○河田賢治君 私は日本共産党を代表して、
中央卸売市場法一部改正案に反対する意思を表明し、その理由を明らかにするものであります。
まず最初に、わが党は、現行
中央卸売市場法が大正十二年の制定以来、約半世紀を経ており、この間三度にわたる部分改正を行なったとはいえ、今日の変化した農水産物の
生産と
流通に十分対応し切れなくなっている事実、さらには、今回の改正案が、無秩序、需細な乱立状態に放置されてきた
地方卸売市場の
整備と、法的規制の適用、
市場新設、拡充への
補助率引上げをはじめ、幾つかの積極的改正点を含んでいることを卒直に認めるものであります。
しかしながら、
中央卸売市場審議会答申を受けた今回の抜本改正の
内容は、今日多くの国民の強い批判を引き起こしている
生鮮食料品の異常な高騰とその原因の一端をになっている今日の
卸売市場運営の実態、とりわけ、コールドチェーン化の急速な進展とその支配を利用した大手水産資本と卸売会社による
市場内外での不正不当な
価格操作の根本的規制など、真に国民が
期待している
卸売市場の民主化、運営の公正化の要求に程遠く、むしろ、こうした現状を法的に追認し、合法化し、拡大させると共に、
市場制度全体を現在以上に大手資本の支配にゆだね、その莫大な利潤確保の
方向に再編、
整備するという危険な
内容に貫かれていることを
指摘せざるを得ないのであります。
即ち、反対理由の第一は、委託に基づくせり取引を原則とした現在の
価格決定方式のもとで、例外的に認められていたにすぎない相対取引——定価売り、見本売りを大幅に拡大し、実質上これを取引
形態の本流に置きかえようとしている点であります。相対取引の対衆として予定されている冷凍品、加工食品をはじめ、バナナ、レモン、冷凍エビ等の輸入食品は、今後とも
市場流通量に占める比重が急激に高まっている食品であり、その大半が大手資本に握られている食品であります。これらの食品こそが、現に巨大な冷蔵、貯蔵
施設を利用した大手資本、卸
業者の
出荷調整、
価格つり上げをセリ取引の悪用と結びつけて行なってきたものであり、彼らの不当な高利潤を可能にしてきたという事実に照せば、その危険性は明白であります。
第二の問題は、相対取引の
価格つり上げの原因となっているセリ取引
価格の不公正なつり上げ操作の規制が強められていないばかりか、逆に、
価格操作の主要な手段に悪用されている転送の合法化と、その拡大、指し値制度の拡大、倉入れの放置等によって、一層不公正な操作が可能になっている点であります。
市場法改正は、生鮮食品の騰貴抑制にとって重要という政府の宣伝の欺瞞性は、こうした事実に照せばおのずから明らかであります。
第三は、改正案が、
卸売市場の開設、運営に関する
農林大臣の権限を大幅に強め、開設者である地方自治体の権限を実質上、仲卸人の許可、
売買参加者の承認等の範囲に押えられ、地方自治体による自主的な管理、運営の強化を一そう困難にしている点であります。
第四には、水産物
市場を
中心とした大手漁業独占を系列下の大手荷受け会社の不公正な
市場支配に対する有効な規制を欠いたまま、一方で、卸売り会社、
仲買い人の統廃合を強引に押し進め、大手資本の少数支配のみを一そう強固にする
方向がとられている点であります。その影響は、単に中・小卸、
仲買い業者にとどまらず、いまなお、労働協約もない前近代的な雇用
関係のもとで、劣悪な労働
条件と身分保障を全く欠いた、多くの
市場労働者の生活に重大な打撃を与える点からも重大であります。
私は、
卸売市場が今後とも果たすべき社会的、経済的責務の重大さに照らして、わが党がさきの衆議院での本案
審議において提起した修正案が示すとおり、
市場制度の真の公正化、民主化をはかる上で、最小限次の点の重要性を主張するものです。
第一に、せり取引の原則を強化し、これをゆがめている倉入れ、差し値、せり止め、不法な転送等の
価格操作手段を厳重に規制し、そのために、
消費者、
生産者、
市場労働者代表等を含む民主的な監視
機構設置をすべての開設者に義務づけると共に、大幅な調査、勧告権を与えることであります。
第二に、卸売会社の許可、取消し、合併認可、
事業停止命令等の権限を開設者に与えると共に、兼業業務、別会社設立を許可制に改めることです。
第三に、せり人を卸売
業者から切り離し、地方公務員とし、卸売
業者によるせり操作の防止に資することであります。
第四に、
市場関係労働者の雇用
関係、労働
条件改善、身分保障の明確化をはかり、労働協約の締結をはじめとする労働
基本権の遵守をすべての卸、
仲買い人の認可の
条件とし、
市場労働者の待遇
改善に資することであります。これらの点を
中心にして、
市場制度の民主的
改善をはかることこそ、今日、多くの国民が強く求めている改正の
方向であることを最後に強調して、私の反対討論を終わります。