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政府委員(
貞家克巳君) ただいま御
指摘の問題は、まさに
執行官法制定当時におきまして非常に慎重な
検討をいたした根本問題でございます。御承知のとおり、
執行官法の
制定に至ります間には、
完全俸給制ということを志向いたしまして鋭意
努力を重ねたわけでございます。しかしながら、最終的な判断の時点におきましては、現在の
状況下におきまして
完全左俸給制の
執行官の
制度を円滑に実現し、運営するについてはあまりにも障害が多過ぎるのではないかという
結論に達したわけでございまして、その
問題点はなお解消しているとは言えないかと存じます。つまり、
執行官制度になりましてかなり変わってまいりましたけれども、
職務内容自体につきましてはやはり昔の
執行吏時代のものを踏襲いたしてございまして、その
事務の
内容を見ますと、一般の
司法事務あるいは
行政事務とは非常に異なる
特殊性、
困難性を持っております。
したがって、完全な
俸給制のもとにおきましては相当多数の
職員を必要とするということは必然覚悟しなければならないのでございます。が、そういった
強制執行等の
事務を行なう
職員としてふさわしい素養、
能力を持つ
職員、しかも決して愉快とは言えないような
職務に挺身する
意欲を持っている者を十分な数だけ確保して、しかもそれを常時
必要数を補給するということが非常に困難ではなかろうか。また、これについての人事の停滞と無気力を防止する。そうして、
勤労意欲と
事務能率の向上、あるいは持続を確保するということは現在の情勢を見まして非常に困難ではなかろうかという
考え方をせざるを得なかったわけでございます。そして、こういった特殊な
困難性を包蔵しております以上、こういった点を無視いたしまして強引に
制度を発足いたしましても早晩手詰まりがくるということが憂慮されたわけでございまして、そういった動きがとれなくなるというような事態はどうしても避けなければならない。確かに
執行官制度になりまして幾多の前
近代性と申しますか、非合理な点は除去されましたけれども、最後に
手数料制というものだけが残ったわけでございます。しかしながら、これが先生御
指摘のように決して理想的な
制度であるとは申せませんし、非常に変態的な
制度であるということはいなめない事実でございます。
そこで、さらにこの
執行官の
給与制度というものを前進すべく私どもも常時
検討はいたしているのでございますが、いま言ったような事情はさして変わっているとは思われない。一方この
執行官法と申しますのは、過去七十年にわたっていわば放置された
執行吏制度に大きなメスを入れたわけでございます。したがって、いろんな面で
受け入れ態勢を徐々に整えるというようなことになったわけでございまして、たとえば
執行官になりましてからは、
予納金の保管とかあるいは差し押え
金銭その他
職務の
執行として受け取った
金銭につきましては、
裁判所が保管するというようなことは非常に大きな
改革でございますが、そういった
改革も当分の間は
最高裁判所の定める庁ではそれによらない、従来の
やり方でもよろしいというような
暫定措置がついているわけでございます。
それから、従来はそれぞれ役場を持っておりまして、それを
一つの
本拠としておりましたけれども、これは完全に
執務の
本拠を
裁判所に置くというような点は大きな
改革でございます。そういった面につきまして
裁判所当局も非常な
努力をされまして、ほぼ
執務の現実の
場所が
裁判所庁内に入るということは完全に実施されているようでございます。
ただ、
会計事務を完全に
裁判所で取り扱うというような点につきましては、徐々に毎年
裁判所職員の
増員措置を講じまして次第に各庁に及ぼして、いま現在三十七庁がそういった
事務を行なっているように聞いております。そういった次第でございまして、まさにそういった準備的な
段階をいま脱却しようという
状況にあるのでございます。こういった気の長い話ではございますけれども、
準備段階を脱却いたしまして、そして完全な姿の
執行官制度、現在の
執行官法が求めております完全な
執行官制度というものの出現を待ちまして、そうなりますと、
執行官の
手数料収入、経費の実態というようなものがよりはっきりと
裁判所においても把握されるわけでございます。そういった
段階を経まして漸進的にこの問題は
検討しないと、不十分な材料のままで勇断をふるうということは、非常に将来の問題として危険ではなかろうかというふうに
考えるわけでございます。
それで、完全な
俸給制をとるということは、非常に割り切った
考え方でございますけれども、世界の例を見ましても、なかなかそういった例は少のうございます。こういった
特殊性に応じまして、いろいろな
考え方があるかと思います。
手数料の性格というようなものをもっとはっきりとさせる、あるいはこれは全くの私見でございますけれども、たとえば外国では
固定俸給制とそれから
手数料の歩合というようなことで、しかも
一定額以上であれば、
国庫にその
収入は入るというような
制度もございます。そういったいろいろなニュアンスがございます。したがって
手数料制のままでございましても、さらにいろいろこまかいところで
検討して、現実的な、よりよいしかも現実的な
制度を
考えるというようなことも不可能ではないわけでございまして、そういったステップを踏みまして、
執行官の
給与制度におきましては、理想的な姿にだんだん近づけていきたいというような
考え方を持っているわけでございまして、非常に気の長い話でございますけれども、なおしばらく
検討の期間を与えていただきたいと
考えている次第でございます。