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最高裁判所長官代理者(
長井澄君)
裁判官は特別職の
公務員でございまして、
一般の
公務員のように法律上の勤務時間の制約というものはないわけでございます。
事件数に比して
裁判官の数が不十分であるために、政府におきましても臨時司法制度
調査会というような機構を設けまして、この点の打開には非常に努力をなされたわけでございますけれ
ども、まだその
結論の実施につきまして、なかなか制約がございまして、その完全な実現を見ませんために、負担がかなり過重であるということが
一般の御
指摘されているところでございます。したがいまして、勤務時間外にも
仕事を自宅に持ち帰ってこれを処理しているということはいずれの
裁判官もやっておるところでございますが、
一般に宅調といわれておりますのは、これはドイツのやり方を、司法制度を取り入れた際にまねたものと
考えられるのでございますけれ
ども、法廷のある日は役所で執務をいたしますが、法廷のない日は終日登庁しないで自宅で執務する体制をさすものと
考えております。日本におきましても、これが全部の
裁判所で行なわれていたというわけではございません。もちろん、宅調してはいけないということも戦前、戦後においてなかったわけでございまして、特に宅調が必要やむを得ざる
措置として行なわれましたのは、
東京、大阪、名古屋というような大都会の
裁判所であったわけでございます。
東京の例を
——大阪も同じでございますが、
一つの机を二人の
裁判官が隔日に使い合うというような形で、これは登庁しても執務の場所がなかったというような
状況がこの宅調を余儀なくしていたわけでございます。ただ、このような庁におきましては、
庁舎も老朽化しておりますし、それから、執務環境が悪いためにどうしても落ちついて
仕事ができないというようなことであったわけでございますけれ
ども、そのような執務体制はきわめて前近代的なもので、これを解消しなければならないということが臨時司法制度
調査会でも強く
指摘されまして、その答申におきましても、
裁判官室を十分に整備する、図書資料を充実したものにして研究施設の整備を早急に行なうようにという
指摘がなされたわけでございます。で、この答申を受けまして、
裁判所といたしましては、
昭和四十年度の
予算におきまして下級
裁判所の
裁判官研究
庁費を
要求いたしまして、十カ年計画でこの
関係の整備にあたってきたわけでございます。主として図書と、それから
庁舎の整備と、この二つの面になるわけでございますが、図書、書架、戸だな、机等を購入して
裁判官室を完備する面の努力をいたしまして、第一次の五ヵ年計画におきまして高等
裁判所、
地方裁判所、家庭
裁判所の本庁と高等
裁判所の支部と地・家裁支部の甲号までをこのように整備計画を実行いたしまして完了いたしまして、
昭和四十五年度から第二次の五ヵ年計画で
乙号支部及び
簡易裁判所に対する
手当てをしているわけでございます。
それから
庁舎の
関係につきましては、
東京、大阪が物理的にも宅調を余儀なくされていたわけでございますけれ
ども、ただいま大阪の高等
裁判所、
地方裁判所、
簡易裁判所の
庁舎が完成いたしまして、
昭和四十八年度に完成の見込みでございます
東京高等
裁判所関係の
庁舎はまだ未整備の
状況でございますが、他の関連の建築が完成いたしますれば、このほうも早急に解決されることになると思います。ただ、
東京におきましては逐次増築によりまして、ほんの一少部分を除きましては宅調をしなくともよろしいような態勢になっておるわけでございます。