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木村禧八郎君 私は、この際、私の円切り上げ是非に関する
考え方を述べまして総裁に
質問いたしたいと思います。
私は、いろいろ調べてみたんですが、たとえばここで五%ぐらい切り上げた場合、
中小企業に対する
影響というものは、特に弱電機とか、あるいは繊維とか、雑貨、そういう
中小企業に対する
影響、これがまた、この十月ごろから特恵
関税があるわけですね。この
影響は、一般に考えられている以上にかなり深刻じゃないか。
通産省が救済法案を出さざるを得ないほどの問題がありますから。私は、そこで
——まだ革新政党は円切り上げ是非についてはあんまりほうぼうで意見をはっきり出しておらないようであります、ほかの政党は知りませんが。われわれも、これは真剣に考えなければならぬ問題だと思っております。そこで、その
影響というものを具体的に考えていきますと、なかなか軽々に結論は出ない。
その前に、一体、外貨はなぜふえるのだろうと。切り上げ論者も、切り上げ反対論者も、外貨がどんどんふえ過ぎることについては、あんまりふやすべきではないと。それがまたインフレにもなっていきますしね。ですから、外貨が急にふえるのを、さっき総裁が言われましたが、なだらかにするという点について、どういう方法を講じたらいいかということが、私は、
対策の焦点になってくるような気がしているわけなんです。そこで、じゃ、外貨はなぜこんなにずっとふえてきて、日本が黒字が定着したか。それは、
一つは、アメリカが、ベトナム戦争のために、基軸通貨であることをいいことにして、ドルを乱発して、日本から、西ドイツから、ずいぶん戦費調達のために金を使って、そしてアメリカが世界的なインフレを起こしているのが
一つの原因だと思うんですよ。それで、日本の
輸出がそのために非常にふえた。それで国際収支の黒字が大きくなった。西ドイツもそうだと思うんですけどね。これが
一つだと思うんですよ。
それからもう
一つは、もっと基本的なんですけれ
ども、日本の経済成長が非常に高かった原因としましては、これは、経済企画庁の経済分析の中で、金森久雄氏が、日本の経済成長はなぜ高いかという分析をしているわけですね。その中で、こういうふうに
調査しています。日本は他国に比べて労働分配率が低く資本分配率が高いことが日本の成長率が高いことの根本的な原因であると、こういうふうに分析してあるわけです。そこで、日本の労働分配率が低いということは、賃金が国際的に低いということですよね。それが
輸出を促進させる有力な原因になってきている。もちろん、賃金ばかりでなく、生産性その他技術革新によってコストが下がっている面もありますが、賃金が国際的に非常に低いと、それで
輸出を増進せしめている原因になっているということは、これは疑いないと思うんですよ。
それから第三番目は、日本の企業は、
公害とかその他の費用を負担していないですね。みんなこれはたれ流しにして、国民にその犠牲を負わしちゃっている。それだけ国際的にはコストが安いというわけですよね。そういうことも間接的に国際競争力をつけていく。いままでは、「経済社会発展
計画」を見ましても、国際競争力を増強させるさせるということに最重点を置いておったわけですよ。そういう政策のしかたが、コストを安くして、そうして
輸出も増加したが、それは、結局、国際的な低賃金ということ、それから当然企業が負担しなければならないものを国民に犠牲を負わしているのですね、いま。
公害なんかたれ流しにしている。それから企業に対する減税
措置を、いろいろな面で、
機械の耐用年数の短縮にしましても、あるいはその他交際費なんかにつきましても税金をとらなかったり、そういうことが企業としては国際的にコストを安くしていますよ、税制面、金融面その他から。それで競争力を強化している。そういうことも
輸出を増大せしめる要素になっていると思うんです。しかも、そのことは、企業のほうに
租税特別
措置でうんと減免税している。だから、十分財源として税金を取れない。それが、結局、社会保障の立ちおくれとか、社会資本の立ちおくれとか、そういうところに
影響きていると思うんですよ。
〔
委員長退席、理事
大竹平八郎君着席〕
ですから、いま、日本の矛盾はどこに集中的にあらわれているかといいますと、非常に逆説的ですけれ
ども、外貨がたまり過ぎてきている。外貨がたまって困ってきているということは非常におかしいことだと思うのですが、その矛盾がここにあらわれてきておる。その矛盾はどういうところから出てきたかというと、だんだん分析してまいりますと、日本の国際的低賃金とか、アメリカのベトナム戦争を中心とするインフレ政策、それから日本の企業がいわゆる
公害対策の費用その他のいわゆる社会的な費用を負担しないでコストを安くしている、あるいは、大幅な減税、金融面についてもそうですが、国際競争力を強化することに最重点を置いて
財政金融政策をやってきた、それで、結局、それは、マクロ的に見た場合、日本の資源の再配分が間違っていた、そういうことからそういうことになってきたと思うんですよ。だから、そう言っちゃ悪いですけれ
ども、佐藤内閣の政策というものはみんなミクロ的な政策ばかりでね。いままで高度経済成長をやってきたそのひずみが生じた、そのひずみに対してみんな小手先のミクロ的な
対策ばかりやっていて、一番基本のマクロ的な大局的な立場に立った資源の適正配分、そういう政策が欠けていたのじゃないか。そういう矛盾が、このドルの、あるいは外貨がたまり過ぎるというところに来ている。私は、この
対策で単に円を切り上げたからインフレがすぐとまるというものじゃないと思う。さっき西ドイツのお話がありました。切り上げても、
政府がそうしたインフレ的な
措置をやめなければとまらぬと思うんですよ。だから、円切り上げで何か問題が解決するように単純に考えることは私は反対なんでして、じゃ、切り上げないでいいのかというと、そこの点はまだ十分煮詰めて考えていないんですけれ
ども、しかし、その前に、なぜドルがこんなにどんどんたまり過ぎるか、その原因は一体どこにあるかをよく分析して、そうして対処すべきだ。
ところが、
政府は、これに対する
対策として、
自由化の問題とか、あるいは
関税の引き下げの問題とか、それから海外に対する
投資をどんどんふやすとか、そういうことに重点を置いて
対策を考えているんですよ。私はそれはやはりミクロ的な
対策だと思う。もっとマクロ的には、さっき申し上げたようなところに重点を置くべきだと思うんですよ。その
一つに総裁が触れているんですよ。社会資本の充実ということに触れていると思う。その社会資本も、さっき御
質問があったように、それが単に大企業のための経済基盤強化に重点を置いた社会資本の充実じゃいけないと思うんですけれ
どもね。そういうふうに私は考えておりますが、これに対して、総裁、どういうふうにお考えか、伺いたいと思います。