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1971-05-21 第65回国会 参議院 内閣委員会、公害対策特別委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月二十一日(金曜日)    午後一時二分開会     —————————————   委員氏名    内閣委員     委員長         田口長治郎君     理事          塚田十一郎君     理事          安田 隆明君     理事          足鹿  覺君     理事          上田  哲君                 井野 碩哉君                 金丸 冨夫君                 源田  実君                 佐藤  隆君                 長屋  茂君                 八田 一朗君                 山本茂一郎君                 渡辺一太郎君                 森  勝治君                 矢山 有作君                 山崎  昇君                 三木 忠雄君                 峯山 昭範君                 松下 正寿君                 岩間 正男君    公害対策特別委員     委員長         占部 秀男君     理事         久次米健太郎君     理事          長屋  茂君     理事          竹田 四郎君                 青木 一男君                 鬼丸 勝之君                 川上 為治君                 木島 義夫君                 古池 信三君                 玉置 和郎君                 矢野  登君                 山本敬三郎君                 渡辺一太郎君                 加藤シヅエ君                 杉原 一雄君                 瀬谷 英行君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 田渕 哲也君                 河田 賢治君     —————————————   出席者は左のとおり。    内閣委員会     委員長         田口長治郎君     理 事                 塚田十一郎君                 安田 隆明君                 足鹿  覺君                 上田  哲君     委 員                 源田  実君                 佐藤  隆君                 山本茂一郎君                 渡辺一太郎君                 森  勝治君                 矢山 有作君                 山崎  昇君                 峯山 昭範君                 岩間 正男君    公害対策特別委員会     委員長         占部 秀男君     理 事                久次米健太郎君                 長屋  茂君                 竹田 四郎君     委 員                 川上 為治君                 矢野  登君                 加藤シヅエ君                 杉原 一雄君                 瀬谷 英行君                 塩出 啓典君                 三木 忠雄君                 河田 賢治君    国務大臣        厚 生 大 臣  内田 常雄君        建 設 大 臣  根本龍太郎君        国 務 大 臣  山中 貞則君    政府委員        内閣審議官    城戸 謙次君        警察庁交通局長  片岡  誠君        経済企画庁審議        官        西川  喬君        文部省体育局長  木田  宏君        厚生大臣官房国        立公園部長    首尾木 一君        厚生省公衆衛生        局長       滝沢  正君        厚生省環境衛生        局公害部長    曾根田郁夫君        厚生省薬務局長  武藤き一郎君        林野庁長官    松本 守雄君        建設省都市局長  吉兼 三郎君    事務局側        常任委員会専門        員        相原 桂次君        常任委員会専門        員        中原 武夫君        常任委員会専門        員        菊地  拓君    説明員        農林省農政局参        事官       安尾  俊君        建設省河川局河        川計画課長    宮崎  明君        日本専売公社生        産本部本部長  佐々木幸雄君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○環境庁設置法案内閣提出衆議院送付)     —————————————   〔内閣委員長田口長次郎委員長席に着く〕
  2. 田口長治郎

    委員長田口長治郎君) ただいまから内閣委員会公害対策特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が連合審査会委員長の職をつとめます。  環境庁設置法案を議題といたします。  御質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 環境庁設置法案が審議されるわけでございますが、私どもはこういう役所ができることを非常に待ち望んでおったわけでございます。この役所ができるまでには、いままで各省ばらばらになっておりました行政を、ある程度ここにまとめて所管なさるということでございまして、これは当然のことでございますけれども、そこまでには相当の抵抗もあったのではないかと想像いたしますので、長官がたいへんに努力なさったことを私は高く評価いたしたいと思います。  きょうは総理大臣もいらしていただくようにお願いしてございましたが、お見えにならないようでございますが、私は特に総理大臣が、環境庁がやがて設置されまして、これが歩きだしましたときには、この設置のために非常にお骨を折られ、しかもその知識を一番、十分に持っていらっしゃると思う山中長官のような方が、ぜひ環境庁長官の役をお引き受けくださるように私は希望するわけでございます。それを私は総理大臣に特にきょうは質問したいと思ったのでございますが、おいでになりませんので、長官にこのことを伺うというわけにもちょっといかないかと思いますから、私からそういう趣旨の発言のあったことをお伝えになっていただきたいと思います。  それから、この環境庁任務でございますが、第三条に「環境庁は、公害の防止、自然環境保護及び整備その他環境保全を図り、国民の健康で文化的な生活確保に寄与するため、」云々ということが書いてございます。これはもとより当然なことでございまして、いままで公害対策のための役所というような考え方から環境庁ができたというふうに考えることは非常に狭い解釈であって、環境庁というのはもっともっと広いものを含んでいるということと、特に私たちは理解したいと思うのでございます。それにつきましての長官のいろいろの抱負や将来の御計画などはあとからいろいろ伺いまして、さらにお答えいただきたいのでございますが、私は特にここで強調いたしたいことは、「健康で文化的な生活確保に審与する」、この健康で文化的な生活というのは一体どういう内容を持っているか。これを非常に平面的に解釈いたしますれば、何か衛生的な環境ができていれば、それが健康的な環境であるというような解釈もできるわけでございます。また文化的な生活確保というふうなことも、学校がたくさんあるとか、図書館があるとか、よき遊び場があるとか、そういうようなことも文化的であるというふうに解釈することができると思います。しかし、私はそれよりもう一歩進めて、もっと深く、もっと広いものをこの中に含めていただきたいということを希望いたしますので、それにつきましては、文化的、健康的というようなことは、ほんとうに肉体的に健康であると同時に、精神的にも健康である、そういった環境をつくるというような意味を、特にここでもってはっきりとしていただきたいと思うわけでございます。  で、それにつきましては、やはり緑の森があるとか、湖があるとかいうだけではなくて、文化的の中には、民族が受け継いでまいりました日本の大切な文化というものの中にほんとうに浸ることができて、そして、そこから日本人としての将来の文化的建設に寄与できるようなインスピレーションをも感じることができるような環境、こんなふうに私はぜひ解釈してまいりたいと思っておりますが、長官もそういうふうにお思いになるかどうか、まずこれだけ伺います。
  4. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 最初の御質問は、私に答弁を求めるのは酷であろうということで、たいへん御高配をいただいたわけで寄りますが、私は、国務大臣を一名増員するということは、その国にとって非常に大きな意義を持つものであると考えます。よほどのことがなければ、逆に言うと増員すべきでない。いわゆる少数精鋭、能率ということが目的として追及されなければならないわけでありますが、しかし、この際、私たち日本の国際的な視野においてとらえられた公害の現状から見て、やはり専任大臣を置かなければならぬ、兼任で片手間に済ますようなものであってはならないという決意の表明でございました。その意味において、いずれ七月一日に発足いたしまして、恒久的な初代長官人事がなされます際は、ただいまの御意見を伝えることはもちろんのことでありますが、私は組閣に人事干渉する立場にもありませんけれども、この環境庁人事についてだけは、総理に私はぜひとも御進言を申し上げて、そうして初代長官姿勢というものが、国際的にも国内的にも、なるほど大臣を一人ふやしてやっただけのことはあるという人であってほしい。そういうことだけはぜひとも、単なる順番人事みたいなことであってもらっては絶対ならない。人事は、環境庁長官であると思っておりますので、私自身の決意も披瀝いたしておきます。  それから第三条の「国民の健康で文化的な生活確保」がまず考え方基本になりますが、これはおっしゃいましたとおりでございまして、この表現は、単に法律の中にこういう表現を用いたというだけではなくて、その根拠は憲法の二十五条というものの精神をそのまま移してきたものでございます。表現もしたがって憲法二十五条の表現をお借りいたしておりますから、私たち憲法によって健康で文化的な生活確保するということを、国のすべての法律のよりどころたる憲法によって差し示しておる、その方針を受けて、この環境庁というものの大使命がそこに存在するのであるという、やや大上段な言い方でありますが、そういう基本的な姿勢を申しておるわけでございます。ややこれを具体的に現象的に見ますと、健康でという意味において、日本の場合においては、大体環境汚染というもの、あるいは環境破壊というものに、まずそれを防止するために立ち向かうという諸外国の姿に比べて、日本の場合は公害にかかる健康破壊救済法等もございますし、また、現実に公害裁判と言われている四大訴訟事件等もありまして、あとを断たないように、不幸にして単なる環境汚染のみにとどまらず、貴重な人間の生命、健康というものに影響を与えつつあるのが、日本公害の最も恥ずべきことだと私は思っております。したがって、これらの問題は、あらゆる規制や基準設定等の手段を行使していくことによって、今後はそのようなことの起こらないように絶対にしなければならない。そしてそれらのことは当然の常識であって、今後は私たちとして、この私たち国土というものを私たち子孫に、現在、生をこのように受けて、しかもまた国会議員の地位にある私たちがみんなでもって私たちの子々孫々にどのように残しておけるかという重大な挑戦を受けているんだ。それに対して私たちはこたえるためのここでいま議論をしているのだという、そういう意味の展開をしなければならぬと覚悟をしているわけでありまして、今後もやはりそういう意味における環境庁長官の責務、環境庁仕事国民から期待される展望というものは非常にきびしくかつ長期的な国際的な視野にたえ得るものでなければならぬ、そういうように考えておるわけであります。
  5. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 長官の御決意を伺いまして、たいへんに私も心強く思っております。いま御発言になりましたよりももっともっときびしく感じていただいて、強力に推進していただかなければならないことだと私は思っております。また、この環境庁設置というようなことは、諸外国に比べまして非常に手おくれであって、この十年間に日本がなし遂げましたところの、世界が驚異の眼をもって見るようなこの産業経済のたいへんな成長、それに付随した膨大な国土の荒廃、そして公害に悩む住民という問題に対しては対処が非常に手おくれだったと思いますだけに、今後のお仕事はすべて急速で強力でなくちゃならない。社会党といたしましては、環境保全基本法の提案をいたしまして、これは議員立法でそのままになったのでございますけれども、党としての考え方を述べました中には、現在の政府のものよりももっと広く、もっと強力なものを申しておりまして、環境保全庁ではなくて、環境保全省というようなものでなくてはならないはずだということを考えておるわけであります。これはいますぐどうということではございません。ワンステップ進んだと理解いたしまして、将来はやはりもっと強力な、もっと幅の広い、またもっと研究をほんとうにやらなきやならない、予算もとらなきゃならないということになれば、やはり省にまで昇格すべき性質の役所ではないか、私どもはこう考えてそれを主張してまいったわけでございます。また同時に、環境保全会議とか、環境問題の研究所というようなものも社会党としては主張いたしまして、こういうようなことは、おそらく審議会というような名目のものがいろいろ書かれておりますけれども審議会というようなものは、どうもいままでの実績を見ますと、いろんな意見の方がそこに集まって、そのいいところでおさまったところで結論をとるとか、あるいは政府がこういうふうに指導してもらいたいというようなメンバーを集めておいて、その結論審議会結論として利用する、そういうことになっておりますので、もっときびしいものにしなければならないはずだと私はこう思っておりますので、この点は社会党考え方が一歩進んでいたかと思いますので、これも将来は御参考にぜひ考えていただきたいと思います。  それからその次に伺いたいことは、いま私が最初質問のとき申し上げました公害対策とか、衛生的に健康であるとか、いわゆる文化的であるということからもう一歩進めて、日本の二千年の歴史の文化的な遺産というものを守るということは、やはり自然環境を守ることとこれはみんな一致しているわけであります。こういうものも、やはり健康な環境というものの中に含まれるべきでございまして、ただ新しく開拓したような、そこに木が植わっていようが、運動場があろうが、それだけではほんとう民族のためのいい環境ではない。幸い日本にはたくさんの世界的にも知られるような歴史的な建造物とか、あるいはそれに付随した大きな森林とか、そういうようなものもたくさん残っていたわけでございますが、それが戦争でもって全部破壊されたというならまだこれはあきらめようもあるかと思いますけれども戦争で破壊されたのではなくて、その後の二十五年間の日本復興途上において、政府が一貫した方針を持っていなかったために、いたずらにこういうものが荒廃されるにまかせてあった、そこに大きな基本的な問題があったわけでございます。長官としては、その問題についてどういうふうにお考えになるか、今後これをどうやって食いとめることができるか。たとえばいま私が問題にいたしましたものが政府所有地であるとかいうような場合には、これを確保することもできますでしょうけれども、それが政府所有地でない場合が多くて、そしてそれが単なる企業家の利益のためにどんどんと荒廃されたり、あるいは浪費されたり、山の上までがやかましいジャズ音楽でもって満たされるというような、こんなものは決して国民ほんとうレジャーでも何でもない。レジャーというものをほんとうに考えるならば、国民がそのことを楽しむことによって同時に精神的にも向上を感ずる、そういうような雰囲気をつくらなければならない、そんなことが全然いままでの政治にはなされていなかった、このことについて長官はどうお思いになりますか。
  6. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいまの御質問、御意見ございましたが、庁を将来は省に考えろというお話でございます。これは大臣専任であたりますので、名前は省と庁と、あるいは省のほうが上のように聞こえるかもしれませんが、庁といいますと総理府のいわゆる外郭としての庁でございますから、むしろ私としては、やはり総理というものが最高の責任者立場に立つ庁のほうが、このような各省を統一していかなければならない、場合によっては勧告もする、あるいは勧告に基づいて報告も求める、気にくわなければ内閣法第六条の総理大臣各省大臣への指揮権発動を要請するというような権限を与えまするには、やはりそういうような総理直属の機関ということで、専任大臣でございますから、省と庁の名前の違いは大して心配要らないだろうと思っております。むしろこのほうがよろしいのではないかと思うわけです。省になりますと、どうしても独立の省ですから、各省とは並列の立場になりますので、そこらのところがたいへんむずかしい問題がかえって起こるのではなかろうかということを私は考えたわけでございます。  なお審議会等運営については、いつも隠れみのみたいに使って民意を反映したんだというようなことで、実際は役所が作文したものを審議会にかける例がなしとはいたしません。しかしながら、今回私どもは、そのようなことがあってはなりませんし、審議会というものが二十名から中央公害対策審議会メンバーを八十名にふやしました。それはただ数が多いだけではなくて、それぞれ水質その他の部会をもちまして、それぞれの部会がまた有機的に中央公害対策審議会メンバーである、そして部会の長は必ず自分の責任において、部会できめたことというものがその審議会の場において構成委員として権利をもって発言されるというような今後の運営をしたいと考えておりますので、これは生態学的な分野にまで将来私たちは提言を聞くための人選をしていかなければならないと思っておるわけであります。  そこで、御質問になりました文化的遺産の継承の問題でございますが、私どももっとにそのことは考えておりますし、今後、環境庁というものはそのようなことももちろんでありますが、この次に環境庁が考えなければならないいわゆる考え方としての一番大きな問題は、ばらばら計画され設計され、あるいは破壊されておりますわが国土というものを、どのようにして新しい国土というものをレイアウトし直すかという、環境保全立場からの土地計画というものに環境庁主導権を持つ時代を早くつくってもらいたい、これは新長官に課せられる、初代長官の重大な任務一つであろうと思うわけでございます。さらに具体的な問題としては、ついでに申し上げますと、現在下水道水道が分かれておりますけれども、これ等もやはり一番の住民生活のための環境汚染の源泉である先行社会資本投資でございますから、いずれ、建設省とも相談をいたしておりますが、早い機会に下水道五カ年計画そのものも含めて、厚生省水道部門等も一緒にした新しい局というものが、環境庁にたとえば下水局というようなものが誕生しなければならない日本状態ではないか。五カ年計画を達成しても諸外国に比してせいぜい先進国の四六%ということは、五カ年計画そのものがどうも恥ずかしい状態だということも言えるわけでありますから、こういうようなことも具体的には考えていかなければならぬと思います。したがって、文化財あるいは民族的な遺産、そういう問題については法律の第十五条、「(文化財保護法の一部改正)」という条項を立てております。これは、「文部大臣は、第一項の規定により名勝又は天然記念物指定をしようとする場合において、その指定に係る地域が自然環境保護の見地から価値の高いものであるときは、環境庁長官意見を聞かなければならない。」、第二項として、「文部大臣又は文化庁長官は、名勝又は天然記念物に係る自然環境保護及び整備に関し必要があると認めるときは、環境庁長官に対し、意見を述べることができる。」、こういうふうにわざわざ文化財保護法をここで改正いたしておりまするゆえんは実はそこにございます。文化財保護は当然まあ国でも、予算制約等もございますものの、やはり物とか、あるいは点とかいう感じの指定ということがわりに先行いたしがちでございます。しかし、今後はそのような文化財の置かれてある環境というものがどのような環境であって残されてきたものであるか、したがって、これを残すとすればその周辺の自然的景観、あるいはそのよって来たった淵源というものをやはりありのままに子孫に伝えていくことの中において、文化財指定あるいは史跡、名勝天然記念物指定が配慮されなければならぬ。こういう意味でここに、唐突の感がありますが、文部行政の中の一部門を引っぱってまいりましたのは、まさにお話のとおりのつもりでやったわけであります。たとえば一例をあげますと、いまは私の手元で一応やりましたから何とかできましたけれども飛鳥地区保存というような場合において、古都保存法文化財保護法というものを新しい視野からながめ直して、全く独自の国の措置としての閣議決定までいたしました飛鳥地方の天然の先祖伝来民族の心のたたずまいを保存するというようなことは、今後のやはりこの条項を受けての環境行政一つの大きなモデルケースになるのではなかろうかというふうに考えております。
  7. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 ただいまの御答弁、たいへんによく理解いたしました。省にしないで庁にしておくことがかえって総理大臣指揮権発動につながるという点、たいへんにけっこうなことでございまして、将来むずかしい問題がございましたらどんどんそういうふうにしてやっていただきたいと思います。  そこで、私伺いたいのでございますが、今日このように日本公害でもって全国的に埋まったような形になっているというのも、この十年間、所得倍増に発しました産業の発展のために他はすべて二の次にされるというような形で進んできたというようなところに大きな原因がある。そして、そういうような計画がこれが全国的な総合開発計画というような一つの国家的な計画というような形でもって臨んでくるというところにたいへんな力があるわけでございます。そして、いま私がここに問題としてあげたいのは、三重県の中南西総合開発計画、この問題でございます。で、この三重県のほうから、私、資料をとり、説明を聞きましたところが、将来、青森県に一つ三重県に一つ、山口、福岡、大分県にかかって一つ、それから鹿児島県に一つと、こういうふうに海面を埋め立てました計画、これが総合計画というような、何か国家的な視野でもあるもののような権威を持って臨んでくるわけでございます。そういたしますと、私がいま問題にする三重県の中南西総合開発計画というのを、そこの自治体の長官がそれをどういうふうに受けとめているか、何か産業が開発されれば、それがすなわち土地の利益に結びつくというふうにのみいままで理解されましたから、これをただ自分が取り上げないというわけにもいかないわけでございます。ところが、この中南西開発計画というのは、その計画を地理的にいろいろ説明を受けますと、少し先のほうに四日市の公害があって、あんなに公害の第一号のモデルケースみたいにしてさんざんに皆が苦しめられた、そのたまったところにまたこのようなものの計画をするということ、第一そのこともこれは考え直さなければならないことである。それから、ここに計画をして大きな工業の立地がなされるということになりますれば、どんな風が吹きますか、四季によって風の向きというものはいろいろに変わるわけでございましょう。そうすれば大気汚染ということはこれは避けることができない。そうしてその背後には伊勢神宮の森があるわけでございます。何百年の長い間かかって成長したこの大きな文化的遺産、これがそういうような汚染した空気にたえずさらされるということになれば、その結果はどうなるか、その結果が少しでも徴候があらわれてから、これはたいへんだなんていうことをいっても、植物学の先生方の話を聞きますと、そういうようなときにはもうすでに手おくれであって、大挙そういうようなものが枯れてしまうのだというようなことも承っておりますので、私が先ほど来申し上げている文化的遺産を尊重しなければならないというような面も含めて、こういうような危い計画というもの、これが国家的な計画みたいにして臨んできた場合にはこれをどうやって解決なさるか。なお、私、時間がないからついでに申し上げるのでございますが、この産業の新しい立地のいろいろ計画が進みましたときには、土地の自治体の長官はじめたくさんの企業家の方々が、今日は公害を避けるために極力いろいろの手を尽くされるということはわかります。しかし、どんなに手を尽くして、どんなにいい計画を立てたと思われましても、それは決して万全なものたり得ないということは、あの鹿島灘の臨海工業地帯の問題で私は一つ証明されているのではないか、また岡山県の水島、大分県の大分市、こうした問題も見てまいりましたけれども、特にこの鹿島の問題は、私、公害委員会が視察をいたしましたときに、他の同僚委員の方たちとつぶさにこれを視察いたしまして、そしてまだそのときは機械が動いておりませんでしたけれども、こういうふうになる、こういうふうになるという説明を聞き、そして知事さんのたいへんな理想と抱負、そういうものとこれが一致するのだということも詳しい説明を聞きました。私が非常に安心して、このくらいの計画が立っていればうまくいくのではないかと思っておりましたから、もうそれからどんどんと、その翌年あたりからいろいろの問題が起こって、地域の方からもいろいろ出ておりますし、いわゆる大気汚染のSO2の問題等も起こって、どうしてこんなになったかということの詳しい報告を私は持っておりますけれども、これは一口に言えば、どんな緻密な計画を立てても立て切れるものではない、それほどこの問題はむずかしいのである、したがって、危険性が少しでもはらんでいると思われる場合には、こういうものはこれは考え直さなくちゃいけないのじゃないかということを私は思いますけれども長官はこれをどういうふうに対処なさろうとなさるか、伺いたいのです。
  8. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) ただいまの三重県の具体的な計画の例は私よく存じませんが、たぶん新全総による新しい国土の見通しによる大型プロジェクトの立地計画の一環に入っておる問題だと私は思います。私のまた別な新聞情報程度の知識でございますが、この計画については伊勢神宮の可否の議論とは別に、天然の森に対して与える影響というものについて自然保護団体等の反対が強いということも漏れ聞いております。これらの問題は、今後、環境庁長官が取り組むべき姿勢の一番大きな問題は、国土の再編、土地計画の練り直しであるということも先ほど申しましたけれども、この中には当然産業の立地という問題も含めての土地問題と私は考えているわけでありますが、しかしながら、現在、通産省が産業立地の許認可を持っておる現体制の中では、あるいはいたしかたがないかもしれませんが、しかしながら、環境庁においては、これらの関係ありと思われるただいま指摘をされましたような新全総に基づく大型プロジェクトの展開等の審議会等については、当然、各種委員会全部参加するということになっておりますし、また一方において環境庁長官はそういうことに対して報告を求める。あるいはその状態について勧告をする。したがって、それがうまくいかない場合は内閣法第六条の権利を要請するということで、全体の権限を与えて具体的に委員会に人を入れておりますので、それらの問題については、今後いままでのような考え方による一方的な建設のみの遂行、自然破壊は、結果的に起こったときに騒ぐという状態は事前にチェックできるものと考えております。
  9. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 次に伺いたいのは、環境庁が今度掌握されますところの鳥獣保護及び狩猟に関する問題でございます。これはたいへんに、いままでわりあいに軽く見られていたことでございますけれども、健全なる環境の保持というためにはこれがもうなくてはならない。さっき長官が言われました生態学的な見地からいたしましても、これはもう非常に重要な問題をここに含んでいる。したがって、この問題については長官も十分に御考慮をいただきたい。ところが、現状はたいへんにおかしなことになっておりまして、今日交通の害のことが非常にいわれておりますけれども、非常に交通によってたくさんの人が死ぬということもたいへん残念なことでございますが、これは極力それに対する対策を講じなくちゃならない。と同時に、自動車が通るということはこれは必要から通るという問題でございます。ところがこの狩猟の問題というのは、これは全国四十万とかのハンターがいらっしゃるんだとかいうことでございますが、その中のどれだけの方がハンターということによって生活をささえているか、これはたいへんに少ないもので、ほとんどないかもしれない。大部分はこれがたいへんかっこいいスポーツであるというようなことで、かっこいいほうが先になって、ほんとうの技術というようなことやハンターが必ず身につけなければならないモラルというものが軽視されて、そして解禁になりますとハンターが盛んに活躍する。そのために何にも罪のない子供が流れだまに当たって死んでしまうとか、あるいはそこに働いておる人たちがけがをするとかいうような問題がたくさん起こって、それが新聞で報道されているわけでございます。ある群馬県の小学校では、解禁になりますと、子供たちは赤い帽子をかぶって、あるいは白い旗を持って歩かないと、動いておるから動物と思われて打たれたらたいへんだというような、そういうような警戒をして歩くとか、スクールバスでもって今部保護して登校させなければならないとか、そんなようなことをやっているということは、これは全く文化国家として考えられないことだと思います。それで、私はこの問題についての対策としては、いまは禁猟区とか、鳥獣保護区などというものが設けられておりますけれども、ところが、日本のようなこの狭い国土であって、そしてこんなに人間が密集して住んでいる、こういうようなところでは日本全国を禁猟区にして、保護区にして、その中のどことどこは解禁になったらハンターは自分のスポーツを楽しんでもよろしいということで、むしろ逆に規定さるべきではないか、私はこういうふうに思っておりますが、鳥獣保護のお役所として長官はどうお思いになりますか。
  10. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そういうことを念頭に置いて鳥獣保護並びに狩猟法関係のすべての権限を環境庁の専管に移して今後やっていくわけでありますが、結論から申しますと、やはり私たちの国は三分の二を山岳地帯におおわれている。そのためにある意味では渡り鳥の天国ともいままでいわれてまいりましたし、生息いたします鳥獣類等についても非常に豊富な種類を持って今日まできておりますが、しかしながら、東京首都圏あたりの渡り鳥等の生息地帯の分布図が、ここ数年くらいで急速に郊外のほうへ飛躍的に後退してきている。あるいはまた海等において渡り鳥は油のために飛び立てなくなって、そしてばたばたしながら悶絶していくというような記事というものは、やはり私たちは自分たちの問題として深刻に考えるべき問題だと思います。つい今週でございますが、閣議で狩猟法の一部改正もいたしました。これは主として危険な、たとえば水平撃ちなんかやっちゃならないときまっているのに、開禁の当初のあたりばたばた事故が起こりましたのは、ただ水平撃ちなんかを平気でやる、基礎的な、やっちゃならない、撃つちゃならない方式でさえも平気でやっているハンターがふえていることを意味するものだと思います。そこで、先般の政令改正では、これはいままで一時間の講習で狩猟免許を試験をいたしておりましたけれども、一時間の講習ということを四時間の講習によって、そのあと試験を受けるということに改める、わずかな手直しでございますが、これでせめてそのようなモラルの問題から始まる危険なそういう銃砲の取り扱いというものについて、十分に角度を変えて勉強をさせよう、そして持たせようというつもりであるわけであります。ところで今後の問題ですけれども基本的な考え方は私もただいま先生おっしゃいましたように、日本国土全体がまずどこでも鉄砲を向けて撃っちゃならないところである。ただ、しかし、その中には有害な鳥獣というものもおりますし、そういう場合においては、やはり自然の繁殖にまかせた場合に、人間の今度は生存のための環境が破壊されることがあるわけです、動物の種類等によって。その場合等において当然これはある一定の地域について狩猟というのが認められる、他面においては、それによってまたなりわいとする猟師の方々の生業というものも、これは認めなければならないということで、たしか狩猟免許税等においても種類が分けてございまして、猟師を専業とするものについては免許税も安いようにしてあるはずでございますが、しかし、あまりにも当今そのような免許税の税差くらいのごときはへっちゃらでございまして、とにかくかっこうよく服装をととのえて、そしてその爽快感を味わうと申しますか、ストレス解消的な狩猟というものが行なわれている。このようなことは、やはりもの言わぬ動植物たちにとって私たちは何を考えてやらなければならないかという基本的な問題だと思うのです。ですから、特別な許された地域がすなわち銃砲を持って鳥獣等を捕獲してもいい場所であるというふうに、逆転した考え方を持つべき時期にもうきていると思います。私どもは光化学スモッグで子供たち運動場で目が痛んだとか、いろいろ見ますけれども、しかしその前に、東京の都内等において、たとえばケヤキが落葉をとんでもない時期にするとか、一年に落葉が三回あるとか、そういうような現象というものを、あるいは紅葉するのにずいぶん早い時期に変な色にちりちりと葉がまるまっていくというような状態は、これは看過してはならないことだと思います。もの言わぬ植物、あるいは水産動植物、あるいは鳥獣類は、黙って自分たちの必死に生きようとする姿でもって、あるときには死に絶え、あるときにはそういうような葉を時ならぬ時に落とし、あるいは新芽を出すなどして、私たちに警告を与えてくれていると思わなければなりません。いまはSF小説ばやりでありますが、これは単なる私はフィクションだけではないのではないか、やはりそのようなことは東京の都内で一番先に枯れていくのはモミである、その次は赤松である、そして黒松であるというようなこと等も、宮城の中などでははっきり出ているようでありますが、こういうことを考えますると、私たちはあすの、そして将来の民族のために何をしてやるべきかをいま議論しているのだということを申しましたけれども、これを単なる樹木の自然保護、自分を守る自然の本能だというだけで片づけるのには、あまりにも重大な人間の未来すらここに象徴して警告をしているのではないかというようなふうにさえ感ずるのでございます。したがって、今後の鳥獣保護の問題についても、まず第一は鳥獣保護行政というものが優先するのだということで狩猟行政も行なわれなければならないと考えるわけでございます。
  11. 田口長治郎

    委員長田口長治郎君) 加藤先生、政府側の答弁が非常に長くて御迷惑でございますが、先生の持ち時間があと少しでございますから、ひとつ御協力願います。
  12. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 この法律案の中に、「環境庁の所管行政に関し職員等の養成及び訓練」ということが含まれているように拝見いたしました。これは非常に必要なことで、やはり日本ではたいへんおくれております。いまの鳥獣の保護にいたしましても、特に動物の保護というようなことは、単なる愛玩用の犬やネコの頭をなでるというようなそんな簡単なことではなくて、人間と一緒にこうした動物が住んでいくためには、専門的な知識を持った人が適正に管理するということが、これがちゃんと法律でもってきめられていないことにはたいへんなそこに被害が起こって、現に起こりつつあるわけでございます。御承知のように、昨日発表されましたけれども、東京都におけるこの一カ月に二百二十四人の人が犬にかまれた被害者である。これが、文化都市東京においてこういうことがあるということ、そして、たった五千五百二十一頭の犬が捕獲された。しかも、その七五%は飼い犬である。野犬ではなくて飼い犬である。飼い犬にしてこういうような事故を起こすということは、いかに人間と一緒に住んでいる動物の管理というものに対する適切な管理が行なわれていないか、知識の普及が足りないか、このためにたいへんな被害が起こっている。これはどうしてもこれに対する特別の立法がなされなければほんとうの管理はできません。そして、あちらこちらで——千葉県で小学校の五年生がこの間、五月の十三日に野犬にかみ殺されているんです。そういうような殺されたということまで起こっていても、どういうことをやっているかといえば、一カ月間——野犬何とか週間、掃討週間、東京都でもこの一カ月やっぱり犬に対する対策の週間とか、月間とか、一カ月たったらもうおしまいなんです。何にもそれから先の施策というものがなされていない。こんな状態でこれが文化都市であるかということを、だれしも気がついていることでございますので、私はこの環境庁が職員の養成及び訓練、特に動物を扱ったり鳥や何かの問題に対しての専門知識を持った職員を養成して、その身分をちゃんと保障して、これをテクニシャンとして各地に配属してこれを使わなければ、あとからあとから追っかけたり、その易しのぎの対策をやっているんではとうていできることではない。こういうことをするのは、幸い環境庁がこういうことも含めていらっしゃいますけれども、特に飼育している動物の適正な管理、家庭で密接に飼育している動物の適切な管理に関する法律というものが必要であるというふうに長官はお考えにならないか。また、これは議員立法として、もうここ十数年にわたってその動きが有志の議員たちによって進められているのでございますけれども議員立法というたてまえから内容も充実しておりませんし、なかなかこれが審議されるという過程まで持ってくることができないような状態で、いまだにできないでたくさんの被害者がこんなふうに堂々めぐりをしているという状態でございます。幸い環境庁ができましたら、むしろ政府案としてこういうような法律をつくるべきではないか。長官はどういうふうにお考えになりますか。
  13. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そのとおりに存じます。
  14. 杉原一雄

    杉原一雄君 昨年の公害国会といわれる臨時国会で、山中長官が中心になって非常に御努力いただいたわけですが、特にあの最後の、十二月十八日だったかと思いますが、本会議基本法の反対討論に立ったときだと思いますが、最後に御注文したわけです。それは、環境保全省設置して公害行政の一元化をはかっていただきたいという要望を申し上げたわけであります。そういう経過等もございますので、どういう形でそれが具体的な公害行政の一元化、それを進める官公庁がどういう姿で出るかについては非常に大きな期待を持って見てまいったわけです。ところが、いま提案されているのを見ますと姿がはっきり出てまいりました。ただ若干、私期待と相反するところは、環境庁であり、私たちが提起したのは環境保全省であったわけです。とかく名は体をあらわすと申しますが、いま長官の提案理由を読んでまいりますと偉大な構想が述べられております。「国民の健康で文化的な生活確保するために、公害を防止し、環境保全をはかることは現下の緊要な課題であり」、そのあとが非常に私は高邁だと思いますが、「文化国家、福祉国家の完成への試金石でもあります。」、こう長官が提案理由の中で明らかにしているわけであります。としますと、環境庁であるのが妥当か、環境保全省であるのが妥当かということになると、われわれの主張が一歩先んじているようにも思います。かりに一歩譲っても、庁という組織にするとしても、私は環境庁という表現のほうが妥当でないような気がします。もっと意欲的な保全省——環境保全していくんだ、自然環境保全していくんだ、社会的環境から公害をなくしていくんだという意欲に満ち満ちた表現のほうが、庁の性格、機能を浮き彫りにするように思いますが、これにはいろいろな議論があったと思います。その点について、結論は出ているわけですけれども、経過等についての状況を簡単にお聞きしたい。
  15. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 委員長からの間接的な御警告もございましたし、なるべく簡潔に答弁いたしますので、決して不親切な答弁でないというふうに受け取っていただきたいと思います。  まず庁と省の問題は先ほど御答弁もすでにいたしたところでございますが、私はいずれでも同じことであると思いますが、しかし、独立の省という感じでおっしゃると、あるいは省のほうがいいという御意見もあると思います。しかし、私があえて庁にいたしましたのは、総理府の外局としての専任大臣を置く役所であるということだけでございまして、そこを受けて内閣法第六条の各省庁の長たる大臣を指揮できる権限を総理大臣が持っておりますから、それの発動を、意見を具申するという権利を与えるために、やはり総理府の外局に置いたほうがいいという考えのほうをとったわけでございます。それから環境庁という名前でございますが、最終的に煮詰まりましたときの名前環境保護庁か環境保全庁かということになりました。その際において、やはり環境保護でも保全でもいいが、まあ保全と言うと、何だかこう人工的に国土保全とか何とかというイメージを伴いがちである、環境保護といっても、これはある意味の、積極的な日本においては公害防止施策というものの相当なウエートを持っているので、やはり保護という名前だけでもいかぬのではないだろうか、まあ中には保護庁と言うと鳥みたいに聞こえるなんという冗談まで言い合ったりしたこともございますが、要するに、全体をひっかぶせて公害の防止行政の積極的な柱の一本である、そして将来に向かっての大きな展望としての自然保護行政というものがもう一つの柱であるというならば、それらの全体を包含して今後さらに環境庁の機構等がふえていかなければならぬと思います。たとえば大気、水質、騒音等において適用除外となっておる電気ガス事業等がそのままであって今後はたしてうまくいくか、やはりエネルギーの広域供給の国家的な義務等の問題を検討しつつ、いずれはやはり環境庁というものが考えられなければならない。適用除外を考え直す時期も近いと思いますし、また下水道あるいは水道等を含めて、人間の生活環境の最も基本である社会資本投下というものを環境保護立場から考えなければならぬ時期はもう近くにきておると思いますが、そういうことを考えますと、まぎらわしい、あるいは局限されたような感じの省にするよりも、環境庁という非常に柔軟な、非常に広くものを集めやすい名前にしておいたほうがよかろうということで、最終的にそのような名前の庁に決断をいたした次第でございます。
  16. 杉原一雄

    杉原一雄君 次は庁の権限なり機能——新しく出発するわけでありますから、いろいろな具体的な問題をぶっつけながら、この庁には四つの局もできるわけでありますから、どこでどういう形でこの問題を今後とも処理をしていくのか。ただ、窓口として受け入れ体制の程度でしかないのか、いろいろあると思います。だから庁の権限、機能について具体的な問題を提示しながら、ここでそれに対する解釈を統一をしていきたい、こういう意図を持って質問いたします。  で、環境庁のお仕事の中で、自然公園の問題が出てきております。国立公園その他に対する保護、これは非常に大事なことだと思います。そこで、具体的な例として、先般、農林水産委員会の中で、国有林の活用法案という法案の審議にあたり、結果的には四十二年以来たな上げになっていた法律でごさいますが、附帯決議をつけて、これを本会議で通したわけであります。その中で議論の出たのでは、あるいは、建築資材としての国有林、水資源の涵養という意味における国有林の管理、いろいろあつたわけですが、やはりここで出てきた新しい提起といいますか、もう一度国有林の価値、値打ちなどを見直されたのは、自然の環境、つまり自然の還流と申しますか、人間の吐く息と樹木との、この辺の関係が非常に重視されてきた、こういうことでありますが、国有林の管理運営は、これは林野庁がやっているわけですが、自然公園の管理運営をやる環境庁との業務上の関係が無関係なのか、関係づけられていくのか、将来。はっきりとその辺のところをまずお伺いします。
  17. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 国立公園、国定公園等は環境庁が直接第一線のレンジャーまで含めて所管をいたします。そこで、今日までも国立公園をめぐって林野庁との間に、あるいは通産省との間にいろいろのトラブルがありました。現実に行政上の末端における混乱等がよく見られたものであります。しかしながら、今後、国立公園、国定公園等の方針というものは、明確にまず天然のそのような資源の水、水源酒養林から始まり、あらゆる特別保護地域を含めたそういうものが優先するのであるという考え方でありますし、林野庁の行政そのもの、全部国有林野行政は兼業業務でございますから、そこまでは取り入れてございませんが、少なくとも保安林行政等については、これは林野庁が一方的に今後は行なえなくなるわけでございます。そこで、林野行政も伐採業務だけをやっているわけではありませんし、御承知のように、伐採のあとは必ず植林をいたしておるわけであります。これを切るだけですと、みるみる国土をはげ山にしていくということになりますから、そういうことはやっておりませんから、そのような計画であっても斧を入れてはならない、斧というのが古ければチェーンソーでありますが、そういうこと等については環境庁のほうからいろんな団体が今後はどんどんものを言いますし、あるいはWWFの支部ともいうべき機構を環境庁につくって、それを所掌させたいと思っておりますので、こういうところの提言等を受けながら、国有林行政の中において行なわれることであっても、環境庁長官がものを言う権利を持っております。したがって、今後の運営については、もちろん相互協議をいたすわけでありますけれども、一方的にこれが行なわれていくということは、破壊への方向は食いとめることが可能であると考えるわけであります。
  18. 杉原一雄

    杉原一雄君 だから、私、質問の点を少し飛躍して、飛躍するのじゃなくて、計画どおり、と申しますのは、こういうことなんです。これは庁の権限と機能の問題に関係するわけですが、私の県の婦中町というところがあるわけですが、これはイタイイタイ病の発生している地点ですが、そこの町がこの間一億五千万の賠償要求を発生源者である三井にやったわけですが、この問題の取り扱いについて一番根拠になっているのは、通産省の昭和四十三年五月八日のイタイイタイ病についてという見解、それから厚生省の同じ四十三年五月八日における見解、これが根拠になって、それでもう三年たちますので、時効になるのであわてて五月四日に催告と申しますか、賠償要求をやったわけです。こうした問題を提起してきた町当局に対して、これらの問題を行政的にアドバイスしたり、推進をしたりする、そういうことでいままで窓口として通産省の公害保安局のほうを訪ねたり、自治省を訪ねたわけですが、こうした通達をかつて通産省なり、厚生省で出してきたわけですが、これをよりどころにしている賠償請求でありますから、こうした業務といいますか、これを継承していくのが企画調整局、自然保護局、大気保全局、水質保全局と、幾つかあるわけですが、そういうところでやるのかやらないのか、つまり環境庁に対する期待は非常に漠然として大きいんですから、その辺のところをちょっと簡単に聞きたい。
  19. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 公害にかがる健康被害の救済等も今後は環境庁に移ってまいります。したがって、それらの問題については今後検討を少ししないと、即答できかねる点もございますが、そういうような姿勢の背景には環境庁が当然立たなければならないだろうと考えます。
  20. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは先ほどのところにもう一度逆戻りをいたしまして、自然保護の問題でありますが、先ほど加藤委員からもいろいろ具体的に質問があったわけですが、自然保護行政が非常に弱体である、また、ある意味ではばらばらである。あるいは森林法があり、文化財保護法があり、都市計画法があってばらばらであるが、これではたいへんだということで、最近、長野県あたりでも県条例をつくって保護対策をとる、これは六月にやるそうであります。香川県では三月に自然保護条例をつくってしまったわけであり、さかのぼって北海道では去年の十月に自然保護条例をつくった。こういう事実が出てまいっておるわけですが、環境庁設置して、今後の行政の中でこうした方向に対して、これを都道府県まかせでよいとお考えになるのか、そうじゃない、都道府県は都道府県で自主的にやることはけっこうだけれども、もっと大きな観点からこれを環境庁がやるんだ、やるとすれば自然保護局だと思うが、そうした今後の行政を進める一つの方向として、こうした面についての考え方、もしあれば明らかにしていただきたい、こう思います。
  21. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) お答えいたします。  ただいまの自然保護の条例の点でございますが、これは環境庁が当然自然保護関係全般を所掌するわけでございますから、都道府県におきます自然保護条例の制定等につき適当なる指導をしていくということは当然だと思っております。
  22. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは質問の半分しか答えておりません。結局、都道府県にひとつ条例でしっかりやれという程度のことならば私でもできますが、そうじゃなくて、国の段階でもう少しその指針と申しますか、積極的に手を下すというようなことはないのかどうか、その辺のところをもう一ぺん、そういうぶっきらぼうな答弁じゃなしに質問に答えていただきたいと思います。
  23. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 自然保護の関係は、現在の段階では国立公園の関係、国定公園の関係等を中心に厚生省の国立公園部で所管をいたしておるわけでございますが、どちらかといいますと、広い意味での自然保護のための立法というのはまだ確立していないという段階でございます。当然新しい環境庁に所管を移しまして以後も、もっと広い自然保護政策のあり方、その一環としての自然保護憲章の問題、あるいは立法化の問題、いろいろなことがあると思いますが、そういう中におきまして、県あるいは市町村が条例で自然保護のためのいろいろ規制をやっているというのがございますれば、これを取り入れていく、あるいはもり立てていく、その方向づけをしていかなければならぬと思うわけでございます。
  24. 杉原一雄

    杉原一雄君 先ほど長官が最後に検討してみるということでお帰りになったわけですが、その問題をもう一度明らかにしていきたいと思います。  先ほど申したように、園田厚生大臣の時代に、イタイイタイ病は公害病である、発生源は明らかに神岡鉱山である、こういうことを言明をしておるが、まあ三年たつわけです。そこで、それに伴うて起こるイタイイタイ病患者に対する健康保険その他の給付等で町としてはかなりの出費をやっている。あるいは簡易水道を必要としないような地下資源の豊かな所であるにもかかわらず、簡易水道をつくって一億円ほどのお金を出したといったような問題を含めて、一億五千万の損害賠償請求を実はやっておるわけで、それだから、その損害賠償請求の根拠規定とは申しませんが、やはり一番よりどころにしているのは通産省の通達、厚生省の通達、こうなっているわけです。で、まあ公害行政はそういう形で環境庁に集中されるような形になりますから、環境庁では今後検討しますということでなしに、そういう具体的なケースについててきぱきと、これはだれがやるのだ、あるいは水質保全局でやるのだ、企画調整局でやるのだというようなことなど、私は明確にできるであろうし、それにまた通産、厚生等のそうした機能をやはり継承していかなければならぬだろうと思うが、その辺のところをはっきりしていただきたいと思います。とりわけこちらに出ている法案の十九ページによりますと、第九条において、「通商産業設置法の一部を次のように改正する。第五条第二項中「、公害保安局に公害部を」を削る。」、こういうふうに出ているわけですから、これらのところなかなか私はよくわからなくなってしまうのですが、そうしたところの今日までのこの問題に対処してきたいわゆる被害者の窓口といいますか、よりどころ、それらが変わるわけですが、その辺のところをはっきり整理していただいて、それからこっちへいらっしゃい、だいじょうぶだ、引き受けてやるぞ、がんばれというようなことにならないのかどうか、その辺のところを私この法案の内容を見ておってわからなくなってきたものですから、明確に、そういう問題をかかえた地方自治体についても、この委員会を通じて答えていただきたいと思います。その意味で権限、機能の具体例として提起したわけです。答えてください。
  25. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 環境庁ができましたら、大気汚染の関係、水質汚濁の関係、その他公害の規制関係は全部まいるわけでございます。法律の数にしまして、直接的に所管になりますのは十四ほどございまして、そのほか部分的に基準等を所管する法律が四つ、また、各種の協議等を受けます法律等も多々あるわけでございまして、私どもとしては、公害に関してはできるだけ一元化された行政が進められるようにやってまいりたいと思っておるわけであります。  ただ、具体的に申されましたイタイイタイ病の認定の問題でございますが、これは具体的なケースについての行政官庁の立場からする事実認定の問題でございますから、これは当然その当時、四十三年の五月八日に厚生省が認定いたしました実はそのまま事実として新しい環境庁に引き継がれるということになるわけでございます。ただ、それをどういうぐあいに解釈するか、これは具体的には今度は裁判の問題でございまして、私ども自身からいろいろなことを申し上げることじゃなしに、そういう厚生省の見解そのものがどういう形で裁判の上で認められていくか、こういう問題だと思うわけでございます。  それからなお所管につきましては、今後の健康被害等の問題は企画調整局の中に公害保健の専門の課を設けましてやってまいりたいと思っているわけでございます。
  26. 杉原一雄

    杉原一雄君 ちょっと急いで答弁しておられるわけですが、結局、私はいま裁判を言っているのじゃないので、イ病裁判は別に原告があって、これはほかの弁護団を背景にして戦っておるわけですが、ぼくが言っている具体例は、裁判を言っているのじゃない。つまり損害賠償を請求しているということです。だから、このあと起こる問題は裁判もあり得るだろう、それから紛争処理機関に持ち込む場合もあろう。いま甲と乙とがやっているわけですね。だから皆さんは、それは関知しないというなら関知しないと言ってください。ところが、通産省が昭和四十三年の五月八日に出した通達、見解の中には、そのような被害者に対しては公害によるそれを非常にあたたかい手で通産省自身が手を下してめんどうを見ると書いてある、詳しくいえば。読みましょうか、読まなくてもわかるでしょうか、いいですか。ところがこの間、通産省のほうではそういうことを言ったことを忘れられたわけでもないし、文書にあるから、今度は被害者ということばの解釈でわれわれわからないしろうとに何とか都合のいいことをおっしゃる。ぼくはとんな辞典を引っくり返してみても——被害者ということばの解釈では通産省ではこうおっしゃる。被害者というのは個人である、町当局が被害者ではないとおっしゃる。ここにおいでになる賢明なる人たちは、そんなことを考える人たちはおそらくないだろうと思う。被害者と見解の中に書いてあるのは個人であって、そういう地方自治体とか、法人格のそうしたものではないとはっきりおっしゃった。それでほんとうにあなたは、特にそういうことを盛んにいつもやっておいでになる方々ですからよくおわかりだと思います。ぼくら、しろうとじゃわからないですよ。そこで、かっちりしたもので、ここで勝負をつけようとは思いませんが、私は環境庁ができますから、そういう訴えなり相談を受ける窓口を明確にしてほしいし、また、私の言いたいのは通産省なり厚生省がかつて出した見解をやはり環境庁が継承してもらいたい、そういう意味で言っているわけです。それは前の通産省でやったことである、これは厚生省のやったことである、環境庁はできたばかりだから知らぬといったような姿勢ではいけないので継承していただきたい、こういうことを要望を含めながら見解を要求しているわけです。それこそ長官のように、研究してみるというならそれも答えですから、その辺のところまでぼくは最後まで追及しようと思いません。裁判の問題じゃない。
  27. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) ただいまの厚生省なり通産省の考え方ということでございますが、その中で厚生省の見解は、これはまさに技術的な見解でございます。それはイタイイタイ病に関して因果関係が、そのイタイイタイ病とカドミウムの鉱山による排出の関係にあるかどうかという判断をします場合、非常にその基礎になる問題だと思うわけでございまして、この考え方は、事実認定でございますから、それをそのまま環境庁で引き継ぐということは当然だと思うわけでございます。ただ、通産省の見解というものは、ちょっと私、中身を存じませんので、ここで申し上げることはできませんが、おそらく産業立場からする考え方、あるいは政治の立場からする考え方、こういうものが両方入っているのじゃないかと思いますが、ちょっと中身を存じておりませんのでここで申し上げることは差し控えたいと思います。
  28. 杉原一雄

    杉原一雄君 それではゆっくり読みたいと思います。聞いてください。中身を読みます。「イタイイタイ病について」、昭和四十三年五月八日、通商産業省、前文を略します。途中から、「しかしながら、当省としては本病の実態にかんがみ、被害者の救済のためあらゆる行政上の措置を適用することが必要であると考える。その一環として、法的解決とは別個に、」、このところは非常に大事だと思います。「法的解決とは別個に、当事者間の損害賠償等に係る紛争については事実上の話合いを進め、被害者対策の迅速な実施を図る必要が大であると考えており、積極的にあっせんを図ることとしたい。」、こう書いてある。疑いの余地はないでしょう。問題は、ひっかかるのは被害者はだれかというカテゴリーの問題です。そのことは先ほどぼくは申したから二度と申しません。
  29. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 途中から引き継ぎましたので、もし違っていたら御訂正願いたいと思いますが、厚生省が発表いたしました見解に対する通産省側がそのような意見を述べたということでありましょう。その際の被害者というのは、やはり通産省側でもいわゆる人間の健康に被害を受けられた方のことを言っているものと私は思います。これは常識上当然そうなければなりませんが、環境庁が発足したあとはそういう見解はどうなるかといえば、厚生省住民の健康の立場からの見解というものはそのまま引き継がれるべきものであります。さらに今後、それらが争われる場合等については、環境庁においては、将来の問題でありますけれども、国立公害研究所等において、そのような問題を国際的にも見解を発表し得るような権威ある機関をつくりたいと思っておりますし、国内的なそのような論争というものについて政府の側において見解が違うというようなことがないように、統一した見解が打ち出せるような姿勢をつくり上げていけると思いますが、その前においても、やはり本筋は厚生省側の立場を受け継いだ見解というものを環境庁はとっていくことになるだろうと思います。
  30. 杉原一雄

    杉原一雄君 あまり問題を別な角度から議論することは好まないのでありますが、これは長官も行ってお聞きだったと思いますが、九月二十一日の宇都宮における、いわゆる一日内閣における佐藤首相の演説、まあニクソンのまねをすれば佐藤さんの公害教書、その一部、全文は省略いたしますが、ここに記載されているわけですが、その中で一部だけ重要な点をピックアップすると、「政府は人間尊重を第一義として公害対策基本法をはじめとする各種公害規制立法の整備公害罪新設などの立法措置を行なうとともに、企業の無過失責任を早急に検討したいと考えている。先般内閣に公害対策本部を設置し、私みずから本部長となって、各省庁の機能を一元化し、迅速かつ強力な対策を推進するとともに、これによって、とかくおくれがちであった公害対策に先手を取り、発生の予防を中心とした対策を軌道に乗せてまいりたいと考えている。また企業の公害問題における社会的責任は重大である。したがって公害防止のため必要な費用を負担することは当然である。今日国際社会においては、環境改善、公害防止のために、適正な措置をとらない企業は、公正な競争の立場をとっていないという考え方が高まりつつあり、このような企業は、国際社会の仲間入りを拒否されることをも覚悟すべきである。そして同時にそのような企業は、国内的にも優秀な人材を集めることがむずかしくなり、やがては衰退する結果となろう。各企業においては、地域住民にとって「よき隣人」としての存在を維持するためにも、さらに一そうの努力を強く要請するものである。」、こう述べておられるわけです。この点は、何の余地もない、それこそ公害教書の名に値するすぐれた首相の発言だと思います。この根本的な精神に基づいて環境庁がいま公害行政を一元的に行なおうとしているという、この偉大な使命を持っているわけです。そういうことにも思いをいたして、いま私が提起したようなことはきわめて具体的な問題でありますが、そうした具体的な問題に対しても、なおかついろいろな解釈云々で、ときには私の目から見ればあいまいな形になるというところに今後の公害行政の問題が非常に憂慮されてくるわけです。でありますから、重ねて答弁を云々ということはいま考えておりませんが、厚生省なり、あるいは通産省なり、それぞれが今日まで公害対策にとってきた不十分さを、この環境庁設置において大胆に踏み切っていただいて、あくまで公害発生源にはきびしく、そうしてまた被害者にはあたたかい行政を進めるという観点から、この庁の発足に大きな期待を実はかけたいと思うのであります。いまの問題はそれ以上やりとりする必要を私は感じませんので、一応これでやめまして、次の問題に入ります。  それは、先ほどの委員の中からもいろいろ議論が出ていると思います。農薬取締法とその行政の問題ですが、これは今日まで幾たびか私もあらゆる機会に発言をしてまいったところであります。ただ、その後この問題があとを絶たないということであります。でありますから、先ほど申し上げたように、私の質問の前提があるわけでございますから、こうした問題をどこでどのセクションでてきぱきと処理をするのか、農林省の仕事だといって、そこら辺のほうへげたを預けるようなことになるのかどうかということで、はっきりした権限、機能ということでお答えをいただきたいと思います。具体的なことはいまさら申し上げるまでもありませんが、きのうの朝日の記事によりますと、神奈川県にも、このようなお母さんの乳から残留農薬が出たという一つのデータが県の衛生部から発表されております。しかも、これはWHOの許容度その他をはるかにこえた非常に危険なものでございますので、私はそうした具体的な何PPMということは申しません。つまり、こうした危険な状態が矢つぎばやに全国各地に起こりつつあるという、この現実認識から、これを環境庁のどこで受けとめて、どうしてどういう形でこういう問題を処理していこうとするのか、その辺のところを簡単にひとつ明快に答えていただきたいと思います。
  31. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) お手元の法律第四条の第二十二に、「農薬取締法による作物残留性農薬、土壌残留性農薬及び水質汚濁性農薬の使用の規制並びに農薬の登録保留の基準の設定に関する事務を処理すること。」、これが環境庁の固有の事務になります。これらの前提である農薬の登録業務については、農薬取締法そのものでやはり機能検査その他等がございますが、他は農林省に残るわけでありますが、人体に、あるいは動植物等に影響を与えるような、そういう問題の分野に関しては環境庁がこれを専管の事項として処理していくということでございます。
  32. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでは、これはいつも山中長官とやりとりしてきた問題ですが、田子の浦のヘドロの問題が今日段階でどうなっておるのかということと同時に、いままで私が得た情報の中から判断すると、成功しているとは思いません。つまり、新聞等の特集の見出しからいえば、「しぼんだヘドロ処理対策、田子の浦港」、こういう表現もあるかと思えば、失敗の連続だという表現も実はあるので、一々中身は私から読みあげるまでもなく、長官はよく御承知のはずであります。でありますから、現状がどうなっていて、それがどういうめどで解決されるのか、そのことを大まかに現状報告としてお聞きしたいわけですが、ただ、それよりもきょうは環境庁設置法の議論をしているわけですから、環境庁等ではこれがどこまでその権限と責任行政指導分野の手が伸びるのか、その辺の限界なり、望むらくは大胆な大きな力を持ってこれを排除していただきたいわけですけれども、しかし、すべて国家が責任を持ってやるというわけにはいきませんから、静岡の知事の権限といいますか、義務とかいうものも大きいわけですから、その辺の関係を明確にしてもらわないと、ぼくたちは、すぐこうした問題のしりを中央政府へ持ち込んでまいりますから、一応交通整理をするということで、現況報告と、環境庁設置された場合に、これを処理する場合の権限、機能の問題等についてきちんとした仕分けをしていただきたいと思います。
  33. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず一番大きな仕事としては、水質保全局を設けておることでもわかりますように、水質汚濁防止法はもっぱらこの規制基準その他全般の業務について、国の業務を環境庁が一手に行なうわけであります。さらに公害防止事業費事業者負担法等における事業の対象に、これは公害防止の計画をつくりました地域に関係なく、全国的に河川、港湾、内水面等の水質、水底の泥質の悪化等について全面的にこれを適用してまいることにいたしておりますので、それらのことを受けました国庫補助率の二分の一を下らざるかさ上げ等の措置等を伴いましての地方自治体の起債等々の措置によって、今後は相当円滑に行政上は進めてまいることができるかと思います。現状はどのようになっておるかについては、詳しい具体的なトン数その他について事務当局から報告いたさせますが、田子の浦のケースにおいては、地方に権限を委譲した場合に、はたしてそれがすべてであるかということについて若干の疑念を抱く面も私としてはあるわけでございまして、地方においては、より身近な問題として、県民の代表たる知事さんというものが、多くの県民の立場に立って処理をされるであろうという信頼性を持ってやっておるわけでありますが、しかし場合によっては、田子の浦の例をとるのは静岡県知事が悪いということになりますから、その例はとりませんが、ひょっとして、逆に地域における極端な密着、癒着という現象につながらないように、十分、中央において公害研修所等を活用いたしまして、それらの第一線の取り締まりの権限を持っておる者たちが、絶えず全国の統一された基準、新しい知識、科学技術、防止技術、そういうものを普遍的な統一されたものとして研修で獲得して、地方に帰って、それを遂行していくというようなことで補完をしてまいりたいというふうに考えております。
  34. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) 田子の浦の現在の状況でございますが、御承知のように、だいぶいろいろ手順がおくれまして、四月二十一日から運搬をやったわけでございますが、四月中に港内のヘドロに換算しまして約一万八千トンのしゅんせつを終わっております。その後、四月末までの期限だったのを若干の間を置きましてまた再開したわけでございますが、この前提としまして五月八日から三日間、ヘドロが漁業等に及ぼす影響の調査をいたしまして、十一日から再開をいたしております。きのう現在で約八万四千トンほどのしゅんせつを終わっております。現在、一日平均大体七千五百トン程度でございますから、あと今月中の期限のうち大体六万トンないし七万トン程度ができるんじゃなかろうか、こう思われているわけでございます。当初の予定が三十万トン余りでございますので、約半分程度しか実際はできないというのが現状でございます。  それから排水の規制、SSの規制のほうでございますが、これにつきましては昨年の十月にSSの水質基準が設定されましたのが、この七月一日から適用になるわけでございまして、昨年の八月現在のレベルの大体六三%程度のSSのカット率になる予定になっております。大企業はほぼもう設備を終わっておりますし、中小企業中心に現在通産省のほうでさらに指導しているという段階でございます。
  35. 杉原一雄

    杉原一雄君 やっぱりぼくが一番心配しておったのは最初の排水の問題です、大昭和製紙その他の。これはいまの説明は聞き取りにくかったんですけれども、だいじょうぶなんですか、また、現在時点で出ていないということなんですか、完全処理されているということですか。
  36. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) これは現在ちょっと手元にこまかな数字を持っておりませんが、昨年の十月に経済企画庁と通産省と、私どものほうとも連絡しながらまとめました数字でありますが、全体の六割三分をカットする。この実績は間違いなく確保できるという見通しでございます。
  37. 杉原一雄

    杉原一雄君 そこでいま進められているぺースで進むと、いま全部で三十万トンですか。そこで残ったやつ、残余のものがいつごろ大体なくなって、港としての機能を完全に回復するのはいつが目標になっているんですか。
  38. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) これは実は夏場になりますといろいろ問題がありますので、五月一ぱい期限にこの作業をやっているわけでございます。したがって、五月以後になりますと、一応作業を中止しまして、四月二十一日以降五月一ぱいにやりましたいろいろの経験にかんがみまして、さらにいい方法をその期間に考えて、秋以後再開したい、こういうぐあいに考えているわけでございます。
  39. 杉原一雄

    杉原一雄君 それでいま城戸さんがいい方法とおっしゃったでしょう。結局現在のところでは山中長官の指導等もあったりして船を使っているんですが、陸上パイプのほうには切りかえないんですかね。現在のようなやり方でそのまま進めて能率的にやるということなんですか、その辺どうでしょう。
  40. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) この陸上のパイプでやることも、この前提として十分考えられて県では検討いたしたわけでございますが、いろいろ技術的な難点がございまして、たとえば圧力をかけて送るわけでございますから、それに伴います硫化水素等の問題、あるいは通す場所の問題、いろいろ検討の結果、やはり陸上ではこの作業を始めます段階では無理だという結論だったわけでございます。ただ、今後絶対だめかということにつきましては、この五月までの実績を十分検討しまして、いまのパイプの方法、あるいはほかの方法、すべてを総合的に検討した上でさらに秋以後の作業にかかる、こういうことにいたしたらと思っております。
  41. 杉原一雄

    杉原一雄君 次は別の問題に移りますが、これもきのう新聞紙上で伝えられたことなんですが、東京都がこの多摩川地域その他におけるところの重金属の、水の中、川底等にあるものについてのデータが大体まとまって発表された。これは御承知のとおりと思います。で、十九日の中間結果でありますね、これについて幾つかの問題点があるような気がするわけです。なかんずく東京都の富沢氏が言っておるような訴えの中に、一つは、事態はますます悪化の一途をたどるという前途非常に暗たんたる提示があると同町に、やはり行政上の問題として、土壌に蓄積されている、あるいは有機リン、水銀、シアン、鉛その他が、この土壌中に蓄積されていることについて、これに対するところの今日までの公害行政を担当なさっておる皆さんのほうで、どのような行政指導をしたか、あるいは環境基準はこのようにしてあるということなどお聞きしたいわけですが、富沢局長の話を聞きますと、それは基準がないんで困っているんだという話ですが、その辺の今日までの取り扱いと今後の考え方と申しますか、指導の方向、行政の方向等についてもしお答えいただければと思いますが、どうでしょう。
  42. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) 先般、朝日新聞等に東京都内の河川あるいは東京湾におけるヘドロ等、水質汚濁の状況が報ぜられたところでありますけれども、主として東京湾等のヘドロ問題につきましては、昨年以来非常にやかましい問題になってまいりまして、厚生省といたしましては、ヘドロの汚染そのものももちろん見のがすことができない問題ではございますけれども、当面最も緊急を要しますのはやはり人体に対する影響でございまして、人の健康に及ぼす影響ということになりますと、ヘドロそのものの濃度というよりは、むしろ海中における魚介類等にそれがどのように汚染、蓄積されておるか、そういうことが問題でございますので、昨年、とりあえず東京湾、そのほか大阪、あるいは伊勢湾等について魚介類等の調査を行なったのでありますが、その結果、一部はすでに出て、特別人体に直ちに問題になるような濃度ではございませんけれども、すべての結果につきましては実はまだ出ておらないところでございます。で、昨年は、当面緊急の問題でございますので、特に水銀あるいはカドミウム等を中心といたしまして、また海域も限られておったのでございますけれども、このヘドロ等の汚染は実は広範な問題になっておりますので、私どもといたしましては、今後継続的に全国主要な海域において、しかも調査対象といたしましては単に水銀、カドミウムにとどまらず、マンガン、クロームあるいは鉄、そういった他の物質も幅広くとらえまして継続的にこの調査を行なおうと考えております。したがいまして、当然こういった調査は環境庁に引き継がれ、他の省庁で行なわれております調査と一体となって、今後体系的に行なわれるものと考えております。
  43. 杉原一雄

    杉原一雄君 じゃ、最後に質問やら注文やらお願いやら、まとめた形で申し上げますが、こういう評論をする人がおるわけですね。つまり、政府で一日内閣のころに、去年ですか、公害対策の本部を内閣内につくって総理みずから本部長になった。山中総務長官が副本部長になった。これは私たちいいことだなと実は思っておったところが、そうじゃなくて、かえってそういう行政を一元化した形をとってきたことは、逆に今日まで政府が進めてきた高度成長政策、それから起こるひずみ、なかんずくそれは公害という形になって環境を破壊するものだということについて、対策本部をつくることによってかえって企業が公害を発生さしていくことについてこれを手助けする、公害を幇助するのだ、こういう言い方も実はある学者がしていることを私見たことがありますが、全面的に私はこの主張を肯定はできませんし、だからといって否定できないような分があるような気がします。このことを私は公害対策本部を環境庁に置きかえてみた場合に、確かにわれわれの主張どおり公害行政の一元化は機能の面でも、能率の面でも、いろいろな面で私は大きな前進だと理解していいと思っているわけですけれども、この学者が憂慮するような意味で、かえってそのことが高度成長、それから起こるひずみ、そうしたことがどんどん増幅されていく、こういったようなことで逆に市民生活を守るのじゃなくて、かえって公害を組織的に、計画的に幇助する結果になるおそれありという指摘があるわけですが、ちょっと被害者意識が強いようにも思いますが、そうしたことなど、私はやはり一つの忠告として耳にしておく必要があるのじゃないか、このようにこの法案審議にあたって、私自身、内心にそのことを頭に置きながらいままでいろいろやりとりをしてまいりました。実は三階の農林水産委員会で、いま農村地域工業導入促進法という法律の審議をやっているわけですが、私ちょうど質問だけ、こちらへ来る都合でやらしていただきましたが、その際に、昭和三十四年三月十八日のことでございますが、会社と市長が——名前は省略いたしますけれども、こういう契約書を取りかわしているわけです。その契約書は非常に長い長いものでありますが、その中でも特に七項と八項に大きな問題があります。七項におきまして、「左に掲げる事項については市は会社に対し会社の要望に副うよう全面的に協力し、会社工場の操業に支障なきことを確保することを約諾する。」、約束、承諾するという意味です。「1上水路工事、2配電会社に対する送電手続、3乙の工場の建築、営業の許可等乙の工場の操業に伴い生ずる一切の手続き、4その他会社において要望する事項」、八番目ですが、「市の負担において掘さくする井戸の掘さく場所、構造については会社又は指名する者の指図に基くことを承諾する。前項の井戸の使用により第二項記載の工場敷地に係る土地の周辺にある井戸の水量が減少し或は万一枯渇するような場合があったときは市において上水道設置する等適当なる方法により善処し万一苦情故障があったときと雖も」、これはまあ公害反対市民運動のことなどをさすわけですが、「市において一切の解決をなし、会社に対して脚も損害をかけないことを確約する。」と、こういう取りきめをしているのです。昭和三十四年三月十八日、これは契約書であります。  これは十年も前のことだから時代は変わっていると言えば、それはそれまでのことですが、私、非常に資本と住民との立場などに、また企業と、そういう財政の乏しい市が財政を確保するために工場を誘致して、何とかやりくりしようとするいわゆる受け身の立場にある市の姿を浮き彫りにしていると思います。こういう力関係の上に立っているのが、いまの世の中の経済機構であり、社会の実態ではないだろうかということになりますと、総理大臣公害教書に示されたように、人間尊重という大前提に立った仕事を行なう環境庁等の任務は、非常に私は重大だと思う。ある意味ではき然たる態度をもって臨まないと、こうした一つの大きな流れに流されるのじゃないか。このように思われるので、環境庁設置の暁は、どなたが長官になられるか知りませんけれども、私は特にこの審議にあたって、そのことを要望して私の質問を終わりたいと思います。
  44. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は環境庁の問題に触れる前に、最初に、この公害に関する日米会議が六月に開かれるようになっておりますが、この問題について山中長官は出席されるようになっております。どういうテーマで、あるいはまたどういう趣旨で、あるいはこの公害会議を通して何を提唱されようとしているか。この点についてまず最初に伺いたい。
  45. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは昨年、米国大統領の環境問題諮問委員会の委員長であるラッセル・トレイン氏と私との間に行ないました第一回の日米公害閣僚会議を受けて、第二回目としてワシントンにおいて六月一日、二日の本会議をはさんで、各種専門家同士の会議を行なっていくわけですが、今日までいろいろと、何を相談し、どのような成果をあげるかというような問題で議題になるような案を詰めているわけでございます。しかし、閣僚会議でございますので、そのような事務、あるいは学者段階の検討の上に立って、もう少し大局的な次元から、私がいま考えておりまするような、両国において、こういうことで相談しましょうかなというような問題を越えた問題にまで発展していく可能性が十分あると思いますが、たとえば、それぞれの国内において法的及び行政的発展を、昨年から今日までの時点においてどのようにとってきたかということについて、環境保護対策を所管する行政機構の問題、あるいは環境保護の分野における政府の活動及び構想並びにこれらの環境管理に対して持つ意義、あるいは環境管理に対する将来の法的及び行政的構想に関する意見の交換、あるいは環境保全手段の国内経済的な側面、こういうような問題等が法的行政的な問題として提起されようかと思っております。さらに今度は、国際機関及び国際会議における日米両国の協力の可能性について、海洋汚染の分野における国際協力に対する意見の交換、さらに環境管理手段が国際貿易に及ぼす影響の検討、一九七二年国連人間環境会議における意見の交換、こういうようなものをその中身にしたいと思っております。  第三の柱としては、研究開発会議における協力として、効果的な協力のための行政組織、相互利益のため自動車排出ガス浄化技術のライセンスを供与することの検討、下水処理技術の開発・評価及びその利用に関する問題点の検討、大気及び食物中の有毒物質の健康への影響に関する研究、固形廃棄物のリサイクリング及び改良された処理法の技術と経済性、こういうような中身等を検討してみたい。  さらに、環境に関するガイドライン及びモニタリングについてでありますが、航空機排出物の増加規制に関する検討、環境の質に関するガイドラインを導く方法に関する協力開発、汚染防止のための方法論、現在の水質汚濁防止と農薬及び大気に関する基準、こういうようなものを、一応いま外交ルートを通じて、単に事務的に並列したものでありますが、テーマとして予備会談を持とうといたしておりますが、しかし、閣僚会議においては、もっと高い見地から、両国において共通の海である太平洋の汚染というものをどのようにするか、あるいは来年のストックホルムの国連の会議について、日米両国はどのような姿勢をもって臨むか、あるいはまたマスキー法案等のアメリカ側におけるラッケルスハウス長官が議会で証言いたしておりますような強固な決意というものが、わが国の輸出産業としての自動車産業、そして国内の基幹産業となっております自動車産業に対するわれわれの国内的な、米側のその姿勢に対する対応のしかた等々の大きな問題等が議題に取り上げられるであろう。米側から、あるいは日本の一部で言われておりますように、日本の企業がダンピングをかけてくる一つの理由に、国民のために、公害防止のために、当然企業のモラルとして資本を投下しないで、その収益部分を投下しない利益をもってダンピングして、コストを下げて攻勢をかけてくる、このような批判等は保護貿易の有力な擁護論の一つにもなりがちでございますので、これらの点については、やはり国内の公害防止施設の投資状況等を対比しながら、規制基準等をきちんと処理していくことを義務づけたことを裏づけとして、無用の誤解を解いて、やはり公正なる貿易論争が行なわれるように、誤解を事前に、まず、芽のうちにつみとるようなことを相談しなければならないものと思っております。
  46. 三木忠雄

    三木忠雄君 私は、この中でひとつ公害ダンピング問題というのは、非常に今回の日米会議に押しつけられるのじゃないかという気配がいろいろな情報で私も耳にするわけでありますけれども、やはり日本製品が安いのは、公害に対する設備投資がないからだという押しつけがましい問題が提起されようとしているというような話も聞くわけでありますけれども、この問題については、ダンピング問題については、日本としてやはり強固な考え方をもって会議に臨まなければならないんじゃないか。私は公害ダンピング、確かに日本の製品が安いのは、公害設備投資が少ないからだとか、そういう問題で日本製品が現在輸出されているというふうには考えられないと思うんですね。こういう点についてのやはり総務長官考え方は私は明確にしておいていただきたい。このことを強く要望するわけでありますけれども、この考えを伺いたいことと、それから、新しい分野の研究開発に関する日米協力ということは、どういうことを具体的にやるかということ、この点について伺いたいと思います。
  47. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず、第一点の、今後、累を多方面に及ぼすおそれのある、先ほど私の申し上げました公害防止投資を怠ってのダンピングという、これは非常に被害を受けている側からすると、説得力を持つ、しかも、ある程度理論的であるかのごとき錯覚におちいりやすい論法でありますから、この点は、逆に、米側の企業のそれぞれの公害発生企業が投資しておる実態、あるいはその企業が周辺の大気、水質等に及ぼす汚染の現状等についても、つぶさに会議前にも私は見ていきたいと思っておりますので、それらの実態を踏まえながら、やはり問題は、非常に幅広い大陸の中の環境基準という問題で議論をしますと、日本の場合には負い目になると思います。やはり規制基準という問題で、個々の問題について、その規制基準をどのようにきびしく守らせておるかという議論に持ち込んでいけば、私ども外交官でないものですから、事前にこういうテクニックまで公開していくと、向こうに筒抜けになっているのかもしれませんけれども、まあオープンでやっていいと思うんです。要するに、そういうような誤解のないように、しかし、日本側が指摘されて反省すべき点があった場合には、やはりこれは直すという姿勢は当然持っていかなければならぬと思いますが、アメリカもみずからがそういうふうに一部主張をしているほど完ぺきにやっておるものとは思われない節がずいぶんあります。これはアメリカの検察側の公害に対する姿勢にもよるものと思われますけれども、相当、巨大企業に向かってびしびし告発をいたしておるこの現状等は、ひとり日本の企業のみが安易な社会環境の中で、世風の中でアメリカよりも甘やかされているということを意味しておるものではないということの証明の一つにもなろうかと思いますが、そこらの点は、私は外交官ではありませんし、野人でございますので、納得いたしかねるところはいたしかねる、その理論はむちゃであるというところはむちゃであるということで、全然、そういう意味では、日本立場というものを隠そうともいたしませんが、そのかわり言いがかりや無法な根拠に立つものの言い方については、遠慮なく反駁をして、なるべくこういうようにしたいと考えております。
  48. 三木忠雄

    三木忠雄君 新分野の研究開発。
  49. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、お互いに、科学技術の研究については、ただいまはライセンスの問題等について触れましたが、これは事務段階におけるテーマの設定でございますので、より広義の問題として、昨年来、お互いに——日本のほうはこれからデータバンクができるわけでございいますが、予算措置等はことしとっておりますが、データバンク等において、国内の民間も含めた各省庁の研究分野の資料を一カ所に集めて、解析、分析した資料をもとに、米側とも今後いろいろとお互いに研究資料の交換、そうして人類のための公開、新しく発明された技術の相互の提携、連絡、援助というようなことが必要になろうかと思います。たとえば汚染マグロの問題で、一時、日本の遠洋漁業あるいはかん詰め業者は、これでもうつぶれてしまうという騒ぎが、日本では水銀汚染の問題で起こりましたが、その後、水産庁や通産省あたりから急遽人を派遣したりなどいたしまして、日本のほうはインド洋の、公海の大洋を遊よくしているマグロであっても、常時これを食して船乗りを何十年やっているけれども、念のため身体等、毛髪等を調べてみたけれども、若干普通の人よりも水銀蓄積が多いかなといえばいえる程度であるけれども、しかし、そういう例もあったけれども、全般的にマグロの乗り組み員だから水銀汚染されて健康を害されているという例はないというようなことで、幸いに、メカジキの問題を除いては、すでに解決をしておるわけでございます。しかし、これはやはり国立公害研究所等が権威ある分析をされた。世界の学者の評価にたえ得る資料を持っておりますので、こういうものは直ちに解決できるわけでありますが、先般は少しもたもたした経験を持っておりますから、これからは——アメリカもまだそのような研究機関というものの総合性あるいは国際的な政治性というものは持っていないようでありますので、今回の会合では十分にそういう技術分野について話し合いもいたしていきますが、ある意味において日本人というのは非常に優秀でありますから、公害が騒がれますと、今度は公害を克服するための公害防止産業あるいは防止技術、こういうものが非常に進んでまいりました。アメリカあたりから、先般は日本の一企業の発明したものについて、アメリカの環境保護局から一千万ドルの補助金を出してアメリカの発電所に試作のために使ってみようという提案を具体的にされておるような発明等もあるようでございますので、これらの問題等も現実の問題と将来の問題とを踏まえてよく相談をしていきたいと考えます。
  50. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは次の問題に移りますが、特に環境庁設置に関して、どうも総合調整機関だけに終わってしまって実施機関にはならないのじゃないかという懸念が、いろんな設置法を見ましても私たちは考えられるわけであります。特に衆議院においても長官が述べられているように、物価の経企庁みたいな感じで公害環境庁、こういうような形にしていきたいというような抱負を述べていらっしゃいますけれども、私は物価の経企庁みたいな感じで公害環境庁になってはこれはますますおくれをとる、後手をとるような環境庁になってしまうんじゃないか、こういう調整機関だけに終わるような環境庁であればまさしくかくれみの、公害のかくれみのを環境庁がつくるような感じになってしまうんじゃないか、私はこの点を強く感ずるわけでありますが、長官考え方を伺いたい。
  51. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 私が物価の経企庁、公害環境庁と申しましたのは、役所の規模というような意味において、新設の役所でございますから、おおむねどれぐらいの規模の役所になるのであろうという原則的な疑問がありますから、それについてお答えしたわけです。しかしながら、経企庁が物価に対して持っております権限とというものは、確かにある意味では色男金と力はなかりけりという感じがしないでもありません。——まあ、よその役所の批判はやめますが、しかしながら、環境庁においては私どもの手元でそのようなことを心配いたしましたので、第六条で環境庁長官のみに与えられる特権的な項目を列挙いたしております。すなわち、「環境庁長官は、環境保全を図るため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し必要な資料の提出及び説明を求めることができる。」、第三項は、「長官は、環境保全を図るため特に必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し環境保全に関する重要事項について勧告することができる。」、第四項、「長官は、前項の規定により関係行政機関の長に対し勧告をしたときは、当該行政機関の長に対し、その勧告に基づいてとった措置について報告を求めることができる。」、ここまででも相当な権限が付与されているわけでありますが、しかしながら、やはり大臣同士は並列の権限を持っておりますから、そこで最後の念押しとして第五項、「長官は、第三項の規定により勧告した重要事項に関し特に必要があると認めるときは、」というのは、やはり勧告をしたけれども報告はせぬ、報告はしたけれども、いいかげんなことで実行はせぬという場合のことであります。そういう場合においては、「内閣総理大臣に対し当該事項について内閣法第六条の規定による措置」、すなわち閣議で決定された方針に基づいて関係行政機関の長たる国務大臣を指揮する総理大臣の権限を発動するように、「意見を具申することができる。」、ここに現在の他省庁との関係が、全く他省庁よりも違う大臣の権限を与えたということになるわけでありまして、その意味では、規模は物価の経企庁と一緒でありますが、その機能、権能については、はるかに高い権能を長官は持つことになるということを御理解賜わりたいと思います。
  52. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは具体的な問題を通しまして、実際新たにできる環境庁がどのような権限が及ぼせるかということについて、私は何点か具体的な問題を通して考えてみたいと思うのです。  一つは、長野県の佐久地方に起こっている眼病の公害といわれる問題が学童の間に、特に佐久地方を中心にし、あるいは全国的に、いまわかっているところでも千名程度、そういう学童の眼病の方がいらっしゃるそうです。こういう問題について具体的に掌握されておるかどうか。これは総務長官でなしに文部省だと思いますが、あるいは厚生省、掌握されておれば報告願いたいと思います。
  53. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 昭和四十年に佐久の地方に子供の視力の低下、あるいは視野の狭窄等が起こる奇病があるということが報告されまして、これが農薬等に原因するというような報告がございましたが、その後、全国各地にそのような類似の報告がなされまして、約千名の患者があるということで、厚生省といたしましても、これが対策を、研究面、診断基準の確立等の方向でただいま対処いたしておる次第でございます。
  54. 三木忠雄

    三木忠雄君 文部省はこれは承知しておりますか。
  55. 木田宏

    政府委員(木田宏君) ただいま入りましたので、ちょっとお尋ねのことを伺っておりませんでしたけれども、佐久の奇病といわれます眼病が子供たちの問題として話題になったことは私どもも承知をいたしておりまして、当時、長野県等と連絡をとりまして、長野県の教育委員会で、このことに関連いたしまして、子供たちの目の検査をあらためてやり直すという措置をとった次第でございます。
  56. 三木忠雄

    三木忠雄君 その、あらためて調査をした実態については文部省の見解はどういうふうな見解を持っておりますか。
  57. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 当時の東大講師をしておられました石川さんの調査が四十四年八月から四十五年の三月までの間の御調査として行なわれました。その結果、長野県の教育委員会当局も事柄を重視いたしまして、長野県の県内の小学校三年生から六年生までの児童全員につきまして調査のやり直しを——やり直しと申しますか、あらためて調査をいたした次第でございます。その調査の結果、これは長野県の教育委員会が信州大学の眼科の担当者に調査を依頼して実施したわけでございますけれども、石川講師が当時発表されました農薬と見られる疾病事情、そういう判断には至っておりませんので、当時の調査をいたしました長野県学校会の会長からの教育委員会に対します結果報告によりますと、県下の児童の目の奇病といおれて問題になるものと考えられますものについては、佐久地方のみに限局したものではなくて、全県下にある程度散発をしておるという事実と、それから農薬として使用したマラソン剤がその原因であるとの説は、現在までの調査研究の時点ではどうもそういう結論には到達していないということと、それから発見されました子供たちの目の障害のもろもろの症状は、これまでもしばしば見られた眼疾患であって、特別特異なもの、奇病というものとは考えられないというような判断がございまして、なお今後この子供たちの眼疾がどういう性質のものであるかにつきましては、今後も追跡して検討するという報告をちょうだいをしておる次第でございます。
  58. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは、厚生省にもあとで伺いますけれども、文部省としてこの佐久地方だけではなしに——先ほど厚生省からも話がありましたように、実際にわかっているだけで全国に約千名ですね。潜在患者を合わせると何万にもなると、こういうふうにいわれているこの学童の眼病の公害といいますか、この問題について、この佐久地方だけではなしに、全国的に文部省として実態調査をしたことがありますか。
  59. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 御案内のように、各学校におきましては毎年定期の健康診断の際に、この目の疾患につきましても——疾患だけではございません。目の現状について調査をいたしておるわけでございまして、その間、最近の動きといたしましては、私ども近視が著しくふえる、また乱視もそのふえ方が著しいというような動向はつかんでおるわけでございますが、調査の結果、異常がございました者につきましてはそれぞれ個別にできるだけ精密検診をするようにという一般的指導をいたしておりまして、長野県でこの問題の指摘されました際に、県の当局がとりあえず県下の児童について調査をしたということはございますが、一般的には健康診断をもって出てまいりました者について個別の指導、精密検査を受けるように指導するという態勢でやっておりまして、いま御指摘ありました特定の疾患としての検査を文部省の健康診断の中では現在までのところいたしておりません。
  60. 三木忠雄

    三木忠雄君 これはあとで今度の環境庁等の問題に関連して私はお聞きしたいと思っておりますが、厚生省ですね、全国に潜在患者が相当あるといわれているこの眼病についてはどのように実態調査をされようとされているのか。特に厚生省あるいは文部省がどうしてもこういう問題に手をつけたがらないのですね。こういう実態のところですが、実際に何万といるといわれるこの学童の眼病についてはどのような全国的な調査をされようとしているか、これについてお伺いいたします。
  61. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) ただいまの文部省のお話にございましたように、長野県の学童、佐久地区以外の検診の結果もわれわれは承知いたしておりますが、その精密検査は、現在、文部省が実施しているわれわれの承知しております一般的な視力表等を使いました視力の能力等を見るだけでは不十分でございまして、瞳孔を散大させてさらに精密な検査を必要とするというような報告がございますので、この点につきましてはやはり特別な対策を必要とするというふうに考えます。しかしながら、一面、佐久の奇病が報告されますと同時に、長野県の信州大学等の眼科教室等の見解の中にも、一部遺伝的な素質のものであるというような見解も出ましたり、その後最近に至りまして、乳幼児の使います食器からのフォルマリンの慢性中毒に同様の症状、あるいは視野狭窄の症状を起こす。したがいまして、眼科学会あるいは研究者の中にも、これらの原因が多様にわたることはやはり認めざるを得ないというようなことで、農薬説一つだけでこの原因が究明できるとは限らないということになってまいりますと、われわれとしては、本年度の研究費でお願いいたしたいと思っておりますことは、まず奇病であるというものなのか、本来的に最近のテレビその他の社会生活全体を通じたものを含めまして、あるいは場合によっては農薬あるいは特殊な殺虫剤等の影響によりましてこのような症状がくるものか、そうしてそのような従来なかった子供の病気として確立するような診断基準というものを設けませんと、それぞれの先生がそれぞれの見解でこれを報告されていましても、中には確かに遺伝的なものも含まれるでしょうし、子供の視力の問題は、客観的に子供の視力をつかむことは、本人の自覚からつかめる時期というものはかなりむずかしいし、おくれてまいります。そういうような万般の問題を検討いたしますと、まず診断基準を、このようなものは従来眼科学会で考えられていた、学童の疾患として考えられた以外の特殊のものであるかどうか、こういうふうな点も確立していく必要がございます。そういう意味で、結論的に申しますと、学会の研究費をお願いし、まず診断基準を確立し、それによって文部省その他厚生省立場からも、これらの問題の地区的な特殊な疾患なのか、あるいは全般的にこのような問題が存在しているのか、そういうようなものの解明に向かわなければならない、こういうように手順としては考えている次第でございます。
  62. 三木忠雄

    三木忠雄君 その具体的な診断基準の確立ですね、あるいは聞きますと、予算も何かこの病気に対してはついたという話も聞いているのですがね。具体的にこの眼科学会等に対して厚生省としては診断基準の依頼といいますか、それをやられる計画になっておりますか。
  63. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) 眼科学会、特にこの問題を最初に提唱されました北里大学の石川先生がこの問題の研究の解明に非常に御熱心に取り組んでおられまして、厚生大臣にも研究費の配分について特段の御要望がまいっておったりいたしまして、当然のことながらわれわれは研究費の配分につきまして、本年度の厚生省の持っております研究費の中から、特に関係者の研究の内容、必要とする計画等をお聞きいたしまして、できるだけの研究費の配分をいたす方向でただいま配分の事務を手続中でございます。
  64. 三木忠雄

    三木忠雄君 厚生大臣に伺いますがね、この問題については、厚生大臣のところに何回か陳情もでされたり、あるいはいろんな話を聞かれているのではないかと思うのですがね。具体的にこの眼科学会の会長さん等に診断基準を依頼をし、あるいは予算をつけてこの病気の解明にあたるという決意はおありですか。
  65. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私のところには特に私を名ざしての御要望なり陳情なりというものはございませんです。実は私もまあ役目がら役所におりまして、昨年のうちにこのことを知りまして担当者のほうにただしましたところが、厚生省ではわざわざ現地に当時の公害課長として名高い人を派遣をいたしまして、大学の先生方と共同調査をいたしたことがあり、またその後、私には話がございませんでしたが、たしか東大医学部の講師の石川さんという方から総理大臣に手紙がまいりまして、私は総理大臣からその手紙を見せていただいたことがございます。そして担当者にただしましたところが、いま局長から御答弁をいたしましたような計画を現に進めておりますほか、すでに、いま私ここに資料を持っておりませんけれども、この日本眼科学会ではない他の研究団体である、たしか農村医学会といいましたか、農村医学研究会といいましたか、そういう方面に厚生省からでございましょうか、農林省からでございましょうか、研究費の助成を一般的に行なっている中で、その一般的の研究というのは、農薬中毒の診断と治療に関する研究というような一般的な研究の中で、いま御指摘の方面の研究をも委嘱したというようなこともやっておったようでございます。しかし、そのグループと、私の耳に残っておりますところでは、記憶に残っておりますところでは、石川先生等が必ずしも同じ研究団体に属しておらないというようなこともあったようでございますから、さらにそういう状況のもとにおきまして、いまも説明がございましたように、日本眼科学会といろいろ相談の上、これらの眼疾愚の診断の基準というものの研究ということにして、より準備された形での研究体制をつくってそこに研究費を出そうと、こういうことにいたしておるはずでございます。ときどきこの問題は断続的に取り上げられておりますので、私はそういうようなことを記憶をいたしております。
  66. 三木忠雄

    三木忠雄君 先ほど文部省からもお話がありましたけれども、信州大学の研究、いろいろな研究は調査を命じておるとは思うのですけれども、どうもこの眼科学会、あるいは大ぜいの眼科医の考え方が農薬説だということが非常に濃厚だという線が出てきているわけですね。ところが、いろいろな例を、あちらから検出したりこちらから検出する方法で、何とかこれはぼかそうというような傾向が私はあるのではないか。農薬説と言われるのを非常にいやがって、いろいろな例を出してきている。積極的に調査をしようという、あるいはその実態を把握しようという体制が非常におくれているという点で、学童がどんどんこの奇病にかかってきているという例が非常に多いわけです。現実に眼科学会の会長自身も、眼科学会全体に眼病を、公害をテーマにした報告を出させるようになっているわけですね。この問題を、やはり農薬説であるというこの観点に立って具体的にこの報告テーマをまとめているという話を私たちも聞いているわけでありますけれども、こういうふうにやはり佐久地方、あるいは最近の野菜、果実を通して都市地域の子供にもこういう病気がどんどん出てきている。実際のその実態というものは、文部省においてもあるいは厚生省においても実態把握が非常におくれているというのですね。現実に農林省として、特に都市地域でありますけれども、鮮度を落とさないために有機燐系の農薬を使用していると言われているのですけれども、この問題については農林省、どういうふうになっておりますか。
  67. 安尾俊

    説明員(安尾俊君) お答えいたします。  野菜や果実の鮮度を高めるための農薬は登録を一切いたしておりません。で、収穫後の野菜や果実に薬剤をまくことは食品衛生法上で取り締られてできないことになっておりますので、もしそういうことがかりにありとしますと、たいへん遺憾なことでございますが、今後そういうことがないように指導の徹底をはかりたいと思います。
  68. 三木忠雄

    三木忠雄君 それは、遺憾なことが現実に弱毒のLDK、トマトとか、あるいはリンゴの鮮度を保持するために一部に使われているというのですね。そういうところから、やはり都市の子供たちが眼病にかかってきているという例があるのです。実際に農林省がこういうことを事実上把握しておってもなかなかデータが私たちに公表されない、こういう点が間々あるのじゃないかと思うのです。現実に佐久地方で散布しておるマラソン剤あるいはカーバメート剤ですか、こういう農薬が原因と言われているのですけれども、こういう農薬は使用しておりますか。
  69. 安尾俊

    説明員(安尾俊君) 従来、果樹の害虫防除には毒性の強いパラチオン剤等が使われておりましたが、これは散布者に急性中毒の事故を起こしますので、最近は低毒性の有機燐剤のマラソン剤あるいは毒性のきわめて低いカーバメート剤等に切りかえて使用いたしております。
  70. 三木忠雄

    三木忠雄君 そういう使用している農薬から、原因不明だと言われておるこの佐久地方の子供の問題とか、あるいは最近農薬を使って、あるいはその地域だけではなしに、やはり鮮度を保持するために燐酸系の薬品を使ってリンゴとか、あるいはトマト等の鮮度を保持されている、こういう一つ一つの実例から、子供の奇病が全国的な地域においてやはり蔓延してきているという、こういう実態が、あらゆる眼科学会のいろいろな調査に基づいても、実際には現在千人しか掌握しておりませんけれども、潜在患者が数多くあると害われているわけですね。こういう問題について、やはり私は文部当局に聞きたいわけですけれども、この問題が学童であるだけに積極的に調査をし、この問題の具体的な対策を講じなければならないのではないかと、こう考えるわけでありますが、文部省どうですか。
  71. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 教育の場で、学童、生徒の健康状態を的確に把握するということはきわめて大事なことでありまして、そういう観点から時代に適合した適切な検査基準で、学童の健康、身体の状況の把握につとめるということは私どももいたしておるところでございます。目につきましても、先ほど申し上げましたとおり、定期の健康診断によりましてその目の異常というもののある子供につきましては早く把握をし、指導するように持っていくというのが私どものつとめであろうかと思いますが、しかし、いま御指摘になっておりますような原因について学問的な理論の分かれます課題、こういうものの究明ということは、これは医学そのものの課題であろうかと思いまして、私どもの学校保健の立場で、その疾患の実態が子供にどういうふうに出ておるかという欠陥を把握することはつとめなければなりませんけれども、その原因の究明だとか防除につきましては、専門的な御研究の成果によって、その結果私どもが子供に対してなすべき指導をする、こういう手順に相なろうかと思います。先ほど御説明申し上げましたように、そうした具体的な問題の指摘がありました場合に、随時、時期に応じて長野県の当局がとりましたように、検査をし直していくということは非常に適切な措置だと思っておりますし、今後もそのようなことは指導いたしたいと思いますが、原因の究明あるいはそれに対応する専門的な措置等につきましては、御専門のほうの成果を待ちたいと考えております。
  72. 三木忠雄

    三木忠雄君 そこでですね、佐久地方だけではなしに、全国の各地にそういうふうな奇病と言われている問題が起こってきているわけです。そういう問題について、積極的にやはり全国の教育委員会等を通してその実態の掌握に当たっていくという考え方は文部省にないのですか。
  73. 木田宏

    政府委員(木田宏君) 子供の、いま御指摘は目でございますが、目も含めまして健康状態につきましての把握、また異常の把握ということは文部省としてぜひつとめなければなりません。しかし、その原因がどうであるかということは、これは文部省の学校保健の領域を越えたものだと、こう考えております。
  74. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、まあ領域はいろいろあるでしょうけれども、具体的にこういう眼病で出てきている問題について、定期的な健診だけではなしに、こういうものの実態を調査してみようという、その積極的な考え方で臨まれる、こうとってよろしいのですか。
  75. 木田宏

    政府委員(木田宏君) これはその地域地域によります課題でございますし、文部省がいたします定期の健康診断の項目として、目につきましてはどの程度のことを行なうべきであるかというのは、ちょうどたまたま私ども審議会でも、検査の項目基準がこれでいいかということを検討いたしております。しかし、一般的に千数百万の児童、生徒の定期に行ないます診断で、どの程度までの検査が行なえるかということは技術的な限界もございます。私どもといたしましては異常の発見を早くする。そうしてそれによって精密な検査は御専門のほうに回す、こういう方針で進みたいと考えております。
  76. 三木忠雄

    三木忠雄君 厚生大臣に伺いますが、具体的にこういう専門の研究機関といいますか、国立研究所にしても、新しい病気の問題については非常に研究体制がおくれているわけですね。こういう問題について全国の衛生試験所、あるいは保健所等にはいろいろな施設があるわけですね。それ等を活用して、こういういま全国的に起ころうとしている学童の奇病の問題について積極的に調査、分析をされるというお考えはお持ちですか。
  77. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 一般的にはけっこうな御提案だと思います。しかし、これは専門医に属する病気のようでございまして、全国の保健所等で診断基準なり、あるいは治療法の検討ということができることでもないようでございますので、やはりその方面の専門家の方々にグループをつくっていただいて、そして検討して、それに診断基準等がつきましたならば、各地でそういうふうな報告があったときにその診断基準に照らして、それが一般の目の機能の弱化、その他の疾病によるものか、あるいは、いわゆる奇病なり、あるいは一つの農薬なり、どういうことかというようなことを、それこそいまおっしゃるように、全国の能力ある医者や、場合によっては、できますならばすでに確立された診断基準に照らして検診をするというようなことは可能だと思いますが、いまの段階では、私などはもちろん専門家ではございませんが、はたしてそれが奇病といわれるものなのか、農薬が原因なのか、他の原因からくるのかという診断がつきかねているというふうに私は聞かされておる現在では状況でございます。
  78. 三木忠雄

    三木忠雄君 そうしますと、もう一歩進んで、眼科学会とか、その専門の権威筋にこの問題等について積極的に農薬関係か、あるいは何が原因になっているかということを究明していこうという、厚生省考え方を持っているわけですね。
  79. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) そのとおりでございまして、先刻担当の公衆衛生局長からそのことについて申し上げたとおりでございます。
  80. 三木忠雄

    三木忠雄君 ここで総務長官に伺いたいのですが、このような、これも一例でありますけれども、非常にスモン病にしても、あるいはこういう新しい病気ですね、こういう問題に対しては実際に各省、いま厚生省にしましても、あるいは文部省にしても、あるいは農林省が窓口と思うんですが、なかなかこういう新しい問題については手がけづらいというか、やりづらいというか、こういう問題があるわけですね。いろんな関連があってなかなか積極的に取り組もうという姿勢は私はないんじゃないかと思うんです。こういう問題について今回できる環境庁ですね、これはどういうふうに、こういう新しい奇病の問題等は対処していかれるような仕組みになっておるか、この点について。
  81. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 先ほども申しましたように、第四条、第二十二項の農薬取締法改正をうたっておりますが、この中の作物残留性農薬、土壌残留性農薬及び水質汚濁性農薬、これの使用の規制並びにこれらの農薬の登録保留の基準の設定がございますから、このような眼病というものが単なる奇病でなくて、必然的に起こってくる農薬使用のための残留性による疾病、その他の特殊な例であるということが医学的に、ただいま答弁がありましたような究明がなされてある程度まいりましたならば、直ちに環境庁はこれらに対して規制基準なり、あるいはその農薬の取り消しなり、そういうものについての行動を開始するということになって、当然これに対しては農林省も農薬取締令に従って、それを処理していくということになると思います。
  82. 三木忠雄

    三木忠雄君 農薬取締法の第十三条に報告、あるいは検査の規定がいろいろ述べられているわけでありますけれども、このような問題に対して具体的に報告あるいは検査を命ずることが、はたして環境庁としてできるのかどうか。農林省に対して、そういう権限はあるのかどうか。
  83. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは使用規制のことはもちろんですけれども、これらの農薬の登録保留の基準の設定ですから、これは登録を保留されたら使用できないわけでございますし、したがって、製造もしないわけでありますから、それは十分にブレーキがきくと思います。
  84. 三木忠雄

    三木忠雄君 あと、たばこの問題も聞きたいと思っているんですけれども、農薬の人体に対する影響等は非常に最近とみにふえているわけですね。こういう問題については農林省もいろいろ分析もし、あるいはいろいろ検討はされているんだろうと思うのですけれども、なかなかわれわれの前には公表されない。こういう実態について積極的に農薬問題等についても環境庁が、国立公害研究所ですか、こういうところを通して具体的に究明に当たっていく考えがあるのかどうか、この点について。
  85. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) もちろん、当初からそのような能力を付与されて出発するわけじゃございませんが、権限としては明らかにそういうような権限を持っておりますので、既存の能力等にそれらの調査を委託して、権能の行使は直ちに開始しなければならぬと思いますが、完全に国立公害研究所としての建物、人員、機構、設備等の完成するには、やはり建築の都合がありまして若干先に延びるということでございますが、実質の行動を起こす必要がある場合にはちゅうちょしてはならないと思うわけであります。
  86. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは最後の問題で、たばこの問題について伺いたいと思います。  最初厚生省に伺いたいんですが、この五月十八日の新聞等でも報道されておりますし、私も都の衛生研究所から出された資料を持っておりますけれども、実際に、このようにDDTの問題が愛煙家に対して非常にショックを与えていると、こういう問題についての厚生省の見解はどういうふうな態度でありますか。
  87. 滝沢正

    政府委員(滝沢正君) この問題につきましては、都のほうの見解、それから専売公社の側も、従来たばこにつく農薬の問題について研究をしておられますので、これらのデータできわめて食い違いの多いものなのか、ほぼ妥当なものであるかということをまず確かめたのでございますが、両者の説明をお聞きしますと、ほぼ妥当なものであると、両者の研究の成績はほぼ一致しておる。ただ、あの新聞紙上で発表されました環境基準としての、アメリカの労働環境の基準に使われておりますDDTの一立方メートル当たり一ミリグラム、この基準を適用しまして、今回、都が出しました二十本のたばこを平均的に吸うものとして、そのたばこの煙について一立方メートル当たりアメリカの労働環境基準を上回るものがあるという見解は、これは午前の産業公害関係の委員会でも議論がございましたが、この点につきましては都の見解も公社の見解に近いものになりまして、結論的に申すと、ほかに基準というものがないので、アメリカの労働省の労働環境基準を使ったけれども、実際にわれわれ人間が二十本のたばこを吸う場合のほぼ肺内に空気を吸入する空気量、こういうものと合わせて換算しますと、アメリカの環境基準に比べて約千分の一ぐらいの数値になるのでございまして、この点については公社の見解がほぼ正しいと思うのでございますが、ただ、都の見解といたしましては、従来たばこの問題は二コチン、タールだけを中心に考えておったが、煙というものの中に農薬の問題があるということを認識する意味において、また、さらに食品公害等の関係から農薬がさらに人体に加わる、こういうようなことを考えると、一般的な啓蒙の意味で、この問題を取り上げたことに意義があるというような御見解でございました。  以上のような見解を総合いたしまして、厚生省の見解といたしましては、ただいまのところ、たばこに農薬の存在が事実であるけれども、これが直ちに喫煙者に影響を与える。極端に申すと、先ほどの基準になるためには二十本入り五百箱以上を喫煙しないと、その都の発表しておるような基準に達しないというような、数値だけからの試算をいたしてみましても、直ちにこれが人体に危険を与えるというような見解ではございませんけれども、先ほど東京都の見解にもございましたように、このような事実をやはり国民の保健の立場からはその存在というものを認識し、なお、農薬のたばこ栽培による使用等につきまして、すでに専売公社も規制に入っておられますけれども、今後これはたばこに農薬があるという問題はゼロになるような方向を期待するわけでございます。そういう意味厚生省はたばこ事業が専売であろうと、民間企業であろうとにかかわらず、国民の保健の立場から、正しいデータなり、その検討されたものを、その真実性を確かめてこれに対処し、国民に正しくPRする責務は今後とも積極的に続けたいという気持ちでございます。
  88. 三木忠雄

    三木忠雄君 具体的なことは、きょうも午前中にやられたそうでありますので、私は省きたいと思いますけれども、実際に都の衛生研究所がこういう問題を研究し、発表しているのに、国がこういうものを全然研究——専売公社は当然やられていると思うのですけれどもね。都の衛生研究所がこういうことをやっているけれども、実際に国としてこういうものを分析し、研究機関が積極的な姿勢を示していないということについては私はいささかこれは問題ではないかと思うのですね。この点については厚生大臣いかがですか。
  89. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) たばこの煙に含まれる農薬については、私は研究がされて、厚生省の関係機関では——これは私が申し上げることが間違っておりましたら、あとでまた専門の政府委員から訂正させますが、煙の中に含まれる農薬に関しましては、たとえば国立の衛生試験所などでは研究はしておらなかったと思います。むしろ、たばこにつきましては、それはガンとか、また場合によりましては心臓疾患などについて有力な疑いがかかっておるという見地から、毎年一千数百万円、二千万円近いぐらいの研究費を厚生省だけでも支出をいたしまして、国立がんセンターの研究所の専門の方々並びに公衆衛生院の専門の方々その他の専門家を集めて、ガン発生の疫学的研究あるいはガンの多発原因に関する研究というものを実はずっと進めてまいってきておるものでございます。これらにつきましても、おおむねの疫学的見地からの考え方というものは示されてきております。ただ、この病理といいますか、臨床などからニコチンなり、タールなりというものがガン、特に肺ガンあるいはまた心臓疾患と病理学的に結びつくかどうかということにつきましては、最終的な研究上の結論が得られていないということのまま今日なお研究を続けておるという状態であります。専売公社におきましては、私どもが聞いておりますところによりましても、その何倍かの予算をもって従来ともこのガンに関連するニコチン、タールについての研究を主として進めておったようでございます。いまも聞いておりますと、専売公社では煙の中に含まれる特殊の農薬等を構成する物質についても研究が進められていたようなお話があったようでございますが、専売公社のほうではいろいろな研究を進めておる、両々相待ちまして、従来そういう研究につきましては、ガンとの関連の研究につきましてはずいぶんと力を入れてまいっております。
  90. 三木忠雄

    三木忠雄君 それで、まあ専売公社の、現実的に国内たばこの農薬の使用という問題については、いろいろ新聞紙上では禁止を命ぜられていると、こんな話をしているわけですけれども外国からのたばこのほうについては、このように検出された問題についてはどういうふうに対処されていくのですか。
  91. 佐々木幸雄

    説明員佐々木幸雄君) 御質問の点の外国の製品なり、あるいは外国から輸入します葉たばこあたりにつきましては、まあこうした問題が非常にたいへん現在問題になってきてはおりますけれども、比較的そういう問題が出てまいりまして日が浅いということもございまして、まだその辺の検討には着手しておりません。
  92. 三木忠雄

    三木忠雄君 こういう点が、まあ都の衛生研究所は積極的にこういう姿勢で取り組んでおりますけれども、やはり専売公社が、国民の健康ということを考えていないとは私は言いませんけれども、やはりこの販売一本に片寄った姿勢というか、そういうものがやはり輸入たばこ等についても、あるいはこの農薬を禁止したといっても、はたして具体的に何年ごろからこの禁止した葉たばこは出回るのかという問題になってくると、私は相当疑問ではないかと思うのですけれども、この点はいかがですか。
  93. 佐々木幸雄

    説明員佐々木幸雄君) ただいま厚生省のほうからいろいろだばこの問題についての御説明をいただきましたが、DDTあたりにつきましての公社の見解、御説明があったとおりでございまして、現状の状態におきましては含まれておる、あるいは煙の中に出ておるということは好ましいことではないと思いますけれども、現状の状態でそれが非常に大きな健康との関連があるという把握はしておりません。ただ、これからの問題といたしまして、そういう問題についての検討をさらに進めていきたいと、こういうぐあいに考えております。
  94. 三木忠雄

    三木忠雄君 まあそれは専売公社の私は一方的な見解ではないかと思うのですね。都の衛生研究所では相当心配である。神経系の障害であるとか、肝臓障害であるとか、そういう問題にいろいろ影響が出てくるという見解を都の衛生研究所はとっておるわけですね。専売公社のほうは当然そういういろいろな理由づけはされておりますけれども、やはりこの問題についてはもっと積極的に私は考えなきゃならぬじゃないかと思うのです。その農薬の使用の問題についても、いつまでにこういう問題は、この葉たばこに関しては使用を禁止するとか、あるいは輸入たばこについては、このBHCを含まないもの、これをしっかりいつまでにどういう態勢をとるかと、こういう研究、あるいはこういう指示といいますか、具体的な対策を講じなきゃならないのじゃないかと思うのです。ただ人体に影響がないからと、こういう専売公社の一定の考え方国民に押しつけていくようなやり方は私はこれは納得できないのじゃないかと思うのです。現実に都の衛生研究所で分析した結果が有害だと、こう言っているわけですね。こういう問題はやはりもっと国民の側に立ってこういう問題は考えなきゃならぬじゃないかと思うのです。いかがですか。
  95. 佐々木幸雄

    説明員佐々木幸雄君) 農薬問題につきまして都のほうからああした分析結果が出ておるわけでございます。公社のほうも事前にそういうような調査はしておりました。いろいろな、たとえばアメリカの大気中のDDTの含量との問題と、あるいはもう一方WHOのほうの摂取許容量の問題とか、そういう問題と照らし合わせまして国内の製品なり、あるいは外国の製品なりがどういう状態にあるかというような問題は調査はしております。ただ、先ほども申し上げましたように、そうした問題を特別に大きな問題として考えるかどうかということにつきましては、比較的影響が少ない問題であろうと、こういうぐあいに考えておったわけでございますけれども、御説のように、そうした問題を無視するわけでもございません。いろいろ原料を栽培します耕作農家に対しましては、事前にDDTの使用を制限する時期、あるいは本年作から使用を取りやめる、こういうような趣旨で指導してまいってきております。現在の製品以上にこれからはそうしたものは少なくなるようにしてまいっております。ただ御存じのように、いろいろな農薬の問題といいますのは、葉っぱについた残留問題だけではございませんで、いろいろそういう農薬が土地に入った場合の土壌残留の問題その他ございます。そうした影響をどういうかっこうでなくしていくかという問題は、将来の問題としてあろうかと思います。
  96. 三木忠雄

    三木忠雄君 これは幾ら詰めても公社の考え方と衛生研究所の考え方、いろいろ理由はあると思うのです。厚生大臣、こういう問題について厚生省はもう一歩強い姿勢でこういう問題には処理していかなければならないのじゃないかと私は考えるのですけれども、いかがでございますか。
  97. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 厚生省が何でもかんでも、森羅万象とらえまして、全部自分の手で調査をするということも事実上不可能でありますが、私が大臣として、生理衛生学的判断をいたしますならば、たばこについては、厚生省のこれまで毎年累計数億円を投じた研究によりましても、タールやニコチンがガンの発生あるいはまた心臓疾患ということに有力な関係があるということは疫学的には疑いがない、ただし、先ほど申しますように、病理学的、臨床学的には証明がついていない。そこに問題が残っておりますが、これは厚生省の国立公衆衛生院の所長の曾田博士でありますとか、あるいはがんセンターの研究所におります平山博士というような人々も、これもいま私が述べましたように、そういう見地から、たばこは人側の衛生上好ましいものではないという、中間的にしろ結論を出しておりまして、先般の専売公社における関連の問題につきましても、審議会などにつきましても同様の意見を強く述べているはずでございます。今度の煙の中の農薬、DDTとび、BHCの残留量につきましては、これは許容限度などについて厚生省で検討をいたしてみますると、アメリカの産業衛生、労働衛生の許容限反、つまり一日八時間そういう空気の中で働いている勤労者の、その産業衛生の許容限度としては、一立方メートルの空気の中に一ミリグラムというようなものが限度とされているけれども、たばこを人間がのみます場合には、そういう勤労者がそういうよごれた空気の中で一日八時間おるような状態にはない。二、三十本のまれる方も、十本のまれる方も相当多いが、そういうことから考んでみますると、たばこを煙にして一立方メートル、その中で一ミリグラム以上のDDTが賦存するという検査結果は出ておるけれども、それはいまのアメリカの基準に照らしてみると、それは人体に与える影響は千分の一というようなことになる。しかし、それは決して好ましいものではない。決して好ましいものではないので、たばこの中には、タール、ニコチンが有害であると疫学的に判断されるほか、いまのような農薬の問題も好ましくないような要素も加えられておるわけでありますから、一そう好ましからざる状態が加えられたという判断は私どもも持つわけでございます。ただ、たばこというものが食品衛生法の対象になっておるものと違います。たばこの専売法の対象となっておりまして、これらの処理につきましては、もっぱらたばこ専売法上の処置で論ずることになっておる。厚生大臣は厚生大臣の一般的の健康管理上の職能から、当然この問題のカバーはいたしますけれども、食品衛生法第何条によってこうするというようなことができるものと違いますので、私は大蔵大臣に対しましては、厚生大臣の顔色を見ながら、たばこに関する大蔵大臣の政策を進めてほしいというようなことも述べている、こういうような次第でございます。
  98. 三木忠雄

    三木忠雄君 それでは時間もあまりありませんので、私、最後に総務長官に無過失賠償責任法案が今回見送りと、こういうふうに、さきの公害国会、あるいはまた今国会でも見送りと、こういう二度の公約違反をしたといいますか、こういう問題についてはどういうふうに総務長官は考えられているか、この点について伺いたい。
  99. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは私の政治力の至らなさを示すものでございます。私としても誠心誠意、今国会立法の公約を果たすべく答弁等においても書明いたしてまいっておりましたし、本部長もまたそれを推進をしてくれたのでありますが、三月の十六日の締め切り日等において、おおむね法案の内容等の概略はでき上がっておりましたものの、与党との調整が手間どりまして、また、政府部内においては法制局の純法理論的な民法との関連等からするその限界の問題、最終段階においては法制局等との調整の問題、いろいろの要素が重なりまして、昨日午後、たしか五時四十分ごろでございましたか、最終的に本部長たる総理の裁断を仰いで今国会提出を断念をいたしました。この点はすべて私の政治家としての力量の至らなさを示すものでございます。公害の現状から考えて、無過失損害賠償制度の確立の急務であることが叫ばれて、すでに一年近くをけみしようとしておりますのに、なお私が今国会に出せなかったということは、幾らおわびを申し上げても申し上げることの可能でない、いわゆることばを知らないというくらい、ほんとうに相すまない結果に相なりましたということを言わざるを得ないことを残念に思います。ただ、政党内閣でございますので、与党のほうはただこれを今国会にもう物理的に無理であるということで、単にこれを提出できないように結果的にしたというばかりではありませんで、そのかわりに今度は与党が、責任を持って公約として国民に無過失損害賠償制度を確立するということを総理本部長に対して誓ったようでございます。したがって、党のほうでそのような総務会決定がなされたと聞いておりますので、ある意味では前進はいたしておりますが、過去の経緯を踏まえますと、今国会における公約の違反ともなりましょうし、私としては、ただ衷心、国民に対し、議会に対し、おわびのほどを申し上げるほかない次第であります。
  100. 三木忠雄

    三木忠雄君 総務長官が努力されたことは、私もいろいろ承っておるわけでありますけれども、この問題を次の国会に提出されるお考えがあるかどうか、当然だろうと思うのですが、それともう一つ、この法案の中身に、硫黄酸化物を対象に入れたらどうか、こういう考え方があるわけでありますが、この点をお伺いして私の質問を終わりたいと思います。
  101. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) まず硫黄酸化物の問題から入りますが、一番議論を呼びましたのが硫黄酸化物そのものの議論が多かったわけです。すなわち、硫黄酸化物は複合汚染の形態となって健康被害というものが起こりますから、その場合において化学的な因果関係の解明あるいはそれがかりに解明され得たとしても、その複合汚染体のいずれをとらえて犯人として無過失損害賠償の責めを負わせるべきか、また、それを負わせた場合において、それぞれの企業に賦課する賠償額の分配負担というような問題について非常に議論が沸騰したわけでございます。しかし、現実的には四日市、これは典型訴訟といわれ、四大訴訟の中にも入っておりますし、川崎ぜん息等はすでに大問題となって議論されておるわけでありますから、私どもとしては、当初から一貫して、硫黄酸化物による被害というものも取り入れなければおかしいということを最後まで姿勢をくずさなかったのでありますが、最終的に、一応、中央公害対策審議会の議を経て、そして法制局段階で成案を得て、法案として印刷し終わっておりました法案の中には、硫黄酸化物は今回除いてございまして、党のほうでも、しかし、やはりこれを除くことは大問題だというので、党のほうでは、さらにそれの原案に、硫黄酸化物については引き続き検討するという法律の中に一項が入れてございました。このような経過がございましたので、今後も硫黄酸化物というものはさらに議論を呼ぶことになると思いますが、やはりこれは時間をかせば、硫黄酸化物はどうしても対象物質として取り入れていかなければならない物質だと思いますので、この次に提案される無過失賠償法については、当然硫黄酸化物を取り入れる方向に向かって、時間を有効に最大限に活用して結論を得ておくべきであろうと思います。  さらに、次の国会ということでありますが、参議院選挙後の特別国会、これは短時日を予想されておりまするし、また沖繩国会と呼ばれる臨時国会においても、やはり沖繩の人々のために、また国民全部にとっても焦点を分散させるような議論のしかたは、沖繩国会ではあるいは無理かもしれないと考えますので、たいへん長い話のようでありますけれども、実際には次の通常国会にはこれはおそらく提出されることになるであろうし、私は、環境庁長官にだれが実質初代の長官に任命されるかわかりませんが、その人選についても注文をつけると同時に、その長官に対し、さらにまた総理に対し、党にはすでにきのう申し上げておきましたが、必ずこの法案は次の通常国会において提案してもらうように、強く要請をして引き継ぐつもりでおります。
  102. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 公害の問題で金のかかる問題はたくさんあるんですけれども、金をかけなくても解決できる問題の一つとしては、騒音の問題が一つあると思います。それは、特に東京に限りませんけれども、わざと大きな音を出して車を走らせるということがあるんですがね、自動車でもオートバイでもバイクでも。マフラーをはずしたりして、それは非常に迷惑な話なんですけれども、全然野放しになっておるんで、ああいう故意に騒音を発して走り回るマイカー族に対して、もっと徹底した取り締まりの方法はないものかどうか、現在どの程度のことが取り締まりとしては行ない得るのか、その点をお伺いしたいと思います。
  103. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 警察庁が来ておりませんから、便宜、私から答弁いたしますが、現在すでに道交法で取り締まりの対象になっております。ただいま偶然「故意」ということばを、そういうことばを使われたのでありますが、私記憶に鮮烈に残っておりますのは、政策審議会に持ってまいりました政府の原案が、故意に騒音もしくはばい煙等を発生させるバイクもしくは自動車ですね、そういうものについては、それを取りかえさせるとか、あるいは補てんさせるとか、あるいは改善させるという、そういう法案だったと思います。そのときに、では「故意」ということばが法律に使ってある場合には、取り締まるのは法制局でもなければ警察庁長官でもないわけですから、第一線のおまわりさんですから、おまわりさんがマフラーを見て、故意かどうかわかるかが問題です。おまわりさんが見つけて注意をしても、いや、故意ではありませんと言われたらどうするのか。もうもうたる煙を上げているが、故意にやっているのか。いや、零細企業であるから、これはしかたがないということで古いマフラーを使っておると言われたら、それを見のがすことになるのかという議論をして、それで、「故意」ということばを削ったことを私覚えております。そういうことで現在取り締まりの対象になっているわけです。したがって、マフラーを切って、故意に音を立てて走っておる車が第一線の交通警官の目にとまった、つかまったならば、それは明らかに違反でありますし、それに対して、マフラーを取りかえさせ、あるいは騒音を立てない装置を取りつけさせるような法律になっておるわけでございます。
  104. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 つかまえて注意をしてマフラーを取りかえさせるということでは、そういう連中に対して効果がないんじゃないかと思うんですね。その連中はわざわざやるわけですから、警官から注意されたからといって、わかりましたというんで、以後心を入れかえて、人に迷惑をかけないようにする、そういう根性の主じゃないと思う。だから、そういった場合の取り締まり法規というものは、現在のようななまぬるいことでは現実には合わないんじゃないかという気がするのです。その点を重ねてお伺いしたいと思いますが、警察庁の関係者はまだ見えていないですか。
  105. 曾根田郁夫

    政府委員曾根田郁夫君) このオートバイも含む交通騒音につきましては、昨年暮れのいわゆる公害国会で御審議願いました騒音規制法に従来なかった交通騒音の問題も取り入れまして、その中で、この道路等における交通騒音が省令で定める限度をこえる場合には、都道府県知事が公安委員会に対し、道交法に基づく規制を要請するものとするという規定も設けられまして、現在、総理府と厚生省との間で、目下その省令の具体的な基準を申しますか、数値について検討中でございまして、近くこれは公布になる見込みでございますので、それによってある程度規制を行なうこともできますし、一方、また、自動車あるいはオートバイ等の個々の規制につきましては、昨年、保安基準の改正で、従来の一車両当たりの許容限度がかなり強化されまして、これは本年四月以降の生産者についての規制でございますけれども、そういった制度面の規制と相待って、万全を期してまいりたいというふうに考えております。
  106. 片岡誠

    政府委員(片岡誠君) いまおくれてまいりまして申しわけありません。総務長官から御質問の趣旨を承りましたので、それで答弁いたしたいと思います。  マフラーをはずした二輪車を取り締まりをして、その場で整備通告をしても、それがなかなか励行されていないのではないか、こういう御質問の趣旨かと存じますが、御承知のように、整備不良車両につきましては、三万円以下の罰金刑もついております。したがいまして、現在のたてまえでは、装置不良車両に対しましては三万円以下の罰金の厳罰による威嚇、一般的な威嚇と同時に、その整備不良と装置不良車両に対しまして整備通告の制度がございますので、それを通常な状態にしてそして警察署に持ってくる、そして署長に証明さす、こういう制度がございます。その二つの面から取り締まりを現在やってるわけでございます。  なお、今回の道路交通法の改正によりまして、他人に著しく迷惑をかける装置不良車両に対しましても、他人に危険を及ぼす整備不良車両と一本にしまして、罰則を強化しまして、三カ月以下の懲役、三万円以下の罰金ということで、威嚇的な効果もより強くなるような仕組みにいたしたわけでございます。
  107. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 その三万円以下の罰金とか、あるいはちょっとしたお目玉程度で問題が解決できれば世話ないと思うのです。しかし実際には、われわれはしばしばそういった問題に直面をするのですけれども、特に深夜住宅街をえらい音を出して走るやつがあります。それはやっぱり一般の家庭ではうるさいと思ったって、外に出て追っかけるわけにいかないのですね、早いものですから。それをいい気になってちょくちょくやる。これはどこでもそういうばかはいると思うのですが、そういう連中はつかまえにくいし、かりにつかまえたとしても、おそらく最高の罰則である三万円という罰金を払うといったような例はきわめて少ないのじゃないか。だからその程度のことではだめなんじゃないかと思うのです。だから徹底してやろうとするならば、そういう連中はまずつかまえる。つかまえた場合には車を没収する、あるいは体刑にする。そのぐらいの処置をしないと、これはきかないのじゃないか。二万だの三万だのという罰金では、銭払えばいいんだろうということになりますわね。だから私は、この前も公害の委員会でこのことを質問したら、検討するという話だった。検討するということだから、もう何年もたつから、どの程度に検討されて、どの程度に取り締まりの実績があがってるかということを聞きたいと思ってきょう質問したのです。依然として何らの実効があがっていないということであれば、これは話になりません。だから、もし本気になってやるということであれば、三万円の罰金だとか何だとか、そういうなまぬるいことではなくて、これは明らかに不心得者なんだから、そういう連中は車を没収するぐらいのことをしたって——これは二輪車に限らない、四つ車もとほうもない音を出して走ってるのもある。危険でもあるし迷惑でもあるし、特に国道なんかそういう音を出して走るという例はまあ少なくないと思う。だからそれらの問題を解決をするということに警察庁としては本気になって取り組む気があるのかどうか。もしあるとするならば、おまじないの程度じゃなくて、実際の効果があがるような取り締まりをやるべきじゃないかということを言っているのです。
  108. 片岡誠

    政府委員(片岡誠君) 取り締まり件数でございますが、昨年、四十五年度、一カ年中に主として騒音関係だと思いますが、ばい煙も入っておりますけれども、装置不良車両——他人に著しく迷惑をかける車両の取り締まり件数が一万一千百八十八件でございます。現在取り締まりもやっておりますが、と同時に、たとえば新宿の副都心が夜オートバイのレース場のようになったような時代がございます。そこで、あそこでは自動二輪車の通行禁止をかけて、そしてやってくるのは禁止違反で取り締まるというようなやり方もして実効をあげた例もあります。問題はやはり夜間住宅街を、本来静ひつに保つべき住宅街にマフラーをはずして走るという車に対しては、装置不良で取り締まるだけでなくして、そういう夜間の通行の禁止をかけていくというのも一つのやり方だと思います。ただ、これも禁止を破って走る車自身を警察官が現認して検挙していくという態勢が十分とれないと、規制のかけっぱなしでは実効があがらないということだと思います。  それから没収論でございますが、それはなかなかむずかしい問題だろうと私思います。したがいまして、われわれのできることは、罰則を強化して体刑を入れたということと、それから取り締まりももう少し態勢をとって強くやっていくということ、それから地域を限って交通の禁止をしていくといったようなやり方をあわせ考えてやってまいりたいと思っております。
  109. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 もう一度局長に聞きたいのですが、その程度でもって問題の解決をはかり得ると思っているのかどうかということですね。これはいままでも例がないわけじゃない、あり過ぎるぐらいあるのですね。そういう多くの例に対して、たとえば通行禁止するといったって道路なんですからね。そう通行禁止するうまい方法ないでしょう。何か道路という道路にみんな門でもつくってしまうと、江戸時代みたいに。夜になったらもう歩けないようにする、こういう方法でも講ずるとおっしゃるなら別ですよ。警察庁にそういう腹案があるなら言ってもらいたいと思う。そういう腹案ないのでしょう。交通規制したいと言ったって、新宿なら新宿だけ交通規制したって何とかなるものではない、日本国中の問題なんですからね。だからできないことを言ったってしょうがないと言うのです。実効のあがることを言ってもらいたい。また実効のあがることを約束してもらいたいのです、私は。これは何億という予算を必要とするわけじゃなかろうと思うのです。その財源の問題があれば、これはやっぱり何百億という財源を必要とするという問題は、それは簡単にいかない。だから簡単にいかないことを私はあえて言わないのです。金をかけなくたって、やる気になればできる方法があるのじゃないかと言っているのです。  ところが、いままでお聞きしたところによると、きわめて微温的な方法ですよ。そういう方法じゃだめだと思うから、もう少し気のきいた方法を、まあできないのかどうかですね、やる気があるのかないのか、できないのかどうか。もしできないとすると、法律的にどういう障害があるか、その点を明確に答えていただきたいと思うのです。
  110. 片岡誠

    政府委員(片岡誠君) やる気は十分ございます。それから法律上問題があるのは、その没収論につきましては問題はあろうと思いますので、慎重に検討させていただきたいと思います。  それから、現在私どもの考えておりますのは、本来、交通公害——騒音の問題と同時に、歩行者の交通事故を減らすというその安全のことも非常に考えております。今回の道路交通法改正で、制度としてつくりましたのが歩行者用道路というものをつくる。その歩行者用道路と申しますのは、車の通行を禁止する、そして車の通行を禁止した場合にどうしても必要な車があろうと思います。たとえば郵便車であるとか清掃車であるとか、あるいは道路の沿道に車庫を持つ車とか、そういう問題で、明らかに郵便車のように形でわかるものは規制の対象からはずす。それから車庫を沿道に持っているといったような場合には、署長の許可にかかわらしめてステッカーを渡す。ステッカーを持ってない車は通ってはいけない、そこはもう歩行者が自由に車の危険から離れて歩ける。そこをどうしても署長許可を得て通る車は、歩行者に特に注意して徐行しなければならない。そういう規定を設けまして、そういう道路を住宅街の中に、裏通りにつくってまいりたいと思っております。そうしますと、それは一日じゅう歩行者の通行を原則として、通過交通に入れないという道路でございますから、そこではいまの騒音の問題も同時に解決できていくんではないかと、私は現在まあそれに期待をかけております。
  111. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 裏通りだけ規制ができたって、じゃ表通りに住んでいる人はどうするかということですね。表通りと横町の方は困っちゃう。裏通りだけしたって、それはやはり手落ちというものじゃないですか。まあせっかくやる気がありますとおっしゃるなら、もっと徹底した方法をとらなきゃしようがないですよ。私は、まあ警察庁としてこういう方法で、たとえば騒音の問題を、もう根本的に解決するという答弁を得るのなら、きょうはだれが答弁してもいいと言ったのですよ。何も大臣に出てもらわなくてもいい。ところが、おまじないみたいなその易しのぎのことしかできないというのじゃ、これは問題は解決しないということなんですからね。何でそんなに遠慮しなければならないのか。自動車でもって深夜ばかでかい音を立てて走り回るというのは、音が迷惑であると同時に、そういうのはゆっくり走らないのですね。もっともゆっくり走れば音は出ないけれども、まあわれわれがひやひやするほどのスピードでもって走り抜ける。だから酔っぱらいなんかがひっかけられる。ひっかけられればおそらくひき逃げしてしまうんじゃないかというふうなおそれのある走り方ですね。あるいは走っている連中、運転している連中自身が酔っぱらって運転しているかもしれない。だからこういう取り締まりというのは、これはもう仮借なくやっていいんじゃないかと思うのですよ。  これは私がたとえば車を没収したらどうかと言ったら、没収についても問題があると言っておられるのですがね。何で問題があるのか、これは。そのくらい危険で迷惑なことをやっている者は、車を没収するというくらいの思い切った取り締まりをやらなければ問題は根絶できないんじゃないかと思うから私は言っているわけですよ。もしその没収という方法が憲法上問題があるんだとおっしゃるんなら、その根拠をはっきりさしてもらいたいと思うのです。じゃそれにかわる取り締まりの方法があるんなら、有効な方法があるんならあるということをおっしゃっていただきたいと思うのですね。
  112. 片岡誠

    政府委員(片岡誠君) いまの没収の問題につきましては検討さしていただきたいと思います。それから取り締まりの問題は、先生御承知のように、交通事故が非常にふえてきて、そしてその交通事故自身の処理とその捜査に第一線の警察官が追われているのが現状でございます。で、私どもとしては、何とかして、まあいわばうしろ向きの、事故があってからの捜査ではなくして、そちらのほうを何とか簡素化するなり合理化をして、一人でも多くの警察官を現場に立たしていく、街頭に出していくという方向でやってまいっておりますけれども、大量の処理のためになかなか思うにまかさないのが現状でございます。それで、私どもとしては、何として毛もう少し白バイなりパトカーあるいは街頭の警察官の数をふやして、そして取り締まりを厳重にやっていくということをやりたい、そのように考えて、現在いろいろ検討をいたしておる次第でございます。
  113. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 今度は長官にお伺いしたいんですがね。どうもやっぱりいまの局長答弁では、これはなまぬるい、一口で言えば。これで効果をあげることはきわめて困難という感じがします。そこで、公害関係の担当の大臣としてどういう考え方かを明らかにしてもらいたいと思うのですけれども、私自身がちょくちょく目撃をしている事実に基づいてこれは言っていることなんです。それはバーやら何やら、そういう特殊なところに車を置いている連中が、えてしてまあスポーツカーというのでしょうかね。そういったような車を乗り回して、深夜寝静まった町中を走り回るという実例を見ているのですよ。だから、おそらく運転している連中も酔っぱらっているのじゃないかと、う疑いが一つあります。それから速いですからね、まあ眠けをさまされた人が寝巻きで追っかけるというわけにいかないですよ、これは車ですから。すると方法がないのです、一般の庶民にしてみれば。それだからそういう問題を解決するためには、たとえばその車の持ち主は、とまっているときはわかるわけですからね、そのナンバーは。こういう車の人たちが特別に大きな音を立てて走り回るということを、じゃあ密告させてもいいじゃあないかと思っている。そうして調査をしてみれば、その車の構造、マフラーがはずしてあるかどうかということはすぐわかる。そういうような方法を講ずれば、その取り締まる方法をもっと徹底して行なうことができるだろう。その走り回ってひき逃げしたあとで捜査するということにだけ捜査の重点を置いたんじゃしょうがないと思う。だからそういうことではなくて、事前にやはりこのような無法な運転に対しては厳重な取り締まりをやるのだということを明確にしたほうが、私は予防の効果はある。  きのうからこの間うちにかけての私鉄と国鉄のストライキがありましたけれども、混乱はしたけれども、これが予想外にうまくいったというのは、これは利用者のほうがある程度予期をして、それぞれがうまい方法を考えるということがあったから、だから事前に、ストライキであっても予告をされておれば、何とか一般の利用者の知恵でもって混乱を最小限度に食いとめ得るということがわかっているわけでしょう。だから、こういう車の取り締まりにあたりましても、いまのように、たいしたことはないと思えば、これは図に乗ってどんなことでもやりますよ。しかし、この取り締まりが非常に厳重である、まごまごすれば車は没収されちまう。わからないつもりでいても、自分のナンバー密告をされれば、マフラーがはずれているということがもうわかってしまうといったようなことがはっきりすれば、その乱暴なことをする人間もいなくなるのじゃないかと思うのですよ。だから、いままでのように中途はんぱなことでは、私は実効があがらないと思うのですね。実効のあがるような方法を大臣としてはやる気があるのかどうか、そういう問題について即刻手を打つ考えはないのかどうかということを私はお伺いしたいと思うのです。どうですか。
  114. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはどうも長官違いで、国家公安委員長の荒木長官のほうなんですけれども、まあ金をかけないでも、違法なことをやっているものを取り締まる方法としては、ほかに自動車を買うときに要る車庫証明、それから買ってしまったらもうどこに頼んだか忘れたくらい、自分のうちの狭い道路の前でとめるというようなことなんかも、やはり何とかしなければならない問題の一つなんです。いまマフラーを切って騒音をわざと発生さして、しかも、それに人命に与える危険さえ起こしているような連中であるということを前提のお話ですが、密告せいというわけにもなかなかいきませんが、いま免許証取り消しという問題が点数制によってとられているようですけれども、たとえば、それをドラスチックに割り切って、マララーをはずして、あるいはマフラーを半分に切ってわざわざ音の発生するようなことをやるような行為については、そのまま見つかったが最後、免許証を取り上げればというような、没収である、あるいは停止であるというような措置を、たいへんドラスチックですがとれば、相当こたえるだろうとは思うのですね。まあしかし、先ほど来局長、なかなか答弁してないようですが、没収ということはやはり今度はその人が、いや自分は返してもらえばマフラーは改装してつけますというようなことになれば、それでもなお返さないということになると、おまえは返してもまたマフラーを切るから返さないということになれば、賠償をしなければならない、私物ですから。そういうことがありますから、そこまでは踏み切れない答弁を事務当局はしていると思うのですが、そこまでどうしてもぴしっと懲罰していく方法、見つかったら免許証を取り上げるというような方法も一つの案かと思いますが、これはどうも荒木長官のほうに少し相談をかけてみなければやりにくい問題だと思います。
  115. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まあ、だれがやったっていいんですよ、荒木長官であろうとだれであろうと、そういうことを実行する能力があればいい。私が言っているのは、こういうことをするのは、普通の善良な国民じゃないんですね。多少ぐれたような連中がやっているわけですよ。しかも酔っぱらってやるという例が多いし、ただ、見つかれば即刻免許証取り上げといっても、わざわざ見つからないような深夜にやる例が多いから、そこでそういう深夜にそういう危険な、しかも迷惑のかかるような方法を講じて、まあ実害が出るかどうかは別として——騒音という実害はもう完全に出ている。それから、人をひいたりはねたりするという危険性は多分にはらんでいるのですからね。これはもうどうしたら根絶できるかということは、もっと真剣に考えていいと思うのですよ。で、没収がいいとか悪いとか言っておりますけれどもね、そういう連中からは、私は没収したところで、刑法学者や何かから文句は出ないだろうと思うのですね。もし法律的に心配があるなら、だから、どういう点で心配があるかということを聞いているわけです。これはまあやむを得ないということならば、これは別ですけれどもね。たとえば消防自動車やら何やら、ああいうものはしかたがないです、静かに走らせておいたんじゃもう仕事にならない。だから、そういうことは言っていない。私のは、わざと意地悪く人に迷惑をかける、しかも危険をおかしている、いわばこれはもう準犯罪者ですから、こういう準犯罪者に対していまのような甘い法でいいのかどうかということを言っているわけですからね。これは荒木長官の担当であろうと何であろうと、公害という点で思い切った措置を講ずる義務があるというふうに私は思うのです。その点は、きょうの答弁ははなはだ私は納得いたしかねる。したがって、納得できるような答弁をされるまで私はこの問題についてはしつこく繰り返しますからね。念のために、どういう方法を講ずるかということだけをもう一度聞かしてもらいたいと思う。
  116. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 瀬谷さん、何かよほどしゃくにさわっていることがあるらしいですね。ここれは荒木長官でもだれでもいいのだとおっしゃいますけれども、なかなかそういうわけにはいかぬのです。やはり道交法を所管されるのは国家公安委員長でございますから、やはり交通局長答弁をいたしておりますが、それだけではなかなか満足いく答弁が、いわゆる政治的な配慮のある答弁局長ではいたしかねるだろうというので、私のほうで申し上げておる次第でございますので、まあ私がここで荒木長官にかわってこういう権限を行使することにしたいと言えば、あるいは御満足いただけるかと思いますが、やはりこの点はいま少しく検討をさしていただきませんと、私自身の所管、権限外のことでございますので、その意味で御理解を賜わりたいと思います。
  117. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 まあね、山中長官にしちゃずいぶん遠慮しがちな答弁をしていると思っているのですがね。この程度のことですから、そんな弱腰じゃ、無数にある公害問題に対して取り組むなんということはできませんよ。私は一番銭のかからない、一番やりやすい方法と思って、そういう配慮でもって質問をしているのですからね。それ以外の問題はもっと手間もかかるし金もかかるし、問題の困難な点ではもうはるかに大きいですからね。それじゃまあこの問題はきょうはこの程度で私は保留しておきます。  いま一つ、災害の問題とも関連するのですがね。公害と災害、一応委員会は担当は違っておりますけれども、関東大震災という大正十二年の経験がありますけれども、一定の周期でもって大震災がまた発生するという学説を唱えている学者もおられるわけなんです。その関東大震災と同じ程度の大地震があったときに、東京並びに東京周辺、この首都圏がどんなことになるのかということは、十分に考えておく必要があるのじゃないかと思うのですね。で、その大地震は対応できるような広場がとってあり、道路が広がっており、すべての防災対策ができておるということであれば心配ないのでありますけれども、現状はそうでないのです。だからこの関東大震災に準ずるような大地震の可能性があるのかどうか、そういう問題について専門的に研究をしているならば、その研究の結果、どういうことになるかという一つの予測が立つと思う。それらの予測と、それに対応する対策というものはどういうものがあるのか。これはいつ何どき起こるかわからないことだけに、われわれも話を聞けば、ちょっと薄気味悪い気がするのですがね。これは建設省で担当してやっておられるのではないかと思いますので、まずその点をお伺いいたします。
  118. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 瀬谷さんも御存じのように、地震の予知については非常に学説的にもよだ究明されておらないのであります。ただ、今日までの研究の結果、大体こういうことであろうこいうことで、予測を現在やっておるわけでありますが、これは的確に当たるかどうかについてはまだ保証がないという状況であります。これは実粉に関すること、しかも非常に科学的なことでありますので、私はそうしたものをまとめたことを申し上げまして、さらに詳しくは事務当局から御答弁いたさせます。  現在地震予知としてとられておる方法は、まず地殻の活動の異常状況、これは微小、極小をも含めた小地震の前震活動、地震の起こる前の徴候をデータで集めていく。それから、地磁気、それから地電流の異常、それから地震波速度の変化等、こういう現象をずっと計測して、その場所、それからその大きさ、それからいつごろ起こるであろうかということを予測しようとする方法でございます。それからもう一つは、過去の資料を統計的に調べて、それから推測をすると、この二つの方法でいまやっておるようでございます。それから関東南部につきましては、これは現在でも地震予知連絡会を開きまして、気象庁、それから地理院の測量部等、こういうものでやっておるのが現段階でございます。  そこで、いわゆる統計的に六十九年周期説というものもありまするが、一部におきましては、これが必ずしもそうは見られないという学説もあるようでございます。南関東のうち、西埼玉地震が昭和六年に起きておりまするが、この間すでに四十年になる、四十六年ですから。東京で震度五の地震はまだ起きていないというような状況で、この点はさらにもっと観測を深めていかなければならないという感じがいたしております。  ただ、御承知のように、変歪測量によって一部の変動があるということは、南房総が上がったり、それから伊豆のほうで大島との間のあそこが縮まったとか、こういうようなことがありまするので、やはり地殻の内部にかなりのエネルギーが蓄積されておるということだけは言えるわけでございます。  先般も世界の地震学者を日本に招集いたしまして、そうして地震の予測、それからいま南関東の問題等もいろいろ検討されておりまするが、結論的なものはまだ出ていないようでございまするが、しかし、お示しのとおり、これ一たび起こりますならばたいへんな被害になりますので、でき得るだけ予測並びに推定を確立ならしめる努力はいたしております。  それから、これに対する対策といたしましては、総務長官から総括的な御説明があるとは思いますけれども、すでに政府といたしましても、もう大体近く六月中、あるいはそれ前に出るかもしれませんけれども基本的な対策を九つのグループに分けて検討する。おおむねこれがととのいつつあるわけであります。御承知のように、災害対策、特に地震に対する災害対策は、地域によって非常に違うわけでございますので、政府としては基本的な要項をつくりまして、これに基づいて都道府県がそれぞれの実施計画をつくることになっております。ただ、東京のうちの江東地区は、特にこれは被害が相当深刻になると予想されまするので、実は一つのモデル的な地域として、建設省が東京都に対して、ある意味における指導的な動きをいたしまして、これの地区についてはあるいは防災地域をきめまして、そのために避難街路あるいは避難場所、それから避難緑地、それからもう一つは、防火のための一つのプロジェクトをつくりまして、それをいま計画的に進めておる。なおまた、防潮堤は大体できましたけれども、内水面の対策がまだおくれているようなので、これも計画的にいま進めております。東京都はこれと協力して、実施面もいま着々しておる、こういう段階でございます。  こうしたものができてまいりますれば、この前の、本年の予算委員会でもかなり問題になりましたので、やはり何としてもいままでの経験からいたしますれば、地震そのものの被害よりも、それに続いて起こるところのいまの火災、それから一つのパニック現象のために起こる災害のほうが多いのでございまするので、これにはやはり結局それぞれの人々がみんな自制して、どういう行動をとることがいいかということを知っておれば、災害が非常に押えられるということで、そのために、たとえば地下鉄に乗っておるときに地震がぱっときたときに、どういうふうに地下鉄を運営するか、乗っている人はどういうふうな心がまえでやるべきか、あるいは高層建築におる人がぐらぐらときたときに、それによっては倒れないのだけれども、人間の心の動揺から、みな殺到してわあっとおりだすと、あるいは今度はビル街から町中に出てくる、自動車が突破するというふうなことの被害が多いようなのでございまするので、それについては一つは手引き書と申しますか、心得書のようなものをいま準備してもらっているわけであります。で、それをずっと一般国民に知っていただくと同時に、それらに基づいて今度は地域的な訓練をしないと、一緒にはできませんけれども、少なくとも町内、あるいは区単位で演習訓練をして、これに対応するという物的な措置の対策と、それから心の準備、訓練と、こういうものをあわせてやるべきだと思って、いませっかく準備しております。  なおまた、建設省が所管しておるものについては、全国的にまずダム、橋梁あるいは建物、こういうもののいま総点検を命じております。六月中にこれはたぶんまとまる予定でございます。その結果、もし理論的には十分でありますけれども、総点検の結果、脆弱なもの、あるいは腐朽しているようなものがわかりますれば、直ちにこれは改善あるいは修理、あるいは全部取りかえるというようなことを都道府県に指示して、これに必要なる予算措置も明年度から実施しなければならぬと思いまして、いま調査中でございます。  以上でございます。
  119. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 この間、千葉でデパートが火災になったとき、あれは約一昼夜燃え続けて、町じゅうの消防署が寄ってたかって水をかけたけれども、どうにもならなかったんですね。ビルの火災というものは、外からの延焼に対しては強いかもしれないけれども、内部で発生した場合には手がつけられないという一例を見せつけられたわけなんです。それと、たとえば大地震の場合ですね、まあいろいろなことが起こると思うのですけれども、火災が同時に多発をすると電気がとまる、信号がとまる、町じゅうが大混乱になり、電話もとだえるということになっちまう。たとえば電気がとまるということだけでも相当な問題になってくると思う。  ついこの間なんですけれども、会館で停電がありまして、エレベーターがとまっちまった。たまたま私が乗っておったエレベーターが変なところでとまっちまって、さあ、非常の際には電話をかけてくれということになっておりますけれども、女の子が電話をかけたけれども、今度は通じない。それでもう何が何だかわからなくなっちまう。手動でもってとびらをあけるしかけがあるので、手動でとびらをあけてみたら、ちょうど何階だかわからないけれども、まん中辺なんですね。上のほうにこういうすき間があって、下のほうにこういうすき間がある。上からも出られなきゃ下からも出られない。変なところにとまっちまった。そういう状態になったときに、じゃあ火災が発生したなんということになれば、これはもうどうこもならぬわけですね。エレベーターなんというのは、そういう点じゃ始末が悪いということです。  会館の一つの例をとってみましても、これはエレベーターの問題だけじゃありませんが、千葉のデパートのような火災になった場合ですね、非常階段はないでしょう。会館でもどこからどうやって逃げたらいいのか、上のほうから燃えてくれば下のほうへ逃げればいいけれども、下から燃えてきた場合に、上の人はどうしたらいいだろう。非常階段はないし、それから、救命袋なんというのもあるようですけれども、あれを引っかけるたって、どこに引っかけていいかわからないし、かなりむずかしいんですね。まあ会館の例をとってみても、異常災害の場合にはかなり問題があります。だから、会館よりも設備の悪いビルというのは無数にあると思います。それらの高層建築が一斉に火災になったという場合に、消防能力があるか、消火能力があるかですね。おそらくないのじゃないかと思う。そういうことを考えてみた場合、まあいま大臣は訓練をというような話だったけれども、戦時中の防火訓練みたいな式のことをやったって間に合わないと思うのですよ。これは根本的に考えなきゃならない。そういう大地震がないという保証があればいいけれども、先般のロサンゼルスのような大地震が関東にあったならばということを考えてみると、これはどうにも方法はないのじゃないかという気がするんですね。  で、先般、首都圏整備委員会でもって災害の問題についての質問が出ましたが、江東地区では何十万という人がいるけれども、おそらく全滅でしょう。事もなげにこう言われる。東京の一千万の人ローこれは何も東京に限らないわけですよ。京浜地帯から京葉地帯まで、非常に首都圏全体が多数の人口をかかえているわけですから、ここでそういう大地震になった場合には一体どうなるのか。まあ全滅でしょうなんてあっさり言われちゃ、これは生き残る人はいいかもしらぬけれども、全滅のほうに入る人はだまらないわけです。もっとこれは真剣に、統計的にも可能性があるかどうか、その地震の可能性があった場合にはどうしたらいいかということを考えるべきじゃないか。汚水だとかばい煙だとか、悪臭だとか、俗に言われている公害は、これは発生の原因があるわけですよ、どこかに。だから、その原因を突き詰めて何とかするという方法はあると思うのですけれども、地震のようなのは、文句の持っていきどころがないわけです。だから、言うならば、こういうのこそ純粋の公害になるのじゃないかと思うのです。  だから、こういう問題を私はもっと専門的に突っ込んで研究すると同時に、その対策というものは一朝一夕にできることじゃないだけに、もっと念を入れて万全を期すべきじゃないかと思うのです。その点を再度お伺いしたいと思います。
  120. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 御指摘のとおりでございまして、これは実は、先般各国の地震の権威のある人たちが集まってきたわけですが、ソ連のある学者が、日本で六十年周期説なんて言っているけれども、あれは統計的であるということと、科学的であるということがどう結びつくのか、われわれには不可解だと、こういう質問をされまして、私も実はそれはわからない。しかし、現実に統計的にはそうなっておる。それから地震の予知ということについては、いま宇宙旅行までできるような状況がありながら、なぜできないかという逆に質問したら、アメリカの学者の諸君も、これは全く、宇宙の方面の見当はある程度までこれはつかめるけれども、しかし地殻の変動に基づくところの地震については、あまりに複雑な要件が累積しているために、実はアメリカでも非常にこれはわかりにくい、こう言っておりました。したがって、これは一国だけではできない。それで、国際的な地震の検討をすべきだということで、先般も実は日本でこれを主催してやっているという状況でございまして、これは学者の皆さんが一生懸命に研究されて今後いかなければならぬと思う。  それから、対策の面でございますが、これはやはりアメリカでも、あのロスアンゼルスの結果に基づいていつ対策結論が出るかといったら、やはり一年はかかる、あれだけのデータを集めても。そういう状況でございます。それで、日本といたしましては、非常に今日まで議論されながら、ややもすれば、のど元過ぎれば熱さ忘れるというようなことで、どうもこれは実施面に結びつかない傾向が非常に多かったと思うのです。そこで今回は、災害対策本部で一応基本要綱ができますれば、今度は政府全体といたしまして、各都道府県に具体的な災害の対策実施計画を立てさせまして、これに基づいてやはり着実に、あるいは都市計画の手法の中にはっきりこれを組み込んでいく、あるいは河川計画にこれを組み込む、あるいは消防充実の計画を立てていくというふうに、今度はきめこまかに具体的な指示をしていかないと、結局議論して、そうして答弁をして、要綱をつくって終わりというような私は気がするのですよ。その意味で私は、山中長官が主宰して今度この総合計画を立てておるわけですが、これはあくまでも要綱なんです。これが実施はどこまでも都道府県がその気になってやらなければいかないわけでございますから、これが要綱ができましたならば、直ちに各都道府県に実施計画の提出を求めるつもりでございます。そうしてそれに基づいて今度は各省がそれぞれの予算措置をフォローしていかないと、結局議論ばかりしておって、あとはしようがないというふうなことで、これははなはだどちらも責任をとらないで、評論になってしまうということで、そういうふうにして進めていくべきだ。  これは特に電電会社とか何かも、ただ、いまのところは普及率だけ一生懸命やっている。しかし、そういう場合になったときの対策ははたしてあるか。これはないと思う。それから、いまの地下鉄でもそうです。それから鉄道でもそうです。いまのところはもう賃金ベースアップと合理化のけんかばかりしていて、そうしたときのことは、はたしてどこまでいっているか、フォローがない、こう思います。こういうことではいかないから、やはり基本計画を立てて、それに基づく実施計画を各関係官庁から、それから企業体もやらなければならない。  いま一番問題になるのは、私はこの京葉地区においてはいまのコンビナート地区、いまの石油コンビナート、鉄鋼コンビナート、こういうところに起こったときには、もっと大きな危険物がある。だから、これはよほど通産省と各省は協力して、そうした場合におけるところの手段、方法、これをちゃんと規定してやっておかないといかないというような気がいたしまして、今後御指摘のように非常に重大な問題でございますから、われわれは総理府の防災会議を中心として、各省が綿密な具体的実施指導計画を立てていかなければならぬと考えております。
  121. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 一つだけ関連をして。私はいま建設大臣の御答弁を伺ったのでございますが、建設大臣はたいへん御尊敬申し上げておりますけれども、いまの御答弁というものは、あの関東大震災のときに東京のまん中にいて、あの震災の起こったときにどんなふうに火事が起こったか、どんなふうに市民が逃げまどったか、私の場合はそれをつぶさに東京のまん中で、自分の目で見て、三日三晩逃げ回った。自分の家族は鎌倉にいて、その生死のほども、電話をかけることも電報をすることも何もできないで、たいへん心配をしていた。ようやく五日目に歩いて歩いて、軍艦に乗せてもらって、そうしてもう水ぶくれになった水死体が海面に一ぱい浮いている。その中を通って、そうして横須賀まで着いて、それからまた鎌倉まで歩いて——その途中全部の家がつぶれて、その下にまだ生きている人がそのままつぶされているという状態の中を歩いて、そうしてやっと鎌倉の家に帰った。そういうような経験を持っておる者から見ますと、まことに心細い御答弁になります。大臣は関東大震災を御経験なさったでしょうか。
  122. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) 私は子供の時代いなかにおりましたから、話は聞いていますが、それは体験はいたしておりません。
  123. 加藤シヅエ

    加藤シヅエ君 そういうふうですから、そういうのんきな答弁をしていらっしゃる。ですから、おそろしさが一つも実感がないのです。それは大臣だけではございません。ほかのえらい方たちがこの地震の対策をいろいろ講じていらっしゃるのを見ていると、もうまことに人ごとみたいで、自分が死ぬかもしれないという実感は一つもない。  これは私は、ごく最近テレビで、どこぞかの小学校で地震のときの演習をしました。どういうことをしているかというと、地震だというと、子供が一斉に机の下にさっともぐって、さあ、済んだから逃げろといって、ちょいちょいとかばんなんか持って逃げる。あんな机の下なんかにかがんだくらいのことで、ほんとうに関東大震災くらいの地震が起こったら、そのとたんにどこかに飛び出さされてしまう、そういうことのおそろしさが一つもわからない。また、学者の方が仮装の家なんか建てて、何度の地震のときにはこのくらいだとか、何度の地震のときにはこれくらいだとか、関東地震のときはこのくらいだということの震動なんかを実験して、テレビで見せたのを私は見たことがありますが、そんなものじゃございませんです。  それから、この間のロスアンゼルスの地震のとき、私の親戚の者がたまたまロスアンゼルスにいてホテルで泊まっておりました。地震だなと、そしてひどくゆれるな、それでどうしたかというと、逃げ出さないで、そのまま眠いから寝ちゃった。そしたら、そのうちに外のプールの水がばしゃばしゃいったから、 これはたいへんひどい地震だと言ったけれど、そのまま着がえもしないでまた寝ちゃった。そういうような場所なんていうのは関東大震災のときはなかったんです。そして、ロサンゼルスの地震は横の大きなゆれがあったらしいけれども、下からの突き上げはなかったらしいんです。それから、ひんぱんな余震というものも非常に少なかったらしいんです。そういうようなことを全部経験した人の話、これをもう少し参考になさらなくちゃ、まことにのん気にこんなことで、一千百万の東京都民は総死にになってしまう。  私は具体的な策を一ついつも考えております。それは、こういう具体的な災害防止の策をお立てになるときに、まず第一に火事が一番こわいわけです。この火事に対しましては、いまの火事の一番たくさんの原因は、石油ストーブがひっくり返ることです。この石油ストーブを急速に何かほかのものにかえるということは、お金を出せばできるんですが、これは政府がお金を出して安全な暖房設備にかえるということが、それがまず第一です。それから、ボンベがみんなひっくり返ってガスが出て、またそれに引火する。この二点だけでも具体的に予算を取ってお講じになる。私はこれを進言したいと思いまして、あえて申し上げます。
  124. 瀬谷英行

    瀬谷英行君 最後に長官から。いま建設大臣からお話ございましたが、長官のほうからも——加藤委員からの御質問もございましたが、対策というものはもっと具体的にやっておく必要があるんじゃないかと思うんですよ。で、加藤さんが関東大震災の経験があるとおっしゃったんですが、私も経験があるんです。ただ、私の場合は加藤さんよりだいぶ年が下でして、ちょうど私の母親が加藤さんと同じ年だったんです。そして、かかえられて逃げ出したことを覚えている。ただ、夜になって空がまっ赤になった。あのおそろしさというものは、四つか、五つだったんですけれども、いまでも忘れられないんです。当時の東京といまの東京は全然違いますからね。ここであの関東大震災並みの地震がもう一回起きたならばどんなことになるか、いろいろ考えてみると、私はちょっと想像に絶するものがあるんですね。それだけに私は、地震はないかもしれないけれども、あった場合には困るんですから、どこにも文句の持っていきようがないんだから、だからその対策というものを真剣に考えるべきじゃないかと思うんです。加藤委員からも関連の質問がございましたから、その点について長官のほうからの答弁をもう一度お願いしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  125. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 当時二つでありました坊やであります私が中心になって、いま一応各省のこれまでの研究の成果等を踏まえて、来週の火曜の閣議後に中央防災会議を招集いたしまして、総理が議長でございます。検討事項を要綱として進めておるわけでございますが、「大都市震災対策推進要綱案」というものでございます。項目だけ申し上げます。  一、大都市震災対策に関する基本的な考え方。  二、事前の対策。1、震災に対する防災体制の整備、2、震災に関する知識の普及、3、震災訓練の実施、4、公共施設等の点検整備、5、情報収集、伝達体制及び通信施設の整備、6、火災防止対策、7、都市防災化事業の推進、8、避難地及び避難路の確保等、9、道路交通規制の事前措置、10、応急対策用資機材の整備等、11、震災対策に関する研究開発、12、地震保険制度の検討。  三、災害応急対策。1、災害対策本部の設置、2、緊急措置、3、情報の収集及び伝達体制、4、消防対策、5、避難対策、6、緊急交通確保対策——これはたとえば道路が火の海になるというようなことなどもいまの自動車の状態から考えられるわけですから——7、施設の緊急復旧、8、救護対策、9、警備対策、10、自衛隊の災害派遣。  それから事後になりますが、四、震災復旧の方針。1、民生の安定、2、震災復興計画、3、経済秩序等の早期回復。  これらの柱のもとに、一応持ち寄れるだけの知恵を持ち寄り、また、ロサンゼルス地震の政府調査団の報告等をもとにして一応はまとめてございますが、ただいまの加藤委員の実感としての、とてもとてもそんなものではないんだという御意見は、私どもとしてよく身に体して、実感としてのどこまでそれができますか、努力したいと思いますが、あまり恐怖感にとらわれるような、先ほど申しました江東地区全滅というような、策のないようなことを言うようなことは、やはりこのような場合においては流言飛語、パニック状態ということも非常に輪をかけますので、慎重にかつ細心にこれらの問題を、六十九年周期説をとるとらないは別にして、やはり大都市の態様が違ってまいっておりますので、これらの問題を十分に検討いたすために、まず来週の火曜に第一回のそういう地震対策をやるということになりましたことを一応申し上げておきます。
  126. 竹田四郎

    竹田四郎君 他の委員会との関係がありましてまいっておりませんでしたので、あるいは重複する部分につきましては簡明に御答弁ただければ幸いだと思います。  今度できます環境庁、これ読んで見ますと、環境庁の事務の所掌あるいは権限というものから考えてみまして、名前は何か環境庁ということで、たいへんすぐれて、いい感じの名前をおつけになっているわけでありますが、それではほんとう環境保全、それを優先的にやっていく役所なのか、それとも、公害基本法で述べられているところの公害、それの防止対策をやっていくのか、どうもその付近が明らかでないような気がいたしますが、要綱を読みましても、「公害の防止」という文言が一番最初にきておりまして、「その他環境保全」ということで、非常に環境保全ということが低位にあるわけですが、いままで出ておる公害の防止というのは、私はどちらかというとあと追い対策というような気がいたします。そういう意味で、私ども環境保全をするというこことが、今後の生活環境を高めていく、そうした意味でたいへん大切だと思います。たとえば、これは先ほどの長官の御意見の中にもありましたように、生態学等を導入して事前に大気汚染を防止していく、水質汚濁を防止していくというような形がなければいけない、こういうふうに思うのですが、公害防止ということと、環境保全という関係は、一体どういう点にあるのか。あるいはこの要綱の中の「環境庁設置」の二番目に「自然環境保護及び整備」、自然環境保護というのは一体どういうことなのか。これを環境保全とはどう違うのか、こうした点をお聞きをしたいと思いますが、何か私は公害防止のあと追い行政のしりぬぐい勘定という印象を受けるわけでありますが、御所見を承りたい。
  127. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは最初に「公害の防止」ということを第三条で頭に置いたために、そういう御意見があるいは疑問として提起されたのかもしれませんが、それを全部締めくくって、「国民の健康で文化的な生活確保に奇与するため、」ということにしてございます。これは憲法二十五条の、私たち国民がこういう権利として持っておるそういうものを、環境庁としては任務の一番基本姿勢にするんだという意味で持ってきたんです。現実としては、不幸にして日本の場合においては、やはり公害が人の健康、生命に影響を与えるところまできてしまっておりますので、これは国際的にも恥ずかしいことでありますから、まずこれは当面の主軸として、公害防止ということは大気汚染あるいは水質汚濁、こういうものについて特別に大きな柱を立てて、すみやかにこういう現状というものをあるべき姿に取り戻す仕事という規制事務というものを実行していくということであります。そして、一方の柱には、これは取り込んだ範囲が国立公園を中心にいたしておりますために、「自然環境保護及び整備その他環境保全を図り、」という表現になっておりますが、国立公園の仕事、国定公園並びに鳥獣保護、狩猟行政、こういうもの等を含めて自然保護局というものが出発をいたします。これがやはり大きな今後の柱の一つでありますし、ここを踏まえて都市計画等の近郊緑地あるいは林野行政等の各種保安林、こういうもの等、全体に対して環境庁長官と協議するという形をもって、国土環境保全という広い意味に対処できるような姿勢をとっておるのでありますが、まあ字句の並べ方あるいはその順番その他で、あるいは少しそういう誤解を招くかもしれませんが、結論として申しますと、環境庁とは一本の柱は自然保護という、これから相当範囲が広がってまいると思いますが、そういうこれはレンジャー部隊を含む実務までやるわけでありますが、そういう柱が一本、さらに各省の実務として行ないます行政についての調整権能というものを踏まえながら、しかしそれらの実務の前提としての公害の発生を起こさせない、あるいは規制するという調整業務を含めた水質保全、大気保全、こういう実務というものを行なっていく。要するに調整と実務と両方行なっていくものであります。建設大臣とは大局的な見地から、環境庁出発の際に、この際私たちの人間の生活に伴って最も必要な社会資本投資としての公害防止の大前提である下水道行政というものをまるまる環境庁に移そうじゃないかという相談をしたわけです。建設大臣も大局的に、それはこの際やれるならばやろうということでございましたが、ちょうど建設省もことしの予算でやっと何とかかっこうのつく新五カ年計画が設定されたばかりで、公害部の設置というものも認められたばかりでございますし、一方また、通産省から水道関係等も移して、完全に一元化された下水道局みたいなものをつくるのには少し時間的に間に合いませんでした。しかし、建設大臣も、あるいは事務次官等も非常に前向きで協力を約してくれましたので、今後やはり私ども国民の一番必要な下水道整備等についての達成率というものは、諸外国に比較して、この五カ年計画を終わってもなお四六%ということでございますから、先進国に比べてですね、ですからこれはやはりいずれ国民のためにも、また直接こういう行政に携わる人々のためにも、建設省自体のためにも、環境庁にいずれ移していくような日が来るであろう。そうなりますと、完全に環境公害防止についても、自然保護と同じように、実務行政まで全部入っていけるということになると思いますが、まあ幸い建設省との間には基本的な姿勢で合意を見ておりますので、今後新しい環境庁においてよく相談をされて、そういう方向に、国民の期待する方向に進めていってもらいたいものと念願しております。
  128. 竹田四郎

    竹田四郎君 長官の御答弁、たいへん私、展望が開けるような思いで伺いました。そういう立場でお進めいただくということについてはたいへんうれしく思います。しかし実際この環境庁というもの、役所の性格が総合調整的な仕事が実に多いわけです。これに似たような役所というのは私は経済企画庁ではなかろうか、経済関係機関の調整というようなことをやる横割りの組織になっているわけです。それで、経済企画庁はいまの二つの大きな社会問題、その一つであります物価対策、これはたいへんな大きなものであろうと思う。これを見ましても、実際ここは経企庁の方がおられないから言うわけではございませんけれども、私どもの前ではたいへん強いことを言いましても、帰ってしまいますと、どこへ行ったかわけのわからぬようになってしまう。ビールの値上げにいたしましてもそうでありました。牛乳の値上げにいたしましてもそうであった。もうすべて委員会の答弁はなかなかはきはきしているのですが、帰って関係省と話をするということになりますと、いつの間にかどこかへ行ってしまう。無視をされてしまう。こういうのがいままでの経済企画庁の実態ではなかったか、こういうふうに私思っているわけでありますが、どうしてもこの予算をみずから持っていない、みずからが事業省庁でないというところですと、いままでの状態では事業省庁の主張が強くて、いわゆる調整関係の力というものが非常に弱いというのが実態であったわけですが、私はどうもそういう心配も一つ感ずるわけでありますけれども山中長官がやっている限りはかなり力強く各省も屈服させるであろうと思うのですけれども、まあ山中長官もいつまでも、この環境庁長官になるかならないかもまだ私ども承っておりませんし、いままではたいへん御苦労してきていただいているわけであります。そういう点を見ると、どうも経済企画庁的な存在になるのではないかという心配を私はたいへんしているわけですが、いかがでしょう。
  129. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 環境庁を発足させる産婆役として私もその点を非常に心配をいたしました。したがって、まずこの長官の権限、権能というものをどこまで持っていけるかということでそれは勝負がつくと、経企庁長官に与えられていない権能をどうしてもとらなければ、この緊急事態に対処できない、あるいは私たちが子々孫々に残す環境というものを保持できない。こういうことを考えましたので、お手元に法案がまいっておると思いますが、法律の第六条に「環境庁の長は、環境庁長官とし、国務大臣をもつてあてる。」ということから始まる権限が書いてございますが、その第二項「環境庁長官は、環境保全を図るため必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し必要な資料の提出及び説明を求めることができる。」、「3長官は、環境保全を図るため特に必要があると認めるときは、関係行政機関の長に対し環境保全に関する重要事項について勧告することができる。」、ここらから相当強い権限を持ってきます。「4長官は、前項の規定により関係行政機関の長に対し勧告をしたときは、当該行政機関の長に対し、その勧告に基づいてとつた措置について報告を求めることができる。」、ここまででも他の大臣と違った大臣ではあるわけです。しかしよその大臣が同じ大臣同士だからと言って、報告を求めても、しなかったり、求めても、いいかげんなものだったり、あるいは口と実行と伴わなかったりという場合のことを念頭に置きまして、第五項で、「長官は、第三項の規定により勧告した重要事項に関し特に必要があると認めるときは、内閣総理大臣に対し当該事項について内閣法第六条の規定による措置がとられるよう意見を具申することができる。」、すなわち、内閣総理大臣は、閣議において法定された方針に基づいて関係行政機関の長たる国務大臣を指揮するという、この総理大臣各省庁の長たる国務大臣を指揮する権限を発動することを要請する権利を与えております。これは私は今後相当強く、運用次第によってでありますけれども、その姿勢というものによって生きてくるということを確信を抱いておるわけであります。  一方、予算面については、さしあたりは、一般の環境行政については、これは調整——いわゆる予算の要求をいたしますとき、長官が全部説明を求め、意見を述べ、訂正をし、いろんな手段をとって、一括して各省庁から出すものに対する環境庁長官意見をつけて大蔵省に出す。その過程において、大蔵大臣環境庁長官とが協議しながら、最終的に全体のバランスとして、どのようなおさまりぐあいで各省庁に予算がつくかという見届けをした上で予算が確定するという仕組みにしておりますが、研究費については、もう四十七年度から環境庁で一括計上をして、それを各省庁に配分するということにしております。なお、調整費みたいなものは、それでもやはりどうしても持っておりませんと、各省予算の調整機能を持っておるといいましても、何らメリットがない場合においてかってにおろしてしまう役所等も出てくる可能性もありますから、できれば一般の予算の中で調整費を環境庁には取れるようにしたいというふうに、大蔵省といま相談中でございます。
  130. 竹田四郎

    竹田四郎君 なかなか景気のいいお話でありますけれども、まあ、山中長官ならそのくらいのことはおやりになるだろうと思うんですが、実際上はなかなかそこまでいくかどうか、私はたいへん心配をしている一人でございます。  その問題に入る前に、環境庁がこういうふうにできますと——いままでの公害対策というのは非常にばらばらであったわけです。各省庁のやっていることがまちまちである。片方では農業生産を高めるために薬を使う、片方では使っちゃいけない。その間の調整なんというのは、いままでなかなかついてなかったわけです。そういうことが国民をして腹立たしくさしている一面でもあると私は思うわけでありますが、環境庁ができて、そうしたばらばら行政というのははたしてほんとうに統一されるのかどうか。いままで、特に官庁のセクショナリズムというものでありますか、そういうようなものを私どもはたいへんいつも見せつけられているわけでありますし、実はうんざりもしているわけですね。片方ではこの薬はきくぞと言っていたんだけれども、片方じゃそんな薬は全然きかないというふうなこともあったわけでありますが、そういう意味で、セクショナリズムの解消、あるいはばらばら行政の解消ということについて、この環境庁設置法との関係は一体どうなるのだろうか。その辺がはっきりしていかなければ、おそらく、先ほどいろいろおっしゃられた環境庁長官に与えられている強い権限も、ついに発動できないというようなところに押し込められてしまう。長官は意思があっても、そういう形で押し込められてしまう。こういうことは私はあるだろうと思うんです。そういうばらばら行政各省のセクショナリズム、こうしたものをやはり解消するということがなければ制度として生きてこないのではないかと、こういうふうに思いますが、いかがですか。
  131. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これはもう第四条第一号で、「環境保全に関する基本的な政策を企画し、立案し、及び推進する」ということでございますから、一切の公害防止の基準設定その他、環境庁が行なうわけです。したがって、たとえば、大気、水質、騒音等で電気、ガス事業等が適用除外をされて、それぞれ独立法の公害対策にゆだねられておりますが、これら等についても、やはり、一応、広域供給行政、さらに低硫黄重油確保行政、こういう問題で環境庁がすぐに全体を引き取ってやることはむずかしかろう。しかしながら、これらの問題についても、やはり直罰規定等を含めた公害防止の行政のあり方について、環境庁長官はすべてにものが言えますし、また、経企庁の国土開発審議会等を含めた、それらあらゆる審議会に、環境庁長官はそれに対して全部入るということになりますので、大体において、いままでのばらばら行政と極端に言われたようなことは、先ほどは例を別にとられましたが、たとえば米で、厚生省が発表した要観察基準のPPMと、買い入れをしないPPMと、国民にはたいへんなやっぱり食糧でありますだけに困難を与え、また食糧管理行政の農林省は非常にまたその混乱をしばらく収拾し得なかったということ等は、これは私どもはもう最近体験したことでありますが、こういうようなことが今後起こらないことは、私は環境庁行政責任者たる長官のやり方いかんによってその権限が行なえるわけでありますから、そういう国民から、一体、環境庁ができて、しかも大臣の数が多きがゆえにとうとからず、それをしかも大臣をわざわざ一人ふやして、そうしてなおかつ何やってるんだというようなこと、というような批判を受けるようなことが絶対にあってはならないし、また、環境庁長官が一名増員されて、専任で、もっぱらそれに当たるわけでありますから、すべての法律整備して、再出発しなさいと言われて、そのあと行政運営について姿勢がなっていないとか、国民からなおかつ非難されるということであれば、私はこれは明らかに政治として敗北であると、こう考えておりますが、そういう観念論は別にして、今回の法律の権能の行使によって、いままでのような極端な事例というものは姿を消すことは間違いないだろうと思っております。
  132. 竹田四郎

    竹田四郎君 いろいろおっしゃられたのですが、どうもはっきりそれを確保できるようなことが一体あるだろうかという気が私はするわけです。さっきの勧告権の問題もあります。その勧告権の問題にしても、勧告するだけであります。そして、さらにその勧告したものが、必要であると認めたときには総理大臣に何々できる、こういうふうにおっしゃっておりますけれども、しかし、閣僚の中でこれをばっとやるということが一体できるのかどうか。ただ個人の、人の問題だけに私はそういうものを回避してはならない。それはやはりちゃんとそうしたものが確保される体制というものをもう少し考えていかないと、やはりばらばら行政になり、各省庁で意見がおおきに食い違ってしまう。この間ある人が、日本公害行政の中で合意というものを求めるという、その合意とは何か、各省庁で異論のない点が合意である、こういう皮肉たっぷりなことを言っておられましたけれども、そういうふうになる可能性というのは、どうも私はありそうな気がするわけです。長官答弁を聞いている間は、ああなるほどなと思っているのですが、聞き終わったとたんにそういう心配が出てくるわけでありますが、そういうものは、ただ単に環境庁長官が、勧告権や、あるいは具申権というものだけでできるようには私は思わないわけでありますが、そうした点は、もっとはっきりとしておかなければいけないし、私どもは、環境庁を中心にして、まあ省の中ではそうでありますが、国全体の中では、やはりそうしたセクショナリズムを起こさせないというためには、公害行政の権限をひとつもっと下におろして、地方自治体におろしていくということが必要であるし、公害というものが非常に地域的なものであるだけに、その地域の実態に合わせて、地域住民公害防止に対する直接的な参加、こうしたものなしには、私はいま長官がおっしゃられたような形で、ばらばら行政も、セクシヨナリズムも解消されるというふうに——ことばの上では聞いているわけでありますが、どうもその辺がはっきりいたしませんけれども環境庁では当然、私その環境保全計画というような計画というものをつくり、それを国民に示していくというようなことはおやりになるわけですか、どうですか。
  133. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは法律上、環境保全計画をつくって国民に示すという形には、そういう表現をいたしておりませんが、必要に応じて水質なり大気なり、そういうものの環境基準、そういうものを達成するための排出基準なり、そういうものを逐次示していく、そういう権限はおおむね全部地方にゆだねましたので、それらに対していずれ定められます政令等によって、知事に権限が委譲された上積み権というものが行使されるでありましょうから、それぞれのローカルに必要な範囲における最も適切な処理が地方においてとられていくと思います。その際に権限だけ委譲したんでは、はなはだ地方は迷惑でありましょうし、その人員等についての財政的な措置等の一応配慮も大幅にいたしておりますが、あるいは公害防止事業費事業者負担法等に伴う事業の対象の明定、あるいはそれに伴う地方財政のかさ上げ等、それぞれ御審議願って成立をすでに見ておるわけでありますので、地方にそうひどく御迷惑をかけないで、地方の住民から選ばれた責任者の方々が、その環境保護行政を展開される上において、環境庁は明確なよりどころとなるすべての一切の権限の集中的な処理をすることができるわけでありますから、それらの辺の、地方がばらばらにならないように、環境保護公害防止行政の立ち入り権限その他を持っております地方の職員諸君が、ばらばらの知識やばらばらの基準でもって行動したのでは、これがまた全国にばらばら行政がちらばってしまいますので、その辺の意味を考えて公害研修所等を法律に明定いたしました。これは東京都に置くつもりでありますけれども、都内に置いて、逐次地方からそれぞれの第一線の担当業務の実務の諸君を東京に集めまして、そうして最も新しい公害の態様とその防止技術、あるいは機械測定の方法等について最も斬新な知識と、そうして全国どこでも普遍的な共通の知識とを持たして、絶えず交流させながら、中央において統一的な地方の環境保護行政が行なわれるように、公害防止の行政が行なわれるように補完的な配慮もいたしておるわけであります。
  134. 竹田四郎

    竹田四郎君 いまのお話の中で、環境保全計画というのは、何か環境基準を示したもののような感じ、あるいは公害研究所で研究のプログラムというようなものが計画として細まれるというような感じを受けたのですが、保全計画という、もっと全体的な環境保全という立場での計画というものはつくって国民に示すというようなお考えはないわけですか。
  135. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは先ほど来お答えいたしておりますが、環境庁ができますと、庁長官の一番基本的な取り組みの問題としての大きな課題は、日本国土のレイアウト、いわゆる自然にでき上がってしまった太平洋メガロポリス、そこから発生する公害、一方において産業は発展をしたかもしれませんが、そういうようなことを考えた上に立って、新しい角度から、都市計画から始まる一切の国土の土地利用計画というものを環境庁の第一番目の仕事にしなくてはならないだろう。そういうことを踏まえて、やがては許認可業務までいけるかどうか知りませんが、企業の立地という問題まで環境庁というものはこれに対して取り組みの一義的な官庁でなければならない日が近い。そのための取り組みというものが環境庁のまず一番研究課題として根底に横たわっておる問題が一つあるということを御説明申し上げておりますが、そういう意味において、日本列島の土地政策というものをやはり日本においては環境庁主導権を持ってこれを推進していくということが必要であろうと考えます。その意味においては私のお答えのしかたが別の受け取り方からの答弁でございましたので、あるいは御不満であったと思いますが、ただいまの御質問に答える意味においては、先ほど来このようなことを答弁しておるわけでございます。
  136. 竹田四郎

    竹田四郎君 建設大臣お急ぎのようでございますから、先に質問を申し上げたいと思いますが、いまの公害の発生ということは、土地の利用の立場、その問題と切り離して考えるわけにはいかないわけです。いま長官お話ですと、土地利用計画、あるいは産業立地計画というものは、今後すべて環境庁がやるわけだというように私は受け取ったわけであります。建設大臣もそのように、いままで建設省がやってまいりました立地規制あるいは土地利用、こうしたものはもう一切環境庁にお渡しになるわけですか。
  137. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) お答え申し上げます。  従来は土地利用計画的なものは、基本姿勢としては御承知のように経済企画庁がやっておったわけです。それに基づいて、あるいは農林省、あるいは建設省、あるいはまた運輸省という実施官庁がこれを具体的にやってきておったということであります。で、今度は環境保金あるいは公害の防止、自然の保金という観点から、環境庁ができました以上、この環境庁建設省とは都市計画を実施する場合には当然これは協議の上やることにいたしております。したがいまして、今度のあれにおきましても、都市計画法、三十一条の一項でこれは明定いたしました。都市計画を実施する場合に公害防止計画に適合したものでなければいけないから、公害防止の点、自然環境保護についてはちゃんと環境庁と協議の上これは計画を立てるというようにいたしております。それからまた、市街化区域及びその整備、開発、保金、この方針を定める場合においても、建設大臣環境庁長官と協議の上、あらかじめ合意をしてからこれを実施させる、こういうふうにいたしております。なおまた首都圏とか近畿圏、中部圏というものがございまして、この委員会が近郊緑地の保金計画を策定する場合においては、事前に環境庁長官と協議の上これは定める、こういうふうにいたしまして、環境庁建設省及び三地圏の、三つの圏ですね、そこの委員会とは密接な連携をとりまして、公害防止並びに環境の保金に留意をいたすことにいたしております。したがいまして、その点からいたしましても、環境庁設置は大きく今後の国土計画に貢献するというふうに考えておる次第であります。
  138. 竹田四郎

    竹田四郎君 話はわかりました。話はわかりましたけれども、協議してきめるということは、たとえば環境庁意見というものをその中で優先させるという意味にはどうも解することはできないと思います。ただ話を聞いて、そうしてあとはきめる、実質的な問題は建設省が持つ、こういうふうなことが、いわゆる協議してきめると、こういうことになるわけであって、結論的には参考意見を聞く、その程度におさまるんじゃないでしょうか。
  139. 根本龍太郎

    国務大臣根本龍太郎君) そういうことではございません。いまの表現のしかたは協議でありますけれども、この都市計画なり、あるいは建設省が実施する、いまの保全計画等をきめるのは、結局は環境保全し、かつ人間生活に貢献するという目的のためにこれはやることでございますから、したがいまして、必ずこれは優先と言えば、これは環境庁が考えることが優先しているといってもこれは差しつかえございません。ただ、先ほど来御質問があります、その環境庁大臣が各大臣に命令するようなことは、内閣法上これはできない。したがって、勧告とか、あるいはまた総理大臣に、総理のいわば指揮権を要請するということになっていますけれども、おそらくこの環境庁設置にあたって、いままでの内閣法でこれほどの権限を与えたものはないのです。その意味においては、これは抜本的な対策決意していると解釈していいと思います。そういう意味で、われわれのほうも、いわゆる環境庁の言うことは一応聞いておく、しかし、われわれはわれわれでやると、そういう態度ではございません。どこまでもこれは、建設省ただ事務をやることが目的ではなくて、人間生活の豊かなる環境をつくることが、その具体策として建設省がいろいろの都市計画なり、あるいは道路その他をやることでございますから、その主たる目的は、環境庁が考えていることにマッチするように、技術的に行政的に実施していくと、こういうことになっております。
  140. 竹田四郎

    竹田四郎君 どうもその辺が実はよくわからないわけです。先ほどのやはり各省庁のセクショナリズムというようなものが完全に消えているということであれば、それはよくわかる。そうしたセクショナリズムというものは、環境庁ができたから建設省のセクショナリズムはなくなる、あるいは農林省のセクショナリズムはなくなる、こういうことはおそらくないと思うのです。相変わらず事業省と言いますか、そういうところの力が結局は強い。ですから、この辺何かことばの上で非常にむずかしいと思うのですが、同じ対等の大臣でありますからむずかしいと思うのですけれども環境庁の何か決裁を得た上で何とかきめるとか、ことばがいいかどうかわかりませんが、要するに環境庁の権限を優先させていくようなきめ方、こういうものは何かそういう形でやっていく、環境庁考え方環境庁計画が優先していくというやり方を担保するやり方というのは何かないのですか。
  141. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、将来の問題は別として、いまは環境庁は、都市計画をたとえば例にとって脅えば、都市計画を策定し、それを実行する能力はないわけです、建設省部門がまるまる移ってこない限り。そこで建設省がそれらの能力と機構によっておやりになる実務、そのおやりになる計画というものが、自然保護環境保護立場からそれでよろしいかどうかについて相談を受ける。協議をするということは、意見が一致し縛るまで話し合うことでありますから、そこで協議して意見が一致したところでその計画を実行計画として、あと建設省にやっていただくわけであって、また、これを建設省行政の分野まで環境庁が追っかけていって、まあ立ち入るというような感じのそういうとげとげしいものでなくても、私は話し合いでうまくいくものであると思っております。
  142. 竹田四郎

    竹田四郎君 実は一番の心配はその辺なのですね。その辺がはっきりしてくれればいいわけであって、実際上は協議してきめるといっても、いままで協議してきめるということで、ほんとう意見が一致したこともありますけれども、ないことも多いわけであります。そういう意味では、どうも先ほどの一番最初長官答弁がだんだんくずれてきたような感じがしてしょうがないのです。特に都市計画上のいろいろな地域の設定などは、これはやはり騒音あるいは悪臭あるいは水質汚濁と、こういうことに非常に関係があるわけです。こうした地域の設定というものがぴしっとしていれば、私は公害問題というものはこれほど大きくならなかったであろうと思う。そういう点でどうもその辺が、それでは、環境庁がそれでこまかいところまでできるかというと、実際上能力はない。どうですか、まあ建設省のほうの専門家がおっしゃったことでしょうからということで、どうも終わってしまうのではないか。その辺が非常に心配なのですが、どうですか、長官。その点がはっきりすれば、建設大臣お帰りいただいてもけっこうです。   〔委員長退席、内閣委員会理事安田隆明君着   席〕
  143. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは私と根本さんという関係だったら、これはまあ法律を越えて何でも相談できるわけです。先ほど下水道行政も気持ちよく話し合ってやっていくということですけれどもただ、少なくとも法律の上で、それをてん補する法律になっているかどうかという念押しでしょうか、私は大上段のものの言い方をするつもりはありませんが、協議をして、そうしてそれでどうしても意見が決裂だというような場合における勧告というようなことも起こってきますし、そうしてそれがあり得ない場合は、それもむずかしい場合には、建設大臣の言われたように、環境大臣といえどもそれは対等なんだから命令権はない。したがって、その命令権というものは、環境庁長官から総理大臣の権限行使を要請することしかない。こういうことでありますから、今後私はそういうある役所国民環境保全行政に対する考え方というものと全く逆行するというような行政を行なって、しかも、環境庁長官と決裂までして行なっていくような姿勢はとらないと私は考えているのです。また、そういう時勢ではもうないのだと思っておりますので、私としては、建設大臣にお帰り願う願わないの問題よりも、これは建設大臣お一人の問題ではございませんので、各省庁全部、農林もございますし、いろいろありますから、まあ建設大臣の都市計画だけを例にとって建設大臣をすわらせて置くのも気の毒でございますので、あとは私のほうでやりますから、建設大臣は釈放賜わりたいと思います。
  144. 竹田四郎

    竹田四郎君 これは建設大臣だけの問題では、いまおっしゃるようにないわけです。まあそういうことが、この法案をせっかくおつくりになったけれども、姿はつくったけれども、実際の活動が期待されないということになることを一番おそれるわけです。建設大臣けっこうでございますから……。  それで、予算の問題、いろいろな御説明予算の問題でお話をいただいたわけですが、どうもあれですね、経費の見積もりの方針について調整を行なうというようなことのようでございますけれども、結局これは各省庁にお願いを申し上げまして、ひとつこういうことでやっていきたいと思いますから、おたくの省ではひとつ公害の防止のこういう問題についてはひとつ予算を十分おとりいただくように、環境庁からも大蔵大臣のほうにひとつこの点はお願いしておきますからという程度のことじゃないのですか。   〔委員長代理安田隆明君退席、委員長着席〕
  145. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) そういうこともやります。しかし反面、環境庁として、たとえばことしの予算なんかでも、公害対策本部でチェックしました。そうすると、新宿副都心が二つの役所から同じ予算要求が出されていたりしているわけなんですね。そういうものは当然整理もいたしましたし、事前の意見交換というのはやはり何日間もかかってやりますから、相当やはり各省が、中央公害対策本部の立場から、今後は環境庁から見て、わが国の環境行政に対して、予算は来年度はこういう展望で各省バランスがとれて、一応国民に対して、あるいは世界的な立場からも、まあまあであろうというような形の調整はできるわけです。一方においては、環境庁自体が調整費を持って、それによって各省庁に対して、それでえさにするというわけではありませんが、必要な役所にはその調整費を配分して重点的にやっていくというようなことも補てんをいたしますから、一般予算については、それは見方によるわけで、幾らそういったって各省庁はかってにやるぞということで行なえば、それはやはりそれを絶対にそうでありませんと言えない点が予算にはございます。しかし、先ほども申しましたとおり、研究費等になりますればこれは一括計上の配分になりますから、これはまさに環境庁各省の研究機関の意見を聞いて予算要求をまとめて、それを、環境庁がとった予算として各省庁にまた配分していくということになりますから、将来は一般の公害防止関係、環境行政も、そこまでいければいいと思いますけれども、さしあたり、いまのところ、一般予算については、調整並びに調整費をみずから持つというところにとどまることになろうと思います。
  146. 竹田四郎

    竹田四郎君 私は総務長官の関係はいままでよくやってまいりませんでしたけれども、経済企画庁関係ですと、物価対策なんというのは入れております。これは建設省の住宅建設費も入れている。それから、農林省関係の特定野菜の指定産地の助成費等も、これは物価対策の中にある。何でもかんでも、物価対策に入れようと思えば入るわけですね。環境庁の関係の公害防止というようなものも、そういうようなものも入ってくるのじゃないかと思うのですね。何もかも入れて、こんなにたくさんありますというような形にどうもなっていくし、環境庁自体が今後一体どういう職員によってつくられていくかという問題にも、私は非常に関係があると思うのですよ。  予算の話はどうも、承るだけ承っておきますが、私は決して納得しているわけじゃございませんけれども環境庁の職員というのは、どういう形で組織されていくのですか。たとえば、農林省から出向する、厚生省から出向してきておるという形——環境庁固有の職員、ほとんど幹部の間がそれで占められているという体制があれば、それは環境庁の言い分というのはかなり私は貫いていけると思うのですが、へたをすれば、各省庁から出向されて、各省庁の悪い意味でいえば出先ですね。そういうような形になったならば、環境庁というのも何にもできない。むしろ屋上屋を重ねた役所になってしまう。こういうことになるわけですが、これは最初からぴしっとやっていかないと、出向のような形で、環境庁の幹部職員というものをそういう形で配置していくということになりますと、私は環境庁が機能しない、こういうふうに思うのですが、それはどういうふうになりますか。
  147. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 加藤先生からも、環境庁をつくるときはたいへんだったろうというねぎらいのことばをいただいたのですけれども、非常な抵抗が率直に言ってありましたが、いざほんとうにできるということになりますと、今度は一転して売り込みが盛んでございます。しかし、国会において環境庁設置法というものが通っていないのに、それらの、あとの人選その他について仕事を進めることはたいへん越権でありますから、一切ストップさしておりますが、今後、環境庁設置法が通りましたならば、急速にそれらの機構、人員等も定めてまいりたいと思いますが、これは出向という形でとるのではなくして、たとえば厚生省の国立公園部、これはそのまま機構、人員、予算、ごっそりそのまま移してまいりますから、機構そのものが移ってまいりますから、人間も、そこに張りついてずっとまいりました人間は、当然そこでこれから環境庁の中の大きな柱である自然保護局の責任者の地位にまで上がっていく役人として進んでいくだろうと私は思うのです。よその省も、やはりそれぞれの部門を担当いたしておりました者を全部そのまま移してまいるわけでございます。ただ問題は、官房長、四局長というような首脳どころをどういう形で据えるかによって、それが非常に大きな問題になってこようと思いますし、また、環境庁姿勢というものについても、第一歩においてどのような評価を受けるかの私は分かれ目になると考えております。そこで今後、課を幾つつくるか、課についてはどういう体制でいくか等について、局長人事等も含めながら、国民立場に立って、どういう人選であらねばならないか、どこのポストはどこの役所確保しておいて、入れかわり立ちかわり出向させるというような役所にしてはならないというようなことは、十分戒心してやるつもりでございます。
  148. 田口長治郎

    委員長田口長治郎君) 竹田委員に申し上げます。お持ちの時間がわずか残っているようですから、ひとつお含みをお願いしたいと思います。
  149. 竹田四郎

    竹田四郎君 国立の公害研究所をつくられるというのは前々からの構想でございますけれども、その公害研究所、第九条でありますが、これを見ますと、前、長官は、国立の公害センターといいますか、公害研究所というのは一つのデータバンクにしよう、そのことが一番重要なことである、こういうふうにおっしゃっていたように私記憶しておりますけれども、今回の場合には、むしろ研究機関的な要素が重点になって、データバンク的なものというのはどうも従になっている感じがいたします。それから、次に、附則でありますか、附則のところで、公害研究所の発足の時期でございますが、これはかなり、「昭和四十九年三月三十一日までの間」のいつかと、こういうふうに規定しているというふうに思いますが、データバンク等のものをやるとすれば、すぐにもできるわけですね。各都道府県、あるいは大きな市なりでは、それぞれのデータをお持ちになっているわけであります。あるいは外国にもそういう資料があるわけでありますから、そういうものを早く発足させるということが、やはり公害防止の上にも非常に必要なことだというふうに私は思うのですが、どうも公害研究所というのを試験研究ということでやっていきますと、これは試験研究の二重投資的なことにもなりかねません。私どもはむしろ、データバンクのようなものが国立の公害センターとして進んでいくべきであるという当初のお考え方、このお考え方のほうにむしろ賛成していたわけであります。どうなのか。  それから、もしそういうものをつくるとすれば、これは、全体として試験研究機関をつくる前に、そういうものは先に発足させてもいいのじゃないか。こういうふうに思いますが、いかがですか。
  150. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 公害データバンクはことしの予算ですでにとってございます。したがって、環境庁が出発いたしますと、データバンクを所管する専門の参事官なり課長なりというものが生まれて、そこでデータバンクの作業はまず活躍を開始するような予算確保してございますので、これは、仰せのとおり、直ちに活躍を開始いたすわけです。ただ、研究所が「四十九年三月三十一日までの間において、」ということが書いてありますが、これは建物の建築、筑波を予定しておりますが、筑波学園都市の建築の期間を見ておるわけでありますから、したがって、「までの間」でありますので、予算のとり方いかんでは、これを相当早く開設することも可能であると思っておりますが、そういう関係では、変な言い方ですが、「三月三十一日までの間」、それよりおそくはなりません。「までの間」ということは、それより早く施設設備が完成すればオープンできるのだということを含んでおりますので、その意味では急ぎたいと考えます。
  151. 竹田四郎

    竹田四郎君 最後の質問です。産業廃棄物というものがこれからますますふえてくるし、それが大型化してくる。こういうことになるわけでありますが、産業廃棄物について、私の勉強が足りないのだろうと思うのですけれども、この所掌の中ではあまり非常に大きくは取り上げられていないと思いますが、むしろ廃棄物の処理ということでは、その面が非常に大きく取り上げてこられるのではないかと思うのですが、廃棄物の処理及び清掃に関する法律との関係があるわけでありますが、そうした面は具体的にどこでどのように処理をされていくのか、この点をお聞きをいたしまして、時間がきたようでありますから終わりたいと思います。
  152. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは廃棄物は、大体清掃は市町村固有の業務でありますし、昨年の国会の立法によって、広域的な産業廃棄物等も含めた処理もできるようになりましたが、それを踏まえて環境庁自体が処理する事項としては、法律第四条の二十三号で、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律による廃棄物の最終処分に関する基準の設定に関する事務を処理する」ということになりますと、これはもちろん当然、海洋汚染防止法等の投棄場所、その他の指定等も含めた全面的な最終処分に関する基準を設定していくという権限を環境庁が持つものでございます。
  153. 河田賢治

    河田賢治君 きょうは主として静岡県の田子の浦のヘドロの問題について質問したいと思います。  御承知のように、私は昨年夏、農水委員会で山中長官にこの問題を提起しまして、水質保全法によって水域指定ををサボって、排水規制を放棄してきた経企庁の責任の重大性。第二にヘドロの海中投棄をやめること。第三、企業の操業を一時中止ないし規制する処理対策を急げ等等について質問しましたけれども、御承知のように、昨年もこの田子の浦は、世界の公害科学を研究しておる学者が集まりまして、あの非常にひどい状態はまさにこれは公害の見本であるといって、外国の学者たちが来まして、非常にこれはわれわれ日本人にとっても、このことは教訓だと思うのです。したがいまして、その後、いろいろ新聞には出ておりますが、この問題につきまして、企業に対する規制、ヘドロ処理など、どの程度進展したか、まず総括的にお伺いしたいと思います。
  154. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは静岡県知事の計画というものに対して、私どもがどのような協力をまずしたかでございますが、それについては、まず静岡県が必要とします財源については、本来企業が即時負担をしなければならないものについて、全くの特例でありますが、自治、大蔵、公害対策本部が中に入りまして、転貸債という形でとりあえず支出をし、改善させるということにして、一応県の計画というものについて協力をいたしたわけであります。ところで、一方においては、操業を一時中止もしくは停止命令行為ができないかという御意見でございました。私も気持ちの上では、それくらいのことをしなければならない事態に達していると思いまして、ずいぶん国の各種法令をさがしてみたのでありますが、そのような私企業に対して停止を命ずる権限というものが、ことに製紙企業等の場合において、はっきり根拠が見つからないということで、その点は公害対策本部副部長としては断念をいたしました。まあしかし、企業のほうで若干の操短等は、今日まで一応自粛はいたしておるようでありますが、国家権力の行使ができなかったという点は反省すべき点の一つでございます。  海洋投棄の御計画については、私自身も当初から海洋投棄については県の計画をやむなく承認いたしましたものの、全く賛成しがたい計画として意見を交換したわけでありますが、万やむを得ず、県にその他の手段がないとすれば、やむを得ないということで了解をいたした程度であります。その当初から私としては、場所やあるいは名前もこういうところでどうだとか、いろんな提案もしたくらいでありますけれども、県知事さんの御了承を得られなくて、最初は海洋投棄、次に湾内の移動、そしてついに建設省の河川敷の許可ということまでわずらわしまして、富士川の河川敷に、しかも出水期までの期限付のわずかな間の処理しかできない状態になってしまった。この点は明らかに、これは地方を責めるわけにはいきませんから、私自身の目的と結果において大きく食い違っておる点について、大きな責任を感じます。  今後これらの行政というものは、地方の都道府県知事さんを中心に、権限がどんどん移譲されてまいりますので、これらの点は地方に権限を移譲する際に少し心配になってくる点の一つでもございますけれども、まあ一応現在許される条件のもとにおける処理はやっているようでございますし、大企業も一応の要請される水準に達する施法については夏までにほぼ終わるようでございますし、中小企業については、一応たれ流しでもいいという約束で岳南排水路をつくられたのじゃないかという意見もありますが、しかし、今日の港の状態あるいは駿河湾等の水産動植物の影響の深刻さということから考えて、ようやく合意を得て、これは再来年の三月を目標に、岳南排水路の終末処理というものを大々的にやろうといたしております。これによって一応企業側の排出については完全に規制し縛ると思いますけれども、問題は九十万トンとも百万トンとも言われております、すでに湾内に堆積しておりますもの、これはどのように今後処理するか、夏場の間はガスの発生その他の心配がございますし、建設省の許可も一応出水期までということでございましたから、秋になって再び相談をいたさねばならない問題が残っておる。この問題は明らかに私どもの当初の見通しと違ってしまって、たいへん申しわけないことであると存じます。
  155. 河田賢治

    河田賢治君 少しまた具体的になりますが、静岡県当局はことし三月からヘドロの富士川河川敷地に投棄ということを開始していますが、現在までのところ、計画処理量三十二万トンの約一〇%しか処理ができていないと聞いております。建設省は五月中に取り除くことを条件に許可しておるんですが、その期限はもうすでに切れる時期に近づいております。処理が大幅におくれた原因は何か。また、県当局が五月以降も継続しようと、いましておりますが、建設省はこれを認めていくお考えかどうか、このことをお聞きしたいと思います。
  156. 宮崎明

    説明員(宮崎明君) 出水期ということで、五月中という期限でやっております。で、出水期に河川の出水によりまして、脱水処理のために投棄されておりますヘドロが流出するというようなことになりますと、これは結果的には海洋投棄と同じ状況になりますので、私どもとしては、期限を延長する考えはございません。
  157. 河田賢治

    河田賢治君 特にこの富士川は、御承知のように、七月、八月、九月というころになりますと非常な出水をしております。で、現在の県の処理計画では、全ヘドロの堆積量が九十万トンの約三分の一、三十二万トンにすぎないということになっております。これでは非常に不十分なんですね。しかも計画では一日の処理量が七千五十トンになっておりますが、天候等によって実際に作業できるのは月に十八日程度、したがって実際の一日平均処理量は四千二百トン前後と見られるのであります。この上、一方では、二百の工場から排出されるヘドロは一日平均二千三百トンでありますから、その半分が堆積すると見て、差し引き一日平均三千トン程度にすぎません。これは計画どおり三十二万トン処理しても、終了後数カ月でもとどおりになります。根本的な解決には何ら役立たないのであります。しかも、出水期を前にして、県がいまやっている処理方式が、建設省が河川敷を使わないというようなことになれば、一体この問題はどういうふうになりますか。県のほう、並びにこれを指導しておる官庁では、どういう考えを持っておられますか。
  158. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 建設省には、これは実はたいへん迷惑をかけたわけであります。直轄河川敷を使わしてくれという占用使用許可願いでありますから、公害対策本部が中に入りまして、私の名前でもってぜひ使用を許可願いたいということで、水産庁とも検討した結果をわざわざ副申をつけて、やっと建設省も許可したくらいでありますから、河川法の政令等において、一方において河川をよごさないという姿勢をとっておる建設省として、よごすための許可をするわけでありますので、たいへん建設省には迷惑をかけたと思っております。したがって、その約束の日限は一応守らざるを得ませんが、今度は夏場を過ぎましたならば、あらためて、ガスの発生やあるいは出水等のおそれがなくなります秋口等において、再び建設省に対して、私どもが静岡県と相談して、再度使用許可のお願いをすることになるかもしれない。また、そうしなければエンドレスな状態でそれが蓄積されていくということになりますと、それでは非常に問題であると考えておりますので、そういう措置を考えてまいりたいと思います。
  159. 河田賢治

    河田賢治君 企業の排出規制を抜本的に強める必要があるのですが、七月一日から水質保全法による浮遊物質——SSですね、規制を適用することになっておりますが、これによって現在のヘドロ流入量はどの程度減少させることができますか、一応ちょっとお伺いしたいと思います。
  160. 西川喬

    政府委員(西川喬君) お答え申し上げます。  七月一日から第一段の規制がかかることになっているわけでございますが、これによりまして一応全社が−大企業は全部自社で処理をいたしますが、岳南排水路の特別都市下水路のほうへ流入させることが第一次処理計画ということになっておりますので、そのことを勘案いたしまして、計算上におきましては六三%カット、大体三分の二カットいたしまして、現在の約三分の一に減ると。現在と申しましても、実は昨年問題になりました当時の三分の一に減るということになっておるわけです。現在はすでに二割操短を行なっておりますから、約二割は減らしております。それがさらに七月一日から六三%減ると、残り三七%ということになっておるわけです。最終的にはこれを、最後の基準がかかりましたところで最後に残りますのは約一五%程度ということを目標にいたしておりますが、その第一段といたしまして約三分の一に減らすということでございます。
  161. 河田賢治

    河田賢治君 公害基本法の改正で水底質の環境基準を定めることになっておりますが、ヘドロについてはまだ環境基準が定められていないのです。分析や調査はどこが責任を持ってやっておられますか、その部課——局とか課をお願いします。
  162. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは、水底のヘドロ等についての、内水面も含めての環境基準というものは、一応現在は定めるたてまえになっておりませんけれども、しかし公害防止事業費事業者負担法の対象にもし、あるいはそれの裏づけとしての地方財政のかさ上げ法の対象にもいたしております。したがって、それらの地域において必要なものについて、ある内水面においては透明度がだんだん浅くなってくるという問題を解決するためにやられるところもありましょうし、あるいは上水道の取水源としての浄化という意味で採用されるところもありましょう。いろいろなことがありましょうが、しかし、将来はやはり環境庁において、それらの内水面とか河川とか港湾を含めた海上と海底の底質についての環境基準については検討課題になることであろうと考えます。
  163. 河田賢治

    河田賢治君 そうすると、ヘドロについて、その分析や研究、検討の内容というものはないのですか。
  164. 内田常雄

    国務大臣(内田常雄君) 私はまあ厚生大臣でございますが、たまたまお答えの一環をなすような資料が手元にございますので、御参考までに申し上げます。  田子の浦のヘドロにつきましては、その処理をめぐって、有害物質に対する注意が向けられているが、港湾内のヘドロの中の水銀、カドミウムについて次のような結果が静岡県当局によって分析されております。  すなわち、これは、幾つかの数値が出ておりますから、そのまま申し上げますと、水銀は〇・〇五七PPM、〇・〇四八PPM、〇・五四、〇・〇二三、〇・〇七六、高いところになりますと〇・一〇七、〇・一五七、〇・一九三というような数字も検出されております。それからカドミウムの一番高い検出値は三・一七PPM、一・六七PPMというようなところから、低いところでは〇・〇六PPM、〇・〇二PPMというような数値が出ており、また、そのほかクローム、これはいずれも御承知のように、微量重金属といわれる有害物質でございますが、クロームは四ないし一二PPM、こういう数値が示されております。  しかし、これは、総務長官からもお話がございましたように、水の中の数値ではございませんで、ヘドロの中の数値でございまして、この数字は厚生省の判定によりますと、自然界におけるこれらの金属含有値以下か、あるいはその程度であって、そのもの自身はさほど問題にするような含有値ではない、こういう資料がございます。  以上申し上げます。
  165. 河田賢治

    河田賢治君 いまヘドロの移送に伴ってだいぶん問題が起こっております。硫化水素により中毒や、運送船がぼろぼろになっておると、先日の新聞で輸送している船が破損して、これがもう使えなくなったというような問題まで出ているのです。たとえ少量でもこういう水銀やカドミウムが検出されたなら、今後駿河湾への拡散、汚染もわれわれは十分これが可能であるというふうに考えておりますが、対策を強める必要があるのじゃないか。現にあそこでは、私も実際に行って見ましたけれども、奇形の魚が生まれておる、あるいは日本の有数なサクラエビの漁場が、すっかりサクラエビがとれなくなったという、あの漁港は大きな被害を受けております。さらにこれは、単に魚だけでなく、こうした重金属等が出ますと、たとえ少量でも、これがまたやがて人体に被害を与える、こういう原因になるわけですから、この問題についてお考えを願いたいと思うのです。
  166. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 先ほど経企庁から御説明をいたしましたような大体の手順で目的が達成できるものと考えておりますが、しかしながら、それでもことしの夏は、やはりもうすでにSSの沈でんいたしました有毒ガスを発生するおそれのある堆積物というものはそのままになって、なおかつ若干はその上をすべって駿河湾の中に出ておるらしいということになるおそれがあるわけであります。これらの点は大いに心配でありますし、注意してまいらなければならぬと考えますが、これらの対策をやってまいりまして、最終的に岳南排水路の終末処理施設等が備えられる、そうして企業が排水基準をきれいに守っていて、なおかつ問題が発生するのであるとすれば、これは当然もっときびしい規制に移行していかなければならぬ。目的は、やはり基準というものは、それを守っていくことによって公害が発生しない基準であるべきはずでありますから、なお発生するとすれば、それはもの言わぬ水産物、動植物を含め、あるいはまた人間への影響をも含めて、当然基準の改定ということに結びつかざるを得ないものと思います。
  167. 河田賢治

    河田賢治君 いまヘドロの処理で、パイプ輸送、海底管で河川敷輸送を行なっておりますけれども、パイプの破損が始終続発していると聞いております。その原因は何でしょうか。
  168. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) ただいまのパイプ事故の件でございますが、これ、実は県のほうへも確かめたんでございますが、パイプそのものの事故ということは別にないということでございます。モーターが故障したとか、あるいは船の故障があったということはありますが、パイプそのものの故障は私どものほうでは報告を直接受けておりません。
  169. 河田賢治

    河田賢治君 パイプの破損がない……。この間新聞では、船なんかがどろを積んでいますと、すぐに船底のほうが大きな影響を受けるということをいっております。新聞にも出ておりましたですね。それで、とうていこれは引き受けるわけにいかぬというような、輸送船の業者が言っておるのです。で、そういう、やはりこのヘドロの中に金属を腐食させるようなものがあるんじゃないんですか。その点はどうなんです。
  170. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) ただいま私は、現在作業に使われております船なり、あるいはまたパイプなりの破損と、こう受け取ったわけでございますが、直接この作業に従事しております船について、あるいはパイプにつきまして、ただいまのようなことはないということを申し上げたわけでございます。ただ、新聞で、確かに船の一般的な被害が多いということは報道されておりますし、これにつきましては、まだ十分調査を私どもいたしておりませんが、硫化水素等が出るということでございますれば、何らかの形で影響が相当あるということは当然考えられることだと思います。
  171. 河田賢治

    河田賢治君 かつて、このヘドロの汲み上げをやったりしているときに、やはりそこでたくさんの病人が出たですね。だからこういうかつてたくさんな人が、急に病気が出るというような現実に問題があるのですから、何も聞いてないといって、新聞に出ておれば、それを直ちに調査したり、あるいはそれが不適当なら適当な船の構造、材質なんかを変えさすとか、そういう処置をするような、一体指導はされていないんですか。地方庁がこれはやっているから、これは静岡県の問題だからわれわれは知らぬというようなお考えなんですか。その辺はっきりしてください。
  172. 城戸謙次

    政府委員(城戸謙次君) これはいまのような財産的な面の被害の問題、あるいは先般健康被害に関連いたしまして、南中学校の観測点でいろいろな問題があるというようなことも報道されていますので、そのつど県に照会いたしておりますが、いまの船の件につきましては、まだ報告を十分受けておりませんので、至急調査してみたいと思っております。
  173. 岩間正男

    岩間正男君 関連。とにかくいまの答弁では、全くこれは怠慢ですね。長官の、常に対処するとか何とか、美辞麗句を並べていてもしようがないんだ。実際新聞に出たら、見にくるのか、こないのか、じっとしていられないはずだ。動き出さなくちゃだめでしょう。ところがどうです、いまの答弁は。その前にはどこでヘドロのそういう問題を分析したり研究しているかと聞いたけれども、これどうもわからぬ。実際は静岡県のデータを出してきて、それで問題をそらしているのです。こんなことでいいんですか。この姿勢が問題なんだ、この姿勢が。どう思います、一体。長官、いまの実態を見てください。ここなんだ。足がだめなんだ、足が。いざりですよ。だから何ぼきれいに口ばっかりうまいこと言ったってだめだと思うんだが、どうです。
  174. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) 田子の浦の問題は、率直に、あの当初の知事さんと打ち合わせたとおりになかなか進みませんでしたと、この点おわびを申し上げますと言っているので、決してこれを糊塗して申し上げているつもりはありません。やはり地方が計画をお立てになって、そうしておやりになることについて、私ども一つのテストケースとして、特別に御援助申し上げたケースでございます。したがって、船舶のスクリュー、あるいは船底壁、そういうもの等が浸食された。普通耐用年数十年くらいのものが三年目でぼろぼろになった写真等も見ましたし、また海員組合等が、港内に船を入れて荷役をするというようなことについて、夏場については拒否をするという決議をされたこと等も聞いております。これらについては、やはり非常に心配をいたしておりますけれども、やはり早くその堆積している湾内ヘドロを除去することが先決だということでやっておりまして、まだ船舶のスクリューの早期腐食について、補償問題とか何とかいう、そういうこととしてとらえてもおりませんので、ただヘドロを処理するという問題について思うにまかせない状態であることについては、先ほど来私として何回も申し上げておるとおり、思うとおりまいっておらないことは認めておるわけであります。
  175. 河田賢治

    河田賢治君 田子の浦周辺は潮の流れが非常に速いのですね。だからいろいろなパイプの破損とか、あるいは輸送船の破損等々で、そこからヘドロが流出して駿河湾に流れていって全体を汚染するという心配もあるし、また、ヘドロを現在くみ上げておりますから、堆積ヘドロがやはり遊離、浮遊して駿河湾へ流出するという危険も強いわけです。こういうことは、日本科学者会議でもこの点は指摘しております。だから、しゅんせつ作業をすると同時に、駿河湾の汚染調査、あなた方のほうで十分おやりになる気はないんですか。  御承知のとおり、このようなパルプ会社が出すヘドロというの駿河薬袋的でありますけれども、四国の愛媛県の東部、北海道の石狩川、いろいろなところで、同じやはりそういう危険を持っておるわけです。たくさん出だしているわけです。だからここ自身が、御承知のように静岡県というのは、私たちから見るとぐうたらな県です、何一つよう手を打たぬですね、まじめに。ああいう県ではほんとう公害に取り組む姿勢はないんですよ。そうだとすれば、直接あなた方のほうから役人が行って、そこの湾で調査するとか、また科学者、あそこの技術者なんかがそういうことをしたがっているわけですから、そういうことをおやりになって、やはりこの問題のはっきりした究明をし、そうして今後これを起こらぬような対策も、十分国としての意見をまとめる上からも考える必要があると思います。県が主体だから県にやらせておけばそれでいいという問題じゃない。県がやって、あなた方の知恵が出ればいいですよ。具体的にどうだという事実を調べる、確信を持って調査の内容、研究の方法やいろいろなものをわれわれが集めていかなければならぬわけでしょう。こういうときに、やはり中央政府自身がそういうぐうたらな県にはどんどんいって、やっぱり私は県の科学者、関係方面の連中も教育しなければならぬのですから、そういう点は積極的に私はやっていただきたいと思うのです。この点についてどうでしょう。
  176. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) あるいは、いまにして思えば、この問題を一つのモデルケースとして、公害対策本部が直接関係省庁の機能を動員してやったほうがよかったのかもしれません。しかしながら、その当時はやはり地方自治体になるべく権限を委譲せよということで、公害国会の前等においても、工場排水等においては全部知事に権限を委譲したというようなこと等もございましたので、やはり一義的に県の方針というものを中央が強力に、特定の場所ですが、バックアップしてみようということが、あるいは裏目に出たのかもしれません。その反省もいたしておりますが、かといって、次は瀬戸内海等の問題もございますし、ただいまあげられた地域について、国が全部やっていくことになっていいかどうかという問題は、責任を回避するつもりはありませんが、そのような地域の特定の場所については、やはり県のほうでしっかりしてもらいたい。それに対して国に御要望があれば、いろいろの自分たちとしては応援をしていくというようなことにならなければならないのではないかと思っておりますが、しかし、田子の浦の問題は、これは幾ら申し上げても、結局は私たちの取り組み方がまずかったのか、あるいは結果がうまくいかなかったためにそういうことになるのかわかりませんが、たいへん申しわけない結果に現在終わりつつある。現在の時点においては、はなはだ所定の成果をあげていないということは、たびたび認めているところでございます。
  177. 田口長治郎

    委員長田口長治郎君) 河田委員に申し上げます。お持ちの時間があと五分しかありませんから、お含みの上、ひとつやってください。
  178. 河田賢治

    河田賢治君 あと一間で終わります。  先ほども言いましたように、静岡県というのはなかなか公害に取り組まぬ県なんですよ。世界の学者が来て、これこそ公害の見本だと、そしてそこの住民に、もうあなた方はあのりっぱな富士山に行ったらどうですかと、ふもとへ。そういうことを、みな外国の学者が来て、こんなくさいところ、きたないところによう住んでいますなといって、そこの住民に言ったでしょう。ところが住民は、ああいう富士山のふもとは、みな社長さんやえらい方が住んでいるけれども、われわれはそういうところに住めないのだと言って答えているのですよ。これは恥さらしじゃないですか、日本の。世界じゅうから、外国から来たんですから——そういうことをいままでほったらかしているんです。あの岳南排水路にしましても、計画どおりに何もやってないんです。あそこに一応集めて、何か貯水池をつくるということになっているけれども、それもやってなかった。これも私が質問したときには、自分たちはやってなかったということを断わりましたよね。だからそういう国の姿勢も、県の姿勢もそうなんですから、私はここに時間がありませんが、科学者会議が、この方面の公害なんかを非常に研究しておる科学者会議が提起しておるんです。田子の浦港付近に脱水濃縮装置及び焼却装置を設置して、脱臭処理を施したヘドロをその場で脱水し、焼却すると、こういう処理方法を検討する意思はあるのかないのか。私はまあ専門家でありませんけれども、とにかく専門家はそういう提案をしているわけです。  これによれば、九十万トンのヘドロは脱水焼却で五千トンないし一万トンの無機物になり、埋め立てにも十分使用できるではないかと、その場合、前提として作業期間中は企業の操業を一時中止し、港を閉鎖することも必要になるだろうと、こういうことを言っているんですね。しかし、この問題は思い切った措置をとらないと解決はできない。まして無責任にたれ流しを続けてきた企業の利益をそこなわない範囲での処理対策という現在の県の対策では、解決にならないということは明らかだということを、この学者たちは言っているんです。だから学者はちゃんと解決方法を出しているんですよ。だから、まあこういう比較的良心的な学者が、少しでも日本国民の受ける被害を少なくしようという考えでいろいろ考えて、これならだいじょうぶだということを現に発表しているんですね。ところが、静岡県あたりは全然こういうことにも耳を傾けて、ひとつやってみようという気持ちになっていないわけですね。ちゃんともう明らかになっている。一体こういう、今日これらの公害問題を研究している科学者が一生懸命やっているんですから、そういうことを一ぺん検討するというようなことをあなた方のほうでもお考えになることはできませんか、どうです。
  179. 山中貞則

    国務大臣山中貞則君) これは昨年相談をいたしましたときにも、問題として当然検討いたしました。そのときには静岡県は荏原製作所の機械を二台据えつけてやろうということで、内々会社に相談もしたようであります。ところが、その脱水過程において、港の埠頭でやる予定でございましたので、そうするとその過程において発生する硫化水素のガス処理という問題でやはり行き詰まりまして、結局それは成約を見るに至らなかったようでありますが、最近の話によりますと、新しい機械が、隅田川で実験した結果、含水率八五%ぐらいで手に取ってもかわらを焼く前のかたさくらいのところまで、全然ガスの発生その他もなしでできるような機械が一応開発されたということで、静岡県当局との間にそのような機械を田子の浦のほうに持っていく話が進展中であるやに聞いておるのであります。したがって、その学者の提言というものが、現実に行なって、周辺住民の方々にガスその他の影響がないという機械があれば、静岡県も実施したいということは、昨年から言っておったわけでありますから、その機械が試験運転をしてみて成功すれば、その学者の提言どおり行なわれることになると考えます。
  180. 河田賢治

    河田賢治君 最後に、とにかくまあそこの製紙会社というのは、もうむちゃくちゃな会社なんですね。御承知のとおりに斉藤何とかという社長ですが、第一あの機械にしましてもですね、外国からはどんどん製紙機械を入れたり買ったりしておるわけですけれども、それに伴って諸外国ではちゃんとこの被害の、公害の出ぬ設備やああいうものがあるわけですね。それを見てこないのです。それを買ってこないのです。だから北欧地方では製紙工場なんかこういう公害をちっとも起こしていないですよ。だからほんとうにエコノミックアニマルですからね。だからどうしてもこういう公害を起こしておるところに対しては強い姿勢で、県に対しても、また企業に対しても、ひとつ長官はこれから処していただきたい。そして、できる限り早く公害のない日本をつくってもらいたい、こう思うのです。このことを申し添えて私の質問を終わります。
  181. 田口長治郎

    委員長田口長治郎君) 他に御質疑はありませんか。——それでは本連合審査会はこれにて終了することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  182. 田口長治郎

    委員長田口長治郎君) 御異議ないと認めます。よって、連合審査会は終了することと決定いたしました。  これにて散会いたします。    午後六時二十七分散会