○永岡光治君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されました
郵便法の一部を
改正する
法律案に対し、郵便料金の値上げ反対の
立場から、
佐藤総理並びに
関係大臣に対し
質問いたすものであります。
まず、
佐藤総理にお伺いいたしたいのでありますが、目下、公害問題と並んで
国民の最大関心事である物価問題について、
総理はどのような
認識をお持ちなのかということであります。先日の
総理府統計局よりの発表によりますれば、昨年一年間の全国消費者物価上昇率は七・七%に達し、いまや物価問題は、かの朝鮮動乱によるインフレ時代以来、二十年ぶりの最悪
状態に立ち至ったことを示しておるのであります。
このような情勢の中で、
総理は、昨年十二月一日消費者団体の代表とお会いになられ、その席上、
国民の生活に密着したはがきや封書の値上げは押えたいと、このように約束されました。われわれ
国民は、
佐藤総理も四選によっていよいよ物価問題に真剣に取り組まれる御決意をお示しになられたものと
理解し、心から期待したのでありますが、そのお約束の舌の根もかわかないうち郵便料金の大幅値上げを決定され、ここに値上げ
法案の提出を見たのであります。一国の最高責任者である
総理大臣の発言が全く信じられないというこの姿は、有言不実行という従来の
佐藤内閣の
政治姿勢がいまだに改められていないことを端的に暴露したものと言わざるを得ないのであります。
国民大衆は
政治に対するやりきれない失望感を持ってこの
法案の成り行きを見守っているのでありますが、まず、
国民の期待を裏切って郵便料金値上げの
方針に踏み切ったことについての
総理としての弁明と、現下の物価問題にどう取り組もうとしているのか、真意のほどをお聞かせ願いたいのであります。
次に、郵政大臣にお尋ねいたします。
郵政事業が
財政面で非常に苦しい経営下にあることは
世界共通の悩みといたしまして私も承知いたしております。しかし、赤字が出るからといって安易に料金値上げにたよることは厳に慎しまなければならないのでありまして、郵便料金値上げの前にできる限り経営面での
努力をなすべきだと思うのであります。そこで郵政大臣にお尋ねいたしますが、経営面でどれだけ
努力をしたのか。
努力次第では、たとえ値上げするにいたしましても、その幅はもっともっと小さくて済むのではないかという点についてであります。経営面で
努力の足りないと思われる第一の点は、労務の正常化についてであります。
私は、今日の不正常な労使
関係が続く限り、幾ら郵便料金を値上げいたしましても、サービス面では何ら改善されることなく、
国民にとっては、料金は上がったけれども郵便の遅配や欠配は一向になくならないというばかを見る結果になると思うのであります。労使
関係の正常化により郵便労働者の勤労意欲が盛り上がるとすれば、経費の節約にもなるし、郵便の送達も
確保されるのであります。そのいい例は、昨年の年末闘争であります。郵政当局は組合側の超勤拒否闘争に対し三百万人——三百万人にも及ぶ臨時雇いを投入して業務の正常運行を
確保すると豪語していましたけれども、二千数百万通という空前の滞溜郵便物をかかえ、収拾のつかない大混乱を出現いたしたのであります。しかし、一たび闘争の妥結を見まするや、職員の勤労意欲が盛り上がるに従って、さしもの滞溜郵便物も数日を出でずして解消し、
懸念されました年賀郵便の送達も、一部を除き、ほぼ正常な運行が
確保された事実であります。当初から労使
関係の正常化が
確保されておりましたならば、ばく大な、何百万人にも及ぶ臨時の賃金も相当
程度節約できたでありましょうし、郵便の送達ももっともっと正常な運行が
確保できたことだろうと残念に思うのであります。これは一例でありまするけれども、このようなことは日常の業務運行にしばしば見受けられることでありまして、労使
関係の正常化に
努力すれば、経費の節約も業務の正常な運行も可能になるし、したがって、料金の値上げも小さくて済むということになるのであります。
さらにこの際、
国民の
立場から郵政当局の独善と労務政策の無能について若干言及しておきたいのであります。それは、郵便を利用する
国民の
立場から言えば、労使紛争がどうあろうと、そんなことは言いわけにならないのでありまして、
国民は、確実に郵便を配達してくれればいいのであります。その責任はあげて郵政当局にあると
考えているのであります。言うまでもなく郵便事業は
政府の独占事業であるからであります。しかるに、郵政当局はみずからの無能をたなに上げ、労働組合員が働かないとか、ストライキをやるからとか言って、労働組合が一〇〇%悪くて郵政当局は一〇〇%正しいというようなものの言い方をし、郵便の遅配や欠配の責任を労働組合側に転嫁しております。そして紛争が妥結しますると、みずからの業務の運行の責任はちっともとろうといたしませず、あげて労働組合を悪もの扱いにして、たとえば今次年末闘争の例に見るごとく、首切りを含む八千数百名の多数を処分して平気でいるのであります。一体、労働者側は一〇〇%悪くて使用者側は一〇〇%正しいというようなことがあるでありましょうか。紛争にはよって来たる原因があるはずであります。今次郵政の年末闘争の場合でも、聞けば、昨年四月の紛争の妥結の際団体交渉で取りきめられた労使
関係の正常化の約束を、郵政当局側が忠実に実行しなかったことに原因があると言われています。みずからの約束違反が原因で紛争を起こさせておきながら、郵政当局は一〇〇%正しいとして涼しい顔をし、組合側は一〇〇%悪いとして厳罰に処し、郵便の遅配や欠配解消の責任や業務の正常運行の経営者としての責任については何らの責任もとらないという、まことに、まかふしぎな独善がまかり通っているのを
国民はふしぎに思っているのであります。郵便の遅配や欠配に対する経営者の責任は一体だれがとるのでありましょうか。
国民の不満はその持って行き場がないのであります。いや、みずからの責任をとらないのみか、承るところによりますると、組合を弾圧したり、憲法違反のおそれさえある組合切りくずしに狂奔して、従来平穏であった職場に波乱を巻き起こし、労使の紛争を激化させ、さらに、みずからの業務知識の未熟さと相まって業務の運行を乱すような管理者が、労働組合弾圧に功績があったということでどんどん栄転していくというこの
事例を聞くに及んでは、まさに郵政事業の末期的症状もはなはだしいと言わねばならないのであります。労働組合弾圧対策あって事業のサービス対策なしという
国民不在の郵政行政では、幾ら郵便料金を値上げいたしましても無
意味であり、ばかを見るのは
国民だけと申し上げましても決して過言ではないと思うのであります。郵政事業は人件費が総経費の八〇%にも達する企業であり、人なくして事業なしという典型的な事業であるだけに、正常な労使
関係の確立こそまさに経営の
基本なりと信ずるのであります。労働者に対して組合の切りくずしや、所属組合によるところの人事差別や、GPU的な存在に堕してしまった労務連絡官制度や、陰険な監視労働は、郵便労働者の反発と抵抗意識の誘発には役立っても、明るい職場づくりと勤労意欲の高揚には決して役立ちません。労使
関係抜本的改善に対し、郵政大臣の誠意ある御
答弁をいただきたいのであります。
次に第二点として、小
規模な郵便局の運営を近代化、合理化することによって、かなりの経費節減が可能ではないかということであります。われわれの多年にわたる一貫した撤廃要求にもかかわらず、戦前の非近代的な郵便局制度の残滓がいまだに尾を引く特定郵便局は、現在その数一万六千有余に及んでおるのでありまして、さらにこれは年々増加している状況であります。一人か二人の職員を管理するために、管理職である郵便局長をあまねく配置しなければならないというこの制度は、経営的に見ても全くむだな制度でありますことは論を待たないところであります。無集配一局開局しますと、年間約二百万円の赤字を出すのであります。今日、年間三百局をつくっておりまするから、約六億というものがもう目に見えて赤字として計上されていくことになるのであります。このことについて、すでに行政管理庁におきましても、去る三十二年の勧告においては、分局、出張所等の制度を活用してこの不合理を是正すべきことを強く指摘しているのであります。しかるに、郵政当局は、この制度の改革には全く熱意を示さないのでありますが、一人の局長が
二つや三つの局を兼務することも可能でありましょうし、あるいは十局
程度を
一つにまとめての集団管理方式も十分可能であると思われるのでありまして、近代社会に即応した最も合理的な制度を考究し具体化することこそ、
国民から郵政事業を負託された経営者としての最大の責務であると思うのであります。郵便料金値上げの前にむだをなくす方策の
一つとして、小局運営の近代化、合理化について郵政大臣はどのようなお
考えをお持ちになっているか、お聞かせを願いたいのであります。
次に郵便事業の経営形態の
あり方についてお尋ねいたします。最近、
世界各国とも国営である郵政事業の行き詰まりを
打開するために経営形態についての再検討がなされておりまして、
イギリスにおいてはすでに公社制度に移行しております。
アメリカにおきましても、先般、郵便事業公社法が成立をし、近く公社が発足する予定でありますし、また
西ドイツ、オランダ等におきましても公社化への動きを示している模様でございます。ひるがえって
わが国における郵政事業経営の現状を見まするに、いまだに旧態依然たる官僚的事業運営から脱却しておりませんし、特に経営の最高責任者たる郵政大臣を含む首脳者が、席があたたまるひまもなく更迭するお役所的人事制度となっております。たとえば郵政、電電が分離されましてすでに二十二年になりますけれども、この間、郵政大臣の数は二十四人になっております。一人平均一年未満であります。しかも、郵政事業は郵便貯金、保険のほかに電信電話事業の管理監督、電波放送の管理監督までやっております。これで一体真に
国民の期待にこたえる仕事ができるでありましょうか。さらにまた会計面から見ましても、行政活動の統制を目的とする官庁
予算会計制度と相なっております。これは現業官庁にはきわめて不向きであります。
このように、事業の経営には適合しない諸制度のもとにありましては、事業経営に対する明確な責任体制の確立も、また、長期的展望に立った継続性のある一貫した経営政策の策定、実施も、とうてい期待することはできないのでありまして、私は、つとに郵政事業の経営形態を抜本的に再検討するとともに、いますぐにでも企業としての総合的長期的展望に立つ経営調査的な部局の新設の必要を痛感いたしておるものであります。
なおまた、すでに郵政
審議会からも経営形態の改善についての答申がなされているにもかかわらず、
政府は、今日なおこの問題について積極的な
姿勢をお示しになっていないのでありますが、この際、
国民の負託にこたえる郵政事業の経営形態の
あり方について
総理並びに郵政大臣のお
考えをお聞かせ願いたいと思うのであります。
さて、次にお尋ねいたしたいことは、この料金の値上げによって、どのような郵便サービスの改善がなされるのか、その明確なプランをお示し願いたいのであります。遅配、欠配をはじめとする実質的サービス低下により、郵便事業に対する
国民の不信感が増大いたしております今日、単なる赤字解消が目的であるというような理由で安易な料金値上げが許されるはずはないのでありまして、料金値上げに対する反対給付として、
国民の信頼を回復するための具体的な施策が約束されなければならぬことは当然であろうと思うのであります。その
一つといたしまして、現在、郵便に対する
国民の不信感の最大の原因は、郵便の送達速度が不安定なことにあるのでありまして、したがって、一定の時刻までに差し出された郵便物は所定の日時までには確実に配達されるという標準送達速度を確立し、
国民に約束することが目下最大の急務であると
考えるものでありますが、いわゆる郵便タイム・テーブルというようなものを確立される用意があるのかないのか、他の改善策とあわせまして郵政大臣から明確な御
答弁をお願いいたします。
最後にお伺いいたしたいことは、新聞、雑誌、学術刊行物等のいわゆる第三種、第四種郵便物の料金設定についてであります。現在、新聞、雑誌、学術刊行物等、
国民の
経済、教育の面や、
文化生活の面において
影響の大きいこれらの郵便物は、その重要性を認めまして、封書やはがきとともに、
基本料金として、一種の封書、第二種のはがきとともに第三種、第四種として法定料金になっておるのでありまするが、この
改正法案によりますれば、これを法定料金からはずしまして、省令料金に移譲しておるのでありまするが、このような本来の思想というものをどのような理由で変えられたのか、お尋ねをいたしたいのであります。
また、省令移譲につきましては、基準を設け、また郵政
審議会に諮問するというパターンを条文上は一応整えておりますが、その基準たるや、封書の料金より低いものでなければならないという全く無
意味な基準でありまして、歯どめとしては、とうてい機能を果たすことができないと思うのであります。
また、郵政
審議会への諮問につきましても、これをチェック
機関として諮問することになっておりますけれども、現在の郵政
審議会の
実情におきましては、はたしてこのような従来の
国会の
議決にかわる責務を果たし、利用者たる
国民の利益擁護を期待することが可能でありましょうか。大きな疑問を抱くものであります。これは要するに、法律上は民主的な行政執行体制を擬制し、公共料金を法律から行
政府の恣意にゆだねるものと断ぜざるを得ないのであります。もしこれが杞憂であるとするならば、少なくとも郵政
審議会の強化についての構想をお持ちのことと思いますので、これらの点について、
総理並びに郵政大臣から明確なる御所見を承りたいのであります。
以上をもちまして、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕