○
国務大臣(
福田赳夫君) 私は、日中間は、隣国としてなるべく仲よくしなきゃならぬと、こういうふうに考えておるわけです。その方法として、とにかく
経済交流ですね、これは積極的に進めるべきであると、こういう考え方で、この間岡崎さんが覚え書き
貿易の交渉に行かれるその前におきましても、岡崎さんに対しまして、
特恵問題の話が出たら、向こうが、手をあげるという
わが国の方式に乗ってくる、こういうことであれば、これはひとつ前向きに考慮しましょうと。また、決済につきましても、これは対等の
立場から言えば円元決済です。しかし、中共側において元元決済だと、こういうようなことにこだわる、こういうような傾向があれば、あえて円元決済にこだわることをしない。そこまでやって、とにかく
貿易の相互交流、これを進めたらどうでしょうかと、こういうふうに申し上げておるわけでありまして、決して日中
貿易を阻害をしている、これに冷たい態度をとっているという状態ではないんで、むしろ考え方によると、厚い考え方をとっておると、こういうふうに御理解願っていいんじゃないかと思います。
それから輸銀の問題は、これはいま吉田書簡ということを
お話しでございますが、これは、もう
政府において吉田書簡なんていうことは言っておりません。おっしゃるのは、
木村さんのほうなんです。(「おかしいですな」と呼ぶ者あり)私どもは、吉田書簡、だからこうだというようなことはもう一切言っておりませんし、この間通産大臣からはっきりそのような答弁をしておるわけなんです。だから、ケース・バイ・ケースだと言うのです。ケースによっては、これは吉田書簡というものと相背馳して、輸金による延べ払いというケースもあり得ると。これはケース・バイ・ケースなんです。ところが、そのケースがなかなかむずかしいんです、そういうケースが出てくるのが。つまり、ケース・バイ・ケースという方式は、
わが国としてひとり
中国に対してのみとっている方針じゃないんです。相手が他の自由主義
諸国といたしましょうか、それに対しましても、延べ払い輸銀融資を全部与えているわけじゃないんです。ケース・バイ・ケースで
判断いたしまして、これは
わが国益とどういう連なりがあるか、こういうことから与えているわけであります。
中国に対しましてケース・バイ・ケースという考え方、これは決して観念的に他の
諸国と変わっている考え方じゃありません。ただ、
中国の置かれておる国際社会における
立場、そういうようなところがなかなかこのケースが出てこないと、こういうことなんですね。たとえば、商社が
中国と接触をします。そして、何か機械の輸出を考えるという際に、さあ長期延べ払い方式でいこうかというような際には、またこれがいろんな国にいろんな影響があります。場合によると、その商社が他の国から締め出されるというような場合もなきにしもあらず、そういうようなことで、商社としても非常に慎重なわけなんです。そこで、ケース・バイ・ケースの該当するケースというものがなかなか出てこないというのが現状でございますが、決して吉田書簡にとらわれてどうのこうのという考え方は持っておらぬということだけははっきり申し上げさせていただきます。