○永岡光治君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、
郵便法の一部を
改正する
法律案に対し、反対の意を表するものであります。
反対の理由の第一は、ますます深刻化する
物価問題に対する
政府の政治姿勢についてでありますが、私は特に
郵政大臣の姿勢を問題にしたいのであります。
郵政省は単に郵便を送達するだけの役所ではありません。郵便貯金、簡易保険という庶民に密着した貯蓄手段を
国民に提供しており、
国民の汗の結晶である貴重な財産を守る重大なる使命を有するはずであります。現在、郵便貯金の利率は最高でも年六%であり、簡易保険の予定利率は年四%にすぎないのであります。しかるに、最近の
物価上昇はその利率をはるかにこえる高率になっておるのでありまして、
国民大衆はみすみす損をすることがわかっていながら生活を守るために身を切られるような思いで郵便貯金に預金し、簡易保険に加入しているのでありまして、その
国民の切実な声を少しでも理解するならば、
郵政大臣こそ
物価抑制の最先鋒に立たれるべき
立場にあると思うのであります。しかるに、
郵政省が
物価への影響の大きい公共料金値上げの先頭に立ち、
国民の日常生活に密着した郵便料金を一挙に三五%も値上げしようとしておるのでありますが、一方において、
国民に貯蓄を奨励し、一方においては、その貯蓄を実質的に破壊するような姿勢ではたして
郵政事業に対する
国民の信頼が得られるでありましょうか。
私は、
郵政事業を心から愛する者の一人として、今日の郵便料金値上げには絶対に反対せざるを得ないのであります。
次に、第二点としては、今回の
改正においては、創業以来百年にわたる郵便事業の使命と性格を根本的に改悪しようとしておることであります。
申すまでもなく、郵便事業が国の独占事業として
運営されているゆえんのものは、民主主義社会の基礎をなすコミュニケーションの最も基本的な手段をあまねく全
国民に国が保障することにあるのでありまして、このことは
郵便法の第一条に明記されておるところであります。しかるに、今回の
改正案においては、新たに料金決定原則の規定を設け、
企業的な独立採算主義を強く打ち出しておるのであります。われわれも郵便事業が
企業的、合理的に
運営されること、そのことには何ら反対するものではありません。しかしながら、問題は、一般会計からの財政繰り入れの道が全く閉ざされるということであり、すなわち、
政府の行政目的による政策料金の赤字までを郵便本来の使命である信書の料金に負担させることが合法化されるということであります。
政府の行政目的のための政策料金の赤字は当然
政府の責任において措置すべきものであり、そのことは事業の
企業的経営とは何ら矛盾するものではないと思うものでありますが、そのための一般会計からの財政繰り入れの道までも全く閉ざそうとする今回の
改正は、郵便事業が今後その公共的使命を維持していく上において大きな禍根を残すことになると憂慮せざるを得ないのであります。
第三の理由といたしましては、第三種、第四種郵便物等の料金の省令委任の問題でありますが、われわれの納得のできないことは、
法律で明確な基準を定めず、実質上全く無条件で省令に委任されることであります。
政府は、
法律に明確な基準が定めてあり、さらに
郵政審議会に諮問することとしているから歯止めがあると述べておるのでありますが、これは全くの詭弁であると言わざるを得ないのであります。同一重量の第一種の料金の額より低いものというようなものがはたして基準といえるでありましょうか。第三種や第四種の郵便物は、その
制度がないとするならば、それらはすべて第一種に包含されてしまうものでありますから、
制度がある限り第一種よりも安いことは
法律にうたうまでもなく当然のことなのであります。
また、
郵政審議会への諮問につきましても、現在の審議会は、
郵政大臣の任命による
委員からなる単なる
郵政省の付属機関であり、これが国会にかわって
国民の意思を十分に反映できる機関であるとはとうてい考えられないところでありまして、この際、
郵政審議会
制度の抜本的改革を強く要望するものであります。
次に、第四といたしましては、今回の料金値上げは単なる赤字解消のための値上げにすぎず、
国民の納得を得られるだけの事業改善の具体策が何ら示されないことであります。
今年はあたかも郵便創業百年を迎えたのでありますが、かってのわが国の
郵政事業は迅速、確実、低廉といういわゆる郵便の三大モットーを掲げ、世界第一のサービスを誇ったものであります。もちろん時代が変わっておるのでありますから、明治、大正時代のサービスをそのまま復活させよとは申しません。しかしながら、今日郵便事業に対する
国民の不信の最大の原因は、郵便送達の確実性すら確保されていないことにあるのでありまして、送達速度の安定は通信事業としての最低要件であり、それを
国民に確約することこそ現在
郵政省としてなすべき最大の急務であると思うものであります。そのためには、何をおいても
労使関係の正常化は喫緊の要務であります。
郵政当局は当
委員会において、
郵政事業は八〇%が人件費であるとしばしば強調されておりますとおり、
郵政事業は労働力に依存する度合いがきわめて高く、
職員の協力を得られるかどうかが正常な業務の遂行を確保できるかどうかにかかっているといっても過言ではありません。したがいまして、今日の
労使関係の不正常な
状態が続く限り、
幾ら料金の値上げをしましても郵便サービスの改善は多くを望めないと思うのであります。
労使関係の正常化がなされて初めて郵便料金の改定が検討の対象になると思うのであります。今日の
郵政の
労使関係の不正常な
状態は
国民とともにまことに残念でなりません。
以上、数点にわたって反対理由を述べてまいりましたが、ときあたかも郵便第二世紀の第一歩をしるすべきときであり、また、今後の情報化社会の中における郵便事業のあるべき姿が強く問われている際でもありまして、言うならば、第二の近代郵便創業の時期にいままさに際会しているといっても過言ではないと思うのであります。
政府においては、単なる赤字解消のための値上げというようなこそくな手段によって当面を糊塗することなく、この際、広い視野と遠大な展望に立った郵便事業の抜本的改善策を一日も早く策定して
国民に示されるよう強く要望いたしまして、私の反対討論を終わります。