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1971-03-23 第65回国会 参議院 大蔵委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十六年三月二十三日(火曜日)    午前十時十三分開会     —————————————    委員異動  三月十八日     辞任         補欠選任      津島 文治君     村上 春藏君  三月十九日     辞任         補欠選任      村上 春藏君     津島 文治君  三月二十日     辞任         補欠選任      山内 一郎君     丸茂 重貞君  三月二十二日     辞任         補欠選任      向井 長年君     高山 恒雄君  三月二十三日     辞任         補欠選任      高山 恒雄君     向井 長年君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         柴田  栄君     理 事                 大竹平八郎君                 玉置 猛夫君                 中山 太郎君                 成瀬 幡治君     委 員                 青木 一男君                 青柳 秀夫君                 伊藤 五郎君                 岩動 道行君                 津島 文治君                 丸茂 重貞君                 木村禧八郎君                 戸田 菊雄君                 吉田忠三郎君                 鈴木 一弘君                 向井 長年君                 渡辺  武君    国務大臣        大 蔵 大 臣  福田 赳夫君    政府委員        大蔵政務次官   藤田 正明君        大蔵大臣官房審        議官       吉田太郎一君        大蔵省主計局次        長        橋口  收君        大蔵省主計局長  細見  卓君        大蔵省関税局長  谷川 寛三君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    参考人        日本輸出入銀行        総裁       石田  正君     —————————————   本日の会議に付した案件国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出、衆議院送  付) ○日本輸出入銀行法による貸付金利息特例等  に関する法律案内閣提出衆議院送付) ○相続税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○入場税法の一部を改正する法律案内閣提出、  衆議院送付) ○租税及び金融等に関する調査  (当面の財政及び金融等に関する件)     —————————————
  2. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告いたします。  三月二十日、山内一郎君が委員辞任され、その補欠として丸茂重貞君が選任されました。  また、昨二十二日、向井長年君が委員辞任され、その補欠として高山恒雄君が選任されました。     —————————————
  3. 柴田栄

    委員長柴田栄君) それでは、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案日本輸出入銀行法による貸付金利息特例等に関する法律案相続税法の一部を改正する法律案入場税法の一部を改正する法律案、並びに租税及び金融等に関する調査、以上五案件を便宜一括して議題といたします。  質疑のある方は、順次御発言を願います。
  4. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、関税定率法等の一部を改正する法律案のうち、特恵関税関係について質問いたしたいと思います。  まず、第一に、改正案の第八条の二の二項なんですが、その中で、いわゆる希望条項というのがあるんですが、この希望条項について、これはどういう意味であるかを説明していただきたい。
  5. 谷川寛三

    政府委員谷川寛三君) 御案内のとおり、今回の特恵関税は、国連貿易開発会議の場で開発途上国からの要望がありまして、これは一九六四年でございますが、先進国側でその要望にこたえてひとつ開発途上国経済開発をこういうかっこうで促進しようじゃないかということになったわけでございますが、そこで、それでは開発途上国をどういうふうにして判定をしてまいるかと基準をいろいろ勉強したのでございますが、なかなか無理だということで、挙手主義、ただいま先生から御質問がございました特恵供与希望することを条件にいたしまして特恵供与をしようということになったわけでございます。そうして、日本法案でございますが、八条の二の第一項が原則でございまして、開発途上国国連貿易開発会議加盟しておる国、そうしてそれらの国で特恵供与希望するものに原則としては特恵関税を供与するのだということにしたわけでございますが、その後、いろいろ、国連貿易開発会議場等で、地域属領に対しましても特恵を供与してほしいというような要望もございました。それから昨年来、先生からもいろいろ御質問ございましたが、中共に特恵をどうするかという問題が起こりまして、いろいろ研究をいたしました結果、八条の二の二項を起こしまして、経済開発途上にあって、かつ、固有関税貿易に関する制度を有する地域につきましては、やっぱりこの原則に従いまして便益供与希望条件にいたしまして特恵を供与できるような法制にしておく必要があるのではないか。つまり、この制度暫定措置ではございますが十年問継続する措置でございますこと等を考え合わせますと、とにかく希望してまいった場合には供与できるようにしておく必要があるのではないかということで二項を起こした次第でございます。  そこで、その希望をすることを条件にした経緯はいま申し上げたとおりでございますが、これを削ることにいたしますと、御案内のとおり、これまた昨年来先生からの御質疑にもお答えを申し上げておりますが、ケネディラウンドによる関税率一括引き下げと選ぶところがなくなってまいりまして、特恵関税特質が薄れるということで、この条項ははずすわけにはまいりませんが、いま申しましたような次第で規定をした次第でございます。
  6. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 UNCTADですね、ここでは、結局、開発途上国と、それから特恵関税を供与するOECD参加国ですか、先進国ですね、この間で意見はまとまらなかったんでしょう。
  7. 谷川寛三

    政府委員谷川寛三君) まとまりませんでしたが、お手元に差し上げてありまする貿易開発会議合意書をごらんいただきましてもおわかりになりますように、四節の「受益国」というところで、いま私が申し上げましたようなことをまあ一応の合意ということでまとめておる次第でございます。つまり、その節によりますと、自己選択原則に従おうではないか。かつ、ここにもありますように、文書TD五六というところを参照しろということを書いておるのでございますが、そこを見ますと、地域属領も全部含めて挙手主義にして従おうではないかという合意に達しております。意見は必ずしもまとまりませんでしたが、一応の合意書にそういう規定がありますので、日本法案によりましてもそれに従った次第でございます。
  8. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 結局、この法律によりますと、特恵を与えてもらいたい国が希望を申し出ると、それに対して特恵を与える国が選択できるわけですね。希望を申し出たからすぐに特恵を与えるわけじゃなくて、選択できるということになっているですね。ですから、これは、特恵を与える国のほうの、何というのですか、イニシアのもとで行なわれるということになるわけでしょう、結局ね。そこで、いま合意に達したと言いますけれども、私、資料を要求したんですが、「UNCTAD第四回特恵特別委員会再開会期の概要」というのをもらいました。その中に「最終報告書」というのがありますが、この中で、決して合意に達していないんですよ、はっきりね。たとえば「最終報告書法的地位」というところがあります。その資料の三〇ページです。こう書いてある。「チュニジアILO規約の如き国際規約とすべき旨述べたのに対し、Bグループ——先進国ですね——諸国が反対したほか、議長ラ米——ラテンアメリカ——諸国インド等もそのような厳格な法的文書をつくることに疑義を表明し、これが大方の意見となった。」と。それからさらに三一ページ「受益国」の項で、「七十七カ国グループ——つまりアルジェ憲章に基づく七十七カ国グループ——より同グループメンバーはすべて受益国となるとの保証をえたい旨の要望があったが、Bグループ諸国——つまり先進諸国——は概ね自己選択原則によるとの従来の立場にかわりない旨を主張し、結論はえられなかった。」と、こういうことになっているんですよ。だから、結論は得られなかったことになるんですね。合意に達したと言いますけれども、こういう経過になっているわけですよ。そこで、先進諸国イニシアチブの、つまり大国ですわな、そういう国のイニシアチブのもとに行なわれるそうした特恵供与のしかたでありまして、これについては非常に問題があるのじゃないかと思うんです。そういう経過がありますから、特に中国とかあるいは北朝鮮とかそういうところのものですね、そういう場合に、希望条項を付するということは私は不適当ではないかと思うんですよ。そうして、また、あとでも質問いたしますが、これについては何も法的拘束力的な根拠はないんですよ、条約上の。ですから、日本関税自主権立場からいって、日本はもっと自主的に考えることができるのじゃないかと思うんですが、この点はどうなんですか。
  9. 谷川寛三

    政府委員谷川寛三君) 確かに、先生お話しになりましたように、すべての条項にわたりまして完全にこれでいくという意味でのまとまりはございません。まとまりはございませんが、たとえばいまお話がありました「受益国」にいたしましても、こういうふうに書いております。OECD諸国共同立場、これはいまの自己選択原則に従うんだと。それからさっき申しましたように、文書TD五六で、地域属領にもこの原則を適用すべきであるということを規定しておりますが、とにかくOECD諸国共同立場ということで、自己選択原則に従うということを申してございます。これは、合意がなされた意味であるというふうに日本も解しておりますし、各国もそういうふうにとっております。  それからいまお話がございましたように、七十七カ国グループ云々という事項がたくさんございますが、これは、決して、いま申しました挙手原則を否定したものではございませんで、たとえば、七十七カ国グループがうちにもひとつ特恵を供与してほしいということを希望したんだということをコメントしただけでございまして、決していまのOECD諸国共同の意思を否定したものではないと考えております。  それから確かに法案にもありますように、挙手主義原則で、手をあげた諸国につきまして最後に特恵を供与するかどうかは、供与国判断、まあ日本判断によってやるようになっておりますけれども、いまお話がありましたように、挙手主義を無視いたしますと、お手元に差し上げておりまする合意書の「法的地位」のところで申しておるところにそごを来たすことになるわけでございます。つまり、先進国はこの挙手主義でやりました特恵につきましては最恵国待遇権利主張しないということを申しておりますのですね。ですから、挙手をしないのに特恵を渡したとなりますと、各国から最恵国待遇権利主張してまいることがあることが予想されるわけでございます。そうなりますと、ケネディラウンド関税率一括引き下げと何ら選ぶところがない、特恵特質がなくなってまいりますので、この原則ははずすわけにまいらないということでございます。  なお、法的な規制力はないではないかというお話でございますが、これは、国連決議等はすべて法的な拘束力はないわけでございます。しかし、条約ではございませんけれども、道義的なそれは課せられるというふうに私ども解しております。これは、もうこれに限りません、国連決議等はすべてそういうものであろうかと考えております。
  10. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あと法的云々は、さっき私が言いましたように、特に「最終報告書法的地位」につきまして論議されたわけなんですよ。あなたは国際条約というのは別に法的拘束力はないと言いますけれども、しかし、特にこの問題については的地位について論議をされたから私は質問しているんですよ。そうでしょう。それで、結局、チュニジアからILO規約のような国際条約とすべき旨が述べられたのに対して、先進国のほうは、つまりBグループのほうは、反対したんです。それからインド等もやはりそういう厳格な法的文書をつくることに疑義を表明したんで、そこでそうならなかったということになっているんですね。だから、これはそういう法的な拘束力を持たないということに大体なったということですよ。そういう意味で、これは法的な拘束力はないんじゃないかと私は質問しているんです。  それからもう一つは、結局、特恵を受けたいという受益国のほうが、つまりアルジェ憲章に基づく七十七カ国グループのほうが、そのグループメンバーはすべて受益国となるという保証を得たい。むしろ、受益国のほうは、希望を出すんじゃなくて、また、希望を出した場合に、先進国が、意思表示した諸国に対して、政治経済等の面で判断をし、好みによって選択するということになっているんでしょう。そういうことは欲しないわけなんですよ、特恵を受ける側がですよ。ですから、結局、これは、特恵を与える側のイニシアのもとに特恵を与えることになるんですね。われわれから見ると、結局、これは、特恵を通じて、各国が、申し入れがあったときに、それについて政治経済等の面で判断をする。たとえば、中国のような、政治的にいやだというときに、日本のほうでそれを判断する、そうして選択余地を得るということになるんでしょう。そういう形になっているんです。そうして、結局、世界市場の再分割の手段に使われている。そうですよ。先進国好みによるんですよ。受益国がそういう希望を出さなくても七十七カ国グループよりそのグループメンバーがすべて受益国となることを欲しているのに、特恵を与えるほうは、いや、そうじゃない、おおむね自局選択原則による、そういう立場で与えるということで、対立しちゃったわけです。結論が得られない、こういうことになっている。  そういうのを踏まえてこの法律が出ているわけですよ。そういう場合に、日本はどういう立場をとるべきかというのですね。そこで、中国の問題、あるいは北朝鮮の問題が起こってくるわけですね。ですから、日本が、法的には拘束力がないというんならば、日本関税自主権を持って、その上に立ってもっと自主的に考えて、この希望条項を取ったらいいじゃないか。これを取りまして、それでたとえばこういうふうに改正するんですね。「経済開発途上にあり、かつ、固有関税及び貿易に関する制度を有する地域のうち、前項の規定による関税についての便益——ここから私の主張になるんですが——日本貿易及び通商上の利益から支障を来たさないよう当該地域に対し、政令で定めるところにより、地域及び物品を指定し、同項の規定による便益の限度をこえない範囲で、関税についての特別の便益を与えることができる。」と、こうしたらどうか。そこで、結局、第八条の二の二項のうち、「便益を」というそれ以下ですね、「受けることを希望する地域を原産地とする物品で輸入されるものには、」と、ここまでを削る。それで、いま私が申しましたようなことをこれに入れると、こういうふうに修正すれば、いわゆる希望条項というものは取れて、そうしてこれはもっと自主的に考えられるということになるだろう。かりに、中国に、じゃ希望しなさいと言ったって、中国希望しっこないですよ、こういう状況のもとでは。佐藤内閣中国敵視政策をしているという、そういう佐藤内閣のもとに、特恵を与えてくださいと頭を下げて来るはずもない。また、かりにそう来たときに、佐藤内閣が、また、おれたちを敵視しているという攻撃をいままでしてきた中国に対して、おれのほうは、向こうが言ってきたって、いや与えないぞという選択余地があるんですから、そういうような何か非常に政治的な含みのあるようなこういう規定にすべきじゃないと思うんですよ。だから、希望条項、これを取りなさいと。そうして、もっと自主的に、日本関税自主権に基づいて特恵を与えるようにしたらどうか、これがわれわれのほうの希望であり、われわれの主張である。ですから、煮詰めていくと、この特恵関係法律に対してのわれわれの立場と、それから政府の出した立場は、この希望条項を取るか取らないかということがまず一つ対立点なんですよ。それで、希望条項を取って、私がいま主張したようなことを入れるかどうか、その点ですね、この点がなぜいけないのか。関税自主権に基づいてできるはずなんです。そうして、これは、法的拘束力がないということも明らかになった、あなたのほうの出した資料から見てもですね。そういうことが問題になったけれども、それは意見が一致しなかったということはわかりますね。それからさっき言ったように、七十七カ国は、むしろそういう希望条項を、いわゆる選択ルールといいますか、そういうものを欲していないんですよ、受益国のほうが。そういう立場からいきまして、さっき私が主張したように、これを修正されるべきじゃないかと、こういう質問をしているわけです。——問題点はわかりましたね。
  11. 谷川寛三

    政府委員谷川寛三君) 確かに、法的拘束力はございません。これは、この合意書に限りません、国連決議はすべて一般的に法的拘束力はございませんが、やっぱり道義的な責任が課せられることになります。いま話がありました報告書によりましてもおわかりのように、いろいろ議論はございましたが、一応、受益国について、OECD諸国共同立場、すなわちそれは自己選択原則だということで、法的な拘束力はございませんけれども、とにかくそれでいこうじゃないかという大かたの気持ちが合ったということでございますので、日本といたしましても、これによらなければ、先ほど申しましたように、先進各国から最恵国待遇権利主張されるおそれがある。これは法的拘束力です。このUNCTAD決議によって与える特恵には最恵国待遇権利主張しないと、こういうふうに各国合意しておりますが、これにはずれた場合には要求してまいるおそれがある。それからいま、いろいろ御意見がございましたが、そういう御意見もありましょうが、そういうふうにいたしますと、むしろ非常に恣意的になるのじゃないかと思っております。OECD各国共同立場、すなわち、開発途上にあることと、それから特恵供与希望することと、こういうような条件がついて、はじめて恣意的にむしろならないようになるのではなかろうかと考えております。  それから七十七カ国そのほかいろいろな国がいろいろな主張をしておりますが、それは私がいま申しました挙手主義を否定するものではございません。たとえば七十七カ国は、私どもはここで手をあげますよといって特恵供与希望したことをこの合意書に付記しておるだけでございまして、決して挙手主義を否定しているものではございません。その原則に従って手をあげますよといって手をあげた国を付記しているだけでございます。  関税自主権はございますが、いま申しましたよに、これに従う道義的な義務がございますので、それに従って法案を準備しておる次第でございます。
  12. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私がいただいたこの資料、これはまだ不十分ですよ。詳細なる内容じゃないですよ。しかし、これを検討しただけでも、道義的責任があるあると言いますけれども、この経過を見ますと、意見が対立しておりまして、そうして、結局、合意に達していないんですよ。たとえば、さっき言いましたアルジェ憲章に基づく七十七カ国グループですね、現実には九十一カ国といわれておりますけれども、そこが少なくともまとめてすべて適用すべきであると、そのグループ全体がね。だから、希望したら適用するとか、さらにまた、希望しても選択によって与えられないこともあるというんじゃ困ると。そこで、まとめてすべて適用すべきだと譲らなかったというのでしょう。譲らなかった。それから七十七カ国以外、ルーマニア、ギリシャ、マルタ等は、自国——自分たちにこそ供与してもらいたいと発言したと。それからイギリスは、香港のような属領にも供与してほしいと、そういうことを要望したそうですね。結局、先進国側開発途上国側意見は、最終的には合意に達しなかった。さらに、それ以外の意見も含めて、一九七〇年十月二十四日、国連における特恵関税合意書ではついに適用対象国について意見がまとまらずということになっておる。それで、おのおのの意見はそのまま並記されるに至った。そうでしょう。並記されているんですよ。そういう経過であり、実態なんですよ。ですから、それについて、やはり守る義務があるというようにあなたは言いますけれども、そういう経過があるんですから、そういう経過を踏まえて考えれば、発展途上国にそういう特恵を与えるという場合、与えられるほうがこういう無差別に与えてもらいたいと言っているのに対して、与えるほうが、さっき言いましたように、自己選択原則による、従来の立場に変わりない、これを主張して譲らない。とうとうそこで合意に達しないで、そうしてこれをスタートすることにしたんでしよう。そういう経過があるんですからね。ですから、私は、その経過からかんがみて、日本の場合、もっと自主性を持っていいということなんですよ。だから、そんなに窮屈にこだわらなくてもいいじゃないか、こういう経過立場で。与えてもらいたいというほうが希望してないんですから。それなのに、日本希望条項を入れると。だから、もっと日本は、そういう経過があるんだから、特恵供与国に対して希望条項というものは入れないようにして対処するほうがもっと自主的ではないかと、こういうことを主張しているわけです。この希望条項が入ると、特に、中国とか、あるいはベトナムとか、あるいは朝鮮ですね、そういうものとの差別がしいいようになるわけです。だから、非常に政治的意図を持っていると、われわれはそう考えざるを得ないんですよ。だから、これを取りなさいというんですよ。取ることによって、中国ベトナム朝鮮等にもこういうものが均てんできるようにすべきではないかと、こういう主張なんですけれども、どうなんですかね。
  13. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この制度は、開発途上国に対して恩恵を与えると、こういうものですね。ところが、開発途上国が何であるかということは、これは個々具体的な国の指定というところからかんがみると、はっきりしてないんです。そこで、挙手というか、自己選択という制度が設けられたんだと、こういうふうに思います。そういう前提のもとに、わが国においては、自主権がないようなお話ですが、自主権はちゃんとあるわけです。挙手をいたした国に対しましてわが国がこれをわが国特恵関税供与国として承認をするかしないか、これの判断権利というものはわが国に留保されておるわけです。いまのそういう開発途上国開発途上国でない国との限界が具体的に明らかでない今日の現状とすると、まずまずこの選択制度というか、挙手制度といいますか、これあたりは最も常識的妥当な制度となるのじゃないか、そういうふうに考えられるのです。木村さんは、そういう選択制挙手制があるがゆえに、わが国自主性がそこなわれると、こういうことを主張されているわけですが……
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 選択制じゃない、希望条項のほうです。希望のほうです。
  15. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 決してそこなわれるものじゃない。この条項があるがゆえに、はじめてこの制度が動くのだと、これがなかったらなかなかこの制度は動かないんだと、こういうふうに思うのですが、どうも行き違いがあるようですね。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣は、関税自主権云々につきましては、誤解しているんですよね。それは、供与を与えるほうが選択余地があるということは、それは自主的に——希望条項のほうを言っているんです。だから、片方から手をあげさして希望さして、そしてそれに今度は選択をするということですね。先進国のほうではそういう主張なんですよ。ところが、特恵を与えてもらいたいというそういう低開発のほうでは、そういうやり方では困ると。そこで、結局、意見が対立して、さっき言いましたように、もう時間がありませんから繰り返しませんが、アルジェ憲章に基づく七十七カ国、実際は九十一国ですが、全部に適用するようにしろと、こういうことなんですよ。そういうことになっているから、そういう経過だから、何も先進国のほうのいわゆるBグループのほうの立場にばかり立たなくてもいいじゃないかと、そういうことなんです、私は。だから、そこに自主的に日本として、これは拘束力はないんですから、道義的、道義的と言いますけれども、いま言った経過から言って両方が付記されているんです。合意に達せずということになって付記されている。だから、もっと自主的に考える余地があるということなんですよ。そこで、こういう法律を実施すると、中国に対していわゆる意思表示ルールを適用することになるんですよ。なぜ中国あるいは朝鮮、そういうところへ区別をするのか、法的根拠がないのにですね。そこで、そのことと、それからOECD側が中国政府に対して特恵と同じ待遇を与えた場合はどうするのか、たとえばカナダとかイタリーがですよ。そうした場合はどうなりますか。
  17. 谷川寛三

    政府委員谷川寛三君) 中共の場合につきましては、冒頭にお答えしたところで御理解いただけるかと思うのです、規定のしかたにつきましてはですね。  それからカナダ等が与えたらどうするかという御質問でございますが、実は、昨年も先生から御質問がありましたので、大使館を通じましてカナダ当局に聞き合わせてみましたのでございますが、これは全くきまっておりませんので、先生お話ですと、カナダが中共に特恵を与えるやに伺ったようなお話でございましたけれども、全くきまっておりません。私どもといたしましては、日本といたしましては、ここにありますように、とにかく中共が特恵供与希望してまいりましたら、その段階で慎重に検討をしようという法案を用意した次第でございます。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃ、この希望条項を取る意思がないわけですね。結論としてこれはもう取る意思がないと、そういうことですね。
  19. 谷川寛三

    政府委員谷川寛三君) 先ほども大臣からお答えいたしましたように、とにかく挙手原則というのがいろいろ議論をした末のOECD共同立場でございまして、法的拘束力はございませんが、とにかくお互いに受け入れられ得る条件だということで合意をいたしておりますので、これははずすわけにいかない。これをはずしますと、さっき申しましたように、先進各国から最恵国待遇権利主張が出てまいります。  それから重ねて申し上げますが、七十七カ国グループ特恵供与希望したとか、イギリスその他が属領にも特恵供与をしてほしいという希望を表明したということが付記されておりますが、それらは決していま申しました挙手主義原則を否定したものではございませんで、この場で私たちにもくださいということを表明しますよという意思表示をしただけでございますから、希望を表明しただけでございまして、挙手主義原則を否定したものじゃございませんので、この点は御理解いただきたいと思います。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 結局、こうした希望条項を入れた特恵供与法律は、いま申しましたように、結論として、中国とかあるいは朝鮮ベトナム等に対して特恵を与えないことになると思うんですね。希望を申し出さして、また、希望を申し出なければもちろん適用しない。希望を申し出ても、これを拒否することができるということになりますわね。そこで、これは大蔵大臣に伺いたいんですが、どうもこれまで日中貿易につきまして非常に消極的なわけですよね。そこで、こういう今度の特恵とも関連しまして、これから今後非常に中国との問題は重大化してくると思うのでありますが、この際あらためて聞いておきたいんですが、輸出入銀行の長期ファイナンスですね、これにつきましては、吉田書簡が非常に支障になっているんですが、この間、小柳君ですか、これについて質問したところ、通産大臣は、ケース・バイ・ケースというふうにかなり積極的な前向きのような答弁をしたように新聞に伝えられているんですよ。いつまでも吉田書簡が非常なガンになっているように思うんですけれども、もうそろそろこの辺で——ずいぶん情勢が変わってきておるんですからね。そうして、輸出入銀行というのは、大蔵大臣も十分御存じだと思うのですが、これは前に海外経済協力基金ができたときに、輸出入銀行の政治的な部分、ソフトローンとかそういう部分は海外経済協力基金のほうに移しちゃう。そこで、もう輸出入銀行は純コマーシャル・ベースに基づくファイナンスをやる専門の金融機関であるというふうにたてまえをしたわけですよ。ですから、いま輸出入銀行がそういう長期のファイナンスをかりに中国との取引でした場合、何らこれは政治的じゃないんです、たてまえから言って。従来は、蒋介石のほうが、台湾が、輸出入銀行の日中貿易における長期ファイナンスは政治的だ政治的であると。あるいは、輸出入銀行というのは非常に政治的な金融機関だと、こう言っておる。しかし、そうじゃないんです。輸出入銀行ははっきり政治的なファイナンスは海外経済協力基金のほうに移したわけです。分離したんです、たてまえは。そういう点から言って、輸出入銀行の日中貿易における長期ファインナンス、そういうものは政治的ではないんですから、ここら辺で、大蔵大臣は非常に頭がいいんですから、もっと前向きにもうそろそろ考えていい時期じゃないですか。次の政権を担当するという大蔵大臣は、これはもうそのぐらいのことも考えておきませんと、もう佐藤さんじゃだめだとなっている。佐藤さんじゃもう見込みないですよ。だから、どうしても、福田さんが今後政権担当したら、日中問題が最大の問題ですよ、何と言ったって。これに対して前向きの姿勢を示すことは、福田政権実現に一歩近づくことなんですからね。どうですか、そういうあれはともかくとして。
  21. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、日中間は、隣国としてなるべく仲よくしなきゃならぬと、こういうふうに考えておるわけです。その方法として、とにかく経済交流ですね、これは積極的に進めるべきであると、こういう考え方で、この間岡崎さんが覚え書き貿易の交渉に行かれるその前におきましても、岡崎さんに対しまして、特恵問題の話が出たら、向こうが、手をあげるというわが国の方式に乗ってくる、こういうことであれば、これはひとつ前向きに考慮しましょうと。また、決済につきましても、これは対等の立場から言えば円元決済です。しかし、中共側において元元決済だと、こういうようなことにこだわる、こういうような傾向があれば、あえて円元決済にこだわることをしない。そこまでやって、とにかく貿易の相互交流、これを進めたらどうでしょうかと、こういうふうに申し上げておるわけでありまして、決して日中貿易を阻害をしている、これに冷たい態度をとっているという状態ではないんで、むしろ考え方によると、厚い考え方をとっておると、こういうふうに御理解願っていいんじゃないかと思います。  それから輸銀の問題は、これはいま吉田書簡ということをお話しでございますが、これは、もう政府において吉田書簡なんていうことは言っておりません。おっしゃるのは、木村さんのほうなんです。(「おかしいですな」と呼ぶ者あり)私どもは、吉田書簡、だからこうだというようなことはもう一切言っておりませんし、この間通産大臣からはっきりそのような答弁をしておるわけなんです。だから、ケース・バイ・ケースだと言うのです。ケースによっては、これは吉田書簡というものと相背馳して、輸金による延べ払いというケースもあり得ると。これはケース・バイ・ケースなんです。ところが、そのケースがなかなかむずかしいんです、そういうケースが出てくるのが。つまり、ケース・バイ・ケースという方式は、わが国としてひとり中国に対してのみとっている方針じゃないんです。相手が他の自由主義諸国といたしましょうか、それに対しましても、延べ払い輸銀融資を全部与えているわけじゃないんです。ケース・バイ・ケースで判断いたしまして、これはわが国益とどういう連なりがあるか、こういうことから与えているわけであります。中国に対しましてケース・バイ・ケースという考え方、これは決して観念的に他の諸国と変わっている考え方じゃありません。ただ、中国の置かれておる国際社会における立場、そういうようなところがなかなかこのケースが出てこないと、こういうことなんですね。たとえば、商社が中国と接触をします。そして、何か機械の輸出を考えるという際に、さあ長期延べ払い方式でいこうかというような際には、またこれがいろんな国にいろんな影響があります。場合によると、その商社が他の国から締め出されるというような場合もなきにしもあらず、そういうようなことで、商社としても非常に慎重なわけなんです。そこで、ケース・バイ・ケースの該当するケースというものがなかなか出てこないというのが現状でございますが、決して吉田書簡にとらわれてどうのこうのという考え方は持っておらぬということだけははっきり申し上げさせていただきます。
  22. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 非常に重要な御発言だと思うんですが、じゃ、吉田書簡というものは、もう破棄されているんですか、それとも、まだ存続しておるんですか。あるいは、存続しておっても、永久にお墓に眠らせると、そういうことに何か話し合いができているのか、政府のほうでそういう統一見解になっているのか。吉田書簡があるから、台湾のほうでそれをもとにしてしょっちゅう言うから、いまの長期のファイナンスができないと、ケース・バイ・ケースということに逃げているんじゃないですか。
  23. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 吉田元総理が書簡を台湾政府に対して出された、これはもう事実です。その事実は消すわけにはいかない。しかし、それをいま今日の日本政府がどういうふうに見ておるかと、こういう問題かと思うんですね。そういう場合に、吉田書簡が意味するもの、そういうことをたてにとるとか、そういうような態度はとっておらぬと、こういうことなんです。現に、吉田書簡がありますから、こういうふうな中共との間の通商政策になりますよ、というようなことは、一言も言っておりません。吉田書簡ということばが出るのは、木村さんのほうからでありまして、私のほうで吉田書簡があるからこうだというようなことは言ったためしはございませんですから、よくひとつこれは速記録等をごらん願いたい、かように思います。
  24. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それなら、これまでの歴史的経過があるんですから、それをはっきり破棄されたらどうなんですか。はっきりと声明されたらどうなんですか。そうすれば、はっきりしますよ。そうでなくて、私が吉田書簡と言うから吉田書簡があるように誤解していると、こう言われるんですけれども、それなら、はっきりとここで結末をつけるべきですよ。中国が、佐藤内閣は敵視政策をとっていると、こう非難するのは、具体的にそういう事実があるからであって、それを一つ一つやめていってごらんなさいな、私は、そうすれば、正しく理解されてくると思う。たとえば、チンコム、ココムとか、食肉の問題とか、円元決済の問題とか、輸銀の問題とか、吉田書簡の問題がいろいろ、ずっとあるわけですよ。ですから、私は、中国との対立緩和を佐藤内閣がやる一番いい方法は、まず吉田書簡をここで、存在しないと、もう破棄すると、そういうような何か声明でも出されれば、これは非常に効果があると思う。われわれ決してそういう誤解をもういたしません。今後も吉田書簡を云々いたしません、はっきりされれば。そういうことをする必要があるのじゃないですか。
  25. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 吉田書簡は、吉田元総理の個人としての書簡なんですよ。ですから、それを、今日になって、日本政府が、あれはその内容を取り消すんだとか消滅させますとか、そんなことを言えるような性質のものじゃないんですが、木村さんよく御了解と思うんですが、私どもは吉田書簡ということをもう引用しておらないんです。もう吉田書簡にとらわれているという考え方はないんです。そこで十分じゃないかと思うんですね。その結論がケース・バイ・ケースで、ケースによってはこれは吉田書簡と違った結果になるということもあり得るんですから、もう非常に事柄ははっきりしているんじゃないか、こういうふうに思います。
  26. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じゃ、くどいようですが、今後輸出入銀行を通じるプラント輸出に対する長期ファイナンスですね、そういうことはあり得るわけですね。そういうことは可能であり、積極的に前向きに考えると。コマーシャル・ベースですから、コマーシャル・べースでそういうことが要求があればできるということですね。
  27. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 吉田書簡を引用して云々ということはあり得ません。それから長期延べ払いに輸銀資金を使うかどうか、これはケース・バイ・ケースで判断をいたす、そういうことであります。
  28. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 次に、特恵の影響について質問したいんですが、その前に、まず、この法律がかりに通った場合、いつごろから実施されるのかということが一つと、それから影響につきましては二つの点について伺いたいんです。一つは、この特恵を供与した場合、かりに韓国とか台湾ですね、そういうところが特恵供与をされるとしますね。そうしますと、日本の会社が日本でつくっていた同じ品物を今度は韓国、台湾でつくるとしますね。そうすると、特恵供与をされれば、それが外国へ輸出される場合ですね。たとえば日本でつくってアメリカに輸出した場合は一〇%関税がかかる。ところが、その工場を韓国、台湾に移した場合は、これは特恵供与を受ければ関税はゼロになると、そういうことは可能なのかどうかですね。そうなると、韓国、台湾は非常に低賃金だからどんどんいま進出していますが、そういうことのできない日本の商社が今度はアメリカへ輸出する場合、そこで非常に不利になるわけですね。そういうこと。  もう一つは、今度低開発国が特恵供与を受けた場合ですね、低開発国の品物と日本の中小企業の商品と諸外国においてどの程度競合関係にあるかですね。中小企業白書、四十四年度ですが、たとえばアメリカでは六六・八%競合しているですね。それから東南アジアでは三一・八%、国内では二一・二%、西欧では二一・八%、カナダでは一八・九%、その他の諸国が二・九%となっているですね。もうかなり競合しているんです、このように。その結果、日本の中小企業に与える影響というものはかなり大きいんじゃないか。大蔵省から、アメリカの市場における日本の中小企業の製品と低開発国の商品との競合関係について資料をいただきましたが、これを見ましても、最近はもう日本の軽工業品のアメリカに対する輸出の中に占めるウェートがどんどん低下しているんですよ。かなり低下していますね。それを資料に基づいて説明してもらいたい。その上に、この特恵が適用されるとなったら、これは影響甚大なるものがあると思う。だから、これに対する影響を通産省も調べているはずであります。調べてなきゃならぬと思うんです。その影響と、それの対策ですね。それに対する救済の法案が出されておりますが、この法案のもとで実質的にどれだけの金融面なりあるいは税制面なりその他の救済措置を考えているのか。どの程度の影響があるか、もっと具体的に説明してもらいたいですね。まず大蔵大臣から、これは私は非常に深刻な問題が起こってくると思うので、どういうふうに対処するかですね。
  29. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、お話しのように、非常に重大な影響があるんです。そういう認識をとっております。そこで、この特恵関税制度自体の中にそれに対する対策を織り込んでおるわけであります。つまり、シーリング方式をとる、あるいは五〇%追い出し条項を置く、あるいは最悪の事態においては特恵の品目からはずすというところまで考えておるわけなんです。しかし、そればかりでなくって、やっぱり、この際、国内の中小企業の体質を改善をする、そういう必要が痛感されるわけであります。そこで、あるいは近代化だとか、あるいは構造改善でありますとか、そういうために、予算上、また税制上、あるいは財政投融資計画上、特恵対策と銘打ちまして、四十六年度予算ではかなりの仕組みが用意されておるわけであります。そうほかに、さらに、たとえば影響甚大で、ある種の業種は転換をしなきゃならぬというような立場に追い込まれるものがあるかもしらぬ。そういう際には、中小企業特恵対策措置法、これを発動いたしまして、資金上、あるいは税制上、特別の援護を与えると、こういうような、あらゆる措置をとっておるわけです。影響は、わが国に低開発国の商品がどんどん入ってくる傾向になる。同時に、世界市場においてわが国の中小企業とこれらの低開発国の商品とが競争関係に立つわけですから、両方から日本の産業が攻められると、こういうことなんですね。しかし、この制度は、これはわが国ばかりじゃないんです。特恵待遇を与える先進諸国共通の問題なんです。これをわが日本が拒否するというような態度は、いまはとてもとれません。そういう中において、この特恵供与、これは踏み切らざるを得ない立場に置かれておる。ふん切らざるを得ないとすればどういう対策が必要なのかということで、これは最大限の努力をしておるということをお答え申し上げます。
  30. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もうもう一問だけですが、日本に、特恵が与えられて安く入ってくるそういう外国の品物に対して、日本の中小企業を守るという点は、いろいろな操作によって、天井を設けるとか、なんとかしてできる。ところが、諸外国における競合関係については手の打ちようがないでしょう。私、これは大蔵省にもらった資料ですが、驚いたんですよ。「アメリカ市場におけるわが国主要軽工業品の輸出額及びシェアの推移」、について、大蔵省はよく調べております。通産省はあまりやっていないようですがね。たとえば人形ですよ。一九六四年には五八%のシェアだったのが、一九六九年には二四%に下がっている。それからバトミントン・ラケットというのですか、これが一九六四年は八九%のシェアが、四二%に下がっている。あるいは、敷物類が、五七%から三五%に下がっております。人造真珠が、四三%から三一%に下がっている。その他詳細な資料がありますが、とにかく一九六四年から六九年まで、とにかくこまかいですよ、玩具とか、あるいは洋傘、合板、トランジスターラジオ、こういうものが、みんなダウンしているんです、ずうっと。その上にこの特恵が適用されることになりましたら、これはかなり大きな影響が出てくるんじゃないか。それに対して通産省はもっと具体的に調査をしなきゃならぬのじゃないかと思う。いま時間ございませんから、そこで、私は、予算の分科会で通産省にこの影響についてこまかく具体的に伺いたいと思うんです。それで、いま、法案が出ています、この救済法案が。いま大蔵大臣の答弁がありましたように、もしかすれば倒産する、そういうところが出てくるかもしれない。それほど深刻な影響が予想されるんですから、そこで、これに対して万全の措置を講じないと、非常に重大なことになる。これ以外にも、まだ自由化の問題もあります。繊維の規制の問題もあるでしょう。中小企業にとって非常にマイナスの影響のある問題が次々に出てきておりますから、そういう点については非常に前向きにやはり対処しなきゃいけないと思うんですが、こういう点について、最後に、もう私はこれで時間がありませんから、大蔵大臣に全体を含めてどういう対処をすべきかということについて重ねて御質問しまして、私の質問を終わりたいと思います。
  31. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 木村さん御指摘のように、これは、わが国の産業、特に中小企業に対しまして重大な影響がある問題でありますので、これが対策につきましては十分配意いたしまして、万遺憾なきを期していきたいと思っております。  それから与える影響いかんという問題につきましては、これは一応の調査はしております。しかし、なおこれは具体的にかなり推し進める必要がなおあると、こういうふうに判断しまして、通産省に特恵の与える影響を特に調査するための調査費等も予算に組みまして今後に対処していきたいと、かように考えております。
  32. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 大蔵大臣に主として租税三法を中心に総論的な質問をいたしたいと思います。  その第一は、四十六年度の減税施策についてお伺いをしたいのでありますが、今年度政府は自動車重量税が発足しまして千三百八十七億円減税をしたと、こういうことでありますが、これは自然増収一兆四千九百六十五億円のわずか九・三%ですね。これはどういうことになっているのでありましょうか。所得税減税は必要ないということなんですか、あるいは、スローダウンしてもよいというのか、現実の減税の幅からいってどういうお考えでありますか。
  33. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) わが国の今後の経済財政を長期に展望してみまするときに、社会資本の充実——これは公害も含めてでございますが、充実ということが非常に大きな課題になってくる。同時に、社会保障も充実しなきゃならぬ。それらのことを考えまするときに、これは数年間の長期展望のもとにおきましては、どうしても国民の税負担は二、三%ぐらい上がるような傾向にならざるを得ないのじゃないかと、こういうふうに見ておるわけであります。これは何も高負担ということを目標にしているわけじゃないんで、目標は高度社会資本国家、高度社会保障国家というところにあるんですが、それを実現しようとすると、どうも、必要悪というか、そういうようなことで国民の負担が増高する傾向にある。私は、なるべくその増高を低位に押えたいと、こういうふうに思うのです。しかし、ある程度の増高はこれはやむを得ない。が、まあとにかくでき得る限り低位に押えるという努力をします。特に、その中におきましても、直間比率ということが言われますが、所得税につきましては、何とか大幅な減税をある時期になったらしたいという気持ちを持っておるんです。しかし、これにかわるべき財源というようなことを考えまするときに、今日この時点ではなかなかむずかしい。そういう段階に今日立たされておるということかと思うのであります。  そこで、四十六年度の問題とすると、そういう経過的な時期における租税制度をどういうふうにするかということになるのだと思いますが、とにかく物価その他の経済情勢が変わっておる。それに対しましては、最小限の備えをしなければならぬ。これだけは社会資本のほうをそれだけ犠牲にしましてもそういうことをしなきゃならぬ、そういうふうに考えまして、自然増収額の一割にちょっと足りませんけれども、その程度の減税をいたすことにしたと、こういう考え方でございます。
  34. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 大臣がおっしゃられましたように、将来三%程度の上昇は見込んでおるということは再々言っておるようでありますが、しかし、自然増収一兆四千九百六十五億円——大体の想定でありますが、時間がありませんから一々計数を聞いておるわけにいきません。誤っておればひとつ指摘をしていただきたいんですが、この内訳を見ますと、これは私の試算でありますが、所得税が六千九百四十七億円見当の自然増収があるわけですね。総体から見て四六・四%、前年四十五年度に比較しまして一七%増の見積もりなんです。それから法人税は四千四百九十九億円。これは三〇%見当。前年比で一二%程度の増。その他の個人営業所得その他ありますが、これは省きますけれども、結局、これを見ますと、減税割合等を含めますると、所得税の増税というものが柱になっているのではないか、こういうふうに考えるわけなんであります。ことに、自動車重量税を今回設置をして間接税の中に組み入れているわけでありますが、内容についてはあとで具体的に質問してまいりたいと思いますが、直間比率の割合でいきますと六六・六%、これは大体税制を制定して史上最高じゃないかと思うんですね、ことしの割合は。大臣はいままでいろいろそういう直間比の割合というものも是正するかのような言明をやってきているわけでありますが、一貫してそういうことが行なわれている。こういう状況の中で、さらに所得税の納入というものが三千七十万、これも最高じゃないかと私は思う。こういうことで見てまいりまして、いま言ったように千三百八十億円の減税だという。そのおもなるものを見ると、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、これがそれぞれ一万円ずつ引き上げられるですね。減税額総計七百七十二億円と大体なっておる。しかし、四十四年が八百五十七億円、昨年は千二十三億円。だから、それらと比較をしてみても、ことしは一番減税の幅が狭いということになるのじゃないでしょうか。反面、物価騰貴、あるいは社会保険等の負担増、あるいはその他の財政負担、こういうものが逆に上がっておるわけですから、そういうことになるとするならば、今回の政府の減税というものは、全く減税になっていないのじゃないかと思うんですが、その辺の見解はどうですか。
  35. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 毎年の減税の額の大きさということもさることながら、わが国の全体の国民の所得水準の伸びの中で、どの程度所得税についてその税負担を求めるかということの基本的な考え方は、課税最低限を中心といたしまして、これを国際的に見てどの程度妥当であるかどうかということがやはり政策を考える場合の基本であろうかと思います。そうした場合に、今日の租税の負担率全体を見渡しました場合に、これを諸外国との比較におきまして、まずまずの水準に来ておるというところで、課税最低限の大きさを中心にそれをどのように配分していくかということでいろいろの控除等を考えていくということだろうと思います。直間比率の問題は、やはり経済成長の速さによりまして法人税あるいは所得税に対するウエートが高くなってきたと、かようなことでございますので、そういう問題についての問題意識としては、今後七〇年代の税制を考えていくという場合に、基本的に見直していこうということで、現在その検討を続けておるところでございます。     —————————————
  36. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 委員異動について御報告いたします。  ただいま、高山恒雄君が委員辞任され、その補欠として向井長年君が選任されました。     —————————————
  37. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 そこで、大臣に再度質問するわけですが、四十年は非常に不況だと、こういわれたわけですね。当時は、自然増収が千百九十億円、大きく上回って二千九十億円という減税をやったわけですね。もちろん、国債発行という条件、あるいはその不況の深刻さといいますか、そういう深さにおいても異なると思うのでありますが、蔵相がいままで言われてきた不況脱出のいろいろな経験があると思うのです、いままでやられてきた中において。そういう不況脱出の経験というものを四十六年度の減税に対しても私は当然政策として実行すべきであったと思うんですけれども、それがやられていないと思うのですね。そういう面に対する見解はどうですか。
  38. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 不況脱出の際には、よく、財政支出、それから減税、さらに金融緩和と、こういう方式がとられるわけであります。四十年のときは、法人税の軽減、これが減税の主軸をなしておったわけです。それから並行して財政金融政策を進める。これはかなり効果があったようでありますが、今度はどういう考え方をしたかといいますと、設備投資がかなり過度に沈静化の傾向にある、それを補うというためには財政支出をここで拡大をするという必要があろうと、こういうことであります。そこで、従来よりも予算の上げ幅を拡大をするという考え方をとり、さらに、万一それでも足りないという際におきましては、政府保証債を発行し得る、あるいは各種金融公庫の借り入れ権限を拡大する必要がある、あるいは債務負担権限額を拡大していく必要があると、歳出面に重点を置いたわけです。なぜそういう考え方をとったかというと、好況を押えるためには、これは金融が非常に機能的に働くと思うんです。つまり、金融引き締め政策をとりますと、かなり景気が詰まる。しかし、こういう落ち込みの際にこれを持ち上げるという力は、これは、私は、直接に購買力というか需要を喚起いたしまする財政、ここに主軸が置かなければならぬと、こういうふうに考えて、ただいま申し上げたような考え方を今度の景気対策の主軸にいたしたわけであります。しかし、同時に、これと並行いたしまして、二回にわたる公定歩合の引き下げ、あるいはこれと並行して量的金融緩和、そういうこともやる。ただ、税につきましては、これはまあ法人税なんかがまず問題になるのだろうと思いまするけれども、それだけの財政支出をするということになれば、法人税の引き下げというところまでいかぬでよかろう。それから所得税、個人の消費につきましては、今度の景気はどういうことかとうと、企業のほうの需要が衰えておりまするものの、個人の消費需要というものは決して衰えていないのです。そういうような状態から見まして、特別の大幅な所得税減税ということを景気対策の見地からとる必要はない、こういうふうに判断をし、まあミニ減税というふうに言われますが、所得税につきましては自然増収の一割というところを見当といたしましての減税ということにいたしたわけであります。
  39. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 もう少しその辺の見解についてお伺いしたいんですけれども、昨年以来、非常にわが国は不況になりつつあると、こういうことをいわれているわけですね。それは、一つは、カラーテレビ、あるいは自動車、こういったいわば耐久消費財の売れ行きが不振だと、こういうことがいわれているのでありますが、この場合の景気対策として、今年度の政府の説明によりますると、公共事業費の支出増加、こういうものによって何とか景気維持をはかっていこう、こういう考えのようですね。しかし、私は、国民の購買力を引き上げるということをすることが景気持続維持のためには一番いいんじゃないかと思うのですが、そういうためには、大幅減税と、いわば賃金所得のアップですね、こういうものによって国民の消費能力というものを引き上げていく、こういうのが一番やり方としてはなめらかに景気維持ができていく一つの妥当な政策ではないかと、こういうふうに考えるですが、そういう点の大幅減税の効果という点について、大臣は一体どういうふうにお考えになるか。
  40. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 所得税をかりに非常に大胆な大幅な減税をするということになれば、私は、これは景気にはそれなりの影響があると思います。しかし、いまこの時点で景気はどういうことになっているかというと、どうも落ち込みの傾向をたどっていると、こういうふうに見るのでありまするが、それはなぜかというと、企業の投資意欲ですね、そこに問題があるので、まあ国民経済を動かす最大の要因である国民消費につきましては、これはもう依然として堅調でありまして、これをさらに刺激するということを考える必要はない段階である、問題は企業のほうにあると、こういう認識でございます。
  41. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間がありませんから、大綱について質問しますが、減税の中身について若干伺いたいのでありますが、一つは基礎控除についてです。十八万円から十九万円に引き上げた。あるいは配偶者控除も同様である。扶養控除も十二万円から十三万円にそれぞれ一万円引き上げたわけでありますけれども、この一万円の金額の計算基礎をひとつ教えていただきたい。
  42. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 減税をどういう形でやっていくかということにつきましては、むしろ、基本の考え方は、最も標準的と申しますか、あるいは抽象的な日本の国民の標準的な方の課税最低限をどの程度に考えるのが適当であるかどうかということから考えていくべき筋合いのものだろうと思います。そうした場合に、千差万別の何千万という国民の方々のそれぞれの生活の形態は非常に複雑でございますわけでございますので、これを標準的に考えました場合に、基礎控除、あるいは配偶者控除、扶養控除、給与所得控除というものにどういうふうに配分していくことが適当であるかというところから課税最低限の高さに応じた控除をきめていくということになろうと思います。そうした場合に、税制の簡素、執行の容易というようなところから、どうしてもこれを一つまとまりのいい数字に切っていかざるを得ない。そうした場合に、基礎控除、配偶者控除を同額にしていくという基本的な考え方、あるいは扶養控除と配偶者控除との関係、それから給与所得に対するいろいろの世間の考え方等を総合勘案いたしました場合に、基礎控除、配偶者控除その他扶養控除も一万円を上げ、給与所得控除について特に三万円を上げたということでございます。
  43. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 どうも、その説明がわからないですね。大蔵省の尺度でものを言っていることはわかるのですが、なぜ一体一万円引き上げたか、どういう計算によってその積算がされたか、こういう具体的な内容を私は聞いている。従来は、大蔵省メニューというものがあって、生活費には課税しないというたてまえに立って、一時三年ぐらい前までは大蔵省メニューというものを出してきた。だから、それは高い低いのいろいろな批判はあっても、一定の標準にはなったんです。ところが、最近、それは全部大蔵省としてはどういう関係かわかりませんが提示をしておられませんね。いま説明を聞いたところ、どうも具体的なものは説明ができない。こういういわば明確な根拠がないということじゃないですか。どうなんですか、その辺は。
  44. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) お話しのように、かつて、大蔵省メニューと申しますか、標準生計費というようなことを計算し、これをいわば課税最低限を考える場合の憲章というようなことに使っておったこともございます。ただ、三十九年にそういうマーケットバスケット方式による生計費を考えたわけでございますが、その後の物価の上昇ということから考えましても、すでに現在の四十五年度におきます課税最低限は、その後マーケットバスケット方式というものについてはいろいろのむずかしい問題もございましてやっておりませんが、かりに三十九年の家庭生計費というようなものを基準に考えました場合にも、これをかなり大幅に上回ってきておるというのが実情でございます。したがいまして、生計費というものに対してこれを標準な生計費をどこに押えるかということは、先ほど申しましたように、国民全体がこのごろのように生活が多様化してまいりました場合に、これを生計費という形で押えるよりは、むしろ現在の課税最低限はその生計費に対して比較的ゆとりのある形での最低限になっておるというのが現状であると考えておるわけでございまして、そういう意味からいたしまして、生計費をもとにしてこれを考えていくということではなくて、むしろ国際水準との比較においてわが国経済の環境等を総合勘案して現在の控除額をきめたというのが実情でございます。
  45. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 私は、もっと具体性を持った、たとえば基礎控除の引き上げについては、一つは物価上昇分はこのくらいあって、あるいは生活の水準の変化に伴ってどの程度計算がされたかと、そういう科学的と思われる積算基礎を土台にして一万円を引き上げるなら一万円という計算が出てこないと、税金を納める国民全体からすると、何のために一体一万円上がって、これが妥当なのかどうなのかということは、それぞれの尺度で全部判断されるから、一定の説明の納得力を持たない、そういうものが常にただよっているのだろうと思うのです。そういうところから国民の税に対する不公平なり不満なり、そういう苦情が一ぱい出てくると、こういうことになりはしないかというふうに考えるわけでありますけれども、こういう見解についてはどう大臣としては考えますか。
  46. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 今度の基礎控除一万円引き上げにつきましては、大体、課税最低限を十万円見当引き上げる、その場合にどういうふうな控除の引き上げ方をするかと、こういうところからその一万円というものが出てきておる、こういうふうに私は見ておるわけでございますが、問題は、ですから、戸田さんのおっしゃるよりはもっと深いところにあるわけです。つまり、課税最低限を幾らとすることが妥当であるかと、こういう問題にいくのではないかというふうに思いますが、これは課税最低限は高ければ高いほどいいに違いありませんけれども、また、先ほども申し上げましたように、国の財政需要ということも考えなければならぬ。しかし、同時に、日本の国がここまで経済が発展した今日の段階において、その課税最低限というものが国際社会においてどういう地位におるのかというような点も考えなければならぬだろうと、こういうふうに思うのであります。かれこれ勘案いたしまして、課税最低限十万円程度引き上げる。まあ先進諸国の中の中位という程度に日本の課税最低限を持っていくということが妥当であると、こういうふうに判断いたしまして、課税最低限の引き上げを行ない、さて、そうなれば、これは諸控除をどういうふうにするかというと、従来のやり方をいろいろ考えて権衡をとりながらやっておりますが、そのやり方にならって、給与所得控除以外につきましては一万円引き上げと、こういう結論にいたしたわけであります。
  47. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 一万円は大臣がおっしゃられるとおりのそういうことで引き上げられたんでしょうが、その根拠が明確でないのですね。だから、そういう問題について今後やはり検討されて、それの明確化をひとつここでお約束できませんか。大臣、どうです。
  48. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 一万円のことですか、それとも、課税最低限……。
  49. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 課税最低限。
  50. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、私は、国際社会並みの課税最低限という考え方が一番妥当であると、こういうふうに考えるのです。しかし、まだ問題がありますのは、他の先進諸国わが国に比べまして蓄積が多い。わが国は家庭の蓄積が非常に乏しいと、そういうような点があります。ありますが、とにかく、国際社会の中においてまずまずと評価されるような地位を与うべきである。同時に、ただいま申し上げたようなわが国国民生活のデメリットのそういう面も考えまして、なお今後とも課税最低限の引き上げということにつきましては努力をしていかなければならぬと、こういうふうに考えておりますが、さあ、科学的合理的にどういうふうにという基準がありますと、かえって、ミスリードされるようなおそれも感じますので、せっかくのお尋ねでございますけれども、科学的合理的基準の設定ということは、検討はしてみまするけれども、お約束というところまで行きかねるのであります。
  51. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 税負担率についてだいぶ今年度増大をしていると思うのでありますが、たとえば租税及び印紙収入全体で八兆二千九百六十二億ですね。対前年比で一九・六%。専売納付金等を含めた全体の収入見込みというのは一九・四%、それよりも上回っているわけであります。こういう伸び率をずっと見てまいりますと、国税及び地方税を含めまして十二兆九千二百三億、こうなっているわけですね。結局、国民の税負担率は大体一九・三%と予測される。そういうことになりますと、四十四年の場合は、当初の見込みが一八・七%、決算で一九・四%。四十五年は、当初見込みが一八・八%で、決算が一九・三%。この調子でいくなら、四十六年は、私は、二〇%を上回るのじゃないかと思うですね。えらい税負担率ということになるわけでありますが、大臣、この想定は間違いありませんか、高いと思いませんか。
  52. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十四年度におきましても、四十五年度におきましても、御承知のように、かなりの自然増収が見られたわけであります。つまり、政府経済見通しにおきまして予定しました成長率をはるかにこえる成長が実現をされたと、こういうことなんです。ところが、さて、四十六年は一体どうなるであろうかと、こういうことでありますが、これは私は逆に非常に心配でならないんです。自然増収が出るというような状態でなくて、場合によると自然減収というようなこともなきにしもあらずということまで心配をいたしておるわけであります。そういう意味におきまして、景気政策というようなことに最大のいま関心を払っておるわけでございますが、四十四年度が一八・七%、それが補正の段階で一九・四になり、四十五年度が一八・八という当初の負担率が補正の段階では一九・三になると、こういうことでありましたが、今度四十六年度におきましては、これはとてもそういうような状態にはならないのじゃないか、そういう見通しをいたしております。
  53. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 ですから、いままで、政府は、減税だ減税だと、こうやってきているけれども、年々実際問題としてはこういう増徴傾向をたどっているということになるわけですね、全体としては。納税人員もはるかに上回ってくる、額においてもそういうふうに高まってくる、こういうことですね。ことに、四十六年度は、歳出予算をはるかに上回っている。こういうのは、はたして妥当なのかどうかですね。これまで過酷な重税体系をとらなくちゃいなけいのかどうかですね。その辺が私は非常に心配なんです。ことに、そういうものが全部低階層者にしわ寄せがいっているわけですね。それは、時間がありませんから、計数を申し上げているわけにはいきませんけれども、だから、こういう意味合いにおいて、私は、いま税制全般について抜本改正をすべきときではないかという判断をして、過日の本会議でもそのことを言ったのでありますが、大臣から何かごまかされたように、明確な回答を得なかったのでありますが、それはどうですか、もう一回ひとつ……。
  54. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 四十四年度、四十五年度は、先ほども申し上げましたが、当初の見通しをはるかにこえる経済成長が実現され、その中におきましては、個人の消費支出、これなんかも見通しよりははるかに伸びる、そういうことになったわけです。したがいまして、法人も同様でございまするが、個人、法人を通じ、また、その他の税費目を通じまして、かなりの自然増収額で見られると、こういうことになったわけなんでありますが、さて、そこで、今後税制をどうするかということにつきましては、ただいま税制調査会にも諮問をいたしておるわけでございます。今後の租税政策のあるべき姿、そういう審議会の御検討ともにらみ合わせまして、いろんな角度から税制の理想的体系というものを追求してみたいと、かように考えておりますが、何せ、いま、経済の変動期であります。ことに物価が上がる、そういう趨勢の時期でありますので、税制を根本的に改正を実行する時期といたしましてはまことに適当でない時期のように思われるのです。たとえば、直間問題の解決というようなことも、これは理論的には考えられましても、実際問題としてなかなか物価問題を考えますとむずかしい。そういうようなことでありますが、とにかくそういう根本的な長期改革への過程においてどういう対策をとるか、これにつきましても鋭意検討をいたしてみたいと、かように考えております。
  55. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 あと三点ほど時間がありませんからお伺いしたいのでありますが、その第一点は、自動車重量税でありますね。まあいろいろ内情はあったようでありますけれども今回発足をさせるということで出発をしたわけでありますが、初年度で四百二億円、平年度で千二百五十億円、そのうち四分の一は譲与するということでありますが、この自動車重量税の目的ですね、たとえば道路整備に充てるとか、鉄道建設にやるとか、あるいはその他いろいろあるようでありますが、この税金は一体直接税なのか間接税なのか、その辺の見解はどう考えるか。  それからもう一つは、目的税ということでなっておるんですけれども、いま言ったように各般に使われる、こういうことになれば、従来の税理論からいってきわめておかしいのじゃないか。あまりすっきりしないですね。自動車税そのものの関係全体を考えますと、大体七つの税金がいまあるわけでしょう。道路税とか、揮発油税とか、あるいは物品税とか、各般の税金が七つほどもかぶさっている。むしろこの新税を設定するというなら、そういう自動車関係税法の中身の問題を検討して統合整理ができなかったのかどうか、この辺についてひとつ見解を明確にしていただきたい。
  56. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 自動車につきましては、地方税を中心にいたしましての非常に複雑多岐の税体系がとられておるわけです。そこで、新に新税を設けるという際には、その既設の税制の統合というようなことを考えるということは、これは自然の考え方だろうと、こういうふうに思うのです。ところが、これはおもに地方税になりまするし、それからいわゆる総合交通体系というものとにらみ合わせないと本格的な取り組み方ができないというようなこともこれあり、そういうことには手をつけないで、新たにこの自動車新税を追加すると、こういう考え方をとったわけでございますが、しかし、これが根本的に矛盾があるかと、こういいますと、そうじゃないんです。自動車の重量に対して課税するという考え方は、今回の新税が初めてでございます。つまり、道路が足らぬ、あるいは国鉄の輸送力が足らぬ、いろいろ交通関係の問題が起こります。その他、飛行機の輸送能力、あるいは港湾の整備の必要、そういう問題も起こってくる。そういうようなことを考えますと、金が要るわけなんです。先ほど申し上げましたように、これから多少国民負担の増加というような傾向をとらざるを得ない。そういう中におきまして、何といっても道路、これは一番金を食うわけですが、その損壊等、社会負担のかけておるこのものに対しまして特別の負担を求める、そういう考え方、これは、従来のいろいろあります税制、その上に新税というのですから、複雑にはなりまするけれども、理論的にこれが重複いたしておりますとか、矛盾をいたしておりますとか、そういうことはないように考えておるわけであります。
  57. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 どうも、税の理論体系からいって、私は非常に矛盾を来たしておると思うでありますが、当時、政府は、社会資本の充実というようなことの名目で設定をしたわけですね。言ってみれば田中幹事長構想とやらですが、それを事務当局がいろいろ検討して、運輸省案ができ、建設省案ができ、いろんな案が出てきたわけですね。最終的に大蔵省検討で大体おさまったようなんでありますが、だから、私は、これは目的を明確にして、税の存立のそういう内容というものを整理する必要があるのではないかというように考える。非常にもこあいまいです。いま大臣が説明されましたけれども、それでは私納得いきません。使用額から見ましても、たとえば、道路に二百億でしょう。新幹線に三十億でしょう。青函トンネルが三十億でしょう。それから新幹線以外の各種建設費用に三十億使う。それから交通安全対策に十億円使うと、こういうふうになっているわけですが、この目的から言ってもおかしいのじゃないか。そういうことであるならば、当然、総合交通対策の上に立って、それにふさわしい税種目の開始をすべきであって、単に自動車新税ということで各般のこういう交通全般の諸問題に使っているということは、私はどうも納得できかねるのです。  もう一つは、特別会計を発足させると言っているんですね。これは一体いつごろ発足をさせるのですか、その時期と見通し。  それからもう一つは、自動車産業ないし関連産業に対して、需要減退を来たさないかどうか。  もう一つは、既存の自動車関係税とのかね合いにおいて矛盾がないかどうか、もう一ぺん聞かしていただきたい。これはどうしても不均衡是正が出てくると思うのですね。私は非常にあると思う。たとえば自家用車が営業用のトラックその他よりもきわめて比重が重い、そういう重課になっておる。私の計算からいけば、そうなっているんです。こういう面の解消もやるべきじゃないか。  そういう面について、もう少し具体的な内容について大臣の説明を伺いたい。
  58. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 先ほどお答え漏れでございますが、この税は、直接税じゃありません、間接税でございます。  それからいま、特別会計でこれを受け入れることにするのかというお話でございますが、これからの税の扱いはどういうふうにしますかというと、とにかく総合交通対策というものを策定したいという考えでございます。予算でも成立したら、直ちにその作業に取り組みたいと、かように考えておりまするが、それがどういうものになるか、それによって新税を特別会計に受け入れるということにするかしないか、そういうものがきまってくるのではないか、そういうふうに思っておるわけであります。  それから第三は、自動車の需要に対してどういう影響があるかというお話でございますが、これは私は、いささかの影響もないと、こういうふうに見ております。つまり、乗用車につきましては一台年間五千円、トラックにつきましては一台年間一万円、これは平均しての話でありますが、そのくらいの軽微の負担でありますので、御審議をお願いしておるこの税率の程度でありますれば、これは需要には。プラスもマイナスも影響はなしと、こういうふうに考えております。  それから税の体系上矛盾に満ちておるじゃないかというお話でございますが、私は矛盾とは考えないんですけれども、とにかく既存の自動車関連税というものはたくさんある、そこへまた同じ自動車を対象にいたしまして新税が設けられるということは、好ましい形じゃないと思うのですね。まあいずれはこれを合理化しなきゃならぬ時期が来ると思いますが、そういう方向で取り組んでみたいというふうに考えております。ただ、これは地方税が関連いたしますので、取りまとめにつきましてはかなりの紆余曲折がある問題じゃないか。ですから、まだはっきりこれを統合いたしますとか整理いたしますとかということはお約束はいたしかねるのですが、とにかくそういう方向で事を考えてみたいということをお答え申し上げたいと思います。  それから戸田さんのお話を承っておりますと、四十六年度の自動車重量税、これが目的税であるかのごとくお考えのようでありますが、そうじゃないんです。四十六年度は、四十七年度以降の根本的な対策、それに至る過渡的なものでありまして、一般会計に受け入れるのは三百億円でございますが、これは一般財源としてこれを受け入れまして、一般の歳出にこれを充てる、こういう考え方をとっておるわけであります。
  59. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 時間もまいりますから、一括最後に質問したいのでありますが、一つは付加価値税の問題でありますが、いま自動車重量税の問題についてお伺いしたのですが、その設置があったということは、私は付加価値税に対する含みじゃないかというように考えておるわけですが、おそらくことしの七月に税調が開かれますから、大蔵省としては当然これにかけていくのだろうと思うのですね。だから、もうかけることは決定的でありますから、いついつの時期にどのようにつくるかということが私はむしろ問題なんです。そういうことを考えますと、大体想定されるのは、フランス型とか、西ドイツ型とか、EEC型とか、こういう方向があるわけでありますが、どういう方向で一体大蔵当局としては検討されておるのか。あるいは、また、フランス型や西ドイツ型や次々いった場合には、これは想定で申しわけありませんけれども、そういう場合にはどの程度の税収の見積りというものを考えておられるか、その辺をひとつお伺いしたいと思うのであります。  それから租税特別措置関係でありますが、常に政府は廃止、統合、ないし合理化を進めると、こういうことを言われておるのでありますが、一貫して直っておらないように私は考えるのであります。その第一は、さきにも指摘をいたしましたように、いまの税制というものはきわめて不公平、こういう状況がますますこの矛盾を深めているというような状況でありますけれども、こういう中にあって、ことに公害防止施設に対する特別償却費ですね、中小企業も若干は入っておりますけれども、そういうものの特別課税を非常に税金をまけて扱っておるんですね、公害関係については。具体的な数字はありまするけれども、そういう問題について、私は、一そうこの特別措置によって税の不公平というものを増大をさしていると、こういうように考えるのであります。  もう一つは、う一つは、海外の投資損失準備金制度、こういうものを今回確立をされたわけでありますが、こういうものも鉄鉱石、あるいは原料、木材、こういう各般に入っているのですが、より大資本に対する税制免除の優遇措置、こういうものが非常に強まってきているのじゃないだろうか、こういうふうに考えるのでありますけれども、その辺の見解について明確にお答えを願いたいと思います。
  60. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 付加価値税は、御承知のように、EEC諸国が大体これを採用しておるわけです。そこへさらに今後は英米でもこれに前向きで検討するという段階に入ったわけなんです。英米でこれを採用するということになると、先進諸国おおむねが付加価値税方式をとるということになる。わが国は、いま、付加価値税というような制度をとっておりませんが、EEC諸国の実績、また、英米でこれを施行するというようなそういう考え方、これは重要な参考資料にしていい問題ではあるまいか、そういうふうに考えておるわけです。ですから、付加価値税はわが国においてもこれを検討すべきである、こういうふうに思います。ただ、これを実施するということになりますと、これは物価との関係が非常にむずかしい問題かと思うのです。いま物価が非常に流動しておる、そういう段階において、付加価値税がとられるということになると、物価問題にかなりの悪影響がある。そこで、ある程度物価の鎮静する時期でないと実施というわけにはいかないと思いますが、とにかく検討しておくべき課題になってきたというふうに考え、税制調査会のほうでもそういうことで御意見を伺ってみたいと、かように考えておるわけであります。したがって、これから検討するのでありまするから、その税率の幅をどうするか、あるいは、したがって、その収入がどうなるか、こういうことにつきましては、いま固まった考え方はもちろん持っておらないわけであります。  それから公害や海外投資損失準備金、そういうものについて特別措置を考えたらどらかと、こういうようなお話でございますが、公害につきましては、これはもう十分そういう配慮をいたしておるわけであります。公害に対しましては、企業の場合におきましては、あるいは特別償却を大幅に認めますとか、あるいは耐用年数の繰り上げをいたしますとか、それから公害公共事業を執行する場合におきましてそれに分担金を出す、その分担金を経費扱いにするというような措置でありますとか、いろいろな恩典措置を考えておるわけでございます。  海外投資損失準備金、これはどういうことをお考えの上のお話であろうか、ちょっと戸惑いますが、もしかりにこれが円の価値の変更だというようなことに備えての対策だというようなことでありますれば、これはその必要はございませんので、私どもとして特別措置をとる考えはございません。
  61. 戸田菊雄

    ○戸田菊雄君 まだちょっと時間があるようですから、最後にもう一点だけお伺いしますが、退職所得の課税軽減についての問題ですけれども、最近年々べースアップしていることは事実なんであります。したがって、名目退職金が上がっていることも事実なんであります。しかしながら、退職所得の課税軽減については、一貫して触れられてきておらないのですね。税制改正のたびにいままで一回も取り上げられておらない。だから、これをどう一体考えられておるのかですね。経済情勢は非常に変動して、物価上昇その他があるわけでありますけれども、こういう問題については私は当然検討されてしかるべき問題じゃないかと思いますが、大臣、どうですね。
  62. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 給与所得者が長い間の職場を離れて、そうして特に住宅に対する希望というものがずいぶん多いのだろうと思います。そういうことを考えますときに、いま戸田さんの御指摘の問題は、これはまさに考えなきゃならぬ問題だろうと思いますので、これはこれからの検討項目として取り上げたいと、かように思います。
  63. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 初めに、大臣がせっかくいらっしゃいましたので、安定成長のことでちょっとお伺いしておきたいと思います。  いままでの経済社会発展計画等では、安定成長ということをずっと言ってこられたわけでありますけれども、一九七〇年代を見ていくと、現在の世界貿易の伸び、そういうものが過去と同じように大体八%ぐらいにふえていくであろうかと、そういうことを予測して考えてみると、現実問題として、実際は、いままでの安定成長と言われていたことが、実質は昭和四十五年度に一〇・九%のGNPの成長率が四十六年にはこれが九・四%に下がり、ずっといままでの企画庁等でやっている計量モデル等から推測していくと、下がりに下がって、四十九年には六・六という実質成長率になるのではないか。   〔委員長退席、理事大竹平八郎君着席〕 そうして、昭和五十二年あたりから再び景気の回復で一二、三%台に伸びていくだろう、こういうような予測がされているわけでありますけれども、そうすると、政府の言ってきた安定成長ということは、はっきり申し上げて、一〇%台の経済成長とかあるいは四%台の物価上昇ということは、言いかえると、そういう安定ということではなくて、中間に不況を突っ込んで、そうして不況のために物価というものを押し下げて、最終的にはそういうようにするというと安定であったと、こういうような考え方に立っているのじゃないかという危惧があるわけでありますが、その点については大蔵大臣はどういう判断をされていますか。
  64. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 安定成長と私どもが申しておりますのは、二つの面があるんです。一つは、成長が、いまお話しのように、大きな山がある、谷がある、そういうような状態ではいけないのであって、まあ経済のことでありまするから、多少の波はこれはやむを得ない。景気循環現象、これはやむを得ないと思いますが、しかし、その山と谷を、なるべく、山は低く谷は浅くと、こういう成長の高さに対する問題であります。それからもう一つは、成長の過程におきまして国内の諸施策がバランスを得る均衡の問題、国内均衡と言われている問題であります。つまり、需給がバランスをしないといえば物価が上がってきますとか、あるいは国際情勢とのバランスというものが失せられるというふうなことになると国際収支で不安定な状態が来ますとか、あるいは国内そのものにおきましても低生産性部門というものをほうっておきますると物価問題をむずかしくするとか、経済の要因から見ましても、国民感情というような点から見ましても、国民の各階階層がおおむねバランスをとりながら前進をしていく。そしてまた、国民各階階層のそのめぐるところの環境、こういうものにつきましても、経済力の発展に調和のとれるような姿、そういう経済成長内容の面、これがもう一つあるわけなんです。ですから、なるべく息長い成長、こういうことと同時に、その成長の過程においてもろもろのいわゆるひずみというような現象をかもし出さない。もしかもし出されるとすればこれを克服していくという努力を最大限に傾けると、こういう二つの意味を含めまして、安定成長と、こう申し上げているわけであります。
  65. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いま言われた景気の変動の幅をできる限り低く押えたいということなんですが、それが一つ条件である。ですが、その幅というのは、どう見ても、非常に伸びているときから比べると五%以上下がってくる。これは名目でありますけれども、実質的でも四%近く下がってくる。そうなると、これは、大蔵大臣、御存じだと思いますけれども、川口市あたりを歩けば、二百メートル歩けばもう四軒は倒産している。国税庁の方に聞くと、押えるべきものが何もないと。行ってみれば砂しか残っていないなんというようなところの工場がたくさん出てきている。これは一〇%を割るころからもうそういう状況が起きてきておる。日本の不況感というのは、不況というもが起き、そういう中小企業の倒産が起きてくるのは、一〇%台を成長率が割ったときというのが非常にあぶないときじゃないか。それからいまのままでいけば、政府の、あるいは日銀等もそうでありますけれども、金融政策の一面というのは全部後手後手、もう少し早く金融緩和があればここまで設備投資の急激な激減というものはなかったろうと思うのですけれども、そういう面から見ると、景気の変動の幅を極力押えたいという努力が少ないのじゃないか。一体、大臣は、成長率でいえば何%ぐらい上げ下げがあるのが極力押えた姿であるというふうにお考えなのか。あるいは、アメリカの場合と違って、わが国の場合は、一三%という成長率でも国際収支はまだ赤字が出てこないという傾向があります。アメリカは、六%をこえれば赤字が出るという。で、アメリカ並みのところまで日本が落ちれば、これはもうたいへんな不況であるということは、御承知のとおりだと思います。そういう点から見ると、一体、成長率は何%ぐらいに通常押えるのがほんとうなのか。政府では安定と言いながら、一方に幅がある。幅の一の中番下に行ったときには、次から次へと倒産をしなきゃならない。その幅をどのぐらいに考えていらっしゃるのか、それが一つ。もう一つは、中期経済景気循環論というのでありますけれども、どう見てもそういうパターンに入っているとしか私どもにはとれないわけであります。その点については、先ほども循環の話がちょっと出ておりましたが、どういうように大臣は考えておるか。この二点をお伺いいたします。
  66. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 二、三年前は、お話のように、一三%成長から一四%という勢いだったわけです。それがさらに高度化しようというような趨勢であったわけでありますが、それをほうっておきますと、これはどういうことになるか、たいへんなことになっちゃうんです。つまり、一番問題は、資源と労働力の問題これは日本経済は全く壁に突き当たる。もう再起も非常に困難であると、こういうような状態になる、これはもう必至だというふうに考えられたわけです。そこで、息長い経済発展をさせるにはどうするかということを考える。そうすると、どうしても成長の高さというものを落とさなきゃならぬ。しかし、理想的な成長の高さというのはどの辺であるか、これはちょっと判断もいたしかねますが、当面一〇%というくらいなところをにらんでおく。一四%もの勢いで成長した日本経済を一〇%に持っていくということでも、これは非常な衝撃になるだろうと思います。それ以下にするということになれば、かなり混乱があるいは起こるかもしらぬ、こういうふうに考えまして、一〇%というところを当面にらんでいく。経済社会発展計画におきましても、一〇・六ということを言っているんです。これは私はそういううまいぐあいにいくかどうか危惧の念を持っておるのですが、まあしばらくやってみて、この計画というものが妥当であるかどうか、そういうものも見なければならぬというふうに思っておりますが、当面とにかく一〇%というところをにらみながら経済運営をしていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。  それから鈴木さんは、経済循環の底が近く来るのじゃないかというようなお見方のようでございます。私は、そうは考えません。これは、いまは一〇%をかなり割っているというような状態でございまするけれども、これからいよいよ四十六年度予算も施行される。かなりの購買力が注入されるわけです。そのほかに、場合によりますれば、いわゆる機動弾力条項も発動されるということになると、これはもう財政の面でかなりの景気浮揚機能というものが発揮されるだろうというふうに思うわけです。それと並行いたしまして、今月の下旬——もうすでに下旬でございまするけれども、政府の支払い、これがかなりの額が行なわれる。金融もそれを契機としてゆるむという感触が一段と強くなってくる。両々相まちまして景気はそう遠からないうちに上向きに転ずると、こういうふうに見ておるわけです。当面、中間的不況がわれわれの前に待っておるというような認識は、持っておりませんです。
  67. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そうすると、大臣は、景気循環論というのが実際問題としては中期循環のような傾向を現在とりつつあるわけですけれども、そういう点については、そういう感覚はとらないと。もう一つは、一〇%にしたいという話でしたけれども、 〔理事大竹平八郎君退席、委員長着席〕 先ほども私が申し上げたのは、できるだけ変動は小さくしたいと言われる。それでは、これから先の経済は息の長いものでありますけれども、何%ぐらいまでその上下が実質なり名目なりがあるのかということです。そこまでなら安定と見ると、そういうものがなければ、結局、レールのない汽車が走っていくような感じになってしまうわけですけれども、そういうところはどうなんでしょうか。
  68. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、基本になる線が一〇%ということを申し上げているんですが、それをかりに上回って、それが一一%になりましたという場合におきまして、それが非常な危険信号であるかと、こういうと、私はその一一%という問題ではないと思うんです。一〇%から 一一%に至る過程というか、傾向が大事なんだと。これがさらにさらに突っ走って一一%じゃない、一二、一三、一四と、こういうふうな傾向をたどる、そういう一一%ということになると、これはもうたいへんな問題だろうと、こういうふうに思います。逆に、これが九%なり八%になりましても、これがさらに進んで五%だ、四%だというところへ行く過程の八%だ、九%だとすると、これは問題である。そういうふうに傾向を見るべきものであって、そのときの数値を論ずべきものではない、こういう見方をしているんです。
  69. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 じゃ、現状ではどうごらんになっておりますか。はっきり申し上げて、私どもは、設備投資の激減、こういうことが輪をかけてきているというのを実際中小企業等を歩いてみるとほんとうに感じざるを得ないわけです。機械受注の減っていることも確かにありますし、そういう点から見ると、いまのところはどういうように大臣は予測しているのか。一体、どの辺まで行ってしまうんだろうか。経過が非常に大事だというお話でありましたが、私どもが見ているのでは、これはどんどんころがっていくんではないかという感じを受けるわけです。一ぺんにストンと行くということじゃありませんけれども、徐々に徐々に行くんじゃないかということも危惧せざるを得ない。その辺の見通しはどういうふうにおつけになっておりますか。
  70. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) いま、一〇%じゃないと。これは大かた意見が一致しているんです。さて、しからば、何%ぐらいのところへ実質GNPが来ているのだろうかということは、最近の統計がありませんものですからこれはわかりませんが、まあ一、二%、その辺は割っている状態じゃあるまいか。そこで、これをほうっておきますると、さらに下がっていくかもしらない危険性をはらんでおると、こういうふうに見るわけです。そこで、そうあらしてはいかないというので、財政が出動し、また金融が出動して、もうこれをもって底にしたいと。そして、これからつま先上がりで明るいほうへと上昇過程に入ると、そういう状態に持っていきたい、こういうことを申し上げておるわけであります。ほうっておいたらこれはかなり深刻な事態になるんじゃないか、そういう見方です。
  71. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 これは、傾向だけはおわかりいただけているようで、われわれと解釈は同じなんですけれども、私がいまのままで行けばこれから四十七年にも四十八年にも波及してくるのではないかということは、景気循環の姿から見ても、経企庁のやっているいわゆる数量計算の方式から出してみても、そういうようになってくるというのは、これはもう間違いないとこだと思いますけれども、その点で、はっきり申し上げれば、明年の政府投資、これが一五%以上なければあぶないだろう。その次の四十七年になれば、二三%以上伸びをさせなきゃいけないんじゃないか。こういうことを痛切に感じているわけでありますが、そういういわゆる景気ささえをしていくための公共投資の伸びというものについては、どういうような大体いま目途がおありになるでしょうか。
  72. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ですから、ことしの予算は、従来よりも規模において非常に拡大をしたわけでありまして、約一兆五千億円、財政の規模を拡大しております。その中で一番多くの額を占めますのは、地方交付税でございますが、これは地方の開発のために役立つ。次いで大きなのは、一兆七千億になりまする公共投資であります。これは財政投融資とも相まちましてかなりわが国の社会資本の充実ということに貢献をしまするし、同時に、需要を喚起する、購買力を喚起する、そういう面におきまして景気の回復に貢献をする。とにかく、一兆五千億円といえば、これはGNPの二%に該当する数字です。そのほかに、とにかくあり得る不況に備えまして弾力条項というものをお願いしておるわけですが、これが大体GNPに対しましては一%相当の約七千億円、こういうことになるわけで、これだけの装備をしておりますれば、景気については決定的な指導力を持ち得ると、こういうふうに見ておるわけであります。新年度の予算が施行されるという時期から、だんだんとつま先上がりの上昇過程に入っていくのじゃないか、そういう観測をいたしております。
  73. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 そういう弾力条項をいろいろ使って機動的にやるということはわかるのでありますけれども、現実として起きてくるのは、先行きの不安というものがなくならなければ、中小企業等はやっていけないという状態に追い込まれつつあるわけです。そういう点を、これは要望ですけれども、ほんとうに考えていただきたいと思います。  それからそれに連ねてでありますけれども、そういう不況のことから、ぜひとも公定歩合の再々引き下げという声がいろいろな産業界の中から起きてきている。電力消費、そういう面から見ると、四十年当時の不沈とほとんどパターンが変わらないというふうにいわれているわけであります。そういう点から、公定歩合というものの再々引き下げということが非常に声があがってくるものがあるわけでありますが、この点については大臣はどうお考えになりますか。
  74. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 公定歩合につきましては、財界の一部あたりにも、再引き下げをしたらどうだろうというような声を出す人もあるようでありますが、いま、わが国は、国際収支は非常ないい状態であります。また、物価、これを考えると、なかなか容易じゃない。公定歩合を下げるということになりますれば、これは国際収支をさらによくすると、こういう要因になるわけで、さらにというか、多少の調整をするという効果はありまするけれども、一面、物価のことを考えるということになりますると、これはまた容易ならざる問題であるというふうに考えておるわけであります。まあ国際均衡ということも考えなければなりませんけれども、同時に、より以上に考えなければならぬのは、国内均衡、つまり物価問題、こういう問題をどういうふうにとらえていくか、そういうようなことからも、軽々にまだ第三次公定歩合の引き下げということを論ずべきじゃないだろうと、こういうふうに私は考えております。
  75. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 その点はわかりました。いま、景気の問題そのほか外貨の話もありましたんですけれども、前回、大臣は、この委員会でもって、外貨準備高が六十億ドルをこえるような状態になり、あるいは円が高くなっても、円切り上げは考えていないというような答弁があったわけでありますが、それから以後の大蔵省の外貨急増対策というものを見ていると、次から次へと出てきているわけであります。あるいは個人投資の自由化であるとか、不動産取得の自由化であるとか、政府短期証券の外人買いのストップ令が出るとか、JDRの創設であるとかと、次から次へとこういう問題が出てきておりますが、この外貨減らし策ということは、円切り上げということを回避しようと、そういうふうに考えていいんでしょうか。
  76. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 円の切り上げということは、全然考えていないんです。わが国は、とにかく今日はかなりの額の資産超過国であります。その資産はドルで保有しているということになりますから、そのドルと円との相対的価値、円の切り上げはドルの切り下げになりますから、したがって、わが国としては、相対として見ますると、非常な損失になる。そういうようなことから、理論的にも問題にはしがたい問題でありますが、同時に、実際問題として、外国からの圧力、そういうものがあり得るかというと、これはもう外国におきましても節度を持った国際社会の一員としての行動をとっておるんです。わが国に対して、わが国の非常な重大な問題である円の切り上げというようなことを公式に言っている人はありません。この間、私は、イギリス、アメリカ、フランス、ドイツ、ここへ大蔵省から出向しておりまする方々に御参集願って話も聞いたんですが、彼らが接する海外の専門家のうちには、とにかくドイツがこの問題では非常な失敗をしている、あの失敗の轍を日本がよもや踏むということは考えられないというのが共通の認識である、こういうふうなことでありまして、私は、いま、外貨がたまるというそれだけをとって外国がわが国に切り上げを迫るという事態は予想しておりません。ただ、問題は、私は輸出のマナーにあると、こういうふうに思うのです。わが日本は、いま諸外国で、スタグフレーション、つまり、不況である、同時に物価が上がる、物価が上がるのが、消費者物価にとどまらず、卸売り物価もまた上がると、こういう状態の中におきまして、わが国ひとり、消費者物価は諸外国並みに上がりまするけれども、卸売り物価は安定している。つまり、輸出物価が安定しているということなんです。ですから、繊維の問題だ、あるいは食器の問題だ、いろいろな問題があるにしても、そういう問題を乗り越えてまたわが日本の輸出が増進するという基盤がますます強くなってくる傾向を持っております。そういう際に、わが国は、海外の輸出相手国、その国内事情というものもよく考えなきゃならぬ そうしないで 輸出する余力ができた、輸出する余地がある、そこでその余地につけ込んで一年のうちに三〇%も四〇%も同じ品目の輸出がふえるというようなことになると、これは相手国の国内市場に与える影響はたいへん目につくわけであります。そういうようなところにいま問題があるようであります。通産当局に対しましても、秩序ある輸出、これが最大の問題だと、こういうことを申し上げておるわけでございます。その辺に根本問題がある。ただ、しかし、外貨が急増する、そういう勢いにあるわけであります。これも、短期資本が入ってきて急増するというのでは不健全な形であります。今度日本経済状態が悪いというときには、逆に引き揚げられちゃう。そういう種をまく結果になりますので、そういうことがないようにという配意をきめこまかくやっておる次第でございますが、しかし、今日、三月末は五十億ドルをかなり上回る外貨準備高というふうになりそうであります。そういう状態を踏んまえまして、秩序ある輸出というところに意を用いなければなりませんけれども、同時に、輸入制限の撤廃、また資本の自由化、あるいは対外経済協力、そういう国際社会において求められる責務、そういうものにつきましてはさらにさらに意を用いていかなければならぬだろうと、こういうふうに存じます。
  77. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 短期資金のいわゆる円投機をねらって入ってくるような金、そういうものについては、確かに、大臣の言うとおり不健全なものですから、とめなきゃならぬということはよくわかるのですが、じゃ、個人投資の自由化とか不動産取得の自由化ということがうたわれているということと、そのために一年間で何億ドルか減るであろうと申されているようでありますけれども、そういうものとはちょっと違うわけですね、性格が。そういうものまで取り入れられたということは、外貨急増対策に対しての外貨減らし策というのは、ほんとうのねらいは何だったんですか。
  78. 稲村光一

    政府委員(稲村光一君) ただいま御質問の点でございますが、われわれのほうといたしまして、外貨減らし策ということは、実は考えておったことはないのでございます。先ほど大臣からも御答弁がございましたとおり、短資の流入、それが日本におきましては短資に関する規制をやっておりますから、具体的には貿易関係の短期の貿易金融のかっこうでしか短資のあれがございませんけれども、そういう点におきまして、やはり内外金利差の関係で相当の短資の流入が貿易金融を通じてあるという状況でございますので、この点につきまして、それが非常に過度にわたらないようにということで措置をとりました。そういう点につきましては、したがいまして、今後もそういう見地から問題をきめこまかく考えてまいりたい。片方の自由化の問題でございますが、これは、従来、先般も先生の御質問に対してお答え申し上げたと存じますが、日本の為替管理の中で、国際収支が非常に悪く、かつ外貨準備が少なかったころの基本的な考え方で、国際的に先進国に比べましてまだ制限が残っているという部面もございますので、そういうものは、わが国の実情を考えつつ、現在のような国際収支の状況に沿いましてその制限を見直していく、こういうふうな線で検討してまいりたいと、こういうことでございますが、これはまだいろいろと研究問題もございますので、早急に結論が得られるかどうかわかりませんが、考え方といたしましてはそういう方向で検討してまいりたいと思っております。
  79. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 時間がないのでその辺にいたしまして、ちょっと特恵のことで大臣に伺いたいんですが、アメリカがフィリピンに現在供与しております特恵が一九七四年で切れると、そういうこともありまして、UNCTAD会議等では、逆特恵先進国に与えているいわゆる低開発諸国といいますか、開発途上国ですね。たとえば、英国に対しては、ジャマイカ、トリニダード、トバゴ、インド、パキスタン、そういう国々が逆特恵を与えている。また、ヤウンデ協定のもとでEECの六カ国にアフリカの十八カ国が逆特恵を与えている。こういうものがあるときに、特恵条件というものができてくるということは、これは先進国間の負担の公平ということがどう考えても納得できないような状態だと思うわけです。この逆特恵についてのUNCTADでの特恵特別委員会の報告書というのをいただきましたけれども、その中には、「解決されないままとなっている逆特恵の問題に関し、直接関係国間でさらに協議が必要であることに留意する。」ということで、未解決のまま放置されている。放置されたままでもって特恵が起きてくるということになると、これは、はっきり申し上げて、イギリスであるとか、あるいはEECの諸国だけが、特別なルートというものを、自分の市場といいましょうか、そういうものを確保した上でということであります。そういうことがはたしていいのかどうか。わが国としては、これは何もアメリカに追随しろということじゃありませんけれども、負担の公平ということから考えたらば、逆特恵というものはなくす方向に行くのが当然であろうと思うわけでありますけれども、わが国としての主張と一体それはどういう経過になったのか、その点を伺いたいと思います。
  80. 谷川寛三

    政府委員谷川寛三君) ただいまお話がありましたように、確かに、英連邦諸国、それからヤウンデ諸国とEECとの間等におきまして、逆特恵の供与が行なわれておるようでございます。UNCTADの場におきましては、これはなかなか大きな問題でございまして、相当な議論が行なわれましたが、結論を申しますと、合意書をごらんいただいたと思いますが、第二節で、もう少し時間をかけまして関係国間で協議をする必要があるということで一応の合意に達しております。つまり、何とか早く実施をしなければいけないという問題がありましたので、この問題を深く議論しておりますと、ヤウンデ諸国とEECとの間、英連邦諸国間のいろいろな事情、非常に複雑な沿革的な問題もございまして、早期実施はなかなかいかぬということがございましたものですから、いま言ったように、さらに時間をかけて議論をしましょうということになりました。アメリカは、いまお話がありましたように、とにかく今後五年の間に逆特恵をやめるということをいま約束しないなら特恵はやりませんぞということを強く主張しておりましたが、日本は、これはスイス、北欧なども同様の意見を申しておったわけでございますが、これは特恵を供与します場合のキーエレメントだということを強く主張してございます。でございますから、先ほど申しましたように、いろいろ事情がありますので、直ちに日本の場合、逆特恵先進国に供与しております国に対して特恵をやらないということを言うことにつきましては問題がございますが、レビューの期間等におきまして再びこの問題が付議されまして議論をされます段階におきましては、いま申しましたようにキーエレメントという姿勢で廃止を強く要求してまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  81. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 受益国側、九十何カ国かあるわけでありますけれども、その中にこういう逆特恵を特定の国にしているところがある。そういうところとの直接の交渉ということになると、わが国が先ほども申し上げたようなこういう国々に対して特恵を与える——まあ与えないというわけにはいかないかもしれませんけれども、じゃそれについての直接的な交渉というものは、おやりになる方針ですか。
  82. 谷川寛三

    政府委員谷川寛三君) ただいま申しましたように、それを事由に特恵を供与しないということは問題があろうかと思っております。しかし、これは、負担の公平その他の見地からいいましても、特恵の精神からいいましても、問題がございますから、関係国間で協議が始まりました段階におきましては、もちろん日本にも意見を求められるわけでございますから、その段階におきまして、強く、いま申しました特恵供与についての判断の場合の大きな問題であるという姿勢に立ちまして逆特恵廃止を要請してまいりたいというふうに考えております。
  83. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 逆特恵の問題、これについて、いま、キーエレメントであるという非常に重要な問題であるということがわかったわけでありますが、これはそのほかのいわゆるサロン外交においても、これは、大臣、おやりになりますか。そのほかの外交の場においても同じことを要求してまいりますか。それと、もう一つは、対日ガット三十五条援用国ということについて、わが国の場合には、そういうのに対してはどういうふうに特恵のことを考えているのか、これは一つの大きな問題だと思う。一方でサービスをして、他方でもって差別をされるということではならないわけでありますが、そういう点についての基本的な考え方を聞きたいと思います。
  84. 谷川寛三

    政府委員谷川寛三君) これは、先ほども申しておりますように、特恵の性質、それからガットの精神にも反することでございますので、UNCTADの場におきまして強く要求してまいりたい。直ちにそういう国に対しまして特恵をやらないというふうにはなかなか歴史的な沿革的な特殊な事情があることでございますから言いにくいのでございますが、特に日本のスキーム自体が相当シビアになっておりますこと等も考えますと、必ずしも当初からやらないということは言いにくいのですが、強くあらゆる機会に呼びかけてまいりたいと思っております。
  85. 鈴木一弘

    ○鈴木一弘君 いままでの委員会でこれは大臣に聞くということで残っておる問題が二つばかりありますので、ぜひ伺いたいんですが、一つは、尖閣列島の石油開発の問題で、これは前回ここで質問いたしましたときには、世界一の油田であるという予想がある、日本での調査も進んでいる、そういう点で積極的にやったらどうかということについて、大蔵大臣と通産大臣とがこの問題について相談をしたというようなことがございましたので、どういう方向になっていくのかを伺いたいのが一つ。  もう一つは、例の財産の合算の問題でございますが、財産所得についての所得税では合算方式をとられている。一方、西ドイツの連邦裁判所ではこれは違憲ということで、子女合算はなくなったわけです。そうして、夫婦については二分二乗方式というふうになったわけであります。わが国の場合は、所得税は、妻の持ち分というものを認めないで、そのまま一人の収入としてかかっていく。それが、相続税では、三分の一ということで、相続分は三分の一ということになり、四百万円という方式になると、どう考えても、本来ならば妻の持ち分が入っているものを認めないでやったんですから、相続分の三分の一とか、相続税についての夫婦間の贈与の問題あるいは相続の問題については、これは税金を課するということが、わが国の、法の下に平等であるとか、男女平等の原則からいっても、憲法にも抵触する問題である、こういうことでこの前質問したのでありますが、委員会等ではありましたが、子女合算の問題についての問題については予算委員会等ではありませんでしたが、その点についての大臣の考え方、この二つを伺って、終わりたいと思います。
  86. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 尖閣列島の近傍にかなり有力な油田がある、そういうことがエカフェの研究で出てきておるわけです。そこで、いま、とにかく資源時代である。石油資源というものがずいぶん問題になってきておるその時勢とすると、世界じゅうでこれに注目をする、これはやむを得ないことかと——やむを得ないというか、自然のことかと、こういうふうに思います。ただ、この問題は、尖閣列島はわが国の領土である、これは一点の疑いの余地はないのでありますけれども、問題は、大陸だなの問題であります。そこで、大陸だなの、何というか、帰属がどこになるのかということをめぐりまして、これはかなり関係諸国との間に問題のありそうな地域になっておるところであります。でありますので、まだ政府べースではこの問題に手を染めておりませんけれども、その大陸だな問題がどういうふうに解決するか、これが円満に解決されるというようなことになりますれば、もちろん政府も、つまり政府じきじきじゃありません、これは石油開発公団が出ていくということになりますが、そういう意味において政府もこの問題には取り組むべき価値のある問題であると、こういうふうな認識を持っておるわけであります。まだ通産大臣と大蔵大臣でこの問題について話し合うという段階まで来ておりません。  それから夫婦の所得税の合算問題は、このあいだ予算委員会でも相当詳細な質問がありました。それで、相続の問題とか生前贈与の問題になりますると、これはわが国の夫婦別産制をとっておる民法問題とからまるわけでありますが、所得税をどういうふうに課税するかということにつきましては、これは別に民法上の関係はないんです。純粋に税法上の考え方で考えてみたらいい問題であると、こういうふうに見ておるわけでございまするが、わが国におきましては、明治、大正、昭和と、戦前におきましては合算制がとられておったんです。ところが、二十五、六年のころですか、いわゆるシャープ税制が行なわれるということになってきた。それで、その合算制をとると、各世帯間で不権衡が起こるというようなこと、それから合算制の利点に着目をしまして財産分割が行なわれる、つまり核家族化の傾向を税が刺激するというようなことでありますとか、いろんな理由をあげまして、合算制はいかぬ、夫婦別産課税にすべきである、こういう勧告になり、それを採用せざるを得なかったのですが、自来二十年間、わが国の税制として国民各階各層の上になじみ込んでおる税制となっておるわけです。そこで、これを合算制に変えるというようなことになりますと、その方法として二分二乗というようなことがいわれておりまするが、そうしますと、これは税の体系に対しましてもう革命的な大きな変化になるわけであります。それは、徴収の手続の問題ももとよりでありまするが、同時に、税率という問題これも根本的に変えていかなきゃならぬ。特にわが国は累進税率をとっておる。また、その累進税率というものをはずすわけにはいかない。累進税率下においてこの制度改正が与える影響はもう非常に甚大なものだろうと思います。合算制、二分二乗の方式へという制度改正、これはなかなかとり得ざるところであると、こういうふうに見ておるわけでございますが、まあ諸外国でもいろいろ立法の事例なんかもあります。二分二乗方式をとっている国が多いんです。そういうような状況もよくつぶさに検討いたしてみなければならぬと思っておりますが、それは言うべくしてなかなか実行はそう容易なものじゃないということだけをお答えさしていただきます。
  87. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 先ほど、鈴木先生が、西ドイツの違憲判決に基づいて、日本が現在行なっておる子女の資産合算が違憲であるかどうかという御質問があったわけでございますが、法律問題にわたりますので私からお答えさしていただきますが、一つは、西ドイツの基本法の規定が、婚姻及び家族は国家秩序の特別の保護を受けるという規定になっておるのでございます。その結果、合算によりまして子女の税負担が重加されるということが一つの理由であったろうと思います。それからもう一つは、合算の結果、それに対して連帯保証の連帯納税義務を負わなくてはならないというのが西ドイツの税制のたてまえでございました。この結果、夫婦間の間で争いが起こる、これが家庭を乱すことになるという、その二点が違憲の判決のおもなる理由であったように考えております。  わが国の場合は、そういう合算はいたしておりませんで、むしろ五百万円以上の高額所得者の持っております独立してない子女について、その税率の計算上、これを合算したところで税率を定めるという趣旨でございまして、それぞれ財産としては分割した形でこれを課税しておるということでございますので、わが国の憲法との関係は起こらないと考えております。
  88. 向井長年

    向井長年君 質問時間が短時間でございますが、大臣、戦前は、国民は三大義務がありましたね。御承知のごとく、義務教育、あるいは納税、そして徴兵。まあ、しかし、戦後は徴兵というのはなくなりましたが、義務教育はあります。納税の義務について、これは国民は当然納税しなければならぬという義務があるわけですが、しかし、現在の実情に応じての課税でなければならぬ、こういうことであろうと思いますが、そういう意味で、私は、二、三点お聞きいたしますが、特に所得税が毎年毎年自然増収があるわけであります。それは相当今後も見込まれると思います。この自然増収に伴っての減税は、直接減税あるいは間接減税、こういうような形でやっておられると思いますが、少なくとも直接減税——本年度も減税いたしておりますが、この減税の基礎はどの辺に求めてその額をきめておられるのか、これをまずお聞きしたいと思う。
  89. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 減税の額は、一本化された考え方、そういうことじゃなくて、長期にわたる経済、その中における財政の見通し、それから国民の負担能力、それから諸外国等の財政に取り組む動向というようなことをにらみ合わせましてきめておるわけです。つまり、これから公害をはじめ社会資本の需要というものがずいぶ大きくなってくるだろうと思うし、社会保障も充実しなければならぬ。そうすると、ずいぶん財政需要というものがかさんでくるわけです。それに財政は立ち向かわなければならぬ。そうすると。どうしても幾らかの租税負担の増高という傾向を持たざるを得ないと、こういうことになるわけです。ですから、そういう長期的な日本の国の行くべき姿というものを展望する。それから、同時に、しかし、それだけ経済が発展しても、国民の負担能力というものが一体どうなっているんだろうかということを一方に考えなければならぬ。そういうようなことを考えまするときに、一つの問題が出てきますのは、直間比率というような問題です。全体としての租税負担は多少ふえる。その中において、直接税負担というものを軽くしていくという考え方。それから同時に、また、さらに具体的な問題になりまするというと、世界的にどういう税制をとっているか、これなんか国際社会の中の一員として大いに参考とすべきことは参考としていく、そして具体的な個々の税制改正というものの重要な資料とする、そういうようなことじゃないかと思うのですがね。一がいにどうというようなことは言えないかと思います。
  90. 向井長年

    向井長年君 それで、本年度は、所得税の自然増収は六千九百億ぐらいあるようですが、私は所得税の問題を言っておるわけですが、所得税の自然増収に対しては、大体これくらい自然増収があるとするならば、何%は直接減税に回すというようなことをこれは制度化すべきではないかというような感じもするんですが、たとえば、三分の一、あるいは二分の一、これは直接減税として行なうという制度化、こういうものはできないものですか。当然、私は、現在よりも来年度は所得が若干ふえる。したがって、これに伴ってそれのたくさんの税金がかかってくるわけですから、これをひとつ最低限はこれだけやるんだという制度化の問題、こういう問題を考えるべきだと思うんですが、その点、いかがですか。
  91. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) そういう考え方からいいますと、物価の動き、それは重要な指標になると思います。それと税制との調整、これはしないと不公平になりはしないか、そういう感じがいたすわけでありますが、どのくらいの自然増収があるからその何割を減収するというところはなかなかこれはふん切りがたいむずかしい話のように思います。まあ諸般の情勢を勘案いたしまして、ことしは課税最低限を何万円上げる、何万円上げるにはどういう内容を持たすべきかと、こういうようなことを世界の動きの中において妥当と見られる日本の場合を想定いたしまして、そして減税の政策を進めると、こういうことが常識的ではあるまいか、と、そういうふうに考えます。
  92. 向井長年

    向井長年君 いま、預金利子のいわゆる非課税が、百五十万円ですか、そういう形できめられておりますが、これは、国民所得というよりも、給与生活者が、御承知のごとく、おそらく公務員にいたしましても、七万円余りじゃないですか、平均の給与がですね。そうしますと、こういう諸君が、毎年若干のべースアップをいたすにいたしましても、わずかな生活費から差し引いて預金をしていく。それで、この預金にいたしましても、利率がこうであるという形から、定期預金をするとか、あるいはまた信託預金をするとか、こういう形になると思う。その目的は何だ。将来やはりみずから自分が家も持ちたいとか、あるいは生活の安定をしたいと、こういう気持ちからその預金をささやかながらしていると思うんですよ。それに対して、利子に対する課税という問題ですね。これは百五十万円という分離課税になっておりますけれども、もっとこれを上げてもいいんじゃないかと、こういう感じがするんですが、この点、いかがですか。
  93. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 少額貯蓄、零細貯蓄を奨励したいと、こういう考え、これは向井さんのお述べになったように、みんなが国民がひとしく、とにかく家を持ちたい、そういうような希望があるだろうと思います。そういうような希望にこたえるという趣旨でこういう制度があるわけであります。いまお話にありまするとおり、預金につきましては、いままで百万円だったのが、今度は百五十万円にお願いしたい。それから別に郵便貯金があるんです。これも免税でございますが、いままで百万円が郵便貯金の限度でありましたが、百五十万円、こういうふうにする。国債は、いままで国債というものの免税点が五十万円だったんです。今度はこれを百万円にしよう。そうすると、その三つを合わせますと、それで四百万円なんですよ。いままで四十五年度までが、その三つを合算しますと二百五十万円であったものが、今度は四百万円になると、こういうことであるし、その上さらに財産形成対策というので天引き預金に対しましては特別な奨励をしようというような制度もありまするし、まあこれは租税特別措置でありまするから、またあんまりこれをやりますと皆さんからおしかりを受ける、そういうものでありまするか、この程度のことはひとつお許し願って、特にサラリーマン階層というものに希望を与えるようにしたらどうだろうか、こういう考え方をとっておるわけであります。
  94. 向井長年

    向井長年君 大臣ね、いま、東京周辺で、自分が家を買いたい、土地も買う、あるいはまた建て売りを買う、どれくらいすると思っておるんですか。四百万円とかなんとか言われるが、それで家が建ちますか、買えますか、長年勤めて預金してですね。この点、いかがです。
  95. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 四百万円というお話がございましたが、これが配偶者控除という相続税のお話でございます場合には、むしろ相続税の評価ということになりますと、時価の五割ぐらいということになっておるかと思います。大体、現在、三百万から四百万の間。私ども、今度、財産税の控除の関係で調べましたところ、東京の郊外、しかも比較的いいところ、世田谷、杉並あたりで、土地三十坪から四十坪、家屋が二十坪といったところが、大体そのあたりではなかろうかと、かように考えております。
  96. 向井長年

    向井長年君 そのあたりというのは、どういうことですか、四百万円で買えるというの。
  97. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) それは、相続税の評価額でございます。
  98. 向井長年

    向井長年君 私のいま聞いているのは、評価額じゃなくて、いま預金をして、そうして家を持とうと。そういう場合に、いま言われましたように、郵便貯金も入れまして四百万ぐらいになると、こういう形ですけれども、それをためるのにたいへんなんだな。それに税金がずんずんかかってくるわけですよ、金利に対して。できるだけ利率のいい、あるいは金利に対して税金のかからない形をとろうとして努力をしていると思うんだ。それで、利率のいいといえば、信託がいいだろうとか、あるいは定期がいいだろうとか、こういってやったところが、五分五厘に対する税金がかかり、あるいは信託の利子に対する税金がかかってくるわけでしょう。したがって、そういうサラリーマン階級の持ち家のために預金をしておる、たまたまこれがある程度たまって建てようとしたところで、いま言われるような税金がかかってくるものだから、本来であるならばこれはもっと限度をそれくらいに求めるべきではないか、こういう立場から私はいまの問題を取り上げておるんですが、いかがなんですか。
  99. 吉田太郎一

    政府委員吉田太郎一君) 一人四百万円と申しましたのは、家族一人当たりでございます。したがいまして、家族人数に応じまして、たとえば三人家族でございますと、千二百万までは非課税の恩典が受けられると、こういうことにはなっております。ただ、現実にそれだけの貯蓄をなし得るかどうかということとは別でございますが、非課税の限度としては家族数当たり一人四百万円が限度と、こういうことでございます。
  100. 向井長年

    向井長年君 時間がないからやめましょう。その論議はまた租税特別措置のときにやります。  それと、大蔵大臣、国民は、国税であろうが地方税であろうが、これはみんな税金と見ておるんですよね。そうでしょう。これは大蔵大臣のほうの責任があるわけです。地方税であっても、自治省と言われるけれども、国民はそう感じていない。すべて税金というものは同じように考えて納税しておると思いますが、特に地方税との関係ですね。この予算の中で地方税の問題とあわせて大蔵省は非常に大きな構想の中から立てなければならぬと思いますが、そういう場合に、地方の財源という立場から、地方の減税問題があると思います、それぞれ。その問題について自治省といろいろと討議いたしますと、大蔵省がどうしても聞かないからやむを得ないんだと、こういうものの言い方を自治省のほうではしておるんです、現在までね。こういう地方税と税との関係ですね、どういう形で組まれておるのですか。
  101. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) これは、地方税は地方に必要なる財源ということで、国税とは別個になっておるわけなんですが、私は、いま向井さんもお話しのように、国税であれ、地方税であれ、納める人は同じ国民なんです。そこで、常に同じ人が納めるんだという見地から、中央・地方税、この問題は考えなきゃならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。  さて、そういう考え方に立った場合におきまして、一番国民に受けるというか、国民の待望しておるのは、これは付加税方式だろうと思う。税務署からも税務事務所からも両方から取り調べを受けるというような制度はやめまして、国税でまた所得税、それにおんぶして地方税もきまっていくという形、まあそういうことになるには、前提として基礎控除を肩を並べさせなきゃなりませんけれども、それからそういうことができて付加税方式が行なわれるならば、今度は徴税のほうも共同でやったらいいと思うのです。これはむしろ地方にやってもらって、国は地方でかわってとっていただいたものを受け取ると、こういうふうにしたらいいだろうかと、こういうふうに思っておるわけでありますが、いま、法人税につきましては法人付加税というのがありますが、所得税については付加税方式でないんです。私は所得税についても付加税方式とったらどうだどうだと言うんですが、これは国会の中でも、どうも地方自治の精神をじゅうりんするものであるというようにきめつけられまして、なかなか私も身動きができないんです。このあいだは少しそういう議論に対して抵抗を感じまして、そういう考え方は少し保守的に過ぎると、こう言ったら、またそれでつかまりましてとっちめられましたが、そういう考え方はどうも少し時代におくれているんじゃないか。やっぱり、国民という点に立脚いたしまして、そうして中央・地方税の徴収というものを考えるべきじゃないか。だいぶそれは違ってくるんです。税務公務員にいたしましても、国税のほうでは五万人おりますが、地方のそういう税務職員は八万人もおるんです。それが一緒になるということになったら、たいへん能率も上がるんじゃないか。私といたしましては、いろいろ締めつけを受けますが、この考え方は断じて捨てないと、こういう考え方であります。
  102. 向井長年

    向井長年君 その考え方は、私も賛成なんですが、消費税に対して基礎控除方式はやらぬわけですか。
  103. 細見卓

    政府委員(細見卓君) 消費税と申しますか、間接税というのは、一般的に基礎控除というようなことは取り上げない方式にいたしております。と申しますのは、間接税というのは、原則的に段階課税になっておらぬわけでありまして、一本税率が多いわけでありますので、むしろそういう物の消費あるいはサービスの消費そのものについて課税するその場合に、あまり小規模のものは、納税者にも問題があり、それから税務執行も困難だということで、行政簡便といわゆる納税者の便宜というふうな程度の考えでございますので、消費税については基礎控除は入らず、ただ、例外がございますのは、料理飲食税あるいは宿泊などにつきまして、これは家に寝ておっても一定まではかかるわけです。そういうものを引こう、いわばその特殊なものであるということでございます。
  104. 向井長年

    向井長年君 消費税に対して、確かに、行政上では簡便ですよ。ところが、納税者は簡便じゃないですよ。納税者は過酷ですよ、これはね。そういう立場があるわけだから、それはそういうことじゃない。納税者は非常に過酷だ。たとえば、大蔵大臣、いつも言っているように、電気ガス税のようなものですよ、これについては、少なくとも生活必需品に対して現在なお七%というものをかけられておるわけです。これは地方税ですよね。毎年毎年七十億というような増収が全国で出てきておるんですよ。それは、ほとんどこれに対する減税もせずして、過酷にかけてきておる。地方財源がなくなるからといって。地方財源がなくなるのではなくして、本年よりも来年度はまたふえてくるんだ、自然増収として。それを、徴収に対して非常に便利がいいと、それから毎年ふえる財源であると、そういう中から国民に対しては過酷な状態が毎年毎年ふえてくる、こういう状態は一日も早くなくしなければいかぬ。その場合に、しかし、そういっても、財源が必要だからというならば、基礎控除方式もとれるではないか。たとえば、千円あるいは千五百円までは無税だ、それからは若干ぜいたくではないけれども、その規模に応じて税金をかけると、こういう方向があるわけですよ。そういう問題については、自治省だからといって、その自治省は自分のところの自治体の財源だけを何とか確保しようとするわけだ。これは、やっぱり、大臣、大蔵省としても、それに対する見合う地方財源も苦しめてはいかんと思うんですよ。しかし、自然増収があるんだから。池田内閣当時、御承知のごとく、これは悪税だから少しでも早く軽減したい、将来撤廃したい、こう言ってきて、ようやく一%一%して七%まで来たけれども、それから一つも向こうへ進まないんですね。ただ、わずか免税点を百円ぐらい引き上げた程度で、こういう不合理というものは、大蔵であわせて地方税も検討しなければ、自治省だけにまかせてはできないと思うんですよ。したがって、その点を、大臣、十分腹に入れて、今後どうするか御検討いただく、これの答弁をいただいて、私の質問を終わります。
  105. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 電気ガス税は、もうずいぶん国民の間からこれが撤廃が唱えられるわけなんです。ただいま、いま、地方自治団体が、行政水準を向上する、そういうたてまえから、ずいぶん税としては取りいい税であるものですから、なかなかこれを離したがらない、そういう傾向があるんです。もちろん、税は、中央、地方あわせて考えなきゃならぬ。税制調査会これも地方税のこともあわせ検討するわけなんですけれども、なおお説の点はよく頭に置きまして検討に当たりたいと、かように考えます。
  106. 渡辺武

    ○渡辺武君 私は、入場税について伺いたいと思います。  この税金を撤廃してほしいということは、芸術家、愛好家はもとよりのこと、良識ある国民のひとしく強く要求しているところだと思う。したがいまして、両院でもこの入場税撤廃について決議があったということは、御存知のとおりだと思うのですね。大臣も、私が御質問した際に、前向きに検討するという趣旨の御答弁をいただきました。ところが、ふたをあけてみたら、どうでしょうか。今度の法案は、免税点三十円から百円に上げると、差は七十円と、こういうことですよ。私は、これを見て、あきれ返りました。まあ大臣言明もずいぶん安くなったものだなあという気がしたわけです。私、きょうここへ、音楽だとか、バレーだとか、歌舞伎だとかというもののチラシを持って参りましたけれども、見てごなんなさい。たとえば、N響室内合奏団、これの入場料は幾らかといいますと、A席が千五百円、B席が千二百円、C席が九百円と、こういうことですよ。それから牧阿佐美のバレー団ですね、これの公演の入場料は、二千円、千五百円、千円、こういうようなところです。時間もないから、ほかは読みませんけれども、今度の措置が何のかいもないということは、これはもう明らかだと思うのです。一体、なぜこんなみみっちいことをなさったのか。両院決議があるのに、大臣言明があるのに、なぜこんなみみっちいことをなさったのか、そのことをまず伺いたいと思います。
  107. 細見卓

    政府委員(細見卓君) 入場税の免税点の引き上げにつきましては、そもそもこの入場税に免税点を置きましたのは、博覧会とかあるいは特殊な催しものについて入場税を課すのは適当でないということから始まりまして、その後若干の変遷がございましたが、現在は、小規模の、いわば不特定といいますか、臨時の催しものについて税をかけるということは、あまりにも零細なものまで取り入れておることになり、また、そういう臨時の催しについては興行者もなれておらない、そういう人たちを免税点で救ったらどうかということで現在のものがあったわけでありますが、いかにそういうものが低料金とは申しましても、三十円ではいかにもひどいということで、百円の案あるいは二百円の案というのを検討いたしたわけでありますが、二百円ということになりますと、百円と二百円との間のものはほとんど風俗映画といわれるようなものが多いとか、あるいは二百円になりますと、地方の番外館などになりますと二百五十円ぐらいのところで、もし二百円というところに免税点ができれば、その辺に価格のシフト現象が起こる。いろいろなことがございまして、結果としては私どもとしてもあまり誇れる金額ではございませんが、一応百円ということになっております。
  108. 渡辺武

    ○渡辺武君 大臣の御答弁を伺っている、なぜ撤廃されなかったのか。
  109. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 私は、免税点を、二百円説、三百円説がありましたが、少し上げたいと思ったんです。思ったのでありますが、ただいま主税局長が申し上げましたようないろいろな難点がありまして、そういうようなことから、とにかく気は心だと、そういうような程度のあれに終わったわけでございますが、前向きに検討いたしました結論がそういうことであったわけであります。
  110. 渡辺武

    ○渡辺武君 気は心などということは、これは両院の決議があったんですから、あんまりふざけた御答弁だと私は思いますよ。まじめに答弁していただきたいと思います。  大臣は、衆議院での御答弁の中で、撤廃をされなかった理由として、ほかの個別物品やサービスに対する課税との負担のバランスを著しく失するので反対である、撤廃反対だということを述べていらっしゃるですね。大体、入場税が、これは戦争中につくられたもので、それが依然として残されている、戦争課税だということは、いままで私ども盛んに追及してきました。ところが、その追及を避けるために大臣が持ち出されたのが、いま言ったような税のバランスという議論だと思うんです。音楽や演劇等の芸術鑑賞にかかる入場税と、パチンコなどの娯楽施設利用税、それからバーやキャバレーや芸者の花代いうとようなところの料理飲食税などとのバランスをとろうとすることが、芸術を軽視する考え方のあらわれだと私は思います、そのこと自体が。しかし、課税すべからざる芸術鑑賞に税金をかけているということから、その税のバランスも矛盾撞着だらけだというふうに私は思います。  大臣も御存じだと思いますけれども、昭和四十三年の七月に出された税制調査会の長期答申、この中でも、入場税の税率については次のように言っております。「入場税がその消費の背後にある担税力に照応して応能的に課税されるべき性格を有するものであるかぎり、料金階級別税率構造はむしろ合理的なものといえるが、この制度によるかぎり、芸術性の高い催物等に対して重い負担を課することとなる」と、こう言っております。これでもわかるように、消費税の原則は入場税には適用することはむずかしいということだと思います。  次に、免税点を引き上げるという問題ですけれども、この点についても、「免税点を相当高い水準に定めた場合には、一般にそのコストの高い催物——この催物の中には一般に芸術的価値の高いといわれている催物が多く含まれる——だけが課税されることとなる」というふうに言っております。  結局、これは、音楽、舞踊、映画など、芸術の鑑賞という課税すべからざるものに税金をかけているということから来る矛盾だと思います。一体、バランスをどういうふうにおとりになるのか、バランス、バランスとおっしゃるけれども。この点を伺いたいと思う。——いや、大臣の御答弁を伺っている。
  111. 細見卓

    政府委員(細見卓君) 御承知のように、日本の間接税は、物の消費につきましては、物品税がございますし、サービスの消費につきましては、いま御指摘の娯楽施設利用税でありますとか、あるいは料理飲食税でありますとか、国税といたしましては通行税というようなものがあるわけでありますが、物品税につきましては、御承知のように、製造段階での課税が二〇%ないし一五%ということになっておりまして、これを小売り価格に直しますと、おしなべて一〇%ということになっております。そのほかのサービスにかかっておりまする税は、いまさら申し上げるまでもなく、すべて一〇%の課税がたてまえになってできておるわけでございまして、その間におきまするある程度の金額の支出に対してサービスを亨受することに対しましていろいろな税がかかっておるわけでありますが、それはすべて一〇%になっておる。その間、渡辺委員御指摘の、芸術性の問題あるいは準芸術の問題というようなものがございまして、差等税率を設けたらどうかいうとような議論もあったことはございます。しかし、税におきまして、何が準芸術であるか、何が娯楽的なものであるかということを区別するということは困難だということで、現在のように、おしなべて日本の消費税は一〇%という——小売り価格に一〇%というようなところでバランスがとられておる、こういうわけでございます。
  112. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) この問題につきましては、特に芸術性の高いなまものといわれるものなんかに配慮はできないかということは、ずいぶん検討してみたんです。しかし、いま主税局長からお答えをいたしておりまするとおり、さて、どの辺で線を引くべきかいうとような点にも技術上の困難がある。そういうようなことで、いろいろの方面からお話がありますが、なまものの特例ということまで行き得なかったわけでありますが、とにかくせめてもというので百円に引き上げたということにいたしたわけであります。
  113. 渡辺武

    ○渡辺武君 結局、課税すべからざるものにかけているから、税率の点においても、免税点においても、何とか矛盾の取りつくろいをしなきゃならぬということで、一〇%いうとようなところに落ちついたということだと私は思うんです。あなたの答弁はそうしか聞けないですね。  それじゃ、もう少し伺いますけれども、先ほども主税局長の御答弁にありましたが、いま展覧会は入場税の課税範囲からはずされておりますけれども、一体、展覧会場でゴッホやセザンヌの絵を見ることが、これがただであって、べ−トーベンやモーツァルトの音楽を聞きに行くと何で税金がかけられるのですか。同じ芸術品ですよ。芸術大学だって音楽と絵については何の区別もしていないでしょう。それからまた、著作権法でも差別をつけてはいない。差別をつけているのは入場税だけです。何でこんな差別をおつけになるんですか。バランスがちっともとれていないじゃないですか。その点、どうですか。
  114. 細見卓

    政府委員(細見卓君) その点が、先ほど、入場税につきまして、文化的なものあるいは芸術性の高いものとそうでないものとを区別しろと言われたことのむずかしさをあらわすわけでありまして、一般的に博覧会というようなところは、むしろ娯楽とかあるいは芸術とかというものにつながるものでなくて、ある程度、物に対する知識でありますとか、あるいはめったに見られぬものを見るとかいうような、いわば教養といいますか、知識を広めるというような程度のものが多いわけでありますが、その一連のところにいまお話しの展覧会場が出てくる。片一方、音楽のほうになりますと、おっしゃるように、非常に芸術性の高いものがあるわけでございますが、その反面、かなりいわゆる歌舞音曲といわれるようなものがあるわけで、そのほうからつながってくる。確かに、おっしゃるように、総体的にバランスがとれている中でぎりぎりのボーダーラインになったときには、いろいろな御議論があろうかと思います。その辺は、先ほど申し上げておりますように、そういうことがあって、博覧会ははずれておりますが、一律な一〇%課税をせざるを得なかったというわけでございます。
  115. 渡辺武

    ○渡辺武君 それごらんなさい。何で絵を見に行くのがただで、音楽を聞きに行くのが税金かけられるのか、その辺の説明ができないじゃないですか。そもそも課税すべからざるものにかけているからそういうような矛盾が出てくるんでしょうどうですか。  時間を節約するために、まとめて伺いますけれども、もう一つ、二つ例をあげて聞きます。いまの場合をさらに考えてみますと、デパートは、高い入場料をとって、たとえばパリモードなど、これは全くの言ってみればぜいたくに類するものだと思いますけれども、こういうようなものの展覧会をやります。ところが、それは無税だ。劇場でシェークスピアの劇を上演して、若い学生さんや勤労者や愛好家が、ない金をはたいてそれを見に行く。ところが、それには税金がかかる、こういうことなんですね。おそらく、担税力というようなことからすれば、あなた方のよく言うですね、むしろパリモードの展覧会を見に行く人のほうがよっぽど担税力があると思うんです。ところが、そっちはただなんです。一体、それはどういうことになるのか、バランスという点で。それからもう一つ例をあげます。能や文楽や歌舞伎の出演者で文化財保護法の指定を受けた人が出演する場合には、これは無税だ。ところが、出演しない場合には同じ出しものでも税金がかかる。同じ出しもので、なぜ一方が無税で、一方は税金がかけられるのか。こういう矛盾が出てくるでしょう。一体、それぞれの根拠は何ですか。
  116. 細見卓

    政府委員(細見卓君) 展覧会のお話でございますが、このの催しにおきましても、ファッションショーとかいうようなことで新しいショーあるいはファッションを見せるということが主になって入場税を取っておる場合も取っておらない場合も、そういうものが主になっておるような場合につきましては課税になるわけでありまして、御指摘のようなものは、そうした大きな展覧会というのにまでは至らない、文字どおり百貨店そのものの商品のセールスにあたっての一つの宣伝という程度のものにとどまっておる場合であろうと思いますし、シェークスピアの場合におきましては、これは芸術性の非常に高いものでありましても、いずれにしても入場税のかかるべきところで行なわれておるものであるということでその差があるわけであります。  それから、第二の点につきましては、入場税の非課税につきましては、国の文化財として指定されておる方々を推奨しようというわけでございまして、御指摘のような議論をすれば、むしろ歌舞伎座で行なう歌舞伎に税がかかって国立劇場で行なう同じ歌舞伎には税がかからないのはおかしいじゃないか。その辺については、文化財であり、しかも、その文化財が、何といいますか、それ自体古い日本の文化を伝承するものであるというもの、それを取り上げて非課税にしておる。これは入場税法規定によって行なっておるわけでございます。それ以外の分野におきまして、そういう具体的に税の執行者が文化の価値判断をするということじゃなくて、外形的に明らかな、何らの紛議を起こさないというようなものについてそういう指定があるわけでございます。
  117. 渡辺武

    ○渡辺武君 入場税が矛盾しているから、その矛盾を指摘しているのに、入場税に基づけばこうなるというようなことは、説明になりませんよ。  もう一つ伺います。先ほど、物品税とのバランスということを言われました。これは、政府がもうたびたび、言明されておりますように、物品税の課税原則というのは、ぜいたく品に課税するということだと思う。そのぜいたく品に課税するということをたてまえにした物品税とのバランスをはかって入場料をかけるということ、これは、結局のところ、芸術鑑賞をぜいたく品と思っているというふうにしか思えませんけれども、これはひとつ大臣から御答弁を伺いたいと思います。芸術鑑賞をぜいたく品と考えていらっしゃるんですか。——大臣からです、もう時間がないので。
  118. 細見卓

    政府委員(細見卓君) 一言申し上げて、後に大臣にお答え願うといたしまして、物品税は、単に奢侈品でなくて、今日では、ある意味では、皆さんに非常に普及しておるいろいろな電気器具等についても課税になっておるわけでありまして、税でございますので、ある程度の高度なといいますか、ある程度の消費が行なわれました場合には、それが物であれ、あるいはサービスの享受であれ、やはりバランスをとって課税するというのは、税はバランスをとるべきものであるという意味で、私どもは、物品税を奢侈品課税と観念いたしませんので、その間には矛盾はないと、かように考えます。
  119. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいま主税局長からお答え申したとおりでございます。
  120. 渡辺武

    ○渡辺武君 時間が来たようなので、最後に一問だけして終わります。これは主税局長の答弁は要りません。大臣からひとつ答弁をいただきたいと思います。  いま、主税局長の御答弁を伺っておりますと、芸術そのものに対して税金をかけるという立場からいろいろ区別してかけたりかけなかったりといことをやっているんですね。これは、結局のところ、税金をかけるべからざるものに税金をかけているがゆえに、芸術に対して大蔵省が差別的に干渉している、事実干渉しているということをはっきり示していると思う。それで、一番最初に述べましたように、最近の大蔵大臣の答弁は、入場税が戦争税だという追及をはずされるために、税のバランス論を持ち出しておられる。ところが、いま私が指摘しましたように、その税のバランス論は非常に矛盾と撞着に満ちている。収拾しようがない、いまの御答弁を聞いておってもね。ですから、そういう税のバランス論というものそのものがすでに破綻していると思いますけれども、そのバランス論を依然としてこうやって固執されて入場税をかけているということ自身が、私は戦争中の例の総力戦思想のあらわれだというふうに思います。なぜかといえば、これは私が詳しく申し上げるまでもなく、昭和十三年の四月に日支事変の特別税法が成立した。それに続く昭和十五年の四月に、入場税法、通行税法、それから遊興飲食税法の三法が成立した。この三法は、当時としてはバランスがとれておった。なぜバランスがとれていたか。それは、戦費調達、ぜいたく追放、それから芸術はぜいたくだ、追放せよ、芸俯瞰視というような総力戦思想があって、はじめて、各税間のバランスが私はとれていたと思う。大臣のバランス論というのも、こういう総力戦思想のなごりそのものだ。そうでしょう。つまり、芸術はぜいたくだというような見方、あるいは芸術に対する事実上いろいろの差別をして、課税するものと課税しないものというような差別と干渉、これに結びついているものだというふうに考えます。こういう総力戦思想のなごり、しかも、すでに破綻している各税間のバランス論、こういうものを捨てて、音楽、演劇、舞踊、映画などに対する入場税を撤廃すること、それからその第一段階として、衆議院で四党修正案を出しましたけれども、この四党修正案の内容を即時実行することを私は最後に強く大蔵大臣に要求したいと思います。すでに両院決議もあったことでありますし、一体これをどうなさるおつもりなのか、今後ですね。その点についての御見解をあわせて伺いたいと思います。
  121. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) 入場税は戦時中に始められたものでありますが、今日の入場税を私どもが維持するゆえんは、何も総力戦思想だとか戦争推進だとかそんな考え方ではございません。これは先ほどから主税局長からもるる申し上げておりますが、税の体系の中のバランス、こういうところから考えると、これはそう批判を受ける税ではないと、こういう考え方に立っておるわけです。しかし、三十円というような零細な額、これはいかがなものであろうかと、こういうことから、百円ということに改正をするわけでありますが、まあとにかくそういう原案を練りに練った上提案をいたしておりますので、ぜひそれに賛成をしていただきたい。したがって、千円という免税点を設定すべしという衆議院野党四派の御提案、これは私どもは反対でございます。  それからなお、渡辺さんが、両院で決議があった決議があったと言うが、いかなる段階で決議があったのか、私どもは寡聞にして承知しておりませんが、決議はないはずでございます。その点も一つ申し添えておきます。
  122. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  123. 柴田栄

    委員長柴田栄君) それでは速記を起こして。  ただいま議題となっております五案件中、租税及び金融等に関する調査はこの程度にとどめ、残り四法案につきまして、御発言もなければ、質疑が尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  124. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより四法案を一括して討論に入ります。御意見のある方は、賛否を明らかにしてお述べを願います。——別に御発言もないようでございますが、討論はないものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 御異議ないと認めます。  それでは、これより順次採決に入ります。  まず、相続税法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  126. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 全会一致と認めます。よって、本案は、全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、入場税法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  127. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 多数と認めます。よって、本案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、国際開発協会への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  128. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 多数と認めます。よって本案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、日本輸出入銀行法による貸付金利息特例等に関する法律案を問題に供します。本案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  129. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 多数と認めます。よって、本案は、多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
  130. 中山太郎

    ○中山太郎君 私は、ただいま可決されました日本輸出入銀行法による貸付金利息特例等に関する法律案に対し、自由民主党、日本社会党、公明党及び民社党四派共同による附帯決議案を提出 いたします。  案文を朗読いたします。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いい たします。
  131. 柴田栄

    委員長柴田栄君) ただいまの中山君提出の附帯決議案を議題といたします。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  132. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 多数と認めます。よって、中山君提出の附帯決議案は、多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、福田大蔵大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。
  133. 福田赳夫

    国務大臣福田赳夫君) ただいまの附帯決議につきましては、政府といたしましても、御趣旨を体して十分努力してまいりたいと存じます。
  134. 柴田栄

    委員長柴田栄君) なお、ただいま可決されました四法案につきまして、本院規則第七十二条により議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  135. 柴田栄

    委員長柴田栄君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  次回の委員会は明後二十五日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十六分散会      —————・—————