○田代富士男君 私は、公明党を代表して、問題を主として内政にしぼって、
総理並びに
関係大臣に
質問をいたします。
総理は、先日の
所信表明において、「一九七〇年代の
わが国は、現在、その長い歴史の中でも、最も力の充実した時期、いわば壮年期にあるということができる」と述べ、わが世の春を謳歌し、さらに、
日本列島の
未来像についても述べております。
総理の
演説を聞く限り、
日本列島の
未来像は、まさにバラ色と言えましょう。確かに、全
国民のエネルギーを新しい日本の
建設に集中するためには、一国の
総理として、
国民にその
未来像を示すことも必要でありましょう。しかし、
現実は、バラ色とはほど遠く、緊急に解決せねばならない諸問題が山積しているのであります。一九七〇年代は、生きがいを求める時代であるといわれております。しかし、私は生きがいを求める前に、まず生きることを保障するため、
政治がなさねばならぬことがあまりにも多いと思うのであります。
現在、朝夕のラッシュアワーにおける通勤電車の混乱は想像を絶するものであることを、
総理は実感をもって御存じでしょうか。東京、大阪等の各駅には、あふれた通勤者を電車の中に押し込む、押し屋という、世界でも日本だけにしかない新職業が誕生し、日本
経済をささえる勤労者は、通勤に大半のエネルギーを失っております。通勤電車の混乱は東京、大阪のみならず、地方の各都市にも及んでおります。最も急を要する通勤電車のこのような殺人的混雑は、いつ解決できるのでしょうか。
見通しは立っていないのであります。
また、
人間の生活に、空気同様欠かせない水や電力の供給についても、その前途が深く憂慮されております。高度
成長政策に伴う工業
生産の発展は、水、電気の需要の増大をもたらしておりますが、
政府の試算によれば、
昭和六十年には、日本国じゅうのあらゆる河川を限度まで開発しても、関東、関西、山陽等の各地では水不足がくると予測しております。しかも、
現実には、ダム
建設も
政府の不手ぎわのため各地で住民の
反対にあい、
計画は遅々として進んでおりません。そして河川の水も、
産業廃棄物中の重金属によって汚染されております。はたして
国民は、これなくしては一日とても生きていけない水を、いずこに求めていけばよろしいのでしょうか。
電力についても同様であります。新しい発電所の
建設は、
公害発生源として各地で
反対され、現在、電力の供給予備率、わずか二ないし三%で、ここ一、二年のうちに電力使用制限を予想されるなど、電力事情もまさに薄氷を踏む思いであります。その他、石油をはじめとする
資源不足の問題、住宅難、辺地の医者の不足、出かせぎ問題、過密過疎問題等に対する
政府の
施策の貧困は、表現することばも見当たらないほどであります。
総理は、胸を張って、
わが国の壮年期や
日本列島のバラ色の
未来像を説き、また、与党自民党の議席の多いことを声を大にして誇ってみても、言えば言うほど、
国民にはうつろに響くのみであります。
佐藤総理、あなたは、一億
国民のとうとい生命と生活を預かる国政の最高
責任者として、その
現実を冷静に見詰め、全
国民に心から訴え、抜本的
対策を立てるべきと思うが、その決意を伺いたいのであります。
以下、私は具体的な諸問題について
質問をしたいと思います。
さて、
総理は、すでに七年前、政権の座についたそのときから、物価安定をかたく
国民に約束をしたはずであります。にもかかわらず、物価、特に
消費者物価の年々の上昇は目をおおうばかりであり、明らかに重大な公約違反と言わねばなりません。
総理、あなたが
総理に就任する直前の
昭和三十九年九月に比べてサンマは実に五・一倍、アジは三倍の
値上がりとなり、その他イワシ、カレイ等の大衆魚も二倍をこえる
値上がりを見せております。また、キュウリ、タマネギ、キャベツ等の野菜の
値上がりもすさまじく、最近の東京、大阪では、二百円以上もする大根が店頭に出回る始末であります。その他、土地、住宅あるいはサービス料金の
値上がりももちろんであります。
この間、
政府は、常に
国民生活よりも
経済の
成長を優先する立場から、
消費者よりも
企業の利益を重視し、いままで提言されてきた数多くの物価
対策がたなざらしのままに終始してきたのであります。しかも、さきの
政府演説においても、いたずらに同じ
対策を羅列しているにすぎないばかりか、四十六年度の
消費者物価を五・五%以内の上昇率で押えると言明しているのであります。四十五年十二月には、一年前に比べて七・二%も上昇した実績がありますし、また、学識経験者や民間の
経済金融等の機関の予測を見ましても、
国民感情をごまかすため故意に低くしていると言うほかはないのであります。はたして五・五%の
政府の
見通しが達成できるかどうか、何かほかにきめ手となる
対策を
考えているのかどうか、お伺いしたい。
また、
政府は、その
経済運営の
基本である新
経済社会発展
計画で、四十五年度から五十年度までの年平均上昇率を四・四%とし、五十年度には三・八%程度にするとしておりますが、四十五年度を七・二%、四十六年度を五・五%として
考えた場合、はたして五十年度には三・八%になるのかどうか、
政府の決意と
見通しをお伺いしたいのであります。
当面緊急を要する生鮮食料品、特に野菜価格安定のための
施策はどうでしょうか。昨年春、農林省は、米の
生産調整に伴う野菜への転作によって秋には暴落さえ予測したのであります。ところが、
現実は全く逆であり、野菜の高騰は、台所を預かる主婦としてやりくりに頭を悩ますばかりであります。倉石
農林大臣は、去る十四日、生鮮食料品価格安定
対策本部を設け、農林省の全力をあげて価格安定に取り組むとして、るるその
対策を述べておりますが、問題はその効果であります。はたして実効があがるかどうか、
総理の
所信を承りたい。
市場
制度など流通機構の不備のため、最近の野菜の値段は、市場に入荷する量とは無
関係に、需給原則に合わない動きを見せております。たとえば、入荷量が昨年並みであるのに値段が五倍になったり、五割ぐらいふえているのに値段が二倍になっているなど、大衆にとっては全く納得できない不合理な価格が形成され、一部産地商人による思惑買い横行による価格操作の疑いも出ているのであります。この
実態をどう把握し、どのように
処理されるのか、お伺いしたいのであります。
そのことに関連して、物価安定
政策会議が昨年十月、野菜の価格安定
対策について提言をしておりますが、
総理はこの提言も過去のいろいろな提言と同様にたなざらしのままにしてしまうおつもりなのかどうか。いずれにしましても、
総理が新年の
記者会見において、「
消費者物価については、昨年以上に努力し、思い切った大勇断が必要だ」と述べたことが真意であるならば、この野菜価格安定に、まず実行をもって
国民の前に示していただきたいと思うのであります。毎日食ぜんにのぼるものだけに、不買運動もできずに、高い野菜に泣き寝入りしている
国民に対して納得のできる
答弁をいただきたいのであります。
さらに問題なのは、最近の物価高騰に関連して、
政府が所得
政策の導入について
考え始めたということであります。
総理は、昨年十二月の経団連の会合や新聞紙上における新春対談において、「
物価上昇のおもな原因は賃金である」とし、所得
政策導入を示唆しておりますが、その意図が春闘
対策であることは明らかであります。私は賃金抑制のために所得
政策を導入することには絶対承服できないのであります。なぜならば、
わが国の
物価上昇の原因は、
政府の
生産第一主義の
経済運営、すなわち、大
企業擁護の財政金融
政策によるものであり、中小
企業や農水
産業の低
生産性部門に重点的な
対策を怠ったためであります。それを賃金の上昇に転嫁することは誤りであります。そのことは、大川委員会の
報告や、過去十五年の賃金上昇は
生産性上昇を下回っているという日本
生産性本部の発表によっても明らかではありませんか。その上、さきの
経済白書の一時間当たりの製造業労務者賃金の国際比較によれば、
わが国の賃金水準が西ドイツやイギリスの約三分の二、アメリカの四分の一であり、現在の
経済成長をささえた勤労の報酬としては、まことに低い水準に置かれているのであります。したがって、まず
政府のなすべきことは、所得
政策導入という名目で賃金を抑制する以前に、
物価上昇の要因に対してその解消策を着実に実行することであります。
国民大衆は、この物価高の暮らしの中で、賃金の上昇に一るの望みを託しておるのであります。その願いを踏みにじり、かつ
物価上昇の
責任を転嫁する
政府の姿勢に、
国民は決して納得できないと思うのでありますが、
総理の所見を伺いたいのであります。
また、
政府が真に
国民生活を物価高から守るという決意であるならば、当分の間、公共料金を据え置くべきであります。ことばだけは極力抑制すると約束しておりながら、実際には、これを安易に値上げしてきたことは明白な事実であります。たとえば昨年の私鉄運賃であります。
国民の値上げ
反対の世論に、さすがの
総理も一時は値上げの再考を求めました。ところが、大手十四社の強引な
政治交渉によって、株主配当金を一律に一分減配するという条件で値上げを認めることになったのであります。しかも、増資払い込み中のある会社は、一分減配の見返りとして、一分の無償交付を行なったといわれております。その上、多額の
政治献金を支出しておる事実は、
一体何を物語っておるでしょうか。これではまるでいなか芝居ではありませんか。もし
企業側で値上げ要求するほど経理が逼迫しておるのであれば、多額の
政治献金はできないはずであります。逆説すれば、
政府・自民党は、
政治献金を出す
企業に何らかの理由をつけて値上げを認めたとしか思えないが、どうか。さらには、
政府はことしから郵便、電報料金の値上げを行なおうとしております。まさに
政府主導型の
物価上昇というほかはありません。しかも、一方では、
国民に対して
消費態度が悪いとか、大幅な賃金を得ているからだなどと言って、
物価上昇の
責任を
国民に転嫁していることは言語道断であります。私は、物価が安定するまでの当分の間は、郵便、電報料金を含め、公共料金を据え置くべきであると
考えますが、
総理の
見解を伺いたいのであります。
なお、その間において、郵便事業の根本的改革に
政府は全力をあげて取り組み、事業収支が
赤字であるから値上げ以外にないという安易な事業運営にメスを入れるとともに、
公共性、
国民の
福祉増進の立場に立って、納得のいく姿にすべきであると思うのであります。その上、
政府は、バスやトラックの運賃を
運輸審議会にはからずに決定できるように、また郵便料金の改定を法律でなく省令でできるようにしようとしております。わが党は、これまで各種の審議会ですら値上げの隠れみのになる可能性が強いので、第三者的な裁定機関で料金を検討、決定すべきであると主張してまいりましたが、その際、
政府は審議会で十分対処するとの
答弁であったのであります。
国会や審議会の検討を避けて、
国民の目の届かないところで料金を決定しようとする
政府の姿勢は断じて許せません。
総理の
見解をお伺いしたい。
このことに関連して、タクシー料金についてお伺いいたします。現在、大阪府下の衛星都市のタクシー料金は大阪市内とほぼ同一料金となっておりますが、府下衛星都市の業者から
基本料金の値上げ申請が出されていたのであります。ところが、去る一月二十二日、
運輸省は、大阪府民の
反対の声を押し切り、ついに一五・一六%値上げ認可に踏み切ったのであります。これに対して、一昨日、大阪府下三十市の市長会も、多くの大阪府民の
反対の声を受けて値上げ認可撤回を決議したのであります。これでも値上げしなければならないでしょうか。また、東京、大阪を
中心とした大都市においては、無線タクシーの二割割り増し料金
制度の新設を
運輸省に申請しているのであります。この申請については、大阪の婦人団体が大阪陸運局に押しかけて強力に
反対しているのであります。もし、これが認可に至るならば、実質的なタクシー料金値上げとなり、他の物価の値上げを誘うものであります。業者の圧力に屈して認可寸前と言われております。これが全国的に波及するおそれがあるので、小さな問題であるかもしれないが、
総理の
見解を伺いたいのであります。
また、現在の異常な物価高を解決するためには、公正かつ自由な
競争政策が必要であります。
総理は、かつて、
生産性が上昇している
企業については、その価格の引き下げを期待すると述べております。その期待にこたえて引き下げられた製品がはたしてあったでしょうか。いま大きな問題になっている管理価格の問題は、値段の下がるべきものが下がらないというところに本質があると
考えます。なぜ下がるべきものが下がらないのか。
総理は、現行独禁法の厳正な運用によって対処していくと表明しておりますが、昨年、ビールの一斉値上げが堂々と行なわれたときにも、対処し切れなかったことがはっきりしているではありませんか。したがって、独禁法の改正、強化に踏み切り、公正な
競争による
消費者保護をすべきと思うがどうか。
一方、
政府の価格形成に対する介入が
競争促進を妨げ、かえって
物価上昇をもたらしているのではないかということが、物価安定
政策会議からも提言されております。その典型的なものとして、
政府のとっているカルテル容認
政策や過剰
行政指導があります。すなわち、独禁法適用除外カルテルが昨年末で実に八百四十六件もの多くを数えるに至っていることであり、それに加えて、
政府の
行政指導という名目で独禁法違反である価格協定を行なわせております。たとえば昨年、清酒の値上げの際には、国税庁の指導のもとに一定時期に一定の幅で値上げが行なわれたのであります。この点について、まず
政府みずからの姿勢を改めるべきであると
考えますが、いかがでありましょうか。
最近の著しい物価高騰と並んで、
国民の重税、不平等感はきわめて高く、大幅減税を求める声は日増しに強くなってきております。しかるに、来年度の税制改正案をながめるとき、まさに増税ムードの中のミニ減税であります。高
福祉高負担の美名のもとに、所得減税も著しく小幅にとどめようとしているのであります。所得税の減税額は、
昭和四十五年度が二千四百六十一億円であったのに対し、新年度は千六百六十五億円であり、前年度に比べて七百九十六億円減という大幅な後退であります。しかも、来年度の租税の自然増収額は一兆六千億円以上が見込まれると言われており、大幅減税が十分可能であるにもかかわらず、自然増収の一割程度の超ミニ減税にとどめたのは全く不可解であり、はなはだ理解に苦しむものでありますが、
総理の所見をまずお伺いしたいのであります。
また、
政府は今回の所得減税によって、
わが国の所得課税最低限は欧米先進国並み、あるいはそれ以上の水準に達し、国際
関係比較の上からも決して遜色はないとの判断をしておりますが、このような国際比較からの減税論は全くナンセンスであります。額は確かに欧米並みになりましたが、
わが国の
物価上昇率は先進国中第一位であり、また、個人の所得水準、社会事情、給与体系、税体系の異なるこれら諸外国と、所得税の課税最低限だけを比較することがいかに無理なことか、指摘するまでもないのであります。むしろ
国民生活の実情から
考えてみても、この際わが党の主張する所得課税最低限、独身世帯四十八万五千円、親子五人世帯百五十万円まで引き上げるべきであると提唱するものでありますが、
総理及び
大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
またさらに、税の不公平を税制面で代表しているのは各種の課税優遇
政策であります。すなわち、輸出振興や資本蓄積促進などの名目で実施されている各種の特別
措置によって、四十五年度の減税額は国税及び地方税へのはね返りを合わせて五千億円を上回る額に達しているのであります。明年度の所得減税額千六百億円と比べて実に三倍に達する減税額であり、大
企業への超サービスぶりがうかがえるのであります。特にこの中で見のがせないのは、交際費課税の特例であります。
企業の交際費はいまや
公害予算の十倍もつぎ込まれており、飲み食い接待等は、明年度はその額が一兆円をこえようとしております。そして、その原因は放漫な交際費の支出を認める税制と、
政府の
企業に対する過保護
政策にあることは明白な事実であります。にもかかわらず、
政府与党が交際費課税の強化にどうしても踏み切れないのは、
政治献金等に直接
影響を及ぼすからであるともいわれております。
政府は、このような
国民の疑惑をはらすためにも、税負担公平の原則の税法のたてまえからも、勇断をもって、大
企業優遇の租税特別
措置の改廃、なかんずく交際費の非課税限度を現行の半額まで引き下げる
意思があるかどうか、お伺いしたいのであります。
さらに、
自動車新税についてでありますが、
政府は、道路
財源として
自動車重量税の名のもとに、車検を受ける
自動車を対象として、その保有者に、重量に応じて課税することとしております。そして、初年度四百億円、平年度千六百億円の税収を見込んでおりますが、四百億円の支出
内容も明らかでなく、むしろ取りやすいところから取るという印象を与えるものであります。税理論からしてもまことに不可解なものであり、むしろ四十七年度から設置を
予定されている
自動車重量税を
財源とする総合
交通特別会計を含めた総合体系の確立が先決であると
考えられますが、この点について
大蔵大臣の御所見を伺いたい。
また、
大蔵大臣は、間接税の洗い直しを行なうと、たびたび
国会で約束しておりますが、現在の間接税、特に物品税の体系は
国民生活とは大きくかけ離れているのであります。一例をあげれば、日常生活必需品であるみそ、しょうゆには税がありませんが、同じ日常必需品の砂糖には一キログラム十六円の砂糖
消費税がかかっており、実に卸し価格の約一五%になっております。この一五%という比率は、乗用車や電気冷蔵庫の物品税と同じであります。ダイヤモンドでさえ二〇%であることを
考えると、こういう税のあり方は早急に是正さるべきでありますが、いつまでに
一体洗い直しをするのかどうか、お伺いしたい。
政府は、砂糖
消費税については嗜好品であるからという
答弁を繰り返しておりますが、生活の中では嗜好品でないことは明白であり、さらに、砂糖には一キロ当たり四十一円以上の関税がかかっているのでありますから、少なくとも十六円の
消費税は廃止すべきであると思うが、どうか、所見を伺いたい。
総理は、
施政方針演説の中で、「社会の健全な発展と
国民の
福祉を
確保するためには、社会保障体制の整備をはからなければならない」として、それぞれの項目をあげ、改革をすると述べておりますが、
内容的にはきわめて具体性に欠け、ただことばの羅列に終わった感を受けたのは、私一人にとどまるものではないと思うのであります、社会
福祉施設の貧困、恵まれない
老人、母子家庭あるいは心身
障害者などに対する救済
措置の不備、
医療体制の混乱など、いずれを見ても社会
福祉の立ちおくれは、
総理のことばとは逆に、生きがいを失なわしめる方向をたどっているのであります。
国民大衆に希望を与えられる明確なビジョン、及び
具体的内容と実施
計画を
国民の前に示すべきであると思うが、特に
老人、児童、婦人、身体
障害等に分けて、その目標と
計画を示していただきたい。
また、憲法第二十五条に定められた理念に基づいて、社会保障に関する
施策の原則、国及び地方公共団体の責務、
施策の
基本となる事項を定め、社会保障
制度を総合的に整備するために、社会保障
基本法の制定を急ぐべきではないかと痛感するものでありますが、
所信のほどを伺いたい。
今
国会の焦点といわれている健康保険料の改正についても、同様の問題があることを指摘しておきたいのであります。四十五年度末における健保
関係の
赤字は、政管健保が千九百五億円、日雇健保が千百九十二億円、しかも四十六年度にはさらに七百億が上積みされる
予定であります。これに対して
政府の行なった
措置は、再診料の新設など、患者の一部負担増、あるいは家族の
医療給付割合を五割から七割に引き上げるとか、標準報酬月額の最高限度を引き上げるなど、被保険者、患者の負担を大きくふやし、
医療給付側の負担には何ら手がつけられていないのであります。これらの
施策は、率直に申し上げて一時しのぎの
赤字対策以外の何ものでもありません。特に再診料百円の新設、入院中の食費引き上げなどは、政管健保の加入者が所得の低い中小
企業に多いことを
考えるならば、かなり家計負担の拡大となり、受診抑制を招くことにもなると思うのでありますが、
総理はこのたびの各種の引き上げについてどのように
考えられているのか、率直な
答弁をお聞かせ願いたいのであります。
また、
国民が最も不満に思うことは、なぜ健保
対策が常に収入面からのみ
考えられ、支出面の不合理を是正して
医療費のむだづかいを解消する
対策を真剣に取り上げないのかということであります。昨年一月の九・七四%の
医療費値上げで、総
医療費は三〇%も急増しており、この調子でいけば、ことし
医療費が上がれば一そう
赤字対策を
考えなければならないのであります。
医療費の急増とそれに基づく健保財政の
赤字は、技術を尊重しない診療報酬体系の合理化、現物給付、でき高払い方法の再検討、乱検査、乱投薬の厳重な監査など、
医療制度の
抜本改正を抜きにしては永久に解決できないのであります。一歩一歩不合理を是正していかなければ、
国民は負担の増大を絶対認めることができないのであります。したがって、圧力団体の抵抗を口実とする
赤字対策だけでは、とうてい
国民の納得は得られないと思うものであります。
総理は、この辺で真剣に
抜本改正への決意を固めるべきであると思いますが、決意のほどを伺いたいのであります。
総理は、五年前の五十一
国会の
施政方針演説において、「住宅は、
国民のいこいの場、家族の親睦の場であり、青少年の
人間形成の場として、健全な社会の基礎をなすものであり、住生活の安定なくして
国民生活の安定はない」、このように述べ、
昭和四十五年度末までに一世帯一住宅を実現すると、
国民の前に決意のほどを明らかにしましたが、五年後の今日、その
現状はどうでありましょうか。東京、大阪等の大都市圏の住宅難世帯はほとんど減少しておらず、いまなお全国で三百六十万世帯にのぼる住宅難世帯が
存在しており、その大部分は民間木造賃貸アパート住いとなっております。その契約
内容は、六畳一間で家賃が一万円をこえ、さらに入居の際には、おおむね、ただとられてしまう礼金が家賃の一カ月から二カ月分、権利金、敷金が同じくそれぞれ一カ月から二カ月分、不動
産業者の紹介料が一カ月分となっております。特に大阪においては東京の場合と異なり、保証金という名目で、入居時の一時金を半年から一年分支払わなければならない慣習となっております。すなわち、六畳一間で一万円程度の家賃のところに新たに入居するのに必要な一時金の総額は、少なくとも東京では五万円から八万円、大阪では七万円から十三万円くらいであります。そして、二年ごとに一カ月から三カ月分の契約更新料を取られ、一方的に一〇%以上も家賃が値上げされるのであります。その上、子供が生まれたら出ていかなければならないという契約をしいられ、さらに、プライバシーの侵害に気を配らなければならないような劣悪な木造賃貸アパートに耐え忍んでいるありさまであります。その詳細な
実態については、先日わが公明党が発表した「民間木造賃貸アパートの
実態調査」が如実に物語っております。しかも、今後ますます核家族化が進行するであろうことが予想されるのであります。すなわち、これからの五年間には、戦後二十二年から二十四年にかけてのベビーブームのときに誕生した若者が一斉に結婚適齢期を迎えるのであります。すでに四十五年度には三十一秒に一組の割合で新しい家庭が生まれ、実に百万組を突破しておりますが、バラ色の
未来を期待している若者にとっては、その夢とは
反対に、大半が、さきに述べた木造賃貸アパート住まいとなっているのであります。このような状況を
考え合わせるとき、現下の住宅問題は心底から
国民の生きがいを奪っていると言っても過言ではありません。住宅よこせ都民大会に象徴されるごとく、
政府の
施策に対する怨嗟の声が日増しに高まっている現況を、
総理は、はたして御存じでありましょうか。
改善されていない住宅事情について、住宅宅地審議会は、最近の
答申の中で、「四十一年度に策定した住宅
建設五カ年
計画が過小であったことによる」と、その原因を指摘し、大都市の勤労者に対する公的住宅の画期的拡充を強く要請しております。当然、
政府はこれを受けて、公的住宅の割合をふやすべきであり、公営住宅への入居基準も大幅に緩和すべきではないでしょうか。また、当面の
措置として、弱い立場に立たされている借家居住者を保護し、合理的な市場を形成するために、昨年の六十三
国会においてわが党が提唱し、
総理が検討を約束された家賃の公示
制度を早急に実施するとともに、貸し家、貸し間の契約
内容を規制し、適正化をはかるための立法
措置を講ずべきであると
考えるものでありますが、
総理の
所信を伺いたいのであります。
いずれにせよ、
国民は、一世帯一住宅が実現するその日が一日も早からんことを願っております。
総理は、今度こそ、五年後の
昭和五十年までには必ず一世帯一住宅を保証すると
国民に確約すべきであると思いますが、具体策を通して決意のほどをお伺いしたいのであります。
最後に、万国博会場のあと地利用についてでありますが、欧米諸国では、「初めにあと地あり」ということばがあるくらいに、会場のあと地利用を重視して、万国博誘致の時点ですでに利用
計画をきめているのであります。ところが、
わが国においては、あと地をめぐって、やれ公務員宿舎にしたいとか、古米の倉庫だとか、砂糖に群がるアリのように、
政府各省庁のぶんどり合戦が入り乱れるという醜態を招き、やっと昨年の末になって万国博跡地利用懇談会の
答申がまとまるといった超スローモーぶりであります。
答申では、非常識な切り売りプランを退け、
国民の要望にこたえて、会場あと地全域を緑に包まれた文化公園とし、一括利用を強く打ち出しております。
申すまでもなく、公園や緑地は、都市のアクセサリーではなく、むしろ都市の健康を保つ栄養剤であり、文化の
成長をはかるバロメーターでもあり、
未来への遺産となるものであります。さらに、それは、
公害の防波堤であり、汚染された空気を清浄にするフィルターでもあります。このような観点からも、
政府は当然
答申を尊重すべきであり、実質的な切り売りとなることは絶対に排除すべきであると思いますが、その決意のほどをお伺いしたいのであります。また、この緑に包まれた文化公園にどのような文化的施設を誘致するのか、あわせてお伺いしたいのであります。
なお、今後の運営については、万国博の運営収支の黒字百六十四億円を基金とした記念財団をあてる方向が
答申で示唆されているのでありますが、
政府をはじめ地元の大阪府及び大阪市などの
協力体制がなければ、緑に包まれた文化公園は絵にかいたもちとなることは明らかであります。そこで、進歩と調和の遺産を生かすための
協力並びに実行体制について
総理の所見をお伺いしたいのであります。
以上、
人間らしい、生きがいある人生を送りたいという
国民の切なる願望をくみ取り、
総理並びに
関係閣僚の誠意ある
答弁を期待して、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
国務大臣佐藤榮作君
登壇、
拍手〕