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政府委員(
宮澤弘君) ただいまモード委員会についてのお話であったわけでございます。私もイギリスの事情をそう知悉をいたしているわけではございませんけれ
ども、御
指摘のように、モード委員会はかなりの時間をかけまして、イギリスの
地方制度の改革の
基本になりますようなものについて検討を加え、結論を出したわけでございます。その結論を出すにあたりましてはかなり時間をかけておりますし、同時に、先ほ
どもお話がございましたように、相当な専門的なスタッフというものを置きまして、各方面の分析、研究をかなり徹底をしてやっているようでございます。
そういうことに比較をして、ただいまの御所見でございますが、わが国の
地方制度調査会はなるほどいろいろ苦心はしているようであるけれ
ども、各ときどきごとにいろいろな問題を取り上げ、ちょっと気軽にいろいろなことに触れている、こういう感じがするんだがどうであろうか、もう少し
基本的な事項をじっくり研究をすべきではないか、こういう御意見であろうと思うのでございます。
私は、ただいまの御意見は決して間違った御意見ではないと思うのでございます。ただ、
一つ付言して申し上げたいことは、イギリスと日本というものを比べました場合に、これはあるいは私の個人的な、あるいは場合によりましては独断的な見方になるかもしれないと思うのでございますけれ
ども、
地域社会の変貌のあり方と申しますか、そのスピードというものに非常な違いがあると思うのでございます。イギリスにおきましても、大都市問題でございますとか、あるいは日本とはやや性格は違うようでございますけれ
ども過疎の問題でございますとか、そういうやはり時代が進むに応じまして
地域社会が徐々に変わりつつあるという傾向はもちろんあるように
承知をいたしておりますけれ
ども、しかし、たとえばわが国のように爆発的に大都市の人口あるいは大都市周辺の人口がふえていく、あるいは非常に急激なスピードで日本の特定の
地域が
都市化、工業化をされていく、その半面、また一種のなだれ現象的な過疎現象が生じているというような事態というのは、イギリスにはそれほど深刻でないといいますか、それほど激しい勢いで
地域社会が変わっていないということが言えるのだろうと思うのでございます。そういたしますと、ある程度将来を見通しまして
地方制度の
基本を考えていくということは相当程度可能なように思うのでございますけれ
ども、わが国におきましては、御
承知のように、人口のふえ方、あるいはその移動の姿、それに伴います過密過疎の現象というものがたいへん顕著でございまして、しかもそういう
地域社会の変動の姿なり、スピードなりというものは相かわらずそう衰えていないということから申しますと、なかなか将来を現在見通して相当
基本的な
地方制度の構造を打ち立てていくというものはなかなかむずかしいということは言えるのではないかと思います。しかし、まあそうであるからこそ、この際、進むべき
方向というものを考えていく必要があるという
議論もありましょうけれ
ども、私は
基本的には、そういう
地域社会の構造の変化のスピード、というものがイギリスその他の大陸諸国と日本とは違っているということから、なかなか将来の
基本的な構想が立てづらい面があるということは言えると思うのでございます。しかし、イギリスのモード委員会等が
地方制度の改革につきましていろいろ検討をいたしましたその方法なり何なり、先ほど藤原委員も御
指摘になったところでございますけれ
ども、これはやはりわが国の
地方制度の今後の改革を考えるにあたりましても、他山の石と申しますか、私
どもとしてもこれを導入をしていく必要があるのではないかという感じがいたします。
地方制度調査会は、学識経験者あるいは国会議員の方々、その他わが国の有識層をもって構成をされているわけでございます。しかし、そういう方々がそう多くの時間をしばしば調査会の
審議にさくということはなかなか不可能でございます。そういう点から申しますと、もう少し
事務レベルにおきまして専門的なスタッフを集めまして、じっくり腰を落ちつけて長期的に調査研究をする体制を整えていくということは必要だろうと思うのでございます。現在は、
地方制度調査会の
事務部局は、私
ども自治省の
事務名局がつとめているわけでございますけれ
ども、私
ども自身も通常のルーティーンの
仕事がございますほかに、モード委員会の例を待つまでもなく、
地方制度と申しますものは、各般の
行政の総合をいたしたものでございます。各個別の
行政分野、専門分野につきましての相当精緻な分析、調査、検討が必要だろうと思います。そういうことから、ただいま私
どものほうの内部でも、おりおり相談をいたしているのでございますが、専門委員的な方々というものを今後少し活用することによって、先ほど来御
指摘がございましたように、なるほど日本の
地域社会も変動をいたしておりますけれ
ども、もう少し長期的な
基本的な展望というものを精緻な調査、分析に基づいてやっていきたいというふうに考えているのでございまして、御
指摘の点は、私は一々ごもっともであるという感じがいたすわけでございます。