○鈴木強君 私は、
日本社会党、公明党及び民社党を代表して、ただいま議題となりました
公衆電気通信法の一部を改正する
法律案に対し、反対討論を行なわんとするものであります。
以下、順次、その理由を申し上げます。
第一は、データ通信回線使用契約
制度の新設についてであります。需気通信回線の開放は情報化社会への第一歩を踏み出すものでありまして、政治、経済、社会に与える影響はきわめて大きく、その及ぶところははかり知れないものがあります。したがいまして、情報化を今後進めるに当たりましては、まず、その
基本原則たる平和利用と
国民生活の
向上、民主的な
管理運営及び
基本的人権とプライバシーの保護の三原則を明確にした情報化に関する
基本法を制定し、その上に立って
基本的政策を定めるべきであるとするのが、私どものかねてからの主張であります。とのことにつきましては、すでに昨年五月の衆参両院においても、情報処理
振興事業協会等に関する
法律案の採決の際、全会一致をもって附帯決議が付され、
政府もその趣旨に沿って善処する旨約束をしているのであります。しかるに、今回もまたこの約束を無視して、
基本法の制定を見ないまま、通信回線の開放のみを先行させることは、まことに遺憾なことでありまして、将来に大きな禍根を残すものであることを深く憂うるものであります。特に情報の秘密保護については、今後情報化の進展によって企業や組織等の情報のほかに、
国民の個人情報も大量に蓄積されるようになると思われるのでありますが、もしこれが悪用されますれば、
基本的人権とプライバシーの侵害という重大な問題を惹起するおそれがあります。しかも、現在、情報の秘密保護については、
法律上その対象とされておらず、また、すでに磁気テープの盗難という具体的犯罪事件が発生しておりまして、単に企業機密にとどまらず、個人のプライバシーの保護を含めた
対策が望まれているのであります。この問題は、データ通信のための通信回線開放以前に解決しておくべき重要問題であると思うのであります。
さらに、改正案によれば、データ通信のための回線開放により民間企業等にも公衆電気通信回線の大幅使用が認められることになり、電報、電話などの一般公衆通信の疎通や
機能が阻害されるおそれもあるのでありまして、安易な回線開放はきわめて問題であります。大企業のために、こうした優先的な
措置をとることは、公共施設である公衆通信回線網を私するものであり、また、データ通信のため公衆通信回線の利用に関連して、市内通話の三分制が採用されることになりますが、これによって生ずる料金負担の
増大も、大企業のために一般電話の加入者を犠牲にするものであると言わざるを得ないのであります。
また、この
法律案は、電電公社の行なうデータ通信サービスの提供を本来業務として法的に裏づけようといたしております。しかし、
わが国の公衆電気通信業務を専掌する公共企業体たる公社の第一義的責務は、現在なお申し込んでもつかない三百万になんなんとする電話の積滞を、一日も早く一掃することにあると思うのでございます。データ通信業務の実施よりも、積滞電話の解消こそ先決問題であると思うのであります。
また、情報化
産業に対する貿易と資本の自由化
対策について見ますれば、コンピューターのハードウエアとソフトウエアの両面とも、現在はいまだ自由化されておりませんが、近ごろの新聞にも報道されておりますように、近い将来必ず問題となることは明らかであります。資本的にも技術的にも格段優位に立つ米国の情報
産業は、
わが国を絶好な市場としてねらっていることは事実だと思います。米国資本にじゅうりんされた西ヨーロッパ諸国の二の舞いを、
わが国において再び演ずることは絶対に許されません。したがいまして、この面に対する何らの配慮もなく、ただ通信回線の開放を行なうことは、外国系大型コンピューターやソフトウエアの
進出を容易にするものでありまして、
わが国情報
産業の現在と将来のためにも、とるべき道ではないと信ずるものであります。
このほか、データ通信に関しては、労働者に対する大きな影響や情報化のもたらす人間疎外の問題、情報の独占的
管理の
強化など種々の問題が伴なってくるのでありまして、私どもは、データ通信の健全な
発展をいささかも否定するものではありませんが、
政府がこれらの問題に対する回答を見出せないまま、財界の圧力に屈して公衆電気通信回線を開放して、データ通信を民間社会にも行なわせようとすることに対しては、反対せざるを得ないのであります。
第二は、電話料金体系について広域時分制を採用する問題であります。提案によりますと、全国五百六十二の単位料金区域を最低通話料金区域として、通話料を三分七円にしようとするものでありまして、まさに重大な改悪というべきであります。この
方法は、従来の市内・市外の料金格差を縮めて、負担の均衡をはかろうとする意味においては、一歩前進であることは認めるものでありますが、現在の単位料金区域そのものが、必ずしも合理的であるとは言えないばかりか、隣接区域内通話との料金格差も大幅なものがあります。したがって、私どもがかねてから提唱しているいわゆるグループ料金制とはきわめてほど遠いものとなっております。また従来、通話時間に制限のない市内電話の度数制を一挙に三分単位の時分制に変更することは、通話料の実質的値上げになるのであって、
国民大衆は全く納得しかねるのであります。このことは、大企業に奉仕するデータ通信のための通信回線の開放によって、そのしわ寄せが一般
国民に押しつけられるものであります。のみならず、広域時分制の採用によって、大半の単位料金区域においては電話
基本料の引き上げを伴うこととなるのでありますが、単位料金区域の規模、特に一加入回線に七つも八つも加入者が接続されている地域集団電話の多い区域等においては、この
基本料が一挙に二段階も引き上げられることとなるのでありまして、たいへん不合理になるのでございます。
第三は、設備料の値上げについてでありますが、御承知のとおり、設備料は
昭和四十三年に単独電話の場合一万円から三万円に引き上げられたばかりであり、今回はこれをさらに五万円に引き上げようとするのでありまして、わずか三年間に一万円から五万円にという大幅な値上げが行なわれることになるのであります。
政府は、この設備料値上げについて、加入電話の増設のため必要な
措置であると説明しているのでありますが、特に公社の都合により、二年も三年も、長きは五年も待たされた電話申し込み者は、設備料の一方的引き上げを押しつけられることになり、大きな損害をこうむるのでございます。
政府は電話架設のためには、思い切って財政投融資資金等を増額投入する等、公社の建設資金調達に最大限の協力をすべきでありまして、今回のような安易な申し込み者への加重負担となる設備料の値上げは避けるべきものと思うのであります。
第四に、電報
事業の
近代化とこれに関連する問題についてであります。
政府と公社は電報料金値上げの理由として、
昭和二十八年以来、料金が据え置かれたため、あらゆる
経営合理化の努力にもかかわらず、電報の収支率は実に七二〇%と最悪の状態になっており、また、過去の累積赤字は約四千百億円にも達していることをあげております。これは電報
事業の
公共性が強く主張されて、採算性が無視された結果生じたことには間違いがありません。電報
事業といえども、原価主義による独立採算を
経営の
基本原則とすべきことは言うまでもないところであります。にもかかわらず、
長期間にわたり、電報の赤字は電話収入で補てんするという安易な態度に終始して、その
基本となっている
公共性と採算性について真剣な
対策がなされなかったため今日の状態を招来し、一挙に大幅値上げを実施せざるを得なくなったと思うのでありまして、その責任は重大と言わなければなりません。
しかも今回の値上げや利用
制度の
改善等、一連の
近代化施策を実施しても、その収支差額はなお相当な額に達するのでありまして、
事業の将来に光明を見出すことは不可能であります。したがいまして、電報
事業については、電話や加入電話、データ通信その他近代的電気通信手段が急速に
発展する中にあって、そのあり方、電気通信手段全体の中における位置づけについて、
長期的展望を明らかにするとともに、その上に立って抜本的
対策を樹立すべきであります。しかし、そのことがなされておりません。その場合、大量の電報要員の他部門への流動が予想されるのでありますが、その
対策については、十分、労働者の納得が得られるよう、電報要員の士気高揚
施策とあわせて、特に格段の配意が必要であります。労働者の犠牲の上に立った
合理化には絶対に反対であることを表明せざるを得ないのであります。
次に、今回の電報の利用
制度の
近代化に関連して、慶弔電報の
制度を廃止することとしているのでありますが、慶弔電報はすでに
国民生活の中に定着しております。その利用は、今後ますます
増加する
傾向にあることが予想されているのでありますから、
国民感情としても、むしろこの
制度は存続するのが適当であると考えるのでありまして、この点についての再考を強く
要請するものであります。
最後に、以上の電話料、設備料、電報料金等の一連の値上げについて総括いたしますと、これらはいずれも利用者に多額の負担を強いるものであり、これら公共料金の値上げは、最近における異常な消費者物価の
上昇にさらに拍車をかけることは明らかでありますので、今回の改正は絶対に避くべきものであったと思うのであります。さきに郵便料金の値上げが行なわれ、いままた電報電話料金の引き上げが行なわれるのでありますが、このような
政府主導型の物価
上昇施策に対して、私どもは一億
国民とともに強く反対するものでございます。
以上をもって討論を終わります。(
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