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国務大臣(
佐藤榮作君) 私が申し上げるまでもなく、ただいまのわが国は民主国家でございます。自由を守り、平和に徹する、そういう国柄であります。その民主国家で最も大事なことは法秩序の維持にある、かように私は信じております。したがいまして、国民の皆さま方も最終的には法の秩序を守る、法に従う、それが本来の姿でなければただいまの民主国家は成立しない、繁栄しないと、かように私は思うのであります。この点は、幾ら申しましても、野党の諸君といえ
どもこれは御賛成だろうと思います。どこまでも法律を守らなければならない。そのことはもうきちんとしております。したがいまして、先ほど来のいろいろのお話についても、いろいろの個々の御意見はおありでございましょう。しかしながら、長い間の論争の問題、しかも社会問題であり、政治問題である。そうして、政府は法の命ずるとこによって所定の手続でただいま代
執行を行なっておる、こういう
事件を十分御勘案いただくならば、どうもやむを得ないと言って協力してもらうという以外には
方法はないんではないだろうか。先ほど来、運輸大臣から国際
空港の必要性を特に説明しております。私
どもも近代国家としてこれからどうしても国際
空港を整備する要があるのでございます。その
土地がいまの
三里塚になっておる、
成田空港、かように呼ばれておるものであります。したがいまして国家的な要請である。これについてお気の毒な方も出てまいります。自分の父祖伝来の
土地だ、かように言ってそれをどこまでも守ろうと、かように言われるのも、これは私、私情として理解できないことはございません。しかしながら、やはり国家的要請にこたえていただくということが、私は何よりも必要なことではないだろうかと思います。民主国家の当然のあり方だろうと思います。私は先ほど来の話を聞きながら、その
土地に対する権利者、いわゆる所有権者、それだけならば比較的話はスムーズに、また衝突がありましても解決の
方法はあるだろうと思います。しかしながら、この場所でいわゆる
学生運動が展開される。ことに気の毒なのは、小、中学のいたいけな児童、
生徒が動員されて第一線に立つ、私はまことにこれは人道上から見ましても許せない行為だと実は思うのであります。その点でただいま言われるように、政府の扱い方がなまぬるいと、かような御批判もあろうかと思います。また同時に、政府のやり方については、片一方で、何だ一体、政府は力にたよって乱暴するのかと、こういう批判もあるだろうと思います。私はそれらの点を勘案しながら、国家
公安委員長の答弁にありましたように、問題を悪化させないようにあらゆる注意を払っておるという、これは政府としても当然のことだろうと思います。ことにまた私
どももそういう立場でいわゆる所有権者に死傷、まあからだに
けがをするとか、こういうような
負傷者を生じないようなあらゆる注意を払っております。ただいま
投石をしておる連中というのは、これは
成田空港の
建設にことかりて問題を提起しておる諸君だと思います。これこそは
警察が近づけないように処置をとるのが当然だろうと私は思います。したがいまして、本来の権利者と、あるいは代
執行するにしても、その範囲が限られるならば、私はたいへん平穏にやられることだろうと思います。しかしながら、権利者外、そういう者が出てきていろいろ問題を紛糾さしておる、そういう点はこれはやはり政府自身の責任だろうと思います。よって来たるところ、先ほどは
教育の問題ではないかと、かように言われますが、
教育までさかのぼらなくても、現在の問題として私
ども政治を担当する者の責任だ、かように政府自身を御叱正賜わるのが私は本来の筋だろうと思います。私は、
教育者自身が本来間違った筋をただいまやっておるとは思いません。戦後の
教育から最近の
教育はよほど変わっております。先ほ
ども言われるように、小、中学の
生徒を第一線から差し引き――引っ込ますために
校長さんが四人も五人も出かけて、そうして子供らを直接説得されたという、そういうように
教育者としてはあらゆる努力をしておられます。そのもとが
千葉県教育委員会の問題であろうが、あるいは
文部省の問題であろうが、その姿勢は私、正しいだろうと思います。しかし、私はこういう事柄にいろいろの名目をつけ、ただいまいろいろ外部からの力でいろいろの問題をかもし出しておる、そういうのは純然たる一治安問題だとかように考え、その治安問題と代
執行の問題を混同しないようにして、いかにして治安、秩序を維持するか、これは国家、
警察の役目でありますから、そういう意味で荒木君のところでも十分
対策を立てておられようと――ただ問題は非常に
八田君はお急ぎのようでございますが、私はやつぱりただいまの民主国家の、また民主主義のあり方といたしましては、もう少しよく理解ができるようにあらゆる努力を続けることが望ましいことではないだろうか、あまり結論を急ぐよりも、ただいま申し上げるような民主主義のもとにおける各種の問題、地域住民の十分な協力を得るような努力が必要だろう、かように私思います。