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鈴木強君 私は、日本
社会党を代表して、ただいま議題となっております
公衆電気通信法の一部を改正する
法律案に対し、反対の意思を明らかにして討論をいたすものであります。
本改正案は
データ通信制度の新設、広域時分制の採用、設備料の値上げ、電報料金の値上げと、その利用制度の改正など重要な
内容を持っておるのであります。
データ通信は、いわゆる
情報化社会の根幹に触れる問題を含み、また料金改定はいずれも利用者に多額の負担をしいる不合理なものでありまして、わが党はさきの本会議において、当
委員は質疑を行ない、党の主張を明確にいたしたところでありますが、本日までの
委員会論議を通じてわが党の主張が正しかったことについてさらにその感を強めたところでございます。
以下反対の理由を申し述べていきたいと思います。
その第一は
データ通信についてであります。電気
通信回線の開放は
情報化社会への第一歩を踏み出すものであり、政治、
経済、
社会に与える影響はきわめて強いのであります。したがいまして、情報化を進めるに
あたりましては、平和利用と
国民生活の向上、民主的な管理
運営及び基本的人権とプライバシーの保護の三原則による基本法を制定し、その上に立って基本的
政策を定めるべきであるとするのが、わが党のかねてからの主張であります。しかるに、今回基本法の制定を見ないまま
通信回線の開放のみを先行させることはまことに遺憾な処置であって、将来に大きな禍根を残すものであることを深く憂うるものであります。特に情報の秘密保護につきましては、現在、
法律上保護の対象とされておらず、またすでに問題を発生しているところでありますので、企業の秘密に限らず、個人のプライバシーの保護を含めて
対策が望まれているところであります。さらに
データ通信のための回線開放により、民間企業等にも公衆電気
通信回線の大幅使用が認められることになり、電報、
電話などの一般公衆
通信の疎通が阻害されるおそれもあるのでありまして、安易な回線開放はきわめて問題であります。もっとも
公社の専用回線を利用して行なう特定
通信回線の開放については、それが
事情の許す範囲内で行なうものについてでありますから、これについては反対するものではありません。
また本案は
電電公社の行なう
データ通信サービスの提供を本来
業務として法的に裏づけようといたしておりますが、公共企業体たる
公社の第一義的責務は三百万になんなんとする積滞
電話を一日も早く一掃することにあることは多言を要しないところでありまして、
データ通信業務の実施よりも積滞
電話の解消、加入区域の変更、市町村合併に伴う
電話の統合問題等の解決こそ先決問題だと思うのであります。
このほか、
データ通信に関しては、労働者に与える大きな影響や情報化のもたらす人間疎外の問題、情報の独占的管理の強化の問題、種々の問題を伴ってくるのでありまして、私どもは
データ通信の健全な発展をいささかも否定するものではありませんが、
政府がこれらの問題に対する回答を見出せないまま、財界の圧力に屈して公衆電気
通信回線を開放して、
データ通信を民間会社にも行なわせようとすることに対しては、反対せざるを得ないのであります。
第二は、
電話料金体系について広域時分制を採用する問題であります。提案によりますと、
全国五百六十二の単位料金区域を最低通話料金区域として、通話料を三分七円にしようとするものでありまして、まさに重大な改革というべきであります。この方法は、従来の市内・市外の料金格差を縮めて、負担の均衡をはかろうとする意味においては、一歩前進であることは認めるものでありますが、現在の単位料金区域そのものが、必ずしも合理的であるとは言えないばかりか、隣接区域内通話との料金格差も大幅なものであります。したがって、私どもがかねてから提唱しているいわゆるグループ料金制とはきわめてほど遠いものとなっております。また従来、通話時間に制限のない市内
電話の度数制を一挙に三分単位の時分制に変更することは、通話料の実質的値上げとなるのであって、
国民大衆は全く納得しかねるのであります。このことは、大企業に奉仕する
データ通信のための
通信回線の開放によって、そのしわ寄せが一般
国民に押しつけられるものであります。のみならず、広域時分制の採用によって大半の単位料金区域においては、
電話基本料の引き上げを伴うこととなるのでありますが、単位料金区域の規模、特に一加入回線に七つも八つも
加入者が接継されている
地域集団電話の多い区域等においては、一挙に基本料が二段階もの引き上げが行なわれるという不合理な結果を招来することも、きわめて問題であります。
第三は、設備料の値上げについてであります。御
承知のとおり、設備料は
昭和四十三年に単独
電話の場合一万円から三万円に引き上げられたばかりであり、今回はこれをさらに五万円に引き上げようとするのでありまして、わずか三年間に一万円から五万円にという大幅な値上げが行なわれることになるのであります。
政府は、この設備料値上げについて、
加入電話の増設のため必要な措置であると説明しているのでありますが、特に
公社の都合により、二年も三年も長きは五年も待たされた
電話申し込み者は、設備料の一方的引き上げを押しつけられることになり、大きな損害をこうむることになるのであります。
政府は
電話架設のためには、思い切って財政投融資を増額投資する等、思い切った
公社の
建設資金調達に便宜を与えるべきでありまして、今回のような安易な申し込み者への加重負担となる設備料の値上げは、避けるべきものと
考えるのであります。
第四に、電報
事業の近代化とこれに関連する問題についてであります。
政府と
公社は、電報料金値上げの理由として、
昭和二十八年以来、料金が据え置かれたため、あらゆる経営合理化の
努力にもかかわらず、電報の収支率は七二〇%と最悪の
状態になっており、また、過去の累積赤字は約四千百億円にも達していることをあげております。これは電報
事業の
公共性が強く主張されて、採算性が軽視された結果生じたことには間違いありません。電報
事業といえども、原価主義による独立採算を経営の基本原則とすべきことは、いうまでもないところであります。にもかかわらず、長期間にわたり、電報の赤字は
電話収入で補てんするという安易な態度に終始して、その基本となっている、
公共性と採算性について真剣な
対策がなされなかったことが今日の
状態を招来した原因であります。一挙に大幅値上げを実施せざるを得なくなったと思うのでありますが、その責任は重大といわなければなりません。
しかも今回の値上げや利用制度の改善等、一連の近代化施策を実施しても、その収支差額は、なお相当な額に達するのでありまして、
事業の将来に光明を見出すことは不可能であります。
したがいまして、電報
事業については、
電話や加入
電信、
データ通信その他近代的電気
通信手段が急速に発展する中にあって、そのあり方、電気
通信手段全体のなかにおける位置づけについて、長期的展望を明らかにするとともに、その上に立って抜本的
対策を樹立すべきであります。
その場合、大量の電報
要員の他部門への流動が予想されるのでありますが、その
対策については、十分、労働者の納得が得られるよう、電報
要員の志気高揚施策とあわせて、特に格段の配意が必要であります。労働者の犠牲の上に強行せられる合理化には絶対に反対であります。
次に、今回の電報の利用制度の近代化に関連して、慶弔電報の制度を廃止することとしているのでありますが、慶弔電報は、すでに
国民生活の中に定着しており、その利用は、今後ますます増加する傾向にあることが予想されているのでありますから、
国民感情としても、むしろこの制度は存続するのが妥当であると
考えるのでありまして、この点についての再考を要請するものであります。
最後に、以上の
電話料、設備料、電報料金等の一連の値上げについて総括いたしますと、これらはいずれも利用者に多額の負担をしいるものであり、これら公共料金の値上げは、最近における異常な消費者物価の上昇にさらに拍車をかけることは明らかでありますので、今回の改正は絶対に避くべきものであります。さきに郵便料金の値上げが行なわれ、いままた電報
電話料金の引き上げが行なわれるのでありますが、このような
政府主導型の物価上昇施策に対して、わが党は強く反対を唱えざるを得ないのであります。
以上をもって反対討論を終わります。