○亀田得治君 まあ具体的な
関係事項はこの
程度にしておきましょう。
そこで、午前の最後にも
参考人の
意見を聞きましたが、いまともかく
司法の
独立ということが専門家だけじゃなしに、国民の皆さんの関心を集めておるのは、
裁判官だけはやはり忠実に
憲法に従って、良心に従って、そうして行動をしていってもらいたい。政府といえ
ども、これは間違ったことをやることがあるわけでして、そういうことがあれば、
裁判所に持っていけば、刑事事件であっても、あるいは民事事件であっても救ってもらえる。これが新
憲法下の
裁判所の非常に大きな特色でもあり、また、民主主義の最後のとりでとも言われておるゆえんでもあるわけでしょう。それが侵されやせぬかという心配があるわけですね。そのもとの起こりは、これは皆さん自身がよく知っているように、いろんな
行政事件、公安事件等で政府側が敗訴するといったような際に、国家公安
委員長とか、法務大臣が
裁判所の判決を非難しましたわけです。これでは
考えなきゃいかぬとか、そういうような空気の中から
裁判所に対するいろんな多数党側からの
調査活動というものが始まってきたことは、これはまぎれもない事実なんです。
最高裁判所が、初めはそういう出発点で、
調査会をつくるようなことはどうも
司法の
独立から言って思わしくないというふうな意向を表明したこともありました。ありましたが、最近はもうそれに押されてしまったんだね。むしろ政府が
考えておることを、
最高裁長官がみずから先頭に立って、どんどんやっていくというふうな事態ですね。だから、政府のほうは、あるいは向こうはよくやっておる、あれだけやっていれば、こっちから干渉する必要はない、三権分立だ、この領域には入ってはならないと、今度は逆に、
国会まで、シャットアウトされるというふうなかっこうが出てきておるわけですね。裏では、政府に迎合するような方向をとりながら、表では、
司法権の
独立だ、ほかのものは関与せぬでほしい、こう言いましても、国民が
考えておるのはそういうことじゃなしに、三権分立とかそういう形式論じゃなしに、それでは自分たちの
基本的人権が権力者から侵された場合に、はたして守ってもらえるのかどうか、このことを危惧しておることと思うのです。
これは私は公安事件や、
行政事件には、
裁判官のこの点についての姿勢によって、
結論は非常に変わってくると思うのです。それは国民が心配するのはあたりまえだし、いわんや
法曹の人が、まじめに人権ということを
考える
法曹であれば、これは政治的には、左であろうが、右であろうが、みんな心配するのはあたりまえだと思うのです。問題の本質はそこなんですね。そこにあるんです。そういう立場に立って
再任拒否と
新任拒否がやられたから、それでこれが大問題になっておる。まあ
法律の理屈から言うと、ともかく十年切れたんだから、
採用する、しないはおれのかってだ、それはそう言っても、いままでの慣例等に反するんじゃないか、まあ理屈は両方からつけられますが、そういう区々たる理屈の問題では、これは片づかぬのですね。
最高裁判所が、政府の権力からきちんとした姿勢を守っていくという姿勢がくずれてきているんじゃないか。
最高裁判所の
裁判官の任命の問題、こういうことももちろんみんな関連して
考えておりますよ。
佐藤総理になってから、もうすでに十四名
裁判官を任命したわけでしょう。ほとんど佐藤総理の息がかかっておる。初めはしかし外部の
意見も聞きながら、佐藤総理もやったようですが、下田
裁判官の任命などは全くそうじゃない、これは。これはおそらく安保問題とか、自衛隊の第四次防衛力整備計画とか、そういったようなことに関連して
憲法第九条とかさらに問題になってきやせぬか、そんなことを
考えておるのかもしれません、佐藤総理としては。強引に下田
裁判官をもってきたようですね。だから、表向き聞けば、もう
最高裁は決してそんな政府の言いなりになっておらぬとおっしゃるでしょうが、そうじゃないですよ。そこをみんなが心配しておる。だから、たまたまそのことを
発言したのは、この下田判事ですよ。これはその意味ではきわめて正直な人です。思っておることをずばり言ったんです。ともかく体制を批判するような人は
裁判官をやめたほうがいいでしょう、こうおっしゃるわけですからね。
新任、
再任そんなことはあたりまえのことで、現在おる人でもそんな人はやめてもらったほうがいいんだと、こういう
考えで
再任問題、
新任問題を実際は扱っているんじゃないですか。だから政府からはきわめてほめられるわけです。その点どういうふうにお
考えですか。
そうしていま日弁連なりいろいろな方がこの
司法権の
独立の問題について心配しておる。何を心配しておるのか、そこをどういうふうに理解しておるのですか。皆さんは、日弁連会長の談話があったりいろいろしますと、いや、ことさらに誹謗しておるとか、疑惑を起こさせるようなことをしておるとか、いろいろなことを言いますが、そうではないのです。皆さんの体制がいま私が言うたような方向に動いておる。それに対して
ほんとうに心配しておるんじゃないですか。誹謗でもなんでもない。そういう事実を心配しておる。下田
裁判官が十五人の
裁判官の一人としてたまたまそのことをはっきりおっしゃっておるわけです。これを見ればやはりわれわれが心配しておったとおりのことを現在の
最高裁の諸君は
考えておるんだと思わざるを得ないわけですね。こういうことになりますと、これはどうしてもやはり
再任なり
新任なりそういうことを決定していく
最高裁の長官が出てきて、
ほんとうは十五人なら十五人来ていいですよ。出てきて、
考えを述べるべきなんです。民主主義の
基本に触れる重大な問題なんです。あなたにそんな
考えを求めても、これは第一、人のことだし、始まる前にちょっと相手がおかしいと申しましたのはそういうことなんでしてね。これだけみんな心配しておるのですから、長官がどうして出てこないのですか。
国会に何も出てはならぬと書いてない。国民がこれだけの疑惑を持っておれば進んで来るべきでしょう。人が批判をすれば要らぬことを言うなと、
弁護士会が言えば、在野の分を守れと、そういうことではいかぬのですよ。それはやはり国民の信頼感がなかったら、そうして幾ら現在はこういうふうに批判を封じておっても、第一国民が信頼しないのです。
たとえばここにも新聞を持ってきておりますが、四月十三日、京都の清田祐一郎外一名、これは公安事件の被告人ですが、一審無罪、二審有罪で、上告を取り下げましたね。その取り下げ書の中で、こんなことを言っておりますよ。「
最高裁は最近、
憲法で保障された
思想、
信条、結社、表現の自由を否定し、
裁判官の再、
新任拒否、
司法修習生のひ免などを行なってきた。もはや人権擁護の府でなく、人権弾圧機関に堕落した。このような
状況のもとでは公正な審判を受けることは期待できない。
最高裁の腐敗、堕落に抗議し、無意味な上告を取下げる。」と、こういうことを被告人から突きつけられておる。それは極端な人だろうというふうに
考えたら間違いですよ。大なり小なりそういう気持ちはあります。私は
最高裁判所のためにこのことを言っている。一時はそういう批判を封じ、一方的に押し切っていっても、それは長続きするものじゃないんですよ、そんなことは。だれも
最高裁に事件を持ち込まぬで、別個のところで解決をはかるようになったらこれはどうするんです。これはちょっとお答え願えるわけにもいかぬでしょうが、まあ
最高裁判所長官によく伝えておいてください。
この民主主義の世の中に、批判を受けないというような存在がどこにあるのですか、あり得るわけがないですよ。
国会は国権の最高の府だといったって、これはみんな選挙によって洗礼を受けるわけだ。
行政関係の人は絶えず
国会で審議の対象になるわけです。それは権限はみな
独立よ。
国会は
国会の権限、
行政官は
行政官持っております。
最高裁だって特別の権限を持っているでしょう。ひとり
最高裁だけが批判を受けない、そんなことはあり得ないじゃないですか。だから一から十までこまかい問題について長官に出てこいなんていうことを言っているわけじゃない。これほど
基本に触れる問題であればはっきりすべきじゃないか。下田
裁判官のような
考え方が正しいというふうに十五名の
裁判官が
考えているなら、そのことを言うたらいいでしょう。そうでないなら、ない。何にも言わないで、そして抽象的に自分だけが公正で、りっぱで、ほかのやつはみんな誤解をしておる、誹謗をしておる、国民を特に誤らすようなことを言う。まるで、戦時中軍部を批判すると、軍部がやったような、ものの言い方に少し似てきておりますね。はなはだ私は遺憾と思う、遺憾千万だ。
で、
最高裁の内部でこういう人権侵害がある
——民間で人権侵害があったら、普通は
裁判所に持っていかなければいかぬでしょう。
最高裁の中での人権侵害だから、結局は、最後には、
最高裁が裁くんでしょう。だから、そこだけはもう全くの特殊地帯ということになってしまうんですね。論理的にもおかしいでしょう。だからもっと謙虚に
——ちょっと思い上がり過ぎていますわ。だから、
阪口君の処分にしたって、ああいう軽卒な、事実を間違えたようなことを土台にして、そして軽卒な処分というものが行なわれているんですよ。まあ何か弁解したかったら事務
総長しなさい。特に求めません。私は、長官と総理に対して、このことは私の十八年間の最後の質問として
——私も十八年間人権問題では全身全霊、全力を打ち込んできたつもりなんです。その最後の質問として聞きたいと思ったんたが、二人とも来ないのでしかたがない。あなた、何か私の誠意にこたえられるお答えができるようでしたら、何かおっしゃってください。