○沢田実君 私は公明党を代表して、ただいま説明のありました
農業白書に対し、総理並びに関係
大臣に
質問いたします。
まず第一点、新しい
農村社会の
建設は、単に
農民のためのみではなく、全
国民のための良好な
生活環境を確保するために、国土全体の立場に立って、
長期的、総合的に
計画を立てる必要があるのではないかということであります。
政府・自民党がとってまいりました
高度成長政策のもとで行なわれた
経済第一主義への偏重は、
農村には過疎を、
都市には過密と
公害を招来し、極度の自然破壊は人間に生命の危険を感ずるまでに至らしめたのであります。良好な
生活環境をつくることは、もはや
都市政策のみでは不可能な時代になりました。従来、
都市と
農村は、一つの
政策によってこうむる利害が相反することが多かったのでありますが、今後、総合的な立場に立つ新しい
政策の樹立は、両者の利益が一致するものでなければならないと思うものであります。すでに、
農村には、都会の人々のレジャーのための施設が急速につくられつつあります。しかし、その大部分は観光企業による営利事業であって、そのために、かえって自然が破壊され、
農村に対するメリットはほとんどないと言っても過言でない
状態であります。美しい自然に対する
国民の欲求にこたえるため、
公害のない
緑地空間として自然の積極的な保全並びに
活用が重要な
課題であります。
さらに、
農村は、すでに少数の専業
農家と多数の
兼業農家や非
農家の混在する
地域社会になっております。したがって、
農村における
生産基盤の
整備は、ともに生活
基盤をも向上させるという総合的な
計画でなくてはなりません。
農村の
整備は、
国民の
生活環境をよりよくするという、人間の生命を大事にする
政策でなくてはならないと思います。
都市と
農村と総合的な立場に立った新しい
農村づくりに対し、総理並びに
農林大臣の所信を承りたいと思います。
第二点は、
農業と他
産業との
比較生産性及び所得
格差をいかにして
改善縮小させるか、
農家の所得
対策及び見通しについて
お尋ねいたしたいのであります。
白書は、
農業の
比較生産性の推移を次のように表示しております。
農業が製造業に対して占める就業者一人当たりの比率は、
昭和三十五年の二七・九%から徐々に増加し、
昭和四十二年には三九・二%まで上昇いたしましたが、その後再び下向線をたどり、
昭和四十四年には三三・七%に低下しているのであります。
白書の数字を見るまでもなく、
生産調整による
減反、
生産者米価の
連続据え置き、
農産物の
輸入自由化、消費者に対する
物価対策として
農産物の
価格抑制等々、
農業にとっては連続的に打撃を受ける問題のみであります。農
作物の反当たり
生産数量には限度があり、しかも
価格は頭打ちです。その反面、
生産のために要する経費は、農耕機械や肥料の値上がり、労働賃金の上昇等、年々
増大し、
生産農家に大きな
経済的圧力を加えております。したがって、
農家の実質的所得が毎年減少しつつあることは説明を要しないところであります。この事実は、
農業基本法の精神、すなわち
農業と他
産業との均衡ある収入の確保という立法の大原則に反するものであり、
政府・自民党の
農民不在の
農政を物語るものであると思います。
政府は、このような
農家所得をいかにして増加させ、
国民主食の確保と質の向上につとめてきた
農民に、どのようにしてこたえようとするのか、その
対策を承りたいのであります。
兼業農家対策として、
農村に
工業を導入するとか、専業
農家の
規模拡大をはかるなどという、ありきたりの答弁では納得できませんので、そのつもりで明快な御答弁をお願いいたします。
第三点は、
農林省関係
予算は
昭和四十六
年度ついに一兆円を突破する大型
予算になったのでありますが、その内容を見ますと、米中心の
予算である観を免れ得ません。しかも、そのばく大な金額が
農家の
希望する
総合農政の諸
施策に使われることはまことに少なく、きわめてうしろ向きの
対策に使用されておるものが多いという点であります。
生産調整による休耕地に対する補償金の支払い、八百万トンに達しようとする過剰米に対する支払倉庫料、金利、輸出をすれば半額の損失、飼料にすれば八〇%に近い国庫負担を余儀なくされる
食管会計の現況等、数え上げれば切りのない
状態であります。しかも、その中にあって、小麦は
需要量の八六%、
大豆にいたっては九五%を
輸入に依存している実情であります。小麦の
輸入金額は、
昭和四十四
年度で二億九千七百万ドル、
農産物の全輸出金額に匹敵するほどの大きな数字を示しております。
政府は、なぜ休耕地に麦、
大豆等、大量に
輸入している農
作物をつくらせ、休耕地補償の
予算で
価格補償をして、
農家の所得を確保しつつ、貴重な外貨を節約するということがどうして実現できないのか。
農林大臣は、委員会では賛成しながら、
実行に踏み切れないのはどういうわけなのか、お伺いをいたしたいのであります。
第四点は、
農産物の
価格対策がばらばらで、一貫性僕達性に欠けているという点であります、
米価の
生産費所得補償方式、麦のパリティ方式、畜産、特に乳牛の不足払い、豚肉の安定帯方式、
野菜の出荷安定
資金制度、砂糖の課徴金制度等、
価格算定の
方法一つを見ましても、そのばらばらさを如実に示しているのであります。あるいは、一歩譲って、その
特殊性を考慮し、種々の計算
方法によることはやむを得ないといたしましても、これらの農
作物をつくるために支払われる一日当たりの労働力に対する報酬は、
白書の付属統計表、
昭和四十四年の数値で見ますと、米の二千四百四十円に対し、小麦の六百五円、大麦七百七十五円、
大豆千二百二十七円、甘蔗八百十二円等となっております。この数字は、米以外の農
作物の
生産基盤の
整備と、
近代化のおくれを雄弁に物語り、
政府の米一辺倒の
政策のひずみを明瞭にあらわしていると思うのであります。
農産物価格に対する根本的な一貫した
対策があれば、この際お示しいただきたい。
最後に、
土地改良事業を根本的に
改善する意思はないかという点であります。
農林省の直営による
土地改良事業及び干拓事業等に要する年月は、
計画から完了まで、短くて七年、長いものは二十年を要し、平均十年見当になっております。したがって、事業の完成時には、
計画当時と比較にならない客観的条件の変化があるわけであります。
長期にわたりばく大な
資金を投下しながら、その投資効果はきわめて低いものになっている例が多いのであります。一例を八郎潟の干拓事業に見ますと、
昭和二十七年から調査開始、
昭和三十二年着工、十三年を経過した現在、その事業進度は、総面積一万七千二百二十五ヘクタールに対し、完了一万一千六百十八ヘクタールで、七〇%弱となっております。干拓事業が完了した
地域には、第一次から第四次まで入植させましたが、未入植地はまだ三分の一ほどあります。過剰米のたくさんあります現在、米づくりもならず、何をつくり、たれを入植させるか、根本
方針もいまだ
決定していない
状態であります、また、大規模な
土地改良事業は、そのかん排事業を国営で行ない、次に県営でこまかい排水路等の工事をし、
最後に団体営で圃場
整備を行なっておりますので、たいへん長い年月を必要としているのであります。しかも、
予算のぶんどり合いが一そうそれに拍車をかけている
現状であります。このようなやり方は、当該地方の
農民の損失ばかりでなく、国家的損失であろうと思います。
計画及び
予算のつけ方について根本的な
改善をする用意はないかどうか、承りたい。
わが国農業は、まさに有史以来、未曾有の難関に直面いたしております。
政府は、このような事態に至らしめた責任を自覚し、全力を上げて積極的に
農政に取り組むべきであることを強く要望し、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕