるまでもなく、原子力発電等におきまする原子炉の設置、あるいは運転等に関しますところの原子炉等規制法というものは、これはわが国の規制法は諸外国に比べましてもきわめて厳格な規制を行なっておるわけでございます。十分その安全性を確保するためにやっておるわけでございますが、そこで、このわが国の第一線の専門家の英知を集めまして、安全審査というものを十分に行なっておるのでございます。そういうようなことでございます。そこで、しかしながら、ただいま御指摘になりましたような、きわめて微量といえどもそういうものが流出しておるということに対しまして御不安があるわけでありますが、これらに対しましては十分その研究を進め、これを根絶するように関係者一同非常に努力をしておるところでございます。  そこで、これからいろいろのたくさんの発電所ができてまいりますが、なるべく地元の方々の意向が反映されるということが必要かと思います。そういう意味では、この原子力発電所の設置につきましては、御承知のとおり、電源開発促進法がございまして、そこで総理大臣が電源開発調整審議会の議を経てこの電源開発基本計画をつくる、その中に火力であるとか、原子力であるというものがだんだん具体的に入ってくるわけでございますが、その際には、地元を代表する知事の意見等も十分聞くたてまえになっております。そうして地元の意向を十分反映させる体制をとっておるのでございます。しかしながら、原子力発電所というものは、地元住民にも非常に深いかかわりを持つものでございまするので、従来から原子炉の設置許可申請がございましたつど、関係地方公共団体に十分連絡をする体制をとってきておるところでございまして、今後ともこの原子力開発利用の円滑な推進を進めてまいります立場から、現行法の運用に際しましては、事実上地方公共団体とも連絡を密にいたしまして、そして十分その意向をくんでまいりたいと考えております。  また、現地におきましては、県、市あたりと原子力事業者との間におきましても、こういう問題に対するいろいろな意見交換、あるいはまた具体的な覚え書きの取りかわしというようなことも行なわれておりまして、われわれは、こういう点につきまして万全を期してまいりたいと考えております。
  172. 中尾辰義

    中尾辰義君 それで、最後にお伺いしますが、この計画を見ますというと、福井県の若狹方面に非常に原電が集中している。敦賀の三十五万キロ、美浜一号が三十四万、二号が五十万キロ、高浜の一号が八十二万、二号が八十二万でしょう。このほかにいま申請中のものが大飯地方に百十七万五千キロワットのやつが二つできると、こういうことで、最初は一つ、二つということで地元の方も非常に安心してお願いをしたけれども、最近は非常に排斥運動が起こっておるんですね。しかも、これが地震等があった場合にどうなるのか、また、そういうような、いま私申し上げましたような原電の事故がありまして、住民が非常に不安を持ってる。そういうところに、今度は近畿のレクリエーションの場として、海水浴そのほか観光に来る、そういう人たちが来なくなるのじゃないか。もう少しこの原子力発電というものは、ただ立地条件がいいからとか、あるいはあの辺の住民が非常におとなしいからとか、そんなことで関西電力は関西電力の自分の供給地域に建てる、東電は東電で自分の供給地域に建てるとか、そういうことでなしに、もう少し国家的な立場から、高度な立場からこの原電の建設計画というものを検討してみたらどうかと、私はそう思うのですが、その辺はどうでしょうか、総理。  それともう一点。これで私終わりますから。それからもう一つは、原子炉設置に関しましてですが、放射性物質の放出で起きた災害については、災害対策基本法で自治体に防災上の責任が負わされているのに、原子炉の設置、運転中の安全性については何の発言権もない、地方自治体に。その上、万一にも事故が起こった場合は自治体が事実上責任を負わなければならぬという矛盾がある。原子力基本法の原子力三原則、とりわけ公開の原則からいっても、自治体に発言権を認めるように、原子炉等規制法の改正をしたらどうか、そうすることが県、市、住民の不安を除くことになるのじゃなかろうかと、こういうふうに思うわけですが、その二点をひとつお答え願いたい。それで終わります。
  173. 西田信一

    国務大臣(西田信一君) その敦賀等の地域に原子力発電が集中して建設されるのはどうかというお尋ねでございますが、これは原子力発電所を建設するにつきましては、地理的ないろいろな諸条件が整っていなければなりません。そういう意味におきまして、あの地区は比較的その条件を満たしておるということであろうと思います。そして安全審査につきましては、これはもう審査会は総合的な立場から、先生御指摘になりましたような問題も含めまして、十分な審査を行なっておることでありまするし、また同時に、地元の方々の非常な御協力があってそういう計画が成り立っているわけでございまして、決して意識的にそこに集中しておるということではないと思います。  それから第二のお尋ねの、原子炉等規制法を改正して地元に何か発言権を与えたらどうかという御趣旨のように伺ったのでありますが、これは三十一年にこの法律ができましてから数回手直しが行なわれておりまして、所要の改正を行なってまいったところでございます。そこで特に、先ほども申し上げましたように、発電所の計画を決定します基本計画をきめます場合に、地元の知事にも意見を述べていただくということになっておりまするし、また、その後におきましても常時連絡を密にいたしておりまして、十分その御意見を反映させていただくような仕組みにいたしておりますので、ことに原子力は非常に高度な技術を要するものでございますから、やはり現在のようなたてまえで、原子力委員会の意見を聞いて総理大臣がその責任のもとに行なうという体制のほうが適当であろうというふうに考えます。しかしながら、地元の意見を十分反映するようなことに対しましては、十分努力を払ってまいりたいと存じますが、現在におきましては、その改正の必要はなかろうかと考えております。
  174. 古池信三

    委員長(古池信三君) 以上をもって中尾君の質疑は終了いたしました。  次回は、八日午前十時開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十二分散会