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国務大臣(
坂田道太君) この前申しましたのは、四十七年度から
国立大学の医科
大学あるいは学部増設、
創設というものを考えていきたいという
意味でございますから、まずそれを前提として申し上げたいと思います。と申しますのは、御
承知のように、医師不足が非常に強く訴えられております。特にこの僻地等においてきわめてその声は強いわけでございます。そのことにつきましては、医師の不足、あるいは医師
養成が追いつかないという事情が一つございます。
それからもう一つは、これはやはりお医者さんの行政と申しますか、医療行政そのものに根ざしておるとも言える部面があるわけでございます。これはまあ厚生省の所管でございますけれども、
政府としましてはやはり医療の機関の整備、あるいは医療のやり方等について抜本的な基本的なこともやっぱり考えていかないといけないんじゃないか、かなりなお医者さんがおるわけですが、それがどうも東海道メガロポリスの都市に集中している。そして僻地に行かない、あるいは
大学にくっついておりまして、これがなかなか地方に出て行かないという事情が一つある。しかし医師
養成を受け持っております
文部省としましては、どう考えてみましても、医療行政だけではなくて、絶対数もやはり十分ではないんではないか。現在たしか人口十万に対しまして百十二ぐらいだろうと思います。先進国では百三十、あるいは百五十という、ソ連なんかはもうちょっと多いんじゃないかと思います。そういうことから考えまして、そしてもう一つは、最近
私立の医科
大学ができました。できましたけれども、巷間伝えるところによりますと、相当多額の入学金を出さなければ医学
教育は受けられないという。そうしてこれが一種の
社会問題になってきている。そうなりますと、金を持っておる者は医学
教育が受けられるけれども、金を持たない者は医学
教育を受けられない、これは何としても問題である、こう私は考えるわけでございます。一方、私のところとしましては、医学
教育を
大学でどう考えるかということが、実は
大学改革の一つの問題点でもあった。また
大学紛争の原因にもなったわけでございまして、この解明も急がなければならないわけでございますが、しかし、このような
社会問題を惹起しており、そして今日
不正入学なんかの問題が出てまいりますと、五月に中教審の最終
答申がございますけれども、もちろんそれを尊重していきますけれども、
政府としましては、あるいは
文部省としましては、絶対数の医師
養成に対しまして真剣にこれは具体案を考えなければ
国民の皆さまに申しわけない、こう判断をいたしまして、この一月以来、
大学局を督励いたしまして、本年じゅうに一定の医師
養成の計画を発表しようと、こういうことで臨んでおるわけでございます。
しかし、われわれもいままで何にもしていないかと言いますと、そうでもないわけでありまして、
昭和三十六年度から十年間今日まで、約千五百四十名の医師
養成の学生増をいたしておるわけでございます。これは
国立では約九百、
私立が六百、
公立が四十だったと記憶いたしております。これはいろいろのやり方がございましょうが、一つには定員増あるいは昨年度から秋田医科
大学の
創設それから
私立大学の認可という形でこの十年間まいっております。しかし、御
承知のように、
教育期間が普通の学部より二年長いわけでございまして、その効果が出てまいりますのが、実を申しますと、大体千五百四十人の増が出てまいりますのが
昭和五十一年度なんですね。ただいまのところそういう計画を三十六年にやって
養成をしておりますけれども、実際世の中に出てきております医者の数というのは、大体その半分くらいじゃないかと思うわけでございます。その計画が、千五百四十名が世の中に出てくるのは五十一年度なのです。しかし、五十一年度になりますと、いまの人口十万当たり百十二が大体百二十五ぐらいになる。厚生省のほうでもいろいろ試算をいたしまして、これは一応の試算でございますけれども、大体人口十万当たりに対して百五十人くらいまでのところには
昭和六十年度くらい目当てとして考えるべきじゃないか、こういうような
要請がございます。そういたしますと、いまからこの
昭和六十年までの間に大体千五百くらいの増員計画を考えたら一応の絶対数の不足というものは満たされるのではなかろうか、というのが一応の私たちの試算でございます。この千五百を一体どのようにして考えていくかという場合に、私はこの際はいろいろの困難はあろうかもしれません。定員の問題もございます。あるいは
国立で秋田医科
大学をつくるにしましても約八十億ぐらいはかかると思いますし、人数にいたしましても、病院等を含めますと八百人程度は定員をいただかなければならない、そういう問題もございますけれども、私は、こういう
社会問題となっておるのにわれわれがだまっておるわけにはいかないので、四十七年度からできますならば二つか三つの
国立の医科
大学あるいは医学部というものはどうしてもつくらなければならないのではなかろうか。その他
私立の医科
大学もございましょうし、あるいは
公立の医科
大学もあるわけなんで、特に
公立はたしかいま九つ医科
大学があるわけでございますが、その中でかなり
国立と大差なく動いておるし、またそのレベルも高いものも二、三あるわけでございますが、その定員が六十というのがまだあるんです。あるいはまた八十というのもあります。戦前は、
国立の医科
大学でも百二十という定員がございました。しかし、私は人の生命を守るという特殊の職業でございますから、やはりレベルダウンをしてはいけない。お医者さんになる人は、やはり医術につきましても相当な技術を身につけていただかなければなりませんし、昔から医は仁術なりと言っておるわけでございまして、やはりこのモラルがりっぱな人でなければほんとうのお医者さんではあり得ないと私は思うわけでございまして、やはりレベルダウンはよろしくないということを考えておるわけでございますが、この
公立の医科
大学の人員をたとえば二十名ずつふやしましてもかなりな増員計画ができるわけです。で、辺地医科
大学の
構想が自治省から出されまして、われわれもこれには賛意を表したわけでございますが、そのときに自治
大臣に私は申し上げたんです。おたくの
関係で九つの医科
大学がございます。これにわれわれもまだ
予算的に十分めんどうを見てあげておらないということは深く反省をしなくちゃなりません。おたくのほうでも一つか二つの新しい医科
大学をおつくりになるのならば、この現在の九つある医科
大学を
充実するあるいは定員を何とか考えていくということを自治省も考え、国も考え、
文部省も考え、あるいは厚生省も協力し合うという形で、ある程度今後の千五百名の
確保というものも私はできるんじゃないか。そのほうがむしろ現実的であるし、効率もいいんじゃないかというふうにさえ考えております。まあこの問題についてはいろいろございましょうけれども、そういうことで私は基本的に
国立の——学生のほうからいうならば、お金がかからないで医学
教育が受けられる道をどうしてもこれはやらなければならぬと決心をしておるわけでございまして、いずれまたその計画がもう少し進みましたら、皆さま方にお話を申し上げ、また御批判等も受けたいというふうに考えておる次第でございます。