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1971-05-20 第65回国会 参議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年五月二十日(木曜日)    午後零時四十四分開会     —————————————    委員異動  五月十八日     辞任         補欠選任      占部 秀男君     吉田忠三郎君  五月十九日     辞任         補欠選任      青木 一男君     二木 謙吾君  五月二十日     辞任         補欠選任      岩動 道行君    久次米健太郎君      小林  章君     亀井 善彰君      今  春聴君     佐田 一郎君      伊藤 五郎君     井川 伊平君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柴田  栄君     理 事                 大竹平八郎君                 玉置 猛夫君                 中山 太郎君                 成瀬 幡治君     委 員                 青柳 秀夫君                 井川 伊平君                 亀井 善彰君                久次米健太郎君                 栗原 祐幸君                 佐田 一郎君                 二木 謙吾君                 丸茂 重貞君                 木村禧八郎君                 戸田 菊雄君                 松井  誠君                 吉田忠三郎君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君                 渡辺  武君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        大蔵政務次官   藤田 正明君        大蔵大臣官房長  高木 文雄君        大蔵大臣官房審        議官       吉田太郎一君        大蔵省主計局次        長        竹内 道夫君        大蔵省主税局長  細見  卓君        大蔵省関税局長  谷川 寛三君        大蔵省理財局長  相澤 英之君        大蔵省国際金融        局長       稲村 光一君        食糧庁長官    亀長 友義君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        農林大臣官房企        画室長      内藤  隆君        農林省農政局植        物防疫課長    福田 秀夫君        通商産業省通商        局次長      佐々木 敏君    参考人        日本銀行総裁   佐々木 直君        日本銀行理事   井上 四郎君        日本銀行総務部        長        中川 幸次君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案  (内閣提出衆議院送付) ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件)     —————————————
  2. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  五月十八日、占部秀男君が委員辞任され、その補欠として吉田忠三郎君が選任されました。  昨十九日、青木一男君が委員辞任され、その補欠として二木謙吾君が選任されました。  また、ただいま、岩動道行君、小林章君、今春聴君及び伊藤五郎君が委員辞任され、その補欠として久次米健太郎君、亀井善彰君、佐田一郎君及び井川伊平君が選任されました。     —————————————
  3. 柴田栄

    委員長柴田栄君) まず、参考人出席要求に関する件についておはかりいたします。  租税及び金融等に関する調査のため、日本銀行総裁及びその他の役職員出席を求めることに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     —————————————
  5. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 次に、食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。  前回に引き続き質疑を行ないます。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  6. 松井誠

    松井誠君 前回に引き続いて、私は、ちょっともっぱら米の需給のことについてお尋ねをしたいと思います。  いろいろな資料をいただきました。その資料のいわば読み方みたいなものになるかもしれませんけれども最初に、農薬の問題ですね。何度も言いましたけれども農薬使用というのが、公害の問題にからんで、これから禁止をされる、あるいはその使用が控えられる、そういうことになってくる可能性は大いにあるわけですが、このいただいた統計を見ますというと、これは農薬年度で四十四年度までなんですけれども、四十五年の農薬年度というと、四十四年の十月から四十五年の九月までですけれども、だとすれば、もうそれの数字ぐらいはあってもよさそうなものですが、四十五年度は書いてないわけですね。これはまだないんでしょうか。私は、四十五年度は、多少農薬が減ってくる、あるいは増加の勢いが鈍ってきはしないかと、そういう気がするものですからお尋ねをするんですが。
  7. 内藤隆

    説明員内藤隆君) 農林省におきましては農薬使用量調査しているわけでございますが、四十五農薬年度資料につきましては、実は、農政局植物防疫課のほうでもまだちょっと数字の集計が終わっていないそうでございまして、資料として御提出することができませんでございました次第でございます。
  8. 松井誠

    松井誠君 そういう公害関係もあって農薬使用が何がしか手控えられることになると、それが具体的に収量影響しないか。公害関係のない農薬というものがいずれは開発されるにしても、少なくともその間収量減少ということがあり得るわけではないか、こういうことを思うのですけれども、いかがですか。
  9. 内藤隆

    説明員内藤隆君) ただいま御指摘のように、農薬によりまして栽培面におきまするいろいろな影響があるわけでございます。作況その他、それから病害虫自体問題もさようでございますが、ただ、基本的には、農林省農政局のほうといたしましては、代替農薬というものにつきまして相当の準備を進めております関係がございますので、それが直接今年なり近い将来の作況影響するというふうには考えていない次第でございます。
  10. 松井誠

    松井誠君 そうしますと、具体的に、公害を発生するということで禁止をされ、あるいは手控えを期待をされなければならない農薬種類、それにかわる農薬種類、そういうものをひとつ教えてください。
  11. 内藤隆

    説明員内藤隆君) 若干専門的な話になりますので、いま専門家を呼びましてすぐお答えするようにいたします。
  12. 松井誠

    松井誠君 じゃ、それはもしお見えになりましたらお答えをいただくことにして、もう一つ、私がやはり将来の収量について聞きたいのは、現在動力耕うん機を中心にしておる機械化中型あるいは大型機械化になった場合に、当然予想されるその収量減少、そういうものが予想されるのですけれども、具体的な資料としてはなんにもないわけですね。これは、あれでしょうか、そういう機械化規模によるそういう生産量というようなものについての実験なり統計的な資料なんというものはございませんか。
  13. 内藤隆

    説明員内藤隆君) 前回も申し上げましたように、大型機械化体系と申しますものは、実は、現状普及度合いというものは非常に低いわけでございまして、これはごく事例的な数字しかないわけでございまして、その事例も累年数字をとって調べたというようなことになっておりませんのでございます。ただ、中型機械化体系につきましてはかなりの普及度を見ておりますけれども、この面につきましては、反収変化というものはほとんど考えられない、こういうふうに私どもは考えているわけでございます。
  14. 松井誠

    松井誠君 中型機械反収変化が考えられないというのは、つまり、現実にそういう収量には変化がないという資料があるわけですか、これからの見通しの話ですか。
  15. 内藤隆

    説明員内藤隆君) 現在、中型機械化体系というのは、かなり普及いたしておりますし、それから試験実績の結果と申しますか、試験結果はあるようでございます。
  16. 松井誠

    松井誠君 試験の結果というのは、言ってみれば、大量的に将来採用された場合に、そのまま基礎的な数字になるかどうかが実はだいぶ疑問ではあろうと思う。  それからもう一つ、この中型機械が入ってきたときに問題になったのは、非常に湿田地帯ですね。入ってきたはいいが、さっぱり進まないという、機械を入れたらかえって動きがとれなくなったという、そういうこともあって、基盤整備と具体的に並行していかなきゃならないわけですね。具体的に機械化と並行したそういう基盤整備というものも計画の中には入っておるわけですか。
  17. 内藤隆

    説明員内藤隆君) 先生案内のように、土地改良のほうには土地改良法に基づきます長期計画というのがございまして、これはそういう排水それから圃場整備というようなことを年次計画をもちまして実施するようになっておりまして、現在でも依然として機械化のための土地条件の悪い面積というものは相当数にのぼっているというようなことが土地改良捕捉調査の結果に出ておりまするけれども、そういうものを年次計画をもって進めるように閣議決定をしてやっておるわけでございます。
  18. 松井誠

    松井誠君 私らが具体的に知っておる例でも、たとえば大型圃場整備というのですか、大規模圃場整備というのですか、そういうことをやったはいいけれども機械が使えないという、そういうちぐはぐな現象というものがときどきあるわけですね。ですから、そういうものも具体的にひとつ並行して検討していただきたい。  それからこのあいだいただいた資料で、現実に、農家負債として、機械化なり基盤整備なりというものをやったおかげでどのくらいいま農家が負担しているかという資料をいただきました。これで見ますと、約三千億ぐらいになりましょうか、三千億に足りないわけでありますけれども農民がそういうもののために投資をしておったいままでの総額、どれくらいの総額負債があったのに、だんだん償還をしてきてこれだけになったのかという、そういうおよその総額の見当はつきませんか。
  19. 内藤隆

    説明員内藤隆君) 先生の御指摘のようなことにまっすぐ該当すると申しますか、そういう数字累積値というようなものはございませんけれども農業農家社会勘定数字から見ますると、毎年最近時におきましては一兆円前後の農業投資、これは全部でございまするけれども、そういうものが行なわれているということでございまして、それから前回も若干御指摘ございましたけれども、「農家経済調査」によります一戸当たり負債額平均残高でございますが、これは年度末におきまして二戸当たり三十三万円程度というようなことになっておりますので、投資負債の概況というのはおおよそそういうようなことであろうと、こういうふうに思っております。
  20. 松井誠

    松井誠君 いまちょっと言われた二戸当たり負債残高三十三万円程度というのは、これは全農家で割った平均ですか、負債のある農家平均ですか。
  21. 内藤隆

    説明員内藤隆君) いま申し上げました数字は、「農家経済調査」の結果でございますので、一応全農家の二戸当たり平均というふうに考えていただいてよろしいかと思います。
  22. 松井誠

    松井誠君 そうしますと、これに農家戸数を掛けたものが現在の負債残高というおよその推計になる。それは三千億近い——ここに書いてあるこれは特定金融機関からの負債ですね、これとどの程度の違いになりますか。つまり、こういう金融機関からの負債以外にいろんな負債があろうと思いますけれども、その割合は大体どんなふうになりますか。
  23. 内藤隆

    説明員内藤隆君) お手元に提出しました資料は、いま御指摘のように、特定資金のうちの、またさらに米作関係のものを推定した数字でございますので、いまの三十三万円と申しますのは、生産面だけでなく、生活面なり、一切がっさいの負債ということでございますので、先ほどちょっとお話しがございましたこの表にございます三千億程度のものよりは相当上回る——まあ相当といいますか、ある意味では比較を一応推定いたしますと絶するくらいということなんでございますが、この数字がおそらく二割ないし三割程度のものになるのではないか、こういうふうに思っております。
  24. 松井誠

    松井誠君 いままで米価がずっと逐年上がってきて、そしておまけに開田というものにも相当精を入れた時期があったわけです。そこで、農民は、政府開田政策の上に乗っかって荒れ地を開田をする、そういうことをやってきて、およそ借金をしてやってきた。そうして、これからいよいよつくれようかというようなときになって、こういうような事態にぶつかる。借金はふえてきているし、米の値段はこれから上がっていかない。そういうところへいきなり押し込められておる、そういう開田地帯農民がたくさんおるわけですね。そういう者に、こういう米の値段の据え置きというものにからんで、何か特段の措置というものをお考えになっておりますか。
  25. 内藤隆

    説明員内藤隆君) 生産調整実施にあたりましては、御案内のように、国のそういう財政援助に基づきまして計画的に実施いたしております開田等につきましては、施策開田というふうにいたしまして一般の自己資金による開田等との取り扱いを異にいたしまして、これは一応四十四年基準の作付面積を考慮します際にもそういうものを考慮するということをやって生産調整実施上の扱いには配慮をいたしたわけでございますが、また、生産調整実施に伴いましてその償還というようなことに困難を生ずるというような場合に備えまして、そういう場合には自作農維持資金を融資するというような措置を本年度講じた次第でございます。
  26. 松井誠

    松井誠君 じゃ、最後に一点だけ、米の消費のほうの関係でお伺いをいたしたいのですが、いただいた資料で、消費といっても輸出ですね、この輸出について、昭和四十三年度から米の輸出という形で一部を消費するという方式が始まっておるわけですね。それで、昭和四十五年の消費は、この中には沖繩に行った米も入っておるわけで、輸出と言うのはおかしいんですけれども、実際輸出という形で入っておるわけですね。四十六年のこの計画というものの中にも、したがって、沖繩へやる米も中に入っている、こういうことですか。
  27. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 輸出実績を整理いたします際に、私ども、従来、沖繩を含めてまいりました。ただ、今度考えております過剰米処理と、四十六年度から始まります計画の中には、沖繩輸出輸出の中に入れておりません。これは単に事務的整理としてそうしておるだけのことでございます。しかし、現実沖繩へ米を出すことは間違いございません。
  28. 松井誠

    松井誠君 そうしますと、このいただいた資料の四十六年の輸出計画ですね、七十五万トンの計画すね、これには沖繩へやる予定の米は入っていないわけですか。
  29. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 七十五万トンの中には、沖繩として四万七千トンの予定を含めてございます。
  30. 内藤隆

    説明員内藤隆君) 植物防疫課長が参っておりますので、先ほど保留させていただきました農薬の……。
  31. 福田秀夫

    説明員福田秀夫君) まず最初に、四十五年度農薬使用量の御質問があったように伺いますが、四十五年は、四十四年までと比べまして、あまり詳しい資料をいま持っておりませんので若干記憶でございますが、頭打ちというところではないかと思います。農薬全体としましても前年並みでありまして、水稲に使った農薬としても前年並みではないかと記憶いたしております。  それから代替農薬のお話かと伺いましたが、水稲農薬の中で規制を受けておりますのは、前にいわゆる水稲いもち病防除剤としての有機水銀剤を規制いたしまして、これは四十三年末をもって全部とりやめ、他の薬剤に切りかえたわけでございまして、これは新しく抗生物質剤だとか、有機塩素系殺菌剤だとか、有機リン剤殺菌剤だとか、十種類ぐらいのものが出ておりまして、それがかわりに使われております。それから最近になりまして、御承知のとおり、BHCDDT等有機塩素系殺虫剤を全面的に水稲から締め出したわけでございますが、これはDDTはあまり使われておりませんで、BHC水稲害虫防除には非常に使われておりましたけれども、その代替としましては、害虫によりまして、たとえばメイ虫類でございますと、低毒性有機リン剤が数種類出ております。それからウンカのほうですと、カーバメート系殺虫剤というようなものがこれまた十種類くらい出ております。さきに申しましたメイ虫類に対しましての有機リン系殺虫剤としましては、スミチオン、バイジット、エルサン等々何種類か出ておりますし、ウンカ類対象といたしましたカーバメート系殺虫剤としまして、銘柄としては、デナポンだとか、メオバールだとか、何種類か出ております。これらの代替農薬を用いまして水稲病害虫防除はできるというふうに考えております。  ただ、少しつけ加えさしていただきますと、規制いたしましたBHCは、非常に広い範囲にきく殺虫剤だったものでございますから、BHCであればメイ血類でもウンカ類でもあるいはその他の害虫でもみな防除ができたということでございますけれども、それにかわった代替農薬は、多少、選択性と申しますか、害虫によってきくものときかないものとございますので、それ一種類というわけにまいりませんで、やはり何種類かの農薬対象害虫によって使い分けていかなければならないというようなことになったと思います。  以上でございます。
  32. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ちょっと残存輸入制限の問題で伺っておきたいのですけれども、四月末、九月末の自由化計画に含まれている品目の大部分農畜水産物ということになってきておりますが、これら大部分のものが中小企業製品であり、そういう点で菓子業界のようなところからはいろいろな問題が提起されておりますが、それについてどういう対策実施していくのか、その点をまず伺っておきたいと思います。
  33. 谷川寛三

    政府委員谷川寛三君) それぞれ農政上いろいろな御措置があると思いますが、関税上、先般お認めいただきました関税率等の一部改正法案におきまして、とにかく自由化をいたしましても、なまに税率を上げてしまっては自由化意味がございませんので、たとえば、季節関税とか、差額関税とか、関税割当制度とか、関税上のいろいろな制度を活用いたしまして、そうして産業に対するショックを緩和しつつ自由化を進めてまいるということにした次第でございます。
  34. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 現在あるドルの急増防止対策というようなことからも、輸入自由化ということが強くいわれており、特に、そうなると、残存輸入制限品目についてのわが国態度というものが強く出されてくるわけですね。また、そうでなければならない。そういう一方で、いまのような関税だけの私は対策を聞いたわけでありますけれども、まあお答えはそうなったわけですけれども、具体的にそれ以外にはどういうようなことを——私がいま申し上げたのは菓子業界だけだったのでありますけれども、そういう点を伺っておきたいと思います。
  35. 亀長友義

    政府委員亀長友義君) 担当の者が実は参っておりませんので、私、担当ではないのでございますが、便宜上答えることでお許しをいただきたいと思います。  菓子原料の主たるものでございます砂糖につきましては、昨年来から物価自由化対策の両面からいろいろ検討いたしまして、砂糖消費税に所要の調整を加えるよう、税制措置を講ずべく、目下検討中であるとのことでございます。  なお、ビスケットに関しましては、ビスケット業界におきまして、昨年五月、中小企業近代化促進法に基づく業種指定を行ないまして、体質改善をはかるという方向で進んでおります。  以上でございます。
  36. 佐々木敏

    説明員佐々木敏君) 自由化につきましては、国内的には、低物価政策等国民生活安定等要求もございまして、また、対外的には、国際化もろもろの要請がございまして、そういった面から通産省といたしましては今後とも自由化を極力進めるという方針でありますが、昨年九月十日の関係閣僚協議会におきましては、自由化産業経済に与える影響を十分配慮してその円滑な実施のための措置を講ずるというようなことが御決定になっておるわけでありまして、これに従いまして、ただいまも農林省のほうから御説明がありましたような各業種ごとに実情に即した関税措置とか、その他中小企業近代化促進法に基づく業種指定とか、もろもろ措置業種ごとに十分配慮いたしまして措置をすることになっておる次第であります。
  37. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 いまの食糧庁長官答弁にあり、した例の砂糖消費税の問題ですけれども農林省で検討して——前回大蔵大臣は、その点は全然考えていないというような答弁があったわけですけれども、その点は、大蔵大臣農林省のほうで十分検討して、ぜひともというような声があったときは、これは大蔵省としては検討するというふうな態度に出てこられるでしょうか、その点はどうですか。
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 砂糖消費税につきましては、これを軽減するという場合に、税法を改正するということと、それから行政措置でできるという分野と、この二つあるんです。私は、税法税率まで改正するということについては、今日なお消極的な考え方を持っておるわけであります。しかし、行政上多少のことができるというようなことで、いま農林省で検討しておるんだというような話があります。これは行政範囲ですから、軽微なことだと思いますが、そういうような話でありますれば、これは自由化対策としてどのくらい有効であるか、また、必要の限度はどうかというようなものと勘案いたしまして、私どもも前向きでひとつ相談に応じてみたいと、かように考えております。
  39. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ちょっと質問はまた戻るのですけれども農畜水産物自由化、こういうことについて、豚肉であるとか、紅茶、落花生、いろいろございます。チョコレートからビスケット、クラッカー、こういう日常製品というものがかなり出てくるわけでありますが、この日常生活必需品というものがどういう程度安値になってくるというような予想ができているのか、また、その場合、輸入された品目輸入価格販売価格との間の差というものがあまりにも大きければ、何のためにやったのかわからないということも出てくるわけでありまして、一面には物価安定ということも大きなねらいでなきやならないと思うのです。そういう点の予想等があったり、また、値段の格差についてはどういうふうな考え方があるのか、伺っておきたい。
  40. 佐々木敏

    説明員佐々木敏君) 現在まだ八十品目残存輸入制限物資がございまして、そのうちの大部分は、ただいまおっしゃいましたような生活消費物資でございますが、それぞれの物資につきまして輸入価格並びに国内卸売価格との比較はできませんけれども、一般的には相当国内価格が高いのが現状であります。私ども通産省といたしましては、国内産業保護ということを十分考えまして、かつまた、国民生活の安定と低物価政策を考えまして、輸入自由化が可能なものにつきましては自由化する、その場合には当然に自由化されました物資が必要限度入りまして物価対策相当寄与する、かように考えておる次第であります。
  41. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 私どものほうでも若干の試算はやっているんですが、現在のいわゆる関税負担率というか、各国の比較では、わが国はかなり高いほうであります。それが思い切って半分に減らすというようなことになれば、物価の安定は目に見えているわけであります。そういう点も十分な配慮というものをしてもらいたい。これは大蔵大臣に要望でありますけれども、それとからみ合って、こういうような残存輸入制限品目の撤廃と一緒に、関税率の引き下げということもさらに進めてもらわなきやならぬと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  42. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま、国際社会の中で、日本の経済、これが非常にうまくいっているがゆえに注目を浴びているわけなんです。ことに経常収支、その中でも輸出入バランスがすばらしくいいような状態でございますので、この点が各国から着目をされ、何かあらがあったらひとつ日本を攻撃しようと、こういうような風潮かと私は見ておるのです。そういうさなかでありますので、私どもは、円の問題ということがありますが、これはもうどこまでも堅持してまいる。が、しかし、円の問題——江戸のかたきを長崎でという話がありますが、円はアタックはできない、そこで通商面でアタックをしようというようなところへ来ると、これはまた基本的にわが国の経済に影響がありますので、とにかくいくらさがしてもあらはないと、そういう状態に国際対外姿勢というものを置かなければならない、こういうふうに考えておりまして、その第一は、いま御指摘自由化の問題なんです。これはスケジュールはあるんです。ところが、四月中実施という二十品目、これがグレープフルーツの問題でちょっといま足踏みをしておるのですが、これもそう遠くない時期に実行したいと、こういうふうに考えておりますが、自由化は着実に計画を進める。進めるのみならず、計画によりますれば四十品目が年末には残る、その四十品目につきましても、何とかなおこれを残存品目を少なくできないかということを検討してみたい、こういうふうに考えております。  第二は、いままさに御指摘関税の問題であります。関税は、ケネディ・ラウンドに従いましてかなりの引き下げを行なったのでありますが、わが国輸入がいま停滞しておる、反面において輸出が激増しておる、こういうような状態でありますので、この辺で関税政策をひとつまた考え直す必要があるのじゃないかというふうに考えております。それは、同時に、国際社会に臨む効果ばかりじゃない、わが国物価対策上御指摘のような効果があるだろうと、こういうふうに思いますので、これはひとつあらためて検討してみたい、そういうふうにいま考えておる次第でございます。
  43. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 他に御発言もなければ、質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  44. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。−別に御意見もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより採決に入ります。  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手〕
  46. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 多数と認めます。よって、本案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  午後一時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十八分休憩      —————・—————    午後一時三十七分開会
  48. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 休憩前に引き続き大蔵委員会を再開いたします。  租税及び金融等に関する調査中、当面の財政及び金融等に関する件を議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まず、大蔵当局に伺いたいのですが、いまの外貨準備ですね、いまどのくらいで、今後の見通しはどうか、こういう点をまず……。
  50. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 外貨準備の状況でございますが、先月末五十七億七千七百万ドルでございまして、その後マルクを中心といたします通貨問題が起こりまして、その後、短期間でございますが、外準はだいぶふえて、たしか数億ドルふえており、おそらく最近の時点では六十五億ドルをこえておるかと思われます。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 今後の見通しはどうですか。
  52. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 今後の見通しにつきましては、こういう情勢でございますので、その見通しは非常に困難でございまして、こういう今回の通貨不安に基づきまする資金の流入につきましては種々措置をとりましたので、今後大幅の流入があるとは思われませんが、国際収支全般といたしまして健全に黒字の基調にございますので、そういう意味でまだ若干の増加はあろうかと思われますが、計数的に通常の事態と違っておりますのでこの見通しを立てることは非常にむずかしい問題であろうかと存じます。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 正確な見通しを聞くわけじゃないですけれども、それは、結局、円投機をどの程度防止できるかとか、そういう今後の円投機防止対策がどの程度効果があるかによりますけれども、しかし、六十五億ドルよりふえないという見通しはないでしょう。ですから、どの程度、七十億ドル台になるかですね。この調子でいけば、あとでこの円投機について伺いたいんですけれども、そう簡単にこのままの増加を阻止することは困難ではないかと、こう思うんですよ。たとえば例のリーズ・アンド・ラックズだけでも、これはまあ輸出入で違いますけれども、一カ月分リーズでやるとしてもかなりふえますからね。そうしますと、少なくとも二、三億ドルぐらい、あるいはもう少しふえるのじゃないか。だから、六十五億ドルをこのまま維持するということは困難じゃないか。ですから、どの程度ぐらいふえるかということは大体見当がつかないですかね。まず見当をつけてやるべきじゃないですかね。
  54. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 正確にはなかなかこの見当がつきがたいということを先ほど申し上げましたが、御指摘のとおり、リーズ・アンド・ラッグズその他の関係で理論的にはそれが起これば一度に多額の流入が起こり得るということは事実でございますけれども、御承知のとおり、短資に関しましては厳重な規制をやっておりまして、今後とも情勢に応じてさらにもし追加措置が必要であればとるという体制をとっております。したがいまして、普通の意味のいわゆる短資の流入というものは、これからはあまり起こるということはないのではなかろうか。ただ、先ほども申しましたとおり、基礎的な国際収支全般のたとえば貿易収支が良好であるというようなことからいたしまする外準の増というのは起こり得ると存じますので、したがいまして、まあ六十五億ドルをこえておりますが、この水準で外準はもうふえないというふうには申し上げられないかと思いますが、と申しまして、他方、どのくらいふえるかということにつきましては、非常にこの見通しがむずかしい。確かに、若干はふえるということを考えなければいけないかと存じます。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日銀さんのほうではどういうお見通しですか。
  56. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 先ほどから稲村国際金融局長が御答弁になったことと全く同じでございまして、今後もかなりまだふえると思いますが、はたして幾らぐらいふえるかということは、いまの段階ではとうてい的確に申し上げられないのじゃないか、こう考えております。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 では、次に伺いますが、いま外為証券の発行限度は幾らですか。
  58. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 八千億円でございます。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま、最近ですね、一番最近の時点でどのくらい発行していますか。
  60. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 大体八千億円の限度に近くなっておりますが、七千七百億円ぐらいでございます。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、かりに一億ドル外貨準備がふえると、一億ドル外貨を買うとなると、三百六十億でしょう。そうしたら、もうこれをオーバーしますよ、限度を。どうなんです、それは。
  62. 稲村光一

    政府委員(稲利光一君) そういう場合には、すでにいままでもたびたび起こっておりますが、外為会計といたしましては外貨をアウトライトで日銀に売却をいたします。外貨を日銀に売却をいたしまして処理しておりますので、この限度をこえることはございません。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは限度をこえることはできないわけですよね。その限度に達してしまうでしょう。そうしたら、今後その操作をどうするのですか。
  64. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいまの御説明があるいは不十分であったかと思いますが、外為会計といたしまして保有し得る限度は、いまの外為証券の発行限度によって頭を打ちますが、しかし、流入外貨が多くなっておりますから、したがいまして、そういう外貨は日銀に売却をいたします。すでに何回もやっております。したがいまして、外為会計といたしましては、その発行限度の外貨を保有しておれば、これが通常の市場介入に支障ない限度ということで、この八千億円の限度を設けていただいておるわけでございます。したがいまして、その限度いかんによって、いまの入ってくる外貨が、何と申しますか、経理上処理できなくなるということは全くございません。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、日銀のほうに伺いますが、大蔵省が外貨を日銀に売ります。通貨が出てくるわけですね、円が。通貨膨張になりますね。そういうふうに見ていいですか。
  66. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 通貨との関係は、日本銀行が外為特別会計から外貨を買いました段階ではなくて、外為会計が為替市場で外貨をお買いになった般階で市中に円が出てまいりますわけですから、日本銀行の金融政策といたしましては、それを十分考慮に入れまして、全体の通貨増発量、外貨が幾ら出たというようなことで、具体的に申しますと、それだけたとえば買いオペレーションの量を減らす、あるいはもっと余れば売りオペをするというようなことによって金融調節をしてまいりますので、目下のところ何ら支障なくなってきておる、こう確信いたしております。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこで、ぼくはわからないのは、外為証券の発行限度八千億ときめるでしょう。きめて、それを今度はこえて外貨を買う場合、円資金がないわけですわね。ないから、外貨を日銀に売るわけですね。それで、日銀から円資金をもらって、それで、また外貨を買うということですね。そういうことと、外為証券を発行して——これは外為証券を売るわけでしょう。外為証券はどうなるんですか。そういう外為証券を発行して、金利を払って、それで円のファイナンスをして外貨を買うという場合と、どういうふうに違ってくるのですかね。
  68. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 経済的には、二つは全く同じ影響だと思います。大体、外国では、中央銀行——日本で申しますと日本銀行——が自分の勘定で直接外貨を売買して市場に介入しておる。日本の場合には、外国為替特別会計がその任に当たっておられる。ただ、外国為替特別会計は、いまの八千億の限度がありまして、無限に外貨を持つわけにはまいりませんから、その底だまりの分は日本銀行がいただく、両方であわせて一本の仕事をしておると、こうお考えいただければよろしいのじゃないかと思います。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 わかりました。その違いは、外貨を持っているときは、その外貨を運用しているわけですね、政府が。アメリカの大蔵省証券とか、あるいは銀行預金とか、金利がついて運用しているわけですよ。ところが、外貨を日銀に売っちゃうと、これは金利がつかぬわけですね。そうでしょう。
  70. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) はい、外貨の金利は、そのとおり、私どもが外国為替特別会計に円を払って外貨を買い取りますと、利息はその日から日本銀行がいただくわけでございます。そのかわり、外為特別会計は、いままで外為証券で、お払いになっていた利息が払わなくてよくなりますから、結局、円と外貨の利息との差額の問題になりまして、その損得は、そのときどきの日本と海外との金利差によって起きてくるわけでございます。たとえば、現状で申しますと、外為証券の利息は五・三七五でございまして、それによりまして、アメリカのTBをお持ちになりますと、四・三か四、むしろ逆ざやを食うわけでございまして、それを日本銀行にお売りになってしまえば、もう何も損はないということになっております。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いま、逆ざやの状況にあるわけですね。いまお話しのように、二カ月ものですが、外為証券は五分三厘七毛ですね。それで、アメリカのTB——大蔵省証券ですか、これは四分五厘ですね。六カ月ものが四分五厘、五月十七日現在で調べたものですが、預金が大体五分。逆ざやですわね。そうすると、外為会計はどうなっているんですか、逆ざやがずっと続いていくですね。
  72. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 先生指摘のとおり、外為会計が負担いたします金利と、それからたとえばTBの金利、まあ大体四・五%ぐらい、最近のところ。それから預金がございますが、それと比較いたしますと、確かにその部分だけでは逆ざやになっておりますが、これはいわば限界的な逆ざやでございまして、外為会計全体といたしましては、全体では逆ざやになっておりませんで、順ざやになっております。これはコストのかからないなにを別途持っておりますから、そういう意味で、全体として見ますと、外為会計の採算といたしましては逆ざやにはなっておりません。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 現在では、ほかの勘定を総合して、外為会計に対しては逆ざやじゃないとしましても、こういう状況がずっと続くということになると、やはり問題じゃないですか。しょっちゅう外貨を低利で運用して、そしてその資金は高い証券を発行して、そうしてこういう逆ざやをずっと続けていくということは、これは正常の姿じゃないじゃないですか。これが長期にだんだん続くとなったら、これはボリュームにもよりますけれども、今後どんどんドルがたまるなんということになっていくと、問題が出てくるんじゃないですか。
  74. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 御指摘のとおり、その部分だけを考えますと逆ざやの分もございますが、これは今後どういうふうに推移いたしますか、たとえばドルの短期金利もむしろいま底をつきまして上昇のほうに移っておりますし、それから将来の長い問題として見ますと、この外為証券の金利につきましても、これは現在の水準がこのまま行くかどうか問題でございます。したがいまして、これは長い問題としましてはむろん慎重に検討をいたす必要があるかと存じますが、このほかにまた外為会計といたしまして売買益もございますし、採算といたしましては決して赤になるということではございません。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 井上参考人に伺いたいんですけれども、外貨がどんどんふえますと、結局、円が出ていきますわね。特に円投機によって外貨がたまって、そして円が出ていくということは、日銀の金融政策のらち外の通貨が出ていくわけでしょう。らち外の円が出ていく。これは、ですから、金融政策を行なう場合に、非常に混乱的要素ということになりますわね。ですから、そうした外貨がたまることによるインフレというんですか、それは最近特に円投機による外貨の増加が多いんですが、これに対していろいろこれまで措置を講じられておりますが、たとえば、非居住者の自由円の規制とか、公社債株式についてはなかなか規制が困難だといわれましたが、これに対しても、最近、いろいろ対策を講じているようですけれども、今後一番問題になるのは、リーズ・アンド・ラッグズですね、特にそのうちの輸入面ですね、輸入面の代金の支払いをおくらせるということが問題だと思うんですよ。  それから時間がありませんからもう一つついでに聞いておきますけれども、円に対する日本の相場ですね。いま平価は三百六十円ですけれども、IMFでは一応上下一%ずつ変動を認められている。ところが、いま日本での実際の操作は〇・七五ですね、上下〇・七五でやっているわけです。私、わからないのは、スポット——現物においてはこの範囲で操作されていますわね。ところが、現物の相場がどんどん下限が接近してきていまして、たとえばこれは五月十七日の相場なんですけれども、TTのスポットで三百五十六円八十五銭になっています。そうすると、いま買いささえの下限が三百五十六円八十銭ですよね。五銭しか差がない。非常に下限が限度に近づいてきているということと、もう一つは、先物ですね。先物は、これは介入しないもんですから、自由ですわね。介入していないでしょう、政府は。すると、先物は、六カ月先物は三百四十八円です。だから、スポットの現物のささえ限度をここで割っちゃっているわけです。そうなると、先物のほうに介入しなくていいのかどうか。先物がどんどんもう三百五十円を割っちゃっているんですよ。こういうことを放任しておいていいのか。そういう点がどうもわれわれわからぬのですが、その二点について伺いたい。
  76. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 第一点の円投機と金融政策の点でございますが、私ども、必ずしもいま、ごく例外的にはございますが、一般的に円投機が起きているとは思っておりません。一つの例を申し上げますと、外人の証券買いでございますが、短期の証券を買う人は多いのですが、大体先のカバーをとりまして、そこでまたプレミアムをかせいでおる。円を買いますけれども、先の円を売ってしまう。円のポジションを持っていない外人投資が大部分でございます。と申しますのは、これは金利かせぎであって投機ではないという具体的な証拠でございます。  それからリーズ・アンド・ラッグズの点は、確かに問題はございますが、御承知のように、日本の場合には、外国貿易はほとんど外貨建てでできておりまして、ドイツの場合のように向こう側の貿易商にリーズ・アンド・ラッグズを起こす要因はございませんで、こちら側の商社の側にむしろございますわけですが、輸出のほうにつきましては、たとえば資金貸しというような有利な金融制度もございますし、それほど大規模に起こるとは考えておりません。また、かりに多少起こりましても、別に円投機の円といってしるしがついているわけでございませんで、結局、その円資金トータルのボリュームの問題でございますので、これはほかの証券の買い入れを差し控えますとか、貸し出しを回収するとか、あるいは場合によっては売りオペをやりますとか、一般の金融政策で十分対処していけると、こう確信いたしております。  それからスポットと先物の点は、IMFの規定では、スポットを一%上下に押える義務を負っておりまして、先物のほうはそういう義務は負っておらないわけでございます。ただ、御指摘のように、直先があまりに開きますことはいろいろ問題がございますわけですが、これは今回ヨーロッパでいろいろ起きました通貨不安から商社が輸入ワクを手控えたというようなところから一時かなりそういう状態になっておりますが、きのうあたりから若干落ちついてきておりますし、もちろん十分注意して見てまいらなければなりませんが、ただ、いまここですぐ先物をどうにかしなければいけない、目下のところまだそういうふうには考えておりません。十分情勢を注意はいたしてまいりたいと、こう考えております。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いろいろ円投機については万全の策を講じているようですけれども、しかし、まだいろいろ不備な点があるということが指摘されている。たとえば、公社債の買い入れにつきましても、これは日本の金利が高いということもありましょうけれども、たとえば造船なんかが円為替を押しつける。したがって、そのために公社債を買い入れて、まあ船主のほうは非常に金持ちですから、それでそういう公社債の買い入れがふえてくる。そうすると、たえず円の切り上げというものの不安があると、そういうことが絶えないのじゃないかという気もしますね。  それからもう一つは、たとえばリーズ・アンド・ラッグズで外国から借り入れをするとしても、銀行が保証する場合もありますけれども、銀行が保証されなくても借りられる商社もあると思うんですよね。たとえば、ソニーとか、あるいはその他ね。そういうところがやはり手当てをする可能性は十分あると思うんですよ。ですから、そういうことを考えると、やはりじわじわと私はそうした円投機——投資ですかね、円投機というのですか円投資というのですか、それが絶えないのじゃないか。  そういうことと、もう一つ、今度は、西ドイツがいま変動為替からマルクを切り上げるというようなことになりますと、また情勢は非常に変わってくるんじゃないかと思うですね。そういう点はどうなんでしょうか。
  78. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 西ドイツの点をお答えいたしたいと思いますが、現在ではフロートしたような形になっておりますが、ECの閣僚会議の申し合わせで旧平価に返るんだという約束になっております。ただ、その後、オーストリー、スイスが切り上げをいたしましたので、ブンデスバンクのクラーゼン総裁の演説でも、旧平価に戻ることは非常に困難になったと、しかし、インポシブルではないんだというような言い方をしておりまして、実際に市場ではなかなか旧平価に戻ることは困難じゃないかと見ておる方が多いかと思います。ですから、かりに——どもとして他国のことをいろいろ予想するのは差し控えなければいけませんが、いま御質問先生からございましたような、かりにそういうことが起きましても、市場としてはそれはすでにかなり織り込み済みであって、今後それによって新しく大きな影響が起きると、そういうふうには私どもは見ておりませんでございます。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はもうこれでかわりますけれども、いまお話を承りますと、今後円投機等についてもいろんな対策でそんな不安がないし、それから外貨も急にいままでのようにふえることもないだろうと、大体こういうような御答弁でしたね。それにもかかわらず、しょっちゅう円の切り上げの問題が話題になっているし、また、アメリカあたりでもどんどんそういうことが言われておりますし、日本の財界ではまた最近反対論がずいぶん出てきておりますけれども、外国あたりでは、また、アメリカあたりでは、ずいぶん圧力をかけてきているような情勢が見えますけれども、そういうことが絶えないわけですよ。万全の措置を講じているからだいじょうぶだだいじょうぶだと言っておりますけれども、その点についてはどうなんですか。  それからこれはすぐに切り上げの問題につながらなくても、私は今度IMFあたりで変動為替の問題がどうしても出てくると思うんですよ。固定為替にしている日本が、それをずっと維持していくのかいかないのかですね、そういう点です。  それと、最後に一つだけ、さっきの先物にはもう介入する必要がないのかどうか、今後。かなり開いていますよね。最近少し縮まったといいますけれども、しかし、三百五十円を割っているんですからね。こういう状況をずっと続けて、それで介入しなくていいのかどうかですね、その点です。
  80. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 御質問お答えいたします前に、先ほどの相場の問題に若干補足して御説明申し上げたいと存じますが、三百五十六円何がしという相場は対顧客レートでございまして、これはインターバンクのレートに五十銭の手数料が入っておりますので、IMFのいいます一%以内、あるいは現在平衡操作の基準としております。〇・七五%の相場とは直接の関係はございませんで、そういう意味の介入相場といたしましては、十二日、十一日、いずれも三百五十七円三十八銭、四十三銭という相場でございまして、〇・七五%の範囲に入っております。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは〇・五を加えなきゃならないでしょう。〇・五が手数料ですか。
  82. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 手数料でございますから、これは別でございますから、したがいまして、平衡操作の限度としております平価の上下〇・七五%というのは三百五十七円三十銭でございますので、それを割っているわけではございません。その点、若干補足して御説明を申し上げておきたいと存じます。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 三百五十六円八十銭になるんでしょう、手数料を引きますと。
  84. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ですから、それは〇・七五%のときの基準ではないわけでございます。その点、ちょっと補足して……。
  85. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 〇・七五は三百五十七円三十何銭ということでしょう。
  86. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 三十銭です。その範囲内ではございます。
  87. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 上限は幾らになるのですか。
  88. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 三百六十二円七十銭でございます。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、今度はそれは手数料を加えるのですか、この場合はね。加えると、実際の取引相場というのですか、実際は、三百六十三円二十銭ということになるでしょう。この手数料を除外して考えるのですか。
  90. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 若干こまかい点になりますが、IMFで平価の上下一%と言っておりますのは、いまの手数料を除いたところで考えるべき数字でございます。その点につきましては、わが国としましては、一%でなくて〇・七五というさらに縮まった幅で平衡操作をいたしております。それのドルの下限は三百五十七円三十銭でございますから、この下限を割り込んでいるわけではございませんということを若干補足して申し上げておきたいと思います。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 一%になぜしないんですか。七五でどうして……。
  92. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) これは、IMFで許容しております上下一%というのまで拡大する必要がないと。これは、ヨーロッパの各国におきましても、大体〇・七五、まあ端数の関係その他で若干のあれはございますが、そういうところで平衡操作をやっておりますので、日本としてもこれをさらに一%まで広げるという必要はないということでございます。
  93. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それからさっきの質問に答えてください。
  94. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 今後の資金の流入その他によって外準がさらにふえる、そうすれば切り上げの圧力が強くなるのではないかという御質問であったかと存じますが、その点につきましては、二、三述べさせていただきたいと存じますが、外貨準備がふえることが、それが急激にふえるということは、確かに、ある意味で内外ともに心理的な要因として、切り上げ圧力というか、こういうことが生じてくるということは否定できないかと存じますが、しかし、この点につきましては、先ほど申し上げましたとおり、基本的にいま外準の水準がこのくらいあればどうしても切り上げなければいかんかというような問題ではございません。この点につきましては、そういう心理的な悪い影響を考えまして、資金の大量の一時の流入ということに対しましては、現在もコントロールをいたしておりますし、今後もコントロールを続け、さらに、要すれば、もし必要があれば追加措置をとる用意があるわけでございますが、いずれにしましても、そういう意味で、短期の資金の移動によりまする問題につきましては、対処できると存じております。  他方、先ほども当初申し上げましたとおり、経常収支と申しますか、一般の国際収支の黒字が、さらに大幅で、しかも長く続くということになりますと、これはその意味でまた別の問題が生じますので、この点につきましては、最近のことしに入ってからの経常収支の黒字という中には相当に景気情勢その他によって生じている部分もあるから存じますので、今後景気が上向きのほうに上がってまいりますれば、当然是正をされてくるということも考えられます。さらに、先ほど大臣も答弁申げし上げましたように、輸入自由化その他の措置をとりまして国際収支の全体としての調整をはかってまいりたいと、こういうふうに考えております。  それから相場制度の問題につきましては、確かに、今回のヨーロッパのマルクの問題を契機といたしまして、従来ございました相場制度に関する論議がさらに盛んになってくるということはあろうかと存じますが、しかし、実は、相場制度につきましては、先生十分御承知のとおり、昨年のIMF総会のときまでにいろいろと議論がございまして、慎重に検討いたしました結果、現在残っておりますのは三つの問題にしぼられてまいっておりまして、その一つにこの変動幅の拡大というのがあるわけでございますが、これにつきましても、このようなマルクの問題を通じましても、まだ世界各国の意見というのは決して一致しておりませんで、変動幅を現在のIMF協定の一%で維持すべきであるという相当有力な議論がわが国を含めましてあります反面、それを若干広げるべきではないかという議論もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、この件につきましては、わが国といたしましては、やはり従来の立場を堅持していくべきであるというふうに考えております。
  95. 松井誠

    松井誠君 私も、いま木村委員からお尋ねのありました西ドイツの場合を実はお聞きしようと思っておったのですが、いまのお話ですと、いわゆる旧平価でやるということは非常に困難になる、しかし、その困難ということも市場では織り込み済みだからというようなお話でしたね。旧平価でいくのか、ここでマルクが切り上げになるのかということは、日本の円に対する切り上げの圧力がさらに強くなるのかどうかという——マルクが切り上げになれば、さらに円に対する切り上げの圧力が強くなるでしょうし、そういう意味では、どうなるかという見通しは、日本としても、よそのことに介入する云々という問題じゃなくて、やはり大事な問題じゃないかと思うのですね。機能停止したドイツの連銀とドイツの政府でも、切り上げをやらないんだ、旧平価で行くんだというようなことを言っておりますけれども、平価の問題というのは通貨当局というのはうそを言う権利と義務があるんだそうですから、そういう意味で公式の声明はちょっとやっぱり信じられないわけです。そういう意味で重ねてお尋ねをしたいのですが、いまあなたが言われたように、スイスやオーストリーもそういう切り上げをやっている。私はわからぬのは、アメリカが今度のこの通貨不安というのはいわゆる短資の一時的な流入が問題なのであって、したがってマルクの切り上げは必要ないみたいなことを言うわけです。本来なら、アメリカが希望しておるはずのそのことを逆なそういう言い方をするというのは、私らにはよく通用しないのでありますが、ドイツというのは、よく言われるように、NATOの優等生だということで、アメリカの政治的な要求というものにわりあい弱い。そういうことも考えると、切り上げをしない、旧平価でいこうという、そういう言明を文字どおり私らも信用するわけにはいかない、重ねて、その点、もう少し詳しいお話を伺いたい。
  96. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) また同じことを申し上げますようですけれども、どうも、よその国のことでございますので、あまりいろいろ個人的な予想めいたことを申し上げるべきではないと思いますのですが、実際に現在三%前後の切り上げになっておりまして、きのうまたちょっと上がりまして、一番最近のところは三・三%ぐらいの切り上げになっております。それで、今度の騒ぎの起こります前に去年じゅうでドイツは六十五億ドルくらい短資が流入いたしまして、ことしに入りましてからも、それに匹敵するような外貨、あの市場を閉鎖いたします前の日が十五億ドル足らず、その閉鎖いたしました朝は四十五分間に十億ドル近くと言っておりますが、そういうような状態から考えますと、まあ個人的な見解でございますが、旧平価に戻るということはまた投機を引き起こす関係があるということで、クラーゼン総裁の言われておりますとおり、確かに不可能ではないと思いますが、非常に困難なことであろうかと、他国のことながら私どもそういうふうに観察いたしております。
  97. 松井誠

    松井誠君 もしそういうことになると、マルクの切り上げということになると、それはさらに円に対する切り上げの圧力となって、さらに投機圧力になってくる、これは間違いないと思う。それで、アメリカが、四、五百億ドルにのぼるといわれるユーロダラーですね、それを今度多少吸収するということをやっております。しかし、やっておっても、それは具体的にどれくらいの数字になるなったのかわかりませんけれども、それにしても、基本的なドルの過剰という問題が解決しない限り、やっぱり問題は残ってくる。いまマルクの投機に対するそういう防波堤というものがないわけですから、そういう意味で、日本の通貨当局も、そういうものに備えていくということは必要ではないかと思うのですね。さっきの話のように、通貨当局に円の切り上げのことをずばりお聞きをしても、これは意味がないわけですからお聞きしませんけれども、よく通貨の切り上げというのがインフレ退治というものとストレートに結びつけられますけれども、このあいだ二回目にやられたマルクの切り上げですね、あれが一年半ですか、いまインフレ克服ということに具体的にどういうふうに作用したか、これは他山の石にもなろうと思うのですが、この点がおわかりでしたらお聞かせをいただきたいと思います。
  98. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 第一のアメリカの国際収支の問題でございますが、先生の御指摘のとおり、これが現在の国際通貨制度上の一番の基本問題だと考えております。今回ヨーロッパでこういうごたごたが起きましたのは、ヨーロッパの連中の中には、アクシデントだと、あるいは不必要な——アンネセサリー・クライシスだと言っておるような人がございますが、そう言う意味は、今度の危機がこの機会にこういう形で起きたのは、ドイツのシラー経済相がいろいろかなり軽率な言動もあったというようなことからアクシデントのようにして起こったという意味でございまして、そのもとに根本問題として米国の国際収支の大きな赤字があることは、だれもそのとおり思っているところでございまして、去年百億ドルでございますか、ことしの第一四半期には五十億ドルという公的決済べースの赤字でございます。切り上げとか、為替相場制度とか、あるいは国際通貨体系とか、いろいろな問題がございますが、国際収支というのは、どこかの国があんまり大きな赤字なり黒字を長い間続けますと、どうにもうまくスムーズに動いていかない性質のものでございまして、現在では、日本の立場から見ましても、アメリカが、むずかしいことではございますが、一日も早くインフレをおさめて、国際収支の経常的な赤字を小さくして、ドルの健全性を強化してもらいたい、そう念願いたしておる次第でございます。  それから第二の御質問の、ドイツのマルクの切り上げのインフレヘの影響でございますが、こういう経済のことは、あのとき切り上げしなかったら、あるいはしたらという実験ができませんわけで、どれだけ切り上げの影響かということは、これはそれぞれの判断の問題になってしまいますわけですが、この一年半のドイツの状況は、インフレとしては決していい状態ではございません。賃金も上がっておりますし、物価も大体四%前後、ほかの国から見ますとそれほど高い騰貴でもないかもしれませんが、ドイツとしてはたいへんな大きな物価騰貴というふうに考えておりまして、その意味では切り上げもインフレ防止には効果がなかったと言っている人もおりますし、あるいは、あのときに切り上げをしなかったらもっとインフレは進んでおったという議論も一部にはありますわけで、これはどうも何とも申し上げられないわけでございますが、ただ、一つだけ言えますこと  は、切り上げたからインフレはおさまるんだと、そういう簡単なものではないということだけは、もうドイツの例からはっきり申し上げられることじゃないかと思います。
  99. 松井誠

    松井誠君 時間がありませんから、一つだけ最後にお尋ねをしたいのですが、それは日本の外貨準備の中における金準備の問題ですね。このごろ、いろいろな新聞に、スイス、オーストリー、ベルギーあたりがアメリカから金を買ったと。最近はフランスも買っているということもわかっておる。日本の金準備は非常に少ないわけですね。このあいだ、フランスが、金価格の引き上げという提案をしたり、あるいはそれと今度はうらはらに、各国の通貨の一斉切り下げ、特にドルの大幅切り下げ、そういう提案をしていますわね。これがどういう形になるかならぬか別として、あるいは円の切り上げというものになるかならぬかというものは別として、ともかくこういう情勢でありますから、日本の外貨準備の中における金準備の割合というものをできるだけ高める、そういうことはどっちみち必要な対策だと思うんですが、それが一番必要なときに、三年前にあのワシントン会議で約束をした、われわれは御遠慮しましょう、アメリカに対する金免換の要求は御遠慮しましょうという、そういうことがあって、実は、いわゆる先進国といわれるところではどこでも遠慮しているのかと思いましたら、あにはからんや、そうじゃなさそうなものですから、金準備をふやすということについて、日銀なり、これはあるいは政府にもお尋ねをしたいんですが、具体的にどういうお考えかということですね。
  100. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 外貨準備の中の金準備をふやすべきかいなかという問題に関しましては、大蔵大臣も再度にわたり御答弁申し上げていると存じますが、基本的には、やはり正当に金の購入ができます範囲内において金準備を今後もふやしてまいりたいというふうに考えておりますことにつきましては、従来と全く変わっておりません。正当にと申し上げましたのは、先ほど先生も御指摘にありましたとおり、こういう時期に、貨幣用金の取得というのを無秩序にいたしますことは、現在の国際通貨制度の基本をゆるがしまして大きな混乱を起こします。したがいまして、結局、元も子もなくなるという関係にございますので、この点につきましては、三年前のワシントン会議のあと各国がそれぞれ通貨当局が自制をしていこうという点は、まさにそういう方向で行くべきであろうかと存じます。  現在、それでは、日本はどういうふうにして金の取得をしておるかと申しますと、これはもう十分御承知のとおりと存じますが、IMFに対しまする資金協力を通じまして、IMFから金の売却を受ける。あるいは、昨年からは、南アの新産金をIMFが購入するということに関しまして合意が一昨年の末でございましたか成立をいたしまして、それに基づきまして、IMFは昨年南アから金を購入いたしまして、それをIMFの公平な基準に基づきまして加盟国に配分するということを、昨年の九月、それからまた最近のたしか四月でございましたか、いたしておりまして、こういう機会を通じまして、日本といたしましては、たしか三年前ぐらいには三億五千万ドルぐらいの金の保有でございましたのが、現在は六億ドルをこえております。約倍に近くなっておりますが、こういうふうに、金の保有高を順次機会あるごとに正当に取得できる、国際的な観点から見ても問題ない方法によりまして金準備をふやしていくということはやっておるわけでございます。  ただいま御指摘になりましたベルギー、フランスの問題につきましては、フランスの場合は、これはIMFとの関係で、IMFに対する返済をするのにつきまして、米ドルをもって返済することが、IMFの規約上、現在の米ドルの保有状況からいたしましてできませんので、したがいまして、金で返済をするというかっこうで、その分をIMFに返済すべき金を米国から買ったということで、実は、その金はフランスに行ったのではなくて、そのままIMFに入ったわけでございます。これが最近ございましたフランスが金を買ったということの背景でございまして、しかも、これはずっと前から、数カ月前から、そういうことでしかフランスのIMFに対する返済は技術的にできないということで準備されていたことでございます。  それからベルギーにつきましては、これはベルギーの法律に基づきまして、まだベルギーは金本位的な考え方を残しておりまして、通貨準備のたしか三割ぐらいでございましたか金で保有しなければいけないという法律がございます。したがいまして、それに基づきまして、この金をどうしても国内法上持たざるを得ないということで買ったものでございます。ベルギーとしての特殊のケースであろうかと存じます。
  101. 松井誠

    松井誠君 しかし、手持ちに金がないわけじゃないのに、そのためにいわばアメリカから金を引き出すということ自体は、やはりいわゆるワシントン会議の精神からいえばおかしいわけじゃないですか。ですから、アメリカの金をなるべく減らさないで日本の金準備をふやす方法が大いにあるんなら、それはけっこうですけれども、しかし、それはきわめて細々のルートしかないわけです。特にいまこういう金の問題が大きくなっておる段階で、ひょっとすれば日本はたいへんなことになりかねないというそういうときでありますから、いまのようなそういうIMFのルートを通すということだけではなくて、もっと考えるべきではないか。私がこういうことを言うのは、そういうことはなかなかアメリカに対してできぬかもしらぬ。しかし、そういう問題でみんながアメリカに対して金の兌換を要求をするということになりますと、アメリカのいわば無節度、節度のないという方法に対する一つの反省というものの材料にはなるわけでございます。  このあいだのある新聞なんか見ますというと、アメリカが、いまちょっとお話がありましたけれども、今度第一四半期で五十五億ドルという赤字を出した。そんなニュースのときに、通貨不安の元凶はここにあるんだとか、それからアメリカがいままで黒字を出すほうが悪いんだといって逆に居直っておったけれども、居直るには限界があるんだとか、きわめて最大限の形容詞と見出しを使ってやっておるというのは、やっぱりアメリカに対する警鐘というものをもっとやらなきやならぬ。日銀にしても政府にしても、ときどきは言ってはおるでしょう。おるでしょうけれども、しかし、その声が非常に小さくて、アメリカのそういう国際収支に対する節度というものをもっと声を大きくして言うためには、ここで、三年前の紳士協定にもかかわらず、ひとつドルを金にかえてくれというそういうことを声を大きくするというのも一つの方法ではないか、そういうことも考えてお尋ねをしたわけです。ですから、いまのようなアメリカのしいたそういうルールの中でやっておる限りは、このドル過剰というものは基本的にはなかなか解決ができないし、それを何かの形で転換をするということが必要である、そういう意味でお聞きをしたわけです。
  102. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 米国に対しまして国際収支の節度を求めるということに関しましては、先ほど井上理事からも答弁がございましたように、われわれといたしましても、アメリカの経済が、インフレがおさまりまして、国際収支が一日も早く回復をいたしまして、ドルの信認が強くなるということを念願しておるわけでございますが、また、そういう点は、機会を通じまして、アメリカに対しましてもそういう線の考え方で対処いたしておるわけでございますが、しかし、その方法論として、金の兌換を要求するかいなかという点になりますと、これはまた別の問題でございまして、先ほども申しましたとおり、現在の国際通貨制度のいわば一つの根幹でございますので、こういうものをこの機会に金の兌換を要求するということは、単にアメリカに対する関係だけではなくて、世界の全体に対しまして非常に大きな国際通貨制度上の混乱を起こすもとを与えるということになると存じますので、これはむしろマイナスのほうが多いのではないかというふうに考えております。
  103. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ほど来の質疑応答の中で、円に対する投機的なアタック、これについては、ある程度措置が講ぜられて、まだ円投機というのが大規模には起こっていないということが明らかになりましたけれども、しかし、同時に、日本の国際収支の基礎収支は依然として黒字を続けておるという状況でありますので、やはり円切り上げに対する国際的な圧力というものは今後依然として引き続くし、さらには強くなるだろうというふうに見て私は差しつかえないと思うんですね。また、同時に、他の面では、アメリカの国際収支の赤字が異常に大きくなっているというような事態もありますし、日本は西ドイツよりもアメリカの圧力に対しては非常に弱いというのも従来の経験からして明らかでありますし、円切り上げに追い込まれる可能性というのは十分強いのではないかというふうに思うのですけれども、これに対していろいろ対策を考えていらっしゃるのじゃないかと思うんです。たとえば、貿易の自由化、資本の自由化などを繰り上げて実施するというようなこともいわれておりますし、さらには、このあいだ財界筋から対外投資自由化を進めたらどうだというような意見も出ているようです。あるいは、佐々木日銀総裁は、予算の弾力条項を発動して公共投資を繰り上げてやったらどうだというような御意見を出されたということが新聞に書かれているわけです。いろんなことがいわれているんですけれども、一体、対策としてどういうふうなことを考えておられるのか、その点をまず最初に伺いたいと思います。——井上参考人に対する質疑という範囲内でやっていますから。
  104. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) ただいまのお話し、先生からございましたように、日本の基礎収支、特に貿易収支の黒字が大きいのは、確かに問題だと思います。したがいまして、これに対しては何を一つやれば済むということでなしに、いまおっしゃいましたようないろいろなことをやっていくことが問題だと思います。  まず、第一に、最近貿易収支の黒字が大きくなっておりますのは、輸出も好調でございますが、輸入がかなり減っておることがかなり影響しておる。その輸入の減っておりますのは、やはり現在時点では経済の成長速度は若干落ちておる。それを正常な速度に戻すというようなことも一つ対策じゃないかと思います。それの関係もございまして、公定歩合も三度下げたというようなことでございます。そのほかに、輸入自由化、あるいは対外投資自由化、あるいは後進国の援助、あるいは現在やっております世銀の債券を日本で出す、これはやはり対外投資一つになります。それからまた、御指摘のありましたように、いままでの日本経済は、どちらかといいますと、輸出のほうにあらゆる生産力なり労働力が向いておりますのを、社会資本の充実といいますか、ある程度そういうふうな方面に振り向ける必要もあるんじゃないか。そのタイミング、程度等は、これはいろいろ問題のあるところだと思います。  最後に、もう一つ申し上げたいのは、切り上げに追い込まれるのじゃないかというお話でございましたのですが、切り上げのほうは、自分の通貨が強いわけでございますから、直接追い込まれるということはございませんので、逆の立場で申しますと、たとえばイギリスは切り下げをやりました。弱い通貨のときは、自国通貨を擁護いたしますので、それには外貨がないと擁護ができない。外貨は、貿易でかせいでくるか、借りてくるかしなければなくなりますので、あまり借金が多くなりますと貸してくれる人がない。そうなりますと、金の切れ目は縁の切れ目で切り下げも多くなるということはございますわけですが、切り上げのほうは、円でドルを買いますわけでございますから、これはまあ無限と言っては言い過ぎかもしれませんが、自分の決心次第で相当やれますことで、切り上げはあくまで自分で自分のためになるかどうかを考えてやることで、今度ドイツ、スイス、オーストリー等がすでに措置をとっておりますが、いずれも短資の流入で困ってやったことではございますが、結局、そういうことをやることが自分の国のためだという判断に立って決心をしてやったことだと。したがって、日本も、追い込まれるということじゃなくて、自分の立場から切り上げは現在日本の経済のために決してならない、したがって、先ほどからいろいろなことを申し上げましたような措置をとって切り上げに持っていかないことが日本の国益であると、こういうふうに確信いたしております次第でございます。
  105. 渡辺武

    ○渡辺武君 日本が輸出が急速に伸びているということが黒字のふえている重要な理由だというふうにおっしゃいましたけれども、私、やはりその点が非常に大事じゃないかと思うのですね。一時的にはそれは確かに輸入がいま鈍化しております。しかし、基本的には、自由化を進めるということよりも、何といいますか、輸出第一主義と言ってもいいくらい猛烈な勢いで海外に進出しているということのほうがより大きな問題じゃないかと思うのです。さらに言えば、貿易の自由化ですね、これを進めることによってさしあたり考えられることは、日本の農業中小企業に対する打撃が非常に大きいということです。私どもは、円が切り上げられようと、あるいはまた切り上げないで済もうと、そのこと自身も多少の問題ですけれども、それよりももっと問題にしなければならぬのは、こういう国際通貨の変動あるいは円の変動に伴って予想される日本の国民の生活、それから農民中小企業の経営、これに対する打撃をどのように防いでいくか、そうして、今後の方向を国民生活の安定と向上の方向でやっていくという方向でこの円問題にも対処しなければならぬじゃないか。そういう点から考えてみますと、自由化を進めるということは私はかえってマイナスだと思う。むしろ日本の大企業の輸出第一主義ですね、これを押えていくことのほうがより適切な対策になるのじゃないかと思うのです。  その点で伺いたいんですけれども、日本銀行は輸出手形についてはいろいろな優遇措置を講じていると思うのですね。この輸出優遇税制については考え直すというような答弁大蔵大臣からあったようですけれども、日本銀行として、この輸出手形に対する優遇措置、これはこの際やめるべきじゃないかというふうに思いますけれども、その点はどうでしょうか。  それから時間も来ましたので、重ねて一、二点伺いますけれども、いままで、日本銀行の通貨金融政策、これは日本経済の高度成長を進めるための必要な通貨をまかなうというところに大きな重点があったかと思うのですね。そうして、その結果としてあらわれているのは、日本の国内でのインフレーションの高進、つまり消費物価の上昇という形をとってあらわれているインフレーションの高進だと思うのですね。同時に、大企業が猛烈な勢いで高度成長をやって、そうしてその生産力の振り向け先を輸出増進に求めるというようなところが大きかったと思うですね。そういう通貨金融政策をこの際やはり根本的に改める。そうして、高度成長ではなくして、消費物価の安定をめどにしながらの通貨金融政策、したがって、私は、これは日本の経済の安定成長に通ずる道だと思うのですけれども、そういう方向に基本的に転換するおつもりがあるか、これが第二点です。  それから第三点として伺いたいことは、佐々木総裁は公共投資の拡大ということを対策一つとして言われましたけれども、私はこれに必ずしも反対ではない。反対ではないけれども、現在の公共投資は、高速自動車道路その他の、言ってみれば大企業の利益が特別出てくるような公共投資が中心です。むしろ、公共投資の拡大をやろうとするならば、勤労者のための住宅建設だとか、あるいはまた生活環境、とりわけ、交通災害を防止するとか、あるいは生活用の道路の整備を進めるとか、そういう方向を重点とした公共投資の拡大によって国内の市場を広げる必要があるのじゃないかと思うのですね。また、労働者の賃金も大幅に引き上げて、そういう形をとって国内市場の拡大を進めるべきだと思うのですね。これは日本銀行からお答えいただくわけにはいかぬでしょうから、大蔵省はその点をどう考えておられるのか。  以上の三点について御答弁いただきたい。
  106. 井上四郎

    参考人(井上四郎君) 最初一つお断わりいたしたいと思いますが、いま日本が当面しております問題は、日本経済が非常によくて円が強いという問題でございまして、数年前にイギリスが切り下げで大騒ぎいたしました状態に比べれば、大体何をやりましても国民生活にとっては大勢としてはいい方向に向かうことをやることになると思いますので、その点は一つお断わりいたしたいと思っています。自由化の問題、もちろん個々の面にいろいろ問題の起こることはありましょうと思いますが、大勢としてはやはりそれだけ国民生活が豊かになる面が多いのじゃないか。もちろん、これは、日本銀行だけでまいりませんが、それによって特にいろいろと摩擦の起きます中小企業あるいは農業関係、それには、これはもう日本銀行だけの問題ではございませんが、十分な配慮はしていかなければならないことは当然だと思います。  それから御質問の第一点の輸出金融でございますが、これは、先生の御指摘のとおり、輸出優遇措置はだんだん廃止していくべきものだと考えております。ただ、長年そういう輸出優遇制度になれておりますので、一挙に廃止するということはなかなか貿易業界その他に摩擦も大きいと思いまして、逐次廃止をしていく。その証拠には、最近三回公定歩合を下げておりますが、その間、貿易金融の金利は一回も下げておりません。全部据え置きにしてきております。そのために、公定歩合と貿易金融の金利は差が非常に縮まりまして、中にはもう全く同じになったものもございます。それからまた、資金貸しと申しまして、船積み後の金融につきましては、現在五分の金利で貸しておりますが、先ほどからお話のございました先物のカバーチャージの関係から、むしろ円を借りますとかえって高過ぎるということが問題になっておりまして、現在では日本銀行のいたしております船積み後の輸出金融は、かえってアメリカの銀行から借りたほうが安いというふうになっているという状態になっておりますことを御了解いただきたいと思います。  それから第二の御質問の金融財政施策の姿勢の問題、どうも私は担当外で、ちょっと問題が大き過ぎて一般的なことしかお答えできないと思いますが、確かに、御指摘のとおりだと思います。ただ、日本は、何ぶんにも資源のない小さな国でございますから、やはり輸入はしていかなければならない。輸入をするのには輸出はしなければいけないわけでございますから、いままでみたいな、なんでもかんでも輸出ということは改めていかなければいけないと思いますが、輸出を軽視していいと、そういうことではないと思いますので、これはやはりあくまで程度問題の問題じゃないかと思います。  最後の公共投資の内容につきましては、ちょっと日本銀行としてお答えできない問題でございます。  以上でございます。
  107. 藤田正明

    政府委員(藤田正明君) ただいまの御質問は、公共投資が大企業のための公共投資であって、庶民のための公共投資でないではないかと、その辺の考え方はどうかというふうな御質問の内容であったかと思うのでありますが、高速度道路に関しましても、決して大企業のためのみの投資ではないと思っております。過疎・過密の解消、あるいは未開発地域の開発のための高速度道路でもございます。また、政府といたしましては、庶民に密接いたしておりますところの住宅問題も、第二次五カ年計画を立てまして着々と実行中でございますし、また、下水道に関しましても、長期計画を立てまして実行に移しておるところでございます。決して大企業のためのみの公共投資に重点を置いておるとは思っておりません。
  108. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日本銀行総裁に御質問いたします。  時間がございませんから、端的に御質問したいのですが、それは、いま円の切り上げの是非とか賛否論が非常に盛んになってきているわけです。もちろん、私も、あとから自分の考え方を述べながら質問いたしますが、その前に、BISからお帰りになってから総裁はその所見を述べられておりますので、私は新聞で拝見しただけですから、この際、じかに総裁から、日銀総裁としての円切り上げの賛否あるいは可否につきましての所見をお伺いしたいと思います。
  109. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 円平価の切り上げの問題につきましては、かねてからいろいろお尋ねを受けまして御返答申し上げた記憶がございますが、いまの状況において日本として為替相場の変更を行なうということは全然問題にならないと、そういうことをなすべきではないというふうに強く考えております。それで、今回BISに参りまして、各国の総裁の前で、私は、そういう為替相場現状維持、そしてまた変動幅の拡大等も全然考えないということを説明をいたしました。それに対しては、全然質問も意見も出ませんでございました。したがって、よく言われますように、そういうような問題で外からいろいろ意見とかそういうものが出ているのではないかというようなお話がございますが、少なくとも責任者に対してそういうような意見の表明というものはございませんでした。私は、すでにここでいろいろ御質問もあり、こちらからも御返答申し上げたと思いますけれども、いまの日本の国内の情勢、これを今後の推移等をあわせ考えますときに、いまの国際金融市場においていろいろむずかしい問題が起こっておりますが、その中をしのいでいまの平価で進んでいけるものと、こう確信しておるのでございます。
  110. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総裁のお話によりますと、西ドイツが変動為替相場を採用したことは、実質的にそれだけマルクを切り上げたということにもなると思う。それから他の国も平価を切り上げたところもあります。それは日本の輸出力を相対的に強めるということにもなるので、日本がさらにまた輸出力を強化するというので、そういうことからも、日本に対して諸外国が、円の切り上げとまでいかなくても、変動為替とかあるいはその他の措置要求している風当たりがだんだん強くなっているということもいわれておりますですね。そういうことも確かにあると思う。そこで、一体、日本としては、さっき総裁も言われましたが、外圧も相当あると思うのです。これに対してどういうふうに日本は円を切り上げないでさっき総裁が言われましたが対処していくか、また、それに対してはどういう対策をお持ちか。このままの状態では、日本は国際収支黒字は定着してきていると思うのですね。外貨がどんどんたまる一方であると思う、長期的に見てですよ。円投機の一時的な急増というものを除いても、長期的に見て日本は国際収支が黒字が定着してきたということになる。そうすると、黒字のたまることにつきまして何か調整する必要がどうしても出てくるのじゃないか。それはどうしたらいいか、そのことについて伺いたいと思います。
  111. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 確かに、日本の貿易黒字が非常に大きいことは、いまの世界各国の貿易収支の実情の中で非常に目立っておることは事実でございます。しかも、輸出の伸びということは、結局、いまの世界貿易が主として工業国相互間の貿易で伸びておることを考えますと、日本の輸出が伸びていきますその相手国の国内産業に対して脅威を与えるというような結果にも相なっておりますので、そういう各国の産業界の反発というものがなかなか強い。そして、日本の商品の競争力をやわらげる手段を何とかほしいという気持ち、それが、ある場合には円平価切り上げの議論になり、あるいは輸入制度の動きになっておるのだと思います。したがって、こういう情勢は、われわれとしても十分考えていかなければ、世界の平和のためと言うと大げさになりますけれども、穏やかな貿易の伸長ということに障害になるおそれもあろうかと思います。  したがって、この黒字をどういうふうにすれば穏やかなものにできるかということになると思いますけれども一つは、これは先ほどからいろいろ御説明申し上げたと思いますが、いま日本の経済がある程度伸びが鈍くなっております。その結果、国内の総需要が一時ほど伸びません結果、どうしても輸出に活路を求めるというようないわゆる輸出プレッシャーがかかっておるということでございます。干それからまた、経済活動の低調から、輸入原材料の消費が落ちているということ。したがって、この二点は、今後、漸次経済が活気を取り戻しますときに、ある程度調整輸出輸入の両面からできるものと考えます。それからもう一つの点は、輸入自由化によりまして、ある程度日本の国内の物価を落ちつかせる手段として使いながら輸入の増加をはかることもできようかと思います。また、国内におけるいろいろ社会資本の充実という方面に金を使います、あるいは物を使いますと、その結果、そこに需要が生じて、いまの輸出に向いている物、労働力というものが国内の国民の生活の質的な向上に使われるということにもなろうかと思います。いろいろな方策をできるだけ早く実質的に行なっていくということがこの黒字を穏やかにするための一番大事な点であろうと思います。この点については、関係方面が全部協力して努力をしていく必要があるのではないかというふうに考えておるのでございます。
  112. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ついでに伺っておきますが、これは新聞で読んだんですが、政保債の弾力条項でもこれをもっと発動してそうして有効需要を拡大したら、ことに社会資本のほうにこれをもっと使ったらいいと、そういう御意見を述べたんですが、大蔵省はこれに対してあまり賛成でないようなことを言っていましたけれども、どうなんですかね。
  113. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 昨日、ある会合の席で、私は、今度外国へ参りましたときの出張の印象を話をしろということで、話をしたわけでございます。そのときに、経済界の方が大部分でございましたので、あんまり日本の輸出がむやみに伸びると、相手から非常にいやがられるんだと、だから輸出にもやっぱり節度が要るんじゃないかというようなことを話をいたしましたところが、しかし、やはりできたものを売らないわけにもいかないからというようなことがございまして、まあ財政需要などがふえればいいという話だったんですが、四十七年度の予算でふえるのではなかなか間に合わないというような話で、まあ弾力条項もあるという程度の話でございました。私が弾力条項発動を求めるというような発言をいたしたわけではございません。
  114. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、この際、私の円切り上げ是非に関する考え方を述べまして総裁に質問いたしたいと思います。  私は、いろいろ調べてみたんですが、たとえばここで五%ぐらい切り上げた場合、中小企業に対する影響というものは、特に弱電機とか、あるいは繊維とか、雑貨、そういう中小企業に対する影響、これがまた、この十月ごろから特恵関税があるわけですね。この影響は、一般に考えられている以上にかなり深刻じゃないか。通産省が救済法案を出さざるを得ないほどの問題がありますから。私は、そこで——まだ革新政党は円切り上げ是非についてはあんまりほうぼうで意見をはっきり出しておらないようであります、ほかの政党は知りませんが。われわれも、これは真剣に考えなければならぬ問題だと思っております。そこで、その影響というものを具体的に考えていきますと、なかなか軽々に結論は出ない。  その前に、一体、外貨はなぜふえるのだろうと。切り上げ論者も、切り上げ反対論者も、外貨がどんどんふえ過ぎることについては、あんまりふやすべきではないと。それがまたインフレにもなっていきますしね。ですから、外貨が急にふえるのを、さっき総裁が言われましたが、なだらかにするという点について、どういう方法を講じたらいいかということが、私は、対策の焦点になってくるような気がしているわけなんです。そこで、じゃ、外貨はなぜこんなにずっとふえてきて、日本が黒字が定着したか。それは、一つは、アメリカが、ベトナム戦争のために、基軸通貨であることをいいことにして、ドルを乱発して、日本から、西ドイツから、ずいぶん戦費調達のために金を使って、そしてアメリカが世界的なインフレを起こしているのが一つの原因だと思うんですよ。それで、日本の輸出がそのために非常にふえた。それで国際収支の黒字が大きくなった。西ドイツもそうだと思うんですけどね。これが一つだと思うんですよ。  それからもう一つは、もっと基本的なんですけれども、日本の経済成長が非常に高かった原因としましては、これは、経済企画庁の経済分析の中で、金森久雄氏が、日本の経済成長はなぜ高いかという分析をしているわけですね。その中で、こういうふうに調査しています。日本は他国に比べて労働分配率が低く資本分配率が高いことが日本の成長率が高いことの根本的な原因であると、こういうふうに分析してあるわけです。そこで、日本の労働分配率が低いということは、賃金が国際的に低いということですよね。それが輸出を促進させる有力な原因になってきている。もちろん、賃金ばかりでなく、生産性その他技術革新によってコストが下がっている面もありますが、賃金が国際的に非常に低いと、それで輸出を増進せしめている原因になっているということは、これは疑いないと思うんですよ。  それから第三番目は、日本の企業は、公害とかその他の費用を負担していないですね。みんなこれはたれ流しにして、国民にその犠牲を負わしちゃっている。それだけ国際的にはコストが安いというわけですよね。そういうことも間接的に国際競争力をつけていく。いままでは、「経済社会発展計画」を見ましても、国際競争力を増強させるさせるということに最重点を置いておったわけですよ。そういう政策のしかたが、コストを安くして、そうして輸出も増加したが、それは、結局、国際的な低賃金ということ、それから当然企業が負担しなければならないものを国民に犠牲を負わしているのですね、いま。公害なんかたれ流しにしている。それから企業に対する減税措置を、いろいろな面で、機械の耐用年数の短縮にしましても、あるいはその他交際費なんかにつきましても税金をとらなかったり、そういうことが企業としては国際的にコストを安くしていますよ、税制面、金融面その他から。それで競争力を強化している。そういうことも輸出を増大せしめる要素になっていると思うんです。しかも、そのことは、企業のほうに租税特別措置でうんと減免税している。だから、十分財源として税金を取れない。それが、結局、社会保障の立ちおくれとか、社会資本の立ちおくれとか、そういうところに影響きていると思うんですよ。   〔委員長退席、理事大竹平八郎君着席〕  ですから、いま、日本の矛盾はどこに集中的にあらわれているかといいますと、非常に逆説的ですけれども、外貨がたまり過ぎてきている。外貨がたまって困ってきているということは非常におかしいことだと思うのですが、その矛盾がここにあらわれてきておる。その矛盾はどういうところから出てきたかというと、だんだん分析してまいりますと、日本の国際的低賃金とか、アメリカのベトナム戦争を中心とするインフレ政策、それから日本の企業がいわゆる公害対策の費用その他のいわゆる社会的な費用を負担しないでコストを安くしている、あるいは、大幅な減税、金融面についてもそうですが、国際競争力を強化することに最重点を置いて財政金融政策をやってきた、それで、結局、それは、マクロ的に見た場合、日本の資源の再配分が間違っていた、そういうことからそういうことになってきたと思うんですよ。だから、そう言っちゃ悪いですけれども、佐藤内閣の政策というものはみんなミクロ的な政策ばかりでね。いままで高度経済成長をやってきたそのひずみが生じた、そのひずみに対してみんな小手先のミクロ的な対策ばかりやっていて、一番基本のマクロ的な大局的な立場に立った資源の適正配分、そういう政策が欠けていたのじゃないか。そういう矛盾が、このドルの、あるいは外貨がたまり過ぎるというところに来ている。私は、この対策で単に円を切り上げたからインフレがすぐとまるというものじゃないと思う。さっき西ドイツのお話がありました。切り上げても、政府がそうしたインフレ的な措置をやめなければとまらぬと思うんですよ。だから、円切り上げで何か問題が解決するように単純に考えることは私は反対なんでして、じゃ、切り上げないでいいのかというと、そこの点はまだ十分煮詰めて考えていないんですけれども、しかし、その前に、なぜドルがこんなにどんどんたまり過ぎるか、その原因は一体どこにあるかをよく分析して、そうして対処すべきだ。  ところが、政府は、これに対する対策として、自由化の問題とか、あるいは関税の引き下げの問題とか、それから海外に対する投資をどんどんふやすとか、そういうことに重点を置いて対策を考えているんですよ。私はそれはやはりミクロ的な対策だと思う。もっとマクロ的には、さっき申し上げたようなところに重点を置くべきだと思うんですよ。その一つに総裁が触れているんですよ。社会資本の充実ということに触れていると思う。その社会資本も、さっき御質問があったように、それが単に大企業のための経済基盤強化に重点を置いた社会資本の充実じゃいけないと思うんですけれどもね。そういうふうに私は考えておりますが、これに対して、総裁、どういうふうにお考えか、伺いたいと思います。
  115. 佐々木直

    参考人佐々木直君) お話しのように、日本という国がいままで非常に輸出を伸ばすということに大きな力を傾けてまいったのは、事実でございます。先生御承知のように、昭和六年の輸出禁止以来、日本の為替収支というのはいつも大体において赤でございます。それで、それを外債の発行その他によってやっと補ってきておりました。そこで、大東亜戦争になり、戦後も、やはり国際収支については非常に苦労したわけでございます。やっとこの二、三年になりまして外貨がだんだんふえてきている。ですから、この四十年間にしみつきましたものの考え方というものがなかなか急速に変わらない。いまそれを急速に変えなければならないと思っておりまして、その方向でいろいろ考えて具体的な措置をとっていくべきだと思いますけれども、これだけ長いものの考え方を続けてまいりましただけに、ちょっとその転換に正直申し上げて時間がかかっておるのが事実だと思います。  ただいま日本のドルがふえましたことの裏にあります原因につきまして先生から御指摘がありましたけれども、アメリカの需要が強いということの中にアメリカの軍需というものもあることも、これは事実でございましょう。それからまた、いま世界の中で一人当たりの国民所得からいいますと、日本はまだだいぶ下のほうにある。そういうことがあらわしますように、国民の一人一人の実際の所得というものは、世界的なレベルから言うと、まだ低いことも事実です。ただ、総体的に国内においてはずいぶんそう差はなくなってきておると思いますけれども、しかし、世界的な水準で考えれば、まだ低いととも事実でございましょう。それからまた、公害問題などにつきましても、いままで、何といいますか、配慮されるのが少しおくれて、ここにきて急にみんなで対策を至急立てなければならぬということになっております。そういうことで、もっと企業として払うべきものも払っていないという点もあろうかと思います。  ただ、最近のドルの増加につきましては、そういう基本的なもののほかに、先ほどから申し上げました景気の停滞でありますとか、あるいは外国における物価の上昇でございますとか、あるいはまたスト気がまえの備蓄輸入が海外にあるというような、いろいろな条件が加わっておると思います。したがいまして、この問題につきましては、基本的にはあまりに輸出に重点を置き過ぎたいままでの体制を根本的に立て直すということが何よりも基礎的に必要であると思います。そうして、それの対策を一方で至急講じつつ、個別的には、たとえば景気の立て直りをできるだけ早くさせるとか、あるいは輸入自由化、海外投資の促進等々の、いままでたびたび申し上げましたもろもろの点を実行していく。要するに、長期的な対策と短期的な対策と、両方あわせて進行すべきものだと、こういうふうに考えるわけであります。
  116. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もうあと時間がございませんから、簡単に一つだけ伺いたいんですが、それは為替制度の問題なんですけれども、秋のIMF総会で変動為替の問題がまた持ち出される、これまでもずいぶん問題になっておりましたけれども。固定為替をこのままでやっていけるかどうかですね。これは、総裁も、新聞で拝見したんですけれども、何か検討する必要があるのじゃないかと。それが変動為替に踏み切るとか踏み切らないとかというそういうことを意味しているのじゃないと思うんですけれども、とにかくいままでのような固定為替の行き方で、IMFあたりに行って日本はあくまで固定為替を維持すると言ったって、それには合理的な説得できるような根拠がなければならないと思うんです。そういう意味で、いままでのようなあれを固執していっていいのかあるいは為替制度について何か改革する必要があるのじゃないか——あると私は思うのですけれども、その点が一つ。  もう一つは、SDRについて、アメリカがまた今後第二回の発動を要求するのではないかといわれておりますが、そういうときに、これまでわれわれはSDR協定を批准した際に、SDR発動の条件として、世界的に国際流動性の不足が生ずると見られるとき、あるいは基軸通貨国の国際収支の均衡が回復したとき、あるいは国際収支調整過程がもっと改善されたときというような条件を付した。ところが、全くこれが逆になっているんですね。いま情勢が逆ですから、もしアメリカが第二回の発動を要求したときは拒否をすべきじゃないかと、そういうふうに考える、IMFでそれが問題になったようなときにですね。  この二つの点につきまして、どういうふうに処理されたらいいとお考えか、この際御意見を伺っておきたいと思います。
  117. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 為替相場制度の問題につきましては、昨年の秋のIMF総会におきまして、それまでの検討の結果の中間報告がございました。去年の秋は、国際通貨問題がある程度小康状態でありましたものですから、この問題に火がついたというような切迫感がございませんで、引き続き検討を続けようということで、そのまま流れてきております。したがいまして、今度のような問題を経験いたしました後においては、やはりあの問題はもう少し具体的に煮詰めていかなければならないのではないかという意見が出る可能性が十分あるように思います。したがいまして、一時ちょっとお休みになっておりました検討が再開されるという可能性があると私は思います。そこで、日本がどういう立場でどういうものを主張すべきかということは、これからの問題でありまして、いまからあらかじめものをきめて入るというべき性質のものでもないと思います。ただ、今度の為替問題について見ますと、スイスとオーストリーは、変動相場を立てないで、直ちに平価の改正をいたしております。これはやはり固定為替相場制度のほうがいいんだという考え方の上に立っておるものだと思うのであります。したがって、いまの段階では、固定為替相場制度自体について多くの国が非常に考え方を変えるというところまでは来ていないのではないかと思いますが、しかしながら、新しい情勢のもとでどういう意見が出てまいりますか、それは今後の問題だと思います。  それから第二点のSDRの問題でございますが、御承知のように、SDRの配分は三年分ずつきめております。したがって、お説のとおり、こんなにアメリカの国際収支の赤字が大きく続くならば、あの三年分のきめ方は少し多過ぎたという感じは各国とも持っておりますようです。したがいまして、この次の割り当てをどうするかという場合には、いまのそういうような各国の準備の増加状況等々を見て相当議論が行なわれるものだと考えております。
  118. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間が一〇分でありますから、要点だけこの機会に質問しておきたいと思います。  一つは、景気見通しについてでありますが、現在の景気見通しを見ますと、大体、三月の決算期に各企業の利益が九月に比べて非常に落ち込んでいる。したがって、景気は依然として停滞していると思うのでありますが、今後の回復の状況ですね、これをどう考えるか、それが一つであります。  もう一つは、最近の調査で、景気の総合指標が五〇%、この転換点を意味してきておるわけでありますが、総裁としては景気は底入れの上昇局面に入ったと理解しておるのかどうか、この辺の見解をお聞かせをいただきたいと思います。  もう一つは、景気回復の今後の趨勢でありますが、大体、私たちの推定では、なだらかに回復しつついくんじゃないかというふうに考えるのですが、今年度政府の見通しでは一〇・一%の成長を見ておるわけですね。この一〇・一%というのが総裁として妥当だと思うのかどうか、あるいは一〇%以下に落ち込むような心配はないのかどうか、その辺の見解を聞かせていただきたいと思います。
  119. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 景気が底を入れたか、それともいつどうか、それから上昇するとすればいつごろであるか、その上昇の形はどうであるかという点が御質問の要点だと存じます。   〔理事大竹平八郎君退席、委員長着席〕  実は、なかなか景気が底をついたかどうかの判断はむずかしゅうございます。ただ、三月の清算の数字が発表されておりますけれども最初速報ではごくわずかですがマイナスが立っておりましたところが、確報では速報に比較しますとわりあい大幅な増加になっておるような状態でございまして、その他、機械の受注とか、そういうようなものを見ますと、どうやら三、四月の間に底が入りつつあるのではないかという感じがいたします。しかし、業種によっていろいろ差がございますので、総体として底が入ったかどうかということは、まだちょっと判断が立ちにくい状態でございます。先般国会で私が御質問を受けましたときに、七月ごろに回復すると思うがどうかという御質問をいただきまして、それからそう遠くはないであろうと、そう違わないだろうという御返事を申し上げたことがございますが、底が入ったにいたしましても、回復のテンポはそれほど速いものではないと思いますから、国民の実感として景気が立ち直ってきたなということが一般的に持たれるようになるのには相当時間がかかるのではないか。急にV字型に上がるというようなことは、いまの経済情勢ではなかなか考えられないように思われます。  それから四十六年度の経済成長の率につきましては、私は、大体一〇%前後という政府の見通しがいまのところ当面一番いい線であろうと、こう考えております。
  120. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 次に、いろいろと各委員から国際通貨問題については質問がなされておりますが、総裁自身が最近ヨーロッパでの中央銀行総裁会議に出席をしておるわけですが、その際の国際通貨問題でどのようなことが話をされたのか、その内容を発表できるならひとつ教えていただきたい。
  121. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 国際決済銀行の会議は一切非公開でございますので、私がその内容について公表する自由は持ちませんが、私の印象を申し上げますならば、これはすでに話が出たかもしれませんが、やはり、アメリカの国際収支の赤字が大きいこと、しかもまた、アメリカの金利が急速に低下したことなどについては、批判的な気分が非常に強いのでございますが、ただ、最近になりましてアメリカの短期金利もやや反騰してきておりまして、アメリカのそういう政策当局も、こういう国際的ないろいろな意見をある程度参考にしておるのではないかというふうに思われます。  それから今度の為替のいろいろな動揺につきましては、各国とも非常に迷惑だという感じでございまして、為替相場なども、いままでどおりでやっていければ一番いいんだと、それにしかしどうしてもこういうふうな特別な措置をとらざるを得なかったことははなはだ残念だといったような印象でございました。  それからいまのユーロダラーというものが非常に大きな金額に達しておりますが、これが、いろいろ国際金融の面で問題が起こりますと、あっちへ行ったりこっちへ行ったりして問題を起こすわけでございます。したがって、このユーロダラーというものについて、各国が協力してある規制を加えるということが必要であろうというそういう意見もずいぶん強かったように思います。
  122. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 それで、三点ほど具体的な問題でお伺いします。  西独マルクが、例のシラー発言等でマルク投機が起こったわけでありますが、結果的に変動相場制へ移行していくというようなニュースが流れておるわけですけれども、こういう西独における変動相場制というのは長期に今後やはり継続をされていくのか、その辺、日銀としての見解はどういう見解を持っておりますか。  時間がありませんから続けてお伺いしますが、もう一つは、いま木村委員からもちょっと質問が出されたのでありますが、いまの西独のいわゆる為替変動相場制の採用ということが、いわばIMF通貨体制としては固定為替相場をとっておりますね、前提として。だから、そういう固定相場制というものが根本的にくつがえされていくのではないか、こういうように考えますし、さらに、アメリカを中心とするドル体制、こういうものが一面非常な危険な形に追い込まれていくのではないだろうか、こういう通貨不安を打開するドルの切り下げ、こういうものが当然起こってくるのじゃないかと思うのですが、その辺の見解が一つであります。  それからもう一つは、先ほどこれも委員からちょっと出されておったようでありますが、日本の円がマルクのあとの投機の対象となって、一説には、短資の流入によって、外貨準備高が、現在六十五億ドルと、こうわれわれ理解しておるわけでありますが、それを突破するのではないかと、こういうことをいわれております。したがって、最新の予測はどのぐらい一体あるのかですね、この辺の数字になりますけれども、教えていただきたいと思います。それから外貨準備の近い将来の見通しですね、ないし動向、こういうものを日銀としては一体どういう見通しを持っておられるか、その辺の見解についてお伺いをして、私は一〇分ですから、これで終わりたいと思います。
  123. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 第一の御質問は、ドイツのいまの為替相場を浮動させております、それがどれぐらい続くだろうかという御質問だと思いますけれども、これは私どもにも正直に申してなかなかわかりません。ただ、ドイツ当局としては、できるだけ早くこういう状況をやめたいという考えは持っておると思います。それから第二の御質問とも関連しますけれども、これはIMFの規定には反しておるわけでございますから、ドイツのような大きな国といたしましては、そういうふうなIMF体制に反するようなことをいつまでも続けてはおられないという気持ちが裏にずいぶんあるようでございます。シラー経済相は、新聞の質問に対して、まあ期間は月単位で計算されるぐらいの幅ではないかということを言っております。したがって、ごく短期間とも言えませんでしょうけれども、さりとてそういつまでもこれをするというわけにはいかない性質のものだと思います。  それから第二番目のIMF体制自体の問題でございますけれども、確かにこのごろのドルにはいろいろ問題がございますけれども、いま世界で準備通貨として使えるものはドル以外には実はないわけでございます。マルクなどもずいぶん強い通貨にはなりましたけれども、やはり準備通貨という立場から来るマイナスがずいぶんございますので、ドイツ自身も、自分の国が準備通貨的な使われ方をするのには、何といいますか、断わり続けておるというような状態でございます。したがって、当面の状態として考えます場合に、ドルの準備通貨としての地位は依然として続く、でありましょうし、したがって、いまのドル基準でいろいろ考えておりますIMF体制というものも、やはり引き続いて維持されていくものだ、こういうふうに考えております。  それから第三番目の外貨準備の見通しの問題でございますが、ごく最近、わずかの間に急速にふえましたが、こういう増加が今後また続くとは私は思いません。最近ここ一両日の動きから見ましても、大きな資金移動はやや一服という感じでございます。ただ、先ほど来議論がございましたように、基礎的な国際収支の黒字はまだしばらくは続くでございましょう。したがって、その面から来る外貨準備の増加はまだやはりあるのではないかというふうに思います。ただ、その金額を予想しますことは、たとえば外人の証券投資の金額など、なかなか見通しのつきかねる要素が多いものでございますから、具体的な数字についてはちょっといまのところはっきりした予想を持っておりません。
  124. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 日銀総裁にお伺いしたいのですが、世界決済銀行の総裁会議の出席後の記者会見で、わが国に対して円の切り上げの諸外国の圧力があるのは貿易収支の黒字幅が大きいことが原因だと、その対策として輸入自由化の促進が急務であるというような発言をしております。政府輸入自由化の進め方というものがなまぬるい、こういうように言われておりますけれども、この輸入自由化について、具体的に、じゃ一体どの辺までやればいいというようにお考えになって御発言があったのかということと、また、一方、その自由化というものが果たせてくれば円の切り上げというようないわゆる海外からの圧力、そういうものが弱まると、こういうように断言ができるのかどうかということ、あるいはそういう円の切り上げというものが回避できるかということ、こういう点についてお伺いしたいと思います。
  125. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 輸入自由化の問題は、これは日本といたしましてだいぶ前からの懸案問題でございまして、その問題について、日本としてはやるやると言いながらなかなかそれが具体的に進行しないものですから、海外で、一体何をしているんだろう、いろいろ口では言うけれども実際になかなか具体的な手を打たないではないかというような印象がございますので、輸入自由化の問題なんかを特に申し上げたのでございますけれども、しかし、貿易黒字の大きいことに対する対策としては、これだけではもちろん十分ではないので、全体の経済活動を活発化させるということによって輸出プレッシャーをやわらげ、輸入を増大させるというような基本的な手も非常に必要であります。いろいろな手段を併用いたしましてこの問題に対処しなければならないと、こう考えております。輸入自由化はそのいろいろな対策の中の一つであるというふうに考えております。
  126. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ここで日銀総裁にぜひ私の意見をお伺いしておきたいことがありますが、いわゆるスウィング論と呼ばれているものについてでありますが、結局、国際流動性、これが非常に大事な問題になっておるわけですね。これが保証されていけば、ドルというものも価格というものが下落してくるということも避けられるだろうというふうに思うわけでありますが、そういうような点から、はっきり申し上げると、黒字国が真剣に努力をするというよりも、赤字国である国々がそのような国際流動性問題から見ても経常収支の改善のために努力するというそういう金融節度を守ることが大事だと、こういうことでアメリカ政府というものを批判する態度をとっております。  その考え方でありますけれども、どうしても一方に赤字国があれば他方に黒字国がある、その黒字国のほうが悪いというだけじゃなくて、そういう赤字国のほうが真剣に努力をするのが正当ではないか、そうでなければ、国際通貨体制というふうなものもくずれざるを得なくなってくるのではないか、国際流動性の確保もできないのではないかという、そういう説があるわけでありますが、その点についての考え方はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  127. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 私は、ただいまお話しがありましたように、そういう問題についての一番大きな責任は赤字国にあると考えます。ただ、黒字国の場合でも、その黒字が全く自由な姿での黒字であるかどうか、その黒字を生んでいる環境に、たとえば、輸入の制限であるとか、あるいは輸出についての特別な補助政策であるとか、そういうものがありますと、黒字の国でも、そういう黒字を重ねておるぐらいな力がある場合には、そういうような特別な措置というものははずさなければいかぬというようなそういう反省は必要であると思います。しかしながら、基本的には、やはり赤字国がまず自分の身をちゃんとすることに努力すべきであると、こう考えます。
  128. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 そういう主張を総裁はお持ちになっているとすれば、国際会議の席上、または対アメリカとの関係で、その点は強く御要望なさったり、あるいは強く御主張なさったことはございますですか。
  129. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 先ほども国際決済銀行の会議についての印象で申し上げましたように、それは、日本だけでなくて、各国ともアメリカの国際収支の均衡回復については強く要望いたしております。
  130. 鈴木一弘

    鈴木一弘君 ここでちょっと大蔵大臣に伺っておきたいのですが、大蔵省が十三日に貿易収支の均衡回復のために輸出振興税制を四十七年から全廃すると、こういうように言われておるのでありますけれども、これが確約はできるものなのかどうか、その点が一つ。  それから現在の輸出振興税制というのは、輸出の割り増し償却、海外市場開拓準備金、技術などの海外取引所得特別控除、この三つでできておりますが、この中で海外市場開拓準備金も廃止をしようというような考え方なのかどうか。  いま一つは、もしそれをやるならば、いま申し上げたような輸出振興税制を全廃するとするならば、見返りとして法人税率を引き下げてもらいたいという財界からの声もあるようでありますが、この三つの点についてどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか。
  131. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、まだ、輸出振興税制を改正する、あるいはこれを廃止する、こういうようなことは一言も言ったことはございません。ただ、私が申し上げておりますのは、手前も申し上げたのですが、わが国が世界経済社会の中で問われている問題は何だと、こういうと、いま非常な貿易黒字を出しておる。その黒字を出しておる原因、それについて妥当を欠くものがないかと、こういう問題なんです。そこで、輸入自由化でありますとか、関税の問題でありますとか、あるいは対外経済協力の問題、あるいは貿易のマナーの問題、そういうことについて深くここで再検討しておく必要がある、こういうふうに考えますが、その一環といたしまして、輸出振興税制についても問題はないのかどうか、国際社会の水準と比べましてどういう関係になっているのだろうか、これは最近のわが国の国際社会における地位、そういうものとにらみ合わして再検討はすべきであると、こういうふうに考えておるのでありまして、事務当局に対しましても、そういう観点から見直しをひとつしておいてもらいたいと、こういうことは申し上げております。しかし、まだ結論は別に得ておらないわけであります。したがって、市場開拓準備金をどうするとか、そういうところまではいっておらないのでありまして、まして、財界からその見返りとして法人税を軽減せよというような要望にも接しておりません。
  132. 向井長年

    ○向井長年君 日銀総裁に質問をいたしますが、私の持ち時間は六分であります、わずか。したがって、三分間で六点にわたって質問いたしますから、三分間で答弁していただきたいと思います。  最近における国際通貨危機を招いだ根本の原因は、米国の国際収支が大きな赤字を出していることにあるといわれているが、日銀総裁としてどのような見解を持っておられるか、これが一点であります。  二点は、アメリカのニクソン政権は、昨年末以来低金利政策をとり、米国内経済の景気上昇を促進しようとしているが、その結果、ドル資本は高い金利を求めて、海外、特に欧州に流出する傾向を強めております。ベトナム戦争や開発途上国に対するドル支出など、アメリカの国際収支の中でも資本収支が大幅な赤字になっていることは事実だと思います。日本としては、アメリカに対し、国際通貨の秩序を維持する立場から、これはまあ政府が要望することになろうと思いますが、要望なり何らかの申し入れをすべきだと思いますが、これはどう考えておられますか。  三点は、もしアメリカがその威信にかけても海外派兵の減少や資本収支の改善を行なわないとしたならば、マルクはもちろん、円も、結局はその経済的な実力以上の強い通貨とされて、平価の切り上げを迫られることになるのではなかろうかと、こう思うわけであります。言うならば、アメリカの赤字を日本に肩がわりすると、こういう形になってくるのではなかろうか、こう思うわけでありますが、この点についていかがでしょうか。  第四点は、わが国の造船業界が円建で契約していることは事実であるし、最近は経済界の首脳部でも円切り上げへの対応を強調する動きも出てきております。これは同友会なんかでも出ておりますが、先般も植村さんなりあるいは木川田さんが発表されておりましたけれども、一方、政府・日銀当局は平価の維持を強調しているが、通貨当局が切り上げや切り下げを事前に示唆するということは、これは原則としてないと思いますけれども、国内外を問わず、円切り上げはもはや必然だという考え方も成り立つのではなかろうかと、こう思います。これに対して、政府が講じている一連の外貨減らし対策で十分こたえ得ると考えておられるか、この点についてお伺いいたします。  第五点は、政府当局が円切り上げを望まない気持ちはよく理解できますけれども、その結果は、単に切り上げを回避しようとする対策のみに終始する傾向がある。やがて外圧によってやむなく切り上げをさせられるような事態が起きたとき、それに十分対応するような国内の経済体質に対してどういう努力を講じなければならないのか、この点についてお伺いいたしたいと思います。その意味合いからしても、政府あるいは日銀はどのような対策を今日まで講じてき、あるいは今後も講じようとするのか、この点についてお伺いいたします。  六番目は、国際通貨としてのドルの安定性はますます失われ、往年の地位を回復することは不可能だと思います。これは識者のひとしく指摘しているところでございます。したがって、IMFの現行通貨制度は改革されなければならないのでございますが、すでに昨年の秋以来、IMFにおいて、為替変動幅の小幅な拡大、あるいは自由変動相場制、あるいは漸進的で小幅な平価調整等の案が検討されているのでございますけれども、日本としては国益と新しい国際通貨秩序の確立という点から積極的に改革を推進する役割りを果たすべきだと思いますが、日銀としてどう考えられますか。  以上でございますが、あわせて大蔵大臣に一言だけお聞きいたしますけれども、たとえばこの円の切り上げがなされたとした場合に、日本国内においてのいわゆる国民生活に、あるいはまたあらゆる企業に、まあ経済界をあわせまして、どういう反応が起きるのか、また、どういうようなわれわれの生活にこれが影響を与えるのか、こういう点をこれは大蔵大臣からお伺いをいたしたいと思います。  大体三分だと思いますので、これで私の質問を終わります。
  133. 佐々木直

    参考人佐々木直君) 第一番目の御質問は、アメリカの国際収支の赤字というものが今回の国際通貨動揺の原因ではないかという点であったかと思いますが、先ほどもちょっと申し上げましたように、今度の動揺の直接的な原因はドイツのやり方でございますけれども、その背景にアメリカの国際収支が長い間赤字を続けており、また、それを原因といたしましてユーロダラー・マーケットに非常に多くの短期資金が積まれてきたということが働いておることは事実であります。  それから第二番目のアメリカの低金利の問題でございますが、確かに、アメリカの短期金利は、ことしの初めから三月ごろにかけまして急速に下がりました。これが国際的な資金の移動の一つの原因になったことは否定できないと思います。この点につきまして、いろいろ国際会議においてアメリカのそういうような金利政策について批判がありましたことも事実でございます。どういうことがそのきっかけになったかは私にもよくわかりませんが、しかしながら、この短期金利は最近になりましてだいぶ上昇してきておりまして、一時のような姿とはだいぶ変わってきておるのが現実でございます。  それから第三番目は、アメリカのドルの地位が低下してきておる問題についてでございますが、これはほかの国の通貨との関係においてだんだんアメリカのドルの弱さが出ておることは事実でございますけれども、しかしながら、ほかの国の通貨がアメリカのそういう弱さを肩がわりするというようなことの性質の問題ではないと私どもは理解しておるのでございます。  それから第四番目の、円の切り上げについて、日本の財界のものの考え方政府・日銀のものの考え方の間に多少差があるようなお話でございましたけれども、実はそういう当の発言をなさっておられる方に直接伺いますと、やはり円の切り上げは回避すべきものだと。しかし、そのためにはどういうふうにすればいいかということをやはり検討しなきゃならない、こういう趣旨であるというふうな御説明をいただいておるのであります。  それから第五番目は、外圧によってやむなく日本の国内で手を打たなきゃならぬのじゃないかという御質問であったかと思うのでありますが、われわれといたしましては、こういうような平価の問題は、日本の国にとって何が一番利益であるかということの自主的な判断で決定すべき性質のものであると思うのであります。  それから最後の問題でございますが、第六番目は、ドルの地位の低下によりましてIMF体制というものが動揺するのではないかという御質問であったかと思うのでありますが、先ほども申し上げましたように、確かにドルの力は一時に比べてだいぶ弱くなってきておりますけれども、世界の準備通貨といたしましてはまだこれにかわるものがございません。したがって、当面やはりいまの米ドルを中心とするIMF体制というものを続けていかなければならない。そうして、お話しのように、為替相場制度というものについて今後どういうふうにしていけばいいかという問題を今回の経験にかんがみまして新しく勉強し直す必要がある。それで、それに対して日本がどういう態度をとるかにつきましては、検討の推移を見ながらこちらとしては考え方をまとめていくべきものだと、こう考えておるのでございます。
  134. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これはもうほんとうに仮の話でございましょうと思いますが、いまの経済体制のもとで円の切り上げを行なうという際にどういう影響が起こってくるか。これは、一般論からしますと、輸出が不振になる、輸入が盛んになる、それから国内の物価はしたがって下がってくる、また、賃金も下がってくる、こういうような一般的なデフレ現象を起こす、そういうことです。これがまあ経済の一般の動きでございますが、しかし、最近は、たとえば賃金をとってみますると、これが経済原則できまらない、力の関係できまるというような要因もありますので、ドイツが一昨年マルクの切り上げをやったが、ただいま申し上げたような現象にはならなかったわけです。わが国では、昭和初期、全の解禁というのをやりました。これが正式の意味のあれではありませんけれども、実体は平価の切り上げであった、こういうふうに思いますが、あのときは、端的に、貿易は不振になり、輸入はふえて、国際収支は悪化する、それから物価は下がる、賃金も下がるということになりまして、私どもは百五十円月給をいただかなきやならぬのが百三十五円しかいただけなかったと、こういうようなことになり、そして満州事変直前に全国を覆う大不況になった、こういうのですが、さあ今度こういう国際情勢下でどういう動きになりますか、経済原則のほかに力の関係というものが入りますので、ちょっと予測できませんけれども、まあある程度のデフレ的な影響を及ぼすであろう、これはそう言えるのじゃないかと思います。
  135. 渡辺武

    ○渡辺武君 先ほど来の御答弁を伺っておりますと、今度西ドイツを中心として起こった国際通貨危機の背景、あるいは根源と言ってもいいと思いますが、そこにアメリカのドル危機の激化があるというような御答弁でございましたが、私もその点は賛成です。しかし、私は、それだけじゃないだろうというふうに考えております。と申しますのは、アメリカは、先ほども答弁の中にありましたが、昨年は法的決済ベースで約百億ドル、この第一四半期には五十五億ドルという大幅な赤字を出しながら、しかし、あたかも国際収支の黒字国のほうが問題だと言わんばかりの口吻を高官が漏らすというような事態であります。つまり、他国の犠牲と責任によって解決しようというところにこのたびのマルクを中心とする通貨危機の一つの大きな原因があるんじゃないかというふうに思うのです。つまり、今度の通貨危機を見てみると、私は一つの特色があると思う。それは、通貨の弱い国が問題になったんじゃなくて、マルクというような通貨の強いといわれる国に攻撃が集中して大問題になっている。それからまた、同じく通貨の強いと見られている円にアタックが集中するというような事態だと思うのですね。しかも、それが、スイスなりオーストリアなりオランダなりというようなところにおしなべてあらわれている。これは一つの特色だと思う。なぜこういう事態が起こったのか、この点は私は考えてみなければならぬと思う。私は、この一つの原因として、一九六八年でしたかの三月だったと思いますが、アメリカはいわゆる二重価格制をとった。いままで、外国の政府あるいはまた中央銀行の要求があれば、ドルを金と交換したというのを、事実上ここでもってとめてしまった。あるいは、金の自由市場も、これを事実上ふさいでしまった。こうしてアメリカからの金の流出を押えるというようなことをやって、他国の犠牲でこれを解決しようとしている。そこで、ほんとうならば、ドル危機が激化すれば、アメリカのドルが大動揺を来たすはずなんで、つまりゴールドラッシュが起こるはずですね、ドルを金に乗りかえるから。ところが、今回はそれが起こらないで、相対的に強い通貨であるといわれるマルクその他に攻撃が集中する、こういう形になったと思うのですね。したがって、私は、他国の犠牲によって国際通貨危機を解決しようと、こういうアメリカの不当な態度、とれを改めさせない限り、同じような事態がしょっちゅう起こるだろうというふうに思います。  それで、総裁及び大蔵大臣に伺いたいんですが、アメリカにドル危機をみずからやめさせる、自分の犠牲と責任でドル危機を解決させるという方向に申し入れをする意図がおありかどうか。  時間がないので、私も端的に一、二点だけ申し上げますけれども、まず第一に、私は、ドル危機の最大の原因はアメリカのベトナム侵略戦争にあると思う。このベトナム侵略戦争を中心とするアメリカの海外侵略政策をささえるばく大な海外経済軍事支出、これがドル危機の大きな原因になっていると思う。もちろん、資本収支の赤字、貿易収支の赤字もありますけれども、一番大きな根源はここにあると思う。したがって、このような侵略政策はやめるべきだということをまず第一にドル危機解決の重点として申し入れる意図がおありかどうか。それからもう一つは、先ほどの二重価格制度に関連してでありますけれども、そういう事態があれば、必然的に、通貨危機が起これば、攻撃は強い通貨に集中するという事態になります。したがって、いわゆる金の二重価格制、こういうものはやめさして、ドルと金との交換性の回復、あるいは金の自由市場の再開というようなことを申し入れるおつもりがあるかどうか。  この二点をまず伺いたいと思います。
  136. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私には、赤字国の責任を追及すべきじゃないかというお話です。私も、子供じゃありませんから、言い方はいろいろあります。ありますが、アメリカに、あなたが悪いんだと、こんなふうには申しません。しかし、赤字国に反省してもらわなければ困りますよということは強調をいたしております。今後といえどもこの態度は続けてまいると、かような考えであります。
  137. 渡辺武

    ○渡辺武君 金についてはどうですか。
  138. 佐々木直

    参考人佐々木直君) それでは、金の問題について御説明申し上げますけれども、いまの二重価格制度では、工業用金その他を買うための市場というものとオフィシャルなものとの二重になっておるわけでありまして、ですから、自由市場というものはいま一つあるわけです。日本が工業用金などもそこで買っていま輸入しておるのが実情でございます。ただ、いま、世界で自分の国の通貨と金とを交換する制度を持っておりますのはアメリカだけでございます。ほかの国は、金は相当持っておりましても、自分の国の通貨を金にかえるということは全然やっておりません。そういう特殊な地位にドルがあることは、これはわれわれとしても認めて、そのプラスも考えてやらなければいけないと、こう考えております。
  139. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間が来たそうで、あとほんの一言だけ伺います。  新聞によりますと、フランス政府が日本政府の意向を打診してきている問題があるそうです。その内容はどうかと申しますと、いまの国際通貨危機を解決する一つの方法として、主要国が平価を一斉に切り下げたらどうだと。そうして、その中でアメリカのドルの平価の切り下げはほかの国よりも大きくして、事実上ドルの切り下げという形をとるようにしたらどうかというのを在仏日本大使館を通じて日本政府の意向を打診してきているという記事が出ておりました。実際こういう申し入れがあったかどうか。それが一点。  それからもしなかったとしても、このフランス政府のような考え方ですね、これについては、日本政府として、あるいは日本銀行総裁として、いい方向だと思っているのか、あるいはまた、まずいと思っていらっしゃるのか。この点をお伺いいたします。
  140. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまのお話は、新聞で見ました。見まして調べてみましたが、公式にも非公式にもそういう申し入れを受けておりませんです。  それからかりにそういう話があったらどうだというと、私どもは、まあこまかい点になりますのでなにですが、大体の考え方といたしましては、現行の平価制度を堅持すべきものであると、こういうふうに考えております。
  141. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 佐々木日銀総裁及び井上理事に申し上げます。  本日は、たいへん御多用の中を御出席いただきまして、ありがとうございました。お約束の時間が参りましたので、退席していただいてけっこうでございます。
  142. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣質問したいのですが、いままで日銀総裁に円切り上げ問題を中心にいろいろ質問をしたわけですが、質問の要点は、円の切り上げ賛成論者も、円の切り上げ反対論者も、日本の国際収支の黒字幅が非常に大きくなって外貿がどんどんたまってきている、その外貨のいわゆるたまり過ぎについてはこれを調整しなきゃならぬという、この点については一致していると思うんですよ。そこで、問題は、なぜ外貨がこのようにどんどんたまってきているか。一つは、特に最近円に対する投機を中心として、これはマルクの変動為替相場の採用等も影響がありますが、そういう円投機を中心として急にふえたこともありますけれども、しかし、基本的には日本の国際収支は黒字に定着をしてきているということはすでに認められているところだと思うのです。  そこで、この黒字をどうして急激にふえるのを抑制するかということにつきまして、政府は、ミクロ的じゃなく、大局的にこれまでの政策全体にここで再検討をしなきゃならないというふうに考えていないかどうか。単に小手先じゃなくてですよ。たとえば、輸入自由化をふやすとか、海外に貸し付けをするとか、そういうような小手先じゃなくて、政策全体として——これまで、「経済社会発展計画」というのは、海外の競争力を強化するということに非常に重点を置かれているんですよね。それから資本の効率ということ。それから物価安定ということ。これはもう全く逆になっておりますがね。しかし、「経済社会発展計画」は、あれが発表された当時、大蔵大臣は御存じだと思いますが、学者の間で、国際収支の黒字幅が実際よりは小さく出るような作業をして発表されているんだと。もし「経済社会発展計画」に基づいて日本の国際収支の黒字が大きくなるというようなそういう作業が発表されると、外国から円の切り上げの圧力が強くなるだろうと。そこで、実際よりは小さく出るように作業したんだと、こういうような作業をして「経済社会発展計画」をつくったということは、学者の間でずいぶん批判がありましたよ。だから、あれは信用できない、非常に政策的意図があったんだと言われているんですよ。ところが、学者が指摘したとおりになって、実際に政府があの「経済社会発展計画」で見通したよりは国際収支の黒字幅は大きいんですよ。大きくなってきている。最近の円投機を除いての話ですけれどもね。ですから、ここでやっぱり「経済社会発展計画」につきましては、いままでの基本的な方針というものは、情勢も変化してまいりますし、これはまた再検討して、洗い直して、そうして新情勢に応じたそうした作業をすべきじゃないかと、そういうように思うのですが、いままでの「経済社会発展計画」のままで行くのかどうか、その点を伺いたい。
  143. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 「経済社会発展計画」は、期間が五年です。五年という長い間を見通しておるわけでございますが、いま、時勢の変化が激しいものですから、もう五年を待たずしていろんな変化が出てくる。今日、いま木村さんの御指摘のような変化が出てきておるわけなんです。ですから、五年を待たずしてこれは時々改定したらどうだろうと、私はそう考えております。何も、メンツだ、計画だからというようなことにこだわる必要はないというふうに考えておりまして、おそらく政府としても同じような考えだろうと思いますが、この計画は、いますぐということにはちょっとむずかしいと思いますが、ちょっと時局の推移を見まして、改定作業に移るべきであると、こういうふうに見ております。
  144. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 改定作業に移るべきだというお話ですが、それはどういう方向において改正する必要があるか、どういう着想のもとに改定をする必要があるか、そこがお聞きしたいんですよ。
  145. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この計画は、非常に総合的に各経済要素というものを検討した結果できております。しかし、これをさあ実行してみまして、まず資源の問題に問題はないか、こういう問題、それからもう一つは、労働力の問題です。それから国内の輸送が一体いままでのような計画でいいのであろうかどうか、そういう問題等々ありますが、一番大事な問題は、何といっても成長の高さの問題だろうと思います。いまこの計画は一〇・六ということで出てきておりますが、この一〇・六ということで、はたしてこれで妥当であるか。現に、四十六年度は、一〇・一と、こういうふうにやっておりますが、まあしばらくこの高さでやってみて、一体これが低過ぎるのか高過ぎるのかと、こういうような問題があるだろうと思います。それらを総合的に見まして、現実に即したものにしなければならぬ。それから特に先ほどから木村さんからも御指摘がありまするが、国際経済社会におけるわが国の立場をどういうふうに持っていくかというこの角度の問題も大きくその際には取り入れなきゃならぬと、こういうふうに考えております。
  146. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、前にも総理に予算委員会で質問したんですけれども、全体として物価がその意図に反して非常に上がってしまった、あるいは公害が激化したり、そういういわゆるひずみがたくさん出てきたということは、その一番基本は私は特に財政面に非常な責任があるように思うんですよ。というのは、これは適正な資源配分が行なわれなかった。財政の機能としましては、たとえば所得の配分を適正化するとか、あるいは資源の配分を適正化するとか、そういうファンクションがあると思うのですがね。その中で、全体として重化学工業のほうにのみ非常に資源配分が偏在してしまった。そこに一つ非常な問題があると思うんですよ。海外の競争力強化ということに重点を置いて、資本の効率ということに非常に重点を置いて、そうした資源配分をやった。だから、そこに非常な欠陥があって、マクロ的にはそこに欠陥があって、それを直されるのは容易ならぬことだと思います。それは、私は、財政、金融、それから税制にももちろん、そこに問題があるんじゃないかと思います。  そこで、具体的にこれから「経済社会発展計画」を、さっき大蔵大臣が言われましたが、とにかく再検討しなきゃならぬ。五カ年の期間が来なくても、情勢に応じて再検討しなきゃならぬ。資源の問題とか、労働力、輸送の問題、あるいは成長率の問題、あるいは世界経済の中における日本の位置づけとか、いろいろあると言われましたが、私は、その中で、特に財政とか税制とか金融の面につきまして、これまでのような財政、税制、金融ではいけないのじゃないか。そこにやはり再検討を加える必要があるんじゃないかと、こう思うんですが、その大蔵大臣の御意見を伺いたいのですが、まず、財政につきましては、これは日銀総裁も言われましたが、国際収支の黒字の増加をなだらかに抑制していくその一つの方法として、弾力条項を発動して、政保債をもっと発行して国内需要を喚起したらどうかということも言われておりましたが、そういう問題だけではなく、これまでの財政政策につきましては、何といっても資本の効率第一主義ですね。いわゆる輸出競争力強化主義ですね。つまり、「経済社会発展計画」の基本的な発想ですよ、それに基づいて行なわれたと思うんです。だから、財政支出につきましては、今後その点について考え方を変えていく必要があるのではないか……
  147. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ちょっといま最後のところを聞き漏らしました。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ですから、財政の支出ですね、予算の中で、重要費目別にいろいろ編成されておりますね。そこで、今後、ウエートの置き方、比重の置き方を変えていかなきゃいけないのじゃないか。つまり、日銀総裁は社会資本ということばで言われましたが、もっとその投資を強化せよと言われましたが、全体として焦点の一つは、国際収支の黒字幅が大幅にどんどん増加していくのをなだらかな増加にこれを調整するためには社会資本の充実が必要だという言い方をしているわけですけれども、そればかりではなくて、全体としてこれまで輸出競争力強化重点主義、資本の効率重点主義、これが「経済社会発展計画」の基本になっているんですよ。もう一つは、物価の安定でしたがね。物価の安定のほうは、これは実現できなかった。だから、財政構造というのですか、予算の構造の中の重点の置き方、ウエートの置き方、これをいままでとは違ったウエートの置き方にしていかなきゃいけないのじゃないかと、そこを伺っているわけです。
  149. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは私どもが常々申し上げておるわけなんですが、七〇年代は内政の七〇年代でなければならぬと、経済は量的成長から質的成長へ転換しなければならぬと、こういうふうに申し上げておるので、これは非常に大きな転換を考えておるわけなんです。つまり、具体的に言いますれば、これだけ成長した。しかし、成長一点張りじゃいかぬ。いままでは、どちらかといえば、成長成長といって成長が目的であるかのごとく理解されるような状態であったが、そうじやない、成長は手段であって、目的がなければならぬと、こういうことであろうと思う。その目的は一体何か、こういうことになりますれば、まず第一に、国内の整えです。いま、社会資本にしても、社会保障にしても、わが日本は決して誇り得べき状態じゃございません。このおくれの取り戻し、これに重点を指向していかなければならぬ。それから同時に、国際社会においてわが国は経済の先進国としての役割りを演じなければならぬ、こういうふうに思いますが、そういう点に深く思いを配意した政策運営、この二つが、これからの課題になってくるのではあるまいか、そういうふうに考えております。
  150. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、それは、構想ですね。構想ばかりそういうふうに私は転換さしても——四十六年度の予算に関連して、佐藤経済企画庁長官は、構想の転換をしなきゃならぬと言っているんですよね。構想ばかり転換したって、実際が転換しなきゃですね。実際の転換というのは、私は、結局、財政あるいは金融等につきまして、これまでの重化学工業中心の資源配分というのを転換しなきゃならぬと思うんですよ。構想の転換ではなくて、実際にそれをなさなきやならぬ。特に、今後、これから第四次防衛計画が出てくるんでしょう、五兆八千億のね。そういう大きな防衛費が出てくる場合、そういう構想の転換だけではなく、実際の資源配分の転換が一体できるかどうか。大体、政府は、口では言っていますよ。たとえば低生産性部門の生産性を高めると言います。低生産性部門というのは、農業なんかが低生産性でしょう。ところが、実際に私が質問しますが、農業の生産性は低下しているんですよ。上がっていないんですよ。逆に低下している。それで、構想ばかり転換したって、実を結ばない。だから、結局、日本経済の均衡的発展がどうしてもできない。ひずみがしょっちゅう出てくると、こういうふうに思うんですがね。  大蔵大臣、これから総理大臣にもなろうという人ですから、そういうマクロ的な均衡的発展をはかるようなそういう着想をしっかり身につけなきゃだめだと思うんですよ、今後ですね。その点が非常に欠けていると思うんですよ。私はいつかの機会に質問したいと思っていたんですけれども、ちょうどいま外貨がたまり過ぎる。外貨がたまり過ぎるという形において日本の矛盾が集中的に出ていると思うんですよ。その点をひとつ……。
  151. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 事をマクロ的に見なければならぬということ、これはもう私は大賛成でありまして、常々そういうふうなものの見方をしたいと思っております。ただ、具体的な問題として、いま木村さんは重化学工業といって何回もこれを敵視するがごとき御発言をされましたが、これは私は根本的に考え方が違います。つまり、わが国は、世界の中における日本の位置づけ、これを考えていかなければならぬ。いままでのように、日本が軽工業じゃ、あるいはその他の低生産性部門に属する産業、これにこびりついておったら、一体、わが国は世界の中でどういうふうに批判されるか。ちっとも世界の後進国に対してこれに協力をするというような姿勢じゃないじゃないかと、こういう姿勢になってくるんです。わが国は、だんだんと低開発国に対しまして、低開発国にふさわしい産業、つまりわれわれが十年前、二十年前に主産業として取り組んでおった産業を、これを譲り渡さなければならぬと、こういう立場にあるんだろうと思う。そういうようなことも考えながらわれわれは重化学工業というものを育成強化してきたんです。育成強化して、育成強化された。ですから、これに対して、積極的な援助だ、財政配分だというようなことをそう考える必要はない時期に来ておるので、その辺は十分配意しております。おりますが、重化学工業を敵視するという考え方は、これは世界の中の日本経済ということを考えるときに、私は非常に道を誤ることになるんじゃないか、そういうふうに考えております。
  152. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 こういう議論をする機会がなかったんで、私は幸い時間的にそういう機会がありましたから、その点を詰めて議論をしたいと思うんですけれども、私は敵視はしていないんですがね。大蔵大臣はすぐそういうふうに、なかなかうまいですよ、そういうふうにね。こちらの質問をとらえてすぐ敵視というようにしちゃう。そうじゃなくて、全体のバランスのとれた経済成長を行なうにあたりまして、重化学工業に偏向しちゃっているんですよ。片寄っている。ですから、具体的にはこういうことですよ。これまでの高度成長は、まあ下村理論を基礎にしたようですけれども、物、金、労働力を技術革新に合わせるように、技術革新投資ですよ。重点的に物、金、労働力を重化学工業方面につぎ込んだことは確かですよ。そのために、低生産性部門のほうにその物、金、労働力の導入がおくれた。アンバランスなんです。これから物価の値上がりが生じておる。卸売り物価が安定しているということは、物、金、労働力を重化学工業のほうにうんとつぎ込んだから安定しているんですよ。コストが安くなっていますからね。そのために今度は犠牲となったのが低生産性部門でしょう。だから、そっちのほうが物価が上がるんですよ。だから、私は、低生産性部門の犠牲において卸売り物価が安定していると、そういうふうに理解しているんですよ。諸外国では卸売り物価が上がって、日本では上がっていないということは、逆に日本の消費物価が諸外国より値上がりがひどいという犠牲において卸売り物価が安定しているんですね。ですから、そこは大川報告でも言っているでしょう。そこのところの資源配分の問題で、低生産性部門のほうにもつと思い切った投資なり何なりを行なわれるべきだったと思う。アンバランスがある。それがひずみという形で出てきたと思うんですよ。そこのところを言っているわけですね。ですから、最初は、下村君も、私はあの木をずっと読んでみましたが、その意図はよかったんですよ。ところが、非常に予想に反して−いわゆる生産力さえ増大すれば諸矛盾が解決すると思っていたんですよ。あの本を読むと、たとえば生産力が大きくなれば、あのころ農村では人口過剰だった、過剰人口がどんどん都会へ流れてくる。農村の過剰人口は解決する。それで、少ない人口が農地を耕すから、一人当たりの耕地面積はふえて、農村所得がふえる。そうすると、都市と農村との所得格差が縮まる。そういう理論ですよ。それで、重化学工業はうんと発展したんですよ。だけども、低生産性部門が犠牲に供され、そこでアンバランスが生じているんですよ。日本の経済はそのひずみを直すような財政、金融政策をとらなければならぬ。ここが私は一番重要だと思うんですよ、資源の再配分が。ことはいまの国際収支の黒字幅が予想以上にどんどん多くなっているということとやはり関連があると思うんですよ。みんな関連がある。だから、この点、やはり総合的に考えて政策転換をしなきゃいけないんじゃないかと、こういう見方なんですけどね。
  153. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 木村さんの御意見が、低生産性部門に対する力の入れ方が足りないんじゃないかという御激励でありますれば、私はたいへん欣快に存じます。つまり、重化学工業の発展のテンポに対しまして低生産性部門の立ちおくれということは事実だと私は思います。そこに物価問題のむずかしさなんかある、こういうふうに存じますので、低生産性部門の生産性の向上政策、これにつきましては、これはできるだけ努力をしてまいりたい、かように思います。
  154. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから次に伺いたいのは、税制につきましても、これまでの海外の経済競争力強化重点主義の税制になっていると思うんです。そういう側面が強い。ですから、この円切り上げ問題とも関連しまして、やはり税制面でも私は考え直さなきゃならぬ点があるんじゃないかと思う。輸出金融の特利の問題もきつき出ましたけれども、そういうものも含めて、税制面におきましてもあんまり企業を保護し過ぎているんじゃないですか。税制面で企業をですね。私は、その点、ことに交際費その他につきましても非常に矛盾が多いんじゃないかと思うんですがね、税制面について。
  155. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほども申し上げましたが、税制についても検討をいたしてみたいと、かように考えております。私は、国際通貨問題については、いま風潮として黒字国のことを云々するのは、これは間違っていると思うんです。やっぱり赤字国の責任も追及しなけりゃならぬと、こういうふうに考えますから、追及する黒字国は、黒字国といたしまして、一点世界のどこからも非難を受けない、こういう体制を整えなきゃならぬと、こういうふうに思いますので、税制もその体制の一環といたしまして全部検討してみたいと、かように考えます。
  156. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣が、いま急に、赤字国のビヘービアがよくないと、これを正さなきゃならぬと言われていますが、しかし、前にSDRのあれを設定するとき、大蔵大臣は逆のことを言われたですね。国際流動性が不足だ不足だと、こう言われましたがね。ところが、それが過剰になっちゃっているんですよ。ドルが過剰ですよ。ですから、SDRの設定につきましても、あれは問題が非常にあったと思いますけれどもね。さっき、日本銀行総裁も、BISの総会でも日本だけではなく、ヨーロッパの諸国の銀行もアメリカの国際的赤字に対して批判したというお話がありましたが、これはもっと強く主張しなきゃならぬ。もっと外交的にもですね。さっきから議論があるんですけれども、この根本の原因は、何といったって、ベトナム戦争ですよ。基軸通貨であるために、ドル札はほかの通貨と違うんですから。ドル札をどんどん出せば、みんな戦費になるんですからね。諸外国でものが買えるんですから。日本の円札と違いますからね。そこで、むやみにドル札を刷って、日本もドル札がたくさんだまっているわけです。そのかわりに今度は日本が軍事輸出して、アメリカにどんどん物が行っているわけでしょう。それが日本のインフレを促進していると思うんですけどね。アメリカの国際的な通貨問題に対する国際収支についてのビヘービアというものは、これは強く批判されなきやならぬと思うんですよ。  それで、いまの円切り上げの圧力に対して一番大きい問題は、やっぱりアメリカの国際収支の赤字が問題だというふうに大蔵大臣は認めているわけですから、何らかの形でアメリカに警告を発する。警告というのがいやなら、アドバイスということばでもいいですよ。それで、非難ということばがよくないなら、批判ということばでもいいですよ。コンデムネーションじゃなくてクリティシズムとかいうことばでもいいですからね。何か私はもっときつくその抑制について反省を促さなきゃいけないというふうに感ずるんですけれども、その点、何か方法はお考えかどうかですね。
  157. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、終始一貫、この国際経済問題、国際通貨問題につきましては、赤字国がまず姿勢を正すべきだと、こういうふうに主張をしておるんです。特に基軸通貨圏において姿勢を正してもらいたいと、こういうことを主張しておるわけでございます。ただ、姿勢を正してもらいたいということを言う以上は、そういうことを言うわが国において指をさされるような一点で毛あっては相ならぬと、こういうふうに考えておりますので、そういう黒字国の姿勢ということについても反省するところがなければならぬ、こういうふうに存じます。まあいままでもそういう考え方でございますが、今後ともそういう姿勢を堅持してまいりたいと、かように考えております。
  158. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 本来なら、私は、ドルは当然切り下げるべきだと思うんですよね。ドル切り下げを行なうべきであるのに、切り下げを行なわないで、何か居直ったような形で、ドルより強いところは切り上げろ、弱いところは切り下げろ、こういうふうに出てきているわけですね。その点は私は自分自身の反省しなきゃならぬ点をたな上げして、諸外国に犠牲を負わしているというようなことだと思う。その点は全く大蔵大臣と意見は同じですよ。それについては、恐怖の安定というのですかね、ドルを切り下げさすと、今度は世界的な通貨不安になってよその国が困るから、それでうっかりドルの切り下げを強く要求できないというような、そういう立場があると思うんです。さっき、日本銀行総裁は、何と言ったって世界的な基軸通貨はドルしかないんだから、国際決済通貨としてと、そういうことを言われていましたがね。そういう恐怖の安定というのですか、ドルの切り下げをされちゃ困るというのでみんなそこのところをさわらないようにしているというようなことは、それは許されないのじゃないかと思うんですけどね。  それから次に、今度は金融面です。金融面にも私は反省しなきゃならぬ点があると思うんです。大蔵大臣は、一部両建て・歩積みにつきましてこのあいだ見解を明らかにされましたが、これも私は適切な措置と思うんですよ。しかし、金融面についてはまだまだ反省しなきゃならぬ点がたくさん——金融機関過保護ということも非常に問題になっているようですけれども、それから特に私は円切り上げの問題と関連していま聞いているわけなんですけれども、いまの金融面について私は反省する点があるんじゃないかと思うんです。この点はどういうふうにお考えですか。
  159. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 金融は、この一月から特に量的緩和政策をとりまして、かなり緩和されてきております。それで、御承知のように、コールも引き下げ得られると、こういうような状態であり、日本銀行当局の見方によりますと、七月になりますと、きわ立って緩和感というものが出てくるであろうと、こういうふうに観測をいたしておりますが、いま御指摘の歩積み・両建てと、こういう問題につきましても、この金融の量的緩和と相並行いたしまして自然に是正されていく傾向ではございまするけれども、歩積み・両建てというのは、何といっても債権者と債務者との間のきわめて複雑な関係から生ずる現象でございますので、表面にあらわれてくるところとその実体とが少し乖離すると、こういうような傾向もあるんです。そこで、まあ形式的、表面的には歩積み・両建てというのはかなり整理されたと、こういうふうになっておりますが、実体がはたして一体整理されておるのかどうかということになりますると、一つ一つのケースなんか見ましても、必ずしもそうでない面が多いわけであります。これは是正しなければならぬというので、今月からわが大蔵省の銀行検査官をして歩積み・両建てだけに問題をしぼりまして金融機関の検査に当たらしておるというのが実情であります。これは、必ず金融の量的緩和と相まちまして実効をあげ得ると、こういう確信を持っております。
  160. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に一つだけ。先ほど、外為会計の逆ざやについてちょっと質問したんですよ。どうもわからぬ点があるんですけれども、四十六年度の外為証券の発行限度は八千億ということになっていますね。それで、五月二十日現在で、七千七百三十三億発行しているんですね。さて、余力は二百六十七億の余力ですわね。そうすると、かりに一億ドルここで外貨を買うとすれば、もう三百六十億ですから、発行限度はそこでオーバーしちゃうんですね。そういう場合には、外貨を日銀に売るというんですよね。売ってファイナンスをすると、こういう話です。しかし、発行限度というものを何のために設けたかといえば、やはり外為証券で金融的にファイナンスして、そうしてその外貨を外為で外貨集中制をとっているから買って操作をしているわけでしょう。そういうことをするなら、何も発行限度なんて要らぬわけですよ。要らぬというのは、発行限度を何もいじくる必要がなくて、限度をオーバーすれば、いつでも外貨を日銀に売ってやっていればいいんでしょう。発行限度をオーバーするというような状態になってきたとき、何ら措置をしなくていいのかどうかですよ。さっきの話で、この八千億というのはもう今後超過しても直さなくていいのかどうか。ちょっと待ってください。それか一つ大蔵大臣に聞きたいんですよ。というのは、さっき国際金融局長に伺いましたから、大臣に伺いたい。そこのところがどうもわからぬのは、発行限度を設けておきながら、今度、外貨を買う場合、買い入れ額が発行限度を上回った場合は、外貨は日本銀行に売って調達するから差しつかえないというんですよね。そんなら、なぜ発行限度というものを設けるのか。そうしてまた、予算編成のときに、いつでも予算総則で発行限度をわれわれきめるわけでしょう。きめるわけなんですよ、発行限度を。そうしたら、発行限度というのを何もきめなくったっていいじゃないか、オーバーすればいつでも日本銀行に売ればいいんだから、外貨を。その点がどうも私はわからぬということ。  もう一つは、逆ざやなんですよね。それで、ささっき国際金融局長説明を聞きましたら、なるほどその操作自体では逆ざやであると。外貨をアメリカに預金したり、あるいは大蔵省証券に運用しているわけですよ。それよりは外為証券のほうの利息のほうが高いんですよ。そうなってきている。逆ざやになってきている。逆ざやになると、外為証券を発行して外貨を買えば買うほど損が立つわけです。しかし、それは、ほかの全体の外為の勘定では損にならない、利子のつかない資金があるから。利子のつかない金というのは、結局、一般会計から繰り入れる資金がたくさんあれば、それは利子はつきませんよ。そういうことをずっと長く続けていれば、結局、一般会計から利子のつかない金を繰り入れなければならぬということになる。だから、こういう逆ざや現象をこのまま放任しておいていいのかどうか、そういうことを。  この二つの点です。大蔵大臣に。さっき国際金融局長に聞いたんですが、よくわからないんです。
  161. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 先ほども答弁申し上げましたところでございますが、第一の点につきまして、発行限度の問題につきましては、確かに本年度の予算総則におきまして外為証券の発行限度八千億円というふうに定められておりました。それに対しまして、最近のところの現実の発行は七千七百億をこえておりまして、限度に近くなっておるということは事実でございますが、こういう場合には、先ほども説明申し上げましたとおり、外貨を日銀に売却をいたしまして、そして既存の外為証券の償還をいたしますので、したがいまして、外為証券の発行残高といたしましては八千億をこえないというこのやり方は、実は最近だけの問題ではございませんで、従来毎年こういう事態におきましてはやっておるところでございます。  それでは、限度自体が意味がないではないかという御質問でございますが、これはおそらく外国為替資金特別会計法だけではないと存じますが、こういう特別会計の短期の借り入れにつきまして予算総則におきまして限度を設けましてその範囲内で借り入れを認めるということが、特別会計制度その他一般のいわば原則になっておるかと思います。それの一つのあらわれであろうと存じます。  それからもう一つは、この採算の問題でございますが、これは、先ほども説明申し上げましたが、確かに限界的に、外為証券の金利とそれから米国のTBの現在の金利とは逆になっておることは事実でございますけれども、これは、先ほども申し上げましたとおり、こういう情勢が長く続くかいなかというところにまず第一に問題がございます。先ほども申し上げましたが、米国の短期金利は、底をつきまして、いわば反騰に転じております。たとえば、今後は、そういう意味で、この米国の低金利が、短期の金利の低いという状況が、長く続くかいなかということ自身に問題もあろうかと存じます。全体の外為会計の採算といたしましては、先ほども申しましたとおり、全体としては逆ざやにはなっておらないわけでございまして、これは今後短期的にそういう事態が生ずるということはございましても、全体として年度間を考えてみますと、決して赤字にはならないという状況であろうと存じます。
  162. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どうも、そこのところがよくわからない。そうしますと、外為証券を発行しないでそれでドルを買うということになると、結局、日銀が直接買うのと同じことになる。ただクッションが外為というものを通るだけでね。そういうことになるんですか。外為を通して——外為証券発行しない。もう限度があるから、発行できないわけですね。発行できないですよ。今度は外貨を買う場合、円資金はどうするかというんですね。円資金は、いままで持っている外貨を売ってですか、売って円資金を調達するんですか、そうすると、いままで持っている外貨というのは、アメリカの大蔵省証券とか、銀行に預金しているんでしょう。運用しているわけですよね。それを日銀に売却するということになると、これは金利はつかないですわな。金利というのはもらえないでしょう、おろすわけですから。そうでしょう。おろすわけですよ、運用しないんだから。それで金利はないと。それで日銀から今度は金を借りるわけですね。——売るからいいんですか。売るから、借りるわけじゃないと。しかし、そのときのレートが問題でしょうけれどもね。売るときの幾らで売るか、それがまあ問題でしょうけれども、それは損得なしとして。そうすると、やはり運用益がなくなるわけですね。そうでしょう。やっぱりそれが一つの外為会計の赤字要因になってくる。ならないですか。どうもそこのところがよくわからない。
  163. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) その点は、先ほども、私のほうから、また、日銀のほうからも御説明をしたところでございますが、もう一ぺん繰り返して申し上げますと、日銀に売りますと、むろんその外貨のTBなりあるいは当座預金——当座預金じゃございませんが、金利はつかなくなりますから、したがいまして、その意味の運用益はなくなりますが、他方、その外貨を持つために必要な円資金のためには、外為証券のコストがかかっておりますから、それが要らなくなるという意味で、そこで、したがいまして、その点だけでは単純に赤字になるのではなくて、むしろマイナスの面とプラスの面と両方採算上はあるということでございます。
  164. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでしたら、外為証券を発行しないほうがいいんじゃないんですか。外為証券を発行すると逆ざやになってくるんでしょう。そうしたら、いまお話しのように、いま持っている金は日銀に売っちゃって資金をもらえば、金利を払わなくていいわけですよね。外為証券は金利を払わないでいいんですから。とんとんになっていくわけですよ。逆ざやにならぬじゃないですか。そうしたら、外為証券を発行して外貨を——逆ざやの場合ですよ、発行すれば損だから、それじゃもう外為証券は発行しないで外貨を売ったら、それだけで逆ざや現象はなくなるというんでしょう。そこのところがよくわからない。
  165. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) 外為会計が持っております外貨は、これは平衡操作等に必要な限度で持っておるわけでございまして、その限度を割りますと、これは毎月の平衡操作に支障を来たしますから、そういう分までを全部日銀に売ってしまうというわけにはまいりません。そういうことを考えまして、毎年度予算で外為証券の限度をおきめいただきまして、その範囲で外貨を持って、それを運用と申しますかしておるわけでございますが、したがいまして、現在の限界的な問題としては、御指摘のとおり、外為証券のコストとそれから運用のコストとは、TBその他だけを考えますと確かに逆ざやであることは事実でございますが、しかし、これは、先ほども申し上げましたとおり、こういう事態が長く続くかどうか、今後の問題といたしましてはむしろ是正されるのではないか。現実に、昨年は逆でございまして、この運用コストのほうが世界的に短期金利が高うございましたので非常な利益が出ております、この意味で。したがいまして、その点は、毎年の予算の御審議におきまして、いまの外為会計の行ないます平衡操作に必要な、その他の事情を勘案いたしまして、この程度の限度ということでやらしていただいておるわけでございます。この点は、むしろ、この制度の基本の問題といたしましては、たとえばフランスのように、日銀が大蔵省に無利子でもってフランを貸してそして外貨を持つという、そういう制度も国によってはございます。しかし、日本におきましては、そういう制度ではございませんで、外国為替資金特別会計が普通の意味の短期証券を発行いたしまして、コストのかかる円でございますけれども、この範囲でそういう形で処理をいたすという制度になっておるわけでございます。
  166. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後にもう一つだけ。外貨集中制について伺いたいんですがね。いま、外貨集中制をとっておりますわね。そうすると、外貨がたまればたまるほど円が多く出てくると、こういう関係はありますね。ですから、それがやはり一つのインフレ要因になっていくと思うんですよ。外貨がたまれば、それは外為へ売ると円が出てきますからね。そういう意味で、外貨集中制に何か変更を加える必要がないか。外貨がどんどんたまればたまるほど今度円資金が出てきてインフレ的になるから、それで、今度は、何も政府が外貨ばかり持っていなくてもいいんじゃないかと、そういう気もするんですよ。インフレ要因をそこで断つ意味で、どんどん黒字が多くなって外貨がたまる場合に、それがすぐに円資金の増加になり、インフレ的作用を及ぼすのをチェックする意味で、外貨集中制に何か一つ、何というかな、調整を何かしてみる必要があるんじゃないかというような気もするんですが、その点はどうでしょう。
  167. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま外貨がふえる情勢下だもんだから、きわめてのびのびとした御議論ができますが、これが今度は窮屈になってくると、こういう事態もあるわけでございますから、そういう際のことも考えておかなきゃならぬ。そういう際におきまして、外貨が集中されておらぬというような事態になりますると、これはわが国の貿易を運営するというような上におきまして重大な支障を生ずる、そういうようなことを考えますと、この集中制という制度の基本を変えるわけにはいかぬと思います。ただ、現実の問題として、今日外貨がふえております。そういうことに対処いたしまして、臨時的というか、あるいは調整的といいますか、そういう考え方、これは私はとるべきだと、こういうふうに考えておりまして、どういう調整を行なうか、これはいま検討をいたしておるところでございます。
  168. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、具体的には、たとえば商社の外貨保有をもっと拡大するとか、そういうようなことですか。
  169. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういうことでございます。
  170. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 本件に対する本日の質疑は、この程度にとどめます。  暫時休憩いたします。    午後四時四十三分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕