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政府委員(
亀長友義君) 現在の食管制度が不足時代のものであるということは、私、そのとおりだと思います。従来の食管制度というものが、無
制限買い入れ、それからいわゆる切符による配給制というものにささえられておりまして、そういう観点から申しましても、これが
食糧が足りない時代に発足をしたものであるという点については、全くそのとおりでございます。したがって、いまの時代にこれをどのように考えていくか、さらに根本的に再
検討すべきであるという御
意見につきましても、私
どももまことにごもっともな御
趣旨であると思います。ただ、問題は、
一つには基本的な米作をどうするかということでございまして、御承知のように、米に対する依存度というものが生産者の側からは非常に高くなってきております。他の農作物に比べて米価による収入のほうがはるかに高いという点がなかなかそれを是正することができない。これに対して非常な抵抗もあるというようなところから、私
ども、一昨年来、総合農政ということを打ち出しまして、稲作から他作物への転換の促進ということをいろいろ計画をいたしておるわけであります。本
年度予算で申しましても、稲作転換の推進だけに約四百億の金が特別に
支出をされておるという実情でございます。ただ、稲作の転換の促進というだけでなく、あるいは他の作物につきましても、なたね、大豆、あるいは畜産物、牛乳等につきましても、それぞれの物資の実情に応じまして価格支持制度もございます。しかしながら、どうもそれだけではなかなか進まないということで、片一方で米を休む人、米をつくらない人にも、
生産調整という形で千七百億もの金を出す。そんな中でも、単に休むだけでなくて、他の作物へ転換するという人は、さらにその度合いに応じてその奨励金の単価を高くするというふうな芸のこまかい
政策もとる。さらに、これも単年でなくて三年ないし五年にわたって出すという
政府としては約束をする、こういう施策をいろいろやっておるわけでございます。さらに、米価というものが他の転換作物に対する有利性を依然としてなかなか縮小できない以上、食管が無
制限買い入れということをやっている以上は、どうしてもつくってしまうということから、今
年度から
買い入れ制限ということも打ち出しておるわけでございます。ただ、御
指摘のように、基本的にやはり米作から転換をしていく。現在、御承知のように、日本の自給率ということを計算してみますと、米については一一八%にもなる。しかし、他の作物につきましては、八五だとか九〇だとかいうふうな数字のものが多いという状況でございます。そういう方向への転換をはかるというのは、私
ども、五十二年までの生産及び需給調整の見通しはつくっております。さらに、過剰
委員会のいろいろ御
検討の結果もございまして、米だけにつきましては、この五十二年までの長期需給見通しをさらに地域的に細分をいたしました
農業生産の地域分担の指標というのを現在試案をつくって、発表いたしておりますが、この際には、米につきましてはさらに最近の時点の要素を取り入れまして修正をした数字も作成をいたしまして地域分担の指標をつくっておる次第でございます。私
どもとしては、そういう長期見通しと、地域分担の指標、これを
一つの数量的な目標にいたしまして生産の転換をはかるということが
政策の大前提でなければならぬと思います。かりに
現行法のもとで無
制限買い入れをいたしましても、それは食管が買わないだけであって、買わない以上はやはりどこかのところで流通をするということに相なりますと、国民経済的に余りのあるものがどこかでまた余るということになるわけでございますから、その点の基本的な農政の展開ということが基本的に樹立をされなければならぬ、こういう
姿勢を私
どもはっきり打ち出しておるわけでございます。
そこで、そういうものと並行いたしまして、食管制度をどういうふうにするかという問題がございます。当面、私
どもは、現在の
食管法のもとで、なし得る限度においてこれに対応いたしておるつもりでございます。基本的にこの食管制度を
法律制度の根本にわたってどのように持っていくか、これは再
検討すべき時期であるという点については、おそらくこれは消費者、生産者の
方々も大体これはもう一致をした
意見でないかと思われます。しかしながら、現在の生産者の
立場から見ますと、やはり農政の転換、展開ということが、本来
農業というものが長期的な
政策を擁しなければなかなか地についていかないというところから、早急に切りかえることにはなかなか政治的反応も強いものがございます。また、消費者の面から見ましても、従来いろいろ味の点とかあるいは配給制度に対する御不満も多々ございますけれ
ども、やはり一定のものが一定の価格で買えたという特に所得の階層によっては
一つの安心感というものもあったというところから、私
どもとして、これを大きくどのような形に切りかえるかという点については、まだ明確な結論が得られないでいるというのが率直な実情でございます。私
どもとしまして、今後食管制度というものが、まあ不足時代に発足したにせよ、数十年にわたって国民生活の中に存在をしてきたということから、いろいろなその制度に関連をして生産をしあるいは消費をしておるという事実がある。こういう事実をいまの実態に合うように持っていくような見きわめをつけた上でやはり再
検討の内容というものを明らかにしなければならぬというような
意味合いで、やや御
指摘の御意向からは慎重にかまえ過ぎておるのかもしれませんが、問題が重大なだけに、慎重に、また、一たん手をつけた以上は、国民的にも納得のいくような線を打ち出したいと思いまして、いろいろ各方面の御
意見も聴取をしながら今後慎重に
検討を進めてまいりたいと考えておる次第でございます。