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参考人(
小泉明君) ただいま御
紹介にあずかりました
小泉でございます。
先ほどから
お話に出ております
金融制度調査会の
臨時委員をやっておりました
関係でここで
意見を述べろという
お話になったのだと思います。
結論から申しますと、この二つの
法案はいずれも
調査会の
答申の線に沿っておると思いますので、
賛成でございます。
その
金融制度調査会の
考え方を多少述べさせていただきますと、
金融の
効率化ということが非常に大きく打ち出されまして、その
関係で
預金法案が出てきたというふうに理解されますし、確かにそういう面があるわけでありますが、何か、
世の中には、
金融の
効率化ということで
競争を激しくさせるのじゃないか、それでばたばたとつぶれる
金融機関が出るかもしれないというので
預金保険制度を
考えたのかというような、非常に片寄った解釈の方もあるようでございますが、決してそういうことはないと私は思います。
金融の
効率化というようなことが強くスローガン的に打ち出されましたけれ
ども、もともと
金融制度調査会で
考えるべき課題は、当面の問題というよりも、十年、二十年ぐらい先まで
考えてその
制度を変えるべき点があったらば
考えてほしいと、こういう諮問の
趣旨である、こういうふうに伺って
議論が始まったわけであります。そういうわけでありますから、いまこの
預金保険法案を通さないとたいへんなことがあるとか、差し迫ってそういうことが必要になるとかいうことではなくて、十年、二十年を
考える、そういうことで
考えますと、こういう
預金者保護をいままでよりもさらに一そう合理的にやる
方法をとっておくのが必要じゃなかろうかと、こういうことで
意見がまとまったのだと思います。ほかの論点につきましては、いろいろ異論もありまして、なかなか
意見が一致しなかったわけですが、この
預金保険法案につきましては、積極的と消極的の差はありますが、ほとんどの方が御
賛成であってこういうふうにまとまったと思います。
ですから、
委員会の席上ではあまり
反対論はなかったわけでありますが、そんなものはなくてもいいじゃないかというお
考えも
世の中に耳にするわけでありますが、なくてもいいというばかりでなく、あるとかえってその
法案にたよって
銀行経営あるいは
金融機関の
経営が不健全になるのじゃないかと、こういうような
お話もあります。それにつきましては、いま
伊原参考人もおっしゃったように、決して
金融機関のほうで
健全経営の原則をこのためにゆるがせにするというようなことはないと思います。会社が
火災保険に入っているから火の
用心をしなくてもいいかと、そういうようなことではないというふうに私は思うのでありまして、これはやっぱり火の
用心は火の
用心でやる、
火災保険は
火災保険でやると。それからまた、
金融機関だけではありません。
大蔵あるいは
日本銀行当局におかれましても、
金融恐慌というようなことが起こらないようにと、こういう配慮は十分これからもおとりになるというふうに私は
期待しているわけであります。
そんなことはまあ当然のことでありまして、そうしますと、それじゃなぜ必要かということになりますが、この
法案ができたということについて非常に影響があるといいますか、
参考にされたのは
アメリカの
制度だと思いますが、
アメリカの
預金保険法案は、やはり
銀行恐慌の苦しい経験から出てきたわけであります。確かに、そういうことで出てきたわけでありますが、それだからといって、すべて
保険制度にまかせるというわけではないことも明らかでありまして、ただ、
不況とか
銀行恐慌ということに関連して申し上げますと、大体、
産業界の
不況、生産過剰というほうは、
商品が生産されておりまして、これが滞貸になる、在庫は幾らあるということがはっきりしておりまして、そして売れ行き不振でその売り値を下げなくちゃならぬとか、滞貨になるとかということがありますが、
金融恐慌というほうは、歴史を見ますと、結局、確かにその
根本原因がありますが、それがどのくらいの
規模まで広がるかということは全く
社会心理的な
信用の問題でありまして、どこかの
銀行があぶない、だれか取りつけがあるということになると、
不安心理が広がる。
日本の
昭和二年の
恐慌にしましても、御
承知のように、議会の中の
大蔵大臣の発言がきっかけになったというようなことでございますが、このときに
預金保険制度というようなことがありますと、おれの
預金は百万円以下だと、だからそんなばたばたあわてて行かないでも、とにかくその元本は保証されているんだということになりますと、あわてることはない。そういうわけてありますから、
預金保険制度があるということが、万一
金融機関に破綻が起こった場合にも、それが全面的な
恐慌というようなことにはならない
一つのブレーキになるのじゃないかと、この点がいままで
速記録を拝見いたしますとあまり触れておられないようなので、この点を申し上げたいと思います。つまり、できるだけ
大蔵、
日銀当局は
恐慌の起こらぬようになさると思いますけれ
ども、万一どこかで不安が起こる、
山陽特殊鋼のような例が起こるとしましても、全部の
預金者が不安を感ずるというようなことはない。そうすれば、非常に対策もやりやすいというような面があるように思います。
ただ、そのためにコストが非常に高くかかるということであると困るというまた不安もございまして、でき上がった案を見ますと、非常に簡素なシステムになるということでございますから、このくらいであれば、
金融界全体としては
貸し出し金利にはね返るというようなことはなくて済むのじゃないかというところにおさまっているように思います。この点は、
機構としましては
アメリカと非常に遣いまして、
アメリカはもう少し大きなスタッフを使っているようでありますが、それはある
加盟機関に対しては
保険機構のほうが
監督をするというようなことを引き受けているからだと思います。
日本の場合には、
監督というようなことは、いままでどおりの
大蔵なり
日本銀行にまかせるということで、全くお金だけを集め、また、万一の場合には支払う、そういう仕事を制限したために
一つは非常に安くできることになっているのじゃないかと思います。
それからまた、
金融機関と申しましても、いろいろ、大きいところから小さいところとありまして、
自分の
業界では全然そんな心配はないんだというようなところは
保険料なんというものはもともと払う必要はないんじゃないかというお
考えのところもあるかと思いますけれ
ども、今日は
内部経済、
外部経済というようなこともありまして、公害問題なんかになりますと、必ずしも
自分の
機関の中だけの採算ではやっていけないというようなときでございますから、やはり
金融界全体の
連帯、そういったようなことをお
考えになって御
協力を願うということになったんだと思います。
そういうような
意味で、この
制度ができましても、
効率化というために、急にいままでの過
保護というか、その
反対には過
保護ということがいわれておりますが、まあ過
保護というのがいい表現かどうかわかりませんが、いままでの行き方を一朝一夕で変えろというようなものではないし、そういうはことできないのじゃないかと思っております。さっき申しましたように、十年、二十年先を
考えますと、だんだんに
競争原理というのはもっと入れざるを得ないだろうというふうに私も思いますけれ
ども、そうかと申しまして、戦後この二十年間にやってきました実績というものがありまして、それからまた、まだまだそれぞれの
業界、その専門
分野というようなものの
意味が必ずしもなくなっていないわけでありますから、ただ、長い目としては徐々にかきねを低くしていく。これは、
国際化というようなこともありますし、あるいは戦後の
日本の非常な窮乏状態から脱却してきたということでゆとりが出てきたということもありまして、だんだんにそういうふうになるということではないかと思います。
あまりいい例じゃないかもしれませんけれ
ども、お米にしましても、戦争直後のように一千万人ぐらい飢え死にするのじゃないかというときには、非常に厳格な配給
制度が必要でありますけれ
ども、だんだん米がたくさん余ってくると、逆に、消費者を
保護しているのじゃない、これは生産者
保護だというふうに
意味が変わってまいりますとまた問題が出てくるというようなわけで、過
保護というのもいろいろありますが、
日本の資本蓄積が少なくて、それをできるだけ適正な
資金配分をやろうというようなところからいろいろな手が打たれてきたのだと思いますが、だんだんにゆとりが出てくれば、かえってそのほうが能率が悪いという反省が
効率化ということだというふうに私は思っております。
そういうようなわけで、
預金保険法案は、こういうような形でありますと、私は
賛成であります。
それから
貸付信託法のほうも、運用先をだんだんに広げていく。これも、いま申しましたように、最初は、二十年代、三十年代の初めは、基幹
産業を
育成するということが非常に重点でございましたが、だんだんそれも一段落ついたという段階でございますから、住宅であるとか、あるいは都市開発であるとか、先ほど
伊原参考人がおっしゃった
地域開発とか、そういうようなまだまだ残された
分野に行く。特に、
長期金融機関でありますから、
長期資金の面でいろいろ新しい
分野に進出されるということは非常にけっこうなことじゃないかと思います。
産業ということばを広く使ったり狭く使ったりするわけですが、このごろは住宅
産業とかレジャー
産業ということばがございますから、これは
産業ということばをとるかとらないかというのは表現の問題で、要するに
趣旨が広がっていくということであろうと思いまして、
賛成でございます。
それから
景気調整ということにつきましても、
貸付信託の金利を払うのには公社債ではコストから見てどうかという点もあるようでございますが、先ほど申しましたように、短期のことでなくて、相当十年、二十年先まで
考えるということになりますと、やはりこういう弾力性が非常に必要ではないか。そうでないと、さっき申しました
景気調整政策というものもやりにくい。
公社債市場の
育成にもこれが役に立つというような
意味で私は
賛成でございます。