○国務
大臣(
坂田道太君) まあ大松さんのこの御質問、それから、また先ほどの
安永先生の御質問とも
関連すると思うのですが、少しわれわれのほうの答弁は現状維持といいますか、現在の
一つのワク内でお答えをしておるというふうに思うわけでございます。しかしながら、
文化功労年金というもののあるべき姿あるいは
文化勲章のあるべき姿というようなことを将来を見通して、あるいは現在の日本の社会
一般を考えるとですね、やはりこれについては私
どもも少しこの考えを新たにする必要があるというふうに私は考えておるわけでございまして、やはりもう少し、スポーツであれ、あるいは
教育者であれ、そういう、あるいは同じ
芸術の
分野、あるいは同じ歌を歌うという
分野におきましても、歌謡等についても、あるいは庶民
文化一般についてももう少しこのウエートあるいは価値を考える必要があるのじゃないかというふうには
一般的に私は考えておるわけでございます。この
法案が衆議院におきまして審議をされました段階におきまして、たしか有島
委員だったと思いますが、これだけ歌謡曲が盛んになってきておるのだけれ
ども、一体歌謡曲を歌うような人で非常にすばらしい人があった場合にはこの対象にされるのですかという質問があったのです。こういうものは全然問題にならないのですかという
お話でございました。私はそれに対しましてそうは考えておりませんと、ほんとうにこの現在の
文化功労者に値する方があったらやはりその範疇に入れるべきだというまあお答えを申し上げたのです。で、その前に、またたとえばスポーツについても同じような議論が他の議員からございまして、そのときにも三船さんは柔道なんだけれ
ども、それじゃ剣道についてはどうなんだという話がございまして、確かに私は剣道につきましても三船さんと同じような、だれから見てもあの人ならばと思われるような方があるとするならばその方に差し上げるのもこれは当然なことじゃないかというまあお答えをした。その
一つの例といたしまして、これはまあ歌謡曲についてなのでございますけれ
ども、どうも日本人はシャンソンの歌い手だと何か
芸術性があるとか、あるいはカンツォーネを歌う人は非常にいいとか、
外国の場合だったら非常にそういうものはいいと思うのだけれ
ども、日本の歌謡曲だとか、あるはい民謡だとか、あるいは浄瑠璃その他のようなものについては何だか
文化が低いようなものだというふうに考えがちであると、それはいかがかと私は思う。たとえばビートルズを見てごらんなさい。これはリバプールから生まれて、そうして非常に独創的な、しかもリバプールの庶民性を持ったものであって、それが非常に全世界を実は風靡した。で、単にこれは外貨をかぜいだぜいではないと思う。私の記憶に間違いなければ、たしかクイーンが表彰を、
勲章をやったと、最近になって、これは、私の子供に聞いてみましたところ、三人がうまくいかなくなっちゃったんでそれやめになって、また辞退をしたとかなんとかというようなことを言っております。その真偽のほどは知りませんけれ
ども、たしか一回クイーンが表彰したというようなことを聞いておるわけでございますが、やはりそういうようなことも考える必要があるんじゃないかということで、私は庶民
文化というものがやはり日本民族の
発展のために果たしておる役割りというものは非常に大きい。御指摘のエノケンさんにしてもそうだと私は思っている。そういうようなものをことさらに除外して、単に
芸術といったら
芸術院会員あるいは
学術といったら
学士院会員というものだけを中心にして
文化全体を考えるということは、私は少し片寄った
考え方じゃなかろうかというふうにも思っておるわけでございまして、もう少し広く考える必要がある。ただ、いま申し上げますような庶民
文化の中においても、そのすぐれたものと、すぐれないものとの区別はあるはずです。そのどれがすぐれているか、どれがすぐれていないか、あるいはどれが独創的であり、どれがほんとに民族の将来のために影響を与えたというようなものであるか、そういうことを判定するというのは非常にむずかしい仕事ではあるけれ
ども、だれかがやらなければならないことじゃなかろうかというふうに思います。そういうようなやはり観点から、たとえば
選考委員の選定についても、これは私たちの責任でもございますから、やはり一ぺんこの辺で見直してみる、あるいは考え直してみるということは必要であるし、あるいはそういうような時期にきておるんじゃなかろうかということで、去年くらいから寄り寄り私
どものほうで相談をいたしておるわけでございます。ただいまは、いま
官房長からお答えを申し上げたとおりでございますけれ
ども、しかしながらこの
あたりでもう一ぺんそういうようなお二人の
先生のこの御指摘あるいは衆議院の
文教委員会においての御指摘等もやはり十分踏まえて考え直してみるということは、この段階で必要だというふうに私は考えておるわけでございまして、きょうの大松さんといい、また
安永先生といい、非常に貴重な御意見を承りまして、十分これを参考にいたしまして検討をいたしたい、かように考えておる次第でございます。
特にまたスポーツにつきましては、あるいはこれはこれといたしまして、スポーツ
関係者としてほんとに
文化功労に値するお人を選び出すということも
一つの方法でございますが、別にあるいはスポーツ賞というようなものにするか、あるいはどういうことになりますか、顕彰の方法等も込めてこれは考えてみる必要があるんじゃないかというように思います。たとえば
芸術関係になりますと、叙勲もございますし紫綬褒章もございます、藍綬褒章もあります、
芸術祭優秀賞もありましょう。
芸術祭優秀賞あるいは
芸術選奨等につきましてはこの間
文部大臣賞にフランク永井さんを、あるいは
文部大臣新人賞にはレビューの振りつけの藤代暁子さんを選奨いたしまして、
芸術祭優秀賞には講談の馬琴さん、三遊亭金馬さん、それから歌手の眞帆志ぶきさん、あるいはジャズバンドの東京キューバンボーイズ、こういうようなかなり
範囲を広げましてやっておるわけでございますが、これは実際やってみまして、非常にいいことだというふうにいわれておるわけでございますが、そういうことを考え合わせました場合に、スポーツについて何か特別の表彰の方法という
意味を含めてこれは考えてみる価値のあることである、というふうに私は考えております。