○多田省吾君 私は公明党を代表して、ただいま
議題になっております
自動車重量税法案に対し、
反対の
意見を表するものであります。
私は本
法案に
反対の
理由を述べる前に、本
法案の
審議経過に対し、強い憤りを感じたことを申さぬわけにはまいりません。すなわち、本国会の会期が百五十日間あったにもかかわらず、本
法案が参議院に来たのは会期終了四日前であり、与党の圧力によって十分なる会期を与えられずに終わったことであります。これはまさに良識の府たるべき参議院の自殺行為であり、私は会期終了前三十日以内に来た野党
反対の
法案は廃案にすべきことを強く主張するものであります。
次に、本
法案に
反対の
理由を四つに分けて述べます。
まず第一の
理由は、新税創設の目的、その使途ともにはなはだ不明確であり、税の
性格がきわめてあいまいであるということであります。すなわち、一昨年、自民党の一部からいわゆる自動車新税構想なるものが提唱されました。その
意図するところは、新道路整備五カ年計画の財源補てん及び
国鉄、地下鉄建設などの財源とすることにあったことは周知の事実であります。その後、建設省、運輸省、自治省などから、それぞれの思惑を含んだ自動車新税案が提唱されたものの、最終的にでき上がった今回提案の
法案は、最初の
意図どおり、自動車の保有者から新たにその重量に応じて税を徴収して、道路建設整備以外に、
国鉄の赤字対策などにも充当できる可能性を含んでいるのであります。自動車の使用者から徴収する税金で道路整備の財源をまかなうということに対してさえ異論のあるところでありますが、その上、
国鉄の赤字埋め合わせにも充当できるとした含みがあることは一体どういうことなのか、全く
理解に苦しむところであります。
また、この新税創設に際して議論されたことは、まず総合交通対策の確立が
前提とされなければならぬということでありました。昨年暮れのマスコミの報道によれば、大蔵当局は、政策としての総合交通体系が確立されていないことを
理由に、この新税創設には難色を示していたとのことであります。しかるに、絶対多数を誇る与党は、議席にものを言わせて、大蔵当局が渋るなら、三百議席を動員しても議員立法で成立させてみせると、某実力者は強大な圧力をかけたと言われております。立法府からこのような挑戦を受けた行
政府である大蔵当局は、ついにこの圧力に抗し得ず、
法案の作成に当たったと報道されております。
今回、このような事情の中であえて
法案提出に踏み切ったことは、財政当局の悩みもさることながら、とりもなおさず、政策もその使途も全くあいまいなまま財源調達が先行したものであり、その結果は、自動車使用者のみをねらい撃ちにする大衆課税強化の典型ができ上がったのであります。このようなやり方がはたして正常なものかどうか、良識の府である本院の私どもには全く
理解に苦しむものであります。
第二の
理由は、税制全般の見直しを怠った安易な新税の創設であります。今回の自動車重量税はもとより大
反対でありますが、百歩譲って考えましても、このような新税を創設する前に、まず財政収支の適正合理化をはかり、現行税制の不合理、不平等を改革し、今日の税体系の矛盾を十分に洗い直し、しかる上の納税者の納得、
理解できる税の創設でなければならぬと思うものであります。このようなきわめて基本的な問題が何ら手を触れられずして、安易なる新税創設に踏み切ったことは、全く容認できないものであります。
第三には、自動車は今日では生活必需品であり、所有者はすでに八税目にも及ぶ過重な税負担をしいられており、これ以上新税を創設する余地は全くないのであります。わが国の自動車保有台数は、経済の高度成長に伴って、すでに一千九百万台をこえ、米国、西独、フランスに次いで英国と肩を並べ、今日では都市はもちろん
過疎地域の山村に至るまで、国民の生活必需品となっております。しかも、現行税法では、国税、地方税合わせて八種目にも及ぶ過重な税負担をしいられ、加えて自動車を保有する勤労者の七五%は年収百五十万円以下の人々であり、さらに、この上に重量税の課税は、まさに同一納税者に対するその名のどおり重量税であり、過重負担であります。したがいまして、現在のような、いたずらに税の種類を多くして、税体系を複雑怪奇にしておいて、知らぬ間に国民大衆から多額の税を取り立てることは断じて容認できないものであります。
第四の
理由は、新税創設は、自動車輸送業界、中小零細
企業に重大な影響を及ぼし、しかもその結果として物価上昇に一そうの拍車がかかるということであります。現在、旅客輸送、物資の運送の両面においても、自動車による輸送は年々増加し、その輸送量は鉄道輸送を大きく上回って、内陸輸送部門の第一位を占めていることは御承知のとおりであります。したがって、この重量税という新たな負担がバス、トラック、タクシーなどにも課せられる以上、それらを口実として輸送料金の引き上げが計画され、それが価格高騰となり、さらに交通事故激増の原因ともなり、国民生活にしわ寄せされることは、
政府の弁解を待つまでもなく火を見るよりも明らかなことであります。さらに、中小零細
企業におきましても、自動車を保有する
企業はふえ、全体の八〇%以上も占めており、これら
企業は生活を切り詰め、割賦販売によって購入しているのが大半でありまして、
企業活動にとっては車は必要不可欠のものであります。苦しい不況の中でやりくりの中小零細
企業の活動の足を引っぱるようなこの新税創設は、これら
企業に対する愛情と誠意の片りんもない
政府の政治姿勢を如実にあらわしており、とうてい認めることはできないものであります。
以上の
理由をもって、新税創設に対する
政府の姿勢をきびしく糾弾して、
反対の
討論を終わります。(
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