運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1971-04-28 第65回国会 参議院 農林水産委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年四月二十八日(水曜日)    午前十一時二十八分開会     —————————————    委員の異動  四月二十八日     辞任         補欠選任      中村 波男君     矢山 有作君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         河口 陽一君     理 事                 亀井 善彰君                 園田 清充君                 杉原 一雄君                 村田 秀三君                 沢田  実君     委 員                久次米健太郎君                 小林 国司君                 鈴木 省吾君                 高橋  衛君                 高橋雄之助君                 堀本 宜実君                 森 八三一君                 山下 春江君                 川村 清一君                 達田 龍彦君                 中村 波男君                 矢山 有作君                 片山 武夫君                 河田 賢治君    政府委員        北海道開発庁総        務監理官     新保 實生君        北海道開発庁主        幹        村山  進君        農林政務次官   宮崎 正雄君        水産庁長官    大和田啓気君   事務局側       常任委員会専門       員         宮出 秀雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○水産業協同組合法の一部を改正する法律案(内  閣提出、衆議院送付) ○漁港法の一部を改正する法律案内閣提出、衆  議院送付) ○海洋水産資源開発促進法案内閣提出衆議院  送付)     —————————————
  2. 河口陽一

    委員長河口陽一君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  水産業協同組合法の一部を改正する法律案漁港法の一部を改正する法律案及び海洋水産資源開発促進法案を便宜一括して議題といたします。  これより三案について質疑に入ります。質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 達田龍彦

    達田龍彦君 この提案をされております水産関係法案について質問をいたしたいのでありますが、三法案ともたいへん関連があるわけでありますから、一括して質問をいたしますけれども内容的にはこの水産業協同組合法の一部改正法律案、それからこの海洋水産資源開発促進法案、それから漁港法改正ということで、まず私は水産業協同組合法の一部を改正する法律案から質問をしたいと思うのであります。しかし、その中には、三法案十分関係をしてまいりますから、関係をする部分については、三法案関連として質問を聞いていただき、また回答をいただきたいと思っておるわけであります。  まず、この水産業協同組合法の一部改正でございますけれども改正をされている内容については理解が十分できるところでありますけれども、特に私が一番目に基本的な問題として考えますことは、今回の改正によって協同組合性格というものが、一体どういうように理解をされていくのかということについて、基本的な問題として疑問を抱くのであります。資格制限の緩和、あるいは運営の改善というものが出されておるのでありますけれども、あくまでも基本的には、協同組合という性格は一貫して私は貫かなければならぬと思うのでありまして、今回の改正協同組合性格というものをどうとらえていらっしゃるのか、まずお伺いいたしておきたいのであります。
  4. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 漁業協同組合水産業協同組合法の第一条にございますように、個人としての漁民を中心とした経済的な組織でございまして、これによって日本の中小漁民の社会的、経済的発展を願うという、そういうものでございます。で、その点につきましては、今回の改正におきましても変更はございません。ただ漁業実態からいたしまして、漸次漁業経営大型化いたし、また法人化法人成りをいたしまして、三十八年におきます前回の法律改正におきましても、漁業協同組合の正組合員として常時従事者三百人以下、かつ使用漁船三百トン以下の法人を正組合員とするという法律改正をいたしたわけでございます。これは当時におきましても御議論のあったところでございますけれども法人といいましても、実態といたしましては、個人たる漁民実態的にそれほど差のないものを協同組合の中に取り入れ、そういう中小漁業者のために便益をはかると同時に、それによって組織強化にも当たりたいという、そういう趣旨であったわけでございます。その後、一般の経済界発展に従いまして、漁業経営自体もだんだんに大型化いたしまして、三百人以下、かつ三百トン以下ということでは、それからはみ出す中小漁業者相当出てくるのが実態でございますので、新しい時点に立ちまして、常時従事者三百人以下、かつ千五百トン以下の中小規模法人協同組合の中に受け入れて、事業の利用もさせるし、また組合もそれによって組合強化すると、そういうふうにいたしたわけでございます。  また組合運営合理化の点につきます若干の改正がございまして、その多くは農協法の先般の改正に大体同じでございますけれども、これは私どもはあくまで漁業協同組合というのは、組合民主主義といいますか、組合員意思を適正に反映して運営が行なわれなければならないということは、原則、根本でございますが、同時に非常にテンポはおそいわけでございますけれども、やはり農協と同じように漁協規模もだんだん拡大をいたしまして、離島を含めた相当大型組合もできると、そういう状態でございまして、組合民主主義徹底といいますか、組合員意思を正当に反映させるために、総会を優先的に考えることは、私はこれはものごと基本であろうと思いますけれども、場合によりましては、形式的に総会主義でやりますと、なかなか物理的にも、経済的にも総会の開催が困難だという組合がぼつぼつあらわれてきたわけでございます。今後も組合合併というのは、幸いに最近、漁業協同組合合併助成法の延長も国会で御可決いただいた関係で、組合合併も、今後私ども熱意を持って進めるつもりでございますが、そういう情勢におきましては、総会による組合民主主義徹底ということは、これは基本でございますから大事でございますが、同時に、場合によっては総会にかけて総代会を開き、それに相当大幅の権限をゆだねる、いわば組合運営能率化させるということも、私は今後の組合運営についてたいへん必要なことであろうと思います。あくまで私が申し上げました組合組織の問題と運営合理化の問題は、ともに協同組合としての本質をかたく維持しながら、しかも新しい経済動きにつれて組合能率化合理化あるいは組織強化をはかるという、そういう趣旨でございまして、協同組合に対する考え方は従来と少しも変わっておらないわけでございます。
  5. 達田龍彦

    達田龍彦君 いま長官の御説明で、ほぼ基本的な考え方が示されたわけでありまして、私は、次に質問しようと思っておりましたけれども、実はこの法案改正組合民主化という問題が、これまた重要な基本的な問題だろうと実は思っているわけであります。それについても民主化民主性というものは常に一貫して守っていくという方針を述べられましたし、また協同組合の一貫した性格は、これまた十分生かしていくんだというお話であります。私も協同組合性格限界、いま申された経済拡大あるいは近代化に対する対応策として、その中にあって協同組合性格と、それから協同組合組合員民主化というものをどうはかっていくかということは、今後、この経済拡大さらに近代化されていく中においては、常に私は起こってくる問題であろうと思うんであります。  そこで、その限界の問題に、実は私もどういう観点でこれを見ていくべきかという点について疑問がまだ残るのでありますが、特に私は協同組合性格というものを、今回の改正によってある側面から見ていくと、非漁民化傾向が強くなりつつあるのではないかという気がして、経済拡大あるいは近代化によって大型化される、あるいは生産量拡大されるということは当然でありますけれども、それに基づいて漁民というものが非漁民化するという傾向も、同時に側面的に持っておるのでありまして、そういう点を私は組合運営上、あるいは行政指導の衝にある立場の人としては常にそのことを配慮しながら、協同組合本質を生かす運営が必要ではないかと思うんであります。それも単なる精神的な面だけでそういうものを貫いていくんではなくって、具体的な法の改正の中、あるいは具体的な施策の中でこれを生かすべきではないかと私は思うんでありまして、そういう点に対しての具体的な指導のあり方について、もう少しお話を聞かせていただきたいと思うんであります。
  6. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 今回の改正におきまして、組合員資格制限を緩和するのを一体どこで押えるかということ、これはなかなか私どもといたしましてもずいぶん長いこと検討いたしたわけでございますが、使用漁船千五百トンということで限界をつけましたのは、個人企業でもそのくらいのものがかなりあるということばかりではございませんで、組合実態経営実態からいきましても、千五百トンというのは、中小企業等協同組合法におきまして組合員資格といたしまして資本金五千万あるいは常時従業者三百人ということでやっておりますけれども経営内容資本金あるいは売り上げ高等々比較いたしますと、千五百トン以下かつ三百人以下という規定は、中小企業等協同組合法でいう資格よりはかなり下回っておるわけでございます。そしてまあ私は、協同組合実体というのはあくまで個人たる漁民でございますから、正組合員として漁業協同組合に加入を認めるものは、個人たる漁民実体的にあまり違わないものということが限界であろうと思います。そしてそれは大体中小企業者と言われるものを越えては絶対いけない。むしろ水産業協同組合法におきましては、実は中小企業等協同組合法の第百七条にございますように、従業者百人以上のものにつきましては排除措置ができるというような公取関係のきつい規定があるわけでございますが、水産業協同組合法におきましてはそういうふうに排除措置規定がございません。したがいまして、中小企業等協同組合法中小企業資格よりは、私は場合によりましては若干、水産業協同組合あるいは漁業協同組合組合員資格というのは、さらにそれを若干下回ることが適当なのではないかという考え方も持っておるわけでございまして、まず組合員資格制限を緩和いたします場合に、水協法の一条の精神に照らして誤りなきことを繰り返し繰り返し措置をしたということが一点でございます。  それから、実は現在常時従業者三百人以下かつ使用漁船三百トン以下という現行の組合員資格にかえまして、千五百トン以下というふうにいたしましても、そこで正規の組合員になる資格のある者は三百七十人ほどでございます。したがいまして、漁業協同組合の正組合員の数は沿海地区出資漁協で四十五万六千九百入、ほとんど四十六万人に近い数字でございますし、また業種別出資漁協でも一万八千人という相当多数ございますから、私はただ数の問題として三百七十人がこれらのものに比べて非常に少ないから問題はないというふうに申し上げている趣旨ではございませんけれども、いずれにいたしましても相当膨大な数の組合員、——いま申し上げました三百七十人、三百七十法人というのは、これは数は少ないけれども、カツオ、マグロ、あるいは底びきあるいはまき網等々で、いわば中堅漁家で非常にエネルギッシュな漁業家であるわけで、それが協同組合事業を利用し、また協同組合がそれらの資金に依拠するということは、私は協同組合にとってたいへん必要であると思いますけれども、いずれにいたしましても、数の面からいって、それほどその人たち組合に入ることによりまして組合の民主的な体制がゆがめられるという実態ではございません。したがいまして私ども注意は十分いたすつもりでございます。今後も小漁民あるいは零細沿岸漁民中小規模漁業者との対立というのは、まあこれは活動分野が違いますから私はそうあらわにあらわれることもまずないというふうに思いますけれども、それは県の水産部局等にもよく話をいたしまして、今回の改正漁業協同組合にとって一つのエネルギーを与えるプラスの面になることを望んでいるわけでございますから、それが少数の中小漁業者によって組合がいわば牛耳られるという形になって、協同組合運動としてはマイナスの形にならないように十分指導をいたすつもりでおるわけでございます。
  7. 達田龍彦

    達田龍彦君 そこが一番私はこの法律改正の重要な部分だと思っておるのであります。漁民が個々の弱い力を協同組合によって力をたくわえて、そして経済活動を続けていく、漁業活動を続けていく、そのために協同組合法というのがあるわけであります。したがって、この中小漁業者がその中に多く分野を持つことによってその人たち支配強化が行なわれて、協同組合としての漁民の利益が守れないという傾向が必ず出てまいるのであります。私はそういう意味において今回の改正というものが、一体いま水産庁長官が言われるように、漁民漁業協同組合としての性格を実際的にも、運営の上でも、形式の上でも確保することができるのかということになると、実体としては非常に今日むずかしい条件にあるのではないかと私思うのであります。でありますから、特にこの数の問題、それから経済的立場の問題からいっても、中小漁業者がその中に拡大をされていくということは、どうしてもやっぱり運営がそういう人たち支配下に置かれるという傾向は、これはいなめない事実だろうと思うのでありまして、その点が将来さらに漁業近代化、あるいは漁船大型化、あるいは漁業組合合併によるところの組合員拡大等が出てまいりますと、いま長官が言われるような立場で進める限り、さらに中小水産業者がその中に拡大をされ、入っていくことは当然だという根拠になるわけでありまして、そういうことになりますと、一体いよいよ協同組合の非漁民化協同組合という性格がゆがめられ、そこなわれていくという結果になるわけでありまして、その限界というものを一体どこに求めるのかということが一番私は問題だろうと思うのであります。それが一つ。  それから同時にまた組合民主化の問題でありますけれども協同組合ができて形式的には民主化されておることは事実であります。また内容的にも民主化がかなり進んでおることは事実であります。総会を開き、あるいは代議員会を開き、あるいは常時会議内容組合員に知らせるということが形式的には行なわれておりますけれども、大多数の漁業組合実態、とりわけ私のところの長崎県は離島、僻地、辺地が多いわけでありまして、その中における漁業協同組合運営というのは、一部の有力者、あるいは力のある者、あるいは権力や金力を持っている人がやはりボス的に存在をし、力で運営をするという傾向は、今日なおかつたくさん残っておるのでありまして、そういう状況の中でなおかつ総代会制にしてみたり、あるいは役員会権限強化するというようなことになると、組合民主化というのは非民主化のほうに進んでいく傾向が強いのでありまして、そういう点に対しても将来合併ということは漁業経営形態からいってこれはどうしてもやっていかなければならない必然性を持っているわけでありますけれども、それと民主化というものはある意味で逆行するものを持っておるのでありまして、その場合に組合民主化を守るための限界というものをどこに求めていくのかというのがまた当然出てくる問題でありまして、そういう点の将来の展望に立った民主化とそれから漁業協同組合性格をそのまま一貫して守るという限界は一体どこにあるのか、その点をひとつ明確にお示しをいただきたい。
  8. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) まあ私は、その漁協の非漁民化動きというよりも、むしろ漁民漁業経営拡大化方向というふうにこの問題をとらえるべきではないかというふうに思います。まあ千五百トン未満あるいは千トン程度の船主あるいはその使用人等々がやはりその漁民の中から成長をしてきた者が大部分でございまして、漁民が大きくなったというふうにお考えいただいていい部面が私は非常に多かろうと思います。それでまあ将来この組合員資格制限を緩和することの問題でございますけれども、私はやはり漁業経営拡大の趨勢あるいは中小企業等協同組合法等々の改正によって中小企業自体もだんだんせり上げられていくという問題、そういうことを考慮いたしまして、私はまた将来いつの時点におきまして組合員資格を再検討する時期というのが私は来るであろうというふうに思います。しかしその場合も、私どものこの水産業協同組合法というたてまえをとります限りは、あくまでこれは漁民共同組織でございますから、漁民と並んで組合組織することができるような範囲のものという、そういう限定は私は絶えずつきまとっておるというふうに思います。そういう限定のもとで漁業経営実態の進展に従ってどういうふうに法人組合員資格を考えるかという、そういう問題であろうと思います。  それから第二番目の問題でございますが、私はまあ漁協共同組織であると同時に、これは経済的に自立可能でなければならないわけでございますし、今後のいろいろ他の金融機関からの競争もございましょうし、あるいは販売事業におきましても他の仲買人産地仲買人等々の力が及ぶという問題もございましょう。私は漁民経済組織として自立可能であるためには、やはり相当程度事業量は確保されなければならないという問題がございますし、そのまた運営がそうその総会が物理的にもなかなか開かれないような場合にも、総会法律として強制をして総会を開かなければ重要なことがきまらないということで、いわば形の上では総会主義あるいは組合民主主義が守られても、実体的に非常に組合運営に困難を来たすという状態ではこれもまた困るわけでございますから、組合経済的な自立と組合の能率的な運用とそれから組合員すべてによる民主的な運営と、それを一体これからもどういうふうに調整するかということが、水産業協同組合に対する私ども行政一つのやはり問題であろうというふうに思います。これはなかなかいまここで形式的にこういうふうにさばくというふうに申し上げることもできませんけれども、そういう問題を絶えず頭の中に置いて、十分漁業協同組合行政指導に当たってまいりたいというふうに思います。
  9. 達田龍彦

    達田龍彦君 いまの御説明ですね、私はこういう懸念を持つのです。まあ考え方としては一応理解ができます。ただ、この漁民漁業家としてだんだん成長、転化をしていく、そういう事実もあるのです。ところがですね、それに取り残されていく漁民というのはさらに零細性拡大をしていくという傾向をつくるのです。そういう意味での私は漁業家の上下の格差、階層の分化というのがこういう傾向の中にさらに拡大をし、さらに生産をあげ得る漁業家漁民という立場の、何と言うか、そういう状態定着をする傾向が今日側面としてあるわけであります。そうなってまいりますと、漁業協同組合の中において零細な漁民定着化ということが取り残される状態になってまいりますと、それをどう守るかということが協同組合の中にまた出てくる。私は、この傾向が今日の漁業協同組合の中に一つあらわれている現象ではないかと思うのであります。特に協同組合会議運営等を見てまいりますと、ややともすると組合長まかせ、理事まかせでありまして、理事さんにおまかせしておけばそれでいいだろう、組合長にまかせておけばいいだろう。しかも、漁民の皆さんというのは、仕事の性格等もあり、単純でありますから、またなかなか理屈が言えない人々が多いのでありまして、そういう人たちの集団でありますから、どうしても運営が幹部まかせあるいは組合長まかせ、ある特定の力を持っている人の発言、行動に左右されるという傾向が非常に強い体質を持っている。  私はそういう意味で今後の協同組合運営というのは、協同組合全体が経済体である限り、近代化方向あるいは大型化方向あるいは各分野に対応できる体制体質を持たなければならぬということの半面として、いま申し上げたように、民主化やいわゆる漁業協同組合性格がだんだんなくなっていくという半面を持つわけでありますから、いま長官が言われるような方向でのみいわゆる経済拡大近代化方向に重点を置いて法改正をする限り、零細漁民中小業者との間に格差拡大と同時に零細漁民定着化というものが出てきて、その中における非民主化あるいは非漁民化という傾向はさらに増大するであろうと私は見ております。この側面は必ず持っております。だから、そういう面を、ある一定の段階にくるとそういう面もまた違った形での協同組合というものをつくるとか、すでに漁業家になって生産拡大をされ、それだけでやっていけるような人々は、また違った角度法体系の中でとらえて措置するとか、こういう限界が必ず私は出てくると思うのです。ですから、そういう面を包括していまの協同組合でやっていくのか、あるいはそれを分割するのかという状態が私は出てきたときに、一体どういう体制をとるのか、これが一つ問題だろうと思うのですが、どうでしょうか、その点。
  10. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私は、いまの段階におきましては、中小漁業者とそれから漁民とで協同組合をつくるということが、漁民の力を分散させない正しい方向であろうというふうに思います、現在の段階におきましては。ただ将来の問題といたしまして、中小企業といいますか、法人経営相当漁民から異質のものに育っていって、一つ協同組合の中に取り込んで措置することが適当でないという時点に至りますならば、私は協同組合の中にそういう中小企業的なものだけを取り出して、現在それをある意味業種別組合という形で一つのくくり方をいたしているわけでございますけれども、そういう一つ組織協同組合の中につくって、それを水産業協同組合法の中で位置づけるということも考えられますし、また場合によりましては別途取り出して単独の法律をつくるということも私は将来の問題としてあるいは出てくるかと思います。これは現在私どもは、その中小漁業者というのは、大体いわゆる漁民から成長発展してきたものであって、協同組合の中に取り込んで運営することが少しも不自然ではないという感じを持っているわけでございますから現在のような措置をいたしているわけで、将来、相当長い将来の問題としては、私は組合組織論としては、またそれこそ現実の動きに従って措置すべきものであろうというふうに思います。  それから、零細漁民固定化ということをいま御指摘になったわけでございますけれども、これは私は、組合組織論の問題とはやや別の角度から、沿岸漁業振興ということで私ども措置してしかるべきものでございまして、そのためには、水産庁といたしまして、決して十分ではございませんけれども予算等措置におきましても、この二、三年相当水産にウエートを置いて農林省としては予算の編成にも当たっておりますし、また今回、海洋水産資源開発促進法案という形で沿岸漁業者増養殖の推進について一つ法律案の御審議をわずらわしておるわけでございますので、これは私は、組合組織論としてはやや別の角度からお取り上げいただいてよろしいのではないかというふうに思うわけでございます。
  11. 達田龍彦

    達田龍彦君 もう一点だけ考え方をただしておきたいのでありますが、私は、こういう改正を重ねていきますと、いま申し上げたように、上下の格差がかなりはっきりしてまいります。その場合、協同組合性格を、それを入れながらなおかつ持たせるという方法は、協同組合漁業権を持たせることだと私は思うのです。協同組合の利益を漁民全体に配分していく。これがやっぱり根本になければならぬと思う。その意味では、たとえば定置網等の場合には若干ございます漁業協同組合がこれを管理に付しておる。そのもうけによって配当、配分をしている。そういう形で、協同組合性格を守り、漁民経済的な地位の向上、社会的な地位の発展をはかっているという状態があるわけであります。いまの長官の話の中では、沿岸漁業の振興によって零細漁民定着化を防いでその人たち経済的な向上をはかっていくという、こういう考え方でありますけれども、私は、そういう観点からも一面は出てくると思いますけれども本質はやっぱり漁業協同組合を単位にして、その中における漁民の全体としての地位とあるいは経済的な発展をはかっていくという姿勢が私は根本であろうと思うのですよ。そうしないと、いま長官が言うような姿勢になりますと、漁業協同組合という性格がだんだん薄れていって、何か業者の集まりみたいなものになり、お互いに力の強い者が協同組合を利用するというそういう結果になると、私は内部破壊に通ずると思う。   〔委員長退席、理事亀井善彰君着席〕 したがって、そういう意味では、むしろ指導方向、一貫した基本的な方向としては、協同組合強化協同組合がどう利益を拡大しながら零細漁民をどう引き上げていくかということが中心であり、それに対して沿岸漁業の振興対策を側面的にぶっつけるということによって、漁業協同組合零細漁民発展していくと、こういう私は相関関係でなければいけないのではないかと思うのでありまして、その点どうですかね。いま長官お話によると、協同組合の中における個々の漁業者発展をはかっていくことが協同組合発展に通ずるというような理解、そういう理解になるような御発言でありますが、その点私は、それでは協同組合性格がそこなわれ、非漁民化あるいは非民主化というものが当然出てまいる結果になるのではないかと思うのですが、どうですかね。その点私は違うのじゃないかと思いますがね。
  12. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私の説明がやや舌足らずの点があったかと思いますが、沿岸漁民の振興ということは、相当漁業協同組合活動にまつところが多いわけでございます。ただ、たとえば行政庁と沿岸漁民関係だけで問題が処置されるものではございませんで、たとえばことしから出発いたします第二次構造改善事業につきましても、私ども相当漁業協同組合に期待をいたしておるわけでございます。したがいまして、漁業協同組合を通じて、あるいは漁業協同組合活動相当期待をして、沿岸漁業の振興をはかるつもりでおるわけでございます。そうして、いま具体的に御指摘になりましたたとえば定置網の問題でございますが、漁業協同組合といいましても、漁業協同組合農協との非常な違いは、漁業協同組合漁業権の主体であることが多いこと、それがまた合併一つの阻害要因になっておるともいわれる点でございますけれども、そういう漁業権の主体であり、また場合によりまして漁業を自営をいたしておるわけで、私ども漁業協同組合が自営をできるだけしないように、あるいは漁業協同組合から漁業権を引き離すようにというそういう要請はいたしておらないわけでございます。ただ、定置網の漁業等なかなか経営が苦しい漁協にとって、相当赤字要因になって何ともしようがないという事態がかなりある。そういう場合に、漁業協同組合から漁業権を離すということもこれも私はやむを得ないであろうと思います。しかし、その場合でも、たとえば新しい定置網の運営につきまして、漁協が何らかの形で実際的に介入をする、定置網の利用につきまして漁協発言をするという、私はそういう態度であってよろしいだろうというふうに思います。定置網その他漁協漁業自営の問題につきまして、うまくいっているのもございますし、またかなり赤字を出しておるのもございますが、漁業協同組合というのは信用事業をやっておりますから、漁協漁業自営をすることによって非常な赤字を出して信用事業の根底をくつがえすようなことになることは、これはどうしても避ける必要があるわけでございますけれども経営がいわば合理的に行なわれる限り、漁業自営というのを決して私ども冷たい態度で、漁協から漁業自営あるいは具体的には定置網の自営等を引き離すような措置はとっておりません。これは、そのまま十分やってもらうように、できるだけ御援助をいたすつもりでおるわけでございます。   〔理事亀井善彰君退席、委員長着席〕
  13. 達田龍彦

    達田龍彦君 私は、大体議論が行きついておりますから、そういたしませんけれども、やっぱり漁業協同組合漁業権を持って、そうしていわゆる独占的なあるいは支配的な漁業者から漁業権を漁業協同組合が握って、そうして漁業協同組合としての運営を行なうし、漁民民主化、それから漁村の民主化というものを発展をさしていくところに、漁業協同組合の真の私はあるべき姿があると思うのです。その意味では、やはり漁業権というものは漁業協同組合が民主的にお互いに話し合って運営をしていくという姿を基調に置かないと、漁業民主化やあるいは漁業協同組合本質的な性格が失われる。それだけはきちんと私は踏まえてもらわないと、昔みたいにやっぱり漁業者漁業権を握ってしまって、漁業協同組合は単なる漁業者が利用するための機関にすぎないというようなことにおちいりがちなんであります。その点のきちんとした指導と踏まえ方をしておらないと、私はたいへんだろうと思う。特に、いま申し上げたように、こういうように、漁業協同組合経営上機構も大きくなるし、またそれに対応する措置をしなければならぬということになると、組合も大きくなりますから、そういう形から出てくるそういう弊害というものを除去するためには、その基本の精神だけはきちんと踏まえて私は運営してもらわなければならぬと、こう思っておるのでありまして、ぜひひとつその点は、そういう認識をきちんときめて、今後の法改正あるいは法の運営あるいは具体的な漁業協同組合指導に私は当たってもらいたいということを強く主張しておきたいと思うのであります。  それから、これは農協法改正の中にも出てまいっておりましたけれども総代会権限拡大されたわけでありますけれども、なるほど総代会権限拡大されたことに対する理由はきちんとついておりますけれども、一面では総代会の制度のほうがいいんだという面も、私はうまく運営されればその点の利点は十分理解できるところでありますけれども、逆にそれに頼ってしまって、組合員間の意思の疎通を欠いてくることは間違いないという側面を持っておるのでありまして、将来これはどんどんどん合併が進んでまいりますと、そういう形をどんどんおとりにならなければ組合運営上困るんだという御意見も組合の幹部の中からあるんであります。たとえばそうしていかなければ、そうしてもらうことによって経営が安くついてたいへんよくなりましたとか、やかましい意見が少なくなりましたとか、めんどくさい説明をしなくても大体わかっている連中が集まってくれるからいいですとか、そういう面で取り扱われる、そういう面で理解をされている面があるのですよ、事実の中には。だから、総代会制にはいい面が生かされないで、経費が節減された、文句が少なくなった、あるいはわれわれが自由にできるという面での、サイドからのみ問題が理解される風潮が強いんであります。その点が私は一番危険だと思うんでありまして、その点に対する何らかの歯どめをしていかないと組合の非民主的な運営に陥ります。そういう点どうお考えになっておりますか。
  14. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私ども総代会を設けて運営いたします場合は、どうしても総代会によらなければ経済的に物理的に運営がなかなかむずかしいときに限ることを十分指導をいたしたいと思います。そして総会を開くということがあくまで原則でございますから、原則は固く守ると、総代会を開くようにという行政指導はいたしません。  また、今回の法律改正におきましても、総会が開きやすいような手段も講じておるわけでございまして、現在総会におきます代理委任は代理は二人、あるいは大きな組合につきましては三人までしかできないということになっておりますけれども、今回は四人まではできると。しかしそれも組合員でありますとか、使用人でありますとか、そういう限定したものに限るということで、まあ代理人の代理し得る組合員の数をふやすことによりまして、一面総会を開きやすいような事態をつくっておるわけでございますから、あくまで総会が原則であって、総代会はいわば例外である。その例外を開くようにという行政指導はいたしません。むしろ総会が原則であって、総代会を開くのはやむを得ない場合に限ると、しかし総代会をやむを得ず開く場合はこういう制度をつくりましたと、そういうような指導をいたすつもりでおるわけでございます。
  15. 達田龍彦

    達田龍彦君 それから時間がないので、もう一つはいま漁業協同組合実態を見てみますと、正組合員よりも准組合員が多いところが極端に言ってあるのです。そういうことになりますと、漁業協同組合性格がこれまたゆがめられる結果になり、しかもこの准組合員というのは、実際には漁業操業をやらないで、たばこ屋のおっさんとか、酒屋のおっさんが何か株をにぎっておってやっている傾向もある。常にそういうことから漁業権者、あるいは漁業協同組合の純漁業者との間に感情的にも運営の中でも摩擦が生じているという傾向にあるのであります。したがって、将来のこの漁業協同組合の中における組合員と准組合員のあり方をどう持っていくかということがひとつ私は問題だろうと思うのでありまして、准組合員をだんだん拡大をしていくということになると、漁業協同組合性格がそこなわれてくると同時に、漁業活動それ自体にも大きな問題が出てまいりますし、それから、漁業の将来にとってもこれは私は大きな問題だろうと思うのです。でありますから、准組合員をどんどん拡大していくということは、協同組合よりも何か協同組合を単なる商売上に利用するという面で理解される傾向が強くなり、組合員漁業に対する意欲を喪失する面も出てまいるわけでありまして、えてしてそういう人の中にボスとか、有力者がいるのでありまして、そういう人たち漁業はしないが、口出しをして、漁業協同組合を牛耳るという結果がある組合もあるのです、実態の中には。でありますから、たとえば現場の中には漁業をしない組合長というのが現実におるわけですよ。あれは理屈を言うからだとか、そういうことになりますと、一体漁業を愛してやっているのかどうか、職業の手段としてやっているのかどうか、あるいは地位を確保するためにやっているのかどうかという疑わしいところも出ているわけでありまして、これはやはり組合員と准組合員というもののあり方、立場というものを明確にしていかなければならぬと思うのでありまして、そういう点についてどうお考えになっているか、お聞かせをいただきたいと思います。
  16. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 漁業協同組合におきましては、正組合員は当然漁業従事の日数、年間九十日ないし百二十日の間で定款で定めるもの、准組合員につきましては、実はこれは農協と違いまして、その地区におる者はだれでもということではなくて、とにかく漁民であることを要件としておるわけでございまして、私ども今回の改正をやります場合に、念を入れるために、各界の権威者を集めて、水産業協同組合関係の研究会を昨年いたしましたが、そのとき漁業協同組合も、一つのやはり地域的な協同組合性格を持っているから、農協と同じように准組合員資格拡大すべきじゃないかという御議論も相当あったわけでございますが、まあ私どもは先ほどもお話にございましたように、漁業協同組合というのは、漁業権の主体であることが多いわけでございますから、漁業と全然関係のないものを准組合員として加入させることは適当でないという、そういう判断から、今回の改正では准組合員資格拡大には触れなかったわけであります。したがいまして、いま御指摘のように、全然漁業関係のない、あるいは漁民であるばかりでなしに、法律では「河川において水産動植物の採捕若しくは養殖をする者」というものもついておりますけれども、そういうこともやっておらない人は准組合員資格はないわけでございますから、これは当然資格審査の問題になるだろうと思います。私どもこの点は農協とやや違う考え方をしているわけで、漁業協同組合も確かに地域的な協同組合性格を持っておるけれども、同時にやはり漁業権の主体という性格も非常に強く持っているわけでございますから、准組合員資格限定をするということでやっておるわけでございます。
  17. 達田龍彦

    達田龍彦君 では次は、この漁協合併がずっと進められておりまして、今回もまた合併促進法の延長が国会できまりましたけれども、一向にまだ進まないという状況にあるようであります。たとえばわが長崎県についても、百七十八の漁業協同組合があるんです。漁民の数は約五万、農協組合員は十五万もおりまして、百二十ぐらいの組合である、こういうような零細な全く漁協としては経営ができないような状態でありながらも、漁業協同組合としての単位漁協をつくっている。極端なところでは一行政区の中に二つあるいは三つの漁業協同組合がある、部落ごとにある、こういう状況でございますので、これは十分積極的な指導はされておると思いますけれども漁業権の問題、あるいは信用組合との関係、あるいは政治的な地盤等の関係からなかなか進まないという現状にあると思います。そういう理由がわかっているのだけれども、なおかつ進めなければならぬという実情にあるわけですが、これを今後どういう形で、いまのままでいきますと、なかなか私は進まんだろうと思います。でありますからそういう事実の上に立って促進の方法を再検討していかないと進まないだろうと思うのでありますが、そういう現状の上に立って、さらに助成法の延長だけはきめましたけれども水産庁指導方針として、どういうふうにしていけばこれがこういうふうに進みますという、自信のある構想をお持ちであれば、この際明らかにしてもらいたいと思います。
  18. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) まあ私は、漁協合併というのは、農協合併に比べてもむずかしい要素があるだろうと思います。たとえば漁業権の問題をとりましても、また漁村で交通が非常に不便だという問題をとりましても、私は農協合併よりむずかしいだろうと思います。ただ、まあこれからの漁協活動を考えまして、私ども構造改善事業その他で漁協に大いに活動してもらう、あるいは流通機構の改善という問題で漁協販売事業に大いに期待をいたすという観点からいいますと、漁協事業が自立できるような規模にまで大きくなってもらうということは、やはり非常に大事なことでございますので、まあ役所として、漁協は当然民主的な自立の団体でございますから、役所の行政として合併を非常に強制することはもちろん非常に力強く行政庁が押すということは、なかなかこれむずかしい面があるわけでございます。したがってまあ全漁連その他系統組織と十分相談をいたしまして、とにかく一定の規模以上、事業規模が一定の範囲にならなければ、これからの漁協活動というのは非常に困難だという、そういうことの啓蒙宣伝につとめますと同時に、漁協合併するにあたりましていろいろな困難な問題がございますが、それを行政的にできるだけこなしていくという、そういう役割りをして、実際の旗振りはやはり系統組織にやってもらう。しかし、私どもとしては合併運動に熱意を持って取り組むという、そういうことで、今後もこの問題の措置をいたしていきたいと考えておるわけでございます。
  19. 達田龍彦

    達田龍彦君 その場合水産庁指導方針として私は信用部の統合合併を先に進めてそれを誘い水といいますか、そういう雰囲気、状況をつくりながら、漁協合併を促進をしていく、こういう指導のあり方は一つの方法だと思うのです。そういうことをとっておるところもあります。ところがしばらくしておきますとこれは固定化していくのです。信用部の合併合併でよろしいけれども漁協だけ依然としてそのままという状況で何ら矛盾を感じないという状況になるのですが、これは信用部は信用部なりのものの考え方でやっております。これは比較的信用部のほうは統合合併がしやすい状況にあるからであります。だけれども私はそこまでいったところについては、それをやっぱり基盤にして漁協合併の促進をさせていくという必要があるのではないかと思っておるのでありまして、そういう点をひとつ具体的にやっぱり何らかの方法を講じながら、そういうものを進めていかないと、単なる系統におまかせするという程度では、指導力の弱い系統では全くお話になりません。と同時に漁連の中にも漁政活動の活発なところと活発でないところがありまして、そういう指導体制の強弱によって問題の解決がおくれておる面がありますから、そういう点はひとつ各県の実情をとらえて、そうして信用部との関係がどうなっているか見ながら、具体的な指導をしてもらわないと、私はいま申し上げたように、漁業全体の発展あるいはその開発という問題に即応できる漁協という体制はできないのではないかという気がいたしますので、そういう点を十分注意をしながら御指導いただきたいと思うのであります。
  20. 河口陽一

    委員長河口陽一君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時二十五分まで休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      —————・—————    午後一時五十八分開会
  21. 河口陽一

    委員長河口陽一君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、水産関係法案について質疑を行ないます。
  22. 達田龍彦

    達田龍彦君 この海洋水産資源開発促進法案内容に触れたいと思いますが、この海洋開発は、最近各産業分野で開発意欲が非常に旺盛になってまいりまして、いろいろな形で開発が進められようといたしておりますが、その中でとりわけこの水産資源の開発ということは非常に緊急でしかも重要な課題だろうと私は思うのでありますが、今回の法律の提案の背景になっているこの水産資源の開発は、海洋開発全体の中における水産資源の開発というものがどういう位置づけの中にあるのか、まずそれを承っておきたいと思います。   〔委員長退席、理事亀井善彰君着席〕
  23. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 海洋開発全体につきましては、実は科学技術庁を中心として技術的な問題からの検討を深め、また事実海洋のスペースとしての利用でございますとか、あるいは海底資源開発の問題でありますとか、いろいろやっておるわけでございますが、私どもは、海洋開発の中で水産業は日本におきましては相当大きな比重を占めるものというふうに考えております。また事実いままでも水産業は相当高い水準にあるわけでございますから、海底の鉱物資源の開発でありますとか、あるいはスペースの利用のように全く新しいプロジェクトということではございませんだけに、いわば人目をひかないという点はございますが、重要さにおいて他産業に比べて水産業の地位が低いというふうには私ども考えておりません。そこで、まあ全く新しい仕事ではないわけで、水産庁が従前からその所管として海洋開発を水産の面からやっておるわけでございますが、私どもがこの法案を出しました背景を申し上げますならば、水産物の需要がきわめて強くて供給がなかなかそれに追いつかないという問題から現に水産物の値段が非常に高くなったという、そういう問題がございます。それは流通改善等、流通・加工の面で処理すべき問題も多うございますけれども、何としても食料でございますから生産の量をふやすことがやはり基本的な問題であるというふうに思います。したがいまして沿岸におきます増養殖の推進、海洋におきます新漁場の開発という二点にしぼりまして今回の法案を作成いたしますと同時に、海洋開発の問題がいろいろな関係で推し進められる過程におきまして水産業と他産業との調整の問題が当然出てくるわけでございます。私ども、海は魚をとるためにだけあって他産業は一切これに踏み込むべきではないという、そういうふうには実は考えておらないわけでございますけれども、しかしいままで他産業と水産業との海面における調整ということが法律制度としてございませんでしたものですから、他産業がまず出て水産業があとからそれを追いかけて補償の問題でありますとか、あるいは公害の問題でありますとか、いわば後手後手に回るという実情であったわけでございます。したがいまして、海面は水産業だけが独占するという趣旨ではございませんけれども、他産業が進出いたします場合に適正な形で水産業と他産業との調整が行なわれるというようなことを考えまして、それは沿岸における増養殖の推進の際に開発区域をつくるということで、その開発区域において、たとえば砂利を取ったり工作物を設置したりする場合に、都道府県知事に届け出をさせて必要な勧告を都道府県知事がするということで、他産業との調整をする、あるいはきわめて重要な漁場は政令で沖合い漁場を指定いたしまして、そこでたとえば海底の石油の開発をいたします場合に都道府県知事あるいは農林大臣に届け出をさせて必要な勧告をするという、そういうことの調整を考えたわけでございます。
  24. 達田龍彦

    達田龍彦君 特にこの海洋開発の中で、いまお触れになったように、他の産業との開発関係の調和ということが私はたいへん重要なことだと思うんです。先ほども触れられたように海洋、海底鉱物資源の開発、それに伴い操業が困難になる、あるいは海水が汚濁をされる、あるいは漁場がだんだん少なくなっていく、こういう結果が出てまいるわけでありますから、他の産業の海底、海洋の開発との調和ということは今後きわめて重要な水産資源の確保の上にとっては問題であろうと思うんです。  そこで私がお伺いをしておきたいのは、もう一つは国際関係における海洋開発という形がすでに日本の沿岸に出てまいってきておるわけでありまして、それとの関係も調整しなければならぬと思うのです。特に西日本では韓国の進出だとか、あるいは台湾政府の進出だとかいうような形が出てまいっておりまして、漁民はそのことに対してたいへん不安と危険を感じておるという状況にあるのであります。したがって、この調整というものを、国際的な面と国内の他産業との関係というものをどういうふうにしていくのか。たとえば宇宙開発だとかあるいは原子力開発というのは、事業団をつくって一つの機構でもって開発、推進が行なわれているわけでありますけれども、海洋開発はいまのところ企画庁がやるのですか、そういうかっこうで持ち寄って進める、あるいは調整をするということになるのではないかと思うのでありますけれども、そういう関係が一体どういうふうに進められるのか、それから他のこの海洋開発の法案とこの法案との関係はどうなのか、その辺を御説明願いたいと思うのです。
  25. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 海洋開発につきましては、水産を除きましては新しい分野で、まず技術的な基礎を固めるということが第一でございますので、現在科学技術庁を中心にいたしまして種々の審議会をつくって水産関係からも人を出して審議いたしておるわけでございます。海洋開発全体に関する法案というのはまだございませんで、最近も海洋開発の技術関係で海洋のスペース利用をはかる施設を保持するために科学技術庁関係事業団を設立させるための法案の提出があったわけでございますけれども、他の水産資源開発につきましては他産業との調整ということが一つあるだけで、すでに実績もあることでございますから、科学技術庁で水産を含めて全体の海洋開発についての総合的な計画が立たなければ水産資源の開発ができないというそういう関係にもございませんので、他産業の調整ということを頭に置きながら、私ども独自の立場でこれは当然海洋開発関係のいろいろな審議会におきましては水産の立場を強調いたすことはいたしますけれども、科学技術庁でありますとかあるいは経済企画庁でありますとか、他の官庁の総合的な計画がまとまらなければ私ども前進できないということではなくて、まず水産庁といたしまして今回御審議をわずらわしております法案に基づいて水産資源開発に向かう。それ以外、まあ非常に深海における資源の探索でありますとか、いろいろ新しい科学技術を必要とする面が当然これからもあるわけでございますから、それは科学技術庁を中心とする技術のレベルアップとの関連で私どもその成果を当然利用させてもらいますけれども、ただいまは水産庁がこの法律案でまず乗り出すということで考えているわけでございます。
  26. 達田龍彦

    達田龍彦君 そうしますと、この他産業との調和の中で、常に被害は漁業資源の立場のほうにあると思うのですよ。そういう場合の補償だとか罰則ですね、これはどういうきめ方になるのですか。
  27. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 一つの具体的な例で申し上げますと、海底資源の開発、特に石油資源の開発、日本周辺の大陸だなにおきますそれが、これから日本の石油資源の確保ということからも相当進められるだろうと思います。現に島根県の浜田沖におきまして、西日本石油開発株式会社が現在試掘をやっておるわけでございます。で、私ども今後海底石油の開発ということが相当行なわれて、その場合に水産業との調整が当然必要になるという前提でこの法案の提案をいたしておるわけでございますが、通産省と私どもとでこの法案の相談をいたします前後に相当長いことかかって調整をいたしました。大体の筋を申し上げますと通産省においては海底資源の開発といいますか、石油の開発をいたします場合に、安全操業ということに全力をあげて被害が起こらないように企業を指導する。しかし万一漁業その他について被害が起こった場合は適正な補償を行なうように業界を指導する。で、私ども水産庁と通産省との間では水産業の実態、あるいは石油開発の現状等々につきましてお互いに情報の交換をひんぱんに行なう、そうして水産庁としてはとにかく漁民といいますか漁業者に対しまして円満に話し合いが進められるような土俵づくりをする、そういうことで通産省との事務調整が行なわれまして、今回の浜田沖の石油の試掘についてもまず順調に両者の話し合いが行なわれておるわけでございます。これは今後相当各所において問題が起こると思いますので、私どもこの方針で進めたいと考えております。
  28. 達田龍彦

    達田龍彦君 そういう場合に漁業権が設定されている場合はもちろんその地域の漁場、漁協あるいは漁業権者の了解というのですか、そういうものを前提にするのだと思いますが、そうでない地域における操業に支障がある場合が出てまいりますね。そういう場合もただ各省間の話し合いで問題を決着するのじゃなくて、その地域の漁業者ないしは漁業協同組合等の了解といいますか、納得といいますか、そういうものを前提にしないと問題の本質的な解決に私はならぬと思うのですけれども、これは今後たくさん出てまいると思います。でありますからその点をどういうふうにお考えになるのか。どうですか。
  29. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) まあ海底石油の開発をいたします場合に水産庁と通産省とで話し合いをしてものごとをきめるという趣旨ではございませんで、あくまで交渉は会社と漁業者との間に行なわれるわけでございます。私どもも今回の法律案をつくりますときに、まあいろいろ問題がございまして、今後の石油開発の国策からいって、こういう形で法案がつくられることはむしろ石油業界にとって非常にマイナスになるのではないかという、そういう心配も各方面にあったようでございますけれども、私ども漁業者を納得させなければ開発が現実に進まないわけでございますから、一つのルールをつくって法律制度としてもルールをつくり、それから水産庁と通産省との間で行政的なルールをつくり、それに基づいて漁業者と石油の開発の企業との間で話し合いをするということでなければ石油がとても掘れないと——まあ俗にそこのけ、そこのけお馬が通るという形で企業が進出しようといたしましても、それは絶対今後できないからこういうルールをつくろうではないかということで、いま申し上げましたような行政上のルールとそれからこの法案の作成をいたしたわけでございまして、事柄につきまして漁業者と会社との話し合い、特に漁業者の納得が先だということはおっしゃるとおりでございます。
  30. 達田龍彦

    達田龍彦君 それから国際関係、たとえばいまの台湾だとかそれから韓国が西日本の海域あるいは東支那海の海域に天然ガスだとか海底の石油資源の開発調査と、こういう形で開発調査を行ないつつあるわけですね。これはいまの状況で漁民の話を聞きますと領海でない公海の場合は自由かってにいまやっているという状況にあるようです。網を切られる、操業困難という状況が出てまいっておりますけれども、これは何としても国際間の取りきめをするか話し合いをするかしないと安心して操業ができない状況にあるのです。そういう面では何らかの方法を講じなければいけない状況にあるわけでありますが、この前私が予算委員会でちょっと触れたときには外務省の御答弁では国際間の話し合いで解決をしたいという意向を回答として出されたわけでありますけれども、そういうたとえば国際間の開発に対しての取りきめというものが特に漁業資源を守るという立場から確立されなければならぬと、こう思っておるわけでありますが、そういう点、これはまあ外務省が一番適当だと思うのでありますけれども、どういうように取り進められておるのか。それでそういう事態になった場合にはどういう方法でもって話し合いが進むようになっておるのかお聞かせをいただきたいと思います。
  31. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 日本の近海といいますかあまり遠くないところで石油の開発が問題になっておりますのは韓国と台湾であります。それで、現在大陸だなの条約に日本は入っておりませんけれども、水深二百メートルまでのところを大陸だなとし、そしてそこの鉱物資源は沿岸国の主権に属するということは、これは大陸だな条約に入るか入らないかという問題とは別に、国際司法裁判所の判決によっても明らかでございます。問題はそれより深いところで、大陸だな条約におきましてはきわめて不明確な形で、開発可能であれば水深二百メートルよりも深いところでも沿岸国の管轄に属するというような規定があるわけでございまして、問題はそういう地帯で両国の間にあるそういう水深二百メートルを越えるような地帯における問題が国際的にもなかなか各所で問題になっておるようでございます。まあ、韓国との話につきましては現在話し合いを外務省が進めておるようでございますけれども、まだなかなか合意には達しておらないようでございます。それから東支那海等における問題はまだ私ども非常に具体的な試掘あるいは採鉱に入っておるというふうには聞いておりませんけれども、現在の状態におきましては関係国の間で話し合いをして賠償についての取りきめをするということがやはり国際関係のたてまえからいって適当でございますので、まあ現実に被害を受けますものは漁業が主でございますから、私どもも外務省と相談をいたしまして漁業立場を十実主張できるようにいたしたいというふうに現在考えておるわけでございます。
  32. 達田龍彦

    達田龍彦君 ではまあ現段階においては国際間の問題としてはまだ補償問題あるいは罰則問題等については全く話し合いが持たれてない。したがってそういう補償に値する状態が出た場合については国内法でもってきめられるまでの過程として日本政府が持つとかそういう何らかの方法を私は講じなければいけないと思いますけれども、その辺はどういうお考えですか。
  33. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) まあこれ、外国の会社が公海において石油の採油をするわけでございますから、日本の政府が賠償するということは、これはなかなかむずかしいと思います。やはり台湾政府その他、鉱業権を付与するわけでございますから、その国を相手どり、またその企業を相手どって政府として賠償の請求をする、いわば申し入れをするということになるだろうと思います。  またこの問題につきましての国際的な動きとしては、十分御承知と思いますけれども、一九七三年の海洋法会議において大陸だなの定義の再検討、たとえば水深二百メートルまでのところを大陸だなとし、それより先は国際的な管理に移すという、そうして開発しようとするものはその国際的な機関に免許料を払って事業をする。その場合に十分公害等について注意をするという、そういう問題も、実は一九七三年の海洋法の会議において討議をされる予定でございますし、私どももそれに対応していろいろ対策を練っておるわけでございますので、国際的な問題として、いま御提出になっております問題はなかなか重要な問題として今後の国際法関係会議においても私は大きな議題になって、私どももそれに参加して議論するということになると思います。
  34. 達田龍彦

    達田龍彦君 それからこの法案の提出の背景は、先ほどお触れになったように水産物の需給の均衡、とりわけ生産拡大をどうしていくかということにあると思うのでありますが、今日年間の生産量八百六十一万トンですか、この見通しを昭和五十年あるいは五十五年ということで、水産庁では一応お出しになっておると思うのでありますけれども、それによっても需給均衡ということは、なかなか均衡がとれないというほど、生産が追いつかない状況にあるのではないかと思うのでありますが、将来の需給均衡の上に立って今回の法案がどれほど役割りを果たすのか、沿岸の場合は増養殖、それからそれ以外の場合については漁場の開発ということが中心になっておるわけであります。かりにこの法律によって需給均衡が保てるほど生産拡大するとするならばこれはけっこうな話でありますけれども、それでもなおかつ需給均衡が保てないということであれば、さらに何らかの需給均衡の方策を考えなければならぬと思うのでありますが、その背景になっているこの法律が役割りを少しでも果たしていくことは認めますけれども、どの程度の役割りを果たす結果を予想されておるのか、その辺見通しをお聞かせいただきたいと思います。
  35. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私ども昭和四十四年の十月に、「水産物の需給の見通し」を検討し、これを発表いたしておるわけでございます。その際は、農業基本法におきます「農産物の需要と生産の長期見通し」というものもございますが、現在の傾向を将来に反映させるならばどういうことになるかという、そういういわば単純見通しをやったわけでございまして、五十二年を目途に試算をいたしますと、需要におきまして千二百三十万トン程度、国内生産におきまして九百四十万トン程度ということで、結局輸入が非常に増大しない限りはおおむね二百九十万トン程度の一応不足量が出ると、そういう試算でございます。これは需給が非常に逼迫いたしますれば価格が上がって需要が落ちるということで、二百九十万トンという数字が裸のまま供給不足ということには現実にはならないわけでございますが、需要と生産との単純見通しをいたしますと、そういう形になるわけでございます。  これはあくまで単純見通しでございますが、今回の法案を提案いたしましたときに、それではいわば意欲的な見通しといいますか、沿岸における増養殖、新漁場の開発ということを精一ぱいやるとしてどの程度生産増が見込まれるかという、これも一応の試算でございますけれども、大体いま申し上げました九百四十万トン程度生産の見込みに八十万トン程度の増となるのではないか。八十万トン程度の増の中で沿岸関係で大体三分の一、遠洋関係で三分の二程度の増産が見込まれるのではないかということでございます。  そこで、五十二年における需給は一体それではなお均衡しないわけでございますが、私ども、いままだ未知の条件でございますが、たとえば四十四年で申し上げまして、食用と非食用とに魚介類を分けますと、国内生産量の中で六百三十六万トンほどが食用になり、百八十万トン程度が魚かすあるいは養殖のえさ等の非食用になるわけでございます。それから輸入ものの中で二十三万六千トンが食用になり、五十一万トンほどが非食用、えさの輸入ということになるわけでございますが、この非食用で国内生産量と輸入量とを合わせまして大体二百三十万トンに及ぶものが一体今後どうなるか。石油たん白の問題もございますし、配合飼料で、石油たん白といきませんでも、大豆かす等々の利用がだんだん行なわれてくるわけでございますから、いま申し上げましたように、単純見通しでは二百九十万トン程度の穴があくと、輸入がふえる分はそれだけの穴が小さくなるわけでございますし、それからこの法案に基づくいわば意欲的な見通しとして八十万トン程度もふえるわけでございますが、さらに非食用部分——家畜のえさあるいは養殖のえさ、そういうものが水産物から別のものに転換するならば、またここでも供給増という形になるわけでございますから、まず五十二年における需給状態というのは、一番最初に申し上げました裸での単純見通しにおける需給の見通しよりはよほど改善されるというふうに考えておるわけでございます。
  36. 達田龍彦

    達田龍彦君 それで、いまの見通しは一応試算をされた見通しでありますが、需給の今後の見通しの中で一つ重要なことは、海洋の汚染を含めた公害のための海洋資源の喪失といいますか、減少というものをどう見ていくかというととはたいへん私は重要な問題だと思う。今回出されておるこの法案の中で、この沿岸海域、あるいは遠洋、沖合いにおける公害発生から出てくる被害、水産物の減少というものを考えるならば、法律の中でやっぱりそれを規制していく、守っていくという立場がなければこの需給の見通しは私は達成できないんではないかと思いますし、また漁業生産活動の中でもたいへん大きな規制と被害を受ける結果になると思うんです。その点についてどういうお考えを持っておられるか、法律の中でどう取り扱おうとしておられるのかお聞かせをいただきたいと思います。
  37. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) この法案の中におきましては、一つは沿岸の問題として水産物の増養殖に非常に必要な漁場は開発区域と知事が指定をいたしまして、先ほども申し上げましたけれども、砂利の採取でありますとか、あるいは工作物の設置でありますとか、そういうことをやります場合に知事に届け出をさして、そして知事が海を非常によごすような場合は必要な勧告をする、沖合いの漁場につきましては政令で重要な漁場を指定いたしまして、そこで石油を掘るというような場合は知事または農林大臣に届け出をして必要な勧告をすると、そういうことで調整をいたすわけでございます。実は公害対策といたしましては、この法律としてはそれだけでございますが、昨年の国会で水質汚濁防止法でありますとか、海洋汚染防止法でありますとか、それから廃棄物の規制をする法律でありますとか、あるいは公害復旧の事業者の事業費負担法でありますとか、公害関係法案相当提案され、可決されまして、その成案を得る過程におきまして、私ども水産の立場からずいぶんいろいろな注文をいたしまして、法案の修正をやってもらいまして、いままでとは違って相当適正に運営をするならば、私は公害の防止について相当威力が発揮できるというふうに考えております。したがいまして、この法案は別にこれ、公害対策法案ということではございませんで、水産資源開発の側面からの他産業との最小限度の調整でございますから、これだけではなくて他の公害関係法律の適正な運営を通じて十分公害対策には今後手を差し伸べていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  38. 達田龍彦

    達田龍彦君 持ち時間がもう参りましたので、まだたくさん法案内容についても質問をしたいのでありますけれども、非常に限られた時間でありますので、あと一、二点質問をして質問を終わりたいと思うわけでありますが、この開発区域に指定された場合については、というのは、海底を掘るとかあるいはいろいろな開発のための行為を行なう場合については届け出を行ない、または勧告をするという程度のことが盛られているようでありますけれども、そういう程度では非常になまぬるいんではないかという私は気がいたすんでありまして、開発区域の中におけるそういう問題についても勧告あるいは届け出による勧告程度ではなくて、補償あるいは罰則というような、そのくらいのきびしいことをしていかないと、私は漁業環境を守ることもできないし、それから漁業資源を守ることは非常に困難だろうという気がいたすんであります 他の法案との関係あるいは他の産業開発との関係という、そういう点の調和から一つはその程度に押えたということかもしれませんけれども、私は海洋開発における被害というものは常に漁業立場にあると思うんでありまして、その立場にある分野が強い姿勢でこれを守るという基本的な立場がない限り常に被害を受け、常に生産が阻害をされ減少をしていく、こういう立場になると思うんでありまして、その意味からもこれは私は補償、罰則を含むところの強い姿勢が当然盛られなければならぬし、またそういう分野で主張しても、他の産業は加害者ですから、当然これはこれを認めていくべきではないか、その意味では私は水産庁の姿勢が非常に弱腰ではないかという気がいたすのであります。そのことは同時に漁民漁業者はたいへん困るんでありますから、この点に対してはこの法律一つの私は問題だと思うんでありますけれども、そういう姿勢で臨むべきだという私は考え方ですけれども、その点この法律内容というのは弱腰でありますけれども、なぜそういうことが強く盛り込まれなかったのか、盛り込もうとしたけれども、政府の政治姿勢全体の問題としてそれが無理だったということなのか、その程度でがまんしていくべきだという水産庁それ自体のお考えなのか、あるいはそういうことをしたんでは水産行政にはね返るものが別にあるのか、そういう配慮からなのか、その点どうなんですか。
  39. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 先ほど申し上げましたように、海をよごさないために公害関係法律を厳正に適用するというのが私は基本だろうと思います。水質汚濁防止法その他それには相当強い規定があるわけでございます。ただ直接水産業と他産業の調整という面につきましては、いままで法律制度としてほとんど何もなかったというふうに申し上げてよろしいわけで、私ども海は水産業だけが独占するということではございませんで、むしろ海を最も合理的に活用するといたしましても、その場合に水産業の立場を無視してほかの産業が出てきて水産業があと始末をするということは絶対困るという、それが基本的な姿勢でございますので、他の公害関係法律を厳正に適用するということと合わせて、私は当面こういう制度を講ずる。いままで全然土俵に上がっていなかった、水産が法律制度として他産業と調整をするということがなかったわけでございますから、まず当面こういう形で運用さしていただきたいというふうに考えておるのであります。
  40. 達田龍彦

    達田龍彦君 私はこの法律の一番弱点は、また私が一番不満に思っているのは、この水産物の需要供給の関係からいっても常に不足をいたしておるわけですね。しかも九百四十万トン程度が将来の見通しとしては国内資源開発の結果、こういう位置づけ、そうすると、私は日本全体の動物性蛋白質全体の需要の動向から見ましても、今後の蛋白質の需要を水産に求めてくるという傾向は非常に強いということを考えなければならぬと思いますよ。そうしますと、国全体のそういう食糧あるいは動物性蛋白質の位置づけから考えても、これは重要な私は日本の政策であり、政治の中でも高く取り扱われなければならない問題だろうと思うのです。農業の畜産その他についても、思うように畜産が伸びない、あるいは価格その他の不安定、農家の所得安定等から考えて、むしろ私は山よりも海に蛋白資源を求めるという傾向が今後の傾向ではないか。そうなってまいりますと、工業資源の開発ということは、それは海には無限のものがあるかもしれません。しかし、そのことと日本全体の今日の立場から考えた蛋白資源を求めるという海への期待というものは、私は考えようによっては、このほうに重点を置いた考え方を持つべきではないかと思うのです。また、そのことを水産庁は強く国全体の方針の中に私は主張すべきだ、そういう位置づけができるならば、それに基くところの海洋開発における水産資源の開発というのは高い私は位置づけをしなければならぬ。それを守りながら、なおかつ半面では、海底鉱物その他の鉱物資源の開発ということが私は付随的に守られていくという形がとられてしかるべきではないかと思うのです。ですから、その辺はやっぱり根本的な位置づけがあいまいなために公害の問題についても非常にあいまいな形で弱腰にならざるを得ないし、それから調整の問題につきましても、むしろ私はこの鉱物資源の開発が先に進められ、そしてそれの権益が守られながら、漁業のほうが押しやられていくという傾向が実際の中には出てくるという気がしてならない。それは日本の政治の方向がやはり工業立国の立場をとっておるという観点から考え、あるいは経済の高度成長の中における工業資源のほうが日本のより経済成長に役立つという方向がある限り、私はそういう意味でも水産業が追いやられていくということは海洋の中にも出てくるのではないか、そういう立場にあるのでありますから、この法律はむしろ追いやられるものの限界におけるぎりぎりの、私は防衛するための壁だろうと思うのでありますが、その意味にしても、あまりにも位置づけと内容が弱々しいわけでありまして、その意味における海洋の中における水産資源の確保ということはさほどこの法律では期待できないのではないかという気がいたすのであります。でありますから、そういう点もう少し明確に私は水産庁はき然とした態度で主張しながら、問題はそういう根本的なたん白資源の確保ということに問題があるわけでありますから、そういう点でもう少し強い姿勢の、水産資源を守るという立場の姿勢と法律内容を確立すべきではなかったかと、こう思うのでありますが、そういう点についてはどうお考えですか。
  41. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 今後の国民食糧確保の面から水藻業がきわめて大事なものであるというお話、私も全くそのとおりであろうと思います。今回海洋水産資源開発センターを設けますのも、ソ連あるいはアメリカが相当な熱意で水産業に取り組んで新漁場の開発について膨大な船舶と膨大な経費とをかけて国みずからやっておるということに一つ刺激された面もあるわけでございますから、その点まさにおっしゃるとおりであろうと思います。で、私どももそういう立場で今後水産行政をやってまいるつもりでございますが、法律の制度といたしましては、とにかく公害関係——水質汚濁防止法でありますとか、あるいは海洋汚染防止法でありますとか、これを厳格に運営するということは従来の経過からいってなかなかむずかしい問題でございますが、それを厳格に実施するように水産庁としては努力をいたすつもりでございます。あわせて水産業と他産業との調整ということを正面から取り上げて最初の法律制度でございますが、今回の開発区域あるいは重要指定漁場、両者につきましては私どもこの法律の定むるところに従って水産業と他産業との調整を十分やって、水産業が単に追いやられる産業であるということを絶対に防ぐつもりで行政をいたすつもりでございます。
  42. 達田龍彦

    達田龍彦君 それで、今後まあ開発区域がきめられていくわけでありますけれども、私は、これはまあどちらということではないのでありますけれども、特に沿岸の漁業開発については十分な配意と熱意を持っていただきたいと思うのでありまして、沿岸のほうはやはりそれだけ力が弱いわけでありますから、またそこには直接漁民がそれでもって生活をしておる。しかもそのことが漁村との行政との問題のかね合いもあるわけでありますから、沿岸におけるこの海域の開発ということについてはこの法律に基礎を置いて重点的に取り上げて開発行政を行なってもらいたいと思うのであります。  それで、一、二点資料をお願いをいたしておきますけれども、時間がないので提出だけ、資料を出していただけばけっこうだと思うのでありますが、開発区域の指定ですね、それはどういうところにされるのかですね。それからそれに基づくところの具体的な方法ですね。そういうものが、まあ政令か何かきめられるのですか、これは。何かそういうものがきめられるようでありますが、そういうものが具体的に指定してどういうふうに進められていくかという内容があればひとつ資料としていただきたいと思います。  最後に一点だけ漁港の問題、法律が出ておりますが、いろいろ漁港の問題についても、出ているのは北海道の率の引き下げの問題でありますが、一点お聞きをいたしておきたいことは、これはこの漁港と港湾の指定との関係というのが非常にあいまいなものがある。ただ船が一般船舶か漁船かということであってですね、施設そのものはほとんど変わりがないという状況にあります。特に私が見た範囲では、漁船がたくさん停泊をしておるのに港湾の指定がされておる港湾がある。この点ですね、この実態に合わした指定がえということも、当然私は漁港あるいは港湾の整備の上からもあるいは行政機構のこの系統化の上からも必要ではないだろうかという気がいたすのでありまして、今回の北海道の問題についても、港湾の場合については引き下げを延期をしておるようでありまして、そういう点の格差がまた当然出てまいるわけでありますが、この点どういう考え方、基準に基づいていままでされたのか。それから将来そういう面をどう改善をされようとされるのかですね、お聞かせをいただきたいと思います。
  43. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私どもも事実上漁港でありますものが地方港湾として指定をされておるという例を若干存じておるわけでございまして、実態に合わして漁港に指定がえをいたしますように、関係当局とも話し合いしておるわけでございます。ただ、なかなか役所同士の話でございますから時間もかかるわけでございますが、漁港として指定するのが当然ふさわしいようなところは漁港にかえてくれという話を今後も関係省とするつもりでございます。
  44. 達田龍彦

    達田龍彦君 その場合ね、これは一般の港湾の場合と漁港の場合と、整備の進捗状況ですね、これはまあどちらがよく進んでいるのですかね。よくそれを聞かれるのです。いいほうに指定したいと、こう言うのだけれども、私は漁港のほうがいいんじゃないかと言うのだが、そうでもないのかどうか、どうなんですか。
  45. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私どものところにも最近地方港湾を漁港に指定し直してくれという陳情があるわけでございます。これはまあ漁港のほうがいいということでございまして、きわめて特殊な、いわゆる重要港湾は別でございますけれども、地方港湾と普通の漁港とを比べますと、漁港のほうが事業が順調に行なわれていくというふうに私どもも考えております。
  46. 達田龍彦

    達田龍彦君 終わります。
  47. 亀井善彰

    ○理事(亀井善彰君) しばらく速記をとめて休憩をいたしたいと存じます。   〔速記中止〕
  48. 亀井善彰

    ○理事(亀井善彰君) では、速記を起こしてください。
  49. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 それじゃこの機会に一、二お伺いしたいと思いますが、これは笑われるような話というものが何かこう伸びていく創造の基本になるようなことがあるものでございます。私は笑われるような話を少ししますが、どうかそこは笑わないで、ひとつ何かこれからの水産資源といいますか、擁護のためにひとつ真剣になって研究してただきたいと、こう思う。いまから十年ぐらい前にやはりこの農林水産委員会で私は提言をいたしました。そのときに皆さんはお笑いになりました。いまでもそのことが笑われたから恥ずかしいとも、笑われたからもうものにならぬとも思うのじゃございませんが、今度いよいよ瀬戸内海に三つの橋ができるという構想がまとまったようでございます。そこで、瀬戸内海における漁業というものは、私も瀬戸内海に面した県におるわけでございますけれども、沿岸漁業はもとよりのこと、どこへ出ましても沿岸漁業といえるくらいな距離の漁法でございます。それがこまかい目の網を使い、またひどいものになると、文鎮こぎというような網は、寝ている魚を起こすのですね。先に金があって、それをかいてとる。そうすると、砂の中にもぐって寝ている魚は、寝ているやつが起きて、そして次に網がきよる。これはほんとうに稚魚までとってしまおうという漁法であろうかと思います。夜は夜で、このごろはあれは何百燭光というのでしょう。たいへん明るい灯をつけて、まるで銀座の灯のように見えるところで灯をつけて、集魚灯をつけて、そして集めてつったり、網でとったりする。そういうことをいたしまするためにもうたいして網に乗らぬわけですね。ですから、違反漁業みたいなものが盛んに起こる。起こっても生活のためにやらなければならないというようなことで、私は瀬戸内海のいまは漁業はもう全く危殆に瀕しておると申し上げて差しつかえないと思う、奇想天外なことがあれば別でございますが。そして、いま稚魚のセンターができておりまして、いろいろタイであるとかタコであるとか、小さい魚を子を生まして育てて、そしてそれを放流するような施設が国で講じられておるのでございまして、小康を保ってはおりますが、とてもいまのように漁業法といいますか、漁具が発達をしてまいりますと、瀬戸内海の魚というものは壊滅をいたすであろう。  そこで、綱でとる漁法をもうやめて、やめてといっても、やめてと言うのは簡単ですが、やめることになりますと——ちょっと長くなりますが、理事会やっておるそうでございますので、その間続けておってくれということでございます。お許しを得まして質問をいたしますが、とにかくそういうことでありますから、瀬戸内海の漁業というものは私は何か一考——ひとつ考えをして、新しい企画でやってやる必要があるのではないかと思うのであります。  そこで、南のほうは豊予海峡、北は紀淡海峡を境にして瀬戸内海というものをせきとめるというわけにはいきますまいが、とにかくその間は世界の釣り堀にしてはどうかという意見であります。網漁業というものをどのくらいあるかお調べになりまして、それはただやめれということではやめますまい、生業でございますから。しかしその網でとる漁業をやめて、そして国家が何年間の補償をしながら、それが一つの、ある一定の船を利用いたしまして魚をつるように、刺すように白砂青松のあの瀬戸内海の多島海、島々を——これは世界一であろうと思います、景色のいいことにつきましては。ですから、そこへ三本の橋が、高速道路がついてくる。そこにヨットハーバーもできましょう、あるいは松の間にホテルも見えましょう。そういうことから、その人たちが世界の釣り堀として世界の人たちが集まってきて、レジャーといいますか、スポーツといいますか、そのつりを楽しめるようなものに改造をしていくという構想、考え方が生まれないものか、実現されないものかと私は思う。ちょっと御返事は困るだろうと思う。まことにとてつもない話だと思うのだが、由来笑われるような話というものが、結局そんなことができるかと思うようなものが私はやっぱり必要なのである。右と左を一歩ずつ出せば前進するというような原則的なものだけでは奇想天外な構想は生まれないというようなことからいまのようなことを申し上げて、いまから十年くらい前にそういうことをある水産庁長官に話をしましたら、それはおもしろい話ですなと、研究してみましょうと言った。それはそう言わなければ悪いからそう言ったのだと思うのですよ。思うのだ。私はこれについてあなたの構想がない、こんなような奇想天外のようなことを言うのですから答弁の必要はないということでございますが、何もけっこうな答弁をいただこうとは思いません。またなかなか答弁のできる話でもないと思いまするので私は答弁は求めませんが、どうかひとつ、そういうことを考えてみる必要があるのではないか。もう瀬戸内海の網を持って漁業をしている人たちはたいへんなことだと私は思うのであります。だんだんとそんなことをしてはいけないのだと言いましても、せざるを得ないことになっていくと思うのでございます。これが一つ。  次に、これは御返事をいただかなきゃならぬと思うのですが、大体瀬戸内海をいま航行する船、からの船ならば二十万トン程度の船ができると思います。これは水島におきましても番の州におきましても、あそこのドックでいま二十三万トンぐらいな船をつくっておりますから、からの船ならば喫水が浅いから航行ができると思う。ところが、それに物を積みまして航行をするということになったら、なかなか瀬戸内海は通らない海峡がたくさんあろうかと思うのでございます。そこで相当の速力を持った大型の船が通るわけで、そこで海上交通法という、海の上にも交通法というものを制定すべきであるという声が盛んに起こってきておるのであります。  そこで先年海上保安庁が制定を試みた案によりますと、昔のお殿さんが通るように、大きな船がやってきて相当の速力で海峡を通る、釣島の瀬戸を通る、あるいは水島の瀬戸を通るというときには漁業者は退避をしなきゃならぬというようなことの原案が出てきたわけです。私はまっこうから反対して、そんなばかな話はない、弱い者が当然大きな者にのまれるから先逃げなきゃならないという理由はないじゃないか、なぜそれをそうしなければ海上の交通が守られないのならば、その逃避をする、逃げる漁船に対しまして補償をなぜ与えないのか、補償してやるということがなければ漁船は退避をするわけにはいかぬじゃないか、しかし退避をしなければ衝突をし沈没をするわけでございますから、やむなく自分の安全を守るために逃げなきゃならぬ、そんな矛盾した社会がありようはずがないのでございます。そこで私は、そういうことで反対をいたしたのでございますが、最後は提案をされなかったような記憶があるのであります。  ところが、その後またそれと同じような、ちょっと中身を変えまして、けしきを変えましてまた出そうという議があったように思うのでありますが、そういうことについて水産庁はどういうふうにお考えになっておるのか。漁場というものがあって、漁場というものは、とりもなおさず農家における田畑と同じような、耕作地と同じような価値を持っておるのでございます。これを守ってやらなければならぬ役所であると私はいまでも信じておりますが、そういう問題についてどういう経過になっておるのか、伺いたいと思います。これはそこでお伺いをいたしまして、次に私、また質問をすることにいたします。
  50. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 第一の瀬戸内海釣り堀論はよく伺わせていただきました。  それで第二の船舶交通法につきましては、海上保安庁からこの二、三年ずっと御相談がございまして、海上、特にある海域におきましてあまり船の往来が激しいわけでございますから、何らかの交通整理が必要なので、法律の必要があるので、水産庁としてもぜひ協力してもらいたいという話がここ二、三年来あるわけでございますが、   〔理事亀井善彰君退席、委員長着席〕 私のほうが問題といたしておりますことも、いまおっしゃいましたまさにそのことでございまして、漁場あるいは漁業者立場をどういうふうに確保するか、それを法律でどういうふうに表現するか、法律で表現しないとしても実際問題として、あらかじめどういうふうに解決するかということで、なかなかまだ両方の話し合いが詰まらないというのが実態でございます。これは私どもと海上保安庁の間だけでなくて、全漁連とか、あるいは船舶協会その他の業者同士の話し合いもこれ必要でございますけれども、私どもそういう交通整理の必要は他面あることも間違いないわけでございますが、同時に、水産あるいは漁業者立場もそうむげに、先ほど申し上げましたように、そこのけ、そこのけと言われて、御無理ごもっともというわけには絶対まいりませんので、今後も両者の調整を続けていくつもりでございます。
  51. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 これはよほど庇護、保護をしてやらないと、弱いものですからね、お殿さんがお通りになっておる、下に、下にというようなかっこうで大きな船が通るときにはこまいものが網を切ってでも逃げておりなさい、退避をしなさいというような矛盾が起きてはたいへんだと思います。去年、おととし、それが出ましたが、そういうものの内容はそういうことを意味したものでありまするので、今後もそれに似たものができまするならば断固反対をすべきであるというふうに思いまするので、お願いを申し上げておきたいと思います。釣り堀の問題は、何かいい思いつきがあればお話をいただきたいと思いますが、なかなか唐突のことで、なかろうかと思いますから答弁は求めません。が、そういう、まあこれこそよまい言かもしれませんが、そういう意見があったということを考えて今後努力をしてもらいたいと思います。  次に、私は去年の暮れに東南アジアをあちこち、豪州のほうからいろいろ回って、そのときタイ、マレー方面に参りましたが、エビを海岸で養殖しておるのですね。そうしてその養殖は、どこに持っていくのですかと言ったら、八〇%日本に持ってまいりますということでございます。これは現地人並びに日本人が経営をいたしておる養殖が多いようでございます。私はこれは遠方から取らなくとも日本でもできるのではなかろうかと思う。また日本でも、私の県でも若干養殖はしております。おりますが、外国から買わなくて済むほど盛んでないのでございますが、何で日本の沿岸で、エビの漁業というものがむずかしいのか、何かむずかしい原因があるのか、あるいはそうでなくて、そういう手が回らないというのか、何か地質的に科学的にぐあいが悪いというのか、そういう計画があるのかどうか、その点についてお伺いいたします。
  52. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) エビの人工ふ化、養殖、放流は日本が一番進んでおるわけでございまして、御承知のように、瀬戸内海の栽培センターを中心として、現在一億尾をこえる人工ふ化をやって、県を通じて漁協等に配付して、そこで放流したり、あるいは養殖をしたりしているわけでございます。これは今度の法律に基づきましても、私はもっと進めたいというように思います。タイのエビの養殖も日本の技術を輸入したはずでございます。ただ日本人が非常にたくさんエビを食べまして、エビは自由化されております関係もございまして、世界の各国、おそらく四十くらいの国から日本の円に直して四百億円をこえるエビを現在輸入しておるわけで、日本で養殖ができれば、多々ますます弁ずということで、増産をするのに何のさわりもございません。ただなかなか幾ら増産しても食べるほうが強いので、それに追いつかないという状態でございます。
  53. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 そういうことならばけっこうだと思いますが、私はタイでその実情をつい去年見たものですから、日本沿岸で、そういうものが直接できればまことにけっこうだというように考えて、特に今後予算化して、そういう指導並びに若干の補助をしましても——あの遠方から日本に持ってこなければならないということもなかろうかと思いますので、特にその点についてお願いを申し上げておく次第でございます。
  54. 河口陽一

    委員長河口陽一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  55. 河口陽一

    委員長河口陽一君) 速記をつけて。     —————————————
  56. 川村清一

    ○川村清一君 ちょっと議題外で恐縮でございますが、緊急の案件でございますので、長官にお尋ねしたいのですが、これはきのうの質問に引き続いて、私、きのうカニ、ニシン、サケ・マスの北洋漁業の問題についてお尋ねをいたしました。そのときに現在モスクワでカニ交渉をやっておる。きのうの朝の新聞によれば、ソ連邦のほうは、それにニシンを抱き合わせて問題にした。それでモスクワでカニ交渉とともにニシンの問題を議論することは明らかに日ソ漁業条約違反である。あくまでもニシン、サケ・マスは漁業条約に基づくところの、現在東京で行なわれている日ソ漁業委員会の中において議論すべきである、こういうことを主張いたしまして、これについては長官と私と意見が一致したように私は理解しておったわけです。ところがけさの新聞を見ますと、政府から赤城特使に対して訓令が出まして、カニとニシン、サケを同時にモスクワにおいて解決する。そして四月三十日に何とか解決したい、こういうようなことが出ておる。そういう訓令を出されたと。まあ、政府は追い詰められておることはわかりますし、やむなくこういう措置をとらざるを得なくなったというようなことも私は理解できないこともない、よく事情を知っているから。ただし、これはいかなる事情があろうとも、両国が合意して一致しておる一九五六年に協定された条約に相反してそういう措置をとることは、これはまことに遺憾である。大きな禍根を将来に残すものと私は考えておる。だから、もはやこの条約は漁民の多くの方も要望しておるのだから、廃棄したらどうか。あるいは根本的に改定に踏み切るべきでないかということを申し上げておるのですが、それはどうなんですか。  きのうの長官お話は、モスクワでそういう話し合いがあっても最終決定は東京の委員会において行なうというような御答弁があったわけですが、しかし、国を代表して両国の首脳が——向こうはコスイギン首相まで出てきておるわけですね。イシコフ漁業相とこちらの政府を代表する赤城特使と、両国の最高首脳が話し合ったものを委員会におろしてきてこれを議論するといっても、ただ形式的なものでしょう。私がきのう米価でお話ししましたように、政府のほうがもうしっかりきめておいて、予算米価をきめておいて、これは変更しませんと言って、ただ形式的に米審にかけているのと同じことであります。しかも農林大臣はぬけぬけと、米審の答申を待って決定しますと、知っている者が聞けば子供だましみたいな答弁を農林大臣はしておる、これは同じですよ。そうしたら、両国政府が任命したいわゆる日ソ漁業委員というものの面目は全くまるつぶれでしょう、これでは。これに対してほんとうはきょうは大臣にお聞きしたいのですが、大臣いないから……。はなはだ遺憾ですよ。どういう御見解をお持ちになっていらっしゃるか。
  57. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) この問題につきましては昨日もお答えいたしたとおりでございまして、カニについては赤城特使がまずモスクワに行かれたわけでございます。ニシン、サケ・マスにつきましては、これはあくまで日ソ漁業委員会の議題で、いままでずっと詰めて、相当問題が解決されておるわけでございます。それで、赤城特使に対するこちらからのお願いも、サケ・マス・ニシンについて現在東京で行なわれている日ソ漁業交渉を側面から推進していただきたいという、そういう趣旨でございまして、赤城特使にそれをお願いいたしましても日ソ漁業委員会は会談を続けておるわけでございまして、決してサケ・マス・ニシンについて日ソ漁業委員会を無視して別のルートで交渉をするということではございません。おっしゃるとおり、赤城特使がわざわざ行かれてサケ・マス・ニシンについても問題をしぼってでもおやりいただくといたしますれば、実体がモスクワへ行ってしまうのではないか、形式だけが東京に残っているのではないかという、そういうお話があろうかと思いますけれども、日ソ漁業委員会で、まあ問題の数で言いますと十のうち八、九まで、相当煮詰まっておりまして、最後の一、二のきわめて重要な問題を四月三十日までに詰めるということは諸般の情勢から見てなかなかむずかしいという判断をいたしましたので、赤城特使に側面から交渉の促進方をお瀬いした、そういうことでございます。私がきのう申し上げたのと矛盾はいたしておりませんので、御了承いただきたいと思います。
  58. 川村清一

    ○川村清一君 私は内容を聞きませんから、それは両国がいま外交交渉をやっていることだから、どういう内容について問題になっておるかというようなことを聞いたところで、よもやあなたは説明をしまい、回答をしまいと思うからあえて聞かなかったのです。しかしいまの答弁を聞いて一つ私、確認しておきますが、これは新聞報道によれば、コスイギン首相は赤城特使に対し、産卵ニシンですね、これを全面的に禁漁することが、いわゆるカニの問題を解決する前提である、こういうようなことを言うわけですね。そこで、ニシンの問題はどういうような請求があって、それに応じてどういうような内容の訓令を出したのかこちらにはわからないのだけれども、しかしいまの答弁からいって、単に形式だけではない、八割はこちらで決定されるのだということでありますれば、よもやモスクワにおいて、産卵ニシンはソ連の言うとおり全面禁止をするとか、あるいはことしは何万トンにするとか、サケ・マスの漁獲量は何万トンにするとか、そうしてこの水域は休漁区であるとか、この水域は全面禁止区であるとかいったような具体的な内容については、これはモスクワにおいてはそういう話しをつけるのではないと、こういうふうに私、理解してかまいませんか。
  59. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) すでに交渉の最終段階でございますし、四月三十日の出漁ということも私どもとしてはぜひとも実現させるということで交渉を進めておるわけでございますから、いまその辺どういうふうに赤城特使がおやりいただくかは申し上げるわけにはいきませんけれども、とにかく日ソ漁業条約があり、また日ソ漁業委員会があるわけでありますから、サケ・マス、ニシンにつきましては最終的にそこできまるということはこれはそのとおりでございます。
  60. 川村清一

    ○川村清一君 だから、きまるでしょうけれども、きまり方ですよ。あなたは形式的にきめるということはないのだと、ここではっきりきめるのだとおっしゃる。だから、向こうのほうはニシンの全面禁漁ということが、これがカニの問題を解決する前提であると。それは全面的にならなくても八割禁漁になるか、七割禁漁になるか、それはわからない。どの場所かもこれはわからぬが、場所であるとか量であるとか、こういったようなものについては具体的な問題は向こうできめるのではなくて、あくまでも基本的な問題をきめるだけであって、具体的な問題は全部東京の委員会できめるのだ——そうでなければ条約の違反ですよ。しかもその条約においてそういうものをきめる根底は何かと言えば、あくまでもこれは科学的調査研究に基づく結論に基づいてそういうのは決定されるわけです。ところが科学的な結論は出ないで、両国の首脳、たとえばコスイギン首相にしても——まあイシコフさんは漁業大臣を二十年もやっていらっしゃるから専門家だと思いますが、しかしながらわがほうの農林大臣だってこのほうはしろうとです。赤城さんは少しは知っているかもしれませんけれども、これも専門家ではない。ところがこっちのほうは専門家がいらっしゃる。そうでしょう。そこで政治的な話し合い、いわゆる政治折衝によって具体的なものをきめるということは明らかにこれは条約違反じゃないかということを私は申し上げておるのです。その点については水産庁長官と意見が一致しておるのです。だから確認しておきたいことは、よもや条約違反のようなことはしないでしょうということです。絶対しませんとあなたが御答弁になれば、それでけっこうです。
  61. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 繰り返しのお答えになって恐縮でございますけれども、最終的な形式としてサケ・マス、ニシンにつきましては、東京で開かれております日ソ漁業委員会において決定されるということ。それからさらに四月三十日にサケ、マス等の出漁をぜひとも実現したい。それにつきましては、きょうは二十八日でございますので、時間的になかなか最後まで押し詰めることはむずかしいという、そういう条件において、赤城特使にいろいろお願いをいたしておるわけでございます。
  62. 川村清一

    ○川村清一君 あまりしつこいようですけれどもね、いまの答弁によれば、今度は形式的にはきめるという形式論になっちゃった。条約違反的な行為をしたくないから形式的にやると、実質的にはモスクワできめるということは明らかに条約違反である。だから、もう関係漁業者あるいは関係漁民の中には、こういうような条約はもう廃棄してもらいたい、あるいは根本的に改定してもらいたいという声がすごく出ているんですよ。ですからカニは四月の十五日、サケ・マスは四月三十日、それで操業期がきまっておる。それで四月三十日に追い込まれてきた。追い込まれた結果、とうとうそういうふうになった。結局長いものに巻かれるか政治的な力の強い者に結局巻かれてしまうかといったような、そういう態度は、私は日ソ両国のいわゆる友情関係を増進していく上からいっても、はなはだ遺憾です。何もソ連を決して悪く言っているわけではないんですが、やはりもっと言うべきことはきちっと言ってもらわなければ困る。大国主義に屈してはならない。言うべきことははっきり言うことが、いわゆる国交関係を深めることだと私は思うわけです。そういう態度でやってもらいたい。毎年でしょう。これはことしに限ったことではないですよ、長官。毎年毎年四月三十日ぎりぎりでもって押し切られておる。そうして、いつも政治折衝、政治的な話し合いの中から配分論、こういうようなことであってははなはだ困るわけです。  いま海洋水産資源開発促進法案なんていう法案が出ていますが、これにだってこれは関係してくるんですよ。そうして、カニ資源が大陸だな資源であるか公海資源であるかということについても、きちっと話し合いがつかない。ソ連だけが言っているのではない。アメリカでさえ言っている。アメリカさえそういう態度を持っている。アメリカという大国とソ連という大国が、カニ資源は大陸だな資源である、管轄権はわがほうにある、日本人がとることはそれはとらしてやるんだ、くれてやるんだ、こういう態度で、一体日本の漁民は、しかもこの漁場を開発した者は日本の漁民なんですね。この日本の漁民はそれではとっても私はだまっていないと思うんです。わが漁民の権利を守るということは、一つは国の利益を守るということです。相通ずることですから、もう少ししっかりやってもらわなければならない。  ところが、きのうアメリカに対しても日本は抗議を申し込んでおるということを言っておるが、しかし漁業者はアメリカがそうだなんてわからない。ただ一方的にソ連はけしからぬと、こう言ってソ連ばかり悪く言っているが、これが世界の大勢であるとするならば、何で一体日本は一九五八年に締結されにところの大陸だな条約に加盟しないのか。この条約に日本も加盟して、その中でソ連やアメリカに対して堂々と議論をしたらいいじゃないか。これはもう大陸だな条約に規定されておるところの大陸だな資源でないという、そういういわゆる理論を科学的な根拠に基づいて大いに展開すべきではないかと私は思う。そういったようなことからこの大陸だな条約に対する日本政府の態度あるいは日ソ漁業条約そのものに対して、毎年こんなことを繰り返していくのじゃ、とってもたまらんから、根本的に解決なり改定するなりという態度を明確にきめてもらいたい。  で、このことにつきましては答弁要りませんが、政務次官いらっしゃっておりますから、政務次官からひとつ大臣に私がこういうことを言っておったということを強く申し伝えていただきたい。政務次官ひとつ御答弁をいただきたい。
  63. 宮崎正雄

    政府委員(宮崎正雄君) ただいまの川村委員の御発言の御趣旨は、大臣によくお伝えしたいと思います。
  64. 川村清一

    ○川村清一君 それでは水産関係法律案について質問いたしますけれども、何せ三つの法案を一時間ぐらいでやれというのですから、一つ法案が三時間ぐらいかかるのに、三つを一時間ぐらいでやれということですから、質問になるかどうかわかりませんけれども、私の考えている大事だと思う骨だけを簡単に簡潔に質問いたしますから、御答弁のほうもひとつ簡潔に要領を得て御答弁いただきたい。最初に漁港法の一部改正法律案について質問いたします。  北海道開発庁にお尋ねしますが、この漁港法の一部を改正したというこの内容は、これはもうすでに昭和四十六年度の予算編成のときに実施されておることでありまして、北海道開発事業費全体に対する施策の一部としてなされたこれは施策でございます。そこで私がお尋ねしたいことは、北海道開発につきましては、北海道開発法という法律があって、この北海道開発法の立法の趣旨に基づき、この開発事業がいろいろなされておるわけでございますが、今年度に至りましてから、開発事業費全般にわたりまして特例を改定いたしまして、そうしていわゆる補助費の一割削減、こういう政策がとられたわけでありますが、この一連のこういう施策に対して、北海道開発庁としてはどういう御見解を持たれているか、まずお尋ねいたしたいと思います。     —————————————
  65. 河口陽一

    委員長河口陽一君) この際、委員の異動について報告いたします。本日、中村波男君が委員を辞任され、その補欠として矢山有作君が選任されました。     —————————————
  66. 新保實生

    政府委員(新保實生君) 北海道の開発につきましては、特別の法律が設けられまして、それに基づきまして、いろいろな措置が講じられておるわけでございますが、公共事業に対する高率の補助ということも、その一つの大きな要素となっております。現在その高率補助の絶対額がどれだけになっておるかということを御参考までに申し上げますが、四十五年度の予算ベースで約三百七十七億というものがいわゆるかさ上げになっておるわけでございます。で、四十六年度予算におきまして、若干の事業につきまして国庫負担率の引き下げを行ないましたが、その引き下げになりました総額は、四十五年度予算ベースで四十三億か、四億程度でございます。したがいまして全体から見ますと一割強という程度の調整が四十六年度において行なわれたわけでございますが、これの考え方は北海道の開発も戦後二十数年たちまして、開発計画の上で申しますと、四十五年度をもちまして第二期の北海道総合開発計画が終了いたすわけでございます。で、四十六年度から、いわゆる第三期の総合開発計画が発足すると、こういう段階で、この公共事業の補助率をどう調整するかということが問題にされたわけでございます。  もっとも、問題として取り上げられましたのは相当古うございまして、三十六年度からこういう議論は行なわれているわけでございますが、私どもとしましては、まず北海道の開発の国家的重要性あるいは開発の成果、そういうものを踏まえて慎重にこいつは取り扱わなければならないという態度で終始いたしております。しかしながら、経済の指標とか、あるいは道財政の現況等から見ますと、大ざっぱに申しますと、いわゆる後進圏から中進圏の段階に入りつつあるという指標もいろいろございますので、そういう状況も勘案いたしまして、個々の事業における開発の成果あるいは道町村の財政の状況、あるいは同じ事業におけるほかの補助金制度、補助率のバランスの問題、制度論、そういうようなもの等を考えまして、多少の国庫負担率の調整ということを徐々にやっていく。実を申しますと、四十五年度におきましても若干の調整を行なったわけでありますが、四十六年度におきましては総額におきまして四十五年度予算ベースで四十三、四億程度、四十六年度予算ベースにおいては五十七億になりますが、その調整を行なったわけであります。しかし考え方としましては、あくまでも国費のほかに道地方費の御協力をいただいて、そうして事業量拡大して、むしろ開発を促進する、そういう前向きの効果をねらいまして、この補助率の調整を行なったわけでございます。これは北海道にとりましては非常に重要な問題でございまして、実は道議会におきましても相当議論をされております。また開発庁内部における開発審議会におきましても、この問題は長うございましていろいろ議論があったわけでございますが、開発の現況とかあるいは客観情勢等を考えまして開発をより積極的に推進する、そういう観点から、負担すべきものは負担する、これはいま申し上げましたのは、第三期総合開発計画策定の前に道から内閣に提出された意見書の中にある字句でありますが、負担すべきものは負担することも必要である、そういうくだりもございます。そういう精神に沿いまして、公共事業の負担率の若干の調整を行なう。しかしそれはあくまでも公共事業につきまして、国費のほかに地方の御協力をいただいて、そうして事業量をふやす、そういう前向きの効果をねらった措置であるということで、われわれは考えておるわけでございます。  なお、道の財政というものは昔と比べますとかなりよくなっておりますけれども、必ずしも余裕のあるものではございませんので、補助率の調整によりまして道負担がふえるわけでございますが、それにつきましては自治省と何回か御相談申し上げておるわけでございますが、前回衆議院農林水産委員会におきましてもその点が問題になりましたが、主として地方交付税を中心としまして事業の実施に支障のないように適切な財政措置を講ずる考えである、こういう自治省の御見解、御方針もいただいておるわけでございます。そういうことでございますので、われわれもこの問題に対しては今後とも慎重に、しかしあくまでも開発を促進するという前向きの効果をねらった立場からこの問題に対処していきたい、かように考えておるわけでございます。
  67. 川村清一

    ○川村清一君 漁港に対する一割補助削減によりまして北海道の負担増はどのくらいになりますか。
  68. 新保實生

    政府委員(新保實生君) 四十六年度の予算べースで申しますと、五億二千五百万円でございます。
  69. 川村清一

    ○川村清一君 公共事業費の中で補助率の変わらなかったもの、いわゆる現行どおりやっておる事業はどんな事業がありますか。全部変わりましたか。
  70. 新保實生

    政府委員(新保實生君) これは四十六年度の予算で国庫負担率を引き下げましたものは……。
  71. 川村清一

    ○川村清一君 いや、引き下げないものを……。
  72. 新保實生

    政府委員(新保實生君) 逆に申しますと、引き下げたものは十割であるものを対象にしたわけでございます。したがって十割でないものはこれはむしろそちらのほうが多うございます。これは土地改良事業その他たくさんございます。今度対象に取り上げましたのは、昔から十割全額国庫負担でやっておった事業でございます。それの調整を行なった。それ以外たくさんあるわけでございます、道路にいたしましても河川にいたしましても。
  73. 川村清一

    ○川村清一君 十割の補助をしておったものでそのままのものはありませんか。
  74. 新保實生

    政府委員(新保實生君) それは若干まだ残っております。
  75. 川村清一

    ○川村清一君 それを聞きたい。
  76. 新保實生

    政府委員(新保實生君) そちらのほうを申し上げますと、まず道路の関係では産業開発道路でございます。それから河川の関係では、特殊河川あるいは指定河川というもの、そういう制度がございます。これが十割で現在も残っております。それから運輸省関係では、港湾でございますが、港湾が十割でございます。港湾のうちの水域外郭施設が十割でございます。港湾につきましては、北海道の場合は市町村が管理をいたしておりますので、四十六年度は調整の対象から除外いたしておるわけであります。
  77. 川村清一

    ○川村清一君 十割補助でもって変更されない事業、並びに今回一割削減された事業、こういう事業をおしなべてことしは一割負担ということになったが、今後さらにその負担率が伸びないとは保証できないと思うんですね。われわれ毎年の予算編成にタッチしておる立場からいっても、十分の一がまた明年になって十分の二になるといったおそれがないとは断言できないと思うんですが、そういう場合に、開発庁としては現在においてどういう立場でそういう問題が出てきた場合に対処しようとしておるか。  第二に港湾の問題、ただいまお話がございましたが、これは管理者は市町村でございますが、港湾の補助率を削減するといったようなことになりますれば、これは道でなくて市町村に財政的な負担が非常にかかってくるということになります。この問題がかりに明年あたり出てきた場合においては、開発庁としてはこれを押し返すという考え方か。またはやむを得ないといってこれをのむ考え方か。その辺はどうですか。
  78. 新保實生

    政府委員(新保實生君) 仰せのとおり、まだ十割全額国庫負担という事業が若干残っておるわけでございまして、これの調整が今後予算の、たとえば四十七年度予算等におきましても問題になる可能性は非常に多うございます。しかし開発庁といたしましては、この北海道の開発を積極的に進めるという立場に立ってこの問題に対処してまいりたいと考えております。  港湾につきましては、現在本州の府県の港湾の水域外郭施設の国庫負担率は四割から五割ということになっております。財政的な見地からばかりこの国庫負担率調整を取り上げておるわけじゃございませんけれども、本州の府県におきましても、財政の状況を見ますと北海道よりも苦しいというところもないではないわけでございまして、しかも一方が十割、一方が四割ないし五割ということになっておるわけであります。われわれとしましては、北海道のこういう特典をなるべく存続する、そういう気持ちは十分持っておるわけでございますが、一方におきまして、内地府県と財政の状況なりあるいは補助率のバランス論から考えました場合に、現在のままでこれが維持できるかどうか、率直に申しまして見通しとしては困難な情勢にあります。しかしながら、これはまた自治省なりあるいは道なりあるいは道内の市町村なりそういうところと御相談をしてこれからきめる問題でございますが、基本的にはわれわれとしてはこういう特別措置は存続させたい。しかし若干むずかしい情勢もあるということを率直に申し上げるわけであります。
  79. 川村清一

    ○川村清一君 ことばじりをとって恐縮なんですが、開発庁の相当な地位にある役人の方が、北海道に対して、本州のほうは内地、内地と言うことはおやめになってもらいたい。まるで北海道は外地か、いまだに植民地なのか、これはほかの役所のことならいざ知らず、北海道開発庁の役人の方が北海道は外地、植民地で、本州は内地だ、こういうことばはお控えなさっていただきたい。私はあえて苦言を申し上げます、私北海道出身でございますから。  水産庁のほうにお尋ねしますが、水産庁としましては日本全国漁業の中に占める北海道の漁業の位置づけ、さらに全国漁港の中における北海道漁港の位置づけ、こういうものについてどう把握されておられるか、ひとつ簡単明瞭にお答え願いたい。
  80. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私は北海道漁業というのは現在も日本の漁業一つの中心的な存在でございますし、将来もそういう位置を続けるであろうと思います。たとえば漁獲量で申し上げますと、全国で大体二割でございます。生産額にいたしますと一二%という状態でございまして、まあ日本の漁業の中で北海道の位置はきわめて大きいわけでございます。さらに北海道の漁港について申し上げますと、これはただ数だけ申し上げるのもいかがかと思いますが、第一種の漁港で八・七%、第二種の漁港で五・六%、第三種の漁港で一五・四%、第四種の漁港が二三・一%というように漁港の数が多いわけでございますし、また東北、あるいは日本海岸の漁船も北海道の漁港を利用するというそういう性格も持っておるわけでございます。
  81. 川村清一

    ○川村清一君 長官のおっしゃいましたように、北海道の漁港というものの全国漁港の中における位置づけというものは第三種漁港において一五・四%、第四種漁港において二三・一%ということは、これは北海道の漁港は単に北海道漁業者の漁港でないということを物語っておると思うのです。いわゆる第一種、第二種は地元漁船の漁港でございますが、第三種、第四種になると規模が大きくてこれは他の地域の漁船の方々の寄りどころでございますし、特に北海道の場合は全国的漁業の本拠地ですから、イカで富山県、石川県、新潟県、あの辺からも集団で北海道の海域にまいりまして、そうしてイカをとって函館、室蘭、広尾、あるいは釧路、根室、羅臼、こうずっといろいろ動いていきますね。イカの最盛期になりますというと、羅臼の漁港には本州の船も含めて千二、三百隻くらいの船が入るわけでありまして、全く船と船とが相接し、立錐の余地もないというような状態になるわけでございますね。それから鮭鱒時期では釧路、あるいは根室の花咲あるいはサンマ時期になりますと、釧路、根室、花咲といったよ、うに、しかも今度は単に漁港ではなくして港湾、これは函館、釧路、根室、広尾、みな港湾です。地方港湾でございますが、この地方港湾が全部漁港として使われておるわけですね。  こういったように、全国的の漁業の中における北海道漁業の重要性、特殊性というものを考えて、そして北の海ですから非常に秋から冬は荒れますね、海難事故が多いということも現実の問題として、したがって漁港整備というものはきわめて大きいわけですね。こういったような全国的な視野に立って考えてみても、きわめて重要な北海道の漁港、しかもそれは完全に整備されているかというと未整備なところが非常にあるし、漁民から非常に強い要望がなされているし、しかも第一種、二種、三種というふうに規模を広めていかなければならない。こういう現実的な要求等もあるわけですが、そういうような事情の中において、この漁港の整備をおくらせるような、整備事業に阻害要件として与えられるような補助率を削減していくという、こういう内容を持った本法律案を、一体農林省はいかなる見解によってこれを出されたのか、これをはっきりお答えしていただきたい。
  82. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私がただいま申し上げましたように、北海道の漁業、あるいは北海道の漁港の位置づけからいたしまして、北海道漁港の建設について何ぶんの特別措置を講ずべきであるというふうに思いますけれども、問題は十分の十という補助率でございます。外郭施設、あるいは水域施設等、都府県の漁港の補助率は、特定三種が十分の六でございまする以外は十分の五でございますから、それに比べまして北海道は十分の十でございますから、また今回の調整措置も十分の十を十分の九に改めるということで、私は北海道の特殊的な地位が十分に保障されておるのではないか、これを無限にと申しますか、十分の九をさらにどんどん引き下げるということには私ども賛成はいたしませんけれども、全体をながめて、まず十分の九という補助率に改定いたすことは、これはやむを得ない措置である、こういうふうに考えております。
  83. 川村清一

    ○川村清一君 ただいまの長官の御答弁によって、十分の九以下に下げることは賛成できないという御答弁をいただいたので、来年以降十分の九から絶対に下がることはないということを、そういうことを大蔵省が言い出してもあなたのほうは強硬にそれを主張されてけ飛ばされるということを期待して、その点は了解いたします。  しかし、ここでもう一つ私は申し上げておきたいのは、私は毎年できるだけ全国漁港大会に出席しております。昨年は北海道の稚内でございまして、私行って参りました。そうすると、全国の漁民の方々、あるいは都府県の方々は、漁港の整備予算をうんとふやして、そうして早急に整備してもらいたいということが一点と、それから地方負担をできるだけこれを低くしてもらいたい。裏を返せば補助率アップということを要求されております。これが都府県の要求なんです。ところが長官は都府県のほうが低いのだから北海道のほうを十分の十を十分の九にしてもなお北海道はいいんだ、こういう御答弁、私は何も上を下げる必要はないので、下のほうを上げたらいいのではありませんか。これが政治ではないですか。これは労働組合の賃金要求じゃないけれども、何もいいほうを下げる必要はない、悪いほうを上げたらいい、私はこう言いたいのですよ。実際、そんなことを議論しておったら時間がないからやめますけれども、ぜひ十分の九以下になることが絶対にないように抵抗していただきたい。  最後に、四十六年度予算の中で、第四次整備計画完全実施のために昨年度に比較して一体漁港の予算の伸びは幾らか。それを聞く前提として、昨年私は大和田長官とこれ議論したのであって、第四次計画を完全に実施するためには年間どれだけの予算の伸びがあればできるのだと言ったら、あなたは二八%と大きなことをおっしゃった。二八%なんというのは実現する可能性はないじゃないかといったら、胸を張って、いや絶対やるということを確言された。そこでことしは二八%伸びたのか。そして総額二千百億、そのうち二百億調整費で二千三百億、千四百億が国費。そうすると、一体国の負担分の何%四十六年度いったのか。あと四十七年、四十八年、二ヵ年しかないですから、この二ヵ年でそれを完全に一〇〇%実施できる自信があるのかどうか。そこはもう全国の漁民に答えるつもりではっきりひとつお答えいただきたい。
  84. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 漁港の予算の伸びを事業関係について申し上げますと、四十四年度から第四次漁港計画が始まったわけでございますが、四十四年度は前年に対し二一%の増でございます。それから四十五年度は二四%増でございます。そして四十六年度は二七%の増でございます。したがいまして、四十五年度の時点において四十八年度までに第四次漁港整備計画を完成いたしますためには二八%程度の伸びが必要だというふうに申し上げましたが、二八%にはなりませんでしたけれども、二七%ということで、公共事業関係では特別なものを除いては一番よく伸びたわけでございます。そうしてそれに基づきまして、漁港関係は修築事業、改修事業、局部改良事業というふうに分けておりますけれども、修築事業だけについて申し上げますと、四十六年度のこの二七%伸びた予算で四十四年、四十五年、四十六年の三ヵ年の進捗率を計算いたしますと、四五・七%でございます。そうして改修事業あるいは局部改良事業等々を全部ひっくるめますと四五%ということになります。まあ、この調子で四十六年度以降二八%伸びる必要があるということを申し上げて、四十六年度は二七%でございますから、四十七年度、四十八年度はさらに私ども努力をいたす必要があるわけでございますけれども、漁港予算の伸びが二一、二四、二七というようにはずみがついてまいりましたので、四十七年度、四十八年度の二ヵ年で完成をいたすように努力をいたすつもりでございます。
  85. 川村清一

    ○川村清一君 大体わかりましたが、そうしますと、修築事業で四五・七%進捗しておりますから、あと五四・三%、やはり半分以上、これを四十七年、四十八年、二ヵ年でやらなければならないわけですから、相当努力をしなければ困難だと思いますね。長官は胸を張って絶対にやると、こうおっしゃったわけですから、ぜひ実現されますように今後とも努力していただきたい。  これで漁港法についての質問は終わります。どうも開発庁の方ありがとうございました。  それでは次に、水協法の一部を改正する法律案について質問いたします。これも二、三問題をしぼって簡潔に質問いたします。  われわれは農業協同組合法改正のときにこの内容についてはずいぶん論議いたしましたので、水協法で特別取り上げてやることもそうないのですが、一点お聞きしておきたいことは、漁業協同組合に関する規定の整備の中で、法人の正組合員資格を常時使用する従業者数三百人以下、かつ使用漁船の合計トン数「三百トン以下」を、これを「千五百トン以下」と改めましたが、この三百トンを千五百トン以下と改めたことによって一体どんなメリットがあるのか、これを端的にひとつ説明してください。
  86. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 常時従事者三百人以下で使用漁船三百トンから千五百トンまでの法人は数にして三百七十ほどでございます。数は決して多いものではございませんけれども、しかしこの三百七十会社というのは、いわばカツオ・マグロ漁業、あるいはまき網漁業、底びき漁業等々の中堅の漁業会社でございまして、まあ実態的には大きな個人経営と違わないものでございますが、それらのものが協同組合に参加して、協同組合事業を利用するということは、これらの漁業者にとってきわめて必要でございますし、またそれによって組合もエネルギーを得ると、そういうメリットがあるというふうに私どもは考えております。
  87. 川村清一

    ○川村清一君 私もいただいた資料をたんねんに見てみたんですがね。千五百トンということになりますと、あまり数は多いわけではないですね。そうして業種別にいっても、いま御説明になったようにカツオ・マグロあるいは底びき、まき網といったような業種ですね。そこで、この業種から強い要請があってこういうことになったと思うのですが、この業種のものをこの協同組合の正会員にすることによってどういう一体利益があるのか。それから協同組合というものは沿岸の二トン、三トンぐらいの、あるいは無動力の漁船漁業者、あるいはもう無動力だから漁船漁業じゃなくて、藻類ですね、藻類を対象として漁業経営しておる人、こういう人々によって漁業協同組合というものはおもにつくられておる、いまの漁業協同組合というものは。そこにこういう大きな業種の方が入ることによってそれじゃ組合員にどういう利益を与えるのか。またこの人々はどういうふうな考え方でわれわれも漁業協同組合正会員と認めろということを要望されておるのか。よく私もわからないので説明していただきたい。
  88. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 三百トン以上千五百トン未満の漁業者は、そう全国各地に分散しているわけでも必ずしもございません。一会社、二会社、たまたまあるというところもございますけれども、たとえば焼津でありますとか、三崎でありますとか、その他、わりあい集中をしておるのが例でございます。その経営主の考えとしては、やはり漁民でございまして、漁民がだんだん大きくなってそこに至ったということで、いわゆる大洋とか、日水とかいう会社とは全然別のものでございます。で、むしろそれらを組合員としないといいますと、たとえば私たち中小漁業振興特別措置法で中小漁業合理化ということで公庫の融資等を使って仕事を進めておりますけれども、そこでは一つの目標としておりますのは、カツオ・マグロでいえば四そう程度、三百五十トンとして千五百トン、それからまき網で申し上げますれば一ヵ統五百トン、大体三統ぐらい持つのが経営として安定をするのではないかということで指導をいたしておりますけれども、それが千五百トン、そういうふうにだんだん経営が大きくなりますることと、あわせてやはり大きな個人業者というものもだんだん経理の合理化という観点から法人成りをいたす関係で、現在の三百トンで押えますと三百五十トンのカツオ・マグロの船を持っている業者は組合から出なくちゃならぬということになるわけでございまして、決してこれは大資本家ではなくて、漁民の大きくなったものというふうに私ども考えておりますが、それが組合に参加して組合事業を利用し、また組合としてもそれらとの間で信用事業あるいは販売事業を営むということが組合経営の基礎を強くするゆえんでもあるわけでございますから、そういうことで新しく組合員となる立場からいっても、また漁協経営立場からいっても、千五百トン程度で正組合員資格をもらえるならば、個人としての漁民の利益を害することもなく、また組合員にとりましても、また会社にとりましても、会社といいますか中小漁業者にとりましても経営上プラスになる、そういうふうに考えるわけでございます。
  89. 川村清一

    ○川村清一君 われわれは中小漁業振興法を制定するときにいろいろ議論したのですが、もしいま長官がおっしゃるようなことでありますれば、あの法律改正して、そして中小漁業の金融措置並びにその中小漁業の振興をはかるべきではないかと思うのですが、あえてこの中小漁業振興法には手をつけないで漁業協同組合法に手をつけたというのは、それはどういうわけですか。
  90. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 中小漁業振興特別措置法のほうは、これは各種の漁業形態につきましてそれぞれ中小漁業としての合理的な線を定めてその振興をはかるわけでございますが、そういう形で確立された経営協同組合に入れることの可否についての問題が今回の法律改正になるわけでございまして、私ども中小漁業振興特別措置法を直接直すかどうかということは現在考えておらないわけでございます。
  91. 川村清一

    ○川村清一君 中小漁業振興法、あの法の適用を受ける漁船のトン数とかまた業種というものはいろいろ規制を受けるわけですから、いま長官がおっしゃるように、このカツオ・マグロあるいは底びきといったような、こういう業種のものを振興させるのならばそちらの法律改正も必要だし、その意思はないといったような御答弁ではちょっと合わないと思うのですね。  それから一つお聞きしておきますが、このカツオ・マグロ、底びき、まき綱をやっている業種の方が漁業協同組合の正会員になるということは、この方々は業種別組合をつくって、その業種別組合組合員ではないかと思うのですが、業種別組合のほうをやめて漁業協同組合員になるということなんですか、両方の組合に入っているということなんですか、どっちなんですか。
  92. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 地区組合に入るかあるいは業種別組合に入るかということは、これはそれぞれ組合員たるべき人の判断に待つわけでございますから、大体は地区組合にも入り業種別組合にも入るというのが実態でございます。それはまあいろいろ事業の利用関係からいって両方の組合に入ることが普通であるようでございます。  それから中小漁業振興特別措置法を改正いたしませんと私が申し上げましたのは多少舌足らずでございまして、漁業関係中小漁業者というものの定義がいろいろばらばらでございます。今回の水協法改正で千五百トンというのは一応中小漁業的なものとして、いわゆる個人としての漁民に似ているものとして正組合員資格を与えるものでございますが、水産関係で各種の法律あるいは金融制度等につきまして、たとえば沿岸漁業等振興法では三百人以下、千トン以下の漁業者というふうに規定し、また中小漁業振興特別措置法では三百人以下で、千トン以下、業種別組合組合員は二千トン以下という、そういうきめ方をいたしておるわけで、私どもいま直ちにこの水協法漁業協同組合資格に従ってすべての法律あるいは金融制度を直すというつもりはございませんけれども、逐次同じものにしていく方向で今後措置をいたしたいというふうに考えております。
  93. 川村清一

    ○川村清一君 ただいまの御答弁を聞いておると、結局こういうことになるようですね。カツオ・マグロあるいは底びき、まき網という中小漁業者ですね、この方々は業種別組合をつくっておる組合員である、しかし業種別組合だけでは金融その他の措置において十分でないから、要するにその地区組合にも入るような措置をとってもらいたいと、そのことによって組合を利用して、そして要するにこれらの業種の方々が金融やその他において利益を受けると、そういったような観点からこれらの業種の方がわれわれにもぜひ組合員としての資格を与えてもらいたいというそういう要望があり、それが根拠になって今日のような法改正水産庁は踏み切ったと、こういうふうに私は理解されるのですが、そう理解していいですか。
  94. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 中小漁業者協同組合に入ります場合の形といたしましては、業種別組合と地区組合とがあります場合は、両方に入る。しかし一般的には業種別組合と思われておりますような、たとえば焼津の漁業協同組合は、これはカツオ・マグロの中心地でございます。これはカツオ・マグロの業産別組合ではございませんで、地区組合でございます。したがいまして単純な形でいつも二つが並んで二つに入るということではございませんで、実態的には業種別組合実態を持ちながら、形としては地区組合というものもございますし、いろいろでございますけれども、先ほど申し上げましたように、日本の中堅の漁業者漁協の正組合員になれない、漁協事業が利用できないという状態でいままであるわけでございますし、それから今後も三百トン以上の船主になりますと、正組合員から離れていかなくてはならないという、そういうきわめて不自然なこともございますので、私ども千五百トンというところで線を引いて、個人としての漁民とそれほど違わない中小漁業者の一定範囲のものを正組合員として認めて、それは地区組合によりあるいは業種別組合によって漁協事業も利用し、また漁協もそういうエネルギッシュな漁業者を取り込んで漁協経営発展に資したいと、そういう双方の願望が今度の法律改正に結集したというふうに考えております。
  95. 川村清一

    ○川村清一君 さらに話を進めまして、この資料を見ますと、四十四年度で地区漁業組合の貸付金というのが総額で千四百六十五億あります。それから信漁連の貸付金というのが千三百四十二億ありますが、この貸付金を階層別に説明できますか。
  96. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 階層別とおっしゃいますのは漁業者の階層でございますか。
  97. 川村清一

    ○川村清一君 漁業者のトン数別……。
  98. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) それは資料はございません。
  99. 川村清一

    ○川村清一君 大体の傾向はわかりますか。
  100. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私ども四十四年度から漁業近代化資金をつくっておりまして、四十四年度百億、四十五年度二百五十億、四十六年度三百五十億というふうにこれが相当中以下の漁民にいっておると思いますので、四、五年前の資料とごく最近の資料とは私は相当な食い違いがあるというふうに思います。それ以下の特定の組合についての実態調査は資料としてあるいはあるかもしれませんけれども、全国おしなべての漁民階層別の信用事業との関係、あるいは貸し付けとか領金とかの資料は私ども残念ながら持っておりません。
  101. 川村清一

    ○川村清一君 中小漁業者がかりに三百トンあたりの鋼船一隻をつくるとなればいまは一億五千万ぐらいかかる、そういう膨大な資金が要る。それはおもに農中あたりから借りているようですが、その場合はやっぱり組合の転貸資金になるわけでしょう。
  102. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 組合の転貸資金になるわけでございます。
  103. 川村清一

    ○川村清一君 この近代化資金によってこの二、三年前からああいう施策によって沿岸の小規模漁業者にも融資の道が開けたことはこれは知っておりますし、けっこうなことだと思いますし、またその資金がふえることにわれわれもいろいろ努力してまいったわけでございますが、いまこの資料に出ておる千四百六十五億という地区組合の貸し付け金、あるいは信漁連の千三百四十二億という貸し付け金はこれはプロパーな金でしょう。
  104. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) これは転貸を含めての総額でございます。
  105. 川村清一

    ○川村清一君 そうしますと、問題がやっぱりあるわけですね。先ほど私がお聞きしたのは、そういう千トンまで引き上げたと、そしてその引き上げた理由は何かというと、また中小漁業という範疇に入りますけれども、しかし沿岸のほんとうに二トン、三トンの漁業者から見ればとても中小どころか大資本の漁業に見えるわけですね。(は)大洋や日水、日魯などに比べれば中小ですが、これはコンブをさがしてとっている船から見ればほんとうにでかい資本漁業ですね。それは中小漁業という法的な範疇に入れているからそれはそれとして認めますが、そこで私いまここでいろいろ考えて、ひょっとするとこれはたいへんなことになるだろうと思うわけですね。と申しますのは、先ほど申し上げましたように、三百トンのいま母船底びきでも、あるいは鮭鱒の母船式の鋼船いわゆる独航船をつくればまあいまの金で一億五千万ぐらいかかるわけですね。そうすると、これは中金から借りますが、しかしこれは組合の転貸になるわけですから、組合の貸し付け金のこのいま読んだ地区組合の千四百六十五億あるいは信漁連の千三百四十二億という中にこういう転貸資金もこれに入っておるということになれば、これは完全に返してもらえばいいけれども、まかり間違ってそのでかい業者が倒産でもしたならば一体これはどういうことになるんだ、船はなくなる、漁業者はやめてしまった、借金は返せない。しかしこれは組合の借金として残る、組合の借金として残ったならばそれは漁業者の借金であり、組合員の借金である。もう無動力の漁船漁業者から二トン、三トンの雰細漁業者までこれは全部が共同の責任で負わなければならない借金になってくるんではないか。こういう例を私は知っている。だからこういうのがこういう組合に入ってくるには、それは入ってくる業者はメリットがあるからわれわれも正組合員として認めよとして要求してくる、しかし、これを入れることによってわずかの業者は組合を利用することによって利益を受けるかもしれないけれども、多くのいわゆる組合を構成する組合員はちっとも利益を受けないではないか。もしもこの大きいものが倒産でもされたならば借金を全部背負わなければならないということになるんではないか。こういうことを心配するわけですが、長官はどうお考えですか。
  106. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 沿岸漁民組合の中にたまたま大きい千五百トン、こういう業者が入ってくるという場合を想定いたしますと、組合にはそれぞれ貸し付け限度というものがあるわけで、それは当然沿岸漁民漁業経営にとって必要な貸し付け限度でございまして、千五百トンの漁業者の、たとえば三百トンとか五百トンという船の方の借りるものの貸し付けの限度になっておらないわけでございます。そういう業者がといいますか、千トンなり千五百トンの漁業者が、金融の道を講ずるためには地区の漁協に入るのではなくて、やはり業種別漁協に入ってそこで金融を受けるというのが通例でございます。私ども地区の漁協の貸し付け限度というものがございますから、まず、いまお示しになりましたような具体的な例はないと思いますけれども、なお今後これらの新しい三百七十という数は少ないわけでございますけれども、いままで三百トン未満のものが千五百トンということに上がるわけでございますから、その影響等は十分行政指導として見詰めて、あやまりのないような措置をいたすつもりでございます。
  107. 川村清一

    ○川村清一君 長官は少し認識不足ですよ、現行法でも三百トンですからね。三百トンまではこれは組合員ですから、現行法規においてもいわゆるいま船に乗って母船底びきや北洋鮭鱒、独航船では三百トンを使っているんですよ、私どもの町なんか何隻もあるんです。これは三百トンというものをこれでいうと千五百トンまで上げたのだから千五百トンの船というようなものは漁村で見たことがないんですから、私は三百トンでも相当大きいと思うんです。これは三百トンの船で一億五千万くらいかかるんです、現在でも一隻で、それだけ借金をしておる。二隻くらい持っておる者もあるわけです。これは中金から金を借りております。組合の転貸で借りているわけですよ組合が保証しておる。そのくらいになれば遭難してあれをしても保険に入っておりますから返せないことはないかもしれないけれども、しかし、年々歳々不漁、しかもいまの日ソ漁業委員会じゃないけれども、北洋から全部サケ・マスは締め出される、それからニシンまで締め出されるとすると、生産はあがらないのだから借金は返せない。その場合に、業者が倒産した場合に借金はだれかが負わなければならないじゃないですか、転貸になっておるんです、組合の借金になっておるんです。この法律を直さなくとも、現在でもそういう問題があるんですよ。  それから貸し付け限度があるから心配はない、貸し付け限度というものは組合できめて、総代会できめられるんですよ。こういういま小さな漁村でかりに三百トンの船を経営しておる漁業者はどういう人ですか。その漁村のまず一番の親方です。漁業協同組合組合長か、組合長でなくとも組合長を動かせるくらいの人がそうなっておる、漁村にいったら実力者ですよ、悪く言えばボスですよ。現在でもそうなんですよ、これがもっと千五百トンまでということになったらまあそれは大統領のようなものが一ぱい入ってくるんですよ。この資本主義の時代においてそういう大きな経営をやっておる、いわゆる資本をもっておる者はその漁村において一番いばっておるということはもうこれは当然です。それがその組合組合長になったり、役員に全部なりますよ。そこでだれに貸すとかなんとかということをきめるわけだから、だから先ほど聞いたのです。この業種別組合に入っておるカツオ・マグロ、底びき、まき網、いわゆる大規模漁業をやっているほうから、われわれも組合員にしてくれという、そういう要請があって、水産庁法改正に踏み切ったんだろうと思うけれども、メリットはどうか。メリットは、組合を利用して金を借りられるから、金融の道をそこから見つけられるからと。しかし、多くの漁民にはちっともメリットがないじゃないですか。ありますか。へたすると借金全部負わなければならないということになりませんか。  かつて北海道において、日本海はニシン漁業地帯だった。ところが、昭和二十八年、九年あたりを限度としてニシンが全然こなくなった。ところが、ニシン地帯でございますから、ニシンだけに依存しておった浜ですから、漁船というものが何にもないのです。漁船漁業というものが何にもないのです。北海道の沿岸からいうと、宗谷、留萌あるいは後志というこの日本海に面したところでは、そこでその漁師の方々がもうニシン漁業から離れて漁船漁業に移ろうとしたときに、漁船をつくったり、あるいは漁網を買ったりする資金を貸してくれるところ何にもありませんよ。組合、信連でも貸してくれませんよ。なぜ貸してくれないかというと、組合が山ほどの借金をしょってしまった。借金をしょってしまったから資金も借りられませんよ。それは借金はだれがつくったかというと、その浜でもってニシン漁業をやっておったいわゆるニシンの親方ですよ。定置網をやっておった二、三人の親方ですよ。この二、三人の親方が、ことしはニシンがくるだろう、ことしはくるだろうと思ってばく大な投資をしておった。ところが数年、かいもくニシンがこなくなった。しまいには一匹もこなくなった。そこで残ったのは何か、借金ばかり。その親方が首をつったって借金を返す金が出てこない。そうすると、その借金は組合がしょっていくわけですから、組合員が全部しょっていく。そうすると、そういう不良組合というか、借金をしょった組合には金は貸されない。そういう系統金融の道はそこで切られている。だから、そのニシンに見放されたところの沿岸において漁船漁業に移ろうとしたときに、とうていできなくて、そこで私はその当時道会議員をやっておったが、それを救済するために非常な苦労をしたものですよ。そういう心配がありませんか。これはあったらたいへんですよ。その点ここではっきりしておいていただきたい。
  108. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 金融をいたします場合に、私ども中小漁業についての信用保証の制度もございますから、相当規模の金融につきましては信用保証制度に乗せるような指導を当然いたします。したがいまして、一朝にして組合がえらい赤字をかかえるということは私は万ないというふうに思います。  それから、そういう沿岸漁業者に比べれば大きい漁業者を入れることの可否につきましては、先ほども申し上げましたけれども、系統組織人たちを含めての学識経験者の集まりでずいぶん議論をいたしたわけでございますが、これは単に業種別漁業からの希望であるばかりではございませんで、沿岸漁民を代表する系統組織人たちからも、その人たち組合員として迎えて組合事業に資金を利用し、組合としてもそのエネルギーを摂取したいという、そういう希望でございます。まず金融の問題につきましては、信用保証制度で私は対処できるというふうに思います。
  109. 川村清一

    ○川村清一君 私はそういう点心配しておりますから、それをくだくだと議論しておってもしようがないから、そういうことがないように十分ひとつ行政指導をしっかりやってもらわなければ、私はこういう三百トン以下というものを千五百トン以下までぐんと飛躍的に上げたというと、まあ三百トンというのが少し足りなければ、五百トンとか六百トンとかいうならわかりますけれども、一ぺんに三倍も、千五百トンまで上げたということに相当問題があるので、漁業協同組合を構成している全組合員にこれによって利益を与えることになればいいです。組合員の多くはほんとうはメリットがなくて、新しく入ってくるものだけに利益が与えられるという、こういう法律改正には私は納得がいかないです。この点を申し上げておきます。  それからいろいろ貯金と貸し付け金の関係をちょっとお聞きしておきたいと思うのですが、いただいた資料の七ページ、これは信用事業の表なんですが、これに「貯金、貸付金残高の推移」というものがあります。沿海地区漁業協同組合、内水面地区漁業協同組合、これは問題はないですが、業種別漁業協同組合の、かりに昭和四十三年、四十四年度を見てみましょう。これを見ますと、四十三年度において貯金額は百十三億ですね——これは単位千円ですから百十三億二千六百九十三万九千円ですね。これに対して貸し付け金総額が五百四十四億二千八百七十九万九千円、それから四十四年度にいきますと、貯金額が百五十五億九千五百三十万一千円に対して、貸し付け金が六百四億七千二百九十八万四千円、こういう貯金額と貸し付け金額が非常に何といいますか、貯金額に比して貸し付け金の額が非常に大きいのではないか。それからずっとうしろのほうにいきまして一六ページ、ここに「水産加工業協同組合の取扱高の推移」という表がありますが、これを見ますと、貯金額が昭和四十三年度において十二億円、貸し付け金は四十三億円、四十四年度は貯金額が二十二億円、貸し付け金は六十四億円。で、この表を見ただけでは業種別組合というのと水産加工業協同組合というものの、もちろんこれは定款に反しているものではないと思うのですが、非常に不健全な業務運営をしているのではないかという気がするのですが、これはどうですか、御検討になりましたか。
  110. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 業種別組合につきまして、貯金の額よりも貸し付け金の額が多いのは、これは事業活動がきわめて活発で、造船を一生懸命やっておるということのあらわれでございまして、これは経営が健全であるか健全でないかということとはやや別の問題であろうと思います。しかし、このオーバーローンの形態で、しかも、事業が健全に行なわれてないといたしますれば、これは組合運営にとっても大問題でございますかり、私ども本省において連合会の検査をし、県において漁業協同組合の検査をいたしておりますけれども、そういうことを通じまして経営が不健全に流れないように十分注意をいたすつもりでおります。
  111. 川村清一

    ○川村清一君 この表からも、私先ほど申し上げたことを考えたんですが、要するに業種別組合というのはきわめてオーバーローン、したがって、組合のほうで貸し付け限度にきていると思うのです。これ以上出せない。そこで、この業種の人たちは、別に金融の道を求めなければいけない。それが地区組合に加入したいと、こういうような切実な要望になってきているので、これの具体的なあらわれではないか、そう思うのですが、そういうことはないですか。
  112. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) それは私はあまりないと申し上げていいと思います。といいますのは、業種別組合でこそ大きな金が借りられるのでありまして、地区組合ではそんなに三百トン、四百トンの船をつくるだけの金を借りるようなことは万むずかしいわけでございますから、地区組合に入りたいために——千トンなり千五百トンなりの漁業者が地区組合に入りたいために今回の改正を要望したいということはまずございません。
  113. 川村清一

    ○川村清一君 それではその問題は終わりまして、次の問題に移ります。  今回の法律案改正の中の一つのこれは要点だと思うんですが、総代会権限を非常に強化したんですね。この問題は農協法の場合にもありまして、農協法改正案のときにもいろいろ議論したわけでございますけれども、しかし農協漁協というものを比べれば、その規模においてもう比較にならぬほど格段の相違があるわけです。農協というものはもうマンモス化しまして、一組合組合員数が何千名というのがたくさんあるわけです。ところが、漁協のほうは、この資料をいただいたのをちょっと検討してみますというと、五百人から九百九十九人までの組合員を持つ組合が百五十六組合、千人以上の組合というのは二十六組合。ですから、百五十六組合の全体に対する構成比はわずか六・七%、二十六組合の構成比はわずか一・二%。で、地区組合の四十四年度における一組合の平均正組合員数というものは二百二人ですよ。もう農協規模からいったら問題にならないんです。こんな小さな漁協組合に何のために総代会権限強化しなきゃならぬのか。これは総会でいいですよ。その辺が納得いかないんです。
  114. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 農協漁協とを比較いたしますと、確かに組合員の数におきましては農協が圧倒的に多いわけでございますが、漁協につきましては、たとえば山形県は県下一円の漁協でございます。それから海岸線に沿うて非常に長い組合もございます。あるいは離島を含めての組合もございます。したがいまして、数こそ農協に比べますと少ないわけでございますけれども総会を開くことが物理的にも経済的にもなかなかむずかしいという事情は、私は農協の場合に比べて決して劣るものではないというふうに思います。ただ、先ほども申し上げましたけれども総会を尊重することが私どものたてまえでございますから、総代会を開くがいい、あるいは総代会を開いたらどうかというそういう行政指導はいたしません。
  115. 川村清一

    ○川村清一君 長官、そういう特殊の例を取り上げてそういう御説明をされるなら、私のほうだって特殊の例を出しますよ。離島にだって農協あるんですよ。それから、たとえば北海道の根室の別海町なんというところになりますと、いま町ですが、この間まで村だな、村の面積が四国の香川県と同じ面積ですよ。私ども選挙なんかでトラックで飛んでいくというと、一時間から一時間半ぐらい走ったって、人一人いない、家一軒もありません。あそこにいるのは人かと思うと、牛ですよ。一人口が一万九千に対して牛が五万頭いるんですからね。だから、そういう特殊な例を言ったら、そういう農協だってちゃんとやっていますよ。海岸線が長いというんなら、一体別海町はどういうことになっているんですか。そういうことを言ってはこれはいけないと思うんで、特別論を言うんじゃなくて、一般論で言わなければ、議論しなければだめですよ。  そこで一般的にいって、何といったって農協のほうはもうマンモス化してでかいですよ。これは農業人口と漁業人口を比べただけでもはっきりしているんですね。ですから、農協のまぬをしなくてもいいと私は思うんですよ。できるだけ総代会だとかそういうもので議決するんでなくて、総会できめる、みんなが話し合ってきめる、これが協同組合運動の原則である。そうしてまた民主主義の原則でないですか。ですから、総代会権限強化するということは、これはもう農協の場合ならある程度わかりますが、私は漁協の場合についてはわからない。また長官のただいまの説明でもわからない。それから漁業協同組合合併助成法という法律が出て、それを運用されてきたんですが、さっぱりその合併が進まない。そうして法律が消えそうになるとまた時限立法で延ばしてきた。それが現実です。法律をつくってもさっぱりそれが実現しない。その行政責任は私はやはり水産庁にあると思うのですよ。あなたのほうでそういう法律を出した、そこで法律をつくるときもずいぶん議論した。しかしさっぱりそれが進まない。何を指導しておるのか。そしてそんな小さな——組合関係の方だれかいらっしゃいますか。北海道の渡島、檜山あたりの地域に行った方おりますか。渡島支庁管内なんかに行きますと、一町村にいまだにもう五つも六つも組合がある。車で五分も走ると組合がある。そんなのがいまだに存在している。北海道庁の指導もなっておらぬし、その上にある水産庁指導も全然なっていないということを私は指摘したい。現実にそういう組合があるにもかかわらずこっちのほうで総代会権限強化する。どうも納得がいかぬですね。どうですか。
  116. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私はいまの御議論に格別に反対しておるわけではございませんで、漁協組合の本来の姿としては、総会を尊重して総会組合運営をはかるべきだということは、もうおっしゃるとおりであります。ただ、農協に比べてどうかというお話もございましたけれども、先ほど申し上げました事情につけ加えて申し上げますならば、組合員の中には相当乗り組み員が多いわけでございます。それはなかなか総会に出席するチャンスがないわけでございまして、総会組合運営することがたてまえでございますけれども、しかし総会では物理的にも経済的にもなかなかやっていけないという特殊な事情があるために総代会の制度を設けた。先ほども申し上げましたように、総代会を設けろとか、総代会のほうがいいぞという指導は私どものほうは毛頭いたしません。  現に今回の法律改正におきましても、たとえば総会出席者の代理につきましても、いままで二人ないし、大きな組合について三人までしか代理できませんのを、今回は四人というふうに総会が開きやすいようにいたしましたし、総代会を開く場合でも現行法では百人をこえる組合であれば総代会を開けるというのを、二百人をこえる組合というふうに総代会を開きにくいような形にもいたしておるわけでございます。したがいまして、総会を主にして総代会は特別の場合に限って開かせる。それから漁協については特別の場合が現にあるわけでありますし、また今後組合合併ということも私ども系統組織とよく連絡をとりながら進めるわけでございます。漁業協同組合は数は少ないわけですが、三十五年から四十六年にかけまして、合併は二百九十九、参加組合九百十九ということで、まあ多少の促進は見られるわけです。今後はそれを強化するわけでございますから、合併の促進ということにも私は総代会の存在ということはプラスになるというふうに考えます。別に御趣旨に反して反対のことを申し上げているのではございません。
  117. 川村清一

    ○川村清一君 私もこれは絶対反対だということを言っているのではなくて、いわゆるこの法律改正されるやはり大事な一つの骨子になっているから、その骨子として出した以上はそれ相当の、すべての人が納得されるだけの根拠がなければ、法律改正ですから、ちょっと思いつきでもって法律なんか改正されたらたいへんですよ。そういう立場で私は申し上げている。  そこで、必ず総代会をつくらなければならないということもないし、それから総代会をつくる場合において、現行法は正組合員の総数が二百名をこえる組合の総代の定数は五十人以上であればよい、こういうことになっておったのが、今度は四百人をこえる組合の総代の定数は百人以上あればよいこととした、こういうことなんです。こういうふうに変えた。  そこでしからば、とまた聞きたい。四百人をこえる組合というのは全国に一体どれだけあるか。これはわが北海道に例をとれば、四百人をこえる組合なんというのはそうないんですよ、大きな組合でなければ。正組合員ですよ。そうしますと、しかも現在こういう漁村というものはどんどん過疎の傾向にあるわけです。いわゆる漁民が減っていっているわけです。ですから、その中で四百人をこえる組合というのは相当大きな組合限定されるのですよ。そのわずかばかりの組合のためにこういう法律改正をしなければならないそういう理由があるのかどうか。こうしなければほんとうに困るのだ、こういうことになるのかどうか。また、そういう措置をすることによって、一つには合併を促進するのでなくして合併をおくらせるということにもならないか。そしてまたそのことによって組合の民主的運営というものを阻害することにならないか。  そもそもこの漁業の一番のよりどころになる基本的な法律は何ですか。漁業法でしょう。漁業法の精神は何ですか。いわゆる漁村の民主化というのが漁業法の基本的な精神でしょう。そうすると、漁村の民主化というものを、これを阻害する要因にならないか。私はなると思うんです。だから、あまり好ましくない、こういう見解を私は持っている。もう一度御答弁をいただきたい。
  118. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 四百人をこえる組合員を持っております組合の数は、統計調査の関係で厳密に出しておりませんが、御提出いたしました資料に基づいて推算をいたしますと、大体三百三十程度だろうと思います。その数は全体の中でそれほど大きな比率ではございませんが、しかし沿岸地区の漁協の総数は約二千三百でございますから、そう少ない数でもございません。  また、先ほど申し上げましたように、合併の促進ということを私どもこれから心がけるわけでございますから、四百人をこえる組合の数も漸次ふえるというふうに思うわけでございます。で、まあ、そう無視できない数の漁協の中で、先ほど申し上げましたような事情で総会を物理的にもなかなか開きにくいというものが現実にございますわけでありますから、それらについてやむを得ない場合に総代会を開くということで運営をいたしますならば、総会の開催がきわめて無理な組合総会を開催せよといって、形の上では組合民主主義徹底するように見えて、なかなか実際としては組合にとって非常に苦労であるばかりでなしに、なかなか討議もうまく行なわれないという事態もあるわけでございますから、私は、総会をあくまで尊重するたてまえをくずさなければ、総会がなかなか開きづらいところで一定の制約のもとで総代会を開いて、そこで組合運営するということは、能率の点からいきましても決して今後の組合運動にとってマイナスにはならない。何でもかんでも総代会を開く、あるいは総代会に切りかえろという、そういう指導をいたすならば別でございますけれども、たてまえとしてはあくまでも総会を尊重するという根本をくずさないならば、私は組合運営にとって総代会の存在はプラスになるというふうに考えておるわけでございます。
  119. 川村清一

    ○川村清一君 前の問題の質疑を通して、またこの問題の質疑の中から、私はこの法律改正に踏み切った水産庁の発想というものをこう感じ取るわけです。  それは、日本の沿岸地区におけるすべての漁業協同組合、大かたの漁業協同組合、あるいは組合員という立場からこの改正を発想したんではなくて、ある特定の地区、地域、ある特定の業種、こういうものの利便あるいは要望、これに基づいて発想されておる、こう考えざるを得ない。で、ある地域とは何か、それは焼津とか、あるいは下関とか、遠洋漁業に出漁するそういう漁船、あるいは漁業者を多数かかえておる組合、あるいは業種別組合、こういうようなものからの発想が即動いておるということがうかがえるわけです。  それで先ほど、総会は好ましい、しかしながら、出漁しているためになかなか総会に出られない、それでですね、生活上の問題、いろいろ考えてこういうことになったといったような意味の御答弁があったんですが、しかし、何日に総会だと、年に総会を何回もやるわけじゃないですから、その総会に出られないという漁業者——これは長官は——ずっと出漁しておる、出漁するということならば、やはり遠洋漁業に出ておられるカツオ・マグロ漁業、あるいは北方の底びき漁業、あるいはまき網漁業、あるいはサケ・マス漁業ということになりますれば、出漁して帰ってくるまでに数ヵ月たたなければその地域に帰ってこないわけですから、したがって、漁業者がいないので、組合員がいないので、その場合において総会権限総代会に付与して、そうして総代会においていろいろなものをきめてもらうのだと。しかしですね、それはそうないのですよ。ですから、それがこの法律改正の根拠であるとするならば、冒頭申し上げましたように、この発想というものは、ある限られた地域であるとか、ある特定の業種、こういう地域事情なり、あるいは漁業者の事情というものを考えてやられたんだ。日本の全体的な立場から考えたんではない、こういうふうに断ぜざるを得ないのですが、それに対して長官は何か反論がございますか。
  120. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私どもの、この法律改正立場、あるいはこれは水産行政全体の立場から申し上げましても、漁業協同組合というのはやはり沿岸漁民の中核的な共同組織でございまして、これを強くしなければ沿岸漁民の、あるいは沿岸漁業の振興は不可能だという立場に私ども立っております。全体の水産庁行政はそういう基本的な立場に立っておるわけでございます。たまたま今回の改正で御議論のありましたところについて、たとえば、カツオ・マグロでありますとか、底びきでありますとか、まき網であるとかいうふうに申し上げ、また、総代会等につきましては、総会運営しにくいような組合の例としていろいろそういう面について申し上げましたけれども、だからといって、この法律改正全体が、特殊の漁業者あるいは特殊の組合の利益のために法律改正をするということではございませんで、それはもちろん沿岸漁業全体を見回し、また地区漁協全体を見直しての私ども改正の案でございますから、その辺はひとつ、いまおっしゃったように、今回の改正あるいはそれはおしなべて、押し詰めて言えば、水産庁行政の態度にも及ぶわけでございますから、決して一部の漁業者あるいは一部の組合の利益に基づく行政をし、また法律を考えておるわけではございません。その点ははっきり申し上げておきたいと思います。
  121. 川村清一

    ○川村清一君 それじゃ、その問題はそれくらいにしまして、この法律改正の中には出ておらないわけですが、私は水協法改正のこのときにぜひやってもらいたいことが一つあったんです。これは取り上げられてありませんが、それは何かと申しますと、この漁業協同組合法の中に、農業協同組合法にありますように、組合指導機関として農協では中央会というのがありますね、ああいう中央会のごとき指導機関を法制化して設置すべきではなかったかと、こう思うんです。と申しますのは、先ほども申し上げましたが、信用漁業組合連合会の貯金残高は千八百十五億、約二千億近い、貸し付け金が千三百四十二億、それから漁連の購買事業は二百九十三億、販売事業は千八百八十億、約千九百億、相当大きな事業もやっていますし、相当大きな金を動かしておる。そこで、やはり中央会のような機関を設置して——中央会の中には、法律的に監査士というものがあります。監査士を設置して、監査士がいろいろ経理の監督をするとか、いろいろ帳簿の監査をするとかいうことになっていますね。こういうようなものを設置すべきではないかと、こう考えるんですが、この法律改正段階において、部内でそのような議論されたことがございませんでしょうか。
  122. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 現在、系統団体として全国漁業協同組合連合会、いわゆる全漁連がございまして、そこでは指導事業経済事業を一緒にやっておるわけでございます。そのほか水産業界におきましては大日本水産会というのが一つのいわば漁政団体としてつくられておるわけでございますけれども、いわゆる系統機関の中に漁政活動をするものと経済活動をするものとを峻別したらどうかという意見はあるわけでございます。私どもも、今回の協同組合法——水協法改正にあたりましてそのことを一応は議論いたしましたけれども、農業あるいは農協と違いまして組織も小さく、事業活動規模も小さい全漁連等におきまして、経済活動を行なう団体のほかに漁政活動を行なう団体を別につくることがいいかどうかということについては現在きわめて消極的でございます。これは今後の系統組織の伸展の模様によりまして、あるいはまた新しく検討されることになるかもわかりませんけれども、私どもの考えといたしましても、また現在の系統団体の考えといたしましても漁政活動を行なう団体と経済活動を行なう団体とを二つに分けるということは消極的でございます。したがいまして、農協の中央会には制度として監査士の制度がございまして、それもいまのように二つの機能で団体を分けるということをいたしませんと、監査士の制度もなかなか実現を見ないわけでございますけれども漁協活動が今後ますます活発になるに従いまして、役所の検査あるいは団体の自主的な監査ということの必要性は私はだんだん強くなると思いますので、どういう形で検査なり監査なりを進めるかということは私は今後の重要な問題として十分研究をいたすつもりでおります。
  123. 川村清一

    ○川村清一君 そこは十分検討していただきたいと思います。  そこで、最後にしますが、漁連に対する行政庁の検査ですね、これは法律によれば毎年一回定例にしなければならないということになっていますね。それで現在農林省はこれに対して法律どおり検査をやっておるのかどうか、これをひとつ。
  124. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 残念ながら毎年一回というふうにはいたしておりませんわけで、四十三年、四十四年、四十五年と三年を見まして、大体二年に一回、一年おきには必ずやっておるというのが常態でございます。
  125. 川村清一

    ○川村清一君 しかしそれは、それじゃ法律違反じゃないですか。法律には毎年一回行なわなければならないと書いてありますね。水産業協同組合法の第百二十三条の第四項「行政庁は、出資組合又は共済会の業務又は会計の状況につき、毎年一回を常例として、帳簿検査その他の検査をしなければならない。」、それから百二十七条には「都道府県の区域又はその区域をこえる区域を地区とする組合については主務大臣、その他の組合については、主たる事務所を管轄する都道府県知事とする。」と、こう書いてあります。要するに「行政庁」というのは、主務大臣は、連合会については検査をしなければならないと書いておるのに、毎年はできない、二年ぐらいに一回やっていますというのは、これは法律違反になりませんか。
  126. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) これは実は農協法運営とあわせて私ども法律どおりにできないことをはなはだ遺憾に思っておるわけでございますけれども、また他を顧みて申し上げるつもりはございませんが、大体現状といたしましては農協では三年に一回、漁業関係では二年に一回ということで現在の陣容で懸命の努力を続けておるわけであります。
  127. 川村清一

    ○川村清一君 ですから、これは要望になりますけれども、この法案改正によって相当大きな業種、法人が入ってくるわけです。それだけに扱う金額も大きくなる、また利用する金額も大きくなってくると、だからこういう傾向にかんがみて監査を厳重にすべきじゃないか。それで私は中央会を設置すべきではないかと、そして監査士でも設けて、それでベテラン職員を置いて、ベテラン職員によって常に監査すべきではないか。もちろん単協にも連合会にもそれは監事というのがありますよ。監査機関があるわけです。あるわけだけれども、その監査機関がまた組合長であるとか、他の業務があるわけですから、専門的に監査とかそういうものはできないわけですね。ですから専門的にやる、しかも会計に明るいベテラン職員をそこに置いて、そうしてそれを間違いなくするのに業務、会計を監査すべきではないか。そのために監査士を設置する。監査士を設置するとすると農協の中央会という機関を設けなければならないから私は申し上げているんで、私の言うほうが筋が通っていると思うんですが、ひとつそれを検討してみていただく用意がありますかどうか。
  128. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 先ほどお答えいたしましたように、中央会の設立あるいは監査士の設置ということは別といたしまして、漁協の今後の基礎固めをいたします一つの手がかりといたしまして、監査は十分に行なっていくように予算その他の面で努力をいたすつもりでございます。
  129. 川村清一

    ○川村清一君 それではよろしくお願いします。  それではこのほうは終わりまして、最後に海洋水産資源開発促進法案について質問いたします。  最初にお尋ねしますことは、現在水産資源保護法という法律が存在しております。昭和二十六年十二月十七日に制定されまして、その後改正がされまして、最終改正は昭和四十三年に改正されておりますね。それでこの水産資源保護法に基づいてどのような行政がなされておるか、かいつまんで御説明願います。
  130. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 水産資源保護法に基づきまして、一つはサケ・マスの人工ふ化放流をやっておるわけでございます。それから保護水面を指定いたしまして、そこでモ場でありますとか、あるいは稚魚の自然的な成長の中心地帯でありますとか、そういう地域の海面を限りまして、あるいは内水面につきまして保護水面として農林省で予算措置を講じて稚魚の保護その他の行政をやっておるわけでございます。
  131. 川村清一

    ○川村清一君 いま水質汚濁の問題などが大きな問題になってきておりまして、これらの問題もこの法律をつくる一つの要素になったと私は解釈しておるわけでありますが、もしも水産資源保護法というものの趣旨並びにこの法文をもっと積極的に熱意を持って行政を実施しておれば今日的な段階のような、こういう水質汚濁だとかその他の公害を防止することができたんではないかと思いますが、それが今日のような状況を招いたということは、この法律の運用実施というものについて政府が相当怠慢であったんではないか。怠慢のそしりを免れないと思うのですがいかがですか。
  132. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) この水産資源保護法の運用につきましては、法律相当きびしい規制がございますほかに、都道府県の条例におきまして水産資源保護条例等を公布いたしまして、水質の汚濁等について相当のことがやれるようにはなっておるわけでございます。そこで事実、数はそう多くはございませんが、この県の条例あるいは規則を利用して、水面を汚濁するものに対して告発その他の措置を講じておる事例がございます。しかしこの法律ができましてから、水質の汚濁に関する法律その他新しいもろもろの法律ができまして、この水産資源保護法の適用というのが事実上なかなかむずかしい情勢になってまいりましたわけで、私ども水産保護水面あるいはサケ・マスの人工ふ化等、当然今後もこの法律によって行政すべきことは多いわけで、その面でこの法律は十分生きておるわけでございますが、水質汚濁関係は水質汚濁防止法あるいは海洋汚染防止法、廃棄物処理法等々、昨年の十二月に成立いたしました公害関係法規をあわせ十分に適用して水質の汚濁を防ぐという、そういうつもりでおるわけでございます。
  133. 川村清一

    ○川村清一君 私の手元には、この水産資源保護法の第十四条に基づいて農林大臣が保護水面として指定した区域の一覧図というものがあるわけでございますが、これはあれですか、最初指定しただけであとこれをふやしていくといったようなことはないんですか。それとも、この私の持っておる一覧図はいつのころかわからないんですが、これは毎年ふやしていっているんですか。
  134. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 年々ふやしていっておるわけでございまして、総体について申し上げますと、貝類、サケ・マス、モ場、アユ、ワカサギ等々で、四十四年で申し上げますと四十一ヵ所でございますが、四十五年度で四十五、四十六年は今後指定する分を含めまして五十というふうに年々少しずつふやしていっておるわけでございます。
  135. 川村清一

    ○川村清一君 そういうことになりますと、私はいままだ全国的なことはわからないんですが、北海道だけを見ますと、いま北海道で一番サケ・マスのふ化放流、また遡上する河川として主要河川になっております河川は全然入っておらないといっても過言でない。いま水質汚濁で一番やかましく言われておる石狩川あるいは網走川、湧別川、常呂川、十勝川といったようなものも全然入っておらないんですが、この保護水面の設定というものは何を根拠にしてされておるんですか。
  136. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) これは当然現在時点及び将来を考えまして、北海道で申し上げますと大体サケ・マス関係が多いわけでございますが、それをとりまして保護すべき水面を指定いたしておるわけでございます。現状を申し上げますと、これは四十五年度末でございますが、カラフトマス、サクラマスにつきまして増幌川、サクラマスにつきまして……。
  137. 川村清一

    ○川村清一君 いいですよ、これは私持っておりますから。
  138. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) お持ちでございますれば省略いたしますけれども、私どもの観点としては、保護水面として指定して今後の汚染を防ぐ必要のある個所を厳密に査定しておるわけでございます。
  139. 川村清一

    ○川村清一君 北海道に限定しますが、ほとんどサクラマスとカラフトマスだけじゃないですか。サケ・マスといってもサケは全然ないじゃないですか。先ほど申し上げましたように、いま北海道で大きな問題を生んでおる網走川、常呂川あるいは斜里川とか湧別川とか、ないです。石狩川もない。石狩川なんていうのは北海道の母なる川といわれておる。石狩川といえばサケ、サケといえば石狩川、石狩なべといったらサケなべですよ。その石狩川にサケなんて一匹もいませんよ。それから十勝川もいまそういう傾向になってきておる。そういう川が一本もないのはどういうわけなんですか。したがってこれをきめた根拠は何かというんです。
  140. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) これをきめました根拠は、当然現在時点において水が相当きれいである、今後もそこを守らなければいけないというそういう地点でございます。したがいまして残念ながら石狩川にサケがあがらなければ保護水面として指定をすることはしないわけでございます。
  141. 川村清一

    ○川村清一君 それではこの法律を制定した意味がちっともないじゃないですか。この法律はいわゆるきたなくなるのを防ぐ法律であって、しかもこの法律が制定されたのは昭和二十六年であって、最終改正は昭和三十七年ですよ。三十七年の時点においてこの法律ができておるのですね。そうしていまの答弁では、ここに出ておる川はきれいだからよごれておらないからこれ以上よごさないためにも指定したと、こういうことでしょう。ところが一体三十七年にできておるのに、さっさと指定してくれればいいものを、ちっとも指定してくれないで、そして現在よごれておる、もうよごれておるから保護水面に指定しないなんて、そんな理屈にもならない理屈を言ったってとてもこれは通らないですよ。だから先ほど申し上げましたように、法律運用について政府はきわめて怠慢だったと私は言っておるが、そうでしょう、怠慢のそしりを免れないでしょう。三十七年にこの法律ができておるのですよ。だからこの法律を忠実に実行しておればもっと川がよごれないで済んだのではないかということを私が言っているのですよ。長官のその御答弁では全然だめですわ。したがってこの法律に対しまして農林省はきわめて誠意がなかった、まことに怠慢であったと、こう言わざるを得ないわけです。
  142. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 保護水面を指定いたします基準といたしましては、私が申し上げたとおりでございまして、きたなくなった川は水質汚濁防止法その他を厳密に運用してきれいにするという努力をいたすつもりでございます。
  143. 川村清一

    ○川村清一君 まあ議論してても結論出ませんからやめますわ。  そこで、今度はいよいよこの法律に入りますが、まあこの法律はまとめて言えば、一つは沿岸、沖合い、これは近海も含めて、これの漁業の振興というものをひとつねらっておる。一つは遠洋の資源開発をねらっておる。この二つの柱からこの法律案ができておると思うのですが、どっちのほうにウエートを置いておりますか。
  144. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 沿岸における増養殖の推進とそれから遠洋におきます新漁場の開発というこの二点、私どもどちらに重点を置くというよりも、両方に重点を置いておるわけでございますが、あわせて水産資源の開発をするためには、他産業がどんどん出てきて水産業が圧迫されるということでは水産資源の開発もできませんので、沿岸の開発区域の指定あるいは重要な漁場を指定漁場として政令で指定することによりまして、水産業と他産業との調整をはかるということが、この法律の第三のかなめでございます。
  145. 川村清一

    ○川村清一君 この法律ができますと、沿岸海域における水産動植物の増殖及び養殖を計画的に推進するための措置を強力に行なうということになるわけでありますが、この法律ができない今日におきましても沿岸海域における水産動植物の増殖及び養殖事業というものはなされておりますね。そこでなおお聞きしたいことは、この法律がなくても現在実施されている沿岸の増殖とか養殖とかいうものの実施はどういう法律をよりどころにしてこれを行なっていますか。
  146. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 沿岸漁業の振興につきましては、基本的には沿岸漁業等振興法があるわけで、それに増養殖というものも取り入れられているわけでございますが、具体的な法律といたしましては法律なしに、たとえば第一次構造改善事業増養殖の施設をつくる、あるいは県、市町村漁協等でそういうものを施設すると同時に金融の措置を講じて漁民自身も施設をつくるという、そういうことが一つでございます。それからもう一つは神戸に瀬戸内海栽培漁業協会というのがございまして、そこに水産庁として大体二億程度の委託費を出しまして、この協会が岡山県の玉野、あるいは香川県の屋島、あるいは愛媛県の伯方島等々五ヵ所のセンターをつくりまして、そこで現在一億尾をこえるようなクルマエビの人工ふ化でありますとか、あるいはマダイ、カサゴ、メバル等々の人工ふ化をやっております。また北海道もそうでございますが、日本海を中心として相当栽培漁業の熱が上がり、県も漁協等の漁民団体も熱心でございますので、四十六年度から新しく予算を組みまして日本海における栽培漁業の推進のための基礎調査をいたすことになっておるわけでございます。これらはいずれも法律によらないで予算措置として進めておるわけであります。
  147. 川村清一

    ○川村清一君 そうすると、いま長官がおっしゃったそれらのもろもろの事業に対する昭和四十六年度の総体予算はどのくらいになっておりますか。
  148. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 第二次構造改善事業を今年度からいよいよ事業実施で十二の地区について進めるわけでございまして、その金額が全体として十一億四千七百万円、これは増養殖関係だけではございませんけれども。それから栽培漁業等の推進ということで、特に栽培漁業に限っておりますのは瀬戸内海栽培漁業センター関係で一億五千七百万円、それから日本海の栽培漁業調査千五百万円、それからさらに水産庁の研究所あるいは県、大学等々の共同研究で現在まで企業化されてはおりませんけれども、実験室の中で人工ふ化養殖が行なわれておりますマグロ、サケ・マス、タラバガニ、そういうものの養殖を大規模に行なうための試験費といたしまして五千三百万、   〔委員長退席、理事亀井善彰君着席〕 それからハマチの幼魚でありますとか、あるいはウナギのシラスでありますとか、それらの重要な水産資源についての開発をいたしますための予算が千万円、このほかこまかく申し上げますればそういうものの関係で県の試験場にも相当予算補助をいたしておりますが、大体以上のとおりでございます。
  149. 川村清一

    ○川村清一君 総額どのくらいになりますか、大体。
  150. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 栽培漁業等の推進ということで予算としてくくっております瀬戸内海栽培漁業センターからブリ、ウナギ等回遊性重要資源開発の面までは二億三千五百万円でございます。
  151. 川村清一

    ○川村清一君 法律がなくても予算措置でわれわれは足りない足りないとだいぶ水産庁のほうに言いまして、相当の金額をやってきておる。さて、この法律が成立をいたしますと、これらの養増殖栽培漁業、これらに関する予算が飛躍的にふえる、このことを期待しておるわけですが、これはもちろん法律がなくてもこれだけのことをやっているのですから、その点はせっかく法律ができるわけですから、予算は来年は二倍くらいに間違いなくなるでしょう、それくらいの考えでもってこの法律案を提案されておるものと思うのですが、どうですか。
  152. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 具体的に二倍というふうに申し上げることもできませんけれども増養殖関係でこれらのほかになお浅海漁場開発という予算もございますし、構造改善事業相当大きくなりますし、それから構造改善事業以外で申し上げますような瀬戸内海等々の話もございますので、私ども予算規模相当ふくらますつもりで現在検討をいたしておるつもりでございます。
  153. 川村清一

    ○川村清一君 海洋水産資源開発センターについては、すでに予算措置がなされておりますね。四十六年でどのくらいの予算措置がなされておりますか。
  154. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 政府が海洋水産資源開発センターに一億の出資をいたしますが、この一億を含めまして補助金と合わせて約十一億くらいでございます。
  155. 川村清一

    ○川村清一君 この法律はまだ制定されておらないが、今国会には法律を出すということでこの予算をつくって予算を議決している。その予算関連のこの法律案、この開発センターのほうは。ところが、沿岸のほうも養増殖のほうはいま法律がなくてそれだけのことをやってきた。いま法律を提案されたんですから、どうして昭和四十六年度には、これは法律関係予算のように、開発センターのように予算をふやしておかなかったのですか。
  156. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 予算の額で申しますと構造改善事業で、第二次の分の全体の事業費千四百十四億ということでございまして、そのうち国費が補助事業につきまして四百億、単独融資事業も五百六十億程度相当大がかりなものでございまして、その中に増養殖関係相当入っておるわけでございます。また瀬戸内海の栽培センターその他現に予算措置としてやっておるわけでございまして、水産資源開発センターにつきましては、これは新しい機構をつくることで本年初めて設定をいたしたわけでございますから、はっきり予算面にもあらわれるわけでございますが、海洋水産資源開発促進法の中の沿岸の増養殖関係につきましては、この法律をつくるからといって、特に新しい項目として起こしたものはございません。しかし、沿岸における増養殖の問題というのはこれからますます発展すべき性格事業でございますから、予算措置といたしまして明年度以降も私ども相当な覚悟をもって予算を組むつもりでございます。
  157. 川村清一

    ○川村清一君 海洋水産資源開発センターというものが新しく設置される、これについては十一億からの予算がついておる。出資金、補助金合わせて十一億からの予算がついた。ところが同じくこの法制化されるところの増養殖のほうについては昨年並みであるということであっては、ちょっとこれは筋が通らない。そこで私はどちらのほうにウエートを置いておるのかと聞いたら、両方とも同じに考えておるということですが、ここに問題があるのであって、これはいま議論してもしようがないのですが……。   〔理事亀井善彰君退席、委員長着席〕  それでは次に進みますが、農林大臣は、この法律ができますというと、開発基本方針というものを定めることになっておりますね。この開発基本方針というのはそれはことし中につくるわけですか。
  158. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) ことし中につくるつもりでおります。
  159. 川村清一

    ○川村清一君 そうするとこの開発基本方針を国がきめますというと、それに基づきまして都道府県は沿岸水産資源開発区域を指定するということになっております。そうしてさらに沿岸水産資源開発計画を定めると、こういうことになっておりますが、この都道府県知事に対しまして、政府はどのような行政指導をなされるわけですか。質問がちょっとおわかりにくいと思うのですが、まず、もとになる開発基本方針というものの中には、沿岸の水産資源開発区域はここにしなさいとか何とかという、国がある程度区域を定めてこれを都道府県知事に指示するわけですか、この辺はどうなんですか。
  160. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 開発基本方針の中では、何々県のどこというふうな指定はいたしませんでそれは県知事にまかすつもりでおります。
  161. 川村清一

    ○川村清一君 そうしますと、開発基本方針というものはどういうことが骨子となってつくられるわけですか。
  162. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 開発基本方針はまず漁業といいますか、水産物の生産と需要の動向に即してつくるということでございます。したがいまして現在の状態におきましては、できるだけ増養殖を進め、できるだけ新漁場の開発を行なうということが内容になるわけでございますが、沿岸海域におきましてはどういう魚あるいは海藻の増殖なりあるいは養殖を進めるか、そうしてそれらの増殖または養殖による漁業生産をどの程度増大させるか、さらにそれら水産動植物の種類ごとの増殖または養殖に適する自然的条件、これは水温でありますとか塩分でありますとか、いろいろなものがございますけれども、そういうことに関する基準をきめます。さらにこれらの計画を達成するためには基盤整備が必要でございますし、また浅海漁場開発等々の開発の施設も必要でございますから、それらにつきましての基本的な事項を書くというのが開発基本方針の中で沿岸漁業関係で書こうとする内容でございます。
  163. 川村清一

    ○川村清一君 私はそこに重大な問題が出てくるような気がしてならないわけです。と申しますのは、沿岸水産資源開発区域をきめる、この区域を指定するのはだれかというと、これは都道府県知事である。そうして開発計画を定めるのはだれか、これも都道府県知事である。そこで現在の都道府県知事というものの姿勢を考えてみなければならない。現在の都道府県知事というものは、その地域の開発、何を重点に置いて開発しようとしておるか、これは各府県おしなべて知事は、特に保守系の知事は、工業開発、これに重点を置いている。これは静岡県の田子の浦に例をとるまでもない、あるいは四日市に例をとるまでもない、一ぱいあるわけです。知事は、沿岸漁業の開発などというものよりも、いかにして企業を誘致してくるか、工業を持ってくるかと、こういうことに狂奔しておるというのが実情ではないですか。まあ、私どもの北海道に実例をとってもたくさんある。こういう姿勢の知事に対して沿岸水産資源開発区域をきめなさいと、そうして開発計画を定めなさいと、こう言ったところで、漁民が期待しているようなそういう区域の設定や実施計画というものは私はできないと思うのです。そこで、都道府県知事に対して、この法律をつくった以上は相当のやはり行政指導をなさらなければならない。その行政指導の根底としてこの開発基本方針というものをきちっとしたものをつくらなければならないと私は思うんですが、どうですか。それはまかすということはできないですよ。長官絶対に。
  164. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 地方におきます工業の誘致ということも非常に大きな関心の的でございますけれども、昨年の公害国会等を契機といたしまして知事の姿勢も私は相当変わってきておるというふうに思います。それから漁業者自身の姿勢も、いままでは場合によりましては工場等が進出いたします場合には漁場を放棄して補償金をもらうという考え方が必ずしもなかったわけではございませんけれども、最近の動きといたしましては、補償金よります漁場の造成あるいは漁場の確保ということを漁業団体も相当熱心に言っておりますので、私は、今後の水産業界の動き等からも考えまして、知事に開発区域をまかせ、また開発計画を立てさせましても、開発基本方針その他農林省からそう手をとり足をとりということでなくても大体いいところの線で落ちつくのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  165. 川村清一

    ○川村清一君 長官、それは非常に甘いですよ。とってもそんな甘い考えではとてもできませんよ。まず農林省自体の姿勢から直してもらわなければ、水産庁の。それだから私は最初にこの水産資源保護法について申し上げたんです。こういう法律があったって全然あなた農林省やってないじゃないですか。この法律に基づいてどれだけの河川をあなた保護水域として指定したんです。まあ私は北海道しか知らないが、北海道見たって、一番問題になっている川は一本も入っていないんです。保護水域として指定していない。農林省もそういう姿勢で、さて今度は、都道府県にこの開発区域をきめなさい、そして開発計画を定めなさい、こう言ったところで、いま長官が言われているようなそんなようなことになるわけがないですよ。たとえば北海道のこの太平洋の室蘭、苫小牧、あの水域だって、長官、これ、ごらんになりましたか。全漁連で出しているこの「沿岸漁業資源・漁場開発の背景と対策」というのをこれ、ごらんになりませんか。これには全国の大規模培養魚礁帯の造成をする地図なんか書かれておりますが、これは別としてですよ、これがこういうところにどういうふうにするか、したがって開発地域に指定をすればいいと考えておったって、この中にですね、たとえば北海道太平洋岸区という地域がありますが、ここには苫小牧、室蘭がある。そうするといま日軽金の赤どこがここから流されるとかどうとか言って大騒ぎしておる。それから、大昭和製紙の廃液が出てくる。それから、茨城県にくると、この辺には鹿島の臨港工業地帯があるというようなことで開発計画を立て、開発区域をつくれといったところで、いまの都道府県知事の一生懸命やっているこの地域の中からそういう海区はないと言っても私は過言ではないのではないかと思います。ですからそういう甘い考えでなくて、せっかくこの法律が制定されるならばもう少しきちっとした姿勢で都道府県知事を行政指導してもらわなければこの法律を制定した意味は出てこないと私は思います。いかがですか。
  166. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私が申し上げましたのは、都道府県知事といいますか、都道府県庁を手取り足取りしなくてもいいと思いますということを申し上げたので、水産振興、沿岸漁業の振興のために水産庁が十分に指導することは当然でございます。  それから、まあ現在構造改善事業の第二次計画が今年から出発いたしておるわけでございますが、その事業の府県から希望あるいはこれに対する県の受け取り方等を見ますと、相当な熱意をもって漁業振興に取り組んでおるわけでございますから、私、そういうことも頭に置きまして、水産庁としては十分指導をいたすつもりでございますが、まずまずいいところにいくのではないかと、そういうふうに申し上げたわけでございます。
  167. 川村清一

    ○川村清一君 私はこの法律案には賛成しているのですよ。賛成だけでなく、これまでまとめるについてはずいぶん水産庁に対して抵抗があったと思う。特に通商産業省あたりからずいぶんこれは抵抗もあり、じゃまもあったと思うのですよ。それをここまで持ってきたことに対しては、その労をきわめて多とし、敬意を表しておるのですよ。これはよくわかるわけだ。しかしこれをつくっただけでは、結局仏つくって魂入れず、これをつくった以上はほんとうに沿岸漁業を守り、沿岸漁民を守るために強い姿勢でもってやってもらわんければ意味がないんですよ。ですから、この都道府県知事は必要な勧告をすることができるものとすると書いてあっても、知事が必要な勧告なんかするものでないですよ、大体において。必要な勧告は、それは農林大臣がしなければ、ここに石油開発ができるなんていうようなことになれば、ここの海底から石油が出るかもしれないなんて話が出たら、目の色変えて知事は、一生懸命事業を進めるために奔走しますよ。そうでしょう。魚とるよりも石油があがったほうがその県に対しては大した経済的なプラスになるわけですから、漁民にとって漁場がなくなるとかなんとかいう、こんなことはおかまいなしですよ。そうして、石油が出てきたら、まあ漁民には何ぼか補償金やるからおまえらがまんせい、がまんせいとこうなる。また、知事がこんなことを勧告する気づかいもないし、また、こういう計画を立てたりすることは絶対にないですよ。私は断言しておきます。だから、通産省あたりの反対、抵抗を押し切ってせっかくここまで踏み切ったのならば、き然として、その知事を行政指導するだけのかまえをもってやっていただきたい。いかがですか。
  168. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 私どももそのつもりで行政をするつもりでございます。
  169. 川村清一

    ○川村清一君 それでは次に、海洋水産資源開発センターについて——もうだいぶおそくなりましたし、みんな早くやめれやめれというような顔をしておりますから早くやめますが、この事業は「海洋の新漁場における漁業生産の企業化のための調査」こういうような調査というものはこれは直営でなされるのか、民間委託でなされるのか、または直営でもやるし民間にもやらせるのか、どうなんですか。
  170. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) この開発センターの新漁場の開発調査は、民間から船を借りまして、用船をしてセンター自身が研究者を乗り組まして調査をするわけでございます。
  171. 川村清一

    ○川村清一君 そうすると、民間に委託してやらせる、そうして、民間に対してその経費は国が持つということですか。
  172. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) 用船をして、船を借り上げてセンター自身がやるわけでございます。したがいまして、民間に委託ではございません。
  173. 川村清一

    ○川村清一君 それじゃセンター自身がやると、こういうことですね。  そうしますと、こういう心配はないですね。どういうふうに調査されるのかわからぬけれども、またどういう魚種についておもに調査されるのかわからぬけれども、これは一般論ですが、企業採算ベースに乗るか乗らないかということを調べるわけですから、ですから、これは国がやるということならばそういう心配もないですけれども、民間に委託してやらせますと、結局そこの調査船であっても企業採算ベースに乗る海域でないと調査しないですよ。資源があるかないかわからない海を調べるわけですから、そこに網を入れて見るわけですから、もっともいろいろないまは科学的な機械が出ているから、全然魚もいないところに絹を入れることもないと思いますけれどもね。そうずると全然——全然というよりも、あまり資源のないところを調査をしたといっても、その船の企業採算というのはとれないわけですよ。ですから資源のあるところばかりさがす。で、われわれはこれを経験したことがあるんですが、北海道においてエビのけた網を、エビの新漁場を民間委託にして道がやらせたことがある。ところがこうずっと広い海であっても海区番号がみんなついていますからね。そうするとその海区番号のうちエビ資源があると思っているところばかり行って、調査と称してそこでエビをとっているわけです。資源のあるかないかわからないところには行かないわけですよ。そうすると資源があるかないかわからないところを調査しなければ、これは調査にならないわけです。この開発センターについて私が一番心配しているのはそういうところなんです。だからそれに対する、そういうことはないのだと、全部これはセンターが用船してセンターの仕事としてやるんだ、だから企業採算に乗るか乗らないか、そんなことはセンター自身には問題ないのだということならわかりますよ。しかし、これもそうでしょう。センターだって出資金国が一億、あと補助金でやっているでしょう。これを食いつぶしてしまったらセンターつぶれるわけですよ。そうするとセンター自身だって採算ベースに乗るところを調査しなかったら、これは仕事にならないでしょう。企業にならないでしょう。やはりこれはセンターがやったって、一つの企業でないですか。こういう心配が一つある。それからどういう海域を考えておられるのか。それから調査の魚種ですね、これらについてひとつ説明していただきたい。
  174. 大和田啓気

    政府委員大和田啓気君) いまお話のありましたようなことを避けるために認可法人という、そういう法人をつくることがなかなかむずかしいときでございますけれども、特に法律に基づいて認可法人をつくって、国が人件費につきましては定額といいますか全額、事業費につきましては三分の二という相当高率の補助金で運営をするわけでございます。したがいまして、二分の一補助で民間にやってもらうということとはよほど違って、厳密な企業化調査ができるというふうに私は考えております。  四十六年度におきます新漁場開発事業の具体的な項目を申し上げますと、一つはマグロはえなわ関係で南大西洋の高緯度区域——高緯度区域といいましても、四十度ないし四十五度前後のところでございます。海外トロールといたしましてニュージーランドの周辺海域、アフリカ東岸沖合い海域、まき網といたしまして中東太平洋海域、それから大西洋海域、サンマで北東太平洋海域、スルメイカでニュージーランド周辺海域、沖合い底びき網といたしまして日本の沖合い海域、これは大陸だなの下で相当深いところで、案外資源調査も企業化調査も進んでおりませんので、そこを特にやるつもりであります。それからカツオでパラオ、トラック島の周辺海域が、これは四十六年度の先ほど申し上げました予算に基づいて行なおうとする調査でございます。今後の長い長期的な展望といたしまして、赤道あるいは赤道から南の太平洋、大西洋の南部海域というのに相当重点を置いて、新しい漁場の開発につとめるつもりでございます。
  175. 川村清一

    ○川村清一君 わかりました。  それでひとつ今後の心配もありますから申し上げておきますが、遠洋漁業ですね、現在世界の漁業を考えてみますというと、どの国も、特に低開発国は漁業に非常に力を入れておる。そこできのうきょうと北洋漁業の問題についていろいろ長官と議論いたしましたが、北洋のサケ・マス漁業、この漁業も、あるいはカニ漁業、それから特にニシン漁業ですね。これなんかは日本人が開発したものであります。ニシン漁業なんというものはまさに北海道、日本海にニシンが一匹もこなくなってから、命を張って遠洋に出かけていって開発したものですね。相当の犠牲を払っておる。ところが開発したところが、これが国際的ないろいろな問題が起きてきておる。全部締め出されておる。そこで、いませっかく開発センターというものをつくって、それで長官がおっしゃったように遠洋に行って新漁場を開発する、その開発をしていったときに、そうして企業採算がとれると、こういう段階までいったときに、またその沿岸国から横やりが入ってきて、そうしてそこから締め出されるということ等もあるわけです。ですから国際関係というものを十分考慮してやっていただかなければ、せっかく苦労したってこれは水のあわ、そしてもう、かけた金は全部むだになってしまうということになりますから、この点ひとつ十分考えてやっていただきたいわけでございます。もう終わります。  そこで、この沿岸のあれに関係しているのですがね、長官、これをひとつよく見てください。これはことしから国が補助費をつけてやっていただいておる北海道道南におけるコンブ養殖ですよ。コンブ養殖、これは道南のコンブです。これは最高級のコンブなんです。尾札部コンブ系統なんですね。ですから、これは北海道の最高コンブというのは日本の最高コンブです。これの養殖をやって、製品がようやくコンブができて、そうしてよくできたといって喜んでおったら、こういう状態。これは何かというと、コケムシという虫なんですよ。それで顕微鏡で見ると、イソギンチャクのようなもの、これが無数について、細胞分裂のようにだんだんふえていってこうなっている。これじゃ全然製品としても商品価値ないわけです。それで補助金はもらっておりますが、全額補助でございませんから、やはり自己負担もある。この自己負担分というものは、これは商品価値がないから全部借金になってしまうといったようなことで、道南のほうの漁民はみんないま頭を悩めておる。だから、補助を打ち切ってしまうということを言っては困るけれども、そこでこれを水産試験場に行って、これは何だと、コケムシって何だと、こう聞いてみても、現在においてはコケムシって何だかわからない。どうしてこうなっているのかわからない。こういうものを駆除する方法がわからないと、こういうことなんです。いま農業を見てみましたときに、農業では非常に技術が進歩いたしまして病害虫だとか何とか、そういうふうなものによって稲が全部だめになるなんということはないです、もうむしろ農薬公害なんというものが出てきているわけですから。ところが、水産のほうだけはこういう状態です。ですから、もっと試験研究関係予算をうんとふやしてもっとしっかり研究させてもらわなければ困ると思うのです。何だかわからないじゃ処置ないわけだ。それではせっかく希望を持っておった漁民が、そうしていまこの法律ができて、これから沿岸における養増殖をふやすといったところで、こんなことになったのでは……。この点をぜひひとつ研究を進めていただきたいんですよ。こんなことになるならもう国の補助は打ち切ったなんといってもらっては困るけれどもね。ただし、これをとにかく何であるかといって駆除する方法を早急にぜひ考慮していただきたい。これは最後はお願いになって恐縮ですが、これで、ずいぶん長い間やりましたが、三法についての質問を終わらせていただきます。
  176. 河口陽一

    委員長河口陽一君) 三条に対する質疑は本日はこの程度にとどめます。     —————————————
  177. 村田秀三

    ○村田秀三君 私は、四十六年産生産者米価引き上げ等に関する決議を本委員会において行なわれることの動議を提出いたします。  その内容は次のとおりであります。  以上であります。
  178. 河口陽一

    委員長河口陽一君) 速記を中止してください。   〔速記中止〕
  179. 河口陽一

    委員長河口陽一君) 速記を起こしてください。  これにて暫時休憩いたします。    午後五時五十五分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕