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説明員(
小沼通二君) ただいま
会長から申し上げたとおりでございます。その点につきましてもう少しこまかいことを申させていただきたいと思うんですが、この
研究所の所長並びに
研究に関係する所員の身分保障というものについて私
ども、
文部省がこの法律の改定に伴ってつくられる法令において
考えておられることというのを聞いておりますけれ
ども、それによりますと、大筋において、この
研究所の所員の身分については、教育公務員特例法の規定を国立遺伝学
研究所と同じように準用する、こういうことを言われ、先ほど御
質問の中にありましたように、幾つかの条項について準用されていない、こういうことになっています。この問題につきましては、
日本学術会議の中で、法律に関係する第二部の方々を
中心にしまして、今度の
研究所に直接関係のある
原子核の
研究所、そして今後似たような
研究所をつくりたいというようなことを
考えているほかの
分野の方々という間で非常に慎重な
検討がなされました。その結果、ただいま問題になっております教育公務員特例法の準用の範囲と準用のされ方につきまして、二つの問題があるということになったわけでございます。二つの問題と申しますのは、
一つは準用の範囲の問題でございます。準用されていない条項があるということが先ほどございましたけれ
ども、そのことが
一つと、それから準用されている条項につきましても、準用のされ方がこれで適当なのかどうかという二つの問題があると思う。
第一の、準用されていない条項ということは、先ほど御
説明がございましたように、教育公務員特例法の中の幾つかの条項、これは、本人の意思に反した転任、それから免職、それから降任、それから任期を定める件、停年を定める問題、それから懲戒処分の問題というような
内容につきまして、
大学における取り扱いと違っているわけでございます。
大学においては、これは評議会であるとか、協議会であるとかいう場所で審査が行なわれまして、審査の方法も規定されていて、審査の結果によるのでなければ本人の意思に反した不利益処分は行なわれない、こういうかっこうになっております。そして、審査の結果を
大学の場合には学長から
文部大臣に申し出て、その申し出に基づいて不利益処分が行なわれる、こういう形になっておりますけれ
ども、この条項が準用されていない。たとえば国立遺伝学
研究所等の場合におきましては、形式的に申しますと、法律だけから申しますと、これらについては任命権者——
文部大臣が、極端なことを申せば、
研究所の
研究者、そして関係する
研究者並びに所長の
意向に反してでも不利益処分が行なわれる、こういう法律の構成になっているわけです。これは、たいへんその
意味では遺伝学
研究所が適当で——遺伝学
研究所にとりましてもこういうことが適当であるかどうかと申しますと、決してそうではないんだろうと思うんです。所長の——実際にはそういうことはめったに起こらないというふうに私
ども考えますし、皆さまもお
考えになると思います。ただ、一たん事が起こりますと、これは、単に
研究所にとっての不幸のみならず、
文部省側にとってもたいへん困った事態になることは疑いないわけで、そういう点から
考えましても、この点につきまして、
大学におけるようにやはり審査が行なわれて、そしてその結果を、
大学の場合は学長でございますが、こういう
研究所の場合は所長が申し出る、その所長の申し出に基づいてその不利益処分が行なわれる、こういうことになっているのが普通ではないか、というふうに
考えるわけです。教育公務員特例法を全面的に準用せよということは、
研究者並びに
学術会議が前から
考えていたわけで、先ほど
内容を御
説明しませんでした共同
研究所のあり方という
学術会議の
勧告の中にも、この
研究所の所員は教育公務員とするというような表現で、身分保障を
大学と同じようにするんだという
考え方が述べられておりました。
内容はただいま申しましたように決してそう特別なことであるわけではなくて、たいへん普通のことであると私
ども考えているわけです。
ついでに申しますと、幾つかの条項は、教育公務員でないんですけれ
ども、教育公務員特例法が準用されております。これは遺伝学
研究所などにも準用されているんでございますけれ
ども、そういう中に、これも実はまだ問題がございまして、たとえば勤務評定という問題がございます。勤務評定を行なって、その結果に応じて措置をとる、そして勤務評定の基準を定める、こういう条項が教育公務員特例法の中にございます。これにつきましては、
大学においてはこの勤務評定の基準は協議会の議に基づいて学長が定めるとなっておりまして、そして、教育の勤務評定は協議会の議に基づいて学長が行なう、そしてその結果に応じた措置も学長がとる、こういうことになっておりますけれ
ども、国立遺伝学
研究所などの場合におきましては、勤務評定の基準は
文部大臣が定め、そして勤務評定は
文部大臣が行ない、その結果に応じた措置は
文部大臣が行なう、こういうようなことが、たとえばこれは教育公務員特例法の第十二条でございますけれ
ども、そういう形の法律になってるわけでございます。そうなりますと、これは準用されているといいましても、たいへん
考えてみればおかしなことで、実際上こういうことはできないはずでございます。
そこで、私
ども日本学術会議でいろいろ
検討いたしました結果、教育公務員特例法の準用につきましては、その準用されていない条項を全面的に準用すること、そして準用されているところにも問題があるので、これも実は
検討が要ると、こういう見解を実は前から持っていたわけでございますが、今回
文部省が
考えておられますこの
研究所の所員の身分保障というものにつきまして
文部省側のお
考えも伺いました結果、私
ども先ほど申しましたように、全面的に特例法を準用するということについて、何ら間違っているということを
考えているわけではございませんけれ
ども、いまの幾つかの問題の中で実際には運用で困ったことが起こらないようにしていくという部分もあってもやむを得ないんじゃないかと。やむを得ないと申しますのは、これは私
どもの
日本学術会議の力の限界ということもございまして、なかなか早急に——つくられようとしている
研究所の所員の身分保障についていままで
文部省がお
考えになってるものを急に変えるというところまではいかないんじゃないかということもありまして、たいへんいろいろ
文部省側との折衝もございまして、この点につきましては最小限この不利益処分、任免、そして不利益処分の手続につきまして、これは所長の申し出に基づいて任命権者が行なう、こういう形のことだけは最小限入れておいてほしい。そうなりますと、たとえば所長とそれ以外の所員そして
研究者の関係というものになりますと、これは
研究者間の問題でございますから、そこのところは最小限われわれは運用でやっていこうではないか、こういう見解に固まりまして、昨年十一月二日付で——実はこれは昨年十月の
日本学術会議の総会の中で討論が行なわれまして、全員一致で
結論を得ましたので、その点につきまして運営
審議会で
内容を取りまとめ、
文部大臣に申し入れをしたわけでございます。
ちょっとこの点につきまして、あと補足させていただきたいのですが、聞くところによりますと、
文部省の中につくられておりますこの新しい高エネルギ
物理学研究所の
設置準備の
会議といういう中で、この問題いろいろ御議論なされたよしでございまして、その結果、所長の
意向に反するようなことを
政府がやるようなことは何ら
考えていないというふうに
結論がなったというふうに私
ども非公式に聞いておりますが、そうであるといたしますと、それを規定の中に入れるということに何ら差しつかえがないのではないかというのが、今日
日本学術会議で
考えている点でござでます。で、実際にいま申しましたように、それにもかかわらず、この点について現在
考えられているこの法律の改正に基づく法令の中に準用ができない。できないと申しますのは、特例法の全面準用ができないということもございますし、最小限
考えておりますただいま申しました任免、不利益処分の手続の点についての準用、これは第十条の準用ということになりますが、それができないというならば、私
どもといたしましては、
文部省から当然そのできないというはつきりした根拠のある理由を聞かしていただくということを希望しているわけで、強い理由があってそれが納得できるならば、何も全面的に準用しなければならないということを申し上げるつもりは何もございません。しかし根拠のある理由がないならば、そしてこの運用上そのとおりにやると
文部省がおっしゃっているならば、それは当然そこに書き込んでおかれて
文部省にとっても何らさしさわりがないことだろうと思いますし、私
どもにとっても今後この
研究所にできるだけいい
研究者を集め、そしてそういう形でのトラブルが起こらないように
研究を進めていきたいということを
考えておりますものにとってもたいへん望ましいことであるというふうに
考えているわけでございます。