○久保等君 私は、
日本社会党を代表いたし幸して、ただいま郵政
大臣から
趣旨説明のありました
公衆電気通信法の一部を
改正する
法律案に対しまして、佐藤
総理並びに
関係大臣に対しまして若干の質疑を行ないたいと存じます。
今回の
法律改正案は、ただいまの
趣旨説明にありましたように、電報料金の値上げ、電報利用
制度の
改正、電話料金体系における広域時分制の
採用、電話設備料の値上げ、データ通信
制度の新設など、まことに多岐にわたって重要な
内容を持つものであります。
これより逐次問題点を指摘して、佐藤
総理をはじめ
関係大臣の御所見をお聞きいたしたいと存じます。
そこで、まず、データ通信のための通信網の開放について
お尋ねいたします。今世紀における人類の誇るべき英知の所産であるコンピューターと通信回線との接続は、情報化社会への扉を大きく開くものでありまして、政治、
経済、社会に与える影響はきわめて大きく、その及ぶところ、はかり知れないものがあります。したがいまして、情報化を今後進めるにあたりましては、まず、その基本原則たる平和利用と
国民生活の向上、民主的な管理
運営及び基本的人権とプライバシーの保護の三原則を明確にした基本法を制定し、この原則のもとに情報化に関する基本的政策を定めるべきであるとするのが、われわれのかねてからの主張であります。このことについては、すでに衆参両院においても情報処理振興
事業協会等に関する
法律案可決の際、全会一致をもって附帯決議がなされているところであります。
しかるに、このような基本法の制定もないまま、今回、財界の圧力に屈して、通信網の開放を先行させるということは、まことに無原則な
措置であって、秩序ある情報化への進展を著しく混乱させるものであると断ぜざるを得ないのであります。また、もしこの状態を放置するならば、
わが国情報化の進展は、ますます大資本の意のままに進められ、
国民生活や労働環境との矛盾を激化するばかりでなく、情報の独占的管理の強化、マスコミ操作による
生活意識の類型化、マスプロによる労働からの人間疎外、さらにファシズム型の政治、社会への移行など、まことに種々危険な傾向を
促進することになりかねないのであります。
政府は、
わが国情報化社会の健全な発展をはかるため、いかなる政策を
実施されようとしているのか、この際、佐藤
総理の所信を
国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。
第二に、電電公社の行なうデータ通信業務の法定化についてお伺いいたします。
改正法律案は、電電公社の行なうデータ通信サービスの提供を本来の業務として法的に裏づけようといたしております。公衆
電気通信業務を担当する公共
企業体たる公社の第一義的責務は、現在なお申し込んでもつかない三百万になんなんとする電話の積滞をすみやかに一掃することにあることは、多言を要しないところであります。
昭和四十六年度を初年度とする電信電話拡充七カ年
計画におきましても、この
計画の終了時にようやく全国的規模において積滞を解消するという
見通しでありまして、そのテンポははなはだ緩慢であり、われわれの納得し得ないところであります。しかるに、公社は、現在サービスを提供している六システムのデータ通信に加え、電信電話拡充七カ年
計画において膨大なる投資を行なって、二百を上回るシステムを
計画しております。一体、公社はいかなるシステムを
考えているのか、あわせて郵政
大臣から
お答え願いたいと存じます。
第三に、基本的人権とプライバシーの保護について
お尋ねいたします。基本的人権とプライバシーの保護は、情報化を進めるにあたっての重要なる基本原則の一つであることは先ほど申し述べました。今後、情報化の進展によって
国民の個人情報、あるいは
企業、組織の情報が大量に蓄積をされるようになると思われますが、もしこれが悪用されますれば、基本的人権とプライバシーの侵害という重大な問題を惹起するおそれがあります。最近報道された某出版社のコンピューター用磁気テープ複写事件の示唆するところは、まことに大なるものがあります。現在、情報については
法律上保護の
対象とされていないのでありますが、このことは、データ通信のための通信網開放以前に解決しておくべき重要問題であると思うのでありますが、この点に関する法務
大臣の御所見をお聞きいたしたいと存じます。
第四は、情報産業に対する外資の自由化
対策についてであります。コンピューターの資本自由化は、第四次資本自由化における最大の問題点となっております。また、情報処理サービス業も、現在でこそ自由化されておりませんが、近い将来必ず問題となることは明らかであります。資本的にも技術的にも、
わが国に対し格段の優位に立つ米国情報産業資本は、
わが国を絶好な市場として虎視たんたんとしてねらっております。米国資本にじゅうりんされた西ヨーロッパ諸国の二の舞いを演ずることは断じて許されてはなりません。情報産業に対し、いかなる外資
対策をお持ちであるか、通産
大臣にお伺いいたします。
第五は、国際間のデータ通信について
お尋ねいたします。国際間の通信は、電話にしても、加入電信にいたしましても、各国が独自の交換網を所有して、その交換網と交換網をつなぐのが国際通信サービスでありますが、新しいデータ通信にもこの方式が貫かれるべきであると
考えます。これは、その交換機能を情報処理機能に置きかえてみれば明らかなことでありますが、各国が中央処理システムを所有し、その中央処理システム相互間をデータ伝送回線で結合するシステム構成となるべきであると思うのであります。しかしながら、国際間のデータ通信は、ごく一部の先進国で開始されたばかりでありまして、いまだ国際的にこのことの重要性が十分認識されているとは申せません。また、御承知のように、国際間のデータ通信による情報処理につきましては、いまだ基本的な取りきめが存在していないのであります。そのため、特定国の巨大独占資本による市場支配が先行するおそれがきわめて濃厚となっております。この問題は国際間の問題でありますので、国際
電気通信連合において原則的な取りきめがなされるのが最も望ましい姿であると思います。そのためには、平等と対等の原則に立った国際間の合意を成立させるよう
わが国が積極的に働きかけるべきであると
考えるものでありますが、この点についても
総理の御見解を
お尋ねいたします。
第六は、電話料金体系について広域時分制を導入する問題であります。御承知のように、
現行の通話
制度は、通話が加入区域内に終始するかいなかによって市内通話と市外通話に区別され、市内通話であれば時間に制限なく七円で通話できるのに対し、市外通話は
距離と時間とによって課金されることになっております。提案によりますと、全国五百六十二の単位料金区域を最低通話料金区とし、通話料を三分七円にしようとするもので、まさに画期的な改変と言うべきであります。この方法は、従来の市内、市外の料金格差を縮めて負担の均衡をはかる
意味においては一歩前進であることを認めるものでありますが、この単位料金区域の設定は、
国民の立場から見ると必ずしも合理的であるとは言えないのでありまして、われわれはかねてからいわゆるグループ料金制を提唱してまいったのであります。また、従来、時間に制限なく認められていた市内通話を一挙に三分単位とすることについては
国民大衆は、大
企業に奉仕するデータ通信のための通信回線の開放によって、
国民一般が
経済的な負担増となり、あるいは電話による通話が制限されることになるのだという疑問を感じているのであります。広域時分制の
採用は、はたして
国民の要望にこたえ得るものであるのか、また、通話料を三分単位とする根拠は一体何か、さらには、この単位料金区域を再検討する用意がはたしてあるのかどうか、郵政
大臣の御見解をお聞きいたしたいと存じます。
第七は、電報
事業の近代化とこれに関連する問題についてであります。電電公社におきましては、
改正法律案による市内電報、市外電報の区別廃止等のほか、慶弔電報
制度の廃止や夜間配達の時間帯の
改正などを企図しているようであります。これらの
制度改正は電報利用の実態等から見てやむを得ざる
措置なりとして提案していると思われますが、しかし、
国民にとって著しいサービス・ダウンであることは明らかであります。特に大衆化され、利用数が逐年上昇している慶弔電報
制度の廃止は全く理解に苦しむものであります。
次に、料金値上げとこれら一連の
制度改正に伴って電報通数は大幅に減少し、したがって電報
関係要員に
相当数の削減を生ずることが予想されます。これらのいわゆる電報
事業の
合理化対策がもし従業員の犠牲において
実施されるとすれば、断じてこれを許すことはできません。いかなる要員
対策を
考えておられるのか、電報
事業の将来あるべき姿とあわせて郵政
大臣の御答弁をお願いいたします。
最後に、電報及び電話の料金の値上げについて
お尋ねいたします。今回の
法律改正により電報料金や電話設備料が大幅な値上げとなるほか、広域時分制の
採用により市内電話は三分七円となり、実質的に利用者の負担増となることは明らかであります。
政府はさきに郵便
事業の赤字を理由に郵便料金の大幅値上げ案を提出いたしております。このような通信料金の値上げが直ちに物価にはね返ることは火を見るより明らかであります。電電公社は、四十四年度決算において二百六十八億円の利益をあげているのであります。しかも、
国民が相次ぐ物価の上昇に苦しんでいるときに、電話料金の実質的値上げや設備料の引き上げ、あるいは電報料金の大幅改定を何ゆえ強行しようとするのか。これは
生活の安定を求める
国民の強い願望に背を向けた、まさに
国民不在の
法律改正であると言わざるを得ません。ここにあらためて物価政策に関する基本的な姿勢について
総理の御答弁を求めるものであります。
なお、通産
大臣が不在の趣でありますので、通産
大臣に対する私の
質問は
総理のほうから
お答え願いたいと存じます。
以上をもって私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕